WHO Patient Safety Curriculum Guide - Extranet Systems - World ...
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ドラインには, 少 なくとも3 年 毎 に 必 要 に 応 じて 検<br />
討 と 改 訂 がなされるべきである.<br />
米 国 医 学 院 (Institute of Medicine)は, 医 療<br />
行 為 の 内 容 に 医 療 従 事 者 間 で 大 きなばらつきがあ<br />
ることを 重 大 な 問 題 であるとみなしている 8) . 過 剰<br />
な 医 療 や 過 小 な 医 療 , 間 違 った 医 療 などによるばら<br />
つきについては, 根 拠 に 基 づく 実 践 によって 対 応 可<br />
能 であり,それらを 小 さくして 患 者 へのリスクを 低<br />
減 することが 目 標 となる. 病 院 や 診 療 所 に 勤 務 して<br />
いる 医 療 専 門 職 には, 自 分 用 のガイドラインを 独 自<br />
に 作 成 するだけの 資 源 や 時 間 はなく, 必 要 となる 専<br />
門 知 識 も 不 足 することであろう.そこで,まず 確 立<br />
された 既 存 のガイドラインを 採 用 した 後 ,それを 自<br />
身 の 業 務 や 地 域 の 環 境 に 適 合 するように 修 正 する<br />
ことが 勧 められる.<br />
ガイドラインが 必 要 となった 背 景 には, 医 療 の 複<br />
雑 化 と 専 門 化 が 進 むとともに,より 多 様 な 医 療 専 門<br />
職 が 関 与 するようになった 結 果 , 個 人 の 見 解 や 学 会<br />
や 組 織 の 主 観 的 な 方 針 に 従 っていると, 無 駄 が 生 じ,<br />
安 全 も 損 なわれるようになったという 事 情 がある.<br />
現 在 では, 医 療 従 事 者 が 安 全 に 業 務 を 遂 行 し, 手 術<br />
での 部 位 間 違 い, 手 技 間 違 い, 患 者 間 違 いおよび 手<br />
術 部 位 感 染 を 防 止 するうえで 有 用 とであることが<br />
確 認 されたガイドラインが 何 百 も 作 成 されている.<br />
個 々の 領 域 で 用 いられるガイドラインについて,<br />
必 ずしも 学 生 への 説 明 がなされるとは 限 らないが,<br />
それでも 学 生 は, 実 務 の 多 くの 領 域 ( 特 に 慢 性 疾 患<br />
の 管 理 に 関 連 した 領 域 )には 最 良 の 治 療 方 法 を 決<br />
定 するための 確 立 されたガイドラインが 存 在 するこ<br />
とを 認 識 しておくべきである. 一 方 , 必 要 としてい<br />
るチームがガイドラインを 入 手 できない 場 合 もあ<br />
り,ガイドラインの 存 在 自 体 をチームが 把 握 してい<br />
ないことさえある. 医 療 機 関 が 独 自 のガイドライン<br />
を 公 表 することもまれではないが, 全 てのスタッフ<br />
がそれを 認 識 しているとは 限 らない. 従 うべきガイ<br />
ドラインが 多 すぎるあまり, 一 部 を 無 視 したり, 重 要<br />
性 を 理 解 していなかったりするスタッフもいるかも<br />
しれない. 学 生 にガイドラインについて 質 問 させ,<br />
実 際 に 使 用 させるためには,まず 適 切 なガイドライ<br />
ンを 使 用 することの 重 要 性 を 認 識 させる 必 要 があ<br />
る. 最 も 有 効 なガイドラインは, 各 施 設 の 環 境 と 患<br />
者 の 実 態 を 考 慮 して 作 成 されており, 各 推 奨 策 をそ<br />
れぞれの 職 場 に 合 わせて 容 易 に 改 変 できるように<br />
なっている. 血 液 製 剤 の 使 用 など, 著 しいリスクを 伴<br />
う 処 置 については,すでに 科 学 的 根 拠 に 基 づくガイ<br />
ドラインが 作 成 されている 場 合 が 多 い. 安 全 な 血 液<br />
製 剤 を 使 用 しなかったり, 間 違 いなく 正 しい 血 液 を<br />
輸 血 するための 対 策 を 怠 ったりした 場 合 には, 破 滅<br />
的 な 有 害 事 象 が 発 生 する 可 能 性 があるためである.<br />
安 全 な 医 療 を 実 施 していくには,ガイドラインを<br />
実 践 する 中 で,チーム 内 の 全 メンバーが 各 自 に 期 待<br />
されている 事 項 を 正 しく 把 握 しておく 必 要 がある.<br />
ガイドライン,プロトコルおよびチェックリストが 入<br />
手 可 能 であり( 文 書 として 作 成 されているか,ある<br />
いはウェブサイトで 閲 覧 可 能 となっているか),かつ<br />
実 際 の 現 場 に 適 用 可 能 である( 資 源 面 の 状 況 が 勘<br />
案 されているか, 医 療 従 事 者 がすぐに 利 用 できる 内<br />
容 となっているか)ことも 求 められる.ツールを 有<br />
効 に 活 用 するためには,スタッフがそのツールにつ<br />
いて 学 び,それを 信 頼 するとともに, 容 易 に 参 照 で<br />
きる 状 態 としたうえで, 推 奨 策 を 実 践 できるだけの<br />
能 力 を 身 に 付 けなければならない.<br />
利 用 可 能 な 資 源 , 各 施 設 の 状 況 , 患 者 の 種 類 など<br />
に 関 連 したさまざまな 理 由 により, 一 部 の 確 認 プロ<br />
セスは, 特 定 の 状 況 下 では 実 用 的 でなくなったり,<br />
不 適 切 となったりする 場 合 がある.そのような 場 合<br />
には, 適 用 対 象 とする 環 境 や 状 況 に 合 わせてツール<br />
を 改 変 する 必 要 がある.その 際 には,チームの 全 メ<br />
ンバーがガイドラインなどのツールを 適 用 できるよ<br />
うに,その 変 更 について 全 員 に 連 絡 しておく 必 要 が<br />
ある.<br />
チーム 内 の 全 員 が 常 にツールに 従 わなかったり,<br />
日 常 的 に 一 部 の 手 順 が 省 略 されているようでは,<br />
ツールを 採 用 しても 患 者 を 有 害 事 象 から 守 ること<br />
はできない. 学 生 を 含 むスタッフ 全 員 がツールに 従<br />
うことが 重 要 であり,ガイドライン,プロトコル,<br />
チェックリストを 効 果 的 に 活 用 するためには,チー<br />
ムのリーダーとメンバー 全 員 が 一 丸 となって 真 剣 に<br />
取 り 組 む 必 要 がある.<br />
確 認 プロセスに 従 うだけの 価 値 があるのか, 疑 い<br />
を 持 つ 医 療 従 事 者 もいるかもしれない. 特 に 自 身 の<br />
専 門 家 としての 自 律 性 が 損 なわれていると 感 じた<br />
場 合 に,このような 感 覚 が 生 まれやすく,チームア<br />
プローチの 導 入 により 自 身 の 裁 量 権 が 取 り 上 げら<br />
れたように 感 じる 場 合 もある.しかしながら, 医 療<br />
の 連 続 性 を 維 持 し, 安 全 な 意 思 決 定 を 行 い, 患 者 に<br />
とって 最 善 の 結 果 を 達 成 するうえでは,チーム 内 で<br />
知 識 と 情 報 を 共 有 し,メンバー 間 で 抵 抗 なく 学 び 合<br />
うことが 絶 対 的 に 不 可 欠 となる.<br />
2007〜2008 年 に,ある 画 期 的 な 国 際 研 究 が 実<br />
施 された.8カ 国 において 簡 単 な 術 前 チェックリスト<br />
の 有 効 性 を 検 証 した 研 究 であり, 解 析 の 結 果 ,その<br />
チェックリストを 使 用 したことで( 資 源 面 の 条 件 と<br />
は 無 関 係 に) 術 後 合 併 症 の 発 生 率 と 死 亡 率 がいず<br />
229 Part B トピック 10: 患 者 安 全 と 侵 襲 的 処 置