卒業論文要旨

久 留 米 大 学 文 学 部 心 理 学 科 2009 年 度 卒 業 論 文 要 旨
大 学 生 のテスト 不 安 時 における
楽 観 性 とストレスコーピングとストレス 反 応 表 出 との 関 連
206qa90 江 夏 泰 二 郎 (Taijirou
ENATU)
【キーワード】ストレスコーピング
楽 観 性 ストレス 反 応
【 問 題 と 目 的 】
学 生 を 取 り 巻 く 社 会 環 境 の 歪 みは、そのまま 学 生 の
不 安 、 抑 うつなどに 繋 がりステューデントアパシーや
登 校 拒 否 などの 形 として 表 出 する( 木 村 ら、2003)。ま
た、この 度 合 いが 強 まると 重 度 の 心 身 的 な 疾 患 を 罹 患
する 可 能 性 がある。Lazarus & Folkman(1984)は
ストレッサーの 対 象 を 日 常 頻 繁 に 起 こるものに 規 定 し、
それはストレッサーに 対 する 認 知 的 な 評 価 (1 次 的 評
価 )とストレッサーに 対 するコーピング( 対 処 )の 選
択 やその 有 効 性 に 対 しての 認 知 的 な 評 価 (2 次 的 評 価 )
の 2 つの 評 価 によって 決 定 されるものとした。その 認
知 の 部 分 には 個 人 の 性 格 特 性 が 大 きく 関 わってくる
( 木 村 ら、2003)。また、コーピングへ 影 響 を 与 える 内
的 な 対 処 資 源 として 楽 観 性 が 大 きく 関 わっている( 川
島 、2007)。そして、コーピングの 結 果 から 生 じる、
問 題 への 対 処 の 仕 方 によってストレス 反 応 は 大 きく 異
なると 考 えられる( 木 村 ら、2003)。ストレッサーとし
ての 要 因 は 大 学 生 に 日 常 比 較 的 頻 繁 に 起 こるテストと
し、そのストレッサーに 対 して、 対 処 (コーピング)
の 認 知 、 方 略 についての 考 えがストレスの 表 出 にどの
ように 関 連 しているかについて、 性 格 特 性 としての 楽
観 性 が、ストレス 反 応 表 出 にどの 様 に 関 連 しているか、
仮 説 を 立 て 検 証 を 行 うこととした。
仮 説 1、 悲 観 的 な 性 格 特 性 を 持 つものは、ストレス
反 応 を 高 く 表 出 する。 仮 説 2、 楽 観 的 な 性 格 特 性 を 持
つものは、ストレス 反 応 をあまり 表 出 しない。
仮 説 3、ストレッサーの 解 決 に 焦 点 をあてたコーピ
ングにおいて、「 計 画 を 立 てる」 事 は 不 安 や 抑 うつとい
ったストレス 反 応 を 低 減 する 作 用 がある。 仮 説 4、ス
トレッサーの 解 決 に 焦 点 をあてたコーピングにおいて、
「 情 報 を 収 集 」する 事 は 不 安 や 抑 うつといったストレ
ス 反 応 を 低 減 する 作 用 がある。 仮 説 5、 情 動 に 焦 点 を
あてたコーピングのうち 嫌 なことを 考 えない 様 にする、
あきらめるといった「 回 避 的 思 考 」を 行 うものは、 心
理 的 ストレスを 増 加 させる 可 能 性 がある。 仮 説 6、 情
動 に 焦 点 をあてたコーピングのうち、 困 難 を 避 けよう
とするといった「 気 晴 らし」を 行 うものは、 心 理 的 ス
トレスを 増 加 させる 可 能 性 がある。
【 方 法 】
3 種 類 の 質 問 紙 調 査 を 2 期 に 分 けて 行 った。
1 期 、5 月 中 旬 2 期 、7 月 中 旬
楽 観 性 尺 度
ストレスコーピング 尺 度
心 理 的 ストレス 反 応 尺 度
図 1 質 問 紙 調 査 の 時 期
調 査 対 象 : 久 留 米 市 内 大 学 生 1 期 、132 名 ( 有 効 回 答
数 130 名 ) 2 期 、110 名 ( 有 効 回 答 数 102 名 )
調 査 時 期 :1 期 、5 月 下 旬 2 期 7 月 中 旬
測 定 尺 度 :
(1) 楽 観 性 尺 度
中 村 ら(2000)が 作 成 した「 楽 観 的 主 義 尺 度 」を 使
用 した。この 尺 度 は 全 12 項 目 からなるが、 項 目 1、4、
5、11 が 楽 観 的 自 己 感 情 項 目 であり、 項 目 3、8、9、
12 が 悲 観 的 自 己 感 情 項 目 である。なお、その 他 の 項 目
はフィラー 項 目 であり 分 析 には 使 用 しない。「まったく
当 てはまらない」(1 点 )から「 非 常 にあてはまる」(5
点 )5 件 法 で 回 答 する。
(2)ストレスコーピング 尺 度
神 村 ら(1995)が 作 成 した、3 次 元 コーピングスケ
ール Tri-Axial Coping Scale(TAC-24)を 使 用 した。
情 報 収 集 、 計 画 立 案 、カタルシス、 肯 定 的 解 釈 、 放 棄 ・
諦 め、 責 任 転 嫁 、 回 避 的 思 考 、 気 晴 らしの 8 つの 下 位
尺 度 からなり、 全 24 問 よりなる。「まったくない」(1
点 )、から「 非 常 に」(5 点 )で 回 答 する。
(3) 心 理 的 ストレス 反 応 尺 度
鈴 木 ら(1995)によって 作 成 された SRS-18:Stress
Response Scale-18 を 使 用 した。この 尺 度 は 全 18 問 で
あり、3 下 位 尺 度 、 抑 うつ・ 不 安 、 不 機 嫌 、 怒 りから
なる。「まったく 違 う」(0 点 )、から「その 通 りだ」(3
点 )で 回 答 する。1 期 の 楽 観 主 義 尺 度 による 測 定 後 、
各 解 答 用 紙 に 楽 観 的 自 己 感 情 の 得 点 の 素 点 を 記 入 した
後 、 個 人 に 返 却 し、 説 明 を 加 えた。

【 結 果 】
仮 説 1、 仮 説 2を 検 証 するために 楽 観 的 自 己 感 情 点 、
悲 観 的 自 己 感 情 得 点 と SRS-18 のストレス 反 応 との 相
関 係 数 を 求 めた( 表 1)。「 楽 観 的 自 己 感 情 得 点 」と
SRS-18 各 下 位 尺 度 、「ストレス 反 応 合 計 」との 間 には、
ほとんど 相 関 はなかった。「 悲 観 的 自 己 感 情 得 点 」と「 無
力 感 」との 間 に 弱 い 相 関 が 見 られた(r=0.33,p