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C-Sn(三重結合への付加)

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ディビジョン 番 号<br />

ディビジョン 名<br />

6<br />

有 機 化 学<br />

大 項 目 3. 炭 素 骨 格 合 成<br />

中 項 目 3-2. C-X 結 合 生 成<br />

小 項 目 3-2-3. C-Sn( 三 重 結 合 への 付 加 )<br />

概 要<br />

適 度 な 反 応 性 を 持 ちながら 官 能 基 選 択 性 が<br />

高 く 取 り 扱 いが 容 易 なアルケニルメタルであ<br />

るアルケニルスズを 与 えるアルキンのカルボ<br />

スタニル 化 は, 最 近 10 年 間 で 大 きく 発 展 し,<br />

多 置 換 アルケンを 立 体 および 位 置 選 択 的 に 得<br />

る 有 力 な 手 段 の 一 つとなっている. 様 々な 有<br />

機 スズ 化 合 物 の 炭 素 −スズ 結 合 が, 触 媒 量 のラ<br />

ジカル 開 始 剤 ・Lewis 酸 ・ 遷 移 金 属 錯 体 によ<br />

って 効 果 的 に 活 性 化 され 炭 素 − 炭 素 三 重 結 合 に<br />

付 加 し, 新 たな 炭 素 −スズ 結 合 が 形 成 される.<br />

現 状 と 最 前 線<br />

R SnBu 3<br />

+<br />

R<br />

R 1 R 2<br />

R 1 R 2<br />

ラジカル 開 始 剤<br />

Lewis 酸<br />

遷 移 金 属 錯 体 (Pd, Ni)<br />

( 触 媒 量 )<br />

SnBu 3<br />

アルキンのカルボメタル 化 反 応 ,すなわちアルキンに 対 する 有 機 金 属 化 合 物 の 付 加 反 応 で<br />

は, 炭 素 − 炭 素 結 合 と 同 時 に 官 能 基 変 換 の 足 掛 かりになる 炭 素 − 金 属 結 合 が 形 成 されアルケニル<br />

メタルが 得 られるので,アルケンを 母 核 とした 複 雑 な 炭 素 骨 格 の 構 築 に 有 効 である. 中 でも,<br />

適 度 な 反 応 性 を 持 ちながら 官 能 基 選 択 性 が 高 く 取 り 扱 いが 容 易 なアルケニルスズを 与 えるア<br />

ルキンのカルボスタニル 化 反 応 の 有 機 合 成 上 の 意 義 は 大 きいが, 反 応 性 が 低 い 炭 素 −スズ 結 合<br />

を 活 性 化 し 炭 素 − 炭 素 三 重 結 合 に 付 加 させる 効 果 的 な 方 法 が 知 られていなかったので, 約 10 年<br />

前 まで 未 開 拓 の 反 応 であったと 言 える.1996 年 にラジカル 開 始 剤 を 用 いる 方 法 と Lewis 酸 触 媒<br />

を 用 いる 方 法 が 同 時 期 に 報 告 されたのち,パラジウムやニッケルの 錯 体 を 触 媒 とする 反 応 が 開<br />

発 され,いまや 最 も 適 用 範 囲 の 広 いアルキンのカルボメタル 化 反 応 の 一 つとなっている.<br />

ラジカル 開 始 剤 によるアリルスズの 炭 素 −スズ 結 合 のホモリシスによって 生 じたスズラジカル<br />

をアルキンに 付 加 させるとβ-スタニルビニルラジカルを 経 てアリルスタニル 化 体 が 得 られる.<br />

MeO 2 C<br />

SnBu 3<br />

+ R 1 R 2<br />

(H)<br />

AIBN<br />

MeO 2 C<br />

(H)<br />

R 2<br />

R 1<br />

SnBu 3


Lewis 酸 触 媒 を 用 いる 方 法 によっても, 様 々な 末 端 アルキンに 対 してアリルスズを 立 体 およ<br />

び 位 置 選 択 的 に 付 加 させることができる. 通 常 はトランス 付 加 選 択 性 を 示 すが,アセチレンな<br />

ど 一 部 のアルキンではシス 付 加 体 が 選 択 的 に 得 られる.<br />

+ R H<br />

SnBu 3<br />

cat. ZrCl 4<br />

R<br />

H<br />

SnBu 3<br />

H<br />

SnBu 3<br />

H<br />

遷 移 金 属 触 媒 を 用 いるカルボスタニル 化 は, 炭 素 −スズ 結 合 がパラジウム 0 価 錯 体 に 酸 化 的<br />

付 加 するという, 同 結 合 の 新 しい 活 性 化 法 の 発 見 を 基 に 開 発 された.その 後 ニッケル 触 媒 も 炭<br />

素 −スズ 結 合 の 活 性 化 に 有 効 であることがわかり,アルキニル・アリル・アシルスズなど 様 々<br />

な 有 機 スズ 化 合 物 が 種 々のアルキンに 付 加 することが 明 らかにされた.パラジウム 触 媒 とニッ<br />

ケル 触 媒 はアルキンの 適 用 範 囲 に 関 して 相 補 的 で、これらを 使 い 分 けることで 電 子 的 環 境 の 異<br />

なる 様 々なアルキンに 有 機 スズ 化 合 物 を 付 加 させることができる.さらにパラジウム 触 媒 の 配<br />

位 子 を 工 夫 すると,アルキンのカルボスタニル 化 がアルキンの 二 量 化 を 伴 って 進 行 することも<br />

明 らかになった.この 反 応 は 有 機 スズ 化 合 物 に 関 する 適 用 範 囲 が 極 めて 広 く,アルキニル・ア<br />

ルケニル・アリールスズなどがアルキンに 立 体 および 位 置 選 択 的 に 付 加 し, 共 役 トリエニルス<br />

ズなどの 長 い 共 役 系 をもつアルケニルスズが 得 られる.<br />

R<br />

R SnBu 3<br />

O<br />

SnBu 3<br />

R SnBu 3<br />

+<br />

R SnBu 3<br />

+<br />

R 1 R 2<br />

R 1 R 2<br />

cat. Pd or Ni<br />

cat. Pd<br />

SnBu 3<br />

R 1 R 2<br />

SnBu 3<br />

R 1 R 2<br />

将 来 予 測 と 方 向 性<br />

・5 年 後 までに 解 決 ・ 実 現 が 望 まれる 課 題<br />

特 殊 な 場 合 を 除 いてうまくいっていない,アリールスズ・アルケニルスズのアルキンに 対 す<br />

る 付 加 反 応<br />

・10 年 後 までに 解 決 ・ 実 現 が 望 まれる 課 題<br />

カルボスタニル 化 とそれに 続 くスタニル 基 の 変 換 反 応 を 連 続 して 行 うことによって, 毒 性 面<br />

で 工 業 的 レベルの 合 成 に 不 向 きとされるスズの 使 用 量 を 触 媒 量 に 減 らす 系 の 開 発<br />

キーワード<br />

カルボメタル 化 , 付 加 反 応 , 有 機 スズ 化 合 物 ,アルケン 合 成 , 遷 移 金 属 触 媒<br />

( 執 筆 者 : 白 川 英 二 )<br />

R<br />

R 1<br />

R 2 R 1<br />

R 2<br />

SnBu 3<br />

R<br />

O<br />

SnBu 3<br />

R 1 R 2

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