PIC マイコンを使った自由度のある実践的電子制御工学実験の取り組み

PIC マイコンを 使 った 自 由 度 のある 実 践 的 電 子 制 御 工 学 実 験 の 取 り 組 み
○ 中 尾 三 徳 * 1 , 西 川 弘 太 郎 * 1
* 1 独 立 行 政 法 人 国 立 高 等 専 門 学 校 機 構 津 山 工 業 高 等 専 門 学 校 教 育 研 究 支 援 センター
1. 概 要
現 在 ,PIC マイコンを 使 った 教 材 は 多 くの 高 専 で 実 験 , 創 造 演 習 等 の 課 題 解 決 型 授 業 に 導 入 されている. 津 山 高 専 電 子
制 御 工 学 科 では, 一 部 の 卒 業 研 究 で PIC マイコンを 使 用 していたが 授 業 等 への 導 入 は 未 実 施 であった.
電 子 制 御 工 学 実 験 Ⅲ( 以 後 , 実 験 Ⅲと 称 す.)のマイコン 実 験 は, 平 成 19 年 までは, 図 1 の Z80 マイコンを 使 ってお
こなっていたが, 平 成 20 年 から,PIC マイコンを 使 った 2 人 で 1 セットを 使 用 する 実 験 に 変 更 された.Z80 マイコンで
は,プログラム 言 語 に Z80 アセンブラを 使 用 し,アセンブラ 言 語 はマイコンによって 違 う 記 述 フォーマットになってお
り,プログラミング 言 語 を 基 本 に 考 えると, 授 業 等 と 継 続 的 なプログラミング 言 語 実 験 には,なっていなかった.パソコ
ンのプログラミングで 使 用 されている C 言 語 をマイコン 実 験 で 使 用 すれば,パソコンを 使 った 授 業 からのリテラシーの
継 承 ができ,マイコンを 習 得 する 学 生 にとっても 処 理 内 容 が 理 解 しやすいと 考 えられる. 実 験 Ⅲの 実 験 概 要 は 高 専 の 低 学
年 で 体 得 した 実 験 実 習 および 授 業 の 内 容 を 網 羅 したテーマを 8 週 間 で 実 施 することとなっている. 平 成 19 年 前 までの 実
験 Ⅲは,3 テーマの 実 験 〔マイクロコンピュータ
マイクロコンピュータ,マイクロマウス,TeX〕があり,それぞれのテーマを 十 数 人 の 班 に 分
け,8 週 毎 にテーマを 変 更 し 実 践 する.3 つのテーマは 次 のようになっている.
1)メカトロニクスに 関 する 基 礎 的 実 験 遂 行 能 力 を 修 得 する(マイクロコンピュータ).
2) 実 践 的 プログラミング 能 力 を 修 得 する(マイクロマウス).
3) 技 術 報 告 書 の 様 式 を 理 解 し, 電 子 化 する 手 法 を 修 得 する(Tex).
各 テーマに 共 通 にレポートを 通 じて, 実 験 結 果 の 考 察 能 力 を 修 得 する
(レポート 報 告 ). 著 者 らが 担 当 している 1)のマイクロコンピュータに
関 する 実 験 について 以 下 のような 内 容 に 変 更 された. 平 成 19 年 度 までの
内 容 では,
1 基 礎 知 識 ガイダンスと 機 器 組 込 用 プロセッサの 概 略 .
2 四 則 演 算 のアセンブラプログラミング.
3 Z80 マイコンの 2 チャンネル 割 込 みの 動 作 確 認 とプログラミング.
4 Z80 アセンブラの 応 用 プログラム(エレベータシーケンス).
としていたが, 平 成 20 年 度 からは,
1 電 子 素 子 ・ 部 品 のガイダンスと PIC マイコンの 概 略 説 明 .
図 1
平 成 19 年 度 実 験 Ⅲマイコン 実 験 システム
2 PIC マイコンの 動 作 確 認 とプログラミング(C 言 語 ,LED 点 灯 制 御 ).).
3 PIC マイコンの 基 本 プログラミング(7セグメント
LED 点 灯 制 御 ,ドライバー
ドライバーIC 制 御 ).).
4 PIC マイコンの 応 用 プログラム(ブザー 音 制 御 ,DC モータ 制 御 , 割 り 込 み). み
).).
となった.
従 来 の Z80 マイコン 実 験 は ROM や RAM 等 の CPU の 外 側 に 周 辺 装 置 を 配 置 しなければならず, 実 験 装 置 自 体 も 大 掛
かりになっていた.それに 対 して,PIC マイコンは EE-PROM や RAM や I/O や A/D 変 換 PIO 通 信 デバイス 等 もマイコン
内 部 に 持 っており, 電 源 とクロッククリスタルがあれば, 即 , 簡 単 な 配 線 でデジタル 電 子 回 路 を 組 み 立 てることができ,
Z80 マイコン 実 験 装 置 の 故 障 もあいまって,PIC マイコンによる 実 験 をおこなうことになった.また, 近 年 , 産 業 界 で PIC
マイコンが 多 く 使 用 されるようになり,これに 対 応 する 必 要 性 が 生 じた.

実 験 Ⅲは, 通 常 の 実 験 実 習 のように 毎 週 完 結 した 内 容 でおこなう 実 験 ではないので, 実 験 担 当 教 員 と 担 当 技 術 職 員 が
標 準 実 験 計 画 を 立 て,これに 基 づき 毎 週 の 成 果 を 評 価 していき, 学 生 が 独 自 に 提 案 した 計 画 , 手 法 , 問 題 提 起 を 尊 重 し,
実 験 手 法 を 強 制 するような 指 導 を 極 力 しないように 努 めることが 重 要 な 点 になっている. 毎 週 , 課 す 実 施 報 告 書 はこのた
めに 有 る.
図 2
平 成 22 年 度 実 験 Ⅲ PIC マイコン 実 験 システム(16 セット)
図 2 の 実 験 Ⅲの PIC マイコン 実 験 の 3 年 目 ( 平 成 22 年 度 )の 現 状 について 報 告 する.
2. 実 験 Ⅲの 実 施 内 容
実 験 Ⅲの PIC マイコンの 実 験 装 置 は, 平 成 21 年 度 までは,2 人 で 1 台 の 装 置 で 実 験 をおこなっていた.また,プログ
ラミング 用 パソコンに 従 来 のものを 使 用 していたため, 性 能 的 には 低 能 力 であり, 故 障 が 多 く 発 生 した.PIC マイコンを
用 いたマイコン 実 験 の 各 週 の 標 準 課 題 は 表 1 のようになっている.PIC マイコン 実 験 は,1 回 が 3 時 限 ,8 回 ( 週 )で
おこなうようになっている. 平 成 22 年 度 からは 1 人 1 台 で 実 験 をおこなっている。 実 験 方 法 については,まず
表 1 平 成 22 年 度 週 毎 のマイコン 実 験 の 標 準 課 題
週
1 週 目
2 週 目
3 週 目
4 週 目
5 週 目
標 準 課 題 内 容
導 入 、PICマイコン、 電 子 素 子 、 回 路
図 エディターによる 電 子 回 路 図 作 成
電 子 回 路 作 成 とプログラムコンパイ
ル 実 行 , 書 き 込 み
プログラムの 制 御 とLEDランプのSW
による 点 灯 制 御
7セグメントLEDのドライバーICによ
る 点 灯 制 御
7セグメントLEDの 直 接 制 御 , 文 字 表
示 ,チャタリング 処 理 , 構 造 体
6 週 目 ブザー 音 制 御
7 週 目
ドライバーICによるDCモータ 回 転 制
御
8 週 目 プログラミング 割 り 込 み 制 御
1) 標 準 課 題 の 電 子 回 路 を 回 路 図 エディターで 作 成 する.
2) 標 準 課 題 の 電 子 回 路 をブレッドボード 上 に 電 子 素 子 を 使 用 して
配 線 する.
3)マイコンプログラミング 用 パソコンで 標 準 課 題 の PIC マイコン
用 C 言 語 プログラム 作 成 ,コンパイルとリンクをおこない,PIC
マイコン 用 バイナリーHEX ファイルをつくる.
4)PIC マイコンライターでバイナリーHEX ファイルを PIC マイコ
ンへ 書 込 む.
む
5) PIC マイコンをブレッドボード 上 の 電 子 回 路 に 取 付 け 後 , 電 子
回 路 動 作 確 認 する.
6) 電 子 回 路 写 真 をディジタルカメラで 撮 影 後 ,PIC マイコン 用 C
言 語 プログラム,ブレッドボード 上 の 製 作 回 路 写 真 , 及 び 電 子 回 路
図 を 添 付 した 実 験 報 告 書 を 作 成 し, 提 出 する.
1)から 6)の 処 理 を 週 毎 におこなう.
3. おわりに
今 後 , 実 験 テキストおよび 資 料 の 改 善 をおこなっていく 予 定 である。