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ドイツのエネルギー革命

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ドイツのエネルギー 転 換


ドイツのエネルギー 転 換<br />

ドイツでのエネルギー 供 給 の 改 編


02 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

Energiewende ドイツのエネルギー 転 換<br />

ようこそ!<br />

ドイツの 未 来 のための 最 も 重 要 なプロジェクトの 一 つであるエネルギー 転 換 に<br />

ついての 情 報 をお 求 めいただき 嬉 しく 思 います。<br />

我 々は、ドイツ 国 内 のエネルギー 供 給 を 根 本 的 に 再 生 可 能 エネルギーに 切 り 替<br />

えて、エ ネル ギ ー 効 率 性 を 向 上 すべく 決 定 をいたしました 。そ れ により 経 済 の 面<br />

でも 見 合 うかたちで 気 候 保 護 に 多 大 な 貢 献 を 行 うことが 目 的 です。<br />

エネルギー 転 換 は、どのようにエネルギー 供 給 を 安 全 、 経 済 的 かつ 持 続 可 能 に<br />

するのかという 問 いへの 答 えです。それは、 経 済 の 拠 点 ドイツにとって 唯 一 のチ<br />

ャンスであり、ビジネスの 新 規 開 拓 、 革 新 の 促 進 、 雇 用 と 成 長 をもたらすと 同 時<br />

に、 我 が 国 の 石 油 ・ガス 輸 入 への 依 存 を 減 らしつつ、 我 が 国 の 生 活 の 質 を 確 保<br />

します。<br />

© iStock/SilviaJansenx © Paul Langrock<br />

1971 年<br />

ドイツ 政 府 は 最 初 の 環 境 プログラムを 実 施 しました。


© dpa/Westend61/Werner Dieter<br />

ドイツのエネルギー 転 換 | 03<br />

なぜこの 展 示 会 を 開 催 するのですか?ドイツ 政 府 は、 世 界<br />

中 から 非 常 に 頻 繁 にエネルギー 転 換 についての 質 問 を 受<br />

けます。 有 難 いことに、「Energiewende」(エネルギー 転 換<br />

の 原 語 )がすでに 多 くの 言 語 で 外 来 語 になったほど 関 心 が<br />

高 まっています。<br />

同 時 に、プロジェクトの 規 模 や、 関 連 する 観 点 の 多 さに 大<br />

勢 の 人 が 驚 いて います。このことはまた 、エ ネル ギ ー 転 換 が<br />

一 朝 一 夕 に 実 現 できるものではないことを 示 しています。エ<br />

ネルギー 転 換 は 、 何 世 代 にもわたり、か つ 多 くの 要 素 が 絡<br />

み 合 うプ ロセスな ので、たくさん の 様 々な 要 件 を 満 たす 必<br />

要 があります。 必 要 となる 措 置 は、 気 候 保 護 と 豊 かさを 両<br />

立 するために 熟 慮 したものでなければなりません。そのため<br />

進 展 が 遅 々とした 歩 みとなる 時 期 も 繰 り 返 し 生 じます。この<br />

展 示 会 では、まさにこの 多 様 な 課 題 やチャレンジを 展 示 い<br />

たしたく 思 います。<br />

エネルギー 転 換 は 国 際 枠 組 みに 確 実 に 組 み 込 まれていま<br />

す。 近 隣 欧 州 諸 国 および 国 際 パートナーとのインテンシブ<br />

な 交 流 を 模 索 し、 国 境 を 越 えた 協 力 と 解 決 策 を 目 指 してい<br />

ます。 世 界 中 の C O 2<br />

排 出 量 を 減 らし、 地 球 温 暖 化 を 抑 え、<br />

安 全 で 持 続 可 能 かつ 経 済 的 なエネルギー 供 給 を 果 たすた<br />

めには、 共 同 の 解 決 策 が 必 要 です。<br />

ドイツは、 地 球 と 人 間 への 責 任 を 真 摯 に 受 け 止 め、エネル<br />

ギー 転 換 はその 気 持 ちの 表 明 です。エネルギー 転 換 を 追<br />

体 験 し、 整 理 してみてください。<br />

展 示 会 と 交 流 をお 楽 しみいただけますことを 願 っております。<br />

1972 年<br />

ドイツ 南 部 の 小 さな 町 のペンツベルクで、ドイツ 最 初 の 太 陽 光 発 電 住 宅 団 地 の<br />

一 つが 建 設 されました。


04 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

エネルギー 効 率 性<br />

省 エネおよびエネルギー<br />

効 率 の 向 上<br />

電 力 効 率 、 熱 効 率 および 燃 料 効 率 の 高 さは、 節 約 や 給 電 の 安 定 性 、そして 気<br />

候 保 護 をもたらします。ドイツはエネルギー 源 の 大 部 分 を 輸 入 する 必 要 がありま<br />

す。 総 エネルギー 需 要 の 輸 入 量 は、1970 年 代 は 約 50%でしたが、ほぼ3 分 の2<br />

に 増 加 しており、エネルギー 効 率 は 再 生 可 能 エネルギーの 導 入 拡 大 と 共 にエネ<br />

ルギー 転 換 の 柱 となります。<br />

ドイツでは、 過 去 数 十 年 にわたってエネルギー 効 率 の 重 要 性 に 対 する 意 識 が 高<br />

まっています。1973 年 の 第 一 次 オイルショックが 大 きな 誘 因 となって、ドイツ 人 は<br />

どれだけ 化 石 燃 料 に 依 存 しているのかが 明 らかになったのです。 結 果 、 当 時 のド<br />

イツ 政 府 は、 省 エネについての 情 報 キャンペーンを 開 始 し、アウトバーンで 速 度<br />

制 限 を 制 定 しました。それ 以 来 、 引 続 き 多 数 の 法 律 が 可 決 され、エネルギー 効 率<br />

対 策 の 実 施 に 成 功 しました。これらの 法 律 と 対 策 の 特 徴 は、 特 定 の 助 成 、 情 報<br />

提 供 、とコンサルティング、 拘 束 力 ある 省 エネの 目 標 値 の3つの 要 素 です。<br />

© dpa/Jörg Carstensen © dpa/Westend61/Werner Dieter<br />

1973 年<br />

第 四 次 中 東 戦 争 (1973 年 10 月 )は 世 界 中 にオイルショックを 引 き 起 こしました。<br />

ドイツはエネルギーを 節 約 するため、 車 のない 日 曜 日 を4 回 全 国 で 指 定 しました


ドイツのエネルギー 転 換 | 05<br />

ドイツの 省 エネターゲット<br />

2008 年 に 比 べた 主 要 なエネルギー 消 費 量 低 減 の 目 標<br />

経 済 は 成 長 、エネルギー 消 費 量 は 低 下<br />

国 内 総 生 産 および 主 要 なエネルギー 消 費 量 の 遷 移<br />

1,959 15,152<br />

2,359<br />

14,771<br />

2,497<br />

14,217<br />

3,263<br />

13,525<br />

50% 減 6% 減<br />

1990 年<br />

2000 年<br />

2010 年<br />

2017 年<br />

2050 年 2017 年<br />

までに 達 成<br />

10 億 ユーロ 単 位 の 国 内 総 生 産 は1990<br />

年 以 来 、 毎 年 平 均 1.4% 増<br />

1990 年 、2000 年 、2010 年 、2017 年 の1ペタジュー<br />

ル 単 位 の 主 要 なエネルギー 消 費 量 は、1990 年 以 来 、<br />

毎 年 平 均 0.3% 減<br />

「 最 善 のキロワット 時 は 使 わない 時 のものです。」<br />

ドイツ 連 邦 共 和 国 首 相 、アンゲラ・メルケル<br />

戦 略 は 成 功 しており、ドイツの 国 内 総 生 産 は 大 幅 に 上 昇 し<br />

ている 一 方 、エネルギー 需 要 は1990 年 以 来 低 下 していま<br />

す。よって、ドイツの 産 業 は10% 超 の 省 エネで 稼 動 しなが<br />

ら、 経 済 的 成 果 が2 倍 になっています。 技 術 進 歩 により、 家<br />

庭 と 会 社 のエネルギー 効 率 が 向 上 しています。 現 代 の 家 電<br />

は15 年 前 に 比 べ 、 電 力 消 費 量 が 7 5 %まで 削 減 されます。 更<br />

に 生 活 習 慣 の 変 更 も 省 エネになります。そのため、 何 万 人 も<br />

のエネルギー・コンサルタントがドイツ 全 土 においてエネル<br />

ギー 診 断 を 実 施 し、 賃 借 人 、 住 宅 所 有 者 と 企 業 に 省 エネの<br />

可 能 性 を 提 示 し、 国 のサポートプログラムについて 情 報 を<br />

提 供 しています。<br />

EU 加 盟 国 はすべて 主 要 なエネルギー 消 費 量 を2020 年 ま<br />

でに20%、2030 年 までに27% 以 上 低 減 することに 合 意 し<br />

て いま す。ドイツは エ ネル ギ ー 消 費 量 を 長 期 的 に 半 減 しよう<br />

としています。これは 気 候 に 関 するパリ 協 定 が 定 める 義 務<br />

の 一 部 です。<br />

エネルギー 生 産 性 の 大 幅 な 増 加<br />

1ギガジュール(GJ)のエネルギーで 多 大 なゲイン<br />

241.29 €<br />

+87%<br />

128.80 €<br />

1 GJ 1 GJ<br />

1990 年 2017 年<br />

1975 年<br />

エネルギー 確 保 法 は、ドイツの 道 路 におけるエネルギーリザーヴを 増 やすこ<br />

と、およびスピード 制 限 を 規 定 しました。ドイツ 政 府 は、 省 エネ 情 報 キャンペ<br />

ーンを 開 始 しました


06 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

暖 房<br />

快 適 に 暖 かく 再 生 可 能 で 効<br />

率 的<br />

エネルギー 転 換 の 成 功 は、エネルギー 需 要 が 屋 内 の 冷 暖 房 と 温 水 のためである<br />

のか、そして、どれだけ 再 生 可 能 エネルギーが 残 りの 需 要 に 応 えるかに 依 存 しま<br />

す。 暖 房 はドイツのエネルギー 消 費 量 の 半 分 以 上 を 占 めています。そのうちおよ<br />

そ3 分 の2が 我 が 国 の 約 4,000 万 世 帯 の 暖 房 と 温 水 に 使 用 されています。<br />

暖 房 用 エネルギー 需 要 低 減<br />

全 暖 房 用 エネルギー 需 要 低 減 の 目 標<br />

2,152ペタジュール<br />

2016 年 にドイツの4.000 万 世 帯 が 暖 房 ・ 温 水 に 消 費<br />

同 等 量<br />

18.3% 減 12.9 %<br />

80% 減 達 成 14% 達 成<br />

2016 年 2017 年<br />

2050 年 2020 年<br />

屋 内 での 主 要 なエネルギー 消 費 量<br />

(2008 年 比 )<br />

暖 房 需 要 における 再 生 可 能 エネルギー<br />

のシェア<br />

石 油 500 億<br />

リットル<br />

ドイツの 航 空 分 野 の 年 間 エネルギー<br />

需 要 の<br />

6 倍<br />

ウズベキスタン<br />

のエネルギー 需 要<br />

このため、ドイツ 政 府 は2050 年 までに 屋 内 用 の 石 油 ・ガスの 主 要 なエネルギー<br />

需 要 を 低 減 しようとしています。この 目 標 を 達 成 するには、 屋 内 用 のエネルギー<br />

© dpa/Jacobs University Bremen © dpa<br />

1975 年<br />

エネルギー 確 保 法 は、ドイツの 道 路 におけるエネルギーリザーヴを 増 やすこと、<br />

およびスピード 制 限 を 規 定 しました。ドイツ 政 府 は、 省 エネ 情 報 キャンペーンを 開 始 しました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 07<br />

効 率 を 著 しく 高 め 、 再 生 可 能 エ ネルギーによる 冷 暖 房 供 給<br />

のシェアを 増 大 させる 必 要 が あります。 再 生 可 能 エ ネルギ<br />

ーが2020 年 までに 冷 暖 房 需 要 の14%に 応 えることを 目 指<br />

しています。このように、ドイツはEUの 目 標 をも 実 施 してい<br />

ます。E Uの 現 在 の、 屋 内 用 エ ネルギー 効 率 性 に 関 する 指<br />

令 では、ヨーロッパにおいてすべての 新 築 建 物 が2021 年 以<br />

降 「ほぼゼ ロエ ネルギーの 建 物 」になる 必 要 が あることを<br />

規 定 しています。<br />

ドイツでは、 屋 内 にどれほどの 省 エネポテンシャルがある<br />

か を 早 期 に 発 見 しました 。す で に 1 9 7 6 年 に 、ドイツ 政 府 は<br />

オイルショックに 応 じて 第 一 次 の 省 エ ネルギー 法 と、 次 いで<br />

第 一 次 の 断 熱 令 を 制 定 しました 。そ れ らの 規 定 は 絶 えず 更<br />

新 され、 技 術 が 進 むにつれて 適 応 されています。 再 生 可 能<br />

エネルギー 再 生 可 能 エネルギー 熱 法 では、2009 年 以 来 す<br />

べての 新 築 住 宅 が 再 生 可 能 エネルギーによりエネルギー<br />

需 要 の 最 低 シェアに 応 える 必 要 があります。 対 応 策 には、<br />

例 えば、 太 陽 熱 によるガス 暖 房 、 石 油 暖 房 のサポート、ある<br />

いは、ヒートポンプやペレットヒータなどの 再 生 可 能 エネル<br />

ギーだけを 使 う 式 暖 房 機 器 の 設 置 があります。<br />

ドイツでは、 全 住 宅 用 建 築 物 の70%が 築 35 年 以 上 で、 第<br />

一 次 の 断 熱 令 が 制 定 される 前 に 建 設 されました。よって、<br />

多 くの 建 物 はしっかり 断 熱 されず、しばしば 古 いボイラ、 油<br />

や ガ ス など の 化 石 燃 料 で 暖 房 さ れて いま す。 平 均 して、ドイ<br />

ツの 平 均 的 家 庭 は 暖 房 に 毎 年 居 住 空 間 1 平 方 メートルあた<br />

り 約 145キロワット 時 消 費 しており、 石 油 約 14. 5リットルに<br />

相 当 します。 効 率 の 高 い 新 築 建 物 はこの 量 の1 割 しか 要 り<br />

ません。エネルギー 効 率 向 上 策 を 実 施 し 再 生 可 能 エネルギ<br />

ーに 切 り 替 えることにより、 既 存 建 築 物 の 主 要 なエネルギ<br />

ー 需 要 を80%まで 低 減 することができます。そうするには、<br />

外 装 断 熱 の 改 善 、 建 材 の 更 新 、 現 代 的 な 暖 房 ・ 冷 却 機 器<br />

および 制 御 技 術 の 最 適 化 が 必 要 となります。2015 年 だけ<br />

でも、エネルギー 効 率 向 上 策 に530 億 ユーロ 投 資 しました。<br />

ドイツ 政 府 は 当 政 策 を 低 金 利 クレジットと 助 成 金 で 助 成 し<br />

て いま す。この エ ネ ル ギ ー 効 率 向 上 策 に よって、ドイツの 国<br />

民 は2016 年 に 一 人 当 たりおよそ500ユーロ 節 減 しました。<br />

これは 世 界 でもトップクラスです。<br />

古 くなった 暖 房 装 置 を 交 換 して 化 石 燃 料 源 を 再 生 可 能<br />

エネルギーへ 転 換 することが 特 別 な 着 眼 点 です。 石 油 暖<br />

房 は 、19 7 5 年 のドイツ で は 全 住 宅 の 少 なくとも 半 数 であ<br />

ったのに 対 し、 今 日 ではわずか4 分 の1 未 満 となっていま<br />

す。2016 年 に 完 成 した 新 築 住 居 では、60%が 暖 房 に 再 生<br />

可 能 エネルギーを 使 用 しています。 周 囲 熱 を 利 用 する 太 陽<br />

熱 プラント、バイオマス 暖 房 設 備 、またはヒートポンプは、<br />

すでに 暖 房 需 要 の 約 12%を 供 給 しています。ドイツ 政 府<br />

は、 交 換 を 促 進 するため2000 年 以 来 ヒータの 更 新 を 助 成<br />

しています。<br />

屋 内 でどれくらいエネルギーを 消 費 していますか?<br />

ドイツにおける 全 エネルギー 消 費 のシェア<br />

新 築 建 物 では、その1 割 しか 消 費 しません。<br />

建 物 の 種 類 別 居 住 空 間 1 平 方 メートルあたり 年 間 暖 房 用 エネルギー<br />

消 費 量 ( 灯 油 リットルで 表 示 )<br />

36.0%<br />

屋 内<br />

15~20リットル<br />

未 改 装 の 古 い 建 物<br />

5~10リットル<br />

改 装 済 みの 古 い 建 物<br />

7リットル<br />

新 築 建 物<br />

28.0%<br />

暖 房<br />

4.7%<br />

温 水<br />

2.8%<br />

照 明<br />

0.4%<br />

空 調<br />

1.5リットル<br />

パッシブハウス<br />

2016 年 時 点<br />

1977 年<br />

ドイツ 政 府 は 断 熱 令 をもって 建 築 物 エネルギー 効<br />

率 基 準 を 初 めて 定 めました。


08 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

「 石 油 時 代 は 終 焉 へ 向 かっています。」<br />

Daimler AG 社 、ディーター・ツェッチェ<br />

© dpa/Paul Zinken<br />

1979 年 ~1980 年<br />

イラン・イラク 戦 争 は 第 二 次 オイルシ<br />

ョックを 引 き 起 こしました。<br />

1984 年<br />

エネルコン 社 はドイツで 最 初 の 近 代 的 な<br />

量 産 型 の 風 力 発 電 設 備 を 開 発 しました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 09<br />

モビリティ<br />

電 力 で 走 る<br />

自 動 車 はドイツの 最 も 重 大 な 輸 出 製 品 です。 自 動 車 産 業 に<br />

は75 万 人 が 従 事 し、 国 内 最 大 の 雇 用 主 に 数 えられます。<br />

同 時 に、 交 通 部 門 は 多 量 のエネルギーを 消 費 し、ドイツの 最<br />

終 エネルギー 消 費 量 のおよそ3 分 の1を 占 めます。このため、<br />

ドイツ 政 府 は 消 費 量 低 減 活 動 の 強 化 に 取 り 組 んでいます。<br />

すでに 結 果 が 目 に 見 えるように 出 始 めています。 例 えば、 貨<br />

物 や 乗 客 の 毎 年 の 走 行 距 離 は1990 年 から2017 年 までの<br />

間 にほぼ2 倍 となりましたが、 消 費 量 では 同 期 間 にわずか<br />

9%の 上 昇 でした。<br />

加 えてドイツでは、 一 層 の 省 エネを 目 的 に、 高 効 率 な 自 動<br />

車 技 術 を 開 発 し、 道 路 車 両 の 電 気 化 に 取 り 組 んできます。<br />

特 には、 市 街 地 交 通 および 公 共 交 通 用 の 乗 用 車 とトラッ<br />

ク、ならびにオートバイを 中 心 に、 電 動 化 が 進 められていま<br />

す。この 実 現 に 向 けては、ドイツ 政 府 は 数 多 くのプログラム<br />

により 市 場 開 発 と 技 術 開 発 を 促 進 しています。<br />

燃 料 電 池 自 動 車 は、 電 池 式 電 気 自 動 車 の 重 要 な 補 充 と 見<br />

なされています。2019 年 までには、 水 素 電 池 や 燃 料 電 池 の<br />

プロジェクトに 国 から16 億 5,000 万 ユーロの 助 成 金 が 提 供<br />

されます。 水 素 ハイブリッドバスはす でに 幾 つか のドイツの<br />

地 域 で 公 共 交 通 に 使 用 されています。<br />

気 候 に 優 しいドライブ 方 式 に 加 えて、 自 動 車 、 自 転 車 、 電 動<br />

スクータのシェアリングなどの 新 モビリティコンセプトが 重<br />

要 度 を 増 しつ つあります。こうして1 台 の 車 両 を 数 人 で シェア<br />

することで、 路 上 の 渋 滞 を 緩 和 し、 排 出 量 を 低 減 します。デ<br />

ジタル·ソリューションは、 交 通 に 関 連 したオファーを 効 率<br />

化 し、さらには 自 転 車 への 移 行 の 支 援 となるものです。ドイ<br />

ツの150 社 のカーシェアリング 提 供 業 者 には、 現 在 210 万 人<br />

超 のユーザが 登 録 しています。<br />

エネルギー 転 換 が 交 通 分 野 でも 成 功 するために、 日 常 生<br />

活 、 政 策 、 経 済 といった 多 くの 分 野 で 変 革 が 必 要 となりま<br />

す。そのため 市 民 のモビリティを 損 なうことなく 交 通 を 持 続<br />

可 能 なものとするこのプロセスには 時 間 が 必 要 なのです。<br />

ドイツの 交 通 部 門 における 目 標 および 経 過<br />

エネルギー 効 率 の 向 上<br />

100 kmを 運 転 するにはどれだけのエネルギーが 必 要 ですか?<br />

1990 年<br />

66.1 メガジュール<br />

100 km<br />

2013 年<br />

35.6 メガジュール<br />

100 km<br />

eモビリティの 普 及<br />

8,280 万 人<br />

ドイツの 人 口<br />

6,370 万 台<br />

ドイツ 国 内 許 可 車 両 数<br />

44,419 台<br />

イー·モバイル<br />

2018 年<br />

のeモビリティ<br />

+<br />

236,710 台<br />

ハイブリッド 車 両<br />

2018 年<br />

のドイツ<br />

2022 年<br />

までのeモビリティの 普 及<br />

100 万 台<br />

1986 年<br />

ウクライナのチェルノブイリ 原 子 力 発 電 所 で 重 大 な 原 発 事 故 が 発 生 しました。<br />

ドイツでは 連 邦 環 境 ・ 自 然 保 護 ・ 原 子 炉 安 全 省 が 創 設 されました。<br />

1986<br />

初 の 路 上 走 行 可 能 ソーラーモバイ<br />

ルな 自 動 車 がドイツ 全 土 を 走 行 。


10 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

再 生 可 能 エネルギー<br />

風 力 発 電 および 太 陽 光 発 電<br />

再 生 可 能 エネルギーの 普 及 は、エネルギー 効 率 と 共 にエネルギー 転 換 の 大 黒 柱<br />

となります。 風 力 、 太 陽 光 、 水 力 、バイオマス、 地 熱 による 発 電 は 気 候 に 優 しい 国<br />

産 エネルギー 源 としてドイツの 化 石 燃 料 への 依 存 を 減 らし、 気 候 保 護 において 重<br />

要 な 役 割 を 果 たします。<br />

電 力 分 野 では、 再 生 可 能 エネルギーを 最 も 高 度 に 採 用 しています。2014 年 以<br />

来 、ドイツの 電 力 系 統 の 中 でも 最 も 重 要 なエネルギー 源 で、 我 が 国 の 電 力 消 費<br />

量 の3 分 の1 以 上 を 供 給 するものです。10 年 前 は、わずか9%だけに 応 えていまし<br />

た。この 成 功 の 基 礎 となったのは、 目 的 別 の 助 成 でした。 市 場 を 新 技 術 に 開 放<br />

する 目 的 で 固 定 報 酬 と 購 入 義 務 を 初 めて 規 定 した 電 力 供 給 法 に 基 づき1991 年<br />

に 開 始 されました。 次 に、20 0 0 年 に 再 生 可 能 エネルギー 法 (EEG)を 制 定 しまし<br />

た。 多 様 な 技 術 に 対 する 保 証 付 き 供 給 料 金 、 優 先 される 電 力 系 統 への 給 電 、そ<br />

れに 伴 う 構 成 中 核 要 素 があります。<br />

© aleo solar AG/Flo Hagena<br />

再 生 可 能 エネルギーは 電 力 系 統 の 中<br />

で 最 も 重 要 なエネルギー 源 です。<br />

総 エネルギー 消 費 量 における 再 生 可 能 エネルギーのシェア<br />

再 生 可 能 発 電 の 最 大 シェアは 風 力 です。<br />

2017 年 の 再 生 可 能 エネルギー 総 生 産 におけるシェア<br />

3.4%<br />

1990 年<br />

6.2%<br />

2000 年<br />

17.0%<br />

風 力<br />

16.3%<br />

2010 年<br />

33.3%<br />

2017 年<br />

太 陽 光<br />

6.1%<br />

水 力<br />

3.1%<br />

バイオマス<br />

6.9%<br />

1987 年<br />

ドイツ 初 のウィンドパーク、ヴィントエネルギ<br />

ーパルク・ヴェストキュステ( 西 海 岸 )が 建 設<br />

されました。30 基 のタービンで 発 電 します。<br />

1990 年<br />

ドイツ 政 府 は 太 陽 光 発 電 所 を 助 成 す<br />

るため「1,000の 屋 根 プログラム」を<br />

開 始 しました。<br />

1990 年<br />

東 西 ドイツが 統 一<br />

されました。


© dpa<br />

ドイツのエネルギー 転 換 | 11<br />

再 生 可 能 エネルギーは 発 電 と 気 候 保 護 を 強 化 します。<br />

2017 年 の 指 標<br />

再 生 可 能 エネルギー 法 により<br />

170 万 ヶ 所<br />

の 発 電 所 が 助 成 を 受 けました。<br />

発 電 量<br />

217テラワット 時<br />

インドネシアにおける 総 発 電 量 にほぼ 相 当 します<br />

1 億 7,900 万 トン<br />

に 相 当 するCO 2<br />

排 出 量 を 回 避 しました。<br />

2015 年 のチリにおける 温 室 効 果 ガス<br />

排 出 量 の2 倍 以 上 に 相 当 します。<br />

再 生 可 能 エネルギー 法 が 発 効 して 以 来 、 年 間 投 資 額 は 木<br />

材 燃 焼 発 電 所 、バイオガス 発 電 所 、 特 には 新 型 風 力 発 電<br />

所 や 太 陽 光 発 電 所 において 引 き 続 き 上 昇 しています。 需 要<br />

の 高 さが 新 たな 経 済 分 野 を 生 み、ドイツだけでも 新 雇 用 を<br />

33 万 8,000 件 超 創 出 し、 再 生 可 能 エネルギー 設 備 の 効 率<br />

的 な 量 産 を 刺 激 し、 世 界 中 で 大 幅 な 設 備 価 格 低 下 につな<br />

がりました。 例 として、2014 年 、 太 陽 電 池 モジュールは5 年<br />

前 に 比 べ 価 格 が75% 下 がり、2000 年 ではドイツの 太 陽 光<br />

電 力 の1キロワット 時 は 、5 0 セント 相 当 でしたが 、 現 在 で は<br />

4セント~5セントです。 太 陽 光 発 電 は、 日 照 時 間 がそれほ<br />

ど 長 くない 中 欧 に 位 置 するドイツで 重 要 な 電 力 源 となるに<br />

至 りました 。 再 生 可 能 エ ネルギー のうち 太 陽 光 発 電 設 備 が<br />

現 在 電 力 のおよそ5 分 の1を 占 めています。<br />

再 生 可 能 エネルギーのうち 現 在 最 も 重 要 な 電 力 源 は、 風<br />

力 で す。 陸 上 の 風 力 ター ビ ン に よる 発 電 に は 、も は や 平 均 1<br />

キロワット 時 1.9~2.5セントしかかかりません。<br />

ドイツは、 手 頃 な 価 格 を 維 持 し、 給 電 の 安 定 性 に 貢 献 すべ<br />

く、 風 力 エネルギーと 太 陽 光 エネルギーの 拡 大 に 挑 戦 して<br />

います。そのため、ドイツ 政 府 は 電 力 分 野 における 再 生 可 能<br />

エネルギーへの 助 成 を 再 構 築 して、 風 力 エネルギー、 太 陽<br />

光 エネルギーの 安 い 技 術 に 注 力 しています。それぞれの 技<br />

術 の 年 間 の「 拡 大 回 廊 」により、 拡 大 の 計 画 と 実 施 が 容 易<br />

になります。 再 生 可 能 エネルギー 発 電 事 業 者 は 他 の 発 電 所<br />

と 同 様 に 市 場 へ の 電 力 販 売 を 徐 々に 実 行 して、エ ネルギ ー<br />

供 給 系 統 においてさらなる 責 任 を 負 います。2017 年 以 来 、<br />

発 電 量 750キロワット 超 のすべての 発 電 所 に 提 供 される 助<br />

成 金 額 は 特 定 の 技 術 の 入 札 を 行 って 算 出 されます。 年 間<br />

の 拡 大 の 約 80%を 占 めています。そのうえ 拡 大 には、 地 域<br />

差 もあります。 電 力 系 統 に 不 足 分 がある 場 合 は 常 に、 入 札<br />

金 額 は 低 くなります。こうして 電 力 分 野 に おける 再 生 可 能 エ<br />

ネルギーのサクセスストーリーが 続 いていくのです。これに<br />

伴 うコスト 低 減 により、この 他 にも 助 成 制 度 を 変 更 すること<br />

で、エネルギー 転 換 の 経 済 面 での 長 所 をより 良 く 活 用 でき<br />

るようになります。<br />

1990 年<br />

気 候 変 動 に 関 する 政 府 間 パネル(IPCC)<br />

は 世 界 気 候 に 関 する 初 の 評 価 報 告 書 を 公<br />

表 しました。<br />

1991 年<br />

電 力 供 給 法 では、ドイツ 国 内 の 全 エネルギー 供 給 者 が 再 生 可 能 エネルギー<br />

発 電 による 電 力 を 買 い 取 り、 電 力 系 統 に 給 電 することを 義 務 付 けました。


12 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

費 用<br />

「 エ ネ ル ギ ー 転 換 は 、ドイツ の<br />

人 々にとって 負 担 が 大 きすぎ<br />

るのでは?」<br />

いいえ、 将 来 エネルギーを 手 頃 な 価 格 で 確 保 することはエネルギー 転 換 の 目 標 の<br />

一 つです。エネルギー 転 換 それ 自 体 が 雇 用 と 新 たな 経 済 力 を 同 時 にもたらすので<br />

す。エネルギー 効 率 性 と 再 生 可 能 エネルギーの 普 及 の 二 本 柱 により、エネルギー<br />

輸 入 への 依 存 を 減 らし、 給 電 の 安 定 性 を 高 め、ドイツにおける 有 益 な 投 資 を 可 能<br />

にすることを 目 指 しています。エネルギー 転 換 には 費 用 対 効 果 があるのです。<br />

世 帯 あたり 月 ごとの 支 出 額<br />

2003 年 と2016 年 の 毎 月 の 支 出 の 比 較<br />

暖 房 と 温 水<br />

66ユーロ<br />

75ユーロ<br />

暖 房 と 温 水<br />

調 理<br />

照 明 と 電 気<br />

10ユーロ<br />

22ユーロ<br />

176<br />

ユーロ<br />

224<br />

ユーロ<br />

24ユーロ<br />

40ユーロ<br />

調 理<br />

照 明 と 電 気<br />

燃 料<br />

78ユーロ<br />

85ユーロ<br />

燃 料<br />

2003 年<br />

2016 年<br />

比 較 : 家 計 支 出 の 割 合 :9%<br />

過 去 10 年 間 、 原 油 価 格 は 急 上 昇 しました。その 結 果 、 消 費 者 のエネルギーへの<br />

支 出 は 、2 0 世 紀 後 半 には 個 人 消 費 総 額 の 6 % 未 満 でしたが、2 016 年 にはおよそ<br />

7.5% 以 上 となっていました。<br />

ドイツの 家 庭 のエネルギー 代 の 大 部 分 は、 暖 房 、 温 水 、 調 理 および 輸 入 化 石 エ<br />

ネルギー 源 ベースの 燃 料 代 です。2014 年 末 に 石 油 価 格 は 下 落 し、ドイツの 消 費<br />

© dpa/Philipp Dimitri © dpa/McPHOTO‘s<br />

1992 年<br />

リオデジャネイロの 環 境 と 開 発 に 関 する 国 際 連 合 会<br />

議 では、「 持 続 可 能 開 発 」のモデルを 採 用 しました。


© dpa/Jens Büttner<br />

ドイツのエネルギー 転 換 | 13<br />

ドイツ 全 世 帯 のエネルギー 支 出 額<br />

2016 年 の10 億 ユーロ 単 位 の 支 出<br />

106.4<br />

35.7<br />

11.4<br />

19.0<br />

40.3<br />

暖 房 と 温 水<br />

調 理<br />

照 明 と 電 気<br />

燃 料<br />

これは、ドイツの 国 民 総 所 得 の3%に 相 当 します。<br />

者 にとっても 価 格 低 下 という 好 事 となりましたが、2 018 年<br />

以 降 、 石 油 価 格 は 再 び 上 昇 しています。 化 石 燃 料 の 価 格 と<br />

入 手 可 能 性 は サプライヤー の 利 益 に 依 存 するため、 価 格 の<br />

動 向 は 予 測 のつかないものとなっています。<br />

エネルギー 転 換 というプロジェクトには 初 期 投 資 が 必 要 に<br />

なる、というのは 事 実 です。 新 エネルギーインフラを 整 え、<br />

エネルギー 効 率 性 に 関 する 措 置 を 実 施 するためには、 数 十<br />

億 ユーロの 投 資 が 必 要 になります。 従 って、 再 生 可 能 エ ネル<br />

ギーの 拡 充 は、 近 年 のドイツ 一 般 家 庭 の 平 均 電 気 代 の 増<br />

加 の 一 因 でした 。2 0 0 7 年 には 、1キロワット 時 あたり 平 均 お<br />

よそ21セントでしたが、 現 在 は、およそ29セントとなってい<br />

ます。 電 力 の1キロワット 時 ごとに 、 再 生 可 能 エ ネルギー 法<br />

による 分 担 金 というかたちで 再 生 可 能 エネルギーの 拡 充 費<br />

用 を 負 担 しています。<br />

この 分 担 金 は2019 年 では6.4セントです。しかし、 最 終 的 に 実<br />

際 に 支 払 う 金 額 には 様 々な 価 格 要 因 が 複 雑 に 関 係 します。そ<br />

の ため 電 力 取 引 価 格 は 大 幅 に 低 下 して います。そ の 原 因 は 、<br />

電 力 市 場 で 取 引 される 再 生 可 能 エネルギーによる 電 力 量 が<br />

増 加 していることにあります。 再 生 可 能 エネルギー 法 による 分<br />

担 金 、 電 力 市 場 の 両 方 の 価 格 構 成 要 素 を 併 せて 計 算 すると、<br />

過 去 4 年 間 で 下 降 しています。その 結 果 、 一 般 家 庭 に 対 する 平<br />

均 電 力 価 格 は 同 じ 時 期 に 安 定 したものとなっています。 入 札<br />

方 式 に 切 り 替 えることで、 再 生 可 能 エネルギーを 助 成 するため<br />

の 負 担 が 減 少 し、さらに 家 計 への 負 担 も 軽 減 されます。<br />

一 般 市 民 にとっては、ドイツ 経 済 に 過 大 な 負 担 とならない<br />

ことも 大 切 です。 高 いエネルギー 価 格 は 消 費 者 にとっての<br />

製 品 価 格 と 会 社 の 競 争 力 に 波 及 します。そのため、ドイツは<br />

再 生 可 能 エネルギー 法 の 分 担 金 から 特 定 のエネルギー 集<br />

約 型 の 企 業 を 一 部 免 除 しています。しかし、 免 除 対 象 の 企<br />

業 はエネルギー 効 率 性 への 投 資 を 増 やす 必 要 があります。<br />

1994 年<br />

欧 州 初 の 量 産 型 電 気 自 動 車 が 発 売 されました。<br />

1995 年<br />

第 1 回 気 候 変 動 枠 組 条 約 締 約 国 会 議 がベルリンで 開 催 され、<br />

世 界 中 で 温 室 効 果 ガス 排 出 量 を 低 減 する 交 渉 が 始 まりました。


14 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

気 候 保 護<br />

温 室 効 果 ガス 排 出 量 の 低 減<br />

エネルギー 転 換 は 気 候 保 護 の 中 心 となる 要 素 です。どちらも 気 候 変 動 の 人 間 、 自<br />

然 、 経 済 への 影 響 を 持 続 可 能 な 水 準 に 制 限 することを 目 指 したものです。 気 候 変<br />

動 に 関 する 政 府 間 パネル(IPCC)の 計 算 によると、 地 球 温 暖 化 を 産 業 革 命 以 前<br />

の 温 度 から2 °Cを 超 えない 水 準 まで 抑 えなければなりません。よって、 大 気 圏 に<br />

は 一 定 量 の 温 室 効 果 ガスだけしか 排 出 は 許 されません。 大 気 にはす でにこの 一<br />

定 量 の65%が 含 まれているため、 温 室 効 果 ガス 排 出 量 を 低 減 するためのグロー<br />

バルかつ 各 国 の 莫 大 な 努 力 が 必 要 です。<br />

主 に 化 石 燃 料 の 燃 焼 で 発 生 する 二 酸 化 炭 素 は 気 候 変 動 に 対 して 最 大 の 影 響 を<br />

及 ぼします。ドイツでも 世 界 中 でも、 温 室 効 果 ガスの 総 排 出 量 の3 分 の1 超 が 発<br />

電 所 から 排 出 されています。このため、 再 生 可 能 エネルギーなど 気 候 変 動 に 影 響<br />

しない 資 源 への 転 換 は 気 候 保 護 の 中 心 課 題 です。<br />

気 候 に 関 する 目 標 および 経 過<br />

予 定 または 達 成 された 温 室 効 果 ガス 排 出 量 の 低 減 (1990 年 との 比 較 )<br />

温 室 効 果 ガスを 排 出 しているのは?<br />

数 字 はすべて2017 年 の100 万 トン 単 位 のCO 2<br />

相 当 値<br />

2030 年<br />

の 目 標<br />

40% 減 23% 減<br />

2016 年<br />

までに 達 成 済 み<br />

ヨーロッパ<br />

(EU28ヶ 国 )<br />

2030 年<br />

の 目 標<br />

55%<br />

以 上 減<br />

ドイツ<br />

28% 減<br />

2017 年<br />

までに 達 成 済 み<br />

9 億 500 万 トン<br />

...<br />

328<br />

91<br />

171<br />

39<br />

193<br />

72<br />

10<br />

エネルギー 分 野<br />

家 庭<br />

交 通<br />

事 業 、 商 業 、サービス<br />

工 業<br />

農 業<br />

その 他<br />

© dpa/Luftbild Bertram © dpa/MiS<br />

1996 年<br />

ヨーロッパは、これまで 国 ・ 領 土 ごとに 区 切 られていた 電 力 市 場 、ガス 市 場 を 開 放 することを 決 定 しました。<br />

欧 州 委 員 会 はヨーロッパ 初 の 再 生 可 能 エネルギーの 開 発 に 関 する 共 同 戦 略 を 発 行 しました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 15<br />

© iStock/ querbeet<br />

ドイツはどれくらい 温 室 効 果 ガス 排 出 量 を 低 減 しましたか?<br />

数 字 はすべて 百 万 トン 単 位 のCO 2<br />

相 当 値 です<br />

1,250<br />

1990 年<br />

1,121<br />

1995 年<br />

1,046<br />

2000 年<br />

994<br />

2005 年<br />

910<br />

2010 年<br />

902<br />

2014 年<br />

1997 年 に 京 都 議 定 書 を 締 結 したことで、ドイツは2012<br />

年 までに1990 年 の 水 準 に 比 べて 温 室 効 果 ガス 排 出 量 を<br />

2 1 % 低 減 する 義 務 を 負 いました 。そ れ 以 来 、 大 幅 に 進 歩 し<br />

ています。2017 年 までに、ドイツはすでに28%の 低 減 を 達<br />

成 しました。 今 日 ドイツの 会 社 は、10 億 ユーロを 得 るため<br />

に、1990 年 の 半 分 の 温 室 効 果 ガスで 済 みます。<br />

ドイツはその 取 組 みを 大 幅 に 増 大 し、2030 年 までに 温 室<br />

効 果 ガス 排 出 量 を55% 以 上 低 減 しようとしています。2050<br />

年 までに1990 年 に 比 べて 排 出 量 を80~90%にまで 低 減<br />

することを 目 指 しています。これら 国 家 規 模 の 低 減 目 標 は<br />

欧 州 連 合 や 国 際 的 な 気 候 保 護 政 策 に 盛 り 込 まれていま<br />

す。EUの 国 家 元 首 は 各 国 の 温 室 効 果 ガス 排 出 量 を2020<br />

年 までに20%、2030 年 までに40% 以 上 低 減 することを 決<br />

定 しました。2015 年 12 月 に195ヶ 国 がパリ 協 定 を 採 択 し、<br />

各 国 の 気 候 変 動 目 標 に 従 い、 今 世 紀 以 内 に 地 球 温 暖 化 を<br />

2 °C 未 満 に 抑 えようとしています。<br />

欧 州 気 候 保 護 措 置 の 中 核 は、 全 締 結 国 の 汚 染 物 総 排 出 量<br />

の 上 限 を 規 定 する 排 出 量 取 引 です。 大 規 模 な 温 室 効 果 ガ<br />

ス 排 出 者 はすべてこの 取 引 に 参 加 する 必 要 があり、 工 業 と<br />

エネルギー 経 済 分 野 からのCO 2<br />

排 出 量 の 大 部 分 を 占 めて<br />

います。 企 業 は 排 出 温 室 効 果 ガス1トンごとに 該 当 額 の 排<br />

出 証 明 書 を 入 手 する 必 要 があります。 許 容 量 が 足 りない 場<br />

合 は 、 排 出 証 明 書 をもっと 買 ったり、 気 候 保 護 技 術 に 投 資<br />

したりできます。このようにすることで、 最 も 有 利 な 場 面 で<br />

CO 2<br />

排 出 を 防 止 します。2030 年 までには、 排 出 量 取 引 にあ<br />

る 全 部 門 において2005 年 に 比 べて 温 室 効 果 ガス 排 出 量<br />

を43% 低 減 することを 目 指 しています。<br />

ドイツ 政 府 はドイツの 低 減 目 標 を 達 成 すべく、「 気 候 行 動 プ<br />

ログラム2020」と「 気 候 保 護 計 画 2050」を 可 決 しました。 気<br />

候 行 動 プログラムには、エネルギー 効 率 を 向 上 させ、 交 通 、<br />

工 業 と 農 業 を 環 境 に 優 しくするための 多 様 な 措 置 がありま<br />

す。 気 候 保 護 計 画 では、エネルギー 経 済 や 工 業 など 産 業 別<br />

の 長 期 CO 2<br />

排 出 量 低 減 目 標 を 策 定 しています。<br />

1997 年<br />

世 界 中 の 温 室 効 果 ガス 排 出 量 の 低 減 を 目 指 す 京 都 議 定 書 が 採 択<br />

されました。それ 以 来 、191ヶ 国 が 当 該 議 定 書 を 批 准 しています。


16 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

原 子 力<br />

脱 原 発<br />

発 電 目 的 での 原 子 力 の 使 用 について 数 十 年 に 亘 りドイツにおいて 熱 い 議 論 が 行<br />

われています。 多 くのドイツ 人 にとって、この 技 術 のリスク 評 価 が 困 難 となってい<br />

ます。 原 子 炉 事 故 から 人 間 、 自 然 と 環 境 が 影 響 を 受 ける 可 能 性 が 懸 念 されてい<br />

ます。1986 年 にウクライナのチェルノブイリで 事 故 が 発 生 し、ドイツの 一 部 も 汚<br />

染 されたことから、こういう 懸 念 が 裏 付 けられました。2000 年 に、ドイツ 政 府 は<br />

発 電 目 的 での 原 子 力 の 使 用 を 完 全 に 廃 止 し、 再 生 可 能 資 源 に 基 づいたエネルギ<br />

ー 供 給 に 切 り 替 えることを 決 定 しました。 既 設 発 電 所 の 使 用 期 限 の 設 定 につい<br />

て 原 子 力 発 電 所 事 業 者 との 合 意 に 達 し、 新 発 電 所 の 建 設 を 禁 止 しました。<br />

© dpa/Uli Deck<br />

この 規 定 は2010 年 に 改 正 されました。 原 子 力 が 再 生 可 能 エネルギーによって 完<br />

全 に 代 替 できるまでのギャップを 埋 めるため、 既 設 発 電 所 が 使 用 できる 期 間 を<br />

延 長 しました。 日 本 の 福 島 県 で 原 子 炉 事 故 が2011 年 3 月 に 発 生 して 以 来 、ドイツ<br />

政 府 はこの 決 定 を 覆 しました。<br />

原 子 力 発 電 所 では、 大 きなリスクのため、 保 険 と 保 安 システムに 多 くのコストが 発<br />

生 します。そのため 脱 原 子 力 は 経 済 面 からも 意 義 のあるものとなっています。<br />

原 子 力 発 電 所 をいつ 閉 鎖 しますか?<br />

2022 年 末 までのドイツの 原 子 力 発 電 所 発 電 量 の 低 減 予 定<br />

原 子 力 発 電 所 総 発 電 量<br />

福 島<br />

43%<br />

2003 年 11 月<br />

2005 年 5 月<br />

2011 年 8 月<br />

57%<br />

2015 年 5 月<br />

2017 年 12 月<br />

2019 年 12 月<br />

2021 年 12 月<br />

2022 年 12 月<br />

2000 年 2005 年 2010 年 2015 年 2020 年<br />

1998 年<br />

ドイツは 電 力 市 場 とガス 市 場 を 開<br />

放 する 法 律 を 可 決 しました。<br />

2000 年<br />

欧 州 委 員 会 はヨーロッパ 初 の 再 生 可 能 エネルギー、エネル<br />

ギー 効 率 性 と 気 候 保 護 に 関 する 共 同 戦 略 を 発 行 しました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 17<br />

© dpa/Jens Wolf<br />

ドイツの 原 子 力 発 電 所 はどこにありますか?<br />

閉 鎖 済 みまたは 稼 働 中 の 発 電 所<br />

年 間 の 最 大 発 電 量<br />

年 間 のテラワット 時 単 位 の 最 大 発 電 量<br />

ブルンスブュッテル<br />

2011 年<br />

ブロークドルフ<br />

2021 年<br />

グライフスヴァルト<br />

1990 年<br />

ウンターヴェーザー<br />

2011 年 シュターデ<br />

2003 年<br />

クリュンメル<br />

2011 年<br />

エムスラント<br />

ラインスベルク<br />

2022 年<br />

1990 年<br />

リンゲン<br />

1979 年<br />

グローンデ<br />

2021 年<br />

ヴュルガッセン<br />

1994 年<br />

ミュールハイム=ケルリヒ<br />

2001 年<br />

ビーブリスA+B グラーフェンラインフェルト<br />

2011 年 2015 年<br />

フィリップスブルク1<br />

廃 炉 予 定 年<br />

2011 年<br />

オーブリヒハイム<br />

2005 年<br />

廃 炉 年<br />

フィリップスブルク2<br />

ネッカーヴェストハイム2<br />

2019 年<br />

2022 年<br />

イーザル1<br />

ネッカーヴェストハイム1<br />

2011 年<br />

2011 年<br />

閉 鎖 済 みの 発 電 所<br />

グンドレミンゲンB<br />

2017 年<br />

イーザル2<br />

2022 年<br />

グンドレミンゲン C<br />

2021 年<br />

稼 働 中 の 発 電 所<br />

171テラワット 時<br />

2001 年<br />

ドイツ 全 国 の 原 子 力 発 電 所<br />

の 合 計<br />

217 テラワット 時<br />

2017 年<br />

再 生 可 能 エネルギーの 合 計<br />

ドイツ 連 邦 議 会 は、 原 子 力 の 発 電 目 的 の 利 用 をできるだけ<br />

早 く 停 止 することを 圧 倒 的 多 数 で 議 決 しました 。この 法 律 の<br />

発 効 をもって、いくつかの 発 電 所 が 発 電 停 止 に 至 りました。<br />

残 りの 発 電 所 は2022 年 末 までに 順 を 追 って 稼 働 を 停 止 し<br />

ます。ドイツでは、 現 在 でも7ヶ 所 の 原 子 力 発 電 所 が 電 力 を<br />

供 給 し、ドイツの 発 電 量 のおよそ8 分 の1を 占 めています。<br />

原 子 力 の 使 用 がもたらすチャレンジがいかなるものかは、<br />

放 射 性 廃 棄 物 処 理 の 必 要 性 を 見 ても 分 かります。 住 民 と 環<br />

境 を 保 護 するためには、 廃 棄 物 を 生 物 圏 から 確 実 に 遠 ざ<br />

けて 非 常 に 長 期 間 にわたって 保 管 する 必 要 があります。 専<br />

門 家 の 意 見 では、 核 廃 棄 物 を 深 い 地 層 中 に 処 分 することが<br />

最 適 だと 考 えられています。<br />

ドイツは 放 射 性 廃 棄 物 を 自 国 内 で 処 分 する 意 向 です。しか<br />

し、 最 終 処 分 場 に 相 応 しい 場 所 を 見 つけるのは 困 難 である<br />

ことが 分 かり、 住 民 は、これからの、またはすでに 探 索 済<br />

の 場 所 で の 処 分 に 、こ れ ま でど ちら かというと 反 対 の 立 場<br />

を 取 ってきました。<br />

このため、ドイツは 新 たな 方 法 を 取 り、 社 会 全 体 が 透 明 性<br />

のある、 科 学 に 基 づいた 探 索 手 続 きに 参 画 するようにし<br />

ました。2031 年 までに 特 に 放 射 線 量 の 高 い 放 射 性 廃 棄<br />

物 を 貯 蔵 する 最 終 処 分 場 を 見 つけることを 目 的 としていま<br />

す。この 場 所 は100 万 年 にわたって 最 高 の 安 全 性 を 提 供 し<br />

な け れ ば なりま せん 。この 最 終 貯 蔵 が 、 原 子 力 エ ネル ギ ー<br />

のコストを 押 し 上 げる 結 果 となっています。ドイツはすでに<br />

2022 年 に 開 設 する 予 定 のコンラート 処 分 場 を 中 ・ 低 レベ<br />

ルの 放 射 性 廃 棄 物 用 最 終 処 分 場 として 承 認 しています。<br />

2000 年<br />

再 生 可 能 エネルギー 法 (EEG)が 発 効 し、ドイツにおけ<br />

る 再 生 可 能 エネルギーの 開 発 の 原 動 力 となりました。<br />

2000 年<br />

ドイツ 政 府 は 脱 原 子 力 を 決 定 しました。<br />

原 子 力 発 電 所 の 最 長 稼 働 期 間 :32 年 。


18 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

© dpa/Jens Büttner<br />

2002 年<br />

第 一 次 の 省 エネルギー 令 が 発 効 し、 新 築 または 既 存 建 築<br />

物 の 全 エネルギー 効 率 に 関 する 基 準 を 定 めました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 19<br />

経 済 と 価 値 創 造<br />

「エネルギー 転 換 で 多 くの 人 が<br />

仕 事 を 失 いませんか?」<br />

あらゆる 再 生 可 能 エネルギー 系 新 発 電 所<br />

への 高 額 な 投 資<br />

ドイツの 発 電 所 への10 億 ユーロ 単 位 の 年 間 投 資 額<br />

再 生 可 能 エネルギーによる 雇 用<br />

2016 年 のドイツの 従 事 者 数<br />

従 事 者 数<br />

33 万 8,600 人<br />

16 万 200 人<br />

10 万 5,600 人<br />

4 万 5,200 人<br />

風 力<br />

バイオマス<br />

太 陽 光<br />

4.6<br />

2000 年<br />

27.3<br />

2010 年<br />

15.1<br />

2016 年<br />

2 万 300 人<br />

地 熱<br />

7,300 人<br />

水 力<br />

いいえ、その 逆 です。エネルギー 転 換 は 経 済 的 に 見 ても 費<br />

用 に 見 合 ったものです。ドイツで 革 新 を 促 進 したり、エネル<br />

ギー 輸 入 費 用 を 軽 減 し、 環 境 汚 染 ・ 温 室 効 果 ガス 排 出 量<br />

を 低 減 し、 付 加 価 値 を 高 めます。 設 置 や 整 備 など 労 働 集 約<br />

型 の 業 務 が 現 地 の 企 業 によって 実 施 されるため、 再 生 可 能<br />

エネルギーの 開 発 や 建 物 の 再 開 発 による 収 益 の 多 くが 現<br />

地 に 溜 まります。<br />

再 生 可 能 エネルギーの 開 発 、エネルギー 効 率 への 投 資 によ<br />

り、 将 来 の 成 長 分 野 において 新 職 業 や 新 雇 用 が 創 出 され<br />

ます。 商 業 、 工 業 と 建 物 再 開 発 において 講 じられ た 諸 エ ネ<br />

ルギー 効 率 措 置 だけ でも、 新 雇 用 を5 6 万 件 以 上 創 出 し、<br />

また 再 生 可 能 エ ネルギー へ の 投 資 で は 、10 年 間 に 同 分 野<br />

における 従 業 員 人 数 が2 倍 以 上 に 増 加 しました。<br />

これらの 新 雇 用 の 一 部 は、 化 石 燃 料 が 大 きな 役 割 を 果 た<br />

す 産 業 、 特 に 石 油 またはガスの 生 産 、 採 炭 ならびに 発 電 に<br />

お ける 雇 用 と 入 れ 替 わりま す。そ のうえ 、 一 般 的 な 構 造 上 の<br />

変 化 もあります。 例 えば、ヨーロッパのエネルギー 市 場 の 開<br />

放 は 、 競 争 を 高 めます。この ため 、 企 業 は 効 率 を 向 上 させる<br />

必 要 があります。これら 全 ての 要 因 は、 職 種 の 適 合 化 にも<br />

つながります。その 結 果 、 従 来 のエネルギー 経 済 企 業 の 従<br />

業 員 は 近 年 減 少 しています。<br />

2003 年<br />

欧 州 連 合 は 拘 束 力 のある 温 室 効 果 ガ<br />

ス 排 出 権 利 取 引 を 決 議 しました。<br />

2004 年<br />

ドイツでの 再 生 可 能 エネルギー 分 野<br />

の 従 事 者 が16 万 人 になりました。


20 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

国 際 的 なエネルギー 転 換<br />

「エネルギー 転 換 はドイツでは<br />

上 手 くいっても、 経 済 的 に 弱 い<br />

他 の 国 ではどうでしょう?」<br />

© dpa/epa Business Wire<br />

エネルギー 転 換 は 贅 沢 なものではなく、むしろ 革 新 を 推 進 して 成 長 と 繁 栄 を 増 大<br />

させ、 将 来 の 成 長 分 野 で 雇 用 を 創 出 することにより、 持 続 可 能 かつ 有 益 な 開 発<br />

を 支 援 するものです。そのため、この 間 に 世 界 中 の 国 々が、エネルギーシステムを<br />

原 則 としてもっと 持 続 可 能 なものにしたいと 思 うのは 不 思 議 ではありません。<br />

ほぼ 世 界 中 の 国 々で 再 生 可 能 エネルギーの 拡 充 が 望 まれています。<br />

再 生 可 能 エネルギーの 政 策 機 関 や 拡 大 目 標 をもつ 国 々<br />

支 援 システムが1つ 以 上 ある<br />

固 定 価 格 買 い 取 り 制 度 ・ 報 酬 支 払 い<br />

再 生 可 能 エネルギーの 最 小 割 当 量<br />

入 札<br />

ネットメータリング― 小 規 模 ( 多 くは 私 有 )<br />

の 太 陽 光 発 電 システムでは 電 力 の 消 費 と<br />

供 給 は 相 殺<br />

財 政 的 インセンティブ<br />

助 成 政 策 なし、またはデータなし<br />

風 力 や 太 陽 光 など 革 新 的 な 再 生 可 能 技 術 の 価 格 は 近 年 世 界 中 で 大 幅 に 低 下 し<br />

ています。それには 早 期 の 研 究 ・ 開 発 への 投 資 、ならびに 諸 先 進 国 、 特 にドイツ<br />

の 市 場 展 開 における 再 生 可 能 エネルギーの 助 成 が 大 いに 貢 献 しました。<br />

投 資 費 用 の 低 減 と 元 々 低 い 稼 動 費 のおかげで、 再 生 可 能 エネルギーはすでに 現<br />

在 世 界 の 一 部 では 助 成 金 がなくても 競 争 力 を 持 っています。 例 えば、 南 北 アメリ<br />

カの 風 力 発 電 所 や 大 規 模 な 太 陽 熱 発 電 所 の 発 電 は 新 化 石 燃 料 発 電 所 より 安 価<br />

です。 中 国 、ブラジル、 南 アフリカ、インドなどの 国 々は 再 生 可 能 エネルギーの 開<br />

発 をリードしています。しかし、この 普 及 は、 消 費 者 物 価 を 低 く 抑 えるため、 化 石<br />

2005 年<br />

欧 州 排 出 量 取 引 が 開 始 しま<br />

した。E U 加 盟 国 はすべて<br />

参 加 しました。<br />

2007 年<br />

EUは 再 生 可 能 エネルギー、 気 候 保 護 とエネルギ<br />

ー 効 率 を 開 発 するため、 拘 束 力 のある 目 標 のあ<br />

る2020 年 の 気 候 ・エネルギーパッケージを 可 決<br />

しました。<br />

2007 年<br />

ル イ・パーマー は 太 陽 エネル ギ ーで の み 駆 動<br />

する「ソーラータクシー」で 世 界 一 周 を 始 めま<br />

した。 旅 行 には18ヶ 月 かかりました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 21<br />

© dpa<br />

燃 料 を 助 成 する 国 があることが 部 分 的 に 妨 げになっていま<br />

す。これらの 補 助 金 は 毎 年 約 3,250 億 ドルであり、 再 生 可 能<br />

エネルギーへの 助 成 金 の2 倍 以 上 です。もしこれらの 補 助 金<br />

を 代 わりにエネルギー 効 率 を 向 上 させるためのプログラムに<br />

使 用 するとなれば、 使 用 可 能 な 資 金 は3 倍 になります。<br />

再 生 可 能 エネルギーは、 国 内 資 源 なので、エネルギー 輸<br />

入 、および 化 石 燃 料 相 場 の 変 動 への 依 存 を 減 らします。 温<br />

室 効 果 ガス 排 出 量 の 増 加 または 現 地 環 境 の 汚 染 をせず<br />

に、 新 興 国 や 途 上 国 におけるエネルギー 需 要 の 増 加 に 応<br />

える 重 要 な 役 割 も 果 たす 可 能 性 があります。<br />

インフラの 乏 しい 地 域 では 、 発 電 にはディー ゼル の 使 用 が<br />

必 須 で 費 用 がかさむため、 再 生 可 能 エネルギーは 安 価 な<br />

代 替 でもあります。 太 陽 光 発 電 所 や 風 力 発 電 所 は 比 較 的<br />

に 早 く 設 置 でき、 火 力 発 電 所 または 原 子 力 発 電 所 に 比 べて<br />

計 画 期 間 と 工 事 期 間 が 遥 かに 短 く、 大 勢 の 人 に 電 気 エネ<br />

ルギーへのアクセスそのものをやっと 可 能 にします。この 点<br />

は、 多 くの 国 が 再 生 可 能 エネルギーのための 助 成 プログラ<br />

ムを 実 施 しているもう 一 つの 理 由 です。<br />

ドイツは 世 界 中 で 持 続 可 能 、 革 新 的 で 手 頃 なエネルギー<br />

政 策 のために 尽 力 し、エネルギー 転 換 での 経 験 を 他 国 と 共<br />

有 し、 近 隣 欧 州 諸 国 や 国 際 的 パートナーと 密 接 に 協 力 して<br />

いま す。ドイツは 多 国 間 の 委 員 会 、 組 織 など で も 積 極 的 な<br />

役 割 を 果 たしています。 加 えて、インド、 中 国 、 南 アフリカ、<br />

ナイジェリア、アルジェリアなどの 国 々と 数 多 くの 二 国 間 エ<br />

ネルギー 提 携 に 取 り 組 んでいます。<br />

再 生 可 能 エネルギー 発 電 所 が 世 界 で 最 も 多 い 国 は?<br />

2017 年 までの 発 電 所 の 容 量<br />

1 | 米 国<br />

1 | 英 国<br />

バイオマス<br />

2 | 中 国<br />

3 | インド<br />

洋 上 風 力<br />

2 | ドイツ<br />

3 | デンマーク<br />

1 | 米 国<br />

1 | 中 国<br />

地 熱<br />

2 | フィリピン<br />

3 | インドネシア<br />

陸 上 風 力<br />

2 | 米 国<br />

3 | ドイツ<br />

1 | 中 国<br />

1 | 中 国<br />

水 力<br />

2 | ブラジル<br />

3 | 米 国<br />

太 陽 光<br />

2 | 日 本<br />

3 | ドイツ<br />

2008 年<br />

ドイツは 建 物 のエネルギー 消 費 とエネルギー 品 質 について 情 報 を 提 供 する 建 築 物 エ<br />

ネルギー 証 明 書 を 導 入 しました。 再 生 可 能 エネルギー 熱 法 により、 新 築 建 物 において<br />

一 定 量 の 暖 房 を 再 生 可 能 エネルギー 源 から 提 供 する 必 要 があることを 定 めました。<br />

2009 年<br />

国 際 再 生 可 能 エネルギー 機 関 (IRENA)<br />

が75ヶ 国 によって 創 設 されました。


22 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

電 力 網<br />

スマートグリッド<br />

© dpa/Stefan Sauer<br />

エネルギー 転 換 には、 現 代 的 で 効 率 的 なインフラが 必 要 です。 従 って、 送 配 電<br />

線 を 拡 充 し 、 系 統 全 体 の 柔 軟 性 を 高 め る 必 要 が ありま す。ドイツ で 原 子 力 発 電<br />

所 が 閉 鎖 された 後 には、 特 にドイツ 北 部 ・ 東 部 からの 再 生 可 能 エネルギーが 発<br />

電 の 不 足 分 を 補 います。このエネルギーがドイツ 南 部 で 必 要 とされます。 同 地<br />

では 原 子 力 発 電 所 を 代 替 しなくてはならず、また 多 くの 人 々が 住 み、 大 規 模 な<br />

工 業 プラントが 存 在 します。そのため 特 に 高 効 率 な 技 術 の 新 電 力 アウトバーン<br />

が、ドイツ 北 部 ・ 東 部 からの 風 力 電 力 を 直 接 、 南 部 に 送 電 するのです。<br />

ドイツの 電 力 網 の 総 延 長 は180 万 kmです。 電 力 網 はどこで 拡 張 されますか?<br />

ドイツの 特 別 高 圧 送 電 網 における 送 電 線 架 設 予 定<br />

ブレーメン<br />

ハンブルク<br />

ハノーファー<br />

ベルリン<br />

承 認 手 続 き 前<br />

承 認 手 続 き 中<br />

承 認 済 みまたは 工 事 中<br />

完 成 済 みのプロジェクト<br />

系 統 連 系 点<br />

洋 上 風 力 発 電 所 のクラスター<br />

洋 上 風 力 発 電 所 の 電 力 連 系 線<br />

デュッセルドルフ<br />

ケルン<br />

ドルトムント<br />

ライプツィヒ<br />

ドレスデン<br />

フランクフルト・アム・マイン<br />

地 球 の 赤 道 の<br />

45 周<br />

に 相 当 します。<br />

シュトゥットガルト<br />

ニュルンベルク<br />

ミュンヘン<br />

欧 州 連 合 内 のエネルギー 市 場 はドイツの 電 力 網 拡 張 の2つ 目 の 駆 動 力 となりま<br />

す。 電 力 がヨーロッパ 全 域 で 自 由 に 流 れ 、 消 費 者 に 対 してより 安 価 になるため 、<br />

欧 州 では 加 盟 国 および 国 境 を 越 えたインフラを 強 化 する 必 要 があります。 欧 州<br />

連 合 内 の 送 電 網 事 業 者 は2 年 ごとに 共 同 送 電 網 開 発 計 画 書 を 提 示 します。ドイ<br />

ツのプロジェクトはすべてのこの 計 画 書 に 盛 り 込 まれます。<br />

担 当 電 力 網 事 業 者 は、10~20 年 後 を 予 測 する 独 自 の 方 法 で、ドイツでプロジェ<br />

クトに 必 要 とされる 電 線 を 決 めます。それらの 提 案 は 政 府 当 局 者 であるドイツ<br />

連 邦 ネットワーク 庁 によって 検 証 されます。この 手 続 きは、 段 階 を 踏 んでパブリ<br />

ックの 密 な 関 与 のもとで 行 われます。 当 庁 は 対 話 を 通 じて、 人 間 、 環 境 と 経 済<br />

のニーズに 最 も 合 った 解 決 策 がどれなのかを 秤 に 掛 けます。<br />

2009 年<br />

電 力 系 統 拡 張 法 により、 特 別 高 圧 線 の 新<br />

規 承 認 手 続 きをスピードアップしました。<br />

2010 年<br />

ドイツ 政 府 はドイツの2050 年 までのエネルギー 供 給 に 関<br />

する 長 期 戦 略 のエネルギーコンセプトを 可 決 しました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 23<br />

© dpa/euroluftbild.de/Hans Blossey<br />

「エネルギー 転 換 は、ドイツの 有 人 月 旅 行 計 画 なのです」<br />

イツ 連 邦 共 和 国 大 統 領 、フランク=ヴァルター・シュタインマイアー<br />

エネルギー 転 換 に 当 たっては、 配 電 網 も 更 新 する 必 要 があ<br />

ります。 配 電 網 は、 本 来 は 電 力 を 消 費 者 に 細 やかに 分 配 分<br />

布 するためだけに 設 計 されたものなので、 一 方 通 行 路 のよ<br />

うに 機 能 します。しかし、 現 在 はほとんどの 太 陽 光 発 電 所 と<br />

数 多 くの 風 力 タービンは 配 電 網 に 給 電 します。その 場 で 必<br />

要 とされないものは 逆 方 向 に 流 れます。さらに、 再 生 可 能<br />

エネルギー 発 電 は 天 気 に 依 存 します。 太 陽 光 発 電 所 の 稼<br />

働 率 は、 晴 れの 時 には 非 常 に 高 いですが、 曇 りの 時 にはす<br />

ぐに 低 下 します。 発 電 が 変 動 する 場 合 にも 安 定 性 を 維 持 す<br />

るには、 配 電 網 をスマートグリッドへと 開 発 する 必 要 があり<br />

ます。「スマートグリッド」では、「スマートグリッド」では、 関 係<br />

者 全 員 、すなわち 発 電 、 送 電 、 蓄 電 、 配 電 の 各 事 業 者 から<br />

最 終 消 費 者 までが 相 互 に 連 携 されます。 発 電 と 消 費 はこう<br />

して 調 整 し、 短 期 間 で 一 致 することが できるのです。<br />

スマートグリッドの 機 能 方 法<br />

関 係 者 、インフラ、 通 信 路 の 概 略 図<br />

送 電 網 、 配 電 網<br />

制 御 および 通 信<br />

スマートメーター<br />

発 電 事 業 者<br />

従 来 型 エネルギーまたは 再 生 可 能 エネルギー<br />

消 費 者<br />

家 庭 、 工 業 、 商 業<br />

市 場<br />

エネルギー 供 給 、<br />

サービスおよび 取 引<br />

トランジット<br />

欧 州 近 隣 諸 国 にて<br />

交 通<br />

自 動 車 、<br />

近 距 離 公 共 交 通<br />

蓄 電<br />

電 池 、 蓄 電 装 置<br />

2010 年<br />

EUはビルのエネルギー 性 能 に 関 する 指 令 を 発 しまし<br />

た。2021 年 以 降 、すべての 新 築 ビルは「ほぼゼロエネ<br />

ル ギ ー のビル」になることです。<br />

2010 年<br />

ドイツ・エネルギー 機 構 は、ドイツで 再 生 可 能 エネル<br />

ギーのシェアを 約 40%とするために 必 要 な 電 力 網 拡<br />

張 についての 研 究 を 発 表 しました。


24 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

供 給 安 定 性<br />

「 風 力 や 太 陽 からの 電 力 がこ<br />

れ ほど 多 いと、 供 給 が 不 安 定<br />

になりはしませんか?」<br />

© dpa/Moravic Jakub<br />

「 心 配 することは ありま せ ん 。ドイツ で の 電 力 供 給 は 将 来 も 確 実 で す。」 我 が 国<br />

はエネルギー 供 給 においては 世 界 一 に 数 えられます。1 年 間 の8,760 時 間 以 上<br />

のうち、 停 電 したのは 平 均 してわずか12.8 分 です。それどころか、 風 力 発 電 と 太<br />

陽 光 発 電 の 割 合 が 増 加 しているにかかわらず、この 数 値 は 近 年 さらに 減 ってい<br />

ます。<br />

ドイツでは 停 電 は 非 常 にまれです。<br />

2013 年 の 分 単 位 の 平 均 停 電 時 間<br />

10.0 ルクセンブルク<br />

11.3 デンマーク<br />

12.8 ドイツ (2016 年 )<br />

15.0 スイス<br />

15.3 ドイツ (2013 年 )<br />

23.0 オランダ<br />

68.1 フランス<br />

70.8 スウェーデン<br />

254.9 ポーランド<br />

360.0 マルタ<br />

停 電 が 発 電 変 動 から 生 じることはまれです。 主 に 外 部 要 因 またはヒューマンエラ<br />

ーから 生 じます。2006 年 11 月 4 日 にドイツの 一 部 で 起 こった 最 後 の 重 大 な 停 電<br />

もこれらが 原 因 でした。 数 時 間 にわたる 停 電 は、 連 系 線 の 送 電 を 遮 断 したこと<br />

が 原 因 でした。 他 の 送 配 電 線 が 過 負 荷 になり、ヨーロッパの 電 力 系 統 で 連 鎖 反<br />

応 を 引 き 起 こしました。この 事 件 の 後 に、ドイツと 近 隣 欧 州 諸 国 のセキュリティ<br />

機 構 はさらに 改 善 されています。<br />

例 として、ドイツは 電 力 不 足 を 防 止 するため、 発 電 所 を 追 加 して 一 定 量 の 予 備 電<br />

力 を 設 置 しています。 消 費 量 が 特 別 に 高 く、またドイツの 風 力 原 動 機 の 稼 働 率<br />

が 最 高 である 冬 頃 に、これらの 発 電 所 は 特 に 重 要 です。ドイツ 北 部 から 南 部 へ<br />

と 大 量 の 電 力 を 送 電 するため、 電 力 系 統 が 過 負 荷 になる 場 合 は、これらの 予 備<br />

発 電 所 が 南 部 の 需 要 に 応 えます。<br />

2011 年<br />

日 本 の 福 島 県 の 原 子 力 発 電 所 で 重 大 事 故 が 発 生 しまし<br />

た。ドイツは 本 来 の 計 画 よりも 早 く2022 年 までに 発 電<br />

目 的 での 原 子 力 の 使 用 を 廃 止 することを 決 定 しました。<br />

2011 年<br />

すぐに 旧 型 発 電 所 を8ヶ 所 閉 鎖 しました。 欧 州 委 員 会 はヨー<br />

ロッパにおける 気 候 保 護 とエネルギー 供 給 に 関 する 長 期 戦 略<br />

の「エネルギーロードマップ2050」を 発 行 しました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 25<br />

© dpa/euroluftbild.de/Hans Blossey<br />

再 生 可 能 エ ネ ル ギ ーで は 、す で に 現 在 、 時 間 あ たりで もの<br />

ドイツの 電 力 供 給 の 6 0 % 超 を 占 め 、この シェア が 今 後 数 年<br />

も 引 続 き 増 加 します。この 際 、 多 様 な 再 生 可 能 エネルギー<br />

が 互 い に 補 完 し 合 います。パ イロットプ ロジェクトで は 、 各<br />

発 電 所 の 多 様 な 発 電 を 組 み 合 わせ、 結 果 として 給 電 の 信<br />

頼 性 を 向 上 させることが 可 能 なことを 示 しています。 陽 や 風<br />

のない「ドゥンケルフラウテ( 暗 い 凪 )」 時 には 、 柔 軟 な 従<br />

来 型 発 電 所 でギャップを 埋 めます。その 場 合 は、ガス 発 電<br />

所 が 特 に 適 していますが、 揚 水 発 電 所 やバイオエ ネルギー<br />

発 電 所 で も 迅 速 に 電 力 を 提 供 で きま す。しかし 、 将 来 にこ<br />

れが 発 生 した 場 合 には、 中 長 期 的 に 蓄 電 施 設 でギャップを<br />

埋 めることも 計 画 しています。<br />

大 きな 課 題 となるのが、 電 力 市 場 の 改 革 です。ドイツはこ<br />

の 分 野 で 改 革 のプロセスを 開 始 し、 第 一 歩 を 踏 み 出 しまし<br />

た。 重 要 な 特 徴 の 一 つは、 柔 軟 性 です。 電 力 市 場 の 関 係 者<br />

はすべてできる 限 り 良 好 に 風 力 発 電 または 太 陽 光 発 電 の<br />

変 動 に 対 応 する 必 要 があります。 同 時 に、 全 体 的 な 費 用 を<br />

低 く 抑 えるため、これらの 電 力 網 には 多 様 な 平 衡 化 方 法 の<br />

間 の 競 争 が 必 要 です。<br />

また 、 国 境 を 越 える 電 力 網 の 拡 大 、ならび にヨーロッパ の<br />

かつて 地 域 別 の 電 力 市 場 の 統 合 はドイツにおいても 安 定 性<br />

と 柔 軟 性 を 向 上 させます。<br />

電 力 消 費 者 自 身 も 重 要 な 役 割 を 果 たします。 風 の 強 い 時 な<br />

ど、 給 電 量 が 高 い 時 に 消 費 者 が 電 力 を 使 用 することを 奨<br />

励 することができます。 工 場 、 冷 蔵 倉 庫 などの 大 規 模 な 消<br />

費 者 はこのように 系 統 全 体 への 負 荷 を 大 幅 に 軽 減 するこ<br />

とができます。<br />

再 生 可 能 エネルギー 発 電 の 変 動<br />

2017 年 のドイツのあらゆるエネルギー 源 による 発 電 および 電 力 消 費<br />

100 GW<br />

80 GW<br />

発 電 および 電 力 消 費<br />

60 GW<br />

40 GW<br />

20 GW<br />

0 GW<br />

2017 年 1 月 2017 年 2 月 2017 年 3 月 2017 年 4 月 2017 年 5 月 2017 年 6 月 2017 年 7 月 2017 年 8 月 2017 年 9 月 2017 年 10 月 2017 年 11 月 2017 年 12 月 2018 年 1 月<br />

従 来 型 発 電 所<br />

太 陽 光 陸 上 風 力 洋 上 風 力 水 力 バイオマス<br />

電 力 消 費<br />

2012 年<br />

京 都 議 定 書 はドーハの 気 候 変 動 会<br />

議 で2020 年 まで 延 長 されました。<br />

2013 年<br />

ドイツは 送 電 網 に 必 要 な 拡 張 に 関 する 初 と<br />

なる 連 邦 需 要 計 画 法 を 可 決 しました。


26 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

蓄 電<br />

蓄 えられるエネルギー<br />

電 力 の80%は、2050 年 までに 主 に 風 力 発 電 所 や 太 陽 光 発 電 所 からの 再 生 可<br />

能 エネルギーから 調 達 することを 目 標 としています。その 前 提 で、ドイツの 日 照 時<br />

間 が 減 ったり、 風 が 吹 かなくなる 非 常 事 態 が 発 生 する 場 合 、 迅 速 かつ 柔 軟 に 状<br />

況 に 適 応 できる 電 力 系 統 を 必 要 とします。エネルギー 貯 蔵 装 置 は 解 決 策 の 一 つ<br />

となります。 風 や 日 光 が 強 い 時 には 電 力 を 蓄 え、それを 稼 働 率 の 低 い 時 、 暗 い<br />

時 や 曇 りの 時 にも 必 要 に 応 じて 再 び 放 出 することができます。<br />

© dpa/Hannibal Hanschke<br />

蓄 電 ソリューションは 色 々あります。 電 池 、コンデンサ、フライホイール 蓄 電 装 置<br />

などの 短 期 蓄 電 装 置 では、 一 日 に 何 度 も 充 電 ・ 放 電 することができます。しか<br />

し、 容 量 が 限 定 されます。<br />

マイホーム 蓄 電 : 電 池<br />

太 陽 光 発 電 装 置 & 自 家 消 費 用 および 電 力 網 給 電 用 電 池 とのコ<br />

ンビネーション<br />

揚 水 蓄 電 装 置 : 自 然 のストックを 利 用<br />

揚 水 蓄 電 施 設 の 構 成<br />

太 陽 光 発 電 装 置<br />

上 部 貯 水 池<br />

変 圧 器<br />

モーター/ 発 電 機<br />

1.<br />

2.<br />

電 池 による 蓄 電<br />

ポンプタービン<br />

下 部 貯 水 池<br />

【 自 家 消 費 】<br />

太 陽 光 発 電 の 直<br />

接 使 用 または 電 池<br />

余 分 な 電 力 の 電 力 網 給 電<br />

1.<br />

蓄 電<br />

( 余 剰 ) 電 力 でタービンを 駆 動 します。<br />

上 部 貯 水 池 に 揚 水 します。<br />

2.<br />

蓄 積 エネルギーを 放 出 します。<br />

水 が 下 へ 流 れ 、タ ー ビ ン を 駆 動 し ま す 。<br />

タービンで 発 電 し、 電 力 網 に 給 電 します。<br />

10 万 台 の 蓄 電 装 置 が 使 用 中 稼 動 発 電 量 9.2GW、 工 事 中 4.5GW<br />

ドイツは 長 期 蓄 電 のために 主 に 揚 水 発 電 所 を 使 用 します。これらの 発 電 所 はそ<br />

の 一 部 がルクセンブルクやオーストリアにあり、 現 在 容 量 が 約 9ギガワットで、ド<br />

イツの 電 力 網 に 接 続 されています。このように、ドイツはEU 最 大 の 揚 水 容 量 を 持<br />

っていますが、 拡 大 の 余 地 があまりありません。それゆえ、ドイツは 蓄 電 容 量 の<br />

大 きい 国 と 密 接 に 協 力 し 合 っています。その 中 、オーストリア、スイスとノルウェ<br />

ーは 最 も 重 要 な 国 々です。<br />

もう 一 つの 長 期 蓄 電 に 圧 縮 空 気 蓄 電 があります。 余 剰 エネルギーで 空 気 を 岩<br />

塩 抗 などの 地 中 空 間 に 圧 縮 します。 必 要 になった 時 は、 圧 縮 空 気 で 発 電 機 を<br />

駆 動 して 発 電 します。<br />

2013 年<br />

初 の 完 全 に 新 規 開 発 された 電 動 自<br />

動 車 がドイツで 量 産 されました。<br />

2013 年<br />

世 界 初 の 工 業 規 模 に 則 るパ<br />

ワーツーガス 発 電 所 がドイ<br />

ツで 稼 動 されました。<br />

2014 年<br />

ドイツは 再 生 可 能 エネルギー 法 を 改 正 しました。<br />

同 法 には 初 の 年 間 開 発 目 標 が 含 まれ 、 市 場 統 合 を<br />

促 進 しました。


ドイツのエネルギー 転 換 | 27<br />

© Paul Langrock<br />

より 将 来 性 のある 長 期 蓄 電 コンセプトにはパワーツーガス<br />

があります。 電 気 分 解 で 再 生 可 能 エネルギーに 由 来 する 電<br />

力 を 水 素 または 合 成 天 然 ガスに 変 換 します。メリットとし<br />

て、 水 素 や 天 然 ガスを 保 管 したり、すぐに 使 用 したり、 天 然<br />

ガスネットワークに 供 給 したりできます。これらのガスは 輸<br />

送 が 簡 単 で、 柔 軟 に 使 用 可 能 で、また 必 要 に 応 じて 発 電 所<br />

が 電 気 または 熱 に 再 変 換 し、 最 終 消 費 者 が 調 理 、 暖 房 ま<br />

たは 自 動 車 運 転 に 使 用 することができます。<br />

エ ネ ル ギ ー 蓄 積 装 置 の コストを 下 げ るため 、ドイツ 政 府 はこ<br />

の 分 野 での 研 究 と 開 発 を 進 め、2011 年 に「 蓄 電 」という 助<br />

成 イニチアチブを 開 始 しました。2013 年 以 来 、 太 陽 光 発 電<br />

装 置 に 接 続 する 小 規 模 な 分 散 型 蓄 電 装 置 にも 助 成 を 行 っ<br />

て います。 電 池 の 新 しい 応 用 フィールドには 、 電 力 網 におけ<br />

る 些 細 な 不 均 衡 を 迅 速 に 解 消 することがあります。こうする<br />

ことで 電 気 自 動 車 も、 使 用 時 以 外 に 電 力 供 給 の 安 定 化 に<br />

貢 献 することができます。これらの 電 池 システムの 市 場 への<br />

導 入 は、 研 究 ・ 革 新 を 促 進 し、 価 格 を 低 減 します。<br />

蓄 電 池 の 需 要 は 、 今 後 数 年 で 特 に 電 気 自 動 車 の 搭 載 向 け<br />

に 増 加 することが 見 込 まれています。 電 力 網 におけるすべ て<br />

の 蓄 電 技 術 のシステム 費 用 を 低 減 することは、 長 期 的 に 再<br />

生 可 能 エネルギーのシェアを 大 幅 に 増 加 することによって<br />

のみ 期 待 できます。 短 期 ・ 中 期 的 には、 電 力 網 の 拡 大 や、<br />

効 率 的 にエネルギーを 使 用 するために 発 電 と 消 費 の 目 的 に<br />

応 じて 制 御 する、といった 他 の 対 策 を 講 じた 方 がコスト 面<br />

で 有 利 です。<br />

電 気 のガスへの 変 換<br />

電 気 分 解 やメタン 発 酵 の 機 能 原 理 。 可 能 な 使 用 用 途<br />

余 剰 再 生 可 能 エネルギー<br />

電 気 分 解<br />

メタン 化<br />

H<br />

2<br />

H<br />

2<br />

H<br />

2<br />

CH<br />

4<br />

天 然 ガスネットワーク<br />

ガス 貯 蔵 設 備<br />

工 業 用 途 交 通<br />

発 電 熱 供 給<br />

稼 働 中 のパイロットプロジェクト15 件 、 工 事 中 または 計 画 中 のプロジェクト6 件<br />

2014 年<br />

EUは、 温 室 効 果 ガス 排 出 量 を40% 削 減 し、 再 生 可 能<br />

エネルギーのシェアを27% 以 上 に 増 加 し、エネルギ<br />

ー 消 費 量 を27% 以 上 低 減 するといった2030 年 のエ<br />

ネルギーと 気 候 に 関 する 目 標 を 決 議 しました。<br />

2014 年<br />

ドイツは 国 家 エネルギー 効 率 行 動 計 画 を 可 決 し、「 気 候 保 護 行 動 プロ<br />

グラム2020」を 開 始 しました。 再 生 可 能 エネルギーは、 電 力 消 費 量 の<br />

27.4%を 占 め、ドイツで 最 も 重 要 なエネルギー 源 になりました。


28 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

市 民 とエネルギー 転 換<br />

「 市 民 がエネルギー 転 換 から<br />

得 るものは?」<br />

エネルギー 転 換 は 市 民 も 一 体 となってはじめて 成 功 できます。そして、これは<br />

エネルギーが 個 人 消 費 者 に 対 して 手 頃 かどうかに 大 きく 左 右 されます。しか<br />

し、 市 民 はエネルギー 供 給 の 改 編 からも 直 接 に 利 益 を 得 ます。よって、 大 勢 の<br />

市 民 が、どのように 家 でエネルギーを 最 も 節 約 できるかについてアドバイスを<br />

求 めています。<br />

旧 型 暖 房 装 置 を 切 り 替 えたり、 家 を 修 繕 する 人 は 低 金 利 のローンや 国 家 助 成<br />

金 の 恩 恵 を 受 けます。 新 築 アパートを 借 りようとする 人 はエ ネルギー 消 費 量 や<br />

費 用 に 関 する 情 報 を 自 動 的 に 受 け、また 新 しい 洗 濯 機 、パソコンまたはランプ<br />

を 買 いたいなら、 製 品 のエネルギー 効 率 がラベルで 分 かります。<br />

一 般 市 民 が 所 有 する 発 電 設 備 は 何 ヶ 所 ありますか?<br />

所 有 者 グループ 別 の 発 電 用 再 生 可 能 エネルギー 設 備 発 電 量 のシェア<br />

42%<br />

市 民<br />

( 個 人 所 有 者 、<br />

市 民 エネルギー 企 業 、 住 民 参 加 )<br />

16%<br />

エネルギー 供 給 者<br />

41%<br />

投 資 家<br />

( 機 関 投 資 家 、 戦 略 的 投 資 家 )<br />

© dpa/Westend61/Tom Chance © dpa/Bodo Marks<br />

2015 年<br />

第 21 回 気 候 変 動 枠 組 条 約 締 約 国 会 議 がパリ<br />

で 開 催 され、195ヶ 国 が2 °Cを 上 限 にして 地<br />

球 温 暖 化 を 抑 えることに 合 意 しました。<br />

2016 年<br />

パリ 気 候 協 定 が11 月 4 日 に 発 効 しました。ドイツは 再 生 可 能<br />

エネルギー 助 成 を 変 更 しました。2017 年 現 在 、あらゆる 技<br />

術 に 対 して 入 札 が 行 われています。


dpa/Marc Ollivier<br />

ドイツのエネルギー 転 換 | 29<br />

市 民 は 従 来 のエネルギー 分 野 にも 積 極 的 に 関 与 していま<br />

す。 電 気 と 暖 房 はもはや 小 規 模 または 大 規 模 なエネルギー<br />

供 給 者 だ け で なく、ソーラ ーパ ネル システムを 所 有 したり、<br />

風 力 発 電 所 に 投 資 したり、バイオガス 発 電 所 を 運 営 したり<br />

している 市 民 自 身 が 生 み 出 します。ドイツの150 万 台 以 上 の<br />

太 陽 光 発 電 装 置 の 多 くは 一 戸 建 て 住 宅 の 屋 根 に 設 置 され<br />

ています。ドイツの 市 民 は、 全 風 力 タービンに、 農 家 はバイ<br />

オエネルギーのおよそ 半 分 に 投 資 しています。<br />

自 前 の 再 生 可 能 エネルギー 技 術 の 設 置 または 資 金 調 達 が<br />

難 しい 人 は 他 人 と 力 を 合 わせることができます。エネルギー<br />

協 同 組 合 はおよそ850 団 体 、 組 合 員 は18 万 人 以 上 にのぼり<br />

ます。こうした 組 合 がエネルギー 転 換 の 諸 プロジェクトに 共<br />

同 投 資 しています。 消 費 者 は、わずか100ユーロから 投 資 を<br />

始 めることができます。<br />

さらに 消 費 者 は、エネルギー 転 換 の 具 体 的 な 点 について<br />

多 大 な 発 言 権 をもち、 例 えば、 自 分 の 地 域 で 特 に、 新 たな<br />

風 力 発 電 所 が 計 画 されると、 懸 念 や 要 望 を 表 明 でき、 特<br />

に、ドイツ 中 に 大 量 の 電 力 を 送 電 する 送 電 線 の 架 設 計 画<br />

においては、 市 民 が 非 常 に 積 極 的 な 役 割 を 果 たします。こ<br />

の 場 合 、 市 民 は す で に 電 力 網 拡 張 の 需 要 を 調 べる 時 点 で<br />

提 案 、 意 見 を 出 すことができます。 送 配 電 線 の 実 際 の 経 路<br />

の 決 定 に 至 るまで、 他 のすべての 計 画 段 階 もパブリックの<br />

参 加 のもとに 行 わ れ ま す。 加 えて 消 費 者 は 、す で に 正 式 な<br />

手 続 きの 開 始 前 に、 連 邦 ネットワーク 庁 と 系 統 運 用 者 より<br />

送 配 電 線 の 各 プロジェクトに 関 する 詳 細 情 報 を 受 け 取 りま<br />

す。<br />

上 記 の 諸 活 動 は、「 電 力 網 市 民 対 話 」イニチアチブにより<br />

補 われ、これは 市 民 オフィスをもち、 拡 大 プロジェクトが 計<br />

画 されて いる 地 域 で 直 接 対 話 を 提 供 して、 電 力 網 拡 張 のあ<br />

らゆる 事 項 につ いての 固 定 連 絡 窓 口 で もあります。このよう<br />

に 早 期 に 取 組 むことにより、エ ネルギ ープ ロジェクトは 実 施<br />

が 容 易 になり、 受 容 性 が 高 まります。<br />

消 費 者 は 家 でどのようにエネルギー 転 換 から 利 益 を 得 ますか?<br />

1970 年 代 に 建 築 された 一 戸 建 て 住 宅 に 採 用 可 能 な 再 生 可 能 エネルギーのエネルギー 効 率 性 と 利 用 の 選 択 例<br />

省 エネルギー13%<br />

屋 根 の 断 熱<br />

自 家 消 費 電 力 の60~70%<br />

蓄 電 池 を 搭 載 した 太 陽 光 発 電 装 置<br />

省 エネルギー10%<br />

三 層 ガラス<br />

省 エネルギー22%<br />

外 壁 の 断 熱<br />

省 エネルギー80%<br />

白 熱 電 球 の 代 わりにLED 照 明 具<br />

省 エネルギー5%<br />

地 下 室 天 井 の 断 熱<br />

省 エネルギー15%<br />

暖 房 装 置 の 近 代 化<br />

自 家 消 費 暖 房 の100%<br />

暖 房 ・ 温 水 用 ヒートポンプ<br />

2018 年<br />

欧 州 連 合 (EU)の 理 事 会 と 議 会 は、EUにおける 再 生 可 能 エネルギーの 拡 大<br />

と 利 用 の 助 成 を 目 的 とした 管 理 システムのための 規 則 に 合 意 しました。


30 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

用 語 集<br />

予 備 発 電 所<br />

電 力 系 統 において 急 なボトルネックが<br />

発 生 した 場 合 は 、 予 備 発 電 所 を 使 用<br />

します。 速 やかに 起 動 ・ 停 止 する 必 要<br />

が あるため 、ガ ス 発 電 所 はこの 目 的 に<br />

最 適 です。<br />

電 池<br />

電 池 は 電 気 化 学 蓄 電 装 置 です。 電 子<br />

回 路 につなぐと、 電 荷 を 放 出 し、 電 力<br />

を 流 します。 携 帯 電 話 、 電 気 自 動 車<br />

などの 装 置 に 使 われる 充 電 式 電 池 は<br />

蓄 電 池 と 呼 ばれ、 太 陽 光 発 電 施 設 な<br />

どの 再 生 可 能 エネルギー 源 でも 使 用<br />

される 充 電 式 電 池 は、 電 池 貯 蔵 装 置<br />

と 呼 ば れます。 電 池 は 容 量 (アンペア<br />

時 、 略 してAh 単 位 )によってわずかな<br />

電 荷 を 蓄 積 できます。<br />

建 物 の 改 修<br />

建 築 物 のエネルギー 効 率 向 上 の 取 組<br />

みで は 、 技 術 の 現 状 を 踏 まえて 必 要<br />

以 上 にエネルギーが 失 われるという<br />

弱 点 を 解 消 します。 可 能 な 改 良 措 置 に<br />

は、 壁 や 屋 根 の 断 熱 、 断 熱 窓 の 新 設<br />

等 が あります。 他 には 、 暖 房 装 置 を 近<br />

代 化 することができます。<br />

コンデンサ<br />

コンデンサは 短 期 間 に 蓄 電 できます。<br />

コンデンサは 金 属 球 や 金 属 板 など、2<br />

つの 部 品 から 構 成 されます。1つの 部<br />

品 は 正 電 荷 、もう 一 つの 部 品 は 負 電 荷<br />

を 帯 びます。 両 部 品 が 互 いに 接 続 さ<br />

れると、 電 荷 が 平 衡 になるまで 電 気<br />

が 流 れます。<br />

カーシェア<br />

カ ーシェアとは 、 複 数 の 使 用 者 で 単<br />

一 の 自 動 車 を 共 有 することを 意 味 し<br />

ます。 一 般 的 には、この 自 動 車 を 所 有<br />

する 企 業 の 顧 客 になって、 必 要 時 に 借<br />

りるという 形 になります。カーシェア<br />

は 従 来 のカーレンタルサービスとは 違<br />

い 、 急 用 時 、ま た 例 え ば 3 0 分 間 で も<br />

自 動 車 を 予 約 することが 可 能 です。カ<br />

ーシェアサービス 専 用 駐 車 場 を 造 っ<br />

たコミュニティが たくさんあります。カ<br />

ーシェア 用 自 動 車 はバス 専 用 レーン<br />

でも 使 用 できます。<br />

CO₂ 相 当 値<br />

C O 2 相 当 値 とは 、 通 常 10 0 年 にわた<br />

る 化 学 化 合 物 の 温 室 効 果 に 対 する 影<br />

響 の 比 較 数 値 で す。た だし、 二 酸 化<br />

炭 素 (CO2)の 値 を1とします。CO2<br />

相 当 値 が25の 物 質 の 場 合 は、この 物<br />

質 1キロの 排 出 はCO21キロの 排 出 よ<br />

りも25 倍 有 害 です。 備 考 :CO2 相 当<br />

値 は 、 化 学 物 質 の 気 候 変 動 に 対 する<br />

実 際 の 影 響 を 示 すものではありませ<br />

ん。<br />

圧 縮 空 気 蓄 電<br />

圧 縮 空 気 蓄 電 は、 電 力 で 空 気 を 圧 縮<br />

して 地 中 空 洞 に 貯 蔵 することです。 圧<br />

縮 空 気 は 必 要 に 応 じて 開 放 してター<br />

ビ ン で 発 電 することが で きます。これ<br />

まではこの 技 術 はあまり 使 われてきま<br />

せんでした 。しかし、 再 生 可 能 エ ネル<br />

ギー 源 による 余 剰 発 電 力 を 蓄 積 する<br />

オプションと 見 なされています。 気 密<br />

性 のある 岩 塩 坑 は 貯 蔵 にふさわしい<br />

安 全 な 地 形 と 見 なされています。 設 置<br />

には 、 克 服 すべき 地 質 学 上 の 課 題 が<br />

幾 つか あります。 後 になってから 施 設<br />

が 不 安 定 と 判 明 した 場 合 、 安 定 化 する<br />

ことができないためです。また、 周 辺<br />

の 岩 石 の 張 力 に 影 響 を 及 ぼさないこ<br />

とが 重 要 です。<br />

ドゥンケルフラウテ( 暗 い 凪 )<br />

風 力 発 電 施 設 や 太 陽 光 発 電 施 設 が 発<br />

電 できない 時 期 はドゥンケルフラウテ<br />

( 暗 い 凪 )と 言 われています。 最 悪 の<br />

場 合 は 、 雲 がかかり、 風 のない 新 月 の<br />

夜 です。こういった 時 期 は、 他 のエネ<br />

ルギー 源 または 予 め 蓄 積 したエネル<br />

ギーで 電 力 需 要 に 対 応 する 必 要 があ<br />

ります。<br />

排 出 量 取 引<br />

ヨ ー ロッパ で は 、C O 2 には 市 場 価 値<br />

があります。エネルギー 経 済 と 工 業 の<br />

大 部 分 は、 排 出 する 温 室 効 果 ガス1ト<br />

ンごとに 証 書 を 提 示 する 必 要 がありま<br />

す。 証 書 が 足 りない 場 合 は 専 用 市 場<br />

で 購 入 し、 排 出 量 を 低 減 する 場 合 は<br />

余 分 な 証 書 を 売 ることが で きます。 毎<br />

年 入 手 可 能 な 証 書 の 総 件 数 が 減 少 す<br />

るため、 企 業 が 省 エネルギー 措 置 に


ドイツのエネルギー 転 換 | 31<br />

投 資 し、また 環 境 への 害 の 少 ない 他<br />

のエネルギー 源 を 採 用 するインセンテ<br />

ィブになります。<br />

エネルギー 協 同 組 合<br />

協 同 組 合 は19 世 紀 の 理 念 に 基 づくも<br />

の で 、 現 在 、ド イツ で 確 固 たる 地 位 を<br />

築 いていま す。フリードリヒ・ヴィル ヘ<br />

ルム・ライフアイゼンとヘルマン・シュ<br />

ルツェ=デーリッチュはそれぞれ 同 時<br />

にドイツ 初 の 協 同 組 合 を 立 ち 上 げまし<br />

た。 同 様 の 事 業 の 利 害 関 係 を 持 つ 複<br />

数 の 個 人 が 力 を 合 わせて、 購 買 組 合<br />

などの 形 で 市 場 での 影 響 力 を 強 める<br />

という 構 想 です。ドイツでは、このよ<br />

うな 特 殊 な 企 業 形 態 は 固 有 の 法 律 で<br />

定 められています。エネルギー 供 給 の<br />

分 野 で 協 同 組 合 が 存 在 するのはずっ<br />

と 以 前 からのことです。ドイツで 電 化<br />

が 始 まると、 特 に 農 村 部 は 、 大 都 市 と<br />

同 じスピードで 電 化 を 行 うことができ<br />

なかったため、 同 地 の 電 力 供 給 を 行 う<br />

エネルギー 協 同 組 合 を 結 成 しました。<br />

今 でもこれらのエネルギー 協 同 組 合<br />

の 一 部 は 存 続 しています。エネルギー<br />

転 換 のおかげで、 協 同 組 合 モデルに<br />

新 しい 命 を 与 えました 。 関 係 者 の 大 多<br />

数 は 、 例 として、 太 陽 光 発 電 所 、 風 力<br />

発 電 所 の 建 設 に 資 金 を 与 える 個 人 が<br />

占 めています。<br />

エネルギー 効 率 性<br />

エネルギー 効 率 性 とは、 投 入 エネル<br />

ギ ー に 比 べ た 性 能 水 準 、もしくは 一 定<br />

の 性 能 水 準 を 達 成 するために 必 要 な<br />

エネルギーの 投 入 量 を 指 します。エネ<br />

ルギー 効 率 性 が 高 い 場 合 、 成 果 を 遂<br />

げるのに 必 要 なエネルギーは 低 くな<br />

ります。 例 えば、エネルギー 効 率 の 高<br />

い 建 物 は 、サ イズ が 同 様 の 、エ ネ ル ギ<br />

ー 効 率 の 低 いビル 建 物 に 比 べて 冷 暖<br />

房 に 必 要 なエネルギーが 少 なくて 済<br />

みます。 他 に、 工 業 生 産 や 交 通 は、エ<br />

ネルギー 効 率 性 がますます 重 要 にな<br />

っている 分 野 です。エネルギー 効 率 向<br />

上 措 置 が、その 実 施 に 要 した 費 用 より<br />

も 多 くの 資 金 を 節 減 できる 場 合 、 企 業<br />

にとって 興 味 深 いものとなります。 個<br />

人 消 費 者 も、 特 にエネルギー 効 率 の<br />

高 い 装 置 を 使 うと 省 エネに 貢 献 でき<br />

ます。 多 くの 国 では、 冷 蔵 庫 、テレビ、<br />

洗 濯 機 等 に 消 費 表 示 があり、それによ<br />

り 消 費 者 は 家 電 のエネルギー 効 率 を<br />

すぐ 見 てとれます。<br />

エネルギー 生 産 性<br />

エネルギー 生 産 性 とは、 使 用 エネル<br />

ギー1 単 位 あたりの 国 民 経 済 の 価 値 (<br />

国 内 総 生 産 におけるシェア)を 指 しま<br />

す。 国 民 経 済 の 場 合 は 、 主 要 な エネル<br />

ギーを 基 に 算 出 します。<br />

拡 大 回 廊<br />

拡 大 回 廊 では、 再 生 可 能 エネルギー<br />

開 発 の 予 測 可 能 性 、 電 力 網 へのより 良<br />

い 統 合 、 消 費 者 に 対 する 追 加 費 用 の<br />

管 理 性 の3 点 に 対 応 します。 再 生 可 能<br />

エネルギー 法 では、 再 生 可 能 エネル<br />

ギー 技 術 別 に 専 用 目 的 回 廊 を 割 り 当<br />

てます。 新 設 備 容 量 が 当 年 上 限 を 上<br />

回 った 場 合 は 、 翌 年 に 助 成 金 が 少 くな<br />

ります。 回 廊 の 目 標 に 達 せ ず、 拡 大 が<br />

小 さい 場 合 は、 助 成 額 低 減 が 低 くな<br />

るか、あるいは 消 失 します。<br />

固 定 価 格 買 取<br />

再 生 可 能 エネルギー 法 は、 風 力 発 電<br />

所 または 太 陽 光 発 電 所 の 事 業 者 が 所<br />

定 の 期 間 に 生 産 する 電 力 を 最 小 限 の<br />

固 定 価 格 で 買 い 取 ることを 保 証 する<br />

ものです。 固 定 価 格 を 設 定 する 期 間<br />

は 、 発 電 所 が 開 設 した 年 です。 技 術<br />

が 進 歩 し、 技 術 の 使 用 用 途 が 広 がる<br />

につれて 投 資 費 用 が 減 少 し 続 けるた<br />

め 、 固 定 価 格 は 年 々 下 落 しま す。ドイ<br />

ツでは、 今 後 数 年 で 入 札 手 続 き( 入 札<br />

参 照 )が 現 行 の 固 定 価 格 買 取 制 度 に<br />

変 わって 導 入 されます。<br />

最 終 エネルギー 消 費 量<br />

最 終 エネルギーは 消 費 者 に 実 際 にた<br />

どり 着 くエネル ギ ーで す。この 数 値 か<br />

らは 伝 送 線 損 失 、 発 電 所 における 効<br />

率 由 来 の 損 失 などの 因 子 を 差 し 引 き<br />

ます。しかし、 電 源 装 置 の 発 熱 などに<br />

よる、 消 費 者 側 で 生 じる 損 失 は 最 終<br />

エネルギー 消 費 量 に 含 まれます。<br />

フライホイール 蓄 電 装 置


32 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

フライホイール 蓄 電 装 置 は 短 期 間 に<br />

電 力 網 の 余 剰 電 力 を 蓄 積 できます。<br />

電 力 は 機 械 的 に 蓄 積 されます。 電 動<br />

機 では、フライホイールを 駆 動 して 電<br />

気 エネルギーを 回 転 エネルギーに 変<br />

換 します。 回 収 するためには、 必 要 な<br />

時 にホイールで 電 動 機 を 駆 動 します。<br />

電 池 と 同 様 に、フライホイールもモジ<br />

ュール 型 の 構 造 に 適 しています。この<br />

技 術 の 基 本 原 理 は 中 世 以 来 すでに 知<br />

られていますが、 当 時 は 電 力 と 併 用 さ<br />

れていませんでした。フライホイール<br />

は 主 に 短 期 間 にピークが 望 まれる 蓄<br />

電 に 適 し、 後 で 電 力 網 に 迅 速 に 給 電<br />

できるように 設 計 されています。<br />

燃 料 電 池<br />

燃 料 電 池 は 化 学 エネルギーを 電 気 エ<br />

ネルギーに 変 換 して 発 電 する 小 型 発<br />

電 所 で、 電 気 自 動 車 を 駆 動 したり 電<br />

力 網 に 未 接 続 の 地 域 で 発 電 したりす<br />

る 目 的 などで 使 用 されます。 大 抵 の<br />

場 合 、 必 要 な 原 料 は 水 素 と 酸 素 だけ<br />

です。この 発 電 方 法 では 環 境 に 有 害<br />

なガスは 一 切 発 生 せず、 発 生 するの<br />

は 蒸 気 だけです。 発 電 に 必 要 な 水 素<br />

は 再 生 可 能 エネルギーによる 電 力 で<br />

生 産 することが で きます( パ ワーツ<br />

ーガス 参 照 )。しかし、メタノールなど<br />

別 の 原 料 を 採 用 した 燃 料 電 池 もあり<br />

ます。<br />

温 室 効 果 ガス<br />

温 室 効 果 ガスは、 地 表 から 反 射 した<br />

太 陽 光 線 が 宇 宙 に 戻 らず、 大 気 圏 で<br />

再 び 地 球 に 向 かって 反 射 されるとい<br />

う 大 気 の 変 化 を 起 こし 、そ の 結 果 、<br />

地 球 温 暖 化 に 決 定 的 な 影 響 を 与 えま<br />

す。この 効 果 は 温 室 の 原 理 と 同 様 に<br />

地 球 を 暖 めます。 最 も 良 く 知 られてい<br />

る 温 室 効 果 ガスは、 主 に 石 油 、ガス、<br />

石 炭 などの 化 石 燃 料 の 燃 焼 で 生 じる<br />

二 酸 化 炭 素 です。 他 には、メタン、フ<br />

ロン 類 (CFC)などの 温 室 効 果 ガス<br />

があります。<br />

総 電 力 消 費 量<br />

国 の 総 電 力 消 費 量 を 計 算 するには、<br />

国 内 発 電 力 量 と 外 国 輸 入 電 力 量 を 合<br />

計 しま す。 次 に 、この 合 計 か ら 輸 入 電<br />

力 量 を 差 し 引 きます。<br />

国 内 発 電 電 力 量<br />

+ 輸 入 電 力 量<br />

- 輸 出 電 力 量<br />

--------------------------------------<br />

= 総 電 力 消 費 量<br />

ヒートポンプ<br />

ヒートポンプは 深 い 地 層 など 周 辺 か<br />

ら 熱 エネル ギ ー を 吸 収 します。この 熱<br />

で 温 水 を 生 成 したり、 屋 内 を 暖 房 した<br />

りします。 必 要 な 電 力 は 再 生 可 能 エネ<br />

ルギーから 生 成 できます。 冷 蔵 庫 は<br />

同 様 の 原 理 を 応 用 し、 内 部 を 冷 却 し<br />

ながら 外 部 へ 放 熱 します。<br />

京 都 議 定 書<br />

19 9 7 年 に 日 本 の 京 都 で、 気 候<br />

変 動 に 関 する 国 際 連 合 枠 組 条 約<br />

(UNFCCC) 加 盟 国 は2012 年 まで<br />

の 温 室 効 果 ガス 排 出 量 の 低 減 に 関 す<br />

る 目 的 に ついて 合 意 しました 。19 9 0<br />

年 の 水 準 が 基 準 になっています。190<br />

ヶ 国 以 上 が 当 該 議 定 書 を 批 准 しまし<br />

た。2020 年 までの 二 つ 目 の 議 定 期<br />

間 はドーハの 国 連 気 候 変 動 会 議 で 合<br />

意 されました。 京 都 議 定 書 は、2015<br />

年 12 月 に 現 在 196のUNFCCC 加 盟<br />

国 が2 °Cを 地 球 温 暖 化 の 上 限 とする<br />

ことに 合 意 したパリ 気 候 協 定 の 前 身<br />

です。<br />

ほぼゼロエネルギーの 建 物<br />

ほ ぼ ゼ ロ エ ネル ギ ー の 建 築 物 は 、 特<br />

にエネルギー 消 費 量 の 低 い 建 物 を 指<br />

す 用 語 です。2021 年 以 降 、 欧 州 連 合<br />

ではすべての 新 規 建 築 物 は 該 当 する<br />

基 準 に 従 う 必 要 が あります。 公 共 建<br />

築 物 には、すでに2019 年 以 降 この 規<br />

制 が 適 用 されています。ドイツでは、<br />

このようなビル 建 物 の 主 要 なエネル<br />

ギー 需 要 は、 毎 年 1 平 方 メートルあた<br />

り40kWh 以 内 とされています。<br />

ペレット 暖 房 装 置<br />

木 材 ペレットは、 切 り 屑 や 削 り 屑 を 圧<br />

縮 して 小 型 の 球 状 、 棒 状 にしたもの<br />

で、 専 用 暖 房 装 置 で 燃 焼 しま す。 圧<br />

縮 したためエネルギー 密 度 が 高 くな<br />

り、 薪 などに 比 べて 収 納 スペースをあ<br />

まり 取 りません。 木 材 ペレット 暖 房 装<br />

置 は 、 燃 焼 時 に 、 植 物 が 生 存 中 に 吸<br />

収 した 二 酸 化 炭 素 の 量 だけを 開 放 す<br />

るため 、 気 候 変 動 に 影 響 を 及 ぼしま<br />

せん。<br />

電 力 網 、 特 別 高 圧 電 力 網 、 配 電 網<br />

電 力 網 は 電 力 を 伝 送 するルートです。<br />

ドイツ など 多 くの 国 で は 、 電 力 網 は<br />

特 別 高 圧 (220kVまたは380kV)


ドイツのエネルギー 転 換 | 33<br />

、 高 電 圧 (60kV~220kV)、 中 電 圧<br />

(6kV~60kV)、 低 電 圧 (230kVま<br />

た は 4 0 0 V )といった 電 圧 の 異 なる 4<br />

段 階 から 構 成 されます。 低 電 圧 網 は<br />

家 庭 などの 受 電 者 を 対 象 とします。 特<br />

別 高 圧 網 はそれより 約 1,000 倍 高 い<br />

電 圧 に 対 応 し、 大 量 の 電 力 を 長 距 離<br />

で 伝 送 します。 高 電 圧 系 統 はさらに<br />

中 電 圧 網 または 低 電 圧 網 へ 電 力 を 分<br />

配 します。 中 電 圧 網 はさらに 電 力 を 輸<br />

送 して、 工 業 や 病 院 などの 重 要 な 消<br />

費 者 にも 供 給 します。 一 般 世 帯 は 低<br />

電 圧 網 から 電 力 を 受 けます<br />

パワーツーガス<br />

( 電 気 分 解 、メタン 化 )<br />

パワーツーガスは 余 剰 電 力 の 長 期 間<br />

蓄 積 を 可 能 にする 技 術 です。2 段 階 の<br />

プロセスでは、 電 力 をガスに 変 換 し、<br />

ガス 貯 蔵 施 設 に 貯 め、ガス 網 を 介 し<br />

て 分 配 で きます。 第 1 段 階 で は 、 水 を<br />

電 気 分 解 して 酸 素 と 水 素 を 生 成 しま<br />

す。 生 成 された 水 素 は 一 定 量 で 直 接 、<br />

ガス 網 に 供 給 したり、 第 2 段 階 (メタ<br />

ン 化 )で 他 のガ スに 変 換 したりで きま<br />

す。メタン 化 では、 水 素 に 二 酸 化 炭 素<br />

を 加 えてメタンと 水 を 生 成 します。メ<br />

タンは 天 然 ガスの 主 要 構 成 要 素 で、<br />

ガス 網 への 供 給 が 容 易 です。。<br />

主 要 なエネルギー、 主 要 なエネルギ<br />

ー 消 費<br />

主 要 なエネルギーは 石 炭 、 石 油 、 太<br />

陽 光 、 風 力 などのエネルギー 源 のうち<br />

使 用 可 能 なエネルギーの 合 計 です。<br />

最 終 エネルギー( 最 終 エネルギー 参<br />

照 )に 変 換 する 場 合 、 発 電 、 伝 送 時<br />

な ど 、いず れ に せよ 多 少 の 損 失 が 伴<br />

います。ただし、 損 失 量 は 元 々のエネ<br />

ル ギ ー 源 によって 異 なりま す。そ のた<br />

め、 常 に 最 終 エネルギー 消 費 量 より<br />

主 要 なエネルギー 消 費 量 の 方 が 高 く<br />

なります。<br />

揚 水 蓄 電<br />

揚 水 蓄 電 および 揚 水 蓄 電 発 電 所 は 信<br />

頼 性 の 高 い 蓄 電 技 術 で、 電 力 網 の 余<br />

剰 エネルギーで 高 地 の 貯 水 池 に 汲 み<br />

上 げます。 追 加 の 電 力 が 必 要 な 場 合<br />

は、 放 水 してタービンを 駆 動 して 発 電<br />

します。<br />

放 射 性 廃 棄 物<br />

放 射 性 廃 棄 物 はとりわけ 原 子 力 発 電<br />

をする 時 に 生 成 されます。 放 射 性 物<br />

質 は 燃 料 棒 内 で 分 裂 し、 別 の 物 質 に<br />

なります。 一 定 時 間 を 経 て、これらの<br />

物 質 は 使 用 できなくなりますが、 放 射<br />

性 を 持 ち 続 けます。これらは 最 初 は、<br />

ウラニウム、プルトニウム、ネプツニ<br />

ウム、ヨウ 素 、セシウム、ストロンチウ<br />

ム、アメリシウム、コバルトなどの 元<br />

素 の 同 位 体 です。 時 間 を 経 て、 崩 壊 系<br />

列 を 経 ながら 他 の 放 射 性 物 質 が 生 成<br />

されます。 人 間 と 自 然 への 被 害 を 防 止<br />

するため、この 廃 棄 物 は 長 期 間 に 安<br />

全 に 保 管 する 必 要 があります。 高 レベ<br />

ルの 放 射 性 廃 棄 物 は 最 短 100 万 年 間<br />

安 全 に 保 管 する 必 要 があります。 中 レ<br />

ベルの 放 射 性 廃 棄 物 では 防 護 措 置<br />

が 減 り、 低 レベル 放 射 性 廃 棄 物 では<br />

防 護 措 置 がほとんどありません。しか<br />

し 、こ れ も 長 期 間 で 安 全 な 保 管 が 必<br />

要 です。<br />

再 生 可 能 エネルギー<br />

再 生 可 能 エネルギーには、 風 力 、 太<br />

陽 エネルギー( 太 陽 光 、 太 陽 熱 )、 地<br />

熱 、バイオマス、 水 力 、 海 洋 エネルギ<br />

ーなどがあります。 水 力 の 場 合 は、 以<br />

下 の 区 別 がなされることがあります。<br />

多 くの 統 計 では、 小 規 模 な 水 力 施 設<br />

が 再 生 可 能 エネルギー 源 とされる 一<br />

方 、 設 備 容 量 が50メガワット 以 上 の<br />

大 規 模 な 水 力 発 電 所 は 、 再 生 可 能 エ<br />

ネルギー 源 とされないことがありま<br />

す。 石 炭 、 石 油 、ガ ス 、 原 子 力 などの<br />

従 来 のエ ネル ギ ー 源 とは 異 なり、 再 生<br />

可 能 エネルギーは 発 電 時 に 有 限 のエ<br />

ネルギー 源 を 使 用 しません。ただし、<br />

例 外 として、バイオマスは 、 原 料 が 同<br />

期 間 に 再 び 成 長 する 範 囲 内 で 処 理 さ<br />

れる 場 合 に 限 り、 気 候 中 立 と 見 なさ<br />

れます。 地 熱 は 常 に 批 判 の 的 です。 地<br />

質 に 手 を 加 える 場 合 、 特 に 地 震 を 引<br />

き 起 こしたり、 地 上 の 建 築 物 が 居 住<br />

不 可 能 になるほど 地 面 が 隆 起 するこ<br />

とがあります。


34 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

再 生 可 能 エネルギー 法 による 分 担<br />

金 、 分 担 金 制 度<br />

ドイツの 電 力 消 費 者 は 全 員 、 再 生 可<br />

能 エネルギー 法 に 従 って 電 力 価 格 に<br />

組 み 入 れられ た 分 担 金 によって、 再 生<br />

可 能 エネルギーに 由 来 する 電 力 に 関<br />

連 する 追 加 費 用 を 支 払 います。その 額<br />

は 、 事 業 者 に 支 払 わ れ る 報 酬 と、 電 力<br />

市 場 での 電 力 売 買 から 生 じる 収 入 と<br />

の 差 によって 変 わります。 電 力 需 要 の<br />

非 常 に 高 い 企 業 は 分 担 金 の 全 額 を 支<br />

払 う 必 要 がありません。<br />

欧 州 単 一 市 場<br />

欧 州 連 合 加 盟 国 は 単 一 市 場 を 構 成 し<br />

ま す。 単 一 市 場 で は 、 物 、サ ー ビ ス 、 資<br />

本 や、 一 定 の 制 限 の 下 での 国 境 を 越 え<br />

た 人 の 自 由 な 移 動 を 保 証 します。 例 と<br />

して、 国 境 を 越 えて 移 動 する 物 やサー<br />

ビスには、 関 税 などの 税 金 が 課 され<br />

ません。 電 力 、ガスや 石 油 も 国 を 超 え<br />

て 流 れていま す。しかし、 既 設 の 電 力<br />

線 、ガス 線 といったインフラは 欧 州 エ<br />

ネルギー 単 一 市 場 の 機 能 を 確 保 する<br />

にはまだ 不 十 分 です。 標 準 化 された 国<br />

を 越 えた 規 制 もまだ 必 要 です。EU 内<br />

の 電 気 価 格 の 均 一 性 を 確 保 して 供 給<br />

の 安 全 性 を 向 上 するため、これら2つ<br />

の 課 題 は 今 後 数 年 以 内 に 解 決 される<br />

予 定 です。<br />

ギ ー 供 給 を 調 整 しやすくなります。 特<br />

に 再 生 可 能 エネルギー 源 からの 電 力<br />

の 供 給 が 不 安 定 な 場 合 、こういった 解<br />

決 策 が 必 要 になります。 同 時 にスマー<br />

トグリッドでは、 柔 軟 な 電 力 価 格 モデ<br />

ルを 用 いて 需 要 を 制 御 することがで<br />

きます。<br />

入 札<br />

2017 年 以 降 、 新 規 風 力 発 電 所 プロジ<br />

ェクトや 大 規 模 太 陽 光 発 電 所 の 助 成<br />

タリフは、 入 札 によって 決 定 されてい<br />

ます。 複 数 のプ ロジェクトが 同 時 に 公<br />

示 されています。 各 プ ロジェクトの 応<br />

募 者 は 最 初 の 報 酬 額 に 相 当 する 付 け<br />

値 を 出 します。こうして 法 定 報 酬 に 代<br />

わって 再 生 可 能 エネルギーのフェアな<br />

市 場 電 力 価 格 が 決 められます。この 方<br />

法 を テストして 最 適 化 する た め 、す で<br />

に2015 年 に 大 規 模 太 陽 光 プロジェク<br />

トの 入 札 が3 回 行 われました<br />

スマートグリッド<br />

スマートグリッドは、 発 電 事 業 者 から<br />

系 統 や 蓄 電 設 備 を 通 じて 需 要 家 まで<br />

のすべての 関 係 者 が 相 互 通 信 を 行 う<br />

供 給 ネットワー クで、 自 動 の デ ジタル<br />

データ 伝 送 がこれを 確 保 しています。<br />

ボ トル ネック や 過 剰 発 電 を 防 止 し 、す<br />

べての 関 係 者 の 需 要 に 応 じてエネル


参 考 文 献 一 覧<br />

AG Energiebilanzen e.V. (2017):<br />

Energieverbrauch in Deutschland im Jahr 2016.<br />

Agora Energiewende (2017): Agorameter –<br />

Stromerzeugung und Stromverbrauch.<br />

Auswärtiges Amt (2015): Rede von Frank-<br />

Walter Steinmeier zur Eröffnung des Berlin<br />

Energy Transition Dialogue 2015.<br />

BMWi und BMBF: Energiespeicher – Forschung<br />

für die Energiewende.<br />

Bundesamt für Strahlenschutz (2016):<br />

Kernkraftwerke in Deutschland: Meldepflichtige<br />

Ereignisse seit Inbetriebnahme.<br />

Bundesministerium für Umwelt, Naturschutz,<br />

Bau und Reaktorsicherheit (2015):<br />

Atomenergie – Strahlenschutz.<br />

Bundesministerium für Umwelt, Naturschutz<br />

und nukleare Sicherheit (2018): Klimaschutz<br />

in Zahlen.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2014): Die Energie der Zukunft.<br />

Erster Fortschrittsbericht zur Energiewende.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2014): Zweiter Monitoring-Bericht<br />

„Energie der Zukunft“.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2015): Die Energie der Zukunft.<br />

Fünfter Monitoringbericht zur Energiewende.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2015): Eckpunkte Energieeffizienz.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2015): Erneuerbare Energien<br />

in Zahlen. Nationale und Internationale<br />

Entwicklung im Jahr 2014.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2015): EU-Energieeffizienz-Richtlinie.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2016): Bruttobeschäftigung durch<br />

erneuerbare Energien in Deutschland und<br />

verringerte fossile Brennstoffimporte durch<br />

erneuerbare Energien und Energieffizienz.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2016): Energiedaten: Gesamtausgabe.<br />

Stand November 2016.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2016): Erneuerbare Energien auf<br />

einen Blick.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2017): Energieeffizienz zahlt sich für<br />

deutsche Haushalte aus.<br />

Bundesministerium für Wirtschaft und<br />

Energie (2018): Energie der Zukunft – Sechster<br />

Monitoringbericht zur Energiewende.<br />

Bundesnetzagentur (2015): EEG-Fördersätze<br />

für PV-Anlagen. Degressions- und Vergütungssätze<br />

Oktober bis Dezember 2015.<br />

Bundesnetzagentur (2017): EEG in Zahlen.<br />

Bundesnetzagentur; Bundeskartellamt (2016):<br />

Monitoringbericht 2016.<br />

Bundesregierung (2015): Die Automobilindustrie:<br />

eine Schlüsselindustrie unseres Landes.<br />

Bundesverband CarSharing (2018):<br />

Aktuelle Zahlen und Daten zum CarSharing<br />

in Deutschland.<br />

Bundesverband der Energie- und<br />

Wasserwirtschaft (2014): Stromnetzlänge<br />

entspricht 45facher Erdumrundung.<br />

Bundesverband der Energie- und<br />

Wasserwirtschaft e.V. (2016): BDEW zum<br />

Strompreis der Haushalte. Strompreisanalyse<br />

Mai 2016.<br />

Council of European Energy Regulators<br />

(2015): CEER Benchmarking Report 5.2 on the<br />

Continuity of Electricity Supply – Data update.<br />

BSW-Solar (2018): Meilenstein der Energiewende:<br />

100.000ster Solarstromspeicher<br />

installiert.<br />

Deutsche Energie Agentur GmbH (2012):<br />

Der dena-Gebäudereport 2012. Statistiken<br />

und Analysen zur Energieeffizienz im<br />

Gebäudebestand.<br />

Deutsche Energie Agentur GmbH (2018):<br />

Der dena-Gebäudereport 2018. Statistiken<br />

und Analysen zur Energieeffizienz im<br />

Gebäudebestand.<br />

Deutsche Energie-Agentur (2013): Power to<br />

Gas. Eine innovative Systemlösung auf dem<br />

Weg zur Marktreife.<br />

Deutsche Energie-Agentur (2015):<br />

Pilotprojekte im Überblick.<br />

Deutscher Bundestag (2011): Novelle des<br />

Atomenergiegesetzes 2011.<br />

DGRV – Deutscher Genossenschaftsund<br />

Raiffeisenverband e.V. (2014):<br />

Energiegenossenschaften. Ergebnisse<br />

der Umfrage des DGRV und seiner<br />

Mitglieds ver bände.<br />

EnBW (2015): Pumpspeicherkraftwerk Forbach<br />

– So funktioniert ein Pumpspeicherkraftwerk.<br />

Energy Information Administration (2018):<br />

International Energy Statistics.<br />

entsoe (2014): 10-year Network Development<br />

Plan 2014.<br />

European Environment Agency (2016): Annual<br />

European Union greenhouse gas inventory<br />

1990-2014.<br />

Filzek, D., Göbel, T., Hofmann, L. et al. (2014):<br />

Kombikraftwerk 2 Abschlussbericht.<br />

GWS (2013) Gesamtwirtschaftliche Effekte<br />

energie- und klimapolitischer Maßnahmen der<br />

Jahre 1995 bis 2012.<br />

Heinrich-Böll-Stiftung (2018): Energieatlas 2018.<br />

IEA (2016): World Energy Outlook 2016<br />

Summary, November 2016.<br />

Intergovernmental Panel on Climate Change<br />

(2014): Climate Change 2014. Synthesis Report.<br />

International Renewable Energy Agency (2015):<br />

Renewable Power Generation Costs in 2014.<br />

IRENA (2015): Renewable power generation<br />

cost in 2014.<br />

KfW (2015): Energieeffizient bauen und sanieren.<br />

KfW-Infografik.<br />

Kraftfahrt-Bundesamt (2018): Fahrzeugbestand<br />

in Deutschland.<br />

Merkel, A. (2015): Rede von Bundeskanzlerin<br />

Merkel zum Neujahrsempfang des Bundesverbands<br />

Erneuerbare Energie e.V. (BEE) am<br />

14. Januar 2015.<br />

Ratgeber Geld sparen (2015): Kühlschrank A+++<br />

Ratgeber und Vergleich. Stand November 2015.<br />

REN21 (2017): Renewables 2017. Global Status<br />

Report. 2017.<br />

Statistische Ämter des Bundes und der Länder<br />

(2014): Gebiet und Bevölkerung – Haushalte.<br />

Statistisches Bundesamt (2015): Preise. Erzeugerpreise<br />

gewerblicher Produkte (Inlandsabsatz)<br />

Preise für leichtes Heizöl, schweres Heizöl,<br />

Motoren benzin und Dieselkraft stoff. Lange<br />

Reihen.<br />

Statistisches Bundesamt (2015): Umsätze in der<br />

Energie-, Wasser- und Entsorgungswirtschaft<br />

2013 um 1,6% gesunken.<br />

Statistisches Bundesamt (2016):<br />

Umweltökonomische Gesamtrechnungen,<br />

Werte für 2015 unter https://www.destatis.de/<br />

Statistisches Bundesamt (2017):<br />

Bevölkerungsstand.


36 | ドイツのエネルギー 転 換<br />

Statistisches Bundesamt (2018):<br />

Bruttoinlandsprodukt 2017 für Deutschland.<br />

trend:reseach Institut für Trend- und<br />

Marktforschung, Leuphana Universität<br />

Lüneburg (2013): Definition und Marktanalyse<br />

von Bürgerenergie in Deutschland.<br />

Umweltbundesamt (2015):<br />

Emissionsberichterstattung Treibhausgase<br />

Emissionsentwicklung 1990-2013 –<br />

Treibhausgase.<br />

Umweltbundesamt (2015): Nationale Trendtabellen<br />

für die deutsche Bericht erstattung<br />

atmosphärischer Emissionen 1990-2013.<br />

Umweltbundesamt (2015): Presseinfo<br />

14/2015: UBA-Emissionsdaten 2014 zeigen<br />

Trendwende beim Klimaschutz.<br />

Umweltbundesamt (2016): Treibhausgas-<br />

Emissionen in Deutschland.<br />

Umweltbundesamt (2016): UBA-Emissionsdaten<br />

für 2015 zeigen Notwendigkeit für<br />

konsequente Umsetzung des Aktions programms<br />

Klimaschutz 2020.<br />

Umweltbundesamt/Arbeitsgemeinschaft<br />

Energiebilanzen (2018): Indikator Energieverbrauch.<br />

Zetsche, D. (2009): Rede auf dem World<br />

Mobility Forum in Stuttgart, Januar 2009.


© dpa/Catrinus Van Der Veen<br />

印 刷<br />

発 行<br />

Auswärtiges Amt(ドイツ 連 邦 共 和 国 外 務 省 )<br />

Werderscher Markt 1<br />

10117 Berlin<br />

電 話 : +49 30 1817-0<br />

www.diplo.de<br />

編 集 ・デザイン<br />

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Diamond media GmbH,<br />

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