ラフ集合による設計空間特徴抽出
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ラフ 集 合 による 設 計 空 間 特 徴 抽 出<br />
Feature Extraction from Design Space Using Rough Sets<br />
大 林 茂 ( 東 北 大 流 体 研 )<br />
Shigeru Obayashi, Institute of Fluid Science, Tohoku University, Katahira 2-1-1, Aobaku, Sendai, Japan<br />
Data mining technique based on Rough Set theory has been applied to solutions obtained from three-objective<br />
optimization for regional-jet wing design with engine nacelle. To reveal design tradeoffs, multiobjective optimization<br />
was performed by using Evolutionary Algorithms coupled with the Kriging model. High dimensional data (design<br />
parameters and the corresponding objective function values) are mapped onto the two-dimensional Self-Organizing<br />
Map (SOM) where global tradeoffs are visualized. The rule sets are derived by Rough Set theory so as to determine the<br />
importance of design parameters corresponding to the clusters obtained from SOM.<br />
Key Words: Design, Evolutionary Computation, Data Mining, Rough Sets, CFD<br />
1.はじめに<br />
工 学 設 計 では, 最 適 化 の 結 果 そのものより, 最 適 化 のプロ<br />
セスから 設 計 空 間 について 如 何 に 価 値 のある 情 報 を 引 き 出<br />
すかが 重 要 である. 進 化 的 計 算 法 を 用 いた 多 目 的 最 適 化 では,<br />
設 計 トレードオフの 検 討 を 通 じて, 設 計 空 間 の 特 徴 をつかむ<br />
ことができる. 本 研 究 では,この 多 目 的 最 適 化 の 過 程 から 推<br />
定 される 設 計 空 間 の 特 徴 を 導 き 出 すために,ラフ 集 合<br />
1 によ<br />
るデータマイニングの 適 用 を 検 討 する.<br />
2.MDOシステム<br />
本 研 究 で 用 いる MDO システムの 全 体 図 を 図 1 に 示 す 2 .<br />
本 MDO は 格 子 生 成 モジュール,CFD&CSD モジュール,ク<br />
リギングモデル& 最 適 化 モジュールの 大 きく 三 つのモ<br />
ジュールから 成 り 立 っている.MDO システムはまずラテン<br />
超 方 格 法 により 設 計 空 間 内 で 均 一 に 分 布 したサンプル 点 を<br />
抽 出 する.そのサンプルに 対 して, 格 子 生 成 モジュールで 解<br />
析 に 必 要 な 計 算 格 子 を 生 成 し, 次 に CFD&CSD モジュールで<br />
解 析 を 行 う.CFD ではオイラー 解 析 を 行 う.ウィングボック<br />
ス 形 状 の CSD モデルは 主 にスキン,スパー,リブを 表 すシェ<br />
ル 要 素 から 構 成 されており,その 他 の 翼 の 要 素 は 集 中 質 量 要<br />
素 としてモデル 化 されている.そして, 解 析 の 結 果 得 られた<br />
サンプル 点 の 目 的 関 数 値 と 設 計 変 数 をもとにクリギングモ<br />
デル& 最 適 化 モジュール 内 で 最 適 化 を 行 う.<br />
進 化 的 計 算 法 を 用 いた 空 力 最 適 化 は 膨 大 な 計 算 時 間 と 大<br />
規 模 な 計 算 機 環 境 を 必 要 とするため, 実 設 計 適 用 への 大 きな<br />
障 壁 となっていた. 本 研 究 では,MDO 設 計 システムにおい<br />
て 最 も 計 算 負 荷 の 高 い CFD による 空 力 特 性 評 価 をクリギン<br />
グ 近 似 モデル 上 での 代 数 計 算 に 置 き 換 えることでパレート<br />
解 の 探 索 に 要 する 計 算 時 間 の 大 幅 な 短 縮 を 試 みている 3 .ク<br />
リギングとは 南 アフリカの 鉱 山 学 者 Kridge が 鉱 物 資 源 の 埋<br />
蔵 量 推 定 のために 考 案 した 手 法 をフランス 人 数 学 者<br />
Matheron が 統 計 的 手 法 として 確 立 したもので,サンプル 点 間<br />
での 評 価 値 に 不 確 定 性 という 概 念 を 導 入 して 設 計 空 間 を 近<br />
似 する 手 法 である.また,モデル 上 の 目 的 関 数 値 そのものを<br />
最 適 化 するのではなく, 不 確 定 性 を 考 慮 した Expected<br />
Improvement (EI) 値<br />
4 の 最 大 化 することで 近 似 モデルの 精 度<br />
向 上 と, 大 域 的 最 適 解 の 探 索 を 両 立 させることが 可 能 となる.<br />
3. 最 適 化 問 題<br />
本 MDOシステムの 有 用 性 を 検 証 するため,エンジンウィン<br />
グマウントの 主 翼 に 対 して 空 力 ・ 構 造 の 複 合 最 適 化 を 行 った.<br />
3.1 最 適 化 問 題 定 義<br />
< 目 的 関 数 > 3 目 的 関 数 ( 最 小 化 )<br />
1) 巡 航 抵 抗 (C D )<br />
-Cp<br />
Latin Hypercube Sampling<br />
Pressure distribution<br />
0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20<br />
図 2 パイロン 取 付 け 部 付 近<br />
の 圧 力 分 布<br />
x/c<br />
CFD (Euler)<br />
Static analysis model<br />
Flutter analysis model<br />
Aerodynamic & structural<br />
performances<br />
START<br />
NURBS airfoil<br />
3D wing<br />
Wing-body-nacelle<br />
configuration<br />
FLEXCFD<br />
Design variables<br />
Structural optimization<br />
code + NASTRAN<br />
Construction of initial<br />
Kriging model<br />
MOGA<br />
(Maximization of EIs)<br />
Selection of additional<br />
sample points<br />
Mesh generation<br />
–C p,max<br />
Mesh generation module<br />
Load condition<br />
Strength & flutter<br />
requirements<br />
CFD&CSD module<br />
Yes<br />
Continue ?<br />
Update of<br />
Kriging model<br />
CFD&CSD<br />
図 1 MDOの 全 体 図<br />
END<br />
図 3 設 計 翼 型 断 面<br />
2) パイロン 取 付 け 部 付 近 の 衝 撃 波 強 さ (–C p,max ,<br />
図 2 参 照 )<br />
3) 主 翼 構 造 重 量 (Wing weight)<br />
No<br />
Data mining<br />
η= 0.29 η= 0.12
設 計 変 数 > 30 変 数<br />
・2 断 面 位 置 での 翼 型 ( 図 3 参 照 )<br />
→ 13 変 数 (NURBS)× 2 断 面 = 26 変 数<br />
・4 断 面 位 置 での 捩 り 角<br />
< 拘 束 条 件 ><br />
・ 翼 厚 > 規 定 値<br />
・ 後 桁 高 さ > 規 定 値<br />
・ 強 度 ・フラッタ 余 裕 > 要 求 値<br />
XmaxTC<br />
sparTC<br />
maxTC<br />
XmaxL<br />
maxL<br />
3.2 結 果<br />
本 最 適 化 ではラテン 超 方 格 法 により 88 の 初 期 サンプル 点<br />
抽 出 を 行 い,クリギングモデルの 更 新 は 6 回 行 った. 結 果 と<br />
してクリギングモデル 構 築 には 合 計 149 点 のサンプル 点 を 用<br />
いた(149 回 の 関 数 評 価 ). 図 4-6 はモデル 構 築 に 用 いたサン<br />
プル 点 とベースライン 形 状 のオイラー 計 算 による 目 的 関 数<br />
値 を 2 次 元 プロットしたものである. 追 加 サンプル 点 を 加 え<br />
ていくことで 最 適 化 方 向 の 設 計 探 索 が 行 われベースライン<br />
に 対 して 全 3 目 的 が 改 善 された 個 体 を 複 数 得 ることが 出 来 た.<br />
追 加 サンプル 点 に 用 いたひとつの 個 体 ではベースライン 形<br />
状 に 対 して,C D 値 6.7 カウント,−C p,max 値 0.61,Wing weight<br />
に 関 して 12.2kg の 改 善 を 達 成 した.<br />
図 7 翼 型 パラメータ<br />
表 1 翼 型 パラメータ 対 応 表<br />
Number Airfoil parameters<br />
dv1 XmaxL @ η= 0.12<br />
dv2 XmaxL @ η= 0.29<br />
dv3 maxL @ η= 0.12<br />
dv4 maxL @ η= 0.29<br />
dv5 XmaxTC @ η= 0.12<br />
dv6 XmaxTC @ η= 0.29<br />
dv7 maxTC @ η= 0.12<br />
dv8 maxTC @ η= 0.29<br />
dv9 sparTC @ η= 0.12<br />
dv10 sparTC @ η= 0.29<br />
-Cpmax<br />
CD<br />
Initial points<br />
1st update<br />
2nd update<br />
3rd update<br />
4th update<br />
5th update<br />
6th update<br />
Baseline<br />
Wing weight [kg]<br />
-Cpmax<br />
Initial points<br />
1st update<br />
2nd update<br />
3rd update<br />
4th update<br />
5th update<br />
6th update<br />
Baseline<br />
図 4 サンプル 点 のC D , –C p,max 値 図 5 サンプル 点 の–C p,max ,<br />
Wing weight 値<br />
dv3-dv9<br />
5%<br />
dv10<br />
6%<br />
Others<br />
24%<br />
dv2-dv3<br />
6%<br />
dv9<br />
7%<br />
CD<br />
dv7<br />
8%<br />
dv2-dv7<br />
13%<br />
dv2<br />
12%<br />
dv3-dv7<br />
11%<br />
dv2-dv9<br />
8%<br />
dv1<br />
5%<br />
dv4-dv10<br />
7%<br />
dv4<br />
8%<br />
dv2<br />
9%<br />
Others<br />
14%<br />
-Cpmax<br />
dv4-dv6<br />
9%<br />
dv10<br />
16%<br />
dv6<br />
32%<br />
Wing weight [kg]<br />
CD<br />
Initial points<br />
1st update<br />
2nd update<br />
3rd update<br />
4th update<br />
5th update<br />
6th update<br />
Baseline<br />
図 6 サンプル 点 の C D ,<br />
Wing weight 値<br />
4.データマイニング<br />
次 に 本 最 適 化 問 題 における 設 計 空 間 の 構 造 を 明 らかにす<br />
るため, 分 散 分 析 (ANOVA)や 自 己 組 織 化 マップ(SOM) 5 によ<br />
るデータマイニングを 行 う. 本 設 計 問 題 では 設 計 変 数 として<br />
NURBS を 用 いている.しかしこの NURBS 制 御 点 の 座 標 値<br />
自 体 の 情 報 は 設 計 者 としてあまり 役 に 立 つものではない.そ<br />
のため,データマイニングに 当 たっては, 設 計 断 面 の 翼 型 を<br />
図 7 に 示 すパラメータに 変 換 する.パラメータとして 次 の 5<br />
つを 用 いる.XmaxL は 翼 下 面 最 大 厚 み 位 置 の 前 縁 からの 距<br />
離 .maxL は 翼 下 面 最 大 厚 み.XmaxTC は 翼 型 最 大 厚 み 位 置<br />
の 前 縁 からの 距 離 .maxTC は 翼 型 最 大 厚 み.sparTC は 前 桁<br />
位 置 における 翼 の 厚 みをそれぞれ 示 している.また, 翼 のス<br />
パン 方 向 2 断 面 における 翼 型 パラメータの 対 応 表 を 表 1 に 示<br />
す.<br />
4.1 ANOVA<br />
翼 型 パラメータが 目 的 関 数 に 与 える 影 響 を 定 量 的 に 評 価<br />
する 手 法 として ANOVA による 解 析 を 行 った. 図 8 の 円 グ<br />
dv2<br />
7%<br />
dv6-dv8<br />
7%<br />
dv8<br />
7%<br />
Others<br />
17%<br />
dv6<br />
10%<br />
Wing weight<br />
dv2-dv6<br />
52%<br />
図 8 ANOVA の 結 果<br />
ラフがその 結 果 の 図 である.<br />
この ANOVA の 結 果 から C D 値 に 関 しては,η= 0.29 での<br />
XmaxL,η= 0.12 での maxTC, 及 びη= 0.12 での sparTC(そ<br />
れぞれ dv2,7,9)が 特 に 影 響 を 与 えていることがわかる.<br />
パイロン 取 り 付 け 部 の Cp,max 値 にはη= 0.29 の XmaxTC,<br />
sparTC, 及 び maxL などのη= 0.29 における 翼 型 パラメータ<br />
(dv6,10,4)が 影 響 を 与 えている.さらに 主 翼 重 量 ではη=<br />
0.29 の XmaxTC,maxTC, 及 び XmaxL(dv6,8,2)が 影 響<br />
を 与 えていることがわかる.<br />
4.2 SOMを 用 いた 設 計 空 間 の 可 視 化<br />
設 計 空 間 全 体 の 構 造 を 把 握 するため 設 計 空 間 上 において<br />
ラテン 超 方 格 法 により 一 様 に 分 布 した 個 体 を 約 1000 サンプ<br />
リングし,クリギングモデル 上 でのそれらの 個 体 に 対 する 目<br />
的 関 数 値 から SOM を 作 成 した. 図 9 は 3 目 的 関 数 に 対 して<br />
9 個 のクラスタに 分 類 した SOM を, 目 的 関 数 , 翼 型 パラメー
タごとに 色 付 けしたものである. 目 的 関 数 のカラーマップか<br />
ら, 全 ての 目 的 関 数 が 改 善 する 設 計 空 間 内 のスイートスポッ<br />
トは 右 下 角 のクラスタに 存 在 することがわかる.<br />
obj1<br />
obj2<br />
obj3<br />
ことを 表 している.<br />
5.ラフ 集 合 によるルール 生 成<br />
ラフ 集 合 によるデータマイニングの 流 れは 図 12 のように<br />
まとめることができる 6 .<br />
データの 準 備<br />
数 値 データの 離 散 化<br />
0.018 0.019 0.020 0.022<br />
0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.7<br />
758 786 813 840 868 895<br />
縮 約<br />
dv1<br />
dv2<br />
dv3<br />
ルールの 生 成<br />
フィルタリング<br />
ルールの 解 釈<br />
13 19 26 32 38 44 50 56<br />
dv4<br />
19 24 30 35 40 46 51 56<br />
dv5<br />
8 8 9 9 10 11 11 12<br />
dv6<br />
図 12 ラフ 集 合 によるデータマイニングの 流 れ<br />
-Cp<br />
6.3 6.6 7.0 7.3 7.6 8.0 8.3<br />
dv7<br />
14 15 15 16 16 17 17 18<br />
dv10<br />
10 10 11 11 12 12 13 13<br />
0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20<br />
x/c<br />
14 18 23 27 31 36 40 44<br />
dv8<br />
12 12 13 13 13 14 14 14<br />
Lower wing shape<br />
-Cp<br />
-Cp<br />
23 27 31 35 39 43 47 51<br />
dv9<br />
12 13 13 14 15 16 17 18<br />
図 9 設 計 空 間 の SOM による<br />
可 視 化<br />
0.00 0.20 0.40 0.60 0.80 1.00 1.20<br />
x/c<br />
Lower wing shape<br />
図 10 パイロン 付 近 の 翼 形 状 図 11 パイロン 付 近 の 翼 形 状<br />
と 圧 力 分 布 (dv6: 小 ) と 圧 力 分 布 (dv6: 大 )<br />
図 8 の ANOVA の 結 果 から−C p,max に 関 して dv6 の 影 響 が 大<br />
きいことがわかる.そこで, 図 9 を 見 ると,dv6 の 値 が 大 き<br />
いときは, 常 に−C p,max の 値 が 低 い.これは 図 10-11 に 示 した<br />
圧 力 分 布 の 図 からわかるように,dv6 の 値 が 大 きいと 翼 とナ<br />
セル 間 の 閉 塞 が 緩 和 され,その 結 果 衝 撃 波 が 弱 くなっている<br />
-Cp<br />
翼 型 パラメータや 目 的 関 数 が 連 続 値 であるのに 対 して,ラ<br />
フ 集 合 で 扱 う 属 性 値 は 離 散 値 である.そこで,まずデータの<br />
離 散 化 が 必 要 となる.そこで, 変 数 毎 に 領 域 を3 分 割 し, 各<br />
区 間 でデータ 数 が 同 じになるように, 分 割 幅 を 自 動 的 に 定 め<br />
た.これより 各 変 数 について,{ 小 }{ 中 }{ 大 }の3つの 属<br />
性 値 を 与 える. 決 定 属 性 については, 各 目 的 関 数 が{ 小 }と<br />
なることに 加 え、スイートスポットとなる 右 下 角 のクラスタ<br />
に 属 することとした.<br />
これらの 決 定 属 性 値 に 対 して,それぞれ 縮 約 とルールの 生<br />
成 を 行 う.この 部 分 は Rosetta 7 によりほぼ 自 動 的 に 計 算 され<br />
る. 問 題 は, 機 械 的 に 生 成 されるルールが 数 百 にも 及 ぶこと<br />
である.そこから 意 味 のあるルールを 見 つけるべく,さらに<br />
絞 り 込 みが 必 要 となる.このプロセスがフィルタリングであ<br />
る.ルールの 当 てはまりを 見 るために 様 々な 指 標 が 提 案 され<br />
ているが,ここでは 単 純 にルールが 当 てはまるデータ 数 で<br />
フィルタリングした. 例 として,スイートスポット 決 定 属 性<br />
に 対 して,ルールが 成 立 するようなデータが 7 つ 以 下 しかな<br />
いようなルールは 自 動 的 に 切 り 捨 てると, 表 2( 末 尾 に 掲 載 )<br />
に 示 すように 合 計 17 のルールが 得 られた.<br />
これらのルールを 見 ても,まだ 条 件 部 が 複 雑 であり, 十 分<br />
情 報 が 煮 詰 まっているとはいえない.そこで,さらにルール<br />
の 条 件 部 の 傾 向 を 見 ることで,ルールを 解 釈 し, 設 計 指 針 を<br />
得 ることを 考 えた. 具 体 的 には, 各 目 的 関 数 が{ 小 }となる<br />
決 定 属 性 に 対 してルールを 生 成 し,それぞれが 10~20 程 度<br />
となるように 当 てはまり 数 でフィルタリングする.こうして<br />
得 られた 上 位 ルールの 中 では, 翼 型 パラメータがある 特 定 の<br />
属 性 を 持 つことが 分 かった.そこで,スイートスポット 決 定<br />
属 性 とあわせて, 各 翼 型 パラメータの 出 現 数 をまとめたのが,<br />
表 3 である.また, 表 中 で 欄 の 背 景 色 が 赤 の 場 合 は 属 性 { 大 },<br />
無 色 は 属 性 { 中 }, 青 は 属 性 { 小 }である.この 結 果 より,<br />
dv2,6 は 大 きく 取 ること,すなわち 翼 厚 最 大 位 置 は, 下 面 に<br />
注 目 しても, 全 体 としても,なるべく 後 方 に 取 ることがよい<br />
ことが 分 かる.これは, 前 節 の 結 果 図 10,11 と 一 致 する.<br />
一 方 ,dv9,10 についてはなるべく 小 さく 取 ると 良 い.すな<br />
わち, 前 桁 は 低 い 方 がよいことが 分 かる.そこで, 図 9 を 見<br />
直 してみると, 確 かにその 傾 向 が 見 て 取 れる.また,dv4( 下<br />
面 の 翼 厚 )は 抵 抗 を 下 げるには 小 さい 方 がいいが, 全 体 とし<br />
ては 大 きい 方 が 良 いことが 分 かる.<br />
また, 図 9 の 9 つのクラスタに 対 して, 各 パラメータの 属
性 がどのように 分 布 しているかを 確 認 したところ,スイート<br />
スポットのクラスタでは,dv10 のみ 決 して 属 性 { 大 }となる<br />
ことがなかった.これは,「dv10(ナセル 付 近 の 前 桁 )は 決<br />
して 大 きくしてはいけない」という 設 計 指 針 といえよう.<br />
ANOVA では, 特 定 のパラメータの 影 響 が 大 であることが<br />
分 かっても,その 値 が 大 きければいいのか, 小 さければいい<br />
のかは 分 からない.SOM では, 色 のパターンを 一 つ 一 つ 比<br />
較 して, 傾 向 を 見 分 けなければならない.ラフ 集 合 では,ルー<br />
ルを 生 成 し,その 傾 向 をつかむことで, 比 較 的 容 易 に 設 計 空<br />
間 の 特 徴 を 抽 出 することができた.<br />
表 3 決 定 属 性 に 対 する 上 位 ルールの 属 性 値 の 傾 向<br />
Sweet Cd Cp WW<br />
dv1 11 1 1 5<br />
dv2 9 2 6 3<br />
dv3 8 5 6 4<br />
dv4 10 3 5 11<br />
dv5 13 8 1 7<br />
dv6 7 6 3 3<br />
dv7 9 5 6 5<br />
dv8 2 4 3 2<br />
dv9 9 2 2 3<br />
dv10 14 9 8 8<br />
赤 は 属 性 { 大 }, 無 色 は 属 性 { 中 }, 青 は 属 性 { 小 }<br />
参 考 文 献<br />
[1] 森 典 彦 , 田 中 英 夫 , 井 上 勝 雄 編 ,「ラフ 集 合 と 感 性 」,<br />
海 文 堂 出 版 , 東 京 ,2004.<br />
[2] T. Kumano, S. Jeong, S. Obayashi, Y. Ito, K. Hatanaka and<br />
H. Morino, “Multidisciplinary Design Optimization of Wing<br />
Shape with Nacelle and Pylon,” Proceedings of ECCOMAS<br />
CFD 2006, CD-Rom (2006)<br />
[3] Donald, R. J., Matthias S. and William J. W., “Efficient<br />
Global Optimization of Expensive Black-Box Function,”<br />
Journal of global optimization, Vol.13, 1998, pp. 455-492.<br />
[4] Matthias, S., “Computer Experiments and Global<br />
Optimization,” Ph.D Dissertation, Statistic and Actuarial<br />
Science Dept., University of Waterloo, Waterloo, Ontario,<br />
1997.<br />
[5] Kohonen, T., Self-Organizing Maps, Springer, Berlin,<br />
Heidelberg, 1995.<br />
[6] 大 林 茂 ,「ラフ 集 合 による 多 目 的 最 適 化 データマイニン<br />
グ」, 科 研 費 シンポ 原 稿 改 訂 版 (2006)<br />
http://www.ifs.tohoku.ac.jp/edge/j_pdf.html<br />
[7] A. Øhrn, ROSETTA Technical Reference Manual,<br />
Department of Computer and Information Science,<br />
Norwegian University of Science and Technology (NTNU),<br />
Trondheim, Norway, 2000.<br />
表 2 スイートスポット 決 定 属 性 に 対 するデータの 当 てはまり 数 が 8 までのルール<br />
ルール<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv2([40.69, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv9([*, 12.62)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 10<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv2([40.69, *)) AND dv3([8.88, 9.57)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv9([*, 12.62)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 10<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv3([8.88, 9.57)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv6([39.25, *)) AND dv9([*, 12.62)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 10<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv6([39.25, *)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv9([*, 12.62)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 10<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv2([40.69, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv6([39.25, *)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv9([*, 12.62)) AND dv10([*, 10<br />
10.58)) => Cluster(C6)<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv3([8.88, 9.57)) AND dv4([7.54, *)) AND dv6([39.25, *)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 9<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv2([40.69, *)) AND dv3([8.88, 9.57)) AND dv4([7.54, *)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 9<br />
dv3([8.88, 9.57)) AND dv4([7.54, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv6([39.25, *)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv2([40.69, *)) AND dv3([8.88, 9.57)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv8([12.82, 13.32)) AND dv9([*, 12.62)) => Cluster(C6) 8<br />
dv2([40.69, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv8([12.82, 13.32)) AND dv9([*, 12.62)) => Cluster(C6) 8<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv4([7.54, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv3([8.88, 9.57)) AND dv4([7.54, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv4([7.54, *)) AND dv6([39.25, *)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv9([*, 12.62)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv1([33.08, 39.30)) AND dv2([40.69, *)) AND dv4([7.54, *)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv9([*, 12.62)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv2([40.69, *)) AND dv3([8.88, 9.57)) AND dv4([7.54, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv2([40.69, *)) AND dv4([7.54, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv4([7.54, *)) AND dv5([29.65, 33.61)) AND dv6([39.25, *)) AND dv7([15.09, 15.83)) AND dv10([*, 10.58)) => Cluster(C6) 8<br />
dv の 引 数 は 各 設 計 変 数 の 区 間 を 示 し,*は 上 下 限 値 を 示 す. 左 に*を 含 めば 属 性 { 小 }, 右 なら{ 大 }である.C6 はスイートスポットのクラスタを<br />
示 す.<br />
数<br />
註 ) 本 論 文 のカラー 印 刷 が 可 能 な PDF ファイルを http://www.ifs.tohoku.ac.jp/edge/j_pdf.html に 掲 載 する.