べきである. 講 義 を 検 討 する 場 合 は,その 中 で 学 生 に 対 話 や 討 論 をさせるのが 良 いアイデアとなる. 事 例 研 究 を 用 いれば,グループ 討 論 の1つのきっかけ が 生 まれる. 技 術 者 は 航 空 産 業 や 運 送 業 など 他 産 業 での 例 を 挙 げるかもしれないが,その 場 合 は 医 療 に 関 連 した 具 体 例 も 提 示 して, 紹 介 された 理 論 が どのように 応 用 できるのかを 理 解 できるようにする こと.もう1つの 方 法 は, 本 トピックに 関 係 する 問 題 をもたらす 医 療 のさまざまな 側 面 について 学 生 に 質 問 することである. トピック2のスライドは, 指 導 者 が 本 トピックの 内 容 を 学 生 に 教 える 際 に 役 立 つよう 作 成 されており, 各 地 域 の 環 境 や 文 化 に 合 わせて 変 更 してもよい. 全 てのスライドを 使 用 する 必 要 はなく, 教 育 セッショ ンに 含 まれる 内 容 に 合 わせて 調 整 するのが 最 も 有 効 となる. 119 Part B トピック 2: 患 者 安 全 におけるヒューマンファクターズの 重 要 性
トピック3: システムとその 複 雑 さが 患 者 管 理 に もたらす 影 響 を 理 解 する 間 違 った 造 影 剤 を 投 与 された 患 者 Jacquiは 大 規 模 な 教 育 病 院 において 胆 嚢 疾 患 の 疑 いで 内 視 鏡 的 逆 行 性 胆 道 膵 管 造 影 (ERCP)という 検 査 を 受 けた. 処 置 は 全 身 麻 酔 下 で 行 われ, 内 視 鏡 が 口 から 食 道 を 通 して 十 二 指 腸 まで 挿 入 された.この 内 視 鏡 を 通 してカテー テルが 総 胆 管 の 内 部 に 挿 入 され,X 線 撮 影 用 の 造 影 剤 が 注 入 された. それから2か 月 後 , 腐 食 性 物 質 であるフェノー ルの 入 った 造 影 剤 が28 名 の 患 者 に 投 与 されたこ と,そしてJacquiもその 一 人 であるという 事 実 が 判 明 した. 病 院 の 薬 剤 部 は 普 段 は20mLバイ アルのConray 280を 注 文 していたが, 約 5か 月 間 にわたって, 誤 ってフェノール10%を 含 有 する 5mLバイアルの60% Conray 280を 注 文 し, それを 手 術 室 に 届 けていた.そのバイアルには, はっきりと「 厳 重 な 監 督 のもとで 使 用 すること ― 腐 食 性 物 質 」および「 単 回 投 与 バイアル」と 明 示 してあった. 最 終 的 に1 人 の 看 護 師 が 間 違 い に 気 づいたが,それまで 薬 剤 部 も 多 数 の 手 術 チームもこの 間 違 いを 見 過 ごしていた. 薬 剤 を 注 文 して 保 管 し, 手 術 室 に 届 けるまで の 流 れと 患 者 に 正 しい 薬 剤 を 間 違 いなく 投 与 し ているかを 確 認 する 手 順 は, 複 数 の 段 階 で 構 成 されるが,その 過 程 ではさまざまなエラーが 発 生 しうる. 各 要 素 をどの 段 階 でどう 組 み 合 わせるべ きかを 理 解 するためには,まずシステムの 複 雑 さ を 理 解 する 必 要 がある. SourceReport on an investigation of incidents in the operating theatre at Canterbury Hospital 8 February – 7 June 1999., Health Care Complaints Commission, Sydney, New South Wales, Australia. September 19991–37http //www.hccc.nsw.gov.au/Publications/Reports/default. aspxaccessed 18 January 2011. はじめに ― 患 者 安 全 にシステム 1 思 考 が 重 要 となる 理 由 医 療 を 一 人 だけで 行 うことはまれである. 安 全 か つ 有 効 な 医 療 を 行 えるか 否 かは, 現 場 で 働 く 医 療 従 事 者 の 知 識 , 技 能 , 行 動 だけでなく, 各 業 務 環 境 で 医 療 従 事 者 同 士 がどのように 協 力 し,どのように 情 報 伝 達 を 行 うかにも 依 存 しており,この 業 務 環 境 と いうものは, 通 常 はそれ 自 体 が 大 きな 組 織 の 一 部 である. 言 い 換 えると, 患 者 は, 多 数 の 医 療 従 事 者 が 正 しい 時 期 に 正 しいことを 行 えるか 否 かに 依 存 しており, 医 療 システムに 左 右 されているとも 言 え る 1) . 安 全 を 確 保 できる 医 療 従 事 者 となるためには, 医 療 における 複 雑 な 相 互 作 用 や 相 互 関 係 を 理 解 し ておく 必 要 がある.このことを 認 識 していれば,た とえば, 患 者 や 来 院 者 に 害 を 与 えかねない 間 違 いの 機 会 を 同 定 しやすくなり,その 発 生 を 防 止 するため の 措 置 を 講 じるのにも 有 用 となる.なお,このトピッ ク3は 医 療 提 供 のためのシステムに 関 するものであ り,エラーを 減 らすための 方 法 についてはトピック5 で 詳 細 に 検 討 する. キーワード システム, 複 雑 システム, 高 信 頼 性 組 織 (HRO) 学 習 目 標 2 システム 思 考 を 用 いることによって,どのように 医 療 が 改 善 され,どのようにして 有 害 事 象 を 最 小 限 に 減 らせるかを 理 解 する. <strong>WHO</strong> 患 者 安 全 カリキュラムガイド 多 職 種 版 120
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