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目<br />
次<br />
[CA1743] 被 災 資 料 を 救 う:<br />
阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 からの 歴 史 資 料 ネットワークの 活 動 / 川 内 淳 史 …… 2<br />
[CA1744] 大 学 図 書 館 員 の 継 続 教 育 における 汎 用 的 能 力 の 重 要 性<br />
/ 溝 上 智 恵 子 …… 4<br />
[CA1745] 外 国 児 童 文 学 の 翻 訳 の 歩 み / 福 本 友 美 子 …… 6<br />
動 向 レビュー<br />
[CA1746]Linked Dataの 動 向 / 武 田 英 明 …… 8<br />
[CA1747]ONIX: 書 籍 流 通 における 出 版 社 のメタデータ 標 準 化 / 吉 野 知 義 …… 11<br />
[CA1748]デジタル 教 科 書 をめぐって / 澤 田 大 祐 …… 15<br />
研 究 文 献 レビュー<br />
[CA1749]MLA 連 携<br />
−アート・ドキュメンテーションからのアプローチ / 水 谷 長 志 …… 20<br />
No.308<br />
2011.6.20<br />
編 集 ・ 発 行 / 国 立 国 会 図 書 館 関 西 館 図 書 館 協 力 課<br />
〒619−0287 京 都 府 相 楽 郡 精 華 町 精 華 台 8−1−3 TEL:(0774)98−1448<br />
季 刊 / 3 月 ・6 月 ・9 月 ・12 月 各 20 日 発 行<br />
・ 本 誌 は、メールマガジン「カレントアウェアネス-E」 と 連 携 を 図 りながら、<br />
図 書 館 及 び 図 書 館 情 報 学 における、 国 内 外 の 近 年 の 動 向 及 びトピックスを 解 説 する 情 報 誌 です。<br />
・ 本 誌 の 全 文 は、「<strong>カレントアウェアネス・ポータル</strong>」 でもご 覧 いただけます。<br />
・ 本 誌 の 掲 載 記 事 を 長 文 にわたり 抜 すいして 転 載 される 場 合 には、 事 前 に 図 書 館 協 力 課 に 連 絡 してください。<br />
この 刊 行 物 は 再 生 紙 を 使 用 しております。
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
この 度 の 東 日 本 大 震 災 で 被 災 された 皆 様 に、 心 よりお<br />
見 舞 いを 申 し 上 げます。 本 誌 とカレントアウェアネ<br />
ス・ポータルでは、 被 災 地 の 復 興 の 一 助 となるよう、<br />
様 々な 情 報 提 供 を 行 っていきます。お 役 立 て 頂 ければ<br />
幸 いです。<br />
国 立 国 会 図 書 館 関 西 館 図 書 館 協 力 課<br />
CA1743 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■<br />
被 災 資 料 を 救 う: 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 からの<br />
歴 史 資 料 ネットワークの 活 動<br />
1. はじめに<br />
2011 年 3 月 11 日 に 発 生 した 東 日 本 大 震 災 により、<br />
東 北 ・ 関 東 地 方 を 中 心 とする 東 日 本 各 地 は 甚 大 な 被 害<br />
を 受 けた。 地 震 発 生 から 1 か 月 以 上 が 経 過 した 現 段 階<br />
(2011 年 4 月 26 日 現 在 )においても、1 万 人 以 上 の 行<br />
方 不 明 者 があり、 今 後 の 被 災 地 の 復 旧 ・ 復 興 には 困 難<br />
を 伴 うことも 予 想 される。そうした 中 、 今 回 の 震 災 で<br />
は 地 震 発 生 直 後 より 日 本 国 内 外 において 文 化 領 域 に 関<br />
わる 復 旧 支 援 活 動 が 広 範 な 拡 がりの 中 で 展 開 され、す<br />
でに 様 々な 取 り 組 みがなされているが (1) 、 被 災 地 であ<br />
る 宮 城 や 福 島 、 岩 手 などでは、 被 災 した 資 料 や 文 化 財<br />
の 滅 失 の 危 機 から 救 うべく、 被 災 資 料 ・ 文 化 財 の 救 出<br />
活 動 が 行 われている。2011 年 4 月 1 日 には 文 化 庁 によ<br />
る「 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 被 災 文 化 財 等 救 援 事 業 ( 文<br />
化 財 レスキュー 事 業 )」が 開 始 され、 阪 神 ・ 淡 路 大 震<br />
災 以 来 はじめて「 被 災 文 化 財 等 救 援 委 員 会 」が 設 置 さ<br />
れることになった (2) 。<br />
日 本 において 大 規 模 災 害 時 の 被 災 資 料 ・ 文 化 財 救 出<br />
事 業 が 本 格 的 に 開 始 されたのは、1995 年 1 月 17 日 の<br />
阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 からである。 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 にお<br />
いては、 前 述 の 文 化 庁 によるレスキュー 事 業 ( 被 災 文<br />
化 財 等 救 援 委 員 会 )のほか、ボランティア 団 体 連 合 で<br />
ある「 地 元 NGO 救 援 連 絡 会 議 」 内 の 文 化 情 報 部 など、<br />
様 々な 個 人 ・ 団 体 が 被 災 資 料 ・ 文 化 財 レスキュー 活 動<br />
を 行 ったのであるが、その 中 の 1 つが、 関 西 に 基 盤 を<br />
置 く 歴 史 学 会 ( 大 阪 歴 史 学 会 、 大 阪 歴 史 科 学 協 議 会 、<br />
日 本 史 研 究 会 、 京 都 民 科 歴 史 部 会 など)によって 結 成<br />
された 連 合 体 「 阪 神 大 震 災 対 策 歴 史 学 会 連 絡 会 ( 歴 史<br />
資 料 保 全 情 報 ネットワーク)」である。 歴 史 資 料 保 全<br />
情 報 ネットワークは 1996 年 にボランティア 組 織 「 歴<br />
史 資 料 ネットワーク( 略 称 : 史 料 ネット)」に 改 組 さ<br />
れ、さらに 2002 年 には 会 員 制 へと 移 行 した。 史 料 ネッ<br />
トは 結 成 より 16 年 間 、 大 規 模 地 震 ・ 水 害 時 における<br />
被 災 資 料 ・ 文 化 財 の 救 出 ・ 保 全 活 動 を 行 ってきた。<br />
そこで 本 稿 では、 現 在 、 史 料 ネットの 活 動 に 参 加 す<br />
る 一 員 として、これまでの 活 動 内 容 および、この 16<br />
年 間 での 活 動 の 拡 がりを 紹 介 することで、 大 規 模 自 然<br />
災 害 時 における 被 災 資 料 保 全 活 動 の 意 義 について 述 べ<br />
てみたい。<br />
2. 歴 史 資 料 ネットワークによる 被 災 資 料 保 全 活 動<br />
前 述 のように、 史 料 ネットは 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 を 契<br />
機 として、 震 災 により 被 災 した 資 料 の 救 出 ・ 保 全 を 目<br />
的 に、1995 年 2 月 13 日 、 尼 崎 市 立 地 域 研 究 史 料 館 ( 兵<br />
庫 県 尼 崎 市 )に 事 務 局 を 設 置 し、 結 成 された (3) 。 当 初<br />
の 活 動 は 地 元 NGO 救 援 連 絡 会 議 や 文 化 財 等 救 援 委 員<br />
会 、 地 元 博 物 館 などからの 救 援 要 請 を 受 けてボラン<br />
ティアを 派 遣 する 体 制 をとっていたが、 被 災 地 では 資<br />
料 の 被 災 状 況 ( 特 に 民 間 所 在 ・ 未 指 定 文 化 財 )に 関 す<br />
る 情 報 収 集 が 十 分 ではない 場 合 があったため、 同 年 3<br />
月 25 日 の 伊 丹 市 での 活 動 を 皮 切 りに、 地 元 自 治 体 と<br />
連 携 した 巡 回 調 査 を 行 った。 現 在 でも 史 料 ネットでは、<br />
大 規 模 な 災 害 が 発 生 した 場 合 、レスキュー 要 請 に 基 づ<br />
く 資 料 救 出 ・ 保 全 、および 被 災 地 での 巡 回 調 査 ( 被 害<br />
が 確 認 された 際 には 救 出 ・ 保 全 活 動 を 実 施 )を 活 動 の<br />
基 本 スタイルとしているが、その 原 型 はすでにこの 時<br />
点 で 確 立 されていた。 文 化 財 等 救 援 委 員 会 の 現 地 本 部<br />
( 当 初 は 神 戸 芸 術 工 科 大 学 内 、1995 年 4 月 より 尼 崎 市<br />
立 地 域 研 究 史 料 館 内 )が 閉 じられた 5 月 以 降 も 史 料 ネッ<br />
トによる 資 料 救 出 ・ 保 全 活 動 は 継 続 され、1996 年 12<br />
月 までに 段 ボール 箱 にして 計 1,500 箱 以 上 ( 民 具 類 を<br />
除 く)の 資 料 が 救 出 された。<br />
阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 に 際 しての 活 動 の 中 で 認 識 させら<br />
れたのが、 歴 史 研 究 者 と 市 民 との 間 の 歴 史 資 料 に 対 す<br />
る 認 識 の「ズレ」であった。すなわち、 歴 史 研 究 者 の<br />
側 は 近 代 以 前 の 古 文 書 のみならず、 近 現 代 の 日 記 ・ 写<br />
真 ・ 町 内 会 の 記 録 ・ビラなどの 身 近 なものについても、<br />
家 族 や 地 域 の 歴 史 を 伝 える 資 料 であると 認 識 するのに<br />
対 し、 市 民 の 側 はそうしたものを 歴 史 的 ・ 文 化 的 価 値<br />
を 有 するものと 考 えていない 場 合 が 多 く、そのため 災<br />
害 に 際 してそれらのものが 廃 棄 されてしまうケースが<br />
目 立 った。そのため 史 料 ネットでは、こうした 認 識 の<br />
ズレを 克 服 すべく、 自 治 体 関 係 者 や 市 民 との 日 常 的 な<br />
連 携 を 意 識 した 市 民 講 座 や 講 演 会 の 開 催 を 行 ってい<br />
る。また、 災 害 自 体 を 記 録 し、 地 域 社 会 の 中 で「 災<br />
害 文 化 」として 継 承 していくことを 主 眼 に、 阪 神 ・ 淡<br />
路 大 震 災 における「 震 災 資 料 」の 保 全 活 動 も 行 ってい<br />
る (4) 。こうした 活 動 は、 当 初 は 短 期 的 な 組 織 と 考 えら<br />
れた 史 料 ネットを、 恒 常 的 な 組 織 へと 発 展 させる 要 因<br />
となった。<br />
史 料 ネットの 活 動 のひとつの 転 機 となったのが、<br />
2004 年 より 開 始 された 風 水 害 に 際 しての 資 料 救 出 ・ 保<br />
2
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
全 活 動 である (5) 。2004 年 は 日 本 列 島 に 合 計 10 個 の 台<br />
風 が 上 陸 し、 各 地 に 被 害 をもたらした。こうした 状 況<br />
の 中 、 史 料 ネットでは 関 西 地 方 にも 大 きな 被 害 をもた<br />
らした 台 風 23 号 の 被 災 地 ( 兵 庫 県 北 部 および 京 都 府<br />
北 部 )において 活 動 を 行 った。 地 震 被 害 とは 違 い、 水<br />
損 ・ 汚 損 資 料 は 劣 化 (カビ・ 異 臭 )の 進 行 が 速 く、ま<br />
た、 復 旧 活 動 を 行 う 人 びとの 間 で、 歴 史 資 料 に 対 する<br />
十 分 な 認 識 が 得 られていないことから、 阪 神 ・ 淡 路<br />
大 震 災 以 後 定 着 した 迅 速 な 復 旧 ボランティア 活 動 の 中<br />
で、 劣 化 の 進 んだ 資 料 が「ゴミ」として 廃 棄 されてし<br />
まう 可 能 性 が 高 い。したがって、 被 災 地 における 資 料<br />
救 出 ・ 保 全 活 動 には 迅 速 さが 求 められ、また 手 近 なも<br />
ので 簡 単 に 行 うことができる 水 損 資 料 の 応 急 処 置 法 の<br />
開 発 ・ 普 及 が 求 められた。そうした 状 況 の 中 、 水 損 資<br />
料 への 対 応 に 際 しては、 地 元 の 教 育 委 員 会 や 郷 土 史 研<br />
究 団 体 、さらに 文 化 財 修 復 関 係 者 などとの 広 範 な 連 携<br />
が 行 われ、 迅 速 かつ 適 切 な 処 置 がとられる 必 要 があっ<br />
た。2009 年 8 月 の 台 風 9 号 により 兵 庫 県 佐 用 町 ・ 宍 粟<br />
市 を 中 心 に 被 害 のあった 際 には、これら 関 係 者 とのス<br />
ムーズな 連 携 をとることができ、それ 以 後 の 風 水 害 へ<br />
の 対 応 のモデルケースとなっている。また 日 常 的 な 活<br />
動 として、 各 大 学 や 学 会 などにおいて「 水 損 史 料 修 復<br />
ワークショップ」を 実 施 し、キッチンペーパーなど 身<br />
近 にある 物 で 行 える 水 濡 れ 資 料 の 簡 易 応 急 処 置 法 の 普<br />
及 にあたっている。<br />
風 水 害 被 災 地 での 活 動 を 通 して 認 識 させられたこと<br />
の 一 つに、 地 元 関 係 者 や 資 料 保 存 関 係 者 などとの、 日<br />
常 的 なコミュニケーションの 重 要 性 がある。 迅 速 な 対<br />
応 が 求 められる 風 水 害 被 災 地 においては、いかに 多 く<br />
の 関 係 者 と 日 常 的 に「 顔 見 知 り」となっているかで、<br />
救 出 ・ 保 全 活 動 の 成 否 が 決 まると 言 っても 過 言 ではな<br />
い。<br />
また 活 動 の 中 で、ほとんど「ゴミ」にしか 見 えない<br />
水 損 ・ 汚 損 資 料 が 修 復 されることで、 被 災 者 の 方 に 大<br />
変 喜 ばれたことにも 深 く 考 えさせられた。このことは、<br />
災 害 によって 多 くの 物 を 失 った 被 災 者 にとって、 一 度<br />
は 諦 めた 思 い 出 の 品 や 地 域 の 資 料 が 再 び 手 許 に 戻 ると<br />
いうことであり、それは 今 後 の 復 興 段 階 で 被 災 地 に<br />
とっての「 心 の 支 え」となるものである。 風 水 害 への<br />
対 応 に 際 して、 被 災 資 料 救 出 ・ 保 全 活 動 が 単 に「モノ」<br />
を 救 うだけの 活 動 ではなく、 被 災 地 の「 生 活 復 興 」の<br />
一 環 であることを、 資 料 の 救 出 ・ 保 全 活 動 を 行 う 私 た<br />
ちの 側 が 逆 に 認 識 させられたものであった。<br />
3. 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 から 16 年 。 今 、できること<br />
ごく 簡 単 にではあるが、 史 料 ネットの 16 年 間 の 活<br />
動 を 紹 介 してきた。1995 年 以 降 、 日 本 列 島 では 多 くの<br />
地 震 ・ 風 水 害 が 発 生 し、 各 地 で 甚 大 な 被 害 がもたらさ<br />
れている。しかしながらこの 16 年 の 間 、 災 害 を 契 機<br />
とした 形 で、あるいは 災 害 発 生 以 前 の 段 階 での 予 防 的<br />
なものとして、 同 様 のネットワークが 全 国 各 地 で 結 成<br />
されている (6) 。 東 日 本 大 震 災 においても、こうした 各<br />
地 で 結 成 された 資 料 ネットが 被 災 資 料 救 出 ・ 保 全 活 動<br />
を 精 力 的 に 展 開 しており、 史 料 ネットでも、 各 地 の 資<br />
料 ネットとの 協 力 体 制 を 構 築 している。<br />
また 震 災 発 生 直 後 より、 津 波 被 災 地 域 においては 写<br />
真 ・アルバムを 拾 い 集 めるボランティア 活 動 が 行 われ、<br />
各 メディアでも 大 きく 取 り 上 げられた。こうした 活 動<br />
が 注 目 を 浴 びることは、 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 から 16 年<br />
たった 現 在 、 資 料 を 救 うことが 心 の 復 興 、 生 活 の 復 興<br />
の 一 部 であると 日 本 社 会 の 中 で 認 識 されつつあること<br />
を 意 味 していると 言 えよう。おそらくこうした 心 の 復<br />
興 、 生 活 の 復 興 、そして 文 化 の 復 興 には、 膨 大 な 時 間 と、<br />
広 範 な 連 携 が 必 要 となるであろう。 近 年 、 文 化 領 域 で<br />
の MLA 連 携 の 重 要 性 などの 議 論 が 盛 んとなっている<br />
が、 被 災 地 の 復 興 に 向 けて、 今 、 多 くの 関 係 者 の 連 携<br />
が 必 要 とされていると、 私 たちは 考 えている。<br />
かわうちあつ<br />
し<br />
( 歴 史 資 料 ネットワーク 事 務 局 長 : 川 内 淳 史 )<br />
( 1 ) 例 えば 全 国 の 図 書 館 司 書 、 学 芸 員 、アーキビストなど 有 志 に<br />
より、 博 物 館 、 図 書 館 、 文 書 館 、 公 民 館 などの 被 災 情 報 を<br />
共 有 し、 必 要 とされる 情 報 発 信 を 行 う 被 災 情 報 ・ 救 援 サイト<br />
“saveMLAK” が 立 ち 上 げられている。<br />
saveMLAK. http://savemlak.jp/, ( 参 照 2011–04–26).<br />
( 2 )“ 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 被 災 文 化 財 等 救 援 事 業 ( 文 化 財 レス<br />
キュー 事 業 )について”. 文 化 庁 . 2011–03–31.<br />
http://www.bunka.go.jp/bunkazai/tohokujishin_kanren/pdf/<br />
bunkazai_rescue_jigyo_ver03.pdf, ( 参 照 2011–04–26).<br />
( 3 ) 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 をめぐる 史 料 ネットの 活 動 については 以 下<br />
を 参 照 。<br />
歴 史 資 料 ネットワーク 活 動 報 告 集 . 歴 史 資 料 ネットワーク,<br />
2004, 300p.<br />
( 4 ) 史 料 ネットによる「 震 災 資 料 」への 取 り 組 みについては 以 下<br />
を 参 照 。<br />
板 垣 貴 志 ほか 編 . 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 像 の 形 成 と 受 容 : 震 災 資<br />
料 の 可 能 性 . 岩 田 書 院 , 2011, 137p., ( 岩 田 書 院 ブックレット 歴<br />
史 考 古 系 , 7).<br />
( 5 ) 史 料 ネットによる 水 損 資 料 への 対 応 については 以 下 などを 参<br />
照 。<br />
松 下 正 和 ほか 編 . 水 損 史 料 を 救 う: 風 水 害 からの 歴 史 資 料 保<br />
全 . 岩 田 書 院 , 2009, 158p., ( 岩 田 書 院 ブックレットアーカイブ<br />
ズ 系 , 12).<br />
松 下 正 和 . 新 自 由 主 義 時 代 の 博 物 館 と 文 化 財 : 歴 史 資 料 ネッ<br />
トワークによる 水 損 史 料 救 出 活 動 について:2009 年 台 風 9<br />
号 への 対 応 を 中 心 に. 日 本 史 研 究 . 2010, (575), p. 55–61.<br />
板 垣 貴 志 ほか. 特 集 , 資 料 保 存 ・ 修 復 : 災 害 時 における 歴 史 資<br />
料 保 全 活 動 とその 方 法 : 歴 史 資 料 ネットワークによる 取 り 組<br />
み 現 場 から. 専 門 図 書 館 . 2010, (241), p. 21–28.<br />
( 6 ) 災 害 を 契 機 としたネットワークとしては 2000 年 鳥 取 県 西 部<br />
地 震 ( 山 陰 史 料 ネット)、2001 年 芸 予 地 震 ( 愛 媛 資 料 ネット、<br />
広 島 史 料 ネット、 史 料 ネットやまぐち)、2003 年 宮 城 北 部 地<br />
震 ( 宮 城 資 料 ネット)、2004 年 福 井 水 害 ( 福 井 史 料 ネット)、<br />
2004 年 中 越 地 震 ( 新 潟 資 料 ネット)、2005 年 台 風 14 号 ( 宮<br />
崎 ネット)、2007 年 能 登 半 島 地 震 ( 能 登 ネット)、2011 年 東<br />
日 本 大 震 災 ( 岩 手 ネット)がある。また、 災 害 前 に「 予 防 ネッ<br />
ト」として 設 立 されたものとしてはふくしま 史 料 ネット、 山<br />
形 ネット、 千 葉 ネット、 岡 山 史 料 ネットがある。なお 本 稿 では、<br />
歴 史 資 料 ネットワークの 略 称 としての「 史 料 ネット」と 区 別<br />
して、 各 地 のネットワークの 総 称 を「 資 料 ネット」と 表 現 した。<br />
3
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
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大 学 図 書 館 員 の 継 続 教 育 における<br />
汎 用 的 能 力 の 重 要 性<br />
継 続 教 育 における 専 門 的 能 力 と 汎 用 的 能 力<br />
専 門 職 の 継 続 教 育 は、1 特 定 分 野 の 知 識 や 技 能 など<br />
の 専 門 的 能 力 のブラッシュアップをめざす 教 育 と2<br />
あらゆる 分 野 の 業 務 に 必 要 な 汎 用 的 能 力 のブラッシュ<br />
アップをめざす 教 育 に 大 別 できる。これまで 図 書 館 員<br />
の 専 門 性 の 確 立 をめざしてきた 日 本 の 図 書 館 界 では、<br />
養 成 教 育 のみならず、 継 続 教 育 においても、 専 門 的 能<br />
力 を 養 成 するための 教 育 に 力 点 がおかれてきた。 例 え<br />
ば、2007 年 に 文 部 科 学 省 生 涯 学 習 政 策 局 社 会 教 育 課 が<br />
まとめた『 図 書 館 職 員 の 資 格 取 得 及 び 研 修 に 関 する 調<br />
査 研 究 報 告 書 』の「 第 5 章 司 書 等 に 対 する 研 修 事 例<br />
の 把 握 と 特 徴 的 な 事 例 の 整 理 」にみられるように、 図<br />
書 館 員 対 象 の 研 修 においては、 図 書 館 サービス 論 、 著<br />
作 権 、レファレンスサービス、 図 書 館 経 営 論 が 内 容 の<br />
大 半 を 占 め、 汎 用 的 能 力 にかかる 内 容 はごくわずかに<br />
すぎない (1) 。<br />
しかし、 近 年 、 図 書 館 をとりまく 社 会 が 急 激 に 変 化<br />
するなか、 日 本 においても 変 化 に 柔 軟 に 対 応 する 図 書<br />
館 員 の 能 力 獲 得 が 着 目 されるようになり、 決 して 専 門<br />
的 能 力 の 養 成 のみが、 継 続 教 育 の 目 的 ではなくなってき<br />
ている。 大 学 図 書 館 界 でこの 流 れを 示 すものに、2007<br />
年 に 出 された 国 立 大 学 図 書 館 協 会 人 材 委 員 会 の『 大 学<br />
図 書 館 が 求 める 人 材 像 について: 大 学 図 書 館 職 員 のコ<br />
ンピテンシー( 検 討 資 料 )』 (2) がある。<br />
コンピテンシーとは、「 既 存 の 能 力 指 標 や 職 務 分 析 に<br />
よる 職 務 特 性 とは 異 なっており、 行 動 として 顕 在 化 し<br />
観 察 可 能 であるが、 個 人 が 内 的 に 保 有 し 学 習 によって<br />
獲 得 される、 職 務 上 の 高 い 成 果 や 業 績 と 直 接 的 に 関 連<br />
した、 職 務 遂 行 能 力 にかかわる 新 しい 概 念 」 (3) であり、<br />
米 国 で 主 流 の 知 的 側 面 を 重 視 する「 能 力 」とは 必 ずし<br />
も 同 義 ではない。ただし、コンピテンシー 自 体 の 概 念<br />
も 定 義 も 依 然 として 多 義 的 であることを 踏 まえ、 本 稿<br />
では、 職 務 遂 行 能 力 としてとらえていくことにする。<br />
さて、このコンピテンシーも、『 大 学 図 書 館 が 求 め<br />
る 人 材 像 について: 大 学 図 書 館 職 員 のコンピテンシー<br />
( 検 討 資 料 )』では、 専 門 的 コンピテンシーと 一 般 的 コ<br />
ンピテンシーに 区 分 され、 後 者 の 一 般 的 コンピテン<br />
シーには、コミュニケーションや 連 携 ・ 協 力 などが 含<br />
まれ、 図 書 館 の 専 門 的 職 務 に 関 わる 専 門 的 コンピテン<br />
シーとは 異 なる 概 念 とされている。<br />
なお 永 田 治 樹 ほかの「 大 学 図 書 館 職 員 のコンピテン<br />
シーについて」 (4) は、 海 外 における 議 論 をもとに、 専<br />
門 職 のためのコンピテンシーとネブラスカ 大 学 図 書 館<br />
員 のそれとを 比 較 して、 図 書 館 員 のコンピテンシーは、<br />
問 題 解 決 の 貫 徹 や 問 われる 前 の 問 題 への 取 組 みといっ<br />
た 先 導 性 よりも、 顧 客 やコミュニティへのまなざしが<br />
強 いことや、そのための 知 識 や 状 況 への 対 応 が 求 めら<br />
れているとしている。<br />
このように 注 目 を 集 めている 汎 用 的 能 力 は、 国 や 研<br />
究 者 により 呼 称 が 異 なっており (5) 、 日 本 では、 例 えば<br />
経 済 産 業 省 が「 社 会 人 基 礎 力 」 (6) 、 厚 生 労 働 省 が「 就<br />
職 基 礎 力 」 (7) と 表 現 する 一 方 で、 文 部 科 学 省 はキャリ<br />
ア 教 育 分 野 でも「 汎 用 的 能 力 」を 使 用 している (8) 。つ<br />
いては 本 稿 では、 体 系 的 な 継 続 教 育 を 提 供 する 場 であ<br />
る 高 等 教 育 界 でもっとも 流 通 している「 汎 用 的 能 力 」<br />
を 用 いていく。<br />
汎 用 的 能 力 とその 育 成 の 背 景<br />
教 育 分 野 では「 汎 用 的 能 力 」が 一 般 名 詞 になりつつ<br />
あるとはいえ、 具 体 的 な 個 々の 能 力 になると、その 内<br />
容 は 百 花 繚 乱 状 態 であり、 概 念 や 定 義 の 明 確 化 はまだ<br />
図 られていない。 例 えば、 前 述 の 経 済 産 業 省 が 定 義 す<br />
る「 社 会 人 基 礎 力 」では、12 の 能 力 要 素 ( 主 体 性 、 働<br />
きかけ 力 、 実 行 力 、 課 題 発 見 力 、 計 画 力 、 創 造 力 、 発<br />
信 力 、 傾 聴 力 、 柔 軟 性 、 情 況 把 握 力 、 規 律 性 、ストレ<br />
スコントロール 力 )があげられている (9) 。<br />
また、 国 立 大 学 図 書 館 協 会 は 一 般 的 コンピテンシー<br />
として 12 のコンピテンシー(コミュニケーション、<br />
連 携 ・ 協 力 、 問 題 解 決 、 継 続 学 習 、 柔 軟 性 ・ 積 極 性 、<br />
戦 略 策 定 、 創 造 性 ・ 革 新 性 、 視 野 の 広 さ、 表 現 力 ・ 交<br />
渉 力 、 公 平 性 、チームワーク、 調 査 研 究 )をあげてい<br />
る。<br />
なお、オーストラリア 国 家 訓 練 局 は、 各 国 の 汎 用 的<br />
能 力 に 関 する 議 論 を 踏 まえて、 基 礎 的 能 力 、 人 間 関 係<br />
能 力 、 概 念 / 思 考 能 力 、 個 人 の 能 力 と 特 性 、ビジネス<br />
社 会 関 連 能 力 そしてコミュニティ 関 連 能 力 の 6 つの<br />
要 素 を、 汎 用 的 能 力 に 共 通 する 部 分 として 抽 出 してい<br />
る (10) 。<br />
ついては、 本 稿 では、 前 述 の 定 義 や 概 念 をもとに、<br />
図 書 館 職 員 に 求 められる 汎 用 的 能 力 として、 仮 に「 人<br />
間 関 係 形 成 ・ 社 会 形 成 能 力 」、「 情 報 活 用 発 信 能 力 」、「 課<br />
題 発 見 解 決 能 力 」および「 意 思 決 定 能 力 」の 4 つの 能<br />
力 から 構 成 されると 定 義 したい。すなわち、 他 者 との<br />
人 間 関 係 を 構 築 できること、 課 題 発 見 のための 情 報 を<br />
収 集 し 分 析 できること、そして 収 集 データから 解 決 策<br />
を 導 きだし、それを 実 施 できる 能 力 ということである。<br />
では、 教 育 の 場 で、この 汎 用 的 能 力 の 育 成 が 注 視 さ<br />
れるにいたった 背 景 には、どのような 社 会 の 変 化 が<br />
あったのだろうか。まず、 情 報 通 信 技 術 の 急 速 な 発 達<br />
に 伴 い、 知 識 の 獲 得 が 以 前 に 比 較 すると 容 易 になった<br />
ことがある。そこで、 既 存 の 知 識 体 系 の 精 通 のみなら<br />
ず、「 変 化 する 社 会 に 応 じて、 既 存 の 知 識 体 系 を 見 直 す、<br />
4
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
若 しくは 組 み 合 わせを 変 えて 新 たな 価 値 を 創 出 し、そ<br />
れを 実 践 できる 人 材 」が 重 要 視 されるようになった (11) 。<br />
これを 受 ける 形 で、 学 校 教 育 の 場 で 獲 得 すべき 能 力 の<br />
1 つとして、「 文 脈 を 超 えて 通 用 する『 汎 用 性 』のあ<br />
る 知 識 や 技 能 が 全 ての 市 民 に 求 められ」るようになっ<br />
たのである (12) 。<br />
よって 日 本 では、 汎 用 的 能 力 はキャリア 教 育 ・ 職 業<br />
教 育 や 大 学 教 育 との 関 連 で 論 じられる 傾 向 が 強 いとい<br />
える。<br />
現 職 者 を 対 象 とし、 実 践 的 研 究 を 行 う 高 度 専 門 職 業 人<br />
の 育 成 をめざす 図 書 館 情 報 学 キャリアアッププログラ<br />
ムを 設 けた。 図 書 館 情 報 学 にかかる 専 門 的 能 力 のみな<br />
らず、「 研 究 の 手 引 き」や「 調 査 分 析 法 」を 演 習 科 目<br />
として 設 定 するなど 汎 用 的 能 力 の 養 成 もめざしたカリ<br />
キュラムの 提 供 を 開 始 した (16) 。その 具 体 的 成 果 は 数 年<br />
後 を 待 たねばならないが、 従 来 の 図 書 館 員 の 継 続 教 育<br />
に 刺 激 を 与 える、 新 たな 動 きとして 着 目 したい。<br />
みぞうえ<br />
ち え こ<br />
)<br />
( 筑 波 大 学 : 溝 上 智 恵 子<br />
大 学 図 書 館 員 のキャリアアップ 教 育<br />
確 かに 大 学 図 書 館 員 にも 汎 用 的 能 力 が 必 要 だとする<br />
意 見 は、すでに 存 在 する。しかし 実 際 の 図 書 館 員 対 象<br />
の 研 修 内 容 には、いまだ 十 分 反 映 されているとはいえ<br />
ない。ついては、 今 後 、 図 書 館 員 の 継 続 教 育 において、<br />
汎 用 的 能 力 の 具 体 化 と 重 要 性 の 認 知 が 必 要 であろう。<br />
汎 用 的 能 力 の 育 成 といった 点 から、 大 学 図 書 館 員 の<br />
継 続 教 育 を 再 考 してみよう。 例 えば、『 大 学 図 書 館 が<br />
求 める 人 材 像 について: 大 学 図 書 館 職 員 のコンピテン<br />
シー( 検 討 資 料 )』が、 若 手 、 中 堅 、 補 佐 ・ 専 門 員 、<br />
管 理 職 の 4 職 層 別 にあげているコンピテンシーをみて<br />
みよう (13) 。 各 職 層 に 汎 用 的 能 力 は 含 まれているが、な<br />
かでも 中 堅 職 員 と 補 佐 ・ 専 門 員 に 着 目 すると、 前 者 に<br />
必 要 なコンピテンシーとしてあげられている 5 点 中 4<br />
点 ( 問 題 解 決 、 視 野 の 広 さ、 表 現 力 ・ 交 渉 力 およびリー<br />
ダーシップ)、 後 者 に 必 要 なものとしてあげている「 調<br />
査 研 究 」は、まさにいずれもが 汎 用 的 能 力 に 該 当 して<br />
いる。<br />
つまり、 中 堅 職 員 以 上 の 職 層 には、 汎 用 的 能 力 の 育<br />
成 を 主 眼 としたプログラムの 開 発 が 求 められていると<br />
いえるのではないだろうか。<br />
今 日 、 多 くの 大 学 図 書 館 では、 図 書 館 サービス 向 上<br />
のための 施 策 立 案 や 図 書 館 評 価 の 実 施 が 求 められて<br />
いる。そのため 大 学 図 書 館 員 には、 大 学 図 書 館 の 現 状<br />
を 分 析 し、 課 題 を 発 見 し、その 解 決 策 を 生 み 出 すデー<br />
タ 収 集 能 力 を 含 めた 課 題 発 見 解 決 能 力 こそが 必 須 であ<br />
る。そして、 発 見 された 課 題 を 解 決 するためには、 意<br />
思 決 定 能 力 が 不 可 欠 である。キャリアアップ 教 育 の 中<br />
でも、 特 に 図 書 館 経 営 や 戦 略 立 案 を 担 う 中 堅 以 上 の 職<br />
員 を 対 象 とした 継 続 教 育 には、こうした 能 力 の 育 成 に<br />
もっと 重 点 をおくべきであろう。<br />
汎 用 的 能 力 の 育 成 を 意 識 した 動 きとして、 例 えば 海<br />
外 では、リーダーシップ 能 力 の 育 成 に 重 点 がおかれ (14) 、<br />
ライブラリー・スクールを 持 たないハーバード 大 学 が<br />
大 学 図 書 館 員 を 対 象 にしたリーダーシップ 育 成 のため<br />
の 継 続 教 育 プログラムを 実 施 している (15) 。<br />
日 本 でも、2011 年 度 から 筑 波 大 学 図 書 館 情 報 メディ<br />
ア 研 究 科 が 博 士 前 期 課 程 に、 図 書 館 情 報 学 関 連 分 野 の<br />
( 1 ) 文 部 科 学 省 生 涯 学 習 政 策 局 社 会 教 育 課 . “ 第 5 章 司 書 等 に 対<br />
する 研 修 事 例 の 把 握 と 特 徴 的 な 事 例 の 整 理 ”. 図 書 館 職 員 の<br />
資 格 取 得 及 び 調 査 研 究 報 告 書 . 文 部 科 学 省 , 2007, p. 127–218.<br />
h t t p : / / w w w . m e x t . g o . j p / a _ m e n u / s h o u g a i / t o s h o /<br />
houkoku/07090599/005.pdf, ( 参 照 2011–04–01).<br />
( 2 ) 国 立 大 学 図 書 館 協 会 人 材 委 員 会 . “ 大 学 図 書 館 が 求 める 人 材<br />
像 について: 大 学 図 書 館 職 員 のコンピテンシー( 検 討 資<br />
料 )”. 国 立 大 学 図 書 館 協 会 , 2007.<br />
http: //wwwsoc.nii.ac.jp/anul/j/projects/hr/jinzaizo1903.pdf,<br />
( 参 照 2011–04–01).<br />
( 3 )JMAM コンピテンシー 研 究 会 編 . コンピテンシーラーニン<br />
グ: 業 績 向 上 につながる 能 力 開 発 の 新 指 標 . 日 本 能 率 協 会 マ<br />
ネジメントセンター, 2002, p. 193.<br />
( 4 ) 永 田 治 樹 ほか. “ 大 学 図 書 館 職 員 のコンピテンシーについて:<br />
大 学 図 書 館 員 の 専 門 性 と 人 材 育 成 のあり 方 に 関 する 研 究 ”.<br />
筑 波 大 学 附 属 図 書 館 研 究 開 発 室 年 次 報 告 : 平 成 20–21 年 度 .<br />
筑 波 大 学 附 属 図 書 館 研 究 開 発 室 , 2011, p. 34–44.<br />
http://www.tulips.tsukuba.ac.jp/RD/annual_report_2008–2009.<br />
pdf, ( 参 照 2011–04–01).<br />
( 5 ) 国 や 研 究 者 により 呼 称 が 異 なっており、「 中 核 技 能 (Core<br />
skills)< 主 として 英 国 >」、「 就 業 可 能 性 (Employability<br />
skills)< 主 としてオーストラリア>」あるいは「 基 礎 技 能<br />
(Basic skills)< 主 として 米 国 >」と 呼 ばれる 場 合 もある。<br />
Australian National Training Authority. Defining Generic<br />
Skills: At a Glance. National Centre for Vocational<br />
Education Research Ltd, 2003, p. 2.<br />
( 6 )“「 社 会 人 基 礎 力 」 育 成 のススメ: 社 会 人 基 礎 力 育 成 プログ<br />
ラムの 普 及 を 目 指 して”. 経 済 産 業 省 , 2007, 27p.<br />
http://www.meti.go.jp/press/20070517001/kisoryokureference.pdf,<br />
( 参 照 2011–04–01).<br />
( 7 ) 中 央 職 業 能 力 開 発 協 会 . “ 若 年 者 就 職 基 礎 能 力 修 得 のための<br />
目 安 策 定 委 員 会 報 告 書 ”. 厚 生 労 働 省 . 2004–07.<br />
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/07/dl/h0723-4h.pdf,<br />
( 参 照 2011–04–01).<br />
( 8 )“キャリア 発 達 にかかわる 諸 能 力 の 育 成 に 関 する 調 査 研 究<br />
報 告 書 ”. 文 部 科 学 省 国 立 教 育 政 策 研 究 所 生 徒 指 導 研 究 セン<br />
ター. 2011–03.<br />
http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/22career_shiryou/<br />
pdf/career_hattatsu_all.pdf, ( 参 照 2011–04–30).<br />
( 9 )“「 社 会 人 基 礎 力 」 育 成 のススメ: 社 会 人 基 礎 力 育 成 プログ<br />
ラムの 普 及 を 目 指 して ”. 経 済 産 業 省 , 2007, p. 1.<br />
http://www.meti.go.jp/press/20070517001/kisoryokureference.pdf,<br />
( 参 照 2011–04–01).<br />
(10)Australian National Training Authority. Defining Generic<br />
Skills: At a Glance. National Centre for Vocational<br />
Education Research Ltd, 2003, p. 8.<br />
(11)“「 社 会 人 基 礎 力 」 育 成 のススメ: 社 会 人 基 礎 力 育 成 プログ<br />
ラムの 普 及 を 目 指 して”. 経 済 産 業 省 , 2007, p. 2.<br />
http://www.meti.go.jp/press/20070517001/kisoryokureference.pdf,<br />
( 参 照 2011–04–01).<br />
(12) 川 嶋 太 津 夫 .“ ジェネリック・スキルとアセスメントに 関 す<br />
る 国 際 動 向 ”. 学 士 課 程 教 育 のアウトカム 評 価 とジェネリッ<br />
クスキルの 育 成 に 関 する 国 際 比 較 研 究 : 平 成 19–21 年 度 科<br />
学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 (B) 研 究 成 果 報 告 書 . 研 究 代 表 者 :<br />
濱 名 篤 . 関 西 国 際 大 学 , 2010, p. 158.<br />
http://www.kuins.ac.jp/kuinsHP/facilities/Education/2010/<br />
InternationalComparisonResearchReport.pdf. ( 参 照 2011–04–<br />
01).<br />
(13) 国 立 大 学 図 書 館 協 会 人 材 委 員 会 . “ 大 学 図 書 館 が 求 める 人 材<br />
像 について: 大 学 図 書 館 職 員 のコンピテンシー( 検 討 資 料 )”.<br />
国 立 大 学 図 書 館 協 会 , 2007, p. 7, 14.<br />
http://wwwsoc.nii.ac.jp/anul/j/projects/hr/jinzaizo1903.<br />
pdf, ( 参 照 2011–04–01).<br />
5
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
(14) 例 えば 以 下 の 文 献 がある。<br />
Byke, Suzanne et al. A Leadership Primer for New<br />
Librarians: Tools for Helping Today's Early-career<br />
Librarians to Become Tomorrow's Library Leaders.<br />
Chandos Publishing, 2009, 167p.<br />
Lowe-Wincentsen, Dawn et al. Mid-Career Library and<br />
Information Professionals: A Leadership Primer. Chandos<br />
Publishing, 2011, 241p.<br />
(15)“Programs in Professional Education”. Harvard Graduate<br />
School of Education. 2011–03–03.<br />
http://www.gse.harvard.edu/ppe/programs/highereducation/portfolio/leadership-academic-librarians.html,<br />
(accessed 2011–04–20).<br />
(16)“ 筑 波 大 学 大 学 院 図 書 館 情 報 メディア 研 究 科 修 了 要 件 指 導 体<br />
制 ”. 筑 波 大 学 図 書 館 情 報 メディア 研 究 科 .<br />
http://www.slis.tsukuba.ac.jp/grad/education/youken.html,<br />
( 参 照 2011–04–01).<br />
CA1745 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■<br />
外 国 児 童 文 学 の 翻 訳 の 歩 み<br />
はじめに<br />
国 際 子 ども 図 書 館 が 開 館 したのは 2000 年 5 月 だっ<br />
たが、 開 館 記 念 の 行 事 として、 社 団 法 人 国 際 児 童 図 書<br />
評 議 会 との 共 催 で「 子 どもの 本 ・ 翻 訳 の 歩 み 展 」が 行<br />
われた。これは 日 本 の 子 ども 達 が 過 去 に 読 んできた 児<br />
童 書 のなかで 大 きな 位 置 を 占 める、 外 国 語 から「 翻 訳 」<br />
された 児 童 文 学 を 歴 史 の 流 れに 沿 って 通 覧 しようとい<br />
う 試 みであった。 国 際 児 童 図 書 評 議 会 の 会 員 として 長<br />
年 翻 訳 児 童 文 学 の 歴 史 を 研 究 してきた 筆 者 は、この 展<br />
示 会 の 実 行 委 員 として 参 加 した。<br />
本 稿 では、この 展 示 会 で 発 表 した 1960 年 代 までの<br />
翻 訳 作 品 に、それ 以 降 の 翻 訳 の 状 況 を 加 えて、 外 国 児<br />
童 文 学 の 翻 訳 の 歩 みを 概 観 する。なおここで 取 り 上 げ<br />
る「 外 国 児 童 文 学 」は、 外 国 語 で 執 筆 され、 日 本 語 に<br />
翻 訳 された 子 どものための 文 学 とし、 絵 本 、ノンフィ<br />
クションは 含 まない。<br />
参 考 文 献 とした 子 どもの 本 ・ 翻 訳 の 歩 み 研 究 会 編<br />
『 図 説 子 どもの 本 ・ 翻 訳 の 歩 み 事 典 』は、 上 記 展 示 会<br />
の 実 行 委 員 が 中 心 となって 編 纂 した 書 物 である。<br />
児 童 文 学 翻 訳 黎 明 期 から 戦 前 まで<br />
日 本 で 子 どものために 翻 訳 された 最 初 の 本 といわれ<br />
ているのは、 幕 末 の 1857 年 に「ロビンソン・クルー<br />
ソー」をオランダ 語 版 から 重 訳 した『 魯 敏 遜 漂 行 紀 略 』<br />
である。これを 皮 切 りに、「ガリヴァー 旅 行 記 」やヴェ<br />
ルヌの 空 想 科 学 小 説 などが 盛 んに 翻 訳 された。 長 い 鎖<br />
国 が 終 わり、 新 しい 世 界 に 目 を 向 けようという 気 運 が<br />
感 じられる。<br />
明 治 時 代 には 若 松 賤 子 訳 のバーネット 作 『 小 公 子 』<br />
(1891)と、 森 田 思 軒 訳 のヴェルヌ 作 『 十 五 少 年 』(1896)<br />
が 二 大 名 訳 といわれた。 若 松 の 訳 文 は 滑 らかな 言 文 一<br />
致 体 で、その 後 の 翻 訳 文 体 に 多 大 な 影 響 を 与 えた。ま<br />
た「 翻 案 」をせず、 原 作 の 雰 囲 気 を 忠 実 に 伝 えようと<br />
した 翻 訳 態 度 は 画 期 的 であった。 森 田 の 訳 文 は 漢 文 調<br />
だったが、 緊 迫 した 描 写 を 精 密 に 訳 し、 原 作 者 の 精 神<br />
を 生 かした 名 訳 とうたわれた。<br />
「 翻 案 」とは 外 国 の 風 物 になじみのない 日 本 の 読 者<br />
に 配 慮 して、 人 物 名 を 日 本 名 に、 物 語 の 舞 台 を 日 本 の<br />
地 名 に 移 し 変 えることで、 明 治 ・ 大 正 時 代 に 盛 んに 行<br />
われた。 菊 池 幽 芳 訳 の『 家 なき 児 』(1912)では、 主<br />
人 公 のレミを 民 、シャバノン 村 を 鯖 野 村 と 訳 すという<br />
具 合 である。 他 にも、ハイジは 楓 ちゃん、オリバー・<br />
ツイストは 小 桜 新 吉 になった。また 子 どものために 原<br />
作 をやさしく 語 り 直 した「 再 話 」や、 複 雑 な 部 分 を 省<br />
略 した「 抄 訳 」も 多 く 行 われた。<br />
大 正 時 代 には 冨 山 房 の『 模 範 家 庭 文 庫 』、 精 華 書 院<br />
の『 世 界 少 年 文 学 名 作 集 』、 世 界 童 話 大 系 刊 行 会 の『 世<br />
界 童 話 大 系 』などの 豪 華 で 高 価 な 叢 書 が 刊 行 され、 家<br />
庭 の 本 棚 に 翻 訳 文 学 が 教 養 として 備 えられるようにな<br />
る。これらの 叢 書 に 収 められた 古 典 作 品 が、その 後 も<br />
長 いあいだ 外 国 児 童 文 学 の 名 作 として 定 着 していく。<br />
昭 和 に 入 っても 繰 り 返 し 翻 訳 され 定 番 となったタイト<br />
ルには、 英 国 の「ロビンソン・クルーソー」「 宝 島 」「ガ<br />
リヴァー 旅 行 記 」「 不 思 議 の 国 のアリス」「ピーター・<br />
パン」「ジャングル・ブック」「 黒 馬 物 語 」「フランダー<br />
スの 犬 」「クリスマス・カロル」、 米 国 の「 王 子 と 乞 食 」<br />
「トム・ソーヤーの 冒 険 」「 小 公 子 」「 秘 密 の 花 園 」「 若<br />
草 物 語 」、フランスの「ああ 無 情 」「 三 銃 士 」「 十 五 少<br />
年 漂 流 記 」「 家 なき 子 」、イタリアの「クオレ」「ピノッ<br />
キオの 冒 険 」、スイスの「ハイジ」、ベルギーの「 青 い 鳥 」、<br />
スウェーデンの「ニルスの 不 思 議 な 旅 」などがあり、<br />
「グリム 童 話 集 」「アンデルセン 童 話 集 」「アラビアン・<br />
ナイト」も 人 気 があった。 自 国 以 外 の 児 童 文 学 の 中 に、<br />
皆 が 共 通 して 知 っているタイトルがこれほど 多 い 国 は<br />
世 界 でも 稀 であろう。<br />
昭 和 初 期 には 児 童 文 学 も 大 衆 化 の 時 代 を 迎 え、 大 量<br />
生 産 による 廉 価 な 叢 書 が 出 版 された。アルス 社 の『 日<br />
本 児 童 文 庫 』 全 76 巻 と 興 文 社 ・ 文 藝 春 秋 社 の『 小 学<br />
生 全 集 』 全 88 巻 は 互 いに 激 しい 宣 伝 ・ 販 売 合 戦 を 繰<br />
り 広 げた。この 中 にも 名 作 の 翻 訳 が 多 く 含 まれている。<br />
戦 後 から 現 代 まで<br />
戦 後 になってやっと 各 国 の 児 童 文 学 の 新 しい 作 品 を<br />
紹 介 しようという 動 きが 出 てきた。1950 年 から 刊 行 さ<br />
れた『 岩 波 少 年 文 庫 』と 講 談 社 の『 世 界 名 作 全 集 』は、<br />
定 番 の 名 作 を 残 しながらも 同 時 代 の 新 しい 作 品 を 意 欲<br />
的 に 翻 訳 し 始 めた。『 岩 波 少 年 文 庫 』には、ソビエト<br />
児 童 文 学 から『こぐま 星 座 』や『ヴィーチャと 学 校 友<br />
だち』、ドイツからケストナーの『ふたりのロッテ』<br />
ほかの 作 品 、 英 国 からランサムの『ツバメ 号 とアマゾ<br />
ン 号 』やルイスの『オタバリの 少 年 探 偵 たち』、 米 国<br />
6
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
からワイルダーの『 長 い 冬 』など、 新 しい 時 代 の 息 吹<br />
を 感 じさせる 児 童 文 学 が 次 々に 翻 訳 された。 少 年 少 女<br />
の 日 常 生 活 を 細 部 にわたってリアリスティックに 描 い<br />
た 作 品 が 目 立 つ。<br />
一 方 空 想 的 な 物 語 は 英 国 に 多 く、『とぶ 船 』『 風 にのっ<br />
てきたメアリー・ポピンズ』『 床 下 の 小 人 たち』『クマ<br />
のプーさん』などが 翻 訳 された。フランスの『 星 の 王<br />
子 さま』、アメリカの『ドリトル 先 生 アフリカ 行 き』、<br />
チェコの『 長 い 長 いお 医 者 さんの 話 』、イタリアの『チ<br />
ポリーノの 冒 険 』なども、 独 特 の 楽 しい 世 界 を 繰 り 広<br />
げた (1) 。<br />
同 じころ 相 次 いで 刊 行 が 始 まった 創 元 社 の『 世 界 少<br />
年 少 女 文 学 全 集 』(1953 ~ 1958)と 講 談 社 の『 少 年 少<br />
女 世 界 文 学 全 集 』(1958 ~ 1962)は、 世 界 の 児 童 文 学<br />
を 全 50 巻 の 中 に 網 羅 的 に 収 録 した 大 規 模 な 全 集 であ<br />
る。 社 会 の 安 定 と 共 に 家 庭 の 購 買 力 が 上 がり、 子 ども<br />
に 良 質 の 文 学 を 読 ませたいという 親 の 意 識 も 高 まっ<br />
て、これらの 全 集 は 爆 発 的 な 売 れ 行 きをみせた。<br />
1960 年 代 から 70 年 代 には、 児 童 図 書 の 出 版 も 年 々<br />
盛 んになり、 出 版 社 も 増 えた。 欧 米 の 児 童 文 学 の 研 究<br />
が 熱 心 におこなわれ、 新 しい 情 報 も 容 易 に 手 に 入 るよ<br />
うになって、 児 童 図 書 賞 の 受 賞 作 など 評 価 の 高 い 作 品<br />
がいち 早 く 翻 訳 されるようになった。あかね 書 房 、 学<br />
習 研 究 社 、 評 論 社 、 偕 成 社 、 福 音 館 書 店 、 冨 山 房 など<br />
から、 質 の 高 い 充 実 した 翻 訳 シリーズが 次 々に 刊 行 さ<br />
れている。 第 二 次 世 界 大 戦 後 の 児 童 文 学 には、 困 難 を<br />
のりこえて 成 長 する 子 どもの 姿 を 描 いた 理 想 主 義 的 な<br />
作 品 が 多 く、 日 本 の 作 家 たちにも 大 きな 刺 激 となった。<br />
20 世 紀 の 終 わりには 児 童 文 学 も 現 代 社 会 の 諸 相 を 映<br />
し、テーマは 多 岐 にわたるようになる。 物 質 的 な 豊 か<br />
さとは 裏 腹 に、 家 族 の 崩 壊 や 老 人 問 題 、 差 別 などの 深<br />
刻 な 問 題 が 扱 われ、 子 どもの 心 の 内 側 を 深 く 掘 り 下 げ<br />
る 作 風 が 注 目 された。<br />
21 世 紀 に 入 ってすぐに 一 大 旋 風 を 巻 き 起 こしたのは<br />
「ハリー・ポッター」シリーズである。1997 年 に 英 国<br />
で 出 版 されるや 欧 米 諸 国 で 一 躍 ベストセラーとなった<br />
ローリングのファンタジーが 日 本 でも 翻 訳 され、 子 ど<br />
もばかりか 大 人 にも 人 気 を 博 して 驚 異 的 な 売 り 上 げを<br />
記 録 した。 不 況 続 きの 出 版 界 ではこれにあやかろうと<br />
次 々に 古 いファンタジーを 復 刊 したり、 新 作 を 捜 し 求<br />
めたりする 傾 向 が 見 られた。<br />
南 欧 、 東 欧 諸 国 の 文 学 はまだ 少 ない。アジアについて<br />
は、 中 国 、 韓 国 の 作 品 が 少 しずつ 訳 されているが、そ<br />
の 他 の 国 々の 作 品 はほとんど 紹 介 されていない。アジ<br />
ア 諸 国 では 児 童 文 学 の 出 版 自 体 がまだ 発 展 途 上 にある<br />
ことや、 多 岐 にわたるアジア 言 語 の 翻 訳 者 が 少 ないこ<br />
とも 一 因 である。<br />
21 世 紀 は、 異 文 化 を 知 り 国 際 理 解 を 深 めるグロー<br />
バリゼーションの 時 代 といわれる。これまでごく 少 数<br />
だったアフリカを 舞 台 にした 作 品 も 翻 訳 され 始 めた。<br />
英 米 主 導 の 児 童 文 学 も 少 しずつその 地 平 を 広 げつつあ<br />
る。<br />
日 本 では 世 界 の 先 端 を 行 く 児 童 文 学 が 翻 訳 されると<br />
同 時 に、 古 典 作 品 が 訳 者 を 新 しくして 訳 し 直 されてき<br />
た。 明 治 から 平 成 の 長 きにわたり 外 国 の 名 作 を 翻 訳 で<br />
読 み 続 けられたのは 日 本 ならではの 幸 せだが、 現 代 の<br />
子 ども 達 に 供 するには 注 意 を 要 する 点 もある。 児 童 文<br />
学 はその 時 代 の 社 会 の 価 値 観 を 反 映 する 傾 向 にあるの<br />
で、 古 い 時 代 の 作 品 には 今 と 異 なる 価 値 観 で 描 かれた<br />
部 分 が 少 なくない。 例 えば 名 作 物 によく 登 場 する「 孤<br />
児 院 」のイメージは 今 の 養 護 施 設 の 状 況 と 全 く 異 なる<br />
し、 職 業 、 貧 富 の 差 、 障 碍 に 対 する 考 え 方 も 変 化 して<br />
いる。 作 品 によっては、 時 代 背 景 をまだ 理 解 できない<br />
年 齢 の 読 者 には 誤 解 を 与 える 危 険 性 があるので、 新 訳<br />
の 際 に 時 代 背 景 について 解 説 を 加 えたものもある。 図<br />
書 館 では 新 訳 が 出 るたびにそういった 観 点 からも 作 品<br />
を 見 直 し、 現 代 の 読 者 への 提 供 の 方 法 に 配 慮 すること<br />
が 望 ましい。<br />
ふくもと<br />
ゆ み こ<br />
( 児 童 図 書 研 究 ・ 翻 訳 家 : 福 本 友 美 子 )<br />
( 1 ) 現 実 の 暮 らしの 中 に 妖 精 や 小 人 が 出 現 して 不 思 議 なことがお<br />
こるエブリデイマジックの 手 法 は、 日 本 でいぬいとみこの『 木<br />
かげの 家 の 小 人 たち』や 佐 藤 暁 の『だれも 知 らない 小 さな 国 』<br />
に 生 かされ、 両 作 の 出 版 された 1959 年 は 日 本 の 現 代 児 童 文<br />
学 が 成 立 した 年 といわれている。 従 来 の「 童 話 」や「メルヘ<br />
ン」に 代 わって「ファンタジー」という 用 語 が 使 われ 始 めた<br />
のはこのころからである。<br />
Ref:<br />
子 どもの 本 ・ 翻 訳 の 歩 み 研 究 会 編 . 図 説 子 どもの 本 ・ 翻 訳 の 歩 み<br />
事 典 . 柏 書 房 , 2002, 398p.<br />
おわりに<br />
このように 児 童 文 学 の 翻 訳 出 版 には 長 い 歴 史 がある<br />
が、 翻 訳 されるのは 児 童 文 学 の 長 い 伝 統 を 誇 る 英 国 と、<br />
常 に 新 しい 時 代 をリードしてきた 米 国 の 作 品 が 圧 倒 的<br />
多 数 を 占 める。 欧 州 からは、ドイツ 語 、フランス 語 、<br />
ロシア 語 の 作 品 が 古 くから 翻 訳 されてきたが、 北 欧 、<br />
7
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
CA1746 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■<br />
動 向 レビュー<br />
Linked Data の 動 向<br />
1. はじめに<br />
Linked Data はデータの 共 有 の 新 しい 方 法 として 近<br />
年 認 知 されつつある。 特 にデータのオープン 化 (オー<br />
プンデータ)の 標 準 的 方 法 として 使 われるようになっ<br />
ている。 図 書 館 の 世 界 においても 所 蔵 データや 件 名 標<br />
目 表 を Linked Data として 公 開 する 図 書 館 が 相 次 いで<br />
いる。<br />
本 稿 では Linked Data の 基 本 的 な 考 え 方 と 全 体 的 な<br />
動 向 ・ 傾 向 について 述 べる (1) 。<br />
2. Linked Data とはなにか<br />
Linked Data とは、 一 言 で 言 ってしまえば、データ 版<br />
の World Wide Web(WWW、 以 下 Web)である。 現<br />
在 の 普 通 の Web の 主 たる 対 象 は、 人 間 が 理 解 する 文<br />
章 、 文 書 であり、それがハイパーリンクでつながって<br />
いるので、「 文 書 の Web」(Web of Documents)とい<br />
える。Linked Data は 文 書 ではなくデータがハイパー<br />
リンクでつながったもので、「データの Web」(Web of<br />
Data)というわけである。<br />
Web が HTML という 標 準 言 語 を 必 要 としたようにこ<br />
の「データの Web」にも 標 準 言 語 が 必 要 であり、それが<br />
RDF(Resource Description Framework)である。Linked<br />
Data とは、 様 々な 情 報 源 のデータが RDF で 記 述 され、<br />
それらが 結 びついてつくられるデータの 集 合 である。<br />
RDF は 元 々はメタデータ 記 述 言 語 であるが、Linked<br />
Data ではこれを 使 ってデータを 記 述 する。RDF では、<br />
データは( 主 語 、 述 語 、 目 的 語 )という 単 純 な 関 係 と<br />
して 記 述 される。この 一 組 のデータを RDF 文 (RDF<br />
Statement)あるいはトリプルと 呼 ぶ。<br />
パターン 化 されているデータは RDF スキーマ(RDF<br />
Schema:RDFS)を 使 って、データ 構 造 を 明 示 的 に 定<br />
義 して、 個 別 のデータはスキーマ(あるいはクラス)<br />
のインスタンスとして 記 述 される。RDF を 使 うこと<br />
でデータを 一 つの 標 準 言 語 で 記 述 することができる。<br />
しかし、これだけでは 単 にデータをある 言 語 で 記<br />
述 しただけに 過 ぎない。Linked Data ではその 名 の 通<br />
り、“Link” されないといけない。そこで 重 要 になって<br />
くるのが URI(Uniform Resource Identifier)である。<br />
URI は URL の 拡 張 として 提 示 されるもので、Web 空<br />
間 でリソース( 資 源 )を 一 意 に 指 定 することのできる<br />
識 別 子 である。URL も URI としてみることができる<br />
が、URL と 異 なり URI はそこに 何 か(URL でいえば<br />
Web 文 書 )があることを 保 証 するわけではなく、あ<br />
くまで 一 意 に 指 し 示 す 識 別 子 である。<br />
RDF ではその 主 語 は URI である 必 要 がある。また<br />
述 語 、 目 的 語 も URI でよい。すなわち、RDF を 使 っ<br />
てデータを 記 述 する 場 合 、 常 に Web 空 間 で 一 意 に 識<br />
別 可 能 な 形 で 書 くということである。さらに 目 的 語 と<br />
して 任 意 の URI が 使 えるので、 自 分 のデータセット<br />
の 中 の 項 目 を 指 し 示 すだけではなく、 他 のデータセッ<br />
トの 中 の 項 目 も 指 し 示 すことができる。この 仕 組 みに<br />
よってデータセットを 超 えて 相 互 に 参 照 しあう Linked<br />
Data が 可 能 になる。<br />
Web の 創 始 者 で あ る バ ー ナ ー ズ・ リ ー(Tim<br />
Berners-Lee)は Linked Data の 4 原 則 として 以 下 の<br />
ものを 挙 げている (2) 。<br />
1 ものの 名 前 として URI を 使 うこと<br />
2 ものの 名 前 を 調 べられるように HTTP URI を 使<br />
うこと<br />
3 URI を 見 に 行 ったとき、RDF や SPARQL のよう<br />
に 標 準 技 術 によってそれに 対 する 有 用 な 情 報 を 提<br />
供 できるようにすること<br />
4 より 多 くのものが 発 見 できるように、データの 中<br />
に 他 の URI へのリンクをいれること<br />
何 らかのものを 言 及 するときはそれに URI を 用 意 し<br />
ましょうということである。これにより Web 上 で 一<br />
意 にそのものを 指 し 示 すことができるようになる(1)。<br />
さらに URI の 中 でも HTTP URI を 使 うことで、 通<br />
常 の Web と 同 じような 方 法 でデータにアクセスでき<br />
るようになる(2)。<br />
URI というのは 識 別 子 に 過 ぎず、その URI にアク<br />
セスするとデータ 自 身 が 手 に 入 るようにしておく 必 要<br />
がある。その 一 つの 方 法 は 通 常 の Web が HTML 文 書<br />
を 返 すに 対 して、Linked Data の URI は RDF 文 を 返<br />
す 方 法 である。あるいは RDF データベースに 対 する<br />
問 い 合 わせ 言 語 SPARQL(リレーショナルデータベー<br />
スに 対 する SQL のようなもの)を 使 って、 問 い 合 わ<br />
せができるようにしておいてもよい(3)。<br />
そして、そのデータもそのサイト 内 のデータのみ 参<br />
照 するのではなく、 外 部 のサイトのデータも 参 照 する<br />
ようにすべきである(4)。<br />
3. LOD クラウドの 現 状<br />
LOD とは Linking Open Data または Linked Open<br />
Data (3) のことを 指 す。 前 者 であればオープンなデータ<br />
のつながりを 指 し、 後 者 であればオープンに 利 用 可 能<br />
な Linked Data を 指 すが、あまり 指 すところの 差 はな<br />
い。その Linked Data 間 の 相 互 関 係 を 図 示 したものが<br />
LOD クラウドである。<br />
LOD クラウドとはデータサイトの 作 るネットワー<br />
8
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
図 1 LODクラウド<br />
出 典 :(5)を 基 に 筆 者 が 加 筆<br />
ク 図 である。Linked Data の 原 則 のところで 述 べたよ<br />
うに、Linked Data の 強 みは 異 なるデータサイトのデー<br />
タがつながりあうことができる 点 である。LOD クラ<br />
ウドはその 広 がりを 視 覚 的 に 表 現 したものである。<br />
2010 年 9 月 時 点 での 状 況 を 図 示 したものが 図 1 であ<br />
る (4) 。 一 つ 一 つのノードがデータセットを 示 し、ノー<br />
ド 間 のリンクはそれらのノード 間 にデータの 参 照 があ<br />
ることを 示 す。<br />
中 心 に DBpedia(Wikipedia を LOD 化 し た も の )<br />
がある。 右 上 を 中 心 に 図 のノード 全 体 の 1/4 以 上 を 占<br />
めているのが 出 版 ・ 論 文 ・ 図 書 館 関 係 (publication)<br />
である( 図 中 で 楕 円 で 囲 んだ 部 分 の 大 部 分 )。ここか<br />
ら 反 時 計 回 りにみていくと、 左 上 の 1/8 程 度 の 部 分 が<br />
メディア 関 係 である。 左 端 あたりにあるのが 政 府 関 係<br />
データ、 左 下 に 地 理 関 係 とクロスドメインが 順 にある。<br />
右 下 にありノード 全 体 の 1/4 弱 を 占 めるのが 生 命 科 学<br />
関 係 である。<br />
以 下 ではバイザー(Chris Bizer)らの 分 析 を 中 心 に<br />
して、この LOD に 含 まれるデータが 何 であるかをみ<br />
ていく (6)(7) 。<br />
2010 年 10 月 時 点 で 全 体 で 約 286 億 トリプル、207<br />
データセットである (8) 。 量 の 割 合 でみると、 政 府 関 係<br />
がもっとも 多 く 全 体 の 約 41%を 占 める。ただし、 政 府<br />
関 係 はカテゴリとしては 2010 年 に 初 めてできたもの<br />
である。 次 は 地 理 関 係 で 約 21%、 以 下 はクロスドメイ<br />
ン、 生 命 科 学 、メディア 関 係 、 出 版 ・ 論 文 ・ 図 書 館 関<br />
係 の 順 に 続 く。<br />
トリプル 数<br />
3E+10<br />
26930509703<br />
2.5E+10<br />
2E+10<br />
1.5E+10<br />
1E+10<br />
6726000000<br />
5E+09<br />
2000000000 0 500000000<br />
2007 2008 2009 2010<br />
図 2 LODのデータ 量 の 変 遷<br />
出 典 :(9)を 基 に 筆 者 が 作 成<br />
増 加 率 でみると、2007 年 から 2010 年 にかけて 毎 年<br />
おおよそ 300%ずつ 増 加 している (10) 。すなわち 指 数 的<br />
に 増 加 している( 図 2)。2009 年 6 月 から 2010 年 11<br />
月 の 変 化 を 分 野 別 にみると、 出 版 ・ 論 文 ・ 図 書 館 関 係<br />
はおおよそ 1,000%の 増 加 をして 22 億 トリプルであ<br />
る (11) 。2010 年 に 初 出 の 政 府 関 係 をのぞけば 最 大 の 伸<br />
び 率 である。2010 年 にこの 分 野 で LOD が 多 くの 注 目<br />
を 集 め、 実 際 にデータがでてきたことを 示 している。<br />
出 版 ・ 論 文 ・ 図 書 館 関 係 の 分 野 に 関 しては、<br />
9
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
・ 米 国 議 会 図 書 館 (subject headings)<br />
・ドイツ 国 立 図 書 館 (PND dataset and subject<br />
headings)<br />
・スウェーデン 国 立 図 書 館 (Libris-catalog)<br />
・ハ ン ガ リ ー 国 立 図 書 館 ( O P A C a n d D i g i t a l<br />
Library)<br />
・ドイツ 経 済 学 中 央 図 書 館 (subject headings)<br />
・ 国 立 国 会 図 書 館 ( 国 立 国 会 図 書 館 件 名 標 目 表 )<br />
といった 各 国 を 代 表 する 図 書 館 がデータセットを 公 開<br />
してきたことが 大 きな 流 れをつくっている( 括 弧 内 が<br />
公 開 しているデータセット) (12) 。また、 欧 州 連 合 (EU)<br />
の 国 々の 図 書 館 ・ 文 書 館 ・ 美 術 館 ・ 博 物 館 の 統 合 サイ<br />
トである Europeana も 実 験 サイト (13) をつくって LOD<br />
を 指 向 している。<br />
デ ー タ の 語 彙 に 関 す る 分 布 は 次 の よ う で あ る。<br />
Dublin Core(シンプル DC)を 使 っているデータサイ<br />
トは 全 体 の 約 32%、FOAF (Friend-Of-A-Friend) (14) を<br />
使 っているのは 約 27%、dcterms (15) が 約 18%、SKOS<br />
(Simple Knowledge Organization System) (16) が 約<br />
14%である。 何 らかの 独 自 の 語 彙 も 併 せて 使 っている<br />
データセットは 全 体 の 約 59%、 残 りは 外 部 で 定 義 され<br />
た 語 彙 のみで 記 述 している。なお、 独 自 語 彙 を 標 準 語<br />
彙 へマッピングする 定 義 が 書 かれているものは 7 % 程<br />
度 であった。<br />
先 に 分 野 別 にデータ 数 を 提 示 したが、これを 各 デー<br />
タセットから 外 へ 出 ていくリンク(Outlink) 数 でみ<br />
ると 順 位 は 大 幅 に 変 わる。 生 命 科 学 が 一 番 大 きくな<br />
り 50%を 超 える。 以 下 、 出 版 ・ 論 文 ・ 図 書 館 関 係 が 約<br />
20%、メディア 約 13%、クロスドメイン 約 7%である。<br />
Outlink 数 が 多 いというのはより 外 のデータとのつな<br />
がりがあるということであり、 生 命 科 学 関 係 はデータ<br />
セット 間 でよく 参 照 されている Linked Data の 特 徴 を<br />
生 かしたデータであることがわかる。 反 面 、 政 府 関 係<br />
データセットはデータ 数 は 多 いものの、 各 データセッ<br />
ト 内 で 閉 じていて、あまり Linked Data の 特 徴 を 生 か<br />
していないことを 示 している。<br />
Outlink の 数 でみると、 多 く(43%)のデータセッ<br />
トは 1,000 以 下 である 一 方 、100 万 を 超 える Outlink を<br />
持 つデータセットも 約 11%ある。<br />
一 つのデータセットの Outlink のターゲットのデー<br />
タセットがいくつあるかをみてみると、ターゲット<br />
のデータセットが 1 つのみが 約 31%を 占 める。2 つ<br />
であるのが 約 19%なのでこれで 約 半 数 である。 一 方 、<br />
10 個 以 上 というデータセットも 約 14%ある。Linked<br />
Data のサイトといっても 多 くから 参 照 されているサ<br />
イトもあれば 特 定 のサイトからしか 参 照 されないサイ<br />
トもあり、かなり 幅 があることがわかる。<br />
なお、データセットのうち、データの 作 成 者 自 身 が<br />
LOD として 公 開 しているのが 約 1/3、 残 りはデータ 作<br />
成 者 以 外 が LOD 化 している。<br />
4. Linked Data の 役 割 と 期 待<br />
データは 公 開 されるだけでも 価 値 があるが、リンク<br />
されることによってより 価 値 を 高 める。これまで 各 種<br />
のデータは 紙 の 文 書 や PDF で 公 開 されることが 多 かっ<br />
た。 確 かに 公 開 はされているが、 加 工 も 操 作 も 難 しい<br />
ので、データ 提 供 者 の 意 図 どおりに 受 け 入 れるしかな<br />
かった。データを 加 工 したり 他 のデータと 結 びつけた<br />
りするという 役 割 はデータの 提 供 者 のみに 任 されてい<br />
た。<br />
一 方 、Web ページの 情 報 、ことに HTML 文 書 は 自<br />
由 に 操 作 可 能 である。 様 々なタギングシステムやリン<br />
クシステムでユーザは 自 分 なりの 情 報 のまとめを 作 っ<br />
たりすることができる。さらに Web API が 公 開 され<br />
ているサイトでは API を 活 用 してマッシュアップと<br />
いう 形 でデータを 集 約 、 関 連 づけることができる。<br />
ユーザがデータを 取 捨 選 択 できたり 他 のデータと<br />
統 合 したりできるという 点 では、Linked Data の 役 割<br />
は Web API と 似 ている。しかし、Web API と 異 なる<br />
のは URI と RDF スキーマを 用 いることで 透 明 性 をで<br />
きる 限 り 確 保 していることである。 透 明 性 があること<br />
でデータの 統 合 に 関 して 自 由 度 が 増 している。このこ<br />
とにより、データの 提 供 者 でもデータの 利 用 者 でもな<br />
く 第 三 者 がデータを 統 合 したりすることが 可 能 になっ<br />
た。すなわち、データ 提 供 者 以 外 でも、 独 自 の 視 点 で<br />
データを 集 約 したり 加 工 したりしたデータをまた 公 開<br />
することができる (17) 。この 点 においてはデータ 提 供 者<br />
にとってメリットになりうる。すなわち、データ 提 供<br />
者 は 利 用 者 向 けの 加 工 まで 用 意 しなくてもすむように<br />
なる。またデータ 利 用 者 も 好 きなデータ 加 工 を 選 択 で<br />
きるという 自 由 度 が 得 られる。Linked Data はこのよ<br />
うなデータの 利 用 の 役 割 分 担 を 新 たにつくることによ<br />
り、データ 利 用 をより 活 性 化 させることができるので<br />
ある。<br />
たけ だ ひで<br />
( 国 立 情 報 学 研 究 所 : 武 田 英 明<br />
あき<br />
)<br />
( 1 )Linked Data について『 情 報 処 理 』2011 年 3 月 号 に 特 集 が<br />
ある。 総 説 、 各 分 野 (メディア、 医 薬 品 、 政 府 、 地 理 空 間 )<br />
での 状 況 、 日 本 での 課 題 について 個 別 に 言 及 されているの<br />
で、<strong>こちら</strong>も 参 照 されたい。<br />
特 集 , リンクするデータ(Linked Data): 広 がり 始 めたデー<br />
タのクラウド. 情 報 処 理 . 2011, 52(3), p. 284–333.<br />
( 2 )Berners-Lee, Tim. “Linked Data”. Design Issues. 2009–06–18.<br />
http://www.w3.org/DesignIssues/LinkedData.html,<br />
(accessed 2011–05–10).<br />
( 3 ) 当 初 、LOD はオープンデータを 収 集 する Linking Open Data<br />
プロジェクトの 略 称 として 使 われていたが、 次 第 にオープン<br />
な Linked Data (Linked Open Data)の 略 称 としても 指 すよ<br />
うになった。<br />
( 4 )Cyganiak, Richard et al. “The Linking Open Data cloud<br />
diagram”. 2010–09–22.<br />
http://lod-cloud.net/, (accessed 2011–05–10).<br />
10
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
( 5 )Cyganiak, Richard et al. “The Linking Open Data cloud<br />
diagram”. 2010–09–22.<br />
http://lod-cloud.net/, (accessed 2011–05–10).<br />
( 6 )Bizer, Christian et al. “State of the Web of Data”, 4th Linked<br />
Data on the Web Workshop (LDOW2011), Hyderabad,<br />
India, 2011–03–29.<br />
http://events.linkeddata.org/ldow2011/slides/ldow2011-<br />
slides-intro.pdf, (accessed 2011–05–10).<br />
( 7 )Bizer, Christian et al. “State of the LOD Cloud”. Freie<br />
Universität Berlin. 2011–03–28.<br />
http://lod-cloud.net/state/, (accessed 2011–05–10).<br />
( 8 )Bizer, Christian et al. “State of the LOD Cloud”. Freie<br />
Universität Berlin. 2011–03–28. http://lod-cloud.net/state/,<br />
(accessed 2011–05–10).<br />
( 9 )Bizer, Christian et al. “State of the Web of Data”, 4th Linked<br />
Data on the Web Workshop (LDOW2011), Hyderabad,<br />
India, 2011–03–29.<br />
http://events.linkeddata.org/ldow2011/slides/ldow2011-<br />
slides-intro.pdf, (accessed 2011–05–10).<br />
(10)Bizer, Christian et al. “State of the Web of Data”, 4th Linked<br />
Data on the Web Workshop (LDOW2011), Hyderabad,<br />
India, 2011–03–29.<br />
http://events.linkeddata.org/ldow2011/slides/ldow2011-<br />
slides-intro.pdf, (accessed 2011–05–10).<br />
(11)Bizer, Christian et al. “State of the LOD Cloud”. Freie<br />
Universität Berlin. 2011–03–28.<br />
http://lod-cloud.net/state/, (accessed 2011–05–10).<br />
(12)Bizer, Christian et al. “State of the Web of Data”, 4th Linked<br />
Data on the Web Workshop (LDOW2011), Hyderabad,<br />
India, 2011–03–29.<br />
http://events.linkeddata.org/ldow2011/slides/ldow2011-<br />
slides-intro.pdf, (accessed 2011–05–10).<br />
(13)Europeana Research Prototype.<br />
http://eculture.cs.vu.nl/europeana/session/search,<br />
(accessed 2011–05–10).<br />
(14)FOAF は 人 と 人 の 関 係 を 書 くために 定 義 されたメタデータ<br />
スキーマであるが、 単 に 人 のプロファイルを 書 くときにもよ<br />
く 用 いられる。<br />
FOAF Vocabulary Specification. 2010–08–09.<br />
http://xmlns.com/foaf/spec/, (accessed 2011–05–10).<br />
(15)Dublin Core は 2003 年 に ISO 15836 として 標 準 化 された(シ<br />
ンプル DC)が、2008 年 に 提 案 された 豊 富 で 精 密 な 定 義 をも<br />
つ 要 素 に 拡 張 をされた 語 彙 を dcterms と 呼 んで 区 別 してい<br />
る。<br />
DCMI Metadata Terms. 2010–10–11.<br />
http://dublincore.org/documents/dcmi-terms/, (accessed<br />
2011–05–10).<br />
(16)SKOS はシソーラスや 分 類 表 で 使 われる 上 位 下 位 関 係 など 概<br />
念 間 の 関 係 を 中 心 とした 語 彙 である。<br />
SKOS Simple Knowledge Organization System Reference.<br />
2009–08–19.<br />
http://www.w3.org/TR/skos-reference/, (accessed 2011–<br />
05–10).<br />
(17)2011 年 の 東 日 本 大 震 災 における 福 島 第 一 原 子 力 発 電 所 問 題<br />
においては、 有 志 が 各 地 の 放 射 線 データを 集 約 して 公 開 して<br />
いる 元 のデータが csv や excel データであるため、 工 夫 して<br />
統 合 しているが、Linked Data であればこういった 活 動 はよ<br />
り 楽 に 行 えることが 期 待 できる。<br />
放 射 線 量 モニターデータまとめページ. 2011–05–10.<br />
http://sites.google.com/site/radmonitor311/, ( 参 照 2011–05–<br />
10).<br />
CA1747 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■<br />
動 向 レビュー<br />
ONIX: 書 籍 流 通 における 出 版 社 の<br />
メタデータ 標 準 化<br />
1. はじめに<br />
書 籍 をはじめとする 図 書 館 資 料 は、 著 者 による 執 筆<br />
を 起 点 に、 利 用 者 がそれを 閲 覧 するまでの 一 連 で 流 通<br />
され、 次 々に 提 供 される。その 中 には、 出 版 社 、 書 籍<br />
取 次 、 書 店 、 図 書 館 のそれぞれの 役 割 が 存 在 している。<br />
各 場 面 において、 書 籍 を 流 通 させ、 管 理 し、 探 すため<br />
には、その 書 籍 を 表 す 何 らかのデータ(メタデータ)<br />
が 必 要 であることは 言 うまでもない。<br />
図 書 館 では、 書 誌 データの 交 換 フォーマットである<br />
MARC( 機 械 可 読 目 録 )が 図 書 館 資 料 の 管 理 および<br />
利 用 者 による 検 索 のためのメタデータとして 利 用 され<br />
ている。MARC は 一 定 の 標 準 規 格 となっているため、<br />
国 際 的 にも 多 くの 図 書 館 で 共 通 で 活 用 することができ<br />
るようになっている。<br />
一 方 、 出 版 社 、 書 籍 取 次 、 書 店 の 側 にもメタデータ<br />
が 必 要 であることに 変 わりはない。これまでは 各 国 、<br />
各 社 での 独 自 運 用 が 多 かったが、 最 近 では 後 述 する<br />
EDItEUR が 管 理 する ONIX というフォーマットの 採 用<br />
が 欧 米 の 出 版 社 を 中 心 に 進 み 標 準 となってきている。<br />
本 稿 では、 書 籍 流 通 における 商 品 情 報 としてのメタ<br />
データである ONIX を 取 り 上 げ、その 概 要 と 共 に 図 書<br />
館 と 関 係 した 動 き、および 日 本 での 対 応 状 況 について<br />
解 説 する。<br />
2. ONIX について<br />
2.1. EDItEUR<br />
ONIX は、 出 版 物 の 流 通 に お け る 標 準 化 を 推 進<br />
す る 団 体 で あ る EDItEUR(European Book Sector<br />
Electronic Data Interchange Group)により 管 理 され<br />
ている。EDItEUR は、1991 年 に 設 立 された 英 国 ロン<br />
ドンに 本 部 を 置 く 国 際 団 体 で、19 か 国 から 80 以 上 の<br />
機 関 がメンバーとして 参 加 している。 日 本 からは、 一<br />
般 社 団 法 人 日 本 出 版 インフラセンター(JPO)、 株 式<br />
会 社 紀 伊 國 屋 書 店 、 丸 善 株 式 会 社 の 3 機 関 がメンバー<br />
となっている(2011 年 4 月 1 日 現 在 )。EDItEUR では、<br />
メタデータと 各 種 の 識 別 規 格 の 管 理 、 利 用 促 進 を 行 っ<br />
ており、ONIX 以 外 にも EDI( 電 子 データ 交 換 による<br />
商 取 引 )、RFID(IC タグ) 等 の 標 準 化 、ガイドライ<br />
ンの 作 成 、 普 及 を 推 進 している (1) 。<br />
2.2. ONIX ファミリー<br />
ONIX は ONline Information eXchange の 略 称 であ<br />
り、EDItEUR が 管 理 する 規 格 の 総 称 である。それら<br />
11
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
の ONIX フォーマットの 集 合 は ONIX ファミリーと 呼<br />
ばれている。<br />
ONIX ファミリーの 全 てのフォーマットは、XML<br />
形 式 で 記 述 されている。XML は 書 誌 データのような<br />
複 雑 な 構 造 を 記 述 するのに 最 適 であり、 出 版 、 流 通 、<br />
販 売 、ライセンス 管 理 などの 各 種 システム 間 で 運 用 が<br />
容 易 であることや、データが 人 間 でも 判 読 できるため<br />
導 入 に 障 害 が 少 ないことが 利 点 である。また、 出 版 社<br />
が ONIX を 採 用 する 場 合 は 無 料 でそのフォーマットを<br />
使 用 することができる。このように、 必 要 な 機 能 を 確<br />
保 しつつ、 出 版 社 が 容 易 に ONIX を 採 用 できるように<br />
している。<br />
2.3. ONIX for Books<br />
ONIX for Books は、インターネット 上 での 書 籍<br />
販 売 において、より 充 実 したメタデータの 迅 速 な 提<br />
供 を 求 めるニーズに 応 えるため、 米 国 出 版 社 協 会<br />
(Association of American Publishers:AAP)のデジ<br />
タル 化 課 題 ワーキング 部 会 (Digital Issues Working<br />
Party)の 主 導 で 開 発 が 開 始 された。 具 体 的 な 作 業<br />
は、 米 国 の 書 籍 産 業 研 究 グ ル ー プ(Book Industry<br />
Study Group:BISG)と 英 国 の 書 籍 産 業 コミュニケー<br />
シ ョ ン(Book Industry Communication:BIC) と の<br />
密 接 な 協 力 関 係 において 進 められている (2) 。さらに 現<br />
在 では 国 際 的 な 普 及 と 実 装 のために、15 か 国 の 地 域<br />
別 ONIX 委 員 会 が 組 織 され、それらの 代 表 者 が 集 ま<br />
る ONIX for Books 国 際 運 営 委 員 会 (ONIX for Books<br />
International Steering Committee)も 構 成 されている。<br />
国 際 運 営 委 員 会 は 年 2 回 開 催 され、ONIX for Books<br />
の 改 訂 や 開 発 における 方 針 、 手 順 、 優 先 度 を 決 定 した<br />
り、 新 しいバージョン 内 の 相 違 点 を 解 決 し、リリース<br />
を 認 可 したりするなどの 任 務 を 持 ち、ONIX for Books<br />
の 統 制 を 行 っている (3) 。<br />
ONIX for Books の 最 初 のバージョンは 2000 年 に 1.0<br />
としてリリースされた。 以 降 、 継 続 的 に 改 訂 が 行 われ、<br />
2001 年 に 2.0、2004 年 に 2.1 がリリースされ、 書 籍 の<br />
商 品 情 報 を 電 子 的 に 提 供 および 通 信 する 際 の 国 際 標 準<br />
として 位 置 づけられるようになった。そして 2009 年 4<br />
月 に 3.0 がリリースされている (4) 。<br />
最 新 の 3.0 の 開 発 では 機 能 的 な 追 加 だけでなく、 項<br />
目 間 の 関 係 性 や 配 置 の 見 直 しを 含 む 改 訂 が 行 われたた<br />
め、3.0 から 2.1 以 前 のバージョンへの 下 位 互 換 性 は 保<br />
たれていない (5) 。3.0 における 機 能 面 の 強 化 としては、<br />
近 年 の 電 子 書 籍 の 出 版 ・ 流 通 の 拡 大 への 対 応 を 中 心 に<br />
改 訂 が 行 われ、 最 新 の 流 通 形 態 に 適 応 するような 改 善<br />
が 施 されている 点 である。 現 時 点 では 2.1 を 採 用 して<br />
いる 出 版 社 が 多 いが、 今 後 3.0 への 移 行 が 進 むものと<br />
考 えられる。<br />
2.4. MARC との 違 いから 見 る ONIX for Books<br />
冒 頭 に 記 したように、 図 書 館 では 書 籍 のメタデータ<br />
として MARC が 利 用 され OPAC を 通 して 利 用 者 へも<br />
その 情 報 が 提 供 されている。つまり、 同 じ 書 籍 であっ<br />
ても、その 情 報 が ONIX for Books と MARC の 異 なっ<br />
た 規 格 で 表 現 されることになる。ここでは、 商 品 情 報<br />
としての ONIX for Books の 特 徴 を 理 解 するために、<br />
構 造 や 特 有 の 項 目 を 中 心 に MARC との 違 いを 紹 介 す<br />
る。<br />
まず、ONIX for Books は 商 品 としての 書 籍 の 流 通<br />
をサポートすることを 目 的 とし、MARC は 一 資 料 と<br />
しての 書 誌 事 項 のみを 記 述 することを 目 的 に 定 義 され<br />
ている。そのため、 全 体 の 構 造 、それぞれに 含 まれる<br />
項 目 要 素 、コード 化 される 体 系 には 差 異 があり、また<br />
書 名 、 著 者 名 のような 基 本 的 な 書 誌 事 項 においても 記<br />
述 方 式 が 異 なっている。<br />
また、 書 誌 データの 集 合 としての ONIX for Books<br />
は、 発 信 出 版 社 と 受 信 利 用 者 の 情 報 を 記 述 し た<br />
Message Header と 呼 ばれる 部 分 と、 書 誌 情 報 と 取 引<br />
情 報 を 記 述 した Product Record と 呼 ばれる 部 分 との<br />
組 み 合 わせで 構 成 される (6) 。<br />
Message Header には、 発 信 出 版 社 、 受 信 利 用 者 双<br />
方 の 識 別 子 、 名 称 、 担 当 者 名 、メールアドレスなどが<br />
記 述 される。この 部 分 は MARC には 存 在 しない 情 報<br />
である。<br />
Product Record では、 書 名 、 著 者 名 、 出 版 事 項 、 形<br />
態 に 関 する 事 項 などを 中 心 に 書 誌 事 項 が 記 述 される。<br />
しかし、 標 目 とアクセスポイントの 概 念 は 無 く、 複 数<br />
の 著 者 も 並 列 に 記 述 される。また、MARC での 記 述<br />
は 国 際 標 準 書 誌 記 述 (ISBD)で 定 義 された 区 切 り 記<br />
号 を 伴 うが、ONIX for Books にはその 必 要 はない。<br />
さらに、 商 取 引 を 目 的 としているため、 以 下 の 項 目<br />
は MARC には 存 在 せず、ONIX for Books 特 有 の 情 報<br />
であると 言 える (7) 。<br />
・Publisher: 詳 細 な 出 版 社 情 報 、Web サイトなど。<br />
・Territorial rights / sales restrictions: 販 売 対 象 市 場 、<br />
目 的 の 限 定 など。<br />
・Supply detail: 取 次 、 販 売 店 の 詳 細 。 価 格 、 在 庫 状 況 、<br />
部 数 などの 取 引 時 の 条 件 。<br />
さらに、3.0 となって 電 子 書 籍 へ 対 応 することによ<br />
り 以 下 のような 項 目 が 加 わっている。<br />
・Product form: 大 きさだけでなく、パッケージ 形 態 、<br />
閲 覧 利 用 環 境 、 媒 体 など。 特 に 電 子 書 籍 に 関 する 項<br />
目 として、デジタル 著 作 権 管 理 (DRM)や 印 刷 、コ<br />
ピーなどの 利 用 許 諾 範 囲 なども 記 述 される。<br />
12
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
・Cited content: 他 の 書 籍 、 論 文 などで 引 用 されたリ<br />
ンク 先 の 情 報 など。<br />
・Market publishing detail:マーケティング、キャン<br />
ペーン 情 報 。<br />
これらの 項 目 は、 同 一 の 内 容 を 持 つ 書 籍 が 複 数 の 利<br />
用 環 境 や 媒 体 で 提 供 される 電 子 書 籍 特 有 の 情 報 や 販 売<br />
手 法 などを 含 むものである。そのため、 書 籍 そのもの<br />
の 情 報 を 集 約 し、その 書 籍 の 利 用 方 法 などは 含 まない<br />
MARC とは 異 なる 部 分 となっている。<br />
2.5. ONIX for Books 以 外 の ONIX フォーマット<br />
ONIX for Books が 最 初 に 確 立 された 後 、EDItEUR<br />
からは ONIX ファミリーとして 雑 誌 情 報 、 契 約 情 報 、<br />
識 別 子 情 報 のフォーマットがリリースされている。こ<br />
こではそれぞれの 名 称 、 最 新 バージョン、リリース 時<br />
期 のみを 記 す。<br />
(8)<br />
1 ONIX for Serials: 雑 誌 に 関 する 情 報<br />
・ONIX-SPS(Serials Products and Subscriptions)<br />
雑 誌 商 品 情 報 (0.92 2008 年 6 月 )<br />
・ONIX-SOH(Serials Online Holding)<br />
電 子 商 品 購 読 情 報 (1.1 2007 年 6 月 )<br />
・ONIX-SRN(Serials Release Notification)<br />
近 刊 予 定 情 報 (0.92 2008 年 5 月 )<br />
(9)<br />
2 ONIX for Licensing Terms: 契 約 管 理 情 報<br />
・ONIX-PL(Publications Licenses)<br />
出 版 権 (1.0 2008 年 11 月 )<br />
・ONIX for RROs(Reproduction Rights Organization)<br />
再 版 / 再 利 用 権<br />
ONIX-DS Distributions<br />
権 利 移 動 (1.0 2008 年 2 月 )<br />
ONIX-RP Repertoire<br />
既 刊 書 籍 の 集 積 (1.0 2008 年 2 月 )<br />
3 ONIX for identifier registration: 識 別 子 登 録 情 報<br />
・ONIX-DOI(1.1 2008 年 2 月 ) (10)<br />
・ONIX-ISTC(1.0 2008 年 8 月 ) (11)<br />
3. 図 書 館 との 関 係<br />
欧 米 では 出 版 社 を 中 心 として ONIX への 対 応 が 標 準<br />
となりつつある 状 況 で、 図 書 館 側 でも ONIX に 関 する<br />
様 々な 検 討 が 開 始 されている。その 中 で 世 界 最 大 の 総<br />
合 目 録 データベースを 持 ち、 図 書 館 関 係 のサービスを<br />
提 供 している OCLC の 活 動 を 紹 介 する。<br />
for Publishers” は、 出 版 社 か ら 依 頼 さ れ た ONIX<br />
for Books に よ る 書 誌 デ ー タ に 対 し て、OCLC の<br />
WorldCat が 搭 載 している 数 多 くの 書 誌 データから 適<br />
合 する 情 報 を 追 加 し、 出 版 社 に 戻 すものである。 各 所<br />
で 行 われているメタデータの 作 成 、 整 備 作 業 の 重 複 を<br />
取 り 除 き、 経 費 の 削 減 を 目 指 すサービスである。 結 果<br />
として、 出 版 社 にとっては 自 社 書 籍 データの 品 質 ・ 精<br />
度 の 向 上 、 図 書 館 にとっては 発 注 前 からの 充 実 した 書<br />
誌 情 報 の 確 認 などの 利 点 が 見 込 まれる (12) 。<br />
3.2. ONIX for Books から MARC へのマッピング<br />
OCLC では、 前 述 のサービスと 関 連 して ONIX for<br />
Books 2.1 と MARC21 とのデータ 交 換 のためのマッピ<br />
ングを 検 討 し、 相 互 の 変 換 (クロスウォーク)につい<br />
ての 報 告 書 を 2010 年 4 月 に 出 している (13) 。<br />
このマッピングの 目 標 は、 書 籍 に 関 する 基 本 的 な 情<br />
報 を 2 つの 規 格 の 間 で 受 け 渡 し、 出 版 社 や 図 書 館 でそ<br />
れぞれに 有 用 だと 考 える 高 品 質 なメタデータを 作 成 し<br />
てデータ 作 成 や 管 理 の 効 率 化 を 進 めることである。 詳<br />
細 な 相 互 変 換 の 仕 様 は Excel のシートにまとめられ、<br />
ONIX for Books の 項 目 と MARC21 のタグ、サブフィー<br />
ルドとの 対 応 が 示 されている (14) 。<br />
当 然 ながら、 変 換 可 能 なデータは MARC21 に 含 ま<br />
れる 書 誌 的 記 述 データに 限 定 される。その 中 でも、デー<br />
タを 若 干 の 変 更 で 置 き 換 えられる 項 目 もあれば、 構 造<br />
的 な 順 序 を 変 更 する 必 要 なものもある。 例 えば、ISBN<br />
のような 固 有 の 識 別 子 はそのまま ONIX for Books か<br />
ら MARC21 へ 置 き 換 えが 可 能 であり、 書 名 は 大 文 字 ・<br />
小 文 字 の 記 述 規 則 を 変 更 して 置 き 換 えが 可 能 である。<br />
一 方 で、 出 版 者 と 出 版 年 は ONIX for Books では 同 レ<br />
ベルの 項 目 として 別 々に 存 在 するが、MARC21 では<br />
タグ 260 の 中 にサブフィールドで 併 記 されるので、 構<br />
造 的 な 順 序 を 変 更 した 上 での 置 き 換 えが 必 要 になって<br />
くる。それ 以 外 にも、コード 化 されたデータは、コー<br />
ド 体 系 自 体 の 変 換 も 必 要 になってくる。<br />
報 告 書 では、2 つのフォーマット 間 での 記 述 項 目 に<br />
おけるレベルの 考 え 方 の 違 いや 目 録 規 則 に 則 った 記 述<br />
方 式 に 特 徴 がある MARC21 への 対 応 についての 課 題<br />
も 挙 げられている。ONIX for Books 3.0 への 対 応 は 今<br />
後 としているが、 図 書 館 、 出 版 界 の 双 方 からの 精 査 と<br />
改 良 が 必 要 としている。<br />
3.1. ONIX for Books のメタデータに 付 加 情 報 をつけ<br />
て 出 版 社 に 再 提 供 するサービス<br />
2009 年 10 月 に 開 始 さ れ た “Metadata Services<br />
13
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
ター 内 で 整 備 ・ 統 合 処 理 を 行 い、それを 受 信 利 用 者 で<br />
ある 書 籍 取 次 、 書 店 など(24 書 店 ・6 取 次 ・6 団 体 /<br />
2011 年 4 月 1 日 現 在 )に ONIX for Books フォーマッ<br />
トで 提 供 するサービスを 行 っている。このサービスは、<br />
書 籍 の 近 刊 情 報 流 通 の 基 盤 を 構 築 し、 近 刊 情 報 を 活 用<br />
した 商 取 引 の 発 展 を 目 指 している (17) 。<br />
現 時 点 では、 海 外 の 出 版 社 で ONIX for Books 2.1<br />
での 実 績 が 多 いことから、2.1 に 準 拠 したデータと<br />
なっている。3.0 への 対 応 は、 国 内 外 の 出 版 社 の 状 況<br />
を 見 つつ、 今 後 の 検 討 課 題 と 考 えられている。なお、<br />
ONIX に 対 応 していない 発 信 出 版 社 、 受 信 利 用 者 もあ<br />
ることから、それ 以 外 の 方 法 、フォーマットでのデー<br />
タ 提 供 もサポートしている。<br />
図 ONIX for BooksとMARC21の 対 応 例<br />
出 典 :Mapping ONIX to MARC (15)<br />
4. 日 本 での 取 り 組 み<br />
欧 米 の 出 版 社 を 中 心 に 開 発 された 経 緯 から、 日 本 で<br />
の 出 版 社 等 による ONIX 採 用 の 動 きはようやく 最 近 に<br />
なって 始 まってきている。 本 稿 では、2011 年 4 月 1 日<br />
付 けで 正 式 稼 働 を 開 始 した 近 刊 情 報 センターを 紹 介 す<br />
る。<br />
4.1. 近 刊 情 報 センターの 活 動<br />
2010 年 度 に 総 務 省 、 文 部 科 学 省 、 経 済 産 業 省 が 3 省<br />
合 同 で 設 置 した「デジタル・ネットワーク 社 会 におけ<br />
る 出 版 物 の 利 活 用 の 推 進 に 関 する 懇 談 会 」の 提 言 に 基<br />
づき、 総 務 省 委 託 事 業 「 次 世 代 書 誌 情 報 の 共 通 化 に 向<br />
けた 環 境 整 備 」が 進 められた (16) 。その 一 環 として 日 本<br />
書 籍 出 版 協 会 を 代 表 機 関 として 日 本 出 版 インフラセン<br />
ター、NTT コミュニケーションズ 株 式 会 社 、 株 式 会<br />
社 数 理 計 画 が 受 託 したプロジェクトが、 近 刊 情 報 セン<br />
ターとして 正 式 稼 働 した。<br />
登 録 した 発 信 出 版 社 (117 出 版 社 ・5 団 体 / 2011 年<br />
4 月 1 日 現 在 )からそれぞれ 近 刊 の 書 誌 データを ONIX<br />
for Books のフォーマットで 提 供 を 受 け、 近 刊 情 報 セン<br />
5. おわりに<br />
電 子 書 籍 の 出 版 が 増 加 しているだけでなく、イン<br />
ターネット 上 での 書 籍 販 売 や 書 店 の 店 舗 で 商 品 情 報 が<br />
幅 広 く 活 用 されるようになってきているため、あらゆ<br />
る 場 面 で 精 度 の 高 いメタデータが 最 適 なスピードを<br />
もって 提 供 されることが 必 要 となっている。 購 入 した<br />
書 籍 を 管 理 し 提 供 してきた 図 書 館 にとっても、 出 版 社<br />
を 中 心 に 行 われている 書 籍 のメタデータの 作 成 や 活 用<br />
にも 注 目 が 必 要 であろう。また、インターネットの 世<br />
界 ではメタデータ 同 士 をリンクしてその 情 報 力 を 向 上<br />
させる 研 究 も 進 められている。ONIX や MARC など<br />
メタデータの 特 性 を 知 ることにより、 図 書 館 で 利 用 す<br />
る 書 籍 のメタデータも 豊 かになっていくものと 考 えら<br />
れ、その 活 用 に 期 待 したい。<br />
よし の とも<br />
( 丸 善 株 式 会 社 : 吉 野 知 義<br />
よし<br />
)<br />
( 1 )“About”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/2/About/, (accessed 2011–04–07).<br />
( 2 )“ONIX”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/8/ONIX/, (accessed 2011–04–07).<br />
( 3 )ONIX for Books International Steering Committee. “ONIX<br />
for Books International Steering Committee: Terms of<br />
Reference”. EDItEUR. 2009–10.<br />
http://www.editeur.org/files/ONIX%20for%20books%20<br />
ISC/20100813%20ONIX%20for%20Books%20ISC%20ToRs%20<br />
final.pdf, (accessed 2011–04–07).<br />
( 4 )“ONIX for Books”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/11/Books/, (accessed 2011–04–07).<br />
( 5 )“About Release 3.0”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/12/Current-Release/, (accessed<br />
2011–04–07).<br />
( 6 )“ O N I X f o r B o o k s P r o d u c t I n f o r m a t i o n F o r m a t<br />
Specification: Release 3.0”. EDItEUR. 2009–04.<br />
http://www.editeur.org/files/ONIX%203/ONIX_for_Books_<br />
Release3–0_docs+codes_Issue_13.zip, (accessed 2011–04–<br />
07).<br />
(7)“ONIX for Books Product Information Format Data<br />
Element Summary: Release 3.0”. EDItEUR. 2009–04.<br />
http://www.editeur.org/files/ONIX%203/ONIX_for_<br />
Books_Release3–0_docs+codes_Issue_13.zip, (accessed<br />
2011–04–07).<br />
( 8 )“Current Releases”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/18/Current-Releases/, (accessed<br />
2011–04–07).<br />
( 9 )“Overview”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/85/Overview/,(accessed 2011–<br />
14
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
04–07)<br />
(10)“ONIX DOI Registration Formats”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/97/ONIX-DOI-Registration-<br />
Formats/, (accessed 2011–04–07).<br />
(11)“ONIX ISTC Registration Format”. EDItEUR.<br />
http://www.editeur.org/106/ONIX-ISTC-Registration-<br />
Format/, (accessed 2011–04–07).<br />
(12)“OCLC Metadata Services for Publishers”. OCLC.<br />
http://publishers.oclc.org/en/metadata/, (accessed 2011–<br />
04–07).<br />
(13)Godby, Carol Jean.“Mapping ONIX to MARC”. OCLC.<br />
2010–04–09.<br />
h t t p : / / w w w . o c l c . o r g / r e s e a r c h / p u b l i c a t i o n s /<br />
library/2010/2010–14.pdf, (accessed 2011–04–07).<br />
ガッドビー, キャロル・ジーン. “ONIX から MARC へのマッ<br />
ピング ”. 国 立 情 報 学 研 究 所 .<br />
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/archive/pdf/ONIX_<br />
Books_Documentation_jaweb.pdf, ( 参 照 2011–04–07).<br />
(14)“ONIX-MARC Mapping (Crosswalk)”. OCLC. 2010–03–31.<br />
h t t p : / / w w w . o c l c . o r g / r e s e a r c h / p u b l i c a t i o n s /<br />
library/2010/2010–14a.xls, (accessed 2011–04–07).<br />
(15)Godby, Carol Jean.“Mapping ONIX to MARC”. OCLC.<br />
2010–04–09.<br />
h t t p : / / w w w . o c l c . o r g / r e s e a r c h / p u b l i c a t i o n s /<br />
library/2010/2010–14.pdf, (accessed 2011–04–07).<br />
ガッドビー, キャロル・ジーン. “ONIX から MARC へのマッ<br />
ピング ”. 国 立 情 報 学 研 究 所 .<br />
http://www.nii.ac.jp/CAT-ILL/archive/pdf/ONIX_<br />
Books_Documentation_jaweb.pdf, ( 参 照 2011–04–07).<br />
(16)“ 新 ICT 利 活 用 サービス 創 出 支 援 事 業 ”. 総 務 省 .<br />
http://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/<br />
ictriyou/shinict.html, ( 参 照 2011–04–07).<br />
(17)JPO 近 刊 情 報 セ ン タ ー . http://www.kinkan.info/, ( 参 照<br />
2011–04–07).<br />
Ref:<br />
Linked Data で つ な が る デ ー タ . http://linkeddata.jp/, ( 参 照<br />
2011–04–07).<br />
CA1748 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■<br />
動 向 レビュー<br />
デジタル 教 科 書 をめぐって<br />
日 本 のデジタル 教 科 書 :これまで<br />
2009 年 度 の 補 正 予 算 以 後 、 小 中 学 校 において「 電 子<br />
黒 板 」 (1) は、すっかり 有 名 なものとなった。この 次 の 世<br />
代 の 教 材 として 注 目 されるのが、「デジタル 教 科 書 」 (2)<br />
である。 現 在 、「デジタル 教 科 書 」として 市 販 されて<br />
いるものは、 教 員 が「 電 子 黒 板 」 上 に 投 影 して、 児 童 ・<br />
生 徒 に 提 示 することを 目 的 とするものである。これに<br />
対 して、 導 入 に 向 けての 検 討 が 進 められているのは、<br />
児 童 ・ 生 徒 が 1 人 につき 1 台 の 端 末 を 使 い、 教 科 書 や<br />
ノートと 同 様 に 使 うことのできる、「 学 習 者 用 デジタ<br />
ル 教 科 書 」である。1 人 1 台 のノートパソコンの 使 用 は、<br />
2000 年 代 初 めから 導 入 事 例 はあった (3) が、 本 格 的 な 議<br />
論 になったのは 最 近 1–2 年 のことだ。<br />
「 学 習 者 用 デジタル 教 科 書 」( 以 下 「デジタル 教 科 書 」<br />
とする。)とは、どのようなものだろうか? 主 に 教 科<br />
書 製 作 や 端 末 供 給 、コンテンツ 制 作 といった 企 業 の 側<br />
から、 積 極 的 にデジタル 教 科 書 に 関 する 提 言 を 行 って<br />
いるデジタル 教 科 書 教 材 協 議 会 (DiTT)は、デジタ<br />
ル 教 科 書 に 求 められる 機 能 として、 様 々な 要 件 を 挙 げ<br />
ている (4) 。 例 えば、 低 学 年 の 子 どもの 負 担 にならない<br />
程 度 に 軽 いこと、 壊 れにくいこと、タッチパネルや 手<br />
書 き、さらに 音 声 での 入 力 が 可 能 であること、カメラ<br />
とマイクがついていること、Wi–Fi などの 高 速 無 線 通<br />
信 機 能 を 備 え、インターネット 接 続 が 可 能 であり、コ<br />
ンテンツを 自 動 的 にダウンロード 可 能 であること、 動<br />
画 の 再 生 ができること、などである。すなわち、「 教<br />
科 書 」という 名 前 ではあるものの、 目 標 としているも<br />
のは 単 なる 紙 の 教 科 書 のスキャンでも 電 子 書 籍 端 末 で<br />
もなく、スマートフォンやタブレット PC の 水 準 のも<br />
のであり、またコンテンツとしての 教 科 書 だけでなく、<br />
ノートと 筆 記 具 の 機 能 も 兼 ねるものである。<br />
コンピューターを 用 いた 学 習 というと、 単 なる 計 算<br />
問 題 の 正 誤 の 判 定 や、 暗 記 のための 反 復 演 習 のような<br />
ものを 想 像 しがちであるが、デジタル 教 科 書 に 求 めら<br />
れている 機 能 はより 高 い。では、このような 道 具 を、<br />
教 室 で 使 うことのメリットは 何 だろうか?デジタル 教<br />
科 書 の 導 入 に 積 極 的 な 識 者 の 多 くが 最 終 目 標 として 提<br />
示 するのは、「 教 育 の 質 の 向 上 」、 特 に、ICT 機 器 を 活<br />
用 して、 子 どもが 互 いに 教 え 合 い、 学 び 合 う「 協 働 教<br />
育 」(フューチャースクール)である (5) 。ある 生 徒 が<br />
デジタル 教 科 書 に 書 いた 考 えを、 即 時 に 電 子 黒 板 に 投<br />
影 して、 他 の 生 徒 の 考 え 方 と 比 較 することや、 遠 隔 地<br />
の 学 校 と 同 時 に 授 業 を 行 って 意 見 を 交 換 するといった<br />
ことが 可 能 になる。 教 員 は 手 元 の 端 末 からクラス 全 員<br />
15
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
のノートの 内 容 を 把 握 することが 可 能 であり、 普 段 は<br />
なかなか 手 を 挙 げないような 子 がノートによいことを<br />
書 いていれば、その 内 容 を 把 握 して、 発 言 を 促 すこと<br />
もできる (7) 。<br />
他 にも、 教 科 書 がデジタル 化 されることの 長 所 は 多<br />
いという。 英 語 の 発 音 や、 理 科 の 実 験 など、 音 声 や 動<br />
画 によるコンテンツを 児 童 ・ 生 徒 に 供 給 することは、<br />
紙 の 教 科 書 にはない 魅 力 である (8) 。 内 容 の 更 新 も 容 易<br />
であり、 誤 植 があったとしてもすぐに 訂 正 ができる。<br />
文 字 の 拡 大 や 縮 小 、 音 声 情 報 の 提 供 やインターネット<br />
を 通 じたコミュニケーションは、 弱 視 の 子 どもへの 拡<br />
大 教 科 書 の 提 供 や、 入 院 中 の 子 どもへの 遠 隔 教 育 と<br />
いった、 特 別 支 援 教 育 にも 資 するであろう (9) 。さらに<br />
重 要 な 点 は、 紙 の 教 科 書 にはない 長 所 を 活 かすことに<br />
よって、 自 ら 意 欲 的 に 学 ぶ 環 境 がすべての 子 どもに 平<br />
等 に 開 かれることである (10) 。1 人 1 台 の 端 末 であれば、<br />
自 宅 に 持 ち 帰 ってインターネットに 接 続 し、 教 材 の 自<br />
習 や 調 べ 学 習 をしたり、 電 子 メールで 情 報 交 換 をした<br />
りすることで、 興 味 のある 分 野 を 深 く 勉 強 することも<br />
可 能 なのだ。<br />
既 に、デジタル 教 科 書 は 政 策 課 題 の 1 つとされてい<br />
る。2009 年 12 月 、 当 時 の 原 口 一 博 総 務 大 臣 ( 兼 内 閣<br />
府 特 命 担 当 大 臣 ( 地 域 主 権 推 進 ))が 発 表 した「 原 口<br />
ビジョン」では、「 地 域 の 絆 の 再 生 :2020 年 時 点 です<br />
べての 世 帯 (100%)でブロードバンドサービスを 利<br />
用 」という 見 出 しの 下 に、 施 策 例 として「フューチャー<br />
スクールによる 共 同 型 教 育 改 革 」を 挙 げ、「デジタル<br />
教 科 書 を 全 ての 小 中 学 校 全 生 徒 に 配 備 (2015 年 )」と<br />
「フューチャースクールの 全 国 展 開 を 完 了 (2020 年 )」<br />
という 2 つの 目 標 を 掲 げた (11) 。 総 務 省 は、2010 年 度<br />
から、 児 童 1 人 1 台 のタブレット PC を 用 いた「フュー<br />
チャースクール 推 進 事 業 」の 実 証 研 究 を、 全 国 の 10<br />
小 学 校 で 行 っている (12) 。また、これとは 別 に、「 地 域<br />
雇 用 創 造 ICT 絆 プロジェクト( 教 育 情 報 化 事 業 )」と<br />
称 する 単 年 度 の 交 付 金 事 業 を 行 い、 全 国 の 46 小 中 学<br />
校 が 採 用 された (13) 。<br />
「 原 口 ビジョン」に 続 く 形 で、 文 部 科 学 省 は、2010<br />
年 4 月 に「 学 校 教 育 の 情 報 化 に 関 する 懇 談 会 」 (14) を 設<br />
置 し、その 後 1 年 間 にわたる 議 論 の 結 果 、「 教 育 の 情<br />
報 化 ビジョン」を 取 りまとめた (15) 。この 中 では、 総 務<br />
省 と 連 携 した 「 学 びのイノベーション 事 業 」 (16) による<br />
実 証 研 究 の 実 施 や、 教 員 への 支 援 、 基 礎 的 教 材 として<br />
のデジタル 版 「 情 報 活 用 ノート( 仮 称 )」の 開 発 など<br />
が 2020 年 度 に 向 けた 教 育 の 情 報 化 に 関 する 総 合 的 な<br />
推 進 方 策 として 掲 げられている。ただし、「 教 科 書 ・<br />
教 材 の 電 子 書 籍 化 、マルチメディア 化 について」は、「デ<br />
ジタル 教 科 書 ・ 教 材 の 教 育 効 果 、 書 籍 一 般 の 電 子 書 籍<br />
化 の 動 向 等 を 踏 まえつつ」「 制 度 改 正 も 含 め 検 討 」と<br />
記 されており、 慎 重 さが 窺 える。<br />
これに 対 して、 前 述 の DiTT が 掲 げる 目 標 は、 各 省<br />
が 掲 げる 達 成 目 標 よりも 大 胆 なものである。2011 年 4<br />
月 に 発 表 された「DiTT ビジョン」 (17) 及 び「DiTT 第 一<br />
次 提 言 書 」では、1 人 1 台 の 情 報 端 末 、 全 教 室 への 超<br />
高 速 無 線 LAN の 整 備 、 全 教 科 のデジタル 教 科 書 ・ 教<br />
材 の 開 発 の 3 項 目 を 2015 年 までに 行 うことを 提 言 し<br />
ている (18) 。DiTT は、 目 標 を 前 倒 しする 必 要 がある 理<br />
由 として、PISA(OECD 生 徒 の 学 習 到 達 度 調 査 )に<br />
おける 順 位 低 下 (19) や、 国 民 1 人 あたり GDP( 国 内 総<br />
生 産 )の 順 位 低 下 (20) などに 示 される 国 際 競 争 力 の 低 迷 、<br />
公 的 教 育 支 出 の 対 GDP 比 の 低 さ (21) 、 海 外 諸 国 の 教 育<br />
の 情 報 化 に 対 する 取 組 みが 日 本 よりも 早 いことなどを<br />
挙 げている。<br />
一 方 、デジタル 教 科 書 の 導 入 には、 反 対 論 や 慎 重 論<br />
もある。 子 どもの 想 像 力 の 低 下 や 読 書 量 の 減 少 、 教 員<br />
の 指 導 力 の 低 下 など、 様 々な 懸 念 材 料 が 挙 げられてい<br />
る (22) 。<br />
日 本 化 学 会 などの 理 数 系 8 学 会 は、2010 年 12 月 に、<br />
「『デジタル 教 科 書 』 推 進 に 際 してのチェックリストの<br />
提 案 と 要 望 」を 公 表 した (23) 。この 中 では、「『デジタル<br />
教 科 書 』の 活 用 」が「 教 育 における 重 要 な 課 題 であり<br />
かつ、 将 来 にわたってわが 国 の 教 育 を 高 めていく 上 で<br />
必 須 のものである」と 述 べた 上 で、「『デジタル 教 科 書 』<br />
は、あくまでも 教 育 の 手 段 であり、 目 的 とするのは 教<br />
育 を 高 めていくことであるのを 忘 れてはなりません」<br />
としている。また、チェックリストの 項 目 には、 例 え<br />
ば「 事 項 3:『デジタル 教 科 書 』の 使 用 が、 児 童 ・ 生 徒<br />
が 紙 と 筆 記 用 具 を 使 って 考 えながら 作 図 や 計 算 を 進 め<br />
る 活 動 の 縮 減 につながらないこと。」が 挙 げられてい<br />
る。そこでは「 学 びの 基 本 的 な 技 法 である、ノートの<br />
取 り 方 、 直 接 動 かすことができる 教 具 や 図 を 用 いて 考<br />
える 方 法 、 観 察 や 実 験 の 結 果 を 写 真 ではなく 図 や 言 葉<br />
で 記 録 する 方 法 ( 中 略 ) 等 が 十 分 に 身 についていない<br />
学 齢 において、 紙 と 筆 記 用 具 をソフトウェアで 代 替 す<br />
ることは 適 切 でない」と 解 説 が 付 されている。8 学 会<br />
はこのチェックリストが「 世 界 的 に 見 て 低 くない 我 が<br />
国 の 教 育 水 準 を 維 持 し、さらに 向 上 させるために、 必<br />
要 と 思 われる 事 項 」であるとしている 点 も 見 逃 せない。<br />
海 外 のデジタル 教 科 書 事 情<br />
では、デジタル 教 科 書 は、 海 外 ではどのように 導 入<br />
されているのだろうか?<br />
先 進 的 な 事 例 としては、 韓 国 、シンガポール、 台<br />
湾 が 挙 げられる。 韓 国 では、2013 年 を 生 徒 1 人 1 台<br />
の タ ブ レ ッ ト PC 導 入 の 目 標 と し て お り、2007 年<br />
から 実 証 研 究 を 進 めてきた (24) 。シンガポールでも、<br />
FutureSchool@Singapore と 名 付 けられた 実 証 研 究 が<br />
16
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
2008 年 から 続 けられている (25) 。 台 湾 でも 普 及 が 進 ん<br />
でおり、 端 末 の 購 入 ができない 経 済 的 に 困 窮 した 家 庭<br />
の 子 どもには、 民 間 の 財 団 が 教 材 入 りの 端 末 を 無 償 で<br />
供 与 する 動 きもある (26) 。 欧 州 では、 英 国 やポルトガル<br />
で 導 入 が 進 められている (27) 。<br />
州 ごとに 教 育 制 度 が 異 なる 米 国 でも、デジタル<br />
教 科 書 は 普 及 し つ つ あ る。2009 年 5 月 、 カ リ フ ォ<br />
ル ニ ア 州 の シ ュ ワ ル ツ ェ ネ ッ ガ ー(Arnold Alois<br />
Schwarzenegger) 知 事 ( 当 時 )は、 州 規 模 としては<br />
全 米 初 の 試 みである、 高 校 生 用 デジタル 教 科 書 のコ<br />
ンテンツの 州 による 無 償 配 付 を 目 的 として、 知 事 部<br />
局 や 州 教 育 省 、 州 教 育 委 員 会 から 成 る Free Digital<br />
Textbook Initiative を 立 ち 上 げ、 教 科 書 会 社 や 非 営<br />
利 組 織 などにデジタル 教 科 書 の 作 成 を 求 めた。 同 年<br />
8 月 、 州 教 育 省 に 設 置 されている California Learning<br />
Resource Network は、 提 出 された 教 科 書 がカリフォ<br />
ルニア 州 の 指 導 基 準 を 満 たすものであるかどうかを 評<br />
価 し (28) 、10 月 から 実 際 に 数 学 と 理 科 のデジタル 教 科<br />
書 を 用 いた 授 業 が 行 われることとなった。これによっ<br />
て、 生 徒 は 重 い 教 科 書 を 持 ち 歩 く 必 要 はなくなり、 州<br />
は 教 育 水 準 の 向 上 に 加 え、 平 均 100 ドルの 紙 の 教 科 書<br />
を 配 付 しないことで 3–4 億 ドルの 支 出 を 削 減 すること<br />
ができるだろう、とシュワルツェネッガー 知 事 は 述 べ<br />
ていた (29) 。 計 画 が 発 表 された 当 初 は、「 端 末 が 普 及 し<br />
ていないのだから 意 味 がない」「 各 学 校 には 端 末 より<br />
先 にプリンターを 配 付 すべきだ」 (30) 「 印 刷 しないから<br />
といって、 教 科 書 を 無 料 にできるはずがない」 (31) といっ<br />
た 批 判 も 多 くあったが、 現 在 では 少 しずつ 普 及 が 進 ん<br />
でいる。 米 国 では 大 学 の 分 厚 い 教 科 書 を 電 子 書 籍 化 す<br />
る 取 組 みが 先 行 しており、 教 科 書 会 社 も K–12 と 称 さ<br />
れる 初 等 中 等 教 育 での 取 組 みには 懐 疑 的 であったもの<br />
の、 現 在 では 商 機 を 見 出 している 会 社 も 現 れていると<br />
いう。デジタル 教 科 書 によって 初 めてコンピューター<br />
を 持 った 生 徒 が、 端 末 を 家 に 持 ち 帰 って 家 族 と 共 有 す<br />
ることで、さらに 学 習 を 深 めるといった 効 果 もあるよ<br />
うだ (32) 。<br />
導 入 には 否 定 的 な 見 方 もある。シカゴ 大 学 のマラ<br />
ムッド(Ofer Malamud) 助 教 らは、 低 所 得 世 帯 にコ<br />
ンピューター 購 入 のためのバウチャーを 配 付 したルー<br />
マニアで 調 査 を 行 い、その 結 果 、バウチャーを 受 け 取 っ<br />
てコンピューターを 購 入 した 家 の 子 どもはコンピュー<br />
ター 操 作 能 力 が 向 上 するものの、 学 校 の 成 績 は 上 がら<br />
ない、という 結 論 を 得 た (33) 。 家 庭 のコンピューターは<br />
宿 題 のためにあるのではなく、 専 らゲームのために 使<br />
われていたことがその 理 由 であり、コンピューターの<br />
使 用 について 親 の 監 視 がある 家 庭 では 成 績 の 向 上 が 見<br />
られたという (34) 。 他 の 研 究 者 からも 同 様 の 報 告 が 行 わ<br />
れており、それらをまとめると、コンピューターがあ<br />
れば 学 力 が 伸 びるという 事 実 は 見 られないというの<br />
だ (35) 。<br />
このように、 各 国 でもデジタル 教 科 書 をめぐっては<br />
様 々な 議 論 が 起 きているものの、 総 じて 導 入 は 進 みつ<br />
つある。しかし、 外 国 でのデジタル 教 科 書 の 導 入 状 況<br />
を 見 た 上 で、 日 本 はその 流 れに 乗 り 遅 れるべきではな<br />
い、と 考 えるべきなのだろうか? 上 記 の 例 で 言 えば、<br />
米 国 ・カリフォルニア 州 では 州 予 算 の 逼 迫 への 対 応 、<br />
韓 国 では 所 得 格 差 や 地 域 格 差 の 解 消 (36) という、それぞ<br />
れ 独 自 の 課 題 を 解 決 するための 手 段 としてデジタル 教<br />
科 書 が 取 り 入 れられている。シンガポールと 日 本 では、<br />
国 の 大 きさがまったく 異 なる。また、 教 科 書 採 択 の 制<br />
度 も、 教 科 書 の 授 業 内 での 扱 われ 方 も、 国 によって 異<br />
なる。 教 育 事 情 は 国 ごとに 様 々であり、デジタル 教 科<br />
書 という 教 育 インフラの 1 点 だけに 注 目 して「 進 んで<br />
いる」「 遅 れている」といった 評 価 を 行 うのは 妥 当 で<br />
はないと 言 えるのではないか。<br />
日 本 のデジタル 教 科 書 :これから?<br />
日 本 でのデジタル 教 科 書 の 本 格 的 な 導 入 までには、<br />
まだ 課 題 が 多 く 残 っている (37) 。まず 考 えられるのは、<br />
莫 大 なコストである。 小 学 校 の 1 学 年 は 全 国 で 約 100<br />
万 人 であり、 毎 年 新 1 年 生 に 端 末 を 無 償 で 供 給 すると<br />
すれば、1 台 あたり 5 万 円 と 仮 定 して、 端 末 代 だけで<br />
も 総 額 500 億 円 となる。 端 末 の 更 新 や 修 理 を 考 慮 すれ<br />
ば、この 額 はさらに 増 加 することが 見 込 まれる。 現 行<br />
の、 小 中 学 校 9 学 年 の( 紙 の) 教 科 書 無 償 給 与 に 必 要<br />
な 額 は 年 間 約 395 億 円 であり (38) 、これと 比 較 するだけ<br />
でもその 規 模 が 窺 えよう。 学 校 内 のネットワークの 充<br />
実 や、デジタル 教 科 書 として 扱 うに 適 した 端 末 の 開 発<br />
にも 時 間 と 予 算 が 必 要 である。<br />
また、 現 在 のデジタル 教 科 書 は、「 教 科 書 」とはい<br />
え 教 科 書 検 定 制 度 の 中 に 含 まれるものではなく、 教 材<br />
の 1 つとして 扱 われている。デジタル 教 科 書 を 検 定 の<br />
対 象 とするのであれば、デジタル 教 科 書 に 対 応 した 検<br />
定 の 手 法 を 考 える 必 要 があろう。 文 字 だけではなく、<br />
音 声 や 動 画 の 内 容 、インターフェースまでを 考 慮 した<br />
ものになるとすれば、 検 定 をする 側 の 手 間 も 増 えるこ<br />
とになる。 著 作 権 の 観 点 からも、デジタル 教 科 書 を「 教<br />
科 書 」として 扱 うかどうかは 重 要 な 問 題 である (39) 。<br />
教 科 書 会 社 も 対 応 を 迫 られる。デジタル 教 科 書 の 教<br />
材 開 発 には、 紙 の 教 科 書 以 上 のコストが 見 込 まれる。<br />
また、 教 育 委 員 会 や 学 校 は、 教 科 ごとに 異 なる 会 社 の<br />
教 科 書 を 採 択 するが、 例 えば 算 数 の 教 科 書 と 理 科 の 教<br />
科 書 のインターフェースが 全 く 異 なるのであれば、 児<br />
童 ・ 生 徒 にとっては 使 いにくいものになってしまう 可<br />
能 性 もある。 教 科 書 会 社 の 間 で 調 整 が 図 られるのか、<br />
もし 調 整 が 図 られるとすれば、できあがるデジタル 教<br />
17
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
科 書 のコンテンツには、あまり 違 いは 現 れないのでは<br />
ないか。<br />
当 然 、 教 員 も 対 応 が 必 要 となる。デジタル 教 科 書 を<br />
授 業 内 でどう 使 いこなすか、というだけでなく、 情 報<br />
インフラに 関 する 知 識 や、トラブルへの 対 応 なども 必<br />
要 となる。 教 員 だけでなく、 外 部 の 専 門 家 など、 教 員<br />
を 支 援 する 体 制 も 必 要 であろう (40) 。<br />
これらの 課 題 を 1 つずつ 解 決 することも 必 要 である<br />
が、それと 並 行 して 必 要 なのは、 試 行 と 分 析 の 着 実 な<br />
繰 り 返 しである。 現 状 の 教 育 のあり 方 を 批 判 すること<br />
は 簡 単 ではあるが、それは 個 人 の 経 験 や 世 論 ではなく、<br />
事 実 に 基 づく 必 要 がある。また、そもそも、 教 育 手 法<br />
の 変 化 の 成 否 は、 短 期 的 に 明 らかになるものではな<br />
く (41) 、あえて 数 年 のうちにデジタル 教 科 書 の 成 果 を 見<br />
出 そうとするのであれば、その 評 価 基 準 に 相 当 の 妥 当<br />
性 が 求 められよう。スケジュール 先 行 ではなく、 冷 静<br />
な 分 析 と 考 察 や、「 熟 議 カケアイ」 (42) のような 意 見 公 募 、<br />
さらには 教 育 の 情 報 化 だけでなく、より 教 育 の 本 質 的<br />
な 部 分 にまで 踏 み 込 んだ 議 論 も 必 要 となるであろう。<br />
デジタル 教 科 書 に 関 する 議 論 はまだ 始 まったばかり<br />
であり、 識 者 の 間 でも、 導 入 の 手 法 や 授 業 内 での 活 用<br />
のあり 方 などについて 様 々な 意 見 がある (43) 。 長 年 続 い<br />
てきた 教 育 のスタイルを 大 きく 変 えることになるだけ<br />
に、 今 後 数 年 はこの 議 論 から 目 が 離 せない。<br />
さわ だ だいすけ ( 調 査 及 び 立 法 考 査 局 文 教 科 学 技 術 課 : 澤 田 大 祐 )<br />
( 1 )きょういく 特 報 部 :「 電 子 黒 板 」で 変 わる 授 業 . 朝 日 新 聞 .<br />
2010–01–24.<br />
( 2 ) 本 稿 では「デジタル 教 科 書 」を 用 いるが、「 電 子 教 科 書 」と<br />
呼 ぶほうが 望 ましいとする 意 見 もある。<br />
清 水 康 敬 ほか. “「デジタル 教 科 書 」ではなく「 電 子 教 科 書 」<br />
と 呼 びたい ”. 教 育 と ICT Online. 2011–01–18.<br />
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/trend/20110117/1029662/,<br />
( 参 照 2011–05–16).<br />
( 3 ) “ 学 校 インターネットシステム: 三 鷹 市 立 第 三 小 学 校 ”. パナ<br />
ソニック. 2004–07.<br />
http://panasonic.biz/pc/solution/zirei/mitaka.html, ( 参 照<br />
2011–05–16).<br />
( 4 )“DiTT 第 一 次 提 言 書 ”. デジタル 教 科 書 教 材 協 議 会 . 2011–<br />
04–25.<br />
http://ditt.jp/office/DITTteigen_1.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
( 5 )“スマート・クラウド 研 究 会 報 告 書 ”. スマート・クラウド 研<br />
究 会 . 2010–05. p. 16–17.<br />
http://www.soumu.go.jp/main_content/000066036.pdf, ( 参<br />
照 2011–05–16).<br />
清 水 康 敬 ほか. “ICT 活 用 の 成 果 をすべての 学 校 に”. 教 育 と<br />
ICT Online. 2010–09–10.<br />
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/interview/20100806/1026804/,<br />
( 参 照 2011–05–16).<br />
( 6 ) 安 西 祐 一 郎 . 特 集 , 教 育 の 情 報 化 : 教 育 の 情 報 化 は 世 界 をひ<br />
らく. 文 部 科 学 時 報 . 2011, (1620), p. 32–34.<br />
( 7 )“ 教 育 の 情 報 化 ビジョン~ 21 世 紀 にふさわしい 学 びと 学 校<br />
の 創 造 を 目 指 して”. 文 部 科 学 省 . 2011–4–28. p. 15–18.<br />
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/af<br />
ieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
( 8 )“デジタル 教 科 書 1 人 に 1 台 、 授 業 風 景 を 一 変 ”. 日 本 経 済<br />
新 聞 電 子 版 . 2010–12–31.<br />
http://www.nikkei.com/news/topic/related-article/g=969<br />
58A9C93819499E0EAE2E3E58DE0EAE3E0E0E2E3E2E2E<br />
2E2E2E2E2, ( 参 照 2011–05–16).<br />
( 9 ) 中 邑 賢 龍 ほか. “ 討 論 会 「 障 害 のある 子 どものためのデジタ<br />
ル 教 科 書 の 在 り 方 を 考 える」”. AT2ED. 2010–09–16.<br />
http://at2ed.jp/download/dt.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
“ 教 育 の 情 報 化 ビジョン~ 21 世 紀 にふさわしい 学 びと 学 校<br />
の 創 造 を 目 指 して”. 文 部 科 学 省 . 2011–4–28. p. 21–23.<br />
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/af<br />
ieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(10) 安 西 祐 一 郎 . 特 集 , 教 育 の 情 報 化 : 教 育 の 情 報 化 は 世 界 をひ<br />
らく. 文 部 科 学 時 報 . 2011, (1620), p. 32–34.<br />
(11)その 後 、2010 年 5 月 に 公 表 された「 原 口 ビジョンⅡ」( 詳 細 版 )<br />
には、「デジタル 教 科 書 を 全 ての 小 中 学 校 全 生 徒 に 配 備 (2015<br />
年 )」が 含 まれていない。<br />
原 口 一 博 . “ 原 口 ビジョン”. 総 務 省 .<br />
http://www.soumu.go.jp/main_content/000048728.pdf, ( 参<br />
照 2011–05–16).<br />
原 口 一 博 . “ 新 たな 成 長 戦 略 ビジョン: 原 口 ビジョンⅡ”. 総<br />
務 省 .<br />
http://www.soumu.go.jp/main_content/000064871.pdf, ( 参<br />
照 2011–05–16).<br />
(12)“ 教 育 分 野 における ICT 利 活 用 推 進 のための 情 報 通 信 技 術<br />
面 に 関 するガイドライン( 手 引 書 )2011 ~フューチャース<br />
クール 推 進 事 業 をふまえて~”. 総 務 省 .<br />
http://www.soumu.go.jp/main_content/000110108.pdf, ( 参<br />
照 2011–05–16).<br />
(13)“「 地 域 雇 用 創 造 ICT 絆 プロジェクト」に 係 る 交 付 決 定 ”. 総<br />
務 省 . 2010–12–27.<br />
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01ryutsu05_01<br />
000004.html, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(14)「 教 育 の 情 報 化 」とは、デジタル 教 科 書 に 見 られるような 教<br />
科 指 導 の 中 での ICT 活 用 だけでなく、 高 校 の 必 修 科 目 であ<br />
る 情 報 科 に 代 表 される 情 報 教 育 や、 成 績 処 理 や 広 報 などの<br />
校 務 の 情 報 化 までを 含 むものである。<br />
“「 教 育 の 情 報 化 に 関 す る 手 引 」 に つ い て”. 文 部 科 学 省 .<br />
2010–10–29.<br />
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1259413.<br />
htm, ( 参 照 2011–05–16).<br />
澤 田 大 祐 . 高 等 学 校 における 情 報 科 の 現 状 と 課 題 . 調 査 と 情<br />
報 . 2008, (604), p. 1–10.<br />
http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0604.pdf,<br />
( 参 照 2011–05–16).<br />
(15)“「 教 育 の 情 報 化 ビジョン」の 公 表 について”. 文 部 科 学 省 .<br />
2011–04–28.<br />
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/1305484.<br />
htm, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(16) 総 務 省 が 行 う「フューチャースクール 推 進 事 業 」は 主 とし<br />
てハード・インフラ・ 情 報 通 信 技 術 面 からの 実 証 研 究 、 文<br />
部 科 学 省 が 行 う「 学 びのイノベーション 事 業 」は 主 として<br />
ソフト・ヒューマン・ 教 育 面 における 実 証 研 究 を 担 うとさ<br />
れている。ただし、 行 政 刷 新 会 議 が 行 う「 事 業 仕 分 け」に<br />
おいて、「ICT を 教 育 現 場 でどのように 利 用 していくのかと<br />
いう 中 身 について 文 部 科 学 省 が 主 導 的 な 役 割 を 果 たしなが<br />
ら 進 めていくべきであり、 総 務 省 が 実 施 するとハードを 整<br />
備 することが 優 先 されてしまう」として、 総 務 省 の 事 業 は<br />
厳 しく 指 摘 されている。<br />
“ 事 業 番 号 A–3 フューチャースクール 推 進 事 業 (ワーキン<br />
ググループ A 評 価 コメント)”. 行 政 刷 新 会 議 「 事 業 仕 分 け」.<br />
2010–11–15.<br />
http://www.cao.go.jp/sasshin/shiwake3/details/<br />
pdf/1115/kekka/A3.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(17)“DiTT VISION”. デジタル 教 科 書 教 材 協 議 会 . 2011–04–25.<br />
http://ditt.jp/office/DITTVISION.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(18)“DiTT 第 一 次 提 言 書 ”. デジタル 教 科 書 教 材 協 議 会 . 2011–<br />
04–25. p. 101.<br />
http://ditt.jp/office/DITTteigen_1.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(19) 国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 . “ 学 力 ”. 国 際 比 較 にみ<br />
る 日 本 の 政 策 課 題 : 総 合 調 査 報 告 書 . 国 立 国 会 図 書 館 調 査 及<br />
び 立 法 考 査 局 , 2010, p. 44–47.<br />
h t t p : / / w w w . n d l . g o . j p / j p / d a t a / p u b l i c a t i o n /<br />
document/2010/200902/03.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(20) 国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 . “ 一 人 当 たり GDP”. 国<br />
際 比 較 にみる 日 本 の 政 策 課 題 : 総 合 調 査 報 告 書 . 国 立 国 会 図<br />
書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 , 2010, p. 12–15.<br />
h t t p : / / w w w . n d l . g o . j p / j p / d a t a / p u b l i c a t i o n /<br />
document/2010/200902/02.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(21) 国 立 国 会 図 書 館 調 査 及 び 立 法 考 査 局 . “ 教 育 費 ”. 国 際 比 較 に<br />
みる 日 本 の 政 策 課 題 : 総 合 調 査 報 告 書 . 国 立 国 会 図 書 館 調 査<br />
及 び 立 法 考 査 局 , 2010, p. 40–43.<br />
h t t p : / / w w w . n d l . g o . j p / j p / d a t a / p u b l i c a t i o n /<br />
document/2010/200902/03.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(22)シンポジウム「デジタル 時 代 の 教 育 を 考 える」. 読 売 新 聞 .<br />
2010–09–19.<br />
(23) 一 般 社 団 法 人 情 報 処 理 学 会 ほか. “「デジタル 教 科 書 」 推 進 に<br />
際 してのチェックリストの 提 案 と 要 望 ”. 一 般 社 団 法 人 情 報<br />
処 理 学 会 . 2010–12–07.<br />
18
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
http://www.ipsj.or.jp/03somu/teigen/digital_demand.<br />
html, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(24) 既 に 多 くの 考 察 が 日 本 語 で 発 表 されており、 最 近 では 以 下<br />
のような 論 考 が 挙 げられる。<br />
趙 章 恩 . “ 韓 国 教 育 IT 事 情 ”. ReseMom.<br />
http://resemom.jp/special/73/recent/%E9%9F%93%E5%9B<br />
%BD%E6%95%99%E8%82%B2IT%E4%BA%8B%E6%83%85,<br />
( 参 照 2011–05–16).<br />
木 暮 祐 一 . “ 来 春 から 義 務 化 される 韓 国 のデジタル 教 科 書 事<br />
情 ”. WIRED VISION. 2010–10–04.<br />
http://wiredvision.jp/blog/kogure2/201010/201010041230.<br />
html, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(25)ヨン, テイ・リーほか. フューチャースクール:シンガポー<br />
ルの 挑 戦 . ピアソン 桐 原 , 2011, 183p.<br />
(26)“Charity aims to improve underprivileged education with<br />
e-books”. China Post. 2010–10–31.<br />
h t t p : / / w w w . c h i n a p o s t . c o m . t w / t a i w a n -<br />
business/2010/10/31/278096/Charity–aims.htm, (accessed<br />
2011–05–16).<br />
(27)“DiTT 第 一 次 提 言 書 ”. デジタル 教 科 書 教 材 協 議 会 . 2011–<br />
04–25. p. 98–99.<br />
http://ditt.jp/office/DITTteigen_1.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(28)カリフォルニア 州 の 教 育 基 準 との 整 合 性 を 示 すだけのもの<br />
であり、どの 教 科 書 を 採 択 するかは、 学 校 ・ 教 員 の 裁 量 に<br />
任 される。<br />
“Free Digital Textbook Initiative Report”. California<br />
Learning Resource Network. 2009–08–11.<br />
http://www.clrn.org/fdti/FDTI_Report.pdf, (accessed<br />
2011–05–16).<br />
(29)“Governor Holds Press Conference with Education<br />
Officials Regarding Digital Textbooks Initiative”. Office of<br />
the Governor. 2009–06–08.<br />
http://gov38.ca.gov/index.php?/speech/12462/, (accessed<br />
2011–05–16).<br />
(30)“Schwarzenegger's push for digital textbooks”. Christian<br />
Science Monitor. 2009–06–11.<br />
http://www.csmonitor.com/USA/2009/0611/p02s14-usgn.<br />
html, (accessed 2011–05–16).<br />
(31)Osborne, Brian. “Governor Schwarzenegger pushes digital<br />
textbook initiative”. geek.com. 2009–06–09.<br />
h t t p : / / w w w . g e e k . c o m / a r t i c l e s / n e w s / g o v e r n o r -<br />
schwarzenegger-pushes-digital-textbook-intiative-2009069/,<br />
(accessed 2011–05–16).<br />
(32)“Calif. District Pushes Digital-Text Initiative Forward”.<br />
Education Week. 2011-02-04.<br />
http://www.edweek.org/dd/articles/2011/02/09/02books.<br />
h04.html, (accessed 2011–05–16).<br />
(33)Malamud, Ofer et al. “Home Computer Use and the<br />
Development of Human Capital”. 2010.<br />
http://www.columbia.edu/~cp2124/papers/computer.pdf,<br />
(accessed 2011–05–16).<br />
(34) 一 方 、「こんな 自 明 の 結 論 のために『 科 学 的 調 査 研 究 』をす<br />
るのは 研 究 費 の 無 駄 である」と 一 蹴 する 意 見 もあった。<br />
Hicks, Marybeth. “THEN AGAIN…”. Washington Times.<br />
2010–07–14.<br />
(35)Stross, Randall. “Computers at Home: Educational Hope<br />
vs. Teenage Reality”. New York Times. 2010–07–10.<br />
http://www.nytimes.com/2010/07/11/business/11digi.<br />
html, (accessed 2011–05–16).<br />
(36) 趙 章 恩 . “ 韓 国 デジタル 教 科 書 事 情 (2)~ 電 子 黒 板 は 当 たり<br />
前 、10Gbps ネットワークで 教 室 情 報 化 ”. 教 育 と ICT Online.<br />
2010–12–02.<br />
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20101130/1028847/,<br />
( 参 照 2011–05–16).<br />
(37) 多 くの 識 者 による 指 摘 があるが、 例 えば、 以 下 の 論 考 がある。<br />
清 水 康 敬 ほか. “「デジタル 教 科 書 」ではなく「 電 子 教 科 書 」<br />
と 呼 びたい”. 教 育 と ICT Online. 2011–01–18.<br />
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/trend/20110117/1029662<br />
/?P=6, ( 参 照 2011–05–16).<br />
中 村 伊 知 哉 ほか. “これからの 課 題 ”. デジタル 教 科 書 革 命 . ソ<br />
フトバンククリエイティブ, 2010, p. 233–251.<br />
(38)“ 教 科 書 無 償 給 与 の 実 施 状 況 ”. 文 部 科 学 省 .<br />
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kyoukasho/<br />
gaiyou/04060901/__icsFiles/afieldfile/2010/08/06/1235105.<br />
pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(39)“ 授 業 を 豊 かにするデジタル 教 科 書 光 村 図 書 出 版 に 聞 く”.<br />
教 育 と ICT Online. 2011–01–18.<br />
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/trend/20110415/1031298/?P=4,<br />
( 参 照 2011–05–16).<br />
(40)“ 教 育 の 情 報 化 ビジョン~ 21 世 紀 にふさわしい 学 びと 学 校<br />
の 創 造 を 目 指 して”. 文 部 科 学 省 . 2011–4–28. p. 27–31.<br />
http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/23/04/__icsFiles/af<br />
ieldfile/2011/04/28/1305484_01_1.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
(41) 内 田 樹 . “ 教 育 論 の 落 とし 穴 ”. 街 場 の 教 育 論 . ミシマ 社 , 2008,<br />
p. 9–22.<br />
(42)“ 熟 議 カケアイ( 文 科 省 政 策 創 造 エンジン):「 教 育 の 情 報 化<br />
ビジョン」の 検 討 にご 参 画 ください!”. 文 部 科 学 省 .<br />
http://jukugi.mext.go.jp/jukugi?jukugi_id=19, ( 参 照 2011–<br />
05–16).<br />
(43) 賛 否 両 論 は 数 多 くあり、 以 下 は 本 稿 執 筆 の 際 に 参 考 にした<br />
ものの、 本 文 で 言 及 しなかった 論 考 の 一 部 に 過 ぎない。<br />
片 山 善 博 ほか. 新 春 鼎 談 「 学 校 図 書 館 改 革 元 年 に」. 読 売 新<br />
聞 . 2011–01–12.<br />
宮 川 俊 彦 ほか. 金 曜 討 論 :デジタル 教 科 書 . 産 経 新 聞 . 2010–<br />
10–22.<br />
八 木 玲 子 . “「2015 年 にはデジタル 教 科 書 を 全 小 中 学 校 に」<br />
― 孫 氏 が 教 育 改 革 訴 える”. ITpro. 2010–07–29.<br />
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20100729/350755/,<br />
( 参 照 2011–05–16).<br />
田 中 眞 紀 子 ほか. 頭 脳 の 散 歩 :デジタル 教 科 書 はいらない.<br />
ポプラ 社 , 2010, 166p.<br />
植 村 八 潮 . 「デジタル 教 科 書 」はなぜ、もてはやされるのか.<br />
Journalism. 2010, (246), p. 64–65.<br />
山 口 浩 . “ 問 題 はデジタル 教 科 書 ではなく 教 育 ”. SYNODOS<br />
JOURNAL. 2010–10–20.<br />
http://synodos.livedoor.biz/archives/1557331.html, ( 参 照<br />
2011–05–16).<br />
19
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
CA1749 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■<br />
研 究 文 献 レビュー<br />
MLA 連 携 −アート・ドキュメンテーション<br />
からのアプローチ (1)<br />
1. 「 災 後 」を 生 きる: 前 言<br />
本 稿 を 書 き 進 めている 2011 年 4 月 、 余 震 が 間 断 な<br />
く 続 き、さらに 福 島 原 発 のことを 思 えば、 震 災 後 では<br />
なく、いまだ 震 災 中 であろう。<br />
3.11 以 来 、 風 景 が 変 わってしまった。 被 災 地 はもと<br />
より 非 被 災 地 も 日 本 のいずれの 地 も 風 景 とその 見 え 方<br />
が 変 わった。ミュージアム、ライブラリ、アーカイブ<br />
(MLA)という、 歴 史 の 時 間 の 堆 積 において 機 能 する<br />
ものが、この 震 災 を 機 にその 働 きを 問 い 直 されている<br />
と 思 う。<br />
Museum Career Development Network(MCDN)<br />
は 2011 年 4 月 16 日 、 公 開 講 座 「 被 災 ミュージアムの<br />
支 援 と 危 機 管 理 対 策 」 (2) を 開 いた。 文 化 庁 文 化 財 部 美<br />
術 学 芸 課 長 の 栗 原 祐 司 は、 被 災 地 にある 文 化 財 の 救 出<br />
と 保 全 を 目 的 とする 文 化 財 レスキュー 事 業 に 関 する 報<br />
告 において、 救 済 するものの 範 囲 を 家 の 記 録 としての<br />
アルバムまでも 含 みたいと 述 べ、 兵 庫 の 博 物 館 の 学 芸<br />
員 は 1995 年 1 月 17 日 の 阪 神 ・ 淡 路 大 震 災 において、<br />
救 済 しミュージアムが 守 るべき 美 術 品 とそうでないも<br />
のとの 価 値 の 差 異 とは 何 なのかを 問 われたという 体 験<br />
を 語 った。あるいは 被 災 の 現 状 と 復 興 のプロセスを 記<br />
録 することの 意 味 と 必 要 が、3.11 以 後 、 様 々な 場 で 説<br />
かれている (3) 。<br />
MLA(あるいは K= 公 民 館 を 含 んで)は、 東 日 本<br />
大 震 災 被 災 地 での 復 興 の 過 程 で、その 存 在 と 機 能 が 問<br />
われ、MLA 連 携 の 意 義 と 実 体 もまた 問 われ、 変 容 す<br />
るであろう。<br />
すでに saveMLAK という「 博 物 館 ・ 美 術 館 、 図 書 館 、<br />
文 書 館 、 公 民 館 (MLAK)の 被 災 ・ 救 援 情 報 サイト」 (4)<br />
が 稼 働 している。このプロジェクトの 進 行 は、ウェブ<br />
サイトでの 情 報 支 援 を 基 礎 としながら、MLAK とそ<br />
の 従 事 者 の 姿 勢 を 問 いつつ、その 連 携 のありようを 変<br />
えていく 予 感 を 孕 んでいる。<br />
2. 「MLA 連 携 」とは 何 か?<br />
2.1. 本 研 究 文 献 レビューとアート・ドキュメンテー<br />
ション<br />
以 上 前 言 を 書 いたのは、MLA 連 携 をレビューする<br />
ことを 目 的 とする 本 稿 を 書 くにあたって、3.11 に 始 ま<br />
る MLA の 復 旧 復 興 の 過 程 そのものが、MLA とその<br />
連 携 について、 日 々 再 考 を 迫 る 事 態 が 進 行 しているこ<br />
とを 記 録 しておきたいが 故 である。<br />
近 年 の MLA 連 携 の 動 向 については、 当 然 のことな<br />
がら MLA の 個 々それぞれの 文 脈 からアプローチと 成<br />
果 が 現 れており、その 全 てをフォローすることが 困 難<br />
であるということもあるが、 以 下 、アート・ドキュ<br />
メンテーションの 文 脈 に 沿 って、MLA 連 携 に 関 する<br />
研 究 文 献 をレビューすることを 冒 頭 お 断 りしておきた<br />
い (5) 。この 連 携 の 姿 を 端 的 に 示 し、 課 題 の 設 定 として<br />
MLA 連 携 を 具 体 的 に 提 示 してきたのが、 美 術 図 書 館<br />
を 含 んで 美 術 の 資 料 と 情 報 に 関 わるアート・ドキュメ<br />
ンテーションの 文 脈 においてであったからである。<br />
また、 本 誌 の 研 究 文 献 レビューは、 近 年 5 年 程 度 を<br />
その 範 囲 としているが、 本 稿 では 通 例 と 異 なり、1980<br />
年 代 半 ば 以 降 においてわが 国 で 始 まるアート・ドキュ<br />
メンテーションの 文 脈 から MLA 連 携 を 見 渡 したいと<br />
考 えて、 対 象 文 献 等 のレンジは 20 余 年 の 長 きになっ<br />
ている。<br />
管 見 の 限 り、もっとも 早 く MLA 連 携 を 明 確 に 示 し<br />
た 文 献 は、コロンビア 大 学 エィヴリー 美 術 建 築 図 書 館<br />
のヒラル(Angela Giral)による「3 つの 伝 統 が 合 流<br />
するところ:エィヴリー 図 書 館 の 建 築 ドローイング」<br />
(At the confluence of three traditions: architectural<br />
drawings at the Avery Library) (6) であった。この 文<br />
献 は、1988 年 、「 美 術 品 と 美 術 情 報 をつなぐ」(Linking<br />
art objects and art information)をテーマに 特 集 した<br />
Library Trends に 掲 載 されたものである。<br />
著 者 ヒラルは MLA の 3 つの 伝 統 が 合 流 (confluence)<br />
するところとして、 美 術 建 築 図 書 館 を 描 き 出 し、 建 築<br />
そのものとそのドローイング、そしてその 関 連 文 献 と<br />
の 間 に MLA 連 携 を 見 いだしている。この 特 集 が 出 た<br />
1988 年 はアート・ドキュメンテーション 研 究 会 ( 現 、<br />
アート・ドキュメンテーション 学 会 、 以 下 、JADS)<br />
が 発 足 する 1 年 前 のことであった。JADS の 発 足 と 日<br />
本 におけるアート・ドキュメンテーションのはじま<br />
りは、 美 術 図 書 館 あるいは 美 術 情 報 の 新 しい 潮 流 が<br />
MLA 連 携 へと 向 かう、その 最 初 期 に 遭 遇 していたこ<br />
とをあらためて 指 摘 しておきたい。<br />
2.2. 2009 年 の 国 立 MLA 館 長 による 記 念 鼎 談 から<br />
「[MLA の] 全 体 として 見 た 場 合 にものすごく 相 互<br />
関 係 が 深 いわけですね。ですから、 本 を 見 る 時 には<br />
博 物 館 の 内 容 が 見 たいし、あるいは 公 文 書 館 の 実 際<br />
の 文 書 − 誰 が 署 名 しているかとか、そういうことま<br />
で 見 たいということもあるし、 博 物 館 から 見 たら、<br />
あるモノを 見 ている 時 にそれに 関 係 してどういう 研<br />
究 がなされて、どういう 出 版 物 があるかということ<br />
を 知 りたいとか、3 つの 間 にはものすごく 関 係 があ<br />
るわけです。これをなんとか、 利 用 者 から 見 たとき<br />
に 3 つがうまく 連 携 した 世 界 として 見 えてくるとい<br />
うか、 利 用 することができるというか、そういうこ<br />
20
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
とにする 必 要 があるんじゃないかと 思 っておりま<br />
す (7) 。」<br />
長 い 引 用 になったが、MLA 連 携 の 起 源 と 必 要 、 目<br />
指 すところが 平 易 的 確 に 語 られている。これは、2009<br />
年 12 月 5 日 、 東 京 国 立 博 物 館 平 成 館 大 講 堂 での 記 念<br />
鼎 談 「これからの MLA 連 携 に 向 けて」においての 長<br />
尾 真 国 立 国 会 図 書 館 長 の 発 言 である。<br />
鼎 談 は、「 日 本 のアート・ドキュメンテーション−<br />
20 年 の 達 成 MLA 連 携 の 現 状 、 課 題 、 将 来 」を 全 体<br />
テーマに 掲 げた 2 日 間 にわたるフォーラムの 第 4 部 と<br />
して、 佐 々 木 丞 平 独 立 行 政 法 人 国 立 文 化 財 機 構 理 事 長<br />
兼 京 都 国 立 博 物 館 長 、 高 山 正 也 国 立 公 文 書 館 長 とで 行<br />
われ、 国 立 MLA 館 長 がそろって 鼎 談 した 初 めての 機<br />
会 となった。<br />
さらに 長 尾 館 長 は、MLA 連 携 の 具 体 的 な 方 策 とし<br />
て、 例 えば 国 立 国 会 図 書 館 の PORTA (8) をその 走 りと<br />
して 捉 え、「[MLA の]それぞれが 独 立 性 を 持 ちながら、<br />
なおかつ、 上 手 く 連 携 して、 利 用 者 にトータルなシス<br />
テムとして 提 示 できるという、そういうところを 狙 っ<br />
ていくのがいちばんいいんじゃないか」 (9) と 述 べてい<br />
る。<br />
長 尾 館 長 の 発 言 のあった 記 念 鼎 談 を 含 む 文 献<br />
(10) は、<br />
当 該 フォーラムのほぼ 全 体 を 再 録 する 報 告 書 となって<br />
おり、MLA 連 携 の「 現 状 」については 関 連 する 9 つ<br />
の 事 例 を 紹 介 した「 第 II 部 日 本 のアート・ドキュメ<br />
ンテーション」において 報 告 され、 慶 應 義 塾 大 学 、 国<br />
立 国 会 図 書 館 、 国 立 公 文 書 館 、 東 京 国 立 博 物 館 の 事 例<br />
と 意 見 を 踏 まえて、 討 議 を 含 む「 第 I 部 日 本 におけ<br />
る MLA 連 携 の 現 状 と 課 題 」で MLA 連 携 の「 課 題 」<br />
について 検 討 されている。「 将 来 」については「 記 念<br />
鼎 談 −これからの MLA 連 携 に 向 けて」が 稿 を 費 やし<br />
ている。<br />
この JADS のフォーラム 報 告 書 の 刊 行 と 同 じ 2010<br />
年 には、 日 本 図 書 館 情 報 学 会 によって「シリーズ 図<br />
書 館 情 報 学 のフロンティア」No.10、『 図 書 館 ・ 博 物 館 ・<br />
文 書 館 の 連 携 』が 10 月 に 刊 行 された。 同 月 10 日 には「 図<br />
書 館 ・ 博 物 館 ・ 文 書 館 の 連 携 をめぐる 現 状 と 課 題 」と<br />
題 するテーマで 年 次 研 究 大 会 のシンポジウムが 開 催 さ<br />
れた。 同 書 ならびにシンポジウムの 記 録 は、MLA 連<br />
携 を 考 える 上 で 基 本 参 考 文 献 となるものである (11)(12) 。<br />
3. アート・ドキュメンテーションにおける MLA 連 携<br />
3.1. 1994 年 のフォーラム<br />
MLA 連 携 を 掲 げて 開 かれた 国 内 のシンポジウムと<br />
しては、JADS による 第 1 回 アート・ドキュメンテー<br />
ション 研 究 フォーラムにおける「ミュージアム・ライ<br />
ブラリ・アーカイブをつなぐもの−アート・ドキュメ<br />
ンテーションからの 模 索 と 展 望 」(1994 年 11 月 18 日 、<br />
於 国 立 国 会 図 書 館 新 館 講 堂 )が 最 初 であろう (13) 。<br />
「 図 書 館 、 美 術 館 ・ 博 物 館 、 文 書 館 、 美 術 研 究 機 関 、<br />
関 連 メディア、 及 びこれらに 関 係 あるものの 連 絡 ・ 提<br />
携 のもとに( 中 略 ) 美 術 情 報 を 扱 う 学 際 的 専 門 職 能 集<br />
団 の 確 立 に 寄 与 することを 目 的 とする」 (14) JADS が、<br />
会 の 重 要 課 題 を MLA 連 携 と 自 覚 的 に 定 めたのもまた、<br />
この 1994 年 の 第 1 回 フォーラムからであった。<br />
1994 年 第 1 回 フォーラムの 報 告 書 (15) の 通 り、この<br />
フォーラムにおいては、 個 別 報 告 が 美 術 図 書 館 員 、 学<br />
芸 員 、 文 化 財 情 報 学 、 美 術 史 研 究 からなされ、 続 く 記<br />
念 講 演 がオランダ 王 立 図 書 館 美 術 部 長 、 前 IFLA 美 術<br />
図 書 館 分 科 会 議 長 ウィスハウプト(Maggy Wishaupt)<br />
による「 美 術 研 究 者 と 美 術 図 書 館 員 − 電 子 時 代 の 技 能<br />
と 領 域 」であったが、この 講 演 ではじめてインターネッ<br />
トを 知 り、インターネット 上 で MLA 連 携 の 可 能 性 が<br />
開 かれることを 予 感 した 聴 衆 は、 筆 者 含 め、 多 かった<br />
ことを 記 憶 する。<br />
3.2. ライブラリの 中 にあるイメージ( 画 像 および 画 像<br />
資 料 )<br />
日 本 におけるアート・ドキュメンテーションとそ<br />
のための 組 織 である JADS の 起 こりが、1986 年 8 月<br />
の IFLA 東 京 大 会 にあることは、 重 ねて 述 べられてい<br />
るのでここでは 省 くが (16)(17) 、この 時 、 海 外 から 参 加<br />
の 美 術 図 書 館 員 を 前 に、 専 門 図 書 館 部 会 美 術 図 書 館 分<br />
科 会 において 報 告 された 2 つの 日 本 の 事 例 が、ともに<br />
図 書 館 の 中 にある「イメージ( 画 像 および 画 像 資 料 )」<br />
を 取 り 上 げたことは 確 認 しておきたい。<br />
武 蔵 野 美 術 大 学 美 術 資 料 図 書 館 の 大 久 保 逸 雄 による<br />
「 日 本 のポスター 史 とドキュメンテーションの 現 状 」 (18)<br />
であり、 東 京 都 立 中 央 図 書 館 の 木 村 八 重 子 の「 草 双 紙<br />
の 変 遷 − 出 版 美 術 の 視 点 から」 (19) であった。なお 大 久<br />
保 は IFLA 東 京 大 会 に 先 立 って 1980 年 代 から 日 本 に<br />
おけるアート・ドキュメンテーションの 課 題 を 武 蔵 野<br />
美 術 大 学 美 術 資 料 図 書 館 ( 日 本 における ML 融 合 体 の<br />
先 駆 )における 実 践 を 踏 まえて 指 摘 し、『 図 書 館 雑 誌 』<br />
等 に 文 献 を 残 している (20) 。<br />
同 年 (1986)の 10 月 、 日 仏 美 術 学 会 は 日 仏 図 書 館<br />
学 会 との 共 同 研 究 会 として、「 美 術 研 究 と 情 報 処 理 −<br />
コンピューターによる 画 像 ・ 文 献 処 理 はどこまで 可 能<br />
か」をテーマにする 全 国 大 会 を 開 き、 当 時 、 言 葉 とし<br />
てはまだなかったデジタルアーカイブの 先 例 となる 討<br />
議 を 美 術 史 研 究 の 文 脈 から 試 みている (21) 。<br />
同 大 会 の 報 告 書 (22) では、 大 和 文 華 館 、 東 京 国 立 文 化<br />
財 研 究 所 ( 当 時 )の 事 例 紹 介 とあわせて、 慶 應 義 塾 大<br />
学 図 書 館 ・ 情 報 学 科 の 上 田 修 一 が「 美 術 分 野 のシソー<br />
ラス」を、 当 時 都 立 中 央 図 書 館 員 だった 波 多 野 宏 之 が<br />
21
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
「フランスにおける 画 像 ドキュメンテーションの 動 向 」<br />
を 報 告 している。<br />
上 田 報 告 は 図 書 館 情 報 学 の 立 場 から 美 術 情 報 へ 肉 薄<br />
したきわめて 先 例 的 試 みとして 評 価 されるし、 波 多 野<br />
報 告 は 長 期 にわたるポンピドゥーセンター 公 共 情 報 図<br />
書 館 、 特 に 画 像 資 料 課 (Service iconographique)で<br />
の 研 修 を 踏 まえたものであった。 波 多 野 は 1987–88 年<br />
に 刊 行 の 論 考 「 画 像 情 報 の 蓄 積 と 検 索 − 美 術 分 野 にお<br />
ける 応 用 」 (23) を 経 て、1993 年 の 単 著 『 画 像 ドキュメン<br />
テーションの 世 界 』 (24) へと 成 果 をまとめており、ライ<br />
ブラリの 中 のイメージ( 画 像 および 画 像 資 料 )の 価 値<br />
とその 組 織 化 の 課 題 を 明 示 している。<br />
これらの 動 きを 背 景 に 欧 米 にあった ARLIS(ARt<br />
LIbraries Society)、すなわち 美 術 図 書 館 協 会 とは 別<br />
名 による JADS が 1989 年 発 足 している。 名 称 をめぐ<br />
る 由 来 と 議 論 は 水 谷 、ファン・デル・ワテレン(Jan<br />
van der Wateren)の 文 献 を 参 照 されたい (25) 。<br />
3.3. ミュージアムの 中 にあるライブラリ<br />
IFLA 東 京 大 会 の 開 かれた 1986 年 の 11 月 には、 日<br />
本 の 美 術 館 の 公 開 図 書 室 として 先 駆 的 存 在 であった 東<br />
京 都 美 術 館 の 美 術 図 書 室 が 開 室 十 周 年 を 記 念 して、 高<br />
階 秀 爾 による「 文 化 としての 情 報 − 美 術 図 書 室 を 考 え<br />
る」と 題 する 講 演 会 を 開 いている。 講 演 後 の 懇 親 会 に<br />
は、 美 術 図 書 館 員 、 公 開 はされていない 美 術 館 の 中 の<br />
資 料 担 当 者 、 美 術 系 大 学 やデザイン 系 専 門 学 校 の 図 書<br />
館 員 、 公 共 図 書 館 にあって 美 術 図 書 に 興 味 を 抱 く 者 な<br />
どが 参 加 した。このような 人 的 ネットワークが 3 年 後<br />
の JADS の 誕 生 の 素 地 を 作 っていった。 草 創 期 の 美 術<br />
館 図 書 室 の 歩 みは 2009 年 の 第 4 回 アート・ドキュメ<br />
ンテーション 研 究 フォーラム 当 日 配 布 の 予 稿 集 所 収 の<br />
「 年 表 日 本 のアート・ドキュメンテーション− 20 年<br />
の 軌 跡 1989–2008 附 :『1980 年 以 降 の 美 術 図 書 館 を<br />
めぐる 様 々な 動 き』」 (26) に 詳 しい。<br />
日 本 の 美 術 館 図 書 室 の 草 創 期 の 様 子 は 野 崎 たみ 子<br />
の 文 献<br />
(27) を 参 照 されたい。また、 今 日 の 美 術 館 図 書<br />
室 の 成 果 としての 美 術 図 書 館 連 絡 会 (Art Libraries<br />
Consortium:ALC)による 美 術 図 書 館 横 断 検 索 につ<br />
いては 水 谷 の 文 献 (28) を 参 照 されたい。<br />
また、 美 術 研 究 所 ( 現 、 東 京 文 化 財 研 究 所 )におけ<br />
る 文 献 ・ 写 真 資 料 コレクションの 形 成 と 矢 代 幸 雄 初 代<br />
所 長 の 功 績 については、 加 藤 哲 弘 (29) (30)<br />
、 水 谷 の 文 献<br />
を 参 照 されたい。<br />
1980 年 代 以 前 の 日 本 の 美 術 図 書 館 および 今 日 言 うと<br />
ころのアート・ドキュメンテーションの 課 題 について<br />
は 前 出 の 大 久 保 の 文 献 (31) および JADS 刊 行 の『アート・<br />
ドキュメンテーション 研 究 』 創 刊 号 掲 載 の 同 氏 文 献 を<br />
参 照 されたい (32) 。<br />
なお、JADS の『アート・ドキュメンテーション 研<br />
究 』の 創 刊 に 先 立 ち、 日 本 図 書 館 協 会 の『 現 代 の 図 書<br />
館 』が 1990 年 にアート・ドキュメンテーションを 特<br />
集 し、アート・ドキュメンテーションの 概 説 ( 波 多 野 )、<br />
北 米 における 美 術 図 書 館 の 課 題 ( 水 谷 )、 展 覧 会 カタ<br />
ログという 資 料 の 固 有 性 ( 中 島 )、 美 術 情 報 の 取 り 扱<br />
いにおける 図 書 館 と 博 物 館 の 差 異 ( 田 窪 、 鯨 井 )を 取<br />
り 上 げて、MLA 連 携 につながるアート・ドキュメン<br />
テーションの 基 本 課 題 をほぼ 網 羅 する 特 集 となってお<br />
り 重 要 である。また、アート・ドキュメンテーション<br />
研 究 会 による「アート・ドキュメンテーション 関 係 主<br />
要 文 献 解 題 」を 付 して、1990 年 時 点 での 関 連 文 献 をま<br />
とめて 紹 介 している (33) 。<br />
3.4. ミュージアムの 中 にあるアーカイブ<br />
「ミュージアムの 中 のアーカイブ」について 単 著 が<br />
米 国 で 初 めて 出 たのは 1984 年 という (34) 。 日 本 のミュー<br />
ジアムにおいて archives を 英 名 とした 所 蔵 作 品 の 目<br />
録 は、『 東 京 国 立 近 代 美 術 館 所 蔵 品 目 録 岸 田 劉 生<br />
作 品 と 資 料 』(Catalogue of Collections Then National<br />
Museum of Modern Art, Tokyo: Ryusei Kishida<br />
Works and Archives)が 嚆 矢 であると 思 われる。 東 京<br />
国 立 近 代 美 術 館 へ 1993 年 に 遺 贈 され、1996 年 に 目 録<br />
を 刊 行 し、 特 別 展 示 した 岸 田 劉 生 のアーカイブである。<br />
(35)<br />
この 特 別 展 示 と 目 録 の 刊 行 については、 水 谷 の 文 献<br />
があるが、この 体 験 を 踏 まえて、 先 述 の 1994 年 の 第 1<br />
回 アート・ドキュメンテーション 研 究 フォーラムにお<br />
けるシンポジウムのテーマが 浮 き 彫 られたことは 確 認<br />
しておきたい。<br />
ミュージアムにおけるアーカイブと 平 行 して、 主 と<br />
して 美 術 音 楽 等 の 作 家 に 関 わるアーカイブ(アート・<br />
アーカイブ)についての 多 様 な 発 言 が 始 まるのも 1990<br />
年 代 後 半 である。 先 導 した 一 つが 慶 應 義 塾 大 学 アート・<br />
センターである。<br />
土 方 巽 ( 身 体 表 現 )、 瀧 口 修 造 ( 造 形 ・ 評 論 )、ノグ<br />
チ・ルーム( 彫 刻 ・ 建 築 ・ 環 境 デザイン)、 油 井 正 一<br />
(ジャズ 評 論 )の 4 つの「アート・アーカイヴ」を 持<br />
つ 同 センターにおいては (36) 、アート・センター 所 長 を<br />
つとめた 前 田 富 士 男 による「ジェネティック・アーカ<br />
イヴ・エンジン」、 作 家 の 創 作 行 為 の 起 点 としてのアー<br />
カイブ 機 能 と 言 うべきもの、に 関 わる 種 々の 論 考 が<br />
アート・アーカイブの 理 論 構 築 を 推 進 した (37) 。<br />
アート・アーカイブにおけるドキュメンテーション<br />
の 課 題 についても 図 書 館 情 報 学 、 情 報 社 会 学 、 美 術 史<br />
学 の 分 野 から 論 考 が 寄 せられて、「アート・アーカイ<br />
ヴズ/ドキュメンテーション−アート 資 料 の 宇 宙 」と<br />
題 する 同 センターのブックレットとして 刊 行 されてい<br />
る (38) 。<br />
22
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
2000 年 には 東 京 国 立 近 代 美 術 館 のニュース 誌 『 現<br />
代 の 眼 』が「アート・アーカイヴ」を 特 集 して、 美 術<br />
館 、 博 物 館 、 文 学 館 におけるアーカイブの 実 例 を 複 数<br />
紹 介 しており、ミュージアムにおけるアーカイブの 位<br />
置 づけの 鮮 明 化 に 貢 献 している (39) 。さらに、2010 年<br />
の JADS 年 次 大 会 ではテーマを「アート・アーカイヴ<br />
− 多 面 体 :その 現 状 と 未 来 」として、 美 術 、 写 真 、 建 築 、<br />
舞 踏 から 多 面 的 なアート・アーカイヴの 検 証 するシン<br />
ポジウムを 開 催 しており、アート・アーカイヴの 議 論<br />
のフィールドは 大 きな 広 がりを 見 せており、 報 告 書 も<br />
後 日 刊 行 されている (40) 。<br />
3.5. MLA 連 携 の 2 つのトライアングルの 発 見<br />
このような 一 連 の 流 れの 中 で、1994 年 の 時 点 にて、<br />
「ミュージアム・ライブラリ・アーカイブをつなぐもの」<br />
のシンポジウムが 開 催 されたのであるが、 当 時 にあっ<br />
ては 登 壇 者 相 互 において、MLA 連 携 への 理 解 と 展 望<br />
が 十 分 なものであったとは 言 い 難 かったのも 事 実 であ<br />
る。<br />
しかしながら 今 日 では、MLA 連 携 をテーマとした<br />
シンポジウムは 日 本 図 書 館 情 報 学 会 のものなどを 含 め<br />
て、かなりの 数 が 確 認 され、MLA 連 携 の 形 とその 必<br />
要 についての 理 解 も 浸 透 しつつあるようである (41) 。<br />
筆 者 は 1994 年 のシンポジウム 以 来 、MLA 連 携 には<br />
「〈 内 なる〉トライアングル」と「〈 外 なる〉トライア<br />
ングル」という 2 つのトライアングルがあることを 説<br />
明 してきた (42) 。<br />
こ れ を OCLC の ミ ハ ル コ(James Michalko) は、<br />
「 一 つ 屋 根 の 下 の MLA」(MLA under same roof:<br />
An individual institution with all three types of<br />
organizations)と「 荒 野 に 立 つ 3 つの MLA」(MLA<br />
in the wild: Individual independent institutions)と 説<br />
明 しているが、この 論 は MLA 連 携 に 現 れる 2 つのト<br />
ライアングル、すなわち「 館 の 内 」と「 館 の 外 ( 館 同<br />
士 の)」という 2 つの 連 携 があるという 水 谷 の 説 明 と<br />
同 義 である (43) 。<br />
4. MLA 連 携 を 支 える 規 範 と 技 術<br />
4.1. 広 がる MLA 連 携 とそれを 支 える 規 範 と 技 術<br />
第 2 章 において、MLA 連 携 の 姿 を 端 的 に 示 し、 課<br />
題 の 設 定 として MLA 連 携 を 具 体 的 に 提 示 してきたの<br />
が 美 術 図 書 館 を 含 んで 美 術 の 資 料 と 情 報 に 関 わるアー<br />
ト・ドキュメンテーションであったことを、JADS 開<br />
催 のシンポジウムの 紹 介 などを 通 して 述 べた。<br />
すでに MLA 連 携 は、アート・ドキュメンテーショ<br />
ンの 範 疇 を 超 える 広 がりを 見 せており、MLA 個 々の<br />
存 立 と 機 能 に 関 わってその 将 来 展 望 の 開 拓 を 図 ると<br />
き、いまや 欠 かすことのできない 視 点 になっていると<br />
言 えるだろう。<br />
今 日 、MLA 連 携 を 指 向 する 時 、この 連 携 を 支 える<br />
規 範 と 技 術 は、 以 下 のようにメタデータとデジタル<br />
アーカイブの 構 築 の 2 点 に 集 約 されるだろう。<br />
4.2. MLA 連 携 におけるメタデータの 課 題<br />
先 述 の 日 本 図 書 館 情 報 学 会 の『 図 書 館 ・ 博 物 館 ・ 文<br />
書 館 の 連 携 』で 巻 頭 総 論 となっている 田 窪 論 文 「 博 物<br />
館 ・ 図 書 館 ・ 文 書 館 の 連 携 :いわゆる MLA 連 携 につ<br />
いて」は、MLA 連 携 に 関 するきわめて 優 れたレビュー<br />
ともなっている (44) 。<br />
著 者 年 来 の 主 張 であるのだが、 当 該 論 文 中 に、「 資<br />
料 をデジタル 化 ( 電 子 化 )すれば、 図 書 館 資 料 のみな<br />
らず、 博 物 館 資 料 や 文 書 館 資 料 やその 他 の 資 料 も 統 合<br />
的 に 扱 え, 図 書 館 も 博 物 館 も 文 書 館 も “ へったくれ ”<br />
もない 世 界 が 出 現 する」 (45) という 指 摘 がある。<br />
この「“ へったくれ ” もない 世 界 」を 実 現 するため<br />
のキーとなる 事 象 が、MLA における 個 々の 所 蔵 物 に<br />
ついてのメタデータの 形 成 と 統 合 的 マッピングのため<br />
の 規 範 の 整 理 と 技 術 の 開 発 であろう。 特 にメタデータ<br />
については、MLA 連 携 に 関 わって 重 要 な 文 献 が、 研<br />
谷 紀 夫 の 単 著 『デジタルアーカイブにおける「 資 料 基<br />
盤 」 統 合 化 モデルの 研 究 』 (46) であり、 八 重 樫 純 樹 を 科<br />
研 代 表 とする「 広 領 域 分 野 資 料 の 横 断 的 アーカイブズ<br />
論 に 関 する 分 析 的 研 究 」 (47) などの 研 究 である。 八 重 樫<br />
には 鈴 木 良 徳 との 共 著 論 文 において 記 述 規 則 における<br />
MLA の 差 異 を 検 証 する 文 献 がある (48) 。<br />
独 立 行 政 法 人 人 間 文 化 研 究 機 構 の 研 究 資 源 共 有 化 シ<br />
ステムの 統 合 検 索 なども MLA 連 携 におけるメタデー<br />
タの 統 合 という 面 から 貴 重 な 事 例 である (49) 。<br />
日 本 図 書 館 情 報 学 会 が 2004 年 に 編 集 刊 行 の『 図 書<br />
館 目 録 とメタデータ』には、 第 III 部 に「 隣 接 領 域 に<br />
おける 資 料 記 述 とメタデータ」の 章 があり、 森 本 祥 子<br />
がアーカイブから (50) 、 水 嶋 英 治 がミュージアムから (51) 、<br />
それぞれのメタデータの 動 向 を 報 告 している。<br />
4.3. デジタルアーカイブ<br />
MLA 連 携 とデジタルアーカイブとが 緊 密 な 関 係 に<br />
あることは 誰 もが 認 めるところであり、1990 年 代 末 か<br />
ら 2000 年 代 の 半 ばまで、 日 本 のデジタルアーカイブ<br />
を 文 字 通 り 推 進 したのがデジタルアーカイブ 推 進 協 議<br />
会 である。<br />
この 協 議 会 自 体 は 2005 年 6 月 30 日 をもって 解 散 し<br />
たが、2001、2003、2004、2005 年 において『デジタル<br />
アーカイブ 白 書 』を 残 し、また「デジタルアーカイブ<br />
権 利 と 契 約 の 手 引 き 契 約 文 例 + Q&A 集 」「デジタル<br />
アーカイブへの 道 筋 (ハンディ・ロードマップ)」 等<br />
の 貴 重 な 成 果 をいまなおウェブサイトに 公 開 してい<br />
23
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
る (52) 。 同 協 議 会 の 事 務 局 長 をつとめた 笠 羽 晴 夫 による<br />
デジタルアーカイブ 論 は 多 くの 事 例 の 観 察 に 基 づくも<br />
のであり 貴 重 である (53) 。<br />
国 立 国 会 図 書 館 においても 2010 年 3 月 1 日 にデジ<br />
タル 情 報 資 源 ラウンドテーブル 本 会 議 を 発 足 させてお<br />
り (54) 、 記 念 の 講 演 会 (55) などの、MLA 連 携 に 関 わる 旺<br />
盛 な 活 動 を 展 開 している。<br />
5. 施 策 としての MLA 連 携 の 可 能 性<br />
2010 年 の 4 月 から 5 月 にかけて、 文 化 審 議 会 の 文 化<br />
政 策 部 会 のもとに、 舞 台 芸 術 、メディア 芸 術 ・ 映 画 、<br />
美 術 、くらしの 文 化 、 文 化 財 の 5 つのワーキンググルー<br />
プが 組 織 され、 以 後 5 年 間 の 文 化 芸 術 の 振 興 に 関 し、<br />
集 中 的 な 討 議 が 行 われた。<br />
筆 者 は 美 術 ワーキングに 委 員 として 属 し、5 月 7 日<br />
に 主 として、 美 術 館 における 所 蔵 作 品 のメタデータと<br />
アーカイブの 整 備 に 関 する 報 告 を 行 った (56) 。<br />
これらワーキングでの 議 論 は 文 化 政 策 部 会 でのまと<br />
めの 審 議 を 経 て、2011 年 1 月 31 日 、 文 化 審 議 会 総 会<br />
において 西 原 鈴 子 会 長 ( 元 東 京 女 子 大 学 教 授 )より 高<br />
木 義 明 文 科 大 臣 へ「 文 化 芸 術 の 振 興 に 関 する 基 本 的 な<br />
方 針 ( 第 3 次 )について」と 題 された 答 申 が 手 渡 さ<br />
れ、2 月 8 日 、 第 3 次 基 本 方 針 として 閣 議 決 定 された。<br />
これは 文 化 芸 術 振 興 基 本 法 に 基 づくおおむね 5 年 間<br />
(2011–2015 年 度 )の 文 化 芸 術 振 興 に 関 わる 基 本 方 針 と<br />
なるものである (57) 。<br />
この 方 針 の「 第 3 文 化 芸 術 振 興 に 関 する 基 本 的 施<br />
策 / 9. 文 化 芸 術 拠 点 の 充 実 等 /(2) 美 術 館 , 博 物 館 ,<br />
図 書 館 等 の 充 実 」の 10 項 目 の 中 に、 以 下 の 文 言 が 記<br />
載 され (58) 、MLA 連 携 は 文 化 芸 術 の 振 興 に 関 わる 施 策<br />
の 一 つに 位 置 づけられることになった。<br />
・ 優 れた 文 化 財 , 美 術 作 品 等 を 積 極 的 に 保 存 ・ 公 開 す<br />
るため, 所 蔵 品 の 目 録 ( 資 料 台 帳 )の 整 備 を 促 すと<br />
ともに, 書 誌 情 報 やデジタル 画 像 等 のアーカイブ 化<br />
を 促 進 する。<br />
・ 各 地 域 に 所 在 する 貴 重 な 文 化 芸 術 資 源 の 計 画 的 ・ 戦<br />
略 的 な 保 存 ・ 活 用 を 図 るため, 博 物 館 ・ 図 書 館 ・ 公<br />
文 書 館 (MLA) 等 の 連 携 の 促 進 に 努 める。<br />
6. おわりに− 震 災 復 興 と 地 域 資 料 、そして MLA 連 携<br />
MLA 連 携 が 具 体 的 に 効 果 を 発 揮 するフィールドと<br />
して、 地 域 資 料 があることはしばしば 指 摘 されてき<br />
た (59) 。その 中 の 一 つの 文 献 において、 長 谷 川 伸 は、「 地<br />
域 資 料 の 収 集 ・ 保 存 ・ 活 用 」と MLA 連 携 が 関 わる 課<br />
題 として、1 蔵 書 ( 所 蔵 ) 資 料 としての 地 域 資 料 情 報<br />
のネットワーク、2 地 域 資 料 の 科 学 的 な 保 存 管 理 、3<br />
レファレンス 技 術 ・ 知 識 の 共 有 ・ 連 携 を 提 唱 し、「そ<br />
れぞれの 専 門 知 識 を 土 台 に、 守 備 範 囲 を 補 いながら 組<br />
織 的 に 連 携 する」ことが、MLA 連 携 の 要 諦 であると<br />
指 摘 している (60) 。<br />
これはまことに 正 鵠 を 射 た 指 摘 であり、MLA 連 携<br />
はウェブ 上 の 連 携 であるとともに、それ 以 上 に 例 えば<br />
地 域 資 料 という 具 体 かつ 現 場 のある 資 料 に 向 けてこ<br />
そ、 今 後 、もっとも 効 力 を 発 揮 する/ 発 揮 しなければ<br />
ならない 連 携 の 課 題 があると 考 えられる。<br />
3.11 の 地 震 とその 直 後 の 津 波 が 奪 った 東 日 本 の 多 く<br />
の 文 化 財 、とりわけ 地 域 の 文 書 類 の 喪 失 の 大 きさは 想<br />
像 を 越 える。<br />
MLA 連 携 が「 文 化 芸 術 の 振 興 に 関 する 基 本 的 な 方<br />
針 ( 第 3 次 )」において 推 進 すべき 課 題 として 明 記 さ<br />
れたことの 重 さを 思 いつつ、 関 係 する 人 々とのネット<br />
ワークを 一 層 強 く 深 いものとして 築 き、そして 失 われ、<br />
いままさに 危 機 に 瀕 する 東 日 本 大 震 災 被 災 地 の 地 域 資<br />
料 の 復 旧 を 一 つの 試 金 石 として、MLA 連 携 の 可 能 性<br />
をより 多 くの 方 々と 探 り、 構 築 していきたいと 願 って<br />
いる。<br />
みずたにたけ<br />
し<br />
( 東 京 国 立 近 代 美 術 館 : 水 谷 長 志 )<br />
( 1 ) 本 稿 とほぼ 同 じ 時 期 に 執 筆 し、また 刊 行 も 同 じ 月 を 予 定 し<br />
ている『 情 報 の 科 学 と 技 術 』 誌 掲 載 の 拙 稿 「MLA 連 携 のフィ<br />
ロソフィー− “ 連 続 と 侵 犯 ” という」と 連 動 し、いささかの<br />
重 複 のあることを 予 めお 断 りさせていただきたい。<br />
水 谷 長 志 . MLA 連 携 のフィロソフィー:“ 連 続 と 侵 犯 ” とい<br />
う. 情 報 の 科 学 と 技 術 . 2011, 61(6), p. 216–221 .<br />
( 2 )“ 公 開 講 座 「 被 災 ミュージアムの 支 援 と 危 機 管 理 対 策 」&<br />
写 真 展 のご 案 内 ”. Museum Career Development Network.<br />
2011–04–27.<br />
http://www.mcdn.jp/2011/04/blog-post.html, ( 参 照 2011–<br />
04–16).<br />
( 3 ) 松 岡 資 明 . 被 災 地 の 記 憶 デジタル 保 存 . 日 本 経 済 新 聞 .<br />
2011–05–14, 朝 刊 , p. 40.<br />
( 4 )saveMLAK. http://savemlak.jp/wiki/SaveMLAK, ( 参 照<br />
2011–04–16).<br />
( 5 ) 美 術 に 限 らず 広 く MLA 連 携 を 調 査 した 報 告 書 としては 下<br />
記 が 貴 重 であり、 翻 訳 書 も 刊 行 されている。<br />
Yarrow, Alexandra et al. Public Libraries, Archives and<br />
Museums: Trends in Collaboration and Cooperation,<br />
IFLA, 2008, 51p.<br />
http://archive.ifla.org/VII/s8/pub/Profrep108.pdf,<br />
(accessed 2011–04–16).<br />
ヤロウ, アレクサンドラほか. 公 立 図 書 館 ・ 文 書 館 ・ 博 物 館 :<br />
共 同 と 協 力 の 動 向 . 垣 口 弥 生 ほか 訳 . 京 都 大 学 図 書 館 情 報<br />
学 研 究 会 , 2008, 68p.<br />
http://www.educ.kyoto-u.ac.jp/~lib-sci/pdf/IFLA-<br />
Profrep108-Jp.pdf, ( 参 照 2011–05–16).<br />
( 6 )Giral, Angela. At the confluence of three traditions:<br />
architectural drawings at the Avery Library. Library<br />
Trends. 1988, 37(2), p. 232–242.<br />
( 7 ) 水 谷 長 志 編 著 . MLA 連 携 の 現 状 ・ 課 題 ・ 将 来 . 勉 誠 出 版 ,<br />
2010, p. 22.<br />
( 8 )PORTA( 国 立 国 会 図 書 館 デジタルアーカイブポータル).<br />
http://porta.ndl.go.jp/, ( 参 照 2011–04–16).<br />
( 9 ) 佐 々 木 丞 平 ほか. “ 記 念 鼎 談 −これからの MLA 連 携 に 向 け<br />
て”. MLA 連 携 の 現 状 ・ 課 題 ・ 将 来 . 水 谷 長 志 編 著 . 勉 誠 出 版 ,<br />
2010, p. 22.<br />
(10) 水 谷 長 志 編 著 . MLA 連 携 の 現 状 ・ 課 題 ・ 将 来 . 勉 誠 出 版 ,<br />
2010, 296p.<br />
(11) 日 本 図 書 館 情 報 学 会 研 究 委 員 会 編 . 図 書 館 ・ 博 物 館 ・ 文 書 館<br />
の 連 携 . 勉 誠 出 版 , 2010, 186p.<br />
(12) 第 58 回 日 本 図 書 館 情 報 学 会 研 究 大 会 シンポジウム 記 録 「 図<br />
書 館 ・ 博 物 館 ・ 文 書 館 の 連 携 をめぐる 現 状 と 課 題 」. 日 本 図<br />
書 館 情 報 学 会 誌 . 2010, 56(4), p. 220–224.<br />
24
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
(13) 本 フォーラムの 全 体 にわたる 報 告 書 として、 以 下 の 文 献 が<br />
刊 行 された。<br />
アート・ドキュメンテーション 研 究 会 1995 編 . 美 術 情 報 と<br />
図 書 館 : 第 1 回 アート・ドキュメンテーション 研 究 フォーラ<br />
ム 報 告 書 . アート・ドキュメンテーション 研 究 会 1995, 1995,<br />
184p.<br />
(14)アート・ドキュメンテーション 会 則 . アート・ドキュメンテー<br />
ション 研 究 . 2004, (11), p. 150.<br />
会 則 に「 文 書 館 」が 加 えられたのは、 前 年 2003 年 6 月 の 総<br />
会 での 会 則 改 正 からによってである。<br />
(15)アート・ドキュメンテーション 研 究 会 1995 編 . 美 術 情 報 と<br />
図 書 館 : 第 1 回 アート・ドキュメンテーション 研 究 フォー<br />
ラム 報 告 書 . 1995, 184p.<br />
(16) 水 谷 長 志 . 特 集 , IFLA シドニー 大 会 報 告 :IFLA 美 術 図 書<br />
館 分 科 会 に 参 加 して: 日 本 における ARLIS の 可 能 性 を 考 え<br />
る. 図 書 館 雑 誌 . 1988, 82(12), p. 817–819.<br />
(17)Mizutani, Takeshi. The Japan Art Documentation Society<br />
and Art Librarianship in Japan Today. Art Libraries<br />
Journal. 1989, 14(3), p. 5–6.<br />
(18)Okubo, Itsuo. “History of posters in Japan and the present<br />
states of their documentation”. IFLA General Conference.<br />
Tokyo, Japan. 1986–08–23/29. IFLA. 1986. p. 1–5.<br />
Okubo, Itsuo. History of posters in Japan and the present<br />
state of their documentation. Art Libraries Journal. 1986,<br />
11(4), p. 14–18.<br />
大 久 保 逸 雄 . 特 集 , シリ−ズ・IFLA 東 京 大 会 発 表 ペーパー<br />
を 読 む5: 国 際 文 化 摩 擦 の 一 断 面 :ボストン 美 術 館 ・ア<br />
レ ン さ ん の 指 摘 か ら 学 ぶ も の. 図 書 館 雑 誌 . 1987, 81(6).<br />
p. 342–343.<br />
(19)Kimura, Yaeko. “The Change of Illustrated Story Books<br />
in Edo Period (1660–1880)”. IFLA General Conference.<br />
Tokyo, Japan. 1986–08–23/29. IFLA. 1986. p. 1–12.<br />
(20) 大 久 保 逸 雄 . 日 本 における 美 術 史 ドキュメンテーションの 諸<br />
問 題 (1), 図 書 館 雑 誌 . 1981, 75(10), p. 644–645.<br />
大 久 保 逸 雄 . 日 本 における 美 術 史 ドキュメンテーションの 諸<br />
問 題 (2). 図 書 館 雑 誌 . 1981, 75(11), p. 714–716.<br />
上 記 2 つの 文 献 は 1980 年 IFLA マニラ 大 会 での 美 術 図 書 館<br />
ラウンドテーブルでの 口 頭 発 表 論 文 の 翻 訳 である。 初 出 は<br />
次 の 文 献 である。<br />
Okubo, Itsuo. Problems in art documentation in Japan.<br />
Art Libraries Journal. 1980, 5(4), p. 25–33.<br />
(21) 日 仏 美 術 学 会 . 美 術 研 究 と 情 報 処 理 :コンピューターによ<br />
る 画 像 ・ 文 献 処 理 はどこまで 可 能 か. 日 仏 美 術 学 会 , 1987,<br />
143p.<br />
(22) 日 仏 美 術 学 会 . 美 術 研 究 と 情 報 処 理 :コンピューターによ<br />
る 画 像 ・ 文 献 処 理 はどこまで 可 能 か. 日 仏 美 術 学 会 , 1987,<br />
143p.<br />
(23) 波 多 野 宏 之 . 画 像 情 報 の 蓄 積 と 検 索 : 美 術 分 野 における 応 用<br />
Part1. 書 誌 索 引 展 望 . 1987, 11(4), p. 1–11.<br />
波 多 野 宏 之 . 画 像 情 報 の 蓄 積 と 検 索 : 美 術 分 野 における 応 用<br />
Part2. 書 誌 索 引 展 望 . 1988, 12(1), p. 21–29.<br />
(24) 波 多 野 宏 之 . 画 像 ドキュメンテーション 世 界 . 勁 草 書 房 ,<br />
1993, 189p.<br />
(25)Mizutani, Takeshi. The Japan Art Documentation Society<br />
and Art Librarianship in Japan Today. Art Libraries<br />
Journal. 1989, 14(3), p. 5–6.<br />
ファン・デル・ワテレン, ヤン. 美 術 館 情 報 処 理 システムの<br />
諸 問 題 :ヴィクトリア・アンド・アルバート 美 術 館 を 中 心 に.<br />
アート・ドキュメンテーション 研 究 . 1994, (3), p. 3–11.<br />
(26) 平 井 紀 子 ほか. “ 年 表 日 本 のアート・ドキュメンテーション<br />
− 20 年 の 軌 跡 1989–2008: 附 :「1980 年 以 降 の 美 術 図 書 館<br />
をめぐる 様 々な 動 き”. 日 本 のアート・ドキュメンテーショ<br />
ン− 20 年 の 達 成 MLA 連 携 の 現 状 、 課 題 、そして 将 来 . アー<br />
ト・ドキュメンテーション 学 会 , 2009, p. 55–108.<br />
(27) 野 崎 たみ 子 . 特 集 , 21 世 紀 へのまなざし: 美 術 館 ・コレクター・<br />
画 廊 の 現 場 から: 美 術 図 書 室 の 四 半 世 紀 . 美 術 フォーラム<br />
21. 2001, 3, p. 76–79.<br />
(28) 水 谷 長 志 . ミュージアム・ライブラリの 可 能 性 : 人 と 情<br />
報 のネットワーキングのもとに. 図 書 館 雑 誌 . 2004, 98(7),<br />
p. 438–441.<br />
水 谷 長 志 . 美 術 図 書 館 横 断 検 索 by ALC:その 公 開 と 課 題 .<br />
アート・ドキュメンテーション 研 究 . 2005, (12), p. 27–34.<br />
水 谷 長 志 . 特 集 , 平 成 18 年 度 専 門 図 書 館 協 議 会 全 国 研 究 集<br />
会 : 第 五 分 科 会 : 新 しい 動 きと 挑 戦 ・ 事 例 紹 介 : 美 術 館 図<br />
書 室 の 過 去 ・ 現 在 ・ 未 来 :ALC への 道 のりをふり 返 って.<br />
専 門 図 書 館 . 2006, (219), p. 73–77.<br />
Art Libraries' Consortium. http://alc.opac.jp/, ( 参 照 2011–<br />
04–16).<br />
(29) 加 藤 哲 弘 . “ 矢 代 幸 雄 と 近 代 日 本 の 文 化 政 策 ”. 芸 術 / 葛 藤 の<br />
現 場 . 晃 洋 書 房 , 2002, p. 69–84, (シリーズ 近 代 日 本 の 知 , 4).<br />
(30) 水 谷 長 志 . “ 矢 代 幸 雄 の 美 術 図 書 館 プラン”. 図 書 館 情 報 学<br />
の 創 造 的 再 構 築 : 藤 野 幸 雄 先 生 古 稀 記 念 論 文 集 . 勉 誠 出 版 ,<br />
2001, p. 251–261.<br />
(31)Okubo, Itsuo. History of posters in Japan and the present<br />
state of their documentation. Art Libraries Journal. 1986,<br />
11(4), p. 14–18.<br />
大 久 保 逸 雄 . 特 集 , シリ−ズ・IFLA 東 京 大 会 発 表 ペーパー<br />
を 読 む5: 国 際 文 化 摩 擦 の 一 断 面 :ボストン 美 術 館 ・ア<br />
レ ン さ ん の 指 摘 か ら 学 ぶ も の. 図 書 館 雑 誌 . 1987, 81(6).<br />
p. 342–343.<br />
(32) 大 久 保 逸 雄 . アート・ドキュメンテーション 序 説 . アート・<br />
ドキュメンテーション 研 究 . 1992, (1), p. 5–19.<br />
(33) 特 集 , アート・ドキュメンテーション. 現 代 の 図 書 館 . 1990,<br />
28(4), p. 198–253.<br />
各 論 考 は、 次 の 通 り。 波 多 野 宏 之 「アート・ドキュメンテー<br />
ションの 提 起 するもの」、 水 谷 「アメリカにおける 美 術 図 書<br />
館 の 現 状 と 課 題 」、 中 島 理 壽 「 日 本 展 覧 会 カタログについて<br />
の 一 考 察 」、 田 窪 直 規 「 美 術 作 品 の 情 報 管 理 : 図 書 館 の 場 合<br />
と 博 物 館 の 場 合 」、 鯨 井 秀 伸 「 作 品 データと 文 献 データとの<br />
リンク,あるいは 美 術 情 報 の 検 索 システム 化 」。<br />
(34) 筒 井 弥 生 . ミュージアムにおけるアーカイブズ 管 理 という 考<br />
え 方 と 実 態 . アート・ドキュメンテーション 研 究 . 2011, (18),<br />
p. 53.<br />
第 2 版 は 2004 年 刊 行 。<br />
Wythe, Deborah ed. Museum Archives: An Introduction.<br />
2nd ed., Society of American Archivists, 2004, 256p.<br />
(35) 水 谷 長 志 . 美 術 資 料 における < 外 なる / 内 なる > ネットワー<br />
クを 考 える. 現 代 の 図 書 館 . 1996, 34(3), p. 151–154.<br />
(36)“アーツ・アーカイヴ: 新 しい 感 性 と 知 の 空 間 をめざして”.<br />
慶 應 義 塾 大 学 アート・センター.<br />
http://www.art-c.keio.ac.jp/archive/, ( 参 照 2011–04–16).<br />
(37) 前 田 には 多 くの 論 考 があるが、 例 えば、 以 下 の 論 考 が 挙 げ<br />
られる。<br />
前 田 富 士 男 . “アーカイヴと 生 成 論 (Genetics):「 新 しさ」<br />
と「 似 ていること」の 解 読 にむけて”. ジェネティック・アー<br />
カイヴ・エンジン:デジタルの 森 で 踊 る 土 方 巽 . 慶 應 義 塾 大<br />
学 アート・センター,2000, p. 80–95. ( 慶 應 義 塾 大 学 アート・<br />
センターブックレット, 6).<br />
(38) 慶 應 義 塾 大 学 アート・センター 編 . アート・アーカイヴズ /<br />
ドキュメンテーション:アート 資 料 の 宇 宙 . 慶 應 義 塾 大 学<br />
アート・センター, 2001, 91p. ( 慶 應 義 塾 大 学 アート・セン<br />
ターブックレット, 7)<br />
本 書 には、 高 山 正 也 「アート・ドキュメンテーションの 基 礎 :<br />
アート 資 料 の 世 界 とその 組 織 化 のあり 方 」、 田 窪 直 規 「 情 報<br />
メディアを 捉 える 枠 組 : 図 書 館 メディア、 博 物 館 メディア、<br />
文 書 館 メディア 等 、 多 様 な 情 報 メディアの 統 合 的 構 造 化 記<br />
述 のための」、 八 重 樫 純 樹 「 時 間 ― 空 間 情 報 をベースとした<br />
分 野 横 断 的 アーカイブズ 論 への 考 察 」、 鯨 井 秀 伸 「オブジェ<br />
クト・ドキュメンテーションにおけるデータ・リレーショ<br />
ンシップおよびコンテキストにおけるカテゴリーについて」<br />
を 掲 載 する。<br />
(39) 特 集 , アート・アーカイヴ. 現 代 の 眼 . 2000, 523, p. 1–11.<br />
以 下 の 論 考 を 掲 載 。 田 中 淳 「 近 代 美 術 アーカイヴとダンボー<br />
ル 箱 」、 森 仁 史 「フィールドワークからアーカイヴへ」、 平<br />
澤 宏 「アーカイヴとしての「 萬 鉄 五 郎 書 簡 集 」 出 版 に 至 る<br />
まで」、 小 澤 律 子 「 国 吉 康 雄 アーカイヴスの 形 成 と AAA の<br />
こと」、 藤 木 尚 子 「 神 奈 川 近 代 文 学 館 の 特 別 資 料 について」。<br />
(40)アート・アーカイヴ− 多 面 体 :その 現 状 と 未 来 [ 記 録 集 ]. アー<br />
ト・ドキュメンテーション 学 会 , 2010, 35p.<br />
例 えば、2010 年 2 月 21 日 のシンポジウム「 建 築 アーカイ<br />
ヴの 現 在 と 未 来 」など。<br />
“ 資 料 脅 かす 市 場 経 済 : 建 築 アーカイブ 巡 り、 東 大 でシンポ”.<br />
朝 日 新 聞 . 2010–03–23.<br />
h t t p : / / w w w. a s a h i. c o m / c u l t u r e / n e w s _ c u l t u r e /<br />
TKY201003230115.html, ( 参 照 2011–04–16).<br />
(41) 例 え ば、 東 京 大 学 経 済 学 部 資 料 室 開 室 記 念 シ ン ポ ジ ウ<br />
ム「 資 料 を 残 す・ 未 来 に 伝 え る LIBRARY・MUSEUM・<br />
ARCHIVES をつなぐ」、2010 年 7 月 30 日 、 於 東 京 大 学 経<br />
済 学 研 究 科 学 術 交 流 棟 。<br />
“ 資 料 室 開 室 記 念 シンポジウム【7 月 30 日 ( 金 ) 開 催 】の<br />
お 知 らせ”. 東 京 大 学 経 済 学 図 書 室 ニュース. 2010–07–06.<br />
http://www.lib.e.u-tokyo.ac.jp/news2/adiary.cgi/08, ( 参 照<br />
2011–04–16).<br />
(42) 水 谷 長 志 . 美 術 資 料 における < 外 なる / 内 なる > ネットワー<br />
クを 考 える. 現 代 の 図 書 館 .1996, 34(3), p. 151–154.<br />
水 谷 長 志 . “アート・アーカイヴ 再 考 −〈 外 なる / 内 なる〉<br />
二 つのトライアングルをめぐって”. 松 本 透 ほか. 戦 後 の 日 本<br />
における 芸 術 とテクノロジー:2004–2006 年 度 科 学 研 究 費<br />
補 助 金 ( 基 盤 研 究 (B)) 報 告 書 . 東 京 国 立 近 代 美 術 館 , 2007,<br />
p. 88–93.<br />
(43) 水 谷 長 志 . MLA 連 携 のフィロソフィー:“ 連 続 と 侵 犯 ” という.<br />
情 報 の 科 学 と 技 術 . 2011, 61(6), p. 216–221.<br />
25
カレントアウェアネス NO.308(2011.6)<br />
この 稿 に 記 したように、ミハルコの 論 は 慶 應 大 学 における<br />
クローズドな 研 究 会 でのプレゼンテーションによるもので<br />
あるが、この 同 義 であることに 関 わる 資 料 は 氏 の 好 意 によ<br />
り 上 記 文 献 に 再 録 しているので、 参 照 されたい。<br />
(44) 田 窪 直 規 . “ 博 物 館 ・ 図 書 館 ・ 文 書 館 の 連 携 :いわゆる MLA<br />
連 携 について”. 図 書 館 ・ 博 物 館 ・ 文 書 館 の 連 携 . 勉 誠 出 版 ,<br />
2010, p. 1–22.<br />
海 外 における MLA 連 携 についてのレビューとしては 他 に<br />
下 記 がある。<br />
菅 野 育 子 . 欧 米 における 図 書 館 、 文 書 館 、 博 物 館 の 連 携 :<br />
Cultural Heritage Sector としての 図 書 館 . カレントアウェ<br />
アネス. 2007, (294), p. 10–16.<br />
http://current.ndl.go.jp/ca1944, ( 参 照 2011–04–16).<br />
金 容 愛 . 図 書 館 ・ 文 書 館 ・ 博 物 館 における 連 携 の 動 向 . 文 化<br />
情 報 学 . 2009, 16(1), p. 33–43.<br />
(45) 田 窪 直 規 . “ 博 物 館 ・ 図 書 館 ・ 文 書 館 の 連 携 :いわゆる MLA<br />
連 携 について”. 図 書 館 ・ 博 物 館 ・ 文 書 館 の 連 携 . 勉 誠 出 版 ,<br />
2010, p. 16.<br />
(46) 研 谷 紀 夫 . デジタルアーカイブにおける「 資 料 基 盤 」 統 合 化<br />
モデルの 研 究 . 勉 誠 出 版 , 2009, 379p.<br />
研 谷 には 北 岡 他 との 共 著 『Guideline Guideline for デジタ<br />
ルカルチュラルヘリテージ 構 築 のためのガイドライン 評 価<br />
版 ver.1.0』がある。<br />
“Guideline Guideline for デジタルカルチュラルヘリテージ<br />
構 築 のためのガイドライン 評 価 版 ver.1.0”. 社 会 情 報 研 究 資<br />
料 センター.<br />
http://www.center.iii.u-tokyo.ac.jp/wp-content/uploads/<br />
GuidelineForDigitalCulturalHeritage10.pdf, ( 参 照 2011–04–<br />
16).<br />
(47) 八 重 樫 純 樹 ほか. 広 領 域 分 野 資 料 の 横 断 的 アーカイブズ 論 に<br />
関 する 分 析 的 研 究 :2001–2003 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金 ( 基<br />
盤 研 究 (B)) 研 究 成 果 報 告 書 . 静 岡 大 学 , 2004, 238p.<br />
八 重 樫 純 樹 . 横 断 的 アーカイブズ 論 の 総 合 化 ・ 国 際 化 と 社 会<br />
情 報 資 源 基 盤 の 研 究 開 発 . 2005–2007 年 度 科 学 研 究 費 補 助 金<br />
( 基 盤 研 究 (B)) 研 究 成 果 報 告 書 . 静 岡 大 学 , 2008, 358p.<br />
(48) 鈴 木 良 徳 ほか. MLA の 記 述 規 則 に 関 する 比 較 研 究 . 情 報 処<br />
理 学 会 誌 . 2010, 20(2), p. 215–220.<br />
http://www.jstage.jst.go.jp/article/jsik/20/2/215/_pdf/-<br />
char/ja/, ( 参 照 2011–04–16).<br />
(49)“ 研 究 資 源 共 有 化 システム” 大 学 共 同 利 用 機 関 法 人 人 間 文 化<br />
研 究 機 構 .<br />
http://www.nihu.jp/sougou/kyoyuka/system/index.html,<br />
( 参 照 2011–04–16).<br />
(50) 森 本 祥 子 . “アーカイブズにおける 記 述 標 準 化 の 動 向 ”. 図 書<br />
館 目 録 とメタデータ. 勉 誠 出 版 , 2004, p. 145–164.<br />
(51) 水 嶋 英 治 . “ 博 物 館 ・ 美 術 館 における 所 蔵 資 料 記 述 とメタデー<br />
タ”. 図 書 館 目 録 とメタデータ. 勉 誠 出 版 , 2004, p. 165–187.<br />
(52)デジタルアーカイブ 推 進 協 議 会 (JDAA) 関 連 情 報 .<br />
http://www.dcaj.org/jdaa/, ( 参 照 2011–04–16).<br />
(53) 笠 羽 晴 夫 . デジタルアーカイブ: 基 点 ・ 手 法 ・ 課 題 . 水 曜 社 ,<br />
2010, 200p.<br />
(54)“デジタル 情 報 資 源 ラウンドテーブル”. 国 立 国 会 図 書 館 .<br />
http://www.ndl.go.jp/jp/aboutus/roundtable.html, ( 参 照<br />
2011–04–16).<br />
(55) 講 演 会 は、エルランド・コールディング・ニールセン(デ<br />
ンマーク 王 立 図 書 館 長 )、ジル・カズンズ( 欧 州 デジタル 図<br />
書 館 事 務 局 長 )「 知 的 資 産 を 繋 ぐ―ヨーロッパの 実 践 (2011–<br />
03–02)」であった。<br />
国 立 国 会 図 書 館 編 . 国 立 国 会 図 書 館 月 報 . 国 立 国 会 図 書 館 .<br />
2010, (589), p. 29.<br />
h t t p : / / w w w. n d l. g o. j p / j p / p u b l i c a t i o n / g e p p o / p d f /<br />
geppo1004.pdf, ( 参 照 2011–04–16).<br />
菅 野 育 子 . “ 欧 州 の デ ジ タ ル ア ー カ イ ブ と そ の 連 携 :<br />
Europeana を 中 心 として”. 国 立 国 会 図 書 館 .<br />
http://www.ndl.go.jp/jp/news/fy2010/europeana.pdf, ( 参<br />
照 2011–04–16).<br />
(56) 水 谷 長 志 . “ヒアリング(アーカイブ 関 係 )”. 文 化 審 議 会 文 化<br />
政 策 部 会 美 術 ワーキンググループ( 第 3 回 ). 2010–05–07.<br />
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku_wg/<br />
bijutsu_03/pdf/shiryo_2_1_ver02.pdf, ( 参 照 2011–04–16).<br />
水 谷 長 志 . “ 美 術 ワーキング:ヒアリング(アーカイブ 関 係 )”.<br />
文 化 庁 .<br />
http://www.bunka.go.jp/bunkashingikai/seisaku_wg/<br />
bijutsu_03/pdf/shiryo_2_2_ver02.pdf, ( 参 照 2011–04–16).<br />
(57)“ 文 化 芸 術 の 振 興 に 関 する 基 本 的 な 方 針 ( 平 成 23 年 2 月 8<br />
日 閣 議 決 定 )”. 文 化 庁 .<br />
http://www.bunka.go.jp/bunka_gyousei/housin/kihon_<br />
housin_3ji.html, ( 参 照 2011–04–16).<br />
長 官 官 房 政 策 課 . 文 化 芸 術 の 振 興 に 関 する 基 本 的 な 方 針 ( 第<br />
3 次 基 本 方 針 ). 文 化 庁 月 報 .2011, 510, p. 4–19.<br />
(58)“(2) 美 術 館 , 博 物 館 , 図 書 館 等 の 充 実 ”. 文 化 庁 .<br />
h t t p : / / w w w. b u n k a. g o. j p / b u n k a _ g y o u s e i / h o u s i n /<br />
kakugikettei_110208/03-9-2.html, ( 参 照 2011–04–16).<br />
(59) 新 井 浩 文 . 特 集 , 平 成 22 年 度 ( 第 96 回 ) 全 国 図 書 館 大 会 へ<br />
の 招 待 : 第 9 分 科 会 : 地 域 資 料 をめぐる 図 書 館 とアーカイ<br />
ブズ:その 現 状 と 未 来 . 図 書 館 雑 誌 . 104(8), 2010, p. 489.<br />
全 国 図 書 館 大 会 (2010 年 9 月 16–17 日 )の「 地 域 資 料 をめ<br />
ぐる 図 書 館 とアーカイブズ−その 現 状 と 未 来 」をテーマと<br />
する 第 9 分 科 会 〔 資 料 保 存 〕の 企 画 紹 介 。ここでは LMA<br />
連 携 と 表 記 。<br />
(60) 長 谷 川 伸 . 現 場 レベルで 考 える MLA 連 携 の 課 題 : 全 国 歴 史<br />
資 料 保 存 利 用 連 絡 協 議 会 関 東 部 会 総 会 講 演 : 根 本 彰 氏 「 地<br />
域 資 料 とは 何 か− 国 立 国 会 図 書 館 調 査 に 基 づいて」 参 加 記 .<br />
ネットワーク 資 料 保 存 . 2008, (88), p. 6.<br />
著 作 権 法 で 認 められる 場 合 以 外 で、 視 覚 障 害 その 他 の 理<br />
由 でこの 雑 誌 を 活 字 のままで 読 むことのできない 人 の 利<br />
用 に 供 するために、 著 作 権 者 の 許 諾 が 必 要 な 方 は、 国 立<br />
国 会 図 書 館 まで 御 連 絡 ください。<br />
連 絡 先 国 立 国 会 図 書 館 関 西 館 図 書 館 協 力 課<br />
住 所 〒619−0287<br />
京 都 府 相 楽 郡 精 華 町 精 華 台 8−1−3<br />
電 話 番 号 0774−98−1448<br />
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