Listener - 極東書店

イギリス 人 の 文 化 生 活 における BBC
- The Listener の 資 料 的 価 値 を 理 解 する 鍵 -
Times や Economist、Financial Times、Illustrated London News など、 専 門 家 でなくても 一 度 は 耳 にしたことがある
イギリスの 著 名 な 新 聞 や 雑 誌 と 比 較 すると、Listener は 一 部 の 専 門 家 を 除 けば、 内 容 はもちろん 名 前 すら 一 般 には
知 られていないでしょう。Listener という 雑 誌 を 知 るには、いきなり 雑 誌 の 記 事 内 容 に 行 く 前 に、 発 行 機 関 である
BBC がイギリス 人 の 文 化 生 活 の 中 でどんな 位 置 を 占 めているのか、というところから 入 っていくのがよいと 思 わ
れます。 音 楽 を 例 に 取 れば、BBC はクラシックからジャズ、ポップス、ロック、ワールドミュージックまで、 多
くの 演 奏 を 放 送 しています。また、 毎 年 夏 にロイヤル・アルバート・ホールで 開 催 されるクラシック 音 楽 祭 プロ
ムスの 主 催 者 、さらに 音 楽 家 への 助 成 機 関 としても、BBC はイギリス 音 楽 界 に 多 くの 貢 献 をしています。 舞 台 芸
術 に 眼 を 向 ければ、 毎 年 多 くの 演 劇 やミュージカルの 制 作 、 放 送 に 携 わり、 多 くの 作 家 、 演 劇 人 に 対 する 助 成 を
行 っています。 音 楽 と 演 劇 に 関 しては、BBC は 今 でもイギリス 最 大 の 制 作 委 託 機 関 として 知 られています。その
他 、BBC の 教 養 番 組 、ドキュメンタリー 番 組 のクオリティは 世 界 が 認 めるところでしょう。 時 に「イギリス 最 大
の 輸 出 品 」と 言 われる 通 り、BBC は 報 道 、ドラマ、 語 学 等 を 提 供 する 中 でイギリスという
ブランドを 高 める 役 割 を 果 たしてきました。BBC は 創 立 以 来 、 公 共 放 送 として、 視 聴 者 に
「 情 報 を 提 供 し、 啓 蒙 し、 愉 しみを 提 供 する(inform, educate and entertain)」ことをミッシ
ョンとして 掲 げてきました。 多 くのイギリス 人 が BBC の 放 送 を 通 じて 文 学 、 舞 台 芸 術 、
音 楽 等 の 芸 術 に 接 してきたことを 考 えると、イギリス 人 の 文 化 生 活 の 中 に BBC が 深 く 根
付 いていることが 伺 えます。
BBC の 高 級 誌
Listener は 放 送 番 組 のテキストを 永 続 的 に 保 存 することを 目 的 として 1929 年 に 創 刊 されま
した。BBC が 発 行 する 雑 誌 としては、Listener 創 刊 の 6 年 前 に 創 刊 された Radio Times があり
ます。Listener が BBC の 発 行 物 の 中 で 占 めていたポジションを 知 るには、Radio Times と 比 較
すると 分 かりやすい 面 があります。イギリスの 新 聞 には 高 級 紙 と 大 衆 紙 という 分 類 がありま
すが、Listener は BBC の 高 級 誌 、Radio Times は BBC の 大 衆 誌 と 言 えば、 分 かりやすいでし
ょう。とは 言 え、Listener が 少 数 の 読 者 だけを 対 象 とする 雑 誌 であったかというとそうでは
なく、むしろ 広 範 な 知 的 オーディエンスを 読 者 とする 雑 誌 と 規 定 するのが、BBC のミッショ
ンに 則 してみると 相 応 しいでしょう。
初 期 の 放 送 番 組 に 関 する 唯 一 の 記 録 資 料
放 送 初 期 の 番 組 を 記 録 したテープは、 再 利 用 されることが 多 かったため、 残 っていないケースが 多 く、テキス
トの 形 で 残 っているスクリプトが 唯 一 の 資 料 です。BBC の 初 期 のラジオ、テレビ 番 組 の 内 容 を 知 るには Listener
を 参 照 するのが 唯 一 の 手 段 です。 記 事 は 大 半 がラジオ、テレビ 番 組 のスクリプトや 番 組 評 で、 放 送 番 組 に 関 わり
を 持 たない 記 事 は 全 体 の 約 10%です。
■エドワード 8 世 退 位 スピーチ
■ 第 二 次 世 界 大 戦 勃 発 に 際 しての 国 王 ジョージ 6 世 のイギリス 国 民 向 けメッセージ
■ 国 民 医 療 サービス(NHS)の 開 始 を 告 げるアトリー 首 相 の 演 説
■ 歴 史 家 A.J.P. テイラーの 連 続 テレビレクチャー
■BBC の 看 板 報 道 番 組 Panorama
書 評 誌 としての Listener
周 知 の 通 り、イギリスには 書 評 を 重 んじる 伝 統 があります。Times Literary Supplement (TLS), London Review of
Books(LRB)のような 書 評 専 門 誌 の 他 にも、 新 聞 や 雑 誌 に 多 くの 書 評 が 掲 載 されます。それらの 書 評 は 日 本 の 書 評
と 比 較 すると 長 大 で、また 一 個 の 批 評 作 品 として 読 むに 堪 えるものが 多 いと 言 われています。TLS, LRB のような
書 評 専 門 誌 を 筆 頭 に、Sunday Times, New Statesman, Observer, Spectator 等 の 書 評 欄 は、 書 物 や 文 化 の 最 新 動 向 を 知
るためにはフォローしておきたいと 見 做 されてきました。
そして Listener も、その 風 格 を 備 えた 定 評 ある 書 評 は 高
く 評 価 されてきました。
書 評 は 第 一 義 的 には 最 新 の 文 化 動 向 を 知 るツールとし
て 利 用 されますが、それだけであれば 古 い 書 評 を 参 照 す
る 必 要 性 はないでしょう。しかし、 書 評 が 批 評 であり、
また 批 評 の 時 代 的 変 遷 自 体 が 研 究 対 象 になり 得 ることを
考 慮 すると、Listener に 掲 載 された 書 評 も 依 然 として 学 術
G.K. チェスタトンの 書 評 (1932 年 11 月 9 日 号 )
的 価 値 を 持 つことは 言 うまでもありません。
The Listener Historical Archive 1929-1991
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