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森本 侑治 野球と統計学 セイバーメトリクス 投手・年棒評価

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ゼミナールⅢ・クラス E07・2012/06/01 卒 論 報 告 10E0125 森 本 侑 治<br />

野 球 と 統 計 学 ・<strong>セイバーメトリクス</strong><br />

1、 <strong>セイバーメトリクス</strong>の 成 り 立 ち<br />

メジャーリーグでは、1970 年 代 から 始 まった「<strong>セイバーメトリクス</strong>」という 手 法 が<br />

広 く 取 り 入 れられている。これは、 野 球 における 新 しい 統 計 的 解 析 やデータ 分 析 を 示 して<br />

いる。そもそも<strong>セイバーメトリクス</strong>とは、SABR(Society for American Baseball Research:<br />

アメリカ 野 球 学 会 ) と Metrics( 測 定 学 や 計 量 学 )を 組 み 合 わせた 造 語 であり、 別 名 「セイバ<br />

ーメトリカ」ともいう。これは、 野 球 ライターで 野 球 史 研 究 家 ・ 野 球 統 計 の 専 門 家 で<br />

もあるビル・ジェームズによって 提 唱 されたものである。<strong>セイバーメトリクス</strong>を 提<br />

唱 したビル・ジェームズは 野 球 の 経 験 がなく、 当 時 、 缶 詰 工 場 の 警 備 員 として 勤 務<br />

していたジェームズが 夜 勤 の 暇 つぶしに 自 分 の 趣 味 である 野 球 データの 分 析 をし<br />

ていたことから 確 立 したものでジェームズ 自 身 、 野 球 の 常 識 として 知 られる 作 戦 を<br />

知 っていた 訳 ではない。そしてこの 理 論 が 一 般 的 に 知 られるようになった 現 在 でも<br />

野 球 哲 学 を 持 つ 人 々からは、<strong>セイバーメトリクス</strong>のようなデータ 野 球 を 歓 迎 しない<br />

風 潮 がある。しかし 近 年 、<strong>セイバーメトリクス</strong>を 全 面 的 に 用 いた 球 団 としてオーク<br />

ランド・アスレチックスとボストン・レッドソックスなどが 知 られている。<br />

2、<strong>セイバーメトリクス</strong>とは<br />

野 球 は、9 人 でする 団 体 スポーツとして 知 られているが、 個 々の 成 績 がはっきり<br />

し、それを 様 々な 価 値 基 準 や 指 標 で 示 すが、<strong>セイバーメトリクス</strong>では、それらの 重<br />

要 性 を 数 値 から 客 観 的 に 分 析 する。 野 球 を 実 際 に 経 験 した 人 やよく 知 っている 人 な<br />

ら 当 たり 前 の 作 戦 としてバントや 盗 塁 などがあるが、<strong>セイバーメトリクス</strong>の 中 には、<br />

そのような 野 球 の 伝 統 的 価 値 観 を 覆 すものもある。つまり、<strong>セイバーメトリクス</strong>と<br />

は、 数 値 処 理 に 基 づく 統 計 理 論 の 利 用 による「 新 しいゲーム 采 配 と 球 団 運 営 の 方 法 」<br />

を 指 す。 従 来 の 野 球 選 手 の 能 力 基 準 は 主 に 見 栄 えからくるもので 目 に 写 るものとし<br />

て、パワフルな 打 撃 、 走 塁 のすばやさ、 華 麗 な 守 備 、キレのある 投 球 等 が 評 価 ポイ<br />

ントであり、 選 手 起 用 のポイントであった。<strong>セイバーメトリクス</strong>は、このような 野<br />

球 観 を 否 定 し、 得 点 や 勝 利 にどれだけ 貢 献 したかを 数 値 化 し、それを 評 価 や 選 手 起<br />

用 の 基 準 にする。 従 って 見 栄 え 等 といった 要 素 は 一 切 入 る 余 地 がなく、 主 観 的 な 評<br />

価 基 準 では、はかり 得 なかった 選 手 の 能 力 を 客 観 的 に 表 すことができる。 主 に、こ<br />

れが<strong>セイバーメトリクス</strong>である。


3、<strong>セイバーメトリクス</strong>の 主 張<br />

<strong>セイバーメトリクス</strong>の 戦 術 上 の 要 点 は、 攻 撃 側 としてはいかにアウトを 取 られな<br />

いか、 守 備 側 としてはいかにアウトを 取 るかである。 球 団 の 運 営 からすれば、 大 ま<br />

かでよく 取 り 上 げられる 数 値 として 投 手 の 勝 利 数 やセーブ 数 、 打 者 のホームラン 数<br />

や 盗 塁 数 などの 選 手 価 格 が 高 騰 する 要 素 を 省 きながら、 安 価 で 優 れた 選 手 を 調 達 す<br />

る 方 法 として 利 用 した。 具 体 的 に、 不 確 定 な 要 素 を 可 能 な 限 り 排 除 し、 相 手 に 得 点<br />

させる 要 素 を 徹 底 して 排 除 し、できるだけ 安 い 値 段 で 選 手 を 集 め、 強 いチームを 作<br />

るために 利 用 した。そこで 投 手 が 重 要 視 しなければならない 点 は、 与 四 死 球 、 被 本<br />

塁 打 、 奪 三 振 、 被 長 打 率 である。なぜ、この4つを 重 要 視 しなければならないかと<br />

いうと、これらは 得 点 されるリスクが 高 まる、もしくは、 得 点 されるのでいかに 点<br />

を 取 られないかという 観 点 から 重 要 視 しなければならない。これを 極 力 留 意 すべき<br />

ところが 要 点 といえる。<br />

4、 投 手 についての 指 標 1<br />

・DIPS(Defense Independent Pitching System)<br />

DIPS とは 投 手 に 責 任 のある 与 四 死 球 と 本 塁 打 、 三 振 から 投 手 の 力 を 評 価 するもの<br />

である。これは 与 四 死 球 と 被 本 塁 打 の 数 が 少 なく、 奪 三 振 が 多 いほど 数 値 は 低 く、<br />

投 手 能 力 は 高 い。<br />

( 与 四 死 球 - 故 意 四 球 ) 3 ( 被 本 塁 打 13)<br />

-(<br />

奪 三 振 2)<br />

DIPS=<br />

+3.12<br />

投 球 回 数<br />

・DIPS2 (Defense Independent Pitching System 2.0)<br />

DIPS の 修 正 版 で 本 塁 打 のみならず、 打 球 の 性 質 ごとにウエイトをつけて 三 振 奪 取<br />

型 や 技 巧 派 投 手 の 不 公 平 を 緩 和 。DIPS と 同 様 に 数 値 が 低 いほど 優 秀 。<br />

DIPS2={(ゴロ×0.05+ 外 野 フライ×0.251+ライナー×0.224- 内 野 フライ×<br />

0.041- 奪 三 振 ×0.12+ 与 四 球 ×0.316+ 与 死 球 ×0.43)×9}÷ 投 球 回 数


・BABIP (Batting Average Ball in Play)<br />

本 塁 打 以 外 の 安 打 を 奪 われる 比 率 。 打 たせてアウトを 取 るタイプの 投 手 、つまり、<br />

技 巧 派 投 手 の 能 力 を 測 り、 数 値 が 低 い 方 が 優 秀 。<br />

( 被 安 打 数 - 被 本 塁 打 数 )<br />

BABIP=<br />

( 打 数 - 被 本 塁 打 数 - 奪 三 振 数 )<br />

または、<br />

BABIP=<br />

( 投 球 回<br />

2. 8 <br />

( 被 安 打 数 - 被 本 塁 数 )<br />

被 安 打 数 - 被 本 塁 打 数 ー 奪 三 振 数 )<br />

・WHIP (Walks plus Hits divided by Innings Pitched)<br />

1イニングあたり、どれだけ 出 塁 されてしまったかを 表 す。 数 値 が 低 いほど 優<br />

秀 で、1 未 満 であればかなり 優 秀 。<br />

( 被 安 打 数 与 四 球 )<br />

WHIP=<br />

投 球 回 数


2012 年 セントラルリーグ 先 発 投 手 年 俸 、 年 数 、DIPS、WHIPS<br />

(2012 年 7 月 2 日 までのランキング)<br />

年 俸 年 数 防 御 率 DIPS WHIPS<br />

1 杉 内 俊 哉 巨 35000 万 円 11 年 目 1.64 2.30 0.90<br />

2 吉 見 一 起 中 24000 万 円 7 年 目 1.83 2.55 0.78<br />

3 内 海 哲 也 巨 22000 万 円 9 年 目 1.66 2.92 1.14<br />

4 石 川 雅 規 ヤ 20000 万 円 11 年 目 3.71 3.79 1.06<br />

5 ホールトン 巨 19500 万 円 5 年 目 3.33 3.76 1.11<br />

6 館 山 昌 平 ヤ 19000 万 円 10 年 目 2.71 3.33 1.23<br />

7 三 浦 大 輔 横 15000 万 円 21 年 目 2.71 3.99 1.08<br />

8 前 田 健 太 広 15000 万 円 6 年 目 1.50 2.44 1.02<br />

9 久 保 康 友 阪 14000 万 円 8 年 目 3.63 3.95 1.16<br />

10 バリントン 広 13375 万 円 2 年 目 4.12 2.66 1.26<br />

11 スタンリッジ 阪 11700 万 円 5 年 目 2.76 2.94 1.11<br />

12 メッセンジャー 阪 11700 万 円 3 年 目 2.26 3.68 1.14<br />

13 能 見 篤 史 阪 10000 万 円 8 年 目 3.13 3.21 1.12<br />

14 ネルソン 中 7800 万 円 5 年 目 出 場 機 会 なし<br />

15 東 野 峻 巨 6500 万 円 8 年 目 3.60 5.52 0.60<br />

16 大 竹 寛 広 6500 万 円 11 年 目 2.34 3.06 1.26<br />

17 中 田 賢 一 中 6000 万 円 8 年 目 2.33 2.96 1.00<br />

18 由 規 ヤ 6000 万 円 5 年 目 出 場 機 会 なし<br />

19 山 本 省 吾 横 6000 万 円 12 年 目 3.95 4.91 1.57<br />

20 安 藤 優 也 阪 5800 万 円 11 年 目 3.22 3.36 1.16<br />

上 の 表 から 分 かることは、 年 俸 に 値 する 活 躍 をしていると 言 えるのが、 言 うまで<br />

もなく、 上 位 3 位 までの 杉 内 選 手 、 吉 見 選 手 、 内 海 選 手 である。 彼 らは、セイバー<br />

メトリクスの 対 象 になっていない 防 御 率 も 良 いのだが、<strong>セイバーメトリクス</strong>の 対 象<br />

となっている 指 標 の DIPS や WHIPS でも 好 成 績 を 残 せている。<br />

しかし 年 俸 ランキング8 位 の 前 田 選 手 や17 位 の 中 田 選 手 を 見 れば、DIPS、WHIPS<br />

共 に 他 の 選 手 に 比 べ、 好 成 績 を 残 せていることが 分 かる。 彼 らがなぜこのような 成<br />

績 を 残 せているかというと 無 駄 なランナー( 四 死 球 など)を 出 さず、 被 本 塁 打 も 極<br />

めて 少 なく、 三 振 も 取 れる 投 手 だということが 分 かる。このことからセイバーメト<br />

リクスを 採 用 しているチームからすれば 非 常 に 目 に 止 まる 選 手 であることがわか<br />

る。


2012 年 セントラルリーグ 中 継 ぎ、 抑 え 投 手 年 俸 、DIPS、WHIPS<br />

(2012 年 7 月 2 日 までのランキング)<br />

年 俸 年 数 防 御 率 DIPS WHIPS<br />

1 岩 瀬 仁 紀 中 45000 万 円 14 年 目 1.71 3.53 1.07<br />

2 藤 川 球 児 阪 40000 万 円 14 年 目 1.90 1.81 1.06<br />

3 林 昌 勇 ヤ 36000 万 円 5 年 目 0.00 1.93 1.14<br />

4 浅 尾 拓 也 中 26000 万 円 6 年 目 2.25 2.07 1.20<br />

5 小 林 宏 阪 20000 万 円 16 年 目 出 場 機 会 なし<br />

6 久 保 裕 也 巨 15000 万 円 10 年 目 9.00 10.12 4.00<br />

7 山 口 鉄 也 巨 12000 万 円 7 年 目 0.23 1.70 0.49<br />

8 山 口 俊 横 10000 万 円 7 年 目 2.03 2.07 1.13<br />

9 サファテ 広 9000 万 円 2 年 目 2.28 2.82 1.18<br />

10 松 岡 健 一 ヤ 9000 万 円 8 年 目 0.00 5.26 1.29<br />

11 永 川 勝 浩 広 8000 万 円 10 年 目 出 場 機 会 なし<br />

12 久 保 田 智 之 阪 8000 万 円 10 年 目 6.00 2.79 1.33<br />

13 マシソン 巨 7800 万 円 1 年 目 1.45 2.35 0.94<br />

14 越 智 大 祐 巨 7500 万 円 7 年 目 11.25 11.87 3.25<br />

15 押 本 健 彦 ヤ 6800 万 円 9 年 目 3.46 4.12 1.65<br />

16 横 山 竜 士 広 6500 万 円 18 年 目 出 場 機 会 なし<br />

17 平 井 正 史 中 6500 万 円 19 年 目 出 場 機 会 なし<br />

18 小 林 正 中 6400 万 円 10 年 目 2.25 3.87 1.42<br />

まず、 中 継 ぎ 投 手 や 抑 え 投 手 の 役 割 は1~2イニングをしっかり 抑 えるというこ<br />

とであるので、 先 発 投 手 に 比 べて 投 げるイニングは 極 めて 少 ない。そこから 分 かる<br />

のは 少 ないイニングしか 投 げないので 四 死 球 の 数 や 被 本 塁 打 の 数 、 逆 に 三 振 を 取 っ<br />

た 数 などが 少 しでも 多 いと 目 立 つだろう。つまり DIPS の 数 値 が 良 い 投 手 と 悪 い 投<br />

手 に 別 れやすい。また WHIPS の 数 値 を 考 えると1イニングにどれだけ 走 者 に 出 塁 さ<br />

れたかを 示 すので 彼 らからすればほぼ1 試 合 で 与 えるランナーということになる。<br />

そういったことを 踏 まえて 上 の 表 を 見 ると、 上 位 3 選 手 は 年 俸 に 相 当 する 活 躍 を<br />

していると 言 える。<br />

しかし7 位 の 山 口 投 手 の 成 績 を 見 ると 防 御 率 、DIPS、WHIPS 共 に 上 位 3 位 の 選 手 に<br />

比 べて 断 然 良 い 成 績 を 残 せている。また 同 チームで6 位 の 久 保 投 手 よりも 年 俸 は 低<br />

いが 成 績 は 山 口 投 手 の 方 が 断 然 良 い。つまり 山 口 投 手 は<strong>セイバーメトリクス</strong>の 目 に<br />

止 まる 選 手 である。


5、 投 手 についての 指 標 2<br />

・QS(Quality Started)/ QS% (Ratio of Quality Started)<br />

先 発 して6 回 以 上 を3 点 以 内 に 抑 えた 回 数 。これは、 先 発 投 手 に 資 質 評 価 である。<br />

QS%=(QS÷ 先 発 登 板 回 数 )×100<br />

・ERA(Earned Run Average)/ 防 御 率<br />

自 責 点 とは、 失 点 のうちで、 投 手 が 負 うべき 点 数 のことで、つまり、 安 打 、 犠 飛 、<br />

犠 打 、 刺 殺 、 故 意 を 含 む 四 死 球 、 暴 投 、ボーク、 野 手 選 択 、 盗 塁 によって 進 塁 した<br />

走 者 が 得 た 点 。1 試 合 あたりの 自 責 点 を 平 均 で、どれだけ 走 者 に 点 を 許 してしまっ<br />

たのかを 示 す 指 標 。<br />

( 自 責 点 9)<br />

ERA=<br />

投 球 回 数

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