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地域参画型公共交通の形成・持続メカニズム に関する研究 - 名古屋大学

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福 本 ・ 加 藤 : 第 43 回 土 木 計 画 学 研 究 発 表 会 ( 春 大 会 )<br />

を 設 けており 3) , 4) ,そういった 市 町 村 では, 他 に 比 べて<br />

地 域 住 民 による 公 共 交 通 維 持 の 取 り 組 みが 盛 んに 行 われ<br />

ていることから, 支 援 制 度 の 有 効 性 が 示 唆 される.<br />

しかしながら, 地 域 参 画 型 公 共 交 通 の 実 現 にあたって<br />

障 壁 となるのは, 資 金 面 やノウハウのみではない. 地 域<br />

の 多 様 な 主 体 が 参 画 して 合 意 を 形 成 し,さらに 運 営 組 織<br />

を 構 築 して 実 際 の 運 営 を 進 めていくに 至 るまでには 多 大<br />

な 困 難 が 伴 う.<br />

本 研 究 では, 地 域 参 画 型 公 共 交 通 運 営 の 組 織 化 の 過 程<br />

に 存 在 する 障 壁 と,それを 解 消 し 組 織 化 を 促 し 得 る 方 策<br />

について 検 討 する.<br />

2. 地 域 参 画 型 公 共 交 通 運 営 の 障 壁<br />

のようにして 意 識 啓 発 をするかは 根 本 的 な 問 題 である.<br />

(4) 「 口 」に 関 する 障 壁<br />

地 域 で 公 共 交 通 に 関 する 取 り 組 みを 行 うとしても, 地<br />

域 住 民 から 積 極 的 に 意 見 表 明 がなされることはまれであ<br />

る.その 理 由 としては, 多 くの 地 域 住 民 は 公 共 交 通 に 対<br />

する 意 見 を 表 明 するほどの 知 識 を 持 ち 合 わせていないこ<br />

とが 挙 げられる.また, 議 論 に 参 加 するメンバーによっ<br />

ては, 主 体 的 な 意 見 表 明 ではなく 要 望 や 苦 情 に 終 始 する<br />

場 合 もある.また, 積 極 的 に 意 見 表 明 をする 人 が, 必 ず<br />

しも 公 共 交 通 の 利 用 者 ではないという 点 にも 注 意 が 必 要<br />

である.このため, 実 りある 議 論 を 実 現 するためには,<br />

(3)で 述 べた 意 識 啓 発 , 情 報 提 供 とメンバー 選 定 が 重 要<br />

となる.<br />

著 者 らは 既 報 5) において, 地 域 参 画 型 運 営 方 式 におけ<br />

る 関 係 主 体 の 役 割 分 担 ,すなわち 負 担 を 表 す 方 法 として,<br />

「 人 」「 金 」「 心 」「 口 」の4つを 提 案 している.これ<br />

らに 関 する 役 割 分 担 と 連 携 が, 関 係 主 体 間 で 円 滑 に 行 わ<br />

れない 場 合 に, 運 営 が 行 き 詰 まるものと 考 えると, 地 域<br />

参 画 型 公 共 交 通 運 営 の 障 壁 は 以 下 のようにまとめられる.<br />

(1) 「 人 」に 関 する 障 壁<br />

地 域 において 公 共 交 通 問 題 に 取 り 組 む 人 材 の 不 足 であ<br />

る.この 場 合 , 人 材 の 持 つ 知 識 や 社 会 的 つながりといっ<br />

たSocial Capital 的 な 観 点 を 含 めてとらえる 必 要 がある.<br />

また, 一 部 の「 人 」が, 意 図 的 であるかないかに 関 わら<br />

ず, 取 り 組 みを 妨 害 する 場 合 が 存 在 することにも 注 意 が<br />

必 要 である.<br />

(2) 「 金 」に 関 する 障 壁<br />

実 際 に 地 域 公 共 交 通 を 運 行 するにあたっての 資 金 繰 り<br />

である. 地 域 参 画 型 公 共 交 通 の 取 り 組 みが 行 われる 地 区<br />

のほとんどは, 運 賃 収 入 のみでは 運 行 経 費 がまかなえず,<br />

企 業 や 個 人 からの 協 賛 金 や, 市 町 村 からの 補 助 金 が 必 要<br />

となる.しかしながら, 取 り 組 みに 対 する 理 解 や 運 行 事<br />

業 の 収 支 構 造 に 関 する 認 識 が 不 十 分 な 状 態 では, 協 賛 金<br />

や 補 助 金 を 得 ることができないことから,(3)で 述 べる,<br />

取 り 組 みに 対 する 意 識 の 幅 広 い 共 有 を 得 ることが 重 要 と<br />

なる.<br />

(3) 「 心 」に 関 する 障 壁<br />

地 域 で 公 共 交 通 に 取 り 組 もうという 意 識 が 醸 成 されに<br />

くいことである. 今 や, 多 くの 人 が 自 家 用 車 を 利 用 でき,<br />

公 共 交 通 機 関 が 生 活 に 必 需 のものではないことから, 地<br />

域 住 民 の 多 くに 公 共 交 通 が 必 要 であるという 意 識 を 醸 成<br />

することは 困 難 である. 地 域 住 民 が 意 識 を 持 つことは,<br />

「 人 」や「 金 」を 集 めることにも 関 連 することから,ど<br />

3. 事 例 に 見 る 地 域 参 画 型 公 共 交 通 運 営 の 障 壁<br />

以 上 の4つの 負 担 に 関 する 役 割 分 担 がうまく 機 能 しな<br />

い 場 合 に, 一 部 の 主 体 に 過 度 の 負 担 がかかり, 立 ち 上 げ<br />

や 持 続 的 な 運 営 が 困 難 になることが 考 えられる. 以 下 に,<br />

a) 障 壁 により 運 営 が 頓 挫 した 例 ,b) 障 壁 を 乗 り 越 えつつ<br />

ある 例 ,c) 障 壁 をクリアし 持 続 している 例 ,を 説 明 する.<br />

a) 障 壁 により 頓 挫 した 例 <br />

K 市 には,バス 事 業 者 が 路 線 バスを 走 らせているほか,<br />

同 社 が 市 のコミュニティバスを 受 託 して 運 行 している.<br />

また, 近 年 , 新 規 参 入 バス 事 業 者 が 空 港 アクセスバスや,<br />

近 隣 市 のニュータウンへの 路 線 バスを 開 設 していた.<br />

K 市 西 部 の 駅 前 商 店 街 では, 近 隣 に 大 規 模 ショッピン<br />

グセンターが 開 店 することから, 顧 客 の 流 出 が 予 想 され<br />

た.これに 対 抗 するため, 商 店 街 連 合 会 は 商 店 街 へのア<br />

クセス 向 上 を 目 的 とした 循 環 バスの 導 入 を 計 画 した. 特<br />

に, 飲 食 客 の 帰 宅 の 足 という 特 色 を 打 ち 出 し, 深 夜 時 間<br />

帯 にも 運 行 するとした 点 が 特 徴 的 であった.<br />

「 人 」の 面 に 関 しては, 商 店 街 連 合 会 という 既 存 の 組<br />

織 の 中 に 専 門 部 会 を 設 けて 取 り 組 むことにより, 比 較 的<br />

強 固 な 事 務 局 機 能 を 持 つことができた 上 , 市 の 商 工 業 部<br />

局 との 結 びつきを 利 用 して, 国 の 支 援 プログラムを 得 る<br />

ことにも 成 功 した.また, 専 門 部 会 においてバスのサー<br />

ビスを 議 論 する 際 には,バス 事 業 者 ( 前 出 の 新 規 参 入 バ<br />

ス 事 業 者 )を 交 えることにより, 専 門 的 な 見 地 からの<br />

「 口 」の 面 での 負 担 も 得 ることができた.<br />

しかしこの 事 例 で 問 題 となったのは「 心 」と「 金 」の<br />

面 であった.まず,「 心 」の 面 では, 事 業 主 体 となる 商<br />

店 街 連 合 会 と 運 行 主 体 となるバス 事 業 者 との 意 識 共 有 は<br />

できていたものの,そこから 外 への 広 がりがみられなか<br />

った. 当 初 , 市 の 交 通 担 当 部 署 やバス・タクシー 事 業 者<br />

との 事 前 調 整 なしに, 運 行 事 業 者 も 含 めた 運 行 素 案 を 策<br />

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