21.09.2015 Views

スチールデザイン

No.22 「明治安田生命新東陽町ビル」 - JISF 一般社団法人日本鉄鋼連盟

No.22 「明治安田生命新東陽町ビル」 - JISF 一般社団法人日本鉄鋼連盟

SHOW MORE
SHOW LESS

You also want an ePaper? Increase the reach of your titles

YUMPU automatically turns print PDFs into web optimized ePapers that Google loves.

<strong>スチールデザイン</strong><br />

No.22<br />

一 般 社 団 法 人 日 本 鉄 鋼 連 盟<br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22 17


明 治 安 田 生 命 新 東 陽 町 ビル<br />

設 計 施 工<br />

竹 中 工 務 店<br />

編 集 委 員<br />

委 員 長 : 髙 梨 晃 一 ( 東 京 大 学 名 誉 教 授 )<br />

委 員 : 隈 研 吾 ( 建 築 家 )<br />

委 員 : 佐 々 木 睦 朗 ( 構 造 家 )<br />

委 員 : 手 塚 貴 晴 ( 建 築 家 )<br />

委 員 : 西 沢 立 衛 ( 建 築 家 )<br />

委 員 : 馬 場 璋 造 ( 建 築 評 論 家 )<br />

委 員 : 藤 澤 一 善 (JFE スチール)<br />

委 員 : 一 戸 康 生 ( 新 日 鐵 住 金 )<br />

委 員 : 金 子 悦 三 ( 新 日 鐵 住 金 )<br />

委 員 : 高 木 伸 之 (JFE スチール)<br />

委 員 : 北 芳 男 ( 神 戸 製 鋼 所 )


座 談 会<br />

巨 大 アトリウムを 中 心 に<br />

ステップフロアが 作 りだす<br />

大 きなオフィス 空 間<br />

菅 順 二 ( 竹 中 工 務 店 ・ 意 匠 )<br />

田 秀 樹 ( 竹 中 工 務 店 ・ 意 匠 )<br />

田 村 彰 男 ( 竹 中 工 務 店 ・ 構 造 )<br />

松 崎 裕 之 ( 竹 中 工 務 店 ・ 構 造 )<br />

岩 崎 和 義 ( 竹 中 工 務 店 ・ 施 工 )<br />

金 子 悦 三 ( 編 集 委 員 ・ 司 会 )<br />

東 京 都 江 東 区 にある 明 治 安 田 生 命 新 東 陽 町 ビルは、 保 険 業 務 の 事 務 センターと 研 修 所 、 研<br />

修 のための 宿 泊 施 設 の 機 能 をもつオフィスビル。 柱 のない 大 きな 執 務 スペースには、 大<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

トラスで 吊 られたアトリウムから 自 然 の 風 や 光 が 気 持 ちよく 差 し 込 み、 働 く 人 の 創 造 力 を<br />

かきたてる。 構 造 をそのまま 見 せるため、 鉄 の 特 性 を 生 かした 新 たな 技 術 にもチャレンジ。<br />

<br />

ゼネコンならではの 総 合 力 をいかんなく 発 揮 し、 意 匠 ・ 構 造 ・ 設 備 が 同 時 に 展 開 して 生 ま<br />

れた、 従 来 のオフィス 建 築 にないシンボリックな 空 間 を 実 現 している。<br />

<br />

<br />

<br />

新 しいオフィスのあり 方<br />

これまでに 類 をみない、 斬 新 で 空<br />

間 性 に 優 れたオフィス 建 築 ですが、<br />

建 設 に 至 る 経 緯 や 設 計 のコンセプ<br />

トを 最 初 にご 説 明 いただけますか。<br />

明 治 安 田 生 命 新 東 陽 町 ビルに 至 るま<br />

でに、いくつかオフィスのプロジェク<br />

トに 携 わってきましたが、 一 連 のテー<br />

マとして、 建 物 の 中 でも 全 体 を 見 渡 せ<br />

るような 全 体 可 視 性 を 作 り 出 すことと、<br />

また 創 造 的 な 空 間 を 作 るには、どれが<br />

最 適 かを 建 築 主 と 一 緒 に 検 討 しました。<br />

建 築 主 からは 低 層 でワンフロアの 中 に<br />

いろいろな 部 署 が 混 在 して 入 れる 床 面<br />

積 の 大 きいもの、その 中 でコミュニ<br />

<br />

基 準 階 平 面 図 1/800<br />

<br />

で 大 規 模 な 組 織 変 更 を 行 うということ<br />

<br />

菅 ●そうですね。これは、 先 ほどの 一<br />

<br />

<br />

ロアプランになっています。それだけ<br />

<br />

菅 ● 2004 年 に 竹 中 工 務 店 の 東 京 本 店<br />

自 然 通 風 と 自 然 光 を 取 り 入 れてオフィ<br />

ケーションをとりやすいものという 要<br />

だったので、 執 務 スペースを 約 100m<br />

貫 して 実 現 させようとしているコンセ<br />

でも、 建 物 の 中 心 に 向 かって 風 が 流 れ<br />

の 建 物 を 作 った 頃 から、オフィスのあ<br />

ス 環 境 の 改 善 を 図 ることに 取 り 組 んで<br />

望 がありましたので、その 結 果 、 低 層<br />

×30mの 無 柱 空 間 に、また4 階 から9<br />

プトを、 約 100m 角 の 大 きなスペース<br />

たり、 真 ん 中 の 吹 き 抜 けから 大 容 量 の<br />

り 方 やオフィス 環 境 について 考 えるよ<br />

きました。 従 来 の 均 質 なオフィスに 対<br />

1 棟 の 計 画 が 採 択 されました。10 万 m2<br />

階 のオフィス 階 は 各 フロアを4つに 分<br />

の 中 で 作 るにはどうすればいいかとい<br />

自 然 光 が 入 ってきたり、 当 初 のコンセ<br />

うになりました。その 中 で 感 じたのは、<br />

して、 風 や 光 や 目 で 見 るいろいろな 光<br />

弱 の 延 床 面 積 を 高 さ 約 55mの 中 に 収<br />

けて1.2mずつステップアップしなが<br />

う 工 夫 の 下 にできあがりました。<br />

プトがかなり 実 現 されました。また<br />

今 までのオフィススペースは 均 質 で 無<br />

景 に 変 化 を 与 え、オフィスの 中 に 揺 ら<br />

めるために、 建 物 全 体 が 約 100m 角 と<br />

ら 連 なるスパイラルフロアにしました。<br />

まずオフィスフロアの 平 面 計 画 につ<br />

ロの 字 型 の 執 務 スペース(フロアリン<br />

個 性 なものが 多 いのですが、 働 く 人 に<br />

ぎを 作 っていくことが、オフィス 環 境<br />

いう、 日 本 国 内 のオフィスの 中 でも 非<br />

さらに 中 央 に 大 きな 吹 き 抜 けを 設 けて、<br />

いてですが、 我 々はサービスリングと<br />

グ)は 各 フロアが 約 100m×30mの 大<br />

とっては、 均 質 ではない 環 境 の 空 間 の<br />

の 改 善 や 生 産 性 向 上 につながると 考 え<br />

常 に 大 きな 平 面 形 状 の 建 物 になってい<br />

全 体 が 見 渡 せるような 透 視 性 と、 自 然<br />

呼 んでいますが、 普 通 の 建 物 ではコア<br />

プレート2 枚 と 約 30m×30mの 小 プ<br />

ほうが 創 造 性 を 発 揮 する 場 になり 得 る<br />

たのです。<br />

ます。<br />

通 風 と 自 然 光 を 取 り 入 れることを 実 現<br />

としてビルの 中 心 に 置 かれることの 多<br />

レート2 枚 の 計 4 枚 で 構 成 されていて、<br />

のではないかということです。<br />

この 建 物 は、 東 京 都 江 東 区 の 東 陽 町<br />

この 巨 大 なスペースの 中 に、 隅 から<br />

しています。<br />

い 空 調 機 械 室 とエレベーター、 階 段 、<br />

それがリンゴの 皮 をむいたように 階 で<br />

という、 周 りが 住 宅 や 工 場 、オフィス<br />

隅 まで 見 渡 せるような 空 間 の 可 視 性 を<br />

トイレ 等 のサービス 機 能 をフロアの 一<br />

区 切 られることなくスパイラル 状 につ<br />

に 囲 まれた、 都 心 とは 少 し 違 う 環 境 の<br />

中 にあります。 今 回 の 計 画 に 至 るまで<br />

に、 超 高 層 、 分 棟 、それと 低 層 1 棟 で<br />

どのように 作 っていくか、それを 作 る<br />

ことによって 全 階 にわたってつながる<br />

ようなスペースの 連 続 性 ができ、それ<br />

レベル 差 をつけて<br />

視 線 を 通 す<br />

番 外 側 に 持 ってきました。そこから 内<br />

側 に 向 かって 順 に、 奥 行 き30mのフ<br />

ロアリングという 執 務 スペース、40m<br />

ながっていくような 工 夫 を 重 ねました。<br />

さらにそれを、 内 部 吹 き 抜 け 内 のフラ<br />

イングスロープでつないでいます。<br />

菅<br />

順 二 氏<br />

作 った 場 合 のケーススタディをして、<br />

環 境 上 の 問 題 や 我 々が 一 貫 して 進 めて<br />

きた、オフィス 全 体 が 仕 切 りのないコ<br />

ミュニケーションのとりやすい 空 間 、<br />

がいかに 仕 事 をする 環 境 の 中 に 生 かさ<br />

れていくかが 今 回 の 建 物 のメインテー<br />

マになっています。<br />

具 体 的 には、 建 築 主 がフレキシブル<br />

スパイラル 状 に 上 がっていく 床 面<br />

や 大 きなアトリウム、それも 外<br />

部 を 中 まで 取 り 込 んだような 形 は、<br />

今 までのオフィスであまり 例 がな<br />

いように 思 います。<br />

角 の 内 部 吹 き 抜 けのアトリウム(イン<br />

ナーボイド)、そして 中 心 に6 度 角 度<br />

を 振 った17m 角 の 外 部 吹 き 抜 け(アウ<br />

ターボイド)があるという 重 層 的 なフ<br />

なぜスパイラルにしたのですか。<br />

菅 ●ひとつは、100m 角 のものを 真 っ<br />

平 らに 作 ってしまうと、ほとんど 対 角<br />

4 <strong>スチールデザイン</strong> No.22<br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22 5


まで 見 通 すことはできません。ゴルフ<br />

場 である 程 度 見 通 すことができるのは、<br />

起 伏 があるからです。つまり、ワンフ<br />

ロア100m 角 の 中 にレベル 差 をつけて<br />

いかないと、 目 線 が 対 角 まで 通 らない<br />

ことになります。また、リンゴの 皮 の<br />

ようにフロアがつながっているほうが、<br />

何 階 にはどこの 部 署 と 切 って 考 えなく<br />

ていいので、 組 織 変 更 に 対 して 非 常 に<br />

フレキシブルだし、 部 署 や 職 位 で 区 切<br />

らないシームレスなレイアウトが 可 能<br />

です。<br />

あと、もうひとつスパイラルの 大 き<br />

なきっかけになっているのは、 大 プ<br />

レートと 小 プレートの 考 え 方 です。 大<br />

プレートには、 保 険 の 新 商 品 が 出 た 時<br />

のコンピューターバックアップソフト<br />

を 開 発 する 大 きな 部 署 が 入 り、 新 製 品<br />

が 出 る 直 前 には、その 部 署 はそれまで<br />

の 約 1.5 倍 の 人 数 に 拡 大 していくので<br />

す。このように 部 署 が 可 変 的 に 大 きく<br />

なったり 小 さくなったりするので、 小<br />

プレートはそれに 対 応 して 拡 張 できる<br />

スペースとして 考 えています。<br />

階 ごとに 区 切 られた 通 常 のプラン<br />

では、 大 プレート2 枚 に 対 してつなが<br />

る 小 プレートは2 枚 しかできませんが、<br />

階 で 区 切 られていないスパイラルフロ<br />

アにすると、 大 プレート2 枚 に 対 して<br />

小 プレートが3 枚 つながるので、 拡 張<br />

できる 可 能 性 が1.5 倍 に 膨 らむのです。<br />

そこがスパイラルに 隠 された、ひとつ<br />

のアイディアです。<br />

竹 中 工 務 店 の 設 計 施 工 ですから、<br />

意 匠 、 構 造 、 設 備 など、ゼネコン<br />

ならではの 総 合 力 がうまく 生 かさ<br />

れたのでしょうか。<br />

菅 ● 2004 年 に 竣 工 した 竹 中 工 務 店 東<br />

京 本 店 の 建 物 自 体 が、いわゆるコアタ<br />

構 造 上 のさまざまな 工 夫<br />

いうハイブリッド 材 を 使 ってこれを 解<br />

決 しています。プレビームは57 年 前<br />

イプの 従 来 のオフィスの 建 物 を 一 回 白<br />

紙 に 戻 して 考 えることから 始 まりまし<br />

構 造 設 計 の 概 要 とコンセプトをご<br />

紹 介 いただけますか。<br />

に 開 発 されたものです。 小 さな 梁 せい<br />

でスパンを 飛 ばすことができて、しか<br />

内 部 吹 き 抜 けから 執 務 スペースを 見 る 上 部 には 大 トラスの 端 部 が 見 える スパイラルフロア 概 念 図<br />

た。そこでまず 取 り 組 んだのが、 構 造<br />

の 架 構 体 として 一 番 合 理 的 なものはど<br />

田 村 ●この 建 物 の 特 徴 である、96.0m<br />

×28.8mの 無 柱 オフィス 空 間 、スパイ<br />

も 振 動 性 能 も 優 れたものです。 今 回 は<br />

コンクリートを 高 強 度 化 するなどの 改<br />

<br />

<br />

<br />

ういうものか 考 えることでした。もち<br />

ろんその 前 に、どういうスペースあり<br />

ラルフロア、 中 央 のアトリウムを 実 現<br />

させるためにさまざまな 技 術 を 用 いて<br />

善 をして 使 用 しました。<br />

2 番 目 に、 部 署 の 人 数 の 増 減 にフレ<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

きなのですが、そのスペースを 支 える<br />

には、コスト 的 にもあるいはスペース<br />

います。<br />

まず、 非 常 に 大 きな 無 柱 空 間 を 作 る<br />

キシブルに 対 応 するために、 意 匠 側 が<br />

階 高 を4 等 分 して1.2mくらいずつ 上<br />

的 にも 工 法 的 にも、どういう 構 造 にす<br />

ために 世 界 で 初 めて 楕 円 形 鋼 管 CFT<br />

がっていくスパイラルフロアを 提 案 し<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

ると 合 理 的 なのかをまず 押 さえて、そ<br />

れに 今 度 は 設 備 のシステムを 被 せて<br />

いって、それができあがると 結 果 的 に<br />

柱 を 採 用 して、 大 スパン 方 向 の 柱 剛 性<br />

を 確 保 しています。こちらは 法 的 なも<br />

のを 完 備 していなかったので 試 作 しな<br />

ていました。そうすると、 私 どもは 剛<br />

床 といっていますが、 通 常 建 物 の 床 は<br />

ワンフロア1 枚 なのでオフィスが4 階<br />

建 築 のインテリアになるという 進 め 方<br />

がら 進 めました。<br />

から9 階 で 剛 床 が6 個 あればいいわけ<br />

<br />

<br />

<br />

をしていきました。つまり 建 築 のプラ<br />

ンニングと 構 造 、 設 備 を 最 初 のスター<br />

さらに、28.8mのスパンを 飛 ばすに<br />

は、 階 高 4.8mに 対 して 直 天 井 の 梁 下<br />

ですが、これがワンフロア4 枚 になる<br />

と4 倍 になります。また、 床 を 分 ける<br />

<br />

<br />

ト 地 点 から 同 時 に 発 想 して 進 めていく<br />

のです。 今 回 は 当 初 から、かなりダイ<br />

3.4mで、 天 井 の 懐 は1.4mしかありま<br />

せん。つまり、この 約 30mを 梁 せい<br />

と 建 物 がバラバラになってしまうので、<br />

剛 性 を 高 めるために 床 と 床 の 間 に 鉄 板<br />

ナミックに、 作 りたいスペースと 構 造<br />

約 1mで 飛 ばさなくてはなりませんで<br />

の 耐 震 壁 を 縦 に 入 れて、 下 から 上 まで<br />

と、それに 被 せて 設 備 のシステムを 同<br />

した。 通 常 の 鉄 骨 梁 だとかなり 振 動 が<br />

剛 床 の 一 体 化 を 図 る 工 夫 をしています。<br />

時 に 展 開 して 進 めることができました。<br />

心 配 になりますが、 鉄 骨 梁 の 下 フラン<br />

3 番 目 に、 全 体 の 可 視 性 、あるいは<br />

南 北 断 面 図 1/800<br />

ジにコンクリートを 打 つプレビームと<br />

自 然 通 風 や 光 を 取 り 入 れることについ<br />

6 <br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22<br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22 7


プレスベンドで 成 形 した 鋼 材<br />

2つの 鋼 材 を 合 わせて 楕 円 に<br />

楕 円 柱 の 長 軸 方 向 の 頂 点 に 現 れるビードの 跡<br />

<br />

通 常 は 真 円 の CFT 柱 (コンクリー<br />

ト 充 填 鋼 管 柱 )が 性 能 面 でもいい<br />

と 言 われていますが、 楕 円 にする<br />

ために 性 能 面 で 確 認 されたこと、<br />

あるいは 加 工 上 苦 労 されたことは<br />

ありますか。<br />

もうひとつは、あまり 厳 しい 曲 率 だ<br />

と 告 示 に 適 合 しないのです。 建 築 基 準<br />

法 関 係 告 示 2464 号 に 板 厚 の10 倍 以 上<br />

の 曲 率 でないといけないとあって、そ<br />

れを 満 足 しなければなりません。でも<br />

つっかえ 棒 のようなものを 入 れて 作 っ<br />

ています。<br />

もうひとつは、できた 鋼 管 を 組 み 立<br />

てる 時 、 楕 円 をロボット 溶 接 できるプ<br />

ログラムがなかったことです。 楕 円 は<br />

田 村 ●CFT 柱 は、 中 のコンクリート<br />

その 曲 率 自 体 の 形 が 意 匠 的 に 許 される<br />

ちゃんと 関 数 に 乗 っているので、すぐ<br />

が 周 りの 鉄 板 で 拘 束 されることによっ<br />

ものなのか、 意 匠 の 担 当 者 を 工 場 に 連<br />

にプログラミングできると 思 ったので<br />

て 耐 力 が 出 るので、 楕 円 の 場 合 の 拘 束<br />

れていって 一 緒 に 確 認 しました。<br />

かく<br />

すが、 実 はなかなか 難 しくて……。 角<br />

効 果 を 実 験 で 確 認 しました。 基 本 的 に<br />

菅 ● 我 々は、ビードは 楕 円 の 短 軸 方 向<br />

とう<br />

藤 というファブリケーターに 協 力 して<br />

は 楕 円 の 長 軸 方 向 の 拘 束 効 果 で 安 定 し<br />

に 出 したかったのですが、 結 果 的 に 長<br />

もらい、 円 のプログラムをもとに 楕 円<br />

た 耐 力 が 保 てることがわかりました。<br />

軸 方 向 の 頂 点 にして 良 かったのは、 平<br />

のプログラムを 記 憶 させながら 溶 接 し<br />

製 作 については、 楕 円 形 の 鋼 管 は 前<br />

たい 面 や 球 面 だとグラインダーで 削 ぎ<br />

てもらいましたが、 曲 率 の 変 わるとこ<br />

例 のないものなので、いろいろな 鋼 管<br />

落 とさない 限 りはビードの 跡 を 消 すこ<br />

ろで 欠 陥 が 出 てしまい、うまくできま<br />

<br />

メーカーに 相 談 しました。そうした 時<br />

とができませんが、 楕 円 の 頂 点 だと、<br />

せんでした。そこで、 楕 円 形 鋼 管 の 自<br />

ある 方 が、 当 社 の 東 京 本 店 の 柱 を 作 っ<br />

うまくパテ 処 理 をしてあげれば 削 り 落<br />

動 溶 接 プログラムを 特 別 に 一 から 作 っ<br />

軸 組 図<br />

無 柱 オフィス 空 間 、スパイラルフロア、 中 央 アトリウムを 実 現 するためのさまざまな 構 造 の 技 術 的 要 素 が 各 所 に 見 られる<br />

た 兵 庫 県 ・ 伊 丹 の 佐 々 木 製 鑵 工 業 とい<br />

とさなくても 頂 点 が 少 し 尖 ったような<br />

てもらったところ、 結 果 的 に 非 常 に 生<br />

う 鋼 管 メーカーが 意 欲 的 で、しかも 鋼<br />

形 になるだけで、きれいに 消 せるのです。<br />

産 性 が 高 くなり、 全 体 のコストも 圧 縮<br />

てです。 中 央 の 外 部 吹 き 抜 け(アウター<br />

う 地 盤 改 良 工 法 を 用 いたパイルドラフ<br />

円 の 柱 を 提 案 しました。 長 方 形 の 柱 に<br />

材 を 端 から 順 に 丸 くしていくプレスベ<br />

田 村 ● 実 際 に 鋼 管 を 架 構 として 組 み 立<br />

することができました。もちろん 楕 円<br />

ボイド)を 囲 むガラスのカーテンウォー<br />

ト 基 礎 としました。 実 際 に、 東 日 本 大<br />

すればいいのではないかという 話 もあ<br />

ンドで 作 ることができるので 相 談 して<br />

てるときに、いくつかポイントがあり<br />

を 作 るのは 手 間 がかかるので、コスト<br />

ルと、それに 沿 うように 取 り 付 けられ<br />

震 災 でも 液 状 化 は 起 きませんでした。<br />

るのですが、もともと 意 匠 側 から 丸 柱<br />

みてはどうかと 助 言 をくださいました。<br />

ました。<br />

の 面 は 非 常 に 厳 しいのですが、 生 産 性<br />

たフライングスロープは、 浮 いている<br />

で 優 美 なものという 要 望 がありました<br />

そこで 同 社 に 声 をかけたら 非 常 に 協 力<br />

ひとつは 精 度 です。 作 るとき 楕 円<br />

を 上 げることによってトータルとして<br />

ようなイメージを 実 現 するために、 最<br />

ので、 楕 円 になりました。<br />

的 で、 実 大 の 楕 円 形 鋼 管 を 製 作 までし<br />

がひしゃげてしまうのを 避 けるため、<br />

合 理 性 を 十 分 に 確 保 することができま<br />

上 階 のトップライトに 大 きなトラスを<br />

設 けて、そこから 全 部 吊 っています。<br />

また、 吊 り 部 材 の 寸 法 を 小 さくするこ<br />

とで、より 浮 いたように 見 せています。<br />

最 後 に、 地 震 に 対 する 建 物 全 体 の 構<br />

造 として 免 震 構 造 を 採 用 しています。<br />

世 界 初 の<br />

楕 円 形 鋼 管 CFT 柱<br />

採 用 されたいろいろな 技 術 につい<br />

て、ひとつずつお 伺 いします。CFT<br />

柱 (コンクリート 充 填 鋼 管 柱 )は<br />

なぜ 楕 円 形 にしたのでしょうか。<br />

菅 ● 楕 円 柱 は 列 柱 になると 意 外 なデザ<br />

イン 効 果 が 現 れました。 丸 柱 とは 違 っ<br />

て、ちょっと 言 い 過 ぎかもしれません<br />

が、ギリシャのエンタシスのような、<br />

ああいう 力 学 的 な 美 しさが 出 てくるの<br />

です。 実 際 に 建 物 の 入 口 の 柱 は 非 常 に<br />

てくれました。<br />

実 大 のものを 製 作 したのは、その 仕<br />

上 がりが 意 匠 側 の 満 足 のいくものかを<br />

確 認 するためでした。ひとつは 溶 接 に<br />

ついてです。 鋼 材 をプレスベンドで 管<br />

状 に 成 形 したものを、2ヵ 所 で 継 いで<br />

JASS6に 準 拠 して 外 径 ±3mm 以 下 と<br />

いう 厳 しい 精 度 基 準 で、 楕 円 の 中 に<br />

した。 合 理 的 な 生 産 性 を 踏 まえること<br />

も、 設 計 部 としての 使 命 なのです。<br />

さらに、この 敷 地 は 液 状 化 が 起 こる 危<br />

田 村 ● 楕 円 形 鋼 管 CFT 柱 は、 大 プレー<br />

細 く 見 えます。<br />

溶 接 するのですが、 意 匠 側 は 曲 率 の 大<br />

険 性 の 高 い 場 所 なので、TOFT 工 法 ( 耐<br />

トと 小 プレートで 構 成 されるロの 字 型<br />

田 村 ● 実 は 楕 円 は、 設 計 の 菅 がたまた<br />

きい 鋼 材 を2つ 重 ねて 溶 接 することを<br />

液 状 化 格 子 状 深 層 混 合 処 理 工 法 )とい<br />

の 執 務 スペース(フロアリング)の 外<br />

ま「 楕 円 でできないかな」とつぶやい<br />

イメージしていました。それは、 曲 率<br />

側 と 内 側 に 配 置 しました。フロアの 大<br />

たんです。やはり、 柱 の 間 隔 が4.8m<br />

の 小 さい 鋼 材 を 重 ねると、 楕 円 の 頂 点<br />

スパン 方 向 が28.8mに 対 し、 外 側 の<br />

と 狭 いので、 丸 柱 だと 存 在 感 が 大 きく<br />

に 溶 接 棒 が 溶 けた 跡 (ビード)があり、<br />

列 柱 の 間 隔 は4.8mです。<br />

なってしまうところを、 極 力 見 付 を 小<br />

それが 室 内 側 に 出 ないようにするため<br />

楕 円 は 長 軸 方 向 と 短 軸 方 向 で 断 面 性<br />

さくできないかという 発 想 から 楕 円 に<br />

でした。しかし、 曲 率 が 大 きくなるよ<br />

能 がまったく 違 います。30mの 大 スパ<br />

しようと 話 が 出 たのですね。これが、<br />

うに 鋼 材 をプレスベンドしていくと、<br />

ン 方 向 は、 負 担 が 大 きいため 楕 円 の 長<br />

楕 円 の 断 面 性 能 からしても 合 理 的 だっ<br />

工 作 機 械 の 金 型 が 当 たってしまい 難 し<br />

軸 方 向 の 断 面 性 能 が 有 効 です。そこで、<br />

たので、 使 ったことのない 楕 円 にトラ<br />

いことがわかり、 曲 率 の 小 さいものを<br />

田 村 彰 男 氏<br />

大 スパン 方 向 への 剛 性 確 保 のために 楕<br />

イしてみることになりました。<br />

重 ねて 溶 接 することになりました。<br />

柱 のない 執 務 空 間<br />

8 <strong>スチールデザイン</strong> No.22<br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22 9


大 スパンを 実 現 した<br />

プレビーム<br />

プレビームとはどういう 機 構 のも<br />

のなのか 教 えてください。<br />

松 崎 ● 基 本 的 には、 鉄 骨 梁 のH 形 鋼<br />

の 下 フランジにコンクリートを 巻 き<br />

付 けてハイブリッド 材 にすることに<br />

よって、30mの 大 スパンを 振 動 もた<br />

わみも 小 さく 飛 ばそうというもので<br />

す。 通 常 スパンが30mもあると 下 端<br />

に 引 っ 張 りが 出 るので、そのままでは<br />

コンクリートにヒビが 入 ってしまい<br />

ます。そのため、もともとの 鉄 骨 梁 に<br />

むくりを 入 れておき、そこに 荷 重 をか<br />

けて 平 らにして、 下 フランジにコンク<br />

リートを 打 ちます。 最 後 に 荷 重 を 除 去<br />

すると 下 にプレストレスが 入 り、プレ<br />

ビームが 完 成 します。 実 はこれは57<br />

年 前 に 開 発 された 橋 梁 の 技 術 で、それ<br />

が 今 回 のケースに 非 常 にぴったりな<br />

のではないかということで 使 わせて<br />

もらいました。<br />

プレビームにすると、 鉄 骨 の 梁 に<br />

比 べてどの 程 度 梁 せいは 小 さくな<br />

りますか。<br />

田 村 ●かなり 小 さくなりますね。スパ<br />

ン30mですと 梁 せいはその20 分 の1<br />

として1.5mですが、 実 際 には1mくら<br />

いです。プレビームのコンクリートを<br />

入 れても1.1mくらいですので、かな<br />

り 天 井 高 を 大 きくすることができます。<br />

<br />

橋 梁 等 で 利 用 されている 技 術 のよ<br />

うですが、 建 築 ではなかなか 使 う<br />

チャンスがないのでしょうか。<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

執 務 室 断 面 詳 細 図 1/150<br />

<br />

<br />

松 崎 ●そうですね。この 場 合 、 工 場 で<br />

プレストレスの 加 工 をしなくてはなり<br />

ません。また、 運 べる 長 さが 決 まって<br />

いますので、 極 力 長 くして 運 んできま<br />

した。 実 は28.8mの 梁 の 両 端 部 には<br />

鉄 骨 のブラケットが6mずつ 出 ていま<br />

す。<br />

菅 ●プレビームは、 工 場 から 現 場 に 鋼<br />

材 として 運 ばれてくるときにも、 上 む<br />

くりが10mmくらい 残 った 状 態 なの<br />

です。 現 場 では、 鉄 骨 梁 の 下 フランジ<br />

にコンクリートを 打 った 中 央 部 と 両 端<br />

部 のブラケットを 組 み 立 てながら、 一<br />

本 の 梁 として 水 平 になるように 管 理 し<br />

なくてはならなかったので、 現 場 は 相<br />

当 苦 労 していると 思 います。<br />

岩 崎 ● 最 終 的 には、プレビームの 上 に<br />

載 るスラブと 仕 上 げの 重 量 でフラット<br />

になるようにしています。 今 、 菅 が 説<br />

明 したように、プレビームが 中 央 部 と<br />

両 端 部 に 分 かれ、ジョイントがあった<br />

ので、それも 利 用 しながらむくりを 管<br />

理 して 組 み 立 てていきました。<br />

床 は 一 般 的 なデッキではなくプレ<br />

ストレスをかけたコンクリートパ<br />

ネルのスパンクリートを 使 ってい<br />

るのですか。<br />

田 村 ●そうですね、スパンクリートの<br />

上 にコンクリートを 打 設 する 合 成 床 工<br />

法 を 使 用 しました。この 建 物 には、 普<br />

通 は 大 梁 の 間 にあるような 小 梁 があり<br />

ません。<br />

松 崎 ● 柱 とプレビームを4.8mの 間 隔<br />

で 配 置 していますが、これはよく 考 え<br />

た 寸 法 で、 結 果 的 にスパンクリート<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

プレビームを 現 場 で 組 み 立 てる<br />

1 枚 で 載 せることができました。もと<br />

もとこの 建 物 のモジュールは3.2mで<br />

す。それで 最 初 はその3 倍 の9.6mで<br />

梁 を 架 けるとどうなるかを 検 証 したの<br />

ですが、それだと 大 梁 が 非 常 に 大 きく<br />

なってしまい、さらに 小 梁 も 入 れなく<br />

てはなりませんでした。2 倍 の6.4mで<br />

もやはり 大 梁 が 非 常 に 大 きくなって 厳<br />

しかったのです。しかし3.2mにして<br />

しまうと 今 度 は 柱 がたくさんありすぎ<br />

てよくない……。そこで 出 てきたのが、<br />

9.6mの 半 分 の4.8mという 寸 法 なので<br />

す。<br />

田 ● 階 高 も4.8mなので、ちょうど<br />

4.8mのキューブになっています。<br />

田 村 ● 梁 の 間 隔 4.8mを 厚 さ 120mm<br />

のスパンクリートで 飛 ばして、その<br />

上 に80mmのコンクリートを 打 つと、<br />

長 大 スパンに 耐 えられ 小 梁 なしででき<br />

るわけです。 小 梁 は 床 を 受 ける 役 目 も<br />

ありますが、 横 補 剛 の 役 目 もあります。<br />

ところが 大 梁 をプレビームにしている<br />

ので、 下 フランジに 補 強 ができ、 横 補<br />

剛 は 要 らないのです。そうすると 施 工<br />

もすごく 楽 で、 小 梁 を 付 けるための 部<br />

品 がなくなるし、スパンクリート 合 成<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

2 階 エントランスホール 大 トラスから 吊 られた 中 央 外 部 吹 き 抜 けのガラス 底 部 を 見 る<br />

床 の 上 にいろいろな 資 材 を 置 くことも<br />

できます。つまり、 施 工 上 も 構 造 上 も<br />

意 匠 にもすごく 合 理 的 です。<br />

小 梁 のない、これだけの 大 スパン<br />

床 組 みは 壮 観 ですね。<br />

菅 ● 設 備 の 面 でも、フロアの 外 側 の 機<br />

械 室 からプレビームの 脇 にダクトを 延<br />

ばしていますが、 小 梁 がないので 邪 魔<br />

がなく 吹 き 出 し 部 までダクトを 伸 ばす<br />

ことができました。<br />

松 崎 ● 非 常 にフレキシブルなので、 設<br />

備 更 新 もきっと 楽 だと 思 います。<br />

天 井 はスパンクリートの 下 地 のま<br />

まとなっているのでしょうか。<br />

田 ● 直 天 井 ですが、 吸 音 のために 岩<br />

綿 吸 音 板 を 張 りました。プレビームの<br />

下 フランジのコンクリート 部 は 露 出 し<br />

ています。<br />

変 位 量 を 管 理 しながら 施 工<br />

中 央 の 吹 き 抜 け 部 分 は 張 弦 梁 構 造<br />

で 支 えられていますが、 張 弦 梁 構<br />

造 を 建 築 のオフィスビルで 使 うこ<br />

とは 珍 しいのではないでしょうか。<br />

松 崎 ●もともと 意 匠 設 計 側 から、 構 造<br />

を 見 せるデザインにしたいというコン<br />

セプトがあったので、 普 通 のH 形 鋼 な<br />

どの 鉄 骨 を 使 って 作 るのではあまりに<br />

も 面 白 くないということになりました。<br />

そこで、 上 弦 材 はボックス 断 面 にして、<br />

下 弦 材 はダブルプレートと 呼 んでいる<br />

平 型 のプレート、それもSA440Bとい<br />

う 高 強 度 鋼 材 を 使 って、 下 から 見 上 げ<br />

た 時 になるべく 細 く 見 えるようにしま<br />

した。 斜 材 もタイロッドなどで 結 んで、<br />

見 せるデザインを 意 識 しました。<br />

それから、 吹 き 抜 け 自 体 は 約 40m 角 、<br />

高 さが 約 30mあり、そこに8 台 の 大<br />

トラスを 井 桁 状 に 架 け 渡 して、 中 央 の<br />

外 部 吹 き 抜 けを 囲 むガラスのカーテン<br />

ウォールを 支 えています。さらに、 外<br />

部 吹 き 抜 けのガラス 底 部 とスパイラル<br />

フロアをショートカットするフライン<br />

グスロープ、これら 全 部 を 上 の 大 トラ<br />

スからタイロッドで 吊 っています。こ<br />

れは 非 常 に 複 雑 な 構 造 で 設 計 自 体 も 大<br />

変 でしたが、 施 工 ではたわみを 管 理 し<br />

ながら 進 めたので 苦 労 したと 思 います。<br />

どのように 施 工 されたのでしょう。<br />

岩 崎 ●ベント 構 台 という 橋 梁 でよく 使<br />

う 仮 受 け 支 柱 を 使 って 組 み 立 てました。<br />

実 は、この 張 弦 梁 は、 仕 上 げを 含 め<br />

た 施 工 段 階 で 自 重 によって 最 大 54mm<br />

ほどたわむことが 解 析 で 出 ていたので、<br />

その 変 位 量 をいかに 制 御 するか 工 夫 し<br />

ながら 作 りました。 手 順 としては、 最<br />

初 にベント 構 台 を 用 いて3 階 の 外 部 吹<br />

き 抜 け 底 部 を 作 り、さらにベント 構 台<br />

を 組 み 立 て、その 上 に 周 りの 回 廊 を 順<br />

次 載 せながら 上 に 積 み 上 げていきまし<br />

た。 回 廊 の 最 上 階 まで 行 ったら、そこ<br />

から 大 トラスを 支 持 して、 大 トラスを<br />

組 み 立 てて 架 構 系 を 作 りました。<br />

岩 崎 和 義 氏<br />

10 <strong>スチールデザイン</strong> No.22<br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22 11


で、 実 は 上 下 階 の 連 携 がちゃんとでき<br />

ているのです。そうすると、この 建 物<br />

は 免 震 構 造 なので 剛 体 変 形 はしますが、<br />

その 中 でさらに 普 通 の 免 震 構 造 よりは<br />

上 下 階 の 連 成 があって、うまく 力 が 伝<br />

わるのではないかと 考 えました。これ<br />

は 立 体 解 析 で 確 認 しています。<br />

松 崎 ●この 建 物 は、 建 築 基 準 法 上 では<br />

12 階 建 てですが、スパイラルフロア<br />

であるために 実 は 構 造 設 計 上 では30<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

階 建 ての 建 物 と 同 等 の 設 計 を 行 ってい<br />

るのです。<br />

免 震 構 造 では 上 部 構 造 が 重 くて 固<br />

いほうが 免 震 効 果 が 得 られやすい<br />

と 思 いますが、 鉄 骨 造 で 作 るため<br />

には 水 平 剛 性 を 非 常 に 固 くする 必<br />

要 があったのでしょうか。<br />

田 村 ● 実 は、 最 初 はこの 建 物 を 鉄 筋 コ<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

ンクリート 造 で 作 りたいと 考 えていま<br />

した。それは、おっしゃるように、 免<br />

<br />

<br />

中 央 の 外 部 吹 き 抜 けと 大 小 の 執 務 スペースをつなぐフライングスロープ<br />

震 構 造 には 剛 な 構 造 が 適 しているから<br />

です。しかし 鉄 筋 コンクリート 造 では<br />

<br />

<br />

<br />

工 程 が 間 に 合 わないことになり、 工 期<br />

トラスの 詳 細 図<br />

最 後 に 下 のベント 構 台 を 解 体 する<br />

ということですか。<br />

岩 崎 ● 全 部 組 み 立 ててしまうと、たわ<br />

まらないのですね。ですから、トラス<br />

を 約 50mmむくっておいて、それが<br />

実 際 にうまくいくかをカーテンウォー<br />

ザインにしていきました。それで、 見<br />

せる 鉄 骨 になったと 思 います。そうい<br />

うジョイントも 特 注 で 作 っています。<br />

の 短 い 鉄 骨 造 にシフトしていったので<br />

す。<br />

そうすると、 鉄 骨 造 でいかに 免 震 効<br />

<br />

みを 管 理 するのが 難 しいことがわかっ<br />

ル 工 事 の 前 に 検 証 しました。 現 場 所 長<br />

菅 ●この 吹 き 抜 けは、 吊 り 下 げること<br />

果 を 出 すか 考 えなければなりません。<br />

ていました。ですから、 大 トラスの 部<br />

の 提 案 で 各 40トンの 重 りを4 個 載 せ<br />

だけは 決 まっていたのですが、その 方<br />

そのためには 剛 なものにしなくてはな<br />

分 、3 階 の 外 部 吹 き 抜 け 底 部 、 回 廊 の<br />

フライングスロープという3つに 大 き<br />

て、 実 際 にそれが1 個 ずつ 載 ったとき<br />

の 計 算 値 と 実 測 値 から、 想 定 していた<br />

法 については 最 初 いろいろな 案 があり<br />

ました。その 段 階 から 意 匠 も 話 し 合 い<br />

らないので、 楕 円 のCFT 柱 やプレビー<br />

ムを 考 え、さらに 外 側 にブレースを 入<br />

<br />

く 要 素 を 分 けて、 仮 設 をはずしていき<br />

ました。 大 トラスをジャッキダウンし<br />

て、その 後 ロッドで 回 廊 の 部 分 を 吊 っ<br />

変 位 量 が 妥 当 なことが 確 認 できたので、<br />

あとからカーテンウォールを 取 り 付 け<br />

ていきました。<br />

に 入 り、デザイン 的 にも 満 足 のいく 架<br />

構 を 検 討 した 結 果 、 最 後 に 残 ったのが<br />

今 回 の 案 でした。<br />

れる 外 殻 ブレース 構 造 にすることに<br />

よって、かなり 固 くできることを 確 認<br />

しました。それで 免 震 構 造 にフィット<br />

<br />

<br />

てさらに 下 げ、 最 後 に 平 型 のプレート<br />

で 外 部 吹 き 抜 け 底 部 を 吊 り 下 げたとい<br />

うように、 順 次 、 変 位 量 を 管 理 しなが<br />

ら 建 物 を 作 りました。<br />

田 村 ●やはり、 解 析 した 結 果 と 実 際 が<br />

それは 仕 上 げの 精 度 を 守 るためで<br />

もあり、 張 弦 梁 の 応 力 の 配 分 のよ<br />

うなことも 関 係 するのでしょうか。<br />

松 崎 ●そうですね。 張 弦 梁 の 施 工 手 順<br />

には 非 常 に 気 を 使 って、 実 際 にできあ<br />

鉄 骨 造 で 免 震 効 果 を 出 す<br />

スパイラル 状 のフロアでは 地 震 力<br />

はどのように 作 用 しますか。<br />

するような 架 構 にしていった 流 れがあ<br />

ります。<br />

この 建 物 は、 楕 円 の CFT 柱 とプレ<br />

ビームに 加 えて、 外 側 に K 形 ブレー<br />

スが 入 っているのですね。<br />

井 桁 状 に 配 置 したトラスの 概 略 図<br />

違 っていると、 大 トラスからすべて 吊<br />

がるまで1 年 間 くらいは 週 に1 回 作 業<br />

田 村 ● 地 震 力 もスパイラル 状 に 伝 わっ<br />

松 崎 ● 座 屈 補 剛 ブレースが 各 所 に 配 置<br />

り 下 げているので、 仕 上 げもうまく 納<br />

所 で 定 例 会 議 を 行 いました。<br />

ていくと 考 えています。 通 常 の 建 物 は<br />

してあります。<br />

岩 崎 ● 構 造 体 と 仕 上 げは 基 本 的 に 分 け<br />

ワンフロアで 完 結 しているので、その<br />

田 村 ●それは 鋼 管 の 中 にH 形 鋼 が 入 っ<br />

て、 構 造 体 の 変 形 を 済 ませてから 仕 上<br />

力 はワンフロアごとに 処 理 されて 下 に<br />

て 座 屈 補 剛 をするものですが、 座 屈 補<br />

げの 関 係 のユニットを 付 けていく 手 順<br />

伝 わります。スパイラルフロアは、1<br />

剛 型 にしたのは 細 くしたかったからで<br />

で 構 築 していきました。<br />

フロアが4つに 分 かれ1/4 階 (1.2m)<br />

す。 座 屈 の 性 状 を 抑 えることで 細 いブ<br />

松 崎 裕 之 氏<br />

張 弦 梁 の 下 端 にピン 構 造 になって<br />

いるところがありますね。<br />

松 崎 ● 鋳 鋼 を 使 ったりして 理 想 的 なデ<br />

ずつステップアップしていきますが、<br />

床 と 床 の 間 に1.2mの 鋼 板 耐 震 壁 が<br />

あって、 床 、 耐 震 壁 、 床 …、とリンゴ<br />

の 皮 をむいたようにつながっているの<br />

レースができるのです。<br />

スパイラルフロアに 入 れた 耐 震 壁<br />

も 水 平 剛 性 を 高 めているのでしょ<br />

うか。<br />

ベント 構 台 を 使 っ<br />

てトラスを 組 み 上<br />

げる<br />

12 <strong>スチールデザイン</strong> No.22<br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22 13


況 としては、「3.11」の 時 は、 光 庭 の 主<br />

<br />

だった 構 造 体 のジャッキダウンが 終<br />

<br />

わって、ちょうどベント 構 台 を 解 体 す<br />

<br />

<br />

る 最 終 日 でした。 地 震 により、 地 下 の<br />

クス 本 社 (1939 年 )は 天 井 が 非 常 に 高<br />

くて、 吹 き 抜 け 空 間 の 中 で 仕 事 をして<br />

います。オフィスでありながら、 構 造<br />

的 にも 象 徴 性 を 持 たせた 空 間 の 例 が<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

免 震 機 構 も 基 本 的 には 動 いていまし <br />

<br />

た。 建 物 には 大 きな 被 害 はほとんどあ<br />

あったわけです。それがいつの <br />

間 にか、<br />

<br />

<br />

そういうスペースが 持 つ 空 間 の 演 出 性<br />

<br />

<br />

<br />

3 階<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

10 階<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

りませんでしたが、 光 庭 に 取 り 付 ける<br />

エレベーターやガラス、ほかにもグラ<br />

<br />

スウールや 電 線 などの 資 材 関 係 が 入 っ<br />

てこない 状 況 で、 工 程 が 一 部 最 大 2ヵ<br />

月 くらい 後 ろ 倒 しになりました。 片 や、<br />

建 築 主 側 の 本 社 機 能 を 移 転 する 日 程 は<br />

<br />

<br />

ずらすことができません。<br />

がどんどん 薄 まっていき、 割 と 無 個 性<br />

<br />

な 空 間 がオフィスの 歴 史 の 中 でずっと<br />

<br />

<br />

<br />

続 いてきました。 我 々は、そういう 昔<br />

のオフィスが 持 っていた 空 間 性 、 空 間<br />

<br />

<br />

の 象 徴 性 を 取 り 戻 したかったので、あ<br />

えてこのように 構 造 が 求 心 性 を 持 って<br />

見 えてくるようなものを 作 りたかった<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

この 建 物 の 用 途 が 保 険 業 務 の 事 務<br />

センターですから、BCP( 事 業 継<br />

続 計 画 )に 対 して 意 識 が 高 いと 思<br />

いますが、 建 築 主 から 何 か 要 望 は<br />

ありましたか。<br />

のです。<br />

では、なぜ 象 徴 性 が 必 要 なのかとい<br />

うと、 初 期 の 頃 のオフィスは、 経 営 者<br />

が 従 業 員 をいかにコントロールしやす<br />

い 空 間 を 作 るかが 重 視 され、それが 結<br />

<br />

1 階 の 食 堂 と 外 部 テラスを 見 る<br />

このプロジェクトではありません<br />

が、 鉄 鋼 メーカーに 大 臣 認 定 を 取 って<br />

ば、 手 に 触 れるような 小 さいスケール<br />

のドア 枠 やサッシにしても、 鉄 の 曲 げ<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

田 ● 建 築 主 は 丸 の 内 に 本 社 がありま<br />

すが、 全 国 の 保 険 業 の 事 務 センターは<br />

ほとんどこの 建 物 に 集 約 していますか<br />

果 的 に 吹 き 抜 けにつながり、 上 から 統<br />

治 ができるような 空 間 になっていたの<br />

です。でも 我 々がやろうとしたのはそ<br />

もらった 鉄 の 無 垢 柱 を8 年 くらい 前 か<br />

ら 使 っています。 通 常 は 杭 に 使 うスパ<br />

イラル 鋼 管 というものを、 地 上 の 柱 に<br />

物 ではなくて 無 垢 材 で 作 ったものは、<br />

見 た 目 は 同 じでも 空 間 に 与 える 影 響 が<br />

触 ってみるまでもなく 違 うのです。こ<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

ら、こちらの 建 物 は 地 震 があっても 常<br />

うではなくて、ここで 働 いている 人 た<br />

使 ったりもしています。そのように 非<br />

れを 今 回 のような 大 きい 空 間 で 架 構 体<br />

に 動 き 続 けることが 要 求 条 件 でした。<br />

ちが、 一 日 の 中 で 一 番 長 くいる 空 間 と<br />

常 に 自 由 な 発 想 で、 構 造 デザインも 生<br />

として 見 せられるようにデザインする<br />

<br />

<br />

1 階 平 面 図 1/2500<br />

<br />

<br />

2 階<br />

そこで、オイルタンク、 発 電 機 容 量 か<br />

ら、そこに 人 が 集 まって 生 活 できるだ<br />

して、こういう 空 間 で 働 くのだという、<br />

働 く 人 の 心 の 拠 り 所 のようなものを<br />

産 性 も 考 えたものを 作 ることができる<br />

のは 非 常 にすばらしいと 思 っています。<br />

と、もともと 小 さなスケールでも 持 っ<br />

ていた 鉄 独 特 の 硬 度 感 、 密 度 感 、 質 量<br />

<br />

田 村 ●はい。 階 高 の1/4 階 に 相 当 す<br />

<br />

い 一 体 の 空 間 を 作 るかを 考 えました。<br />

けの 水 の 確 保 、 排 水 の 確 保 まですべて<br />

含 めて、 災 害 が 起 きた 時 の1ヵ 月 後 ま<br />

ちゃんと 作 ろうという 思 いから、 空 間<br />

の 演 出 性 、 強 度 、 象 徴 性 などをこのオ<br />

実 は、 日 本 の 高 炉 は 世 界 で 一 番 効 率<br />

が 良 くて、CO2 の 発 生 が 抑 えられるそ<br />

感 が、 今 度 は 空 間 全 体 を 覆 っていって<br />

くれるので、 鉄 の 空 間 に 対 する 影 響 を<br />

る1.2m 上 がっている 部 分 に 取 り 付 け<br />

田 村 ●プレビームは 直 天 井 なので、 鉄<br />

でを 細 かく 想 定 しました。<br />

フィスの 中 に 取 り 戻 したかったのです。<br />

うですし、また 鉄 はリサイクルの 輪 が<br />

表 現 できるのではないかと 思 います。<br />

た 鋼 板 耐 震 壁 がかなり 利 いています。<br />

骨 梁 の 下 端 に 打 ったコンクリートは 耐<br />

それが 意 匠 、 構 造 、 設 備 を 統 合 させた、<br />

確 立 されているので、 非 常 に 環 境 にや<br />

かつての 先 輩 たちもそれらをフルに 利<br />

それがスパイラルなので 卍 (まんじ)<br />

型 にバランスよく 配 置 されています。<br />

入 念 な 災 害 対 策<br />

各 階 、 区 画 のないオフィスを 日 本<br />

で 見 ることは 少 ないように 思 いま<br />

すが、 防 災 面 の 考 え 方 を 聞 かせて<br />

ください。<br />

火 被 覆 として 使 い、 複 合 耐 火 にするこ<br />

とを 考 えました。そこで 当 社 の 研 究 所<br />

の 大 きな 炉 で 耐 火 実 験 を 行 ったところ、<br />

実 は、 最 初 コンクリートがバラバラに<br />

爆 裂 してしまったのです。<br />

菅 ●そこでポリプロピレンの 繊 維 を 入<br />

れて 再 度 耐 火 実 験 を 行 ったら、 繊 維 が<br />

溶 け、そこから 水 分 が 出 ていってくれ<br />

鉄 の 自 由 さが<br />

新 たな 架 構 を 産 み 出 す<br />

構 造 を 見 せるデザインにしたいと<br />

いうコンセプトが 非 常 によく 実 現<br />

されています。<br />

菅 ●なぜ 構 造 をそのままシンボリック<br />

に 見 せるような 空 間 を 作 ったのかとい<br />

こういう 空 間 を 作 った 一 番 の 目 的 です。<br />

また 鉄 骨 造 にしたことで、そのコンセ<br />

プトを 明 確 にすることができました。<br />

最 後 に、 材 料 として 鉄 がもつ 特 性<br />

や 鉄 に 期 待 することなどを 聞 かせ<br />

てください。<br />

田 村 ● 今 回 のプロジェクトを 通 して、<br />

さしい 材 料 です。たぶん 鉄 は 建 築 材 料<br />

として100 年 後 も 使 われていくのでは<br />

ないでしょうか。<br />

田 ● 大 トラスを 作 った 工 場 へ 行 って<br />

感 じたのですが、こちらの 希 望 に 対 し<br />

て「どう 作 ろう?」と 職 人 のみなさん<br />

が 本 当 に 真 摯 に 向 き 合 ってくれるので<br />

す。これが 日 本 の 鉄 鋼 メーカーや 工 場<br />

用 して 建 物 を 作 ってきたし、 我 々もこ<br />

れから 先 、まだいろいろな 可 能 性 を 作<br />

り 出 していけるのではないかと 思 って<br />

います。<br />

(2013 年 6 月 11 日 竹 中 工 務 店 東 京 本 店 )<br />

菅 ●これは 避 難 検 証 法 で 避 難 上 の 安 全<br />

を 確 保 し、 耐 火 性 能 を 検 証 しながら、<br />

その 中 でどうやってなるべく 区 切 らな<br />

るので 大 丈 夫 だったのです。<br />

田 ● 今 も 話 にあったように、この 建<br />

物 は 構 造 が 表 にそのまま 出 ています。<br />

耐 火 検 証 法 を 行 って、 建 物 中 央 の 吊 り<br />

部 材 等 も 耐 火 被 覆 を 軽 減 しましたし、<br />

そのような 防 災 の 面 も 考 慮 して 作 って<br />

いきました。<br />

工 事 途 中 に 東 日 本 大 震 災 がありま<br />

したが、 何 か 設 計 変 更 や 工 事 上 の<br />

問 題 などはありましたか。<br />

うと、 実 はそこが 一 番 の 焦 点 なのです。<br />

我 々がこのプロジェクトで 作 ろうとし<br />

たのは、オフィスの 中 の 空 間 の 象 徴 性<br />

です。 今 までオフィススペースに、 空<br />

間 をどう 演 出 するかという 考 え 方 は<br />

はっきり 言 ってありませんでした。オ<br />

フィスがシンボリックな 空 間 である 必<br />

要 はまったくないですからね。<br />

でもずっと 紐 解 いていくと、 初 期 の<br />

オフィスビルとして 代 表 的 なフラン<br />

鉄 の 造 形 の 自 由 さ、あるいは 鉄 の 部 材<br />

を 作 る 製 作 の 自 由 さが 構 造 デザイン<br />

に 非 常 に 生 きてくることを 感 じまし<br />

た。 楕 円 のCFT 柱 や 下 フランジにコ<br />

ンクリートを 打 つプレビームなど、 自<br />

由 度 が 高 く、 剛 性 を 上 げたり、 強 度 を<br />

上 げたりいろいろな 工 夫 ができます。<br />

非 常 に 自 由 な 発 想 で、みなさんに 協 力<br />

していただきながら、 構 造 デザインも<br />

生 産 性 も 考 えたものを 作 ることがで<br />

などの 製 作 現 場 の 非 常 に 強 いところで、<br />

それらが 我 々の 表 現 したい 形 や 力 に<br />

なって 建 築 として 伝 わることを 改 めて<br />

今 回 確 認 しました。 今 後 も 頭 で 考 える<br />

だけではなく、 製 作 する 人 たちと 一 緒<br />

になってものを 作 っていきたいと 思 っ<br />

ています。<br />

菅 ● 我 々のような 建 築 のデザインを<br />

やっている 人 間 から 見 ると、 鉄 という<br />

素 材 そのものが 持 っている 質 量 感 や 硬<br />

明 治 安 田 生 命 新 東 陽 町 ビル<br />

所 在 地 東 京 都 江 東 区 東 陽 2-2-11<br />

主 要 用 途 事 務 所 研 修 所 宿 泊 施 設<br />

面 積 敷 地 面 積 : 30,081.77m2<br />

建 築 面 積 : 14,768.45m2<br />

延 床 面 積 : 96,911.48m2<br />

構 造 鉄 骨 造<br />

階 数 地 下 1 階 地 上 12 階 塔 屋 1 階<br />

最 高 高 55,500mm<br />

設 計 施 工 竹 中 工 務 店<br />

設 計 期 間 2007 年 1 月 〜2009 年 10 月<br />

施 工 期 間 2009 年 11 月 〜2011 年 11 月<br />

田 秀 樹 氏<br />

岩 崎 ● 工 程 的 に 厳 しくなりました。 状<br />

ク・ロイド・ライトのジョンソン・ワッ<br />

きました。<br />

度 感 がとても 魅 力 的 なんですね。 例 え<br />

写 真 提 供 :<br />

竹 中 工 務 店<br />

14 <strong>スチールデザイン</strong> No.22<br />

<strong>スチールデザイン</strong> No.22 15


ス<br />

チ<br />

ー<br />

ル<br />

デ<br />

ザ<br />

イ<br />

ン<br />

第<br />

二<br />

二<br />

号<br />

二<br />

〇<br />

一<br />

三<br />

年<br />

九<br />

月<br />

二<br />

〇<br />

日<br />

発<br />

行<br />

一 般 社 団 法 人 日 本 鉄 鋼 連 盟<br />

建 築 委 員 会<br />

3 – 2 –10<br />

Tel.03-3669-4815Fax.03-3667-0245<br />

http://www.jisf.or.jp<br />

: <br />

16 2013 年 <strong>スチールデザイン</strong> 9 月 20 日 発 行 No.22

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!