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Title スピンカイラリティによる異常ホール効果と永久 ... - Osaka University

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研 究 ノ ー ト<br />

ス ピ ン カ イ ラ リテ ィ に よ る異 常 ホ ー ル 効 果 と永 久 電 流<br />

ス ピ ンJosephson効 果<br />

最 近 の低 温 セ ンター だ よ りに谷 口氏 が ス ピンカ イ ラ リテ ィに よる ホ ール効 果 を用 い たス ピ ング ラ<br />

ス の測 定 につ い て書 い て い る[1]。こ こで はそ の ホ ール効 果 の メ カニ ズ ム を詳 し く紹 介 す る こ とにす<br />

る。 この現象 は実験 も理論 も阪大 の オ リジ ナル な仕事 で あ る。<br />

1.背 景=強 磁 性 体 の 電 気 伝 導 特 性 の 歴 史<br />

強磁 性 金属 の 電気伝 導 特 性 につ い て の異常 は19世 紀 か ら多 く知 られ て いた 。例 えば電気 抵 抗 が電<br />

流 と磁 化 の相 対 的 な向 きに依 存 す る こ と(異 芳性 磁 気 抵 抗 効 果)[2]、磁 場 をか け な い で もホー ル効<br />

果 が 現 れ る こ と(異 常 ホ ー ル効 果)[3]な どで あ る[41。これ らは強磁 性 体 に は磁 化 が 存在 して い る こ<br />

とを考 えれ ば今 とな って は特 に 「異常 」 な現 象 で は ない が、 こ う した 問題 が理 論 的 に解 決 され た の<br />

は実 に1950年 以 降 の こ とで あ る(も ち ろ ん量 子 論 が 十分 発 展 して か らの こ とで あ る)。 異 方性 磁気<br />

抵抗 効 果 はSmit[5・6ユ、異 常 ホー ル効 果 はSmit[5'8ユ,KaplusとLuttinger[7・9]ら に よって 、 どち ら も磁<br />

化 の存在 とス ピン軌道 相 互作 用 に よる磁 化 と伝 導 の結 合 が 原 因で あ る こ とが 初 め てわ か って きた の<br />

で あ る。異 常 ホ ー ル効 果 につ い て は当初 は多バ ン ドが本 質 的 で あ る[ηか、不 純 物 散乱 が 本 質的 で あ<br />

る[8]か な ど、 理 解 に混 乱 が あ っ た。 ま た 不 純 物 散 乱 の 効 果 に つ い て も、Smit[8]の い うskew<br />

scattering効 果 が重 要 な のか 、Berger[lo]のsidejump効 果が重 要 なの か とい う混乱 も長 い 間続 い た。<br />

今 で は これ らの効 果 は不 純 物 濃度 に よって重 要 性 が ク ロス オーバ ーす る と して決着 してい る。(特<br />

にskewscattering、sidejumpの 効果 につ い て は、現 代 のFeynmandiagramを 用 い る視 点 で は両者<br />

を足 した もの だ けが ゲ ー ジ不 変 な物 理 量 で あ る。)そ れ は さてお き、 その 他 に も強磁 性 転 移 温 度近<br />

くで磁化 の秩 序 が 弱 ま った領 域 で のKondoに よる異常 ホ ー ル効 果 の理 論[ll]を始 め と して数多 くの<br />

理 論 的研 究 が行 わ れ た。 これ らの異 常 ホ ール効 果 の理 論 はす べ て ス ピン軌 道相 互作 用 に基づ くもの<br />

で あ る。以 後 「異 常 ホー ル効 果=ス ピ ン軌 道」 とい う認 識 は定 着 して い た。(も っ と も実験 的 に は<br />

強磁 性体 の異常 ホ ール効 果 は物 質 に よる依存 性 や温 度 や磁 場 依 存性 な どは複 雑 な挙 動 を示 し[4]、す<br />

べ て を理 論 的 に定量 的 に説 明 す るの は到底 無理 で あ る(と 私 は考 え てい る)。)<br />

*科学技術 振興機構 さきが け(PRESTO)<br />

、4月 よ り首都 大学東京 ・都市教 養学部 。<br />

1


2.Berry位 相 に よ る 異 常 ホ ー ル 効 果<br />

と ころが 最 近 、 一様 強 磁 性 秩 序 の ない 、 つ ま り磁 化 がdisorderの 状 況 で 現 れ る新 た な ホ ー ル効<br />

果 の起 源 がYeら に よ り指 摘 され た[12〕。彼 らの指 摘 は、磁 化 が 一様 で な く全 体 と して有 限 のBerry<br />

位相 を もつ ような状況(図1)で は伝 導電 子 と磁 化 との交換 相 互作 用<br />

砺 一J/雌(c主 σ・。),(1)<br />

を通 じてそ の位 相 に よ りホ ー ル効 果 が 生 じる とい う もの で あ る。 た だ し彼 らの 議論 で は ∫が 十 分大<br />

き く伝 導 電子 ス ピ ンはい つ も磁 化 の 方 向 にそ ろ え られて い る とい う断熱 的極 限 を考 え てい る。<br />

ス ピ ンのBerry位 相 は も とは1つ の ス ピンの時 間 的変化 に対 して定 義 され 、極 座標 で表す と<br />

ΩB一 箆3μ φ(… θ一 ・),(・)<br />

であ る。 これ は その 時 間内 にス ピンが は った立 体角 で あ る[ユ6・17]。 今 の ホ ール効 果 に効 くの は この 実<br />

空 間版 で、連 続 体 近似 で<br />

Ω 一 ん3ゑ 面 ・▽φ(… θ一1),(・)<br />

とい う量 であ る(経 路Cに そ った線積 分)。 経 路Cを 微 小 に した極 限 を取 ってみ れ ば わか る よ うに、<br />

この線積 分 はCで 囲 まれ る領域 ∫上 での 幾何 学量8・(∂ κ8× ∂夕S)の 面 積 分 で<br />

Ω 一 瓦3ゐd55・(∂ ⑳5× ∂㌢8),(・)<br />

の よ うに表 され る。 この形 で み る と、確 か に この量 が磁 化 のね じれ(空 間変化)を 表 してい る こ と<br />

が ∂κ,∂夕の か か りか たか ら何 とな くわか る。 この形 は図1の よ うに3つ のス ピ ン8b&,51、 の場 合<br />

には&・(82×83)と い うス カ ラー カイ ラ リテ ィ に帰 着 す る。 た だ しYeら の 断熱 極 限 で は、実 空<br />

間 での幾 何学 量 Ω とホ ール係 数 の 関係 は複雑 で 、 ホー ル係 数 はむ しろ運動 量 空 間 の幾 何 学量 で う ま<br />

く記 述 され る[13劃。<br />

Yeら の指摘 した もうひ とつ の重 要 な点 は、(少 な くと も規則 的 な格 子 で は)Berry位 相 を持 った<br />

磁 化 配 置 を産 み 出 す に はス ピ ン軌 道 相 互作 用 が 必 要 で あ り、 結 果 的 に この新 しい起 源 に よ る異 常<br />

ホ ー ル 係 数 はKaplus-Luttingerの 通 常 の 異 常 ホ ー ル効 果 と同 じ<br />

くス ピ ン軌 道 相 互 作 用 の 大 き さ に比 例 す る こ と で あ る。 そ の 後<br />

か ごめ 格 子 で は ス ピ ン軌 道 な し に ネ ッ トなBerry位 相 を持 つ 磁<br />

化 配 置 が 実 現 さ れ う り、 した が っ て ス ピ ン軌 道 と無 関 係 な 異 常<br />

ホ ー ル 効 果 が 出 現 し う る こ とが 示 さ れ た[13]。 こ う してKaplus<br />

Lutt童ngerよ り50年 近 く後 に初 め て ス ピ ン軌 道 以 外 を起 源 と す<br />

る 異 常 ホ ー ル 効 果 、Berry位 相 に よ る 異 常 ホ ー ル 効 果 の 存 在 が<br />

理 論 的 に は 明 らか に な っ た の で あ る。<br />

2<br />

3132<br />

33<br />

図1:ス ピ ン カ イ ラ リ テ 身(=Berry<br />

位 相)を も つ 磁 化 配 置:。3つ の<br />

ス ピ ン で つ く ら れ る カ イ ラ リ<br />

テ ィ はS1・(82×83)で あ る 。


3.そ の 本 質(=地 味 な 解 釈)は?<br />

さて 、 このBerry位 相 に よる異常 ホニ ル効 果 は位 相幾 何学 的 な仮 想磁 束が ホー ル効 果 を生 じる と<br />

い うフ ァ ンシ イな現 象 であ る[14」5]。この 説明 は伝 導 電 子 ス ピンが磁 化(局 在 ス ピ ン)と 強 く結 合 し<br />

た極 限(ノ → ・・、 断熱 極 限)で のみ 働 く筋 書 きで あ る。.この枠 組 み で は 実際 の 異 常 ホ ール係 数 は、<br />

磁 化 配 置 を取 り入 れ た電 子 のバ ン ド構 造 を数値 的 に解 いて 、 そ の運 動 量 空 間 で のvortex数 を カ ウ<br />

ン トす る ことで計算 され る['3」41。これ で式 の上 で確 か にホ ール効 果 が生 じるの は納得 で きるが、 私<br />

の よ うなpoormanに とって は これで はい まい ち理 解 した気 に なれ ない6そ こで 実 直 に ∫に 関す る<br />

摂 動 論 で示 して み たの が文 献[181であ る・ その結 果 、 ∫の3次 で 、 ホ ール伝 導 度 σ拶 に次 の よ うな項<br />

が存在 す る こ とが わか った。<br />

σ、,,=(4π)2σ 。」3・2・X。.r『(5)<br />

こ こ で レ,τ,σ 。(=θ2靴 τ/翫)は そ れ ぞ れ ア ェ ル ミ面 で の 状 態 密 度 、 不 純 物 散 乱 に よ る 寿 命 、 ボ ル<br />

ッ マ ン伝 導 度 で あ る ㊥ は 電 子 密 度 、6,観 は伝 導 電 子 の 電 荷 と 質 量 で あ る)。z。 が磁 化 の ス ピ ン配<br />

置 を 反 映 す る 量 で<br />

1<br />

Xo… ≡ 万<br />

×<br />

ΣSx、 ・(5x2×Sx3)<br />

x`<br />

ー<br />

(α ×b)彩(わ ×c)z(c× α)g1'(α)1'(b)1(c)+1(α)1'(わ)1'(c)+<br />

αb 6c<br />

,α 聯)・ ¢)],(・)<br />

と、3つ の 局 在 ス ピ ンX、 が つ く る カ イ ラ リ テ ィ 飯,・(S最 ×8悉)を 電 子 が ホ ッ プ して 回 りな が ら<br />

感 じ る とい う寄 与 で あ る。 カ イ ラ リテ ィ は も ち ろ ん そ れ だ け で は ど う い う順 序 で ス ピ ン を ラ ベ ル す<br />

る か の 任 意 性 が あ る の で 物 理 量 に な ら な い1。 向 き は 電 子 が ホ ッ プ し て 回 る振 幅 に よ り、3つ の ス<br />

ピ ンの な す 各 辺 の 長 さベ ク トル α ≡Xl一 漏,う ≡ 混 一 惹,c≡X3--洞 士 の外 積 の 因 子 を とお<br />

して 規 定 され て い る。 電 子 の ホ ップ す る振 幅 はRKKY的<br />

sin々F,<br />

な 因子 ∫(γ)≡6「 溜 とそ の微 分<br />

プ(<br />

γ)=<br />

4∫(γ)<br />

で表 され る。 この ため 、電 子 の平均 自由行 程2程<br />

々F,<br />

度 よ り大 きな三角 形 は ホー ル効 果4∫<br />

に効 か ない 。<br />

結 果 か ら考 える とス ピ ンカイ ラ リテ ィは交 換相 互 作 用 の3次 摂 動 で は必然 的 に現 れ る量 で あ る。<br />

なぜ な ら3つ の ス ピンか らス カ ラー量 を作 る に は&・(8,×83)し か ない か らで あ る。 ただ 、先 に<br />

強 調 した よ うにス ピンの順 序付 け が本 質的 に重 要 で あ るため 、電 気伝 導 度 σκκには現 れず 、 ス ピン<br />

空 間 と座 標 空 間が カ ップ ルで きるホ ∴ ル伝 導 度 吻 に現 れ るわ けで あ る。<br />

現 実 に測 定 され る異常 ホー ル抵抗 はKaplus-Luttingerの 通 常 の異 常 ホ ー ル効 果 をあ わせ て<br />

1そ の観点 か らは、ス ピング ラス の理論 で議論 されてい る 「カイ ラ リテ ィ」 は1直 線 状 にな らぶ3つ の ス ピン<br />

で定 義 されて お り、単 な る乱雑 度 とで もい うべ きで ここで問題 に してい る幾 何学 的 に意味の あ るカイ ラ リテ ィ<br />

とは異 な るものであ る。<br />

一3一


ρ、,"一 λM(孟 ρ+Bρ2)+OX・,(7)<br />

と な っ て い る と は ず で あ る[ユ8](A,Bは 定 数(少 な く と も あ ま り強 く温 度 依 存 しな い 関 数)、cも お<br />

そ ら く)。 ρ は 電 気 抵 抗 率 、 λは ス ピ ン軌 道 相 互 作 用 定 数 で あ る。<br />

式(6)は 複 雑 な 表 式 で あ る が こ れ が 伝 導 電 子 の 感 じ る カ イ ラ リ テ ィ で あ る 。 しか し平 均 自由 行 程 が<br />

spintextureの 変 化 の ス ケ ー ル よ り も十 分 長 い と き に は 数 学 的 なtopologicalnumber<br />

Φ 一4荒 θ、/42・5・(∂ コぴ8× ∂yS),(8)<br />

に 帰 着 す る[19]。こ の と き に は ホ ー ル 伝 導 度 も実 空 間 のvortex数 に 応 じて 量 子 化 され る(た だ し弱<br />

結 合 な の で ~/hの 整 数 倍 で は な い)。<br />

4.さ ら に 良 く 考 え る=カ イ ラ リ テ ィ に よ る 永 久 電 流<br />

上 の 結 果 で 確 か に ス ピ ン カ イ ラ リ テ ィ が あ る とホ ー ル効 果 が 生 じる こ とが わ か っ た。 こ こ で は も<br />

う少 しそ の 起 源 に つ い て 交 換 相 互 作 用 の 摂 動 で 考 え て み よ う。 ス ピ ン&と の 相 互 作 用 で 電 子 に与<br />

え ら れ る 散 乱 振 幅 は 内 積(8ビ σ)の 形 で あ る(σ はPauli行 列 の3成 分 ベ ク トル)。 引 き 続 き 別<br />

の ス ピ ン82で 散 乱 さ れ れ ば そ こで は(82・ σ)と い う振 幅 を電 子 は受 け る 。Pauli行 列 は 非 可 換 で<br />

あ る か ら一 般 に は1→2と い う順 番 の 散 乱 と逆 の2→1と い う散 乱 の 結 果 は 異 な る 。(図2)し か<br />

しTr[(S2・ σ)(Sl・ σ)]=Tr[(81・ σ)(82・ σ)]で あ る か ら2次 摂 動 の 範 囲 で は 、 電 荷 を見 る 限<br />

りは 順 番 は 関 係 しな い 。 しか し3次 摂 動 に な る と事 情 が 異 な る 。Pauli行 列 の 性 質 嘱 σ、=δ 、ゴσ、+<br />

邑訊 一 δ、ら+fε 、,、を つ か う とわ か る よ う に<br />

Tr[(83・ σ)(32・ σ)(51・ σ)]一Tr[(51・ σ)(52・ σ)(33・ σ)}=2葱51・(82×53),(g)<br />

へ1》/ \1ノ<br />

図2:た くさんの ス ピンSiに よる電子 の散 乱 と逆 周 りの振 幅。 両者 は も し局在 ス ピンが カイ ラ リテ ィを もつ配置<br />

であれ ばその分、式(9)だけ異 な り、結果 的 に自発 的な電流 が生 じる。<br />

とな り、局 在 ス ピ ンが カ イ ラ リテ ィ を持 つ と きは そ のス ピン散乱 に よ り電荷 の 流 れ の方 向の対 称 性<br />

が破 れ るの であ る。 つ ま り自発 的 な電 流 が生 じる。 これが 先 に見 たホ ー ル効 果 の本 質 で あ る。 なぜ<br />

な ら円運動 す る電 荷 に電場 をか け る と軌 道 が横 に ドリフ トして い くこ とは古 典 的 に よ く知 られ てい<br />

る こ とで あ る(図3)。<br />

4


5.ス ピ ンJosephson効 果<br />

蠣<br />

o\1<br />

図3:永 久電流 が電場 で ドリフ トしてホ ール効 果 につなが る。<br />

こ う して み る と カ イ ラ リ テ ィ に よ る ホ ー ル 効 果 や 永 久 電 流 は 非 常 に<br />

基 本 的 な ス ピ ン の 量 子 力 学 か ら生 じ て い る こ と が わ か る 。 そ う した 意<br />

味 で は近 藤 効 果 と類 似 とい え よ う(近 藤 効 果 は 局 在 ス ピ ン の 非 可 換 性<br />

か ら で る が 今 の 効 果 は伝 導 電 子 の 非 可 換 性 で あ る 点 が 異 な る)。 も っ<br />

と い え ば こ の 効 果 は ス ピ ン のJosephson効 果 と い え る 。 位 相 が 異 な る<br />

超 伝 導 体 をつ な げ る と位 相 差 に よ り電 流 が 生 じるJosephson効 果 は よ<br />

く知 ら れ て い る 。 実 は 強 磁 性 体 で も同 じこ と が 期 待 さ れ る ゐ で あ る 。<br />

図 の よ う な磁 化 の 向 きの 異 な る2つ の 強磁 性 体(金 属 性 とす る)接 合<br />

で は先 と同 様 な 議 論 に よ り電 子 は1→2と2→1の 向 き に は そ れ ぞ れ<br />

(S2・ σ)(8ユ ・σ)=(Sl・82)一 ぢσ ・(&×S2)と(Sl・ σ)(S2・ σ)<br />

=(sビs2)+iσ ・(8 1×8、)と い う散 乱 振 幅 を 受 け る 。 つ ま り ネ ッ<br />

トに そ の 差<br />

(S2・ σ)(81・ σ)一(&・ σ)(82・ σ);一2fσ ・(&×82)<br />

とい う量 が 残 る。<br />

望<br />

ノ・=51×52 一<br />

、<br />

S<br />

ユ<br />

▲<br />

1<br />

8<br />

2<br />

図4:磁 化 の 異 な る 強 磁 性 体<br />

の 接 合 。81×&に 比 例<br />

し た ス ピ ン の 流 れ 玉 が<br />

生 じ る 。 こ れ は<br />

Josephson効 果 と 類 似 の<br />

現 象 で あ る 。<br />

こ れ は と り も な お さ ず2つ の ス ピ ン の外 積 に 比 例 した ス ピ ン流 ブ、が 存 在 す る こ と を意 味 して い る 。<br />

こ れ は ス ピ ン のJosephson効 果 で あ る[2G・21・22]。(Pauli行列 で 表 さ れ る 散 乱 振 幅 は 一 般 的 にSU(2)位<br />

相 因 子2敵 の 形 に 書 け る(oは 定 数 ベ ク トル)。)通 常 のJosephson効 果 との 違 い は代 数 がSU(2)で<br />

あ る た め 、 生 じ る流 れ は ス ピ ン と電 荷 双 方 で あ る と い う 点 で あ る。 つ ま り現 象 はU(1)の 超 伝 導 の<br />

Josephson効 果 よ り も豊 富 で あ る。 実 際3つ の 強 磁 性 体 の 接 合 を つ くれ ば上 で 議 論 した よ う に 電 荷<br />

の 流 れ が 生 じ る こ と に な る。 きち ん と した 解 析 に よ る と ナ ノ 系 で リ ン グ を作 り3つ の 強 磁 性 コ ン タ<br />

ク トを つ け た 場 合 、 期 待 さ れ る永 久 電 流 は<br />

ゴー 一袴 噛 五)(」6 F)3亀 ・(防・亀),.⑳<br />

で あ る[20ユ。 この永 久 電 流 は電 子 の波 動 関数 が つ なが っ て い る と きに生 じる量 子 効 果 で あ る の で リ<br />

ング は位 相緩 和 長 よ り小 さ くない とい け ない(位 相 緩 和 長 は電子 の コ ヒー レンス の保 たれ てい る距<br />

5一


離)。 実現 され る の は半導 体 で は μm以 下 の サ ンプル で温 度 は0.IK以 下 とい う と ころで あ ろ う。原<br />

理 的 に は これ は量 子XOR演 算 素子 に な ってお り、これ を連結 す る こ とで量 子計 算 が可 能 で あ る[21]。<br />

6.終 り に<br />

現実 問題 と して はス ピ ンカ イ ラ リテ ィに よる ホー ル効 果 を実験 で確 認す るの は容易 で はな い(と<br />

私 は考 え る)。 マ 番 の難 しさはス ピ ン軌 道 相互 作 用 に よ る 「通 常 の」 異 常 ホ ー ル効 果 との分 離 で あ<br />

ろ う。 この通常 の効 果 で さ えか な り複 雑 な挙 動 をす るので あ る[4]。そ こを どれ だ け定 量 的 に理 論 側<br />

が詰 め られ るかが 鍵 とな る。詳 細 な解 析 と実験 とを比 較 してNd2Mo207な どのパ イ ロク ロ ア物 質 で<br />

Berry位 相 に よるホ ー ル効 果 は確 認 され てい る とい う報 告 が あ る[14辱15]。一方 で実験 事 実 はBerry位<br />

相(カ イ ラ リテ ィ)で は説 明 で きない とい う主 張 もあ る[23]。定 量性 を問 題 に しだせ ば き りが な く、<br />

最 終 的 に は フル に第一 原理 計 算 をや って み ない と決 着 はつ か ない の で は ないか と私 は思 う。 さ らに<br />

幾何 学 的 な フ ラス トレー シ ョンが な いス ピ ングラ スの よ うな場 合 も理 論 は まだ不十 分 で あ る。つ ま<br />

り式(6>で示 され る一様 カ イ ラ リテ ィが残 れ ば ホー ル効 果 が で るの だ が、均 一系 で は単 純 に は10cal<br />

な カイ ラ リテ ィは全 体 と して は キ ャ ンセ ル して しま う。一 様 カイ ラ リテ ィが残 る可能性 と して知 ら<br />

れて い るの はス ピ ン軌道 相 互作 用 が あ る場合 で[12・エ8]、だ い たい<br />

Xo(xλM,<br />

が 期 待 さ れ る 。 ス ピ ン グ ラ ス な どの 一 様 系 で 本 当 に こ こ の 比 例 係 数 が 有 限 に残 っ て い る の か は 理 論<br />

で は 未 解 決 で あ る が 、 お お ざ っ ぱ に はDzaloshinsky-Moriya相 互 作 用 が あ る 系 で は一 様 成 分 が 生 じ<br />

る こ とが 期 待 され る 圖 。<br />

実 験 で は ス ピ ン グ ラ ス の 異 常 ホ ー ル 効 果 に 関 して 最 近 精 力 的 に 研 究 が 行 わ れ て い る[1・25924]。特 に<br />

ス ピ ン グ ラ ス 特 有 の 性 質 で あ るzero-f量eld-coolとfield-coolの 場 合 で の磁 化 の 差 を用 い て 「異 常 な 」<br />

異 常 ホ ー ル 効 果 を正 常 な 異 常 ホ ー ル 効 果 と分 離 す る こ と に 最 近 成 功 した こ と は 谷 口 氏 の 解 説 に あ る<br />

通 りで あ る 田。 一 様 カ イ ラ リ テ ィが ス ピ ン軌 道 相 互 作 用 で 誘 起 さ れ て い る とす る と理 論 式(7X切 か ら<br />

い え る よ う に ホ ー ル 抵 抗 率 は 馬=λM(孟 ρ+Bρ2+Cノ)と か か れ 、 係 数C'が カ イ ラ リ テ ィか ら<br />

の 寄 与 と な る 。 谷 口 ら は ρ。忽 を 温 度 の 関 数 と して プ ロ ッ ト した と き にfield-cool,zero-field-cool<br />

の:場合 の 差 を見 つ け 、 一 方 で ρ は そ うい う振 る舞 い を持 た な い こ と を確 認 した 。 つ ま りfield-cooL<br />

zero-field-coolの 場 合 の 差 はKaplus-Luttingerの 異 常 ホ ー ル 効 果 で は 理 解 で き ず 、 カ イ ラ リ テ ィ に<br />

よ る ホ ー ル 効 果(び 項)を 表 して い る と彼 ら は 結 論 づ け た 。 この 実 験 は ラ ン ダ ム な一 様 系 で あ る<br />

は ず の ス ピ ン グ ラ ス 系 で 一 様 カ イ ラ リ テ ィが 生 じて い る こ と の初 の 発 見 と して の 意 味 も大 き い 。 こ<br />

う した 優 れ た 実 験 デ ー タ が で て き た こ と で 理 論 も発 展 が 求 め られ て い る 。<br />

最 近 ス ピ ン トロ ニ ク ス の 分 野 で ホ ッ トな 話 題 で あ る 電 流 に よ る磁 化 反 転 や 磁 壁 駆 動[26・27928]もそ の<br />

起 源 は 交 換 相 互 作 用 に よ る ス ピ ンJosephson効 果 で あ る 。 つ ま り こ の 効 果 に よ り電 流 を流 し た 際 に<br />

磁 壁 に力 や トル ク が 働 き運 動 を お こす 。 詳 し くは 文 献 をみ て ほ しい 。<br />

一6一<br />

(11)


参 考 文 献<br />

[1]谷 口 年 史 、 低 温 セ ン タ ー だ よ りNo..129(2005);T.Taniguchietal.,Phys.Rev.Lett.93,<br />

246605(2005).<br />

[2]W.Thomson,Proc.RoyalSoc.London8,546(1857).<br />

[3]A.Kundt,Wied.A皿.49,257(1893).<br />

[4]詳 し く は 磁 性 体 ハ ン ド ブ ッ ク(朝 倉 書 店)を 。<br />

[ .5]J.Smit,Phy・i・ai7,612(19511.<br />

[6]T.R.McGuireandR.1.Potter,IEβETrans.Magn。MAG-11,1018(1975).<br />

[7]R.KarplusandJ.M.Luttinger,Phys.Rev.95,1154(1954).<br />

[8]J.Smit,Physica21,877(1955);24,39(1958).<br />

[9]J.M.L血ttinger,Phys.Rev.112,.739(1958).<br />

[10]L.Berger,Phys.Rev,B2,4559(1970);B5,1862(1972).<br />

[ll]」.Kondo,Prog,Theor.Phys.27,772(1962),<br />

[12]J.Ye,Y,B.Kim,A.J.MIIIiS,B.1.Shraiman,P」4aju皿darandZ.Tesanovic,Phys.Rev.L6tt.83,<br />

3737(1999).<br />

[13]K.Ohgushi,S.MurakamiandN.Nagaosa,Phys.Rev.B62,R6065(2000).<br />

[14]Y.Taguchi,「 ゾ.Oohara,且Y6shizawa,N.Nag興osaandY.Tokura,Science291,2573(2001).<br />

[15]フ ァ ン シ イ で ヱ レ ガ ン ト な 理 論 が 好 き な 方 は 、 永 長 直 人 、 日 本 物 理 学 会 誌59,520(2004).<br />

[16]A.Auerbach,"lnteractingElectronsandQuantumMagnetism",Springer-Verlag(1994).<br />

[17]永 長 直 人 、 「物 性 論 に お け る 場 の 量 子 論 」、 岩 波 書 店(1995).<br />

[18]G.TataraandH.Kawamura,J,Phys.Soc。Jpn.,71,2613(2002).<br />

[19]M.Onoda,G.TataraandN.Nagaosa,J.Phys.So己Jpn.73,2624(2004)..<br />

[20]G.TataraandH.Kohnb,Phys.Rev.B67,113316(2003).<br />

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[26]G. .TataraandH.Kohno,Phys.Rev.Lett.92,086601(2004).<br />

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[21]多.々 良 源 、 パ リ テ ィ20,19(2005).<br />

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