Kyoku-no16
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昭 和 基 地 開 設 60 周 年 記 念 「 南 極 まつり」<br />
寒 波 の 予 測 精 度 を 上 げて 減 災 につなげる<br />
新 北 極 行 「カナダ 北 端 ~グリーンランドへの 徒 歩 行 」<br />
うめ 連 載 マンガ「きょくまん」 第 15 話<br />
南 極 授 業 「 世 界 は 広 い!いろいろな 世 界 をのぞいてみよう!<br />
挑 戦 してみよう!」<br />
One of 南 極 観 測 隊 第 2 回 「 環 境 保 全 」<br />
吉 田 栄 夫 「 越 冬 断 念 、 撤 退 を 巡 って─ 宗 谷 の 時 代 (2)」<br />
きょく<br />
16<br />
2017 春 号<br />
が 描 く<br />
少 し 不 思 議 な 世 界
東<br />
巨 大 な 氷 のかたまり<br />
南 極 は 不 思 議 だらけ<br />
今 回 の 映 画 は 南 極 が 舞 台 とのことですが、 制 作 でい<br />
ちばん 苦 労 されたのはどんなところですか?<br />
高 橋<br />
藤 子 ・F・ 不 二 雄 先 生 は、ご 自 身 の 作 品 をSF( 少<br />
し・ 不 思 議 )と 表 現 されていたこともあって、ドラえもん<br />
の 映 画 は「サイエンス・フィクション」とまではいかなく<br />
ても、ある 程 度 、「サイエンス」の 部 分 も 大 事 にしようと<br />
いうコンセプトがあるんです。ですから、 今 回 も 南 極 につ<br />
いて 調 べたり、 資 料 を 集 めたりするのがたいへんでしたね。<br />
最 初 は、 氷 山 と 流 氷 の 違 いすら 知 らない 状 態 でしたから。<br />
東 そこからのスタートだったんですね。 南 極 について<br />
調 べていて、 何 かびっくりしたことはありましたか?<br />
高 橋 驚 くことだらけでしたけど、 単 純 に、 南 極 全 体 が<br />
ひとつの 氷 って、すごいなと。その 氷 が「 氷 床 」と 呼 ば<br />
れていて、 動 いていることを 初 めて 知 りました。<br />
東 「 氷 床 流 動 」 で す ね 。 簡 単 に 説 明 す ると 、 南 極 や 北<br />
極 の 高 地 に 降 った 雪 は 夏 でも 融 けないので、 長 い 年 月 に<br />
わたって 積 み 重 なっていき、 氷 に 変 化 します。やがて、<br />
重 力 によって、ゆっくりと 低 地 に 向 かって 流 れていくのです。<br />
高 橋 映 画 のなかでもそのことを 説 明 しているのですが、<br />
氷 床 流 動 をアニメにしたのは、 今 回 が「 初 」なんじゃな<br />
いかと 勝 手 に 思 っています( 笑 )。<br />
東 そういうアニメ、 待 ってまし た! サ イエン スカフェな<br />
どで、 一 般 の 人 に 説 明 することがあるので、そのとき、そ<br />
んなアニメがあったら、 興 味 をもってくれる 子 どもたちも<br />
増 えてくれるんじゃないかなと 思 います。<br />
高 橋<br />
氷 床 に 閉 じ 込 められた 雪 や 大 気 から<br />
過 去 の 地 球 の 姿 がわかる<br />
東 さんは、 南 極 や 北 極 の 氷 について 研 究 されてい<br />
るそうですね。<br />
東 はい。 氷 床 を 深 く 掘 って 円 柱 形 の 氷 のサンプル( 氷<br />
床 コア)を 取 り 出 し、 調 べています。<br />
高 橋<br />
東<br />
氷 床 コアからはどんなことがわかるんですか?<br />
南 極 や 北 極 の 氷 床 には、 過 去 の 雪 や 大 気 、そして、<br />
その 中 に 含 まれる 様 々な 物 質 がそのまま 冷 凍 保 存 されて、<br />
地 層 のように 重 なっています。 氷 の 成 分 を 調 べると、そ<br />
のころの 気 候 や 大 気 の 様 子 ( 二 酸 化 炭 素 の 濃 度 など)が<br />
わかるんです。 氷 に 閉 じ 込 められた 過 去 の 微 生 物 の<br />
DNA を 調 べようとしているグループもありますよ。<br />
高 橋<br />
南 極 の 氷 からいろいろなことがわかるんですね。<br />
映 画 ではドラえもんたちが 10 万 年 前 の 南 極 へと 向 かうの<br />
ですが、 実 際 の 10 万 年 前 はどんな 気 候 だったんですか?<br />
東<br />
南 極 の 氷 床 コアを 年 代 ごとに 調 べて、 今 よりも 寒 く<br />
て 氷 床 が 発 達 した 氷 期 と、 暖 かい 間 氷 期 が 約 10 万 年 周<br />
期 で 繰 り 返 されていることがわかっています。10 万 年 前<br />
極 スペシャル<br />
『 映 画 ドラえもん のび 太 の 南 極 カチコチ 大 冒 険 』が<br />
描 く 少 し 不 思 議 な 世 界<br />
『 映 画 ドラえもん のび 太 の 南 極 カチコチ 大 冒 険 』が3 月 4 日 に 公 開 されました。<br />
ドラえもんとのび 太 が 南 極 の 氷 に 閉 じ 込 められた 古 代 の 都 市 遺 跡 を 発 見 !<br />
そこから 地 球 の 運 命 にかかわる 大 冒 険 が 始 まります。<br />
この 映 画 の 監 督 ・ 脚 本 を 担 当 された 高 橋 敦 史 さんと、 国 立 極 地 研 究 所 ・ 気 水 圏 研 究 グループ 教 授 の<br />
東 久 美 子 さんに、 映 画 の 見 所 や 制 作 の 苦 労 、 氷 の 不 思 議 について 語 っていただきました。<br />
2 極 No.16 2017 春 号 3
1<br />
3.8m<br />
3000m<br />
900<br />
<br />
南 極 から 見 える 過 去 と 未 来 ……<br />
サイエンスのドアになれば<br />
高 橋 昭 和 基 地 とドームふじはどれくらい 離 れているんで<br />
すか?<br />
東 距 離 は1000キロほどなんですが、 行 きは、 雪 上 車 で<br />
食 料 や 燃 料 などの 物 資 をのせたそりを 引 っ 張 りながら、 傾<br />
斜 をのぼっていかなければならないので4 週 間 かかりました。<br />
高 橋 雪 上 車 は 乗 り 心 地 が 相 当 悪 いらしいですね。<br />
東 そうなんです。とにかく 振 動 が 激 しくて。それに 春 頃 、<br />
まだ 雪 がふかふかな 状 態 だと、 何 度 もそりが 埋 まって。<br />
高 橋 敦 史 <br />
「 南 極 の 氷 から<br />
<br />
2013<br />
<br />
<br />
というと、ひとつ 前 の 間 氷 期 が 終 わり、 徐 々に 寒 くなっていっ<br />
た 時 期 ですね。<br />
高 橋 このサイクルで 行 くと、 地 球 はもうすぐ 氷 期 に 入 るっ<br />
てことですよね?<br />
東 そうですね( 笑 )。 現 在 の 間 氷 期 は 1 万 年 くらい 続 い<br />
ていますし、1960 年 代 、70 年 代 には 世 界 的 に 少 し 寒 い<br />
時 期 があって「 氷 期 に 入 るのでは」と 言 われたこともあり<br />
ました。 氷 期 ・ 間 氷 期 のサイクルは、 地 球 の 自 転 軸 の 傾<br />
きや 地 球 が 太 陽 のまわりを 回 る 軌 道 の 周 期 的 変 化 などで<br />
決 まっていると 考 えられますが、そのメカニズムは 複 雑 で、<br />
いろいろな 説 があります。 現 在 は「あと1 万 年 くらいは 間<br />
氷 期 が 続 くのではないか」と 考 える 人 が 多 いです。<br />
ドラえもん 映 画 の 見 所<br />
今 回 の NEW ひみつ 道 具 は?<br />
高 橋 何 十 万 年 前 の 地 球 の 気 候 がわかっているというこ<br />
とは、それだけ 深 いところから、 古 い 氷 を 掘 り 出 して 調 べ<br />
たということですよね?<br />
東 はい。 日 本 の 観 測 隊 が 掘 削 したものでいちばん 古 い<br />
のは、72 万 年 前 の 氷 です。 南 極 大 陸 の 内 陸 部 にあるドー<br />
ムふじ 基 地 の 掘 削 場 で、3000 メートルをこえる 深 さから<br />
掘 り 出 しました。<br />
高 橋 3000 メートル 以 上 も 下 にあった 氷 ですか!<br />
実 は 映 画 でも、ドラえもんたちも 先 端 にドリルがついた「 氷<br />
底 探 検 車 」というひみつ 道 具 で、 南 極 の 氷 を 3000 メー<br />
トル 掘 り 進 んでいくというシーンがあるんですよ。<br />
東 そんな 便 利 な 道 具 があるなんてうらやましいです。<br />
高 橋 今 回 の 映 画 には、ほかにも 極 地 研 のみなさんに 興<br />
味 をもってもらえる 道 具 がたくさん 出 てきますよ。たとえば、<br />
氷 に 当 てるとそれがいつできたものかがわかる「 氷 年 代<br />
測 定 器 」とか、 着 るだけで 寒 い 南 極 の 冬 も 快 適 に 過 ごせ<br />
る 「 極 地 探 検 ス ー ツ 」、 地 面 や 氷 の 下 に 何 か 埋 ま っ て い<br />
るものがあると 知 らせてくれる「ここほれワイヤー」など<br />
です。<br />
東 すごい。どれもほしい 道 具 ばかりです! ドラえもん<br />
にぜひ、 南 極 観 測 隊 に 参 加 してほしいですよね。そうす<br />
れば「どこでもドア」で、ドームふじの 掘 削 場 までも 一 瞬<br />
で 行 けますし。<br />
東 久 美 子 <br />
<br />
<br />
45<br />
<br />
<br />
<br />
地 球 の 過 去 がわかるんですね。」 高 橋<br />
そのたびに 引 っ 張 り 出 すのに、 苦 労 しました。<br />
高 橋 それは「どこでもドア」がほしくなりますね。それ<br />
なら、 私 も 南 極 へ 行 ってみたいです。<br />
東 南 極 でどんなことをしてみたい、 見 てみたいというの<br />
はありますか?<br />
高 橋 何 を 見 ても、やっても 感 動 すると 思 いますが、まず<br />
は 生 き 物 が 何 もいない、ただ 真 っ 白 い 世 界 が 広 がる 場 所<br />
に 立 ってみたい。それだけでも 十 分 価 値 があると 思 います。<br />
ところで、 東 さんは、 今 後 、 南 極 や 北 極 でどんな 研 究 を<br />
する 予 定 なんですか?<br />
東 今 、グリーンランドの 国 際 プロジェクトに 参 加 してい<br />
るのですが、そこでは 今 後 、 氷 床 の 氷 がどう 変 化 して、<br />
どう 流 れていくのか、 氷 床 流 動 のしくみを 解 明 していきた<br />
いと 考 えています。それから 南 極 では、 第 3 期 ドームふ<br />
じ 計 画 が 進 んでいて、100 万 年 をこえるような 氷 を 掘 り 出<br />
して 調 査 するのが 目 標 です。<br />
高 橋 100 万 年 前 の 氷 から、どんなことを 解 明 しようとし<br />
ているのですか?<br />
東 実 は 海 底 堆 積 物 の 研 究 から 100 万 年 をこえる 気 候<br />
復 元 が 行 われていて、そのころには 気 候 のサイクルが 10<br />
万 年 ではなく、4 万 年 周 期 だったのではと 言 われているん<br />
です。ではなぜそんな 変 化 が 起 きたのか、 氷 床 コアの 研<br />
究 で 解 明 できたらと 思 っています。<br />
高 橋 さんの 今 後 の 予 定 や 目 標 は 何 ですか?<br />
高 橋 何 も 決 まっていません。 今 はとにかく、 公 開 された<br />
映 画 をたくさんの 人 に 見 てほしい。そして、 南 極 のサイエ<br />
ンスに 興 味 をもってもらえたらうれしいです。<br />
【 作 品 情 報 】<br />
<br />
<br />
201734<br />
<br />
<br />
©ADK 2017<br />
<br />
【ストーリー】<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
10<br />
4 p3-5<br />
p25©ADK2017<br />
極 No.16 2017 春 号 5
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南 極 に 昭 和 基 地 が 開 設 されて 60 年 を 迎 えた 1 月 29 日 、 極 地 研 で<br />
「 南 極 まつり」が 開 催 されました。<br />
約 1200 人 が 訪 れ、 研 究 者 によるサイエンスカフェや 展 示 ・ 体 験 ブース、<br />
オーロラシアター、 昭 和 基 地 とのライブトークなどを 楽 しみました。<br />
<br />
<br />
<br />
─ 南 極 の 夜 空 がよりリアルに<br />
<br />
<br />
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<br />
4 <br />
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南 極 ・ 北 極 科 学 館<br />
Polar Science Museum<br />
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─ 見 て 聞 いて 触 って 体 験 !<br />
<br />
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<br />
展 示 ・ 体 験 ブース<br />
Exhibition / Experience booth<br />
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2100<br />
─ 極 地 の 先 端 科 学 を 楽 しく 学 ぶ<br />
30 <br />
<br />
<br />
<br />
サイエンスカフェ<br />
Science Café<br />
<br />
<br />
6 <br />
極 No.16 2017 春 号 7
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まずは、 南 極 昭 和 基 地 の 映 像 が 映 し 出 されました。この 日 の 気 温 は 0 度 。<br />
残 念 ながら 強 風 が 吹 き 荒 れていたので、 外 の 様 子 はあまりリポートされませんでした。<br />
基 地 内 の 食 堂 に 第 57 次 隊 員 と 第 58 次 隊 員 の 皆 さんが 集 まり、 極 地 研 会 場 の 子 どもたちの 質 問 に 答 えてくれました。<br />
<br />
<br />
<br />
昭 和 基 地 では 毎 日 カラフルなオーロラが<br />
見 られるのですか?<br />
岡 田 雅 樹 さん( 第 58 次 越 冬 隊 長 )<br />
3 <br />
1 <br />
2 3 <br />
3 1 100 <br />
<br />
<br />
昭 和 基 地 にペンギンはよく 来 ますか?<br />
笹 森 映 里 さん( 第 57 次 越 冬 隊 )<br />
<br />
10 11 <br />
1<br />
10 <br />
将 来 、 南 極 観 測 隊 の 隊 員 になりたいの<br />
<br />
ですが、 僕 が 今 すべきことは 何 ですか?<br />
─「ドラえもんと 昭 和 基 地 の<br />
6 0 周 年 をお 祝 しよう!」<br />
ライブトーク<br />
Live talk<br />
僕 の 名 前 は、 初 代 南 極 観 測 船 の 名 前 と<br />
同 じ「そうや」といいます。 観 測 船 の<br />
名 前 はどうやってつけるんですか?<br />
樋 口 和 生 さん( 第 57 次 越 冬 隊 長 )<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
TV <br />
60 <br />
200 <br />
60 <br />
大 鋸 寿 宣 さん(しらせ 艦 長 )<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
今 度 は 昭 和 基 地 から 会 場 に 向 けてクイズが 出 されました。 大 人 も 子 どもも 真 剣 になって、<br />
腕 を 上 げて 〇 と×の 形 をつくります。 正 解 が 発 表 されるたび、「そうなの!?」「やったぁ!」といった 声 があちこちで 上 がりました。<br />
1<br />
<br />
<br />
猪 俣 仁 さん( 第 57 次 越 冬 隊 員 )<br />
問 題 <br />
<br />
<br />
1991 <br />
<br />
<br />
森 川 博 久 さん( 第 57 次 医 療 隊 員 )<br />
問 題 <br />
1 1 <br />
10 1 <br />
<br />
<br />
2 <br />
8 極 No.16 2017 春 号 9
極 の 先 端 研 究<br />
寒 波 の 予 測 精 度 を 上 げて<br />
減 災 につなげる<br />
日 本 など 中 緯 度 を 襲 う 大 寒 波 と 豪 雪 の 被 害 。<br />
その 予 測 精 度 を 向 上 するための 研 究 が 進 められています。<br />
北 極 海 周 辺 には 気 象 データが 少 ない<br />
今 年 の 冬 は 西 日 本 の 日 本 海 側 などで 記 録 的 な 大 雪 が<br />
降 り、 交 通 機 関 がマヒするなどの 被 害 がでました。こ<br />
れは 強 い 寒 波 によるもので、 近 年 、 日 本 だけでなく 北<br />
半 球 の 中 緯 度 地 方 を 大 寒 波 が 襲 うようになりました。<br />
地 球 の 温 暖 化 が 進 んでいるにもかかわらず、これは 不<br />
思 議 な 現 象 です。そのメカニズムを 解 明 しようと、 世 界<br />
中 の 研 究 者 がさまざまなアプローチをしています。<br />
いのうえ<br />
じゅん<br />
猪 上 淳 さん( 国 際 北 極 環 境 研 究 センター 准 教 授 )は<br />
その 先 駆 者 で、 北 極 海 の 氷 が 少 なくなると 日 本 の 冬 が<br />
寒 くなるという 関 係 を2009 年 に 明 らかにしました。そ<br />
の 後 、 研 究 を 進 めていく 中 で、「メカニズムだけがわかっ<br />
ても、 社 会 の 役 に 立 つわけではない。 予 測 という 視 点<br />
で 見 たらどうだろう」と 考 えるようになりました。「 数 日<br />
前 に 出 ていた 大 雪 の 予 報 が1 週 間 前 に 出 るようになれ<br />
ば、 被 害 が 減 るのではないだろうか。 特 に 北 極 の 影 響<br />
があるのなら、もっと 実 用 的 な 研 究 になるだろう」<br />
きょく<br />
北 極 海 の 上 空 には 寒 気 をためている 低 気 圧 の 渦 ( 極<br />
うず<br />
渦 )ができています。 極 渦 は 夏 には 弱 く、 冬 にはもっと<br />
も 強 くなります。 極 渦 が 南 にせり 出 してくると、 寒 波 が<br />
発 生 します。そのため、 寒 波 が 日 本 にやってくるルート<br />
や 移 動 時 間 、その 規 模 などを 予 測 するには、 北 極 周 辺<br />
の 気 象 データ( 気 温 、 湿 度 、 気 圧 、 風 向 、 風 速 など)が<br />
必 要 になります。 特 に、 極 渦 や 寒 波 の 発 生 は 高 度 十 数<br />
キロメートルの 現 象 なので、 気 球 にくくりつけたラジオ<br />
ゾンデ *1 を 使 った 高 層 観 測 が 不 可 欠 になります。とこ<br />
ろが、 北 極 海 上 には 陸 上 にあるような 観 測 ステーション<br />
<br />
<br />
<br />
を 設 置 することができません。 北 極 海 を 囲 むヨーロッパ<br />
からユーラシア、 北 アメリカに 至 る 広 大 な 地 域 に、 観 測<br />
ステーションがわずか 十 数 か 所 置 かれているだけです。<br />
全 世 界 の 観 測 ステーションは800か 所 ですから、 観 測<br />
データの 少 なさがわかります。<br />
北 極 の 高 層 気 象 観 測 で 寒 波 の 予 測 精 度 が 向 上<br />
猪 上 さんはまず、 海 が 凍 らない 夏 に 船 で 北 極 海 に 行<br />
き、 船 上 で 気 象 観 測 をおこないました。そのデータをも<br />
とにして、 大 気 の 流 れを 予 測 してみました。その 結 果 、<br />
上 空 の 風 が 夏 は 中 緯 度 まで 下 りてこないで、 北 極 圏 の<br />
中 を 循 環 していることが 確 かめられました。それに 対 し<br />
て 冬 は、 寒 気 が 南 に 下 りてくるので、 観 測 データがあ<br />
れば 予 報 に 好 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 があると 想 像 してい<br />
たのですが、 海 氷 におおわれた 冬 の 海 を 航 行 できる 船<br />
がないまま、 観 測 の 目 途 が 立 ちませんでした。<br />
2015 年 の 冬 、チャンスが 訪 れました。 北 極 海 の 特 別<br />
観 測 プロジェクト「 N - I C E 2 0 1 5 」が 始 まったので す 。ノ<br />
ルウェーの 研 究 船 「ランス 号 」が 北 極 海 に 停 留 し、 氷 上<br />
から 高 層 観 測 がおこなわれました。それと 並 行 して、<br />
北 極 圏 の 陸 上 にある 観 測 点 4か 所 での 観 測 回 数 も 通 常<br />
の 1 日 2 回 か ら 4 回 に 増 え ま し た ( 図 1 )。 そ れ ら の デ ー<br />
タは、 通 常 の 観 測 データと 同 じように 気 象 ネットワーク<br />
を 通 してリアルタイムで 世 界 中 に 通 報 され、 各 地 の 天<br />
気 予 報 に 利 用 されました。<br />
この 特 別 観 測 がおこなわれていた2 月 、 日 本 と 北 アメ<br />
リカは 大 寒 波 に 見 舞 われました。 猪 上 さんはこの 寒 波 に<br />
着 目 し、「 N-ICE2015」の 観 測 データが 実 際 の 天 気 予 報<br />
に 有 効 だったのではないかと 考 えました。そこで、 特 別<br />
観 測 データを 取 り 込 んだ 場 合 ( 特 別 観 測 あり)と、 特 別 観<br />
測 データを 取 り 除 いた 場 合 ( 特 別 観 測 なし)の 2 パターン<br />
で 、 予 報 に 必 要 な 大 気 の 初 期 状 態 ( 気 温 、 風 など の 3 次<br />
元 分 布 )を、スーパーコンピュータを 使 って 求 めました。<br />
そして、それぞれのパターンについて、 日 本 と 北 アメリ<br />
カの 寒 波 に 対 して 5 日 間 の 予 報 を 出 しました。<br />
その 結 果 、 日 本 周 辺 を 対 象 とした「 特 別 観 測 あり 予<br />
報 」では 北 海 道 西 岸 で 低 気 圧 が 発 達 し、 実 際 の 低 気 圧<br />
の 経 路 と 一 致 しました。これに 対 して「 特 別 観 測 なし 予<br />
報 」では、 日 本 のはるか 東 の 北 太 平 洋 上 で 低 気 圧 が 発<br />
達 し、 実 際 の 経 路 から 大 きくずれてしまいました( 図 2)。<br />
これは、 北 極 域 の 観 測 データが 少 なく、 上 空 の 寒 気 の<br />
構 造 を 正 確 に 予 測 できなかったためで、 観 測 データが<br />
予 報 に 大 きな 貢 献 をしていることが 明 らかになりました。<br />
極 域 予 測 年 へ 向 けて<br />
「これは、 寒 波 の 予 測 を 向 上 させるアクション( 適 応 策 )<br />
を 探 るための 基 礎 研 究 です」。 猪 上 さんは2016 年 12 月 、<br />
新 しいプロジェクトを 立 ち 上 げました。 極 地 研 の 観 測<br />
基 地 があるノルウェーのニーオルスンと、フィンランド<br />
のソダンキュラでの 気 象 観 測 の 回 数 を 通 常 の1 日 2 回 か<br />
ら1 日 4 回 に 増 やし、 予 測 精 度 を 評 価 します。 最 初 に 調<br />
べるのは、 昨 年 12 月 に 北 海 道 を 襲 った 寒 波 です。<br />
そして2017 年 なかばには、 極 域 予 測 年 *2 がスタート<br />
します。2 年 にわたる 期 間 中 は、 多 数 の 国 が 北 極 海 周 辺<br />
で 観 測 をおこないます。これによって 予 測 研 究 が 大 きく<br />
進 展 するとともに、 現 実 的 かつ 最 良 の 北 極 域 での 観 測<br />
ネットワークが 提 唱 されるものと 期 待 されています。<br />
2 YOPP<br />
<br />
図 1<br />
2015<br />
N-ICE2015 <br />
1<br />
2<br />
14<br />
<br />
60N<br />
【℃】<br />
-25<br />
-20<br />
-15<br />
-10<br />
-5<br />
0<br />
<br />
<br />
1<br />
5<br />
0<br />
0<br />
m<br />
<br />
図 2<br />
55N<br />
50N<br />
45N<br />
40N<br />
35N<br />
30N<br />
25N<br />
<br />
20N<br />
110E 120E 130E 140E 150E 160E 170E<br />
60N<br />
55N<br />
50N<br />
45N<br />
40N<br />
35N<br />
30N<br />
25N<br />
北 極 海 の 特 別 観 測 点<br />
ベアーアイランド<br />
特 別 観 測 あり 予 報<br />
特 別 観 測 なし 予 報<br />
ヤンメイアン<br />
ユーリカ<br />
20N<br />
110E 120E 130E 140E 150E 160E 170E<br />
2015<br />
63<br />
<br />
<br />
バロー<br />
10 Haco<br />
極 No.16 2017 春 号 11
新 北 極 行<br />
第 2 回<br />
カナダ 北 端 ~<br />
グリーンランドへの 徒 歩 行<br />
カナダ 最 北 のフィヨルドからグリーンランド 最 北 の 村 に 至 る 無 人 地 帯 。<br />
1000 キロのルートに 単 独 徒 歩 行 で 挑 む。<br />
2016<br />
1000<br />
2000<br />
<br />
<br />
<br />
1975<br />
<br />
<br />
<br />
3050100<br />
<br />
<br />
<br />
2480<br />
<br />
グリスフィヨルド~<br />
シオラパルク 横 断 ルート<br />
<br />
<br />
<br />
10<br />
<br />
アイスランド<br />
<br />
<br />
グリーンランド<br />
スミス 海 峡<br />
カナダ<br />
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40<br />
グリスフィヨルド<br />
北 極 海<br />
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グリーンランド<br />
Profile 荻 田 泰 永 <br />
19772000<br />
シオラパルク<br />
カナダ<br />
1714<br />
9000<br />
2000<br />
1000<br />
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http://www.ogita-exp.com<br />
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スベルドラップパス<br />
2016 年 荻 田 ルート<br />
1975 年 植 村 ルート<br />
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12 <br />
極 No.16 2017 春 号 13
第 15 話<br />
いざ! 潜 水 !<br />
湖 底 に 広 がる 宇 宙<br />
後 編<br />
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70<br />
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IT<br />
14 極 No.16 2017 春 号 15
誌 上 「 南 極 授 業 」<br />
世 界 は 広 い!いろいろな 世 界 をのぞいてみよう!<br />
「 南 極 に 行 く!」という 夢 をかなえた 栗 原 さん。その 体 験 を 伝 えます。<br />
挑 戦 してみよう!<br />
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S17<br />
日 本 から 遠 く 離 れた 南 極 で 働 いてい<br />
る 人 がいることを 知 っていますか?<br />
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S17、 美 しい 空 と 雪 上 車 生 活<br />
S17<br />
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20<br />
S17<br />
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S17<br />
S17<br />
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昭 和 基 地 の 夏<br />
Profile<br />
1<br />
栗 原 陽 子 <br />
201411456<br />
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S17<br />
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S17<br />
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子 どもたちにいちばん 伝 えたいこと<br />
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16 <br />
極 No.16 2017 春 号 17
第 2 回<br />
環 境 保 全<br />
▲<br />
「 来 たときよりも 美 しく、 基 地 も、こころも」をモットーにして 活 動 する 環 境 保 全 隊 員 。<br />
その 仕 事 について、 第 51・52 観 測 隊 に 参 加 した 柏 木 隆 宏 隊 員 にお 聞 きしました。<br />
環 境 保 全 の 仕 事 とは?<br />
▲<br />
生 活 排 水 はどう 処 理 している?<br />
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1<br />
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南 極 ならではの 管 理 の 仕 方 は?<br />
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40<br />
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生 ごみの 処 理 方 法 は?<br />
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Antarctic Class<br />
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0120-398-330 <br />
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e-mail330houjin@home.misawa.co.jp
越 冬 断 念 、<br />
撤 退 を 巡 って<br />
― 宗 谷 の 時 代 (2)―<br />
吉 田 栄 夫 <br />
宗 谷 ビ セット<br />
本 観 測 とされた 第 2 次 観 測 隊 を 乗 せた“ 宗 谷 ”は、 快 晴 の 東 京 港 ・ 日 の<br />
出 桟 橋 を1957 年 10 月 21 日 出 航 、 第 1 次 の 経 験 を 基 にして 前 年 より18<br />
日 も 早 い 出 発 であった。 観 測 担 当 では 下 から2 番 目 の 若 輩 、 地 理 部 門 を<br />
一 人 で 背 負 って 越 冬 しようとする 私 は、 緊 張 感 と 昂 揚 感 に 満 ちていた。<br />
シンガポールとケープタウンで 初 めての 外 国 を 体 験 、 暴 風 圏 も 揺 れ<br />
を 楽 しみ、 初 氷 山 に 感 激 したのも 束 の 間 、“ 宗 谷 ”は 流 氷 縁 に 少 し 進 入 し<br />
たところで、12 月 31 日 砕 氷 困 難 となって 動 けなくなり、ビセット( 氷 に<br />
とり 囲 まれ 動 けない) 状 態 に 陥 ってしまった。それからおよそ40 日 間 、<br />
積 み 重 なって 厚 く 広 く 固 結 し 合 った 海 氷 とともに、リュツォ・ホルム 湾<br />
はるか 沖 合 を 西 へ 西 へと 漂 流 することとなった。<br />
僅 かな 観 測 と 様 々な 談 義<br />
ビセット 中 、 永 田 武 隊 長 、 村 山 雅 美 副 隊 長 兼 越 冬 隊 長 のもと、 幹 部<br />
によるオペ 会 が 何 度 も 開 かれ、 事 態 への 対 応 や、 我 々を 待 つ 昭 和 基 地<br />
の11 名 の 越 冬 隊 や、 内 地 の 南 極 本 部 事 務 局 との 交 信 も 重 ねられた。20<br />
名 規 模 の 越 冬 隊 も、 次 第 に 縮 小 する 案 が 検 討 された。この 過 程 で、20<br />
名 の 内 、 誰 が 越 冬 隊 員 として 選 ばれるかを 巡 り、 隊 員 の 中 で 俺 の 学 問<br />
の 方 がより 価 値 が 高 いんだという 主 張 も 出 てきた。 永 田 隊 長 は 私 を 呼<br />
び、「 誰 でも 自 分 の 学 問 が 一 番 と 思 ってやっているんだ。」と 弱 小 部 門 を<br />
背 負 っている 身 を 慰 めてくれた。<br />
苦 闘 の 末 、 越 冬 断 念<br />
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Profile<br />
吉 田 栄 夫 (よしだ・よしお)<br />
国 立 極 地 研 究 所 ・ 立 正 大 学 名 誉 教 授 。( 公 財 ) 日 本 極 地 研 究 振 興 会 代<br />
表 理 事 。1930 年 生 まれ。 長 く 南 極 大 陸 の 地 形 や 氷 河 、 湖 沼 など、 自 然<br />
地 理 学 の 研 究 に 従 事 。1957 年 の 第 2 次 夏 隊 、 第 4 次 越 冬 隊 、 第 8 次<br />
越 冬 隊 、 第 16 次 観 測 副 隊 長 兼 夏 隊 長 、 第 20 次 観 測 隊 長 兼 夏 隊 長 、<br />
第 22 次 観 測 隊 長 兼 越 冬 隊 長 、 第 27 次 観 測 隊 長 兼 夏 隊 長 、アメリカ<br />
隊 、ニュージーランド 隊 、イギリス 隊 などに 参 加 。 第 2 次 南 極 観 測 隊 で<br />
は 樺 太 犬 係 を 兼 ねる 予 定 だった。<br />
全 く 動 けない“ 宗 谷 ”、 海 氷 上 に 出 て、 清 水 補 給 用 の 氷 採 りやバレー<br />
ボールに 興 じた。 私 は 船 尾 の 僅 かな 水 空 きからの 採 泥 を 手 伝 い、また<br />
座 礁 して 動 かないと 考 えた 氷 山 の 方 位 と 距 離 をレーダーで 測 定 し、 船<br />
の 漂 流 を 調 べた。これがご 指 導 頂 いた 村 内 必 典 さんとの 共 著 の 一 部 と<br />
して、 南 極 での 最 初 の 研 究 報 告 となった。ある 日 突 然 船 の 周 囲 の 海 氷<br />
さ<br />
が 渦 を 巻 いて 動 き 出 した。そして“ 宗 谷 ”は 自 力 で 氷 縁 へと 出 たが、 左<br />
げん<br />
舷 のプロペラの 一 枚 が 切 断 、 推 進 力 は 落 ちた。 救 援 に 来 航 した 米 沿 岸<br />
警 備 隊 の 砕 氷 艦 “バートン・アイランド”と 海 氷 域 の 外 縁 で 会 合 、“ 宗 谷 ”<br />
はその 後 に 付 いて 氷 海 に 突 入 、 昭 和 基 地 を 目 指 すも 厚 い 氷 に 阻 まれ、<br />
雪 上 車 で 接 近 を 試 みるも 挫 折 、バ 号 は 一 旦 外 洋 へ 出 るよう 要 請 、 機 を<br />
見 て7 名 までに 減 らした 越 冬 隊 を、フロートを 装 着 して 水 上 機 にした 小<br />
型 機 昭 和 号 で 送 りこむことにした。しかし、 天 我 に 利 せず、1958 年 2<br />
月 24 日 、 船 の 清 水 欠 乏 を 勘 案 し 帰 航 を 決 断 、 永 田 隊 長 は 食 堂 での 全 員<br />
集 合 で、 声 涙 ともに 下 る 演 説 を 行 った。 西 堀 榮 三 郎 第 1 次 越 冬 隊 長 の<br />
「 南 極 越 冬 記 」に、「ついに 最 後 が 来 てしまったのだ。エキスペディショ<br />
ンというものはこうしたものだ」とある。<br />
てんまつ この 敗 退 の 顛 末 は、ある 種 の 感 銘 として 深 く 心 に 残 った。<br />
INFORMATION<br />
南 極 ・ 北 極 科 学 館 のオーロラシアター<br />
602017129<br />
TACHIHI<br />
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© ADK2017<br />
No.162017 春 号<br />
: 2017 3 24 <br />
:<br />
190-8518 10-3www.nipr.ac.jp<br />
:<br />
TEL:042-512-0655 / FAX:042-528-3105<br />
e-mail:kofositu@nipr.ac.jp<br />
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© 本 誌 掲 載 記 事 の 無 断 転 載 を 禁 じます。ISSN 1883-9436