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CSRの社会的側面の充実と国際競争力の強化 -矛盾した課題を抱える

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コストを抑え、雇用調整を容易にし、直接雇用を避けたいとの思惑があった 14 からだと考えられる。<br />

適正な請負では、人を募集し、技術を教え、製造装置も自前でそろえる必要がある。派遣に比べて、<br />

費用や時間がかかる。これに対して、偽装請負は、技術はメーカー側が指導し、生産設備も借り、社<br />

会保険に加入させず、人材サービス会社側の費用負担も浮かすことができる。メーカーとしては本来<br />

の請負に必要なコストを人材会社に払いたくないのである 15 。<br />

2.請負労働形態の弊害<br />

しかし、CSRの「社会的な側面」の充実を図ろうとした場合、偽装しなくとも、請負といった働き<br />

方それ自体も問題になるのではないだろうか。<br />

厚生労働省の「平成18年版労働経済の分析 16 」によると「製品のライフサイクルが短くなり、生産<br />

変動の見通しがつきにくくなる中で、そのリスクを低減させ管理するために、生産過程の一部の工程<br />

を請負事業者などに任せる動きが広がっている」とある 17 。<br />

そのような企業側の要請は内閣府が行った「平成15年度企業行動に関するアンケート調査要旨」に<br />

おいても表れている。この調査は「国際競争力の改善に向けた努力」について質問事項を設けている。<br />

その中で、「主力製品が外国製品と競合する」と回答した企業は、製造業で78%という結果になった。<br />

また13年度の比較においても製造業全体において、外国製品と競合すると回答した企業の割合は増加<br />

した。その外国企業との競争の中で、日本企業の製品がどの部分で「強み」持っており、どの部分で<br />

「弱み」をもっているかとの問いに関しては、「強み」は「品質」と回答した企業が77.1%で、「弱み」<br />

は「価格」と答えた企業が68.3%であった。その「価格」についての弱みをどこで解決しようとして<br />

いるか、それが調査のまとめ部分から読み取れる。<br />

調査のまとめには次のようにある。「利益を上げるために企業はさまざまな施策を採用してきてお<br />

り、売上高を向上させる施策が収益に貢献したとする企業は全体のおよそ、4分の1に上っているも<br />

のの、売上高を向上させる施策よりもコストカットのほうが収益に貢献したとする企業が多いことが<br />

調査結果からも改めて明らかになった。その中でも人件費の抑制が最も効果があったと回答した企業<br />

が多く、これを裏付けるように正社員数はこれまで減少を続け、変わってパートや派遣社員数が増加<br />

してきた。」つまり日本企業は国際競争に勝つために人件費削減の必要に迫られているということであ<br />

る。その結果として請負などの雇用形態を企業がとるようになったと考えられる。<br />

情』2007年2月5日号 No.2513<br />

14 朝日新聞(インターネット版)2006年10月13日を参考にした。<br />

15 朝日新聞特別報道チーム『偽装請負』朝日新書2007年5月30日55ページ<br />

16 厚生労働省「平成18年版 労働経済の分析」http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/06-2/dl/02-03.pdf<br />

17 厚生労働省の「派遣労働者実態調査(2004)」によると現在、日本の製造現場で働く請負労働者は86万人と発表<br />

されている。ただし、この調査は30人未満の事業所を対象としていないので、実際はさらに多いと考えられる。<br />

このように正確な数字がないのは監督官庁が存在しないからである。<br />

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