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第 3 章<br />
風 力 発 電<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
第 3 章 風 力 発 電 .................................................................................................. 1<br />
3.1 技 術 の 概 要 ............................................................................................................ 3<br />
3.1.1 技 術 の 俯 瞰 ................................................................................................................. 3<br />
3.1.2 システム 価 格 、 発 電 コスト ....................................................................................... 9<br />
3.2 導 入 ポテンシャル、 導 入 目 標 、 導 入 実 績 ............................................................. 18<br />
3.2.1 導 入 ポテンシャル .................................................................................................... 18<br />
3.2.2 導 入 目 標 .................................................................................................................. 30<br />
3.2.3 導 入 実 績 .................................................................................................................. 36<br />
3.3 世 界 の 市 場 動 向 ................................................................................................... 41<br />
3.3.1 市 場 の 現 状 および 将 来 見 通 し ................................................................................. 41<br />
3.3.2 風 力 発 電 機 メーカーの 合 併 ・ 新 規 参 入 の 歴 史 ........................................................ 42<br />
3.3.3 国 別 ・ 企 業 別 市 場 シェア ......................................................................................... 44<br />
3.3.4 洋 上 風 力 のサプライチェーン ................................................................................. 47<br />
3.4 各 国 の 技 術 開 発 動 向 ............................................................................................ 50<br />
3.4.1 技 術 開 発 の 歴 史 と 近 年 の 動 向 ................................................................................. 50<br />
3.4.2 主 要 国 の 技 術 開 発 動 向 ............................................................................................ 56<br />
3.4.3 洋 上 風 車 に 係 る 技 術 開 発 動 向 ................................................................................. 75<br />
3.5 今 後 に 向 けた 課 題 と 克 服 方 策 .............................................................................. 84<br />
3.5.1 発 電 コストの 低 減 .................................................................................................... 85<br />
3.5.2 設 置 可 能 地 域 の 拡 大 ................................................................................................ 86<br />
3.5.3 洋 上 風 力 発 電 の 技 術 開 発 の 推 進 .............................................................................. 86<br />
3.5.4 系 統 連 系 対 策 ........................................................................................................... 87<br />
3.5.5 環 境 調 和 と 地 域 協 調 ................................................................................................ 87<br />
3.5.6 まとめ ...................................................................................................................... 87<br />
2
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.1 技 術 の 概 要<br />
3.1.1 技 術 の 俯 瞰<br />
(1) 風 力 発 電 の 原 理<br />
風 力 発 電 は、 風 の 運 動 エネルギーを 風 車 ( 風 力 タービン)によって 回 転 エネルギーに 変 え、そ<br />
の 回 転 を 直 接 、または 増 速 機 を 経 た 後 に 発 電 機 に 伝 送 し、 電 気 エネルギーに 変 換 する 発 電 システ<br />
ムである。<br />
風 が 持 つ 運 動 エネルギーは 風 を 受 ける 面 積 に 比 例 し、 風 速 の 3 乗 に 比 例 して 増 大 する 性 質 を 持<br />
っており、 理 論 的 には 風 速 が 2 倍 になると 風 力 エネルギーは 8 倍 になる。したがって、より 風 の<br />
強 い 場 所 に 設 置 すること、 大 きい 翼 で 効 率 良 く 風 を 受 けることが 重 要 となる。<br />
また、 風 力 発 電 は 風 の 運 動 エネルギーの 最 大 30~40% 程 度 を 電 気 エネルギーに 変 換 できるなど、<br />
効 率 の 高 いことが 特 徴 に 挙 げられる。ただし、 風 のエネルギーを 風 車 の 回 転 エネルギーに 変 換 す<br />
る 効 率 (パワー 係 数 )は 風 車 の 形 式 によって 異 なる。また、 効 率 は、 風 速 と 翼 の 先 端 の 速 度 の 比<br />
( 周 速 比 )によって 異 なることから、 風 速 に 適 した 回 転 速 度 であることも 重 要 になる。<br />
図 3-1 陸 上 ウィンドファーム<br />
( 新 出 雲 風 力 発 電 所 )<br />
出 典 :ユーラスエナジーホームページ<br />
図 3-2 洋 上 ウィンドファーム<br />
(London Array)<br />
出 典 :London Array ホームページ<br />
出 典 :NEDO ホームページ<br />
図 3-3 風 力 発 電 の 各 種 損 失 と 効 率<br />
3
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
NEDO「 風 力 発 電 導 入 ガイドブック(2008 年 2 月 改 訂 第 9 版 )」では、 表 3-1 に 示 すような<br />
定 格 出 力 別 の 呼 称 が 挙 げられている。 本 白 書 では 表 3-1 に 示 す 定 義 を 用 いることとし、 主 に 中 型<br />
風 車 、 大 型 風 車 について 取 り 上 げる。<br />
表 3-1 定 格 出 力 から 見 た 風 車 の 分 類 基 準<br />
分 類<br />
定 格 出 力<br />
マイクロ 風 車<br />
小 型 風 車<br />
中 型 風 車<br />
大 型 風 車<br />
Ⅰ<br />
Ⅱ<br />
1kW 未 満<br />
1kW ~ 50kW 未 満<br />
50kW ~ 500kW 未 満<br />
500kW ~ 1,000kW 未 満<br />
1,000kW 以 上<br />
注 : 風 車 の 分 類 は 便 宜 的 に 分 けたものである 1 。<br />
出 典 :「 風 力 発 電 導 入 ガイドブック」(2008, NEDO)<br />
(2) 風 力 発 電 機 の 形 式<br />
風 力 発 電 機 の 形 式 は、 回 転 軸 の 方 向 によって「 水 平 軸 」と「 垂 直 軸 」に 大 きく 分 けられる。さ<br />
らに 作 動 原 理 によって、 翼 の 揚 力 を 利 用 して 高 速 回 転 を 得 る「 揚 力 形 」と、 風 が 押 す 力 で 低 速 回<br />
転 する「 抗 力 形 」に 分 けられる。 中 型 ・ 大 型 風 車 は、 水 平 軸 風 車 の 3 枚 翼 プロペラ 式 ( 図 3-4)<br />
が 主 流 である。<br />
(2.4MW 機 ) (1.0kW 機 )<br />
図 3-4 水 平 軸 風 車 の 例<br />
図 3-5 垂 直 軸 風 車 の 例<br />
出 典 : 三 菱 重 工 業 ホームページ<br />
出 典 : 一 般 社 団 法 人 日 本 小 形 風 力 発 電 協 会 ホームページ<br />
プロペラ 式 の 中 には、アップウィンド 方 式 とダウンウィンド 方 式 がある。アップウィンド 方 式<br />
4<br />
1<br />
【 電 気 事 業 法 】 電 気 主 任 技 術 者 の 選 任 :20kW 以 上 は 義 務 、20kW 以 上 2,000kW 未 満 は 外 部 委 託 承 認 申 請 も 可 、<br />
20kW 未 満 は 不 要 。 工 事 計 画 の 事 前 届 出 ・ 使 用 前 安 全 管 理 審 査 の 受 審 :500kW 以 上 は 義 務 、500kW 未 満 は 不<br />
要 。<br />
【JIS/IEC】 小 型 風 車 は IEC 61400-2 第 2 版 (2006)において「ロータ 受 風 面 積 が 200m 2 未 満 、 交 流 1,000V<br />
未 満 または 直 流 1,500V 未 満 」[ 水 平 軸 風 車 ではロータ 直 径 が 16m ( 約 50kW 相 当 ) 未 満 ]と 定 義 され、ま<br />
た 2m 2 未 満 ( 約 1kW 未 満 )の 風 車 はマイクロ 風 車 と 定 義 されている。
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
は、ロータの 回 転 面 が 風 上 側 に 位 置 しており、ブレードがタワーによる 風 の 乱 れの 影 響 を 受 けに<br />
くいため、 大 型 の 風 車 において 主 流 となっている。 一 方 、ダウンウィンド 方 式 は、 回 転 面 がタワ<br />
ーの 風 下 側 に 位 置 するため、ブレードを 風 向 きに 合 わせるヨー 駆 動 装 置 が 不 要 であり、 小 型 風 車<br />
への 適 用 例 が 多 いが、 大 型 機 でのダウンウィンド 方 式 の 風 車 も 近 年 、 開 発 されている 2 。<br />
垂 直 軸 風 車 については、 回 転 軸 が 風 向 きに 対 して 垂 直 であり、 風 向 きに 対 する 依 存 性 がない。<br />
また、 発 電 機 などの 重 量 物 を 地 上 付 近 に 設 置 できることや、ブレードの 製 造 がプロペラ 式 と 比 較<br />
して 容 易 であるなどの 利 点 がある。 一 方 、 自 己 起 動 が 困 難 である 3 他 、 回 転 数 制 御 が 難 しいこと、<br />
水 平 軸 風 車 と 比 較 して 効 率 が 劣 るために 装 置 が 大 型 化 する 傾 向 があること、などの 欠 点 がある。<br />
図 3-6 アップウィンド 方 式 とダウンウィンド 方 式 のロータ 位 置 の 違 い<br />
出 典 :NEDO ホームページ<br />
出 典 :NEDO ホームページ<br />
図 3-7 風 車 の 形 式<br />
2<br />
富 士 重 工 業 ( 株 ) 製 の SUBARU80/20(2.0MW 機 )はヨー 制 御 付 きのダウンウィンド 方 式 の 風 車 である。な<br />
お、 富 士 重 工 業 ( 株 )の 風 車 部 門 は、2012 年 7 月 に( 株 ) 日 立 製 作 所 に 譲 渡 された。<br />
3<br />
起 動 時 に 大 きなトルクが 必 要 。トルクは、 回 転 軸 を 中 心 にはたらく 回 転 軸 回 りの 力 のモーメント( 力 の 大 きさ<br />
と 回 転 軸 からの 距 離 の 積 )。<br />
5
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(3) 陸 上 ・ 洋 上 ウィンドファーム 4 の 主 要 構 成 要 素<br />
代 表 的 な 陸 上 ウィンドファームと 洋 上 ウィンドファームの 主 要 構 成 要 素 を 図 3-8 に 示 す。<br />
陸 上 ウィンドファームは、 風 力 発 電 機 、 風 力 発 電 機 の 運 転 / 停 止 ・ 監 視 ・ 記 録 を 行 う 運 転 監<br />
視 施 設 、 変 電 所 、 電 力 を 送 る 送 電 ケーブルなどによって 構 成 される。 風 力 発 電 機 によって 発 電<br />
された 電 力 は、 陸 上 変 電 所 を 経 て 電 力 系 統 に 送 られる。<br />
運 転 監 視 施 設 では、 各 風 力 発 電 機 のリアルタイムのデータ 収 集 によって、 風 力 発 電 機 の 運 転<br />
状 況 の 把 握 や 異 常 の 検 知 などを 行 い、 風 力 発 電 機 の 運 転 / 停 止 を 制 御 している。 変 電 所 には、<br />
系 統 に 送 る 電 気 や 系 統 からの 電 気 の 電 圧 を 変 換 する 変 圧 器 や、 風 力 発 電 システムの 異 常 、 系 統<br />
事 故 時 に 設 備 を 系 統 から 切 り 離 し、 系 統 側 の 損 傷 を 防 ぐ 系 統 保 護 装 置 などが 設 置 されている。<br />
洋 上 ウィンドファームは、 風 力 発 電 機 、 運 転 監 視 施 設 、 陸 上 変 電 所 、 送 電 ケーブルに 加 え、<br />
海 底 送 電 ケーブル、 港 湾 施 設 、 洋 上 変 電 所 などが 必 要 となる。<br />
洋 上 ウィンドファームの 建 設 や 運 転 ・ 保 守 に 当 たっては、 作 業 船 の 出 航 ・ 停 泊 や 関 連 設 備 を<br />
運 送 ・ 保 管 する 港 湾 施 設 が 必 要 となる。また、 海 底 送 電 線 のコスト 削 減 などを 目 的 として、 洋<br />
上 変 電 所 が 建 設 される 場 合 もある。<br />
電 力 系 統<br />
陸 上 変 電 所<br />
( 連 系 保 護 装 置 、 変 圧 器 等 )<br />
運 転 監 視 施 設<br />
風 力 発 電 機<br />
送 電 線 ・ 通 信 ケーブル<br />
電 力 系 統<br />
陸 上 変 電 所<br />
( 連 系 保 護 装 置 、<br />
変 圧 器 等 )<br />
運 転 監 視 施 設<br />
港 湾 施 設<br />
海 底 送 電 線 ・ 通 信 ケーブル<br />
洋 上 変 電 所<br />
風 力 発 電 機<br />
図 3-8 ウィンドファームの 主 要 構 成 要 素 ( 上 : 陸 上 下 : 洋 上 )<br />
4<br />
ここでは、 風 力 発 電 システムを 複 数 基 配 置 (ファーム 化 )した 発 電 所 を「ウィンドファーム」と 定 義 する。<br />
6
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(4) 風 力 発 電 システムの 主 要 構 成 要 素<br />
代 表 的 な 陸 上 および 洋 上 風 力 発 電 機 の 構 成 を 図 3-9 に 示 す。<br />
ブレード<br />
風 向 ・ 風 速 計<br />
ブレード<br />
風 向 ・ 風 速 計<br />
遠 隔 監 視 用<br />
センサー<br />
ハブ<br />
ロータ 軸<br />
増 速 機<br />
※<br />
ナセル<br />
発 電 機<br />
主 軸<br />
ブレーキ 装 置<br />
ハブ<br />
ロータ 軸<br />
増 速 機<br />
※<br />
主 軸<br />
ナセル<br />
ブレーキ 装 置<br />
塩 害 対 策 用 ファン<br />
発 電 機<br />
ヨー 駆 動 装 置<br />
ヨー 駆 動 装 置<br />
メンテナンス 用<br />
昇 降 機 ・はしご<br />
タワー<br />
メンテナンス 用<br />
昇 降 機 ・はしご<br />
タワー<br />
電 力 ケーブル<br />
電 力 変 換 ・ 制 御 装 置<br />
電 力 ケーブル<br />
着 船 用 設 備<br />
プラットフォーム<br />
電 力 変 換 ・ 制 御 装 置<br />
基 礎<br />
送 電 線 ・<br />
通 信 ケーブル<br />
海 底 送 電 線 ・<br />
通 信 ケーブル<br />
基 礎<br />
※ダイレクトドライブ 方 式 (ギアレス)の 機 種 には 増 速 機 は 装 備 されていない。<br />
図 3-9 風 力 発 電 機 の 主 要 な 構 成 要 素 ( 左 : 陸 上 風 力 右 : 洋 上 風 力 )<br />
出 典 : 風 力 発 電 導 入 ガイドブック(2008, NEDO)<br />
表 3-2 陸 上 および 洋 上 風 力 発 電 システムの 主 要 な 構 成 要 素<br />
構 成 要 素<br />
概 要<br />
ロータ 系 ブレード 回 転 羽 根 、 翼<br />
ロータ 軸<br />
ハブ<br />
ブレードの 回 転 軸<br />
ブレードの 付 け 根 をロータ 軸 に 連 結 する 部 分<br />
伝 達 系 主 軸 ロータの 回 転 を 発 電 機 に 伝 達 する<br />
増 速 機<br />
ロータの 回 転 数 を 発 電 機 に 必 要 な 回 転 数 に 増 速 する 歯 車 (ギ<br />
ア) 装 置 ( 増 速 機 のない 直 結 ドライブもある)<br />
電 気 系 発 電 機 回 転 エネルギーを 電 気 エネルギーに 変 換 する<br />
送 電 ケーブル<br />
電 力 変 換 ・ 制 御 装 置<br />
変 圧 器<br />
発 電 機 からの 電 力 を 送 電 する<br />
直 流 、 交 流 を 変 換 する 装 置 (インバータ、コンバータなど)<br />
系 統 からの 電 気 、 系 統 への 電 気 の 電 圧 を 変 換 する 装 置<br />
系 統 保 護 装 置<br />
風 力 発 電 システムの 異 常 、 系 統 事 故 時 などに 設 備 を 系 統 から<br />
切 り 離 し、 系 統 側 の 損 傷 を 防 ぐ 保 護 装 置<br />
運 転 ・ 制 御 系 出 力 制 御 風 車 出 力 を 制 御 するピッチ 制 御 あるいはストール 制 御<br />
ヨー 制 御 ロータの 向 きを 風 向 に 追 従 させる<br />
7
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
ブレーキ 装 置 台 風 時 、 点 検 時 等 にロータを 停 止 させる<br />
風 向 ・ 風 速 計 出 力 制 御 、ヨー 制 御 に 使 用 されナセル 上 に 設 置 される<br />
運 転 監 視 装 置 風 車 の 運 転 / 停 止 ・ 監 視 ・ 記 録 を 行 う<br />
支 持 ・ 構 造 系 ナセル 伝 達 軸 、 増 速 機 、 発 電 機 などを 収 納 する 部 分<br />
タワー<br />
ロータ、ナセルを 支 える 部 分<br />
基 礎<br />
タワーを 支 える 基 礎 部 分<br />
出 典 : 風 力 発 電 導 入 ガイドブック(2008, NEDO)<br />
1) 陸 上 風 力 発 電 システム<br />
陸 上 風 力 発 電 システムは、 基 礎 工 事 が 行 われた 上 にタワーが 設 置 され、タワー 上 にナセルと<br />
ブレードが 組 み 上 げられている。ナセルの 中 には 増 速 機 や 発 電 機 、ブレーキ 装 置 、ロータ 軸 、<br />
主 軸 が 格 納 されており、ブレードはハブによってロータ 軸 に 連 結 されている。タワー 内 には、<br />
電 力 ケーブルおよびメンテナンス 用 の 昇 降 機 ・はしごなどが 設 置 されている。<br />
ブレードは 1 枚 ~ 複 数 枚 の 例 があるが、 一 般 に 方 位 制 御 時 に 振 動 が 起 きにくく 安 定 性 が 良 い<br />
ことから 3 枚 ブレードが 現 在 の 主 流 になっている。ロータの 回 転 数 は 毎 分 数 十 回 転 程 度 であり、<br />
風 力 発 電 で 広 く 用 いられている 誘 導 発 電 機 の 回 転 数 は 一 般 に 毎 分 1,500 回 転 (50Hz 用 )または<br />
1,800 回 転 (60Hz 用 )であるため、 歯 車 (ギア)を 用 いて 増 速 させる。 一 方 、 同 期 発 電 機 の 場<br />
合 は 増 速 機 のない 直 結 駆 動 が 多 い。<br />
風 はエネルギー 密 度 が 小 さいだけでなく、 風 向 や 風 速 が 絶 えず 変 動 するため、その 風 をエネ<br />
ルギー 源 とする 風 力 発 電 機 は 安 定 した 発 電 出 力 を 得 にくい。そこで、アップウィンド 方 式 の 風<br />
力 発 電 システムには、 常 に 羽 根 の 回 転 面 を 風 上 に 向 けるためのヨー 駆 動 装 置 や 出 力 を 制 御 する<br />
ピッチ 装 置 の 機 能 などが 備 わっており、より 多 くの 安 定 した 出 力 が 得 られるように 工 夫 されて<br />
いる。また、 低 風 速 でも 効 率 の 良 い 発 電 が 可 能 となるように 発 電 機 の 極 数 を 増 やしたり、 大 小<br />
2 つの 発 電 機 を 備 えて 風 速 に 合 わせて 発 電 機 を 切 替 えたりするなど、 幅 広 い 風 速 領 域 で 効 率 良<br />
く 発 電 できる 風 力 発 電 システムもある。<br />
2) 洋 上 風 力 発 電 システム<br />
最 近 は、 陸 上 における 適 地 が 減 少 していることや、 陸 上 と 比 較 して 洋 上 は 風 況 が 安 定 してい<br />
ることから、 洋 上 風 力 発 電 システムが 注 目 されており、 欧 州 を 中 心 に 大 規 模 な 洋 上 ウィンドフ<br />
ァームの 建 設 が 始 まっている。 洋 上 風 力 発 電 は、 海 底 に 直 接 基 礎 を 設 置 する 着 床 式 と、 浮 体 を<br />
基 礎 として 係 留 などで 固 定 する 浮 体 式 に 分 類 されるが、 浮 体 式 は 技 術 開 発 の 段 階 で、 実 証 試 験<br />
用 を 除 き、 現 在 導 入 されている 洋 上 風 力 はすべて 着 床 式 である。 現 在 、さまざまなタイプの 基<br />
礎 構 造 が 考 案 ・ 使 用 されている。<br />
ナセルおよびブレード 部 の 構 成 要 素 は、 陸 上 風 力 発 電 機 とほぼ 同 様 であるが、 洋 上 風 力 では<br />
特 に 厳 しい 海 洋 環 境 に 対 応 するため、 浸 水 対 策 や 塩 害 対 策 用 フィルタなどが 必 要 となる。また、<br />
陸 上 風 力 と 比 較 して、 洋 上 風 力 はウィンドファームまでのアクセスやメンテナンス 作 業 が 困 難<br />
かつ 高 コストであることから、 適 切 な 運 用 ・ 管 理 による 風 車 の 故 障 の 防 止 や、メンテナンスコ<br />
ストの 削 減 が 採 算 性 確 保 のために 重 要 となる。 風 車 の 故 障 防 止 に 当 たっては、 日 常 的 な 監 視 に<br />
8
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
よる 風 車 の 運 転 状 況 の 適 時 把 握 、 異 常 の 検 知 などのため、 遠 隔 監 視 制 御 システムの 搭 載 が 重 要<br />
となるだけなく、メンテナンス 用 のプラットフォーム、 着 船 用 設 備 が 必 要 となる。<br />
3.1.2 システム 価 格 、 発 電 コスト<br />
(1) システム 価 格<br />
近 年 の 陸 上 風 力 のシステム 価 格 5は、 世 界 平 均 で 約 11~26 万 円 /kW の 水 準 にある。 地 域 別 に<br />
見 ると、 欧 州 の 約 17 万 円 /kW や 北 米 の 約 16 万 円 /kW と 比 較 して、 日 本 は 20~35 万 円 /kW<br />
と 高 い 水 準 にある。また、 中 国 のシステム 価 格 は 11 万 円 /kW と 比 較 的 低 い。<br />
風 力 発 電 のシステム 価 格 は 1980 年 代 以 降 の 量 産 化 によって 大 きく 低 下 したが、2004 年 から 上<br />
昇 傾 向 に 転 じた。これは 主 に、タービンやギアボックス、ブレード、ベアリングなどの 供 給 不 足<br />
や、 鋼 材 価 格 の 上 昇 が 原 因 とされている 6 。しかし、2009 年 以 降 にはシステム 価 格 が 再 び 下 落 傾<br />
向 に 転 じた。これは、 鋼 材 価 格 が 下 がったこと、 供 給 不 足 が 解 消 され 始 めたこと、 製 造 業 者 間 の<br />
競 争 が 激 しくなったことなどが 原 因 と 考 えらえている 7 。 参 考 として 2006 年 以 降 の 日 本 における<br />
システム 価 格 の 推 移 を 図 3-11 に 示 す。<br />
洋 上 風 力 のシステム 価 格 は、 世 界 平 均 で 約 36~56 万 円 /kW と、 陸 上 風 力 の 約 2 倍 から 3 倍 の<br />
水 準 にある。 一 般 に、 洋 上 風 力 のシステム 価 格 は、 基 礎 工 事 や 係 留 コストが 約 半 分 を 占 めており、<br />
これは 陸 からの 距 離 や 水 深 によって 異 なる 8 。 初 期 に 設 置 された 洋 上 風 力 のシステムは 比 較 的 浅 い<br />
海 に 設 置 されていたものの、2010 年 以 降 には 水 深 が 20m を 超 える 海 域 に 設 置 されるようになっ<br />
ているため、それに 伴 ってシステム 価 格 が 上 昇 傾 向 にある 7 。<br />
図 3-10 陸 上 風 力 発 電 のタービン 価 格 の 推 移<br />
出 典 :Technology Roadmaps Wind energy(2013, IEA)より NEDO 作 成<br />
5<br />
設 備 費 ( 風 力 発 電 装 置 に 掛 かる 費 用 )、 設 置 に 掛 かる 諸 経 費 ( 施 工 、 系 統 連 系 などに 掛 かる 費 用 )の 合 計 を<br />
システム 価 格 と 定 義 する。<br />
6<br />
“Renewable Energy Essentials: Wind”(2008, IEA)<br />
7<br />
“Technology Roadmaps Wind energy”(2013, IEA)<br />
8<br />
“Technology Roadmaps Wind energy”(2009, IEA)<br />
9
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
表 3-3 世 界 の 風 力 発 電 のシステム 価 格<br />
. 国 ・ 地 域 システム 価 格 ( 万 円 /kW)※ 出 典 など<br />
陸 上<br />
風 力<br />
洋 上<br />
風 力<br />
世 界<br />
欧 州<br />
北 米<br />
中 国<br />
日 本<br />
世 界<br />
英 国<br />
独 、 蘭<br />
11~26<br />
(1,100~2,600 ドル/kW)<br />
17 前 後<br />
(1,700 ドル/kW)<br />
16 前 後<br />
(1,600 ドル/kW)<br />
11 前 後<br />
(1,100 ドル/kW 前 後 )<br />
20~35<br />
36~56<br />
(3,600~5,600 ドル/kW)<br />
Technology Roadmaps Wind energy(2013,<br />
IEA)<br />
「コスト 等 検 証 委 員 会 報 告 書 」(2011, エ<br />
ネルギー・ 環 境 会 議 コスト 等 検 証 委 員 会 )<br />
Technology Roadmaps Wind energy(2013,<br />
IEA)<br />
31 前 後<br />
(3,100 ドル/kW) Technology Roadmaps Wind energy(2009,<br />
47 前 後<br />
(4,700 ドル/kW)<br />
日 本 28.3~70<br />
IEA)<br />
「コスト 等 検 証 委 員 会 報 告 書 」(2011, エ<br />
ネルギー・ 環 境 会 議 コスト 等 検 証 委 員 会 )<br />
※ 換 算 レートは、1 ドル=100 円 を 使 用 。 日 本 における 洋 上 風 力 のシステム 価 格 のみモデルプラントにおける 試<br />
算 値 、 他 は 実 績 値 。<br />
注 :「 新 エネルギー 等 事 業 者 支 援 事 業 」の 補 助 申 請 額 から 逆 算 して 算 出 。「 最 大 」は 当 該 年 度 の 補 助 申 請 設 置 コ<br />
ストの kW 単 価 が 最 も 高 いものの 額 。「 最 小 」は 当 該 年 度 の 補 助 申 請 設 置 コストの kW 単 価 が 最 も 小 さいもの<br />
の 額 。<br />
注 :システム 価 格 については、 機 器 装 置 費 の 他 、 工 事 費 用 を 含 むが、 補 助 金 申 請 前 に 要 する 環 境 影 響 評 価 などの<br />
経 費 は 含 まれない。<br />
図 3-11 日 本 におけるシステム 価 格 の 推 移 ( 千 円 /kW)<br />
出 典 : 総 合 資 源 エネルギー 調 査 会 新 第 29 回 エネルギー 部 会 資 料 3-1「 風 力 発 電 の 現 状 について」(2008, 資 源 エ<br />
ネルギー 庁 )より NEDO 作 成<br />
10
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-12 鋼 材 価 格 の 推 移<br />
データ 元 :World Bank, 2008; US Steel 2009; UNCTAD, 2010.<br />
出 典 :Renewable Energy Technologies:Cost Analysis Series Wind Power(2012, IRENA)より NEDO 作 成<br />
11
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 発 電 コスト<br />
表 3-4、 図 3-13 に 世 界 および 日 本 の 風 力 発 電 の 発 電 コストを 示 す。<br />
世 界 の 陸 上 風 力 の 発 電 コストは、おおむね 10 円 /kWh 前 後 であり、 従 来 型 電 源 に 対 してコス<br />
ト 競 争 力 を 持 つ 水 準 にある。 風 況 が 良 く( 稼 動 率 40% 程 度 )、システム 価 格 が 安 い 場 合 には、5<br />
円 /kWh 前 後 の 発 電 コストを 実 現 する 場 合 もある。 洋 上 風 力 のシステム 価 格 は 陸 上 風 力 の 約 2 倍<br />
であるが、 陸 上 よりも 風 況 が 良 く、 約 50% 程 度 多 い 発 電 量 を 得 られるため、 陸 上 風 力 とほぼ 同 水<br />
準 の 発 電 コスト( 約 8~15 円 /kWh 程 度 )が 実 現 可 能 とされている 9 。なお、この 値 は 水 深 が 50m<br />
未 満 の 遠 浅 海 域 に 広 く 導 入 が 進 んでいる 欧 州 の 着 床 式 洋 上 風 力 を 前 提 としたものであり、 浮 体 式<br />
洋 上 風 力 の 発 電 コストが 同 水 準 の 発 電 コストを 達 成 可 能 かは 留 意 が 必 要 である。<br />
日 本 の 風 力 発 電 の 発 電 コストについては、 国 家 戦 略 室 のコスト 等 検 証 委 員 会 で 検 討 が 進 められ<br />
ており、 陸 上 風 力 は 好 条 件 が 揃 った 場 合 で 約 10 円 /kWh と、 火 力 ( 石 炭 、LNG)と 同 程 度 の 発<br />
電 コストになり 得 るという 試 算 結 果 が 示 されている。 洋 上 風 力 については、9.4~23.1 円 /kWh<br />
と、 陸 上 風 力 よりも 高 めの 発 電 コストになると 試 算 されている。 同 委 員 会 の 報 告 書 では、 洋 上 風<br />
力 について、 送 電 線 の 敷 設 コストが 陸 上 より 高 価 になることが 指 摘 されている。<br />
表 3-4 風 力 発 電 の 発 電 コスト<br />
場 所 発 電 コスト( 円 /kWh) 1) 出 典 など<br />
3.2~12.8 2)<br />
Deploying Renewables - Best and Future<br />
(0.04~0.16 ドル/kWh) Policy Practice(2011, IEA)<br />
世 界<br />
陸 上<br />
5.6~10.4<br />
Technology Roadmaps Wind energy(2009,<br />
風 力<br />
(0.07~0.13 ドル/kWh) IEA)<br />
日 本 9.9~17.3 3)<br />
「コスト 等 検 証 委 員 会 報 告 書 」(2011, エネル<br />
ギー・ 環 境 会 議 コスト 等 検 証 委 員 会 )<br />
8.0~15.2<br />
(0.1~0.19 ドル/kWh)<br />
Deploying Renewables - Best and Future<br />
Policy Practice(2011, IEA)<br />
世 界<br />
※2005~2008 年 の 価 格<br />
洋 上<br />
8.8~10.5<br />
Technology Roadmaps Wind energy(2009,<br />
風 力<br />
(0.11~0.131 ドル/kWh)<br />
IEA)<br />
日 本 9.4~23.1 2)<br />
「コスト 等 検 証 委 員 会 報 告 書 」(2011, エネル<br />
ギー・ 環 境 会 議 コスト 等 検 証 委 員 会 )<br />
1) 換 算 レートは 1 ドル=80 円 を 使 用 。<br />
2) 建 設 費 :1,400~2,500 ドル/kW、O&M コスト: 建 設 費 の 2.5%、 全 負 荷 時 間 :1,800~3,500 時 間 / 年 、 加 重 平<br />
均 資 本 コスト:6.5%、 稼 動 年 数 :20~25 年 と 仮 定 。<br />
3) 建 設 費 :20~35 万 円 /kW、 設 備 の 廃 棄 費 用 : 建 設 費 の 5%、O&M コスト: 人 件 費 ・ 修 繕 費 ( 建 設 費 の 1.4%)<br />
諸 費 ( 建 設 費 の 0.6%) 業 務 分 担 費 ( 直 接 費 の 14%)の 和 、 設 備 利 用 率 : 陸 上 風 力 20%、 洋 上 風 力 30%、 稼 動<br />
年 数 :20 年 、 割 引 率 :3%と 仮 定 。<br />
9<br />
“Technology Roadmaps Wind energy”(2009, IEA)<br />
12
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
出 典 : 表 3-4 より 取 りまとめ<br />
図 3-13 風 力 発 電 コストまとめ<br />
(3) 風 力 発 電 のコスト 構 造<br />
陸 上 風 力 と 洋 上 風 力 のシステム 価 格 の 内 訳 例 を 図 3-14 に 示 す。なお、ここで 紹 介 する 数 値 は<br />
一 例 であり、プロジェクトごとにコスト 構 造 が 異 なることに 留 意 が 必 要 である。<br />
陸 上 風 力 と 洋 上 風 力 を 比 較 すると、 陸 上 風 力 はシステム 価 格 に 占 める 構 造 体 (タービン・ 電 気<br />
設 備 、 基 礎 など)の 比 率 が 約 8 割 を 占 めており、 風 力 発 電 機 のコスト 削 減 が 市 場 競 争 力 に 直 結 し<br />
ている。 一 方 、 洋 上 風 力 は、 構 造 体 以 外 の 基 礎 、 系 統 連 系 や 設 置 に 掛 かるコストが 半 分 近 くを 占<br />
めており、 構 造 体 以 外 の 各 構 成 要 素 において、コスト 削 減 余 地 が 多 く 残 されている。<br />
また、 実 運 用 に 当 たっては、 運 転 ・ 保 守 費 の 削 減 が 重 要 となる。 実 際 の 価 格 は 国 や 地 域 によっ<br />
て 大 きく 異 なるが、 陸 上 風 力 についてはライフサイクルコストの 20~25%を 占 めるとするデータ<br />
がある 10 。 運 転 ・ 保 守 費 は 毎 年 一 定 ではなく、 設 置 ・ 運 用 から 年 を 経 るにつれ、 各 種 不 具 合 など<br />
の 発 生 によって 増 加 する 傾 向 がある。<br />
洋 上 風 力 の 運 転 ・ 保 守 費 は、 現 状 では 非 常 に 高 く、 年 間 122,400~178,000 ドル/MW( 約 980<br />
~1,420 万 円 /MW) 近 くになるとの 報 告 もある 11 。 運 転 ・ 保 守 費 削 減 のため、 故 障 の 防 止 や 効 率<br />
的 なメンテナンスの 実 施 などが 重 要 課 題 となっている。 欧 州 を 中 心 に 導 入 が 進 んでいる 洋 上 風 力<br />
12は、1990 年 以 降 、 初 期 の 実 証 研 究 段 階 を 経 て、2000 年 以 降 、 導 入 が 進 められてきた。2010 年<br />
以 降 は 200~700MW 級 の 洋 上 ウィンドファームが 導 入 され 始 めた。 洋 上 ウィンドファームの 導<br />
入 に 際 して 必 要 となるコストを 示 す 初 期 費 用 については、 初 期 の 実 証 研 究 を 除 き、2010 年 以 降 は<br />
概 ね 20~40 万 円 /kW であったのに 対 し、2010 年 以 降 は 概 ね 40~80 万 円 /kW へとコスト 高 の 傾<br />
向 にある。その 背 景 として、 洋 上 ウィンドファームの 設 置 海 域 を 示 す 離 岸 距 離 や 水 深 が 広 がり、<br />
洋 上 風 車 を 支 持 する 基 礎 が 水 深 に 対 応 するために 大 型 化 すると 共 に、 遠 方 で 施 工 を 行 う 船 舶 の 傭<br />
船 費 用 等 が 増 加 することに 起 因 している。 初 期 費 用 が 増 加 する 一 方 、 離 岸 距 離 が 広 がることによ<br />
り、 沿 岸 部 に 比 べ 好 風 況 な 海 域 での 発 電 が 可 能 となり、 設 備 利 用 率 が 向 上 し、 発 電 コストを 低 減<br />
する 等 のメリットを 享 受 することが 可 能 になる。<br />
10<br />
“Renewable Energy Technologies:Cost Analysis Series Wind Power”(2012, IRENA)<br />
11<br />
“Deploying Renewables - Best and Future Policy Practice” (2011, IEA)<br />
12<br />
“Review of Offshore Wind Energy Markets”(2013, GL Garrad Hassan)<br />
13
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-14 システム 価 格 の 内 訳<br />
注 : 上 記 はシステム 価 格 であり、 実 運 用 に 当 たってはシステム 価 格 に 加 え、 運 転 ・ 保 守 費 が 必 要 となる<br />
データ 元 :Douglas-Westwood 2010( 洋 上 風 力 )<br />
出 典 :“The Economics of Wind Energy” (2009, EWEA)、“ Renewable Energy Technologies:Cost Analysis Series<br />
Wind Power”(2012, IRENA)より NEDO 作 成<br />
図 3-15 米 国 における 運 転 ・ 保 守 費 の 経 年 変 化 ( 陸 上 風 力 )<br />
注 : 緑 は 1998~2003 年 に 運 用 開 始 、 赤 は 2004~2009 年 に 運 用 開 始<br />
出 典 :“Renewable Energy Technologies:Cost Analysis Series Wind Power”(2012, IRENA)より NEDO 作<br />
成<br />
14
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-16 洋 上 風 力 ( 着 床 式 )の 発 電 コストの 内 訳<br />
注 1: 赤 が 運 転 ・ 保 守 費 を 示 す<br />
注 2: 各 種 文 献 、 事 例 によって 内 訳 は 大 きく 異 なる<br />
出 典 :“Large‐Scale Offshore Wind Energy for the United States” (2010,NREL)より NEDO 作 成<br />
設 備 容 量 の 推 移<br />
初 期 費 用 の 推 移<br />
図 3-17 欧 州 における 洋 上 風 力 の 設 備 容 量 と 初 期 費 用 の 推 移<br />
出 典 :”Review of Offshore Wind Energy Markets”(2013, GL Garrad Hassan)<br />
15
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
初 期 費 用 と 離 岸 距 離 の 関 係<br />
初 期 費 用 と 水 深 の 関 係<br />
図 3-18 欧 州 における 洋 上 風 力 の 初 期 費 用 と 離 岸 距 離 及 び 水 深 の 関 係<br />
出 典 :”Review of Offshore Wind Energy Markets”(2013, GL Garrad Hassan)<br />
16
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
( 参 考 ) 発 電 コストの 算 出 式 13<br />
発 電 コストは 一 般 的 に、 年 間 経 常 費 を 年 間 発 電 量 で 除 算 することによって 算 出 される。 年<br />
間 経 常 費 は、イニシャルコストと 運 転 ・ 保 守 費 などのランニングコストからなる。イニシャ<br />
ルコストの 算 出 方 法 には、 資 本 回 収 法 によるものと、 減 価 償 却 費 および 平 均 金 利 などの 和 と<br />
して 求 める 方 法 がある。ここでは 資 本 回 収 法 による 算 出 方 法 について 述 べる。<br />
資 本 回 収 法 では、イニシャルコストはシステム 価 格 と 年 経 費 率 の 積 で 表 され、 発 電 コストは<br />
次 の 式 で 計 算 される( 税 金 は 考 慮 していない)。<br />
年 間 発 電 量 は 風 車 の 出 力 曲 線 と 設 置 場 所 の 風 速 から 計 算 する。しかし、 風 力 発 電 の 事 業 化<br />
を 検 討 する 際 は 正 味 年 間 発 電 量 の 推 定 が 重 要 で、 年 間 発 電 量 に 対 し、 例 えば 次 に 示 すような<br />
影 響 による 発 電 量 の 損 失 があり、 利 用 可 能 率 や 出 力 補 正 係 数 とともに 考 慮 することが 望 まし<br />
い。<br />
• 複 雑 地 形 の 影 響<br />
• 複 数 風 車 設 置 の 場 合 の 風 車 間 の 干 渉<br />
• 風 速 の 経 年 変 動<br />
• ハブの 高 さの 風 速 への 換 算 誤 差<br />
図 3-19 年 平 均 風 速 と 発 電 単 価 の 関 係 ( 例 )<br />
出 典 : 風 力 発 電 導 入 ガイドブック(2008, NEDO)より 作 成<br />
13<br />
風 力 発 電 導 入 ガイドブック(2008, NEDO)を 基 に 取 りまとめ<br />
17
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.2 導 入 ポテンシャル、 導 入 目 標 、 導 入 実 績<br />
3.2.1 導 入 ポテンシャル<br />
(1) 世 界<br />
風 力 エネルギーは 風 速 の 3 乗 に 比 例 して 増 大 するため、 経 済 性 の 向 上 には 風 況 の 良 い 場 所 の 選<br />
定 が 必 須 であり、その 目 安 は 年 間 平 均 風 速 7m/s 14 以 上 とされている。 世 界 の 陸 上 の 年 間 平 均 風 速<br />
の 分 布 図 を 図 3-20 に 示 す。 世 界 の 分 布 図 では、 特 に 米 国 中 央 部 や 中 国 西 部 、 英 国 、アルゼンチ<br />
ン 南 部 などが 風 況 に 恵 まれていることが 分 かる。<br />
一 般 に、 洋 上 では 陸 上 よりも 良 い 風 況 が 得 られる。 世 界 の 洋 上 の 年 間 平 均 風 力 エネルギー 密 度<br />
の 分 布 図 を 図 3-21 に 示 す。 北 半 球 冬 期 は、 特 に 米 国 東 岸 や 英 国 ・ノルウェー 沖 の 北 海 、 日 本 沿<br />
岸 域 などの 風 況 が 良 い。また、 豪 州 沿 岸 、 南 アフリカ、アルゼンチン 南 部 などは 1 年 を 通 して 風<br />
況 に 恵 まれている。<br />
図 3-20 世 界 の 年 間 平 均 風 速 分 布 ( 陸 上 )<br />
出 典 :3TIER ホームページ 及 び“Global Wind Report Annual Market Update2012”(2013, GWEC)より 作 成<br />
14<br />
ハブの 高 さ 80m の 場 合 。“Renewable Energy Essentials: Wind” (2008, IEA)<br />
18
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
※ 海 上 風 ( 高 度 10m)の 平 均 風 力 エネルギー 密 度<br />
出 典 :NASA ホームページ<br />
図 3-21 世 界 の 風 力 エネルギー 密 度 分 布 ( 洋 上 )<br />
( 上 :6 月 ~8 月 下 :12 月 ~2 月 )<br />
19
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
日 本<br />
日 本 の 陸 上 および 洋 上 の 風 力 ポテンシャルマップを 図 3-22、 図 3-23 に 示 す。 各 国 と 比 較 して、<br />
陸 上 において 7m/s 以 上 の 風 況 を 得 られる 地 域 ( 下 図 のオレンジや 赤 い 部 分 )は 少 ないが、 北 海 道<br />
や 北 東 北 、 関 東 、 九 州 などを 中 心 に、 洋 上 の 風 況 に 恵 まれている。<br />
図 3-22 日 本 の 風 力 ポテンシャルマップ( 陸 上 )<br />
出 典 :「 平 成 22 年 度 新 エネルギー 等 導 入 促 進 基 礎 調 査 事 業 ( 風 力 エネルギーの 導 入 可 能 量 に 関 する 調 査 )」(2011,<br />
資 源 エネルギー 庁 )<br />
20
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-23 日 本 の 風 力 ポテンシャルマップ( 洋 上 )<br />
出 典 :「 平 成 22 年 度 新 エネルギー 等 導 入 促 進 基 礎 調 査 事 業 ( 風 力 エネルギーの 導 入 可 能 量 に 関 する 調 査 )」(2011,<br />
資 源 エネルギー 庁 )<br />
21
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
日 本 における 風 力 発 電 の 導 入 ポテンシャルおよび 導 入 可 能 量 については、 経 済 産 業 省 および 環<br />
境 省 が 詳 細 な 試 算 を 行 っている。ここで、 導 入 ポテンシャルとは「 自 然 要 因 ( 標 高 、 傾 斜 など)、<br />
法 規 制 ( 自 然 公 園 、 保 安 林 など)などの 開 発 不 可 能 地 を 除 いて 算 出 したエネルギー 量 」、 導 入 可<br />
能 量 とは「 経 済 性 ( 固 定 価 格 買 取 制 度 、 収 益 率 など)を 考 慮 して、 導 入 ポテンシャルから 絞 り 込<br />
んだエネルギー 量 」と 定 義 されている。<br />
図 3-24 ポテンシャルに 係 る 用 語 の 定 義 と 限 界<br />
出 典 :コスト 等 検 証 委 員 会 報 告 書 参 考 資 料 3(2011, エネルギー・ 環 境 会 議 コスト 等 検 証 委 員 会 )より NEDO 作 成<br />
陸 上 風 力 の 導 入 ポテンシャルについては、 経 済 産 業 省 は 2 億 9000 万 kW、 環 境 省 は 2 億 8000<br />
万 kW と、 同 等 の 試 算 結 果 を 出 している( 表 3-5)。また、 導 入 可 能 量 については、 固 定 買 取 価<br />
格 制 度 (FIT)の 買 取 価 格 ・ 買 取 年 別 に 試 算 値 が 出 されており、20 円 /kWh で 15 年 買 い 取 りの<br />
場 合 は 約 1 億 kW、20 円 /kWh で 20 年 買 い 取 りの 場 合 は 1 億 1000 万 kW( 経 済 産 業 省 )~1 億<br />
4000 万 kW( 環 境 省 )と 試 算 されている。<br />
電 力 供 給 エリア 別 の 導 入 ポテンシャル 分 布 状 況 を 見 ると、 最 も 賦 存 量 が 多 いのは 北 海 道 エリア<br />
で、 全 体 の 約 30%を 占 めている。 次 いで 東 北 エリアが 23%、 九 州 エリアが 11%となっている( 図<br />
3-25)。<br />
22
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
表 3-5 導 入 ポテンシャルおよび 導 入 可 能 量 試 算 例 ( 陸 上 風 力 )<br />
※1<br />
経 済 産 業 省<br />
※2<br />
環 境 省<br />
自 然 公 園 第 2 種 ・3 種<br />
※3<br />
開 発 不 可 能 地 特 別 地 域 および 普 通<br />
※3<br />
開 発 不 可 能 地<br />
を 除 く 地 域 並 びに 国 有 林 も を 除 く<br />
開 発 不 可 とした 場 合<br />
導 入 ポテンシャル<br />
2 億 9,000 万 kW 1 億 5,000 万 kW 2 億 8,000 万 kW<br />
(7,000 億 kWh) (3,500 億 kWh) (5,900 億 kWh)<br />
FIT シナリオ<br />
1 億 kW<br />
9,900 万 kW 5,800 万 kW<br />
20 円 ×15 年<br />
(2,100 億 kWh)<br />
上 記 に 自 治 体 の 導 入 意<br />
導 入<br />
可 能 量<br />
※4<br />
欲 係 数 (52%)、 社 会<br />
的 受 容 性 係 数 (75%)<br />
3,900 万 kW 2,300 万 kW<br />
を 乗 じた 場 合<br />
FIT シナリオ<br />
1 億 4,000 万 kW<br />
1 億 1,000 万 kW 6,300 万 kW<br />
20 円 ×20 年<br />
(2,900 億 kWh)<br />
上 記 に 自 治 体 の 導 入 意<br />
欲 係 数 (52%)、 社 会<br />
的 受 容 性 係 数 (75%)<br />
を 乗 じた 場 合<br />
4,200 万 kW 2,500 万 kW<br />
※1 平 成 22 年 度 新 エネルギー 等 導 入 促 進 基 礎 調 査 事 業 ( 風 力 エネルギーの 導 入 可 能 量 に 関 する 調 査 )(2011 年<br />
8 月 , 資 源 エネルギー 庁 )<br />
※2 平 成 22 年 度 再 生 可 能 エネルギー 導 入 ポテンシャル 調 査 (2011 年 4 月 , 環 境 省 )<br />
※3 開 発 不 可 能 地 : 自 然 条 件 ( 風 速 5.5m/s 未 満 、 標 高 1000m 以 上 、 最 大 傾 斜 角 20 度 以 上 )、 法 規 制 ( 自 然 公<br />
園 ( 特 別 保 護 地 区 、 第 1 種 特 別 地 域 ))、 原 生 自 然 環 境 保 全 地 域 、 自 然 環 境 保 全 地 域 、 鳥 獣 保 護 区 のうち 特 別<br />
保 護 地 区 、 世 界 自 然 遺 産 地 域 、 保 安 林 ) 土 地 利 用 等 ( 市 街 化 区 域 、 田 、 建 物 用 地 、 幹 線 交 通 用 地 、その 他 用 地 、<br />
河 川 ・ 湖 沼 、 海 岸 域 、ゴルフ 場 、 居 住 地 から 500m 未 満 。 経 産 省 調 査 では 送 電 線 から 40km 以 上 )<br />
※4 事 業 収 支 シナリオとして、 環 境 省 調 査 では、 設 備 利 用 率 24%( 風 速 6.5m/s の 場 合 。 風 速 によって 異 なる。)、<br />
面 積 当 たり 出 力 1 万 kW/km 2 、 風 車 システム 装 置 ・ 工 事 費 25 万 /kW、 道 路 設 備 費 85 百 万 円 /km( 直 線 距<br />
離 ×2 を 想 定 )、 送 電 線 敷 設 費 (55 百 万 円 /km)、 調 査 ・ 設 計 費 など 470 百 万 円 を 想 定 。 経 産 省 調 査 では、 建<br />
設 コストは「 新 エネルギー 等 事 業 者 支 援 対 策 事 業 」から「 標 高 」「 傾 斜 」「 道 路 からの 距 離 」「 送 電 線 からの<br />
距 離 」のパラメータでモデル 化 したもの、 運 転 保 守 費 6,000 円 /kW、 金 利 4%、 原 価 償 却 期 間 17 年 、 正 味 年<br />
間 発 電 量 (kWh)は 年 平 均 風 速 からレーレ 分 布 と 仮 定 して 算 出 、プロジェクト IRR は 税 引 前 8%に 加 え、 税 引<br />
後 3.3%も 想 定 。<br />
出 典 :コスト 等 検 証 委 員 会 報 告 書 参 考 資 料 3(2011, エネルギー・ 環 境 会 議 コスト 等 検 証 委 員 会 )<br />
23
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-25 陸 上 風 力 の 電 力 供 給 エリア 別 の 導 入 ポテンシャル 分 布 状 況<br />
出 典 : 平 成 22 年 度 再 生 可 能 エネルギー 導 入 ポテンシャル 調 査 (2011 年 4 月 , 環 境 省 )より NEDO 作 成<br />
洋 上 風 力 の 導 入 ポテンシャルについては、 経 済 産 業 省 は 15 億 kW、 環 境 省 は 16 億 kW と、 同<br />
等 の 試 算 結 果 を 出 している( 表 3-6)。 導 入 可 能 量 については、 試 算 値 に 大 きな 差 があり、20 円<br />
/kWh で 15 年 買 い 取 りの 場 合 、 経 産 省 は 4500 万 kW、 環 境 省 は 17 万 kW と 試 算 している。こ<br />
れは 前 提 条 件 として 建 設 コストの 想 定 に 差 がある( 例 えば 水 深 50m で 見 ると、 環 境 省 調 査 では<br />
59 万 円 /kW、 経 産 省 調 査 では 46 万 円 /kW と 想 定 )ことが 要 因 となっている。 電 力 供 給 エリア<br />
別 の 導 入 ポテンシャル 分 布 状 況 を 見 ると、 九 州 エリアが 最 も 大 きく、 全 体 の 29%を 占 めており、<br />
北 海 道 エリアが 26%、 東 北 エリア 14%でそれに 続 いている。 九 州 地 域 の 中 でも、 風 速 7.0~7.5m<br />
/s および 7.5~8.0m/s の 導 入 ポテンシャルが 特 に 大 きく、それぞれ 全 国 のポテンシャル 全 体 の<br />
12%、9%を 占 める。( 図 3-25)。<br />
24
導 入 ポテンシャル<br />
導 入<br />
可 能 量<br />
※4<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
表 3-6 導 入 ポテンシャルおよび 導 入 可 能 量 試 算 例 ( 洋 上 風 力 )<br />
経 済 産 業 省<br />
※1<br />
環 境 省<br />
※2<br />
FIT シナリオ<br />
20 円 ×15 年<br />
上 記 に 自 治 体 の 導 入 意<br />
欲 係 数 (52%)、 社 会<br />
的 受 容 性 係 数 (75%)<br />
を 乗 じた 場 合<br />
FIT シナリオ<br />
20 円 ×20 年<br />
上 記 に 自 治 体 の 導 入 意<br />
欲 係 数 (52%)、 社 会<br />
的 受 容 性 係 数 (75%)<br />
を 乗 じた 場 合<br />
開 発 不 可 能 地<br />
※3<br />
を 除 く<br />
15 億 kW<br />
漁 業 権 が 設 定 されてい<br />
ない 区 域 も 開 発 不 可 と<br />
した 場 合<br />
4 億 kW<br />
開 発 不 可 能 地<br />
※3<br />
を 除 く<br />
16 億 kW<br />
(4 兆 4000 億 kWh) (1 兆 2000 億 kWh) (4 兆 3000 億 kWh)<br />
4500 万 kW 2000 万 kW<br />
1300 万 kW 600 万 kW<br />
17 万 kW<br />
(4 億 6000 万 kWh)<br />
6600 万 kW 3600 万 kW 300 万 kW<br />
2000 万 kW 1100 万 kW<br />
※1 平 成 22 年 度 新 エネルギー 等 導 入 促 進 基 礎 調 査 事 業 ( 風 力 エネルギーの 導 入 可 能 量 に 関 する 調 査 )(2011 年<br />
8 月 )<br />
※2 平 成 22 年 度 再 生 可 能 エネルギー 導 入 ポテンシャル 調 査 (2011 年 4 月 )<br />
※3 開 発 不 可 地 : 自 然 条 件 ( 風 速 6.5m/s 未 満 、 陸 上 から 30km 以 上 、 水 深 200m 以 上 )、 法 規 制 ( 経 産 省 調 査<br />
では、 自 然 公 園 ( 特 別 保 護 地 区 、 第 1 種 特 別 地 域 、 海 中 公 園 地 区 ))、 原 生 自 然 環 境 保 全 地 域 、 自 然 環 境 保 全<br />
地 域 、 鳥 獣 保 護 区 のうち 特 別 保 護 地 区 、 世 界 自 然 地 域 、 区 画 漁 業 権 区 域 。 環 境 省 調 査 では、 国 立 ・ 国 定 公 園 ( 海<br />
域 公 園 )) 水 域 利 用 等 ( 経 産 省 調 査 では 送 電 線 から 40km 以 上 )<br />
※4 事 業 収 支 シナリオとして、 設 備 利 用 率 31%( 風 速 7.5m/s の 場 合 。 風 速 によって 異 なる)、 面 積 当 たり 出 力<br />
1 万 kW/km 2 、 風 車 システム 装 置 ・ 工 事 費 ・ 送 電 線 敷 設 費 などを 含 んだ 建 設 コストは、 水 深 50m 以 浅 ( 着 床 式<br />
を 想 定 )は 水 深 に 応 じて 増 加 、50m 以 深 ( 浮 体 式 を 想 定 )は 水 深 に 関 わらず 一 定 と 想 定 。<br />
出 典 :「コスト 等 検 証 委 員 会 報 告 書 」(2011, エネルギー・ 環 境 会 議 コスト 等 検 証 委 員 会 )<br />
図 3-26 洋 上 風 力 の 電 力 供 給 エリア 別 の 導 入 ポテンシャル 分 布 状 況<br />
出 典 : 平 成 22 年 度 再 生 可 能 エネルギー 導 入 ポテンシャル 調 査 (2011 年 4 月 , 環 境 省 )より NEDO 作 成<br />
25
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 欧 州<br />
欧 州 の 風 況 マップを 図 3-27 に 示 す。 陸 上 風 力 は、 北 に 向 かうほど 風 況 が 良 い。また 洋 上 風 力<br />
は、 北 海 周 辺 の 風 況 に 恵 まれている。<br />
風 力 発 電 の 導 入 可 能 量 について、 欧 州 環 境 庁 (EEA 15 )は 表 3-7 のように 試 算 している。 風 力<br />
発 電 の 経 済 性 を 考 慮 した、 最 も 制 約 条 件 の 厳 しいシナリオにおいても、 陸 上 と 洋 上 含 めて、2030<br />
年 時 点 で 30,400TWh が 導 入 可 能 と 試 算 しており、これは 同 時 点 の 欧 州 の 電 力 需 要 の 約 7 倍 に 相<br />
当 する 量 と 推 算 される。<br />
図 3-27 欧 州 の 風 況 マップ( 陸 上 80m 高 さ、 洋 上 120m 高 さ)<br />
出 典 :“Europe’s Onshore and Offshore Wind Energy Potential” (2009, EEA)<br />
表 3-7 欧 州 における 風 力 発 電 導 入 可 能 量<br />
シナリオ 導 入 可 能 量 需 要 比<br />
最 大 限 導 入 するシナリオ<br />
(Technical potential)<br />
環 境 的 ・ 社 会 的 制 約 条 件 を 考<br />
慮 したシナリオ<br />
(Constrained potential)<br />
経 済 的 競 争 力 を 考 慮 した<br />
シナリオ<br />
(Economically competitive<br />
potential)<br />
2020 年<br />
2030 年<br />
2020 年<br />
2030 年<br />
2020 年<br />
2030 年<br />
70,000TWh<br />
( 陸 上 :45,000 TWh、 洋 上 :25,000 TWh) 17~20 倍<br />
75,000TWh<br />
( 陸 上 :45,000 TWh、 洋 上 :30,000 TWh) 17~18 倍<br />
41,800TWh<br />
( 陸 上 :39,000 TWh、 洋 上 :2,800 TWh) 10~12 倍<br />
42,500TWh<br />
( 陸 上 :39,000 TWh、 洋 上 :3,500 TWh) 10 倍<br />
12,200TWh<br />
( 陸 上 :9,600 TWh、 洋 上 :2,600 TWh)<br />
30,400TWh<br />
( 陸 上 :27,000 TWh、 洋 上 :3,400 TWh)<br />
出 典 :“Europe’s Onshore and Offshore Wind Energy Potential” (2009, EEA)<br />
3 倍<br />
7 倍<br />
15<br />
European Environment Agency<br />
26
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(3) 米 国<br />
米 国 の 風 況 マップを 図 3-28 に 示 す。<br />
陸 上 については、 大 陸 中 心 部 の 風 況 に 恵 まれている。しかし、 大 陸 中 央 部 は 比 較 的 、 電 力 需 要<br />
が 小 さく、 大 きな 需 要 地 から 離 れているため、これらの 風 力 エネルギーを 沿 岸 部 の 需 要 地 まで 送<br />
電 するためには、 送 電 線 の 建 設 が 重 要 となる。<br />
米 国 は 海 岸 線 が 長 く、 沿 岸 部 の 風 況 も 良 いため、 洋 上 風 力 のポテンシャルも 大 きい。<br />
出 典 :NREL 資 料<br />
図 3-28 米 国 の 風 況 マップ( 陸 上 80m 高 さ)<br />
図 3-29 米 国 の 風 況 マップ( 洋 上 90m 高 さ)<br />
出 典 :“A National Offshore Wind Strategy” (2011, DOE EERE)<br />
27
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
米 国 における 風 力 発 電 導 入 可 能 量 の 試 算 例 を 表 3-8 に 示 す。 陸 上 域 では、8.5 セント/kWh( 約<br />
9 円 /kWh) 以 下 の 発 電 コストで、7,834GW の 風 力 発 電 が 導 入 可 能 と 試 算 されている 16 。これは<br />
2007 年 時 点 の 米 国 全 体 の 発 電 容 量 (1,039GW 17 )の 約 7.5 倍 に 相 当 する 大 きさに 相 当 し、 一 定 の<br />
競 争 力 を 持 った 価 格 帯 におけるポテンシャルの 大 きさが 確 認 されている。 洋 上 風 力 発 電 について<br />
は、 陸 上 と 比 較 して 発 電 コストが 高 くなるが、 浅 水 域 において 10~13 セント/kWh( 約 10~13<br />
円 /kWh) 程 度 の 発 電 コストで 1,261GW、 深 水 域 においては 13~17 セント/kWh( 約 13~17<br />
円 /kWh) 程 度 のコストで 3,177GW が 導 入 可 能 と 試 算 されている。<br />
導 入 可 能 量<br />
表 3-8 米 国 における 風 力 発 電 導 入 可 能 量<br />
備 考<br />
陸 上 風 力<br />
7,834GW<br />
・ 米 国 全 体 の 発 電 容 量 の 約 7.5 倍<br />
・ 発 電 コスト:8.5 セント/kWh 以 下<br />
洋 上 ( 浅 水 域 ) 1,261GW ・ 発 電 コスト:10~13 セント/kWh 程 度<br />
洋 上 ( 深 水 域 ) 3,177GW ・ 発 電 コスト:13~17 セント/kWh 程 度<br />
出 典 :“20 PERCENT WIND ENERGY PENETRATION IN THE UNITED STATES” (2007, Black & Veatch)<br />
(4) 中 国<br />
中 国 気 象 庁 によって、 地 上 10m の 高 さにおける 中 国 の 風 力 エネルギー 賦 存 量 は 3,226GW~<br />
4,350GW、このうち 技 術 的 に 取 得 可 能 な 発 電 ポテンシャルは 253GW~297GW と 試 算 されている。<br />
また、 国 連 による 調 査 では、 地 上 50m の 高 さにおける 技 術 的 に 取 得 可 能 な 発 電 ポテンシャルは<br />
1,400GW に 達 すると 試 算 されている。 北 西 部 を 中 心 とした 内 陸 部 の 風 況 に 恵 まれている。<br />
図 3-30 中 国 の 風 力 エネルギー 密 度 マップ( 陸 上 10m 高 さ)<br />
出 典 :“China Wind Power Outlook 2010” (2010,GWEC)<br />
16<br />
“20 PERCENT WIND ENERGY PENETRATION IN THE UNITED STATES” (2007, Black & Veatch)<br />
17<br />
“World Energy Outlook 2009” (2009, IEA)<br />
28
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(5) インド<br />
インド 風 力 エネルギー 研 究 所 (C-WET)によると、インドにおける 導 入 ポテンシャルは、 土 地<br />
の 利 用 可 能 率 を 2% 18 とした 場 合 、491.3GW と 試 算 されている。 国 土 全 体 にわたり、エネルギー<br />
密 度 が 200W/m 2 以 上 の 好 風 況 に 恵 まれている。<br />
図 3-31 インドの 風 力 エネルギー 密 度 マップ( 陸 上 50m 高 さ)<br />
出 典 :“Indian Wind Power Outlook 2011” (2011,GWEC)<br />
18<br />
“Indian Wind Power Outlook 2011” (2011,GWEC)では、この 想 定 は 非 常 に 保 守 的 であると 指 摘 されている。<br />
29
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.2.2 導 入 目 標<br />
欧 州 、 米 国 、 日 本 における 再 生 可 能 エネルギーおよび 風 力 発 電 の 導 入 目 標 例 を 表 3-9 に 示 す。<br />
表 3-9 欧 米 諸 国 における 再 生 可 能 エネルギー・ 風 力 発 電 の 導 入 目 標 例<br />
導 入 目 標 など<br />
日 本<br />
再 生 可 能 エネルギー 全 体<br />
「2030 年 のエネルギー 需 給 展 望 」( 総 合 資 源 エ<br />
ネルギー 調 査 会 需 給 部 会 、2005)において、<br />
2010 年 の 再 生 可 能 エネルギーの 対 一 次 エネル<br />
ギー 供 給 比 を、3.0%に 引 き 上 げる 目 標 を 設 置 。<br />
<br />
<br />
<br />
風 力 発 電<br />
国 としての 導 入 目 標 は 掲 げられていない。<br />
環 境 省 の「 再 生 可 能 エネルギーの 飛 躍 的 導 入 に<br />
向 けたイニシアティブ」の 中 で、 洋 上 風 力 の 導<br />
入 シナリオとして、2030 年 までに 5,860MW<br />
を 提 示 。<br />
日 本 風 力 発 電 協 会 は、 同 協 会 のロードマップに<br />
おいて、2020 年 に 8~12GW、2030 年 に 13<br />
~28GW の 導 入 目 標 を 提 案 。<br />
EU<br />
米 国<br />
中 国<br />
インド<br />
2007 年 に、EU 全 体 の 最 終 エネルギー 消 費 量 に<br />
占 める 再 生 可 能 エネルギーの 割 合 を 2020 年 ま<br />
でに 20%とする 戦 略 を 決 定 。<br />
• 2009 年 の「 再 生 可 能 エネルギー 導 入 促 進 に 関 す<br />
る 欧 州 指 令 」で、 上 記 目 標 達 成 のための 国 別 目<br />
標 値 を 設 定 。<br />
多 くの 州 で、 電 力 部 門 における 再 生 可 能 エネル<br />
ギー 利 用 義 務 制 度 (RPS)を 策 定 。オバマ 大 統 領<br />
は、2025 年 までに 25% 導 入 という 連 邦 RPS 制<br />
度 を 提 案 。<br />
オバマ 大 統 領 は「New Energy for America」で<br />
再 生 可 能 エネルギー 由 来 の 電 力 量 割 合 を、2012<br />
年 に 12%、2025 年 に 25%とする 目 標 を 発 表 。<br />
「 再 生 可 能 エネルギー 中 長 期 発 展 計 画 」(2007<br />
年 9 月 )、「 再 生 可 能 エネルギー 発 展 第 11 次<br />
5 ヵ 年 計 画 」(2008 年 3 月 )において、エネル<br />
ギー 消 費 総 量 に 占 める 再 生 可 能 エネルギー 消<br />
費 量 の 割 合 を、2010 年 までに 10%に、2020<br />
年 に 15%に 引 き 上 げる 目 標 を 設 定 。<br />
第 12 次 5 ヵ 年 計 画 において、2015 年 までに 非<br />
化 石 エネルギーを 標 準 炭 換 算 4.8 億 トン 開 発 す<br />
るという 目 標 を 設 定 。<br />
各 州 において、RPS 制 度 を 実 施 。<br />
「 National Action Plan for Climate<br />
Change(NAPCC)”」において、 再 生 可 能 エネ<br />
ルギー 由 来 の 電 力 購 入 義 務 を 2020 年 に 15%と<br />
設 定 。<br />
• 欧 州 再 生 可 能 エネルギー 評 議 会 は、 左 記 指 令 の<br />
目 標 を 達 成 するために 必 要 な 風 力 発 電 導 入 量<br />
を、2010 年 に 176TWh、2020 年 には 477TWh<br />
と 試 算 。<br />
• 欧 州 エネルギー 技 術 戦 略 計 画<br />
(SET-Plan)において、2020 年 までに EU の<br />
電 力 消 費 量 の 20%を 風 力 発 電 で 賄 う 目 標 を 設<br />
定 。<br />
国 としての 導 入 目 標 は 掲 げられていない。<br />
2030 年 までに 米 国 の 全 電 力 需 要 の 20%を 風 力<br />
エネルギーで 賄 う 技 術 的 可 能 性 を 検 討 。2030<br />
年 時 点 の 風 力 発 電 の 設 置 容 量 および 発 電 電 力<br />
量 をそれぞれ 304.8GW、1200TWh とするシ<br />
ナリオを 提 示 。<br />
左 記 「 中 長 期 発 展 計 画 」において、2020 年 ま<br />
でに 風 力 発 電 の 設 備 容 量 を 30GW に 引 き 上 げ<br />
る 目 標 を 設 定 。<br />
第 12 次 5 ヵ 年 計 画 において、2015 年 までの 風<br />
力 発 電 の 目 標 を 設 備 容 量 100GW、 年 間 発 電 量<br />
190TWh と 設 定 。このうち 洋 上 風 力 について<br />
は、2015 年 までに 5GW、2020 年 までに 30GW<br />
と 目 標 を 設 定 。<br />
• 2011~2017 年 の 6 年 間 で 13.4GW を 追 加 的 に<br />
導 入 。<br />
出 典 :“Technology Roadmap Wind energy” (2009, IEA)、Directive 2009/28/EC on the promotion of the use<br />
of energy from renewable sources and amending and subsequently repealing Directives 2001/77/EC<br />
and 2003/30/EC、“Renewable Energy Technology Roadmap 20% by 2020” (2008, EREC)、DSIRE ホームペ<br />
ージ、“New Energy for America”(2009, Barack Obama and Joe Biden)<br />
30
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(1) 日 本<br />
日 本 においては、 国 としての 風 力 発 電 導 入 目 標 量 は 掲 げられていない。<br />
環 境 省 は、2012 年 8 月 31 日 に「グリーン 成 長 の 実 現 」と「 再 生 可 能 エネルギーの 飛 躍 的 導 入 」<br />
に 向 けたイニシアティブを 発 表 した 19 。その 中 で、 今 後 、 特 に 導 入 戦 略 が 必 要 と 考 えられる 再 生<br />
可 能 エネルギーの 一 つに 洋 上 風 力 を 挙 げ、 各 種 施 策 を 実 施 することによって、2020 年 までに<br />
400MW、2030 年 までに 5,860MW を 導 入 するシナリオを 提 示 している。<br />
日 本 風 力 発 電 協 会 (JWPA)は、2010 年 1 月 15 日 に、【 風 力 発 電 の 賦 存 量 とポテンシャルお<br />
よびこれに 基 づく 長 期 導 入 目 標 とロードマップの 算 定 Ver1.1】を、2010 年 6 月 30 日 に、 殆 ど<br />
全 ての 社 会 的 制 約 条 件 を 考 慮 した【V2.1】を 公 表 したが、2010 年 、2011 年 に 環 境 省 で 実 施 した<br />
「 再 生 可 能 エネルギー 導 入 ポテンシャル 調 査 」また、2011 年 に 経 済 産 業 省 で 実 施 した「 風 力 エネ<br />
ルギーの 導 入 可 能 量 調 査 」により、 解 析 精 度 の 向 上 とポテンシャル 算 出 のための 制 約 条 件 の 精 緻<br />
化 が 図 られた 事 に 加 えて、 最 近 の 洋 上 風 力 技 術 開 発 動 向 や 実 証 試 験 計 画 などをフォローした【 風<br />
力 発 電 導 入 ポテンシャルと 中 長 期 導 入 目 標 V3.2】を 2012 年 に 公 表 した。<br />
目 標 値 に 対 して、プラスにはたらく 要 因 、マイナスにはたらく 要 因 があることに 言 及 した 上 で、<br />
目 標 達 成 は 可 能 との 見 解 を 示 している。プラスの 要 因 としては、 年 間 平 均 風 速 が 高 い 地 点 を 重 点<br />
的 に 選 定 すること、 洋 上 風 力 については 陸 上 風 力 以 上 に 好 風 況 地 域 へ 建 設 することによる 設 備 利<br />
用 率 の 向 上 などを 挙 げている。マイナスの 要 因 としては、 電 力 系 統 運 用 面 から 必 要 となる 風 力 発<br />
電 所 の 最 大 出 力 制 限 運 転 や 出 力 上 昇 率 制 限 運 転 によって 実 質 的 な 設 備 利 用 率 が 低 下 すること、 電<br />
力 系 統 運 用 面 から 必 要 となる 蓄 電 設 備 ( 揚 水 発 電 所 、 蓄 電 池 など)による 電 力 損 失 が 発 生 するこ<br />
となどを 挙 げている。<br />
表 3-10 日 本 風 力 発 電 協 会 の 導 入 ロードマップ<br />
導 入 目 標 量 [GW]<br />
出 典<br />
2020 年 2030 年<br />
風 力 発 電 導 入 ポテンシャルと 中 長 期 導 入 目 標 V3.2<br />
(2012)<br />
11.3 28.8<br />
出 典 : 風 力 発 電 導 入 ポテンシャルと 中 長 期 導 入 目 標 V3.2(2012, JWPA)<br />
19<br />
環 境 省 ホームページ(http://www.env.go.jp/annai/kaiken/h24/s0831.html)<br />
31
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 欧 州<br />
欧 州 における 風 力 発 電 の 導 入 目 標 量 例 を 表 3-11 に 示 す。<br />
表 3-11 欧 州 における 導 入 目 標 量 例<br />
2020 年<br />
再 生 可 能 な 資 源 からのエネルギー 使<br />
用 の 推 進 に 関 する 指 令<br />
Renewable Energy Technology<br />
Roadmap 20% by 2020(EREC)<br />
欧 州 エ ネ ル ギ ー 技 術 戦 略 計 画<br />
(SET-Plan)<br />
EU 全 体 の 最 終 エネルギー 消 費 量 に 占 める 再 生 可 能 エネル<br />
ギーの 割 合 を 20%に 引 き 上 げる。<br />
477TWh<br />
※ 上 記 指 令 を 達 成 するために 必 要 な 風 力 発 電 量<br />
EU の 電 力 消 費 量 の 20%を 風 力 発 電 で 賄 う。<br />
出 典 :“Directive 2009/28/EC” (2009, EC)、“Renewable Energy Technology Roadmap 20% by 2020” (2008,<br />
EREC)、 “SET-Plan Technology Roadmap” (2009, EC)<br />
2007 年 3 月 、 欧 州 理 事 会 は、EU の 地 球 温 暖 化 対 策 として、2020 年 までに EU 全 体 のエネル<br />
ギー 消 費 全 体 に 占 める 再 生 可 能 エネルギーの 比 率 を 20%に 引 き 上 げることで 合 意 した。これを 受<br />
けて「 再 生 可 能 電 力 推 進 に 関 する 指 令 」 20 と「バイオ 燃 料 促 進 に 関 する 指 令 」 21 を 修 正 、 廃 止 する<br />
新 たな 指 令 である「 再 生 可 能 な 資 源 からのエネルギー 使 用 の 推 進 に 関 する 指 令 」が 策 定 され、 本<br />
指 令 において 加 盟 各 国 に 法 的 拘 束 力 のある 数 値 目 標 が 設 定 された。<br />
欧 州 再 生 可 能 エネルギー 評 議 会 (European Renewable Energy Council:EREC)は、この 目<br />
標 を 達 成 するために 必 要 な 再 生 可 能 エネルギーの 種 類 ごとの 寄 与 度 ( 発 電 量 )を 試 算 しており、<br />
2020 年 には 477TWh が 風 力 発 電 によって 供 給 されると 予 測 している( 表 3-12)。これは 2020<br />
年 時 点 の 欧 州 の 電 力 需 要 予 測 (3,914TWh 22 )の 約 12%に 相 当 する。なお、 実 績 との 比 較 におい<br />
て、 現 状 では EREC 試 算 値 を 下 回 っている。<br />
また、 低 炭 素 化 社 会 実 現 に 向 けた 技 術 開 発 戦 略 である「 欧 州 エネルギー 技 術 戦 略 計 画<br />
(SET-Plan)」 23 において、2020 年 までに EU の 電 力 消 費 量 の 20%を 風 力 発 電 で 賄 う 目 標 が 掲<br />
げられている。<br />
20<br />
EU の 全 電 力 供 給 量 に 占 める 再 生 可 能 電 力 の 割 合 を 2010 年 までに EU 全 体 で 21% にするという 目 標 を 掲 げ、<br />
加 盟 各 国 に 目 標 ( 法 的 拘 束 力 なし)を 設 定 した 指 令 。(Directive 2001/77/EC on the promotion of the electricity<br />
produced from renewable energy source in the internal electricity market)<br />
21<br />
2010 年 までにガソリン、ディーゼル 油 の 5.75%をバイオ 燃 料 で 代 替 する 目 標 ( 法 的 拘 束 力 なし)を 設 定 した<br />
指 令 。(Directive 2003/30/EC on the promotion of the use of biofuels and other renewable fuels for transport)<br />
22<br />
“World Energy Outlook 2009” (2009, IEA)<br />
23<br />
低 炭 素 化 社 会 の 早 期 実 現 に 向 けて、EU 全 体 で 共 同 し、 低 炭 素 化 技 術 の 研 究 開 発 および 普 及 を 加 速 させること<br />
を 目 的 とした EU の 技 術 開 発 戦 略 。 欧 州 産 業 イニシアティブ(European Industrial Initiatives:EII)として、<br />
低 炭 素 化 に 資 する 6 つの 有 望 技 術 ( 風 力 発 電 、 太 陽 光 ・ 太 陽 熱 発 電 、バイオエネルギー、CCS、 電 力 系 統 、 持<br />
続 可 能 な 核 分 裂 )に 関 するイニシアティブが 設 置 されている。2009 年 7 月 にはそれぞれの 技 術 について 技 術<br />
ロードマップが 提 示 され、2010 年 3 月 に 欧 州 理 事 会 によって 承 認 された。<br />
32
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
表 3-12 目 標 達 成 に 必 要 となる 風 力 発 電 による 発 電 量 予 測<br />
2006 年 2010 年 2020 年<br />
発 電 量 (TWh) 82<br />
176<br />
477<br />
( 実 績 ) (105 ※ ) (148)<br />
※2007 年 実 績 値<br />
出 典 :“Renewable Energy Technology Roadmap 20% by 2020” (2008, EREC)、“Renewables Information 2011”<br />
(IEA)<br />
欧 州 主 要 国 における 導 入 目 標 を 表 3-13 に 示 す。 洋 上 風 力 発 電 の 導 入 を 推 進 している 英 国 は、<br />
先 に 述 べた 再 生 可 能 エネルギーに 係 る EU 指 令 で 設 定 された 導 入 目 標 (2020 年 までに 15%)を<br />
達 成 するため、“UK Renewable Energy Roadmap” 24 を 策 定 し、その 中 で 2020 年 までに 陸 上<br />
風 力 10~13GW、 洋 上 風 力 11~18GW の 導 入 が 見 込 めると 分 析 している。<br />
また、 環 境 先 進 国 であるドイツでは、EU 指 令 における 導 入 目 標 を 上 回 る、2020 年 までに 35%<br />
という 野 心 的 な 目 標 を 掲 げている。 風 力 発 電 については、2020 年 までに 陸 上 風 力 35.75GW、 洋<br />
上 風 力 10GW の 導 入 見 通 し 25 を 示 している。デンマークやスペインも 野 心 的 な 導 入 目 標 を 掲 げて<br />
おり、デンマークは 2020 年 までに 電 力 需 要 の 50%を 風 力 発 電 によって 賄 うことを 目 指 している。<br />
国<br />
表 3-13 欧 州 主 要 国 における 導 入 目 標 (2020 年 )<br />
導 入 目 標<br />
再 生 可 能 エネルギー 全 体<br />
風 力 発 電<br />
英 国 最 終 エネルギー 消 費 量 の 15% (※ 導 入 見 通 し)<br />
陸 上 風 力 :10~13GW<br />
洋 上 風 力 :11~18GW<br />
ドイツ 最 終 エネルギー 消 費 量 の 35% (※ 導 入 見 通 し)<br />
陸 上 風 力 :35.75GW<br />
洋 上 風 力 :10GW<br />
スペイン 最 終 エネルギー 消 費 量 の 30% 陸 上 風 力 :35GW<br />
洋 上 風 力 :750MW<br />
デンマーク 最 終 エネルギー 消 費 量 の 20% 電 力 需 要 の 50%を 風 力 発 電 で 供 給<br />
出 典 :“Global Wind 2011 Report” (2012, GWEC)、“UK Renewable Energy Roadmap” (2011, 英 国 政 府 )、<br />
“National Renewable Energy Action Plan” (2010, ドイツ 政 府 )、“ACCELERATING GREEN ENERGY<br />
TOWARDS 2020” (2012, デンマーク 政 府 )、“National Renewable Energy Plan” (2010, スペイン 政 府 )<br />
24<br />
“UK Renewable Energy Roadmap” (2011, 英 国 政 府 )<br />
25<br />
“National Renewable Energy Action Plan in accordance with Directive 2009/28/EC on the promotion of<br />
the use of energy from renewable sources” (2010, ドイツ 政 府 )<br />
33
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(3) 米 国<br />
米 国 における 風 力 発 電 の 導 入 目 標 量 例 を 表 3-14 に 示 す。<br />
表 3-14 米 国 における 導 入 目 標 量 例<br />
出 典 2020 年 2030 年<br />
RPS 法<br />
州 別 RPS 法 によって 規 定<br />
New Energy for America<br />
(オバマ 大 統 領 )<br />
(※ 導 入 見 通 し)<br />
20% Wind Energy by 2030<br />
(2012 年 )<br />
再 生 可 能 エネルギー 由 来 の 電 力<br />
量 割 合 :12%<br />
-<br />
(2025 年 )<br />
再 生 可 能 エネルギー 由 来 の 電 力<br />
量 割 合 :25%<br />
発 電 容 量 :304.8GW<br />
発 電 量 :1,200TWh<br />
※2030 年 までに 米 国 の 全 電 力 需<br />
要 の 20%を 風 力 で 賄 う 場 合 の 必<br />
要 量<br />
(※ 導 入 見 通 し)<br />
A National Offshore Wind<br />
Strategy<br />
10GW( 洋 上 風 力 ) 54GW( 洋 上 風 力 )<br />
出 典 :DSIRE ホームページ、“New Energy for America” (2009, Barack Obama and Joe Biden)、“20% Wind<br />
Energy by 2030” (2008, DOE)<br />
米 国 においては 国 全 体 としての 導 入 目 標 値 は 掲 げられていないが、29 の 州 政 府 と DC 政 府 26に<br />
おいて、 電 気 事 業 者 に 対 して 供 給 電 力 の 一 定 割 合 を 再 生 可 能 エネルギーで 賄 うことを 義 務 付 ける<br />
RPS 制 度 を 導 入 しており( 第 1 章 1.7.2 節 参 照 )、 目 標 達 成 に 向 けて、 風 力 をはじめとする 再 生<br />
可 能 エネルギーの 導 入 が 進 んでいる。<br />
また、オバマ 大 統 領 が 掲 げる「New Energy for America」 計 画 では、 電 力 消 費 量 に 占 める 再 生<br />
可 能 エネルギー 由 来 の 電 力 量 の 割 合 を、2012 年 までに 10%、2025 年 までに 25%に 引 き 上 げる 目<br />
標 が 掲 げられている。<br />
米 国 エネルギー 省 (DOE 27 )は、2030 年 までに 米 国 の 全 電 力 需 要 の 20%を 風 力 エネルギーで<br />
賄 う 技 術 的 可 能 性 を 検 討 した 報 告 書 (20% Wind Energy by 2030)を 発 表 している。 本 報 告 書 で<br />
は、2030 年 時 点 の 風 力 発 電 の 設 置 容 量 が 304.8GW、 発 電 電 力 量 が 1,200TWh とするシナリオが<br />
示 されており、このうち、 洋 上 風 力 は 54GW(18%)になるとされている( 図 3-32)。<br />
2011 年 2 月 には、 洋 上 風 力 発 電 の 技 術 開 発 ロードマップとなる“A National Offshore Wind<br />
Strategy”が DOE によって 策 定 された。この 技 術 開 発 ロードマップでは、2020 年 までに 10GW、<br />
2030 年 までに 54GW の 洋 上 風 力 発 電 を 導 入 するシナリオを 描 き、2020 年 段 階 で 0.10 ドル/kWh、<br />
2030 年 段 階 で 0.07 ドル/kWh を 達 成 するための 必 要 施 策 を 取 りまとめている。<br />
26<br />
2010 年 3 月 時 点<br />
27<br />
Department of Energy<br />
34
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-32 20% Wind Energy by 2030 における 導 入 シナリオ( 累 積 )<br />
出 典 :“20% Wind Energy by 2030” (2008, DOE) より NEDO 作 成<br />
(4) 中 国<br />
中 国 は「 再 生 可 能 エネルギー 中 長 期 発 展 計 画 」(2007 年 9 月 )、「 再 生 可 能 エネルギー 発 展 第<br />
11 次 5 ヵ 年 計 画 」(2008 年 3 月 )において、エネルギー 消 費 総 量 に 占 める 再 生 可 能 エネルギー<br />
消 費 量 の 割 合 を、2010 年 までに 10%に、2020 年 に 15%に 引 き 上 げる 目 標 を 設 定 している。また、<br />
第 12 次 5 ヵ 年 計 画 において、2015 年 までに 非 化 石 エネルギーを 標 準 炭 換 算 4.8 億 トン 開 発 する<br />
という 目 標 を 設 定 している。<br />
風 力 発 電 については「 再 生 可 能 エネルギー 中 長 期 発 展 計 画 」で 2010 年 までに 5GW、2020 年<br />
までに 30GW とする 目 標 値 が 掲 げられていた。しかし、 中 国 の 風 力 発 電 設 備 容 量 は 2007 年 に 5GW<br />
を 超 えており、2010 年 の 目 標 を 前 倒 しで 達 成 している。その 後 、 目 標 は 大 幅 に 引 き 上 げられ、 第<br />
12 次 5 ヵ 年 計 画 においては、2015 年 までの 導 入 目 標 は 設 備 容 量 100GW、 年 間 発 電 量 190TWh<br />
に 設 定 された。このうち、 洋 上 風 力 発 電 の 導 入 目 標 については、2015 年 までに 5GW、2020 年 ま<br />
でに 30GW に 設 定 されている。<br />
(5) インド<br />
インドは、2011 年 ~2017 年 の 6 年 間 において、 毎 年 2.2GW~2.4GW 導 入 し、2017 年 に 累 積<br />
導 入 量 27.3GW に 達 する 目 標 を 掲 げている。<br />
表 3-15 インドの 風 力 導 入 目 標 (GW)<br />
2011-12 2012-13 2013-14 2014-15 2015-16 2016-17<br />
合 計<br />
( 新 設 )<br />
合 計<br />
( 累 積 )<br />
風 力 2.4 2.2 2.2 2.2 2.2 2.2 13.4 27.3<br />
出 典 :“STRATEGIC PLAN FOR NEW AND RENEWABLE ENERGY SECTOR FOR THE PERIOD 2011-17”<br />
(2011, MNRE)<br />
35
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.2.3 導 入 実 績<br />
(1) 世 界<br />
世 界 の 風 力 発 電 累 積 導 入 量 の 推 移 を 図 3-33 に 示 す。 過 去 10 年 間 、 堅 調 な 伸 びを 見 せており、<br />
GWEC( 世 界 風 力 発 電 協 会 )の 発 表 では、2012 年 末 までの 累 積 導 入 量 は 282.6GW に 達 している。<br />
風 力 発 電 市 場 は、デンマーク、ドイツ、スペイン、 英 国 などの 欧 州 諸 国 および 米 国 が 牽 引 して<br />
きた。スペインでは、2012 年 の 発 電 電 力 量 の 約 18%を 風 力 が 占 めており、 基 幹 エネルギーの 一<br />
つに 成 長 している。 米 国 では 2005 年 以 降 、 風 力 発 電 が 全 電 源 の 新 設 容 量 に 占 めるシェアは、 天<br />
然 ガスに 次 いで 2 番 目 に 大 きい( 図 3-34)。しかし、 陸 域 における 適 地 の 減 少 や、 近 年 の 経 済 不<br />
況 、シェールガス 28 生 産 量 の 増 大 による 天 然 ガス 価 格 の 低 下 などのさまざまな 要 因 によって、 先<br />
進 国 における 成 長 率 は 近 年 、 鈍 化 しつつある( 図 3-35)。<br />
近 年 、 顕 著 となっているのは、 中 国 の 台 頭 である。2012 年 の 世 界 全 体 の 新 設 容 量 44.8GW のう<br />
ち、28.9%(13.0GW)を 中 国 が 占 める 結 果 となった。これは、 米 国 の 29.3%(13.1GW)に 次 ぐ 値<br />
であった。 中 国 の 累 積 導 入 量 は 2006 年 以 降 、 飛 躍 的 に 伸 びており、2009 年 にはドイツを 抜 き 世<br />
界 2 位 に、2010 年 には 米 国 を 抜 き 世 界 第 一 位 に 躍 進 した。しかし、 短 期 間 での 急 激 な 導 入 量 拡 大<br />
によって、 系 統 容 量 の 不 足 などの 問 題 が 顕 在 化 し 始 めていること 29 、また 導 入 量 に 占 める 系 統 連<br />
系 量 の 割 合 などが 不 明 であることなどに 留 意 が 必 要 である。<br />
図 3-33 世 界 および 主 要 国 における 風 力 発 電 累 積 導 入 量 の 推 移<br />
出 典 :“Global Wind Report 2012” (2013, GWEC) より NEDO 作 成<br />
36<br />
28<br />
泥 土 が 堆 積 して 固 まった 頁 岩 (シェール) 層 に 含 まれる 天 然 ガスで 近 年 、 米 国 において 活 発 に 生 産 されている。<br />
29<br />
“Global Market Report 2011”(2012, GWEC)
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-34 米 国 における 新 設 電 源 の 内 訳 推 移<br />
出 典 :“U.S. Wind Industry Annual Market Report Year Ending 2010” (2011, AWEA) より NEDO 作 成<br />
図 3-35 日 本 と 主 要 国 の 風 力 発 電 導 入 推 移 ( 累 積 )<br />
出 典 :“Global Wind Report 2011” (2012, GWEC)、NEDO 資 料 より 作 成<br />
37
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
現 在 、 導 入 量 世 界 第 2 位 である 米 国 は、 連 邦 政 府 の 支 援 策 である PTC(Renewable Energy<br />
Production Tax Credit: 生 産 税 控 除 )によって、 風 力 発 電 導 入 量 が 大 きく 左 右 される( 図 3-36)。<br />
PTC は、 再 生 可 能 エネルギー 由 来 の 電 力 の 生 産 税 を 控 除 する 制 度 で、 条 件 を 満 たした 新 施 設 で 生<br />
産 された 電 力 に 対 して、 稼 動 開 始 から 最 初 の 10 年 間 、1kWh ごとに 適 用 される。 風 力 の 控 除 額 は、<br />
2.2 セント/kWh である。これまで、PTC は 期 限 切 れと 延 長 を 繰 り 返 しているが、 米 国 経 済 再 生<br />
法 30によって、 風 力 発 電 の 控 除 期 間 については 2012 年 末 まで 延 長 された。2013 年 以 降 の 米 国 市<br />
場 を 見 通 すに 当 たっては、PTC の 延 長 の 有 無 が 鍵 であり、 今 後 の 動 向 が 注 視 される。<br />
▲は PTC の 税 控 除 期 限 が 延 長 された 年 、▼は PTC の 税 控 除 期 限 が 切 れた 年 を 表 している。 期 限<br />
が 延 長 された 年 は 導 入 量 が 大 きく 伸 びているのに 対 し、 期 限 が 切 れた 年 は 導 入 量 が 大 きく 減 少 し<br />
ており、PTC が 風 力 発 電 設 備 導 入 に 与 えている 影 響 の 大 きさが 分 かる。<br />
図 3-36 PTC の 延 長 と 風 力 発 電 の 発 電 容 量 ( 新 規 増 設 分 )の 経 年 変 化<br />
出 典 :“Wind Power Outlook 2008” (2008, AWEA) より NEDO 作 成<br />
また、 陸 上 の 適 地 減 少 に 伴 い、 欧 州 を 中 心 に 洋 上 風 力 発 電 の 導 入 量 が 増 加 している。 図 3-37<br />
に 世 界 における 洋 上 風 力 発 電 累 積 導 入 量 を 示 す。2000 年 代 初 頭 から 導 入 が 始 まった 後 、2005 年<br />
以 降 に 導 入 が 加 速 しており、 近 年 は 成 長 率 約 40%で 推 移 している。2010 年 の 累 積 導 入 量 は 約 3GW<br />
であり、さらに 2012 年 末 には 約 5.4GW に 達 している。ドイツでは、2009 年 よりフィードイン<br />
タリフにおける 洋 上 風 力 発 電 の 買 取 価 格 が 約 9 ユーロセント/kWh から 15 ユーロセント/kWh<br />
に 大 幅 に 引 き 上 げられており 31 、 政 府 による 支 援 策 の 拡 充 も、 洋 上 風 力 発 電 市 場 の 成 長 を 後 押 し<br />
していると 考 えられる。<br />
30<br />
American Recovery and Reinvestment Act、2008 年 末 の 金 融 危 機 対 策 として 2009 年 2 月 に 成 立 。 各 種 経 済<br />
刺 激 策 に 加 え、 科 学 技 術 、 環 境 保 護 、 各 種 インフラへの 投 資 、 州 や 地 方 政 府 の 財 政 安 定 化 策 などが 盛 り 込 まれ<br />
ている。<br />
31<br />
“2009 EEG Payment Provisions” (2008, BMU)<br />
38
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
現 状 では、 風 力 発 電 市 場 全 体 に 占 める 洋 上 風 力 の 割 合 は 小 さいが、 今 後 、 導 入 量 が 増 加 し、 欧<br />
州 では 2020 年 までに 累 積 容 量 約 40GW に 達 するとの 見 通 しも 示 されている 32 。 現 在 は 英 国 、デ<br />
ンマーク、ベルギー、ドイツ、フィンランドなどの 欧 州 市 場 が 中 心 だが、 今 後 は 米 国 や 中 国 、そ<br />
の 他 新 興 国 においても 導 入 が 進 むと 予 想 されている。<br />
図 3-37 洋 上 風 力 発 電 累 積 導 入 量<br />
出 典 :“Global Wind Report 2012”(2013, GWEC), “Global Wind Report 2011”(2012, GWEC)より NEDO 作 成<br />
注 :2012 年 末 時 点<br />
図 3-38 欧 州 における 洋 上 風 力 発 電 累 積 導 入 量 の 国 別 内 訳<br />
出 典 :Global Wind Report 2012” (2013, GWEC)より NEDO 作 成<br />
32<br />
“WIND IN OUR SAILS” (2011, EWEA)<br />
39
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 日 本<br />
日 本 の 風 力 発 電 累 積 導 入 量 の 推 移 を 図 3-39 に 示 す。 日 本 における 風 力 発 電 は 1990 年 代 後 半 か<br />
ら 急 速 に 導 入 が 進 み、2012 年 度 で 累 積 容 量 2,614MW に 達 しているが、 世 界 第 13 位 ( 発 電 容 量<br />
0.9%)にとどまる。 米 国 、 中 国 、 欧 州 および 日 本 の 最 近 5 年 間 の 風 力 発 電 累 積 導 入 量 と 対 前 年 伸<br />
び 率 の 推 移 を 図 3-35 に 示 す。 世 界 市 場 を 牽 引 している 米 国 、 中 国 市 場 と 比 較 して、ここ 数 年 の<br />
日 本 の 伸 び 率 は 10% 前 後 と 非 常 に 小 さい。<br />
しかし、2011 年 8 月 26 日 、 第 177 回 通 常 国 会 において、 日 本 版 フィードインタリフ 制 度 とな<br />
る「 電 気 事 業 者 による 再 生 可 能 エネルギー 電 気 の 調 達 に 関 する 特 別 措 置 法 」が 成 立 した。 買 取 価<br />
格 および 期 間 は、20kW 以 上 のシステムは 23.1 円 /kWh で 20 年 間 、20kW 未 満 のシステムは 57.75<br />
円 /kWh で 20 年 間 に 決 定 され、2012 年 7 月 から 制 度 運 用 が 開 始 されている。 本 制 度 の 開 始 によ<br />
って、 風 力 発 電 をはじめとする 再 生 可 能 エネルギー 導 入 促 進 が 期 待 される( 制 度 の 詳 細 は 第 1 章<br />
1.7.1 節 参 照 )。<br />
出 典 :NEDO 資 料 より 作 成<br />
図 3-39 日 本 における 風 力 発 電 の 導 入 推 移 ( 累 積 ・ 単 年 )<br />
40
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.3 世 界 の 市 場 動 向<br />
3.3.1 市 場 の 現 状 および 将 来 見 通 し<br />
3.2.3 で 示 したとおり、 世 界 の 風 力 発 電 市 場 は 年 々 拡 大 しており、これまで 市 場 を 牽 引 してきた<br />
欧 米 市 場 に 加 え、 近 年 は 中 国 をはじめとする 新 興 国 市 場 が 急 成 長 している。<br />
図 3-40 に IEA( 国 際 エネルギー 機 関 )と、GWEC( 世 界 風 力 エネルギー 協 会 )による 将 来 の<br />
導 入 量 見 通 しを 示 す。2030 年 の 世 界 の 累 積 導 入 量 は、IEA の 見 通 しでは 921GW、GWEC の 見<br />
通 しでは 1,778GW に 達 すると 試 算 されている。 地 域 別 に 見 ると、 両 機 関 とも 欧 州 が 引 き 続 き 市<br />
場 を 牽 引 するのに 加 え、 中 国 が 欧 州 に 次 ぐ 大 規 模 市 場 に 成 長 すると 見 通 している。<br />
注 :それぞれ 以 下 のレポート・シナリオの 値 。いずれも 現 状 より 政 策 的 支 援 を 強 化 したシナリオである。<br />
IEA:World Energy Outlook(New Policies Scenario)<br />
GWEC: Global Wind Energy Outlook (Moderate scenario)<br />
図 3-40 各 機 関 による 風 力 発 電 導 入 量 の 将 来 見 通 し( 上 : 世 界 、 下 : 主 要 国 ・ 地 域 )<br />
出 典 :“World Energy Outlook 2011”(2011, IEA)、“Global Wind Energy Outlook 2010”(2010, GWEC) より NEDO 作 成<br />
41
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.3.2 風 力 発 電 機 メーカーの 合 併 ・ 新 規 参 入 の 歴 史<br />
表 3-16 および 図 3-41 に 風 力 発 電 機 メーカーの M&A 動 向 、 合 併 ・ 新 規 参 入 の 歴 史 を 示 す。1990<br />
年 代 は、 風 力 発 電 市 場 を 牽 引 してきた 先 進 国 の 風 力 発 電 機 専 業 メーカーの 合 併 による 市 場 プレー<br />
ヤーの 淘 汰 が 進 められた。2000 年 代 に 入 ると、 資 金 力 や 販 売 網 に 強 みを 持 つ 重 電 メーカーや、 先<br />
進 国 からの 技 術 供 与 を 受 けた 新 興 国 メーカーが 同 市 場 に 参 入 するとともに、 供 給 力 の 確 保 の 観 点<br />
から、 部 材 メーカーなどの 買 収 によって、サプライチェーンの 垂 直 統 合 が 進 められた。<br />
近 年 になり、 超 大 型 風 車 や 洋 上 風 力 分 野 の 技 術 開 発 の 進 展 に 伴 い、 風 車 デザインや 製 造 技 術 に<br />
関 する 知 的 財 産 の 保 護 などの 観 点 から、サプライチェーンの 垂 直 統 合 がより 重 要 性 を 増 している。<br />
また、 洋 上 風 力 発 電 市 場 への 参 入 を 目 指 し、 洋 上 風 力 発 電 機 のコア 技 術 を 保 有 する 企 業 との 提 携<br />
や 買 収 の 動 きも 活 発 化 している。<br />
風 車 メーカー<br />
GE Energy<br />
表 3-16 風 力 発 電 メーカー 各 社 の 主 要 な M&A 動 向<br />
買 収 動 向<br />
・ 2011 年 に Converteam( 仏 )を 買 収 し、 同 社 のドライブトレインと 発 電<br />
機 技 術 を 取 得 。<br />
・ 2009 年 に ScanWind(ノルウェー)(ギアボックスと 上 位 互 換 する 先 進<br />
的 ドライブトレイン 技 術 を 保 有 するメーカー)を 買 収 。<br />
Siemens ・ 2005 年 に Winergy(ギアボックスの 世 界 大 手 メーカー)を 買 収 。<br />
Gold Wind ・ 2008 年 に 風 車 専 業 メーカーである Vensys( 独 )を 買 収 。<br />
Repower<br />
Suzlon<br />
三 菱 重 工<br />
出 典 : 各 社 ホームページより 作 成<br />
・ 2012 年 に PowerBlades( 独 )(ロータブレード 開 発 メーカー)の 株 式 を<br />
100% 取 得 。<br />
・ 2006 年 に、 増 速 機 メーカーHansen( 独 )を 買 収 したが、2011 年 10 月<br />
に ZF Friedrichshafen( 自 動 車 関 連 装 置 ・ 部 材 メーカー)に 売 却 。<br />
・ 2009 年 に、ドイツの 風 力 メーカーREPower を 買 収 し、 洋 上 風 力 分 野 へ<br />
進 出 。<br />
・ 2010 年 、 英 国 の 開 発 エンジニアリング 企 業 である Artemis Intelligent<br />
Power の 全 株 式 を 取 得 。 洋 上 風 力 市 場 への 参 入 において 必 要 となる、 同<br />
社 が 保 有 する 油 圧 ドライブ 技 術 を 確 保 。<br />
42
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-41 風 力 発 電 機 メーカーの 新 規 参 入 ・ 再 編 の 歴 史<br />
出 典 : 日 本 風 力 発 電 協 会 資 料 および 各 社 ホームページより NEDO 作 成<br />
43
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.3.3 国 別 ・ 企 業 別 市 場 シェア<br />
(1) 世 界 市 場<br />
図 3-42 に 風 力 発 電 機 の 世 界 市 場 シェアの 推 移 を 示 す。2010 年 には 欧 米 メーカーがシェアを 落<br />
とし、 中 国 メーカー4 社 が 上 位 に 進 出 した(Sinovel 第 2 位 、Goldwind 第 4 位 、Dongfang 第 7<br />
位 、United Power 第 10 位 )。 中 国 メーカー 各 社 は、 欧 米 メーカーから 技 術 供 与 を 受 け、 低 コス<br />
トな 製 品 を 量 産 している。 中 国 国 内 市 場 の 立 ち 上 がりによって 生 産 量 を 大 きく 伸 ばし、 生 産 技 術<br />
の 習 熟 、サプライチェーンの 拡 大 を 進 めている。 生 産 能 力 の 拡 大 によって、 近 年 は 国 内 市 場 に 加<br />
え、 海 外 市 場 への 進 出 も 進 んでいる。また、 独 自 の 技 術 開 発 を 積 極 的 に 進 めており、 陸 上 風 力 に<br />
加 えて、 洋 上 風 力 発 電 市 場 の 獲 得 に 向 けた 動 きを 加 速 させている。<br />
しかし、ここ 数 年 で 上 位 企 業 は 大 きく 様 変 わりし、2012 年 は 中 国 メーカーがシェアを 落 とす 一<br />
方 で、 欧 米 メーカーがシェアを 取 り 戻 している(GE Energy 第 1 位 、Vestas 第 2 位 、Siemens<br />
第 3 位 、Enercon 第 4 位 )。 欧 州 メーカーは 陸 上 風 力 に 加 えて、 洋 上 風 力 発 電 市 場 の 獲 得 に 向 け<br />
た 動 きを 加 速 させており、 特 に Siemens はシェアを 伸 ばしている。<br />
日 本 メーカーについては、 世 界 市 場 における 存 在 感 は 小 さいのが 現 状 である。<br />
図 3-42 風 力 発 電 機 の 世 界 市 場 シェア(2008 年 ~2010 年 )<br />
出 典 :Emerging Energy Research 資 料 、BTM Consult ApS 資 料 より NEDO 作 成<br />
44
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
洋 上 風 力 市 場 においては 現 在 、Siemens と Vestas の 寡 占 状 態 にあり、その 他 Repower や<br />
Winwind、BARD、GE、Areva などが 少 量 を 供 給 している。しかし、Doosan、Gamesa、Alstom、<br />
Nordex、 三 菱 重 工 業 なども 洋 上 風 力 市 場 参 入 への 動 きを 見 せており、 陸 上 風 力 市 場 と 同 様 、 洋 上<br />
風 力 市 場 においてもメーカー 間 競 争 が 激 しくなることが 予 想 される。<br />
図 3-43 欧 州 の 洋 上 風 力 市 場 シェア(2012 年 時 点 )<br />
出 典 :“The European offshore wind industry key trends and statistics 2012” (2013, EWEA) より NEDO 作 成<br />
45
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 日 本 市 場<br />
日 本 国 内 の 風 力 発 電 機 は、 現 状 では 大 半 が 欧 米 製 である( 図 3-44)。 日 本 メーカーの 市 場 シェ<br />
アが 小 さい 要 因 の 一 つとして、 国 内 市 場 の 未 成 熟 が 挙 げられる。 世 界 市 場 シェア 上 位 のメーカー<br />
は、いずれも 拡 大 する 自 国 市 場 において 技 術 ・ 実 績 を 確 立 し、 世 界 展 開 している 企 業 である。 一<br />
方 、 日 本 の 風 力 市 場 は 海 外 と 比 較 して 小 さく、 海 外 市 場 で 競 争 力 を 発 揮 できる 日 本 メーカーを 育<br />
成 する 環 境 が 整 っていなかった。しかし、 国 産 機 の 導 入 割 合 は 2002 年 から、 少 しずつ 増 加 して<br />
おり、 国 内 市 場 における 存 在 感 は 増 しつつある( 図 3-45)。<br />
出 典 :NEDO 資 料 より 作 成<br />
図 3-44 風 力 発 電 機 の 日 本 市 場 シェア(2008 年 )<br />
出 典 :NEDO 資 料 より 作 成<br />
図 3-45 国 内 における 海 外 機 ・ 国 産 機 別 導 入 割 合 ( 累 積 基 数 )の 推 移<br />
46
3.3.4 洋 上 風 力 のサプライチェーン<br />
(1) 洋 上 風 力 におけるサプライチェーン<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.2.3 にて 示 したとおり、 陸 上 の 適 地 減 少 に 伴 い、 欧 州 を 中 心 に 洋 上 風 力 発 電 の 導 入 量 が 増 加 し<br />
ており、 市 場 の 拡 大 に 伴 い、 図 3-46 に 示 すサプライチェーンが 構 築 されつつある。<br />
電 力 系 統<br />
陸 上 変 電 所<br />
( 連 系 保 護 装 置 、<br />
変 圧 器 等 )<br />
運 転 監 視 施 設<br />
港 湾 施 設<br />
海 底 送 電 線 ・ 通 信 ケーブル<br />
洋 上 変 電 所<br />
風 力 発 電 機<br />
主 要 企 業<br />
新 規 参 入<br />
企 業<br />
港 湾<br />
管 理<br />
-<br />
海 底 ケーブル<br />
( 製 造 )<br />
Nexans,<br />
Prysmian,<br />
ABB NKT,<br />
Scanrope<br />
海 底 ケーブル<br />
( 敷 設 )<br />
Technip,<br />
CT Offhore,<br />
Global<br />
Marine,<br />
Vesser&Smit<br />
海 洋 土 木 電 気 設 備 基 礎 風 力 発 電 機<br />
A2Sea,<br />
MPI,<br />
SHL,<br />
Geosea<br />
ABB,<br />
Siemens<br />
Energy,<br />
Alstom Grid<br />
SIF,<br />
Smulders,<br />
Bladt,<br />
EEW,<br />
Weserwind,<br />
BiFAB, Aker<br />
Siemens,<br />
Vestas,<br />
Repower,<br />
Areva<br />
H&W, TAG, BARD, GE,<br />
Fred Olsen,<br />
Tata, Doosan,<br />
Beluga,<br />
DRAKA,<br />
Hereema, Gamesa,<br />
-<br />
Beluga Inwind, C&G<br />
JDR<br />
ZPMC, Alstom,<br />
GOAH,<br />
Shinan, Nordex,<br />
Sea Jacks<br />
Fabricom 三 菱 重 工<br />
図 3-46 洋 上 ウィンドファームの 主 要 構 成 要 素 ( 再 掲 )とサプライチェーン<br />
出 典 :“WIND IN OUR SAILS” (2011, EWEA)<br />
図 3-47 に、 欧 州 における 洋 上 風 力 発 電 市 場 の 主 要 プレーヤーの 位 置 関 係 を 示 す。デンマーク<br />
とドイツは、かねてから 風 力 発 電 機 の 主 要 サプライヤーとしての 役 割 を 果 たしてきた。また、オ<br />
ランダ、ベルギー、 英 国 は、 北 海 の 石 油 ・ガス 開 発 のノウハウを 生 かし、 海 洋 土 木 工 事 の 分 野 で<br />
重 要 な 役 割 を 果 たしている。 関 連 電 気 設 備 や 海 底 ケーブルのサプライヤーは、ノルウェーやスウ<br />
ェーデン、ドイツ、イタリアなど、 各 国 に 分 散 している。 近 年 、 洋 上 風 力 市 場 を 牽 引 している 英<br />
国 は、 洋 上 風 力 産 業 に 積 極 的 に 投 資 しており、 北 海 における 国 内 外 市 場 への 展 開 を 見 据 え、 同 国<br />
東 海 岸 に 関 連 設 備 を 増 強 している。このように、 欧 州 は 洋 上 風 力 市 場 を 支 えるサプライチェーン<br />
の 拡 充 が 進 んでおり、 同 市 場 の 成 長 を 支 える 基 礎 となっている。<br />
47
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-47 欧 州 における 洋 上 風 力 発 電 市 場 の 主 要 プレーヤーの 位 置 関 係<br />
出 典 :“WIND IN OUR SAILS” (2011, EWEA)<br />
48
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 洋 上 風 力 市 場 における 開 発 事 業 者 の 動 向<br />
図 3-48 に、 欧 州 の 洋 上 風 力 市 場 における、 開 発 事 業 者 別 の 市 場 シェアを 示 す。 洋 上 風 力 市 場 は<br />
北 海 を 中 心 に 拡 大 しており、 北 海 周 辺 国 (デンマーク、ドイツ、 英 国 、スウェーデンなど)の 大<br />
手 発 電 事 業 者 が 中 心 となり、 開 発 が 進 められてきた。 今 後 も、 大 手 発 電 事 業 者 が 開 発 の 中 心 的 存<br />
在 になると 考 えられるが、Statoil などの 海 洋 土 木 の 技 術 を 持 つ 石 油 ・ガスの 大 手 企 業 や、 丸 紅 な<br />
どの 商 社 、Belwind や BARD などの 風 力 開 発 事 業 者 など、 参 入 企 業 の 業 種 ・ 国 は 多 様 化 している。<br />
図 3-48 開 発 事 業 者 別 市 場 シェア( 上 段 : 単 年 度 下 段 : 累 積 )<br />
出 典 :“The European offshore wind industry key 2009 trends and statistics” (2010, EWEA)、“The European<br />
offshore wind industry key 2011 trends and statistics” (2012, EWEA)より NEDO 作 成<br />
49
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.4 各 国 の 技 術 開 発 動 向<br />
3.4.1 技 術 開 発 の 歴 史 と 近 年 の 動 向<br />
(1) 技 術 開 発 動 向 の 概 観<br />
陸 上 風 力 の 技 術 開 発 は、1970 年 代 のオイルショック 以 降 、 欧 米 にて 本 格 的 に 開 始 され、やや 遅<br />
れて 日 本 もスタートした。 風 車 の 形 式 としては、 水 平 軸 と 垂 直 軸 それぞれについて 研 究 開 発 が 行<br />
われてきたが、1990 年 代 以 降 、 現 在 に 至 るまで、 大 型 風 車 は 3 枚 翼 の 水 平 軸 プロペラ 式 風 車 が 主<br />
流 となっている。また、 風 力 エネルギー 密 度 は 風 速 8m/s で 約 0.3kW/m 2 と 低 く、 単 機 出 力 を 増 大<br />
させるためには 風 車 サイズを 大 きくせざるを 得 ないことから、 大 型 化 に 係 る 技 術 開 発 が 重 要 課 題<br />
となってきた。 世 界 の 風 車 の 平 均 サイズは 国 によっても 異 なるが、 陸 上 風 力 の 平 均 サイズは 2MW<br />
前 後 まで 大 型 化 してきている。 各 種 技 術 開 発 によって、 現 在 、 陸 上 風 力 の 発 電 コストは 10 円 /<br />
kWh 前 後 33にまで 下 がっており、 火 力 などの 従 来 電 源 や 他 の 再 生 可 能 エネルギーとコスト 競 争 力<br />
を 持 つ 水 準 となったことから、 世 界 的 に 導 入 量 が 大 きく 拡 大 している。このように、 陸 上 風 力 に<br />
ついては 技 術 が 成 熟 期 を 迎 えており、 風 力 発 電 機 の 改 良 ( 信 頼 性 ・ 耐 久 性 の 向 上 やブレードを 長<br />
くした 低 風 速 風 車 など)に 加 えて、 風 況 予 測 の 高 精 度 化 や 系 統 連 系 ・ 制 御 システム 開 発 などの 周<br />
辺 技 術 へと、 技 術 開 発 ステージが 進 んでいる。<br />
また、 近 年 になり、 先 進 国 を 中 心 に 陸 上 における 適 地 が 減 少 していることから、さらなる 導 入<br />
拡 大 を 目 指 して、 洋 上 風 力 の 技 術 開 発 が 活 発 化 している。 洋 上 風 力 は 陸 上 風 力 と 比 較 して、 設 置 、<br />
係 留 、 系 統 連 系 、 運 転 ・ 保 守 に 掛 かるコストが 大 きいことから、 採 算 性 を 確 保 するためには 1 基<br />
当 たりの 発 電 量 の 増 加 が 重 要 であること、また 船 があればどこへでも 機 材 の 運 搬 は 可 能 なことか<br />
ら、さらなる 大 型 化 に 向 けた 技 術 開 発 が 推 進 されている。 洋 上 風 力 発 電 の 平 均 単 機 容 量 は 年 々 拡<br />
大 しており、 現 在 導 入 されているものは 2~3MW 機 が 主 流 であるが、5~10MW 以 上 の 超 大 型 風<br />
力 発 電 機 の 技 術 開 発 競 争 が 始 まっている。また、 各 海 洋 条 件 に 適 した 基 礎 構 造 の 技 術 開 発 や、メ<br />
ンテナンスコスト 削 減 を 目 的 としたダイレクトドライブ(ギアレス) 風 車 、 発 電 機 の 軽 量 化 ・ 大<br />
容 量 化 を 目 指 した 超 電 導 風 力 発 電 機 などの 次 世 代 ドライブトレインなどの 開 発 が 行 われている。<br />
加 えて、 深 水 域 への 設 置 を 可 能 とする 浮 体 式 洋 上 風 力 の 開 発 も 進 められている。<br />
このように、 洋 上 風 力 については 多 くの 技 術 開 発 課 題 が 残 されており、 各 国 において 洋 上 風 力<br />
に 係 る 技 術 開 発 が 中 心 となりつつある。<br />
33<br />
3.1.2(2) 発 電 コスト 節 参 照 。<br />
50
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-49 世 界 の 風 車 の 大 型 化 の 推 移<br />
出 典 :“Wind Energy Factsheets 2010” (2011, EWEA)<br />
表 3-17 陸 上 ・ 洋 上 風 力 の 主 要 な 技 術 開 発 課 題<br />
種 類<br />
主 要 な 技 術 開 発 課 題<br />
陸 上 風 力 • 風 況 予 測 の 高 精 度 化<br />
• 系 統 連 系 ・ 制 御 システム 開 発<br />
• 低 風 速 風 車<br />
洋 上 風 力 • 超 大 型 風 車<br />
• 基 礎 構 造 の 最 適 化<br />
• 次 世 代 ドライブトレインの 開 発<br />
• 浮 体 式 洋 上 風 力<br />
51
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 単 機 容 量 およびウィンドファームサイズの 大 型 化<br />
一 般 に、 風 は 地 上 から 上 空 に 向 かうほど 強 くなるため、 風 車 の 高 さ(ハブ 高 さ)はできるだけ<br />
高 くしたほうが 取 得 エネルギーは 増 大 し、 発 電 量 は 増 加 する。また、 風 車 の 取 得 エネルギーは 風<br />
車 の 羽 根 (ブレード)の 回 転 面 の 受 風 面 積 に 比 例 するため、ブレードを 長 く( 風 車 ロータ 直 径 を<br />
大 きく)することでも 取 得 エネルギーは 増 大 する。 風 車 の 大 型 化 によって 1 機 当 たりの 発 電 出 力<br />
を 増 大 させるとともに、 複 数 機 配 置 によってウィンドファーム 全 体 の 出 力 を 増 大 させることで、<br />
発 電 コストを 低 減 することが 可 能 であることから、ウィンドファームの 大 規 模 化 が 進 んできた。<br />
図 3-50 に 平 均 単 機 容 量 の 推 移 を、 図 3-51 に 平 均 ウィンドファーム 規 模 の 推 移 を 示 す。 国 によ<br />
っても 異 なるが、 陸 上 風 力 の 平 均 単 機 容 量 は 2MW 前 後 にまで 大 型 化 してきている。プロペラ 式<br />
風 車 の 大 きさは、 定 格 出 力 が 600kW の 場 合 、タワーの 高 さは 40~50m、ロータ 直 径 は 45~50m<br />
で、1~2MW の 場 合 、タワーの 高 さは 60~80m、ロータ 直 径 は 60~90m が 一 般 的 である。なお、<br />
風 車 の 大 型 化 については、 風 車 の 重 量 がロータ 直 径 の 3 乗 に 比 例 するのに 対 して、 取 得 エネルギ<br />
ーはロータ 直 径 の 2 乗 に 比 例 することから、 風 車 に 掛 かるコストは 直 径 の 3/2 乗 に 比 例 して 増 加<br />
する。したがって、 構 成 機 器 の 強 度 を 向 上 させる、あるいは 風 車 にはたらく 空 力 荷 重 を 低 減 させ<br />
るなどの 技 術 的 ブレークスルーがなければ、 大 型 化 はかえってマイナスとなる。また、 山 間 地 は<br />
機 器 設 置 の 観 点 から 大 型 風 車 に 適 さず、 今 後 は 各 国 の 自 然 条 件 に 応 じたシステムサイズに 分 化 し<br />
ていくものと 推 察 される。<br />
洋 上 風 力 は、 陸 上 風 力 と 比 較 して 設 置 コストが 掛 かることから、 単 機 当 たりの 発 電 量 の 増 大 が<br />
より 重 要 であり、 平 均 単 機 容 量 のさらなる 大 型 化 が 進 んでいる。 現 在 、5~10MW の 超 大 型 風 車<br />
の 技 術 開 発 が 進 められており( 詳 細 な 技 術 開 発 動 向 は 3.4.3 を 参 照 )、 例 えば Vestas 社 の 7MW<br />
機 のロータ 径 は 164m の 設 計 である。また、ウィンドファーム 規 模 も 陸 上 風 力 より 大 規 模 化 する<br />
傾 向 にある。<br />
図 3-50 風 車 の 平 均 単 機 容 量 の 推 移<br />
出 典 : 陸 上 :The Wind Power ® ホームページより NEDO 作 成 、<br />
洋 上 :“The European offshore wind industry key trends and statistics 2012” (2013, EWEA)より NEDO 作 成<br />
52
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-51 平 均 ウィンドファーム 規 模 の 推 移<br />
出 典 : 陸 上 :The Wind Power ® ホームページより NEDO 作 成 、<br />
洋 上 :“The European offshore wind industry key trends and statistics 2012” (2013, EWEA)より NEDO 作 成<br />
(3) ドライブトレイン・ 発 電 機 の 動 向<br />
ドライブトレインとは、 風 力 発 電 機 に 採 用 されている 動 力 伝 達 システムのことである。 風 力 発<br />
電 機 は、 変 速 システムや 発 電 機 の 種 類 の 違 いによって、 図 3-52 のように 分 類 される。 変 速 シス<br />
テムは、 増 速 機 を 用 いて 回 転 数 を 上 げてから 発 電 機 に 伝 達 する 増 速 機 方 式 と、 風 車 の 回 転 をその<br />
まま 発 電 機 に 伝 達 するダイレクトドライブ 方 式 (ギアレス)に 分 類 される。<br />
陸 上 風 力 においては、 増 速 機 方 式 の 風 車 が 一 般 的 であるが、 歯 車 とベアリングの 複 雑 な 相 互 作<br />
用 で 動 く 従 来 の 増 速 機 は、 定 期 的 なメンテナンスを 必 要 とし、 特 に 高 速 状 態 では 不 具 合 が 起 こり<br />
やすい。 陸 上 風 力 においては、タービンへのアクセスが 容 易 なため、 増 速 機 のメンテナンスはあ<br />
まり 問 題 にはならないが、 洋 上 風 力 においては、 作 業 船 のレンタル 料 や 故 障 機 器 の 修 理 、メンテ<br />
ナンススタッフの 動 員 などによって 高 コストとなる。そのため、 求 められる 発 電 容 量 に 応 じて、<br />
ブレードや 発 電 機 を 改 良 しながら 増 速 機 のギア 比 を 最 適 化 することで、コストや 総 重 量 を 抑 える<br />
ことが 検 討 されている。また、 増 速 機 を 用 いないダイレクトドライブ 方 式 が 採 用 される 傾 向 が 強<br />
まっている。ダイレクトドライブ 方 式 は、 増 速 機 を 用 いない 分 、 低 速 で 発 電 することができる 極<br />
数 の 多 い 発 電 機 を 用 いるため、 従 来 の 増 速 機 方 式 に 比 べて 生 産 コストが 高 いなどの 欠 点 はあるが、<br />
先 に 述 べた 増 速 機 の 故 障 リスクの 回 避 やメンテナンスコストの 削 減 に 加 え、 増 速 機 による 伝 達 ロ<br />
スの 削 減 、 重 量 の 削 減 などの 利 点 も 有 している。さらに、 新 しいドライブトレインの 方 式 として、<br />
油 圧 を 用 いる 方 式 が 検 討 されている。この 方 式 では、 翼 が 受 けた 風 力 エネルギーを 油 圧 ポンプ 内<br />
で 高 圧 の 油 圧 エネルギーに 変 換 する。さらに、この 高 圧 の 油 圧 エネルギーを 用 いて 油 圧 モータを<br />
駆 動 し、デジタル 制 御 によって 電 力 系 統 の 周 波 数 に 合 う 一 定 の 回 転 数 へ 昇 速 して 発 電 機 を 電 力 系<br />
統 につなぎ、 稼 動 させている。 油 圧 を 用 いるこの 方 式 を 採 用 すると、 油 圧 ポンプとモータを 個 々<br />
に 制 御 できるだけでなく、 従 来 は 必 要 とされた 歯 車 や 周 波 数 変 換 装 置 が 不 要 となる。 発 電 機 につ<br />
いては、 誘 導 発 電 機 、または 同 期 発 電 機 のいずれかの 交 流 発 電 機 が 用 いられている。 誘 導 発 電 機<br />
53
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
は 増 速 機 方 式 の 風 力 発 電 機 に 採 用 されており、 回 転 子 の 形 状 や 系 統 連 系 方 式 の 違 いによって、か<br />
ご 型 誘 導 発 電 機 、 巻 線 型 誘 導 発 電 機 、 二 次 巻 線 型 誘 導 発 電 機 などに 分 類 される。 以 前 はかご 型 誘<br />
導 発 電 機 および 巻 線 型 誘 導 発 電 機 が 発 電 機 の 主 流 であったが、 大 型 化 が 進 むにつれ、 出 力 変 動 抑<br />
制 などへの 対 応 から、 二 次 巻 線 型 誘 導 発 電 機 が 主 流 になりつつある。<br />
ダイレクトドライブ 方 式 に 用 いられる 同 期 発 電 機 について、 近 年 は 小 型 化 ・ 軽 量 化 を 目 的 とし<br />
て、 永 久 磁 石 発 電 機 の 技 術 開 発 が 推 進 されている。 巻 線 型 誘 導 発 電 機 は、 発 電 時 に 回 転 子 に 駆 動<br />
電 力 を 供 給 する 必 要 があり、 単 独 運 転 はできないが、 永 久 磁 石 発 電 機 は 回 転 子 への 電 力 供 給 が 不<br />
要 であることに 加 え、 発 電 機 の 径 は 大 きくなるものの、 大 幅 重 量 低 減 、ナセル 容 量 の 削 減 が 可 能<br />
とされている。また、 高 効 率 化 と 軽 量 化 を 目 的 とした 超 電 導 技 術 の 開 発 も 行 われている。<br />
Type A<br />
系 統 連 系 盤<br />
系 統<br />
増 速 機<br />
かご 型<br />
誘 導 発 電 機<br />
ソフトスターター<br />
キャパシター<br />
Type B<br />
増 速 機<br />
巻 線 型<br />
誘 導 発 電 機<br />
ソフトスターター<br />
系 統 連 系 盤 系 統<br />
可 変 抵 抗 器<br />
キャパシター<br />
Type C<br />
系 統 連 系 盤 系 統<br />
増 速 機<br />
二 次 巻 線 型<br />
誘 導 発 電 機<br />
AC/DC/AC<br />
コンバーター<br />
Type D<br />
全 量 AC/DC/AC<br />
コンバーター<br />
系 統 連 系 盤<br />
系 統<br />
増 速 機 を<br />
備 えない<br />
ことが 多 い<br />
同 期 式 発 電 機<br />
Type 変 速 システム 発 電 機 長 所 短 所<br />
A 低 速 増 速 機 方 式 かご 型 誘 導 発 電 機<br />
安 価 、 構 造 がシンプル、<br />
頑 丈<br />
フリッカ 電 圧 、 電 力 調 整<br />
不 可 、 抵 抗 率<br />
B 可 変 速 増 速 機 方 式 巻 線 型 誘 導 発 電 機 最 適 な 出 力 調 整 可 コンバータサイズ、 高 価<br />
C 可 変 速 増 速 機 方 式<br />
D<br />
可 変 速<br />
出 典 : 日 本 風 力 発 電 協 会 資 料<br />
二 次 巻 線 型 誘 導 発<br />
電 機<br />
最 適 な 出 力 調 整 可 、コン<br />
バータがコンパクト<br />
速 度 範 囲 の 制 限 、 高 価<br />
ダイレクト<br />
電 圧 および 出 力 調 整 可 、 全 量 コンバータが 必 要 、<br />
ドライブ 方<br />
同 期 発 電 機 ギアレス、 高 効 率 、 頑 丈 、 発 電 機 構 成 が 複 雑 、 非 常<br />
式 (ギアレ<br />
自 己 励 磁<br />
に 高 価<br />
ス)が 多 い<br />
図 3-52 代 表 的 な 発 電 方 式<br />
54
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(4) 系 統 連 系 ・ 制 御 に 係 る 技 術 開 発<br />
風 力 をはじめとする 再 生 可 能 エネルギーは、 気 象 によって 出 力 が 大 きく 変 動 することから、 大<br />
量 に 導 入 された 場 合 、 発 電 出 力 変 動 の 増 大 に 対 応 すべき 周 波 数 調 整 能 力 が 不 足 し、 周 波 数 変 動 が<br />
拡 大 する 可 能 性 がある。FP7 では 現 在 、TWENTIES プロジェクトにおいて、 風 力 発 電 の 大 量 導<br />
入 時 の 系 統 連 系 制 御 に 係 る 技 術 開 発 が 進 められている。 本 プロジェクトは、 送 電 系 統 運 用 者 6 社 、<br />
発 電 事 業 者 2 社 、 風 力 メーカー5 社 および 研 究 機 関 が 参 画 しており、 大 規 模 実 証 プロジェクトを<br />
通 して、 系 統 連 系 制 御 に 係 る 技 術 の 利 点 と 効 果 を 検 証 することを 目 的 としている。 現 在 6 つの 実<br />
証 プロジェクトを 通 して、 出 力 変 動 制 御 に 有 用 な 技 術 、 洋 上 風 力 発 電 導 入 に 必 要 となる 系 統 連 系<br />
技 術 などについて 検 討 が 進 められている。<br />
この 課 題 に 対 し、 風 力 先 進 国 の 一 つであるスペインは、 供 給 電 力 に 占 める 風 力 発 電 の 比 率 が 年<br />
間 平 均 で 10%、 最 大 で 40%に 達 しながらも、 大 きなトラブルもなく 電 力 系 統 の 運 用 ・ 維 持 を 可<br />
能 とし、 注 目 されている( 図 3-53)。スペインの 系 統 運 用 会 社 である Red Electrica de Espana<br />
社 は、 再 生 可 能 エネルギーによる 電 力 安 定 供 給 の 確 保 を 目 的 として、CECRE( 再 生 可 能 エネルギ<br />
ーコントロールセンター)を 立 ち 上 げている。CECRE は、スペインの 電 力 系 統 全 体 を 制 御 する<br />
CECOEL/CECORE に 組 み 込 まれており、 制 御 ・ 監 視 システム GEMAS を 用 いて、リアルタイ<br />
ムで 監 視 ・ 制 御 することによって、 風 力 発 電 の 発 電 電 力 を 最 大 限 に 活 用 し、 火 力 、 水 力 、 原 子 力<br />
の 制 御 と 合 わせて、 他 国 との 電 力 のやり 取 りを 最 小 化 している。 本 制 御 システムによって、スペ<br />
インの 全 発 電 設 備 の 年 間 発 電 電 力 量 に 占 める 風 力 の 割 合 は 10%を 超 えているが、2008 年 3 月 に<br />
は 40%を 超 える 比 率 を 記 録 している。<br />
また、 発 電 量 予 測 に 当 たっては、 風 況 予 測 技 術 の 高 精 度 化 が 重 要 となる。モデル 予 測 精 度 の 向<br />
上 は、 欧 州 の FP7 においても 重 点 開 発 項 目 の 一 つに 挙 げられており、 複 雑 な 風 況 における 発 電 量<br />
予 測 ツールの 精 度 向 上 を 目 的 とした SAFEWIND プロジェクトが 実 施 されている。<br />
揚 水<br />
石 油 ・ガス・ 火 力<br />
水 力<br />
コンバイド 火 力<br />
石 炭<br />
原 子 力<br />
その 他 再 生 可 能 エネルギー<br />
風 力<br />
※マイナス 側 に 表 示 されている 線 は 揚 水 (ポンプ 運 転 )と 国 際 送 電 電 力<br />
図 3-53 風 力 発 電 電 力 が 多 かった 日 の 供 給 電 力 構 成 (2008 年 4 月 13 日 ~4 月 19 日 )<br />
出 典 :“Integration of largescale wind in the grid–The Spanish Experience” (2008, RED ELECTRICA)<br />
55
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.4.2 主 要 国 の 技 術 開 発 動 向<br />
(1) 日 本 の 技 術 開 発 動 向<br />
日 本 ではこれまで、NEDO によって、100kW 級 パイロットプラントの 開 発 (1981~1986 年 )、<br />
500kW 級 風 車 の 開 発 ・ 運 転 研 究 (1985~1998 年 )などが 実 施 され、その 後 、 風 力 発 電 機 大 手 メ<br />
ーカー 各 社 が 立 て 続 けに 2MW クラスの 風 車 を 開 発 ・ 実 用 化 し、 国 内 外 における 実 績 を 積 んでき<br />
た。 現 在 は、NEDO において 表 3-18 に 示 す 技 術 開 発 プロジェクトが 進 行 している。<br />
事 業 ・プロジェクト 名<br />
洋 上 風 力 発 電 等 技 術<br />
研 究 開 発<br />
風 力 発 電 高 度 実 用 化<br />
研 究 開 発<br />
表 3-18 NEDO における 風 力 発 電 関 連 プロジェクト<br />
概 要<br />
• 我 が 国 特 有 の 海 上 風 特 性 や 気 象 ・ 海 象 条 件 を 把 握 し、 洋 上 環 境 影<br />
響 評 価 手 法 を 確 立 するとともに、 実 際 に 洋 上 に 風 力 発 電 機 を 設 置<br />
して 性 能 評 価 などを 行 う。<br />
• 革 新 的 な 超 大 型 風 力 発 電 システムに 係 る 技 術 開 発 を 行 う。<br />
• 洋 上 ウィンドファームの 開 発 に 係 る 風 況 精 査 、 海 域 調 査 、 環 境 影<br />
響 評 価 や、 風 車 、 基 礎 、 海 底 ケーブル、 変 電 所 等 の 設 計 、 施 工 等<br />
の 検 討 を 行 う。<br />
• 洋 上 風 況 を 安 価 でかつ 精 度 よく 観 測 可 能 な 風 況 観 測 システムを 開<br />
発 する。<br />
• 港 湾 や 航 行 、 漁 業 等 の 利 害 関 係 者 や 地 域 住 民 等 と 合 意 形 成 を 図 る<br />
ために 必 要 となる 手 段 、 仕 組 み、 方 法 等 について 検 討 を 行 う。<br />
• 先 進 的 な 次 世 代 風 車 に 適 用 可 能 な 発 電 機 や 主 要 コンポーネントな<br />
どの 性 能 向 上 に 係 る 実 用 化 開 発 を 素 材 レベルから 一 体 的 に 実 施 す<br />
る<br />
• 設 備 利 用 率 の 向 上 を 目 的 として、 高 効 率 なメンテナンス 手 法 を 開<br />
発 するとともに、 実 際 に 既 設 風 車 による 実 証 試 験 を 実 施 する。<br />
• 10MW 以 上 の 超 大 型 風 車 の 調 査 研 究 を 行 い、 発 電 機 等 を 含 むシ<br />
ステム 全 体 の 実 現 可 能 性 を 評 価 する。<br />
洋 上 風 力 については、1990 年 代 後 半 から 洋 上 風 力 発 電 に 関 する 調 査 ・ 研 究 開 発 が 開 始 され、「 日<br />
本 における 洋 上 風 力 発 電 の 導 入 可 能 性 調 査 」(1998)、「 離 島 地 域 等 における 洋 上 風 力 発 電 シス<br />
テム 技 術 開 発 課 題 および 今 後 の 方 向 性 に 関 する 調 査 」(2000)、「 洋 上 風 力 発 電 導 入 のための 技<br />
術 的 課 題 に 関 する 調 査 」(2006)などが 実 施 されてきた。 現 在 、 北 海 道 久 遠 郡 せたな 町 、 山 形 県<br />
酒 田 市 、 茨 城 県 神 栖 市 の 3 ヵ 所 で 着 床 式 洋 上 風 力 発 電 が 設 置 されているが、 実 績 では 欧 州 に 遅 れ<br />
を 取 っている。<br />
NEDO は「 洋 上 風 力 発 電 等 技 術 研 究 開 発 事 業 」を 平 成 20~28 年 度 に 実 施 している。 平 成 20 年<br />
度 は 全 国 6 海 域 での 実 施 可 能 性 調 査 を 実 施 しており、 平 成 21 年 度 からはそのうちの 2 海 域 ( 千<br />
葉 県 銚 子 沖 、 福 岡 県 北 九 州 市 沖 )で 洋 上 風 況 観 測 システムの 実 証 研 究 を 開 始 した。<br />
また、 平 成 22 年 度 からは 国 内 初 の 沖 合 での 洋 上 風 力 発 電 システム 実 証 研 究 を 開 始 している。 日<br />
本 の 自 然 環 境 に 適 した 洋 上 風 力 発 電 設 備 の 開 発 、 洋 上 風 力 発 電 設 備 の 運 転 保 守 方 法 の 確 立 、 環 境<br />
影 響 調 査 、 洋 上 風 力 発 電 設 備 の 設 計 指 針 案 の 作 成 などを 予 定 しており、 成 果 が 期 待 されている。<br />
56
表 3-19 NEDO 洋 上 風 力 発 電 システム 実 証 研 究 の 概 要<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 の 研 究 については、2001 年 度 から 複 数 の 機 関 で 実 施 されてきた( 表 3-20)。<br />
2009 年 、 京 都 大 学 ・ 佐 世 保 重 工 などが 2MW クラスの 風 車 をスパー 型 の 浮 体 に 搭 載 する 想 定 で、<br />
10 分 の 1 モデルの 浮 体 を 海 上 に 浮 かべる 実 験 を 実 施 し、2010 年 度 からは 環 境 省 が、2016 年 度 の<br />
浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 の 実 用 化 を 目 指 し、「100kW 級 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 実 証 事 業 」を 開 始 した。<br />
2010 年 度 は、 環 境 影 響 評 価 方 法 の 検 討 、 地 域 受 容 性 評 価 、 基 本 設 計 などを 実 施 し、2011 年 度 の<br />
準 備 期 間 を 経 て、2012 年 6 月 には 洋 上 設 置 に 成 功 し( 図 3-54) 34 、2013 年 10 月 には 2MW の<br />
風 車 を 導 入 して 運 転 を 開 始 した。<br />
NEDO においては、2011 年 度 に「 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 に 係 る 基 礎 調 査 」を 実 施 した。また、<br />
2012 年 度 からは 経 済 産 業 省 において「 浮 体 式 洋 上 ウィンドファーム 実 証 研 究 事 業 」を 開 始 し、 福<br />
34<br />
京 都 大 学 プレスリリース(2012 年 6 月 12 日 )<br />
57
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
島 県 沖 で 事 業 を 推 進 しており、その 第 一 歩 として、2MW クラスの 浮 体 式 洋 上 風 車 を 2013 年 11<br />
月 に 運 転 を 開 始 した。<br />
浮 体 式 に 関 しては、ノルウェーにおける Siemens 社 やポルトガルにおける PrinciplePower 社<br />
の 実 証 試 験 が 先 行 している( 次 節 にて 紹 介 )。また、2010 年 3 月 、IEC 35 の 国 際 会 議 において、<br />
韓 国 から 浮 体 式 風 車 の 標 準 化 の 提 案 が 行 われており、 世 界 的 にも 浮 体 式 風 車 の 実 用 化 に 向 けて 開<br />
発 競 争 の 時 代 に 入 りつつある。<br />
表 3-20 日 本 における 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 の 研 究 開 発 の 状 況<br />
年 度 機 関 概 要<br />
2001 日 本 海 洋 開 発 産 業 協 会<br />
2002 日 本 海 洋 開 発 産 業 協 会<br />
2003~2005<br />
2003~2007<br />
海 上 技 術 安 全 研 究 所<br />
国 立 環 境 研 究 所<br />
海 洋 資 源 ・エネルギーを 複 合 的 に 活 用 する 沖 合 洋 上 風 力<br />
発 電 等 システムの 開 発 調 査 研 究<br />
浮 遊 式 風 力 発 電 基 地 の 自 然 エネルギーの 最 適 輸 送 技 術<br />
に 関 する 調 査 研 究<br />
浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 による 輸 送 用 代 替 燃 料 創 出 に 資 す<br />
る 研 究<br />
洋 上 風 力 発 電 を 利 用 した 水 素 製 造 技 術 開 発 (セイリング<br />
式 36)<br />
2005~2006 東 京 電 力 ・ 東 京 大 学 フロート 式 洋 上 風 力 発 電 に 関 する 研 究<br />
2009~2010<br />
京 都 大 学 ・ 佐 世 保 重 工 等 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 に 関 する 研 究<br />
2011 NEDO 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 に 係 る 基 礎 調 査<br />
2011~ 環 境 省 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 実 証 事 業 ( 長 崎 県 沖 )<br />
2012~ 経 済 産 業 省 浮 体 式 洋 上 ウィンドファーム 実 証 研 究 事 業<br />
発 電 設 備 (ふくしま 未 来 ) 発 電 設 備 (ふくしま 絆 )<br />
図 3-54 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 施 設 の 形 状 寸 法<br />
出 典 : 浮 体 式 洋 上 ウィンドファーム 実 証 研 究 事 業 ホームページ<br />
35<br />
International Electrotechnical Commission<br />
36<br />
セイルを 擁 する 非 係 留 大 型 浮 体 上 に 風 車 を 搭 載 して 発 電 する 方 式 。<br />
58
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 日 本 メーカーのビジネス 動 向<br />
1) 三 菱 重 工 業<br />
三 菱 重 工 業 は 日 本 を 代 表 する 重 工 業 メーカーであり、 国 内 最 大 手 風 車 メーカーである。 同 社<br />
は 1980 年 から 風 車 の 製 造 を 開 始 し、 現 在 は 1MW 機 および 2.4MW 機 を 製 造 している。 同 社 は、<br />
国 内 市 場 とともに 米 国 市 場 を 中 心 にビジネス 展 開 をしており、2010 年 には 米 国 アーカンソー 州<br />
に 風 力 発 電 設 備 組 み 立 て 工 場 の 建 設 を 開 始 した。<br />
2010 年 に、 洋 上 風 力 発 電 市 場 への 参 入 に 向 けて、 英 国 政 府 からの 補 助 金 によって 7MW 機 の<br />
開 発 実 証 に 着 手 した。 英 国 の 開 発 ベンチャーであるアルテミス 社 を 買 収 し、NEDO の 助 成 を 受<br />
けて 同 社 の 保 有 する 油 圧 トランスミッション 技 術 を 用 いた 洋 上 風 車 用 油 圧 ドライブトレインの<br />
開 発 に 取 り 組 むとともに、ブレードを 含 めた 新 型 設 備 を 開 発 している 37 。2012 年 に 国 内 検 証 し、<br />
2013 年 に 英 国 において 実 証 試 験 を 行 い、2015 年 から 商 用 量 産 を 予 定 している 38 。<br />
表 3-21 三 菱 重 工 の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
MWT-1000A 陸 上 1<br />
MWT92/2.4 陸 上 2.4<br />
出 典 : 三 菱 重 工 業 ホームページ<br />
2) 日 立 製 作 所<br />
日 立 製 作 所 は、 日 本 の 複 雑 地 形 特 有 の 吹 上 風 への 対 応 に 有 利 となる、2MW のダウンウィン<br />
ドロータ 方 式 の 風 車 を 2003 年 に 富 士 重 工 業 と 共 同 開 発 し、 現 在 国 内 において 約 30 基 の 同 社 製<br />
風 車 が 設 置 されている。 日 立 製 作 所 は、 発 電 機 や 電 力 制 御 部 分 の 設 計 ・ 製 造 、および 風 力 シス<br />
テムの 販 売 と 据 付 を 担 当 、 富 士 重 工 業 は 風 車 本 体 のナセル、ブレード、タワーの 設 計 ・ 製 造 を<br />
担 当 し、 事 業 を 展 開 してきた。2012 年 7 月 に 富 士 重 工 業 から 日 立 製 作 所 へ 風 力 発 電 システム 事<br />
業 が 譲 渡 されている 39 。<br />
ダウンウィンドロータ 方 式 は 洋 上 設 置 に 適 しているといわれている。タワーの 風 下 側 にロー<br />
タが 位 置 しており、ロータ 回 転 軸 が 風 上 に 向 かって 下 を 向 いているため、 風 向 とロータ 軸 との<br />
間 の 角 度 誤 差 はアップウィンド 型 の 風 車 に 比 べて 少 ないことから、アップウィンド 型 に 比 べて<br />
発 電 量 を 多 く 獲 得 できるとされている。<br />
同 社 は 2012 年 7 月 、ダウンウィンド 方 式 の 特 徴 を 生 かした 世 界 初 の 5MW 級 ダウンウィン<br />
ド 洋 上 風 力 発 電 システム 開 発 への 着 手 を 発 表 した。2014 年 度 から 実 証 試 験 を 開 始 し、2015 年<br />
の 販 売 開 始 を 目 指 すとしている 40 。<br />
37<br />
風 力 等 自 然 エネルギー 技 術 研 究 開 発 / 洋 上 風 力 発 電 等 技 術 研 究 開 発 / 超 大 型 風 力 発 電 システム 技 術 研 究 開 発<br />
(2010 年 ~2014 年 )<br />
38<br />
三 菱 重 工 業 プレスリリース(2011 年 11 月 28 日 )<br />
39<br />
富 士 重 工 業 プレスリリース(2012 年 3 月 30 日 )<br />
40<br />
日 立 製 作 所 プレスリリース(2012 年 7 月 12 日 )<br />
59
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
表 3-22 日 立 製 作 所 の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
HTW2.0-80 陸 上 2<br />
HTW2.0-86 陸 上 2<br />
出 典 : 日 立 製 作 所 ホームページ<br />
図 3-55 浮 体 式 洋 上 風 車 でのダウンウィンド 方 式 の 優 位 性<br />
出 典 :NEDO ホームページ<br />
3) 日 本 製 鋼 所<br />
日 本 製 鋼 所 は、ダイレクトドライブ 方 式 風 力 発 電 機 を 製 造 している。 発 電 機 は、 永 久 磁 石 同<br />
期 型 発 電 機 を 使 用 しており、 一 般 的 な 風 力 発 電 機 にある 増 速 機 、 主 軸 がないため、 損 失 が 少 な<br />
く、 高 い 発 電 効 率 を 実 現 している。また、 潤 滑 が 必 要 な 部 品 が 少 なく、 部 品 点 数 も 少 ないこと<br />
から、 保 守 が 容 易 で、 保 守 コストの 大 幅 な 低 減 を 可 能 とした。フルコンバータを 使 用 しており、<br />
系 統 への 影 響 もほとんどないため、 系 統 の 弱 い 地 域 にも 対 応 可 能 である。ブレードは 主 に 国 内<br />
で 製 造 し、J82 は 国 内 で 105 基 の 実 績 がある。 新 型 機 の J100 は 平 成 25 年 に 初 号 機 の 運 転 が 開<br />
始 される。<br />
表 3-23 日 本 製 鋼 所 の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
JSW J82 陸 上 2<br />
JSW J100 陸 上 3<br />
出 典 : 日 本 製 鋼 所 ホームページ<br />
60
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
4) 東 芝<br />
東 芝 は 2011 年 5 月 、 韓 国 の 風 力 発 電 機 器 メーカーのユニスン 社 と、 風 力 発 電 機 器 の 共 同 開<br />
発 や 販 売 などにおける 業 務 提 携 に 合 意 し、 風 力 発 電 システム 事 業 に 参 入 している。<br />
表 3-24 東 芝 の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
U50/U54/U57 陸 上 0.75<br />
U88/U93 陸 上 2<br />
出 典 : 東 芝 ホームページ<br />
61
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(3) 欧 州 の 技 術 開 発 動 向<br />
欧 州 では、 加 盟 各 国 共 同 で 研 究 活 動 を 行 うための 支 援 計 画 として、 欧 州 フレームワーク 計 画 (FP)<br />
41を 定 め、 科 学 分 野 の 各 種 テーマについて、 国 家 横 断 的 な 技 術 開 発 が 行 われている。<br />
風 車 設 計 に 係 る 基 礎 研 究 は、FP1(1984~1988 年 )から 開 始 されており、 風 車 後 流 (ウエイク)<br />
や 乱 流 に 関 する 調 査 ・ 研 究 およびモデリング、 空 力 弾 性 計 算 ・ 風 車 音 計 算 ・ 風 車 設 計 応 答 計 算 コ<br />
ードの 研 究 ・ 開 発 、フィールド 試 験 や 数 値 流 体 力 学 をはじめとするシミュレーション 技 術 、 風 洞<br />
試 験 などの 研 究 開 発 プロジェクトが 実 施 されてきた。また、 風 車 の 導 入 適 地 の 選 定 に 重 要 となる<br />
風 況 観 測 や 風 況 予 測 技 術 の 開 発 、 風 況 マップの 整 備 などについても、 早 期 から 研 究 されてきた。<br />
FP6(2002~2006)および FP7(2007~2013)における 主 要 な 技 術 開 発 プログラムを 表 3-25<br />
に 示 す。 陸 上 ・ 洋 上 風 力 双 方 に 関 連 する 技 術 開 発 として、 風 車 の 大 型 化 に 加 え、 発 電 量 予 測 モデ<br />
ルの 高 精 度 化 や 系 統 連 系 制 御 、 次 世 代 ドライブトレインなどの 技 術 開 発 が 実 施 されている。<br />
また、FP6 および FP7 では、 洋 上 風 力 に 係 る 技 術 開 発 プロジェクトが 多 数 実 施 されている。 欧<br />
州 では、FP2(1988~1992)から 洋 上 風 力 に 係 る 基 礎 調 査 が 開 始 され、FP4(1994~1998 年 )<br />
から 技 術 開 発 が 本 格 化 し、FP4 から FP5(1998~2002)にかけて、 風 車 形 状 、ポテンシャル 予<br />
測 手 法 、 低 コスト 化 、 高 耐 久 化 、 運 用 ・ 管 理 手 法 などに 関 する 技 術 開 発 、および 実 機 を 用 いた 実<br />
証 試 験 が 行 われた。FP6(2002~2006)、FP7(2007~2013)では、 超 大 型 風 車 や、 主 要 構 成 機<br />
器 の 故 障 防 止 ・メンテナンス 費 削 減 を 目 的 とした 設 計 最 適 化 手 法 や 高 性 能 モニタリングシステム、<br />
ウィンドファームの 最 適 設 計 手 法 および 浮 体 式 洋 上 風 力 などの 研 究 開 発 が 実 施 されている。<br />
表 3-25 FP6・FP7 における 主 要 な 風 力 関 連 プロジェクト<br />
プロジェクト 名 概 要 期 間<br />
深 水 沿 岸 地 域 における 洋 上 ウィンドファームの 環 境 影 響 、 設 2004/9/14~<br />
DOWNVIND<br />
計 、 費 用 対 効 果 、 運 営 ・ 管 理 手 法 等 の 実 証<br />
2009/9/14<br />
マルチメガワット 級 の 洋 上 発 電 設 備 導 入 のための 出 力 評 2005/10/1~<br />
POW’WOW<br />
価 ・ 予 測<br />
2008/9/30<br />
陸 上 ・ 洋 上 双 方 における 8~10MW の 超 大 型 風 力 発 電 機 の 開 2006/3/1~<br />
UPWIND<br />
発 、 洋 上 風 力 発 電 機 の 基 礎 部 分 ・ 支 持 構 造 の 開 発<br />
2011/2/28<br />
風 力 発 電 機 構 成 機 器 の 連 結 部 分 における 設 計 荷 重 を 規 定 す 2008/3/1~<br />
PROTEST<br />
るための 試 験 ・ 計 測 手 順 の 開 発<br />
2010/8/31<br />
洋 上 風 力 のメンテナンス 費 の 削 減 、 信 頼 性 の 向 上 を 目 的 とし 2008/3/15~<br />
RELIA WIND<br />
た 風 力 発 電 機 のデザインの 最 適 化 に 係 る 研 究 開 発<br />
2011/3/14<br />
2008/5/1~<br />
SAFEWIND 複 雑 な 風 況 における 高 精 度 発 電 量 予 測 ツールの 開 発<br />
2012/4/30<br />
バルト 海 、アイルランド 海 、 北 海 周 辺 の 風 力 資 源 マップの 作 2008/8/1~<br />
NORSEWIND<br />
成<br />
2012/7/31<br />
WINGY-PRO<br />
NIMO<br />
MARINA<br />
洋 上 風 力 発 電 のコスト 競 争 力 の 向 上 を 目 的 とした 海 洋 エネ 2010/1/1~<br />
PLATFORM ルギー 利 用 技 術 ( 波 力 発 電 等 )との 複 合 利 用 に 係 る 研 究 開 発 2014/6/30<br />
2010/4/1~<br />
TWENTIES 風 力 発 電 の 大 量 導 入 時 の 系 統 連 系 制 御 に 係 る 技 術 開 発<br />
2013/3/31<br />
DEEP WIND 垂 直 軸 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 に 係 る 研 究 開 発 2010/10/1~<br />
風 力 発 電 機 の 大 容 量 化 ・ 軽 量 化 を 目 的 とした 横 方 向 磁 束 超 電<br />
風 力 発 電 機 主 要 構 成 機 器 ・ 部 材 の 高 性 能 モニタリングシステ<br />
2009/11/1~<br />
2009/10/1~<br />
導 発 電 機 の 開 発<br />
ムの 開 発<br />
2013/10/31<br />
2012/9/30<br />
62<br />
41<br />
欧 州 フレームワーク 計 画 (FP)とは、 欧 州 連 合 (EU)における 科 学 分 野 の 研 究 開 発 への 財 政 的 支 援 制 度 。1984<br />
年 の FP1 から 始 まり、 現 在 は FP7(2007~2013)が 実 施 されている。
HIPRWIND<br />
EERA-DTOC<br />
高 出 力 ・ 高 信 頼 性 の 浮 体 式 洋 上 風 力 に 係 る 研 究 開 発<br />
洋 上 ウィンドファーム 単 体 およびウィンドファーム 群 の 最<br />
適 設 計 手 法 にかかる 研 究 開 発<br />
CLUSTERDESIGN 洋 上 ウィンドファーム 群 の 最 適 設 計 手 法 に 係 る 研 究 開 発<br />
出 典 :EC ホームページ(http://cordis.europa.eu/fp7/projects_en.html)より 作 成<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
2014/9/30<br />
2010/11/1~<br />
2015/10/31<br />
2012/1/1~<br />
2015/6/30<br />
2011/12/01~<br />
2016/5/31<br />
民 間 ベースでは、ノルウェーの StatoilHydro 社 とドイツの Siemens 社 が、 浮 体 式 洋 上 風 力 発<br />
電 (2.3MW 機 )の 実 証 (Hywind プロジェクト)を 2009 年 からノルウェーのカルモイ 沖 12km<br />
で 実 施 している( 図 3-56)。これは 世 界 初 の 2MW 級 浮 体 式 洋 上 風 力 のフルスケール 実 証 試 験 で<br />
ある。 最 初 の 2 年 間 で 設 計 コンセプトや 性 能 の 確 認 を 行 っており、 次 フェーズではより 大 型 化 ・<br />
軽 量 化 した 風 車 で 大 規 模 な 実 証 ウィンドファームを 建 設 することによって、コスト 競 争 力 のある<br />
浮 体 式 洋 上 風 力 の 早 期 の 実 現 を 目 指 している。2015 年 頃 までにスコットランドなど 2 ヵ 所 に 建 設<br />
する 構 想 である。また、PrinciplePower 社 、ポルトガル 電 力 公 社 などは 2011 年 11 月 、ポルトガ<br />
ルの Aguçadoura 沿 岸 に Vestas 2MW 風 車 を 用 いた 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 を 設 置 、 実 証 研 究 を 開 始<br />
している。<br />
図 3-56 Hywind プロジェクト<br />
出 典 :Siemens ホームページ<br />
図 3-57 WindFloat プロジェクト<br />
出 典 :Principle Power 社 ホームページ<br />
63
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(4) 米 国 の 技 術 開 発 動 向<br />
米 国 では、DOE の Wind Program において、 主 に 次 の 目 標 達 成 に 向 けた 各 種 技 術 開 発 が 進 め<br />
られている。 同 プログラムにおける 技 術 開 発 予 算 は 近 年 、 大 幅 に 増 額 されており、 同 国 における<br />
風 力 発 電 技 術 の 重 要 性 が 増 している。<br />
≪Wind Program における 主 要 な 技 術 開 発 目 標 42≫<br />
○ 大 型 風 力 :2012 年 までに、7.0m/s~7.5 m/s の 風 速 域 における 大 型 風 車 の 発 電 コストを、 陸<br />
域 において、5.5 セント/kWh(2002 年 におけるベースライン)から 3.6 セント/kWh まで<br />
削 減 する。<br />
○ 洋 上 風 力 :2014 年 までに、8.0m/s~8.8 m/s の 風 速 域 における 大 型 風 車 の 発 電 コストを、 洋<br />
上 ( 浅 水 域 )において、 現 状 の 9.5 セント/kWh(2005 年 におけるベースライン)から 7<br />
セント/kWh まで 削 減 する。<br />
○ 系 統 連 系 :2012 年 までに、 電 力 市 場 に 係 る 規 定 、 系 統 連 系 に 係 る 諸 影 響 、 運 用 戦 略 、システ<br />
ムプランニングに 係 る 検 討 を 実 施 する。<br />
図 3-58 Wind Program の 予 算 推 移<br />
出 典 :DOE EERE Wind Program ホームページより NEDO 作 成<br />
同 プログラムでは、 超 大 型 風 車 および 洋 上 風 力 に 係 る 技 術 開 発 を 推 進 しており、DOE は、 洋 上<br />
展 開 を 見 据 えた 10MW 規 模 の 超 大 型 風 車 を 実 現 する 次 世 代 ドライブトレインの 開 発 を 目 指 した 6<br />
件 のプロジェクトに 対 して、750 万 ドルの 資 金 提 供 を 発 表 している( 表 3-26)。 同 プロジェクト<br />
においては、 永 久 磁 石 や 超 電 導 技 術 を 用 いたダイレクトドライブ 発 電 機 の 開 発 に 力 を 入 れている。<br />
また、 世 界 最 大 規 模 レベルの 90m クラスのブレードの 試 験 設 備 を 持 つ Wind Technology<br />
Testing Center(WTTC)をマサチューセッツ 州 に 完 成 させた( 図 3-59)。2011 年 10 月 に 初 の<br />
商 用 機 向 けの 静 的 試 験 を 完 了 させている 43 。<br />
42<br />
DOE Wind Program ホームページ(http://www1.eere.energy.gov/wind/index.html)<br />
43<br />
DOE Wind Program Newsletter(http://apps1.eere.energy.gov/wind/newsletter/detail.cfm/articleId=32)<br />
64
表 3-26 次 世 代 ドライブトレイン 技 術 開 発 の 採 択 案 件<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
採 択 事 業 者<br />
概 要<br />
Advanced Magnet Lab 巨 大 風 力 タービンに 適 用 される 超 電 導 ダイレクトドライブ 発 電 機 の<br />
社<br />
開 発 。ドライブトレインのコイル 配 置 に 関 する 新 技 術 を 採 用 。<br />
Boulder Wind Power 社 永 久 磁 石 ベースのダイレクトドライブ 発 電 機 の、 実 用 大 型 機 におけ<br />
る 性 能 や 信 頼 性 を 実 証 。<br />
Clipper Windpower 社 従 来 の 増 速 機 の 信 頼 性 を 向 上 し、 超 大 型 風 車 へのスケールアップが<br />
可 能 な 独 自 のドライブトレイン 技 術 の 開 発 。<br />
Eaton Corporation 社 油 圧 トランスミッションを 用 いたダイレクトドライブ 技 術 の 開 発 。<br />
GE Global Research 社 低 温 の 超 電 導 技 術 を 用 いた 10MW のダイレクトドライブ 発 電 機 の<br />
構 成 部 品 のテストを 実 施 。<br />
国 立 再 生 可 能 エネルギー ダイレクトドライブ 方 式 と 増 速 機 方 式 を 組 み 合 わせた 発 電 機 の 開<br />
研 究 所<br />
発 。<br />
出 典 :DOE EERE プレスリリース(2011 年 6 月 28 日 )<br />
図 3-59 WTTC に 設 置 された Clipper Windpower 社 の C96 (46.7m)ブレード<br />
出 典 :DOE EERE ホームページ<br />
米 国 においては、まだ 洋 上 風 力 発 電 機 は 建 設 されていないが、 東 海 岸 を 中 心 に 複 数 の 洋 上 風 力<br />
プロジェクトが 提 案 されており、プロジェクト 実 現 に 向 けた 政 府 支 援 も 徐 々に 進 みつつある。<br />
2010 年 4 月 には、 米 国 で 初 めてとなる 洋 上 風 力 開 発 プロジェクト(Cape Wind project)が、<br />
内 務 省 によって 認 可 された。 総 出 力 は 468MW(3.6MW 風 車 130 基 )で、2012 年 中 には 系 統 に<br />
連 系 される 計 画 となっていたが、 地 元 自 治 体 や 住 民 との 調 整 に 難 航 しており、 計 画 は 遅 延 してい<br />
る。 他 にも、 五 大 湖 の 一 つエリー 湖 で 淡 水 湖 の 洋 上 風 力 発 電 所 開 発 の 動 きがある。<br />
2011 年 2 月 には、 洋 上 風 力 発 電 の 技 術 開 発 ロードマップとなる“A National Offshore Wind<br />
Strategy”が DOE によって 策 定 された。この 技 術 開 発 ロードマップでは、2020 年 までに 10GW、<br />
2030 年 までに 54GW の 洋 上 風 力 発 電 を 導 入 するシナリオを 描 き、2020 年 段 階 で 0.10 ドル/kWh、<br />
2030 年 段 階 で 0.07 ドル/kWh を 達 成 するための 必 要 方 策 として「 技 術 開 発 」「 市 場 障 壁 の 除 去 」<br />
「 先 進 技 術 実 証 試 験 」を 挙 げている。 技 術 開 発 については、 計 算 ツールの 開 発 、 革 新 的 タービン<br />
の 開 発 、 海 洋 システム 工 学 技 術 の 3 つの 分 野 が 重 点 課 題 に 挙 げられている。<br />
65
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
データ 元 :US Department of Energy’s “2010 Wind Technologies Market Report”<br />
図 3-60 米 国 で 計 画 中 の 洋 上 風 力 発 電 プロジェクト<br />
出 典 :“WIND IN OUR SAILS” (2011, EWEA)より NEDO 作 成<br />
66
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(5) 欧 米 メーカーのビジネス 動 向<br />
1) Vestas(デンマーク)<br />
Vestas は、 世 界 最 大 の 風 力 発 電 専 業 メーカーであり、1979 年 から 風 車 の 販 売 を 開 始 し、 累<br />
積 導 入 量 は 世 界 第 1 位 である。サイト 開 発 から 製 造 、 販 売 、メンテナンスまで 一 貫 したサービ<br />
スを 提 供 している。しかし、 近 年 は、 海 外 メーカーから 技 術 供 与 を 受 けた 中 国 メーカーや、GE<br />
などの 重 電 メーカーの 追 い 上 げによって、 世 界 シェアを 落 としている 状 況 にあり、 経 営 再 建 に<br />
向 け、コスト 削 減 や 従 業 員 数 削 減 策 を 講 じている。<br />
Vestas 社 の 戦 略 として、 幅 広 い 製 品 を 幅 広 い 市 場 に 販 売 するビジネスモデルが 特 徴 の 一 つに<br />
挙 げられる。 表 3-27 に、Vestas の 風 車 ラインアップと、 機 種 別 販 売 実 績 を 示 す。 発 電 容 量 は<br />
850kW~3.0MW と 幅 広 く、 対 応 風 速 も 低 速 、 中 速 、 高 速 別 に 製 品 展 開 している。 現 在 は 2.0~<br />
3.0MW 機 が 主 力 製 品 である。また、 陸 上 用 に 加 え、 洋 上 風 力 発 電 機 も 販 売 しており、3.0MW<br />
機 を 展 開 している。 販 売 先 は 世 界 全 域 にわたっており、 欧 州 、 北 米 、 南 米 、アジア、 南 アフリ<br />
カ、 豪 州 など、65 ヵ 国 以 上 においてビジネスを 展 開 している。 近 年 は、 中 国 市 場 における 動 き<br />
を 活 発 化 させており、 受 注 数 を 増 加 させている。<br />
近 年 は、 洋 上 風 力 市 場 への 進 出 も 積 極 的 に 行 っており、2011 年 3 月 に 洋 上 専 用 の 7.0MW 機<br />
(V164-7.0 MW)を 発 表 した。2013 年 よりデンマークエネルギー 大 手 の DONG Energy の 実<br />
証 サイトにて 実 証 試 験 を 実 施 予 定 である。<br />
表 3-27 Vestas の 製 品 ラインアップと 販 売 実 績 ( 陸 上 )<br />
機 種<br />
発 電 容 量<br />
2010 年 度 導 入 量 累 積 導 入 量<br />
[MW] [ 基 数 ] [MW] [ 基 数 ] [MW]<br />
V52-850 kW 0.85 340 289 3,764 3,199<br />
V60-850 kW 0.85 15 13 15 13<br />
V80-1.8 MW 1.8 0 0 1,016 1,829<br />
V80-2.0 MW 2.0 267 534 2,981 5,962<br />
V82-1.5 MW 1.5 0 0 213 320<br />
V82-1.65 MW 1.65 273 450 2,883 4,757<br />
V90-1.8 MW 1.8 269 484 572 1,029<br />
V90-2.0 MW 2.0 763 1,527 3,286 6,544<br />
V90-3.0 MW 3.0 834 2,502 2,170 6,510<br />
V100-1.8 MW 1.8 20 36 20 36<br />
V112-3.0 MW 3.0 2 6 2 6<br />
Other 1 1 26,511 13,909<br />
出 典 :Vestas Annual Report 2010<br />
67
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
表 3-28 Vestas の 洋 上 風 力 発 電 機 ラインアップ<br />
機 種<br />
発 電 容 量 [MW]<br />
V90-3.0 MW Offshore 3.0<br />
V112-3.0 MW Offshore 3.0<br />
V164-7.0 MW( 開 発 中 ) 7.0<br />
出 典 :Vestas ホームページ<br />
2) GE Energy( 米 国 )<br />
GE Energy は、2002 年 に Enron Wind 社 の 風 力 発 電 部 門 を 買 収 し、 風 力 発 電 市 場 に 参 入 し<br />
た。 以 来 、 豊 富 な 資 金 力 や 販 売 網 を 生 かし、サプライチェーンの 水 平 ・ 垂 直 統 合 によって 風 力<br />
発 電 事 業 を 拡 大 している。 表 3-29 に 製 品 ラインアップを 示 す。 陸 上 用 に 1.5MW~2.5MW 機 を、<br />
洋 上 用 に 4.1MW 機 を 展 開 している。<br />
2009 年 11 月 にダイレクトドライブ 方 式 で 優 れた 技 術 を 持 つ Scan Wind 社 を 買 収 し、 洋 上 風<br />
力 発 電 市 場 参 入 に 向 けた 動 きを 開 始 した。 洋 上 風 力 用 の 15.0MW 機 の 開 発 計 画 も 発 表 している。<br />
近 年 は、 中 国 やブラジルなどの 新 興 国 の 市 場 開 拓 に 向 けた 動 きを 加 速 している。2010 年 末 に<br />
は、 中 国 の 発 電 設 備 大 手 であるハルビン 動 力 設 備 有 限 公 司 とジョイントベンチャーを 設 立 し、<br />
陸 上 、 洋 上 向 けに、3.5MW 風 車 の 製 造 、 販 売 することを 発 表 している。 同 社 は Scan Wind 社<br />
のダイレクトドライブ 方 式 を 採 用 するとしている。また、ブラジル 市 場 においては、800MW<br />
の 導 入 実 績 を 有 し、2011 年 末 にも 約 380MW のプロジェクトを 受 注 している。<br />
表 3-29 GE Energy の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
1.5-77 Wind turbine 陸 上 1.5<br />
1.6-100 Wind turbine 陸 上 1.5<br />
1.6-82.5Wind Turbine 陸 上 1.5<br />
2.5-100Wind Turbine 陸 上 2.5<br />
2.75-100 Wind turbine 陸 上 2.5<br />
2.75-103 Wind turbine 陸 上 2.5<br />
4.1-113Wind turbine 洋 上 4.1<br />
出 典 :GE energy ホームページ<br />
68
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3) Gamesa(スペイン)<br />
Gamesa は、スペインに 本 社 を 置 く 風 力 発 電 機 メーカーで、ナセル、ブレード、ギアボック<br />
ス、 発 電 機 、パワーエレクトロニクス 機 器 、タワー、それぞれをスペイン、 中 国 、 米 国 、イン<br />
ドの 工 場 で 生 産 し、 自 社 生 産 率 の 向 上 を 進 めている。2008 年 時 点 では、Vestas、GE に 続 き 世<br />
界 シェア 第 3 位 であったが、2012 年 時 点 では、 第 6 位 に 後 退 している。<br />
2010 年 にインド 市 場 に 参 入 してから、 同 国 におけるビジネスを 拡 大 している。これまでは、<br />
インドメーカーの Suzlon や、Enercon、Vestas の 寡 占 状 態 であったが、Gamesa のインド 市<br />
場 のシェアは 10%に 拡 大 している。<br />
洋 上 風 力 市 場 参 入 にも 意 欲 的 であり、Azimuth プロジェクト(11 社 のスペイン 企 業 と 22 の<br />
研 究 機 関 が 参 画 )にて 15.0MW の 超 大 型 風 力 発 電 機 の 研 究 開 発 を 実 施 している。2010 年 から<br />
始 まった Azimuth プロジェクトは、100%スペインの 技 術 を 用 いた 大 型 洋 上 風 車 を 開 発 するた<br />
めに 必 要 なノウハウを 得 ることを 目 的 としており、Alstom や Acciona、Iberdrola などが 参 画<br />
し、Gamesa が 取 りまとめ 役 となっている。このプロジェクトはスペイン 政 府 ・ 産 業 技 術 開 発<br />
センター(CDTI)の 承 認 を 受 け、4 年 間 で 2,500 万 ユーロが 投 資 される 予 定 である。2013 年<br />
までに 技 術 基 盤 を 確 立 した 後 、2020 年 頃 までに 15MW の 大 型 洋 上 風 車 を 開 発 して、 洋 上 風 力<br />
の 技 術 的 ・ 経 済 的 障 壁 を 克 服 することを 目 指 している。<br />
表 3-30 Gamesa の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
G5X-850kW 陸 上 0.85<br />
G9X-2.0MW 陸 上 2.0<br />
G10X-4.5MW 陸 上 4.5<br />
出 典 :Gamesa ホームページ<br />
69
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
4) Enercon(ドイツ)<br />
Enercon は 1984 年 から 風 力 発 電 市 場 に 参 入 し、 高 品 質 、 高 信 頼 性 の 製 品 販 売 をビジネス 戦<br />
略 の 柱 としている。 同 社 の 製 品 はダイレクトドライブ 方 式 を 採 用 しており、 保 守 費 と 故 障 リス<br />
クを 低 減 している。また、 低 風 速 でのカットイン、 高 い 耐 落 雷 性 能 などが 特 徴 である。<br />
近 年 、 商 用 機 では 世 界 最 大 となる 7.5MW 機 ( 陸 上 用 、ダイレクトドライブ 方 式 )を 開 発 し、<br />
2011 年 1 月 にドイツ 国 内 のウィンドファームに 設 置 している。<br />
表 3-31 Enercon の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
E-33(※) 陸 上 0.33<br />
E-48 陸 上 0.8<br />
E-53 陸 上 0.8<br />
E-44 陸 上 0.9<br />
E-70 陸 上 2.3<br />
E-82 陸 上 2/ 2.3/ 3<br />
E-101 陸 上 3<br />
E-126 陸 上 7.5<br />
(※)…2012 年 末 で 製 造 中 止<br />
出 典 :Enercon ホームページ<br />
5) Siemens(デンマーク)<br />
Siemens は、デンマークで 最 も 古 い 風 車 メーカーであり、1979 年 から 風 車 を 販 売 していた<br />
Bonus Energy 社 を 買 収 し、 風 力 発 電 市 場 に 参 入 した。 同 社 の 風 車 は、 厳 しい 風 況 にも 耐 え 得<br />
る 高 い 耐 久 性 を 特 徴 としている。<br />
Siemens は 洋 上 風 力 発 電 のパイオニアであり、1991 年 に 世 界 初 の 洋 上 風 力 発 電 プラントをデ<br />
ンマークに 建 設 して 以 来 、 洋 上 風 力 市 場 において 高 いシェアを 誇 っている。 洋 上 向 け 発 電 機 で<br />
ある SWT-3.6-120(3.6MW)は、 最 もスタンダードな 洋 上 風 力 発 電 機 の 一 つである。 大 型 機 の<br />
開 発 も 進 めており、2011 年 5 月 からデンマークで 6.0MW プロトタイプ 機 の 実 証 試 験 を 実 施 中<br />
である。また、 浮 体 式 洋 上 風 力 の 技 術 開 発 も 進 めており、 現 在 ノルウェーのカルモイ 沖 で 実 施<br />
されている、 世 界 初 の 2MW 級 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 (2.3MW 機 )の 実 証 試 験 には、 同 社 の 風 力<br />
発 電 機 が 使 用 されている。<br />
表 3-32 Siemens の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
SWT-2.3-82,SWT-2.3-93,<br />
SWT-2.3-101, SWT-2.3-113<br />
陸 上 2.3<br />
SWT-3.6-107 陸 上 3.6<br />
SWT-3.0-101 陸 上 / 洋 上 3.0<br />
SWT-3.6-120 洋 上 3.6<br />
SWT-6.0-154 洋 上 6.0<br />
出 典 :Siemens ホームページ<br />
70
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(6) その 他 新 興 国 などの 動 向<br />
1) 中 国<br />
中 国 は 近 年 、 陸 上 風 力 に 加 えて 洋 上 風 力 の 開 発 を 推 進 している。これまでは 風 力 資 源 が 豊 富 な<br />
北 部 および 西 部 を 中 心 に 陸 上 風 力 の 開 発 に 注 力 してきたが、 主 要 な 電 力 消 費 地 は 東 部 およびその<br />
他 沿 岸 地 域 にあり、 両 地 域 を 結 ぶ 送 電 線 の 整 備 が 追 い 付 かず、 系 統 容 量 の 不 足 が 顕 在 化 している。<br />
洋 上 風 力 は、 電 力 消 費 地 と 近 く、 系 統 連 系 しやすいメリットがあることから、 近 年 になって 洋 上<br />
風 力 の 開 発 が 重 要 課 題 となっている 44 。<br />
2007 年 にアジアで 初 となる 海 上 風 力 発 電 モデルプロジェクト「 東 海 大 橋 洋 上 風 力 発 電 プロジェ<br />
クト」の 入 札 を 実 施 し、2010 年 2 月 には 全 発 電 機 の 組 み 立 てが 完 了 、 同 年 6 月 に 運 転 を 開 始 して<br />
いる。 本 プロジェクトでは、Sinovel 製 の 3MW 機 が 34 基 設 置 されており、 総 発 電 容 量 は 102MW<br />
である。また、その 他 にも 水 深 が 5m 以 下 の 沿 岸 域 において、Rudong (30 MW)、Jiangsu Xiangshui<br />
(6 MW)、Shandong Rongcheng (6 MW)など、 複 数 の 洋 上 風 力 発 電 所 が 建 設 されている。<br />
図 3-61 東 海 大 橋 洋 上 ウィンドファーム( 中 国 ・ 上 海 )<br />
出 典 :Anhui Hummer Dynamo Co., Ltd.ホームページ<br />
2) 韓 国<br />
韓 国 も 洋 上 風 力 発 電 の 技 術 開 発 を 推 進 しており、 主 に 次 に 示 す 技 術 開 発 プロジェクトが 実 施<br />
されている 45 。<br />
• 韓 国 電 力 公 社 (KEPCO)による 中 規 模 サイズの 洋 上 風 力 発 電 フィージビリティ 調 査<br />
• 南 西 海 域 における 2.5GW 洋 上 風 力 開 発 プロジェクト<br />
• 大 型 風 車 の 開 発<br />
• 高 性 能 ヨー 制 御 システムの 開 発<br />
• 浅 水 域 用 ・ 深 水 域 用 基 礎 の 開 発<br />
• 浮 体 式 洋 上 風 力 の 基 礎 に 係 る 要 素 開 発<br />
• 洋 上 風 力 用 テストサイト(5MW)の 開 発<br />
44<br />
“WIND IN OUR SAILS” (2011, EWEA0029)<br />
45<br />
“Korea Strategy on Offshore Wind & Marine Energy”[2012 年 6 月 Renewable UK 2012 KWEA( 韓 国 風<br />
力 発 電 協 会 ) 発 表 資 料 ]<br />
71
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-62 南 西 海 域 における 2.5GW 洋 上 風 力 開 発 プロジェクト<br />
出 典 :“Korea Strategy on Offshore Wind & Marine Energy”[2012 年 6 月 Renewable UK 2012 KWEA( 韓<br />
国 風 力 発 電 協 会 ) 発 表 資 料 ]より NEDO 作 成<br />
KERI (STX 2.0 MW)<br />
DOOSAN(3MW)<br />
図 3-63 洋 上 風 力 用 テストサイト(5MW)<br />
出 典 :“Korea Strategy on Offshore Wind & Marine Energy”[2012 年 6 月 Renewable UK 2012 KWEA( 韓<br />
国 風 力 発 電 協 会 ) 発 表 資 料 ]<br />
72
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(7) 新 興 国 メーカーのビジネス 動 向<br />
1) Sinovel( 中 国 )<br />
Sinovel は 中 国 最 大 の 風 車 メーカーで、 中 国 大 手 重 電 メーカーである Dalian Heavy<br />
Industries & Crane 社 の 出 資 を 受 けている。2004 年 にドイツの Fuhrlander 社 から 技 術 供 与 を<br />
受 け、1.5MW 機 を 生 産 ・ 販 売 してきた。2010 年 には、 世 界 市 場 シェア( 単 年 ) 第 2 位 に 躍 進<br />
したが 2012 年 のシェア( 単 年 )は 9 位 となっている。<br />
同 社 は 洋 上 風 力 発 電 に 関 する 技 術 開 発 を 積 極 的 に 進 めている。2009 年 から、 陸 上 と 洋 上 の 双<br />
方 に 対 応 した 3MW 機 の 量 産 を 開 始 し、 中 国 初 の 洋 上 ウィンドファームとなる、Shanghai<br />
Donghai Bridge 洋 上 ウィンドファームに、34 基 を 納 入 した。また、3MW 機 に 続 き、5MW 機 、<br />
6MW 機 を 開 発 しており、10MW 機 の 開 発 計 画 も 発 表 している。<br />
現 在 、 洋 上 風 力 発 電 機 の 研 究 開 発 拠 点 (National Energy Offshore Wind Power Technology<br />
and Equipment R&D Center)を 建 設 中 で、 洋 上 風 力 発 電 の 技 術 開 発 に 力 を 注 いでいる。<br />
表 3-33 Sinovel の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
SL1500 Series 陸 上 1.5<br />
SL 3000 Series 陸 上 / 洋 上 3.0<br />
SL 5000 Series 洋 上 5.0<br />
SL6000 Series 洋 上 6.0<br />
出 典 :GE energy ホームページ<br />
2) Gold Wind( 中 国 )<br />
Gold Wind は、1998 年 に 設 立 された 中 国 の 風 車 メーカーである。ドイツの REPower 社 から<br />
技 術 供 与 を 受 け、ダイレクトドライブ 方 式 を 採 用 した 1.5MW 機 および 2.5MW 機 を 製 造 ・ 販 売<br />
している。2012 年 には、 世 界 市 場 シェア 第 7 位 ( 単 年 )に 躍 進 した。<br />
2010 年 に 初 めて 国 外 市 場 に 進 出 し、 米 国 ミネソタ 州 の Uilk ウィンドファーム 向 けに 1.5MW<br />
機 を 3 基 納 入 した。 米 国 市 場 に 加 え、チリやエクアドルにおいても、それぞれ 34.5MW、15MW<br />
の 契 約 を 結 んでいる。<br />
洋 上 風 力 市 場 への 参 入 意 欲 も 高 く、10MW 機 の 開 発 計 画 を 発 表 している。<br />
表 3-34 Gold Wind の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
1.5MW PMDD 陸 上 1.5<br />
2.5MW PMDD 陸 上 2.5<br />
出 典 :Gold Wind ホームページ<br />
73
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3) Suzlon(インド)<br />
Suzlon は、サプライチェーンの 垂 直 統 合 によって 競 争 力 を 高 め、 市 場 シェアを 拡 大 している。<br />
Suzlon はほぼ 全 部 材 において 自 社 供 給 できる 体 制 を 整 備 しており、 適 地 のアセスメントから 設<br />
備 導 入 、 運 用 保 守 まで 一 貫 したサービスを 提 供 することで、 国 内 シェアは 約 45%を 確 保 してい<br />
る。 海 外 市 場 でもシェアを 伸 ばしており、2012 年 時 点 で 第 5 位 の 位 置 につけている。<br />
同 社 は 2009 年 、ドイツの 風 力 メーカーREPower 社 を 買 収 したことによって、 洋 上 風 力 分 野<br />
への 進 出 を 果 たした。REPower 社 は、 洋 上 風 力 向 けに 5MW 機 および 6.15MW 機 を 開 発 して<br />
おり、RWE Innogy の 洋 上 ウィンドファーム(295MW、2013 運 開 予 定 ) 向 けに 6.15MW 機 を<br />
48 基 納 入 する 予 定 である。<br />
出 典 :Suzlon 資 料 (2008)より NEDO 作 成<br />
図 3-64 Suzlon のバリューチェーン<br />
表 3-35 Suzlon の 製 品 ラインアップ<br />
機 種 設 置 場 所 発 電 容 量 [MW]<br />
S9X Suite 陸 上 2.1<br />
S88 陸 上 2.1<br />
S88 MarkⅡDFIG 陸 上 2.25<br />
S82 陸 上 1.5<br />
S66 陸 上 1.25<br />
S64 陸 上 1.25<br />
S52 陸 上 0.6<br />
出 典 :Suzlon ホームページ<br />
74
3.4.3 洋 上 風 車 に 係 る 技 術 開 発 動 向<br />
(1) 風 車 タービンに 係 る 技 術 開 発 動 向<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
1 超 大 型 風 車 の 開 発<br />
3.4.1 で 示 したとおり、 洋 上 風 力 は、 陸 上 風 力 と 比 較 して 設 置 コストが 掛 かることから、 単 機<br />
当 たりの 発 電 量 の 増 大 がより 重 要 であり、 平 均 単 機 容 量 およびロータ 直 径 の 大 型 化 が 進 んでい<br />
る( 図 3-65)。<br />
図 3-65 風 車 の 平 均 単 機 容 量 の 推 移 ( 再 掲 )<br />
出 典 : 陸 上 :The Wind Power ® ホームページより NEDO 作 成<br />
洋 上 :“The European offshore wind industry key trends and statistics 2012” (2013, EWEA)より NEDO 作 成<br />
図 3-66 および 表 3-36 に、 各 国 メーカーによる 大 型 風 力 発 電 機 の 開 発 動 向 を 示 す。ここ 数<br />
年 間 で、 欧 州 メーカーに 加 え、 米 国 、 日 本 、 中 国 、 韓 国 メーカーなど、40 を 超 えるメーカーが、<br />
50 以 上 の 新 モデル 機 の 開 発 意 向 を 発 表 しており 46 、 陸 上 で 実 績 のある 2~3MW 機 に 加 え、 多 く<br />
の 企 業 が 5~10MW 以 上 の 洋 上 風 力 専 用 モデル 機 の 開 発 を 計 画 している 47 。 発 表 された 新 モデ<br />
ル 機 のうち、 半 数 は 欧 州 メーカー、 次 いで 3 割 を 中 国 メーカーが 占 めており、 陸 上 風 力 シェア<br />
を 伸 ばす 中 国 メーカーが、 洋 上 市 場 においても 今 後 、 存 在 感 を 増 すことが 予 想 される。<br />
46<br />
“The European offshore wind industry key 2011 trends and statistics” (2012, EWEA)<br />
47<br />
各 メーカーの 主 要 機 種 については 表 3-36 に 紹 介 する<br />
75
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-66 各 国 メーカーによる 洋 上 風 力 発 電 機 の 開 発 動 向<br />
出 典 :“The European offshore wind industry key trends and statistics 2012” (2013, EWEA)<br />
表 3-36 主 要 メーカーにおける 大 型 洋 上 風 力 発 電 機 の 開 発 動 向<br />
企 業 名 単 機 容 量 概 要<br />
Siemens(ドイツ)<br />
Alstom(フランス)<br />
6MW<br />
6MW<br />
2011 年 5 月 からデンマークで 6.0MW プロトタイプ 機 を 実 証 試 験<br />
中 。2013 年 2 月 より、 洋 上 実 証 中 。<br />
6.0MW 機 を 開 発 中 。2012 年 中 にプロトタイプ 機 の 洋 上 実 証 試 験<br />
を 終 え、2014 年 には 商 用 量 産 を 開 始 する 予 定 。<br />
Repower(ドイツ) ※ 6.15MW 陸 上 ・ 洋 上 両 用 の 6.15MW 機 を 開 発 。 今 後 、 洋 上 実 証 実 施 予 定 。<br />
三 菱 重 工 業 ( 日 本 )<br />
Vestas(デンマーク)<br />
7MW<br />
8MW<br />
Sinovel( 中 国 ) 10MW 10MW 機 の 開 発 計 画 を 発 表 。<br />
Gold Wind( 中 国 ) 10MW 10MW 機 の 開 発 計 画 を 発 表 。<br />
GE Energy( 米 国 ) 15MW 15.0MW 機 の 開 発 計 画 を 発 表 。<br />
Gamesa(スペイン)<br />
※Suzlon(インド)の 子 会 社<br />
15MW<br />
NEDO 及 び 英 国 政 府 の 支 援 を 受 けて 7MW 機 の 開 発 を 実 施 中 。<br />
2013 年 1 月 から 日 本 国 内 において 2.4MW による 陸 上 試 験 を 開 始<br />
し、2014 年 以 降 、 英 国 Hunterston において、7MW プロトタ<br />
イプ 機 による 実 証 試 験 を 実 施 予 定 。<br />
2011 年 3 月 に 洋 上 専 用 の 7.0MW 機 (V164-7.0 MW)を 発 表 。<br />
その 後 、7MW から 8MW(V164-8.0MW)へ 拡 張 し、2014 年 か<br />
らデンマークの 陸 上 試 験 所 で 8MW によるプロトタイプ 試 験 を 開<br />
始 する 予 定 。<br />
Azimuth プロジェクト(11 社 のスペイン 企 業 と 22 の 研 究 機 関 が<br />
参 画 )にて 15MW の 超 大 型 風 力 発 電 機 の 研 究 開 発 を 実 施 。<br />
出 典 :“The European offshore wind industry key 2011 trends and statistics” (2012, EWEA)、 各 社 ホームペー<br />
ジ・プレスリリース<br />
76
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
ここでは 特 に、 世 界 の 洋 上 風 車 市 場 のシェアの 大 半 を 占 めている Siemens 及 び Vestas と 共<br />
に、 我 が 国 で 大 型 洋 上 風 車 の 開 発 に 取 り 組 んでいる 三 菱 重 工 業 の 取 組 動 向 について 紹 介 する。<br />
Siemens については、2011 年 5 月 にデンマークの 陸 上 サイトにて、ロータ 直 径 120m の 6MW<br />
プロトタイプ 機 による 実 証 研 究 を 開 始 した。Siemens は 従 来 のギア 式 のドライブトレインシス<br />
テムではなく、 同 期 発 電 機 によるダイレクトドライブ 方 式 を 採 用 しており、 部 品 点 数 の 低 減 に<br />
よってナセル 重 量 や 故 障 リスクの 軽 減 を 図 り、 収 益 性 を 向 上 している。そして、2013 年 2 月 か<br />
ら Dong Energy と 共 同 で 英 国 Gunfleets SandsⅢ( 離 岸 距 離 約 8.5km)において、ロータ 直 径<br />
120m の 6MW 洋 上 風 車 2 基 (モノパイル 式 基 礎 構 造 )の 実 証 研 究 を 開 始 した。 建 設 にあたっ<br />
ては、A2SEA 社 の 洋 上 風 車 を 建 設 する 専 用 船 が 用 いられ、 約 3,350m 2 の 甲 板 があり、クレー<br />
ン1 基 で 最 大 800 トンの 吊 上 げ 能 力 (Siemens の 6MW 洋 上 風 車 のナセル 重 量 は 約 350 トン)<br />
を 有 する。 更 に、2013 年 10 月 に 英 国 Hunterston の Scottish and Southern Energy(SSE)<br />
の 陸 上 サイトにおいて、ロータ 直 径 154m の 6MW プロトタイプ 機 の 建 設 を 完 了 している。 今<br />
後 、 陸 上 における 実 証 研 究 を 実 施 し、 英 国 の Round3 に 向 けた 各 種 検 討 が 行 われる 予 定 である。<br />
図 3-67 プロトタイプ 陸 上 試 験 機 ( 左 上 )、プロトタイプ 洋 上 試 験 機 の 施 工 風 景 ( 右 上 )<br />
施 工 終 了 後 のプロトタイプ 洋 上 試 験 機 ( 下 )<br />
77
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
Vestas は、2013 年 12 月 に 8MW ナセルのプロトタイプ 機 が 完 成 したと 発 表 した。そして、<br />
陸 上 試 験 を 実 施 する、デンマークの 試 験 所 へナセル 等 を 搬 送 し、2014 年 以 降 、ロータ 直 径 164m<br />
のプロトタイプ 機 (V164-8.0MW)による 陸 上 試 験 を 実 施 する 予 定 である。2013 年 9 月 、Vestas<br />
と 三 菱 重 工 業 は、 洋 上 風 力 発 電 設 備 専 業 の 新 しい 合 弁 会 社 を 設 立 することで 合 意 した 48 。この<br />
合 意 では、2014 年 3 月 末 までに 事 業 開 始 を 予 定 しており、 洋 上 風 力 発 電 分 野 で 既 に 多 くの 実 績<br />
を 持 つ Vestas と 三 菱 重 工 業 で、 洋 上 風 力 発 電 設 備 の 開 発 ・ 設 計 ・ 調 達 ・ 製 造 ・ 販 売 ・アフター<br />
サービスを 手 掛 けることを 予 定 している。そして、 本 合 弁 会 社 は、Vestas の 商 用 機 である 3MW<br />
機 はもちろんのこと、V164-8.0MW 及 び 新 型 油 圧 ドライブトレイン(DDT)を 搭 載 した 風 力 発<br />
電 設 備 も、V164 のプラットフォームを 活 かして 早 期 に 市 場 投 入 をはかる 予 定 である。<br />
図 3-68 陸 上 試 験 所 へ 出 荷 を 行 う 8MW プロトタイプ 機 のナセル<br />
三 菱 重 工 業 では、 従 来 のギア 式 や 同 期 式 を 採 用 した 洋 上 風 車 ではなく、 新 型 油 圧 ドライブト<br />
レイン(DDT 49 )による 7MW 洋 上 風 車 の 開 発 を 行 っている 50 。 新 型 油 圧 ドライブトレイン(DDT)<br />
では、 風 車 の 回 転 をいったん 油 圧 ポンプで 油 の 流 れに 変 え、それを 油 圧 モータに 伝 えることで、<br />
発 電 機 を 回 す 仕 組 みである。2013 年 1 月 から 三 菱 重 工 業 の 横 浜 製 作 所 において、2.4MW 級 風<br />
車 による 世 界 初 の 油 圧 DDT を 採 用 した 大 型 風 力 発 電 設 備 による 試 験 運 転 を 開 始 した。そして、<br />
2014 年 以 降 、 英 国 Hunterston において、ロータ 直 径 167m の 7MW 陸 上 プロトタイプ 機 によ<br />
る 実 証 試 験 の 実 施 を 予 定 している。7MW 洋 上 風 車 のブレードは 1 翼 でも 80m を 超 えるため、<br />
風 によるたわみも 大 きくなり、 通 常 の 風 車 に 使 用 している GFRP(ガラス 繊 維 強 化 プラスチッ<br />
ク)では、 強 度 的 に 耐 えられないため、 軽 量 で 高 強 度 なブレード 材 料 として CFRP( 炭 素 繊 維<br />
強 化 プラスチック)を 適 しているが、 一 般 的 に CFRP は GFRP の 10 倍 の 価 格 であるため 大 量<br />
に 使 用 することが 困 難 であり、ブレードの 一 部 分 に CFRP を 使 用 する 等 の 工 夫 を 施 している。<br />
48<br />
三 菱 重 工 業 プレスリリース(2013 年 9 月 27 日 発 行 第 5427 号 )<br />
http://www.mhi.co.jp/news/story/1309275427.html<br />
49<br />
Digital Displacement Transmission(DDT):デジタル 制 御 可 変 容 積 式 動 力 伝 達 機 構<br />
50<br />
平 成 23~26 年 度 「 超 大 型 風 力 発 電 システム 技 術 研 究 開 発 」NEDO 助 成 事 業<br />
78
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
図 3-69 2.4MW 級 陸 上 試 験 機 のナセル( 左 上 )、7MW 陸 上 試 験 機 のナセル( 右 上 )<br />
7MW 洋 上 風 車 のイメージ 図 ( 下 )<br />
79
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
2 ドライブトレインの 動 向<br />
洋 上 風 力 においては、 事 業 採 算 性 確 保 のために、 作 業 船 のレンタル 料 や、 故 障 機 器 の 修 理 お<br />
よびメンテナンススタッフ 動 員 などによるコストの 削 減 が 重 要 である。3.4.1 で 述 べたとおり、<br />
歯 車 とベアリングの 複 雑 な 相 互 作 用 で 動 く 従 来 の 増 速 機 は、 定 期 的 なメンテナンスを 必 要 とし、<br />
特 に 高 速 状 態 では 不 具 合 が 起 こりやすいことから、 増 速 機 を 用 いないダイレクトドライブ 方 式<br />
を 採 用 するメーカーが 増 加 している。<br />
図 3-70 に 近 年 の 洋 上 風 力 におけるドライブトレインの 動 向 を 示 す。2010 年 までにかけては、<br />
増 速 機 を 用 いた 機 種 がほとんどであったが、2010 年 以 降 、ダイレクトドライブ 方 式 を 用 いた 機<br />
種 が 増 加 している。また、ダイレクトドライブ 方 式 と 増 速 機 方 式 を 組 み 合 わせたハイブリッド<br />
方 式 も 開 発 されている。 一 方 で、 増 速 機 方 式 を 採 用 し、 増 速 機 の 信 頼 性 向 上 を 志 向 するメーカ<br />
ーも 存 在 しており、ダイレクトドライブ 方 式 と 増 速 機 方 式 のいずれを 採 用 するかは、メーカー<br />
各 社 の 戦 略 によって 異 なっている。<br />
図 3-70 ドライブトレインの 近 年 の 動 向<br />
出 典 :“WIND IN OUR SAILS” (2011, EWEA)より NEDO 作 成<br />
80
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(2) 基 礎 に 係 る 技 術 開 発 動 向<br />
図 3-71 に 洋 上 風 力 発 電 の 形 態 と 水 深 の 関 係 を 示 す。 洋 上 風 力 は、 海 底 に 直 接 基 礎 を 設 置 する<br />
着 床 式 と、 浮 体 を 基 礎 として 係 留 などで 固 定 する 浮 体 式 に 分 類 される。<br />
陸 上 風 車 洋 上 風 車 ( 着 床 式 )<br />
洋 上 風 車 ( 着 床 式 ) 洋 上 風 車 ( 浮 体 式 )<br />
水 深 0 m~30m 程 度<br />
水 深 30m~60m 程 度<br />
水 深 60m 以 上<br />
図 3-71 洋 上 風 力 発 電 の 形 態 と 水 深 の 関 係<br />
出 典 :“Dynamics Modeling and Loads Analysis of an Offshore Floating Wind Turbine” (2007, NREL)<br />
着 床 式 の 一 般 的 な 支 持 構 造 を 図 3-72 に 示 す。 欧 州 で 導 入 されている 洋 上 風 力 発 電 システムは、<br />
ほとんどが 30m 以 下 の 浅 海 域 に 設 置 されている 着 床 式 である。 基 礎 構 造 は、 海 底 に 1 本 の 杭 を 打<br />
ち 込 むモノパイル 式 や、コンクリートのケーソンを 基 礎 とする 重 力 式 が 主 に 用 いられている。こ<br />
れらの 方 式 は、 水 深 20~30m までの 海 域 が 設 置 の 目 安 となるが、それより 深 くなると、 深 さに 応<br />
じてコスト 高 となることに 加 え、 広 く 採 用 されているモノパイル 式 の 場 合 には、 強 度 の 維 持 が 取<br />
りにくくなり、 施 工 自 体 も 難 しくなる。 代 わりにトライポッドと 呼 ばれる 三 脚 式 、あるいは 格 子<br />
梁 (ジャケット 式 )などの 立 体 骨 組 構 造 が 有 利 となる。 例 として、スコットランド 近 くの 北 海 に<br />
あるベアトリスウィンドファーム 実 証 プロジェクトでは、 水 深 45m において 2 基 の 5MW 風 車 が<br />
ジャケット 構 造 物 の 上 に 設 置 されている。しかし、 水 深 が 50m 程 度 にまで 達 すると、 浮 体 式 の 支<br />
持 構 造 のほうがより 経 済 的 とされている。<br />
81
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
モノパイル 式 (Monopile)<br />
重 力 式 (Gravity-based Structure: GBS)<br />
トライポッド 式 (Tripod) ジャケット 式 (Jacket) トリパイル 式 (Tri-pile)<br />
出 典 :“Wind in our Sails” (2011, EWEA)<br />
図 3-72 着 床 式 洋 上 風 力 の 一 般 的 な 支 持 構 造<br />
浮 体 式 は、 係 留 システムやタンク、バラストによってさまざまな 支 持 構 造 が 考 えられる。 浮 体<br />
式 で 提 案 されている 主 要 な 支 持 構 造 を 図 3-73 に 示 す。スパー 式 は、バラストを 使 用 して 浮 力 の<br />
中 心 よりも 重 心 を 低 くすることによって 安 定 させる 方 式 である。また、 張 力 脚 式 (tension leg<br />
platform:TLP)は、タンク 中 の 余 剰 な 浮 力 によってもたらされる 係 留 ケーブルの 張 力 を 利 用 し<br />
て 安 定 させる 方 式 である。 現 在 はスパー 式 とセミサブ 式 のみがフルスケール 機 で 採 用 されている。<br />
スパー 式 (Spar) 張 力 脚 式 (TLP) ジャケット 式 (Jacket)<br />
出 典 :“Wind in our Sails” (2011, EWEA)<br />
図 3-73 浮 体 式 洋 上 風 力 の 支 持 構 造<br />
82
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
(3) 系 統 連 系 に 係 る 技 術 開 発 動 向<br />
洋 上 風 力 の 系 統 連 系 に 当 たっては、 海 底 ケーブルに 加 え、 洋 上 変 電 所 や、 高 圧 直 流 送 電 (HVDC)<br />
の 導 入 が 重 要 となる。<br />
洋 上 風 力 のコスト 構 造 の 中 で、ケーブルおよび 敷 設 に 掛 かるコストの 割 合 は 大 きく、 量 産 化 に<br />
よる 海 底 ケーブル 自 体 の 低 コスト 化 や、 低 コスト 敷 設 技 術 が 必 要 とされている。また、 洋 上 ウィ<br />
ンドファームの 不 具 合 の 原 因 は 海 底 ケーブルの 損 傷 などに 起 因 するものが 多 いため、 海 底 ケーブ<br />
ルの 保 護 も 含 め、 適 切 な 敷 設 工 事 を 実 施 する 必 要 がある。<br />
また、 大 規 模 かつ 遠 距 離 に 位 置 するウィンドファームは、 高 圧 ケーブル(120~150kV)の 使 用<br />
による 海 底 ケーブル 本 数 の 削 減 がコスト 的 に 有 利 であることから、 洋 上 変 電 所 を 建 設 する 事 例 が<br />
増 えている。ただし、 洋 上 変 電 所 設 備 の 不 具 合 による 送 電 停 止 のリスクがあるため、 変 圧 器 およ<br />
び 陸 上 への 送 電 線 を 2 セット 装 備 するのが 一 般 的 となっている。 洋 上 変 電 所 の 建 設 は、 風 車 より<br />
も 大 型 かつ 高 価 な 作 業 船 を 要 するため、 上 部 をモジュール 化 するなどの 試 みが 進 められている。<br />
送 電 方 法 についても、 大 規 模 かつ 遠 距 離 に 位 置 するウィンドファームについては、 送 電 損 失 の<br />
少 ない 高 圧 直 流 送 電 (HVDC)が 有 利 であり、ドイツなどの 複 数 の 洋 上 ウィンドファームで 使 用<br />
されている。 目 安 として、ウィンドファームの 容 量 が 500MW 以 上 、ケーブルの 長 さが 100km 以<br />
上 の 場 合 に、コスト 的 に 有 利 とされている 51 。HVDC を 利 用 する 場 合 、 風 力 発 電 機 からの 交 流 電<br />
流 を 洋 上 変 電 所 で 昇 圧 した 後 、 直 流 に 変 換 して 陸 上 に 送 電 し、 陸 上 の 変 電 所 で 交 流 に 戻 して 送 電<br />
系 統 に 接 続 する。したがって、 洋 上 変 電 所 内 に AC/DC 変 換 器 を 具 備 する 必 要 がある。HVDC<br />
の 採 用 事 例 はあまり 多 くないものの、 洋 上 ウィンドファーム 間 のネットワーク 化 や、 風 車 の 直 流<br />
発 電 機 の 採 用 などを 可 能 にする 技 術 であり、 今 後 の 利 用 拡 大 が 期 待 される。<br />
図 3-74 洋 上 変 電 所<br />
出 典 :London Array 社 ホームページ<br />
51<br />
“Wind in our Sails” (2011, EWEA)<br />
83
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.5 今 後 に 向 けた 課 題 と 克 服 方 策<br />
世 界 の 風 力 市 場 が 拡 大 し、 陸 上 から 洋 上 までそのビジネスチャンスが 広 がる 中 、 日 本 企 業 の 世<br />
界 市 場 シェアを 拡 大 するためには、 海 外 企 業 に 勝 る 性 能 およびコスト 競 争 力 を 持 つ 風 力 発 電 機 の<br />
開 発 が 必 要 となる。<br />
我 が 国 においては、 山 岳 地 形 や 複 雑 な 風 況 が 導 入 障 壁 となっているが、 日 本 の 厳 しい 環 境 下 で<br />
故 障 なく 運 転 可 能 な 風 力 発 電 機 や 運 用 技 術 は、 陸 域 における 適 地 が 減 少 している 世 界 市 場 におい<br />
ても 競 争 力 を 持 ち 得 るものと 考 えられる。そのため、 風 力 発 電 を 取 りまくさまざまな 立 地 制 約 を<br />
克 服 する 技 術 的 対 策 を 推 進 し、 国 内 導 入 量 を 拡 大 することによって、 国 内 企 業 の 技 術 をより 高 め、<br />
実 績 と 信 頼 を 積 み 上 げることが 不 可 欠 である。<br />
図 3-75 風 力 発 電 所 の 開 発 プロセスの 概 略<br />
我 が 国 において、 今 後 、 陸 上 適 地 の 減 少 が 想 定 されるとともに、 洋 上 風 力 発 電 の 新 たな 開 発<br />
を 展 開 する 上 で、 特 に 重 要 となる 発 電 所 の 候 補 サイトや 海 域 の 周 辺 地 域 の 方 々、 利 害 関 係 者 に 当<br />
たる 産 業 関 係 者 との 協 力 ・ 協 調 を 醸 成 する 必 要 がある。そのため、 開 発 初 期 段 階 から 着 手 する 配<br />
慮 書 や 方 法 書 などの 環 境 影 響 評 価 に 係 る 手 続 きを 適 切 に 進 めるとともに、それらの 事 例 を 積 み 重<br />
ね、 円 滑 な 手 続 きを 進 めることが 風 力 発 電 のさらなる 導 入 拡 大 に 寄 与 する。<br />
さらに、 国 内 市 場 で 技 術 力 を 培 うとともに、 国 際 市 場 の 獲 得 や 国 際 標 準 への 貢 献 などが 期 待 さ<br />
れる。 特 に、 各 国 で 大 型 風 車 の 研 究 開 発 、 実 証 研 究 が 進 められており、 塩 害 や 波 浪 などの 厳 しい<br />
84
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
環 境 に 耐 え 得 る 高 性 能 ・ 高 信 頼 性 が 求 められる 洋 上 風 力 発 電 市 場 は、 技 術 競 争 力 を 持 つ 我 が 国 企<br />
業 にとって 大 きな 市 場 ポテンシャルを 秘 めており、 洋 上 風 車 、 洋 上 風 況 観 測 システム、 洋 上 変 電<br />
設 備 、 海 底 ケーブル、 施 工 や 運 転 保 守 に 利 用 する 船 舶 などへの 市 場 展 開 を 国 内 外 で 進 めるととも<br />
に、 我 が 国 における 洋 上 風 力 発 電 の 導 入 普 及 に 向 けて、 国 や 自 治 体 の 政 策 、 地 域 協 調 などを 総 合<br />
的 に 推 進 し、 洋 上 風 力 発 電 市 場 を 創 出 することが 求 められている。<br />
3.5.1 発 電 コストの 低 減<br />
風 力 発 電 は、 再 生 可 能 エネルギーの 中 でも 成 熟 した 技 術 体 系 と 豊 富 な 実 績 を 持 ち、 発 電 コスト<br />
が 比 較 的 低 いことから、 世 界 的 に 導 入 普 及 が 進 んでおり、 風 車 部 品 などについてはグローバルな<br />
サプライチェーンネットワークが 構 築 されている。 近 年 になり、 世 界 の 風 車 市 場 シェアは 大 きく<br />
様 変 わりし、これまで 市 場 を 寡 占 してきた 欧 米 メーカーが 相 対 的 にシェアを 落 とし、 中 国 メーカ<br />
ーが 上 位 に 進 出 している。 背 景 には、 中 国 国 内 での 活 発 な 風 力 発 電 所 の 建 設 があるが、 今 後 、 日<br />
本 を 含 む 他 国 の 開 発 案 件 においても、コスト 競 争 力 を 有 する 中 国 製 の 風 車 が 採 用 される 可 能 性 が<br />
ある。<br />
風 力 発 電 は 今 後 も 比 較 的 、 設 置 しやすい 平 野 部 を 中 心 に 展 開 されることが 予 想 されるが、この<br />
ような 適 地 の 減 少 に 伴 い、 山 間 部 へ、あるいは、 洋 上 へと 進 出 していくことが 考 えられる。この<br />
ような 場 所 への 展 開 は 発 電 コストの 上 昇 につながる 恐 れがあるため、システム 価 格 や 運 転 保 守 費<br />
のさらなる 低 コスト 化 が 欠 かせない。 発 電 コストの 低 減 には、 開 発 費 および 運 転 保 守 などに 掛 か<br />
るコストを 低 減 することと、 稼 動 率 や 設 備 利 用 率 を 上 げ、 十 分 な 発 電 量 を 得 ることが 重 要 である。<br />
これまで 風 車 は 数 kW から 数 百 kW、そして 陸 上 では 3MW 級 の 風 車 まで 開 発 されており、 大 規<br />
模 なウィンドファームの 建 設 が 世 界 中 で 進 み、 他 の 再 生 可 能 エネルギーと 比 較 して 十 分 、 競 争 力<br />
を 持 つ 発 電 コストを 実 現 している。 一 方 、 山 岳 部 や 我 が 国 特 有 の 複 雑 地 形 を 有 する 地 域 では、 建<br />
設 に 掛 かるコストや 運 転 保 守 に 掛 かるコストが 相 対 的 に 高 いのも 事 実 である。また、そのような<br />
地 形 の 影 響 を 受 けやすい 地 域 では、 乱 流 などの 影 響 を 考 慮 した 風 車 の 設 計 や 運 転 保 守 を 行 う 必 要<br />
がある。さらに、 風 車 の 事 故 故 障 が 発 生 した 場 合 には、 代 替 部 品 や 補 修 の 際 に 必 要 となる 機 材 な<br />
どのコスト、 風 車 停 止 による 稼 動 率 や 設 備 利 用 率 の 低 下 が 発 生 する。そのため、 性 能 や 信 頼 性 が<br />
高 く、 事 故 故 障 のリスクの 低 い 部 品 やコンポーネントを 選 定 し、 風 車 に 搭 載 するとともに、 適 切<br />
な 運 転 保 守 の 実 施 、さらに、それら 風 車 部 品 やコンポーネント、 運 転 保 守 技 術 の 高 度 化 が 不 可 欠<br />
である。<br />
また、 洋 上 風 力 発 電 については、 風 車 を 大 型 化 することによって、 基 礎 構 造 物 や 建 設 に 掛 かる<br />
コストを 相 対 的 に 低 減 する 取 り 組 みが 進 められている。 陸 上 風 力 における 最 大 級 の 風 車 である<br />
3MW と 比 較 し、 洋 上 では 既 に 3~5MW の 洋 上 風 車 が 建 設 されており、 今 後 さらなる 大 型 化 とし<br />
て 6~7MW、 先 行 研 究 では 10~20MW の 洋 上 風 車 などが 検 討 されている。 洋 上 における 運 転 保 守<br />
は、 陸 上 と 異 なり、 作 業 員 の 交 通 船 や 作 業 船 などが 必 要 で、これらは 陸 上 に 比 べ 発 電 コストを 押<br />
し 上 げる 要 因 になっている。そのため、 欧 州 で 活 発 な 開 発 が 進 められている、 洋 上 風 車 の 物 流 や<br />
風 車 基 礎 の 製 作 などに 必 要 となる 港 湾 や 船 舶 などのインフラの 整 備 、 船 舶 から 洋 上 風 車 への 作 業<br />
員 の 安 全 な 乗 り 降 りを 可 能 とする 交 通 船 や 作 業 船 などを 手 配 できる 環 境 整 備 が 今 後 、ますます 重<br />
要 になってくる。さらに、 洋 上 風 車 の 状 態 を 遠 隔 で 監 視 するシステムなどを 風 車 に 組 み 込 み、 風<br />
85
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
車 の 各 パーツの 健 全 性 を 確 認 するとともに、 定 期 的 な 点 検 や 計 画 的 な 補 修 を 推 進 し、 運 転 保 守 に<br />
掛 かる 費 用 を 抑 制 する 取 り 組 みが 求 められている。<br />
3.5.2 設 置 可 能 地 域 の 拡 大<br />
陸 上 風 力 の 導 入 量 拡 大 に 向 けては、 山 間 部 や 洋 上 、あるいはこれまで 風 況 が 悪 いことから 立 地<br />
を 見 送 っていた 弱 風 地 域 への 展 開 、さらには、これまで 小 型 風 力 発 電 が 導 入 されていた 地 域 ・ 分<br />
野 への 設 置 が 必 要 となる。そのためには 複 雑 な 風 況 、 台 風 、 洋 上 の 環 境 に 対 応 した 風 力 発 電 機 の<br />
開 発 によって、 設 置 可 能 域 を 拡 大 することが 重 要 となる。このような 地 域 への 設 置 には、 山 間 部<br />
や 複 雑 地 形 の 影 響 による 乱 流 特 性 や、 台 風 による 強 風 の 影 響 など、 地 域 ・ 場 所 特 有 の 自 然 条 件 へ<br />
の 対 応 が 求 められる。また、 設 置 可 能 域 の 事 業 性 を 評 価 するためには、 複 雑 地 形 における 高 精 度<br />
な 風 況 予 測 モデルの 確 立 、 台 風 予 測 の 高 度 化 なども 必 要 となる。そして、 洋 上 風 力 発 電 について<br />
は、 着 床 式 洋 上 風 力 発 電 を 着 実 に 推 進 するとともに、さらに 深 い 水 深 の 海 域 にも 対 応 可 能 な 浮 体<br />
式 洋 上 風 力 発 電 に 係 る 技 術 の 確 立 も 不 可 欠 である。<br />
海 外 においても、 陸 上 の 適 地 が 減 少 するなど、 厳 しい 環 境 下 に 対 応 可 能 な 風 力 発 電 機 へのニー<br />
ズが 高 まる 可 能 性 が 高 く、これまで 我 が 国 の 風 力 発 電 の 発 展 の 阻 害 と 考 えられてきた 自 然 条 件 を<br />
克 服 して、 我 が 国 固 有 の 技 術 力 を 高 め、 海 外 に 展 開 することが 設 置 可 能 地 域 の 拡 大 に 寄 与 すると<br />
ともに、 我 が 国 企 業 の 国 際 競 争 力 の 強 化 にもつながる。<br />
3.5.3 洋 上 風 力 発 電 の 技 術 開 発 の 推 進<br />
広 大 な 排 他 的 経 済 水 域 を 有 する 我 が 国 にとって、 沖 合 で 展 開 できる 洋 上 風 力 発 電 は、 再 生 可 能<br />
エネルギーの 中 でも 際 立 って 大 きな 可 能 性 を 有 している。 着 床 式 洋 上 風 力 発 電 については、 既 に<br />
欧 州 で 導 入 が 進 んでいる。 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 については、 世 界 的 に 実 証 研 究 の 段 階 であり、 造<br />
船 技 術 の 応 用 など、 我 が 国 の 技 術 優 位 性 を 発 揮 できる 可 能 性 を 有 している。<br />
洋 上 風 力 発 電 は 近 年 、 世 界 的 に 水 深 が 深 く、 離 岸 距 離 の 遠 い 海 域 に 建 設 される 傾 向 にあり、 事<br />
業 採 算 性 の 確 保 に 向 けて、 風 車 の 大 型 化 が 進 められている。 我 が 国 においても 世 界 最 大 級 の 7MW<br />
級 の 大 型 風 車 の 開 発 を 進 めており、ドライブトレイン、 長 翼 ブレードなど、 風 車 の 重 要 コンポー<br />
ネントの 性 能 や 信 頼 性 の 試 験 を 工 場 内 で 実 施 するとともに、フルスケール 機 による 発 電 試 験 や 遠<br />
隔 監 視 技 術 の 確 認 などを 予 定 している。さらに、 洋 上 風 力 発 電 は 水 深 や 海 底 地 質 などに 対 応 する<br />
ために、 風 車 の 基 礎 構 造 物 を 十 分 、 検 討 する 必 要 があり、 設 計 、 製 作 、 施 工 、 運 転 保 守 、 撤 去 な<br />
どを 総 合 的 に 考 慮 する 必 要 がある。また、 洋 上 風 力 発 電 は 投 資 額 が 大 きいため、 洋 上 に 風 況 観 測<br />
タワーを 設 置 し、 長 期 間 の 風 況 を 観 測 した 上 で、 風 車 の 選 定 や 事 業 性 の 評 価 を 行 っているが、 我<br />
が 国 のように 比 較 的 、 急 峻 な 海 底 地 形 を 有 する 海 域 においては、 洋 上 風 況 観 測 タワーの 建 設 費 用<br />
が 高 くなるため、 比 較 的 安 価 で、 精 度 良 く 風 況 観 測 可 能 な 洋 上 風 況 観 測 技 術 の 確 立 が 望 まれてい<br />
る。<br />
また、2012 年 7 月 から、 風 力 発 電 を 含 む 再 生 可 能 エネルギーの 固 定 価 格 買 取 制 度 が 開 始 され<br />
たものの、 洋 上 風 力 発 電 については、まだ 国 内 における 十 分 な 実 績 がないことなどから、 諸 外 国<br />
のように 洋 上 風 力 発 電 に 対 する 買 取 価 格 は 設 定 されていない。そのため、 銚 子 沖 や 北 九 州 市 沖 で<br />
推 進 している 実 証 研 究 などから 得 られる 洋 上 風 況 や 発 電 、 運 転 保 守 に 係 るデータなどを 基 に、 洋<br />
86
上 風 力 発 電 の 買 取 価 格 設 定 に 向 けた 根 拠 となるデータの 整 備 が 求 められている。<br />
NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
3.5.4 系 統 連 系 対 策<br />
風 力 発 電 は 文 字 どおり、 風 をエネルギー 変 換 して 発 電 するシステムである。 風 は 必 ずしも 一 様<br />
ではなく、 変 動 するため、 風 力 発 電 による 電 力 は 出 力 、 周 波 数 ともに 不 安 定 であるのは 事 実 であ<br />
る。そのため、 風 力 発 電 をはじめとする 再 生 可 能 エネルギーの 普 及 が 進 展 するにつれ、 系 統 にお<br />
ける 電 圧 、 周 波 数 などの 電 力 品 質 に 与 える 影 響 が 懸 念 されている。<br />
系 統 連 系 対 策 として 電 力 を 安 定 させるアプローチには、 系 統 側 で 行 うものと、 発 電 側 で 行 うも<br />
のがあり、 両 者 が 連 携 して 対 策 を 実 施 することが 重 要 である。3.4.1(4)で 紹 介 したとおり、スペイ<br />
ンのように 高 度 な 制 御 システムを 用 いて、 発 電 量 に 占 める 風 力 発 電 の 比 率 を 最 大 40%まで 高 めて<br />
いる 例 もある。 変 動 対 策 として 蓄 電 池 の 活 用 がオプションの 一 つに 挙 げられるが、 現 状 では 蓄 電<br />
池 の 価 格 は 高 く、さらなるコスト 低 減 などが 必 要 である。そのため、 風 力 発 電 をはじめとする 再<br />
生 可 能 エネルギーのさらなる 導 入 に 向 けて、 発 電 量 予 測 の 高 度 化 や 系 統 の 整 備 ・ 強 化 、さらには<br />
出 力 ・ 周 波 数 変 動 対 策 を 発 電 所 内 または 系 統 側 で 実 施 するなど、 狭 域 ・ 広 域 による 制 御 を 検 討 す<br />
る 必 要 がある。<br />
3.5.5 環 境 調 和 と 地 域 協 調<br />
2011 年 3 月 の 環 境 影 響 評 価 法 の 改 正 によって、 計 画 段 階 における 環 境 配 慮 書 手 続 きや 環 境 保 全<br />
措 置 等 の 結 果 の 公 表 等 の 手 続 きなどが 新 設 され、2013 年 4 月 1 日 には「 発 電 所 の 設 置 又 は 変 更 の<br />
工 事 の 事 業 に 係 る 計 画 段 階 配 慮 事 項 の 選 定 並 びに 当 該 環 境 影 響 評 価 の 項 目 並 びに 当 該 項 目 に 係 る<br />
調 査 、 予 測 及 び 評 価 を 合 理 的 に 行 うための 手 法 を 選 定 するための 指 針 並 びに、 環 境 の 保 全 のため<br />
の 措 置 に 関 する 指 針 等 を 定 める 省 令 ( 平 成 10 年 通 商 産 業 省 令 第 54 号 )」が 施 行 された。 これ<br />
まで、 風 力 発 電 の 環 境 影 響 評 価 は、 地 方 自 治 体 の 条 例 や 事 業 者 による 自 主 アセスなどが 進 められ<br />
てきたが、 発 電 所 建 設 後 には、 騒 音 ・ 低 周 波 音 、 景 観 、 土 地 改 変 、バードストライクなどに 関 す<br />
る 諸 課 題 を 有 する 発 電 所 も 少 なからず 存 在 していた。そのため、 今 後 、 風 力 発 電 所 に 係 る 環 境 影<br />
響 評 価 を 適 切 に 実 施 することが、 風 力 発 電 の 健 全 な 導 入 普 及 に 望 まれる。さらに、 洋 上 風 力 発 電<br />
の 導 入 に 当 たっては、その 地 域 や 海 域 の 状 況 に 応 じた 総 合 的 な 観 点 から 協 議 するとともに、 港 湾<br />
や 航 行 、 漁 業 など 他 の 海 域 利 用 者 との 協 調 を 醸 成 することが 必 要 である。<br />
3.5.6 まとめ<br />
風 力 発 電 は 世 界 的 に 導 入 普 及 が 進 み、2012 年 末 には 全 世 界 で 約 282GW 導 入 された。 洋 上 風 力<br />
発 電 については、 欧 州 を 中 心 に 約 5.4GW 導 入 されており、 風 力 発 電 は 再 生 可 能 エネルギーの 中 心<br />
的 な 役 割 を 占 めている。そして、 我 が 国 においては、 陸 上 風 力 発 電 を 中 心 に、2012 年 末 には 約<br />
2.6GW 導 入 されており、 現 在 、NEDO による 着 床 式 洋 上 風 力 発 電 に 関 する 実 証 研 究 、 環 境 省 や<br />
経 済 産 業 省 による 浮 体 式 洋 上 風 力 発 電 に 関 する 実 証 研 究 が 進 められている。そのため、 従 来 の 陸<br />
上 風 力 発 電 のみならず、 今 後 、 我 が 国 においても 洋 上 風 力 発 電 の 導 入 普 及 が 期 待 されている。<br />
陸 上 風 力 発 電 は、 成 熟 した 技 術 体 系 と 豊 富 な 実 績 を 有 しており、 他 の 再 生 可 能 エネルギーと 比<br />
較 し、 発 電 コストが 低 い 利 点 がある。 一 方 、 陸 上 の 適 地 の 減 少 など 諸 問 題 を 有 しており、 世 界 的<br />
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NEDO 再 生 可 能 エネルギー 技 術 白 書<br />
第 3 章 風 力 発 電<br />
にも 山 岳 部 や 複 雑 地 形 など、 開 発 が 比 較 的 、 困 難 な 地 域 における 陸 上 風 力 発 電 の 導 入 が 予 想 され<br />
る。そのため、 我 が 国 特 有 の 複 雑 地 形 におけるこれまでの 導 入 実 績 を 世 界 的 に 展 開 できる 可 能 性<br />
を 有 しているともいえる。<br />
我 が 国 の 風 力 発 電 の 開 発 は、 台 風 や 地 震 、 複 雑 地 形 の 影 響 を 受 けた 風 による 乱 流 など、 風 車 の<br />
設 計 、 運 転 保 守 などにおいて、 十 分 な 検 証 や 適 切 な 対 応 が 求 められる。そのため、 我 が 国 の 風 力<br />
発 電 の 平 均 的 な 設 備 利 用 率 は 20% 弱 と、 諸 外 国 と 比 較 してそれほど 高 いものではない。したがっ<br />
て、 今 後 さらなる 導 入 拡 大 を 進 めるためには、より 一 層 の 発 電 コストの 低 減 が 重 要 である。 特 に、<br />
風 車 の 事 故 故 障 による 風 車 の 停 止 時 間 の 低 減 に 向 けて、 風 車 の 部 品 やコンポーネントの 性 能 ・ 信<br />
頼 性 の 高 度 化 による 事 故 故 障 リスクの 低 減 とともに、 風 車 の 稼 動 状 態 のモニタリングなどによっ<br />
て、 部 品 やコンポーネントの 疲 労 や 寿 命 を 予 測 し、 風 車 の 事 故 故 障 を 未 然 に 防 ぎ、 適 切 な 運 転 保<br />
守 を 行 う 技 術 の 確 立 などが 求 められている。 今 後 、NEDO では、これらの 技 術 開 発 に 取 り 組 み、<br />
陸 上 風 力 発 電 の 発 電 コストを 低 減 し、 再 生 可 能 エネルギーの 導 入 に 伴 う 電 力 料 金 の 国 民 負 担 を 低<br />
減 するとともに、さらなる 再 生 可 能 エネルギーの 導 入 普 及 を 推 進 する。<br />
次 に、 我 が 国 の 洋 上 風 力 発 電 の 開 発 については、これまで 港 湾 や 海 岸 線 沿 いに 洋 上 風 力 発 電 所<br />
が 建 設 された 実 績 はあるものの、 欧 州 を 中 心 に 展 開 されている 沖 合 における 洋 上 風 力 発 電 はまだ<br />
事 業 化 されていない。 我 が 国 初 の 沖 合 における 本 格 的 な 洋 上 風 力 発 電 として、NEDO の 洋 上 風 力<br />
発 電 システム 実 証 研 究 において、2012 年 度 、 千 葉 県 銚 子 沖 に 2.4MW の 洋 上 風 車 の 建 設 を 完 了 し、<br />
実 証 研 究 を 開 始 したとともに、 福 岡 県 北 九 州 市 沖 に 2.0MW の 洋 上 風 車 の 建 設 を 完 了 した。NEDO<br />
では 2013~2014 年 度 、 発 電 量 評 価 や 運 転 保 守 技 術 を 検 討 するとともに、 洋 上 風 車 に 隣 接 して 建<br />
設 した、 洋 上 風 況 観 測 タワーによる 洋 上 風 況 観 測 や 海 象 計 測 などを 実 施 し、 太 平 洋 側 および 日 本<br />
海 側 における 風 況 特 性 の 違 いなどを 明 らかにする。また、 洋 上 風 車 や 洋 上 風 況 観 測 タワーの 設 置<br />
前 後 における 環 境 調 査 などの 定 量 的 なデータを 踏 まえ、 環 境 影 響 評 価 を 行 い、 周 辺 環 境 に 与 える<br />
影 響 などを 検 証 する。さらに、 欧 州 を 中 心 に 洋 上 風 車 の 大 型 化 が 顕 著 であるため、 現 在 NEDO が<br />
支 援 する 世 界 最 大 級 の 7MW 超 大 型 洋 上 風 車 の 開 発 を 着 実 に 推 進 し、 国 内 外 に 展 開 することで、<br />
我 が 国 企 業 の 国 際 競 争 力 を 強 化 する。<br />
浮 体 式 風 力 発 電 については、 環 境 省 の 洋 上 風 力 発 電 実 証 事 業 において、2012 年 度 、100kW 級<br />
の 浮 体 式 洋 上 風 車 が 長 崎 県 五 島 市 椛 島 沖 に 建 設 され、2013 年 10 月 には 2MW クラスの 浮 体 式 洋<br />
上 風 車 も 運 転 を 開 始 し、 各 種 データが 蓄 積 されており、2013~2015 年 度 には 2MW 級 の 浮 体 式 洋<br />
上 風 車 の 実 証 研 究 が 予 定 されている。また、 経 済 産 業 省 の 浮 体 式 洋 上 ウィンドファーム 実 証 研 究<br />
事 業 においては、2013 年 度 に 2MW 級 の 洋 上 風 車 の 実 証 研 究 を 開 始 した。 今 後 、2015 年 度 まで<br />
に 世 界 最 大 級 の 7MW 級 の 洋 上 風 車 の 実 証 研 究 を 行 う 予 定 である。 今 後 、NEDO では、 千 葉 県 銚<br />
子 市 沖 や 福 岡 県 北 九 州 市 沖 の 実 証 研 究 から 得 られるデータや 知 見 をガイドラインなどに 取 りまと<br />
め、 洋 上 風 力 発 電 を 目 指 す 事 業 者 などの 産 業 界 、 関 係 省 庁 や 地 方 自 治 体 などに 成 果 を 普 及 し、 洋<br />
上 風 力 発 電 の 基 盤 を 構 築 する。そのために、 我 が 国 特 有 の 気 象 ・ 海 象 条 件 などを 踏 まえ、 洋 上 風<br />
車 や 洋 上 風 況 観 測 タワーの 設 計 ・ 施 工 や 運 転 保 守 など、 技 術 的 な 検 証 を 十 分 に 行 うとともに、 発<br />
電 コストを 検 証 し、 洋 上 風 力 発 電 の 固 定 価 格 買 取 制 度 の 買 取 価 格 などの 検 討 に 資 する 基 礎 データ<br />
などを 取 りまとめる。さらに、 我 が 国 における 洋 上 ウィンドファームの 実 現 に 向 けて、 簡 易 に 洋<br />
上 風 況 を 観 測 することができる 技 術 の 開 発 や 洋 上 ウィンドファームの 開 発 支 援 、 海 域 を 利 用 する<br />
関 係 者 や 地 域 の 方 々との 協 調 などを 総 合 的 に 実 施 する。<br />
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