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新安全基準 骨子(たたき台)に関する事業者意見<br />

新安全基準骨子(たたき台) 項目 事業者意見概要 頁<br />

1 SA 2.(1)①(イ)可搬式代替設備に対する要求事項<br />

((ア)代替設備に対する要求事項)<br />

2<br />

SA<br />

可搬式代替設備 ・ 代替設備選択の基本的な考え方について<br />

・ 適正な設備容量と予備の考え方について<br />

2.(1)③原子炉停止対策 ATWS対策 ・ SLCの自動化について<br />

3 SA 2.(1)⑦事故後の最終ヒートシンク確保対策 格納容器破損防<br />

止設備<br />

4 SA 2.(1)⑨格納容器の除熱・減圧・放射性物質除去対<br />

策<br />

フィルタ・ベン<br />

ト<br />

・ 最終ヒートシンク確保対策の多重性・多様性について<br />

・ 炉型に応じたフィルタ・ベントの設置について<br />

5 SA 2.(1)⑪格納容器、原子炉建屋の水素爆発防止対策 水素対策 ・ 炉型に応じた水素対策について<br />

6 SA 2.(1)⑫使用済燃料貯蔵プールの冷却、遮へい、未<br />

臨界確保対策<br />

使用済燃料貯蔵<br />

プールへの注水<br />

7 SA 2.(1)⑮制御室・緊急時対策所 制御室・緊対所<br />

の被ばく<br />

8 SA 2.(2)③恒設設備を中心とした対策<br />

9 SA 2.(3)①炉心損傷防止対策 SA対策の有効<br />

性評価(炉心)<br />

10 SA 2.(3)②格納容器破損防止対策 SA対策の有効<br />

性評価(CV)<br />

11 SA 2.(3)③使用済燃料貯蔵プールの燃料損傷防止対策 SA対策の有効<br />

性評価(SFP)<br />

・使用済燃料貯蔵プールの大規模損傷時の対策について<br />

・個別プラント毎の想定に基づく被ばく評価について<br />

特定安全施設 ・要求機能に応じた恒設設備と可搬式設備について<br />

・特定安全施設の要件について<br />

・ シビアアクシデント対策に対応した有効性評価について<br />

・ シビアアクシデント対策に対応した有効性評価について<br />

・ シビアアクシデント対策に対応した有効性評価について<br />

12 設計基準 2.(5)火災に対する設計上の考慮 火災防護 ・ 火災防護に関する性能要求について<br />

13 設計基準 2.(7)共用に関する設計上の考慮 共用 ・ 共用に関する考え方について<br />

14 設計基準 2.(9)信頼性に関する設計上の考慮 信頼性 ・ 静的機器の単一故障に関する考え方について<br />

15 設計基準<br />

2.(11)通信連絡設備に関する設計上の考慮 通信連絡設備 ・ 通信連絡設備の合理的な設備構成について<br />

16 設計基準 3.(7)電気系統 外部電源確保 ・ 送電線の物理的な分離について<br />

17 設計基準 3.(8)全交流動力電源喪失に対する設計上の考慮 全交流動力電源<br />

喪失<br />

・ 直流電源の容量について<br />

別紙―1<br />

1<br />

5<br />

7<br />

16<br />

19<br />

23<br />

24<br />

26<br />

32<br />

35<br />

37<br />

39<br />

42<br />

44<br />

47<br />

48<br />

52


1.可搬式代替設備<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

<br />

代替設備の基本的考え方について(既設、可搬式代替設備、恒設設備)<br />

新安全基準骨子案(以下、「骨子案」という)では、代替設備として可搬式代替設備に加え<br />

て、信頼性向上の観点から必要に応じて恒設代替設備の設置を要求されているが、これは原<br />

子力発電所の安全性向上の為、可及的、速やかにシビアアクシデント対策を実施するととも<br />

に、継続的に冗長性や頑健性を向上させることにより、更なる安全性向上を図るための要件<br />

であると認識である。また、規制の枠にとらわれることなく安全性向上に対し不断の努力を<br />

払っていくことが事業者の責務と考えている。<br />

事業者としては、シビアアクシデント対策としての可搬式設備と恒設設備のそれぞれの有<br />

する特性(メリット、デメリット:表 1 参照)や現場での対策の実施に関する運用等を踏ま<br />

えて、最適な対策を立案・実施していくことが、プラントの安全性向上の為に効果的である<br />

と考えており、早期に各種安全対策を検討・実施するとともに、今後も更なる安全性向上を<br />

目指し、継続的に冗長性や頑健性を持たすなどの改善を追加して実施していく所存である。<br />

その方策の中には、成立性の観点から既設の恒設設備と可搬式代替設備の組合せが必要な<br />

場合がある。例えば、PWR の例として、格納容器スプレイを活用する場合を考えると、格納<br />

容器スプレイポンプのモータを自己冷却方式(※)化し、可搬式の電源車等から給電し、ス<br />

プレイすること、ならびに従前のアクシデントマネジメント策として整備した、電源が不要<br />

なデイーゼル駆動消火ポンプによるスプレイを用いるのが有効であると考えている(下図参<br />

照)。<br />

※:ポンプモーター等の冷却に、補機冷却水ではなく、ポンプの注入水を用いる方式<br />

M<br />

各消火水系統へ<br />

M<br />

M<br />

非常用接続<br />

コネクタ<br />

格納容器スプレイポンプ<br />

電動消火ポンプ<br />

図 1:格納容器スプレイ代替設備の概要<br />

原水タンク<br />

SA設備<br />

燃料取替<br />

用水ピット<br />

既設配管・機器<br />

このように、個別の対策における可搬式代替設備と恒設設備の選択に関しては、事象進展<br />

に対する時間余裕や可搬式代替設備と恒設設備のそれぞれの特徴を勘案し、選択可能である<br />

ことが対策立案する上で有効である。<br />

- 1 -<br />

※2<br />

※1<br />

M<br />

ディーゼル動消火ポンプ<br />

※1消防車接続口<br />

※2消火スプレイライン<br />

M


1.可搬式代替設備<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

表 1:シビアアクシデント対策としての可搬式代替設備と恒設設備の特徴<br />

メリット デメリット<br />

可搬式 ・事象に応じて、複数の目的に対して ・資機材等の配備作業が必要であり、<br />

代替 柔軟に運用可能<br />

対応に一定の時間を要する<br />

設備 ・航空機衝突の影響を受けない場所や ・大容量の設備は容易な移動・設置<br />

津波の影響を受けない場所に保管可 ができず、目的・機能が限定され<br />

能<br />

・地震に対しても柔軟に対応可能<br />

・汎用品を用いる場合、外部支援に<br />

よる代替が可能<br />

る可能性がある。<br />

恒設 ・進展の早い事象に対応可能<br />

・設置場所が制限される(場合によ<br />

設備 ・既存の技術で信頼性の高い耐震性が っては耐震性のある設置場所が確<br />

確保可能<br />

保が困難な場合がある)<br />

・独立性の確保が困難な場合がある<br />

(参考)<br />

国際的な動向の視点では、例えば、米国では設計基準を超える外部事象等への対応として、<br />

可搬式設備を中心とした対策を示した NEI 12-06(FLEX)および NEI 06-12(B.5.b)<br />

が NRC によりエンドースされている。また、仏国では規制当局から EDF に対して恒設代<br />

替設備としてハードンドコアの設置を義務付けている。<br />

<br />

骨子案では、可搬式代替設備に対する容量の裕度として、複数の接続口に対応した容量と、<br />

故障時のバックアップ並びに点検保守による待機除外を含めた容量を合計し、2N+2 の裕度を<br />

求められている。これは予備の可搬式代替設備による対策の信頼性確保を目的とした要求で<br />

あると考えるが、事業者としては、ハード対策として関連する設備の必要容量の確保はもと<br />

より、訓練や手順書の整備・充実等のソフト面の対策も十分に実施することにより、対策の<br />

信頼性を維持・向上させていくことが重要と考えている。<br />

骨子案に示される要求事項に対する事業者の考えは、以下のとおりである。<br />

①接続口毎に対する設備の設置について<br />

基本的要求事項として、接続口について、複数用意すること並びに融通性を高めることが<br />

要求されている。また、要求事項の詳細として、接続口を 2 箇所要求しており、それに対し<br />

て接続口形状を規格化する要求がある。<br />

現状、事業者において既に実施した対策(例えば、復水タンク等への消防ポンプ等による海<br />

水の補給や電源車等による給電)においても、ユニット間で共通の可搬式代替設備を設置し、<br />

接続の規格を統一するなどして、これらの要求に対応した対策を講じているところであり、対<br />

策の多様化を確保する上で有効な対策と考える。<br />

また、それらの対策を、現場において実際に行う場合、アクセスルートの成立性(接続口<br />

- 2 -


1.可搬式代替設備<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

の利用可能性を含む)や安全性の確認を十分に行い、現場対応者の 2 次災害の防止や現場で<br />

の混乱の回避を図った上で対応を行うことが大前提となる。これは接続口を複数箇所確保し<br />

ている如何に関わらず必須であり、状況の確認・判断を確実に行い、必要なリソースを 1 箇<br />

所に集中的に投入する方が、対策の実効性はより高くなること、さらには限られたリソース<br />

を他の対応に割り当てることができることから、プラントの安全確保に効果的であり、この<br />

ことは福島第一原子力発電所事故の経験からも重要と考える。<br />

(参考)緩和設備の冗長性に関する信頼性工学の観点からの検討について<br />

事故の緩和作業に対する信頼性は、主に①事故の診断過誤、②操作過誤、③設備の故障<br />

が要素として考えられる。事故の診断過誤や操作過誤については、事象発生後の時間余裕<br />

にも依存するが、概ね 10-1~10-4 オーダーである(例えば、事象発生後 10 分で判断が必要<br />

な場合の失敗確率は THERP 診断曲線から約 0.3 と評価される)。他方、設備の故障に関し<br />

ては、一般的に 10-6~10-9 オーダー(NUCIA の国内機器故障率データより)であることか<br />

ら、可搬式代替設備を用いた対策に関しては、ハードの故障は支配的ではないため、設備<br />

の冗長性をもたせることは、信頼性向上の観点での優位性は乏しく、訓練等のソフト面を<br />

充実させることが効果的なプラントの安全性向上につながるものと考えられる。<br />

②故障時のバックアップ及び点検保守による待機除外を考慮した予備容量について<br />

骨子案に求められているように、号機間での融通可能性を確保することで、故障時や点検<br />

保守の際にも、定検等で機能を要求されていない他号機の設備をバックアップとして利用す<br />

ることが可能であり、また定期的な動作確認の実施や、計画的な点検時に代替機器を準備す<br />

ることも可能であることから、所期の機能を果たすために適切な予備(例えば1台)を保有<br />

すればよいものと考えられる。<br />

また、予備の設備容量については、「保守点検の頻度やそれに係る期間」、「移動・設置の容<br />

易性」、「可動部の有無」、「使用履歴」などを総合的に考慮した上で、合理的に決定できるよ<br />

うにすべきと考える。<br />

以上のことから、可搬式代替設備の容量の裕度としては適切な裕度を確保することができて<br />

いることを個別に確認いただくことが適切であると考える。<br />

(参考)<br />

米国 NEI 12-06(FLEX)においては、信頼性は N+1 で確保することとしている。<br />

- 3 -


1.可搬式代替設備<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

可搬式代替設備の保管場所の条件について<br />

骨子案では、可搬式代替設備の保管場所について、航空機衝突を考慮し防護する対象から適<br />

切な離隔(例えば 100m以上)等を確保することを例示している。<br />

航空機衝突事象に対応するための対策に係る可搬式代替設備の保管場所に関しては、骨子案<br />

に記載されているとおり適切な離隔距離をとることや、地下や堅牢な建屋に保管すること、更<br />

にはサイトの立地条件やレイアウトによっては、原子炉建屋等の付近であっても意図的に航空<br />

機を衝突させることが困難な箇所もあることから、このような観点から最適な保管箇所を選択<br />

することが適切であると考える。<br />

その一方で、特定の恒設設備との組合せにより、その機能を発揮する可搬設備(例:格納容<br />

器ベント駆動用のボンベや可搬式コンプレッサー、可搬式バッテリー等)については、瓦礫撤<br />

去や運搬に要する時間を考慮し、配備作業を含めた迅速な対応が可能となるような場所に配備<br />

することが適切な場合もある。<br />

以上のように、可搬式代替設備の保管場所の選択に際しては、サイトの立地条件やレイアウ<br />

ト等、更にはそれぞれの設置目的に応じ、適切に選択できるようにすることが、プラントの安<br />

全性確保の観点で重要であると考える。<br />

- 4 -


2.ATWS 対策<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

【BWR】<br />

<br />

骨子案では、ATWS対策としてSLCの自動起動が要求されているが、ATWS時におけ<br />

るSLC起動の時間余裕は、最も厳しい「隔離事象」かつ「全制御棒の挿入失敗」発生時にも<br />

10 分程度あることを確認している。SLC自動起動の要否については、この対策が必要となる<br />

までの時間余裕に加えて、外部事象も考慮したリスク低減効果、自動化に伴う悪影響、シビア<br />

アクシデントに対する全般的な対策等を総合的に評価した上で選択できるようにすることが適<br />

切であると考える。<br />

なお、米国ATWS規則(1983 年策定)においてSLCの自動化は、バリュー/インパクト<br />

評価に基づき、規則策定以前のプラントに対するバックフィットの必要はないとされた。<br />

<br />

○国内BWRにおけるATWS対応設備の位置づけ<br />

RPT:ATWSの兆候(原子炉圧力高、原子炉水位低)を検知 * し、自動で再循環ポンプを<br />

トリップさせて原子炉出力を急減させる。<br />

ARI:ATWSの兆候(原子炉圧力高、原子炉水位低)を検知 * し、RPTにより原子炉出<br />

力を急減させた後、自動で制御棒を挿入し、S/P水温の上昇を抑制する。<br />

SLC:安全保護系やARIによる制御棒の挿入失敗時に起動させるものであり、手動操作<br />

により中性子吸収材を注入し原子炉を停止し、S/P水温の上昇を抑制する。<br />

*:原子炉緊急停止系とは別に設置した計測制御系による。<br />

(次に続く)<br />

- 5 -


2.ATWS 対策<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(前頁からの続き)<br />

○SLC手動起動の時間余裕について<br />

SLCは、ATWS時のSRV作動に伴うS/P水温上昇を抑制するものであるが、<br />

・米国ATWS規則(1983)策定に当たっての評価においては、S/P水温制限をSR<br />

V作動に伴う動荷重発生の観点から保守的に設定(93.3℃)し、最も厳しい隔離事象<br />

について評価したところ、事象発生後ただちにSLCを起動した場合にも、当該水温<br />

制限を若干超える結果となっている。<br />

・一方、国内では、SRV作動に伴う動荷重に係る試験等の知見に基づき、クエンチャ<br />

型の排気管に対しては、動荷重発生は問題にならないとの結論が得られた。このため、<br />

S/Pの最高使用温度を制限値(104℃)とした上で、現実的なプラント挙動や条件に<br />

基づき最も厳しい隔離事象について評価した結果、SLC起動までの時間余裕が 10 分<br />

程度確保される結果となっている。<br />

なお、米国においても、クエンチャ型の排気管に対しては、動荷重発生は問題になら<br />

ないことを示すGEのレポートが 1994 年に承認され、事業者が本レポートを参照して<br />

個別に申請し、認可を得ている。<br />

○国内プラントの内的事象PSAにおけるATWSのリスク<br />

AM整備有効性評価(平成14年5月報告)において、AM(RPT、ARI)対策によ<br />

り、ATWSによる炉心損傷頻度(CDF)及び格納容器機能喪失頻度(CFF)が小さい<br />

ことを確認している。<br />

・代表BWRにおけるAM整備後の内的事象リスク評価<br />

炉型 全CDF[/炉年] 未臨界確保失敗による<br />

CDF[/炉年] *<br />

- 6 -<br />

BWR2/3 3.1×10-7 1.5×10-9 (0.5%)<br />

BWR4 1.6×10-7 1.4×10-9 (0.9%)<br />

BWR5 2.4×10-8 5.3×10-11 (0.2%)<br />

ABWR 1.7×10-8 7.1×10-11 (0.4%)<br />

炉型 全CFF[/炉年] 未臨界確保失敗による<br />

CFF[/炉年] *<br />

BWR2/3 1.0×10-8 1.5×10-9 (15.0%)<br />

BWR4 1.2×10-8 1.4×10-9 (11.7%)<br />

BWR5 5.5×10-9 5.3×10-11 (1.0%)<br />

ABWR 1.2×10-9 7.1×10-11 (5.9%)<br />

*:( )内は全CDF又は全CFFに対する寄与割合


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

【BWR】<br />

【PWR】<br />

<br />

【BWR】<br />

最終ヒートシンク確保対策<br />

骨子案では、「炉心損傷を防止するための手段」と「格納容器破損を防止するための手段」<br />

を区分けして異なる対策を要求しているが、BWRでは、炉心損傷前の最終ヒートシンク<br />

喪失はいわゆる格納容器先行破損シーケンスであり、原子炉への注水失敗などによる、炉<br />

心損傷後における最終ヒートシンク喪失の格納容器破損シーケンスとは相違し、炉心損傷<br />

に従属して格納容器破損防止に必要な機能が喪失することはない。<br />

したがって、炉心損傷防止の手段と炉心損傷後の格納容器破損防止の手段を区分する必<br />

要はなく、炉心損傷及び格納容器破損を防止する手段として活用できる対策として、以下<br />

を含む多様な手段の中から事業者が選択できる方が効果的な信頼性向上につながるものと<br />

考える。<br />

BWR の最終ヒートシンク確保対策例<br />

・ RHR<br />

・ ドライウェルクーラ<br />

・ 耐圧強化ベント<br />

・ 車載代替熱交換器<br />

・ フィルタ・ベント 等<br />

(補足〉<br />

①RHR による炉心損傷防止および格納容器破損防止について<br />

RHR(設計基準対応設備)は、原子炉内の水を格納容器外にある熱交換器で冷却する<br />

ことで原子炉内の燃料を冷却することができることから、炉心損傷防止を図るための有効<br />

な手段である。<br />

ABWR を例(次頁参照)にすれば、RHR は、サプレッションプール水を熱交換器で冷<br />

却し格納容器へスプレイすることができ、これらの水はベント管を通じてサプレッション<br />

プールへ戻り、再び使用できる構造となっている。<br />

したがって、炉心損傷により溶融炉心(デブリ)がペデスタル内に落下した場合でも、<br />

RHR やサプレッションプールを破損させることはなく、RHRは格納容器破損防止を図<br />

ることのできる有効な手段である。<br />

なお、RHR 熱交換器の冷却水である原子炉補機冷却水系の配管がペデスタル内にある<br />

プラントがあるが、当該配管は常用系に接続されており非常時に隔離できることから、溶<br />

融デブリの影響を受けることなく、RHR 熱交換器の機能を保つことができる。<br />

以上のように RHR は、炉心損傷後の溶融デブリの影響を受けない有効な最終ヒートシ<br />

ンク確保対策とすることができるが、これは、その他の列記した手段(ドライウェルク<br />

ーラ、耐圧強化ベント、車載代替熱交換器、フィルタ・ベント)についても同様である。<br />

- 7 -<br />

3.格納容器破損防止対策


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

圧力抑制室<br />

格納容器<br />

原子炉圧力容器<br />

②ドライウェルクーラによる最終ヒートシンク確保について<br />

ドライウェルクーラを用いた気相部冷却は、ファンが使用不可の場合でも冷却水を通水し<br />

て自然対流により格納容器内の気相部を冷却し、最終ヒートシンク復旧までの時間余裕を延<br />

長する手段である。ドライウェルクーラに通水する冷却水は、原子炉補機冷却水系を用いて<br />

いるが、常用系に接続されているため、これらを非常用系への接続に変更し耐震性を向上さ<br />

せるとともに、車載代替熱交換器等を用いた冷却水を供給できるように設備改造することで、<br />

複数の熱輸送パスを有する有効な候補の一つとなると考える。<br />

- 8 -<br />

排気筒<br />

格納容器ベント<br />

D/W<br />

クーラー<br />

S/P ペデスタル<br />

ECCSストレーナ<br />

熱交換器<br />

RHR<br />

3.格納容器破損防止対策


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

【PWR】<br />

最終ヒートシンク確保対策<br />

骨子案では、「炉心損傷を防止するための手段」と「格納容器破損を防止するための手段」<br />

を区分けして異なる対策を要求しているが、後者についても設計基準対応設備を活用した<br />

方が信頼性が高いことから、区分けを行わず、以下を含む多様な手段の中から事業者が選<br />

択できる方が効果的な信頼性向上につながるものと考える。<br />

PWR の最終ヒートシンク確保対策(図 1 参照)<br />

・ 余熱除去クーラ(RHR クーラ)からの除熱<br />

・ 蒸気発生器からの除熱<br />

・ 格納容器スプレイクーラからの除熱<br />

・ 代替 RHR(空冷式非常用発電機及び大容量ポンプによる海水冷却回復)<br />

・ 代替格納容器スプレイ(空冷式非常用発電機及び大容量ポンプによる海水冷却回復)<br />

・ 自然対流冷却(格納容器再循環ユニットを用いた気相部冷却)<br />

(補足)<br />

PWR では最終ヒートシンク喪失の際にも代替格納容器スプレイにより格納容器気相部の熱<br />

を液相部に蓄熱することで最終ヒートシンクの回復までの時間余裕を延長する。大容量ポンプ<br />

による海水冷却回復(最終ヒートシンクの回復)を行った後は、格納容器内の気相部および液<br />

相部を以下の多様な方法で冷却する。<br />

(1)自然対流冷却(格納容器再循環ユニットを用いた気相部冷却)<br />

格納容器循環空調系のファンが使用できない場合でも格納容器再循環ユニット(クー<br />

ラ)に冷却水を通水して格納容器内の自然対流により気相部を冷却する方法<br />

(2)RHR ポンプによる低圧再循環を用いた液相部冷却<br />

再循環サンプの水を RHR クーラ及び原子炉補機冷却水系統を経由して熱を海に逃<br />

がす方法<br />

- 9 -<br />

3.格納容器破損防止対策


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

空冷式非常用<br />

発電装置<br />

原子炉補機<br />

冷却水ポンプ<br />

海水ポンプ<br />

M<br />

格納容器内の熱を<br />

海へ放出<br />

M<br />

燃料取替<br />

用水ピット<br />

淡水<br />

タンク<br />

M<br />

M<br />

電動<br />

ポンプ<br />

M<br />

大容量ポンプ<br />

ディーゼル<br />

駆動ポンプ<br />

消火水系へ<br />

スプレイにより<br />

液相として冷却<br />

CV循環空調系<br />

図 1:最終ヒートシンクの多重性又は多様性及び独立性、位置的分散について<br />

骨子案では格納容器破損を防止するための手段として、設計基準対応設備を考慮せずに多重<br />

性又は多様性及び独立性や位置的分散を要求しているが、設計基準対応設備を含めた要求事項<br />

とすることが適切と考える。<br />

その理由は、設計基準対応設備は炉心損傷及び格納容器破損の両方を防止する手段として、<br />

安全余裕が確保された設計基準に基づく、耐震、強度設計を実施することで多重故障を防止す<br />

る設計としているためである。<br />

シビアアクシデント対応方策についても設計基準対応設備を含めた要求事項(例)とし、確<br />

率的安全評価の知見に基づいて、系統・機器の信頼性を向上してゆくことが、実質的な安全性<br />

向上につながるものと考える。<br />

(例)設計基準対応設備として格納容器スプレイポンプを設置しているが、その機能喪失を前<br />

提とするとすれば、格納容器スプレイポンプからの位置的分散(例えば別建屋、高所階)、<br />

駆動源の多様化(例えば代替電源からの供給、エンジン駆動)、サポート系の独立(例え<br />

ば、同じ補機冷却系に依存しない)等を適切に考慮した方策を考えていくべきである。<br />

- 10 -<br />

格納容器<br />

スプレイポンプ<br />

余熱除去<br />

ポンプ<br />

海水<br />

気相を直接冷却<br />

熱の流れ<br />

3.格納容器破損防止対策<br />

フィルタ<br />

格納容器ベント<br />

(フィルタベント)


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

【PWR】<br />

<br />

【BWR】<br />

、<br />

【BWR】<br />

耐圧強化ベントについて<br />

骨子案では、事故後の最終ヒートシンク確保対策の例に耐圧強化ベントが記載されておらず、<br />

また、検討チーム(第5回会合)においては、炉心損傷前の耐圧強化ベントを実施するような<br />

状況では炉心が損傷する可能性もあり、格納容器の閉じ込め機能を喪失させるべきではないと<br />

の議論があったが、炉心損傷前の耐圧強化ベントは、全交流電源喪失時における弁の開放手順<br />

の整備などを実施しており、炉心損傷前においては、最終ヒートシンク確保対策として有効で<br />

あり、また、炉心損傷後も一定の放射性物質低減効果を有しており、有効な対策の候補と考え<br />

る。<br />

炉心損傷前の耐圧強化ベントについては、炉心は健全であるが、その実施に伴い、原子炉か<br />

ら格納容器に放出された少量の放射性物質が環境に放出されることが考えられる。<br />

このため、炉心損傷前の耐圧強化ベントにより希ガス及びよう素が環境に放出された場合の<br />

線量について、原子炉設置許可申請における主蒸気管破断の事故時線量評価の方法を参考とし、<br />

代表プラントの評価を実施した。この評価では、格納容器圧力が格納容器最高使用圧力に到達<br />

した時点で炉心損傷前の耐圧強化ベントを実施することと仮定した。これらの条件で評価した<br />

結果は約 1.5×10-1mSv であり、発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針に定める<br />

基準(5mSv)に比べても小さい値である。<br />

原子炉設置許可申請の条件では、冷却材中のよう素濃度や追加放出されるよう素及び希ガス<br />

の量は燃料にわずかな漏えいがある状態を想定していることから、燃料に漏えいがない状態の<br />

例として、代表サイト(3プラント)の通常運転時における冷却材中のよう素濃度(通常運転<br />

時の実績値に余裕をみた値)及び追加放出量(プラント停止時の実績データに余裕をみた値)<br />

の条件を用いて線量評価を実施してみた結果は約 6.8×10-7mSv である。<br />

また、炉心損傷前の耐圧強化ベントの実施は格納容器の閉じ込め機能を一時的に解除させる<br />

ことになるが、実施中は格納容器雰囲気モニタ等のパラメータを監視しながら実施することに<br />

なっており、さらに、原子炉水位等のパラメータを監視することで、炉心損傷に至る可能性が<br />

ある場合には、耐圧強化ベントラインに設置された空気作動弁を、閉止することで格納容器の<br />

閉じ込め機能を速やかに復旧することができる。<br />

これらのことから、炉心損傷前の耐圧強化ベントについては、格納容器の閉じ込め機能を一<br />

時的に解除し、格納容器内のガスを環境に放出するものであるが、その実施に伴う公衆の線量<br />

は小さく抑えられることができ、炉心損傷に至る可能性があると考えられる場合には、速やか<br />

に閉じ込め機能を復旧することができるため、有効な最終ヒートシンク確保対策であると考え<br />

る。<br />

また、炉心損傷に至り圧力容器が破損した後でも、耐圧強化ベントをすることで、サプレッ<br />

ションプール水によるスクラビング効果により粒子状放射性物質を除去する効果は、除染係数<br />

- 11 -<br />

3.格納容器破損防止対策


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(DF)において 10 程度確保することができ、また、格納容器内での自然沈着及び代替格納容<br />

器スプレイによる放射性物質低減効果を考慮することにより、全体で 100~1000 程度の DF は<br />

確保することができると考える。<br />

なお、米国においては、耐圧強化ベントの DF について、格納容器スプレイによる放射性物<br />

質の低減効果等を考慮すると 500 程度かそれ以上と評価されている。 (※1)<br />

炉心損傷シーケンスは、短期に原子炉への注水に失敗するシーケンスと、長期経過後に原子<br />

炉への注水に失敗するシーケンスがあるが、対応策がより限定される短期に原子炉への注水に<br />

失敗して炉心損傷に至るシーケンスについて、耐圧強化ベントを実施した場合の放射性物質の<br />

低減効果を示す。本シーケンスでは、原子炉圧力容器破損後に、代替注水及び代替格納容器ス<br />

プレイ(間欠スプレイ)を実施しながら、格納容器圧力が最高使用圧力の 2 倍に到達した時点で耐<br />

圧強化ベントを実施することを仮定し、MAAP コードによって Cs-137 の放出量を評価した例<br />

を表1に示す。<br />

代表プラントにおける代表的なシーケンスについては、Cs-137 の環境への放出量は 100TBq<br />

以下に抑制されており、海外の放出基準 (※2)を下まわるレベルとなっている。ベントによる放出<br />

量は事故シーケンス、格納容器スプレイや炉心への注水の状況により変動するため、今後これ<br />

らの運転手順を充実することで、炉心損傷後においても最終ヒートシンク確保対策として有効<br />

な候補と考える。<br />

また、耐圧強化ベントは、サプレッションプール水によるスクラビング効果に加えてフィル<br />

タを設置することで、更なる放射性物質放出抑制を図ることができることから、フィルタ・ベ<br />

ントの設置を進めていく。<br />

表 1:耐圧強化ベントの放射性物質低減効果の評価例<br />

格納容器型式 Cs の環境への放出割合(%) Cs-137 放出量(TBq)<br />

Mark-Ⅰ 0.00062 1.2<br />

Mark-Ⅰ改 0.0091 39<br />

Mark-Ⅱ 0.0<strong>03</strong>7 16<br />

RCCV 0.00079 4.1<br />

海外の放出量基準 - 100 以下<br />

※1:参考文献<br />

「Investigation of Strategies for Mitigating Radiological Releases in Severe Accidents、<br />

2012 Technical Report」(EPRI) 3.1.3.7 Drywell Spray with Reliable Hardened Vent <br />

RHV(Reliable Hardened Vent)を格納容器スプレイ(500gpm)と共に用いた場合は、格納容器<br />

スプレイの放射性物質の低減効果等によって全体の DF は 500 程度かそれ以上である。<br />

※2:海外の放出基準<br />

欧州においては、格納容器ベントに伴う放射性物質放出量の判断基準を、土壌汚染を生じる<br />

ような大量の放射性物質の放出を抑制することを目的とし定めている例がある。スウェーデン<br />

では、Cs-134、Cs-137 について炉心インベントリ(熱出力 1800MWt プラントの炉内内蔵量に<br />

対する割合として)の 0.1%とし、また、YVL(フィンランドの安全指針)では、Cs-137 について<br />

100TBq 以下と定めている。<br />

- 12 -<br />

3.格納容器破損防止対策


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

フィルタ・ベントの多重性について<br />

骨子案では、炉心損傷後の最終ヒートシンク確保対策の例として、「①フィルタ・ベント(大<br />

気)」「②フィルタ・ベント(大気)又はその他の UHSS」が示されている。しかしながら、フ<br />

ィルタ・ベントについては、弁、フィルタ及び配管のシンプルな設備により構成され、弁を開<br />

弁することだけで動作することから、1系統で十分に高い信頼性を確保することができる設備<br />

とすることができ、フィルタ・ベントを2系統設置したとしても信頼性の向上やリスクの低減<br />

効果は小さいと考える。<br />

フィルタ・ベント設備を多重化することによる信頼性向上の効果について、従来の耐圧強化<br />

ベント及びフィルタ・ベントについて、図 2 のように構成すると仮定した場合の非信頼度を定<br />

量的に評価した。全交流電源喪失の発生を前提としたベント設備(耐圧強化ベント、フィルタ・<br />

ベント、フィルタ・ベント多重化)の非信頼性(W/W からのベントのみ)について、設備構成<br />

を模擬したフォールトツリー(図 3 参照)を用いて概略評価した結果を表2に示す。<br />

フィルタ・ベントを設置した場合には、全交流電源喪失時にも、十分に信頼度が高く、非信<br />

頼度の大部分は人的要因によるものであり、システムを多重化したとしても、定量的な信頼度<br />

向上に対する寄与はほとんど期待できない。なお、フィルタ・ベントについては、W/W と D/W<br />

からの2つのラインで多重化することから、非信頼度はフィルタ・ベント多重化とほぼ同等と<br />

なる。<br />

なお、BWR のフィルタ・ベントとしては、動的機器である弁については D/W と W/W ライ<br />

ンで多重化すること、弁は電動駆動であり、駆動源である電源が喪失した場合においても、遮<br />

へいを確保した上での現場操作を可能とすること、D/W と W/W ラインは格納容器の異なる位<br />

置から取り出すことから、1系統でも多重性や多様性を考慮した設備とする計画である。<br />

以上のことから、フィルタ・ベントは1系統でも多重性を持ち十分高い信頼性のある設備で<br />

あると考え、フィルタ・ベントの2系統化の必要性はないものと考える。<br />

表 2:格納容器ベントの非信頼度の概略評価結果<br />

格納容器ベント(W/W のみ)の多重性 非信頼度(要求当たり)<br />

耐圧強化ベント (※3) 0.1<br />

フィルタ・ベント 3.1E-3<br />

フィルタ・ベント多重化 3.0E-3<br />

※3:全交流電源喪失のため、耐圧強化ベントは現場操作(緊急安全対策による圧縮空気供給<br />

など)のみを考慮<br />

- 13 -<br />

3.格納容器破損防止対策


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

図 2:フィルタ・ベントの概要<br />

(注:信頼度は実線部で評価)<br />

図 3:ベント設備のフォールトツリー<br />

【PWR】<br />

代替設備等を設ける場合の例について<br />

炉心損傷後の格納容器からの除熱手段の例として PWR に対してもフィルタ・ベント(大気)<br />

を記載しているが、国内の PWR では格納容器内の除熱手段として代替格納容器スプレイに加え<br />

て格納容器再循環ユニットによる自然対流冷却という独自の手段が整備されている。表 3 に各<br />

国の格納容器除熱手段を示すが、国内では格納容器再循環ユニットに冷却水を供給することで<br />

フィルタ・ベントを最終除熱手段として使用することなく、事故収束を図ることとしている。<br />

- 14 -<br />

ドライウェルより<br />

サプレションチェンバ<br />

PCV ベント 開失敗(制御室)<br />

3.1E-2<br />

PCV ベント弁 開失敗<br />

PCV ベント失敗<br />

3.1E-3<br />

3.0E-2(フィルタ・ベント多重化)<br />

1.0E-3<br />

1.0E-3×β(フィルタ・ベント多重化)<br />

PCV ベント開失敗 (フィルタ・ベント)<br />

1.0E-3<br />

3.0E-3(フィルタ・ベント多重化)<br />

PCV ベント弁 開失敗 フィルタ閉塞<br />

PCV ベント弁 手動開操作失敗(現場)<br />

PCV ベント弁 手動開操作失敗(制御室)<br />

PCV ベント弁(A)開失敗 PCV ベント弁(B)開失敗<br />

A<br />

A<br />

M<br />

M<br />

M<br />

M<br />

M<br />

直流電源<br />

4.4E-4 4.4E-4<br />

フィルタ<br />

3.格納容器破損防止対策<br />

0.1<br />

3.0E-2<br />

PCV ベント開失敗 (フィルタ・ベント)<br />

1.0E-3<br />

7.0E-6<br />

排気筒<br />

直流電源喪失<br />

4.0E-5


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

すなわち、PWR のフィルタ・ベントは放射性物質の除去手段として万一の場合の土地汚染に<br />

よる長期避難範囲の極小化を目的として設置するものであり、代替ヒートシンクとしての役割<br />

を期待しているものではない。<br />

代替除熱手段<br />

(自然対流冷却)<br />

フィルタ・ベント設置<br />

有無<br />

表 3:各国PWRの格納容器除熱手段<br />

米国 欧州 日本<br />

なし なし 格納容器再循環ユニ<br />

ットによる自然対流<br />

冷却を整備済み。<br />

フィルタ・ベント設 78 基に設置<br />

計画中<br />

置なし<br />

(全 109 基中)<br />

なお、炉心損傷後においても、例えば、再循環冷却(例)などの炉心損傷前の手段を使用で<br />

きることから、炉心損傷前後で区別する必要はなく、格納容器破損を防止する手段としても設<br />

計基準対応設備を含めて多重性又は多様性及び独立性や位置的分散を要求するものとすべきで<br />

ある。<br />

(例)再循環サンプは原子炉下部キャビテイとは別の区画に分離されて設置されていることか<br />

ら、炉心溶融時にも再循環サンプの水を RHR クーラ等により冷却することにより格納容器の除<br />

熱手段として考慮することが可能である。<br />

- 15 -<br />

溶融炉心<br />

格納容器再循環サンプ<br />

格納容器再循環サンプ<br />

3.格納容器破損防止対策<br />

原子炉容器下部に落下<br />

した溶融炉心は原子炉<br />

下部キャビティ内に留<br />

まると考えられ、炉心溶<br />

融後であっても再循環<br />

サンプへの水の流れを<br />

阻害することは考えに<br />

くい


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

【BWR】<br />

【PWR】<br />

< 1 ><br />

【PWR】<br />

< 2 ><br />

フィルタ・ベントを整備することについて<br />

【BWR】<br />

骨子案では、格納容器フィルタ・ベントを整備することを要求しているが、「⑦事故後の最終<br />

ヒートシンク確保対策」に対する意見のとおり、代替格納容器スプレイなどを前提とすれば、<br />

耐圧強化ベントについても、格納容器の除熱・減圧・放射性物質除去対策の有効な候補と考え<br />

る。耐圧強化ベントを格納容器の除熱・減圧・放射性物質除去対策の1つとして位置付ける場<br />

合には、フィルタ・ベントに関する要求事項の中で、耐圧強化ベントに求められる要求事項を<br />

満足するようにする。<br />

【PWR】<br />

骨子案では、最終ヒートシンクとしてフィルタ・ベントの整備が要求されているが、PWR で<br />

は放射性物質の除去手段として万一の場合の土地汚染による長期避難範囲の極小化を目的とし<br />

て設置するものである。<br />

最終ヒートシンク確保対策の事業者意見の中で述べたようにアイスコンデンサ型の格納容器も<br />

含めて放射性物質を放出せずに最終ヒートシンクを確保できる策として格納容器内の設置され<br />

ている再循環ユニットによる気相部冷却手段があることから、海外に比べて、格納容器除熱対<br />

策が強化されている。また、格納容器除熱・減圧手段として(代替)スプレイによる格納容器<br />

破損防止対策があるなど PWR と BWR では対策が異なることから基本的な要求事項としてベン<br />

トの位置付けが異なると考える。<br />

- 16 -<br />

4.フィルタ・ベント


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

他の系統・機器への接続について<br />

骨子案では、「格納容器フィルタ・ベント設備の配管等は、他への悪影響を防止するため、<br />

他の系統・機器(例えば SGTS)や他号機の格納容器ベント等を共用しないこと。」と要求して<br />

いる。<br />

新たに設置するフィルタ・ベント配管については、既存の格納容器排気筒に接続する設計と<br />

している場合もあるが、この場合には排気筒に接続される他の系統については fail close 設計<br />

となっている2枚のダンパが設置されており、気密性を確保する等、水素の回り込みを防止し<br />

他系統に逆流するリスクは十分に低いこととする計画である。(図 1 参照)<br />

福島第一原子力発電所事故においては、4 号機原子炉建屋での水素爆発の原因となった水素の<br />

流入経路として、3 号機側で実施した格納容器ベントによって放出された放射性物質や水素等が<br />

3 号機・4 号機で非常用ガス処理系排気管を合流させて排気筒放出する設計となっていたことか<br />

ら、この合流部を通じて逆止弁が設置されていなかった 4 号機の非常用ガス処理系を逆流し、4<br />

号機原子炉建屋内に持ち込まれたとして取りまとめられている。(政府事故調査報告書)<br />

この事象は、福島第一 3 号機、4 号機での非常用ガス処理系排気管の合流設計という特異的な<br />

状況に加え、3 号機には設置されている逆止弁が 4 号機には設置されていなかったという独立性<br />

の配慮不足により発生したものと認識している。<br />

このように、他への悪影響を防止するための手法としては、共用禁止以外にも 2 枚のダンパ<br />

で気密性を確保する等の手法があることから、共用禁止を要求事項とするのではなく、他への<br />

悪影響を防止することを要求事項にすることが適切と考える。<br />

(参考)<br />

海外においてもフィルタ・ベントを設置しているフランス、ドイツなどは既存の排気筒に接<br />

続している。<br />

- 17 -<br />

図 1:大飯 3、4 号機の例<br />

4.フィルタ・ベント


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

また、BWR では、フィルタ・ベントの上流配管を既存の耐圧強化ベントの配管から分岐する<br />

例を考えている。この場合、格納容器の貫通口から分岐点までの配管の一部を共有することに<br />

なるが、フィルタ・ベントを実施するために必要な弁を開弁しても、耐圧強化ベントラインに<br />

設けられた弁の機能を維持することに変わりは無いため、格納容器の貫通口から分岐点までの<br />

配管を共有することは問題ないと考える。<br />

<br />

- 18 -<br />

4.フィルタ・ベント


【PWR】<br />

5.水素対策<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

【BWR】<br />

【BWR】<br />

【PWR】<br />

大型ドライ型格納容器の場合は<br />

格納容器自由体積が大きいので、爆<br />

発により格納容器の健全性を脅か<br />

すような水素濃度に直ちに至るこ<br />

とはないと評価しているが、格納容<br />

器内に放出された水素を除去する<br />

ために、電源を必要としない触媒式<br />

水素再結合装置を設置することと<br />

している。また、PWR では福島第<br />

一原子力発電所事故で水素の漏え 図 1:アニュラス及びアニュラス排気設備の概念<br />

い原因と推定されている格納容器<br />

トップフランジはなく、また格納容器貫通部は配置上の特性から溶融炉心からの輻射熱の影響<br />

を直接受ける可能性は低いため、貫通部の損傷によるアニュラスへの漏えいの可能性は小さい<br />

と考えるが、格納容器から漏えいする場合も考慮して、アニュラスで水素が滞留しないよう速<br />

やかにアニュラス排気設備を用いて排出する手順を整備している(図 1 参照)。<br />

また、アイスコンデンサ型格納容器の場合、既に水素燃焼装置(イグナイタ)を設置して格<br />

納容器内で燃焼させることにより水素を低減させるアクシデントマネジメント策を整備して<br />

いるが、福島第一の事故に鑑みイグナイタに電源車等から給電する手順も整備している。<br />

骨子案では、排出設備に対する防爆機能が要求されているが、PWR の場合は確実に格納容<br />

器内で水素処理ができ、アニュラスへの水素漏えいの可能性は小さいため、アニュラスで水素<br />

が蓄積し可燃限界に到達する可能性は小さいと考えられるが、速やかにアニュラス排気設備を<br />

運転する手順としている。<br />

(参考)<br />

海外でも排出設備に対して防爆機能を要求している例はない。<br />

(補足)PWR の対応例<br />

a.大型格納容器を有するプラント<br />

・大型格納容器の場合、水素爆発に至らないことを確認<br />

・格納容器内の水素の除去を進めるため静的触媒式水素再結合装置を順次設置中<br />

・格納容器からアニュラス内に水素が漏えいする場合も考慮して、アニュラス排気設備を<br />

運転(電源車等から給電)し、アニュラス内の水素を排出する手順を整備済み<br />

b.アイスコンデンサ型格納容器プラント<br />

・シビアアクシデント時の水素対策設備として水素燃焼装置(イグナイタ)を設置済みで<br />

あり、同装置へ空冷式非常用発電装置からの給電がなされるよう手順を整備済み<br />

- 19 -


5.水素対策<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

【BWR】<br />

骨子案では、「水素ガスを屋外に排出する場合は、放射性物質を低減した上で排出すること。」、<br />

「防爆機能・放射性物質除去機能付きの水素排出設備の設置」が要求されており、原子炉建屋<br />

において防爆機能・放射性物質除去機能つきの水素排出設備を求められている。<br />

BWR では多重に設けた安全設備がその機能を喪失し炉心が損傷し、水素が発生する場合にお<br />

いても、格納容器内を窒素で不活性化することで格納容器内における水素燃焼を防止し、代替<br />

格納容器スプレイや格納容器ベント等で格納容器の健全性を維持する。福島第一原子力発電所<br />

の事故で水素の原子炉建屋への主な漏えい個所と考えられる格納容器ヘッドフランジに対して<br />

は、さらに、原子炉ウェルに水を張ることにより当該部分の冷却を行う。<br />

重大事故においては、格納容器破損を防止することが重要であり、格納容器の健全性が維持<br />

されている限りは、原子炉建屋への漏えいは小規模であり、代替電源により非常用ガス処理系<br />

を起動し、原子炉建屋の最上階に設置する水素検知器により水素濃度を監視しながら、原子炉<br />

建屋に漏えいした水素を速やかに排出することで原子炉建屋内を可燃限界以下に保つことがで<br />

きる。したがって、水素排出設備の防爆機能は必ずしも必要とはならないと考える。<br />

また、非常用ガス処理系で水素濃度が可燃限界を超えることはないが、福島第一原子力発電<br />

所の事故を踏まえて、念のために、原子炉建屋の最上階の水素濃度が上昇した場合、交流電源<br />

がなくても水素を排出するための開口部を設ける対策(原子炉建屋ベント)も行っている。<br />

○BWR における更なる対応について(格納容器破損後)<br />

種々の格納容器破損防止対策にも関わらず、格納容器が破損するような場合には、格納容器<br />

から原子炉建屋経由で大量の放射性物質と水素が環境に放出される。炉心損傷後に代替格納容<br />

器注水不能など格納容器の健全性維持が困難と判断されるような状況に至った場合(骨子案の<br />

⑲敷地外への放射性物質の放出抑制対策を求めているような状態)には、格納容器が破損する<br />

前に、格納容器ベントを早期に実施して、格納容器内の水素を排出するとともに、格納容器の<br />

圧力をできるだけ低下させる対策をとる。格納容器からの大規模な漏えいが拡大する状況にお<br />

いても、格納容器ベントにより格納容器圧力をできるだけ低く抑制して、原子炉建屋への水素<br />

等の漏えい量を低減し、電源が不要な原子炉建屋ベントを活用し、水素を排出することが原子<br />

炉建屋における水素燃焼防止に有効と考える。<br />

また、このように格納容器の健全性維持が困難と判断されるような状況において、格納容器<br />

破損前に格納容器ベントすることは、環境への放射性物質放出抑制の効果も期待できると考え<br />

る。<br />

- 20 -


5.水素対策<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

格納容器破損前にフィルタ・ベントを行うことによる環境への放射性物質の放出抑制<br />

効果<br />

万一、炉心損傷後において、格納容器の代替注水の確保が見込めないような状況においては、<br />

格納容器ベントで放射性物質の放出量を抑えながら格納容器内の水素を放出し、格納容器内の<br />

圧力を極力低くすることが、有効な対策になる可能性がある。代表プラント(BWR-5,110 万 kWe<br />

級 MarkⅠ改)の MAAP コード解析を実施し、放射性物質の放出抑制効果を評価した例を表1<br />

に示す。<br />

ここでは、全交流電源喪失を想定し、8時間後に原子炉隔離時冷却系の原子炉注水が停止す<br />

ることにより、炉心が損傷し、原子炉圧力容器が破損する。さらに、代替格納容器注水などの<br />

対策も失敗することを前提に以下の4つのケースを評価した。<br />

ケース(1)は、炉心損傷後、減圧に失敗し、圧力容器が高圧で破損に至る。その後、格納<br />

容器の破損に伴い原子炉建屋に放出された水素と放射性物質は、原子炉建屋から屋外に排出さ<br />

れる。その際の原子炉建屋の DF は 10 と仮定(ケース(2)~(4)も同様)する。<br />

ケース(2)は、ケース(1)に対して、格納容器破損前に格納容器が最高使用圧力に到達<br />

した時点で W/W からフィルタ・ベントを実施する。その際のフィルタ・ベントの Cs の DF は<br />

1000 と仮定(ケース(4)も同様)する。これにより、格納容器圧力は低下するものの、格納<br />

容器雰囲気の温度上昇により格納容器は破損する。<br />

ケース(3)は、ケース(1)に対して、炉心損傷後、減圧に成功するが、圧力容器が破損<br />

し、格納容器の破損に至る。<br />

ケース(4)は、ケース(2)に対して、炉心損傷後、減圧に成功するが、圧力容器が破損<br />

し、フィルタ・ベントを実施するが、格納容器の破損に至る。<br />

- 21 -


5.水素対策<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

代表プラントの代表的なシーケンスの評価において、環境に放出される放射性物質の割合<br />

は、格納容器破損前にフィルタ・ベントを実施しないケース(1)、(3)に比べて、格納容器<br />

破損前にフィルタ・ベントを実施するケース(2)、(4)は、十分に小さくなっており、フィ<br />

ルタ・ベントにより排出を確実に実施することで、環境への放出をかなり抑制することができ<br />

る。今後、骨子案に示されている放水による放射性物質の放出抑制対策など更なる抑制対策に<br />

ついても検討していく。<br />

表1:格納容器破損前にフィルタ・ベントを行うことによる環境への放射性セシウムの放出抑<br />

制効果の評価例<br />

(初期炉内インベントリに対する割合)<br />

- 22 -<br />

ケース<br />

原子炉建屋ベント(格<br />

納容器破損)による<br />

放出<br />

フィルタ・ベント<br />

による放出<br />

合計<br />

(1) 2.2×10 -3 - 2.2×10 -3<br />

(2) 5.1×10 -4 1.2×10 -6 5.1×10 -4<br />

(3) 1.4×10 -3 - 1.4×10 -3<br />

(4) 8.6×10 -6 8.9×10 -8 8.7×10 -6


6.使用済燃料貯蔵プールへの注水<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

「使用済燃料貯蔵プールの水位維持ができない場合に、燃料冷却及び臨界防止機能を維持す<br />

る手段を整備すること」という要求事項となっているが、使用済燃料貯蔵プールは、旧原子力<br />

安全・保安院からの「東京電力株式会社福島第一原子力発電所における事故を踏まえた既設の<br />

発電用原子炉施設の安全性に関する総合評価の実施について(指示)」(いわゆる、ストレステ<br />

スト)に対する報告においても示したように、十分な耐震裕度を持つ、厚いコンクリート躯体<br />

からなる頑健な構造物である。そのため、代替注水設備によっても補給が全く追いつかないよ<br />

うな使用済燃料貯蔵プールの大規模な損傷を引き起こす事態を具体的に想定することは困難<br />

である。<br />

事業者としては、緊急安全対策で整備した使用済燃料貯蔵プールへの注水方策の更なる多様<br />

化・増強により、様々な事態に柔軟に対応できる方策を検討している。使用済燃料貯蔵プール<br />

は大規模な開口部を持ち、注水箇所は開口部のどこでも可能であり、使用済燃料貯蔵プールへ<br />

の注水が不能となり水位が低下するような事態に至らない対策は十分実施できていると考え<br />

るが、使用済燃料貯蔵プールへの接近が困難となり水位が低下するような事態も想定し、使用<br />

済燃料貯蔵プールに接近せずにスプレイが可能な可搬式のスプレイ設備の配備と柔軟な対応<br />

手順の整備・充実を図ることが有効であると考える。<br />

なお、外部人為事象による使用済燃料貯蔵プールの大規模な損傷を引き起こすような事態の<br />

場合には、恒設スプレイ設備も損傷しており、期待出来ないと考えられる。<br />

また、使用済燃料貯蔵プールに対して想定すべき脅威に対する対策について、海外の例(米<br />

国の B.5.b)の例なども参考にしながら検討していく所存であるが、具体的な想定が困難であ<br />

ることを踏まえると、その目的については環境影響緩和とすることが実効的であると考える。<br />

- 23 -


<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

<br />

緊急時に対策指令や関係箇所との通信連絡を実施する場所については、福島第一原子力発電所<br />

事故を踏まえ、従来の緊急時対策所に加えて、緊急時対策所が使用できない場合に備えた地震・<br />

津波耐性を有する代替場所の確保や、免震重要棟のような高い免震機能を有する緊急対策所を出<br />

来るだけ早期に設置する等、事業者として緊急時対策所の信頼性向上のための取り組みを図って<br />

いるところである。<br />

緊急時対策所の換気空調系全体に関して、多重性および独立性を求める基準となっているが、<br />

緊急時対策所の機能が必要となるのは、多重性・多様性又は独立性を有する信頼性の高い設計基<br />

準事故対応設備の同時故障等が発生するような場合であり、その際に、さらに緊急時対策所の換<br />

気空調設備の故障が重畳して発生する可能性は極めて小さいと考えられることから、ファンのよ<br />

うな動的機器については多重化の検討が必要であるが、フィルタやダクト等の静的機器について<br />

7.制御室・緊対所の被ばく<br />

は個別に評価を行い十分な信頼性が確保されることを確認していく。また、プラント側設備の故<br />

障が緊急時対策所の換気空調系の機能喪失につながらないように独立性を確保しておくことを<br />

要求事項とする方が適切ではないかと思われる。<br />

(参考)<br />

米国の緊急時対応施設のガイドライン(NUREG-0696)では、換気空調系に冗長性は求めら<br />

れていない。<br />

<br />

緊急時対策所の居住性評価における核分裂生成物の濃度、量及び直接線等の条件として、福島<br />

第一原子力発電所事故と同等を想定することが一律に要求されているが、炉型、出力規模、事象<br />

進展シナリオによって、核分裂生成物条件は異なるものである。<br />

また、福島第一原子力発電所事故と同様の事故を起こさないために種々の安全対策の実施及び<br />

検討をしている。<br />

したがって、これらの状況と整合を図り、プラント毎に、実施及び検討している種々の安全対<br />

策の機能も期待して格納容器破損を防止する事故進展シナリオに基づいて評価した核分裂生成<br />

物の濃度、量及び直接線等を被ばく評価条件とすることが適切である。<br />

具体的には、緊急時対策所の居住性評価における核分裂生成物の濃度、量及び直接線等の条件<br />

ついては、「有効性評価で想定する格納容器破損モードのうち結果が最も厳しくなる成功事故シ<br />

ーケンスを想定」した条件となる。<br />

上記で提案する条件は、制御室の居住性評価条件(※)と同じ条件であり、SA 対応全体の整<br />

合性を図ることもできる。<br />

※ 設計基準超え事故時の制御室の居住性評価(骨子案)<br />

有効性評価で想定する格納容器破損モードのうち結果が最も厳しくなる成功事故シー<br />

ケンスを想定(著しい炉心損傷後、格納容器フィルタ・ベント等の格納容器破損防止対<br />

策が有効に機能する場合)<br />

- 24 -


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(参考)<br />

米国では緊急時対応施設のガイドライン(NUREG-0696)で、緊急時対策所に関して、制御<br />

室と同様の対放射線居住性を有することを求めているという例がある。<br />

<br />

同じ設計基準超え事故下で対応する制御室の居住性評価では認めているマスク着用が、緊急時<br />

対策所の居住性評価では認められていないが、福島第一原子力発電所事故対応時に免震重要棟内<br />

においてマスクを着用していた事実があり、また、別の要求事項において緊急時対策所へのマス<br />

クの配備が要求されていることから、評価にあたっては、現実的なマスク着用の期間を考慮でき<br />

るとすることが適切ではないかと考える。<br />

例えば、対策要員は食事や休憩等の際に一時的にマスクをはずすことが想定されるが、対策要<br />

員が食事や休憩を行うエリアを専用に設け、当該エリアには、局所排気装置等を設置することに<br />

より、マスク着用と同等の効果を見込むことができると考える。<br />

- 25 -<br />

7.制御室・緊対所の被ばく


8.特定安全施設<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

<br />

<br />

恒設設備を特定安全施設とすることについて<br />

事業者としては、外部事象への対応については想定される事象に応じて「可搬式」、「既存設<br />

備の強化」および「恒設代替設備の設置」に関するそれぞれの特徴(時間余裕、機動性、共通<br />

要因故障の有無、操作性等)、環境条件(各発電所の立地の条件等)を考慮し、発電所の特性を<br />

生かした上で創意工夫することが重要と考える。<br />

また、第 9 回の検討チーム会合でも議論があったように、事業者としても特定安全施設は第 8<br />

回資料 1 P7 2.1.b.恒設設備を中心とした対策(特定安全施設(仮称))で例示しているよう<br />

な集中配置には必ずしもならないと考える。また、次ページの図 1(大飯 3/4 号機恒設非常用<br />

発電設備ケーブル敷設イメージ)に示すとおり、航空機衝突に際しては隣接号機の代替設備を<br />

機動的かつ柔軟に活用することも選択肢と考えている。<br />

したがって、自然事象および航空機衝突に対して要求される特定安全施設については、恒設<br />

設備と可搬式設備を組み合わせ、信頼性の高い対策が選択できるような柔軟な定義とするのが<br />

適切である。<br />

特定安全施設の要求事項について<br />

特定安全施設について自然事象に対する頑健性と航空機衝突に対する頑健性の両方を同時に<br />

要求している内容となっている。<br />

しかしながら、地震に対しては耐震性を有する設備、津波に対しては高所設置、航空機衝突<br />

に対しては格納容器からの離隔距離を確保するといった対策を同一施設に求めることとなり、<br />

同時達成させることが合理的でない場合がある。<br />

例えば、次ページの図 1(大飯 3/4 号機恒設非常用発電設備ケーブル敷設イメージ)では、<br />

電源車は地震に対しては耐震性を有しており、また津波対策としては高台に設置をしているが、<br />

航空機衝突への対策としては発電所全体で分散配置をしており対応する計画である。すなわち、<br />

事業者はそれぞれのユニットに属する電源車を必ずしも原子炉建屋から 100m の離隔を有しな<br />

くても航空機衝突に対する対応は可能である。<br />

したがって、特定安全施設に対しては、一つの設備で自然現象(地震・津波)への対応およ<br />

び航空機衝突対応の同時達成を一律に求めるのではなく、それぞれの目的に応じた柔軟な対応<br />

が発電所全体最適の考えから選択できる要求とするのが適切である。<br />

- 26 -


8.特定安全施設<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(第 8 回資料 1 P7 2.1.b.恒設設備を中心とした対策(特定安全施設(仮称))<br />

恒設非常用発電機建屋<br />

フレキシブル電線管<br />

内に敷設(斜面)<br />

トレイに敷設<br />

コンクリートピット<br />

内に敷設<br />

空冷式非常用ディーゼル<br />

発電機用接続盤<br />

4u<br />

3u<br />

既設DG 既設DG<br />

タービン建屋<br />

空冷式非常用ディー<br />

ゼル発電機本体<br />

1/2号へ<br />

図 1:大飯 3/4 号機恒設非常用発電設備ケーブル敷設イメージ<br />

1/2号用は3/4<br />

号既設DGから<br />

号既設DGから<br />

100m離隔<br />

特定安全施設の例示について<br />

特定安全施設について、個別の設備を設置することを要求事項として例示している。<br />

しかしながら、PWR および BWR といった原子炉の型式により対策の必要性の有無および対<br />

策内容の違いがあり、一律に個別の設備を要求することは事業者の創意工夫および改善の選択<br />

肢を狭める可能性がある。したがって、特定安全施設としてある個別の設備を設置要求をする<br />

のではなく、必要な性能に対する要求を明確化する方が効果的かつ柔軟性を有する要求となる<br />

と考える。<br />

(参考)例示されている機能に対し、事業者が検討している対応例は以下のとおり。<br />

【PWR の一例】<br />

・炉内の溶融炉心の冷却機能<br />

設計基準を超える地震・津波に対しては、浸水対策(防潮堤、水密扉等)を施した恒設の充<br />

てんポンプモータおよび格納容器スプレイポンプモータを自己冷却方式に変更し空冷式非常用<br />

発電機により給電することで、炉内への注水を行う。また、耐震性を有した消防車等の可搬式<br />

設備により、非常用接続コネクタから格納容器スプレイ系統を経由し、低圧炉心注入系統の連<br />

携配管を用いた炉心への注入を行う。 航空機衝突に対しては、これらの消防車等の可搬式設<br />

備を原子炉建屋から離隔した場所に位置的分散配置することにより柔軟な対応が可能である<br />

が、今後、接続口を複数設置することにより頑健性を確保していく。なお、水源としては、耐<br />

震性を有した燃料取替用水タンクに加え、復水タンクからの補給ラインの設置および海水補給<br />

が利用可能である。<br />

- 27 -<br />

2u<br />

1u<br />

タービン建屋<br />

既設DGから100mの範囲


8.特定安全施設<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

第 9 回資料 1 P3 「シビアアクシデント対策の要求事項について(個別対策別の主な設備等につ<br />

いて)(案)」<br />

・格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却機能<br />

PWR では上記設備(格納容器スプレイポンプの機能強化、消防車等の可搬式設備)を使用し<br />

た格納容器スプレイ水が炉心の下部(原子炉キャビティ)に案内される流路対策を実施済みで<br />

ある、設計基準を超える地震・津波に対しては自冷式の格納容器スプレイポンプによって燃料<br />

取替用水タンクから注水が可能であり、航空機衝突に対しては、消防車等の可搬式設備による<br />

対応が可能である。<br />

・格納容器除熱機能<br />

PWR では、格納容器再循環ユニットに原子炉補機冷却水を通水することで、格納容器内の自<br />

然対流冷却により、格納容器内の除熱および減圧が可能となっている。格納容器再循環ユニッ<br />

トは格納容器内に設置されており航空機衝突に対する頑健性を有しており、また地震・津波に<br />

対する耐性も有している。格納容器再循環ユニットへの通水は、耐震性を有する原子炉補機冷<br />

却水の他、大容量ポンプ等の可搬式設備による海水の直接給水口を設ける等によって津波や外<br />

部人為事象に対する頑健性を確保する予定である。<br />

なお、フィルタ・ベントは格納容器除熱、減圧手段として位置付けていない。<br />

・サポート機能<br />

(電源)<br />

代替電源設備(電源車、空冷式ディーゼル発電機等)を高所に分散配備することにより、津<br />

波、航空機衝突に対して頑健性を確保することができる(耐震性も確認済み)。<br />

これにより、で説明したように、航空機衝突に対する頑健性を発電所全体の電源で確<br />

保していることから、第 9 回検討チームの資料 1 で議論されている恒設代替電源設備と扱うこ<br />

とも可能である。さらに、今後、更なる信頼性向上の観点から、恒設代替電源設備を高所に分<br />

散配備することにより、地震、津波、外部人為事象に対して更なる安全性の向上を図っていく。<br />

(監視制御)<br />

今後、恒設設備の新設にあたっては、シビアアクシデント環境においても当該設備の動作に<br />

必要な監視・制御機能を確保していく。<br />

【BWR の検討例】<br />

・炉内の溶融炉心の冷却機能<br />

BWR では、炉心への代替注水手段として、補給水系、消火系等による注水に加え、消防車等<br />

の可搬式設備を複数台配備している。<br />

消防車等の可搬式設備については、耐震性を確認するとともに、津波の影響を受けない原子<br />

炉建屋から離隔した高台に位置的分散配置している。水源は代替淡水源(耐震性を有した貯水<br />

槽、河川水等)および海水といった複数の選択が可能である。<br />

今後、給水接続口を複数設置することにより、外部人為事象に対しての対応強化を図ってい<br />

く。さらに、代替注水設備(補給水系等)の耐震性を強化すること等により炉内の溶融炉心の<br />

冷却機能の強化を図っていく。<br />

- 28 -


8.特定安全施設<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

これらの可搬式設備と既設設備との組み合わせにより、特定安全施設に求められる機能(地<br />

震、津波、外部人為事象に対して安全機能が損なわれないこと)を確保していく。<br />

・格納容器下部に落下した溶融炉心の冷却機能<br />

BWR においては、格納容器スプレイ水が格納容器下部へ流入する(または、専用配管による<br />

格納容器下部への注水を行う)ことにより、落下した溶融炉心の冷却が可能である。格納容器<br />

スプレイには炉心への代替注水手段(消防車等の可搬式設備、補給水系等の既設設備)を使用<br />

することから、上記「炉内の溶融炉心の冷却機能」の対応により、特定安全施設に求められる<br />

機能を確保していく。<br />

・格納容器の冷却機能<br />

BWR においては、炉心への代替注水手段(消防車等の可搬式設備、補給水系等の既設設備)<br />

により、代替格納容器スプレイを行い、格納容器の冷却が可能であることから、上記「炉内の<br />

溶融炉心の冷却機能」の対応により、特定安全施設に求められる機能を確保していく。<br />

・格納容器の除熱機能<br />

前述の「事故後の最終ヒートシンク確保対策」に示したように、格納容器の除熱機能につい<br />

ては、RHR の他、ドライウェルクーラ、耐圧強化ベント等が活用できる。<br />

耐圧強化ベントは、耐震性を有するとともに浸水対策を施した原子炉建屋に弁を設置してい<br />

るため、地震、津波、外部人為事象に対する頑健性を有している。また、手動ハンドルの設置、<br />

駆動用予備ボンベの配備等により信頼性の向上を図っている。<br />

ドライウェルクーラは、常用系であるため、今後設備改造を実施することにより、頑健性を<br />

有した最終ヒートシンク確保策の有効な選択肢となる可能性がある。<br />

さらに、特定安全施設に求められる機能を有するフィルタ・ベント設備を設置することによ<br />

り安全性の向上を図っていく。<br />

・サポート機能<br />

(電源)<br />

代替電源設備(電源車、ガスタービン発電機等)を高所に分散配備することにより、津波、<br />

外部人為事象に対して頑健性を確保している(一部、耐震性も確認済み)。今後、耐震性を備え<br />

た恒設代替電源設備を高所に分散配備することにより、特定安全施設に求められる機能につい<br />

て更なる安全性の向上を図っていく。<br />

(監視制御)<br />

今後、恒設設備の新設にあたっては、シビアアクシデント環境においても当該設備の動作に<br />

必要な監視・制御機能を確保していく。<br />

- 29 -


8.特定安全施設<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(第8回資料1 P9 特定安全施設に係る整理案(2/2))<br />

<br />

BWR<br />

<br />

<br />

地震に対する設計要求に関して、第8回検討チーム会合資料1 P9特定安全施設の一部に既存<br />

設備を用いる場合について、特定安全施設と同等の耐震性を有することが求められている。そ<br />

の許容値としてA案、B案の2案が示されており、A案には「特定安全施設及び既設設備ともに、<br />

基準地震動SsのA倍の地震力により発生する応力に対して、設計基準上の許容値を適用する。」<br />

と記載がある。<br />

しかしながら、第8回検討チーム会合資料1 P7原子炉建屋から特定安全施設までの接続配管<br />

等について、100m以上の距離を屋外かつ埋設で耐震性を確保するのには岩盤に相当する基礎の<br />

設置が必要となり、既設構造物等の安全性を低下させずに施設することは非現実的である場合<br />

もある。<br />

一方、事業者としては、例えば、恒設代替電源のケーブル敷設に際して、余長を持たせてケ<br />

ーブルを敷設すること(ピット、トレイ、フレキシブル電線管の組み合わせ)により、可撓性<br />

を確保しており、実力として Ss 地震に耐える設計としての対応を考えている。<br />

既設設備および建屋間の接続配管等に対しては、構造健全性および機能維持を技術的に示す<br />

ことが可能であれば、許容値を超える値も適用可(第 8 回検討チーム会合資料 1 P9 B 案)と<br />

することが、対策の選択肢確保及び実効性の観点から有効である。<br />

なお、代替設備の頑健性の確保の基本的な考え方としては、代替策がとれない場合は、設備<br />

自身の頑健性を向上させることが必要と考えるが、代替策をとり得る設備については、共通要<br />

因を排除することの方が現実的で実効的であり、こういった配慮によりシステム全体の頑健性<br />

を向上させることが効果的であると考える。<br />

<br />

フィルタ・ベントを特定安全施設とした場合、第 8 回検討チームで例示されているように、<br />

フィルタ・ベントを原子炉建屋から 100m 以上離隔する要求となる。<br />

しかしながら、以下の理由により技術的にも課題がある。<br />

1)原子炉建屋からフィルタまでの配管系の外部事象に対する損傷リスクが高まる。また、そ<br />

の配管経路の遮へいも必要となる。<br />

2)フィルタ容器と原子炉建屋の間に離隔を設けた場合は、仮にフィルタ・ベントを実施した<br />

場合に、バウンダリがフィルタ容器まで広がるため、地震動による配管の破損等により放<br />

射性物質が環境に放出されるリスク、及び高線量となる配管(フィルタ容器の上流配管)<br />

長が大きくなり、復旧作業の大きな妨げになるリスクが生じる。<br />

3)発電所により原子炉建屋から 100m 以上の隔離を確保した配置が困難な場合がある。<br />

以上より、航空機衝突を考慮して一律に 100m 以上の離隔距離を確保することは必ずしも信<br />

頼性向上につながらず、現場作業の妨げになるリスクもあることから、フィルタ・ベントは原<br />

子炉建屋近傍に設置することが適切と考えており、プラントおよび設備の特性を勘案し、事業<br />

者の創意工夫を反映できる柔軟な要求が適切と考える。<br />

- 30 -


8.特定安全施設<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(参考)フィルタ・ベントを採用している欧州の場合でもフィルタ・ベントは建屋近傍に設置<br />

されており、100m 以上の離隔をもった要求は無い。<br />

(事業者の創意工夫の例(図 2 BWR の例参照))<br />

フィルタ・ベントの設置にあたっては、ベントを実施すると、フィルタ容器などが高線量<br />

となることを想定し、フィルタ容器や配管の地下埋設、又は 1m 程度のコンクリート遮へいの<br />

設置などの措置を講じる。<br />

- 31 -<br />

原子炉<br />

格納容器<br />

フィルタ<br />

フィルタ容器<br />

図 2:BWR の例(地下埋設の例)<br />

水<br />

排気筒<br />

敷地面


9.SA 対策の有効性評価(炉心)<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

ここに挙げられた満足すべき要件は、設計基準事故を想定した場合の判断基準と同程度の基<br />

準を要求するものとなっているが、設計基準事故を超える事故の判断基準として実際の耐力値<br />

を考慮した方が有効となるシビアアクシデント対策の多様性が増し、より安全性を向上させる<br />

ことができる。例えば格納容器最高使用圧力を基準とした場合に恒設設備でしか対応できない<br />

程度の時間余裕しかない事象においても、格納容器の実際の耐力値を考慮すれば時間余裕が長<br />

くなり、可搬式設備を用いた対応等の裕度や選択肢も増す。<br />

有効となりうるシビアアクシデント対策の多様性を広げて、安全性の向上につなげるために、<br />

設計基準越え事故に対する対策の有効性評価の要件は実耐力を考慮したものとするのが適切で<br />

あると考える。<br />

(参考)<br />

海外においても、設計基準超え事故に対しては、設計基準と異なる実耐力等を考慮した基<br />

準や発生頻度を考慮した段階的な基準が要求されている例がある。<br />

判断基準記載例(提案)<br />

ア 炉心は著しい損傷に至らないこと<br />

イ 原子炉冷却材圧力バウンダリにかかる圧力は、バウンダリの健全性確保が確認されてい<br />

る圧力を下回ること。<br />

ウ 格納容器バウンダリにかかる圧力は最高使用圧力または限界圧力を下回ること<br />

エ 格納容器バウンダリにかかる温度は最高使用温度または限界温度を下回ること<br />

オ 周辺公衆に対して著しい被ばくリスクを与えないこと<br />

イについては米国の基準(SRP15.8:ATWS)においては、PWR については、DBE 基準と<br />

は異なる「ASME Service Level C Limits」(3200psig(約 22MPa))と規定している例がある。<br />

ウ、エについては格納容器破損防止対策の判断基準と同じとすることができる<br />

- 32 -


9.SA 対策の有効性評価(炉心)<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(参考)<br />

海外においては発生頻度や発生頻度に対応する想定事故の規模を踏まえて、段階的に線量限<br />

度を規制要求している例もある。<br />

フィンランドにおける事故時の公衆の線量限度(Government Decree on the Safety of<br />

Nuclear Power Plants)<br />

・クラス1の想定事故(発生頻度 10-2~10-3/年の設計基準事故):1mSv ・クラス2の想定事故(発生頻度 10 -3/年未満の設計基準事故):5mSv<br />

・設計拡張状態:20mSv<br />

- 33 -


9.SA 対策の有効性評価(炉心)<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

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10.SA 対策の有効性評価(CV)<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

格納容器破損防止対策の有効性の評価は、想定した格納容器破損モードに対応して行うこと<br />

になり、満たすべき要件も格納容器破損モードに対応して確認するものと考えられるので、下<br />

記の通り、満たすべき要件について格納容器型式や格納容器破損防止対策等の特性を考慮した<br />

ものとするのが適切であると考える。<br />

・(エ項)PWR は減圧されない場合においても CV が破損しない可能性があることから、要<br />

件は DCH 発生防止もしくは高圧破損後の格納容器破損防止とする(第 3 回検討チーム資料<br />

のとおり)。<br />

・(キ項)格納容器内が不活性化されている BWR では、本項は要求されない旨を明記する。<br />

・(ク項)燃焼については酸素濃度が 5%を下回ればアの要件は要求されない旨を明記する。<br />

・(ケ項)シェルアタックという BWR の MARK-Ⅰ型格納容器特有の破損モードであること<br />

からその旨を明記する。<br />

- 35 -


10.SA 対策の有効性評価(CV)<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

- 36 -


11.SA 対策の有効性評価(SFP)<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

水位維持ができない場合に燃料冷却を維持する対策を求め、その有効性評価として、燃<br />

料が著しく損傷しないことを求めているが、このような事態の場合には、燃料損傷を防止<br />

する段階というよりは、環境影響を緩和する段階であり、要求の目的を環境影響緩和とす<br />

ることが適切であると考える。<br />

(参考)<br />

米国においても、B.5.b(NEI-06-12)では、意図的な外部人為事象による使用済燃料貯<br />

蔵プールの大規模損傷に対応するための対策を環境影響緩和として求めており、燃料損傷<br />

の防止を目的としていない。<br />

- 37 -


11.SA 対策の有効性評価(SFP)<br />

新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

- 38 -


新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

「火災発生防止、火災検知及び消火並びに火災の影響の軽減の各防護対策を考慮した設計」<br />

が基本的要求事項とされているが、「火災発生防止、火災検知及び消火並びに火災の影響の<br />

軽減の各防護対策により、原子炉施設の安全性を損なうことのない設計であること」のよう<br />

に設計上の要求事項を明確にする必要があると考える。<br />

<br />

第4回検討チーム会合で規制委員から、「要求する仕様を定めるに先立ち、定量的ではな<br />

いとしても要求する性能の明文化が必要」との主旨の発言があったように、要求性能は、【要<br />

求事項の詳細】で明文化する必要があると考える。<br />

なお、審査ガイドは国際的な基準とも整合させる必要があると考える。<br />

(参考)<br />

米国の10CFR50附則Rには、要求性能として「高温停止を達成するのに必要な1つのトレイン<br />

の機器は、単一火災による損傷を受けない状態に維持されなければならない。」との記載が<br />

ある。<br />

また、事業者は、従来から火災発生防止、火災検知及び消火、火災の影響の軽減の各防護<br />

対策を実施し、各種の燃焼試験結果を活用した火災影響評価により、火災に対する安全性が<br />

確保されていることを確認してきており、今後の規制側の審査においてもこれまで蓄積され<br />

た科学的知見や運用経験を十分咀嚼の上、評価していただくことが必要と考える。(「事業<br />

者が実施してきた火災防護対策の考え方」参照)<br />

<br />

高放射線環境下で使用する特殊ケーブル、電気品の絶縁材、回転機器の潤滑材、燃料油、<br />

弁やフランジのパッキン等、実用レベルの技術で対応できないもの等に対しては、以下のよ<br />

うな記載の追加が必要と考える。<br />

・機器の性能が確保できない場合<br />

・火災に対する原子炉安全の達成に影響しない場合<br />

・発火源(エネルギー)を抑制することで火災の発生を防止している場合<br />

・他法令等(他法令の認定品を含む)で使用する材料が決められている場合<br />

(参考)<br />

米国の 10CFR50 附則 A や、IAEA の安全指針は、実用的な範囲で不燃性又は難燃性材料の<br />

使用を求めている。また、10CFR50.48(火災防護要件)には、「耐火性試験に合格したケー<br />

ブルを導入する代わりに、既存のケーブルに難燃性コーティング(延焼防止剤)を塗布する<br />

か、自動消火システムを設置して同等レベルの防護性能を備えてもよい」との記述もある。<br />

- 39 -<br />

12.火災防護


新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(参考)<br />

○火災発生防止<br />

事業者が実施してきた火災防護対策の考え方<br />

原子炉の安全<br />

火災の影響の軽減<br />

火災検知及び消火<br />

火災発生防止<br />

図 1:火災防護の考え方<br />

火災により原子炉の安全が<br />

損なわれないこと<br />

火災発生の 3 条件である可燃物、発火源(エネルギー)、酸素が揃わないようにすること<br />

で、安全機能を有する機器で火災が発生するリスクを低減している。具体的には、安全<br />

機能を有する系統、機器の種別に応じて、可燃物の低減、過電流に対して回路をしゃ断<br />

する保護装置の設置、可燃性液体又は気体の漏えい防止等の対策を実施している。<br />

○火災検知及び消火<br />

・火災を早期検知するため、原子炉を停止・冷却する機器、放射性物質を内包する機器の<br />

設置区域に火災検出装置を設置している。<br />

・消火活動に対処できるよう、消火装置を設置している。<br />

・消火装置の破損、誤動作により、安全機能を有する系統、機器の安全機能が失われない<br />

ようにしている。<br />

・火災検出装置及び消火装置の設置要領等は、消防法に従っている。<br />

・中越沖地震を踏まえ、耐震性防火水槽の確保等を行った。<br />

○火災の影響の軽減<br />

高温停止に必要な 1 系統は単一の火災の影響を受けないように、火災の影響を軽減(系<br />

統分離)している。低温停止に必要な系統は、その機能を失わないように、火災の影響<br />

を軽減(系統分離)している。(系統分離方法は図2参照)<br />

- 40 -<br />

12.火災防護


新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

高温停止に必要な1系統<br />

M ケーブル<br />

M<br />

M<br />

ケーブル<br />

M<br />

ケーブルトレイ<br />

M<br />

他の機器<br />

電気盤<br />

電気盤<br />

実規模大の部屋で行った燃焼試験に基づき作成した実験式におい<br />

てポンプ等の火災影響が及ぶ範囲を把握。<br />

ポンプ等とその他機器との分離距離等を確保することで火災によ<br />

る原子炉安全が損なわれないようにしている。<br />

- 41 -<br />

図 2:事業者が実施している系統分離<br />

電気盤の燃焼試験で電気盤の火災の<br />

影響が及ぶ範囲を把握。<br />

電気盤のトレン分離等を実施するこ<br />

とで火災による原子炉安全が損なわ<br />

れないようにしている。<br />

電気盤の燃焼試験状況<br />

ケーブルの燃焼試験でケーブル火災<br />

の影響が及ぶ範囲を把握。<br />

ケーブルトレイ間の分離距離を確保<br />

等することで火災に<br />

よる原子炉安全が<br />

損なわれないよ<br />

うにしている。<br />

試験装置の例<br />

12.火災防護


13.共用<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(説明)<br />

骨子案においては、原子炉の安全性を損なうことのないことを示せない場合は、原則として<br />

共用を禁止する規定となっている。<br />

現行指針では、指針 7 共用に関する設計上の考慮において「安全機能を有する構築物、系統<br />

及び機器が 2 基以上の原子炉施設間で共用される場合には、原子炉の安全性を損なうことのな<br />

い設計であること」とあり、共用を禁止するものとはなっていない。<br />

現状、国内プラントで共用している主な系統・機器・構築物の例として、以下がある。<br />

排気筒(MS-1)、海水取水設備(MS-1)、使用済燃料ピット(PS-2)、放射性気体廃棄物処<br />

理系(PS-2)、送電線(PS-3)、起動用変圧器(PS-3)、原子力発電所緊急時対策所(MS-3) 等<br />

これらの系統・機器・構築物の共用を禁止することは必ずしも安全性の向上につながるもの<br />

ではない。例えば、放射性気体廃棄物処理系をユニット毎に設置した場合、系統の機能として<br />

の信頼性は、動的機器であるポンプ等が多重化されることにより増加するものの、一方で、物<br />

量(配管、弁等)が増加し、リークパス増加の要因となる可能性がある(※1)。また、限られ<br />

たスペースに設備を設置することになるため、当該系統ならびに他設備のメンテナンスに影響<br />

をあたえる可能性がある。<br />

※1:日本原子力技術協会が取りまとめた国内機器故障率データによると、配管の非信頼度は、<br />

6.6E-10/hr(3 インチ以上)と評価されており、例えば、系統全体の配管本数が 2 倍とな<br />

ったと仮定した場合、配管の非信頼度は 1.3E-9/hr となり、リークパスのリスクはわずか<br />

だが増加する。(「14.信頼性」の表 1「国内データによる動的機器と静的機器の信頼<br />

性の比較」を参照。)<br />

以上をまとめると、現状、共用する機器について原子炉の安全性を損なうものではない。<br />

(参考)<br />

共用を禁止する規定としては、米国も同様の記載(※)となっているものの、上記の例にあ<br />

る主な系統・機器・構築物は、日本と同じく共用されている。<br />

※ 米国 GDC Ⅰ(全般的要件 Criterion 5)安全上重要な構築物、系統及び機器は、1 つの<br />

ユニットにおける事故の場合に、その共用が他のユニットでの通常停止及び冷却を含め<br />

その安全機能遂行能力を著しく損なわないことが証明されない限り、原子力発電施設ユ<br />

ニット間で共用してはならない。<br />

- 42 -


13.共用<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

<br />

シビアアクシデント対策においては、第 8 回検討チーム会合で、安全の観点から使用可能な<br />

設備は最大限に有効活用ができるようにするべき、という趣旨の発言があったように、共用や<br />

相互接続そのものを好ましくないものと位置づけることは適切ではない。その時点でのプラン<br />

ト状態などを加味し、使用可能な設備は最大限に活用することで一層の安全性向上を図るとい<br />

う考えから、共用の禁止を適用すべきでないと考える。<br />

(参考)<br />

ドイツにおけるバンカーシステム(SA 対策)は、相互のプラント設備を用い、SG 給水や炉<br />

心注入ができるよう共有化改造が実施されている例がある。<br />

- 43 -


14.信頼性<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

新安全基準骨子案における基本的要求事項及び要求事項の詳細においては、これまでの指針<br />

と概ね同様の記載となっているが、静的機器の単一故障に係る考え方の整理について、第 4 回<br />

検討チーム会合資料・議事で、「重要度の高い安全機能を有する系統を構成する機器に係る長期<br />

における静的機器の単一故障は原則すべての機器に適用する」との要求となっている。(以下の<br />

とおり)<br />

○第 4 回検討チーム会合資料 2-1 P14,P16(抜粋)<br />

14<br />

今後の単一故障に係る考え方の整理案<br />

• 「静的機器の単一故障」について<br />

重要度の特に高い安全機能を有する系統を構成する機器<br />

に係る長期における静的機器の単一故障の仮定について<br />

は、原則すべての機器に適用する。但し、以下の場合につ<br />

いては、当該機器に対する多重性又は多様性の要求は適用<br />

しない。<br />

その単一故障の発生頻度が極めて小さいことが合理的に<br />

説明できる場合<br />

【例】原子炉圧力容器、非常用ガス処理系配管の支持機能<br />

としての排気筒等<br />

その単一故障を仮定する機器により構成される系統の有<br />

する機能について、他の系統の機能により原子炉施設の安<br />

全機能に影響を与えることなく代替し得ることが安全解<br />

析により確認されており、かつ、その代替することにより<br />

他の安全機能に影響を与えないことが確認されている場<br />

合<br />

【例】BWRにおいて、残留熱除去系による停止時の冷却<br />

機能に関し、炉心への注水について、高圧注水系等による<br />

炉心への注水と残留熱除去系の圧力制御室冷却モード運<br />

転などにより代替し得ることが示される場合。<br />

現行指針では、静的機器については、安全上支障がない期間内に除去又は修復できる場合、<br />

又はその故障の発生確率が十分低い場合には、単一故障を仮定する対象から除外してよいとい<br />

う考え方が記載されており、これに基づき、設計を行っている。<br />

(参考)<br />

米国における長期の静的機器の単一故障に対する考え方においても、同様に、信頼性の高い<br />

静的機器の単一故障想定からの除外が認められている。(※)<br />

※ SECY-77-439 “Information report by the office of nuclear regulation on the single<br />

failure criterion”<br />

・単一故障基準を適用する場合、考えられるいかなる故障の発生を想定するものではない。例<br />

えば、原子炉容器または系統内の特定の構造物は、他の発生確率の低い事象と組み合わされ<br />

る時に、破損すると想定されない。これは、それらの複数の故障の重ね合わせた確率が十分<br />

低く、考慮する必要がないと見なされるため。<br />

・LOCA 後長期冷却モード(事象発生後 24 時間以降)時における 1 台のポンプまたは 1 個の弁<br />

のシール完全破損によるリークを想定するが、配管破損は想定しない。これは、LOCA 後に<br />

- 44 -


新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

起こりえる他(ポンプ、弁以外)の静的故障の発生確率は十分小さく、それを考慮しなくと<br />

も系統全体の信頼性に影響することはないため。<br />

実際に、多重化された動的機器と多重化されていない静的機器で構成された系統がある場合、<br />

多重化された動的機器の多重故障の発生率と比べても多重化されていない静的機器の単一故障<br />

の発生率のほうが小さいため(表 1 参照)、静的機器を多重化することによる系統の信頼性向上<br />

への寄与は極めてわずかである。<br />

表 1:国内データによる動的機器と静的機器の信頼性の比較<br />

機器 故障モード 単独での非信頼性 多重化後の非信頼性<br />

動的機器 ポンプ 運転継続失敗 1.1E-06/hr 4.0E-8/hr<br />

静的機器<br />

(系統信頼性の概略評価例)<br />

配管多重化前<br />

ポンプA<br />

ポンプ B<br />

配管多重化後<br />

ポンプA<br />

ポンプ B<br />

ファン 運転継続失敗 6.0E-07/hr 2.2E-8/hr<br />

配管<br />

配管 C<br />

(>3inch)<br />

配管 C<br />

(>3inch)<br />

配管 D<br />

(>3inch)<br />

リーク 1.0E-09/hr -<br />

(3inch) 閉塞 6.6E-10/hr -<br />

逆止弁 閉失敗 4.2E-09/hr -<br />

(出典:日本原子力技術協会)<br />

ポンプ A とポンプ B の両方が故障する確率:4.0E-8/hr ・・・①<br />

配管 C がリークする確率:6.6E-10/hr ・・・②<br />

⇒ 系統が機能喪失する確率(①+②):4.1E-8/hr<br />

ポンプ A とポンプ B が共通要因で故障する確率:4.0E-8/hr ・・・①<br />

ポンプAの単独故障または配管 C がリークする確率:1.1E-6/hr ・・・②<br />

ポンプBの単独故障または配管Dがリークする確率:1.1E-6/hr ・・・③<br />

⇒ 系統が機能喪失する確率①+(②×③):4.0E-8/hr<br />

また、静的機器を多重化することで、反って信頼性が低下する可能性がある。(例:中央制御<br />

室非常用空調系ダクトの多重化によって貫通部が増加し、それがリークパスの要因となる。)<br />

以上をまとめると、静的機器を多重化することによる系統の信頼性向上への寄与は極めて小<br />

さいこと、多重化することによる信頼性の低下の可能性もあることから、静的機器については<br />

個々の信頼性を評価し、十分な信頼性が確保されているを確認する必要がある。なお、前述の<br />

とおり、米国においても、信頼性の高い静的機器の単一故障想定からの除外は認められている。<br />

- 45 -<br />

14.信頼性


14.信頼性<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

(参考)<br />

現状、重要度の特に高い安全機能を有する構築物、系統及び機器で単一故障想定から除外し<br />

ている国内プラントの主な事例として、以下がある。<br />

(PWR)<br />

CV スプレイリング、中央制御室非常用フィルタユニット、原子炉補機冷却水サージタンク、再<br />

循環サンプ、再循環サンプスクリーンなど<br />

(BWR)<br />

D/W スプレイヘッダ、非常用ガス処理系フィルタ、中央制御室換気空調系フィルタなど<br />

- 46 -


新安全基準(SA)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

設計基準事故時に「所内外必要箇所」と連絡をとるための原子炉施設内の通信連絡設備(デ<br />

ータ伝送設備を含む)については、「専用回線かつ多重性及び多様性」が必要とされている。<br />

このうち、音声の通信機能については、内線電話(構内 PHS、固定電話)、インターホン、<br />

ノーベルホーン、衛星電話、トランシーバ等を使用場所に応じて使用できるよう準備してい<br />

る。一方、データ伝送設備については、通信量が多いことから、所内は有線式(光回線を含<br />

む)、所外へは有線式(光回線を含む)、無線式(指向性の高いマイクロ波)で多様化を図っ<br />

ている。所内を無線式とすることは、見通しの確保、その他電子機器の誤作動等、技術的に<br />

困難が伴い現実的ではない。したがって、所内については、高い信頼度を持つ通信経路によ<br />

り通信連絡設備を形成することが現実的である。<br />

よって、通信連絡設備のうち所内通信においては、「多重性及び多様性」を一律に求めるの<br />

ではなく、原子炉施設の地形・構造上の特性を考慮し信頼度を評価した上で合理的な設備構<br />

成としたい。<br />

- 47 -<br />

電<br />

話<br />

電<br />

話<br />

サ<br />

ー<br />

バ<br />

衛星アンテナ<br />

ケーブル<br />

ケーブル<br />

ケーブル<br />

原子炉施設<br />

通<br />

信<br />

設<br />

備<br />

通<br />

信<br />

設<br />

備<br />

衛星<br />

原子力発電所<br />

ケーブル<br />

ケーブル<br />

衛星<br />

通<br />

信<br />

設<br />

備<br />

通<br />

信<br />

設<br />

備<br />

電<br />

話<br />

ケーブル<br />

サービスビル等<br />

図 現状の通信経路概要(例)<br />

衛星アンテナ<br />

ケーブル<br />

ケーブル<br />

電<br />

話<br />

通<br />

信<br />

設<br />

備<br />

通<br />

信<br />

設<br />

備<br />

無線アンテナ<br />

ケ<br />

ー<br />

ブ<br />

ル<br />

無線<br />

ケーブル<br />

15.通信連絡設備<br />

所<br />

外<br />

必<br />

要<br />

箇<br />


16.外部電源確保<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

送電線に対して、新たに「物理的に分離した設計」を求める内容になっている。「物理的に<br />

分離」については、要求事項の詳細および審査ガイドにおいて、回線相互に故障の影響を受<br />

けない離隔距離が必要とされている。<br />

送電線は、信頼性を合理的に確保できるよう、電気事業法により規制を受けており、その<br />

詳細は電気設備に関する技術基準を定める省令に規定され、これまで同基準に基づき施設さ<br />

れた鉄塔が地震動そのもので倒壊した事例はない。<br />

なお、東北地方太平洋沖地震では、地震動そのもので倒壊した送電鉄塔はないものの、周<br />

辺の盛土が鉄塔側へ崩落したことにより1基倒壊したため、昨年度、原子力発電所への送電<br />

ルートについて送電鉄塔の基礎の安定性評価を行い、対策が必要な送電鉄塔を抽出し、対策<br />

を実施済みである(一部実施中)。<br />

加えて、早期復旧は可能であるものの、一部破損が見られた送電線の支持がいしについて<br />

も耐震性向上対策を行っている。<br />

これらの対策により、原子力発電所外の送電線は、更なる信頼性向上が図られており,高<br />

い信頼性を確保できている。<br />

一方、送電線は、狭い国土で限られたルートの中から、地すべりなどの自然災害を含め、<br />

電気事故を極力少なくできるよう、合理的に選定したものであるため、原子力発電所に直接<br />

接続する送電線同士が、物理的に接近、交差することは避けられない(図参照)。「物理的に分<br />

離」が、審査ガイドにあるように、送電鉄塔の転倒も考慮した上で、相互に故障の影響を受<br />

けない離隔距離が必要となれば、接近、交差している送電線を別のルートに迂回させる必要<br />

があるが、迂回ルートを選定しようとすれば、かえって自然災害に対するリスクを増大させ<br />

るばかりか、大規模なルート変更が必要となるため、合理的ではない。<br />

以上のことから、送電線に「物理的に分離した設計」を行うのではなく、所内非常用電源<br />

の信頼性向上も含め、総合的な観点で電源の信頼性向上を図ることが重要であると考える。<br />

- 48 -


16.外部電源確保<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

併架概要図<br />

接近概要図<br />

交差概要図<br />

- 49 -<br />

ア<br />

ア<br />

A線<br />

B線<br />

A線2回線<br />

B線2回線<br />

は送電鉄塔を表す。<br />

イ<br />

イ<br />

B線<br />

A線<br />

A線2回線<br />

B線2回線<br />

1回線 1回線<br />

1回線 1回線<br />

ア-ア断面図<br />

A線2回線<br />

B線2回線<br />

平面図 イ-イ断面図<br />

図:送電線の敷設ルートの例


16.外部電源確保<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

現状の安全系蓄電池の信頼性維持の観点から、必要な全ての機器を対象とするのではなく、<br />

直流電源を必要とする対象設備を適切に選定すること、さらには可搬式設備や専用蓄電池な<br />

どの選択も可能とし、総合的な電源確保を可能とすることが重要であると考える。(詳細は<br />

「17.全交流動力電源喪失」参照)<br />

- 50 -


16.外部電源確保<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

- 51 -


<br />

<br />

17.全交流動力電源喪失<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

非常用直流電源設備について「一定時間(負荷制限なしで 8 時間、さらに負荷制限をした<br />

上で少なくとも 24 時間)確保できる設計」とされている。規制要求として蓄電池容量に一定<br />

の継続時間を設定することは、設計上の基準を与える観点からは合理的とも考えられるが、<br />

現状においても代替の交流電源の供給開始までの時間評価が可能であり、単に一律の時間設<br />

定とするのではなく、個々のプラントの評価に基づいて蓄電池容量(継続時間)を設定し、<br />

これを確認することが安全性確保の観点から実効的であると考える。<br />

蓄電池の容量を増加させることは安全性向上に有効と考えるが、蓄電池はいずれ枯渇する<br />

ことから全交流動力電源喪失時に必要な機器全ての電源を蓄電池のみで担保するのではな<br />

く、多様性を考慮し、外部または内部、可搬または恒設、既設または代替の交流電源(外部<br />

電源、非常用予備発電装置、電源車や空冷式非常用発電装置等)からの電源供給によって継<br />

続的な直流電源供給と動力電源供給を確保することが全交流動力電源喪失時の対応として必<br />

須である。なお、現状においては、福島第一原子力発電所事故後に各発電所に配備した電源<br />

車等の代替の交流電源と、繰り返し実施してきた接続訓練の実績や、非常時の要員確保体制<br />

の整備を充実させてきたことから、短時間で代替の交流電源からの電源供給による蓄電池へ<br />

の充電を可能としている。<br />

また、地震や津波の重畳をも考慮した評価から、現状の蓄電池容量においても、これが枯<br />

渇するまでに代替の交流電源からの供給は可能である。さらに発電所構内に保管されている<br />

燃料によって代替の交流電源を 24 時間以上稼動できることから継続的な直流電源の供給が可<br />

能であり、現状において代替交流電源復旧までの期間のプラントの安全性は担保できている<br />

ものと考える。<br />

なお、事業者においては、前述のとおり、蓄電池の容量を増加させることは、安全性向上<br />

に有効と判断しており、早期に増強を図るとの観点において、当面は常用系の活用や負荷の<br />

切り離し等により、所定の時間の確保に努めていくこととしている。<br />

更なる信頼性向上のために、より信頼性の高い大容量の蓄電池や充電器等の設備を新たに<br />

製作し、計画的に蓄電池の増強を実施していく。<br />

なお、多重故障や設計基準を超える地震・津波等の共通要因によって引き起こされる全交流<br />

動力電源喪失は、シビアアクシデント規制として整理されることが適切と考える。<br />

- 52 -


17.全交流動力電源喪失<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

<br />

<br />

<br />

蓄電池の負荷容量として「原子炉の停止、停止後の冷却、原子炉格納容器の健全性の確保に<br />

係る機能を担う設備のみならず、当該機能を維持するために必要な関連設備や作業環境として<br />

必要な設備の負荷容量を十分満たす電源容量を有する設計」との規制とされている。<br />

直流電源(安全系蓄電池)は、交流電源が復旧するまでの繋ぎとして、原子炉状態の維持<br />

(状態監視、減圧操作等)を目的とした設備であり、全交流動力電源喪失時の初期対応にお<br />

いて炉心損傷防止のために必要な機器(例 BWR:原子炉隔離時冷却系、PWR:タービン駆<br />

動補助給水系)を駆動する電源として重要な設備であると認識している。<br />

骨子案の記載からは、全交流動力電源喪失発生時に必要な機器全ての電源(冷却に必要な<br />

ポンプ等の駆動用の大容量電源を必要とする機器、関連する機器、「重要度の特に高い構築物、<br />

系統及び機器」に該当する全ての直流負荷または計測制御負荷、作業環境として必要な設備)<br />

が要求されている様に読み取れる。<br />

ポンプを駆動するモータなどは負荷側が交流電源であるものがほとんどであり、これらに<br />

ついては直流から交流に変換して給電する必要がある。一例を挙げると大型補機の場合は、<br />

DC125V を AC6600V、440V 等に変換する大型のインバータ装置が必要であり、巨大な蓄電<br />

池設備、充電器、配電設備、関連の空調設備などを含めると直流電源設備だけで非常に大規<br />

模なシステムとなり、信頼性の観点で得策でなく、さらに、関連する全ての機器を対象負荷<br />

とすることは、直流電源設備の信頼性低下(原子炉状態の維持以外の負荷異常時の影響波及)<br />

につながることが懸念される。<br />

なお、こうした観点、さらには福島第一原子力発電所の状況(不測の事態)を考慮すれば、<br />

作業環境として必要な設備については、可搬型設備にて代替手段(資機材)を中央制御室等<br />

必要な場所に配備する等、不測の事態への臨機応変な対応が可能と考える。<br />

これらのことから、現状の安全系蓄電池の信頼性維持の観点から、全交流動力電源喪失発<br />

生時の直流電源(安全系蓄電池)に対する機能要求の解釈(対象とする負荷)については、<br />

必要な全ての機器(交流駆動機器含む)を対象とするのではなく、直流電源を必要とする対<br />

象設備を適切に選定すること、さらには可搬型設備や専用蓄電池などの選択も可能とし、総<br />

合的な電源確保を可能とすることが重要であると考える。<br />

<br />

敷地内の送電鉄塔、開閉所に対して、「十分な支持性能をもつ地盤に設置」することが要<br />

求されている。<br />

送電鉄塔については、信頼性を合理的に確保できるよう、電気事業法により規制を受けて<br />

おり、その詳細は電気設備に関する技術基準を定める省令に規定され、これまで同基準に基<br />

づき施設された鉄塔が地震動そのもので倒壊した事例はない。<br />

- 53 -


17.全交流動力電源喪失<br />

新安全基準(設計基準)骨子(たたき台) -12月27日改訂版 - 事業者意見 備考<br />

なお、東北地方太平洋沖地震では、地震動そのもので倒壊した送電鉄塔はないものの、周<br />

辺の盛土が鉄塔側へ崩落したことにより1基倒壊したため、原子力発電所への送電ルートに<br />

ついて送電鉄塔の基礎の安定性評価を行い、対策が必要な送電鉄塔を抽出し、対策を実施済<br />

みである(一部実施中)。<br />

この対策により、送電線は、更なる信頼性向上が図られており,高い信頼性を確保できて<br />

いる。<br />

開閉所については、福島第一原子力発電所で倒壊したものが気中式機器であったため、よ<br />

り耐震性の高いガス式機器を導入済(一部導入検討中)であり信頼性向上が図られている。<br />

以上のような、送電鉄塔、開閉所の実態を踏まえた上で、さらに所内非常用電源の信頼性<br />

向上に努めるなど、総合的な観点で電源の信頼性向上を図ることが重要と考える。<br />

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