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San Diego Yu Yu, April 16, 2018

年 齢 重 ね、 実

年 齢 重 ね、 実 現 した 豊 かさ 作 家 の 原 尞 さん 小 説 の 本 当 の 面 白 さ 考 えて 究 極 の 普 通 ハ ー ド ボ イル ド と は「 難 問 に 答 え て い く 小 説 だ 」。か つ て 、そ う 表 現 し た こ と が あ る 。 依 頼 を 受 けた 探 偵 が 事 件 に 巻 き 込 まれる。 警 察 の 圧 力 や 依 頼 人 のトラブル、 金 持 ちや 権 力 者 の 横 暴 といった 難 問 を、 孤 独 な 探 偵 が 言 葉 を 頼 りに 切 り 抜 ける。 刑 事 に「なぜそれを 言 わなかった」と 怒 鳴 られても「 聞 かれもしないことには 答 えよ うがない」とかわし、ヤクザから「おれのメンツがかかっているんだ」とすごまれ ても「おまえのメンツなど、おれの 知 ったことか」と 切 り 返 す。 「 権 限 を 与 えられている 警 察 官 ではない。 何 の 保 障 もない」。だから 原 さんは 一 匹 おおかみの 探 偵 を 描 く。「 沢 崎 は 偏 りのない 常 識 の 人 。あえて 言 えば 究 極 の 普 通 の 人 」。 組 織 に 属 さず、どんな 相 手 にも 偏 見 を 持 たず、 個 として 向 き 合 う。ヒー ローたり 得 るのは、しがらみの 多 い 現 代 社 会 に 生 きる 私 たちの、かなわぬ 憧 れの 投 影 だろうか。 事 前 に 作 り 込 んだ 主 人 公 像 ではない。「 僕 は 沢 崎 がどういう 人 間 か 知 りたいか ら 書 いている。 遭 遇 したいろんな 出 来 事 にどう 反 応 し、どうしゃべるのか。どう すればハードボイルドになるのかを、ずっと 考 え 続 けている」 浮 かぶ 友 情 最 新 作 も、 東 京 ・ 西 新 宿 の 古 ぼけた 事 務 所 に 身 なりの 良 い 紳 士 が 訪 れる 場 面 か ら 始 まる。 男 は 望 月 と 名 乗 り、 赤 坂 の 料 亭 のおかみを 調 べてほしいと 依 頼 する。 調 査 を 始 めた 沢 崎 はおかみが 死 んでいたことを 知 るが、 望 月 と 連 絡 が 取 れない。 彼 の 職 場 に 出 向 いたところで 強 盗 事 件 に 巻 き 込 まれ…。 いくつかの 事 件 を 描 きつつ、 姿 を 消 した 依 頼 人 と 探 偵 の、 仕 事 を 超 えたつかの 間 の 友 情 がぼんやりと 浮 かびあがる。 私 淑 する 米 ハードボイルドの 巨 匠 レイモンド・ チャンドラーを 想 起 させる 筋 だ。「 僕 も 好 きな 代 表 作 『 長 いお 別 れ』を 彼 が 発 表 し た 年 齢 に 追 いつき、 追 い 越 しながら、 執 筆 を 進 めた」と 感 慨 深 げ。 年 齢 を 重 ねたことは 大 きい。「かつてはどのページも 自 分 そのものというギリギ リの 感 覚 があった」。 今 作 を 読 み 返 してみて「こんなことを 書 いたのか」と、 驚 くこ とがあったという。「たくらまざる 意 外 性 、 広 がりが 出 てきた。チャンドラーの 豊 か さを 初 めて 実 現 できたのでは」と 自 負 する。 長 いお 別 れ 他 人 を 寄 せ 付 けなかった 沢 崎 も 今 回 はいつもより 感 傷 的 だ。 依 頼 者 に 好 感 を 覚 え、 仕 事 を 超 えて 一 瞬 分 かり 合 う。 父 と 子 というモチーフが 浮 かんだことも 驚 きの 一 つ。 調 査 中 に 知 り 合 った 青 年 らに 沢 崎 は 意 外 な 優 しさを 見 せる。「 子 供 のいない 僕 が 書 くのも 不 思 議 ですが、 何 かにつけ 父 と 子 の 関 係 のようなものが 浮 かんできた。 形 は 違 えど、 僕 にとっての『 長 いお 別 れ』になり 得 ると 思 う」 若 い 頃 は、 東 京 でジャズピアニストをしていた。 映 画 の 脚 本 を 執 筆 した 時 期 もあ るが、 芽 は 出 ず、 故 郷 の 佐 賀 県 で 執 筆 に 専 念 した。チャンドラーの 邦 訳 を 刊 行 する 早 川 書 房 に 原 稿 を 送 り、 出 版 にこぎつけたのは 40 歳 過 ぎ。そのデビュー 作 すら「 若 書 きだった」と 振 り 返 る。「この 年 にならないと 出 てこないものが 随 分 ある。 小 説 の 本 当 の 面 白 さだけを 30 年 間 考 えてきた。そのほかのことなんて、どうでもいい」 孤 高 。 伝 説 。そんな 大 仰 な 言 葉 がしっくりくる。 昨 年 までの 約 30 年 で 発 表 した 小 説 は 5 冊 。 全 て 私 立 探 偵 の 沢 崎 が 主 人 公 だ。 寡 作 のハードボイルド 作 家 、 原 尞 さん(71)が 14 年 ぶりの 新 作 「それま での 明 日 」( 早 川 書 房 )を 刊 行 した。 ピアノを 弾 く 原 尞 さん。 仲 間 と 演 奏 して 楽 しむというジャズ 喫 茶 「コルトレーン コルトレーン」で = 佐 賀 県 鳥 栖 市 「 次 回 作 のプランも 意 欲 もある。 一 度 は『え、そんな に 早 く 書 いたの』と 思 われたい」と 語 る 原 尞 さん 直 木 賞 に 決 まり、 記 念 撮 影 する 原 尞 さん =1990 年 2 月 、 東 京 都 内 の 書 店 ( 早 川 書 房 提 供 ) ピアノの 前 に 立 つ 原 尞 さん。 仲 間 と 演 奏 して 楽 しむというジャズ 喫 茶 「コルトレーン コルト レーン」で = 佐 賀 県 鳥 栖 市 記 事 & 写 真 提 供 : 共 同 通 信 社

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