報 告 書

nmda.or.jp

報 告 書

クラウドコンピューティング 技 術 の 活 用 による

グリーン IT ネットワークの 実 現 性 に 関 する 調 査 研 究

報 告 書

平 成 22 年 3 月

財 団 法 人 ニューメディア 開 発 協 会



わが 国 経 済 の 安 定 成 長 への 推 進 にあたり、 情 報 ・ 機 械 産 業 をめぐる 経 済 的 、

社 会 的 諸 条 件 は 急 速 な 変 化 を 見 せており、 社 会 生 活 における 環 境 、 都 市 、 防 災 、

住 宅 、 福 祉 、 教 育 等 、 直 面 する 問 題 の 解 決 を 図 るためには 技 術 開 発 力 の 強 化 に

加 えて、 多 様 化 、 高 度 化 する 社 会 的 ニーズに 適 応 する 情 報 ・ 機 械 システムの 研

究 開 発 が 必 要 であります。

このような 社 会 情 勢 の 変 化 に 対 応 するため、 財 団 法 人 ニューメディア 開 発 協

会 では、 財 団 法 人 JKAから 自 転 車 等 機 械 工 業 振 興 事 業 に 関 する 補 助 金 の 交 付

を 受 けて、ニューメディアを 開 発 ・ 普 及 する 補 助 事 業 を 実 施 しております。

本 「クラウドコンピューティング 技 術 の 活 用 によるグリーンITネットワーク

の 実 現 性 に 関 する 調 査 研 究 」は、ニューメディアを 基 礎 とした 調 査 ・ 研 究 事 業

の 一 環 として、 当 協 会 が 株 式 会 社 日 本 アイティ 総 合 研 究 所 に 委 託 し、 実 施 した

成 果 をまとめたもので、 関 係 諸 分 野 の 皆 様 方 にお 役 に 立 てれば 幸 いであります。

平 成 22 年 3 月

財 団 法 人 ニューメディア 開 発 協 会


目 次


目 次

1. はじめに ................................................................................................... 1

2. クラウドコンピューティングが 意 味 するもの.......................................... 1

2.1 クラウドコンピューティングの 定 義 ...................................................... 1

2.2 SaaSの 普 及 ............................................................................................ 4

2.3 クラウドホスティング............................................................................ 8

2.4 クラウドコンピューティングの 本 質 .................................................... 10

3. ホスティングおよびデータセンター 事 業 者 の 認 識 ................................. 10

3.1 クラウドコンピューティングによって 生 まれる 新 しいビジネス ........... 11

3.2 パブリッククラウドへの 評 価 と 期 待 ...................................................... 11

3.3 プライベートクラウドへの 評 価 と 期 待 ................................................... 11

3.4 従 来 型 のサーバー 運 用 との 比 較 ............................................................. 12

3.5 SaaSの 展 開 について ............................................................................ 12

3.6 米 国 事 例 評 価 (グーグル 社 、アマゾン 社 など) ..................................... 12

3.7 米 国 事 例 への 評 価 (セールスフォースなどのSaaS) .......................... 13

3.8 ホスティングビジネスの 将 来 ( 共 用 、 専 用 、VPS) ........................... 13

3.9 変 わる 業 態 (SIer、ハードベンダー)................................................. 14

3.10 米 国 の 主 要 企 業 との 競 争 に 勝 てるか(サービスの 質 、 安 定 性 、 価 格 、セ

キュリティ、サポート)............................................................................... 14

3.11 クラウドのいっそうの 展 開 に 必 要 な 技 術 ........................................... 14

3.12 ヒアリング 結 果 の 要 旨 ........................................................................ 15

4. グリーンITネットワークの 実 現 ............................................................. 16

4.1 マクロ 的 な 主 要 課 題 ............................................................................. 16

4.2 環 境 負 荷 軽 減 の 切 り 札 としてのIT........................................................ 16

4.3 データセンターにかかわる 指 標 の 問 題 点 ............................................... 17

4.4 データセンターに 関 しての 求 められる 施 策 .......................................... 19

5. 日 米 の 施 策 と 設 定 課 題 ............................................................................ 20

5.1 日 本 における 施 策 ................................................................................. 20

5.2 米 国 における 施 策 ................................................................................. 23

5.3 設 定 すべき 課 題 ..................................................................................... 25

6. まとめ..................................................................................................... 27


1. はじめに

本 稿 は、「クラウドコンピューティングの 活 用 によるグリーン IT ネットワークの 実 現

性 に 関 する 調 査 ・ 研 究 」における 報 告 を 総 括 したものである。

本 総 括 では、まずクラウドコンピューティングの 現 状 をまとめ、 情 報 通 信 技 術 の 進 展

における 位 置 づけを 行 う。そしてクラウドコンピューティングの 主 たる 担 い 手 であるデ

ータセンターおよびホスティング 事 業 に 焦 点 をあてたヒアリング 調 査 の 結 果 をもとに、

新 しい 形 態 のネットワークへの 取 り 組 みの 実 態 を 紹 介 する。

さらにグリーン IT ネットワークの 実 現 に 向 けた 課 題 などのクラウドコンピューティ

ングに 期 待 される 主 要 課 題 を 整 理 し、 今 後 に 求 められる 施 策 についての 検 討 を 行 う。

2. クラウドコンピューティングが 意 味 するもの

2.1 クラウドコンピューティングの 定 義

ここ 数 年 、クラウドコンピューティングという 言 葉 が IT 業 界 の 新 しいトレンドを 示

すものとして 語 られてきている。2006 年 8 月 9 日 、Google の CEO であるエリック・

シュミット 氏 が、 米 国 カリフォルニア 州 サンノゼ 市 で 開 催 された「 検 索 エンジン 戦 略 会

議 」 (Search Engine Strategies Conference) の 中 で「クラウドコンピューティング」

と 発 言 したことがきっかけであると 言 われている。しかしその 言 葉 は、いまや 業 界 内 だ

けでなく、 一 般 向 けの 新 聞 雑 誌 やテレビ 番 組 などにおいても 取 り 上 げられるようになっ

た。

「クラウド」という 言 葉 は、エリック・シュミット 氏 の 発 言 以 前 からインターネット

の 業 界 内 では 頻 繁 に 使 われて 来 た。Wikipedia においては、その 言 葉 の 由 来 について、

「クラウド( 雲 )は、ネットワーク( 通 常 はインターネット)を 表 す。『コンピュータ

システムのイメージ 図 』ではネットワークを 雲 の 図 で 表 す 場 合 が 多 く、それが 由 来 と 言

われている。」と 紹 介 されている。つまり「クラウド」は、インターネットそのものを

形 容 する 言 葉 であった。そして「クラウド」に「コンピューティング」を 付 けた 場 合 、

1


インターネットを 使 ったコンピューティングに 過 ぎず、なんら 目 新 しさは 無 いようにも

思 える。ところがクラウドコンピューティングは、 単 にこれまでのインターネットを 示

すのではなく、むしろインターネットの 今 後 の 方 向 性 を 示 す 言 葉 として 用 いられている。

Zoho

Google

Salesforce

Yahoo

The cloud

Microsoft

Rackspace

Amazon

図 1 クラウドコンピューティングのイメージ

クラウドコンピューティングは、 言 葉 の 由 来 と 最 近 の 用 法 を 同 時 に 考 慮 すれば、およ

そ 以 下 のものと 解 説 できる。

すなわちクラウドコンピューティングとは、「インターネットをベースとしたコンピ

ュータの 利 用 形 態 である。そしてユーザーはコンピュータ 処 理 をネットワーク 経 由 で、

サービスとして 利 用 する。 従 来 のコンピュータ 利 用 は、ユーザー( 企 業 、 個 人 など)が

コンピュータのハードウエア、ソフトウェア、データなどを、 自 分 自 身 で 保 有 ・ 管 理 し

ていたのに 対 し、クラウドコンピューティングでは、ユーザーはインターネットの 向 こ

う 側 からサービスを 受 け、サービス 利 用 料 金 を 払 う 形 になる。」

クラウドコンピューティングは、いくつかの 異 なる 種 類 のサービスの 組 み 合 わせであ

る。よく 使 われる 分 類 法 は、 以 下 の3つの 種 類 のサービスに 分 けるものである。

2


(1) SaaS (サース: Cloud Software as a Service)

インターネット 経 由 のソフトウェアパッケージの 提 供 サービスのことで、 電 子

メール、グループウェア、 顧 客 情 報 管 理 ソフトなどが 含 まれる。

(2) PaaS (パース: Cloud Platform as a Service)

インターネット 経 由 のアプリケーション 実 行 用 のプラットフォームの 提 供 サー

ビスのことで、SaaS はこのプラットフォームの 上 で 動 く。

(3) IaaS (イアース: Cloud Infrastructure as a Service )

インターネット 経 由 のハードウエアやインフラの 提 供 サービスのことで、PaaS

の 下 位 レイヤーに 位 置 づけられ、 仮 想 化 サーバーや 共 有 ディスクなど、ユーザ

ーが 自 分 で OS などを 含 めてシステム 導 入 ・ 構 築 できる。

これらの3つのサービスは、 以 下 の 図 のような 階 層 構 造 をなしている。

Clients

User Interface Machine Interface

Application

Components

Services

Platform

Compute Network Storage

Infrastructure

Servers

Cloud Computing Stack

図 2 サービス 階 層 構 造 のイメージ

この 階 層 モデルは、クラウドコンピューティングにおいて 提 供 されるサービスの 全 体

像 を 理 解 する 手 助 けになるが、 実 際 に 提 供 されているサービスは 複 数 の 階 層 にまたがっ

ているケースが 多 い。 例 えば SaaS の 場 合 、PaaS の 上 に 構 築 されて 提 供 されているた

め、SaaS プラス PaaS が 実 態 のサービスとなっているため、ユーザー 側 は、その 組 み

合 わせを SaaS として 理 解 することがあるだろう。また IaaS を 提 供 する 事 業 者 は、PaaS

や SaaS を 組 み 合 わせてサービスを 提 供 することがあり、ユーザーからみれば3つの 階

3


層 を 意 識 することなく、 単 にクラウド 型 のサービスを 利 用 しているという 認 識 になるで

あろう。そこで 次 節 以 降 では、この3 階 層 モデルに 忠 実 に 準 拠 する 形 ではなく、 実 際 に

提 供 されているサービス 分 類 に 近 い 形 で、すなわち「SaaS」と「クラウドホスティン

グ」の2つに 分 類 する 方 法 でクラウドコンピューティングの 実 情 を 整 理 してみたい。

2.2 SaaS の 普 及

SaaS は、インターネット 経 由 でソフトウェアパッケージを 提 供 する 仕 組 みであり、

さまざまな 種 類 のサービスが 提 要 されている。 米 国 の 有 名 な SaaS プロバイダーとして、

顧 客 管 理 ソフトを 提 供 する Salesforce.com(Salesforce 社 )、 統 合 ビジネスソフトを 提

供 する Microsoft Online Services(Microsoft 社 )や Google Apps(Google 社 )などの

サービスがあげられる。 下 の 図 は、Google Apps で 利 用 可 能 なサービスのリストである。

図 3 Google Apps のサービス

Google Appsの 利 用 者 は 急 増 しており、 既 に 全 世 界 で 200 万 社 以 上 の 法 人 がこれを 利 用

している 1 。このサービスは、グループウェアと 呼 ばれてきた 組 織 内 でのコミュニケー

ションやコラボレーションを 効 率 化 し、 仕 事 上 で 必 用 なリソースを 有 効 に 配 分 するのに

役 立 つ。Gmailに 代 表 されるGoogle 社 のオンラインサービスは、 個 人 ユーザーによる 無

料 サービスの 急 激 な 利 用 の 増 加 によって 注 目 されたが、 最 近 では 法 人 ユーザーによる 有

料 サービスの 利 用 増 が 見 られる。

1

Google 社 発 表 。

4


日 本 においても、 主 に 日 本 の 法 人 向 けに SaaS 型 のサービスが 多 数 提 供 されている。

経 済 産 業 省 が 進 めている 施 策 の「J-SaaS」というプロジェクトのホームページでは、

日 本 国 内 のさまざまな SaaS が 紹 介 されている( 図 4 及 び 図 5)。

図 4 日 本 の SaaS(1)

とりわけ 財 務 会 計 や 給 与 計 算 といったカテゴリーに 属 する SaaS は、 中 小 企 業 を 中 心

に 今 後 多 くの 企 業 が 利 用 することになると 予 想 されており、 種 類 が 多 く 既 に SaaS ベン

ダー 間 での 競 争 が 激 化 している。また、 管 理 部 門 系 の SaaS 以 外 にも 図 5のように 会 社

でのさまざまな 活 動 を 支 援 するアプリケーションが 提 供 されている。

図 5 日 本 の SaaS(2)

5


日 本 でのSaaSの 普 及 促 進 のために 設 立 された 業 界 団 体 である「ASP・SaaSインダス

トリ・コンソーシアム(ASPIC)」による 調 査 では、 国 内 のASP・SaaS 事 業 者 数 は 約

1,500、 提 供 サービス 数 は 約 3,000 あり、SaaS 市 場 は 2015 年 までに 3 兆 円 規 模 に 急 拡

大 するであろうと 推 定 されている 2 。さらに 同 団 体 の 調 査 結 果 によれば、 日 本 の 法 人 に

おいて 実 感 されるSAP・SaaS 導 入 の 利 用 者 メリットは「 安 全 ・ 信 頼 性 の 確 保 」「コスト

の 直 接 削 減 効 果 」「 迅 速 かつ 自 由 度 の 高 い 経 営 」「 事 業 ・ 売 上 の 拡 大 」および「 中 小 企 業

にとっての 市 場 競 争 条 件 の 改 善 」など 多 岐 に 渡 っており、 今 後 の 市 場 拡 大 への 強 い 期 待

感 を 裏 付 けるものとなっている。

SaaS の 新 規 性 は、 従 来 型 のパッケージソフトと 対 比 すれば 分 かりやすい。ソフトウ

ェア 販 売 の 典 型 的 なパターンは、ソフトウェアをパッケージ 型 の 製 品 として、その 利 用

ライセンスを 販 売 する 形 態 である。 多 くの 場 合 、ユーザーは 自 社 コンピュータでそのソ

フトウェアを 稼 働 させて 利 用 する。それに 対 して SaaS では、ソフトウェアを SaaS 事

業 者 側 のコンピュータで 稼 働 させ、ユーザーはそのソフトウェアが 提 供 する 機 能 をネッ

トワーク 経 由 で 利 用 する。パッケージ 型 の 場 合 は、ソフトウエアライセンス 料 を 支 払 い、

運 用 のためのハードウエアを 用 意 する 必 用 があり 初 期 費 用 がかかる。ところが SaaS で

は、アプリケーションソフトをサービスとして 利 用 する。 利 用 者 は、ライセンス( 使 用

権 )を 購 入 せず、 料 金 を 利 用 量 や 期 間 に 応 じて 支 払 う 形 態 が 主 流 であって 初 期 費 用 は 少

なくて 済 む。

従 来 型 のパッケージソフトと 比 べた 場 合 、さまざまな 利 点 が 指 摘 されているものの、

セキュリティ 面 などにおける 不 安 も 指 摘 されている。 確 かに SaaS の 場 合 は、インター

ネットを 介 して 利 用 するため、 不 安 定 要 素 が 付 け 加 わる。とりわけ 不 安 視 されるのは、

重 要 なデータの 保 管 に 関 わる 点 である。しかしこの 点 においても、VPN( 仮 想 私 設 通

信 網 )を 経 由 して 事 業 者 のサーバーに 接 続 するなどの 方 法 に 留 まらず、さまざまな 方 法

でなるべく 不 安 を 払 拭 しようとしている。

2

「ASP・SaaSインダストリ・コンソーシアム(ASPIC)」のホームページより

6


クラウドコンピューティングのように 仮 想 化 技 術 を 駆 使 した 場 合 、セキュリティを 確

保 するために 必 要 な 対 処 項 目 は 増 加 する。 動 作 しているハードやソフトウェアがどこに

物 理 的 に 配 置 されているのかわからない 状 態 で 安 定 的 な 運 用 を 管 理 し、データセキュリ

ティ 含 めたコンプライアンスを 確 保 しなくてはならない。そのためにはデータの 暗 号 化

の 技 術 の 採 用 、 重 要 なデータの 保 管 場 所 についてのコントロールなども 必 要 であるが、

普 段 からの 運 用 技 術 の 重 要 性 がますます 高 まることになる。

そのような 観 点 から、クラウドコンピューティングの 進 展 に 伴 い、いわゆるマネージ

ドサービスと 呼 ばれるサーバー 運 用 ノウハウが 重 要 なり、 提 供 事 業 者 はその 分 野 のサー

ビス 拡 張 を 重 視 し 始 めている。リソースを 一 元 管 理 し、データセンターにおけるサービ

ス 状 況 の 可 視 化 を 進 めたりすることで 管 理 しやすい 仕 組 みを 構 築 したり、サービスレベ

ルを 自 動 的 に 一 定 以 上 に 維 持 するためのシステムの 構 築 などが 推 進 されてゆくことに

なるであろう。

SaaS は、 従 来 型 のパッケージソフトとの 比 較 において 新 規 性 と 効 率 性 が 指 摘 できる

が、これまでに 同 様 なサービス 提 供 が 無 かったわけではない。 特 に ASP と 呼 ばれるサ

ービスは、SaaS に 先 攻 して 数 年 前 から 多 くの 事 業 者 により 提 供 されてきた 同 種 のサー

ビスである。ASP は、Application Service Provider(=アプリケーションサービス 提 供

事 業 者 )の 略 語 で、ネットワークを 通 じてサービスを 提 供 する 事 業 者 のこと。SaaS は、

Software as a Service(=サービスとしてのソフトウェア)の 略 語 である。つまり ASP

は、SaaS 事 業 者 とほぼ 同 義 語 と 言 える。

SaaS は ASP が 提 供 してきたサービスの 言 い 換 えである。その 意 味 で 新 規 性 はない。

しかし SaaS という 別 名 が 与 えられることによって、ASP への 注 目 が 集 まっており、 業

界 内 での 期 待 感 は 高 まっている。

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2.3 クラウドホスティング

SaaS 事 業 者 の 前 身 としての ASP の 存 在 が 指 摘 できるが、おなじく IaaS 事 業 者 の 前

身 としてのホスティング 事 業 者 ( 英 語 圏 では Hoster と 呼 ばれる)が 存 在 する。IaaS は、

仮 想 化 されたコンピュータ 基 盤 をインターネット 経 由 のサービスとして 提 供 するもの

であり、これを 使 えば「サーバー」や「ソフトウェア」や「データセンターのスペース」

などを 自 分 で 購 入 する 代 わりに、 完 全 にアウトソースされたサービスとして 利 用 できる。

そしてそれは 既 に 世 界 中 で 多 くのホスティング 事 業 者 がレンタルサーバーとして 提 供

してきたサービスと 同 種 である。ホスティング 事 業 者 からみれば、クラウドコンピュー

ティングは 特 に 目 新 しいものではない。

ホスティング 事 業 者 は、これまでに3つの 種 類 のレンタルサーバーサービスを 提 供 し

てきた。 一 つ 目 は、 専 用 型 といわれるもので、1 台 のサーバーをまるごとユーザーへ 貸

し 出 すもので、サーバーの 設 定 に 関 する 自 由 度 が 最 も 高 い。2つ 目 は、 共 用 型 といわれ

るもので、1 台 のサーバーを 複 数 のユーザーで 共 有 するものであり、 設 定 の 自 由 度 は 低

くなるが、 安 価 なサービスである。そして3つ 目 は、 仮 想 専 用 サーバー(VPS)と 呼 ば

れるもので、 共 用 タイプとおなじく1 台 のサーバーを 複 数 のユーザーで 共 有 するものの、

仮 想 化 技 術 を 使 ってあたかも1 台 を 専 用 しているかのような、それに 近 い 自 由 度 を 獲 得

できる。

日 本 において、ホスティングサービスは 既 に 根 付 いており、 会 社 のホームページを 開

設 し、 社 員 の 電 子 メールを 使 えるようにするために 多 数 のユーザーが 利 用 している。 日

本 のホスティングサービスの 市 場 規 模 は、2009 年 の 国 内 の 法 人 向 けホスティングサー

ビスだけで 2,308 億 円 に 達 している 3 。

ホスティング 事 業 者 は、ビジネスの 見 直 しの 時 期 に 来 ている。 彼 らが 提 供 してきたサ

ービスは、 上 述 の3 種 類 のレンタルサーバーであったが、それをクラウドホスティング

3

国 際 大 学 グローバル・コミュニケーション・センター 主 催 ホスティングビジネス 研 究

会 調 べ

8


として 統 合 する 方 向 に 動 いている。ホスティング 事 業 者 が 活 用 してきた 仮 想 化 技 術 は、

仮 想 的 に 専 用 サーバーを 運 用 するタイプのものであったが、それをより 幅 広 く 応 用 し、

共 用 型 から 多 数 のサーバーを 並 列 運 用 するタイプに 至 るまでのラインナップを 揃 えよ

うという 方 向 性 が 見 受 けられる。つまり3つのタイプに 限 定 するのではなく、ごく 小 規

模 から 大 規 模 まで、フルレンジで、ユーザーの 希 望 に 合 わせてサーバーリソースをいか

ようにも 組 み 合 わせることのできるフルカスタマイズ 型 への 移 行 を 目 指 すものと 思 わ

れる。こうなれば、それはレンタルサーバーではなく、まさにクラウドホスティングサ

ービスであり、クラウドコンピューティングサービスである。

クラウド 型 のホスティングサービスは、「パブリッククラウド」と 呼 ばれるインター

ネット 経 由 の 一 般 向 けサービスと、「プライベートクラウド」と 呼 ばれる 企 業 内 ・ 事 業

者 内 利 用 のためのサービスに 分 類 されることがある。またその2つの 組 み 合 わせとして

の「ハイブリッドクラウド」という 分 類 もある。

米 国 の 有 名 なパブリッククラウドとして Amazon 社 が 提 供 する Amazon EC2 という

サービスがあげられる。これは、"Small(メモリ 1.7GB、ストレージ 160GB、32 ビッ

ト 1 仮 想 コア CPU)"から 最 大 "Quadruple Extra Large(メモリ 68.4GB、ストレージ

1690GB、64 ビット 26 仮 想 コア CPU)"までを 選 択 できるホスティングサービスである。

より 大 きなマシンパワーが 必 要 になった 場 合 は 即 時 に 調 達 することができること、そし

て 従 量 制 の 課 金 方 法 をとっているという 点 が 特 徴 的 である。

日 本 においては、 従 来 からのホスティング 事 業 者 はもちろんのこと、 大 手 キャリア、

大 手 コンピュータメーカー、そしてデータセンター 事 業 者 などが 新 規 参 入 を 表 明 してい

る。 例 えば、NEC 社 は「REAL IT PLATFORM」、NTT コミュニケーションズ 社 は

「BizCITY」、KDDI 社 は「クラウドサーバサービス」という 名 称 で 新 規 事 業 をスター

トさせた。そして 新 規 参 入 組 の 特 徴 は、 主 にプライベートクラウドのビジネス 受 注 に 重

きを 置 いている 点 があげられる。

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2.4 クラウドコンピューティングの 本 質

クラウドコンピューティングは、 将 来 的 に 大 きな 広 がりを 見 せる 可 能 性 があるが、 現

時 点 で 顕 在 化 しているサービスは、 一 つが SaaS であり、もう 一 つがクラウドホスティ

ングである。 前 者 はこれまでの ASP の 延 長 であり、 後 者 はレンタルサーバーの 発 展 系

である。それらは、クラウドコンピューティングという 言 葉 によって 業 界 の 内 外 に 注 目

されることで 大 キャンペーンが 繰 り 広 げられている 側 面 がある。 着 目 すべきは、キャン

ペーンにより 宣 伝 されるクラウドコンピューティングのメリットではなく、クラウドコ

ンピューティングがもたらそうとしている 変 化 の 本 質 である。

変 化 の 本 質 は、 以 下 の2つである。1つ 目 は、「IT の 所 有 から 利 用 へ」の 変 化 である。

これまではソフトウェアであれ、ハードウエアであれ、 運 用 に 必 用 なリソースであれ、

必 用 なモノを 選 定 し、 占 有 ないし 所 有 してシステムを 運 用 するケースが 多 く 見 られた。

クラウドコンピューティングにおいては、そのように 所 有 をせずに、 必 用 なものに 対 価

を 払 って 借 りる、という 変 化 がもたらされる。

2つ 目 の 本 質 は、クラウドコンピューティングが「 既 存 のサービスの 進 化 系 」という

ことである。 前 述 のように、クラウドコンピューティングに 先 立 って ASP やレンタル

サーバー 事 業 において、 同 様 ないし 類 似 の 展 開 がなされ、IT の 所 有 から 利 用 への 変 化

も 進 行 していた。しかしクラウドの 進 展 によって、その 流 れがより 顕 著 になり、より 大

規 模 かつ 広 範 囲 なものになると 予 想 される。

3. ホスティングおよびデータセンター 事 業 者 の 認 識

本 調 査 研 究 では、 前 述 の 変 化 の 本 質 についての 解 釈 を 確 かめるためにヒアリング 調 査

を 実 施 した。ヒアリング 調 査 では、 日 本 においてデータセンターないしホスティング 事

業 を 営 む 法 人 の 経 営 者 ないし 事 業 責 任 者 を 対 象 とし、2009 年 8 月 から 9 月 にかけて、

合 計 6 社 に 対 して 実 施 した。ヒアリング 調 査 により 以 下 のとおりいくつもの 興 味 深 い 課

題 が 明 らかになった。

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3.1 クラウドコンピューティングによって 生 まれる 新 しいビジネス

クラウドコンピューティングによって、 新 しいビジネスは 生 まれないという 意 見 があ

った。もちろんハードで 提 供 していたものがサービスに 代 わるとか、 課 金 方 法 が 変 わる、

そういう 程 度 の 変 化 は 起 きるものの、クラウドの 展 開 の 中 心 は、あくまでプラットフォ

ームの 変 化 なので、 新 しい 付 加 価 値 そのものを 生 み 出 すことはないという 考 えである。

他 方 で、 将 来 の 見 込 みとして 自 分 が 利 用 しているサーバーの 使 用 状 態 を 判 定 して、より

低 コスト、より 効 率 的 なサービスに 自 動 移 行 するような 仕 組 みが 可 能 となれば、きわめ

て 強 烈 な 価 格 競 争 に 突 入 しそうであるという 危 惧 も 示 された。

3.2 パブリッククラウドへの 評 価 と 期 待

パブリッククラウドといっても、 現 状 のホスティングサービスと 本 質 的 な 違 いはない

という 意 見 が 示 された。 従 来 のレンタルサーバーの 方 が 操 作 も 簡 単 で 価 格 競 争 力 もあり

そうであるとの 認 識 もある。スケールする 大 きさ、 値 段 の 付 け 方 ( 従 量 制 )が 新 しいが、

革 新 的 なものには 見 えないという 意 見 である。しかも 短 時 間 での 処 理 能 力 の 変 更 は、 現

在 のレンタルサーバーのサービスでもやろうと 思 えば 技 術 的 に 可 能 だがニーズが 少 な

いから 実 施 していないだけであるという 指 摘 もなされた。

また、 最 初 から 必 要 なスケールがわかっていれば、それに 最 適 なシステムをきちんと

設 計 して、ハードを 購 入 した 方 が 結 果 的 に 安 いこともあるという 意 見 があった。なお 従

量 制 は、 効 率 的 な 面 はあるものの、 毎 月 金 額 が 変 動 するとなれば、 予 算 計 画 が 立 てにく

いというデメリットも 指 摘 された。

3.3 プライベートクラウドへの 評 価 と 期 待

新 聞 などで、 大 きくプライベートクラウドを 取 り 上 げているが、すでにホスティング

事 業 者 がサービスを 提 供 しているということを 忘 れているという 指 摘 がなされた。 日 本

の 大 手 ハードメーカが 各 社 とも 仮 想 化 によってサービスを 月 3 万 円 程 度 で 提 供 する 予

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定 であるが、ホスティング 事 業 者 がより 質 の 高 いサービスを 安 く 提 供 しているところへ

の 参 入 は 可 能 なのであろうかという 疑 問 も 示 された。さらに、プライベートクラウドに

は、あまり 価 値 を 見 いださない、 自 社 だけで 余 ったリソースを 融 通 し 合 うことにどれほ

ど 意 味 があるのか、という 意 見 も 示 された。そしてプライベートクラウドは、 不 用 意 に

ブームに 乗 ると、 構 築 コストがかかり、 逆 にコスト 高 になってしまうこともあるという

考 えもあった。

3.4 従 来 型 のサーバー 運 用 との 比 較

クラウドは 大 規 模 化 が 可 能 で、 拡 張 性 が 高 いと 言 える。しかしホスティング 大 手 のシ

ステム 規 模 も 小 さくは 無 く、 数 十 から 数 百 台 のサーバーを 並 列 運 用 しているという 事 実

がある。 普 段 1 秒 に 100 回 程 度 のアクセス 数 が 突 然 100 万 回 に 急 増 するようなケース

であっても 正 常 に 処 理 できた 実 績 もある。 専 用 サーバーを 数 時 間 で 立 ち 上 げるサービス

も 実 施 している。よって 一 般 の 顧 客 にとって 従 来 型 のレンタルサーバーとクラウド 型 の

ホスティングサービスとの 間 には 大 きな 差 は 感 じられないだろうとの 予 想 が 示 された。

3.5 SaaS の 展 開 について

ホスティング 事 業 者 は、Web や Mail といった「インターネット 基 本 アプリ」を SaaS

にて 長 年 提 供 してきた。つまり SaaS ベンダーのさきがけである。

SaaS 事 業 者 は、 申 込 や 運 用 を(そうした 経 験 のある)ホスティング 会 社 に 任 せれば

よいのにと 思 う、との 意 見 があった。そしてクラウド 環 境 での SaaS はこれからの 重 要

な 流 れであり、SaaS ベンダーと 一 緒 にいっそう 推 進 してゆきたいとの 期 待 も 示 された。

3.6 米 国 事 例 評 価 (グーグル 社 、アマゾン 社 など)

アマゾン 社 のクラウドサービスは 値 段 が 高 く、 使 いづらい。サービスは 停 止 するし、

データも 吹 っ 飛 ぶ、という 指 摘 があった。 他 方 で、アマゾンやグーグルのサービスは、

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よく 落 ちるといわれるが、そのうち 落 ちなくなると 思 うという 見 解 もあった。そもそも

米 国 では、 米 国 内 のインターネット 回 線 が 不 安 定 であるためクラウドのサービスだけ 安

定 性 を 高 めても 意 味 がない。ところが 日 本 では 回 線 が 安 定 しているので、サーバーの 安

定 性 も 強 く 求 められる、という 理 解 も 示 された。

さらにクラウドサービスの 特 徴 の 一 つとされる 従 量 課 金 は、 期 間 限 定 利 用 や、アクセ

スに 関 する 強 烈 な 季 節 性 がある 場 合 など、かなり 珍 しいケースしかコスト 削 減 にならな

いという 意 見 があった。

3.7 米 国 事 例 への 評 価 (セールスフォースなどの SaaS)

SaaS の 先 攻 例 についての 評 価 を 求 めたところ、アプリケーションをグローバルな 視

点 から 開 発 し、サービスを 提 供 する 場 合 、 提 供 されているサービスに 業 務 を 合 わせるの

で 良 しとするタイプのライトユーザには 利 用 されると 思 うという 意 見 があった。 同 時 に、

業 務 要 件 へのマッチングを 一 定 以 上 要 求 したとたんに、 個 別 によく 検 討 された、 地 域 性

も 考 慮 されたものにならざるを 得 ない、という 指 摘 もあった。

なお、セールスフォースは、それを 利 用 するユーザーにとって 優 れているから 利 用 し

ているのであって、クラウドプラットフォームであるからとか、SaaS であるから 使 う、

といことではない、という 本 質 論 も 述 べられた。また、 米 国 発 の SaaS は、 日 本 人 にと

って 使 いやすいとは 限 らない。 今 後 は 日 本 人 向 けのサービス、 日 本 人 が 好 むサービスが

求 められるはずであるとの 指 摘 もあった。

3.8 ホスティングビジネスの 将 来 ( 共 用 、 専 用 、VPS)

ホスティングのサービスそのものは、クラウドの 影 響 はあまり 受 けないという 意 見 が

あった。しかし 新 規 参 入 の 事 業 者 により 競 争 が 激 化 する 可 能 性 も 指 摘 された。

またホスティング 事 業 者 は、 自 社 が 提 供 するサービスのプラットフォームをすべてク

ラウドに 集 約 してゆくことになるだろうという 予 測 も 示 された。こうすることで、 共 用

13


タイプから 大 規 模 専 用 サーバー 群 的 な 運 用 まで 完 全 フルカスタマイズが 可 能 となる。し

かし 実 際 には、お 客 様 へクラウドプラットフォームベースのサービスは、わかりやすい

ようにメニュー 化 して 提 供 することになるだろうという 意 見 もあった。

3.9 変 わる 業 態 (SIer、ハードベンダー)

SIer は、クラウドコンピューティングの 流 れによって 大 きな 影 響 を 受 ける 可 能 性 が

あると 指 摘 されている。 今 回 のヒアリングでは、ハードからサービスを 売 る 方 向 に 変 わ

るだけで、 機 能 設 計 の 仕 事 はなくならず、あまり 影 響 を 受 けないという 見 解 があった。

他 方 、Sier の 売 り 上 げと 利 益 率 が 減 る( 保 守 費 とライセンス 費 が 減 る)という 意 見 も 示

された。また、ハードメーカはホスティング 事 業 者 及 びデータセンター 事 業 者 が 顧 客 だ

ったが、 自 らもクラウド 型 サービスを 提 供 し 始 めるとホスティング 事 業 者 との 競 合 とな

るとの 指 摘 もあった。

3.10 米 国 の 主 要 企 業 との 競 争 に 勝 てるか(サービスの 質 、 安 定 性 、 価 格 、セ

キュリティ、サポート)

グーグルは、あまりにも 巨 大 で 勝 てるとは 思 っていないが、 日 本 市 場 のホスティング

サービスにおいては 勝 てるという 意 見 が 多 かった。そもそもアメリカと 日 本 では、ユー

ザーから 求 められるサービスレベルが 違 い、 日 本 的 ホスティングをアメリカで 展 開 して

も、そんなに 良 いものが 求 められていないという 現 実 がある、という 指 摘 もあった。ま

た、 遠 くのアメリカのリソースを 使 う、というのは 非 効 率 、 不 安 定 であり、 日 本 の 重 要

なデータは、 日 本 におかなくてはならないというのはあたりまえという 意 見 もあった。

3.11 クラウドのいっそうの 展 開 に 必 要 な 技 術

クラウドの 中 核 的 な 技 術 である 仮 想 化 技 術 の 進 展 、セキュリティの 向 上 、グリッド 的

な 技 術 の 進 歩 が 必 要 であるとの 指 摘 があった。さらに 安 定 化 技 術 や、ストレージの 処 理

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性 能 やコストパフォーマンスも 重 要 であり、オープンソースの 標 準 仮 想 化 O/S が 必 要

との 意 見 もあった。また、ユーティリティ 的 な 技 術 、すなわち 運 用 管 理 ツール、 課 金 ツ

ールなども 不 足 していて、 運 用 面 のテクノロジーは、まだまだこれからであるとの 見 解

もあった。そして 現 時 点 では、アプリケーションが 仮 想 化 環 境 で 動 かないものが 多 い( 安

定 性 に 不 安 も 残 る)、SLA (Service Level Agreement) の 対 象 となってくると、それの

ためにきちんと 管 理 できるツールが 必 要 、セキュリティレベルの 設 定 や、データの 置 き

場 所 指 定 などが 容 易 にできるようにならないと 対 応 できない、などのさまざまな 指 摘 が

なされ、クラウドコンピューティングの 発 展 のためには 多 くの 技 術 的 課 題 があることが

示 された。

3.12 ヒアリング 結 果 の 要 旨

以 上 のように、ヒアリング 調 査 によって、クラウドコンピューティングに 関 するホス

ティングならびにデータセンター 事 業 者 によるさまざまな 見 解 が 示 されたが、それらは

短 期 的 な 視 点 と 長 期 的 な 視 点 に 分 けて、 以 下 のように 要 約 が 可 能 である。

まず 短 期 的 な 観 点 から、 以 下 の 点 を 指 摘 できる。 現 在 米 国 で 提 供 されているパブリッ

ククラウド 型 サービスは、ニーズを 射 止 めていないので、 日 本 では 普 及 しないという 見

解 が 見 られることである。そして 企 業 向 けのプライベートクラウドの 構 築 についても 有

効 性 は 限 定 的 にしか 認 められないという 自 負 が 確 認 できた。 但 しデータセンターやホス

ティング 事 業 者 は、 仮 想 化 技 術 の 安 定 性 に 十 分 配 慮 しながら、サービスを 効 率 良 く 提 供

するための(プライベートな、しかし 最 終 的 には 顧 客 向 けの)クラウドプラットフォー

ムを( 大 々 的 に) 構 築 してゆくことになると 予 想 される。 重 要 なポイントは、 短 期 的 に

は 日 本 のデータセンター&ホスティングサービスは 突 出 した 安 定 性 、 優 れたサポート、

超 低 価 格 ( 月 125 円 から)という 優 位 性 により「 負 けない」という 考 えが 浸 透 してい

る 可 能 性 があることである。

そして 長 期 的 な 観 点 から、 以 下 の 点 を 指 摘 できる。まず、 将 来 おいて、アプリケーシ

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ョンは 個 別 性 や 地 域 性 に 制 約 されるが、プラットフォームレイヤーのサービスは、グロ

ーバルな 競 争 に 巻 き 込 まれる 可 能 性 に 対 する 危 機 感 が 存 在 する。そして 長 期 的 には、ク

ラウドプラットフォームが 著 しく 進 展 し、サーバー 関 連 リソースの 希 少 性 がますます 薄

れ、サービス 選 定 にあたっての 流 動 性 が 高 くなるかもしれない。そうなれば、PaaS や

IaaS のレイヤーにおいては、きわめて 強 烈 な 価 格 競 争 に 突 入 する 可 能 性 があるとの 認

識 を 確 認 できた。そして 長 期 的 観 点 からの 重 要 なポイントは、 技 術 的 な 課 題 は 多 く 残 さ

れており、クラウドプラットフォームの 普 及 には 時 間 がかかるという 事 実 認 識 である。

こうした 短 期 、 長 期 的 な 見 解 は、ヒアリング 調 査 において 確 認 できた。 但 し、これら

の 指 摘 は、 業 界 内 の 総 意 であるかどうかはわからない。そのことを 調 べるためには、よ

り 多 くのサンプルを 対 象 とした 定 量 的 な 調 査 が 求 められる。

4. グリーン IT ネットワークの 実 現

4.1 マクロ 的 な 主 要 課 題

クラウドコンピューティングの 進 展 により、それを 利 用 するユーザーは、 効 率 化 やコ

スト 削 減 、サービスの 向 上 などのメリットを 享 受 できるかもしれない。そのようなミク

ロ 的 な 期 待 感 とは 別 に、よりマクロ 的 な 観 点 からの 期 待 を 議 論 してみたい。マクロ 的 な

主 要 課 題 には「 中 小 企 業 の 生 産 性 の 向 上 」や「IT 企 業 のグローバル 展 開 の 推 進 」とい

ったものが 上 げられるが、 本 稿 ではそれらと 並 んで 重 要 視 されている「グリーン IT ネ

ットワークの 実 現 」についての 議 論 を 取 り 上 げる。

4.2 環 境 負 荷 軽 減 の 切 り 札 としての IT

クラウドコンピューティングの 進 展 によって、 環 境 負 荷 (CO2)にどのような 影 響 を

与 えることになるのであろうか。その 点 についての 検 討 が 業 界 内 で 始 まっている。 結 論

としては、 各 企 業 における IT 関 連 の 重 複 投 資 の 回 避 、 電 力 消 費 量 の 削 減 、IT の 活 用 促

進 による、 人 やモノの 流 れの 効 率 化 などを 通 じて 省 エネ 効 率 がアップし、 産 業 全 体 の 環

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境 負 荷 は 軽 減 すると 見 られている。

ところが 一 部 にデータセンターは 環 境 負 荷 を 増 大 させるマイナス 要 因 であるという

意 見 がある。しかしこれは 次 のような 誤 った 理 解 に 基 づくものである。 誤 った 理 解 とは、

「データセンターは 大 量 の 電 気 を 使 う」がゆえに「 大 量 の CO2 の 発 生 源 」に 他 ならず、

クラウドの 進 展 のみならず、IT の 普 及 そのものが 電 気 の 大 量 消 費 をもたらす 悪 い 副 作

用 を 有 しているという 理 解 である。

しかし 実 際 には、IT 化 の 促 進 は CO2 削 減 の 切 り 札 の1つである。クラウドコンピュ

ーティングなどによる IT の 利 用 が 促 進 されれば、 当 然 のこととしてデータセンターの

活 用 が 増 大 するために、データセンターが 利 用 する 電 気 が 増 えることは 確 かである。し

かしそのことは、 社 会 全 体 、 産 業 全 体 における 人 やモノの 流 れを 効 率 化 させるため、ト

ータルの 環 境 負 荷 は 軽 減 されることになる。つまりデータセンターの 活 用 により 増 える

電 気 よりもそれにより 社 会 全 体 で 節 約 できる 電 気 の 量 がはるかに 大 きいということで

ある。 従 って、 環 境 負 荷 の 軽 減 のためには、むしろ 積 極 的 にデータセンターを 利 用 すべ

きとさえ 言 える。

但 しそのことは、データセンターにおける 省 エネ 化 を 軽 視 してよいということではな

い。むしろ 役 割 の 集 中 するデータセンターにおける 省 エネ 努 力 は、そのこと 自 体 が 社 会

全 体 の 環 境 負 荷 の 軽 減 に 結 びつく 時 代 が 近 づこうとしている。 日 本 のみならず、 世 界 中

でグリーン IT を 推 進 してゆくべきであろう。

4.3 データセンターにかかわる 指 標 の 問 題 点

データセンターの 省 エネ 化 の 先 進 的 な 具 体 例 として、コンテナ 型 データセンターが 話

題 になることがある。マイクロソフト 社 やグーグル 社 などは、コンテナ 型 データセンタ

ーを 積 極 的 に 建 設 している。それにより、PUE(Power Usage Effectiveness )=1.2

を 実 現 したという 報 告 もある。

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PUE は、データセンターの 省 エネ 指 標 の1つであり、 以 下 の 計 算 式 で 求 められる。

PUE = データセンター 全 体 の 消 費 電 力 ÷ サーバーなどの IT 機 器 の 消 費 電 力

PUE が 大 きな 値 になると 非 効 率 で、1に 近 いほど 効 率 的 である。

PUE という 指 標 は、 日 本 にとって 不 利 な 指 標 であるという 問 題 点 を 抱 えている。 例

えば、 日 本 のコンピュータメーカーが 得 意 とするサーバーなどの 機 器 の 省 エネ 化 は 数 値

を 悪 化 させる。つまりサーバー1 台 あたりのエネルギー 効 率 を 向 上 させると、PUE に

はその 努 力 は 反 映 されないどころか、 省 エネにマイナスという 評 価 の 評 価 がなされると

いう 欠 陥 がある。また、サーバーなどの 機 器 の 演 算 能 力 は 考 慮 されない。つまり 同 じ 消

費 電 力 の IT 機 器 がより 高 い 演 算 能 力 を 発 揮 した 場 合 、その 改 善 は 数 値 に 反 映 されない。

また、 巨 大 な 土 地 に 照 明 をあまり 使 わない 設 備 を 作 れば PUE 値 は 良 くなり、 日 本 のよ

うな 狭 い 国 土 では 不 利 となる。さらにオフィスが 併 設 されているデータセンターは

PUE の 値 が 悪 くなるという 傾 向 もある。このように、PUE という 指 標 には 問 題 があり、

省 エネ 指 標 としてはふさわしくない。ところがそれを 業 界 ないし 政 府 施 策 レベルでの 目

標 数 値 としようという 意 見 もあり、そうした 考 えは 採 用 されるべきではない。

また、データセンターの 善 し 悪 しを 判 断 する 別 の 指 標 として、 米 国 アップタイム・イ

ンスティテュートの 評 価 基 準 がある。これは、 下 記 の 図 のように Tier I( 最 低 )から

Tier IV( 最 高 )まで 4 段 階 でデータセンターを 評 価 するものである。

図 6 Tierの 主 要 な 属 性 ( 出 展 :The Uptime InstituteのWhite Paper) 4

4

独 立 行 政 法 人 情 報 通 信 研 究 機 構 (NICT)の 以 下 ホームページより。

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この Tier 基 準 も 問 題 が 多 く、 日 本 のデータセンターの 実 情 に 合 ない。この 指 標 は、 米

国 の 不 安 定 な 電 力 事 情 を 前 提 としており、 日 本 でははるかに 高 い 稼 働 率 があたりまえの

ように 要 求 される。PUE と 同 様 に、 米 国 の 都 合 から 離 れたスタンダードの 制 定 が 必 要

であり、 日 本 のデータセンター 業 界 内 では 今 後 の 検 討 が 強 く 望 まれている。

4.4 データセンターに 関 しての 求 められる 施 策

日 本 のデータセンターは、いくつもの 点 で 国 際 的 にみて 優 れている。まず、 優 れた

IT 技 術 を 有 する 人 材 がデータセンターで 働 いている。そして 優 れた 電 力 、 通 信 インフ

ラに 支 えられており、 優 れた 環 境 技 術 の 活 用 も 可 能 である。さらに 際 立 った 政 治 的 安 定

性 が 実 現 されている。そして 日 本 のデータセンターでは、 日 々のカイゼンがなされてお

り、サポート 等 においても、おもてなしの 精 神 に 満 ちているケースが 多 い。

グローバルな 競 争 における 日 本 のデータセンターの 最 大 の 課 題 は、 高 い 電 気 代 である。

日 本 のデータセンターのコストのうち、 大 部 分 を 占 めるのは 電 気 料 金 であるが、 日 本 は

国 際 的 にみて 電 気 代 が 高 い。 例 えば 米 国 との 比 較 では、かつてほどの 価 格 差 はないもの

の 2006 年 の 時 点 で 産 業 用 電 気 料 金 は、 日 本 は 米 国 の 約 2 倍 である。

図 7 高 い 日 本 の 電 気 料 金

http://www.venture.nict.go.jp/ezp/index.php/venture/node_2672/node_2755/node_15

953/node_15955

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こうした 事 情 から、データセンターは、これまでに 経 営 の 最 重 要 イシューの1つとし

て、 省 エネ(CO2 削 減 )に 積 極 的 に 取 組 んできた。 他 人 から 省 エネの 必 要 性 を 指 摘 さ

れる 以 前 から、グリーン IT の 推 進 は、 会 社 にとっての 死 活 問 題 であった。データセン

ターは 少 なくとも 部 分 的 にグローバルな 競 争 に 巻 き 込 まれている。リアルタイム 性 や 大

容 量 のデータの 迅 速 な 転 送 などが 要 求 されない 限 り、 多 くのケースでデータセンターの

所 在 地 が 日 本 でなくても 構 わない。そうしたグローバルな 価 格 競 争 の 圧 力 により、たと

え 電 気 代 が 高 くても 国 際 的 な 標 準 と 大 きくかけ 離 れた 価 格 設 定 は 不 可 能 である。このこ

とは、 結 果 的 に 日 本 のデータセンター 事 業 者 の 低 い 収 益 率 に 直 結 していると 考 えられる。

日 本 のデータセンターの 国 際 競 争 力 向 上 のためには、 電 気 代 負 担 の 軽 減 が 欠 かせない。

それが 可 能 となるような 産 業 施 策 の 実 施 は、 業 界 が 熱 望 するものである。そして 日 本 の

事 情 に 合 ない 指 標 をベースとした 目 標 を 設 定 するのではなく、むしろ 日 本 に 合 った 別 の

指 標 を 提 案 すべきである。またデータセンターへ CO2 削 減 義 務 (ないしコスト 負 担 )

を 強 いるべきでなく、むしろ 電 気 代 を 下 げる 努 力 、 国 際 標 準 により 近 い 電 気 代 負 担 で 済

むような 展 開 を 期 待 すべきであろう。

日 本 の 電 気 代 は、 国 際 標 準 と 比 べると 値 段 が 高 いが 品 質 も 高 い。 現 在 の 高 い 品 質 を 保

ちながらより 国 際 標 準 に 近 い 料 金 が 実 現 できれば 日 本 社 会 全 体 に 朗 報 となる。 近 年 話 題

となっているスマートグリッドの 展 開 は、その 一 助 となる 可 能 性 がある。また 従 来 の 電

気 料 金 体 系 にとらわれること 無 く、 例 えば 原 子 力 発 電 を 使 うことを 前 提 とした 固 定 料 金

制 の 導 入 などの 工 夫 によって 電 力 の 提 供 側 にとっても、データセンター 側 にとっても 相

互 にメリットのある 工 夫 も 検 討 すべきであろう。

5. 日 米 の 施 策 と 設 定 課 題

5.1 日 本 における 施 策

クラウドコンピューティングの 進 展 は、 業 界 内 での 強 い 関 心 事 であるだけでなく、 行

政 サイドも 強 い 関 心 を 示 している。 主 要 国 では 既 にいくつかの 具 体 的 な 政 府 系 の 施 策 が

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実 施 に 移 されており、 産 業 政 策 の 主 要 テーマの1つとして 着 目 されてきている。

経 済 産 業 省 では、2008 年 1 月 21 日 に SaaS 向 け SLA ガイドラインを 提 示 した。こ

れは、 企 業 の 経 営 者 および 情 報 システム 担 当 者 が SaaS を 利 用 するにあたって 適 切 な 取

引 関 係 を 確 保 し、より 効 果 的 に SaaS を 利 用 することを 目 的 としたものである。 情 報 セ

キュリティ 確 保 の 観 点 に 重 点 を 置 き、SaaS の 特 徴 と 利 用 事 例 についても 解 説 している。

同 省 ではさらに 2008 年 9 月 9 日 に 発 表 した「 新 経 済 成 長 戦 略 」の 改 訂 の 中 で「グリー

ン・クラウドコンピューティング」の 技 術 開 発 や 実 用 化 に 取 り 組 むことを 明 らかにした。

また 総 務 省 は、2008 年 11 月 11 日 に「ICTビジョン 懇 談 会 」における 検 討 アジェン

ダ( 案 )」の 中 で、クラウドコンピューティングにより「 規 模 の 経 済 」が 働 く 傾 向 が 強 ま

っており、 海 外 に 情 報 が 流 れてしまう 点 を 指 摘 している。 続 く 2008 年 12 月 4 日 に 開

催 されたICTビジョン 懇 談 会 基 本 戦 略 WG( 第 2 回 )においては、クラウドコンピュー

ティングは 新 規 産 業 に 対 してマーケットへの 参 入 障 壁 を 下 げるという 意 見 が 示 された。

そして 2009 年 1 月 9 日 のICTビジョン 懇 談 会 基 本 戦 略 WG( 第 3 回 )では、「 自 治 体 の

システム 構 築 におけるSaaS、クラウドコンピューティング 等 の 技 術 を 使 用 した 国 レベ

ルでの 全 体 最 適 化 の 検 討 が 必 要 」であるという 意 見 が 出 されている。さらに 2009 年 1

月 27 日 に 開 催 された「ICTビジョン 懇 談 会 ( 第 2 回 )」では「ICTを 必 要 なだけ 利 用 す

るというクラウドコンピューティング 技 術 などを 重 点 的 に 活 用 し、 経 営 効 率 化 や 新 産 業

育 成 などを 集 中 的 に 展 開 していくことも 必 要 ではないか。」という 提 言 が 出 され、クラ

ウドコンピューティングにかかわる 施 策 の 必 要 性 が 示 唆 された 5 。

経 済 産 業 省 が 実 施 している 事 業 の1つが「 中 小 企 業 向 け SaaS 活 用 基 盤 整 備 事 業 」で

ある( 図 8 および 図 9)。これは、 主 に 従 業 員 数 20 人 以 下 の 小 規 模 企 業 を 対 象 として、

財 務 会 計 などのバックオフィス 業 務 から 電 子 申 請 までを SaaS を 活 用 して 一 貫 して 行 え

るワンストップサービスを 官 民 連 携 して 構 築 ・ 普 及 させようとするものである。

5

2007 年 から 2009 年 の 主 要 官 公 庁 の 動 向 は、 以 下 を 参 照 した。

http://ja.wikipedia.org/wiki/Software_as_a_Service

21


図 8 中 小 企 業 向 け SaaS 活 用 基 盤 整 備 事 業 のイメージ(1)

図 9 中 小 企 業 向 け SaaS 活 用 基 盤 整 備 事 業 のイメージ(2)

22


また 総 務 省 は 財 団 法 人 マルチメディア 振 興 センターを 通 じて「ASP・SaaS 安 全 ・ 信

頼 性 に 係 る 情 報 開 示 認 定 制 度 」を 開 始 した 6 。これは、 今 後 、ASP・SaaSサービスの 利

用 を 考 えている 企 業 や 地 方 公 共 団 体 などが、 事 業 者 やサービスを 比 較 、 評 価 、 選 択 する

際 に 必 要 な「 安 全 ・ 信 頼 性 の 情 報 開 示 基 準 を 満 たしているサービス」を 認 定 するもので

ある。

自 民 党 政 権 当 時 の 2009 年 3 月 には、 鳩 山 総 務 相 の 私 的 懇 談 会 「ICT ビジョン 懇 談 会 」

において「 霞 が 関 クラウド」の 構 築 など 先 端 ICT で 100 兆 円 の 新 市 場 創 出 を 発 表 した。

そこでは、デジタル 新 産 業 の 創 出 、 霞 が 関 クラウドの 構 築 、ユビキタスタウン 構 想 の 推

進 などが 計 画 された。さらに ICT 産 業 の 国 際 競 争 力 の 強 化 やグリーン ICT の 開 発 ・ 展

開 なども 取 り 上 げられ、クラウドコンピューティング 関 連 の 政 府 主 導 の 施 策 ビジョンが

発 表 され、 一 部 は 実 施 されている。

霞 ヶ 関 クラウドは、 目 玉 の 政 策 の1つである。 政 府 における 情 報 システムを、クラウ

ドコンピューティングなどの 革 新 的 技 術 を 活 用 し、 関 係 府 省 が 連 携 してハードウエアの

統 合 ・ 集 約 化 や 共 通 機 能 のプラットフォーム 化 を 実 現 し、「 霞 が 関 クラウド( 仮 称 )」を

2015 年 までに 段 階 的 に 整 備 していくというものである。

2009 年 の 民 主 党 への 政 権 交 代 により、これらの 施 策 のいくつかは、 計 画 推 進 が 不 透

明 となっている。 他 方 で、2010 年 1 月 に 原 口 総 務 大 臣 主 導 による「 原 口 ビジョン」が

示 され、ICT 活 用 による 2050 年 を 見 据 えた 達 成 目 標 や 知 識 情 報 革 命 の 実 現 といったビ

ジョンが 示 された。しかし、 原 口 ビジョンの 中 にはクラウドコンピューティングという

言 葉 は 登 場 せず、 今 後 の 展 開 は 未 だに 必 ずしも 明 らかではない。

5.2 米 国 における 施 策

米 国 においては、 民 間 主 導 のクラウドコンピューティングの 展 開 が 世 界 をリードして

いる。 同 時 に 政 府 施 策 も 日 本 より 先 行 している。そして 米 国 では、 政 府 機 関 が 自 らクラ

6

認 定 制 度 の 運 用 に 関 する 事 務 は、 特 定 非 営 利 活 動 法 人 ASP・SaaSインダストリ・

コンソーシアム(ASPIC)

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ウド 型 のサービスを 積 極 的 に 構 築 、 運 用 しはじめている。

米 国 防 総 省 は、 軍 隊 などに 提 供 しているアプリケーションをホスティングしたり、 情

報 処 理 などのコンピューティングサービスを 提 供 したりする RACE(Rapid Access

Computing Environment)と 呼 ばれるプライベートクラウドを 構 築 し、2009 年 10 月 か

ら 試 験 運 用 開 始 した。 国 防 総 省 はもともと、それより 2 年 ほど 前 からオンデマンドコン

ピューティングサービスを 立 ち 上 げ、コンピューティングとストレージ 容 量 を 利 用 した

分 だけ 顧 客 に 課 金 するモデルを 導 入 していた。ところが 必 要 なサービス 開 始 までに 何 十

日 もかかる 場 合 があり 運 用 に 支 障 があることがあった。これに 対 し RACE は 24 時 間 利

用 可 能 で、 政 府 系 クレジットカードによる 支 払 いもできるクラウドサービスを 構 築 した。

これにより 必 要 サービスの 開 始 までの 時 間 が 数 時 間 まで 短 縮 されたという 報 告 がある。

またワシントン DC 政 府 は、 業 務 アプリケーションを Google Apps に 移 行 した。2008

年 11 月 時 点 の 報 道 によるとおよそ 5,000 人 が 利 用 を 開 始 しており、さらに 約 3,000 人

が 移 行 段 階 にあった。なお、Google のツールを 利 用 することは 義 務 ではないため、 残

りの 3 万 人 ほどの 職 員 の 移 行 は、 職 員 自 身 またはその 上 司 の 要 請 を 受 けて 随 時 行 われる

ことになる。

さらに 2009 年 2 月 、 連 邦 政 府 公 式 ウェブポータルである USA.gov のホスティング

をクラウドコンピューティング 型 に 移 行 すると 発 表 し、2009 年 5 月 からバージニア 州

カルペッパーにある 同 社 のデータセンターで 運 用 を 開 始 した。 年 間 1 億 4,000 万 人 以 上

が 訪 問 する 連 邦 政 府 のポータルをクラウド 型 に 移 行 することによって、 管 理 コストの 削

減 と、クラウドコンピューティングに 関 する 経 験 を 他 の 政 府 機 関 と 共 有 する 狙 いがある。

加 えて 米 政 府 は 9 月 15 日 ( 現 地 時 間 )、 米 カリフォルニア 州 マウンテンビューにある

NASA Ames Research Center でクラウドコンピューティング 推 進 計 画 を 打 ち 出 し、そ

の 一 環 としてクラウド 上 で 動 作 するアプリケーションの 売 買 を 可 能 にするサイト

「Apps.gov」の 立 ち 上 げを 発 表 した。

24


5.3 設 定 すべき 課 題

日 本 においても、より 積 極 的 にクラウドコンピューティングに 関 連 した 施 策 を 推 進 す

べきであろう。その 際 に、 以 下 の3つの 問 題 意 識 を 指 摘 したい。

1つ 目 は、「 誰 のための 施 策 か」という 観 点 である。クラウドコンピューティングの

議 論 の 多 くは、 無 意 識 に 大 企 業 によるクラウド 活 用 のみを 念 頭 においている。しかし、

日 本 の 法 人 の 大 多 数 を 占 める 中 小 企 業 への 配 慮 も 必 要 である。そしてその 際 には、 中 小

企 業 の IT 利 用 実 態 ( 及 びニーズ)を 十 分 に 把 握 した 上 で 課 題 を 設 定 すべきである。2

つ 目 は「 主 要 な 経 済 目 標 の 設 定 」という 観 点 である。クラウドコンピューティングの 進

展 において 期 待 すべきは、 第 一 に「 国 内 の 公 的 機 関 および 中 小 企 業 における 労 働 生 産 性

の 向 上 」であり、 第 二 に「 新 たな 国 際 競 争 力 のある 事 業 分 野 の 開 拓 と 育 成 」であろう。

さらに3つ 目 は、「 短 期 的 および 長 期 的 な 重 点 課 題 の 整 理 」という 観 点 である。クラウ

ドコンピューティングは、 短 期 的 な 展 開 として SaaS の 普 及 から 始 まるであろう。その

ため 政 府 自 身 による 調 達 と、 民 間 による 新 たな 販 売 方 式 の 確 立 が 急 務 である。さらに 長

期 的 にはプラットフォーム 型 のサービスの 国 際 競 争 力 強 化 が 肝 心 であり、 事 業 者 の 大 規

模 化 とグローバル 展 開 を 視 野 に 入 れた 施 策 を 検 討 する 必 要 があるであろう。

以 上 のような 観 点 からクラウドコンピューティングに 関 して 求 められる 施 策 を 検 討

すれば、 以 下 のように 整 理 できる。 短 期 的 に 実 施 すべき 施 策 は、 以 下 のとおりであろう。

短 期 的 施 策 (1) 公 的 機 関 による SaaS 調 達 の 促 進 策

SaaS の 普 及 を 促 進 するために、「 中 央 政 府 機 関 による 積 極 的 な( 率 先 した)SaaS の

調 達 」や「 公 的 機 関 に 特 化 した 調 達 ガイドラインの 制 定 」は 急 務 であろう。なお 実 施 に

あたり、 取 組 むべきでは「ない」 案 件 もある。 例 えば、 関 連 する 各 種 法 制 度 ( 電 気 通 信

事 業 法 など)の 改 訂 を 試 みれば、それは 長 期 化 するため、 短 期 的 な 施 策 とすべきではな

いだろう。また、SaaS 調 達 の 促 進 に 際 しては、 海 外 のサービスの 過 大 評 価 は 避 けるべ

きである。

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短 期 的 施 策 (2) 中 小 企 業 による SaaS 利 用 を 促 進 するための 施 策

さらに 中 小 企 業 の SaaS 利 用 を 促 進 するために「SaaS の 中 小 企 業 向 け 販 売 に 関 する

新 たなビジネスモデルの 開 拓 」が 必 要 であろう。「どのようにすれば 中 小 企 業 に SaaS

が 普 及 するかを 調 査 」し、「 中 小 企 業 の SaaS 導 入 に 際 しての 減 税 や 公 的 補 助 金 」や「 中

小 企 業 向 けの 全 国 的 な 利 用 促 進 キャンペーン」が 効 果 的 であろう。

長 期 的 施 策 (1)クラウドコンピューティング 技 術 発 展 のための 国 による 実 証 型 事 業

長 期 的 な 成 果 を 目 指 した 施 策 として、クラウドコンピューティングの 技 術 的 な 進 展 を

支 援 するために 複 数 年 にまたがった「 次 世 代 の 仮 想 化 技 術 の 研 究 開 発 及 び 実 証 研 究 」や

「 規 模 とエネルギー 効 率 を 高 める 運 用 技 術 の 研 究 及 び 実 証 実 験 」、「クラウドにおける 安

全 ・ 安 心 を 高 めるための 研 究 及 び 実 証 実 験 」、および「クラウドコンピューティング 技

術 の 国 際 標 準 化 に 関 する 調 査 研 究 」などが 求 められるであろう。

長 期 的 施 策 (2) 日 本 のサーバー 関 連 サービス 事 業 者 の 国 際 競 争 力 強 化 のための 施 策

長 期 的 施 策 の 2 つ 目 として「 構 造 的 なコスト 高 騰 要 因 の 排 除 ( 電 気 代 、 不 動 産 税 、 耐

震 コストなど)」や「 国 内 におけるクラウド 型 サービス 利 用 の 地 域 的 格 差 の 解 消 策 」の

実 施 が 望 まれる。これにより 日 本 のクラウド 型 サービスを 提 供 する 事 業 者 やデータセン

ターの 国 際 競 争 力 が 地 域 的 な 格 差 を 解 消 しながら 向 上 するものと 期 待 される。

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6. まとめ

日 本 は 民 間 ベースでも、 政 府 の 施 策 においてもクラウドコンピューティングの 展 開 に

関 して 米 国 を 追 随 する 立 場 にあり、 官 民 における 積 極 的 な 展 開 が 求 められている。 施 策

実 施 にあたっては、 短 期 と 長 期 の 課 題 にわけて 必 要 性 を 議 論 すべきであろう。クラウド

コンピューティングの 進 展 は、 中 小 企 業 を 含 めた 日 本 の 産 業 の 国 際 競 争 力 向 上 に 寄 与 す

るであろう。そして 同 時 にそれはグリーン IT の 推 進 に 他 ならず、 環 境 負 荷 軽 減 の 切 り

札 的 なアプローチの1つである。しかしクラウドコンピューティングに 対 しては、 過 度

な 期 待 を 抱 くべきではない。それは 極 めて 稀 な 革 新 的 な 出 来 事 というよりは、IT 業 界

において 試 みられてきた 過 去 からの 蓄 積 の 上 に 成 り 立 っており、IT の 所 有 から 利 用 へ

という 流 れを 本 格 化 させる 進 化 である。

本 調 査 研 究 では、クラウドコンピューティングにかかわる 主 要 課 題 を 整 理 することが

できた。しかしそれには 限 界 があり、より 広 範 囲 な 業 界 を 対 象 とした 調 査 が 必 要 であろ

う。 米 国 におけるクラウドの 普 及 に 比 べて 遅 れているとはいえ、わが 国 でもクラウドサ

ービスを 提 供 するデータセンター 事 業 者 が 現 れ 始 めており、 今 後 ますます 普 及 に 拍 車 が

かかるものと 思 われる。そして 断 片 的 に 報 告 されているクラウドコンピューティングの

影 響 について、 新 市 場 の 創 出 というプラス 面 と、コンピュータおよび IT 産 業 に 及 ぼす

負 の 変 化 を 調 査 するとともに、 必 要 となる 施 策 等 についてのより 深 い 洞 察 と 分 析 が 求 め

られている。

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- 禁 無 断 転 載 -

クラウドコンピューティング 技 術 の 活 用 による

グリーン IT ネットワークの 実 現 性 に 関 する 調 査 研 究

平 成 22 年 3 月

作 成 財 団 法 人 ニューメディア 開 発 協 会

東 京 都 文 京 区 関 口 一 丁 目 43 番 5 号

委 託 先 名 株 式 会 社 日 本 アイティ 総 合 研 究 所

東 京 都 豊 島 区 南 池 袋 二 丁 目 8 番 18 号

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