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日本語 - JCIC-Heritage

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被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 調 査 報 告 書平 成 21 年 度文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム


序 文近 年 、 自 然 災 害 や 人 的 災 害 による 文 化 遺 産 の 被 災 事 例 が 相 次 いでおり、 文 化 遺 産 の 防 災 対策 と 復 旧 に 対 する 関 心 が 高 まっています。 自 然 災 害 については 地 球 規 模 の 気 候 変 動 も 一 因 と考 えられています。かけがえのない 文 化 遺 産 が 失 われていくことは、その 国 の 人 々にとどまらず 世 界 にとって 取 り 返 しのつかない 損 失 となります。 普 段 から 文 化 遺 産 の 防 災 対 策 を 講 じておくこと、また、 被 災 後 には 文 化 遺 産 の 復 旧 が 速 やかにかつ 適 切 に 行 われることが 重 要 となります。 海 外 から 我 が 国 への 協 力 の 要 請 も 増 えています。 災 害 が 起 きてからの 対 応 では 迅速 かつ 効 果 的 な 協 力 をすることは 困 難 であり、どのような 形 の 貢 献 が 可 能 であるのか 普 段 から 把 握 しておくとともに、 相 手 国 とも 協 力 連 携 しておくことが 必 要 となります。こうした 背 景 を 踏 まえ、 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムでは 本 年 度 、 文 化 庁 からの 受 託調 査 として、 災 害 に 対 する 予 防 体 制 、 被 災 時 における 復 興 への 取 り 組 み、 及 び 国 際 協 力 の 在り 方 に 関 する 調 査 を 行 うことにいたしました。 対 象 国 は 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム 企画 分 科 会 に 諮 って 検 討 した 結 果 、アジアを 中 心 に、 過 去 10 年 間 に 文 化 遺 産 が 大 きな 自 然 災 害を 被 った 事 例 について、 我 が 国 からの 協 力 実 績 のある 国 5 カ 国 ( 中 国 、タイ、インドネシア、イラン、ギリシャ)を 選 びました。 本 報 告 書 はこれらの 事 例 をとりまとめたものです。本 調 査 実 施 にあたりご 協 力 いただいた 関 係 者 の 皆 様 に 厚 く 御 礼 申 し 上 げます。独 立 行 政 法 人 国 立 文 化 財 機 構東 京 文 化 財 研 究 所文 化 遺 産 国 際 協 力 センター 長清 水 真 一


例 言1. 本 書 は、 中 国 、タイ、インドネシア、イラン、ギリシャ 各 国 の 被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 調 査の 報 告 書 で、 文 化 庁 委 託 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム 事 業 の 一 部 として 刊 行 されたものである。2. 第 二 章 のイラン、ギリシャに 関 する 調 査 と 報 告 は、 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムから 国士 舘 大 学 及 び 立 命 館 大 学 立 命 館 グローバル・イノベーション 研 究 機 構 に 再 委 託 した。3. 編 集 および 執 筆 担 当 は 次 のとおりである。また 第 二 章 のインドネシア 事 例 報 告 においては、菅 原 由 美 氏 ( 天 理 大 学 国 際 文 化 学 部 アジア 学 科 インドネシア 語 コース 講 師 )に 記 述 を 監 修 頂 いた。編 集 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム本 文 執 筆第 一 章 原 田 怜 ( 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム 特 別 研 究 員 )第 二 章 岡 田 健 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 文 化 遺 産 国 際 協 力 センター 国 際 情 報 研 究 室 長 )小 関 久 乃 ( 島 根 県 客 員 研 究 員 )二 神 葉 子 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 文 化 遺 産 国 際 協 力 センター 主 任 研 究 員 )中 村 豊 ( 東 京 工 業 大 学 大 学 院 連 携 教 授 )原 本 知 実 ( 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム 特 別 研 究 員 )田 代 亜 紀 子 ( 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム 特 別 研 究 員 )岡 田 保 良 ( 国 士 舘 大 学 イラク 古 代 文 化 研 究 所 教 授 )益 田 兼 房 ( 立 命 館 大 学 立 命 館 グローバル・イノベーション 研 究 機 構 教 授 )土 岐 憲 三 ( 立 命 館 大 学 立 命 館 グローバル・イノベーション 研 究 機 構 教 授 )後 藤 洋 三 ( 東 京 大 学 地 震 研 究 所 特 任 研 究 員 )金 玟 淑 ( 立 命 館 大 学 立 命 館 グローバル・イノベーション 研 究 機 構ポストドクトラルフェロー)第 三 章 原 田 怜


目 次序 文例 文第 一 章 はじめに第 二 章 各 国 調 査1. 中 国2. タイ3. インドネシア4. イラン5. ギリシャ第 三 章 課 題 と 展 望文 献 ・ 図 表 ・ 面 談 者 一 覧Appendix15217197109151157171


第 一 章 はじめに


第 一 章 はじめに文 化 遺 産 保 護 を 考 える 上 で 切 迫 した 問 題 の 一 つとして、 自 然 災 害 の 脅 威 に 対 してどう 立 ち 向 かうか、という 問 題 がある。地 震 、 津 波 、 地 滑 り、 火 災 などは、 歴 史 上 幾 度 もの 大 惨 事 を 引 き 起 こし、その 度 に 人 類 はまざまざと 自 然 の 脅 威 を 感 じざるを 得 なかった。 自 然 災 害 は 突 発 的 で 発 生 予 測 が 困 難 な 点 が、まさに 人 々が 恐 れる 所 以 であるが、 例 えば 地 震 に 関 して 言 えば、地 震 帯 の 研 究 等 により、どの 地 域 を 重 点 的 に 対 策 を 取 るべきかといった 対 応 は 可 能 である。 震 災 からの 文 化 遺 産 保 護 対 策 に関 しても、 基 本 的 にこの 方 針 は 踏 襲 することができるが、 考 慮 すべき 点 として 地 震 帯 と 文 化 遺 産 の 分 布 の 位 置 関 係 が 挙 げられる。図 1: 地 震 帯 上 の 世 界 遺 産 分 布 図 (2008 年 6 月 時 点 。 立 命 館 大 学 歴 史 都 市 防 災 研 究 センター 提 供 )世 界 遺 産 条 約 における 文 化 遺 産 及 び 複 合 遺 産 の 多 くが 地 震 帯 上 に 存 在 する( 図 1)。このことは、 世 界 遺 産 ではないが 他 の文 化 遺 産 に 関 しても 同 様 に 地 震 帯 上 に 存 在 することが 推 測 でき、それらの 文 化 遺 産 の 多 くが 震 災 する 可 能 性 を 持 つことを 示唆 する。 特 に、 地 震 帯 の 上 に 位 置 する 東 南 アジア 地 域 、 中 国 南 西 地 域 、 西 アジア 地 域 、 地 中 海 沿 岸 、 中 南 米 地 域 等 においてはこの 傾 向 が 顕 著 である。文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムでは、 発 足 直 後 から 積 極 的 に 被 災 文 化 遺 産 に 対 する 国 際 協 力 の 研 究 と 支 援 に 取 り 組 んできた。2007 年 7 月 に 開 催 された 第 一 回 研 究 会 では「 自 然 災 害 による 被 災 文 化 遺 産 に 対 する 緊 急 支 援 」と 題 し、 自 然 災 害 により 被 災 した 文 化 遺 産 の 保 存 への 緊 急 国 際 支 援 をとりまく 現 状 と 課 題 について 考 察 した。また、2008 年 10 月 のイエメン 共 和国 ハドラマウト 地 方 に 起 こった 洪 水 によって 大 きな 被 害 を 受 けた 文 化 遺 産 に 対 する 被 災 状 況 調 査 、 及 び、 日 本 政 府 の 協 力 のあり 方 を 検 討 するための 情 報 収 集 を 2009 年 2 月 に 実 施 している。この 調 査 の 報 告 書 「イエメン 共 和 国 ハドラマウト 地 方洪 水 による 被 災 文 化 遺 産 調 査 報 告 」は 2009 年 6 月 に 刊 行 された。このように、 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムでは 発 足 後 一 貫 して、 被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 問 題 を 重 要 視 してきたわけであるが、 海 外 からの 我 が 国 への 協 力 要 請 や 専 門 家 による 協 力 事 例 が 増 えている 中 、 被 災 文 化 遺 産 の 復 旧 のための 国 際 協 力が 速 やかにかつ 適 切 に 行 われるためにはどういった 対 策 を 講 じるべきなのか、というのは 未 だ 重 大 な 課 題 である。 災 害 が 起きてからの 対 応 では 迅 速 かつ 効 果 的 な 協 力 をすることは 困 難 であり、どのような 形 の 貢 献 が 可 能 であるのか 普 段 から 把 握 しておくとともに、 相 手 国 とも 協 力 連 携 しておくことが 必 要 となる。よって、 被 災 文 化 遺 産 復 旧 のための 国 際 協 力 の 現 状 と 課題 について 総 合 的 な 調 査 の 重 要 性 が 出 てきた。1


第 一 章 はじめにこうした 背 景 を 踏 まえ、 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムでは 平 成 21 年 度 、 文 化 庁 からの 委 託 調 査 として、 被 災 文 化 遺産 復 旧 についての 事 例 調 査 を 行 うこととなった。 対 象 国 はアジアを 中 心 に、 過 去 10 年 間 に 文 化 遺 産 が 大 きな 自 然 災 害 を 被 った 事 例 について、 日 本 からの 協 力 実 績 のある 国 から 5 カ 国 ( 中 国 、タイ、インドネシア、イラン、ギリシャ)とされた( 図 2)。ギリシャイラン中 華 人 民 共 和 国アフリカ 大 陸タイ調 査 対 象 国国 境 線インドネシア図 2: 本 報 告 書 の 事 例 調 査 対 象 国アジアにおける 災 害 は、 洪 水 、 地 滑 り、 山 火 事 など 多 岐 に 及 ぶが、 最 終 的 に 報 告 する 災 害 事 例 は 地 震 被 害 によるものが 中心 となった。これは、ここ 数 年 の 災 害 では 地 震 による 災 害 規 模 が 著 しく 大 きかったことの 表 れであると 理 解 できる。また、地 震 被 害 を 中 心 に 各 国 事 例 調 査 が 行 われたが、 大 地 震 は 火 災 や 地 滑 り 津 波 を 同 時 に 起 こす 複 合 災 害 でもあるため、 結 果 的 には 多 角 的 な 被 災 文 化 遺 産 の 復 旧 に 係 る 調 査 を 行 うことができたと 考 える。 本 報 告 書 はこれらの 各 国 事 例 を 一 冊 に 取 りまとめ、総 合 報 告 書 として 刊 行 されるものである。本 報 告 書 の 構 成 としては、 現 地 調 査 を 行 った5カ 国 の 各 国 調 査 を 第 二 章 にまとめた。 具 体 的 には、 該 当 国 の 災 害 と 文 化 遺産 の 特 性 、 及 び 文 化 遺 産 の 防 災 体 制 と 復 旧 への 取 組 みを 調 査 した。また、 該 当 国 内 の 被 災 文 化 遺 産 を 具 体 例 として 取 り 上 げ、災 害 概 要 、 被 災 ・ 復 旧 状 況 、および 今 後 の 課 題 を 述 べた。さらには、 以 上 を 踏 まえての 求 められる 国 際 支 援 の 姿 を 明 らかにした。 第 三 章 では、 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 国 際 協 力 事 例 を 比 較 し、 求 められる 国 際 協 力 の 在 り 方 を 検 討 した。その 際 、 日 本 として 協 力 できる 部 分 を 明 確 にし、 被 災 文 化 遺 産 復 旧 協 力 の 中 で 日 本 が 果 たすべき 役 割 を 述 べた。地 震 大 国 であるゆえに 多 くの 被 災 経 験 を 持 つ 日 本 からの 協 力 ・ 支 援 は、 海 外 からも 大 きな 期 待 が 寄 せられ、 被 災 文 化 遺 産復 旧 は 日 本 の 責 務 といっても 過 言 ではない。 災 害 が 相 次 ぐ 今 、 本 報 告 書 が 広 く 利 用 され、 今 後 の 文 化 遺 産 国 際 協 力 体 制 へ 貢献 とすることを 望 む。2


第 二 章 各 国 調 査


第 二 章 各 国 調 査1. 中 華 人 民 共 和 国 ( 四 川 大 地 震 の 事 例 を 中 心 に)1. 1-1 近 年 、 世 界 の 各 地 では 地 域 内 、 地 域 間 の 民 族 抗 争 が 顕 在化 し、また 大 規 模 な 自 然 災 害 が 頻 発 している。その 結 果 として、 各 地 の 文 化 遺 産 にも 多 大 な 被 害 が 及 ぶケースが 増 えている。もちろん、 文 化 遺 産 はそれぞれの 長 い 歴 史 において、これまでに 何 度 も 人 為 的 破 損 や 自 然 変 化 、 自 然 災 害 による 破 損 を 蒙 ってきたが、それにもかかわらず、 現 代 の 文化 遺 産 保 護 は 技 術 においても 制 度 においても、 次 に 来 る 災害 に 対 して 十 分 な 体 制 を 取 っているものではなく、 災 害 が発 生 する 度 に 大 きな 被 害 が 生 まれ、 人 々は 常 に 深 い 悔 恨 を余 儀 なくされている。 我 が 国 では、1995 年 に 発 生 した 阪神 淡 路 大 地 震 を 転 機 として、 文 化 遺 産 の 自 然 災 害 への 対 策 、その 修 理 ・ 維 持 方 法 などへの 改 善 が 図 られてきた。そしてその 経 験 をもって、 海 外 で 自 然 災 害 が 発 生 した 場 合 、 当 地の 文 化 遺 産 復 興 について 支 援 活 動 を 行 うことが 次 第 に 多 くなってきている。しかし、 文 化 遺 産 は 各 国 ごとに 多 様 な 内容 を 持 ち、その 保 護 のための 理 念 や 体 制 は 必 ずしも 我 が 国と 同 じではない。それ 故 に、 我 が 国 の 方 法 が 有 効 なものであるかどうか、その 点 が 不 確 かなまま 支 援 活 動 が 実 施 される可 能 性 がある。これからも 起 こり 得 る 災 害 に 対 して、どのような 体 制 を 構築 すべきなのか。外 国 で 災 害 が 発 生 したとき、 我 々にはどのような 協 力 ・ 支援 が 可 能 なのか。これらの 課 題 に 答 えるため、 近 年 とくに 自 然 災 害 によって文 化 遺 産 に 大 きな 被 害 のあった 各 国 に 焦 点 をあて、それぞれの 被 災 後 の 状 況 と 対 応 についての 調 査 を 行 うことになった。これは、 平 成 21 年 度 に 文 化 庁 が 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムへ 委 託 して 実 施 した 事 業 である。本 報 告 は、 東 京 文 化 財 研 究 所 が 担 当 した 中 華 人 民 共 和 国 ( 以下 、 中 国 )を 対 象 に、2008 年 5 月 に 発 生 した 四 川 大 地 震 を中 心 事 例 として 取 り 上 げたものである ( 図 1)。調 査 は、インタビューならびに 資 料 収 集 を 中 心 に 行 った。中 国 の 重 層 的 な 各 行 政 機 関 がどのように 連 携 し、 役 割 分 担 をしながら 復 興 に 着 手 したのかを 明 らかにするため、インタビュー 対 象 として、 国 全 体 の 文 化 遺 産 保 護 行 政 を 統 轄 する 国家 文 物 局 ならびに、 今 回 の 地 震 で 最 も 被 害 を 受 けた 四 川 省 と図 1: 調 査 対 象 国 および 調 査 地 概 要5


第 二 章 各 国 調 査配 下 の 市 ・ 県 レベルの 行 政 機 関 を 設 定 した ( 図 2)。また、 四川 省 での 対 応 が 一 般 的 な 対 応 かどうかをはかるため、 同 じく被 害 を 受 けると 同 時 に 四 川 省 への 復 興 支 援 にも 参 加 した 陝 西省 でもインタビューを 行 った。本 章 に 続 く 第 2 節 では 中 国 の 自 然 災 害 について、 第 3 節 では 中 国 における 文 化 遺 産 の 防 災 と 復 旧 体 制 について 概 要 を 述べる。そして 第 4 節 では 事 例 分 析 として 四 川 大 震 災 における文 化 遺 産 被 災 と 復 旧 の 概 要 ならびに 国 際 協 力 の 状 況 について報 告 する。 最 後 に 第 5 節 において、 本 事 例 調 査 の 総 括 と 提 言をおこなった。を 有 している。このため、 同 国 で 発 生 する 自 然 災 害 も 多 岐にわたっており、それぞれの 地 域 で 異 なった 災 害 特 性 がみられる。乾 燥 した 気 候 の 広 がる 西 部 から 中 央 部 にかけての 地 域 では、 干 ばつや 裸 地 の 増 加 に 伴 う 土 壌 浸 食 、さらには 浸 食 された 土 砂 が 引 き 起 こす 土 砂 災 害 、 河 川 災 害 などが 知 られている。また、 首 都 北 京 の 位 置 する 華 北 高 原 や 内 モンゴル 自治 区 では、 黄 砂 による 風 沙 被 害 が 多 発 している。いっぽう、南 東 部 では 近 年 台 風 や 大 雨 が 多 く 発 生 しており、これに伴 って 土 砂 災 害 や 洪 水 等 の 被 害 が 報 告 されている。 加 えて、中 国 は 大 きく 3 つの 地 殻 ブロックから 構 成 されており、これらの 境 界 部 分 にあたるチベット 高 原 縁 辺 部 や 秦 嶺 山 脈 付近 に 分 布 する 活 断 層 を 震 源 とした 地 震 が 多 発 している。また、それぞれの 地 域 の 中 でも、 局 所 的 に 地 滑 りや 洪 水の 起 こりやすい 地 域 や、 雷 、 乾 燥 に 伴 う 山 火 事 の 発 生 が 見られる 場 所 などもあり、 様 々な 場 所 において 多 様 な 自 然 災害 の 危 険 性 が 潜 んでいる 点 は 我 が 国 と 同 様 である。地 震 についてみれば、 過 去 100 年 の 間 で 極 めて 大 きな 被害 のあった 地 震 には、1920 年 の 甘 粛 省 海 原 地 震 (M8.5、 死図 2 中 国 における 文 化 遺 産 行 政 組 織 模 式 図( 斜 体 は 今 回 インタビューを 行 った 機 関 )者 20 万 人 )、1927 年 の 甘 粛 省 古 浪 地 震 (M8, 死 者 4.1 万 人 )、1975 年 の 遼 寧 省 海 域 地 震 (M7.5)、1976 年 の 河 北 省 唐 山 地震 (M7.8、 死 者 24 万 人 ) などが 知 られている。これらの 地震 を 含 め、 過 去 に 起 きた 大 きな 地 震 の 分 布 をみると、その1-2 岡 田 健 ( 独 ) 国 立 文 化 財 機 構 東 京 文 化 財 研 究 所多 くはユーラシアプレート 内 にある 地 殻 ブロックの 境 界 に集 中 している1。文 化 遺 産 国 際 協 力 センター 国 際 情 報 研 究 室 室 長小 関 久 乃島 根 県 客 員 研 究 員2-2 今 回 の 調 査 において、 中 国 での 過 去 の 自 然 災 害 による 文1-3 7 月 8 日 ( 水 )NH905 成 田 (10:35)→ 北 京 (13:25)同 日 CA1425 北 京 (17:00)→ 成 都 (19:30)7 月 9 日 ( 木 ) 四 川 省 文 物 管 理 局7 月 10 日 ( 金 ) 成 都 市 文 物 局7 月 11 日 ( 土 ) 都 江 堰 市 文 物 局7 月 12 日 ( 日 ) 成 都 博 物 院 金 沙 博 物 館 、 成 都 市 内 視 察 および 資 料 収 集7 月 13 日 ( 月 ) CA4201 成 都 (14:50)→ 西 安 / 咸 陽 (15:55)7 月 14 日 ( 火 ) 陝 西 省 文 物 局7 月 15 日 ( 水 )MU10:50 西 安 (10:50)→ 北 京 (12:50)中 国 文 化 遺 産 研 究 院7 月 16 日 ( 木 ) 国 家 文 物 局化 遺 産 の 被 災 状 況 を 網 羅 的 にとりまとめた 資 料 の 存 在 は 確認 することができなかった。 四 川 省 についていえば、 地 震の 多 発 地 帯 に 位 置 しているものの、 過 去 40 年 ほどの 間 に起 こった 地 震 に 限 っては 幸 い 文 化 遺 産 への 大 きな 被 害 が 報告 されていない。むしろ、 洪 水 や 地 滑 りに 関 する 被 害 報 告の 方 が 多 く、 以 来 、 文 物 管 理 所 や 博 物 館 の 建 設 に 際 しては、このような 災 害 の 被 害 を 受 けにくい 立 地 条 件 を 選 定 するようになっている。 陝 西 省 においても 地 滑 り、 洪 水 が 主 な 自然 災 害 とされており、 北 部 にある 石 窟 には 洪 水 の 痕 跡 が 残されているという。 寧 陝 県 に 位 置 する 城 隍 廟 は、 洪 水 による 被 害 を 受 ける 可 能 性 があったため、やむなく 安 全 な 所 に移 築 されたが、このような 移 築 は 極 めてまれな 災 害 対 策 とされている。7 月 17 日 ( 金 )NH956 北 京 (08:30)→ 成 田 (13:00)3. 2. 2-1 ユーラシア 大 陸 東 部 に 位 置 し、 世 界 第 4 位 の 国 土 面 積 を 誇る 中 国 は、 様 々な 気 候 帯 や 地 質 ・ 地 形 にまたがる 広 大 な 国 土3-1 中 国 では、 自 然 災 害 や 突 発 的 事 件 などの 緊 急 事 態 に 対 処するための 対 処 計 画 策 定 が 国 を 挙 げて 進 められており、 文化 遺 産 保 護 部 門 だけでなく、 教 育 や 交 通 などすべての 部 門6


第 二 章 各 国 調 査系 統 において、それぞれリスク 管 理 と 緊 急 対 処 計 画 を 策 定することが 求 められている。ここで 特 に 強 調 したいのが、中 国 独 自 の 政 治 体 質 に 沿 った 部 門 ごとの 指 示 系 統 の 存 在 である。すなわち、 各 行 政 組 織 は、 緊 急 時 には 日 本 のように市 町 村 単 位 中 心 で 動 くのではなく、 文 化 遺 産 保 護 部 門 であれば、 国 家 文 物 局 からその 配 下 の 省 ・ 市 ・ 県 におけるそれぞれの 文 物 局 という 縦 の 指 示 系 統 に 沿 って 動 く 仕 組 みをとっているという 点 である。この 縦 系 統 に 沿 った 緊 急 体 制作 りの 大 枠 も 法 で 定 められており、 文 化 遺 産 保 護 部 門 においても、 国 家 文 物 局 の 指 導 のもとそれぞれの 行 政 レベルの文 物 局 において 具 体 的 な 対 処 計 画 が 策 定 されていた。さらに、 各 行 政 レベルの 文 物 局 は、こうして 策 定 した 系統 ごとの 対 処 計 画 に 関 して、 対 応 する 人 民 政 府 、 日 本 で 言えば 市 町 村 の 批 准 または 承 認 を 得 ている。 例 えば、 今 回 事例 調 査 を 行 った 四 川 省 文 物 管 理 局 では、2000 年 頃 に「 重 大な 災 害 や 事 件 が 発 生 した 際 には 必 要 な 指 導 チームを 設 置 し緊 急 対 処 を 行 う」という 方 針 の 緊 急 対 処 計 画 を 作 成 しており、 四 川 省 政 府 の 批 准 を 受 けている。また、 都 江 堰 文 物 局でも、 国 家 防 災 減 災 局 と 都 江 堰 市 人 民 政 府 事 務 室 の 承 認 を受 けた 応 急 対 処 計 画 を 策 定 している。このように 各 行 政 レベルの 文 化 遺 産 保 護 部 門 は、 系 統 ごとに 指 示 を 受 けながら動 くという 対 処 計 画 を 作 成 し、 各 レベルの 人 民 政 府 の 承 認も 受 けて、リスク 管 理 を 行 っている。当 報 告 書 の 第 4 節 で 事 例 報 告 として 取 り 上 げた 2008 年5 月 12 日 発 生 の 四 川 大 地 震 後 、このような 突 発 的 な 災 害や 事 件 に 対 応 するためのさらに 総 合 的 な 体 制 作 りが 求 められ、 国 家 主 導 で 新 たな 体 制 が 整 備 されつつある。 現 在 では、「 中 華 人 民 共 和 国 防 震 減 災 法 」、「 中 華 人 民 共 和 国 突 発 性 公共 事 件 応 急 預 案 」という 二 つの 法 律 と、「 中 華 人 民 共 和 国破 壊 性 地 震 応 急 条 例 」という 条 例 が 整 備 されており、これらの 法 律 ・ 条 例 に 沿 って 各 行 政 部 門 がそれぞれの 部 門 系 統ごとに 行 動 するような 体 制 作 りが 進 められている。 今 後 は、この 新 しい 法 ・ 条 例 のもと、さらに 具 体 的 なアクションプランを 整 備 することが 求 められ、 文 化 遺 産 保 護 の 系 統 については、 国 家 文 物 局 から 配 下 の 省 、 市 、 県 のレベルの 文 物局 へ 要 求 がおりる 体 制 がより 強 化 されることになった。 中国 は 平 常 時 の 政 治 体 質 が 緊 急 時 の 対 応 においても 活 かされている。 緊 急 事 態 における 部 門 系 統 ごとの 対 処 という 動 きは、 日 本 における 緊 急 時 の 体 制 と 大 きく 異 なっているため想 像 しづらいかもしれないが、 後 述 の 4 の 事 例 報 告 に 四 川大 地 震 での 具 体 的 な 事 例 をまとめたので、 参 照 されたい。現 在 、 中 国 では 文 化 遺 産 を 集 中 管 理 するためのセンター収 蔵 庫 の 建 設 が 進 められている。 広 大 な 国 土 を 有 する 中 国ではすべての 州 や 市 ・ 県 に 博 物 館 や 収 蔵 庫 が 設 置 されているわけではない 上 に、 各 施 設 において、 国 が 定 めた 温 湿 度管 理 機 能 を 導 入 することも 容 易 ではない。そのため、 今 後の 効 率 的 かつ 効 果 的 な 文 化 遺 産 管 理 の 切 り 札 として、 周 辺地 区 の 文 物 の 一 括 管 理 が 可 能 なセンター 収 蔵 庫 の 建 設 が 進 められていた。 今 回 の 四 川 大 地 震 はこの 計 画 にも 影 響 を 与 え、今 後 建 設 される 予 定 のセンター 収 蔵 庫 に 関 しては、その 立 地や 耐 震 基 準 、 保 管 方 法 に 関 して 耐 震 対 策 を 加 味 したものが 求められるようになったという。こうしたセンター 収 蔵 庫 や 今後 建 設 される 博 物 館 については、 施 設 ごとに 耐 震 基 準 を 設 定することになっており、 成 都 市 では、 今 後 マグニチュード 8までの 地 震 に 耐 えられるよう 基 準 を 設 けることにしている。このように、 博 物 館 や 収 蔵 庫 に 関 しては、 今 後 耐 震 対 策 を加 味 した 建 設 や 改 修 がすすめられているが、 歴 史 的 建 造 物 に関 する 対 策 は 今 後 の 課 題 であるという。 中 国 における 歴 史 的建 造 物 の 保 護 では、オーセンティシティや 完 全 性 の 観 点 から定 期 的 な 解 体 修 理 や 積 極 的 な 耐 震 補 強 は 避 けるべきとされており、あくまでやむを 得 ない 状 況 下 に 陥 らない 限 り、このような 修 理 は 行 わないという。また、 観 光 客 が 内 部 に 入 るような 建 造 物 であっても、 中 国 では、 歴 史 的 建 造 物 は 建 築 法 よりも 文 物 保 護 法 の 方 が 優 先 されており、 積 極 的 な 耐 震 対 策 は 難しいという 2 。このような 状 況 下 で、 歴 史 的 建 造 物 を 活 用 する 場 合 どのように 人 々の 安 全 を 確 保 するか、また、どのような 耐 震 対 策 を 進 めるべきか、 今 後 の 調 査 ・ 研 究 が 必 要 とされている。3-2 前 節 で 述 べたように、 四 川 大 地 震 発 生 時 、 現 地 ではすでに各 行 政 レベルの 文 物 局 において 中 国 独 自 の 政 治 体 質 に 沿 った部 門 ごとの 指 示 系 統 に 基 づく 緊 急 対 処 計 画 が 整 備 されており、 実 際 にこれらの 対 処 計 画 は 有 効 に 機 能 した。 地 震 が 発 生した 一 時 間 半 後 、 温 家 宝 首 相 は 飛 行 場 に 向 かい、 現 場 への 機上 で「 汶 川 地 震 救 済 指 導 チーム」を 設 置 した。しかし、この国 家 による 指 導 チームの 設 置 を 待 たず、 各 現 場 ではそれぞれ対 処 計 画 に 沿 って 指 導 チームが 立 ち 上 げられ、 国 に 報 告 するための 情 報 収 集 やしかるべき 緊 急 対 応 が 開 始 されていたのである。 文 化 遺 産 保 護 部 門 においても、 国 家 文 物 局 が 震 災 のわずか 二 日 後 に 現 場 に 入 り、 具 体 的 な 指 示 を 開 始 したが、このときにはすでに 各 文 物 局 から 集 められた 被 災 状 況 が 国 家 文 物局 へ 集 まりつつあり、 国 家 文 物 局 の 意 志 決 定 に 大 きな 役 割 を果 たしたという。こうした 現 場 での 迅 速 な 対 応 と 情 報 の 集 約が、その 後 の 国 家 文 物 局 の 積 極 的 かつ 正 確 な 行 動 や 情 報 発 信につながったといえる。しかし、 文 化 遺 産 の 実 際 の 管 理 に 当 たっている 成 都 市 や 都江 堰 市 の 文 物 局 では、 今 回 の 災 害 に 関 して、これまでの 対 処計 画 で 対 応 しきれなかったことが 多 くあったという。というのも、これまでの 対 処 計 画 では、 洪 水 や 地 滑 り、 火 災 、 盗 難などを 想 定 した 計 画 が 中 心 であった。もちろん 地 震 対 策 も 含まれていたものの、この 地 域 では 1933 年 以 降 大 きな 地 震 がなかったため、 今 回 の 想 像 を 絶 するような 地 震 とその 被 害 状況 は 想 定 外 であったという。 具 体 的 には、 生 活 インフラが 全7


第 二 章 各 国 調 査滅 することを 想 定 していなかったことや、スタッフの 身 の 安全 の 確 保 、 生 活 必 需 品 の 備 蓄 などに 関 する 対 処 の 不 足 が 大 きな 課 題 として 浮 かび 上 がった。 各 文 物 局 では、 今 回 の 地 震 で得 た 貴 重 な 教 訓 をもとに、 対 処 計 画 の 改 修 もすすめている。4. 4-1 2008 年 5 月 12 日 に 発 生 した 四 川 大 地 震 は、 四 川 盆 地 とチベット 高 原 の 境 界 部 に 位 置 する 龍 門 山 断 層 帯 で 発 生 した ( 図3)。 地 震 の 規 模 は、マグニチュード 8 で ( 中 国 国 家 地 震 局 発表 )、 震 源 は 四 川 省 汶 川 県 映 秀 付 近 の 深 さ 10 ~ 14km のところである。その 被 害 は、 死 者 約 7 万 人 、 行 方 不 明 者 約 1 万 8千 人 、 経 済 的 損 失 は 8,451 億 元 ( 約 13 兆 円 ) に 及 ぶとされている (2008 年 9 月 中 国 政 府 発 表 )。この 地 震 の 被 害 の 特 徴 としては、 山 岳 地 帯 で 発 生 した 地 震 のため、 建 造 物 の 倒 壊 、 道写 真 2 被 災 した 鉄 龍 殿 と 吉 当 普 殿 の 様 子( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 3 被 災 した 雲 岩 寺 の 様 子( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )図 3 四 川 省 の 地 形 と 震 源(Google earth より 引 用 した 画 像 に 加 筆 )写 真 1 都 江 堰 より 前 龍 門 山 方 面 を 望 む写 真 4 被 災 した 汶 川 県 文 物 収 蔵 庫 の 一 級 文 物 ( 東 京 文化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )8


第 二 章 各 国 調 査車 に 積 み、それぞれの 甚 大 被 災 地 へ 配 布 した。この 結 果 、それぞれの 文 物 管 理 所 では 平 均 して 少 なくとも 3 張 のテントを 配 布 することができた。文 化 遺 産 復 興 にむけた 動 きまず 計 画 を 立 案 し、 予 算 を 調 達 しなければ 先 に 進 むことはできず、この 作 業 をいかに 迅 速 に 開 始 するかが 最 大 の 課 題 と 認識 していたためである。しかも、 今 回 の 災 害 は、 国 家 文 物 局がこれまで 想 定 しなかった 極 めて 甚 大 な 災 害 であり、これま写 真 19国 家 文 物 局 が 作 成 した震 災 復 興 計 画 大 綱( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )地 震 発 生 から 1 週 間 後 の 5 月 19 日 、 單 霁 翔 国 家 文 物 局局 長 が 被 災 地 を 視 察 し、 翌 20 日 の 夜 に、 成 都 市 内 の 武 侯祠 において 文 物 関 係 における 災 害 救 済 動 員 大 会 を 開 催 した。これが、 文 化 遺 産 保 護 部 門 における 地 震 救 済 の 最 初 の会 議 となる。その 後 、5 月 29 日 には 再 び 国 家 文 物 局 の 主 催 により、 成都 市 で 四 川 震 災 救 済 保 護 技 術 研 究 会 議 が 開 催 された。 会 議は、 董 副 局 長 を 初 めとし、 中 国 文 化 遺 産 研 究 院 、 中 国 建 築設 計 研 究 院 、 清 華 大 学 、 北 京 古 代 建 築 研 究 所 、 河 北 省 古 建築 保 護 研 究 所 、 浙 江 省 古 建 築 設 計 研 究 院 など、 中 国 国 内 の科 学 研 究 機 関 と 大 学 院 校 19 機 関 が 参 加 して 行 われた。この 会 議 において、 国 家 文 物 局 は 3 つの 課 題 について 取 り 組む 計 画 を 立 てていた。 一 つは、 被 災 地 を 実 際 に 視 察 し、 被害 状 況 を 正 確 に 把 握 すること。 二 つ 目 は、 危 険 な 状 態 にあるもの、 特 に 建 造 物 に 関 して 速 やかな 応 急 措 置 を 指 示 すること。そして、 三 つ 目 は、 現 地 の 復 興 作 業 に 当 たる 体 制 を整 え、 指 揮 することであった。 中 でも、 三 つ 目 の 課 題 は、今 後 の 文 化 遺 産 復 興 活 動 を 確 実 に 進 めていく 上 で 極 めて 重要 な 課 題 であった。というのも、 文 化 遺 産 の 復 興 支 援 には写 真 20 二 王 廟 修 復 での 工 事 標 識施 主 、 設 計 、 監 督 、 施 工 を 行 う 組 織 がそれぞれ 分 かれており、国 家 文 物 局 によって 選 抜 された 組 織 が 担 当 している。写 真 21 伏 龍 観 の 修 復 施 工 に 当 たっている広 西 省 文 物 保 護 センターの 職 員でに 収 集 された 被 害 速 報 を 検 討 した 結 果 、 広 範 囲 にわたって数 多 くの 建 造 物 等 に 被 害 が 発 生 しているため、 四 川 省 単 独 ですべての 文 化 遺 産 の 復 興 をはかることは 不 可 能 と 判 断 されていた。この 困 難 な 課 題 に 対 し、 国 家 文 物 局 は、 全 国 から 文 化遺 産 保 護 に 従 事 する 専 門 家 を 選 抜 し、 彼 らの 技 術 力 を 結 集 させて 支 援 するという 方 向 性 を 打 ち 出 し、この 会 議 においてさっそくその 具 体 的 な 体 制 を 整 えた。こうして、 国 家 文 物 局主 導 のもと、 国 を 挙 げての 本 格 的 な 復 興 事 業 が 開 始 されたのである。 会 議 の 結 果 、 各 機 関 が 四 川 省 内 に 位 置 する 二 十 数 カ所 の 被 災 全 国 重 点 文 物 保 護 単 位 の 救 援 修 復 任 務 をそれぞれ 担当 して 被 災 文 物 の 復 旧 に 関 する 設 計 や 施 工 計 画 を 立 案 したうえで 3 年 以 内 に 修 復 事 業 を 完 了 することが 決 定 された。8 月 1 日 に、 第 2 回 目 の 技 術 研 究 会 議 が 開 催 され、 前 回 の参 加 機 関 に 加 えて、 広 西 文 物 保 護 センター、 北 京 建 築 工 程 学院 、 陝 西 古 建 築 研 究 所 、 河 南 古 建 築 研 究 所 、 江 西 文 物 保 護 センター、 山 東 文 物 保 護 センター、 遼 寧 文 物 保 護 センター、 西安 文 物 保 護 修 復 センター 等 が 救 援 修 復 作 業 に 加 わることとなった。こうして、 国 からのトップダウンという 形 で 救 援 修復 作 業 に 加 わる 組 織 が 決 定 され、2009 年 7 月 現 在 では、 復興 支 援 が 必 要 な 250 カ 所 の 文 物 のうち、150 カ 所 の 設 計 案 が各 支 援 機 関 から 提 出 されている。各 支 援 機 関 から 提 出 された 設 計 案 は、 四 川 省 文 物 管 理 局 において 審 査 を 受 け、ここで 批 准 された 後 に 実 行 に 移 されることになる。 具 体 的 な 作 業 着 手 の 優 先 順 位 は、 各 文 化 遺 産 の 重要 度 および 周 辺 ライフラインの 復 旧 状 況 に 応 じて 決 められた。 例 えば、 都 江 堰 は 世 界 遺 産 であり、 地 区 の 重 要 な 文 化 遺産 であると 同 時 に、 観 光 資 源 でもあるため、 復 旧 が 急 がれるものの 一 つである。 幸 い、 都 江 堰 は 都 市 にも 近 く、 復 旧 作 業に 必 要 な 資 材 や 機 械 を 運 ぶのに 良 い 条 件 にあった。それだけ13


第 二 章 各 国 調 査でなく、 国 家 文 物 局 の 指 導 のもと、 四 川 省 政 府 と 成 都 市 、 都江 堰 市 の 全 面 的 な 支 持 をうけ、 施 工 に 必 要 な 水 や 電 気 などのライフラインを 都 江 堰 市 街 地 区 から 専 用 で 引 いてくることが可 能 であった。そのため、6 月 30 日 という 非 常 に 早 い 時 期に 救 済 工 事 を 開 始 することができたという。こうして、 優 先度 や 作 業 条 件 に 応 じ、 各 地 の 復 旧 整 備 体 制 が 整 えられ、 順 次作 業 が 開 始 されている。いっぽう、 交 通 の 便 の 悪 い 地 域 であっても、 少 数 民 族 の 文化 保 護 および 安 全 確 保 という 観 点 から、 着 工 が 急 がれた 地 域もあった。 中 国 の 少 数 民 族 ・ 羌 族 が 居 住 する 桃 坪 羌 寨 では、7 月 15 日 という 早 い 時 期 に 応 急 工 事 が 開 始 された。ここは、碉 楼 と 呼 ばれる 独 特 の 石 造 の 塔 をもつ 伝 統 的 建 造 物 がみられる 羌 族 の 居 住 地 区 であるが、 地 震 により 一 部 の 建 築 は 完 全 に倒 壊 し、また 一 部 には 壁 に 亀 裂 ができたり、 壁 体 が 開 いた 上に 屋 根 が 倒 壊 したりする 被 害 がみられた。もともと 今 回 の 地震 で 大 きな 被 害 を 受 けた 地 域 一 帯 には 多 くの 羌 族 が 居 住 し、彼 らが 今 回 の 地 震 の 最 大 の 犠 牲 者 とも 言 えることから、 民 族研 究 の 専 門 家 等 からも 早 期 救 済 の 声 があがっていた。このような 事 態 に 対 し、 国 の 中 央 指 導 者 も 強 い 関 心 を 持 って 羌 族 の民 心 の 安 定 を 重 要 視 したため、 今 回 のような 早 急 な 対 応 が 実現 したと 考 えられる。その 後 、10 月 には 馬 爾 康 、 直 波 碉 群というチベット 族 の 地 区 でも 伝 統 的 住 居 の 修 復 作 業 が 開 始 されている。この 桃 坪 羌 寨 と 直 波 碉 群 の 修 復 事 業 を 実 施 するにあたり、四 川 省 文 物 管 理 局 では、 少 数 民 族 の 文 化 遺 産 がもつオーセンティシティと 完 全 性 を 保 つために、 地 元 の 工 人 たちが 持 っている 施 工 方 法 を 採 用 した。その 一 方 で、 彼 ら 少 数 民 族 の 工 人たちに 対 し、 文 化 遺 産 保 護 に 対 する 理 念 と 方 法 に 関 するトレーニングを 中 国 イコモスの 協 力 を 得 て 実 施 した。 具 体 的 には、 桃 坪 と 直 波 の 両 方 において、それぞれ 羌 族 の 工 人 用 とチベット 族 の 工 人 用 のトレーニングコースをそれぞれ 開 催 したのである。トレーニングでは、 文 化 遺 産 修 復 のための 国 際 的な 理 念 を 地 元 の 工 人 にもわかりやすく 伝 えることを 目 的 とし、 中 国 イコモスの 郭 瞻 氏 や 桃 坪 の 震 災 復 興 設 計 を 担 当 した中 国 建 築 設 計 研 究 院 も 参 加 して 行 われた。以 上 が、 全 国 重 点 文 物 単 位 クラスの 文 化 遺 産 復 興 にむけた動 きであるが、それ 以 外 の 省 級 、 市 級 、 県 級 の 被 災 文 化 遺 産に 対 しては、 被 災 直 後 から 各 行 政 レベルの 担 当 者 が 被 災 状 況に 応 じたランク 分 けの 作 業 に 取 りかかった。 省 級 の 文 物 であれば 四 川 省 文 物 管 理 局 のスタッフが、 市 級 であれば 成 都 市 文化 局 のスタッフが 担 当 するという 役 割 分 担 になっている。そして、このランク 分 けの 作 業 は、その 後 の 復 興 を 円 滑 に 進 めるために 欠 かすことのできない 作 業 、すなわち 復 旧 にかかる費 用 の 算 定 および 予 算 要 求 の 根 拠 資 料 となるため、 迅 速 かつ正 確 に 行 う 必 要 があった。 各 レベルの 文 物 局 や 文 化 局 では、この 作 業 をおおむね 一 ヶ 月 から 二 ヶ 月 で 完 成 させている。なお、 国 レベルの 文 化 遺 産 であっても 実 際 の 予 算 の 管 理 や監 督 はすべて 地 元 の 市 ・ 県 レベルの 文 物 局 が 担 当 している。このため、 現 場 の 一 つである 都 江 堰 文 物 局 では、 震 災 後 休みなく 復 旧 作 業 に 従 事 し、 忙 しい 日 々が 続 いているという。博 物 館 収 蔵 品 修 復 にむけた 動 き写 真 22 金 沙 博 物 館 でのインタビューの 様 子四 川 省 文 物 管 理 局 では、 配 下 の 各 文 物 局 ・ 文 物 管 理 所 を通 じて 今 回 の 地 震 で 被 害 を 受 けた 博 物 館 収 蔵 品 の 状 況 を 把握 し、 被 災 したと 判 明 した 3,167 点 の 文 物 を 破 損 の 度 合 いに 応 じて 3 つのレベルに 分 類 した。 第 1 のレベルは、 修 復不 可 能 なもので、 例 えば 倒 壊 した 文 物 管 理 所 の 廃 墟 に 埋 もれて 回 収 不 可 能 なものがこれにあたる。 第 2 レベルは 重 大な 破 損 、 第 3 レベルは 軽 微 な 破 損 で、これらの 合 計 は 2,053点 にのぼった。 修 復 可 能 な 2,053 点 については、 順 次 修 復計 画 を 作 成 し、 修 復 作 業 を 開 始 した。 三 星 堆 博 物 館 で 破 損した 陶 磁 器 については、 北 京 から 供 与 された 基 金 の 援 助 を得 て 既 に 修 復 作 業 が 完 了 しており、 金 沙 博 物 館 での 破 損 文物 についても、 独 自 予 算 で 既 に 修 復 が 完 了 している。 今 後は、 四 川 省 文 物 管 理 局 においても 資 金 を 調 達 し、 被 災 した博 物 館 収 蔵 品 そのものの 修 復 だけでなく、センター 収 蔵 庫建 設 や 博 物 館 の 建 設 など、 順 序 をもって 作 業 を 進 めていく予 定 とのことであった。こうした 震 災 後 の 文 物 の 修 復 や 施設 建 設 は、 四 川 省 文 物 管 理 局 が 中 心 となって 進 めるだけでなく、 政 府 や、 河 北 省 、 北 京 市 、 陝 西 省 、 山 西 省 、 江 西 省など、 中 国 各 地 の 省 の 力 を 借 りて 進 めているところであり、現 段 階 では 国 際 援 助 は 計 画 に 含 まれていないとのことであった。これらの 復 興 計 画 の 中 で 特 に 注 目 されているのがセンター 収 蔵 庫 の 建 設 である。 今 回 の 震 災 により、 綿 陽 市 に 設置 されたセンター 収 蔵 庫 が 文 物 の 震 災 からの 保 護 にも 大 きく 貢 献 したことから、センター 収 蔵 庫 の 有 効 性 が 震 災 からの 保 護 という 点 からも 改 めて 評 価 された 形 となり、その 建設 が 大 きく 推 進 されることになったという。また、その 際には 今 回 の 地 震 での 教 訓 を 踏 まえ、 建 物 自 体 の 耐 震 設 計 はもちろんのこと、 収 蔵 棚 についても 耐 震 性 を 考 慮 したもの14


第 二 章 各 国 調 査を 準 備 することや、 文 化 遺 産 を 収 蔵 箱 に 格 納 して 保 管 するなどの 手 順 徹 底 が 求 められるようになったとのことであった。修 復 支 援 事 業 に 対 する 財 政 的 援 助 の 仕 組 み地 震 発 生 後 、 復 興 支 援 のための 予 算 が 確 定 していない 段階 で 速 やかに 行 動 に 出 る 必 要 があったため、 四 川 省 文 物 管理 局 では、 必 要 に 応 じて 都 江 堰 市 から 2,000 万 元 の 借 款 供与 を 受 けるなどして 緊 急 の 事 業 対 策 を 行 った。また、 初 期に 行 われた 文 化 遺 産 の 整 理 、 遮 蔽 、 消 毒 、 補 強 作 業 等 にかかる 費 用 については、 国 家 文 物 局 が 大 きく 支 持 をしたため、四 川 文 物 管 理 局 が 直 接 国 務 院 に 対 して 報 告 を 行 い、 国 務 院総 理 の 基 金 から 3,000 万 人 民 元 の 予 算 が 支 給 されている。被 災 した 全 国 重 点 文 物 単 位 の 復 興 にかかる 費 用 については、 当 初 はそれぞれの 文 化 遺 産 修 復 の 設 計 ・ 施 工 を 担 当 する 全 国 の 各 機 関 が 持 ち 出 しで 行 い、 無 償 にて 提 供 される 予定 であった。しかし、のちに 国 から 文 化 遺 産 復 興 のための予 算 が 割 り 当 てられたため、 現 在 ではこの 予 算 からプロジェクト 単 位 で 費 用 が 補 助 されるよう 改 められている。 例えば、 都 江 堰 市 にある 二 王 廟 と 伏 龍 観 では、 再 建 設 計 を 北京 市 の 清 華 大 学 が 担 当 し、 再 建 費 用 の 概 算 額 は 約 1 億 人 民元 と 算 出 された。 当 初 はこの 費 用 を 清 華 大 学 や 施 工 に 当 たる 機 関 が 負 担 する 予 定 であったが、その 後 、 文 化 遺 産 の 災害 再 建 のための 経 費 として 国 が 都 江 堰 市 に 対 して 約 1 億 人いっぽう、 省 級 、 市 級 の 文 化 遺 産 に 関 しては、 所 管 する 行政 レベルの 文 物 局 が、それぞれ 作 成 した 被 害 状 況 報 告 書 ならびに 修 復 費 用 試 算 値 をもとに、 各 自 で 国 や 省 政 府 、 市 政府 へ 報 告 を 行 い、 予 算 要 求 を 行 うことになっている。 成 都市 文 化 局 では、 文 化 遺 産 の 被 害 状 況 に 関 するランク 分 け 作業 が 完 了 したのち、 速 やかに 修 復 計 画 案 を 立 案 し、 成 都 市委 員 会 、 市 政 府 に 報 告 を 行 った。その 結 果 、 文 化 遺 産 の 復興 が 極 めて 重 要 と 判 断 され、2009 年 度 の 予 算 から 5,100 万人 民 元 が 拠 出 されることになったという。 今 後 、 成 都 市 文化 局 では、この 予 算 を 受 けて、 被 災 した 文 化 遺 産 復 旧 の 作業 順 序 や 予 算 の 割 り 振 りを 計 画 し、 作 業 をすすめることにしている。 具 体 的 には、 古 建 築 の 修 復 や、 博 物 館 ・ 文 物 管理 所 施 設 の 改 善 、そして 博 物 館 収 蔵 文 物 の 修 復 に 用 いられるとのことであった。4-3-2 被 災 直 後 の 現 地 での 緊 急 対 応 と 復 興 にむけた 動 き地 震 発 生 時 、 陝 西 省 文 物 局 8 でも 大 きな 揺 れを 感 じ、 家具 の 転 倒 や 照 明 の 落 下 などの 被 害 が 発 生 した。 地 震 が 発 生したということは 理 解 できたものの、 震 源 に 関 する 情 報 がなかなか 入 手 できず、30 分 ほどして、ようやく 四 川 省 において 大 地 震 が 発 生 したことが 判 明 したという。この 時 点 で、局 員 は 手 分 けをして 配 下 の 市 文 物 局 に 電 話 をかけ、 各 市 における 被 害 状 況 の 概 要 を 把 握 するよう 指 示 を 行 った。こうした 省 と 市 の 連 携 は、 常 日 頃 から 体 制 が 整 備 されているとのことであり、そのため 緊 急 時 でも 常 に 指 示 系 統 が 明 確 で、写 真 23 陝 西 省 文 物 局 でのインタビューの 様 子民 元 の 予 算 を 割 り 当 てたため、 都 江 堰 市 はこの 災 害 再 建 経費 から 各 機 関 に 必 要 な 経 費 の 補 助 を 行 っている。こうした 公 庫 負 担 以 外 にも、 中 国 国 内 の 個 人 ・ 機 関 から相 次 いで 資 金 寄 付 が 表 明 された。 書 道 家 である 中 国 文 物 出版 社 の 蘇 士 樹 氏 は、 自 らの 作 品 の 販 売 会 を 行 い、その 売 り上 げである 200 万 人 民 元 をすべて 直 波 碉 楼 の 震 災 復 興 に 提供 した。また 広 州 の 郭 氏 グループは 300 万 元 を 雅 安 市 榮 金県 の 開 善 寺 の 復 興 救 済 に 提 供 したほか、マカオの 基 金 会 は北 川 羌 族 博 物 館 の 再 建 に 1 億 人 民 元 を 寄 付 した。 中 国 では、寄 付 を 行 った 個 人 ・ 機 関 の 意 志 が 尊 重 され、 彼 らが 指 定 した 用 途 のために 寄 付 金 全 額 が 使 用 されるようになっている。写 真 24 陝 西 省 文 物 局 が 作 成 した陝 西 省 文 物 救 済 保 護 計 画 大 綱( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )混 乱 なく 連 携 が 可 能 であったという。翌 日 、 陝 西 省 でも 20 名 ほどの 人 命 が 失 われたことが 判 明したが、 陝 西 省 文 物 局 では、 専 門 家 を 含 む 2 つの 被 害 状 況 調査 班 を 組 織 し、 約 10 日 間 かけて 省 内 の 文 化 遺 産 の 被 害 状 況調 査 に 着 手 した。 調 査 班 に 参 加 した 専 門 家 は、 建 築 、 技 術 、文 化 遺 産 保 護 、 地 質 分 野 の 専 門 家 で、 文 物 局 局 員 と 省 内 の 大学 教 員 からなる 混 成 班 である。 調 査 では、 被 災 した 文 化 遺 産を 一 つ 一 つ 確 認 して、 修 復 の 緊 急 性 等 についての 評 価 をおこなった。その 結 果 、 陝 西 省 内 では 86 の 文 物 保 護 単 位 、307件 の 博 物 館 収 蔵 品 が 被 災 したことが 明 らかとなった。この 結果 は 報 告 書 としてとりまとめられ、 国 家 文 物 局 へ 提 出 されている。なお、 陝 西 省 文 物 局 でも、このような 自 然 災 害 発 生 時15


第 二 章 各 国 調 査において、 人 命 救 助 優 先 の 体 制 から 文 化 遺 産 保 護 への 体 制 へ切 り 替 えるタイミングの 判 断 が 非 常 に 難 しかったという。そのような 状 況 下 において、 国 家 文 物 局 からの 作 業 指 示 は 体 制切 り 替 えを 後 押 しするものであり、 現 場 にとって 非 常 に 重 要な 指 示 だったとのことであった。上 記 の 報 告 書 を 提 出 したのち、 次 にこれらの 文 化 遺 産 修 復にかかる 費 用 を 算 出 するため、 陝 西 省 文 物 局 は 専 門 家 に 委 託してさらに 詳 細 な 被 害 状 況 調 査 と 修 復 費 用 の 見 積 もりを 行 った。まず、 先 に 述 べた 専 門 家 集 団 がそれぞれの 被 害 の 程 度 によって 被 災 状 況 を 4 つのランクに 分 類 する。その 後 、 専 門 家からの 報 告 結 果 に 基 づき、 西 安 文 物 保 護 修 復 センターの 計 画立 案 部 門 が、 各 ランクに 設 けられた 修 復 費 用 算 出 基 準 額 に沿 って 費 用 の 見 積 もりを 行 うのである。こうして 半 年 ほどかけて 行 われた 作 業 の 結 果 、 陝 西 省 での 文 化 遺 産 にかかる 被 害額 ( 修 復 にかかる 人 件 費 や 材 料 費 などの 積 算 値 ) は、 総 額 で1.96 億 元 にのぼることが 明 らかとなった。それぞれの 文 化 遺産 修 復 にかかる 費 用 は、 原 則 として 全 国 重 点 文 物 単 位 であれば 国 、 省 級 であれば 省 、 市 級 であれば 市 の 予 算 でまかなわれるのであるが、 今 回 のような 非 常 事 態 では、 状 況 に 応 じて、全 国 重 点 文 物 単 位 の 修 復 であっても 省 が 費 用 を 負 担 したりするとのことであった。このような 作 業 と 予 算 計 画 立 案 を 経 たのち、 陝 西 省 文 物 局では 西 安 文 物 保 護 修 復 センターおよび 陝 西 古 建 築 研 究 所 に 委託 し、3 年 計 画 ですべての 文 化 遺 産 の 修 復 を 完 成 させるという「 陝 西 省 文 物 救 済 保 護 計 画 案 」を 策 定 した( 写 真 24)。 現 在 、この 計 画 に 沿 って、 省 、 市 、それぞれの 修 復 作 業 を 進 めているところである。写 真 25 被 災 前 の 領 報 修 院 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )四 川 省 内 被 災 文 化 遺 産 の 復 興 支 援 にむけた 動 き陝 西 省 は、 中 華 文 明 揺 籃 の 地 として 数 千 年 にわたる 歴 史 を刻 み、 無 尽 蔵 の 文 化 遺 産 が 伝 えられる 省 であり、 文 化 遺 産 保護 にかかる 科 学 技 術 の 研 究 もさかんな 土 地 柄 である。 省 内 には、 西 安 文 物 保 護 修 復 センターと 陝 西 古 建 築 研 究 所 という 文化 遺 産 保 護 にかかる 国 内 有 数 の 専 門 機 関 が 2 カ 所 存 在 する。先 に 述 べたように、 今 回 の 大 地 震 で 被 災 した 四 川 省 内 45カ 所 の 全 国 重 点 文 物 単 位 の 復 興 作 業 は 国 家 文 物 局 主 導 で 進 められ、 国 家 文 物 局 が 文 化 遺 産 保 護 にかかる 優 れた 技 術 を 持 つ国 内 の 機 関 を 選 抜 し、 復 興 支 援 に 当 たるよう 要 請 を 行 った。この 選 抜 された 機 関 のうち、 陝 西 省 からは 先 に 述 べた 2 機 関が 選 ばれ、 青 城 山 とその 他 6 カ 所 の 全 国 重 点 文 物 単 位 、 計 7カ 所 の 復 興 支 援 を 行 うこととなった。これをうけ、 両 機 関 はいずれも3~4ヶ 月 で 修 理 計 画 を 策 定 し、 現 在 この 計 画 に 沿 って 修 復 作 業 が 進 められているとのことである。このように、 中 国 では、 国 家 文 物 局 から 各 省 の 文 物 局 に 対し、 危 機 管 理 を 万 全 にするよう 絶 えず 要 求 がなされており、いずれの 省 も 危 機 管 理 体 制 が 整 備 されているとのことであった。また、 他 省 において 災 害 など 緊 急 事 態 が 発 生 した 際 に、写 真 26 被 災 前 の 領 報 修 院 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 27 被 災 後 の 領 報 修 院 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )16


第 二 章 各 国 調 査関 連 機 関 が 相 互 援 助 を 行 うことは 中 国 では 一 般 的 なこととされている。このため、 陝 西 省 でも 今 回 の 非 常 事 態 に 際 し、 自省 内 の 対 応 ならびに 他 省 の 援 助 という 2 つの 使 命 に 対 して 速やかに 行 動 することができたという。写 真 28 被 災 後 の 領 報 修 院( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 29 文 化 財 建 造 物 等 の 地 震 対 策 に 関 する日 中 専 門 家 ワークショップの 様 子写 真 30 ワークショップ 中 に 行 われた都 江 堰 二 王 廟 視 察 の 様 子4-4 今 回 の 地 震 による 被 災 に 対 し、 幾 つかの 国 ・ 組 織 からの 国際 協 力 の 申 し 出 があったものの、 具 体 的 に 行 動 が 起 こされたのは 3 カ 国 ・ 機 関 のみであった。ユネスコ、フランス 政 府 、そして 日 本 国 政 府 である。ユネスコは、ユネスコ 北 京 事 務 所 を 通 じて、 世 界 遺 産 である 青 城 山 の 再 建 復 興 に 150 万 人 民 元 を 供 与 した。この 資 金 により、 既 に 青 城 山 の 復 興 作 業 は 開 始 されている。また、フランス 政 府 は、フランス 駐 成 都 総 領 事 館 を 通 じ、彭 州 にある 領 報 修 院 ( 図 25 ~ 28) の 再 建 に 関 する 技 術 支 援を 申 し 出 た。この 建 造 物 は 成 都 郊 外 の 彭 州 市 に 位 置 しており、1908 年 にフランス 人 宣 教 師 によって 建 てられたキリスト 教の 修 道 院 である。そのため、 以 前 からフランス 領 事 館 が 関 心を 寄 せていたという。しかし、 修 道 院 はレンガと 木 構 造 の 建築 であったため、 今 回 の 地 震 によって 甚 大 な 被 害 を 受 け、そのほとんどが 倒 壊 してしまった。これをうけ、フランス 政 府はさっそく 8 月 に 自 国 の 古 建 築 や 歴 史 学 の 専 門 家 を 派 遣 したのを 皮 切 りに、これまでにあわせて 3 回 の 視 察 を 実 施 した。視 察 の 申 し 入 れは 毎 回 フランス 大 使 館 を 通 じて 行 われ、 各ミッションのたびに 報 告 書 が 関 係 者 に 提 出 されたという。 最終 的 に、この 修 道 院 の 修 復 計 画 立 案 および 費 用 負 担 はすべて中 国 が 行 ったが、フランスは、この 修 復 計 画 案 に 対 してフランス 人 専 門 家 から 助 言 を 提 供 するという 形 での 技 術 支 援 を行 った。いっぽう、 日 本 国 政 府 は、7 月 9 日 の 洞 爺 湖 サミットへの出 席 のため 訪 日 していた 胡 錦 濤 国 家 主 席 と 福 田 首 相 の 会 談 において、 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 の 復 興 計 画 を 参 考 にした 一 つの 全体 計 画 のもとで、 日 本 が 有 している 震 災 復 興 の 経 験 ・ 知 識 ・技 術 といったソフト 面 での 協 力 を 重 点 とする 支 援 可 能 項 目 リストを 提 示 した。この 包 括 的 支 援 可 能 項 目 リストの 一 つとして 文 化 遺 産 復 興 支 援 が 含 まれており、その 後 の 両 国 関 係 者 の協 議 の 結 果 、 建 造 物 の 保 護 修 復 と 地 震 対 策 、 博 物 館 施 設 および 収 蔵 品 の 地 震 対 策 をテーマとした 専 門 家 のワークショップを 開 催 することとなった。このワークショップは、「 文 化 財建 造 物 等 の 地 震 対 策 に 関 する 日 中 専 門 家 ワークショップ」として 2009 年 2 月 に 実 施 され、 日 中 から 76 名 もの 専 門 家 が 参加 し、4 日 間 にわたる 発 表 や 現 地 視 察 を 踏 まえて 文 化 遺 産 の耐 震 対 策 にかかる 横 断 的 な 内 容 をカバーしながら 議 論 を 行うという、 日 本 国 内 でも 例 を 見 ない 充 実 した 内 容 のワークショップとなった ( 写 真 29、30)。このワークショップに 関して、 中 国 側 で 会 議 開 催 の 準 備 を 指 揮 した 四 川 省 文 物 管 理 局博 物 館 處 の 李 蓓 處 長 は、 復 興 活 動 が 本 格 化 する 直 前 の 非 常 に17


第 二 章 各 国 調 査忙 しい 時 期 の 開 催 であったものの、 当 時 はあらゆる 方 面 からの 有 効 な 提 案 を 必 要 としていたため、 日 中 専 門 家 の 優 れた 理念 を 共 有 することのできた 時 宜 を 得 たものだったとコメントしている。念 や 方 法 論 を 持 ち 込 むだけでも、 実 際 にはかなりの 困 難 を伴 うのである。したがって、 緊 急 時 によらず、 平 常 時 からお 互 いがこれらの 問 題 に 対 する 共 通 認 識 と 解 決 策 が 見 いだせていなければ、 国 際 協 力 は 注 意 を 要 する 難 しい 事 柄 である。 今 回 の 大 震 災 において 行 われた 国 際 協 力 が 資 金 提 供 や技 術 交 流 、 助 言 の 提 供 などにとどまったのは、このような国 家 文 物 局 の 方 針 が 反 映 されていたためと 考 えることができる。写 真 31 国 家 文 物 局 でのインタビューの 様 子このほかにも、 数 カ 国 から 被 害 状 況 の 視 察 団 などが 訪 れたり、 支 援 表 明 があったりしたとのことであるが、 具 体 的 な 支援 に 結 びついたものは 上 記 以 外 にないとのことであった。こうした 緊 急 時 の 文 化 遺 産 国 際 協 力 に 関 し、 中 国 国 家 文 物局 では 二 つの 角 度 からの 検 討 が 必 要 だと 考 えている。その 二つとは、 法 規 上 の 制 限 、そして 技 術 上 の 課 題 である。まず、当 然 のことながら、 中 国 には 中 国 の 文 化 遺 産 を 保 護 するための「 文 物 保 護 法 」が 存 在 し、この 法 の 枠 組 みのもと、 文 化 遺産 保 護 の 手 順 が 決 められている。これはまず 第 一 に 自 国 の 国民 に 対 して 定 められたもので、 外 国 人 もまたこの 法 律 に 従 わなければならないが、 外 国 人 が 中 国 の 文 化 遺 産 に 関 与 しようという 場 合 には、たとえそれが 調 査 研 究 だけの 内 容 であったとしても、 当 然 厳 格 な 審 査 と 制 限 が 加 えられるし、まして 直接 文 化 遺 産 に 対 して 修 復 の 行 為 を 行 うことについては、 原 則これを 認 めない 方 針 が 貫 かれている。このことは 翻 って 我 が国 の 文 化 財 修 復 に 外 国 人 の 参 入 を 許 容 しているか、ということを 考 えれば 簡 単 に 理 解 できる。 従 って、 有 事 の 際 の 国 際 協力 であっても、 協 力 を 行 う 海 外 機 関 は 法 に 定 められた 基 礎 に則 った 形 での 文 化 遺 産 保 護 を 行 う 必 要 がある。また、それ以 上 に 難 しいのは、 保 護 の 理 念 と 技 術 の 違 いである。これは、 先 に 紹 介 した 2009 年 2 月 開 催 の「 文 化 財 建 造 物 等 の 地震 対 策 に 関 する 日 中 専 門 家 ワークショップ」の 討 論 でもたびたび 取 り 上 げられた 課 題 であるが、 同 じような 文 化 遺 産 を 有する 隣 国 同 士 であっても、 文 化 遺 産 を 修 復 するための 理 念 や技 術 は 大 きく 異 なっている。 他 国 が、 相 手 国 の 修 復 理 念 や 技術 を 理 解 しないまま、 他 国 独 自 の 理 念 ・ 技 術 を 持 ち 込 んで 修復 を 行 うことは、もはや「 修 復 」ではないのである。もちろん、 現 状 では 日 本 が 中 国 の 文 化 遺 産 について 直 接 手 を 出 して修 理 作 業 を 行 うことは、 上 記 のような 困 難 があるが、その 理5. 5-1 中 国 の 社 会 体 制 による 対 応 システム2008 年 5 月 12 日 に 発 生 した 四 川 大 地 震 は、かけがえのない 人 命 や 財 産 を 奪 っただけでなく、 数 多 くの 貴 重 な 文 化遺 産 へも 甚 大 な 被 害 をもたらした。このような 未 曾 有 の 災害 からの 文 化 遺 産 復 興 事 例 を 調 査 するなかで、 最 も 特 徴 的であったのは、 文 化 遺 産 保 護 にかかわる 中 国 の 各 行 政 レベルの 対 応 の 素 早 さと 正 確 さであった。これは、ひとえに 中国 の 社 会 体 制 に 基 づく 緊 急 時 の 対 応 システムが、 文 化 遺 産保 護 分 野 においても 実 際 に 機 能 する 形 で 完 備 されていたことによるであろう。中 国 では、 今 回 の 災 害 以 前 から 自 然 災 害 、 火 災 、 盗 難 などの 重 大 な 突 発 性 の 事 件 に 対 して 各 レベルの 組 織 が 対 応 案を 作 成 し、 行 動 するような 体 制 が 整 備 されていた。 今 回 の四 川 大 地 震 では、 現 場 を 預 かる 市 ・ 県 レベルの 文 物 局 はまず 現 場 にいき、 初 期 調 査 の 中 で 被 害 状 況 を 正 確 に 把 握 した。また、 市 ・ 県 を 掌 握 する 省 の 文 物 管 理 局 は、 生 活 物 資 の 補給 という 形 で 現 場 の 文 物 局 を 後 方 支 援 しつつ、 彼 らから 集まった 情 報 をとりまとめ、 速 やかに 国 家 文 物 局 へ 報 告 を行 った。こうした 動 きは、 国 家 文 物 局 が 指 示 する 前 からすでに 各 文 物 局 においてすみやかに 始 められたのである。そして、このようにして 迅 速 に 集 められた 情 報 をもとに、 国家 文 物 局 は 状 況 を 判 断 し、 計 画 を 立 案 し、 極 めて 初 期 の 段階 であるにもかかわらず 必 要 な 専 門 家 を 集 合 して 現 地 へ 視察 に 向 かうことができた。このように、 地 方 行 政 と 中 央 の文 化 遺 産 保 護 部 門 が、 一 つの 系 統 の 中 で 見 事 に 連 携 し、 速やかな 復 興 にむけた 動 きをみせたことは、まさに 中 国 ならではの 体 制 によるものと 考 えられる。この 速 やかな 情 報 収 集 と 意 志 決 定 は、 続 く 復 興 事 業 を 具体 化 するための 予 算 確 保 と 人 材 確 保 へとつながっていく。今 回 、この 大 震 災 の 中 で、 人 命 、 交 通 、 公 共 施 設 、 生 活 インフラなど 様 々な 手 当 や 復 興 が 急 務 とされるなか、 文 化 遺産 も 同 じスピード 感 で 予 算 要 求 に 加 わり、 決 して 優 先 順 位が 低 く 見 られていないのは、このような 正 確 な 情 報 収 集 に基 づく 速 やかな 対 応 によるところが 大 きいと 考 えられる。そして、 非 常 に 早 い 段 階 で 国 の 文 化 遺 産 保 護 行 政 のトップである 国 家 文 物 局 が 現 地 に 赴 き、 率 先 して 復 興 を 指 導 し18


第 二 章 各 国 調 査ていることも 大 きな 特 徴 のひとつといえる。 多 くの 人 命 が失 われる 中 、また 親 族 等 の 安 否 も 定 かではない 中 で、 文 化遺 産 の 救 済 という 職 務 に 専 念 することは 非 常 に 大 きな 困 難が 伴 うと 考 えられる。そのような 厳 しいジレンマの 中 で、国 家 文 物 局 の 局 長 自 らが 現 地 入 りし、 現 場 を 激 励 するとともに 復 興 にかかる 予 算 と 人 材 を 確 保 するための 迅 速 な 行 動を 指 示 することは、 実 際 に 多 くの 関 係 者 にとって 自 らの 行動 の 拠 り 所 となったという。そしてまた、 一 つの 省 が 災 難にあったことに 対 し 国 のリーダーが 率 先 して 協 力 するという 姿 勢 は、 四 川 省 内 の 関 係 者 のみならず、 国 内 の 様 々な 機関 の 団 結 にもつながり、 国 を 挙 げての 文 化 遺 産 復 興 活 動 へとつながったといえる。国 際 協 力 の 現 実いっぽう、これだけの 甚 大 な 被 災 状 況 にもかかわらず、文 化 遺 産 国 際 協 力 は 3 件 のみであったことが 明 らかとなった。しかも、その 協 力 のうちわけは、 資 金 援 助 1 件 、 技 術的 助 言 1 件 、そして 技 術 交 流 が 1 件 で、 具 体 的 な 修 復 活 動は 1 件 も 実 施 されなかった。この 理 由 は、 中 国 ではすでに 国 家 文 物 局 の 主 導 のもと、迅 速 な 復 興 支 援 体 制 が 構 築 され、 外 国 からの 応 援 を 待 つまでもなく 国 内 専 門 家 および 国 家 予 算 である 程 度 の 修 復 の 見通 しがたったことがその 第 一 である。しかし、そこには 国を 隔 てた 文 化 遺 産 保 護 が 持 つ、 重 要 な 要 因 が 存 在 している。すなわち、 文 化 遺 産 保 護 に 関 する 法 規 上 の 制 限 、そして 文化 遺 産 保 護 の 理 念 と 方 法 論 の 違 いである。 今 回 の 場 合 、 国際 協 力 を 行 ったいずれの 国 も、これらを 克 服 してより 積 極的 な 協 力 活 動 を 行 うための 準 備 が 出 来 ていなかったといえる。5-2 最 後 に、 今 回 の 調 査 をもとにした 提 言 を 行 っておく。確 固 たる 体 制 の 確 立 のために 何 をなすか調 査 対 象 国 である 中 華 人 民 共 和 国 は、 言 うまでもなく1949 年 に 建 国 された 社 会 主 義 国 家 であり、 改 革 開 放 政 策 の推 進 によって、 近 年 その 社 会 情 勢 が 急 激 に 変 化 しているとはいえ、 国 家 体 制 の 基 本 は 我 が 国 のそれと 大 きく 異 なっている。 本 報 告 の 冒 頭 、 今 回 の 調 査 における 目 的 の 一 つとして「これからも 起 こり 得 る 災 害 に 対 して、どのような 体 制を 構 築 すべきなのか」というテーマを 挙 げたが、 今 回 四 川省 で 見 た、 文 物 管 理 部 門 が 縦 の 系 統 で 地 震 発 生 直 後 の 文 化遺 産 被 災 状 況 の 把 握 のみならず、 所 属 する 人 員 の 安 否 の 確認 、さらには 衣 食 住 におよぶ 物 資 の 供 給 までを 行 うというシステムは、 明 らかにこの 国 の 社 会 体 制 の 特 質 を 現 すもので、 我 が 国 において 直 接 これを 導 入 することは 困 難 があるようにも 見 える。しかし、 地 震 対 策 と 言 えば 免 震 、 耐 震 構造 の 強 化 などハード 面 での 改 善 に 重 きが 置 かれる 傾 向 があるのに 対 して、 災 害 時 に 人 心 を 一 本 のラインによって 強 力 に 牽引 し、 結 果 として 迅 速 な 被 災 状 況 の 把 握 と 救 済 活 動 のための人 員 配 備 を 含 む 体 制 作 りをも 可 能 にするこのシステムについては、 国 家 体 制 の 違 いに 拘 泥 することなく、 参 考 とすべき 要素 があると 考 えられる。その 場 合 に 我 が 国 の 体 制 に 照 らして考 慮 すべき 事 柄 として 次 の 4 点 を 挙 げておく。・ 各 地 からより 上 位 の 文 化 財 保 護 担 当 部 門 に 対 する 連 絡 系 統の 確 立・ 上 位 機 関 から 地 方 機 関 に 対 する 指 揮 系 統 の 明 確 化・ 迅 速 な 行 動 を 担 保 する 経 費 拠 出・ 災 害 時 に 迅 速 に 行 動 を 開 始 しうる 国 家 レベルでの 専 門 機関 、 専 門 家 等 連 絡 系 統 の 確 立中 国 の 専 門 家 たちは、 近 年 の 経 済 開 発 、 都 市 開 発 による 建設 工 事 にともなう 大 量 の 文 化 遺 産 出 土 や、 世 界 遺 産 という 新しい 概 念 の 導 入 とその 活 用 という 新 しいテーマに 対 応 するため、 日 常 的 に 文 化 遺 産 保 護 の 理 念 や 方 法 論 、 技 術 開 発 等 の 問題 についての 議 論 を 行 っている。この 点 は、 日 本 の 専 門 家 よりもはるかに 熱 心 な 状 態 にある。 上 意 下 達 が 明 確 にある 社 会体 制 の 特 質 は、 上 位 者 が 文 化 遺 産 保 護 のための 確 固 たる 理 念を 持 ち、それを 従 事 者 に 対 して 語 ることを 重 要 な 責 任 としているが、このシステムは 震 災 発 生 時 など 被 害 によって 萎 えかける 人 心 をまとめ、 強 力 に 統 率 していく 必 要 のある 場 合 に、有 効 な 機 能 を 果 たす。 文 化 遺 産 の 価 値 やその 保 護 の 意 味 について 語 る、という 日 常 の 営 みがこのシステムを 確 固 たるものにしている。 文 化 遺 産 は 貴 重 だ。この 自 明 の 前 提 のもと 文 化遺 産 について 語 り 合 うことを 忘 れる、そういうことのないよう、 我 々は 努 めるべきである。日 常 的 な 交 流 の 活 発 化調 査 のもう 一 つの 目 的 として、「 外 国 で 災 害 が 発 生 したとき、 我 々にはどのような 協 力 ・ 支 援 が 可 能 なのか」ということを 挙 げた。 今 回 の 5.12 四 川 大 地 震 においては、 外 国 からの 働 きかけは 意 外 に 少 ない 結 果 に 終 わったが、フランスが行 った 20 世 紀 初 頭 にフランス 人 が 建 てた 修 道 院 の 復 興 建 築計 画 に 対 するアドバイス、 日 本 が 行 った 文 化 遺 産 救 済 復 興 のための 技 術 的 問 題 を 話 し 合 うワークショップの 開 催 という 二つの 成 果 は、いずれもこのようにしっかりとした 体 制 と 経 済的 な 対 応 が 可 能 な 国 家 に 対 する 支 援 のあり 方 として、 示 唆 に富 むものとなった。しかし、 反 面 において 日 本 のように 隣 国 に 位 置 し、 木 造 建造 物 の 伝 統 など、 本 来 は 中 国 に 学 び 今 日 まで 継 続 してきた 文化 遺 産 を 有 する 国 でありながら、 現 在 の 木 造 建 造 物 の 保 護 理念 と 技 術 論 において 大 きな 隔 たりを 持 っている 状 況 では、こちらが 望 んでもその 保 護 修 復 工 程 そのものへは 参 入 のしようがない、ということも 明 らかになっている。もちろん、 中 国側 はその 違 いを 盾 に、 日 本 との 交 流 を 拒 絶 しているのではな19


第 二 章 各 国 調 査い。むしろ 保 護 理 念 の 違 い、 方 法 論 の 違 いの 中 に、 中 国 に 取り 入 れるべきことがないか。 専 門 家 の 視 線 は 冷 静 にそこへ 向けられている。 都 江 堰 の 修 復 設 計 を 担 当 としている 清 華 大 学が、2009 年 2 月 のワークショップの 成 果 を 評 価 し、 日 本 との 研 究 的 側 面 からの 交 流 を 求 めてきていることなどは、その現 れと 見 ることができる。日 中 間 の 文 化 交 流 は 国 交 正 常 化 後 すでに 頻 繁 に 行 われているが、 実 際 には 真 の 意 味 で 専 門 家 同 士 が 技 術 論 をたたかわし、理 念 を 論 じる 会 議 は、まだそれほど 多 く 行 われていない。ここにもまた、 日 常 の 日 中 の 距 離 を 越 えた 議 論 が 必 要 となる。それによって、 互 いに 学 び、 互 いに 研 鑽 することが 実 現 すれば、 交 流 による 新 たな 文 化 の 創 造 へとつながることが 期 待 できる。 震 災 という 不 幸 な 出 来 事 も、ひとつの 重 要 な 契 機 となるはずである。この 点 は 中 国 だけではなく、 広 く 諸 外 国 について 当 てはめることが 可 能 である。 平 常 時 から 相 手 国 の 法 に 定 められた 文化 遺 産 保 護 の 手 順 を 熟 知 していることに 加 え、その 修 復 の 理念 や 技 術 をも 熟 知 し、 有 事 の 際 に 相 手 国 のしかるべき 関 係 者と 連 携 をはかりながら 修 復 プロジェクトを 立 案 できるような専 門 家 集 団 がいれば、 相 手 国 に 大 きな 災 害 が 起 きたとき、あるいは 我 が 国 に 大 きな 災 害 が 発 生 したとき、 専 門 家 同 士 の 速やかな 連 絡 が 行 われ、そこから 具 体 的 な 修 復 活 動 を 伴 うような 文 化 遺 産 国 際 協 力 へと 展 開 していくことが 可 能 だからである。世 界 遺 産 の 都 江 堰 や 青 城 山 などを 含 む 都 江 堰 市 内 の 文 化 財 の 直接 的 な 維 持 ・ 管 理 を 行 っている。スタッフは 現 在 107 名 で、 考古 や 歴 史 、 言 語 などを 専 門 とする 専 門 職 だけでなく、 施 設 の 防災 安 全 管 理 を 担 当 する 部 門 のスタッフも 含 まれる。また、これとは 別 に、 文 物 保 護 単 位 内 の 運 営 ・ 管 理 や 観 光 整 備 を 担 当 する管 理 局 があり、500 人 以 上 のスタッフが 在 籍 。 文 物 局 と 連 携 しながら 保 護 単 位 の 観 光 対 策 や 維 持 管 理 を 行 っている。7四 川 省 成 都 市 の 文 化 財 保 護 を 管 轄 する 組 織 。 成 都 市 配 下 にある市 や 県 の 文 物 局 の 監 督 を 行 っている。スタッフは 現 在 22 名 。8陝 西 省 の 文 化 財 行 政 を 担 う 機 関 。 主 に 陝 西 省 内 の 市 ・ 県 に 位 置する 文 化 局 、 文 物 局 の 指 導 などを 行 っている。1笹 田 政 克 : 2008 年 四 川 大 地 震 の 地 質 学 的 背 景 , 応 用 地 質 技 術 年報 (28), 1~14, 20082この 考 え 方 は、 文 化 財 指 定 されていない 歴 史 的 建 造 物 にも 適 用される。3中 国 では、 日 本 で 言 う 文 化 財 を「 文 物 」といい、「 文 物 保 護 単 位 」は、文 化 的 価 値 を 有 する 有 形 の 文 化 遺 産 をさす。この 中 で、 国 宝 級 に当 たるものが「 全 国 重 点 文 物 保 護 単 位 」である。ただし、 近 年 「 世界 遺 産 」の 概 念 が 導 入 され、とくに 世 界 遺 産 予 備 リスト、さらにそれに 備 えるための 中 国 文 化 遺 産 リストが 作 られるなど、 急 速 に「 文 化 遺 産 」の 概 念 が 取 り 入 れられつつある。 指 定 文 化 財 に 対 しては 変 わらず「 文 物 」の 文 字 を 使 うが、 例 えば 中 国 国 家 文 物 局 の 英語 名 称 は Cultural Heritage に 変 更 になったし、 中 国 文 物 研 究 所 ( 東京 ・ 奈 良 文 化 財 研 究 所 に 相 当 )は 研 究 院 へ 昇 格 するに 際 して 中 国文 化 遺 産 研 究 院 と 名 称 を 変 更 している。この 点 の 使 い 分 けに 混 乱があることは 日 本 と 同 様 である。4国 家 文 物 局 の 公 式 ウ ェ ブ サ イ ト http://www.sach.gov.cn/tabid/294/InfoID/9036/Default.aspx に 被 害 状 況 の 一 部 が 掲 載 されている。5四 川 省 の 文 化 財 行 政 を 担 う 機 関 。スタッフは 15 名 、 主 に 四 川省 内 の 市 ・ 県 に 位 置 する 文 化 局 、 文 物 局 の 指 導 などを 行 っている。6四 川 省 成 都 市 に 属 する 都 江 堰 市 の 文 化 財 保 護 を 管 轄 する 文 物 局 。20


第 二 章 各 国 調 査2. タイ1. 1-1 文 化 遺 産 は 人 類 共 通 の 遺 産 であり、これを 保 護 し 後 世 に伝 えることは 現 在 生 きているわれわれの 責 務 である。しかし、これまで 多 くの 文 化 遺 産 が、 火 災 や 盗 難 、 戦 争 などの人 為 災 害 や、 台 風 ・ 地 震 などの 自 然 災 害 によって 毀 損 され、失 われてきた。 特 に、その 発 生 を 人 間 の 努 力 では 防 ぎ 得 ない 自 然 災 害 を 考 えるとき、あらゆる 文 化 遺 産 に 対 して 最 善の 方 策 を 施 すことは 理 想 ではあるが、 防 災 にあてることのできる 予 算 ・ 人 員 は 限 られており、 公 的 機 関 による 総 合 的な 文 化 財 防 災 を 考 える 上 では、このような 限 られた 資 源 を効 率 的 に 配 分 することが 不 可 欠 である。さらに、 災 害 発 生直 後 には 人 命 救 助 やインフラストラクチャの 復 旧 が 最 優 先課 題 であり、 文 化 遺 産 の 救 援 をこれらと 同 様 に 早 急 に 実 施することは、 人 員 配 置 の 面 でも、また 被 災 者 の 心 理 を 考 慮しても 不 可 能 であって、 災 害 発 生 時 の 対 応 を 最 小 限 にできるような「 防 災 」という 観 点 からの 対 応 が 求 められる。この 面 で、 自 然 災 害 が 多 く 発 生 する 日 本 の 経 験 を 共 有 することに 対 する 諸 外 国 からの 期 待 は 大 きいといえる。今 回 、 私 どものグループでは、 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムの 委 託 により、タイでの 被 災 文 化 財 復 旧 に 関 する 調査 を 実 施 した。 東 京 文 化 財 研 究 所 は、 当 該 国 の 文 化 遺 産 保護 を 主 管 する 国 の 組 織 であるタイ 文 化 省 芸 術 局 と 1970 年代 から 研 究 者 同 士 の 交 流 を 行 っており、1992 年 以 降 は 組織 同 士 で 合 意 書 を 締 結 し、 文 化 遺 産 の 保 存 に 関 する 共 同 研究 をタイおよび 日 本 をフィールドに 実 施 している。また、2009 年 1 月 には、 芸 術 局 との 共 催 により「Expert Meetingon Cultural Heritage: Restoration and conservation of immovableheritage damaged by natural disasters」をバンコクで 開 催 し、タイを 含 む 東 南 アジア 各 国 の 文 化 遺 産 への 災 害 時 の 対 応 について 情 報 共 有 を 開 始 している。タイでは、 雨 季 の 大 雨 や 台 風 による 水 害 が 頻 繁 に 発 生 することが 知 られているが、 北 部 地 域 では 歴 史 的 に 文 化 遺 産の 地 震 被 害 が 発 生 している。ここでは、チェンライのチェンセーンに 所 在 するチョームキティ・パゴダでの 2007 年5 月 の 地 震 被 害 をケーススタディとし、 芸 術 局 を 中 心 とした 公 的 機 関 の 災 害 対 応 と、 実 際 の 被 害 および 復 旧 について、聞 き 取 り 調 査 と 現 地 調 査 を 実 施 した。また、これらの 調 査を 通 じて、タイが 当 該 分 野 で 日 本 に 期 待 する 点 についても検 討 した。1-2 調 査 は、 平 成 21 年 7 月 ~ 11 月 にかけて 3 回 実 施 した。 最初 の 2 回 は 当 研 究 所 のプロジェクト 経 費 による 東 南 アジアでの 調 査 の 機 会 も 利 用 し、バンコクでの 聞 き 取 り 調 査 、 資 料 収集 および 打 ち 合 わせを 実 施 した。11 月 下 旬 には、 被 災 文 化遺 産 に 関 する 現 地 調 査 と 現 地 の 地 方 出 先 機 関 での 聞 き 取 り 調査 を 行 った。これとは 別 に、プロジェクト 経 費 による 東 南 アジア 調 査 の 際 に、6 月 初 旬 に 事 前 打 ち 合 わせ、12 月 中 旬 には事 実 関 係 確 認 のための 打 ち 合 わせを 行 った。 日 程 と 訪 問 先 を下 記 の 表 および 図 1、 写 真 1 に 示 す。第 1 回 調 査 ( 平 成 21 年 7 月 )調 査 月 日訪 問 先 ・ 調 査 内 容面 会 先 、 現 地 対 応 者7 月 29 日バンコクタイ 文 化 省 芸 術 局 考 古 部 (Office ofArchaeology, Fine Arts Department(FAD), Ministry of Culture)調 査 に 関 する 説 明 、 手 続 きに 関 する打 ち 合 わせMr. Tharapong Surischat(Director, Office ofArchaeology, Fine ArtsDepartment)同 上聞 き 取 り 調 査 ( 文 化 遺 産 GISデータベース)Mr. Sitthichai Pooddee(Archaeologist)Ms. Wirayar Chamnanpol(Computer technicalofficer)7 月 30 日バンコクタイ 文 化 省 芸 術 局 考 古 部聞 き 取 り 調 査 (ウェブベースの 文 化遺 産 データベース)Ms. Wirayar Chamnanpol同 上聞 き 取 り 調 査 (ケーススタディ2 件 (チョームキティ・パゴダ、ワット・プラ・タート・ドイ・ステープ)、一 般 的 な 情 報 の 流 れ、 修 理 の 手 続 きの 進 め 方 、 予 算 等 )Mr. Sudchai Phansuwan(Civil engineer)、Ms.Manatchaya Wajvisoot(Architect)、Mr. SurayootWiriyadamrong (Architect)、Mr. Patiwat Tul-on(Architect)第 2 回 調 査 ( 平 成 21 年 9 月 )調 査 月 日訪 問 先 ・ 調 査 内 容面 会 先 、 現 地 対 応 者9 月 17 日バンコクMs. Manatchayaタイ 文 化 省 芸 術 局 考 古 部Wajvisoot前 回 調 査 の 事 実 確 認 、 次 回 現 地 調 査に 関 する 打 ち 合 わせ9 月 18 日バンコクMs. Manatchaya天 然 資 源 環 境 省 鉱 物 資 源 局Wajvisoot(Department of Mineral Resources,Ministry of Natural Resources andEnvironment)資 料 収 集21


第 二 章 各 国 調 査第 3 回 調 査 ( 平 成 21 年 11 月 )補 足 調 査 ( 平 成 21 年 12 月 )* 東 文 研 経 費 による調 査 月 日訪 問 先 ・ 調 査 内 容面 会 先 、 現 地 対 応 者調 査 月 日訪 問 先 ・ 調 査 内 容面 会 先 、 現 地 対 応 者11 月 22 日11 月 23 日チェンセーンチョームキティ・パゴダ(ChomkittiPagoda)現 地 調 査 ( 被 害 状 況 の 確 認 および 当時 の 状 況 についての 聞 き 取 り、 常 時微 動 計 測 )チェンマイワット・プラ・タート・ドイ・ステープ(Wat Pra That Doi Suthep)現 地 調 査 ( 常 時 微 動 計 測 )Mr. Sudchai Phansuwan、Ms. ManatchayaWajvisootMr. Sudchai Phansuwan、Ms. ManatchayaWajvisoot12 月 18 日バンコクタイ 文 化 省 芸 術 局 考 古 部調 査 記 録 の 事 実 確 認天 然 資 源 環 境 省 鉱 物 資 源 局防 災 ( 地 滑 り)に 関 する 情 報 収 集Ms. ManatchayaWajvisoot、Mr. VasuPoshyanandanaMr. Somjai Yensabai11 月 24 日チェンマイチェンマイ 第 8 芸 術 地 方 事 務 所 (8thRegional Office of Fine Arts, ChiangMai)聞 き 取 り 調 査 ( 地 方 事 務 所 の 対 応 について)Mr. Sahawat Maenna(Director, 8th RegionalOffice of Fine Arts)Mr. Sudchai Phansuwan、Ms. ManatchayaWajvisoot1-3 調 査 メンバーは 下 記 の 通 りである。11 月 25 日チェンマイWat Chedi Luang 視 察 ( 過 去 の 地 震 で頂 部 が 崩 れている)Wat Phra Singh 視 察 ( 地 震 について 記した 碑 文 がパゴダの 頂 部 に 埋 め 込 まれている)チェンマイWiang Kum Kam 視 察( 洪 水 や 地 下 水 位 上 昇 の 影 響 を 受 けている)Mr. Sudchai Phansuwan、Ms. ManatchayaWajvisootMr. Sudchai Phansuwan、Ms. ManatchayaWajvisoot氏 名二 神中 村原 本葉 子豊知 実所 属東 京 文 化 財 研 究 所 文 化 遺 産 国 際 協 力 センター・ 主 任 研 究 員 ( 第 1回 ~3 回 )東 京 工 業 大 学 大 学 院 ・ 連 携 教 授 ( 第 3 回 )東 京 文 化 財 研 究 所 文 化 遺 産 国 際 協 力 センター・ 特 別 研 究 員文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム( 第 1 回 、3 回 )チェンマイ第 8 芸 術 地 方 事 務 所 、チェンマイ 博 物館資 料 収 集Mr. Sudchai Phansuwan、Ms. ManatchayaWajvisoot図 1-1-1: 訪 問 先 地 図 ( 広 域 )22


第 二 章 各 国 調 査図 1-1-2: 訪 問 先 地 図 ( 詳 細 )23


第 二 章 各 国 調 査文 化 省 芸 術 局 (バンコク)チョームキティ・パゴダ(チェンセーン)ワット・チェディ・ルアン(チェンマイ)第 8 芸 術 地 方 事 務 所 (チェンマイ)ワット・プラ・シン(チェンマイ)ワット・プラ・タート・ドイ・ステープ(チェンマイ)写 真 1-1: 訪 問 先 写 真24


第 二 章 各 国 調 査2. 2-1 タイは 熱 帯 にあり、 総 面 積 は 513,115km 2 、 国 土 は 5°37ʼN - 20°27ʼ N、97°22 ʼE- 105°37ʼ E の 間 に 所 在 する。 人 口は 約 6500 万 人 で、 気 象 、 気 候 条 件 から、タイは 下 記 のように 75 の 県 (province、タイ 語 で Changwat)およびバンコク 都 が 北 部 、 東 北 部 、 中 部 、 東 部 および 南 部 の 5 つの 地 域に 区 分 される。2-1-1 タイの 気 候 は 南 西 および 北 東 モンスーンの 季 節 風 の 影 響 下にある。 南 西 モンスーン(5 月 中 旬 ~ 10 月 中 旬 )はインド洋 からの 湿 った 温 かい 空 気 を 運 び、 大 雨 を 降 らせる。この時 期 の 雨 は、モンスーンだけでなく 熱 帯 収 束 帯 (IntertropicalConvergence Zone (ITCZ))と 台 風 にも 起 因 する。 北 東 モンスーン(10 月 中 旬 ~ 2 月 中 旬 )は、 特 に 比 較 的 高 緯 度 の 北 部 や東 北 部 に 乾 いた 冷 たい 空 気 をもたらすが、 南 部 では、 北 東 モンスーンは 東 海 岸 に 大 雨 を 降 らせている。表 2-1:タイの 地 域 区 分表 2-1:タイの 地 域 区 分表 2-2:タイの 季 節 区 分地 域北 部東 北 部中 部東 部南 部特 徴15 県 ( Chiang Rai, Mae Hong Son, Chiang Mai, Phayao, Lamphun, Lampang,Phrae, Nan, Uttaradit, Phitsanulok, Sukhothai, Tak, Phichit, KamphaengPhet および Phetchabun)ほとんどの 地 域 は 山 地 で、いくつかの 主 要 河 川 の 源 流 となっている。 南 北に 走 る 山 脈 が 並 び、チェンマイやチェンライ、ランパーン、ナーンなどに近 いいくつかの 谷 で 区 切 られている。チェンマイにはタイの 最 高 峰 ( 海 抜2595m)のインタノン 山 (Doi Inthanon)もある。 東 北 部 との 東 側 の 境 は 中央 高 原 と 呼 ばれる。 西 側 の 山 脈 と 中 央 高 原 との 間 は 中 央 盆 地 である。19 県 (Nong Khai, Loei, Udon Thani, Nong Bua Lam Phu, Nakhon Phanom,Sakon Nakhon, Mukdahan, Khon Kaen, Kalasi n, Maha Sarakham, RoiEt, Chaiyaphum, Yasothon, Amnat Charoen, Ubon Ratchathani, Sri SaKet, Nakhon Ratchasima, Buri Ram および Surin)東 北 部 は 基 本 的 に 高 原 で、 東 北 高 原 と 呼 ばれている。 北 西 から 南 東 に 延 びるプーパン(Phu Phan) 山 脈 は、この 地 を 2 つの 盆 地 に 区 切 る。18 県 (Nakhon Sawan, Uthai Thani, Chai Nat, Sing Buri, Lop Buri, Ang Thong,Sara Buri, Suphan Buri, Ayutthaya, Pathum Thani, Kanchanaburi,Ratchaburi, Nakhon Pathom, Nonthaburi, Bangkok Metropolis, SamutPrakan, Samut Sakhon および Samut Songkhram)この 地 域 は 広 大 な 低 地 となっており、いくつかの 川 がチャオプラヤ(ChaoPhraya) 川 に 合 流 している。 北 部 では 西 部 山 脈 が 西 部 地 域 との 境 となっている。8 県 (Nakhon Nayok, Prachin Buri, Sra Kaeo, Chachoeng Sao, Chon Buri,Rayong, Chanthaburi および Trat)南 および 南 西 部 分 がシャム 湾 に 面 している。ほとんどの 地 域 が 平 原 と 谷 であるが、 北 部 、 中 部 および 東 部 に 小 さな 丘 がある。東 海 岸 :10 県 (Phetchaburi, Prachuap Khiri Khan, Chumphon, Surat Thani,Nakhon Si Thammarat, Pha tthalung, Songkhla, Pattani, Yalaおよび Narathiwat)西 海 岸 :6 県 (Ranong, Phang Nga, Krabi, Phuket, Trang および Satun)西 側 のアンダマン 海 と 東 側 の 南 シナ 海 に 挟 まれた 地 域 。 長 大 な 西 部 山 脈 がこの 地 域 の 北 部 、 南 部 にまで 延 びる。プーケット(Phuket) 山 脈 が 西 海 岸 、ナコン・シー・タマラート(Nakhon Si Thammarat) 山 脈 が 中 部 にあり、 南側 の 脊 梁 山 脈 となっている。表 2-2:タイの 季 節 区 分季 節 期 間 概 要雨 季 5 月 中 旬 ~10 月 中 旬 全 土 で 雨 が 多 い。 北 東 モンスーンが 年 末 まで 多 雨 をもたらす南 部 の 東 海 岸 を 除 き、 最 も 雨 が 多 いのは 8 月 から 9 月 。冬 季 10 月 中 旬 ~2 月 中 旬 気 候 が 穏 やかな 時 期 で、12 月 ~1 月 は 北 部 では 寒 い。10 月 ~11 月 は、タイ 南 部 東 海 岸 で 雨 が 多 い。夏 季 2 月 中 旬 ~5 月 中 旬 北 東 モンスーンと 南 西 モンスーンの 端 境 期 。4 月 が 最 も 暑 い。多 くの 地 域 では 年 間 降 水 量 は 1200 ~ 1600mm である。 東部 の Trat、 南 部 西 海 岸 の Ranong など 季 節 風 の 風 上 にあたる地 域 では、4000mm を 超 えるところもある。 中 部 の 盆 地 や 南部 の 最 上 部 では 1200mm 未 満 の 場 所 もある。地 域 別 、 季 節 別 の 降 水 量 を 下 記 に 示 す。表 2-3 : 地 域 別 の 季 節 降 水 量 ( 単 位 : mm)表 2-3: 地 域 別 の 季 節 降 水 量 ( 単 位 :mm)地 域 冬 季 夏 季 雨 季 年 間 降 水 ( 日 )北 部 105.5 182.5 952.1 123東 北 部 71.9 214.2 1,085.8 117中 部 124.4 187.1 903.3 113東 部 187.9 250.9 1,417.6 131南 部東 海 岸 759.3 249.6 707.3 148西 海 岸 445.9 383.7 1,895.7 1761971 年 ~2000 年 の 平 均 (タイ 気 象 局 による)300タイにおける 主 要 な 自 然 災 害 は、 雨 季 の 洪 水 による 被 害およびそれに 伴 う 崖 崩 れ、 熱 帯 低 気 圧 による 大 雨 および 強風 、 落 雷 などの 気 象 に 関 連 する 災 害 であり、 程 度 の 差 はあるものの、ほぼ 毎 年 発 生 しているといえる。 地 震 については、 北 部 および 西 部 のミャンマーやラオスとの 国 境 近 辺 の地 域 に 活 断 層 が 存 在 することから、これらの 地 域 では 他 の地 域 に 比 べて 地 震 危 険 度 が 高 くなっている( 図 2-4)。2004年 12 月 には、インドネシアのスマトラ 島 沖 を 震 源 とするプレート 間 地 震 により、 南 部 地 域 で 津 波 の 被 害 が 発 生 している。242.7 252.7 250187.5 189.7 201.6 200184150103.510086.640.7465016.7 20.30Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct Nov Dec図 2-1:1971 年 ~ 2000 年 の 平 均 月 別 降 水 量 (タイ 気 象 局 による)25


第 二 章 各 国 調 査このように、 年 間 降 水 量 が 全 ての 地 域 で 日 本 に 比 べて 多 いというわけではない。しかし、 乾 季 と 雨 季 の 別 が 明 瞭 であり、降 雨 が 雨 季 に 集 中 していることから、 雨 季 にはタイ 各 地 で 洪水 が 発 生 している。熱 帯 低 気 圧 (tropical cyclone)は 通 常 、タイでは 西 側 の北 太 平 洋 または 南 シナ 海 から 来 る。 内 陸 部 や 山 脈 地 帯 では、 熱 帯 低 気 圧 (tropical depression、 最 大 風 速 17.2m/s 未満 )の 影 響 を 受 けるが、 南 部 では 台 風 (tropical storm( 最 大風 速 17.2m/s 以 上 32.7m/s 未 満 )、および typhoon( 最 大 風 速32.7m/s 以 上 ))の 危 険 が 大 きい。 熱 帯 低 気 圧 は、 年 平 均 3 ~4 回 タイに 上 陸 する。 台 風 の 季 節 は 4 月 から 始 まり、 特 に 9 月 、10 月 の 上 陸 が 多 い。1 月 から 3 月 の 上 陸 の 記 録 はない。写 真 2-4 : タイにおける 54 年 間 (1951-2004) の 熱 帯 低 気 圧 の 上 陸 頻 度表 2-4:タイにおける 54 年 間 (1951-2004)の 熱 帯 低 気 圧 の 上 陸 頻 度地 域 1 月 2 月 3 月 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 合 計北 部 - - - - 5 2 9 17 23 15 1 - 72東 北 部 - - - - 1 6 4 17 28 22 4 - 82中 部 - - - - 2 1 1 - 7 9 2 - 22東 部 - - - - 1 1 1 - 3 12 2 - 20南 部 - - - 1 - - - - 3 14 24 8 50(タイ 気 象 局 による)洪 水 は 毎 年 タイ 各 地 で 発 生 しており、 多 額 の 被 害 をもたらしている。表 2-5 表 : 2-5:2001 2001 年 ~年 ~2007 年 の 年 洪 の 水 洪 被 水 害 被 害年 回 数 犠 牲 者 数 被 災 者 数 被 害 額 ( 米 ドル)2007 13(54 県 ) 36 2,326,179 48,224,7422006 6(-) 446 6,050,674 475,069,1032005 12(57 県 ) 75 2,874,673 1,692,2382004 6(48 県 ) 27 - 117,502,5002003 17(66 県 ) 53 - 51,652,0002002 -(72 県 ) 216 - 334,632,7502001 14(60 県 ) 244 - 91,657,0002000 12(62 県 ) 120 - 250,823,500(タイ 防 災 局 による。2004 年 以 前 の 被 害 額 は 40 バーツ=1 米 ドルとして 計 算 )2-1-2 タイでは、 気 象 局 が 1912 年 以 来 地 震 の 観 測 を 行 っている。この 記 録 を 見 ると、タイ 国 内 を 震 源 とするマグニチュード 6.5 以 上 の 地 震 が 発 生 したとの 記 録 はなく( 表 2-6、 図2-2)、この 700 年 間 の 地 表 変 位 に 関 する 記 録 はない。そのため、 一 般 にタイはテクトニクス 的 に 活 発 な 地 域 とは 考 えられておらず、 想 定 される 震 度 も 最 大 MM VIII( 気 象 庁 震度 階 で 震 度 6 弱 ) 程 度 と、 日 本 に 比 べて 高 いものではない( 図 2-4)。しかし、この 20 年 ほどの 間 に 行 われた 調 査 によって、 完 新 世 の 大 きな 地 表 変 位 が 確 認 されている。 比 較 的 大規 模 な、 中 には 長 さが 100km を 超 すような 活 断 層 がタイ 北部 や 西 部 地 域 に 分 布 しており( 図 2-2、 図 2-3)、アメリカ地 質 調 査 所 の 地 震 危 険 度 に 関 する 研 究 によれば(Appendix1)、 活 動 間 隔 が 数 千 年 ~ 数 万 年 のオーダーの、M7 クラスの 地 震 を 発 生 させる 可 能 性 のある 断 層 も 存 在 している。このことから、タイでは 今 後 、これまでに 記 録 されていないような 大 きな 地 震 が 発 生 する 可 能 性 もあるということができる。さらに、アンダマン 海 からインドネシアのスマトラ 島 にかけてのプレート 境 界 で 発 生 するプレート 間 地 震 の 影 響 を受 ける。2004 年 12 月 26 日 に 発 生 した M9.0 のインド 洋 地震 では、 南 部 のプーケット 島 やカオラックなどが 津 波 により 大 きな 被 害 を 受 け、タイでの 犠 牲 者 は 5000 人 余 りであった( 図 2-5)。碑 文 などの 年 代 記 には 被 害 地 震 の 記 録 が 残 されている。たとえば、チェンマイのワット・チェディ・ルアン(WatChedi Luang)のパゴダはもともとの 高 さが 86m であったが、1545 年 に 発 生 した 地 震 により 上 部 が 崩 壊 して 60m になったという。また、 本 報 告 書 のケーススタディを 実 施 したチョームキティ・パゴダのあるチェンセーンに 近 いノー・ヨット( 綴 り 不 明 )では、460 年 に 地 震 が 発 生 し、 水 中 に町 が 沈 んだという 伝 説 がある。 近 年 、 町 が 沈 んだとされるチェンセーン 湖 で 水 中 考 古 学 的 調 査 を 行 ったところ、 遺 跡は 発 見 されなかったものの、 堆 積 層 の 調 査 からは 文 化 層 の存 在 が 示 唆 されたとのことである( 第 8 芸 術 地 方 事 務 所 のSahawat 氏 による)。写 真 2-1:タイの 洪 水 (スコータイ、2002 年 9 月 )26


第 二 章 各 国 調 査表 2-6-1:タイで 感 じられた 地 震 (マグニチュード 5 以 上 *)表 2-6-2:タイで 感 じられた 地 震 (マグニチュード 5 以 上 **)日 / 月 / 年( 現 地 時 刻)23 May 1922(09:24)5 May 1930(20:46)4 Dec 1930(01:52)16 May 1933(08:12)22 Sep. 1965(18:25)14 Feb. 1967(08:36)12 Apr. 1967(11:52)28 Apr. 1971(22:32)17 Feb. 1975(10:18)2 Aug. 1978(14:46)4 Apr. 1983(16:24)15 Apr. 1983(16:24)震 源Burma21.0 N, 97.0 EBurma17.0 N, 96.5 EBurma18.2 N, 96.5 ENorthern SumatraIslands7.0 N, 96.5 EBurma20.75 N, 99.26 EAndaman Sea13.7 N, 96.5 ENorthern SumatraIslands5.16 N, 96.31 EBurma-China Border22.98, 101.02Ta Song Yang district,Tak17.6, 97.9Thai-Laos Border20.5, 100.7Northern SumatraIslands5.7, 94.7Si Sawat District,Kanchanaburi14.95, 99.14マグニチュード7.97.37.36.55.35.66.15.65.65.16.65.3揺 れを 感 じた 地 域 ( 改 正 メルカリ震 度 階 )Bangkok (IV)Northern and Central parts, Bangkok(V)Northern and Central parts, Bangkok(V)Surat Thani, Stoon, Phangnga (V)Chiang Mai, Chiang Rai, Lampang,Lamphun, Mae Hon Son (V)Bangkok (IV)Sonkla, Stoon, Phuket (V)Chiang Mai (V)Northern and Central Parts (V-VI)Chiang Rai (IV)Bangkok (IV)Kanchanaburi and Bangkok時 刻13 Dec 2006(00:02)21 Dec 1995(23:30)9 Dec 1995(20:26)11 Sep 1994(8:31)20 Jan 199903:5918 Jul 200216:502 Nov 200208:2622 Jan 200310:0014 Sep 2003震 源Mae Rim, ChiangMai18.91N, 98.93 EPhrao, Chiang Mai19.7 N, 99 ERongkwang, Phrae18.2 N, 99.8 ESaruai, Phan19.46 N, 99.6 ELaos, Hongsawadi,Saiburi19.90 N 100.78 EMyanmar20.1 N 97.5 ESouth Sumatra3.02 N 96.18 ENear Off-shoreSumatra5.9 N 95.6 ESumatraNorth Sumatraareaマグニチュード5.15.25.15.15.95.07.57.05.0イベント・ 被 害Felt shake in Maerim, Sansai,Chiang Mai and Chiang RaiFelt shake in Muang, Chiang Mai,Chiang Rai, Lamphun, Lampang,Phayao, Mae Hong Son. Hadslignt damage near the epicenter. 1people dead.Felt shake in Chiang Mai, ChiangRai, Lamphun, Lampang, Phayao,Phrae, Uttaradit, Nan. Slightlydamaged in Phrae.Felt shake in Saruai, Phan, ChiangRai, buildings had slignt damagenear epicenter like hospital, school,temple in Phan, Chiang Rai.Felt shake in Muang, Tawangpha,Thungchang, Nan, Phrae, Phyao,Chiang Rai, slightly damaged inNorthern area, Nan and Phrae.Felt shake in Chiang RaiFelt shake in Hatyai, SonkhlaFelt shake at upper floor in somehigh rise buildings in Bahgkok andalmost all part of southern area.Phuket22 Apr. 1983(07:38)22 Apr. 1983(10:22)24 Apr. 1984(05:30)Sj Sawat District,Kanchanaburi14.95, 99.07Si Sawat District,Kanchanaburi14.96, 99.06Burma-China Border22.1, 99.15.95.25.9Western, Northern and Central parts(V-VII)Kanchanaburi and BangkokChiang Rai (IV)18 Sep 2003Laos-Myanmarborderfrom themeasurement ofEarthquakeDepartment, 130km northeast ofChiang Mai20.50 N 100.9 E5.5Chiang Rai15 July 1985(17:39)6 Aug. 1988(07:36)BurmaBurma-India Border25.1, 95.15.06.8 Mb7.2 MsChiang Rai (IV)Bangkok (III) (in high rise buildings)22 Sep 200301:21Myanmar345 km north ofYangon19.91 N 95.75 E6.7Chiang Dao, Chiang Mai, highrisebuildings in Bangkok wereslightly damaged.6 Nov. 1988(20:03)1 Mar. 1989(10:25)8 Apr 1989(04:40)Burma-China22.79, 99.61Laos21.73, 97.74Laos20.58, 100.486.1 Mb7.3 Ms5.1Ml5.2Chiang Rai, Chiang Mai & Bangkok(in high-rise buildings) (V-VI)Upper northern part (V)Chiang Rai (V)** 鉱 物 資 源 局 の ウ ェ ブ サ イ ト(http://www.dmr.go.th/main.php?filename=Thaifelt、 お よ び http://www.dmr.go.th/dmr_data/geohazard/earthquake/Homep/Thaifelt.htm) の デ ー タ か ら、 マ グ ニチュード 5 以 上 の 地 震 を 抽 出27 Aug.1989(22:21)Burma-Thai Border20.30 N, 98.77 E4.4 Mb5.0 MlUpper northern part (V)29 Sep. 1989(04:52)Burma-Thai Border20.29 N, 98.77 E5.4 Mb5.5 MlUpper northern part (VI)1 Oct. 1989(01:19)Burma- Thai Border20.27 N, 98.85 E5.3 Mb6.0 MlUpper northern part: Minor damage innon-structural brick walls in sometaller buildings (VI)9 Jan. 1990(22:35)Andaman sea11.59 N, 95.02 E5.2 MbRanong15 Nov.1990(09:34)Northern Sumatra3.91 N, 97.46 E6.1 MbPhuket, Songkla and Bangkok (inhigh-rise buildings)5 Jan. 1991(21:57)Burma23.61 N,95.90 E6.2 MbNorthern part and Bangkok (in highrisebuildings)1 April 1991(10:53)Burma15.65 N, 95.69 E6.5 MbBangkok (in high-rise buildings)12 June 1991(10:05)Andaman Sea14.85 N, 96.31 E5.0 MbBangkok (in high-rise buildings)23 April1992(21:18)Burma22.34 N, 98.84 E6.0 MlChiang Rai, Chiang Mai & Phayao15 June 1992(09:48)Burma23.98 N, 95.89 E5.7 MbBangkok (in high-rise buildings)28 Oct. 1992(14:02)Burma18.3 N, 96.8 E6.0 MlChiang Rai, Chiang Mai, Mae HongSon & Bangkok (in high-risebuildings)* Compiled by Sumalee Prachuab, Geophysical Sub-division,Meteorological Department27


第 二 章 各 国 調 査図 2-2:タイの 活 断 層 と 過 去 の 地 震 の 震 源 および 規 模 ( 鉱 物 資 源 局 による)28


第 二 章 各 国 調 査図 2-3:タイの 活 断 層 地 図 ( 鉱 物 資 源 局 による)図 2-4:タイの 地 震 危 険 度 地 図 ( 鉱 物 資 源 局 による)。 想 定 される 改正 メルカリ(MM) 震 度 により、4 段 階 にゾーンを 区 分 している。図 2-5:タイ 周 辺 で 発 生 した 過 去 のプレート 間 地 震 ( 鉱 物 資 源 局 による)29


第 二 章 各 国 調 査2-2 仏 暦 2504( 西 暦 1961) 年 古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び国 立 博 物 館 法 (Act on Ancient Monuments, Antiques, Objects ofArt and Nations Museums B.E. 2504 (1961))(Appendix 3) によれば、「「 古 代 記 念 物 」とは、その 年 代 、 建 築 上 の 特 性 又は 歴 史 的 証 拠 により 芸 術 、 歴 史 又 は 考 古 学 の 分 野 において有 益 な 不 動 産 を 意 味 し、 考 古 学 記 念 物 (archaeological sites)、史 跡 (historic sites) 及 び 歴 史 的 公 園 である 場 所 を 含 む。」とされる。 国 による 保 護 の 対 象 となる 登 録 記 念 物 (registeredmonuments)としては 2000 件 余 りが 登 録 されており、 今 のところ、 登 録 される 記 念 物 の 年 代 の 下 限 の 目 安 は 50 年 前 とされているが、その 基 準 については 再 検 討 中 とのことである。現 存 する 伝 統 建 築 の 約 95%が 寺 院 建 築 で、 地 域 により 異 なるが、おおむね 時 代 により、クメールおよびロッブリーの 時期 の 建 築 は 砂 岩 およびラテライトが 用 いられており、スコータイやアユタヤの 時 期 には 煉 瓦 およびラテライトが 用 いられている。スコータイ、アユタヤの 時 期 には、 表 面 を 覆 う 装 飾や 煉 瓦 の 目 地 として 漆 喰 が 使 われ、 装 飾 の 一 部 は 現 在 も 残 っている。 木 材 や 瓦 は 用 いられていたと 考 えられるが、ほとんどが 失 われている。より 新 しい 時 期 の 寺 院 については、 木 の部 材 や 瓦 、 壁 面 に 描 かれた 壁 画 などが 残 っている。このほか、 考 古 学 的 な 発 掘 調 査 により 集 落 址 や 墓 、 窯 址 が発 見 されており、また、 時 間 の 経 過 により 地 表 面 下 に 埋 まった 建 物 の 基 礎 部 分 の 発 掘 も 行 われている。世 界 遺 産 に 登 録 されている 文 化 遺 産 は 3 件 あり、 煉 瓦 やラテライトの 建 築 から 主 に 構 成 されるスコータイおよび周 辺 の 歴 史 都 市 (Historic Town of Sukhothai and AssociatedHistoric Towns (1991 年 登 録 ))、アユタヤおよび 周 辺 の 歴 史都 市 (Historic City of Ayutthaya and Associated Historic Towns(1991 年 登 録 ))および 先 史 時 代 の 集 落 址 バンチャン 遺 跡 (BanChiang Archaeological Site (1992 年 登 録 ))である。文 化 遺 産 の 自 然 災 害 による 被 災 の 原 因 として 主 なものは、雨 季 の 洪 水 による 浸 水 、 台 風 などの 強 風 や 地 滑 りによる 破 損 、必 ずしも 自 然 災 害 が 全 ての 原 因 ではないものの、 特 に 雨 季 の地 下 水 位 の 上 昇 による 浸 水 や、 発 掘 調 査 により 低 くなった 遺構 面 への 水 の 流 れ 込 みによる 浸 水 があげられる。 具 体 的 な 被害 としては、 浸 水 の 水 そのものによる 表 面 の 浸 食 や、 水 に 混じった 土 砂 や 樹 木 などによる 汚 れ・ 破 損 、 浸 水 後 に 湿 潤 状 態が 長 期 にわたって 継 続 することによるコケ 類 ・ 藻 類 の 発 生 に伴 う 汚 れや 生 物 劣 化 、 煉 瓦 や 漆 喰 、 修 復 材 料 として 用 いられたセメントの 成 分 の 溶 出 ・ 再 結 晶 による 塩 類 風 化 の 発 生 などがあげられる。チェンマイのウィアン・クム・カーム(WiangKum Kam) 遺 跡 では、 川 に 近 く、また 堆 積 物 に 覆 われていた 遺 構 を 発 掘 して 露 出 されているため、 地 表 面 より 低 い 遺 構面 への 水 の 流 れ 込 みや 地 下 約 2m という 比 較 的 高 い 地 下 水 位(Sahawat 氏 による)の 上 昇 により 浸 水 が 起 きている( 写 真2-2)。また、 世 界 遺 産 に 登 録 されているアユタヤ 国 立 歴 史 公園 は、 周 囲 を 川 に 囲 まれており、 洪 水 による 浸 水 が 頻 繁に 発 生 している。 写 真 のワット・チャイワタナラム(WatChaiwattanaram)では、2009 年 1 月 に 訪 れた 際 、 隣 接 する川 からの 水 の 浸 入 を 防 ぐためにコンクリートの 防 水 壁 を 設置 するとともに、 景 観 に 配 慮 して 盾 状 の 可 動 式 の 防 水 設 備を 設 置 しようとしていた( 写 真 2-3)。写 真 2-2-1:Ku Pa Dom、ウィアン・クム・カーム 遺 跡 (チェンマイ)。屋 根 は 漆 喰 の 遺 構 床 面 を 保 護 するための 覆 屋 。写 真 2-2-2:Ku Pa Dom、ウィアン・クム・カーム 遺 跡 。 雨 季 が 終 わって 間 もないため、 土 が 湿 ってぬかるんでいる。 浸 水 する 部 分 まで 覆 屋の 柱 が 変 色 し、 煉 瓦 の 遺 構 に 藻 類 が 繁 茂 するとともに、 浸 水 部 分 の 境界 付 近 で 白 華 が 観 察 される。写 真 2-3-1:ワット・チャイワタナラム(アユタヤ)30


第 二 章 各 国 調 査写 真 2-3-2:ワット・チャイワタナラム。 右 側 の 川 と 寺 院 のある 場 所との 標 高 差 が 少 ないことがわかる。また、 洪 水 対 策 として、ラテライトの 防 水 壁 を 構 築 している。写 真 2-3-5:ワット・チャイワタナラム。 盾 状 の 浸 水 防 止 設 備 。 可 動 式 で、また 平 常 時 にはたたんでおくことが 可 能 である。写 真 2-3-3:ワット・チャイワタナラム。 浸 水 防 止 のための 工 事 を 行 っている。写 真 2-3-4:ワット・チャイワタナラム。コンクリート 製 の 防 水 壁 。地 震 被 害 としては、 碑 文 の 年 代 記 (chronicle)の 記 録 や、現 存 する 建 築 にもその 痕 跡 が 示 されている。さきに 述 べたように、1545 年 の 地 震 でチェンマイのワット・チェディ・ルアンの 上 部 が 崩 壊 し、 修 理 を 経 た 現 在 でもその 痕 跡 を 見 ることができる( 写 真 2-4)。また、1801 年 には、ワット・プラ・タート・ドイ・ステープの 頂 部 の 傘 状 の 部 分 の 装 飾 が、 地 震により 落 下 したという 記 事 が、 植 物 の 葉 に 記 された 記 録 に 存在 している(Sahawat 氏 による)。文 化 遺 産 の 自 然 災 害 による 被 災 件 数 などを 含 めた 被 災 状 況については、 文 化 省 芸 術 局 の GIS データベースの 属 性 情 報として 被 災 履 歴 の 情 報 を 含 める 試 み( 後 述 )がなされているが、 現 在 のところまだ 本 格 的 には 実 現 されておらず、 統 計 情報 は 公 開 されていない。 特 に、 近 年 の 組 織 改 革 により、かつては 芸 術 局 考 古 部 の 下 にあった 地 方 事 務 所 (Regional Office)が 考 古 部 門 と 組 織 上 横 並 びになった( 図 3-8 の 組 織 図 参 照 )ことにより、 被 災 に 関 する 情 報 が 集 まらなくなったとのことで、 今 回 得 られたのは、2007 年 の 洪 水 による 被 災 情 報 のみである( 表 2-7)。 修 理 費 用 の 請 求 や 専 門 家 派 遣 の 必 要 があると 地 方 事 務 所 が 判 断 した 場 合 は、 地 方 事 務 所 から 芸 術 局 に情 報 がもたらされるが、そうでない 場 合 には、 被 災 情 報 は 地方 事 務 所 にとどまり、 芸 術 局 までは 伝 えられないのである。31


第 二 章 各 国 調 査写 真 2-4:ワット・チェディ・ルアン(チェンマイ)。 上 部 は 地 震 により 大 きく 崩 れているが、1990 年 ~ 1992 年 に 行 われた 修 理 の 際 にも、崩 壊 して 失 われた 部 分 は 復 元 しなかった。写 真 2-5:ポンペット 砦 (アユタヤ)。 洪 水 対 策 を 含 めた 修 理 を 実 施 している(2009 年 1 月 )。表 2-7-1:2007 年 に 洪 水 で 被 災 した 各 地 の 文 化 遺 産 の 一 覧文 化 省 芸 術 局 考 古 部 ( 一 部 訳 )表 2-7-1:2007 年 に 洪 水 で 被 災 した 各 地 の 文 化 遺 産 の 一 覧 文 化 省 芸 術 局 考 古 部 ( 一 部 訳 )場 所 名 称 割 り 当 てられた 予 算 (バーツ) 実 施 内 容職 員 等 への 機 材 ・ 消 耗 総 額手 当 品 ・ 役 務 費4,289,000 111,614,000 115,903,000考 古 部 ( 中 央 ) 150,000 21,832,000 21,982,0001 Pon-Petch Fort, Ayutthaya 150,000 21,832,000 21,982,000 砦 本 体 東 側 の 修 理景 観 の 整 備洪 水 防 止 システムの 整 備第 2 芸 術 地 方 事 務 所 (Suphanburi) 360,0002-11第 3 芸 術 地 方 事 務 所 (Ayutthaya) 1,630,000 13,675,000 15,305,00012-14アユタヤ 国 立 歴 史 公 園 1,050,000 38,521,000 39,571,00015-35スコータイ 国 立 歴 史 公 園 - 3,599,000 3,599,00036シーサッチャナライ 国 立 歴 史 公 園 16,000 1,484,000 1,500,00037第 7 芸 術 地 方 事 務 所 (Nan) 280,000 4,540,000 4,820,00038-40第 8 芸 術 地 方 事 務 所 (Chiang Mai) 619,000 9,081,000 9,700,00041第 11 芸 術 地 方 事 務 所 ( Ubon 184,000 2,336,000 2,520,000Ratchathani)4232


第 二 章 各 国 調 査表 2-7-2:2007 年 に 洪 水 で 被 災 した 各 地 の 文 化 遺 産 の 一 覧 文 化 省 芸 術 局 考 古 部 ( 原 文 )33


第 二 章 各 国 調 査34


35第 二 章 各 国 調 査


第 二 章 各 国 調 査36


第 二 章 各 国 調 査3. 3-1 3-1-1 3-1-1-1 文 化 遺 産 に 限 定 しないタイの 防 災 に 関 する 取 り 組 みについては、アジア 防 災 センターのウェブサイト 所 載 の「タイ国 別 報 告 書 2008 年 版 (Thailand Country Report 2008)」によくまとめられているので、 以 下 にこの 報 告 書 を 翻 訳 、まとめたものを 示 す。画 のガイドラインの 中 で 地 方 防 災 マネージメントプランを 策定 するなどが 主 な 役 割 といえる。(3) バンコク 都 防 災 委 員 会地 方 の 長 官 と 同 様 にバンコクの 首 長 も、バンコクにおける 災 害 の 防 止 と 緩 和 のための 責 任 者 であり、またバンコク、DDPM、 大 学 、 私 的 財 団 などを 含 めた 政 府 系 機 関 の 代 表 によって 構 成 される。 委 員 会 は 防 災 と 災 害 緩 和 計 画 のための 草 案 作成 を 担 っており、この 草 案 は 国 家 防 災 計 画 やその 他 の 関 連 する 管 理 活 動 に 従 っている。災 害 マネージメントシステム1. 25502007 Diesaster Prevention andMitigation Act B.E.25502007 年 防 災 法 は、1979 年 に 制 定 された 市 民 防 衛 法 (CivilDefence Act)と 1999 年 に 制 定 された 火 災 防 止 抑 制 法 (FirePrevention and Suppression Act) に 代 わ り、2007 年 11 月 6日 に 施 行 された。 同 法 の 特 徴 的 は、(1) 国 家 、 地 方 、バンコク 都 での 防 災 政 策 策 定 機 関 を 規 定 (2) 首 相 または 指 名 された 副 首 相 が 国 家 の 指 揮 官 となる (3) 防 災 局 が 国 家 の 防 災業 務 実 施 の 中 心 機 関 となる (4) 地 方 自 治 体 が 州 の 計 画 に 基づき 各 地 域 の 防 災 の 責 務 を 担 う、というものである。同 法 では、 災 害 は 以 下 の 3 つのカテゴリーに 分 類 されている。(1) 人 為 ・ 自 然 災 害 (2) 戦 時 の 空 襲 による 災 害 (3) 破壊 行 為 やテロ 攻 撃 による 災 害政 策 の 策 定 には、 国 家 、 地 方 、バンコク 都 の 3 つの 行 政レベルがあり、それらは 首 相 または 指 名 された 副 首 相 、 地方 の 長 官 、バンコク 都 の 首 長 が 議 長 を 務 める。これら 3 つのレベルの 政 策 策 定 には、それぞれ 以 下 の 委 員 会 が 設 置 されている。2. 防 災 局 は 防 災 計 画 に 責 任 を 負 っている。 防 災 計 画 は 政 府 の関 連 する 機 関 、 地 方 行 政 、そして 民 間 セクターの 協 議 によって 定 められる。いったん 国 家 計 画 が 承 認 されれば、これがマスタープランとして 地 方 とバンコク 都 が 使 用 することになる。 国 家 計 画 は 3 年 計 画 になっている。国 家 計 画 地 方 計 画 バンコク 都 計 画(1) 防 災 ・ 減 災 作 業 を 支 援 するための 体 系 的 かつ 継 続 的 なガイドライ(1) 災 害 発 生 時 の 防 災 と 減 災 作業 ・ 活 動 を 指 令 し、 監 督 する 権 限(1) 被 災 地 に 建 設 と 防 災 ・ 減 災 作 業の 許 可 のための 司 令 部 を 設 立ン、 見 積 もりと 適 切 な 予 算 を 持 つ 特 命 センターの 設 置(2) 被 災 者 の 避 難 手 順 と 合 わせた (2) 防 災 ・ 減 災 の 道 具 、 備 品 、 人 材 、 (2) 防 災 ・ 減 災 の 人 材 、 道 具 、 装 備援 助 供 給 と 短 期 的 ・ 長 期 的 な 減 災 金 属 製 品 と 車 両 の 調 達 のための 地 と 車 両 の 調 達 の 計 画 と 工 程のガイドラインと 方 法 、 行 政 サービス、その 他 地 域 行 政 、 被 災 者 の公 衆 衛 生 と 公 共 施 設 と 情 報 通 信 体制 の 支 援域 行 政 の 計 画 と 手 続 き(3) 関 係 行 政 機 関 と 地 域 行 政 が(1)と(2)のもとですべての 作 業 を 実 行(3) 人 々・ 地 域 へ 災 害 の 到 来 を 通 知する 初 期 警 報 システムと 他 の 装 備(3) 災 害 の 発 生 と 予 想 を 通 知 する信 号 装 置 などの 調 達 計 画 と 工 程し、 資 金 利 用 の 可 能 性 と 流 動 性 を模 索 するの 調 達 のための 地 域 行 政 の 計 画 と手 続 き(4) 全 職 員 の 支 援 、 防 災 ・ 減 災 作 業 (4) 地 域 行 政 の 防 災 実 行 計 画 (4) バンコク 防 災 実 行 計 画のためのその 他 の 人 材 と 備 品 の 配置 、それらの 全 職 員 と 関 係 する人 々の 建 物 の 容 量 の 展 望 の 準 備(5) 被 災 後 の 修 理 、 復 興 、 地 域 の 権利 回 復 のガイドライン(5) 他 の 関 係 する 公 的 支 援 機 関 との 協 同 計 画(5) バンコク 公 共 支 援 機 関 との 協同 計 画(1) 国 家 防 災 委 員 会 (NDPMC)関 連 省 庁 ( 内 務 省 、 防 衛 省 、 農 業 ・ 共 同 組 合 省 、 運 輸 ・通 信 省 、 天 然 資 源 ・ 観 光 省 、 財 務 省 )などの 関 連 町 長 の代 表 により 構 成 される。 首 相 または 指 名 された 副 首 相 が議 長 となり、 防 災 局 長 (Director-Genearal of Department ofDisaster Preveition and Mitigation: DDPM)が 事 務 局 の 役 割 を担 う。この 委 員 会 は 国 家 防 災 計 画 を 策 定 するための 提 案 を行 ったり、 防 災 や、 関 連 省 庁 や 地 方 行 政 や 関 係 の 民 間 セクターを 一 体 化 したメカニズムを 作 り 上 げたりといった 役 割を 担 う。(2) 地 方 防 災 委 員 会地 方 における 指 揮 者 である 長 官 は、 災 害 の 防 止 と 緩 和 のために 地 域 の 他 の 防 災 マネージメント 関 連 の 機 関 の 代 表 による 地 方 防 災 委 員 会 の 任 命 などを 行 う。 国 家 が 策 定 した 計37


第 二 章 各 国 調 査3. 254820052002 年 の 国 家 防 衛 小 委 員 会 に 基 づいて 策 定 された。ガイドラインの 提 示 やオペレーショナルプランの 策 定 などの 災 害マネージメントに 対 して、これらについて 責 任 を 負 う 省 庁 へのマスタープランとしての 役 割 を 果 たしている。このプランは 防 災 局 によって 3 年 ごとに、 国 会 防 災 委 員 会 によって 承 認される 前 に、 見 直 される。このプランは 防 災 の 部 分 と 防 衛 の2 つの 部 分 によって 構 成 される。4. 防 災 局 は 以 下 にあげる 防 災 関 係 に 責 任 を 持 ついくつもの 組織 によって 構 成 されている。(1) 地 方 行 政 局 民 間 防 衛 部(2) 地 方 開 発 促 進 局(3) 地 域 社 会 開 発 局(4) 国 家 安 全 理 事 会 室2008 年 に 防 災 局 は 4220 名 のスタッフを 抱 えていた。このうち 1940 名 は 公 務 員 であり 残 りは 常 勤 と 非 常 勤 の 雇 用 者 である。防 災 法 11 条 によると 防 災 局 は 内 務 省 の 傘 下 で 国 家 防 災 のための 活 動 に 関 して 政 府 の 中 心 的 な 機 関 としての 役 割 を 任 じられている。またバンコクのオフィスの 他 にも、 防 災 局 は 国内 に 18 の 地 域 オペレーションセンターと 75 の 地 方 局 を 設 置している。5. 国 家 安 全 評 議 会 (National Safety Council of Thailand: NSCT)もまた 国 家 レベルでの 防 災 政 策 策 定 を 担 う 組 織 である。ただ、 防 災 局 とは 異 なり、NSCT は 人 的 、 技 術 的 な 災 害 のマネージメントに 焦 点 を 当 てている。この 組 織 は 1982 年 に、 人 命 、物 的 、 経 済 的 に 多 くの 犠 牲 者 を 出 した 交 通 事 故 の 経 験 をもとに 設 立 された。 後 に 活 動 は 化 学 事 故 、 業 務 災 害 、 家 庭 内 や 公共 の 場 所 での 事 故 、 高 層 ビル 火 災 、などの 防 災 を 検 討 したり、 安 全 指 導 を 行 ったりという 活 動 にまで 広 がった。NSCTの 議 長 は 首 相 が 務 め、 議 会 は 関 連 省 庁 の 高 官 や 私 的 財 団 の長 、そして 少 数 の 学 者 により 構 成 されている。 防 災 局 の 局 長も NSCT 事 務 局 のメンバーである。6. 壊 滅 的 な 災 害 を 処 理 するために、タイでは、 国 家 的 な 防 災のまとめ 役 である 防 災 局 の 監 督 のもとで 国 家 的 な 防 災 マネージメントメカニズムとしての 機 能 を 果 たす 防 災 法 を 策 定 した。さらにいうと、 防 災 局 は、 総 合 災 害 リスクマネージメント(Total Disaster Risk Management: TDRM)- 準 備 、 対 応 、 復 旧 、防 災 を 含 み、 市 民 防 災 計 画 に 沿 っている-を 明 確 にしながら、関 係 機 関 との 協 働 により 災 害 マネージメントに 効 果 的 に 対 応している。最 近 では 防 災 局 は 以 下 のようなアプローチによって 災 害準 備 メカニズムを 構 築 している。1) 災 害 マネージメントにおける 行 政 統 合 行 動 計 画 の 創 設地 方 ・ 中 央 の 行 政 組 織 、 私 的 機 関 ・ 政 府 機 関 、 財 団 、NGOなど。2) 兵 庫 行 動 枠 組 み(HFA)の 目 的 を 遂 行 するために、 今後 10 年 間 の 方 針 に 関 する 戦 略 的 国 家 アクションプラン(Strategic National Action Plan (SNAP))が 策 定 されている。3) 地 域 に 基 礎 を 置 い た 災 害 リ ス ク マ ネ ー ジ メ ン ト(Community Based Disaster Risk Management: CBDRM)の 概念 の 持 続 可 能 な 開 発 への 活 用 : 地 方 の 行 政 や 共 同 体 は 災 害による 直 接 の 被 害 者 であり、 現 存 のリスクを 減 らすことが可 能 な 当 事 者 でもある。 防 災 局 は 政 府 ・ 非 政 府 、 私 的 、 市民 防 衛 、 国 家 などの 様 々なレベルの 組 織 と 共 に CBDRM プロジェクトを 実 施 している。4) 公 的 ・ 私 的 両 方 のセクターのスタッフに 対 しての 防災 を 指 導 する 場 所 としての、 防 災 アカデミー(DisasterPrevention and Mitigation Academy: DPMA)の 設 立 。5) 以 下 の 活 動 を 通 じての 地 方 行 政 の 防 災 マネージメントの能 力 強 化・ 技 術 的 なノウハウ 向 上 のためのトレーニングコース・ 災 害 マネージメントに 関 連 する 設 備 ・ 道 具 の 設 置・ 災 害 マネージメントのための 地 方 行 政 に 対 する 中 央 からの 年 度 予 算 の 配 分・ 人 員 の 増 員 - 市 民 防 衛 ボランティアをもとにして( 最 近の 調 査 では 1,087,690 人 )・ 一 村 一 捜 索 救 命 チーム(One Tambon One Search andRescue team: OTOS)タイの 7255 の 各 村 (tambon)の SAR( 捜 索 と 救 命 チーム)は 10 名 ずつで 構 成 される。6) 緊 急 対 応 チーム(ERT)の 創 設すべての 種 類 の 大 規 模 危 機 や 事 件 に 対 して、 地 方 の 指 揮 官や 災 害 時 の 臨 時 の 指 揮 センターの 長 と 協 働 する。 各 ERTはリーダー(1 名 )、 計 画 (3 名 ) 実 行 (6 名 )の 10 名 で 構成 されている。7) 避 難 計 画 と 訓 練地 方 市 民 防 衛 計 画 と 関 連 し、すべてのタイの 地 方 では “ 地方 避 難 計 画 ” を 策 定 する。また 年 2 回 の 訓 練 を 実 施 しなければならない。8) 災 害 リスク 軽 減 戦 略 計 画 のために、 災 害 危 機 エリアの 更新 情 報 を 提 供 しなければならない。38


第 二 章 各 国 調 査 鉱 物 資 源 局 の 当 該 部 門 では 雨 雲 レーダーを 毎 日 監 視 して、 大Somjai Yensabai雨 が 予 想 される 地 域 の 雨 量 ますを 監 視 しているボランティアに 電 話 で 連 絡 し、 雨 量 に 注 意 するよう 促 している。3-33-4Local authority3-2 2 4 100mm150mm26図 3-1: 災 害 発 生 時 の 指 揮 系 統3000(アジア 防 災 センターウェブサイトによる)3-1-1-2 ここでは、 鉱 物 資 源 局 の 地 質 学 専 門 家 である SomjaiYensabai 氏 への 聞 き 取 り 調 査 に 基 づき、 鉱 物 資 源 局 が 実 施している 地 滑 り 災 害 への 対 応 に 関 する 例 を 簡 単 に 紹 介 する。鉱 物 資 源 局 では、 全 土 および 県 ごとの 地 滑 りハザードマップの 整 備 など 調 査 研 究 を 実 施 するとともに、コミュニティを 対 象 とした 防 災 のための 活 動 を 実 施 している。 地 滑 3 - 2 りのハザードマップは 全 国 レベルで 作 成 されており、 危 険図 3-2: 地 方 自 治 体 Phetchaburi!"#$%(Phetchaburi & $' 県 )を対 象 とした 地度 は 植 生 や 地 質 、 地 形 、 降 雨 量 と 密 接 に 関 係 しているが、滑 り 対 応 資 料 ( 鉱 物 資 源 局 )花 崗 岩 地 域 や 雨 の 多 い 地 域 などで 危 険 度 が 高 くなっている( 図 3-3、3-4)。地 域 を 対 象 とした 防 災 活 動 としては、 地 方 当 局 (Localauthority)および 地 域 住 民 を 対 象 にそれぞれのための 対 応マニュアル( 図 3-2)を 整 備 し、 講 習 会 を 実 施 して、 災 害36の 発 生 が 予 想 される 際 にどのように 地 域 が 対 応 すべきかを教 えている。テキストやプレゼンテーション 資 料 はそれぞれの 地 域 ごとに 異 なるものを 作 成 している。 雨 量 ますをボランティアの 家 庭 に 設 置 してもらい、 節 目 となる 雨 量 に 達した 場 合 にはその 集 落 の 長 に 連 絡 するよう 伝 える。 集 落 長は 車 で 危 険 地 域 の 住 民 にすべき 行 動 を 伝 える。 降 雨 量 により 行 動 の 目 安 が 示 されており、たとえば、24 時 間 の 累 積 雨量 が 100mm に 達 したら 避 難 の 準 備 を 行 い、150mm に 到 達したら 避 難 する、という 指 針 が 示 されている。このようなテキストが 作 成 され 講 習 会 が 実 施 されているのは、 地 滑 りの 危 険 が 特 に 大 きい 26 程 度 の 県 で、これまでに 約 3000 の雨 量 ますが 配 布 されている。さらに、 鉱 物 資 源 局 ではこのような 観 測 と 情 報 伝 達 のしくみが 地 域 に 作 られた 後 もフォローアップを 行 っている。39


第 二 章 各 国 調 査図 3-3:タイ 全 土 の 地 滑 りハザードマップ(2004 年 、 鉱 物 資 源 局 による)。 赤 、 黄 、 緑 の 順 に 危 険 度 が 高 い。40


第 二 章 各 国 調 査図 3-4: 地 滑 りハザードマップ( 北 部 の Nan 県 )(2005 年 、 鉱 物 資 源 局 による)41


第 二 章 各 国 調 査図 3-5: 地 滑 りの 危 険 が 予 測 される 際 の、 地 域 の 情 報 伝 達 系 統 および 対 応 ( 鉱 物 資 源 局 )42


第 二 章 各 国 調 査さらに、 鉱 物 資 源 局 では、 地 滑 り 以 外 のさまざまな 災 害 に関 しても 一 般 向 けのパンフレット( 紙 媒 体 、PDF)を 作 成 し、配 布 ・ウェブ 公 開 して、 注 意 を 促 している。館 、 歴 史 、 文 学 、 芸 能 などを 含 めた、 有 形 ・ 無 形 、 動 産 ・ 不動 産 文 化 財 の 保 存 、 保 護 、 管 理 、 振 興 、 調 査 研 究 を 行 っている。 以 下 に 芸 術 局 の 組 織 図 を 示 す。図 3-6: 津 波 に 関 するパンフレット( 鉱 物 資 源 局 )図 3-8: 文 化 省 芸 術 局 組 織 図(Surayoot Wiriyadamrong 氏 ( 芸 術 局 考 古 部 門 ) 作 成 )図 3-7: 自 然 災 害 に 関 するパンフレット( 鉱 物 自 然 局 )3-1-2 3-1-2-1 タイにおいて 文 化 遺 産 の 保 護 を 管 轄 する 国 の 機 関 は、1911 年 に 設 立 された 芸 術 局 (Fine Arts Department)で、 現在 は 文 化 省 (Ministry of Culture)の 下 にある。 芸 術 局 は、いわゆるモニュメントだけでなく、 博 物 館 、 文 書 館 、 図 書文 化 遺 産 の 保 存 ・ 保 護 ・ 管 理 は 文 化 省 芸 術 局 の 管 轄 であり、 実 務 を 担 当 しているのはその 中 の 考 古 部 (Office ofArchaeology)である。 地 方 にある 文 化 遺 産 を 直 接 扱 うのは、芸 術 局 の 組 織 (いわば 国 の 出 先 機 関 )である 芸 術 地 方 事 務所 (Regional Office of Fine Arts)で、 全 国 には 15 の 芸 術 地 方事 務 所 がある。 実 務 としては、この2つの 組 織 が 連 携 して 国登 録 のモニュメント(registered monument)の 保 護 を 行 っているといえる。また、 専 門 家 としてイコモスタイ(ICOMOSThailand)に 所 属 する 大 学 の 研 究 者 なども 関 わることがあり、王 室 財 産 局 (Crown Property Bureau)などの 出 資 による 保 存修 復 事 業 も 実 施 されるとのことである。国 に よ る 保 護 の 対 象 と な る の は 登 録 モ ニ ュ メ ン ト(registered monument)のみである。 日 常 管 理 は 基 本 的 には 所有 者 ( 多 くは 寺 院 )が 行 っている。 修 理 を 実 施 する 場 合 には地 方 事 務 所 が 修 理 計 画 を 策 定 して 芸 術 局 長 に 提 出 、 芸 術 局 考古 部 門 に 組 織 された 委 員 会 (committee)でその 可 否 が 審 議され、 委 員 会 が 妥 当 だと 判 断 すれば 局 長 が 計 画 案 に 同 意 し、修 理 のための 予 算 が 配 分 (allocate)される。 国 からの 予 算43


第 二 章 各 国 調 査が 不 要 なほどの 軽 微 な 修 理 の 場 合 には、 委 員 会 の 審 議 を 経 ず地 方 事 務 所 が 修 理 を 行 うこともある。 地 方 事 務 所 には 考 古 学や 建 築 の 専 門 家 はいるが、その 数 は 少 なく、また 分 野 も 限 られていて 土 木 の 専 門 家 などはいないため、 修 理 設 計 や 実 際 の施 工 の 際 に、 地 方 事 務 所 から 芸 術 局 に 専 門 家 の 派 遣 を 要 請 することもある。災 害 への 対 応 であるが、 災 害 に 専 門 に 対 応 する 部 門 は 設 けられておらず、また、 予 算 についても、 防 災 という 費 目 は立 てられていない。しかし、 修 理 のうち 景 観 管 理 (landscapemanagement)という 名 目 で、 実 際 には 洪 水 対 策 など 防 災 のための 事 業 が 行 われているとのことであった。3-1-2-2 GIS 文 化 遺 産 の 危 険 予 測 のために、 地 理 情 報 システム(GIS)を 活 用 する 試 みが 開 始 されている( 図 3-9)。これは、 芸 術局 がもともと 構 築 していた 文 化 遺 産 データベースに、 災 害 に関 する 情 報 を 新 たに 付 け 加 えることで 実 現 している。芸 術 局 の 文 化 遺 産 データベースには、GIS および MIS(Management information system) の 2 種 類 が 存 在 す る。 7月 の 聞 き 取 り 調 査 の 時 点 において、2,098 件 の 国 の 登 録 記 念物 (registered monuments)、 約 6,700 件 の 未 登 録 記 念 物 (nonregisteredmonuments)、 合 計 約 8,800 件 が 登 録 されている。MIS には 動 産 文 化 財 も 登 録 されている。データベースは 1999 年 から Microsoft Access で 作 成 していたが、 当 時 はその 必 要 性 や 活 用 方 法 に 関 する 理 解 がなかった。現 在 はデータベースソフトとして SQL Server を 使 用 している。2006 年 からイントラネットでデータベースを 公 開 して試 験 運 用 を 行 った 後 、2008 年 から 一 般 公 開 を 開 始 した。 現在 は 一 般 の 人 も、 芸 術 局 のウェブサイト http://www.finearts.go.th/ から、データの 編 集 ができないゲストの 属 性 で 閲 覧 が可 能 である。モニュメントの 属 性 情 報 としては、 名 称 、 所 在 地 ( 地 域 区分 、 緯 度 経 度 ( 地 理 座 標 、UTM および 取 得 方 法 )、 建 造 時 期( 時 代 区 分 、 年 代 )、 歴 史 、)、 種 類 、 用 途 、 材 質 、 修 理 履 歴 ( 年代 、 修 理 者 、 内 容 )などがあり、このほか、 写 真 や 地 図 、 図面 が 掲 載 されている。データベースに 用 いられる 地 図 や 衛 星 画 像 は、GISTDA(、Geo-Informatics 4.56andSpace Technology Development Agency)という 政 府 の 組 織 か43ら 提 供 される。データはできるだけ 無 償 で 提 供 してもらえるように 芸 術 局 では 努 力 しているが、 洪 水 地 図 については、 王立 灌 漑 局 (、Royal Irrigation Department)から 有償 で 入 手 している。それ 以 外 の、 地 震 、 活 断 層 および 地 滑 りの 地 図 A 18Ministry は、 天 然 資 of 源 Natural 環 境 Resources 省 ( and +:2&+:(/'%:=::8;'>94.5!9?&42@.Environment3-9-1GIS3-9-2GISGISTDA!"#$%&'#($)#'*+,-#-./012%'3GISTDA!"#$%&'#($)#'*+,-#-./012%'3 7 89!':!#*+3Geo-Informatics and Space Technology Development Agencyand Space Technology Development Agency43図 3-9-1:モニュメント GIS データベースの 画 面 。 表 示 させるモニュメントの 種 類 を 選 択 し、 地 図 上 から 検 索 ・ 表 示 させることが 可 能 である。図 3-9-2:モニュメント GIS データベースの 画 面 。ワット・プラ・タート・ドイ・ステープを 選 択 したところ。さらに、 詳 細 な 属 性 情 報 を 一覧 表 として 表 示 させ、 地 図 や 図 面 、 写 真 などの 画 像 情 報 をダウンロードすることも 可 能 である。%:8;.


第 二 章 各 国 調 査Resources)から 無 償 で 提 供 されている。これは、 鉱 物 資 源局 が 文 化 遺 産 の 所 在 地 での 鉱 山 開 発 を 規 制 する 目 的 で 文 化遺 産 の 位 置 情 報 を 必 要 としていることから、 相 互 に 情 報 を提 供 しあうことで 無 償 提 供 が 実 現 したものである。芸 術 局 の 15 の 地 方 事 務 所 の 担 当 者 のアカウントは、 自分 の 担 当 の 地 域 についてのみ 編 集 の 権 限 を 有 する。データ入 力 はオンラインで 可 能 である。データは 芸 術 局 の 担 当 部署 であるインベントリー 室 で 確 認 し、 入 力 されていない 項目 などがあれば、 芸 術 局 の 担 当 者 が 地 方 事 務 所 長 に 電 話 等で 連 絡 して、その 旨 指 摘 する。 地 方 出 先 機 関 の 長 が 内 容 を確 認 し 承 認 の 後 、データが 正 式 に 登 録 される。 地 方 事 務 所に 対 して、ノートパソコンと ArcGIS を 提 供 している。ただ、 高 性 能 の PC のある 地 方 事 務 所 では ArcGIS が 使 えるが、そうでない 事 務 所 もあるので、この 点 を 改 善 したいと 芸 術局 の 担 当 者 は 考 えているとのことだった。なお、ちょうど7 月 の 第 1 回 調 査 の 際 に 芸 術 局 で 地 方 事 務 所 の 担 当 者 に 対するデータベース 講 習 会 が 実 施 されており、 各 地 方 事 務 所から 2 名 程 度 が 参 加 していた( 写 真 3-1)。災 害 地 図 との 重 ね 合 わせは、 地 震 、 活 断 層 、 地 滑 り、 洪水 について 行 っている。ウェブベースのデータベースは、オンラインでのデータ 入 力 は 可 能 だが、 災 害 地 図 のような他 の 主 題 図 や 衛 星 画 像 との 重 ね 合 わせや、バッファ 作 成 などの 分 析 作 業 はウェブのデータベースではできないため、スタンドアロンの ArcGIS で 行 っている。嵐 、 洪 水 といった 災 害 を 対 象 とすること、また、 地 震 以 外 の災 害 が 対 象 となることにより、 全 ての 芸 術 地 方 事 務 所 が 参 加することなどが 決 まっているのみで、 具 体 的 な 人 選 など 詳 細に 関 しては 未 定 とのことであった。3-1-2-3 Committee2007 年 5 月 16 日 のタイ 北 部 に 被 害 をもたらした 地 震 の後 、 災 害 対 応 のための 委 員 会 が 芸 術 局 に 組 織 され、2009 年6 月 に 最 初 の 会 合 が 開 催 された。 構 成 員 は、 考 古 部 (Officeof Archaeology) お よ び 建 築 部 (Office of Architecture) 所属 の civil engineer( 合 計 7 ~ 8 名 )、Head of RegistrationSection、Ms. Manatchaya で、アドバイザーとして 歴 代 の 局長 でエンジニアの Mr. Arak、Mr. Suwit が 参 加 し、さらに、地 震 危 険 度 地 図 の 危 険 度 が 最 も 高 い Zone 2( 図 2-4)に 含まれる 芸 術 地 方 事 務 所 から、3 ~ 4 名 が 参 加 したとのことである。この 会 合 の 際 に、モニュメントの GIS データベースと 自 然 災 害 の 地 図 とを 重 ね 合 わせたデータが 示 された( 図 3-10)。 具 体 的 には、 活 断 層 から 5km、10km、20km 以内 にあるモニュメントの 県 別 の 件 数 と、 活 断 層 から 5km および 10km 以 内 にあるモニュメントについては、 全 ての 名称 と 所 在 地 が 示 された。なお、 活 断 層 から 5km 以 内 にあるモニュメントは 8 県 の 44 件 、10km は 10 県 の 75 件 、20kmのものは 14 県 の 178 件 であった。この 組 織 は 2009 年 6 月 の 1 回 の 会 合 を 実 施 したのみで発 展 的 に 解 消 し、 新 たな 委 員 会 を 設 立 することになっている。 現 在 のところ、 組 織 の 目 的 が 災 害 時 にすべきこと(trend)に 関 する 情 報 提 供 であること、 地 震 以 外 の 地 滑 り、 大 雨 や45


第 二 章 各 国 調 査図 3-10: 活 断 層 とモニュメントの 位 置 を 重 ね 合 わせた 図 ( 芸 術 局 作 成 )46


第 二 章 各 国 調 査3-2 災 害 が 発 生 し 文 化 遺 産 への 被 害 が 予 想 される 場 合 には、芸 術 局 考 古 部 の 担 当 者 はテレビなどの 報 道 で 情 報 を 入 手後 、ただちに 地 方 事 務 所 に 電 話 などで 連 絡 をとる。 地 方 事務 所 とは 必 要 に 応 じて 調 査 を 行 う 約 束 をして、 必 要 であれば 災 害 の 発 生 2 ~ 3 日 後 には 現 地 調 査 を 行 う。 緊 急 的 な 修理 を 行 う 場 合 は、 芸 術 局 が 文 化 遺 産 への 入 場 料 収 入 や 民 間機 関 などからの 寄 付 を 緊 急 対 応 のために 積 み 立 てた「 考 古学 基 金 」から 拠 出 することになっている。 考 古 学 基 金 は、仏 暦 「2504 年 (1961 年 ) 古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び国 立 博 物 館 法 」 第 28 条 に 基 づいて 設 置 されている(Appendix3)。地 方 事 務 所 から 芸 術 局 に 対 応 を 要 請 する 場 合 には、 地 方事 務 所 長 が 芸 術 局 長 に 連 絡 し、 局 長 が 考 古 部 長 に 連 絡 、 考古 部 長 が 適 切 な 専 門 家 を 派 遣 する、という 伝 達 の 流 れになるとのことである。本 格 的 な 修 理 を 行 う 場 合 は、 一 般 には 次 年 度 以 降 の 予 算での 対 応 となる。この 際 は、 地 方 事 務 所 が 修 理 計 画 を 策 定し、 芸 術 局 の 委 員 会 でその 計 画 の 可 否 が 審 議 され、 承 認 されれば 予 算 が 割 り 当 てられることになる。この 記 述 は 後 に述 べるチェンセーンでの 地 震 の 際 の 対 応 をより 一 般 化 したものだが、 芸 術 局 で 確 認 したところ、 災 害 時 の 対 応 は 基 本的 に 同 じとのことであったのでこのように 記 している。3-3 具 体 的 な 災 害 時 の 国 際 協 力 ではないが、 文 化 財 の 防 災 に関 する 国 際 的 な 動 きとしては、2009 年 1 月 12 日 ~ 19 日 に、タイおよびラオスで ASEAN+3( 日 本 、 韓 国 、 中 国 )による「 文化 遺 産 の 保 護 のための 防 災 に 関 するフォーラム(Forum onRisk Preparedness for the Preservation of Cultural Heritage)」が開 催 され、カントリーレポートの 発 表 とアユタヤ、チェンマイ、チャンパサック、ワット・プーなどの 遺 跡 の 現 地 視察 が 行 われた。フォーラムには、ブルネイ、カンボジア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナム、 中 国 および 国 際 機 関 の SPAFA が 参 加 している。本 フ ォ ー ラ ム で の 結 論 と 勧 告 (Conclusion andRecommendations)は 下 記 のようなものである。conservation of cultural heritage.2. East Asian Countries should promote the ongoing network tostrengthen the cooperation for risk preparedness in the East Asianregion.3. East Asian Countries should promote some sorts of documentscoming up from each country with experiences in the certain typeof disasters. For example Thailand could do a case study of riskpreparedness for flooding. Myanmar and Indonesia may join theearthquake case. Each country could volunteer to prepare thedocument on each type of disaster that it has been working and hassome experiences in conservation.4. East Asian Countries should consider establishing acommunication channel such as a website in order to disseminatethe documents prepared by the agreement in the recommendationno.3 as well as to exchange and share the experiences among theEast Asian Countries.( 和 訳 )各 国 の 代 表 は ASEAN および 中 国 、 韓 国 、 日 本 の 東 アジア諸 国 間 での 将 来 の 協 力 のために 討 議 して、 次 のような 勧 告 に合 意 した。1. 東 アジア 諸 国 は 本 ワークショップをフォローするような国 によるワークショップを 実 施 し、 各 国 での 文 化 遺 産 の 保 存のために、 防 災 に 関 する 認 識 を 高 めるべきである。2. 東 アジア 諸 国 は、 東 アジア 地 域 での 防 災 のための 協 力 関係 を 強 化 するためのネットワーク 構 築 を 促 進 すべきである。3. 東 アジア 諸 国 は、 各 国 で 特 定 の 災 害 に 関 する 経 験 に 基 づいた 記 録 の 作 成 を 促 進 すべきである。たとえば、タイは 洪 水について、ミャンマーとインドネシアは 協 力 して 地 震 に 関 するケーススタディができるだろう。 各 国 はその 際 に 文 化 遺 産の 保 存 のために 行 動 したり、 文 化 遺 産 の 保 存 について 経 験 となっているような 災 害 に 関 して、 自 発 的 に 記 録 することができるだろう。4. 東 アジア 諸 国 は、 勧 告 3 に 示 されたような 記 録 を 公 表 したり、 各 国 間 で 経 験 を 共 有 するために、たとえばウェブサイトのような 交 流 手 段 を 構 築 すべきである。--------------------The delegates discussed and agreed on the followingrecommendations for the future cooperation among East AsianCountries which include the ASEAN member countries as wellas Peopleʼs Republic of China, Korea and Japan:このフォーラムでは、タイの 代 表 は 文 化 省 であったことから、 本 件 に 関 する 活 動 については 文 化 省 が 窓 口 になるだろう、とのことであった。ただし、 現 在 まで、この 勧 告 に 示されている 活 動 が 実 際 に 行 われた 例 はないということである(Manatchaya Wajvisoot 氏 の 話 による)。1. East Asian Countries should organise national workshopsfollowing up this workshops to move the concept of thisawareness of the risk preparedness to their own countries for47


第 二 章 各 国 調 査4. 4-1 チェンセーン 地 震 (Earthquake in Chiang Saen、 断 層 の 名 称に 由 来 するNam Ma Earthquakeという 呼 称 も 用 いられている。アメリカ 地 質 調 査 所 (USGS)の event ID は us2007ckan)2007 年 5 月 16 日 8 時 56 分 ( 世 界 標 準 時 、 現 地 時 刻 15 時56 分 )に、 北 緯 20.483 度 、 東 経 100.763 度 、ラオス 西 部 のBan Mone の 東 南 東 13.2km を 震 源 とするマグニチュード 6.3(Mw)の 地 震 が 発 生 した。 震 源 の 深 さは 38km(USGS による)である。 震 源 地 では、 前 日 に 4 回 の 前 震 、2007 年 7 月 31 日までにマグニチュード 2.5 ~ 4.5 の 余 震 が 88 回 観 測 されている。この 地 震 は、Nam Ma 断 層 の 活 動 により 発 生 したと 想 定されている。揺 れは 特 にラオスの 西 部 において 強 く、4 件 の 寺 院 、2 件のストゥーパなどが 被 害 を 受 けたとのことである。800km 離 れた 首 都 バンコクのオフィスビルやショッピングセンターなど 高 層 ビルの 上 層 部 でも 揺 れを 感 じ、パニックに 陥 った 人 が 建 物 の 外 に 飛 び 出 した。バンコクは 震 源 からの 距 離 は 遠 いものの、 地 盤 が 軟 弱 なため 揺 れが 増 幅 されたようだ。さらに、ベトナムの 首 都 ハノイでも 揺 れが 感 じられ、 建 物 の 外 に 飛 び 出 した 人 がいたとのことである。なお、この 地 震 による 犠 牲 者 は 報 告 されていない。図 4-1-2:2007 年 5 月 16 日 の 地 震 の 震 源 地 と 揺 れ( 改 正 メルカリ 震 度 階 、 補 完 データ)(アメリカ 地 質 調 査 所 の kml ファイルにより 作 図 )図 4-1-1:2007 年 5 月 16 日 の 震 源 と 各 地 の 計 測 震 度( 改 正 メルカリ 震 度 階 )(USGS)震 源 地 はタイ 国 境 から 61km 離 れている。チェンセーンでの 揺 れの 大 きさは VII( 改 正 メルカリ 震 度 階 による。 気象 庁 震 度 で5 程 度 )であった。チェンライやチェンマイ、ナーンなどタイ 北 部 では 大 きな 揺 れを 感 じ、チェンライでは 壁に 掛 けてある 物 が 落 下 し、メーリム(Mae Rim)では 不 安定 な 置 物 が 棚 から 落 下 した。また、 正 確 な 件 数 は 不 明 だが、これらタイ 北 部 地 域 では 建 物 の 壁 に 亀 裂 が 入 ったり 屋 根 瓦が 落 下 するなどの 被 害 が 発 生 している。2007 年 5 月 27 日には、メーリムで、 地 震 で 損 傷 を 受 けたと 思 われる 旅 行 案内 所 として 使 われていた 2 階 建 ての 建 物 が 倒 壊 したが、 立入 禁 止 となっていたため 怪 我 人 はいなかった。 震 源 から 約4-2 ラオスとの 国 境 の 町 チェンセーン 所 在 のチョームキティ・パゴダで、この 地 震 による 被 害 が 発 生 した。このときの 被 害は、パゴダ 頂 部 にある 金 属 製 の 傘 状 の 部 分 の 落 下 、およびその 部 分 に 使 われていた 宝 石 の 落 下 および 紛 失 (2 点 )がある。さらに、 南 東 角 の 土 台 部 分 や、 漆 喰 表 面 の 亀 裂 である。当 初 、わたしどもは 煉 瓦 およびコンクリートを 芯 にして 漆喰 と 金 属 板 で 覆 われていたパゴダ 頂 部 も 崩 落 したと 考 えていた( 写 真 4-1-3)。しかしこれは 傘 状 の 部 分 が 落 ちてしまった後 でつけなおすのには 撤 去 が 必 要 だったため( 傘 状 の 部 品 の柄 はこのパゴダ 本 体 頂 部 に 深 く 埋 め 込 む 必 要 があり、 残 った部 分 へ 再 度 埋 め 込 むのは 不 可 能 であったとのこと)、 地 震 後に 取 り 除 いたものであり、 地 震 により 落 下 したわけではなかった。なお、この 地 域 を 管 轄 するチェンマイの 第 8 芸 術 地 方 事 務所 の Sahawat 所 長 によれば、チョームキティ・パゴダ 以 外 には、 今 回 の 地 震 による 被 災 が 明 らかな 文 化 遺 産 はないとのことである。 実 は、このほかに 1 件 の 寺 院 から、 地 震 により 損傷 が 発 生 したとして 修 理 費 用 の 請 求 があったが、 地 震 による被 害 なのか 地 震 前 からすでに 発 生 していた 損 傷 なのかは 明 らかでなかった。しかし、 有 名 な 寺 院 であることを 考 慮 して 修理 費 用 を 拠 出 したとのことであった。48


第 二 章 各 国 調 査4-2-1 チョームキティ・パゴダは、チェンライ(Chiang Rai)県 チ ェ ン セ ー ン 市 (Chiang Saen) ヴ ィ エ ン(Wieng)、100.08°E、20.28°N に 所 在 するチョームキティ 寺 院 にある仏 塔 ( 写 真 4-1)で、 仏 暦 1483 年 ( 西 暦 940 年 )に 創 建 されたとの 伝 説 がある。 芸 術 局 のデータベースでは 建 立 は 仏暦 2030 年 ( 西 暦 1487 年 )であり、ランナー 期 に 属 する。仏 暦 2478 年 (1935 年 )3 月 8 日 に 国 の 登 録 文 化 財 (Registeredmonument)となっている。 文 化 財 の 範 囲 は 2,800km 2 である。現 在 、 管 理 はチョームキティ 寺 院 が 行 っており、 現 在 でも寺 院 として 利 用 され、 信 仰 の 対 象 となっている。 構 造 は 煉瓦 で、 表 面 を 漆 喰 および 金 属 の 板 で 覆 っている。このパゴダは 小 高 い 丘 の 上 に 所 在 し( 図 4-2、4-3)、パゴダの 南 東 側 から 川 に 向 かって 緩 やかに 傾 斜 している( 写真 4-1-2、4-1-3)。この 傾 斜 に 沿 って 土 が 移 動 していることから、 建 造 直 後 から 傾 き 続 けていたようである。修 理 履 歴 は、 古 くは 仏 暦 2227 年 (1684 年 )という 記 録がある。 芸 術 局 による 修 理 も 繰 り 返 し 行 われており、1957年 、1968 年 には 欠 損 部 の 補 修 程 度 の 比 較 的 小 規 模 な 修 理が 行 われた。 地 震 以 前 の 比 較 的 大 規 模 な 修 理 は 1976 年と 2006 年 に 実 施 されたものがある。1976 年 には、 水 圧(hydraulic)によるジャッキアップを 実 施 し、 傾 斜 を 倒 れない 程 度 に 修 正 した。パゴダの 傾 きは、 倒 壊 が 予 想 される 頂部 が 中 心 から 1/3 よりもずれていなかったため、 傾 きを 修正 するような 作 業 は 行 わず、これ 以 上 傾 かないようにすることを 目 的 としたものである。また、 先 端 部 をコンクリートで 補 い、 金 属 板 を 貼 るとともに、 頂 部 に 金 属 製 の 傘 をとりつけた。このパゴダは、 過 去 の 地 震 で 繰 り 返 し 被 害 を 受 けている( 写 真 4-1-4 参 照 )。また、この 地 域 では 過 去 の 地 震 が 言 い伝 えとして 知 られていた。この 地 域 で 観 測 が 開 始 されたのは 約 20 年 前 で、それ 以 前 の 観 測 記 録 は 存 在 しないことから、修 理 を 実 施 したのは 過 去 の 地 震 履 歴 データに 基 づく 再 来 周期 等 を 考 慮 したものではないが、 地 震 が 発 生 したとの 記 録があったこと、また、 地 震 による 被 害 の 証 拠 がパゴダに 残されていたためである。1995 年 に 芸 術 局 によって 実 施 された 調 査 から、 地 震 によりパゴダ 本 体 の 亀 裂 が 拡 大 していること、パゴダ 上 部 や 漆喰 の 剥 落 が 見 られることや、パゴダの 傾 斜 が 進 行 していることが 明 らかとなっている。また、2005 年 には 損 傷 の 原 因を 明 らかにするために、 修 理 履 歴 、パゴダの 建 造 および 損傷 に 関 する 分 析 、 周 囲 の 地 盤 の 質 や 挙 動 に 関 する 調 査 が 芸術 局 により 実 施 されている。この 結 果 を 踏 まえ、また、 基 礎 部 分 の 安 定 性 を 改 善 する修 理 が 過 去 に 実 施 されていないことから、パゴダの 基 礎 部分 の 状 態 を 改 善 し、 地 盤 の 流 動 化 を 防 ぐことを 目 的 として、2006 年 に 大 規 模 な 修 理 が 実 施 された( 図 4-4、4-5)。この修 理 では、 基 壇 外 縁 から 1.5m のところに 地 盤 に 筒 状 に 穴をあけ、コンクリートを 充 填 してパイルをその 場 で 作 り、パゴダの 周 囲 に 隙 間 なく 埋 め 込 むとともに、 周 囲 の 地 盤 をポルトランドセメントで 強 化 し、さらに、パゴダ 本 体 の 亀裂 に 対 しては、 深 い 亀 裂 にはエポキシ 樹 脂 を 充 填 し、 表 面は 漆 喰 で 覆 った。 修 理 費 用 は、700 万 バーツが 政 府 から 拠出 され、 装 飾 の 修 理 に 関 しては 400 万 バーツが 私 的 な 機 関からの 寄 付 によりまかなわれた。なお、 当 該 遺 産 はタイで 地 震 対 策 が 実 施 された 唯 一 の 例でである。 今 回 現 地 調 査 を 実 施 したもう1つのサイトであるチェンマイのワット・プラタート・ドイ・ステープでは、地 震 などにより 想 定 される 崖 崩 れへの 対 策 を 前 提 に、 現 在 、ボーリング 調 査 を 実 施 している。図 4-2:チョームキティ・パゴダの 立 地 ( 円 で 囲 まれた 三 角 の 点 )。 川 を望 む 丘 の 上 にある。( 芸 術 局 データベースによる)49


第 二 章 各 国 調 査図 4-3:チョームキティ・パゴダ 平 面 図 (Sudchai 氏 による)写 真 4-1-1:チョームキティ・パゴダ写 真 4-1-3:2007 年 の 修 理 で 切 除 されたパゴダの 先 端 部 分 。東 側 正 面 に 飾 られている。写 真 4-1-2:パゴダ 南 面 。 水 平 を 確 認 して 撮 影 。 東 側 に 大 きく 傾 斜 しているのがわかる。写 真 4-1-4:パゴダ 基 壇 部 分 。 過 去 の 地 震 や 土 壌 の 移 動 による傾 きと 修 理 の 繰 り 返 しを 示 す。50


第 二 章 各 国 調 査図 4-4:チョームキティ・パゴダの 2006 年 の 修 理 設 計 スケッチ( 立 面 図 )図 4-5:チョームキティ・パゴダの 2006 年 の 修 理 設 計 スケッチ( 平 面 図 )51


第 二 章 各 国 調 査4-3 地 震 発 生 直 後 に 現 地 へ 向 かった 第 8 地 方 事 務 所 職 員 の 報 告により 傘 状 の 部 分 から 宝 石 が 落 下 したことを 知 り、 第 8 芸 術地 方 事 務 所 では、ただちに 地 元 の 警 察 などの 協 力 によりこの場 所 を 立 ち 入 り 禁 止 にして 宝 石 を 捜 す 作 業 を 行 った。また第 8 地 方 事 務 所 からは、 芸 術 局 の 土 木 分 野 の 専 門 家 であるSudchai 氏 の 派 遣 を 依 頼 し、Sudchai 氏 は 被 災 直 後 (2 ~ 3 日 後 )に 現 地 調 査 を 実 施 している。 地 震 直 後 の 状 況 の 写 真 を 示 す( 写真 4-2、Sudchai 氏 、 第 8 芸 術 地 方 事 務 所 提 供 )。修 理 の 内 容 は、 傘 状 の 部 品 を 作 り 直 し、それが 設 置 できるようパゴダ 本 体 の 頂 部 をいったん 撤 去 、 新 たに 作 り 直 すとともに、 基 礎 の 部 分 の 亀 裂 をエポキシ 樹 脂 および 漆 喰 で 充 填 するというものである( 図 4-7、4-8)。 修 理 期 間 は、 被 害 報 告書 の 作 成 に 3 ~ 4 か 月 を 要 し、 修 復 は 8 か 月 実 施 したが、これは 2008 年 2 月 にシリントーン 王 女 の 訪 問 が 予 定 されていたためである。前 述 のように、 当 該 文 化 遺 産 では 過 去 の 地 震 でも 被 害 が発 生 しており、また 土 壌 の 流 動 化 による 傾 斜 が 発 生 していたことに 鑑 みて、 芸 術 局 では 2006 年 に 地 盤 強 化 およびコンクリートパイルによる 周 辺 の 土 壌 の 流 出 防 止 のための 処理 を 実 施 していた。このため、 地 震 発 生 時 の 被 害 が 軽 減 できたと 芸 術 局 では 考 えており、このことは、 今 回 実 施 したチョームキティ・パゴダ 周 辺 の 地 盤 およびパゴダ 自 体 の 微動 調 査 からも 確 認 されている。 現 在 は、 傾 きの 状 況 を 確 認するためのモニタリングとして、 年 1 回 のセオドライトによる 測 量 調 査 を 行 っている。図 4-6: 写 真 の 位 置 ( 写 真 4-2-1 ~ 6)52


第 二 章 各 国 調 査写 真 4-2-1: 地 震 の 際 にパゴダ 上 部 の 傘 状 の 部 品 が 落 下 したことを 示 す( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-3: 傘 状 の 部 分 の 切 断 面 ( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-2: 落 下 した 傘 状 の 部 分 (Finial)( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-4: 傘 状 の 部 分 の 切 断 面 ( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-5: 地 震 によるパゴダ 壁 面 ( 東 南 角 )の 亀 裂 ( 図 4-6 の 2)53


第 二 章 各 国 調 査写 真 4-2-6: 東 南 角 の 基 壇 近 くに 入 った 亀 裂 ( 図 4-6 の 3)写 真 4-2-8: 漆 喰 の 部 分 に 亀 裂 が 入 っている写 真 4-2-7: 地 震 によるパゴダ 壁 面 の 亀 裂 ( 漆 喰 の 部 分 )写 真 4-2-9: 漆 喰 に 入 った 亀 裂54


第 二 章 各 国 調 査図 4-7: 地 震 後 の 修 理 位 置 と 内 容 (Sudchai Phansuwan 氏 による)図 4-8:パゴダ 先 端 の 修 理 部 分 の 仕 様 (Sudchai Phansuwan 氏 による)55


第 二 章 各 国 調 査4-4 4-4-1 平 成 21 年 11 月 に 実 施 した 第 3 回 調 査 では、 上 記 2 箇 所において 常 時 微 動 の 調 査 を 実 施 した。この 調 査 は、チョームキティ・パゴダについては、2006 年 に 実 施 した 地 盤 の 強化 や 修 理 、および 地 震 後 の 修 理 を 経 た 状 態 での、また、ワット・プラ・タート・ドイ・ステープについては、 崖 面 や 周囲 の 地 盤 改 良 が 本 格 的 に 行 われる 前 の 状 態 での 常 時 微 動 を計 測 することにより、 修 理 の 効 果 と 現 状 の 問 題 をこの 面 から 明 らかにすることを 目 的 としている。チョームキティ・パゴダの 概 要 に 関 してはすでに 記 述 したので、ワット・プラ・タート・ドイ・ステープについて 概 略 を 述 べることとする。ワット・プラ・タート・ドイ・ステープは、チェンマイ 県 チェンマイ 市 ステープ 地区 、98.92°E、18.8°N に 所 在 し、ステープ 山 の 頂 上 の 標 高1053m に 位 置 する。 芸 術 局 のデータベースによると、 建 造は 仏 暦 20 世 紀 ( 西 暦 14 ~ 15 世 紀 なかば)であり、チェンセーン/ランナー 期 に 属 する。 構 造 は 煉 瓦 で 漆 喰 に 覆 われ、 表面 を 金 箔 を 施 した 金 属 板 で 覆 っている。 日 常 の 管 理 を 行 っているのは、プラ・タート・ドイ・ステープ 寺 院 である。この 寺 院 は、 地 震 の 揺 れによる 損 傷 も 受 けたことがあるうえ、 前 述 の 通 り 山 の 頂 上 に 位 置 しており、 周 囲 は 崖 になっていることから、 地 震 などによる 地 滑 りの 被 害 が 懸 念 されている。このことから、 寺 院 の 周 囲 および 崖 面 について、地 盤 改 良 工 事 が 計 画 ・ 実 施 されているところである。写 真 4-3-1:ワット・プラ・タート・ドイ・ステープ写 真 4-3-2:ワット・プラ・タート・ドイ・ステープから 市 街 地 を 望 む。崖 上 にあることがわかる。この 調 査 は、 中 村 豊 ・ 東 京 工 業 大 学 大 学 院 連 携 教 授 が 実施 した。 以 下 に、 中 村 教 授 の 報 告 書 を 掲 載 する。図 4-9:ワット・プラ・タート・ドイ・ステープの 立 地( 芸 術 局 データベースによる)。 山 の 頂 上 にあることがわかる。56


第 二 章 各 国 調 査図 4-10:ワット・プラ・タート・ドイ・ステープ 平 面 図 ( 芸 術 局 データベースによる)57


第 二 章 各 国 調 査4-4-2 Chom Kitti Doi Suthep 中 村 豊東 京 工 業 大 学 大 学 院 総 合 理 工 学 研 究 科人 間 環 境 システム 専 攻( 株 式 会 社 システムアンドデータリサーチ)1ここでは、タイのふたつの 文 化 財 に 対 して 微 動 調 査 を 実 施 した 結 果 について 報 告 する。ふたつの 文 化 財 とは 以 下 のものである。1 Chom Kitti2 Doi Suthepこれらは、 歴 史 上 地 震 被 害 があり 今 後 も 地 震 で 被 災 する 可 能性 が 高 いと 考 えられるか、または 地 滑 り 被 害 が 発 生 する 可 能性 が 高 いと 考 えられる 地 域 に 存 在 する。 特 に 前 者 では、2007年 の 地 震 時 に、 仏 塔 先 端 の 傘 が 落 下 するとともに、 南 東 側 土留 壁 の 南 側 部 分 が 損 壊 して 土 砂 が 流 出 する 被 害 が 生 じている。また、 後 者 では、 地 滑 り 対 策 として 地 盤 改 良 工 事 が 行 われつつあるところである。 図 0 に、 微 動 調 査 した 文 化 財 の 位置 を 示 す。 本 調 査 報 告 は、これらの 文 化 財 の 周 辺 地 盤 に 対 して 行 った 常 時 微 動 測 定 調 査 ( 測 定 日 :1 2009 年 11 月 22 日 、2 2009 年 11 月 23 日 )に 基 づき、 周 辺 地 盤 の 地 震 動 特 性 を推 定 した 結 果 について 述 べたものである。2常 時 微 動 はいつでもどこでも 計 測 できる 非 常 に 小 さな 振 動で、その 発 生 要 因 は、 自 然 界 の 営 み( 風 雨 、 波 浪 、など)や人 間 の 社 会 活 動 ( 道 路 、 鉄 道 、 工 場 など)に 求 められる。こうした 微 小 振 動 を 使 って、 表 層 地 盤 や 構 造 物 の 地 震 動 特 性 を推 定 しようとする 考 え 方 は、 古 くからある。しかし、 常 時 微動 は、 多 様 な 発 生 要 因 を 反 映 して、さまざまな 情 報 を 内 包 する 微 小 振 動 であり、その 中 から 目 的 に 適 う 情 報 を 抽 出 することが 重 要 となる。ここでは、 表 層 地 盤 内 でせん 断 波 が 重 複 反 射 することによって 生 じる 堆 積 地 盤 の 地 震 動 特 性 ( 固 有 振 動 数 、 増 幅 倍 率 など)を 推 定 することを 目 的 とした 分 析 をおこなう。すなわち、 一点 で 計 測 された 三 方 向 成 分 の 微 動 の 周 波 数 スペクトルのうち、 水 平 スペクトルを 上 下 スペクトルで 除 して 各 方 向 成 分 の地 震 動 増 幅 特 性 を 推 定 する。これは、H/V 法 と 通 称 されるもので、 表 層 地 盤 の 地 震 動 特 性 を 推 定 する 標 準 的 な 手 法 となっているものである。具 体 的 な 微 動 の 計 測 方 法 や 解 析 方 法 は 以 下 のとおりである。計 測 方 法 : 各 測 定 点 毎 に 1 回 40.96 秒 の 微 動 測 定 を 3 回 行 う。解 析 方 法 : 各 測 定 毎 に、また 各 方 向 成 分 ごとに 周 波 数 分 析 を行 い、 水 平 成 分 と 上 下 成 分 間 のスペクトル 比 を 算 定 する。3回 の 測 定 に 対 して 算 定 された 各 方 向 スペクトルおよび H/V スペクトル 比 を 平 均 して、 各 測 点 の 計 測 量 として、これから 卓 越 振 動 数 F、 増 幅 倍 率 A、などを 算 定 して、 分 析 をおこなう。ただし、 平 均 化 に 際 して、 人 の 通 行 など 近 接 ノイズの 影 響 が 大 きいと 思 われるものを 除 いたので、40.96秒 間 の 測 定 1 回 の 分 析 結 果 となっている 地 点 がいくつかある。 推 定 された 卓 越 振 動 数 Fと 増 幅 倍 率 Aを 基 に、 基 盤 のせん 断 波 速 度 Vb を 600m/s と 仮 定 して、(1) 式 から 基 盤までの 深 さhを 推 定 し、(2)によって、 表 層 地 盤 の 壊 れやすさ 指 数 Kg を 算 定 した。h = Vb /(4AF)(1)Kg = A2/F (2)33.1 各 地 点 における 測 定 点 の 分 布 状 況 をそれぞれ 図 1 および 図2 に 示 す。Chom Kitti では 仏 塔 を 中 心 に 域 内 および 仏 塔 基 壇 内 の 29 箇所 ならびに 域 外 の 地 盤 上 の1 箇 所 、 合 計 30 箇 所 で 微 動 を計 測 した。 仏 塔 が 傾 斜 している 方 向 や 域 内 の 一 部 が 崩 壊 したことを 念 頭 において 計 測 点 を 配 置 した。Doi Sutehep では、 地 盤 改 良 工 事 を 実 施 している 部 分 を 中 心に、 縦 横 に 計 測 点 を 配 置 した。仏 塔 域 内 で 4 箇 所 、 地 盤 改 良 工 事 区 域 内 で 5 箇 所 、その 周辺 で 6 箇 所 の 合 計 15 箇 所 で 常 時 微 動 を 計 測 した。3.2 いずれの 地 域 も 観 光 客 が 多 く、 計 測 地 点 のすぐ 近 くを 人 が通 行 する 事 態 を 避 けることができなかった。 計 測 時 、 通 行などの 外 乱 の 影 響 を 受 けた 地 点 は 以 下 のとおりである。Chom Kitti: 基 壇 の 外 側 での 測 定 は、すぐ 近 くを 人 が 通 らない 内 側 (B 測 点 群 )に 比 べて、 人 通 りなどの 外 乱 要 因が 多 いが、 特 に G3、G9 などで 目 立 った。G3 については、通 行 とともに 特 に 大 きな 上 下 動 が 計 測 され、 付 近 のコンクリート 被 覆 と 地 盤 の 間 に 空 隙 などが 生 じている 恐 れがある。 詳 細 に 調 査 することをお 勧 めする。Doi Suthep:ここでは 基 壇 内 を 周 回 祈 祷 する 人 々の 影 響 が、G4 で 特 に 顕 著 にみられた。そのほか、G8、G14、およびG3 で 影 響 が 目 立 つ。G9 ~ G13 は 地 盤 改 良 工 事 の 域 内 であったが、 測 定 の 間 、 工 事 をしばらく 停 止 していただけたので、ここでは 工 事 の 影 響 はない。上 に 注 記 した 人 による 通 行 ノイズの 影 響 は、H/V スペク58


第 二 章 各 国 調 査トル 比 のピーク 部 分 を 下 方 にシフトさせる 効 果 として 現れ、 増 幅 倍 率 の 過 小 評 価 に 繋 がると 考 えられる。 通 行 ノイズの 影 響 が 認 められる 測 点 (Chom kitti: G3,G9、Doi suthep:G3,G4,G8,G14)では、シフト 量 が 大 きい 場 合 、ピーク 直 前のトラフを 基 準 にして 増 幅 倍 率 を 推 定 することで、ノイズの 影 響 を 補 正 することとした。3.3測 定 した 微 動 波 形 をスペクトル 分 析 し、 各 測 定 点 の 方 向 成分 毎 のフーリエスペクトル(X、Y、Z)と H/V スペクトル 比 (X/Z、Y/Z)を、 測 定 地 域 ごとに、 図 3 ~ 図 6 に 示 す。以 下 、 各 地 点 毎 に、 計 測 常 時 微 動 波 形 の 分 析 結 果 を 述 べる。3.3.1Chom Kittiここでは、 基 壇 上 (B 測 点 群 )とその 周 辺 (G 測 点 群 )に分 けて、スペクトルやスペクトル 比 を 示 す。 図 から、スペクトル、スペクトル 比 のいずれも 基 壇 内 では 計 測 地 点 毎 のばらつきが 小 さいことがわかる。これは、 近 くに 外 乱 となる 振 動 源 がなく、 微 動 の 状 況 が 安 定 していることを 示 している。また、 低 い 振 動 数 部 分 の H/V は 多 くの 測 点 で 1 よりやや 大 きい 値 に 収 束 しており、 上 下 動 が 相 対 的 にやや 小 さいことを 示 している。これは 表 面 のコンクリート 被 覆 の 影響 を 示 していると 考 えられ、 増 幅 倍 率 が 多 少 過 大 評 価 気 味になっていることを 示 唆 している。H/V をみると、 卓 越 する 振 動 数 は、2.5Hz 前 後 であり、 増 幅 倍 率 は 10 倍 前 後 と 推定 される。X 方 向 にはあきらかに 近 接 したふたつの 卓 越 振動 数 が 認 められる。Y 方 向 の 卓 越 振 動 数 はおおむねひとつである。また、H/V のピークの 後 に 認 められるトラフ 部 分の 落 ち 込 みはそれほど 大 きくない。これは 表 面 波 の 影 響 が大 きくないことを 示 している。大 きくなっている。45(10-6/Gal) 以 上 と 大 きな Kg 値 であり、概 ね 20Gal 以 上 (ほぼ 震 度 4 以 上 に 対 応 )の 地 震 動 で 何 らかの 地 盤 変 状 が 生 じると 考 えられる。3.3.2Doi Suthep計 測 結 果 から 推 定 された H/V スペクトル 比 のばらつきは、観 光 客 の 多 さからか、Chom Kitti と 比 較 して 大 きい。その H/V のピークは 10 倍 以 下 で 3Hz 前 後 にあり、Chom Kitti より小 さい。ピーク 後 のトラフはやや 顕 著 で、 表 面 波 の 存 在 を 示している。ここでも 低 い 振 動 数 部 分 の H/V はやや 大 きいものの、 概 ね1 前 後 にあり、 卓 越 振 動 数 と 増 幅 倍 率 については、妥 当 な 推 定 値 を 与 えているものと 推 測 される。スペクトル 比からピーク 振 動 と 増 幅 倍 率 を 読 み 取 り、Kg 値 の 大 きい 方 向成 分 やピーク 振 動 数 を 卓 越 振 動 数 としてその 増 幅 倍 率 とともに 表 2に 示 した。この 表 には、これらの 値 から 推 定 されるKg 値 と 参 考 値 として 基 盤 までの 深 さ( 堆 積 層 厚 )も 示 した。図 8はこれらの 値 を 各 測 点 に 対 応 させて 仏 塔 を 中 心 に 視 覚 的に 示 したものである。その 周 りには 縦 横 の 測 線 に 沿 ってグラフ 化 した 図 も 示 した。これらの 図 によると、 卓 越 振 動 数 は 概 ね 3Hz でほとんど 変動 していない。 増 幅 倍 率 も 3 ~ 6.5 で 変 動 は 小 さい。 堆 積 層厚 が 小 さいところや Kg 値 が 大 きいところは、 地 盤 改 良 をしているところと 一 致 しており、 地 滑 りの 危 険 性 が 高 いと 判 断している 場 所 と 一 致 していることになる。ただし、Kg 値 は概 ね 9 程 度 以 下 と 小 さく、 地 盤 変 状 は 100Gal( 震 度 5 以 上に 対 応 )をかなり 上 回 る 地 震 動 で 生 じると 推 測 される。3.4Chom Kitti および Doi Suthep において 常 時 微 動 を 調 査 した 結果 、 以 下 のことが 判 明 した。H/V スペクトル 比 から 卓 越 振 動 数 と 増 幅 倍 率 を 読 み 取 り、Kg 値 の 大 きい 方 向 成 分 の 振 動 数 および 増 幅 倍 率 、これらから 算 定 される Kg 値 ならびに 堆 積 層 厚 の 推 定 値 を 表 1 に、図 化 したものを 図 7 に、それぞれ 示 す。 図 は 仏 塔 を 中 心 にして 二 次 元 的 に 計 測 結 果 を 視 覚 的 に 図 示 し、その 周 りに 碁盤 目 上 に 配 置 された 測 点 群 を 測 線 毎 に 集 約 したグラフを 示した。これらの 図 を 見 ると、 卓 越 振 動 数 は 概 ね 2.5Hz ~ 2.8Hz で一 定 しているのに 対 して、 増 幅 倍 率 は 3 倍 ~ 15 倍 と 場 所により 大 きく 変 動 している。これに 伴 い、 堆 積 層 厚 の 推 定結 果 も 場 所 により 変 動 しているが、 仏 塔 が 傾 斜 している 側の 角 部 の 周 辺 で 浅 くなる 結 果 となっている。コンクリートで 被 覆 されていることもあり、 地 表 面 の 地 震 動 は 場 所 によって 大 きく 変 わらないと 考 えられる。すなわち、 堆 積 地盤 に 生 じるせん 断 歪 みは 堆 積 層 厚 が 薄 いところで 大 きくなると 推 測 され、 果 たして Kg 値 は 角 部 周 辺 から 南 の 部 分 で1)Chom Kitti1 表 層 地 盤 の 固 有 振 動 数 は、おおむね 2.5Hz で 約 10 倍 の 増幅 倍 率 と 推 定 される。2 境 内 での 卓 越 振 動 数 の 変 動 はそれほど 大 きくないが、 増 幅倍 率 のばらつきは 大 きく、 堆 積 層 厚 の 推 定 や Kg 値 の 推 定 結果 は 場 所 により 大 きく 異 なる。3 仏 塔 が 傾 斜 している 角 部 周 辺 で Kg 値 が 50(10-6/Gal) 程度 以 上 と 大 きくなる 傾 向 を 示 し、 仏 塔 の 傾 斜 が 地 震 によるものであれば、 基 礎 地 盤 の 流 動 化 に 起 因 するものと 推 測 される。4 流 動 化 は 20Gal(ほぼ 震 度 4 以 上 に 対 応 )を 大 きく 越 えた地 震 動 で 発 生 すると 推 測 される。現 状 は、 対 策 として 基 壇 を 取 り 囲 むように 連 続 的 に 地 盤 杭 が形 成 されており、 地 表 面 はコンクリートで 被 覆 されているので、 地 盤 が 流 動 化 しても 仏 塔 が 沈 下 する 可 能 性 は 小 さいと 考えられる。しかし、 大 きな 地 震 動 で 地 盤 が 液 状 化 し、さらに59


第 二 章 各 国 調 査地 表 面 のコンクリート 被 覆 が 損 壊 した 場 合 の 検 討 は 必 要 と思 われる。なお、G3 測 点 では、 異 常 な 上 下 動 が 観 測 されており、コンクリート 被 覆 面 の 下 に 空 隙 などが 生 じている可 能 性 があるので、 調 査 が 必 要 と 考 える。2)Doi Suthep1 表 層 地 盤 の 固 有 振 動 数 は 概 ね 3Hz で、 増 幅 倍 率 は 3 ~ 6.5倍 となっている。2 卓 越 振 動 数 の 変 動 は 小 さく、 増 幅 倍 率 も2 倍 程 度 しか 変動 していない。3 推 定 される 堆 積 層 厚 は 北 西 側 で 小 さくなっており、Kg値 の 推 定 結 果 もこの 周 辺 で 大 きくなる。4 Kg 値 は 9 程 度 以 下 で、10 を 上 回 る 測 点 が 少 なくないChom Kitti に 較 べて 小 さくなっている。それだけ 地 震 に 対しては 強 いと 考 えられる。5 Kg 値 が 大 きくなるところは 地 滑 り 対 策 を 実 施 しているところと 概 ね 一 致 しており、100Gal( 震 度 5 以 上 に 対 応 )をかなり 上 回 る 大 きなレベルの 地 震 動 で、 何 らかの 変 状 が発 生 すると 推 測 される。4以 上 、 常 時 微 動 調 査 の 結 果 を 報 告 した。ここでの 検 討 結 果は、 地 盤 の 非 線 形 特 性 を 全 く 考 慮 していないが、それでも実 査 の 変 状 や 危 険 性 と 整 合 性 のある 結 果 が 得 られていることは、 文 化 財 の 耐 震 評 価 や 健 全 度 評 価 に 常 時 微 動 が 大 いに役 立 つ 事 を 示 している。なお、 震 度 5 を 超 えるような 大 きな 地 震 動 の 際 には、 表 層地 盤 の 物 理 的 な 性 質 が 大 きな 歪 で 変 化 し、 固 有 振 動 数 が 低くなるなどの 現 象 が 生 じる。これが 非 線 形 特 性 であるが、このような 変 化 は、 一 般 に、 地 盤 の 変 形 を 一 層 大 きくさせ、地 盤 災 害 を 増 大 させることに 繋 がる。こうした 点 にも 十 分配 慮 していただければ 幸 いである。今 回 の 常 時 微 動 調 査 では、 報 告 したもののほかにも、いくつか 興 味 ある 現 象 が 捉 えられているが、さらに 詳 細 な 検 討が 必 要 で、 今 後 の 課 題 としたい。最 後 に、 測 定 にあたっては、 東 京 文 化 財 研 究 所 の 二 神 葉 子主 任 研 究 員 、 原 本 知 実 リサーチフェロ-、タイ 文 化 省 のSudchai Phansuwan 土 木 技 師 、Manatchaya Wajvisoot 建 築 士の 協 力 と 支 援 を 受 けました。 記 して 謝 意 を 表 します。以 上60


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第 二 章 各 国 調 査4-5 当 該 文 化 遺 産 に 関 しては、 災 害 後 の 復 旧 および 修 復 について 国 際 協 力 は 一 切 行 われていない。その 他 の 文 化 遺 産 についていえば、1992 年 にユネスコと 日 本 の 資 金 援 助 により、400年 以 上 前 (1545 年 )の 地 震 で 上 部 が 崩 れたチェンマイのワット・チェディ・ルアン(Wat Chedi Luang)の 修 理 が 行 われたとの 記 事 がガイドブック 等 に 記 されている。しかし、この 点についてはユネスコの 予 算 書 などを 見 ても 資 料 がなく、またタイ 文 化 省 芸 術 局 に 問 い 合 わせたところやはり 資 料 が 残 されておらず、 当 時 チェンマイの 地 方 事 務 所 にいたスタッフも 異動 や 退 職 で 残 っていないとのことで、 真 偽 は 確 認 できていない。文 化 省 芸 術 局 の 専 門 家 が 今 後 日 本 に 期 待 する 事 柄 としては、 被 災 直 後 のレスキュー 活 動 という 項 目 はインタビューからは 出 てこなかった。 芸 術 局 では、 文 化 遺 産 の 地 震 防 災 に 関して、 具 体 的 な 耐 震 対 策 の 手 法 、 文 化 遺 産 の 地 震 に 対 する 脆弱 性 などの 調 査 法 、 整 備 計 画 の 策 定 などといった 総 合 的 な 防災 対 策 や、また、 文 化 財 防 災 に 携 わる 組 織 や 情 報 伝 達 などの公 共 システムの 整 備 に 関 して、 日 本 の 事 例 を 参 考 にしたいと希 望 している。 現 在 の 耐 震 基 準 は 建 築 基 準 法 にあたる 法 律 で定 められているのみであり、 文 化 遺 産 を 対 象 としたものは 存在 せず、また、 文 化 遺 産 のための 耐 震 補 強 の 指 針 なども 定 められていないとのことであった。また、 文 化 遺 産 の 被 災 履 歴 を 含 めたインベントリーの 作 成や、 地 震 や 洪 水 等 のハザードマップとの 重 ね 合 わせによる 危険 度 評 価 などのデータベースを 活 用 した 文 化 遺 産 の 防 災 についても、 日 本 の 取 り 組 みを 参 考 にしたいと 考 えている。 一 方で、このような GIS データベースを 活 用 した 防 災 計 画 の 策定 については、 日 本 でも 同 様 の 取 り 組 みを 始 めたところであることから、タイとの 共 同 研 究 を 通 じて、 日 本 側 も 多 くの 知見 が 得 られるものと 期 待 される。最 初 にも 述 べたように、 自 然 災 害 による 被 災 直 後 の 救 援活 動 は、 人 命 の 救 助 やインフラ 整 備 に 関 する 内 容 を 最 優 先にすべきであって、 国 内 はもちろんのこと、 特 に 海 外 の 場合 、 文 化 遺 産 に 関 する 救 援 活 動 のために 災 害 発 生 直 後 に 現地 に 入 ろうとすることは 現 実 的 ではなく、かえって 反 発 を招 きかねない。むしろ、 災 害 時 の 対 応 を 最 小 限 にするような「 防 災 」の 観 点 からの 共 同 研 究 ・ 共 同 事 業 を 平 時 に 実 施することが、 国 際 協 力 の 効 果 的 な 実 施 からいっても 望 ましい。この 場 合 の 防 災 とは、 耐 震 補 強 や 耐 震 診 断 、 今 回 実 施した 常 時 微 動 の 計 測 による 壊 れやすさの 評 価 、などといった 文 化 遺 産 自 体 への 対 応 に 関 する 内 容 ももちろんのこと、被 災 予 測 に 基 づく 文 化 遺 産 の 保 存 修 復 計 画 、 計 画 の 検 討 、災 害 時 の 情 報 伝 達 ・ 具 体 的 な 救 済 活 動 の 手 法 など、 体 制 作りも 含 まれる。さらに、 文 化 遺 産 とその 保 護 のもつ 意 味 について、 文 化 遺 産 の 最 も 身 近 にいる 所 有 者 や 地 元 の 住 民 などに 対 して 伝 えることで、 災 害 直 後 に 専 門 家 が 現 場 に 入 れなかったとしても、 所 有 者 や 地 域 の 人 によって 文 化 遺 産 を守 ることも 可 能 になることから、このようなコミュニティベースの 活 動 についても、 検 討 が 必 要 であろう。このようなさまざまな 面 での 防 災 への 取 り 組 みについては、1995 年に 大 きな 地 震 を 経 験 した 日 本 が 伝 えられることが 多 くあるものと 思 われる。今 回 の 調 査 から、タイ 文 化 省 芸 術 局 では、 国 の 大 きさが類 似 し、また 地 震 防 災 に 関 する 経 験 が 豊 富 なことから、 日本 との 共 同 研 究 を 希 望 していることがわかった。 様 々な 分野 の 専 門 家 が 連 携 したうえで、タイにおいて 日 本 がこの 分野 に 貢 献 する 余 地 と 意 義 はたいへん 大 きいと 考 える。さらに、タイの 文 化 遺 産 に 特 有 の 問 題 がある 一 方 で、データベースの 活 用 など 日 本 と 共 通 の 課 題 もあり、タイに 対 する貢 献 だけではなく、この 分 野 での 共 同 研 究 を 通 じて 日 本 にフィードバックできる 成 果 も 多 くあると 考 えられる。5. タイでは、 災 害 発 生 時 の 文 化 遺 産 の 救 援 について、 文 化 省芸 術 局 ( 特 に 考 古 部 門 )および 国 の 出 先 機 関 である 15 の 地方 事 務 所 が 連 携 して 実 施 する 体 制 となっている。また 予 算 措置 は、 災 害 直 後 の 緊 急 的 な 修 理 および 本 格 的 な 修 理 について支 出 元 および 支 出 の 手 続 きが 決 まっており、 修 理 計 画 は 地 方事 務 所 から 提 出 されたものを 芸 術 局 の「 委 員 会 (committee)」で 審 議 し、その 可 否 を 検 討 することとなっている。しかし 一方 で、タイの 文 化 遺 産 の 地 震 防 災 への 取 り 組 みは、 耐 震 対 策や 危 険 度 評 価 など、まだ 緒 に 就 いたばかりである。これは、この 100 年 ほどの 地 震 の 発 生 や 規 模 は 日 本 ほど 大 きくはないことが 原 因 のひとつであると 思 われる。しかし、 過 去 の 記 録や 活 断 層 の 調 査 に 基 づけば、M7 クラスの 大 きな 地 震 の 発 生の 可 能 性 もあることから、 文 化 遺 産 の 地 震 対 策 が 必 要 であることは 間 違 いない。最 後 に、この 調 査 にあたりご 協 力 くださったタイ 文 化 省芸 術 局 考 古 部 門 、 第 8 芸 術 地 方 事 務 所 、 天 然 資 源 省 鉱 物 局の 各 位 に 感 謝 するとともに、 筆 者 を 励 ましてくれたタイ 外務 省 の 友 人 に 感 謝 する。70


第 二 章 各 国 調 査3. インドネシア(スマトラ 沖 地 震 に 伴 う 津 波 被 害 、 中 部 ジャワ 地 震 、パダン 沖 地 震 の 事 例 を 中 心 に)1.近 年 、 文 化 遺 産 の 被 害 に 対 する 関 心 が 高 まり、 自 然 災 害や 人 的 災 害 による 文 化 遺 産 の 被 災 事 例 を 目 にすることが 多くなっている。かけがえのない 文 化 遺 産 について、ふだんから 防 災 対 策 を 講 じておくことが 望 まれる。 防 災 の 取 組 には 国 によってばらつきがある。 文 化 遺 産 が 防 災 対 策 の 視 野に 含 まれていなかったところ、 大 規 模 な 自 然 災 害 の 被 害 をきっかけとして、 初 めて 本 格 的 に 文 化 遺 産 の 防 災 体 制 が 整備 される 事 例 も 多 い。また、 被 災 後 には 文 化 遺 産 の 復 旧 を迅 速 かつ 適 切 に 行 う 必 要 があり、 海 外 からのわが 国 への 協力 要 請 や 専 門 家 による 実 際 の 協 力 事 例 も 増 えている。しかしながら、 災 害 が 起 きてからの 対 応 ではなかなか 迅 速 で 効果 的 な 協 力 は 難 しく、どのような 形 の 貢 献 が 可 能 であるのか、 普 段 から 把 握 しておくことや 相 手 国 と 協 力 連 携 しておくことが 重 要 となる。こうした 背 景 を 踏 まえ、 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムでは 文 化 庁 からの 委 託 を 受 け、 文 化 遺 産 国 際 協 力 に 関 する 調 査 の 一 環 として、 被 災 文 化 遺 産 復 旧 について 事 例 調 査を 行 った。 調 査 の 内 容 は 主 として、 当 該 国 の 文 化 遺 産 の 防災 体 制 と 被 災 時 の 体 制 、また、 具 体 的 な 災 害 事 例 についての 復 旧 と 国 際 協 力 の 状 況 を 焦 点 としている。 本 調 査 ではインドネシア 共 和 国 を 対 象 に、スマトラ 沖 地 震 にともなうアチェの 津 波 被 害 、 中 部 ジャワ 地 震 、そして 2009 年 9 月 に発 生 したばかりの 西 スマトラ 地 震 により 被 災 したパダンに対 する 国 際 協 力 事 例 を 取 り 上 げた。 本 節 における 調 査 概 要に 続 き、 第 2 節 では 災 害 特 性 と 文 化 遺 産 の 被 災 特 性 について 説 明 している。 第 3 節 では 文 化 遺 産 の 防 災 と 復 旧 体 制 について、 第 4 節 では 事 例 分 析 として 実 際 の 文 化 遺 産 被 災 と復 旧 の 概 要 ならびに 国 際 協 力 について、それぞれの 事 例 について 調 査 結 果 をもとにまとめている。 最 後 には 本 調 査 の総 括 と 提 言 をまとめた。期 間 1 次 :2009 年 11 月 1 日 ( 日 )~ 11 月 6 日 ( 木 )2 次 :2009 年 11 月 18 日 ( 水 )~ 12 月 1 日 ( 火 )【1 次 調 査 】11 月 1 日 ( 日 ) 日 本 発 バリ 着11 月 2 日 ( 月 ) バリ 発 ジョグジャカルタ 着プランバナン 遺 跡 群 (ロロジョグラン、セウ、アス)、ラト・ボコ11 月 3 日 ( 火 ) ユネスコ 専 門 家 視 察 団 同 行ボロブドゥール 遺 跡 、パオン 寺 院 、ムンドゥット 寺 院 、セウ 寺 院 、ロロジョグラン11 月 4 日 ( 水 ) ボロブドゥール 遺 跡 およびプランバナン遺 跡 群 に 関 する 専 門 家 会 議(ユネスコ 主 催 )11 月 5 日 ( 木 ) ボロブドゥール 遺 跡 およびプランバナン遺 跡 群 に 関 する 専 門 家 会 議ジョグジャカルタ 発11 月 6 日 ( 金 ) 日 本 着【2 次 調 査 】11 月 18 日 ( 水 ) 日 本 発 ( 田 代 )ジャカルタ 着11 月 19 日 ( 木 ) ジャカルタ 発 パダン 着建 造 物 被 害 状 況 調 査 同 行11 月 20 日 ( 金 ) ブン・ハッタ 大 学 エコ 教 授 面 談都 市 計 画 調 査 同 行日 本 発 ( 菅 原 )ジャカルタ 着11 月 21 日 ( 土 ) パリアマン 地 域 視 察11 月 22 日 ( 日 ) パダン 発 バンダ・アチェ 着打 ち 合 わせ11 月 23 日 ( 月 ) 打 ち 合 わせハルム 氏 宅 訪 問アリ・ハシミ 教 育 財 団アチェ 州 政 府 文 化 観 光 局地 方 公 文 書 館アチェ・インド 洋 研 究 国 際 センター11 月 24 日 ( 火 ) 地 方 公 文 書 館アチェ 州 立 博 物 館アチェ 文 書 情 報 センター津 波 博 物 館 、オランダ 人 墓 地 ( 外 観 のみ)伝 統 的 価 値 ・ 歴 史 研 究 所11 月 25 日 ( 水 ) 打 ち 合 わせグヌンガン 遺 跡バンダ・アチェ 発 ジャカルタ 着11 月 26 日 ( 木 ) ユネスコ・ジャカルタ 事 務 所国 立 図 書 館文 化 観 光 省 歴 史 考 古 総 局11 月 27 日 ( 金 ) ティティク・プジアストゥティ 教 授 面談ジャカルタ 発 パダン 着アンダラス 大 学 との 打 ち 合 わせ11 月 28 日 ( 土 ) オマン・ファトフラフマン 氏 、パダン 着写 本 調 査 ( 以 下 、 訪 問 先 )Mesjid Raya Mudiak Padang / Surau Tandikek(Padang Pariaman)Mesjid Raya VII Koto Ampalu (PadangPariaman)Surau Ampalu Tinggi (Padang Pariaman)Surau Baru Bintungan Tinggi (Padang Pariaman)Surau Paseban(Padang)11 月 29 日 ( 日 ) 写 本 調 査 ( 以 下 、 訪 問 先 )Surau Darussalam (Agam)Surau Syattariah (Batusangkar, Tanah Datar)オマン・ファトフラフマン 氏 、パダン 発71


第 二 章 各 国 調 査11 月 30 日 ( 月 ) 州 立 博 物 館州 立 図 書 館地 方 公 文 書 館菅 原 、 田 代 、パダン 発12 月 1 日 ( 火 ) 日 本 着* 田 代 はバトゥサンカルにあるインドネシア 文 化 観 光 省 歴 史 考 古 総 局 下 にある 西 スマトラ 州 およびリアウ 島 現 地 保存 事 務 所 ( 通 称 BP3 バトゥサンカル )所 長 Fitra Arda 氏 と 面 談 のため 別 行 動 。菅 原 由 美 ( 天 理 大 学 国 際 文 化 学 部 アジア 学 科 インドネシア 語コース・ 講 師 )2 次 調 査田 代 亜 紀 子 ( 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム・ 特 別 研 究 員 )1 次 および 2 次 調 査オマン・ファトフラフマン(インドネシア 国 立 イスラーム 大学 ジャカルタ 校 ・イスラーム 社 会 研 究 所 研 究 員 ) パダン 調査 参 加プラモノ(アンダラス 大 学 ・ 文 学 部 講 師 ) パダン 調 査 参 加2. まず、インドネシアにおいてどのような 自 然 災 害 が 過 去 に発 生 してきたのか、また、どのような 文 化 遺 産 が 被 害 を 受 けてきたのかを 概 観 する。2-1インドネシアは、 火 山 ・ 地 震 国 であり、 日 本 と 同 じ 環 太 平洋 火 山 帯 に 位 置 する。そのため、 洪 水 や 地 滑 りなどの 水 被 害に 加 え、 地 震 、 地 震 に 伴 う 津 波 、 噴 火 が 主 な 自 然 災 害 としてあげられる。2004 年 12 月 には、スマトラ 沖 からインド 洋にかけて 約 1000 キロのプレート 境 界 がずれる 巨 大 地 震 が 発生 し、これにより 発 生 した 大 津 波 で 約 17 万 人 以 上 が 犠 牲 となっている。 火 山 活 動 も 活 発 であり、 首 都 ジャカルタの 位 置するジャワ 島 だけでも、グントゥール 山 、メラピ 山 、ブロモ山 、スメル 山 などの 活 火 山 が 現 在 も 小 規 模 な 噴 火 を 繰 り 返 している。 季 節 的 な 豪 雨 による 土 砂 崩 れや 突 発 的 洪 水 は 毎 年 インドネシア 各 地 で 発 生 しており、 特 に 首 都 ジャカルタは 毎 年のように 発 生 する 洪 水 により、 河 川 流 域 の 流 されやすい 地 域に 位 置 するスラムが 流 され 被 害 がでている。その 理 由 としては、 森 林 伐 採 や 不 十 分 な 都 市 計 画 による 都 市 化 があげられている。2007 年 2 月 にジャカルタを 襲 った 洪 水 では、34 万 人近 くの 人 々に 対 する 避 難 勧 告 がでており、 死 傷 者 もだしている。また、マレーシアとの 国 境 をもつボルネオ 島 、スマトラ島 では 例 年 、 焼 畑 により、 特 に 乾 季 に 大 規 模 な 山 火 事 が 発 生し、 近 隣 諸 国 まで 影 響 をおよぼしている。2-2インドネシアは 300 以 上 の 民 族 が 存 在 するといわれる 多民 族 国 家 である。また、 首 都 ジャカルタが 位 置 するジャワ島 を 始 め、スマトラ 島 、ボルネオ 島 (カリマンタン)、スラヴェシ 島 、バリ 島 等 、 大 小 様 々な 島 々があり、 世 界 最 多の 島 々が 存 在 する 島 嶼 国 でもある。 様 々な 民 族 、そして 地域 の 文 化 を 尊 重 し、「 多 様 性 の 中 の 統 一 」を 目 指 すと 同 時 に、インドネシアという 国 家 のもとに 統 合 していくために、 文化 政 策 は 非 常 に 重 要 な 役 割 を 担 っている。 文 化 財 保 護 法 は1992 年 に 発 令 され、 現 在 に 至 る。インドネシア 国 内 で 登 録されている 考 古 遺 産 は 8000 件 を 越 えるが、 当 然 地 域 によってばらつきがある 1 。ユネスコの 世 界 遺 産 リストには、ボロブドゥール 遺 跡 、プランバナン 遺 跡 群 、サンギラン 遺 跡 の3つの 文 化 遺 産 と4つの 自 然 遺 産 が 登 録 されている(2009年 12 月 現 在 )。インドネシアの 文 化 遺 産 として 国 際 社 会 に最 も 知 られているのはボロブドゥール 遺 跡 とプランバナン遺 跡 群 などに 代 表 されるジャワ 島 に 位 置 する 大 規 模 な 石 造建 造 物 だが、トラジャ、ニアス、ブキティンギ 等 における木 造 建 造 物 、または 植 民 地 期 様 式 の 建 造 物 、バリのブサキ寺 院 などのヒンドゥー 寺 院 、 国 内 に 散 在 する 数 々のモスクなどの 宗 教 建 造 物 など、 様 々な 歴 史 的 建 造 物 が 存 在 する。そのような 多 様 性 に 富 んだインドネシアの 文 化 遺 産 を広 くとらえつつ、 過 去 の 被 災 状 況 を 概 観 することは 難 しく、それを 示 す 歴 史 的 資 料 も 本 調 査 では 確 認 できなかった。ジャワを 中 心 として 遺 跡 修 復 に 関 するオランダ 植 民 地 時 代の 報 告 書 は、1900 年 代 初 めのプランバナン 遺 跡 群 修 復 報 告書 などが、 現 地 事 務 所 に 保 管 されているが、 被 災 に 特 化 した 過 去 の 資 料 は、 確 認 できていない。ここでは、 有 形 ・ 不 可 動 産 に 対 象 を 限 って 過 去 5 年 間 でインドネシアの 被 災 文 化 遺 産 復 旧 体 制 に 影 響 をおよぼしたと 思 われるものを 以 下 にあげるにとどめる。2004 年 12 月 スマトラ 沖 地 震 および 津 波 被 害 によるアチェ 文 字 文 化 財 の 被 災2005 年 3 月 ニアス 沖 地 震 による 歴 史 的 木 造 建 造物 の 被 災2006 年 5 月 中 部 ジャワ 地 震 による 世 界 遺 産 プランバナン 遺 跡 をはじめとする、 中 部 ジャワ 州 およびジョグジャカルタ 特 別 州 の遺 跡 、 王 宮 、 町 並 みなどの 被 災2009 年 9 月 西 スマトラ 地 震 によるパダン 市 内 歴 史的 建 造 物 の 被 災72


第 二 章 各 国 調 査3. ここでは、 厳 しい 自 然 状 況 と 歴 史 のなかで、 様 々な 自 然災 害 に 見 舞 われてきたインドネシアにおける 文 化 遺 産 に 対する 防 災 体 制 と 取 り 組 み、また、 被 災 時 の 体 制 と 取 り 組 みについて 概 観 する。3-1 2004 年 の 津 波 での 反 省 を 受 け、インドネシア 政 府 は 各 国の 支 援 を 受 けながら、 地 震 ・ 津 波 ・ 火 山 噴 火 などのハザードに 関 する 研 究 、 対 策 に 関 する 研 究 などをすすめている。我 が 国 によっても、 独 立 行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構 (JapanScience and Technology Agency、 通 称 :JST) と 独 立 行 政 法 人国 際 協 力 機 構 (Japan International Cooperation Agency、 通 称 :JICA) が 連 携 する「 地 球 規 模 課 題 対 応 国 際 科 学 技 術 協 力 」として、2009 年 から 2011 年 の 3 年 間 「インドネシアにおける 地 震 火 山 の 総 合 防 災 策 」というプロジェクトが、 東 京大 学 地 震 研 究 所 とインドネシア 科 学 院 の 間 で 開 始 されている 2 。このプロジェクトには、 日 本 およびインドネシア 側の 各 大 学 機 関 とともに、インドネシア 政 府 省 庁 では 測 量 地図 庁 、 気 象 気 候 地 球 物 理 庁 、 国 家 防 災 庁 、 内 務 省 、 国 家 教育 省 、 公 共 事 業 省 なども 参 加 している。 具 体 的 には、 地 震 ・津 波 の 発 生 機 構 の 解 明 と 推 測 、 火 山 噴 火 予 測 と 活 動 評 価手 法 などのハザードに 関 するもの、 災 害 に 強 くなる 社 会 基盤 の 構 築 、 災 害 対 応 と 復 興 時 の 社 会 の 脆 弱 性 の 克 服 などの対 策 に 関 するもの、 防 災 教 育 推 進 と 意 識 向 上 、 研 究 成 果 をいかすための 行 政 との 連 携 などの 研 究 活 動 をおこなっている。津 波 と 地 震 に 関 しての 防 災 は、2004 年 の 津 波 被 害 後 、 少しずつではあるが 防 災 体 制 にその 発 展 がみられる。しかし一 方 で、 文 化 遺 産 に 対 しては 防 災 体 制 の 計 画 ・ 実 施 などはされていないのが 現 況 である。3-2被 災 した 後 の 被 災 状 況 調 査 は、 中 央 政 府 、 地 方 政 府 、 文 化遺 産 の 所 有 者 、ユネスコなどの 国 際 機 関 によっておこなわれる。1992 年 に 発 令 された 文 化 財 保 護 法 によれば、 中 央 政 府は 被 害 状 況 調 査 を 行 う 義 務 をもっているが、それは 地 方 政 府に 委 託 できる。また、 文 化 遺 産 の 所 有 者 も 調 査 に 関 わることが 許 されている。プランバナン 遺 跡 群 やボロブドゥール 遺 跡といったユネスコの 世 界 遺 産 リストに 登 録 されている 遺 産 の場 合 、ユネスコもまた 調 査 を 行 うようになっている。修 復 のための 資 金 は、それが 国 家 文 化 遺 産 である 場 合 、 中央 政 府 によって 国 家 予 算 から 支 出 される。それ 以 外 にも、 地方 政 府 、NGO、ユネスコなどの 国 際 機 関 、 文 化 遺 産 の 所 有者 からの 資 金 も 受 け 付 ける。 修 復 方 針 と 計 画 策 定 は、 中 央 政府 の 手 に 委 ねられる。しかし、 自 然 災 害 による 被 災 の 場 合 は広 く 専 門 家 を 招 き、その 修 復 方 針 と 計 画 策 定 に 意 見 を 反 映 させるようにされる。 策 定 された 方 針 と 計 画 は、 中 央 政 府 、 地方 政 府 、 文 化 遺 産 の 所 有 者 、 非 営 利 団 体 、 大 学 などにより 実施 に 移 される 3 。また、その 際 は 専 門 家 の 監 督 も 受 ける。 以上 のような 修 復 へのプロセスは、 被 災 時 と 通 常 時 では 違 っている。また、 緊 急 対 策 への 取 り 組 みは 以 下 の 取 りである。1 被 災 状 況 調 査 のためのチームを 編 成2 調 査 の 後 、 被 災 状 況 調 査 報 告 書 作 成3 被 災 文 化 遺 産 の 清 掃 および 保 護 対 策 実 施4 2 次 災 害 を 防 ぐための 対 策 を 施 す5 文 化 遺 産 復 旧 のための 委 員 会 設 立 と 管 理 のためのチームを 編 成被 災 時 の 修 復 へのプロセス通 常 時 の 修 復 へのプロセス調 査計 画 策 定中 央 政 府 での 検 討国 家 予 算実 施73


第 二 章 各 国 調 査4. ここでは、2004 年 12 月 26 日 にスマトラ 島 沖 で 発 生 した大 地 震 とそれにともなうインドネシア 洋 大 津 波 による 被 害 、2006 年 5 月 26 日 に 中 部 ジャワ 島 において 発 生 した 地 震 の 被害 を 事 例 としてとりあげ、 自 然 災 害 により 被 災 した 文 化 遺 産に 対 する 当 該 国 の 対 応 と 支 援 体 制 に 焦 点 を 当 てて 分 析 する。これらふたつの 自 然 災 害 は、 国 際 社 会 にも 大 きく 取 り 上 げられたと 同 時 に、インドネシア 国 内 の 体 制 改 革 に 及 ぼした 影 響も 大 きい。 加 えて、 被 災 文 化 遺 産 に 関 しては、このふたつの災 害 に 対 する 支 援 と 復 旧 に 我 が 国 が 深 く 関 わっていることもあり、これらふたつの 事 例 に 関 し、その 支 援 と 復 旧 の 過 程 を分 析 することは、インドネシアにおける 被 災 文 化 遺 産 復 旧 に関 わる 体 制 を 検 討 するとともに、 日 本 による 将 来 的 な 文 化 遺産 国 際 協 力 のあり 方 を 検 討 する 際 に 不 可 欠 と 考 える。また、 本 現 地 調 査 計 画 中 の 2009 年 9 月 30 日 には 西 スマトラ 州 パダン 沖 を 震 源 地 としたマグネチュード6の 大 規 模 な 地震 が 発 生 し、 西 スマトラ 州 の 州 都 であるパダンを 中 心 として多 くの 被 害 がでた。 文 化 遺 産 に 関 しては、ユネスコのジャカルタ 事 務 所 とインドネシア 政 府 の 要 請 を 受 け、 独 立 行 政 法 人国 立 文 化 財 機 構 東 京 文 化 財 研 究 所 を 中 心 に 被 災 状 況 調 査 に 関する 調 査 団 が 派 遣 され、 現 地 において 調 査 を 実 施 している(2009 年 11 月 11 日 ~ 25 日 )。このため、 本 事 例 調 査 においても、 緊 急 にこのパダン 地 震 で 被 災 した 文 化 遺 産 に 関 する調 査 を3つ 目 の 事 例 としてとりあげることとした。 災 害 後5 カ 年 を 経 たアチェ、3 カ 年 を 経 た 中 部 ジャワ、 震 災 直 後のパダンという3つの 現 場 における 被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係る 状 況 および 問 題 点 をみていくことで、それぞれの 段 階 で必 要 とされる 支 援 が 明 らかにできると 考 える。4-14-1-1 2004 年 12 月 26 日 にスマトラ 島 沖 で 発 生 した 大 地 震 とそれにともなうインド 洋 大 津 波 は、インドネシアのアチェ 州を 始 めてとして、タイ、マレーシア、ミャンマー、バングラデシュ、インド、スリランカ、モルディブ、ソマリア、ケニア、タンザニア、セーシェルに 甚 大 な 被 害 をもたらし、死 者 ・ 行 方 不 明 者 は 30 万 人 近 くを 数 える( 図 1)。津 波 は 諸 地 域 の 経 済 的 ・ 社 会 的 インフラストラクチャーに 壊 滅 的 被 害 をもたらし、その 凄 まじさは 5 年 を 経 た 現 在も、 各 地 域 で 破 壊 された 社 会 基 盤 の 復 興 に 力 が 注 いでいることからも 明 らかである。図 1津 波 被 災 地 域 [Source:http://www.fao.org/]74


第 二 章 各 国 調 査津 波 は 震 源 地 であるスマトラ 沖 から 発 生 し、スマトラ 島北 端 に 位 置 し 海 外 沿 いに 展 開 していた 都 市 であったバンダ・アチェを 中 心 に 多 くの 被 害 がでた( 地 図 1)。バンダ・アチェ 市 内 を 中 心 とした 死 亡 者 数 は 167,000 人 にのぼり、住 宅 を 失 った 被 災 者 も 50 万 人 以 上 とされる。4-1-2 津 波 によって 破 壊 されたのは 単 に 施 設 や 設 備 ばかりでなく、その 社 会 の 歴 史 を 背 負 った 文 化 財 や 知 識 を 持 つ 人 々もまた、その 多 くが 失 われた。 東 南 アジアにおけるイスラームの 入 り 口 として 栄 えたアチェに 由 来 する 歴 史 文 書 の 数 々が、 貴 重 な 人 命 と 共 に、 地 震 津 波 災 害 によって 失 われたのである。まず、 文 字 文 化 財 に 限 らず、アチェにどのような文 化 遺 産 があるのか 概 観 しながら 被 災 状 況 をみていく。15 世 紀 終 わりにアチェ 川 河 口 に 成 立 したアチェは、 港市 国 家 として 発 展 し、17 世 紀 はじめにはスルタンを 中 心とする 集 権 体 制 を 確 立 した。スルタン・イスカンダル・ムダ( 在 位 1607 ~ 36)と 次 のイスカンダル・タニ( 在 位1636 ~ 41)の 時 代 に 全 盛 期 をむかえ、この 時 代 の 遺 構 としてバンダ・アチェ 市 内 にいまも 残 るのがタマン・サリ・グヌンガン (Taman Sari Gunongan) である( 写 真 1)。スルタン・イスカンダル・ムダが、その 妃 プトレ・パン(プトゥリ・パハン)のために 建 立 したと 伝 えられるタマン・サリ・グノンガンは、1995 年 にユネスコ 世 界 遺 産 暫 定 リストに 登 録 されている。2004 年 の 津 波 はこの 遺 構 まで 到達 したものの、 遺 構 の 目 立 った 被 害 はなかったとのことである。また、 交 易 時 代 に 栄 えたアチェに 残 された 様 々な 墓標 は、 過 去 にどのような 人 々がアチェに 存 在 していたかを示 す 貴 重 な 史 料 のひとつとなっている。2009 年 に 建 設 された 津 波 博 物 館 に 隣 接 するオランダ 人 墓 地 もそのひとつである。 墓 地 にはアチェ 戦 争 (1873 ~ 1912 年 )、それに 続く 時 代 において 命 を 落 としたオランダ 人 が 埋 葬 されている( 写 真 2)。ここでは 津 波 により、 多 くの 墓 標 が 流 されたが、オランダからの 援 助 により 速 やかに 墓 標 は 捜 索 され、もとに 戻 されたとのことである。オランダとの 戦 闘 が 激 しかったアチェでは、ジャワ 島 と 比 較 してオランダ 占 領 下 において 建 立 された 植 民 地 期 の 歴 史 建 造 物 が 少 ない。 本 調 査 において 確 認 できたのは、インドネシア 銀 行 として 現 在 も 使 用されているもので、1916 年 に 建 立 された 建 造 物 である ( 旧De Javasche Bank)( 写 真 3)。この 建 造 物 に 津 波 被 害 があったか 確 認 できなかった。以 上 のように、バンダ・アチェにおける 有 形 の 不 可 動 産は 限 られており、 政 府 によるインベントリーは 存 在 するものの、その 内 容 詳 細 は 確 認 できなかった。また、 自 由 アチェ運 動 が 一 応 の 終 結 をみたのは 2005 年 であり、 津 波 前 にはBEUEH I.SABANGBANDA ACEHMALAKA STRAITINDIAN OCEANNORTH SUMATRASIMEULE IS.BANYAK IS.地 図 1:アチェ 全 域 地 図75


第 二 章 各 国 調 査写 真 1 タマン・サリ・グヌンガン (Taman Sari Gunongan)写 真 2 オランダ 人 墓 地にはアチェは 東 南 アジアにおけるイスラーム 学 の 中 心 となり、 同 地 で 活 躍 していたアブドゥルラウフ・アル・シンキーリー(`Abd al-Raʼuf al-Singkili、 通 称 シャ・クアラSyiah Kuala)やヌルディン・アル・ラニーリ(Nur al-Dinal-Raniri)のような 宗 教 学 者 がアラビア 語 文 献 を 現 地 語 であるマレー 語 に 翻 訳 したことにより、 東 南 アジアにおけるイスラーム 学 の 進 展 に 大 きく 貢 献 した。 上 記 の 宗 教 学 者 たちは、タフシール(コーラン 解 釈 )やフィクフ(イスラーム 法 学 )などの 基 本 的 テクストだけでなく、スーフィーズム(イスラーム 神 秘 主 義 )の 著 作 も 残 している。アチェのタリーカ(イスラーム 神 秘 主 義 教 団 )はその 後 、スマトラやジャワに 影 響 を 与 えていくため、 東 南 アジアにおけるタリーカ 史 の 展 開 を 知 る 上 で、 貴 重 な 史 料 といえる。アチェの 宗 教 学 者 が 残 した 著 作 の 中 には、 現 在 まで 東 南アジアにおいて 出 版 され 続 けているものもある。 現 存 するアチェの 写 本 は 多 くが 18 ~ 19 世 紀 のもので、その 大 半 がオランダなどの 外 国 の 研 究 機 関 図 書 館 に 保 管 されているが、 植 民 地 時 代 に 購 入 ・ 収 得 したものであり、 写 本 の 出 自についてのデータが 失 われてしまったものが 多 い。アチェに 残 っている 写 本 は、 現 在 、ダヤ(dayah)と 呼 ばれるイスラーム 宗 教 教 育 機 関 かあるいは 個 人 が 所 有 しているものになるが、 特 に 地 震 後 、 売 買 がさかんになり、 個 人 コレクター 宅 や 博 物 館 にも 集 積 された。しかし、タノ・アベ(TanohAbee)やアウェ・グタ(Awee Geutah)などの 古 いダヤに残 されている 写 本 は、 比 較 的 出 自 がはっきりしているため、アチェにおけるスクリプトリウム 研 究 をおこなう 重 要 な 史料 として 現 在 、 専 門 家 の 注 目 を 浴 びている。写 真 3 インドネシア 銀 行 ( 旧 De Javasche Bank)政 治 的 理 由 により 立 ち 入 りが 難 しく、これまでに 文 化 遺 産 について 十 分 な 調 査 ができているとは 言 い 難 い 状 態 にあった。そのようななか、 津 波 により 注 目 されたのが、 文 字 文 化 財 としてアチェの 写 本 である。アチェは 13 世 紀 に 東 南 アジアで 最 初 にイスラームが 到 来した 地 域 であり、 特 に 墓 石 などにその 痕 跡 が 残 っていることで 有 名 である。その 後 、 中 東 との 交 流 により、16 ~ 17 世 紀津 波 による 文 字 文 化 財 被 害 については、 東 京 外 国 語 大学 による 支 援 を 受 けて、 津 波 から1カ 月 たたず、インドネシア 国 立 イスラーム 大 学 の 研 究 者 チームがアチェに 入り、 調 査 を 実 施 している。 調 査 結 果 は、 状 況 記 録 ビデオ 付きでいち 早 く 日 本 を 含 めた 各 国 の 研 究 者 にもたらされた(Appendix 4 参 照 )。津 波 による 文 字 文 化 財 被 害 の 特 徴 として、 以 下 の3つがあげられる。1 被 害 を 全 体 的 にみると、 文 字 文 化 財 は 津 波の 被 害 を 受 け 救 済 不 可 能 の 状 態 となったもの、 津 波 の 被 害をほとんど 受 けていないもの、の2つに 分 かれる。つまり、津 波 による 建 物 の 崩 壊 および、1 階 部 分 に 保 管 された 文 書の 流 失 では、 文 書 は 救 済 不 可 能 な 状 態 であるが、 相 対 的 に、2 階 より 上 層 に 保 管 された 文 書 は 津 波 の 影 響 をほとんど 受けていない。しかし、 中 には 例 外 もあり、アリ・ハシミ 教育 財 団 では、 津 波 による 浸 水 は 床 上 5センチほどであったにも 関 わらず、 地 震 により 本 棚 が 倒 れたことで 床 面 に 散 乱した 書 物 や 資 料 が 濡 れたという 例 もある。2アチェ 文 字 文化 財 について 必 要 とされた 支 援 は、 津 波 被 害 からの 復 旧 と76


第 二 章 各 国 調 査いうよりは、インベントリーおよびカタログの 作 成 や 保 管状 況 の 改 善 など、 常 時 の 状 況 改 善 支 援 であったといえる。災 害 以 前 、アチェにおける 文 字 文 化 財 についての 情 報 はほとんどなかった。そのため、インベントリーおよびカタログ 作 成 が 必 要 とされた。3アチェ 地 域 の 特 徴 として、 多 くの 貴 重 な 写 本 がイスラームに 関 わるものであったため、 支援 を 行 う 者 にもイスラーム 写 本 知 識 の 必 要 性 が 求 められた。2009 年 に 再 建 された( 写 真 4)。 津 波 前 は 70 点 近 くの 写 本を 保 管 していたが、 津 波 によりすべて 流 されてしまった。現 在 新 しく 建 設 された 建 物 には、オランダから 贈 られた 書物 を 保 管 している。 写 本 も 蒐 集 したいが 難 しいとのことである。センター 長 はシャ・クアラ 大 学 講 師 でもあり、 職 員数 は 18 名 である。 建 物 はできたものの、 津 波 で 全 ての 所蔵 図 書 が 失 われたため、 図 書 ・ 資 料 の 収 集 が 今 後 の 第 一 の課 題 とされる。4-1-3 2009 年 12 月 26 日 に、アチェは 津 波 から5 年 をむかえた。本 調 査 においては、 津 波 後 の 被 災 状 況 調 査 が 実 施 されたところを 中 心 に、 現 状 把 握 のための 視 察 と 聞 き 取 り 調 査 を 実施 した( 地 図 2)。 調 査 は 東 京 外 国 語 大 学 アチェ 支 援 室 と協 力 し、アチェの 写 本 に 関 する 支 援 をおこなう 民 間 団 体 である PKPM (Pusat Kajian Pendidikan dan Masyarakat) の 協 力のもと 行 われた。また、 一 覧 の 順 番 は 被 災 後 調 査 と 同 じとした。 (PDIA (Pusat Dokumentasi danInformasi Ache)アチェのシャ・クアラ 大 学 とアチェ 州 政 府 によって 設立 ・ 運 営 されているセンターで、 大 学 生 が 多 く 使 用 する 文書 情 報 センターであった。 津 波 により 倒 壊 したが、その 後 (Balai Kajian Sejarah dan NilaiTraidtional)考 古 遺 跡 などの 保 存 を 担 当 するアチェ・ 北 スマトラ 考古 遺 跡 管 理 事 務 所 (Balai Pelestarian Peninggalan PurbakalaBanda Ache、 通 称 :BP3 アチェ ) と 並 んで 文 化 観 光 省 下 の機 関 のひとつである。1995 年 に 設 立 され、 文 化 観 光 省 の下 、インドネシア 全 国 に 11 か 所 センターがある。 地 域 の文 化 、 民 俗 を 研 究 し、 普 及 することを 目 的 としており、 年4 回 の 論 文 集 の 刊 行 、 年 刊 誌 の 発 行 などをおこなっている。それら 刊 行 物 はアチェ 各 地 の 学 校 と 政 府 機 関 に 配 布 される。アチェの 研 究 所 は、アチェおよび 北 スマトラ 地 域 を担 当 している。 津 波 により 建 物 に 被 害 を 受 け、1 階 部 分 の所 蔵 図 書 ・ 資 料 も 流 失 した。 被 災 時 には、2 階 部 分 にも 書籍 が 保 管 されており、それらは 無 事 であったが、 被 災 後 6日 目 に 火 事 が 発 生 し 焼 失 した。 津 波 以 前 は 6000 冊 の 図 書MALAKA STRAIT Pusat Kajian Pendidikan dan Masyarakat (PKPM)Dinas Kebudayaan dan Pariwisata)地 図 2:バンダアチェ 調 査 対 象 諸 機 関77


第 二 章 各 国 調 査写 真 4 再 建 されたアチェ 文 書 情 報 センターと 42 点 の 写 本 ( 津 波 後 の 被 害 状 況 調 査 では 15 点 )を 保 管していた。2006 年 にアチェ・ニアス 復 興 庁 の 資 金 で 建 物が 再 建 されている( 写 真 5)。 建 物 だけではなく 図 書 支 援もアチェ・ニアス 復 興 庁 に 対 し 申 請 したが、 資 金 のみの 支援 だった。 津 波 後 は、オランダ 王 立 東 南 アジアおよびカリブ 海 地 域 研 究 所 (Koninklijk Instituut voor Tall-, Land- enVolkenkunde te Leiden / Royal Institute of Southeast Asian andCaribbean Studies in Leiden、 通 称 KITLV)のジャカルタ 支 部 、オーストラリア 国 立 図 書 館 、フランス 極 東 学 院 ジャカルタ支 部 から 本 が 寄 贈 されており、 所 蔵 図 書 は 2000 タイトルとなった。 写 本 は 現 在 地 域 から 寄 せられたもの 2 点 を 保 管している。写 真 5 再 建 された 伝 統 価 値 ・ 歴 史 研 究 所写 真 6 封 筒 に 入 れ 保 存 されている 写 本写 真 7 写 本 保 管 室 (Yayasan Pendidikan Ali Hasjmi)アチェのインドネシア・イスラーム 協 議 会 議 長 であった故 アリ・ハシミ 氏 が 設 立 した 図 書 館 で、イスラーム 関 連 の書 籍 を 集 めている。 被 災 後 の 調 査 で 記 述 されたように 4 、地 震 により 本 棚 が 倒 れ 床 に 散 乱 した 書 籍 や 資 料 などが、 津波 による 床 上 5 センチの 浸 水 で 濡 れてしまった。 津 波 後 は、東 京 外 国 語 大 学 により 財 団 の 所 有 する 書 物 について 2005年 カタログ 作 成 がおこなわれている。 所 有 している 写 本は 400 点 程 度 。カタログ 作 成 時 は 314 点 (232 冊 )だったが、 近 隣 から 持 ち 込 まれた 写 本 が 増 えたとのことである。PKPM の 支 援 で 100 点 ほどの 写 本 が 修 復 されており、それら 写 本 は1 点 ずつ 封 筒 に 丁 子 とともに 入 れられ、 保 管 されている( 写 真 6)。 津 波 後 はトルコからも 視 察 団 が 来 たが、特 に 具 体 的 支 援 には 至 らなかったとのことである。 東 京 外国 語 大 学 がカタログ 作 成 を 行 った 後 は、ドイツのライプチヒ 大 学 により 写 真 撮 影 機 材 が 持 ち 込 まれ、 電 子 化 がおこなわれている。 現 在 146 点 の 電 子 化 が 終 了 しているが、これは 全 体 の 半 分 に 満 たない。アリ・ハシミ 氏 の 息 子 で 館 長 のスルヤ 氏 以 外 に 職 員 は 3 名 おり、2 名 は 資 料 整 理 の 手 伝 いで、1 名 が 電 子 化 の 専 門 として 働 いている。写 本 などの 重 要 な 資 料 は 館 長 室 の 隣 に 設 置 された 冷 房 がとりつけられたスペースに 保 管 されている( 写 真 7)。しかし、 人 が 不 在 の 時 には 冷 房 が 切 られるため、 保 管 温 度 は一 定 に 保 たれているわけではない。PKPM による 裏 打 ちなどの 修 復 処 置 がなされた 写 本 については、 丁 子 をいれた 封筒 で 保 管 されていたが、その 他 のものはそのまま 重 ねて 保管 されていた。また、いくつかの 写 本 にはカビの 発 生 が 認められている( 写 真 8)。 特 にシリカゲルのような 乾 燥 剤を 置 いている 様 子 はみられない。また、 進 められている 電子 化 作 業 は、 担 当 者 がひとりで 進 めているため、1 日 3 点が 限 界 とのことである。しかし、 電 子 化 作 業 を 支 援 していたライプチヒ 大 学 が 2009 年 12 月 にはアチェを 撤 退 して、ジョグジャカルタでの 写 本 電 子 化 作 業 に 移 るため、その 後はドイツから 借 りているカメラなどの 機 材 も 使 用 ができな78


第 二 章 各 国 調 査くなる。 故 に 担 当 者 は、 作 業 を 急 いでいたが、1 名 では 限界 があるため、 結 局 すべての 写 本 の 電 子 化 は 果 たせないまま、 機 材 も 撤 収 される 状 況 にある。 (Museum Negeri Propinsi)津 波 での 被 害 はなかったが、 多 数 の 写 本 を 保 管 するため、東 京 外 国 語 大 学 アチェ 支 援 室 は 州 立 博 物 館 を 協 力 パートナーとしてアチェ 文 字 資 料 に 関 する 支 援 を 進 めてきた。 保管 する 写 本 は 約 2000 点 にのぼる。 博 物 館 には 修 復 室 も 設けられており、 東 京 外 国 語 大 学 が 主 催 した 紙 修 復 のワークショップ 参 加 者 により 修 復 作 業 ( 主 に 裏 打 ち)がすすめられている( 写 真 9)。 裏 打 ちに 使 用 される 和 紙 は、 我 が 国の 国 立 図 書 館 により 支 援 されている。また、 使 用 している薬 品 のいくつかも 日 本 により 以 前 支 援 されたものである 事が 確 認 された。 写 本 のカタログ 化 はされていないが、 修 復室 で 修 復 が 済 んだ 各 写 本 は 封 筒 に 入 れられ、 館 内 別 所 に 設けられたデジタル 化 のための 部 屋 において 図 書 専 用 スキャナーでスキャンされる( 写 真 10)。スキャン 終 了 後 は、インターネットを 通 して 検 索 システム 用 画 面 に 写 本 情 報 が 入力 されていく。それら 作 業 が 終 了 した 写 本 は 館 内 の 保 管 庫に 運 ばれる( 写 真 11)。本 調 査 により、 博 物 館 が 抱 えるいくつかの 課 題 が 明 らかになった。まず、 写 本 のデジタル 化 の 問 題 があげられる。写 真 9 修 復 作 業 風 景写 真 10 スキャン 作 業写 真 8 カビの 発 生写 真 11 館 内 の 保 管 庫79


第 二 章 各 国 調 査写 本 のデジタル 化 はドイツのライプチヒ 大 学 により 実 施 されているもので、デジタル 化 に 必 要 な 専 用 スキャナーおよびパソコンはライプチヒ 大 学 により 提 供 されているが、アリ・ハシミ 教 育 財 団 と 同 じく、ライプチヒ 大 学 が 2009 年 12 月 にアチェでの 事 業 を 終 了 し、ジョグジャカルタへ 事 業 拠 点 を 移 すため、 写 本 のデジタル 化 作 業 は 途 中 で 終 了 される 予 定 である。博 物 館 が 使 用 していた 専 用 スキャナーおよびパソコンもジョグジャカルタに 移 されるため、 博 物 館 もこれまでのようにデジタル 化 作 業 を 続 けることはできない 状 況 になっている。次 にあげられるのが、 写 本 保 管 庫 設 備 に 関 しての 問 題 である。 修 復 、デジタル 化 が 終 了 した 写 本 は、 写 本 、 古 い 布 、 金属 品 等 の 保 管 のために 館 内 に 設 けられた 保 管 庫 に 運 ばれ 保 管されるが、 冷 房 設 備 が 既 に 長 い 期 間 故 障 しており、 温 度 ・ 湿度 は 一 定 に 保 たれていない。 乾 季 と 雨 季 では 温 度 も 湿 度 も 著しく 違 う 地 域 であるため、 寒 暖 の 差 や 高 い 湿 度 は、 写 本 だけではなく 保 管 されている 他 の 美 術 品 などにも 影 響 があると 思われる。 津 波 後 5 年 間 は、 住 宅 、 公 共 施 設 、 防 災 設 備 などアチェの 社 会 的 ・ 経 済 的 インフラストラクチャー 復 興 に 力 が 注がれており、アチェ 復 興 計 画 のなかで 文 化 については 後 まわしされていた 感 が 否 めない。そのようななか、 博 物 館 設 備 の支 援 として 2 年 前 にアチェ・ニアス 復 興 庁 の 支 援 金 で 博 物 館敷 地 内 にギャラリーとして 建 物 が 建 設 されたが、 内 部 は 大 きい 体 育 館 のような 空 間 で、 高 さ3 階 ほどのこの 建 造 物 は、 博物 館 としての 使 用 用 途 がなく、 使 われることなく 封 鎖 されたまま 現 在 も 放 置 されている 状 況 にある。 現 場 のニーズをくみ取 らずにおこなわれた 箱 物 支 援 の 典 型 といえる。最 後 に、 文 字 文 化 財 修 復 技 術 についての 問 題 があげられる。東 京 外 国 語 大 学 アチェ 支 援 室 により、 既 に 歴 史 文 書 修 復 技 術の 研 修 (2005 年 5 月 、 於 ジャカルタ)、 文 書 管 理 技 術 研 修 (2005年 12 月 、 於 アチェ)、 資 料 整 理 保 存 技 術 研 修 (2006 年 、 於アチェ) 等 の 研 修 が 実 施 されている。 加 えて、アチェ 文 字 文化 財 保 存 関 係 者 が 2 名 日 本 に 招 聘 され、3 カ 月 の 長 期 的 研 修を 受 けている。 現 地 における 研 修 には、アチェ 州 立 博 物 館 職員 のみを 対 象 としてではなく、 公 文 書 館 、アリ・ハシミ 教 育財 団 、タノ・アベの 関 係 者 も 招 かれている。これら 研 修 が 功を 奏 し、 州 立 博 物 館 を 中 心 に 津 波 前 には 実 施 されてこなかった 写 本 修 復 が 行 われているといえるが、 現 在 修 復 を 担 う 人 材は 津 波 後 初 めて 修 復 方 法 を 学 んだ 職 員 であり、5 年 経 た 現 在 、より 深 い 紙 の 修 復 に 関 する 専 門 的 知 識 を 得 る 機 会 はなく、 指導 する 立 場 の 人 間 も 不 在 である。 現 在 の 段 階 で 必 要 なのは、より 深 い 専 門 知 識 をもつ 修 復 家 の 育 成 であり、その 修 復 家 による 後 進 の 育 成 であろう。また、 州 立 博 物 館 で 紙 の 修 復 に 使用 されている 和 紙 及 びその 他 の 修 復 資 材 は 日 本 の 支 援 に 頼 っており、 持 続 的 修 復 がなされていくには、 修 復 するための 材料 についても 支 援 の 仕 方 を 検 討 する 必 要 がある。写 真 12 展 示 されている 写 本写 真 13 シリカゲルを 配 置80


第 二 章 各 国 調 査 (Dayah Tanoh Abee)今 回 の 調 査 では 訪 問 できなかったが、バンダ・アチェより 50 キロメートルのところに 位 置 する 写 本 を 所 有 するイスラーム 寄 宿 塾 で、 地 震 および 津 波 による 被 害 はなかった。東 京 外 国 語 大 学 により 2005 年 ~ 2008 年 に 調 査 およびカタログ 作 成 が 行 われ、その 後 、オランダのクラウス 公 子 基 金(Prince Claus Funds voor Cultuur en Ontwikkeling) より 助 成 を受 けてコレクションを 保 管 するための 図 書 館 が 建 てられている。 (Badan Arsip) (Perpustakaan Daerah)現 在 は 公 文 書 館 と 図 書 館 が 合 併 している。 写 本 は 所 有 していないが、 主 にインドネシア 独 立 後 の 公 文 書 を 保 管 している。なかには 1920 年 代 の 文 書 もあるということである。津 波 では、1 階 部 分 に 保 管 していたものが 流 されたが、ほとんどの 資 料 は2 階 より 上 階 に 保 管 していたため、それらは 無 事 であった。 津 波 後 には、 国 際 協 力 機 構 による 支 援 があり、いくつかの 文 書 はジャカルタへも 運 ばれ 修 復 されている。 公 文 書 館 についてはジャカルタの 国 立 公 文 書 館 が、図 書 館 についてはジャカルタの 国 立 図 書 館 が 津 波 後 支 援 を行 っている。アーカイブ 学 専 門 家 がいないことが 課 題 としてあげられるが、 現 在 修 復 もおこなってはおらず、 修 復 専門 家 もいない。 写 本 を 所 有 しているわけではなく、 比 較 的新 しい 資 料 を 保 存 しているため、 現 在 は 緊 急 的 必 要 性 を 感じていないようだが、 将 来 的 な 修 復 専 門 家 の 必 要 性 は 認 めており、ワークショップなどがあれば 参 加 したいとのことだった。 最 近 は、 研 究 のために 公 文 書 館 を 使 用 する 外 国 人研 究 者 もあるようである。 (Pak.Harun Keuchik Leumiek)津 波 後 の 調 査 には 入 っていないが、2008 年 に PKPM が写 本 修 復 に 関 する 支 援 をおこなっている。 写 本 を 含 めた 古美 術 のコレクションで 知 られる 人 物 で、 古 美 術 商 も 営 んでいる。28 点 の 写 本 と9 点 のコーランをコレクションとして 所 有 している( 写 真 12)。 津 波 前 から 写 本 もコレクションしていたが、 被 害 はなかった。PKPM によりコレクションの 写 本 、コーランともにすべて 写 真 撮 影 が 終 了 している。また、 写 本 は 部 分 的 に 裏 打 ちされ、1 点 ずつ 封 筒 に 丁 子 とともに 入 れられている。 写 本 を 保 管 してある 棚 にはシリカゲルを 置 いている。 他 にも、 金 銀 製 品 、 陶 磁 器 、 古 布 などが 保 管 されているため、 部 屋 自 体 の 温 度 も 保 たれているようである。 写 本 コレクターとして、しばしばアリ・ハシミ教 育 財 団 に 持 ち 込 まれる 写 本 に 対 する 見 識 を 財 団 に 提 供 しているとのことである。 保 管 状 況 は 他 の 個 所 の 写 本 保 管 状況 と 比 較 すると 非 常 に 良 い( 写 真 13)。81


第 二 章 各 国 調 査4-1-4 津 波 前 のアチェは、インドネシア 国 内 でも 情 報 が 閉 ざされていた 地 域 であった。インドネシアが 独 立 してから 続 けられていたアチェの 独 立 を 求 める 自 由 アチェ 運 動 は、1998 年 にスハルト 政 権 が 崩 壊 してからも 続 いていた。そのようななか、2004 年 の 津 波 による 徹 底 的 な 町 の 破 壊 は、 外 には 閉 ざされてきたこの 地 方 をいっきに 世 界 に 繋 げるきっかけとなったといえる。 津 波 後 の 一 時 的 な 措 置 として、 救 援 のためにアチェにはいってくる 外 国 政 府 および 諸 NGOを 認 めたインドネシア 政 府 だが、その 後 、アチェ 復 興 への 国 際 協 力 の 必 要 性 を 認め、 現 在 ではアチェと 海 外 の 組 織 がジャカルタの 政 府 を 通 さずに 直 接 協 力 体 制 を 築 くことも 可 能 となっている。2005 年には 自 由 アチェ 運 動 とインドネシア 政 府 間 に 和 平 協 定 も 結 ばれており、2004 年 以 前 と 比 較 して 外 国 人 が 立 ち 入 りやすくなっている。ここでは、アチェ 津 波 被 害 に 対 する 諸 外 国 の 文 化 遺 産 に 対する 支 援 について 注 目 し、 我 が 国 による 支 援 の 位 置 づけを 考察 する。アチェの 津 波 被 害 については、 津 波 直 後 の 緊 急 支 援 から、その 後 の 住 宅 再 建 補 助 まで、 我 が 国 の 機 関 による 様 々な 支 援がおこなわれてきた。 一 方 で、 文 化 遺 産 に 関 わる 支 援 については、 東 京 外 国 語 大 学 による 文 字 文 化 財 支 援 以 外 はほとんど行 われていない。ここでは、 東 京 外 国 語 大 学 の 活 動 を 中 心 に、国 際 協 力 の 視 点 から 日 本 による 支 援 がどのようなものだったのかふれてみたい。津 波 で 被 災 したアチェの 文 字 文 化 財 に 対 し、 東 京 外 国 語 大学 が 迅 速 に 支 援 を 実 行 に 移 せたのは、 津 波 以 前 からのインドネシアでの 調 査 ・ 研 究 基 盤 および 実 績 があったからこそである。 支 援 では、 津 波 から2 年 前 にあたる 2002 年 度 に 発 足 した 史 資 料 ハブ 地 域 文 化 研 究 拠 点 プロジェクトが 最 初 の 核 を 成した。このプロジェクトは、これまで 十 分 に 活 用 されず、 散逸 ・ 消 失 の 恐 れのあるアジア・アフリカ 諸 地 域 に 関 する 現 地語 の 資 料 を、 現 地 に 残 したまま、 電 子 化 等 の 手 段 により、 利用 可 能 な 形 態 で 保 存 し、 研 究 用 に 供 することを 目 的 としている。その 活 動 の 一 環 として、2003 年 度 からインドネシアの現 地 研 究 者 と 連 携 して、スマトラのパレンバン 及 びパダンの在 地 文 書 のカタログ 化 と 電 子 化 を 進 めており、この 延 長 線 上で、2005 年 度 以 降 、アチェの 文 書 に 着 手 する 予 定 であった。しかし、2004 年 12 月 26 日 の 発 生 したスマトラ 島 沖 地 震津 波 直 後 、インドネシアの 文 書 館 、 図 書 館 、 大 学 関 係 者 から東 京 外 国 語 大 学 に 対 して、アチェの 史 資 料 を 中 心 とする 文 化財 の 復 旧 ・ 保 存 に 協 力 して 欲 しいとの 要 請 を 受 けたこともあり、アチェにおいて 多 数 の 犠 牲 者 が 生 じたこと、そしてアチェの 歴 史 文 書 が 壊 滅 的 な 打 撃 を 受 けたことから、 急きょ 上 記 研 究 拠 点 の 活 動 の 一 部 をアチェに 集 中 させ、 残 された 歴 史 文 書 の 調 査 、 電 子 化 等 による 記 録 を 行 ったとのことである [ 東 京 外 国 語 大 学 2006]。ここでは 東 京 外 国 語 大 学 によるアチェ 支 援 についてのプロジェクトの 特 徴 をあげてみたい。まず、 第 一 に、このプロジェクトが、それまで 東 京 外 国 語 大 学 がインドネシア 側研 究 者 と 築 いてきた 関 係 によってこそ 成 り 立 った 点 があげられる。 津 波 被 害 前 に 築 かれてきたインドネシア 側 研 究 者との 信 頼 関 係 は、 津 波 直 後 の 情 報 提 供 につながり、インドネシア 写 本 学 会 (Masayarakat Pernaskahan Nusantara、 通称 :MANNASA)を 中 心 とした 研 究 者 からの 支 援 要 請 につながったといえる。また、そのようなインドネシア 側 との信 頼 関 係 は、 被 災 後 の 混 乱 した 状 態 でも 確 かな 情 報 をもたらし、それら 情 報 は、 被 災 地 への 支 援 を 検 討 していた 国 際協 力 機 構 (JICA) にも 提 供 され、 検 討 ののち 国 際 協 力 機 構の 援 助 は 土 地 台 帳 の 修 復 に 焦 点 が 絞 られることになる。第 二 に、プロジェクトの 継 続 性 があげられる。 短 期 間 で集 中 して 行 われる 緊 急 支 援 に 対 して、 長 期 的 な 支 援 は 特 に資 金 面 での 問 題 を 抱 える。しかし、このプロジェクトは、文 部 科 学 省 によるCOEプロジェクト、 文 化 庁 による 委 託事 業 、トヨタ 財 団 助 成 事 業 としてなど、 複 数 の 資 金 源 を 駆使 して 現 在 まで 継 続 させ 5 年 目 を 迎 えていることは 特 筆 に値 する。また、 継 続 的 に 現 地 を 何 らかの 形 で 訪 れることにより、さらなる 信 頼 関 係 も 生 まれている。最 後 に、プロジェクトによる 支 援 が、 被 災 した 写 本 をどうするか、という 短 期 的 視 点 ではなく、 将 来 的 にアチェの写 本 がどのように 保 存 されていくべきか、という 視 点 にたって 実 施 されていることが 指 摘 できる。アチェの 写 本 に関 しては、 支 援 時 まだその 全 貌 がつかめていなかったため、最 初 にインベントリー、カタログ 作 成 、デジタル 化 という記 録 に 関 わる 支 援 が 必 要 とされ、 次 に 写 本 の 修 復 、 保 管 、管 理 についての 課 題 がでてきた。プロジェクトは 写 本 保 管場 所 とその 状 況 に 応 じ 段 階 的 に 進 められ、 東 京 文 化 財 研 究所 、 元 興 寺 文 化 財 研 究 所 の 協 力 も 得 て 写 本 の 修 復 に 関 するワークショップも 開 催 されている。ここで 日 本 側 の 運 営 体制 として、 中 東 ・イスラーム 研 究 に 関 する 専 門 家 による 写本 の 価 値 づけと、 写 本 自 体 の 修 復 を 可 能 とする 体 制 が 整 えられたのである。ドイツのライプチヒ 大 学 が、アチェにおいて 写 本 デジタル 化 プロジェクトを 開 始 したのは、2007 年 のことである。82


第 二 章 各 国 調 査デジタル 化 はアリ・ハシミ 教 育 財 団 所 蔵 の 写 本 、 州 立 博 物館 所 蔵 の 写 本 に 対 して 行 われ、2009 年 12 月 に 終 了 した。このプロジェクトは、 中 東 およびアジアの 写 本 を 対 象 としておこなわれているもので、アチェのみに 対 象 を 限 ったものではなく、2009 年 12 月 以 降 は、デジタル 化 の 機 材 などとともにジョグジャカルタの 王 宮 が 所 有 する 写 本 のデジタル 化 を 実 施 する 予 定 であるという。しかし、 前 述 した 通り、 全 てのデジタル 化 を 完 了 せず 機 材 とともに 撤 収 してしまい、 完 了 されずデジタル 化 をまつ 写 本 が 残 された。 資 金としては、ドイツ 外 務 省 の 支 援 を 受 けているものの、ライプチヒ 大 学 の 支 援 は、 学 術 的 目 的 が 主 眼 としてある。その目 的 は 写 本 のデジタル 化 とデータベース 化 であり、 写 本 の保 存 修 復 までむけられてはいなかったのである。ジ ャ カ ル タ に 支 部 を も つ フ ラ ン ス 極 東 学 院 (Écolefrançaise dʼExtrême-Orient,、 通 称 :EFEO)およびオランダ王 立 東 南 アジアおよびカリブ 海 地 域 研 究 所 (KITLV) は、津 波 によって 書 物 が 流 失 してしまった 伝 統 価 値 ・ 歴 史 研 究所 などに 対 して 書 物 を 提 供 するなどの 支 援 を 行 っている。また、KITLV は、 津 波 後 に 図 書 館 に 所 蔵 するアチェに関 する 書 物 のデジタル 化 を 行 い、オランダ 教 育 省 の 資 金 援助 を 受 け、ハーグのオランダ 王 立 図 書 館 監 督 のもと、ウェブ 上 の 公 開 を 行 っている 5 。アチェ・インド 洋 研 究 国 際 センター(International Centrefor Ache and Indian Ocean Studies、 通 称 :ICAIOS)は、アチェにある3つの 大 学 と 海 外 の 学 術 機 関 等 の 協 力 により 設 立 された。2007 年 にはその 構 想 が 示 され、2009 年 初 めにはシャ・クアラ 大 学 構 内 に 研 究 所 が 開 設 された。 研 究 所 はアチェにおける 地 域 、 国 内 、 国 際 レベルの 調 査 を 支 援 し、 調 査 研 究を 通 してアチェの 将 来 を 模 索 すると 同 時 に、 過 去 を 理 解 するよう 促 進 する。 現 在 の 所 長 はフィンランドの 文 化 人 類 学者 で、 運 営 委 員 会 には EFEO、KITLV、 東 京 外 国 語 大 学 、大 英 図 書 館 、ハーバード 大 学 などの 教 授 陣 が 名 を 連 ねる。資 金 はオーストラリア 政 府 の Aus AID、 国 連 開 発 計 画 などから 得 ているが、 研 究 に 関 しては、 最 近 オーストラリアのメルボルン 大 学 とも 協 力 している。アチェを 研 究 する 外 国人 研 究 者 の 拠 点 となると 同 時 に、アチェでの 学 問 活 動 を 活性 化 させる 役 割 を 担 うが、 国 際 協 力 の 調 整 役 というわけではない。4-1-5 アチェを 襲 った 津 波 から5 年 が 過 ぎ、 被 害 が 大 きかったバンダ・アチェの 復 興 は 進 み 現 在 の 市 街 にその 被 害 の 跡 をみることは 難 しい。それでも、 廃 墟 となったままの 建 物 と 荒 地 、住 宅 地 に 残 されたままの 船 舶 、まだ 新 しい 建 物 ばかりの 町 の様 子 に、その 被 害 の 凄 まじさの 片 鱗 をみる。ここでは、 東 京外 国 語 大 学 の 活 動 資 料 および 今 回 の 調 査 をもとに、アチェにおいて 被 災 した 文 字 文 化 財 復 旧 についてまとめてみたい。 津 波 によってさらわれた 写 本 、 資料 、 書 物 などの 文 字 文 化 財 は、 被 害 を 受 けて 復 旧 不 可 能 なもの、 被 害 を 受 けなかったがその 状 況 が 改 善 されるべきものの2つに 分 かれた。つまり、そこで 必 要 とされたのは、 何 が 残されて 何 が 残 されなかったのか、そして 残 されたものの 内 容は 何 なのか、という 情 報 であった。 一 部 では、 津 波 による 被害 が 少 なく、 書 物 が 水 に 浸 かっただけで 後 に 乾 燥 されたものもあったが、「 水 に 濡 れた 書 物 は 天 日 干 ししない」という 処置 方 法 が 浸 透 していなかったため、 状 態 を 悪 化 させた 例 も 認められた。アチェ 文 字 文 化 財 の 場 合 、どのようなものが、どこに、どれくらい 所 蔵 されているのか、 津 波 前 にはほとんど 情 報 がなかった。 津 波 後 1カ 月 以 内 でバンダ・アチェ 市 内の 文 字 文 化 財 についての 被 災 状 況 を 得 ることができたのは、インドネシア 写 本 学 会 のネットワークによる。ジャカルタ 在住 (つまり 被 災 地 以 外 )の 研 究 者 を 中 心 とした 素 早 い 動 きと海 外 研 究 者 との 繋 がりが、 被 災 状 況 および 必 要 とされる 支 援の 具 体 化 につながったといえる。 一 方 で、 人 的 被 害 が 大 きいバンダ・アチェのような 事 例 では、 被 災 1ヶ 月 後 というのが現 地 調 査 をおこなうタイミングとして 早 すぎたのではないかという 指 摘 もあり、 今 後 支 援 のタイミングについては 検 討 されるべきである。アチェの 文 字 文 化 財 の 保 存 、という 大 きい 目 標を 掲 げた 場 合 、 大 まかに、インベントリー、カタログ 作 成 、写 本 の 修 復 、デジタル 化 、 保 管 、 管 理 という 過 程 がある( 図2)。アチェの 各 機 関 ではこれらが 順 序 立 てて 計 画 されることは 津 波 前 も 後 もなく、 緊 急 支 援 のみに 頼 る 行 動 計 画 であったようである。この 点 は 見 直 されるべきであろう。また、 緊 急 的 支 援 として、 写 本 の 修 復 方 法 とその 修 復 で 使用 される 和 紙 や 化 学 薬 品 などを 供 与 することは 短 期 間 では 容易 く、 効 果 的 である 場 合 もある。しかし、その 継 続 性 を 考 えると、 各 機 関 が 抱 える 問 題 性 を 考 慮 しながら 長 期 的 視 点 で 各機 関 に 対 する 段 階 的 支 援 をおこない、 修 復 に 使 用 する 材 料 についても 継 続 的 に 自 国 において 購 入 できる 仕 組 みを 整 えることも 必 要 である。 支 援 の 際 のカウンターパートについては、戦 略 的 に 特 定 の 機 関 を 対 象 とした 支 援 を 行 い、ある 過 程 においての 技 術 や 知 識 はその 機 関 による 普 及 を 期 待 することもできるが、これは 継 続 的 かつ 長 期 的 研 修 計 画 が 必 須 であろう。83


第 二 章 各 国 調 査ない。また、 州 立 博 物 館 に 建 てられた 建 造 物 が、 使 用 されず 2 年 間 放 置 された 状 態 にあるのは 前 述 した 通 りである。アチェは、 国 際 的 支 援 が 効 果 的 かつ 迅 速 におこなわれるように、 国 際 機 関 がアチェ 州 政 府 に 対 してジャカルタの 中央 政 府 を 通 さず 直 接 やりとりできる 唯 一 の 州 である。また、その 復 旧 過 程 は、その 後 に 実 現 した 自 由 アチェ 運 動 とインドネシア 政 府 の 和 平 の 行 方 とともに 5 年 経 った 今 も 国 際 社会 の 注 目 を 集 めている。アチェでの 経 験 が、その 後 2006年 中 部 ジャワ 地 震 、2009 年 の 西 スマトラ 地 震 に 活 かされることになったのも 確 かである。図 2 文 字 文 化 財 保 存 のために 考 えられる 支 援 過 程アチェにおいては 津 波 後 、NGOを 通 した 海 外 支 援 が 行 われるようになり、NGOはアチェに 対 する 国 際 協 力 で 重 要 な 位 置 を 占 めている。 東 京 外 国 語 大 学 、ライプチヒ 大 学 とも 協 力 しているNG O 団 体 PKPM (Pusat Kajian Pendidikan dan Masyarakat) は、シャ・クアラ 大 学 と 国 立 イスラーム 大 学 アル・ラニリ 校 の 講師 が 中 心 となって 2003 年 に 設 立 したNGOである。 津 波 前は 教 育 やジェンダーをテーマのプロジェクトを 多 く 実 施 してきたが、 東 京 外 国 語 大 学 およびライプチヒ 大 学 と 協 力 した 縁もあり、 現 在 の 活 動 の 40%は 写 本 に 関 するものであるという。 当 然 のことながら、イスラームに 関 する 知 識 も 深 く、 写本 に 書 かれたジャウィ 文 字 やアラビア 文 字 に 精 通 するものもいるため、 貴 重 な 存 在 である。また、 中 央 政 府 や 州 政 府 があまり 目 をむけないアリ・ハシミ 教 育 財 団 や、タナ・アベ、ハルム 氏 などの 個 人 宅 に 所 蔵 されている 写 本 にも 様 々な 形 で 協力 している。バンダ・アチェ 市 内 だけではなく、アチェ 全 体の 文 字 文 化 財 についてはまだ 把 握 されていない 点 を 考 えると、PKPM のようなNGOが 果 たす 役 割 は 大 きいと 考 えられる。アチェは、インドネシア 政 府 が 災 害 からの 復 旧 のために 立 ち 上 げる「 復 興 庁 」の 最 初 の 事 例 となった。 津 波 により 初 めて 立 ち 上 げられたアチェ・ニアス andReconstructions Executing Agency for Aceh and Nias / BaranRehabilitasi and Rekonstraksi NAD-Nias、 通 称 :BRR)は 5 年目 をむかえ、 各 国 からの 国 際 支 援 を 統 括 し、アチェ・ニアスの 復 興 計 画 に 沿 い 活 動 をおこなっている。 文 化 面 においては、州 立 博 物 館 に 新 しい 建 造 物 を 建 設 し、 津 波 博 物 館 を 建 設 するなど、3 年 目 に 実 施 しているが、あくまでも 箱 モノとして 支援 であり、 文 化 遺 産 に 関 わるプロジェクトなどは 実 施 してい4-24-2-1 2006 年 5 月 27 日 、ジャワ 島 の 中 部 をマグネチュード 6.3の 地 震 が 襲 った。 死 者 は 3000 人 以 上 、 負 傷 者 は 5 万 人 ともいわれる。 震 源 地 は 内 陸 部 で、バントゥル 県 で 多 くの 被害 が 確 認 された( 図 3)。4-2-2 ジャワ 島 には 多 くの 歴 史 的 石 造 建 造 物 、 木 造 建 造 物 が 存在 する。それらは、 中 部 ジャワ 州 およびジョグジャカルタ特 別 州 に 集 中 しており、 震 源 地 に 近 い 古 都 ジョグジャカルタ 近 郊 には、ユネスコの 世 界 文 化 遺 産 として 登 録 されるボロブドゥール 遺 跡 、プランバナン 遺 跡 群 の2つが 存 在 する( 地 図 3)ジャカルタ 市 内 には 王 宮 があり、 王 宮 に 関 連 した 木 造 、 煉 瓦 造 歴 史 建 造 物 が 多 く 存 在 している。地 震 の 翌 日 にはユドヨノ 大 統 領 が 被 災 地 を 訪 れ、プランバナン 遺 跡 も 訪 ねたこともあり、プランバナン 遺 跡 の 被 害は 早 い 時 期 から 報 道 記 事 に 掲 載 された( 写 真 14)。 世 界 遺産 であるプランバナン 遺 跡 群 とボロブドゥール 遺 跡 の 状 況を 調 査 するため、 急 遽 カンボジアのアンコールで 開 催 されていた 会 議 に 出 席 していたイタリア 人 の 歴 史 的 建 造 物 構 造専 門 家 ジョルジオ・クローチがユネスコより 依 頼 をうけジョグジャカルタへと 飛 び、 被 災 調 査 がおこなわれたのは、 震 災 後 10 日 のことである。 被 災 調 査 は、インドネシア 文 化 観 光 省 歴 史 考 古 総 局 下 に 位 置 するジョグジャカルタ特 別 州 遺 跡 保 存 管 理 事 務 所 および 中 部 ジャワ 州 遺 跡 保 存 管理 事 務 所 の 協 力 のもとにおこなわれ、その 世 界 遺 産 ボロブドゥール 遺 跡 とプランバナン 遺 跡 群 の 被 災 状 況 を 知 る 重 要な 資 料 となった。 調 査 の 結 果 、プランバナン 遺 跡 群 のなかでもシヴァをはじめ6 塔 の 祠 堂 をもつロロジョグラン( 写真 15)、 同 じ 歴 史 公 園 内 に 位 置 するセウ 寺 院 が 深 刻 な 被 害を 受 けていることがわかった( 写 真 16)。また、プランバナン 近 郊 のプラオサン 寺 院 ( 写 真 17)、 修 復 途 中 であったソジワン 遺 跡 にも 大 きな 被 害 が 認 められた( 写 真 18)。一 方 で、 市 内 に 位 置 する 王 宮 や、ジャワの 伝 統 的 建 築 様84


第 二 章 各 国 調 査図 3 震 源 地 と 被 害 状 況 図[Source: http://unosat.web.cern.ch/unosat/]JAVA SEAN↑SEMARANG●WEST JAVADieng Plateu▲ Mt.MerbabuMagelamg●12 3▲Mt.Merapi● SurakartaEAST JAVANUSAKAMEANGAN IS.5 67 48 910YOGYAKARTAINDIAN OCEAN遺 跡 名1 Boroburur2 Candi Pawon3 Candi Mendut4 Prambanan5 Candi Sewu6 Candi Plaosan7 Candi Sari8 Cabdi Kalasan9 Candi Sajiwan10 Ratu Boko地 図 3中 部 ジャワ 州 およびジョグジャカルタ 特 別 州 全 域 の 主 要 な 遺 跡 分 布 地 図85


第 二 章 各 国 調 査写 真 14 ユドヨノ 大 統 領 の 現 地 訪 問(アンタラ 新 聞 2006 年 5 月 31 日 付 報 道 )写 真 15 ロロジョグラン 全 景 (2006 年 7 月 撮 影 )写 真 16 セウ 寺 院 (2006 年 7 月 撮 影 )写 真 17 プラオサン 寺 院 (2006 年 7 月 撮 影 )写 真 18 ソジワン 寺 院 (2006 年 7 月 )写 真 19 ジョグジャカルタ 市 内 王 宮 関 係 木 造 建 造 物 被 害(2006 年 6 月 Jogya Heritage Society)86


第 二 章 各 国 調 査式 であるジョグロ 様 式 の 木 造 建 造 物 、 水 の 王 宮 といわれるタマン・サリ、 古 い 町 並 みを 残 すコタ・グデ、 市 外 のイモギリにある 王 家 の 墓 廟 などの 世 界 遺 産 以 外 の 文 化 遺 産 に 関する 情 報 は、ジョグジャ・ヘリテージ・ソシエティ (JogjaHeritage Society) によってもたらされた。ジョグジャ・ヘリテージ・ソシエティは、ガジャ・マダ 大 学 の 教 授 が 中 心になり 設 立 された 団 体 である。 震 災 後 にウェブサイトを 立ち 上 げ、ウェブサイトを 通 してジョグジャカルタの 文 化 遺産 被 災 状 況 をいち 早 く 世 界 に 伝 えた。 王 宮 では、 木 造 建 造物 1 棟 が 全 壊 し、タマン・サリを 始 めとする 煉 瓦 造 の 建 造物 の 破 損 も 激 しかった( 写 真 19)。4-2-3 インドネシア 政 府 およびユネスコによる 調 査 により、 中部 ジャワに 位 置 する2つの 世 界 遺 産 のうち、ボロブドゥール 遺 跡 に 被 害 がないことは 早 い 段 階 でわかっていたため、大 きな 被 害 を 受 けたプランバナン 遺 跡 群 の 復 旧 に 国 内 外 の注 目 が 集 まった。プランバナン 遺 跡 歴 史 公 園 は、 中 部 ジャワの 観 光 産 業 を 支 える 重 要 な 観 光 名 所 であり、その 復 旧 は災 害 から 復 興 を 果 たそうとする 地 域 の 象 徴 ともなりえたのである。プランバナン 遺 跡 群 の 中 心 となるのが、ロロジョグランといわれるヒンドゥー 教 遺 跡 である。ロロジョグランの 詳細 な 破 損 調 査 はジョグジャカルタ 遺 跡 保 存 管 理 事 務 所 の 管轄 の 下 、ボロブドゥール 遺 跡 保 存 事 務 所 、ガジャ・マダ 大学 などの 協 力 を 受 けて 得 ておこなわれ、 報 告 書 が 作 成 された。その 間 も、 落 下 したラトナは 撤 去 され、 壁 に 生 じた 亀裂 などは 応 急 処 置 的 に 修 理 された。 修 復 工 事 は、 一 番 被 害の 大 きかったガルーダ 祠 堂 から 順 番 に、ナンディ、ハンサ、ブラフマー、ヴィシュヌの 順 に 進 み、2009 年 11 月 の 段 階では、ハンサまでの 修 復 が 終 了 している。 全 ては、 中 央 政府 およびジョグジャカルタ 特 別 州 予 算 により 行 われており、 足 場 はユネスコと、 日 本 政 府 が 2007 年 草 の 根 文 化 無償 により 供 与 したものである。 観 光 客 の 安 全 を 守 るため 一時 入 場 が 禁 止 されていた 内 苑 への 観 光 客 の 立 ち 入 りは、その 後 部 分 的 に 解 除 されている。現 在 も 続 けられている 修 復 工 事 の 最 大 の 問 題 は、 内 苑 中心 に 位 置 するシヴァ 祠 堂 の 修 復 である。6 祠 堂 のなかでも最 も 高 い 47 メートル 祠 堂 の 中 央 にはシヴァ 神 を 祀 る 主 室があり、その 南 、 西 、 北 面 の 側 室 には、それぞれアガスティア、ガネーシャ、ドゥルガーが 祀 られている。シヴァ祠 堂 には 一 見 して 顕 著 な 破 損 は 認 められず、 他 の 祠 堂 とは異 なりラトナの 落 下 や 欄 楯 の 崩 落 はない。しかし、 破 損 状況 調 査 では、 基 壇 入 隅 廻 りや 身 舎 脚 部 で 各 所 に 大 きな 亀 裂が 生 じており、 西 面 門 構 えも 身 舎 背 面 側 のずれに 伴 い、 門と 出 入 り 口 階 段 のまぐさが 押 されるような 形 で 西 面 に 傾 斜していることが 報 告 されている [ 東 京 文 化 財 研 究 所 2007、p.107]。 現 在 議 論 されている 問 題 は、この 一 見 すると 破 損 が認 められないシヴァ 祠 堂 に 対 する 部 分 的 解 体 もしくは 全 体 解体 による 修 復 をおこなうのかどうかである。 一 見 外 側 からは破 損 が 認 められない 場 合 も、 当 然 、 不 可 視 の 部 分 に 生 じた 破損 により 建 物 が 崩 壊 する 危 険 性 もある。 加 えて、シヴァ 祠 堂の 修 復 は、インドネシア 独 立 前 の 1918 年 頃 に 当 時 のオランダ 領 東 インド 考 古 局 により 行 われており、 修 復 に 関 わる 資 料がインドネシア 側 には 保 管 されていない。よって、 修 復 にどのような 材 が 使 用 されており、 内 部 がどのような 構 造 となっているのかが、 他 の5 祠 堂 とは 違 い 不 明 のままなのである。現 在 の 技 術 では 破 壊 せずに 内 部 をスキャンすることは 不 可 能なため、 内 部 の 構 造 および 破 損 状 況 を 知 るために 部 分 解 体 をするかどうかも 議 論 がくり 返 されている。同 じ 歴 史 公 園 内 でも 中 部 ジャワ 州 の 管 轄 となっているセウ寺 院 は、 中 央 祠 堂 を 囲 んで 8 塔 のアピット、240 のプルワラが 配 置 されている 仏 教 寺 院 である。 修 復 は 独 立 後 、1980 年から 1992 年 に 行 われており、1992 年 の 文 化 財 保 護 法 により、国 家 遺 産 として 指 定 されている。また、 世 界 遺 産 プランバナン 遺 跡 群 のなかにくみこまれる 世 界 遺 産 でもある。 緊 急 的 支援 とその 後 の 修 復 は、 中 央 政 府 、 中 部 ジャワ 州 政 府 、NGO、アラブ 首 相 国 連 邦 政 府 からの 資 金 提 供 により 行 われており、修 復 費 用 は 150 万 ドルと 見 積 もりされている。 足 場 は 震 災 後にユネスコにより 供 与 されたものを 使 用 しており、 不 足 している 部 分 は 竹 製 および 木 製 の 足 場 で 補 充 している 状 態 である( 写 真 20)。 修 復 は 中 央 祠 堂 を 主 な 対 象 としておこなわれているが、 部 分 的 に 中 央 祠 堂 を 囲 むアピットの 修 復 も 同 時 におこなわれている。4-2-4 被 災 後 、サウジアラビアによる 財 政 支 援 を 別 にすれば、プランバナン 遺 跡 に 対 する 具 体 的 支 援 に 動 いた 国 は 日 本 が 唯 一である。おりしも 日 本 では、 地 震 発 生 後 、2006 年 6 月 16 日に「 海 外 の 文 化 遺 産 の 保 護 に 係 る 国 際 的 な 協 力 の 推 進 に 関 する 法 律 」が 成 立 した。これを 受 けて 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムが 発 足 し、 我 が 国 における 文 化 遺 産 国 際 協 力 を 掲 げる機 関 や 専 門 家 の 連 携 を 図 り、この 分 野 における 効 果 的 かつ 機動 的 な 国 際 協 力 を 実 践 するための 体 制 づくりが 本 格 的 に 動 きだしたところであった。このような 国 内 的 背 景 により、 中 部ジャワ 地 震 で 被 災 した 文 化 遺 産 に 対 する 支 援 は、 発 足 したばかりの 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムの 最 初 の 活 動 対 象 となったのである。インドネシア 政 府 からの 要 請 を 受 け、 支 援 は 文 化 遺 産 国 際協 力 コンソーシアムによって 企 画 され、 文 化 庁 による 独 立 行政 法 人 文 化 財 研 究 所 東 京 文 化 財 研 究 所 への 委 託 事 業 として 実施 されることになった。コンソーシアムに 参 加 する 外 務 省 、国 際 交 流 基 金 による 協 力 も 得 て、 日 本 人 専 門 家 による 調 査 団87


第 二 章 各 国 調 査写 真 20 中 央 祠 堂 に 組 まれた 足 場が 派 遣 されたのは 震 災 2 カ 月 後 の 2006 年 7 月 のことである( 団 長 : 大 和 智 )。 調 査 は 世 界 遺 産 に 特 定 せず、ジョグジャカルタを 中 心 に 文 化 遺 産 の 被 災 状 況 を 把 握 することを目 的 とした。この 第 一 次 調 査 に 基 づき、 協 力 の 主 眼 はプランバナン 遺 跡 群 のなかでもロロジョグランの6 祠 堂 に 係 る技 術 協 力 とし、 第 2 次 (2007 年 2 月 20 日 ~ 3 月 10 日 )、第 3 次 (2007 年 10 月 21 日 ~ 11 月 4 日 )の 調 査 においては、 破 損 状 況 のより 詳 細 な 把 握 、 建 築 構 造 、 地 盤 特 性 の 解 析 、関 連 資 料 、 修 復 に 係 る 歴 史 資 料 の 収 集 がおこなわれ、 最 終的 にはインドネシア 側 担 当 機 関 との 協 議 のうえ、 耐 震 対 策を 考 慮 した 修 理 設 計 が 立 案 された。これら 成 果 は、 報 告 書として 日 本 語 ・ 英 語 版 が 作 成 され、インドネシア 政 府 およびユネスコに 提 出 されている。また、このような 技 術 的 提 言 に 加 え、2007 年 には 我 が国 の 草 の 根 文 化 無 償 により 修 復 作 業 に 必 要 な 足 場 の 供 与 がおこなわれ、 現 場 で 活 用 されている( 写 真 21)。これは、第 1 次 調 査 において、インドネシア 側 から 足 場 に 関 する 強い 要 望 があったことによる。第 1 次 調 査 から 第 3 次 調 査 は 全 て 文 化 庁 事 業 として 東 京文 化 財 研 究 所 が 委 託 して 実 施 された。その 後 、2008 年 4月 からは 筑 波 大 学 による 文 部 科 学 省 科 学 研 究 補 助 金 によって 引 き 継 がれ、2011 年 3 月 までの 予 定 で 現 在 も 続 けられている。写 真 21 日 本 政 府 により 供 与 された 足 場前 述 したように、 世 界 遺 産 であるプランバナンおよびボロブドゥール 遺 跡 の 状 況 を 把 握 するため、ユネスコはいち 早 く 国 際 専 門 家 としてのクローチ 博 士 を 現 場 に 派 遣 し報 告 書 作 成 を 依 頼 した。また、 日 本 調 査 団 が 派 遣 される頃 には、インドネシア 側 の 要 請 受 け、 足 場 の 提 供 を 行 っている。2006 年 11 月 には「 地 震 被 災 後 の 文 化 遺 産 救 済 のための 会 合 (Consultative Meeting on Preservation of CulturalHeritage of the Aftermath of the Earthquake)」をジョグジャカルタにおいて 開 催 している。 続 いて、2007 年 3 月 には「 世界 遺 産 プランバナン 遺 跡 群 およびタマン・サリ 水 の 王 宮復 興 のための 国 際 専 門 家 会 議 (International Expert Meetingfor Rehabilitation of Prambanan World Heritage Site and TamanSari Water Castle in Yogyakarta and Central Java, Indonesia)」、同 年 6 月 には「プランバナン 遺 跡 群 、セウ 寺 院 群 及 びタマン・サリ 水 の 王 宮 復 興 のための 技 術 会 合 (Technical Meetingon Rehabilitation of Prambanan Temple Complex, Sewu TempleComplex and Tamansari Water Castle)」が 開 催 され、 修 復 に関 する 技 術 的 問 題 について 議 論 されている。 我 が 国 からも 調 査 団 に 参 加 した 専 門 家 が 各 会 議 に 派 遣 され、これら会 議 において 調 査 成 果 を 報 告 している。 本 年 も 2009 年 1188


第 二 章 各 国 調 査月 には、「ボロブドゥールおよびプランバナン 遺 跡 救 済 国際 会 議 (International Coordinating Meeting for SafeguardingBorobudur and Prambanan World Heritage Sites)」が 開 催 され、プランバナン 遺 跡 およびセウ 寺 院 の 修 復 経 過 が 報 告 された。震 災 後 、サウジアラビアは 財 政 に 関 する 支 援 を 表 明 したが、これは 2 カ 国 間 の 支 援 ではなく、ユネスコを 通 した 支援 として 行 われた。これら 財 政 支 援 により、ユネスコによる 最 初 の 会 議 が 開 催 され、 資 金 の 一 部 はセウ 寺 院 修 復 にもあてられている。アチェ、パダンでも 支 援 をおこなっているオランダのクラウス 公 子 基 金 は、NGOであるジョグジャ・ヘリテージ・ソシエティ (Jogja Heritage Soceity) と 協 力 し、 大 きな 被 害を 受 けたイモギリのバティック 工 場 の 再 建 をおこなった。工 場 の 再 建 により、ジョグジャカルタの 伝 統 工 芸 であるバティックの 製 造 販 売 は 速 やかに 再 開 され、バティック 職 人たちは 職 業 機 会 が 失 われることなく、 職 場 に 復 帰 できたとされる。文 化 と 開 発 のためのクラウス 公 子 基 金 は 1996 年 9 月 6日 、オランダの 王 配 クラウス 公 子 の 70 歳 の 誕 生 日 を 記 念した 設 立 された 基 金 である。 諸 文 化 に 注 目 し、 文 化 と 開 発の 相 関 関 係 を 促 進 することを 目 的 としているが、2003 年 4月 のイラク 国 立 博 物 館 での 略 奪 を 受 けて、2003 年 9 月 には 文 化 緊 急 対 策 プロジェクト (Cultural Emergency Response)6を 立 ち 上 げている。 基 金 は、このプロジェクトにより 世界 各 国 で 人 災 、 自 然 災 害 などにより 被 害 を 受 けた 文 化 に 対する 緊 急 時 の 支 援 をおこなっている。 地 震 で 被 災 したイランのバム(2003 年 )、 紛 争 により 破 壊 されたパキスタンのナブルス(2004 年 ・2005 年 )、モロッコ 北 部 で 発 生 した地 震 により 被 災 したモスクの 修 復 (2004 年 )などである。この 基 金 は 相 手 国 政 府 だけではなく、 現 地 研 究 機 関 に 対 しても 行 われるもので、 緊 急 的 資 金 援 助 で、 事 業 に 携 わるのは 現 地 の 人 々が 主 流 となっている。プランバナン 遺跡 群 に 対 する 支 援 は、 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムが 設立 されてからの 初 めての 事 例 となった。インドネシア 側 からもたらされた 情 報 は、 外 務 省 を 通 してコンソーシアムに 伝 わり、コンソーシアムから 文 化 庁 や 国 際 交 流 基 金 をはじめ 各 機関 、 専 門 家 に 伝 わる。 集 められた 情 報 は、コンソーシアムで議 論 され、 調 査 団 構 成 員 として 建 築 を 中 心 にインドネシア 歴史 建 造 物 の 専 門 家 、 歴 史 建 造 物 の 構 造 専 門 家 などが 推 薦 された。 派 遣 費 については 文 化 庁 が 緊 急 支 援 として 負 担 し、 現 地経 費 については 国 際 交 流 基 金 が 分 担 するという 形 がとられ、外 務 省 は 現 地 大 使 館 を 通 しての 便 宜 供 与 をおこなった。このような 情 報 連 携 の 形 は、その 後 の 四 川 、イエメン、パダンに対 する 支 援 でも 受 け 継 がれている。プランバナンに 関 するインドネシア 側の 日 本 に 対 する 要 望 は、 建 造 物 の 耐 震 性 に 関 する 調 査 、 地 盤調 査 などについてであった。これらは、 地 震 国 日 本 における研 究 蓄 積 を 期 待 されてのことである。 地 盤 調 査 については、民 間 の 株 式 会 社 である 応 用 インターナショナルの 協 力 により行 われ、ガジャ・マダ 大 学 、バンドゥン 工 科 大 学 の 協 力 により、 耐 震 のための 材 料 試 験 が 行 われた。しかし、 地 震 測 定 については、 機 械 の 設 置 をし、 測 定 を 開 始 するところから 始 めなければならず、 地 震 測 定 は、 現 在 も 筑 波 大 学 によって 引 き継 がれた 科 研 費 による 研 究 で 続 けられている。 日 本 における歴 史 的 建 造 物 の 耐 震 に 関 する 研 究 は 確 かに 進 んでおり、それらは 技 術 協 力 の 形 で 提 供 可 能 なものであるが、 同 時 にそのような 協 力 は 長 期 的 視 野 にたって 行 われるべきであり、 短 期 的な 緊 急 的 支 援 のなかでの 実 施 は 難 しい。 実 際 、プランバナンに 対 する 日 本 の 支 援 は、 緊 急 的 枠 組 みでは3 回 の 調 査 団 派 遣にとどまっており、その 後 は 科 学 研 究 費 による 研 究 という 形の 支 援 継 続 である。 現 在 の 被 災 文 化 遺 産 に 対 する 支 援 は、 短期 的 な 緊 急 支 援 が 主 となるが、 相 手 国 の 要 望 に 応 えるためにも、 最 初 の 調 査 では、 短 期 的 、 中 期 的 、 長 期 的 視 点 での 協 力内 容 と 体 制 をよく 検 討 のうえ 相 手 側 に 掲 示 することが 必 須 であろう。また 同 時 にその 支 援 内 容 が 研 究 的 要 素 を 含 む 場 合 、相 手 国 の 大 学 などの 学 術 機 関 との 連 携 を 重 視 し、 長 期 的 な 関係 を 維 持 していくことが 重 要 である。4-2-5 震 災 から 3 年 半 が 経 ち、 被 災 地 は 諸 外 国 、NGOなどの国 際 支 援 を 受 けて 確 実 に 復 興 を 遂 げている。しかし、 文 化遺 産 に 関 していえば、 世 界 遺 産 プランバナン 遺 跡 とセウ 寺院 の 復 興 に 比 較 して、その 他 のソジワンやプラオサンを 始め、いくつも 散 在 している 遺 跡 に 対 しては 修 復 を 着 手 できない 状 態 にある。 以 下 、 地 震 災 害 、 有 形 不 可 動 遺 産 に 対 する 支 援 であった 点 を 踏 まえながらいくつかまとめてみたい。89


第 二 章 各 国 調 査4-34-3-1 2009 年 9 月 30 日 に 発 生 したパダン 沖 の 地 震 は、 沈 み 込むプレートの 内 部 で 発 生 した 地 震 と 見 られており、 震 源 は深 く、 津 波 の 発 生 は 確 認 されなかった( 図 4)。 震 源 地 はスマトラ 島 中 部 沖 で、パダン 市 の 西 北 約 45 キロメートル、深 さ 81 キロメートルである。 地 震 の 規 模 はマグネチュード 7.6 とされ、 被 害 は、パダン 市 ( 人 口 約 84 万 人 )、パリアマン 市 ( 人 口 約 7 万 人 )、パダン・パリアマン 県 ( 人 口約 38 万 人 )、アガム 県 ( 人 口 約 42 万 人 )を 中 心 にその 周辺 地 域 に 広 がっている。なかでもパダン 市 は 西 スマトラ 州の 州 都 であり、 多 くの 中 高 層 の 行 政 施 設 、 商 業 ビルが 数多 く 存 在 する。 今 回 の 地 震 でも、パダン 市 内 の 3 階 以 上 、RC 構 造 といった 特 徴 をもつ 大 きな 公 共 施 設 が 大 きな 被 害を 受 けている( 写 真 22)。インドネシア 政 府 発 表 (2009 年10 月 15 日 付 )によれば、 死 者 ・ 行 方 不 明 者 は 1,117 人とされている。写 真 22 倒 壊 する 大 型 施 設 (2009 年 11 月 撮 影 )図 4 震 源 地 [Source: United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs (OCHA)]90


第 二 章 各 国 調 査4-3-2 地 震 被 害 があった 西 スマトラ 州 パダンは、 州 都 として 多くの 行 政 および 教 育 関 係 の 公 共 施 設 が 存 在 するとともに、17 世 紀 に 地 域 に 入 ったオランダの 影 響 を 受 けた 歴 史 的 建造 物 も 多 く 認 められる。オランダの 影 響 を 受 けた 建 造 物 には 煉 瓦 造 建 築 が 多 いのに 対 して、 沿 岸 から 内 陸 にはいる 高原 地 帯 には、ミナンカバウ 民 族 独 特 の 様 式 をもった 木 造 建造 物 が 多 くみられる。 今 回 の 地 震 では、そのような 内 陸 部に 位 置 する 木 造 建 造 物 への 被 害 はなかったが、 海 から 近 いパダン 市 内 の 建 造 物 には 多 くの 被 害 がみられた。パダン 市 内 でバトゥサンカル 遺 跡 保 存 事 務 所 (BalaiPelestarian Peninggalan Purbakala Batu Sangkar、 通 称 :BP3バトゥサンカル)により 登 録 されている 歴 史 的 建 造 物 は73 件 、パダンより 北 部 に 位 置 するパリアマン 市 内 では 52件 、パダン・パリアマン 郡 では 23 件 である。これら 歴 史建 造 物 に 関 しては、 震 災 4 日 後 に BP3 バトゥサンカルにより 緊 急 の 被 災 状 況 調 査 がおこなわれている。また、BP3バトゥサンカルによる 登 録 リストに 限 らない、より 広 い 範囲 での 歴 史 的 建 造 物 をカバーした 被 災 調 査 も、10 月 10 日から 15 日 の 間 に、BP3 バトゥサンカルの 協 力 のもと、オランダのクラウス 公 子 基 金 からの 資 金 助 成 を 受 け、インドネシア・ヘリテージ・トラストによって 実 施 されている。また、 後 述 するが、ユネスコのジャカルタ 事 務 所 およびインドネシア 政 府 からの 依 頼 を 受 けた 日 本 人 専 門 家 による 歴史 的 建 造 物 および 都 市 計 画 に 関 する 被 災 状 況 調 査 も 11 月11 日 から 24 日 にかけ 実 施 されている。それら 建 造 物 および 都 市 計 画 の 詳 細 な 被 災 状 況 については、 報 告 書 を 参 考 されたい [NRICPT 2009]。パダン 市 内 での 地 震 による 建 造 物 への 被 害 が、 大 規 模 の公 共 施 設 に 多 くみられたのは 前 に 述 べた。 地 域 の 重 要 な 記録 を 保 管 する 博 物 館 、 図 書 館 、 公 文 書 館 もその 例 外 ではなく、なかでも 図 書 館 は 4 階 建 ての 建 物 の 1 階 から 3 階 部 分が 倒 壊 した。 加 えて、 建 物 内 に 保 管 されていた 10 万 点 以上 の 図 書 は、 地 震 後 に 続 いた 雨 にさらされてしまった。それら 図 書 は 回 収 され、 公 文 書 館 に 避 難 された。これら 公 共施 設 が 保 管 する 文 字 文 化 財 については、 中 央 政 府 もしくは州 政 府 の 管 轄 下 であるため、 被 災 後 2ヶ 月 となる 調 査 時 には、 図 書 資 料 が 移 動 されたり、カタログ 作 成 が 図 られたりしていた。地 震 前 から、 地 域 の 写 本 調 査 に 力 を 注 いできたアンダラス 大 学 の 研 究 チームによる 地 震 後 の 文 字 文 化 財 被 災 状 況 調査 は、 村 落 部 で 保 管 されている 写 本 を 対 象 としておこなわれた。それまでに 培 ってきたネットワークや 情 報 を 駆 使 しておこなわれた 調 査 による 被 害 状 況 はインドネシア 写 本 学会 (MANASSA)を 通 じて 学 会 関 係 者 ( 外 国 人 研 究 者 も 含む)に 一 部 報 告 されている。 博 物 館 をはじめとする 公 的 機 関は、アンダラス 大 学 が 把 握 するような 広 い 地 域 に 散 在 している 写 本 の 存 在 についての 詳 細 な 情 報 は 持 っていないようである。以 下 、 本 調 査 により 明 らかになった 文 字 文 化 財 の 被 災 状 況を、 訪 問 したサイト 順 に 概 要 を 記 すが、1から7については、アンダラス 大 学 の 協 力 により 実 現 できた 地 域 に 散 在 する民 間 ・ 宗 教 施 設 に 保 管 されている 写 本 について 調 査 成 果 である。 公 文 書 館 に 関 しては、ユネスコの 協 力 を 得 た。( 写 真 はAppendix 5 参 照 ) Mesjid Raya Mudiak Padang / Surau Tandikek (PadangPariaman)パリアマン 県 パタムアン 郡 (Kec. Patamuan)に 位 置 するモスクで、 地 震 によるモスクへの 被 害 があった。モスクの 壁面 、 柱 に 多 くのひび 割 れが 確 認 できるが、 現 在 も 礼 拝 に 使 用している。モスクに 付 属 する 建 物 を 事 務 所 として 使 用 し、 写本 は 事 務 所 の 棚 に 保 存 されている。7 点 の 写 本 を 保 管 しているが、うちいくつかには 文 字 の 滲 みが 確 認 できた。 写 本 のデータは、アンダラス 大 学 と 東 京 外 国 語 大 学 により 作 成 されたカタログに 収 録 されているが、 乾 燥 剤 や 虫 除 けの 処 置 は 行 われていない。デジタル 化 も 行 われていない。 Mesjid Raya VII Koto Ampalu (Padang Pariaman)パリアマン 県 スンガイ・サリック 郡 (Kec. Sungai Sarik)に 位 置 するモスク。 村 に 入 る 道 でがけ 崩 れがおき、 地 震 後 しばらく 交 通 不 可 となった。 調 査 時 には 村 人 による 工 事 がおこなわれており、 徒 歩 とバイクでのみ 村 へ 行 くことができる。このモスクにも 被 害 はあり、 壁 面 、 柱 にひび 割 れが 確 認 できるだけではなく、 床 面 にも 割 れ 目 が 生 じている。しかし、 現在 も 破 損 部 分 はそのまま 礼 拝 に 使 用 している。アンダラス 大学 によると、 以 前 の 調 査 で 23 点 の 写 本 が 確 認 されているが、すべて 州 図 書 館 に 預 けられ、 修 復 作 業 を 受 けていた。ところが、 州 図 書 館 が 全 壊 したため、 写 本 も 瓦 礫 に 埋 もれたため、うち 17 冊 がジャカルタの 国 立 図 書 館 で 再 度 修 復 処 置 を 受 けることとなった。 上 記 以 外 にも 残 された 写 本 が 数 冊 あり、ダンボールに 入 れた 状 態 で、モスクの 東 にある 木 造 の 住 居 に 保管 されている。 乾 燥 剤 や 虫 除 け 処 置 は 行 われておらず、 室 内といえどもガラス 戸 のついた 棚 に 保 管 するのではなく、 壁 際にあつらえられた 棚 の 上 にダンボールごと 置 かれた 状 態 であった。 Surau Ampalu Tinggi (Padang Pariaman)パリアマン 県 にある 礼 拝 所 。 震 災 前 から 新 しいモスクが 建設 されており、1 階 部 分 のみが 既 に 完 成 している。 現 在 はこの 新 しい 方 のモスクを 使 って 礼 拝 がおこなわれている。 古 い91


第 二 章 各 国 調 査モスクは 地 震 被 害 が 大 きいため、 人 の 立 ち 入 りはない。 古 いモスクの 方 に 隣 接 した 住 居 があり、 写 本 はその 住 居 に 保 管 されている。26 冊 の 写 本 を 保 管 しているが、アンダラス 大 学により、 震 災 前 にカタログ 作 成 とデジタル 化 が 終 了 している。前 述 した2つのサイトと 比 べて、 写 本 は1 点 ずつ 封 筒 に 入 れられ、ファイルボックスを 用 いてガラス 棚 のなかに 保 管 されている。しかし、 乾 燥 剤 や 虫 除 けの 処 置 はされていない。 調査 時 、 封 筒 にいれられたファイルボックスは 縦 置 きされていたが、そうすると 写 本 の 一 辺 に 負 荷 がかかりすぎることもあり、 横 向 きに 寝 かせて 保 存 するよう 提 言 された。 Surau Baru Bintungan Tinggi (Padang Pariaman)パリアマン 県 サバリス 郡 (Kec. Nan Sabaris)の 礼 拝 所 。BP3 により 文 化 遺 産 として 登 録 されている。 登 録 されている木 造 のモスク 正 面 にあった 墓 は 屋 根 を 残 して 全 壊 している。木 造 建 造 物 には 被 害 がほとんど 認 められず、 建 物 後 方 の 煉 瓦造 りの 付 属 建 造 物 に 被 害 があった。 全 部 で 16 点 以 上 の 写 本を 保 有 しているが、 保 管 場 所 はモスク 内 と 隣 接 する 住 居 の 2箇 所 であった。 地 震 によって、 隣 接 する 住 居 は 全 壊 した。 倒壊 された 家 屋 に 保 管 してあった 古 いキターブ(イスラム 学 教科 書 )はその 後 降 った 雨 によって 濡 れてしまった。 現 在 は 倒壊 した 住 居 の 住 民 は、 無 事 であった 木 造 のモスク 内 で 避 難 生活 をおくっている。 濡 れてしまった 書 籍 は 現 在 もモスク 内 で陰 干 しされている。アチェ 津 波 においては、 濡 れた 書 籍 を 天日 干 しするという 間 違 った 処 置 が 多 くみられたそうだが、ここでは 適 切 な 処 置 がとられていた。そのような 知 識 をどこで得 たのか 聞 いたところ、2005 年 に 州 立 博 物 館 で 実 施 された写 本 保 存 の 研 修 、2007 年 にアンダラス 大 学 が 大 英 博 物 館 の協 力 で 実 施 した 研 修 に 参 加 して 得 た 知 識 とのことである。 保管 されていたキターブは、 中 東 および 西 スマトラで 出 版 されたものであり、 特 に、 西 スマトラで 出 版 されたものはほとんど 現 存 していないため、 非 常 に 貴 重 なコレクションである。現 在 保 有 するすべての 写 本 はモスク 内 の 小 部 屋 に 保 管 されているが、いくつかのものは 封 筒 いっぱいに 詰 められた 後 、 縦置 きされている。また、 特 に 乾 燥 剤 や 虫 除 けの 処 置 はない。 Surau Paseban (Padang)パダン 県 コト・タンガ 郡 (Kec. Koto Tangah) の 礼 拝 所 。 昔は 100 以 上 の 写 本 があったというが、 現 在 確 認 されているのは 33 点 である。 東 京 外 国 語 大 学 のカタログには 31 点 のデータが 収 録 されている。この 礼 拝 所 は 木 造 で 地 震 の 被 害 はない。写 本 はアンダラス 大 学 の 指 導 により、 礼 拝 所 内 に 置 かれたガラス 戸 棚 のなかと、 礼 拝 所 内 の 小 部 屋 にある 棚 の 両 方 の 中 に保 管 されている。 前 者 が 比 較 的 重 要 と 思 われるものらしく、しっかりと 寝 かせて 保 管 されていた。 後 者 の 棚 におさめられたものは 未 整 理 のもののようである。どちらの 棚 も 乾 燥 剤 や虫 除 けの 処 置 はされていない。 Surau Darussalam (Agam)アガム 県 の 礼 拝 所 。4 冊 の 写 本 を 所 有 。アンダラス 大 学が 新 たにコンタクトを 開 始 した 礼 拝 所 。 信 者 たちが 写 本 を保 管 してほしいと 持 ってくるケースがあり、その 措 置 に困 っていたらしい。 現 在 のところ、 写 本 は 礼 拝 所 の 事 務 室に 保 管 してあるのみで、 未 整 理 状 態 。 今 回 は 礼 拝 所 にも、写 本 にも 地 震 の 被 害 は 見 られないが、 地 震 が 頻 発 する 地 域であるため、 今 後 の 対 処 について 検 討 する 必 要 がある。 Surau Tarekat Syattariyah (Tanah Datar)タナ・ダタール 県 バトゥサンカルの 礼 拝 所 。27 冊 の 写本 を 所 有 している。 大 英 図 書 館 支 援 の 調 査 により、デジタル 化 は 完 了 している。 写 本 は、 封 筒 に 入 れられ、 礼 拝 所 に保 管 されている。 礼 拝 所 の 管 理 者 が、 国 立 イスラーム 高 等学 校 (Sekolah Tinggi Agama Islam Negeri)バトゥサンカル校 の 教 員 で、2006 年 来 、アンダラス 大 学 と 協 力 し、 写 本のコレクションと 調 査 をおこなっている。 地 域 住 民 に、 古写 本 の 管 理 についての 指 導 もおこなっている。 地 震 については 上 記 の 地 域 と 同 様 。パダン 市 内 に 位 置 する。 館 長 不 在 であり、 日 曜 の 訪 問 となったため、 中 には 入 れなかった。 外 観 のみ 見 学 したが、博 物 館 に 58 点 もの 写 本 があるとのことである。 東 京 外 国語 大 学 のカタログに 収 録 されている。 写 本 に 関 しては、 今回 の 地 震 による 被 害 はなかったらしい。パダン 市 内 に 位 置 し、 州 立 博 物 館 とは 50 メートルほどの 距 離 である。4 階 建 ての RC 構 造 であったが、 地 震 により 1 階 から 3 階 が 倒 壊 とのこと。 調 査 時 には 既 に 図 書 をとりだし、 倒 壊 した 建 造 物 は 解 体 されていた。 救 出 された 図書 は、 公 文 書 館 に 避 難 された。 震 災 前 の 2009 年 6 月 にジャカルタの 国 立 図 書 館 による 調 査 がはいり、このとき 州 立 図書 館 に 預 けられていた 23 点 ほどの 写 本 が 修 復 対 象 となった(2が 所 有 する 写 本 )。うち 17 点 が 現 在 も、ジャカルタの 国 立 図 書 館 で 再 度 修 復 中 である。 残 り 6 冊 の 所 在 は 今 のところ 不 明 である。 西 スマトラでは、 古 写 本 の 管 轄 が 図 書館 となったため、アンダラス 大 学 と 協 力 して、 写 本 のコレクションを 増 やす 予 定 でいる。92


第 二 章 各 国 調 査パダン 市 内 に 位 置 する。Eka Nuzia 館 長 が 対 応 してくれた。 公 文 書 館 敷 地 内 には3 棟 の 建 物 があり、 中 央 に 事 務 棟 、その 後 ろに 文 書 を 保 管 する 棟 、その 脇 には 新 しく 建 設 中 の新 文 書 保 管 棟 がある。 事 務 棟 にほとんど 被 害 がないものの、文 書 を 保 管 していた 棟 は 一 階 および 2 階 部 分 に 大 きな 被 害があった。 建 物 内 に 保 管 されていた 文 書 がはいった 箱 は 屋外 より、 目 視 でその 存 在 を 確 認 できるものの、 建 物 が 非 常に 不 安 定 な 状 態 にあり 二 次 災 害 を 起 こす 可 能 性 がある。 現在 は、 文 書 を 救 出 できず 放 置 されている 状 態 にある。4-3-3 現 在 、 中 央 政 府 と 西 スマトラ 州 政 府 を 中 心 に、パダン 復興 計 画 が 立 てられている(2009 年 12 月 現 在 )。これまで大 きな 災 害 にあった 地 域 は、 州 もしくは 市 により 復 興 計 画が 立 てられているが、パダンも 例 外 ではない。また、インドネシア 政 府 はアチェ、 中 部 ジャワおよびジョグジャカルタと 続 いて3 番 目 例 として 西 スマトラ 復 興 庁 を 立 ち 上 げており、この 復 興 庁 が 中 心 となり、 今 後 短 期 ・ 中 期 ・ 長 期 的復 興 計 画 に 沿 った 住 宅 や 公 共 施 設 などの 復 旧 がおこなわれる 予 定 である。また、これまでの 州 もしくは 市 レベルの復 興 計 画 には、 文 化 遺 産 に 関 する 項 目 が 入 れ 込 まれてこなかったため、ユネスコは 文 化 遺 産 に 関 する 被 災 報 告 書 をインドネシア 政 府 に 提 出 し、パダン 復 興 計 画 には 文 化 の 項 目をいれるよう 提 言 する 予 定 とのことである。 本 調 査 でおこなったパダンの 文 字 文 化 財 に 関 する 被 災 状 況 調 査 報 告 は、既 にユネスコのジャカルタ 事 務 所 に 対 して 提 出 されている。4-3-4 パダンの 文 化 遺 産 復 旧 の 国 際 支 援 について、5 年 前 のアチェ 津 波 被 害 、3 年 前 の 中 部 ジャワ 地 震 における 状 況 と 大きく 違 うのは、ユネスコの 動 きである。ユネスコは、 今 回地 震 直 後 からインドネシア 政 府 およびパダン 現 地 関 係 者 からの 被 災 状 況 の 情 報 収 集 を 開 始 し、インドネシア 政 府 と 連携 をとりながら、インドネシア 政 府 による 国 際 社 会 への 支援 要 請 を 助 けた。また、 震 災 1カ 月 後 にはユネスコ 予 算 による 被 災 状 況 調 査 を 計 画 、それまでの 情 報 およびインドネシア 政 府 との 話 し 合 いを 基 に、 支 援 が 求 められている 博 物館 、 歴 史 的 建 造 物 、 都 市 計 画 分 野 に 関 する 専 門 家 を 派 遣 した。 展 示 品 が 地 震 により 落 下 し、 被 害 を 受 けた 博 物 館 に 関する 専 門 家 2 名 は 英 国 から 派 遣 され、 歴 史 建 造 物 および 都市 計 画 に 関 する 専 門 家 は 当 コンソーシアムと 協 議 のうえ、日 本 からの6 名 の 専 門 家 が 派 遣 されている。また、これらユネスコの 動 きを 受 け、 当 コンソーシアムでは 実 施 予 定 であったアチェにおける 調 査 に 加 え、 急 遽 パダンの 文 字 文 化財 被 災 状 況 調 査 を 実 施 し、その 調 査 報 告 書 をユネスコに 提 出している。ユネスコは、これら 報 告 を 基 に 総 合 報 告 書 を 刊 行し、インドネシア 政 府 に 提 出 する 予 定 であり、 国 際 専 門 家 によりあげられた 提 言 がパダン 復 興 計 画 に 入 れ 込 まれることが期 待 されている。パンダンを 嚆 矢 として、 今 後 インドネシアにおいて 震 災 後 の 復 興 計 画 に 文 化 が 取 り 組 まれることが 定 着することができると 考 えれば、その 意 義 は 大 きい。本 事 例 でのユネスコの 動 きは、パダン 地 域 にユネスコの 世界 遺 産 リストに 登 録 された 文 化 遺 産 がなかったことを 考 えれば、その 迅 速 性 、 支 援 の 規 模 および 内 容 も 特 記 に 値 する。 逆に 考 えれば、 国 際 的 にも 広 く 知 られる 観 光 地 で、かつ 世 界 遺産 リストにも 登 録 されているボロブドゥールとプランバナンが 位 置 するジョグジャカルタと 中 部 ジャワでは、ユネスコの動 きに 関 係 なく、インドネシア 国 内 外 の 注 目 を 集 めることができたといえるかもしれない。 今 後 、ユネスコが 作 成 している 総 合 報 告 書 により、 国 際 社 会 の 注 目 がより 集 まり、 具 体 的な 復 旧 のための 支 援 にあてられることに 期 待 したい。オランダのクラウス 公 子 基 金 はアチェにおいて、 多 くの 写本 を 所 蔵 するタノ・アベの 資 料 館 建 設 に 支 援 している。パダンにおいても、インドネシア・ヘリテージ・トラストを 支 援し、10 月 10 日 からの 被 災 状 況 調 査 を 支 援 した。4-3-5 パダンの 事 例 については 震 災 直 後 の 事 例 ということを 念 頭に、これまでの 項 目 を 踏 まえ 調 査 結 果 をまとめてみたい。パダンは、 震 災 直 後 の 事 例 であり、現 地 調 査 時 は 震 災 後 2カ 月 後 の 状 況 であったが、 建 造 物 および 都 市 計 画 調 査 の 中 心 であったパダン 市 内 、そして 写 本 が 散在 するパリアマン 県 近 郊 のスラウやモスクも、 緊 迫 した 空 気は 感 じられなかった。しかし、 震 災 1カ 月 後 に 最 も 被 害 がひどかったパリアマンの 村 にはいったインドネシア 人 関 係 者 によると、 決 して 調 査 ができるような 状 態 ではなかったということであった。 震 災 後 、 文 化 遺 産 関 係 の 調 査 に 入 るのは、3カ 月 の 期 間 をおいて、という 意 見 もあるが、おそらく 何 より重 要 なのは、どれだけ 正 確 にかつ 迅 速 に 現 地 の 状 況 に 関 する情 報 を 収 集 することであると 考 える。 現 地 調 査 および 専 門 家派 遣 による 支 援 時 期 は、それら 情 報 に 基 づいて 決 められるべきであろう。 例 えば、パダン 市 内 では、 震 災 1カ 月 後 には 倒壊 した 建 造 物 の 瓦 礫 が 片 付 けられ 始 めており、 博 物 館 で 落 下により 破 損 した 展 示 品 の 状 況 維 持 も1カ 月 以 降 になると 難 しい 状 態 にあった。 加 えて、パダン 市 内 の 状 況 に 限 っていえば、大 きな 被 害 は 大 規 模 な 公 共 施 設 に 多 くみられ、 一 般 住 居 の 全壊 はほとんど 確 認 されていないこともあり、 治 安 状 況 は 比 較的 早 く 回 復 したといえる。そのような 点 から、ユネスコから93


第 二 章 各 国 調 査の 専 門 家 の 派 遣 ( 震 災 1カ 月 後 )の 時 期 は 妥 当 であったと 思われる。カウンターパートとすればより 大 きい 支 援 効 果 が 得 られるのかよく 検 討 していく 必 要 があるであろう。ユネスコによる 素 早 い 対 応 により、 現 状 の課 題 は、 今 後 いかにインドネシア 政 府 による 復 旧 行 動 計 画 を支 援 していくかである。パダンにおいてはこれまで「 町 並 み」という 考 えで 地 域 を 登 録 してはこなかったが、 復 旧 には 都 市景 観 の 保 護 を 念 頭 におき、 登 録 リストの 再 検 討 と、これまでの 保 護 体 制 の 見 直 しをおこなうとともに、 復 興 行 動 計 画 、 実施 体 制 との 連 携 構 築 をおこなっていく 必 要 があるだろう。また、 我 が 国 がこれまで 国 内 外 で 実 践 してきた 町 並 み 保 存 の 技術 と 知 識 の 提 供 が 求 められている。パダンでも、 大 学 とNGOは 政 府 とは違 う 役 割 を 担 い、 復 旧 へ 取 り 組 んでいる。ブン・ハッタ 大 学の 都 市 計 画 のエコ・アルヴァレス (Eko Alvares) 教 授 は、パダン 市 の 20 カ 年 計 画 作 成 に 関 わっている。 震 災 1カ 月 後 にはパダン 旧 市 街 (Kota Lama Padang) に 被 災 した 住 民 のための 事務 所 を 立 ち 上 げ、 住 民 の 相 談 にのっている。また、 市 内 の7か 所 の 建 造 物 をとりあげ、 震 災 からの 復 旧 のための 図 面 を 学生 とともに 作 成 しているとのことである 7 。NGOの 活 躍 としては、オランダのクラウス 公 子 基 金 をうけて 実 施 された 非営 利 団 体 インドネシア・ヘリテージ・トラストによる 被 災 状況 調 査 があげられる。この 調 査 では、 登 録 文 化 財 に 限 らない歴 史 的 建 造 物 の 被 災 状 況 調 査 がおこなわれている。 加 えて、調 査 には、 中 部 ジャワ 地 震 の 時 にすでに 被 災 文 化 遺 産 状 況 調査 を 経 験 したガジャ・マダ 大 学 のメンバーも 参 加 している。これら 大 学 とNGOの 活 動 は、 政 府 機 関 が 対 応 しきれない 民間 や 地 域 が 所 有 もしくは 管 理 している 被 災 文 化 遺 産 に 対 して重 要 な 役 割 を 果 たしている。インドネシア・ヘリテージ・トラストによる 調 査 の 実 施 は、ジョグジャカルタでの 経 験 が、 次 の 災 害 地 であるパダンに 活 かされていることを 示 している。また、 写 本 に 関 しても、アチェで 素 早く 国 際 社 会 に 対 し 情 報 提 供 を 行 ったインドネシア 写 本 学 会(MANASSA)は 学 術 的 ネットワークを 活 かし、 被 災 した 地域 の 情 報 をいち 早 く 手 に 入 れられるようなネットワークの 充実 化 を、アチェ 以 降 努 めている。しかし、 積 極 的 になるNGOや 大 学 の 動 きに 対 して、それらNGO、 大 学 機 関 と 当 該 地 域 州 政 府 、ジャカルタ 中 央 政 府 、中 央 政 府 直 轄 の 地 方 事 務 所 などの 公 的 機 関 との 連 携 は 不 足 しているように 思 われる。NGOや 大 学 が 結 んでいる 海 外 諸 機関 との 協 力 体 制 に 関 する 情 報 は、 公 的 機 関 には 入 ってきにくい 状 況 がある。 震 災 後 の 迅 速 な 情 報 収 集 、より 効 果 的 復 旧 に取 り 組 むためには、 官 民 の 連 携 体 制 をどう 整 えるかが 課 題 となる。また、 支 援 国 は、そのような 状 況 のなか、どの 機 関 を5. 5-1この 5 年 間 で、インドネシア 2004 年 の 津 波 被 害 、2006年 の 中 部 ジャワ 地 震 、2009 年 の 西 スマトラ 地 震 と、 度 重なる 大 規 模 自 然 災 害 に 見 舞 われた。そこでの 被 災 経 験 は、インドネシアにおける 被 災 復 旧 への 対 策 に 影 響 を 与 えた。防 災 体 制 も、 地 域 差 のあるものの、 各 国 の 支 援 で 少 しずつではあるが 整 備 にむけて 動 きつつある。しかし、 文 化 遺 産の 防 災 体 制 、 被 災 後 の 対 応 、 対 象 文 化 遺 産 について、どれくらい 詳 しく 被 災 状 況 調 査 を 行 うべきか、などの 基 準 設 定はなされていない。また、 文 字 文 化 財 に 特 定 しても、 主 に学 会 などの 動 きにより、その 歴 史 的 重 要 性 が 認 識 されつつあるものの、 現 在 もどのような 文 字 文 化 財 が 地 域 にあるのか 認 識 されていない 状 態 にある。ここでは、 本 調 査 であきらかになったインドネシアにおける 被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 状 況 と 課 題 を 国 際 協 力 の 面 からあげてみたい。・ 支 援 に 入 る 時 期 については、アチェ、ジャワ、パダンという3つの 事 例 では 最 良 と 思 われる 時 期 に 違 いがみられた。 文 化 遺 産 については、 対 象 地 域 の 被 害 の 違 いなどにより 支 援 に 入 るタイミングが 変 わってくる。・アチェにおける 文 書 ・ 写 本 修 復 用 の 和 紙 や 化 学 製 品 、プランバナン 遺 跡 に 対 する 足 場 供 与 などの 例 にみられるように、 緊 急 支 援 としての 物 的 援 助 は、 被 災 状 況 に 関 する 情 報および 相 手 国 の 要 望 を 検 討 したうえで 有 効 的 に 行 われるべきである。・ 支 援 対 象 文 化 遺 産 によっては、 政 府 だけではなく、NGOとの 連 携 が 不 可 欠 となる。 相 手 国 におけるNGOと 政 府の 関 係 と 役 割 を 把 握 し、 支 援 が 有 効 に 活 かされるようにカウンターパートを 検 討 する 必 要 がある。・ 我 が 国 に 期 待 される 事 として、 歴 史 的 建 造 物 の 耐 震 に 関する 研 究 蓄 積 とその 研 究 を 活 かした 技 術 協 力 があげられる。しかし、 長 期 的 計 画 のもとにおこなわれる 研 究 と 技 術協 力 は、 緊 急 支 援 の 枠 組 みを 越 えるものであり、その 実 施には 緊 急 調 査 の 結 果 に 基 づく 国 際 協 力 に 関 する 計 画 立 案 が必 須 となる。その 後 計 画 は、コンソーシアムで 各 専 門 家 および 関 係 諸 機 関 が 資 金 面 についてもふまえて 検 討 されるべきであろう。・ 被 災 文 化 遺 産 に 対 する 国 際 支 援 の 動 きは、ユネスコのような 国 際 機 関 のみではなく、 欧 米 諸 国 をはじめとした 支 援94


第 二 章 各 国 調 査実 施 国 との 連 携 が 必 要 とされる。 各 国 がどのようなタイミングで 動 き、どのような 支 援 内 容 を 実 施 しようとしているのか、 常 に 情 報 を 収 集 しておく 必 要 があり、 支 援 後 の 経 過についても 国 際 会 議 などで 情 報 を 得 ておく 必 要 がある。5-2以 上 のような 状 況 と 課 題 を 踏 まえて、 今 後 、 我 が 国 が 被災 文 化 遺 産 復 旧 に 対 する 支 援 を 実 施 するうえで 必 要 と 考 える 項 目 を 以 下 のようにあげる。 災 害 時 における 情 報 収集 および 支 援 には、 常 時 からの 相 手 国 との 学 術 ネットワークと 信 頼 関 係 構 築 が 必 須 であることは 明 らかである。それら 学 術 分 野 と 国 際 協 力 との 連 携 を 築 く 場 としての 文 化 遺 産国 際 協 力 コンソーシアムの 役 割 がより 重 要 となる。1詳 細 は [ http://www.budpar.go.id/] 参 照 のこと2詳 細 は [ http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/indonesia/ ] 参 照 のこと3資 料 は、 東 京 文 化 財 研 究 所 主 催 会 議 “Expert Meeting onCultural Heritage: Restoration and conservation of immovableheritage damaged by natural disaster, 14-16 January 2009,Bangkok / Ayutthaya, Thailand Immovable Cultural Heritageand Emergency Actions in Southeast Asia” におけるインドネシア 政 府 代 表 発 表 資 料 による。4Appendix 4 参 照5詳 細 は [http://www.acehbooks.org/ ] 参 照 のこと6詳 細 は [http://www.princeclausfund.org/en/what_we_do/cer/index.shtml] 参 照72009 年 11 月 19 日 エコ 教 授 への 聞 き 取 りによる。 被 災 直 後 に 行 われる 被 災 状 況 調査 は、 相 手 国 の 要 請 をよく 検 討 したうえでおこなわれるべきであり、また 支 援 実 施 国 による 将 来 的 な 短 期 、 中 期 、 長期 的 支 援 計 画 の 検 討 材 料 となるような 成 果 が 求 められる。調 査 は 相 手 国 の 被 災 状 況 情 報 を 踏 まえて 時 期 をみて 慎 重 におこなわれるべきであり、その 調 査 内 容 についても、ある特 定 の 地 域 や 文 化 遺 産 に 関 してのみでなく、 支 援 対 象 国 における 文 化 遺 産 保 存 体 制 全 体 をとらえての 視 点 が 求 められる。 緊 急 的 支 援 に 求 められる 物 的 支 援 は、その 支 援 内 容 が 相 手 国 の 要 望 と 状 況 情報 を 十 分 に 検 討 したうえであるならば 有 効 である。 例 えば、被 災 したパダンの 図 書 館 に 対 するカタログ 作 成 のためのPCの 供 与 などは 少 額 でありながら 有 効 であると 思 われる。しかし、 現 在 の 我 が 国 による 文 化 遺 産 に 関 する 緊 急 的 支 援については、 少 額 の 消 耗 品 、PCなどの 機 材 を 供 与 できるような 支 援 金 が 存 在 しない。 被 災 状 況 調 査 なくしての 物 品供 与 は、 役 に 立 たず、 長 期 的 展 望 がない 短 期 的 な 有 効 性 のみの 支 援 となる 可 能 性 も 高 いが、 調 査 結 果 次 第 によっては早 急 な 物 品 供 与 も 検 討 されるべきである。 歴 史 的 建 造 物 の 耐 震 や 防 災 については、 文 化 遺 産 に 関 わる 学 問 分 野 だけでは 十 分 な 技 術 協 力 や研 究 を 行 うことは 不 可 能 である。つまり、 地 震 、 土 木 、 気象 など、 文 化 財 科 学 以 外 の 分 野 との 連 携 が 必 要 となる。 被災 文 化 遺 産 の 復 旧 に 関 する 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムには、 様 々な 学 問 領 域 の 情 報 連 携 の 場 としての 役 割 求 められているといえるだろう。95


第 二 章 各 国 調 査96


第 二 章 各 国 調 査4. イラン (バムの 事 例 を 中 心 に)国 士 舘 大 学1. 1-1 この 調 査 は、 国 際 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムと 国士 舘 大 学 との 委 託 契 約 に 基 づく「 被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る調 査 」であり、その 対 象 となる 文 化 遺 産 とは、2003 年 末 にイラン・イスラーム 共 和 国 を 襲 った 地 震 で 壊 滅 的 な 被 害 をもたらした「バム 遺 跡 」である。バムの 現 地 では、イラン 文 化 遺 産 当 局 のスタッフはもちろん、イタリア、ドイツ、フランスといった 諸 外 国 の 専 門家 たちも、さまざまなスキームで 復 旧 活 動 に 関 わっている。一 方 、 震 災 直 後 には、 資 金 と 人 材 両 面 で 顕 著 な 存 在 感 を 示していた 日 本 はというと、2007 年 10 月 の 大 学 生 誘 拐 事 件が 災 いして、 関 係 者 を 現 地 から 遠 ざけたままである。震 災 後 、 間 もなく 6 年 が 経 とうとする 2009 年 11 月 現 在 、現 地 の 復 旧 状 況 が 如 何 なるものか、そして 今 後 の 展 望 に 資することは 何 か、 本 調 査 の 目 的 はそれらを 明 らかにすることにあるが、 残 念 ながら 震 災 現 場 に 立 つことはかなわず、国 外 調 査 ではもっぱらテヘラン 市 内 で 関 係 者 から 情 報 を 収集 することに 努 めた。ユネスコ・テヘラン 事 務 所 、イラン 文 化 遺 産 ・ 工 芸 ・ 観光 庁 のバム 復 興 プロジェクト 事 務 所 、イラン・イコモス 国内 委 員 会 、イスファハン 大 学 、それぞれの 方 々から 様 々な協 力 をいただいた。 記 して 謝 意 を 表 したい。表 1:バム 文 化 産 被 災 復 旧 調 査 日 程年 月 日 訪 問 先 ・ 面 会 者 調 査 内 容2009 年9 月 8 日 関 西 空 港 経 由 日 本 発 。9 月 9 日9 月 10 日9 月 11 日9 月 12 日カタール 経 由 テヘラ バ ム 事 務 所 副 所 長ン 着 。Nejati 氏 を 紹 介 される。ホ テ ル に て Mokhtari 今 回 の 滞 在 目 的 、 日 程氏 らと 会 食 。 の 確 認 。サーダバード 園 内 に 当 事 務 所 が 管 轄 するバあ る バ ム 事 務 所 に、 ム 事 業 の 説 明 。 刊 行 物Mokhtari、Nejati 両 氏 案 内 。 途 中 か ら 前 イらを 訪 ねる。イラン・イコモス 事 イランの 文 化 遺 産 行 政務 局 長 Boustani 氏 を 全 般 、 及 びイコモス 活自 宅 に 訪 ねる。イラン・イコモス 本 委 員 長 Hojat 氏 らと 面部 事 務 所 を 訪 ね、 役 会 。イコモス 活 動 につ員 会 に 特 別 出 席 。ラン 文 化 遺 産 保 護 局 長Vatandoust 氏 も 同 席 。動 について 意 見 交 換 する。いて 意 見 交 換 する。1-2 本 調 査 では、 以 下 のメンバーが 調 査 に 参 加 協 力 した。 岡田 以 外 は、 情 報 提 供 やペルシア 語 翻 訳 など、 間 接 的 な 協 力者 の 方 々である。団 員 名 所 属 ・ 肩 書 調 査 担 当 項 目岡 田 保 良 国 士 舘 大 学 イラク 古 代 文 総 括 、 報 告 書 作化 研 究 所 教 授成花 里 利 一 三 重 大 学 工 学 部 教 授 地 震 、 耐 震 構 造情 報ソ レ マ ニ エ 東 京 大 学 大 学 院 ペルシア 語 文 献貴 実 也紹 介 翻 訳9 月 13 日9 月 14 日バム 事 務 所 再 訪 。 刊 行 物 を 受 け 取 り、 合わせてイランが 求 める日 本 大 使 館 に 文 化 担 日 本 との 協 力 について当 の 阿 部 氏 らを 訪 ね 合 議 。る。イラン 側 要 望 事 項 を 中テヘラン 空 港 発 。 心 に 意 見 交 換 。カタール 経 由 関 西 空港 - 羽 田 着 。1-3 本 調 査 遂 行 のため、 岡 田 単 独 で 9 月 中 旬 にイランを 訪 れた。 日 程 と 訪 問 先 等 を 以 下 にまとめておく。2. 2-1 イランの 地 質 調 査 所 GSI(Geological Survey of Iran)では、全 土 に 3 つの 大 きな 地 震 帯 があると 把 握 している。 西 方 ザグ97


第 二 章 各 国 調 査ロス 山 脈 沿 い、 北 方 エルブルズ 山 脈 沿 い、そしてこのバムを含 む 東 部 をおよそ 南 北 に 走 る 断 層 地 帯 である( 図 1)。耐 震 設 計 法 が 導 入 され 以 来 、2 度 の 改 正 を 経 て、 現 在 では建 設 は 禁 止 されているが、 依 然 として 多 くの 住 宅 がこのような 伝 統 工 法 を 維 持 しており、 地 震 による 上 部 構 造 の 崩 壊が 甚 大 な 人 的 被 害 をもたらした 大 きな 要 因 となった。図 1:バムの 位 置今 回 の 地 震 直 後 に 日 本 から 派 遣 された 建 築 学 会 や 土 木 学 会の 調 査 団 によると、バム 市 では 有 史 以 来 大 きな 地 震 の 経 験 が無 いと 言 われており、 実 際 、 地 震 による 被 害 は 知 られていなかった。 一 方 、バム 市 の 東 側 には 南 北 に 走 る 右 横 ずれの 活 断層 であるバム 断 層 (あるいは Gowk 断 層 )があり、 今 回 の 地震 もこのバム 断 層 に 関 連 していると 考 えられている( 図 2)。アメリカ 地 質 調 査 所 USGS(United States Geological Survey)による 震 源 位 置 はバム 市 中 心 から 約 10 km 南 側 にあり、 深 さ約 10 km と 浅 い 地 震 であったが、 規 模 が M6.6 と 比 較 的 小 さかったため、 断 層 破 壊 面 は 地 表 まで 到 達 していないとのことである。2-2 花 里 ・ヘジャジ 両 氏 によるバム 地 震 関 係 の 調 査 によると、イランの 大 部 分 は 地 震 活 動 が 活 発 である。しかし、バムの地 域 は 最 もアクティブなゾーンに 属 しているとはみなされていなかった。その 推 定 の 背 後 にある 主 な 理 由 は、 次 の 通り。a) 歴 史 上 、 有 被 害 地 震 はバムからは 報 じられていなかった。b) バム 城 塞 (アルゲ・バム)は 有 被 災 地 震 がなかったという 間 接 的 証 拠 とされていた。城 塞 の 最 も 古 い 部 分 は 2000 年 以 上 前 に 遡 り、 新 しい 部分 でもおよそ 400 年 前 のものである。 我 々の 知 る 限 りでは、アルゲ・バムはかつて、いかなる 地 震 の 被 害 も 受 けていない。バム 周 辺 で 歴 史 的 に 地 震 の 活 性 が 低 かったことは、やや 控 えめな 値 として、500 年 に 10 パーセントの 確 率 で 0.30g 程 度 という 予 想 加 速 度 に 反 映 されている。他 方 、バムの 北 方 地 域 (ゴーク Gowk 断 層 の 延 長 上 )では、過 去 数 十 年 の 間 に、 次 のような 3 度 の 大 きな 地 震 が 襲 っている。・1981 年 6 月 11 日 のゴルバフ Golbah 地 震 :Ms( 表 面波 マグニチュード)= 7.0・1981 年 7 月 28 日 のシルフ Sirch 地 震 :Ms = 7.0・1998 年 3 月 14 日 の 北 ゴ ル バ フ( フ ァ ン ド ガ ーFandogha) 地 震 :Mw(モーメントマグニチ ュード)= 6.6( 注 )マグニチュードの 種 類 :MJ = 気 象 庁 マグニチュード,Ms = 表 面 波 マグニチュード,mb = 実 体 波 マグ 苓 チュード,ML =ローカルマグニチュード,Mw =モーメントマグニチュード,MK = 震 度 マグニチュード,MO = 気 象 庁 の 改訂 前 のマグニチュード,Mm = 群 発 地 震 の 最 大 地 震 気 象 庁マグニチュード,Mt = 群 発 地 震 のトータルエネルギーによるマグニチュード図 2:バム 付 近 の 断 層 (Hejazi & Hanazato 2009)バム 市 の 主 な 建 物 は、アドベ(adobe、 日 乾 煉 瓦 造 )と 通常 の 煉 瓦 組 積 造 であり、 近 代 的 構 造 の 建 物 は 極 めて 少 ない。アドベや 泥 を 重 ねただけのチネと 呼 ぶ 壁 体 は 地 域 の 伝 統 的 な建 築 工 法 であり、 壁 は 厚 く、 屋 根 は 同 様 の 組 積 で 疑 似 ドーム状 に 造 ることが 多 い。 耐 震 性 に 極 めて 劣 るため、1967 年 に3. 3-1 イランにおける 国 レベルの 防 災 体 制 については、バム 震災 後 に UNESCO テヘラン 事 務 所 と Shahid Beheshti 大 学 とが 共 同 してまとめた 詳 しい 報 告 がある。Fallahi, Alireza & Sharif Motawef, 2007, "Bam EarthquakeReconstruction Assessment, An Interdisciplinary analytical studyon the risk preparedness of Bam and its cultural landscape, aWorld Heritage Property in Danger"(A joint project between UNESCO Tehran Cluster Office &University of Shahid Beheshti).98


第 二 章 各 国 調 査本 節 以 下 の 記 述 は、とくに 断 らない 限 り、 上 記 報 告 書 によるものである。3-1-1 1984 年 、UNDRO 国 連 災 害 救 済 調 整 官 事 務 所 (Office ofthe United Nations Disaster Relief Coordinator) は、 次 のような 11 項 目 にわたる 防 災 手 段 を 列 挙 した: 緊 急 計 画 、 法整 備 、 財 政 出 動 と 補 償 、 組 織 、 情 報 伝 達 、 予 測 あるいは 予 兆 、公 的 警 告 と 情 報 、 災 害 後 局 面 の 被 害 と 需 要 査 定 、 緊 急 健 康対 策 、 評 価 、 研 修 、 教 育 。そこには 軍 事 的 な 援 助 、 調 査 、 救 済 や 宇 宙 技 術 、 非 物 質的 援 助 など、 特 殊 な 援 助 形 態 についても 言 及 されている。しかし、 歴 史 的 な 意 味 合 いのある 地 域 では、さらにいくつかの 手 法 を 考 慮 するべきである。それらは:1) 脆 弱 さ 評価 、2) 計 画 、3) 関 係 機 関 の 枠 組 み、4) 情 報 システム、5)補 給 基 地 、6) 警 告 システム、7) 応 答 メカニズム、8) 公 的教 育 と 研 修 、9) 想 定 訓 練 、である。3-1-2 Stakeholders in RiskPreparedness of Bam危 機 管 理 プロセスの 関 係 者 とは、 通 常 以 下 の 代 表 者 のことを 言 う。・ 共 同 体 構 成 員・ 公 的 および 準 公 的 団 体 を 含 む 行 政 機 関 ( 国 および 地 方 )・ 非 政 府 機 関 を 含 む 市 民 社 会 組 織・ 民 間 部 門 、すなわちビジネスや 産 業 団 体・ 学 術 研 究 機 関 、 研 修 組 織 、コンサルタント 企 業 など、専 門 グループ・ 新 聞 やテレビ・ネットワークなどのメディア有 意 義 で 効 果 的 な 危 機 管 理 プロセスにおいて、すべての 関係 者 は、 以 下 の 諸 点 を 表 明 するべきであろう。・ 透 明 性・ 下 から 上 への 計 画 立 案・ 民 主 的 手 法・ 費 用 対 効 果 に 適 う 手 段・ 物 資 の 適 正 利 用 の 確 保・ 緊 密 な 共 同 行 動 と 提 携 関 係 ( 付 表 参 照 )3-2 この 点 に 関 し、 体 制 づくりについての 国 全 体 として 有 用 な情 報 は 得 られなかったが、バムの 事 例 が 文 化 遺 産 被 災 時 の 国家 的 体 制 づくりを 促 したのは 確 かであり、ここではまず、 上記 文 献 (Fallahi 報 告 ) 中 に、バムの 震 災 後 に 市 民 たちがどのように 行 動 したか、を 丁 寧 に 追 跡 した 記 録 とその 総 括 が 記 されているので、 参 考 までにここに 紹 介 し、さらに 世 界 遺 産 委員 会 への 提 出 を 前 提 に、 国 としてのバムの 保 存 管 理 計 画 に 用意 された 被 災 への 取 り 組 み 方 を 抄 録 する。3-2-1 まず Fallahi 報 告 における 調 査 方 法 は、 市 民 を 生 業 の 関 係から 次 の 3 グループに 分 ける。グループ A: 文 化 遺 産 の 影 響 を 受 ける 仕 事 についている 人 々グループ B: 文 化 遺 産 と 深 い 利 害 関 係 のある 人 々グループ C: 一 般 の 人 々そして、 居 住 地 域 を、アルゲ・バムを 含 む 7 つに 分 け、そ表 2:バム 危 機 管 理 プロセスの 関 係 者 分 析99


第 二 章 各 国 調 査れぞれでインタビューをまとめている。 全 体 としての 主 要 な結 論 は 次 の 通 り。1)アルゲ・バムはバム 市 において 文 化 と 伝 統 と 歴 史 を 象徴 する。そのため、アルゲ・バムは 地 域 社 会 において、ある意 味 アイデンティティとプライドを 表 し、かつ 人 々に 思 い 起こさせる 存 在 である。 聖 者 廟 やモスクの 修 復 がそれに 次 いで重 要 。この 優 先 順 位 はバムの 居 住 者 の 見 解 と 一 致 する。2) 長 くこのバム 地 区 に 住 み 続 けていた 住 民 たちと、 地 震後 に 移 住 してきた 人 たちとの 間 には、アルグおよび 他 の 歴 史地 区 に 帰 属 する 感 覚 に 関 して、かなりの 相 違 が 存 在 する。3) 社 会 の 低 ・ 中 ・ 高 というクラス 間 では、アルグとバム全 体 の 歴 史 遺 産 に 対 する 感 覚 という 点 に 関 し、 有 意 の 差 は 存在 しない。4) 震 災 後 もバムに 住 み 続 けた 人 たちは、バムへの 愛 着 がきわめて 強 い。5)20 歳 以 下 の 若 年 層 では、アルゲ・バムやその 他 の 歴 史的 記 念 物 についての 知 識 が 欠 ける。そのため、 住 民 に 対 してこの 点 に 関 する 教 育 と 訓 練 が 急 ぎ 必 要 である。6) 植 物 の 病 気 や 他 の 疫 病 を 防 止 するため、ナツメヤシ 畑の 所 有 者 に 対 する 支 援 が 求 められている。7) 地 区 長 、 市 長 、そして 文 化 遺 産 庁 や 他 の 関 係 機 関 との相 互 関 係 を 強 化 しなければならない。8) 民 間 部 門 が 歴 史 的 建 造 物 の 維 持 をほう 助 するよう 納得 するには、より 大 きな 責 任 を 彼 らが 負 うように 仕 向 けなければならない。9) 危 機 管 理 には 次 の4つの 基 本 要 素 がある: 計 画 、 規 則 、予 算 、そして 市 民 参 加 。3-2-2 表 3:イラン 文 化 遺 産 庁 の 組 織 図 におけるバム・ベース表 4: 危 機 管 理 と 災 害 軽 減100


第 二 章 各 国 調 査図 3:バム 市 内 、 建 物 被 害 の 程 度(UNESCO 事 務 所 提 供 BHRC (Building and Housing Research Center) 作 成 図 の 一 部 )4. 4-1 バムの 大 震 災 は、2003 年 12 月 26 日 、 現 地 時 間 午 前 5 時26 分 に 発 生 した。 伝 えられるマグニチュード 6.6 という 数値 は 米 国 地 質 調 査 所 によるもの。 震 源 地 は 城 塞 から 10km 以内 で、 震 源 深 さは 約 8km。 水 平 および 垂 直 の 加 速 度 は、 各 々0.8g と 1.1g。UN Office for the Coordination of Humanitarian Affairs の 発表 では、バム 市 とその 周 辺 で 約 50,000 棟 の 家 屋 が 破 壊 され、約 43,200 名 が 死 亡 、 約 90,000 名 が 家 を 失 い、 約 200,000 の人 々が 物 的 ・ 経 済 的 な 損 害 を 被 っていると 報 告 されている。IIEES(International Institute of Earthquake Engineering andSeismology)によると、 大 きな 被 害 はバム 市 に 集 中 し、 特に 旧 市 街 地 である 市 の 北 東 部 と 南 東 部 では、アルゲ・バムの 壊 滅 的 被 害 を 含 め、80% 以 上 の 建 物 が 倒 壊 したと 推 定 されている。4-2 4-2-1 バム 城 塞 すなわちアルゲ・バムは、 最 も 顕 著 な 土 の 建 築と 構 造 物 複 合 体 である。2003 年 12 月 26 日 のバム 地 震 で 廃墟 となった。 城 塞 では 震 災 直 後 から 修 復 事 業 が 開 始 されている。バム 城 塞 は、 北 緯 26 度 5 分 、 東 経 58 度 27 分 、 高 温 乾燥 のイラン 南 東 部 に 位 置 するバム 市 の 北 東 部 に 位 置 し、 標高 1065 mの 傾 斜 する 岩 盤 上 に 築 かれている。この 城 塞 は20ha ほどの 広 さを 持 ち、 世 界 最 大 級 の 泥 づくり 複 合 体 の 一つで、 年 代 は 2000 年 近 くも 遡 る。19 世 紀 中 ごろ、 人 々はバムの 新 市 を 建 設 して、それまでは 居 住 地 だった 城 塞 を 放 棄 した。歴 史 的 記 念 物 として、 城 塞 は 1958 年 に 初 めての 修 復 行 為が 行 われ、1966 年 、 国 指 定 の 遺 産 となった。 城 塞 全 体 の 修復 事 業 は 1971 年 に 始 まり、2003 年 の 大 震 災 まで 続 けられていた。城 塞 の 大 部 分 はアドべ( 日 乾 煉 瓦 ) 造 りで、 高 さ 18m の壁 が 2000m にわたって 取 り 巻 く。 城 塞 内 は 庶 民 と 領 主 それぞれの 居 住 区 に 大 きく 二 分 され、 壁 や 塀 によって 隔 てられている。 庶 民 居 住 区 の 方 は 7 つの 街 区 に 分 かれ、 領 主 館 の 方 は軍 用 部 分 、 領 主 住 居 、そして 付 属 建 物 群 から 成 る。4-2-2 - 震 災 後 に 刊 行 の 始 まったバム 専 門 誌 『ARG』の 2 号 (2007年 刊 )に、 復 興 プロジェクトの 副 代 表 M. ネジャーティ 氏 が、建 造 物 の 被 害 状 況 を 次 のようにその 要 因 を 類 別 して 記 述 している。まず、 地 震 後 の 復 旧 に 向 けての 第 一 歩 は、 被 災 したバムにおける 歴 史 的 建 造 物 の 補 強 であったこと、そして、 被 害 状 況にはばらつきが 確 認 され、 地 震 の 影 響 の 他 、 建 物 の 材 料 や 工法 が 影 響 していたことが 確 認 された。それらを 類 別 すると、1) 地 震 被 害 への 影 響 :バムの 地 震 を 分 析 すると、 地 盤 の 違101


第 二 章 各 国 調 査図 4:ICHTO 作 成 のバム 城 塞 模 型 (ランゲンバッハによる)いによって 地 震 の 効 果 が 異 なって 現 れる 場 合 。 同 じ 建 物 でも修 復 が 段 階 的 で 時 間 差 があったり、 修 復 に 利 用 された 建 材 の質 や 工 法 にばらつきがあったことが、 被 害 のあり 方 に 影 響 を与 えた。2) 以 前 の 修 復 による 被 害 :これまで、バムに 限 らずイランにおける 修 復 事 業 は 常 に、 建 物 と 空 間 のオーセンティシティを 追 求 するばかりで、 地 震 や 災 害 を 想 定 したものではなかった。3) 耐 震 設 計 の 欠 如 による 被 害 :イランでは 地 震 の 発 生 時 期のスパンが 長 く、 地 震 国 でありながら、 多 くの 場 合 その 存 在が 忘 れ 去 られていた。よって 設 計 者 や 建 設 職 人 は 地 震 を 体 感することさえもなかった。4) 建 設 材 料 の 欠 点 による 被 害 : 地 震 に 対 する 日 乾 煉 瓦 そして 煉 瓦 の 弱 さは 無 論 一 つの 大 きな 要 因 であったと 考 えられる。5) 建 築 のデザインと 基 礎 の 設 計 における 欠 点 による 被 害 :図 により 正 しいドームやアーチの 設 計 が 確 認 できた 箇 所 とそうでない 箇 所 での 被 害 の 差 を 示 唆 。 更 に 多 くの 建 物 に 基 礎 がなかったことが 被 害 の 拡 大 に 繋 がった。6) その 他 の 自 然 要 因 による 被 害 :シロアリによる 木 材 への被 害 がひとつの 事 例 。またこの 地 域 では 砂 嵐 など、 風 による被 害 も 無 視 できない。しかし 何 れも 地 震 被 害 との 比 較 では 大きなものではない。前 後 での 様 相 の 変 化 がよりきわだった。そうした 震 災 前 後の 対 比 を 例 示 しておく。 震 災 前 の 写 真 は 2004 年 12 月 初 旬 、震 災 後 は 2003 年 3 月 、いずれも 筆 者 ( 岡 田 )が 撮 影 したものである。4-2-3 先 に 記 したように、 地 震 発 生 よりも 以 前 から 本 遺 跡 には 修復 の 手 が 加 えられていた。 修 復 個 所 は 古 い 壁 体 とは 不 連 続 のため、 地 震 による 崩 壊 の 程 度 が 著 しくなる 傾 向 があり、 正 面門 や 領 主 館 遺 構 など 修 復 の 進 んでいた 主 要 な 遺 構 では、その図 5: 南 正 門102


第 二 章 各 国 調 査図 6: 城 塞 中 心 施 設図 7: 厩 舎 建 物 近 傍図 8: 兵 舎 建 物 中 庭図 9: 金 曜 モスク図 10: 貯 氷 建 物103


第 二 章 各 国 調 査4-3 ここでは、 次 の 3 点 の 資 料 に 基 づき、 今 日 の 復 興 状 況と、その 戦 略 的 方 向 性 を 報 告 する。 第 1 は 2009 年 はじめにイラン 政 府 文 化 遺 産 工 芸 観 光 庁 からユネスコあてに 提 出 された 定 期 報 告 :Comprehensive State of Conservation Report forthe World Heritage Property of Bam and its Cultural LandscapeIslamic Republic of Iran にみる「 行 動 計 画 」を 抄 録 し、 次いで、イスファハン 大 学 の M. Hejazi 教 授 が 三 重 大 学 の 花 里利 一 教 授 と 共 同 で 提 唱 する 行 動 計 画 を、 報 告 書 :RestorationPlan for an Adobe Shop Building in the Bam Citadel in Iran(2009)をもとに 紹 介 する。 最 後 に、イラン 政 府 がバムの 復 興 事 業 に関 わる 調 査 研 究 を 統 括 するために 設 けた Arg-e Bam ResearchFoundation が 刊 行 している 年 次 報 告 書 の 概 要 と、2007 年 までの 考 古 学 関 係 の 成 果 をまとめた 報 告 書 のコンテンツを 示 しておく。4-3-1 2009 1) 施 設・ 外 付 けハードディスク 2 台 の 供 給 によって 文 書 センターの配 備 完 了 。さらに、データ 保 護 のセキュリティ・レベル 向 上のため、 外 付 けハードディスクは 異 なる 2 か 所 の 安 全 ボックスに 保 管 する。・バム 城 塞 修 復 用 に 20 万 個 以 上 の 日 乾 煉 瓦 を 生 産 する。・シスターニ・ハウス 修 復 継 続 のため、ドイツ・ドレスデン工 科 大 学 が 求 めるヤシの 木 繊 維 補 強 の 日 乾 煉 瓦 を 25,000 個以 上 生 産 する。・ 第 1 タワー 修 復 のため、イタリア 文 化 省 の 求 めで 11000 個以 上 の 日 乾 煉 瓦 を 生 産 する。・ 日 乾 煉 瓦 、モルタル、 泥 プラスター 生 産 のため、バム 城 塞に 隣 接 するネザーマーバードの 粘 土 を 供 給 するため、バム 郡のネザーム・シャフルと 契 約 する。・ 日 乾 煉 瓦 の 増 産 と 質 の 向 上 をめざして 日 乾 煉 瓦 ワークショップに 対 して 12 × 6 mのテントをさらに 6 張 追 加 する。・ 日 乾 煉 瓦 ワークショップと 実 験 施 設 の 増 設 。・ 模 型 ワークショップの 増 設 。・ 新 規 の 修 復 試 験 用 に 穿 孔 機 を 購 入 する。・ 壁 体 、ドームなどに 引 張 り 素 材 を 挿 入 するために 穿 孔 機 を購 入 。・ 修 復 作 業 に 必 要 な 足 場 の 購 入 。・ 複 数 のワークショップに 必 要 な 資 材 の 購 入 。・ 一 般 的 な 倉 庫 、および 本 事 業 用 道 具 ・ 機 器 類 の 保 管 用 施 設を 拡 充 する。・ 考 古 遺 物 研 究 センターの 建 物 を 完 成 させる( 倉 庫 と 陶 器 展示 )。・ 各 ワークショップで 消 耗 する 用 品 の 準 備 供 給 。・プロジェクト・スタッフの 住 居 を 完 成 させる。・コンピューター 本 体 とソフトウェアのアップデート。・ 高 速 インターネットを 備 えたオフィス 技 術 の 供 与 。2) 応 急 的 修 復緊 急 の 保 存 行 為 は 以 下 の 地 区 において 残 存 部 分 を 保 護 するために 実 施 された。・ 第 2 城 門・ 金 曜 モスクの 風 の 塔・ 厩 舎 の 斜 路・ 公 的 区 域 の 東 西 にわたる 広 い 範 囲・ 金 曜 モスク3) 残 屑 の 除 去残 屑 の 8 割 以 上 は 除 去 されている。その 作 業 は 以 下 の 地点 で 実 施 された。・ 第 2 城 門 の 北 側・ 風 車 の 塔・ 公 的 区 域 の 東 西 にわたる 広 い 範 囲・パヤーンバル Payambar モスク・ 厩 舎 南 側 の 建 築 部 分・サッバース Sabbath の 南 西 建 築 部 分・ 軍 司 令 官 建 物・ 領 主 館 の 西 壁・1,830m に 及 ぶ 周 壁 内 側4) 安 定 化 処 置城 塞 各 部 を 危 うくしている 脅 威 という 観 点 から、 城 壁ワークショップが 設 置 され、 崩 壊 した 構 築 部 分 のうち、 下記 地 点 で 安 定 化 処 置 がとられた。・シスターニ・ハウスの 2 室 で、 注 入 処 置 とファイバーグラス 材 の 挿 入 作 業 完 了 。・ 厩 舎 の 2 室 で、 積 み 柱 piers の 多 様 な 層 に 注 入 処 置 とジオ・グリッド・メッシュ 材 の 挿 入 を 完 了 。・シッセ 素 材 (ナツメヤシ 繊 維 ) 使 用 によるパヤンバール・モスクの 補 強 ( 進 行 中 )。・ 西 部 公 的 区 域 の 一 連 の 遺 構 の 補 強 。5) 修 復 および 再 建・「 四 季 の 館 」( 領 主 館 の 一 郭 )・ 第 2 城 門・ 風 車 の 塔・ 厩 舎 の 斜 路・シスターニ・ハウス・ 第 2 城 門 東 の 建 築 部 分・バーザール 通 りの 東 西 両 側・サッバース・ハウス 西 側・ 金 曜 モスクの 巡 礼 室 の 壁・ 兵 舎 の 修 復 補 修 完 了104


第 二 章 各 国 調 査4-3-2 バム 城 塞 修 復 の 行 動 計 画 を、 次 の3つの 段 階 から 構 成 する。1) 調 査 研 究2) 保 存 、 修 復 、そして 再 生3) 表 示 と 教 育この 計 画 は 遺 跡 全 体 の 完 全 な 復 原 をめざすものではなく、 今 後 数 カ 月 、 数 年 の 間 に 実 行 するべき 明 確 な 指 針 と 戦略 的 で 現 実 的 な 計 画 に 基 づき、 歴 史 的 な 地 区 を 保 存 ・ 修 復 ・再 生 ・ 表 現 そして 発 展 させることをめざすものである。このなかで 優 先 されるのは、 一 つには、 遺 跡 の 主 要 部 分 の 修復 であり、さらには、 例 として 周 壁 、 街 路 や 広 場 、 住 宅 、公 的 建 物 など、 数 か 所 の 部 分 の 再 生 である。 計 画 は 次 の 3つの 異 なる 段 階 に 従 って 実 施 される。Phase I: 応 急 処 置Phase II: 記 録 ・ 評 価 ・ 分 析 ・ 計 画Phase III: 長 期 的 な 修 復 ・ 再 生 ・ 表 示 そしてバム文 化 遺 産 の 持 続 的 活 用Phase I は 緊 急 処 置 の 段 階 。バム 城 塞 は、 余 震 による 遺 構のさらなる 被 害 を 防 ぎ、かつ 遺 跡 の 記 録 保 存 を 確 保 し、また 修 復 計 画 を 進 めるために 必 要 な 調 査 と 分 析 を 開 始 するため、 緊 急 の 調 査 が 求 められた。この Phase I は、2004 年 の前 半 に 実 施 された。Phase II は、2004 年 、2005 年 に 実 施 されたもので、 遺 跡の 持 つ 構 造 学 ・ 地 質 学 ・ 地 盤 工 学 などの 諸 条 件 に 関 する 適切 な 知 見 を 獲 得 するため、 加 えて、 考 古 学 上 の 層 序 に 関 する 情 報 の 収 集 、 今 後 すべての 再 建 修 復 活 動 に 関 するより 適切 な 材 料 と 構 造 の 研 究 をめざし、 総 合 的 な 分 析 と 調 査 を行 った。Phase III は、 長 期 にわたる 修 復 ・ 再 生 ・ 表 示 、そしてバムの 文 化 遺 産 の 持 続 的 活 用 をめざすもの。これらの 活 動 は、バム 市 域 全 体 の 再 建 復 興 計 画 と 連 携 せねばならない。また、この 計 画 は、 文 化 遺 産 としての 真 実 に 基 づいた 意 匠 と 材 料を 用 いつつ、 対 地 震 安 全 性 のある 方 法 によって 構 造 を 計 画し 修 復 するための 人 材 を、 地 方 レベルでも 国 家 レベルでも確 保 する 機 会 にもするべきである。なお、 本 報 告 全 体 の 概 要 を、 以 下 にその 目 次 で 示 しておく。/ Abstract/ 1. Introduction: 1.3. The Action Plan 1.3.1. Phase I: EmergencyMeasures 1.3.2. Phase II: Documentation, Assessment, Analysisand Planning 1.3.3. Phase III: Long-Term Conservation,Restoration, Rehabilitation, Presentation, and SustainableUtilisation of Bamʼs Cultural Heritage/ 2. Description of the Project: 2.1. Original State of the AdobeShop 2.2. State of the Adobe Shop before the Earthquake 2.3.State of the Adobe Shop after the Earthquake 2.4. ProjectOutline 2.5. Activities Carried Out So Far/ 3. Experimental Tests: 3.1. Adobe Material Properties 3.1.1.Material Properties of Adobe Shop 3.1.2. Material PropertiesSelected for Structural Analysis 3.2. Palm-Tree Rope Properties/ 4. Structural Analysis: 4.1. Material Properties 4.2. Loading4.3. Method of Analysis/ 5. Further Activities/ 6. Conclusion4-3-3 Arg-e Bam Research Foundation 1)2005 年 刊 行 第 1 巻 第 1 号・まえがき : 8- Sayyed Beheshti, Bam earthquake, a tremble inthe Iranians mind. / 12- Skandar Mokhtari, A glance over postearthquakeactivities of the Arg-e Bam Urgent Recovery Project.・ 考 古 学 分 野 : 22- Emran Garajian et al., Bam after earthquake:selective information on ethnoarchaeology of disaster. / 38-Narges Ahmadi et al., Debris removal from Arg-e Bam. / 77-Asghar Karimi, Human bone remains inside Arg-e Bam walls:historical context.・ 日 乾 煉 瓦 調 査 : 98- Monizheh Hadiyan Dehkordi, A glanceover laboratory achievements of the Arg-e Bam Urgent RecoveryProject. / 101- Samet Ejraii et al., Soil mechanic laboratory:methods and techniques. / 117- Azadeh Eslafili et al., Laboratorystudies on Arg-e Bam mud-bricks (tower 1). / 123- AzadehEslafili et al., Laboratory studies on Arg-e Bam soil mines.・ 地 質 学 分 野 : 141- Ali Malekabbasi et al., A report ongeological setting of Bam.・ 被 災 状 況 : 167- Eskandar Mokhtari, On the Pathology of Arg-eBam surrounding walls. / 191- Sorna Khakzad, Pathological studyon Arg landscape. / 199- Maryam Nezari, Pathological study onYakhdan (ice house). / 206- Mehdi Keramatfar, Restoration andconservation of tower 7. / 213- Afshin Ekhlaspour, Relics andlimits of the old Bazaars (Markets).・ 事 例 報 告 : 223- Ali Barkhodar, A plan for study of Qanats (wellgallery) of Bam region. / 226- Hadi Ahmadi, A plan for studyof Qalahs (forts) of Bam religion. / 233- Mehrdad Mohamadi,Using GIS in Arg-e Bam documentations. / 237- MozhdehMomenzadseh, ICHTO international activities after earthquake of26 December 2003 in Bam. / 243- Seyed Mehdi, 'Bam' Strategicstructuralproject (from cultural-historical point of view): the firstphase.2)2007 年 刊 行 第 1 巻 第 2 号/ マフムード ・ ネジャーティー、 文 化 財 バムの 緊 急 復 旧 作業 における 技 術 面 の 活 動 報 告/ ニマー ・ ナーデリー、バム 内 部 での 活 動/ ナルゲス ・ アハマディー、バム 復 興 プロジェクトにおける105


第 二 章 各 国 調 査考 古 学 研 究 および 活 動 の 報 告/ シャーラーム ・ ザーレ、アフラーズ 地 区 の 考 古 学 調 査 /バム 断 層/ フィールーゼ ・ サーラーリー、アルグに 関 する 研 究 資 料 の保 護/ メヘディー ・ ケラーマトファル、 地 震 による 被 害 状 況 のランク 付 け/ アリーレザー ・ エイニーファル、バムの 歴 史 的 建 築 物 5 件に 関 する3D モデルの 作 成/ モルテザー ・ ファラー・バフシ、バムのタキーイェの 広 場にて 行 われた 活 動 の 報 告/ モルテザー ・ ファラ・バフシ、バム・アルグの 兵 舎 (サルバーズ・ハーネ)における 修 復 作 業 の 報 告/ ハーニイェ ・ バンキー、バムのアルグへのアクセス 路 の 設計/ レイラー ・ サーダート・サッジャーディー・ハザーウ、 地震 後 発 見 されたバム・アルグにおける 先 史 時 代 の 土 器 の 紹 介/ レイラー ・ サーダート・サッジャーディー・ハザーウェ、マスジェデ・ジャーミー; 地 震 後 の 発 見/ フーマン ・ メグダーディーヤーン、 土 の 建 築 における、アーチと 垂 直 壁 間 の 応 力 の 測 定/ シーリーン ・ シャード( 翻 訳 )、 文 化 財 における 構 造 の 保 護と 修 復 ―2003 年 ジンバブエの 会 議 より/ マンスール ・ アサディー & マースーメ ・ コドゥーリー、アルグ 外 の 活 動 - 旧 病 院 ; シャフル・バストの 壁 ( 市 壁 )/ サスィーム ・ ラーソフ , バムのマスジェデ・ジャーミーの日 干 煉 瓦 に 関 する 研 究 と 分 類/ マフシード ・ ジャーファリー・ザーデ & ズィーバー ・ シャラフィー、バムのアルグ、 王 宮 の 兵 舎 (エスタブル・ホクーマティー)/ アフシーン ・ エフラース・プール、バムの 氷 室 の 修 復 案/ アフシーン ・ エフラース・プール、バムの 旧 病 院 の 再 建3)2007 年 刊 行 「 地 震 後 のバムのアルグ; 考 古 学 的 活 動 」より/ エスキャンダル ・ モフタリー、 地 震 後 のバム 復 興 プロジェクトの 活 動 を 振 り 返 って/ レイリー ・ サッジャーディー、バムの 地 理 的 環 境 とその 歴史/ ナルゲス ・ アハマディー、バムのアルグに 関 する 考 古 学 研究 の 概 要 と 瓦 礫 撤 去 の 報 告 書/ 現 状 調 査 と 考 古 学 調 査 に 関 する、 実 施 されているプログラム(1. アルグの 全 体 図 と 図 面 の 作 成 2. 瓦 礫 撤 去 手 順 に 関 する 図 面 の 作 成 3. アルグと 周 囲 の 図 面 の 作 成 4. 地 震 前 の資 料 の 収 集 ( 写 真 、 図 面 、 報 告 書 ) 5. 日 々の 活 動 報 告 書 の作 成 6. 日 々の 瓦 礫 撤 去 などの 成 果 の 記 録 7. 出 土 品 の 整備 と 管 理 8. 考 古 学 調 査 や 歴 史 調 査 資 料 の 考 察 と 研 究 の為 の 機 関 の 設 立 ( 仮 設 ) 9. 瓦 礫 撤 去 の 各 段 階 における 報告 書 の 作 成 10. 出 土 品 に 関 する 報 告 書 、 研 究 書 の 作 成11. バム 周 辺 の 歴 史 的 遺 構 等 の 調 査 )/ ソニヤー・シドラング、タレ・アータシーより 発 見 された石 器/ レイリー ・ サッジャーディー、ファリーバー・モタワッリー・バーシー、バムから 出 土 した 先 史 時 代 の 土 器 の 紹 介(タッペ・ヤフヤー、タレ・エブリースとの 類 似 点 )/ モハンマド・タギー・アターイー , アケメネス 朝 期 のアルグとバム 周 辺 の 文 化 的 ランドスケープ: 基 礎 的 見 解/ シャフラーム・ザーレ , サーサーン 朝 後 期 およびイスラーム 初 期 のアルグとバム 周 辺 の 考 古 学 研 究 の 紹 介/ オミド・ヤズダーニ、バム・アルグのヒジュラ 暦 8-13 世紀 の 土 器 の 紹 介4-4 4-4-1 震 災 の 直 前 に、ヤズドで「 土 の 建 築 世 界 大 会 」が 開 催 され、多 数 の 専 門 家 がバムを 訪 ねてその 注 目 度 が 一 気 に 高 まった中 での 震 災 だったので、ユネスコ・テヘラン 事 務 所 をキーとして 国 際 支 援 の 立 ち 上 がりは 早 かった。なかでも 直 接 的 な 資 金 援 助 では、 日 本 とイタリアが 先 行した。ただ 日 本 の 資 金 は 国 際 会 議 の 開 催 やドイツ・ドレスデン 大 学 の 試 験 的 修 復 事 業 に 充 てられた。イタリアとフランス(CRATerre)は 震 災 直 後 にユネスコ調 査 団 に 帯 同 していち 早 く 専 門 家 が 現 地 に 入 り、イタリアは 外 城 壁 、フランスは 内 城 壁 それぞれに 修 復 拠 点 をおいて成 果 を 上 げつつある。 他 方 日 本 は、 専 門 家 が 関 わるとはいえ、 唯 一 三 重 大 学 花 里 教 授 がイスファハン 大 学 と 実 験 的 な共 同 事 業 を 実 施 した 以 外 、 現 場 事 業 は 展 開 していない。4-4-2 イラン 政 府 が 2009 年 に 作 成 した “Periodical Report” には、「 国 際 支 援 の 必 要 性 Need for international supports」という 見出 しで、 求 められるべき 国 際 支 援 の 要 領 について 以 下 のように 述 べる。1) 当 面 の 間 、「バムとその 文 化 的 景 観 」 救 済 事 業 の 継 続 には、国 際 機 関 や 共 同 事 業 者 、さらには 大 学 施 設 による 資 金 援 助が 必 要 である。 資 金 措 置 に 制 限 があるため、 本 事 業 を 担 うイラン 政 府 筋 に 迎 えるべき 国 外 専 門 家 を 招 へいする 機 会 に乏 しい。他 方 、 本 事 業 は 継 続 的 な 国 際 協 力 を 真 摯 に 求 めている。すなわち、 資 金 提 供 者 として、 国 際 機 関 を 本 事 業 に 引 き 込む 努 力 が 必 要 である。これまでのところ、ユネスコは「 日本 信 託 基 金 」を 通 じ、この 事 業 に 大 きな 貢 献 を 果 たして106


第 二 章 各 国 調 査きた。また、イタリア 政 府 文 化 省 (Ministero per i Beni e leAttività Culturali) にも、 一 つの 共 同 事 業 に 出 資 していただいた。いくつかの 大 学 がこれまでに 事 業 参 加 の 意 思 表 明 をしていることから、できるだけ 早 い 機 会 に 基 金 が 用 意 されるべきである。2) 科 学 的 実 証 的 に 適 切 な 支 援 なしにこの 事 業 活 動 は 実 施できないという 事 実 がある 以 上 、バム 城 塞 の 煉 瓦 遺 産 に 関する 国 際 的 な 研 究 センターを 設 置 することは 決 定 的 に 重 要と 思 われる。 初 期 段 階 の 措 置 はすでに 採 られた。 調 査 センターの 建 設 を 始 めるために、 事 業 責 任 者 らは 必 要 な 土 地 を完 全 な 形 で 所 有 しようとしている。しかしながら、 施 設 を整 えるには、 国 際 的 な 協 力 が 必 要 である。 調 査 研 究 段 階 でもまた、 望 むべきゴールに 達 するには 国 際 支 援 が 欠 かせない。研 究 活 動 成 果 は、 全 土 の 地 震 防 災 対 策 に 貢 献 するという 観 点を 重 視 したい。4)より 学 術 的 な 視 点 から、バムの 歴 史 と 都 市 構 造 の 解 明 も国 際 的 な 関 心 事 であることに 留 意 し、 遺 跡 の 保 存 修 復 事 業 の基 盤 としての 考 古 ・ 建 築 学 上 の 研 究 活 動 を 促 進 する 施 策 が 望まれる。3) 城 砦 に 必 要 な 資 材 について、その 大 半 はまだ 獲 得 できていない。 現 時 点 では、 最 新 の 工 学 機 器 類 を 必 要 としている。5. 今 回 の 調 査 は、 国 際 協 力 や 災 害 対 応 というテクニカルな課 題 に 調 査 委 託 の 主 眼 が 置 かれ、イラン 当 局 やユネスコ 事務 所 などの 協 力 で 多 くの 情 報 や 関 連 資 料 を 収 集 することができた。震 災 後 6 年 が 経 過 し、E. Mokhtari 氏 が 統 括 するイラン 政府 筋 の 修 復 事 業 は、 迅 速 とはいえないが、 学 術 と 修 復 事 業の 両 面 で 安 定 的 に 成 果 を 上 げつつある。とはいえ、ユネスコや 諸 外 国 から 提 供 される 資 金 援 助 がみな 完 了 段 階 を 迎 えたいま、 世 界 遺 産 にも 登 録 された「バムとその 景 観 」を 回 復 して 維 持 するには 多 くの 課 題 が 横 たわる。 各 種 ドキュメント 情 報 と、2009 年 9 月 に 現 地 で 関 係者 と 接 した 結 果 から、 今 後 の 復 興 と 維 持 管 理 に 有 効 な 施 策をまとめる。1) 修 復 事 業 がこれほど 集 中 的 に 行 われる 例 は 稀 有 だが、なお 待 ち 構 える 事 業 の 種 類 と 量 は 膨 大 で、しっかりした 長期 計 画 を 固 める 必 要 がある。2)これまでに 関 係 した 諸 外 国 隊 を 含 む 複 数 の 修 復 グループの 実 験 的 事 業 の 成 果 とそれらの 評 価 を 相 互 に 共 有 し、 意見 交 換 を 促 す 機 会 としての 持 続 的 な 会 議 体 を 組 織 する。3) 保 存 修 復 の 現 場 では、 機 材 が 決 定 的 に 不 足 。とくに 重機 類 と、 強 い 要 望 があるのは 起 振 装 置 。イラン 全 土 をみると、 比 較 的 短 い 周 期 で 大 きな 人 的 被 害 を 伴 う 地 震 が 起 こっており、ここバムに 蓄 積 されつつある 対 地 震 関 連 の 実 験 や107


第 二 章 各 国 調 査108


第 二 章 各 国 調 査5. ギリシア (ダフニ 修 道 院 とオリンピア 遺 跡 の 事 例 を 中 心 に)立 命 館 大 学立 命 館 グローバル ・ イノベーション 研 究 機 構1. 1-1 近 年 、 文 化 遺 産 の 被 害 に 対 する 関 心 が 高 まり、 自 然 災 害や 人 的 災 害 による 文 化 遺 産 の 被 災 事 例 を 目 にすることが 多くなっている。かけがえのない 文 化 遺 産 について、ふだんから 防 災 対 策 を 講 じておくことが 望 まれる。 防 災 の 取 組 には 国 によってばらつきがある。 文 化 遺 産 が 防 災 対 策 の 視 野に 含 まれていなかったところ、 大 規 模 な 自 然 災 害 の 被 害 をきっかけとして、 初 めて 本 格 的 に 文 化 遺 産 の 防 災 体 制 が 整備 される 事 例 も 多 い。また、 被 災 後 には 文 化 遺 産 の 復 旧 を迅 速 かつ 適 切 に 行 う 必 要 があり、 海 外 からのわが 国 への 協力 要 請 や 専 門 家 による 実 際 の 協 力 事 例 も 増 えている。しかしながら、 災 害 が 起 きてからの 対 応 ではなかなか 迅 速 で 効果 的 な 協 力 は 難 しく、どのような 形 の 貢 献 が 可 能 であるのかできるのか、 普 段 から 把 握 しておくことや 相 手 国 と 協 力連 携 しておくことが 重 要 となる。こうした 背 景 を 踏 まえ、 立 命 館 大 学 歴 史 都 市 防 災 研 究 センターでは 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムからの 再 委 託を 受 け、 文 化 遺 産 国 際 協 力 に 関 する 調 査 の 一 環 として、 被災 文 化 遺 産 復 旧 について 事 例 調 査 を 行 ったものである。 調査 の 内 容 は 主 として、 当 該 国 の 文 化 遺 産 の 防 災 体 制 と 被 災時 の 体 制 、また、 具 体 的 な 災 害 事 例 について 復 旧 と 国 際 協力 の 実 際 を 焦 点 としている。 本 調 査 ではギリシャを 対 象 にダフニ 修 道 院 とオリンピア 遺 跡 を 中 心 事 例 として 取 り 上 げた。 全 体 として、 第 2 節 では 災 害 特 性 と 文 化 遺 産 の 被 災 特性 について 説 明 している。 第 3 節 では 文 化 遺 産 の 防 災 と 復旧 体 制 について、 第 4 節 では 事 例 分 析 として 実 際 の 文 化 遺産 被 災 と 復 旧 の 概 要 ならびに 国 際 協 力 について、それぞれ調 査 結 果 をもとにまとめている。 第 5 節 では、 本 調 査 期 間中 に 開 催 した 特 別 セッション「 文 化 遺 産 の 地 震 からの 防 御と 復 旧 」( 第 3 回 日 本 ・ギリシャワークショップ「 基 礎 構 造物 の 耐 震 設 計 、 観 測 、 及 び 補 強 」の 一 部 )の 概 要 をまとめている。 最 後 に 第 6 節 では 本 事 例 調 査 の 総 括 と 提 言 をまとめた。1-3 今 回 の 調 査 は、2009 年 9 月 20 日 から 9 月 28 日 まで 行 った。また、その 調 査 日 程 及 び 面 談 者 を 下 記 の 表 に 記 す。1-2 ギリシャでは、 以 下 のメンバーが 調 査 を 行 った。109


第 二 章 各 国 調 査図 1-1アテネのアクロポリスの 修 復 現 場 見 学図 1-2 ギリシャ 文 化 省 でのインタビュー図 1-3新 アクロポリス 博 物 館 ( 建 築 家 ベルナール・チュミ 氏 らが 設 計 、2009 年 6 月 にオープン)図 1-4 特 別 セッションの 全 景 (2009 年 9 月 22-23 日 )図 1-5 デルフィ 遺 跡 森 林 火 災 スプリンクラー図 1-6 エピダヴロス 遺 跡 の 消 防 車 とタンク110


第 二 章 各 国 調 査図 1-7 調 査 遺 跡 及 び 訪 問 先111


第 二 章 各 国 調 査2. 2-1 ギリシャの 主 要 な 自 然 災 害 は 地 震 と 山 火 事 である。 地 震災 害 には 地 滑 りと 土 石 流 が 含 まれる。 洪 水 と 火 山 噴 火 も 文化 遺 産 の 長 期 保 存 の 観 点 からは 脅 威 である。1) 地 震ギリシャはヨーロッパで 地 震 にもっともさらされている国 である。マグニチュード 5.5(リヒタースケール) 以 上の 地 震 が1 年 間 に 0.64 回 起 こる。この 値 は 日 本 の 1.14 回より 小 さいがイタリアの 0.52 回 より 多 い(UNDP, 2004)。さらに、 単 位 面 積 あたりで 比 べると、 百 万 平 方 キロメートル 当 たり 1 年 間 でギリシャが 4.9 になるのに 対 し、 日 本 は3.0、イタリアは 1.7 となる。表 2-1 はギリシャにおける 近 年 の 地 震 災 害 を 示 したものである。ここの 地 震 の 規 模 は 日 本 ほど 大 きくないが 頻 繁 に発 生 している。表 2-2 の 歴 史 的 地 震 のリストからギリシャの 地 震 活 動 の別 の 様 相 が 伺 える。マグニチュード 8.0 以 上 の 巨 大 地 震 が数 百 年 間 隔 で 起 きていることである。 一 部 の 歴 史 家 たちはこれらの 巨 大 地 震 が 古 代 ギリシャの 社 会 文 明 の 盛 衰 になにかしらの 影 響 を 与 えてきた、と 述 べている。ギリシャの 地 震 の 特 徴 はギリシャとその 周 辺 のプレート 運動 を 概 観 した 図 2-1 からも 理 解 できる。 東 からトルコのアナトリアプレートに 押 し 込 まれたエーゲ 海 プレートは 西 と 南 に分 かれて 動 いている。 南 からはアフリカプレートがエーゲ 海プレートの 下 に 潜 り 込 んでおり、 典 型 的 な 潜 り 込 み 帯 島 弧 地形 を 形 成 している。それ 故 、クレタ 島 とロードス 島 では 地 震が 多 発 する。M8 級 の 巨 大 地 震 が 数 百 年 ごとに 発 生 し、これらの 島 だけでなくギリシャ 本 土 にも 被 害 をもたらす。 凡 そ 1千 年 に 一 度 起 こる 浅 い 巨 大 地 震 は 地 中 海 沿 岸 に 影 響 するような 津 波 を 起 こす。もう 一 つのギリシャの 地 震 帯 はイオニア 海 に 面 するギリシャ 西 岸 である。ここでは 横 ずれ 断 層 により M7 級 の 地 震が 頻 繁 に 起 こる。 近 年 、この 地 域 で 起 きた 悲 劇 的 な 被 害 は1953 年 のイオニア 諸 島 地 震 (M7.2)である。 約 450 人 が 犠牲 となり、ザキントス 島 の 歴 史 的 街 並 みの 90% が 焼 失 した。このほか 二 つの 地 震 帯 がギリシャの 文 化 遺 産 の 多 くにとって 危 険 である。 一 つはギリシャ 半 島 の 中 央 を 東 から 西 に 通 っており、もう 一 つはアテネからパトラにかけてコリントス 湾の 北 岸 を 通 っている。ダフニ 修 道 院 に 被 害 を 及 ぼした 1999年 の 地 震 は 後 者 の 地 震 帯 に 属 している。表 2-1 ギリシャに 於 ける 最 近 の 被 害 地 震 (European Commission Directorate, 2003)表 2-2 ギリシャの 歴 史 に 残 る 巨 大 地 震 (Papazachos、1997)112


第 二 章 各 国 調 査図 2-1 エーゲ 海 とその 周 辺 地 域 の 地 殻 運 動 に 影 響 を 及 ぼすプレート 運動 (Papazachos, 1997)2) 山 火 事山 火 事 がギリシャの 重 大 な 自 然 災 害 となってきた。1955年 から 1973 年 の 間 は 平 均 で 1 年 間 に 11,500 ヘクタールが 焼失 した。しかし、1980 年 から 2000 年 にはそれが 55,000 ヘクタールに 増 加 している。そして、ギリシャ 近 代 史 上 最 悪 の 山火 事 シーズンと 言 われている 2007 年 夏 には 270,000 ヘクタールが 焼 失 した。 気 候 変 動 の 影 響 に 加 えて、Zirogiannis (2009)はこの 増 加 の 背 景 には 生 態 学 的 で 社 会 経 済 学 的 な 要 因 があると 指 摘 している。 彼 の 見 解 を 要 約 すると、 過 去 50 年 間 、ギリシャは 激 しい 社 会 的 な 人 口 移 動 を 起 こしてきた。1940 年代 の 終 わり 頃 から 急 激 な 都 市 化 が 始 まり、 人 々が 大 きな 都 市に 流 入 するようになった。その 流 れは 1960 年 代 にピークに達 し、 多 くの 農 村 部 の 孤 立 を 招 き、 農 村 人 口 の 定 常 的 な 減 少が 見 られるようになった。 薪 の 需 要 が 減 り、 牧 草 地 や 農 地 が放 置 され、 山 道 も 使 われなくなった。さらに、 森 の 産 物 に 対する 地 中 海 の 市 場 が 収 縮 していった。 従 って、 伝 統 的 な 森 の管 理 者 だった 農 村 地 域 の 住 民 は 生 計 の 場 として 森 林 の 世 話 をしなくなった。その 結 果 、ギリシャの 森 には 植 物 由 来 の 燃 料が 蓄 積 され、 一 方 で、 農 村 部 の 住 民 には 山 火 事 などの 災 害 から 森 林 を 守 るインセンティブが 減 少 していった。さらに、1970 年 代 に 入 ると、 経 済 的 な 富 裕 化 と 都 市 中 心部 の 公 害 の 増 加 から、 多 くの 人 が 夏 の 間 に 町 を 離 れ、 海 岸 部や 山 村 に 別 荘 を 建 てるようになった。その 結 果 、 都 市 の 生 活スタイルが 原 野 に 持 ち 込 まれ、 観 光 旅 行 者 の 増 加 とも 相 まって 失 火 の 機 会 が 増 えてきた。さらに、ギリシャの 法 体 系 が 森 林 地 域 のいかなる 改 変 も 厳しく 制 限 しているので、 土 地 の 不 足 から 地 価 が 極 めて 高 くなった。そして、 開 発 用 地 が 大 変 不 足 している 地 域 では 山 火事 が 増 加 する 傾 向 を 示 すようになった。 不 正 な 開 発 業 者 が 焼け 跡 にすぐに 家 や 観 光 客 の 宿 泊 施 設 を 建 てるために 放 火 している 可 能 性 がある。図 2-2 2007 年 夏 の 山 火 事 で 焼 失 した 地 域(Zirogiannis、2009)図 2-3 火 災 時 の 衛 星 写 真 (DLR)文 化 遺 産 に 対 して 山 火 事 の 危 険 性 が 増 加 しているもう 一つの 要 因 は 山 地 の 植 生 の 変 化 、すなわち、 古 代 ギリシャ 時代 には 無 かった 松 の 木 の 繁 茂 である。 人 工 的 なオリーブの林 を 除 いたギリシャの 山 野 を 松 の 木 が 覆 っている。 松 の 落ち 葉 は 油 を 含 み 大 変 燃 えやすい。 加 えて、 松 笠 は 火 事 にあっても 生 き 残 り、 火 事 のすぐ 後 で 多 くの 種 をまき 散 らす。そのため、 落 ち 葉 と 木 が 燃 え 尽 くされても、 短 い 期 間 で 山 火事 の 危 険 性 が 戻 ってくる。113


第 二 章 各 国 調 査3) 火 山 噴 火ギリシャの 活 火 山 は 多 くない。 歴 史 時 代 に 噴 火 の 記 録 があるのは 3 カ 所 (Methana, Santorini and Nisyros)のみである。それらは 南 エーゲ 海 の 火 山 弧 に 位 置 しておりその 活 動 はアフリカプレートの 潜 り 込 みの 影 響 を 受 けていると 推 定 される(Papazachos、1997)。図 2-5 クレタ 島 のクノソス(Christaras、003)図 2-4 南 エーゲ 海 の 火 山 弧 (Papazachos、1997)メサナ(Methana) 火 山 は 弱 い 噴 火 を 一 度 起 こしただけであり(BC 250 年 )、ニシロス(Nisyros) 火 山 は 5 回 小 さな 噴 火 を 起 こしただけである(1422 年 、1830 年 、1871 年 、1873 年 、1888 年 )。ギ リ シ ャ で 最 も 重 要 で 危 険 な 火 山 は サ ン ト リ ー ニ(Santorini) 火 山 である。この 火 山 は 紀 元 前 1620 年 頃 にカルデラを 形 成 しており、 紀 元 前 197 年 から 西 暦 1950 年 にかけて 13 回 の 噴 火 が 記 録 されている。 そのうちのいくつかは 大 噴 火 で、 大 きな 被 害 がでている。 紀 元 前 1620 年 頃の 噴 火 では 文 明 が 進 んでいたサントリーニ 島 の 住 民 に 被 害を 及 ぼしただけでなくエーゲ 海 の 島 々や 海 岸 に 影 響 を 及 ぼした 大 きな 津 波 を 起 こしている。 歴 史 家 たちの 中 にはこの歴 史 的 な 大 噴 火 をアトランティス 伝 説 と 関 連 づけようとしている 人 たちもいる。2-2 1) 古 代ギリシャの 長 い 歴 史 の 中 で、 地 震 、 火 山 噴 火 、 津 波 、 斜面 崩 壊 が 多 くの 文 化 遺 産 に 被 害 を 及 ぼしてきたことは 間 違いがない。 実 際 、 古 代 のギリシャの 文 明 が 発 達 した 都 市 が自 然 災 害 に 見 舞 われた 物 語 は 多 く 残 っている。クレタ 島 のクノソス(Knossos)はミノワ 文 明 の 宮 殿 があったところで、 新 石 器 時 代 (BC 7000-3000 年 )からローマ 時 代 まで 継続 的 に 居 住 されてきた。その 間 、 地 震 とおそらくサントリーニの 火 山 噴 火 により 紀 元 前 1890 年 以 前 に 破 壊 されている。新 しい 宮 殿 が 紀 元 前 1700 年 に 建 設 されたが 紀 元 前 1570 年 に地 震 によって 破 壊 されている。 紀 元 前 1450 年 に 再 度 建 設 されたが 紀 元 前 1375 年 にまた 破 壊 された(Christaras、2003)。サントリーニ 島 のアクロチリ(Akrotiri)もまたミノワ 文 明の 遺 跡 である。 紀 元 前 1550 年 頃 の 大 噴 火 で 古 代 サントリーニ 島 の 山 体 が 吹 き 飛 ばされアクロチリの 街 は 火 山 灰 と 軽 石 に覆 われてしまった。ポンペイの 遺 跡 とは 異 なって、 住 民 は 噴火 の 前 に 避 難 したと 推 定 されている。 埋 まっていた 街 の 発 掘は 1974 年 から 始 められ、その 豊 かで 大 きなスケールから、伝 説 のアトランティスはサントリーニ 島 にあったとする 仮 説も 出 されている。サントリーニ 島 のもう 一 つの 遺 跡 は 古 代 チラ(Thyra)で、紀 元 前 900 年 頃 に 栄 えた。 紀 元 前 631 年 にチラの 住 民 は 火 山活 動 のために 飢 饉 に 見 舞 われ、リビヤのシレネに 移 住 している。 箕 浦 等 (Minoura、2000) は 南 エーゲ 海 の 海 岸 で 津 波 堆 積物 の 調 査 とサントリーニ 島 のカルデラ 陥 没 による 津 波 の 数 値シミュレーションを 行 って、サントリーニ 島 の 火 山 活 動 が 後期 ミノワ 時 代 においてエーゲ 海 域 に 大 きな 津 波 を 起 こしたと結 論 づけている。古 代 ギリシャの 地 震 に 関 するもう 一 つの 興 味 深 い 話 はトロイ 戦 争 の 伝 説 である。ホメロス(Homeros)によって 書 かれた 叙 事 詩 イリアス(Ilias)でトロイは 木 馬 の 計 略 で 打 ち 破 られたことになっている。しかし、 幾 人 かの 夢 想 家 は、トロイの 城 壁 が 強 い 地 震 によって 崩 壊 し、その 機 に 乗 じて 古 代 ギリシャ 軍 が 城 内 に 侵 入 した、とする 説 を 提 唱 している。ギリシャ 神 話 のポセイドンは 海 の 神 で 津 波 を 起 こし 馬 も 遣わす、そして 馬 はギリシャ 神 話 では 地 震 の 神 とされている。活 動 の 活 発 な 北 アナトリア 断 層 がトロイ 地 方 まで 伸 びているという 客 観 的 事 実 もある。114


第 二 章 各 国 調 査図 2-6 トロイと 北 アナトリア 断 層 (Papazachos、1997)2) 近 代近 代 に お け る 文 化 遺 産 の 代 表 的 な 被 害 に つ い て、Papazachos と Papazachou は 次 の よ う に 書 い て い る(Papazachos、1997)。「ギリシャでは 歴 史 的 記 念 物 が 度 々 地 震 によって破 壊 されて 来 ており、その 文 化 的 影 響 はきわめて重 大 である。たとえば、ロードス 島 のコロッソス(Colossus)(BC 227 年 に 被 災 、 以 下 同 様 )、オリンピアのオリンピックゼウス 神 殿 (AD 365 年 )、コス 島のアスクレピイオンの 建 物 (AD 554 年 )、テッサロニキのローマ 市 場 (AD 620 年 ) 、そして、ヘラクリオンの 博 物 館 に 飾 られていた 多 数 の 考 古 学 的 物 品(AD1926 年 、1935 年 ) があげられる。 国 家 的 文 化 遺産 が 失 われた 近 年 における 印 象 的 な 事 例 は 1953 年のイオニア 諸 島 の 地 震 による 被 害 である。Romas(1975)は、ザンテ 島 の 文 化 的 街 並 みの 90% が 1953年 の 地 震 とそれに 伴 った 火 災 により 灰 燼 に 帰 したと述 べている。」Christaras(2003)はデルフィの 考 古 学 遺 跡 を 破 壊 してきた 地 震 を 次 のようにあげている。・ 紀 元 前 600 年 : 聖 域 の 完 全 な 破 壊・ 紀 元 前 373 年 : 主 に 岩 石 の 落 下 による 古 代 アポロ 神 殿の 大 被 害・ 西 暦 1870 年 : 遺 跡 への 著 しい 被 害 (アラホバ-デルフィ断 層 帯 の 再 活 性 化 )デルフィ 遺 跡 は 石 灰 岩 から 成 る 切 り 立 った 崖 の 下 に 開 かれている。 岩 体 にはほとんど 鉛 直 の 不 連 続 面 が 発 達 しており、節 理 やひび 割 れや 開 いた 割 れ 目 が 発 達 している。 我 々が 調 査で 訪 れた 際 には 数 日 前 に 落 石 があったとのことで、 遺 跡 の 中心 部 の 立 ち 入 りは 禁 止 されていた。Theofili 等 は 1999 年 のアテネ-パルニサ 山 地 震 による 歴 史的 建 造 物 の 被 害 を 以 下 のように 述 べている (Theofili, 2001)。「 大 部 分 の 歴 史 的 建 造 物 はほとんど 被 害 を 受 けなかった。しかし、 重 度 の 被 害 がフィリ(Fili)の要 塞 ( 紀 元 前 5 世 紀 ) とエレフシナ(Elefsina)の壁 ( 紀 元 前 5 世 紀 ) に 発 生 した。また、いくつかのビザンチン 建 造 物 が 被 害 を 受 けた。ダフニ 修 道院 (11 世 紀 )がその 例 で、 被 害 が 大 きかった。この 数 世 紀 の 間 に 建 設 された 歴 史 的 な 組 石 造 の 被 害も 報 告 されている。その 中 にはメトロポリス 大 聖堂 と 国 立 リリック 劇 場 が 含 まれる。また、 修 復 が可 能 であったが、 文 化 活 動 の 場 を 提 供 する 建 物 や文 化 的 に 価 値 の 高 い 物 品 を 収 納 する 多 数 の 建 物 も被 害 を 受 けた。その 中 には 国 立 オペラ 劇 場 や 考 古学 博 物 館 も 含 まれている。」既 にユネスコの 世 界 遺 産 に 登 録 されているダフニ 修 道 院は 中 期 ビザンチン 時 代 の 最 も 重 要 な 建 造 物 で、カトリック(the Catholic)の 優 れたモザイク 画 で 世 界 的 に 有 名 である(Miltiadou、2005)。 しかし、この 修 道 院 はアテネ 盆 地 の 西方 の 新 第 三 紀 テクトニクス 地 溝 にあり、 東 西 走 向 の 縁 端 断層 から 150m の 所 に 位 置 している。 地 殻 変 動 の 活 発 なところにあるため、たびたび 強 い 地 震 の 揺 れで 被 害 を 受 けている。この 2 世 紀 に 限 っても、1889 年 のマグニチュード 6.7(M6.7R:リヒタースケール)の 地 震 、1894 年 (M7.0R)、1914 年 (M6.0R)、1981 年 (M6.7R)、そして 1999 年 (M5.9R)の 各 地 震 が 挙 げられる。1999 年 の 地 震 のマグニチュードはさほど 大 きくないが、 修 道 院 から 北 に 約 15km の 浅 い 地 殻で 発 生 した。 建 物 は 崩 壊 こそ 免 れたが 不 安 定 となり、 緊 急の 支 保 と 多 大 な 修 復 工 事 が 必 要 となった。図 2-7 デルフィ 崖 の 上 からの 景 観115


第 二 章 各 国 調 査3. 3-1 Vatavali (2003) は ギ リ シ ャ の 地 震 防 災 政 策 に つ い て 欧州 委 員 会 一 般 環 境 理 事 会 第 3 分 会 : 市 民 防 災 (EuropeanCommission, Directorate General Environment Unit D3: CivilProtection)に 次 のように 報 告 している。図 2-8 デルフィの 遺 跡 と 絶 壁1) 地 震 防 災 政 策ギリシャでは、 地 震 災 害 により 多 くの 人 命 や 財 産 が 失 われてきており、 文 化 遺 産 も 深 刻 な 被 害 を 蒙 ってきた。こうした経 験 から、 地 震 防 災 政 策 のフレームワークが 何 年 もかけて 作られてきた。 地 震 防 災 政 策 の 主 なポイントは 以 下 の 通 りである。・ 建 造 物 に 関 する 地 震 リスクの 削 減・ 中 央 政 府 レベルおよび 地 方 自 治 体 、 地 域 レベルでの 減 災 対策 の 確 実 な 実 施・ 地 震 に 対 する 意 識 を 高 め、 震 災 からの 安 全 対 策 について 情報 を 公 共 に 開 示 すること・ 緊 急 対 応 力 と 救 援 活 動 力 の 向 上ギリシャにおける 地 震 対 策 政 策 は、 以 下 の 法 定 項 目 に 基 づいている。・Φ EK 534B/20-6-1995、 新 耐 震 規 定・Φ EK 315B/17-4-1997、 新 鉄 筋 コンクリート 規 定・Φ EK 1329/6-11-2000、 鉄 筋 コンクリートに 関 するギリシャ規 定図 2-9 ダフニのモザイク 画図 2-10 修 理 中 のダフニ 修 道 院3) 山 火 事ギリシャの 多 くの 文 化 遺 産 は 火 にあぶられると 表 面 が 変質 する 大 理 石 で 作 られている。 実 際 、いくつかの 遺 跡 のいくつかの 部 分 に 火 災 による 傷 の 跡 が 残 っている。しかし、大 部 分 の 火 災 は 人 工 的 な 出 来 事 である。ギリシャでは 山 火事 による 災 害 が 近 年 増 えているが、 山 火 事 による 文 化 遺 産の 被 害 は 明 確 でない。2) 地 震 防 災 分 野 における 機 関(The Earthquake Planning and ProtectionOrganization(EPPO)) 1 は 1983 年 に、 環 境 国 土 計 画 省(YPEHODE)の 下 に 設 立 された 組 織 である。 国 の 地 震 防 災政 策 を 方 向 づけ、その 実 施 のための 公 的 および 私 的 資 源 を 調整 する 監 督 官 庁 である。EPPO は 地 震 防 災 にかかわる 研 究 プロジェクトを 選 定 し、 支 援 する。 海 外 の 研 究 所 や 関 係 機 関 との 協 同 、 科 学 分 野 との 協 力 、 国 の 地 震 安 全 性 の 推 進 に 於 ける指 導 的 な 役 割 を 果 たすこと、などがその 使 命 に 含 まれる。 震災 対 策 や 地 震 災 害 に 関 する EPPO からのさまざまな 刊 行 物 をそのウェブページから 入 手 できる。(The Earthquake Rehabilitation Service(YAS))は YPEHODE の 下 部 組 織 で 主 たる 業 務 は、 国 、 地 方 自 治 体および 地 域 レベルでの 地 震 災 害 からの 復 興 に 関 する 政 策 を 履行 することである。YAS は 復 旧 と 復 興 の 過 程 を 監 督 し、 地震 でダメージを 受 けた 建 物 の 再 建 や 修 理 に 使 われた 国 の 資 金支 出 の 記 録 をとる。(The General Secretariat of Civil Protection(GSCP)) 2 は 1995 年 に 内 務 省 の 下 に 設 立 され、 主 として 市民 防 災 の 領 域 に 携 わる。あらゆる 種 類 の 災 害 ( 自 然 、 技 術 、等 の 種 類 。 国 、 地 方 、 地 域 レベルでの)から 住 民 を 守 るため、116


第 二 章 各 国 調 査非 軍 事 的 で 私 的 な 方 法 を 含 むあらゆる 対 策 をとることが 法 律で 定 められている。(The Institute of EngineeringSeismology and Earthquake Engineering(ITSAK)) 3 は 1978年 の 震 災 を 受 けて、1979 年 にテッサロニキに 設 立 された。ITSAK の 主 な 課 題 は、ギリシャの 耐 震 設 計 コードを 更 新 し、震 災 による 被 害 を 軽 減 する 目 的 で、 応 用 地 震 学 、 土 質 動 力 学および 地 震 工 学 の 研 究 を 行 うことである。 構 造 モニタリングや 構 造 力 学 の 実 験 技 術 の 更 なる 開 発 、 特 別 研 究 やコンサルティングによる 公 共 / 個 人 事 業 への 関 与 、 震 災 リスク 削 減 に関 する 国 内 および 国 外 での 研 究 計 画 への 参 加 、ヨーロッパ 内外 、 特 に 東 地 中 海 およびバルカン 地 方 の 関 係 研 究 機 関 ならびに 産 業 との 連 携 の 拡 大 などが、 研 究 所 の 将 来 に 向 けての 研 究活 動 プログラムに 含 まれている。The Geodynamics Institute(GI)) 4 はアテネ 国 立 天 文 台 に 属 し、 地 震 学 の 領 域 において、 地 球 内 部 の 研究 、 地 球 物 理 学 、 火 山 学 、 地 熱 、 地 震 地 殻 変 動 学 の 研 究 とその 促 進 を 目 指 している。GI の 主 要 業 務 は 地 震 学 的 ・ 地 球 物理 学 的 パラメータの 収 集 と 処 理 、 研 究 プロジェクトの 実 施 、関 連 研 究 の 強 化 、 第 3 者 機 関 の 教 育 や 支 援 である。のほとんどは、 地 震 防 災に 関 連 のある 幅 広 い 科 学 の 分 野 において 意 義 のある 研 究 を行 っている。 国 立 技 術 大 学 の 土 木 工 学 研 究 科 、 農 業 工 学 ・測 地 工 学 研 究 科 およびアテネ 国 立 大 学 とカポディスティアン(Kapodistian) 大 学 の 地 学 部 、パトラ 大 学 土 木 研 究 科 において、それぞれ 重 要 な 研 究 がおこなわれている。3-2 ギリシャの 災 害 に 対 する 危 機 管 理 体 制 は 主 に 市 民 防 災 総務 局 (GSCR)、ギリシャ 消 防 局 、ギリシャ 警 察 によって 運営 されている。GSCP は 内 務 省 傘 下 で 1995 年 に 設 立 された5。あらゆる 種 類 の 災 害 ( 自 然 、 技 術 、その 他 。 国 、 地 方 、地 域 レベルでの)から 人 命 を 守 るため、 非 軍 事 的 で 私 的 な方 法 を 含 むあらゆる 対 策 をとることが 法 律 で 定 められている。ギリシャ 消 防 局 も 内 務 省6 に 属 するが、ギリシャ 警 察7は 国 民 保 護 省 に 属 する( 前 身 は 公 共 秩 序 省 )。 市 民 防 災 総務 局 (GSCP)の 組 織 図 を 図 3-1 に 示 す。 国 民 保 護 省 (Ministryof Citizen Protection)のウェブサイトのトップページの 中央 に 市 民 防 災 に 係 わる 機 関 として 図 3-2 のロゴが 掲 げられている。これは、 市 民 防 災 総 務 局8 、 消 防 、 警 察 の 間 での密 な 連 携 が 求 められていることを 示 している。図 3-1 GSCP の 組 織 図 (http://www.civilprotection.gr/)117


第 二 章 各 国 調 査図 3-2 市 民 保 護 に 係 わる 機 関 のロゴ(http://www.yptp.gr/main.php?lang=EN&lang=EN)3-3 ギリシャ 文 化 省 の 英 文 のウェブページに 災 害 と 災 害 からの 文 化 財 保 存 に 関 する 記 述 は 見 あたらない。ギリシャ 語 のサイトにも 見 あたらないそうである。 本 調 査 において 文 化遺 産 に 対 する 防 災 や 復 旧 体 制 に 関 するアンケートを 作 成し、 二 度 にわたり 文 化 省 の 数 名 の 職 員 に 回 答 を 求 めたが、答 は 得 られなかった。 一 件 だけ 聞 けた 関 連 事 項 は、2007 年の 山 火 事 の 後 に 中 央 と 支 所 の 各 職 員 の 役 割 が 再 定 義 され、頻 繁 に 防 災 訓 練 が 行 われるようになったと 言 うことであった。ちなみに、 日 本 の 文 化 庁 の 英 文 のウェブページにおいても 日 本 の 文 化 遺 産 を 自 然 災 害 から 守 る 対 策 についての 明 確な 記 述 が 見 当 たらない。 情 報 を 提 供 されなかったことがギリシャ 文 化 省 において 危 機 管 理 に 関 する 関 心 が 低 いことを意 味 するものではないと 考 える。4. 4-1 4-1-1 1) 名 称 : ダ フ ニ 修 道 院 主 教 会 堂 (Katholikon, DaphniMonastery)2) 時 期 : 1999 年 9 月 7 日3) 被 害 の 内 容 と 程 度 : 15km 北 で 発 生 した 1999 年 アテネパルニサ 山 地 震 (マグニチュード 5.9)による 主 教 会 堂 の 構 造 とモザイク 画 への 重 大 被 害4) 場 所 : アテネ 中 心 部 から 約 10km 西 方5) 文 化 遺 産 としての 特 徴 :Miltiadou はダフニ 修 道 院 の 特 徴 を 以 下 のようにまとめている :ビザンチン 様 式 のダフニ 修 道 院 (UNESCO の 世 界 遺 産 リストに 登 録 )は、ビザンチン 時 代 中 期 の 最 も 重 要 な 歴 史 的 建図 4-1 ダフニ 修 道 院 の 位 置 (Google Map に 追 記 )118


第 二 章 各 国 調 査造 物 の 一 つであり、 主 教 会 堂 (Katholikon)のモザイク 壁 画によって 世 界 的 に 知 られている(Miltiadou-Fezans, 2009)。この 修 道 院 は、 図 4-3 の 長 方 形 の 平 面 図 に 示 されるように、11 世 紀 以 降 長 い 時 間 を 掛 けて 建 設 された 多 くの 建 物 によって 構 成 されていた。 大 部 分 の 建 物 は 現 存 しないが、 主 教 会 堂と 修 道 士 の 小 部 屋 の 内 側 の 部 分 と 貯 水 槽 と 北 側 の 防 壁 が 残 っている。主 教 会 は 八 角 形 タイプに 分 類 され、モザイク 壁 画 の 大 部 分を 元 のまま 残 している。 直 角 的 な 設 計 に 基 づき、 主 教 会 堂 はメインとなる 教 会 と 内 陣 、 拝 廊 、4つの 礼 拝 堂 から 構 成 され、長 方 形 の 平 面 形 状 をしている。 西 側 には、 柱 廊 玄 関 の 外 壁 と上 階 へつながる 螺 旋 階 段 塔 だけが 残 っている( 図 4-4、4-5)。主 教 会 の 中 心 部 は 十 字 型 の 平 面 形 状 をしており、 半 球 型 のドームが 方 形 のコア 部 の 上 にそびえている。ドームは 直 径 8.2メートル、 高 さ 16.4 メートルで、16 本 の 柱 と 16 個 のアーチ型 窓 から 成 る、ほぼ 円 筒 状 のドラムの 上 に 据 えられている。ドームとそのドラムは8つのペンデンティブ( 逆 三 角 アーチ)と 8 つのアーチ(4 つは 半 円 形 のもので、 残 りの4つは 角 のスクインチ( 小 アーチ)になっている)に 支 えられており、図 4-4 北 - 西 から 見 た 主 教 会 堂 (Miltiadou、2009)図 4-5 北 - 東 から 見 た 主 教 会 堂 (Miltiadou、2009)図 4-2 主 教 会 堂 のモザイク 画 の 一 つ図 4-3 初 期 の 平 面 図 (Miltiadou、2005)図 4-6 8 つのペンデンティブとアーチに 支 えられた 中 央 のドームとそのドラム (Miltiadou、2009)119


第 二 章 各 国 調 査図 4-7 主 教 会 堂 の 平 面 図 と 緊 急 対 策 工 の 略 図 による 紹 介(Miltiadou、2009)この 部 分 で 円 形 から 方 形 へと 形 を 変 えている。したがって、12 本 の 柱 ( 方 形 にレイアウトされている)が、 上 部 に 位置 する 円 天 井 アーチの 腕 と 共 にドラムを 支 えていることになる( 図 4-6、4-7)。 建 物 の 残 りの 部 分 もビザンチン 式 の円 天 井 アーチで 覆 われている。6) 過 去 における 修 復 と 被 災ダフニ 修 道 院 は、1889 年 と 1897 年 の 地 震 で 深 刻 な 被 害を 被 り、その 後 、ギリシャの 考 古 学 会 によって 修 復 が 行われた 9 。モザイクはイタリアの 職 人 らによって 手 掛 けられ、ナルテックスの 西 側 とドームは 全 て 再 建 された。1920年 には 構 造 補 強 が 行 われた。1955 ~ 57 年 に 文 化 省 の 修 復部 によってより 広 範 囲 に 及 ぶ 修 復 プロジェクトが 実 施 された。 教 会 は 修 復 され、 柱 廊 は 修 理 され、モザイクも 再 びきれいになった。1960 年 、エキソ・ナルテックス( 外 拝 廊 )の 西 壁 でアーチを 作 っている 壁 は 取 り 除 かれ、1968 年 に修 道 院 への 西 側 入 口 の 存 在 が 明 らかとなった。1999 年 に再 び 襲 った 地 震 の 後 、 修 道 院 は 修 復 のために 閉 鎖 された10。4-1-2 1) 被 害 の 詳 細1999 年 9 月 7 日 の 被 害 の 後 に 行 われた 組 織 的 な 調 査 の概 要 が Miltiadou によりとりまとめられている(Miltiadou2009)。これ 以 降 の 4-1-2 項 から 4-1-4 項 は「 文 化 遺 産 の 地 震からの 防 御 と 復 旧 に 関 する 特 別 セッション」( 第 3 回 日 本 ・ギリシャワークショップ「 基 礎 の 耐 震 設 計 、 観 測 、 耐 震 補 強 」の 一 部 として 開 催 された)で Miltiadou が 発 表 した 論 文 を 抜き 書 きしたものである。図 4-9 は、 亀 裂 と 変 形 の 調 査 結 果 のスケッチであり、 観 察された 建 造 物 の 深 刻 な 損 傷 を 示 している( 構 造 部 とモザイク両 方 に 対 する)。 多 数 のせん 断 と 曲 げの 亀 裂 のネットワークが( 微 細 なものから 幅 数 センチに 至 るものまで) 建 物 の 壁 面や 柱 に 現 われており、 同 時 に、 無 数 の 古 い 亀 裂 ( 過 去 の 地 震由 来 )の 長 さと 幅 も 広 がっている。 深 刻 な 構 造 上 の 変 位 と 壁の 外 側 へのずれが 主 教 会 堂 の 北 東 の 角 で 観 察 された( 北 の 方向 に 最 大 14cm、 東 の 方 向 に 最 大 10cm)。 十 字 の 南 と 北 の 腕 も、面 外 変 形 をこうむった(それぞれ 最 大 16cm、 最 大 21cm)。また、 外 拝 廊 の 西 側 に 独 立 して 立 つ 壁 の 変 位 も 記 録 された( 角で 最 大 16cm、 中 央 部 で 最 大 25cm)。これはそれ 以 前 の 変 形がさらに 悪 化 した 結 果 であった。被 害 は 構 造 の 上 部 においてさらに 深 刻 であり、 特 に 内 陣 と十 字 の 腕 、ドーム 部 以 下 のすべてのアーチは 大 きな 被 害 を 受けた。 図 4-9 に 示 されているように、 北 東 と 北 西 のスクインチの 直 下 にあるアーチも 頂 点 付 近 に 深 刻 な 変 形 を 生 じ、スクインチ 自 体 も 面 外 変 形 を 生 じた。 亀 裂 は 教 会 堂 の 円 天 井 (アーチ 状 穹 稜 )すべてにも 生 じた。ドーム(1891 年 に 再 建 。 直後 の 1894 年 の 地 震 で 損 傷 した)の 構 造 状 態 は 地 震 後 すぐに極 めて 危 険 であると 評 価 された。 水 平 方 向 の 亀 裂 がドラムの周 囲 に 沿 って 出 現 していた( 基 底 部 と 上 部 両 方 において、 図4-9)。 東 西 方 向 に 対 して 垂 直 に 設 置 されたドラムの 窓 間 壁 にはその 頂 点 と 最 下 部 において 水 平 に 亀 裂 が 入 った( 面 外 曲 げに 起 因 )。 東 西 軸 と 平 行 に 据 えられた 窓 間 壁 には、 対 角 線 かクロス 対 角 線 状 の(せん 断 ) 亀 裂 が 生 じた。 中 間 部 の 窓 間 壁には、 混 合 タイプの( 深 刻 さは 軽 微 ) 亀 裂 が 観 察 された。図 4-8 ダフニの 発 掘 労 働 者 たち(1891 年 )(ロラン&フランソワ・エティネンヌ、1995)120


第 二 章 各 国 調 査(a) 南 から 見 た 東 西 断 面(b) 北 から 見 た 東 西 断 面(c) 西 から 見 た 南 北 断 面(d) 東 から 見 た 南 北 断 面図 4-9 被 害 の 代 表 的 なスケッチ (Miltiadou、2009)図 4-10 西 より 見 た 南 北 断 面 のズームアップ( 単 位 はメートル ) (Miltiadou、2009)121


第 二 章 各 国 調 査2) 被 害 の 定 性 的 な 解 釈主 教 会 堂 を 構 成 する 部 材 のうち 垂 直 方 向 のものに 入 った亀 裂 の 数 と 大 きさは、 建 物 の 下 から 上 のほうに 行 くにつれて 増 大 している。したがって、この 建 物 が 下 層 から 上 層 に向 かって 二 つの 主 軸 の 方 向 に「 開 く」 傾 向 を 示 しているのは 明 らかである。 教 会 堂 の 変 形 は 建 物 の 歴 史 によっても 確認 できる。 拝 廊 の 南 側 の 外 壁 の 面 外 曲 げは、1894 年 には 完全 200mm を 超 えてしまい、 建 て 直 されている( 図 4-11)。しかし、この 建 て 替 えられた 部 分 ですら、 現 在 では 90mmの 面 外 曲 げを 生 じている( 図 4-11 のスケッチ)。これは、現 在 この 建 造 物 において 観 察 される 変 形 の 特 徴 がこの 建 物の( 初 期 の 建 築 方 式 と、 今 日 まで 幾 度 も 施 された 増 築 / 改築 による) 根 源 的 な 性 格 であることの 証 左 である。外 壁 と 中 央 のドームを 支 える 主 要 なアーチの 両 方 に 見 られる 面 外 変 形 に 従 って、アーチそのものの 幾 何 学 的 変 形 (および 元 の 形 状 の 喪 失 )が 発 生 している。 木 材 ないし 金 属 材による 固 定 (ビザンチン 建 築 では 典 型 的 に 見 られる 建 材 )が 不 十 分 だったこと、あるいは 垂 直 の 壁 、 柱 、 窓 間 壁 をつなぐ 水 平 方 向 の 部 材 が 不 足 していたことが、これらの 欠 陥を 生 み 出 した 主 要 な 原 因 だと 考 えられる。さらに、 上 部 に 向 かうにつれて 亀 裂 開 口 部 が 増 大 する 傾向 は、 建 物 の 東 西 軸 よりも、 南 北 軸 においてより 顕 著 に 観察 された。 建 物 の 挙 動 におけるこうした 方 向 別 の 違 いは、 平面 形 状 が 長 方 形 の 教 会 によく 見 られることであり、 主 教 会 堂の 東 西 軸 に 多 数 の 垂 直 な 部 材 を 並 べられるからである( 図4-7 参 照 )。こうした 挙 動 は 過 去 にも 見 られたものであり、以 前 の 改 修 工 事 はこの 問 題 を 軽 減 することを 目 的 に 行 なわれていた( 北 側 の 石 の 控 え 壁 、 南 側 の 金 属 製 のトラスと 柱 の 補強 )。こうした 補 修 対 応 策 は 正 しい 方 向 であったが(おかげで 教 会 堂 は 20 世 紀 に 入 ってからの 震 災 に 部 分 的 な 崩 壊 もしなかった)、 亀 裂 の 拡 大 を 防 ぐには 十 分 ではなかったことが明 らかになった。したがって、 丸 屋 根 のドラムで 観 察 された 損 傷 は、 教 会 堂全 体 の( 上 層 に 行 くにつれ 増 大 する) 面 外 変 形 に 起 因 するものと 考 えられる。ここで 注 目 すべきは、19 世 紀 の 終 わりにドラムを 再 建 せざるを 得 なくなった 被 害 は、 現 在 観 察 されるものと 同 種 のものだったということで、それはモザイク 画 の欠 けている 部 分 によって 確 認 できる。 上 述 したように、ドラム 部 の 窓 間 壁 のほとんどは 面 外 変 形 を 示 していた。 丸 屋 根 の支 持 構 造 部 分 のみが 面 外 変 形 を 起 こし、 丸 屋 根 自 体 ( 非 常 に硬 い)は 実 質 的 に 変 形 していないため、ドラムの 窓 間 壁 ( 面外 変 形 にはかなりフレキシブル)は、 支 持 構 造 部 からの 変 形の 影 響 を 受 けている。図 4-11 拝 廊 の 南 北 断 面南 の 壁 は 1896 年 に 再 建 されているが、 現 在 90mm の 面 外 変 形 を 起 こしている。(Miltiadou、2009)122


第 二 章 各 国 調 査4-1-3 1) 緊 急 対 応以 下 は Miltiadou の 論 文 の 抜 粋 と 現 地 に 於 ける Miltiadou の解 説 の 要 約 である(Miltiadou-Fezans, 2009)。作 業 環 境 を 提 供 する。(b) 屋 根 の 瓦 を 取 り 除 き、その 下 に 防 水 膜 を 仮 設 してアーチ 構 造 のひび 割 れた 外 輪 を 保 護 し、 同 時 に 雨 漏 りからモザイク 壁 画 を 守 る。地 震 の 直 後 に、ギリシャ 文 化 省 (HMC)によって 学 際 的な 調 査 団 (Delinikolas et al. 1999)が 組 織 された。 調 査 団 には 必 要 な 検 査 を 行 い、 損 害 の 状 態 と 深 刻 さを 評 価 するという役 割 が 与 えられた。また、 同 じ 目 的 のために 設 置 された 科 学委 員 会 (Ch. Bouras 教 授 、T.P.Tassios 教 授 、E. Mariolakos 教 授 、N.Zias 教 授 から 成 る)と、 文 化 省 の 有 能 な 権 威 者 と 共 同 して、モザイク 画 を 含 む 修 道 院 の 保 護 と 保 存 、 修 復 の 戦 略 的 計 画 を策 定 した。構 造 への 深 刻 なダメージと 余 震 の 危 険 性 を 考 慮 した 緊 急対 応 策 の 適 用 (Miltiadou-Fezans 2003)が 決 定 された。その目 的 は、(a) 構 造 へのダメージのさらなる 悪 化 を 避 け、(b)科 学 者 技 術 者 全 てのアクセスと 作 業 の 安 全 性 を 確 保 し、ひいては 最 適 な 構 造 修 復 工 事 の 計 画 と 実 施 のために 必 要 なすべての 調 査 を 可 能 とすることであった。緊 急 工 事 は、 歴 史 的 建 造 物 の 重 要 性 から 生 じる 特 殊 な 条 件と、 最 終 的 な 補 修 作 業 を、 仮 設 の 支 えや 足 場 を 除 かずに 行 う必 要 性 を 考 慮 して 計 画 された。したがって、それらは 可 逆 的でなくてはならず、 損 傷 を 受 けた 部 位 の 歪 んだ 形 にも 適 合 できると 同 時 に、 内 部 で 簡 単 に 組 み 立 てることができ、 段 階 的に 解 体 することができるものでなければならなかった。また、繊 細 なモザイク 壁 画 との 接 触 は 避 けなければならなかった。最 終 的 な 決 定 がなされるまでに、さまざまな 方 法 が 検 討 された。 図 4-12 に 示 したのは、 最 終 案 の 外 観 である。 建 物 の北 東 の 角 には、3 本 の、 二 重 に 枠 がついた 鉄 製 の 支 柱 が 立 てられた。これは、この 場 所 において 外 壁 の 顕 著 な 傾 きが 見 られ、 地 震 の 直 後 に 設 置 された 検 知 器 によってひび 割 れのさらなる 広 がりと 剥 離 の 兆 候 が 発 見 されたからである( 図 4-12)。建 物 の 中 と 外 拝 廊 には、ひび 割 れた 構 造 を 支 えるため、メインアーチの 下 に 垂 直 の 鉄 柱 が 設 置 された( 図 4-13、4-14)。どちらの 支 柱 も 独 立 した 部 材 であり、 構 造 の 破 壊 が 進 行 した 場 合 のみ、 効 果 を 発 揮 するものである。 金 属 製 の 外 枠 ( 鋼製 の 枠 と 支 柱 )と 石 造 の 壁 の 間 には、 木 製 の 梁 と 楔 から 成 る12cm の 層 が 挿 入 され、 表 面 を 傷 つけることなく 石 材 との 接触 を 確 保 している。これはまた、 石 材 の 表 面 に 向 かって 構 造が 傾 かない 限 り、 構 造 が 自 由 に 動 けるようにするものでもある。さらに、 外 拝 廊 の 上 部 の 壁 と、 北 西 と 南 西 の 柱 は、 鋼 板と 鋼 棒 で 拘 束 された。ドームのドラムについては、 窓 を 補 強 し 組 石 造 の 柱 を 拘 束するために 特 別 に 設 計 された 鋼 製 の 部 材 が 二 層 にわたってはめられた( 図 4-15)。また、 次 の 処 置 がとられた。(a) 教 会 堂 の 内 装 部 と 外 装 部 に 適 切 な 足 場 を 組 み、 安 全 な図 4-12 北 東 コーナーに 設 置 された 支 柱(Miltiadou、2009)図 4-13 内 部 の 鉛 直 鋼 製 支 柱(Miltiadou、2009)図 4-14 外 拝 廊 に 設 けられた 鉛 直 のサポート(Miltiadou、2009)123


第 二 章 各 国 調 査図 4-15 ドラムに 対 する 応 急 対 策(Miltiadou、2009)図 4-16 パラメータ 解 析 に 用 いられた FEM モデルの 1 例(Miltiadou、2009)2) 損 傷 イメージの 数 理 的 裏 付 け補 修 計 画 を 立 てるための 構 造 評 価 にあたって 踏 まなければならない 重 要 なステップのひとつは、4-1-2 項 で 述 べた現 地 調 査 で 得 られた 損 傷 イメージを 解 析 的 に 検 証 しておくことである。この 主 教 会 堂 の 場 合 、 適 切 な 緊 急 対 応 策 を 選択 するために 予 備 的 な 線 形 解 析 が 行 われている(Miltiadou2004)。ACORD というコンピュータコードがこの 予 備 的 な解 析 のために 使 われ、 構 造 体 はシェル 要 素 を 用 いてモデル化 された( 図 4-16)。 一 方 、 構 造 各 所 の 部 材 の 力 学 的 な 特性 は、 部 材 材 料 に 関 する 入 手 可 能 なデータに 基 づいて 推 測された。 線 形 弾 性 解 析 がさまざまな 荷 重 の 組 み 合 わせ( 自重 のみ、または 地 震 荷 重 と 組 み 合 わせて)について 行 われ、静 的 ・ 動 的 両 方 の 解 析 が 行 われた。それらの 結 果 は、 主 教会 堂 の 構 造 的 損 傷 のイメージについて 数 理 的 に 強 い 説 得 力のある 確 証 をもたらした。図 4-17 は、 自 重 によってシェル 要 素 の 内 表 面 に 発 生 する 応 力 を 計 算 し 示 したものである。 数 値 的 な 正 確 さはさておき、アーチ 部 とドーム 部 の 脆 弱 性 がはっきりと 見 て 取 れる( 特 に 西 側 )。 予 想 された 通 り、 建 物 の 自 重 だけでも 引張 力 がいくつかのアーチの 頂 点 、 拝 廊 の 天 井 、ドームの 根元 とドラム 部 、および 4 つのスクインチで 大 きくなっている。図 4-18 には、 建 物 の 東 西 の 部 分 での、 位 相 ずれの 動 きが 示 されている。このような 動 きはドームのドラムおよびドームを 支 えているアーチと 円 天 井 における 深 刻 な 損 傷 を説 明 するものである。 一 般 的 に 言 って、 地 震 の 揺 れを 含 めた 荷 重 の 組 み 合 わせによる 解 析 から、さまざまな 異 なる 階層 にあるアーチに 引 張 力 が 集 中 する 深 刻 な 様 子 が 示 され、ドラム 部 の 窓 間 壁 も 同 様 であった。 加 えて、 垂 直 に 立 っている 部 材 ( 建 物 の 外 周 の 組 積 部 と 窓 間 壁 および 柱 )への 広範 なダメージが 確 認 された。図 4-17 シェル 要 素 の 内 表 面 の 応 力 、 自 重 による引 張 応 力 度 が 示 されている。(Miltiadou、2009)さらに、この 予 備 解 析 による 引 張 主 応 力 のプロット 図 が 亀裂 の 観 察 をもとにした 個 々のスケッチと 比 較 された。その 結果 、 観 察 された 亀 裂 のパターン( 位 置 と 拡 がり)は 建 物 の 全ての 領 域 での 分 析 結 果 とほぼ 一 致 することが 明 らかになった(Miltiadou-Fezans、2004)。124


第 二 章 各 国 調 査図 4-18 北 から 見 た 構 造 物 の 変 形 ( 長 軸 方 向 に 地 震 力 が 作 用 した 場 合 の 結 果 )(Miltiadou、2004)3) 構 造 的 な 補 修 方 法 の 決 定主 教 会 堂 は 高 い 価 値 を 有 しており、 脆 弱 ではあるが 工 事 によって 初 期 の 構 造 システムを 大 きく 変 更 することは 望 ましくないため、 建 物 の 構 造 特 性 を 包 括 的 に 調 査 することが 決 定 された。そして、 不 必 要 で 建 物 の 価 値 を 不 可 避 的 に 変 えてしまう 恐 れのある 過 剰 な 補 強 を 避 けるため、さらにデータが 必 要であった。そのため、 構 造 的 な 補 修 作 業 は 2 つの 段 階 に 分 けて 実 施 されることが 決 定 され、それによって 追 加 のデータを収 集 できる 可 能 性 が 生 まれた。第 一 段 階 は、 組 積 造 部 分 の 修 理 と 補 強 をより 良 いものにするために 必 要 と 考 えられる 全 ての 作 業 から 成 る( 主 に、 接 着 、必 要 なところの 再 目 地 塗 り、 体 系 的 なグラウチング、 部 分 的な 再 現 など)。 作 業 の 第 一 段 階 では、 建 物 の 見 えない 部 分 ( 組積 造 部 の 内 表 面 、 天 井 の 外 輪 )に 対 するより 良 い 構 造 調 査 が可 能 となる。第 二 段 階 では、 建 物 全 体 の 挙 動 を 改 善 するために 最 適 であると 判 断 され、 選 択 されたさまざまな 補 強 作 業 が 行 われることになる( 繋 材 の 埋 め 込 み、 円 天 井 や 外 拝 廊 の 外 輪 への 膜 状構 造 の 埋 め 込 みなど)。構 造 補 修 工 事 の 第 一 段 階 は 現 在 までに 完 了 した。また、 同時 に、 両 段 階 の 作 業 のために 実 施 された 調 査 研 究 のほとんども 完 了 した。第 二 段 階 の 工 事 に 対 する 予 備 提 言 もすでに 認 可 されているが、その 最 終 計 画 については 作 業 中 である。・ 引 張 強 度 はグラウチング 前 の 約 二 倍 、 圧 縮 強 度 は 約 3.0MPa とする。その 場 合 、 入 手 可 能 な 文 献 にもとづいて、グラウトの 挿 入 後 6 カ 月 を 経 た 圧 縮 強 度 は 6MPa から 10MPaの 間 になると 予 測 された。・ 曲 げ 強 度 は 2 ~ 3MPa 必 要 である。・さらに、 素 材 の 物 理 化 学 的 な 属 性 が 構 造 体 の 耐 久 性 と 貴重 なモザイク 画 を 損 なわないように 選 択 される 必 要 がある。・ 最 後 に、グラウトは 低 い 圧 力 下 (~ 0.075MPa)で 1mmの 5 分 の1の 幅 の 隙 間 から 入 り 込 んで、 穴 や 亀 裂 を 埋 めることが 出 来 るだけの 高 い 注 入 性 を 持 っていなければならない。大 きく 分 けて2 種 類 のグラウトが、 必 要 な 注 入 性 、 強 度 、耐 久 性 を 満 たすことができた。(ⅰ) 石 灰 、ポゾラン、 少 量 のセメント(30%)の 3 つの原 料 から 成 るグラウトと、(ⅱ) 水 硬 性 石 灰 (NHL5)ベースのグラウトである。表 4-1 壁 試 験 体 に 適 用 されるグラウト 剤 の力 学 特 性 と 浸 透 性 特 性 (Miltiadou、2009)4) 修 復 の 設 計 と 工 事 のための 研 究 開 発(グラウトの 設 計 とグラウトの 前 後 の 組 石 造 の 挙 動 )a) グラウトの 配 合 設 計 とシリンダーテスト高 い 注 入 性 を 持 ったグラウトの 設 計 が 構 造 補 修 研 究 に 基 づいて 決 定 された 必 要 なパフォーマンスを 考 慮 して 行 われた。グラウチングを 施 したあとの 組 積 造 の 基 本 的 力 学 的 特 性 の 目標 値 が 次 のように 定 められた。(1) 3 成 分 混 合 グラウト : 30% 白 ダーニッシュセメント、25% 石 灰 粉 、45% 天 然 ポゾラン Petr. (


第 二 章 各 国 調 査このようにして、ギリシャ 文 化 省 の 修 復 技 術 研 究 所(DTRR/HMC)の 実 験 室 において、 上 述 の 2 種 類 に 分 類 されるさまざまなグラウトの 配 合 が 設 計 され、テストされた。注 入 特 性 を 決 定 するために、 浸 透 性 、 流 動 性 、 安 定 性 が 水との 混 合 率 や 超 可 塑 化 材 の 有 無 を 変 えながら 精 査 された。十 分 な 注 入 性 を 示 した 組 成 は、 腐 食 に 対 する 強 さや、 力 学的 特 性 ( 圧 縮 強 度 、 曲 げ 強 度 )を 調 べるためにさらにテストされた。そして、 似 たような 注 入 性 を 示 した 6 種 類 のグラウトが 三 層 組 積 造 の 充 填 材 料 を 模 した 28 本 のシリンダー試 験 体 に 注 入 された。シリンダー 試 験 体 は 異 なる 経 年 硬 化のもとで 圧 縮 試 験 され、 結 果 を 比 較 検 討 した 結 果 、 二 種 類のグラウト 組 成 (3 組 成 グラウトと NHL5 をベースにしたグラウト)が 必 要 とされる 注 入 性 、 強 度 、 耐 久 性 をおおよそ 満 たしていることが 分 かった( 表 4-1)。それらは 建 物 の上 層 部 の 組 積 造 を 模 して 三 層 の 石 材 で 作 られた 6 個 の 壁 試験 体 に 適 用 された。b) 壁 試 験 体 の 製 作 とテスト組 積 造 の 壁 試 験 体 の 形 状 は 外 周 壁 の 中 でもより 脆 弱 な上 部 を 模 して 作 られた。スケール 効 果 を 避 けるため、2:3 のスケールが 採 用 された。 実 際 のものと 似 た 特 徴 を 持 つ素 材 を 用 いて、6 枚 の 三 層 組 積 造 壁 試 験 体 が 造 られた( 図4-19)。 壁 のうち 半 分 は 圧 縮 力 を、もう 半 分 は 対 角 方 向 に圧 縮 力 を、それぞれ 限 界 までかけてテストされた。 除 荷 後 、壁 には、 表 4- 1のグラウトのうちの 一 種 類 を 順 次 用 いてグラウチングが 施 された。 注 入 は 特 別 な 方 法 で 行 われ、グラウトの 全 使 用 量 ( 壁 全 体 の 質 量 に 対 するグラウトの 質 量の 割 合 )は 10% 以 下 に 抑 えられた。すべてのグラウトの 種類 について 同 じ 方 法 でテストが 行 われた。ついで 試 験 体 は圧 縮 ならびに 対 角 方 向 に 圧 縮 する 試 験 が 崩 壊 するまで 行 われた。対 する 強 度 において 本 質 的 な 改 善 を 見 せ、 一 方 で 硬 さに 大 きな 変 化 はなく、 力 学 的 観 点 から 見 てグラウトは 効 果 的 なものと 判 断 された。2つの 組 成 のうち、 水 硬 性 石 灰 ベースのグラウトがダフニ 修 道 院 の 主 教 会 堂 に 使 用 するものとして 選 択 された。それは、 壁 を 本 質 的 に 強 化 ( 圧 縮 強 度 と 引 張 強 度 )することができ、 対 角 圧 縮 試 験 のもとでかなりの 伸 縮 性 を 発 揮し(3 組 成 グラウトでグラウチングした 場 合 との 比 較 )、モザイク 画 やフレスコ 画 を 守 るために 必 要 な 耐 久 性 においてもより 優 れていたからであった。c) 最 適 グラウト 配 合水 硬 性 石 灰 ベースのグラウトをさらに 良 いものにするために、 純 度 の 高 い 天 然 ポゾラン(dmax


第 二 章 各 国 調 査に 入 れて 設 定 された。モデルは、 作 られてから 9 ヵ 月 の 後 、亀 裂 が 入 るまで 振 動 を 徐 々に 加 えるという 方 法 でテストされた。それからグラウトが 部 分 的 に 注 入 され、 繋 材 がアーチ 部に 挿 入 されてから 適 切 な 期 間 をおいて 再 び 亀 裂 が 入 るまでテストが 繰 り 返 された。そして、 最 終 的 に 決 定 された 組 成 のグラウト( 表 4-2)が 注 入 されて 構 造 全 体 の 均 質 化 がなされた。注 入 は、 前 述 の 壁 試 験 体 の 実 験 の 際 に 用 いられ、 最 終 的 に 建物 そのものにも 用 いられた 方 法 で 行 われた。テストは 再 び 亀裂 が 入 るまで 繰 り 返 された。 予 測 されたとおり、 模 型 の 動 的特 性 は 構 造 全 体 へのグラウチングによって 変 化 し、より 強 い振 動 入 力 に 耐 えられるようになった。図 4-20 震 動 台 にセットされたグラウト 前 の 丸 天 井 構 造 物 の 模 型(Miltiadou、2009)ⅳ) 位 置 がずれてしまったり 崩 れてしまったりした 部 位の、あるいは 過 去 になされた 形 態 変 更 の 修 復 のいずれかに 必 要 なごく 部 分 的 な 再 現 。ⅴ) 必 要 箇 所 の 深 い 再 接 合 および 注 入 グラウチングのための 組 積 造 部 の 処 置 。ⅵ)グラウト 注 入 の 実 施 。ⅶ) 注 入 チューブの 除 去 。ⅷ)フレスコ 技 術 を 用 いて、 劣 化 した 目 地 仕 上 げモルタルをそのままに 保 存 する。ⅸ) 外 輪 を 雨 から 確 実 に 守 るために 必 要 な 作 業 のすべて。組 積 造 部 の 補 修 作 業 と 並 行 して、 有 能 な 修 復 建 築 家 たちが、 深 刻 なダメージを 負 ったモザイク 細 密 画 を 移 動 させずに 保 存 するために 必 要 なすべての 作 業 を 実 施 した(グラウチングを 含 む)。 予 期 されたとおり、 多 くの 場 合 、 組 積 造部 に 入 った 亀 裂 はその 内 側 のモザイクにも 影 響 を 与 えていた( 図 4-23)。古 い 接 合 モルタルの 保 護 と 保 存 を 確 実 にするため、 経 験豊 かな 修 復 建 築 家 たちが 大 規 模 な 再 接 合 作 業 を、 正 面 外 壁 、ドーム 真 下 の 中 央 上 層 部 分 、および 内 陣 のアーチ 天 井 に 対して 行 った。 再 接 合 作 業 のほとんどで、 適 切 な 石 灰 ・ポゾランベースのモルタルが 用 いられた。 部 分 的 な 再 現 や、 極端 な 損 傷 を 受 けた 部 位 の 大 規 模 な 再 接 合 においては、 薄 いチタン 板 や 水 硬 性 石 灰 ベースのモルタルが 使 われた。適 切 なグラウトの 設 計 には 細 心 の 注 意 が 払 われた。さらに、 特 殊 な 現 場 での 適 用 方 法 が 開 発 され、 使 用 された。この 方 法 の 重 要 な 特 徴 は Miltiadou-Fezans et al.(2008)に 詳しく 述 べられている。この 方 法 により、そのままの 状 態 で移 動 させずに 保 存 される 必 要 があるモザイク、フレスコ、古 いモルタルを 保 持 している 建 造 物 に 対 して、より 合 理 的で 制 御 が 容 易 なやり 方 で、グラウトを 注 入 することが 可 能となった。プロジェクト 全 体 を 通 じて、すべての 作 業 は 詳 細 に 文 書化 された。また、 素 材 や 構 造 、 過 去 の 工 事 や 外 側 からは 見えない 部 分 の 損 傷 などについての 新 発 見 も 一 緒 に 文 書 化 された。図 4-21 グラウト 後 の 丸 天 井 構 造 物 模 型(Miltiadou、2009)5) 第 一 段 階 の 補 修 作 業 の 概 要組 積 造 部 修 理 工 事 の 第 一 段 階 は 以 下 の 作 業 から 成 る( 図4-22)。ⅰ) 漆 喰 および 劣 化 した 目 地 仕 上 げモルタルを、 周 りの 部分 を 傷 つけないよう 注 意 深 く 取 り 除 く。ⅱ)すべての 丸 天 井 構 造 体 の 外 輪 部 に 到 達 するために、タイルやほかの 被 覆 材 、 補 填 材 を 取 り 除 く。ⅲ) 長 い 石 材 、 煉 瓦 、 薄 いチタン 板 などを 用 いて、 大 部 分の 大 きな 亀 裂 を 接 着 する。図 4-22 クラックが 入 ったモザイクはその 場 で 補 修 された(Miltiadou、2009)127


第 二 章 各 国 調 査観 測 システムによって 評 価 できることが 証 明 された。そして、2007 年 に、 構 造 物 全 体 をカバーする 目 的 で 計 測 機 器 を 追 加することが 決 定 された。b) モザイク 下 地 のマッピングとグラウチングのモニタリン表 4-3 一 次 モードの 周 期 と 周 期 から 求 められる 剛 性 比 の 変 化図 4-23 現 場 におけるモザイクの 修 復 保 存 作 業 の 一 例剛 性 比 は 剛 性 が 周 期 の 逆 数 の 2 乗 に 比 例 するとして 算 出 。6) モニタリングシステムa) 地 震 観 測 システムの 設 置前 述 したように、 地 震 に 対 する 構 造 物 の 応 答 をよりよく理 解 し、 地 震 応 答 の 不 確 実 性 を 軽 減 するために、 地 震 観 測システムの 設 置 が 決 定 された。2003 年 、 前 述 した 緊 急 対 応策 が 実 施 された 後 、 修 復 作 業 が 始 まる 前 に、このシステムは 建 物 の 中 心 部 に 設 置 された。その 結 果 、 水 硬 性 グラウトを 使 ったグラウチング 作 業 が始 まった 2006 年 6 月 にはこのシステムは 作 動 しており、この 段 階 ですでに 2 回 の 弱 い 地 震 を 記 録 していた。はじめのものは 組 積 造 部 の 修 理 が 始 まる 前 に 発 生 (2004/9/26)し、2 番 目 は、 組 積 造 部 の 亀 裂 をつなぎ 合 わせるという、グラウチング 前 の 準 備 作 業 の 途 中 で 発 生 (2006/1/8)した。グラウチングの 第 一 段 階 終 了 の 3 ~ 4 ヵ 月 後 、グラウチングが 円 天 井 の 起 拱 点 近 くまで 達 しようとしていた時 期 に、さらに 2 つの 弱 い 地 震 が 記 録 された(2006/11/5、2006/12/12)。データの 分 析 結 果 ( 表 4-3)は、 亀 裂 の 接 合 と 深 い 目 地詰 め 作 業 の 間 に 周 期 が 延 び、グラウチングによってある 程度 周 期 が 短 くなったことを 示 した。この 結 果 から、 工 事 、特 にグラウチングの、 構 造 全 体 の 挙 動 に 対 する 効 果 が 地 震グのための 非 破 壊 試 験 NDT の 適 用2 種 類 の 非 破 壊 試 験 NDT が 適 用 された。超 高 周 波 地 下 探 査 レーダー(GPR)による 調 査 がダフニ修 道 院 主 教 会 堂 にある 50 の 主 要 なモザイクに 対 して 行 われた。これは、モザイクを 支 える 構 造 体 に 非 常 に 近 い 場 所 に関 係 している 問 題 箇 所 ( 剥 離 、 下 地 モルタルの 変 化 、 異 物の 埋 め 込 みなど)の 検 出 に GPR が 使 えるかどうかを 調 べる目 的 で 行 われた。モザイク 下 地 についてのより 詳 細 で、 非主 観 的 かつ 定 量 的 な 評 価 を 示 すことが 出 来 る GPR マップは、 修 復 建 築 家 たちが 疑 わしい 箇 所 を 特 定 するのに 有 用 なより 洗 練 されたツールとなりうることがわかった。さらに、GPR 法 で、モザイクの 背 後 にあるグラウトの 動 きを 注 入 の間 にリアルタイムでモニターする 可 能 性 も 調 べられた。二 次 元 の 音 波 到 達 時 間 トモグラフィーも 含 む 音 波 探 査 技術 によって、 組 積 造 壁 へのグラウチング 効 果 をコントロールするための 調 査 が 実 現 された。 図 4-24 に、グラウチングが 施 された 箇 所 とそうでない 箇 所 の 2 次 元 トモグラフィーが 示 されている。この 2 つの 比 較 によって、このような 組積 造 構 造 へのグラウチングの 効 果 の 測 定 を、 構 造 内 部 の 音波 速 度 分 布 を 観 測 することにより 行 えると 判 明 した。図 4-24 グラウトが 浸 透 した 場 所 と 浸 透 していない 場 所 のトモポグラフィー(Miltiadou、2009)128


第 二 章 各 国 調 査4-1-4 Miltiadou は 第 1 段 階 の 修 復 を 次 のように 総 括 している。「ダフニ 修 道 院 の 主 教 会 堂 は 高 い 価 値 を 有 しており、それゆえ、 適 切 な 構 造 補 強 デザインを 行 うためには 正 確 な 情 報 が 必 要 である。このことから、構 造 補 修 工 事 の 計 画 と 実 施 両 面 において、 段 階 を踏 んだ 学 際 的 なアプローチが 採 用 された。このアプローチは、 前 段 階 の 評 価 を 行 いつつ 次 の 段 階 の計 画 を 行 うために 必 要 な 現 場 および 実 験 室 での 調査 実 施 を 可 能 にしたという 意 味 で、 非 常 に 効 果 的であった。」このように、ギリシャの 専 門 家 達 が 彼 らの 地 震 の 技 術 を開 発 して 世 界 的 に 価 値 の 高 い 文 化 遺 産 を 修 復 することに 多大 な 情 熱 と 強 い 意 志 を 傾 けてきたことは 賞 賛 されるべきである。そして、そのような 努 力 の 結 果 として、ギリシャの文 化 遺 産 保 存 のコミュニティーに 彼 ら 自 身 の 経 験 と 知 識 が蓄 積 されており、 彼 らは 他 国 の 支 援 を 必 要 としないように見 える。EU から 修 復 費 用 の 提 供 を 受 けているが、それは 用 途 を限 定 されていない 交 付 金 であり、ギリシャ 政 府 は EU から交 付 金 を 受 け 取 り、ギリシャ 政 府 自 身 の 判 断 で 多 くのプロジェクトに 配 分 している。そのため EU からの 資 金 提 供 は十 分 でなく、EU からの 資 金 以 上 の 資 金 をギリシャの 関 係機 関 が 実 質 的 に 負 担 していると 関 係 者 は 言 っていた。一 方 、 現 地 の 専 門 家 は 主 教 会 堂 から 150m の 所 に 地 割 れが 発 生 していたので 地 震 を 起 こした 断 層 がそこに 現 れたと信 じていたようである。しかし、 地 震 学 的 調 査 によれば1999 年 9 月 の M5.9 の 地 震 断 層 はダフニ 修 道 院 の 15km 北であったとされている。また、その 地 震 のマグニチュードがさして 大 きくない 事 実 を 考 慮 すれば、 最 大 級 の 地 震 力 を受 けたとは 言 えないことになる。すなわち、この 価 値 ある文 化 遺 産 には、 今 後 のその 長 い 存 続 期 間 の 間 において 1999年 の 揺 れよりも 大 きな 揺 れが 作 用 する 可 能 性 があると 言 うことを 意 味 する。この 掛 け 替 えのない 文 化 遺 産 に 対 する 設 計 地 震 動 に 関 する 議 論 がもっと 必 要 である。それが 第 2 次 修 復 工 事 の 方 針を 決 定 する 上 で 極 めて 重 要 になると 思 われる。4-2 4-2-1 1) 名 称 :オリンピア 遺 跡2) 時 期 :2007 年 8 月 24 日 ~ 28 日3) 災 害 の 性 格 と 広 がり:2007 年 のペロポネソス 山 火 事 による 周 辺 丘 陵 の 部 分 的 被 害4) 場 所 :ペロポネソス 地 方 イリア(Elia) 州5) 文 化 遺 産 としての 特 徴 :オリンピアは、 全 ギリシャ 人 において 非 常 に 重 要 な 聖 域 であるとともに、その 遺 跡 は 古 代から 現 在 に 至 るまで 世 界 的 な 威 光 と 輝 きの 慣 行 として 知 られているオリンピックの 発 祥 地 である。BC 10 ~ 9 世 紀 に 形 成 され 始 めたオリンピアの 神 聖 な 場所 であるアルティスは、 主 にゼウスに 捧 げられたものである。 最 初 の 建 築 物 はアルカイク 期 (BC7 ~ 6 世 紀 )に 建 設され、 聖 域 の 持 続 的 に 増 加 する 需 要 を 満 たすために 新 しい建 造 物 が 徐 々に 加 えられた。BC4 世 紀 末 に 遺 跡 の 最 終 的 な配 置 が 定 められ、ヘレニズムとロマン 期 に 時 代 の 影 響 を 受け、 若 干 の 変 更 が 加 えられた(X. Arapoyanni、2004)。聖 域 には 様 々な 建 物 がバラバラに 建 てられている( 図4-26)。テメノス(Temenos: 宗 教 祭 典 の 場 )の 中 にヘラ(Hera)神 殿 、ゼウス(Zeus) 神 殿 、ペロピオン(Pelopion: 英 雄ペロプスの 神 殿 )、 生 け 贄 を 捧 げた 祭 壇 所 がある。 競 馬 場(hippodrome)と 後 期 の 競 技 場 は 東 側 に 位 置 している。聖 域 の 北 側 には、プリタニオン(Prytaneion: 迎 賓 館 )とフィリピオン(Philippeion)、さらに 様 々な 都 市 国 家 の地 位 を 誇 示 する 一 連 の 宝 物 殿 が 並 んでいる。メトロオン(Metroon)が 反 響 歩 廊 (Echo Stoa)ともに 宝 物 殿 の 東 側 にある。 聖 域 の 南 側 は 南 歩 廊 (South Stoa)とブーレフテリオン(Bouleuterion: 会 議 場 )があり、 西 側 にはパレステラ(Palaestra: 闘 技 場 )、フェイディアスの 工 作 所 (workshopof Pheidias)、ジムナジオン(Gymnasion: 体 育 訓 練 所 )、レオニディオン(Leonidaion: 宿 泊 所 )の 建 物 がある。オリンピアにはフェイディアスが 彫 ったとされる 象 牙 と金 で 作 られた 巨 大 なゼウス 像 が 有 ったことでも 知 られている。この 像 はシドンのアンチペーター(Antipater of Sidon)によって 古 代 世 界 の 7 不 思 議 の 一 つとされていたが、イスタンブールに 持 ち 去 られ 遺 失 した。この 像 を 収 めていたゼウス 神 殿 のすぐ 側 に、フェイディアスのスタヂオ( 作 業 所 )があり 1950 年 代 に 発 掘 された。そこから 彫 刻 家 の 道 具 が発 掘 されたことからこの 説 が 確 認 された。 古 代 遺 跡 は 北 にはアルフェイオス(Alfeios) 川 とクロノス(Kronos) 山 (ギリシャの 神 クロノスから 来 ている)があり、アルフェイオスの 支 流 であるクラデオス(Kladeos)が 南 側 を 流 れている。 川 に 沿 って 北 に 行 ったところにオリンピア 博 物 館 がある。この 博 物 館 はオリンピアの 遺 跡 から 取 り 出 された 価 値ある 古 代 の 彫 刻 ( 図 4-27)や 装 飾 品 を 収 納 し 展 示 している。ゼウスの 聖 なる 宮 殿 と 呼 ばれたクロノス 山 は 聖 域 の 北 側 の背 景 を 為 しているが、2007 年 の 山 火 事 ですっかり 焼 けてしまった。129


第 二 章 各 国 調 査図 4-25 オリンピアの 位 置 と 各 州 の 焼 けた 地 域 の 割 合 ( Zirogiannis 2009 に 加 筆 )図 4-26 オリンピア 聖 域 の 平 面 図図 4-27 オリンピア 博 物 館 に 展 示 されている 古 代 の 彫 刻130


第 二 章 各 国 調 査6) 過 去 における 修 復 と 被 災a)オリンピアの 発 掘 の 歴 史オリンピアに 対 する 特 別 な 関 心 は、1767 年 に 近 代 考 古 学研 究 の 創 始 者 であるヴィンケルマン 11 によって 示 された。 彼は、 古 代 遺 物 のコレクションを 本 にまとめ、ヘルクラネウムとポンペイの 発 掘 を 注 意 深 く 見 守 り、その 発 掘 方 法 に 厳 しい批 判 を 加 え、オリンピアの 発 掘 を 夢 見 ていた。 彼 は、ギリシャの 聖 域 についての 研 究 を 系 統 たてて 考 えた 最 初 の 一 人 でもある。そして 彼 のこの 考 えは、19 世 紀 になってから 実 現 されることになる(ロラン&フランソワ・エティネンヌ、1995)。聖 域 の 所 在 を 最 初 に 示 したのはイギリス 人 の 旅 行 家 で、1766 年 にチャンドラー(R. Chandler)がオリンピアを 訪 問した。 間 もなく、1780 年 に 聖 域 を 訪 れたフォーベル(L.S.F.Fauvel)は、 最 初 の 図 面 を 描 いた。1806 年 にはゼウス 神 殿にドッドウェル(E. Dodwell)とゲル(W.Gell)による 最 初の 試 範 的 なトランチが 作 られ、1811 年 にカックレル(C.R.Cockerell)とハラー・フォン・ハラーシュタイン(C. Hallervon Hallerstein) に よ る 小 規 模 の 発 掘 が 行 わ れ た。 ま た、1813 年 には 三 角 測 量 法 を 使 ったオリンピアの 最 初 の 図 面 が、アラソン(Allason)と J. スペンサースタナップ(J. SpencerStanhope)によって 描 かれた。1829 年 、 十 年 近 くにも 及 んだ 独 立 戦 争 を 経 て、ようやくトルコ 支 配 から 独 立 を 果 たした 近 代 ギリシャ 12 は 、メイスン(N.J. Maison) 将 軍 の 指 揮 の 下 、ブルエ(A. Blouet)とヅボイス(J.J.Dubois)の 合 同 のフランスの 学 術 派 遣 隊Expédition Scientifique de Morée によって、2 ヵ 月 間 、 最 初 の発 掘 が 行 われた(Olympia Vikatou, 2006)。この 時 に 地 表 面 でゼウス 神 殿 の 一 部 or 部 材 が 発 掘 され、 現 在 ルーブル 美 術 館にあるゼウス 神 殿 の 初 期 古 典 様 式 の 大 理 石 のメトープの 一 部( 図 4-28)も 発 掘 された(Helmut Kyrieleis, 2007)。聖 域 の 体 系 的 な 発 掘 は、ドイツ 考 古 学 研 究 所 のクルティウス(E. Curtius)による 長 年 の 努 力 の 結 果 、 各 々の 条 件 と 義務 を 定 めたギリシャとドイツの 協 定 が 締 結 された 1875 年 から 始 まった。 大 部 分 の 建 物 が 発 見 された 最 初 の 発 掘 期 間 は、1875 年 から 1881 年 まで 続 き、クルティウス(E. Curtius)、アドレル(A. Adler)、デルプフェルト(W. Dörpfeld)、ベティカー(C.A. Boetticher)、ボルマン(R. Borrmann)、フルトヴェングラー(A. Furtwängler)、トレウ(G. Treu)、グレーフ(P.Graef)によって 推 進 された( 図 4-29、4-30) 13 。 第 2 の 発 掘期 間 には、デルプフェルト(W. Dörpfeld)が 担 当 し 1906 年から 1929 年 まで 続 けられた 14 。1937 年 から 1942 年 までは、クンゼ(E. Kunze)とセリフ(H. Schleif)が 担 当 し、スタジアムを 中 心 に 発 掘 した。 第 2 次 世 界 大 戦 を 以 って、 発 掘 は1942 年 に 中 止 し、 遺 跡 それ 自 体 は 占 領 軍 の 下 で 大 きな 損 傷を 被 った。 戦 後 の 研 究 は、クンゼ(E. Kunze)とマルヴィッツ(A. Mallwitz) の 監 督 下 で、 1952 年 か ら 始 ま っ た( 図4-31)。 殆 どすべての 遺 跡 が、 現 在 では 明 らかとなっている。ここ 数 十 年 間 は、ローマ 時 代 の 巨 大 建 造 物 群 を 発 掘 してきた。 文 化 省 と 地 方 考 古 学 行 政 の 監 督 下 で、ドイツ 考 古学 研 究 所 による 小 規 模 の 発 掘 と 修 復 が 現 在 進 行 中 である。研 究 の 成 果 は、 毎 年 、 発 掘 者 によって 学 術 雑 誌 『オリンピア 研 究 (Olympische Forschungen)』と『オリンピア 報 告(Olympia Bericht)』 15 にて 発 表 されている。図 4-28 オリンピアのゼウス 神 殿 の 西 メトープ、 紀 元 前 460 年 頃(ルーブル 美 術 館 )図 4-29 1876 年 の 発 掘 後 のゼウス 神 殿(Helmut Kyrielesis、2007)図 4-30 1877 年 の 発 掘 で 発 見 されたヘラ 神 殿(Helmut Kyrielesis、2007)図 4-31 発 掘 中 のスタジウム、1958 年(Helmut Kyrielesis、2007)131


第 二 章 各 国 調 査b) 遺 跡 の 修 復発 掘 とは 別 途 に、オリンピアに 関 わった 考 古 学 者 と 建 築家 はオリジナル 建 築 の 部 分 的 な 再 建 を 通 して 建 造 物 の 保 存とそれらの 視 覚 的 な 再 評 価 を 重 要 視 してきた。 例 えば、 完全 に 復 元 された 古 典 的 なスタジアム、パラエストラ( 闘 技場 )とヘラ 神 殿 の 再 建 された 円 柱 ( 図 4-32、4-35)、 宝 庫のテラスの 部 材 は、これらの 活 動 の 特 徴 的 な 証 拠 である。オリンピアにおける 修 復 の 歴 史 を 考 える 際 に、まず 目 に付 くのが 復 元 図 である。 図 4-33 はオリンピアのゼウス 神殿 の 立 面 の 復 元 図 (1883 年 )である。ヴィクトル・ラルーによるものだが、 厳 密 な 科 学 的 正 確 さへの 配 慮 はなされていない。 建 物 への 控 え 目 ながらもでたらめな 色 彩 などは、遺 跡 の 観 察 記 録 というより、むしろ 1880 年 代 の 流 行 を 表す 資 料 と 言 った 方 がふさわしい。また、ゲオルグ・カヴェラウが 1886 年 から 1890 年 にヘラ 神 殿 の 2 本 の 円 柱 を 立 て、バラノス 16 と 協 議 しながら 発掘 を 進 め、アクロポリスで 学 んだ 技 術 を 使 って 1905 年 に修 復 を 行 った(ユッカ・ヨキレット、2005)。2004 年 のオリンピックの 際 にアテネとオリンピアで 着 手された 最 近 の 修 復 工 事 は、ゼウス 神 殿 ( 図 4-34)の 巨 大 的な 柱 のうちの 一 つの 修 復 と、フィリペイオンの 部 分 的 な 再建 ( 図 4-36)であった。この 挑 戦 的 で 膨 大 な 費 用 がかかった 復 元 プロジェクトは、スポンサーによる 豊 富 な 財 政 的 援助 なしには 実 現 されなかったであろう。アナスタシオス G.レヴェンティス(Anastasios G. Leventis) 財 団 は 全 フィリペイオン・プロジェクトに 資 金 を 調 達 し、 大 神 殿 の 柱 のための 経 費 の 最 大 の 出 資 を 行 う 一 方 、 後 者 のための 経 費 の 3 分の 1 はドイツの 考 古 学 研 究 所 の 友 好 協 会 ―Theodor WiegandGesellschaft 17 によって 支 援 された。2005 年 に 終 了 したフィリペイオンの 部 分 的 な 修 復 工 事は、ドイツの 考 古 学 研 究 所 によって 実 行 された。それはいくつかの 建 築 部 材 を 含 めているが、ベルリンのペルガモン博 物 館 からギリシャに 戻 されたものである。ドイツがギリシャの 遺 跡 の 発 掘 と 保 存 にどれほど 貢 献 してきたかは 今 更言 うこともないが、 外 国 に 移 出 された 文 化 遺 産 が 本 国 に 戻されるという 意 味 では、このフィリペイオンの 事 例 は 注 目すべきところでもある。フィリペイオンの 建 築 部 材 の 返 還は、2004 年 のオリンピックをきっかけに 行 われた。これはまた、 長 い 間 国 際 的 な 世 論 を 引 き 起 こしているエルギン・マーブルズ( 大 英 博 物 館 所 蔵 ) 18 の 返 還 問 題 が 未 だにその終 着 点 を 見 せないのに 比 べ、ギリシャのトルコからの 独 立以 降 、ドイツとギリシャの 長 い 間 の 文 化 遺 産 保 存 の 友 好 関係 を 示 していると 言 っても 過 言 ではない。図 4-32 ヘラ 神 殿 の 修 復 工 事 (1972 年 )(Helmut Kyrielesis、2007)図 4-33 ヴィクトル・ラルー(V.Laloux)によるオリンピアゼウス 神 殿 の 再 建 予 想 図 の 詳 細 (1883)(Helmut Kyrielesis、2007)図 4-34 オリンピアのゼウス 神 殿 の円 柱 ドラムと 再 建 円 柱132


第 二 章 各 国 調 査図 4-35 ヘラ 神 殿図 4-36 フィリペイオン4-2-2 1) 山 火 事 災 害 と 対 応 の 概 況以 下 は、Zirogiannis がマサチューセッツ 大 学 アムヘルスト 校 大 学 院 (Graduate School of the University of MassachusettsAmherst) に 提 出 し た 学 位 論 文 の 抜 粋 で あ る (Zirogiannis2009)。b) エリア 州 の 山 火 事行 政 区 画 上 、エリア 州 は 22 の 郡 に 分 かれている。 図4-38 はこれらの 郡 の 位 置 とそれぞれの 燃 えた 地 域 を 示 している。 各 郡 は 多 くの 町 や 村 さらに 分 かれる。 合 計 するとエリア 州 には 210 の 集 落 があり、そのうちの 168 が 山 火 事 の影 響 を 受 け 133 が 激 しく 焼 かれた。古 代 オリンピア 郡 ではその 29%、5,200 ヘクタールが 焼けた。2007 年 の 夏 の 間 だけで、68 人 が 火 災 の 犠 牲 になった。このうちエリア 州 内 だけで 危 機 の 5 日 間 (8 月 24 日 ~ 28 日 )に 46 名 がなくなった。ほとんどの 犠 牲 者 は 燃 える 村 から逃 げる 間 に、あるいは 家 畜 や 家 や 農 地 などの 彼 らの 財 産 を守 ろうとしている 間 に 命 を 落 とした。科 学 者 達 は 気 象 条 件 が 火 の 広 がりに 決 定 的 な 役 割 を 果 たしたと 言 っている。 熱 波 が 3 回 、8 月 後 半 にギリシャを 襲 った。そのようなことは 過 去 になかったことであった。さらに、ペロポネソス 地 方 のあるギリシャ 南 部 には 降 雨 がなかった 事 が 火 勢 を 激 化 させた。しかしながら、 被 害 の 広 がりを 気 象 条 件 のせいだけにするのは 適 切 でない。 燃 えやすい 生 物 資 源 の 蓄 積 、 森 林 管 理 の 不 在 、 山 火 事 制 圧 は 消 防 隊の 専 任 事 項 とする 考 え 方 など 総 てが 関 係 している。摂 氏 1000 度 で 燃 える 山 火 事 は 竜 巻 さえ 起 こす 独 特 の 気象 条 件 を 引 き 起 こすことがある。 家 屋 や 他 のインフラストラクチャーの 損 害 も 大 きい。ギリシャ 全 体 で 約 847 戸 が 焼け 落 ち、その 大 部 分 がペロポネソス 地 方 であった。そのうちの 524 戸 がエリア 州 であった。 表 4-4 はギリシャの 2007年 夏 の 間 に 火 災 にあったインフラストラクチャーの 種 類 別の 統 計 を 示 している。 火 災 の 影 響 を 受 けた 他 州 と 比 べてエリア 州 の 被 害 がぬきんでて 大 きいことが 判 る。a)2007 年 7 月 の 山 火 事2007 年 の 夏 はギリシャの 歴 史 の 記 録 上 で 最 も 山 火 事 が 発生 したシーズンとなった。 約 270,000 ヘクタールの 土 地 が 焼かれた。 図 4-37 が 焼 けた 地 域 を 示 している。 図 4-37 の 赤 で囲 った 四 角 の 領 域 がペロポネソス 地 方 である。 見 れば 判 るように、 焼 けた 地 域 はペロポネソス 地 方 に 集 中 している。ペロポネソス 地 方 は 7 州 ( すなわち、Achaia, Argolida, Arkadia,Elia, Korinthos, Lakonia and Messinia) からなる。 図 4-25 はこれら 7 州 の 位 置 と 2007 年 の 間 に 焼 けた 土 地 の 割 合 を 示 している。ペロポネソス 地 方 の 焼 けた 面 積 は 総 計 で 180,310 ヘクタールである。これは 7 月 の 初 旬 から 9 月 の 初 旬 まで 続 いた火 災 の 結 果 である。しかし、もっと 激 しい 被 害 は 8 月 末 に 起きた。8 月 24 日 から 28 日 にかけて、エリア(Elia)のペロポネシアン 州 だけで 77,756 ヘクタールが 焼 けた。これは 同州 の 面 積 の 29% に 当 たる。 古 代 オリンピア 郡 はこのエリア州 に 属 している。133


第 二 章 各 国 調 査図 4-37 ギリシャにおける 2007 年 夏 の 間 に 焼 けた 地 域 赤 で 囲 った 地 域 がペロポネソス 地 方(Zirogiannis、2009)図 4-38 エリア 州 の 22 郡 と 火 災 を 受 けた 地 域 ( 異 なった 色 で 示 されている)(Zirogiannis、2009)134


表 4-4 ギリシャの 2007 年 夏 に 焼 失 したインフラストラクチャー (Zirogiannis、2009)第 二 章 各 国 調 査c) 気 象 データエリアの 気 象 観 測 所 で 観 測 された 8 月 1 ヶ 月 間 の 湿 度 、 風速 、 最 高 ・ 最 低 温 度 のデータが 図 4-39、4-40、4-41 にそれぞれ 示 されている。8 月 24 日 ( 山 火 事 が 恐 ろしく 広 がりだした 日 )は 強 風 、 低 湿 度 、 高 温 の 悪 条 件 が 重 なった 日 であったことが 分 かる。2007 年 8 月 の 風 向 が 図 4-42 に 示 されている。 山 火 事 が 広がった 方 向 と 明 瞭 に 関 係 があることが 分 かる。d)エリア 州 の 危 機 対 応1 地 域 住 民 の 対 応この 地 域 に 影 響 を 及 ぼした 火 は 8 月 24 日 から 28 日 の 5 日間 続 いた。 火 が 非 常 に 優 勢 だったので 消 防 隊 が 対 応 に 追 われ、多 くの 火 災 の 発 生 時 刻 や 経 過 を 記 録 することが 出 来 なかった。 最 初 の 日 (24 日 )からこの 状 況 になった。ピルゴス 市(エリア 州 の 州 都 )の 消 防 局 の 公 式 記 録 には 8 月 24 日 の 最 初の 6 件 ( 図 4-43 に 示 す)の 火 災 しか 記 載 されていない。これら 6 件 の 初 期 の 火 災 以 降 、 消 防 隊 は 新 しい 火 災 の 発 生 を 記録 できていない。 火 が 広 がり 村 にますます 接 近 してくる 状 況で、 消 防 士 達 は 気 づいた 脅 威 のレベルに 応 じて 対 応 したのであろう。8 月 24 日 の 6 箇 所 の 初 期 火 災 の 内 の 一 つは 午 後 2 時 40 分にパレオホリ(Paleoxori)の 集 落 で 発 生 した ( 図 4-33 の 地 図上 に 示 した 集 落 の 位 置 を 参 照 )。 パレオホリは 道 が 狭 い 山 がちの 地 形 の 所 に 位 置 している。 強 風 と 異 常 に 低 い 相 対 湿 度 の下 で 高 く 燃 え 上 がった 炎 を 見 て 地 域 の 人 達 は 自 発 的 に 村 から避 難 を 始 めた。 数 キロメートル 先 の 海 岸 に 避 難 しようとする人 達 の 乗 った 大 きな 車 列 が 道 を 下 っていた。 村 を 目 指 して 道を 駆 け 上 がってきた 消 防 車 が 下 りてきた 車 列 と 衝 突 した。この 事 故 が 道 路 をふさぎ、 人 々はその 場 で 動 けなくなってしまった。その 事 故 現 場 に 火 が 直 ぐに 押 し 寄 せ、 午 後 3 時 30分 頃 に 9 名 ( 消 防 士 3 名 、 市 民 6 名 )が 火 にまかれてしまった。この 悲 劇 的 な 事 故 は 5 日 間 の 山 火 事 危 機 期 間 の 成 り 行 きを 決 定 づけた。すぐにこのニュースは 州 の 中 の 隅 々に 広がった。これほどの 人 が 山 火 事 で 死 んだことは 現 代 のギリシャの 歴 史 では 初 めてのことであった。この 事 故 はエリアに 大 きなパニックを 引 き 起 こした。この 日 以 降 、 火 が 村 に近 づくと、 時 には 差 し 迫 った 危 険 がない 場 合 でも、 当 局 ( 主に 警 察 、 時 には 消 防 署 )は 集 落 に 避 難 命 令 を 出 すようになった。 前 例 のない 国 家 的 な 悲 劇 に 直 面 して、 連 邦 政 府 の 責 任者 は 火 に 近 い 村 から 確 実 に 市 民 を 遠 ざけることにより 人 命を 守 ることを 最 優 先 とすることを 決 定 した。しかし、 森 林 監 督 官 や 火 災 科 学 者 が 実 施 すべきだと 主 張したことは、 当 局 が 消 防 士 の 活 動 を 大 きく 手 助 けできる 有能 な 村 人 を 招 集 することであった。その 結 果 、 日 が 経 つにつれ、 市 民 と 当 局 職 員 は、 地 域 の 村 人 ( 大 部 分 は 農 業 を 職業 としている 人 )が 火 災 と 闘 う 際 の 装 備 と 経 験 を 持 ったむしろ 効 果 的 な 火 災 抑 制 力 であると 認 識 するようになった。これらの 人 の 大 部 分 は 山 火 事 と 闘 った 経 験 を 持 ち、ミニ 消防 トラックとして 使 うことが 出 来 る 農 業 用 トラックと 水 槽を 持 っている。その 結 果 、3 日 目 から 避 難 命 令 は 減 少 するようになり、 人 々は 火 災 抑 制 の 努 力 を 行 うことが、 自 分 自身 と 自 分 の 財 産 を 守 る 効 果 的 な 道 であると 認 識 するようになった。 図 4-44 からその 傾 向 が 読 み 取 れる。2 消 防 隊 と 消 防 飛 行 機 の 活 動エリア 州 には 5 箇 所 に 消 防 署 がある。 図 4-45 にその 位置 を 黄 色 で 示 し 各 署 の 所 管 エリアを 色 分 けした。 各 消 防 署の 職 員 は 常 勤 者 と 季 節 雇 用 者 で 構 成 されている。 季 節 雇 用者 は 5 月 1 日 から 10 月 31 日 まで 6 ヶ 月 間 の 契 約 であった。2008 年 からは、 季 節 雇 用 消 防 士 の 収 入 をより 安 定 化 にする努 力 として、その 契 約 が 8 ヶ 月 間 (4 月 1 日 から 11 月 31日 まで)に 延 長 された。 表 4-5 はエリア 州 の 5 消 防 署 における 職 員 数 と 自 動 車 保 有 台 数 を 示 している。135


第 二 章 各 国 調 査図 4-39 2007 年 8 月 における 1 日 ごとの 風 速 (km/ 時 )の 変 化(アンドラヴィダ(Andravida) 気 象 観 測 所 による)(Zirogiannis 2009)図 4-40 2007 年 8 月 における 1 日 ごとの 湿 度 の 変 化(アンドラヴィダ(Andravida) 気 象 観 測 所 による)(Zirogiannis 2009)図 4-41 2007 年 8 月 における 1 日 ごとの 最 高 、 最 低 気 温 の 変 化(アンドラヴィダ(Andravida) 気 象 観 測 所 による)(Zirogiannis 2009)136


第 二 章 各 国 調 査図 4-42 2007 年 8 月 の 間 の 風 向 (Zirogiannis、2009)図 4-43 8 月 24 日 の 6 箇 所 の 発 火 地 点 とそれぞれの 発 生 時 刻発 火 点 を 黄 色 のピンで 示 している ( クリンディアス(Klindias)の 火 は 8 月 25 日 の 午 前 1 時 に 起 きた )。 色 のついたセグメントは 焼 けた 地 域 を 示 している。 6 箇 所 の 内 の 2 箇 所 ( 北 西 地 域 のシニス(Thines)とアマィアダ(Amaliada))の 火 災 は 消 し 止 められた。 他 の 4 箇 所 はほとんどコントロールできずに 5 日 間 燃 え 続 けた。(Zirogiannis、2009)137


第 二 章 各 国 調 査図 4-44 村 人 が 消 火 活 動 に 参 加 した 割 合 を 日 を 追 って 棒 グラフで 表 示図 4-45 エリア 州 の 消 防 署 (Zirogiannis、2009)138


第 二 章 各 国 調 査州 内 の 消 防 局 の 対 応 設 備 力 の 限 界 に 加 えて、エリア 州 の 村の 59% が 火 災 の 影 響 を 受 けた( 合 計 219 村 の 内 の 130 村 が火 災 を 受 けた)ことから、 危 機 の 5 日 の 間 、 消 防 士 の 人 数 が圧 倒 的 に 不 足 した。地 上 部 隊 とは 別 に、 空 からの 支 援 はどのような 山 火 事 の 制圧 活 動 においても 決 定 的 に 重 要 である。2007 年 夏 、ギリシャの 飛 行 消 防 隊 ( 表 4-6 参 照 )はいくつかのヨーロッパの 国 から 23 機 の 飛 行 機 と 18 機 のヘリコプターの 支 援 を 受 けてめざましく 増 強 された。エリア 州 には 消 防 飛 行 機 の 基 地 が 2 箇 所 有 る。 一 つはアンドラヴィダ(Andravida)の 軍 用 飛 行 場 で、4 機 の CanadairCL-415 が 駐 機 し、 他 の 一 つはエピタリオ(Epitalio)で 2 機の PZL M-18 が 駐 機 している。 後 者 はエリア 州 の 消 防 局 司 令部 の 専 属 の 指 揮 下 にある。約 330 人 の 消 防 士 と 60 台 の 消 防 車 両 が 毎 日 数 十 の 脅 威 にさらされた 村 に 対 応 しなければならなかった。 加 えて、アンドラヴィダに 駐 留 する 4 機 の Canadair CL-415 は 同 じ 危 機 の5 日 間 に 山 火 事 の 危 機 にさらされた 他 の 州 にも 対 応 しなければならなかった。エリア 州 の 地 上 部 隊 はギリシャの 他 の 州 からの 消 防 士 と 外 国 からのボランティアの 応 援 を 受 けた。しかしながら、 州 外 からの 消 防 士 は 制 圧 活 動 に 十 分 に 貢 献 できないケースがしばしば 見 られた。 彼 らは 地 域 の 地 勢 や 地 形 、その 地 域 で 主 要 な 風 の 性 質 についての 知 識 が 不 足 していることがその 理 由 である。9 名 の 命 が 失 われたアルテミダ(Artemida)の 悲 劇 の 後 、危 機 管 理 対 応 情 報 共 有 技 術 による 減 災 対 策 の 当 局 者 の 主 たる 関 心 事 は 人 命 と 住 居 を 守 ることに 置 かれ、しばしば 森 林や 農 地 を 守 ることが 放 棄 された。 村 の 中 心 部 に 留 まることを 命 じられて 到 着 した 消 防 車 が 燃 えている 家 を 救 うためだけの 活 動 しかできない 事 態 が 多 発 した。この 事 態 は、 森 や農 地 の 火 災 を 抑 制 する 活 動 にその 優 れた 能 力 を 適 用 することが 許 されなかった 為 に、 消 防 隊 に 可 能 であった 貢 献 を 著しく 制 限 してしまった。エリア 州 の 大 多 数 の 市 民 は 消 防 隊 の 貢 献 に 感 謝 しており、 消 防 士 が 市 民 とその 財 産 を 守 るために 英 雄 的 な 活 動 をしたが、 火 炎 が 非 常 に 強 く 市 民 も 消 防 士 もその 巨 大 な 脅 威に 圧 倒 されてしまった、と 言 っている。スメルナ(Smerna)のある 年 配 の 市 民 は、「 我 々の 全 てが 専 門 の 消 防 士 であったとしても 火 災 を 抑 制 することは 出 来 なかっただろう」と強 調 していた。表 4-5 エリア 州 の 5 箇 所 の 消 防 署 における 消 防 要 員 と 保 有 消 防 車(Zirogiannis、2009)表 4-6 ギリシャの 飛 行 消 防 力 (Zirogiannis、2009)139


第 二 章 各 国 調 査2)オリンピア 古 代 遺 跡 の 被 災 状 況以 下 は、 文 化 省 本 庁 と 現 地 の 管 理 事 務 所 の 職 員 にインタビューした 結 果 の 要 約 である。a) 危 機 の 切 迫8 月 26 日 ( 大 山 火 事 の 発 生 から3 日 目 )、 火 は 北 側 の 山地 からクロノス 山 の 森 に 浸 入 した。クロノス 山 の 背 後 には高 速 道 路 があり、 山 火 事 に 対 する 防 火 帯 と 成 ることが 期 待された。しかし、 火 は 道 路 がトンネルで 通 過 している 盛 土の 部 分 を 伝 って 来 た。クロノス 山 の 森 は 完 璧 に 焼 かれてしまった。( 図 4-46b 参照 )。 次 に 火 はオリンピア 遺 跡 域 の 境 界 までせまり、スタジアムの 東 側 のいくつかの 樹 木 が 焼 かれた。しかし、 幸 運 にも火 はスタジアムを 飛 び 越 え 夕 方 には 東 の 方 に 移 動 した( 図4-47)。これは 遺 跡 が 発 掘 されてから 最 初 の 山 火 事 による 被害 であった。(a) 山 火 事 の 前 (Zirogiannis、2009)(b) 山 火 事 の 最 中 (Zirogiannis、2009)(c) 山 火 事 の 直 後 (Zirogiannis、2009)(d) 山 火 事 から 2 年 後図 4-46 クロノス 山 の 変 貌140


第 二 章 各 国 調 査b) 古 代 遺 跡 管 理 事 務 所 の 職 員 による 防 火 活 動クロノス 山 と 周 辺 の 丘 陵 に 配 置 されていた 約 20 基 の 放 水塔 ( 図 4-49)が 作 動 したが、 火 勢 が 非 常 に 強 く 放 水 砲 は 十分 な 効 果 がなかったようであった。これらの 放 水 砲 は 2003年 に 設 置 されたもので、おもに 木 々への 散 水 ( 水 やり)に 使われていた。 管 理 事 務 所 の 職 員 、 消 防 士 、ボランティアなどの 凡 そ 60 名 が 遺 跡 内 に 配 置 された 消 火 栓 ( 図 4-48)を 使 って、消 火 活 動 を 行 った。 彼 らの 英 雄 的 な 消 火 活 動 と 消 火 栓 や 放水 砲 などの 消 火 設 備 によってオリンピア 考 古 学 博 物 館 と 大部 分 の 遺 跡 は 火 災 を 免 れた。電 力 の 供 給 は 絶 たれたが、 発 電 機 を 作 動 させることが 出来 た。 山 の 背 後 に 設 置 された 水 槽 とサイトの 側 の 川 から 汲み 上 げた 水 がこれらの 消 火 活 動 に 使 われた。これらの 施 設は 2002 年 に 改 善 されていた。(a) 山 火 事 の 前(b) 山 火 事 の 直 後図 4-47 オリンピア 古 代 遺 跡 の 東 の 端 (Zirogiannis、2009)図 4-48 遺 跡 内 の 消 火 栓図 4-49 放 水 砲 のタワー141


第 二 章 各 国 調 査4-2-3 クロノス 山 は 丸 坊 主 になってしまったが、2008 年 の 北 京オリンピックのための 聖 火 の 採 火 式 が 迫 っていたので、 山に 緑 を 回 復 することが 緊 急 の 課 題 と 成 った。クロノス 山 は山 火 事 に 焼 かれる 前 は 松 の 木 で 覆 われていた。しかし 古 代のクロノス 山 はプラタナス、イト 杉 、オリーブ、ドングリの 木 々で 覆 われていたことが 文 献 から 分 かっているので、これらの 木 の 3,500 本 の 苗 木 が 選 ばれ 植 林 された。また、木 材 で 作 られた 砂 防 ダム( 図 4-50)が 山 腹 に 設 置 された。オリンピア 遺 跡 管 理 事 務 所 の 危 機 管 理 組 織 が 再 度 明 確 にされ、 災 害 対 応 訓 練 が 以 前 に 増 して 行 われるようになった。また、ギリシャ 文 化 省 は 考 古 学 遺 産 の 保 護 のために、 以下 の 対 策 を 実 施 した(Sofia Avgerinou Kolonia、2008)。・ 水 源 確 保 のための 建 設 工 事 ( 試 掘 孔 、 水 集 約 のための隣 接 する 河 川 の 平 坦 部 における 技 術 的 な 工 事 、 適 切 な場 所 に 水 タンクを 建 設 )・ 人 工 衛 星 にて 地 域 のモニタリング(アテネ 気 象 台 )・ 低 植 生 地 帯 における PUP-UP システム 19 の 建 設 (スタジウムの 斜 面 )・ 周 辺 施 設 群 における 既 存 の 防 災 システムの 設 置 拡 大腐 食 と 浸 水 を 防 止 するための 予 算 は、 非 常 事 態 用 の 特 別な 寄 付 金 が 当 てられた。 新 しい 木 を 植 えるプロジェクトは、ラーツィスグループ(Latsis Group)とユーロバンク EFGによって 全 て 支 払 われた(Olympia Vikatou、2008)。であろう。しかし、 古 代 の 貴 重 な 宝 物 を 再 び 土 の 中 に 埋 めることが 非 現 実 的 な 選 択 である 以 上 、 我 々はこの 人 為 的 な 自 然災 害 と 戦 っていかなければならない。一 つの 方 法 は、 古 代 遺 跡 の 周 囲 に 広 い 防 火 帯 を 設 けることであるが、 遺 跡 の 周 囲 のほとんどは 私 有 地 であり、また、 遺跡 に 隣 接 している 地 域 の 自 然 な 緑 が 遺 跡 の 背 景 に 欠 けがたい物 であることもある。 他 の 方 法 は、 周 辺 の 植 生 を 燃 えやすい松 などの 木 から、 燃 えにくい 古 代 の 土 着 の 木 に 戻 すことである。この 努 力 はオリンピアのクロノス 山 で 試 みられており、より 普 遍 的 に 適 用 されていくべきである。 最 も 即 効 的 な 対 策は 消 火 能 力 の 向 上 である。2007 年 の 大 山 火 事 の 際 に 経 験 されたように、 多 くの 火 災 が 同 時 に 起 こる 可 能 性 がある。それは 大 都 市 が 地 震 に 見 舞 われた 際 の 同 時 多 発 火 災 と 似 た 状 況 である。したがって、 地 域 の 消 防 隊 に 頼 らずとも 防 火 できる 状態 での 十 分 な 自 営 消 火 施 設 の 設 置 と 訓 練 の 実 施 が 重 要 な 古 代遺 跡 では 必 要 である。この 課 題 は 日 本 の 木 造 の 文 化 遺 産 についてもより 深 く 議 論 されるべきである。ギリシャにおける 大 きな 山 火 事 の 際 の 国 際 協 力 は 多 くのヨーロッパの 国 による 消 防 飛 行 機 の 提 供 という 形 で 行 われている。それらはギリシャの 消 防 隊 に 組 み 込 まれ、 古 代 遺 跡 周辺 の 火 勢 の 抑 制 に 貢 献 した。しかし、 古 代 遺 跡 の 消 火 活 動 への 直 接 の 支 援 は 我 々の 調 査 では 聴 取 できなかった。いずれにせよ、この 恐 ろしい 同 時 多 発 火 災 におけるギリシャの 消 火 活 動 の 経 験 は 日 本 の 文 化 遺 産 の 専 門 家 や 管 理 者 と交 流 されるべきである。図 4-50 砂 防 ダム4-2-4 多 くのギリシャの 古 代 の 貴 重 な 遺 品 は 風 塵 や 泥 流 や 植 物の 繁 茂 等 によって 埋 められていたことによって 保 存 されてきたが、 近 年 になって 発 掘 されることにより 新 たな 危 機 に直 面 するようになったということが 出 来 る。 山 火 事 の 近 年の 増 加 は、 山 林 管 理 の 低 下 、 気 候 温 暖 化 現 象 などの 人 的 な要 因 と 推 定 され、これら 人 的 な 要 因 は 取 り 除 かれるか、 少なくとも 抑 制 されねばならないが、 大 変 長 い 時 間 がかかる4-3 ここで 取 り 上 げたギリシャの 2 つの 事 例 は、 地 震 と 火 災 という 異 なる 災 害 であるが、いずれも 復 旧 について 特 定 の 外 国の 支 援 を 受 けていない。EU というヨーロッパ 全 体 の 地 域 組織 による 財 政 的 な 支 援 、あるいは 消 防 飛 行 機 の 非 常 時 の 提 供等 に 留 まっており、それも 技 術 的 な 支 援 を 受 けていない。これまで 同 様 の 災 害 を 繰 り 返 し 受 けているために、すでに復 旧 技 術 が 完 成 しているかといえば、 必 ずしもそうではない。今 回 の 災 害 に 対 応 して、 最 新 の 減 災 や 復 旧 の 技 術 開 発 に 取 り組 んでおり、 文 化 遺 産 保 護 の 先 進 国 ならではの 対 応 である。例 えば、ダフニ 修 道 院 の 地 震 後 の 補 強 事 例 では、 全 体 的 な復 旧 事 業 の 過 程 が 終 始 一 貫 して 科 学 的 で 公 開 されているという 特 徴 がある。 施 工 前 の 構 造 解 析 ・ 構 造 補 強 前 の 実 験 ・ 実 験分 析 に 基 づく 補 強 方 法 や 材 料 の 開 発 ・ 補 強 後 のモニタリングなどの 内 容 が、 工 事 担 当 者 であるミリティアドウ 氏 によって英 語 論 文 として 公 開 され、 同 様 の 課 題 がある 諸 外 国 の 研 究 者や 他 分 野 の 専 門 家 がアクセスできる 状 況 にある。 今 回 の 現 地調 査 でも、ミリティアドウ 氏 自 身 が 積 極 的 に 我 々の 調 査 に 協力 し、 全 てを 細 部 まで 公 開 してくれた。 防 災 という 多 くの 異なる 分 野 の 総 合 で 可 能 となるような 政 策 を 形 成 する 上 で、このオープンな 姿 勢 は 重 要 である。 日 本 としては、このような142


第 二 章 各 国 調 査方 法 論 に 学 ぶべき 点 があり、 各 分 野 の 専 門 家 同 士 が 交 流 する価 値 がある、と 考 えられる。また、オリンピア 遺 跡 の 火 災 被 害 の 場 合 、ギリシャ 文 化 省は、この 災 害 から1 年 後 の 2008 年 11 月 に、ユネスコ 世 界 遺産 センターと 連 携 して 世 界 の 文 化 遺 産 防 災 専 門 家 の 参 加 する国 際 会 議 を 開 催 した。 自 分 の 失 敗 も 含 まれる 問 題 点 を 現 地 で公 開 し、 今 後 の 世 界 文 化 遺 産 の 防 災 対 策 を 向 上 させるため、国 際 的 な 枠 組 み 形 成 の 場 を 提 供 している。 災 害 の 経 験 を、 国際 機 関 等 と 連 携 して、 途 上 国 を 含 む 国 際 社 会 と 広 く 共 有 する機 会 をつくることで、 二 国 間 の 押 しつけでない 国 際 的 な 貢 献をしようとしている。ギリシャの 意 図 は、 世 界 文 化 遺 産 の 防災 に 関 する 国 際 的 な 合 意 文 書 、オリンピア・プロトコール 20となって 広 く 配 布 され、 世 界 遺 産 委 員 会 の 議 論 に 反 映 されつつある。この 動 きは、2009 年 11 月 のイスラエル 政 府 と 世 界遺 産 センターが 開 催 した 第 2 回 専 門 家 会 議 に 継 承 され、 次 の国 際 的 な 動 きをつくりつつある。ギリシャはこの 第 2 回 会 議でも、 重 要 な 役 割 を 果 たしている。ここには、 二 国 間 の 支 援に 傾 きがちな 日 本 の 国 際 交 流 が、 学 ぶべき 点 があると 言 えよう。以 上 をまとめると、 日 本 はギリシャとの 関 係 でいえば、 日本 からの 国 際 支 援 ではなく、 地 震 対 策 や 火 災 対 策 等 の 分 野 での 専 門 家 交 流 や、 国 際 社 会 貢 献 での 連 携 などで、ギリシャとの 共 同 作 業 に 取 り 組 むことが 期 待 されている。 木 造 と 石 造 の建 築 構 造 の 相 違 を 超 えた、 普 遍 性 のある 世 界 文 化 遺 産 の 防 災計 画 の 形 成 も、 重 要 な 課 題 となろう。5. このワークショップは 基 礎 構 造 物 の 耐 震 設 計 、 観 測 、 及び 補 強 について 日 本 の 土 木 学 会 とギリシャの 地 震 工 学 会 の間 で 技 術 的 な 知 見 を 交 流 するために 開 催 されたものであった。しかるに、ワークショップの 開 催 地 がギリシャの 重 要な 文 化 遺 産 の 遺 跡 であることから、 立 命 館 大 学 の 調 査 グループが 文 化 遺 産 の 保 全 に 関 する 特 別 セッションの 開 催 を提 案 したものである。この 提 案 はギリシャ 側 の 賛 同 を 得て、ワークショップ 運 営 委 員 会 のギリシャ 側 議 長 である G.Gazetas 教 授 からギリシャ 文 化 省 と 国 立 アテネ 工 科 大 学 のキーパーソンが 紹 介 された。そして、 特 別 セッションの 目 的 とするところが 合 意 され、スペシャルセッションに 向 けた 論 文 の 募 集 がアナウンスされ、 並 行 して、4 名 の 招 待 講 演 者 が 選 定 された。この4 名 は、 立 命 館 大 学 の 土 岐 憲 三 教 授 、ギリシャ 文 化 省 の A.Miltiadou-Fezans 博 士 、 国 立 アテネ 工 科 大 学 の T. P. Tasios 教授 と E. Vintzileou 教 授 である。招 待 講 演 者 の 5 論 文 を 含 む 15 論 文 が 特 別 セッションに投 稿 され、 発 表 された。セッションは 9 月 22 日 の 午 後 2時 20 分 から 午 後 8 時 まで 開 催 されたが、 熱 心 な 発 表 とディスカッションにより 当 初 セッションに 割 り 当 てられた 時 間が 1 時 間 半 オーバーした。この 特 別 セッションは、 多 くの 重 要 な 情 報 を 我 々の 調 査にもたらすと 共 に、ギリシャの 専 門 家 や 教 授 達 との 貴 重 な経 験 交 流 の 機 会 を 提 供 した。 図 5-1、5-2、5-3、5-4 はセッションのスナップショットである。 特 別 セッションのプログラムを 含 むワークショップ 全 体 のプログラムを 図 5-5 に示 す。図 5-1 講 演 中 の 土 岐 教 授図 5-2 司 会 する 益 田 教 授 と Miltiadou-Fezans 博 士図 5-3 講 演 中 の 後 藤 博 士図 5-4 会 場 の 様 子143


第 二 章 各 国 調 査図 5-5 第 3 回 日 本 ・ギリシャワークショップ「 基 礎 構 造 物 の 耐 震 設 計 、 観 測 、 及 び 補 強 」ならびに 特 別 セッション「 文 化 遺 産 の 地 震 からの 防 御 と 復 旧 」のプログラム144


第 二 章 各 国 調 査6. 6-1 前 述 のように、ギリシャは、ヨーロッパ 古 典 文 明 の 母 として、 紀 元 前 17 世 紀 以 来 の 多 くの 古 代 考 古 遺 跡 をもち、また中 世 以 降 のビザンチン 文 化 の 遺 産 も 多 い。 一 方 で 自 然 環 境 として、アフリカ 大 陸 プレートがヨーロッパ 大 陸 プレートにぶつかる 位 置 にあって 古 代 以 来 常 に 地 震 被 害 を 受 けてきた。また、 乾 燥 した 地 中 海 気 候 から 山 林 火 災 も 毎 年 のように 発 生 して、これらの 災 害 が 文 化 遺 産 の 保 護 に 大 きな 影 響 を 与 えている。この 調 査 では、 最 近 の 大 きな 災 害 事 例 として、1999 年 地震 被 害 を 受 けたダフニ 修 道 院 遺 跡 ( 世 界 遺 産 登 録 1990 年 )、2007 年 森 林 火 災 の 影 響 があったオリンピア 遺 跡 ( 世 界 遺 産登 録 1989 年 )をとりあげた。ギリシャ 文 化 省 等 の 協 力 を 得て 現 地 調 査 を 行 い、またギリシャの 地 震 関 係 の 専 門 家 との 研究 会 を 行 って、 論 文 発 表 と 意 見 交 換 を 行 った。この 結 果 、 基礎 的 な 学 術 水 準 では 日 本 が 進 んでいる 部 分 があるが、ギリシャの 文 化 遺 産 保 護 施 策 では、 地 震 対 策 ・ 火 災 対 策 ともに 日本 より 優 れた 部 分 があり、また 一 方 で、 予 算 不 足 や 行 政 組 織間 の 連 携 などで 同 様 の 問 題 があることが 判 明 した。災 害 時 の 文 化 遺 産 の 復 旧 に 関 する 国 際 的 な 支 援 は、2001年 にユーロ 圏 に 参 加 した EU からの 財 政 的 な 支 援 を 受 けているが、 災 害 復 旧 や 文 化 遺 産 に 限 ったものではない。 多 くの 文化 遺 産 の 保 存 修 復 事 業 に 対 して、75% 補 助 の 支 援 を 受 けている。しかし、EU への 必 要 な 支 払 い 分 担 金 の 義 務 は 規 定 通り 果 たしており、 当 然 の 交 付 である、と 見 なしている。18 世 紀 以 来 ギリシャは、 英 仏 独 等 による 多 くの 考 古 学 的な 調 査 の 対 象 となった。1832 年 オスマントルコからの 独 立後 も、1931 年 開 催 のアテネ 憲 章 国 際 会 議 など、ヨーロッパ近 代 文 化 遺 産 保 護 運 動 での 国 際 的 な 役 割 が 大 きい。 特 定 の 国との 特 別 な 2 国 間 関 係 はないが、ハインリッヒ・シュリーマンの 発 掘 以 来 の 実 績 があるドイツとは、 国 立 考 古 学 博 物 館 での 特 別 展 示 室 への 熱 心 な 大 量 観 光 客 など、 友 好 的 な 関 係 が 深い。EU 域 内 でも 国 際 的 な 支 援 が 得 られやすい 有 利 な 立 場 にあるが、ギリシャ 自 身 は、 自 国 の 文 化 遺 産 保 護 の 水 準 は 高 く、外 国 からの 技 術 的 支 援 が 必 要 とは、 考 えていない。文 化 遺 産 破 壊 に 関 わる 近 年 の 国 際 活 動 では、 大 英 博 物 館収 蔵 のパルテノンのレリーフ(エルギンマーブルズ)の 返還 を 求 めており、2009 年 にはその 返 還 後 の 展 示 に 備 えた 新アクロポリス 博 物 館 がオープンした。ユネスコ 松 浦 事 務 局 長は、その 開 館 式 に 出 席 し、 祝 辞 を 述 べている 21 。2007 年 オリンピア 火 災 を 受 け、ユネスコとギリシャ 政 府 文 化 省 は 協 力して、2008 年 11 月 に 世 界 文 化 遺 産 防 災 国 際 専 門 家 会 議 を 開催 し、 世 界 遺 産 センターの 基 本 戦 略 となる 文 書 The OlympiaProtocol for International Cooperation 22 を 採 択 した。この 会 議報 告 によれば、 日 本 政 府 が 自 国 の 現 状 報 告 に 留 まったのに 対して、ギリシャはホスト 国 としてこの 分 野 での 国 際 的 な 枠 組み 準 備 に 大 きく 貢 献 している。2009 年 11 月 には、この 第2 回 会 議 が 近 くの 地 震 国 イスラエルで 開 催 され、ギリシャは 活 発 な 役 割 を 続 けており、 日 本 等 の 国 々に 第 3 回 会 議 の開 催 を 呼 びかけている。また 対 立 をつづけている 隣 国 トルコとは、1999 年 8 月 のトルコ 北 西 部 の 地 震 の 際 、ギリシャが 緊 急 救 助 隊 を 派 遣 し、その 1 ヶ 月 後 のギリシャ 地 震 ではお 返 しのトルコ 救 助 隊 が 派 遣 されることで、 若 干 の 関 係 改善 があった。これらの 救 援 活 動 は、 同 一 地 震 帯 内 での 文 化遺 産 災 害 を 外 交 として 活 用 しているとも 理 解 できる。以 上 の 状 況 をまとめると、ギリシャが 必 要 としているは、ヨーロッパにおける 文 化 先 進 国 としての 保 存 事 業 への 地 域的 支 援 、 国 際 社 会 での 名 誉 ある 地 位 を 求 めてのユネスコ 等国 際 機 関 との 連 携 であり、 周 辺 国 との 文 化 遺 産 の 災 害 からの 保 護 を 通 じた 友 好 的 な 関 係 であって、 特 定 国 からの 技 術的 金 銭 的 な 支 援 ではない。 日 本 との 関 係 で 求 めているのは現 在 、まず 1) 日 本 からの 良 質 な 文 化 遺 産 観 光 客 の 増 加 であり、 次 いで 2) 同 じ 地 震 国 としての 文 化 遺 産 保 護 に 関 する 学 術 的 技 術 的 な 知 識 の 交 換 、さらには 3)ユネスコ 傘 下での 世 界 遺 産 の 持 続 可 能 な 保 護 のための 危 機 管 理 計 画 策 定など、より 進 んだ 国 際 的 枠 組 みの 形 成 に 向 かっての 連 携 、といえよう。6-2 上 記 のまとめに 基 づき、 我 が 国 の 専 門 家 がギリシャでの文 化 遺 産 災 害 への 協 力 や、ギリシャ 関 連 の 国 際 協 力 を 行 う場 合 に 関 して、 以 下 のような 提 言 を 行 いたい。1. 上 記 の 3) との 関 連 では、まず 急 がれるのは、2010年 度 に 開 催 が 期 待 されている、 第 3 回 ユネスコ 世 界 文 化遺 産 防 災 国 際 専 門 家 会 議 の 開 催 への 協 力 の 表 明 である。2008 年 ギリシャ・オリンピアで 第 1 回 目 が 開 催 され、2009 年 はイスラエルのアクレで 第 2 回 目 が 開 催 された。2010 年 度 会 議 は、 日 本 の 支 援 により、アジア 太 平 洋 地 域での 開 催 が 期 待 されている。東 アジアでは、 韓 国 がソウル 南 大 門 2008 年 火 災 後 の再 建 に 伴 うなんらかの 記 念 に 大 きな 文 化 遺 産 防 災 会 議 開催 の 予 定 があるので、 日 韓 が 共 同 で 開 催 することも 有 意義 であろう。あるいは、 津 波 や 気 候 変 動 や 無 形 遺 産 など、従 来 充 分 取 り 上 げてない 文 化 遺 産 防 災 の 課 題 を 中 心 に、サモアなど 太 平 洋 地 域 での 共 同 開 催 もありえよう。 文 化遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムにとっては、 国 内 だけでなく、 海 外 と 連 携 してのユネスコ 傘 下 の 国 際 会 議 を 開 催 できる 機 会 となろう。日 本 は、2009 年 度 のセビリア 世 界 遺 産 委 員 会 において、2012 年 の 世 界 遺 産 条 約 成 立 40 周 年 に、 大 規 模 な 記念 会 議 の 開 催 を 国 際 社 会 に 対 して 提 案 している。この2010 年 会 議 に、その 1 回 目 の 準 備 会 議 としての 性 格 を 持たせて 共 催 することも、 外 務 省 文 化 庁 の 双 方 が 関 わるコ145


第 二 章 各 国 調 査ンソーシアムなら 可 能 であろう。2. 次 いで、 両 国 間 の 学 術 的 技 術 的 な 交 流 の 促 進 である。ギリシャと 日 本 は 国 土 が 地 震 帯 に 属 して、 世 界 遺 産 がその 上 に 立 地 しており、 地 震 を 基 礎 とする 文 化 遺 産 危 機 管理 計 画 の 手 法 を 開 発 する 必 要 性 が 高 い。 石 造 建 築 文 化 と木 造 建 築 文 化 が 共 同 で 研 究 することで、 普 遍 性 が 高 い 手法 開 発 が 可 能 となる。その 関 連 研 究 分 野 は 広 いが、 当 面下 記 の 分 野 での 交 流 効 果 が 大 きく、 急 がれる。・ 文 化 遺 産 保 存 分 野 の 専 門 家 交 流 :ギリシャの 文 化 遺産 保 存 の 諸 分 野 では 経 験 と 知 識 が 蓄 積 しており、 目 的 と方 法 、 熱 意 を 同 じくすれば、 日 本 の 同 じ 各 分 野 の 専 門 家との 交 流 は 効 果 が 大 きい。・ 火 災 分 野 間 の 交 流 :ギリシャは 恐 ろしい 同 時 多 発 火災 での 消 火 活 動 経 験 があり、 文 化 遺 産 保 護 に 関 連 する 火災 分 野 の 専 門 家 や 行 政 担 当 者 と 交 流 するべきであろう。1http://www.oasp.gr2http://www.civilprotection.gr/3http://www.itsak.gr4http://www.gein.noa.gr5http://www.gscp.gr/ggpp/site/home/ws.csp6http://www.fireservice.gr/pyr/site/home.csp (in Greek)7http://www.astynomia.gr/index.php?option=ozo_content&perform=view&id=34&Itemid=13&lang=EN8http://www.yptp.gr/main.php?lang=EN9ダフニ 修 道 院 のように 中 世 に 建 てられた 建 物 は、 当 初 、研 究 者 らの 関 心 をひかず、より 古 い 建 物 (パルテノン、ハドリアヌス 帝 の 図 書 館 )などの 発 掘 の 障 害 となった 時 には、取 り 壊 されていた(ロラン&フランソワ・エティネンヌ、1995)。10Sacred Destinations(http://www.sacred-destinations.com/greece/daphni-monastery)11ヨ ハ ン・ ヨ ア ヒ ム・ ヴ ィ ン ケ ル マ ン(Johann JoachimWinckelmann 、1717 - 1768)は、「ギリシアの 復 活 」を 始 めることでの 18 世 紀 後 半 における 新 古 典 主 義 運 動 の 発 生 に決 定 的 な 影 響 を 及 ぼしたドイツの 美 術 史 家 であり、 考 古 学者 である。 彼 は 科 学 的 手 法 による 考 古 学 の 創 始 者 の 1 人 で、美 術 史 においても 巨 大 で 体 系 的 な 基 礎 の 上 、 最 初 に 様 式 のカテゴリーを 適 用 した。また、 美 術 史 の 父 とも 呼 ばれている。ヴィンケルマンは、 著 書 『 絵 画 と 彫 刻 におけるギリシャ作 品 の 模 倣 に 関 する 考 察 』(1755)にてギリシャの 芸 術 の本 質 に 関 する 彼 の 概 念 ―「 高 貴 なる 単 純 さと 静 謐 なる 偉 大さ」の 理 念 と「 我 々が 偉 大 になるため、 比 類 なきものになるための 唯 一 の 方 法 は、 古 代 人 を 模 倣 することである」という 権 威 ある 主 張 ―を 結 晶 化 させた。(ロラン&フランソワ・エティネンヌ、1995、p.65 参 照 )12初 代 国 王 としてオソン(ドイツ 読 みでは、オットー)をバイエルン 王 室 から 迎 える。この 事 実 一 つをとっても、 当 時 のギリシャのドイツとの 親 密 な 結 び 付 きが 知 られるが、それは後 の 遺 跡 の 発 掘 と 保 存 修 復 にも 引 き 継 がれることになる。13最 初 の 成 果 は、『OLYMPIA』という 大 型 本 ( 全 5 巻 )で 出版 された。14その 成 果 は 全 2 巻 となっている『ALT-OLYMPIA』という本 としてとして 出 版 された。15この 雑 誌 は、1944 年 からドイツ 考 古 学 研 究 所 が 刊 行 しているもので、 次 の URL からその 目 録 を 閲 覧 できる。http://www.dainst.org/index_34eed562bb1f14a146890017f0000011_de.html161894 年 、アテネを 襲 った 大 地 震 は、すでに 崩 壊 が 進 んでいた 古 代 ギリシャの 大 建 造 物 にさらに 大 きな 被 害 を 与 えた。この 時 からギリシャの 近 代 的 な 修 復 活 動 は 本 格 的 に 始 まることになるが、アクロポリスの 修 復 に 任 命 されたのがバラノス(Nikolaos Balanos)であった。バラノスはこれ 以 降 、 第 二 次世 界 大 戦 まで 約 40 年 間 にわたってギリシャでの 保 存 修 復 活動 の 中 心 的 な 存 在 でありつづけた。また、バラノスはアテネ会 議 でアクロポリスの 修 復 で 用 いられていたアナスティローシス(anastylosis)の 紹 介 を 行 い、その 会 議 の 際 に 採 択 されたアテネ 憲 章 では、ギリシャ 語 の「アナスティローシス」がそのまま 採 用 され、 使 われた。このことでバラノスの 名 は「アナスティローシス」とともに 世 界 的 なものとなった。「アナスティローシス」は、1964 年 のヴェニス 憲 章 にもそのまま使 われ、その 語 義 においてもアテネ 憲 章 と 比 べ、 大 きな 意 味の 変 化 は 見 られないものの、 運 用 の 指 示 においてはより 具 体的 になる。現 代 ギリシャ 語 のアナスティローシスは、「 上 に」あるいは「 再 び」という 意 味 の 接 頭 辞 ana と「 円 柱 」を 意 味 する 語 幹stylos からなる。すなわち、「 柱 の( 再 ) 構 築 」ということであって、そこから、 建 築 の 象 徴 である 柱 の 建 て 起 こし、さらには 残 存 部 材 の 組 み 立 てによる 修 復 、という 意 味 の 進 化 がギリシャ 本 国 でも 一 般 的 になっていったと 考 えられる。 実 はこの 言 葉 はすでに 古 典 ギリシャ 語 にも 同 様 な 意 味 、「 遺 跡 建造 物 を 建 ち 上 げること(setting up of a monument)」で 存 在 していた。( 松 本 修 自 、2000)17http://www.twges.de/18エルギン・マーブルズ( 別 名 パルテノン・マーブルズ)は、元 々はアテネのアクロポリスのパルテノンとその 他 の 建 物 の一 部 で、 古 典 的 なギリシャの 大 理 石 彫 刻 、 碑 文 、 建 築 部 材 のコレクションである。エルギン 伯 爵 (1799 年 から 1803 年 までのオスマン 帝 国 のイギリス 大 使 )は、オスマントルコ 当 局からアクロポリスからの 部 材 の 解 体 許 可 ―これについては、まだ 議 論 の 余 地 がある―を 取 得 した。1801 年 から 1812 年 まで、エルギンの 代 理 人 は、 前 門 やエレクテイオンの 建 築 部 材146


第 二 章 各 国 調 査と 彫 刻 だけでなく、パルテノンに 存 在 する 彫 刻 の 半 分 を 解 体した。 大 理 石 はイギリスに 船 便 で 輸 送 された。イギリスでは、このコレクションの 搬 入 について 一 部 の 人 々は 支 持 したが、 多 くの 批 評 家 はエルギンの 行 動 を 破 壊 または 略 奪 に 比 較した。 国 会 での 公 共 議 論 とエルギンの 行 動 の 免 責 に 従 い、 大理 石 彫 刻 は 1816 年 にイギリス 政 府 によって 購 入 され、 現 在は 大 英 博 物 館 に 展 示 中 である。このエルギン・マーブルズの解 体 に 関 する 合 法 性 は 問 い 続 けられており、 大 英 博 物 館 に 残すべきか、アテネに 返 還 しなければならないかについて 議 論が 続 いている。19火 災 鎮 火 システムのひとつ20Appendix 7 を 参 照 。21Appendix 6 を 参 照 。22Appendix 7 を 参 照 。147


第 二 章 各 国 調 査148


第 三 章 課 題 と 展 望


第 三 章 課 題 と 展 望第 三 章 では、 第 二 章 の 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 調 査 事 例 から 学 ぶ、あるべき 国 際 協 力 の 姿 について 考 察 し、そのための 課 題 と展 望 について 述 べる。まずは、 各 国 事 例 に 基 づき 文 化 遺 産 の 被 災 状 況 と 復 旧 への 対 応 、 及 び、それに 関 する 国 際 協 力 を 下 記に 表 としてまとめる。文化遺産の被災状況被災文化遺産への対応国際支援インドネシア ギリシャ中 国 タイ イランアチェ 中 部 ジャワ 西 スマトラ ダフニ 修 道 院 オリンピア 遺 跡四 川 省 では 震 源 地 を 中心 に 建 造 物 への 大 きな被 害 が 出 た。 山 岳 地 帯に 居 注 する 羌 族 の 伝 統的 建 造 物 である 碉 楼 、世 界 遺 産 都 江 堰 の 建 造物 群 には 国 内 外 から 関心 が 寄 せられた。チョームキティ・パゴダは、タイ 国 内 にて 地震 対 策 が 実 施 された 唯一 の 例 。ただし、 今 回の 震 災 により 土 台 の 亀裂 や、 頂 上 部 の 落 下 などの 被 害 があったが、大 きな 被 害 はなかった。このパゴダ 以 外 の文 化 遺 産 への 被 害 は 報告 なし。津 波 によるアチェ 写 本保 管 建 物 の 崩 壊 、 文 書が 流 された。ボルブドゥール 遺 跡 には 被 害 なし。プランバナン 遺 跡 群 とその 周 辺の 石 造 建 造 物 に 被 害 。ジョグジャカルタ 市 内の 王 宮 内 の 木 造 建 築 物の 一 棟 は 全 壊 。 周 辺 煉瓦 造 建 造 物 にも 被 害 。パダン 市 内 の 歴 史 的 建造 物 に 被 害 。 市 内 の 大規 模 公 共 施 設 に 被 害 が集 中 し、 博 物 館 、 公 文書 館 などが 一 部 倒 壊 。図 書 館 は 全 壊 。バム 市 旧 市 街 地 では、アルゲ・バムの 壊 滅 的被 害 を 含 め、80% 以 上の 建 物 が 倒 壊 。バム 市の 存 立 にかかわるカナート( 地 下 水 路 )も被 災 。その 景 観 全 体 が震 災 後 、 危 機 遺 産 としてユネスコ 世 界 遺 産 に登 録 。震 災 により 緊 急 の 鉄 骨支 保 と 多 大 な 修 復 工 事が 必 要 となった。2007 年 森 林 火 災 の 影 響を 受 け、 危 うく 石 材 が被 害 を 受 ける 状 況 となった。 背 後 の 聖 なる山 も 含 めて 周 囲 ははげ山 となった。文 化 財 部 門 の 縦 方 向 の連 絡 系 統 により 速 やかに 被 害 情 報 伝 達 し、 国家 文 物 局 局 長 も 震 災 後一 週 間 以 内 に 現 地 入り。 震 災 1カ 月 以 内 には 国 家 文 物 局 主 催 で 会議 を 行 い、 復 興 事 業 開始 。 震 災 以 前 から 計 画されていた 文 物 保 護 のためのセンター 収 蔵 庫の 建 設 が 促 進 される。2 年 以 内 の 修 復 事 業 完了 目 標 。災 害 発 生 当 日 に 当 該 地域 を 担 当 する 第 8 芸 術地 方 事 務 所 が 現 地 入 りし、バンコクの 芸 術 局に 応 援 を 要 請 し、2~3 日 後 に 担 当 者 が 調整 。 落 下 部 分 の 再 作 成と 設 置 に 伴 う 本 体 部 分の 工 事 、 亀 裂 の 充 填 を実 施 。 現 在 も 傾 きの 状況 を 確 認 するために 年一 回 のモニタリング 調査 行 う。新 たな 建 物 の 建 築 や、資 料 の 収 集 、 写 本 の 電子 化 、 保 管 庫 設 備 の 検討 、 写 本 の 修 復 などが行 われている。震 災 翌 日 には、ユドヨノ 大 統 領 がプランバナン 遺 跡 視 察 。 破 損 調査 、 修 復 工 事 な ど 実施 。中 央 政 府 と 西 スマトラ州 政 府 を 中 心 に 復 興 計画 策 定 中 。 復 興 庁 も 設立 。城 塞 では 震 災 直 後 から修 復 作 業 実 施 。組 積 造 壁 体 の 多 数 のひび 割 れやモザイクの 剥落 対 策 として、 水 硬 性石 灰 グラウトを 注 入 する 工 事 が 継 続 中 。植 林 作 業 、 洗 堀 防 火 装置 の 設 置 、 水 源 確 保 、災 害 対 応 訓 練 強 化 などを 実 施 。・ユネスコ、フランス政 府 、 日 本 政 府 の3カ国 ・ 機 関 から 支 援 。・ユネスコ( 資 金 援助 )世 界 遺 産 青 城 山 の 再 建復 興 に150 万 人 民 元 供与 。 復 興 作 業 開 始 。・フランス 政 府 ( 技 術的 助 言 )彭 州 にある 修 道 院 を3回 視 察 。 修 復 計 画 案 に対 してフランス 人 専 門家 から 助 言 提 供・ 日 本 ( 技 術 交 流 )建 造 物 の 保 護 修 復 と 地震 対 策 、 博 物 館 施 設 及び 収 蔵 品 の 地 震 対 策 をテーマとする「 文 化 財建 造 物 等 の 地 震 対 策 に関 する 日 中 専 門 家 ワークショップ」の 開 催(2009 年 2 月 )調 査 事 例 に 関 しては、国 際 協 力 は 行 われていない。・ 国 際 機 関 が 中 央 政 府を 通 さずにやり 取 りできる 唯 一 の 州 。・ 日 本 ( 資 金 ・ 技 術 的支 援 )東 京 外 国 語 大 学 による文 字 文 化 財 支 援 。 東 京外 国 語 大 学 は 津 波 以 前の2002 年 からインドネシアについて 調 査 ・ 研究 実 績 を 持 ち、 現 在 も支 援 継 続 。・ドイツ(2007 年 ~2009 年 )ライプチヒ 大 学 による写 本 のデジタル 化 。 全てのデジタル 化 を 完 了せずに 撤 収 。・フランスフランス 極 東 学 院(EFEO)による 書 物 の提 供 。・オランダKITLVによる 書 物 のデジタル 化 とウェブ 上 での 公 開 。・アチェ・インド 洋 研究 国 際 センター( 多 国的 機 関 )2009 年 開 設 。アチェでの 学 問 活 動 活 性 化 を 担う。・ 日 本 ( 技 術 ・ 物 資 支援 )文 化 庁 より 東 京 文 化 財研 究 所 への 委 託 事 業 として、 文 化 遺 産 の 被 災状 況 の 調 査 ( 計 3ミッション)。その 後 、 筑波 大 学 により 引 き 継 がれ 現 在 も 支 援 継 続 。2007 年 には 外 務 省 草 の根 文 化 無 償 により 足 場の 供 与 。・ユネスコ( 技 術 ・ 物資 支 援 、 技 術 交 流 )震 災 10 日 後 の 文 化 遺 産の 被 災 状 況 調 査 、 足 場の 提 供 、 国 際 会 議 の 開催 。・サウジアラビア( 資金 援 助 )ユネスコを 通 した 財 政支 援・オランダ( 資 金 援助 )クラウス 公 子 基 金 により 伝 統 工 芸 の 製 造 販 売のための 工 場 再 建 。・ユネスコ( 技 術 支援 )英 国 に 博 物 館 被 災 状 況調 査 を 依 頼 。 日 本 へは、 文 化 遺 産 国 際 協 力コンソーシアムと 協 議の 上 、 歴 史 的 建 造 物 及び 都 市 計 画 分 野 に 関 する 調 査 について 依 頼 が来 る。・オランダ( 資 金 援助 )クラウス 公 子 基 金 によりインドネシア・ヘリテージトラストの 支援 。震 災 直 前 に「 土 の 建 築世 界 大 会 」が 開 催 され、 多 数 の 専 門 家 がバムを 訪 ねてその 注 目 度が 一 気 に 高 まった 中 での 震 災 のため、ユネスコ・テヘラン 事 務 所 を中 心 に 国 際 支 援 の 立 ち上 がりは 早 かった。・イタリア 及 びフランス( 技 術 援 助 ・ 修 復 協力 )イタリア 及 びフランス(CRATerre)は 震災 直 後 にユネスコ 調 査団 に 帯 同 して 専 門 家 による 現 地 調 査 。イタリアは 外 城 壁 、フランスは 内 城 壁 を 修 復 拠 点 とする。・ 日 本 ( 資 金 援 助 ・ 技術 交 流 )国 際 会 議 の 開 催 やドイツ・ドレスデン 大 学 の試 験 的 修 復 事 業 に 資 金援 助 。 三 重 大 学 とイスファハン 大 学 との 実 験的 な 共 同 事 業 を 実 施 したが、 現 場 事 業 は 展 開なし。調 査 事 例 に 関 して 特 定 の 外 国 からの 支 援 はない。・EU財 政 的 支 援 と 消 防 飛 行 機 の 非 常 時 の 提 供 。151


第 三 章 課 題 と 展 望各 国 事 例 に 共 通 する 点 として、 下 記 の 項 目 が 挙 げられる。・ 緊 急 支 援 は 政 府 からの 支 援 が 中 心 であった。 緊 急 支 援 の 形 としては、 資 金 援 助 、 技 術 交 流 、 助 言 の 提 供 ( 文 化 遺 産 の被 災 状 況 の 調 査 )などが 中 心 であり、 技 術 協 力 は 少 数 であった。 例 えば、 中 国 では、 幾 つかの 国 、 機 関 から 国 際 協 力 の申 し 出 があったものの、 最 終 的 には、 緊 急 支 援 としてユネスコからの 資 金 援 助 、フランス 政 府 からの 技 術 的 助 言 、 日 本政 府 との 技 術 交 流 の 場 の 提 供 に 留 まった。・ 継 続 的 支 援 の 場 合 は、 支 援 機 関 が 政 府 以 外 となる 傾 向 があり、また 技 術 協 力 の 割 合 が 高 くなる。 例 えば、 被 災 以 前 からインドネシアにて 調 査 ・ 研 究 を 行 ってきた 日 本 の 東 京 外 国 語 大 学 のアチェ 文 字 文 化 財 支 援 がある。・ 緊 急 支 援 が 行 われなかった 国 々からは、 平 時 における 協 力 体 制 の 要 望 が 強 い。 例 えば、タイでは 被 災 に 際 して 諸 外 国に 対 する 要 請 が 出 なかったが、 今 後 防 災 対 策 や 文 化 財 防 災 に 携 わる 組 織 や 情 報 伝 達 の 公 共 システム、GIS データベースの 活 用 などについての 共 同 研 究 が 期 待 されている。ギリシャでも、 調 査 事 例 に 関 して 特 定 の 外 国 からの 支 援 は 報 告 されていないが、 防 災 分 野 ・ 文 化 遺 産 保 護 分 野 における 学 術 的 知 識 交 換 や 専 門 家 交 流 が 望 まれている。・ 国 家 首 脳 が 被 災 した 文 化 遺 産 を 視 察 し 激 励 したことで、その 後 の 文 化 遺 産 復 旧 作 業 に 良 い 影 響 を 与 えた。 例 えば、 中国 では、 国 家 文 物 局 長 が 関 係 者 を 激 励 したことで、 人 命 救 助 と 文 化 遺 産 保 護 という 職 務 使 命 のジレンマの 中 でも 使 命 を果 たすことができたという。また、インドネシアの 中 部 ジャワ 地 震 の 翌 日 には、ユドヨノ 大 統 領 がプランバナン 遺 跡 を訪 れたこともあり、プランバナン 遺 跡 の 被 害 は 早 くから 報 道 された。・ 被 災 した 文 化 遺 産 に 関 係 の 深 い 国 が 国 際 協 力 を 実 施 した。 中 国 の 彭 州 にある 領 報 修 院 は 1908 年 にフランス 人 宣 教 師 によって 建 てられたキリスト 教 修 道 院 であることもあり、フランス 人 専 門 家 から 修 復 計 画 案 に 助 言 提 供 を 行 った。インドネシアのアチェでは、アチェ 戦 争 において 戦 死 したオランダ 人 が 埋 葬 されるオランダ 人 墓 地 の 墓 標 が 津 波 で 流 されたが、オランダ 人 からの 支 援 によって 速 やかに 元 に 戻 された。以 上 の 項 目 と 各 国 事 例 で 述 べられている 提 言 から、 被 災 文 化 遺 産 復 旧 のための 国 際 協 力 において 求 められている 点 を3つ挙 げる。中 国 の 事 例 のように、 有 事 の 際 の 国 際 協 力 であっても、 協 力 を 行 う 海 外 機 関 は 法 に 則 った 形 での 文 化 遺 産 保 護 を 行 う 必 要があるため、 文 化 遺 産 制 度 、 理 念 、 技 術 の 違 いを 平 時 からお 互 い 認 識 することで、 具 体 的 修 復 活 動 を 伴 う 国 際 協 力 に 発 展 することが 可 能 となる。また、タイ 事 例 の 中 で 記 載 のある 2009 年 1 月 に ASEAN と 日 本 、 中 国 、 韓 国 による「 文 化 遺 産 保 護のための 防 災 に 関 するフォーラム」では、フォローワークショップの 実 施 、 防 災 のための 協 力 強 化 のためのネットワーク 構築 の 促 進 、 共 同 研 究 と 研 究 結 果 の 公 表 、ということが、 結 論 と 勧 告 として 出 されており、 有 事 での 国 際 協 力 よりも 平 時 における 国 際 協 力 が 望 まれていることがわかる。タイ 文 化 省 芸 術 局 からも、 地 震 防 災 に 関 する 経 験 豊 富 な 日 本 との 共 同 研 究 を 希望 する 声 を 聞 く。 実 際 、 有 事 には 人 命 救 助 やインフラストラクチャーの 復 旧 が 最 優 先 課 題 であるため、 災 害 発 生 時 の 対 応 を最 小 限 にできる「 防 災 」という 観 念 に 則 り、 平 時 からの 共 同 研 究 ・ 共 同 事 業 の 実 施 などの 協 力 体 制 を 築 くことが 重 要 である。また、 平 時 からの 協 力 体 制 は、プロジェクトの 継 続 性 にも 繋 がる。インドネシアの 事 例 では、 東 京 外 語 大 学 が 津 波 以 前 からインドネシアにて 調 査 ・ 研 究 を 行 っていることで、 信 頼 関 係 によってプロジェクトが 成 り 立 っている。これは、 緊 急 支 援 で終 わりがちな 被 災 文 化 遺 産 復 旧 のための 国 際 協 力 の 中 では 特 筆 すべきであり、まさに 平 時 からの 協 力 体 制 の 有 効 性 が 証 明 されたといえる。本 調 査 で 明 確 になったことの 一 つに、 各 国 の 被 災 時 の 連 絡 ・ 指 示 系 統 には 各 国 ごとの 特 色 があるということがある。 例 えば、中 国 では 中 国 独 自 の 縦 割 りの 指 示 系 統 によって 政 府 への 情 報 が 集 約 される。 一 方 、インドネシアのように、 情 報 収 集 のために NGO との 連 携 が 効 果 的 であった 国 もある。 平 時 から、 各 国 の 制 度 を 踏 まえての 情 報 共 有 体 制 を 作 ることで、 緊 急 時 にも効 率 的 な 情 報 交 換 が 期 待 でき、 支 援 が 有 効 に 活 かされるようなカウンターパートを 検 討 することが 可 能 となる。また、 被 災文 化 遺 産 に 係 る 国 際 支 援 で 困 難 な 問 題 の 一 つが 支 援 時 期 の 決 定 であるが、 情 報 を 相 手 国 と 共 有 することで、 状 況 に 応 じて 最良 な 支 援 のタイミングを 制 定 することが 可 能 である。152


第 三 章 課 題 と 展 望前 述 したが、インドネシアのアチェの 事 例 が 示 す 東 京 外 国 語 大 学 による 長 期 的 支 援 は、 緊 急 支 援 で 終 わりがちな 被 災 文 化遺 産 復 旧 のための 国 際 協 力 の 中 では 特 筆 すべきである。 研 究 機 関 である 大 学 は 研 究 地 域 において 長 期 的 な 研 究 計 画 を 持 っており、 事 実 被 災 以 前 からインドネシアにて 研 究 を 行 ってきた。これは、 政 府 による 支 援 は 要 請 を 契 機 とするものであるのに対 し、 研 究 機 関 による 支 援 は 各 研 究 機 関 の 研 究 目 的 に 因 るためである。よって、 現 在 緊 急 支 援 を 行 う 場 合 は 政 府 機 関 が 中 心となって 要 請 に 応 じているが、 長 期 的 支 援 が 政 府 以 外 の 機 関 により 行 われる 傾 向 を 鑑 みると、 使 節 団 の 中 に 被 災 地 域 ・ 国 と以 前 から 協 力 関 係 にある 専 門 家 ・ 研 究 機 関 を 含 むことで、 短 ・ 中 ・ 長 期 的 支 援 計 画 の 検 討 材 料 を 相 手 側 に 提 示 することが 可能 であると 考 える。 使 節 団 の 人 選 に 関 しては、 国 内 の 専 門 家 の 広 いネットワークを 持 つ 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムが情 報 提 供 を 行 うことが 可 能 である。また、 支 援 計 画 検 討 の 際 は、ある 特 定 地 域 の 文 化 遺 産 に 関 してのみではなく、 支 援 対 象国 における 文 化 遺 産 保 存 制 度 全 体 をとらえる 視 点 を 持 つことが、より 包 括 的 な 支 援 計 画 の 立 案 に 繋 がる。上 記 を 踏 まえると、 今 後 日 本 が 被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 国 際 協 力 活 動 の 一 例 としては、ワークショップの 開 催 が 挙 げられる。すでに 日 本 主 導 で 開 催 された 四 川 におけるワークショップ「 文 化 財 建 造 物 等 の 地 震 対 策 に 関 する 日 中 専 門 家 ワークショップ」がある。また、タイ 及 びラオスで ASEAN、 日 本 、 中 国 、 韓 国 により 開 催 された「 文 化 遺 産 保 護 のための 防 災 に 関 するフォーラム」では、 国 別 報 告 と 現 地 視 察 の 結 果 、1フォローワークショップの 実 施 、2 防 災 のための 協 力 強 化 のためのネットワーク 構 築 の 促 進 、3 共 同 研 究 と 研 究 結 果 の 公 表 、4 以 上 三 点 を 実 現 するためのウェブサイトのような 交 流 手 段 の 構 築 、についての 勧 告 が 出 されている。これら 2 つのワークショップでは、 被 災 文 化 遺 産 復 旧 にのみならず、 防 災 、 保 存 理 念 、GIS などのデータベースの 活 用 、 災 害 時 の 情 報 伝 達 などについて、 情 報 共 有 の 場 としてのワークショップの 開 催 が 切 望 されていることがわかっている。ワークショップでは、ギリシャの 事 例 が 示 すような、ユネスコ 傘 下 での 世 界 遺 産 の 持 続 可 能 な 保 護 のための 危機 管 理 計 画 策 定 についてなど、より 進 んだ 国 際 的 枠 組 みの 形 成 に 向 けてのテーマが 望 まれる 一 方 、 我 が 国 が 蓄 積 してきた 研究 成 果 を 提 供 できるような 建 築 構 造 、 土 木 、 気 象 、 地 震 などの 分 野 ごとのテーマの 設 定 が 考 えられる。 今 後 、こういったテーマでのワークショップが 開 催 される 際 には 積 極 的 に 日 本 の 専 門 家 を 派 遣 し、 専 門 家 を 派 遣 する 場 合 は 情 報 収 集 を 行 っていきたいと 考 える。また、 国 内 専 門 家 の 広 いネットワークを 持 つ 文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアムの 役 割 としては、 文 化 遺 産 に 関 する 各 分 野の 専 門 家 のデータを 収 集 し、より 効 果 的 協 力 内 容 が 行 われる 様 、 分 野 間 の 情 報 共 有 の 場 を 提 供 し 連 携 をはかることが 必 要 となる。本 調 査 では、 残 念 ながら 西 欧 諸 国 などの 他 の 支 援 実 施 国 間 での 連 携 は 見 られず、また、 支 援 実 施 国 がどのような 方 針 に 基づいて 国 際 協 力 を 行 っているかの 情 報 は 限 られた。しかし、 各 国 がどのようなタイミングで 動 き、どのような 支 援 内 容 を 実施 しようとしているのか、 常 に 情 報 を 収 集 しておく 必 要 があり、 支 援 後 の 経 過 についても 国 際 会 議 などで 情 報 を 得 ておく 必要 がある。 日 本 が 今 後 どのような 形 の 貢 献 が 可 能 であるのか 把 握 するためにも 被 災 国 だけではなく 支 援 国 の 調 査 も 行 う 事 で、協 力 連 携 が 強 化 された、より 効 果 的 な 国 際 協 力 が 期 待 できる。153


第 三 章 課 題 と 展 望154


文 献 ・ 図 表 ・ 面 談 者 一 覧


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図 表 一 覧図 表 一 覧0. はじめに図 1 : 地 震 帯 上 の 世 界 遺 産 分 布 図 (2008 年 6 月 時 点 。 立 命 館 大 学 歴 史 都 市 防 災 研 究 センター 提 供 )図 2 : 本 報 告 書 の 事 例 調 査 対 象 国1. 中 華 人 民 共 和 国図 1 : 調 査 対 象 国 および 調 査 地 概 要図 2 : 中 国 における 文 化 遺 産 保 護 行 政 組 織 模 式 図図 3 : 四 川 省 の 地 形 と 震 源 (Google earth より 引 用 した 画 像 に 加 筆 )写 真 1 : 都 江 堰 より 前 龍 門 山 方 面 を 望 む写 真 2 : 被 災 した 鉄 龍 殿 と 吉 当 普 殿 の 様 子 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 3 : 被 災 した 雲 岩 寺 の 様 子 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 4 : 被 災 した 汶 川 県 文 物 収 蔵 庫 の 一 級 文 物 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 5 : 陝 西 省 西 郷 午 子 観 における 屋 根 瓦 の 崩 落 ( 趙 強 撮 影 ) ( 写 真 提 供 : 陝 西 省 文 物 局 )写 真 6 : 陝 西 省 留 バイ 県 張 良 廟 五 雲 楼 建 築 の 被 災 状 況 ( 趙 強 撮 影 ) ( 写 真 提 供 : 陝 西 省 文 物 局 )写 真 7 : 陝 西 省 宝 鶏 市 陳 倉 区 文 物 管 理 所 における 被 災 状 況 ( 宝 鶏 市 文 物 局 撮 影 ) ( 写 真 提 供 : 陝 西 省 文 物 局 )写 真 8 : 被 災 した 二 王 廟 の 一 部写 真 9 : 被 災 した 伏 龍 観 屋 根 にビニールシートがかけられている。写 真 10 : 被 災 した 安 県 文 星 塔写 真 11 : 被 災 した 桃 坪 羌 寨 の 様 子 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 12 : 被 災 した 桃 坪 羌 寨 の 碉 楼 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 13 : 倒 壊 した 漢 源 県 の 文 物 管 理 所 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 14 : 文 物 管 理 所 で 被 災 した 陶 磁 器 類 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 編 2009 より 引 用 )写 真 15 : 都 江 堰 市 文 物 局 は 世 界 遺 産 都 江 堰 の 一 角 にある写 真 16 : 都 江 堰 市 文 物 局 でのインタビューの 様 子写 真 17 : 四 川 省 文 物 管 理 局 がとりまとめた 被 害 状 況 調 査 報 告 書 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 18 : 成 都 市 文 化 局 でのインタビューの 様 子写 真 19 : 国 家 文 物 局 が 作 成 した 震 災 復 興 計 画 大 綱 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 20 : 二 王 廟 修 復 での 工 事 標 識 施 主 、 設 計 、 監 督 、 施 工 を 行 う 組 織 がそれぞれ 分 かれており、 国 家 文 物 局 によって 選 抜 された 組 織 が 担 当 している。写 真 21 : 伏 龍 観 の 修 復 施 工 に 当 たっている 広 西 省 文 物 保 護 センターの 職 員写 真 22 : 金 沙 博 物 館 でのインタビューの 様 子写 真 23 : 陝 西 省 文 物 局 でのインタビューの 様 子写 真 24 : 陝 西 省 文 物 局 が 作 成 した 陝 西 省 文 物 救 済 保 護 計 画 大 綱 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 25 : 被 災 前 の 領 報 修 院 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 26 : 被 災 前 の 領 報 修 院 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 27 : 被 災 後 の 領 報 修 院 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 28 : 被 災 後 の 領 報 修 院 ( 国 家 文 物 局 ウェブサイトより 引 用 )写 真 29 : 文 化 財 建 造 物 等 の 地 震 対 策 に 関 する 日 中 専 門 家 ワークショップの 様 子写 真 30 : ワークショップ 中 に 行 われた 都 江 堰 視 察 の 様 子写 真 31 : 国 家 文 物 局 でのインタビューの 様 子2. タイ図 1-1-1 : 訪 問 先 地 図 ( 広 域 )図 1-1-2 : 訪 問 先 地 図 ( 詳 細 )161


263000図 表 一 覧図 2-1 : 1971 年 ~ 2000 年 の 平 均 月 別 降 水 量 (タイ 気 象 局 による)図 2-2 : タイの 活 断 層 と 過 去 の 地 震 の 震 源 および 規 模 ( 鉱 物 資 源 局 による)図 2-3 : タイの 活 断 層 地 図 ( 鉱 物 資 源 局 による)図 2-4 : タイの 地 震 危 険 度 地 図 ( 鉱 物 資 源 局 による)。 想 定 される 改 正 メルカリ (MM) 震 度 により、 4 段 階 にゾーンを 区分 している。 図 2-5 : タイ 周 辺 で 発 生 した 過 去 のプレート 間 地 震 ( 鉱 物 資 源 局 による)図 3-1 : 災 害 発 生 時 の 指 揮 系 統 (アジア 防 災 センターウェブサイトによる) 3 - 2 図 3-2 : 地 方 自 治 体 Phetchaburi!"#$%(Phetchaburi & $' 県 ) を 対 象 とした 地 滑 り 対 応 資 料 ( 鉱 物 資 源 局 )図 3-3 : タイ 全 土 の 地 滑 りハザードマップ (2004 年 、 鉱 物 資 源 局 による)。 赤 、 黄 、 緑 の 順 に 危 険 度 が 高 い。図 3-4 : 地 滑 りハザードマップ ( 北 部 の Nan 県 ) (2005 年 、 鉱 物 資 源 局 による)図 3-5 : 地 滑 りの 危 険 が 予 測 される 際 の、 地 域 の 情 報 伝 達 系 統 および 対 応 ( 鉱 物 資 源 局 )図 3-6 : 津 波 に 関 するパンフレット ( 鉱 物 資 源 局 )図 3-7 : 自 然 災 害 に 関 するパンフレット ( 鉱 物 資 源 局 )図 3-8 : 36 文 化 省 芸 術 局 組 織 図 (Surayoot Wiriyadamrong 氏 ( 芸 術 局 考 古 部 門 ) 作 成 )図 3-9-1 : モニュメント GIS データベースの 画 面 。 表 示 させるモニュメントの 種 類 を 選 択 し、 地 図 上 から 検 索 ・ 表 示 させることが 可 能 である。図 3-9-2 : モニュメント GIS データベースの 画 面 。 ワット ・ プラ ・ タート ・ ドイ ・ ステープを 選 択 したところ。 さらに、 詳 細な 属 性 情 報 を 一 覧 表 として 表 示 させ、 地 図 や 図 面 、 写 真 などの 画 像 情 報 をダウンロードすることも 可 能 である。図 3-10 : 活 断 層 とモニュメントの 位 置 を 重 ね 合 わせた 図 ( 芸 術 局 作 成 )図 4-1-1 : 2007 年 5 月 16 日 の 震 源 と 各 地 の 計 測 震 度 ( 改 正 メルカリ 震 度 階 ) (USGS)図 4-1-2 : 2007 年 5 月 16 日 の 地 震 の 震 源 地 と 揺 れ ( 改 正 メルカリ 震 度 階 、 補 完 データ)図 4-2 : チョームキティ ・ パゴダの 立 地 ( 円 で 囲 まれた 三 角 の 点 )。 川 を 望 む 丘 の 上 にある。 ( 芸 術 局 データベースによる)図 4-3 : チョームキティ ・ パゴダ 平 面 図 (Sudchai 氏 による)図 4-4 : チョームキティ ・ パゴダの 2006 年 の 修 理 設 計 スケッチ ( 立 面 図 )図 4-5 : チョームキティ ・ パゴダの 2006 年 の 修 理 設 計 スケッチ ( 平 面 図 )図 4-6 : 写 真 の 位 置 ( 写 真 4-2-1 ~ 6)図 4-7 : 地 震 後 の 修 理 位 置 と 内 容 (Sudchai Phansuwan 氏 による)図 4-8 : パゴダ 先 端 の 修 理 部 分 の 仕 様 (Sudchai Phansuwan 氏 による)図 4-9 : ワット ・ プラ ・ タート ・ ドイ ・ ステープの 立 地 ( 芸 術 局 データベースによる)。 山 の 頂 上 にあることがわかる。図 4-10 : ワット ・ プラ ・ タート ・ ドイ ・ ステープ 平 面 図 ( 芸 術 局 データベースによる)表 2-1 : タイの 地 域 区 分表 2-2 : タイの 季 節 区 分表 2-3 : 地 域 別 の 季 節 降 水 量 ( 単 位 : mm)表 2-4 : タイにおける 54 年 間 (1951-2004) の 熱 帯 低 気 圧 の 上 陸 頻 度表 2-5 : 2001 年 ~ 2007 年 の 洪 水 被 害表 2-6-1 : タイで 感 じられた 地 震 (マグニチュード 5 以 上 *)表 2-6-2 : タイで 感 じられた 地 震 (マグニチュード 5 以 上 **)表 2-7-1 : 2007 年 に 洪 水 で 被 災 した 各 地 の 文 化 遺 産 の 一 覧 文 化 省 芸 術 局 考 古 部 ( 一 部 訳 )表 2-7-2 : 2007 年 に 洪 水 で 被 災 した 各 地 の 文 化 遺 産 の 一 覧 文 化 省 芸 術 局 考 古 部 ( 原 文 )写 真 1-1 : 訪 問 先 写 真写 真 2-1 : タイの 洪 水 (スコータイ、 2002 年 9 月 )写 真 2-2-1 : Ku Pa Dom、 ウィアン ・ クム ・ カーム 遺 跡 (チェンマイ)。 屋 根 は 漆 喰 の 遺 構 床 面 を 保 護 するための 覆 屋 。写 真 2-2-2 : Ku Pa Dom、 ウィアン ・ クム ・ カーム 遺 跡 。 雨 季 が 終 わって 間 もないため、 土 が 湿 ってぬかるんでいる。 浸水 する 部 分 まで 覆 屋 の 柱 が 変 色 し、 煉 瓦 の 遺 構 に 藻 類 が 繁 茂 するとともに、 浸 水 部 分 の 境 界 付 近 で 白 華 が観 察 される。写 真 2-3-1 : ワット ・ チャイワタナラム (アユタヤ)写 真 2-3-2: ワット・チャイワタナラム。 右 側 の 川 と 寺 院 のある 場 所 との 標 高 差 が 少 ないことがわかる。 また、 洪 水 対 策 として、162


図 表 一 覧ラテライトの 防 水 壁 を 構 築 している。写 真 2-3-3 : ワット ・ チャイワタナラム。 浸 水 防 止 のための 工 事 を 行 っている。写 真 2-3-4 : ワット ・ チャイワタナラム。 コンクリート 製 の 防 水 壁 。写 真 2-3-5 : ワット ・ チャイワタナラム。 盾 状 の 浸 水 防 止 設 備 。 可 動 式 で、 また 平 常 時 にはたたんでおくことが 可 能 である。写 真 2-4 : ワット ・ チェディ ・ ルアン (チェンマイ)。 上 部 は 地 震 により 大 きく 崩 れているが、 1990 年 ~ 1992 年 に 行 われた 修 理 の 際 にも、 崩 壊 して 失 われた 部 分 は 復 元 しなかった。写 真 2-5 : ポンペット 砦 (アユタヤ)。 洪 水 対 策 を 含 めた 修 理 を 実 施 している (2009 年 1 月 )。写 真 3-1 : 芸 術 局 での 地 方 事 務 所 向 けのデータベース 講 習 会 の 様 子写 真 4-1-1 : チョームキティ ・ パゴダ写 真 4-1-2 : パゴダ 南 面 。 水 平 を 確 認 して 撮 影 。 東 側 に 大 きく 傾 斜 しているのがわかる。写 真 4-1-3 : 2007 年 の 修 理 で 切 除 されたパゴダの 先 端 部 分 。 東 側 正 面 に 飾 られている。写 真 4-1-4 : パゴダ 基 壇 部 分 。 過 去 の 地 震 や 土 壌 の 移 動 による 傾 きと 修 理 の 繰 り 返 しを 示 す。写 真 4-2-1 : 地 震 の 際 にパゴダ 上 部 の 傘 状 の 部 品 が 落 下 したことを 示 す。 ( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-2 : 落 下 した 傘 状 の 部 分 (Finial) ( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-3 : 傘 状 の 部 分 の 切 断 面 ( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-4 : 傘 状 の 部 分 の 切 断 面 ( 図 4-6 の 1)写 真 4-2-5 : 地 震 によるパゴダ 壁 面 ( 東 南 角 ) の 亀 裂 ( 図 4-6 の 2)写 真 4-2-6 : 東 南 角 の 基 壇 近 くに 入 った 亀 裂 ( 図 4-6 の 3)写 真 4-2-7 : 地 震 によるパゴダ 壁 面 の 亀 裂 ( 漆 喰 の 部 分 )写 真 4-2-8 : 漆 喰 の 部 分 に 亀 裂 が 入 っている。写 真 4-2-9 : 漆 喰 に 入 った 亀 裂写 真 4-3-1 : ワット ・ プラ ・ タート ・ ドイ ・ ステープ写 真 4-3-2 : ワット ・ プラ ・ タート ・ ドイ ・ ステープから 市 街 地 を 望 む。 崖 上 にあることがわかる。3. インドネシア図 1 : 津 波 被 災 地 域図 2 : 文 字 文 化 財 保 存 のために 考 えられる 支 援 過 程図 3 : 震 源 地 と 被 害 状 況 図 [Source: http://unosat.web.cern.ch/unosat/]図 4 : 震 源 地 [Source: United Nations Office for the Coordination of Humanitarian Affairs (OCHA)]写 真 1 : タマン ・ サリ ・ グヌンガン (Taman Sari Gunongan)写 真 2 : オランダ 人 墓 地写 真 3 : インドネシア 銀 行 ( 旧 De Javasche Bank)写 真 4 : 再 建 されたアチェ 文 書 情 報 センター写 真 5 : 再 建 された 伝 統 価 値 ・ 歴 史 研 究 所写 真 6 : 封 筒 に 入 れ 保 存 されている 写 本写 真 7 : 写 本 保 管 室写 真 8 : カビの 発 生写 真 9 : 修 復 作 業 風 景写 真 10 : スキャン 作 業写 真 11 : 館 内 の 保 管 庫写 真 12 : 展 示 されている 写 本写 真 13 : シリカゲルを 配 置写 真 14 : ユドヨノ 大 統 領 の 現 地 訪 問 (アンタラ 新 聞 2006 年 5 月 31 日 付 報 道 )写 真 15 : ロロジョグラン 全 景 (2006 年 7 月 撮 影 )写 真 16 : セウ 寺 院 (2006 年 7 月 撮 影 )写 真 17 : プラオサン 寺 院 (2006 年 7 月 撮 影 )163


図 表 一 覧写 真 18 : ソジワン 寺 院 (2006 年 7 月 )写 真 19 : ジョグジャカルタ 市 内 王 宮 関 係 木 造 建 造 物 被 害 (2006 年 6 月 Jogya Heritage Society)写 真 20 : 中 央 祠 堂 に 組 まれた 足 場写 真 21 : 日 本 政 府 により 供 与 された 足 場写 真 22 : 倒 壊 する 大 型 施 設 (2009 年 11 月 撮 影 )地 図 1 : アチェ 全 域 地 図地 図 2 : バンダアチェ 調 査 対 象 諸 機 関地 図 3 : 中 部 ジャワ 州 およびジョグジャカルタ 特 別 州 全 域 の 主 要 な 遺 跡 分 布 図4. イラン図 1 : バムの 位 置図 2 : バム 付 近 の 断 層 (Hejazi & Hanazato 2009)図 3 : バム 市 内 、 建 物 被 害 の 程 度(UNESCO 事 務 所 提 供 BHRC (Building and Housing Research Center) 作 成 図 の 一 部 )図 4 : ICHTO 作 成 のバム 城 塞 模 型 (ランゲンバッハによる )図 5 : 南 正 門図 6 : 城 塞 中 心 施 設図 7 : 厩 舎 建 物 近 傍図 8 : 兵 舎 建 物 中 庭図 9 : 金 曜 モスク図 10 : 貯 氷 建 物表 1 : バム 文 化 遺 産 被 災 復 旧 調 査 日 程表 2 : バム 危 機 管 理 プロセスの 関 係 者 分 析表 3 : イラン 文 化 遺 産 庁 の 組 織 図 におけるバム ・ ベース表 4 : 危 機 管 理 と 災 害 軽 減5. ギリシア図 1-1 : アテネのアクロポリスの 修 復 現 場 の 見 学図 1-2 : ギリシャ 文 化 省 でのインタビュー図 1-3 : 新 アクロポリス 博 物 館図 1-4 : 特 別 セッションの 全 景図 1-5 : デルフィ 遺 跡 森 林 火 災 スプリンクラー図 1-6 : エピダヴロス 遺 跡 の 消 防 車 とタンク図 1-7 : 調 査 遺 跡 及 び 訪 問 先図 2-1 : エーゲ 海 とその 周 辺 地 域 の 地 殻 運 動 に 影 響 を 及 ぼすプレート 運 動図 2-2 : 2007 年 夏 の 山 火 事 で 焼 失 した 地 域図 2-3 : 火 災 時 の 衛 星 写 真 (DLR)図 2-4 : 南 エーゲ 海 の 火 山 弧図 2-5 : クレタ 島 のクノソス図 2-6 : トロイと 北 アナトリア 断 層図 2-7 : デルフィ 崖 の 上 からの 景 観図 2-8 : デルフィの 遺 跡 と 絶 壁図 2-9 : ダフニのモザイク 画図 2-10 : 修 理 中 のダフニ 修 道 院図 3-1 : GSCP の 組 織 図図 3-2 : 市 民 保 護 に 係 わる 機 関 のロゴ図 4-1 : ダフニ 修 道 院 の 位 置164


図 表 一 覧図 4-2 : 主 教 会 堂 のモザイク 画 の 一 つ図 4-3 : 初 期 の 平 面 図図 4-4 : 北 - 西 から 見 た 主 教 会 堂図 4-5 : 北 - 東 から 見 た 主 教 会 堂図 4-6 : 8 つのペンデンティブとアーチに 支 えられた 中 央 のドームとそのドラム図 4-7 : 主 教 会 堂 の 平 面 図 と 緊 急 対 策 工 の 略 図 による 紹 介図 4-8 : ダフニの 発 掘 労 働 者 たち (1891 年 )図 4-9 : 被 害 の 代 表 的 なスケッチ図 4-10 : 西 より 見 た 南 北 断 面 のズームアップ図 4-11 : 拝 廊 の 南 北 断 面図 4-12 : 北 東 コーナーに 設 置 された 支 柱図 4-13 : 内 部 の 鉛 直 鋼 製 支 柱図 4-14 : 外 拝 廊 に 設 けられた 鉛 直 のサポート図 4-15 : ドラムに 対 する 応 急 対 策図 4-16 : パラメータ 解 析 に 用 いられた FEM モデルの 1 例図 4-17 : シェル 要 素 の 内 表 面 の 応 力 、 自 重 による 引 張 応 力 度 が 示 されている図 4-18 : 北 から 見 た 構 造 物 の 変 形 ( 長 軸 方 向 に 地 震 力 が 作 用 した 場 合 の 結 果 )図 4-19 : 三 層 組 積 造 壁 試 験 体図 4-20 : 震 動 台 にセットされたグラウト 前 の 丸 天 井 構 造 物 の 模 型図 4-21 : グラウト 後 の 丸 天 井 構 造 物 模 型図 4-22 : クラックが 入 ったモザイクはその 場 で 補 修 された図 4-23 : 現 場 におけるモザイクの 修 復 保 存 作 業 の 一 例図 4-24 : グラウトが 浸 透 した 場 所 と 浸 透 していない 場 所 のトモポグラフィー図 4-25 : オリンピアの 位 置 と 各 州 の 焼 けた 地 域 の 割 合図 4-26 : オリンピア 聖 域 の 平 面 図図 4-27 : オリンピア 博 物 館 に 展 示 されている 古 代 の 彫 刻図 4-28 : オリンピアのゼウス 神 殿 の 西 メトープ、 紀 元 前 460 年 頃図 4-29 : 1876 年 の 発 掘 後 のゼウス 神 殿図 4-30 : 1877 年 の 発 掘 で 発 見 されたヘラ 神 殿図 4-31 : 発 掘 中 のスタジウム (1958 年 )図 4-32 : ヘラ 神 殿 の 修 復 工 事 (1972 年 )図 4-33 : ヴィクトル ・ ラルー (V.Laloux) によるオリンピアゼウス 神 殿 の 再 建 予 想 図 の 詳 細 (1883)図 4-34 : オリンピアのゼウス 神 殿 の 円 柱 ドラムと 再 建 円 柱図 4-35 : ヘラ 神 殿図 4-36 : フィリペイオン図 4-37 : ギリシャにおける 2007 年 夏 の 間 に 焼 けた 地 域 赤 で 囲 った 地 域 がペロポネソス 地 方図 4-38 : エリア 州 の 22 郡 と 火 災 を 受 けた 地 域図 4-39 : 2007 年 8 月 における 1 日 ごとの 風 速 (km/ 時 ) の 変 化図 4-40 : 2007 年 8 月 における 1 日 ごとの 湿 度 の 変 化図 4-41 : 2007 年 8 月 における 1 日 ごとの 最 高 、 最 低 気 温 の 変 化図 4-42 : 2007 年 8 月 の 間 の 風 向図 4-43 : 8 月 24 日 の 6 箇 所 の 発 火 地 点 とそれぞれの 発 生 時 刻図 4-44 : 村 人 が 消 火 活 動 に 参 加 した 割 合 を 日 を 追 って 棒 グラフで 表 示図 4-45 : エリア 州 の 消 防 署図 4-46 : クロノス 山 の 変 貌図 4-47 : オリンピア 古 代 遺 跡 の 東 の 端図 4-48 : 遺 跡 内 の 消 火 栓165


図 表 一 覧図 4-49 : 放 水 砲 のタワー図 4-50 : 砂 防 ダム図 5-1 : 講 演 中 の 土 岐 教 授図 5-2 : 司 会 する 益 田 教 授 と Miltiadou-Fezans 博 士図 5-3 : 講 演 中 の 後 藤 博 士図 5-4 : 会 場 の 様 子図 5-5 : 第 3 回 日 本 ・ ギリシャワークショップならびに 特 別 セッションのプログラム表 2-1 : ギリシャに 於 ける 最 近 の 被 害 地 震表 2-2 : ギリシャの 歴 史 に 残 る 巨 大 地 震表 4-1 : 壁 試 験 体 に 適 用 されるグラウト 剤 の 力 学 特 性 と 浸 透 性 特 性表 4-2 : 最 適 グラウト 配 合 と 実 験 室 ならびに 現 場 のパイロット 試 験 で 測 定 された 浸 透 性表 4-3 : 一 次 モードの 周 期 と 周 期 から 求 められる 剛 性 比 の 変 化表 4-4 : ギリシャの 2007 年 夏 に 焼 失 したインフラストラクチャー表 4-5 : エリア 州 の5 箇 所 の 消 防 署 における 消 防 要 員 と 保 有 消 防 車表 4-6 : ギリシャの 飛 行 消 防 力166


面 談 者 一 覧面 談 者 一 覧※ 敬 称 以 下 省 略1. 中 華 人 民 共 和 国趙 川 榮 ( 四 川 省 文 物 管 理 局 ・ 副 局 長 )李 蓓 ( 四 川 省 文 物 管 理 局 博 物 館 處 ・ 處 長 )朱 小 南 ( 四 川 省 文 物 管 理 局 文 物 保 護 處 ・ 處 長 )汪 邦 軍 ( 成 都 市 文 化 局 ・ 副 局 長 )繆 永 舒 ( 成 都 市 文 化 局 文 物 所 ・ 所 長 )卞 再 斌 ( 都 江 堰 市 文 物 局 ・ 副 局 長 )徐 軍 ( 都 江 堰 市 文 物 局 ・ 局 員 )王 毅 ( 成 都 博 物 院 ・ 院 長 )周 魁 英 ( 陝 西 省 文 物 管 理 局 文 物 處 ・ 處 長 )趙 强 ( 陝 西 省 文 物 管 理 局 文 物 處 ・ 副 處 長 )詹 長 法 ( 中 国 文 化 遺 産 研 究 院 文 物 保 護 科 学 技 術 研 究 所 ・ 所 長 )許 言 ( 中 華 人 民 共 和 国 国 家 文 物 局 文 物 保 護 司 文 物 處 ・ 處 長 )2. タイ【タイ 文 化 省 芸 術 局 考 古 部 】Tharapong Surischat (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 部 長 )Sudchai Phansuwan (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 土 木 専 門 官 )Vasu Poshyanandana (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 建 築 専 門 官 )Manatchaya Wajvisoot (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 建 築 専 門 官 ) *タイ 側 担 当 者Surayoot Wiriyadamrong (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 建 築 専 門 官 )Patiwat Tul-on (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 建 築 専 門 官 )Sitthichai Pooddee (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 考 古 専 門 官 )Wirayar Chamnanpol (タイ 芸 術 局 考 古 部 ・ 情 報 技 術 官 )【タイ 文 化 省 芸 術 局 第 8 芸 術 地 方 事 務 所 】Sahawat Naenna (チェンマイ 第 8 芸 術 地 方 事 務 所 ・ 所 長 )【 天 然 資 源 環 境 省 鉱 物 資 源 局 】Somjai Yensabai ( 天 然 資 源 環 境 省 鉱 物 資 源 局 環 境 地 質 部 ・ 部 長 )3. インドネシア【ジョグジャカルタ】ジョグジャカルタ 特 別 州 遺 跡 保 存 事 務 所中 部 ジャワ 州 遺 跡 保 存 事 務 所ボロブドゥール 遺 跡 保 存 研 究 所ガジャ ・ マダ 大 学【アチェ】PKPM (Pusat Kajian Pendidikan dan Masyarakat)ハルン ・ クチク ・ ルミエク 氏 (Pak.Harun Kuchik Leumiek)アリ ・ ハシミ 教 育 財 団 (Yayasan Pendidikan Ali Hasjmy)アチェ 文 書 情 報 センター (Pusat Dokumentasi dan Informasi Aceh)伝 統 価 値 ・ 歴 史 研 究 所 (Balai Kajian Sejarah dan Nilai Traidtional)州 立 博 物 館 (Museum Negeri Propinsi)地 方 公 文 書 館 (Badan Arsip)167


面 談 者 一 覧地 方 図 書 館 (Perpustakaan Daerah)アチェ ・ インド 洋 研 究 国 際 センター (International Centre for Aceh and Indian Ocean Studies)【ジャカルタ】国 立 図 書 館 (Perpustakaan National)文 化 観 光 省 歴 史 考 古 総 局ユネスコ ジャカルタ 事 務 所ティティク ・ プジアストゥティ 教 授 ( 元 インドネシア 写 本 学 会 ・ 会 長 )【パダン】Mesjid Raya Mudiak Padang / Surau TandikekMesjid Raya VII Koto AmpaluSurau Ampalu TinggiSurau Baru Bintungan TinggiSurau PasebanSurau DarussalamSurau Tarekat Syattariyahバトゥサンカル 考 古 遺 跡 保 存 事 務 所州 立 博 物 館 (Museum Negeri Propinsi)地 方 公 文 書 館 (Badan Arsip)4. イラン渡 辺 邦 夫 ( 埼 玉 大 学 地 圏 科 学 研 究 センター 教 授 : 土 質 ・ 建 材 分 析 、 調 査 団 情 報 )Mehrdad Hejazi (イスファハン 大 学 教 授 : イラン 伝 統 構 法 、 修 復 法 提 案 )谷 口 純 子 (ユネスコ ・ テヘラン 事 務 所 専 門 官 : ユネスコ 主 催 情 報 ・ 文 献 提 供 )Eskandar Mokhtari (イラン ・ バム 修 復 事 務 所 長 : イラン 政 府 側 総 括 ・ 文 献 提 供 )Arash Boustani (イラン ・ イコモス 事 務 局 長 )Mohammed H. Talebian (ICHTO : イラン 全 土 の 文 化 遺 産 動 向 について)Rasool Vatandoust ( 前 RCCCR 局 長 )Abe Masamichi (Director, Japan Information and Culture Center : 大 使 館 の 見 解 、 イラン 側 要 望 )5. ギリシアMaria Ioannidou, Director of The Acropolis Restoration Service (YSMA), Civil Engineer of NTUA (National TechnicalUniversity of Athens)Elena Korka, Director of Prehistoric and Classical Antiquities, Hellenic Ministry of CultureMiltiadou-Fezans, Directorate of Technical Research for Restoration, Hellenic Ministry of CultureN. Delinikolas, Head of the Section for Restoration Studies on Byzantine monuments, Hellenic Ministry of CultureHarris P. Mouzakis, Assistant Professor, National Technical University of Athens (NTUA)Konstantinos Antonopoulos, Head of local service at Olympia, Hellenic Ministry of CultureNikos Ninis, Head of the Engineering Division, Finance Management Fund for Archaeological Projects, Hellenic Ministryof Culture168


Appendix


AppendixAppendix 1 : タイ 1Mark Petersen, Stephen Harmsen, Charles Mueller, Kathleen Haller, James Dewey, Nicholas Luco, Anthony Crone, DavideLidke, and Kenneth Rukstales (2007): Documentation for the Southeast Asia Seismic Hazard Maps, Administrative ReportSeptember 30, 2007. U.S.Department of the Interior, U. S. Geological Survey (タイに 関 する 部 分 を 抜 粋 し、 和 訳 )タイでは、 過 去 700 年 間 に 地 表 変 位 を 伴 う 地 震 の 記 録 はないが(Bott and others, 1997; Renton and others, 1997)、この 20 年 の 間 に 完 新 世 の 地 表 変 位 の 証 拠 が 広 く 認 められるようになった。このような 内 陸 地 殻 内 の 活 断 層 には、非 常 に 複 雑 なテクトニクスの 活 動 史 がある(i.e., Morley, 2002)。それらの 起 源 、 分 布 、 地 史 は、 遠 方 のプレート 収束 の 動 きに 関 係 している。 南 アジア 北 部 では、ビルマの 海 岸 から 東 へ 向 かって、ベトナムを 経 て 中 国 まで、 一 般に 東 西 走 向 で 並 行 する 左 断 層 が 幅 広 いゾーンを 持 って 発 達 している。これらの 断 層 は、ヒマラヤの 変 形 帯 とともにインドとアジアの 衝 突 帯 の 弧 をなしている。これらのタイの 北 部 および 西 部 の 横 ずれ 断 層 は、 国 の 北 東 部 で 正断 層 に 移 行 する。この 正 断 層 群 は、アメリカ 西 部 のベイスンアンドレンジ(Basin and Range) 地 域 の 断 層 によく類 似 している(Fenton and others, 1997, 2003)。これらの 断 層 は、 第 三 紀 の 盆 地 を 境 し、 起 源 、 断 層 の 変 容 式 、 空間 分 布 、 活 動 性 がベイスンアンドレンジ 地 域 のものと 類 似 している。 同 様 に、タイの 北 部 地 域 は、 東 西 から 北 西- 南 東 方 向 に 拡 大 が 進 行 している(Fenton and others, 1999)。ベイスンアンドレンジ 地 域 と 同 様 、タイでは、 歴 史時 代 に 大 きな 規 模 の 地 震 が 発 生 していないので、 地 震 学 的 に 活 動 的 であるとは 一 般 に 考 えられていない。しかし、地 質 学 的 な 証 拠 は、これらの 一 般 に 活 動 性 の 低 い 断 層 も 大 地 震 の 源 であったことを 示 し、そして、もし、 地 震 の発 生 過 程 がベイスンアンドレンジ 地 域 のものに 対 比 可 能 であれば、1915 年 のネバダ 州 のプレサントバレー 地 震(M7.1)~モンタナ 州 のヘブジェン 湖 (M7.3) 程 度 の 地 震 が 起 こりうる。われわれがモデルに 含 めた 断 層 は、このような 規 模 の 地 震 が 発 生 するのに 十 分 な 長 さである。タイでは、 潜 在 的 に 活 動 的 な 断 層 の 特 性 を 明 らかにし、 記 録 するために、タイのチュラロンコーン 大 学 の 鉱 物資 源 学 科 と 関 連 する 分 野 、さらに 日 本 の 秋 田 大 学 によって 非 常 な 努 力 がなされており(Kosuwan and others, 1999,2000)、 初 期 のまとめ(Nutalaya, 1994; Hinthong, 1995)から 大 きく 進 展 した。これらの 最 初 期 のまとめから 10 年の 間 に 多 数 のトレンチ 調 査 が 行 われ、 完 新 世 およびそれ 以 前 の 大 規 模 な 地 震 が 発 生 した 場 所 が 明 らかとされた。われわれは、 変 位 速 度 のモデルへの 割 り 当 てに 対 して、 公 表 されているデータを 信 頼 して 用 いた。そして、タイでのワークショップにおける 断 層 パラメータに 関 するわれわれの 議 論 から、 公 表 されている 変 位 速 度 が 非 常 に 多様 であることがわかった。これは、タイ 特 有 の 問 題 ではなく、 世 界 中 に 見 られることである。そのばらつきの、全 てではないがいくつかの 理 由 として、 相 対 年 代 を 決 定 する 技 術 が 再 現 性 に 欠 けるということが ある。われわれは、 個 々のトレンチ 調 査 結 果 を 同 等 に 扱 うこととした。もし、 公 表 された 変 位 速 度 に 幅 があるときには、そのエンドメンバーの 平 均 を 用 いた。そのため、 個 々の 研 究 による 値 は、 平 均 化 されたものである。しかし、 研 究 結 果が 地 形 の 地 域 比 較 に 基 づいている 場 合 には、その 後 トレンチ 調 査 を 含 むより 最 近 の 調 査 が 行 われていればそちらを 優 先 し、 地 域 比 較 の 結 果 は 変 位 速 度 の 算 出 には 考 慮 されない。タイで 最 も 初 期 のかつ 最 も 精 力 的 な 現 地 調 査 は、Fenton and others (1997, 2003) によるものである。 彼 らは、 断 層 運 動 の 地 表 表 現 を 評 価 した。しかし、その 研 究 は、第 四 紀 後 期 に 関 する 枠 組 みに 欠 けている。この 研 究 の 地 域 的 な 性 質 から、 変 位 速 度 は 断 層 間 の 幅 広 い 類 似 性 に 基づいて 与 えられている。われわれは、まだ 断 層 を 特 定 した 調 査 に 置 き 換 えられていない 解 析 においては、 彼 らの知 見 を 用 いた。Lon 断 層 、Nam Pat 断 層 、Phayao 断 層 および Phrae Basin 断 層 に 関 する 将 来 の 研 究 は 間 違 いなくこれらの 断 層 に 関 するわれわれの 理 解 を 改 善 する。 同 様 の 考 え 方 に 基 づいて、Wong ほか(2005)によって 追 加 の断 層 が 特 徴 付 けられる。Khlong Maru 断 層 ( 図 7、 表 3)は 一 般 に、 地 表 表 現 は 弱 い。そのため、 平 均 変 位 速 度 は小 さく、このことは、M7.5 の 地 震 の 再 来 間 隔 は 10 万 年 よりも 長 いことを 示 している。 同 様 に、Ranong 断 層 も、Fenton ほか(2003)の 活 動 性 の 低 い 断 層 と 同 様 の 変 位 速 度 が 割 り 当 てられている。われわれの 解 析 で 用 いられたこれら 以 外 の 断 層 は、 最 近 の 詳 細 な 古 地 震 学 の 調 査 対 象 であった。これらの 断 層のパラメータは、タイのワークショップで 議 論 され、そのときに 最 も 適 切 な 評 価 が 与 えられた。 地 震 ハザードマップに 現 れるこれらの 断 層 について 簡 単 に 述 べる。 図 7 と 表 3 を 参 照 せよ。171


Appendix図 7. タイ 国 内 および 近 傍 の 断 層 源 (fault sources)表 3.タイの 断 層 パラメータ1 Characteristic magnitude fixed based on worldwide analog.172


AppendixMae Chan 断 層 は、タイの 北 部 の Mae Chan 市 のそばに 位 置 し、 東 西 走 向 の 左 横 ずれ 断 層 である。Mae Chan 断 層 は、Nam Mae Kok 谷 のビルマとの 境 界 付 近 から 東 へメコン 川 を 越 えてラオスにまで 伸 びる(Fenton and others, 2003)。Mae Chan 断 層 の 地 形 は、 閉 塞 丘 、 断 層 池 、 谷 頭 を 取 られたガリーなど、 第 四 紀 後 期 の 地 表 変 位 の 明 瞭 な 証 拠 を 示す(Wood, 1995, 2001, Hinthong, 1995; Rymer and others, 1997)。 長 期 の 活 動 性 は、 現 河 床 の 数 百 メートルのスケールに 及 ぶオフセットが 示 された 衛 星 画 像 により 明 らかとされる。Fenton and others (2003) により 推 定 された 浸 食 速度 から、Mae Chan 断 層 の 変 位 速 度 は 0.3 ~ 3mm/yr である。Kosuwan and others (2003) による 最 近 のトレンチ 調 査では、 完 新 世 に 地 表 変 位 を 伴 う 3 回 のイベントが 推 定 され、やや 小 さめの 0.7mm/yr の 変 位 速 度 が 示 されている。われわれが 割 り 当 てた 変 位 速 度 は、この 近 年 のより 詳 細 な 研 究 に 基 づいている(0.7mm/yr にした)。Mae Kuang 断 層 は、Perez and others (1999) によってはじめて 報 告 された、Mae Chan 断 層 の 南 部 延 長 部 におよそ平 行 な 30km の 長 さの 断 層 である。Mae Tho 山 脈 の Chiang Mai 盆 地 の 北 東 にある。Mae Chan 断 層 と 同 様 、 横 ずれ断 層 の 構 造 を 示 す。われわれが 割 り 当 てた 変 位 速 度 は、Rhodes and others (2003) によって 提 案 された 長 期 の 速 度 の平 均 値 で、500 ~ 2000 万 年 前 に 断 層 が 反 転 運 動 してからの 3.5km のずれに 基 づく 0.175 ~ 0.7mm/yr という 値 である。Mae Yom 断 層 は、 北 東 走 向 のおよそ 25km の 長 さの 断 層 である。 最 近 の 調 査 によると、 完 新 世 に 複 数 の 変 位 が認 められ、 最 近 の 活 動 はおよそ 5000 年 前 である(Charusiri and others, 2006)。最 も 顕 著 な 横 ずれ 断 層 のおよそ 230km の 長 さの Moei(または Mae Ping) 断 層 は、タイの 西 の 国 境 近 くに 平 行に 北 西 の 走 向 を 持 つ。この 断 層 の 最 近 の 研 究 によると、 再 来 間 隔 は 万 年 のオーダーで、 変 位 速 度 は 0.36mm/yr である(Saithong and others, 2005)。今 回 のモデルで、 最 も 変 位 速 度 の 小 さな 断 層 は、 中 央 に 位 置 する Phrae 断 層 である。 割 り 当 てた 変 位 速 度 は、Udchachun and others (2005) によって 得 た。しかし、それまでに 公 表 されていた 変 位 速 度 の 0.1mm/yr(Fenton andothers, 2003)は、 地 域 的 な 類 似 性 に 基 づくものであったが、この 値 の 基 礎 データは 述 べられていなかった。われわれのモデルでは、 再 来 間 隔 は 万 年 のオーダーとした。タイの 最 も 北 東 部 に 位 置 する Pua 断 層 は、 間 違 いなく 最 近 繰 り 返 し 活 動 した 証 拠 を 示 す。 衛 星 画 像 によると 山地 の 境 界 は 明 瞭 かつ 直 線 的 であり、この 西 傾 斜 の 正 断 層 をはっきり 際 立 たせている。Fenton and others (2003) は、最 も 最 近 でよく 保 存 された 地 形 を 断 層 の 北 部 および 中 部 で 発 見 したことを 報 告 している。 彼 らは、 地 形 の 比 較 から、0.6mm/yr の 変 位 速 度 を 与 えた。Charusiri and others (2006) によるより 最 近 の 研 究 では、この 断 層 の 変 位 速 度 を 示 してはいないが、トレンチ 結 果 によると、 地 表 変 位 を 伴 う 地 震 が 8000 年 前 、6000 年 前 、2800 年 前 に 起 こったとしている。われわれの 研 究 の 最 近 の 1 年 あたりの 確 率 3.184 × 10 -4 は、Charusiri and others (2006) に 示 された 年 代 と整 合 する。西 傾 斜 の 正 断 層 である Thoen 断 層 (Fenton and others, 2003)は、Thoen、Mae Moh と Lampang 盆 地 の 東 縁 を 境している。この 断 層 の 繰 り 返 しの 活 動 によって、250 m~ 350m の 高 さにわたる 一 連 の 山 脚 とワイングラス 状 に 伸びた 谷 が 形 成 されている。 産 地 のすその 境 界 は 衛 星 画 像 でも 明 瞭 で、このことは、この 断 層 が 大 きな 規 模 の 繰 り返 す 大 きな 地 震 の 源 である 更 なる 証 拠 である。Fenton and others (2003) は、Mae Mai 川 の 現 在 の 河 床 に 6m のずれを 報 告 している。この 段 丘 面 の 絶 対 年 代 は 決 定 されていないが、およそ 1 万 年 という 値 が 考 えられる。 完 新 世 の変 位 に 対 する 広 域 的 な 証 拠 は 一 般 に 欠 如 しているが、Charusiri and others (2004)やPailplee (2004)がそれぞれ0.15mm/yr や、0.17mm/yr と 結 論 付 けた 最 近 の 研 究 報 告 のように 実 際 の 変 位 速 度 はさらに 小 さいと 考 えられる。 適 用 した変 位 速 度 は、 最 も 最 近 公 表 された 変 位 速 度 の 平 均 値 とした。Sri Sawat と Three Pagodas 断 層 は、ほぼ 平 行 な 横 ずれ 断 層 で、われわれのモデルでは 似 たような 変 位 速 度 を 持つ。 断 層 パラメータはほとんど 知 られておらず、 最 近 の 研 究 も 行 われていない。Fenton and others (2003) は、 地 形と 相 対 年 代 値 より、Three Pagodas 断 層 について 0.5 ~ 2mm/yr という 広 い 幅 を 提 示 している。その 後 の 研 究 は、 変位 速 度 として 0.22 ~ 0.5mm/yr(Charusiri and others, 2004)と、0.76mm/yr(Kosuwan and others, 2006)を 示 す。これらが、われわれが 適 用 した 変 位 速 度 の 基 礎 データである。Three Pagodas 断 層 は、タイのバンコク 市 街 に 最 も 近い 震 源 断 層 であり、 危 険 度 に 対 して 主 要 に 寄 与 するので、 特 に 重 要 である。Sri Sawat 断 層 に 適 用 した 変 位 速 度 は、Kosuwan and others (2006) の 研 究 による。 彼 らの 研 究 によると、この 断 層 は 完 新 世 に 少 なくとも1 回 の 大 きな 規 模の 地 震 を 発 生 させている。断 層 の 位 置 と 変 位 速 度 に 加 えて、 震 源 断 層 の 三 次 元 形 状 が 定 義 されなければならない。Bott and others (1977) は、タイでの 大 多 数 の 地 震 活 動 が 深 さ 10km ~ 20km で 発 生 しているという 要 旨 を 報 告 した。そこで、われわれは 平 均的 な 深 さとして 15km を 適 用 する。われわれのモデルでの 正 断 層 の 傾 斜 角 度 の 割 り 当 ては、 合 衆 国 での 初 期 値 を173


Appendix反 映 させた。 全 ての 変 位 速 度 は、 正 断 層 については 鉛 直 方 向 、 横 ずれ 断 層 については 水 平 方 向 についてのものであり、 断 層 面 の 幅 は 横 ずれ 断 層 よりも 傾 斜 した 断 層 のほうが 長 くなる。モデル 中 の 90km を 越 えるような 長 大 な断 層 帯 には、 世 界 を 対 象 にしたカタログから 最 大 規 模 として M7.5 を 割 り 当 てた。われわれのモデルで 用 いられたタイのほとんどの 活 断 層 は、 数 千 年 に 及 ぶ 再 来 間 隔 の 特 性 を 有 する。 地 震 危 険度 は、 近 隣 の 国 に 分 布 する 断 層 や 震 源 の 影 響 を 受 けうるので、タイの 国 境 を 越 えた 主 要 な 震 源 を 評 価 するために 文 献 調 査 が 行 われた。2つの 断 層 が 数 百 年 の 規 模 の 再 来 間 隔 を 有 している。すなわち、Red River 断 層 およびSagaing 断 層 ( 図 7、 表 4)である。これらの 断 層 は、 東 南 アジアの 北 部 において 最 も 高 い 危 険 度 を 示 す。ミャンマーの Sagaing 断 層 は、スマトラ 島 のスマトラ 断 層 に 類 似 して、インドユーラシアのプレート 収 束 に 関 係する 斜 め 方 向 のプレートの 動 きのいくらかもしくは 全 てをまかなう 主 要 な 右 横 ずれ 断 層 である。われわれが 適 用した 変 位 速 度 は、Socquet and others (2006) の GPS の 研 究 により 得 られた 大 きなひずみ 蓄 積 速 度 に 基 づく。Socquetand others (2006) は、GPS により 得 られた 速 度 は 以 前 の 地 質 学 的 な 研 究 (Bertrand and others, 1998)による 速 度 と類 似 していると 述 べた。スマトラ 断 層 のように、われわれは Sagaing 断 層 を 最 大 M7.9 の 可 変 規 模 としてモデル 化 し、断 層 に 沿 う 破 壊 には、 等 分 の 確 率 を 持 たせた。それ 以 外 の 震 源 として、 図 7、 表 4 のベトナムと 中 国 に 位 置 する Red River 断 層 がもうひとつの 主 要 な 断 層 帯 としてあげられる。Red River 断 層 は、900km 以 上 の 長 さの 右 横 ずれ 断 層 である。 報 告 されている 変 位 速 度 は、9m~ 6km の 範 囲 で 計 測 されたずれに 基 づく 2 ~ 8mm/yr の 値 である(Allen and others, 1984)。われわれのモデルで 用いられた 平 均 値 は、Replumaz and others (2001) や Schoenbohm and others (2006) によるデータに 整 合 している。RedRiver 断 層 の 変 位 速 度 は、 地 形 のずれの 炭 素 年 代 のデータ 不 足 により、 十 分 に 定 められていない。Sagaing 断 層 と同 様 、 最 大 規 模 として M7.9 を 与 えた。表 4. 地 域 の 断 層 パラメータ注 1) 固 有 規 模 は 世 界 の 類 例 (worldwide analog)に 基 づいて 決 定 した。地 震 動 モデルは 距 離 減 衰 の 関 係 式 あるいは 地 震 動 予 測 の 関 係 式 に 関 係 する。これらのモデルは、ある 特 定 の 震源 断 層 、 断 層 タイプ、マグニチュード、 距 離 、 応 力 降 下 量 、 地 殻 の 減 衰 特 性 (Q 値 )そして 地 盤 特 性 に 対 応 した地 震 動 を 予 測 する。われわれは、 安 定 大 陸 地 域 の 内 陸 地 殻 内 地 震 、プレート 境 界 部 近 くで 起 こるプレート 境 界 地殻 内 地 震 、プレート 境 界 面 で 起 こる 海 溝 型 地 震 、そして 沈 み 込 んでいくスラブ 内 で 起 こるやや 深 発 あるいは 深 発地 震 に 距 離 減 衰 式 を 適 用 する。地 震 の 震 源 が 確 定 すると、 距 離 減 衰 式 が 地 震 の 震 源 特 性 と 地 震 波 が 地 表 のある 場 所 にまで 進 展 するパスとを 関係 付 ける。 推 定 される 地 震 動 は、マグニチュード、 距 離 、 地 盤 特 性 、そしてそれら 以 外 の 要 因 の 平 均 値 として、典 型 例 として 定 量 化 され、 最 大 水 平 加 速 度 または 異 なる 周 期 の 加 速 度 スペクトルの 確 率 密 度 関 数 としてあらわされる(McGuire, 2004)。われわれは、プレート 間 、 内 陸 地 殻 内 、 深 発 、そして 沈 み 込 み 型 地 震 のそれぞれに 異 なる距 離 減 衰 式 を 適 用 する。 地 震 動 地 図 は、ある 場 所 に 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 のある 地 震 から、 建 築 基 準 への 応 用 を 考慮 して、 年 あたりの 超 過 確 率 が 1/475 または 1/2475(それぞれ 10%と 2%)と 計 算 された 地 震 動 について 作 成 する。安 定 的 な Sunda プレートには、われわれは、 地 震 動 を 特 性 化 するために、 内 陸 地 殻 内 の 距 離 減 衰 式 を 用 いる。われわれは 以 下 に 示 すような 重 みの 考 え 方 を、これらの 距 離 減 衰 モデルに 適 用 した。Toro and others (2005; wt. 0.2)、Frankel and others (1996; wt. 0.1)、Atkinson and Boore での 200 bar の 応 力 降 下 (2006, 2007; wt. 0.1)、Somerville and174


Appendixothers (2001; wt. 0.2), Campbell (2002; wt. 0.1)、Tavakoli and Pezeshk (2005; wt. 0.1) および Silva and others (2005; wt. 0.1)である。これらのモデルは、さまざまな 応 力 降 下 量 、 端 のある 断 層 、そして 安 定 大 陸 の 距 離 減 衰 特 性 を 説 明 する。東 南 アジアの 地 震 危 険 度 マップは、 地 殻 の 上 部 30m の 平 均 S 波 速 度 が 760m/s(Building Seismic Safety Council,2003)で 境 される NEHRP のクラス B と C の 境 界 を 特 定 する 地 盤 特 性 を 参 照 して 作 成 された。しかし、 先 ほどのいくつかの 距 離 減 衰 式 は、これらの S 波 速 度 を 考 慮 して 作 成 されていない。そのため、 内 陸 地 殻 内 地 震 の 距 離 減衰 式 として、われわれは、 基 盤 岩 の 距 離 減 衰 式 を NEHRP の B/C 境 界 での S 波 速 度 を 持 つ 地 盤 での 地 震 動 に 変 換した。われわれがこの 地 図 のために 用 いたこれらのモデルのいくつかは、 基 盤 岩 (NEHRP A)の 軟 岩 (NEHRP-BC)の 変 換 がほとんどの 周 期 帯 において 簡 単 な 係 数 となっている。 周 期 帯 ごとのこれらの 係 数 は、0.1 秒 で 1.74、0.3秒 で 1.72、0.5 秒 で 1.58、2 秒 で 1.20 である。PGA の 0.2 秒 と 1.0 秒 についても、 類 似 の 係 数 が 利 用 可 能 である。内 陸 地 殻 内 地 震 の 距 離 減 衰 式 による 地 震 動 シミュレーションでの 重 要 な 他 のパラメータとしては、 応 力 降 下 量または 地 震 破 壊 の 稠 密 さ(compactness)である。G. Atkinson の 推 薦 に 基 づいて、われわれは、それらのパラメータの 認 識 論 的 不 確 定 性 を 説 明 するために、Atkinson and Boore (2006, 2007) に 対 して 140 bar と 200 bar の2つの 異なる 応 力 降 下 量 を 適 用 した。(p.44)タイの 地 震 危 険 度 は、 沈 み 込 みの 地 震 と 深 発 地 震 に 規 定 される 海 岸 地 域 、 断 層 に 起 因 されるタイの 内 陸 西 部 地 域 、そして 相 対 的 には 不 活 発 な 背 景 領 域 地 震 で 規 定 される 内 陸 安 定 地 域 に 分 けられる。 図 16 は、バンコクの 周 期 1 秒の 地 震 危 険 度 についての 地 震 ごとの 貢 献 度 を 示 す。バンコクは、 断 層 モデルの 中 で 最 も 近 い 第 四 紀 の 活 断 層 である Three Pagodas 断 層 からも 比 較 的 遠 くに 位 置 している。そのため、バンコクの 危 険 度 で 主 要 な 地 震 の 起 源 は、 安定 している Sunda プレート 内 の 背 景 地 震 である。1 秒 周 期 の 加 速 度 スペクトルの 500 年 を 再 来 間 隔 とする 最 大 値 は、バンコク(BC 地 盤 条 件 )では 0.02g である。USGS による 東 南 アジアの 地 震 危 険 度 マップは、USAID の 使 用 に 限 る。これらは、まだ 工 業 規 格 には 用 いる 準備 ができていない。 地 図 から 不 自 然 な 部 分 を 取 り 除 くための 改 良 が 今 後 も 継 続 される。 近 日 公 開 されるオープンファイルレポート(Open file report)は、 設 計 に 有 用 なモデルの 詳 細 を 含 むであろう。175


Appendix表 1. 地 域 のソースモデル1 Shallow background seismicity (0-50 km) does not include region of the Sundasubduction zone or the Sunda plate zone. Char and GR represent characteristic andGutenberg and Richter magnitude-frequency distributions.図 16: バンコク(タイ)での 1Hz のスペクトル 加 速 度 についてのハザードカーブFigure 16. Hazard curves for 1-Hz spectral acceleration at a site in Bangkok, Thailand.176


AppendixFigure D-1. Hazard map for Thailand and Malaysian peninsula showing the peak ground accelerationwith a 10-percent probability of exceedance in 50-yr hazard level for firm rock site condition(Vs30=760 m/s). Low hazard areas near central Thailand are artifacts of the Sunda zone and will bemodified in the near future.Figure D-2. Hazard map for Thailand and Malaysian peninsula showing the 5-Hz spectral accelerationwith a 10-percent probability of exceedance in 50-yr hazard level for firm rock site condition(Vs30=760 m/s). Low hazard areas near central Thailand are artifacts of the Sunda zone and will bemodified in the near future.177


AppendixFigure D-3. Hazard map for Thailand and Malaysian peninsula showing the 1-Hz spectral accelerationwith a 10-percent probability of exceedance in 50-yr hazard level for firm rock site condition(Vs30=760 m/s). Low hazard areas near central Thailand are artifacts of the Sunda zone and will bemodified in the near future.Figure D-4. Hazard map for Thailand and Malaysian peninsula showing the peak ground accelerationwith a 2-percent probability of exceedance in 50-yr hazard level for firm rock site condition (Vs30=760m/s). Low hazard areas near central Thailand are artifacts of the Sunda zone and will be modified inthe near future.178


AppendixFigure D-5. Hazard map for Thailand and Malaysian peninsula showing the 5-Hz spectral accelerationwith a 2-percent probability of exceedance in 50-yr hazard level for firm rock site condition (Vs30=760m/s). Low hazard areas near central Thailand are artifacts of the Sunda zone and will be modified inthe near future.Figure D-6. Hazard map for Thailand and Malaysian peninsula showing the 1-Hz spectral accelerationwith a 2-percent probability of exceedance in 50-yr hazard level for firm rock site condition (Vs30=760m/s). Low hazard areas near central Thailand are artifacts of the Sunda zone and will be modified inthe near future.179


AppendixAppendix 2 : タイ 2Revision: 0.0 Updated: 3 October 2007(H.M. the King signet)Disaster Prevention and Mitigation ActB.E. 2550 [A.D. 2007]________________________________________________________BHUMIPOL ADULYADEJ, REX:Given on the 28 Day of August, B.E. 2550 [2007]Being the 62 nd Year of the Present Reign.His Majesty the King Bhumibol Adulyadej is graciously pleased to proclaim that;Whereas, it is expedient to have the law on Disaster Prevention and Mitigation.Be it, therefore, enacted by the King, by and with the advice and consent of the NationalLegislative Assembly as follows;Section 1: This act is called “Disaster Prevention and Mitigation Act, B.E. 2550 [A.D. 2007]”Section 2: This act shall come into force as from the day following the date of its publication inthe Royal Gazette 1 .Section 3: These following acts shall be repealed and replaced by this act;(1) Civil Defense Act, B.E. 2522 [A.D. 1979](2) Fire Defense Act, B.E. 2542 [A.D. 1999]Section 4: Herein the act;“Disaster” means any of these disasters; fire, storm, strong wind, flood, drought, epidemic inhuman, epidemic in animals, epidemic in aquaculture, and epidemic in plants and other public disastereither natural disasters or human-made disasters, accidents or all other incidents that effect to life, bodyor properties of the people, of the government. And in this regards, air threats and sabotages are alsoincluded.“Air threat” means any disasters affected from strikes or attacks in the air by terrorists or aliennations.“Sabotage” means any disasters affected from any activities aim to destroy to private orgovernment properties, public utilities, or activities of offensive, deterrence, delay to any operationsincluding of any harmful actions toward persons which will create a political, economical and socialdisturbance or damage to national security as a whole.“Government agency” means any government services, state enterprises, national publicorganizations, or other government units; excludes local administrations or municipal governments.“Local administration” means any Tambon 2 administrations, municipalities, Pattaya citygovernment, or other local administrations by law; excludes provincial governments and BangkokMetropolitan government.“Province” means any provinces throughout the Kingdom of Thailand; excludes Bangkok.1 Published in the Royal Gazette Vol. 124, Part 52 A (ก), dated on 7 September B.E. 2550 [A.D. 2007]2 There is also mentioned as “sub-district”180


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007“District” means any districts and minor districts 3 throughout the Kingdom of Thailand; excludesdistricts in Bangkok.“District governor” means any district governors and any assistant district governors who are incharge to all minor districts are also included.“Local governor” mean any governors in Tambons, municipality governors, Governor of Pattaya,and other chiefs or governors of other local administrations.“Commander in chief” means the chief who is in charge on National Disaster Prevention andMitigation Operation.“Director” means any directors in central, provinces, districts, local administrations and Bangkokis also included.“Officer” mean any designated officials for disaster prevention and mitigation operation in anyrelevant area of works by this law.“Volunteer” means any Disaster Prevention and Mitigation volunteers.“Director-General” means Director-General of Department of Disaster Prevention and Mitigation.“Minister” means respective minister who has been authorized by this law.Section 5: Minister of Interior shall be having authorities to define relevant ministerialregulations, regulations, and other announcements to be enforced by this law, but not before thoseregulations or announcements have been published in the Royal Gazette.CHAPTER 1General Provisions________________________________Section 6: There shall be a National Disaster Prevention and Mitigation Committee (NDPMC) 4 ,consisting of Prime Minister or designated Deputy Prime Minister as a chairperson, Ministry of Interior asfirst vice chairperson, Permanent Secretary for Interior as second vice chairperson, and PermanentSecretary for Defense, Permanent Secretary for Social Development and Human Security, PermanentSecretary for Agriculture and Cooperatives, Permanent Secretary for Transportation andCommunications, Permanent Secretary for National Resources and Environment, Permanent Secretaryfor Information and Communication Technology, Permanent Secretary for Public Health, Direct-Generalof The Bureau of Budget, Commissioner-General of Royal Thai Police, Supreme Commander, Commandantof Royal Thai Army, Commandant of Royal Thai Navy, Commandant of Royal Thai Air Force, Director-General of National Security Council, and together with others but not more than five intellectuals whoare experienced in city planning, and disaster prevention and mitigation shall be appointed by the Cabinetas members.Director-General of Department of Disaster Prevention and Mitigation as the secretariat of thecommittee, and not more than other two officials in Department Disaster Prevention and Mitigation shallbe appointed as an assistant secretary.Section 7: The committee shall have the powers and duties as follows;(1) Propose the policy to formulate the National Disaster Prevention and Mitigation plan.(2) Determine and preapproval the plan under Section 11 (1) before submitting the plan to theCabinet.3 There is also mentioned as “King Amphoe” in Thai4 Thai Abbreviation of the committee is “กปภ.ช”181


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007(3) To integrate the development on disaster prevention and mitigation mechanism amongGovernment agencies, Local administrations, and other relevant private sectors effectively.(4) To recommend, support and promote on any disaster prevention and mitigation activities.(5) To propose regulations on remuneration, recompenses, and other expenses related todisaster prevention and mitigation operations, and those regulations shall be in accordanceto rules and regulations of Ministry of Finance.(6) To perform other duties according to this and other laws as may be required by the Minister.Regarding to the operations of the committee in paragraph one, the committee shall have theirrights to appoint a sub-committee to perform tasks on their behalf, and the sub-committee shall adaptSection 10 to regulate their meetings.To have more benefit from the committee according to paragraph one, the committee shall haveauthority to demand other government services, local administrations, or other private agencies toprovide, to illuminate any relevant information to their meetings.Section 8: The appointed intellectual members of the committee shall be performing their dutiesfor a term of four years.In case of any appointed intellectual members vacate before their term, or a new or an additionalmember appointed by the Cabinet, the appointee shall be resumed in their duties not more than theremaining of the term.Any members who vacate office upon termination of the term shall maintain their duties until thenewly appointed members take their office.The appointed intellectual members could be reappointed but they are not allowed to be in theiroffice more than two terms continuously.Section 9: In addition the vacation of their office upon termination of the term according toSection 8, the appointed members would vacate their office upon;(1) Death(2) Resignation by proposing the resignation letter to the chairperson(3) Being dismissed by the Minister(4) Being a bankrupt(5) Being an incompetent or a quasi-incompetent person(6) Being imprisoned by a final judgment or a lawful order to a term of imprisonment, except foran offence committed through negligence or petty offence.Section 10: The constituted quorum meeting of the committee shall have not less than one-halfof the total members.For any meetings, the chairperson of the committee shall preside over the meeting. If thechairperson absence, or unable to perform his or her duties, the vice chairperson shall be resumed thefunction as the chairperson respectively. Otherwise, one of the present members shall be selected as thechairperson.Any decisions of meeting shall be judged by majority of the votes, based on one member one votebasis. In case of equality of votes, the chairperson who is presiding over the meeting shall have anadditional vote as a casting vote.Section 11: Department of Disaster Prevention and Mitigation shall be the central governmentunit to operate any related activities on national disaster prevention and mitigation, and shall havepowers and authorities as follows;(1) Formulates the National Disaster Prevention and Mitigation Plan for the committee to seekfor an approval by the Cabinet182


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007(2) Organizes and researches on procedures and measures to prevent and mitigate all impacts ofdisasters effectively(3) Operates, cooperates, supports and assists other government services, local administrations,and other relevant private sectors on disaster prevention and mitigation. And provides aidsto disaster effected people(4) Guides, and provides consultancy, and train other government services, local administrationsand other private sectors on disaster prevention and mitigation(5) Follow-up, assesses and evaluates all activities related to disaster prevention and mitigationat all levels(6) Perform other duties in accordance to this and other law or as may required by Commanderin Chief, Prime Minister, the Committee or the CabinetAfter the plan in paragraph one has been approved, other related government services and localadministrations shall operate all of their activities according to the plan.During the process of formulating the prevention and mitigation plan in paragraph one,Department of Disaster Prevention and Mitigation shall confer with relevant government agencies, localadministrations. In this regards, private sectors shall be able to be included into this conferring for theiropinions.For benefit of any operations under Section 10 (3), (4), (5) and (6), there shall be DisasterPrevention and Mitigation Center in some provinces. Those centers shall operate in the area of provinceand neighboring provinces as necessary. And there shall be Disaster Prevention and Mitigation Offices tooversee and support any disaster prevention and mitigation activities at provinces level or as required byDirector.Section 12: The Disaster Prevention and Mitigation Plan under Section 11 (1) shall havesubstantial parts as follows;(1) Guide lines, measures and adequate budget to support disaster prevention and mitigationoperations systemically and continuously(2) Guide lines and methods for providing aids and mitigate the impacts of disasters in bothshort and long term, together with evacuation procedures of effected people, governmentservices, and other local administrations, supports effected people on their public health,public utilities and communication system(3) Relevant government agencies and local administrations shall proceed all operations under(1) and (2), and shall seek for availability and mobility of fund(4) Preparedness perspectives on support personnel, equipments and other materials to deployupon disaster prevention and mitigation operations, and capacity building of those personneland other people shall be included(5) Guide line on fixing, recovery and restoration to community right after disasterThose activities on paragraph one shall be preceded based on prioritization of hazard risks andvulnerabilities of disasters. And if there is any necessities to update, to correct laws or regulations orpropositions of the Cabinet, those necessities shall be included into the National Disaster Prevention andMitigation Plan.Section 13: Designated Minister as Commander in Chief shall have power to control and overseeon disaster prevention and mitigation throughout the Kingdom according to this law. And the ministershall have power to command or demand to Directors, Deputy Directors, Assistant Directors, Officers, andVolunteers throughout the Kingdom.The Permanent Secretary for Interior as Deputy Commander in Chief assists the Commander,shall perform any duties as my required by the Commander. He or she shall have delegated power tocommand the operations under paragraph one.183


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007Section 14: The Director-General as Central Director, shall have power to control and overseeoperations of other Directors, Deputy Directors, Assistant Directors, Officers, and Volunteers on disasterprevention and mitigation throughout the Kingdom.Section 15: Provincial Governor as Provincial Director shall responsible for disaster preventionand mitigation of their own province. He or she shall have power as follows;(1) Formulate the Provincial Disaster Prevention and Mitigation Plan in accordance to thenational plan(2) Oversee and train all volunteers of local administration in the province(3) Oversee and investigate all local administrations on preparing of disaster prevention andmitigation equipments, materials, vehicles and other related hardware for their own use inaccordance to Provincial plan(4) Operate as a government service unit at local administration level to provide basic support todisasters affected people, and other activities related to disaster prevention and mitigation(5) Support local administrations on any related activities of disaster prevention and mitigation(6) Perform other duties as may be required by the Commander in Chief or the Central DirectorFor benefit of operations under Section 15 (3), (4), and (5), Provincial Director shall have powerto demand other government agencies and other local administrations in their own province to cooperateto Provincial Disaster Prevention and Mitigation Plan and shall have power to control and overseeactivities of Officers and Volunteers in according to this law.Section 16: Provincial Disaster Prevention and Mitigation Plan under Section 15 (1) shall havesubstantial parts as follow;(1) The setting up of Special Command Center when ever disasters strike, that center shall beconstructed and has authorities to command and oversee disaster prevention and mitigationoperations and activities(2) Plan and procedures for local administrations for procuring tools, equipments, materials,hardware and vehicles in disaster prevention and mitigation operations(3) Plan and procedures for local administrations for procuring an early warning system andother equipments to inform people and communities on incoming disasters(4) Operation plan for disaster prevention and mitigation at local administrations(5) Cooperation plan to other relevant public charities.Section 17: For formulating Provincial Disaster Prevention and Mitigation Plan, ProvincialGovernor shall appoint a committee. That committee shall be consisted of these following members;(1) Provincial Governor as chairperson(2) Designated Deputy Provincial Governor as a vice chairperson(3) Commander of Army Circle, or Commander of Provincial Army base or their representativeas a vice chairperson(4) Provincial Administrator as a vice chairperson(5) Other members shall be consisted of these following;(a) Representatives from provincial government services appointed by ProvincialGovernor at any appropriated numbers as members(b) Seven representatives from local administrations consisting of two persons frommunicipalities and other five persons from Tambon Administrations as members(c) Representatives from public charities shall be appointed by Provincial Governor inany appropriated numbers as member(6) Chief Officer of Disaster Prevention and Mitigation Office or representative from Departmentof Disaster Prevention and Mitigation as secretaryIn case of higher education institutes or universities located in that province, president or rectorof each institute shall be appointed by Provincial Governor at any appropriated numbers as members orconsultants.184


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007The committee under paragraph one shall formulate their Disaster Prevention and MitigationPlan and propose to their Provincial Governor for executing of the plan.Responsibilities and meeting procedures of committee under paragraph one shall be assigned byProvincial Governor.Section 18: Provincial Administrator as Deputy Provincial Director shall assist ProvincialDirector on disaster prevention and mitigation operations, and shall perform other duties as may berequired by Provincial Director.Section 19: District governor as District Director, shall perform duties on disaster preventionand mitigation in their home-land and shall perform other duties as may be required by Provincialdirector.For any operations of District Director under paragraph one, the director shall have power todemand other government agencies, relevant local administrations in their area of works to operate theProvincial Disaster Prevention and Mitigation Plan, and shall have power to command, control andoversee all activities of relevant Officers and Volunteers on their operations in accordance to this law.Section 20: Local Administration as Local Director shall perform their duties on disasterprevention and mitigation in their areas of works. Local administrators shall perform duties as LocalDirector, and shall assist Provincial Director and District Director in performing other duties asrequested.For any operations of Local Director under paragraph one, the director shall have power tocontrol, and oversee local Officers, local Volunteers activities according to this law.The Administrative assistants shall perform their duties as Assistant Local Director on disasterprevention and mitigation and other duties as may be required by Local Director.CHAPTER 2Disaster Prevention and Mitigation____________________________________________Section 21: In any occurrence or expected to occur of disasters in local administration area, thatLocal Director has to proceed the disaster prevention and mitigation operation at once, and he or sheshall report to District Director, and Provincial Director immediately.For the operations on paragraph one, the Local Director shall have power to;(1) Demand any local civil servants, local government employee, local government serviceservants, local government officers, volunteers, and other relevant personnel to perform anynecessity actions for prevention and mitigation of that disasters(2) Utilize any materials, tools, equipments, and vehicles of the government, or of private sectorsin affected areas as necessary to prevent and mitigate that disasters(3) Utilize communication devices of the government, or of private sectors in affected area orneighboring areas(4) Request other local administrations to support that disaster prevention and mitigationoperation(5) Order any people to enter or leave the areas, buildings or any specific locations(6) Provide aid and support to effected people radically and expeditiouslySection 22: If there is an incident or event in paragraph one, District Director and ProvincialDirector shall have their authorities equal to Local Director. District Directors shall oversee in theirdistrict, and Provincial Directors shall function in their provinces respectively.185


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007In case of that Local Director require a support from other government agencies or othergovernment agents outside the areas, he or she has to request to District Director or Provincial Directorto demand other relevant agencies to response rapidly.Section 23: When a disaster occurs in any local administrations, other neighboring LocalDirectors shall have to support to that Local Director on the prevention and mitigation operations.Section 24: When a disaster occurs, local Officers in those affected area shall have to deploy themitigation operation at once, and report to Local Director in their area of works for further operationimmediately. And in some unavoidable cases, those Officers shall have power to implement anyoperations to protect or save life of those effected people.Section 25: In any occurring disasters or expected to occur, the Director shall have authorities tocommand other Offices to modify, destroy, move or remove any obstacle, structures, materials of anyprivate properties to mitigate the impacts of disaster. But any actions shall be limited to protect or toresolve any damages from disasters.Any actions in paragraph one shall be allowed to operate upon necessities to communityrelatively.If there is any modifications, destroying, or talking out of structures, materials or properties thatwill lead to more disaster dilation to other neighboring areas that Local Director shall not allow operatingunder paragraph one or two, except that operation is under supervision of Provincial Director.Section 26: When any Officers shall be able to enter into private own buildings or properties orplaces near to area of disaster for prevention and mitigation purpose, those Officers shall get permittedby the owner before taking any actions or operations, except that operation is under supervision ofDirectors, even there is no owner presenting over, those Officer shall be granted.In some cases under paragraph one; some belongings or materials inside those properties shallbe able to active a disaster, those Officers shall have power to order the owner to bring their belongingsout of that building.If the owner or proprietor ignore or unable to compile the order, those Officers under paragraphtwo shall have authority to take those belongings out of the properties or building. However, thoseauthorizations shall be limited to any necessity for disaster prevention and mitigation only. And thoseOfficers shall not be blamed to any damages.Section 27: In the disaster mitigation operations, Director or designated Officers shall havepower to;(1) Build some temporary shelters for living or getting first aid, and properties care taking toeffected people(2) Manage the traffic arrangement in the disaster impact areas and neighboring areas(3) Keep out the disaster impact areas and neighboring areas for preventing unauthorizedpeople(4) Provide security measures to prevent plunderers or thief to through the area(5) Support effected people to move their moveable properties and belongings from disasterimpact area to secured neighboring areas as requestedThe Director or designated Officers shall prepare tools or signals for displaying working status orpurpose on specific locations or actions under paragraph oneIn any operation under (2), (3), (4), and (5), either Director or Officer shall be proceeding bythemselves or shall be able to delegate their authorities to other appropriated government official or localpolice department to assist or proceed on their behalf. Under (5), other public charities shall be includedto assist this operation.186


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007Section 28: When disaster occur or expected to occur, in any local areas and people in that areashall be affected by disaster, or will be obstacles to disaster prevention and mitigation. Commander inChief, Deputy Commander in Chief, Central Director, Director, District Director and Local Director shall beable to order those effected people to evacuate to other areas as necessary to disaster prevention andmitigation operations.Section 29: When disaster occurs or expected to occur in any areas, and there shall raise moreviolent for staying or continuing normal living activities. Commander in Chief, Deputy Commander inChief, Provincial Director, District Director and, Local Administration Director under the approval fromDistrict Director shall be able to make an announcement to disallow any people to entry, or to do otherbusiness in that area. That announcement shall be in specific period of time as necessary.Section 30: Local Director shall responsible for damaged assessment of disaster, and thoseeffected people, and properties shall be recorded or certified on that assessment. A proof of affected or acertificate shall be given to those people for recovering and compensation.Proof of affected under paragraph one shall have entitlement details to get restoration andcompensation from the government, name and contact information of relevant government agency.Anyhow, the required information shall be defined by the Director-General.If those effected people lost their official or legal documents, those people shall request or informtheir local administration at effected area or at their homeland. That local administration shall notify toother relevant government agencies. Those relevant government agencies shall renew and delivery thatdocuments to effected people or the local administration. All charges and fees shall be waived for theserenewing services, even there shall be charged legally.When those affected people or owner of damages properties request other support or services,that Local Director shall issue assessment certificate in accordance the regulations of Ministry of Interior.Section 31: In case of severe drought occurring, Prime Minister or designated Minister shall havepower to demand the Commander in Chief, Directors, government agencies and related localadministrations to deploy disaster prevention and mitigation, including of providing supports to thepeople in affected areas. The Commander in Chief shall have power further to Section 13 and Directorsshall have power further to Section 21 and other duties under Section 25, 28 and 29 shall be granted tothe Commander in Chief, Deputy Command in Chief, Directors, Deputy Director, Assistant Director andother Officers respectively.If any government employees abandon their duties, deny compiling any commands from PrimeMinister or designated Deputy Prime Minister, shall be charged as highest disciplinary violation orimproperly operation at highest degree.CHAPTER 3Disaster Prevention and Mitigation in Bangkok Metropolitan_________________________________________________________________________Section 32: Bangkok Metropolitan Governor as Bangkok Director shall be responsible forBangkok Disaster Prevention and Mitigation shall have power as follows;(1) Formulate the Disaster Prevention and Mitigation Plan for Bangkok, which shall beconsistence to the National Disaster Prevention and Mitigation Plan(2) Oversee and train Volunteers in Bangkok(3) Procure materials, equipments, tools, vehicles and others, as necessary to DisasterPrevention and Mitigation as stated in Disaster Prevention and Mitigation Plan for Bangkok(4) Provide basic recovery to disaster effected people or victims, and shall provide security andany disaster prevention and mitigation actions(5) Support and assist local administrations and their neighboring in disaster prevention andmitigation187


Appendix(6) Perform any related duties as may required by the Central DirectorRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007For most benefits from conforming (3) (4) and (5), Bangkok Director shall have power tocommand government services and Bangkok services, and coordinate other government agencies andother relevant local administration in disaster prevention and mitigation operation in Bangkok inaccordance to Bangkok Disaster Prevention and Mitigation Plan, and shall have power to command,control and oversee all operations of Bangkok Officers and Volunteer in accordance to this law.Section 33: Bangkok Disaster Prevention and Mitigation Plan. As stated under Section 32 (1)there shall be substantial subjects according to Section 12 as follows:(1) Establish Command Center where disaster occurred, there shall be constructed andauthorized for disaster prevention and mitigation operations(2) Plan and process to procure materials, equipments tools and vehicles for disaster preventionand mitigation operation(3) Plan and process to procure signaling devices or others for notifying the occurrence orexpectation of a disaster(4) Bangkok Disaster Prevention and Mitigation Action Operation Plan(5) Coordination plan with public charity organizations in BangkokSection 34: For formulating the Bangkok Disaster Prevention and Mitigation Plan, BangkokGovernor shall appoint a committee that consisting of:(1) Bangkok Governor as chairperson(2) Permanent Secretary for Bangkok as vice chairperson(3) Other members of the committee consisting of:(a) Appropriate number of delegates from government agencies or offices in Bangkok(b) Representatives from Department of Disaster Prevention and Mitigation(c) Appropriate number of delegates from public charities in Bangkok(d) Appropriate number of delegates from communities in BangkokThe Bangkok Governor shall appoint appropriate number of representatives from Ministry ofDefense and universities as consultants or committee members.The committee in paragraph one shall formulate the Bangkok Disaster Prevention and MitigationPlan and propose to Bangkok Governor for further promulgation.The committee in paragraph one shall perform and arrange meetings as defined by BangkokGovernor accordingly.Section 35: Permanent Secretary for Bangkok as vice chairperson to assist Bangkok Director indisaster prevention and mitigation operations and others duties as my required by Bangkok Director. Thepowers and authorities as described under Section 32, paragraph 2 shall be adapted to his or her duties, ifappreciable.Responsibilities and authorities of Permanent Secretary for Bangkok as Bangkok Deputy Directorshall be described under paragraph one. Permanent Secretary for Bangkok’s authorities and duties shallbe able to be delegated to Assistant Permanent Secretary.Section 36: Each Bangkok District Directors as Assistant Bangkok Director to assist BangkokDirector in responsible and perform duties on disaster prevention and mitigation in each districts andother duties as may be required by Bangkok Director.As described under paragraph one, the Assistant Bangkok Director shall be authorized tocommand government services and Bangkok services to assist or cooperate on disaster prevention andmitigation over affected areas in Bangkok where those authorities appreciable for controlling andsupervision to Officers and Volunteers to perform their duties to this law accordingly.188


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007Responsibilities and authorities of District Director as Assistant Bangkok Director as described inparagraph one and two shall be able to be delegated to Assistant District Directors to perform duties ontheir behalf, if appreciable.Section 37: In any occurrences or expected to occur of disasters, Assistant Bangkok Directorshall immediately proceed the disaster prevention and mitigation operation, and notify the BangkokDirector and Assistant Bangkok Director at once.The prescription under Section 21 paragraph two, Section 22 paragraph three and four, Section24, Section 25, Section 26, Section 27, Section 28, Section 29 and Section 30 shall be adapted for Bangkokdisaster prevention and mitigation accordingly.Section 38: In case of further assistance from other government services is required to performdisaster prevention and mitigation in Bangkok, the Bangkok Director shall request those agencies. Anddepending on the requests, those informed government officials shall immediately perform their duties asrequested over disaster prevention and mitigation operation in Bangkok.CHAPTER 4Officers and Volunteers______________________________Section 39: Directors shall have powers and authorities to appoint Officers as follows:(1) Central Director shall has authority to appoint Officers for performing their dutiesthroughout the Kingdom(2) Province Director shall has authority to appoint Officers for performing their duties atprovince level(3) District Director shall has authority to appoint Officers for performing their duties at districtlevel(4) Local Director shall has authority to appoint Officers for performing their duties at localregion(5) Bangkok Director shall has authority to appoint Officers for performing their dutiesthroughout Bangkok MetropolitanRules and regulations of Ministry of Interior shall be applied for appointing and operations ofOfficers at each level.Section 40: If there are any places or buildings, or materials or parts inside or outside ofbuildings or places, could be a cause of a disaster easily. Those Directors or Officers who know shallinform relevant authorities for further investigation.Section 41: Directors shall conduct to set up Volunteer unit in their responsible area to performduty as follows:(1) Assist Officers in disaster prevention and mitigation operations(2) Perform other duties as my required by Director and according to rules and regulations ofMinistry of InteriorThe administration and management, selection, training, rights, duties and disciplines ofVolunteers shall be followed rules and regulation of Ministry of Interior accordingly.Section 42: In the case of any public charities or persons assist the Officers during disaster event,Director or designated Officer shall delegate their duties or area of work to those persons appropriately.For efficiency disaster recovery, the Director shall notify relevant public charities, and person inthat affected area. They shall be informed on coordination procedures and operation details of ProvincialDisaster Prevention and Mitigation plan or Bangkok Disaster Prevention and Mitigation plan.189


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007CHAPTER 5Miscellaneous_____________________________________Section 43: Commander in Chief, Deputy Commander in Chief, Director, Deputy Director, andother Officers who perform their duties in accordance to this Disaster Prevention and Mitigation Act shallbe designated officials under Criminal Laws. And any those performed operations with properness andcarefulness upon their authorities and functions according to this act; there shall be no guilty and shall beacquitted.Any actions under paragraph one, if there are any direct damages to properties of one, exceptthat disaster itself. The government shall compensate to that damages subject to ministerial regulationsand procedures.Section 44: In case of any changes of disaster prevention and mitigation facts as specified indisaster prevention and mitigation plans under this act, or if those plans have been used for five years.Those responsible persons who oversee the formulating of plan shall have to revise or review that planrapidly.Section 45: There shall be a uniform, badge and identify card for Officers and Volunteers todeclare themselves whilst disaster prevention and mitigation operation.That uniform, badge and identify card shall be specified by Ministry of Interior.In the case of the Commander in Chief, Deputy Commander in Chief, Director or Deputy Directorprefer to attire in uniform, and shall be specified by Ministry of Interior accordingly.Section 46: Any operations under Section (21), (22), (25), (28) or (29), if there would beexecuted in military areas, related to military missions and personnel, or affected to military propertiesand assets. Those operations shall be an agreement between the military commandant in that area andProvincial Director or Bangkok Director.Section 47: All fines according to this act shall be settled into local administration for spendingon their local disaster prevention and mitigation operation.Section 48: Those personal and officials who related to disaster prevention and mitigationoperation shall not use any confidential information for their own interests, or shall not expose theinformation that would be able to effect to other persons or their professions without an authority.CHAPTER 6Penalties______________________________Section 49: Any persons who are not observance or impede to any official operations of Directorunder Section 21 shall be imprisoned not more than three months or shall be fined not more than sixthousand Baht or both.Section 50: Any persons who impede any operations of the Officers under Section 24 or violateto any commands of Director under Section 25, or impede any operations of the Officers under Section 26,shall be imprisoned not more than one year or fined not more than twenty thousand Baht or both.Section 51: Unauthorized entry to keep out disaster area under Section 37 (3) shall beimprisoned not more than three months or fined not more than six thousand Baht or both.190


AppendixRevision: 0.0 Updated: 3 October 2007In the case of the violation under paragraph one has been made by the owner or holder of thoseproperties under Section 27 (3). Director or designated Officer shall state a warning instead ofprosecution.Section 52: Any persons who violate to an evacuation order under Section 28, if that orderwould be prevent the interfering of disaster prevention and mitigation operations, or behave againstSection 29 shall be imprisoned not more than one month or fined not more than two thousand Baht orboth.Section 53: Whilst the occurrence of public disaster, any persons who wear uniform or badge ofthe Volunteer or the public charity in order to belie others shall be imprisoned not more than threemonths or fined not more than six thousand Baht or both.Section 54: Any persons who dishonestly collect or look for themselves or others by appearingto be a Volunteer, Officer or any related services concerning to disaster prevention and mitigationoperation shall be imprisoned not more than one year or fined not more than twenty thousand Bath orboth.Section 55: Any persons who violent to Section 48 shall imprisoned not more than six months orfined not more than two thousand Baht or both.Transitory Provisions___________________________________Section 56: All related personal or government agencies shall finish the formulating of theirDisaster Prevention and Mitigation Plan in accordance to this Act within two years after this Act isenforced. Until the formulating of the plan finish, all disaster prevention and mitigation activities shall beoperated in accordance to the existing plans.Section 57: All Disaster Prevention and Mitigation Regional Centers in Department of DisasterPrevention and Mitigation shall be Disaster Prevention and Mitigation Centers established under Section22 paragraph 11 of this Act.Section 58: All ministerial regulations, disciplines, notices or orders of Civil Defense Act B.E.2522 [1979] and Fire Defense Act B.E. 2542 [1999] shall be enforced upon acquiesce to this Act.Countersigned byGeneral Surayuth Chulanont,Prime Minister of ThailandRemarks: The reasons for promulgation of this act is follows; in reference to the establishment of Department of DisasterPrevention and Mitigation under Ministry of Interior according to Bureaucracy Improvement for Ministries, Bureaus, DepartmentsAct B.E. 2545 [A.D. 1998] The main mission of the department is for oversee disaster prevention, mitigation and recovery, andincluding of accidents. As of this, all disasters and accidents related administrations that used to be under supervision by twoagencies, The Civil Defense Division in Department of Local Administration, Ministry of Interior and The National Safety Council,Office of Permanent Secretary for Prime Minister Office shall be in charged by a single department. Moreover, the law of FireDefense is described in details on fire prevention and mitigation, and the responsible agency of both Fire Defense Act and CivilDefense Act is the same, then for the effective, consistency and unity of disaster risk reduction management and operations, thesetwo laws shall be aggregated into this Disaster Prevention and Mitigation Act.(Unofficial translated by Khun Usa BANYEN, Khun Sirikorn KITIWONG, DDPM and Khun Pairach HOMTONG, UNDP)191


Appendixหนา ๑เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐พระราชบัญญัติปองกันและบรรเทาสาธารณภัยพ.ศ. ๒๕๕๐ภูมิพลอดุลยเดช ป.ร.ใหไว ณ วันที่ ๒๘ สิงหาคม พ.ศ. ๒๕๕๐เปนปที่ ๖๒ ในรัชกาลปจจุบันพระบาทสมเด็จพระปรมินทรมหาภูมิพลอดุลยเดช มีพระบรมราชโองการโปรดเกลา ฯใหประกาศวาโดยที่เปนการสมควรมีกฎหมายวาดวยการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจึงทรงพระกรุณาโปรดเกลา ฯ ใหตราพระราชบัญญัติขึ้นไวโดยคําแนะนําและยินยอมของสภานิติบัญญัติแหงชาติ ดังตอไปนี้มาตรา ๑ พระราชบัญญัตินี้เรียกวา “พระราชบัญญัติปองกันและบรรเทาสาธารณภัยพ.ศ. ๒๕๕๐”มาตรา ๒ พระราชบัญญัตินี้ใหใชบังคับเมื่อพนกําหนดหกสิบวันนับแตวันประกาศในราชกิจจานุเบกษาเปนตนไปมาตรา ๓ ใหยกเลิก(๑) พระราชบัญญัติปองกันภัยฝายพลเรือน พ.ศ. ๒๕๒๒(๒) พระราชบัญญัติปองกันและระงับอัคคีภัย พ.ศ. ๒๕๔๒มาตรา ๔ ในพระราชบัญญัตินี้192


Appendixหนา ๒เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐“สาธารณภัย” หมายความวา อัคคีภัย วาตภัย อุทกภัย ภัยแลง โรคระบาดในมนุษยโรคระบาดสัตว โรคระบาดสัตวน้ํา การระบาดของศัตรูพืช ตลอดจนภัยอื่น ๆ อันมีผลกระทบตอสาธารณชน ไมวาเกิดจากธรรมชาติ มีผูทําใหเกิดขึ้น อุบัติเหตุ หรือเหตุอื่นใด ซึ่งกอใหเกิดอันตรายแกชีวิต รางกายของประชาชน หรือความเสียหายแกทรัพยสินของประชาชน หรือของรัฐ และใหหมายความรวมถึงภัยทางอากาศ และการกอวินาศกรรมดวย“ภัยทางอากาศ” หมายความวา ภัยอันเกิดจากการโจมตีทางอากาศ“การกอวินาศกรรม” หมายความวา การกระทําใด ๆ อันเปนการมุ งทําลายทรัพยสินของประชาชนหรือของรัฐ หรือสิ่งอันเปนสาธารณูปโภค หรือการรบกวน ขัดขวางหนวงเหนี่ยวระบบการปฏิบัติงานใด ๆ ตลอดจนการประทุษรายตอบุคคลอันเปนการกอใหเกิดความปนปวนทางการเมืองการเศรษฐกิจและสังคมแหงชาติ โดยมุงหมายที่จะกอใหเกิดความเสียหายตอความมั่นคงของรัฐ“หนวยงานของรัฐ” หมายความวา สวนราชการ รัฐวิสาหกิจ องคการมหาชนและหนวยงานอื่นของรัฐ แตไมหมายความรวมถึงองคกรปกครองสวนทองถิ่น“องคกรปกครองสวนทองถิ่น” หมายความวา องคการบริหารสวนตําบล เทศบาล องคการบริหารสวนจังหวัด เมืองพัทยา กรุงเทพมหานคร และองคกรปกครองสวนทองถิ่นอื่นที่มีกฎหมายจัดตั้ง“องคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่” หมายความวา องคการบริหารสวนตําบล เทศบาลเมืองพัทยา และองคกรปกครองสวนทองถิ่นอื่นที่มีกฎหมายจัดตั้ง แตไมหมายความรวมถึงองคการบริหารสวนจังหวัด และกรุงเทพมหานคร“จังหวัด” ไมหมายความรวมถึงกรุงเทพมหานคร“อําเภอ” หมายความรวมถึงกิ่งอําเภอ แตไมหมายความรวมถึงเขตในกรุงเทพมหานคร“นายอําเภอ” หมายความรวมถึงปลัดอําเภอผูเปนหัวหนาประจํากิ่งอําเภอ“ผูบริหารทองถิ่น” หมายความวา นายกองคการบริหารสวนตําบล นายกเทศมนตรี นายกเมืองพัทยา และหัวหนาผูบริหารขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่อื่น“ผูบัญชาการ” หมายความวา ผูบัญชาการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติ“ผูอํานวยการ” หมายความวา ผูอํานวยการกลาง ผูอํานวยการจังหวัด ผูอํานวยการอําเภอผูอํานวยการทองถิ่น และผูอํานวยการกรุงเทพมหานคร193


Appendixหนา ๓เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐“เจาพนักงาน” หมายความวา ผูซึ่งไดรับแตงตั้งใหปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในพื้นที่ตาง ๆ ตามพระราชบัญญัตินี้“อาสาสมัคร” หมายความวา อาสาสมัครปองกันภัยฝายพลเรือนตามพระราชบัญญัตินี้“อธิบดี” หมายความวา อธิบดีกรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัย“รัฐมนตรี” หมายความวา รัฐมนตรีผูรักษาการตามพระราชบัญญัตินี้มาตรา ๕ ใหรัฐมนตรีวาการกระทรวงมหาดไทยรักษาการตามพระราชบัญญัตินี้และใหมีอํานาจออกกฎกระทรวง ระเบียบ ขอบังคับและประกาศเพื่อปฏิบัติการตามพระราชบัญญัตินี้กฎกระทรวงนั้น เมื่อไดประกาศในราชกิจจานุเบกษาแลวใหใชบังคับไดหมวด ๑บททั่วไปมาตรา ๖ ใหมีคณะกรรมการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติ เรียกโดยยอวา“กปภ.ช.” ประกอบดวย นายกรัฐมนตรีหรือรองนายกรัฐมนตรีซึ่งนายกรัฐมนตรีมอบหมายเปนประธานกรรมการ รัฐมนตรีวาการกระทรวงมหาดไทย เปนรองประธานกรรมการคนที่หนึ่งปลัดกระทรวงมหาดไทย เปนรองประธานกรรมการคนที่สอง ปลัดกระทรวงกลาโหม ปลัดกระทรวงการพัฒนาสังคมและความมั่นคงของมนุษย ปลัดกระทรวงเกษตรและสหกรณ ปลัดกระทรวงคมนาคมปลัดกระทรวงทรัพยากรธรรมชาติและสิ่งแวดลอม ปลัดกระทรวงเทคโนโลยีสารสนเทศและการสื่อสาร ปลัดกระทรวงสาธารณสุข ผูอํานวยการสํานักงบประมาณ ผูบัญชาการตํารวจแหงชาติผูบัญชาการทหารสูงสุด ผูบัญชาการทหารบก ผูบัญชาการทหารเรือ ผูบัญชาการทหารอากาศเลขาธิการสภาความมั่นคงแหงชาติ และผูทรงคุณวุฒิอีกไมเกินหาคนซึ่งคณะรัฐมนตรีแตงตั้งจากผูมีความรู ความเชี่ยวชาญ หรือประสบการณที่เกี่ยวของกับการผังเมือง และการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย เปนกรรมการใหอธิบดีเปนกรรมการและเลขานุการ และใหแตงตั้งขาราชการในกรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจํานวนไมเกินสองคนเปนผูชวยเลขานุการมาตรา ๗ ให กปภ.ช. มีอํานาจหนาที่ ดังตอไปนี้(๑) กําหนดนโยบายในการจัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติ194


Appendixหนา ๔เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๒) พิจารณาใหความเห็นชอบแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติ ตามมาตรา ๑๑ (๑)กอนเสนอคณะรัฐมนตรี(๓) บูรณาการพัฒนาระบบการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย ระหวางหนวยงานของรัฐองคกรปกครองสวนทองถิ่น และหนวยงานภาคเอกชนที่เกี่ยวของใหมีประสิทธิภาพ(๔) ใหคําแนะนํา ปรึกษาและสนับสนุนการปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๕) วางระเบียบเกี่ยวกับคาตอบแทน คาทดแทน และคาใชจายในการดําเนินการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย โดยความเห็นชอบของกระทรวงการคลัง(๖) ปฏิบัติการอื่นใดตามที่บัญญัติไวในพระราชบัญญัตินี้หรือกฎหมายอื่น หรือตามที่คณะรัฐมนตรีมอบหมายในการปฏิบัติการตามอํานาจหนาที่ในวรรคหนึ่ง กปภ.ช. จะแตงตั้งคณะอนุกรรมการเพื่อปฏิบัติการอยางหนึ่งอยางใดแทนหรือตามที่มอบหมายก็ได ทั้งนี้ ใหนําบทบัญญัติในมาตรา ๑๐มาใชบังคับกับการประชุมของคณะอนุกรรมการโดยอนุโลมเพื่อประโยชนในการปฏิบัติการตามอํานาจหนาที่ตามวรรคหนึ่ง กปภ.ช. อาจเรียกใหหนวยงานของรัฐ องคกรปกครองสวนทองถิ่น หรือหนวยงานของภาคเอกชนที่เกี่ยวของมารวมประชุมหรือชี้แจงหรือใหขอมูลก็ไดมาตรา ๘ ใหกรรมการผูทรงคุณวุฒิอยูในตําแหนงคราวละสี่ปในกรณีที่กรรมการผูทรงคุณวุฒิพนจากตําแหนงกอนวาระ หรือในกรณีที่คณะรัฐมนตรีแตงตั้งกรรมการผูทรงคุณวุฒิเพิ่มขึ้นในระหวางที่กรรมการผูทรงคุณวุฒิซึ่งแตงตั้งไวแลวยังมีวาระอยูในตําแหนง ใหผู ไดรับแตงตั้งใหดํารงตําแหนงแทน หรือเปนกรรมการผูทรงคุณวุฒิเพิ่มขึ้นอยูในตําแหนงเทากับวาระที่เหลืออยูของกรรมการผูทรงคุณวุฒิซึ่งไดแตงตั้งไวแลวเมื่อครบกําหนดตามวาระดังกลาวในวรรคหนึ่ง หากยังมิไดมีการแตงตั้งกรรมการผูทรงคุณวุฒิใหมใหกรรมการผูทรงคุณวุฒิซึ่งพนจากตําแหนงตามวาระนั้น อยูในตําแหนงเพื่อดําเนินงานตอไปจนกวาจะมีการแตงตั้งกรรมการผูทรงคุณวุฒิใหมกรรมการผูทรงคุณวุฒิ ซึ่งพนจากตําแหนงตามวาระอาจไดรับการแตงตั้งอีกได ทั้งนี้ ไมเกินสองวาระติดตอกัน195


Appendixหนา ๕เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐มาตรา ๙ นอกจากการพนจากตําแหนงตามวาระตามมาตรา ๘ กรรมการผูทรงคุณวุฒิพนจากตําแหนงเมื่อ(๑) ตาย(๒) ลาออก โดยยื่นหนังสือลาออกตอประธานกรรมการ(๓) คณะรัฐมนตรีใหออก(๔) เปนบุคคลลมละลาย(๕) เปนคนไรความสามารถ หรือคนเสมือนไรความสามารถ(๖) ไดรับโทษจําคุกโดยคําพิพากษาถึงที่สุดใหจําคุก เวนแตเปนโทษสําหรับความผิดที่ไดกระทําโดยประมาทหรือความผิดลหุโทษมาตรา ๑๐ การประชุมของ กปภ.ช. ตองมีกรรมการมาประชุมไมนอยกวากึ่งหนึ่งของจํานวนกรรมการทั้งหมด จึงจะเปนองคประชุมในการประชุมคราวใด ถาประธานกรรมการไมอยูในที่ประชุมหรือไมสามารถปฏิบัติหนาที่ไดใหรองประธานกรรมการคนที่หนึ่งเปนประธานในที่ประชุม ถารองประธานคนที่หนึ่งไมอยูในที่ประชุมหรือไมสามารถปฏิบัติหนาที่ได ใหรองประธานคนที่สองเปนประธานในที่ประชุม ถาประธานกรรมการและรองประธานกรรมการทั้งสองไมอยูในที่ประชุม หรือไมสามารถปฏิบัติหนาที่ไดใหกรรมการซึ่งมาประชุมเลือกกรรมการคนหนึ่งเปนประธานในที่ประชุมสําหรับการประชุมคราวนั้นการวินิจฉัยชี้ขาดของที่ประชุมใหถือเสียงขางมาก กรรมการคนหนึ่งใหมีเสียงหนึ่งในการลงคะแนน ถาคะแนนเสียงเทากัน ใหประธานในที่ประชุมออกเสียงเพิ่มขึ้นอีกเสียงหนึ่งเปนเสียงชี้ขาดมาตรา ๑๑ ใหกรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัยเปนหนวยงานกลางของรัฐ ในการดําเนินการเกี่ยวกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยของประเทศ โดยมีอํานาจหนาที่ ดังตอไปนี้(๑) จัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติเสนอ กปภ.ช. เพื่อขออนุมัติตอคณะรัฐมนตรี(๒) จัดใหมีการศึกษาวิจัยเพื่อหามาตรการในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยใหมีประสิทธิภาพ(๓) ปฏิบัติการ ประสานการปฏิบัติ ใหการสนับสนุน และชวยเหลือหนวยงานของรัฐองคกรปกครองสวนทองถิ่น และหนวยงานภาคเอกชน ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย และใหการสงเคราะหเบื้องตนแกผูประสบภัย ผูไดรับภยันตราย หรือผูไดรับความเสียหายจากสาธารณภัย196


Appendixหนา ๖เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๔) แนะนํา ใหคําปรึกษา และอบรมเกี่ยวกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแกหนวยงานของรัฐ องคกรปกครองสวนทองถิ่น และหนวยงานภาคเอกชน(๕) ติดตาม ตรวจสอบ และประเมินผลการดําเนินการตามแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในแตละระดับ(๖) ปฏิบัติการอื่นใดตามที่บัญญัติไวในพระราชบัญญัตินี้หรือกฎหมายอื่นหรือตามที่ผูบัญชาการ นายกรัฐมนตรี กปภ.ช. หรือคณะรัฐมนตรีมอบหมายเมื่อคณะรัฐมนตรีอนุมัติแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติตาม (๑) แลวใหหนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นที่เกี่ยวของปฏิบัติการใหเปนไปตามแผนดังกลาวในการจัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติตาม (๑) ใหกรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัยรวมกับหนวยงานของรัฐที่เกี่ยวของและตัวแทนองคกรปกครองสวนทองถิ่นแตละประเภทมาปรึกษาหารือและจัดทํา ทั้งนี้ จะจัดใหหนวยงานภาคเอกชนเสนอขอมูลหรือความเห็นเพื่อประกอบการพิจารณาในการจัดทําแผนดวยก็ไดเพื่อประโยชนในการปฏิบัติหนาที่ตาม (๓) (๔) (๕) และ (๖) กรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจะจัดใหมีศูนยปองกันและบรรเทาสาธารณภัยขึ้นในบางจังหวัดเพื่อปฏิบัติงานในจังหวัดนั้นและจังหวัดอื่นที่อยูใกลเคียงกันไดตามความจําเปน และจะใหมีสํานักงานปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัดขึ้น เพื่อกํากับดูแลและสนับสนุนการปฏิบัติการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในจังหวัดหรือตามที่ผูอํานวยการจังหวัดมอบหมายดวยก็ไดมาตรา ๑๒ แผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติตามมาตรา ๑๑ (๑) อยางนอยตองมีสาระสําคัญดังตอไปนี้(๑) แนวทาง มาตรการ และงบประมาณที่จําเปนตองใชในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยอยางเปนระบบและตอเนื่อง(๒) แนวทางและวิธีการในการใหความชวยเหลือและบรรเทาความเดือดรอนที่เกิดขึ้นเฉพาะหนาและระยะยาวเมื่อเกิดสาธารณภัย รวมถึงการอพยพประชาชน หนวยงานของรัฐ และองคกรปกครองสวนทองถิ่น การสงเคราะหผูประสบภัย การดูแลเกี่ยวกับการสาธารณสุข และการแกไขปญหาเกี่ยวกับการสื่อสารและการสาธารณูปโภค(๓) หนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นที่รับผิดชอบในการดําเนินการตาม (๑)และ (๒) และวิธีการใหไดมาซึ่งงบประมาณเพื่อการดําเนินการดังกลาว197


Appendixหนา ๗เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๔) แนวทางในการเตรียมพรอมดานบุคลากร อุปกรณ และเครื่องมือเครื่องใชและจัดระบบการปฏิบัติการในการดําเนินการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย รวมถึงการฝกบุคลากรและประชาชน(๕) แนวทางในการซอมแซม บูรณะ ฟนฟู และใหความชวยเหลือประชาชนภายหลังที่สาธารณภัยสิ้นสุดการกําหนดเรื่องตามวรรคหนึ่ง จะตองกําหนดใหสอดคลองและครอบคลุมถึงสาธารณภัยตาง ๆโดยอาจกําหนดตามความจําเปนแหงความรุนแรงและความเสี่ยงในสาธารณภัยดานนั้น และในกรณีที่มีความจําเปนตองมีการแกไขหรือปรับปรุงกฎหมาย ระเบียบ ขอบังคับ หรือมติของคณะรัฐมนตรีที่เกี่ยวของ ใหระบุไวในแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติดวยมาตรา ๑๓ ใหรัฐมนตรีเปนผูบัญชาการมีอํานาจควบคุมและกํากับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยทั่วราชอาณาจักรใหเปนไปตามแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติและพระราชบัญญัตินี้ ในการนี้ ใหมีอํานาจบังคับบัญชาและสั่งการผูอํานวยการ รองผูอํานวยการ ผูชวยผูอํานวยการ เจาพนักงาน และอาสาสมัครไดทั่วราชอาณาจักรใหปลัดกระทรวงมหาดไทยเปนรองผูบัญชาการมีหนาที่ชวยเหลือผูบัญชาการในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย และปฏิบัติหนาที่ตามที่ผูบัญชาการมอบหมายโดยใหมีอํานาจบังคับบัญชาและสั่งการตามวรรคหนึ่งรองจากผูบัญชาการมาตรา ๑๔ ใหอธิบดีเปนผูอํานวยการกลางมีหนาที่ปองกันและบรรเทาสาธารณภัยทั่วราชอาณาจักร และมีอํานาจควบคุมและกํากับการปฏิบัติหนาที่ของผูอํานวยการ รองผูอํานวยการผูชวยผูอํานวยการ เจาพนักงาน และอาสาสมัคร ไดทั่วราชอาณาจักรมาตรา ๑๕ ใหผูวาราชการจังหวัดเปนผูอํานวยการจังหวัด รับผิดชอบในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตจังหวัด โดยมีอํานาจหนาที่ดังตอไปนี้(๑) จัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัด ซึ่งตองสอดคลองกับแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติ(๒) กํากับดูแลการฝกอบรมอาสาสมัครขององคกรปกครองสวนทองถิ่น(๓) กํากับดูแลองคกรปกครองสวนทองถิ่นใหจัดใหมีวัสดุ อุปกรณ เครื่องมือเครื่องใชยานพาหนะ และสิ่งอื่น เพื่อใชในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามที่กําหนดในแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัด198


Appendixหนา ๘เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๔) ดําเนินการใหหนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นใหการสงเคราะหเบื้องตนแกผูประสบภัย หรือผูไดรับภยันตรายหรือเสียหายจากสาธารณภัยรวมตลอดทั้งการรักษาความสงบเรียบรอยและการปฏิบัติการใด ๆ ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๕) สนับสนุนและใหความชวยเหลือแกองคกรปกครองสวนทองถิ่นในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๖) ปฏิบัติหนาที่อื่นตามที่ผูบัญชาการและผูอํานวยการกลางมอบหมายเพื่อประโยชนในการปฏิบัติหนาที่ตาม (๓) (๔) และ (๕) ใหผูอํานวยการจังหวัดมีอํานาจสั่งการหนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นซึ่งอยูในจังหวัด ใหดําเนินการในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัด และมีอํานาจสั่งการ ควบคุมและกํากับดูแลการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานและอาสาสมัครใหเปนไปตามพระราชบัญญัตินี้มาตรา ๑๖ แผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัดตามมาตรา ๑๕ (๑) อยางนอยตองมีสาระสําคัญตามมาตรา ๑๒ และสาระสําคัญอื่นดังตอไปนี้(๑) การจัดตั้งศูนยอํานวยการเฉพาะกิจเมื่อเกิดสาธารณภัยขึ้น โครงสรางและผูมีอํานาจสั่งการดานตาง ๆ ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๒) แผนและขั้นตอนขององคกรปกครองสวนทองถิ่น ในการจัดหาวัสดุ อุปกรณ เครื่องมือเครื่องใช และยานพาหนะ เพื่อใชในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๓) แผนและขั้นตอนขององคกรปกครองสวนทองถิ่น ในการจัดใหมีเครื่องหมายสัญญาณหรือสิ่งอื่นใด ในการแจงใหประชาชนไดทราบถึงการเกิดหรือจะเกิดสาธารณภัย(๔) แผนปฏิบัติการในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยขององคกรปกครองสวนทองถิ่น(๕) แผนการประสานงานกับองคการสาธารณกุศลมาตรา ๑๗ ในการจัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัด ใหผูวาราชการจังหวัดแตงตั้งคณะกรรมการขึ้นคณะหนึ่ง ประกอบดวย(๑) ผูวาราชการจังหวัด เปนประธานกรรมการ(๒) รองผูวาราชการจังหวัดซึ่งผูวาราชการจังหวัดมอบหมาย เปนรองประธานกรรมการ(๓) ผูบัญชาการมณฑลทหารบกหรือผูบังคับการจังหวัดทหารบกหรือผูแทนเปนรองประธานกรรมการ(๔) นายกองคการบริหารสวนจังหวัด เปนรองประธานกรรมการ199


Appendixหนา ๙เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๕) กรรมการอื่น ประกอบดวย(ก) ผูแทนหนวยงานของรัฐที่ประจําอยูในพื้นที่จังหวัดตามจํานวนที่ผูวาราชการจังหวัดเห็นสมควรแตงตั้ง(ข) ผูแทนองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่จํานวนเจ็ดคน ซึ่งประกอบดวยผูแทนเทศบาลจํานวนสองคนและผูแทนองคการบริหารสวนตําบลจํานวนหาคน(ค) ผูแทนองคการสาธารณกุศลในจังหวัดตามจํานวนที่ผูวาราชการจังหวัดเห็นสมควรแตงตั้ง(๖) หัวหนาสํานักงานปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัด หรือผูแทนกรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัย เปนกรรมการและเลขานุการในกรณีที่จังหวัดใดเปนที่ตั้งของสถาบันการศึกษาระดับอุดมศึกษา ใหพิจารณาแตงตั้งผูบริหารของสถาบันการศึกษานั้น เปนที่ปรึกษาหรือกรรมการตามจํานวนที่ผูวาราชการจังหวัดเห็นสมควรใหคณะกรรมการตามวรรคหนึ่งมีหนาที่จัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัดเสนอผูวาราชการจังหวัดเพื่อประกาศใชตอไปการปฏิบัติหนาที่และการประชุมของคณะกรรมการตามวรรคหนึ่ง ใหเปนไปตามที่ผูวาราชการจังหวัดกําหนดในกรณีที่กรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัยเห็นวาแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัดไมสอดคลองกับแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติ ใหแจงใหผูวาราชการจังหวัดทราบเพื่อดําเนินการแกไขใหแลวเสร็จภายในสามสิบวันนับแตวันที่ไดรับแจงมาตรา ๑๘ ใหนายกองคการบริหารสวนจังหวัดเปนรองผูอํานวยการจังหวัด มีหนาที่ชวยเหลือผูอํานวยการจังหวัดในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย และปฏิบัติหนาที่อื่นตามที่ผูอํานวยการจังหวัดมอบหมายมาตรา ๑๙ ใหนายอําเภอเปนผูอํานวยการอําเภอ รับผิดชอบและปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตอําเภอของตน และมีหนาที่ชวยเหลือผูอํานวยการจังหวัดตามที่ไดรับมอบหมายในการปฏิบัติหนาที่ของผูอํานวยการอําเภอตามวรรคหนึ่ง ใหผูอํานวยการอําเภอ มีอํานาจสั่งการหนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นที่เกี่ยวของซึ่งอยูในเขตอําเภอใหดําเนินการในการ200


Appendixหนา ๑๐เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐ปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัด และมีอํานาจสั่งการควบคุม และกํากับดูแลการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานและอาสาสมัครใหเปนไปตามพระราชบัญญัตินี้มาตรา ๒๐ ใหองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่มีหนาที่ปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตทองถิ่นของตน โดยมีผูบริหารทองถิ่นขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่นั้นเปนผูรับผิดชอบในฐานะผูอํานวยการทองถิ่น และมีหนาที่ชวยเหลือผูอํานวยการจังหวัดและผูอํานวยการอําเภอตามที่ไดรับมอบหมายในการปฏิบัติหนาที่ของผูอํานวยการทองถิ่นตามวรรคหนึ่ง ใหผูอํานวยการทองถิ่นมีอํานาจสั่งการควบคุม และกํากับดูแลการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานและอาสาสมัครใหเปนไปตามพระราชบัญญัตินี้ใหปลัดองคกรปกครองสวนทองถิ่นขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่นั้นเปนผูชวยผูอํานวยการทองถิ่น รับผิดชอบและปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตทองถิ่นของตนและมีหนาที่ชวยเหลือผูอํานวยการทองถิ่นตามที่ไดรับมอบหมายหมวด ๒การปองกันและบรรเทาสาธารณภัยมาตรา ๒๑ เมื่อเกิดหรือคาดวาจะเกิดสาธารณภัยขึ้นในเขตขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ใด ใหผูอํานวยการทองถิ่นขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่นั้นมีหนาที่เขาดําเนินการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยโดยเร็ว และแจงใหผูอํานวยการอําเภอที่รับผิดชอบในเขตพื้นที่นั้นและผูอํานวยการจังหวัดทราบทันทีในการปฏิบัติหนาที่ตามวรรคหนึ่ง ใหผูอํานวยการทองถิ่นมีอํานาจหนาที่ ดังตอไปนี้(๑) สั่งขาราชการฝายพลเรือน พนักงานสวนทองถิ่น เจาหนาที่ของหนวยงานของรัฐเจาพนักงาน อาสาสมัคร และบุคคลใด ๆ ในเขตองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัยใหปฏิบัติการอยางหนึ่งอยางใดตามความจําเปนในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๒) ใชอาคาร สถานที่ วัสดุ อุปกรณ เครื่องมือเครื่องใช และยานพาหนะของหนวยงานของรัฐและเอกชนที่อยูในเขตองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัยเทาที่จําเปนเพื่อการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย201


Appendixหนา ๑๑เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๓) ใชเครื่องมือสื่อสารของหนวยงานของรัฐหรือเอกชนทุกระบบที่อยูในเขตองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัยหรือทองที่ที่เกี่ยวเนื่อง(๔) ขอความชวยเหลือจากองคกรปกครองสวนทองถิ่นอื่นในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๕) สั่งหามเขาหรือใหออกจากพื้นที่ อาคารหรือสถานที่ที่กําหนด(๖) จัดใหมีการสงเคราะหผูประสบภัยโดยทั่วถึงและรวดเร็วมาตรา ๒๒ เมื่อมีกรณีตามมาตรา ๒๑ เกิดขึ้น ใหผูอํานวยการอําเภอ และผูอํานวยการจังหวัดมีอํานาจหนาที่เชนเดียวกับผูอํานวยการทองถิ่น โดยในกรณีผูอํานวยการอําเภอ ใหสั่งการไดสําหรับในเขตอําเภอของตน และในกรณีผูอํานวยการจังหวัด ใหสั่งการไดสําหรับในเขตจังหวัดแลวแตกรณีในกรณีที่ผูอํานวยการทองถิ่นมีความจําเปนตองไดรับความชวยเหลือจากเจาหนาที่ของรัฐหรือหนวยงานของรัฐที่อยูนอกเขตขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ของตน ใหแจงใหผูอํานวยการอําเภอหรือผูอํานวยการจังหวัด แลวแตกรณี เพื่อสั่งการโดยเร็วตอไปในกรณีจําเปนเพื่อประโยชนในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยใด ผูอํานวยการจังหวัดจะสั่งการใหหนวยงานของรัฐ องคกรปกครองสวนทองถิ่น เจาหนาที่ของรัฐ หรือบุคคลใดกระทําหรืองดเวนการกระทําใดที่มีผลกระทบตอการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยนั้นก็ได คําสั่งดังกลาวใหมีผลบังคับเปนระยะเวลาตามที่กําหนดในคําสั่ง แตตองไมเกินยี่สิบสี่ชั่วโมง ในกรณีที่มีความจําเปนตองใหคําสั่งดังกลาวมีผลบังคับเกินยี ่สิบสี่ชั่วโมง ใหเปนอํานาจของผูบัญชาการที่จะสั่งการไดตามความจําเปนแตตองไมเกินเจ็ดวันในกรณีที่พื้นที่ที่เกิดหรือจะเกิดสาธารณภัยตามวรรคหนึ่งอยูในความรับผิดชอบของผูอํานวยการทองถิ่นหลายคน ผูอํานวยการทองถิ่นคนหนึ่งคนใด จะใชอํานาจหรือปฏิบัติหนาที่ตามมาตรา ๒๑ ไปพลางกอนก็ได แลวใหแจงผูอํานวยการทองถิ่นอื่นทราบโดยเร็วมาตรา ๒๓ เมื่อเกิดสาธารณภัยขึ้นในเขตพื้นที่ขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ใดใหเปนหนาที่ของผูอํานวยการทองถิ่นซึ่งมีพื้นที่ติดตอหรือใกลเคียงกับองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่นั้น ที่จะสนับสนุนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยที่เกิดขึ้นมาตรา ๒๔ เมื่อเกิดสาธารณภัย ใหเปนหนาที่ของเจาพนักงานที่ประสบเหตุตองเขาดําเนินการเบื้องตนเพื่อระงับสาธารณภัยนั้น แลวรีบรายงานใหผูอํานวยการทองถิ่นที่รับผิดชอบในพื้นที่202


Appendixหนา ๑๒เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐นั้นเพื่อสั่งการตอไป และในกรณีจําเปนอันไมอาจหลีกเลี่ยงได ใหเจาพนักงานมีอํานาจดําเนินการใด ๆเพื่อคุมครองชีวิตหรือปองกันภยันตรายที่จะเกิดแกบุคคลไดมาตรา ๒๕ ในกรณีที่เกิดสาธารณภัยและภยันตรายจากสาธารณภัยนั้นใกลจะถึงผูอํานวยการมีอํานาจสั่งใหเจาพนักงานดัดแปลง ทําลาย หรือเคลื่อนยายสิ่งกอสราง วัสดุ หรือทรัพยสินของบุคคลใดที่เปนอุปสรรคแกการบําบัดปดปองภยันตรายได ทั้งนี้ เฉพาะเทาที่จําเปนแกการยับยั้งหรือแกไขความเสียหายที่จะเกิดขึ้นจากสาธารณภัยนั้นความในวรรคหนึ่งใหใชบังคับกับกรณีมีความจําเปนตองดําเนินการเพื่อปองกันภัยตอสวนรวมดวยโดยอนุโลมในกรณีที่การดัดแปลง ทําลาย หรือเคลื่อนยายสิ่งกอสราง วัสดุ หรือทรัพยสินจะมีผลทําใหเกิดสาธารณภัยขึ้นในเขตพื้นที่อื่นหรือกอใหเกิดความเสียหายเพิ่มขึ้นแกเขตพื้นที่อื่น ผูอํานวยการทองถิ่นจะใชอํานาจตามวรรคหนึ่งหรือวรรคสองมิได เวนแตจะไดรับความเห็นชอบจากผูอํานวยการจังหวัดมาตรา ๒๖ เมื่อมีกรณีที่เจาพนักงานจําเปนตองเขาไปในอาคารหรือสถานที่ที่อยูใกลเคียงกับพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัยเพื่อทําการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย ใหกระทําไดเมื่อไดรับอนุญาตจากเจาของหรือผูครอบครองอาคารหรือสถานที่แลว เวนแตไมมีเจาของหรือผูครอบครองอยูในเวลานั้นหรือเมื่ออยูภายใตการควบคุมของผูอํานวยการ ก็ใหกระทําไดแมเจาของหรือผูครอบครองจะไมไดอนุญาตในกรณีที่ทรัพยสินที่อยูในอาคารหรือสถานที่ตามวรรคหนึ่ง เปนสิ่งที่ทําใหเกิดสาธารณภัยไดงาย ใหเจาพนักงานมีอํานาจสั่งใหเจาของหรือผูครอบครองขนยายทรัพยสินนั้นออกจากอาคารหรือสถานที่ดังกลาวไดในกรณีที่เจาของหรือผูครอบครองไมปฏิบัติตามคําสั่งของเจาพนักงานตามวรรคสองใหเจาพนักงานมีอํานาจขนยายทรัพยสินนั้นไดตามความจําเปนแกการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยโดยเจาพนักงานไมตองรับผิดชอบบรรดาความเสียหายอันเกิดจากการกระทําดังกลาวมาตรา ๒๗ ในการบรรเทาสาธารณภัย ผูอํานวยการและเจาพนักงานซึ่งไดรับมอบหมายจากผูอํานวยการมีอํานาจหนาที่ดําเนินการดังตอไปนี้(๑) จัดใหมีสถานที ่ชั่วคราวเพื่อใหผูประสบภัยอยูอาศัยหรือรับการปฐมพยาบาล และการรักษาทรัพยสินของผูประสบภัย203


Appendixหนา ๑๓เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๒) จัดระเบียบการจราจรชั่วคราวในพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัยและพื้นที่ใกลเคียงเพื่อประโยชนในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๓) ปดกั้นมิใหผูไมมีสวนเกี่ยวของเขาไปในพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัยและพื้นที่ใกลเคียง(๔) จัดใหมีการรักษาความสงบเรียบรอยและปองกันเหตุโจรผูราย(๕) ชวยเหลือผูประสบภัย และชวยขนยายทรัพยสินในพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัยและพื้นที่ใกลเคียง เมื่อเจาของหรือผูครอบครองทรัพยสินรองขอผูอํานวยการหรือเจาพนักงานซึ่งไดรับมอบหมายจากผูอํานวยการจะจัดใหมีเครื่องหมายหรืออาณัติสัญญาณเพื่อใชในการกําหนดสถานที่หรือการดําเนินการใดตามวรรคหนึ่งก็ไดในการดําเนินการตาม (๒) (๓) (๔) และ (๕) ผูอํานวยการหรือเจาพนักงานจะดําเนินการเองหรือมอบหมายใหพนักงานฝายปกครองหรือตํารวจในพื้นที่เปนผูดําเนินการ หรือชวยดําเนินการก็ไดและในกรณีตาม (๕) จะมอบหมายใหองคการสาธารณกุศลเปนผูดําเนินการหรือชวยดําเนินการดวยก็ไดมาตรา ๒๘ เมื่อเกิดหรือใกลจะเกิดสาธารณภัยขึ้นในพื้นที่ใด และการที่ผูใดอยูอาศัยในพื้นที่นั้นจะกอใหเกิดภยันตรายหรือกีดขวางตอการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงาน ใหผูบัญชาการรองผูบัญชาการ ผูอํานวยการ และเจาพนักงานซึ่งไดรับมอบหมายมีอํานาจสั่งอพยพผูซึ่งอยูในพื้นที่นั้นออกไปจากพื้นที่ดังกลาว ทั้งนี้ เฉพาะเทาที่จําเปนแกการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยมาตรา ๒๙ เมื่อเกิดหรือใกลจะเกิดสาธารณภัยขึ้นในพื้นที่ใดและการอยูอาศัยหรือดําเนินกิจการใด ๆ ในพื้นที่นั้นจะเปนอันตรายอยางรายแรง ผูบัญชาการ รองผูบัญชาการ ผูอํานวยการกลางผูอํานวยการจังหวัด ผูอํานวยการอําเภอ และผูอํานวยการทองถิ่นโดยความเห็นชอบของผูอํานวยการอําเภอ จะประกาศหามมิใหบุคคลใด ๆ เขาไปอยูอาศัยหรือดําเนินกิจการใดในพื้นที่ดังกลาวก็ไดประกาศดังกลาวใหกําหนดระยะเวลาการหามและเขตพื้นที่ที่หามตามที่จําเปนไวดวยมาตรา ๓๐ ใหผูอํานวยการในเขตพื้นที่ที่รับผิดชอบสํารวจความเสียหายจากสาธารณภัยที่เกิดขึ้นและทําบัญชีรายชื่อผูประสบภัยและทรัพยสินที่เสียหายไวเปนหลักฐาน พรอมทั้งออกหนังสือรับรองใหผูประสบภัยไวเปนหลักฐานในการรับการสงเคราะหและฟนฟูหนังสือรับรองตามวรรคหนึ่งตองมีรายละเอียดเกี่ยวกับการสงเคราะหและการฟนฟูที่ผูประสบภัยมีสิทธิไดรับจากทางราชการ พรอมทั้งระบุหนวยงานที่เปนผูใหการสงเคราะหหรือฟนฟูและสถานที่ติดตอของหนวยงานนั้นไวดวย ทั้งนี้ ตามแบบที่อธิบดีกําหนด204


Appendixหนา ๑๔เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐บรรดาเอกสารราชการของผูประสบภัยที่สูญหายหรือเสียหายเนื่องจากสาธารณภัยที่เกิดขึ้นเมื่อผูประสบภัยรองขอตอองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัย หรือที่เปนภูมิลําเนาของผูประสบภัย ใหเปนหนาที่ขององคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่นั้นแจงใหหนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นที่เกี่ยวของทราบ และใหหนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นที่เกี่ยวของออกเอกสารทางราชการดังกลาวใหใหมตามหลักฐานที่อยูในความครอบครองของตนสงมอบใหแกผูประสบภัยหรือสงมอบผานทางองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่ที่เปนผูแจง ทั้งนี้โดยผูประสบภัยไมตองเสียคาธรรมเนียมหรือคาบริการ แมวาตามกฎหมายที่เกี่ยวกับการออกเอกสารราชการดังกลาวจะกําหนดใหตองเสียคาธรรมเนียมหรือคาบริการก็ตามในกรณีที่ผูประสบภัยหรือเจาของหรือผูครอบครองทรัพยสินรองขอหลักฐานเพื่อรับการสงเคราะหหรือบริการอื่นใด ใหผูอํานวยการในเขตพื้นที่ที่รับผิดชอบ ออกหนังสือรับรองใหตามระเบียบที่กระทรวงมหาดไทยกําหนดมาตรา ๓๑ ในกรณีที่เกิดสาธารณภัยรายแรงอยางยิ่ง นายกรัฐมนตรีหรือรองนายกรัฐมนตรีซึ่งนายกรัฐมนตรีมอบหมายมีอํานาจสั่งการผูบัญชาการ ผูอํานวยการ หนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นใหดําเนินการอยางหนึ่งอยางใดเพื่อปองกันและบรรเทาสาธารณภัยรวมตลอดทั้งใหความชวยเหลือแกประชาชนในพื้นที่ที่กําหนดก็ได โดยใหมีอํานาจเชนเดียวกับผูบัญชาการตามมาตรา ๑๓ และผูอํานวยการตามมาตรา ๒๑ และมีอํานาจกํากับและควบคุมการปฏิบัติหนาที่ของผูบัญชาการ รองผูบัญชาการ ผูอํานวยการ รองผูอํานวยการ ผูชวยผูอํานวยการ และเจาพนักงานในการดําเนินการตามมาตรา ๒๕ มาตรา ๒๘ และมาตรา ๒๙ ดวยเจาหนาที่ของรัฐผูใดไมปฏิบัติตามคําสั่งของนายกรัฐมนตรี หรือรองนายกรัฐมนตรี ตามวรรคหนึ่งใหถือวาเปนการปฏิบัติหนาที่โดยไมชอบหรือเปนความผิดวินัยอยางรายแรง แลวแตกรณีหมวด ๓การปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตกรุงเทพมหานครมาตรา ๓๒ ใหผูวาราชการกรุงเทพมหานครเปนผูอํานวยการกรุงเทพมหานครรับผิดชอบในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตกรุงเทพมหานคร และมีอํานาจหนาที่ ดังตอไปนี้205


Appendixหนา ๑๕เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐(๑) จัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานคร ซึ่งตองสอดคลองกับแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยแหงชาติ(๒) กํากับดูแลการฝกอบรมอาสาสมัครของกรุงเทพมหานคร(๓) จัดใหมีวัสดุ อุปกรณ เครื่องมือเครื่องใช ยานพาหนะ และสิ่งอื่น เพื่อใชในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามที่กําหนดในแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานคร(๔) ดําเนินการใหการสงเคราะหเบื้องตนแกผูประสบภัย หรือผูไดรับภยันตราย หรือเสียหายจากสาธารณภัย รวมตลอดทั้งการรักษาความสงบเรียบรอย และการปฏิบัติการใด ๆ ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๕) สนับสนุนและใหความชวยเหลือแกองคกรปกครองสวนทองถิ่นซึ่งมีพื้นที่ติดตอหรือใกลเคียงในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๖) ปฏิบัติหนาที่อื่นตามที่ผูบัญชาการและผูอํานวยการกลางมอบหมายเพื่อประโยชนในการปฏิบัติหนาที่ตาม (๓) (๔) และ (๕) ใหผูอํานวยการกรุงเทพมหานครมีอํานาจสั่งการสวนราชการและหนวยงานของกรุงเทพมหานคร รวมทั้งประสานกับหนวยงานของรัฐและองคกรปกครองสวนทองถิ่นที่เกี่ยวของในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย เพื ่อใหเปนไปตามแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานคร และมีอํานาจสั่งการ ควบคุม และกํากับดูแลการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานและอาสาสมัครของกรุงเทพมหานครใหเปนไปตามพระราชบัญญัตินี้มาตรา ๓๓ แผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานครตามมาตรา ๓๒ (๑)อยางนอยตองมีสาระสําคัญตามมาตรา ๑๒ และสาระสําคัญอื่นดังตอไปนี้(๑) การจัดตั้งศูนยอํานวยการเฉพาะกิจเมื่อเกิดสาธารณภัยขึ้น โครงสรางและผูมีอํานาจสั่งการดานตาง ๆ ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๒) แผนและขั้นตอนในการจัดหาวัสดุ อุปกรณ เครื่องมือเครื่องใช และยานพาหนะเพื่อใชในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๓) แผนและขั้นตอนในการจัดใหมีเครื่องหมายสัญญาณ หรือสิ่งอื่นใด ในการแจงใหประชาชนไดทราบถึงการเกิดหรือจะเกิดสาธารณภัย(๔) แผนปฏิบัติการในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตกรุงเทพมหานคร(๕) แผนการประสานงานกับองคการสาธารณกุศลในเขตกรุงเทพมหานคร206


Appendixหนา ๑๖เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐มาตรา ๓๔ ในการจัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานคร ใหผูวาราชการกรุงเทพมหานครแตงตั้งคณะกรรมการขึ้นคณะหนึ่ง ประกอบดวย(๑) ผูวาราชการกรุงเทพมหานคร เปนประธานกรรมการ(๒) ปลัดกรุงเทพมหานคร เปนรองประธานกรรมการ(๓) กรรมการอื่น ประกอบดวย(ก) ผูแทนสวนราชการหรือหนวยงานของกรุงเทพมหานครตามจํานวนที่ผูวาราชการกรุงเทพมหานครเห็นสมควรแตงตั้ง(ข) ผูแทนกรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(ค) ผูแทนองคการสาธารณกุศลในเขตกรุงเทพมหานครตามจํานวนที่ผูวาราชการกรุงเทพมหานครเห็นสมควรแตงตั้ง(ง) ผูแทนชุมชนในเขตกรุงเทพมหานครตามจํานวนที่ผูวาราชการกรุงเทพมหานครเห็นสมควรแตงตั้งใหแตงตั้งผูแทนกระทรวงกลาโหมและผูแทนสถาบันการศึกษาระดับอุดมศึกษาเปนที่ปรึกษาหรือกรรมการตามจํานวนที่ผูวาราชการกรุงเทพมหานครเห็นสมควรแตงตั้งใหคณะกรรมการตามวรรคหนึ่งมีหนาที่จัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานครเสนอผูวาราชการกรุงเทพมหานครเพื่อประกาศใชตอไปการปฏิบัติหนาที่และการประชุมของคณะกรรมการตามวรรคหนึ่ง ใหเปนไปตามที่ผูวาราชการกรุงเทพมหานครกําหนดมาตรา ๓๕ ใหปลัดกรุงเทพมหานครเปนรองผูอํานวยการกรุงเทพมหานครมีหนาที่ชวยเหลือผูอํานวยการกรุงเทพมหานครในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย และปฏิบัติหนาที่อื่นตามที่ผูอํานวยการกรุงเทพมหานครมอบหมาย และใหนําความในวรรคสองของมาตรา ๓๒ มาใชบังคับกับการปฏิบัติหนาที่ของรองผูอํานวยการกรุงเทพมหานครดวยโดยอนุโลมความรับผิดชอบ และอํานาจหนาที่ของปลัดกรุงเทพมหานครในฐานะรองผูอํานวยการกรุงเทพมหานครตามวรรคหนึ่ง ปลัดกรุงเทพมหานครจะมอบหมายใหรองปลัดกรุงเทพมหานครเปนผูชวยปฏิบัติดวยก็ได207


Appendixหนา ๑๗เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐มาตรา ๓๖ ใหผูอํานวยการเขตในแตละเขตของกรุงเทพมหานคร เปนผูชวยผูอํานวยการกรุงเทพมหานครรับผิดชอบและปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตของตน และมีหนาที่ชวยเหลือผูอํานวยการกรุงเทพมหานครตามที่ไดรับมอบหมายในการปฏิบัติหนาที่ของผูชวยผูอํานวยการกรุงเทพมหานครตามวรรคหนึ่ง ใหผูชวยผูอํานวยการกรุงเทพมหานคร มีอํานาจสั่งการสวนราชการและหนวยงานของกรุงเทพมหานครที่อยูในเขตพื้นที่ใหชวยเหลือหรือรวมมือในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานคร และมีอํานาจสั่งการ ควบคุม และกํากับดูแลการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานและอาสาสมัครของกรุงเทพมหานครใหเปนไปตามพระราชบัญญัตินี้ความรับผิดชอบ และอํานาจหนาที่ของผูอํานวยการเขตในฐานะผูชวยผูอํานวยการกรุงเทพมหานครตามวรรคหนึ่งและวรรคสอง ผูอํานวยการเขตจะมอบหมายใหผูชวยผูอํานวยการเขตเปนผูชวยปฏิบัติดวยก็ไดมาตรา ๓๗ เมื่อเกิดหรือคาดวาจะเกิดสาธารณภัยขึ้นในเขตกรุงเทพมหานคร ใหผูชวยผูอํานวยการกรุงเทพมหานครมีหนาที่เขาดําเนินการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยโดยเร็ว และแจงใหผูอํานวยการกรุงเทพมหานครและรองผูอํานวยการกรุงเทพมหานครทราบทันทีใหนําความในมาตรา ๒๑ วรรคสอง มาตรา ๒๒ วรรคสามและวรรคสี่ มาตรา ๒๔มาตรา ๒๕ มาตรา ๒๖ มาตรา ๒๗ มาตรา ๒๘ มาตรา ๒๙ และมาตรา ๓๐ มาใชบังคับกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในเขตกรุงเทพมหานครดวยโดยอนุโลมมาตรา ๓๘ ในกรณีที่มีความจําเปนที่จะตองไดรับความชวยเหลือจากเจาหนาที่ของรัฐผูใดหรือหนวยงานของรัฐใดในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยที่เกิดขึ้นในเขตกรุงเทพมหานครใหผูอํานวยการกรุงเทพมหานครแจงใหเจาหนาที่ของรัฐผูนั้นหรือหนวยงานของรัฐนั้นทราบ และเมื่อเจาหนาที่ของรัฐผูนั้นหรือหนวยงานของรัฐนั้น แลวแตกรณี ไดรับแจงแลว ใหเปนหนาที่ที่จะตองดําเนินการใหความชวยเหลือในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยที่เกิดขึ้นในเขตกรุงเทพมหานครตามที่ไดรับแจงโดยเร็ว208


Appendixหนา ๑๘เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐หมวด ๔เจาพนักงานและอาสาสมัครมาตรา ๓๙ ใหผูอํานวยการมีอํานาจแตงตั้งเจาพนักงานเพื่อปฏิบัติหนาที่ดังตอไปนี้(๑) ผูอํานวยการกลาง มีอํานาจแตงตั้งเจาพนักงานใหปฏิบัติหนาที่ไดทั่วราชอาณาจักร(๒) ผูอํานวยการจังหวัด มีอํานาจแตงตั้งเจาพนักงานใหปฏิบัติหนาที่ไดในเขตจังหวัด(๓) ผูอํานวยการอําเภอ มีอํานาจแตงตั้งเจาพนักงานใหปฏิบัติหนาที่ไดในเขตอําเภอ(๔) ผูอํานวยการทองถิ่น มีอํานาจแตงตั้งเจาพนักงานใหปฏิบัติหนาที่ไดในเขตองคกรปกครองสวนทองถิ่นแหงพื้นที่(๕) ผูอํานวยการกรุงเทพมหานคร มีอํานาจแตงตั้งเจาพนักงานใหปฏิบัติหนาที่ไดในเขตกรุงเทพมหานครหลักเกณฑการแตงตั้งและการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานใหเปนไปตามระเบียบที่กระทรวงมหาดไทยกําหนดมาตรา ๔๐ ในกรณีที่ผูอํานวยการหรือเจาพนักงานพบเห็นวาอาคารหรือสถานที่ใดมีสภาพที่อาจกอใหเกิดสาธารณภัยไดโดยงายหรือมีวัสดุหรือสิ่งของใดในอาคารหรือสถานที่ใดที่อาจกอใหเกิดสาธารณภัยได ใหแจงพนักงานเจาหนาที่ตามกฎหมายวาดวยการนั้นทราบเพื่อตรวจสอบตามอํานาจหนาที่ตอไปมาตรา ๔๑ ใหผูอํานวยการจัดใหมีอาสาสมัครในพื้นที่ที่รับผิดชอบ เพื่อปฏิบัติหนาที่ดังตอไปนี้(๑) ใหความชวยเหลือเจาพนักงานในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย(๒) ปฏิบัติหนาที่อื่นตามที่ผูอํานวยการมอบหมายและตามระเบียบที่กระทรวงมหาดไทยกําหนดการบริหารและกํากับดูแลอาสาสมัคร การคัดเลือก การฝกอบรม สิทธิ หนาที่และวินัยของอาสาสมัคร ใหเปนไปตามระเบียบที่กระทรวงมหาดไทยกําหนดมาตรา ๔๒ ในกรณีที่องคการสาธารณกุศลหรือบุคคลใดเขามาชวยเหลือการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานในระหวางเกิดสาธารณภัย ใหผูอํานวยการหรือเจาพนักงานที่ไดรับมอบหมายมีอํานาจ209


Appendixหนา ๑๙เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐มอบหมายภารกิจหรือจัดสถานที่ใหองคการสาธารณกุศลและบุคคลดังกลาวในการใหความชวยเหลือไดตามที่เห็นสมควรเพื่อใหการชวยเหลือหรือบรรเทาสาธารณภัยเปนไปอยางมีประสิทธิภาพ ใหผูอํานวยการแจงใหองคการสาธารณกุศลและบุคคล ที่มีวัตถุประสงคในการใหความชวยเหลือผูประสบภัยที่อยูในพื้นที่ที่รับผิดชอบ ทราบถึงแนวทางการปฏิบัติตามแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยจังหวัดหรือแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยกรุงเทพมหานคร และวิธีการประสานงานในการปฏิบัติหนาที่หมวด ๕เบ็ดเตล็ดมาตรา ๔๓ ใหผูบัญชาการ รองผูบัญชาการ ผูอํานวยการ รองผูอํานวยการ ผูชวยผูอํานวยการ และเจาพนักงานซึ่งปฏิบัติการตามหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามพระราชบัญญัตินี้ เปนเจาพนักงานตามประมวลกฎหมายอาญา และในการปฏิบัติการตามหนาที่ดังกลาว หากไดดําเนินการไปตามอํานาจหนาที่ และไดกระทําไปพอสมควรแกเหตุและมิไดประมาทเลินเลออยางรายแรง ใหผูกระทําการนั้นพนจากความผิดและความรับผิดทั้งปวงในการดําเนินการตามวรรคหนึ่ง หากเกิดความเสียหายแกทรัพยสินของผูใดซึ่งมิใชเปนผูไดรับประโยชนจากการบําบัดภยันตรายจากสาธารณภัยนั้น ใหทางราชการชดเชยความเสียหายที่เกิดขึ้นใหแกผูนั้นตามหลักเกณฑและวิธีการที่กําหนดในกฎกระทรวงมาตรา ๔๔ ในกรณีที ่ขอเท็จจริงเกี่ยวกับสาธารณภัยหรือการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยที่ไดกําหนดไวในแผนตาง ๆ ตามพระราชบัญญัตินี้เปลี่ยนแปลงไปหรือแผนดังกลาวไดใชมาครบหาปแลว ใหเปนหนาที่ของผูซึ่งรับผิดชอบในการจัดทําแผน ปรับปรุง หรือทบทวนแผน ที่อยูในความรับผิดชอบของตนโดยเร็วมาตรา ๔๕ ใหมีเครื่องแบบ เครื่องหมาย และบัตรประจําตัว สําหรับเจาพนักงานและอาสาสมัครเพื่อแสดงตัวขณะปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย210


Appendixหนา ๒๐เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐เครื่องแบบ เครื่องหมาย และบัตรประจําตัวตามวรรคหนึ่ง ใหเปนไปตามแบบที่กระทรวงมหาดไทยกําหนดในกรณีที่ผูบัญชาการ รองผูบัญชาการ ผูอํานวยการ หรือผูชวยผูอํานวยการประสงคจะแตงเครื่องแบบ ก็ใหกระทําไดตามแบบที่กระทรวงมหาดไทยกําหนดมาตรา ๔๖ การดําเนินการตามมาตรา ๒๑ มาตรา ๒๒ มาตรา ๒๕ มาตรา ๒๘ หรือมาตรา ๒๙ ภายในเขตทหารหรือที่เกี่ยวกับกิจการ เจาหนาที่ หรือทรัพยสินในราชการทหารใหเปนไปตามความตกลงเปนหนังสือรวมกันระหวางผูอํานวยการจังหวัดหรือผูอํานวยการกรุงเทพมหานครและผูบังคับบัญชาของทหารในเขตพื้นที่ที่เกี่ยวของ เวนแตเปนกรณีการสั่งการของนายกรัฐมนตรีหรือรองนายกรัฐมนตรี ตามมาตรา ๓๑มาตรา ๔๗ บรรดาคาปรับตามพระราชบัญญัตินี้ใหเปนรายไดของทองถิ่น เพื่อนําไปใชจายเกี่ยวกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยของทองถิ่นนั้นมาตรา ๔๘ หามมิใหบุคคลที่ปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย นําเอาความลับ ซึ่งตนไดมาในฐานะนั้น ๆ ไปใชเพื่อประโยชนสวนตัว หรือเปดเผยความลับนั้นแกผูอื่นโดยไมมีอํานาจโดยชอบดวยกฎหมายในประการที่นาจะเกิดความเสียหายแกผูหนึ่งผูใด หรือแกการประกอบอาชีพของผูนั้นหมวด ๖บทกําหนดโทษมาตรา ๔๙ ผูใดไมปฏิบัติตามคําสั่งหรือขัดขวางการปฏิบัติหนาที่ของผูอํานวยการตามมาตรา ๒๑ ตองระวางโทษจําคุกไมเกินสามเดือน หรือปรับไมเกินหกพันบาท หรือทั้งจําทั้งปรับมาตรา ๕๐ ผูใดขัดขวางการดําเนินการของเจาพนักงานตามมาตรา ๒๔ หรือการปฏิบัติตามคําสั่งของผูอํานวยการตามมาตรา ๒๕ หรือขัดขวางการปฏิบัติหนาที่ของเจาพนักงานตามมาตรา ๒๖วรรคสาม ตองระวางโทษจําคุกไมเกินหนึ่งป หรือปรับไมเกินสองหมื่นบาท หรือทั้งจําทั้งปรับมาตรา ๕๑ ผูใดเขาไปในพื้นที่ที่ปดกั้นตามมาตรา ๒๗ (๓) โดยไมมีอํานาจหนาที่ตามกฎหมายหรือตามคําสั่งของผูอํานวยการ ตองระวางโทษจําคุกไมเกินสามเดือน หรือปรับไมเกินหกพันบาทหรือทั้งจําทั้งปรับ211


Appendixหนา ๒๑เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐ในกรณีที่ผูกระทําความผิดตามวรรคหนึ่งเปนเจาของหรือผูครอบครองอาคารหรือสถานที่ที่อยูในพื้นที่ที่ปดกั้นตามมาตรา ๒๗ (๓) ผูอํานวยการหรือเจาพนักงานซึ่งไดรับมอบหมายจากผูอํานวยการจะเรียกบุคคลดังกลาวมาตักเตือนแทนการดําเนินคดีก็ไดมาตรา ๕๒ ผูใดฝาฝนหรือไมปฏิบัติตามคําสั่งอพยพบุคคลออกจากพื้นที่ตามมาตรา ๒๘ถาคําสั่งอพยพนั้นเพื่อเปนการปองกันการกีดขวางการปฏิบัติหนาที่ในการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยหรือฝาฝนคําสั่งตามมาตรา ๒๙ ตองระวางโทษจําคุกไมเกินหนึ่งเดือน หรือปรับไมเกินสองพันบาทหรือทั้งจําทั้งปรับมาตรา ๕๓ ในขณะเกิดสาธารณภัย ผูใดแตงเครื่องแบบหรือประดับเครื่องหมายของอาสาสมัครหรือขององคการสาธารณกุศล และเขาไปในพื้นที่ที่เกิดสาธารณภัย โดยมิไดเปนอาสาสมัครหรือสมาชิกองคการสาธารณกุศลดังกลาว เพื่อใหบุคคลอื่นเชื่อวาตนเปนบุคคลดังกลาวตองระวางโทษจําคุกไมเกินสามเดือน หรือปรับไมเกินหกพันบาท หรือทั้งจําทั้งปรับมาตรา ๕๔ ผูใดเรี่ยไรหรือหาประโยชนอื่นใดสําหรับตนเองหรือผูอื่นโดยมิชอบโดยแสดงตนวาเปนอาสาสมัคร เจาพนักงานหรือผู ดํารงตําแหนงอื่นใดในหนวยงานที่เกี่ยวกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย หรือใชชื่อของหนวยงานที่เกี่ยวกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในการดําเนินการดังกลาว ตองระวางโทษจําคุกไมเกินหนึ่งป หรือปรับไมเกินสองหมื่นบาท หรือทั้งจําทั้งปรับมาตรา ๕๕ ผูใดฝาฝนมาตรา ๔๘ ตองระวางโทษจําคุกไมเกินหกเดือน หรือปรับไมเกินสองพันบาท หรือทั้งจําทั้งปรับบทเฉพาะกาลมาตรา ๕๖ ใหหนวยงานหรือบุคคลที่มีหนาที่จัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามพระราชบัญญัตินี้ ดําเนินการจัดทําแผนการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยตามพระราชบัญญัตินี้ใหแลวเสร็จภายในสองปนับแตวันที่พระราชบัญญัตินี้ใชบังคับ การดําเนินการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในระหวางที่ยังจัดทําแผนดังกลาวไมแลวเสร็จใหเปนไปตามแผนที่เกี่ยวของที่ใชบังคับอยูในวันกอนวันที่พระราชบัญญัตินี้ใชบังคับ212


Appendixหนา ๒๒เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐มาตรา ๕๗ ใหบรรดาศูนยปองกันและบรรเทาสาธารณภัยเขต กรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัย เปนศูนยปองกันและบรรเทาสาธารณภัยที่จัดตั้งขึ้นตามมาตรา ๑๑ วรรคสี่แหงพระราชบัญญัตินี้มาตรา ๕๘ บรรดากฎกระทรวง ระเบียบ ขอบังคับ ประกาศ หรือคําสั่งที่ออกตามพระราชบัญญัติปองกันภัยฝายพลเรือน พ.ศ. ๒๕๒๒ และพระราชบัญญัติปองกันและระงับอัคคีภัยพ.ศ. ๒๕๔๒ ซึ่งใชบังคับอยูในวันที่พระราชบัญญัตินี้ใชบังคับ ใหยังใชบังคับไดตอไปเทาที่ไมขัดหรือแยงกับบทบัญญัติแหงพระราชบัญญัตินี้ผูรับสนองพระบรมราชโองการพลเอก สุรยุทธ จุลานนทนายกรัฐมนตรี213


Appendixหนา ๒๓เลม ๑๒๔ ตอนที่ ๕๒ ก ราชกิจจานุเบกษา ๗ กันยายน ๒๕๕๐หมายเหตุ :- เหตุผลในการประกาศใชพระราชบัญญัติฉบับนี้ คือ เนื่องจากการปฏิรูประบบราชการตามพระราชบัญญัติปรับปรุง กระทรวง ทบวง กรม พ.ศ. ๒๕๔๕ ไดจัดตั้งกรมปองกันและบรรเทาสาธารณภัยขึ้นเปนสวนราชการสังกัดกระทรวงมหาดไทย มีภารกิจหลักในการดําเนินการปองกัน บรรเทา ฟนฟูสาธารณภัยและอุบัติภัย ซึ่งมีผลทําใหงานดานสาธารณภัยและงานดานอุบัติภัย ที่เดิมดําเนินการโดยกองปองกันภัยฝายพลเรือน กรมการปกครอง กระทรวงมหาดไทย และสํานักงานคณะกรรมการปองกันอุบัติภัยแหงชาติสํานักงานปลัดสํานักนายกรัฐมนตรี สํานักนายกรัฐมนตรี มารวมอยูในความรับผิดชอบของหนวยงานเดียวกันนอกจากนี้กฎหมายวาดวยการปองกันและระงับอัคคีภัย เปนกฎหมายที่มีสาระสําคัญและรายละเอียดเกี่ยวกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัยในดานของอัคคีภัย รวมทั้ง หนวยงานที่จะตองปฏิบัติเพื่อใหเปนไปตามกฎหมายดังกลาวก็เปนหนวยงานเดียวกัน เพื่อใหการปฏิบัติงานเปนไปอยางมีประสิทธิภาพและแนวทางเดียวกัน ตลอดจนเพื่อใหเกิดความเปนเอกภาพในการอํานวยการและบริหารจัดการเกี่ยวกับการปองกันและบรรเทาสาธารณภัย จึงเห็นสมควรนํากฎหมายวาดวยการปองกันภัยฝายพลเรือน และกฎหมายวาดวยการปองกันและระงับอัคคีภัย มาบัญญัติไวรวมกัน จึงจําเปนตองตราพระราชบัญญัตินี้214


AppendixAppendix 3 : タイ 3仏 暦 2504 年 (1961 年 ) 古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 ( 東 京 文 化 財 研 究 所 文 化 遺 産 国 際 協 力 センターによる 和 訳 )仏 暦 2504 年 (1961 年 ) 古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法BHUMIBOL ADULYADEJ 国 王現 国 王 治 世 16 年 目 の B.E. 2504 年 8 月 2 日1Bhumibol Adulyadej 国 王 陛 下 は、 仁 慈 深 く 宣 する。古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 を 改 訂 することは 適 切 である。よって 国 会 の 役 割 を 果 たす 憲 法 制 定 議 会 (Constituent Assembly) の 助 言 と 同 意 により、 国 王 により 制 定 される。 1 本 法 は「 古 代 記 念 物 (ancient monuments)、 遺 物 (antiques)、 芸 術 品 (objects of art) 及 び 国 立 博 物 館 (National Museums) 法 、B.E. 2504 年 (1961 年 )」と 称 する。 2 本 法 は、その 政 府 官 報 の 公 表 日2 から 三 十 日 が 経 過 した 後 、 効 力 を 有 する。 3 1. 以 下 は 廃 止 されるものとする。(1) 古 代 記 念 物 、 芸 術 品 、 遺 物 及 び 国 立 博 物 館 法 、B.E. 2477 年(2) 古 代 記 念 物 、 芸 術 品 、 遺 物 及 び 国 立 博 物 館 法 ( 第 2)、B.E. 2486 年2. 本 法 規 定 事 項 を 扱 うか、 本 法 と 相 反 するか、 又 は 本 法 と 矛 盾 する 他 の 全 ての 法 律 、 細 則 (bye-laws) 及 び 規 則(regulations) は、 本 法 に 置 換 される。 4 1. 本 法 において、「 古 代 記 念 物 」 3 とは、その 年 代 、 建 築 上 の 特 性 又 は 歴 史 的 証 拠 により 芸 術 、 歴 史 又 は 考 古 学 の分 野 において 有 益 な 不 動 産 を 意 味 し、 考 古 学 記 念 物 (archaeological sites)、 史 跡 (historic sites) 及 び 歴 史 的 公 園 である 場 所 を 含 む。2. 「 遺 物 」とは、 人 間 又 は 自 然 の 何 れかが 作 ったものであるか、 或 いは 年 代 、 制 作 特 徴 又 は 歴 史 的 証 拠 により 芸 術 、歴 史 又 は 考 古 学 の 分 野 で 有 益 な 古 代 記 念 物 、 人 骨 又 は 動 物 骨 格 の 一 部 である 古 代 (archaic) 動 産 を 意 味 する。3. 「 芸 術 品 」 4 とは、 芸 術 分 野 において 高 い 価 値 を 有 する 熟 練 技 能 により 巧 みに 制 作 されたものを 意 味 する。4. 「 複 製 遺 物 」 5 とは、 本 法 に 基 づき 登 録 された 芸 術 品 又 はその 特 定 の 一 部 の 複 製 であるか、 或 いは 芸 術 局(Department of Fine Arts) が 所 蔵 するものを 意 味 する。5. 「 複 製 芸 術 品 」 6 とは、 本 法 に 基 づき 登 録 された 芸 術 品 又 はその 特 定 の 一 部 の 複 製 であるか、 或 いは 芸 術 局 が 所蔵 するものを 意 味 する。6. 「 複 製 」 7 とは、その 原 物 の 大 きさ、 特 徴 又 は 材 質 にかかわらず、 原 物 と 同 じになるよう に、あらゆる 手 法 で 模 造 、模 写 又 は 複 写 することを 意 味 する。7. 「 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 (competent official)」とは、 大 臣 により 本 法 執 行 の 為 に 任 命 される 者 を 意 味 する。8. 「 長 官 (Director-General)」とは、 芸 術 局 の 長 官 を 意 味 する。9. 「 大 臣 」とは、 本 法 執 行 に 責 任 を 持 ち 且 つ 監 督 権 を 有 する 大 臣 を 意 味 する。 5 81. 本 法 に 基 づく 長 官 による 許 可 証 又 は 免 許 証 の 発 行 に 関 して 長 官 は、 局 長 又 はそれと 同 等 以 上 の 地 位 にある 芸 術局 の 政 府 公 務 員 (government official) に、 自 らの 代 理 として 行 動 することを 委 託 するか、 又 はいずれかの 地 方 の 県知 事 (Changwat Governor) にも、その 地 方 において 自 らの 代 理 として 行 動 することを 委 託 することができる。その215


Appendix委 託 は 政 府 官 報 に 公 示 されなければならない。2. 前 項 に 従 い、いずれかの 地 方 の 県 知 事 への 権 限 委 託 が 公 示 された 後 は、 許 可 証 又 は 免 許 証 の 申 請 はその 地 方 の県 知 事 に 提 出 されなければならない。 6 91. 教 育 大 臣 は、 本 法 執 行 に 責 任 及 び 監 督 権 を 有 し、 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 を 任 命 する 権 限 、 及 び 本 法 に 添 付 された 別 表 に 定 められた 率 を 超 えない 手 数 料 を 規 定 する 省 令 を 発 し、 手 数 料 の 免 除 を 許 可 し、 本 法 執 行 の 為 のその 他の 活 動 を 規 定 する 省 令 を 発 する 権 限 を 有 する。2. 省 令 は、 政 府 官 報 に 公 示 され 次 第 、 効 力 を 有 する。第 一 章 古 代 記 念 物 7 1. 長 官 は、 本 法 において 古 代 記 念 物 を 保 存 、 維 持 及 び 管 理 する 為 に、 政 府 官 報 での 公 示 により、 自 らが 適 切 と 考える 古 代 記 念 物 を 登 録 せしめ、 自 らが 適 切 と 考 える 地 区 (area of land) の 土 地 をその 敷 地 (compound) であると 決 定する 権 限 を 有 する。その 地 区 も 古 代 記 念 物 とみなされる。その 取 消 及 び 修 正 は 同 様 に 行 なうことができる。2. 前 項 により 登 録 される 古 代 記 念 物 が 何 人 かに 所 有 又 は 合 法 的 占 有 されている 場 合 、 長 官 は その 所 有 者 又 は 占 有者 に 書 面 で 通 知 しなければならない。 所 有 者 又 は 占 有 者 は 不 服 ある 場 合 、 長 官 の 通 知 を 知 った 日 から 三 十 日 以 内 に、場 合 に 応 じて 登 録 又 はその 地 区 を 古 代 記 念 物 として 決 定 することの 中 止 を 長 官 に 請 求 する 裁 判 所 命 令 に 訴 える 権利 を 有 する。 所 有 者 又 は 占 有 者 が 裁 判 所 命 令 に 訴 えない 場 合 、 又 は 訴 訟 終 結 時 に 裁 判 所 が 請 求 を 却 下 する 命 令 を出 す 場 合 、 長 官 は 登 録 手 続 を 続 行 する。 7 2 101. 長 官 から 許 可 証 を 取 得 していない 限 り、 何 人 も 長 官 が 登 録 した 古 代 記 念 物 の 敷 地 内 に、 建造 物 建 設 の 管 理 に 関 する 法 律 (law on the control of building construction) に 従 い 建 造 物 を 建 設 することはしてはならない。2. 無 許 可 で 建 造 物 が 建 てられている 場 合 、 長 官 は 建 設 を 中 止 させ、 命 令 受 領 日 から 六 十 日 以 内 にその 建 造 物 の 全体 又 は 一 部 を 取 り 壊 す 権 限 を 有 する。3. 長 官 の 命 令 に 従 い 建 設 を 中 止 するか、 或 いは 建 造 物 の 全 体 又 は 一 部 を 取 り 壊 すことを 拒 否 する 者 は、 担 当 官 の命 令 (order of official) を 拒 否 する 罪 を 免 れない。 長 官 は 建 造 物 の 全 体 又 は 一 部 を 取 り 壊 さなければならない。 所 有者 、 占 有 者 又 は 建 設 業 者 は 損 害 を 主 張 して、 取 壊 しを 実 行 する 者 に 対 して 提 訴 の 手 続 に 入 る 権 利 を 有 さず。4. 所 有 者 が、 取 壊 し 完 了 日 から 十 五 日 以 内 に 古 代 記 念 物 敷 地 から 取 り 壊 された 資 材 を 除 去 しない 場 合 、 長 官 はかかる 資 材 を 競 売 により 売 却 する。 売 却 金 は、 取 壊 し 及 び 売 却 費 用 を 控 除 した 後 、 資 材 の 所 有 者 に 返 却 されなければならない。 8 本 法 発 効 日 以 前 に、 古 代 記 念 物 、 芸 術 品 、 遺 物 及 び 国 立 博 物 館 に 関 する 法 律 に 基 づき、 長 官 により 政 府 官 報 に 列挙 及 び 公 示 された 全 ての 古 代 記 念 物 も、 本 法 に 基 づき 登 録 された 古 代 記 念 物 とみなされる。 9 何 人 かの 所 有 又 は 合 法 的 に 占 有 する 登 録 済 古 代 記 念 物 が、 何 らかの 方 法 で 劣 化 、 荒 廃 又 は 損 傷 しつつある 場 合 、その 所 有 者 又 は 占 有 者 はその 発 生 に 気 づいた 日 から 三 十 日 以 内 にその 劣 化 、 荒 廃 又 は 損 傷 を 長 官 に 通 知 しなければならない。 9 2 111. 第 9 条 に 基 づく 古 代 記 念 物 で 通 常 業 務 として 入 場 料 又 はその 他 の 料 金 を 徴 収 する 為 に 一 般 公 開 しているか、 或いはその 古 代 記 念 物 から 何 らかの 利 益 を 生 じている 場 合 、その 所 有 者 又 は 占 有 者 は、 長 官 により 規 定 される 通 り216


Appendixに 修 理 費 の 全 部 又 は 一 部 を 負 担 する。2. 前 項 の 修 理 費 を 決 定 するに 際 して、 長 官 は 三 名 を 下 まわらぬ 数 の 委 員 を 任 命 しなければならない。 所 有 者 又 は占 有 者 もその 構 成 員 としなければならない。 10 12長 官 の 命 令 による 場 合 又 は 長 官 から 許 可 証 を 得 た 場 合 を 除 き、 何 人 も 古 代 記 念 物 の 全 体 又 は 一 部 を 修 理 、 変 更 、改 築 、 取 壊 、 増 築 、 破 壊 、 除 去 し、 又 は 古 代 記 念 物 敷 地 内 で 発 掘 し、 建 造 物 を 建 設 してはならない。 許 可 証 に 条件 がついている 場 合 、それを 遵 守 しなければならな い。 10 2 131. 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 は、 古 代 記 念 物 の 全 部 又 は 一 部 の 修 理 、 変 更 、 改 築 、 取 壊 し、 増 築 、 破 壊 、 除 去 、 或 いは 古 代 記 念 物 敷 地 内 での 発 掘 又 は 建 造 物 の 建 設 が 行 われているか 否 かについて 査 察 する 為 に、いかなる 古 代 記 念物 にも 立 ち 入 る 権 限 を 有 する。 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 はこの 為 、 古 代 記 念 物 敷 地 内 で 発 掘 が 行 われたと 合 理 的 に疑 われる 物 品 を 押 収 するか 又 は 差 押 さえる 権 限 を 有 する。2. 前 項 の 査 察 、 押 収 又 は 差 押 は、 日 出 から 日 没 までの 間 に 行 わなければならない。 査 察 、 押 収 又 は 差 押 の 後 、それがバンコク 首 都 圏 で 行 われた 場 合 は 長 官 に、その 他 の 県 で 行 われた 場 合 、その 県 知 事 及 び 長 官 に 報 告 書 を 提 出する。 11 長 官 は 全 ての 登 録 済 古 代 記 念 物 に 関 して、それが 所 有 又 は 合 法 的 に 占 有 されているものであっても、 管 轄 権 を 有する 係 官 又 はその 他 の 者 に 命 じて、 修 理 させるか 又 はあらゆる 手 段 によりその 原 状 への 修 復 又 は 保 存 の 為 にあらゆることを 行 なわせる 権 限 を 有 する。 但 し、その 所 有 者 又 は 占 有 者 に 先 ず 知 らせることを 条 件 とする。 12 1. 登 録 済 古 代 記 念 物 を 譲 渡 する 場 合 、 譲 渡 人 は 譲 受 人 の 氏 名 及 び 住 所 、 及 び 譲 渡 日 を 明 記 し た 情 報 書 を 譲 渡 日 から 三 十 日 以 内 に 長 官 に 通 知 しなければならない。 2. 相 続 又 は 遺 言 により 登 録 済 古 代 遺 産 の 所 有 権 を 取 得 する 者 は、取 得 日 から 六 十 日 以 内 にその 取 得 を 長 官 に 通 知 しなければならない。 同 一 古 代 遺 産 の 所 有 権 を 取 得 する 者 が 多 数いて、 所 有 権 取 得 の 通 知 を 委 託 された 共 同 所 有 者 の 一 人 が 本 法 の 定 めた 期 間 内 に 通 知 する 場 合 、 共 同 所 有 者 全 員がその 通 知 を 行 なったとみなされる。 13 141. 登 録 済 古 代 記 念 物 の 状 態 、 安 全 、 清 潔 及 び 整 頓 しておくことが 適 切 であるとみなされる 場 合 、 大 臣 は 入 場 中 の入 館 者 の 行 動 に 関 する 省 令 を 発 する 権 限 を 有 し、 入 場 料 又 はその 他 の 料 金 を 定 めることができる。2. 入 場 料 又 はその 他 の 料 金 を 課 すような 個 人 が 所 有 又 は 合 法 的 に 占 有 する 古 代 記 念 物 への 訪 問 を 企 画 する 場 合 、それを 書 面 で 先 に 長 官 に 通 知 し、 長 官 が 政 府 官 報 に 公 示 した 規 則 、 手 続 及 び 条 件 を 遵 守 しなければならない。 13 2 15教 育 を 促 進 し 文 化 及 び 芸 術 を 宣 伝 するのに 適 切 と 看 做 される 場 合 、 長 官 は、 個 人 により 所 有 又 は 合 法 的 に 占 有 されていない 登 録 済 古 代 記 念 物 の 敷 地 内 から 利 益 を 上 げる 活 動 を 行 なう 許 可 証 を 個 人 に 与 える 権 限 を 有 する。 被 許可 者 はその 活 動 で 発 生 する 全 ての 費 用 を 負 担 し、 所 有 権 料 、 送 金 手 数 料 、 及 びその 他 の 手 数 料 を 芸 術 局 に 支 払 わなければならない。 受 領 金 は 長 官 が 政 府 官 報 に 公 示 する 規 則 (rules) に 従 い 考 古 学 基 金 に 繰 り 入 れられなければならない。第 二 章 遺 物 及 び 芸 術 品 14 161. 芸 術 局 が 所 有 していない 遺 物 又 は 芸 術 品 が、 芸 術 、 歴 史 又 は 考 古 学 の 分 野 において 有 益 であり 特 別 の 価 値 を 有217


Appendixすると 長 官 が 考 える 場 合 、 長 官 は 政 府 官 報 での 公 示 によりその 遺 物 又 は 芸 術 品 を 登 録 せしめる 権 限 を 有 する。2. 登 録 の 如 何 を 問 わず 遺 物 又 は 登 録 済 の 芸 術 品 が、 国 家 財 産 として 保 存 されるべきだと 長 官 が 考 える 場 合 、 長 官は 政 府 官 報 での 公 示 によりその 遺 物 又 は 芸 術 品 を 取 引 できないようにせ しめる 権 限 を 有 する。それらが 国 家 財 産になるべきだと 長 官 が 考 える 場 合 、 長 官 はその 遺 物 又 は 芸 術 品 を 購 入 する 権 限 を 有 する。 14 2 171. アユタヤ 朝 以 前 の 時 代 のものと 認 められる 遺 物 又 は 芸 術 品 の 保 存 及 び 登 録 の 為 に 適 切 と 考 えられる 場 合 、 長 官は 政 府 官 報 での 公 示 により 如 何 なる 地 方 をも 特 定 の 遺 物 又 は 芸 術 品 の 調 査 区 (an area of survey) にせしめる 権 限 を有 する。この 場 合 、 所 有 者 又 は 占 有 者 は 長 官 により 公 示 された 規 則 、 手 続 及 び 条 件 に 従 い、その 遺 物 又 は 芸 術 品の 数 量 、 外 観 及 びそれらが 保 管 されている 場 所 を 長 官 に 通 知 しなければならない。2. 前 項 に 基 づく 通 知 がなされた 場 合 、 長 官 又 は 長 官 により 委 託 された 者 は 登 録 の 為 に 所 有 者 又 は 占 有 者 の 居 住 場所 、 或 いは 遺 物 又 は 芸 術 品 が 保 管 されている 場 所 に 日 出 から 日 没 までの 間 又 は 作 業 時 間 (working hours) 中 に、 立ち 入 る 権 限 を 有 する。 何 らかの 遺 物 又 は 芸 術 品 が、 芸 術 、 歴 史 又 は 考 古 学 の 分 野 において 有 益 であるか 又 は 特 別の 価 値 を 有 すると 考 えられる 場 合 、 長 官 は 第 14 条 に 基 づく 権 限 を 有 する。 15 長 官 から 許 可 証 を 取 得 していない 限 り、 何 人 も 登 録 済 の 遺 物 又 は 芸 術 品 を 修 理 、 修 正 又 は 変 更 してはならない。許 可 証 に 条 件 が 附 いている 場 合 、その 条 件 を 遵 守 しなければならない。 16 18登 録 済 の 遺 物 又 は 芸 術 品 が 劣 化 、 荒 廃 又 は 損 傷 しているか、 或 いはその 保 管 場 所 から 紛 失 又 は 除 去 される 場 合 、その 遺 物 又 は 芸 術 品 の 占 有 者 はその 発 生 を 知 った 日 から 三 十 日 以 内 にその 劣 化 、 荒 廃 、 損 傷 、 紛 失 又 は 除 去 を 長官 に 通 知 しなければならない。 17 1. 登 録 済 の 遺 物 又 は 芸 術 品 が 譲 渡 される 場 合 、 譲 渡 人 は 譲 受 人 の 氏 名 、 住 所 、 及 び 譲 渡 日 を 明 記 した 情 報 書 (awritten information) を 譲 渡 日 から 三 十 日 以 内 に 長 官 に 与 えなければならな い。2. 相 続 又 は 遺 言 により 登 録 済 の 遺 物 又 は 芸 術 品 の 所 有 権 を 取 得 する 者 は、かかる 取 得 を 取 得 日 から 六 十 日 以 内 に長 官 に 通 知 しなければならない。 同 一 の 遺 物 又 は 芸 術 品 の 所 有 権 を 取 得 する 人 が 多 数 で 所 有 権 取 得 の 通 知 を 委 託された 共 同 所 有 者 の 一 人 が 上 記 期 間 内 に 通 知 する 場 合 、 共 同 所 有 者 全 員 が 当 該 通 知 を 行 なったとみなされる。 18 19国 家 財 産 であり 芸 術 局 の 保 管 ・ 保 護 下 にある 遺 物 又 は 芸 術 品 は、 法 による 場 合 を 除 き、 譲 渡 不 能 である。しかし一 定 の 同 一 の 遺 物 又 は 芸 術 品 の 数 量 が 必 要 を 超 えている 場 合 、 長 官 は 政 府 官 報 に 公 示 する 規 則 に 従 い、 国 立 博 物館 の 利 益 の 為 に 売 却 又 は 交 換 によりそれらを 譲 渡 す ることを 許 可 し、 或 いは 褒 賞 又 はサービスの 対 価 としてそれらを 発 掘 者 に 与 えることができ る。 18 2】 201. 芸 術 局 所 有 又 は 登 録 済 で 芸 術 、 歴 史 又 は 考 古 学 の 分 野 で 有 益 であるか、 又 は 特 別 な 価 値 を 有 する 遺 物 又 は 芸 術品 について、 大 臣 は 政 府 官 報 での 公 示 によりその 遺 物 又 は 芸 術 品 の 複 製 を 管 理 せしめる 権 限 を 有 する。2. 前 項 の 公 示 がなされた 場 合 、 複 製 管 理 下 にある 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 を 営 業 場 所 での 生 産 、 取 引 又 は 所 有 するには、 長 官 により 政 府 官 報 に 公 示 される 規 則 、 手 続 及 び 条 件 を 遵 守 しなければならない。かかる 複 製 管 理 下 にある 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 の 生 産 を 希 望 する 者 は 品 目 一 覧 表 を 長 官 に 通 知 し、 生 産 される 各 品 目 に 複 製 の 印 を示 さなければならない。3. 前 項 に 従 い 通 知 を 受 けた 長 官 は、 輸 出 又 は 王 国 からの 持 出 しの 為 に、 生 産 者 、 複 製 管 理 下 にある 複 製 遺 物 及 び複 製 芸 術 品 の 一 覧 表 を 税 関 長 官 に 通 報 しなければならない。218


Appendix 19 211. 第 14 条 2 項 に 基 づき 取 引 できない 遺 物 及 び 芸 術 品 の 事 業 に 従 事 することを 希 望 する 者 は、 長 官 から 免 許 証 を 取得 しなければならない。2. 免 許 証 の 申 請 とその 付 与 は、 省 令 に 定 められる 規 則 、 手 続 及 び 条 件 に 従 わねばならない。3. 長 官 が 申 請 を 認 める 場 合 、 長 官 は 免 許 証 保 持 者 の 一 覧 表 を 政 府 官 報 に 公 示 する。4. 長 官 が 申 請 承 諾 を 拒 否 する 場 合 、 申 請 人 はかかる 命 令 を 知 った 日 から 三 十 日 以 内 に 書 面 で 大 臣 に 上 訴 する 権 利を 有 する。5. 大 臣 の 決 定 は 最 終 的 である。 19 2 22入 場 料 又 はその 他 の 料 金 を 徴 収 する 為 に、 遺 物 及 び 芸 術 品 を 公 衆 に 展 示 することを 希 望 する 者 は、 事 前 に 通 知 書を 長 官 に 提 出 し、 長 官 が 政 府 官 報 に 公 示 する 規 則 、 手 続 及 び 条 件 を 遵 守 しなければならない。 19 3 231. 第 19 条 に 基 づき 発 行 される 免 許 証 は、 発 行 年 の 12 月 31 日 まで 有 効 である。 免 許 証 保 持 者 が 免 許 証 更 新 の 申 請を 希 望 する 場 合 、 保 持 者 はその 満 了 前 に 長 官 に 申 請 書 を 提 出 する。 申 請 書 を 提 出 した 者 は 長 官 が 申 請 を 却 下 する命 令 を 出 すときまで 事 業 を 行 なうことができる。2. 免 許 証 更 新 の 申 請 及 びその 付 与 は、 省 令 に 規 定 される 規 則 、 手 続 及 び 条 件 に 従 わなければならない。3. 長 官 が 申 請 を 認 める 場 合 、 長 官 は 政 府 官 報 に 免 許 証 保 持 者 の 一 覧 表 を 公 示 しなければならない。4. 長 官 が 申 請 を 却 下 する 場 合 、 申 請 人 はかかる 命 令 を 知 った 日 から 三 十 日 以 内 に 書 面 で 大 臣 に 上 訴 する 権 利 を 有する。5. 大 臣 の 決 定 は 最 終 的 である。6. 大 臣 により 決 定 が 下 される 前 に、 第 3 項 に 基 づく 免 許 証 更 新 について 上 訴 がなされる 場 合 、 大 臣 は 上 訴 人 がそう 要 求 する 場 合 上 訴 人 がその 営 業 を 続 けることができる 許 可 を 与 えること ができる。 20 24第 19 条 に 基 づく 免 許 証 保 持 者 は、その 店 の 目 立 つ 場 所 に 免 許 証 を 掲 示 し、 自 らが 所 有 する ( イ ) 遺 物 又 は 芸 術 品 、或 いは ( ロ ) 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 の 一 覧 表 を 作 成 し、 一 覧 表 を 政 府 官 報 で 長 官 が 公 示 する 規 則 に 従 った 場 所 に保 管 しなければならない。 21 25管 轄 権 を 有 する 担 当 官 は、( イ ) 遺 物 又 は 芸 術 品 、 或 いは ( ロ ) 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 の 生 産 、 営 業 、 展 示 又 は保 管 の 場 所 に、 日 出 から 日 没 の 間 又 は 営 業 時 間 中 に 立 入 り、その 場 所 において 免 許 証 保 持 者 が 本 法 を 遵 守 しているか 否 か、 或 いは ( イ ) 遺 物 又 は 芸 術 品 、 或 いは ( ロ ) 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 が 非 合 法 に 取 得 されているか 否 か、或 いは 第 18 条 ノ 2 に 基 づき 長 官 が 規 定 する 公 示 に 従 っていない ( イ ) 遺 物 又 は 芸 術 品 、 或 いは ( ロ ) 複 製 遺 物 又は 複 製 芸 術 品 が 存 在 するか 否 かを 査 察 する 権 限 を 有 する。 免 許 証 保 持 者 が 本 法 を 遵 守 していない か、 或 いは 非 合法 に 取 得 された ( イ ) 遺 物 又 は 芸 術 品 、 或 いは ( ロ ) 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 、 或 いは 第 18 条 ノ 2 に 基 づき 長 官が 規 定 する 公 示 に 従 っていない ( イ ) 遺 物 又 は 芸 術 品 、 或 いは ( ロ ) 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 が 存 在 すると 疑 うべき 合 理 的 な 根 拠 が 存 在 する 場 合 、 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 は 法 的 訴 追 の 為 にいかなる ( イ ) 遺 物 又 は 芸 術 品 、 或 いは ( ロ ) 複 製 遺 物 又 は 複 製 芸 術 品 でも 押 収 又 は 差 押 を 行 う 権 限 を 有 する。 21 2 261. 事 情 に 応 じて 長 官 又 は 長 官 が 委 託 する 者 、 或 いは 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 は 各 々 義 務 を 履 行 する 際 、 第 14 条 ノ 2又 は 第 21 条 に 基 づき 査 察 される 場 所 において、 所 有 者 、 占 有 者 、 免 許 証 保 持 者 又 は 関 係 者 に 自 らの 身 分 証 明 書 を提 示 し、 関 係 者 は 査 察 官 に 妥 当 な 便 益 を 提 供 しなけれ ばならない。2. 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 の 身 分 証 明 書 は、 省 令 で 定 められた 様 式 でなければならない。219


Appendix 21 3 27長 官 又 は 長 官 が 委 託 する 者 、 或 いは 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 は、 義 務 を 履 行 する 際 、 刑 法 典 における 公 務 員 である。 22 281. 長 官 から 免 許 証 を 取 得 していない 限 り、 何 人 も 登 録 の 如 何 を 問 わず 遺 物 又 は 芸 術 品 を 輸 出 又 は 王 国 から 持 ち 出してはならない。2. 免 許 証 の 申 請 及 びその 付 与 は、 省 令 で 定 められた 規 則 、 手 続 及 び 条 件 に 従 う。3. 第 1 項 の 規 定 は、 五 年 未 満 の 芸 術 品 で 登 録 されていない 物 及 び 遺 物 の 運 搬 又 は 通 過 中 の 芸 術 品 には 適 用 されない。 23 1. 王 国 から 遺 物 又 は 芸 術 品 を 一 時 的 に 発 送 することを 希 望 する 者 は、 長 官 に 免 許 証 を 申 請 しなければならない。長 官 が 申 請 を 却 下 する 命 令 を 与 える 場 合 、 申 請 人 はこの 長 官 命 令 を 知 っ た 日 から 三 十 日 以 内 に 大 臣 に 上 訴 する 権利 を 有 する。 大 臣 の 決 定 は 最 終 的 である。2. 王 国 からの 遺 物 又 は 芸 術 品 の 一 時 的 発 送 の 為 の 免 許 証 を 申 請 人 に 発 行 することが 適 切 であると 長 官 が 考 えるか又 は 大 臣 が 斯 く 決 定 し、 且 つ 申 請 人 がそれに 関 する 省 令 に 規 定 されてい る 補 償 金 の 供 託 及 び 罰 金 の 支 払 いに 関 する 条 件 、 方 法 及 び 要 件 を 遵 守 することに 同 意 した 場 合 、 長 官 は 然 るべく 免 許 証 を 申 請 人 に 発 行 しなければならない。 23 2 29教 育 、 分 析 、 調 査 、 修 理 又 は 組 立 の 為 に、 芸 術 局 が 所 有 する 遺 物 又 は 芸 術 品 の 全 部 又 は 一 部 を 輸 出 又 は 王 国 から持 ち 出 す 必 要 がある 場 合 、 長 官 はその 遺 物 又 は 芸 術 品 の 全 部 又 は 一 部 を 一 時 的 に 輸 出 又 は 王 国 から 持 ち 出 す 権 限を 有 する。かかる 遺 物 又 は 芸 術 品 の 一 部 が 分 析 又 は 調 査 の 過 程 において 加 工 又 は 破 壊 されなければならない 場 合 、長 官 はかかる 一 部 を 持 ち 帰 る 義 務 を 負 うことなく 輸 出 又 は 王 国 から 持 ち 出 すことができる。 24 301. 何 人 もその 所 有 者 であると 主 張 できない 状 況 下 で 王 国 又 は 排 他 的 経 済 区 域 内 に 埋 蔵 、 隠 匿 又 は 放 棄 されている遺 物 又 は 芸 術 品 は、 埋 蔵 、 隠 匿 、 又 は 放 棄 されている 場 所 がいずれかの 者 に 所 有 又 は 占 有 されているか 否 かにかかわらず、 国 家 財 産 になる。かかる 遺 物 又 は 芸 術 品 の 発 見 者 は、 刑 事 訴 訟 法 典 に 基 づき 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 、行 政 官 又 は 警 察 官 にそれを 引 き 渡 し、 当 該 財 産 の 価 値 の 三 分 の 一 を 越 えない 報 酬 を 得 る 権 利 を 有 する。2. 長 官 は、 前 項 に 従 い 財 産 の 価 値 を 決 定 する 為 に 三 名 を 下 らない 委 員 会 を 任 命 しなければならない。 発 見 者 は 委員 会 の 決 定 に 対 して、その 決 定 を 知 った 日 から 十 五 日 以 内 に 長 官 に 上 訴 する 権 利 を 有 する。 長 官 の 決 定 は 最 終 的である。 24 2 311. 本 法 に 基 づき 発 行 される 免 許 証 を 紛 失 した 場 合 、 又 は 物 質 的 に 毀 損 した 場 合 、 免 許 証 保 持 人 は 紛 失 又 は 毀 損 に気 付 いた 日 から 十 五 日 以 内 に 代 用 免 許 証 の 申 請 を 長 官 に 提 出 する。2. 代 用 免 許 証 の 申 請 及 びその 付 与 は、 省 令 に 定 められる 規 則 、 手 続 及 び 条 件 に 従 い 行 われる。第 三 章 国 立 博 物 館 25 1. 国 家 財 産 である 遺 物 又 は 芸 術 品 を 保 管 する 為 の 国 立 博 物 館 を 設 置 する。2. 国 立 博 物 館 が 設 立 される 場 所 、 又 は 国 立 博 物 館 となることを 要 求 される 場 所 、 及 び 国 立 博 物 館 の 地 位 の 取 消 は、大 臣 により 政 府 官 報 で 公 示 されなければならない。3. 本 法 発 効 日 に 既 存 の 国 立 博 物 館 は、 本 法 に 基 づく 国 立 博 物 館 となる。220


Appendix 26 321. 芸 術 局 管 理 下 の 国 家 財 産 である 遺 物 又 は 芸 術 品 は、 国 立 博 物 館 以 外 の 場 所 に 保 管 されてはならない。しかしそれらを 国 立 博 物 館 に 保 管 することが 不 可 能 又 は 不 適 切 な 場 合 、 長 官 の 許 可 に 従 い、それらを 政 府 に 属 する 他 の 博物 館 、 寺 院 、 又 は 場 所 に 保 管 することができる。2. 長 官 の 許 可 により 遺 物 又 は 芸 術 品 をいずれかの 場 所 に 一 時 的 に 展 示 する 場 合 、 或 いは 長 官 の 命 令 により 遺 物 又は 芸 術 品 を 修 理 の 為 に 国 立 博 物 館 から 持 ち 出 す 場 合 、 前 項 の 規 定 は 適 用 されない。3. 同 様 の 遺 物 及 び 芸 術 品 が 多 数 存 在 する 場 合 、 長 官 はいずれかの 省 (ministry)、 庁 (sub- ministry) 又 は 局 (department)がそのいくつかを 保 管 することを 許 可 することができる。 27 33国 立 博 物 館 の 安 全 、 清 潔 及 び 整 頓 を 保 持 する 為 に 適 切 と 考 えられる 場 合 、 大 臣 は 入 場 中 の 入 館 者 の 行 動 に 関 する省 令 を 公 布 する 権 限 を 有 し、 入 場 料 又 はその 他 の 料 金 を 定 めることがで きる。第 四 章 考 古 学 基 金 28 古 代 記 念 物 にとって 有 益 な 作 業 又 は 博 物 館 活 動 の 費 用 の 為 に、「 考 古 学 基 金 」と 呼 ばれる 基 金 を 設 立 する。 29 考 古 学 基 金 は 以 下 から 構 成 される。(1) 本 法 に 基 づき 取 得 される 資 金(2) 古 代 記 念 物 から 生 じる 金 銭 的 利 益(3) 現 金 による 寄 付 又 は 現 金 以 外 (in property) での 寄 付(4) 古 代 記 念 物 、 芸 術 品 、 遺 物 及 び 国 立 博 物 館 に 関 する 法 律 に 基 づき 同 法 発 効 日 に 芸 術 局 の 裁 量 で 使 える 中 央基 金 又 は 資 本 金 。 30 考 古 学 基 金 の 維 持 及 び 支 払 は、 大 臣 が 定 める 規 則 (rules) に 従 い 執 り 行 う。第 四 章 ノ 2 34 免 許 証 の 停 止 及 び 取 消 30 21. 免 許 証 保 持 者 が 本 法 、 本 法 に 基 づき 公 布 される 省 令 、 公 示 、 規 則 又 は 長 官 が 課 す 条 件 に 違 反 するか、 或 いはそれらを 遵 守 しない 場 合 、 長 官 は 各 々につき 六 十 日 を 越 えない 期 間 に 亘 り 免 許 証 を 停 止 する 権 限 を 有 する。しかし免 許 保 持 者 が 本 法 に 基 づく 犯 罪 で 裁 判 所 に 訴 追 され る 場 合 、 長 官 はその 裁 判 所 の 最 終 判 決 まで 免 許 証 を 停 止 することができる。2. 免 許 証 を 停 止 されている 者 は、 停 止 期 間 中 は 本 法 に 基 づく 免 許 証 を 申 請 することができな い。 30 31. 免 許 証 保 持 者 が 本 法 の 違 反 で 裁 判 所 の 最 終 判 決 を 受 けたこと、 又 は 停 止 命 令 に 違 反 していることが 明 らかになった 場 合 、 長 官 はその 者 の 免 許 証 を 取 消 す 権 限 を 有 する。2. 免 許 証 を 取 消 された 者 は、 取 消 日 から 二 年 の 期 間 が 経 過 するまで 本 法 に 基 づく 免 許 証 を 申 請 することができない。 30 41. 免 許 証 保 持 者 には、 停 止 命 令 及 び 取 消 命 令 を 書 面 で 通 知 しなければならない。 免 許 証 を 停 止 又 は 取 消 された 者が 見 つからないか 又 は 命 令 書 の 受 取 りを 拒 否 する 場 合 、 命 令 書 を 免 許 証 に 指 定 の 目 立 つ 場 所 又 は 当 該 免 許 証 保 持221


Appendix者 の 住 居 に 郵 送 し、かかる 免 許 証 保 持 者 は 命 令 書 の 郵 送 日 からそれを 知 るものとみなされる。2. 前 項 の 停 止 命 令 及 び 取 消 命 令 は 政 府 官 報 に 発 表 され、これを 新 聞 又 はその 他 の 方 法 で 広 く 伝 えることができる。 30 51. 免 許 証 を 停 止 された 者 は、その 命 令 を 知 った 日 から 三 十 日 以 内 に 書 面 で 大 臣 に 上 訴 する 権 利 を 有 する。2. 大 臣 の 決 定 は 最 終 的 である。3. 第 1 項 に 基 づく 上 訴 は、 停 止 又 は 取 消 命 令 の 執 行 を 猶 予 しない。第 五 章 罰 則 31 35何 人 もその 所 有 者 であると 主 張 できない 状 況 下 で、いずれかの 場 所 に 埋 蔵 、 隠 匿 又 は 放 棄 されている 遺 物 又 は 芸術 品 を 発 見 し、それを 自 分 自 身 又 は 他 の 人 の 為 に 横 領 する 者 は、 七 年 を 越 えない 懲 役 又 は 70 万 バーツを 越 えない罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 31 2 361. 第 31 条 上 の 罪 を 犯 す 形 で 取 得 した 遺 物 又 は 芸 術 品 を、 隠 匿 、 処 分 、 持 ち 逃 げ 又 は 質 物 又 はその 他 の 形 で 購 入 、受 領 する 者 は 五 年 を 越 えない 懲 役 又 は 50 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いは その 両 方 に 処 せられる。2. 前 項 の 罪 が 商 業 目 的 で 犯 される 場 合 、その 犯 人 は 7 年 を 越 えない 懲 役 又 は 70 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 32 371. 古 代 記 念 物 を 侵 害 、 損 傷 、 破 壊 、 価 値 減 損 、 又 は 無 用 化 する 者 は、 七 年 を 越 えない 懲 役 又 は 70 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。2. 前 項 の 罪 が 登 録 済 古 代 記 念 物 に 対 して 犯 される 場 合 、 犯 人 は 十 年 を 越 えない 懲 役 又 は 100 万 バーツを 越 えない罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 33 38登 録 済 遺 物 又 は 芸 術 品 を 損 傷 し、 破 壊 し、 価 値 毀 損 、 無 用 化 し、 又 は 紛 失 する 者 は、 十 年 を 越 えない 懲 役 又 は 百 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 34 39第 9 条 、 第 12 条 、 第 13 条 2 項 、 第 14 条 ノ 2、 第 16 条 、 第 17 条 又 は 第 20 条 を 遵 守 しない 者 、 或 いは 第 13 条 及び 第 27 条 に 基 づき 公 布 される 省 令 を 遵 守 しない 者 は、 一 ヵ 月 を 越 えない 懲 役 又 は 10,000 バーツを 越 えない 罰 金 或いはその 両 方 に 処 せられる。 35 10 40第 10 条 に 違 反 する 者 、 又 は 第 10 条 に 基 づき 免 許 証 において 長 官 が 課 す 条 件 を 遵 守 しない 者 は、 三 年 を 越 えない懲 役 又 は 30 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 36 41第 14 条 2 項 に 基 づく 公 示 により 取 引 が 禁 止 される 遺 物 又 は 芸 術 品 を 取 引 する 者 、 或 いは 第 15 条 に 違 反 する 者 、或 いは 第 15 条 に 基 づき 長 官 が 免 許 証 に 課 す 条 件 を 遵 守 しない 者 は、 五 年 を 越 えない 懲 役 又 は 50 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 36 2 18 2 42第 18 条 ノ 2 第 2 項 に 基 づく 公 示 を 遵 守 しない 者 、 或 いは 自 らが 生 産 する 物 品 (items) の 一 覧 表 を 長 官 に 通 知 しな222


Appendixいか 又 は 第 18 条 ノ 2 に 基 づき 自 らが 生 産 する 物 品 に 複 製 印 を 示 さない 者 は、 一 年 を 越 えない 懲 役 又 は 10 万 バーツを 越 えない 罰 金 、 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 37 19 43第 19 条 1 項 を 遵 守 しない 者 は、 三 年 を 越 えない 懲 役 又 は 30 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 37 2 19 2 44第 19 条 ノ 2 又 は 第 19 条 ノ 2 に 基 づく 公 示 を 遵 守 しない 者 は、 六 ヵ 月 を 越 えない 懲 役 又 は 5 万 バーツを 越 えない罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 37 3 45本 法 に 基 づく 義 務 を 履 行 している 長 官 、 長 官 により 委 託 された 者 又 は 管 轄 権 を 有 する 担 当 官 を 妨 害 するか 又 は 妥当 な 便 益 を 提 供 しない 者 は、 一 ヵ 月 を 越 えない 懲 役 又 は 一 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 38 22 46第 22 条 に 違 反 して 未 登 録 の 遺 物 又 は 芸 術 品 を 輸 出 するか 又 は 王 国 から 持 ち 出 す 者 は、 七 年 を 越 えない 懲 役 又 は70 万 バーツを 越 えない 罰 金 或 いはその 両 方 に 処 せられる。 39 22 47第 22 条 に 違 反 して 登 録 済 の 遺 物 又 は 芸 術 品 を 輸 出 するか 又 は 王 国 から 持 ち 出 す 者 は、 一 年 乃 至 十 年 の 懲 役 及 び100 万 バーツを 越 えない 罰 金 に 処 せられる。暫 定 規 定 40 1. 本 法 発 効 日 に 遺 物 又 は 芸 術 品 を 取 引 きするか、 又 は 正 規 の 業 務 として 入 場 料 徴 収 の 為 にそれを 公 衆 に 展 示 している 者 は、 本 法 発 効 日 から 三 十 日 以 内 にその 趣 旨 の 免 許 証 を 長 官 に 申 請 する。2. 第 19 条 及 び 第 20 条 の 規 定 は、 本 法 発 効 日 に 遺 物 又 は 芸 術 品 を 取 引 きするか、 又 は 正 規 の 業 務 として 入 場 料 徴収 の 為 にそれを 公 衆 に 展 示 し 且 つ 前 項 に 従 い 免 許 証 を 申 請 する 者 に 対 しては、 本 法 発 効 日 から 免 許 証 受 領 日 まで適 用 されない。副 署 人 :首 相陸 軍 元 帥 S. Dhanarajata保 証 正 確 訳( 署 名 )(Ackaratorn Chularat 博 士 )国 家 評 議 会 長 官国 家 評 議 会 室48手 数 料 率(1) 第 19 条 に 基 づく 免 許 証 各 20,000 バーツ(2) 第 22 条 に 基 づく 免 許 証(a) 芸 術 局 がアユタヤ 朝 かそれ 以 前 の 時 代 のものとみなす 遺 物 又 は 芸 術 品 各 2,000 バーツ 以 下(b) 芸 術 局 がアユタヤ 朝 より 新 しい 時 代 のものとみなす 遺 物 又 は 芸 術 品 各 1,000 バーツ 以 下(3) 代 用 免 許 証 各 100 バーツ223


Appendix(4) 免 許 証 の 更 新 更 新 時 毎 に 免 許 証 手 数 料 と 同 額1古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992)( 政 府 官 報 Vol. 109、Part 38、B.E. 2535(1992)年 4 月 5 日 付 に 発 表 ) により 最 後 に 修 正2政 府 官 報 Vol. 78、Part 66、B.E. 2504(1961) 年 8 月 29 日 付 に 発 表3古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 3 条 により 修 正4前 掲 法 第 4 条 により 修 正5古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 5 条 により 修 正6同 上7同 上8前 掲 法 第 6 条 により 修 正9古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 6 条 により 修 正10B.E. 2515(1972) 年 12 月 13 日 付 全 国 執 行 評 議 会 公 示 No. 308 第 1 条 により 追 加11古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 7 条 により 追 加12前 掲 法 第 8 条 により 修 正13古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 9 条 により 修 正14古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 10 条 により 修 正15前 掲 法 第 11 条 により 修 正16古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 12 条 により 修 正17前 掲 法 第 13 条 により 追 加18古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 14 条 により 修 正19前 掲 法 第 15 条 により 修 正20古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 16 条 により 追 加21前 掲 法 第 17 条 により 修 正22古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 18 条 により 修 正23前 掲 法 第 19 条 により 追 加24古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 20 条 により 修 正25同 上26古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 21 条 により 追 加27同 上28前 掲 法 第 22 条 により 修 正29古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 23 条 により 追 加30前 掲 法 第 24 条 により 修 正31古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 25 条 により 追 加32古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 26 条 により 修 正33同 上34古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 27 条 により 追 加35古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 28 条 により 修 正36前 掲 法 第 29 条 により 追 加37前 掲 法 第 30 条 により 修 正38古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 31 条 により 修 正39前 揚 法 第 31 条 により 修 正40同 上41前 揚 法 第 32 条 により 修 正42前 揚 法 第 32 条 により 追 加43古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 34 条 により 修 正224


Appendix44前 掲 法 第 35 条 により 追 加45同 上46前 掲 法 第 36 条 により 修 正47同 上48古 代 記 念 物 、 遺 物 、 芸 術 品 及 び 国 立 博 物 館 法 (No.2)、B.E. 2535(1992) 第 37 条 により 修 正* 目 次 及 び 各 条 文 の 見 出 しは、 文 化 遺 産 国 際 協 力 センターによる。225


AppendixAppendix 4 : インドネシア 1東 京 外 国 語 大 学 アチェ 文 化 財 復 興 支 援 室 提 供 アチェ 文 書 被 災 状 況1 被 災 状 況 の 調 査 : インドネシア 国 立 イスラーム 大 学 の 研 究 者 のアチェ 派 遣2005 年 1 月 16 日 ~ 20 日「 史 資 料 ハブ 地 域 文 化 研 究 拠 点 」 事 業アチェ 文 書 被 災 状 況 状 況 記 録 ビデオ 付2005/03/25文 責 菅 原 由 美1. アチェ 文 書 情 報 センター (PDIA (Pusat Dokumentasi dan Informasi Aceh))所 在 地 :Jl. Prof. Majid Ibrahim I/5, Banda Aceh・ 大 学 生 が 主 に 論 文 執 筆 の 資 料 収 集 のために 利 用 していた 図 書 館 。アチェ 州 と Syiah Kuala 大 学 の 協 力 によって、設 立 された。オランダやジャカルタからの 寄 贈 資 料 が 主 要 コレクションであった。 大 学 以 上 にこちらの 資 料 の 方が 充 実 していた。・70 冊 ほどのマレー 語 、アラビア 語 、アチェ 語 の 写 本 も 収 集 、 保 管 されていた。・ 建 物 が 崩 壊 、 文 書 もすべて 水 に 流 されたか、 残 っていてもすでにごみ 同 然 。 現 在 はすでにすべて 片 付 けられて、跡 形 もなし。・PDIA 再 建 のために、 資 料 のコピーや 書 物 の 寄 贈 を 強 く 希 望 している(ただし、 建 物 から 立 て 直 さなければならないので、 当 座 の 間 、 書 籍 は、 博 物 館 に 保 管 する 予 定 )。2. 伝 統 価 値 ・ 歴 史 研 究 所Balai Kajian Sejarah dan Nilai Traditional所 在 地 :Jl. Tuanku Hasyim Banta Muda 17, Banda Ache・ 約 15 冊 の 写 本 を 保 管 していた。・ 建 物 が 崩 壊 、コレクションも 洪 水 によって 流 されたか、 水 浸 しであった。3.アリ・ハシミ 教 育 財 団Yayasan Pendidikan Ali Hasjmi所 在 地 :Jl. Jend. Sudirman 20, Banda Aceh・アチェのインドネシアイスラム 協 議 会 議 長 であった 故 アリ・ハシミ 氏 が 設 立 した 図 書 館 。イスラーム 関 連 書 籍を 集 めている。・50 冊 ほどの 写 本 を 保 管 、 他 にも、アリ・ハシミ 氏 の 個 人 記 録 を 含 め、 歴 史 的 文 書 が 多 く 保 管 されている。・ 少 し 高 台 に 存 在 しているため、 津 波 はこの 建 物 を 倒 壊 させるまでにはいたらなかった。しかし、 高 さ 5 センチほど 床 に 浸 水 していた。また、 最 初 の 地 震 により、 本 棚 が 倒 れ、 書 物 やその 他 の 資 料 もすべて 床 に 落 ち、 水 にぬれてしまっていた 上 に、 地 震 ・ 津 波 後 一 週 間 ほど 放 置 されたままになっていた。すぐさま 拾 い 上 げ、 天 日 に 干 した (http://www.pikiran-rakyat.com/cetak/2005/0105/14/0804.htm)。(→これは、 救 済 法 としては 間 違 っている)写 本 が 収 められていた 本 棚 は、 倒 れなかったため、 写 本 は 水 につからなかった。・ 保 管 されている 写 本 はかなり 状 態 が 悪 く、 保 存 に 丁 子 を 使 っているのみ。 整 理 もおこなわれていない。 写 本 を立 たせて 置 いてあるケースまで 見 られた。・ 専 門 家 の 指 導 を 受 けていなかったため、 以 前 から、 資 料 の 整 理 や 保 存 状 態 の 悪 い 図 書 館 であり、 研 究 者 には 利用 しがたいところであった。226


Appendix4. 州 立 博 物 館Museum Negeri Propinsi所 在 地 :Jl. Sultan Alaidin Mahmudsyah・360 冊 ほどの 写 本 を 保 管 。 保 管 状 態 はとてもよいらしい。・ 建 物 はほとんど 地 震 ・ 津 波 の 被 害 を 受 けなかった。・ 館 長 が 文 献 学 の 知 識 を 持 っている。アチェで 写 本 プロジェクトを 計 画 する 場 合 には、この 館 長 にまず 協 力 を 依頼 すべき。5.タノ・アベ 図 書 館Dayah Tanoh Abee (Dayah とは、イスラーム 寄 宿 塾 を 意 味 する )所 在 地 :Seulimeum, Aceh Besar ( バンダ・アチェより 50km)・19 世 紀 後 半 、Abdul Wahab al-Fairusy により 設 立 された 寄 宿 塾 。・ 約 3500 冊 ( 推 計 ) の 写 本 を 保 有 (これまでもカタログは 作 成 されたことがあるが、コレクションすべてを 網 羅したものではない)。インドネシアで 最 大 の 写 本 コレクションを 保 有 する 寄 宿 塾 。 写 本 はウラマーの 遺 産 と 民 間 から 収 集 したもの。・ 建 物 は、アチェの 伝 統 的 家 屋 。 地 震 の 影 響 は 見 られない。・ 写 本 の 保 存 に 対 する 処 置 がまったくとられていない。 丁 子 使 用 など、 伝 統 的 な 手 法 さえ 用 いられていない。・ 閉 鎖 的 で 有 名 、 特 に 異 教 徒 の 利 用 に 対 する 制 限 が 厳 しい(→アチェ 人 以 外 のインドネシア 人 の 利 用 に 対 して 厳しい。 外 国 人 に 対 してはむしろ 寛 容 )。UIN の 代 表 に 対 して、 調 査 許 可 を 与 えた。6. 地 方 公 文 書 館Badan Arsip・かつては、ジャカルタにある 国 立 公 文 書 館 の 西 インドネシア 支 部 。 地 方 分 権 化 以 降 、 独 立 組 織 。・ 資 料 は 主 に 1950 年 代 以 降 の 公 文 書 。ただし、1920 年 代 からの 資 料 も 存 在 。・ 現 在 の 政 治 問 題 に 直 接 関 係 する 公 文 書 が 保 管 されているため、 基 本 的 に 非 公 開 。 研 究 者 の 利 用 が 難 しい。・ 一 階 部 分 にあったものがすべて 津 波 によって、 押 し 流 された。ただし、 資 料 は 通 常 、 二 階 に 保 存 している。 一階 部 分 には 政 府 からの 新 しい 配 布 物 のみが 用 意 されていたと 思 われる。7. 地 方 図 書 館 (Perpustakaan Daerah)・ 一 階 は、 一 般 向 け 図 書 が 用 意 されていた。 二 階 は、アチェでの 出 版 物 を 保 管 していた。・ 公 文 書 同 様 、 一 階 部 分 にあった 本 はすべて 津 波 に 押 し 流 された。すでに 本 は 跡 形 もなかった。 二 階 は 津 波 の 被害 は 受 けていなかったが、 火 事 場 泥 棒 によって、 貴 重 品 は 持 ち 去 られてしまっていた。・ 巡 回 図 書 館 用 の 車 両 2 台 が 津 波 によって 破 壊 されていた。8. 民 間Teupin Raya, Kabupaten Pidie, Awe Geutah Aceh Utara, Samalanga Aceh Utara, Langsa Aceh Timur などの 地 域 ではまだ 写本 が 民 間 で 保 管 されているという 情 報 を 得 た。 小 さい Dayah がまだ 写 本 を 保 管 しているはず。総 括 :1. 写 本 に 関 する 限 り、 機 関 に 保 管 されているものは、すでに 救 済 不 可 能 のもの(1 及 び2)と、 津 波 の 被害 をほとんど 受 けていないもの(3 ~5)に 分 かれる。2. ただし、3 及 び 5 は、 地 震 が 起 こる 前 からすでに 保 存 状 況 が 悪 かったため、 写 本 の 修 理 及 び 保 管 に 関 する 指 導 が 必 要 → 図 書 館 及 び 公 文 書 館 に 協 力 を 要 請 する 必 要 有 り。3. 3 と 5 に 関 し、インベントリー 及 びカタログの 作 成 が 必 要 。ただし、5 は 数 が 多 いため、かなり 時 間 がかかる 可 能 性 が 大 → 写 本 学 会 から 文 献 学 者 派 遣 要 請 の 必 要 有 り。4. 3 と 5 に 関 しては、 所 有 者 からの 信 用 を 得 るため、またイスラーム 写 本 の 知 識 を 持 つ 者 が 必 要 であるため、ジャカルタ・イスラーム 大 学 及 びアチェ・イスラーム 大 学 の 共 同 作 業 が 必 要 。5. 3 は、ビデオで 見 る 限 り、 早 急 に 対 処 した 方 がよいと 思 われる。5 は 地 震 の 被 害 をほとんど 受 けていな227


Appendixいため、 特 に 緊 急 性 はない。( 災 害 支 援 というより、 復 興 支 援 )6. 6 及 び 国 土 庁 (Badan Pertanahan Nasional)では、 国 立 公 文 書 館 及 び 坂 本 氏 が、 文 書 の 緊 急 救 済 方 法 の 指導 をおこなったが、その 際 、3や5のような 民 間 機 関 のスタッフは 呼 んでもらえなかった。7. 7 には、ジャカルタの 国 立 図 書 館 が 支 援 を 送 っている。8. 民 間 所 有 の 写 本 調 査 の 必 要 あり。9. 地 方 文 書 館 への 支 援 の 必 要 性 についてはまだ 調 査 不 足 。情 報 提 供 :ジャカルタ・イスラーム 大 学 Oman Fathurahman 氏国 立 図 書 館 、 国 立 公 文 書 館Teuku Ibrahim Alfian 氏 ( 元 ガジャマダ 大 学 教 授 、アチェ 人 歴 史 研 究 者 )Imran T. Abdullah( 元 ガジャマダ 大 学 教 授 、 元 外 語 大 の 客 員 教 授 )西 芳 実228


AppendixAppendix 6 : ギリシア 1On 20 June 2009, Mr Koichiro Matsuura, the Director-General of UNESCO, took part in the inauguration of the NewAcropolis Museum in Athens, Greece.Speaking in the presence of the President and Prime Minister of the Hellenic Republic, their Excellencies Karolos Papouliasand Kostas Karamanlis, the Minister for Culture, Antonis Samaris, numerous Heads of State and Government, the Presidentof the European Commission, Mr. Jose Manuel Barroso and Mr. George Anastassopoulos, President of UNESCO's GeneralConference and Ambassador of the Hellenic Republic to UNESCO, Mr Matsuura congratulated his hosts on the completionof the museum. Recalling his first visit to the Acropolis and the strong emotion he had felt on seeing the craftsmanship of thework undertaken 2,500 years ago, he observed that "this stunning new home for its artefacts is an important complement to theWorld Heritage site that will allow visitors to fully appreciate this outstanding heritage of humanity.""At UNESCO, we believe that museums are places where cultural legacies are safeguarded and transmitted to successivegenerations. By generating pride and mutual understanding through cultural representations, [they] foster appreciation forcultural diversity," Mr. Matsuura continued.Congratulating the Hellenic Republic on its commitment to safeguarding heritage for future generations, the Director-Generalacknowledged its special contribution in the area of the return of cultural property, highlighting an international conferenceheld in Athens in March 2008 and its support for the activities of the International Committee for Promoting the Return ofCultural Property to its Countries of Origin or its Restitution in Case of Illicit Appropriation. In this regard, Mr. Matsuuranoted that "at its fifteenth session last month, this Committee adopted a recommendation jointly proposed by the Governmentsof Greece and the United Kingdom, inviting UNESCO to assist in convening necessary meetings between the two countrieswith the aim of reaching a mutually satisfactory solution to the issue of the Parthenon Marbles. We stand ready to do so," heconcluded.In a meeting prior to the inauguration, the Director-General and President Papoulias discussed the outcomes of the RegionalSummit of Heads of State of South East Europe held in Cetinje, Montenegro, on 4 June last. Mr Matsuura also paid warmtribute to Ambassador Anastassopoulos's tireless work both in strengthening the bilateral cooperation between UNESCO andthe Hellenic Republic and as President of UNESCO's General Conference.A lunch hosted by Ambassador Anastassopoulos provided the opportunity for wide ranging discussions with Mr. TheodoreDravillas, Secretary of State for Culture, Mrs. Maria Ekaterini Papachristopoulou-Tzitzikosta, the President of the HellenicNational Commission for UNESCO and Mrs. Helena Korka, Director of Antiquities at the Ministry of Culture.During his brief stay in Athens, the Director-General also had the opportunity to admire the collections of the NationalArchaeological Museum.* Author(s):Office of the Spokesperson - La Porte-parole* Source:Flash Info N°123-2009* 24-06-2009235


AppendixAppendix 7 : ギリシア 2STRENGTHENING DISASTER RISK REDUCTIONAT WORLD HERITAGE PROPERTIES:THE OLYMPIA PROTOCOL FOR INTERNATIONAL COOPERATION(UNESCO WORLD HERITAGE CENTRE, 2009)1. INTRODUCTION: WHAT IS THIS DOCUMENT AND HOW TO USE ITThis document is part of the outcome of a Workshop on Disaster Risk Management at World Heritage Properties, jointlyorganised in November 2008 at Olympia (Greece) by the Hellenic Ministry of Culture and the UNESCO World HeritageCentre, with a financial contribution from the UNESCO Goodwill Ambassador Mrs. Marianna Vardinoyannis.During this workshop, which gathered experts and heritage site managers from various regions, participants discussed thescope and contents of a possible “Programme” for reducing disaster risks at World Heritage properties, which would assistStates Parties to the 1972 Convention in translating into action the “Strategy for Reducing Risks from Disasters at WorldHeritage Properties” adopted by the World Heritage Committee in 2007 24 . The present document provides a summary of thediscussions held at Olympia with regard to this possible Programme.The participants in the Olympia Workshop recognised that a Programme for reducing disaster risks at World Heritageproperties would have a considerable scope and require the joint effort of all the actors engaged in the implementation of theWorld Heritage Convention. Considering the difficulty of identifying resources for the entire Programme in one time, it wassuggested that its implementation could proceed in steps, depending on the availability of funds and the interest of potentialdonors. It was not to be expected, thus, that this Programme be implemented within a given time frame as a standard projectunder a single, comprehensive funding, but rather that it may provide a framework under which separate, but related activitiescould be developed, funded and carried out. For this reason, the present Document makes reference to the “Olympia Protocolfor International Cooperation”, named after the venue of the above-mentioned Workshop, rather than to a Programme in themore traditional sense.It is hoped, indeed, that States Parties would use this document as a general framework, or protocol, for developingcooperation among them – possibly through partnerships and twinning arrangements among World Heritage properties sharingsimilar disaster risks - in the area of disaster risk reduction at World Heritage properties. At the same time, States Parties andother potential donors are encouraged to provide support to enable the UNESCO World Heritage Centre and other partners toensure the overall coordination of the initiative as well as the implementation of the proposed activities at global level, withinthe framework of the Strategy approved by the World Heritage Committee. Some activities foreseen under this Documenthave already been carried out and others may be implemented with funding through the International Assistance scheme underthe World Heritage Fund, or with support from States Parties and other donors. The majority of them, however, are currentlynot funded. The more resources can be mobilised, the larger the scope of the initiative that will be implemented and the moreWorld Heritage sites that will benefit from it.The present document includes an initial chapter explaining the rationale for its establishment (i.e. why such a protocol isneeded), an outline of its main objectives and a description of proposed activities. The latter include both initiatives that wouldneed to be implemented by UNESCO, owing to their global scope, and actions (the majority) that could be carried out directlyby States Parties, individually or, more appropriately, in the framework of twinning arrangements among World Heritage sites,as mentioned above. Both the global and individual activities would be framed within a single, coherent strategy, where eachstep contributes to the achievement of the broader aims of the Protocol.2. RATIONALE: WHY REDUCING DISASTER RISKSWorld Heritage properties, as with all heritage properties, are exposed to natural and man-made disasters, which threaten236


Appendixtheir integrity and may compromise their values.By disaster we mean here a sudden event whose impact exceeds the normal capacity of property managers, or of acommunity, to control its consequences. The loss or deterioration of these outstanding properties would negatively impactthe national and local communities, both for their cultural importance as a source of identity and of information on the past,and for their socioeconomic value. Experience, moreover, has demonstrated that the conservation of cultural heritage andthe transmission of traditional technology, skills, and local knowledge systems, are not just important per se, i.e. for theirintrinsic historic, artistic or scientific significance, but because they may contribute fundamentally to sustainable development,including the mitigation of disasters. Heritage-sensitive practices, in fact, can assist in significantly reducing the impact ofdisasters, before, during and after they have taken place. For instance, research in areas affected by seismic activities hasshown that buildings constructed with traditional techniques have often proven to be very resilient to quakes, when wellmaintained, as compared with modern construction. Sustainable land-use practices for agricultural and forestlands act toprevent landslides and floods, which each year cause more casualties than earthquakes in many parts of the world.Risks related to disasters within heritage sites are a function of their vulnerability to different potential hazards. The recentnatural disasters in Bam, Iran, or in the Old Fort of Galle in Sri Lanka are high profile examples of the vulnerability of culturalheritage worldwide. Natural heritage can also be threatened, in exceptional circumstances, by natural disasters. Hazards,however, may be also man-made, such as fire, explosions etc. Accidental forest fires, conflicts, massive refugee movements,bursting of tailing pond dams as in Doñana, Spain, are certainly a concern to natural World Heritage sites. If natural disastersare difficult to prevent or control, hazards resulting from human activities can be avoided, and the vulnerability of heritagesites to both natural and manmade disasters can be reduced, thus lowering the overall risk threatening a property. Despite this,most World Heritage properties, particularly in developing areas of the world, do not have any established policy or plan formanaging the risk associated with potential disasters. Existing national and local disaster preparedness mechanisms, moreover,usually do not take into account the significance of these sites and do not include heritage expertise in their operations. At thesame time, traditional knowledge and sustainable practices that ensured a certain level of protection from the worst effectsof natural hazards are being progressively abandoned. As a result, hundreds of sites are virtually defenceless with respectto potential hazards and consequent disasters. Strengthening disaster risk management for properties inscribed in the WorldHeritage List, therefore, is necessary to prevent and reduce damage from disasters and preserve their cultural and naturalvalues, thus protecting an essential support for the social and economic wellbeing of their communities.UNESCO and other partner institutions such as ICCROM, ICOMOS, IUCN and ICOM, have in the past years developeda number of initiatives aimed at strengthening the capacity of site managers to address disaster risk management for WorldHeritage cultural and natural properties. These drew from concerns originating after the Second World War and renewed in1992 because of the high and visible incidence of disasters and armed conflict on television in the early 90s. They were partof a general movement from curative approaches to conservation to a concern for preventive approaches, and from managinginterventions to managing sites. While the need to strengthen disaster risk management for World Heritage has been stressedin the past, governmental commitments have not yet followed. In particular, the Kobe-Tokyo Declaration of 1997 and theRecommendations from the Kobe Thematic Session on Cultural Heritage Risk Management in 2005 pinpointed the necessityfor better integration of concern for risk in cultural heritage management, and recognition of the value of local and indigenousknowledge in disaster risk reduction. The Davos Declaration, adopted in 2006 by the International Disaster ReductionConference (IDRC), reiterated these principles 25 .3. OVERALL OBJECTIVES AND STRATEGY FOR IMPLEMENTATIONThe overall objective of this Protocol is to provide a general framework for developing cooperation among States Parties inorder to translate the Strategy for Reducing Risks from Disasters at the World Heritage Properties into concrete actions at thesite level.The Protocol is based on a combination of global and site-based activities complementing each other and contributing to its237


Appendixoverall goal. Its main components are:1. The establishment of a Clearing House on Disaster Risk reduction;2. The organization of International Workshops to introduce the 2007 Strategy for Disaster Risk reduction art WorldHeritage Properties and the scope and contents of the present Protocol for Cooperation. These workshops should also facilitatethe identification of pilot sites – and the establishment of twinning arrangements among them – for the implementation of theProtocol;3. The development, mostly through partnerships or twinning arrangements, of disaster risk reduction strategies on pilotproperties inscribed on the World Heritage List, selected among those more vulnerable to possible hazards in different regionsof the world, and also using, as a methodological reference, the recently developed “World Heritage Resource Manual forDisaster Risk Reduction”;4. The organisation of International Workshops to review the progress made at different pilot sites, harmonise theapproaches and share the lessons learnt. The experience resulting from these activities will be widely disseminated throughpublications regional meetings, on line communications, etc.;5. The development of complementary capacity-building, educational and communication initiatives.4. ACTIVITIES AND EXPECTED RESULTSA detailed description of the proposed activities is provided here below, arranged according to the three most relevantstrategic objectives of the World Heritage Convention, i.e. Conservation, Capacity-Building and Communication, taking intoaccount that the strategic objective of “Community” – adopted by the Committee in 2007 - is integrated within each of these.Activities that could be implemented directly by the States Parties, for example in the framework of twinning arrangements,are marked with an asterisk.Conservation4.1 Establishment of a Clearing House on Disaster Risk ReductionIt is proposed to develop a Clearing House of resource materials on Disaster Risk Reduction – possibly at the WorldHeritage Centre or at ICCROM - including policy texts, guidance, case studies and illustrations, drawing also from submissionby States Parties in the context of Nominations and the Periodic Reporting exercise. This would include information onexisting initiatives and twinning arrangements between World Heritage properties. ICOM will continue to collect and put atdisposal resource material concerning principally the disaster risk reduction of movable heritage.Expected result : Information and reference materials on disaster risk reduction for World Heritage are accessible to thoseconcerned.4.2 International Workshops 26 to introduce the Protocol, to identify pilot sites and facilitate the establishment oftwinning arrangementsThese international workshops (as many as appropriate and feasible) would involve bringing key management personnelfrom selected sites together with disaster risk reduction experts for cultural and/or natural heritage, depending on the selectedsites. The Protocol for International Cooperation and its strategy for implementation will be presented, and case studiesreviewed. In selecting potential sites, attention will be paid to ensure diversity of typologies (including presence of movableheritage), of disaster risks – with consideration given to post-disaster areas and linkages with Climate Change - and ofgeographical regions, with priority given to properties exposed to multiple hazards.238


AppendixExpected results : The objective and scope of the protocol for cooperation as well as a methodology for developing disasterrisk reduction strategies for each site are introduced. Experiences on disaster risk reduction are shared among managementpersonnel, while concrete twinning arrangements among partner World Heritage sites are developed; understanding of the“Strategy for Reducing Risks from Disasters at World Heritage Properties”( adopted by the World Heritage Committee in2007) is increased.4.3* Workshops to build capacities of concerned stakeholders and launch the development of appropriate disaster riskreduction strategies at selected sites.These workshops - to be organized once two or more World Heritage properties have decided to cooperate in the frameworkof a twinning arrangement - will involve key management personnel from each site, local and national-level authoritiesresponsible for reducing disaster risks in each country concerned (i.e. civil defense officials) and international resourcepersons. A general introduction on Disaster Risk Reduction will be provided, based on the selected sitesʼ case studies, andmodalities for long-term cooperation will also be identified through the establishment of time-framed action plans. This wouldbe the first step towards the development of appropriate disaster risk reduction strategies at the concerned World Heritageproperties.Expected results : Capacities among the key stakeholders are built, and a concrete time-framed plan of action is defined forthe implementation of activities in the context of established cooperation agreements (e.g. twinning) among States Parties andother partners.4.4* Risk Assessment at selected pilot propertiesAn analysis and assessment of the risks threatening the selected pilot sites and the people living in them will be led byresponsible site managers, in collaboration with local civil defence officials and in consultation with disaster risk experts,taking into account existing records of disasters, potential hazards and the vulnerability of the property. This assessment willalso provide a complete understanding of existing policies and measures for reducing the impact of disasters (if any) on theWorld Heritage property, and opportunities for cooperation with other concerned institutions.Expected results : Risks to the World Heritage property are defined, which will have to be reduced through appropriateidentification of potential hazards and vulnerabilities of the site. Priorities for intervention are set up.4.5* Socio-economic analysis and research on traditional skills and local knowledge systems relevant to disaster riskreductionThis activity will enable the understanding of the opportunities and threats, resulting in particular from the interactionbetween the local communities and the selected World Heritage properties, with regard to the risks associated to disasters.Research will be carried out on traditional land uses, skills, knowledge systems etc. whose continuation or revitalisationmight be beneficial to strengthen the preparedness to disaster for the protection of the World Heritage property. Research ontraditional knowledge related to movable heritage disaster risk management will also be carried out. At the same time, thestudy will take into consideration the social and economic feasibility of the integration of this traditional knowledge in themanagement of risks within the property, making suggestions for its adaptation to modern constraints and requirements.Expected result : Essential information is provided for the establishment of consultations with the local community andvaluable insights on its possible participation in the reduction of disaster risks in the context of the management of their WorldHeritage property.4.6* Inter-institutional Workshops on Disaster Risk Reduction at site levelAt this stage of the Protocol for Cooperation, it is proposed to organise an Inter-institutional Workshop at each of thepilot-sites, including representatives from the heritage agency responsible for the protection of the property, and of all other239


Appendixinstitutions and agencies, both at national and local levels, concerned with disaster risk reduction. The workshop, moderatedby an international resource person, will facilitate the exchange of information on perceived risks at the World Heritageproperty and existing policies and procedures to mitigate the impact of disasters. This will provide essential input for theintegration of concern for disaster risks within Management Plans for the World Heritage property.Expected results : An understanding of the respective needs, roles and capacities with respect to disaster risk reductionfor the World Heritage property is shared among participating institutes, and possible weaknesses and the scope for bettercoordination and integration are identified.4.7* Seminars with local communityA Seminar with representatives from the local communities will be held at each selected property in order to sensitise themto the risks from disasters affecting the World Heritage site in or around which they live, and the possible impact of a hazardon their persons and well-being. The Seminar will present and discuss the results of the research (see points 4.4 and 4.5 above)and solicit a reaction from the local communities on its possible direct involvement in disaster risk reduction activities for theprotection of the World Heritage property, and the appropriate ways of achieving this.Expected result : A full understanding of the opportunities and constraints for the integration of local community concernsand capacities related to disaster risk reduction into the Management Plan for the World Heritage property are shared amonglocal communities.4.8 Mid-term International Workshop to review progress of the activities and validate methodologies for developing anappropriate disaster risk management strategy at site level.This international workshop, gathering representatives from the pilot sites where activities are being implemented, willenable the review of experiences and learning among the participating sites, and will compare proposals for finalising theirrespective risk-sensitive management plans.Expected results : The approach and methodologies being developed within each site are confirmed or reoriented, bestpractices are shared, and the network among all participants in the initiative is strengthened.4.9* Development of disaster risk reduction strategies at selected World Heritage propertiesWhen activities 4.1 to 4.7 are completed, Heritage Conservation Agencies, assisted by international resource persons, willdevelop the appropriate Disaster Risk Reduction Strategies for their properties, taking into account all the elements gatheredthroughout the Programme. These will be integrated on one hand into Management Plans for the properties, if existing,and into existing Disaster Preparedness, Response and Recovery Plans at national and local levels. They will include theidentification of indicators for monitoring the effective management of disaster risks at the sites.Expected result : conservation at selected World Heritage properties is strengthened through improved disaster riskreduction strategies.4.10* Follow up at Pilot PropertiesA follow-up evaluation is suggested, at each pilot World Heritage property, to assess the impact of the activities carried outon the conservation and management of the sites. This evaluation could take place two years after the completion of activity 4.9above.Expected results : lessons from past activities are learnt and corrective measures identified.240


AppendixCapacity building and Communication4.11 Publications and dissemination of materials on the webAfter the completion of the work at the selected pilot sites, a publication will be prepared, and translated into the officiallanguages of UNESCO. Complementing the “Resource Manual” developed by ICCROM, IUCN and the World HeritageCentre, this publication will provide concrete references and best practices showing how the methodology outlined in theResource Manual can be applied in practice. The Resource Manual will be also made available on the web, possibly in a moreuser-friendly format.Expected result : Publications and materials (including on the web-site of the World Heritage Centre) on disaster riskreduction are disseminated to site managers around the world.4.12 Distribution of information for each RegionDistribution of the results from the above activities will also take place in conjunction with scheduled regional meetings foreach of the five geographic regions of the world, i.e. Africa; Arab States; Asia and the Pacific; Europe and North America; andLatin America and the Caribbean. The staff members of the Heritage Conservation Agencies for each pilot site will be askedto contribute to information sessions and presenting the above-mentioned publication, and to share their experience in helpingcompleting the risk-sensitive Management Plan for their site in the context of their particular region. This component willcomplement the above publication in building capacities among the various regions of the world.Expected result : Firsthand knowledge about the development of disaster risk reduction strategies from the pilot sitesexchanged.4.13 Development of a curriculum for a Training Course on Disaster Risk ReductionBuilding on the experience of the activities carried out, and on the methodology outlined in the “Resource Manual”, it issuggested to develop a curriculum for a short (one or two weeks) course on World Heritage Disaster Risk Reduction, whichcould possibly become a regular feature of ICCROMʼs Training programmes. This Course could be offered in different regionsof the world, in partnership with the various Category 2 Centres on World Heritage that are being established, using one of thepilot World Heritage properties taking part in the initiative as a case study.Expected result : Progress is made towards the development of a much-needed training programme which would buildcapacity on reducing disaster risks among those responsible for the conservation of World Heritage properties.4.14 Development of a component on Disaster Risk Reduction within the World Heritage in Young Hands School Kitand activitiesIt is proposed to expand the current School Kit “World Heritage in Young Hands” by introducing a component on DisasterRisk Reduction. The related activities could envisage visits to sites exposed to disaster risks and activities to reduce underlyingrisk factors.Expected result : Educational material is developed which would contribute to sensitising the young people to the threatsposed by disasters to World Heritage properties and the urgent need to reduce the related risks.4.15 International Day of Disaster Risk Reduction at World Heritage PropertiesIt is proposed to celebrate the International Day of Disaster Risk Reduction at World Heritage Properties, in coordinationwith the existing International Day of Disaster Risk Reduction (early October, every year), to give visibility and raiseawareness about this important issue. This annual event will also provide opportunities for conducting drills and educationalactivities, including exhibitions, at World Heritage properties.241


AppendixExpected results : Awareness is raised at the local and global level on disaster risks that affect World Heritage propertiesand ways to reduce them. At the same time, preparedness for effective response is strengthened at site level.5. IMPLEMENTATION MODALITIESIf resources were made available, the activities under this Protocol for International Cooperation could be coordinated bythe World Heritage Centre of UNESCO, possibly through the establishment of a Focal Point, and implemented by variouspartners according to different modalities, including – as mentioned above – bilateral twinning arrangements.Global activities such as International Workshops, publications and training courses will be implemented directly by theWorld Heritage Centre in collaboration with Advisory Bodies and other appropriate partners, including ICOM, the Blue Shieldand the UN International Strategy for Disaster Reduction.As already explained, considering the difficulty of identifying resources for all activities proposed under this protocol forCooperation, it is envisaged that its implementation could proceed by steps, depending on the availability of funds and theinterest of potential donors. The activities described in Section 4 above, on the other hand, lend themselves to a certain degreeof flexibility. Site-based activities, for example, could be implemented independently from global ones in the framework ofspecific “packages”, and the number of sites concerned would also depend on the availability of resources and the numberof twinning arrangements established. When the Programme reaches a critical mass of ongoing activities, it is proposed toestablish an Advisory/Steering Group involving, of course, the Advisory Bodies to the World Heritage Convention, but alsoUN-ISDR, ICOM and other Members of the Blue Shield, the Council of Europe and other relevant Institutions. The role ofthis Steering Group would be to review the progress of the Programme and provide orientation for its improvement.24See Document WHC-07/31.COM/7.2, available online from:http://whc.unesco.org/archive/2007/whc07-31com-72e.doc25The Davos Declaration is accessible online from:http://www.idrc.info/userfiles/image/PDF_2006/IDRC_Davos_Declaration_2006.pdf26The Olympia Workshop of November 2008 intended to achieve these objectives, as well as serving as an opportunity for thelaunching of the Programme and this Protocol for International Cooperation.242


被 災 文 化 遺 産 復 旧 に 係 る 報 告 書文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム 編2010 年 3 月 発 行[ 連 絡 先 ]110-8713 東 京 都 台 東 区 上 野 公 園 13-43( 独 ) 国 立 文 化 財 機 構 東 京 文 化 財 研 究 所 内文 化 遺 産 国 際 協 力 コンソーシアム 事 務 局Tel. 03-3823-4841 Fax. 03-3823-4027http://www.jcic-heritage.jp/243

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