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18 Miyazato Readers’ Forum次 に、 日 本 人 の 抱 くNS 信 仰 に 関 してだが、 鈴 木 (1999,2001) の 示 す 通 り、 西 洋 並 びに 英 語 やNSに 対 する 憧 れはエリート 的 イメージとして 広 く 受 け 入 れられており、この 問 題 を 解 決 するのは 容 易 ではない。 特 に、バトラー(2005) も 述 べているように、 日 本 のようなEFL 環 境 においては、 主 要 英 語 国 出 身 のNSによる「 本 物 」の 英 語 に 学習 者 をできるだけ 多 く 触 れさせるほうが 効 果 的 とするのが、 現 在 の 日 本 英 語 教 育 界 の 大 勢 の 見 方 であろう。しかし、Takada (2000, p. 23) によると、 学 習 者 やその 親 に 強く 見 られるNS 教 師 崇 拝 により、 第 二 言 語 取 得 の 理 論 や 最先 端 の 教 授 法 を 熟 知 している 熱 心 で 経 験 豊 富 なJTEでさえ、NS 英 語 教 師 の 前 では 見 劣 りしてしまうなど、 英 語教 育 の 現 場 でもこの 問 題 は 大 きな 影 響 を 及 ぼしている。そこで 重 要 になってくるのは、NNS 英 語 教 師 としての 適切 なアイデンティティー 確 立 であると 考 える。やみくもにNSと 競 合 したり、NSを 最 終 目 標 とするのではなく、NNS 英 語 教 師 としての 長 所 を 認 識 し、それを 授 業 に 活 用していくことである。 具 体 的 には、 英 語 のインプットを増 やすことは 重 要 だが、 最 近 の 傾 向 として 見 られる 完 全な 英 語 オンリーの 授 業 を 強 行 するより、 状 況 に 応 じて 母語 をうまく 取 り 入 れながら 授 業 を 行 うことも 大 切 なのではないか。 前 述 の 通 り、 学 生 の 心 理 やバックグラウンドなどの 学 習 者 の 心 理 面 ・ 学 習 面 や、 入 試 や 学 校 制 度 ・ 社会 規 範 などの 社 会 面 にも 精 通 し、 自 身 も 英 語 学 習 者 としての 経 験 を 持 つJTEは、 目 的 言 語 ・ 文 化 と 母 語 ・ 母 語 の文 化 をつなぐ 大 切 な 役 割 を 担 っている。NNSとしての 英語 力 やアイデンティティーを 卑 下 することなく、JTEだからこそできうることにも 目 を 向 け、 教 師 としての 指 導力 を 向 上 させていく 姿 勢 を 持 つことが 望 まれる。こうしたJTEの 取 り 組 みは、 学 習 者 や 社 会 のNS 信 仰を 軽 減 する 努 力 と 平 行 して 行 っていく 必 要 がある。そのために、 世 界 言 語 としての 英 語 教 育 を 示 していくのも、JTEの 役 目 であろう。 急 増 する 英 語 人 口 の 中 、これからは 英 語 を 母 語 としない 人 同 士 の 英 語 でのコミュニケーションが 益 々 増 えていくこと、そしてそれにより、イギリスやアメリカの 英 語 のみならず 多 様 な 英 語に 触 れていくであろう 事 を 踏 まえ、Takada (2000, p.23)も 指 摘 しているように、 特 有 のアクセントのある 外 国語 や 第 二 言 語 として 話 される 英 語 も 国 際 社 会 においては 十 分 通 用 することを 紹 介 することは、 学 習 者 に 現 実に 見 合 う 学 習 目 標 を 促 し、 結 果 として 彼 らの 自 信 を 高めることに 繋 がるであろう。また、NS-NNS 間 のコミュニケーションや 異 文 化 理解 にも 対 処 するべく、 日 本 の 教 室 内 に 多 少 なりとも多 文 化 学 習 環 境 を 作 り 出 すことも 一 案 であろう。まずは、 英 語 主 要 国 からだけでなく、Kachru (1992) の言 う、インドやシンガポールなど 植 民 地 化 により 第二 言 語 ・ 公 用 語 として 英 語 を 使 用 している 外 円 (OuterCircle) や 韓 国 、 中 国 などの 外 国 語 として 英 語 が 話 されている 拡 大 円 (Expanding Circle) の 国 々からも 有 能 な英 語 教 師 を 雇 用 し、 学 習 者 が 様 々な 英 語 や 文 化 に 触 れながら 学 習 していくことが 望 まれる。それにより、 教師 自 身 も 多 種 多 様 な 教 え 方 や 価 値 観 に 出 会 い、それが更 なる 教 師 としての 成 長 につながると 共 に、「JTEのNNS 英 語 」「ALTの 本 物 英 語 」というNS-NNS 間 の 二 極分 化 志 向 に 歯 止 めをかけ、 日 本 人 が 抱 くNS 信 仰 を 軽 減させることにも 貢 献 すると 推 察 する。終 わりにGraddol (1999) によると、もはや 外 国 語 として 英 語を 使 用 している 人 の 数 は、 英 語 を 母 語 や 公 用 語 として使 用 している 人 を、はるかに 上 回 っているという。また、Strevens (1992) は、 英 語 のNSは 世 界 の 英 語 人 口 のたった1/5と 見 積 もっており、Crystal (1997) に 至 っては、90 年 代 後 半 においてNSが3.7 億 人 、 英 語 を 第 二 言語 として 話 す 人 が3.7 億 人 、 英 語 を 外 国 語 として 話 す 人が7.5 億 人 という 具 体 的 数 値 を 提 示 している。 更 に、Canagarajah (1999) は、この 膨 大 な 英 語 人 口 を 支 える英 語 教 師 の80%がNNS 教 師 であると 述 べている。つまり、NNS 教 師 によってほとんどの 英 語 の 授 業 が 教 えられているのが 現 実 なのである。これに 鑑 み、OCを 含 めた 英 語 の 指 導 において、バトラー (2005) も 指 摘 する 通り、NS 教 師 だけに 頼 らずに 指 導 できる 体 制 作 りを 目 指すことが 肝 要 であり、 現 在 のようなJTEがNS 教 師 の 補佐 的 存 在 で 居 続 けることは、 急 速 に 変 化 している 英 語をとりまく 状 況 から 見 ても、 改 善 していかなくてはならないと 考 える。そのためにも、 英 語 を 特 定 の 国 民 が 所 有 する 言 語 としてではなく 世 界 言 語 としてみなすという 概 念 をJTE 自身 が 理 解 し、 積 極 的 に 学 習 者 に 教 育 していく 姿 勢 がわれわれJTEに 必 要 であろう。そしてNS 教 師 と 競 合 するのではなく、 互 いの 長 所 を 尊 重 し 短 所 を 補 い 合 いながら 共 生 ・ 協 力 を 目 指 すことが、この 莫 大 な 英 語 人 口 を支 えていく 上 で 重 要 であると 感 じている。 本 論 において 一 人 のJTEとして 日 本 社 会 にはびこるNS 信 仰 に 敢 えて 異 論 を 唱 えたが、これにより 日 本 における 英 語 教 育を 支 えているJTEの 意 識 や 在 り 方 が 再 考 され、よりよい学 習 ・ 教 育 環 境 になることを 期 待 してやまない。追 記 本 論 は、2006 年 8 月 7 日 開 催 の 第 14 回 関 東 地区 高 等 学 校 英 語 教 育 研 究 協 議 会 ワークショップにおいて、 筆 者 により 口 頭 発 表 された「 日 本 人 英 語 教 師Speakingにおける 役 割 と 展 望 」に 加 筆 および 修 正 したものである。参 考 文 献英 語 文 献Amin, N. (1999). Minority women teachers of ESL: Negotiatingwhite English. <strong>In</strong> G. Braine (Ed.), Non-nativeeducators in English language teaching (pp. 93-104).Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.Braine, G. (1999). From the periphery to the center:One teacher’s journey. <strong>In</strong> G. Braine (Ed.), Non-nativeeducators in English language teaching (pp. 15-28).Mahwah, NJ: Lawrence Erlbaum Associates.Canagarajah, A. S. (1999). <strong>In</strong>terrogating the “nativespeaker fallacy”: Non-linguistic roots, non-pedagogicalresults. <strong>In</strong> G. Braine (Ed.), Non-native educators inEnglish language teaching (pp. 77-92). Mahwah, NJ:Lawrence Erlbaum Associates.CLAIR. (The Council of Local Authorities for <strong>In</strong>ternationalRelations) (2003). The JET Programme 2003-2004. Tokyo: CLAIR.Cook, V. (1999). Going beyond the native speaker inlanguage teaching. TESOL Quarterly, 33, 185-209.Crystal, D. (1997). English as a global language. Cambridge:Cambridge University Press.Ferguson, C. A. (1992). Foreword. <strong>In</strong> B. B. Kachru (Ed.),The other tongue: English across cultures (pp. xiii-xvii).Urbana: University of Illinois Press.THE LANGUAGE TEACHER 31.6 • June 2007