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<演習> 材料の機械的性質の解析 - Tsuji Lab - 京都大学

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演 習 > 材 料 の 機 械 的 性 質 の 解 析 <br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

0. 材 料 の 力 学 的 性 質 を 学 ぶ 理 由 : <br />

金 属 材 料 は、 比 較 的 大 きな 強 度 を 有 しながら、 展 延 性 に 富 んでいる。そのため、 単 に 強 度 が 高 いと<br />

いうだけでなく、 様 々な 形 に 加 工 することが 可 能 であり、また 衝 撃 力 等 に 対 して 脆 く 破 壊 する 危 険 性<br />

も 少 ない。このことが、 金 属 材 料 の 有 用 性 を 際 立 たせており、 構 造 材 料 として 多 量 に 使 われている 理<br />

由 となっている。 金 属 材 料 は、 素 材 として 製 造 する 際 に 圧 延 、 鍛 造 、 線 引 き 等 の 一 次 加 工 を 受 ける。<br />

また、 厚 板 、 薄 板 、 棒 、 線 材 などの 形 状 になったあと、 実 際 の 製 品 とするために、 鍛 造 、 深 絞 り、 曲<br />

げあるいは 切 削 などの 二 次 加 工 が 行 なわれる。いずれもそこで 起 こっていることは、 金 属 の 塑 性 変 形<br />

である。そして 製 品 として 用 いられる 場 合 、 機 械 設 計 段 階 で 必 ず 材 料 の 強 度 ・ 延 性 等 が 問 題 となる。<br />

すなわち、 金 属 材 料 の 変 形 の 原 理 を 知 ることは、 構 造 材 料 として 金 属 を 用 いるものにとって 避 けて 通<br />

ることのできない 課 題 である。 本 講 義 ( 演 習 )では、 材 料 のマクロな 変 形 を、 弾 性 変 形 、 塑 性 変 形 に<br />

分 けて 論 じ、 応 力 とひずみという 基 礎 概 念 から、 実 際 の 材 料 試 験 に 即 した 知 識 までを 概 説 する。 本 演<br />

習 の 目 的 は、 材 料 の 機 械 的 性 質 の 基 本 的 概 念 を 学 び、 力 学 特 性 の 実 験 的 測 定 法 を 理 解 することである。<br />

【 関 連 する 講 義 】<br />

・ 材 料 科 学 実 験 D 材 料 の 変 形 と 結 晶 の 配 向 の 決 定<br />

・ 「 材 料 科 学 基 礎 1」、「 結 晶 物 性 学 」、「 金 属 材 料 学 」、「 材 料 強 度 物 性 」<br />

【より 詳 しく 学 ぶための 参 考 書 】<br />

(1) Materials Science And Engineering, An Introduction: by William D. Callister, Jr., John<br />

Wiley & Sons, Inc.<br />

(2) Mechanical Metallurgy, G.E.Dieter, McGraw Hill, 1987<br />

(3) Fundamentals of Metal Forming, Robert H. Wagoner, Jean-Loup Chenot, John Wiley &<br />

Sons, 1996<br />

(4) 材 料 の 科 学 と 工 学 、[2] 金 属 材 料 の 力 学 的 性 質 、W.D.キャリスター 著 入 戸 野 修 監 訳 、 培<br />

風 館<br />

(5) 材 料 強 度 の 原 子 論 、 日 本 金 属 学 会 、1985<br />

(6) 金 属 塑 性 加 工 学 、 加 藤 健 三 、 丸 善 、1971<br />

(7) 材 料 強 度 の 基 礎 、 高 村 仁 一 、 京 都 大 学 学 術 出 版 会 、1998<br />

(8) 材 料 強 度 の 考 え 方 、 木 村 宏 、アグネ 技 術 センター、2000<br />

【 講 義 情 報 および 資 料 のダウンロードサイト】( 以 下 の【 教 育 】から、 当 該 年 度 の「 材 料 科 学 実 験 およ<br />

び 演 習 」へ)<br />

http://www.tsujilab.mtl.kyoto-u.ac.jp/01<strong>Tsuji</strong><strong>Lab</strong>/index_j.html<br />

【 教 員 連 絡 先 ・レポート 提 出 先 】<br />

材 料 工 学 専 攻 教 授 辻 伸 泰 (つじ のぶひろ)<br />

工 学 部 総 合 校 舎 6F 607 号 室<br />

E-Mail nobuhiro-tsuji@mtl.kyoto-u.ac.jp<br />

TEL 075-753-4868( 小 池 秘 書 、 梅 井 秘 書 :611 号 室 )<br />

1


1. 材 料 のマクロ 変 形 の 基 礎<br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

1.1. 材 料 の 弾 性 変 形 と 塑 性 変 形<br />

応 力<br />

破 壊<br />

B<br />

A<br />

加 工 硬 化<br />

降 伏<br />

C<br />

O<br />

ひずみ<br />

塑 性 ひずみ<br />

図 1.1 金 属 材 料 の 典 型 的 な 応 力 ひずみ 曲 線<br />

弾 性 変 形 (Elastic Deformation)= 力 が 徐 荷 された 場 合 、 時 間 的 遅 れなしに 元 の 形 に 戻 るような 変 形<br />

σ = E ε (1.1)<br />

E : Young's modulus (ヤング 率 ( 縦 弾 性 係 数 ))<br />

€<br />

τ = G γ (1.2)<br />

G : Shear modulus ( 剛 性 率 ( 横 弾 性 係 数 ))<br />

€<br />

G =<br />

E<br />

2 1+ ν ( )<br />

(1.3)<br />

ν : Poisson's ratio (ポアソン 比 )<br />

€<br />

表 1.1 典 型 的 な 金 属 材 料 の 弾 性 定 数<br />

Material E (GPa) G (GPa) ν<br />

Aluminum alloys 72.4 27.5 0.31<br />

Copper 110 41.4 0.33<br />

Steel (plain carbon & low-alloy) 200 75.8 0.33<br />

Stainless steel (18Cr-8Ni) 193 65.6 0.28<br />

Titanium 117 44.8 0.31<br />

Tungsten 400 157 0.27<br />

塑 性 変 形 (Plastic Deformation)= 力 を 徐 荷 しても 残 る 永 久 変 形<br />

2


材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

1.2. 応 力 とひずみ<br />

1.2.1.ひずみと 回 転<br />

仮 定 : 連 続 体<br />

線 形 弾 性 論<br />

微 小 変 形 理 論 (ひずみ 成 分 の 大 きさが1に 比 べて 十 分 小 さい)<br />

x3<br />

変 形 後<br />

変 形 前<br />

0<br />

x<br />

u<br />

x + u<br />

x1<br />

x2<br />

図 1.2<br />

変 位 (Displacement):<br />

u ≡ ( u 1 ,u 2 ,u 3 ) (1.4)<br />

u が 物 体 内 のどの 部 分 でも 同 一 なら、 単 に 平 行 移 動 しただけ。<br />

€<br />

変 形 ・・・u の 場 所 による 変 化 の 議 論<br />

変 形 勾 配 (Distortion):<br />

∂u i<br />

∂x j<br />

i,j =1,2,3<br />

( )<br />

(1.5)<br />

変 形 勾 配 の 対 称 成 分 をひずみ(Strain)εij、 反 対 称 成 分 を 回 転 (Rotation) ωij と 定 義 する。( 対 称<br />

化 操 作 による € 変 形 勾 配 テンソルからの 剛 体 スピン 成 分 の 除 去 )<br />

ε ij + ω ij ≡ ∂u i<br />

∂x j<br />

€<br />

ε ij ≡ 1 ⎛⎛<br />

∂u i<br />

+ ∂u ⎞⎞<br />

j<br />

⎜⎜<br />

2⎜⎜<br />

⎟⎟<br />

⎝⎝ ∂x j ∂x ⎟⎟<br />

i ⎠⎠<br />

(1.6)<br />

€<br />

3


ω ij ≡ 1 ⎛⎛<br />

∂u i<br />

− ∂u ⎞⎞<br />

j<br />

⎜⎜<br />

2 ⎜⎜<br />

⎟⎟<br />

⎝⎝ ∂x j ∂x ⎟⎟<br />

i ⎠⎠<br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

( 注 ) 「ひずみ」という 場 合 、 工 学 せん 断 ひずみ<br />

€<br />

γ ij ≡ ∂u i<br />

+ ∂u j<br />

= 2ε ij ( i ≠ j)<br />

∂x j ∂x i<br />

を 用 いる 場 合 もある。<br />

(1.7)<br />

€<br />

€<br />

⎡⎡ ε 11 ε 12 ε 13<br />

⎤⎤<br />

⎢⎢<br />

⎥⎥<br />

ε ij =<br />

⎢⎢<br />

ε 21 ε 22 ε 23 ⎥⎥<br />

⎣⎣ ⎢⎢ ε 31 ε 32 ε 33 ⎦⎦ ⎥⎥<br />

⎡⎡ ∂u 1 1⎛⎛<br />

∂u 1<br />

+ ∂u ⎞⎞<br />

2 1⎛⎛<br />

∂u 1<br />

⎜⎜ ⎟⎟ + ∂u ⎞⎞ ⎤⎤<br />

3<br />

⎢⎢<br />

⎜⎜ ⎟⎟ ⎥⎥<br />

⎢⎢ ∂x 1 2⎝⎝<br />

∂x 2 ∂x 1 ⎠⎠ 2⎝⎝<br />

∂x 3 ∂x 1 ⎠⎠ ⎥⎥<br />

1⎛⎛<br />

∂u<br />

= 2<br />

+ ∂u ⎞⎞<br />

1 ∂u 2 1 ∂u 2<br />

⎜⎜ ⎟⎟<br />

+ ∂u ⎡⎡ ε<br />

⎢⎢<br />

⎛⎛ ⎞⎞ ⎥⎥ 11 ε 12 ε 13<br />

⎤⎤<br />

3 ⎢⎢<br />

⎥⎥<br />

⎢⎢<br />

⎜⎜ ⎟⎟ ⎥⎥ =<br />

2⎝⎝<br />

∂x 1 ∂x 2 ⎠⎠ ∂x 2 2⎝⎝<br />

∂x 3 ∂x 2 ⎠⎠<br />

⎢⎢<br />

ε 12 ε 22 ε 23 ⎥⎥<br />

⎢⎢<br />

⎢⎢ 1⎛⎛<br />

∂u 3<br />

+ ∂u ⎞⎞<br />

1 1⎛⎛<br />

∂u 3<br />

⎜⎜ ⎟⎟ + ∂u ⎥⎥<br />

⎞⎞<br />

⎣⎣ ⎢⎢ ε<br />

2 ∂u 13 ε 23 ε 33 ⎦⎦ ⎥⎥<br />

3 ⎥⎥<br />

⎢⎢<br />

⎜⎜ ⎟⎟<br />

⎣⎣ 2⎝⎝<br />

∂x 1 ∂x 3 ⎠⎠ 2⎝⎝<br />

∂x 2 ∂x 3 ⎠⎠ ∂x ⎥⎥<br />

3 ⎦⎦<br />

(1.8)<br />

€<br />

⎡⎡<br />

1 ⎛⎛ ∂u<br />

0<br />

1<br />

− ∂u ⎞⎞<br />

2 1 ⎛⎛ ∂u 1<br />

⎜⎜ ⎟⎟ − ∂u ⎞⎞ ⎤⎤<br />

3<br />

⎢⎢<br />

⎜⎜ ⎟⎟ ⎥⎥<br />

⎡⎡ ω 11 ω 12 ω 13<br />

⎤⎤ ⎢⎢<br />

2 ⎝⎝ ∂x 2 ∂x 1 ⎠⎠ 2 ⎝⎝ ∂x 3 ∂x 1 ⎠⎠ ⎥⎥<br />

⎢⎢<br />

⎥⎥ ⎢⎢ 1⎛⎛<br />

∂u<br />

ω ij =<br />

⎢⎢<br />

ω 21 ω 22 ω 23 ⎥⎥<br />

= 2<br />

− ∂u ⎞⎞<br />

1<br />

1 ⎛⎛ ∂u<br />

⎜⎜ ⎟⎟ 0<br />

2<br />

− ∂u ⎞⎞ ⎥⎥<br />

3<br />

⎢⎢<br />

⎜⎜ ⎟⎟ ⎥⎥<br />

2⎝⎝<br />

∂x<br />

⎣⎣ ⎢⎢ ω 31 ω 32 ω 33 ⎦⎦ ⎥⎥ ⎢⎢ 1 ∂x 2 ⎠⎠<br />

2 ⎝⎝ ∂x 3 ∂x 2 ⎠⎠<br />

1⎛⎛<br />

∂u 3<br />

− ∂u ⎞⎞<br />

1 1 ∂u 3<br />

⎜⎜ ⎟⎟ − ∂u ⎥⎥<br />

⎢⎢<br />

⎛⎛ ⎞⎞<br />

2<br />

⎥⎥<br />

⎢⎢<br />

⎜⎜ ⎟⎟ 0<br />

⎣⎣ 2⎝⎝<br />

∂x 1 ∂x 3 ⎠⎠ 2 ⎝⎝ ∂x 2 ∂x 3 ⎠⎠<br />

⎥⎥<br />

⎦⎦<br />

(1.9)<br />

一 般 に、 行 列 の 対 角 成 分 の 和 (trace)は 座 標 系 の 取 り 方 によらない 不 変 量 (invariant)である。<br />

€<br />

ε 11 + ε 22 + ε 33 = 不 変 量 (1.10)<br />

V + ΔV = V( 1+ ε 11 )( 1+ ε 22 )( 1+ ε 33 )<br />

€<br />

≅ V( 1 + ε 11 + ε 22 + ε 33 ) (1.11)<br />

よって、 € 微 小 変 形 の 場 合 、<br />

€ ε 11 + ε 22 + ε 33 = ΔV V (1.12)<br />

ひずみ 行 列 のトレース = 物 体 の 体 積 変 化 率<br />

€<br />

4


1.2.2. 応 力<br />

力 ( force, load )<br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

表 面 力 ( traction ); 物 体 表 面 に 作 用<br />

体 積 力 ( body force ); 物 体 全 体 に 作 用 ( 電 磁 力 、 重 力 、etc.)<br />

外 力 が 物 体 に 作 用 すると、 物 体 は 自 ら 変 形 することにより 外 力 と 釣 り 合 う 内 力 を 生 じる。 内 力 の 分<br />

布 状 態 は 材 料 の 形 状 寸 法 などにより 変 化 するため、ひずみ( 局 部 的 な 変 形 )に 対 応 する 局 所 的 な 内 力<br />

( 応 力 (Stress))を 定 義 する 必 要 がある。<br />

x3<br />

x3<br />

σ33<br />

F = (F1, F2, F3)<br />

σ32<br />

F3<br />

σ31<br />

σ23<br />

A<br />

F2<br />

x2<br />

σ11<br />

σ13<br />

σ12<br />

σ21<br />

σ22<br />

x2<br />

F1<br />

x1<br />

図 1.3. 図 1.4.<br />

x1<br />

面 力<br />

応 力 の 定 義<br />

€<br />

€<br />

X = F A (1.13)<br />

垂 直 応 力 (Normal Stress)<br />

σ 33 ≡ F 3<br />

A (1.14)<br />

せん 断 応 力 (Shear stress)<br />

σ 13 ≡ F 1<br />

A , σ 23 ≡ F 2<br />

A (1.15)<br />

€<br />

⎡⎡ σ 11 σ 12 σ 13<br />

⎤⎤<br />

⎢⎢<br />

⎥⎥<br />

σ ij =<br />

⎢⎢<br />

σ 21 σ 22 σ 23 ⎥⎥<br />

⎣⎣ ⎢⎢ σ 31 σ 32 σ 33 ⎦⎦ ⎥⎥<br />

€<br />

⎡⎡ σ ii<br />

⎤⎤ ⎡⎡<br />

⎢⎢ 0 0<br />

3<br />

⎥⎥ σ 11 − σ ii<br />

⎢⎢<br />

3<br />

⎢⎢ σ ⎥⎥ ⎢⎢<br />

= ⎢⎢ 0 ii<br />

0 ⎥⎥ + ⎢⎢ σ 12<br />

⎢⎢ 3 ⎥⎥ ⎢⎢<br />

⎢⎢ σ<br />

0 0 ii ⎥⎥ ⎢⎢<br />

⎣⎣ 3 ⎦⎦ ⎣⎣<br />

σ 12 σ 13<br />

σ 22 − σ ii<br />

3<br />

σ 23<br />

σ 13 σ 23 σ 33 − σ ii<br />

3<br />

⎤⎤<br />

⎥⎥<br />

⎥⎥<br />

⎥⎥<br />

⎥⎥<br />

⎥⎥<br />

⎦⎦<br />

(1.16)<br />

€<br />

静 水 圧 (Hydrostatic) 成 分<br />

( σ ii = σ 11 + σ 22 + σ 33 )<br />

偏 差 (Deviatoric) 成 分<br />

5<br />


1.3. 弾 性 変 形 における 応 力 とひずみの 関 係<br />

線 形 弾 性 論 :フックの 法 則 (Hooke's law)<br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

σ ij = C ijkl e kl (1.17)<br />

€<br />

Cijkl: 弾 性 定 数 (Elastic Constant )<br />

弾 性 スティフネス(Elastic Stiffness)<br />

e ij = C −1 ijkl σ kl (1.18)<br />

Cijkl -1 : 弾 性 コンプライアンス(Elastic Compliance)<br />

応 力 成 分 、ひずみ 成 分 が 対 称 であること、 弾 性 ひずみエネルギーがひずみの2 次 形 式 で 表 されるこ<br />

とから、 €<br />

C ijkl = C jikl = C ijlk = C klij (1.19)<br />

よって、 独 立 な 弾 性 定 数 は 最 大 で21 個 。<br />

結 晶 のように 対 称 性 が 高 い 場 合 には 独 立 な 弾 性 定 数 の 数 はさらに 減 り、 立 方 晶 では3 個 。 等 方 体 で<br />

€<br />

は、2 個 の 独 立 な 弾 性 定 数 (Lame's constant:λ、μ)があるのみで、<br />

σ 11 = ( λ+2µ ) e 11 + λ( e 22 +e 33 )<br />

σ 22 = λ+2µ<br />

( ) e 22 + λ( e 33 +e 11 )<br />

σ 33 = ( λ+2µ ) e 33 + λ( e 11 +e 22 ) (1.20)<br />

€<br />

€ σ 12 = 2 µ e 12<br />

σ 23 = 2 µ e 23<br />

€ σ 31 = 2 µ e 31<br />

等 方 体 € の 弾 性 定 数 としては、ヤング 率 E、ポアソン 比 ν、 体 積 弾 性 率 (Bulk Modulus)Kなども<br />

用 いられる。 €<br />

外 部 応 € 力 としてσ11 のみの 一 軸 応 力 を 付 加 した 場 合 、<br />

E ≡ σ 11 e 11<br />

体 積 弾 性 € 率 は、 静 水 圧 σ11=σ22=σ33=σH の 付 加 の 下 で、<br />

€<br />

以 上 の 式 より、<br />

€<br />

ν ≡ −e 22 e 11 ≡ −e 33 e 11 (1.21)<br />

K ≡ σ 11 +σ 22 +σ 33<br />

3( e 11 +e 22 +e 33 ) ≡ σ H<br />

e ii (1.22)<br />

E = µ ( 3λ+2µ )<br />

λ+µ<br />

€<br />

€<br />

€<br />

ν =<br />

λ<br />

2 λ+µ ( )<br />

E = 2µ ( 1+ ν) (1.23)<br />

K = 3λ+2µ<br />

3<br />

=<br />

E<br />

3 1−2ν ( )<br />

6<br />


1.4. 弾 性 ひずみエネルギー<br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

力 F<br />

k<br />

F<br />

図 1.5. 伸 びたバネに 蓄 えられる 弾 性 エネルギー<br />

伸 び x<br />

E S = 1 2 k x2 = 1 2 F x (1.24)<br />

単 位 体 積 あたりの 弾 性 ひずみエネルギー( 弾 性 エネルギー 密 度 )E0 は、<br />

E 0 = 1<br />

€<br />

2 C ijkl e ji e kl = 1 2 σ kl e kl<br />

(1.25)<br />

一 般 に 応 力 、ひずみは 場 所 によって 異 なるので、 体 積 Vの 物 体 に 蓄 えられる 弾 性 ひずみエネルギー<br />

Eel は、<br />

€<br />

E el = 1 2<br />

∫ C ijkl e ji e kl dV = 1 2<br />

V<br />

∫<br />

V<br />

σ kl e kl dV<br />

(1.26)<br />

€<br />

7


1.5. 降 伏 条 件 ・・・ 等 方 弾 性 体 の 降 伏 現 象<br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

金 属 材 料 の 塑 性 変 形 機 構 は 一 般 にすべり 変 形 であることから、 体 積 ひずみ 変 化 dεii(=dε11+ dε22<br />

+ dε33 )は、ほとんど 無 視 することができる。 塑 性 仕 事 増 分 dW は、 偏 差 応 力 成 分 σ’ij、 圧 力 P を<br />

用 いて、<br />

dW = σ ij dε ij = σ ʹ′ ij dε ij + P dε ij (1.27)<br />

金 属 材 料 に 対 して 提 唱 ・ 使 用 されている2つの 降 伏 条 件<br />

1 Tresca の 降 伏 条 件 : 物 体 内 で 最 大 せん 断 応 力 が 降 伏 せん 断 応 力 (χ)に 達 すると 降 伏 する。<br />

2 € von Mises の 降 伏 条 件 : 偏 差 応 力 の 二 次 不 変 量 (J'2)が 一 定 値 に 達 すると 降 伏 する。・・・<br />

Taylor と Quinney の 組 み 合 わせ 応 力 実 験 により 妥 当 性 が 確 認 され、 塑 性 流 動 解 析 にも 有 用 。<br />

von Mises の 条 件 を、<br />

と 書 くと、<br />

より、<br />

€<br />

€<br />

となる。 <br />

J ʹ′ 2 = − ʹ′<br />

− ʹ′<br />

σ xx<br />

σ x<br />

σ ʹ′ y − ʹ′<br />

σ ʹ′ yy − ʹ′<br />

σ yy<br />

σ y<br />

σ ʹ′ z −σ ʹ′ z σ ʹ′ x + σ xy<br />

σ ʹ′ zz − ʹ′<br />

σ zz<br />

2 +σ 2 yz +σ 2<br />

( ) zx<br />

(1.28)<br />

σ ʹ′ xx = 1⎡⎡<br />

6<br />

σ xx −σ yy<br />

⎣⎣ ⎢⎢<br />

J ʹ′ 2 = ( σ xx −σ yy ) 2 + ( σ yy −σ zz ) 2 + σ zz −σ xx<br />

いま、 € 単 軸 引 張 り(σ xx = Y、 他 の 成 分 はゼロ)を 考 えると、 <br />

J ʹ′ 2 = 2 Y 2 =const. <br />

よって、von Mises の 条 件 は、 <br />

σ xx −σ yy<br />

€<br />

となる。テンソル 表 記 を 用 いると、 <br />

€<br />

( ) 2 + ( σ yy −σ zz ) 2 + σ zz −σ xx<br />

( ) 2<br />

⎤⎤<br />

⎦⎦ ⎥⎥<br />

(1.29)<br />

( ) 2 +6 σ 2 xy +σ 2 yz +σ 2<br />

( ) zx<br />

= 一 定 (1.30) <br />

( ) 2 + ( σ yy −σ zz ) 2 + σ zz −σ xx<br />

⎧⎧ 3<br />

⎨⎨<br />

⎩⎩ 2 ʹ′<br />

σ ij σ ij<br />

と 書 けるため、 左 辺 を 相 当 応 力 σ と 定 義 すると、 <br />

( ) 2 +6 σ xy<br />

(1.31) <br />

2 +σ 2 yz +σ 2<br />

( ) zx = 2Y 2 = 6χ 2 (1.32) <br />

1<br />

⎫⎫ 2<br />

ʹ′ ⎬⎬ = Y<br />

⎭⎭ (1.33) <br />

€ von Mises の 条 件 =「 相 当 応 力 が 引 張 降 伏 応 力 に 達 すると 材 料 は 降 伏 する」 <br />

ということができる。 <br />

8


1.6. 材 料 試 験 による 応 力 -ひずみ 曲 線 の 測 定 <br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

前 節 で 示 したように、 応 力 とひずみは3 次 のテンソル 量 である。しかし 我 々は、 行 列 形 式 の 複 雑 な<br />

テンソル 量 を 直 感 的 に 理 解 することが 難 しい。 材 料 の 機 械 的 特 性 を 数 値 として 表 し、 理 解 するために、<br />

単 純 な 変 形 様 式 を 用 いた 材 料 試 験 が 行 われ、 応 力 — ひずみ 曲 線 が 得 られる。 用 いられる 単 純 な 変 形 様<br />

式 としては、 図 1.6に 示 す、「 引 張 」、「 圧 縮 」、「せん 断 」、「ねじり」などがある。 <br />

図 1.6 (a) 引 張 、(b) 圧 縮 、(c)せん 断 、(d)ねじり。 <br />

これらの 中 で、 信 頼 性 ある 応 力 — ひずみ 関 係 を 得 るためにもっとも 良 く 用 いられるのが、 引 張 試 験<br />

(Tensile Test)である。 典 型 的 な 引 張 試 験 機 の 構 成 を 図 1.7に 示 す。 <br />

図 1.7 典 型 的 な 引 張 試 験 機 の 構 成 <br />

9


1.6.1. 引 張 試 験 <br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

引 張 試 験 片 : 丸 棒 状 、 板 状 ・・・JIS で 規 定 ( JIS Z2201 ) <br />

初 期 標 点 間 距 離 L 0 、 初 期 直 径 D 0 の 丸 棒 試 験 片 ( 初 期 断 面 積 A 0 = π D 0<br />

2<br />

/ 4 )の 単 軸 引 張 試 験 を<br />

行 い、 標 点 間 距 離 がLとなった 時 点 ( 直 径 がD)の 垂 直 荷 重 がPだとすると、 <br />

公 称 応 力 (Nominal Stress): <br />

s ≡ P A 0 <br />

公 称 ひずみ(Nominal Strain): <br />

(1.34) <br />

e ≡ L −L 0<br />

€<br />

L 0 (1.35) <br />

真 応 力 (True Stress): <br />

σ ≡ P<br />

€<br />

A <br />

真 ひずみ(True Strain): <br />

€<br />

ε ≡ ln L L 0<br />

= 2ln D 0<br />

D <br />

(1.36) <br />

(1.37) <br />

(1.34)〜(1.37)より、 <br />

σ = s 1 + e<br />

€<br />

ε = ln 1+ e<br />

( ) (1.38) <br />

( ) (1.39) <br />

また、 <br />

€ ひずみ 速 度 (Strain Rate): <br />

€ ε ˙ = dε<br />

dt = 1 dL<br />

L dt ≅ v<br />

L p <br />

(1.40) <br />

L p : 各 時 刻 における 試 験 片 の 平 行 部 長 さ <br />

v:クロスヘッドの 移 動 速 度 <br />

絞 り(Reduction in Area): <br />

€<br />

φ ≡ A 0 −A f<br />

A 0 (1.41) <br />

€<br />

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材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

公 称 応 力 - 公 称 ひずみ 曲 線 <br />

(a) 明 瞭 な 降 伏 ( 点 降 下 ) 現 象 (Yield Drop; Discontinuous Yielding)のある 場 合 ・・・ 軟 鋼 など <br />

s<br />

σB<br />

M<br />

N:くびれ 開 始 点<br />

x 破 断<br />

σyu<br />

σyl<br />

E<br />

P<br />

e<br />

eu<br />

el<br />

図 1.8 <br />

P: 比 例 限 <br />

E: 弾 性 限 <br />

σ yu : 上 降 伏 応 力 (Upper Yield Stress) <br />

σ yl : 下 降 伏 応 力 (Lower Yield Stress) <br />

σ B : 引 張 強 さ(Tensile Strength ) <br />

e u : 均 一 伸 び(Uniform Elongation) <br />

e l : 局 部 伸 び(Local Elongation) <br />

e f : 全 伸 び( 破 断 伸 び;Total Elongation) <br />

ef<br />

<br />

(b) 明 瞭 な 降 伏 現 象 のない 場 合 ・・・アルミニウムなど <br />

s<br />

σB<br />

x<br />

σ0.2<br />

e<br />

e = 0.2%<br />

図 1.9 <br />

σ 0.2 : 0.2% 耐 力 (0.2% Proof Stress; 0.2% Offset Stress ) <br />

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材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

ところで、 引 張 試 験 の 途 中 で 除 荷 を 行 なうと、 図 1.10に 示 すように、 弾 性 定 数 の 傾 きに 平 行 に<br />

左 斜 め 下 に 曲 線 が 推 移 し、 応 力 ゼロの 地 点 のひずみがその 応 力 での 塑 性 ひずみを 表 す。つまり、 降 伏<br />

以 降 も、 材 料 の 変 形 には、 負 荷 荷 重 に 応 じた 弾 性 変 形 分 が 含 まれることに 注 意 しなければいけない。 <br />

図 1.10 除 荷 、 再 負 荷 時 の 挙 動 <br />

図 1.11には、 引 張 試 験 により 得 られる 公 称 応 力 — 公 称 ひずみ 曲 線 と、 真 応 力 — 真 ひずみ 曲 線 と<br />

の 関 係 を 模 式 的 に 示 す。 <br />

図 1.11 公 称 応 力 — 公 称 ひずみ 曲 線 と 真 応 力 — 真 ひずみ 曲 線 の 関 係 <br />

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1.6.2.くびれの 発 展 条 件 ( 塑 性 不 安 定 (Plastic Instability)) <br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

引 張 試 験 中 の 試 験 片 の 外 形 変 化 を、 応 力 — ひずみ 曲 線 に 対 応 させながら 模 式 的 に 示 したのが、 <br />

図 1.12である。 引 張 試 験 においては、いずれ 試 験 片 のくびれ(necking)が 生 じ、 破 断 に 至 る。 <br />

図 1.12 引 張 試 験 中 の 試 験 片 の 外 形 変 化 の 模 式 図 <br />

ここで、 試 験 片 のくびれが 発 展 していくかどうかの 条 件 を 考 察 してみる。 <br />

F<br />

F<br />

A<br />

L<br />

A + dA<br />

L + dL<br />

σ<br />

σ + dσ<br />

図 1.13 <br />

変 形 が 局 所 的 に 起 こり、 長 さLなる 領 域 のみが L+ dL(dL>0)に 変 形 し、 断 面 積 もA + dA(d<br />

A0)へと 増 加 したとすると、くびれの 進<br />

展 する 条 件 は、 <br />

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材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

( σ + dσ )( A + dA) ≤ σ A<br />

∴ A dσ + σ dA ≤ 0 (1.42) <br />

体 積 一 定 条 件 (AL = 一 定 )および 真 ひずみの 定 義 より、 <br />

€ − dA<br />

€ A = dL L = dε<br />

(1.43) <br />

よって、くびれの 開 始 条 件 ( 塑 性 不 安 定 条 件 )は、 <br />

dσ<br />

€ dε ≤ σ<br />

(1.44) <br />

左 辺 は 加 工 硬 化 率 (Strain Hardening Rate)である。( 注 : 変 形 応 力 ( 変 形 抵 抗 ; flow stress )が<br />

ひずみ 速 度 の 関 数 であれば、(1.44) 式 の 表 現 は 異 なるものとなる。) <br />

€<br />

いずれにせよ、 <br />

「 加 工 硬 化 が 大 きいほど、くびれは 発 生 しにくく、 材 料 の 塑 性 変 形 は 安 定 に 進 行 する」 <br />

1.6.3. 変 形 応 力 の 実 験 式 <br />

n 乗 硬 化 則 : <br />

σ = K ε n<br />

Ludwik の 式 : <br />

€ σ = Y + K ε n<br />

(1.45) <br />

(1.46) <br />

€<br />

Swift の 式 : <br />

( ) n (1.47) <br />

σ = K B + ε<br />

€<br />

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1.6.4. 圧 縮 試 験 <br />

材 料 科 学 実 験 および 演 習<br />

2012 (H24) 担 当 ・ 辻 伸 泰<br />

圧 縮 試 験 では、 治 具 と 試 験 片 の 間 の 摩 擦 の 影 響 が 大 なり 小 なり 生 じ、 材 料 中 の 変 形 は 均 一 ではない <br />

⇨ 潤 滑 の 重 要 性 <br />

図 1.9 <br />

I : 不 変 形 領 域 ( dead cone )、 II : 主 変 形 領 域 、III : 均 一 変 形 領 域 <br />

s<br />

圧 縮<br />

x<br />

引 張<br />

e<br />

図 1.10 引 張 試 験 、 圧 縮 試 験 により 得 られる 公 称 応 力 - 公 称 ひずみ 曲 線 <br />

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