BTMU FX Weekly a
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<strong>BTMU</strong> <strong>FX</strong> <strong>Weekly</strong><br />
Global Markets Research<br />
a<br />
1.今週 今週 今週のトピックス<br />
今週 トピックス<br />
(1) 日銀新総裁の下での金融政策<br />
(2) 総裁、副総裁が決まった後<br />
2.来週 来週 来週の相場見通<br />
来週 相場見通 相場見通し 相場見通<br />
チーフアナリスト 内田 稔<br />
シニアマーケットエコノミスト 鈴木 敏之<br />
(1) ドル円 92.00 ~ 95.00<br />
(2) ユーロ 対ドル: 1.2950 ~ 1.3450<br />
対 円: 121.00 ~ 126.00<br />
(3) 豪ドル 対ドル: 1.0150 ~ 1.0400<br />
対 円: 94.00 ~ 97.00<br />
(4) 人民元 対ドル: 6.22500 ~ 6.25000<br />
3.来週の経済指標 経済指標 経済指標、イベント<br />
経済指標 イベント イベント<br />
4.マーケットカレンダー<br />
マーケットカレンダー<br />
対 円: 14.70 ~ 15.10<br />
平成 25(2013)年 2 月 22 日
1.今週のトピックス<br />
強い関心が寄せられ<br />
る日銀総裁人事<br />
当面、封印される見<br />
込みとなった「外債<br />
購入」<br />
高まる買入資産「対<br />
象年限延長」の可能<br />
性<br />
買入年限の国際比較<br />
(1) 日銀 日銀新総裁<br />
日銀 日銀 総裁 総裁の下での<br />
総裁 での での金融政策<br />
での 金融政策<br />
市場では、日銀総裁人事が最大の関心事となっている。安倍首相が、日<br />
米首脳会談から帰国後、国会に対して提示される見込みだ。確かに、誰が<br />
総裁になるのか、極めて重要である。特に、日銀は 1 月 22 日、「2%」と<br />
いう物価安定の目標を導入し、今後はその達成に向けて、金融緩和を強化<br />
していくものと予想されている。国際社会に対しても、ここまで進行した<br />
円安は、金融緩和の強化や、その期待の表れであるとの説明がなされてき<br />
た。ただ、重要な点は、誰が総裁になるかはもちろん、どういった政策が<br />
取られるかだ。その点、今週は以下の二つが明らかとなった。<br />
まずは、日銀による外債購入の可能性が、現時点では極めて低いという<br />
ことだ(詳しくは後述「ドル円の項」)。これまでの G7 や G20 声明を踏<br />
まえると、金融緩和の結果として生じる円安圧力は容認されようが、為替<br />
の需給に影響をおよぼす日銀の外債購入は国際的に受け入れられにくい。<br />
政権公約に、「経済を取り戻す」や「教育を取り戻す」など、いくつかの<br />
「取り戻す」を掲げた自民党は、「外交を取り戻す」ことも挙げている。<br />
国際社会との間で、軋轢を起こしてまで、日銀法を改正し、金融緩和の選<br />
択肢に「外債購入」を据えるとは考えにくい。誤解を招きかねない外債に<br />
関連する政策は、再び「80 円割れ」とでもならない限り、当面の間、封<br />
印されよう。<br />
一方、日銀が買い入れる資産の対象年限については、現在の「3 年以内」<br />
が「5 年」まで延長される可能性が高まった。これは、19 日に公表された、<br />
日銀金融政策決定会合議事要旨(1 月実施分)のなかで、複数の委員が、<br />
5 年程度まで延長することも考えられるとしていたためだ。もっとも、買<br />
い入れる資産の残存年限が長期化するほど、財政ファイナンスとみなされ<br />
かねない点に注意が必要となる。高知市での記者会見において、資産買い<br />
入れ基金で購入する長期国債の対象年限を、従来の 3 年から 5 年に延長す<br />
る可能性を問われた森本審議委員も 20 日、「効果とコストもチェックし<br />
ながら考えていきたい」と述べている。日銀にとって、「3 年」から「5<br />
年」への延長は、重い「金融緩和の強化」との位置づけのはずだ。<br />
欧米と比べた場合、例えば、長期国債も購入している米国と比べると日<br />
銀が「5 年」まで年限を延長した場合も、その緩和の程度が弱いとされる<br />
かも知れない。ただ、公的債務残高が名目 GDP 比でみて 100%程度の米<br />
国と、200%を軽く超えている日本の中央銀行とでは、そもそも財政ファ<br />
1
1.今週のトピックス<br />
問題は、為替市場の<br />
強烈な「期待」<br />
イナンスとみなされるかどうかの年限にも差があって然るべきだ。その米<br />
国においてさえも、まさに長期国債の買い入れ継続に関する様々なコスト<br />
やリスクに対する議論が始まろうとしている。さらに、政府債務危機に揺<br />
れたユーロ圏の中央銀行、ECB も、その国債買い入れプログラム(OMT)<br />
にて定めた買い入れ国債の年限は「3 年以内」だ。これらを踏まえると、<br />
日銀が年限を「5 年」に延長することは、「安易な財政ファイナンスとみ<br />
なされない」うえでの、ギリギリの選択と言えよう。<br />
問題なのが、為替市場の受け止め方だ。短期間のうちに、79 円台から<br />
94 円台までドル円が上昇した通り、為替市場の「金融緩和強化」に対す<br />
る期待は非常に強い。このため、買入資産対象年限の「5 年」への延期が、<br />
極めて重い決定であるにもかかわらず、為替市場ではそうした受け止め<br />
方がなされない可能性が決して低くない。<br />
特に、前述の通り、為替市場で期待された外債購入に関するものは、円<br />
高対策としての「官民協調外債購入ファンド」の創設ともども、すでに可<br />
能性は極めて低くなっている。今後は、新総裁の経歴や考え方、また国会<br />
での所信聴取での発言内容などが注目されよう。いずれにせよ、「金融緩<br />
和の強化」という言葉に秘められた期待が、新総裁のもとで開かれる 4<br />
月 4 日の初会合において、満たされない可能性をみておく必要があろう。<br />
2<br />
チーフアナリスト 内田 稔
1.今週のトピックス<br />
市場は金融緩和に強<br />
い期待<br />
学界は懐疑的<br />
(2) 総裁 総裁、副総裁<br />
総裁 副総裁 副総裁が決まった<br />
副総裁 まった まった後 まった<br />
今、市場では、次期の日銀総裁が誰かが、最大の関心になっている。新<br />
総裁が就任すれば、次は、その緩和の政策が、いかなる効果を持つかが関<br />
心になるであろう。今は見えていない効果を期待して、市場は動いている<br />
わけだが、なぜか、学界関係者の見方は、金融緩和でデフレを脱却できる<br />
かについて懐疑的である。市場は今後の金融緩和に非常に強い期待を抱き、<br />
学界はそれに冷めている構図になっている。その論点をみておきたい。<br />
① 素朴な貨幣数量説にしたがう不安<br />
いわゆる量的緩和でデフレを脱却するというのは、素朴な貨幣数量説か<br />
らの発想があろうが、それには、マネーの動きとインフレの動きの関係が<br />
安定していなければならない。その関係は、安定しているとは言い難い。<br />
余談ながら、これは、いわゆるソロスチャートで為替相場をみる議論にも<br />
共通する難点である。<br />
② クルーグマンの主張する緩和の問題点<br />
次に、クルーグマン説の現実への適用がある。今は、流動性の罠にはまっ<br />
ていても、将来の緩和を言うことで需要を刺激できるとして、理論の精緻<br />
化がはかられている。こうした理論を受け入れる学者は少なくない。実際<br />
に、米国の Fed が採用した政策は、このクルーグマン説の具現であること<br />
もみられている。しかし、マクロ経済学のミクロ的基礎として代表的個人<br />
を受け入れられない立場からは理論的根拠がないとされている。理論基盤<br />
がないこと、あるいは、その実証(データによる確認)が不十分で、実際<br />
の政策をとってよいものかは議論の余地があるところであろう。<br />
そのクルーグマン説を受け入れた立場でも、需要の刺激効果が小さいと<br />
みられると、今日のフィリップス曲線がフラットな状態で、はたして継続<br />
的にインフレ率を上げられるものか難しいという指摘もされている。<br />
③ 量的緩和を軸とすることへの疑問<br />
ゼロ金利下で金融緩和を行う方策について、昨年のジャクソンホールシ<br />
ンポジウムで、重鎮のウッドフォードから、中央銀行の資産購入について<br />
効果を疑問視する報告があり、フォワードガイダンスによる緩和に重きが<br />
移りつつある。<br />
④ 時間非整合の問題<br />
3
1.今週のトピックス<br />
金融緩和によるデフ<br />
レ脱却にはリーダー<br />
シップが重要<br />
インフレ率が上がると、時間非整合の問題が出てくる。当初の最適な政<br />
策と、時間が経過した後の最適な政策が異なることで、途中で政策が変<br />
わってしまうと、それ以降の政策への期待が変わる弊害の問題である。特<br />
に、政治主導であると、この問題が厄介になる。インフレ率が上がる、何<br />
らかの弊害が見えると、世論を受けて、政治がインフレ率を押し上げるこ<br />
とに否定的になるだろう。そのとき、中央銀行に強い独立性があって、政<br />
治が否定的でも、インフレ率を押し上げる政策を続けられるものであろう<br />
か。もし、そこでひるめば、その後、デフレ経済に戻っても、フォワード<br />
ガイダンスによる緩和政策の効果は期待できないという問題になる。<br />
⑤ インフレは容易に抑えられるという発想への疑問<br />
仮に、緩和の度が過ぎてインフレになっても、インフレ目標を持ってい<br />
れば、インフレは容易に抑えられるという言われ方もある。しかし、これ<br />
も簡単な話ではないだろう。ECB は、毅然としたインフレファイターで、<br />
見事にインフレ率を安定させているが、失業率が上がっている。金融政策<br />
でインフレは抑えられるといっても、経済活動の減退というコストがかか<br />
るという論点である。<br />
(%)<br />
14<br />
12<br />
10<br />
8<br />
6<br />
4<br />
2<br />
0<br />
-2<br />
図: インフレ安定でも失業率の上昇が続くユーロ圏<br />
失業率<br />
インフレ率<br />
99 01 03 05 07 09 11 13 (年)<br />
(資料)Eurostatのデータより三菱東京UFJ銀行グローバルマーケットリサーチ作成<br />
マクロ経済は期待で動く。その期待形成には、リーダーシップの役割は<br />
大きい。金融緩和でデフレを脱却することは、上記の通り、簡単ではない<br />
面があるとみておいてよいであろう。それを押しのけてデフレ脱却の政策<br />
の目的を達成するとなると、経済の安定のために正しいことを行い続けて、<br />
その言動が「安定」とみなされるようになったテイートマイヤー独連銀総<br />
裁や、市場からも政治からも強い信認を得た最盛期のグリーンスパン FRB<br />
議長のような存在でなければならないということではないだろうか。<br />
4<br />
シニアマーケットエコノミスト 鈴木 敏之
2.来週の相場見通し<br />
今週のレビュー<br />
来週の見通し<br />
(1) ドル ドル円:日銀総裁人事<br />
ドル 日銀総裁人事<br />
日銀総裁人事への<br />
日銀総裁人事 への への関心高<br />
への 関心高 関心高いが<br />
関心高 いが いが、米国<br />
いが 米国 米国への 米国 への への注意 への 注意 注意が必要<br />
注意 必要<br />
今週のドル円は 93.76 で寄り付いた。18 日朝方は G20 で、日本への批<br />
判が回避されたとの解釈からドル円は堅調に推移。加えて、安倍首相が参<br />
院予算委員会で、金融緩和手段として日銀が外債を購入することも選択肢<br />
と発言したため、ドル円は週間高値となる 94.22 まで上昇した。ただ、翌<br />
19 日には麻生財務相が「金融緩和として外債購入する気はない」と否定。<br />
また、甘利経済再生相も「選択肢は各国とも幅広く持つとの一般論」と発<br />
言。安倍首相も 20 日には、政権公約に掲げていた「官民協調外債購入フ<br />
ァンド」について、その創設の必要性が相当薄まっているとの考えを示し<br />
た。このため、市場では、外債に関連する政策の実現性が低くなったとの<br />
見方から、ドル円は次第に上値が重くなった。もっとも、1 月の本邦貿易<br />
収支(通関ベース)では、過去最大の赤字幅(約 1.6 兆円、季節調整前)<br />
を記録し、ドル円を支えた。また、日銀総裁人事をめぐり、金融緩和強化<br />
や円安への期待も根強い。また、公表された 1 月 FOMC の議事録におい<br />
て、月間 850 億ドルの資産購入継続を巡り、「失業率 6.5%」という雇用目<br />
標が達成される前に、減額や停止すべきとの意見も多かったことから、ド<br />
ルが全面高となる場面もみられた。このため、ドル円の週間安値も 92.77<br />
(21 日)にとどまっており、依然として高値圏を維持したまま、越週す<br />
る見込みである。(正午のドル円スポット:93.14~16)<br />
来週は、日銀総裁人事をめぐり、上値を試す場面があったとしても、<br />
力強さには欠けよう。むしろ後述の通り、反落材料も少なくない。<br />
日銀総裁人事をめぐっては、各候補者名が報じられるたびに、予想さ<br />
れる緩和策の度合いが想起され、市場も翻弄されている。ただ、今回の<br />
人事で言えることは以下の二つ。まず、誰が総裁になっても、従来より<br />
緩和的な政策が期待されることだ。このため、新総裁下での初会合(4月<br />
3日、4日)までは、引き続き「金融緩和強化への期待」が持続しようが、<br />
実際の政策の内容が明らかとなるまでは、動きにくいだろう。次に、外<br />
債購入ファンド創設の提唱者として知られる岩田一政氏(元日銀副総裁)<br />
の場合でさえ、ここまでの経緯から外債購入ファンド創設の実現性は極<br />
めて低いことだ。氏自身も最近の講演などで、為替相場の水準が大きく<br />
変わったことを主な理由に、積極的ではない発言などが報じられている。<br />
このため、総裁人事だけを以って、ドル円が直近高値(94.46)を大きく<br />
上回り、続伸するのは難しいだろう。また、麻生財務相は、8日、「為替<br />
も意図しないぐらいに78円程度から90円くらいになった」と発言したの<br />
に続き、21日には「輸入価格が急激に上昇する状況が続けば、日本にとっ<br />
5
2.来週の相場見通し<br />
て大きな問題を抱えることになる」と発言した。一連の発言は、石破自<br />
民党幹事長の発言「円安になって困る産業も出てくる」(1/16、経団連と<br />
の懇談)や甘利経済相の当初の発言「円安は国民生活にマイナスの影響<br />
もある」(1/15、閣議後の会見)などと符合するものだ。即ち、急激な円<br />
安には、当然、コストも生じるということだ。「円高や金融緩和不足だ<br />
けが諸悪の根源」と考える向きを除けば、今後、円安を意図したかの誤<br />
解を国際社会に与えかねない要人発言は慎まれよう。安倍首相も、19日<br />
の参議院予算委員会で、「為替についてコメントするのは適切でない」<br />
としている。昨年以降、何度もドル円を押し上げた要人発言だが、当面、<br />
影を潜めそうだ。加えて、為替市場にて、円安と併走してきたユーロ高<br />
や世界的な株高も、やや一服している。円安だけが、このまま持続する<br />
とも考えにくい。<br />
こうしたなか、来週は米国に強い関心が必要だ。バーナンキ議長の議<br />
会証言にて、当面の金融政策姿勢を確認する必要があるほか、ISM製造業<br />
景況指数の発表を控える。また、政府の強制歳出削減の開始予定日も3月<br />
1日に迫るためだ。米経済に関しては、住宅市況の改善など、明るい話題<br />
も少なくない。ただ、2月のフィラデルフィア連銀製造業景況指数は<br />
「▲12.5」と前月から大幅に悪化。ISM指数が「50」を割っても不思議で<br />
はない水準だ(第1図)。また、歳出削減を巡っては、その軽減や回避策<br />
を巡り、与野党協議に進展はみられていない。「財政の崖」が回避された<br />
とはいうが、給与所得税減税や高額所得者向けのブッシュ減税が打ち切<br />
られており、既に約1,500億ドルの増税が始まっている。これに政府の強<br />
制歳出削減が加わると、緊縮財政の規模は、軽く2,000億ドルを超える計<br />
算だ。米経済の先行きに対する楽観的な見方を後退させる結果となる場<br />
合、ドル円にとっても下押し圧力となりそうだ。<br />
第 1 図:米 ISM 製造業景況指数とフィラデルフィア連銀指数<br />
70<br />
65<br />
60<br />
55<br />
50<br />
45<br />
40<br />
35<br />
30<br />
25<br />
2009年 2010年 2011年 2012年 2013年<br />
6<br />
ISM(左)<br />
フィラデルフィア(右)<br />
(資料)米供給管理協会、フィラデルフィア連銀より<br />
三菱東京 UFJ 銀行グローバルマーケットリサーチ作成<br />
40<br />
30<br />
20<br />
10<br />
0<br />
-10<br />
-20<br />
-30<br />
-40<br />
-50
2.来週の相場見通し<br />
予想レンジ<br />
なお、日米首脳会談に、財務省の中尾財務官が同行したと報じられてい<br />
る。会談では、強固な日米同盟を再確認するほか、TPP(環太平洋戦略的<br />
経済連携協定)など議題は多い。こうしたなか、これまでの円安が釘を刺<br />
されるのか、財務官の訪米によって、日本の状況に対する理解を得られる<br />
のか不明だ。ただ、ポイントは、「為替の話が出る」可能性が高いという<br />
ことだろう。<br />
ドル円:92.00~95.00<br />
7<br />
チーフアナリスト 内田 稔
2.来週の相場見通し<br />
今週のレビューと<br />
来週の見通し<br />
予想レンジ<br />
(2) ユーロ ユーロ:上値<br />
ユーロ ユーロ 上値 上値の重い展開<br />
上値 展開 展開を予想<br />
展開 予想 予想、伊選挙<br />
予想 伊選挙 伊選挙で振れる<br />
伊選挙 れる れる可能性<br />
れる 可能性 可能性も 可能性<br />
今週のユーロドルは 20 日に 1.34 台を回復したものの同水準では上値も<br />
重く、その後は下落する展開となった。今週は 2 月の独 ZEW 景況感調査<br />
や、ユーロ圏各国の PMI が発表されたが、両者の結果と市場の反応は対<br />
照的なものとなった。独 ZEW 景況感調査が市場予想を大幅に上回った一<br />
方、ユーロ圏 PMI は前月から予想外の低下となったからだ。PMI を発表<br />
しているマークイット社は独仏の統計の差が 1998 年の統計開始以来最大<br />
になったと指摘している。フランスでは、サービス業 PMI が 42.7 と 2009<br />
年 2 月以来の低水準を記録するなど景況感の悪化が目立っており、ドイツ<br />
頼みであるユーロ圏経済の危うさを改めて市場に認識させることとなっ<br />
た。こうしたなか、FOMC 議事要旨を受けドル買いが優勢となったこと<br />
もあり、ユーロドルは約 6 週間ぶりに 1.32 割れを示現。本稿執筆時点で<br />
は 1.31 台後半での推移となっている。<br />
24、25日に予定されているイタリア総選挙を巡る不透明感もユーロ相場<br />
の重石となっている。イタリアでは15日前から世論調査結果の公表が禁じ<br />
られているが、最後となる8日公表分の平均値によれば、ベルサニ氏率い<br />
る民主党を中心とした中道左派連合が支持率34.7%と首位を保った。追う<br />
ベルルスコーニ氏ら中道右派は29.0%であるが、調査会社によってはベル<br />
ルスコーニ氏支持率の方が上回っているものもあり予断を許さない。モン<br />
ティ暫定首相が選挙後の連立政権協議で「構造改革推進派となら連携す<br />
る」旨を表明していることから、選挙後はモンティ氏と連立左派連合が連<br />
立政権を樹立するとの見方が大勢だ。ベルルスコーニ氏はモンティ、ベル<br />
サニ両氏が「緊縮財政を推進するドイツの言いなり」とのイメージを全面<br />
に出すなどして、支持率拡大を図っている。<br />
週初にはイタリア総選挙の結果が明らかとなる。前述の通り、モンティ<br />
氏と連立左派連合による連立政権が樹立されるとの見方が大勢であるが、<br />
市場予想と異なる結果になった場合は相場が上下に振れることとなろう。<br />
このため、予想のレンジの幅を通常より広く見ておきたい。<br />
ユーロドル:1.2950~1.3450 ユーロ円:121.00~126.00<br />
8<br />
アナリスト 関谷 菜摘
2.来週の相場見通し<br />
今週のレビューと<br />
来週の見通し<br />
予想レンジ<br />
(3) 豪ドル ドル ドル:利下<br />
ドル 利下 利下げ期待後退<br />
利下 期待後退 期待後退もドル<br />
期待後退 ドル ドル高で上値重<br />
ドル 上値重 上値重い 上値重<br />
今週の豪ドル相場は、対ドルで 1.03、対円で 96 円を挟んでの推移となっ<br />
た。今週は今月の RBA 理事会議事録、スティーブンス RBA 総裁の議会<br />
証言と、金融政策の先行きを占う重要な情報発信が相次いだ。どちらも金<br />
融緩和スタンスの維持を明らかにしたものの、近い将来に利下げが実施さ<br />
れるとの一部期待に沿うような示唆はなかったことから、豪ドル買いの材<br />
料となった。一方、米 FOMC を受けてドルがほぼ全面高の状況となり、<br />
豪ドルの上値を抑えている。<br />
2 月の RBA 理事会は政策金利を 3.00%に据え置いたが、19 日に公表さ<br />
れた議事録では、物価が抑制気味であり必要ならば利下げの余地はあると<br />
した。しかし、これまでの 175bp に及ぶ利下げが景気を刺激している兆候<br />
があり、据え置きが妥当と判断したとの記述がみられた。すでに政策金利<br />
が史上最低水準まで引き下げられていることもあり、市場の期待とは裏腹<br />
に追加利下げに慎重な姿勢を示した。22 日にはスティーブンス総裁が議<br />
会証言に立ったが、「緩和の可能性がより高いというのが妥当」と緩和ス<br />
タンス維持を明言する一方で、「現在の金利水準は適切」、「多くの金融<br />
刺激策が進行中」、「低金利は預金者を苛立たせる」、「中国経済の減速<br />
は終わった」など、議事録同様に当面は様子見姿勢としたいとの思惑を滲<br />
ませている。<br />
利下げ期待を後退させるようなコミュニケーションが図られたものの、<br />
豪ドル相場の上値は重い。これはこれまで豪ドル高の要因のひとつとなっ<br />
てきた、米量的緩和拡大ペースの調整が議論の的となったことによるドル<br />
高の影響と言えよう。20 日に公表された 1 月の FOMC 議事録では資産買<br />
取政策のリスクや出口政策の難しさを指摘する声があり、これまで以上に<br />
「タカ派」的と受け止められたようだ。その結果ドルは今週、円以外の主<br />
要通貨に対して上昇している。こうしたドル回帰ともとれる動きが豪ドル<br />
の上値を抑える状況は目先継続しそうだ。FOMC の総意として資産買取<br />
ペースの議論は決着をみていないが、来週 26 日には今後の議論をリード<br />
する立場にあるバーナンキ FRB 議長半期議会証言が予定されており、注<br />
目される。<br />
対ドル:1.0150~1.0400 対円:94.00~97.00<br />
9<br />
アナリスト 井野 鉄兵
2.来週の相場見通し<br />
10<br />
(4) 人民<br />
人民<br />
人民<br />
人民元:対ドル<br />
ドル<br />
ドル<br />
ドル基準値<br />
基準値<br />
基準値<br />
基準値の元安誘導<br />
元安誘導<br />
元安誘導<br />
元安誘導を予想<br />
予想<br />
予想<br />
予想するも<br />
するも<br />
するも<br />
するも下値<br />
下値<br />
下値<br />
下値は限定的<br />
限定的<br />
限定的<br />
限定的<br />
今週の中国人民元は6.24挟みの推移が続いた。春節休暇明けとなる18日、<br />
中国人民銀行は対ドル基準値を休暇前8日の6.2793と比べてやや人民元安<br />
水準となる6.2816へ設定。以後、基準値は週を通じて6.28台で設定され、<br />
22日には6.2871まで切り下げられた。市場における人民元高圧力も低下し<br />
ており、これまでのように一日の許容上限近くまで上昇する場面はみられ<br />
なかった。また、短期金融市場における人民元の流動性も改善。休暇前に<br />
は人民元需要の高まりを受け、レポ金利7日物は一時4%台を示現したが、<br />
今週は2%台後半を中心とした推移が続いている。<br />
中国商務省が15日に発表したデータによると、春節期間中(9日~15日)<br />
の全国の重点観測小売店と飲食店の売り上げは前年比14.7%の増加とな<br />
り、2012年の同16.2%から鈍化した。これは4年ぶりの低水準となる。景<br />
気減速を受けて賞与が減少した企業が多かったほか、習近平総書記が打ち<br />
出した綱紀粛正方針の一つである「倹約令」を受け、高級ホテルや高級食<br />
材などの売上が大幅に減少したことが響いたとみられる。一方、庶民的な<br />
食事を扱う飲食店やレジャー施設は活況であったようだ。また、バレンタ<br />
インデーと重なったこともあり金銀製ジュエリー・アクセサリーが前年<br />
比38.1%と大幅な伸びを記録している。こうした消費者の購買力向上は、<br />
2013年の経済運営方針で課題の一つに挙げられている「内需の拡大」にお<br />
いて重要なポイントになってくるとみられ、今後の動向に注目だ。<br />
足もとではFOMC議事録等を受けてドルが上昇しており、対ドル基準値<br />
はやや人民元安に設定されよう。もっとも、以前よりは弱まってきたとは<br />
いえ市場における人民元需要は依然強い。下値余地も限られ、来週の人民<br />
元は現水準を中心とした推移になろう。<br />
ドル人民元:6.2250~6.2500 人民元円:14.70~15.10<br />
アナリスト 関谷 菜摘<br />
予想レンジ<br />
今週のレビューと<br />
来週の見通し
3.来週の経済指標、イベント<br />
来週の主な経済指標<br />
予想 前回<br />
25日 (月)<br />
26日 (火) 23:00 米 ケース・シラー住宅価格指数(12月) 145.82<br />
23:00 米 FHFA住宅価格指数(前月比、12月) 0.6% 0.6%<br />
27日 (水) 0:00 米 新築住宅販売件数(1月・万件) 38.0 36.9<br />
0:00 米 消費者信頼感指数(2月) 60.6 58.6<br />
18:00 ユ マネーサプライM3(季節調整済前年比、1月) 3.1% 3.3%<br />
19:00 ユ 欧州委員会景況指数(2月) ▲ 1.09<br />
22:30 米 耐久財受注(前月比、1月) ▲ 4.7% 4.3%<br />
28日 (木) 8:50 日 鉱工業生産指数(前月比、1月速報) 1.5% 2.4%<br />
14:00 日 住宅着工戸数(1月・万戸) 89.4 88.0<br />
19:00 ユ 消費者物価指数(前年比、1月コア) 1.6% 1.5%<br />
22:30 米 新規失業保険申請件数(2/23・万件) 36.0 36.2<br />
22:30 米 GDP(前期比年率、4Q改定) 0.5% ▲ 0.1%<br />
23:45 米 シカゴ購買部協会景気指数(2月) 54.0 55.6<br />
1日 (金) 8:30 日 消費者物価指数(全国、除食料エネ、前年比、1月) ▲ 0.7% ▲ 0.6%<br />
8:30 日 消費者物価指数(東京都区部、除食料エネ、前年比、2月) ▲ 1.0% ▲ 0.9%<br />
8:30 日 失業率(1月) 4.2% 4.2%<br />
8:30 日 家計調査消費支出(1月) 0.4% ▲ 0.7%<br />
8:50 日 法人企業統計調査(4Q) ▲ 7.2% 2.2%<br />
10:00 中 製造業PMI(2月) 50.4<br />
10:45 中 HSBC製造業PMI(2月) 52.3<br />
19:00 ユ 消費者物価指数(前年比、2月速報) 2.0% 2.0%<br />
19:00 ユ 失業率(1月) 11.8% 11.7%<br />
22:30 米 個人所得(前月比、1月) ▲ 2.0% 2.6%<br />
22:30 米 個人支出(前月比、1月) 0.2% 0.2%<br />
22:30 加 GDP(四半期/年換算、4Q) 0.7% 0.6%<br />
22:30 米 PCEデフレータ(前年比、1月) 1.3%<br />
2日 (土) 0:00 米 ISM製造業景況指数(2月) 52.5 53.1<br />
0:00 米 建設支出(前月比、1月) 0.4% 0.9%<br />
7:00 米 自動車販売(2月・万台) 1,510 1,523<br />
中央銀行関連<br />
25日(月) 9:15 米<br />
26日(火) 0:30 ユ<br />
3:30 ユ<br />
9:00 米<br />
27日(水) 17:30 ユ<br />
23:00 ユ<br />
米<br />
28日(木) 2:30 ユ<br />
6:30 米<br />
10:30 米<br />
17:00 ユ<br />
19:30 ユ<br />
22:15 米<br />
米<br />
1日(金) 2:30 米<br />
10:00 米<br />
20:00 ユ<br />
2日(土) 12:00 米<br />
その他<br />
25日(月) 伊 総選挙(24日~)<br />
26日(火) 3:00 米 2年債入札<br />
27日(水) 3:00 米 5年債入札<br />
19:00 伊 5年債、10年債入札<br />
28日(木) 3:00 米 7年債入札<br />
1日(金)<br />
12:45 日 2年債入札<br />
※市場予想はBloomberg調査中央値 *印は作成日(2/22)現在で未確定のもの<br />
時刻は日本時間<br />
ローゼングレン・ボストン連銀総裁講演<br />
バイドマン・独連銀総裁講演<br />
アスムセン・ECB専務理事講演<br />
ロックハート・アトランタ連銀総裁講演<br />
プラート・ECB専務理事講演<br />
メルシュ・ECB専務理事講演<br />
バーナンキ・FRB議長半期議会証言(上院)<br />
ドラギ・ECB総裁講演<br />
フィッシャー・ダラス連銀総裁講演<br />
木内・日銀審議委員講演<br />
コンスタンシオ・ECB副総裁講演<br />
コンスタンシオ・ECB副総裁講演<br />
ロックハート・アトランタ連銀総裁講演<br />
バーナンキ・FRB議長半期議会証言(下院)<br />
ラスキン・FRB理事講演<br />
エバンス・シカゴ連銀総裁講演<br />
LTRO早期返済締切<br />
バーナンキ・FRB議長講演<br />
11
4.マーケットカレンダー<br />
月 火 水 木 金<br />
2013/2/25 2013/2/25<br />
26 26 27 27<br />
28 28<br />
3/1<br />
3/1<br />
米/新築住宅販売(1月) 米/耐久財受注(1月) 米/GDP改定(4Q) 米/個人所得・消費支出(1月)<br />
ケース・シラー住宅価格指数(12月) ユーロ圏/マネーサプライM3(1月) シカゴPM景況指数(2月) 建設支出(1月)<br />
FHFA住宅価格指数(12月) 欧州委員会景況指数(2月) ユーロ圏/消費者物価指数速報(2月) ISM製造業景況指数(2月)<br />
CB消費者信頼感指数(2月) 日/鉱工業生産速報(1月) 自動車販売(2月)<br />
住宅着工戸数(1月) ユーロ圏/消費者物価指数速報(2月)<br />
失業率(1月)<br />
中/製造業PMI(2月)<br />
日/完全失業率(1月)<br />
家計調査(1月)<br />
消費者物価指数<br />
米・アトランタ連銀総裁講演 米・バーナンキFRB議長議会証言<br />
イタリア総選挙(24日~) 米・バーナンキFRB議長議会証言 (下院金融委員会)<br />
韓国大統領就任式 (上院銀行委員会) 米・ダラス連銀総裁講演<br />
12<br />
(東京都区部:2月,全国:1月)<br />
法人企業統計(4Q)<br />
加/GDP(4Q)<br />
米・2年債入札 米・5年債入札 米・7年債入札 米・シカゴ連銀総裁講演<br />
4 5 6 7 8<br />
ユーロ圏/生産者物価指数(1月) 米/ISM非製造業景況指数(2月) 米/地区連銀経済報告 米/貿易収支(1月) 米/雇用統計(2月)<br />
ユーロ圏/小売売上(1月) ADP雇用統計(2月) 消費者信用残高(1月) 卸売在庫・売上(1月)<br />
豪/RBA理事会 製造業受注指数(1月) ユーロ圏/ECB理事会 中/貿易収支(2月)<br />
英/MPC(BOE金融政策委員会、~7日) ECB総裁定例会見 消費者物価指数(2月、9日)<br />
日/日銀金融政策決定会合(~7日) 英/MPC(BOE金融政策委員会) 鉱工業生産(2月、9日)<br />
加/BOC金融政策委員会 日/日銀金融決定会合 固定資産投資(都市部、2月)<br />
豪/GDP速報(4Q) 日銀総裁定例会見 小売売上(2月、9日)<br />
景気動向指数速報(1月) 日/日銀金融経済月報(3月)<br />
GDP改定(4Q)<br />
国際収支速報(1月)<br />
景気ウォッチャー調査(2月)<br />
EU経済・財務相理事会(ブリュッセル)<br />
ユーロ圏財務相会合(ブリュッセル) 中・全国人民代表大会(北京) 米・フィラデルフィア連銀総裁講演<br />
11 11<br />
12 12<br />
13 13<br />
14 14<br />
15 15<br />
中/マネーサプライM2(2月)* 米/財政収支(2月) 米/小売売上(2月) 米/経常収支(4Q) 米/NY連銀景況指数(3月)<br />
日/機械受注(1月) 日/日銀金融政策決定会合議事要旨 輸出入物価指数(2月) 生産者物価指数(2月) 消費者物価指数(2月)<br />
(2/13,14分) 企業在庫(1月) 豪/雇用統計(2月) 証券投資収支(1月)<br />
法人企業景気予測調査(1Q) ユーロ圏/鉱工業生産(1月) 鉱工業生産(2月)<br />
設備稼働率(2月)<br />
米国夏時間(10日~)<br />
欧州議会本会議 EU首脳会議(ブリュッセル、~15日)<br />
(ストラスブール、~14日) 米・3年債入札 米・10年債入札 米・30年債入札<br />
ミシガン大消費者信頼感指数速報<br />
(3月)<br />
ユーロ圏/消費者物価指数確報(2月)<br />
18 18<br />
19 19<br />
20 20<br />
21 21<br />
22<br />
ユーロ圏/貿易収支(1月) 米/FOMC(~20日) 米/FOMC 米/中古住宅販売(2月) 独/Ifo景況指数(3月)<br />
住宅着工件数(2月) FRB議長定例記者会見 FHFA住宅価格指数(1月)<br />
建設許可件数(2月) ユーロ圏/経常収支(1月) 景気先行指数(2月)<br />
独/ZEW景況指数(3月) 英/MPC議事録(2/6, 7分) フィラデルフィア連銀景況指数(3月)<br />
豪/RBA議事要旨(3/5分) ユーロ圏/製造業PMI速報(3月)<br />
サービス業PMI速報(3月)<br />
日/貿易収支(2月)<br />
日・白川日銀総裁辞任(予定) 東京市場休場 米・10年TIPS債入札<br />
*印は作成日(2/21)現在で日程が未確定のもの<br />
【ご注意】当資料は相場情報の提供を唯一の目的としたもので、投資勧誘を目的としたものではありません。投資の最終決定は投資家ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。当資料は信頼<br />
できる情報源から得た情報に基づき作成したものですが、その情報の正確性、完全性を保証するものではありません。また、過去の結果が必ずしも将来の結果を暗示するものではありません。当資<br />
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照会先:三菱東京UFJ銀行 市場企画部 市場ソリューション室<br />
グローバルマーケットリサーチ チーフアナリスト 内田 稔<br />
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