UWCの概要 - 日本経済団体連合会
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Ⅰ.UWCのプロジェクト<br />
UWCの概 要<br />
- 1 -<br />
資 料 第 1<br />
2012年1月<br />
社団<br />
法人 ユナイテッド・ワールド・カレッジ日本協会<br />
UWC(United World Colleges)は、世界各国から選抜・派遣された生徒(日本の<br />
場合は高校生)を中等教育期間終了前の2年間受け入れ、国際感覚豊かな人材を<br />
育成することを使命としている。<br />
UWCの本部はロンドンにあり、その運営は常任理事会(UWC Executive Board)<br />
があたっている。国際理事会(UWC International Board of Directors)と5年毎に開<br />
催される国際評議員会(International Council)は、UWCの運営について助言を行っ<br />
ている。<br />
UWCの最初のカレッジは、1962年にイギリスに開設したアトランティック・カレッジで<br />
ある。その後、ピアソン・カレッジ(カナダ:1974年)、東南アジア・カレッジ(シンガポ<br />
-ル:1975年)、南部アフリカ・カレッジ(スワジランド:1981年)、アドリアティック・カ<br />
レッジ(イタリア:1982年)、アメリカン・ウェスト・カレッジ(アメリカ:1982年)、シモン・ボ<br />
リバル農業専門カレッジ(ベネズエラ:1988年)、香港カレッジ(香港:1992年)、レッ<br />
ド・クロス・ノルディック・カレッジ(ノルウェー:1995年)、マヒンドラ・カレッジ(インド:<br />
1997年)、コスタリカ・カレッジ(コスタリカ:2006年)、モスタル・カレッジ(ボスニア・ヘル<br />
ツェゴビナ:2007年)、マーストリヒト・カレッジ(オランダ:2009年)が開設された。これ<br />
らのカレッジでは、60~70カ国の生徒約200名が寮で共同生活を送るとともに、勉<br />
学やスポーツに勤しんでいる。UWCは今後も世界各地にカレッジを開設していく<br />
計画をもっている。UWCは国際感覚豊かな有能な人材を多数養成しており、国<br />
際的な相互理解という点でも大きな貢献を行っている。<br />
Ⅱ.カレッジにおける教育<br />
カレッジでの教育は、世界の多くの大学で入学資格として認められている国際<br />
バカロレア(International Baccalaureate=IB)のカリキュラムにのっとっており(シ<br />
モン・ボリバル農業専門カレッジを除く)、各国から招聘された優秀な教師陣が授業<br />
を行っている。生徒たちはこのIBのディプロマを取得すべく、勉学に励んでいる。<br />
一般に各IB科目の要求水準は高く、幅広い知識とともに深い理解力・洞察力
が要求される。これに対して、カレッジ側の生徒への配慮は大変きめ細かい。例<br />
えば、各生徒には担任としてテューターがおり、定期的に勉強の進み具合を話し<br />
合う。また、テューターは、学習方法、進路指導、その他生活一般について生徒<br />
を指導し、良き相談相手となってくれる。授業は尐人数のクラスで行われ、活発<br />
な討論を交えた密度の濃いものとなっており、科目によってはゼミ形式が採られ<br />
たり、自主研究が課せられることも多い。また、UWCが国際的な学校であるこ<br />
とから、授業で扱われる問題も国際的なものが多く、授業での活発な討論を通<br />
じて、教科書からは得られない多くのことを学ぶことができる。こうした環境<br />
の中で、生徒たちの知識と判断力が向上していく。<br />
また、社会への奉仕活動にも熱心に取り組んでいる。IBのプログラムの一環と<br />
して、社会福祉・海難救助・山岳救助・海洋生物調査・森林整備などの活動を<br />
行っている。奉仕活動は通常週2回、午後に行われており、カレッジでの生活に<br />
おいて重要な役割を果たしている。これらの活動はUWCならではのもので、日<br />
本の高校では経験しがたいものが多い。青年期におけるこうした経験は、責任<br />
感や友情を育て、地域社会との交流にも役立っている。また、奉仕活動を通じ<br />
て、生徒たちはカレッジの理想とする国際理解をさらに深めている。<br />
奉仕活動のほかに、各生徒はIBのカリキュラムに従って、芸術系と体育系のアク<br />
ティビティ(日本のクラブ活動に相当)に参加することが奨励されている。<br />
* 国際バカロレア(The International Baccalaureate=IB)<br />
国際バカロレア(IB)とは、世界共通の基準を持つ教育プログラムで、大学進<br />
学前の2年間実施される教育課程を「IBディプロマプログラム」と称している。<br />
これには主要科目〔言語(A、Bの2カ国語)、人文科目(歴史、地理、経済等の<br />
うち1科目)、実験科目(生物、化学、物理等のうち1科目)、数学および選択科<br />
目(芸術、音楽等)の計6科目〕を始め、一般教養や卒業論文、社会奉仕活動、<br />
クラブ活動等も必要とされており、学業のみならず全ての点でバランスのとれ<br />
た生徒を育成することを目的としている。<br />
IBディプロマは、IBのカリキュラムを採用し、ジュネーブのIB本部に登録した学校<br />
のディプロマ課程2年を修了し、IB試験で一定以上の得点をした者に与えられる。<br />
このディプロマを得た者は、IB試験での得点を基準に大学入学資格が与えられる<br />
という仕組みになっている。現在、日本をはじめ世界の多くの大学がIBディプロ<br />
マを入学資格として認めている。<br />
- 2 -
また、京都大学、国際基督教大学、慶應義塾大学などでは、IBディプロマの取得<br />
者もしくは海外留学2年以上の生徒に対し、帰国子女特別選抜制度を設けてい<br />
る。<br />
世界各国の大学におけるIBディプロマ取得者の入学選考基準等については、国際<br />
バカロレア機構のウェブサイト(http://www.ibo.org/country/index.cfm)にて参照できる。<br />
Ⅲ.各校の紹介<br />
(1) アトランティック・カレッジ (United World College of the Atlantic)<br />
英国はウェールズの首都カーディフから西に約40km、ブリストル海峡に臨む位置に、<br />
アトランティック・カレッジ(AC)がある。ACは1962年、英国空軍中将ローランス・ダー<br />
ヴァル卿、クルト・ハーン博士、そして初代学長となったデズモンド・ホール氏など<br />
有志の尽力により、最初に設立されたUWCの学校である。当初は男子生徒のみ<br />
で開校し、カリキュラムも英国の教育制度に沿ったものであったが、1969年に男女<br />
共学となり、1971年からは国際バカロレアのカリキュラムを採用した。<br />
ACの中心となる建物は13世紀に建てられた古城で、現在ここには大ホール、<br />
食堂、図書室、集会場などが置かれている。まわりには近代的な校舎、実験室が散<br />
在し、生徒は授業ごとにそれぞれの教室に移動する。生徒数は約300人、国籍は70<br />
カ国にわたっている。また、生徒全員のための寄宿設備として7つのハウス(寮)<br />
がある。各ハウスの収容人数は約50人で、原則として1階に男子生徒、2階に女<br />
子生徒というように分かれており、簡単なキッチンがついた団欒のための部屋<br />
(デイルームと呼ばれる)がある。各ハウスには寮監督の教師とその家族が住み、<br />
生徒の学習や生活面の指導を担当している。他の主な施設としては、生徒たち<br />
の憩いの場であるソーシャル・センターやアート・センター、屋内・外プール、テニス<br />
コート、沿岸パトロール基地、牧場などがある。<br />
(2) ピアソン・カレッジ<br />
(Lester B. Pearson United World College of the Pacific)<br />
カナダ太平洋岸、アメリカとの国境に近いバンクーバーからフェリーで1時<br />
間半南下すると、バンクーバー島のヴィクトリア市に到着する。そこからさら<br />
に車で1時間、ペダー湾に面したピアソン・カレッジ(PC)が視界に入ってくる。PC<br />
は1974年に設立されたカレッジで、設立に尽力したカナダ元首相でノーベル平<br />
和賞を受賞した故レスター・B・ピアソン氏の名前を冠している。<br />
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PCの生徒は全て奨学金で学んでいる。これはピアソン氏の「生徒は国家・民<br />
族・宗教・思想によって差別されることなしに選ばれ、またあらゆる階層から<br />
集まるものでなければならない」という言葉に基づくものである。生徒数は約<br />
200人、国籍は5大陸80カ国にわたっている。<br />
PCの特色は、カレッジを単に従来の意味での「学校」としてではなく、ひと<br />
つの共同体、もしくは「村」として運営していることである。また、生徒の自<br />
由とそれに付随する責任を最も重視しているため、カレッジには規則と名のつ<br />
くものは存在しない。<br />
カレッジの寮は「ハウス」と呼ばれ、カナダの有名な建築家R・J・トム氏の<br />
設計により、教師と生徒が家族的な雰囲気で、勉強や生活ができるようになっ<br />
ている。ハウスは周囲の美しい自然にマッチした山小屋風の建物で、5棟から<br />
なっている。うちひとつは、日加両国の友好親善を図るために日本政府と企業<br />
の支援により建設されたもので、「ジャパン・ハウス」と名付けられている。<br />
それぞれのハウスは、1階に女子生徒、2階に男子生徒というように分かれ<br />
ている。また、ひとつの部屋にはなるべく異なる文化圏の生徒を入れることを<br />
原則としている。このほか、デイルームと呼ばれる居間、洗面所、洗濯室、教<br />
師とその家族の部屋がある。デイルームは昼間は教室、夜は生徒たちの団欒室<br />
となる。また、22時30分以降は他の生徒の部屋への訪問は禁じられ、それ以後<br />
の用談、懇親等はデイルームなどを使用することになっている。<br />
(3) 東南アジア・カレッジ (United World College of South East Asia)<br />
東南アジア・カレッジ(SC)は、マレー半島の突端の島シンガポールの中心部に近<br />
い住宅地にある。本来、英国士官子弟の教育を目的として設立された学校であ<br />
るだけに、古き良き時代の英国の面影を今日に伝えている。また、1975年にUWC<br />
に加盟するまでのInternational Schoolの特色を残して、随所に他校とは異なった<br />
雰囲気を醸し出している。<br />
生徒数は約2200名、その半数が通学生である。通学生にはシンガポール在住の<br />
外交官やビジネスマンの子弟が多く、日本人学生も珍しくない。7年制で、初<br />
等部・中等部・高等部に分かれている。日本から派遣の対象となるのは高等部(生<br />
徒数約1300名)である。初等部・中等部・高等部それぞれに寮があり、高等部の寮<br />
生約170名のうち、各国から派遣されているUWC奨学生は約30名となっている。<br />
日常生活では勉学の占める割合が比較的高いが、スポーツにも重きが置かれて<br />
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いる。学年を越えた全校的な文化活動も多い。また、地域社会への奉仕活動も<br />
盛んで、カレッジが職業訓練、保健衛生、環境などのプロジェクトを支援している。<br />
大都市の中心部に位置することやその生徒構成から、校風もやや厳しく、制<br />
服があることなど、他のカレッジと異なる点も多い。しかし、古くから異文化が<br />
交わってきた東南アジアに位置することから、あらゆる価値観とぶつかり合う<br />
こともでき、学ぶことは多い。<br />
(4) アドリアティック・カレッジ(United World College of the Adriatic)<br />
アドリアティック・カレッジ(AD)は、ベニスから車で2時間ほどのドゥイノ村にある。<br />
ドゥイノはアドリア海に面した閑静なリゾート地で、スロベニアとの国境にも近い。<br />
ADは1982年、UWCで初めて英語圏外の国に開設されたカレッジである。<br />
そのため、他のカレッジとは異なるいくつかの特徴が見られる。そのひとつは、<br />
生徒総数約200名のうち約3割をイタリア人が占め、イタリア語が必須科目となって<br />
いることである。しかし、IBでイタリア語を選択するかどうかは本人の自由であ<br />
る。また、ADにはカレッジというまとまった領域がないのも大きな特徴である。<br />
カレッジ独自のキャンパスはなく、校舎、図書館、寮などの施設は村の中に点在し<br />
て、ドゥイノ村自体があたかもカレッジであるかのような雰囲気を醸し出している。<br />
カレッジでの朝食はそれぞれの寮のキッチンでとり、昼食と夕食は食堂でと<br />
ることができる。運動場やプールといった設備はないが、地域のグラウンドや<br />
体育館、プールを使用できる。また、夏になれば、カレッジ専用のビーチで泳<br />
ぐこともできる。<br />
寮は6つある。個人の家を改築したものもあり、それぞれの寮が独自の雰囲<br />
気をもっている。寮にはハウスマスターがいて、生徒の生活を指導しているが、<br />
厳しい規則はほとんどなく、生徒は自分の家にいるようにのびのびと生活して<br />
いる。<br />
ADがドゥイノという村の中に存在することの意味は大きい。村人と接する機会<br />
が多く、カレッジ自体が外界と孤立することなく、イタリア社会のなかに自然に溶<br />
けこんでいるからである。<br />
(5) アメリカン・ウェスト・カレッジ<br />
(Armand Hammer United World College of the American West)<br />
アメリカン・ウェスト・カレッジ(AW)は、ニューメキシコ州のアルバカーキから北へ<br />
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150km、車で3時間ほどのロッキー山脈の中腹の町モンテズマに位置する。その名<br />
の通り、アメリカの実業家故アーマンド・ハマー氏の尽力により1982年に設立された。<br />
生徒総数は約200人、国籍は70カ国以上に及ぶ。<br />
AWは、100年ほど前にホテルとして建てられたモンテズマ城を中心に、その周<br />
囲に4つの校舎と購買部などが置かれたキャンパスセンター、4つの寮(男性寮2、<br />
女性寮2)、さらにテニスコート、バスケットボールコート、サッカー場、Hot Springs<br />
(温泉)など各種設備が整っている。また、それぞれの寮のデイルーム(居間)には<br />
台所用品や洗濯機、乾燥機、アイロンなど、生活に必要なものが一通り揃ってい<br />
る。寮ごとのミーティングやパーティーもここで開かれる。<br />
海のないAWでの野外活動の中心は山岳活動である。特にSearch & Rescue<br />
Team(山岳救助隊)は、近くの山で遭難した人の救助に大きく貢献している。週<br />
末には各種のスポーツ大会、キャンプ、スキーツアーなどがあり、自由に参加でき<br />
る。<br />
さらに、学業やスポーツだけでなく、生徒の国際社会に関する幅広い知識の習<br />
得にも重点を置いており、これに関係した行事が多い。例えば、各分野の専門<br />
家を招いたり、生徒自身が自国の現状や問題点について語るなどして、毎週違<br />
ったテーマで討論会を開いている。<br />
地域の人々との交流は、他のカレッジと同様、社会奉仕活動や文化活動を通じ<br />
て行っているが、“Get-Away Family”と呼ばれるプログラムもある。これは、生徒<br />
一人ひとりが近くの町にホストファミリーを持ち、週末など暇な時にホストファミ<br />
リーを訪れ、自由に交流を深めるというプログラムである。<br />
(6) 香港カレッジ (Li Po Chun United World College of Hong Kong)<br />
香港カレッジ(HC)は、香港の実業家 リー・ポー・チュン氏と香港政府の協力によ<br />
り設立され、1992年9月に開校した。カレッジは静かな住宅街である新界(ニュー・<br />
テリトリー)の沙田地区にあり、緑に囲まれたカレッジからは、美しいトロ湾を望むこ<br />
とができる。<br />
現在、約230名の生徒がカレッジに在籍し、IBにのっとった教育を受けている。<br />
生徒の約30%は中国人で、残りは世界中から集まった生徒たちである。20名余<br />
の教師も世界中から招聘され、校内にある住居で家族とともに生活している。<br />
授業は全て英語で行われるが、非中国語圏からきた生徒は、第2外国語として<br />
中国語を学ぶことを奨励されている。カレッジでの社会奉仕活動は、恵まれない<br />
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子供たちの施設や老人ホームの訪問が行われている。課外活動では、水泳、ヨット、<br />
カヌー、クロスカントリー、登山、オリエンテーリングなどのスポーツが行われている。<br />
また、3月のプロジェクト・ウィークには、生徒の半数以上が中国旅行に出かけてい<br />
る。<br />
カレッジには、カフェテリア式の食堂、キャンパスストア(購買部)、テニスコート、グ<br />
ラウンドなどの設備が整備されている。また、プール、図書館、コンピュータ装備<br />
のAVルーム、実験室等が授業や自主学習で利用される。校舎は広々とした近代<br />
的な建物で、中庭に日本庭園をつくることも検討されている。寮は男子寮と女<br />
子寮に分かれており、海外から入学した生徒のほとんどが入寮している(寮は4<br />
人部屋)。<br />
(7) レッド・クロス・ノルディック・カレッジ<br />
(Red Cross Nordic United World College)<br />
レッド・クロス・ノルディック・カレッジ(NC)は、ノルウェー政府と赤十字の協力によ<br />
り設立され、1995年9月に開校した。カレッジは、オスロから北西約300kmのフィヨ<br />
ルドを望む風光明媚なフレック・フャーレルに位置している。<br />
生徒は約200人で、北欧諸国からの生徒が3割、7割は70カ国以上から集まっ<br />
てきている。カレッジには講堂とカフェテリアが一緒になった“カフェトリアム”や図書<br />
館、実験棟、科目ごとに分かれた教室、また生徒が暮らす寮など13の施設があ<br />
る。それぞれ石作りの小道でつながれ、校長以下、教師、生徒が共同生活を送っ<br />
ている。校舎や寮など建物の外観は、地域の風景と調和するように、時代ごと<br />
の伝統的なノルウェー西部の木造建築で統一されている。一方、内部はデジタル<br />
情報通信システムなど、最新のシステムが導入され、快適な学校生活を送ることが<br />
できるように環境整備されている。<br />
NCの大きな特徴は、学校名に赤十字の名前が冠されているように、「赤十字リ<br />
ハビリテーション訓練センター」が併設されていることである。生徒はIBカリキュラム<br />
の一環である社会奉仕活動として、同センターで海難・山岳救助、応急手当措置<br />
などの訓練を受ける。また、環境教育を重視していることから、カリキュラムには<br />
地球規模の環境問題に関する授業(環境システム論、開発学)が盛り込まれ、アク<br />
ティビティ(課外授業)には環境プログラムも導入されている。<br />
社会福祉や地球環境問題を重視する点は、他のカレッジにはない特徴である。<br />
世界中から集まる生徒とともに、NCで貴重な経験を得られるであろう。<br />
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(8) マヒンドラ・カレッジ(The Mahindra United World College of India)<br />
マヒンドラ・カレッジ(MC)は、ムンバイ(旧ボンベイ)近郊の学術・文化都市プーネ<br />
から車で1時間ほどの風光明媚な山々とムラ川を望む地に、インドの実業家ヒンド<br />
ラ家からの基金により、1997年9月に設立された。現在生徒数は約200名で、イン<br />
ド人の生徒が2~3割を占め、70を超える国から生徒が集まっている。<br />
MCは生徒の住居を、中庭とベランダを持つインドの伝統的な家としている。ま<br />
た、自然石で壁を葺くなど、建築材料やカレッジのレイアウトにインド古代建築の伝<br />
統を反映させている。全体の仕上がりや、洗面所・浴室、キッチン、実験室は現<br />
代的で最新鋭のものとなっている。気候は地中海型で、冬は温暖であり、モンス<br />
ーン期もほどよい降雨量となっている。1年中を通じてアウトドアの生活を楽しむ<br />
ことができる。<br />
インドのような発展途上国においては、自然資源の保存と再利用が重要であり、<br />
そのためにMCでは持続的発展の追求を最重要テーマとしている。廃棄物のリサイ<br />
クルや再植林プログラム、水耕栽培、代替エネルギーの利用などが、社会奉仕活動<br />
の重要な部分を占めている。また、インドの豊かな歴史と、この地に深く根差し<br />
た哲学や文化を様々な機会を通して学ぶことができる。<br />
MCは、農業に従事する近隣社会との交流にも力を入れている。キャンパス内の<br />
広々とした空き地を利用して、農園をつくっている。近隣の農民の指導を受けなが<br />
らカレッジの農園を耕し、野菜を栽培し、牛や馬などの家畜を育てている。他方、<br />
近隣の子どもや大人たちに教えることにより、地域社会からの協力を得る。こ<br />
のように、お互いが教えあい、学びあうことにより、双方向の交流を行う。<br />
MCはチャレンジを求める生徒たちに、多くの機会を提供できるであろう。<br />
(9) コスタリカ・カレッジ(United World College Costa Rica)<br />
コスタリカ・カレッジ(CR)は、北をニカラグア、南をパナマに挟まれたコスタリ<br />
カ中央部の首都サン・ホセ市郊外の農園地帯に立地している。<br />
コスタリカは中米で最も安定した民主主義国であり、1948年に世界で始めて<br />
国軍を廃止した国としても知られており、中南米諸国から多くの留学生を受け<br />
入れてきている。CRの前身は、2000年に児童の保護・育成を行なう国際NGOの<br />
SOS Kinderdorf International が、南米の恵まれない子どもたちを支援するために、<br />
コスタリカに、アフリカのガーナに続く世界で2番目の支援センターを設立し<br />
たことに始まる。CRは、支援センターを卒業した若者に、世界中の同世代の若<br />
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者との交流の機会を与えつつ、高等教育への門戸を開くために、2006年に設立<br />
された。<br />
カレッジの所在地は、コスタリカの主要農産物であるコーヒー・プランテー<br />
ションの跡地で、周囲をバナナ・唐辛子・ブーゲンビリア・生姜などの商品作<br />
物農園に囲まれている。自然を生かした5ヘクタールの敷地には、15の教室と<br />
8つの寮などが建てられている。<br />
教育プログラムは国際バカロレアだが、CRでは、UWCで唯一、授業が英語と<br />
スペイン語の完全バイリンガルで行なわれている。国内に紛争を抱える中南米<br />
諸国出身の生徒が多いこともあり、倫理・道徳的に強固な信念をもたせること<br />
を主眼に据えつつ、平和教育、多文化尊重、環境保護活動の3点に重点的に置<br />
いている。<br />
(10) マーストリヒト・カレッジ(United World College Maastricht)<br />
マーストリヒト・カレッジ(MR)は、2009 年に、既存の二つのインターナシ<br />
ョナル・スクールの統合によって設立された。マーストリヒト市東部に立地し<br />
ており、仮の学生寮は現時点で、市内の別の場所に立地している(寮生は、自<br />
転車でキャンパスまで通学する)。建設中の新キャンパスは 2013 年から開校す<br />
る予定。<br />
MR の生徒数は現在、525 名。大半が通学生で、初等部に 285 名、中等部に 115<br />
名、高等部に 115 名が在学している(2013 年までに 300 名に増やす予定)。初<br />
等部から高等部までの全学生がコミュニティ・サービス・プログラムに参加す<br />
る。カレッジは都市に立地しているため、学生が参加するコミュニティ・サー<br />
ビスは非常に多岐にわたる。コミュニティ・サービスには学生のみでなく教師<br />
も参加し、学生の監督にあたっている。MR は、オランダのコミュニティ・サー<br />
ビス・センターとして、オランダ教育省と協力しながら、カレッジの学生のみ<br />
でなく、他校の学生も対象に、大胆なコミュニティ・サービスを展開していく<br />
予定である。<br />
Ⅳ.UWCの組織<br />
(1) UWC会長 (UWC President)<br />
UWC会長は、1995年からヌール・ヨルダン王妃が務めている(前任はチャール<br />
ズ英国皇太子)。UWC会長はUWCの国際組織、すなわち国際評議員会・理事会、<br />
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各国国内委員会、各カレッジを大所高所から積極的に指導する。<br />
(2) 国際評議員会 (UWC International Council)<br />
アトランティック・カレッジの成功により、他の国々からもこのようなカレッジ設立<br />
を要望する声が多く出された。そこで、1967年に各国の著名人を集めて国際評<br />
議員会が組織され、英国のマウントバッテン伯爵がその初代会長となった。その後、<br />
1978年にチャールズ英国皇太子が、1995年にはネルソン・マンデラ前南アフリカ共和<br />
国大統領が就任した。現在は、ヌール・ヨルダン王妃が務めている。同評議員<br />
会は5年毎に開催され、UWCの事業と運営に関して助言を行っている。<br />
(3) 国際理事会 (UWC International Board of Directors)<br />
国際理事会は、有識者や各カレッジの校長、卒業生ネットワークの代表などから<br />
構成されるUWCの運営組織である。具体的には、UWCの運営、運営に関する政<br />
策の立案・実施、UWCの各カレッジへの協力・支援などを行っている。わが国から<br />
は、1992年より小笠原敏晶 ジャパンタイムズ会長が国際理事に就任、2001年から<br />
2006年まで盛田昌夫 ソニー業務執行役員SVPが国際理事を務めた。<br />
(4) UWC国内委員会 (National Committee)<br />
各国の国内委員会は国際評議員会の一員となり、各カレッジに留学する生徒を<br />
支援・選抜し、カレッジに派遣する責任を負っている。これらの国内委員会の中<br />
には、自国内にカレッジを設立する計画を検討しているところがある。<br />
(5) UWC日本協会(http://www.keidanren.or.jp/japanese/profile/UWC/index.html)<br />
UWC日本国内委員会は1972年9月25日に設立され、当時の経団連会長であっ<br />
た植村甲午郎氏が初代会長に就任した。同委員会は1975年に社団法人ユナイテッ<br />
ド・ワールド・カレッジ日本協会に改組された。(2012年4月1日より公益社団法人移<br />
行予定)<br />
1978年にはソニーの盛田昭夫会長が第2代会長に、1995年にUWC国際理事で<br />
あるジャパンタイムズの小笠原敏晶会長が第3代会長に、1999年に全日本空輸の野<br />
村吉三郎社長が第4代会長に、そして2007年には朝日生命保険の藤田讓社長(当<br />
時)が第5代会長に選任され、現在に至っている。<br />
事務局業務は、経団連が行なっている。<br />
UWC 日本協会からは、AC(1972 年度~)、PC(1974 年度~)、SC(1979<br />
年度~)、AD(1982 年度~)、AW(1983 年度~)、HC(1994 年度~)、NC<br />
(1996 年度~)、MC(1998 年度~)に累計 471 名の奨学生を派遣している。<br />
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Ⅴ.UWC国際本部・事務局と各カレッジの所在地<br />
UWC国際本部・事務局 (UWC International Office)[UWCIO]<br />
Lynton House, Tavistock Square<br />
London WC1H 9LT<br />
United Kingdom<br />
TEL : +44-171-388-2066<br />
FAX : +44-171-388-3166<br />
[E-mail] uwcio@uwc.org<br />
[Internet] http://www.uwc.org/<br />
(1) United World College of the Atlantic[AC]<br />
St.Donat’s Castle, Llantwit Major<br />
Vale of Glamorgan, Wales CF61 1WF<br />
United Kingdom<br />
TEL : +44-1446-799000<br />
FAX : +44-1446-799013<br />
[Internet] http://atschool.eduweb.co.uk/atlantic/index.html<br />
(2) Lester B. Pearson United World College of the Pacific[PC]<br />
650 Pearson College Drive<br />
Victoria, British Columbia<br />
Canada V9C 4H7<br />
TEL : +1-250-391-2411<br />
FAX : +1-250-391-2412<br />
[Internet] http://www.pearson-college.uwc.ca/pearson/<br />
(3) United World College of South East Asia[SC]<br />
Pasir Panjang , PO BOX 15<br />
Singapore 911121<br />
Singapore<br />
TEL : +65-6-775-5344<br />
FAX : +65-6-778-5846<br />
[Internet] http://www.uwcsea.edu.sg/<br />
(4) United World College of the Adriatic[AD]<br />
Via Trieste 29<br />
34013 Duino (Trieste)<br />
Italy<br />
TEL : +39-040-373-9111<br />
FAX : +39-040-373-9225<br />
[Internet] http://www.uwcad.it/<br />
- 11 -
(5) The Armand Hammer United World College of the American West[AW]<br />
PO Box 248, Montezuma<br />
New Mexico 87731-0248<br />
U. S. A.<br />
TEL : +1-505-454-4200<br />
FAX : +1-505-454-4274<br />
[Internet] http://www.uwc-usa.org/<br />
(6) Li Po Chun United World College of Hong Kong[HC]<br />
10 Lok Wa Sha Lane, Sai Sha Road<br />
Sha Tin, New Territories<br />
Hong Kong SAR<br />
TEL : +852-2640-0441<br />
FAX : +852-2643-4088<br />
[Internet] http://www.lpcuwc.edu.hk/<br />
(7) Red Cross Nordic United World College[NC]<br />
N-6968 Flekke, Fjaler<br />
Norway<br />
TEL : +47-57-737000<br />
FAX : +47-57-737001<br />
[Internet] http://www.rcnuwc.uwc.org/<br />
(8) The Mahindra United World College of India[MC]<br />
Village Khubavali, Paud<br />
Taluka Mulshi, District Pune 412 108<br />
India<br />
TEL : +91-2029-43258<br />
FAX : +91-2029-43260<br />
[Internet] http://www.muwci.net/<br />
(9) United World College Costa Rica[CR]<br />
Santa Ana Centro, de la esquina sureste de la Iglesia Catolica, 400 mts al norte,<br />
San Jose<br />
Costa Rica<br />
TEL : +506-2282-5609<br />
FAX : +506-2282-1540<br />
[Internet] http://www.uwccr.com/<br />
- 12 -
(10) United World College Maastricht[MR]<br />
Nijverheidsweg 25, 6227 Al Maastricht, The Netherlands<br />
TEL : +3143 3674666<br />
[Internet] http:// www.uwcmaastricht.com<br />
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *<br />
国際バカロレア機構事務局 (International Baccalaureate Organization)<br />
Route des Morillions 15, 1218 Grand-Saconnex<br />
Geneva, Switzerland<br />
TEL : +41-22-791-0274<br />
FAX : +41-22-791-0277<br />
[E-mail] IBHQ@ibo.org<br />
[Internet] http://www.ibo.org/<br />
United World Colleges(UWC)日本卒業生会ホームページURL<br />
http://uwc-japan.org/<br />
- 13 -<br />
以 上