Sn-Cu めっきコネクタにおけるウィスカ対策とその効果 - KYOCERA ...
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<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきコネクタにおけるウィスカ 対 策 とその 効 果<br />
コネクタの 鉛 フリー 化 に 伴 い、 新 たに 嵌 合 時 にコンタクト 接 点 部 から 発 生 するウィスカが 問 題 となっている。このウィスカの 抑 制 を 目 的 として、<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong><br />
めっきを 用 いて 各 種 試 料 を 作 製 しウィスカ 発 生 状 況 の 調 査 を 行 った。その 結 果 、<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきの 結 晶 粒 径 を 制 御 することによって 皮 膜 硬 度 低 下 を 実 現<br />
し、ウィスカ 発 生 の 少 ないめっきが 得 られることが 明 らかとなった。 現 在 、<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきはウィスカが 発 生 し 易 いめっき 組 成 の1つであると 考 えられ<br />
ている [1-2] 。しかしながら、 適 切 な 粒 径 に 制 御 された <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきは 耐 ウィスカ 性 やぬれ 性 において 優 れた 特 性 を 有 するため、コネクタの 鉛 フリーめ<br />
っきとして 有 力 であると 考 えられる。<br />
キーワード:ウィスカ、<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong>、コネクタ、 鉛 フリー<br />
1.はじめに<br />
2006 年 7 月 1 日 から 施 行 される RoHS 規 制 に 対 応 する<br />
ため、 各 コネクタメーカは 2001-2002 年 にかけて <strong>Sn</strong> 系 鉛<br />
フリーめっき 製 品 の 供 給 を 開 始 した。 当 時 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき<br />
が <strong>Sn</strong>-Pb めっきの 代 替 めっきとして 有 力 と 考 えられてい<br />
たため、 多 くのコネクタメーカが <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきを 採 用 し<br />
た。<br />
2002-2003 年 頃 、これらの 鉛 フリーめっきコネクタが<br />
搭 載 された 電 子 機 器 においてウィスカによる 短 絡 事 故 が<br />
相 次 いで 発 生 したことから 問 題 が 明 らかとなった。この<br />
ウィスカは 従 来 のものと 発 生 モードが 異 なり、 嵌 合 によ<br />
って 接 点 部 付 近 から 短 時 間 に 発 生 することが 知 られてい<br />
る。 短 絡 事 故 の 危 険 性 は、 特 に 端 子 間 距 離 の 短 い 狭 ピッ<br />
チ FPC/FFC 用 コネクタにおいて 高 いと 考 えられている。<br />
状 況 把 握 及 び 問 題 解 決 のため、 電 子 情 報 技 術 産 業 協 会<br />
(JEITA)によって 詳 細 に 調 査 が 行 われてきた。その 結 果 、<br />
<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> め っ き は 他 の 鉛 フリーめっき(<strong>Sn</strong> リフロ<br />
ー,<strong>Sn</strong>-Bi,<strong>Sn</strong>-Ag 等 )に 比 べて 長 いウィスカ 発 生 するもの<br />
の、 熱 処 理 によってウィスカ 抑 制 効 果 が 得 られることが<br />
明 らかとなった [3] 。<br />
現 在 、 実 装 に 使 用 されるはんだは <strong>Sn</strong>-Ag-<strong>Cu</strong> 系 へと 標 準<br />
化 が 進 んでいるが、 低 融 点 はんだの 実 用 化 検 討 も 平 行 し<br />
て 行 われている 状 況 である。 将 来 予 想 される 多 様 な 実 装<br />
条 件 を 想 定 して、 実 装 温 度 によらない 安 定 かつ 優 れたウ<br />
ィスカ 抑 制 効 果 を 持 っためっきが 要 求 されている。 今 回 、<br />
この 要 求 を 満 たすため <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきを 用 いて 各 種 試 料 を<br />
作 製 し、その 抑 制 効 果 について 確 認 を 行 った。コネクタ<br />
のめっきには 耐 ウィスカ 性 以 外 にも 様 々な 機 能 が 求 めら<br />
れるが、 最 も 重 量 な 性 能 の1つであるはんだ 付 け 性 につ<br />
いても 確 認 を 行 った。<br />
2. 試 験 方 法<br />
2.1. 試 料<br />
2.1.1.めっき<br />
コネクタ 端 子 (コンタクト) 形 状 にプレス 加 工 されたリ<br />
ン 青 銅 (C5210-EH,t=0.2)に、アルカリ 脱 脂 、 電 解 脱 脂 、<br />
酸 活 性 処 理 を 行 い、スルファミン 酸 Ni の 下 地 加 工 を 施 し<br />
た。その 後 、 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき、 半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき<br />
の 順 に 電 解 めっきを 行 った。 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき 浴 は、<br />
半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき 浴 から 光 沢 剤 成 分 を 除 去 しためっき<br />
液 である。 図 1にめっき 断 面 模 式 図 を 示 す。<br />
1<br />
X 1-X<br />
図 1 めっき 断 面 模 式 図<br />
トータル <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 膜 厚 を 一 定 に 保 ち、 無 光 沢 と 半 光 沢 膜 厚<br />
比 率 を 変 更 した 計 6 種 類 の 試 料 を 作 製 した。 各 試 料 の 膜<br />
厚 は 蛍 光 X 線 膜 厚 計 (XRF)を 用 いて 測 定 を 行 った( 表 1)。<br />
全 ての 試 料 共 に 後 処 理 として 酸 化 防 止 処 理 を 行 った。<br />
表 1 めっき 厚 測 定 結 果<br />
半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong><br />
無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong><br />
Ni<br />
リン 青 銅<br />
X: 無 光 沢 膜 厚 比<br />
試 料<br />
No.<br />
無 光 沢<br />
膜 厚 比 X<br />
トータル<br />
<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 膜 厚 [μm]<br />
Ni 膜 厚<br />
[μm]<br />
1 0 4.78 2.10<br />
2 0.2 4.92 2.14<br />
3 0.4 5.02 1.79<br />
4 0.6 5.35 2.26<br />
5 0.8 5.48 2.03<br />
6 1.0 5.21 1.88<br />
N=5<br />
皮 膜 中 の <strong>Cu</strong> 濃 度 は EDX 定 量 分 析 によって 2±1wt%を 満<br />
たしている。 融 点 は DTA 測 定 結 果 より 229℃であった。<br />
2.1.2. 組 立 て<br />
表 1の 各 コンタクトをインシュレータに 圧 入 し、スラ<br />
イダーを 取 り 付 けコネクタ 製 品 に 加 工 した。 作 製 したコ<br />
ネクタは 0.5mm ピッチ、ZIF タイプの FPC/FFC 用 コネク
タである。コネクタの 断 面 形 状 を 図 2に 示 す。<br />
図 2 コネクタ 断 面 図<br />
2.2. 試 験<br />
2.2.1. 嵌 合 ウィスカ 試 験<br />
コネクタはリフロー 無 し( 前 処 理 無 し)とリフローピ<br />
ーク 温 度 230[℃]/250[℃]( 基 板 上 面 温 度 、 空 リフロー)<br />
のリフロー 炉 を 通 した 計 3 種 類 を 用 意 した。 各 コネクタ<br />
に 各 種 FPC/FFC を 嵌 合 し、 最 も 発 生 し 易 いとされている<br />
室 温 (25±10 [℃]) 環 境 下 [3] で 放 置 した。 所 定 時 間 経 過<br />
後 に FPC/FFC を 抜 去 し、マイクロスコープ(×300)を 用<br />
いてコンタクト 接 点 部 を 観 察 しウィスカ 発 生 有 無 の 確 認<br />
とウィスカ 長 の 測 定 を 行 った。なお、 本 試 験 は 各 時 間 で<br />
の 破 壊 試 験 になるため、 予 め 観 察 時 間 毎 に 別 々の 試 料 を<br />
用 意 した。<br />
2.2.2.ぬれ 性 試 験<br />
コネクタは 初 期 ( 前 処 理 無 し)とプレッシャー・クッ<br />
カー 試 験 (PCT:105[℃],100[%RH], 1.22×10 5 [Pa],8[h])<br />
品 の2 種 類 を 用 意 した。コンタクトテール 部 にフラック<br />
ス(ロジン 25[%]IPA 溶 液 )を 塗 布 し、メニスカス 法 ( 浸<br />
漬 速 度 :2.5[mm/s], 浸 漬 深 さ:0.5[mm],<strong>Sn</strong>-3.0Ag-0.5<strong>Cu</strong>:<br />
245[℃])によってゼロクロスタイムの 測 定 を 行 った。<br />
皮 膜 硬 度 [HV]<br />
2.0<br />
スライダー<br />
5.5<br />
コンタクト<br />
FPC/FFC 接 点 部 インシュレータ<br />
50<br />
N=10<br />
40<br />
0.02[gf]<br />
30<br />
20<br />
3に 示 す。 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき 層 が 厚 くなるに 従 って 皮<br />
膜 硬 度 が 低 下 していくことが 判 る。<br />
3.1.2. 嵌 合 ウィスカ 試 験<br />
図 4にダミーFPC(ガラスエポキシ 材 ,t=0.35) 嵌 合<br />
72[h] 後 のウィスカ 最 大 長 を 示 す。 各 試 料 のウィスカ 性 能<br />
が 最 も 顕 著 に 確 認 できるため、コネクタはリフロー 無 し<br />
品 を 用 いた。 試 験 結 果 より、 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 膜 厚 増 加 に 伴<br />
いウィスカ 最 大 長 が 減 少 していくことが 判 る。 無 光 沢<br />
<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきは 半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきに 比 べて 皮 膜 硬 度 が<br />
低 いため、 外 部 から 印 加 された 力 が 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 層 によ<br />
って 吸 収 されていると 予 想 される。<br />
最 も 耐 ウィスカ 性 が 優 れていたのは 無 光 沢 膜 厚 比 率 X<br />
=0.8 であった。なお、X=1.0 は X=0.8 に 比 べて 若 干 長<br />
いウィスカ 発 生 が 見 られるが、その 理 由 は 明 らかでない。<br />
ウィスカ 最 大 長 [μm]<br />
300<br />
250<br />
N=180[PIN]<br />
200<br />
150<br />
100<br />
50<br />
0<br />
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1<br />
無 光 沢 膜 厚 比 X<br />
図 4 嵌 合 ウィスカ 試 験 結 果<br />
3.1.3.ぬれ 性 試 験<br />
ゼロクロス 測 定 結 果 を 図 5に 示 す。X=0.2~0.8 は 安<br />
定 した 良 好 なぬれ 性 を 示 しているのに 対 し、X=0、1 は 若<br />
干 ぬれ 性 が 劣 る。X=0 におけるぬれ 性 悪 化 の 理 由 として、<br />
皮 膜 中 の 有 機 物 成 分 が 悪 影 響 を 及 ぼしていると 考 えられ<br />
る。また、X=1 は 表 面 酸 化 によるぬれ 性 低 下 である。 従<br />
って、 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> のみではぬれ 性 に 問 題 があるため、<br />
保 護 膜 としての 半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 層 は 必 須 であると 言 える。<br />
5.0<br />
10<br />
0<br />
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1<br />
無 光 沢 膜 厚 比 X<br />
図 3 皮 膜 硬 度 測 定 結 果<br />
3. 結 果 及 び 考 察<br />
3.1. 膜 厚 比 変 更 試 料<br />
3.1.1.<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき 皮 膜 硬 度 測 定<br />
作 製 した 試 料 のマイクロビッカース 硬 度 測 定 結 果 を 図<br />
ゼロクロスタイム[s]<br />
4.0<br />
3.0<br />
2.0<br />
1.0<br />
0.0<br />
初 期<br />
N=10<br />
PCT8[h]<br />
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1<br />
無 光 沢 膜 厚 比 X<br />
図 5 ゼロクロスタイム 測 定 結 果
3.2.X=0.8 試 料<br />
3.2.1. 嵌 合 ウィスカ 試 験<br />
最 も 耐 ウィスカ 性 の 優 れていた X=0.8 を 用 い、 市 販 の<br />
<strong>Sn</strong> めっき FFC(<strong>Sn</strong> めっき 厚 :1μm 以 上 、t=0.3)との 嵌<br />
合 試 験 を 実 施 した( 図 6)。 嵌 合 時 間 は 100[h]である。<br />
コンタクト 接 点 部 から 発 生 したウィスカは 各 試 料 共 に<br />
50[μm] 以 下 であり、リフロー 条 件 によらず 高 い 抑 制 効 果<br />
が 得 られている。リフロー 無 し 品 と 230[℃]リフロー 品<br />
を 比 較 すると、230[℃]リフロー 品 の 方 がウィスカ 長 及 び<br />
発 生 率 が 若 干 少 ない。これは、 熱 処 理 によって 抑 制 効 果<br />
(3.4. 参 照 )が 得 られたためと 考 えられる。 一 方 、<br />
230[℃]リフロー 品 と 250[℃]リフロー 品 を 比 較 すると、<br />
250[℃]リフロー 品 の 方 が 長 いウィスカ 発 生 が 確 認 され<br />
た。この 原 因 については 不 明 である。しかしながら、 現<br />
在 、 原 子 移 動 モデルによって 嵌 合 時 のウィスカ 発 生 が 一<br />
部 説 明 可 能 である [4] ことから、 金 属 間 化 合 物 の 成 長 (3.<br />
4. 参 照 )がこのウィスカ 発 生 に 寄 与 している 可 能 性 が<br />
挙 げられる。<br />
室 温 放 置 100[h],□ 市 販 FFC(<strong>Sn</strong>) 嵌 合<br />
300<br />
30<br />
3.2.2. 未 嵌 合 ウィスカ 試 験<br />
未 嵌 合 時 のウィスカ 発 生 状 況 について 調 査 を 行 った 結<br />
果 を 表 2に 示 す。 試 料 はリフロー 無 し 品 を 使 用 した。 各<br />
試 験 共 にウィスカ 発 生 は 見 られなかった。<br />
未 嵌 合 ( 自 然 放 置 ) 時 におけるウィスカ 発 生 要 因 の1つ<br />
として、 母 材 から <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 皮 膜 への <strong>Cu</strong> 拡 散 が 挙 げられる。<br />
<strong>Cu</strong> 拡 散 によって <strong>Cu</strong> 6 <strong>Sn</strong> 5 が 生 成 し、 体 積 膨 張 による 圧 縮 応<br />
力 増 加 がウィスカ 発 生 の 駆 動 力 になっていると 考 えられ<br />
ている [3] 。 従 って、Ni 下 地 によって <strong>Cu</strong> の 拡 散 が 抑 えら<br />
れていると 考 えられる。なお、 自 然 放 置 によって 発 生 す<br />
るウィスカは、 各 種 環 境 下 4000[h] 程 度 の 確 認 が 必 要 と<br />
考 えられており [3] 、 本 試 験 のみでは 充 分 であるとは 言 え<br />
ない。 今 後 さらに 加 速 した 試 料 についてウィスカ 発 生 が<br />
無 いことを 確 認 する。<br />
表 2 未 嵌 合 ウィスカ 試 験 結 果<br />
N=10<br />
結<br />
No. 試 験 項 目 試 験 項 目<br />
果<br />
温 度 :25±2[℃], 湿 度 :50[%RH] 以 下 ,<br />
1 室 温 試 験<br />
○<br />
試 験 時 間 :6[ヶ 月 ](≒4300[h])<br />
温 度 サイクル 最 低 保 存 温 度 :-40±2[℃], 最 高 保 存 温<br />
2<br />
○<br />
試 験 度 :85±2[℃],サイクル 数 :1500[ 回 ]<br />
ウィスカ 最 大 長 [μm]<br />
250<br />
200<br />
150<br />
100<br />
50<br />
0<br />
N=360<br />
無 し 230℃ 250℃<br />
ウィスカ 発 生 率 [%]<br />
25<br />
20<br />
15<br />
10<br />
5<br />
0<br />
N=360<br />
無 し 230℃ 250℃<br />
温 度 :60±2[℃], 湿 度 :90~95[%RH],<br />
3 恒 温 恒 湿 試 験<br />
試 験 時 間 :1000[h]<br />
温 度 :50±2[℃],<br />
4 高 温 試 験<br />
試 験 時 間 :1000[h]<br />
○:ウィスカ 発 生 無 し、×:ウィスカ 発 生 有 り<br />
○<br />
○<br />
図 6 リフロー 温 度 と 最 大 ウィスカ 長 / 発 生 率 の 関 係<br />
図 7にリフロー 無 し 品 と 250[℃]リフロー 品 について、<br />
5000[h]までの 嵌 合 ウィスカ 試 験 結 果 を 示 す。<br />
コンタクト 接 点 部 から 発 生 するウィスカの 成 長 は、 嵌<br />
合 時 間 100~500[h]で 止 まることが 判 る。リフロー 無 し<br />
品 と 250[℃]リフロー 品 とを 比 較 すると、 最 大 長 ・ 発 生<br />
率 において 両 者 に 大 きな 違 いは 見 られない。<br />
ウィスカ 最 大 長 [μm]<br />
300<br />
250<br />
200<br />
150<br />
100<br />
50<br />
0<br />
□リフロー 無 し, ○ 250[℃]リフロー<br />
30<br />
N=360 25 N=360<br />
20<br />
15<br />
10<br />
5<br />
0<br />
0 1 2 3 4 5 6<br />
放 置 時 間 [×10 3 h]<br />
市 販 FFC(<strong>Sn</strong>) 嵌 合 , 室 温 放 置<br />
ウィスカ 発 生 率 [%]<br />
0 1 2 3 4 5 6<br />
放 置 時 間 [×10 3 h]<br />
図 7 放 置 時 間 と 最 大 ウィスカ 長 / 発 生 率 の 関 係<br />
3.3.リフロー 温 度 と 皮 膜 硬 度 の 関 係<br />
図 8にリフロー 温 度 と 皮 膜 硬 度 の 関 係 を 示 す。 初 期 か<br />
ら 230[℃]リフロー 時 にかけて 若 干 皮 膜 硬 度 が 低 下 する<br />
ことが 判 る。また、250[℃]リフロー 時 では 急 激 に 皮 膜 硬<br />
度 が 上 昇 し、 測 定 値 に 大 きなバラツキが 生 じる。<br />
皮 膜 硬 度 [HV]<br />
50<br />
N=10<br />
40<br />
0.02[gf]<br />
30<br />
20<br />
10<br />
0<br />
無 し 230℃ 250℃<br />
図 8 リフロー 温 度 と 皮 膜 硬 度 の 関 係<br />
3.4.めっき 断 面 SEM 観 察<br />
リフロー 温 度 と <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきの 粒 子 状 態 を 調 べるため、<br />
各 温 度 でのめっき 断 面 SEM 観 察 を 実 施 した( 図 9)。リフ
ロー 無 しの 状 態 は、 直 径 0.5[μm] 程 度 の 半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 層<br />
と、 直 径 2[μm] 程 度 の 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 層 で 構 成 されている<br />
ことが 判 る。<br />
半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong><br />
無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong><br />
<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong><br />
<strong>Sn</strong>-Ni 金 属 間 化 合 物<br />
Ni<br />
リン 青 銅<br />
(a) リフロー 無 し (b) 230[℃]リフロー (c) 250[℃]リフロー<br />
図 9 各 リフロー 温 度 における <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき 結 晶 状 態<br />
230[℃]リフロー 時 についても2つの <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき 層 が 確<br />
認 できる。ピーク 温 度 保 持 時 間 が 短 かったため、<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっ<br />
き 溶 融 には 至 っていない。また、どちらの 層 もリフロー 無 し<br />
品 に 比 べて 結 晶 粒 径 が 大 きく 成 長 している。 図 6において<br />
230[℃]リフロー 品 がリフロー 無 し 品 に 比 べてウィスカ 発 生<br />
が 抑 えられていた 理 由 は、この <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 粒 子 成 長 による 皮 膜 硬<br />
度 低 下 の 効 果 であると 考 えられる。<br />
250[℃]リフロー 時 には、 完 全 に 溶 融 した <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっき 皮 膜<br />
が 再 結 晶 化 することによって 最 も 大 きな 粒 子 を 形 成 しており、<br />
<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 層 自 体 の 硬 度 は 最 も 柔 らかくなっていると 考 えられる。<br />
また、 無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> 層 と Ni 層 との 境 界 に 針 状 の 金 属 間 化 合 物<br />
層 が 成 長 していることが 判 る。この 層 は XRD 測 定 によって、<br />
Ni 3 <strong>Sn</strong> 2 や Ni 3 <strong>Sn</strong> 4 を 主 成 分 とする 合 金 層 であることが 確 認 され<br />
ている。これが、 図 8の 250[℃]リフロー 時 において 皮 膜 硬<br />
度 増 加 が 見 られた 原 因 である。これによって、FPC/FFC 導 体<br />
部 からのウィスカ 発 生 が 促 進 されると 考 えられる。<br />
参 考 文 献<br />
1)K.-W.Moon,M.E.Williams,C.E.Johnson,G.R.Stafford,C.A.<br />
Handwerker,and W.J.Boettinger;Prceedings of The Fourth<br />
Pacific Rim Conference on Advanced Materials and<br />
Processing,pp.1115-1118,(2001)<br />
2)George T.T.Sheng et al.;J.Appl.Phys.,92(1),64-69,(20<br />
02)<br />
3)( 社 ) 電 子 情 報 技 術 産 業 協 会 : 鉛 フリーはんだ 実 用 化 検 討<br />
の 2004 年 度 成 果 報 告 書 ,(2004)<br />
4)( 社 ) 電 子 情 報 技 術 産 業 協 会 : 鉛 フリーはんだ 実 用 化 検 討<br />
の 2005 年 度 成 果 報 告 書 ,(2005)<br />
5)( 社 ) 電 子 情 報 技 術 産 業 協 会 :JEITA 鉛 フリー 化 完 遂 緊 急<br />
提 言 報 告 書 ,(2005)<br />
4. 結 論<br />
半 光 沢 と 無 光 沢 の2つの <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきを 用 いて 結 晶 粒 径 を<br />
制 御 することによって 耐 ウィスカ 性 に 優 れ、かつ 充 分 な 耐 食<br />
性 を 有 するめっきが 得 られることが 明 らかとなった。<br />
半 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきはぬれ 性 確 保 の 面 から 不 可 欠 である。<br />
無 光 沢 <strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきは 皮 膜 硬 度 低 下 を 実 現 し、 嵌 合 によって<br />
発 生 するウィスカを 50[μm] 程 度 まで 抑 えることができる。<br />
無 光 沢 膜 厚 比 X=0.8 において 最 も 良 好 な 耐 ウィスカ 性 が 得<br />
られる。なお、 嵌 合 によって 発 生 するウィスカは 嵌 合 時 間<br />
100[h]~500[h]で 飽 和 する。<br />
5.おわりに<br />
比 較 的 容 易 な 対 策 を 行 うことによって、<strong>Sn</strong>-<strong>Cu</strong> めっきであ<br />
ってもウィスカ 抑 制 効 果 に 優 れた(コネクタの <strong>Sn</strong> 系 鉛 フリー<br />
めっきとして 使 用 可 能 と 考 えられる)めっきが 得 られること<br />
が 明 らかとなった。 但 し、 現 在 もなおウィスカ 発 生 メカニズ<br />
ムは 完 全 に 解 明 されていないため、 今 後 様 々な 要 因 ( 浴 組 成 、<br />
加 工 条 件 、コンタクト 接 圧 、 接 点 形 状 等 )を 変 えて 性 能 確 認<br />
を 行 う 必 要 がある。