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メキシコ湾大水深の古第三系石油開発に道を拓く - JOGMEC 石油・天然 ...

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メキシコ 湾 大 水 深 の 古 第 三 系 石 油 開 発 に 道 を 拓 く~ 超 大 水 深 ・ 大 深 度 掘 削 のジャック2 号 井 成 功 のインパクト~はじめに2 0 0 6 年 9 月 5 日 、 米 国 メ ジ ャ ー の シ ェ ブ ロ ン(Chevron)は「メキシコ 湾 大 水 深 のジャック2 号 井 におけるテストで 日 量 6,000バレル 以 上 の 出 油 に 成 功 した」と 発 表 した。ジャック2 号 井 は、ニューオーリンズの 南約 270マイル( 約 430km) 沖 合 の 水 深 約 7,000フィート( 約2,134m)の 超 大 水 深 *1 に 位 置 し、 掘 削 深 度 2 万 8,175フィート(8,588m)の 大 深 度 掘 削 井 である。ジャック 油 田 を 含 めた 古 第 三 系 プレイ *2 の 可 採 埋 蔵 量は、 将 来 的 に30 億 〜150 億 バレルに 達 する 可 能 性 があると 報 道 されている。 現 在 の 米 国 の 残 存 確 認 可 採 埋 蔵 量 が214 億 バレル、このうち 米 国 メキシコ 湾 が41 億 バレルであるのと 比 べると、 古 第 三 系 プレイがいかに 巨 大 なポテンシャルを 持 つかが 分 かる。一 方 、メキシコ 領 メキシコ 湾 の 大 水 深 には 広 大 な 未 探 鉱 エリアが 残 されており、メキシコ 国 営 石 油 会 社 ぺメックス(Pemex)によると、 原 油 換 算 で293 億 バレルもの 資源 量 が 期 待 されている。米 国 メキシコ 湾 の 超 大 水 深 および 隣 国 メキシコ 領 メキシコ 湾 の 大 水 深 は、いまだ 大規 模 な 探 鉱 ポテンシャルを 有 しており、その 探 鉱 ・ 開 発 の 成 否 は 巨 大 消 費 国 である 米国 にとって 大 きな 鍵 を 握 っていると 言 えよう。本 稿 では、 米 国 メキシコ 湾 の 古 第 三 系 プレイのポテンシャルおよびメキシコ 領 メキシコ 湾 のポテンシャルをまとめ、 最 後 にメキシコ 湾 全 体 の 展 開 について 考 察 することとしたい。なお、 米 国 メキシコ 湾 の 基 礎 資 料 として、 探 鉱開 発 史 、 埋 蔵 量 、 探 鉱 開 発 状 況 などを 付 記 するので、ご 参 照 いただきたい。出 所 :MMS 他 より 作 成出 所 :デボンエナジーに 加 筆図 1図 2メキシコ 湾 の 古 第 三 系 プレイ 位 置 図古 第 三 系 プレイ 概 念 図 1. ジャック2 号 井 の 成 功 をはじめとする 古 第 三 系 プレイのポテンシャル(1) 米 国 メキシコ 湾 における 古 第 三 系 プレイメキシコ 湾 の 主 要 貯 留 層 は 中 新 統 (Miocene) 以 浅 の地 層 であり、 累 計 生 産 量 の99%を 産 出 している( 表 1)。一 方 、 古 第 三 系 プレイは 未 開 発 であることから、 生 産 量はゼロとなっている。古 第 三 系 プレイの 探 鉱 エリアは、メキシコ 湾 の 超 大 水*1: 米 国 内 務 省 鉱 物 管 理 局 (MMS:Minerals Management Service)にしたがい、 水 深 1,000フィート(305m) 以 深 を 大 水 深 (Deepwater)、 同 5,000フィート(1,524m) 以 深 を 超 大 水 深 (Ultra Deepwater)として 扱 う。*2: 古 第 三 系 プレイとは、 古 第 三 系 暁 新 統 〜 始 新 統 Wilcox 層 のタービダイト 成 砂 岩 を 貯 留 岩 とする 探 鉱 プレイで、 探 鉱 エリアはメキシコ 湾 の 超 大水 深 に 東 西 に 広 がる( 図 1、 図 2)。これまでにジャックを 含 めて12 油 田 が 発 見 されている。なお、 探 鉱 プレイとは、 石 油 ガス 鉱 床 成 立 のために 必 要 な 条 件 としての 根 源 岩 から 石 油 ガスの 生 成 、 移 動 および 貯 留 岩 への 集 積 のメカニズムが 類 似 した 探 鉱 対 象 のまとまりである( 探 鉱 プロスペクトはプレイの 中 の 一 つひとつの 試 掘 対 象 構 造 、リードは 試 掘 レベル(プロスペクト)に 達 しない 探 鉱 対 象 構 造 を 意 味 する)。41 石 油 ・ 天 然 ガスレビュー


深 に 東 西 に 広 がっており( 図 1)、これまで12 油 田 ( 表 2)が 発 見 されている。12 油 田 のオペレーターはシェブロンが6 油 田 と 最 も 多 く、BHP、BP、トタール(Total)、シェル(Shell) 等 が 続 いている。パートナーとしてはデボンエナジー(Devon Energy)、ペトロブラス(Petrobras)、スタトオイル(Statoil)など 大 水 深 を 重 視 する 会 社 が 参 加 している。 水 深 は5,000フィート( 約 1,524m) 以 深 の 超 大 水 深 である。古 第 三 系 プレイの 貯 留 岩 であるWilcox 層 は、 海 底 扇状 地 に 堆 積 したタービダイト 成 砂 岩 *3 であり、その 分 布は 米 国 メキシコ 湾 大 水 深 から 一 部 メキシコ 領 にかけての海 底 扇 状 地 に 広 がると 推 定 されている( 図 3)。Wilcox層 砂 岩 は、 厚 いところで 数 百 フィートもの 層 厚 を 有 して連 続 性 よく 分 布 しているため 貯 留 岩 リスクは 小 さい。ただし、 貯 留 岩 性 状 については 上 位 の 新 第 三 系 のタービダこうげきイト 砂 岩 よりは 大 深 度 であるため、 圧 密 を 受 けて 孔 隙 率が 低 くなると 考 えられる。(2) メキシコ 湾 の 地 質 構 造 および 古 第 三 系 プレイとの関 連メキシコ 湾 は 巨 大 な 岩 塩 の 堆 積 盆 地 であり、 岩 塩 の 流動 に 関 連 する 構 造 運 動 は 石 油 ・ 天 然 ガスのトラップ 形 成という 油 田 成 立 の 大 きな 要 素 となっている。 岩 塩 は 中 生代 に 広 く 浅 海 域 にも 広 く 分 布 していたが、 陸 側 からの 大量 の 堆 積 物 の 供 給 により 深 海 側 に 向 かって 押 し 出 された結 果 、 現 在 では 主 に 大 水 深 エリアに 岩 塩 が 厚 く 分 布 している( 図 4)。さらに、 岩 塩 より 上 位 の 地 層 は、 基 本 的 に 岩 塩 層 を 滑しゅうり 面 として 深 海 側 に 滑 動 し、 大 水 深 エリアには 広 範 な 褶きょく曲 帯 が 形 成 されている。また、 岩 塩 自 体 も、 一 部 で 上 位層 をダイアピル *4 として 貫 き、そこから 岩 塩 シート *4 やキャノピー*4 として 上 位 層 を 覆 う 複 雑 な 分 布 形 態 を 形 成している( 図 2)。米 国 のメキシコ 湾 大 水 深 における 主 要 構 造 は、 具 体 的には1ルイジアナ 沖 合 の 東 北 東 - 西 南 西 方 向 のトレンドをもつミシシッピ 海 底 扇 状 地 褶 曲 帯 (Mississippi FanFold Belt: 図 4、 図 5)、2テキサス 沖 合 の 東 北 - 南 西方 向 のトレンドをもつペルディド 褶 曲 帯 (Perdido FoldBelt: 図 4、 図 6)、3それらを 覆 う 岩 塩 シート、キャノピーおよびダイアピルの 存 在 ( 図 4)で 特 徴 付 けられる。古 第 三 系 プレイは、 上 記 褶 曲 帯 周 辺 に 存 在 しており、表 1メキシコ 湾 における 炭 化 水 素 の 時 代 別 累 計 生 産 量 出 所 :デボンエナジーより 作 成 出 所 :MMSより 作 成出 所 :MMSより 作 成図 3表 2 古 第 三 系 発 見 油 田 一 覧古 第 三 系 ( 暁 新 統 ~ 始 新 統 )Wilcox 層 の 堆 積 環 境*3:タービダイト 成 砂 岩 とは、 浅 海 域 から 混 濁 流 により 水 深 の 深 いところに 運 ばれ、 堆 積 した 砂 岩 層 。 図 3ではテキサス 州 周 辺 のデルタから 大 陸 斜面 を 下 って、 深 海 のメキシコ 湾 の 海 底 扇 状 地 に 運 ばれて 堆 積 した 砂 岩 層 で、 一 般 に 良 好 な 貯 留 岩 性 状 を 示 す。*4: 岩 塩 は 地 層 深 部 から 流 動 して、 上 位 の 地 層 を 貫 いて 分 布 するが、その 分 布 形 態 によりダイアピル、シート、キャノピーなどと 呼 ばれている。 下位 層 から 上 位 層 を 貫 いて 垂 直 的 に 分 布 するものをダイアピル、 地 層 に 沿 って 水 平 に 広 く 分 布 するものをシート、 下 から 貫 いて 屋 根 のように 覆 うものをキャノピーと 呼 んでいる。2007.1 Vol.41 No.1 42


メキシコ 湾 大 水 深 の 古 第 三 系 石 油 開 発 に 道 を 拓 く 〜 超 大 水 深 ・ 大 深 度 掘 削 のジャック2 号 井 成 功 のインパクト〜1ルイジアナ 沖 合 のジャックを 含 む 油 田 群 はミシシッピ海 底 扇 状 地 褶 曲 帯 南 西 部 に 属 し、2テキサス 沖 合 のグレートホワイトを 含 む 油 田 群 はペルディド 褶 曲 帯 に 属 する。 古 第 三 系 の 発 見 油 田 は、いずれも 岩 塩 シート 近 傍 または 岩 塩 シートやキャノピーの 下 の 構 造 となっている( 図 4)。一 方 、メキシコ 領 については、 北 部 に 米 国 から 連 続 するペルディド 褶 曲 帯 の 構 造 トレンドが 存 在 する。また、その 南 方 では 構 造 トレンドが 南 北 方 向 に 変 わり、 長 大 なメキシカンリッジ 褶 曲 帯 (Mexican Ridge Fold Belt: 図 4)が 生 成 されている。メキシコ 領 の 岩 塩 については、 南 に向 かって 分 布 が 狭 まり、メキシカンリッジ 褶 曲 帯 では 存在 しなくなる( 図 4)。(3)ジャックの 発 見 と 埋 蔵 量 規 模ジャック2 号 井 は、ニューオーリンズの 南 約 270マイル( 約 430km) 沖 合 の 水 深 約 7,000フィート( 約 2,134m)の 超 大 水 深 に 位 置 し、 掘 削 深 度 2 万 8,175フィート(8,588m)の 大 深 度 掘 削 井 である。2006 年 の 第 2 四 半 期に 実 施 されたテストでは、 古 第 三 系 のWilcox 層 より 日量 6,000バレル 以 上 の 出 油 が 確 認 されている。ジャックプロスペクト(P41の*2を 参 照 )には、2004 年 にジャック1 号 井 が 最 初 に 掘 削 され、そこで 有 効層 厚 350フィート 以 上 の 油 層 を 確 認 している。 続 いて2005 年 にジャック2 号 井 が 掘 削 され、2006 年 のテストにより 前 述 の 成 果 が 確 認 された。将 来 的 には、 評 価 井 のジャック3 号 井 が2007 年 第 3 四半 期 に 掘 削 される 計 画 で、 埋 蔵 量 の 検 討 および 開 発 計 画の 立 案 がなされる 予 定 である( 図 7)。一 般 に 新 規 発 見 油 田 は 埋 蔵 量 推 定 に 関 連 する 情 報 に 乏しいが、ジャックの 場 合 は、25%の 権 益 を 保 有 するデボンエナジーがジャックの 油 層 の 有 効 層 厚 が350フィート以 上 と 発 表 している。さらに、 同 社 が 権 益 を 保 有 する 古第 三 系 プレイの3 油 田 についても、 有 効 層 厚 がCascade油 田 で450フィート 以 上 、St.Malo 油 田 で450フィート 以上 、Kaskida 油 田 で 約 800フィートとしている( 表 3)。現 段 階 における 埋 蔵 量 についても、4 油 田 の 同 社 権 益分 (20〜50%)で 期 待 される 埋 蔵 量 を 合 計 3 億 〜9 億 バ 出 所 :Trudgill et al, 1999より 作 成 図 5ミシシッピ 海 底 扇 状 地 褶 曲 帯 の 断 面 図出 所 :Trudgill et al, 1999より 作 成図 4メキシコ 湾 の 主 要 地 質 構 造 と 岩 塩 の 分 布 出 所 :Trudgill et al, 1999より 作 成 注 : 図 の3 桁 の 数 字 は鉱 区 番 号 です出 所 :デボンエナジーホームページより 作 成図 6ペルディド 褶 曲 帯 の 断 面 図図 7ジャック 油 田 の 坑 井 位 置 図43 石 油 ・ 天 然 ガスレビュー


表 3レルと 見 ていることから、 各 油 田 規 模 は 数 億 バレルの 大油 田 であると 推 定 される。(4) 古 第 三 系 プレイの 石 油 ポテンシャル古 第 三 系 プレイの 探 鉱 ポテンシャルについては、シェブロンが 可 採 埋 蔵 量 30 億 〜150 億 バレルに 達 する 可 能 性を 指 摘 している。古 第 三 系 プレイに 対 する 探 鉱 は、いまだ 初 期 段 階 であしんぴょうり、シェブロンの 言 う「30 億 〜150 億 バレル」の 信 憑 性を 評 価 するのは 難 しいが、デボンエナジーおよびペトロブラスのホームページで 公 表 されているプロスペクト 数や 埋 蔵 量 規 模 などの 情 報 から、ある 程 度 の 幅 を 推 定 することはできる。デボンエナジーの 古 第 三 系 発 見 油 田 の 情 報 (4 油 田 の 同 社 権 益 分 の 期 待 埋 蔵 量 は3 億 〜9 億 バレルと 公 表 )デボンエナジーおよびペトロブラスの 情 報 によると、 両 社 保 有 鉱 区 には 少 なくとも 合 計 25プロスペクトが存 在 している( 図 8)。 両 社 の 鉱 区面 積 は、 古 第 三 系 プレイの 探 鉱 エリアの 数 パーセント 程 度 であり、 全 探鉱 エリアにはおそらく 数 百 ものプロスペクト・リード(P41の*2を 参照 )が 存 在 すると 考 えられる。一 方 、2001 年 以 降 の 約 5 年 間 で 古第 三 系 プレイには 試 掘 井 19 坑 が 掘 削され、12の 油 田 が 発 見 されている。その 成 功 確 率 は63%と 驚 異 的 なレベルにある。その 理 由 は1 重 合 前 深 度マイグレーション *5 等 、 物 探 技 術 ( 付記 参 照 )の 進 歩 により 構 造 把 握 のリスクが 軽 減 されたこと、2 貯 留 岩 リスクが 小 さいことなどが 考 えられる。また、 発 見 油 田 の 埋 蔵 量 規 模 については、 各 種 報 道 で 数 千 万 バレルから 数 億 バレル 規 模 が 示 唆 されてお り、さらに 前 述 のデボンエナジーの4 油 田 のデータからも 数 億 バレル 規 模 は 裏 付 けられている。さて、ジャックの 成 功 を 受 けて、 今 後 の 古 第 三 系 プレイの 探 鉱 活 動 は 加 速 していくことが 予 想 されるが、 仮 に将 来 的 に100のプロスペクトに 対 して 探 鉱 がなされ、その 成 功 確 率 を40%と 想 定 し、 各 プロスペクトの 埋 蔵 量 を5,000 万 〜5 億 バレルとして 概 算 すると、プレイ 全 体 の埋 蔵 量 は20 億 〜200 億 バレルとなる。すなわち、シェブロンの 言 う「30 億 〜150 億 バレル」の 値 は、 想 定 できる範 囲 にあると 筆 者 は 考 える。また、 一 つのプレイで「30 億 〜150 億 バレル」のポテンシャルを 持 つという 観 測 は、メキシコ 湾 の 累 計 生 産 量130 億 バレルに 近 い 値 であり、それは 現 在 の 米 国 の 残 存確 認 可 採 埋 蔵 量 の214 億 バレル、 米 国 メキシコ 湾 の41 億バレルと 比 べても 巨 大 であることが 分 かる。(5) 古 第 三 系 プレイの 開 発古 第 三 系 プレイは2001 年 以 降 、12の 発 見 油 田 を 数 えるが、 実 際 に 開 発 に 移 行 したものはいまだない。これは、超 大 水 深 ・ 大 深 度 掘 削 という 過 酷 な 条 件 のために 技 術 的課 題 が 大 きいこととともに、 開 発 コストの 高 騰 が 大 きな 出 所 :デボンエナジー・ペトロブラスのホームページより 作 成図 8下 部 第 三 系 プレイのプロスペクト 位 置 図*5: 重 合 前 深 度 マーグレーション(Pre-Stack Depth Migration:PSDM)。 石 油 探 鉱 における 地 下 の 構 造 把 握 には 一 般 的 に 反 射 法 地 震 探 査 が 用 いられ、通 常 は 水 平 多 層 構 造 を 前 提 とした 処 理 が 行 われる。しかし、 複 雑 な 構 造 を 対 象 とした 場 合 には、 地 震 波 の 屈 曲 を 考 慮 した 特 殊 な 処 理 (PSDM)を 行 うことにより、 膨 大 な 計 算 時 間 を 要 するものの 精 度 の 高 い 構 造 把 握 が 可 能 となる。2007.1 Vol.41 No.1 44


メキシコ 湾 大 水 深 の 古 第 三 系 石 油 開 発 に 道 を 拓 く 〜 超 大 水 深 ・ 大 深 度 掘 削 のジャック2 号 井 成 功 のインパクト〜問 題 になっている。 具 体 的 には、1 坑 あたりの 掘 削 費 用が 約 100 億 〜150 億 円 (8,000 万 〜1 億 2,000 万 ドル)、 海 底生 産 システムに720 億 〜1,800 億 円 (6 億 〜15 億 ドル)もの 巨 費 を 要 すると 言 われている(デボンエナジー)ことからも、 容 易 な 作 業 ではない。このような 状 況 の 下 でも、 古 第 三 系 プレイ 開 発 として先 陣 を 切 ると 言 われているのが、ペトロブラスのカスケード 油 田 である。ペトロブラスによると、カスケード油 田 (Cascade)は 同 社 が 得 意 とするFPSO(FloatingProduction Storage and Offloading Unit: 洋 上 浮 体 式 石油 生 産 ・ 貯 蔵 ・ 積 み 出 し 設 備 )を 用 いた 開 発 を 行 い、2009 年 末 にファーストオイルを 生 産 する 計 画 である。続 いて 検 討 されているのが、シェルによるグレートホワイト 油 田 (Great White)の 開 発 である。 大 水 深 開 発システムは、スパー(Spar、 図 22)を 用 いて、 超 大 水深 まで 幹 線 パイプラインを 敷 設 する 計 画 で、 開 発 コストは 約 4,800 億 円 ( 約 40 億 ドル)を 超 えると 報 道 されている。2. メキシコ 領 メキシコ 湾 の 状 況(1)メキシコ 領 メキシコ 湾 大 水 深 の 探 鉱 状 況メキシコ 領 メキシコ 湾 の 大 水 深 海 域 には 広 大 なフロンティアが 広 がっており、 国 営 石 油 会 社 Pemexが2003 年に 開 始 した 試 掘 キャンペーン 以 降 でも、 試 掘 井 はわずか4 坑 にとどまっている。これらの 坑 井 はいずれもメキシコ 湾 南 部 に 掘 削 されており( 図 9)、2004 年 にNab-1で 上部 白 亜 系 炭 酸 塩 岩 から 日 量 1,180バレルの 重 質 油 、2006年 にNoxal-1で 鮮 新 統 砂 岩 から 日 量 950 万 立 方 フィートのガスの 産 出 を 確 認 している。なお、2003 年 に 掘 削 されたChuktah-201および2005 年 のCaxui-1はドライであった。Pemexは、 引 き 続 き 南 部 においてLakach-1、Leek-1をはじめ 複 数 の 試 掘 を 予 定 している。地 震 探 鉱 の 作 業 も、 米 国 と 比 較 すると 圧 倒 的 に 少 なく、3 次 元 震 探 の 面 積 は、 米 国 の10 分 の1 程 度 の 僅 か2 万5,558 平 方 キロメートルである( 図 10)。 南 部 の 震 探 作業 は、 東 から1 巨 大 油 田 カンタレル 沖 合 で 重 質 油 を 確 認したNab-1 周 辺 のTamil(1997)およびNox-Hux(2003)、2ガスを 確 認 したNoxal-1 周 辺 のHolok-Alvarado(2004)、3Lankahuasaガス 田 沖 合 のLankahuasaProfundo(2003)およびShanit(2004)の 大 きく 三 つの震 探 実 施 エリアに 区 分 される。一 方 、 北 部 には 試 掘 井 がないものの、 米 国 国 境 のペルディド 褶 曲 帯 (Perdido Fold Belt)においてMaximo(2002)およびMagno(2005)の3 次 元 震 探 作 業 が 実 施されている。(2)メキシコ 領 メキシコ 湾 大 水 深 のポテンシャルPemexは、メキシコ 湾 大 水 深 エリアに 未 発 見 資 源 量(Prospective Resources)として、 原 油 換 算 で 約 293 億バレルのポテンシャルがあると 推 定 している( 図 11)。探 鉱 プロスペクト・リードは175 以 上 存 在 し、 試 掘 許 可の 下 りたものが 北 部 のペルディド 褶 曲 帯 に6プロスペク出 所 :Pemexより 作 成図 9ト、 南 部 の3 次 元 震 探 収 録 エリア 内 に18プロスペクト 存在 する( 図 12)。メキシコの 試 掘 井 位 置 図出 所 :Pemexより 作 成図 10 メキシコ 領 の3 次 元 地 震 探 鉱 位 置 図これら 大 水 深 のプロスペクトの 探 鉱 プレイは、1 北 部のペルディド 褶 曲 帯 での 古 第 三 系 砂 岩 プレイ、2 中 部 か45 石 油 ・ 天 然 ガスレビュー


ら 南 部 にかけてのメキシカンリッジにおける 第 三 系 砂 岩 プレイ、3 南 東 部のカンタレル 沖 合 の 上 部 白 亜 系 炭 酸塩 岩 プレイに 大 別 される。北 部 のペルディド 褶 曲 帯 における古 第 三 系 プレイは、メキシコ 領 での 試掘 井 はないが、 米 国 側 での 実 績 から、油 田 が 発 見 される 確 率 は 非 常 に 高 い。構 造 形 態 や 規 模 も 米 国 側 と 類 似 していることから、 期 待 される 埋 蔵 量 も 大規 模 であると 見 られる。しかし、 探 鉱エリアが 中 南 部 のプレイに 比 べて 比較 的 狭 く、プロスペクト 数 は 限 られている。中 部 のメキシカンリッジから 南 部にかけての 第 三 系 砂 岩 プレイは、プロスペクトおよびリードの 数 が 大 水 深 プレイの 中 で 最 も 多 く、Noxal-1や近 隣 の 試 掘 井 で 油 ガスを 確 認 していることから、 高 い 探鉱 ポテンシャルを 有 する。しかし、 貯 留 岩 の 第 三 系 砂 岩は、 後 背 地 が 近 隣 の 炭 酸 塩 岩 が 主 体 であり、さらに 小 規模 な 河 川 から 供 給 されたものであることを 考 慮 すると、貯 留 岩 にリスクは 存 在 する。また、 構 造 形 成 時 期 が 非 常に 新 しいため、チャージのタイミングに 関 するリスクも推 定 される。 実 際 、Noxal-1ではガスが 確 認 されているとはいえ、 商 業 規 模 ではないという 情 報 もあることから、今 後 の 探 鉱 動 向 を 注 視 する 必 要 がある。南 部 の 上 部 白 亜 系 炭 酸 塩 岩 プレイはNab-1で 油 を 確 認しており、プロスペクト 数 も 比 較 的 多 いことから、 非 常に 高 いポテンシャルを 有 する。ただし、 原 油 がAPI 比 重10° 前 後 と 重 質 であることは 本 プレイのマイナス 面 である。出 所 :Pemexより 作 成以 上 、メキシコ 領 メキシコ 湾 大 水 深 は 地 域 ごとに 異 な図 11 メキシコにおける 石 油 ・ 天 然 ガスの 累 計 生産 量 、 埋 蔵 量 (3P *6 )、 未 発 見 資 源 量出 所 :Pemexより 作 成る 有 望 なプレイが 存 在 する 巨 大 フロンティアと 位 置 づけられ、 今 後 の 各 プレイの 探 鉱 動 向 に 注 目 する 必 要 がある。図 12 メキシコ 領 大 水 深 のプロスペクト・リード3. 今 後 の 展 望米 国 メキシコ 湾 は、 過 去 50 年 以 上 にわたって 生 産 実 績を 有 する 米 国 有 数 の 堆 積 盆 地 で、 原 油 130 億 バレル、 天然 ガス150 兆 立 方 フィートを 生 産 してきた。1990 年 代 以 降 、 大 水 深 の 生 産 量 も 急 速 に 拡 大 し、1999年 には 大 水 深 の 生 産 量 が 浅 海 を 上 回 った。しかし、2003年 以 降 大 水 深 の 生 産 量 は 頭 打 ちになっている( 付 記 および 図 13、 図 14)。メキシコ 湾 大 水 深 における 当 面 の 開 発 としては、ルイジアナ 沖 合 の 新 第 三 系 プレイを 中 心 に 複 数 の 開 発 プロジェクトが 立 ち 上 がるが、それだけでは2003 年 にピークを 打 ったように 見 える 石 油 生 産 (2004 年 および2005 年 はハリケーンによる 生 産 停 止 が 影 響 )は、いずれ 減 退 に 転*6: 埋 蔵 量 は、 確 実 に 採 取 可 能 なレベルの 確 認 埋 蔵 量 (Proved Reserves)、 適 切 な 技 術 ・その 時 点 の 経 済 条 件 で 採 収 されるレベルの 推 定 埋 蔵 量 (ProbableReserves)、 直 接 確 認 されていないが 将 来 的 に 採 収 される 可 能 性 のある 予 想 埋 蔵 量 (Possible Reserves)に 分 類 される。3Pとはその 頭 文 字 を 取 ったもので、Proved Reserves、Probable Reserves、Possible Reservesの 三 つを 指 す。2007.1 Vol.41 No.1 46


メキシコ 湾 大 水 深 の 古 第 三 系 石 油 開 発 に 道 を 拓 く 〜 超 大 水 深 ・ 大 深 度 掘 削 のジャック2 号 井 成 功 のインパクト〜じるであろう。今 世 紀 に 入 って 発 見 が 相 次 ぐ 古 第 三 系 プレイは、「30億 〜150 億 バレル(シェブロン)」 規 模 の 巨 大 な 石 油 ポテンシャルを 有 することから、 数 年 後 には 生 産 量 を 再 び 増大 させる 可 能 性 を 秘 めている。実 際 に、 開 発 移 行 を 検 討 しているカスケード 油 田 およびグレートホワイト 油 田 等 が 順 調 に 立 ち 上 がり、 周 辺 油田 のハブとなる 大 規 模 開 発 システムとして 稼 働 を 始 めると、 日 量 数 十 万 バレル 規 模 のインパクトとなり、メキシコ 湾 全 体 の 生 産 量 が 維 持 される 確 率 は 高 い。さらに、 古 第 三 系 プレイが 今 後 も 高 い 発 見 確 率 を 保 持し、 多 数 の 大 規 模 発 見 が 続 くような 場 合 は、メキシコ 湾の 生 産 量 が 新 たなピークを 迎 える 可 能 性 もある。しかし、 超 大 水 深 の 開 発 コストの 問 題 、 油 価 の 大 幅 下落 などの 経 済 的 リスクに 加 え、 発 見 確 率 の 低 下 や 追 加 埋蔵 量 の 小 規 模 化 等 のリスクも 存 在 し、 超 大 水 深 における古 第 三 系 プレイの 開 発 がスローダウンする 可 能 性 も 否 定できない。ただし、 原 油 生 産 量 の 減 退 を 続 ける 米 国 のなかで、メキシコ 湾 は 約 40 年 もの 間 100 万 バレル/ 日 規 模 の 生 産 を続 ける 例 外 的 な 堆 積 盆 地 であり、その 源 は 常 に 深 海 側 にの 古 第 三 系 プレイに 対 するチャレンジにおいても 成 功 を収 めると 筆 者 は 考 える。もう 一 つ 強 調 したいことは、メキシコ 湾 超 大 水 深 が 最先 端 技 術 を 実 証 する 場 であり、ここでの 次 世 代 プレイに挑 戦 する 企 業 は、 世 界 をリードする 技 術 を 獲 得 できる、と 見 ているという 点 である。一 方 、メキシコ 領 メキシコ 湾 大 水 深 には、 地 域 ごとに異 なる 有 望 プレイが 存 在 し、 合 計 約 293 億 バレルのポテンシャルが 期 待 されるフロンティアが 広 がる。そのうち、 北 部 では 米 国 から 連 続 する 古 第 三 系 砂 岩 プレイが 存在 しており、 米 国 同 様 に 非 常 に 高 いポテンシャルを 有 する。しかし、Pemexは 水 深 の 比 較 的 浅 いメキシコ 湾 南部 の 試 掘 を 優 先 しており、 北 部 における 古 第 三 系 砂 岩 プレイの 油 田 発 見 は 数 年 先 になると 筆 者 は 考 える。メキシコ 湾 中 南 部 の 大 水 深 については、カンタレル 巨大 油 田 と 同 一 タイプの 上 部 白 亜 系 炭 酸 塩 岩 プレイ、および 第 三 系 砂 岩 プレイがPemexにより 継 続 的 に 探 鉱 され、近 い 将 来 、ある 程 度 の 成 果 を 収 めるであろう。ただし、メキシコの 場 合 、 技 術 と 資 金 の 両 面 から 外 資 導 入 が 不 可欠 であるため、 元 エネルギー 大 臣 のカルデロン 新 大 統 領が 打 ち 出 すエネルギー 政 策 を 注 視 していく 必 要 がある。かんが広 がるフロンティアであったことを 鑑 みると、 超 大 水 深付 記 : 米 国 メキシコ 湾 の 石 油 開 発 動 向1. 米 国 メキシコ 湾 の 探 鉱 開 発 史メキシコ 湾 沖 合 における 試 掘 は1938 年 に 開 始 され、1947 年 にはカーマギーによる 初 の 海 底 油 田 「Ship Shoal32 油 田 」が 発 見 され、 同 年 に 生 産 が 開 始 された。 以 来 、浅 海 域 を 中 心 に 探 鉱 開 発 が 進 み、1971 年 に 原 油 生 産 量 が100 万 バレル/ 日 を 超 えてピークに 達 した( 図 13)。大 水 深 に 関 しては、1989 年 のシェルによるマース 油 田出 所 :MMSより 作 成出 所 :MMSより 作 成図 13 メキシコ 湾 浅 海 および 大 水 深 の 原 油 生 産 量図 14 メキシコ 湾 浅 海 および 大 水 深 の 天 然 ガス 生 産 量*7:ロイヤルティー 免 除 法 とは、 大 水 深 の 石 油 ・ 天 然 ガス 開 発 を 推 進 するために1995 年 に 制 定 された 法 律 。 連 邦 政 府 管 轄 の 海 洋 鉱 区 において 連 邦 に支 払 うべきロイヤルティーが 水 深 ごとに 決 められた 範 囲 の 生 産 量 まで 免 除 される 法 律 。 当 初 の 規 定 で、 例 えば800m 以 深 の 水 深 における 油 ガス田 で、 生 産 量 87.5MMboeまで 間 ロイヤルティーが 免 除 されていた。47 石 油 ・ 天 然 ガスレビュー


など 巨 大 油 田 の 発 見 を 機 に 注 目 を 浴 び、1995 年 のロイヤルティー 免 除 法 *7 の 制 定 により、 探 鉱 開 発 活 動 が 急 速 に活 発 化 した。メキシコ 湾 大 水 深 の 原 油 生 産 量 は、 同 法 施行 以 降 に 急 激 な 伸 びを 示 し、2002 年 には 浅 海 域 におけるピークの100 万 バレル/ 日 に 迫 るレベルに 達 した( 図 13)。しかし、2003 年 以 降 は 大 水 深 における 生 産 量 の 伸 びも 頭打 ちになり、メキシコ 湾 全 体 の 原 油 生 産 量 は 減 少 を 始 めているように 見 える(2004 年 および2005 年 はハリケーンによる 生 産 の 長 期 ストップの 影 響 あり)。 天 然 ガス 生 産量 も 原 油 と 似 た 傾 向 があるとはいえ、 大 水 深 における 生産 割 合 は 原 油 ほど 大 きくなっていない( 図 14)。2. 米 国 メキシコ 湾 の 埋 蔵 量現 在 の 米 国 全 体 の 原 油 の 残 存 確 認 可 採 埋 蔵 量 は214 億バレルで、そのうちメキシコ 湾 は 約 20%に 相 当 する41 億バレルを 占 める。一 方 、 天 然 ガスは 米 国 全 体 で193 兆 立 方 フィートの 残存 確 認 可 採 埋 蔵 量 があり、メキシコ 湾 は 約 10%に 相 当 する19 兆 立 方 フィートである。炭 化 水 素 の 水 深 別 追 加 発 見 埋 蔵 量 の 推 移 を 見 ると、1989 年 のマース 油 田 の 発 見 以 降 、 大 水 深 が 浅 海 を 圧 倒 しており、さらに1998 年 以 降 はロイヤルティー 免 除 法 施 行の 影 響 で 大 きく 伸 びていることが 分 かる( 図 15)。メキシコ 湾 では、 前 項 に 示 したように 約 40 年 にわたり、原 油 で100 万 バレル/ 日 レベルの 生 産 を 続 けて、 累 計 生産 約 130 億 バレルを 達 成 し、 天 然 ガスも100 億 立 方 フィート/ 日 以 上 の 生 産 を 続 けて 累 計 生 産 約 150 兆 立 方 フィートを 達 成 しているが、 常 にその 生 産 を 下 支 えしてきたのが 探 鉱 による 追 加 発 見 埋 蔵 量 である。メキシコ 湾 での 探 鉱 は、 前 述 のように1990 年 代 以 降 に入 って 大 水 深 に 活 動 の 中 心 が 移 っており、ロイヤルティー 免 除 法 の 影 響 が 出 る1997 年 以 降 、 年 間 100 坑 前 後の 試 掘 井 が 大 水 深 エリアで 掘 削 されている。さらに、5,000フィート 以 深 の 超 大 水 深 および7,500フィート 以 深 における 試 掘 の 割 合 も、 全 体 的 には 増 加 している( 図 16)。大 水 深 の 新 規 発 見 トレンドは、 当 初 、ルイジアナ 州 沖合 が 先 行 し、1990 年 代 以 降 は 深 海 方 向 およびテキサス 沖合 に 発 見 が 広 がっている( 図 17)。5,000フィート 以 深の 超 大 水 深 の 発 見 に 関 しては2000 年 以 降 のものがほとんどである。この 超 大 水 深 で 最 近 注 目 を 集 めているのは、ルイジアナ 州 沖 合 のジャック 周 辺 の 発 見 トレンド、テキサス 沖 合のグレートホワイト 周 辺 の 発 見 トレンドなどの、 古 第 三系 プレイである。出 所 :MMSより 作 成 出 所 :MMSより 作 成図 16 メキシコ 湾 大 水 深 における 水 深 別 の 試 掘 井 数出 所 :MMSより 作 成図 15 メキシコ 湾 における 炭 化 水 素 の水 深 別 追 加 発 見 埋 蔵 量 の 推 移 図 17 メキシコ 湾 大 水 深 における 年 代 別 発 見 トレンド2007.1 Vol.41 No.1 48


メキシコ 湾 大 水 深 の 古 第 三 系 石 油 開 発 に 道 を 拓 く 〜 超 大 水 深 ・ 大 深 度 掘 削 のジャック2 号 井 成 功 のインパクト〜3. 米 国 メキシコ 湾 大 水 深 における 地 震 探 鉱 の 状 況メキシコ 湾 大 水 深 における 探 鉱 を 成 功 に 導 いた 一 つの要 因 として、3 次 元 地 震 探 鉱 とイメージング 技 術 の 進 歩が 挙 げられる。図 18は、3 次 元 地 震 探 鉱 データの 収 録 地 域 であり、メキシコ 湾 大 水 深 のリースエリアのほぼ 全 域 をカバーしていることが 分 かる。ここで 重 要 なことは、 収 録 された 地 震 探 鉱 データに 対して「 重 合 前 深 度 マイグレーション」という 特 殊 処 理 が、広 範 なエリアで 実 施 されるようになった 点 である( 図 19)。一 般 にメキシコ 湾 で 地 震 探 鉱 を 実 施 すると、 岩 塩 周 辺 とその 下 位 層 のイメージングが、 弾 性 波 の 散 乱 により 極 めて 困 難 となり、 最 大 の 探 鉱 リスクは 構 造 把 握 にあると 認識 されていた。しかし、 近 年 の「 重 合 前 深 度 マイグレーション」 処 理技 術 の 進 歩 により、 岩 塩 層 およびそれより 下 位 の 構 造 のイメージングが 向 上 し、それに 伴 い 試 掘 精 度 が 高 まったのである。図 20は、 同 処 理 が 施 されたルイジアナ 沖 合 の 地 震 探鉱 断 面 の 実 例 である。 岩 塩 の 下 位 層 が 鮮 明 になり、 構 造が 容 易 に 把 握 できることが 分 かる。出 所 :MMSより 作 成 図 18 メキシコ 湾 大 水 深 における3 次 元 地 震 探 鉱 エリア出 所 :MMSより 作 成図 19 メキシコ 湾 大 水 深 における 重 合 前深 度 マイグレーション 処 理 エリア出 所 :Fugro Multi Client Serviceより 作 成図 20 重 合 前 深 度 マイグレーション 処 理 の 実 例49 石 油 ・ 天 然 ガスレビュー


4. 米 国 メキシコ 湾 の 開 発 状 況メキシコ 湾 浅 海 のパイプラインネットワークは 網 の 目のように 張 りめぐらされている( 図 21)。 大 水 深 への 幹線 パイプラインは1990 年 代 後 半 から 敷 設 され、2000 年 以降 は5,000フィート 以 深 の 超 大 水 深 においても、 複 数 の開 発 システムの 建 設 が 始 まっている。大 水 深 開 発 システムは、 固 定 式 プラットフォーム(Fixed Platform)、コンプライアントタワー(CompliantTower)、TLP(Tension Leg Platform)スパー(Spar)、半 潜 水 型 生 産 施 設 (Semi-submersible ProductionUnit)、 海 底 生 産 システム(Subsea System)など 多 岐に 及 んでおり、ここでの 開 発 は、 最 先 端 技 術 の 実 証 の 場となっている( 図 22)。出 所 :MMSより 作 成図 21 メキシコ 湾 におけるパイプラインネットワークと 開 発 システム出 所 :MMS図 22 大 水 深 生 産 システムの 概 念 図参 考 文 献1. MMS, 2006, Deepwater Gulf of Mexico 2006: America's Expanding Frontier2. Trudgill, B. D., M.G. Rowan, J.C. Fiduk, P. Weimer, P.E. Gale, B.E. Korn, R.L. Phair, W.T. Gafford, G.R. Roberts,and S.W. Dobbs, 1999, The Perdido Fold Belt, Northwestern Deep Gulf of Mexico, Part 1: Structural Geometry,Evolution and Regional Implications, AAPG Bulletin, v.81, p.88-113.3. メキシコ 湾 関 連 のウェブ 情 報 :Pemex、Devon Energy、Petrobras、Chevronなど4. Fugro Multi Client Service 社 提 供 、 地 震 探 鉱 地 質 断 面 図執 筆 者 紹 介佐 藤 隆 一 (さとう りゅういち)愛 知 県 出 身 。 静 岡 大 学 理 学 部 卒 業 、 同 大 学 院 修 了 、 理 学 修 士 ( 地 球 科 学 )。1990 年 より 石 油 公 団 地 質 調 査 部 ・ 技 術 部 等 を 経 て、 現 在 、<strong>JOGMEC</strong> 米 ヒューストン 事 務 所 副 所 長 。 石 油 公 団 時 代 は、 地 質 調 査 部 で 中 国 、イエメン、イランの 海 外 地 質 構 造 の 調 査 等 に 従 事 。現 在 はメキシコの 国 営 石 油 会 社 Pemexとの 構 造 調 査 関 連 業 務 に 携 わりながら、メキシコを 中 心 にベネズエラ、ブラジルなどラテンアメリカ 諸 国 の 情 報 収 集 を 行 っている。2007.1 Vol.41 No.1 50

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