哲学57-2

19
1.はじめに
stotra 1
Śivatāṇḍava-stotra
2
7
3 Kailāsottarolana-mūrti
Rāvaṇānugraha-mūrti
4
2010
5
1
2
3
4
5
Gonda1977, 233-70
1992Madhusūdhana Miśra
Sadānanda Das
Sadānanda
1980, 95-62000, 70-12008, 204-5
Rao1968, 217-220
1292
4
( 1 )

20
2.『ラーマーヤナ』 第 7 巻 ウッタラ・カーンダ 第 16サルガについて
7
1
6 3 1
Rāvaṇa
16 bhakta
Paṇśīkar 1940, 995-7 7
3.『ラーマーヤナ』7.16 訳 と 解 説
§1 停 止 するプシュパカ
1. ラーマよ、その 羅 刹 族 の 王 (ダシャグリーヴァ=ラーヴァナ)は、 兄 ダナダ(クベーラ= 毘 沙 門
天 )を 制 圧 し、マハーセーナ(カールティケーヤ=スカンダ)の 生 誕 地 である、かの 大 いなる 蘆
原 (śaravaṇa)に 赴 いた。
2. さて、ダシャグリーヴァは、まるで 第 二 の 太 陽 であるかのように 光 線 の 網 に 覆 われ 金 色 に 輝 く 大
いなる 蘆 原 を 見 た。
3. 彼 (ダシャグリーヴァ)が 美 しい 森 の 中 程 の、ある 山 に 登 ると、そのときラーマよ、[ 彼 がダナダ
から 奪 った 輿 ]プシュパカがそこで 止 まったのを 見 るのであった。
4. 「この[プシュパカ]は[ 持 ち 主 の] 意 のままに 進 むのではないのか。いったいどうして 止 まってし
まって 動 かぬのか」[と]、かの 眷 属 たちによって 囲 まれた 羅 刹 の 王 (ダシャグリーヴァ)は 考 えた。
5. 「なにゆえに、わしの 意 のままにこのプシュパカは 動 かぬのか。これは 山 の 上 にいる 何 者 かの 仕 業
であろう」[と]。
6. するとそのとき、ラーマよ、マーリーチャという 知 恵 すぐれたる[ 家 臣 ]が 言 った。「 王 よ、プ
シュパカが 動 かない、というこのことに 理 由 がないわけはありません。
6
7
1980, 258-9.
RāmāyaṇaśiromaṇiBhūṣana Mukhopadhyaya1990, 2785-9
Oriental InstituteShah 1975, 101-7
1980, 232
( 2 )

21
7. さては、このプシュパカはダナダ 以 外 の 者 の 乗 り 物 とはならないのでしょう。だから、 財 宝 の 主
(ダナダ)なしでは、 動 きを 止 めた[のでありましょう]。」
8 7 9
Viśravas
16
2
Vaiśravana
6
§2 ナンディンの 警 告
8. 以 上 の 彼 の 発 言 の 間 に、 恐 ろしげで、 暗 黄 色 で、 矮 小 にして、 異 形 、 禿 頭 であり、 腕 短 く、 剛 力
であるナンディンが[ 現 れた]。
9. そして、バヴァ(シヴァ)の 家 来 であるナンディーシュヴァラ(ナンディン)は、 傍 らまでやっ
て 来 て、 恐 れることなく 羅 刹 族 の 王 (ダシャグリーヴァ)にこの 言 葉 を 語 った。
10. 「 立 ち 去 れ、ダシャグリーヴァよ。 山 の 上 でシャンカラ(シヴァ)がお 戯 れである。 鳥 ・ 蛇 ・ 夜 叉 ・
神 ・ガンダルヴァ・ 羅 刹 たちにとって、
11. [すなわち]まさに 一 切 の 生 類 にとって、 山 は 立 ち 入 れないものとなっている」、というナンディ
ンの 言 葉 を 聞 いて、[ダシャグリーヴァの] 耳 飾 りは 怒 りによって 震 えた。
12. [ナンディンからこの 警 告 を 受 けた]けれども、 怒 りによって 目 を 赤 くした 彼 (ダシャグリーヴァ)
はプシュパカから 降 り、「そのシャンカラとはいったい 何 奴 だ」と 言 って、 山 のふもとに 近 づいた。
13. 彼 はそこに、 第 二 のシャンカラであるかのように 輝 く[ 三 叉 ] 戟 を 支 えて、[シヴァ] 神 から 遠 く
ないところに 立 つナンディンを 見 た。
8
Shastri1959
( 3 )

22
14. その 羅 刹 族 の 者 (ダシャグリーヴァ)は 猿 の 顔 をした 彼 を 見 て 侮 り、 水 を 保 つ 雲 が[ 雷 を 放 つ]
ように、 高 笑 いを 放 った。
9
29
10
§3 ラーヴァナが 猿 族 に 滅 ぼされることになる 因 縁
15. シャンカラ(シヴァ)の 別 体 であり、そこ(カイラーサ 山 の 麓 )の 番 人 である 尊 者 ナンディンは、
彼 に 腹 を 立 て、 近 づいてきた 十 面 の 者 (ダシャーナナ=ダシャグリーヴァ)にそこで 言 った。
16. 「ダシャーナナよ、[お 前 は] 猿 の 姿 をした 私 を 侮 り、 落 雷 にも 似 た 嘲 り 笑 いを 放 ったから、
17. それゆえに、 私 の 勇 気 を 備 え、 私 の 姿 と、 私 同 様 の 熱 情 を 持 つ 猿 たちが、 実 にお 前 の 一 党 の 殺 害
のために 生 まれてくるであろう。
18. 残 酷 な 者 (ダシャグリーヴァ)よ、 爪 や 牙 を 武 器 とし、 心 のようにすばやく 動 き 11 、 戦 いに 酔 いし
れ、 力 勝 り、 山 々のように 広 がる、
19. 彼 ら( 猿 たち)は、お 前 や、 家 来 および 息 子 の 持 つ、 様 々な 強 さや 自 尊 心 や 崇 高 さを、まとめて
取 り 去 るであろう。
20. おお、 夜 動 く 者 (ダシャグリーヴァ)よ、 今 私 はお 前 を 殺 すことができるけれども、[お 前 は 今 ]
殺 されるべきではないのだ。というのは、 自 らの 諸 行 為 (カルマ)によってお 前 はまさに 既 に 殺
されているのだから。」
21. という 言 葉 を 発 したその 偉 大 な 神 (ナンディン)の 上 に、 諸 々の 神 の 太 鼓 が 鳴 り、そして 花 の 雨
が 空 から 降 り 注 いだ。
9
Rao1968, 455-602008, 170
34
10
2000, 70.śāripaṭṭa
2002, 72-7
11
(4)

23
§4 カイラーサ 山 に 押 し 込 められるラーヴァナ
22. そのとき、 大 きな 力 を 持 ったかのダシャーナナは、ナンディンの 言 葉 を 気 にとめずに、 山 に 近 づ
き、[ 次 の] 言 葉 を 語 った。
23. 「 私 が 進 んでいるのに、プシュパカの 進 行 が 途 切 れたのはどういうわけだ。お 前 のこの 山 を 根 こそ
ぎにしてやるぞ、 牛 飼 い(シヴァ)よ。
24. 何 の 権 限 があって、バヴァ(シヴァ)は 王 侯 のようにずっと 戯 れているのか。 知 らるべき 恐 怖 の
原 因 が 近 づいているのに、 奴 は 知 らないのだ。」
25. こう 言 った 後 に、ラーマよ、[ダシャグリーヴァは] 山 に 多 くの 腕 を 伸 ばし、それを 素 早 く 持 ち 上
げたのであった。その 山 は 震 動 した。
26. まさに 山 の 震 動 により、 神 (シヴァ)の 眷 属 たちは 震 動 した。パールヴァティーもまた 揺 れ、そ
のとき、 偉 大 な 神 (シヴァ)にしがみついた。
27. すると、ラーマよ、 神 々の 中 で 最 高 位 にある 偉 大 な 神 、ハラ(シヴァ)は、 足 の 親 指 でその 山 を
戯 れに 押 したのであった。
28. すると、 彼 (ダシャグリーヴァ)の、 山 の 柱 に 比 すべき 多 くの 腕 は 押 し 潰 された。そこでその 羅
刹 の 家 来 たちは 驚 愕 した。
29. 怒 りゆえに、また、 諸 々の 腕 の 痛 みゆえに、その 羅 刹 (ダシャグリーヴァ)により、それによっ
て 三 界 が 震 えるほどの 叫 び 声 (virāva)が 突 如 放 たれた。
30. 彼 の 家 臣 たちは、ユガ 末 ( 世 界 の 終 わり)における 雷 撃 だと 思 った。そのとき、インドラを 先 頭
とする 神 々[でさえ]、 道 々でよろめいた。
31. 海 々もたぎり、また、 山 々も 震 えた。[ヒマーラヤに 住 むという]ヴィドヤーダラ( 持 明 族 )や
シッダ( 成 就 者 )たちが、「これはどうしたことか」と 言 うほどに。
29 1
12
12
85-95
Kala1988, 36-42; Fig. 32,33
Berkson et. al1983, 34; Pl. 70
2002, 71-104
(5)

24
2 13
§5 「ラーヴァナ」という 名 の 由 来
32. 「 偉 大 な 神 、 青 い 頸 を 持 つウマー(パールヴァティー)の 夫 (シヴァ)を 鎮 めて 下 さい。ダシャー
ナナ 様 、 彼 を 措 いては、 他 の 避 難 所 (śaraṇa)をこの[ 世 界 ]に 私 たちが 見 ることはありません。
33. 讃 辞 によって 敬 意 を 示 す 者 となって、まさに 彼 という 避 難 所 に 赴 いて 下 さい。 憐 れみ 深 いシャン
カラ(シヴァ)は 鎮 まり、あなたのために 恩 寵 を 配 するでありましょう。」
34. そのときこのように 家 臣 たちによって 言 われて、かのダシャーナナは、 雄 牛 を 旗 印 とする 者 (シ
ヴァ)を 様 々な 種 類 の 詠 唱 や 讃 歌 によって 礼 拝 し、 讃 えたのであった。しかし、 嘆 く 羅 刹 (ダ
シャーナナ)に 千 年 が 過 ぎ 去 った。
35. それによって、 力 強 い 偉 大 な 神 (シヴァ)は、 山 の 頂 上 に 固 定 された[ダシャーナナ]に 満 足 し
た。そして、 彼 の 諸 々の 腕 を 自 由 にして、ラーマよ、ダシャーナナに[ 次 のような] 言 葉 を 語 っ
た。
36. 「ダシャーナナよ、 私 は 勇 者 たるお 前 の 高 潔 さゆえに 満 足 である。 山 に 押 し 潰 されたお 前 により 放
たれた、 大 変 恐 ろしげな 叫 び 声 (rāva)と、
37. そして、[その 声 の] 響 き 渡 った(rāvita)この 三 界 が 恐 怖 に 到 ったことにより、 王 よ、お 前 はま
さにラーヴァナ(Rāvaṇa)という 名 となるであろう。
38. 神 々、 人 々、 夜 叉 達 、そして 地 上 にいるその 他 の 者 達 は、お 前 を「 世 界 を 叫 ばせる 者 」(Lokarāvaṇa)、「ラーヴァナ」とこのように
呼 ぶであろう。」
39. プラスティ 仙 の 子 孫 (ダシャグリーヴァ 改 めラーヴァナ)よ、お 前 が 望 む 道 にて 自 由 に 立 ち 去 れ。
他 ならぬ 私 によって 許 されたのだ。 羅 刹 族 の 王 よ、どうぞ 行 くがよい。」
1000
Rāvaṇa √ru
2 rāva
rāvita
§6 シヴァによる 恩 寵 とその 後 のラーヴァナ
40. しかし、このようにシャンブ(シヴァ)に 言 われて、ランカー 島 の 王 (ラーヴァナ)は 自 ら 言 っ
た。「 偉 大 なる 神 よ、もしも 満 足 されたのでしたら、 請 うている 私 に 恩 恵 をお 与 えください。
41. 神 、ガンダルヴァ、 悪 魔 たち、および、 羅 刹 族 の 者 たち、 秘 密 者 たち、 蛇 族 たちによっては、ま
た、 他 のより 強 い 者 たちによって[さえ] 殺 されえない 性 質 が 私 によってすでに 得 られておりま
13
Giteau1967-68
(6)

25
す。
42. 人 間 たちを 数 には 入 れません、 神 (シヴァ)よ。[というのも、] 彼 らは 私 にとって 取 るに 足 らな
いものと 考 えられる[からです]。そして、 私 には、 梵 天 から 長 い 寿 命 がすでに 得 られています。
三 都 城 を 滅 ぼす 者 (シヴァ)よ、[ 私 が] 望 んでいる、 寿 命 の 残 りと 武 器 とを、あなたは 私 にお 与
え 下 さい。」
43. すると、そのラーヴァナによってこのように 言 われたかのシャンカラ(シヴァ)は、「 月 の 笑 み」
(candrahāsa)として 名 高 い 光 輝 く 剣 を 与 えた。そして、そのときに、 生 類 の 主 (シヴァ) 14 は 寿 命
の 残 りをも 与 えた。
44. 与 えると、その 後 シャンブ(シヴァ)は、「この[ 剣 ]はお 前 によって 軽 んじられてはならない。
というのは、もし 軽 んじられることがあるならば、 他 ならぬ 私 [のところ]に 疑 うことをしない
[その 剣 ]は 戻 ってくるであろうから。」[と] 述 べた。
45. このようにして、まさに 大 主 宰 神 (シヴァ)によってつくられた 名 前 を 持 つかのラーヴァナは、
偉 大 なる 神 (シヴァ)に 挨 拶 をすると、プシュパカに 乗 りこんだのであった。
46. その 後 、ラーマよ、ラーヴァナは 地 表 を 征 服 していった。たいへん 大 きな 勇 気 を 持 つ 武 人 (クシャ
トリヤ)たちを 次 から 次 へと 倒 しつつ。
47. ある 者 たちは 力 強 い 勇 者 で、 戦 いにひどく 熱 心 な 武 人 であったが、 彼 (ラーヴァナ)の 命 令 に 従
わず、 従 者 たちともども 滅 亡 した。
48. 他 の 知 恵 を 備 えた 者 たちは、 羅 刹 (ラーヴァナ)が 打 ち 負 かし 難 いことを 知 って、「 我 々は 征 服 さ
れました」と[その] 力 を 誇 る 羅 刹 族 の 者 に 話 しかけた。
1000
42
14
bhūta-patibhūta
21
(7)

26
4.『シヴァターンダヴァ・ストートラ』について
1000
32
Pañcacāmara 16 4
15
Bhaktimala: Shiva, Vol .1, Music Today CD D92003, 1991
Ramanand Sagar’s Ramayan, DVD Disc 7, Episode 30, 2001
111
16
17
Pandey1997
15
116
8
jaṭā ṭavī galaj jalap ravā hapā vitas thale
⏑ – ⏑ – ⏑ – ⏑ – ⏑ – ⏑ – ⏑ – ⏑ –
38
16
1149
17
Agrawala1960
(8)

27
Pandey1997
STpBhaktimala CD Music Today
1992
1912
Bṛhatstotraratnākara STj
1 14
1
5.『シヴァターンダヴァ・ストートラ』 訳 と 解 説
§1 シヴァ 神 の 姿
jaṭā-͡aṭavī-galaj-jala-pravāha-pāvita-sthale
gale ’valambya lambitāṃ bhujaṅga-tuṅga-mālikām |
ḍamaḍ-ḍamaḍ-ḍamaḍ-ḍaman-ninādavaḍ-ḍamarv ayaṃ
cakāra caṇḍa-tāṇḍavaṃ tanotu naḥ śivaḥ śivam || 1||
1. 巻 髪 の 森 より 落 ちる 水 の 流 れによって 清 められた 土 地 である 喉 頸 に、 垂 れ 下 がった 大 きな 花 輪 の
ようなコブラを 懸 けて、「ダマッド、ダマッド、ダマッド」という 音 のする 太 鼓 を 伴 う、 猛 々しい
舞 踊 (tāṇḍava)をかの 方 は 行 った。[その]シヴァ 神 は 我 々に 幸 せ(śiva)を 恵 みたまえ。
jaṭā-kaṭāha-saṃbhrama-bhraman-nilimpanirjharīvilola-vīci-vallarī-virājamāna-mūrdhani
18 |
dhagad-dhagad-dhagaj-jvalal-lalāṭa-paṭṭa-pāvake
kiśora-candra-śekhare ratiḥ prati-kṣaṇaṃ mama || 2||
2. 鉢 状 の 巻 髪 に 渦 を 巻 き 彷 徨 う 神 聖 な 河 (nilimpanirjharī: ガンガー)のうねる 波 の 分 岐 に 輝 く 頭 を
持 ち、「ダガッド、ダガッド、ダガッド」と 燃 える 額 の 表 面 に 炎 を 備 え、 細 い 月 を 頭 飾 りとする 者
18
STpmūrddhaniSTj
(9)

28
(シヴァ 神 )に 対 し、 毎 瞬 毎 瞬 、 私 の 熱 情 がある。
1. 2. 3.
4. 5.
6.
3
§2 パールヴァティー 妃 を 伴 うシヴァ 神
dharādharendra-nandinī-vilāsa-bandhu-bandhurasphurad-dig-anta-santati-pramodamāna-mānase
|
kṛpā-kaṭa-͡akṣa-dhoraṇī-niruddha-durdhara-͡āpadi
kvacid dig-ambare 19 mano vinodam etu vastuni || 3||
3. 山 の 王 (dharādharendra: ヒマーラヤ)の 娘 (パールヴァティー 妃 )と 美 しい 遊 び 仲 間 と[に 比 さ
れる] 山 並 みの、 輝 く 四 方 位 の 果 てまでの 連 続 ( 稜 線 )を 喜 ぶ 御 心 (mānasa)を 持 ち、 慈 悲 の 一
瞥 (kaṭākṣa)の 持 続 によって 耐 え 難 い 苦 難 を 制 した、 四 方 位 を 衣 とする 存 在 (vastu)[であるシ
ヴァ 神 ]において、 心 が 喜 びに 赴 きますように。
jatā-bhujaṅga-piṅgala-sphurat-phaṇā-maṇi-prabhākadamba-kuṅkuma-drava-pralipta-dig-vadhū-mukhe
|
mada-͡andha-sindhura-sphurat-tvag-uttarīya-medure
mano vinodam adbhutaṃ bibhartu bhūta-bhartari || 4||
4. 巻 髪 のコブラの 赤 茶 に 輝 く 襟 の 珠 の 輝 きによって、カダンバとクンクマの 液
20 に 染 められたように
[ 四 方 の] 天 空 の 乙 女 たち(dig-vadhū)の 顔 を[ 黄 色 や 赤 色 に 染 め]、 盲 いた 酔 象 の 輝 く 肌 を 滑 ら
かな 上 衣 とする 生 類 の 主 (シヴァ 神 ) 21 において、 心 は 喜 びを 保 ちますように。
19 STj: cid-aṃbare
20
21
14 1980, 106
bhūta-bhartṛ
(10)

29
22
mānasa
Himavat 23
3
phaṇā-maṇi
§3 シヴァ 神 とインドラおよびカーマ
sahasralocana-prabhṛty-aśeṣa-lekha-śekharaprasūna-dhūli-dhoraṇī-vidhūsara-͡aṅghri-pīṭha-bhūḥ
|
bhujaṅga-rāja-mālayā nibaddha-jāṭa-jūṭakaḥ
śriyai cirāya jāyatāṃ cakorabandhu-śekharaḥ || 5||
5. [ 頂 礼 する] 千 眼 の 者 (sahasralocana: 帝 釈 天 インドラ)をはじめとする 全 ての 神 々の 冠 から[ 落 ち
る] 花 弁 と 花 粉 の 連 続 によって 色 づけられる 足 の 置 き 場 を 持 つ 者 であり、コブラの 王 でできた 花
輪 によって、もつれた 髪 (jāṭa-jūṭa)を 結 ぶ 者 であり、チャコーラ 鳥 の 友 (cakorabandhu: 月 ) 24 を
頭 飾 りとする 者 (シヴァ 神 )は、 長 き 吉 祥 のため、 生 起 しますように。
lalāṭa-catvara-jvalad-dhanañjaya-sphuliṅga-bhānipīta-pañcasāyakaṃ
naman-nilimpa-nāyakam |
sudhā-mayūkha-lekhayā virājamāna-śekharaṃ
mahā-kapāli sampade śiro jaṭālam astu naḥ || 6||
6. 5 本 の 矢 を 持 つ 者 (pañcasāyaka: 愛 神 カ ー マ ) が[ そ の ] 額 の 祭 場 (catvara) で 燃 え る 炎
(dhanañjaya)の 火 の 粉 と 輝 きに 飲 み 込 まれた 場 所 であり、 神 々の 指 導 者 (インドラ)が 礼 拝 する
22
3 “vilāsa-bandhu-bandhura”
“vilāsa”“dalliance”Pandeya1997, 60
23
2008, 228-33
24
kavi-samaya
(11)

30
対 象 である、 甘 露 を 光 線 とする 繊 月 によって 輝 く 頭 飾 りをつけた、 頭 蓋 骨 の 大 きな 25 結 髪 する 頭 が、
我 々の 幸 せ(sampad)のためにありますように。
karāla-bhāla-paṭṭikā-dhagad-dhagad-dhagaj-jvaladdhanañjaya-͡āhutīkṛta
26 -pracaṇḍa-pañcasāyake |
dharādharendra-nandinī-kuca-͡agra-citra-patrakaprakalpana-͡eka-śilpini
trilocane ratir 27 mama || 7||
7. [その] 恐 ろしき 額 の 表 面 で「ダガッド、ダガッド、ダガッド」と 燃 える 炎 に、 鋭 い 5 本 の 矢 を 持
つ 者 ( 愛 神 カーマ)が 供 物 として 捧 げられた 者 であり、 山 の 王 の 娘 (パールヴァティー 妃 )の 胸
の 先 に 色 とりどりの 彩 色 を 施 す 唯 一 人 の 職 人 である、 三 眼 の 者 (trilocana: シヴァ 神 )に 対 し、 私
の 熱 情 がある。
56
67
28 5
5
29
30
§4 荒 ぶる 神 としてのシヴァ 神 の 諸 相
navīna-megha-maṇḍalī-niruddha-durdhara-sphurat-
25
1988, 219
26 STj: ādharīkṛta
27
STj: matir
28
1980, 83-4.
29
Agrawala1960, 195
30
2008, 228-39
(12)

31
kuhū-niśīthinī-tamaḥ 31 -prabandha-baddha 32 -kandharaḥ |
nilimpanirjharī-dharas tanotu kṛtti-sindhuraḥ
kalā-nidhāna-bandhuraḥ śriyaṃ jagad-dhurandharaḥ || 8||
8. とぐろを 巻 く 新 しい 雲 に 覆 われた、 抑 えがたく 輝 く 新 月 の 夜 の 暗 闇 の 連 続 と 結 合 した[かのよう
に 青 黒 い] 頸 を 持 つ 者 、 神 聖 な 河 (ガンガー)を 支 える 者 であり、 象 皮 を 纏 う 者 であり、[ 月 の]
欠 片 の 美 しい 置 き 場 であり、 世 界 という 重 荷 を 支 える 者 [であるシヴァ 神 ]は、 吉 祥 ( 富 )を 恵
み 給 え。
praphulla-nīla-paṅkaja-prapañca-kālima-prabhā-͡
avalambi-kaṇṭha-kandalī-ruci-prabaddha-kandharam 33 |
smaracchidaṃ puracchidaṃ bhavacchidaṃ makhacchidaṃ
gajacchida-͡andhakachidaṃ tam antakacchidaṃ bhaje || 9||
9. 満 開 の 青 い 蓮 より 放 散 する 青 黒 い 輝 きを[したコブラを] 掛 ける 喉 と、カンダリーの[ 白 い 花 の]
光 と 結 びついた 首 を 持 つ、 愛 神 (カーマ=スマラ)を 滅 ぼす 者 であり、[ 魔 神 ターラカ 三 兄 弟 の]
都 城 を 滅 ぼす 者 であり、 生 ( 再 生 )を 断 ち 切 るものであり、[ダクシャの] 祭 式 を 破 壊 する 者 であ
り、 象 の 姿 をした 魔 神 (ガジャ・アスラ)を 滅 ぼす 者 であり、 魔 神 アンダカを 滅 ぼす 者 であり、
死 神 (アンタカ)を 滅 ぼす 者 である 彼 (シヴァ 神 )に、 私 は 礼 拝 いたします。
akharva 34 -sarvamaṅgalā-kalā-kadaṃba-mañjarīrasa-pravāha-mādhurī-vijṛmbhaṇā-madhu-vratam
|
smarāntakaṃ purāntakaṃ bhavāntakaṃ makhāntakaṃ
gajāntaka-͡andhakāntakaṃ tam antakāntakaṃ bhaje || 10||
10. カ ダ ン バ の 花 房 の 精 髄 の 流 れ で あ る 蜜 を 湛 え て 開 く 花 の よ う な 一 切 の 吉 祥 を 備 え た 者
(sarvamaṅgalā: パールヴァティー)の 全 ての 支 肢 に[とまる] 蜂 (madhuvrata)であり、 愛 神
(カーマ=スマラ)を 滅 ぼす 者 であり、[ 魔 神 ターラカの 三 人 の 息 子 の] 都 城 を 滅 ぼす 者 であり、
生 ( 再 生 )を 断 ち 切 るものであり、[ダクシャの] 祭 式 を 破 壊 する 者 であり、 象 の 姿 をした 魔 神
(ガジャ・アスラ)を 滅 ぼす 者 であり、 魔 神 アンダカを 滅 ぼす 者 であり、 死 神 (アンタカ)を 滅 ぼ
す 者 である 彼 (シヴァ 神 )に、 私 は 礼 拝 いたします。
8 ab 9 ab
35 10 ab
31 STptamaḥ STj
32
STj: bandhu
33 STj 9ab: praphulla-nīla-paṅkaja-prapañca-kālimac-chaṭā-viḍambi-kaṇṭha-kandharā-ruci-prabandha-kandharam |
34
STj: agarva
35
(13)

32
4
9 cd 10 cd
saṃhāra-mūrti 7 36
smara 67
3 3
pura 16
37
bhavakāla
38
39
40
makha
41
4 8 gaja
42
andhaka
43
36
2008, 189
Sadananda
37
1980, 87-8.
38
bhavāntaka
1988, 2062002, 86
39
17
2002, 105-262008, 206-11
40
Agrawala1960, 19.
41
1980, 90-2; 128-302008, 240-1.
42
1980, 84-6.
43
2008, 184.
(14)

33
44
antaka
16
45
§5 シヴァ 神 のターンダヴァ 舞 踊
jayatv adabhra-vibhrama-bhramad-bhujaṅgama-śvasad 46 -
vinirgamat-krama-sphurat-karāla-bhāla-havyavāṭ | 47
dhimid-dhimid-dhimid-dhvanan-mṛdaṅga-tuṅga-maṅgaladhvani-krama-pravartita-pracaṇḍa-tāṇḍavaḥ
śivaḥ || 11||
11. 多 くのとぐろを 巻 くコブラが、 呼 吸 し、 這 い 出 し、 順 にくねる、 恐 ろしき 額 に、 供 物 を 保 つ[ 炉
のごとき 第 三 の 目 ]を 有 する 者 であり、「ディミッド、ディミッド、ディミッド」と 鳴 るムリダン
ガ 太 鼓 の、 大 きく 吉 祥 なる 音 の 連 なりにかき 立 てられた 猛 々しい 舞 踊 (tāṇḍava)をなす、シヴァ
神 に 勝 利 あれ。
1
naṭa-rāja 48
49
50
44
OFlaherty1983, 35-6
45
1980, 86-7.
46
STj: sphurad
47 STj 11b: dhagad-dhagad-vinirgamat-karāla-bhāla-havyavāṭ |
48
1980, 104-7. Rao1968, 221-270.
49
1988, 225-91980, 106
2007: 119-20
lāsya
50
1988, 39, 402008, 6.17; 18; 20
(15)

34
§6 詠 い 手 の 問 いかけ
dṛṣad-vicitra-talpayor bhujaṅga-mauktika-srajor
gariṣṭha-ratna-loṣṭayoḥ 51 suhṛd-vipakṣa-pakṣayoḥ |
tṛṇa-͡aravinda-cakṣuṣoḥ prajāmahī-mahendrayoḥ
samapravṛttikaḥ kadā sadāśivaṃ bhajāmy aham || 12|| 52
12. 岩 でできた 極 彩 色 の 寝 台 を 持 ち、コブラの 珠 の 首 飾 りを 付 け、 至 高 なる 宝 の 塊 を 持 ち、 友 に
も 敵 にも 味 方 となり、 草 のように[ 切 れ 長 で] 蓮 のように[ 輝 く] 目 を 持 つ 生 類 の 王 と 王 妃
(prajāmahī-mahendra: シヴァ 神 とパールヴァティー 妃 )とに 同 じ[ 帰 依 の 心 を] 起 こしている 私 は、
いつシヴァ 神 の 永 遠 相 (sadāśiva)を 礼 拝 できるでしょうか?
kadā nilimpanirjharī-nikuñja-koṭare vasan
vimukta-durmatiḥ sadā śiraḥ-stham añjaliṃ vahan |
vilola 53 -lola-locano 54 lalāma-bhāla-lagnakaḥ
śiva-͡iti mantram uccaran kadā sukhī bhavāmy aham || 13||
13. 神 聖 な 河 (ガンガー)の 木 陰 の 洞 に 住 み、 悪 しき 考 えを 離 れ、 常 に 頭 の 上 に 合 掌 の 手 を 置 き、きょ
ろつくことなく、 飾 りのついた 額 を 持 つ[シヴァ 神 ]に 献 信 し、「シヴァよ」というマントラを 唱
えている 私 は、いったいいつ 幸 せを 備 えた 者 となるでしょうか?
55
12.89 2
56
12 Agrawala1960, 20
51
loṣṭhayoḥをSTjにより 修 正 。
52 STj 12d: samaṃ pravartayan-manaḥ kadā sadāśivaṃ bhaje ||
53
STj: vimukta
54
STj: locanā
55
1980, 107; 116Maheśa
Srinivasan
1990, 109; 140Sadāśiva
O'Flaherty1983, 37-8
56
Sivaramamurti1951, 130-2.
(16)

35
ardhanārīśvara-mūrti 57
§7 読 誦 の 効 能 (phalaśruti)
imaṃ hi nityam evam-uktam uttama-͡uttamaṃ stavaṃ
paṭhan smaran bruvan naro viśuddhim eti santatam |
hare gurau subhaktim āśu yāti na ͡anyathā gatiṃ
vimohanaṃ hi dehināṃ suśaṅkarasya cintanam || 14||
14. このように 説 かれた 最 上 なるこの 讃 辞 を、 常 に 読 み 上 げ、 記 憶 し、 唱 える 人 は 永 遠 なる 清 浄 性 に
赴 く。ハラ(シヴァ 神 )という 師 に 対 する 良 き 信 仰 に 速 やかに 至 るのである。 別 の 方 法 では[そ
こに] 行 くことはない。 人 々にとって、よきシャンカラ(シヴァ 神 )に 対 する 念 想 (cintana)こ
そが、 妄 念 を 離 れること 58 なのだから。
pūjā-͡avasāna-samaye daśavaktra-gītaṃ
yaḥ śaṃbhu-pūjana-paraṃ 59 paṭhati pradoṣe |
tasya sthirāṃ ratha-gajendra-turaṅga-yuktāṃ
lakṣmīṃ sadā ͡eva sumukhīṃ pradadāti śaṃbhuḥ || 15||
15. 供 養 の 終 わりに 際 して、 十 の 口 を 有 する 者 (daśavaktra: ラーヴァナ)によって 歌 われた、シャン
ブ(シヴァ 神 )の 供 養 のうちの 最 高 のもの(であるこの 讃 歌 )を、 宵 に 唱 える 者 、その 者 には、
車 駕 、 象 、 馬 を 備 えた 堅 固 なる 富 を、シャンブは、 喜 んで 与 える。
iti śrī-rāvaṇa-kṛtaṃ 60 śiva-tāṇḍava-stotraṃ sampūrṇam |
以 上 、ラーヴァナ 作 『シヴァターンダヴァ・ストートラ』、 了 。
phalaśruti
15
14 Vasantatilakā
57
1980, 99-100
58
vimohana confusion, perplexity seducing, fascinating
cintana
Pandey1997, 69
59 STj: pūjanam idaṃ
60 STj: viracitaṃ
(17)

36
略 号
STj Śivatāṇḍavastotra: Javaji (1912, 112-4).
STp Śivatāṇḍavastotra: Pandey (1997, 58-70).
Bibliography
文 献
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1980 376
(18)

37
2008
1980
2000
2002
1988
2007Abhinayadarpaṇa1
41: 105-126
図 版 1 エローラ 第 29 窟 撮 影 : 佐 久 間 留 理 子 (2007.2.5)
(19)

38
図 版 2 バンテアイ・スレイ 南 経 蔵 破 風 撮 影 : 前 川 実 保 (2009.12.15)
図 版 3 シヴァ 神 の 容 姿 と 持 物
(20)

39
Abstract
An Annotated Japanese Translation of the Śivatāṇḍava-stotra
Toshiya UNEBE
Śivatāṇḍava-stotra is a Sanskrit hymn of praise to the Lord Śiva in the Hindu religious tradition. It has been
very popular in India and is famous for its high literary grace. And it is traditionally ascribed to Rāvaṇa, the rival
of Rāma who is the hero of one of the two cerebrated Indian epics, Rāmāyaṇa.
This article presents a Japanese translation of this hymn with annotation. The Rāmāyaṇa (chapter 7, section
16) narrates the account of how Rāvaṇa became a devotee (bhakta) of Śiva and how he came to sing the hymn to
him. This episode is also translated in this article.
The hymn describes many mūrti (forms) of Śiva related to his various mythological episodes. The annotation
explains these related episodes and the visual representations as well.
(21)