構造ヘルスモニタリング用ワイヤレスセンサに関する研究 - 日本地震工学会

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構造ヘルスモニタリング用ワイヤレスセンサに関する研究 - 日本地震工学会

日 本 地 震 工 学 会 論 文 集 第 3 巻 、 第 4 号 、2003

構 造 ヘルスモニタリング 用 ワイヤレスセンサに 関 する 研 究

長 井 望 1) 、 三 田 彰 2) 、 矢 向 高 弘 3) 、 佐 藤 忠 信

4)

1) 正 会 員 慶 應 義 塾 大 学 大 学 院 理 工 学 研 究 科 、 大 学 院 生

e-mail : nnozomu@2001.jukuin.keio.ac.jp

2) 正 会 員 慶 應 義 塾 大 学 理 工 学 部 システムデザイン 工 学 科 、 助 教 授 Ph.D.

e-mail : mita@sd.keio.ac.jp

3) 慶 應 義 塾 大 学 理 工 学 部 システムデザイン 工 学 科 、 専 任 講 師 工 博

e-mail : yakoh@sd.keio.ac.jp

4) 正 会 員 京 都 大 学 防 災 研 究 所 、 教 授 工 博

e-mail : sato@catfish.dpri.kyoto-u.ac.jp

要 約

建 築 ・ 土 木 構 造 物 の 損 傷 リスクの 定 量 化 を 実 現 する 手 法 として、 構 造 ヘルスモニタリングが 注 目

されている。しかしながら、ワイヤ 敷 設 に 費 やすコストが 大 型 構 造 物 へモニタリングシステムを

導 入 する 障 壁 となっていた。 本 研 究 では、ワイヤ 敷 設 コスト 削 減 のため、TCP/IP と 無 線 通 信 を

用 いたワイヤレスセンサネットワークシステムを 提 案 し、その 理 論 解 析 、プロトタイプ 製 作 、 評

価 試 験 を 行 った。こうした 検 討 の 結 果 、 本 論 文 で 提 案 したセンサネットワークは、 目 標 として 設

定 した 性 能 を 満 足 し、ワイヤ 敷 設 コストと、 敷 設 に 要 する 時 間 を 大 幅 に 削 減 することが 可 能 で、

かつリアルタイムな 損 傷 検 知 に 必 要 とされる 高 い 同 期 性 能 を 確 保 できることが 確 認 された。

キーワード : 構 造 ヘルスモニタリング、センサネットワーク、ワイヤレス、 時 刻 同 期

1. はじめに

建 築 ・ 土 木 構 造 物 へ 構 造 ヘルスモニタリングシステムを 適 用 する 場 合 、 地 震 動 や 風 荷 重 など、 環 境 からの 外

乱 に 対 する 構 造 物 の 応 答 を 計 測 するために、 多 点 での 計 測 が 可 能 なセンサシステムが 必 要 である。 強 震 動 の

計 測 は 数 多 く 行 われ、 構 造 物 の 性 能 確 認 や 現 象 把 握 に 活 用 されてきたが、コストの 問 題 から 新 たな 設 置 は 減

少 している。しかし、 健 全 性 診 断 や 劣 化 予 測 のために、 長 期 間 に 渡 って 構 造 物 の 応 答 を 取 得 する 構 造 ヘルス

モニタリングシステムへの 期 待 が 高 まり、センサシステムの 低 価 格 化 および 導 入 時 間 の 低 減 が 実 現 されれば、

広 く 普 及 していくものと 予 測 されている。 構 造 物 の 損 傷 同 定 、 損 傷 検 知 に 関 する 信 号 処 理 技 術 の 発 展 は 近 年

著 しく、ハードウェアであるセンサとソフトウェアである 信 号 処 理 技 術 の 融 合 により、インフラストラクチ

ャのメンテナンスの 効 率 化 が 期 待 されている。これにより、 現 在 のスケージュールベースのメンテナンスか

ら、より 合 理 的 なコンディションベースのメンテナンスへのパラダイムシフトが 期 待 できる。しかしながら、

- 1 -


現 在 使 用 されているような 有 線 で 構 成 されるセンサシステム( 図 1)では、センサシステムのケーブリング

コストが 構 造 ヘルスモニタリングシステムを 実 構 造 物 へ 適 用 する 際 の 大 きな 障 害 になっている。

たとえば、 1997 年 に 完 成 した 香 港 にある Tsing Ma Bridge ( 青 馬 大 橋 )への 構 造 ヘルスモニタリングシス

テムの 導 入 コストは 1 センサチャンネル 当 たり$27,000 以 上 であることが 報 告 されている 1)。また、 構 造 ヘ

ルスモニタリングシステム 導 入 時 間 の 約 75%が 対 象 構 造 物 にセンサデータの 伝 送 路 であるワイヤを 敷 設 する

作 業 にかかる 時 間 であり、 全 モニタリングシステム 費 用 の 約 25%がワイヤリングの 費 用 だという 報 告 がある。

たとえば、カリフォルニア 州 交 通 局 の 報 告 では、60 から 90 の 加 速 度 センサで 構 成 される 計 測 システムをひ

とつの 橋 梁 に 導 入 するのに 約 $300,000 の 費 用 がかかり、そのうち 橋 梁 の 過 酷 な 環 境 からワイヤを 守 るために

1 フィートあたり$10 の 費 用 がかかったとしている 3)。しかも、ワイヤ 敷 設 が 困 難 である 場 合 や、モニタリ

ングシステムを 構 成 するセンサユニットの 取 り 扱 いが 難 しい 場 合 は、 導 入 コストはさらに 上 昇 する。このよ

うに、 構 造 ヘルスモニタリングシステム 導 入 の 高 コスト 要 因 の 一 つは、データ 収 集 サーバへ 取 得 したセンサ

データを 送 信 するために 必 要 なワイヤ 敷 設 である。

また、ワイヤレス 化 によって、ワイヤリングの 計 画 の 煩 雑 さの 回 避 と、 実 作 業 の 時 間 の 削 減 が 可 能 である。

そして、 永 久 的 に 設 置 するのではなく、 既 存 の 建 物 の 耐 震 診 断 などのように、 計 測 システムを 仮 設 するよう

な 場 合 には 自 由 度 が 高 く、 有 線 とくらべて 格 段 に 有 利 となる。さらに、 例 えば 毎 日 人 が 多 く 行 きかうため、

敷 設 工 事 時 間 を 十 分 に 取 れない 構 造 物 では、ワイヤレスの 分 布 型 計 測 は 大 きな 利 点 と 成 り 得 る。

一 方 、 既 存 の 建 築 構 造 物 では、LAN 設 備 に 相 当 数 の TCP/IP ポートがあり、それを 利 用 して 有 線 でセンサ

ネットワークを 構 築 できるとの 考 えもあるが、 実 際 にはビル 全 体 を 一 体 したネットワーク 管 理 は 現 実 的 では

ない。なぜなら、 通 常 、 部 署 、フロア 毎 にネットワークへのアクセスに 権 限 が 求 められており、そのために

計 測 が 極 めて 煩 雑 になるからである。また、 通 常 ビル 内 では 複 数 のルータを 介 しており、データの 同 期 性 能

が 著 しく 劣 化 してしまうといった 問 題 も 生 じる。

したがって、ワイヤリングの 制 約 から 解 放 し、 図 2 のようなワイヤレスシステムとすることで、ワイヤリ

ングコスト 低 減 化 、ワイヤリングの 計 画 の 煩 雑 さの 回 避 、 実 作 業 の 時 間 の 削 減 などを 目 的 とした、ワイヤレ

スセンサネットワークに 関 する 研 究 が 行 われている。

Jerome P. Lynch らは 一 連 の 論 文 4) 5) 6) において、ワイヤレスセンサシステムの 概 念 設 計 、ハードウェア

設 計 、ソフトウェア 設 計 、 研 究 室 での 基 礎 実 験 、 実 構 造 物 への 適 用 実 験 を 報 告 している。この 研 究 における

ワイヤレスセンサシステムは 加 速 度 計 、AD コンバータ、RISC マイクロプロセッサ、ワイヤレスモデムから

構 成 されている。H. O. Marcy らは、 論 文 7) において 地 域 全 体 と 移 動 車 両 のヘルスモニタリングを 目 的 にワ

イヤレスセンサネットワークシステムを 提 案 し、 開 発 している。センサとして、 加 速 度 センサが 用 意 されて

おり、48kHz でサンプリングできる。E. IhIer らは、 論 文 8) において、クラックなどのローカルな 損 傷 をモ

ニタリングするため、バッテリを 無 くして 電 力 をワイヤレスで 供 給 するピエゾセンサシステムを 提 案 してい

る。J. Lemke らは 論 文 9) において、ワイヤレスアクセスとインターネットを 介 した 遠 隔 での 振 動 モニタリン

グシステムを 提 案 している。この 論 文 で 述 べられているワイヤレスアクセス 方 式 は 携 帯 電 話 のデータ 転 送 モ

デム 機 能 を 利 用 している。 K. Mitchell らは 論 文 10) において、WEB で 制 御 できるワイヤレスセンサネット

ワークシステムを 提 案 している。このシステムは HTML を 用 いて、 遠 隔 からセンサデータへのアクセスとそ

の 操 作 を 簡 単 に 行 えるようにしているもので、 静 的 な 計 測 が 目 的 である。V. Ravindran らは 論 文 11) でワイヤ

レスアクセス 方 式 としてブルートゥースを 用 いた 温 度 センサネットワークを 実 装 している。

以 上 、ワイヤレスセンサネットワークの 構 造 ヘルスモニタリングへの 適 用 研 究 事 例 は 多 いが、 加 速 度 デー

タのような 短 いサンプリング 周 期 (10msec 以 下 )のデータを、センサ 内 にストアすることなく 逐 一 データ 収

集 ホストへ 転 送 することでリアルタイムな 損 傷 検 知 が 可 能 なワイヤレスセンサシステムに 関 する 研 究 はほと

んど 存 在 していない。

そこで 本 論 文 ではコンピュータネットワーク 標 準 プロトコルとして 普 及 が 進 んだ TCP/IP プロトコルを 用

いたネットワーク 技 術 と、 近 年 接 続 の 容 易 性 から 普 及 がすすむ 無 線 技 術 を 用 いて、 建 築 ・ 土 木 構 造 物 を 対 象

としたワイヤレスセンサネットワークを 提 案 し、その 検 討 を 行 う。 構 造 ヘルスモニタリングシステムを 実 構

造 物 に 対 して、より 低 コストかつより 短 時 間 に 導 入 することを 可 能 とさせることを 目 指 している。

- 2 -


主 な 固 有 振 動 数 が 50Hz 以 下 である 建 築 ・ 土 木 構 造 物 を 適 用 対 象 として 想 定 し、ワイヤレスセンサシステ

ムの 性 能 に 対 する 目 標 を 以 下 のように 設 定 した。

1センサ 間 時 刻 同 期 誤 差 は 2msec 以 下 (50Hz 以 下 の 成 分 の 精 度 を 確 保 )

2センサの 最 大 サンプリング 周 波 数 は 1kHz

3センサ 数 の 増 減 に 対 して、 容 易 に 対 応 できる 拡 張 性 を 有 すること

4センサによるデータ 取 得 から 収 録 ホストに 入 力 するまでの 転 送 遅 延 が 20msec 以 下 で 予 測 可 能 であること

1、2に 関 しては、50Hz 以 下 の 成 分 の 精 度 を 確 保 するために、センサ 間 時 刻 同 期 誤 差 を 2msec 以 下 とし、

同 定 の 精 度 を 十 分 に 保 障 するためにセンサのサンプリング 周 波 数 を 1kHz とした。また、 同 定 モデルの 最 小

更 新 周 期 は 100Hz でも 十 分 であることから、 転 送 遅 延 の 増 大 を 考 慮 し、 本 研 究 で 開 発 のセンサユニットは、

データ 転 送 周 期 を 100Hz にしている。

3、4に 関 しては、 構 造 ヘルスモニタリングがワイヤレスアクセスにメディアアクセス 方 式 として 求 める

性 能 から 決 定 した。その 性 能 とは、

・センサの 同 期 を 実 現 できること

・センサデータの 遅 延 時 間 が 予 測 可 能 であること

である。 構 造 ヘルスモニタリングの 主 な 目 的 は、 構 造 物 の 損 傷 同 定 であり、 構 造 物 の 損 傷 同 定 では 構 造 物 の

加 速 度 応 答 など 時 刻 歴 データが 必 要 である。 同 定 対 象 物 に 取 り 付 けられた 各 センサのデータの 時 刻 が 異 なっ

ている 場 合 、 多 点 入 出 力 のシステムとして 同 定 することができなくなってしまう。この 観 点 において、セン

サの 時 刻 同 期 性 は 構 造 ヘルスモニタリングにおいて 必 要 条 件 であるといえる。

また、 取 得 したセンサデータの 遅 延 時 間 の 予 測 可 能 性 には 二 つの 解 釈 がある。 遅 延 時 間 最 大 値 の 確 定 的 な

予 測 可 能 性 と、 遅 延 時 間 最 大 値 の 非 確 定 的 な 予 測 可 能 性 である。リアルタイム 制 御 の 分 野 では、 前 者 をハー

ドリアルタイム 性 、 後 者 をソフトリアルタイム 性 と 呼 ぶ。 構 造 ヘルスモニタリングにおいては、その 目 的 が

構 造 物 の 損 傷 同 定 である 場 合 、 同 定 モデルの 更 新 サイクルの 時 間 制 約 はソフト 的 な 制 約 で 十 分 であるため、

ハードリアルタイム 性 は 要 求 されないとの 考 えもあるが、 本 研 究 では 同 定 モデルの 更 新 サイクルの 遅 れを 確

定 的 に 20msec 以 下 とすることを 目 標 とした。

本 研 究 では、まず 拡 張 性 と 経 済 性 の 両 立 を 確 保 するため 無 線 LAN を 用 いたシステムを 想 定 し、 設 定 した

要 求 性 能 の 実 現 可 能 性 を 理 論 的 に 検 討 する。 次 にワイヤレスセンサネットワークのプロトタイプを 構 築 し、

初 期 目 標 性 能 を 実 現 可 能 かどうか 検 証 する。

Sensor station

sensor

Data acquisition host

Data acquisition host

図 1 Conventional sensor network

図 2 Proposed wireless sensor network

2. ワイヤレスアクセスの 方 法 とその 性 能

2.1 ワイヤレスアクセスの 種 類 と 構 造 ヘルスモニタリングの 要 求 特 性

許 可 を 得 ることなしに 利 用 できるワイヤレスアクセス 方 式 には、 多 くの 種 類 が 存 在 する。 表 1 に 種 々のア

クセス 方 式 とその 使 用 周 波 数 帯 を 示 す。

- 3 -


表 1 Wireless access system and frequency band

Wireless access system Multiple access method - Duplex method Frequency band

PHS TDMA - TDD 1.9GHz

PDC TDMA - FDD 800MHz, 1.5GHz

W-CDMA CDMA - FDD 2GHz,etc

Wireless LAN IEEE802.11 CSMA/CA - TDD (MAC) 2.4GHz, 5GHz

FWA Depend on frequency band 1.9, 2.4, 22, 26, 38, 60GHz, Optical

Bluetooth TDMA - TDD 2.4GHz

Wireless IEEE1394 Isochronous, Asynchronous 5GHz, 60GHz

ワイヤレスアクセスには 大 別 して 二 つのアクセス 形 態 が 存 在 する。 各 ワイヤレスノードの 役 割 がアクセス

ポイント( 以 下 AP: Access Point )とステーション( 以 下 STA: Station)が 固 定 されているインフラストラク

チャ 形 態 と、その 区 別 がなくいずれのワイヤレスノードも AP や STA になることができるアドホック 形 態 の

二 つである。インフラストラクチャ 形 態 は AP を 介 してすべての 通 信 を 行 う 通 信 形 態 である。したがって AP

を 介 さず STA だけによる 通 信 を 行 えない。つまりインフラストラクチャモードでは,AP からの 電 波 到 達 半

径 がワイヤレスネットワークの 構 成 範 囲 になる。 一 方 アドホック 形 態 ではどのノードとも 通 信 ができ、 電 波

の 電 力 範 囲 が 狭 い 場 合 においても 近 隣 のワイヤレスノードを 介 すことによって、 電 波 到 達 半 径 外 のノードと

も 通 信 が 可 能 となる。 歴 史 的 に AP を 介 したインフラストラクチャ 形 態 がワイヤレスアクセスとして 普 及 し

てきた。そのためアドホック 形 態 を 実 現 できるワイヤレスアクセス 方 式 はまだ 少 ないのが 現 状 である。アド

ホック 形 態 は 携 帯 電 話 網 のような 巨 大 なワイヤレスシステムではなく 数 メートルから 数 百 メートル 範 囲 での

狭 い 範 囲 でのワイヤレスネットワークをアドホックに 構 築 する 通 信 方 式 として 開 発 されている。 表 1 の 中 に

おいてアドホック 形 態 を 構 成 できるワイヤレスアクセス 方 式 は、 一 部 の 無 線 LAN,Bluetooth,ワイヤレス

IEEE1394 である. 図 3、 図 4 にインフラストラクチャ 形 態 、アドホック 形 態 の 概 念 図 をそれぞれ 示 す.

AP

STA STA STA STA STA

図 3 Infrastructure mode

図 4 Ad-hoc mode

以 上 が 一 般 的 なワイヤレスアクセスの 方 式 である。 構 造 ヘルスモニタリングでは、 複 数 のセンサからのデ

ータを 最 終 的 には 一 箇 所 に 収 集 して 処 理 する 場 合 と、ローカルにデータを 処 理 する 場 合 があるが、 本 論 文 で

は、 例 として 図 3 のようなインフラストラクチャ 形 態 を 選 択 している。

2.2 無 線 LAN を 利 用 した 場 合 のワイヤレスセンサネットワークのビット 誤 り 率 と 転 送 遅 延 の 理 論 解 析

無 線 LAN は、 現 在 のイーサネットによる LAN をそのまま 無 線 化 することを 目 的 に 開 発 された。 従 って 既

存 LAN との 接 続 が 容 易 で、 急 速 に 普 及 が 進 んでおり 低 価 格 化 が 著 しい。 最 も 一 般 的 に 普 及 している 2.4GHz

帯 を 用 いた IEEE802.11b では 最 高 で 11Mbps の 通 信 帯 域 がある。 他 には、 最 高 で 54Mbps の 物 理 帯 域 である

IEEE802.11a があり、 指 定 された 遅 延 時 間 を 保 証 するリアルタイムサービス 提 供 を 実 現 する IEEE802.11e など

の 開 発 が 進 められている。 帯 域 の 拡 大 とリアルタイム 性 のサポートの 充 実 を 期 待 できるという 観 点 より、 本

研 究 ではワイヤレスアクセスとして 無 線 LAN を 使 用 する。

また、802.11b 無 線 LAN では 異 なる 周 波 数 11 チャネルを 使 用 しており、うち 4 チャネルを 同 時 に 使 用 して

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も 互 いに 干 渉 せずに 使 用 することができる。そのため、 既 に 無 線 LAN が 設 置 されている 場 所 では、 既 存 無

線 LAN の 周 波 数 帯 と 異 なるチャネルをヘルスモニタリング 用 チャネルとして 設 定 することで、 互 いの 混 信

を 回 避 することができる。

ワイヤレスセンサネットワーク 内 で 送 受 信 されるセンサデータは、 周 辺 環 境 の 雑 音 電 力 によって 取 得 デー

タの 送 受 信 時 にデータのビット 誤 りが 発 生 する。ワイヤレスアクセスではパケット 内 にビット 誤 りを 検 知 す

ると 送 信 元 のセンサに 同 じデータの 再 送 を 要 求 する。 従 って、エラーが 頻 発 するような 高 雑 音 環 境 下 におけ

るセンサネットワークの 実 現 可 能 性 を 検 討 する 必 要 がある。そこで 本 解 析 では、 市 街 地 での 平 均 雑 音 として

-80dB、 工 場 などの 高 雑 音 環 境 として-70dB の 二 つの 雑 音 電 力 を 想 定 ( 文 献 14) )し、センサネットワーク

半 径 とパケット 誤 り 率 (Pp) およびその 平 均 値 (Pave) を 文 献 12) 13) より、 式 (1)に 基 づいて 計 算 した。な

お 式 (1)の 積 分 内 部 がパケット 誤 り 率 (Pp)に 相 当 する。

Lp

r ⎡


( )

⎥ ⎥ ⎤

1 ⎢ ⎪

⎧ 1



Pave

= 1−


⎨1


exp − ( WR

− N

0

) / 4 ⎬ 2πrdr

(1)

2

πr

0


⎪⎩ π ( W − N )

R 0

⎪⎭ ⎦

ここで W R は 受 信 電 力 、N 0 は 雑 音 電 力 、r はセンサネットワークの 半 径 である。W R は、 伝 送 方 程 式 (2)か

ら 求 められる。

W [ dBm]

= W [ dBm]

− L [ dB]

+ G [ dB]

− L [ dB]

+ G [ dB]

− L [ dB]

(2)

R

T

CT

ここで、 W T

は 送 信 電 力 W

R

、 L CT

は 送 信 側 の 給 電 線 損 失 、 G AT

は 送 信 側 のアンテナ 利 得 、 L A

は 空 間 損 失 、 G AR

は 受 信 側 のアンテナ 利 得 、 L CR

は 受 信 側 の 給 電 線 損 失 である。また 簡 単 のため、 変 調 方 式 を 2 値 のオンオフ

キーイング(ASK)で 同 期 検 波 方 式 とした。 図 5 にその 結 果 を 示 す。これによって 理 論 的 には-70dB の 様 な 高

雑 音 電 力 環 境 下 でも 100m 以 内 のネットワーク 半 径 であれば、10 -5 以 下 のパケット 誤 り 率 を 実 現 可 能 である

ことを 確 認 できた。なお、IP 電 話 回 線 の 最 高 品 質 の PER 推 奨 値 が 10 -5 である。

AT

A

AR

CR

Packet error rate

1

0.1

0.01

0.001

0.0001

1E-05

1E-06

1E-07

1E-08

1E-09

1E-10

1E-11

1E-12

1E-13

1E-14

Pp (No -80dB)

Pp (No -70dB)

Pave (No -80dB)

Pave (No -70dB)

0 200 400 600 800 1000

Distance [m]

図 5 Packet error rate with respect to distance

無 線 通 信 では 搬 送 波 の 有 無 を 検 出 するキャリアセンス(CS : carrier sense)が 存 在 する。キャリアが 存 在 して

いる 場 合 、 他 のステーションがパケットの 伝 送 を 行 っていることを 意 味 する。 無 線 LAN では、このキャリ

アセンスを 用 いた 多 元 接 続 方 式 である CSMA(carrier sense multiple access)が 用 いられる。これは、 各 ステーシ

ョンがキャリアを 検 知 し、その 時 点 でキャリアが 存 在 していれば、ビジーとみなし、 衝 突 を 避 けるために 送

信 を 控 える。 逆 にキャリアが 存 在 していなければ、 送 信 を 試 みるという 多 元 接 続 方 式 である。しかしながら,

フレームが 転 送 される 際 には 伝 搬 遅 延 時 間 が 存 在 するため、 完 全 に 衝 突 を 防 ぐことはできない。しかも 無 線

アクセスではこの 衝 突 を 送 信 側 で 直 接 検 知 することができず、 送 信 先 からの 受 信 不 完 全 (NACK)であった

(もしくは 受 信 完 了 ACK した)というパケットの 受 信 によって 検 知 する。したがって、なんらかの 方 法 で

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衝 突 を 回 避 する 必 要 があり、この 方 式 を CSMA/CA (carrier sense multiple access with collision avoidance)と 呼 ぶ。

なお, 以 下 の 解 析 では 特 に 断 りのない 限 り、 搬 送 波 の 測 定 にかかる 時 間 は 無 視 できるとし、パケットの 伝 搬

遅 延 時 間 を 一 定 として、 送 信 パケット 時 間 (パケットサイズを 回 線 速 度 で 割 ったもの)に 対 して 十 分 小 さい

とする。また、パケット 発 生 はポアソン 分 布 に 従 い、 受 信 通 知 (ACK,NACK)パケットのパケット 誤 り 率

を 0 と 仮 定 する。

解 析 条 件 として、ステーションがキャリアセンスし、チャネルがビジーであった 場 合 を 考 える。その 後 、

キャリアセンスをし 続 け、ビジーからアイドルになった 瞬 間 に 必 ず 送 信 を 試 みる 方 式 を 1-persistent CSMA と

いう。 本 論 文 では 簡 単 のため、1-persistent CSMA の 場 合 を 想 定 し 議 論 する。1-persistent CSMA を 理 想 的 な 回

線 において 用 いた 場 合 のスループット S は、パケット 誤 り 率 を 考 慮 すると、 文 献 15) により、

S

となる。 一 方 、 供 給 トラフィックG は、

G(1

+ G)

e

G

G + e

=


−G

⋅ (1 − P

ave

)

(3)


T ⎫

send

nSTA

⎨( r ⋅ n ) × + L ×

senosr sensor

head ⎬

T

T

sensor

send

G =



(4)

R

と 求 められる。

次 にパケットが 発 生 してから、 誤 り 無 く 相 手 に 受 信 されるまでの 平 均 遅 延 時 間 d について 考 察 する。 図 6

はパケット 発 生 と、キャリアセンス、それに 伴 うビジー 状 態 と 遅 延 を 表 したものである。 横 軸 は 時 間 の 経 過

を 表 し、 上 段 が STA、 下 段 が AP の 時 間 的 な 状 態 推 移 である。また 図 中 の 横 軸 の 時 間 はパケット 一 つあたり

の 送 信 時 間 で 正 規 化 している。STA、AP のそれぞれのキャリアセンスによってチャネルがビジーと 分 かり、

送 信 が 一 回 延 期 されることによる 遅 延 を d 1

とし, 送 信 が 失 敗 し 再 送 するのに 要 する 遅 延 を d 2

とすると、 図 6

より、

d

1

= t w

(5)

d +

となる。ここで、 t w

を 送 信 待 ち 時 間 、 t e

を 伝 搬 遅 延 時 間 、 t a

を ACK の 伝 送 時 間 、 SIFS を ACK 送 信 前 の

待 ち 時 間 とした。なお、 使 用 している 時 間 を 表 す 数 はすべて 1 パケットの 送 信 時 間 に 正 規 化 している。すな

わち、 式 (6)の 1 はパケット 長 を 回 線 速 度 で 割 った 時 間 を 表 現 していることになる。 衝 突 なしに 受 信 された

パケットあたりの 平 均 再 送 回 数 は N は、

G − S

N = (7)

S

と 表 現 できる。 以 上 より 平 均 遅 延 時 間 d は、

2

= 1+

2t

e

+ SIFS + t

a

t

w

(6)

d = d

1 +

1

+ d

2

N + t

e

+ + SIFS + t

e

t

a

(8)

となる。 t w

の 平 均 値 であるt

w

の 許 容 可 能 な 最 小 値 を 解 析 的 に 求 めることは 困 難 であり、その 評 価 にシミュ

レーションが 用 いられている。 本 論 文 では IEEE802.11b の 使 用 を 考 慮 し、IEEE802.11b 仕 様 書 16) を 参 考 に

各 値 を 表 2 のように 設 定 した。1 センサユニットあたりのセンサ 数 (チャンネル 数 ) n sensor

を 8、センサデ

ータの 分 解 能 rsensor

を 16bit、センサユニットから 送 信 され 無 線 化 する 際 に 付 加 されるヘッダ 長 Lhead

を 118byte、

センサのサンプリング 周 期 Tsensor

を 10msec、センサユニットから 収 録 ホスト AP に 送 信 する 送 信 周 期 Tsend


10msec、 無 線 チャネルの 回 線 速 度 R を 11Mbps とした。 雑 音 電 力 を-80dB、セル 半 径 (AP から 最 も 遠 いセン

サユニットまでの 距 離 )を 10m、200m、400m、600m、800m、1000m とした 場 合 の 1 セルあたりのセンサユ

ニット 数 nSTA

に 対 するスループットの 計 算 結 果 を 図 7 に 示 す。なお 図 7 の 縦 軸 のスループットは 回 線 速 度 R

で 正 規 化 してある。また、 雑 音 電 力 を-80dB、セル 半 径 を 400m、600m、800m、1000m とした 場 合 の、セン

サユニット 数 に 応 じた 遅 延 時 間 の 計 算 結 果 を 図 8 に 示 す。8 チャンネルのセンサユニット 数 が 100 程 度 の 場

- 6 -


合 、 遅 延 は 1msec 以 下 にできることがわかる。

以 上 の 計 算 は 理 想 的 な 直 線 見 通 し 内 での 計 算 であり、 実 構 造 物 を 考 慮 するとそのような 条 件 は 考 えにくい。

しかしながら、 例 えば 電 波 減 衰 の 大 きい 部 分 では AP を 複 数 用 意 し、 有 線 で AP 間 同 士 を 接 続 して 複 数 のセ

ルを 作 成 するなどの 対 応 ができる。このように、 状 況 に 応 じてセンサシステムを 変 更 しやすいことも 無 線

LAN の 利 点 である。

Busy

tw

Idle

1

SIFS

ta

tw

Idle

SIFS

tw

表 2 Delay parameter of DSSS PHY

STA

AP

Waiting time

tw

d 1

d 2

1

te

Failure Ack Success

d

Waiting time

図 6 Packet transmission and delay

te

te

Ack

t

w

(DIFS)

SIFS

ACK size

Air propagation delay

50μsec

(DIFS=SHIFS+2*SLOTTIME)

10μsec

14byte

1μsec

S (Throughput)

1

0.9

0.8

0.7

0.6

0.5

0.4

0.3

0.2

0.1

S ( r = 10m )

S ( r = 200m )

S ( r = 400m )

S ( r = 600m )

S ( r = 800m )

S ( r = 1000m )

G

Delay [μsec]

8000

7000

6000

5000

4000

3000

2000

1000

r = 10m

r = 400m

r = 600m

r = 800m

r = 1000m

0

0 50 100 150 200 250 300

Number of sensor STA

0

0 50 100 150 200 250 300

Number of sensor STA

図 7 Throughput analysis

図 8 Delay of sensor network

3. ワイヤレスセンサのプロトタイプの 構 築 と 実 験 的 評 価

3.1 ワイヤレスセンサの 構 成

前 節 におけるワイヤレスセンサネットワークの 理 論 解 析 により、その 実 現 可 能 性 を 確 認 した。そこで、 前

節 で 設 定 したセンサの 分 解 能 、センサユニットあたりのセンサ 数 、センサのサンプリングタイムと 送 信 時 間

周 期 を 用 いて、センサユニットを 設 計 し、 実 装 した。センサユニットの 外 観 を 図 9 に 示 す.

センサユニットはセンサからのアナログデータを 1kHz でサンプリングし、デジタルに 変 換 して、10 サン

プル 毎 にデータ 送 信 を 行 う。データのワイヤレス 化 は 日 本 無 線 株 式 会 社 製 の IEEE802.11b ユニットである

JRL-600 および JRL-610 を 用 いた。JRL-600 をセンサユニット 側 の 無 線 ユニットとして、JRL-610 を 収 録 ホス

ト 側 の 無 線 ユニットとして 使 用 した。JRL-600 有 線 インターフェイスとして、イーサネットを 採 用 しており、

ワイヤレスセンサユニットとは、10Base-T で 接 続 する。 一 方 JRL-610 は 有 線 インターフェイスが 100Base-TX

に 対 応 しており、 収 録 ホストとは 100Base-TX で 接 続 する。また、センサユニット、STA、AP、センサ 収 録

ホストからなる、 本 論 文 で 提 案 するセンサネットワークを 図 10 に 示 す。

本 研 究 において 設 計 、 実 装 したセンサユニットは A/D コンバータ、FIFO メモリ、イーサネットコントロ

ーラチップ、CPU、1MHz 水 晶 発 信 器 などから 構 成 されている。センサは 物 理 量 を 電 圧 値 としてステーショ

ンに 入 力 するが、それをサンプリングし、デジタル 化 を 行 うのは A/D コンバータである。この A/D コンバー

タのサンプリング 間 隔 を 規 定 するのが 水 晶 発 信 器 であり、A/D コンバータへは 水 晶 発 信 器 の 同 期 の 1000 倍 、

すなわち 1kHz クロックが 入 力 される。ユニットが 送 信 可 能 状 態 になってから、クロックに 従 って CPU に 割

り 込 みが 入 ると、CPU は FIFO メモリに 存 在 しているセンサデータをイーサネットのデータとして 送 信 すべ

- 7 -


く、イーサネットコントローラに 送 信 処 理 を 行 わせる。 本 センサユニットは、 各 ユニットごとに 差 動 8ch の

センサ 入 力 が 可 能 となっている。イーサネットコントローラで 作 られたパケットは 無 線 ユニットに 受 信 され、

無 線 化 されてデータ 収 集 ホストへ 送 信 される。パケットは、この 無 線 ユニットで 受 信 されるとイーサネット

パケットとして、データ 収 集 ホストへイーサネットインターフェイスカードを 通 して 送 信 される。 本 ワイヤ

レスセンサネットワークの 特 徴 は、コンピュータネットワークとして 最 も 普 及 してコストが 安 いイーサネッ

ト 機 器 、また 市 販 の 無 線 LAN 機 器 を 用 いている 点 である。このため、PC との 接 続 が 容 易 であり、センサユ

ニット 部 のみの 製 作 でワイヤレスセンサネットワークの 構 築 が 可 能 というメリットがある。

Ethernet network interface card

Sensors

Data acquisition host

AP (IEEE802.11b)

Sensor station

STA (IEEE802.11b)

図 9 Sensor unit and STA

図 10 Configuration of proposed wireless sensor network

3.2 同 期 精 度 の 評 価 試 験

センサ 間 の 時 刻 同 期 を 確 保 するために、 本 センサネットワークでは、データ 取 得 作 業 前 にデータ 収 録 ホス

トから 各 センサユニットへ 同 期 用 ブロードキャストパケットを 送 信 している。 各 センサユニットは 時 刻 同 期

用 のブロードキャスト 信 号 を 受 信 し、その 時 刻 を 0 としてセンサ 内 部 のタイムカウンタを 開 始 させる。それ

以 降 の 計 測 のタイミングはセンサユニット 内 部 の 水 晶 発 信 器 に 従 う。 従 って、 水 晶 発 信 器 の 固 体 間 誤 差 を 無

視 すると、センサユニット 間 での 同 期 精 度 を 測 定 するためには、ブロードキャスト 信 号 がセンサユニットへ

到 着 する 時 刻 の 時 間 差 をとればよい。

図 11 にブロードキャスト 信 号 の 到 着 時 間 差 測 定 試 験 の 状 況 を 示 す。 無 線 ユニット AP に PC-UNIX をイー

サネットで 接 続 し、STA にはセンサユニットを 接 続 した。STA とセンサユニット 間 のイーサネットケーブル

の 被 覆 をそれぞれ 剥 がして 分 岐 させ、オシロスコープに 入 力 させた。PC-UNIX からは UDP プロトコルで 各

センサユニットへブロードキャストパケットを 送 信 し、オシロスコープで 計 測 して 観 測 した。

拡 大 したレンジのオシロスコープ 測 定 画 面 を 図 12 に 示 した。

また、センサユニット 内 部 のカウンタは 前 述 したように、ブロードキャストパケットの 受 信 時 にリセット

され、 開 始 される.そこでその 開 始 時 間 差 を、ブロードキャストパケット 受 信 後 のカウンタピンの 信 号 をオ

シロスコープで 測 定 することにより 測 定 した。オシロスコープの 測 定 結 果 画 面 例 を 図 13 に 示 す。4 つのブロ

ードキャストパケット 到 着 時 刻 の 最 大 誤 差 と、ブロードキャストパケットを 受 信 してから、 受 信 カウンタピ

ンが 立 ち 上 がる 時 刻 の 時 間 差 の 最 大 値 を 100 回 測 定 し、その 結 果 をヒストグラムにした。それぞれ 図 14、 図

15 に 示 した。

Sensor station

192.168.10.1

STA

UDP Broadcast

sendto 192.168.10.255

192.168.10.2

192.168.10.3

192.168.10.4

10base-T

AP

192.168.10.100

100base-TX

Oscilloscope

図 11 Experimental setup of synchronous characteristic of sensors

- 8 -


0 100 200

time [μsec]

15

図 12 Arrival of broadcast packet

15

15

0 100 200

time [μsec]

図 13 Time difference of counter start time

10

10

10

5

5

5

0

0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 1000

Maximum time interval [μsec]

Maximum time interval [μsec]

図 14 Histogram of max arrival time interval 図 15 Histogram of max difference of synchronous

of broadcast packet

3.3 送 信 遅 延 時 間 の 評 価 試 験

センサネットワークの 遅 延 時 間 を 測 定 するため 3 つに 遅 延 時 間 を 切 り 分 ける。 所 望 の 遅 延 時 間 をT

system

とす

ると 次 のように 書 ける。

T sys Tw

+ Ts

0

0

0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000

0 200 400 Maximum 600 delay of 800 synchronous 1000 signal [μsec] 1200 1400 1600 1800 2000

Maximum delay of synchronous signal [μsec]

Maximum delay of synchronous signal [μsec]

= (9)

ここで、 T s

はセンサから 信 号 がセンサユニットに 入 力 され A/D 変 換 後 データがユニットから 出 力 されるま

での 時 間 である。 T w

は 有 線 を 通 してワイヤレスユニットにデータが 入 力 されワイヤレスネットワークを 経

てそのデータがまた 有 線 の 信 号 で 出 力 されてデータホストに 入 力 されるまでの 時 間 である。

まず、 T s

を 測 定 した。 T s

はセンサユニットのハードウェア 設 計 に 依 存 する。 本 研 究 において 設 計 、 実 装 し

たセンサユニットでは、 水 晶 発 信 器 の 波 形 の 立 ちあがり 時 刻 と、イーサネットケーブルへの 出 力 データの 立

ち 上 がり 時 刻 の 時 間 差 を 計 測 することで、ユニットの 遅 延 時 間 Ts

を 計 測 できる。 水 晶 発 信 器 の 発 振 の ON/OFF

を 簡 便 に 行 うため、 調 整 可 能 な 外 部 発 信 器 を 用 いて 水 晶 発 信 器 波 形 を 模 擬 した。 外 部 発 信 器 を 用 いて、 水 晶

発 信 器 のような 振 幅 5V、 振 動 数 1.000MHz の 波 形 を 作 成 し 任 意 のタイミングでセンサユニットへ 入 力 できる

ようにした。 同 時 に 発 信 器 からの 出 力 信 号 を、オシロスコープにも 入 力 した。センサユニットからの 出 力 信

号 は、IEEE802.11b 無 線 ユニットへイーサネットで 転 送 されるが、そのイーサネットケーブルの 被 覆 を 剥 ぎ、

センサユニットからの 出 力 もオシロスコープへ 入 力 した。オシロスコープへのこれら 二 つの 入 力 信 号 時 間 差

を 測 定 すればよい。 本 実 験 のセットアップ 状 況 を 図 20 に 示 す。センサユニットは 全 部 で 4 つあり、 各 センサ

ユニットの 計 測 はそれぞれにつき 10 回 計 測 した。10 回 の 平 均 値 を 表 3 に 示 す。

次 に、ワイヤレスリンク 自 体 の 遅 延 時 間 Tw

を 測 定 した。 無 線 AP 側 を PC-UNIX サーバ、 無 線 STA 側 を

PC-UNIX クライアントにイーサネットで 接 続 し、サーバではクライアントから UDP で 受 信 したパケットを

- 9 -


そのまま 送 信 元 クライアントへ UDP で 転 送 するプロセスを 起 動 させた( 図 16)。またクライアントでもサー

バからのデータを 受 信 すると、サーバへ 新 しい 送 信 を 開 始 させるというプロセスを 起 動 させた。バイト 数 を

100Byte から 1500Byte まで 変 化 させ、それぞれにおいてクライアントで 500 回 UDP 送 信 関 数 sendto( )を 実 行

し、 終 わるまでの 時 間 を 関 数 gettimeofday( )を 用 いて 計 測 した。 時 間 軸 ( 上 下 方 向 )とパケットの 送 受 信 の 関

係 を 図 17 に 示 す。 同 様 に 無 線 ユニットをはさまず、 直 接 クロスケーブルで 接 続 した 場 合 においても 計 測 を 行

った。それぞれの 計 測 結 果 を 図 18 に 同 時 に 示 した。 差 をとることで、100Byte のパケットでのワイヤレス 部

のみの 遅 延 は 2019μsec,1500Byte では 3916μsec となった。ワイヤレス 部 の 物 理 帯 域 が 11Mbps であること

を 考 慮 すると、100Byte では 1946μsec が、1500Byte では 2825μsec がワイヤレスによるオーバーヘッドとな

っていることが 分 かった。また、センサユニット 数 増 加 に 伴 う 転 送 遅 延 の 変 化 も 計 測 した。これは, 一 つの

AP に 対 して 1 つの STA の 時 から 4 つの STA の 時 までそれぞれにおける 遅 延 時 間 を 計 測 したものである。 計

測 は 計 測 用 のセンサデータに 関 して 行 い、 負 荷 として 流 したセンサデータは、 送 信 側 のホストにおいて 2msec

間 隔 で 100、500、1000、1500Byte の 大 きさである。また、 各 測 定 条 件 において 計 測 用 フローのパケット Byte

数 も 負 荷 用 の Byte 数 と 同 じに 設 定 した。 結 果 を 図 19 に 示 す。 図 19 の 横 軸 はパケット Byte 数 、 縦 軸 は 遅 延

である。

結 果 、すべてのセンサユニットにおいて、 T s

およびT w

を 足 しあわせた 値 は、 目 標 とした 20msec 以 下 とな

っており、 設 定 した 目 標 を 達 成 できたことが 確 認 できた。この 遅 延 はセンサユニットとその 数 に 固 有 であり、

予 測 可 能 である。また、 本 条 件 は 4 つの STA による 結 果 であるが、STA の 増 加 に 伴 う 遅 延 時 間 の 増 大 は、STA

数 100 までは 1msec 以 内 であることを 理 論 計 算 によって 確 認 している( 図 8)。

Sensor station

CPU

表 3 Average of sensor unit delay

Sensor

A/D

FIFO Ethernet chip

PC

Serial No. 1 2 3 4

Average of delay [msec] 11.2 13.0 6.0 5.6

Wave generator

Oscilloscope

図 16

Sensor unit delay experiment

Delay of

Delay of

Delay of

PC-UNIX

network

PC-UNIX

Ethernet(10base-T/UTP)

Ethernet(100base-TX)

sendto( )

Delay of wireless network

recvfrom( )

sendto( )

Wireless LAN STA

recvfrom( )

sendto( )

PC-UNIX

Wireless LAN AP

Time flow

Data flow

recvfrom( )

sendto( )

図 17 Wireless link delay experiment

図 18 Packet transmission through wireless link

- 10 -


Time [μsec]

6000

5000

4000

3000

2000

1000

0

100

200

wire average

wireless average

300

400

500

600

700

Data length [Byte]

800

900

1000

1100

1200

1300

1400

1500

5000

4500

4000

3500

3000

2500

No. of STA 1

2000

2

1500

3

1000

4

500

0

0 500 1000 1500

Packet size [byte]

図 19 Average time of wire and wireless communication 図 20 Delay of wireless link

Delay [μsec]

6.まとめ

本 研 究 では、TCP/IP を 用 い、 構 造 ヘルスモニタリングに 適 したワイヤレスセンサネットワークの 理 論 解 析 、 構 築 と

その 評 価 を 行 った。ワイヤレスアクセスに 対 する 要 求 性 能 を 明 確 化 し、 十 分 な 帯 域 と 今 後 のリアルタイムサポートを

期 待 できる 無 線 LAN を 選 択 し、 最 も 普 及 している 規 格 である IEEE802.11b を 用 いてワイヤレスセンサネットワークの

プロトタイプを 設 計 、 構 築 した。 提 案 するセンサシステムの 目 標 は、センサ 間 時 刻 同 期 誤 差 を 2msec 以 下 とし、

センサのサンプリングタイムを 50Hz 以 上 に 保 証 、センサの 最 大 サンプリングレートは 1kHz であり、センサ

によるデータ 取 得 から 収 録 ホストがそのデータを 受 信 するまでの 転 送 遅 延 を 20msec 以 下 とするというもの

であった。

まず 理 論 的 にその 実 現 可 能 性 を 検 討 した。 理 論 解 析 の 結 果 、 提 案 センサネットワークは-70dB の 雑 音 電 力 下 で、

100m 以 内 のネットワーク 半 径 であれば、10 -5 以 下 の PER を 実 現 可 能 であった。また、 送 信 遅 延 時 間 は、 理 論

上 300m のセンサネットワーク 半 径 であっても 20msec 以 下 であることを 確 認 し、 目 標 を 実 現 可 能 であること 確 認 し

た。 次 に、プロトタイプを 実 際 に 製 作 し、その 評 価 試 験 を 行 った。 製 作 したセンサユニットは 1kHz でのサ

ンプリング、100Hz でのデータ 転 送 が 可 能 である。この 提 案 システムのセンサユニット 間 時 刻 同 期 誤 差 は 最

大 で 1.7msec と 計 測 された。また、データ 収 集 ホストのスペックに 依 存 しない 範 囲 での 転 送 遅 延 時 間 は、セ

ンサユニット 数 が 4 つの 場 合 では 初 期 の 目 標 性 能 を 満 たしており、 目 的 を 達 成 したといえる。 今 後 の 課 題 と

して、センサ 数 増 加 にともなうワイヤレスリンクの 転 送 遅 延 時 間 増 大 への 対 処 と、 精 度 が 高 いセンサ 間 時 刻

同 期 の 安 定 的 な 確 立 などがあげられる。

なお、 本 研 究 で 開 発 した 無 線 LAN システムは、バッテリー 駆 動 ではなく AC100V の 電 源 を 必 要 とするた

め、 電 源 部 はワイヤレス 化 されていない。しかし 近 年 、 電 源 部 に 無 線 微 弱 電 波 の 使 用 や、スリープモードな

どを 活 用 して、 省 電 力 化 する 研 究 も 進 められており、また 燃 料 電 池 の 使 用 も 現 実 的 なものになっている。こ

うした 利 用 も 視 野 に 入 れているが、 本 研 究 では 第 一 歩 として、 電 源 を 確 保 するのは 容 易 であるものの 短 時 間

で 多 くの 計 測 を 行 いたいような 場 合 を 想 定 して 開 発 した。また、パソコンを 見 ればわかるように 無 線 LAN

を 使 った 場 合 でも 数 時 間 程 度 はバッテリー 駆 動 にはまったく 問 題 なく、 現 状 のシステムにおいても、 臨 時 に

設 置 してフィールドで 計 測 するような 場 合 に 大 いに 有 効 と 考 えられる。

以 上 、 本 論 文 で 提 案 したセンサネットワークは TCP/IP による 拡 張 性 、ワイヤレスアクセスという 接 続 の 容

易 性 を 有 し、 構 造 ヘルスモニタリングに 適 したセンサネットワークとして 有 用 であり、センサ 敷 設 コストの

低 減 、ワイヤリングの 計 画 の 煩 雑 さの 回 避 、 実 作 業 の 時 間 の 削 減 を 可 能 にするものとして 期 待 される。

謝 辞

株 式 会 社 東 京 測 振 社 長 横 井 勇 氏 にはワイヤレスセンサネットワークの 研 究 に 関 してご 協 力 いただきました。

また 第 一 技 術 グループ 佐 藤 正 幸 氏 、 佐 藤 卓 也 氏 には 主 にセンサの 回 路 、ソフト 開 発 に 関 し、 大 変 お 世 話 にな

- 11 -


りました。ここに 記 して、 謝 意 を 表 します。

参 考 文 献

1) Sohn, H., and Farrar, C.R. : Damage diagnosis using time series analysis of vibration signals. Smart Materials and

Structures, Institute of Physics, 10:4, 2001, pp.446-451.

2) Straser, E. G., and Kiremidjian, A. : A Modular Wireless Damage Monitoring System for Structures, The John

A.Blume Earthquake Engineering Center, Report 114, Department of Civil and Environmental Engineering,

Stanford University, Stanford, CA., 1998, pp.18-20,

3) Graizer V., T. Cao, A. Shakal and P. Hipley : Data from downhole arrays instrumented by the California Strong

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Conference on Seismic Zonation, Palm Springs, California. 2000.

4) Jerome P. Lynch, Arvid Sundararajan, Kincho H. Law, Anne S. Kiremidjian, Thomas W. Kenny and Ed Carryer, :

Computational Core Design of a Wireless Structural Health Monitoring System, Proceedings of Advances in

Structural Engineering and Mechanics (ASEM'02) Conference, Pusan, Korea, August 21-23, 2002.

5) Jerome P. Lynch, Kincho H. Law, Anne S. Kiremidjian, Ed Carryer, Thomas W. Kenny, Aaron Partridge, and Arvind

Sundararajan : Validation of a Wireless Modular Monitoring System for Structures, SPIE 9th Annual International

Symposium on Smart Structures and Materials, San Diego, CA, USA, March 17-21, 2002.

6) Jerome P. Lynch, Kincho H. Law, Anne S. Kiremidjian, Thomas W. Kenny, Ed Carryer, and Aaron Partridge, : The

Design of a Wireless Sensing Unit for Structural Health Monitoring, Proceedings of the 3rd International Workshop

on Structural Health Monitoring , Stanford, CA, USA, September 12-14, 2001, pp.1041-1050

7) Henry O. Marcy, Jonathan R. Agre, Charles Chien,Loren P. Clare, Nikolai Romanov, and Allen Twarowski :

Wireless sensor networks for area monitoring and integrated vehicle health management applications, AIAA

Guidance, Navigation, and Control Conference and Exhibit, Portland, OR, Aug. 9-11, 1999, Collection of Technical

Papers. Vol. 1, pp.1-11

8) Elmer Ihler, Helmut W. Zaglauer, Ursula Herold-Schmidt, Kay W.Dittrich, Werner Wisebeck : Integrated Wireless

Piezoelectric sensors, Procs. of SPIE vol.3991, industrial and commercial apprications of smart structures

technologies, Mar, 2000, pp.44-51

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Nondestructive Evaluation of highways, utilities, and Pipelines 5, Mar,2000, pp.436-445

10) Kyle Mitchell, Nghia Dang, Pengxiang Liu, Vitta1 S. Rao, and Hardy J. Pottinger : Web-Controlled Wireless

Network Sensors for Structural Health Monitoring, Smart Structure and Materials 2001 Smart Electronics and

MEMS, Vijay K. Varadan, Editor, Proceedings of SPIE Vol. 4334 , 2001, pp.234-243

11) Vibha Ravindran, V.V. Varadan : Implementation of Local Area Wireless Sensor Networks using Bluetooth, Smart

Structures and Materials 2002: Smart Electronics, MEMS, and Nanotechnology,Vijay K. Varadan, Editor,

Proceedings of SPIE Vol. 4700, 2002, pp.258-265

12) 松 本 充 司 、 若 原 俊 彦 、: 60GHzミリ 波 帯 による 高 速 無 線 キャンパスネットワークの 構 築 、 第 3 回 YRP 移 動

体 通 信 産 学 官 交 流 シンポジウム2001、2001 年 、pp.124-125

13) トランジスタ 技 術 , CQ 出 版 社 , 2001 年 7 月 号

14) 柴 田 伝 幸 , 山 田 直 之 , 浅 野 孔 一 : 工 場 内 無 線 LANシステム、 豊 田 中 央 研 究 所 R&Dレビュー、Vol. 29 No. 3,

1994 年 9 月 、pp.25-35

15) 松 下 温 監 修 重 野 寛 著 : 無 線 LAN 技 術 講 座 , SRCハンドブック, 1994

16) IEEE 802.11b-1999, Supplement to 802.11- 1999,Wireless LAN MAC and PHY specifications: Higher speed

Physical Layer (PHY) extension in the 2.4 GHz band,

http://standards.ieee.org/getieee802/download/802.11b-1999.pdf

( 受 理 : 月 日 )

( 掲 載 決 定 : 月 日 )

Wireless Sensor for Structural Health Monitoring

- 12 -


NAGAI Nozomu 1) , MITA Akira 2) , YAKOH Takahiro 3) and SATO Tadanobu 4)

1) Member, Graduate student, Keio University

2) Member, Associate Professor, Keio University, Ph. D.

3) Assistant Professor, Keio University, Dr. Eng.

4) Member, Professor, Kyoto University, Dr. Eng

ABSTRACT

Structural health monitoring attracts attention, as the technique of realizing quantification of the damage risk of building

and civil structure. However, the cost spent on wiring had become the barrier which introduces a monitoring system to a

large-sized structure. In this research, for wiring cost reduction, the wireless sensor network system which used TCP/IP

and radio communications was proposed, and the theoretical analysis, prototype manufacture, and the evaluation

examination were performed. The sensor network proposed in this paper satisfied the target performance. And it was able

to reduce sharply the wiring cost and the time. Furthermore, it has attained the high synchronicity needed for real time

damage detection.

Key Words: Structural Health Monitoring, Sensor Network, Wireless, Time Synchronization

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