復興リーダー会議第1期報告書 - G-sec

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復興リーダー会議第1期報告書 - G-sec

はじめに慶 應 義 塾 常 任 理 事 井 田 良(グローバルセキュリティ 研 究 所 担 当 )東 日 本 大 震 災 は 甚 大 な 被 害 と、 人 々の 心 に 深 い 爪 痕 を 残 しました。慶 應 義 塾 は、 被 害 を 受 けられたすべての 被 災 者 の 方 々に 対 し、 義 塾 社中 が 一 致 協 力 し 最 大 限 の 支 援 に 努 めたいと 考 え、 医 療 チームや 学 生 ・教 職 員 有 志 による 被 災 直 後 の 支 援 活 動 に 始 まり、 教 育 ・ 研 究 ・ 医 療 等を 通 じて、さまざまな 取 り 組 みを 行 って 参 りました。グローバルセキュリティ 研 究 所 (G-SEC)も、 復 興 とその 先 の 未来 、そして 世 界 を 見 据 えて 新 たなアクションを 起 しました。本 書 で、その 第 1 期 の 活 動 と 成 果 を 報 告 します「 復 興 リーダー 会議 」は、 復 興 を 担 うさまざまな 組 織 のリーダーに 焦 点 をあてたプロジェクトです。実 際 に 復 興 支 援 に 携 わっているリーダーが 集 まり、 被 災 地 での 救 援や 支 援 に 関 する 情 報 交 換 、 復 興 に 向 けての 議 論 や 勉 強 会 を 重 ね、 復 興を 支 援 ・ 推 進 するネットワークや 活 動 モデルづくりにつなげ、それを社 会 と 共 有 する。このような 成 果 を 目 指 しました。また、G-SECでは、Faculty Seminarにおいて 中 ・ 長 期 的 な 視 点 から 復 興 について、 公 開 講 座 ( 港 区 共 催 )では「 自 立 と 絆 」をテーマに自 立 社 会 をいかに 創 るかについて、 参 加 者 と 共 に 考 えました。竹 中 平 蔵 所 長 は、 有 識 者 の 協 力 を 得 て、 東 日 本 大 震 災 がもたらした複 合 連 鎖 危 機 とリスク 管 理 をまとめた 書 籍 「 日 本 大 災 害 の 教 訓 」を日 ・ 英 ・ 中 ・ 韓 の4か 国 語 で 出 版 。 世 界 8カ 国 11 拠 点 でシンポジウムを 開 催 しました。 震 災 関 連 で 唯 一 の 海 外 発 信 事 業 と 言 えます。世 界 各 国 からさしのべられた 温 かい 支 援 、「 絆 」に 象 徴 される 惨 状の 中 においても 互 いを 思 いやり 助 け 合 う 世 界 に 誇 れる 日 本 国 民 の 姿 など、 大 災 害 からの 復 旧 ・ 復 興 は、 未 来 につながる 明 るい 希 望 を 与 えてくれています。G-SECの 活 動 成 果 も、 社 会 と 共 有 し、 社 会 の 発 展 に活 用 いただくことを 切 に 願 うものです。末 筆 になりますが、 本 活 動 に 支 援 を 賜 った 企 業 、 講 師 ・アドバイザーの 皆 様 、 会 議 委 員 の 皆 様 に 感 謝 申 し 上 げます。1


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録1 復 興 リーダー 会 議 について復 興 リーダー 会 議 副 委 員 長田 村 次 朗( 慶 應 義 塾 大 学 法 学 部 教 授 ・グローバルセキュリティ 研 究 所 副 所 長 )3


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録2 復 興 リーダー 会 議 の 成 果復 興 リーダー 会 議 委 員 長細 田 衛 士( 慶 應 義 塾 大 学 経 済 学 部 教 授 )7


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書「 復 興 リーダー 会 議 」から 得 られたこと・ 今 後 の 課 題【 復 興 リーダー 会 議 の 目 的 の 確 認 】復 興 リーダー 会 議 の 成 果 の 概 要 を 述 べる 前 に、この 会 議 の 目 的 をあらためて 確 認 しておきたい。 目的 を 明 確 にしてこそ、 成 果 の 内 容 が 明 らかになるからである。2011 年 3 月 11 日 に 起 きた 東 日 本 大 震 災 はこれまで多 くの 日 本 人 が 経 験 してこなかったような 非 常 事態 、いわゆる 有 事 であった。 災 害 の 規 模 、 内 容 と 深刻 さ、そして 影 響 の 波 及 力 ・ 持 続 性 、どの 点 をとっても 空 前 絶 後 とも 言 える 事 態 である。災 害 の 直 後 から 現 場 に 身 を 投 じて 被 災 者 救 済 を指 揮 した 人 々、 国 や 自 治 体 が 十 分 に 機 能 しない 現 場において 被 災 者 支 援 を 指 揮 した 人 々、そして 未 曾 有の 事 態 からの 復 興 の 重 責 を 託 された 人 々には、 平 時とは 大 きく 異 なる 困 難 な 事 態 において 自 ら 判 断 し 行動 するリーダーとしての 能 力 が 求 められた。 時 には、 平 時 には 認 められないようなことも 敢 えてしなければならないこともあった。 有 事 にこそ 必 要 とされる 柔 軟 な 判 断 が 必 要 だったのである。以 上 のようなことに 鑑 み、G-SEC「 復 興 リーダープロジェクト」は、 被 災 地 での 支 援 活 動 で 実 際に 行 動 し 実 績 を 積 んだリーダー、および 今 後 の 復旧 ・ 復 興 を 担 う 人 々を 中 心 とした 構 成 員 によって 形成 される「 復 興 リーダー 会 議 」を 立 ち 上 げ、 被 災 地での 救 援 や 支 援 に 関 する 情 報 交 換 と 人 材 交 流 を 行い、 復 旧 ・ 復 興 に 向 けての 議 論 を 重 ねることを 大 きな 目 的 とした。より 具 体 的 には、1 復 興 を 支 援 ・ 推 進 するプログラムづくりやネットワークづくり2 被 災 直 後 の 避 難 支 援 、 避 難 生 活 の 支 援 、 復旧 、 復 興 等 の 活 動 モデルづくり3 日 本 発 グローバルリーダー 像 の 提 示という 成 果 の 達 成 を 目 標 として 会 議 を 運 営 した。 同時 に 達 成 した 内 容 を 広 く 社 会 と 共 有 していくことも目 指 している。【 多 様 な 人 材 の 結 集 】良 く 指 摘 されるように、 縦 割 り 型 の 日 本 社 会 では同 質 的 な 人 材 が 好 まれる 傾 向 がある。 特 に 平 時 においては、 同 じように 物 事 を 考 え、 同 じように 判 断 すればことが 足 り、 敢 えて 異 質 性 を 取 り 込 んで 意 思 決定 する 必 要 もないと 考 えられてきた 傾 向 が 否 めない。しかしそのような 同 質 論 的 考 えは 幻 想 に 過 ぎない。 周 辺 環 境 は 常 に 変 化 しているのであり、 異 質 的な 考 え 方 を 取 り 入 れて 行 かないと、 経 済 ・ 社 会 ・ 文化 的 に 人 間 は 進 化 しない。あたかも6500 年 前 に 隕石 の 衝 突 によって 巨 大 恐 竜 が 絶 滅 したような 状 況 を人 間 が 迎 える 可 能 性 もあるのだ。そのような 状 況 がまさに3.11 東 日 本 大 震 災 であると 行 っても 言 い 過 ぎではない。なぜなら、 平 時 に 機能 した 縦 割 り 型 のガバナンス 体 制 は 機 能 せず、むしろ 平 時 ではあまり 顧 みられることのないような 草 の根 的 な 活 動 の 方 が 柔 軟 に 対 応 でき、 復 旧 ・ 復 興 に 大きな 力 を 果 たしたことからである。 顧 みれば 阪 神 淡路 大 震 災 のときもそうであった。上 記 の3つの 個 別 目 標 を 達 成 するためには、 平 時から 有 事 に 備 えて 多 様 で 異 質 な 人 材 を 集 めて 文 化 的なインターフェースを 作 り、 更 には 個 々の 異 なった活 動 ・ 行 動 をネットワーク 化 して 新 たな 次 元 の 活動 ・ 行 動 に 飛 躍 させるような 場 を 設 定 することが 重要 である。異 なった 分 野 でリーダーシップを 発 揮 する 人 々が異 なる 立 場 ・ 視 点 から 意 見 を 交 換 し、 熟 議 することによってこれまで 得 られなかったような 新 しい 地 平が 開 ける。 柔 軟 な 発 想 、 意 思 決 定 ができるようになる。これがまさに 有 事 で 必 要 とされる 能 力 なのではないだろうか。復 興 リーダー 会 議 には、 株 式 会 社 、NGO・NPO、ニュースメディア、シンクタンク、 教 育 機関 などで 活 躍 するリーダーや 地 方 公 務 員 ・ 国 家 公 務員 などの 公 務 員 に 代 表 される 多 彩 な 人 材 が 集 まった。 正 直 言 ってこれほどの 有 為 な 人 材 が 集 まるとは想 定 していなかった。このこと 自 体 がこの 会 議 の 第1の 成 果 と 言 っても 良 いほどである。もとより、いくら 意 志 と 才 能 にあふれた 人 材 が 集まっても、それだけでは 意 味 がない。 重 要 なことは、そのような 人 材 の 間 で 討 議 ・ 熟 議 がなされることによって 文 化 的 インターフェースが 形 成 されることがまずは 求 められる。 有 為 な 人 材 が 孤 立 的 存 在 であったり、 縦 割 り 的 組 織 のなかに 閉 じ 込 められたりすることが 日 本 社 会 の 問 題 であることを 考 えれば、このインターフェースの 形 成 がいかに 重 要 なことかがわかる。実 際 、 復 興 リーダー 会 議 によって 人 材 間 のインターフェースが 形 成 されたことは 明 らかである。 次の 章 で 詳 細 されるように、 各 会 のリーダー 会 議 や 夏の 合 宿 、シンポジウムでの 成 果 発 表 などを 通 じて、人 材 間 のコミュニケーションは 質 ・ 量 ともに 増 加し、 単 なるコミュニケーションを 越 えて 文 化 の 交 流の 水 準 まで 達 成 した。 情 報 受 発 信 、 意 見 の 交 換 から始 まって、 討 論 、 問 題 点 の 止 揚 、そして 個 々の 智 慧の 向 上 まで 至 るようになったのである。そして 最 も重 要 なことの1つは、 細 分 化 的 視 点 から 鳥 瞰 図 的 視点 、あるいはミクロ 的 視 点 からマクロ 的 視 点 への 移行 が 可 能 になったことである。もとより 細 分 化 的 視点 、ミクロ 的 視 点 は 重 要 であるが、 同 時 に 鳥 瞰 図 的視 点 、マクロ 的 視 点 も 重 要 である。とりわけ 有 事 には、 縦 割 り 的 発 想 による 閉 塞 状 況 を 乗 り 越 えるために 後 者 の 視 点 が 必 要 になる。これも、 異 分 野 のリーダーが 文 化 的 インターフェースを 作 り 上 げることによって 可 能 になることである。たとえば、 地 方 公 務 員 とNGO・NPOのリーダーたちが 文 化 的 インターフェースを 作 り 上 げることによって 相 互 理 解 を 一 層 深 め、 個 別 の 問 題 (( 例 )な9


ぜNGO・NPOが 考 えるような 災 害 支 援 が 実 現 しないか、 実 現 させるためにはどのような 公 的 役 割 が 必要 かなど)を 解 決 できるようになる。 詳 しくは 次 章で 見 て 頂 きたいが、「N 助 」による 復 旧 ・ 復 興 というアイデアなどもこのようなインターフェースから可 能 になることである ※1 。更 に 求 められることは、 有 為 な 人 材 間 の 文 化 的 インターフェースが 具 体 的 行 動 ・ 活 動 につながるようなネットワーク 形 成 に 高 められることである。これは 私 見 になるかもしれないが、 単 に 問 題 (issue)のみを 共 有 した 人 間 の 集 まりは 持 続 的 なネットワークとはなり 難 い。 個 々 人 の 高 い 文 化 や 教 養 が 人 的 インターフェースを 通 じて 交 換 されることによって 初めて 持 続 的 なネットワークになり 得 る。またそれによって、 具 体 個 別 の 問 題 が 高 い 水 準 で 解 決 されるのだ。これも 次 章 を 参 照 して 頂 きたいが、「『タフな街 』 岩 手 県 釜 石 市 の 水 産 加 工 等 復 興 プロジェクト」では、 異 質 の 人 材 のネットワーク・コラボレーションによって 釜 石 市 における 産 業 復 興 と 地 域 の 復 興 が具 体 案 として 提 示 された。これは 人 材 間 の 文 化 的 インターフェースが 活 動 ネットワークに 高 められることによって 実 現 した 事 例 である。「 指 定 廃 棄 物 の 最終 処 分 場 選 定 プロセスの 構 築 」というプログラムにも 同 じことが 言 える。このような 柔 軟 かつ 多 様 性 をもつネットワークが 有 事 においていかに 重 要 かが 理解 される。もとより、 文 化 的 インターフェース→ 活 動 ネットワークという 変 化 はそう 簡 単 に 起 きる 訳 ではない。時 間 のかかる 作 業 であり、 時 には 衝 突 も 起 き、 乗 り越 え 難 く 見 える 問 題 も 生 じる。しかし、 熟 議 を 重 ねることによってこうした 問 題 を 解 決 したからこそ 上のような 具 体 的 な 提 案 が 提 示 されるまでになったのであり、この 復 興 リーダー 会 議 の 大 きな 成 果 と 言 えるだろう。本 会 議 においては、いくつかのネットワークが 形成 されて 具 体 的 提 案 がなされるまでになった。 次 に求 められることは 各 ネットワークがそれぞれで 閉 じてしまわないことである。 本 会 議 でもこのことには十 分 留 意 したつもりではある。 常 に 個 別 の 班 だけで議 論 が 終 始 することがないように、 討 論 ・ 熟 議 の 場を 用 意 した。ネットワークが 形 成 されたら、ネットワークを 横 串 で 通 してネットワークの 間 のインターフェースを 形 成 し、 更 にはネットワークのネットワークまで 高 めることができれば、 復 旧 ・ 復 興 のための 新 たなる 地 平 が 見 えて 来 ると 思 われる。これは今 後 の 課 題 であろう。【 教 養 と 実 務 のバランス】さて、 以 上 述 べたように、 復 興 リーダー 会 議 では多 様 で 有 為 な 人 材 の 結 集 → 文 化 的 インターフェースの 形 成 → 活 動 的 ネットワークの 構 築 という 形 で、 上に 挙 げた 具 体 的 目 標 1〜3の 達 成 に 努 めたが、その実 現 に 当 たっては 各 リーダーの 智 慧 の 向 上 が 必 要 である。もちろん、 本 会 議 に 結 集 した 有 為 なリーダーたちの 能 力 はさまざまな 面 で 並 々ならぬものがあり、「 智 慧 の 向 上 」などという 言 葉 を 使 うのもためらわれるほどである。しかしながらどんな 人 間 であっても 学 ぶべきことは 無 限 にあるのであって、 常 に 精 進 するからこそ 一皮 も 二 皮 も 向 ける 人 間 になるのである。 学 びの 機 会も 無 限 にある。 問 題 は、 与 えられた 学 びの 機 会 をどのようにしてつかむか、のがなさないかということである。これはどのようなリーダーについても 言 えることである。復 興 リーダー 会 議 ではリーダーたちの 智 慧 の 向 上のために、 時 間 の 制 約 からコンセプトとしてはおもに1 点 に 絞 って 学 びの 機 会 を 設 けた。それは「 実 務と 教 養 のバランス」という 点 である。 実 務 に 関 しての 学 びについては 誰 もが 当 然 と 思 うだろう。 実 務 に全 く 経 験 のないものが、いきなり 東 日 本 大 震 災 という 未 曾 有 の 有 事 に 当 たってリーダーシップを 発 揮 できるとは 考 えにくい。 既 にリーダーとして 活 躍 している 人 材 が 更 に 実 務 を 学 ぶことによって、 復 旧 ・ 復興 の 局 面 でリーダーとして 貢 献 できる 可 能 性 が 高 まるのである。一 方 で 我 々は 有 事 の 際 にこそ 教 養 力 が 必 要 になると 考 える。なぜか。それは、 有 事 には 横 断 的 視 点 ・鳥 瞰 図 的 視 点 と 歴 史 的 視 点 の 双 方 が 必 要 となるのであって、それにはまさに 教 養 力 の 獲 得 が 枢 要 な 要 件となるからである ※2 。ここで 留 意 しておきたいのだが、 教 養 とは 単 に 知 識 があり、 知 識 が 個 人 のなかに積 み 重 ねられていることを 意 味 するのではない。 教養 人 と 物 知 りは 全 く 別 ものの 概 念 なのである。このことは、 第 4 回 会 議 での 村 上 陽 一 郎 氏 の 講 演 からも理 解 される。教 養 とは、 常 に 自 分 を 新 たなる 方 向 に 作 り 上 げて行 くことであり、 自 分 の 狭 い 世 界 を 越 えて 広 く 他 の世 界 に 思 いを 馳 せるとともに、 喜 びも 悲 しみも 共 有する 能 力 のことである。 古 人 の 短 歌 に 表 現 されている「もののあわれ」を 共 有 するのも、 今 私 たちが 十分 食 に 満 ちている 一 方 で 必 要 カロリーが 摂 れない 人間 が10 億 人 近 くいるという 悲 しみを 共 有 するのも、教 養 であると 考 える。 過 去 犯 した 過 ちから 十 分 学び、 再 び 同 じ 過 ちを 犯 さないようにする 智 慧 も 教 養である。このことからわかる 通 り、 教 養 とは 単 なる 知 識 の集 積 ではないけれど、 基 礎 的 な 知 識 は 必 要 なのである。すなわち、 知 識 の 集 積 は 教 養 の 獲 得 の 必 要 条 件ではあるが、 十 分 条 件 ではないのだ。 人 は 良 くこの点 を 誤 る。そこで、 復 興 リーダー 会 議 では 教 養 とは 言 うもの※1 N 助 とは 自 助 ・ 共 助 ・ 公 助 の 次 に 来 る 考 え 方 で、NPO・NGOなどの 自 発 的 ネットワークを 通 して 得 られる 支 援のことである。N 助 には 大 学 や 研 究 機 関 などから 発 信 される 新 しい(New) 理 論 も 活 用 される。10


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書の、 単 に 知 識 を 授 けるのではなく、リーダーたちに「 自 分 を 耕 す」ための 思 考 を 深 めるよう 様 々な 配 慮をした。その 配 慮 の1つが 実 務 的 講 演 と 教 養 的 講 演をユニットとして 提 示 することであった。 第 1 回 〜5回 の 会 議 では、この 実 務 と 教 養 のユニットによる 講演 が 基 調 になっている。実 務 と 教 養 のユニットによる 講 演 で 意 図 したことはもう1つある。それは 有 事 において 特 に 必 要 となる 横 断 的 視 点 ・ 鳥 瞰 図 的 視 点 を 養 うことである。 例えば 第 4 回 目 の 会 議 では、 先 に 引 用 した 村 上 陽 一 郎氏 ( 東 洋 英 和 女 学 院 大 学 学 長 )の 教 養 講 義 と 対 になって 折 木 良 一 氏 ( 前 防 衛 省 統 合 幕 僚 長 )の 実 務 講義 があった。 折 木 良 一 氏 は 東 日 本 大 震 災 のときの 防衛 省 統 合 幕 僚 長 であった。 日 本 全 体 の 安 全 保 障 に 一刻 一 刻 目 を 見 張 りつつも、 被 災 地 の 復 旧 ・ 復 興 のために 自 衛 隊 をいかに 投 入 するかを 考 えるのが 当 時 の折 木 氏 のリーダーとしての 役 割 であった。 折 木 氏 の- - - - - -話 から(また 折 木 氏 が 話 さなかったことから)、 東日 本 大 震 災 という 想 像 を 絶 するような 有 事 で 意 思 決定 することの 困 難 さと 必 要 とされる 意 志 の 強 さの2つがひしひしと 感 じられたのである。 個 別 のことに集 中 しなければ 救 援 はできないが、 他 方 常 に 日 本 全体 の 安 全 保 障 はおざなりにできないのである。 横 断的 視 点 ・ 鳥 瞰 図 的 視 点 の 重 要 性 を 多 くのリーダーたちが 感 じ 入 ったはずである。その 一 方 で、 折 木 氏 のようなリーダーがなぜ 生 まれたのか、 村 上 陽 一 郎 氏 の 話 に 立 ち 返 って 見 るとよくわかる。つまり、 自 分 を 耕 すこと、 自 分 を 少 しでも 高 めるように 常 に 精 進 すること、すなわち 教 養 力を 向 上 させることである。多 少 脱 線 するが、このバランスの 重 要 性 を 示 す 話を 記 しておきたい。 小 さい 頃 から 音 楽 、 例 えばバイオリンをやって 世 界 的 に 著 名 になった 演 奏 家 がぶつかる 壁 が 必 ずある。それは、 結 局 自 分 はバイオリンンしか 知 らず、 世 間 のことなど 全 く 知 りもしないし、 実 際 興 味 もなかったということである。しかし、 一 流 の 演 奏 家 であるならば 気 づくことがある。世 界 の 人 々を 感 動 させるのが 音 楽 であるとすれば、世 界 のことを 知 らなければならないし、 人 々のことを 知 らなければならないということだ。そこで 一 流の 演 奏 家 は 自 分 のやり 方 で 教 養 を 身 につけ、 一 皮 むけて 超 一 流 の 演 奏 家 になる。同 じ 話 は、リーダーの 養 成 にも 通 じるはずである。 深 い 教 養 に 裏 付 けられた 実 務 能 力 が 本 当 の 意 味でもリーダーを 作 り 上 げる。実 務 と 教 養 のバランスで 更 にもう1つ 重 要 なことがある。それは、 有 事 で( 実 は 平 時 でも) 自 分 の 置かれた 立 場 を 認 識 し、 柔 軟 に 振 る 舞 い 平 時 ではできないような 意 思 決 定 をする 一 方 、 危 うい 一 線 を 越 えないような 判 断 力 を 身 につけることである。これが実 際 難 しい。というのも、やるべきこととやってはならないことの 間 には 濃 淡 があり、しかも 濃 淡 が 連続 的 に 変 化 しているために 自 分 の 立 ち 位 置 を 見 誤 る可 能 性 があるからである。この 危 機 に 陥 らないようにするためには2つの 道がある。1つはリーダーといえども、 常 に 我 が 身 を人 の 批 判 に 曝 す 勇 気 を 持 つことである。これも 教 養の1つであると 考 える。もう1つは、 常 に 歴 史 的 認 識を 持 つということである。つまり 同 じ 過 ちを2 度 繰り 返 さないということである。 連 続 的 濃 淡 のなかで自 分 の 立 ち 位 置 を 見 失 ったために 過 ちを 繰 り 返 したリーダーは 数 えきれない。「 失 敗 の 本 質 」を 学 び 取り、 同 じ 間 違 いを 繰 り 返 さないためには 歴 史 を 学 ぶことが 重 要 である。 学 んだだけではダメで、それを実 務 のなかに 活 かさなければならないことも 明 らかである。であるからこそ、 実 務 教 育 と 教 養 教 育 のカプリングが 必 要 なのであって、 我 々はこのことに 最大 の 留 意 を 払 った 訳 である。【 個 別 の 論 点 】以 上 復 興 リーダー 会 議 の 成 果 の 概 要 を 述 べた。この 節 の 最 後 に 簡 単 に 個 別 の 成 果 を 挙 げることにしよう。 詳 細 については 次 章 で 述 べるので、ごく 簡 単 に触 れることにする。まず 大 きな 成 果 は、5 回 の 会 議 における 実 務 と 教養 がカプリングされた 講 演 とそれに 引 き 続 いて 行 なわれたリーダーたちの 熟 議 である。 復 興 リーダー 会議 のリーダーたちは、 実 務 と 教 養 の 講 演 を 聴 いたあと、 自 らの 問 題 意 識 に 基 づいて 班 ごとにディスカッションした。その 場 では 講 演 者 の 講 演 内 容 や 意 図 を完 全 には 汲 み 取 れなかったことはあるかもしれないが、メッセージは 確 実 に 伝 わっており、 各 班 の 最 終成 果 に 結 実 している。 震 災 復 興 の 現 場 で 活 躍 するリーダーが、 実 務 教 育 と 教 養 教 育 の 双 方 に 接 することによって、 能 力 を 一 層 向 上 させる 場 が 作 られたのである。しかし、 復 興 リーダー 会 議 という「 場 」を 通 じて行 なわれたことは 一 方 通 行 の 教 育 では 決 してない。それは、 講 演 後 の 毎 回 の 熟 議 において、 日 々の 利 害と 関 係 なく 悩 みを 共 有 して 問 題 を 解 決 するという 機会 を 持 ったことにより、 利 害 関 係 を 越 えた 実 行 力 のあるネットワークを 作 り 上 げられたことからもわかる。各 分 野 の 第 一 線 で 活 躍 するリーダーと 第 一 級 の 講師 陣 が 集 まる 復 興 会 議 という 半 公 式 的 な 場 での 議 論は 双 方 にとって 刺 激 的 であり、そこで 作 り 上 げられた 新 しい 課 題 設 定 とアクションプランは、 十 分 発 信に 足 る 内 容 になっている。 普 段 の 仕 事 の 場 では 出 会わないような 多 様 な 人 材 が 渾 然 一 体 となり、 熟 議 したことの 結 果 である。また、 被 災 地 の 現 場 で 直 接 復 興 に 携 わっている 人たちと 東 京 中 心 に 動 いている 人 たちの 間 で 考 え 方 の※2 但 し 細 分 化 的 視 点 ・ミクロ 的 視 点 も 重 要 であり、それは 各 リーダーが 既 に 十 分 獲 得 しているということが 前 提である。11


違 いはあるものの、 災 害 の 復 旧 ・ 復 興 そして 日 本 の復 興 という 意 味 で 目 指 すところは 同 じであり、 会 議の 場 などで 議 論 をぶつけ 合 うことによって、 両 者 のいい 面 が 合 わさって、 新 しいものが 生 まれるきっかけができた。まさに、イノベーション 的 な 視 点 に 基づく 議 論 がなされ、その 結 果 として、 新 しい 発 想 が生 まれ、 強 固 な 繋 がり(インターフェースからネットワークへ)が 形 成 された 訳 である。また、 復 興 会 議 という 場 で 大 きな 目 標 を 共 有 していく 仲 間 ができたことで、 継 続 性 が 生 まれ、 結 果的 に 東 日 本 大 震 災 を「 風 化 させない」ための 一 つのプラットフォームが 生 まれつつある。 具 体 的 な 成 果はまだ 萌 芽 状 態 であると 思 われるかもしれないけれど(この 点 については 次 章 参 照 )、ヒューマンキャピタル・ネットワークの 一 大 基 地 としての 場 ができ、ここをベースにしてサブネットワークができていく 大 きなマザーボードができはじめたことは 間 違いない。 震 災 復 興 そして 日 本 全 体 の 復 興 には 時 間 がかかるので、この 繋 がりを 活 かして、 今 後 も「 復 興リーダープロジェクト」を 継 続 することが 持 続 性 の観 点 から 重 要 である。通 常 の 会 議 に 加 え、2012 年 9 月 22・23 日 の 両 日には、 岩 手 県 で 合 宿 が 行 なわれた。そこでは、 情報 ・ 問 題 点 ・ 課 題 の 共 有 、アクションプランに 向 けての 討 議 ・ 熟 議 が 行 なわれた。タイトなスケジュールにも 関 わらず、リーダー32 名 が 盛 岡 市 内 の 会 場 に集 まり、 熱 い 議 論 を 戦 わせた。それ 以 前 の4 回 までの 会 議 では、 講 演 に 関 連 した 対 話 と 議 論 を 中 心 に 重 ねてきたが、 岩 手 合 宿 ではリーダー 自 身 が 抱 えている 課 題 の 共 有 や 解 決 にむけた 具 体 的 な 議 論 を 集 中 的 に 行 った。 第 1 部 では、 鈴木 寛 氏 ( 参 議 院 議 員 ・ 元 文 部 科 学 副 大 臣 )の 講 演 に 続いて、 同 様 のカテゴリーにより 分 かれたグループの中 で、それぞれの 課 題 を 発 表 し、 共 有 した。 第 2 部では、グループで 課 題 を 選 定 し、 解 決 に 向 けた 対 話と 議 論 を 行 った。第 3 部 では、アクションプランの 発 表 会 を 行い、 鈴 木 寛 氏 から 講 評 とアドバイスを 受 けた。また、 達 増 拓 也 氏 ( 岩 手 県 知 事 )と 現 地 リーダー5 名 を招 いて、 復 興 の 現 状 や 発 表 に 対 するコメントを 受け、 討 論 を 行 なった。 第 4 部 では、 達 増 拓 也 氏 の 講演 に 続 き、ブラッシュアップしたアクションプランの 発 表 会 を 行 い、 達 増 知 事 より 講 評 とアドバイスを受 けた。この 岩 手 合 宿 によって、これまで 東 京 で 行 なってきた4 回 の 会 議 の 討 論 が 深 められ、 同 時 に 具 体 的なプラン 提 示 に 向 けて 大 きな 一 歩 が 踏 み 出 された。このように 深 められたアイデアそしてプランは、 中間 報 告 (2012 年 11 月 23 日 G-SEC Square 2012)を経 過 して2013 年 2 月 23 日 慶 應 義 塾 大 学 北 館 ホールで行 なわれたシンポジウム(シンポジウムタイトル:「 震 災 2 年 目 のチャレンジ〜 復 興 を 風 化 させないために〜」)において 最 終 成 果 として 報 告 された。根 本 匠 復 興 大 臣 による 講 演 (「 復 興 の 現 状 と 課題 」)の 後 、リーダーたちによる 最 終 成 果 報 告 が 行われた。 会 議 のリーダーたちによる 具 体 的 復 興 プランとしては2つのものが 報 告 された。1つは「 被 災 地における 中 間 支 援 組 織 とSROI・SRBの 可 能 性 」であり、もう1つは「『タフ』な 街 釜 石 市 の 水 産 加 工等 復 興 プロジェクト」である。 前 者 は 金 融 支 援 の 立場 から、 復 興 支 援 の 具 体 的 プランを 提 示 している。被 災 地 の 復 興 金 融 は 従 来 型 の 金 融 組 織 では 実 行 が 難しい。このプランでは、 新 しい 中 間 組 織 を 設 立 することによって、 社 会 的 投 資 のリターンを 確 保 する 現実 的 な 提 案 がなされている。 後 者 は 地 場 ビジネス 支援 の 立 場 から 具 体 的 な 復 興 プランを 提 示 している。ここでじゅうようなのが「ブランド 化 」である。 個別 企 業 から 釜 石 の 水 産 加 工 業 全 体 までブランド 化 するための 具 体 的 プランが 提 案 されている。 聞 くところによれば、このプランは 実 行 の 兆 しを 見 せているという。 動 きの 速 さに 驚 かされる。具 体 的 な 復 興 プランにまではいたらなかったが、課 題 共 有 として 以 下 の3つのものが 報 告 された。 第 1は「 震 災 風 化 を 乗 り 越 える」、 第 2は「 指 定 廃 棄 物の 最 終 処 分 場 確 定 プロセスの 構 築 」、 第 3は「“N 助型 ”ソリューションによる 創 造 的 教 育 復 興 支 援 」である。「 震 災 風 化 を 乗 り 越 える」は 復 興 人 材 プラットフォームの 重 要 性 を 指 摘 する。 震 災 復 興 に 携 わりたいと 思 っていても、その 場 を 見 いだせない 人 たちが 多 数 いるのだ。そうした 人 々の 思 いを 実 現 するために、 情 報 共 有 システムの 場 が 必 要 となる。その 具体 的 設 計 が 示 されている。「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 確 定 プロセスの 構 築 」は 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 確 定 のための 住 民 合 意 プロセスを 提 示 する。NIMBY(Not in my backyard)は日 本 人 のみならず 世 界 のすべての 人 に 当 てはまるが、それではいつまでたっても 震 災 廃 棄 物 とりわけ 放 射 性 汚 染 廃 棄 物 の 埋 立 問 題 は 解 決 しない。ここではいかにして 住 民 合 意 を 得 るかのプロセスが提 示 されている。「“N 助 型 ”ソリューションによる 創 造 的 教 育 復興 支 援 」は、 有 事 における 支 援 を、 全 く 新 たな 視 点から 問 い 直 し、 有 事 におけるNGO・NPOの 貢 献 のあり 方 を 提 案 している。この3つの 課 題 共 有 報 告 も、 具 体 的 な 復 興 プランとなるまでにはあとほんの 一 歩 であり、ほとんど 復興 プランと 呼 んで 良 いほどのところまで 来 ている。先 の 述 べた 本 会 議 のネットワークの 持 続 性 を 考 えるならば、こうしたアイデアが 具 体 的 なプランとして結 実 することは 十 分 可 能 であると 考 える。【 残 された 課 題 】以 上 述 べたように 概 ね 復 興 リーダー 会 議 の 当 初 の目 的 は 達 成 したと 思 われる。 最 後 に、 残 された 課 題を3 点 述 べておきたい。第 1は 作 り 上 げた 異 分 野 のリーダーのインターフェースさらにはネットワークの 維 持 がどのように可 能 になるかということである。 確 かに 先 に 述 べたように、 本 会 議 という「 場 」が 提 供 される 限 りにおいては、 作 り 上 げられたネットワークは 持 続 可 能 な12


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書ように 思 われるけれど、 一 旦 「 場 」がなくなるとどうなるかについては 確 定 的 な 答 えを 与 えることができない。 何 らかの 形 で 第 1 期 のリーダーたちに「 場 」を 提 供 する 必 要 があるのではないかと 思 われる。こうした「 場 」があれば、 今 回 復 興 プランにまでは 至 らず 課 題 共 有 で 終 わったものも、やがて 復 興 プランに 結 実 する 可 能 性 が 十 分 ある。そのフォローの意 味 からも「 場 」の 提 供 が 必 要 であろう。第 2に 文 化 遺 伝 子 の 伝 達 という 作 業 である。 確 かに 第 1 期 のリーダーたちは 所 期 の 目 的 を 達 成 し、 復興 プランや 課 題 共 有 という 形 での 成 果 を 獲 得 した。そして 何 より、 講 演 と 熟 議 の 場 を 通 して 文 化 的 インターフェースの 形 成 、ネットワークの 構 築 を 果 たした。その 過 程 は 決 して 平 坦 ではなく、 山 も 谷 もあったはずである。それを 乗 り 越 えて 成 果 を 発 表 することができたのだ。とするなら、そこで 得 られた 体験 ・ 智 慧 を 次 の 世 代 にバトンタッチすることが 重 要である。横 のインターフェースやネットワークが 重 要 ならば、 縦 のインターフェースやネットワークも 同 じように 重 要 である。それには 文 化 遺 伝 子 を 伝 達 する「 場 」が 必 要 である。 復 興 会 議 での 個 々のリーダーの 経 験 は、 震 災 復 旧 ・ 復 興 の 現 場 での 体 験 と 同 様 重要 なものであり、 次 の 期 に 受 け 継 がれて 行 く 必 要 があると 考 える。第 3は 学 びの 難 しさに 関 することである。 実 務 と教 養 の 講 演 の 受 け 取 り 方 は 各 リーダーによって 著 しく 異 なる。 伝 え 聞 くところによると、 講 演 によってはどうしてあのような 講 演 が 必 要 か 理 解 できないとこぼすリーダーもいたようである。 我 々 主 催 者 としては、すべての 講 演 に 非 常 にメッセージ 性 があり、胸 を 打 つとともに 多 くのことが 学 べたと 確 信 している。しかしそのようには 受 け 取 らないものもいるのである。もちろんだからと 言 って、 講 演 に 不 満 を 言 うリーダーたちを 非 難 するつもりは 全 くない。これは 学 びの 場 で 常 に 起 きることがらだからである。 空 間 と 時間 が 異 なれば 人 間 は 容 易 に 変 化 するものであり、 情報 の 受 容 性 ・ 受 容 能 力 も 変 化 する。あるときはほとんど 受 け 付 けないような 内 容 の 情 報 も、 時 間 や 場 所が 異 なれば 容 易 に 受 け 入 れられることもある。 学 びは、 人 間 が 常 に 変 わり 得 るもの、 成 長 するものということを 前 提 している。その 場 ではわからなかったことを 後 で 気 づくということが 往 々にしてあるのだ。但 し、やはり 学 びの 機 会 には 工 夫 も 必 要 である。受 講 しているリーダーたちに 受 容 することができないような 講 演 があった 場 合 、 柔 軟 に 修 正 する 必 要 があるかもしれない。この 点 、 今 回 の 復 興 リーダー 会議 では 十 分 な 対 応 ができなかった。これは 今 後 の 重要 課 題 としたい。13


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録3 この 会 議 で 学 び 取 ったこと~ 会 議 委 員 からのコメント~15


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書この 会 議 で 学 び 取 ったこと‐ 会 議 委 員 の 言 葉◇ 課 題 を 解 決 するには、「 根 拠 (エビデンス)」に 基 づいて「 事 実 (ファクト)」を 見 極め、これに 正 しい「 評 価 (アセス)」を 加 えて 政 策 を 打 ち 出 すことが 求 められる。 委 員 同士 の 情 報 交 換 なしには、 真 にみるべき 事 実 に 触 れることはできなかっただろうと 考 える。様 々なステークホルダーの 本 音 を 知 ることができたらこそ、 評 価 軸 を 誤 らない 選 択 をするための 気 づきを 得 られたのではないかと 思 う。すでに 委 員 同 士 で 様 々な 化 学 反 応 が 生 まれている。これは、 被 災 地 から 参 加 いただいている 委 員 と、 支 援 に 従 事 してきた 委 員 とが、得 意 分 野 を 活 かしつつ、ベストプラクティスを 発 掘 し、 普 遍 的 な 理 論 に 再 構 築 し、 別 の 事例 へ 応 用 する 流 れを、ともに 創 ってきたことの 証 明 ではないだろうか。 今 後 もこのような場 を 提 供 いただけたら 幸 いである。◇ 今 までの 日 本 で 必 要 とされていた 調 整 役 のリーダーからリーダー 像 がSNSの 普 及 も 手 伝い 変 わってきている。 山 積 された 問 題 を 解 決 していくのが 私 たち 一 人 一 人 だし、これからもチャレンジしていこうと 強 く 思 えたこと。◇ 震 災 から2 年 ほど 経 ち、 多 角 化 かつ 複 雑 化 するニーズに 対 し、どのように 分 析 し 対 応 すべきかという 局 面 をむかえている 我 々に 大 きなリソースを 与 えていただける 機 会 であった。多 くの 先 輩 方 の 講 話 を 踏 まえ、かつ 様 々な 分 野 で 活 動 を 行 っている 仲 間 たちと 課 題 を 共 有し、 議 論 する 中 で、ヒントとなるアイデアやキーワードが 生 まれた。 復 興 に 携 わる 人 材 バンク。 実 現 したいプロジェクト。◇ 大 変 基 本 的 な 事 ではあるが、 有 事 に 於 いてリーダーシップを 発 揮 するための 平 時 からの 準備 、 心 構 えが 災 害 などの 緊 急 時 に 正 しい 判 断 をすることに 繋 がると 再 認 識 した。Grp2に於 いては 中 間 組 織 の 意 義 と 課 題 に 関 する 議 論 から、 東 松 島 におけるHOPEの 活 動 継 続 と 推進 のためにSROIさらにはSIBの 段 階 的 導 入 が 提 言 として 導 き 出 された。 既 成 概 念 に 囚 われて 自 身 を 制 限 していなかったかという 自 己 反 省 をするとともに、 企 業 が 継 続 的 に 復 興 支援 に 関 わるためのキーとなるであろうこの 画 期 的 な 試 みに 大 いに 期 待 したい。◇ 復 興 には 多 様 な 方 が 多 様 な 関 わり 方 をしているということ、そして、つながりが 新 たな 動きを 作 っていくということを 体 感 した。リーダーという 存 在 は、 揺 るがない 信 念 を 持 って活 動 を 継 続 していくことで 生 まれるのだと 感 じたことが、 個 人 的 には 一 番 の 学 びであったと 思 う。また、 様 々な 講 師 の 方 々のお 話 も 非 常 に 興 味 深 いものであるとともに、 他 の 委 員との 会 話 が 知 的 好 奇 心 をくすぐる 刺 激 となっていた。この 会 議 を 通 じて 具 体 的 な 行 動 につなげられればベストかもしれないが、 会 議 が 醸 成 している 価 値 観 や 思 想 に 触 れ、 影 響 を 受けることができただけでも 有 意 義 な 場 であったと 思 う。◇ 自 分 としては、 講 義 はもちろんのこと、 参 加 者 のみなさんから 大 いに 刺 激 を 受 けた。いろんな 場 所 での 活 動 そのものからも 非 常 に 感 銘 を 受 け、 閉 塞 感 あふれる 日 本 ではあるが、 未来 への 可 能 性 はここにあるとも 思 わせられた。 実 感 したのは、 多 様 性 が 非 常 に 大 事 だということだ。セクターや 職 業 、 男 女 、 世 代 を 超 えてコミュニケーションすることで 化 学 反 応が 起 きて、 新 たなものが 生 まれてくる。 今 後 も、この 会 議 でできたネットワークをさまざまな 形 で 活 用 できると 思 うし、すべきだと 思 う。◇ 復 興 というものは 場 所 、 暮 らす 人 々、 時 間 の 経 過 などを 始 めとして、 実 に 様 々なことがか17


らみあって 進 んでいくものであるため、そこに 携 わり 活 動 するリーダーも 多 種 多 様 にならざるを 得 ないということがよくわかりました。リーダーそれぞれが 抱 えている 課 題 は千 差 万 別 で、 参 考 になる 先 行 事 例 が 多 くないため、ひとつずつ 自 ら 解 決 策 を 考 え 実 行 するという 試 行 錯 誤 の 上 に 成 り 立 っているものであり、それゆえリーダーたちが 孤 独 にならないために、そして 新 たにできたネットワークを 駆 使 できるようにするためにも、 今後 は 事 務 局 の 役 割 がとても 重 要 であると 感 じました。 最 大 のポイントであった 合 宿 に 参加 できなかったのが 残 念 ですが、 三 田 で 学 んだことをベースに、 私 も 微 力 ながら 自 分 にできる 活 動 を 継 続 して 行 っていきたいと 思 います。◇ 今 まで 東 北 の 地 にあって、 日 本 の「 国 」は、 東 京 に 集 うエリートたちがよろしく 運 営 してくれるだろう、という 根 拠 のない 安 心 感 があった。しかし、 図 らずもこの 会 議 の 末 席に 加 えて 頂 き、それは 安 心 感 ではなく 責 任 の 放 棄 であると 考 えを 改 めた。しかし 一 方で、 東 京 で 日 本 の 社 会 潮 流 の 中 心 を 泳 いできた 他 メンバーに 比 べ、 被 災 地 からのメンバーはどうしてもスマートさ、というか、 流 れへの 乗 り 方 で 劣 る。 本 会 議 は、それに 気づけた 良 い 機 会 だった。またそれゆえ、 東 北 の 地 域 に 根 差 す 人 材 の 育 成 と、 連 携 の 枠 組み 作 りを 急 ぐ 必 要 性 を 感 じた。G-SECでのこの 会 議 が 解 散 するのであれば、ぜひ 東 北 大学 として 継 続 する 方 向 を 検 討 したい。◇ 第 1 回 、2 回 、4 回 と3 回 の 会 議 と 盛 岡 での 会 議 に 参 加 させていただきました。この 会 議 に参 加 させていただく 前 は 被 災 地 の 教 育 の 復 興 で、 学 校 や 生 涯 学 習 の 教 育 現 場 の 困 っていることとそれを 支 えてくれるNPOや 研 究 者 のスタイルがマッチせず、どうしたものかとずっと 悩 んでいました。しかしこの 会 議 の 機 会 を 得 て、 私 の 感 じていた 悩 みは 被 災 地 全体 、いや 日 本 全 国 で 抱 えている 問 題 であることに 気 付 きました。さらに 正 論 だけでは 人は 動 かず、 相 手 の 心 理 を 考 えながら 粘 り 強 く 交 渉 していくことが 大 切 であることをいろいろな 講 義 、 話 し 合 いの 中 で 理 解 しました。お 陰 様 で、 地 元 に 戻 って 復 興 教 育 の 会 議 を重 ねるごとに、 時 間 はかかってもうまくいったことがいくつも 出 てきました。 今 年 度 の体 制 をもとに、 来 年 度 は 学 校 、NPO、 研 究 者 、 行 政 、PTA、 地 域 の 方 々が 皆 で 被 災 地 の教 育 を 話 し 合 う「 会 」が 始 まります。 今 後 も 復 興 リーダー 会 議 で 学 んだことを 皆 さんに紹 介 しながら、 子 どもたちや 住 民 の 皆 さんの「 最 高 の 笑 顔 」を 作 り 出 す 教 育 の 場 を 考 えて 行 きたいと 思 います。ご 講 義 をいただいた 諸 先 生 方 、 運 営 スタッフの 皆 様 、 慶 応 大 学の 皆 様 、 本 当 に 有 難 うございました。◇ 復 興 リーダー 会 議 で 一 番 感 じたのは「 多 様 性 、ダイバーシティ」と、それが 共 感 しあうことで 生 まれる 新 たな 気 づきでした。 震 災 復 興 とリーダーというテーマのもと、 今 までお 会 いしたことがない、また、 経 験 したことがないような 経 験 をしている 方 々と 知 り 合い、 議 論 をかわし、 合 宿 で 懇 親 を 深 めあうことで、この 日 本 をどのように 構 築 していくかということを 改 めて 感 じさせられました。「 自 分 の 小 ささ」を 知 った。 霞 が 関 の 中 では、それでも 多 様 な 人 脈 、 経 験 を 有 してきたと 思 っていたが、まだまだ 足 りない、 今 の自 分 では 遠 く 及 ばないことを 痛 感 させられた。それと 同 時 に、もっと 頑 張 ろう、この 人たちから 吸 収 しようという 気 持 ちが 大 きく 生 まれた。 一 流 の 人 が 集 うと、 自 分 が 二 流 でもその 環 境 に 順 応 しようと 努 力 する、これが 実 感 した 会 でした。 最 後 に、こういうことが「 社 会 を 変 える」ことだと 思 った。 個 々 人 、 手 法 (プロセス)は 違 えども、 目 指 すゴールは 同 じであり、 各 リーダーが 様 々な 場 面 で 社 会 を 変 える、そういう 変 革 を 起 こすのではないかと 思 いました。そして、こういう 場 をセットすることもまた、「 社 会 を 変える」トリガーです。 今 後 是 非 、 続 けていってほしいと 思 います。◇ リーダーシップとは、いわゆる 前 例 踏 襲 とは 対 極 にある 行 動 様 式 ですが、「 前 例 のな18


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書い」 事 態 が 起 きリーダーシップを 発 揮 すべき 際 の 思 考 フレームなどは「 前 例 踏 襲 」できるものだと 思 います。この 復 興 リーダー 会 議 の 講 師 ・ 参 加 者 の 多 くは 実 際 にリーダーとして 活 躍 しており、その 方 々と 経 験 を 共 有 する 過 程 で、「 前 例 のない」ことをしようとする 時 の 物 事 の 進 め 方 、 想 定 外 のことが 起 きた 場 合 の 対 応 の 仕 方 、 多 くの 人 たちを 説 得し 巻 き 込 んでいくやり 方 などの「 暗 黙 知 」を 伺 うことができたのが 最 大 の 収 穫 でした。◇ 途 中 参 加 で、 欠 席 も 多 くほとんど 参 加 できなかったことが 残 念 です。 正 直 申 しまして、回 によってはどういう 目 的 でこの 講 師 を 呼 んだのかな?と 思 うことがありました。また、 会 議 自 体 の 方 向 性 もまだ 自 分 自 身 で 理 解 していないこともあり、 自 分 の 不 勉 強 のせいで、うまく 実 際 の 現 場 で 学 んだものを 落 とし 込 めるまでできなかったように 思 います。しかしながら、この 会 議 で 出 会 った 皆 様 、 事 務 局 の 皆 様 はとても 刺 激 的 であり、 今でも 多 くの 方 と 交 流 を 続 けさせてもらっています。かけがえのない 出 会 いになりましたし、 実 際 に 復 興 のための 事 業 アイディアも 生 まれています。これからにつながる 素 晴 らしい 出 会 いを 頂 けました。◇ “ 多 様 性 ”というものの 重 要 性 について、こんなにも 実 感 したことはありませんでした。NPOや 一 般 民 間 企 業 、 地 方 公 共 団 体 、そして 政 府 組 織 。 異 なる 経 験 やバックグランドを 有 した 会 議 委 員 が 一 堂 に 会 して 議 論 を 行 うことによって、 一 つの 事 象 ・プロジェクトに 対 して、それぞれの 専 門 性 や 経 験 に 裏 打 ちされた、 多 様 な 観 点 からのコメント、エピソードが 提 示 されました。 自 分 が 全 く 知 らなかった、 想 像 すらできなかった 意 見 が提 示 され、 現 に 存 在 する 課 題 に 対 して、 創 造 的 なアプローチ・ 解 決 策 を 構 築 していく。そんな“ 多 様 性 ”の 力 を 目 の 当 たりにしたことにより、 今 後 、 仕 事 や 他 のプロジェクトにおいても、 多 様 性 を 有 するチームの 力 を 結 集 しようと 感 じました。◇ 産 学 官 、それぞれ 立 場 は 違 えど、 考 えていることは 大 きくは 異 ならないことを 体 感 できた。 特 に、 震 災 復 興 のように、さまざまなアプローチが 考 えられる 中 で、ほぼ 同 一 の 目標 を 目 指 す 場 合 には、 多 様 な 主 体 が 交 わり 合 える 場 、 機 会 の 創 出 が 大 きな 意 味 を 持 つように 感 じた。それぞれの 立 場 で、 現 場 で、 色 々な 情 報 が 生 まれており、 情 報 ネットワークを 介 して、やり 取 りが 容 易 になっているからこそ、「 顔 」「 付 き 合 い」という 古 典 的なコミュニケーションの 壁 を 最 初 に 取 っ 払 って、 次 々にアイディアがぶつかり 合 い、アクションが 生 まれる 下 地 を 作 り 上 げることの 重 要 性 を 身 を 以 て 感 じた 気 がする。◇ 「 復 興 リーダー 会 議 」に 参 加 させていただけたことには、 心 から 感 謝 しております。さまざまな 分 野 ・ 立 場 で 震 災 復 興 に 取 り 組 む 素 晴 らしいメンバー 達 と 共 に 学 び 合 い、 議 論できた 事 は、かけがえなのない 時 間 でした。 岩 手 の 合 宿 を 経 て、お 互 いの 立 場 や 言 葉 遣い、 一 人 ひとりが 目 指 す 姿 や、 所 属 する 組 織 の 目 指 す 像 など 一 層 理 解 がし 合 えたように思 います。そのお 陰 様 で、 毎 月 の「リーダー 会 議 」の 学 びの 場 を 超 えて、さまざまなコラボレーションも 実 現 出 来 ました。この 大 切 な 繋 がりは、これからも 守 り、 育 てていきたいと 思 います。 貴 重 な 場 をどうも 有 難 うございました。◇ 復 興 現 場 で 価 値 を 生 み 出 しているのは、 企 業 や 団 体 単 位 から「 個 」の 単 位 へシフトしていっています。こうした 中 で、キーマンとなっている 優 秀 な 方 々とつながる 機 会 を 得 たことに 感 謝 しております。 特 に 岩 手 での 合 宿 は 素 晴 らしい 場 だったと 思 います。◇ 復 興 は、 立 場 をこえた 本 音 の 議 論 が 重 要 だと 認 識 させられた。メンバーにはNPO、 支 援企 業 、メディアから、 復 興 庁 職 員 、 被 災 地 副 市 長 まで 参 加 した。 合 宿 では 岩 手 県 知 事と、 発 災 当 時 の 文 部 副 大 臣 が 長 時 間 参 加 し、 本 音 のディスカッションを 行 った。ここで19


の 議 論 がベースとなって、 復 興 現 場 で 行 動 が 取 られた 例 も 少 なくない。 復 興 には 日 本 の総 力 が 求 められる。 復 興 リーダー 会 議 のように、 立 場 をこえて 議 論 できる 場 がさらに 生まれることが 今 求 められている。 個 人 としても、そうした 場 の 創 出 を 手 がける 必 要 があると 気 付 かされた。◇ 私 はこの 復 興 リーダー 会 議 というものは、 立 ち 上 がりから 座 学 かアクションかという 部分 に 大 きな 問 題 点 を 孕 んでいるように 思 いました。 実 際 、その 問 題 点 は 会 議 の 進 行 と 共に、 会 議 の 大 きな 議 題 ともなりました。そして、その 会 議 の 中 で 結 論 付 けられたのは、会 議 の 在 り 方 は、 会 議 そのものもメンバーと 共 に 成 長 を 果 たすべきものだという 事 でした。この 段 階 で、 会 議 を 諦 め 離 脱 する 方 々も 多 くいました。しかし、 具 体 的 アクションへの 舵 きりに 大 いに 共 感 して 会 議 自 体 も 一 部 、この 方 向 に 動 いていきました。 特 に 私 がいた4 班 はそうでした。 結 果 、 釜 石 市 の 漁 業 支 援 がアクションとして 出 てきました。ところが、ここに 来 て 会 議 の 予 算 切 れ、シンポジウムとのスケジュールの 兼 ね 合 いが 出 てきました。そして、 会 議 での 決 定 事 項 であるアクションが、 予 算 や1 年 というスケジュール 優 先 の 会 議 の 在 り 方 と 乖 離 して 行 く 事 になりました。 本 来 は 組 織 ( 会 議 )で 動くべきアクションの 責 任 や 実 行 は、 個 人 に 委 ねられ、これまでの 会 議 は 何 だったのか、という 疑 問 を 抱 きました。これでは 机 上 の 空 論 になると 諦 めた 離 脱 者 が 正 解 で、 残 ったものは 予 想 通 りの 求 めていない 座 学 (もちろん 実 はありました。)という 結 果 だと 悲 観しました。 復 興 リーダー 会 議 とは、 会 議 の 在 り 方 、スケジュール、 予 算 、ゴール 設 定 、参 加 者 などの 思 いも 含 めてもっと 誰 かがリーダーシップを 持 ってコーディネーションすべきものだと 強 く 思 いました。 復 興 リーダー 会 議 には、 会 議 自 体 を 有 効 化 するリーダーが 不 在 だったと 言 わざるを 得 ません。これなら 会 議 のタイトル「 復 興 について 考 える 会議 」とでもすれば 良 かったのではないかと 思 いました。 私 が 学 んだ 事 は、 辛 辣 になって申 し 訳 ないですが、この 会 議 をもっと 有 意 義 なものにできなかった 自 分 自 身 の 反 省 から得 られたものです。 今 後 の 会 議 の 発 展 と 成 功 を 心 から 祈 念 いたしまして、クリティカルに 書 かせて 頂 きました。 素 晴 らしい 機 会 をありがとうございました。20


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録1 アクションプラン・ 提 言 (1)~2つの 復 興 支 援 活 動 モデル~「 被 災 地 における 中 間 支 援 組 織 とSROI・SIBの 可 能 性 」「『タフな 街 』 岩 手 県 釜 石 市 の水 産 加 工 等 復 興 プロジェクト」21


て 成 立 する。• 寄 付 者 にとっては、 通 常 寄 付 として 支 出 するリソースを、 投 資 という 形 で 支 出 でき、リターンがあれば 再 投 資 に 回 すことが 可 能 。• 事 業 主 体 にとっては、 資 金 調 達 と 事 業 拡 大 の 機会 となる。• 受 益 者 ・ 市 民 ( 国 民 )にとっては 公 的 資 金 の 利用 効 率 が 上 昇 し、 高 い 社 会 的 生 産 性 が 確 保 でき図 3 SIBの 仕 組 み表 1 SIBに 係 わる7つのステークホルダーサービス 対 象 者 プログラムの 受 益 者 。 社 会 的 なサービスを 必 要 としている 人 々。( 問 題 を 抱 えた 人 々) 未 就 職 者 、 障 碍 者 、ホームレス、 出 所 者 など。行 政SIBを 用 いて 財 政 支 出 を 削 減 したい 自 治 体 など。SIBの 内 容 の 設 定 や 組 織 間 の 調 整 に 関 わる。 目 標 が 達 しされた 場 合 、 報 酬 を支 払 う。サービス 提 供 者 社 会 的 インパクトの 高 いサービスを 提 供 している 組 織 (NPOなど)。仲 介 者 と 契 約 を 結 んで 資 金 提 供 を 受 け、サービスを 拡 大 する。目 標 の 達 成 度 合 いを 評 価 機 関 から 評 価 される。投 資 家経 済 的 リターンよりも 社 会 的 リターンを 重 視 する 慈 善 投 資 家 など。仲 介 者 を 通 して 資 金 を 提 供 する。プログラムが 成 功 したら 報 酬 を 受 け 取 る。中 間 支 援 組 織 SIB 全 体 のコーディネートをする 組 織 。行 政 との 調 整 、 投 資 家 集 め、サービス 提 供 者 と 評 価 機 関 の 選 定 、 資 金 提 供 、プロジェクト 管 理 などを 行 う。評 価 アドバイザー プログラムの 進 捗 状 況 をモニターし、 期 待 したとおりに 進 んでいるかチェックする 組 織 。シンクタンクやコンサルティングファームなど。仲 介 者 やサービス 提 供 者 と 二 人 三 脚 でプロジェクトの 成 功 を 監 視 する。独 立 評 価 組 織プロジェクトが 当 初 に 規 定 した 目 標 を 達 成 しているか 同 かを 判 定 する 第 三 者機 関 。シンクタンクや 大 学 の 専 門 家 など。この 組 織 の 報 告 に 基 づき、 行 政 は 報 酬 を 支 払 うかどうか 判 断 する。図 3および 表 1出 典 :From Potential to Action: Bringing Social Impact Bonds to the U.S. McKinsey & Company(2012)の図 および 表 をもとに 鴨 崎 氏 が 作 成 。http://mckinseyonsociety.com/downloads/reports/Social-Innovation/McKinsey_Social_Impact_Bonds_Report.pdf26


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書る。出 典 : 社 会 的 価 値 評 価 (SROI 等 )の 世 界 的 動 向伊 藤 健 (2012)5. 中 間 支 援 組 織 (HOPE)とSROI・SIBをめぐる 課 題(まとめ)「HOPE」の 場 合 、 運 営 財 源 の 多 くは 東 松 島 市 役 所からの 交 付 金 によっている。(プロジェクトの 実 施に 係 る 経 費 については、 国 ・ 民 間 からの 競 争 的 資原 資 を 次 の 課 題 解 決 に 向 けようとする。この 構 造 を変 化 させなければ、SIBは 成 立 しえない。「HOPE」では、 役 場 行 政 への 運 営 費 拠 出 に 係 る 説明 材 料 、あるいはステークホルダーとのコミュニケーションツールとして、SROIに 期 待 を 寄 せている。SIBについては 当 面 、 企 業 からの 寄 付 や 献 金 によるファンド 造 成 と 組 み 合 わせ、 役 場 からの 運 営 費拠 出 を「 役 場 が 支 出 を 免 れたコスト」と 見 立 てられるよう 形 式 を 整 える 方 針 である。 現 在 、「HOPE」で図 4 SIBプログラムのコストとベネフィットの 概 念 図出 典 :From Potential to Action: Bringing Social Impact Bonds to the U.S. McKinsey & Company(2012)の図 および 表 をもとに 鴨 崎 氏 が 作 成 。http://mckinseyonsociety.com/downloads/reports/Social-Innovation/McKinsey_Social_Impact_Bonds_Report.pdf金 ・ 交 付 金 ・ 支 援 金 を 用 いる。)「HOPE」の 存 在 により、( 他 の 誰 もが 主 体 性 を 持 ちえないゆえに) 行政 が 担 わざるをえない 復 興 業 務 が 軽 減 され、それに必 要 な 財 政 支 出 も 軽 減 される 可 能 性 がある。しかし、 現 在 の 行 政 会 計 システムでは、 仮 にSROIで 多 大な 社 会 的 効 用 が 発 生 していることが 示 され、かつ 行政 支 出 が 削 減 されていることが 明 らかになっても、それをSIBに 充 当 することができない。これは、 行 政 において 当 該 年 度 に 支 払 われなかった 経 費 は、「 削 減 されたコスト」という 考 え 方 ではなく、「 使 わずに 済 んだ 予 算 」つまり 次 年 度 予 算 付けが 必 要 ない 経 費 と 見 なされるためである。 地 域 社会 の 様 々な 課 題 に 財 政 出 動 で 対 応 しようとする 地 方行 政 では、 一 つの 課 題 で 予 算 が 削 減 されれば、そのは、SROI・SIBについてのフィージビリティ・スタディを 開 始 している。「HOPE」は、 市 の 復 興 計 画 の 定 めたリーディングプロジェクトである4つの 部 会 の 下 に27 個 もの 復 興事 業 を 抱 えている。こうした 事 業 を 統 括 する「HOPE」に 寄 付 を 募 り、ファンド 造 成 するのか、あるいは 個 々の 部 会 レベル、 事 業 レベルでファンド 造成 するべきなのかも、 現 時 点 では 判 断 できない。「HOPE」に 限 らず、 被 災 地 で 復 興 にあたる 役 場 ・ 民間 、あるいは 中 間 支 援 組 織 の 多 くが、 組 織 機 構 ・ガバナンス・ファンド 等 々、そのあり 方 を「 走 りながら 考 える」 状 況 のなかで、「 走 り 続 けることで 掴 める 成 功 」を 求 めるしかない 状 況 にあると 思 われる。支 援 側 が 急 速 に 縮 小 するなかで、 先 頭 を 走 ることで27


手 厚 く 支 援 を 受 け、 成 功 を 掴 む 方 法 もあるが、 広 範囲 にわたる 被 災 地 全 般 に 有 効 な 先 進 事 例 をつくり 出すことが、 現 時 点 での 被 災 地 支 援 活 動 において 重 要な 意 味 を 持 つと 思 われる。28


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書「『タフな 街 』 岩 手 県 釜 石 市 の 水 産 加 工 等 復 興 プロジェクト 」【 課 題 意 識 と 取 組 の 概 要 】「 産 業 復 興 」をテーマとする 第 4 班 では、 産 業 復興 のためには、 企 業 のビジネス・ベースの 取 組 を 促進 する 基 盤 づくりが 不 可 欠 であること、また、 産 業の 再 生 はコミュニティの 再 興 と 両 立 させる 必 要 があることを 議 論 した 上 で、この「 復 興 リーダー 会 議 」の 成 果 として、 提 言 の 発 表 に 留 まらず、 具 体 的 なアクションを 実 行 し、 産 業 復 興 のモデルとなる 事 例 を作 り 出 すことで 合 意 した。具 体 的 には、 津 波 により 甚 大 な 被 害 を 被 った 岩 手県 釜 石 市 を 対 象 として、 水 産 加 工 業 のブランド 化 による 産 業 復 興 と、ラグビー・コミュニティを 活 用 した「タフな 街 」としての 町 興 しを 行 うアクションプランを 策 定 した。トを 生 み 出 すものとするため、 釜 石 市 の 産 業 復 興 と町 興 しについて、それぞれ、 定 性 的 な 目 標 と 共 に、活 動 の 指 標 (KPI)を 定 めて 具 体 的 な 目 標 値 を 設定 した。• 水 産 業 のブランド 化 においては、 地 場 の 水 産 業 を中 心 とした 雇 用 と 経 済 利 益 の 創 出 を 目 標 とし、1年 以 内 に 売 上 50 億 円 規 模 の 水 産 加 工 業 者 を5 社 生み 出 すことをKPI 目 標 とした。•「 元 気 になる 街 」としての 集 客 においては、 過 疎に 直 面 する 町 の 復 活 のロールモデルを 作 ることを目 標 とし、2022 年 までに 定 住 人 口 を50000 人 とする、という 目 標 に 加 えて、 交 流 人 口 を2020 年 までに 年 間 202 万 人 ( 震 災 前 の 約 2.5 倍 )に 増 やすことをKPI 目 標 とした。【 背 景 】釜 石 市 は、 日 本 の 鉄 の 発 祥 地 、また、 水 産 業 が 盛んな、「 鉄 と 魚 とラグビーの 町 」として 栄 え、 最 盛期 の1960 年 代 は 人 口 9 万 人 以 上 、 盛 岡 市 に 次 ぐ 岩 手第 二 の 都 市 だった。しかし、その 後 、 基 幹 産 業 である 鉄 鋼 業 の 合 理 化 の 影 響 などにより 人 口 は 減 少 、 震災 前 の 平 成 22 年 12 月 末 には 人 口 4 万 人 、 高 齢 化 率 35%という 典 型 的 な 過 疎 化 ・ 高 齢 化 問 題 に 直 面 する 地 方都 市 となっていた。この 釜 石 市 を 東 日 本 大 震 災 が 襲い、 死 者 ・ 行 方 不 明 者 1040 人 、 被 災 家 屋 約 4700 戸( 市 全 体 の3 割 )、 浸 水 した 事 業 所 約 1400 事 業 所( 市 全 体 の6 割 )という 壊 滅 的 な 被 害 を 受 けた。震 災 後 、 釜 石 市 の 産 業 とコミュニティを 同 時 に 復興 するためには、 世 界 三 大 漁 場 の 一 つである 三 陸 沖の 水 産 資 源 の 強 みを 生 かし、 地 域 に 根 差 した 水 産 業の 再 興 が 欠 かせない。また、 町 興 しには、 定 住 人 口( 震 災 後 3 万 7000 人 に 減 少 )だけでなく、 釜 石 を 訪れ、 釜 石 に 何 らかの 形 で 関 わりを 持 つ「 交 流 人 口 」を 拡 大 することが 必 要 であり、そのためには、ラグビー 界 を 席 巻 した 新 日 鉄 釜 石 ラグビー 部 、その 後 を継 ぐ「 釜 石 シーウェイブスRFC」のファンを 中 心 とするラグビー・コミュニティを「 釜 石 ファン」として 巻 き 込 んでいくことが 必 要 と 考 えた。【 目 標 】我 々の 取 組 を 提 案 どまりにせず、 具 体 的 なインパク【アクションプラン】Ⅰ. 水 産 加 工 業 のブランド 化 による 産 業 復 興水 産 加 工 業 のブランド 化 においては、1) 個 別 企 業の 既 存 商 品 の 販 路 拡 大 から、2) 個 別 企 業 の 新 商 品開 発 ・ブランディング、そして、3) 釜 石 水 産 業 全体 のブランディング、と 段 階 を 追 って 活 動 を 拡 大 していくこととした。1) 個 別 企 業 の 既 存 商 品 の 販 路 拡 大< 時 期 >2012 年 12 月 ~< 活 動 内 容 >• 個 別 企 業 の 既 存 商 品 を、 首 都 圏 をはじめとする 大規 模 販 路 にマッチングする。•そのための 企 業 のバイヤーの 釜 石 訪 問 、 合 同 リアルマッチング• 一 般 社 団 法 人 「 東 の 食 の 会 」を 通 じたマッチングなお、これらのマッチングにより、すでに、 地 元企 業 が 生 産 ・ 加 工 する 食 材 を、1) 大 手 企 業 の 社 食として 採 用 する、2) 全 国 規 模 の 飲 食 店 ( 高 級 和食 ・ 居 酒 屋 )で 活 用 する、などの 案 件 が 具 体 化 している。2) 個 別 企 業 の 新 商 品 開 発 ・ブランディング< 時 期 >2013 年 2 月 ~< 活 動 内 容 >• 販 売 企 業 、ブランディングチームと 共 同 での 新 商29


品 開 発•プロを 起 用 したブランディングと、メディアを 活用 とした 大 規 模 プロモーション< 具 体 案 >• 新 たな 缶 詰 商 品 の 開 発 ( 中 身 のおいしさは 前 提 とした 上 で、 釜 石 の 鉄 を 想 起 させるデザイン 性 の 高いパッケージなど、 総 合 的 な 付 加 価 値 を 高 める 取り 組 みを 実 施 )3) 釜 石 水 産 業 全 体 のブランディング< 時 期 >2013 年 4 月 ~< 活 動 内 容 >• 先 行 事 例 を 作 って 求 心 力 を 生 んだ 上 で、 賛 同 企 業を 増 やしていく• 共 通 の 釜 石 ブランディングの 下 、 販 促 活 動 を 行 う‐ 共 通 の 釜 石 シールを 商 品 に 貼 付 するといったアイディアはどうか‐ 訴 求 力 の 高 い 商 品 と、 他 の 地 元 企 業 の「 隠 れた」 名 産 品 を 組 み 合 わせるといった 雁 行 型 の取 り 組 みはどうか< 具 体 案 >· 「タフな 街 ・ 釜 石 」としての 町 全 体 のブランディング‐ サンセバスチャンの 例Ⅱ.ラグビーワールドカップの 誘 致 によるインバウンドを 活 用 した 交 流 人 口 の 増 加定 住 人 口 のみにとらわれることなく、 交 流 人 口 に着 目 し、その 増 大 に 向 けた 事 業 を 実 施 する。 具 体 的には、1)2019 年 に 日 本 で 行 われる 第 9 回 ラグビーワールドカップの 誘 致 を 念 頭 に、2) 東 北 地 方 では圧 倒 的 に 降 雪 量 が 少 ない・ 高 齢 化 率 が 高 い、といった 特 徴 を 踏 まえたスポーツ・ 健 康 関 連 の 取 り 組 みを実 施 し、3)「タフな 街 ・ 釜 石 」としての 街 自 体 のブランディングを 積 みあげていくことで、 単 純 なスポーツイベントの 招 致 だけに 留 まらず、すそ 野 の 広い 街 の 活 性 化 につなげていく。1) 第 9 回 ラグビーワールドカップ 日 本 大 会 の 試 合会 場 としての 釜 石 招 致 活 動< 時 期 >2013 年 4 月 ~< 活 動 内 容 >· NPOスクラム 釜 石 など 有 志 団 体 との 連 携 による誘 致 活 動· 地 域 での 地 道 なイベント 開 催< 具 体 案 >· 地 元 盛 り 上 がりの 対 外 的 なPR· 復 興 事 業 の 進 捗 と 軌 を 一 にした 誘 致 活 動 をパッケージとして 実 施2)「タフな 街 ・ 釜 石 」のブランディング< 時 期 >2015 年 4 月 ~< 活 動 内 容 >· ラグビーワールドカップ 開 催 を 念 頭 に、スポーツ・ 健 康 関 連 事 業 の 実 施< 具 体 案 >· 「タフな 街 ・ 釜 石 」の 考 え 方 に 沿 った 商 品 開 発 ・対 外 露 出 など「タフな 街 、 釜 石 」としての 産 業 復 興 ・ 町 興 し1水 産 加 工 業 のブランド 化目 標 概 要 KPI• 地 場 の 水 産 業 を 中 心 とした雇 用 と 経 済 利 益 の 創 出• 「タフな 水 産 加 工 食 品 」として 共 通 のブランディングの 下 、地 元 加 工 企 業 の 販 売 を 促 進する• 1 年 以 内 に、 売 上50 億 円 の 水 産 加工 業 者 を5 社 生み 出 す2「 元 気 になる街 」 集 客• 過 疎 に 直 面 する 町 の 復 活 のロールモデルを 作 る• 「 元 気 になる 街 」とのブランディングの 元 、ラグビーコミュニティを 中 心 に 定 住 人 口 、交 流 人 口 を 増 やす• 2022 年 までに 定住 人 口 を50000人 に• 交 流 人 口 TBD3漁 業 技 術 を 生かした 人 材 育成• 漁 業 技 術 を 生 かして、 国 際交 流 を 促 進 し、グローバル人 材 を 輩 出 する図 1:「タフな 街 、 釜 石 」としての 産 業 復 興 ・ 町 興 し30


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録2 アクションプラン・ 提 言 (2)~3つの 課 題 共 有 に 関 する 提 言 ~「 震 災 風 化 を 乗 り 越 える」「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 選 定 プロセスの 構 築 」「“N 助 型 ”ソリューションによる 創 造 的 教 育 復 興 支 援 」31


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書「 震 災 風 化 を 乗 り 越 える 」■ 復 興 に 関 心 をもちつづける 必 要 性もう 一 つは、 多 くの 方 々がこれから10 年 間 、 見 守 っ3 月 で、 震 災 から2 年 が 経 過 しようとしている。 て 頂 ける。 私 たちに 求 められていることは 無 理 くり被 災 市 町 村 ごとに 復 興 の 方 向 性 をさだめた 復 興 計 画 にでも 経 営 革 新 することです。 震 災 前 と 同 じことをはほぼできあがり、 定 められた 施 策 は 少 しずつ 進 め やっていたのでは、 経 営 は 成 り 立 ちません。そんなられている。とりわけ、 道 路 ・ 港 湾 などのインフラ 中 、 中 小 企 業 が 売 上 などの 経 営 状 況 をガラス 張 りとの 復 旧 は 早 い。また 被 災 者 個 人 や、 被 災 事 業 者 への なって 公 開 していくことは、 経 営 の 緊 張 感 につなが支 援 は 手 厚 く、 行 政 が 得 意 な 分 野 での 復 旧 は 進 んで ります。また、 出 資 者 の 方 々と、これからの 戦 略 やいるといえる。付 加 価 値 をどうやって 作 っていくか、ということに一 方 で、 行 政 が 得 意 ではない 分 野 での 復 興 は 遅 れ ついても、 直 接 的 なニーズを 伺 いながら 進 めていけがある。 住 民 同 士 の 合 意 形 成 、 事 業 者 の 再 開 の 意 思 ることはとても 重 要 だと 思 っています。こうして、決 定 、 被 災 者 の 心 のケア、 再 就 職 への 意 欲 確 保 な 私 たちに 寄 り 添 って 頂 き、これからの 再 建 のプロセど、 行 政 が 補 助 をおこなったり 規 制 すれば 解 決 する スを 全 て 見 て 頂 ける。これは、 強 いプレッシャーで問 題 ではない。 被 災 住 民 自 身 が 自 立 的 に 前 を 歩 む 必 もあり、 甘 くはないと 思 っています。でも 本 当 に 大要 がある 分 野 だ。しかし 被 災 地 ・ 被 災 者 の 被 害 は 甚 きな 励 みになるのです。だから、 私 は 当 社 への 寄 付大 であって、NPOや 企 業 といった 外 部 からの 支 えが を 希 望 して 頂 く 方 にはできるだけこのファンドの 方まだまだ 必 要 である。 二 つ 例 をあげたい。にお 申 込 頂 くよう、お 願 いしてきました。 寄 付 金 は大 変 有 難 いのですが、その 後 、ずっとつながって 頂1. セキュリテによるクラウドファンディング 支 援 くことの 方 が 当 社 にとって 重 要 だからです。」セキュリテ 被 災 地 応 援 ファンドは、 被 災 から 立 ち上 がる 事 業 者 を、 個 人 からの 出 資 を 通 じて 応 援 して 2. 釜 石 におけるコミュニティ 支 援いる。1 口 1 万 円 の 内 、5 千 円 が 出 資 金 、5 千 円 が ある 団 体 では、 東 京 でキャリアを 積 んだ「 地 域 復支 援 金 となり、 出 資 者 は 自 分 が 応 援 したい 事 業 を 選 興 コーディネイター」が 釜 石 市 ・ 唐 丹 地 区 に3 人 常び、その 事 業 に 役 立 てることができる 仕 組 みとなっ 駐 する 形 で、 住 民 主 体 の 復 興 を 支 援 している。 釜 石ている。ただ 投 資 するだけではなく、 事 業 者 と 個 人 市 役 所 の 復 興 推 進 本 部 や、 地 域 NPOと 連 携 しながをつなぎ、お 金 と 仲 間 を 集 めるマイクロ 投 資 プラッ ら、 住 民 への 情 報 提 供 や、 意 見 交 換 、また 支 援 関 係トフォームであり、 出 資 先 の 商 品 が 届 いたり、 出 資 者 を 巻 き 込 んだ 連 絡 会 議 等 の 企 画 を 行 ってきた。 外を 通 してつながった 事 業 者 との 交 流 会 や 現 地 を 訪 問 するツアー 等 の 企 画 もある。現 在 までに、 投 資 者 約25,000 人 、 調 達 金 額 約 9 億円 の 実 績 があり、23 事 業 者 のファンド 募 集 完 了 (14 事 業 者が 現 在 も 募 集 中 )している。陸 前 高 田 の 老 舗 の 社 長 は、しょうゆ 醸 造 ファンドについて 以 下 のように 述 べている。「このファンドは 私 たちにとって、 大 きな 希 望 の 光 なのです。 資 金 を 調 達 させて 頂 けることは 大 きなことですが、図 1 復 興 コーディネイターの 活 動 イメージ33


部 の 人 間 が 入 ることにより 住 民 たちの 本 音 を 引 き 出すことができたし、 中 立 的 な 立 場 で 住 民 の 意 見 ・ 悩み 事 を 市 役 所 へつなぐ 役 割 を 果 たし、 問 題 解 決 を 図ることができた。また、 多 忙 な 市 役 所 をサポートする 形 で、 企 業 ・NPO 等 外 部 に 対 する 窓 口 ともなり、 支 援 実 施 までのコーディネート 役 も 果 たしている。■ 風 化 の 現 実しかし、 被 災 地 外 の 日 本 において、 震 災 についての 記 憶 は 薄 れ、また 関 わる 人 間 も 減 り 続 けているのが 現 状 である。メディア 報 道 は、 震 災 直 後 の2か 月 間 で2070 時 間にも 及 んだが、5 月 前 半 の 時 点 では 震 災 関 連 の 占 める 時 間 が40%、8 月 になると13%にまで 減 少 していた。2 年 近 く 経 とうとしている 今 は、さらに 減 少 しているだろう。東 京 にある 被 災 3 県 のアンテナショップへも 風 化の 影 響 が 見 られるためか、 客 数 は 前 年 比 54% 減 、 売上 も 半 減 している。 池 袋 の「 宮 城 ふるさとプラザ」では、2011 年 4-6 月 の 売 上 が 例 年 の2 倍 以 上 にまで 伸 びたが、2012 年 4-8 月 の 売 上 は、 前 年 同 期 比の 半 分 に 減 った。 銀 座 の「いわて 銀 河 プラザ」では、2012 年 4-8 月 の 売 上 は、 前 年 同 期 比 43% 減 。葛 西 の「ふくしま 市 場 」は、2011 年 度 はオープン 以来 、 過 去 最 高 を 記 録 したが、2012 年 秋 になるとやはり 半 減 している。また 被 災 地 でのボランティア 数 も 減 少 しており、震 災 直 後 の5 月 時 点 では 約 17.2 万 人 だったのが、 昨図 2 進 む 震 災 の 風 化年 12 月 時 点 では、 初 めて1 万 人 をきっているのが 現状 である。■ポジティブメッセージの 必 要 性被 災 者 からすれば 復 興 はいまだ 道 半 ばであって、 風化 に 対 しての 危 機 感 は 強 い。しかし、 被 災 地 以 外 においては「 復 興 」「 支 援 」という 言 葉 に 対 しての 共感 は 下 がりきっている 現 実 がある。「 復 興 」という言 葉 では、 東 北 に 関 わりをもとうとする 人 を 増 やすことができない。 被 災 地 への 関 わりをよりポジティブに 見 せる 取 り 組 みが 必 要 になる。 有 効 事 例 をあげてみたい。1. 中 越 復 興 支 援 員 の 事 例2004 年 に 起 こった 新 潟 県 中 越 地 震 の 中 山 間 地 域 では、「 地 域 復 興 支 援 員 」による 地 域 活 性 化 が 行 われている。 地 域 復 興 支 援 員 は、「 中 山 間 地 域 の 新 たな魅 力 創 出 」「 生 きる 力 を 育 む 学 びの 場 の 創 出 」「 自然 と 経 済 の 循 環 型 ネットワークの 構 築 」をテーマに、 新 しいまちづくりのモデル 構 築 を 目 指 している。この 地 域 復 興 支 援 員 として 活 動 するのは、20~50代 と 幅 広 く、 地 元 出 身 者 が 主 だが 地 域 外 出 身 者 も 多数 見 られる。 若 い 世 代 では、 地 域 づくりを 学 んできた 方 なども 多 く、 被 災 地 支 援 という 文 脈 だけではなく、まちづくりや 地 域 経 営 に 関 する 挑 戦 として 捉 えていると 考 えられる。2. 右 腕 派 遣 プログラムこのプログラムでは、 被 災 地 の様 々なプロジェクトに 対 して、「 右 腕 」となる 優 位 な 人 材 を 送 り込 む 支 援 を 続 けている。3か 月 に1 度 東 京 で 行 われるイベントには、1 年 半 経 過 した 今 も100 名 以 上を 集 客 し、その 結 果 、2012 年 12 月時 点 で、50プロジェクトに 対 して130 人 の 復 興 人 材 をコーディネイトした。 人 材 を 集 め 続 けられているのは、 東 北 の 可 能 性 や、 日 本 の未 来 の 姿 、 課 題 先 進 地 域 といったメッセージにより、 社 会 課 題 の 解決 等 に 関 心 がある20~30 代 の 若 手を 惹 きつけるのだろう。これらの 事 例 で 見 られるように、 長 期 に 渡 って 人 材 を 集 めるた34


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書めには、「 支 援 」や「 復 興 」ではなく、ポジティブ げられる。 現 在 被 災 地 が 直 面 している 課 題 の 多 くで 発 展 的 なイメージを 発 していくことが 有 効 である は、 高 齢 化 などを 背 景 として 震 災 前 より 地 域 が 抱 えと 考 えられる。ていた 問 題 であることはよく 言 われているが、これは 日 本 全 体 が 近 い 将 来 抱 える 問 題 でもある。 例 えば■アクションのイメージ年 々 進 行 する 高 齢 化 率 では、 全 国 平 均 の23.3%( 平以 上 で 見 てきたように、 復 興 に 向 けては 被 災 地 外 成 23 年 )に 対 し 被 災 地 沿 岸 では30%を 超 える 地 域 が部 からの 関 与 が 欠 かせないが、 残 念 ながら 震 災 の 風 多 くを 占 める。つまり 被 災 地 は 高 齢 社 会 の 医 療 や 福化 は 進 んでおり、 復 興 に 関 わる 人 材 が 減 少 してきて 祉 、 産 業 の 課 題 を 全 て 抱 える 課 題 先 進 地 域 であり、いるのが 現 実 である。 一 方 で、 被 災 地 での 新 しい 取 復 興 は 言 い 方 を 変 えると「 課 題 解 決 先 進 地 域 」になり 組 みに 関 わる 人 材 を 集 めている 団 体 もあり、その るための 取 組 であるとも 言 える。要 因 は、「 支 援 」ではなく、 例 えば「 未 来 」「 課 題 未 来 のための 地 域 づくりという 文 脈 では、 移 住 誘解 決 」「 最 先 端 」などといったポジティブなイメー 致 に 成 功 した 島 根 県 の 海 士 町 や、アートによるまちジの 発 信 であると 考 えられる。 復 興 に 関 わる 人 材 を づくりを 行 った 新 潟 県 十 日 町 市 など、 全 国 に 好 事 例集 めるために 求 められる 取 り 組 みを 以 下 に2つ 挙 げ が 複 数 ある。これらは 実 際 の 成 果 が 上 がっているだたい。けでなく、 普 遍 的 なコンテンツとして 継 続 してメディア 露 出 をしながら 関 心 を 集 めている。そこで、1. オールニッポン 地 域 づくりアカデミー現 在 被 災 地 が 取 り 組 む 地 域 づくりに、 全 国 の 先 行 事関 心 や 共 感 を 集 める 情 報 発 信 のためには、 被 災 地 例 キーマン 達 が 参 加 し 知 の 交 換 をするプログラムを側 の「 伝 えたい」ではなく、 外 部 の「 知 りたい」を 行 う。 被 災 地 は 甚 大 な 被 害 を 受 けてしまったが、 逆出 発 点 として 情 報 を「コンテンツ 化 」する 必 要 があ にゼロベースで 新 たな 取 組 を 行 う 余 地 ができた 側 面る。 被 災 地 の 情 報 を 単 体 ではなく、 他 の 地 域 活 性 化 もある。 被 災 地 をよい 意 味 でのチャレンジの 場 としやコミュニティデザインの 取 組 とパッケージングし て、 日 本 全 国 あげて 未 来 の 為 の 地 域 づくりを 行 うこて 発 信 する 取 組 を 提 案 する。とは、 実 際 の 効 果 が 見 込 めるだけでなく 関 心 を 呼 ぶ全 国 的 な 関 心 と 被 災 地 の 置 かれた 状 況 が 重 なる 大 コンテンツになる 可 能 性 が 高 い。きな 一 つとして、「 未 来 のための 地 域 づくり」が 挙 あわせて、その 地 域 を 越 えた 知 の 交 換 を 番 組 化 するなどし、 学 びコンテンツとして 配 信 する。 全 国 各 地 の 地 域づくりへ 関 心 のある層 に 対 してのアプローチにおいて、様 々なメディアとのコラボレーションも見 込 める。この 一 連の 取 組 を「オールニッポン 地 域 づくりアカデミー( 仮称 )」とし、「 被 災地 の 復 興 」ではなく「 未 来 のための 地 域づくり」への 文 脈 転換 により、 日 本 全 国を 巻 き 込 む 新 たなムーブメントをつくっていくことを 目指 す。図 3 オールニッポン 地 域 づくりアカデミー( 仮 称 )35


2. 復 興 人 材 プラットフォーム復 興 に 関 わりたいと 考 える 人 材 と、まちづくりや産 業 復 興 等 の 事 業 に 関 する 情 報 のプラットフォームを 構 築 する。これまでに 見 てきたように、「 支 援 」や「 復 興 」ではなく、 地 域 づくりや 産 業 復 興 、 各 テーマにおける 課 題 解 決 に 関 心 のある 人 材 を 集 め、 復 興 関 係 者 の受 け 皿 、I/Uターンしたい 人 の 登 録 を 受 け 付 ける。登 録 者 に 対 しては、 被 災 地 での 事 業 に 関 する 情 報 提供 を 行 うことで、 各 自 に 挑 戦 する 機 会 を 提 供 することができる。ただ 紹 介 するだけでなく、 送 り 出 す 際の 基 礎 知 識 ・スキルのインプットや、 送 り 出 した 後もフォローを 行 うことで、 人 材 にとっても、 受 入 側にとっても 有 効 な 仕 組 みとなることを 目 指 す。5 年 程 度 は 東 北 中 心 で 行 っていくが、それ 以 降は、 東 北 に 留 まらず、 全 国 の 地 域 活 性 化 、 防 災 や 災害 対 応 の 人 材 のプールにもなっていくことを 期 待 している。職 員 補 充 の 充 足 率必 要 数3 県 合 計72.7%N=1658 人岩 手79.6%N=372 人宮 城71.0%N=936 人福 島69.7%0.0% 100.0%N=350 人注 ) 確 保 数 ( 充 足 率 )は 国調 整 分 と 自 治 体 調 整 分 の合 計• 東 日 本 大 震 災 で 被 災 した 岩 手 、 宮 城 、 福 島 の3 県 で 復 興 業 務 に 当 たる 職 員 の 充足 率 は 約 73%。453 人 が 不 足• 引 き 続 き 全 国 の 自 治 体 に 職 員 派 遣 を 要 請 するほか、 任 期 付 き 職 員 採 用 などの 対策 を 講 じている出 展 :2012 年 11 月 16 日 河 北 新 報 http://www.kahoku.co.jp/news/2012/11/20121116t71010.htm図 4 被 災 自 治 体 職 員 の 不 足36


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 選 定 プロセスの 構 築 」~より 良 い 合 意 形 成 に 向 けて~1.はじめに「 合 意 形 成 」とは、 人 が 集 団 として 行 動 する 際 には 欠 かせないプロセスである。 前 例 のない 課 題 に 向き 合 っている 危 機 の 時 代 においては、 特 にその 重 要性 が 増 す。それは、 伝 統 に 従 っていれば 正 統 性 を 主張 できる 平 時 とは 違 い、 危 機 の 時 代 には 依 るべき 前例 が 存 在 しないからである。東 日 本 大 震 災 、そして 東 京 電 力 福 島 原 発 事 故 は、日 本 にとって、 正 にこうした 前 例 のない 事 態 である。 我 々のグループにおいては、 震 災 を 契 機 として噴 出 した 種 々の 課 題 に 向 き 合 うに 当 たり、「 住 民 ・市 民 による、より 良 い 合 意 形 成 のためには、どのようなプロセスを 踏 めば 良 いのか」という 点 について討 論 を 行 った。メンバーからの 問 題 提 起 の 中 では、 例 えば、 津 波によって 流 されてしまった 街 の 再 建 に 当 たって、 今後 、その 街 の 担 い 手 となる20 代 、30 代 を 如 何 に 巻 き込 み、その 意 見 を 吸 い 上 げ、 反 映 していくのか、といった 課 題 も 提 起 された。しかし、 今 次 の 我 々の 提言 においては、 緊 急 に 対 処 すべき 課 題 であるとともに、 多 様 なステークホルダーが 存 在 し、 合 意 形 成 が極 めて 難 しい「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 選 定 」という 課 題 に 焦 点 を 当 て、より 良 い 合 意 形 成 を 構 築 するためのプロセスについて 提 言 を 行 うこととした。2. 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 選 定 について東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 に 伴 う 原 子 力 発 電 所 の 事 故によって 放 射 性 物 質 が 大 量 に 放 出 されており、 放 射性 物 質 が 人 の 健 康 ・ 生 活 環 境 に 対 して 及 ぼす 影 響 を低 減 させることが 喫 緊 の 課 題 となっている。当 該 事 故 によって 発 生 した8000Bq/kgを 超 える 廃棄 物 は「 指 定 廃 棄 物 」と 呼 ばれ ※1 、 最 終 処 分 場 の確 保 やその 安 全 性 の 確 保 を 含 め、 政 府 が 責 任 を 持 って 処 分 を 行 うこととされている ※2 。 指 定 廃 棄 物 の処 理 は 当 該 指 定 廃 棄 物 が 排 出 された 都 道 府 県 内 で 行うものとされているが、 除 染 の 進 展 に 伴 って 多 量の 指 定 廃 棄 物 が 各 地 で 発 生 し、 一 時 的 な 保 管 が 長 期間 継 続 しており、これらの 処 理 を 迅 速 に 進 めるためには、 各 県 内 に、 政 府 が 最 終 処 分 場 を 設 置 していくことが 必 要 となる。このため、 政 府 は、 平 成 26 年 度末 を 目 途 として 必 要 な 最 終 処 分 場 を 確 保 することを目 指 しており、 最 終 処 分 場 を 新 たに 設 置 する 場 合 には、 平 成 24 年 9 月 末 までに 場 所 を 示 すとされていた ※3。最 終 処 分 場 を 新 たに 設 置 する 場 合 には、1 必 要 規模 や 地 形 を 考 慮 した 国 有 地 を 抽 出 し( 基 本 条 件 )、2 法 令 面 の 制 約 のない 国 有 地 を 抽 出 し(1 次 スクリーニング)、3 最 終 処 分 場 の 適 地 として 望 ましくない 地 域 ( 地 すべり 地 形 、 洪 水 浸 水 区 域 、 活 断 層 近接 地 域 等 )、 自 然 的 条 件 ( 地 形 、 地 質 、 希 少 動 植 物等 )、 社 会 的 条 件 ( 水 道 水 源 の 位 置 等 周 辺 土 地 利 用等 )を 確 認 し、 県 内 で 複 数 の 候 補 地 を 抽 出 し(2 次スクリーニング)、4 複 数 の 候 補 地 に 対 して 現 地 調査 を 行 って 最 終 的 な 候 補 地 を 選 定 する、という 順 序で 手 続 きを 進 めるとしている。政 府 は、 以 上 の1~4の 手 続 きを 進 めた 上 で、 平成 24 年 9 月 3 日 には、 栃 木 県 内 における 最 終 処 分 場の 候 補 地 を 矢 板 市 塩 田 字 大 石 久 保 国 有 林 野 に、9 月27 日 には、 茨 城 県 内 における 最 終 処 分 場 の 候 補 地 を高 萩 市 大 字 上 君 田 字 竪 石 国 有 林 野 に 決 定 した。政 府 の 決 定 に 対 し、 矢 板 市 及 び 高 萩 市 においては激 しい 反 対 運 動 が 勃 発 した。 矢 板 市 長 は「 候 補 地 を突 然 伝 えてきた 国 のやり 方 は、 一 方 的 で 地 元 を 無 視している。 矢 板 市 全 体 で 反 対 していかなければならない」と 反 対 を 表 明 し ※4 、また、 高 萩 市 長 も「 寝耳 に 水 である。( 市 内 における 最 終 処 分 場 の 設 置に) 断 固 として 反 対 する。 何 の 相 談 もなく、いきなり『 選 定 された』との 一 方 的 な 選 定 決 定 に 憤 りと 不※1 「 平 成 二 十 三 年 三 月 十 一 日 に 発 生 した 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 に 伴 う 原 子 力 発 電 所 の 事 故 により 放 出 された 放 射 性物 質 による 環 境 汚 染 への 対 処 に 関 する 特 別 措 置 法 」※2 平 成 23 年 11 月 11 日 「 平 成 二 十 三 年 三 月 十 一 日 に 発 生 した 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 に 伴 う 原 子 力 発 電 所 の 事 故 により放 出 された 放 射 性 物 質 による 環 境 の 汚 染 への 対 処 に 関 する 特 別 措 置 法 基 本 方 針 」※3 平 成 24 年 3 月 30 日 「 指 定 廃 棄 物 の 今 後 の 処 理 の 方 針 について」※4 平 成 24 年 9 月 6 日 市 長 コメントより。hp://www.city.yaita.tochigi.jp/20120903_saisyusyobun/index.htm37


信 感 を 感 じる。」と 述 べて、 反 発 している ※5 。以 上 のような 状 況 を 踏 まえ、 我 々のグループでは、 栃 木 県 及 び 茨 城 県 における 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処分 場 選 定 からどのような 教 訓 が 導 き 出 せるのか、そして、よりよい 合 意 形 成 に 向 けて、どのようなプロセスを 構 築 すべきかについて 提 言 を 行 うこととした。栃 木 県 及 び 茨 城 県 では 既 に 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分場 の 候 補 地 の 選 定 がなされており、 我 々の 提 言 をそのまま 活 用 することはできないが、1 他 の 都 道 府 県においても、 栃 木 県 や 茨 城 県 と 同 様 に、 最 終 処 分 場の 設 置 場 所 を 選 定 する 必 要 性 があること、2 指 定 廃棄 物 については、 最 終 処 分 場 のみならず、 中 間 貯 蔵※6施 設 や 仮 置 場 を 選 定 する 必 要 があること、3 指定 廃 棄 物 に 限 らず、こうした 所 謂 「 迷 惑 施 設 」については、 常 に 同 様 の 問 題 ( 行 政 による 設 置 場 所 の 選定 と 近 隣 住 民 の 反 発 )が 起 きうる 可 能 性 があること等 を 踏 まえれば、 応 用 可 能 な 範 囲 が 十 分 に 広 いものであると 考 えられるため、 我 々は「 指 定 廃 棄 物 の 最終 処 分 場 選 定 」というテーマについて 提 言 を 行 うこととした。3.アクションプラン(1) 市 町 村 長 会 議 への 最 終 処 分 場 選 定 の 委 託今 般 の 最 終 処 分 場 の 候 補 地 選 定 プロセスにおいては、 最 終 処 分 場 決 定 の 基 準 及 び 具 体 的 な 設 置 場 所 について、 各 市 町 村 や 住 民 等 に 発 言 の 機 会 はなかった。 指 定 廃 棄 物 については、 政 府 がその 処 分 に 対 して 責 任 を 持 つものとされており、 最 終 処 分 場 の 設置 ・ 運 営 についても 政 府 が 責 任 を 持 って 行 うことが必 要 であるが、 最 終 処 分 場 の 設 置 から 大 きな 影 響 を受 ける 県 や 市 町 村 、 住 民 の 意 向 に 耳 を 傾 け、 議 論 することが 重 要 であった。そこで 我 々は、 最 終 処 分 地 の 選 定 に 当 たって、 政府 が、 県 知 事 を 議 長 とし、 県 内 の 全 市 町 村 長 を 会 議員 とする 市 町 村 長 会 議 に 最 終 処 分 場 の 選 定 についての 討 議 を 委 託 することを 提 案 する。 議 論 の 過 程 においては、 専 門 的 な 知 見 や 幅 広 いデータを 有 する 政 府も 情 報 提 供 や 事 務 運 営 等 において、 最 大 限 協 力 するものとする。市 町 村 長 会 議 の 運 営 に 当 たっては、 政 府 からも(2)に 示 すような「 最 終 処 分 場 の 選 定 プロセス( 案 )」を 提 示 するが、どのようなプロセス・ 手 続 きによって 議 論 を 進 めるかも、 最 終 的 に 市 町 村 長 会 議によって 決 定 する。政 府 からは、 最 終 処 分 地 の 選 定 に 当 たって、 当 該期 限 内 に 選 定 をなすべき 合 理 的 な 理 由 を 添 えて、 議論 の 期 限 の 目 途 を 提 示 する ※7 。 期 限 内 に 選 定 がなされない 場 合 は、 政 府 が 最 終 処 分 場 を 選 定 するが、市 町 村 長 会 議 によって 期 限 の 延 長 について 半 数 以 上の 合 意 が 得 られた 場 合 には、 期 限 の 延 長 を 認 める。政 府 としてのスタンスを 示 しつつ、 議 論 の 期 限 さえも 市 町 村 長 会 議 の 決 定 に 委 ねるのは、 政 府 よりも市 町 村 長 会 議 の 方 が、 指 定 廃 棄 物 の 処 分 から 一 番 大きな 影 響 を 受 ける 住 民 により 近 いため、 合 意 形 成 のための 議 論 に 掛 かるコストと、そこから 得 られるリターンとのトレードオフについても、 住 民 の 意 向 を反 映 しやすいと 考 えるからである。(2) 政 府 から 提 示 する 最 終 処 分 場 の 選 定 プロセス( 案 )我 々のアクションプランにおいては、 最 終 処 分 場の 決 定 に 当 たって、その 選 定 プロセスさえも 市 町 村長 会 議 での 決 定 を 求 めることとしている。しかし、これは 全 ての 議 論 を 市 町 村 長 会 議 に 任 せ、 政 府 として 何 もしないという 訳 ではない。 政 府 としては、 議論 のたたき 台 として 以 下 のような 選 定 プロセス( 案 )を 提 示 するとともに、 円 滑 な 議 論 の 進 行 に 向けて、 最 大 限 協 力 を 行 うべきである。1 有 識 者 会 議 の 設 置何 らかの 意 思 決 定 をする 際 、 単 にいくつかの 選 択肢 を 挙 げて 議 論 するのではなく、まず、どのような考 え 方 に 基 づいてその 意 思 決 定 をするかについて 考えることが 重 要 である。 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 の選 定 に 当 たっても、まず、どのような 基 準 で 指 定 廃棄 物 の 最 終 処 分 場 の 場 所 を 決 めるかということについて 議 論 するべきである。その 際 、 最 終 処 分 場 の 設置 が 多 くのステークホルダーに 対 して 影 響 を 与 える※5 平 成 24 年 9 月 27 日 市 長 コメントより。http://www.city.takahagi.ibaraki.jp/bousai.php?code=1064※6 相 当 量 の 土 壌 及 び 廃 棄 物 を 一 定 の 期 間 安 定 的 に 集 中 して 貯 蔵 及 び 管 理 する 施 設 ( 平 成 23 年 11 月 11 日 「 平 成 二 十 三年 三 月 十 一 日 に 発 生 した 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 に 伴 う 原 子 力 発 電 所 の 事 故 により 放 出 された 放 射 性 物 質 による 環 境 の 汚染 への 対 処 に 関 する 特 別 措 置 法 基 本 方 針 」)※7 今 般 の 政 府 の 方 針 では、 最 終 処 分 場 を 新 たに 設 置 する 場 合 には、 平 成 24 年 9 月 末 までに 場 所 を 示 すとされていた。( 平 成 24 年 3 月 30 日 「 指 定 廃 棄 物 の 今 後 の 処 理 の 方 針 について」)38


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書ことを 踏 まえ、より 多 様 な 考 え 方 を 反 映 した 基 準 を策 定 すべきである。そこで、 政 府 から 提 示 する「 最 終 処 分 場 の 選 定 プロセス( 案 )」においては、ステークホルダー( 観 光産 業 ・ 農 林 業 関 係 者 、 自 然 保 護 等 に 係 るNPO 等 )や 有 識 者 ( 学 者 等 )10 名 程 度 から 成 る 有 識 者 会 議 を設 置 し、「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 決 定 に 当 たっての 基 準 の 原 案 」( 以 下 「 原 案 」と 言 う。)の 策 定 を委 託 し、 公 開 の 場 において 議 論 を 行 ってもらう。有 識 者 会 議 において 議 論 を 行 う 際 、 政 府 から、「 原 案 」の 議 論 の 叩 き 台 として、 以 下 のような「 指定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 を 選 定 するに 当 たっての 基 準( 政 府 案 )」を 提 示 する。 有 識 者 会 議 については、特 定 の 団 体 ・ 地 域 等 からの 圧 力 がかからないよう、事 務 局 の 第 三 者 への 委 託 や、 公 正 な 運 営 が 行 われていたかを 検 証 する「 検 証 委 員 会 」の 設 置 等 を 含 め、有 識 者 会 議 の 公 正 な 運 営 を 確 保 するための 方 策 を 検討 する。( 参 考 1)指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 を 選 定 するに 当 たっての 基準 ( 政 府 案 )( 例 )• 必 要 規 模 確 保 の 実 効 性 ( 地 形 勾 配 等 を 含 む)• 土 地 利 用 に 関 する 法 令 制 約 ( 自 然 公 園 、 地 すべり危 険 区 域 等 )• 自 然 災 害 ( 地 震 、 津 波 、 洪 水 等 )に 対 する 堅 ろう性• 自 然 条 件 ( 希 少 動 植 物 、 鳥 獣 保 護 区 等 )• 水 道 水 源 や 公 共 施 設 、 既 存 集 落 、 農 業 等 への 影 響• 文 化 遺 産 や 観 光 資 源 への 影 響• 既 存 道 路 及 び 林 道 へのアクセス 性 等2 一 般 市 民 からの 意 見 の 募 集有 識 者 会 議 においては、 専 門 家 及 び 利 害 関 係 者 の観 点 に 基 づき「 原 案 」を 策 定 する。しかし、 言 うまでもなく、10 名 程 度 の 有 識 者 会 議 の 作 る「 原 案 」では、 全 ての 利 害 関 係 者 や 様 々な 立 場 からの 意 見 を 反映 できていない。そこで、 一 般 市 民 、 特 にこれまでの 合 意 形 成 過 程 において、 意 見 を 反 映 される 機 会 が少 なかった 女 性 や 子 供 等 からも 意 見 を 聴 取 するため、 一 般 公 募 及 び 無 作 為 抽 出 によって 選 ばれた 市 民による「 市 民 会 議 」を 開 催 し、 有 識 者 会 議 が 決 定 した「 原 案 」に 対 して 市 民 が 意 見 を 言 う 機 会 を 設 ける。また、 市 民 会 議 に 参 加 できなかった 市 民 についても、「 原 案 」について 意 見 を 述 べる 機 会 を 確 保 する。3 市 町 村 長 会 議 における「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場決 定 に 当 たっての 基 準 」の 決 定 、 具 体 的 な 設 置 場 所についての 議 論市 町 村 長 会 議 は、 有 識 者 会 議 が 作 成 した「 原 案 」及 び、それに 対 して 一 般 市 民 から 寄 せられた 意 見 を踏 まえ、「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 決 定 に 当 たっての 基 準 」( 以 下 、「 基 準 」と 言 う)を 決 定 する。4 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 の 決 定市 町 村 長 会 議 で 決 定 された「 基 準 」に 基 づき、 具体 的 な 最 終 処 分 場 の 設 置 場 所 について 議 論 する。そして、2/3 以 上 の 賛 成 が 得 られた 場 合 には、 政 府に 対 して、その 場 所 を 最 終 処 分 場 にすべきと 提 言 することとする。 政 府 は 市 町 村 長 会 議 の 提 言 を 最 大 限尊 重 して、 指 定 廃 棄 物 の 設 置 ・ 運 営 を 行 う。4. 終 わりに本 提 言 は、 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 の 選 定 に 当たって、 政 府 から 一 方 的 に 考 え 方 を 押 し 付 けるのではなく、 市 町 村 長 会 議 という 地 方 自 治 体 の 代 表 者 の会 議 において、1 合 意 決 定 のプロセスについての 議論 を 行 い、2そして 次 に、 指 定 廃 棄 物 の 選 定 の 考 え方 についての 議 論 を 深 め、3その 後 、 実 際 の 最 終 処分 場 の 選 定 について 議 論 することを 求 めるものである。本 提 言 にあるアクションプランは、1 県 や 市 町村 、 各 ステークホルダーに、「 当 事 者 」としての 参加 を 求 め、 議 論 と 決 定 について、 一 定 の 責 任 を 共 有してもらうこと、2 政 府 が 議 論 の 期 限 の 目 途 を 示 すものの、 議 論 のプロセス・ 手 続 きや、 議 論 の 期 限 を含 めた 決 定 権 を 市 町 村 長 会 議 に 委 ね、 住 民 の 意 向 に沿 った 意 思 決 定 を 行 うこと、3「 当 事 者 」たる 住 民と 近 過 ぎる 市 町 村 長 会 議 においては、 具 体 的 な 最 終処 分 場 の 設 置 場 所 まで 決 められない 可 能 性 があり、その 場 合 、 政 府 が 最 終 処 分 場 の 場 所 を 決 定 することにより、“ 汚 れ 役 ”を 政 府 が 引 き 受 けられること、という3 点 の 狙 いを 有 している。これにより、できる 限 り「 当 事 者 」たる 住 民 の 声 に 耳 を 傾 けながら、意 思 決 定 の 遅 延 を 防 ぐことができる。しかし、 我 々が 提 示 した 本 提 言 も、 完 璧 なものでは 決 してない。 例 えば、 最 終 処 分 地 の 選 定 者 ( 市 町村 長 会 議 )と 設 置 者 ・ 運 営 者 ( 政 府 )が 異 なり、 実効 性 や 効 率 性 等 を 無 視 した 選 定 がなされる 可 能 性 が※8 参 考 1において 挙 げている「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 を 選 定 するに 当 たっての 基 準 ( 政 府 案 )( 例 )」は、 今般 、 実 際 に 行 われた 最 終 処 分 場 の 選 定 の 際 に 考 慮 された 項 目 である。( 平 成 24 年 9 月 3 日 「 栃 木 県 における 指 定 廃 棄 物 の最 終 処 分 場 候 補 地 について」、 平 成 24 年 9 月 27 日 「 茨 城 県 における 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 候 補 地 について」 参 照 )39


ある。これに 対 しては、 市 町 村 長 会 議 が 策 定 する「 基 準 」に、 設 置 者 ・ 運 営 者 たる 政 府 が 考 慮 すべき項 目 を 入 れておくことや、 選 定 プロセスに 対 する 政府 の 関 与 を 強 めるといった 工 夫 が 必 要 になるだろう。“より 良 い” 合 意 形 成 は、 我 々が 常 に 追 及 すべき永 遠 の 課 題 である。 完 璧 な 合 意 形 成 プロセスを 構 築することは 困 難 だが、 漸 次 的 であっても“より 良い” 合 意 形 成 を 目 指 すことが 重 要 である。指 定 廃 棄 物 の 処 分 場 選 定 プロセス市 町 村 長 会 議・ 県 知 事 を 議 長 とし、 県 内の 全 市 町 村 長 を 会 議 員とする。・ 政 府 も 情 報 提 供 や 事 務運 営 等 において、 最 大限 協 力 。・どのような 手 続 きによって 議 論 を 進 めるかも、 市町 村 長 会 議 で 決 定 。・ 政 府 から 議 論 の 期 限 の目 途 を 提 示 。 期 限 内 に選 定 がなされない 場 合は、 政 府 が 最 終 処 分 場を 選 定 。 市 町 村 長 会 議によって 期 限 の 延 長 について 合 意 が 得 られた場 合 には、 議 論 を 延 長 。有 識 者 会 議・ステークホルダー( 観 光産 業 ・ 農 林 業 関 係 者 、自 然 保 護 等 に 係 るNPO等 )や 有 識 者 ( 学 者 等 )10 名 程 度 から 構 成 。・「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処分 場 決 定 に 当 たっての基 準 の 原 案 」を 策 定 。・ 政 府 も、 議 論 の 叩 き 台として 政 府 案 を 提 示 。・ 特 定 の 団 体 ・ 地 域 等 からの 圧 力 がかからないよう、 公 正 な 運 営 を 行 う。一 般 市 民 からの 意 見 募 集・ 一 般 公 募 及 び 無 作 為 抽出 によって 選 ばれた 市民 による 市 民 会 議 を 設置 。・ 有 識 者 会 議 が 策 定 する「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処分 場 決 定 に 当 たっての基 準 の 原 案 」に 対 して意 見 を 言 う。・ 市 民 会 議 に 参 加 できなかった 市 民 についても、「 原 案 」について 意 見 を述 べる 機 会 を 確 保 。処分場の選定図 1: 指 定 廃 棄 物 の 処 分 場 選 定 プロセス40


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書「“N 助 型 ”ソリューションによる 創 造 的 教 育 復 興 支 援 」1. 概 要 ~『N 助 』とはこれからの 新 しい 組 織 には『N 助 』(えぬ・じょ)が 不 可 欠 である。N 助 とは, 自 助 ・ 共 助 ・ 公助 の 次 に 来 る 考 え 方 で,NはNPO・NGOのN,NEWのNで,NETWORKのNである。震 災 後 の 難 局 を 乗 り 切 るためには,これまでの 教 育行 政 の 力 : 公 助 だけではなく, 学 校 教 育 や 生 涯 学 習などの 教 育 現 場 の 困 り 感 や 組 織 と 組 織 の 隙 間 を 埋 めるNPO・NGOの 力 が 不 可 欠 である。また, 大 学 研 究 者等 による 最 新 の 理 論 (NEW)も 不 可 欠 である。それらの 力 を 全 て 集 結 し 新 しいネットワークが 構築 されたとき, 混 沌 とした 現 状 を 突 き 抜 け 次 のステージ(NEXT)へ 教 育 は 推 進 するのだろう。2. 現 場 の 課 題 とプラクティス( 気 仙 沼 のESDの 取り 組 みから)被 災 地 では, 震 災 後 「 教 育 における 日 常 性 の 回復 」を 目 標 に 教 育 活 動 に 取 り 組 んでいる。 教 職 員 や行 政 職 員 , 地 域 住 民 の 努 力 ,また, 多 方 面 からの 支援 のおかげで,スピードの 差 こそあれ, 被 災 地 の 教育 を 着 実 に 前 へ 進 めている。反 面 , 学 校 現 場 , 生 涯 学 習 のフィールドで, 困 り 感 を 抱 えているのも 事 実 である。一 例 を 挙 げると, 支 援 と 現 場 のニーズのマッチングの 難 しさがある。 震 災 直 後 , 芸能 人 ,スポーツ 選 手 などたくさんの 有 名 人が 被 災 地 を 訪 れた。その 方 々と 触 れ 合 うことによって, 一 時 でも 子 どもたちは 辛 い 体験 を 忘 れ, 元 気 を 出 すことができた。しかし,あまりに 多 いそれらの 支 援 は, 徐 々に教 育 課 程 や 教 職 員 のルーティンワークの 時間 を 圧 迫 し, 教 科 の 進 度 が 遅 れたり, 目 の前 の 校 務 が 終 わらなかったりする 現 実 に 悩んでいる。次 に, 支 援 者 側 の 視 点 で 述 べると, 大 学等 の 研 究 者 やNPOなどの 各 団 体 は, 被 災 地 を助 ける 最 新 知 識 や 先 行 実 践 ,ノウハウやマンパワーを 持 っている。しかし, 多 忙 感 に悩 んでいる 被 災 地 の 教 育 現 場 では, 支 援 者とゆっくり 話 し 合 う 時 間 が 十 分 に 取 れない。 支 援 者 は, 現 場 を 助 けたいのになかなか 交 渉 の 場 にすらつけなかったり, 支 援 ニーズを探 ったりすることができずに 困 っている。 支 援 を 受けるフェーズから 持 続 可 能 な 地 域 づくりへのフェーズへと, 役 割 の 段 階 的 変 化 が 起 きている。 現 場 の 実態 やあるべき 姿 (ビジョン)を 把 握 しながら, 外からの 支 援 をコーディネーションしていく「 持 続 可能 な 地 域 復 興 」につなげる” 仕 組 み”が 必 要 である。そして 被 災 地 で 行 われているグッドプラクティスをモデル 化 し, 被 災 地 全 体 や 全 国 へ 発 信 ・ 波 及 する 必 要 がある。そこでまず, 気 仙 沼 市 で 行 っているESDの 取 り 組みを 紹 介 する。気 仙 沼 市 では, 環 境 教 育 を 基 軸 とする 特 色 ある「 持 続 可 能 な 開 発 のための 教 育 」(ESD)を 創 造 ・実 現 していくために, 知 識 ベースとなる 地 域 のネットワークを 構 築 し,その 地 域 力 を 生 かしながら,より 広 範 な 協 力 体 制 のもとで 教 育 を 展 開 している。図 1: 気 仙 沼 市 のESD 構 造 図 をご 覧 いただきたい。 気 仙 沼 市 のESD の 推 進 のプロセスは,まず 第 1に, 豊 かな 自 然 を 生 かした 環 境 教 育 を 基 軸 に, 学 校と 産 業 , 行 政 ,NPO, 博 物 館 など, 地 域 の 様 々な 機図 1: 気 仙 沼 市 のESD 構 造 図41


関 やリソースとの 連 携 システムの 構 築 , 第 2に,その 協 力 支 援 を 受 けながら, 地 域 の 自 然 や 文 化 , 伝統 , 産 業 などを 素 材 に 小 ・ 中 ・ 高 校 が 連 携 した 体 系的 な 学 習 プログラムの 開 発 ・ 実 践 , 第 3に,その 成果 を 地 域 に 普 及 啓 発 をはかるとともに, 国 連 大 学RCEやASP-net(ユネスコスクール) 等 のグローバルネットワークを 活 用 して 海 外 とともに 学 びを 進 めることで, 持 続 可 能 な 社 会 の 構 築 のための「 地 球 的 な視 野 」の 育 成 ,という3 段 ロケットの 様 相 を 呈 している。また,その 方 向 性 を 定 める 翼 として 宮 城 教 育大 学 等 の 専 門 機 関 や 国 連 大 学 ,UNESCO,フルブライト 等 の 国 際 機 関 の 指 導 助 言 を 受 けながら 推 進 している。 気 仙 沼 のESDの 取 り 組 みは, 教 育 を 学 校 の 中 だけで 終 わらせず,N 助 の 力 を 最 大 限 に 生 かした 持 続可 能 な 発 展 ( 復 興 )のための 教 育 である。気 仙 沼 市 教 育 委 員 会 は, 東 日 本 大 震 災 からの 復 興に 向 けて,このESDと 理 念 とフレームワークを 最 大限 生 かすとともに, 復 興 教 育 の 基 軸 として 位 置 づけている。 去 る 平 成 24 年 10 月 30 日 には, 市 内 の各 小 中 高 校 , 行 政 , 大 学 , 地 域 の 住 民 ,NPO, 文 部科 学 省 等 のステークホルダーをはじめ 約 150 名 が集 結 して,「 気 仙 沼 ESD 円 卓 会 議 」を 開 催 した。この「 多 様 な 主 体 の 参 画 と 協 働 によるネットワーク」により 気 仙 沼 市 の 復 興 に 向 けた 教 育 の 理 念 を 共 有 するとともに,その 具 体 的 な 学 習 プログラムや 教 育 実践 を 交 流 した。3.N 助 理 論N 助 とは, 東 日 本 大 震 災 等 で 各 被 災 地 が 経 験 した 自助 ・ 公 助 ・ 共 助 の 間 に 生 まれる 時 間 的 ・ 空 間 的 隙 間を 埋 めていくNGO・NPO, 大 学 の 研 究 者 等 の 最 新 知 識(NEW),とNETWORKを 活 かして 恊 働 関 係 を 築 き, 多様 な 主 体 の 参 画 と 恊 働 による 教 育 スタイルである。組 織 を 立 ち 上 げるというより,「 具 体 的 に 支 援 をつなげる」コンソーシアム・プラットフォームが 自 然発 生 的 に 出 来 上 がっていくことが 理 想 である。N 助の 単 位 であるが, 県 では 広 すぎ, 学 区 では 広 がりと多 様 性 に 欠 けるため, 復 興 を 進 める 単 位 である 基 礎自 治 体 単 位 が 望 ましい。しかし 一 方 では, 自 治 体 と越 え、 被 災 地 相 互 の 連 携 や 調 整 を 促 進 する 多 様 で 柔軟 なコーディネーションを 可 能 とするために,もっと 広 域 で 行 う 必 要 性 も 考 えられる。(NPO 法 人 のプロデュースするコラボスクール, 女 川 向 学 館 と 大 槌臨 学 舎 の 例 がこれにあたる。)N 助 への 期 待 されるミッションとしては・ 被 災 地 のニーズの 吸 い 上 げと 発 信・あるべき 復 興 の 姿 のビジョンを 把 握 し 発 信 ( 内 外へ)・ニーズと 支 援 のマッチング・ 支 援 コンテンツの 摘 要 化・ 支 援 メニューの 情 報 提 供・リソースや 機 関 へのアクセス 機 能・アドバイザリー 機 能・シンクタンク 機 能・ 被 災 地 間 交 流 のアクセスポイント・ 教 育 復 興 グッドプラクティスの 共 有 と 発 信・ネットワークコンソーシアムの 構 築・ファンドレイジング図 2 気 仙 沼 ESD 円 卓 会 議 ( 平 成 24 年 10 月 30 日 )などが 上 げられる。つまりN 助 のコンテンツとしては, 人 ,も の, 金 ,チ ャ ンス,プログラム(メニュー), 知 恵 , 専門 知 識 ,リソース, 技 能 などである。N 助 にはコーディネーションを 担 える 人材 育 成 が 大 切 である。N 助 のコーディネーターには 行 動 力 , 実 践 力 , 決 定 力 ,コミュニケーション 力 が 必 要 である。また, 法 と 個 人 の 関 わりや 声 を 出 せば 法 も変 えられることを 知 っている 法 の 専 門 家や 知 識 人 も 必 要 である。そこで 個 人 を 育てるだけではなく, 協 働 するチームを 創る 視 点 を 持 つべきである。そのような 人材 を 育 成 するためには, 教 えて 終 わりなのではなく, 日 常 の 学 びのあり 方 を「 自覚 的 」なものとする 工 夫 が 必 要 である。42


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書まずは 子 どもたちに 一 日 一 日 を 精 一 杯 学 ばせ, 生 きさせ,そして 振 り 返 りをさせる。 自 分 がこだわりを持 って 一 日 を 生 き, 自 分 がなりたい 自 分 に 近 づいたかどうかを 振 り 返 る 教 育 が 重 要 と 考 える。4.N 助 型 支 援 の 広 がり( 女 川 町 での 実 践 )震 災 から10ヶ 月 が 経 った2012 年 1 月 , 女 川町 の 教 育 の 復 興 を 加 速 させるべく, 女 川 町 の 教 育 現場 に 継 続 して 支 援 をいただいてきた 知 ・ 徳 ( 心 のケア)・ 体 の 分 野 の 支 援 者 で 専 門 家 チームを 作 り, 学校 ・ 生 涯 学 習 現 場 を 支 援 する 仕 組 みが 出 来 上 がった。「 女 川 学 びの 町 づくり 実 効 委 員 会 」である。 実行 委 員 会 は, 町 行 政 から 教 育 委 員 会 教 育 長 と 教 育 委員 会 教 育 総 務 課 , 教 育 委 員 会 生 涯 学 習 課 , 健 康 福 祉課 代 表 が 出 席 し, 学 校 関 係 からは 校 長 会 代 表 と 女 川一 中 防 災 主 幹 教 諭 が,PTAからは 町 PTA 連 合 会 会 長 が出 席 している。また,NPOや 大 学 等 の 研 究 者 , 連 携団 体 としてNPO 法 人 が 運 営 する 放 課 後 コラボスクール「 向 学 館 」 代 表 ,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー, 東 北 学 院 大 学 鈴 木 准 教 授 らの 運 動 支 援 チーム「アクティブクラブ」 代 表 , 早 稲田 大 学 竹 中 教 授 の「 女 川 心 のABC 活 動 」 代 表 , 南 三陸 観 光 バスマネージャーの 総 勢 約 20 名 で 構 成 されている。( 次 頁 「 図 4: 女 川 町 復 興 基 本 計 画 ・ 心 豊かな 人 作 り( 人 材 育 成 )の 概 念 図 」 参 照 )「 知 」の 領 域 では, 放 課 後 コラボスクール 向 学 館の 学 習 支 援 が 中 心 になっている。 向 学 館 で 学 習 している 児 童 ・ 生 徒 数 はおよそ200 名 で,これは 女 川 町の 全 児 童 ・ 生 徒 数 の 約 4 割 にあたる。また, 向 学 館では 塾 としての 学 習 支 援 だけではなく 理 科 の 実 験 教室 や 絵 画 ・ 工 作 教 室 を 行 いたい 支 援 団 体 の 受 け 皿 となっている。さらに 向 学 館 を 運 営 するNPOカタリバが 女 川 一 中 のキャリア 教 育 を 支 援 し, 受 け 入 れ 可 能な 事 業 所 を 開 拓 したり,キャリア 教 育 をねらいとした 東 京 方 面 の 修 学 旅 行 を 企 画 したりした。 今 後 は 生涯 学 習 課 との 連 携 を 強 化 し, 協 働 体 制 で 生 涯 学 習 事業 を 展 開 する 可 能 性 もあります。「 徳 」の 領 域 では,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーによる 児 童 ・ 生 徒 の 心 のケアだけではなく, 保 護 者 や 教 師 の 心 のケアも 行 っている。スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの 情 報 交 換 も, 機 会 を 捉 えて 行 われており, 専 門 性 を 活 かしてスクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの 取 り 扱 うケースを 分 けている。また, 実 行 委 員 会 や 生 徒 指 導 の 研 修 会 , 養護 教 諭 部 会 等 で 先 生 方 や 心 のケア 専 門 員 で 情 報 交 換し,チームで 行 う 心 のケアが 展 開 されている。「 体 」の 領 域 では, 東 北 学 院 大 学 の 鈴 木 先 生 を 中心 とした 運 動 支 援 を 行 うアクティブクラブが 中 心 となり,2 名 のスポーツコーディネーターを 女 川 二 小に 派 遣 し, 毎 週 水 曜 日 の 朝 に 行 われる「さわやかタイム」での 運 動 支 援 や, 体 育 の 授 業 での 学 習 支 援 を行 っている。今 後 は, 継 続 して 協 働 ・ 連 携 して 町 の 教 育 を 作 り 上げていくため, 町 の 教 員 で 組 織 する 女 川 町 教 育 研 究会 や 他 の 教 育 課 題 を 考 える 組 織 と 連 携 することや,資 金 の 調 達 が 課 題 である。5. 提 言図 3: 第 5 回 女 川 学 びの 町 づくり 実 行 委 員 会(H24.11.21)「 多 様 な 主 体 の 参 画 と 協 働 による 教 育 の 創 造 は 地 域の 復 興 を 牽 引 する」教 育 を 学 校 だけに 丸 投 げするのではなく, 子 どもを 中 心 とした 多 種 多 様 な 協 働 体 で, 教 育 を 推 進 することは, 教 育 のみの 効 果 だけではなく 地 域 のコミュニティー 作 りやNPO・NGOの 活 動 の 場 , 大 学 等 の 研 究者 の 研 究 フィールドとしても 価 値 がある。そのためにはコーディネート・ 運 営 サポートに 対 する 自 由 度の 高 い 資 金 の 獲 得 が 必 要 である。 行 政 の 予 算 では 自由 度 が 低 く, 仕 組 み 自 体 にお 金 が 落 ちないことが 多い。 教 育 のファンドレイジングの 事 例 を 作 り, 資 金面 でも 持 続 可 能 な 仕 組 みを 作 ることが 大 切 である。43


新 しい 教 育 課 題・ 防 災 教 育・ 志 教 育(キャリア 教 育 )生 涯 学 習 課 との連 携・ 心 のケア知「 未 来 を 切 り 拓 いていく 子 どもたち」体徳確 かな 学 力 豊 かな 人 間 性 健 やかな 体【 学 校 の 困 り 感 】・ 体 力 の 低 下・ 運 動 場 所 , 運 動 時 間の 確 保・ 学 力 向 上・ 家 庭 での 学 習 環 境 づくりの 難 しさ・ 登 下 校 の 安 全 確 保・ 基 礎 基 本 の 習 得 ・ 志 教 育 の 推 進 ・ 食 育 の 推 進・ 活 用 型 の 学 習 サイクル ・ 地 域 学 習 ・ 運 動 習 慣 づくり・ 家 庭 学 習 の 習 慣 化 ・ 道 徳 教 育 ・はやね 早 起 き 朝 ごはん・ 言 語 活 動 ・ 環 境 教 育 ・ 自 然 体 験 学 習・ 学 びの 共 同 体 ( 研 究 ) ・ 人 間 関 係 づくり・ 地 域 コミュニティーとの 連 携・ 新 しい 教 育 課 題 への対 応・ 支 援 団 体 への 対 応・ 教 職 員 の 心 のケア○ 女 川 の 子 どもたちは 女 川 の 教 師 が 教 育 する。 女 川 のみんなで 育 てる。・ 地 域 主 体 の防 災 教 育( 生 涯 学 習課 との 連 携 )「 夢 と 志 をもって, 安 心 して 学 べる 教 育 環 境 の 確 保 」【 教 育 委 員 会 ・ 生 涯 学 習 課 ・ 健 康 福 祉 課 ・ 各 校 PTA・ 青 少 年 健 全 育 成 協 議 会各 行 政 区 ・ 各 地 区 こども 会 ・ 各 スポーツ 少 年 団 等 ・ 各 家 庭 】公 共 施 設 の 復 旧 ・ 整 備家 庭 地 域 社 会 の 教 育 力 向 上表 1 SIBに 係 わる7つのステークホルダー健 康 ・ 体 力 ・ 生 涯 スポーツ【 地 域 の 困 り 感 】・ 地 域 防 災・ 家 庭 教 育 や 子 育 て・ 学 びの 場 の 確 保・ 新 しいコミュニティーづくり・ 雇 用 の 確 保復 興 を 担 う 人 材 育 成歴 史 的 遺 構 ・ 伝 統 文 化 の 回 復教 育 委 員 会 所 属 の 地 域 コーディネーター 複 数 名 B)と 生 涯 学 習 課 派 遣 社 会 教 育 主 事 による 調 整知向 学 館 (カタリバ)コーディネートA1) 中 学 校 へのキャリアスタートウィーク 支 援( 生 涯 学 習 課 と 連 携 )B1) 向 学 館 による 放 課 後 学 習 支 援 。*NPO との 連 携 アドバイス支 援 フィルター教 育 委 員 会 の 地 域 コーディネーター(B),生 涯 学 習 課 派 遣 社 会 教 育 主 事 と, 学 校 ・ 地 域を 支 える 知 ・ 徳 ・ 体 の 外 部 団 体 により, 支 援フィルターを 形 成 。徳SSW 阿 部 先 生 コーディネートA1) 心 のケア 教 育 でのTT 指 導( 例 : 山 形 SC との 連 携 )C1)ストレスマネージメント 教 育女 川 こころのABCキャンペーン ( 早 大 竹 中 教 授 )* 緊 急 スクールカウンセラー 等 派遣 事 業 については, 県 教 委 , 文 科省 とも 連 携 しながら, 人 材 リストを 作 成 し, 学 校 からの 要 望 があった 場 合 ,その 都 度 申 請 する。例 :バスの 添 乗 員 , 教 室 補 助 員 ,学 習 支 援 補 助 員 なども OK体東 北 学 院 大 学 コーディネート女 川 っ 子 元 気 UPプロジェクトB1) 放 課 後 アクティブクラブ( 例 :ドッチビー 体 験 会 )B2) 家 庭 でできる 運 動 遊 び 実 技 講 習 会B3) 体 育 実 技 研 修 会B4) 女 川 っ 子 元 気 アップ 講 習 会B5) 向 学 館 との 連 携*B1)については, 三 次 補 正 予 算 で雇 用 して 対 応 する。1h:1,000 円 ×6h×21 日 =126,000様 々な 支 援 を, 直 ぐに 各 学 校 に 結 び 付 けるのではなく, 学 校 が 受 け 取 りやすい 形 にしたり, 学 校 の 支 援 ニーズを 聞 き 取 り,そのような 団 体 や 講 師 を 探 したりするなど,コーディネートを 行 う。(フィルター 機 能 )新 しい 支 援新 しい 協 働新 しい 連 携A: 復 興 教 育 支 援 事 業 B: 学 びを 通 じた 被 災 地 域 コミュニティー 再 生 支 援 事 業 C: 大 学 等 における 地 域 復 興 のためのセンター 機 能 の 整 備図 4: 女 川 町 復 興 基 本 計 画 ・ 心 豊 かな 人 作 り( 人 材 育 成 )の 概 念 図44


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録3 会 議 記 録~ 第 1 回 から 第 6 回 ・いわて 合 宿 ~45


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書会 議 記 録本 日 のプログラム13:00 開 会 挨 拶 細 田 衛 士13:15 オリエンテーション( 自 己 紹 介 、 事 務 連 絡 )14:30 休 憩14:45 「 復 興 リーダーと 問 題 解 決 力 ‐ 交 渉 学 への 招 待 ‐」講 師 : 田 村 次 朗16:15 コーヒーブレイク、 会 場 移 動 ( 北 館 ホールへ)16:30 「 復 興 をリードする 指 揮 者 の 仕 事---「 二 つ」を 同 時 にコンダクトする---」講 師 : 伊 東 乾 ( 作 曲 = 指 揮 )18:00 会 議 終 了 → アフタートーク( 懇 親 会 、 自 由 参 加 )20:00 アフタートーク 終 了第 1 回 :2012 年 4 月 21 日 ( 土 )冒 頭 、 細 田 衛 士 委 員 長 より、 開 催 趣 旨 ならびに、本 会 議 の 目 指 すところについて 説 明 があり、 各 会 議委 員 による 自 己 紹 介 に 引 き 続 き、 以 下 の 講 演 と 委 員による 対 話 と 議 論 が 行 なわれた。第 1 部 「 復 興 リーダーと 問 題 解 決 力 ‐ 交 渉 学 への 招 待 ‐」講 師 : 田 村 次 朗 ( 慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 副 所 長 、 法 学 部 教 授 )第 2 部 「 復 興 をリードする 指 揮 者 の 仕 事 ‐「 二 つ」を 同 時 にコンダクトする‐」講 師 : 伊 東 乾 ( 作 曲 = 指 揮 )第 2 回 :2012 年 5 月 26 日 ( 土 )グローバル 人 材 育 成 を 視 野 に、 国 際 的 な 市 民 活 動について 学 び、 議 論 することを 狙 いとして、 政 策 提言 や 普 及 啓 発 活 動 (アドボカシー 活 動 )に 取 り 組 む国 際 市 民 グループ RESULTS のJoanne Carter 氏をお 招 きした。 民 意 の 反 映 された 国 際 援 助 を 実 現し、 飢 餓 と 貧 困 の 根 絶 を 最 優 先 とする“ 政 治 的 意思 ”の 確 立 に 向 けた 活 動 を 紹 介 いただき、 復 興 リーダーと、 対 話 と 議 論 が 展 開 された。第 1 部 「Creating Global Change Through Local Advocacy: How Individuals Can Shape PoliticalPriorities and Improve the World‘s Health 」( 現 地 から 発 信 されるアドボカシーを 通 して、 世 界 の 新 しい 流 れを 創 り 出 す: 如 何 にして 個 人の 力 で 政 策 における 優 先 課 題 を 形 成 し 世 界 の 健 康 を 向 上 することができるか)講 師 :ジョアン・カーター(RESULTS エグゼクティブディレクター)第 2 部会 議 委 員 による 対 話 と 議 論第 3 回 :2012 年 6 月 16 日 ( 土 )リーダーに 求 められる 重 要 な 役 割 の1つである「 現 場 における 判 断 と 対 処 」をテーマに 取 り 上 げました。第 1 部 では、 伊 勢 崎 賢 治 氏 によるキックオフスピーチに 続 いて、 国 家 的 な 非 常 事 態 を 想 定 し、「セキュリタイゼーション」、「 脅 威 」などをキーワードに 取 り 上 げ、アフガニスタンや 福 島 を 事 例 として「 平 和 はつくれるか」というテーマについて 議 論 がなされました。第 2 部 では、 西 村 雄 一 氏 によるキックオフスピーチに 続 いて、サッカーにおける 審 判 の 役 割 を 事 例 として、 刻 々と 事 象 や 環 境 が 変 化 する 現 場 において、いかに 判 断 ・ 対 処 するか、そこにおけるリーダーの役 割 やあり 方 について、 復 興 リーダーと 対 話 と 議 論が 展 開 されました。第 1 部 「 平 和 はつくれるか」 講 師 : 伊 勢 崎 賢 治 ( 東 京 外 国 語 大 学 大 学 院 教 授 )第 2 部 「スポーツの 秘 める 無 限 のパワー 」 講 師 : 西 村 雄 一 ( 日 本 サッカー 協 会 レフェリー)47


第 4 回 :2012 年 7 月 21 日 ( 土 )今 回 は、 教 養 の 視 点 と 実 務 の 視 点 から「リーダーシップ」をテーマに 取 り 上 げました。第 1 部 では、 村 上 陽 一 郎 氏 によるキックオフスピーチに 続 いて「 教 養 」「 古 典 」「エリート」などをキーワードに 取 り 上 げ、「リーダーは 目 指 すべきものか」というテーマについて 議 論 がなされました。第 2 部 では、 折 木 良 一 氏 によるキックオフスピーチに 続 いて、「 状 況 判 断 」「 権 限 と 責 任 」「 信 頼感 」などをキーワードに 取 り 上 げ、 今 般 の 震 災 における 防 衛 省 ・ 自 衛 隊 における 指 揮 活 動 を 事 例 として、リーダーが 論 理 的 に 判 断 を 行 なうためには、リーダーは 如 何 に 育 つか、 育 てられるか、 非 常 時 に求 められるリーダーとしての 資 質 について、 対 話 と議 論 が 展 開 されました。第 1 部 「リーダーシップとは」 講 師 : 村 上 陽 一 郎 ( 東 洋 英 和 女 学 院 大 学 学 長 )第 2 部 「 東 日 本 大 震 災 における 防 衛 省 ・ 自 衛 隊 の 指 揮 活 動 」 講 師 : 折 木 良 一 ( 前 防 衛 省 統 合 幕 僚 長 )第 5 回 :2012 年 10 月 27 日 ( 土 )第 1 部 では、 教 養 の 視 点 から、エディ・ジョーンズ 氏 によるキックオフスピーチに 続 いて、「Leadership(リーダーシップ)」「Learning( 学 ぶ心 )」「Loyalty( 自 分 が 信 じているもの( 事 柄 )への忠 誠 心 」などをキーワードに 取 り 上 げ、「チームづくり」というテーマについて 対 話 と 議 論 が 展 開 されました。第 2 部 では、 岡 本 全 勝 氏 によるキックオフスピーチに 続 いて、1「 国 土 の 復 旧 」と「 生 活 の 再 建 」2「 行 政 の 役 割 、 企 業 の 貢 献 、ボランティアの 活 躍 」などをキーワードに 取 り 上 げ、「 住 民 の 暮 らしの 再建 と 町 の 賑 わい 復 興 には 何 が 必 要 か」について、 対話 と 議 論 が 展 開 されました。第 3 部 では、 合 宿 での 成 果 の 共 有 とブラッシュアップのための 議 論 が 展 開 されました。第 1 部 「Making a Championship Team」 講 師 :エディ・ジョーンズ(ラグビー 日 本 代 表 ヘッドコーチ)第 2 部 「 進 んだ 復 興 とこれからの 課 題 」 講 師 : 岡 本 全 勝 ( 復 興 庁 統 括 官 )第 6 回 :2012 年 12 月 1 日 ( 土 )第 1 部 では、 教 養 の 視 点 から、 田 村 次 朗 教 授 による 講 義 の 後 、ケースを 用 いた 演 習 を 行 いました。 悪魔 の 代 理 人 (Devil’s Advocate)という 問 題 解 決 の手 法 を 使 って、あえて 批 判 をさせる 者 を 人 為 的 におくことによって、 反 論 や 少 数 意 見 を 大 切 にしながら、 創 造 的 に 議 論 するアプローチを 参 加 者 で 共 有 しました。第 2 部 では、 合 宿 から 取 り 組 んでいる 課 題 別 アクションプランの 発 表 会 を 行 いました。1「 風 化 防 止 に 向 けた 施 策 」2「 組 織 連 携 による 復興 支 援 の 枠 組 み“ 中 間 支 援 組 織 ”」3「 指 定 廃 棄 物の 処 分 場 選 定 プロセスの 構 築 」4「“タフな 街 、 釜石 ”としての 産 業 復 興 ・ 町 興 し」5「“N 助 型 ” 創造 的 教 育 復 興 支 援 チーム( 仮 )」の5つのプランが発 表 された 後 に、 参 加 者 の 様 々な 視 点 からの 質 疑 応答 が 行 われ、それぞれのブラッシュアップが 行 われました。第 1 部 「Communication Management‐Group Dynamics‐」 講 師 : 田 村 次 朗 (G-SEC 副 所 長 ・ 法 学 部 教 授 )第 2 部 「アクションプラン 最 終 発 表 会 」48


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書いわて 合 宿 :2012 年 9 月 22 日 ~23 日4 回 までの 会 議 では、 講 演 に 関 連 した 対 話 と 議 論を 中 心 に 重 ねてきましたが、 合 宿 では 委 員 自 身 が 抱えている 課 題 の 共 有 や 解 決 にむけた 議 論 を 集 中 的 に行 いました。第 1 部 では、 鈴 木 寛 氏 ( 参 議 院 議 員 ・ 元 文 部 科 学副 大 臣 )の 講 演 に 続 いて、 同 様 のカテゴリーにより分 かれたグループの 中 で、それぞれの 課 題 を 発 表し、 共 有 しました。第 2 部 では、グループで 課 題 を 選 定 し、 解 決 に 向けた 対 話 と 議 論 を 行 いました。第 3 部 では、アクションプランの 発 表 会 を 行 い、鈴 木 寛 氏 に 講 評 とアドバイスをいただきました。また、 達 増 拓 也 氏 ( 岩 手 県 知 事 )と 現 地 リーダー5 名 もお 招 きし、 復 興 の 現 状 や 発 表 に 対 するコメントをいただき、 議 論 を 展 開 しました。第 4 部 では、 達 増 拓 也 氏 の 講 演 に 続 き、ブラッシュアップしたアクションプランの 発 表 会 を 行 い、達 増 氏 に 講 評 とアドバイスをいただきました。【いわて 合 宿 講 演 の 要 旨 】大 震 災 対 応 で 重 要 な 四 つの 視 点達 増 拓 也 氏 ( 岩 手 県 知 事 )2011 年 3 月 11 日 の 東 日 本 大 震 災 で、 岩 手 県 は 大 きな 被 害 を 受 け、 死 者 ・ 行 方 不 明 者 合 わせて 約 5900 人の 犠 牲 者 が 出 た。 発 災 直 後 には 人 命 救 助 を 最 優 先 したが、 多 くのご 遺 体 も 見 つかった。 亡 くなられたご本 人 にとってだけではなく、ご 遺 族 にとっても 人 の死 は 大 変 に 重 い。通 常 、 人 が 亡 くなると、お 通 夜 やお 葬 式 があり、火 葬 が 行 なわれ、 多 くの 人 たちが 駆 けつけてお 悔 みをし、 遺 族 を 慰 める。そういうなかで 遺 族 は 心 のけじめがついていく。しかし、 大 震 災 の 時 にはそういう 普 通 のお 悔 みができなかった。 未 だに 行 方 不 明 の人 たちがいるし、ご 遺 体 が 見 つかっても 普 通 のご 葬儀 ができなかった。 何 とかご 葬 儀 を 執 り 行 うことができても、そこに 集 まるべき 人 が 集 ることができなかった。私 自 身 も 知 人 が 何 人 も 犠 牲 になったが、ご 葬 儀 に参 加 することができなかったことが 心 に 引 っかかっている。 人 の 死 をどう 受 け 止 め、 残 された 人 たちをどう 慰 めていくかということを 常 に 起 点 に 考 えていかなければならないと 思 った。発 災 直 後 の3 月 15 日 には 内 陸 の 市 町 村 長 に 呼 び 掛けて 県 庁 に 集 まっていただき、 沿 岸 市 町 村 への 支 援をお 願 いした。その 際 、 今 回 の 災 害 対 策 においては、 犠 牲 者 の 故 郷 への 思 いをしっかり 受 け 止 め、 引きついでいくことと、 難 を 逃 れた 人 たちが 幸 福 を 追求 できるようことを2 大 原 則 とすることを 伝 えた。「 幸 福 の 追 求 」は 憲 法 にも 謳 われている 基 本 的 権 利であり、「 世 界 全 体 が 幸 福 にならない 限 り、 個 人 の幸 福 はあり 得 ない」という 宮 沢 賢 治 の 言 葉 をイメージしたものでもあり、 具 体 的 には、「 暮 らし」「 仕事 」「 学 び」の3つについて 幸 福 を 追 求 できるようにするということである。◎ ◎ ◎大 震 災 からの 復 興 の 原 理 ・ 原 則 については、 当時 、 政 府 もほとんど 言 及 していなかった。そこで、岩 手 ・ 宮 城 ・ 福 島 3 県 の 知 事 もメンバーになった 東日 本 大 震 災 復 興 構 想 会 議 の 第 1 回 会 合 (4 月 14 日 開催 )で、 私 は、 今 回 の 大 震 災 に 対 応 するにあたって「 重 要 と 考 える4 視 点 」を 発 表 した。第 1は、「 復 興 の 起 点 としての 追 悼 ・ 慰 霊 」。 今回 の 震 災 における 犠 牲 の 大 きさを 自 覚 して、 復 興 への 確 固 たる 決 意 を 持 つ。そして、 亡 くなった 方 々、犠 牲 になった 方 々への 追 悼 ・ 慰 霊 を 起 点 とすべきであるということである。 復 興 構 想 会 議 のメンバーにも 賛 同 していただき、「 提 言 」の 中 に 同 趣 旨 の 文 章が 盛 り 込 まれた。第 2は、「 国 際 協 力 事 業 としての 復 興 」。 大 震 災 後2 日 目 の3 月 12 日 、 私 はヘリコプターで 陸 前 高 田 から 入 って 宮 古 までの 被 災 地 を 上 空 から 視 察 した。それはまるで 神 話 のなかの 出 来 事 のようだった。 陸 前高 田 市 、 大 槌 町 、 山 田 町 や 宮 古 市 田 老 地 区 では 町 全体 が 根 こそぎ 流 されていて、まさに 世 界 史 的 、 人 類史 的 な 大 災 害 だという 印 象 を 持 った。 実 際 、 世 界 各国 も 我 がことのように 関 心 をもってくれたし、 世 界中 からいろいろなお 見 舞 い、ご 支 援 をいただいた。岩 手 県 に 外 国 の 緊 急 援 助 隊 が 入 るのは 初 めてのことだった。 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 の 事 故 もあり、この世 界 的 な 事 故 には 世 界 的 に 対 応 していかなければならないという 視 点 を 持 って 国 際 協 力 事 業 として 復 興を 進 めていかなければならないということである。第 3は、「 日 本 史 上 の 大 事 業 としての 復 興 」を49


進 めるべきだということ。 換 言 すれば、 国 家 プロジェクトとして 東 日 本 大 震 災 復 興 に 取 り 組 むべきだということである。 日 本 全 体 に 被 害 が 及 ぶ 規 模 の 大災 害 なので、 日 本 が 総 力 を 結 集 して 復 興 を 進 めていかなければならない。また、 東 北 地 方 の 歴 史 を 考 えた 時 に、 奈 良 ・ 平 安 の 時 代 から 東 北 地 方 ( 東 日 本 )の 経 営 は 日 本 国 家 にとってのプロジェクトであり 続けた。 大 正 時 代 に 東 北 地 方 で 飢 饉 が 続 き、 疲 弊 して東 北 の 力 だけでは 回 復 できないという 時 に、 原 敬 が呼 びかけて 渋 沢 栄 一 が 会 長 になって 東 北 振 興 会 ができて、オールジャパンの 経 済 界 で 東 北 を 振 興 していこうという 運 動 が 起 きている。第 4は、「 関 東 大 震 災 の 教 訓 に 学 ぶべき」ということ。 岩 手 ・ 水 沢 出 身 の 後 藤 新 平 は 関 東 大 震 災 直 後 に帝 都 復 興 院 の 総 裁 となって 復 興 の 先 頭 に 立 った。 巨額 の 予 算 をつぎ 込 んで 東 京 の 道 路 拡 張 や 架 橋 、 巨 大な 公 園 などをつくる 計 画 を 立 てたため「 大 風 呂 敷 」と 揶 揄 されたが、 後 藤 は 満 州 鉄 道 調 査 部 や 東 京 市 政調 査 会 などの 調 査 機 関 を 作 って 緻 密 に 調 査 ・ 研 究 をした 上 で 科 学 的 ・ 技 術 的 必 然 性 に 基 づいてさまざまな 計 画 を 立 てて 事 業 を 進 める 人 だった。 今 回 の 東 日本 大 震 災 からの 復 興 についても、 関 東 大 震 災 の 教 訓に 学 んで 科 学 的 ・ 技 術 的 必 然 性 に 基 づき、そこに 社会 的 ・ 経 済 的 必 要 性 を 加 味 して 復 興 計 画 を 作 るべきである。◎ ◎ ◎今 回 の 復 興 に 際 しては、 東 日 本 大 震 災 の 直 前 にニュージーランドのクライストチャーチで 起 きた 大地 震 の 教 訓 にも 学 ぶべきである。クライストチャーチでは、 大 地 震 発 生 直 後 に 市 の職 員 が 全 戸 を 回 って 地 震 被 害 の 様 子 を 一 軒 一 軒チェックするとともに、 市 の 図 書 館 で 借 りた 本 はしばらく 返 さなくていい、というようにきめ 細 かく 情報 を 伝 えたという。 災 害 対 策 として 住 民 一 軒 一 軒 を掌 握 していくアプローチは、 選 挙 対 策 の 仕 事 に 似 ている。そこで、3 月 16 日 から4 日 間 かけて 沿 岸 全 市町 を 回 り、 市 町 村 長 にその 話 を 伝 えた。また、クライストチャーチ 地 震 では、 避 難 所 に 寝泊 まりすることがほとんどなかったという。 家 が 倒壊 してしまった 人 たちにはホテルが 部 屋 を 無 料 で 提供 したり、ホームステイをしたという。 避 難 所 とは、 大 雨 が 降 って 洪 水 や 土 砂 崩 れが 起 きたら 被 害 を受 けるかもしれないような 地 域 の 人 たちが、 一 晩 様子 をみるために 過 ごす 場 として 想 定 されている。したがって、 避 難 所 に 何 週 間 、 何 カ 月 も 寝 泊 まりするというような 状 況 は 望 ましくない。3 月 15 日 に 内 陸 市 町 村 長 に 集 まっていただいた 折に、 市 町 村 が 経 営 する 宿 泊 施 設 や 民 間 のホテル・ 旅館 の 開 放 をお 願 いした。 盛 岡 市 では 一 般 の 人 からのホームステイの 申 し 出 もあり、 岩 手 県 全 体 で 約 9000人 分 の 緊 急 宿 泊 枠 を 当 面 確 保 できた。 実 際 に 希 望 した 人 は 約 2000 人 で、 最 終 的 には 災 害 救 助 法 による 国の 予 算 で 一 人 一 泊 約 5000 円 の 宿 泊 費 を 確 保 することができた。実 は、 利 用 希 望 者 が 少 なかったことには 理 由 がある。 避 難 所 生 活 は 体 にはきついが、 行 方 不 明 者 を 探したいという 人 や 位 牌 などを 見 つけたいという 人 が多 かったことである。また、4 月 に 入 れば 学 校 が 始まるので、 学 校 に 通 わせるために 地 元 を 離 れられないという 事 情 もあって、 地 元 から 離 れての 避 難 が 少なかったのである。結 果 として、4 万 人 ~5 万 人 の 人 たちに 避 難 所 での 長 期 的 な 生 活 を 強 いることになってしまった。 長期 的 に 避 難 所 生 活 をしなければならないような 大 災害 が 起 きた 時 の 避 難 所 の 在 り 方 、むしろ 第 一 次 仮 設住 居 のような 位 置 付 けの 施 設 を 用 意 していかなければならないいと、 県 として 反 省 している。創 造 的 復 興 教 育 の 取 り 組 み鈴 木 寛 氏 ( 参 議 院 議 員 、 元 文 部 科 学 副 大 臣 )今 回 の 震 災 で、 宮 城 県 の 大 川 小 学 校 をはじめとして 学 校 現 場 でも 生 徒 ・ 児 童 が 命 を 失 うという 痛 ましい 出 来 事 が 起 きた。しかし、 岩 手 県 内 においては、小 学 校 と 中 学 校 の 教 育 管 理 下 では 生 徒 ・ 児 童 が 命 を失 うことはなかった。その 理 由 として、 群 馬 大 学 の片 田 敏 孝 教 授 が 約 10 年 前 から 釜 石 市 で 津 波 を 想 定 した 防 災 教 育 に 取 り 組 みはじめ、そのコンセプトや 考え 方 がその 後 三 陸 沿 岸 に 広 まっていったことが 考 えられる。 大 人 たちは 高 さ30メートルの 堤 防 を 作 り、それが 決 壊 して 多 くの 命 が 失 われたが、10 年 間 の 教育 の 成 果 が 自 らの 命 を 自 ら 救 う 小 学 生 や 中 学 生 を 育てたのである。片 田 教 授 と 岩 手 県 の 教 育 者 たちが 作 った 防 災 教 育は「マニュアルに 頼 らない」、「ミスを 恐 れず 最 善を 尽 くす」、「 指 示 を 待 たず、 率 先 的 に 避 難 者 になる」という3つのポイントに 集 約 されるが、これは日 本 の 教 育 において 最 も 欠 けていることでもある。そこで、 東 北 の 地 から 未 来 型 の 教 育 モデルづくりを促 進 し、かつ 全 国 に 広 げていくために、2011 年 10 月の 補 正 予 算 で「 創 造 的 復 興 教 育 事 業 」を 立 ち 上 げて、 震 災 の 教 訓 から、1 社 会 を 生 き 抜 く 力 の 養 成 、2 未 来 への 飛 躍 を 実 現 する 人 材 の 養 成 、3 学 びのセーフティネットの 構 築 、4 絆 づくりと 活 力 あるコミュニティの 形 成 という4つの 基 本 的 方 向 性 を 明 確にした。今 回 の 震 災 は、 大 量 生 産 ・ 大 量 エネルギー 消 費 ・大 量 流 通 ・ 大 量 消 費 ・ 大 量 廃 棄 型 の 物 質 文 明 システムがもはや 立 ち 行 かないことを 暗 示 した。 文 明 の 転換 を 担 うのは 今 の 大 人 たちではなく、 次 の 若 い 世 代である。 東 日 本 大 震 災 により 東 北 の 教 育 は 大 きな 打撃 を 受 けたが、 子 どもたちは 震 災 体 験 を 通 じて「 自ら 学 び 考 え 行 動 する 力 」や「たくましさ、しなやかさ」を 身 につけている。 地 域 社 会 や 大 学 、NPOと 学校 等 が 連 携 した 新 しい 学 びの 実 践 も 広 がっている。一 般 社 団 法 人 創 造 的 復 興 教 育 協 会 をプラットフォームとして、 志 を 同 じくする 教 育 関 係 者 が「つなが50


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書り」、「 創 発 」することにより、 東 北 から 次 代 を 切り 開 く「 生 き 抜 く 力 」を 持 った 人 材 の 芽 を 伸 ばし、地 域 社 会 の 真 の 絆 を 取 り 戻 し、 課 題 克 服 の 先 進 地 域として 全 国 に 発 信 していきたい。◎ ◎ ◎2012 年 5 月 20 日 には「 創 造 的 復 興 教 育 フォーラム」( 創 造 的 復 興 教 育 協 会 主 催 )を 文 部 科 学 省 講 堂で 開 催 した。フォーラムでは、いわき 総 合 高 校 演 劇部 による 公 演 (『Final Fantasy for XI.III.MMXI』)と、 復 興 教 育 に 取 り 組 む 民 間 団 体 や 自 治 体 による 各種 の 教 育 実 践 の 発 表 が 行 なわれた。「 創 造 的 復 興 教 育 」の 実 践 事 例 としては、NPO 法人 じぶん 未 来 クラブが 主 催 する「ヤングアメリカンズ」プロジェクトがある。ニューヨークを 拠 点 にして、アメリカの 貧 困 層 の 子 どもたちに 対 するワークショップを 行 なっている 団 体 「ヤングアメリカンズ」が、 今 回 の 被 災 を 機 に、 被 災 地 の 子 どもたちと一 緒 に、 英 語 による 歌 やダンスなどのワークショップを 実 施 した。2~3 時 間 のワークショップを 経 験するだけでそれまで 下 を 向 いていた 子 供 たちが 開 放的 になったのが 印 象 的 だった。OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 )と 福 島 大 学 が 主 催する「 東 北 スクール」は、 子 どもの 復 興 への 参 画 やグローバル 人 材 育 成 を 図 ることを 目 指 した3 年 間 の教 育 プログラムである。 被 災 地 の 中 高 生 約 100 名 が参 加 し、 平 成 26(2014) 年 夏 にパリで、 東 北 ・ 日 本をPRするイベントを 生 徒 の 力 で 実 施 することを 目 指している。OECDが 特 定 国 向 け 教 育 プログラムに 取り 組 む 初 の 事 例 である。さらに、SEND to2050 PROJECT( 一 般 財 団 法 人 夢 現プロジェクト)が 主 催 する「 全 国 生 徒 会 サミット」がある。 平 成 23(2011) 年 9 月 には、 中 学 生 リーダー( 生 徒 会 役 員 等 )によ「 未 来 づくりアジア 子 どもサミット」を 開 催 し、 震 災 を 受 けた 中 学 生 として何 ができるかを 被 災 地 と 全 国 の 生 徒 会 代 表 が 議 論し、アクションプランを 発 表 した。さらに、 平 成がある。 平 成 23(2011) 年 9 月 には、 中 学 生 リーダー( 生 徒 会 役 員 等 )によ「 未 来 づくりアジア 子 どもサミット」を 開 催 し、 震 災 を 受 けた 中 学 生 として何 ができるかを 被 災 地 と 全 国 の 生 徒 会 代 表 が 議 論し、アクションプランを 発 表 した。さらに、 平 成 24(2012) 年 4 月 から7 月 にかけて、 被 災 3 県 で 自 治体 別 に 生 徒 会 サミットを 開 催 し、8 月 には 被 災 地 を含 む 日 本 全 国 、アジア10カ 国 から 約 160 名 が 集 まり、 釜 石 市 において 全 国 生 徒 会 サミットを 開 催 した。◎ ◎ ◎震 災 前 から 文 部 科 学 省 が 行 なってきたプロジェクトとして「 熟 議 プロジェクト」がある。「 熟 議 」とは、 関 係 当 事 者 が 集 まって 自 分 たちのコミュニティが 抱 えている 問 題 を 当 事 者 として 捉 え、それぞれから 見 えているさまざまな 情 報 やアイデアを 持 ち 寄 ることによって、 問 題 の 構 造 や 本 質 を 立 体 的 ・ 動 的 に把 握 する。 問 題 に 対 する 理 解 が 深 まると、ほとんどの 問 題 は 悪 循 環 になっていることがわかる。他 のプレイヤーの 行 動 は 変 わらないという 前 提 で「 部 分 最 適 」をみんなが 目 指 す 結 果 、 全 体 としては「 合 成 の 誤 謬 」が 起 きて 悪 循 環 になっていることに気 が 付 いてもらい、その 悪 循 環 を 解 決 するためにはどうしたらいいのかを 考 える。そして、 同 じビジョンと 同 じ 問 題 認 識 を 共 有 して、すべての 人 に 悪 循 環を 好 循 環 に 変 える 役 割 があることに 気 が 付 いてもらう。 誰 かから 強 制 されるのではなくて、 熟 議 を 通 じてコラボレーションを 創 発 させる。「 近 代 」は 基 本 的 には 飴 と 鞭 とで 人 々の 行 動 を 社会 にとって 良 き 方 向 に 持 っていくというガンバナンスだった。しかし、 飴 にしても 鞭 にしても、それを調 達 する 社 会 コストがかかり、ほとんどの 先 進 国 はその 社 会 コストに 押 しつぶされそうになっている。いまや 政 府 と 市 場 による 解 決 だけではなく、コミュニティによるボランタリーな 解 決 を 付 け 加 えなければ 新 しいガバナンスを 行 なうことはできない。今 回 、「 子 どもの 学 び 支 援 ポータルサイト」を作 った。 支 援 したい 人 と 支 援 を 受 けたい 人 のマッチングサイトで、 文 部 省 がサーバーを 提 供 し、システムは 民 間 企 業 がボランタリーに 提 供 してくれた。ここでのマッチングは2289 件 にのぼった。 例 えば、 宮古 高 校 ヨット 部 のヨットが 流 されたが、「 学 びのポータルサイト」を 通 じてヨットが 届 けられ、 宮 古高 校 はインターハイでベスト4に 入 るという 快 挙 を成 し 遂 げている。また、 東 北 3 県 の 多 くの 中 学 校 、高 等 学 校 が、2011 年 の 夏 に 全 国 中 学 校 大 会 予 選 やインターハイ 予 選 などに 出 場 できたのは、「 学 びのポータルサイト」を 通 じて、バットやネット、ボール、あるいはブラスバンドの 楽 器 などが 全 国 から 集まったことが 大 きくプラスしている。最 後 に、 私 が「 創 造 的 復 興 教 育 」を 確 信 した 一 枚の 新 聞 を 紹 介 したい。 震 災 から1 週 間 後 の3 月 18 日に、 大 船 渡 市 立 第 一 中 学 校 の 生 徒 による 手 書 き 新 聞『 希 望 』である。トップの 見 出 しに「 一 中 生 に 声 をかけて 下 さい! 何 でもやります」とある。 特 にご老 人 の 方 は 遠 慮 なく 近 所 の 一 中 生 に 声 をかけて、 何でもやらせてください、と 書 いて 近 隣 に 配 布 した。その 後 も、 定 期 的 に 発 行 し、 中 学 校 の 校 庭 に 建 てられた 避 難 住 宅 に 配 り 続 けているという。51


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録4 公 開 シンポジウムG-SEC Square 2011 @ SFC ORF 2011G-SEC Square 2012 @ SFC ORF 2012シンポジウム( 第 1 期 )53


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書G-SEC セッション@ SFC Open Research Forum 2011テーマ「リーダーのあり 方 について 考 える‐ 震 災 復 興 を 契 機 として‐」東 日 本 大 震 災 の 復 興 現 場 で 活 躍 するリーダーを 支 援 し、それにより 復興 を 支 援 する「 復 興 リーダープロジェクト」のキックオフミーティングを 兼 ね、 鈴 木 議 員 の 講 演 の 後 、リーダーシップ、その 育 成 、 国 際 貢 献等 、 複 眼 的 視 点 からディスカッションを 行 った。日 時 :2011 年 11 月 22 日 ( 火 )17:00~18:00会 場 : 東 京 ミッドタウン カンファレンスRoom3ゲスト: 鈴 木 寛 氏 ( 参 議 院 議 員 ( 前 文 部 科 学 副 大 臣 )・「 復 興 リーダー 会 議 」アドバイザー)進 行 : 田 村 次 朗 ( 慶 應 義 塾 大 学 G-SEC 副 所 長 ・ 法 学 部 教 授 ・「 復 興 リーダー 会 議 」 副 委 員 長 )鈴 木 議 員 の 講 演 の 要 旨「 近 代 社 会 が 終 焉 を 迎 えつつあり、…… 何 かが 姿を 消 しつつあり、 何 か 別 のものが 生 みの 苦 しみを 経て 生 まれつつある。」(ハヴェル・チェコ 大 統 領 )大 衆 民 主 主 義 、 代 議 制 政 党 政 治 、 官 僚 制 度 、マス教 育 、マスメディアなどのマスシステムがワークしなくなっており、 人 々の 価 値 観 や 生 き 様 などが 多 様化 して、 代 表 に 託 したりする 際 に 捨 象 するものが 多くなりすぎたために 代 表 制 が 綻 びをみせている。それを 私 は「 卒 近 代 」と 名 付 けているが、その 卒近 代 のなかで、 東 日 本 大 震 災 が 起 き、 福 島 第 一 原 子力 発 電 所 の 爆 発 事 故 が 起 きた。チェルノブイリ 事 故(1986 年 ) 後 のロシアは、ソ 連 崩 壊 (1991 年 )、ロシア 通 貨 危 機 (1998 年 )、プーチン 登 場 (2000年 )、 急 速 な 経 済 成 長 ……というように 激 動 を 経 験した。 日 本 でも、 東 日 本 大 震 災 を 経 験 したいま、 起きていることを 一 つ 残 らず 凝 視 しながら、 緊 張 した判 断 の 日 々を 送 っていくべき 局 面 に 入 っている。もはや 日 本 は、 大 量 生 産 ・ 大 量 エネルギー 消 費 の物 質 文 明 に 戻 ることはできない。 震 災 復 興 は、20 世紀 への 復 旧 ではなく、22 世 紀 の 日 本 を 先 取 りした 創造 的 復 興 ( 福 興 )を 目 指 すべきであり、それを 日 本からアジアへ、そして 世 界 へ 発 信 していかなければならない。20 世 紀 の 政 治 課 題 は 富 国 強 兵 、GDP 至 上 主 義 、 物質 的 価 値 ・ 物 質 文 明 の 偏 重 だったが、21 世 紀 の 政 治課 題 は、 人 間 の 尊 厳 、 友 愛 ・ 共 生 の 精 神 であり、コミュニケーション、 知 恵 、 文 化 などの 価 値 をより 重んずる 新 たな 文 明 を 希 求 していくことがわれわれに課 された 使 命 である。いることにある。 巨 大 複 雑 システムの 暴 走 を 止 めるには、 統 合 ・ 集 積 して 複 雑 性 を 増 すことではなく、巨 大 複 雑 システムを、 分 散 ・ダウンサイングし、 人間 の 制 御 下 自 律 安 定 させ、 協 調 させることが 必 要 になる。 自 律 ・ 分 散 ・ 協 調 のシステムに 移 行 しなければならないということである。このような 卒 近 代 のなかで、リーダーが 強 い 決 意 をもって 解 決 すべき 問題 の 状 況 ・ 様 相 や 解 決 方 法 ・ 方 略 が 変 容 している。そして、リーダー 像 も 変 化 している。 調 達 力 ・ 統合 力 重 視 の 親 分 型 リーダーではなく、 調 整 力 ・ 共 鳴力 ・オーケストレーション 力 重 視 の 指 揮 者 型 リーダーが 求 められている。さらに、 知 将 ・ 智 将 、 闘将 、 徳 将 など、いろいろなタイプのリーダーやいろいろな 局 面 におけるリーダーが 必 要 になっている。今 の 日 本 においてリーダーが 目 指 すべきことは 何か。それは、 複 雑 化 ・グローバル 化 する 社 会 ・ 世 の中 に 対 するリテラシーや 想 像 力 に 欠 け、 自 立 ・ 自 律して 生 き 抜 いていくために 不 断 の 学 びの 必 要 性 を 認識 していない 人 に 対 して、 眼 前 にいない 人 々にまで思 いを 馳 せたり、 人 々を 進 んで 助 ける、 役 に 立 つ、奉 仕 するといった、 積 極 的 な 人 生 を 生 きるとの 思 いを 生 ぜしめることである。コミュニティの 一 員 としての 責 任 を 全 うし、 人 々の 役 に 立 つことの 尊 さを 自覚 し、 愛 他 ・ 利 他 を 願 う 人 間 を 育 てるプロジェクトを 構 想 し、 実 践 していくことがリーダーの 役 割 である。リーダーには、 深 い 洞 察 と 理 解 をもって 問 題 解決 の 先 頭 に 立 ち、 人 々を 自 発 ・ 創 発 させるための 卓越 したコミュニケーション 能 力 が 求 められている。◎ ◎ ◎現 代 人 は、 人 間 の 理 解 と 制 御 の 限 界 を 超 えて 巨 大化 ・ 複 雑 化 した 社 会 システムの 暴 走 に 翻 弄 されている。もはや「 不 足 」が 問 題 なのではなく、 昭 和 が 失われていること( 失 調 )、あるいは 悪 循 環 に 陥 って55


G-SEC セッション@ SFC Open Research Forum 2012テーマ「 今 こそ 考 える 被 災 地 の 復 興 ‐ 慶 應 G-SEC 復 興 リーダー 会 議 の 試 み‐」復 興 リーダー 会 議 の 中 間 報 告 という 位 置 づけで、 研 究 所 公 開 イベント(G-SEC Square 2012)の 中 で、セッションを 開 催 した。冒 頭 木 川 氏 から 東 日 本 大 震 災 の 被 災 直 後 から 物 流 のノウハウを 活 かし、 支 援 物 資 などの 運 搬 ・ 仕 分 け、 宅 配 便 1 個 につき10 個 の 寄 付 など、民 間 企 業 による 復 興 支 援 のさまざまなしくみの 創 設 を 事 例 に、 大 震 災 を経 験 したあとの 企 業 の 新 しい 支 援 スタイルのあり 方 、 企 業 と 震 災 復 興 の係 わり 方 について、ご 講 演 いただいた。その 後 、 会 議 委 員 の 代 表 4 名 から、 各 セクターでの 取 り 組 みが 紹 介 され、今 後 の 展 望 と 課 題 について 議 論 が 展 開 された。日 時 :2012 年 11 月 23 日 ( 金 ・ 祝 )11:00~12:30会 場 : 東 京 ミッドタウン カンファレンスRoom9ゲスト: 木 川 眞 氏 (ヤマトホールディングス 株 式 会 社 代 表 取 締 役 社 長 )藤 沢 烈 氏 ( 一 般 社 団 法 人 RCF 復 興 支 援 チーム 代 表 理 事 、 復 興 庁 政 策 調 査 官 )龍 治 玲 奈 氏 ( 日 本 マイクロソフト 株 式 会 社 法 務 ・ 政 策 企 画 統 括 本 部 渉 外 ・ 社 会 貢 献 課 長 )葛 巻 徹 氏 ( 特 定 非 営 利 活 動 法 人 いわて 連 携 復 興 センター 事 務 局 長 )高 橋 大 就 氏 ( 一 般 社 団 法 人 東 の 食 の 会 事 務 局 代 表 )進 行 : 田 村 次 朗 (( 慶 應 義 塾 大 学 G‐SEC 副 所 長 ・ 法 学 部 教 授 ・「 復 興 リーダー 会 議 」 副 委 員 長 )シンポジウムの 講 演 及 び 報 告 の 要 旨田 村 復 興 リーダー 会 議 は、 被 災 地 での 救 援 や 支 援に 関 連 する 情 報 交 換 、 復 興 に 向 けての 議 論 や 勉 強 会を 重 ねることによって、1 復 興 を 支 援 ・ 推 進 するプログラムやネットワークづくり、2 被 災 直 後 の 避 難支 援 ・ 避 難 生 活 の 支 援 ・ 復 旧 復 興 等 の 活 動 モデルづくり、そして3 日 本 初 のグローバルリーダー 像 とその 育 成 プログラムづくりという 三 つのことを 目 標 にして 活 動 し、それを 広 く 社 会 と 共 有 していくことを目 指 している。まず、 東 日 本 大 震 災 の 被 災 直 後 から 物 流 のノウハウを 活 かし、 支 援 物 資 などの 運 搬 ・ 仕 分 けなどで 大きな 貢 献 をしたヤマト 運 輸 の 木 川 さんに、 民 間 企 業による 被 災 地 の 復 興 支 援 のさまざまな 仕 組 みについてお 話 しいただき、 次 にG-SEC 復 興 リーダー 会 議に 参 加 している4 名 の 委 員 からそれぞれの 活 動 について 報 告 していただきたい。木 川 眞 (ヤマトホールディングス 株 式 会 社 代 表 取締 役 社 長 )木 川 2019 年 に 創 立 100 周 年 を 迎 えるヤマトホールディングスは、 宅 急 便 とクロネコメール 便 を 中 心 とした 小 口 貨 物 輸 送 サービスを 主 な 事 業 とし、 日 本 全国 で 約 4000 拠 点 というネットワークを 持 っている。スキー 宅 急 便 やゴルフ 宅 急 便 で「 手 ぶら 文 化 」を 作り、クール 宅 急 便 で 食 文 化 を 変 えた。いまや 日 本 では、 新 鮮 な 魚 や 野 菜 をダイレクトに 家 庭 にまで 届 けることができるのが 当 たり 前 になっている。昨 年 (2011 年 )4 月 から 開 始 した「DAN-TOTSU 経営 計 画 2019」は、お 客 様 、 社 員 、 株 主 、 社 会 の 満 足度 を 上 げる「 満 足 創 造 経 営 」の 実 現 を 目 指 している。そして、この 計 画 を 発 表 した 直 後 に 東 日 本 大 震災 が 起 きた。震 災 発 生 の 直 後 には、 社 員 、 施 設 、 荷 物 の 被 害 状況 の 把 握 を 指 示 し、 次 いで、 企 業 の 最 大 の 使 命 として、いつ 事 業 が 再 開 できるかを 考 えた。 津 波 で 被 災したエリアでは、 営 業 所 が 使 用 不 能 となり、100 台以 上 の 車 が 失 われ、 残 った 車 も 燃 料 がないという 状況 だったが、それでも10 日 目 には 事 業 を 再 開 した。震 災 復 興 への 取 り 組 みとして、 「みんなのチカラ プロジェクト」として3つのアクションを 展 開した。第 一 のアクションは、 現 地 の 社 員 が 震 災 発 生 の 数 日後 から 既 に 自 主 的 、 自 発 的 に 始 めていた 救 援 物 資 輸送 協 力 を 本 社 が 追 認 する 形 で 行 なった「 救 援 物 資 輸送 協 力 隊 」である。 全 国 から200 台 の 車 両 と、 救 援物 資 の 仕 分 けや 物 流 の 専 門 家 を 中 心 に500 人 を 集め、3 月 23 日 から 組 成 した。この 活 動 には、 延 べ 車56


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書両 4,187 台 、 人 員 14,286 名 を 投 入 し、 今 年 (2012年 )1 月 15 日 に 終 了 した。第 二 のアクションは、「 宅 急 便 ひとつに、 希 望 をひとつ 入 れて。」と 題 して、 宅 急 便 1 個 につき10 円を1 年 間 寄 付 する 活 動 である。 結 果 的 には、 当 社 の年 間 純 利 益 の 約 4 割 に 当 たる142 億 円 を 超 える 寄 付金 額 となった。第 三 のアクションとしては、 一 人 ひとりが 全 社 運動 としての、 被 災 地 でのボランティア 活 動 への 参加 、ベルマークで 被 災 地 の 学 校 を 支 援 、みんなで 打ち 水 ( 社 内 公 募 した 節 電 アイデア)を 行 なった。「 寄 付 」については、3 月 31 日 に 経 営 トップ3 人で 話 をして 了 解 を 得 て、4 月 1 日 に 社 内 で 発 表 し、その1 週 間 後 に 世 の 中 に 公 表 した。 地 元 の 水 産 業 、農 業 などの 基 幹 産 業 の 復 興 と、 地 元 の 学 校 、 病 院 、保 育 園 などの 生 活 インフラの 復 旧 に 限 定 して、 寄 付金 全 額 を1 円 残 らず 現 地 に 渡 したいということがヤマトグループとしての 考 え 方 だった。ところが、 当初 は 日 本 の 税 法 上 は 寄 付 ではなく 営 業 活 動 に 伴 う 経費 と 見 做 されて、 課 税 されると 言 われた。そこで 当局 と 交 渉 し、「 指 定 寄 附 金 」に 指 定 いただくことで、 全 額 無 税 にするという 大 英 断 を 財 務 省 に 下 していただいた。障 害 者 の 自 立 支 援 のために 設 立 されたヤマト 福 祉財 団 に 全 額 寄 付 し、 財 団 では 有 識 者 による「 復 興 再生 支 援 選 考 委 員 会 」を 作 って 助 成 案 件 を 公 募 したうえで、「 見 える 支 援 ・ 速 い 支 援 ・ 効 果 の 高 い 支 援 」という 考 え 方 に 基 づいて 助 成 先 を 選 考 した。この 結果 、 選 考 対 象 174 事 業 のうちから31 件 の 事 業 に 対 して、 総 額 142 億 6,600 万 円 が 寄 付 された。 例 えば、 日本 有 数 の 秋 鮭 の 水 揚 げで 知 られる 南 三 陸 の 魚 市 場 は完 全 に 破 壊 され、 製 氷 機 も 失 われたが、10 月 下 旬 には 水 揚 げ 時 期 がくる。しかし、 仮 設 の 建 物 に 対 しては 国 が 優 先 的 にはおカネを 出 せない。そこで、 仮 設魚 市 場 の 建 設 に 必 要 な 金 額 を 寄 付 させていただいた。また、94 名 の 園 児 全 員 が 助 かったことがニュースになった 岩 手 県 野 田 村 の 保 育 園 は、 高 台 移 転 の 土地 は 用 意 したが 建 設 資 金 がなく、 国 に 助 成 を 求 めたが、 村 全 体 の 復 興 の 青 写 真 がまだ 描 けていないという 理 由 でゼロ 査 定 だった。 保 育 園 がないと 子 どもを抱 えた 女 性 は 働 きに 出 られない。そこで、 建 設 資 金を 全 額 寄 付 して、 保 育 園 は10 月 30 日 に 竣 工 した。ちなみに、 財 務 省 から 唯 一 注 文 があったのは、 一企 業 だと 全 額 無 税 という 枠 組 みはできないので、ヤマトホールディングスの 活 動 に 賛 同 する 寄 付 を 募 ること、すなわち 募 金 を 一 般 に 広 げることだった。ヤマト 福 祉 財 団 は 日 本 赤 十 字 と 同 じステータスを 与 えられたことになるが、これによって 民 間 企 業 による寄 付 文 化 が 変 わるきっかけになれば 良 いと 考 えている。震 災 復 興 には 長 い 時 間 がかかり、 膨 大 なおカネが必 要 になる。したがって、 企 業 として 大 事 なことは、 一 時 的 なおカネを 出 すのではなく、 企 業 活 力 を使 いながら 継 続 的 に 復 興 にかかわっていくこと。つまり、 震 災 復 興 などに 対 して 企 業 は、 本 業 を 通 じて社 会 的 責 任 を 全 うできるような 取 り 組 みをすることであり、 事 業 として 成 立 するような 仕 掛 けを、 復 興の 枠 組 みのなかにどれだけ 埋 め 込 めるかである。 一方 、 行 政 は 自 らが 事 業 主 体 になってやらなければならない 住 民 サービスに 特 化 して、それ 以 外 のものは民 間 に 任 せればいい。 補 助 金 でなく、 民 間 がやり 易いような 優 遇 措 置 を 考 えてほしい。それができれば、 本 業 を 通 じた 社 会 貢 献 活 動 が 可 能 になる。企 業 にとっての 本 業 は 商 売 だが、そこから 過 大 な利 益 を 得 る 必 要 はない。 従 来 のCSR( 企 業 の 社 会 的責 任 )の 考 え 方 から 発 展 した、ハーバード 大 学 のマイケル・ポーター 教 授 が 提 唱 するCSV( 共 通 価 値 創造 )という 新 たな 概 念 、すなわち、 企 業 は 社 会 と 共有 できる 価 値 の 創 造 を 通 じて、 事 業 戦 略 と 社 会 活 動の 一 体 化 を 実 現 すべきという 考 え 方 が 必 要 である。藤 沢 烈 ( 一 般 社 団 法 人 RCF 復 興 支 援 チーム 代 表 理事 、 復 興 庁 政 策 調 査 官 )藤 沢 いま 復 興 が 進 んでいないように 見 えるのには、1 被 災 者 が 避 難 所 から 仮 設 住 宅 に 移 り、よりプライベートな 空 間 を 取 り 戻 したので 状 況 が 見 えにくいこと、2 道 路 の 復 旧 などのハードから 医 療 や 教育 、 雇 用 などのソフトに 移 っている 段 階 なので、 目には 見 えにくいこと、3 行 政 主 導 の 復 興 から 住 民 主体 の 復 興 に 進 む 段 階 で、いわば 復 興 の 踊 り 場 にあること、という 三 つの 背 景 がある。RCFは 企 業 とパートナーシップを 組 みながら、「 生 活 再 建 」「 事 業 再 開 」「まちの 記 憶 」という 三つのテーマで、 仮 設 住 宅 の 支 援 、コミュニティ 支援 、 水 産 加 工 業 支 援 、 事 業 者 の 情 報 発 信 などを 進 めている。これからの 東 北 に 必 要 なことは、1 行 政 と 民 間 ・NPO、あるいはNPOと 企 業 を 繋 ぐ 復 興 コーディネーター 集 団 の 組 織 化 、2 主 要 メディアの 報 道 が 減 っているなかで 被 災 地 企 業 の 情 報 を 国 内 外 に 伝 えていくこと、3どうすれば 新 しい 切 り 口 で 東 北 が 進 んでいくのかということを 真 剣 に 考 えることだ。 例 えば 製造 業 の 情 報 化 によって、インターネットなどを 通 じて 世 界 中 と 繋 がって 東 北 の 製 品 が 流 通 する 可 能 性 が出 てきている。 新 しいモデルを 東 北 に 作 って、 復 興が 真 に 実 現 した 環 境 ができるまでにはさらに10 年 以上 はかかるだろうと 思 っている。 長 いスパンで 支 援していきたい。龍 治 玲 奈 ( 日 本 マイクロソフト 株 式 会 社 法 務 ・ 政 策企 画 統 括 本 部 渉 外 ・ 社 会 貢 献 課 長 )龍 治 当 社 は 発 災 直 後 、 外 部 向 けには 本 業 のITを 通じて、アクセスが 集 中 するウェブサイトの 負 荷 軽減 、 情 報 の 可 視 化 を 行 ない、 社 内 では 緊 急 時 の 組 織体 制 が 組 まれて、 意 思 決 定 の 迅 速 化 が 図 られた。海 外 の 災 害 事 例 から、 情 報 の 獲 得 手 段 となる 通 信 可能 なパソコンを 送 ることが 被 災 地 にとって 役 立 つ 支援 であることがわかっていたので、3 月 12 日 から 社内 や 業 界 に 呼 び 掛 けを 開 始 。 約 3000 台 のパソコンが東 北 の 被 災 地 に 送 られ、 各 自 治 体 が 開 設 している 災害 ボランティアセンターでの 情 報 連 携 や 避 難 所 で 被災 者 が 情 報 を 得 る 手 段 として 使 われた。 弊 社 の 被 災57


地 支 援 で 特 徴 的 なのことはNPOとの 連 携 で、 例 えば、パソコンの 使 い 方 を 支 援 するボランティアの 派遣 なども、NPOとの 連 携 を 通 じて 行 われた。 更 に、失 業 保 険 がきれる2012 年 初 めに 開 始 した 就 労 支 援 プログラムもNPO 連 携 のもとに 仕 組 みを 作 り、パソコンの 電 源 も 入 れたこともなかった 女 性 が、いまやエクセルで 在 庫 管 理 をしているというような 成 功 事 例がでてきている。震 災 から1 年 経 った2012 年 3 月 9 日 に、 支 援 を 連携 させていただいた 行 政 、 企 業 、NPO、 大 学 、 医 療関 係 者 に 集 まっていただき「 震 災 復 興 とICT」と 題するカンファレンスを 開 催 。 次 期 災 害 に 備 える 上 でも、 復 興 支 援 に 関 するベストプラクティスを 共 有 した。安 心 」については、 企 業 側 の 自 主 検 査 の 導 入 支 援 などを 行 なっている。「 調 査 ・ 提 言 」 活 動 では、 消 費者 ニーズを 定 量 的 に 分 析 して 提 言 を 行 なっている。「 経 営 基 盤 支 援 」 活 動 では、 顧 客 ニーズベースの 新しい 水 産 業 を 作 っていくために、 水 産 加 工 業 の 担 い手 にマーケティングの 研 修 などを 行 なうプログラムを 始 めている。葛 巻 徹 ( 特 定 非 営 利 活 動 法 人 いわて 連 携 復 興 センター 事 務 局 長 )葛 巻 岩 手 県 では、 一 般 社 団 法 人 や 任 意 団 体 を 含 めると 県 内 の100 以 上 の 団 体 が 震 災 復 興 活 動 をしている。いわて 連 携 復 興 センターは 発 災 後 に 岩 手 県 にできた 中 間 支 援 組 織 のNPOで、 住 民 が 自 立 的 に 活 動 する 一 つの 手 段 としてのNPOにノウハウ 等 を 提 供 したり、 県 外 からの 支 援 を 伝 えたりしている。いわて 連携 サポートセンターのホームページでは、ホームページを 持 てないNPOなどをマッピングして 情 報 を発 信 したり、 地 元 の 企 業 団 体 とともにイベント 等 を開 催 し、 物 販 や 情 報 発 信 などを 行 なったりしている。行 政 、 企 業 、NPOはそれぞれ 得 意 分 野 を 持 っているので、いわて 連 携 復 興 センターはそれらを 繋 ぐ 役割 を 担 っている。 行 政 との 連 携 では、 岩 手 県 復 興 局生 活 再 建 課 とともに「いわて 連 携 復 興 会 議 」を 作 って、 県 庁 の 他 の 部 署 、 各 市 町 村 の 課 題 を 協 議 し、 情報 共 有 を 行 なっている。また、 宮 城 と 福 島 の 連 携 復興 センターとともに 月 1 回 会 合 を 開 いて、 各 県 の 状況 や 取 組 みなど、 県 をまたいだ 情 報 交 換 を 行 なっている。さらに、ノウハウ 面 では 東 京 のNPOやNGOの 力を 借 りて、いわて 連 携 サポートセンターが 講 座 やセミナーなどを 主 催 している。高 橋 大 就 ( 一 般 社 団 法 人 東 の 食 の 会 事 務 局 代 表 )高 橋 この 震 災 を 機 に、 東 北 地 方 の 農 業 、 漁 業 や 水産 業 を 新 しい 産 業 として 興 していくために、 食 関 連に 係 わる 企 業 約 40 社 が 集 まって「 東 の 食 の 会 」を 立ち 上 げた。 長 期 で 取 り 組 まなければいけない 震 災 復興 は、チャリティーでは 続 かないので、 生 産 者 側 と販 売 者 側 の 両 方 が 儲 かるWIN-WINのモデルを 構 築 するための 活 動 を 行 なっている。生 産 者 が 作 った 食 材 を 販 売 側 に 紹 介 して 販 路 を作 っていく「マッチング」 活 動 では、ナチュラルローソンに 福 島 のスイーツを 紹 介 し 販 売 していただいている。「ブランディング」 活 動 としては、 消 費者 の 関 心 を 買 うための 仕 掛 けとして、 東 北 6 県 のそれぞれの 名 産 で 作 った 巻 物 の 新 しい 名 産 品 を 作 る「6 県 ROLLプロジェクト」を 始 めている。「 安 全 ・58


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書シンポジウム( 第 1 期 )テーマ「 震 災 2 年 目 のチャレンジ~ 震 災 を 風 化 させないために~」復 興 リーダー 会 議 第 1 期 の 成 果 報 告 として、シンポジウムを 開 催 した。 根 本 大 臣 からは、 復 興 の 現 状 と課 題 及 び 東 北 がこの 震 災 によって 現 在 直 面 し 日 本 がこれから 抱 えるであろう 問 題 ( 人 口 減 少 ・ 高 齢 化 ・ 産業 の 空 洞 化 ・エネルギー 問 題 等 )についてご 講 演 いただくとともに、 震 災 復 興 を 契 機 に 東 北 の 持 つ 可 能性 ・ 地 域 資 源 を 活 かし 新 しい 東 北 を 創 造 し、 世 界 のモデルとなる 未 来 社 会 をめざすべく、それぞれの 分 野にリーダーの 活 躍 を 期 待 するという 力 強 いメッセージをいただいた。その 後 、 会 議 委 員 がグループごとに練 り 上 げた5つの 課 題 について「 復 興 プラン・ 復 興 の 課 題 」が 発 表 された。 鈴 木 議 員 からは、それぞれの発 表 に 対 する 示 唆 に 富 んだコメントをいただき、 全 体 のプロジェクトがシンクロナイズしており、ピンチから 生 まれる( 知 恵 ・エネルギー・ 努 力 )を 振 り 返 って21 世 紀 のガバナンスの 創 造 が 大 いに 期 待 できるという 勇 気 づけられる 言 葉 をいただいた。日 時 :2013 年 2 月 23 日 ( 土 )14:00~16:00会 場 : 慶 應 義 塾 大 学 三 田 キャンパス 北 館 ホール【プログラム】基 調 講 演 :「 復 興 の 現 状 と 課 題 」 根 本 匠 氏 ( 復 興 大 臣 )復 興 リーダー 会 議 について: 田 村 次 朗( 慶 應 義 塾 大 学 G-SEC 副 所 長 ・ 法 学 部 教 授 ・「 復 興 リーダー 会 議 」 副 委 員 長 )発 表 Ⅰ:「 被 災 地 における 中 間 支 援 組 織 とSROI・SIBの 可 能 性 」「『タフな 街 』 釜 石 市 の 水 産 加 工 等 復 興 プロジェクト」総 評 : 鈴 木 寛 氏 ( 参 議 院 議 員 ( 前 文 部 科 学 副 大 臣 )・「 復 興 リーダー 会 議 」アドバイザー)発 表 Ⅱ:「 震 災 風 化 を 乗 り 越 える」「 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 選 定 プロセスの 構 築 」「“N 助 型 ”ソリューションによる 創 造 的 教 育 復 興 支 援 」総 評 : 細 田 衛 士 (「 復 興 リーダー 会 議 」 委 員 長 ・ 慶 應 義 塾 大 学 経 済 学 部 教 授 )進 行 : 田 村 次 朗 ( 慶 應 義 塾 大 学 G-SEC 副 所 長 ・ 法 学 部 教 授 ・「 復 興 リーダー 会 議 」 副 委 員 長 )基 調 講 演 の 要 旨「 復 興 の 現 状 と 課 題 」根 本 匠 ( 復 興 大 臣 福 島 原 発 事 故 再 生 総 括 担 当 )平 成 23(2011) 年 3 月 11 日 に 三 陸 沖 で、 日 本 の 観測 史 上 最 大 規 模 、 世 界 的 に 見 ても1900 年 以 降 4 番 目の 規 模 の 地 震 が 発 生 した。 平 成 25(2013) 年 2 月 20現 在 、 死 者 ・ 行 方 不 明 者 は 震 災 関 連 死 を 含 め2 万877 人 、 建 築 物 被 害 ( 全 壊 ・ 半 壊 ・ 一 部 損 壊 )は113万 2690 戸 に 達 している。 改 めていうまでもなく、 東日 本 大 震 災 は 未 曾 有 の 大 災 害 であり、 決 して 風 化 させてはならない。被 災 した 避 難 者 は 約 31 万 5000 人 で、そのほとんどはすでに 仮 設 住 宅 や 民 間 の 借 り 上 げ 住 宅 等 に 移 転 し、本 格 的 な 住 宅 再 建 が 大 きな 課 題 になっている。 一方 、 公 共 インフラは 応 急 ・ 復 旧 段 階 を 終 え、 本 格 復旧 ・ 復 興 が 課 題 であり、 災 害 廃 棄 物 ( 瓦 礫 ) 処 理 については、 平 成 26(2014) 年 3 月 末 までに 処 理 を 終えることが 目 標 になっている。 産 業 の 復 興 状 況 については、 鉱 工 業 生 産 指 数 でみると、 被 災 地 域 はその他 の 地 域 との 差 がなくなりつつあり、 農 業 ・ 水 産業 ・ 観 光 業 も 改 善 が 見 られるものの、 本 格 的 な 復 興が 今 後 の 課 題 となっている。安 倍 総 理 は、 平 成 24(2012) 年 12 月 26 日 の 就 任 直後 に、 日 本 経 済 再 生 、 復 興 と 危 機 管 理 に 全 力 で 取 り組 むよう 全 閣 僚 に 指 示 するとともに、「 復 興 の 加 速化 が 何 よりも 重 要 」であるとの 認 識 のもと、 被 災 地の 心 に 寄 り 添 う 現 場 主 義 で 復 興 の 加 速 化 に 取 り 組 むよう 指 示 している。さらに、 福 島 については、「 福島 再 生 総 括 担 当 大 臣 」を 中 心 に、 関 係 省 庁 の 力 を 結集 して、 国 が 前 面 に 立 って、 国 の 責 任 において、 福島 の 再 生 に 取 り 組 むとしている。59


◎◎ ◎安 倍 総 理 の 指 示 を 踏 まえた 復 興 加 速 化 への 取 り 組みの 第 一 は、 復 興 庁 の 司 令 塔 機 能 の 強 化 と 現 場 主 義の 徹 底 である。とりわけ 福 島 においては、 復 興 行 政の 一 元 化 のために「 福 島 復 興 再 生 総 局 」を 設 置 し、復 興 庁 幹 部 を 常 駐 させるとともに、 東 京 に「 福 島 復興 再 生 総 括 本 部 」を 設 置 し、 中 枢 機 能 を 強 化 した。例 えば、「 除 染 」にしても、 単 に 除 染 するだけではなく、 同 時 に 農 業 再 生 を 目 指 すなど、 複 合 的 な 政 策目 的 を 持 って 進 める。また、 津 波 被 災 地 での 高 台 移転 については、 用 地 取 得 職 員 の 確 保 や、 埋 蔵 文 化 財の 調 査 、 権 利 調 整 や 基 本 設 計 、そして 本 格 設 計 、 施工 に 至 るまで、 文 化 庁 、 国 土 交 通 省 、 農 林 水 産 省 など、さまざまな 省 庁 による 施 策 が 必 要 になっている。そこで、 従 来 の 縦 割 り 行 政 を 打 破 して 横 串 を 入れていくことが 不 可 欠 になる。つまり、 本 物 の 政 治主 導 を 行 うことが 何 よりも 重 要 であり、 現 場 主 義 に立 って、 新 しい 統 治 システムを 作 り、 具 体 的 な 施 策に 還 元 していかなければならない。ちなみに、 現 場 主 義 の 事 例 としては、 集 団 移 転 の動 きを 加 速 するために 津 波 被 害 農 地 の 転 用 許 可 を 不要 にすること、 雇 用 促 進 住 宅 を 活 用 していわきの 地震 ・ 津 波 被 害 者 が 入 居 できるようにした。第 二 の 取 り 組 みは、 復 興 予 算 に 関 するフレームの見 直 しである。 当 初 、5 年 間 で19 兆 円 だった 財 源 のうち、すでに17.5 兆 円 が 使 われている。そこで、 平成 25 年 度 予 算 編 成 と 合 わせて、これを25 兆 円 に 見 直した。 財 源 を 確 保 することによって 被 災 地 の 不 安 を解 消 することが 目 的 である。第 三 の 取 り 組 みは、 復 興 の 加 速 化 策 の 具 体 化 ・ 推進 である。 例 えば、 住 宅 再 建 ・まちづくり、なりわいの 確 保 については、 工 程 表 を 作 成 するとともに 住宅 ・ 宅 地 の 戸 数 の 年 度 別 目 標 を 明 示 して、 事 業 のスピードアップを 図 る。また、 被 災 地 ではマンパワーが 不 足 しているので、 各 自 治 体 からの 支 援 や、 任 期付 き 職 員 の 採 用 、 公 務 員 OB、 民 間 実 務 経 験 者 、 海 外青 年 協 力 隊 帰 国 隊 員 等 の 活 用 で 対 応 する。 産 業 再 生については、グループ 補 助 金 の 事 業 対 象 に 共 同 店 舗の 新 設 や 街 区 の 再 配 置 等 を 追 加 し、 被 災 地 域 の 商 業復 興 を 促 進 する。さらに、 福 島 の 復 興 ・ 再 生 の 加 速化 については、これまで 対 処 できなかった 課 題 に 対する 新 たな 支 援 制 度 として、 避 難 区 域 等 帰 還 ・ 再 生加 速 事 業 、 長 期 避 難 者 の 生 活 拠 点 形 成 事 業 、 福 島 中通 り 等 への 定 住 支 援 事 業 ( 子 ども 元 気 復 活 交 付 金 )の 創 設 などを 行 っている。◎ ◎ ◎今 後 もさまざまな 問 題 点 が 出 てくると 思 われるが、 復 興 庁 の 職 員 に 対 しては、 具 体 的 な 問 題 を 一 つ一 つ 解 決 していくために 知 恵 を 絞 り、 創 造 突 破 型 の精 神 で 仕 事 に 邁 進 してほしいと 指 示 している。震 災 復 興 に 当 たっては、 最 低 限 の 生 活 再 建 にとどまることなく、 創 造 と 可 能 性 の 地 としての「 新 しい東 北 」を 作 り 上 げることを 目 指 さなければならない。 日 本 社 会 がこれから 抱 える 人 口 減 少 、 高 齢 化 、産 業 の 空 洞 化 への 対 応 や、 持 続 可 能 なエネルギー 社会 の 構 築 などのさまざまな 問 題 について、 震 災 復 興を 契 機 に、 世 界 のモデルとなる、 可 能 性 ある 未 来 社会 の 創 造 を 目 指 すということである。そのために、 地 域 の 将 来 像 について、 子 どもの 元気 で 健 やかな 成 長 を 見 守 る 安 心 な 社 会 、「 高 齢 者 標準 」による 活 力 ある 超 高 齢 社 会 、 持 続 可 能 なエネルギー 社 会 ( 自 律 分 散 型 エネルギー 社 会 )、 頑 健 で 高い 回 復 力 を 持 った 社 会 基 盤 の 導 入 で 先 進 する 社 会 、地 域 資 源 の 高 い 発 信 力 を 持 った 社 会 などのテーマを中 心 に 検 討 を 進 めている。かつての 日 本 では、それぞれの 地 域 に 消 防 団 や 青年 団 などの 強 いリーダーがいて、 地 域 社 会 を 支 えた。そこが 日 本 の 強 みだった。 被 災 地 を 束 ねるコーディネーターと、それぞれの 分 野 のリーダーの 活 躍に 期 待 したい。総 評 の 要 旨鈴 木 寛 ( 参 議 院 議 員 ・ 元 文 部 科 学 副 大 臣 )東 日 本 大 震 災 の 被 災 地 では、 必 要 最 低 限 度 の 健 康 で文 化 的 な 生 活 を 取 り 戻 す 大 前 提 として、 瓦 礫 処 理 が行 なわれなければならない。ただ、 行 政 に 任 せるとの 平 等 原 則 に 従 う。 伝 統 的 な 政 府 は、 公 共 サービスの 形 式 的 平 等 を 実 現 することは 得 意 としている。しかし、それぞれの 自 治 体 で 事 情 は 異 なるので、「 必要 最 低 限 度 」を、どのように 決 めていくのかというむずかしい 問 題 がある。それぞれの 事 情 に 応 じた 最適 かつ 公 正 な 公 共 サービスを「 正 義 にかなう 不 平等 」あるいは「 不 平 等 な 正 義 」の 場 合 にも 提 供 していくためには、 何 が 適 正 な 行 政 レベルなのか、そして 何 が 適 正 な 費 用 なのかをはかる 評 価 機 関 を 作 ることは 重 要 な 課 題 であり、これを 作 るノウハウはまさにこれからの 日 本 のガバナンスを 救 うといえる。例 えば、 指 定 廃 棄 物 の 最 終 処 分 場 選 定 についても、 形 式 的 に 平 等 なプロセスは 議 会 政 治 によって 確立 されている。しかしそれは、 行 政 効 率 を 最 大 化 するためのルールにすぎない。むしろ、 個 別 具 体 的 なジャスティス( 正 義 )やフェアネス( 公 正 )を 最 大化 する 方 向 に 向 けていくことが、 日 本 の 民 主 主 義 にとって 極 めて 重 要 である。それを 突 き 詰 めていくプロセスは 厳 しいが、それにチャレンジできるメン60


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書バーが 復 興 リーダー 会 議 には 集 まっている。その 時のキーワードは「 熟 議 」だと 思 う。さまざまなステークホルダーが 入 り 混 じっている 時 に、 当 事 者 性をどう 理 解 していくのか。しかも、それぞれの 当 事者 は 複 数 のアイデンティティを 持 っている。 複 数 のコミュニティに 参 画 して、 対 立 のステークホルダーとしてではなく、さまざまなレイヤーで 接 点 があり、 繋 がっていることを 理 解 する。そして、 小 さな成 功 モデルを 積 み 重 ねていくなかで、ソーシャルキャピタルが 醸 成 される。第 一 期 の 復 興 リーダー 会 議 では、それぞれのプロジェクトで 素 晴 らしい 成 果 を 上 げていただいたが、同 時 に、 全 体 のプロジェクトがシンクロナイズしていて、それぞれの 成 果 が 合 わさると、 今 抱 えているさまざまな 課 題 に 対 して 共 通 のブレークスルーができるだろう。 現 場 のきわめて 厳 しい 現 状 に 直 面 し 板ばさみになっている 方 々がいること、そしてそれを真 摯 に 支 える 全 国 各 地 のネットワークがあることが何 よりの 財 産 である。そういうすばらしいコミュニティができたことを 喜 びたい。現 在 、 日 本 は 歴 史 において 最 大 級 ともいうべき 危機 に 直 面 している。 一 方 、このピンチの 中 で、われわれが 持 てる 力 をフルに 発 揮 して、 振 り 絞 れるかぎりの 知 恵 とエネルギー、そして 努 力 を 重 ねることができるというチャンスに 遭 遇 している。 第 一 期 の 復興 リーダー 会 議 では、20 世 紀 のガバナンスを 卒 業し、21 世 紀 のあるいは22 世 紀 のガバナンスを 先 取 りした 新 しいイニシャティブが 出 てくる 予 感 を 感 じさせていただいた。 今 回 の 成 果 を 第 二 期 、 第 三 期 とつなげていっていただきたいと 思 う。ご 検 討 をお 祈 り申 し 上 げたい。発 表 の 様 子61


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書Ⅰ 会 議 の 概 要Ⅱ 会 議 の 成 果Ⅲ 講 演 記 録1 講 演 のエッセンス会 議 委 員 の 声( 講 義 から 学 び 取 ったこと、印 象 に 残 ったキーワード、 感 想 )63


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書No.1 「 復 興 リーダーと 問 題 解 決 力 」‐ 交 渉 学 への 招 待 ‐田 村 次 朗( 慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 副 所 長 ・ 法 学 部 教 授 )「 交 渉 」とは、 論 理 的 に 思 考 しながら 事 前 準 備 したものを 相 手 に 出 していく 作 業 であり、ロジャー・フィッシャー 教 授 は「 賢 明 な 合 意 」と 表 現 している。とかく 二 分 法 の 罠 や 合 意 バイアスに 陥 りやすい交 渉 の 場 で「 賢 明 な 合 意 」を 達 成 するためには、1状 況 把 握 、2ミッション、3 目 標 設 定 、4 創 造 的 選択 肢 、5BATNAという 五 つの 事 前 準 備 が 必 要 であり、 交 渉 の 場 では、「 人 と 問 題 の 分 離 」と「 立 場 から 利 害 へ」という 二 つの 基 本 原 則 が 交 渉 の 成 功 確 率を 向 上 させる。交 渉 あるいは 会 議 の 手 法 としては、「ブレイン・ストーミング 型 」と「Devil’s Advocate 型 」の 二つの 形 態 があり、 効 果 的 な 会 議 を 行 なうためには、議 論 の 拡 散 を 恐 れず、イシューに 焦 点 を 合 わせ、ミッションを 形 成 するという 三 つの 視 点 が 重 要 である。リーダーに 必 要 な 交 渉 力 の 前 提 条 件 は、 自 分 に 心地 よい 意 見 や 情 報 にのみ 耳 を 傾 けてしまいがちになる 誘 惑 に 打 ち 勝 つこと。 転 換 期 にある 日 本 では、 組織 の 中 で 優 秀 さを 発 揮 する「 従 来 型 のエリート」ではなく、「 論 理 的 思 考 力 」「 戦 略 ・ 構 想 力 」「 交 渉力 」を 兼 ね 備 えた 問 題 解 決 力 をもつリーダーが 求 められている。< 会 議 委 員 によるコメント>・ 我 々は 議 論 において 特 定 の 声 が 大 きい 者 に 頼 り、あるいは、 交 渉 の 相 手 となる 個 人 と 敵 対 してはいないだろうか。 復 興 支 援 においては 様 々なステークホルダーが 登 場 し、それぞれがその 立 場 における 正 論 をぶつけ 合 う。 創 発 を 促 す 交 渉 スキルの 基 礎 をロジックとして 学 ぶ 機 会 に 恵 まれた。・ 複 数 の 利 害 関 係 者 がいる 際 に、 利 害 を 聞 いてみると 意 外 と 一 致 している 場 合 もある。・キーワードは"Devil's Advocate"。 復 興 関 連 の 政 策 や 動 きに 対 して、 人 を 批 判 せずに 解 決 策 を 批 判 するという 姿 勢 の 大 切 さを 学 んだ。また、 自 らが 行 動 する 際 にも 批 判 を 好 意 的 に 受 け 止 められるようになった。・■ 事 前 準 備 = 状 況 把 握 ・ミッション・ターゲティング・ 創 造 的 選 択 肢 ・BATNA ■ミッション( 共 通 の 目標 / 究 極 のゴール)を 見 つける(ある 程 度 ブレイクダウンした 可 能 性 のあるものを 幾 つか 用 意 しコミュニケーション 材 料 に)■ 上 を 向 いて 交 渉 する■ 問 題 解 決 に 向 けての[ 共 有 の 絵 ]■Devil’s Advocate 型 合 議 =あえて 違 う 意 見 を 出 す 人 ( 悪 魔 の 代 理 人 )を 用 意 ■ 交 渉 の 場 のつくり 方 = 聞 くき 上 手 であることと 良 い 質 問 で 形をつくっていくこと■ 複 数 の 利 害 関 係 者 の 中 にも 共 通 利 害 は 意 外 とありそこから 広 げていく■さんづけ、丁 寧 語 、ポジティブフレーミング・「 交 渉 学 」の 基 礎 を 体 得 できていれば、 混 乱 した 現 場 でも「 仕 方 ない 落 としどころ」ではなく、 現 場 すべてがWin-Winとなるような 最 適 解 が 導 き 出 せたかもしれない。・「リサーチ」と「アドボカシー」という 言 葉 が 大 変 印 象 に 残 りました。 被 災 地 の 学 校 や 生 涯 学 習 などの教 育 現 場 で 先 生 や 保 護 者 、 教 育 行 政 の 方 々と 交 渉 する 場 面 がたくさんありました。 交 渉 が 行 き 詰 まったときのことを 振 り 返 ってみると、リサーチの 立 場 で 持 論 を 展 開 することが 多 かったように 思 います。 相 手 の困 り 感 や 立 場 を 考 えながら、 一 番 は 子 どもや 町 民 のために 何 が 最 善 なのか、 共 に 考 える 姿 勢 が 大 切 と 理 解した。・「 交 渉 」することによってお 互 いの 利 害 関 係 を 調 整 し、ビジネスを 円 滑 に 進 めることができること。・ 交 渉 のポイントは 個 人 を 批 判 するのではなく、 対 象 となっている 物 事 について 冷 静 に 議 論 すること。・リーダーシップとは 他 人 への 命 令 ではなく 説 得 の 過 程 。 説 得 のためには 交 渉 力 が 重 要 。その 意 味 で 大 変勉 強 になった。・ 交 渉 とは、 決 して「 勝 ち」・「 負 け」ではなく、Win-Winが 可 能 であること。・ 交 渉 学 というものが 問 題 解 決 に 大 きく 役 立 つ 事 がわかりました。ネゴシエーションというのは、どの 仕事 にも 共 通 して 必 要 なスキルで、 知 らぬ 間 に 自 然 体 で 使 っている。・それをハーバード 大 学 などを 中 心 に 体 系 付 けられている 事 が 非 常 に 興 味 深 かった。65


No.2 「 復 興 をリードする 指 揮 者 の 仕 事 」「 二 つ」を 同 時 にコンダクトする伊 東 乾 ( 作 曲 家 = 指 揮 者 /東 京 大 学 大 学 院 情 報 学 環 作 曲 = 指 揮 ・ 情 報 詩 学 研 究 室 准 教 授 )指 揮 者 が 楽 譜 から 主 観 的 に 解 釈 するだけでは 仕 事にならないのと 同 様 に、 指 導 者 が 復 興 計 画 から 主 観的 に 解 釈 するだけでは 仕 事 にならない。 各 当 事 者 が主 体 性 をもって 復 興 計 画 から 解 釈 したアクションを評 価 激 励 する 客 観 性 、 客 体 を 励 まし 伸 ばす「 準 備 」と、 進 行 の 不 断 の 事 故 防 止 ・ 人 間 の 安 全 保 障 こそが、 復 興 リーダーの 本 分 だろう。「 主 従 のコントロール(の 残 滓 )を 超 え、 主 客 のけじめのついた 客体 に 対 する 配 慮 と 尊 敬 と 協 賛 と 配 慮 のあるガバナンス・リーダーシップへ」ということである。被 災 地 が、また、 私 たちも 望 むものは、 箱 物 行 政的 な 一 過 性 アリバイの 物 理 的 事 業 だけでもなく、またその 場 限 りの 気 休 め 的 サービスでもなく、 継 続 的かつ 発 展 的 なソリューション・ネットワークと、それに 基 づく 物 理 的 にも 社 会 心 理 的 にも 長 期 安 定 した復 興 発 展 である。2010 年 代 の 被 災 地 以 外 の 日 本 社会 の 現 状 を 見 れば、 復 興 は「 復 旧 」というより、むしろ「 新 生 」であるべきである。そこでの 復 興 リーダーは、 復 興 の 指 揮 者 としての汝 自 身 を 知 り、 自 分 がいかに 主 観 に 縛 られ 客 観 的 に他 者 を 思 いやれていないかを 常 に 意 識 すべきである。< 会 議 委 員 によるコメント>・「リーダーとはオーケストラの 指 揮 者 である。 主 役 の 演 奏 者 たちの 能 力 を 最 大 限 に 引 き 出 すためにコンダクトするのがリーダーである」。「 復 興 リーダー 会 議 」の 参 加 者 の 中 には 多 く「 支 援 者 」 立 場 の 者 が 多い。 被 災 地 域 で 生 活 再 建 をする 者 が 主 役 であることを 忘 れないようにしたい。・ 一 つの 組 織 のリーダーとしてどのように 周 りを 活 かすか?それを 行 動 していきます。・リーダーの 立 ち 位 置 として、 主 客 分 離 を 行 うことの 有 効 性 は 理 解 できた。そして、 震 災 復 興 の 現 場 では、 自 分 も 客 体 でしかない。 客 体 として 主 体 にいかに 働 きかけるかが 難 しいところだ。・ 被 災 地 における 復 興 と 音 楽 の 密 接 な 関 係 を 感 じた。・ 指 揮 者 の 役 割 、そしてそのリーダーシップについて 感 銘 を 受 けた。・conduct( 指 揮 )する 人 がいるといないとでは 集 団 全 体 の 行 動 の 精 度 が 変 わる。 全 く 関 係 ないと思 われた 音 楽 の 世 界 からリーダーシップとは 何 かを 学 ばせてもらい 大 変 参 考 になった。・" 言 葉 ではない”という 事 。Body Languageの 威 力 。・ 指 揮 者 に 必 要 な 要 素 は 準 備 であると 言 われていた 事 が 印 象 に 残 っている。また、 昔 からの 東 北 の 地 図 と被 災 地 のマップを 歴 史 と 共 に 紐 解 くと、ここ30 年 ほどの 三 角 州 地 帯 の 商 業 利 用 や 交 通 の 発 展 などが 大 きく被 災 している 実 態 がわかった。・ 震 災 前 の 状 態 に 戻 すのか、それ 以 前 の 状 態 がいいのか 考 えさせられました。66


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書No.3 「 地 域 アドボカシーを 通 じて 世 界 を 変 える 」個 人 が 政 治 的 優 先 順 位 を 形 成 し、 世 界 の 保 健 を 向 上 させる 方 法ジョアン・カーター(RESULTSエグゼクティブディレクター)望 ましい 成 果 を 得 るために 資 金 の 運 用 、 政 策 の 形成 、 社 会 ・ 文 化 的 障 壁 の 排 除 に 必 要 な 政 治 責 任 や 社会 的 圧 力 を 形 成 することを 目 指 す 戦 略 的 コミュニケーションを「アドボカシー」と 呼 ぶ。現 実 には、 貧 しい 人 たちの 生 死 は 政 治 家 には 見 えない。 事 実 だけでは、 政 治 家 もメディアも 一 般 大 衆も 動 かすことはできない。だからこそ、「アドボカシー」を 行 なう 人 たちが 問 題 を 認 識 し、これらの 問題 に 対 する 解 決 策 を 社 会 全 体 で 考 えるようにさせることが 必 要 である。RESULTS が 行 なっている「アドボカシー」では、いわゆる 普 通 の 人 が、 本 格 的 な 訓練 を 受 け、 献 身 的 に 活 動 している。科 学 者 や 研 究 者 たちのリサーチのコミュニケーションでは、 問 題 を 明 確 かつ 正 確 にするために 専 門用 語 を 使 い、 詳 細 に 説 明 して、 問 題 の 結 論 を 導 くのに 対 して、アドボカシーのコミュニケーションでは、 最 初 から 結 論 を 定 め、 混 乱 を 避 けるために 専 門用 語 は 使 わず、 伝 えたいメッセージを 限 定 して、 明確 なかたちでシンプルに 伝 えることにより、 必 ず 理解 してもらえるように、ストーリーを 交 えて 人 の 心に 強 く 訴 えかけるように 話 すことが 必 要 である。< 会 議 委 員 によるコメント>・「 当 たり 前 の 正 論 が 大 きな 動 きとなって 世 界 を 動 かす」ことを 実 践 してきたカーター 氏 。 慶 應 義 塾 大 学法 科 大 学 院 に 創 設 された「 災 害 復 興 法 学 」の 考 え 方 とも 重 なる。 法 律 家 は、 東 日 本 大 震 災 直 後 から 無 料 法律 相 談 を 重 ね、4 万 件 以 上 の 事 例 を 分 析 し、 立 法 提 言 を 実 現 させてきた。 最 初 の 一 歩 は 避 難 所 の 被 災 者 の叫 び 声 だった。カーター 氏 の 講 演 で、 被 災 者 の 生 の 声 に 寄 り 添 うことの 重 要 性 を 再 認 識 できた。・ 問 題 があった 時 にその 問 題 を 解 決 したいと 思 えばそれこそがリーダーなんだ 。・" 誰 かがやっているはず"だと 思 っている 問 題 点 に、 実 は 誰 も 動 いていないという 気 づきからリーダーシップが 生 まれるという 一 面 を 学 んだ。いかに 違 いを 生 み 出 す 解 決 策 を 出 せるか、という 点 も 興 味 深 い 内容 だった。・■アドボカシ―= 望 ましい 成 果 を 得 るために 資 金 の 運 用 、 政 策 の 形 成 、 社 会 ・ 文 化 的 障 壁 の 排 除 に 必 要な 政 治 責 任 や 社 会 的 圧 力 を 形 成 することをめざす 戦 略 的 コミュニケーション■real & compelling■narrative ストーリーテリング■ 国 とローカルの 両 方 でやる■いちばん 簡 単 な 第 一 歩 は 国 会 議 員 や 新 聞に 手 紙 を 書 く■どの 人 が 我 々のチャンピオンになってくれるか 見 つけてアプローチする■エレベーターの中 でのレーザートーク■ 頭 と 心・ 我 々が 目 前 の 課 題 をすべて 一 気 に 解 決 することは 難 しい。しかし、アドボカシー 活 動 は、すべての 課 題を 解 決 するための 第 一 歩 となる、ということ。・ 第 一 に 英 語 で( 同 時 通 訳 付 きでしたが) 会 議 をしたことが 恥 ずかしながら 初 めてだったため、 大 変 緊 張しました。 資 料 最 後 のページにあった、「アドボカシーとリサーチのつながり」の 資 料 が、 前 回 の 田 村 先生 の 講 義 とリンクし、さらに「リザルツ」の 活 動 内 容 の 紹 介 と 相 まって、 大 変 興 味 深 く 聞 くことができました。「 実 話 を 交 えて 人 の 心 に 強 く 訴 えかける」 姿 勢 は、 被 災 地 でミッションを 行 うのに 一 番 大 切 なことだと 思 った。・アドボカシーグループ、いい 意 味 でのロビーイングというものが 諸 外 国 と 違 い 日 本 には 足 りない。それが 政 策 の 貧 困 を 招 いているとの 認 識 を 持 った。・ 個 人 が 世 界 を 変 える、 人 々の 意 志 が 政 治 を 動 かすアドボカシーの 考 え 方 は、 世 界 の 集 団 の 動 かし 方 と 日本 の 集 団 の 動 かし 方 ではノウハウが 異 なるように 思 えました。それは 寄 付 金 を 集 める 体 制 や 制 度 であったり、 国 のフォームが 関 係 していて、 日 本 なりのアドボカシーを 行 う 必 要 があると 感 じた。67


No.4 「 平 和 はつくれるか 」伊 勢 崎 賢 治 ( 東 京 外 国 語 大 学 大 学 院 教 授 )国 際 紛 争 の 現 場 では、 戦 闘 の 難 を 逃 れて 難 民 が 発生 する。しかし、 難 民 となるのは 脱 出 できる 能 力 がある 人 たちで、そうでない 人 たちもたくさんいる。たとえそれが 微 かな 期 待 であっても、 情 勢 の 回 復 に一 縷 の 望 みをかけて、どんなに 危 険 な 状 況 でも、 生活 を 捨 てないという 選 択 をする 人 がいる。たぶん 福島 でもそういう 構 図 が 生 まれるはずである。災 害 には 必 ず 復 興 がある。 何 の 支 援 なしでも、 人間 は 必 ず 復 興 する。 政 府 が 無 為 無 策 であっても、 無政 府 状 態 でも、そして 建 築 家 がいようがいまいが、日 本 人 は 市 民 として 自 力 で 復 興 する。だから、 東 北の 復 興 については 心 配 する 必 要 はない。 問 題 は、 復興 のやり 方 によってもたらされる 国 のあり 方 の 変 化である。災 害 が 起 きる 前 は 達 成 できなかった 価 値 や、その 不 在 が 社 会 不 安 の 根 源 をつくってきた 価 値 を 災 害後 の 復 興 で 実 現 しようという、 復 興 を 導 く「 上 位 概念 」が 生 まれるのが 常 である。 少 子 高 齢 化 、 過 疎化 、 不 況 、 失 業 、 政 治 とカネ、 財 政 破 綻 、ムダな 公共 事 業 など、 停 滞 していた 日 本 の 災 害 前 の 状 況 を 表すキーワードのうち 何 が 復 興 の 上 位 概 念 をつくるのか、まだわからない。< 会 議 委 員 によるコメント>・ 緊 急 人 道 支 援 の 現 場 における 意 思 決 定 、 組 織 の 在 り 方 、また 政 治 的 な 情 勢 を 読 み 取 る 力 、 環 境 の 設 定 などの 重 要 性 を 学 んだ。・■ 戦 争 の 前 の 社 会 は 必 ずセキュリタイズされる・ 戦 禍 と 震 災 に 同 時 に 見 舞 われた 地 域 に 比 べ、 震 災 だけであれば 復 興 はラクだろう。しかし、 現 在 のグローバル 経 済 にフィットしない 経 営 資 源 しか 持 たない 地 方 ・ 地 域 で、 人 々が 普 通 に 暮 らすためには 何 をしなければならないか、という 課 題 は、 共 通 して 存 在 している。・「 丸 腰 でいくから 相 手 も 信 用 し 交 渉 のテーブルにのってくれる」 旨 の 発 言 は 大 変 参 考 になった。まずは自 ら 胸 襟 を 開 かなければ 交 渉 のテーブルにすらつけない。ただ、それができる 勇 気 を 持 つことは 大 変 難 しいとも 感 じた。・ 紛 争 解 決 ・ 平 和 構 築 って 復 興 支 援 と 構 造 的 に 似 ているのだとはっとさせられた。どれも、そこに 必 要 なリーダーがいることが 不 可 欠・ 紛 争 国 におけるコミュニティ 支 援・ 復 興 現 場 のミクロな 減 少 や 課 題 を、マクロ 的 、 国 際 的 な 視 点 から 見 直 すきっかけを 頂 きました。・ 日 本 は 必 ず 復 興 しますという 言 葉 が 印 象 に 残 っています。 海 外 の 紛 争 地 帯 で 地 震 が 起 こったケースなどと 比 較 説 明 されて 確 信 的 に 述 べられてました。また、 一 人 のテロリストを 殺 すのに 一 般 人 60 人 ぐらいが 巻き 込 まれ、その 家 族 や 親 族 がまたテロリストになるという 負 のスパイラルの 話 が 忘 れられません。68


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書No.5 「 スポーツに 秘 めるパワー 」西 村 雄 一 (( 公 財 ) 日 本 サッカー 協 会プロフェッショナルレフェリー/ 国 際 主 審 )サッカーにとって 最 も 大 事 なことは、ゲームを 観戦 した 人 に 感 動 してもらうことである。 選 手 も 監 督も 審 判 もスタッフも、すべての 人 に 感 動 があるからこそ、サッカーを 楽 しみ、またサッカーを 観 戦 したいと 思 う。もちろん、 感 動 をつくりだすのは 選 手 の役 割 であり、 審 判 員 が 直 接 感 動 を 生 むことはできない。審 判 員 は、 誠 心 誠 意 をもって 選 手 の「 夢 」の 実 現をサポートする。 主 審 は 選 手 のために 判 定 を 下 し、副 審 や 第 4の 審 判 員 は、 主 審 を 満 足 させるためにサポートに 専 念 する。レフェリング・アシスタンス・プログラムのインストラクターたちは、 審 判 員 が 思う 存 分 能 力 を 発 揮 できるようにサポートする。それぞれの 立 ち 位 置 をしっかりと 認 識 して、 関 係 しているすべての 者 がサッカーの 感 動 のために 頑 張 ることで、ゲームはより 魅 力 的 になる。審 判 員 が 大 切 にしているのは「リスペクト」の心 を 持 つこと。 選 手 や 審 判 員 という 立 場 を 超 えて、人 としてお 互 いを 信 頼 し、 大 切 に 思 うことである。信 頼 関 係 を 築 くための 努 力 を 続 けることで、 審 判 員は「 多 くの 人 に 感 動 を 伝 える 手 助 け」をまっとうすることができる。< 会 議 委 員 によるコメント>・レフェリーの 最 大 の 仕 事 は、 観 客 と 選 手 に 最 大 限 のパフォーマンスを 提 供 すること。プレイヤーと 観 客は 被 災 者 ・ 被 災 地 域 で 生 きる 者 たち。それを 最 大 限 にアシストするのがリーダーである。 広 い 視 野 を 持 つことの 重 要 性 を 認 識 させられた。・ 瞬 時 の 冷 静 な 判 断 、チームでの 動 き、 精 神 面 のコントロール、ボディラングエッジを 活 用 した 表 現 はテクニックとして 身 に 付 け、さらに 訓 練 を 積 むべき、という、 分 野 は 異 なっても 我 々の 業 務 ・ 活 動 で 共 通 する 部 分 が 多 く 共 感 を 覚 えた。・レフェリーの 姿 勢 や 振 る 舞 いでプロ 選 手 をいかに 制 するか、という 点 が 非 常 に 興 味 深 かった。 個 々の 強烈 な 思 いが 交 錯 する 復 興 の 現 場 でも、 立 ち 居 振 る 舞 いでひとつで 結 果 に 影 響 するのではないかと 感 じた。・ 信 頼 感 が 非 常 に 大 事 であり、それをどう 構 築 するかということが 非 常 に 印 象 に 残 った・■respect= 相 手 を 大 切 に 思 うこと・リーダーの 資 質 は、 先 天 的 なものだけではなく、 日 ごろの 鍛 錬 によって 磨 かれるもの。かつ、 他 者 からリーダーへの 評 価 は 一 瞬 で 決 まるため、その 一 瞬 を 逃 さない 胆 力 と 資 質 が 必 要 であること。・ 選 手 たちに 決 定 に 従 わせるためには、その 決 定 をする 前 のbody languageが 重 要 だと 教 えてもらった。・リーダーの 対 外 的 な「 振 る 舞 い」や「 言 動 」の 重 要 性 や 揺 るがない 意 思 の 重 要 性 について・ 世 界 に 信 頼 される 素 晴 らしい 日 本 人・プレゼンテーションにおける 姿 勢 や 表 情 の 効 果 が 印 象 的 でだった。・サッカーの 審 判 は、 選 手 と 話 す 事 ができないのでゼスチャーで 語 ることが 多 い。そのゼスチャーでいかに 素 晴 らしい 試 合 をコントロールして 執 り 行 うかを 語 られていた 印 象 である。 事 態 が 悪 い 場 合 に 選 手 が 沈静 化 する 時 間 を 作 るなど 細 かく 感 情 のコントロールが 行 われている 事 に 感 心 した。69


No.6 「 リーダーシップとは 」村 上 陽 一 郎 ( 東 洋 英 和 女 学 院 大 学 学 長 )「リーダー」という 概 念 が 問 題 になりはじめたのは19 世 紀 後 半 から20 世 紀 にかけてのことで、それまで 特 別 な 人 たちだけが 享 受 できたものが 一 般 化 するという「 大 衆 化 」 現 象 が 進 行 した 結 果 である。リーダーの 素 養 とは、 他 者 に 対 して「 開 かれて」いることであり、 自 分 に 対 しても「 開 かれて」いることである。よく「 目 から 鱗 が 落 ちた」と 言 うが、私 たちは 何 枚 もの「 鱗 」を 身 につけている。その 鱗を1 枚 ずつ 落 としていくプロセスの 中 で、 自 分 がどのような 方 向 に 向 かって 自 らを 形 作 ろうとしているかが 少 しずつ 見 えてくる。それが「 自 分 に 対 して 開かれている 教 養 」の 持 つ 意 味 であり、リーダーの 素養 として 絶 対 に 必 要 なことである。リーダーとは、 自 分 がリーダーになろうとするのではなくて、そうした 経 験 を 積 み 重 ねた 結 果 、 衆 目から「あの 人 に 任 せておいたら、 自 分 たちのコミュニティは 自 分 たちの 思 う 方 向 にうまく 開 かれて 進 んでいくことができるだろう」と 言 われるような 存 在である。そのようなリーダーが、ある 集 団 や 組 織 から 自 然 に 生 まれてくる。それが「リーダー」の 理 想的 な 姿 ではないだろうか。< 会 議 委 員 によるコメント>・リーダーとは、 一 人 一 人 がそれぞれの 現 場 でどのように 全 力 を 尽 くせる 状 況 をつくりだせるか?・ 仕 事 を 頼 む、 任 せる 際 には 相 手 のことを 良 く 勉 強 すべし。そして 信 じて 任 せること。・■リーダーの 素 養 は 他 者 に 対 して「 開 かれて」いること=ダイナミックな 存 在 、スタティックに 固 定 されていない 存 在・ 他 人 に 責 任 を 負 わせないことを 発 信 する、そのための 説 得 力 ・コミュニケーション 力 をどう 磨 くか。・Aspenのようなリーダーとなる 人 間 に 教 養 をしっかりと 教 える 場 が 日 本 にも 必 要 だと 認 識 した。・ 特 に 印 象 に 残 るものが 恐 縮 ですがありませんでした。お 話 は 素 晴 らしかったですが、どう 自 分 の 活 動 に持 ち 帰 っていいかわからずにいました。・ 本 質 に 根 差 した 教 育 → 慈 悲 ( 愛 情 )・ 自 ら 磨 き 上 げるうちにリーダーに・「 信 頼 」の 思 いをどう 作 り 出 すか・ 大 衆 化 、 世 論 やエリートなどを 歴 史 的 背 景 とともにご 教 授 頂 きいた。そして、リーダーの 在 り 方 も 海 外と 日 本 は 少 し 異 なり、 日 本 的 リーダーとは 衆 目 からあの 人 ならと 言 われるような 調 整 型 の 存 在 であると 述べられました。70


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書No.7 「 東 日 本 大 震 災 における 防 衛 省 ・ 自 衛 隊 の 指 揮 活 動 」折 木 良 一 ( 防 衛 大 臣 補 佐 官 ・ 前 防 衛 省 統 合 幕 僚 長 )危 機 管 理 の 本 質 は、 想 定 外 に 対 する 統 制 ある 対 応である。そのためには、 平 時 からいろいろなリスク想 定 を 見 積 もって 計 画 し、 準 備 し、 訓 練 することが重 要 である。リーダーは、 何 を、いつ 決 定 すべきかを 至 当 に 判 断 し、 優 先 順 位 を 決 定 し、 組 織 化 する 必要 がある。いろいろな 要 素 が 絡 み 合 った 複 雑 な 現 代 社 会 では、「 行 政 ・ 管 理 型 」リーダーではなく、しっかりした 目 標 設 定 ができる「 有 能 ・ 指 導 者 型 」リーダーあるいは「ワンマン 型 」リーダーが 求 められている。 中 枢 のリーダーになればなるほど 方 向 性 、コンセプト( 方 針 、 指 導 要 領 )を 示 す 必 要 があることはいうまでもない。厳 しい 状 況 のもとでは 部 下 はリーダーの 顔 を 見る。 統 率 における 共 通 の 基 本 は、 部 下 との 信 頼 関 係であり、さらにその 根 底 にあるべきは、 組 織 の 任 務に 対 するリーダーの 使 命 感 と、 組 織 をいかに 良 くし強 くするかというリーダーの 情 熱 である。さらにいえば、リーダーは 自 らがリーダーに 育 っていくだけではなく、 次 のリーダーを 育 てる 責 任 がある。リーダーが 次 代 のリーダーを 育 てることの 積 み重 ねが、 組 織 を 立 派 なものにする。< 会 議 委 員 によるコメント>・ 最 後 に 決 断 をする 人 は 必 ずリスクを 伴 う。それを 乗 り 越 える 人 は 孤 独 になる。・コミュニケーションと 規 律 ある 組 織 。リーダーは 勇 敢 であれ。・ 災 害 救 援 に 欠 かせなかった 自 衛 隊 の 現 場 の 実 感 が 聞 けてよかった。・■ 東 日 本 大 震 災 自 衛 隊 派 遣 規 模 10.7 万 人 ■ 災 害 対 応 で 初 の 陸 海 空 自 衛 隊 からなる 統 合 任 務 部 隊 の 編 成■1 滴 でも2 滴 でも 落 とさないとこの 国 は 大 変 なことになる■ 自 信 をもってやってこれたのは 現 場 でやってきた 経 験 と 後 ろに 陸 海 空 がいるということ■ 実 行 させる 時 は 人 を 信 用 してやらせる、 責 任 と 権 限 を 心 底 付与 する。・ 被 災 地 で 支 援 をいただいた 自 衛 隊 の 皆 さんの 姿 を 思 い 出 しながら 聞 かせていただきました。「 情 勢 判断 」と「 状 況 判 断 」。 危 機 的 状 態 の 中 で、 如 何 に 冷 静 に 判 断 し 最 善 の 方 法 を 導 き 出 すのか。そのためには日 頃 の 準 備 と、チーム 内 でのコミュニケーションが 大 切 であると 感 じました。 現 場 を 知 っているプロとして、 最 終 決 定 者 に 臆 せず 具 申 する「 気 構 え」の 大 切 さも 教 えていただいた。・ 時 間 と 情 報 が 限 られた 中 で 重 要 な 決 定 をする 際 には、とにかく 迅 速 にやり、 失 敗 したら 即 修 正 するということが 大 切 だと 教 わった。・シンプルな 組 織 。 説 明 しやすい 組 織 体 制 。というようなキーワードが 心 に 残 っている。・ 相 手 を 理 解 する= 自 分 が 悩 むという 事・ 私 が 折 木 さんのご 高 説 で 一 番 印 象 に 残 っているのが、 自 分 の 反 対 の 人 を 育 てるのは 大 変 だが、 必 要 という 事 でした。 人 を 育 てるには 我 慢 も 必 要 とのことだった。 確 かに 切 り 捨 てるのは 簡 単 だけど、そうすると人 材 もいなくなりますし、リアリティがある 話 だった。あと、 被 災 時 には、お 風 呂 支 援 が 最 後 まで 続 いた大 切 なものだったという 事 をお 伺 いして、 食 事 にしてもそうですが、 温 かいものへのニーズは 沢 山 あるのだと 改 めて 思 った。71


No.8 「 チャンピオンチームを 作 る 」エディ・ジョーンズ(ラグビー 日 本 代 表 ヘッドコーチ)スポーツにおいてもビジネスにおいても、トップになるためには、 現 状 に 満 足 せずチャレンジすることと、 競 合 相 手 が 真 似 したくなるような 新 しいものを 創 ること、すなわちその 分 野 の 最 先 端 に 立 つことが 必 要 である。「リーダーシップ」とは、 個 々の 持 つ 力 を 最 大 限に 引 き 出 す 能 力 のことであり、 明 確 かつ 強 いビジョンで 進 むべき 道 を 示 す 能 力 である。リーダーはより良 い 環 境 を 作 るために 必 死 に 努 力 し、どこへ 向 かうべきかを 示 すビジョンを 作 り、それが 正 しい 道 であると 信 じ 続 けなければならない。そしてリーダーは、 自 分 が 作 ったビジョンをメンバーが 信 じ、そのビジョンに 重 要 性 を 見 いだせるように 導 かなければならない。 大 事 なことは、リーダーは 自 らの 態 度 に一 貫 性 を 持 つことである。その 際 、キーとなるのは「 誇 り」、「 尊 敬 」、「 絶 対 に 諦 めないこと」である。自 分 の 性 格 、 知 識 、マネージメントスキル、 情熱 、それらをすべて 使 って、 他 の 誰 もが 作 ることのできない 商 品 、チーム、 環 境 をつくること、それがリーダーの 役 割 である。 常 に 向 上 心 を 持 っているからこそ、 勝 者 は 絶 えず 挑 戦 し 続 け、 独 創 的 なのである。< 会 議 委 員 によるコメント>・チャンピオンになるために 必 要 なものは 現 状 に 満 足 せず、チャレンジすること!・■ 組 織 構 成 (コーチ 陣 )の2つのキ― 要 素 = 人 格 者 &エキスパート■コーチ= 情 熱 的 、 分 析 家 、 勤 勉 ■リーダーを 育 てる=ロッカールームグループ、ゲームプランリーダーグループ、キャプテンズグループ■プライベートを 理 解 せずに 選 手 達 が 何 によってどういう 影 響 を 及 ぼされているかわからないと 力 を 最 大 限 引 き出 せない■1 人 1 人 に 特 化 した 接 し 方 で1 人 1 人 の 最 大 限 の 力 を 引 き 出 す■ 監 督 は 誰 よりも 良 いゲームプランを 持 つ■ 選 手 が 何 をモチベーションとするか、 本 能 的 なところで 動 く 人 には 大 きなビジョンを、 他 のメンバーには 細 かいことを■ 物 事 を 駆 り 立 てられる 人 がリーダーとして 大 切 ■ 人 によって 説 明 の 仕 方 を 変 える。・これまでの 伝 統 ( 慣 行 )で、 継 承 すべき 部 分 と、そうでない 部 分 があること。 今 までの 方 法 でダメなら、 方 法 自 体 を 変 えるべきだという 事 。・「チャレンジしないことがリスクである」という 言 葉 に、 感 銘 を 受 けた。 保 守 的 になりがちな 役 所 の 仕事 を 考 えると、その 通 りだと 感 じた。・ 弱 小 チームを 強 豪 に 鍛 え 上 げた 指 導 力 について、 参 考 になった。・ラグビー 日 本 代 表 が、 単 なる 集 団 から、どのように“チーム”になっていったのか、そして、その“チーム”の 団 結 に 向 けて、ジョーンズ 監 督 やキャプテンが、どのようにリーダーシップを 発 揮 したのかを 学 ぶことを 通 じて、リーダーシップの 一 つの 例 を 学 ぶことができた。・Treat the team as a group, treat the players as an individual・ 根 回 し( 会 議 の 前 の 会 議 )は、 日 本 では 重 要・ 世 の 中 のアテンションを 得 るためオーストラリアで 展 開 されたというPR 施 策 の 事 例 。・チーム 形 成 のノウハウを 教 えて 頂 いたご 講 演 でした。 新 規 性 の 大 切 さややらない 事 のリスクなど 日 本 人が 英 断 できない 事 象 が 多 く 含 まれているような 気 がしました。なぜだかサッカー 日 本 代 表 にしても、 日 産にしてもそうですが、 日 本 の 場 合 、 外 国 人 のリーダーが 上 手 くいく 傾 向 があるように 思 います。 出 る 杭 は打 たれる 文 化 だからでしょうか。そんな 印 象 が 残 りました。72


慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 復 興 リーダー 会 議第 1 期 報 告 書No.9 「 進 んだ 復 旧 とこれからの 課 題 」岡 本 全 勝 ( 復 興 庁 統 括 官 )今 回 の 政 府 の 被 災 地 復 旧 活 動 の 特 徴 は、 被 災 者 支援 本 部 、 復 興 本 部 、 復 興 庁 を 作 って 責 任 組 織 を 一 元化 したことと、インフラだけではなく 被 災 者 の 生 活や 産 業 復 旧 を 重 視 していることである。町 が 復 興 するためには、 道 路 ・ 施 設 ・ライフラインなどインフラの 復 旧 、 公 共 サービスと 商 業 サービスの 復 旧 、そして 企 業 活 動 と 事 業 の 再 開 による 働 く場 の 復 興 という3つの 要 素 が 必 要 である。さらに、コミュニティ、ご 近 所 づきあい、お 友 達 などの「つながり」も 重 要 である。また、 町 づくりに 際 しては、 官 (= 行 政 )、 共 (=ボランティア、 町 内会 )、 私 (= 企 業 )という3つの 主 体 が 必 要 で、「 私 」においては、 商 業 サービスの 再 開 と 雇 用 の 場の 再 建 を 担 う 地 域 企 業 の 役 割 が 大 きい。今 回 の 大 震 災 では、 道 路 や 橋 、 小 学 校 や 中 ・ 高 等学 校 が 壊 れ、 大 勢 の 命 が 失 われた。 科 学 技 術 ( 者 )への 信 頼 が 失 われ、 政 府 への 信 頼 も 失 われた。そして、「 助 け 合 いと 拒 否 」の 共 存 が 見 えた。しかし、新 幹 線 の 安 全 性 は 失 われなかったし、 大 震 災 直 後 の混 乱 のなかで 暴 動 や 略 奪 が 起 きなかった。 日 本 社 会の 日 常 生 活 も、 行 政 の 仕 組 みも 壊 れなかった。< 会 議 委 員 によるコメント>・ 人 が 住 むには「 働 く 場 所 」、「 子 供 の 教 育 」、「 医 療 」これが 必 要 。・ 国 の 対 応 には 疑 問 に 思 うことも 多 かったが、 官 僚 にもいろいろいるのだとわかり、 非 常 によかった・■ 被 災 が 大 きい3 県 は 人 口 や 産 業 活 動 で 日 本 全 体 の 約 5%■ 救 急 → 避 難 所 → 家 ・なりわい・ 町 並 み・ 賑 わい■ 復 興 予 算 5 年 19 兆 円 のうち2 年 間 で17 兆 円 使 う・ 復 興 を 考 える 上 で、 各 省 の 縦 割 りではなく、 全 省 庁 連 携 して 震 災 という 国 家 危 機 に 立 ち 向 かうことの 重 要性 を 感 じた。・○× 省 の 役 人 ではなく、「 内 閣 官 僚 」となること、これが 必 要 であることは 非 常 に 共 感 できた。・ 組 織 で 迅 速 に 対 応 しなければならない 際 には、まずは 信 頼 できる 者 に 権 限 移 譲 し、きちんとその 者 をマネージすること。それがトップに 立 つ 者 の 仕 事 であるということを 改 めて 認 識 させられた。・ 情 報 の 集 約 と 権 限 の 分 散 。その2つによって 東 日 本 大 震 災 直 後 の 被 災 者 支 援 をどのように 全 うしたかを学 んだ。 同 時 に、 今 後 、 日 本 において 為 すべきこと、 役 人 としてのあるべき 姿 について、 全 勝 さんの 言葉 ・ 姿 勢 から 学 ぶことができた。・インフラ 復 旧 しても 働 く 場 所 がなければ。・・・ 行 政 だけでどこまでできるのか。→ 道 路 や 堤 防 が 復 旧 しても 暮 らしは 再 建 出 来 ない。ソフト 面 の 復 興 は、 企 業 ・NPO。・ 復 興 庁 → 国 民 の 命 を 守 ることは 行 政 の 原 点 ・・それを 統 合 する 必 要 がある。・リーダー: 受 けるのは 自 分 、 部 下 は 守 る。・マクロ 的 視 点 を 持 ちつつ 現 場 感 スピード 感 を 持 って 進 められている 国 の 動 きが 理 解 できました。・「インフラ 整 備 後 のまちづくり」「 福 島 における 原 発 に 代 わる 産 業 創 出 」といった、 政 府 だけでは 実 現しない 課 題 を 共 有 して 頂 けた。メディアでは 復 興 における 政 府 政 策 良 否 のみ 取 り 上 げられるが、いかに 民間 と 行 政 が 連 携 し、 長 期 の 目 線 で 復 興 を 推 進 するかが 復 興 の 本 質 であることを 気 づかせてくれた。・ 政 府 の 判 断 の 遅 さが 命 取 りになるような 時 に、 岡 本 さんのような 方 がおられたのが 有 難 く 感 じました。タテ 社 会 の 官 僚 の 世 界 で 彼 が 行 った 数 々の 決 断 に 感 謝 いたします。・ 復 興 までに 現 実 に 起 こった 事 象 を 聞 けたことは 今 後 の 人 生 においても 大 変 役 立 つものだと 思 います。ご講 演 頂 いたすべての 事 が 血 肉 になりました。この 機 会 を 活 かすべく 復 興 支 援 のお 手 伝 いをしていきたいと思 いました。73


No.10 「 コミュニケーション・マネジメント 」Communication Management ; Can Leadership be Learned?田 村 次 朗( 慶 應 義 塾 大 学 グローバルセキュリティ 研 究 所 副 所 長 ・ 法 学 部 教 授 )衝 動 が 抑 えられない 人 、 他 人 に 任 せない 人 、あるいは 対 立 や 反 論 に 耐 えられない 人 はリーダーには 相応 しくない。リーダーには、 熟 慮 ・ 共 感 という 二 つの 基 本 的 なスキルと、 弁 論 ・ 協 働 ・ 交 渉 という 三 つの 中 核 的 スキルが 必 要 とされる。グループ・ダイナミクスの 際 に 必 要 な 二 つの 手 法は、「ポジティブ・フレーミング」と、 議 論 の 際 には 思 いやりの 精 神 を 発 揮 すべきだという「プリンシプル・オブ・チャリティ」である。また、 二 分 法 の罠 を 使 い、パワープレイを 仕 掛 け、「 逃 げる・ 切 れる・すねる」という 手 法 を 使 うとクリエイティブな議 論 はできなくなる。そして「 集 団 的 浅 慮 」や「 集団 極 性 化 」が 働 くと 破 滅 的 なグループ・ディスカッションが 行 なわれることになる。「 悪 魔 の 代 理 人 」とは、カトリック 教 会 で 聖 人を 選 ぶ 際 に、その 人 物 の 欠 点 や 問 題 点 を 指 摘 する 列聖 調 査 審 問 検 事 のことで、 同 質 的 な 意 見 を 意 図 的 に避 けるために 用 いられてきた。「 悪 魔 の 代 理 人 」のポイントは、 解 決 策 を 十 分 に 理 解 し、 人 を 批 判 せずに 解 決 策 を 攻 撃 し、 批 判 し 続 けること、そして、 結論 を 急 がず、 安 易 にまとめないことである。< 会 議 委 員 によるコメント>・リーダーになるべきではない 資 質 からのアプローチが 非 常 に 参 考 になった。 自 らの 思 考 や 行 動 を 見 つめなおし、すぐにでも 実 践 できる 有 意 義 な 内 容 だった。・■ 教 養 の7つの 学 問 のうち3つは 文 法 ・ 修 辞 学 ・ 弁 証 法 ■ 政 策 には 緊 急 、 暫 定 、 恒 久 がある、 自 分 の 判 断が1 週 間 後 全 体 にどう 影 響 するか 考 える■ 言 わせる 場 = 相 手 にも 責 任 をもった 行 動 をとらせる 場 をちゃんと作 ったか?■ 定 義 をたずねる= 最 初 の 定 義 がズレていると 話 も 結 論 もズレる■ 相 手 の 議 論 には 必 ず 隠 された 先 入 観 、 常 識 がある・いろいろな 立 場 から 被 災 地 の 教 育 を 支 える 実 行 委 員 会 を 運 営 していますが、 第 1 回 ~ 第 3 回 の 実 行 委 員 会は 資 料 にある「 普 通 の 会 議 」と「みせかけのコンセンサス」に 終 始 していました。 第 4 回 から 小 グループの円 卓 会 議 にしたところ、 立 場 を 超 えて 協 働 的 な 話 し 合 いがなされました。2 月 21 日 に 最 終 の 実 行 委 員 会 がなされますが、 次 年 度 にこの「 創 造 的 会 議 」の 進 め 方 を 引 き 継 ぎたいと 思 います。・ 相 手 に 理 解 してもらえる 自 己 主 張 。・リーダーは、 誰 に 任 せるのかを 決 める。74


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