28.12.2014 Views

GI Explore_DIC184.indd

GI Explore_DIC184.indd

GI Explore_DIC184.indd

SHOW MORE
SHOW LESS

Create successful ePaper yourself

Turn your PDF publications into a flip-book with our unique Google optimized e-Paper software.

成 人 の 自 己 免 疫 性 腸 症 :メイヨークリニック・<br />

ロチェスターの 経 験<br />

Adult autoimmune enteropathy: Mayo Clinic Rochester experience<br />

AKRAM S, ET AL.<br />

Clin Gastroenterol Hepatol. 2007; 5: 1282-1290<br />

◆サマリー◆<br />

自 己 免 疫 性 腸 症 (autoimmune enteropathy; AIE)は 血 中 抗 腸 管 抗<br />

体 と 自 己 免 疫 素 因 を 伴 い、 難 治 性 の 下 痢 を 呈 する 疾 患 である。 成 人<br />

ではごく 稀 で、これまでの 症 例 報 告 は 11 例 に 過 ぎない。2001 年 5<br />

月 〜 2006 年 6 月 の 間 に、 成 人 AIE の 15 症 例 がメイヨークリニッ<br />

ク・ロチェスターで 経 験 された。 患 者 の 診 療 録 から、 人 口 統 計 、 臨<br />

床 的 および 治 療 のデータが 抽 出 された。 研 究 対 象 の 患 者 群 は、 平 均<br />

年 齢 が 55 歳 ( 集 団 の 真 中 50%は 42 〜 67 歳 )であり、87%が 白 人 、<br />

47%が 女 性 であった。 患 者 全 員 が 長 期 間 持 続 する 下 痢 、 体 重 減 少 お<br />

よび 栄 養 不 良 を 呈 した。セリアック 病 は 無 グルテン 食 による 改 善 の<br />

欠 如 あるいはセリアック 病 でみられる HLA 遺 伝 子 型 を 持 たないこ<br />

とにより 除 外 診 断 された。14 症 例 に 対 して 血 中 の 抗 腸 管 上 皮 細 胞<br />

抗 体 が 測 定 され、14 例 中 13 例 (93%)で 抗 腸 細 胞 抗 体 かつ / ある<br />

いは 抗 杯 細 胞 抗 体 が 陽 性 であった。さまざまな 自 己 抗 体 が 存 在 する<br />

自 己 免 疫 素 因 が 80%で 認 められた。 小 腸 の 病 理 組 織 所 見 では、 完<br />

全 に 近 い 絨 毛 萎 縮 がみられ、また 表 層 の 上 皮 間 リンパ 球 は 比 較 的 少<br />

数 であるものの 粘 膜 固 有 層 におけるリンパ 球 ・ 形 質 細 胞 浸 潤 が 認 め<br />

られた。T 細 胞 受 容 体 遺 伝 子 の 再 構 築 はすべての 症 例 で 陰 性 であっ<br />

た。14 例 (93%)で 免 疫 抑 制 治 療 が 必 要 であった。ステロイド 治<br />

療 の 1 〜 8 週 後 に 9 例 (60%)で 臨 床 的 な 改 善 がみられた。 以 上 の<br />

結 果 より、1 AIE は 不 均 一 な 疾 患 であり、 吸 収 不 良 と 小 腸 の 絨 毛 萎<br />

縮 は 鑑 別 診 断 のひとつとして 考 慮 されるべきである;2 抗 腸 管 上 皮<br />

細 胞 抗 体 の 存 在 が 診 断 の 確 定 に 有 用 である;3 寛 解 の 導 入 に 明 らか<br />

に 有 効 な 単 一 の 薬 物 治 療 はなく、ほとんどの 症 例 で 免 疫 抑 制 治 療 を<br />

必 要 とする、と 結 論 された。<br />

◆コメント◆<br />

AIE は、1982 年 にロンドンの 二 人 の 小 児 科 医 により 提 唱 された<br />

疾 患 概 念 であり、 血 中 の 腸 管 自 己 抗 体 が 陽 性 で、 難 治 性 の 下 痢 、<br />

体 重 減 少 、 嘔 吐 をきたす。その 症 例 は、 生 後 15 ヵ 月 の 乳 児 であ<br />

り、 小 腸 絨 毛 の 萎 縮 を 認 め、 消 化 器 症 状 は 食 事 中 のグルテン、 牛 乳 、<br />

卵 を 除 外 しても、あるいは 完 全 静 脈 栄 養 により 8 週 間 の 腸 管 安 静<br />

を 行 っても 改 善 しなかった。その 小 児 は IgG 型 抗 小 腸 細 胞 抗 体 が<br />

陽 性 であり、サイクロフォスファマイド 治 療 後 に 粘 膜 異 常 はある<br />

程 度 残 存 したものの、 抗 体 は 消 失 した。AIE の 診 断 基 準 として、1<br />

食 事 制 限 に 反 応 しない 高 度 の 絨 毛 萎 縮 、2 血 中 腸 管 自 己 抗 体 陽 性<br />

かつ / あるいは 自 己 免 疫 疾 患 の 合 併 、3 高 度 の 免 疫 不 全 がないこと<br />

が 提 唱 されている。 小 児 に 特 有 な 疾 患 と 考 えられてきたが、 近 年<br />

では 成 人 発 症 の AIE も 11 例 報 告 されている。その 病 態 生 理 は 完 全<br />

に 明 らかではないが、 制 御 性 のT 細 胞 ホメオスタシスの 欠 如 によ<br />

り 引 き 起 こされる 免 疫 反 応 の 亢 進 状 態 が 関 与 する。 無 グルテン 食<br />

に 反 応 しなくなったセリアック 病 の 1 型 である 難 治 性 のスプルー<br />

との 鑑 別 が 重 要 であるが、AIE の 疫 学 、 自 然 経 過 および 治 療 選 択 に<br />

関 するデータは 限 られている。したがって、その 治 療 法 の 決 定 は<br />

経 験 的 なものにならざるを 得 ない。 副 腎 皮 質 ステロイド、アザチ<br />

オプリン、サイクロフォスファマイド、タクロリムスなどの 免 疫<br />

抑 制 治 療 、インフリキシマブなど 数 多 くの 治 療 が 選 択 され、さま<br />

ざまな 程 度 の 効 果 が 報 告 されている。 本 研 究 はメイヨークリニック・<br />

ロチェスターで 5 年 間 に 経 験 された AIE の 15 例 のケースシリーズを<br />

解 析 している。 抄 訳 者 は 原 因 が 特 定 できない 難 治 性 の 下 痢 患 者 を 2<br />

例 経 験 したことがあるが、AIE の 知 識 を 初 めて 得 たため、その 疾 患<br />

概 念 を 紹 介 させていただいた。<br />

サマリー&コメント: 平 石 秀 幸<br />

炎 症 性 腸 疾 患 において、 微 生 物 パターン 認 識<br />

レセプター( 自 然 免 疫 系 )の 遺 伝 子 変 異 は、<br />

微 生 物 抗 原 への 血 清 学 的 ( 血 中 抗 体 ) 反 応 性<br />

パターンを 修 飾 する<br />

Mutations in pattern recognition receptor genes modulate<br />

seroreactivity to microbial antigens in patients with inflammatory<br />

bowel disease<br />

HENCKAERTS L, ET AL.<br />

Gut. 2007; 56: 1536-1542<br />

◆サマリー◆<br />

クローン 病 (CD)では 種 々の 微 生 物 抗 原 や 自 己 抗 原 へ<br />

の 抗 体 が 存 在 する。これは CD に 関 係 した 腸 内 微 生 物 への<br />

免 疫 寛 容 の 破 綻 の 結 果 であり、これらの 抗 原 への 獲 得 免 疫<br />

の 異 常 な 活 性 化 を 意 味 する。このような 微 生 物 抗 原 への 免<br />

疫 応 答 に 遺 伝 的 因 子 が 関 与 しているとの 仮 説 の 元 、 自 然 免<br />

疫 系 のレセプター 遺 伝 子 の 変 異 と IBD における 微 生 物 関 連<br />

抗 原 への 抗 体 産 生 の 関 係 をみることを 目 的 とした 研 究 であ<br />

る。 検 討 した 遺 伝 子 は、NOD2/CARD15、NOD1/CARD4、<br />

TUCAN/CARDINAL/CARD8、TLR4、TLR2、TLR1、TLR6<br />

である。<br />

1,163 例 の 炎 症 性 腸 疾 患 [IBD; うち CD874 例 、 潰 瘍 性 大<br />

腸 炎 (UC)259 例 ]、ならびに 健 常 者 312 例 を 対 象 とした。<br />

血 中 抗 体 は、 抗 Saccharomyces cerevisiae(gASCA)IgG、<br />

抗 ラミンアラビノシド(ALCA)IgG、 抗 キトビオシド(ACCA)<br />

IgA、 抗 マンノビオシド(AMCA)IgG、 外 膜 ポリン(Omp)<br />

IgA の 6 種 類 であった。 上 記 の 各 遺 伝 子 変 異 は、 代 表 的 な<br />

いくつかの 変 異 について genotype を 検 討 した。<br />

CARD15 変 異 を 持 つ CD では、 変 異 のない CD に 比 して<br />

gASCA 陽 性 率 (66.1% vs 51.1%)と ALCA 陽 性 率 および<br />

gASCA のタイターが 有 意 に 高 く、この 変 化 は 回 腸 病 変 の 有<br />

無 とは 独 立 していた。CARD15 異 常 の 部 位 の 重 積 はgASCA や<br />

ALCA 陽 性 率 と 関 連 していた。NOD1 変 異 を 持 つ CD でも<br />

ワイルドタイプに 比 して 同 様 の gASCA 陽 性 率 と 遺 伝 子 異<br />

常 重 複 との 相 関 が 見 られた。TLR4 D299G と TLR2 P631H<br />

ではそれぞれ ACCA 低 値 と Omp 低 値 という 反 対 の 結 果 が<br />

見 られた。<br />

自 然 免 疫 系 レセプターの 遺 伝 子 変 異 は 抗 体 産 生 に 影 響 し<br />

ていた。 特 に CARD15 と TLR4 に 相 反 する 関 係 がみられた。<br />

◆コメント◆<br />

CD では、 微 生 物 抗 原 への 血 中 抗 体 が 鑑 別 診 断 に 有 用<br />

と 考 えられている。また、CD 患 者 では NOD2/CARD15<br />

変 異 の 重 要 性 が 報 告 されているが( 欧 米 の CD で 報 告 が<br />

多 く、 日 本 や 韓 国 などアジア 人 の CD では 同 じものに 対<br />

する SNP 陽 性 率 がきわめて 低 いことから、 人 種 差 も 重<br />

要 と 考 えられている)、これらの 微 生 物 抗 原 を 認 識 する 自<br />

然 免 疫 系 のレセプターが、ある 種 の 微 生 物 への 免 疫 応 答<br />

の 異 常 が 病 態 形 成 に 重 要 と 考 えられている。<br />

本 研 究 で は、NOD2/CARD15 や NOD1 の 変 異 と、<br />

gASCA などの CD に 特 徴 的 な 抗 体 産 生 に 相 関 があること<br />

が 示 され、 逆 に TLR4 や TLR2 は 抑 制 的 に 働 く 可 能 性 が<br />

示 唆 された。すなわち、 遺 伝 的 素 因 を 背 景 とした 自 然 免<br />

疫 系 のバランスの 乱 れが CD の 病 態 ・ 病 因 にかなり 関 連<br />

が 深 いことが 示 された。 日 本 人 においてどのような 分 子<br />

が 関 与 しているのかなど、 今 後 の 重 要 な 検 討 事 項 と 思 わ<br />

れる。<br />

サマリー&コメント: 松 本 譽 之<br />

<br />

<strong>GI</strong> <strong>Explore</strong>

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!