アブラナ 科 野 菜 の 黒 斑 細 菌 病 防 除 指 針

1
アブラナ 科 野 菜 の
黒 斑 細 菌 病 防 除 指 針
(Ver1)
本 指 針 はP.cannabina pv.alisalensisによる 黒 斑 細 菌
病 に 対 する 防 除 指 針 です。

アブラナ 科 野 菜 の 黒 斑 細 菌 病 とは
病 原 菌
アブラナ 科 野 菜 の 黒 斑 細 菌 病 菌 は、その 名 の 通 りアブラナ 科 野 菜
全 般 に 病 原 性 を 示 します。 本 病 の 原 因 となる 病 原 菌 は、 次 の2 種 類
がいます。
◎Pseudomonas cannabina pv. alisalensis
(シュードモナス カンナビナ パソバ アリサレンシス、 以 下 アリサレンシスと 表 記 )
( 旧 名 :P. syringae pv. alisalensis)
○Pseudomonas syringae pv. maculicola
(シュードモナス シリンゲ パソバ マクリコーラ、 以 下 マクリコーラと 表 記 )
2 種 類 の 病 原 菌 は、 病 徴 と 宿 主 範 囲 に 違 いがあります。
キャベツ 葉 の 病 徴
アリサレンシスの 病 徴
マクリコーラの 病 徴
アリサレンシスはアブラナ
科 植 物 だけでなく、 緑 肥 作 物
のエンバクや 一 部 のムギ 類 で
発 病 することが 明 らかになっ
ています。
エンバクの 病 徴
* 長 野 県 で 平 成 23 年 以 降 、 現 地 の 発 病 株 から 分 離 した 黒 斑 細 菌 病 菌
は 全 てアリサレンシスです。そこで、 以 降 の 内 容 は、アリサレンシ
スを 対 象 とした 防 除 指 針 となります。
2

3
病 徴
< 発 生 状 況 >
これまでに 長 野 県 では、はくさい、キャベツ(グリーンボール
を 含 む)、ブロッコリーなどで 発 生 が 認 められています。
< 病 徴 >
黒 斑 細 菌 病 は 育 苗 期 の 苗 から 収 穫 期 の 結 球 葉 および 花 蕾 まで、ど
の 生 育 ステージでも 発 生 がみられます。 葉 に、 初 め 小 さな 水 浸 状 の
病 斑 ができ、 後 に 黒 褐 色 となるため、 黒 斑 細 菌 病 と 呼 ばれます。 病
気 が 進 行 すると 葉 に 穴 が 開 き、 葉 身 部 が 腐 敗 し、 葉 脈 だけを 残 し、
最 終 的 には 葉 の 大 部 分 が 腐 敗 して、 枯 死 します。 初 期 病 徴 は 他 の 病
害 や 生 理 障 害 と 類 似 しています。
なお、ブロッコリーでは 黒 斑 細 菌 病 菌 が 花 蕾 腐 敗 病 の 原 因 にもな
ります。
キャベツ(グリーンボールを 含 む)の 病 徴
育 苗 期 の 初 期 病 徴
育 苗 期 の 病 徴
外 葉 の 初 期 病 斑
外 葉 に 大 型 の 病 斑
結 球 葉 の 病 徴

病 徴
はくさいの 病 徴
育 苗 期 の 初 期 病 徴
育 苗 期 の 病 徴
外 葉 の 初 期 病 斑
外 葉 に 大 型 の 病 斑
ブロッコリーの 病 徴
結 球 期 の 病 徴
育 苗 期 の 病 徴
外 葉 の 初 期 病 斑
外 葉 に 大 型 の 病 斑
花 梗 部 の 腐 敗 症 状
4

5
発 生 生 態
結 球 始 期
生 育 初 期
収 穫 期
降 雨 で
拡 散
降 雨 により
ほ 場 全 面 に
拡 大 する
本 ぽで 黒
斑 細 菌 病
が 発 生
定 植
* 翌 作 の 発 生 源 と
なることがある
栽 培 終 了 後
罹 病 した
残 渣 の 鋤
き 込 み
残 渣 中 で 病
原 菌 が 生 存
緑 肥 栽 培
育 苗 期
育 苗 期 に 発
生 した 罹 病
苗 を 誤 って
本 ぽに 定 植
罹 病 した 緑 肥 作
物 の 鋤 き 込 み
アブラナ 科 野 菜 の 黒 斑 細 菌 病 は、 本 ぽに 持 ち 込 まれた 罹 病 苗
が 伝 染 源 となり、 降 雨 により 周 辺 の 株 に 感 染 します。このため
生 育 初 期 から 発 生 し、 降 雨 により、ほ 場 全 面 に 拡 大 します。
その 後 、 罹 病 したアブラナ 科 野 菜 や 緑 肥 作 物 (エンバクな
ど)の 残 渣 中 で 病 原 菌 が 生 存 し、ほ 場 内 に 病 原 菌 が 定 着 し、 発
病 のサイクルを 繰 り 返 すと 考 えられます。

6
黒 斑 細 菌 病 の 本 ぽでの 拡 大
病 斑 を 形 成 している 葉 面 には 多 量
の 病 原 菌 が 存 在 しており、 降 雨 な
どの 水 滴 を 介 して 病 気 が 拡 がって
いきます。
細 菌 の 塊
菌 泥 の 噴 出
25
日 20
降 15
雨
量 10
5
0
(mm)
本 ぽにおいて、 黒 斑 細 菌 病 は、 降 雨 とともに 罹 病 株 などの 伝 染 源 から
発 生 が 拡 大 していきます( 下 図 )。このため、 伝 染 源 を 本 ぽに 持 ち 込 ま
ないこと、また 降 雨 に 応 じた 薬 剤 防 除 が 重 要 となります。
7 月 30 日 の 発 病 株 分 布 8 月 20 日 の 発 病 株 分 布 9 月 25 日 の 発 病 株 分 布
1 1 1 2 3 3 3 2
1 1 2 1 2 3 2 3 2
1 2 1 1 2 3 3 3 2
1 a) 2 2 3 3 3 2
1 1 1 2 3 3 2 3
2 2 2 2 3 2 2
1 2 2 2 2 3 3
30 31 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 5 6 7 17 18 19 20 21 22 23 24 25
7 月
8 月 9 月
図 グリーンボールにおける 黒 斑 細 菌 病 の 発 生 推 移 と 栽 培 期 間 中 の 雨 量 ( 平 成 24 年 )
試 験 方 法 : a) 枠 で 囲 った 試 験 区 の 中 心 に 罹 病 苗 を 定 植 し、 周 囲 の 健 全 株 への 発 病 拡 大 程 度 を、 下 記 の 基 準 により 調 査 した。
図 中 の 数 字 は 発 病 指 数 を 示 す。 定 植 日 : 平 成 24 年 7 月 30 日 品 種 :「プラディボール」
発 病 指 数 無 表 記 : 無 発 病 1: 外 葉 の1/3 以 下 が 発 病 2: 外 葉 の1/3~2/3が 発 病 3: 大 部 分 の 外 葉 および 結 球 葉 が 発 病

7
黒 斑 細 菌 病 防 除 のポイント
防 除 対 策
育 苗 期
外 葉 形 成 期
結 球 期 ・ 花 蕾 肥 大 期
栽 培 終 了 後
播
種
定
植
結 出
球 蕾
始 始
期 期
収
穫
Point1
育 苗 トレイの 消 毒
Point2
スライド 凝 集 反 応 法 を 用 いた
罹 病 苗 の 持 ち 込 み 防 止
Point3 感 受 性 の 低 い 品 種 の 作 付
Point4 重 点 防 除 時 期
Point6
病 原 菌 が
感 染 しない
緑 肥 作 物
の 選 定
Point5 作 物 の 生 育 ステージに 応 じた 薬 剤 防 除
効 果 の 高 い 薬 剤
薬 害 リスクの 低 い 薬 剤
アブラナ 科 野 菜 の 黒 斑 細 菌 病 防 除 対 策 には、 次 の6つのポイン
トがあります。これらをできる 限 り 組 み 合 わせることで 高 い 効 果
が 得 られます。
防 除 対 策
1 育 苗 トレイの 消 毒
2スライド 凝 集 反 応 法 を 用 いた 罹 病 苗 の 持 ち 込 み 防 止
3 病 気 に 強 い 品 種 の 作 付
4 重 点 防 除 時 期 の 薬 剤 防 除
5 作 物 の 生 育 ステージに 応 じた 薬 剤 防 除
( 初 期 : 効 果 の 高 い 薬 剤 、 後 半 : 薬 害 のリスクの 低 い 薬 剤 )
6 病 原 菌 が 感 染 しない 緑 肥 作 物 の 選 定

8
防 除 対 策 メニュー
育 苗 前 の 防 除 対 策 ( 共 通 )
1 育 苗 トレイの 消 毒
P9
育 苗 期 の 防 除 対 策 ( 共 通 )
2スライド 凝 集 反 応 法 を 用 いた
罹 病 苗 の 持 ち 込 み 防 止
P10
定 植 ~ 収 穫 までの 防 除 対 策 ( 品 目 ごと)
(3 品 種 情 報 および、45 薬 剤 防 除 )
✓はくさい
P11
✓グリーンボール・
キャベツ
✓ブロッコリー
P13
P16
栽 培 終 了 後 の 防 除 対 策 ( 共 通 )
6 病 原 菌 が 感 染 しない 緑 肥 作 物 の 選 定
P18

9
1 育 苗 トレイの 消 毒
資 材 消 毒 剤 (ケミクロンG)
でトレイを 消 毒 することで、ト
レイに 付 着 した 病 原 菌 を 殺 菌 し、
黒 斑 細 菌 病 の 発 生 を 防 ぐことが
できます。
育 苗 時 に 黒 斑 細 菌 病 が 発 生 したセルトレイを、 消 毒 すること
なく 再 利 用 すると、 再 び 本 病 が 発 生 する 危 険 性 があります。 資
材 消 毒 剤 (ケミクロンG)でトレイを 消 毒 することでトレイを
介 した 黒 斑 細 菌 病 を 防 除 できます( 下 図 )。
発
病
苗
率
(%)
20
15
10
5
0
資 材 消 毒 剤 処 理
無 処 理
図 資 材 消 毒 剤 (ケミクロンG)による 黒 斑 細 菌 病 菌 の
防 除 効 果 ( 平 成 26 年 )
前 作 で 黒 斑 細 菌 病 が 発 生 したセルトレイを 利 用 し、10 月 2 日 に 無 処 理 または 資 材 消 毒
剤 (ケミクロンG)の1,000 倍 液 に10 分 間 浸 漬 処 理 し、 翌 日 グリーンボール「エックス
ボール」を 播 種 し、10 月 27 日 に 苗 の 発 病 を 調 査 した。

2スライド 凝 集 反 応 法 を 用 いた
罹 病 苗 の 持 ち 込 み 防 止
黒 斑 細 菌 病 べと 病 生 理 障 害
黒 斑 細 菌 病 に 罹 病 した 苗 を 本 ぽに 持 ち 込 まないことが 重 要 です。
誤 って 本 ぽに 定 植 してしまうと、 伝 染 源 となり 本 病 が 多 発 することが
あります。しかし 育 苗 中 の 病 斑 は 他 の 病 害 や 生 理 障 害 と 似 ており、 肉
眼 での 識 別 は 非 常 に 困 難 です。
簡 易 かつ 迅 速 に 黒 斑 細 菌 病 を 正 確 に 診 断 できるスライド 凝 集 反 応
法 により 罹 病 苗 を 検 出 し、 本 ぽへの 罹 病 苗 の 持 ち 込 みを 防 ぎます。
スライド 凝 集 反 応 による 迅 速 診 断 法
陽 性
陰 性
病 斑 を 含 むサンプル 磨 砕 液
ラテックス 粒
子 が 凝 集 する
ラテックス 粒 子 が
凝 集 せず、 拡 がっ
たままの 状 態
しないで 一
様 に
スライド 凝 集 反 応 試 薬
アブラナ 科 野 菜
の 黒 斑 細 菌 病
他 の 病 気 か 生 理 障 害
*スライド 凝 集 反 応 法 による 診 断 は、 各 普 及 センターで 実 施 できます。
10

11
3 黒 斑 細 菌 病 に 対 するはくさいの
品 種 による 感 受 性 の 違 い
黒 斑 細 菌 病 に 対 して、はくさいの 品 種 間 で 感 受 性 に 差 異 が 認 められ
ています。 感 受 性 の 低 い 品 種 ほど、 黒 斑 細 菌 病 が 発 生 しくくなりま
す。
品 種 の 感 受 性 品 種 名 種 苗 メーカー 感 受 性 程 度
病 気 に 罹 り
にくい
低
感
受
性
高
病 気 に 罹 り
やすい
黄 楽 60 トーホク 6.6
大 福 234 トーホク 18.3
みねぶき505 サカタのタネ 19.0
秋 の 祭 典 渡 辺 採 種 場 19.4
晴 黄 65 タキイ 種 苗 22.7
黄 稔 タキイ 種 苗 23.7
晴 黄 60 タキイ 種 苗 26.9
黄 愛 65 渡 辺 採 種 場 35.1
黄 信 タキイ 種 苗 42.7
信 州 大 福 トーホク 45.1
黄 だて03 タキイ 種 苗 48.7
大 福 トーホク 48.8
春 の 祭 典 渡 辺 採 種 場 51.8
大 福 65 トーホク 57.5
あきめき 日 本 農 林 社 61.4
CRご 黄 げん70 タカヤマシード 67.7
彩 黄 サカタのタネ 69.0
感 受 性 程 度 は、 平 成 24 年 に 北 佐 久 郡 御 代 田 町 現 地 圃 場 、 平 成 24 年 に 南 佐 久 郡 小 海 町 現 地 圃 場 、
平 成 24~27 年 に 小 諸 市 ( 野 菜 花 き 試 験 場 佐 久 支 場 )、 平 成 25~27 年 に 塩 尻 市 ( 野 菜 花 き 試 験 場 )
で 実 施 した 試 験 の 発 病 度 を 平 均 して 算 出 しました。
感 受 性 の 低 い 品 種 ほど 数 値 は 小 さく、 感 受 性 の 高 い 品 種 ほど 数 値 は 大 きくなります。

12
4、5 薬 剤 防 除 (はくさい)
黒 斑 細 菌 病 は 定 植 後 から 収 穫 前 まで 連 続 した 防 除 が 必 要 です。 多
発 後 の 防 除 は 困 難 となるため、 定 植 から 結 球 始 期 に 至 るまでの 重 点
防 除 時 期 は、 防 除 効 果 の 高 い 薬 剤 を 散 布 します。 結 球 期 以 降 は 薬 害
発 生 のリスクが 低 い 薬 剤 を 散 布 します。
【ハクサイ 黒 斑 細 菌 病 に 登 録 のある 薬 剤 】
Frac
コード
薬 剤 名
商 品 名
希 釈 倍 率
( 倍 )
使 用 時 期 使 用 回 数
薬 剤 の
防 除 効 果
薬 害 発 生
のリスク
M1 塩 基 性 硫 酸 銅 水 和 剤 Zボ ル ド ー 500 - - 高 高
41
25
オキシテトラサイクリン・
ストレプトマイシン 水 和 剤
アグリマイシン
100 水 和 剤
1,500
収 穫 14 日
前 まで
3 回 以
内
高
高
31
24
オキソリニック 酸 ・
カスガマイシン 水 和 剤
カセット
水 和 剤
1,000
収 穫 21 日
前 まで
2 回 以
内
中 ~ 低
低
31 オキソリニック 酸 水 和 剤
スターナ
水 和 剤
1,000
収 穫 7 日
前 まで
3 回 以
内
中 ~ 低
低
26 バリダマイシン 液 剤
バリダシン
液 剤 5
500
収 穫 3 日
前 まで
3 回 以
内
中 ~ 低
低
-
シュードモナス・フルオ
レッセンス 水 和 剤
べジキーパー 水
和 剤
1,000 - - 中 ~ 低 低
JPPネット( 平 成 28 年 3 月 31 日 現 在 )
使 用 にあたっては 適 用 登 録 内 容 を 確 認 し、 遵 守 する。
本 ぽでの 薬 剤 防 除 について
定
植
重 点 防 除 時 期
外 葉 形 成 期
結
球
始
期
結 球 期
収
穫
防 除 効 果 の 高 い
薬 剤 を 中 心 に 散 布
薬 害 発 生 のリスク
が 低 い 薬 剤 散 布

13
3 黒 斑 細 菌 病 に 対 するグリーン
ボールの 品 種 による 感 受 性 の 違 い
黒 斑 細 菌 病 に 対 してグリーンボールの 品 種 間 で 感 受 性 に 差 異 が 認
められています。 感 受 性 の 低 い 品 種 ほど、 黒 斑 細 菌 病 が 発 生 しにく
くなります。
品 種 の 感 受 性 品 種 名 種 苗 メーカー 感 受 性 程 度
病 気 に 罹 り
にくい
低
感
受
性
高
病 気 に 罹 り
やすい
SK5-533 サカタのタネ 22.9
ハイボール 大 和 農 園 24.2
ニューボール 日 本 農 林 社 32.8
リッチボール トキタ 種 苗 35.7
清 月 カネコ 種 苗 36.2
爽 月 カネコ 種 苗 40.7
アーリーボール サカタのタネ 49.0
SK9-545 サカタのタネ 49.1
ボールランナー 大 和 農 園 59.8
55ボール トキタ 種 苗 66.1
エックスボール 住 化 農 業 資 材 69.9
感 受 性 程 度 は、 平 成 23~24 年 に 北 佐 久 郡 御 代 田 町 現 地 圃 場 、 平 成 23~27 年 に 小 諸 市 ( 野 菜 花 き
試 験 場 佐 久 支 場 )、 平 成 24~27 年 に 塩 尻 市 ( 野 菜 花 き 試 験 場 )で 実 施 した 試 験 の 発 病 度 を 平 均 し
て 算 出 しました。
感 受 性 の 低 い 品 種 ほど 数 値 は 小 さく、 感 受 性 の 高 い 品 種 ほど 数 値 は 大 きくなります。

14
3 黒 斑 細 菌 病 に 対 するキャベツ
の 品 種 による 感 受 性 の 違 い
黒 斑 細 菌 病 に 対 してキャベツの 品 種 間 で 感 受 性 に 差 異 が 認 められて
います。 感 受 性 の 低 い 品 種 ほど、 黒 斑 細 菌 病 が 発 生 しにくくなりま
す。
(*キャベツは 他 のはくさいやグリーンボールと 比 較 して、 感 受 性 が 低 い 傾 向 にありま
す。 本 試 験 では 品 種 間 の 感 受 性 を 明 らかにするため、 甚 発 条 件 下 で 判 定 しました。)
品 種 の 感 受 性 品 種 名 種 苗 メーカー 感 受 性 程 度
病 気 に 罹 り
にくい
低
感
受
性
高
病 気 に 罹 り
やすい
YR 若 虎 増 田 採 種 場 10.3
寒 玉 910 増 田 採 種 場 11.1
YR 彩 藍 2 号 トキタ 種 苗 11.7
翠 青 大 和 農 園 14.3
新 緑 カネコ 種 苗 14.5
初 夏 808 増 田 採 種 場 19.6
信 州 868 トーホク 20.4
青 琳 サカタのタネ 20.7
たちかぜ 渡 辺 農 事 29.0
きよはる 日 本 農 林 社 29.7
ことみ 日 本 農 林 社 32.3
恋 風 カネコ 種 苗 34.5
みくに カネコ 種 苗 34.9
輝 吉 日 本 農 林 社 39.9
YR- 晴 信 雪 印 種 苗 53.7
好 菜 堂 渡 辺 採 種 場 54.4
YRSE 長 野 県 原 種 センター 56.6
感 受 性 程 度 は、 平 成 24 年 に 北 佐 久 郡 御 代 田 町 現 地 圃 場 、 平 成 25~27 年 に 小 諸 市 ( 野 菜 花 き 試 験
場 佐 久 支 場 )、 平 成 25~27 年 に 塩 尻 市 ( 野 菜 花 き 試 験 場 )で 実 施 した 試 験 の 発 病 度 を 平 均 して 算
出 しました。
感 受 性 の 低 い 品 種 ほど 数 値 は 小 さく、 感 受 性 の 高 い 品 種 ほど 数 値 は 大 きくなります。

15
45 薬 剤 防 除
(グリーンボール・キャベツ)
黒 斑 細 菌 病 は 定 植 後 から 収 穫 前 まで 連 続 した 防 除 が 必 要 です。 多
発 後 の 防 除 は 困 難 となるため、 定 植 から 結 球 始 期 に 至 るまでの 重 点
防 除 時 期 は、 防 除 効 果 の 高 い 薬 剤 を 散 布 します。 結 球 期 以 降 は 薬 害
発 生 のリスクが 低 い 薬 剤 を 散 布 します。
【キャベツ 黒 斑 細 菌 病 に 登 録 のある 薬 剤 】
Frac
コード
薬 剤 名
商 品 名
希 釈 倍 率
( 倍 )
使 用 時 期
使 用 回 数
薬 剤 の 防
除 効 果
薬 害 発 生
のリスク
M1 塩 基 性 硫 酸 銅 水 和 剤 Zボ ル ド ー 500 - - 高 高
24
M1
カスガマイシン・
銅 水 和 剤
カスミンボル
ドー
1,000
収 穫 7 日
前 まで 4 回 以 内 高 高
41
25
オキシテトラサイクリン・
ストレプトマイシン 水 和 剤
アグリマイシン
100 水 和 剤
2,000
収 穫 14 日
前 まで 2 回 以 内 高 ~ 中 高
31
24
オキソリニック 酸 ・
カスガマイシン 水 和 剤
カセット 水 和 剤 1,000
収 穫 7 日
前 まで 3 回 以 内 中 ~ 低 低
31 オキソリニック 酸 水 和 剤 スターナ 水 和 剤 1,000
収 穫 7 日
前 まで 3 回 以 内 中 ~ 低 低
JPPネット( 平 成 28 年 3 月 31 日 現 在 )
使 用 にあたっては 適 用 登 録 内 容 を 確 認 し、 遵 守 する。
本 ぽでの 薬 剤 防 除 について
定
植
重 点 防 除 時 期
外 葉 形 成 期
結
球
始
期
結 球 期
収
穫
防 除 効 果 の 高 い
薬 剤 を 中 心 に 散 布
薬 害 発 生 のリスク
が 低 い 薬 剤 散 布

16
3 黒 斑 細 菌 病 に 対 するブロッコ
リーの 品 種 による 感 受 性 の 違 い
黒 斑 細 菌 病 に 対 してブロッコリーの 品 種 間 で 感 受 性 に 差 異 が 認 め
られています。 感 受 性 の 低 い 品 種 ほど、 黒 斑 細 菌 病 が 発 生 しにくい
傾 向 にあります。
品 種 の 感 受 性 品 種 名 種 苗 メーカー 感 受 性 程 度
病 気 に 罹 り
にくい
低
感
受
性
高
病 気 に 罹 り
やすい
トップギア タキイ 種 苗 14.8
ピクセル サカタのタネ 18.3
ファイター ブロリード 21.6
SK9-099 サカタのタネ 23.9
グリーンキャノン サカタのタネ 25.0
夢 ひびき ナント 種 苗 26.8
ジェットドーム みかど 協 和 28.4
スピードドーム052 みかど 協 和 31.8
玉 麟 トキタ 種 苗 34.5
翠 鱗 トキタ 種 苗 36.4
おはよう サカタのタネ 50.0
サマードーム サカタのタネ 52.9
感 受 性 程 度 は、 平 成 24 年 に 北 佐 久 郡 御 代 田 町 現 地 圃 場 、 平 成 25~27 年 に 小 諸 市 ( 野 菜 花 き 試 験
場 佐 久 支 場 )、 平 成 25~27 年 に 塩 尻 市 ( 野 菜 花 き 試 験 場 )で 実 施 した 試 験 の 発 病 度 を 平 均 して 算
出 しました。
感 受 性 の 低 い 品 種 ほど 数 値 は 小 さく、 感 受 性 の 高 い 品 種 ほど 数 値 は 大 きくなります。

17
45 薬 剤 防 除 (ブロッコリー)
黒 斑 細 菌 病 は 定 植 後 から 収 穫 前 まで 連 続 した 防 除 が 必 要 です。 多
発 後 の 防 除 は 困 難 となるため、 定 植 から 出 蕾 始 期 に 至 るまでの 重 点
防 除 時 期 は、 防 除 効 果 の 高 い 薬 剤 を 散 布 します。また 黒 斑 細 菌 病 菌
が 原 因 となる 花 蕾 腐 敗 病 を 防 除 するため、 出 蕾 期 以 降 は 薬 害 のリス
クが 低 い 薬 剤 を 散 布 します。
【ブロッコリー 黒 斑 細 菌 病 に 登 録 のある 薬 剤 】
Frac
コード
薬 剤 名
商 品 名
希 釈 倍 率
( 倍 )
使 用 時 期
使 用 回 数
薬 剤 の
防 除 効 果
薬 害 発 生
のリスク
M1 塩 基 性 硫 酸 銅 水 和 剤 Zボ ル ド ー 500 - - 高 高
M1
有 機 銅 水 和 剤
キ ノ ン ド ー 40
水 和 剤
800
収 穫 14 日
前 まで 3 回 以 内 中 ~ 低 低
31 オキソリニック 酸 水 和 剤
スターナ
水 和 剤
2,000
収 穫 14 日
前 まで 2 回 以 内 中 ~ 低 低
【ブロッコリー 花 蕾 腐 敗 病 に 登 録 のある 薬 剤 】
Frac
コード
薬 剤 名
商 品 名
希 釈 倍 率
( 倍 )
使 用 時 期
使 用 回 数
薬 剤 の
防 除 効 果
薬 害 発 生
のリスク
M1
水 酸 化 第 二 銅 水 和 剤
コ サ イ ド 3000
水 和 剤
1,000 - - 高 高
-
シュードモナス・フル
オレッセンス 水 和 剤
ベジキーパー
水 和 剤
1,000 - - 中 ~ 低 低
-
シュードモナス・ロデ
シア 水 和 剤
マスタピース
水 和 剤
1,000 - - 中 ~ 低 低
JPPネット( 平 成 28 年 3 月 31 日 現 在 )
使 用 にあたっては 適 用 登 録 内 容 を 確 認 し、 遵 守 する。
本 ぽでの 薬 剤 防 除 について
定
植
重 点 防 除 時 期
外 葉 形 成 期
防 除 効 果 の 高 い
薬 剤 を 中 心 に 散 布
出
蕾
始
期
花 蕾 肥 大 期
収
穫
薬 害 発 生 のリスク
が 低 い 薬 剤 散 布

18
6 病 原 菌 が 感 染 しない
緑 肥 作 物 の 選 定
本 病 原 菌 は、アブラナ 科 の 植 物 以 外 にもエンバクや 一 部 のオオムギおよびラ
イムギに 対 しても 病 斑 を 形 成 します。 緑 肥 作 物 を 利 用 する 際 は、 病 原 菌 が 感 染
しないものを 選 定 してください。
なお、エンバク 野 生 種 ( 和 名 :セイヨウチャヒキ、 学 名 :Avena strigosa)と
エンバク( 和 名 :エンバク、 学 名 :Avena sativa)の2 種 類 が 現 場 で 利 用 されま
す。エンバク 野 生 種 はどの 品 種 も 感 受 性 が 高 いのですが、エンバクは 品 種 によっ
て 感 受 性 が 異 なる 傾 向 にあります。
緑 肥 作 物 名 品 種 名 罹 病 性 緑 肥 作 物 名 品 種 名 罹 病 性
エンバク 野 生 種 ヘイオーツ +++ コムギ シラネコムギ -
ニューオーツ +++ 銀 河 のちから -
ソイルセルバー +++ ゆめちから -
エンバク ウエスト + ライコムギ ライコッコⅡ -
エンダックス + ライコッコⅢ -
スタンドオーツ
++
たちいぶき ++ エビスグサ エビスグサ -
さきがけ
++
ヘアリーベッチ まめ 助 -
オオムギ ワセミドリ2 条 - 藤 えもん -
てまいらず - 寒 たろう -
ムサシボウ
+
百 万 石 ++ クロタラリア ネマキング -
ソルガム 三 尺 ソルゴー -
オーチャード
グラス
ネマックス
スダックス 緑 肥 用 - ハゼリソウ アンジェリア -
ナツミドリ
-
めぐみ
アキミドリⅡ - ライムギ R007 -
ハルジマン - 緑 春 -
ハルミドリ
スーダングラス ねまへらそう - サムサシラズ2 -
リッチスーダン - 春 香 -
緑 肥 用 ライムギ
ギニアグラス ソイルクリーン - ライ 太 郎 +
マリーゴールド エバーグリーン -
ボンネル
-
-
-
-
++
罹 病 性 -: 発 病 しない、+: 幼 苗 の1/3 以 下 が 発 病 、++: 幼 苗 の1/3~2/3の 葉 身 に 発 病 、
+++: 幼 苗 の2/3 以 上 の 葉 身 部 に 発 病

19
その 他 の 防 除 ポイント
✓ 害 虫 による 食 害 を 防 ぎましょう。
( 黒 斑 細 菌 病 菌 を 含 む 細 菌 は 葉 の 気 孔 ・ 水 孔
や 害 虫 の 被 害 を 受 けた 傷 口 から 病 原 菌 が 侵
入 して 発 病 します)
✓ 周 辺 雑 草 の 除 去 を 実 施 しましょう。
( 黒 斑 細 菌 病 菌 はアブラナ 科 雑 草 にも 感 染 し
ます)
✓ 発 病 株 はできるだけ 早 く 抜 き 取 り 処 分 を
行 いましょう。
( 本 ぽの 伝 染 源 になります)
✓ 前 作 で 黒 斑 細 菌 病 が 多 発 した 場 合 は、アブ
ラナ 科 野 菜 の 連 作 を 避 けましょう。
( 残 渣 中 で 病 原 菌 が 生 存 、 越 冬 します)

20
今 後 、 本 指 針 の 精 度 向 上 に 取 り 組 むとともに、 品 種 、 薬 剤
および 防 除 技 術 など 新 たな 知 見 が 得 られた 場 合 、 随 時 改 訂 し
ていきます。
「アブラナ 科 野 菜 の 黒 斑 細 菌 病 防 除 指 針 」
(2016 年 3 月 31 日 現 在 )
問 合 せ 先
長 野 県 野 菜 花 き 試 験 場 環 境 部
〒399-6461 長 野 県 塩 尻 市 宗 賀 床 尾 1066-1
電 話 0263-52-1148