ditn0914

yusukemonkyoto

ditn0914

Online DITN 第 438 号 ■ EDITORIAL(1)

● EDITORIAL

高 齢 者 の 重 症 低 血 糖 は

1 回 でも 認 知 症 発 症 の

危 険 因 子

超 高 齢 化 社 会 における

糖 尿 病 治 療 の 展 望

本 邦 では、75 歳 以 上 の 後 期 高 齢 者 が 増 加 し 続 けており、

2060 年 には 約 27%になると 予 想 される。 後 期 高 齢 者 の 増 加 は、

認 知 症 やADL( 日 常 生 活 動 作 ) 低 下 などでセルフケアができな

い 糖 尿 病 患 者 が 増 えることを 意 味 する。こうした 超 高 齢 化 社 会

における 高 齢 者 糖 尿 病 治 療 のあり 方 や 展 望 について 述 べてみ

たい。

高 齢 者 糖 尿 病 では ADL が 障 害 されやすい

高 齢 糖 尿 病 患 者 ではADLを 評 価 することが 大 切 である。

A D L には 食 事 、 移 動 、 排 泄 、 入 浴 など 生 活 上 で 不 可 欠 な 基 本

的 行 動 の 能 力 の B A DL( 基 本 的 A DL)と 外 出 、 買 い 物 、 料 理 、

金 銭 管 理 、 服 薬 管 理 などの 能 力 であるIADL( 手 段 的 ADL)と

がある。 高 齢 者 糖 尿 病 では 糖 尿 病 でない 人 と 比 べて BADLや

IADLが 1.3 ~ 2.8 倍 障 害 されやすく、 高 血 糖 ではさらに 障 害

され る。A D L の 障 害 は、 決 して 悪 化 するだけ ではなく、 合 併

症 の 予 防 、 運 動 ( リハビリ)、 社 会 サポートでその 維 持 向 上 を 図

ることができる。

これらのADL の 障 害 は、 看 護 師 などのコメディカルが 評 価

できるように、C DEJ の 教 育 に 取 り 入 れるべきであろう。

サルコペニアは 高 齢 者 糖 尿 病 の 病 態 の 1 つ

加 齢 に 伴 って 筋 肉 量 の 減 少 、 内 臓 脂 肪 の 増 加 が 見 られる。

こうした 体 組 成 の 変 化 はインスリン 抵 抗 性 をもたらし、 高 齢 者

糖 尿 病 の 病 態 の1つとなっている。 筋 肉 量 の 減 少 は 筋 力 の 減

少 または 身 体 能 力 の 低 下 を 伴 うとサルコペニアと 呼 ばれる。

糖 尿 病 で 高 血 糖 になるとサルコペニアが 起 こりやすく、サル

コペニアになると 高 血 糖 になるという 悪 循 環 が 起 こりうる。サ

ルコペニアは 転 倒 、ADL 低 下 につながる。

したがって、 高 齢 者 の 運 動 療 法 はサルコペニアの 予 防 のた

めにレジスタンストレーニングを 行 うことが 必 要 であろう。レジ

スタンストレーニングは 血 糖 、Q O L 、A D L に 対 する 改 善 効 果

が 報 告 されているが、 今 後 はレジスタンストレーニングを 指 導

する 運 動 療 法 士 をできるだけ 多 く 育 成 することが 必 要 である。

糖 尿 病 患 者 では 転 倒 予 防 が 大 切

転 倒 ・ 骨 折 は 高 齢 者 の 寝 たきりの 原 因 の1つである。 高 齢 糖

尿 病 患 者 は 非 糖 尿 病 者 と 比 較 すると、 転 倒 が 約 1.4 ~ 4 倍 多 い。

糖 尿 病 患 者 における 転 倒 の 要 因 は、 神 経 障 害 によるバラン

ス 障 害 、サルコペニア、 高 血 糖 、 低 血 糖 、 認 知 機 能 低 下 、うつ

傾 向 、 視 力 障 害 、 脳 卒 中 既 往 など が ある。 海 外 で は 高 血 糖

(HbA1c 8.0% 以 上 )が 転 倒 ・ 骨 折 の 危 険 因 子 であり、われわ

れの 調 査 では 低 血 糖 が 転 倒 と 関 連 した( 図 )。

転 倒 ・ 骨 折 を 防 ぐためには、 適 切 な 血 糖 コントロール、 筋 力

トレーニング、バランストレーニングを 含 んだ 運 動 療 法 、 心 理 サ

ポート、 薬 剤 数 を 減 らすこと、 居 住 環 境 の 整 備 、 骨 粗 鬆 症 の 治

療 などが 大 切 である。

糖 尿 病 における 認 知 機 能 低 下

認 知 症 を 早 期 発 見 するためには

糖 尿 病 患 者 は 非 糖 尿 病 者 と 比 較 して、アルツハイマー 病 が

1. 5 倍 、 血 管 性 認 知 症 が 2 . 5 倍 起 こりや すい。また、 糖 尿 病 患

者 は、 注 意 力 、 情 報 処 理 能 力 、 学 習 記 憶 能 力 などの 認 知 機 能

低 下 が 起 こりやすく、 特 に 高 血 糖 や 脳 梗 塞 がある 患 者 で 起 こり

やすい。

糖 尿 病 患 者 の 認 知 機 能 低 下 は、MMSE、 長 谷 川 式 知 能 検

査 、 符 号 ( W A I S - R )な ど の 検 査 で 見 出 す こ と が で き る 。1 つ の







































2014 Medical Journal Sha Co., Ltd. Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


検 査 のみで 認 知 症 を 診 断 することは 難 しく、すべての 患 者 に 心

理 検 査 を 行 うことは 困 難 である。そこで、I A D L の 障 害 、 記 憶



障 害 、 意 欲 の 低 下 などが 認 知 症 発 見 の 手 がかりになる。 患 者


だけでなく、 家 族 からIADL 障 害 や 社 会 生 活 の 障 害 があるか


を 聴 取 することも 大 切 である。 複 数 の 認 知 機 能 障 害 と 社 会 生

活 の 障 害 がある 場 合 に、 認 知 症 と 診 断 する。




高 齢 者 の 血 糖 コントロールのあり 方









高 齢 者 の 高 血 糖 は


認 知 症 発


症 、サルコペニア、


転 倒 ・ 骨 折


の 危 険 因 子 である。 一 方 、 低 血 糖 は、 認 知 機 能 低 下 、 転 倒 、

Q O L 低 下 をきたす。 特 に 高 齢 者 の 重 症 低 血 糖 は 1 回 でも 認 知

症 発 症 の 危 険 因 子 である。 重 症 低 血 糖 を 避 けるためには、

HbA1c 低 値 (6.5% 未 満 )に 注 意 すること、SU 薬 を 腎 機 能 によっ

て 調 節 し、できるだけ 少 量 で 用 いることが 大 切 である。

表 に 欧 米 の 高 齢 者 糖 尿 病 治 療 のガイドラインにおける

HbA1c の 目 標 値 を 示 す。 個 別 に 血 糖 の 目 標 値 を 設 定 すること

が 原 則 であるが、 認 知 症 、A DL 低 下 、 施 設 入 所 、Fr a i lt y( 脆 弱

さ)の 有 無 でHbA1cの 目 標 を2 ~ 3 段 階 に 設 定 している。 私

見 では 認 知 機 能 やADLが 保 たれている 健 康 な 高 齢 者 の 場 合

は、HbA1c 7.0%±0.5%であり、 認 知 症 やBADL 障 害 がある

場 合 は、H b A 1c 8 . 0 %±0 . 5 % がよいと 考 える。 今 後 、 本 邦 でも、

血 糖 コントロール 目 標 や 高 齢 者 の 診 療 のあり 方 も 含 めた 高 齢

者 糖 尿 病 治 療 のガイドラインが 作 成 されることを 期 待 する。

Online DITN 第 438 号 ■ EDITORIAL(2)









































荒 木 厚

( 東 京 都 健 康 長 寿 医 療 センター 糖 尿 病 ・ 代 謝 ・ 内 分 泌 内 科 )

2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ Diabetes Front(1)

● Diabetes Front

糖 尿 病 患 者 における

血 圧 管 理

日 本 人 のエビデンスを

取 り 入 れて 欧 米 に 発 信 する

「 高 血 圧 治 療 ガイドライン 2014」

ゲスト 片 山 茂 裕 先 生

( 埼 玉 医 科 大 学 かわごえクリニック)

ホスト

浜 野 久 美 子 先 生

( 関 東 労 災 病 院 糖 尿 病 ・ 内 分 泌 内 科 )

浜 野 ● 糖 尿 病 患 者 では 40 ~ 60%が 高 血 圧 を 合

併 していると 言 われ、 腎 症 をはじめとする 合 併 症

の 進 行 を 早 めるため、 糖 尿 病 患 者 にとって 血 圧 管

理 は 重 要 です。わが 国 では、 日 本 高 血 圧 学 会 が 高

血 圧 治 療 のガイドラインを 5 年 ぶりに 改 訂 し「 高

血 圧 治 療 ガイドライン 2014(JSH 2014)」を

2014 年 4 月 に 発 表 しました。 本 日 は、 糖 尿 病 と

高 血 圧 がご 専 門 で、「 高 血 圧 治 療 ガイドライン

2014」 作 成 委 員 会 において、 日 本 糖 尿 病 学 会 の

リエゾン 委 員 として 携 わっておられる 片 山 茂 裕 先

生 ( 埼 玉 医 科 大 学 )をお 招 きして、 高 血 圧 治 療 に

関 してお 話 しいただきたいと 思 います。

日 本 の 糖 尿 病 患 者 の 降 圧 目 標 は

the lower、the better

浜 野 ● 今 回 「JSH2014」では、 高 血

圧 の 糖 尿 病 患 者 で「130/80mmHg

未 満 」という 厳 格 な 降 圧 目 標 を 堅 持

し、 欧 米 のガイドラインと 一 線 を 画 し

ています。 その 経 緯 をお 話 しいただ

けますか。

片 山 ● 高 血 圧 の 糖 尿 病 患 者 では、 糖

尿 病 性 細 小 血 管 症 が 進 行 するだけで

なく、 心 血 管 イベントのリスクが 増 加

するため、 厳 格 な 降 圧 治 療 が 重 要 で

す。 日 本 で の ガ イド ラ イ ン で は、

「JSH2004」から 高 血 圧 の 糖 尿 病 患

者 の 降 圧 目 標 は「130/ 80mmHg 未 満 」と、 一 般 的 な 降 圧 目

標 「 14 0/ 9 0 m m Hg 未 満 」 よ り 低 め に 設 定 さ れ ま し た。

「JSH2009」でも、この 厳 格 な 降 圧 目 標 が 引 き 継 がれました。

その 後 、2010 年 に 発 表 された ACCORD 血 圧 試 験 では「 収

縮 期 血 圧 120mmHg 未 満 」を 目 指 した 厳 格 な 血 圧 管 理 群 と、

従 来 の 標 準 的 な 血 圧 管 理 群 「 収 縮 期 血 圧 140mmHg 未 満 」

を 比 較 したところ、 厳 格 な 血 圧 管 理 群 では 収 縮 期 血 圧 が 平 均

119mmHg と 14mmHg 有 意 に 低 く 推 移 したにもかかわらず、

1 次 エンドポイントの 非 致 死 性 心 筋 梗 塞 および 脳 卒 中 ・ 冠 動 脈

疾 患 死 の 年 間 発 生 率 を 少 し 下 げましたが、 残 念 ながら 有 意 差

に 達 しませんでした 1) 。このことから、「 収 縮 期 血 圧

130mmHg 未 満 」という 目 標 値 が 各 国 で 見 直 されることにな

りました。

米 国 糖 尿 病 学 会 (ADA)では、 表 1に 示 すように、 臨 床 ガ

イドライン“Clinical Recommendation 2013”で、2 型 糖 尿

病 患 者 の 降 圧 目 標 値 を「 1 3 0 / 8 0 m m H g 未 満 」 か ら

「140/80mmHg 未 満 」に 緩 和 することを 2013 年 に 発 表 しまし




















































2014 Medical Journal Sha Co., Ltd. Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


た 2) 。その 後 、 欧 州 高 血 圧 学 会 (ESH)と 欧 州 心 臓 病 学 会 (ESC)

Online DITN 第 438 号 ■ Diabetes Front(2)

の 両 学 会 は、 合 同 で 作 成 している 高 血 圧 管 理 ガイドラインを 6 リスクが 減 りました。その 中 で、 有 意 差 はなく 非 常 に 数 は 少

年 ぶ り に 改 訂 し て、2 型 糖 尿 病 患 者 の 降 圧 目 標 を なかったのですが、 心 血 管 疾 患 による 死 亡 例 が、オルメサル

「140/85mmHg 未 満 」とすることを、2013 年 6 月 に 開 催 され タン 使 用 群 2232 例 のうちの 15 人 、 対 照 群 2215 例 のうち 3 人

た 第 23 回 欧 州 高 血 圧 学 会 で 発 表 しました。さらに、 米 国 の でした。 統 計 学 的 にはパワーがありませんが、 死 亡 例 を 解 析

JNC8( 米 国 高 血 圧 合 同 委 員 会 第 8 次 報 告 )は「140/90mmHg したところ、15 例 中 11 例 が 冠 動 脈 疾 患 合 併 例 でした。そう

未 満 」に 改 訂 しました。

いう 人 々のベースラインからイベント 発 生 前 の 血 圧 低 下 度 を 見

今 回 「JSH2014」の 作 成 にあたって、 日 本 では 降 圧 目 標 値 を ると、 最 も 下 がった 人 々で 多 かったのです。

どうするか、2 年 前 から 議 論 が 始 まりました。

したがって、「JSH2014」では 5 年 前 と 比 べて、 高 血 圧 の 糖

日 本 にもいろいろな 疫 学 的 な 研 究 があります。JDCS(Japan 尿 病 患 者 の 中 でも、 冠 動 脈 疾 患 、 末 梢 動 脈 疾 患 がある 患 者

Diabetes Complications Study)では、 脳 梗 塞 の 発 症 率 が 心 では、 降 圧 目 標 を 緩 和 するようにしています。

筋 梗 塞 の 約 1.65 倍 高 値 です。 久 山 町 研 究 では、 冠 動 脈 疾 患 もう1 つ、「JSH2014」では 高 齢 者 の 降 圧 目 標 が 前 期 高 齢

は 男 性 9.4/ 1000 人 ・ 年 、 女 性 6.9/1000 人 ・ 年 ですが、 脳 梗 者 では 140/90mmHg 未 満 、 後 期 高 齢 者 では 150/90mmHg

塞 は 男 性 11.3/1000 人 ・ 年 、 女 性 9.3/ 1000 人 ・ 年 です。 私 た 未 満 と 改 訂 されまし た( 表 2)。そして、 年 齢 による 降 圧 目 標

ち 日 本 人 は 依 然 として 脳 卒 中 、 最 近 ではとりわけ 脳 梗 塞 が 心 を 達 成 することを 原 則 とし、 忍 容 性 があれば 低 いほうの 目 標

筋 梗 塞 に 比 べて 多 いという、 特 殊 な 事 情 があります。

値 を 目 指 すことになります。75 歳 以 上 の 後 期 高 齢 者 では

ACCORD 血 圧 試 験 では、 脳 卒 中 に 関 して 厳 格 管 理 群 でハ 「150/90mmHg 未 満 」を 目 指 して、 可 能 ならば 前 期 高 齢 者 の

ザード 比 (HR)0.59 と 低 下 しています。 米 国 では 脳 卒 中 が 少 「140/90 mmHg 未 満 」 を、 さ ら に 糖 尿 病 で あ れ ば

ないわけですが、 日 本 人 にとっては 重 要 なメッセージです。 「130/80mmHg 未 満 」を 目 指 します。

このような 状 況 を 鑑 みて、 図 1に 示 すように、 日 本 では 高 血 このように、 患 者 個 々の 年 齢 、 病 態 を 優 先 して、75 歳 以 上

圧 の 糖 尿 病 患 者 の 降 圧 目 標 は、「the lower、the better」とい

の 糖 尿 病 患 者 は、3 段 階 の 目 標 値 を 設 定 し、 症 状 をみながら

う 結 論 になり、「130/80mmHg 未 満 」を 堅 持 することになりま 降 圧 治 療 を 行 うことを 今 回 強 調 させていただきました。




した。むしろ、そういう 日 本 の 事 情 を 欧 米 に 発 信 したいという




意 気 込 みです。これは 重 要 な 意 味 のある 提 言 だと 思 います。


後 期 高 齢 者 では 3 段 階 の 降 圧 目 標 値





浜 野 ● 最 近 、 患 者 個 々の 治

療 目 標 が 大 事 であることが 言 われ



ていますが、

今 回 「JSH2014」では、その 辺 が 明 文 化 されて



いますね。




片 山 ●「JSH2014」では、




尿 病 患 者 では 図 1 脚


注 に「 動 脈



硬 化 性 冠 動 脈 疾 患 、 末 梢 動

脈 疾 患 合 併 症 例 、 高 齢 者 におい


ては、 降 圧 に 伴 う 臓 器 灌 流 低 下 に 対 する 十 分 な 配 慮 が 必 要 で

ある」というただし 書 きが 付

けられました。 平 たく 言 うと、「 血




圧 を 下

げ 過 ぎて 不 都 合

のある 患 者 では、 必 ずしも


130/80mmHg 未 満 にこだわりません」という 意 味 です。

こ れ は 欧 米 の INVEST(International Verapamil

SR-Trandolapril) 試 験 のサブ 解 析 で、 糖 尿 病 患 者 6400

人 を 厳 格 管 理 群 ( 収 縮 期 血 圧 < 130mmHg)、 通 常 管 理

群 ( 収 縮 期 血 圧 130mmHg ~ 140 mmHg)、 管 理 不 良 群

( 収 縮 期 血 圧 ≧ 140 mmHg)に 分 けて 解 析 したところ、

厳 格 管 理 群 の 全 死 亡 、 非 致 死 的 な 心 筋 梗 塞 ・ 脳 卒 中 を


含 む 1 次 エンドポイント 発 生 は、 通 常 管 理 群 よりも 減 少


しませんでした。



さらに、A R B であるオルメサルタンが 正 常 アルブミン




尿 の 2 型 糖 尿 病 患 者 に 対 して 微 量 アルブミン 尿 発 症 を 予

防 するかどうかを 検 証 した ROADMAP 試 験 では、 約 23%
















































































2014 Medical Journal Sha

Co., Ltd.



Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ Diabetes Front(3)






浜 野 ● 実 地 医 家 にとって、かなり 使 いやすくなったと 思 います。 異 常 群 では 診 察 室 血 圧 より 家 庭 血 圧 が 有 意 差 をもってよりよ


い 心 血 管

イベントの 予 測 能 を 有 することが 明

らかでした。そし





家 庭 血 圧 を 診 察 室 血 圧 より 重 視

て、 血 圧

は 低 ければ 低 いほど 良 いという 結 果

であり、「JSH2014」



における 家 庭 血 圧 の 降 圧 目 標 「125/75mmHg 未 満 」を 支 持


浜 野 ● 今 回 「JSH2014」で、 家 庭 血 圧 を 重

視 することになりま しています。

したが、その 根 拠 について 教 えていただけますか。 また、 家 庭 血 圧 は 従 来 「1 機 会 1 回 測 定 」でしたが、 今 回

片 山 ●これは 大 きな 転 換 です。 今 までは 診 察

室 血 圧 が 優 先 さ 「JSH2014」では「1 機 会 原 則 2 回 測 定 してその 平 均 値 とする」


れ、 家 庭 血 圧 は 高 血 圧 の 診 断 、 治 療 の 参 考 としていました。


ことが 変 更 点 になっています。 測 定 するタイミングとしては、





しかし 近 年 、 日 本 では 欧 米 よりかなり 家 庭 血

圧 計 が 普 及 し 起 床 時 ( 排 尿 後 ・ 服 薬 前 ・ 朝 食 前 )と 就 寝 前 の 朝 晩 2 機 会 の




て、 約 4000 万 台

売 れています。 各 家 庭 に 1 台 はあるといえ、 測 定 が 推 奨 されています。


あるいはドラッグストアへ 行 けば 置 いてあります。 家


庭 血 圧 の




メリットは、


何 回 も


時 間 を 変 えて 測 定 できることです。 白 衣 現 高 血 圧 の 糖 尿 病 患 者 における 降 圧 薬 の 選 択





がないため、

患 者 によっては 診 察 室 血 圧 より10 ~







2 0mmHg 低 い 値 になります。

浜 野 ● 次 に 薬 剤 の 選 択 について 伺 いたいと 思 います。 高 血 圧




そして、 東 北 大 学 の 今 井 潤 教 授 のグループにより 行 われた

の 糖 尿 病 患 者 は 厳 格


な 降 圧 が 必 要 とされていますが、 単 剤 、



日 本 の 代 表 的 な 高

血 圧 ・ 循 環 器 疾 患 の 前 向 きコホート 研 究 で 併

用 療 法 など 教 えていただけますか。





ある 大 迫 研 究 によると、10 ~ 20 年 後 の 心 血

管 疾 患 の 発 症 率 片 山 ●まず、 第 1 選 択 薬 についてです。 糖 尿 病 患 者 に 多 い 臓





は、 診 察 室 血 圧 より 家 庭 血 圧 のほうが 予 測 能 が 高 く 確 実 でし 器 障 害 、インスリン 抵 抗 性 に 対 して、レニン・アンジオテンシン



た。この 結 果 が、 今 回 、 図 2に 示 すように 家 庭 血 圧 を 優 先 す (RA) 系 阻 害 薬 が 改 善 します。また、RA 系 阻 害 薬 は 高 血 圧


ることになった 1 つの 大 きな 理 由 です。

患 者 の 糖 尿 病 新 規 発 症 率 を 30 ~

40% 減 少 させることが 報 告

今 回 「JSH2014」では、 高 血 圧 の

糖 尿 病 患 者 における 家 庭 血 圧 の 降


圧 目 標 を「 1 2 5 / 7 5 m m H g 未 満 」 と



しています。この 数 値 の 根 拠 として、






東 北 大 学 で 実 施 された HOMED-BP

研 究 があります 3) 。 約 3500 人 の 軽 症 ・








中 等 症 の 高 血 圧 患 者 を 対 象 として、



家 庭 血 圧 による 至 適 降 圧 レベルなど








を 検 討 したスタディです。 私 たちは、


その 中 の 2 型 糖 尿 病 患 者 と 耐 糖 能 異





常 の 約 9 0 0 人 を 解 析 しました。 合 併




症 はまだないけれど 血 圧 が 少 し 高 め



で 軽 度 の 肥 満 があるという 初 期 の 耐





糖 能 異 常 と 糖 尿 病 患 者 です。これら

の 患 者 を 家 庭 血 圧 の 収 縮 期 血 圧

「125mmHg 以 上 」「115 ~






125mmHg」「115mmHg 未 満 」 の






3 群 に 分 けて 解 析 したところ、 図 3




に 示 す よ う に 、「 1 2 5 m m H g 以 上 」








群 に 比 べて「115mmHg 未 満 」 群 の






イベント( 脳 卒 中 、 心 筋 梗 塞 、 循 環





器 死 亡 の 複 合 エンドポイント)の 相




対 リスクのハザード 比 は 0.20 でした。







「115 ~ 125mmHg」 群 も 0.63 です。




拡 張 期 血 圧 も 同 様 に 低 ければリスク











が 下 がるという 結 果 でした。 耐 糖 能

























2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ Diabetes Front(4)

されています。そういう 意 味 では、RA 系 阻 害 薬 が 第 1 選 択

薬 という 位 置 づ けは 5 年 前 と 変 わっていません( 図 1)。

ただ、 血 圧 をしっかり 下 げることが 大 事 であり、 単 剤 で 降 圧

目 標 を 達 成 できる 糖 尿 病 患 者 は 30%もいないため、Ca 拮 抗

薬 、あるいは 少 量 のサイアザイド 系 利 尿 薬 を 第 2 選 択 薬 とし

て 併 用 して、 最 終 的 にはその 3 つの 降 圧 薬 を 併 用 しないとい

けない 患 者 もいらっしゃると 思 います。

合 併 症 がない 患 者 であれば、まず 血 圧 を 下 げるという 意 味

で、 必 ずしも RA 系 阻 害 薬 ではなくて、 日 本 の 先 生 方 は Ca

拮 抗 薬 を 好 まれるので、それでもけっこうだと 思 います。

微 量 アルブミン 尿 など 臓 器 障 害 が 起 きている 患 者 では、2

剤 併 用 の 際 に 必 ず 1 剤 は RA 系 阻 害 薬 を 用 いることが 欧 米 の

ガイドラインで 強 く 推 奨 されています。

混 乱 を 招 いた 日 本 人 間 ドック 学 会 の

基 準 範 囲

浜 野 ● 2014 年 4 月 に、 日 本 人 間 ドック 学 会 と 健 康 保 険 組 合

連 合 会 は、「 新 たな 健 診 の 基 本 検 査 の 基 準 範 囲 日 本 人 間 ドッ

ク 学 会 と 健 保 連 による 150 万 人 のメガスタディー」を 発 表 して、

健 康 基 準 を 緩 和 する 数 値 で 論 議 を 起 こし、 臨 床 現 場 で 混 乱

が 生 じました。その 辺 のことをお 話 しいただけますか。

片 山 ●これは 日 本 高 血 圧 学 会 、 日 本 糖 尿 病 学 会 、 日 本 動 脈

硬 化 学 会 それぞれ 反 論 を 展 開 して、 正 式 に 学 会 としての 見 解

を 表 明 しています。

まず、 日 本 人 間 ドック 学 会 が 今 回 の 数 値 を 算 出 した 方 法 を

申 し 上 げますと、 約 150 万 人 の 人 間 ドック 受 診 者 から 他 の 疾 患

の 可 能 性 がない 約 1 万 5000 人 を 選 んで、その 人 々の 分 布 を

求 めています。 血 圧 に 関 しては、 収 縮 期 血 圧 の 基 準 値 が

140mmHg から 147mmHg に 上 がっています。 合 併 症 もなく

人 間 ドックを 受 診 するようなモチベーションの 高 い 人 々のバック

グラウンドデータであり、10 ~ 20 年 後 に 脳 卒 中 や 心 疾 患 を 発

症 したかどうか 横 断 的 研 究 はなされていません。95% 信 頼 区

間 の 上 限 をカットオフ 値 とするという 考 え 方 は、 肝 機 能 や 腫 瘍

マーカーなどの 異 常 値 ・ 外 れ 値 を 決 定 する 時 には 使 ってもいい

かもしれません。しかしながら、そういう 求 め 方 をした 基 準 値

を、そもそも 連 続 変 数 ともいえる 高 血 圧 や 糖 尿 病 、 脂 質 異 常

症 の 判 定 には 使 用 できません。 日 本 人 間 ドック 学 会 では、そ

の 後 、すぐ 訂 正 の 発 表 をしています。それをメディアがしっか

り 伝 えていかないと、 治 療 を 中 断 される 患 者 や、 私 どもの 外

来 でも「 高 血 圧 の 薬 をもう 飲 まなくてもいい」という 患 者 もお

られるため、 理 解 していただくのに 通 常 より 5 ~ 10 分 、 余 分

な 時 間 をかけて 説 明 しています。 実 地 医 家 の 先 生 方 もお 怒 り

になられています。

浜 野 ●その 辺 り、 私 たちは 多 くのエビデンスをもっているわけ

ですから、 信 念 をもって 患 者 にお 伝 えして 治 療 に 向 かうことが

必 要 ですね。

血 圧 の 変 動 が 大 きいほど

心 血 管 イベントのリスクが 高 い

浜 野 ● 血 糖 、 血 圧 、 脂 質 は 、 糖 尿 病 の 3 つ の バ イオ マ ーカーで、

治 療 の 指 標 になっていますが、 変 動 (variability)という 概

念 があります。 血 圧 の 変 動 はどのようにとらえればよいでしょ

うか。

片 山 ●まず 明 らかなのは 季 節 変 動 です。 血 圧 は、 冬 に 高 くなり、

夏 は 少 し 低 くなります。それから、 日 内 変 動 があります。 就 寝

時 は 低 くて、 早 朝 、 覚 醒 時 に 向 かって 血 圧 は 少 しずつ 上 がり、

日 中 は 活 動 に 伴 い 高 く、 夕 食 を 食 べてお 風 呂 に 入 って 就 寝 前

に 下 がります。 昼 間 に 比 べて 夜 間 の 血 圧 低 下 率 が 約 10 ~

20%の 人 々を dipper といいます。 中 には 血 圧 があまり 下 がら

ない 人 もいて non-dipper といいます。 糖 尿 病 患 者 は nondipper

が 多 く、 腎 症 、 脳 血 管 障 害 や 心 血 管 イベントが 多 いと

いわれています。それから、 早 朝 の 急 な 血 圧 上 昇 (morning

surge)も 問 題 になります。

最 近 注 目 されているのは、 血 圧 の 受 診 間 変 動 (visit-to-visit

blood pressure variability)という、 同 じ 薬 剤 を 服 用 してい

ても 外 来 に 来 るたびに 数 値 が 変 動 することです。このバラツキ

が 大 きい 人 ほど 心 血 管 イベントが 多 いことがわかっています。

このような 変 動 は、Ca 拮 抗 薬 が 最 も 抑 制 するという 報 告 が

いくつか 出 ているため、「Ca 拮 抗 薬 は 第 2 選 択 薬 になってい

るが、 第 1 選 択 薬 でもいいのではないか」という 話 がまた 出

てくるかもしれません。

また、 家 庭 血 圧 は 測 定 回 数 が 多 いので、visit-to-visit では

なく、 日 間 変 動 (day by day)という 変 動 性 も 算 出 できます。

そういう 意 味 でも 家 庭 血 圧 は 情 報 が 大 きいのです。

浜 野 ● 最 後 に 何 かありましたらお 願 いします。

片 山 ● 糖 尿 病 患 者 は 現 在 約 950 万 人 といわれていますが、 高

血 圧 患 者 は 約 4300 万 人 です。 通 院 患 者 は、 糖 尿 病 で 400 ~

500 万 人 、 高 血 圧 は 約 2000 万 人 ですから、 今 後 血 圧 をしっか

り 下 げて、 脳 、 心 血 管 疾 患 を 減 らしていくのは 大 事 なことです。

現 在 わが 国 の 塩 分 摂 取 量 は 1 日 平 均 10g といわれています。

高 血 圧 患 者 では 1 日 6g 未 満 を 推 奨 していますが、 味 噌 や 醤

油 を 使 う 和 食 文 化 の 日 本 人 では、なかなか 達 成 が 難 しいので、

とりあえず 1g でも 減 らすことが 効 果 的 だと 思 います。

浜 野 ● 本 日 は 貴 重 なお 話 をありがとうございました。

参 考 文 献

1)The ACCORD Study Group. N Engl J Med 2010; 362: 1575-1585.

2)American Diabetes Association. Diabetes Care 2013; 36: S11-S66.

3)Noguchi Y. et al. J Hypertens 2013; 31: 1593-1602.

2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ ZOOM UP(1)

● ZOOM UP

糖 尿 病 医 療 学 のすすめ

- 第 1 回

糖 尿 病 医 療 学 研 究 会 に 向 けて-

● 石 井 均

( 奈 良 県 立 医 科 大 学 糖 尿 病 学 講 座 )

「 糖 尿 病 とともに 生 きる~ 夢 から 実 践 へ~」

- 第 57 回 日 本 糖 尿 病 学 会 年 次 学 術 集 会 から

ケア(Care)とキュア (Cure):

糖 尿 病 治 療 と 糖 尿 病 研 究 の 目 標

第 57 回 日 本 糖 尿 病 学 会 年 次 学 術 集 会 が 2014 年 5 月 22

日 ( 木 )~ 24 日 ( 土 ) 大 阪 で 開 催 された。 会 のメインテーマ

は「 糖 尿 病 とともに 生 きる~ 夢 から 実 践 へ~」であった。プロ

グラム 集 冒 頭 のあいさつで、 会 長 の 大 阪 医 科 大 学 花 房 俊 昭 教

授 は 以 下 のように 述 べておられる。

糖 尿 病 は 現 在 でも 完 治 することが 困 難 な 病 気 であり、 糖

尿 病 を 持 つ 人 は 生 涯 その 病 気 を 持 って 生 きることになりま

す。そのような 人 たちに 対 してわれわれは 医 療 者 として 何

ができるのかこの 問 いに 対 し、 本 学 術 集 会 を、 日 本 糖 尿

病 学 会 としてすべての 学 会 員 の 英 知 を 結 集 し、 糖 尿 病 患 者

を 勇 気 づけることのできる、 現 時 点 で 最 善 の 答 えを 見 出 す

ことが、 私 の 使 命 と 考 えております。それには、 明 日 の 医

療 を 築 き、 将 来 の 夢 を 追 う 研 究 と 目 の 前 の 患 者 一 人 ひとり

の 心 に 寄 り 添 う 実 践 を 車 の 両 輪 とし、その 橋 渡 しをするこ

とが 求 められていると 思 います。

日 本 糖 尿 病 学 会 は 糖 尿 病 治 療 の 目 標 を 3 段 階 で 示 している。

血 糖 などの 管 理 を 通 じて、 慢 性 合 併 症 の 発 症 進 展 を 予 防 し、

健 常 者 と 変 わらないQOLを 維 持 および 寿 命 を 確 保 する。こ

れは、 少 なくとも 現 時 点 における 糖 尿 病 治 療 目 標 が、 生 涯 に

わたるケアであることを 示 している。 一 方 で、 医 学 研 究 の 究

極 目 標 は 糖 尿 病 の 治 癒 (キュア;Cure)であり、それを 花 房

会 長 は「 将 来 の 夢 を 追 う 研 究 」と 表 現 された。この 関 係 を

Joslin 糖 尿 病 センターは 次 のように 表 現 している。

“Until there is a cure”- 治 癒 という 日 が 来 るまで

「 治 癒 という 日 が 来 るまで、 私 たちに 何 ができるのだろ

うか」。

筆 者 は 今 回 の 学 術 集 会 で「 糖 尿 病 医 療 学 のすすめ」と 題 す

る 講 演 の 機 会 をいただいたが、 冒 頭 このような 問 いかけをし

た。 会 長 の 問 いかけのリフレインである。

病 を 持 つことによって 人 は 苦 しみを 体 験 するのであるが、

花 房 先 生 は、「1 型 糖 尿 病 とともに~ 夢 から 実 践 へ~」 会 長

講 演 の 中 で、ご 自 身 の 研 究 および 診 療 / 臨 床 を 振 り 返 られ、

研 究 面 では 劇 症 1 型 糖 尿 病 の 臨 床 像 や 原 因 に 関 する 基 礎 研 究

の 成 果 を 紹 介 された。 臨 床 面 では、その 劇 症 1 型 糖 尿 病 を 発

症 した 女 性 で、CSIIによる 治 療 を 開 始 したが、「どうしても

病 気 が 受 け 入 れられない」ため、 自 己 管 理 がうまくできなかっ

それは 心 理 的 には「 病 を 持 つ 人 の 客 観 的 状 況 」と「 主 観 的 な 想

い、 願 い、 価 値 観 」のズレからくるという 理 論 がある 1) ( 図 1)。

糖 尿 病 に 適 用 すると、 例 えば「1 型 糖 尿 病 のため 生 活 の 中 で

各 種 治 療 法 を 生 涯 継 続 する 必 要 がある」が 客 観 的 状 況 であり、

「1 型 糖 尿 病 が 治 ってほしい」が 主 観 的 な 願 いであったとする。

このズレが 大 きいほど 悩 みが 強 いと 想 定 される。

た 事 例 を 提 示 された。この 方 を10 年

以 上 継 続 診 察 、 血 糖 をコントロールし

妊 娠 出 産 に 至 るところまで 紹 介 され


た。 先 生 はお 話 を 以 下 のように 結 んで


おられる。



「すべての 創 口 を 癒 合 するものは 相

手 を 思 いやる 温 かい 気 持 ちで 時 間 をか



けて 相 手 に 接 すること。それは 研 究 ・


教 育 ・ 診 療 に 共 通 するcommunication


の 極 意 だと 思 います」。


2014 Medical Journal Sha Co., Ltd. Online DITN 第 438 号

2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ ZOOM UP(2)

この 設 定 で、キュア- 治 癒 は 客 観 的 現 状 を 変 化 させ 主 観 的

願 いに 合 致 させることである。 一 方 、ケアは 主 観 的 な 想 いや

願 いが 客 観 的 状 況 に 沿 うように 変 わるのを 支 えることであ

とは 科 学 としての 医 学 ( 糖 尿 病 学 )とは 異 なるものであり、こ

れを 扱 う 領 域 を 筆 者 らは 医 療 学 ( 糖 尿 病 医 療 学 )と 呼 んでい

る( 図 2)。

る。 糖 尿 病 においては 単 に 客 観 的 状 況 を 受 容 するというだけ

でなく、 病 気 とともに 生 きる 新 しい 生 活 を 構 築 していくこと

を 援 助 するということになろう。

患 者 も 悩 み、 医 療 者 も 悩 む

語 り 合 う 場 としての 研 究 会 を

このように 考 えると、「 治 癒 という 日 が 来 るまで、 私 たち

に 何 ができるのだろうか」に 対 する 答 えの 方 向 が 見 えてく

る。すなわち、「 糖 尿 病 を 持 つ 人 が 自 身 の 客 観 的 状 況 を 引 き

受 け、 糖 尿 病 とともに 歩 む 新 しい 人 生 を 創 造 していくこと

を 傍 にいて 支 援 する」ということになろう。

医 療 者 の 大 きな 役 割 が 糖 尿 病 を 持 つ 人 をケア( 支 援 )してい

くことであると 述 べたが、それは 糖 尿 病 を 持 つ 人 が Doing や

Being の 問 題 ( 課 題 )に 取 り 組 んでいく 力 を 培 う 過 程 をともに

歩 むことを 意 味 している。この 過 程 において 医 療 者 もまたそ

の 進 展 について 悩 みや 迷 いを 持 つことになる。この 過 程 は 人

治 療 医 学 と 患 者 の 課 題

と 人 とのかかわりによって 進 んでいくものだからである。

「 今 のかかわり 方 でいいのだろうか」- 熱 心 な 医 療 者 ほど

近 年 、 糖 尿 病 治 療 では、 新 薬 や 血 糖 測 定 法 の 開 発 など 目 覚

ましい 進 歩 がある。それらによって 質 の 良 い 血 糖 コントロー

ルが 達 成 できるようになった。これは 医 学 の 進 歩 と 言 える。

しかし、その 新 しい 治 療 法 も 実 行 されなければ 十 分 な 効 果 は

悩 み、 迷 う。これも 糖 尿 病 医 療 学 が 扱 う 重 要 な 問 題 である。

医 療 者 はその 状 況 を 患 者 とともに 生 き 延 びねばならない。そ

の 知 恵 の 集 積 が 必 要 である。そのために、 今 抱 えている 問 題

について 語 り 合 う、 相 談 し 合 う 場 が 必 要 である。そこにはこ

出 ない。 薬 物 の 効 果 は 科 学 的 性 質 とそれを 使 用 する 人 の 行 動 ころの 専 門 家 の 存 在 が 必 要 だ。そのような 場 として 糖 尿 病 医


によって 規 定 される。そして、 飲 む、 飲 まないは 患 者 本 人 が 療 学 研 究 会 を 開 催 する(2014 年 10 月 11 日 、12 日 開 催 。7 面

決 める。


Information 参 照 )。 日 々の 診 療 の 中 で 持 ちあぐねている 困 難 、


治 療 者 は 薬 物 の 効 果 を 推 定 するとき、それがきちんと 服 用 あるいは 成 功 体 験 、あるいは 新 しい 試 み、そのようなことを 持

されることを 前 提 としがちである。しかし、 治 療 を 実 行 する ち 寄 って 討 論 し、 明 日 の 診 療 の 力 にしようではありませんか。



側 から 言 えば、する-しないの 間 に 多 くの 要 素 が 介 在 してい

参 考 文 献

る。 好 き 嫌 いや 面 倒 さに 始 まって、 他 者 の 意 見 、 効 果 の 出 や

1) 村 田 久 行 . ケアの 思 想 と 対 人 援 助 - 終 末 期 医 療 と 福 祉 の 現 場 から 改 訂 増 補 . 川 島 書

すさ、 時 間 や 大 切 さの 優 先 順 位 、 経 済 的 なこと、…などなど、


店 , 1998 年 .


きわめて 多 彩 である。 治 療 を 始 めること、 続 けることは 容 易


ではない。 筆 者 はこれを「Doing( 行

動 、 行 為 )の 問 題 」と 呼 ぶ。


糖 尿 病 を 持 つ 人 はもう1つの 異 な


る 問 題 - 課 題 を 抱 える。 花 房 教 授 の 事



例 に 登 場 する、「どうしても 病 気 が 受


け 入 れられない」という 問 題 である。



これは、そのような 病 気 を 持 った 自


分 を 受 け 入 れられないという「 存 在



(Being)の 問 題 」である。 彼 女 はその


問 題 と 向 かい 合 い、 長 い 年 月 をかけ




て 新 しい 価 値 観 を 創 り 出 していった


のではないだろうか。


これらの 課 題 や 問 題 をケアするこ






2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号

2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ REPORT(1)

● REPORT

第 2 回 日 本 糖 尿 病 協 会

療 養 指 導 学 術 集 会

Japan Association for

Diabetes Education and Care

情 報 に 溺 れ、 知 恵 に

飢 えていないだろうか

● 森 川 浩 子

( 福 井 大 学 医 学 部 看 護 学 科 )

限 りある 医 療 資 源

第 2 回 日 本 糖 尿 病 協 会 療 養 指 導 学 術 集 会 が、 渥 美 義 仁 会 長

( 永 寿 総 合 病 院 )のもと、 国 立 京 都 国 際 会 館 で 2014 年 7 月 12

日 ( 土 )~ 13 日 ( 日 )に 開 催 された。

伝 統 ある 夏 祭 りの 熱 気 の 中 で、 全 国 から1014 人 が 集 い 激 論

の 学 術 集 会 となった。テーマは「 糖 尿 病 療 養 指 導 に 広 く 応 え

る CDE ネットワーク」であった。

壮 年 期 に 糖 尿 病 を 発 症 した 団 塊 世 代 が、2015 年 には、

前 期 高 齢 者 (65 ~ 74 歳 )に 到 達 し、 複 数 の 血 管 合 併 症 や 生 活

機 能 障 害 を 抱 え、 増 大 する 医 療 需 要 となっているが、ヒト・

モノ・カネは、 無 尽 蔵 ではない。これまで 国 を 支 えてきた 団

塊 世 代 が、 給 付 を 受 ける 側 に 回 り 医 療 財 政 のバランスが 崩 れ

かねない 事 態 に 陥 っている。

見 えないものが 見 える

今 回 の 学 術 集 会 開 催 と 重 ね、2014 年 7 月 日 本 糖 尿 病 協 会

機 関 誌 「さかえ」は、 特 別 企 画 「『2012 年 国 民 健 康 ・ 栄 養

調 査 』 結 果 を 読 み 解 く」を 掲 載 した 1) 。「 糖 尿 病 が 強 く 疑 われ

る 者 」は 950 万 人 に 達 し 増 加 傾 向 にあるものの「 糖 尿 病 の 可 能

性 を 否 定 できない 者 」は1100 万 人 で 5 年 前 より220 万 人 も 減

少 したという 興 味 深 い 結 果 が 示 された。 糖 尿 病 予 備 群 が 減 少

傾 向 に 転 じたことは、 喜 ぶべきことである。

しかし、わが 国 では 2007 年 に 超 高 齢 社 会 (65 歳 以 上 の 高 齢

者 が 総 人 口 に 占 める 割 合 が 21% 以 上 )に 入 り、2013 年 には、

高 齢 者 の 割 合 が 25%に 達 した。 日 本 は、 平 均 寿 命 ( 長 さ)・ 高

齢 化 率 ( 高 さ)・ 高 齢 化 進 展 ( 速 さ)という 三 点 において、 世 界

一 の 超 高 齢 社 会 を 迎 えている。 今 回 、 日 本 糖 尿 病 協 会 ウィリ

アム・カレン 賞 を 受 賞 された 津 村 和 大 先 生 ( 川 崎 市 立 川 崎 病 院 )

は、「ほかの 人 にまだ 見 えていないものが 見 える 人 こそ、 真 の

2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

リーダーである」と 言 われた。 白 杖 に 義 足 で 歩 く 高 齢 糖 尿 病

患 者 の 姿 は、もう 目 前 に 迫 っている。 今 後 の 高 齢 化 の 進 展 を

見 据 え、 着 実 な 対 策 を 打 ち 出 すのがリーダーの 役 割 である。

糖 尿 病 と 加 齢 医 学

2014 年 6 月 25 日 、 医 療 介 護 総 合 確 保 推 進 法 が 公 布 された 2) 。

この 法 律 は、 消 費 税 率 の 引 き 上 げ 後 、 社 会 保 険 制 度 の 持 続 可

能 性 に 向 けて、 政 府 が 最 初 に 取 り 組 んだ 法 律 である。また 厚

生 労 働 省 老 健 局 によると 全 国 の 認 知 症 高 齢 者 数 は、2025 年 に

は 470 万 人 になると 予 測 され、 医 療 ・ 介 護 制 度 の 持 続 可 能 性

は 喫 緊 の 課 題 となっている。

プログラム「 高 齢 者 の 糖 尿 病 」は、「 高 齢 糖 尿 病 患 者 ケアの

課 題 と 展 望 」をテーマに、 横 野 浩 一 先 生 ( 北 播 磨 総 合 医 療 セン

ター)の 基 調 講 演 「 高 齢 者 糖 尿 病 のより 良 い 治 療 と 管 理 に 向 け

て」から 始 まった。

高 齢 者 糖 尿 病 をライフワークとされてきた 横 野 先 生 の 講 演

は、 鬼 気 迫 るものがあり、 加 齢 化 現 象 とともに 起 こるサルコ

ペニア(Sarcopenia)の 病 態 を 示 された。サルコペニアとは、

骨 格 筋 ・ 筋 肉 (sarco)が 減 少 (penia)していることをいう。

サルコペニアを 予 防 するためには、バリン・ロイシン・イソ

ロイシンなどの 必 須 アミノ 酸 ( 肉 類 や 乳 製 品 に 含 まれる)が 筋

肉 の 維 持 に 必 要 であり、 腎 障 害 がない 限 り、 摂 取 が 推 奨 され

る。また 高 齢 者 では、 薬 剤 による 有 害 事 象 もおこりやすく、

壮 年 期 とは 異 なるマネジメントが 必 要 である。

「 高 齢 糖 尿 病 患 者 ケアの 課 題 と 展 望 」では、ケアマネジャーの

立 場 から 日 本 介 護 支 援 専 門 員 協 会 副 会 長 水 上 直 彦 氏 、 在 宅 医

療 の 立 場 から 倉 敷 スイートホスピタル 松 木 道 裕 氏 、 理 学 療 法

士 の 立 場 から 関 西 福 祉 科 学 大 学 野 村 卓 生 氏 が 登 壇 された。

Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 15 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ REPORT(2)

「 糖 尿 病 は、サルコペニアを 助 長 させる 要 因 になる」こと

から、 医 療 ・ 介 護 ・ 福 祉 が 共 通 の 問 題 意 識 をもち、ケアを 通

じ ADL( 日 常 生 活 動 作 ) 拡 大 に 取 り 組 む 方 向 性 が 示 された。

言 える・ 聞 ける・ 見 えてくる

本 学 術 集 会 では、 講 演 やポスターセッションによるスキル

アップを 図 るとともに、 参 加 者 全 員 が 参 加 するスモールグ

ループディスカッション( 表 )を、ワールドカフェ 方 式 ( 図 )で 行 っ

ている。

ワールドカフェ 方 式 は、 事 前 登 録 したテーマに 沿 って、10

人 程 度 のスモールグループに 振 り 分 けられた。 初 対 面 の 相 手

を 前 に、 心 と 頭 はカチカチ 状 態 で 始 まった。ファシリテーター

の「 場 を 温 める」「 考 えを 引 き 出 す」「 考 えを 広 げる」「 考 えを

深 め 合 う」テクニックで、カフェにいるような 活 き 活 きした 意

見 交 換 の 場 となった。

「 透 析 の 予 防 と 管 理 」のグループでは、2012 年 から 始 まった

「 糖 尿 病 透 析 予 防 指 導 管 理 料 」にフォーカスが 集 まった。 多 くの

施 設 では、「 糖 尿 病 治 療 ガイド2014- 2015」( 日 本 糖 尿 病 学 会 編 )

等 を 用 い、「あなたは 糖 尿 病 性 腎 症 第 2 期 にあたります」と 医

師 より 説 明 していた。しかし「まだまだ 先 の 話 だから…」と 透

析 予 防 に 向 き 合 おうとしない 患 者 が 多 く、 施 設 が 違 っても 同

じ 問 題 を 抱 えていた。ワールドカフェ 方 式 では、 考 えを 深 め

合 う 中 で、「MessageとMaterialがつながっていないので

は」と 意 見 が 出 された。

われわれは、 知 恵 に 飢 えると 同 時 に 情 報 に 溺 れている 3) 。

We are drowning in information, while starving for

wisdom.

参 考 文 献

1) 春 日 雅 人 .「2012 年 国 民 健 康 ・ 栄 養 調 査 」 結 果 を 読 み 解 く. さかえ 2014; 54(7):

17-19.

2)http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/186.html

3) 堀 内 志 奈 訳 . 決 められない 患 者 たち. 医 学 書 院 , 2013.












































































































































































2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号 2014 年 ( 平 成 15 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ 糖 尿 病 治 療 に 心 理 学 ・ 行 動 科 学 的 視 点 を 活 かす(1)

● 糖 尿 病 治 療 に 心 理 学 ・ 行 動 科 学 的 視 点 を 活 かす

連 載 第 1 回

焦 点 を“ 問 題 ”から

“ 人 ”へと 移 す

● 五 十 嵐 友 里

( 埼 玉 医 科 大 学 総 合 医 療 センター メンタルクリニック 臨 床 心 理 士 )

はじめに

筆 者 は 臨 床 心 理 士 として、 埼 玉 医 科 大 学 病 院 内 分 泌 内 科 ・

糖 尿 病 内 科 、 埼 玉 医 科 大 学 総 合 医 療 センター 内 分 泌 ・ 糖 尿 病

内 科 にて 面 接 を 担 当 している。 糖 尿 病 治 療 に 心 理 学 ・ 行 動 科

学 的 視 点 が 活 用 されうる 場 面 は 多 岐 に 渡 っていて、 数 多 くの 著

書 や 論 文 で 報 告 がなされ 1), 2) 、 取 り 組 みが 行 われている。 今 回

改 めて、 事 例 や 筆 者 の 体 験 をふまえながら4 回 に 分 けて 実 践

の 紹 介 をする。 本 稿 では、 患 者 との 関 係 づくりとアセスメント

を 目 的 とした、 背 景 や 生 活 の 聴 取 の 必 要 性 とその 利 点 を 概 観

する。 患 者 の 心 理 的 側 面 に 関 わるときは 図 1に 示 したプロセス

をたどるとされ、 今 回 はそのうちの 主 に1と2に 関 連 する 報

告 として 位 置 づけられる。

“ 指 導 者 ”から

“ 生 活 支 援 のカウンセラー”に 5)

■ 糖 尿 病 に 対 する 気 持 ちと 生 活 に 与 える 影 響 を 聴 く

図 1に 示 すように、 患 者 と 医 療 従 事 者 の 関 係 づくりは 常 に

全 ての 過 程 の 基 盤 となる。そのために、“ 糖 尿 病 に 対 してどの

ような 気 持 ちや 苦 痛 があるのか”、“ 病 気 や 治 療 が 生 活 にどの

ような 影 響 や 支 障 を 与 えているのか”を 教 えてもらうことが

役 に 立 つ。これらの 理 解 に 努 めることは、 医 療 従 事 者 に 感 情

の 動 きを 引 き 起 こし、 自 然 に「 大 変 だな」「これはつらい」と

感 じることにつながる 6) 。こうした 感 情 は 医 療 従 事 者 の 言 動

に 表 れ、 患 者 も 自 分 の 苦 痛 、 少 なくともその 一 部 が 理 解 され

たと 感 じることができ、 関 係 づくりに 寄 与 する 6) 。

加 えて、 特 に 行 動 変 容 において 重 要 とされるのは、 医 療 従

事 者 が 患 者 の 自 律 性 を 支 援 するという 立 場 である 1), 5) 。 患 者

が 困 っていたり 支 障 を 感 じるところは、 健 康 を 最 優 先 すべき

という“ 指 導 ” 的 立 場 から 与 えられた 課 題 よりも 取 り 組 みの 動

機 づけを 持 ちやすい。まず、どこからどのような 取 り 組 みを

始 めるかに 関 するアセスメントとしてもこれらの 聴 取 は 大 変

有 用 である。

■“ 人 ”としての 幅 広 い 情 報 を 収 集 する

精 神 科 診 療 では、 症 状 や 現 病 歴 と 併 せて、 成 育 歴 や 心 理 社

会 的 な 歴 史 、 性 格 などといった 情 報 を 重 要 視 して 患 者 や 家 族

から 収 集 する。これらは、もともとどのような 人 がどのよう

なことを 体 験 して、 今 どのような 状 況 になっているのかとい

う 理 解 をわれわれに 提 供 してくれる。 糖 尿 病 治 療 においても、

こうしたアセスメントや、どのように 対 応 してきて 今 どう

なっているのかという 糖 尿 病 を 持 つ 人 としての 歴 史 的 観 点 、

さらに 暮 らしてきた 社 会 ・ 家 族 的 背 景 や 役 割 を 考 慮 すること

が、 一 人 ひとりに 沿 ったテイラーメイドな 治 療 計 画 を 検 討 す

ることに 非 常 に 有 用 であることを 改 めて 強 調 したい。

ここで、 生 活 背 景 、その 背 景 と 糖 尿 病 療 養 の 関 連 や 経 過 を 振

り 返 って 相 談 した 症 例 を 紹 介 する。また、この 症 例 は、 図 1に 示

したプロセスのうち、5の 有 用 性 も 併 せて 示 唆 してくれた。

症 例 60 歳 代 、 男 性 (2 型 糖 尿 病 、

HbA1c と 体 重 の 経 過 を 図 2 に 示 す)

セルフケアの 維 持 支 援 を 目 的 として 心 理 面 接 を 開 始 。 当 初 、

面 接 は 患 者 が 参 加 する 社 会 活 動 について 饒 舌 に 話 すことで 時 間

を 終 えてしまっていた。すぐに 具 体 的 なセルフケアの 相 談 を 始

めることは 難 しく、 活 動 についての 話 を 伺 う 中 で、 生 活 状 況 や

性 格 の 情 報 収 集 に 努 めた。そうした 活 動 にも 苦 労 があるのかと

問 うたところ、 外 食 で 体 重 管 理 に 苦 労 することを 吐 露 された。

この 活 動 には 頻 繁 な 外 食 が 伴 ったが、 生 き 甲 斐 でもあることが

互 いに 共 有 され、この 活 動 の 邪 魔 をしない 範 囲 で 検 討 していく

ことを 話 し 合 った。また、 医 師 、 看 護 師 、 栄 養 士 とのカンファ

レンスにて 現 病 歴 や 経 過 を 振 り 返 り、これまで、 努 力 の 継 続 に

よって 体 重 減 量 されてきたことが 改 めて 確 認 された。 患 者 とも

共 有 し、 取 り 組 んでこられた 工 夫 を 一 緒 に 振 り 返 りながら、 本

人 が 提 案 する 方 法 を 支 持 した( 社 会 活 動 でリーダシップを 発 揮

するこの 方 の 性 格 の 理 解 を 支 援 方 法 の 選 択 に 反 映 )。 面 接 への

抵 抗 は 少 しずつ 軽 減 し、セルフケアの 維 持 に 対 する 相 談 を 継 続

している。

2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号

2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


おわりに

行 動 変 容 にあたってはスモールステップで 臨 むことが 重 要

であることはよく 知 られており、われわれ 医 療 従 事 者 の 臨 床 実

践 の 向 上 過 程 にもこの 考 え 方 が 役 立 つ。 今 回 概 観 したことは、

心 理 的 ケアとして 特 別 なことではないと 感 じられるかもしれ

ないが、まずはこうした 姿 勢 から 筆 者 もまた 改 めて 取 り 組 み

を 見 直 してみたい。

参 考 文 献

1) 石 井 均 : 糖 尿 病 医 療 学 入 門 , 医 学 書 院 , 2011

2) 中 井 吉 英 ・ 内 分 泌 糖 尿 病 心 理 行 動 研 究 会 : 医 療 に

おける 心 理 行 動 科 学 的 アプローチ― 糖 尿 病 ・ホル

モン 疾 患 の 患 者 と 家 族 のために, 新 曜 社 , 2009.

3) Hersen M & Van Hasselt VB. A Practical Guide

for Counselors and Clinicians: Lawrence

Erlbaum Associates, 1998.( 深 澤 道 子 〔 監 訳 〕: 臨

床 面 接 のすすめ 方 , 日 本 評 論 社 , 2001.)

4) 成 田 善 弘 : 治 療 関 係 と 面 接 , 金 剛 出 版 , 2005.

5) 足 達 淑 子 : 行 動 変 容 のための 面 接 レッスン, 医 歯

薬 出 版 , 2008.

6) 堀 川 直 史 . 心 理 的 ケアの 基 本 : 支 持 的 精 神 療 法




とエンパワーメント ・ アプローチ. 治 療 学 2010;

44: 465-467.

















Online DITN 第 438 号 ■ 糖 尿 病 治 療 に 心 理 学 ・ 行 動 科 学 的 視 点 を 活 かす(2)




















































































2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号

2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ BOOK(1)

● BOOK

いまさら 聞 けない

糖 尿 病 診 療

一 問 複 答 !

臨 床 医 のギモンをディベートで 導 く

● 編 者 : 松 岡 健 平

● 発 行 :2014 年 3 月 14 日

● 発 行 所 : 株 式 会 社 南 山 堂

● 定 価 : 本 体 3,500 円 + 税

長 く 生 きていると、いろいろな 経 験 をする。それが 人 生 な

のだと 近 頃 、 思 うようになった。 自 分 だけの 体 験 と 思 われる

ことも、みんながそれぞれ 体 験 していることなのだろう。ほか

の 人 のことは 知 りようがないので、ついつい 自 分 だけのことな

のかと 思 いがちである。 本 書 を 読 んでそれをつくづく 感 じた。

しかし、いろいろな 体 験 をするには 年 月 が 必 要 なので、 高

齢 にならない 人 には、わからないことも 多 くあることだろう。

高 齢 になるとささいなことに 目 がいかず、 耳 も 遠 くなるので

雑 音 も 聞 こえなくなる。その 代 わりに 耳 鳴 りが 次 第 に 多 く

なってくる。いろいろな 音 になって 聞 こえてくるので、 退 屈

しないでいられる。 田 園 交 響 曲 を 聞 いているような 気 分 に

なって、うれしく 楽 しい。 小 川 のせせらぎ、 鳥 のさえずりなど、

いろいろ 聞 こえてきて 飽 きることがない。 人 に 意 地 悪 や 悪 い

ことをしたことがないので、 嫌 なことも 思 い 浮 かばないので

あろう。

子 どものときに 野 山 を 駆 け 回 ったことが、 次 々に 浮 かんでき

てうれしさが 消 せない。 幸 せなことだと 感 謝 している。

小 学 校 は 上 級 生 になってから、 夕 方 、 自 転 車 に 乗 って 勉 強

に 行 ったこと、 子 どものいない 老 先 生 に 大 事 にいろいろなこ

とを 教 わったこと。 大 部 分 は 自 習 していたわけだが、それが

母 親 の 目 的 だったのだろう。

中 学 に 入 って、 最 初 はバスと 汽 車 で 通 学 していたが、2 年 生

になってからは 自 転 車 で 中 学 まで 往 復 25キロの 道 を 通 った。

いろいろなことを 考 えながら、 歌 を 口 ずさんだり、 友 達 と 一

緒 に 話 しながら、 自 転 車 をこいでいたわけである。 天 気 の 日 も、

雨 の 日 も 通 ったわけで、それで 自 然 と 鍛 えられて 丈 夫 な 身 体

になったのであろう。 何 も 評 価 されないことの 連 続 、それが

人 生 なのだろう。 自 分 も 他 の 人 も 同 じだと 思 う 一 方 で 何 とか

よくなろうと 思 う 気 持 ちが 向 上 心 というものであろう。

この 本 を 読 んで、みな 同 じように 経 験 しながら 齢 をとって

いくのだろうと 思 った。

後 藤 由 夫

( 東 北 大 学 名 誉 教 授 、1925 年 生 )

2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号

2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


Online DITN 第 438 号 ■ Q&A(1)

● Q&A

糖 尿 病 患 者 において

禁 煙 が 及 ぼす

効 果 ・ 影 響

Q:

● 菊 池 貴 子

( 朝 日 生 命 成 人 病 研 究 所 附 属 医 院 糖 尿 病 代 謝 科 )

糖 尿 病 患 者 の 禁 煙 の 効 果 とコツなどを

ご 教 示 ください。

( 東 京 H.Y)

A:

喫 煙 も 顕 性 腎 症 進 展 のリスク 因 子

禁 煙 直 後 でも 全 身 の 慢 性 炎 症 が 低 下

喫 煙 は 心 血 管 疾 患 と 大 きく 関 わっており、 糖 尿 病 と 喫 煙

は 相 乗 的 に 心 血 管 疾 患 のリスクを 高 める。また、 糖 尿 病 性

腎 症 の 進 展 や 歯 周 病 などにも 関 与 している。

では、 糖 尿 病 専 門 施 設 ではどの 程 度 禁 煙 が 実 践 されてい

るであろうか。

2011 年 に 報 告 されたJapan Diabetes Complications

Studyは、 全 国 の 糖 尿 病 専 門 施 設 における2 型 糖 尿 病 患 者

2205 人 の 前 向 きスタディであるが、 対 象 患 者 のうち 27%が 喫

煙 者 であった。 当 時 の 全 国 の 喫 煙 率 ( 男 性 33.7%、 女 性

10.6%、 全 体 21.7%)と 比 較 しても、 喫 煙 率 は 相 当 高 いと 感

じる。 同 報 告 で、 顕 性 腎 症 進 展 のリスク 因 子 ( 多 変 量 Cox 回

帰 分 析 )として、 高 血 圧 、HbA1c 高 値 、アルブミン 尿 が 挙 げ

られたが、 喫 煙 もHazard Ratio 1.87(95% CI 1.07-3.25)と 指

摘 された。 糖 尿 病 患 者 に 禁 煙 が 必 要 な 根 拠 の 1 つである。

また、 受 動 喫 煙 によっても 糖 尿 病 の 発 症 リスクが 上 昇 す

る 報 告 もあり、 本 人 の 健 康 問 題 だけではない。

以 上 より、 禁 煙 指 導 が 重 要 なことは 自 明 だが、いざ 禁 煙

を 実 践 した 場 合 、 体 重 増 加 や 血 糖 の 悪 化 を 生 じることがあ

り、 患 者 も 医 療 者 も 苦 い 思 いをすることがある。そこで、 糖

尿 病 患 者 が 禁 煙 した 前 後 で、どのような 変 化 を 認 めるかを

検 証 した。

2010 年 5 月 か

ら2012 年 2 月 に

か け、 朝 日 生 命

成 人 病 研 究 所 附

属 医 院 禁 煙 外 来

にてVarenicline

(チャンピック

ス ® )を 用 いて 禁

煙 に 挑 戦 した2

型 糖 尿 病 患 者 56

人 を 解 析 対 象 と

した。 対 象 患 者

のプロフィール

を 表 1に 示 す。 全

員 が 経 口 糖 尿 病

薬 とインスリン

の 片 方 もしくは

両 方 を 使 用 して

いた。3カ 月 後 の

禁 煙 成 功 者 は

46/56 人 ( 成 功 率

82%)であった。





































2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号

2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行


禁 煙 成 功 群 と 不 成 功 群 を 比 較 したところ( 詳 細 割 愛 )、 喫

煙 歴 の 長 い 患 者 では 不 成 功 となる 確 率 が 高 いことがわかっ

た(p=0.018)。

次 に、 禁 煙 成 功 者 46 人 について、 禁 煙 の 前 後 の 各 パラメー

タの 変 化 を 表 2にまとめた。 残 念 ながら、 禁 煙 後 BMIと

HbA1cはわずかだが 有 意 に 増 加 していた。 当 院 のデータで

は、 男 性 1.5kg、 女 性 0.9kg の 体 重 増 加 を 認 めたが、これらは

一 般 的 な 禁 煙 による 体 重 増 加 よりは、 少 なかった。 日 頃 よ

り 体 重 管 理 意 識 が 高 いことが 関 係 しているかもしれない。

一 方 、 白 血 球 数 や 同 じく 炎 症 の 指 標 とされるNLR






















Online DITN 第 438 号 ■ Q&A(2)

(neutrophil to lymphocyte ratio)は 有 意 に 減 少 しており、 全

身 の 慢 性 炎 症 は 禁 煙 直 後 から 低 下 することが 推 察 される。

ヘモグロビンとヘマトクリット 値 も 禁 煙 直 後 から 低 下 し

た。またHDL-Cが 有 意 に 増 加 しており、 全 身 の 慢 性 炎 症 の

低 下 と 併 せて、 心 血 管 疾 患 のリスクの 低 下 に 寄 与 すると 考

えられた。

禁 煙 に 失 敗 しても

またチャレンジすればいい

以 上 より、もし 体 重 増 加 やHbA1c

悪 化 に 対 して 患 者 が 不 安 に 思 う 場 面

があっても、 短 期 間 に 確 認 できるメ

リットを 提 示 し、 禁 煙 を 迷 いなく 継

続 できるようサポートすることが 必

要 と 考 える。 運 動 や 食 事 療 法 で 体 重

が 増 えない 工 夫 を、 患 者 とともに 考 え

ることも 重 要 である。 仮 に 一 度 禁 煙 に

失 敗 しても、またチャレンジすれば

いいので、 患 者 とよく 相 談 して 親 身

になりたいと 努 めている。 筆 者 は、「2

度 と 禁 煙 はしたくない」と 思 われなけ

れば 失 敗 とは 考 えていない。

禁 煙 によって 将 来 、 糖 尿 病 合 併 症 や

心 血 管 疾 患 のリスクが 低 減 することは

も ち ろ ん 、さ ら に「 禁 煙 に 成 功 し た ! 」と

いう 成 功 体 験 が 糖 尿 病 と 健 やかに 生 き

る 自 信 につながることを 期 待 している。

2014 Medical Journal Sha Co., Ltd.

Online DITN 第 438 号

2014 年 ( 平 成 26 年 )9 月 5 日 発 行

More magazines by this user
Similar magazines