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平成25年電気学会産業応用部門大会, 1-62 (2013) - 長岡技術科学大学

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フライングキャパシタ 形 トポロジーに 着 目 した<br />

マルチレベルコンバータの 損 失 解 析 とその 高 効 率 設 計<br />

学 生 員 樫 原 有 吾 , 正 員 伊 東 淳 一 ( 長 岡 技 術 科 学 大 学 )<br />

Power Loss Analysis and High Efficiency Design Method<br />

for Multilevel Converter based on Flying Capacitor Topologies<br />

Yugo Kashihara, Student Member, Jun-ichi Itoh, Member (Nagaoka University of Technology)<br />

This present paper discusses the high efficiency design method for n-level converter based on flying capacitor topologies, and<br />

analyzes the power losses of converter. The error rates between the theoretical and simulation values are under 0.05 % at the rated<br />

load. In addition, two kinds of power loss characteristics of multilevel converters are compared. The comparison results indicate<br />

that the power loss of the ANPC topology is lower than the FC topology. In addition, the criteria design for achieving high<br />

efficiency in the multilevel converters is discussed.<br />

キーワード:マルチレベル 変 換 器 ,インバータ, 損 失 解 析 , 高 効 率 設 計<br />

Keywords:Multilevel converter, Inverter, Loss analysis, High efficiency design<br />

品 開 発 の 低 コスト 化 ができる。<br />

1. はじめに<br />

これまで, 著 者 らは,6 つの 3 レベル 方 式 の 損 失 について 検<br />

近 年 , 様 々なマルチレベル 変 換 器 の 回 路 トポロジーが 提 案 ,<br />

検 討 されている (1)-(5) 。マルチレベル 変 換 器 は, 従 来 の 2 レベル<br />

の 電 力 変 換 器 と 比 較 すると,1レベル 数 n に 対 しスイッチング 素<br />

子 の 耐 圧 を n-1 分 の 1 に 低 減 できること,2 複 数 レベルの 電 圧 を<br />

出 力 するので 出 力 電 圧 の 高 調 波 を 低 減 できることが 利 点 として<br />

あげられる。これらの 利 点 から, 低 耐 圧 で 低 オン 電 圧 ,もしくは<br />

低 オン 抵 抗 の 半 導 体 素 子 を 使 用 できるため, 高 効 率 な 電 力 変<br />

換 器 を 構 成 できる。そのため,マルチレベル 変 換 器 は 高 圧 大 容<br />

量 化 技 術 だけでなく 高 効 率 化 技 術 として 注 目 されている。<br />

これまでに,マルチレベル 変 換 器 の 損 失 について 検 討 した 研<br />

究 がいくつかある (6),(7) 。これらの 文 献 はシミュレーション 解 析 を 用<br />

いて, 複 数 のマルチレベル 変 換 器 の 損 失 を 比 較 している。しか<br />

しながら,シミュレーション 解 析 において, 変 換 器 の 仕 様 や,レ<br />

ベル 数 ,デバイスを 変 更 した 場 合 ,その 都 度 シミュレーションモ<br />

デルを 修 正 する 必 要 がある。さらに, 損 失 最 小 点 の 検 討 などの<br />

最 適 設 計 を 目 指 した 場 合 , 大 量 のシミュレーション 解 析 が 必 要 と<br />

なり, 最 適 設 計 の 手 段 として 有 効 であると 考 えにくい。<br />

そこで, 筆 者 らは 数 式 を 用 いたマルチレベル 変 換 器 の 損 失 や<br />

体 積 などのパラメータの 設 計 法 について 検 討 を 行 ってきた (8),(9) 。<br />

この 方 法 は, 変 換 器 を 構 成 する 半 導 体 素 子 やキャパシタなどの<br />

デバイスパラメータや 変 換 器 の 仕 様 から, 解 析 的 に 変 換 器 の 効<br />

率 や 体 積 を 推 定 し, 高 効 率 化 ・ 体 積 の 最 小 化 を 目 的 にコストとの<br />

バランスを 見 ながら 変 換 器 設 計 ができ, 試 作 時 間 の 短 縮 化 , 製<br />

討 を 行 ってきた (9) 。マルチレベル 変 換 器 のトポロジーは,ダイオ<br />

ードクランプ 形 とフライングキャパシタ 形 に 分 類 できる。クランプ<br />

ダイオードの 導 通 損 失 がないので, 効 率 の 点 では,フライングキ<br />

ャパシタ 形 の 方 が 有 利 である。 一 方 ,マルチレベル 変 換 器 のレ<br />

ベル 数 は, 用 途 や 使 用 デバイスの 特 性 などにより 選 択 される。 特<br />

に, 損 失 低 減 の 観 点 から 最 適 なレベル 数 を 検 討 した 文 献 は 著<br />

者 らの 知 る 限 りない。<br />

本 論 文 は,フライングキャパシタトポロジーに 着 目 し,フライン<br />

グキャパシタ( 以 下 FC) 方 式 とその 派 生 回 路 であるアクティブ 中<br />

性 点 クランプ( 以 下 ANPC) 方 式 について,n レベル 変 換 器 の 損<br />

失 を 一 般 化 し,その 損 失 特 性 について 考 察 する。まず,2 つのマ<br />

ルチレベル 方 式 について 説 明 する。 次 に, 各 方 式 の 変 換 器 の<br />

仕 様 とデバイスパラメータに 基 づいた 損 失 計 算 法 について 説 明<br />

する。そして,シミュレーションを 用 いて 各 方 式 の 損 失 計 算 法 の<br />

妥 当 性 の 確 認 を 行 う。 最 後 に, 損 失 計 算 法 を 用 いて,2 つのマ<br />

ルチレベル 方 式 の 損 失 特 性 について 考 察 し,パワーデバイスの<br />

選 定 指 針 を 明 らかにする。その 結 果 ,ANPC 方 式 がレベル 数 に<br />

関 係 なく FC 方 式 よりも 低 損 失 であることが 明 らかになったので 報<br />

告 する。<br />

2. マルチレベル 方 式<br />

〈2・1〉フライングキャパシタ 方 式<br />

Fig.1 に 一 般 化 された FC 方 式 の 回 路 図 (1 相 分 )を 示 す。FC


方 式 は 中 性 点 電 圧 とフライングキャパシタの 電 位 をスイッチング<br />

によって 加 減 算 することで 任 意 の 電 位 を 出 力 する 方 式 で,レベ<br />

ル 数 に 比 例 してフライングキャパシタの 数 が 増 加 する (1) 。<br />

〈2・2〉アクティブ 中 性 点 クランプ 方 式<br />

Fig.2 に ANPC 方 式 の 回 路 図 (1 相 分 )を 示 す。ANPC 方 式 は<br />

フライングキャパシタ 方 式 と 3 レベル 中 性 点 電 圧 出 力 回 路 を 組<br />

み 合 わせた 方 式 であり,それぞれ 2 つの Cell に 分 けることができ<br />

る (2) 。 本 論 文 では,フライングキャパシタ 回 路 部 分 を Cell 1,3 レ<br />

ベル 中 性 点 電 圧 出 力 回 路 部 分 を Cell 2 とする。2 つの Cell の 電<br />

位 を 加 減 算 することで 任 意 の 電 圧 を 出 力 する。ANPC 方 式 はレ<br />

ベル 数 に 比 例 して Cell1 の 回 路 のレベル 数 が 増 加 する。<br />

3. 一 般 化 されたマルチレベル 方 式 の 損 失 計 算 法<br />

2 章 で 述 べた 2 つのマルチレベル 方 式 の 半 導 体 素 子 に 発 生<br />

する 損 失 の 計 算 法 について 説 明 する (9)(10) 。 電 力 損 失 は 以 下 の<br />

条 件 で 計 算 を 行 う。<br />

1) 負 荷 電 流 リプルは 無 視 できる( 電 流 源 負 荷 とみなす)<br />

2)キャパシタのリプル 電 圧 は 無 視 できる( 直 流 電 圧 源 とみなす)<br />

半 導 体 素 子 に 発 生 する 損 失 P sw は 導 通 損 失 とスイッチング 損<br />

失 ,ダイオードに 発 生 する 損 失 P D は 導 通 損 失 とリカバリ 損 失 とし,<br />

それぞれ(1)~(2) 式 で 得 られる。<br />

P<br />

sw<br />

Pcon<br />

_ sw<br />

Pswitch<br />

..............................................................(1)<br />

P<br />

D<br />

Pcon<br />

_ D<br />

Prec<br />

.................................................................(2)<br />

ここで,P con_sw は 半 導 体 素 子 に 発 生 する 導 通 損 失 (W),P switch は<br />

半 導 体 素 子 に 発 生 するスイッチング 損 失 (W),P con_D はダイオー<br />

ドに 発 生 する 導 通 損 失 (W),P rec はダイオードに 発 生 するリカバリ<br />

損 失 (W)である。<br />

導 通 損 失 はスイッチ(IGBT,MOSFET) 側 と 環 流 ダイオード<br />

(FWD) 側 に 発 生 する 損 失 に 分 けて 考 えることができる。ここで,<br />

素 子 に 流 れる 正 の 電 流 はすべてスイッチ 側 に, 負 の 電 流 はすべ<br />

て FWD 側 に 流 れると 仮 定 する。また,MOSFET の 場 合 ,オン 抵<br />

抗 が 小 さければスイッチ 側 に 正 負 両 方 に 電 流 が 流 れる。しかし,<br />

FWD のオン 電 圧 特 性 を MOSFET と 同 一 に 設 定 することで 損 失<br />

は 計 算 できる。スイッチの 導 通 損 失 の 平 均 値 P con は,スイッチの<br />

オン 電 圧 とスイッチに 流 れる 電 流 から 導 出 することができ,それ<br />

ぞれ(3),(4) 式 にて 表 せる。<br />

P<br />

v<br />

Con<br />

<br />

1<br />

2<br />

<br />

<br />

v i dx .............................................................(3)<br />

on sw<br />

<br />

on<br />

ronI<br />

v 0 ......................................................................(4)<br />

I<br />

sw<br />

I m<br />

sin<br />

............................................................... (5)<br />

ここで,v on はスイッチのオン 電 圧 (V),i sw は 素 子 に 流 れる 電 流<br />

(A),とは 電 流 の 流 れている 期 間 ,r on はスイッチのオン 抵 抗<br />

(),v 0 は 0 A の 時 のオン 電 圧 降 下 (V),は 変 調 波 ,は 位 相 ,<br />

は 負 荷 力 率 角 である。ここで,オン 電 圧 は IGBTを 想 定 し,PN 接<br />

合 による 電 圧 降 下 と 抵 抗 分 にある 電 圧 降 下 として(4) 式 にて 表 現<br />

しているが,MOSFET は 抵 抗 特 性 であるため(4) 式 において<br />

v 0 =0 とすれば 表 現 できる。<br />

〈3・1〉フライングキャパシタ 方 式 の 損 失 計 算 法<br />

本 節 では,FC 方 式 の 半 導 体 素 子 の 損 失 計 算 法 について 説<br />

明 する (10) 。FC 方 式 は, 全 てのスイッチが 出 力 電 圧 指 令 値 1 周 期<br />

Fig.2. Generalized ANPC inverter circuit topology.<br />

に 対 して PWM 駆 動 する。そのため 全 ての 半 導 体 素 子 に 発 生 す<br />

る 損 失 は 同 じである。FC 方 式 を 位 相 が 異 なる 複 数 のキャリアを<br />

用 いた 位 相 シフト 変 調 方 式 で 動 作 させるとすると,FC 方 式 の 変<br />

調 波 A は(6) 式 で 得 られる。<br />

A asin<br />

.......................................................................(6)<br />

ここで,a は 変 調 率 である。<br />

FC 方 式 の 半 導 体 素 子 1 つのスイッチ 側 に 発 生 する 導 通 損 失<br />

P FC_con_Sw と FWD 側 に 発 生 する 導 通 損 失 P FC_con_FWD は(7),(8)<br />

式 で 得 られる<br />

P<br />

FC _ con _ Sw<br />

P<br />

FC _ con_<br />

FWD<br />

1 1 1 1 <br />

v0<br />

I<br />

mron<br />

I<br />

m<br />

aI<br />

mron<br />

av0<br />

I<br />

m<br />

cos<br />

..........(7)<br />

2<br />

8 3<br />

8 <br />

1 1 1 1 <br />

v0<br />

I<br />

mron<br />

I<br />

m<br />

aI<br />

mron<br />

av0<br />

I<br />

m<br />

cos<br />

.........(8)<br />

2<br />

8 3<br />

8 <br />

FC の 全 ての 半 導 体 素 子 は, 同 じスイッチング 周 波 数 で 動 作<br />

し,スイッチングを 行 う 期 間 や 印 加 される 電 圧 も 同 じである。その<br />

ため,スイッチング 損 失 P FC_switch は(9) 式 ,リカバリ 損 失 P FC_rec は<br />

(10) 式 で 表 される。<br />

P<br />

FC<br />

Fig.1. Generalized FC inverter circuit topology.<br />

Cell 2<br />

Sn<br />

Sn+1<br />

Sn+2<br />

Sn+3<br />

1 EdcI<br />

m<br />

_ switch<br />

<br />

e<br />

<br />

<br />

on<br />

e off<br />

f c ....................................(9)<br />

2 n 1 E I<br />

dcd md<br />

S2(n-1)-1<br />

S3<br />

S1<br />

S2<br />

S4<br />

S2(n-1)<br />

Cell 1<br />

Sn-2<br />

S3<br />

S1<br />

S2<br />

S4<br />

Sn-1


P<br />

FC _ rec<br />

1<br />

E<br />

I<br />

dc m<br />

err<br />

fc<br />

<br />

..............................................(10)<br />

2 n 1 E I<br />

dcd md<br />

従 って,n レベルの FC 方 式 の 半 導 体 に 発 生 する 1 相 当 たり<br />

の 損 失 は(11) 式 で 表 される。<br />

P<br />

FC _ Loss_<br />

semi<br />

2n<br />

1 PFC<br />

_ con_<br />

Sw<br />

PFC<br />

_ con_<br />

FWD<br />

PFC<br />

_ switch<br />

PFC<br />

_ rec<br />

.... (11)<br />

〈3・2〉アクティブ 中 性 点 クランプ 方 式 の 損 失 計 算 法<br />

本 節 では,ANPC 方 式 の 半 導 体 素 子 の 損 失 計 算 法 について<br />

説 明 する (2)(9) 。ANPC 方 式 も FC 方 式 と 同 様 に 位 相 シフト 変 調 方<br />

式 で 動 作 させるとすると,ANPC 方 式 の 変 調 波 B は(12) 式 で 得<br />

られる。<br />

asin<br />

when 0 <br />

B <br />

....................................(12)<br />

asin<br />

1<br />

when 2<br />

Fig.2 において,Cell1 の 素 子 1 つに 発 生 するスイッチ 側 の 導<br />

通 損 失 P ANPC_con_sw_Cell1 は (13) 式 で , FWD 側 の 損 失<br />

P ANPC_con_FWD_Cell1 は(14) 式 で 導 出 することができる。<br />

P<br />

ANPC _ con_<br />

sw_<br />

Cell1<br />

P<br />

ANPC _ con_<br />

FWD<br />

v0<br />

1 1<br />

I<br />

m<br />

v0<br />

cos<br />

I<br />

mron<br />

sin 2<br />

2<br />

2 8<br />

.........(13)<br />

1 2<br />

1 <br />

I<br />

mron<br />

I<br />

maron<br />

cos<br />

av0<br />

cos<br />

<br />

4<br />

3<br />

4 <br />

v0<br />

1 1<br />

1<br />

_ Cell1<br />

I<br />

m<br />

v0<br />

cos<br />

I<br />

mron<br />

sin 2<br />

I<br />

mr<br />

2<br />

2 8<br />

4<br />

1 2<br />

1 <br />

I<br />

mron<br />

I<br />

maron<br />

cos<br />

av0<br />

cos<br />

<br />

4<br />

3<br />

4 <br />

on<br />

(14)<br />

Cell2 の 導 通 損 失 について 述 べる。S n ,S n+2 のスイッチ 側 の 導<br />

通 損 失 P ANPC_con_sw_Cell2A は(15) 式 で,S n ,S n+2 の FWD 側 の 導 通<br />

損 失 P ANPC_con_FWD_Cell2A は(16) 式 で 導 出 することができる。<br />

P<br />

ANPC _ con_<br />

sw_<br />

Cell2<br />

A<br />

P<br />

1 1 2 1 <br />

aron<br />

cos 2<br />

cos<br />

I<br />

2<br />

6 3 2 <br />

1 1 1 <br />

av0<br />

cos<br />

sin<br />

cos<br />

<br />

2 2 2 <br />

1 <br />

I<br />

<br />

ma<br />

8I<br />

r<br />

12<br />

<br />

m<br />

<br />

2<br />

m<br />

................ (15)<br />

4<br />

<br />

<br />

<br />

sin<br />

3v<br />

<br />

0<br />

sin<br />

3v<br />

0<br />

cos<br />

<br />

2 <br />

<br />

ANPC _ con_<br />

FWD _ Cell2<br />

A<br />

on<br />

(16)<br />

同 様 に,S n+1 ,S n+3 のスイッチ 側 の 導 通 損 失 P ANPC_con_sw_Cell2B<br />

と FWD 側 の 導 通 損 失 P ANPC_con_FWD_Cell2B は(17),(18) 式 となる。<br />

1 <br />

2 1 <br />

PANPC<br />

_ con _ sw_<br />

Cell2B<br />

I<br />

mv0<br />

cos<br />

1<br />

I<br />

m<br />

r<br />

sin 2<br />

<br />

2<br />

<br />

2 2 4 <br />

(17)<br />

1 1 1 2 1 <br />

I<br />

mav0<br />

cos<br />

sin cos<br />

I<br />

mar<br />

cos 2<br />

cos<br />

<br />

2 2 2 6 3 2 <br />

P<br />

ANPC _ con_<br />

FWD _ Cell<br />

1<br />

I<br />

mav<br />

2<br />

<br />

1 2 <br />

1 <br />

2B<br />

I<br />

m<br />

r<br />

sin 2<br />

I<br />

mv0<br />

I<br />

mv0<br />

cos<br />

2<br />

2 4 <br />

...(18)<br />

2 1 2 1 <br />

sin<br />

<br />

cos<br />

<br />

I ar cos 2<br />

cos<br />

<br />

0<br />

m<br />

<br />

6<br />

3<br />

<br />

2 <br />

Cell1 のスイッチング 損 失 P ANPC_switch_Cell1 と FWD のリカバリ 損<br />

失 P ANPC_rec_Cell1 は(19),(20) 式 で 導 出 することができる。<br />

P<br />

P<br />

ANPC<br />

1 EdcI<br />

m<br />

_ switch_<br />

Cell1<br />

<br />

e<br />

<br />

<br />

on<br />

e off<br />

f c ...........................(19)<br />

n 1 E I<br />

ANPC _ rec _ Cell1<br />

1<br />

E<br />

dcd md<br />

I<br />

dc m<br />

err<br />

fc<br />

.......................................(20)<br />

n 1 E I<br />

dcd md<br />

Cell2 のスイッチング 損 失 は,Cell2 のスイッチが 出 力 周 波 数 で<br />

スイッチングを 行 うため,キャリア 周 波 数 と 同 じ 周 波 数 でスイッチ<br />

ングする Cell1 のスイッチング 損 失 と 比 較 して,Cell2 のスイッチン<br />

グ 損 失 は 十 分 小 さく 無 視 できる。<br />

従 って,n レベルの ANPC 方 式 の 半 導 体 に 発 生 する 1 相 当 た<br />

りの 損 失 は(21) 式 で 表 される。<br />

n<br />

3 <br />

P 2 1<br />

P<br />

ANPC _ Loss_<br />

semi<br />

<br />

<br />

<br />

2<br />

2 P<br />

ANPC _ con _ sw_<br />

Cell2<br />

A<br />

P<br />

<br />

<br />

P<br />

ANPC _ con _ sw_<br />

Cell1<br />

ANPC _ switch_<br />

Cell1<br />

P<br />

ANPC _ con _ sw_<br />

Cell2B<br />

ANPC _ con _ FWD _ Cell1<br />

ANPC _ rec _ Cell1<br />

ANPC _ con _ FWD _ Cell2<br />

A<br />

P<br />

P<br />

P<br />

ANPC _ con _ FWD _ Cell2B<br />

<br />

<br />

..... (21)<br />

〈3・3〉シミュレーションを 用 いた 各 マルチレベル 方 式 の<br />

損 失 計 算 式 の 妥 当 性 の 確 認<br />

Fig.3 に 3 相 10kW の 各 方 式 の 半 導 体 素 子 に 発 生 する 損 失 を<br />

数 式 による 計 算 結 果 とシミュレーションによる 解 析 結 果 で 比 較 し<br />

た 結 果 を,Table1 に 解 析 に 用 いた 変 換 器 の 仕 様 とデバイスを 示<br />

す。Table1 の 仕 様 に 基 づいて 3 相 10kW の 5 レベル FC インバ<br />

ータ,7 レベル ANPC インバータを 設 計 した。Fig.3 より, 各 方 式<br />

の 半 導 体 に 発 生 する 損 失 の 数 式 による 計 算 結 果 とシミュレーシ<br />

ョンによる 解 析 結 果 が 最 大 誤 差 0.05% 以 下 で 全 て 一 致 してお<br />

り, 数 式 による 損 失 計 算 法 の 妥 当 性 を 確 認 した。<br />

4. 損 失 計 算 法 による 各 方 式 のレベル 数 に 対 する<br />

損 失 特 性 の 比 較<br />

本 節 では,3 章 にて 提 案 した 各 方 式 の 損 失 計 算 法 を 用 いて,<br />

レベル 数 を 3-11 レベルまで 変 化 させたときの 2 つのマルチレベ<br />

ル 方 式 の 損 失 特 性 について 考 察 する。<br />

Fig.4 に MOSFET の 素 子 耐 圧 に 対 するオン 抵 抗 の 特 性 を 示<br />

す。Fig.4 に 示 す MOSFET は 5 つのデバイスメーカ(Infineon,<br />

IXYS, IR, RENESAS, TOSHIBA)の 製 品 から, 素 子 耐 圧 が<br />

60V-300V, 電 流 定 格 が 50A-100A のものを 選 択 している。Fig.4<br />

において, 素 子 耐 圧 とオン 抵 抗 が 比 例 する 近 似 線 を 任 意 に 作<br />

成 し,それに 基 づいてレベル 数 を 3-11 レベルまで 変 化 させたと<br />

きのマルチレベル 変 換 器 の 損 失 を 導 出 する。<br />

Fig.5 に,2 つのマルチレベル 方 式 のレベル 数 に 対 する 損 失<br />

特 性 を 示 す。Fig.5 は, 変 換 器 の 仕 様 に Table1 と 同 じパラメータ<br />

を 用 い,レベル 数 に 応 じて Fig.4 の 近 似 線 に 基 づいた MOSFET<br />

を 使 用 したときの 各 マルチレベル 変 換 器 の 損 失 特 性 である。<br />

ANPC 方 式 の 損 失 特 性 は,Cell2 に 高 耐 圧 素 子 を 1 つ 用 いた 場<br />

合 (ANPC 方 式 1)と,Cell2 に Cell1 と 同 耐 圧 の 素 子 を 複 数 直 列<br />

に 接 続 して 使 用 した 場 合 (ANPC 方 式 2)の 2 つの 条 件 で 検 討 し<br />

ている。 各 レベルの MOSFET は, 半 導 体 素 子 の 印 加 電 圧 に 対<br />

して 1.5 倍 以 上 の 余 裕 をみて 選 定 している。Fig.5 より, 各 損 失 特<br />

性 において,レベル 数 に 対 して 損 失 が 低 減 されている。また,<br />

FC 方 式 と ANPC 方 式 の 損 失 特 性 において, 同 耐 圧 の 素 子 を 用<br />

いた 場 合 , 導 通 損 失 は 同 じ(Fig.5(a))であり,スイッチング 損 失<br />

(Fig.5(b))は 倍 になっている。レベル 数 を n(n≧5)とすると,ANPC<br />

方 式 の Cell1 の FC 回 路 のレベル 数 は n-2 レベルになる。そのた<br />

め,レベル 数 が 同 じ 場 合 ,ANPC 方 式 において PWM 駆 動 する<br />

半 導 体 素 子 の 数 は, 常 に FC 方 式 の 半 分 であり,レベル 数 に 関<br />

係 なく ANPC 方 式 の 方 が FC 方 式 よりも 損 失 が 小 さくなる。<br />

Fig.5 の ANPC 方 式 の 損 失 特 性 において,ANPC 方 式 1 と<br />

ANPC 方 式 2 の 場 合 では, 高 レベル 化 に 対 する 損 失 の 低 減 効


果 が 異 なっている。これは,ANPC 方 式 1 においてレベル 数 に<br />

関 係 なく Cell2 に 同 じ 性 能 の 高 耐 圧 素 子 を 用 いているので,<br />

Cell2 に 発 生 する 損 失 は,レベル 数 に 依 存 しないためである。 従<br />

って,ANPC 方 式 1 の 条 件 で, 高 レベル 化 , 低 損 失 化 を 達 成 す<br />

るためには, 素 子 のオン 抵 抗 が 以 下 の 条 件 を 満 たせば 良 い。<br />

r<br />

n 1<br />

2<br />

on_<br />

h<br />

ron_<br />

n ...............................................................(22)<br />

ここで,r on_h は 素 子 耐 圧 が 入 力 電 圧 の 半 分 の 電 圧 を 許 容 できる<br />

素 子 のオン 抵 抗 値 ,r on_n は n レベルの 時 に 素 子 耐 圧 が 入 力 電<br />

圧 の 1/(n-1)を 許 容 できる 素 子 のオン 抵 抗 値 である。 一 方 で,<br />

(22) 式 を 満 たす 素 子 がない 場 合 , 例 えば Fig.4 の 近 似 線 よりもオ<br />

ン 抵 抗 の 小 さい 素 子 がない 場 合 は,レベル 数 を 変 化 させず 同 耐<br />

圧 で 低 オン 抵 抗 の 素 子 を 用 いる,もしくは, 複 数 の 素 子 を 並 列<br />

接 続 して 使 用 することで, 電 力 変 換 器 の 低 損 失 化 を 達 成 でき<br />

る。またこの 指 針 は 他 の 方 式 にも 同 様 に 用 いることができる。<br />

5. 結 論<br />

本 論 文 では,2 つのマルチレベル 方 式 の 損 失 一 般 化 を 行 い,<br />

その 損 失 特 性 について 考 察 した。 各 方 式 の 損 失 計 算 法 は,シミ<br />

ュレーションによる 解 析 結 果 と 比 較 して 誤 差 0.05% 以 下 で 一 致<br />

し,その 妥 当 性 を 確 認 した。また, 損 失 計 算 法 を 用 いて,マルチ<br />

レベル 方 式 の 損 失 特 性 について 比 較 し,ANPC 方 式 が FC 方 式<br />

よりも 低 損 失 な 変 換 器 ということがわかった。さらに,マルチレベ<br />

ル 方 式 の 高 効 率 化 を 目 的 とした 高 レベル 化 の 条 件 及 び 半 導 体<br />

素 子 の 複 数 並 列 使 用 条 件 を 明 らかにした。<br />

今 後 は,マルチレベル 方 式 の 損 失 計 算 法 の 拡 張 性 を 高 める<br />

ために,ダイオードクランプ 方 式 及 び 一 般 化 されたマルチレベ<br />

ル 方 式 の 損 失 一 般 化 について 検 討 を 行 う。<br />

文<br />

(1) F. Z. Peng : “A Generalized Multilevel Inverter Topology with Self Voltage<br />

Balancing”, IEEE Transactions on industry applications, Vol.37, No.2, pp.<br />

2024-2031 (2001)<br />

(2) Barbosa, P.; Steimer, P.; Steinke, J.; Meysenc, L.; Winkelnkemper, M.;<br />

Celanovic, N: “Active Neutral-point-Clamped Multilevel Converter”,<br />

Power Electronics Specialists Conference, 2005. PESC '05. IEEE 36th<br />

16-16 June 2005 Page(s):2296 – 2301<br />

(3) Gateau, G., Meynard, T.A., Foch, H.: “Stacked multilcell converter<br />

(SMC) : properties and design”, Power Electronics Specialists Conference<br />

(2001), 2001, IEEE 32nd Annual<br />

(4) 徳 永 翔 平 , 宗 島 正 和 ,Hui Zhang, 漆 畑 正 太 , 小 金 沢 竹 久 :「3 レベル<br />

T-type NPC を 拡 張 した 5 レベル 変 換 器 」, 全 国 大 会 ,No4,pp75 (2012)<br />

(5) ABB RESEARCH LTD. : 多 数 の 電 圧 レベルを 切 換 えるためのスイッチ<br />

ギアゼル 及 び 変 換 回 路 P2009-525717A<br />

(6) Lin Ma, Tamas Kerekes, Remus Teodorescu, Xinmin Jin, Dan Floricau,<br />

Marco Liserre :「The High Efficiency Transformer-less PV Inverter<br />

Topologies Derived From NPC Topology 」,EPE 2009-Barcelona ,<br />

pp.1-10 (2009)<br />

(7) Sayago, J.A. ; Bernet, S. ; Bruckner, T.:「Comparison of Medium Voltage<br />

IGBT-based 3L-ANPC-VSCs」,Power Electronics Specialists Conference<br />

– 2008, pp. 851-858 (2009)<br />

(8) J. W. Kolar, J Biela and J, Minibock:「Exploring the Pareto Front of Multi<br />

–Objectice Single-Phase PFC Rectifier Design Optimization -99.2%<br />

Efficiency vs. 7kW/dm 3 Power Density」,IPEMC 2009-China,(2009)<br />

(9) 樫 原 有 吾 , 伊 東 淳 一 , 森 田 一 徳 , 宗 島 正 和 , 小 倉 和 也 :「パレートフロント<br />

カ ー ブ を 用 い た 5 レ ベ ル ト ポ ロ ジ ー の 性 能 比 較 」 , SPC 浜 松 ,<br />

SPC-12-159,EDD-12-066(2012)<br />

(10) 樫 原 有 吾 , 伊 東 淳 一 : 「3 レベルマルチレベル 方 式 の 半 導 体 素 子 に 発 生<br />

する 損 失 に 対 する 一 考 察 」, 全 国 大 会 , NO 4-041, pp. 71-72 (<strong>2013</strong>)<br />

献<br />

Conduction loss[W]<br />

Conduction loss [p.u.]<br />

Error rate 0.003% 0.005%<br />

450<br />

400<br />

350<br />

300<br />

250<br />

200<br />

150<br />

100<br />

On-resistance []<br />

50<br />

0<br />

0.09<br />

0.08<br />

0.07<br />

0.06<br />

0.05<br />

0.04<br />

0.03<br />

0.02<br />

0.01<br />

0<br />

Calculation result<br />

Simulation result<br />

Error rate 0.049% 0.012%<br />

2<br />

1.5<br />

1<br />

0.5<br />

Five-level Seven-level<br />

0<br />

Five-level Seven-level<br />

FC inverter ANPC inverter FC inverter ANPC inverter<br />

(a) Conduction loss<br />

(b) Switching loss<br />

Fig.3. Power loss comparisons of two multilevel converters.<br />

Selection critea<br />

Breakdown voltage : 60V-300V<br />

Continuous drain current: 50A-100A<br />

Infineon<br />

IXYS<br />

IR<br />

RENESAS<br />

TOSHIBA<br />

Switching loss[W]2.5<br />

Calculation result<br />

Simulation result<br />

0 100 200 300 400<br />

Breakdown voltage of device[V]<br />

Fig.4. Relations between on resistance and breakdown voltage of device.<br />

1.0<br />

0.9<br />

0.8<br />

ANPC topology 1<br />

0.7<br />

ANPC topology 2<br />

FC topology<br />

0.6<br />

2 4 6 8 10 12<br />

Number of level<br />

(a) Conduction loss<br />

Semiconductor loss [p.u.]<br />

Table 1 Specification.<br />

(a) Converter specification<br />

Input voltage<br />

350V Rated power<br />

10kW<br />

Output voltage<br />

200V Output frequency<br />

50Hz<br />

Output current<br />

29A Switching frequency 10kHz<br />

Phase angle -18deg. Modulation index<br />

0.93<br />

(b) Device parameters<br />

Topology FC topology<br />

ANPC topology<br />

Cell 1<br />

Cell 2<br />

MOSFET<br />

V DSS<br />

I D<br />

R DS<br />

t r<br />

t f<br />

V F<br />

t rr<br />

1.05<br />

1<br />

0.95<br />

0.9<br />

0.85<br />

0.8<br />

0.75<br />

0.7<br />

0.65<br />

0.6<br />

IXTH88N15(IXYS) 2SK4201(RENESAS) IXTK75N30(IXYS)<br />

150V<br />

88A<br />

22m(Max.)<br />

33ns<br />

18ns<br />

1.5V(Max.)<br />

150ns<br />

100V<br />

80A<br />

9.1m(Typ.)<br />

12ns<br />

11ns<br />

0.95V(Typ.)<br />

73ns<br />

300V<br />

75A<br />

42m(Typ.)<br />

25ns<br />

20ns<br />

1.5V(Max.)<br />

360ns<br />

ANPC topology 1<br />

ANPC topology 2<br />

FC topology<br />

Switching loss [p.u.]<br />

2.0<br />

ANPC topology 1<br />

1.8<br />

ANPC topology 2<br />

1.6<br />

FC topology<br />

1.4<br />

1.2<br />

1.0<br />

0.8<br />

0.6<br />

0.4<br />

0.2<br />

0.0<br />

2 4 6 8 10 12<br />

Number of level<br />

(b) Switching loss<br />

2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12<br />

Number of level<br />

(c) Total loss<br />

Fig.5. Power loss characteristics of multilevel converters.<br />

1 [p.u.] of the figure 6 (a) is normalized value by total conduction loss of<br />

the three-level ANPC topology 1. On the other hand, 1 [p.u.] of the figure<br />

6 (b) are normalized by total switching loss of the three-level ANPC<br />

topology 1. Finally, 1 [p.u.] of the semiconductor losses of figure 6 (c) are<br />

normalized value by total loss of the three-level ANPC topology 1. Cell 2<br />

devices of the ANPC topology 1 use high-voltage rating devices. Cell 2<br />

devices of the ANPC topology 2 use same rating devices of the Cell 1<br />

devices.

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