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構造化箱庭療法の有効性に関する検討 ―量的データの ... - 東京成徳大学

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東 京 成 徳 大 学 研 究 紀 要 ― 人 文 学 部 ・ 応 用 心 理 学 部 ― 第 20 号 (2013)考 察 と 今 後 の 課 題本 研 究 の 結 果 からは, 構 造 化 された 箱 庭 の 手 法 に 基 づく 作 品 制 作 を 通 じて, 特 に 風 景 構 成 法 に 比 べて 作 品 に 対 して 力 強 さやパワーといった「エネルギー」を 感 じさせる 表 現 がより 促 される 可 能 性 が 示唆 された。 箱 庭 制 作 における 自 由 度 の 高 さは 想 像 力 を 用 いて 箱 庭 に 向 き 合 えるクライエントに 対 しては 豊 かな 表 現 を 促 せる 利 点 が 大 きいと 考 えられるが, 本 研 究 の 結 果 からは, 工 夫 として 箱 庭 の 施 行 方法 に「 枠 」を 与 えることで, 風 景 構 成 法 による 施 行 に 加 えてより 作 品 に「エネルギー」を 加 えられることが 明 らかとなった。鎌 田 ら(2013)は, 通 常 の 箱 庭 制 作 において「 入 り 込 めない」と 表 現 する 製 作 者 において, 実 際 には 自 らの 内 的 世 界 に 触 れる 体 験 をしているものの,そこに 触 れる 怖 さを 感 じているために「 入 り 込 めない」と 表 現 しており,それまでせき 止 められていた 心 的 エネルギーが 急 に 溢 れ 出 すことによって 心理 的 不 安 や 認 知 的 負 担 を 感 じさせる 可 能 性 を 指 摘 している。また, 風 景 構 成 法 においては 不 安 やアンヴィバレンツに 対 する 耐 性 や 認 知 的 成 熟 が 要 請 されるため, 作 品 制 作 時 に 認 知 的 負 担 を 感 じる 場 合 があることを 指 摘 している( 鎌 田 ら,2013)。 以 上 の 論 と 本 研 究 結 果 を 照 らし 合 わせると, 構 造 化 された 手 続 きに 基 づく 箱 庭 制 作 は, 溢 れるエネルギーの「 抱 え」の 機 能 として 作 用 し, 心 理 的 不 安 や 認 知的 負 担 を 緩 和 しつつもエネルギー 豊 かな 作 品 を 創 出 可 能 な 工 夫 となりうることが 示 唆 される。また,想 像 力 の 問 題 を 抱 えるなど, 具 体 物 の 提 示 と 環 境 の 構 造 化 の 両 方 が 必 要 な 制 作 者 に 対 しては, 風 景 構成 法 ではなく 構 造 化 された 箱 庭 を 施 行 することで, 安 全 な 枠 組 みに 加 えて 象 徴 機 能 の 形 成 が 図 れるなど( 浦 崎 ,2004), 箱 庭 が 有 する 内 面 の 表 現 及 び 発 達 を 促 進 できるという 利 点 を 活 かした 援 助 が 展 開できることが 推 察 される。今 後 の 研 究 に 向 けた 課 題 は 以 下 の 通 りである。まず, 本 研 究 は 健 常 大 学 生 に 実 施 した 予 備 的 調 査 であるため, 実 際 のクライエントに 治 療 として 構 造 化 された 箱 庭 を 実 施 した 際 にも 同 様 の 結 果 が 得 られるか 否 かを 確 認 する 必 要 がある。 特 に, 作 品 製 作 者 の 持 つ 認 知 特 性 と3 種 類 の 施 行 方 法 の 組 み 合 わせによって 有 効 性 が 異 なるか 否 かを 精 査 することが 望 まれる。また, 今 回 は 製 作 された 箱 庭 への 自 己 評定 による 量 的 データに 基 づく 印 象 評 価 のみで 効 果 を 判 定 している。したがって, 今 後 は 作 品 制 作 への取 り 組 みやすさや 他 者 評 定 による 作 品 への 印 象 評 価 など, 量 的 データに 質 的 データを 組 み 合 わせた 検討 を 進 めていく 必 要 があるだろう。引 用 文 献古 野 裕 子 (2005): 描 画 解 釈 における「 空 間 構 成 」の 意 義 と 課 題 京 都 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 紀 要 , 51,193-203.入 江 茂 (1987): 事 例 9 分 裂 病 者 の 寛 解 過 程 と 箱 庭 療 法 河 合 隼 雄 ・ 山 中 康 裕 ( 編 ) 箱 庭 療 法 研 究 3誠 信 書 房 pp190-211.入 江 茂 (1998): 第 7 章 箱 庭 療 法 の 実 際 ― 成 人 例 徳 田 良 仁 ・ 大 森 健 一 ・ 飯 森 眞 喜 雄 ・ 中 井 久 夫 ・ 山 中 康裕 ( 監 修 ) 芸 術 療 法 2 実 践 編 岩 崎 学 術 出 版 社 pp64-73.皆 藤 章 (1994): 風 景 構 成 法 ―その 基 礎 と 実 践 誠 信 書 房加 地 雄 一 ・ 松 浦 隆 信 ・ 鎌 田 弥 生 (2013): 構 造 化 箱 庭 療 法 の 有 効 性 に 関 する 検 討 ― 事 例 分 析 を 通 して― 東京 成 徳 大 学 研 究 紀 要 ,20, 123-137.鎌 田 弥 生 ・ 加 地 雄 一 ・ 松 浦 隆 信 (2013): 構 造 化 箱 庭 療 法 の 有 効 性 に 関 する 検 討 ― 修 正 版 グラウンデッド・セオリー・アプローチを 用 いての 質 的 データの 分 析 から― 東 京 成 徳 大 学 研 究 紀 要 ,20, 147-157.144

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