触覚における皮膚構造の役割 - Tachi Lab
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結果を Fig. 3,Fig. 4, に示す(皮下組織は省略).ここで注<br />
目すべきはマイスナー小体の存在位置(図中黒丸)でのひ<br />
ずみ集中である.指紋,真皮乳頭といった皮膚構造により<br />
以下の二点の機構が存在することがわかった.<br />
• 垂直応力でもせん断ひずみを生じる機構.<br />
• 水平応力に対し,ひずみ集中位置がひとつずれた位置に<br />
集中する機構.(以下「クロス機構」と呼ぶ)<br />
Fig. 3: Vertical force from whole surface<br />
Fig. 4: Horizontal force from middle fingerprint<br />
4. ロバスト性の検証<br />
発見されたクロス機構が実際の皮膚で生じうるか検証し<br />
た.応力比として垂直:水平 = 10:1, 1:5 の 2 種類について,<br />
皮膚の厚さと指紋の高さを変化させ,クロス機構が生じる<br />
範囲を求めた(Fig. 5, Fig. 6).この範囲に実際の皮膚構<br />
造があればクロス機構が生じていると考えて良い.実際の<br />
皮膚と対応させた結果を Fig. 7 に示す.この結果から実際<br />
の皮膚でクロス機構が生じている可能性は極めて高いとい<br />
える.<br />
Fig.6:Vertical:Horizontal=10:1 Fig.7:Vertical:Horizontal=5:1<br />
Fig.8: Comparison with actual skin<br />
1P1-3F-C1(2)<br />
5. 皮膚構造の果たす役割<br />
第 3 節で示した二つの機構が皮膚構造のどの部位によって<br />
生じるかを解明する.四つの構造的特徴の有無によりモデ<br />
ルを作成し(Table 1)シミュレーションを行った.実際の皮<br />
膚構造の場合の結果(Fig. 3, Fig. 4)と比較することにより,<br />
各皮膚構造が機構に果たす役割がわかる.結果の一部を拡<br />
大したものを Fig. 9, Fig. 10 に,まとめたものを Table 2<br />
に示す.人間の皮膚における四つの構造的特徴が,垂直応<br />
力をせん断ひずみに変換する機構および,クロス機構にと<br />
って各々重要な働きを果たすことがわかった。<br />
Table 1: Models<br />
model no.<br />
fingerprintintermediate<br />
limiting<br />
huge<br />
intermediate<br />
actual skin ○ ○ ○ ○<br />
1 × ○ ○ ○<br />
2 ○ × × -<br />
3 ○ ○ × -<br />
4 ○ × ○ -<br />
5 ○ ○ ○ ×<br />
Fig.9: Vertical no. 3, 4<br />
Fig.10: Horizontal no. 3, 4<br />
Table 2: The role of skin structure in force direction<br />
force finger- inter-<br />
huge<br />
limiting<br />
direction print mediate<br />
intermediate<br />
vertical ○ ○ × ○<br />
horizontal ○ × ○ ×<br />
6. おわりに<br />
垂直応力をせん断ひずみに変換する機構の存在により,第1<br />
節で示した一点目の問題点が解決された.また,水平応力<br />
に関しては,従来,指紋直下にしか影響を及ぼさないと思<br />
われていた.しかし,水平応力に対しひずみが特徴的な空<br />
間分布に変換されること(クロス機構)がわかった.さらに,<br />
各皮膚構造が二つの機構に果たす役割を明確化した.今後<br />
は,複数の指紋から応力をかけた場合に拡張する.<br />
参考文献<br />
[1] 奈良: “触覚情報処理の理論およびその触覚ディスプレ<br />
イへの応用,”東京大学博士論文, 2000.<br />
[2] 前野他: “ヒト指腹部構造と触覚受容器位置の力学的関<br />
係 , ”日本機械学会論文集(C 編 ), Vol.63, No.607,<br />
pp.881-888, 1997.<br />
[3] 宮岡他: “触覚における振動検出域値の振動方向依存性,<br />
静岡理工科大紀要,”Vol.9, 2001.