LAND ROVER マガジン – 第40号
最新号では、南極探検を控えたふたりの若き冒険家が、DEFENDERを駆ってトレーニングに挑む様子を取り上げています。また、レンジローバー50周年を記念したドバイへの旅もご紹介。数々の発見が、あなたの好奇心をかきたてるでしょう。他、人類の未来を左右する先進テクノロジー開発者たちの話もお楽しみください。
最新号では、南極探検を控えたふたりの若き冒険家が、DEFENDERを駆ってトレーニングに挑む様子を取り上げています。また、レンジローバー50周年を記念したドバイへの旅もご紹介。数々の発見が、あなたの好奇心をかきたてるでしょう。他、人類の未来を左右する先進テクノロジー開発者たちの話もお楽しみください。
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<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong> MAGAZINE<br />
第 40 号<br />
<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong><br />
M AGAZINE<br />
エクストリームキャンプ<br />
新 型 DEFENDERで<br />
ピレネー 山 頂 へ<br />
最 先 端 のグルメ・トレンド<br />
意 外 な 食 材 が<br />
新 たなトレンドに<br />
思 い 描 いた 未 来 を 現 実 に<br />
未 来 を 創 造 する<br />
テクノロジーをご 紹 介<br />
イノベーター 第 40 号<br />
イノベーター<br />
レンジローバー 生 誕 50 周 年 。ドバイとレンジローバーが 駆 け 抜 けた50 年 を 振 り 返 ります
DEFENDER<br />
オフローダー の<br />
最 高 峰 へ<br />
JOHN ALEXANDER<br />
編 集 デスクより<br />
編 集 長 コ ナ ー・マクニコラス<br />
Land Rover オーナー 限 定 の 雑 誌<br />
『Land Rover <strong>マガジン</strong>』 最 新 号 へ<br />
ようこそ。 今 号 は、 過 去 と 未 来 の 両<br />
方 に ス ポット を 当 て ま す 。<br />
2020 年 、レンジローバーは 誕 生<br />
50 周 年 という 大 きな 節 目 を 迎 えま<br />
した。1970 年 にデビューした 当 時 、<br />
レンジローバーはきわめて 画 期 的<br />
な 存 在 で し た 。 美 し い デ ザ イ ン と 優<br />
れたオフロード 走 行 性 能 を 融 合 し<br />
た、この 革 新 的 な 車 は 瞬 く 間 に 人 気<br />
を 集 めました。 現 在 、コンディション<br />
の 良 い 初 期 のレンジローバーには<br />
高 い 価 値 が 付 いており、 新 品 同 様 の<br />
1 台 を 手 に 入 れるのは 至 難 の 業 で<br />
す。ランドローバークラシックワーク<br />
ス で は 、「 レ ン ジ ロ ー バ ー リ ボ ー ン 」<br />
プログラムにより、お 客 様 がお 乗 り<br />
の 初 代 モデルをお 預 かりして、 完 璧<br />
なコンディションにレストアしてお 戻<br />
し い た し ま す 。<br />
レンジローバーの50 周 年 を 記 念<br />
して、 今 回 、 私 たちは1970 年 代 当 時<br />
の 初 代 モデルに 施 されていた 大 胆<br />
なボディカラーを 取 り 上 げま<br />
した。パーフェクトなコンディション<br />
のクラシックレンジローバー3 台 を<br />
集 め、その 鮮 烈 なカラーをテーマに<br />
ファッションフォトグラフィーを 制 作<br />
しました。<br />
次 に 私 たちは 現 代 へと 視 点 を 切<br />
り 替 え 、 最 新 モ デ ル の レ ン ジ ロ ー バ<br />
ーで、ドバイへ 発 見 の 旅 に 出 かけま<br />
した。この50 年 で 飛 躍 的 な 発 展 を<br />
遂 げたこの 首 長 国 は、テクノロジー<br />
とラグジュアリーの 最 前 線 にもなっ<br />
ています。<br />
いっぽう 冒 険 の 旅 では、 二 人<br />
カバー 写 真<br />
最 新 モデルのレンジローバーが<br />
半 世 紀 の 節 目 を 記 念 して<br />
ドバイ 歴 史 散 策 の 旅 に 出 かけました<br />
の 若 き 冒 険 家 、フィービー・スミス<br />
とドウェイン・フィールズが、 新 型<br />
Defenderでピレネーの 山 々を 駆 け<br />
抜 けます。 二 人 は 南 極 探 検 の 準 備<br />
を 進 めていますが、その 目 的 は 子 ど<br />
もたちに 地 球 の 大 切 さを 教 えること<br />
に あ り ま す 。<br />
さらに 私 たちは 未 来 にも 目 を 向<br />
けました。テクノロジーで 未 来 を 変<br />
えようとしている 人 たちに 会 い、 話<br />
を 聞 きました。このほか、さまざまな<br />
失 敗 からできるだけ 多 くのことを 学<br />
ぶ 方 法 について、 専 門 家 からアドバ<br />
イス を も ら い ま し た 。ま た 、 最 新 の グ<br />
ルメトレンドのひとつ、 昆 虫 食 につい<br />
ても 取 り 上 げています。 今 号 も 読 者<br />
の 皆 様 にご 興 味 を 持 っていただける<br />
トピックを 満 載 しています。<br />
私 たちは 皆 様 からのご 意 見 やご<br />
感 想 をお 待 ちしております。hello@<br />
landrovermagazine.co.uk 宛 てに<br />
お 送 りくだ さ い 。<br />
では、 最 新 号 をごゆっくりお 楽 し<br />
みください。<br />
DEFENDERは、 強 靭 なボディと 最 先 端 テクノロジーをあわせ 持 って<br />
います。フルタイム 全 輪 駆 動 、 世 界 初 の 機 能 「コンフィギュラブル<br />
テレインレスポンス」などを 搭 載 し、 道 なき 道 を 乗 りこえる 走 破 性 を<br />
実 現 しました。ランドローバーの 伝 統 と 進 化 を 体 現 した、DEFENDER。<br />
さらなる 高 みを 目 指 す 冒 険 心 が、オフローダーの 新 たな 道 を<br />
ひらきます。<br />
landrover.com<br />
WLTPモードによる 燃 料 消 費 率 (L/100km):〈 複 合 〉8.8~12.5<br />
CO 2 排 出 量 230~283 g/km 数 値 は 欧 州 仕 様 車 値 ( 自 社 データ)です。<br />
実 際 の 数 値 は 走 行 スタイルおよび 周 囲 の 環 境 により 変 動 します。
<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong> MAGAZINE<br />
<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong> MAGAZINE<br />
第 40 号 36<br />
連 載<br />
連 載<br />
特 集<br />
28<br />
68<br />
短 編 『Breathe"( 呼 吸 )』<br />
韓 国 の 受 賞 作 家 クリス・リーが 贈 るショート<br />
ストーリー<br />
8<br />
ABOVE + BEYOND<br />
ドローンと 衛 星 による 世 界 各 地 の 写 真<br />
頂 上 を 目 指 して<br />
ピレネー 最 高 峰 のひとつに 登 る<br />
二 人 の 英 国 人 冒 険 家 を、 新 型<br />
Land Rover Defenderがサポート<br />
45 52<br />
ブライト・ライト<br />
70 年 代 を 彩 った 鮮 やかな<br />
Land Rover と ブリティッシュ・ファ<br />
ッションを1 枚 に<br />
TOMORROW<strong>LAND</strong><br />
未 来 を 予 測 するもっとも 簡 単 な 方<br />
法 。それは、 実 現 させること。 新 しい<br />
未 来 を 創 造 する3 人 に 話 をききます<br />
失 敗 から 学 ぶ<br />
500 万 人 以 上 のリスナーを 抱 えるポ<br />
ッドキャスト 配 信 者 、エリザベス・デ<br />
イ。 失 敗 から 学 ぶ 方 法 を 彼 女 にきき<br />
ます<br />
56 64<br />
72<br />
<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong>ラボ<br />
優 れたウェイドプログラム 機 能 に<br />
詳 しく 迫 ります<br />
17<br />
VISTA<br />
荒 野 に 建 つホテル、ノルウェーの 絶 景 ドライブ、<br />
小 さなお 子 様 を 連 れて 参 加 したい 家 族 向 け<br />
体 験 ツ ア ー 、こ だ わ り の グッ ズ 。<br />
ドバイの 栄 光 の 歴 史<br />
小 さな 漁 村 から 世 界 のハイテク 都<br />
市 へ。50 年 で 目 覚 ましい 発 展 を 遂 げ<br />
たドバイ。ドバイ 国 際 博 覧 会 に 先 立<br />
ち、ドバイの 発 展 を 振 り 返 ります<br />
意 外 なグルメ<br />
タンパク 源 として 人 類 に 重 宝 されて<br />
きた 意 外 な 食 材 が 高 級 レストランで<br />
話 題 に。 昆 虫 食 は 未 来 のグルメ?<br />
74<br />
WONDERFUL WORLD<br />
物 理 学 者 のヘレン・チェルスキーが、 私 たちの<br />
知 らない 波 の 世 界 を 科 学 で 解 説<br />
4<br />
5
<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong> <strong>マガジン</strong>チーム<br />
CLASSIC <strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong>S WANTED<br />
アル サラーン・モハマド<br />
(Arsalan Mohammad)<br />
ロンドン、ドバイ、ベルリンを 拠 点 に、<br />
「Esquire」、「 The Financial Times」<br />
、「 Harper’s Bazaar」な ど 各 誌 に ア<br />
ート 系 の 記 事 を 寄 稿 。 彼 がプロデュ<br />
ーサーを 務 めるポッドキャストでは、<br />
著 名 人 がお 気 に 入 りのデビッド・ボ<br />
ウイのアルバムを 紹 介 しています。<br />
今 回 はレンジローバーでドバイを<br />
訪 れ、 街 の 隆 盛 の 過 程 を 紐 解 きます<br />
(56ページ)<br />
ロッテ・ジェフズ<br />
(Lotte Jeffs)<br />
数 々の 受 賞 歴 を 誇 る 特 集 記 事 執 筆<br />
者 、コ ラ ム ニ スト 。 著 書 に「 How to<br />
be a Gentlewoman: The art of soft<br />
power in hard times」が あ り、 妻 と<br />
幼 い 娘 とともにロンドンで 暮 らして<br />
い ま す 。<br />
今 回 はポッドキャスト 配 信 者 のエリ<br />
ザベス・デイから、 失 敗 する 方 法 を<br />
学 びました(52ページ)<br />
「 娘 の 成 長 を 見 守 ることで、 現 代 の<br />
若 者 を 取 り 巻 く 状 況 について 理 解<br />
を 深 め ら れ た ら と 思 って い ま す 。 新<br />
し い 音 楽 、テ クノ ロ ジ ー 、ファッ ショ<br />
ン な ど の 面 で 、 若 者 が 何 を 考 えて い<br />
るか 理 解 できるのではと 期 待 して<br />
い ま す 」<br />
編 集 長<br />
コナー・マクニコラス<br />
副 編 集 長<br />
サチン・ラオ<br />
編 集 次 長<br />
マリサ・キャノン<br />
アートディレクター<br />
ジョン・ウィギンズ<br />
画 像 編 集<br />
レベッカ・ネイラー<br />
コピー 編 集<br />
ブライオニー・コールマン<br />
アカウントマネージャー<br />
アドリアナ・ユーラシェク、<br />
ハナ・マクドナルド<br />
事 業 戦 略 ディレクター<br />
アン・ハートランド<br />
制 作 管 理<br />
ジョン・モアクラフト<br />
制 作 ディレクター<br />
ヴァネッサ・ソルター<br />
コンサルタントディレクター<br />
ケリー・スミス<br />
広 告 ディレクター<br />
アリサ・スタメンコビッチ<br />
ランドローバーは、<br />
時 代 も 乗 りこえる。<br />
「かなり 前 から 考 えていたのです<br />
が、 車 で 旧 ルート66 沿 いにアメリカ<br />
を 横 断 し て み た い で す ね 。」<br />
Cedar Communications<br />
CEO クレア・ブロ ードベ ント<br />
グローバル 事 業 開 発<br />
ディレクター クリスティーナ・ダシルバ<br />
グローバルチーフクリエイティブディレクター ス<br />
チュアート・パーセル<br />
グローバルコンテンツディレクター ジーナ・ロ<br />
ーワン<br />
グローバルイノベーションディレクター レベッカ・<br />
ビリングズリー<br />
商 務 ディレクター ジャスティン・デイリー<br />
財 務 ディレクター ジェーン・モフェット<br />
コンプライアンスディレクター カレン・ハクスリー<br />
質 問 :<br />
寄 稿 者 の 皆 様<br />
「 今 後 10 年 でいちばんやってみたいことは<br />
何 ですか?」<br />
ジョン・アレクサンダー<br />
(John Alexander)<br />
元 英 国 海 軍 潜 水 士 。<br />
現 在 は 冒 険 写 真 家 、<br />
人 物 写 真 家 として 活 動 中 。<br />
英 国 王 立 地 理 学 協 会 会 員 。<br />
今 回 は 英 国 の 探 検 家 2 名 と 一 緒 に、<br />
新 型 ディフェンダーで ピレネー 山 脈<br />
に 向 か い ま し た( 2 8 ペ ー ジ )<br />
ジミ・ファムレワ<br />
(Jimi Famurewa)<br />
ロンドンの 夕 刊 紙 「Evening Standard」が<br />
発 行 す る「 ES Magazine」 誌 の レ ストラ ン<br />
批 評 家 。BBCのグルメ 番 組 にも 出 演 して<br />
います。<br />
今 回 はブームになりつつある 昆 虫 食 を 体<br />
験 して き ま し た( 6 4 ペ ー ジ )<br />
「 脱 炭 素 へのさまざまな 取 り 組 みが、どの<br />
ように 新 しく 楽 しい 暮 らしへとつながって<br />
いくのか、 注 目 しています。(それと、ほぼあ<br />
り 得 な い で す が 、チャ ー ルト ン・ア ス レ ティッ<br />
クFCが、2029 年 度 UEFAチャンピオンズリ<br />
ー グ に 優 勝 す る こ とで す )」<br />
Land Rover<br />
ダイレクトコミュニケーションマネージャ<br />
ハナ・リントールホード<br />
編 集 担 当 ヴィクトリア・カービーキーズ<br />
ブランドコミュニケーションディレクター<br />
リチ ャード・アグニュー<br />
『Land Rover』は 、Land Rover<br />
(Abbey Road, Whitley, Coventry CV3 4LF, UK) に 代<br />
わ り Cedar Communications Limited (85 Strand,<br />
London WC2R 0DW, UK) が 年 2 回 発 行 しています。<br />
© 2020 Cedar Communications Limited<br />
Cedarは 最 高 水 準 のジャーナリズムを 信 条 としてい<br />
ます。 編 集 資 料 や 表 明 意 見 は 、 必 ずしも 当 社 やLand<br />
Roverの 見 解 ではありません。<br />
また 、 当 社 および Land Roverは 、 広 告 内 容 に 対 する 責<br />
任 を 一 切 負 いません。『Land Rover<strong>マガジン</strong>』の 編 集<br />
内 容 については 細 心 の 注 意 を 払 っていますが、 記 載 の<br />
仕 様 、 機 能 、 機 器 など は 変 更 さ れ る 場 合 や 国 に より 異<br />
なる 場 合 が あります。 入 場 規 制 区 域 内 で の 動 画 および<br />
写 真 撮 影 には、 必 要 となるすべての 許 可 を 取 得 していま<br />
す。 本 誌 記 載 の 情 報 は、 印 刷 時 において 正 確 です。 車 に<br />
関 する 詳 細 については、Land Rover 正 規 代 理 店 までお<br />
問 い 合 わせください。オンロードとオフロードでの 運 転<br />
時 は、 責 任 ある 行 動 をお 取 りください。 本 誌 掲 載 の 記<br />
事 ・ 写 真 ・イラストの 無 断 転 用 を 禁 じます。また、 本 誌<br />
掲 載 資 料 の 無 断 複 製 を 禁 じます。<br />
思 い 出 が 詰 まったクラシックランドローバーを、 安 心 してご 売 却 いただける<br />
サービスがあります。 豊 富 な 知 識 と 経 験 を 持 つランドローバーの 専 門 スタッフが、<br />
大 切 なお 車 の 購 入 希 望 者 を 迅 速 かつ 確 実 にお 探 しいたします。<br />
クラシックカー 市 場 の 最 新 情 報 をもとに、ご 相 談 時 点 で 速 やかに 査 定 額 を<br />
ご 提 示 できるのも 私 たちの 強 み。お 客 さまのクラシックランドローバーを<br />
ご 納 得 の いく 価 格 で、 信 頼 で きる 新 たな オーナー のもとに お 届 けします。<br />
ランドローバーは、ひたむきな 情 熱 で 車 と 向 き 合 っています。お 客 さまが、<br />
大 地 に 刻 んでこられた 愛 車 との 道 のり。そのわだちを 未 来 に 残 すことも、<br />
私 たちのサービスだと 考 えています。<br />
クラシックランドローバーの 冒 険 が、 終 わることはありません。<br />
詳 しくは、jaguarlandroverclassic.com/consignment をご 覧 ください。<br />
「 世 界 各 地 をまわり、この 星 の<br />
美 しさと 人 々の 多 様 性 を 伝 える<br />
ことです」<br />
t) +44 (0)203 601 1255 e) classic@jaguarlandrover.com.<br />
所 在 地 : Classic Works, Imperial Road, Ryton-on-Dunsmore, CV8 3LF<br />
6
北 京<br />
( 中 国 )<br />
2019 年 9 月 開 港 の 北 京 大 興<br />
国 際 空 港 は、 英 国 の 設 計 事<br />
務 所 ザハ・ハ ディッド・アー キ<br />
テ ク ツ に よ る 設 計 で す 。「 ス タ<br />
ーフィッシュ(ヒトデ)」の 愛 称<br />
を 持 つ こ の タ ー ミ ナ ル は 、 単<br />
一 構 造 の 空 港 建 築 としては<br />
世 界 最 大 の 面 積 70 万 m 2 を 誇<br />
り、 年 間 4,500 万 人 の 乗 客 の<br />
利 用 を 見 込 んでいます。<br />
A<br />
B<br />
O<br />
写 真 : 全 体 像 。 画 像 ソース © Maxar Technologies<br />
V<br />
E<br />
+<br />
B<br />
E<br />
Y<br />
O<br />
N<br />
D<br />
飛 行 機 、ドローン、 衛 星 から 撮 影 した<br />
世 界 各 地 のベストフォト
ボゴリア 湖<br />
(ケニア)<br />
リフトバレー 州 にあるこの 湖<br />
には、 毎 年 7 月 と8 月 になる<br />
と、およそ150 万 羽 のフラミン<br />
ゴが 飛 来 します。 塩 分 濃 度 と<br />
アルカリ 度 が 高 いこの 火 山<br />
湖 の 水 は、 緑 藻 や 紅 藻 の 繁<br />
殖 に 適 し て い ま す 。こ れ ら の<br />
藻 は 他 の 動 物 には 有 害 です<br />
が、 独 自 の 代 謝 システムを 持<br />
つフラミンゴにとっては 貴 重<br />
な 食 料 となります。<br />
写 真 : Cristobal Serrano
ラ ン カ ス タ ー( 米 国 、<br />
カリフォルニア 州 )<br />
ロサンゼルスのすぐ 北 に 位 置<br />
するこの 砂 漠 の 町 で、スター<br />
ト アップ 企 業 「 Heliogen」が 、<br />
独 自 のシステムで 太 陽 光 か<br />
ら 最 大 1,000°Cの 高 温 を 生 成<br />
して い ま す 。 製 鉄 な ど の 製<br />
造 工 程 において、 化 石 燃 料 に<br />
代 わるエネルギー 源 として 期<br />
待 されています。 同 社 はビ<br />
ル&メリンダ・ゲイツ 財 団 から<br />
支 援 を 受 けています。<br />
写 真 : Cineatra Media
シドニー<br />
(オーストラリア)<br />
シドニーの 北 部 郊 外 にある<br />
モナベール(Mona Vale)オー<br />
シャン プ ー ル は 、ニ ュ ー サ ウ<br />
スウェールズの 海 辺 に 造 られ<br />
た100 以 上 の 屋 外 海 水 プー<br />
ルのひとつです。19 世 紀 初 め<br />
から 使 われているこのプール<br />
で は 、 波 に さら わ れ た り、サ メ<br />
に 襲 われる 心 配 なく、 太 平 洋<br />
での 海 水 浴 を 満 喫 すること<br />
ができます。<br />
写 真 : Peter Yan Studio
NEW DISCOVERY SPORT PHEV<br />
チャージするのは、<br />
冒 険 心 。<br />
VISTA<br />
旅 ・ グッズ・ ラグジュアリー・ サクセス<br />
“<br />
プライベートテラスに 立 つと、<br />
ユタ 砂 漠 の 壮 大 なパノラマが<br />
広 がります<br />
”<br />
こどもたちにも、 冒 険 の 楽 しさを。3 列 7シートを 備 えた<br />
新 型 ディスカバリー スポーツ PHEVは、ファミリーにも 実 用 性 が 高 い<br />
コンパクトSUVです。 平 日 は、フル 電 動 SUVのような 走 りを 楽 しみながら<br />
ショッピングへ。 週 末 は、ロングドライブでも 安 心 なガソリンエンジンも<br />
駆 使 し、 家 族 そろって 冒 険 の 旅 へお 出 かけになれます。<br />
landrover.com<br />
風 変 わりな 発 電 所<br />
世 界 一 クールなスキースポットが 発 電 所<br />
の 頂 上 にあります<br />
不 屈 のチャレンジャー<br />
中 国 人 マラソンランナーが 持 久 力 の 限 界<br />
に 挑 戦 します<br />
スタントジャンプ<br />
新 型 Land Rover Defenderが、<br />
007 最 新 作 に 登 場 します<br />
WLTPモードによる 燃 料 消 費 率 (L/100km):〈 複 合 〉1.6~2.0<br />
CO 2 排 出 量 36~44 g/km 数 値 は 欧 州 仕 様 車 値 ( 自 社 データ)です。<br />
実 際 の 数 値 は 走 行 スタイルや 周 囲 の 環 境 、 装 着 するホイールや<br />
オプションにより 変 動 します。 17
VISTA<br />
VISTA<br />
広 大 な 荒 野 に 身 をゆだねる<br />
荒 涼 とした 美 しさの 中 に、ひっそりと 佇 む 静 かなオアシス。ここで<br />
ご 紹 介 する4つのラグジュアリーロッジは、 日 常 生 活 から 離 れ、<br />
リフレッシュするには 最 適 な 場 所 です。<br />
ロンギチュード131<br />
(オーストラリア、ウルル)<br />
見 渡 すかぎりの 赤 茶 けた 大 地 。ここは、 古 くから 信 仰 を 集 める、 聖 なる 一 枚<br />
岩 に 最 も 近 いラグジュアリーロッジです。ケンブリッジ 公 爵 夫 妻 が 宿 泊 した<br />
こともあります。アボリジナルアートで 飾 られた 豪 華 なテント 風 の 客 室 や、<br />
砂 丘 の 頂 上 にある 小 さなプールで 特 別 なひとときをお 楽 しみいただけま<br />
す 。longitude131.com.au<br />
アマンギリ<br />
( 米 国 、ユタ 州 )<br />
磨 かれたコンクリートとすっきりとし<br />
たラインが 印 象 的 な 建 築 。 各 部 屋 に<br />
用 意 されたプライベートテラスに 足<br />
を 踏 み 入 れた 瞬 間 、ユタ 砂 漠 の 素<br />
晴 らしいパノラマが 目 前 に 広 がりま<br />
す。 周 囲 に 広 がる 壮 大 な 岩 山 を 眺 め<br />
な が ら 、ヨ ガ 、 乗 馬 、 探 検 ハ イ キ ン グ、<br />
熱 気 球 体 験 、ヘリコプターツアーな<br />
ど、 多 彩 なアクティビティを 満 喫 でき<br />
ます。ゆっくりと 寛 ぎたい 方 は、 広 さ<br />
2,300m 2 のスパや、ナバホ 族 の 伝 統<br />
にインスパイアされたトリートメント<br />
をお 楽 しみください。aman.com<br />
アナンタラ・アル ジャバ ル・<br />
アルアフダル・リゾート<br />
( ニ ズ ワ 、オ マ ー ン )<br />
標 高 2,000mの 高 地 に 位 置 するこの<br />
リゾ ート は 、 眼 下 に 広 が るドラ マ チッ<br />
クな 峡 谷 が 最 大 の 魅 力 。 絶 壁 からの<br />
懸 垂 下 降 やアーチェリーなど、 度 胸<br />
試 しに 最 適 なアクティビティが 充 実<br />
して い ま す 。4 つ の レ ストラ ン が あ り、<br />
中 東 料 理 からイタリアンまで、さま<br />
ざまな 料 理 を 堪 能 することができま<br />
す 。anantara.com<br />
ホアニブ・バレー・キャンプ<br />
( カ オ コ ラ ンド 、ナ ミ ビ ア )<br />
テントスタイルの 辺 境 のリゾート。<br />
キャンプファイヤーやサファリツア<br />
ー を は じ め 、さ ま ざ ま な ア ク ティ<br />
ビ ティを 楽 し む こ と が で き ま す 。 象<br />
やキリン、サイなどの 野 生 動 物 に<br />
出 会 え る チ ャ ン ス も あ り ま す 。こ の<br />
施 設 は 太 陽 光 発 電 を 利 用 し、 基 礎<br />
部 分 は 木 と 竹 とリサイクル 複 合 素<br />
材 を 用 い て 作 ら れ て お り、 環 境 に<br />
与 える 影 響 を 極 力 抑 えています。<br />
naturalselection.travel<br />
18<br />
19
VISTA<br />
VISTA<br />
探 検 家<br />
発 想 の 転 換<br />
世 界 一 クールな 発 電 所 の 上 は、 世 界 一<br />
グリーンなスキースロープでした。<br />
ビジネスとレジャーを 融 合 させた 画 期 的 な 廃 棄<br />
物 発 電 プラントが、デンマークのコペンハーゲン<br />
にオープンしました。「コペンヒル」と 呼 ばれるこ<br />
の 施 設 は、 巨 大 なスロープ 状 のルーフを 有 してい<br />
ます。ルーフ 上 には、スキー/スノーボード 用 の 人<br />
工 ス ロ ー プ 、ハ イ キ ン グ コ ー ス な ど が 構 築 さ れ て<br />
います。フリースタイルパークでアクロバティック<br />
な 演 技 を 決 めたり、スラロームコースでタイムを<br />
競 ったり、オリンピックのハーフパイプと 同 じ 長 さ<br />
のスロープを 滑 り 降 りたりできます。 壁 のひとつ<br />
には 世 界 で 最 も 高 い(85m) 人 工 のクライミング<br />
ウォールが 設 置 されているほか、アフタースキー<br />
を 楽 しむためのバーも 併 設 されています。これら<br />
のレジャー 施 設 の 下 では 焼 却 炉 とタービンが 稼<br />
働 し、 年 間 44 万 トンの 廃 棄 物 をクリーンエネルギ<br />
ーに 変 換 するとともに、15 万 世 帯 に 熱 供 給 を 行 っ<br />
て い ま す 。copenhill.dk<br />
コペンヒルは 都 会 のマウンテン<br />
スポーツの 中 心 地 になっています。<br />
耐 久 スポーツの 世 界 に 飛 び 込 んだ<br />
きっかけは 何 ですか?<br />
たまたま 腕 立 て 伏 せ 大 会 に 出 場 し、<br />
ノンストップで438 回 を 達 成 して 優<br />
勝 したことでした。 観 客 の 驚 きの 表<br />
情 は 今 でも 覚 えています。それで 自<br />
信 がついた 私 は 本 格 的 にランニン<br />
グを 始 めることにしたのです。<br />
肉 体 の 限 界 を 追 求 したいという 強<br />
い 気 持 ちは、どこから 生 まれたので<br />
すか?<br />
中 国 東 部 の 小 さな 島 で 生 まれ 育 っ<br />
た 私 は、13 歳 から 漁 師 として 働 き 始<br />
めました。 仕 事 は 非 常 に 過 酷 でした<br />
が 、 魚 を たくさ ん 食 べ て 育 ち ま し た 。<br />
きっ と 、そ の 栄 養 の お か げ も あ る と<br />
思 い ま す 。<br />
フルマラソンの 距 離 を100 日 連 続 で<br />
走 ったときは、どのようなトレーニン<br />
グをしましたか?<br />
準 備 に4か 月 を 費 やし、 栄 養 士 や 理<br />
学 療 法 士 を 含 む30 人 体 制 のチーム<br />
からサポートを 受 けました。トレーニ<br />
ングは 有 酸 素 運 動 をメインに、 心 肺<br />
機 能 を 強 化 して 心 拍 数 を 安 定 させ<br />
ることに 重 点 を 置 きました。<br />
不 屈 のチャレンジャー<br />
中 国 のウルトラアスリート、チェン・ペンビンは、フルマラソンの 距 離 を100 日 連 続 で 走 るなど、 驚 異 的 な<br />
持 久 力 でいくつもの 偉 業 を 成 し 遂 げ、「 中 国 のフォレスト・ガンプ」と 呼 ばれるようになりました。 元 漁 師<br />
の 彼 は、 最 近 クロスカントリースキーのナショナルチーム 入 りを 果 たしました。 何 が 彼 をそこまで 駆 り 立<br />
ててきたのでしょうか<br />
これまで 参 加 した 中 で 最 も 難 しかっ<br />
たレースは 何 ですか?<br />
いちばん 印 象 に 残 っているのは、<br />
「La Ultra <strong>–</strong> The High」と い うヒ マ ラ<br />
ヤ 山 脈 を 走 る333kmのレースです。<br />
標 高 5,000mという 高 地 で、ひどい<br />
高 山 病 に 苦 しみ、 厳 しい 気 温 にも 悩<br />
まされました。 無 事 完 走 を 果 たした<br />
ときは、 本 当 に 嬉 しかったです。<br />
休 みの 日 は 何 をしていますか?<br />
写 真 を 撮 るのが 好 きで、カメラも 収<br />
集 しています。 私 は 自 分 が 子 どもの<br />
頃 の 写 真 を1 枚 も 持 っていません。<br />
ですから 娘 には 同 じ 思 いをさせたく<br />
ないので、 娘 と 妻 の 写 真 ばかり 撮 っ<br />
ています。<br />
クロスカントリースキーの 中 国 ナシ<br />
ョ ナ ル チ ー ム に 招 か れ る 前 に 、ス キ<br />
ーの 経 験 はあったのですか?<br />
い い え 、ス キ ー どこ ろ か 、 雪 を 見 た<br />
ことさえありませんでした。でもこ<br />
う 思 ったのです。「41 歳 の 人 間 が 新<br />
し い ス ポ ー ツ を 一 か ら 始 め て 、プ ロ<br />
フェショナルなレベルまで 到 達 でき<br />
たとしたら、それはものすごく 素 晴<br />
らしいことだ」と。2022 年 冬 のオリ<br />
ンピックに 向 けてのトレーニングも<br />
順 調 です。 最 近 、 新 しいテクニックを<br />
始 めたのですが、 良 い 感 触 をつかめ<br />
ています。<br />
20 年 後 はどんなことをしていると 思<br />
いますか?<br />
い つ ま で も 走 り 続 け 、 常 に ア ク ティブ<br />
で い た い と 思 い ま す 。と き ど き 学 校<br />
で 子 どもたちにランニングのコツを<br />
教 える 機 会 があり、スポーツの 重 要<br />
性 に つ い て も 話 をして い ま す が 、 今<br />
後 もこうした 活 動 を 続 けていくつも<br />
りです。 運 動 による 健 康 維 持 の 大 切<br />
さ に つ い て 、もっ と 知 って も ら い た い<br />
と 考 えています。<br />
プランBEE<br />
都 会 でミツバチを 増 やすための 取 り 組 みが 進 められています。<br />
ミツバチの 個 体 数 は、 生 息 地 の 減 少 に 伴 い 世 界 的 に 減 少 しつつあります。そ<br />
んな 中 、 都 会 の 養 蜂 家 たちがミツバチの 生 育 支 援 に 取 り 組 むとともに、「ポ<br />
リネーター( 送 粉 者 )」としてのミツバチの 重 要 性 を 世 間 に 伝 えています。 米<br />
国 の 企 業 「BEEcosystem」が、 新 しい 養 蜂 の 概 念 を 導 入 しました。ミツバチ<br />
が 群 れ で 育 つ こ と が で きる よう に 、 巣 箱 を モ ジュ ー ル 化 し た シ ス テ ム は 、 養<br />
蜂 の 重 要 性 を 訴 える 効 果 もあります。モジュールはスリムな 壁 掛 け 型 で、 家<br />
庭 内 や 屋 外 にも 設 置 可 能 。 窓 に 出 入 り 口 を 設 けるアタッチメントと、ミツバ<br />
チの 一 日 のリズムを 乱 さないようにするための 夜 間 用 フィルター、 情 報 サポ<br />
ート が 付 属 し ま す 。beecosystem.buzz<br />
写 真 : RASMUS HJORTSHØJ<br />
インタビュー: CHIA-WEN LIU。イ ラ スト :CRISTINA CHUNG<br />
20 21
VISTA<br />
VISTA<br />
グッズ<br />
暮 らしに 個 性 をプラス<br />
日 常 を 楽 しく 演 出 する、こだわりのギア、ガジェット、ギフトを<br />
集 めました<br />
05<br />
01 Loog Proエレクトリックギ<br />
ター 美 しい 仕 上 がりのお 子 様 向<br />
けギター。3 本 弦 でお 子 様 でも 演<br />
奏 しやすく、 基 本 的 なコードはア<br />
プリが 教 えてくれす。<br />
loogguitars.com<br />
02 Kaffeeformラテカップ&ソ<br />
ーサー コーヒー 抽 出 後 の 豆 かす<br />
を 再 利 用 した、リサイクル 素 材 を<br />
使 用 。ドイツ 製 。kaffeeform.com<br />
09 Tom Dixon Swirl<br />
Stepped ブックエンド 大 理 石<br />
の 廃 材 を 粉 末 化 し、 顔 料 と 樹 脂<br />
と 混 ぜ 合 わせた 素 材 で 作 られて<br />
います。tomdixon.net<br />
10 The Story of Tools Hole<br />
& Corner 刊 世 界 中 のハンドツ<br />
ールの 歴 史 がよくわかる 一 冊 。<br />
写 真 と 作 者 へのインタビューを<br />
満 載 。pavilionbooks.com<br />
02<br />
03<br />
03 Hövding 3エアバッグヘル<br />
メット 市 街 地 でのサイクリング<br />
やマウンテンバイキングに 最 適 。<br />
0.1 秒 で 膨 らみ、 通 常 の 自 転 車 用<br />
ヘルメットの8 倍 の 保 護 性 能 を<br />
発 揮 します。hovding.com<br />
11 GilletteLabs ヒーテッドレ<br />
ーザー 温 熱 バーにより、ホットタ<br />
オルをあてたような 剃 り 心 地 を<br />
楽 しめます。マグネット 式 ワイヤ<br />
レス 充 電 ベースが 付 属 。<br />
gillette.co.uk<br />
04<br />
06<br />
04 Bramwell Brown ウェザー<br />
クロック 天 気 予 報 付 きの 壁 掛 け<br />
時 計 。かわいらしい 絵 で 晴 れや<br />
雨 を 表 示 し ま す 。 ハ ンドメ イド 、<br />
英 国 製 。bramwellbrown.com<br />
05 Land Rover ウェルドサー<br />
モジャケット 軽 量 断 熱 素 材<br />
PrimaLoft Silver、 遭 難 時 に 位<br />
置 を 救 助 者 に 伝 えるRECCO 組<br />
み 込 み 型 アンテナなど、 最 先 端<br />
のテクノロジーを 採 用 していま<br />
す。shop.landrover.com<br />
06 Wyatt & Jack ファスナー 付<br />
きトートバッグ 古 いエア 遊 具 や<br />
ビーチトイを 再 利 用 した、 耐 久 性<br />
の 高 いユニークなバッグ。<br />
wyattandjack.com<br />
07 Bohempia Milek シューズ<br />
耐 久 性 と 通 気 性 を 備 え、 環 境 に<br />
優 しいヘンプキャンバス 製 のハイ<br />
トップ。アウトソールは 天 然 ゴム<br />
製 。PeTA 認 証 のヴィーガン 製 品 。<br />
bohempia.com<br />
08 Hasselblad X1D II 50C 評<br />
価 の 高 い 中 判 デジタルカメラの<br />
最 新 版 。5,000 万 画 素 のセンサー<br />
と 大 型 3.6インチタッチディスプ<br />
レイを 搭 載 。hasselblad.com<br />
12 Land Rover Above<br />
& Beyond マルチツール 耐 久<br />
性 に 優 れた9 種 類 のツールをひ<br />
とつに。ツール 部 分 はハードユ<br />
ースに 耐 える420グレードのステ<br />
ンレススチール 製 、ハンドル 部 分<br />
は 軽 量 なアルミ 製 。<br />
shop.landrover.com<br />
13 Vaonis Stellina 天 体 観 測<br />
を 手 軽 に 楽 しめる、 口 径 80mm<br />
の 屈 折 望 遠 鏡 。アプリで 簡 単 に、<br />
美 しいデジタル 写 真 を 撮 影 でき<br />
ます。smartech.buzz<br />
14 Marvis 練 り 歯 磨 き<br />
洗 面 台 をスタイリッシュに 演 出<br />
するイタリア 製 練 り 歯 磨 き。フッ<br />
化 物 と 香 料 入 りで、ジンジャーミ<br />
ントなどのフレーバーを 楽 しめ<br />
ます。marvis.com<br />
15 Wooden Spoon Herbs<br />
Buggin’ Out スプレー<br />
天 然 由 来 成 分 の 虫 除 けスプレ<br />
ー。ウィッチヘーゼル、アップルビ<br />
ネガー、ラベンダーのハーブブレ<br />
ンド で 、 蚊 、ブ ヨ 、ダ ニ な ど の 虫 を<br />
近 づけないようにします。<br />
woodenspoonherbs.com<br />
01<br />
11<br />
12<br />
07<br />
文 : CARAMEL QUIN 写 真 : ANDY BARTER<br />
08<br />
13<br />
09<br />
10<br />
14<br />
15<br />
22 23
VISTA<br />
VISTA<br />
撮 影 の 舞 台 裏<br />
タイム・トゥ・フラ イ<br />
Land Rover Defender が 、ジ ェ ー ム ズ・ボ ン<br />
ド 最 新 作 で 宙 を 舞 います。<br />
『ノー・タイム・トゥ・ダイ』の 冒 頭 のシーンに 登 場<br />
する Land Rover Defender は、80km/h 近 いス<br />
ピードで 走 り、 地 上 から3メートル 近 い 高 さまでジ<br />
ャンプします。007を 追 いかける2 台 のDefender<br />
も 宙 に 舞 い 上 が り ま す 。<br />
右 の 写 真 は、 新 型 Defenderのスクリーン<br />
デビューの 舞 台 裏 を 写 した 特 別 なショットです。<br />
緻 密 に 計 算 して 配 置 されたジャンプ 台 から、<br />
Defenderが 勢 いよく 飛 び 出 していきます。<br />
「ボンドほど 魅 力 的 なキャラクターはほかに<br />
い ま せ ん 」と 語 る の は 、『 ノ ー ・ タ イ ム ・ト ゥ ・ ダ イ 』<br />
でスタントコ ーディネ ーター を 務 めるリー・モリソ<br />
ンです。このシーンで、モリソンはボンドを「 広 大 な<br />
荒 野 で、 野 生 動 物 のように 追 い 回 される」という<br />
シチュエーションに 置 きたいと 考 えていました。<br />
通 常 、このようなスタントでは、ドライバーの 安<br />
全 を 考 慮 しジャンプハーネスを 使 用 します。しか<br />
し、このシーンでは、 彼 は 自 らジャンプを 試 した 後<br />
に 別 の 方 法 を 選 択 しました。タイヤの 空 気 圧 を 下<br />
げた 状 態 でドライバーの 安 全 を 確 保 するために<br />
は、5 点 式 のレーシングハーネスが 必 要 だと 判 断<br />
したのです。ロールケージなどのスタントの 必 須<br />
装 備 を 除 けば、 撮 影 に 使 われたDefenderはすべ<br />
て 標 準 仕 様 でした。<br />
「 興 奮 度 を 最 大 限 に 高 めるために、 私 たちは<br />
不 可 能 と 思 われるレベルまでDefenderを 酷 使 し<br />
ました」と、モリソンは 言 います。「どんな 極 限 的 な<br />
要 求 にも、Defenderは 応 え てくれ ま し た 。」こ れ<br />
はDefenderがいかに 堅 牢 な 車 であるかを 証 明 し<br />
ています。<br />
そのうちの1 台 を 運 転 していたのが、 若 き 英 国<br />
人 女 性 レーシングドライバーのジェシカ・ホーキ<br />
ンスです。 普 段 はシングルシーターの 選 手 権 で 活<br />
躍 して い ま す が 、 初 め て の ス タント で 、S U V に 乗 っ<br />
て 宙 を 舞 う こ と に な り ま し た 。「 初 め て ジ ャ ン プ に<br />
挑 戦 したとき、 車 が 浮 かび 上 がった 瞬 間 ヒヤリと<br />
しました」と、 彼 女 は 語 ります。<br />
「 私 も 着 地 のことを 心 配 していました」と、モリ<br />
ソンが 同 意 します。「 地 面 はぬかるんでいて、 滑 り<br />
やすい 状 態 でした。 私 は 状 況 の 厳 しさをクルーに<br />
伝 え ま し た 。け れ ど も 、Defenderは 見 事 に 着 地<br />
し、 難 易 度 の 高 いスタントを 成 功 させることがで<br />
きました。 本 当 に 過 酷 な 条 件 だったと 思 います。<br />
着 地 の 瞬 間 は、ものすごい 衝 撃 音 がしました!」<br />
ホ ー キ ン ス に とって 、ス タ ントドラ イ ブ を 演 じ る<br />
のは 大 きなチャンスだったと 言 います。「とてもス<br />
リリングな 体 験 でした。 少 し 怖 かったですが……」<br />
と、 彼 女 は 振 り 返 ります。「プレッシャーを 感 じて<br />
い ま し た 。で も 、Defenderが 大 きな 衝 撃 を 難 なく<br />
受 け 止 めてくれたのには、 本 当 に 驚 きました。<br />
Defenderはドライバーの 要 求 どおりに 走 り、スタ<br />
ントを 成 功 させてくれました。その 素 晴 らしさは、<br />
劇 場 の 大 スクリーンで 証 明 されることでしょう。 目<br />
の 肥 えたボンドファンも 納 得 する 仕 上 がりになっ<br />
ていると 思 いますよ。」<br />
文 : Dan Stevens 写 真 : David Shepherd<br />
プロのスタントドライバーが 撮 影 用 に 設 定 された 状 況 で 走 行 しています。 危 険 ですので、 決 して 真 似 をしないでください。<br />
24 25
VISTA<br />
VISTA<br />
POINT-TO-POINT<br />
家 族 で 楽 しむ<br />
体 験 の 旅<br />
小 さなお 子 様 を 連 れて、 体 験<br />
旅 行 を 楽 しんでみませんか<br />
お 子 様 を 連 れて 安 心 して 参 加 で<br />
きるツアーをご 紹 介 します。「Two<br />
Point Four」は 、 小 さ な 子 ど も 向 け<br />
の 体 験 ツアーを 専 門 とする 旅 行 会<br />
社 です。2 歳 以 上 の 子 どもを 対 象 に、<br />
異 なる 文 化 や 食 事 、 野 生 生 物 など<br />
を 体 験 しながら、 学 校 以 外 の 世 界 に<br />
ついて 学 べるツアーを 企 画 ・ 主 催 し<br />
て い ま す 。 最 新 ツ ア ー の ひ とつ が 、バ<br />
リ 島 で 過 ごす12 日 間 のアドベンチャ<br />
ープログラムです。この 魅 力 的 な 島<br />
で 、 家 族 で サ ーフィン を 習 っ た り、 泥<br />
遊 び を し た り 、メ パ ン ティガ ン と 呼 ば<br />
れる 武 術 に 挑 戦 したりして 過 ごしま<br />
す。また、 子 どもたちが 絵 を 描 いた<br />
り、バ リ 料 理 を 習 っ た りし て い る 間 、<br />
大 人 たちはラフティングを 楽 しむこ<br />
と も で き ま す 。コ ス タ リ カ を 訪 れ る<br />
10 日 間 のツアーでは、ポアス 火 山 国<br />
立 公 園 でのウォーキングやファミリ<br />
ーヨガのほか、 大 人 向 けの 滝 つぼ<br />
ジャンプ、 子 ども 向 けの 伝 統 的 なダ<br />
ンスのレッスン、セレステ 川 のカヤ<br />
ッキングなども 用 意 されています。<br />
twopointfourtravel.com<br />
バランス<br />
ネスリン・ダリー<br />
ヒジャブを 着 て 戦 う 英 国 人 女 性 ムエタイ・ボ<br />
クサーが、 人 生 のバランスを 維 持 する 秘 訣<br />
を 語 ります<br />
プロフェッショナルとしてスポーツ<br />
に 携 わるようになったきっかけは 何<br />
ですか?<br />
私 の 家 族 は 皆 、スポーツが 大 好 きで<br />
す。 姉 はスピードスケートのチャンピ<br />
オンでした。 私 は9 歳 から 水 泳 を 習<br />
い、 中 学 卒 業 後 はウェイトトレーニ<br />
ン グ も 始 め ま し た 。 大 学 に 入 る と 、コ<br />
ンタクトスポーツに 興 味 を 持 ちまし<br />
た。ムエタイは 全 身 を 使 った 総 合 的<br />
なト レ ー ニ ン グ で も あ り 、す ぐ に こ の<br />
ス ポ ー ツ が 大 好 き に な り ま し た 。 挑<br />
戦 し 甲 斐 のあるエクササイズで、ぜ<br />
ひ 極 めたいと 思 いました。<br />
試 合 中 にヒジャブを 着 けることに 不<br />
安 はありませんでしたか?<br />
実 はヒジャブを 着 てみたいとずっと<br />
思 って い た の で す 。ヒ ジ ャ ブ を 着 て<br />
スポーツをできるか、 葛 藤 はありま<br />
し た が 、 初 め て ヒ ジャブ を 着 け て 試<br />
合 に 臨 んだとき、 違 和 感 はありませ<br />
んでした。 私 のクライアントやキャ<br />
リアにも、ほとんど 影 響 はありませ<br />
んでした。<br />
あなたの 活 動 は、ムスリムの 女 性 が<br />
スポーツを 始 めるきっかけになると<br />
思 いますか?<br />
はい。 多 くの 女 性 が 制 約 を 感 じ、ス<br />
ポーツをあきらめていたと 思 いま<br />
す。そうした 人 たちに 私 は 扉 を 開 い<br />
たと 思 います。さらに 言 えば、これは<br />
スポーツ 界 全 般 において、ムスリム<br />
女 性 の 問 題 に 真 剣 に 向 きあうため<br />
の 小 さな 一 歩 になったと 思 います。<br />
ム ス リ ム 女 性 の 多 くは 、ス ポ ー ツ を<br />
する 際 に 何 を 着 ればよいのかさえ<br />
知 らなかったのです。<br />
肉 体 的 、 精 神 的 な 集 中 力 をどのよう<br />
にして 維 持 していますか?<br />
私 は 目 標 に 向 かって 邁 進 するタイ<br />
プです。 小 さな 目 標 と 中 期 的 、 長 期<br />
的 な 目 標 を 自 分 で 設 定 します。まず<br />
は 週 単 位 で 小 さな 目 標 を 達 成 する<br />
ことから 始 めます。ランニングとジ<br />
ム で の ワ ー ク ア ウト 、 特 別 な ム エ タ<br />
イ・エクササイズをこなします。トレ<br />
ーニングによって 健 全 な 心 身 を 維 持<br />
し 、 幸 せ を 感 じ 、 自 分 の や る 気 を 高<br />
めています。<br />
アスリートとしての 成 功 以 外 に、<br />
あなたにとって 大 切 なことは 何 で<br />
すか?<br />
小 さ な 子 ど も が い ま す の で 、 家 族 が<br />
最 優 先 ですね。ベビーシッターの 都<br />
合 が つ か な い とき は 、ベ ビ ー カ ー を<br />
押 しながらジョギングすることもあ<br />
り ま す 。 家 か ら 離 れ ら れ な い と き は 、<br />
自 宅 でワークアウトをします。 工 夫 し<br />
て、 自 分 の 時 間 を 有 効 に 使 ってトレ<br />
ーニングしています。<br />
何 かリラックスできる 趣 味 で、ワー<br />
クライフバランスの 充 実 を 図 ってい<br />
ますか?<br />
旅 行 が 大 好 きです。 異 なる 文 化 を 体<br />
験 し、いろんな 人 々に 出 会 えます。<br />
スポーツから 何 を 学 びましたか?<br />
困 難 を 乗 り 越 えようと 一 生 懸 命 に 取<br />
り 組 めば、 必 ず 自 分 自 身 を 高 めるこ<br />
とができるとわかりました。 恐 れて<br />
いることから 逃 げ 出 すのではなく、<br />
それに 向 かって 進 むことが 大 切 だと<br />
思 います。<br />
バランスインタビュー: LUKE PONSFORD、 写 真 : OLI HILLYER-RILEY。 写 真 : DAIGA ELLABY, SIMON RAE; KIELL OVE STORVIK, LAURIAN GHINIOIU, AINA BYE<br />
01<br />
N<br />
ノルウェー<br />
キステフォス 博 物 館 と<br />
彫 刻 公 園<br />
イェヴナーケル<br />
イェヴナーケル<br />
ノードスコット<br />
距 離 1,304km<br />
ドライブ 日 数 4 日 間<br />
ノルウェーでは、 絶 景 や 雄 大 な 自 然 を 車 で<br />
楽 し む こ と が で き ま す 。 冬 の ノル ウェ ー 北<br />
部 を 走 るには4 輪 駆 動 車 が 必 要 ですが、 夏<br />
は 北 極 線 を 越 えても 快 適 な 道 が 続 きます。<br />
このルートは 首 都 オスロ 近 郊 からスタート<br />
して 北 上 し、 壮 大 なフィヨルド 地 帯 を 目 指<br />
します。<br />
ここは1996 年 、パルプ 製 材 所 の 跡<br />
地 にオープンした 北 欧 最 大 のコン<br />
テンポラリーアートの 彫 刻 公 園 で、<br />
ノルウェーの 現 代 カルチャーの 重 要<br />
な 拠 点 でもあります。 広 大 な 敷 地 に<br />
は 現 代 彫 刻 やオブジェ、 斬 新 な 建 造<br />
物 が 展 示 さ れ て い ま す 。 最 も 大 き な<br />
ギャラリーは、2019 年 10 月 に 完 成 し<br />
た「リビングブリッジ( 居 住 できる 橋 )<br />
」で す 。 長 さ 6 0 メ ー ト ル の 、ラ ンド セ<br />
ルヴァ 川 上 に 建 てられたこの 建 物<br />
は、 湾 曲 したフォルムが 特 徴 です。<br />
01<br />
02<br />
03<br />
03<br />
02<br />
マンシャウゼン 島<br />
ノードスコット<br />
小 さな 島 に 建 てられたこの 高 級<br />
リゾ ート は 、7 つ の ス タ イリッ シュ<br />
な「 シ ー キ ャ ビ ン 」で 構 成 さ れ<br />
ています。それぞれに、2つのベ<br />
ッドルームとフィヨルドを 一 望 で<br />
きる 巨 大 なガラス 張 りの 展 望 プ<br />
ラットフォームがあります。 周 辺<br />
エ リ ア で は 、カ ヤッ キ ン グ、ダ イ<br />
ビング、サイクリング、クライミン<br />
グ、 夏 と 冬 の 両 方 で ハ イ キ ン グ<br />
を 楽 し む こ と が で き ま す 。 運 が 良<br />
ければ、ベッドルームからオーロ<br />
ラを 眺 めることができるかもし<br />
れません。<br />
南 サーミ 博 物 館 と 文 化 セン<br />
ター<br />
スノーサ<br />
サーミ 人 は3,500 年 前 から 北 ス<br />
カンジナビアに 暮 らす 先 住 民 族<br />
です。 彼 らは 北 極 圏 でトナカイを<br />
遊 牧 していることで 有 名 ですが、<br />
サーミ 人 とその 文 化 ははるか 南<br />
方 ま で 広 が って い ま す 。こ の 博 物<br />
館 では、 伝 統 的 な 泥 レンガ 造 り<br />
の 小 屋 での 生 活 を 体 験 したり、<br />
語 り 継 がれてきた 民 話 に 触 れた<br />
り、サーミ 文 化 を 象 徴 する 伝 統 ア<br />
ートや 工 芸 品 を 観 賞 することが<br />
できます。<br />
27
頂 点 を<br />
目 指 して<br />
二 人 の 型 破 りな 冒 険 家 が、 南 極 探 検 に 向 けた 訓 練 のために、 新 型<br />
Land Rover Defenderとともに 雪 深 いピレネー 山 脈 へと 向 かいます。<br />
文 : Marisa Cannon 写 真 : John Alexander<br />
29
時 刻 は 午 前 7 時 30 分 。ここピレネー 山 脈 の 麓 アン<br />
ドラには、まだ 朝 の 光 は 届 いていません。 満 月 の<br />
明 かりが、 山 のすそ 野 を 覆 う 針 葉 樹 林 に 反 射 して<br />
い ま す 。 山 々 の 頂 か ら 日 が 昇 る 頃 に は 、ラ ンド ロ<br />
ーバー 新 型 Defenderは 、 麓 の 町 カ ニ ー リョか ら<br />
標 高 差 およそ500mの 位 置 にあるベースキャンプ<br />
に 向 かって 順 調 に 進 んでいました。<br />
山 岳 路 を 登 るDefender。そ の ス テ ア リン グ を<br />
握 るのは、 英 国 人 冒 険 家 のフィービー・スミスで<br />
す。 助 手 席 では、 仲 間 の 冒 険 家 ドウェイン・フィー<br />
ルズがDJを 楽 しんでいます。「じゃあ、こんな 曲<br />
はどうかな?」と、 彼 がボリュームを 上 げると、フ<br />
ィービーはニヤリとしながら、 直 線 路 でアクセル<br />
を 踏 み 込 み、ドウェインの 音 楽 の 趣 味 をからか<br />
います。<br />
二 人 は、 南 極 大 陸 のバークナー 島 から 南 極 点<br />
までの1,300kmに 及 ぶトレッキングを2022 年 11<br />
月 に 計 画 しており、 今 回 はそのトレーニングのた<br />
めに、このヨーロッパの 小 国 に 来 ています。 取 材<br />
したときはスコットランドの 最 北 端 からイングラ<br />
ンドの 最 南 端 まで、40 日 間 のトレッキングを 終 え<br />
たところでした。そのせいか、 二 人 とも 気 分 良 くふ<br />
ざけあっていたのです。<br />
二 人 の 出 会 いは2017 年 、バッキンガム 宮 殿 で<br />
行 わ れ た「 デ ュ ー ク・オ ブ・エ ディン バ ラ・ア ワ ー<br />
ド」の 授 賞 式 でした。その 後 、 冒 険 活 動 で 感 じた<br />
人 種 や 性 別 の 壁 といった 問 題 を 通 じて、きずなを<br />
深 めるようになりました。 彼 らは 共 同 で「WeTwo<br />
Foundation」という 基 金 を 設 立 しました。この 基<br />
金 は、 冒 険 活 動 のあり 方 を 変 え、アウトドア 活 動<br />
をもっと 身 近 なものにすることを 目 的 としていま<br />
す。 二 人 の 人 生 を 変 えたアウトドアという 生 き 方<br />
を、 恵 まれない 若 い 人 たちにも 知 ってもらいたい<br />
と 考 えて い ま す 。<br />
しかし、まずは 目 の 前 にそびえるアンドラの 山<br />
を 征 服 しなければなりません。 今 回 二 人 をサポー<br />
トするDefenderは、フジホワイトの110 X。この 国<br />
の 最 高 峰 のひとつ、カサマーニャの 登 山 道 入 口 を<br />
目 指 し、 雪 道 を 進 みます。そこからドウェインとフ<br />
ィービーは 徒 歩 で 標 高 2,740mの 山 頂 付 近 まで<br />
登 り、テントを 張 ります。 山 頂 の 気 温 は 氷 点 下 で、<br />
雪 面 は 凍 りついています。この 過 酷 な 状 況 下 での<br />
キャンプは、 南 極 探 検 に 向 けて 有 意 義 な 経 験 に<br />
な る は ず で す 。<br />
ドウェインは 幼 少 時 にジャマイカで 暮 らしてい<br />
たときからアウトドアが 大 好 きでしたが、ロンドン<br />
に 移 住 してからは 遠 ざかっていました。「 移 り 住 ん<br />
だ 当 初 は、 友 達 を 作 るのに 苦 労 しました」と、 彼<br />
は 回 想 します。「そこで、ある 日 、 私 は 校 庭 で 虫 を<br />
たくさ ん 捕 ま えて クラ ス メ イト に 見 せ 、 自 分 の 知 っ<br />
ていることを 教 えて、 感 心 させてやろうと 考 えた<br />
のです。 案 の 定 、このアイデアは 裏 目 に 出 ました。<br />
クラスメイトは 皆 、 怖 がって 逃 げてしまいました。<br />
人 生 で、このときほど 強 い 孤 独 感 を 味 わったこと<br />
はありません。 私 が 新 たに 生 活 する 世 界 は、それ<br />
まで 知 っていた 世 界 とはまったく 違 うことに 気 づ<br />
き ま し た 。」<br />
周 囲 に 溶 け 込 むために、ドウェインは 周 りに 同<br />
調 し、ほかの 子 達 と 同 じように 行 動 しました。 成<br />
長 すると、 彼 はストリートギャングの 仲 間 に 入 り<br />
ます。しかし、ナイフで 刺 されたり、 二 度 も 至 近 距<br />
離 から 銃 で 撃 たれたりと、 過 酷 な 日 々を 過 ごしま<br />
す。 銃 は 二 度 とも 暴 発 事 故 でした。その 後 、 彼 は<br />
自 分 の 人 生 を 見 つめ 直 します。 一 番 楽 しかったの<br />
は 、ジャマ イ カ に い た 頃 、 木 に 登 っ た り、 動 物 を 捕<br />
まえてローストして 食 べていたときだったと 気 づ<br />
い た の で す 。<br />
それ 以 来 、ドウェインはできるだけ 自 然 の 中 で<br />
暮 らすようにし、それが 自 分 の 使 命 だと 考 えてき<br />
ました。また 身 近 に 起 きた 悲 しい 出 来 事 も、きっ<br />
オフロード 走 行 シーンは 専 用 の 場 所 で 許 可 を 得 て 撮 影 したものです<br />
かけとなりました。「2007 年 、 友 人 が 殺 されまし<br />
た。それを 機 に 私 は、 世 界 は 自 分 の 身 の 回 りだけ<br />
ではないと 考 えるようになりました。」<br />
20 代 のとき、ドウェインは 資 金 を 集 めて 北 極 圏<br />
への 旅 行 を 実 現 し、 黒 人 系 英 国 人 として 初 めて<br />
北 磁 極 までの640kmを 徒 歩 で 走 破 しました。 現<br />
在 、 彼 は 王 立 地 理 学 会 の 特 別 研 究 員 で、これまで<br />
に、カヤックによるジャマイカ 一 周 、 都 市 中 心 部 に<br />
住 む 貧 困 層 の 子 どもたちを 連 れてのベン・ネビス<br />
山 登 攀 など、 数 々の 業 績 を 残 し、 今 後 も 活 躍 が 期<br />
待 されています。<br />
フィービーは 旅 行 ジャーナリストで、 雑 誌<br />
『Wanderlust』の 編 集 者 を 務 めた 後 、 現 在 は 英<br />
国 国 内 の 複 数 の 新 聞 に 寄 稿 しています。 多 くの 女<br />
性 から 注 目 されている 女 性 冒 険 家 のひとりです。<br />
彼 女 がアウトドアに 興 味 を 抱 いたきっかけは、オ<br />
ーストラリアで 友 人 から、スワッグバッグと 呼 ばれ<br />
る 現 地 の 牧 夫 が 使 う 簡 易 ベッドで 一 夜 を 過 ごす<br />
よう 説 得 されたことでした。<br />
「 怖 かったのです」。 彼 女 はそのときのことをよ<br />
く 覚 えています。「それまでキャンプをしたいとは、<br />
一 度 も 思 いませんでした。ベッドに 入 る 前 、さまざ<br />
まな 危 険 に 関 する 注 意 事 項 を 聞 かされ、『 絶 対 に<br />
好 きになるはずがない!』と 思 いました。」<br />
彼 女 の 予 想 は 見 事 に 外 れました。それどころ<br />
か、その 後 彼 女 は 英 国 本 島 のあらゆる 極 地 で 夜<br />
を 過 ごした 最 初 の 人 物 となり、ウェールズ、イング<br />
ランド、スコットランドそれぞれの 山 頂 で 一 夜 を 過<br />
ごし、アウトドアに 関 する 著 作 を10 冊 も 執 筆 する<br />
までになりました。 代 表 作 には『Extreme Sleeps:<br />
Adventures of a Wild Camper』、『 Wilderness<br />
Weekends: Wild Adventures in Britain’s<br />
Rugged Corners』などがあります。<br />
冒 険 活 動 を 生 業 とする 女 性 の 数 は、フィービ<br />
ー が 子 ど も の 頃 に 比 べ れ ば 増 えて い ま す が 、 男<br />
性 に 比 べ 圧 倒 的 に 少 ない 状 況 は 変 わっていま<br />
せ ん 。<br />
Defenderはベースキャンプへと 向 かう 中 、 狭<br />
い ヘ ア ピ ン カ ー ブ を い くつ も 通 過 し て い き ま す 。ド<br />
ウェインとフィービーは 南 極 探 検 の 動 機 について<br />
説 明 してくれました。それは、2021 年 に 恵 まれな<br />
い 若 者 たちを 探 検 船 に 乗 せて、 英 国 から 南 極 ま<br />
で 連 れ て 行 き た い と い う も の で し た 。<br />
「 私 たちが 手 を 差 し 伸 べたいと 思 っているの<br />
は、『そんなことはおまえには 無 理 だ』と 言 われて<br />
いるような 境 遇 にいる 子 どもたちや、 自 分 の 可 能<br />
性 を 考 えたこともない 子 どもたちです」と、フィー<br />
ビ ー は 言 い ま す 。<br />
「 彼 らに 南 極 大 陸 を 見 せたいだけではなく、<br />
この 地 球 が 直 面 している 問 題 について 理 解 し、 想<br />
像 すらしなかったであろうキャリアの 選 択 肢 に 目<br />
を 向 けてほしいと 願 っています。 私 たちは 気 候 変<br />
動 を 心 配 し、 野 生 生 物 が 大 好 きです。 今 では 互 い<br />
に 切 っても 切 れない 関 係 にあります。 南 極 大 陸 は<br />
二 人 にとって 非 常 に 重 要 な 問 題 なのです。 南 極 へ<br />
の 探 検 を 通 じ、これらの 問 題 を 世 間 に 訴 えたいの<br />
です。 私 たちは、この 探 検 でほかでは 成 し 得 ない<br />
ことをやりたいと 考 えています。 栄 誉 が 目 的 では<br />
一 日 の 始 まり<br />
深 い 雪 と 身 を 切 るよう<br />
な 寒 さも、 二 人 の 冒 険<br />
の 妨 げにはなりません<br />
31
森 林 限 界 を 越 えると、<br />
まばゆいばかりの 純 白 の<br />
雪 原 が 広 がります。<br />
道 なき 道 を 行 く カサマ<br />
ーニャ 峰 の 山 頂 を 目 指<br />
し て 、ト レ ッ キ ン グ を 開<br />
始 する 冒 険 家 のドウェ<br />
インとフィービー<br />
ないのです。」<br />
このような 山 の 中 でDefenderを 走 らせるの<br />
は、 素 晴 らしい 体 験 です。Defenderは 、タ イト な つ<br />
づら 折 りの 山 道 でも 洗 練 された 走 りを 見 せます。<br />
卓 越 したオフロード 走 行 性 能 のおかげで、 深 い 雪<br />
道 でもその 安 定 性 は 揺 るぎません。ぬかるみ、 深<br />
い 水 たまり、 凍 結 した 路 面 など、ここにはあらゆる<br />
悪 条 件 が 揃 っていますが、そうした 自 然 の 脅 威 か<br />
ら 守 られている 安 心 感 があります。<br />
ベースキャンプに 到 着 し、Defenderは50cmほ<br />
ど の 雪 を か き わ け て 駐 車 し ま し た 。 静 ま り 返 っ た<br />
森 の 中 、 凍 り つ い た 朝 露 が 輝 い て い ま す 。ド ウ ェ イ<br />
ンとフィービーが、Defenderの 広 いラゲッジスペ<br />
ースから 装 備 が 詰 まったオフロードバッグを 取 り<br />
出 し ま す 。バ ッ クパ ッ ク、ス ノ ー ブ ー ツ 、ア イ ゼ ン 、ア<br />
イスアックス、ウォーキングポール、ブーツといっ<br />
た 装 備 をすべて 取 り 出 して、 点 検 を 行 います。<br />
「 南 極 大 陸 は 極 寒 の 地 です。 平 均 気 温 は-15°C<br />
から-20°Cで、 常 に 風 が 吹 いています。また、 行 程<br />
のおよそ90%が 上 り 坂 となります」と、ドウェイン<br />
は 説 明 します。「どんな 状 況 が 待 ち 構 えているか<br />
は、だいたいわかっているつもりです。 初 めて 北 極<br />
に 行 ったときは、 事 前 にスポーツ 心 理 学 者 からサ<br />
ポ ート を 受 け て 、 集 中 力 を 高 め た い とき と、 気 を<br />
紛 らわせたいときに 役 立 つテクニックをいくつか<br />
教 え て も ら い ま し た 。」<br />
フィービーもこう 付 け 加 えます。「 必 要 な 装 備<br />
はすべてソリに 載 せて 引 っ 張 ってキャンプ 地 まで<br />
運 びますが、 実 はこうした 探 検 で 大 きな 問 題 とな<br />
るのが 退 屈 との 闘 いなのです。それに 対 する 絶 好<br />
のトレーニングになったのが、 先 日 達 成 した40 日<br />
間 の 英 国 走 破 の 旅 でした。この 旅 で 学 んだのは『<br />
何 事 も 難 しく 考 えすぎないこと。 笑 える 余 裕 があ<br />
れば 大 丈 夫 』ということでした。 英 国 走 破 を 達 成<br />
したことで 自 信 が 高 まり、 南 極 大 陸 で 何 が 起 こっ<br />
ても 対 処 できると 確 信 しました。」<br />
標 高 の 高 いアンドラの 山 中 でのトレーニング<br />
は、 南 極 大 陸 でのキャンプの 準 備 にも 役 立 ちま<br />
す。スキーリゾートとして 知 られるこの 小 国 は、<br />
山 の 中 でフランスとスペインと 国 境 を 接 し、 国 土<br />
の90%が 森 に 覆 われ、 四 方 を 雪 山 に 囲 まれてい<br />
ます。 二 人 が 目 指 すカサマーニャ 峰 は、その 中 で<br />
もひときわ 存 在 感 を 放 ちます。この 山 はアンドラ<br />
の 渓 谷 部 を 東 西 に 分 ける 位 置 にあり、 山 頂 では<br />
壮 大 なパノラマビューを 楽 しめます。 頂 上 から2<br />
~300メートル 下 がったポイントが、ドウェインと<br />
フィービーの 今 夜 の 野 営 地 です。ピレネー 山 脈<br />
の 荒 々しい 気 候 と 厳 しい 気 温 が 二 人 に 試 練 を 与<br />
えます。<br />
山 頂 に 通 じる 道 の 周 りには、クロマツが 生 い<br />
茂 っています。その 幹 のくぼみから、このあたりに<br />
キツツキがいることがわかります。 森 の 上 の 方 で<br />
は、チフチャフムシクイが 飛 び 交 っています。 二 人<br />
が 進 むたびに、 雪 を 踏 みしめる 心 地 よい 音 が 耳<br />
に 届 きます。 時 折 その 歩 みを 止 め、 雪 崩 や 落 下 物<br />
に 警 戒 を 払 います。 右 側 に 急 峻 な 渓 谷 が 深 く 伸 び<br />
ています。 足 を 一 歩 進 めるたびに、ウォーキングポ<br />
ー ル が 雪 に 深 く 突 き 刺 さ り ま す 。<br />
や が て 高 木 が 姿 を 消 し 、ま ば ゆ い ば か り の 純<br />
白 の 雪 原 が 広 がります。このあたりは 吹 き 溜 まり<br />
がひどく、 先 頭 を 進 むドウェインが 重 い 足 取 りで、<br />
まっさらな 雪 の 上 に 深 い 足 跡 を 残 していきます。<br />
さらに 先 へと 進 むと、いよいよ 山 頂 が 視 界 に 入 り<br />
ます。そしてそのすぐ 下 に、 岩 がたくさん 並 んでい<br />
る 場 所 があります。それらの 岩 はそこが 水 平 な 地<br />
面 である 目 印 にもなっています。 今 夜 テントを 張<br />
る 場 所 です。ゴールが 見 えて 元 気 を 取 り 戻 した 二<br />
人 はペースを 速 め、ほどなくして 鞍 部 に 到 着 。 荷<br />
物 を 肩 から 下 ろし、 景 色 に 見 入 ります。<br />
赤 茶 色 の 山 々の 稜 線 が 地 平 を 覆 い、コバルト<br />
色 の 空 に 一 筋 の 飛 行 機 雲 が 伸 びていきます。 遠 く<br />
に 見 える 低 い 山 々の 頂 の 周 りにはうっすらとした<br />
雲 が 浮 かび、 暗 緑 色 の 渓 谷 の 上 を1 羽 のシロエリ<br />
ハ ゲ ワ シ が 舞 って い ま す 。 息 を の む よう な 美 し い<br />
景 色 が 広 がるこの 場 所 で、 一 晩 を 過 ごします。<br />
33
装 備 をほどきながら、フィービーはここを 野 営<br />
地 に 選 んだ 理 由 を 説 明 します。「 水 平 な 地 面 はキ<br />
ャンプで 最 も 重 要 な 要 素 です。また、 地 面 にペグ<br />
が 刺 さり、 快 適 に 眠 る こ と が で き て 、 上 か ら 何 か<br />
が 落 ちてくる 可 能 性 がないという 条 件 も 大 切 で<br />
す。」 雪 崩 の 危 険 性 については、ここまでの 道 中 で<br />
も 警 戒 してきました。 雪 崩 は35 度 から40 度 の 斜<br />
面 で 起 きやすいと 言 われていますが、この 野 営 地<br />
はそれよりも 傾 斜 が 急 な 場 所 にあります。<br />
二 人 はカサマーニャ 峰 の 山 頂 まで 最 後 のハイ<br />
クを 終 え、 温 かい 紅 茶 で 一 息 ついた 後 、 今 夜 の 宿<br />
を 設 営 し ま す 。 日 が 沈 む とすぐに 襲 ってくる 寒 さ か<br />
ら 身 を 守 らなければなりません。<br />
翌 朝 午 前 9 時 、 太 陽 が 昇 り、まぶしく 辺 りを 照 ら<br />
す 中 、ドウェインとフィービーがベースキャンプに<br />
戻 ってきました。 時 間 ぴったりの 帰 還 です。 二 人 と<br />
も 興 奮 した 様 子 で、お 腹 もすいているようです。「<br />
昨 夜 は 気 温 が-6°Cまで 下 がりました。 幸 いなこと<br />
に、 風 は 弱 まってくれました。」と、ドウェインが 報<br />
告 します。「 空 は 見 事 に 晴 れ 渡 り、とても 寒 かった<br />
ですが、 素 晴 らしい 夜 でした。 南 極 大 陸 でも 同 様<br />
な 体 験 をすることになるでしょう。もちろん、 南 極<br />
の 方 がもっと 寒 いですが、 昨 夜 のような 急 激 な 温<br />
度 変 化 はないと 思 います。 私 たちは 南 極 大 陸 が<br />
夏 の 時 期 に 行 きますので、 太 陽 が 毎 日 24 時 間 出<br />
ているはずです。 今 回 のような 極 限 条 件 でのトレ<br />
ーニングは 非 常 に 重 要 です。イギリス 国 内 ではで<br />
き ま せ ん か ら 。」<br />
「ほかにも 自 分 たちに 課 していたテーマがあ<br />
りました。それは、 状 況 を 見 極 めながら 行 動 する<br />
こと。 地 形 の 変 化 に 対 処 できること。そして 装 備<br />
の 取 り 扱 いに 慣 れることです」。そう 言 いながら、<br />
ドウェインはDefenderのリアドアを 大 きく 開 き、<br />
すべての 装 備 を 積 み 込 みます。「 南 極 大 陸 では、<br />
装 備 もきちんと 整 理 しておく 必 要 があります。 必<br />
要 な 装 備 を 素 早 く 探 し 出 し 準 備 できないと、 凍 傷<br />
で 指 を 失 いかねないからです。<br />
二 人 の 話 は 続 きます。 昨 夜 テントに 潜 り 込 む 前<br />
に 山 から 見 た 景 色 の 素 晴 らしさについて、 語 らず<br />
に は い ら れ な い よう で す 。「 時 折 、 遠 くか ら 、 雪 崩<br />
を 人 為 的 に 起 こすための 爆 発 の 音 が 聞 こえてき<br />
ました」と、フィービーは 言 います。「この 怖 いくら<br />
いの 静 寂 の 中 では、それがまるで 銃 の 音 のように<br />
響 き ま し た 。」<br />
山 の 頂 上 で、まったくの 一 人 で 過 ごすというの<br />
は、どんな 気 分 なのでしょうか?「この 地 球 上 で 一<br />
番 安 全 な 場 所 にいるように 感 じられます」と、 彼<br />
女 は 言 います。「しっかりと 守 られている 安 心 感 が<br />
あります。 聖 域 のような 安 らぎの 場 所 で、 一 日 をリ<br />
セットできます。 気 持 ちが 新 たになります」<br />
二 人 は 装 備 をDefenderに 積 み 込 んでいきま<br />
す。 目 の 前 には 雄 大 な 風 景 が 広 がっています。 広<br />
大 な 空 の 下 、まっさらな 雪 原 が 太 陽 光 線 で 輝 いて<br />
います。「 素 晴 らしい」。ドウェインは 鋭 い 爪 が 付 い<br />
たアイゼンを 慎 重 にトランクにしまいながら、つ<br />
ぶやきます。きっと、これからの 活 動 の 糧 となる、<br />
かけがえのない 思 い 出 ができたことでしょう。<br />
心 癒 される 眺 め 南 極<br />
探 検 に 向 けてのハー<br />
ドなトレーニングが<br />
終 わり、 二 人 は 一 息 つ<br />
きます<br />
探 検 のウェア 類 はELLIS BRIGHAM(ELLIS-BRIGHAM.COM)か ら 、テ ント は TERRA NOVA(TERRA-NOVA.COM)から 提 供 を 受 けました。 宿 泊 協 力 : HOTEL SKI PLAZA AND<br />
WELLNESS(EN.HOTELSKIPLAZAANDORRA.COM)。アンドラに 関 する 詳 細 はこちら: VISITANDORRA.COM<br />
「 聖 域 のような 安 らぎの 場 所 で、 一 日 を<br />
リセットできます。 気 持 ちが 新 たになります」<br />
34
装 いを<br />
鮮 やかに<br />
50 年 前 、レンジローバーは 鮮 やかなカラーを 身 にまと<br />
い、 華 々しく 登 場 しました。1970 年 代 のレンジローバー<br />
に 施 されたボディカラーの 多 くは、 当 時 の 流 行 を 映 し 出<br />
しています。 落 ち 着 いた 色 合 いが 好 まれる 現 代 に 比 べ、<br />
リンカーングリーンやマサイレッドなどの 鮮 やかな 色 彩<br />
に 溢 れていました。 今 回 、ランドローバー 誕 生 50 周 年 を<br />
記 念 し、 往 年 のカラーを 再 現 したアニバーサリー 特 別<br />
仕 様 のレンジローバーが 登 場 します。クラシックなレン<br />
ジ ロ ー バ ー を 象 徴 す る 、ト ス カ ー ナ ブ ル ー 、ダ ボ ス ホ ワ<br />
イト、バハマゴールドの3 色 。 最 新 のブリティッシュファッ<br />
ションを 意 識 した 標 準 カラーとの 対 比 をお 楽 しみくだ<br />
さい。<br />
写 真 : James Day
レンジローバー 3.5L V8ガソリンエンジン<br />
ボディカラー: リンカーングリーン(1970~1982 年 まで 販 売 のカラー)<br />
前 ページ: (ブルー)ジャケットとジーンズ: ダニエル・W・フレッチャー 、ポ ロ シャ ツ :ルー・ダルトン、Bookerローファー: グレンソン、( グリ<br />
ー ン )キ ル ティン グ コ ート :ハウスオブホランド、Nanetteブーツ: ハウスオブホランドxグレンソン、ゴールドのラッキーチャームネックレス:<br />
ルーシー・ウィリアムズxミッソマ、The Tale of Virgilネックレス: アリギエーリ、( レ ッ ド )Carmelドレス: ロ ーランド・ムレ、Sunriseサンダ<br />
ル: ハウスオブホランド、ゴールドリッジの 大 ぶりネックレスとリング: ルーシー・ウィリアムズxミッソマ<br />
このページ: (グリーン)テクニカルチェックのジャッキー 風 トレンチ: マルベリー、ボ ウ イ 風 ジップ 付 き シャ ツ :YMC;<br />
Nanetteブーツ: グレンソン、Onyx Nightfallイヤリング: アリギエーリ(ブルー) 上 記 を 参 照<br />
39
レンジローバー 3.5L V8ガソリンエンジン<br />
初 代 の 記 者 会 見 仕 様 車 の1 台<br />
ボディカラー: マサイレッド(1970~1982 年 まで 販 売 のカラー)<br />
フェリシティ 風 ジャケットと 毛 織 物 のアシュレイ 風 トラウザーズ: マルベリー、Norinaトップス: ロ ーランド・ムレ ;<br />
Sunsetサンダルシューズ: ハウスオブホランド、Fridaイヤリング: ルナ、Il Leoneブレスレット: アリギエーリ<br />
41
スタイリスト: OTTER HATCHETT、メイクとヘアメイク: JOANNA BERNACKA<br />
モデル: JAMEL GORDON-LYNCH AT ELITE, RANA OLIVEIRA AT WILD, ROBYN SCHRIKKER AT NEVS<br />
(グリーン)ス ー ツ :ハウスオブホランド、Edith No. 1イヤリング: ルナ、(ブルー)Cromwellジャケット<br />
とJudoパンツ: オリヴァー・スペンサー 、ラインマンシャツ: イートウツ、Bennettシューズ: グレンソン<br />
レンジローバー 3.5L V8ガソリンエンジン<br />
ボディカラー: トスカーナブルー(1970~1982 年 まで 販 売 のカラー)<br />
42
クルマの 新 しい 乗 り 方<br />
F<br />
THE<br />
U<br />
T<br />
U<br />
R<br />
I<br />
転 勤 や 家 族 が 増 えるなど、 人 生 にはさまざまな 節 目 があり<br />
ます。ですから、 経 済 状 況 に 合 わせて 月 々の 支 払 いを 柔 軟<br />
に 見 直 したいというニーズもあります。Pivotalのランド<br />
ロ ー バ ーサブスクリプ シ ョン は 、 最 新 モ デル に 自 由 に 乗 ること<br />
ができるサービス。ご 都 合 に 合 わせて、いつでも 自 由 に<br />
休 止 ・ 再 開 いただけます<br />
クルマは6か 月 ごとにアップデートされ、お 好 きなタイミン<br />
グでプラグインハイブリッドに 切 り 替 えることができます。<br />
Pivotalは 現 時 点 では 英 国 内 のお 客 様 にのみ 提 供 して<br />
いるサービスです。<br />
2020 年 の 今 、 私 たち 全 員 の 未 来 を 決 定 づ<br />
けるであろう 数 名 のイノベーターの 横 顔<br />
を、クリス・ハスラム が 自 身 の 思 いも 重 ね<br />
て 浮 き 彫 りにします。<br />
S<br />
T<br />
S<br />
WWW.DRIVEPIVOTAL.COM<br />
ランドローバーのサブスクリプション
マテリアル・テクノロジー<br />
ニック&スティーブ・ティドボー ル<br />
VOLLEBAK 創 業 者<br />
他 の 企 業 が、 地 球 上 の 過 酷 な 条 件 に 耐 え 得 る 衣<br />
料 を 作 ろうと 考 えている 間 、ロンドンを 拠 点 とす<br />
る 衣 料 のイノベーターであるVollebak 社 は、 人 類<br />
初 の 火 星 へのミッションに 向 けてアイテムを 生 み<br />
出 そうとしています。Vollebakは「 徹 底 的 に」を 意<br />
味 するフラマン 語 です。その 姿 勢 は、 同 社 の 衣 料<br />
の あ ら ゆ る 面 に 反 映 さ れ て い ま す 。<br />
創 業 から5 年 で、ノーベル 賞 を 獲 得 した 革 新 的<br />
な 素 材 であるグラフェンを 世 界 で 初 めて 採 用 した<br />
ジャケットをプロデュース。100 年 間 着 られる 衣 料<br />
を 製 造 。ユーカリと 藻 類 を 原 料 として、 廃 棄 後 は<br />
生 分 解 されるTシャツを 開 発 。 周 囲 の 状 況 に 溶 け<br />
込 むイカの 保 護 色 機 能 を 模 した、Black Squidジ<br />
ャケットを 制 作 。そして、 史 上 最 高 強 度 の 繊 維 を<br />
使 用 し た ダ ウ ン ジャ ケット を デ ザ イ ン 。 各 ア イテ ム<br />
の 構 造 は 急 進 的 で、きわめて 先 進 的 な 素 材 のい<br />
くつかを 採 用 し、 少 量 生 産 でプレミア 価 格 の 製 品<br />
を 世 に 送 り 出 しています。<br />
双 子 のニック・ティドボールとスティーブ・ティド<br />
ボールが 立 ち 上 げたVollebak 社 には、 未 来 志 向<br />
の 素 材 を 発 見 し、 開 発 したいという 同 社 の 意 欲 に<br />
感 銘 を 受 けたファンが 数 多 く 存 在 しています。<br />
「Vollebakの 服 を 製 造 す る に は 、そ れ ま で 目 に し<br />
たこともない 新 しい 製 造 手 法 や 素 材 が 必 要 にな<br />
ることも 多 いんだ」とスティーブは 言 います。<br />
Vollebakの イン ス ピ レ ー ション の 源 は 、 常 に 限<br />
界 を 押 し 上 げようとしてきた、この 兄 弟 の 半 生 に<br />
ありました。「いつも、 途 方 もない 活 動 に 足 を 突 っ<br />
込 むことになった」とスティーブは 続 けます。「30<br />
歳 に なっ た とき、 僕 ら 2 人 で ウ ルトラ マ ラ ソン を 走<br />
り 始 めたんだ。 幸 運 なことに、 常 識 では 考 えられ<br />
ないような 場 所 に 何 度 かたどり 着 いて、 冒 険 を 恐<br />
れない 未 来 志 向 の 人 たちに 巡 り 会 った。ただ、 彼<br />
らが 着 ていたものは、 彼 らのニーズを 満 たしてい<br />
るとは 感 じられなかった」<br />
世 界 有 数 のスポーツやファッションのブランド<br />
で 長 年 にわたって 広 告 を 手 がけた 後 、ニックとス<br />
ティーブが 実 感 したのは、 将 来 を 考 えた 場 合 、ア<br />
パレル 企 業 は、 今 よりもはるかにラディカルであ<br />
るべきだということでした。「そういった 企 業 に、<br />
僕 ら 自 身 が な ろう と 決 め た ん だ 」と ス ティー ブ は<br />
言 います。「トレンドを 追 いかけて、それに 合 う 商<br />
品 を 提 供 する 典 型 的 なブランドとは 違 って、 僕 ら<br />
の 場 合 、あるバージョンの 未 来 を 提 示 すれば、 人<br />
々はそのバージョンの 未 来 にたどり 着 かざるを<br />
得 ないと 思 った」<br />
では、 気 温 が 下 がるほど 強 度 が 増 すジャケット<br />
という 型 破 りなアイテムは、どのような 経 緯 で 発<br />
案 されたのでしょうか。<br />
「 面 白 い ア イ デ ア が な い か どう か 、 常 に 探 し 求<br />
めているんだ」とスティーブは 言 います。 北 極 の 石<br />
油 タンカーや 砕 氷 船 で 使 われていて、 気 温 が 下 が<br />
るほど 強 度 が 増 すロープについて 書 かれたもの<br />
を 読 んだ2 人 。その 素 材 を 利 用 して 生 地 を 製 造 す<br />
ることに 興 味 を 示 すサプライヤーがないかどう<br />
か、 発 掘 に 乗 り 出 します。「その 調 査 の 成 果 と、 過<br />
酷 な 条 件 下 で 服 が 破 ければ 命 に 関 わるという 事<br />
実 を 突 き 合 わせたとき、Indestructible Puffer( 決<br />
して 破 れ な い ダ ウン )ジャ ケット の 素 材 が 見 つ か<br />
っ た と い う わ け 」と ス ティー ブ は 言 い ま す 。<br />
商 品 を 発 売 すれば 即 完 売 となるVollebak 社<br />
は、 今 や 羨 望 の 的 です。スティーブは、 未 来 の 衣 料<br />
がどのように 発 展 すると 見 ているのでしょうか。<br />
「この5 万 年 の 間 、 服 は 僕 らを 暖 かく、 涼 しく、<br />
濡 れ な い よう に して 、 命 を 守 ってくれ た 。た だ 、 今<br />
後 数 十 年 で、 服 は 今 よりもはるかに 多 機 能 にな<br />
る。 外 骨 格 を 使 って 人 の 腕 力 を 強 化 したり、 医 者<br />
になったり」と 彼 は 説 きます。「 人 の 身 体 は 常 にシ<br />
グナルを 発 している。 問 題 は、 着 ている 人 が 心 臓<br />
発 作 を 起 こしそうだとジャケットが 感 知 した 場<br />
合 、そ の デ ー タ を 使 って 、ジャ ケット で 何 が で き る<br />
かということなんだ」<br />
写 真 : BEN QUINTON<br />
「 未 来 からやってきた 服 を 作 りたい」<br />
46
病 気 の 治 療 法 を 発 見 したいと 考 えた 場 合 、まず<br />
病 気 について 知 らなければなりません。しかし、こ<br />
の50 年 間 に 出 版 された 数 千 冊 の 医 学 雑 誌 に 情<br />
報 が 分 散 しているとしたら、いったいどのように<br />
病 気 を 知 ればよいのでしょうか。 人 間 の 処 理 能 力<br />
をはるかに 超 える 量 です。しかし、 今 や 人 工 知 能<br />
が 回 答 を 提 供 できます。<br />
医 学 研 究 者 であり、 起 業 家 であるカテリーナ・<br />
ヴォルツは、 研 究 者 を 支 援 する 電 子 頭 脳 の 構 築<br />
に 携 わっています。この 電 子 頭 脳 は、 疾 患 に 関 す<br />
る 膨 大 な 量 の 研 究 データを 処 理 し、 人 間 では 見<br />
出 せない 場 合 もある 関 連 性 や 解 決 策 を 提 示 しま<br />
す。<br />
ヴォルツは、 米 国 サンフランシスコを 拠 点 とす<br />
るOccamzRazor 社 のCEOです。 同 社 は、 世 界 の<br />
患 者 数 が1,000 万 人 を 超 える 複 雑 な 神 経 変 性 疾<br />
患 であるパーキンソン 病 を 対 象 として、 治 療 法 の<br />
発 見 を 支 援 するために 設 立 されました。<br />
ハーバード 大 学 医 科 大 学 院 を 卒 業 後 、スタンフ<br />
ォード 大 学 で 博 士 号 を 取 得 した 当 時 のヴォルツ<br />
は、 学 究 生 活 に 入 ろうとしていました。しか<br />
し、2016 年 、パーキンソン 病 に 罹 患 していた 近 し<br />
い 人 物 から 電 話 があり、「 大 きなショックを 受 け<br />
た」と 言 います。「 治 療 法 を 見 つけ 出 すと 心 に 誓 い<br />
ました」<br />
バイオ 医 薬 品 に 関 する 全 情 報 の80%は、 医 学<br />
書 や 診 療 文 書 に 記 載 されています。 検 索 を 開 始 す<br />
るには、これらの 学 術 論 文 を 理 解 して 仮 説 の 構<br />
築 を 支 援 できる、 新 たなテクノロジーを 開 発 する<br />
ことが 欠 かせませんでした。<br />
「パーキンソン 病 は 未 解 明 の 部 分 が 多 い 疾 患<br />
です」と 彼 女 は 説 明 します。「 患 者 に 現 れる 症 状<br />
は、 震 え、 嗅 覚 の 喪 失 、 平 衡 感 覚 障 害 など 一 様 で<br />
はありません。ゲノム 学 、プロテオミクス、メタボ<br />
ロミクスといった、 本 質 的 に 異 なる 分 野 の 情 報 を<br />
取 りまとめることが 必 要 になります。<br />
人 間 にとってはあまりに 複 雑 な 作 業 であるため、<br />
関 係 するすべての 要 素 を 把 握 するのは 不 可 能 で<br />
す」そこで、 機 械 学 習 の 専 門 家 、バイオ 医 薬 品 研<br />
究 者 、コンピューター 生 命 工 学 研 究 者 で 構 成 さ<br />
れた 少 人 数 のチームとともに、パーキンソン 病 に<br />
関 係 する 数 百 の 主 要 語 句 をまず 洗 い 出 した 後 、ス<br />
医 療 用 人 工 知 能<br />
カ タ リ ー ナ・ヴ ォ ル ツ<br />
OCCAMZRAZOR 社 CEO<br />
タンフォード 大 学 の 人 工 知 能 研 究 所 と 共 同 して、<br />
論 文 を「 理 解 」できる 機 械 学 習 システムを 開 発 し<br />
ま す 。<br />
「 各 種 の 要 素 と、それらの 間 の 生 物 学 的 関 係<br />
を 識 別 できる 自 然 言 語 処 理 アルゴリズムを 開 発<br />
しました」とヴォルツは 説 明 します。Human<br />
Parkinsomeは、すでに 知 られているとおり、 人 間<br />
と 同 じ 精 度 を 保 ちながら、 同 じ 作 業 を10 倍 の 速<br />
度 で 実 行 できます。「このシステムに 読 み 込 ませた<br />
学 術 論 文 は2,000 万 件 を 超 え、 新 たに 発 表 された<br />
論 文 はすぐにシステムに 取 り 込 んでいます」とヴォ<br />
ルツは 言 います。 研 究 者 は、 提 唱 されている 仮 説<br />
を 照 会 し、 成 果 をすぐにフィードバックすることが<br />
可 能 で 、シ ス テ ム は さら に ス マ ート に な り ま す 。<br />
現 在 、AI 頭 脳 はパーキンソン 病 を 理 解 する 段 階<br />
まで 発 達 し、この 技 術 を 他 の 疾 患 に 応 用 すること<br />
が 可 能 に な っ て い ま す 。「 こ の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム は 、<br />
癌 、アルツハイマー 病 、あらゆる 複 雑 な 生 物 学 的<br />
疾 患 のデータを 入 力 できるように 構 築 されていま<br />
す」 今 なお 発 展 の 初 期 段 階 ではあるものの、 彼 女<br />
は、 医 学 研 究 のあり 方 を 変 えることに 意 欲 を 燃 や<br />
しています。「 病 気 の 治 療 法 発 見 に 利 用 されるソ<br />
フトウェアより、 電 子 メールソフトウェアのほうが<br />
賢 いなんて 滑 稽 ですよね。ただ、 私 はとても 楽 天<br />
的 に 構 えて い ま す 。 私 の 信 条<br />
は、『 不 可 能 なことはない』な<br />
んです」<br />
写 真 : MATHEW SCOTT<br />
「パーキンソン 病 の 治 療 法 を 見 つけ 出 すと 心 に<br />
誓 いました」<br />
49
人 体 へのバイオチップ 導 入<br />
ヨ ワ ン・オ ス タ ー ル ン ド<br />
BIOHAX 社 創 業 者 兼 CEO<br />
幼 少 時 のヨワン・オスタールンドは、サイボーグ<br />
が 大 好 きな 子 供 でした。ヒト 生 物 学 とテクノロジ<br />
ー と い う 組 み 合 わ せ が 、 彼 の 心 を 魅 了 し た の で<br />
す。 成 人 した 彼 は、ピアスなどの 身 体 改 造 によっ<br />
て 人 体 を 強 化 する 仕 事 に 就 きます。しかし、バイオ<br />
チップ 企 業 であるBiohax International 社 を 設 立<br />
したことで、 一 躍 、 論 争 と 巨 大 なビジネスが 渦 巻<br />
く 業 界 の 寵 児 になります。 彼 は、 私 たち 全 員 を 何<br />
らかの 形 でサイボーグ 化 するための 扉 を 開 こうと<br />
しているのでしょうか。<br />
バイオチップの 導 入 とは、ガラス 製 または 樹 脂<br />
製 の 小 さな 円 筒 容 器 に 収 めたマイクロチップを、<br />
皮 膚 よりも 奥 深 く、 通 常 は 人 差 し 指 と 親 指 の 間 に<br />
埋 め 込 む 工 程 です。 埋 め 込 みが 完 了 すると、チッ<br />
プ 上 の 一 意 識 別 子 を 利 用 して、 個 人 の 診 療 情 報<br />
のロック 解 除 、セキュリティロック 付 きドアの 開<br />
放 、 場 合 によっては 代 金 の 支 払 いなど、プログラ<br />
ムで 各 種 の 機 能 を 実 行 できます。オスタールンド<br />
は、このテクノロジーによって 将 来 的 に 個 人 の 安<br />
全 が 強 化 され、この 上 ない 便 利 な 社 会 が 実 現 す<br />
ると 主 張 しています。<br />
「 自 分 の 身 体 に 埋 め 込 んだテクノロジーの 欠<br />
片 を 使 って、 初 めて 実 際 にプログラミングを 施 し<br />
たとき、13 歳 の 頃 の 夢 が 実 現 したんだ」と 彼 は 言<br />
います。「まずやったのは、チップに 電 話 発 信 のプ<br />
ログラムを 組 み 込 むことだった。だから、 僕 がスマ<br />
ートフォンを 腕 に 当 てると、 僕 の 妻 に 電 話 がかか<br />
るんだ」<br />
テクノロジーを 人 体 に 埋 め 込 むという 発 想 は、<br />
特 に 目 新 しいものではありません。 心 拍 を 調 整 す<br />
る 電 動 ペースメーカーは、1960 年 代 から 人 体 に<br />
埋 め 込 ま れ て い ま す 。ペ ット を 識 別 す る た め の バ<br />
イオチップも、 長 年 にわたって 利 用 されています。<br />
従 来 と 異 なるのは、たとえ 必 須 ではなくても、 身<br />
体 へ の テ クノロ ジ ー の 追 加 ( バ イ オ ハ ッキ ン グ )に<br />
人 々が 積 極 的 であることです。これは、 人 間 の 姿<br />
形 という 聖 域 に 対 する 態 度 としては、 今 まで 見 ら<br />
れなかったものです。 人 々は、これまでの 人 類 を<br />
超 える 存 在 になることに 魅 力 を 感 じつつありま<br />
す。<br />
「これまで、 人 間 は、 身 体 の 外 側 にあるすべて<br />
の 対 象 を 最 適 化 しようとしてきた。とても 多 くのリ<br />
ソースが 必 要 な 行 為 であり、ストレスを 生 む」とオ<br />
スタールンドは 言 います。「バイオハッキングなら、<br />
人 間 が 物 事 のエコシステムの 一 部 になる。 人 間<br />
は 鍵 であって、あらゆる 意 味 において、 人 間 が 鍵<br />
の 管 理 者 なんだ」<br />
それは 多 くの 人 を 惹 きつけるスピードや 利 便<br />
性 が 、 約 束 さ れ る こ と に な りま す 。Biohax 社 は 、 創<br />
業 の 地 であるスウェーデンでは 比 肩 する 存 在 が<br />
ないほどの 成 功 を 収 め、 受 け 入 れられています。<br />
スウェーデンの 国 営 鉄 道 網 はバイオチップ 対 応<br />
であり、フィットネスジムのチェーンであるNordic<br />
Wellnessでは、 会 員 が 手 をかざすと 入 場 ゲート<br />
や ロ ッ カ ー が 開 き ま す 。 現 在 、Biohax 社 のチップ<br />
は 世 界 各 地 の 約 6,000 人 が 利 用 しています。この<br />
変 化 は、 革 命 的 なものになる 可 能 性 があります。<br />
「(バイオハッキングの) 普 及 要 因 になるのは、 最<br />
終 的 には、 実 生 活 でどのようなメリットを 得 られ<br />
るのかを 人 々が 理 解 することだ」とオスタールン<br />
ドは 言 います。「 鍵 や 銀 行 のカードをなくさないか<br />
どう か 、 心 配 し なくて も よくな る と 考 えて み て ほ し<br />
い」<br />
このテクノロジーは 今 なお 論 争 の 的 となって<br />
いて、 多 くの 人 がプライバシーの 面 や 宗 教 上 の 理<br />
由 から 反 対 論 を 唱 えています。しかし、バイオチッ<br />
プ 導 入 論 は 徐 々に 勢 いを 増 しつつあります。「チッ<br />
プが 埋 め 込 まれていれば、 医 療 従 事 者 や 医 療 機<br />
関 が 個 々 人 を 識 別 して、たとえ 意 識 不 明 であって<br />
もその 人 の 医 療 状 況 の 情 報 を 取 得 することが、ま<br />
もなく 可 能 になる」「 間 違 いなく、 人 の 命 を 救 うこ<br />
とになるんだ」<br />
写 真 : JANNICK BOERLUM<br />
「 自 分 の 身 体 に 埋 め 込 んだテクノロジーを 使 って、 初 めてプログラミング<br />
を 施 したとき、13 歳 の 頃 の 夢 が 実 現 したんだ」<br />
50
生 きるための 力 をもたらす<br />
失 敗 について<br />
エ リ ザ ベ ス・デ イ の ポ ッド キ ャ スト「 How To Fail」( 失 敗 のしかた)の 視 聴 者 は、すでに500 万 人 を 数 えます。<br />
なぜ 大 ヒットしたのか、そしてこのポッドキャストから 何 を 学 べるでしょうか。<br />
失 敗 という 言 葉 は、これまでとは 意 味 が 違 います。かつては 大<br />
きな 痛 手 となる 言 葉 でしたが、 近 年 、フェイルファスト( 早 く 失<br />
敗 すること)やフェイルフォワード( 失 敗 しても 前 を 向 くこと)が<br />
奨 励 されている 中 で、 名 誉 回 復 を 果 たしています。ソーシャル<br />
メディアでこれ 見 よがしに 拡 散 されてしまう 個 人 攻 撃 の 災 難 か<br />
ら、 現 れては 消 えるシリコンバレー 起 業 家 の 精 神 に 至 るまで、<br />
時 代 の 精 神 を 映 すものとして、 失 敗 という 言 葉 がこれほど 多 く<br />
登 場 したことは、かつてありません。エリザベス・デイは、そんな<br />
「 失 敗 」の 議 論 の 中 心 にいます。<br />
筆 者 の 長 年 の 友 人 であるデイは、「これまでの 実 績 の 中 で、<br />
失 敗 に 関 するものが 最 も 成 功 を 収 めているというのは、 何 と<br />
も 皮 肉 ね」と 語 ります。「ただ、 自 分 がもろくて 弱 いことを 素 直<br />
に 受 け 止 めて、そうすることを 他 の 人 にも 勧 めたら 反 響 があっ<br />
たというのは、うれしく 思 っているわ」<br />
筆 者 の 知 己 の 中 でも、デイは 屈 指 の 成 功 者 であると 思 えま<br />
す。3 冊 の 小 説 を 上 梓 し、 自 身 のポッドキャスト「How To Fail」<br />
では、SASのメンバーや 作 家 アンディ・マクナブから、 革 新 的 な<br />
女 優 であり 脚 本 家 であるフィービー・ウォーラー・ブリッジま<br />
で、 世 界 有 数 の 著 名 人 と 対 談 を 繰 り 広 げています。 洞 察 力 のあ<br />
る 質 問 を 投 げかけ、ゲストの 本 音 や、そこから 学 んだことを 鮮<br />
やかに 聞 き 出 すのがデイです。<br />
一 方 、 表 舞 台 での 成 功 の 陰 には、 彼 女 自 身 の 葛 藤 もありま<br />
す。「 特 に 女 性 の 場 合 、 世 間 と 向 き 合 うために 体 裁 を 繕 うよう<br />
に 求 められることが 少 なくないと 思 う」と 漏 らします。「 私 たち<br />
は 最 新 のinstagramの 投 稿 のように、 完 璧 な 暮 らしがキュレー<br />
ションされた 世 界 に 住 んでいる。もちろんそれが 真 実 ばかりで<br />
はないとわかっているけど、そういう 自 分 たちで 定 めたスタン<br />
ダ ー ド に 合 わ せ て 生 きる の は す ごく 難 し い わ 」<br />
オックスフォード 大 学 を 優 秀 な 成 績 で 卒 業 したデイは、 失 敗<br />
に 関 する 自 身 の 葛 藤 を、2018 年 のポッドキャスト 制 作 に 生 かし<br />
ました。「30 代 に 子 供 を 持 とうとして、 体 外 受 精 に2 回 失 敗 した<br />
後 、 妊 娠 3か 月 で 流 産 が1 回 、とうとう 上 手 くいかなかった。 何 か<br />
心 に 決 めたことを 達 成 できなかったのは、それが 初 めて」と 言<br />
います。その 後 ほどなく、 彼 女 は 夫 と 離 婚 します。さらに 別 の 男<br />
性 と 恋 に 落 ちますが、 思 いがけず 失 恋 してしまいます。<br />
「39 歳 の 誕 生 日 の3 週 間 前 だったの」と 彼 女 は 振 り 返 ります。<br />
「 本 当 にひどい 体 験 で、 思 ってもみないことだった」そうした 出<br />
来 事 を 経 てふさぎ 込 む 日 々が 続 き、それまでの 人 生 を 見 つめ<br />
直 そうとします。 誰 かの 悲 劇 的 な 人 生 に 比 べれば、まだ 軽 い 出<br />
来 事 かもしれないと 彼 女 は 十 分 わかっているけれど、とこのよ<br />
うに 続 けています。「 失 敗 というのは、すごく 個 人 的 なことだか<br />
ら。 私 たちは 誰 もがそれぞれ、 自 分 自 身 やこれからの 人 生 につ<br />
いて 期 待 を 抱 いているわ」<br />
デイの 視 点 の 中 心 にあるのは、 人 は 何 かに 失 敗 したとき、 自<br />
分 自 身 について、 成 功 した 場 合 よりも 多 くを 学 べるという 知 見<br />
です。「『こういう 特 別 なやり 方 で 失 敗 しなさい、 上 手 に 失 敗 し<br />
な さ い 』と か 言 い た い わ け で は な い の 」と デ イ は 言 い ま す「 生 き<br />
ていく 中 で 試 練 を 経 験 して、 悲 嘆 に 暮 れる 時 期 があり、やがて<br />
受 け 入 れるというのは、まったく 理 にかなっているわ。 私 は、 失<br />
敗 をやみくもに 賞 賛 したりしない。 言 いたいのは、 失 敗 は 誰 に<br />
でも 起 き 得 るということ。 失 敗 は、この 世 界 が 別 の 方 向 から 与<br />
えてくれるちょっとした 合 図 や、 学 ばざるを 得 ない 教 訓 だと 捉<br />
えることにしたの。 失 敗 したからといって、 私 が 失 敗 作 になるわ<br />
けではないとわかって、 生 きていく 中 で 本 当 に 助 けになった」<br />
彼 女 自 身 の 人 間 関 係 のトラウマが 契 機 となって、「How To<br />
Fail」の 構 想 が 生 まれます。「 失 恋 したときは、 音 楽 を 聴 くと 落<br />
ち 込 むから 聴 いていなかった」とデイは 言 います。「インスピレ<br />
ーションのもとになるポッドキャストをたくさん 聴 いたわ」 筆 者<br />
は、 当 時 ロサンゼルスに 住 んでいた 彼 女 に 寄 り 添 い、 日 中 は 忙<br />
しく 立 ち 回 って、 夜 はハリウッドの 丘 で 過 ごしました。 絶 えずお<br />
しゃべりして、こうしたすべてのことに 何 かの 意 味 を 見 出 そうと<br />
していました。「この 世 界 は 混 沌 としていて、それはとても 怖 い<br />
ことだと 思 う」と 彼 女 は 言 い 添 えます。「 私 たちが 失 敗 を 恐 れる<br />
理 由 は、まさにそこにある。 失 敗 は、 上 手 くコントロールでき<br />
文 : Lotte Jeffs 画 : Joël Penkman<br />
53
るという 幻 想 の 鎧 にある 隙 間 なの」<br />
デイは、 現 実 的 な 形 で 人 生 と 関 わっていくこと、 自 分 の 手 が<br />
及 ばない 事 柄 (たとえば、 人 間 関 係 にありがちなこと)に 責 任<br />
をとろうとしないことを 力 説 します。 何 らかの 状 況 の 悪 化 を 経<br />
験 したとしても、 自 分 自 身 に 対 する 期 待 や、 社 会 から 寄 せられ<br />
る 期 待 を 手 放 せば 自 由 になれます。<br />
「ロサンゼルスにいたとき、そういったあらゆる 事 柄 につい<br />
て、さまざまな 境 遇 の 女 性 たちと 話 をしたわ」とデイは 言 いま<br />
す。「 私 の 年 齢 でも、みずから 子 どもを 持 たない 選 択 をした 女<br />
性 はいくらでもいる。 判 断 しなければならないことがぐっと 減<br />
るから、 解 放 感 があるわ」 自 分 自 身 に 対 する 期 待 を 見 つめ 直 す<br />
ことで、 失 敗 は 変 化 のみなもとであるという 彼 女 の 基 本 的 な<br />
姿 勢 が 固 ま り 始 め ま し た 。<br />
「 私 にとって、 失 敗 とは 何 かがプラン 通 りに 進 まないこと」<br />
と 彼 女 は 熱 意 をこめて 続 けます。「だけれど、それは 自 分 で 思<br />
いどおりにプランをコントロールできたし、 実 際 にプランを 立<br />
てたということそのプランを 掘 り 下 げてみると、 社 会 的 条 件 に<br />
よって 説 明 できることが 多 いの。かつての 私 のプランは 結 婚 し<br />
て 子 供 を 持 つことで、それは1980 年 代 のいろんなラブコメの<br />
公 式 に な って い た 。そ の プ ラ ン が 思<br />
惑 どおりに 進 まなかったとき、 私 の<br />
目 の 前 にあったのは、 何 も 描 き 込 ま<br />
れ な い ま ま の カ ン バ ス だ っ た 。そ れ<br />
は 恐 ろしいことだけど、 同 時 に 解 放<br />
感 もあったの」<br />
彼 女 は 心 を 開 いて 自 由 に 話 すこ<br />
とで 新 たな 視 点 を 見 つけると、 自 身<br />
の 体 験 を 他 の 人 に 向 けて 発 信 する<br />
というアイデアが 浮 かびました。<br />
「 自 分 の 辛 い 体 験 から 得 られたこと<br />
を ポッド キ ャスト で 打 ち 明 け て 、もっ<br />
と 多 くの 人 に 知 ってもらえたらどうなるだろう」と 彼 女 は 自 問<br />
します。このとき、 筆 者 はポッドキャストが 名 案 であることには<br />
頷 きましたが、あれほど 多 くの 人 の 共 感 を 得 る 結 果 になるとは<br />
想 像 していませんでした。「 正 直 に 言 えば、 聴 いてくれる 人 がた<br />
とえ1 人 だったとしても、まったく 気 にしなかった」とデイは 言 い<br />
ます。「そのポッドキャストが 一 晩 で 何 千 回 もダウンロードされ<br />
て、 本 当 に 驚 いた。シーズンの 終 盤 には、それが 数 万 回 になっ<br />
て。 今 では500 万 回 超 えだものね」<br />
筆 者 は、 失 敗 というテーマの 捉 え 方 について、 彼 女 が 気 づい<br />
た 男 女 のゲストの 差 に 関 して 質 問 しました。 彼 女 は、こう 説 明<br />
しています。「 第 1シーズンで 話 を 聞 いた 男 性 ゲストたちは、1 人<br />
を 除 いて 全 員 、『 僕 は 失 敗 したことがないと 思 っているから、こ<br />
のポッドキャストにふさわしいかどうかわからないんだ』と 言 っ<br />
たの。 女 性 は 全 員 、『 失 敗 してばかりだから、どれか3つに 絞 る<br />
なんて 無 理 !』と 言 ったのに。 男 性 は 尊 大 な 人 たちではないし、<br />
心 を 開 いて 話 してくれた。 男 性 は、 失 敗 を 失 敗 と 見 なしていな<br />
い 可 能 性 が 高 いみたい。 人 生 について、 女 性 よりも 楽 観 的 に 捉<br />
えているの」ポッドキャストが 第 7シーズンに 達 した 今 、 視 聴 者<br />
たちは、 自 分 自 身 の 脆 さを 受 け 入 れることに 前 向 きになってき<br />
て い ま す 。<br />
「 失 敗 は、 上 手 くコントロ<br />
ールできるという 幻 想 の<br />
彼 女 がまさに 人 生 の 転 機 となったゲストとして 挙 げたのは、<br />
先 のGoogle X 最 高 業 務 責 任 者 であり、 幸 せをつかむためのア<br />
ルゴリズムを 開 発 したモー・ガウダットです。デイは、このように<br />
振 り 返 っています。「 彼 は『 君 は、 絶 えず 心 配 事 を 抱 えている 君<br />
の 脳 とは 別 の 存 在 だ。 脳 は、 体 中 に 血 液 を 巡 らせている 心 臓 と<br />
同 じように、 有 機 的 な 働 きで 思 考 を 生 み 出 している。 君 は、 君<br />
の 人 間 性 が 血 液 で 決 まるとは 考 えていないだろう。じゃあ、な<br />
ぜ 思 考 によって 決 まると 考 えるんだい? 物 事 をどのように 捉 え<br />
るかは、 君 が 選 べるんだ』と 言 ったの」<br />
ガウダットの 息 子 アリは、ごくありふれた 手 術 を 受 けている<br />
間 に、21 歳 の 若 さで 命 を 落 としました。 想 像 を 絶 する 心 の 傷 を<br />
負 ったモーが、 毎 朝 起 きて 最 初 に 考 えるのは「アリは 死 んでし<br />
まった」でした。デイは 言 います。「しばらく 経 って、 彼 は『アリは<br />
死 んだが、この 世 界 に 確 かに 生 きていた』と 考 えることに 決 め<br />
たそうなの。 考 えていることは 同 じだけれど、 裏 返 しにしたの<br />
ね」<br />
ポッドキャストがきっかけで 生 放 送 が 行 われ、デイの 同 名 の<br />
書 籍 『 How To Fail』も 出 版 さ れ て 、ベ スト セ ラ ー に なって い ま<br />
す。デイは 新 作 小 説 のほか、『Failosophy』( 失 敗 の 哲 学 )と 題<br />
する 新 たな 著 作 にも 取 り 組 んでいま<br />
す。「 私 の『 失 敗 の 原 理 』に 基 づいて、<br />
失 敗 に 対 処 するための 実 用 的 な 手<br />
引 きになっているわ」と 彼 女 は 説 明<br />
し ま す 。「 ひ ら め き の 元 に な る 引 用<br />
と、わ か りや す い アド バ イス を 組 み<br />
合 わせているの」<br />
生 番 組 は、デイのキャリアの 中 で<br />
も 注 目 の 集 まる 仕 事 の1つとなって<br />
います。 毎 回 、 冒 頭 は 台 本 のない20<br />
分 間 の 一 人 語 りで 始 まります。「 本<br />
当 に 心 細 いけれど、もう 一 度 殻 を 脱<br />
ぎ 捨 てて、 心 からの 言 葉 を 話 したかった」<br />
そういったデイの 誠 実 さや 怖 れることのない 無 防 備 さに、 視<br />
聴 者 は 惹 きつけられます。 彼 女 は、いつでも 壁 を 取 り 払 ってつ<br />
まずきを 認 めます。キラキラした 完 璧 な 暮 らしを 世 間 に 発 信 す<br />
るという 罠 に 陥 りがちな 時 代 にあって、この 姿 勢 はすがすがし<br />
く 映 ります。 誰 もが 不 完 全 であるということが、 動 かしがたい 現<br />
実 だからです。 失 敗 は、 人 生 という 旅 から 決 して 切 り 離 せない<br />
の で す 。<br />
鎧 にある 隙 間 なの」<br />
54
砂 と 未 来 の 展 望<br />
わずか50 年 あまりで、ドバイは 砂 漠 の 街 から 映 画 産 業 の 街 へと 様 変 わりしました。<br />
レンジローバーの50 周 年 を 記 念 して、 時 を 駆 け 抜 ける 至 福 の 旅 をお 届 けします<br />
文 : Arsalan Mohammad 写 真 : John Wycherley
アラブ 諸 国 は、 今 日 のように 平 和 な 日 々ばかりで<br />
はありませんでした。 砂 漠 を 二 分 する、 鏡 のように<br />
滑 らかなタールマカダム 舗 装 の 街 路 。 駆 け 抜 ける<br />
レンジローバーの 車 内 は、この 上 ない 静 寂 に 包 ま<br />
れています。 砂 まじりの 風 が 道 を 横 切 り、 行 く 手 に<br />
真 新 しい 砂 丘 を 形 作 ろうとします。 道 々にぽつん<br />
と 立 ちすくむ 標 識 は、すでに 半 ば 埋 もれています。<br />
何 世 紀 にもわたって、この 地 域 は 部 族 間 闘 争<br />
の 嵐 に 見 舞 われてきました。わずか50 年 ほど 前 、<br />
それまで 対 立 関 係 にあった 諸 王 国 が 重 要 な 決<br />
断 を 下 しました。アブダビ 首 長 国 の 指 導 者 であっ<br />
たサミアの 砂 漠 宮 殿 で、シェイク・ザイードは 長<br />
らく 対 立 していた 首 長 国 ドバイの 君 主 であるシ<br />
ェイク・ラー シド・ビン・サイード・アル・マクトゥー<br />
ムと 会 談 し、 衝 突 を 終 結 させるための 連 合 国 家<br />
構 想 を 提 案 したのです。8 日 後 、 指 導 者 たちによっ<br />
て、1971 年 のアラブ 首 長 国 連 邦 の 成 立 につなが<br />
る 合 意 文 書 への 署 名 がなされました。 以 後 、この<br />
地 には 平 和 と 急 速 な 発 展 が 訪 れます。<br />
その 当 時 は、どれほど 先 見 の 明 がある 預 言 者<br />
でも 予 想 できなかったでしょう。 産 油 国 である 首<br />
長 国 連 邦 第 2の 都 市 となったドバイで、ブロックチ<br />
レンジローバーが 世 に 送 り 出 された1970 年 の<br />
ドバイの 雰 囲 気 を 味 わうため、 一 行 は 埠 頭 へと<br />
ハンドルを 切 りました。ドバイ 旧 市 街 は、その 背 後<br />
にある 過 酷 な 砂 漠 と 対 峙 しながら、いつの 時 代 も<br />
海 に 臨 んでいました。この 地 域 は 海 賊 の 出 没 と 真<br />
珠 産 業 で 知 られていました。どちらも、 糧 としてい<br />
たのはペルシャ 湾 の 海 です。ドバイ 旧 市 街 にあっ<br />
た 貧 しい 漁 民 の 家 屋 すらも、この 海 から 採 取 した<br />
珊 瑚 を 資 材 として 建 てられていました。その 家 並<br />
みは 姿 を 消 して 久 しい 一 方 、19 世 紀 から20 世 紀<br />
にかけて 使 われた 大 型 の 貿 易 帆 船 であるダウ 船<br />
は 、ド バ イ ク リ ー ク を 往 き 来 す る と い う 形 で は あ り<br />
ますが、 旅 行 者 たちを 乗 せて 今 日 も 水 上 を 渡 って<br />
います。 埠 頭 には、 日 中 の 厳 しい 陽 射 しをしのごう<br />
とする 労 働 者 の 姿 が 見 え、 気 だるい 空 気 が 漂 って<br />
います。 有 機 的 なカーブを 描 く 木 造 の 帆 船 は、 鉄<br />
とガラスで 覆 われた 現 代 都 市 の 街 角 と 好 対 照 を<br />
な して い ま す 。<br />
埠 頭 越 しに 右 側 から 見 ると、 砂 丘 に 摩 天 楼 の<br />
種 が 蒔 かれる 以 前 、 屋 根 の 低 い 建 物 と、 壮 麗 な 木<br />
造 帆 船 とが 入 り 交 じっていた 往 時 の 姿 に 思 いを<br />
馳 せることができます。 陽 射 しが 容 赦 なく 照 りつ<br />
ける 中 で、レンジローバーの 涼 やかな 車 内 に 戻 る<br />
幸 せを 味 わいながら、 次 の 目 的 地 へ 出 発 です。<br />
帆 船 が 行 き 交 う 中 、 起 業 家 のライアン・ガズダ<br />
ルは、「もし 人 生 を 最 初 からやり 直 したいと 思 った<br />
ら、その 場 所 はドバイだね」とアイスティー 越 しに<br />
漏 らしました。 彼 は 隣 国 オマーンのマスカット 出<br />
身 で、 現 代 のドバイを 物 語 るうえでは 格 好 の 人 物<br />
でしょう。ガズダルは、バックパック1つと 現 金 100<br />
ポンドを 握 りしめ、2003 年 にドバイの 土 を 踏 みま<br />
した。 今 日 では、ブルジュハリファに 居 を 構 え、 実<br />
に45か 国 でプロジェクトが 展 開 されているフード<br />
ホスピタリティー 企 業 の 創 業 者 です。<br />
「この20 年 間 、 街 が 変 わる 様 子 をこの 目 で 見<br />
てきたよ」と 彼 は 微 笑 みます。「105か 国 を 旅 して<br />
き て 、 間 違 い な く 言 え る 。こ の 街 ほ ど の ペ ー ス で<br />
改 革 と 発 展 が 進 んでいる 都 市 は、 世 界 のどこに<br />
もないよ」<br />
ドバイクリークからもう 一 度 街 を 抜 け 出 し、か<br />
つて、 砂 漠 の 真 新 しい 道 沿 いにぽつんと 立 ってい<br />
たアイコニックな 時 計 塔 を 通 り 過 ぎます。この 時<br />
計 塔 は、 未 来 に 期 待 を 寄 せていた1960 年 代 のド<br />
バイを 象 徴 する 存 在 です。 以 後 長 らく、 発 展 の 象<br />
徴 としてさまざまなものに 囲 まれ、その 役 割 を 取<br />
って 代 わられてきました。 私 たちはヨガの 予 約 が<br />
夢 を 乗 せた 帆 船<br />
レンジローバーの 描 く<br />
現 代 的 な 輪 郭 が、ダウ<br />
船 の 滑 らかな 曲 線 に<br />
縁 取 られている<br />
ェーン 技 術 の 採 用 準 備 が 進 められ、 建 設 業 では<br />
再 生 可 能 な 資 材 が 優 先 的 に 使 用 され、 幸 福 担 当<br />
国 務 大 臣 が 任 命 され、 世 界 初 のハイパーループ<br />
鉄 道 網 が 敷 かれ、3Dプリントの 超 高 層 ビル 群 が<br />
林 立 する 未 来 が 到 来 することを。 今 日 のドバイに<br />
は、 数 千 平 方 キロにわたって 小 売 店 やホテルが<br />
軒 を 連 ね 、 企 業 の オフィス が 立 ち 並 ん で い ま<br />
す。50 年 前 の 人 口 はわずか65,000 人 でした。 現 在<br />
の 人 口 は300 万 人 あまりで 推 移 し、その85%が「<br />
ドバイドリーム」を 追 う 海 外 からの 移 住 者 です。<br />
ドバイ 万 博 も 開 催 予 定 であり、 世 界 有 数 の 巨<br />
大 都 市 となるに 至 っています。 万 博 は、 世 界 的 規<br />
模 の 貿 易 や 開 発 を 推 進 したり、 文 化 の 紹 介 を 目<br />
的 として、 世 界 各 地 で 数 年 ごとに 開 催 されます。<br />
中 東 地 域 では 初 の 開 催 であり、 世 界 各 地 から 数<br />
百 万 人 が 訪 れると 見 込 まれ、ドバイは 祝 賀 ムード<br />
に 包 ま れ て い ま す 。<br />
この 街 が 抱 く 発 展 の 未 来 像 に 囲 まれながら、<br />
中 心 地 にそびえ 立 つ 数 々の 摩 天 楼 を 縫 うように<br />
走 ると、ドバイの 急 速 な 発 展 の 足 跡 をたどること<br />
ができます。レンジローバーも、この50 年 間 にわ<br />
たってイノベーションを 重 ねてきました。ドバイが<br />
近 代 的 な 街 へと 様 変 わりしてからも、ラグジュア<br />
リーSUVという 概 念 を 塗 り 替 えてきました。 今 日<br />
では、ドバイと 同 様 に、ラグジュアリーの 頂 点 に 立<br />
っています。<br />
58
あったため、 時 計 塔 も 後 にして、 再 び 砂 丘 の 方 面<br />
に ハ ンド ル を 切 り ま し た 。 向 か う 先 は ヨ ガ が 行 わ<br />
れ る 建 物 で す 。<br />
建 てられたばかりのアル・クスバンヨガホール<br />
は、この 都 市 国 家 の 新 たな 未 来 を 指 し 示 してい<br />
ます。 絢 爛 に 彩 られたダウンタウンからわずか30<br />
マイルであるにもかかわらず、 別 の 惑 星 に 移 動 し<br />
たかのような 雰 囲 気 が 漂 っています。アル・マル<br />
ムーン 砂 漠 保 護 区 の 中 にたたずむこのヨガホー<br />
ルの 輪 郭 は、ハート 型 です。 上 空 から 見 ると、まる<br />
で 砂 丘 に 舞 い 降 りた 砂 色 の 蝶 のよう。この 施 設<br />
は、2018 年 に、ドバイの 指 導 者 であるシェイク・<br />
モ ハ メド・ビン・ラー シド・アル・マクトゥーム が 立<br />
ち 上 げたアル・マルムーン 構 想 の 一 環 です。ドバ<br />
イ 原 生 の 野 生 動 植 物 を 保 護 し、ドバイを 自 然 界<br />
と 結 ぶという 趣 旨 のプロジェクトが 母 体 となっ<br />
ています。<br />
建 物 自 体 は、 陽 よけの 天 蓋 いっぱいに 有 機 的<br />
に 形 作 られた 開 口 部 から 光 が 降 り 注 ぎ、 繊 細 で<br />
優 美 な 佇 まいを 見 せます。 建 物 の 中 は 静 謐 さを<br />
湛 えています。 体 を 伸 ばし、 瞑 想 にふけるには 申<br />
し 分 のない 場 所 であることを 実 感 できるでしょう。<br />
この 静 寂 のひとときから、がらりと 河 岸 を 変 え<br />
ましょう。レーシングドライバーであり、 砂 丘 でドラ<br />
ッグスター を 巧 み に 操 るガイス・アル・ファラーサ<br />
に 会 います。 染 みひとつない 純 白 のカンドーラに<br />
身 を 包 んだこの 陽 気 な 青 年 は、 生 まれながらに<br />
オフロード 走 行 シーンは 専 用 の 場 所 で 許 可 を 得 て 撮 影 したものです<br />
アラブ 首 長 国 連 邦 の 国 民 となった 世 代 です。ドバ<br />
イのめまぐるしい 発 展 については、 前 向 きに 楽 観<br />
して い ま す 。<br />
ドラッグレースとサーキットでの 競 技 歴 は20 年<br />
になるガイスですが、 数 千 人 ものInstagramフォ<br />
ロワーには、 砂 漠 を 疾 駆 するドラマチックな 動 画<br />
の 投 稿 者 としての 活 動 のほうが 知 られています。<br />
砂 丘 の 凹 凸 を 猛 スピードで 駆 け 巡 り、 卓 抜 したマ<br />
シンコントロールで 魅 せる 姿 には、 思 わず 目 を 奪<br />
わ れ ま す 。 話 を ラ ンド ロ ー バ ー に 向 け る と 、 表 情<br />
が 輝 きました。「 子 供 の 頃 、 父 は2 台 のランドロー<br />
バーに 乗 っていて」と 彼 は 語 ります。「 砂 漠 を 走 る<br />
とき、 最 高 に 快 適 なのは、いつだってレンジロー<br />
バ ー だ っ た 」<br />
彼 の 主 張 を 確 かめるべく、 果 てしない 砂 丘 に 飛<br />
び 込 みました。SVOデザインパックを 装 備 したレ<br />
ンジローバー Vogueは 、 回 転 す る ホ イ ー ル か ら<br />
大 きな 弧 を 描 くように 砂 を 巻 き 上 げ、 半 ば 走 るよ<br />
うに、 半 ば 翔 ぶように 砂 丘 の 頂 点 に 達 します。こ<br />
の 爽 快 な 瞬 間 を 楽 しみつつ、パフォーマンスを 見<br />
せつけるかのような、 終 始 滑 らかなクルージング<br />
で 魅 せ てくれ ま し た 。 日 が 傾 き 始 めたところで、<br />
私 たちはレンジローバーの 快 適 なシートに 身 を<br />
委 ねながら 帰 途 に 就 きました。<br />
その 翌 日 に 満 喫 したのは、 現 代 のドバイです。<br />
ドバイのダウンタウンにある 世 界 一 高 いビル、ブ<br />
ルジュハリファの 威 厳 を 感 じながら、ドバイで 急<br />
砂 漠 に 咲 く 薔 薇 ( 左 )<br />
大 志 と 環 境 の 両 立 を<br />
目 指 す 精 神 が、 息 をの<br />
むほどの 美 しさを 織 り<br />
なすヨガホール<br />
61
「 不 可 能 なことも 現 実 になるかのような<br />
思 いにとらわれる」<br />
ショータイムの 始 まり<br />
テレビとエッフェル 塔 の 共 通 点 は 何<br />
でしょうか。 最 初 の 万 博 がロンドン<br />
で 開 催 されて 以 来 、この150 年 間 で<br />
世 に 送 り 出 されたその 他 多 くの 著<br />
名 な 発 明 品 と 同 様 に、どちらも 万 博<br />
を 機 に 登 場 したものです。4 年 ごとに<br />
開 催 されるこのイベントは、2021 年<br />
はドバイで 開 催 されます。 中 東 、アフ<br />
リカ、 南 アジア 地 域 では 史 上 初 開 催<br />
となります。「 心 をつなぎ、 未 来 を 創<br />
造 す る 」を テ ー マ とし たド バ イ 万 博<br />
の 会 期 は、2021 年 10 月 から2022 年<br />
3 月 。 人 類 の 力 強 さ、 団 結 、 連 帯 を 称<br />
える 多 彩 なアクティビティー、 展 示 、<br />
催 しを 楽 しむ 来 場 者 の 数 は、2,500<br />
万 人 と 予 想 されています。 下 の 写 真<br />
のような 前 衛 的 なデザインを 前 面<br />
に 押 し 出 し、 年 月 をかけて 整 備 が 進<br />
められ、 一 般 的 に 国 家 の 記 念 碑 とさ<br />
れる(かつ、70 億 ポンドもの 巨 額 が<br />
投 じられた)この 事 業 は、「 世 界 最 大<br />
のショー」と 銘 打 たれています。 詳 細<br />
については、expo2020dubai.com<br />
をご 覧 ください。<br />
光 を 放 つ 塔 わずか 数<br />
十 年 で、ドバイの 光 輝<br />
く 稜 線 が 砂 漠 から 切 り<br />
立 つまでになった<br />
成 長 するデザインコミュニティーがあるデザイン<br />
地 区 の 付 近 をクルージングします。この 地 区 のロ<br />
ータリーや 小 さな 公 園 のあるエリアには、 国 際 色<br />
豊 かなデザインの 粋 が 集 められた、 鮮 やかな 彫<br />
刻 が 立 ち 並 ん で い ま す 。<br />
このような 施 策 は、トレンドの1つに 過 ぎませ<br />
ん。その 豪 奢 さや 旺 盛 な 消 費 で 知 られるドバイ<br />
は 、 近 年 、 新 た な 物 語 を 生 み 出 そう と 努 め て い ま<br />
す。ラグジュアリーさを 保 ちつつ、エシカルで 分 別<br />
のある 生 活 様 式 を 模 索 する 最 中 にあります。 今<br />
日 、ドバイの 建 築 家 やインテリアデザイナーは、<br />
デザインにリサイクル 素 材 を 採 用 することが 増 え<br />
て い ま す 。<br />
芸 術 活 動 の 支 援 も、こうした 新 たな 取 り 組 みの<br />
1つです。ドバイのアルサーカル 芸 術 地 区 は、アー<br />
トギャラリーや 展 示 スペースが 立 ち 並 ぶ 一 角 とし<br />
て 発 展 し、 中 東 全 体 から 集 まる 芸 術 作 品 が 紹 介<br />
されているほか、アートフェアも 年 1 回 開 催 されて<br />
います。それはすべて、ビーチ、 超 高 層 ビル、ショッ<br />
ピングモールという 文 化 から、 地 球 上 でより 軽 や<br />
か に 、 価 値 あ る 何 か を も た ら す 街 へ と シフトす る<br />
取 り 組 みの 一 環 です。<br />
次 にたどり 着 いたドバイフレームは、 思 わず 息<br />
をのむ 新 たな 街 のランドマークで、 中 心 地 の 超 高<br />
層 ビル 群 から 離 れた 場 所 に 位 置 しています。 地 上<br />
150mにそびえ 立 つこの 建 物 は、2020 年 ドバイ 万<br />
博 (2021 年 に 延 期 予 定 )のシンボルである 金 環<br />
の 装 飾 が 全 面 にあしらわれ、2つのタワーとその<br />
間 に 展 望 台 をそなえています。その 立 ち 姿 は、ド<br />
バイの 旧 市 街 と 新 市 街 を 切 り 取 る 額 縁 のように<br />
なっています。 一 方 から 見 ると、 古 い 町 並 みが 縁<br />
取 られます。 反 対 側 から 見 ると、 天 に 向 かってそび<br />
え 立 つドバイの 超 高 層 ビル 群 が 額 縁 に 収 まりま<br />
す。ドバイフレームは 一 種 の 出 発 点 であり、 言 わ<br />
ばタイムマシンであり、この 街 の 過 去 と 未 来 を 結<br />
ぶ 存 在 で す 。<br />
エレベーターに 乗 って 最 上 部 に 到 着 すると、 頭<br />
の 中 では 処 理 しきれないほどの 光 景 が 飛 び 込 ん<br />
できます。ここから 眺 望 するドバイの 街 はこの 上<br />
なく 幻 想 的 で、 映 画 の 特 殊 効 果 によって 現 代 に 映<br />
し 出 された 未 来 の 街 のよう。 砂 丘 から 屹 立 する 数<br />
々のガラスの 刃 を 見 つめていると、ここは 何 が 起<br />
きてもおかしくない 場 所 で、 不 可 能 なことも 現 実<br />
に な り、 新 た な 可 能 性 が 、 今 ま さ に 思 い 描 か れ つ<br />
つ あ る か の よう な 感 慨 に とら わ れ ま す 。<br />
62<br />
63
コオロギ<br />
今 まで、これほど 洗 練 された 昆 虫 食<br />
は あ り ま せ ん で し た 。ジ ミ・ファ ム レ<br />
ワは 美 食 としての 昆 虫 食 の 新 たな<br />
調 理 法 を 探 求 しています。<br />
ショウガとアンバーのハチミツに 漬 け 込 んだ 赤 アリ(Alchemist)<br />
ワカモレに 金 のスプレーをまぶしたバッタを 添 えて(Ella Canta)<br />
だけでは<br />
ありません<br />
写 真 ( ALCHEMIST): ソ ー レ ン・ガ メ ル マ ー ク<br />
2017 年 、 採 集 に 重 きを 置 いたロンドンのレストラン<br />
『Native』はアリに 関 する 深 刻 な 問 題 に 直 面 してい<br />
ました。 誤 解 のないように 言 っておくと、これはアリの<br />
大 量 発 生 によって 起 こった 問 題 などではなく、 害 虫 駆<br />
除 業 者 に 電 話 をすればすぐに 解 決 するようなもので<br />
はありません。オープンしたばかりのレストランでそ<br />
の 革 新 的 なメニューの 数 々が、ワイルドマラードのラ<br />
グーからモリバトのケバブまで、たった1 皿 の 料 理 に<br />
完 全 に 人 気 をさらわれてしまったのです。その 料 理<br />
は、メドースイートのファッジに 挑 戦 的 に 山 アリを 振<br />
りかけたプチフールでした。<br />
「(その 料 理 の) 写 真 がインスタグラムで 拡 散 した<br />
せいで、2 人 掛 けのテーブルでファッジを1 皿 だけ 注<br />
文 す る よ う な お 客 様 が 増 え ま し た 。」シェフ の ア イ ヴ ァ<br />
ン・ティス ダ ル・ダ ウ ネ ス 氏 と 共 に『 Native』を 創 業 し<br />
たイモージェン・デイビス 氏 は 笑 いながら 言 いました。<br />
「 水 道 水 だけを 頼 んで、 椅 子 の 上 でカメラを 構 えて<br />
いる 人 々を『20しかない 席 のうち2つを 占 拠 してるん<br />
だよ。 分 かってる?』と 思 いながら 見 ていました。」<br />
昆 虫 食 の 流 行 化 がもう 止 められないところまで 来<br />
ていることの 証 拠 が、ここから 縮 図 的 に 見 てとれま<br />
すね。 虫 を 食 べるといえば、かつて 頭 に 浮 かんだの<br />
は、よく 洗 っていないサラダの 葉 に 芋 虫 が 這 っている<br />
姿 や 未 開 の 地 を 訪 れるTVのリアリティショーで 行 わ<br />
れる 恐 ろしい 罰 ゲームでしたが、 今 では 世 界 で 最 先<br />
端 の 評 価 を 受 けているレストランが 昆 虫 食 を 取 り 入<br />
れているケースもあります。<br />
例 え ば 、メ キ シ コ シ ティー の 流 行 を リ ー ド す る<br />
『Quintonil』で 出 さ れ て い る ア リ の 幼 虫 の ナ ッ ツ パ<br />
ールをトッピングした 焦 がしアボカドのタルタル、コ<br />
ペ ン ハ ー ゲ ン の 型 破 り な『 Alchemist』が 提 供 す る 食<br />
用 花 、シトラスアリ、ミールワームのローストで 飾 られ<br />
た 子 羊 の 脳 、そして 一 度 は 足 を 運 ぶべき 日 本 の 山 中<br />
にあるレストラン『 柳 家 』の 醤 油 とみりんで 漬 け 込 ん<br />
だ ス ズ メ バ チ の 子 な ど が 挙 げ ら れ ま す 。<br />
今 、 突 如 として、 先 駆 的 なメニューの 数 々がじわじ<br />
わと 世 界 に 広 がり 始 めています。 丁 寧 に 調 理 された<br />
無 脊 椎 動 物 たちとともに。(ミシュランで 星 を 獲 得 し<br />
ている、サンパウロのアイコン 的 レストラン『D.O.M』<br />
の)アレックス・アタラ 氏 など、 昆 虫 食 の 提 唱 者 たちは<br />
「なぜ『ミツバチの 排 泄 物 』であるハチミツを 食 べて<br />
いる 人 々がもう 一 歩 踏 み 出 せないのか」と 疑 問 を 投<br />
げかけています。また、シリコンバレーで 火 が 付 いた<br />
エントモファジー( 昆 虫 食 の 正 式 名 称 )を、 環 境 に 被<br />
害 を 及 ぼす 集 約 的 な 食 肉 生 産 の 代 替 として 奨 励 す<br />
る 運 動 も 注 目 に 値 します。 現 在 の 食 文 化 に 一 石 を 投<br />
じるには 申 し 分 のないトレンドとなっているようで<br />
す。はたして、この 急 速 に 広 がりつつある 古 来 の 珍 味<br />
に 対 する 現 代 の 受 け 入 れは 続 いていくのでしょうか?<br />
ま た 、こ のト レ ンド を う な が し て い る も の は 何 で しょう<br />
か?ソーシャルメディアで 効 果 を 発 揮 する 直 感 的 な<br />
ビジュアルのインパクト 以 上 に、 触 覚 のサクサク 感 や<br />
ネバネバの 噴 出 が 料 理 にもたらすものは 何 でしょう<br />
か?<br />
アリとチョコレート、マッシュルームのデザート(Native)<br />
64
私 は ま ず『 Native』に 伺 い ま し た 。デ イ ビ ス 氏 と ティ<br />
スダル・ダウネス 氏 に 気 前 よくボウルいっぱいのアリ<br />
でもてなされ、 新 たな 世 界 へと 誘 われました。「この<br />
アリは、 提 携 している 採 取 業 者 からちょうど 送 られて<br />
きたんです。ただただ 感 動 しました。」とデイビス 氏 。「<br />
レ モ ン シ ャ ー ベ ット が は じ け て い る よ う で し た 。ア リ<br />
が 防 衛 のために 出 すギ 酸 が 自 然 にパチパチと 鳴 るん<br />
です。」アリを 口 に 入 れると 強 烈 な、 柑 橘 類 のような<br />
甘 さと 香 りが 弾 けて 驚 きと 喜 びが 広 がります。 小 さな<br />
アリからは 想 像 できないほど 強 い 味 と 香 りです。まる<br />
で 魔 法 のようでした。そして、この 後 にいただいたマ<br />
ッシュルームのクリームプリンにアリを 振 りかけたも<br />
のは、クリーミーな 甘 さと 調 和 してさらに 感 動 的 でし<br />
た。ニゲラシードと 間 違 える 方 もいるかも 知 れませ<br />
ん 。<br />
ナイジェラ・ローソン 氏 などからも 好 意 的 な 評 価<br />
を 得 ているデイビス 氏 とティスダル・ダウネス 氏 は、「<br />
驚 きの 要 素 」も 彼 らがデザートで 使 用 している 山 アリ<br />
の 魅 力 の 一 つだと 認 めていますが、タルタルステー<br />
キに 付 け 合 わせたエスカルゴのピクルスやラザニア<br />
に 入 れたリスの 肉 のように、きっかけとなったのは、<br />
天 然 の 食 材 を 料 理 したい、そして 食 料 の 無 駄 を 減 ら<br />
したいという 現 実 的 な 願 望 でした。<br />
「アリは 酸 性 の 成 分 を 持 っているので、 英 国 の 食<br />
材 と 調 和 させるのに 苦 労 しました。」と 言 うのはティ<br />
スダル・ダウネス 氏 。「また、 輸 入 レモンを 使 用 するこ<br />
とに 比 べると、 二 酸 化 炭 素 の 排 出 量 を 最 小 限 に 抑 え<br />
ることにもつながります。つまり、これは 人 目 を 引 くた<br />
めの 策 略 ではなく、 自 然 から 採 取 した 野 生 の 食 材 を<br />
もっ と 活 用 し て 行 こ う と い う 考 え な ん で す 。」<br />
『Native』や『 Mana』(『 Noma』で 修 業 し た シ モ<br />
ン・マーティン 氏 がマンチェスター に 開 いたレストラ<br />
ン。 松 かさと 山 アリを 使 ったデザートでミシュランの<br />
「コオロギのフライが 新 しく 昆 虫 食 の 愛 好 家 を<br />
ビートルートとコオロギ(Dier Makr)<br />
誕 生 させるきっかけとなっています」<br />
星 を マ ン チェス タ ー で 初 め て 獲 得 して い る )と いっ た<br />
ヨーロッパのレストランにとって、 昆 虫 食 は 西 洋 の 食<br />
文 化 と 失 われた 過 去 の 食 文 化 のかけらを 再 びつな<br />
ぎ 合 わせる 試 みです。 昆 布 やサジー、 蜜 蝋 など、 流 行<br />
のメニューで 使 用 される 食 材 と 同 様 に 扱 われるべき<br />
も の で す 。<br />
こ の 考 え は 、タ ス マ ニ ア 州 ホ バ ート の『 Dier Makr』<br />
にも 通 じる 部 分 があります。スパイスを 効 かせたコオ<br />
ロ ギ ペ ー スト の 人 参 と ネ ギ の ピ ュ ー レ 添 え な ど 、 先<br />
住 民 の 地 虫 を 食 べる 習 慣 と 新 しい 北 欧 の 感 性 を 組<br />
み 合 わせた 世 界 的 に 名 高 いレストランです。<br />
一 方 で、エントモファジーが 歴 史 から 掘 り 起 こされ<br />
るべき 大 胆 で 目 新 しい 文 化 というわけではない 国 も<br />
もちろん 多 くあります。タイのホーカーズマーケット<br />
で 売 ら れ て い る 揚 げ ゾ ウ ム シ の ホ ット バ ッ グ や 、ケ ニ<br />
ヤ で 食 べ ら れ て い る 白 ア リ のドラ イ ロ ー スト な ど 、 世<br />
界 中 で 推 定 20 億 の 人 々が 日 常 的 に 昆 虫 を 食 べてい<br />
ま す 。<br />
この 点 においては 国 内 で500 種 以 上 の 昆 虫 を 食 し<br />
ているというメキシコが 良 い 例 です。メキシコ 料 理 の<br />
根 強 い 人 気 は、ニューヨーク(『The Black Ant』の 有<br />
名 なバッタタコス)やマドリード(ミシュランの 星 を 獲<br />
得 し た『 Punto MX』の 羽 ア リ を あ しらっ た ア ン コ ウ の<br />
アグアチレ)に 至 るまで 幅 広 く、 多 様 な 昆 虫 食 メニュ<br />
ー を 生 み 出 して い ま す 。<br />
遠 回 りしましたが、このようにして 最 終 的 に 私 は<br />
『Ella Canta』に 辿 り 着 きました。ロンドンのメイフェ<br />
アにあるメキシコ 人 シェフ、マルタ・オルティス 氏 の 社<br />
交 的 でラグジュアリーなお 店 です。ここで 私 は、 金 の<br />
スプレーをまぶしてクリスピーに 仕 上 げた2 匹 のバッ<br />
タ を ち り ば め た ワ カ モ レ ボ ウ ル に 出 会 い ま し た 。「 こ<br />
のアイデアはメキシコの 宝 石 をイメージしているん<br />
です。」と 説 明 するオルティス 氏 に、 私 も 胸 が 高 鳴 りま<br />
した。「 人 々の 好 奇 の 対 象 となることは 分 かっていま<br />
し た 。で す が 、 私 が 子 供 の こ ろ は 、 塩 や こしょう の よう<br />
に 昆 虫 がテーブルによく 並 んでいたんです。 誰 がバッ<br />
タを 食 べるかでお 客 さんが 揉 めているのを 見 たこと<br />
も あ り ま す 。」<br />
今 にも 砕 けそうな 虫 の 体 を 持 ち 上 げ、アボカドを<br />
少 しすくい、 口 に 放 り 込 みました。 心 地 よい 網 焼 きの<br />
ジャコウに 似 た 香 りと 豚 肉 のような 風 味 が 何 度 も 口<br />
の 中 に 広 が り ま す 。バ ッ タ や コ オ ロ ギ の フラ イ が 、 世<br />
界 中 で 新 しく 昆 虫 食 の 愛 好 家 を 誕 生 させるきっかけ<br />
となっているというのもうなずけます。<br />
これはつまり、ノーズ・トゥ・テイル( 鼻 先 から 尻 尾<br />
まで 食 べ 尽 くす) 運 動 や 晩 年 のアンソニー・ボーデイ<br />
アボカドとアリのタルタル(Quintonil)<br />
ン 氏 のように、 何 にでも 挑 戦 する 恐 れを 知 らないセ<br />
レブリティの 影 響 によって、 西 洋 の 食 文 化 が 以 前 より<br />
も 潔 癖 ではなくなってきているということなのでしょ<br />
うか?これについてはティスダル・ダウネス 氏 も 確 信<br />
が 持 てないようでした。「 私 もミールワームを 食 べた<br />
ことがありますが、 私 でさえ 噛 む 瞬 間 は 気 がおかしく<br />
なりそうでした。」と 語 ります。また、 成 長 の 著 しい 食<br />
用 昆 虫 業 界 ( 来 年 までに12 億 ポンドの 売 上 を 見 込 ん<br />
でいる)では、ほとんどの 新 規 事 業 者 が 見 た 目 を 重<br />
視 して、 形 のはっきりとしていない、 外 骨 格 を 咀 嚼 す<br />
る 必 要 のない 粉 末 やパテ、エナジーバーなどにター<br />
ゲットを 絞 っていることも 注 目 すべき 点 です。<br />
一 方 、フードデリバリーアプリの 普 及 によって 伝 統<br />
的 な 食 事 が 危 機 にさらされているこの 時 代 において<br />
は、 美 食 としての 昆 虫 食 は 多 くのレストランにとって<br />
代 えがたい 興 奮 をもたらす 打 開 策 となるのではない<br />
で しょう か 。<br />
「1か 月 前 に、 当 店 の 試 作 メニューを 召 し 上 がった<br />
女 性 は、 自 分 がアリを 食 べた 事 に 気 付 きませんでし<br />
た。」とデイビス 氏 。「 後 から 事 実 を 伝 えると、 彼 女 は<br />
ただただ 歓 喜 と 恐 怖 で 悲 鳴 を 上 げていました。」この<br />
ような 愉 快 な 反 応 は、 多 くのシェフが 影 響 されないよ<br />
うに 努 めているものの 一 つです。だから 勘 違 いはし<br />
ません。おそらく、これは 足 の 反 射 運 動 が 起 きたよう<br />
な も の だ か ら で す 。<br />
子 羊 の 脳 のミールワーム 添 え(Alchemist)<br />
66 67
特 別 短 編<br />
Breathe( 呼 吸 )<br />
受 賞 作 家 クリス・リー は 短 編 集 『Drifting House( 漂 う 家 )』<br />
と 小 説 『 How I Became a North Korean( 私 が 如 何 にして 北 朝 鮮 人 になったか)』<br />
( 発 行 元 :Viking/Penguin Random House 社 )の 著 者 です。<br />
韓 国 の 延 世 大 学 校 で 創 作 文 の 助 教 授 を 務 めています。<br />
完 璧 な 人 生 を 送 る 完 璧 な 娘 。 誰 しもがそう 思 っていた。<br />
しかしユーニーは、 自 分 ではない 誰 かになりたいと 願 ってい<br />
る。この 願 いは、ある 意 味 すでに 叶 っていた。 彼 女 はほんの 数<br />
日 前 に21 歳 になったのだ。そして、これは 彼 女 自 身 にとって 最<br />
高 のプレゼントだった。やっと 逃 げられる。<br />
バックパックがラゲッジベルトの 上 を 回 り、ツアーガイドたち<br />
が 出 迎 えのサインを 振 っているのを 見 ると、ユーニーの 耳 は 熱<br />
くなった。 学 習 アプリで 勉 強 してきたスペイン 語 は、 彼 女 を 捕 ら<br />
えているガラス 瓶 のようだった。 駐 機 されている 飛 行 機 を 振 り<br />
返 ると、どちらも 何 とも 慌 ただしい 動 きを 繰 り 返 した 後 、 今 は<br />
ぴたりと 止 まっている。ボストンを 後 にした 時 に 思 っていたこと<br />
にふと 疑 問 を 抱 き、 少 し 躊 躇 した。<br />
そして 両 親 の 事 を 考 えた。ユーニーは、 痛 いほど 薄 いアンデ<br />
ス 山 脈 の 空 気 を、まるで 息 の 吸 い 方 を 一 から 学 ぶように 不 規<br />
則 に、でも 肺 一 杯 に 吸 い、クスコ 空 港 を 後 にした。<br />
でこぼこの 道 のりをタクシーで 揺 られたどり 着 いた 先 では、<br />
ホームステイの 寮 母 がユーニー<br />
の 肩 をつかんで 部 屋 に 案 内 した。<br />
まるでユーニーに 助 けが 必 要 だ<br />
っ た よ う に 。こ れ は ユ ー ニ ー に は<br />
もう 慣 れたことだった。 彼 女 の 大<br />
きく、 少 し 驚 い た よう な 目 と ハ ート<br />
の 形 をした 顔 は、 主 体 性 のない 印<br />
象 を 与 えた。 彼 女 自 身 が 意 図 して<br />
い た も の だ 。<br />
「 し ば らくは の ん び りして て ね 」<br />
と 家 主 が 言 う。「 消 化 に 悪 いものは<br />
食 べないで、ソパ・デ・ポヨを 食 べ<br />
な さ い 。」<br />
ユーニーは 反 射 的 に「ありがと<br />
うございます。ありがとうございま<br />
す 。」と 応 え た が 、 言 うこ と を 聞 くつ<br />
もりはなかった。<br />
家 主 が 付 け 加 える。「 深 く 呼 吸<br />
す る よ う に し な さ い ね 。」<br />
ユーニーが 家 業 の 一 部 を 継 ぐこと<br />
は 常 に 変 えることのできない 事 実<br />
だった。 韓 国 最 大 級 の 複 合 企 業 の<br />
一 つだ。 彼 女 が 望 めば 一 生 働 く 必<br />
要 もなかった。しかし 彼 女 は、その<br />
選 択 肢 を 選 ぶことはないと 分 かっていた。<br />
「お 前 には 何 もかも 与 えた。」と 父 がよく 言 っていた。それは<br />
繰 り 返 されるリマインダーであり、 陰 険 な 警 告 でもあった。ベッ<br />
ドルームサイズのクロー ゼットにはカラーコ ーディネートされ<br />
た 洋 服 が 取 り 揃 えられ、 滑 らかなブラックの 自 動 車 には 学 校<br />
への 送 迎 のための 運 転 手 が 付 いていた。そして 個 人 秘 書 が 子<br />
供 の 頃 からユーニーの 学 校 とプライベートの 予 定 を 管 理 して<br />
いた。すべて、 彼 女 が 父 の 期 待 通 りに 振 舞 っていれば 与 えられ<br />
るものだった。<br />
ユーニーは 短 期 間 で「あらゆること」を 学 んだ。 父 の 人 目 を<br />
忍 んだ 情 事 を 見 てみぬふりする 無 表 情 の 装 いも、 家 族 が 公 の<br />
場 に 出 る 際 の 演 出 された 振 る 舞 いも。それでも 彼 女 の「 新 し<br />
い」 鼻 が 癒 える 頃 には 夏 は 去 り、 彼 女 が 好 きだった 優 しい 話 し<br />
方 をする 少 年 は、 彼 のことを 母 に 話 してから1 週 間 以 内 に 転 校<br />
していった。<br />
そして「 あ ら ゆ る こ と 」に は 、6 か 月 前 に 届 い た お ざ な り な E メ<br />
ールの 内 容 が 含 まれていた。それは 彼 女 がハーバード 大 学 を<br />
卒 業 して、ソウルに 戻 ってくるのを 婚 約 者 が 待 っていると 知 らせ<br />
るものだった。 言 わずもがな 半 導 体 業 界 の 有 力 者 の 御 曹 司<br />
だ 。<br />
しかし、 完 璧 な 娘 でいるための 訓 練 にも 利 点 があった。 彼 女<br />
が 仮 面 を 被 り 続 けている 間 は、 誰 もその 下 の 素 顔 を 暴 こうとは<br />
しなかったし、 彼 女 が 何 百 時 間 にも、 何 年 にも 渡 って 逃 走 を 企<br />
てていたことを 誰 も 知 る 由 はなかった。そして、ついに 先 週 、 彼<br />
女 の 幼 少 期 に 祖 母 が 秘 密 裏 に 用 意 してくれた 口 座 の 預 金 にア<br />
クセスすることができた。 逃 げ 出 す 時 が 来 たのだ。<br />
「もう 何 年 もFBIに 追 われてるんだ。」 激 しく 揺 れるローカルバ<br />
スで 隣 に 座 ったアメリカ 人 の 男 が 囁 く。 野 性 的 な 目 をしたドレ<br />
ッドヘアの 男 だった。「 老 化 のさ、 治 療 法 を 発 見 したんだよ。 分<br />
かるか?でもさ、 大 手 製 薬 会 社 のやつらはそれが 気 に 入 らない<br />
ん だ 。く そ っ 、あ い つ ら 。」<br />
初 めの30 分 は 無 礼 にならない<br />
程 度 に 彼 との 会 話 を 避 けていた<br />
が、 彼 の 非 現 実 的 な 被 害 妄 想 話<br />
の 中 で 何 かが 引 っかかった。「 分 か<br />
り ま す 。」と 応 え る 。 嘘 は つ い て い<br />
ない。「 私 はいつも 新 しい 部 屋 に<br />
入 ると 盗 聴 器 と 隠 しカメラを 探 し<br />
ます。」 初 めて 自 分 の 習 慣 を 認 め<br />
た 瞬 間 だった。<br />
「それだよ! 近 頃 は 誰 も 信 用 で<br />
き ね ぇよ な 。」 叫 ぶ よ う に 言 って 彼<br />
女 の 方 を 見 ると、 彼 は 初 めて 彼 女<br />
の 様 子 に 気 付 いたようだった。 彼<br />
はたじろいで 素 早 く 立 ち 上 がる<br />
と、2 羽 の チ キ ン が 入 っ た キ ャン バ<br />
スバッグを 何 とか 踏 まないように<br />
避 けて、ブツブツ 独 り 言 を 言 いな<br />
がらバスの 後 方 の 席 に 移 動 してい<br />
った。<br />
海 抜 3,000mでもワシが 頭 上 を<br />
飛 び 回 り、 農 家 の 人 々は 雲 の 上 で<br />
ジャ ガ イ モ を 育 て て い た 。 聖 な る<br />
谷 へ 降 りていくと、 四 方 に 絶 壁 が<br />
そびえ 立 つ。 道 を 曲 がる 度 にトウ<br />
モロコシの 段 々 畑 や 人 気 のない<br />
教 会 、また、 別 のゴツゴツした 峰 が 姿 を 現 す。<br />
ユーニーは、このままひたすら 登 り 続 けたら、いつかはこの<br />
混 沌 から 逃 れて、 何 もない 青 色 の 中 に 辿 り 着 けるのではない<br />
かという 気 持 ちになっていた。<br />
目 まいがする 度 に、ハイキングポールを 支 えにし、しゃがみ 込 ん<br />
で 息 を 整 えた。ラレスの 温 泉 まで 歩 いて 向 かうのは 常 に 険 しい<br />
道 のりだった。ここは 平 地 より 空 気 中 の 酸 素 が4 分 の1 程 度 薄<br />
い。それでも 歩 いていると 孤 独 を 紛 らわすことができた。<br />
安 定 して、 深 く 呼 吸 できるように 練 習 した。もうすでに 酸 素 の<br />
薄 さを 理 由 にギブアップできないところまで 来 てしまっている。<br />
心 は 決 まっていたし、 前 に 続 く 道 は 一 点 の 曇 りもなく 見 えた。<br />
決 められていた 未 来 から 離 れて、 穏 やかで 誰 も 知 らない 未 来<br />
へと 歩 いて 行 くのだ。<br />
細 い 道 が 山 の 奥 深 くに 入 り、やがてまた 戻 ってくる。インカの<br />
石 を 再 利 用 して 建 てられた 家 が 景 観 の 中 に 点 在 している。そこ<br />
に 住 む 人 々の 顔 は 砂 漠 の 地 形 や 氷 河 の 峰 のように 長 い 時<br />
68 69
間 をかけて 風 雨 によって 彫 り 込 まれたもののようだった。 一<br />
歩 一 歩 が 何 かを 得 る 作 業 だった。 一 歩 進 む 度 に 呼 吸 を 意 識 さ<br />
せられた。アンデス 山 脈 は「ペースを 落 とせ」と 言 っている。<br />
ユーニーは 思 考 の 片 隅 で、 何 かの 気 配 を 感 じた。ポールを<br />
握 る 手 に 力 を 入 れ、 辺 りを 見 回 す。 日 の 出 前 に 単 独 でハイキン<br />
グをすることは 安 全 とは 言 えない。だが 彼 女 はこれまでの 人<br />
生 をずっと「 安 全 」にやり 過 ごしてきたのだ。<br />
辺 りを 見 回 してみても、いたずらな 風 が 吹 き、 足 元 でうごめく<br />
山 の 圧 力 を 感 じ る だ け だ っ た 。<br />
道 が 曲 がりくねる 度 に 気 温 が 下 がっていく。ユーニーの 呼 吸<br />
と 引 き 換 えに 広 大 で 開 放 的 な 空 間 が 現 れた。まるでアンデス<br />
山 脈 が 樹 木 限 界 線 を 落 としてしまったようだ。<br />
そ の 時 、 茂 み か ら ガ サっ と い う 音 が し た 。 金 色 の ファ ー が 飛<br />
び 跳 ね て ひ ら めく。 暖 か い 、ずっし り とし た 犬 の 体 。 足 が も つ れ<br />
る。 彼 女 の 体 は 砂 利 道 に 倒 れ 込 む。 青 い 空 。 砂 ぼこりが 舞 う。ブ<br />
ー ン と 虫 が 飛 ぶ 。<br />
暖 かい 何 かを 顔 に 擦 りつけら<br />
れてユーニーは 生 き 返 った 心 地<br />
に な っ た 。ラ ブ ラ ド ー ル が ユ ー ニ<br />
ー を 見 下 ろして い た 。だ ら り と 垂<br />
れた 耳 、 大 きく 優 しい 目 、そして 黒<br />
く 濡 れた 鼻 先 がユーニーを 現 実<br />
に 引 き 戻 す 。<br />
その 時 、ユーニーは 犬 の 後 ろに<br />
立 って い る 男 を 見 た 。 引 き 締 まっ<br />
た 体 。 鋭 い が 遠 くを 見 る よう な グ<br />
レ イ が か っ た ブ ラ ウ ン の 目 。<br />
「ご 自 分 の 犬 はしっかり 管 理 し<br />
てくだ さ い 。」と ユ ー ニ ー は 鋭 く 言<br />
った。 転 んだ 時 に 打 ったところが<br />
痛 む。<br />
「 俺 の 犬 じゃないよ。 野 良 犬 だ<br />
と 思 うよ。」 男 は 何 食 わぬ 顔 で 応<br />
え た 。「 手 を 貸 そ う か ? 」<br />
「いえ、 結 構 です。」 肘 をついて<br />
体 を 起 こしながら 応 える。「 大 丈 夫<br />
で す 。」<br />
「 一 人 でハイキングは 危 ない<br />
よ。 分 かってる?」 心 から 気 遣 いと<br />
父 親 のような 恩 着 せがましさを 同<br />
じくらい 織 り 交 ぜたようなトーン<br />
で 男 は 言 った。 自 己 完 結 的 で、 完<br />
璧 にバランスの 取 れた 言 い 方 だ。それが 彼 女 をイラつかせた。<br />
「ラレスまで 歩 いてるんです。」ユーニーは 男 に 見 下 ろされ<br />
ないように 立 ち 上 がった。「 後 はそのままマチュピチュまでトレ<br />
ッキングするつもりです。」<br />
男 がうなずく。「じゃあ 同 じルートだ。 俺 はジェイコブ。」<br />
ユーニーはためらいながら 応 える。「ユーニーです。」<br />
「 引 き 返 した 方 がいいんじゃないかな。」とうとう 彼 は 言 っ<br />
た。「ほら、 高 度 がさ。 山 の 空 気 に 慣 れるには 少 し 時 間 がかかる<br />
よ 。」<br />
彼 女 は 躊 躇 したが、「 自 分 の 呼 吸 を 感 じるのが 好 きなんで<br />
す。どうして 他 の 皆 さんみたいにバスでラレスに 行 かないんで<br />
す か?」と 言 い 返 し た 。<br />
「あんまり 金 がないんだよ。」と 彼 。<br />
「じゃあどうして 旅 をするんです?」<br />
「どうしてダメなんだい?」と 彼 が 言 い 返 す。「 世 界 は 広 いだ<br />
ろ。 出 来 るだけ 見 て 回 ってるんだよ。 全 部 は 無 理 でもさ。」<br />
「 広 いですね、 世 界 は。」ユーニーが 言 う。「 狭 すぎると 思 うこ<br />
と も 時 々 あ る け ど 。」<br />
「そいつはおかしな 話 だね。」 彼 が 言 う。「 歳 は 関 係 なくね。」<br />
「そうやって 私 の 年 齢 を 聞 く 手 口 ですか?」ユーニーがばか<br />
にしたように 言 う。<br />
「 俺 はナンパ 師 じゃないよ。」 彼 は 真 剣 に 言 った。「 君 がひっ<br />
くり 返 ったのを 見 たから、 様 子 を 見 なきゃと 思 っただけさ。」<br />
ユーニーは 不 信 感 をあらわにしていた。<br />
ジェイコブはバックパックを 背 負 い 直 した。「 食 べ 物 は 持 って<br />
る? 水 は?」<br />
「 必 要 なものは 全 て 持 っています。」と 彼 女 が 言 う。<br />
「あぁ、そうですか。」 彼 はうなずいて 立 ち 去 り、すぐに 曲 がり<br />
くねった 道 の 小 さな 点 になった。<br />
ラブラドールはユーニーに 付 いてきた。 時 折 彼 女 の 足 に 当<br />
たる 尻 尾 が、 暗 くなる 前 にラレスへ 到 着 するように 急 かしてい<br />
るようだった。 気 温 が 急 に 下 がり、 冷 たい 風 が 彼 女 の 髪 や 頬 を<br />
撫 でた。<br />
震 える 足 でラレスに 辿 り 着 く。<br />
彼 女 はガイドを 失 った。ラブラドー<br />
ルは 抱 きしめられていたユーニー<br />
の 腕 からすっと 抜 け 出 すと、 村 の<br />
外 れにある 家 の 中 に 消 えていっ<br />
た。 温 泉 から 立 ち 上 がる 湯 気 の 中<br />
に 踏 み 入 り、 湯 に つ か る 。 暖 か い<br />
お 湯 が 彼 女 の 体 を 少 しずつ、それ<br />
から 全 身 を 溶 かしていくようだっ<br />
た。<br />
誰 かの 声 が 聞 こえては 消 える。<br />
ユーニーには、 旅 行 者 たちのおし<br />
ゃべりや 似 たり 寄 ったりの 話 が 疎<br />
ま し か っ た 。お 互 い に そ ん な に 話<br />
すことがあるのかしら。 話 すことが<br />
なくなったらどうするの? 愛 がなく<br />
なったら? 彼 女 の 頭 の 中 で、 旅 行<br />
者 たちはいつの 間 にかユーニー<br />
の 父 と 母 になっていた。<br />
このミニバンのドライバーは 居 眠<br />
り 運 転 している。ユーニーは 確 信<br />
し て い た 。サ ン タ・テ レ サ に 向 か う<br />
曲 がりくねった 片 道 斜 線 を2 時 間<br />
のドライブ。アンデス 山 脈 が 暗 闇 に 輪 郭 を 浮 かび 上 がらせ、 空<br />
には 星 が 輝 く。そしてドライバーのまつげが 頬 骨 に 向 かって 降<br />
りて いく。<br />
ユーニーは、 今 にも 崩 れそうな 崖 の 縁 からミニバンが 転 落<br />
していくのを 想 像 していた。 峡 谷 の 中 へ、 深 く 落 ちていく。 野 生<br />
のビクーニャだけがそれを 見 ていた。 彼 女 が 死 んでも、あの 峠<br />
に 並 ぶきらびやかに 飾 り 立 てられた 墓 石 に 彼 女 の 名 前 が 刻 ま<br />
れることはないだろう。 死 ぬことは 彼 女 の 選 択 肢 にはなかっ<br />
た 。 誰 か の 人 生 を ま ね る こ と も 。<br />
ユーニーは 必 要 とあらばすぐにでもハンドルをつかんで 操<br />
縦 で きる よう に 、 用 心 深 く、 常 に 手 を 少 し 上 げ た ま ま 構 えて い<br />
た。 後 ろの 席 の 老 婦 人 が 解 いたブライトハットの 紐 が 彼 女 の 顔<br />
に か か り、 婦 人 は そ の ま ま う た た 寝 を 始 め た が 、 気 に し な か っ<br />
た。きっとマウンテンスピリッツである「アプ」が 彼 らを 見 守 って<br />
いたのだろう。サンタ・テレサには 何 事 もなく 到 着 した。<br />
翌 朝 、マチュピチュの 麓 からシャトルバスに 乗 った。 深 い 緑 の<br />
イラスト:カルバン・スプレーグ 著 者 写 真 :マット・ドゥーマ<br />
中 に 燃 えるように 赤 い 熱 帯 の 花 々が 咲 き、 玉 虫 色 の 鳥 たちが<br />
生 き 生 きと 暮 らす 山 中 をバスが 登 っていくにつれて、ユーニー<br />
は、この 人 を 寄 せ 付 けない 自 然 の 風 景 や 川 の 怒 号 、 果 てしのな<br />
い 断 崖 のミステリアスで 目 の 離 せない 魅 力 に 圧 倒 されていた。<br />
階 段 を 上 った 先 にパスポートとチケットを 確 認 するための 列<br />
ができ、 様 々な 国 の 言 葉 が 飛 び 交 っていた。 旅 行 者 たちは 花 こ<br />
う 岩 の 階 段 を 上 り 下 りしながら、 写 真 を 撮 ることに 夢 中 だ。こ<br />
れらの 写 真 は 永 久 にクラウドに 保 存 されるのだろう。 彼 らが 撮<br />
影 している 廃 墟 のように。 一 方 、ユーニーは 夢 中 で 前 を 見 つめ<br />
ていた。 彼 女 の 少 し 前 方 でいつもキラキラと 揺 らめいている 人<br />
生 を、 自 由 を 切 望 しながら。<br />
もっと 日 常 的 な 観 点 から 見 ると、 彼 女 が 見 ていたのは 水 の<br />
ボトルを 売 っている 女 性 だった。ボストンに 置 いて 来 たくはなか<br />
った 自 身 の 所 有 物 を 全 て 詰 め 込 んだ 重 いバックパックを、 何 と<br />
か 運 びながら 旅 をするのは 喉 の 乾 く 作 業 だ。コインを 何 枚 か 探<br />
し 出 し、 女 性 の 方 へ 向 かった。<br />
すると 視 界 の 端 に 見 覚 えのあ<br />
る 顔 を 捉 えた。<br />
ユーニーはじっと 見 てから 素 っ<br />
気 な く 言 っ た 。「 偶 然 ね 。」<br />
「 お ぉ 。」ジ ェ イ コ ブ が 驚 い て 微<br />
笑 む。「ほとんど 奇 跡 だね。」<br />
今 回 、ユーニーは 前 よりも 注 意<br />
深 く 彼 を 分 析 す る こ と に し た 。 初<br />
めて 会 った 時 は 気 付 かなかった<br />
が、 彼 は 歯 切 れの 良 い 話 し 方 をし<br />
たし、 彼 のきちんとした 姿 勢 は 群<br />
れをなして 動 き 回 る 旅 行 客 たち 中<br />
では 際 立 っていた。アスリートのよ<br />
うな 体 。もう 一 度 思 い 浮 かべてみ<br />
る。もしくは 格 闘 家 。<br />
「 こ れ は きっ と 宿 命 ね 。」ユ ー ニ<br />
ーはじっと 彼 を 見 つめながら 言 っ<br />
た 。「 ま ぁ 、 私 に 付 い て く る ん だ っ た<br />
ら 、あ な た も 少 し は 役 に 立 って よ<br />
ね…。」ユーニーは 自 分 のバック<br />
パ ッ ク を 下 す と 、い た ず らっ ぽく 笑<br />
って 彼 に 押 し 付 け た 。<br />
「モタモタしないで 付 いてき<br />
て!」 彼 女 はそう 言 うと、まだ 困 惑<br />
しているジェイコブに 背 を 向 け、<br />
波 打 つ 青 い 山 々に 囲 まれた、まる<br />
で 空 中 に 浮 いているかのような 古 代 都 市 に 続 く 小 道 へと 向 か<br />
っていった。 美 の 科 学 、そして 科 学 の 美 を 理 解 した 古 代 の 技 術<br />
者 たちによって 建 設 された 水 路 、 寺 院 、 段 々 畑 。<br />
狭 い 小 道 は 称 賛 する 人 々で 込 み 合 っていたが、ユーニーは<br />
人 の 流 れに 逆 らって、 左 に 曲 がり、 次 は 右 へ、そして 上 に 上 り、<br />
太 陽 の 神 殿 へと 向 かった。 誰 かが 彼 女 の 名 前 を 呼 んだ。 風 だっ<br />
たかもしれない。<br />
ユーニーは 階 段 状 になった 場 所 でとうとう 足 を 止 め、 彼 が<br />
追 い 付 いてくるのを 待 った。<br />
「こんなに 混 んでるなんて 知 らなかった。 閑 散 期 だと 思 って<br />
たのに。」と 彼 に 言 う。「 私 ね、 消 えたかったの。いや 違 うかな、ど<br />
こでもない 所 に 行 きたかった。」<br />
「ペルーはどこでもなくないだろう。」と 彼 が 言 う。<br />
「ねぇ、あなたがどうしてここに 来 たか 知 ってるわ。」 彼 女 は<br />
決 然 とした 声 で 言 う。<br />
彼 は 困 惑 しているようだった。 彼 の 両 目 に 不 安 がちらつく。<br />
「あなたは 自 分 の 仕 事 もまともにできないようね。」ユーニ<br />
ー が 落 ち 着 い た 声 で 言 う 。<br />
ジェイコブが 混 乱 した 様 子 で 立 ち 上 がる。<br />
彼 の 名 前 はそもそもジェイコブだろうか? 違 うかも 知 れな<br />
い 。<br />
「 要 するに 私 が 言 いたいのは、あなた、スパイには 全 く 向 い<br />
てないわ。」<br />
彼 は 取 り 繕 うことをすっかり 忘 れて、ユーニーを 正 面 から 見<br />
た。「 失 礼 ですが、 朴 さん、 私 は 要 人 警 護 のプロです。そしてあ<br />
なたは 自 ら 消 息 を 絶 ち、 自 身 を 危 険 に 追 い 込 んだ。」<br />
「ええと、ボディガードさん、 私 は 戻 るつもりはないとお 父 様<br />
に お 伝 えくだ さ い 。」<br />
気 まずい 沈 黙 が 生 まれる。「これからどうするつもりですか?<br />
」とうとう 彼 が 口 を 開 いた。<br />
「 私 は 旅 を 続 けるわ。」パタゴニアまで。それから 海 に 呼 ば<br />
れるままに。「それで、あなたは 私 に 付 いて 来 ようって 言 うの?」<br />
「 朴 さん、ご 家 族 は 必 ず 追 って<br />
き ま す よ 。 断 固 として 連 れ 戻 す お<br />
つ も り の よ う で し た 。」<br />
それは 彼 女 自 身 が 一 番 分 かっ<br />
て い た 。<br />
だ が し か し 、 行 方 をくら ま し た<br />
者 たちは 誰 しも、 砂 の 上 の 落 書 き<br />
のように、 自 分 の 人 生 を 消 しては、<br />
また 自 ら 描 き 直 して 来 たのだ。 一<br />
人 の 少 女 が 一 つの 大 陸 から、 半 球<br />
から 消 え 失 せるなんて 難 しい 事 で<br />
は な い は ず だ 。そ う で しょう?<br />
まず 彼 女 がしなければならな<br />
いのは、ジェイコブを 撒 くことだ。<br />
ユーニーは 彼 を 見 て 見 ぬふり<br />
した。 彼 は 突 然 目 的 を 失 って 立 ち<br />
尽 くしている。そして 空 を 見 た。 白<br />
い 雲 が 流 れ て いく。た ゆ み なく、 形<br />
を 変 えながら。<br />
少 なくとも 今 日 はまだ 彼 女 の<br />
も の だ っ た 。<br />
この 呼 吸 も、そして 次 の 呼 吸 も。<br />
彼 女 の も の だ 。<br />
70 71
<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong>ラボ<br />
<strong>LAND</strong> <strong>ROVER</strong>ラボ<br />
ウェイドプログラム<br />
新 型 Land Rover Defenderには 革 新 的 な 渡 河 モードが 採 用 されています。<br />
Land Rover のテレインレスポンスシステム 内 で 機 能 し、ボタンひとつで 車 両 を<br />
渡 河 用 にセットアップします。その 仕 組 みをご 紹 介 しましょう<br />
1990 年 代 の 中 盤 、 第 2 世 代 のレンジ<br />
ロ ー バ ー( P38)では 渡 河 を 示 す 絵<br />
の 描 かれたボタンがダッシュボード<br />
上 に 搭 載 さ れ て い ま し た 。こ の ボ タ<br />
ンは、 単 純 に 車 両 のエアサスペンシ<br />
ョンを 使 用 して 車 高 を 調 整 し、 水 の<br />
中 を 走 りやすくするというものでし<br />
た 。し か し 、25 年 の 月 日 が 経 った 今 、<br />
新 型 Defenderに 搭 載 された 渡 河 モ<br />
ー ド で は 、は る か に 多 くの こ と が 行<br />
わ れ ま す 。<br />
水 深 の 深 い 場 所 を 渡 ろうとする<br />
と、Land Roverの 新 しい 先 進 的 なウ<br />
ェイドプログラムが 自 動 的 に 車 両 を<br />
セット アップ す る た め 、 安 全 か つ 安<br />
心 に 走 行 することができます。プロ<br />
グラムの 各 コンポーネントを 使 用 す<br />
ることで、Defenderがクラス 屈 指 の<br />
渡 河 性 能 を 実 現 している 仕 組 みを<br />
ご 紹 介 しましょう。<br />
タッチスクリーン<br />
ディスプレイ<br />
ウェイドプログラムは、 中 央 のPivi<br />
Proインフォテインメントシステムの<br />
タッ チ ス ク リ ー ン * で 選 択 し ま す 。こ<br />
のプログラムを 作 動 させると、 小 川<br />
やより 深 くて 不 確 かな 水 路 を 渡 る 際<br />
に 、ウェ イド セ ン シ ン グ を 利 用 し て 周<br />
囲 の 水 深 を 視 覚 化 することができ<br />
ます。Defenderの 深 水 渡 河 性 能 を<br />
最 大 限 に 活 かしつつ、より 安 心 して<br />
運 転 していただけるように 設 計 され<br />
ています。<br />
車 高<br />
エアサスペンションが 装 備 されてい<br />
る 車 両 では、 浅 瀬 や 小 川 に 近 づいた<br />
際 に、テレインレスポンスでウェイド<br />
プログラムを 選 択 することで、 車 高<br />
が75mm 上 り、Defenderの 標 準 オ<br />
フ ロ ー ド 車 高 に セット さ れ ま す 。 渡<br />
河 中 に、 予 想 より 水 深 が 深 かったこ<br />
とを 車 両 が 検 知 した 場 合 や、 車 両 の<br />
渡 河 水 深 限 界 である900mmに 到<br />
達 した 場 合 は、 車 高 をさらに40mm<br />
上 げることで、システムが 自 動 的 に<br />
より 高 い 車 高 に 切 り 替 えます。「 泥 /<br />
わだち」 運 転 プログラムは、ウェイド<br />
プログラムを 選 択 すると 自 動 的 に<br />
有 効 になり、 河 床 で4 輪 がスリップし<br />
ている 状 態 を 車 両 が 検 知 できるよう<br />
になります。 前 に 進 んでいないこと<br />
を 検 知 すると、 車 両 が 接 地 している(<br />
車 両 の 底 面 が 水 面 下 で 岩 やわだち<br />
に 接 触 している) 状 態 や、ホイールと<br />
走 行 面 との 接 触 が 不 十 分 な 状 態 を<br />
シ ス テ ム が 検 出 し ま す 。い ず れ か に<br />
当 てはまる 場 合 は、Defenderの 車<br />
高 が 自 動 的 に 上 がります。<br />
渡 河 走 行 の 際 は、 走 行 前 に 必 ずルートと 出 口 を 確 認 してください。* 車 内 機 能 は 必 ず 安 全 が 確 保 された 状 態 でドライバーのみがご 利 用 ください。<br />
ドライバーは、 常 に 車 両 を 安 全 に 制 御 できる 状 態 を 保 つ 必 要 があります。<br />
900mm<br />
渡 河 水 深 限 界<br />
(エアサスペンシ<br />
ョン 装 備 車 )<br />
スロットルレスポンス<br />
とドライブトレイン<br />
ウェイドプログラムでは、システムが<br />
早 い 段 階 で 高 い 速 度 段 を 選 択 する<br />
一 方 で 、ス ロ ット ル レ ス ポ ン ス の ア グ<br />
レッシブさが 抑 えられ、エンジン 回<br />
転 数 が 減 少 します。ドライバーの 視<br />
点 で 見 てみると、アクセルペダルが<br />
わ ず か に 減 衰 さ れ る た め 、ア イドリ<br />
ング 状 態 から2,500~3,000rpmに<br />
突 然 エンジン 回 転 数 が 上 がるよう<br />
な こ と が 起 こ り にくくな り ま す 。エ ン<br />
ジン 回 転 数 が 上 がるにつれてゆっく<br />
りと 切 り 替 え が 行 わ れ る た め 、 突 然<br />
エンジンが 過 剰 に 回 転 することを<br />
防 止 し、 水 の 中 に 入 る 際 にはエアイ<br />
ンテークシステムが 多 量 の 空 気 を<br />
吸 気 すること、また、 渡 河 中 にはゆ<br />
るい 泥 や 砂 利 にはまり 込 むことを<br />
防 ぎます。<br />
ヒーターとベンチレーション<br />
一 部 の 車 両 では、 水 の 中 に 入 った 際 、<br />
エンジンルームの 下 にある 高 温 にな<br />
ったエキゾーストシステムが 大 量 の 蒸<br />
気 を 放 ち、それがエアコンディショナ<br />
ーシステムによってキャビン 内 に 取 り<br />
込 まれ、 車 内 が 曇 ることが 問 題 となっ<br />
ています。Defenderで は 、こ れ が 起 き<br />
ません。ウェイドプログラムを 選 択 す<br />
ると、Defenderのヒーティングシステ<br />
ムが 自 動 的 に「 内 気 循 環 モード」にな<br />
り、 車 内 の 空 気 が 循 環 されるため、キ<br />
ャビン 内 が 曇 ることはありません。<br />
ブレーキ<br />
水 中 での 運 転 を 無 事 に 終 えた 後 は、<br />
当 然 車 両 のブレーキディスクとブレ<br />
ーキパッドが 濡 れた 状 態 です。 車 両<br />
が 水 から 出 ると、ABSシステムがブ<br />
レーキにわずかな 負 荷 をかけ、ブレ<br />
ーキディスクとブレーキパッドをわ<br />
ず か に 接 触 さ せ ま す 。こ れ に よ り 、ブ<br />
レーキディスクとブレーキパッドの<br />
表 面 から 水 分 が 取 り 除 かれ、 深 い 水<br />
の 中 を 走 行 した 後 でもDefenderが<br />
最 適 なブレーキ 性 能 を 発 揮 します。<br />
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WONDERFUL WORLD<br />
ヘレン・チェルス キー が 教 える 自 然 の 不 思 議 の 裏 側 にある 科 学<br />
UCL 機 械 工 学 部 の 自 然 科 学 者 および 海 洋 学 者 。ヘレンはBBCのプレゼンターでもあり、 日 々の 生 活 や 大 気 と 海 に<br />
関 する 演 説 や 執 筆 活 動 も 行 っている。<br />
写 真 : アンドレイ・ポリワーノフ<br />
海 の 波<br />
何 世 紀 もの 間 、 船 乗 りたちは 嵐 の 海<br />
を 乗 り 越 え 、 幸 運 に も 生 き て 帰 っ た<br />
者 たちは、 怪 物 のような 波 と 荒 れ 狂<br />
う 海 の 上 で 生 きることの 恐 ろしさを<br />
伝 える 語 り 部 となってきました。しか<br />
し、 現 代 の 科 学 では 唸 る 急 流 の 中 に<br />
また 違 ったものが 見 えてきます。こ<br />
れは 熟 練 の 船 乗 りたちの 厳 しい 航<br />
海 の 中 でも 見 えなかったものでしょ<br />
う。 砕 ける 波 の 真 下 で 生 まれ 続 ける<br />
泡 の 隠 れた 世 界 、そして、この 地 球<br />
が 天 候 のエンジンを 回 し 続 けるた<br />
めに 海 が 果 たしている 大 きな 役 割 。<br />
砕 波 (さいは)は 通 常 、 浜 辺 から 遠<br />
く 離 れた 海 上 で、 風 が 海 の 表 面 を 押<br />
し 上 げ る こ とで 生 ま れ ま す 。 風 速 が<br />
20mphを 超 えると、 波 が 大 きく、 急<br />
勾 配 になり、 砕 波 となります。 船 乗 り<br />
は 、こ の よ う に し て 生 ま れ た 海 上 の<br />
白 い 泡 の 断 片 を 目 にしますが、その<br />
下 で 生 成 されているおびただしい<br />
数 の 泡 を 見 ることはありません。 海<br />
によって 捉 えられた 空 気 の 小 さく 透<br />
明 な カ プ セ ル た ち を 。<br />
直 径 が1mmより 大 きいものは、<br />
海 の 上 部 で 一 時 的 なプルームを 形<br />
成 し、 太 陽 の 光 が 当 たると 青 緑 色 に<br />
輝 きます。 一 方 で、それよりも 小 さい<br />
数 十 億 もの 微 細 な 泡 はもっと 深 い<br />
場 所 に 長 時 間 持 続 するプルームを<br />
形 成 します。 中 には1,000 倍 小 さい<br />
ものも 含 まれます。そして 海 洋 面 下<br />
で 再 びプルームが 発 生 するまで 何<br />
時 間 も 漂 流 します。このように 漂 流<br />
する 泡 によって 大 気 と 海 が 接 する 面<br />
積 が 増 加 し、より 多 くの 時 間 と 空 間<br />
で 空 気 と 水 の 物 理 的 および 化 学 的<br />
な 反 応 が 起 こ り ま す 。<br />
大 きな 嵐 が 発 生 する 度 に、 海 は 効<br />
率 的 に 深 く 息 を 吸 い 込 みます。 二 酸<br />
化 炭 素 に 着 目 してみると、これは 特<br />
に 重 要 な 働 きです。 二 酸 化 炭 素 を 吸<br />
収 することで 海 は、 我 々 人 類 が 大 気<br />
に 与 え 得 る 影 響 も 緩 和 してくれてい<br />
る の で す 。<br />
私 たちが 泡 に 覆 われた 海 の 景 色<br />
を 見 ている 時 は、 海 が 大 気 に 還 元 し<br />
ている 瞬 間 を 目 の 当 たりにしている<br />
の で す 。 泡 が は じ け る と 、 塩 分 や 微<br />
生 物 、 藻 、バクテリアを 含 む 小 さな<br />
粒 子 が 上 に 向 かって 吐 き 出 されま<br />
す。これらの 微 細 な 大 気 の 粒 子 は 空<br />
気 中 の 水 蒸 気 を 引 き 付 けて 小 滴 と<br />
なり、 最 終 的 には 空 に 浮 かぶ 雲 にな<br />
り ま す 。<br />
船 乗 りたちにとっては 劇 的 に 変 化<br />
する 厄 介 なものかも 知 れませんが、<br />
砕 波 はこの 星 の 表 面 と 私 たちを 守<br />
っている 大 気 とをつないでいる 非 常<br />
に 大 事 なものなのです。 一 つ 一 つの<br />
泡 はとても 小 さなものですが、 膨 大<br />
の 数 の 泡 が 集 まって、この 地 球 全 体<br />
に 影 響 を 及 ぼ して い る の で す 。<br />
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