森丑之助與楊南郡老師 - 東華大學原住民族發展中心首頁 - 國立東華大學

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生宮 岡 真 央 子はじめに日 本 統 治 期 の 台 湾 原 住 民 族 研 究 について、 未 刊 行 資 料 の 発 掘 や 整 理 、 研 究 成 果 や 人 物 に対 する 再 評 価 の 動 きが 盛 んになったのは、1980 年 代 末 頃 からのことである。それは 台 湾 と日 本 で 互 いに 呼 応 しつつおこなわれ、 原 住 民 族 研 究 の 礎 石 と 軌 跡 の 再 確 認 ・ 理 解 を 促 した。そのなかで、この 一 連 の 動 きを 牽 引 し、 大 きな 功 績 を 残 してきたのが 楊 南 郡 先 生 であることはいうまでもない。 今 日 の 台 湾 において、 楊 先 生 の 数 々の 翻 訳 や 著 作 とそれにともなう詳 細 な 調 査 ・ 研 究 の 成 果 が、 日 本 統 治 期 の 学 者 と 彼 らの 調 査 研 究 に 対 する 理 解 の 基 本 的 枠組 みを 提 供 しているということに 異 論 はないだろう。報 告 者 は 以 前 、 日 本 統 治 期 初 期 の 原 住 民 族 研 究 者 の 一 人 である 森 丑 之 助 (1877-1926)について、 書 誌 学 的 な 研 究 を 行 った 経 験 がある[ 宮 岡 1997a,b]。 同 じ 頃 、 台 湾 では 楊 南 郡 先生 がすでに 森 丑 之 助 の 研 究 に 着 手 されており、その 後 まもなく 翻 訳 選 集 を 出 版 された[ 森2000]。 森 丑 之 助 の 調 査 回 顧 録 [ 丙 牛 生 1924a]のタイトルである「 生 蕃 行 脚 」を 書 名 に冠 したこの 書 籍 には、 非 常 に 詳 細 な 森 の 年 譜 や 著 作 目 録 、 調 査 行 程 を 示 す 地 図 が 付 されたほか、「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」と 題 された 評 伝 が 添 えられている[ 楊 南 郡 2000]。この 評 伝は、 森 丑 之 助 に 関 して 過 去 から 現 在 まで 著 されたもののうちで、 質 ・ 量 ともに 突 出 しており、 森 の 研 究 と 人 物 像 の 概 要 はこれによって 初 めて 明 らかにされたといってよい。 刊 行 からすでに 10 年 を 経 た 今 日 、 森 丑 之 助 に 関 する 理 解 は、 楊 先 生 のこの 研 究 を 抜 きにしては 考えられない。その 意 味 でこの 評 伝 は、 楊 先 生 がこれまで 数 々 手 がけてきた 日 本 統 治 期 の 学者 についての 研 究 成 果 のうちでも、 記 念 碑 的 業 績 の 一 つとして 挙 げることができよう。そこで 本 報 告 では、 森 丑 之 助 の 研 究 に 従 事 した 経 験 のある 報 告 者 の 立 場 から、この 評 伝を 森 丑 之 助 研 究 史 のなかに 位 置 づけ、その 独 自 性 を 数 点 に 整 理 して 述 べることとする。そして、 楊 南 郡 先 生 が 森 丑 之 助 の 研 究 と 生 き 方 に 見 出 した「 学 術 探 険 家 」という 形 容 が、 実は 楊 先 生 ご 自 身 に 対 しても 用 いることがふさわしいものであることを 論 じたい。またそれ1

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生をふまえて、100 年 の 時 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 の 違 いについても 言 及 しようと 思 う 1 。1. 忘 れられた 研 究 者 ・ 森 丑 之 助従 来 研 究 者 の 間 で、 森 丑 之 助 は 主 に3つの 側 面 から 認 知 されてきた。ひとつは 鳥 居 龍 蔵の 調 査 報 告 に 登 場 する 調 査 助 手 という 側 面 である。また、 考 古 学 分 野 では 多 くの 遺 跡 の 発見 者 として 評 価 されてきた[ 金 関 / 国 分 1979:6]。そして 台 湾 原 住 民 族 研 究 では、 早 期 の写 真 集 『 台 湾 蕃 族 図 譜 ( 第 1・2 巻 )』やタイヤル 民 族 誌 『 台 湾 蕃 族 志 ( 第 1 巻 )』の 著 者 としても 知 られてきた[ 森 丑 之 助 1915 ,1917]。しかしながら、 研 究 者 にその 名 前 自 体 は 知 られていたとしても、かつて 森 丑 之 助 という人 物 や 彼 の 研 究 そのものが 語 られることは 決 して 多 くなかった。これはおそらく、 森 が 無学 歴 のまま 総 督 府 嘱 託 などの 身 分 で 調 査 研 究 に 従 事 し、 後 継 者 や 弟 子 と 呼 べる 人 をもたなかったことに 起 因 するものと 思 われる。 森 の 死 からわずか2 年 後 の 昭 和 3(1928) 年 に 開学 した 台 北 帝 国 大 学 に 設 置 され、 昭 和 期 の 原 住 民 族 研 究 の 本 拠 地 となった 土 俗 ・ 人 種 学 研究 室 に 所 属 した 宮 本 延 人 や 馬 淵 東 一 にとっても、 森 についての 知 識 はその 著 作 に 関 するものを 除 いては 伝 聞 の 枠 を 出 なかった[ 馬 淵 1954b:91、 宮 本 / 瀬 川 / 馬 淵 1987:172] 2 。 森丑 之 助 に 関 する 情 報 は、 非 常 に 断 片 的 な 形 でしか 後 世 に 残 されなかったのである。もっとも 実 際 のところ、 森 丑 之 助 は 明 治 末 から 大 正 中 頃 にかけて、 原 住 民 族 に 関 する 知識 の 権 威 的 な 存 在 であった。 例 えば、 大 正 元 (1912) 年 に 刊 行 された『 日 本 大 百 科 事 典 』( 三省 堂 )の「 台 湾 蕃 族 」という 項 目 は、 森 によって 執 筆 されたものであった[ 森 丑 之 助 1912]。また、 台 湾 総 督 府 が 大 正 2(1913) 年 より 終 戦 まで 公 式 に 用 いた 民 族 分 類 法 (アミ、タイヤル、サイシャット、ブヌン、ツォウ、パイワン、ヤミの 七 分 類 )は、 森 丑 之 助 によるものを 基 礎 としていた[ 馬 淵 1954a:3-4、 宮 岡 1997b:126]。そして、 森 の 撮 影 した 写 真 の 数 々はこれまで 所 々で 繰 り 返 し 使 用 されてきたし、 森 が 台 湾 総 督 府 博 物 館 で 収 集 した 膨 大 な 標本 資 料 は 国 立 台 湾 博 物 館 へと 引 き 継 がれた 3 。にもかかわらず、 森 丑 之 助 本 人 については 依1 本 小 稿 は、 楊 南 郡 先 生 の「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」の 日 本 語 訳 [ 楊 2005]に 寄 せた 解 説 文[ 宮 岡 2005]をもととし、それに 加 筆 ・ 修 正 を 加 えたものである。2 一 方 、 同 研 究 室 の 主 任 教 授 を 務 めた 移 川 子 之 蔵 は 森 と 面 識 があった[ 台 湾 総 督 府 博 物 館1939:389-390]。 森 の 交 友 関 係 については[ 笠 原 2005a]に 詳 しい。3 国 立 台 湾 博 物 館 で 2008 年 に 開 催 された 特 別 展 「 百 年 物 語 ― 台 湾 博 物 館 世 紀 展 蔵 特 展 」では、 同 館 に 大 きな 貢 献 をした 人 物 の 一 人 として 森 丑 之 助 がとりあげられ、 森 によって 収 集された 標 本 資 料 の 紹 介 がなされた[ 李 2009:48-53]。2

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生然 よく 知 られぬままであった。 楊 先 生 の 嘆 くように、 森 丑 之 助 は、 忘 れられた 研 究 者 であったのだ[ 楊 2000:30,110]。日 本 では、1980 年 代 後 半 から 台 湾 における 日 本 統 治 期 の 資 料 発 掘 の 動 きと 呼 応 しつつ、過 去 の 台 湾 原 住 民 族 研 究 者 の 業 績 が 整 理 ・ 再 評 価 されはじめた。 鳥 居 龍 蔵 や 伊 能 嘉 矩 に 関する 資 料 整 理 ・ 再 評 価 の 動 きに 遅 れること 約 10 年 、1990 年 代 後 半 以 降 ようやく 日 本 において 森 丑 之 助 についての 資 料 整 理 が 着 手 された[ 宮 岡 1997a, b、 笠 原 2002、 森 丑 之 助 2002など]。これは、 冒 頭 で 述 べたように 楊 南 郡 先 生 の 森 丑 之 助 著 作 選 集 の 出 版 と 相 前 後 する 出来 事 である。2003 年 には 和 歌 山 県 新 宮 市 の 佐 藤 春 夫 記 念 館 において、 台 湾 を 舞 台 にした 作品 を 多 く 遺 した 作 家 佐 藤 春 夫 と 森 丑 之 助 の 交 友 関 係 に 焦 点 を 当 て、 森 から 佐 藤 に 宛 てた 書簡 を 公 表 する 企 画 展 が 開 催 された[ 新 宮 市 立 佐 藤 春 夫 記 念 館 編 2003]。これら 一 連 の 動 きによって、にわかに 森 丑 之 助 という 研 究 者 の 具 体 像 が 浮 かび 上 がってきたといってよいだろう。とはいえ、これらは 書 誌 学 的 な 研 究 を 主 とした。 森 丑 之 助 という 人 物 に 対 するより全 体 的 な 理 解 は、 楊 先 生 による 研 究 以 降 になされるようになったのである 4 。2. 楊 南 郡 先 生 による 森 丑 之 助 研 究 の 独 自 性楊 南 郡 先 生 が 森 丑 之 助 の 研 究 と 生 涯 の 全 体 像 に 迫 りえた 背 景 として、これまで 知 られてこなかった 森 の 著 作 、そして 他 者 による 森 に 関 する 記 述 の 新 たな「 発 見 」があったことをまず 指 摘 できる。これを、 楊 先 生 による 森 研 究 の 独 自 性 の 第 1 点 目 として 挙 げておきたい。従 来 知 られてきた 森 丑 之 助 の 著 作 とは、 前 述 の『 台 湾 蕃 族 志 』や『 台 湾 蕃 族 図 譜 』などの 単 行 本 のほかは、『 人 類 学 雑 誌 』およびその 前 身 の『 東 京 人 類 学 会 雑 誌 』、『 台 湾 時 報 』や『 東 洋 時 報 』などに 掲 載 された 論 文 や 彙 報 類 であり、それらは 簡 潔 な 文 体 の 調 査 報 告 が 中心 を 占 める[ 宮 岡 1997a:192-193]。それらのなかに 森 丑 之 助 の 個 人 的 な 生 活 や 思 想 に 触 れた 部 分 を 見 いだすことは 難 しい。また、 当 時 の 関 係 者 が 森 について 記 したものも 限 られていて、その 人 物 像 を 想 像 することは 容 易 ではなかった。そのなかで、 森 が 大 正 2 年 に 台 湾を 離 れるときに 行 った 講 演 録 「 台 湾 蕃 族 に 就 て」[ 森 丑 之 助 1913]は、 森 の 原 住 民 族 に 対する 考 え 方 や、 自 らの 生 い 立 ちが 詳 しく 語 られているという 点 で 異 色 であり、 楊 先 生 もこ4 2005 年 に 日 本 で 楊 先 生 の「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」が 翻 訳 出 版 された 際 には、 笠 原 政 治 により 佐 藤 春 夫 をはじめとする 森 の 交 友 録 が 論 じられた[ 笠 原 2005a, b]。また 同 年 には、 台湾 原 住 民 族 に 関 するルポルタージュを 多 く 手 がけてきた 柳 本 通 彦 が、 森 丑 之 助 を 伊 能 嘉3

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生こから 多 くを 引 用 しながら、 森 の 思 想 や 半 生 を 述 べている。しかし、 楊 先 生 はそれにとどまらず、それ 以 外 に 森 丑 之 助 の 人 となりを 伝 える 文 章 を、 当 時 の 新 聞 や 雑 誌 を 丹 念 に 調 査することで 新 たに「 発 見 」し、それらをていねいに 読 み 解 くことで、 森 丑 之 助 の 思 想 やふるまいについて 豊 富 で 具 体 的 なイメージをつかむことに 成 功 したのであった。たとえば、 楊 南 郡 先 生 によって 発 掘 された 著 作 の 一 つ、『 台 湾 日 日 新 報 』 紙 上 に 19 回 にわたって 連 載 された「 南 中 央 山 脈 探 険 」は、 森 の 数 ある 調 査 報 告 文 のなかでもきわめて 動的 で 描 写 的 な 読 み 物 である[ 森 丙 牛 1909]。 記 事 は 毎 回 の 新 聞 一 面 を 飾 り、あたかも 人 気連 載 小 説 のような 体 をなしている。おそらく 当 時 の 台 湾 で、 森 が 山 地 で 経 験 することは、台 湾 の 平 地 の 日 々とは 全 くかけ 離 れた 世 界 のものに 属 し、 一 般 読 者 の 多 大 なる 興 味 や 関 心を 引 くものであったことが 容 易 に 想 像 できる。そしてそこには、 森 と 原 住 民 族 との 関 わり合 いが 濃 密 に 描 かれている。 森 丑 之 助 がタルナス 社 でブヌンのアリマン・シケンに 首 を 狙われたのを 逃 げ 延 びて、 数 年 後 には 彼 と 深 い 友 情 を 築 いたという 森 自 身 による 述 懐 は、 森の 人 となり、そして 原 住 民 族 との 交 友 を 理 解 するために 大 変 重 要 な 資 料 である。また、やはりこれまで 顧 みられることのなかった『 実 業 之 台 湾 』 所 載 の 晩 年 の 森 の 論 考の 数 々を 取 り 上 げたことも 看 過 できない[ 丙 牛 生 1924b、 森 丙 牛 1924, 1925a, 1925b]。これらは、 森 丑 之 助 が 官 界 や 学 界 、そして 一 般 台 湾 社 会 に 向 けて 原 住 民 族 社 会 や 研 究 に 対する 自 らの 立 場 ・ 意 見 を 表 明 した 文 章 である。ここに 述 べられた 森 丑 之 助 の 思 想 を 通 して、その 人 物 像 は 非 常 に 具 体 的 なものとなった。さらに 楊 先 生 は、 森 自 身 の 著 作 のみならず、 森 の 死 後 に 書 かれた 宮 川 次 郎 による 文 章 や、森 と 親 しかった 尾 崎 秀 眞 の 談 話 を 載 せた『 台 湾 日 日 新 報 』 上 の 森 の 訃 報 記 事 などをも 参 照することで、 森 の 晩 年 の 思 想 や 活 動 についての 新 たな 事 実 を 提 示 することに 成 功 した[ 宮川 1926、 筆 者 不 詳 1926]。 宮 川 や 尾 崎 は、ブヌンの 抗 日 戦 に 心 を 痛 めた 森 が 大 阪 毎 日 新 聞からの 著 作 出 版 の 助 成 金 を 使 ってブヌンの 移 住 と 生 活 の 安 定 を 図 ろうとしたという「 蕃 人楽 園 計 画 」について 言 及 しているが、これは 森 が 目 指 していた『 台 湾 蕃 族 志 』や『 台 湾 蕃族 図 譜 』の 続 刊 をしないままに 忽 然 と 姿 を 消 したことの 原 因 の 一 端 を 伝 えて 余 りある。 森丑 之 助 という 人 物 の 生 きざまを 理 解 する 上 で、たいへん 重 要 な 証 言 といえよう。 楊 先 生 の丹 念 な 調 査 と 研 究 によって、 森 という 人 物 の 具 体 像 はようやくあらわになったのである。楊 先 生 による 森 丑 之 助 研 究 の 独 自 性 の 第 2 点 目 は、 森 の 中 央 山 脈 を 舞 台 にした 調 査 研 究についての 理 解 が、すべて 楊 先 生 のベテラン 登 山 家 としての 豊 かな 経 験 と 確 かな 視 点 に 裏矩 ・ 田 代 安 定 と 並 ぶ「 明 治 の 冒 険 科 学 者 」として 論 じる 書 籍 を 刊 行 した[ 柳 本 2005]。4

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生打 ちされたものであるという 点 である。そもそも、 森 自 身 の 文 章 のなかでその 行 程 を 詳 細に 記 したものはきわめて 少 ない。あるとしても 地 名 が 断 片 的 に 記 されている 程 度 であり、しかもそれは、 現 在 ではもはや 使 用 されない 日 本 語 による 地 名 、 現 在 では 移 住 ・ 廃 絶 した村 名 などである。それらの 現 在 地 を 知 ることは 今 日 となっては 甚 だ 困 難 だが、 楊 先 生 は、それらの 地 名 と 森 が 断 片 的 に 記 した 地 形 や 周 囲 の 環 境 の 描 写 とを 照 らし 合 わせることによって 現 在 地 を 探 り、それらを 地 図 上 にプロットするという 大 変 根 気 を 要 する 作 業 を 行 うことで、 森 丑 之 助 の 歩 いた 道 のりや 調 査 歴 を 再 現 することに 成 功 した。 台 湾 の 山 々を 隈 なく自 らの 脚 で 歩 いた 経 験 と、その 地 形 や 環 境 に 対 する 理 解 がなければ、 決 してなしえなかった 成 果 である。 同 時 代 の 人 びとにも 理 解 困 難 であったろう 森 の 調 査 研 究 の 足 跡 が、100 年 の時 を 越 え、 楊 南 郡 先 生 によって 見 事 に 再 構 成 されたのだった。楊 南 郡 先 生 の 森 丑 之 助 研 究 の 独 自 性 の 第 3 点 目 として、これまで 原 住 民 族 や 考 古 学 の 研究 分 野 でのみ 語 られてきた 森 丑 之 助 の 業 績 について、 新 たに 植 物 学 や 地 理 学 への 貢 献 を 付け 加 えたという 点 が 挙 げられる。たとえば 植 物 学 では、 森 の 新 種 発 見 の 痕 跡 として 学 名 や中 国 語 名 に 森 の 名 が 含 まれる 高 山 植 物 が 少 なくとも 20 種 以 上 あることが 指 摘 された。 楊 先生 は、 植 物 学 者 佐 々 木 舜 一 による 評 価 や 森 自 身 の 川 上 瀧 也 との 交 流 を 綴 った 文 章 などをも参 照 しつつ、これまで 注 意 が 払 われてこなかった 森 の 植 物 学 研 究 における 業 績 を 提 示 したのであった[ 楊 南 郡 2000:57-62]。また 地 理 学 については、 先 にも 触 れた 新 聞 記 事 「 南 中 央山 脈 探 検 」に 記 された、 玉 山 山 脈 が 中 央 山 脈 から 独 立 した 一 つの 山 脈 であることを 証 明 するための 調 査 を 例 に 取 りながら、 台 湾 の 地 理 学 において 森 の 果 たした 役 割 を 強 調 した[ 楊南 郡 2000:53-57]。さらにもう 一 点 、「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」で 用 いられた 表 現 手 法 という 観 点 から 楊 南 郡 先生 の 研 究 の 独 自 性 を 述 べるとすれば、それは、 文 学 としての 高 い 品 性 を 備 えているという点 であろう。よく 知 られるように、これまで 楊 先 生 の 著 作 の 多 くは、「ルポルタージュ 文 学 」としても 評 価 されてきた。なかでもこの「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」における 描 写 は 動 的 で 劇的 であり、あたかも 森 を 主 人 公 に 据 えた 小 説 のような 風 格 さえ 備 えている。 地 道 な 実 証 主義 に 裏 付 けられながらも、リアリティを 引 き 出 すために 文 学 的 な 修 辞 を 用 いるという 手 法こそ、 楊 先 生 の 独 自 のスタイルであるといえよう。3. 時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生5

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生楊 先 生 がこれまでのご 研 究 で 扱 ってこられたのは、 多 くが 研 究 という 世 界 に 身 をおいた人 びとである。しかし、それらの 人 びとの 足 跡 を 追 う 際 に 重 視 されるのは、 当 の 彼 らが 世に 出 した 学 術 的 研 究 成 果 そのものというよりは、その 素 地 となった 調 査 の 行 程 やさらにそれら 調 査 の 原 動 力 としての 志 、 熱 意 、 人 となりなどである。それゆえに、 詳 細 な 資 料 にもとづいてアカデミズムに 関 わる 人 びとについて 語 るものでありながら、その 語 り 口 にアカデミズムの 用 語 や 理 論 がふりかざされることはなく、 第 一 に、 対 象 を「 人 」としての 魅 力に 満 ちたリアルな 存 在 として 描 くことになる。「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」のなかの 一 文 を 挙 げておこう。 楊 先 生 は 森 丑 之 助 が 学 問 を 積 まずに 調 査 を 急 いだことをさして、 次 のように 記した。学 問 の 基 礎 がなかったために、 彼 が、 実 地 踏 査 における 多 大 な 労 苦 を 経 た 後 に 手 に入 れた 一 次 的 資 料 とオリジナルな 論 点 は、みな 学 術 用 語 は 用 いられない 素 朴 で 飾 り 気のない 記 録 として 提 出 された。それは 目 の 前 で 見 聞 きした 現 況 に 対 する 最 も 質 朴 な 記述 であり、 主 観 的 理 論 によって 事 実 が 解 釈 されることはなかった。このような 未 加 工な 本 来 の 記 録 は、 理 論 化 された 学 術 論 文 に 比 して 更 に 価 値 がある。なぜなら、 学 術 論文 は 新 たな 証 拠 が 提 出 されれば、 当 時 は 至 高 の 経 典 と 見 なされていたとしても、やがては 笑 い 話 にさえ 取 り 上 げられなくなるかもしれないという 可 能 性 を 常 にはらんでいる。しかし、 実 地 採 訪 による 村 落 生 活 、 文 化 や 地 理 に 関 する 本 来 の 姿 の 記 録 は、 数 年後 に 調 査 訪 問 の 対 象 とした 場 合 、それが 時 勢 の 変 化 によって 消 失 あるいは 変 容 している 状 態 では、 原 初 の 記 録 として 更 にその 価 値 を 増 すのである。[ 楊 南 郡 2000:39]楊 南 郡 先 生 がここで 書 いているのは 森 丑 之 助 のことである。しかしそこには、 楊 先 生 ご自 身 の 立 場 ・ 姿 勢 といったものが 色 濃 く 反 映 されているように 思 えてならない。たとえば、 楊 先 生 の 手 による 翻 訳 書 には、 原 書 には 存 在 しない 調 査 行 程 を 示 す 地 図 や 膨大 な 訳 注 が 常 に 添 えられてきた。これらは、 気 の 遠 くなるような 地 道 な 実 証 研 究 の 賜 物 である。 形 式 としては 翻 訳 書 の 付 属 資 料 の 形 をとるが、それらはまさに 楊 先 生 独 自 の 研 究 成果 といえる。そして、この 楊 先 生 の 地 道 な 実 証 主 義 に 支 えられて 初 めて、 読 者 は 100 年 前の 学 者 たちについて 深 く 理 解 することが 可 能 になる。これは 楊 先 生 独 自 の 手 法 であり、 他人 には 真 似 できない 所 業 である。おそらく 楊 先 生 は、いかなる 研 究 機 関 にも 属 さず 自 らの 知 的 関 心 に 沿 って 独 自 の 翻 訳 ・6

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生研 究 スタイルを 築 き 上 げてきたご 自 身 のあり 方 を、 森 の 生 き 方 と 重 ねあわせ、 強 い 共 感 を抱 いたのではないだろうか。 身 ひとつで 知 の 世 界 に 貪 欲 に 入 り 込 み、 常 にアカデミズムから 距 離 を 置 いた 独 自 の 立 場 から 発 言 ・ 研 究 をしてきた 楊 先 生 のそのお 姿 は、 森 丑 之 助 と 大きく 重 なってみえる。 楊 南 郡 先 生 は、 自 らの 足 でフィールドを 歩 き、そこから 思 考 する。そのやり 方 を 貫 徹 する 姿 は、まさに 森 丑 之 助 と 同 じく「 学 術 探 険 家 」と 呼 ぶにふさわしい。現 代 の 学 術 探 険 家 である 楊 南 郡 先 生 は、ご 自 身 の 研 究 と 探 険 を 通 じて 森 丑 之 助 という 人 物に 邂 逅 した。 楊 南 郡 先 生 は、100 年 という 時 代 を 隔 てた 先 達 の 人 生 と 心 情 に 寄 り 添 い、 共 鳴し、その 感 動 を 我 々の 前 に 示 したのである。しかしながら、「 学 術 探 険 家 」という 共 通 の 形 容 をなしえたとしても、 言 うまでもなく2人 には 決 定 的 に 異 なる 側 面 がある。 森 丑 之 助 は、さまざまな 社 会 的 期 待 や 圧 力 と 自 らの 問題 意 識 や 志 との 狭 間 で 苦 渋 し、 結 果 的 には 自 らの 理 想 を 叶 えることなく、それゆえに 悲 嘆にくれて 40 代 の 終 わりにその 人 生 を 終 えてしまった。 楊 南 郡 先 生 は、 森 が 焦 り、 急 ぎすぎたことを 指 摘 している[ 楊 南 郡 2000:112]。これに 対 して 楊 先 生 は、 他 の 人 が 追 従 しえない 自 らの 道 をひたすら 切 り 拓 き、それによって 数 々の 前 人 未 踏 の 業 績 を 紡 ぎだし、80 才 になられる 今 日 に 至 るまでなお 現 役 であり 続 けている。その 意 味 で 楊 南 郡 先 生 は、100 年 前 の森 丑 之 助 の 挫 折 や 失 望 に 深 い 共 感 を 示 しつつ、そこから 遠 く 隔 たった 新 たな 境 地 に 立 ってもおられるのだといえよう。おわりに以 上 、 非 常 に 簡 単 ではあるが、ここでは 楊 南 郡 先 生 の 森 丑 之 助 研 究 について、その 独 自性 と 意 義 を 論 じてきた。 楊 先 生 が 実 践 されている 過 去 の 研 究 者 の 声 にまず 謙 虚 に 耳 を 傾 けるというご 姿 勢 や、 地 道 で 徹 底 的 な 実 証 にこだわるという 研 究 スタイルは、 報 告 者 にとってはこれまでも 常 に 学 ぶべき 手 本 としてあり 続 けてきた。 森 丑 之 助 や 楊 南 郡 先 生 のように中 央 山 脈 を 縦 横 に 探 険 することは 難 しいとしても、 自 らの 知 的 関 心 や 使 命 感 に 偽 ることなく、 独 自 の 研 究 成 果 を 世 に 問 い 独 自 の 役 割 を 果 たす 意 欲 を 持 ち 続 けるという、 学 術 探 険 家としての 生 き 方 に 学 ぶ 必 要 性 と 重 要 性 とを、 今 ここにあらためて 痛 感 している 次 第 である。参 考 文 献笠 原 政 治 2002『 文 化 人 類 学 の 先 駆 者 ・ 森 丑 之 助 の 研 究 』( 科 学 研 究 費 研 究 成 果 報 告 書 )7

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生2005a「 師 ・ 友 人 ・ 訪 問 者 たち」 楊 南 郡 著 、 笠 原 政 治 / 宮 岡 真 央 子 / 宮 崎 聖 子 編訳 『 幻 の 人 類 学 者 森 丑 之 助 ― 台 湾 原 住 民 の 研 究 に 捧 げた 生 涯 』pp.231-248、東 京 : 風 響 社 。2005b「 森 丑 之 助 と 佐 藤 春 夫 」 楊 南 郡 著 、 笠 原 政 治 / 宮 岡 真 央 子 / 宮 崎 聖 子 編 訳『 幻 の 人 類 学 者 森 丑 之 助 ― 台 湾 原 住 民 の 研 究 に 捧 げた 生 涯 』pp.249-274、東 京 : 風 響 社 。金 関 丈 夫 / 国 分 直 一 1979『 台 湾 考 古 誌 』 東 京 : 法 政 大 学 出 版 会 。新 宮 市 立 佐 藤 春 夫 記 念 館 編 2003『 佐 藤 春 夫 宛 森 丑 之 助 書 簡 』 新 宮 : 新 宮 市 立 佐 藤 春 夫記 念 館 。台 湾 総 督 府 博 物 館 編 1939『 創 立 三 十 年 記 念 論 文 集 』 台 北 : 台 湾 博 物 館 協 会 。丙 牛 生 1924a「 生 蕃 行 脚 (1-5)」『 台 湾 時 報 』55:106-114, 56:141-149, 57:158-166,59:107-113, 62:144-155。1924b「 浪 人 気 質 」『 実 業 の 台 湾 』16(10):62-65。馬 淵 東 一 1954a「 高 砂 族 の 分 類 ― 学 史 的 回 顧 」『 民 族 学 研 究 』18(1-2):1-11(1974『 馬 淵 東一 著 作 集 第 2 巻 』pp.249-273、 東 京 : 社 会 思 想 社 )。1954b「 高 砂 族 に 関 する 社 会 人 類 学 」『 民 族 学 研 究 』18(1-2):86-104(1974『 馬淵 東 一 著 作 集 第 1 巻 』pp.443-483、 東 京 : 社 会 思 想 社 )。宮 岡 真 央 子 1997a「 森 丑 之 助 の 著 作 目 録 及 び 若 干 の 解 説 」『 台 湾 原 住 民 研 究 』2:189-199、東 京 : 風 響 社 。1997b「 野 人 の 文 化 人 類 学 ― 森 丑 之 助 の 生 涯 と 研 究 」『 南 方 文 化 』24: 123-137、天 理 : 天 理 南 方 文 化 研 究 会 。2005「 解 説 」 楊 南 郡 著 、 笠 原 政 治 / 宮 岡 真 央 子 / 宮 崎 聖 子 編 訳 『 幻 の 人 類 学 者森 丑 之 助 ― 台 湾 原 住 民 の 研 究 に 捧 げた 生 涯 』pp.109-122、 東 京 : 風 響 社 。宮 川 次 郎 1926「 蕃 通 森 丙 午 の 死 因 」『 台 湾 ・ 南 支 ・ 南 洋 パンフレット』21、 東 京 : 拓 殖通 信 社 。宮 本 延 人 / 瀬 川 孝 吉 / 馬 淵 東 一 1987『 台 湾 の 民 族 と 文 化 』 東 京 : 六 興 出 版 。森 丑 之 助 1912「 台 湾 蕃 族 」『 日 本 百 科 大 事 典 第 6 巻 』pp.734-737、 東 京 : 三 省 堂 。1913「 台 湾 蕃 族 に 就 て( 上 ・ 下 )」『 台 湾 時 報 』47:6-13, 49:15-27。1915『 台 湾 蕃 族 図 譜 ( 第 1 巻 ・ 第 2 巻 )』 台 北 : 臨 時 台 湾 旧 慣 調 査 会 。1917『 台 湾 蕃 族 志 ( 第 1 巻 )』、 台 北 : 臨 時 台 湾 旧 慣 調 査 会 。8

宮 岡 真 央 子時 代 を 隔 てた 二 人 の 学 術 探 険 家 ―― 森 丑 之 助 と 楊 南 郡 先 生2000『 生 蕃 行 脚 ── 森 丑 之 助 的 台 湾 探 険 』 楊 南 郡 訳 、 台 北 : 遠 流 出 版 。2002「 台 湾 蕃 族 の 種 別 について」 江 田 明 彦 編 『 台 湾 原 住 民 研 究 』6: 330-343。森 丙 牛 1909「 南 中 央 山 脈 探 険 (1-19)」『 台 湾 日 日 新 報 』1 月 7 日 -2 月 4 日 。1924「 台 湾 の 生 蕃 問 題 」『 実 業 の 台 湾 』16(12):13-16。1925a「 台 日 社 説 の 蕃 人 に 関 する 社 説 を 読 みて― 敢 て 世 人 の 謬 相 を 解 く」『 実 業の 台 湾 』14(7):22-26,30。1925b「 蕃 地 開 発 の 先 決 問 題 として― 蕃 務 法 規 制 定 の 必 要 」『 実 業 の 台 湾 』17(8):6-15,61。1925c「 川 上 農 学 士 と 台 湾 植 物 調 査 事 業 」『 実 業 の 台 湾 』17(9): 23-27。柳 本 通 彦 2005『 明 治 の 冒 険 科 学 者 たち― 新 天 地 ・ 台 湾 にかけた 夢 』 東 京 : 新 潮 社 。楊 南 郡2000「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」『 生 蕃 行 脚 ─ 森 丑 之 助 的 台 湾 探 険 』pp.29-113、 台北 : 遠 流 出 版 。楊 南 郡2005「 学 術 探 険 家 森 丑 之 助 」 楊 南 郡 著 、 笠 原 政 治 / 宮 岡 真 央 子 / 宮 崎 聖 子 編 訳『 幻 の 人 類 学 者 森 丑 之 助 ― 台 湾 原 住 民 の 研 究 に 捧 げた 生 涯 』pp.15-107、 東京 : 風 響 社 。李 子 寧 編 2009『 百 年 物 語 ― 台 湾 博 物 館 世 紀 展 蔵 専 輯 』 台 北 : 国 立 台 湾 博 物 館 。筆 者 不 詳 1926「 蕃 通 の 第 一 人 者 森 丙 牛 氏 の 死 」『 台 湾 日 日 新 報 』7 月 31 日 。9

宮 岡 真 央 子時 代 相 隔 的 兩 位 學 術 探 險 家 ── 森 丑 之 助 與 楊 南 郡 老 師一 、 被 遺 忘 的 研 究 者 ―― 森 丑 之 助以 往 在 研 究 者 之 間 , 對 森 丑 之 助 的 認 知 主 要 有 三 個 層 面 。 第 一 , 鳥 居 龍 藏 的調 查 助 理 。 第 二 , 於 考 古 學 領 域 中 因 發 掘 多 處 遺 跡 而 深 受 好 評 的 發 現 者 ( 金 関 丈夫 、 国 分 直 一 ,1979:6)。 第 三 , 於 台 灣 原 住 民 族 研 究 領 域 , 以 早 期 的 照 片 集 《 台灣 蕃 族 圖 譜 ( 第 1、2 巻 )》、 泰 雅 族 民 族 誌 《 台 灣 蕃 族 志 ( 第 1 巻 )》 之 作 者 而 廣為 人 知 ( 森 丑 之 助 ,1915、1917)。然 而 , 雖 然 研 究 者 們 知 其 名 , 過 去 卻 鮮 少 有 人 針 對 森 丑 之 助 及 其 研 究 進 行 探討 。 這 也 許 是 因 為 森 丑 之 助 無 學 歷 且 以 總 督 府 囑 託 等 身 分 從 事 調 查 研 究 , 且 無 後繼 者 或 弟 子 之 故 。 即 使 是 森 丑 之 助 過 世 後 2 年 , 亦 即 昭 和 3(1928) 年 創 校 的 台 北帝 國 大 學 裡 的 原 住 民 族 研 究 大 本 營 「 土 俗 人 種 学 研 究 室 」 的 宮 本 延 人 與 馬 淵 東 一等 人 對 森 丑 之 助 的 相 關 知 識 , 除 了 其 著 作 之 外 皆 為 一 般 傳 聞 2 ( 馬 淵 東 一 ,1954b:91; 宮 本 延 人 、 瀬 川 孝 吉 、 馬 淵 東 一 ,1987:172)。 總 言 之 , 流 傳 後 世 的 森 丑 之助 相 關 訊 息 , 多 屬 斷 簡 殘 編 。然 而 , 實 際 上 森 丑 之 助 乃 明 治 末 期 至 大 正 中 期 的 原 住 民 族 知 識 權 威 。 例 如 ,大 正 元 (1912) 年 發 行 的 《 日 本 大 百 科 事 典 》( 三 省 堂 出 版 ) 中 的 〈 台 灣 蕃 族 〉 條目 即 由 森 丑 之 助 執 筆 ( 森 丑 之 助 ,1912)。 台 灣 總 督 府 自 大 正 2(1913) 年 至 第 二次 世 界 大 戰 結 束 為 止 的 民 族 分 類 法 ( 阿 美 、 泰 雅 、 賽 夏 、 布 農 、 鄒 、 排 灣 、 雅 美等 七 族 ) 即 參 考 森 丑 之 助 的 分 類 ( 馬 淵 東 一 ,1954a:3-4; 宮 岡 真 央 子 ,1997b:126)。 森 丑 之 助 拍 攝 的 許 多 照 片 長 久 以 來 廣 為 使 用 、 其 於 台 灣 總 督 府 博 物 館 蒐 集的 龐 大 標 本 資 料 亦 由 國 立 台 灣 博 物 館 承 接 3 。 然 而 , 森 丑 之 助 本 人 卻 鮮 為 人 知 。 如楊 老 師 所 感 嘆 , 森 丑 之 助 是 個 被 遺 忘 的 研 究 者 ( 楊 南 郡 ,2000:30、110)。日 本 自 1980 年 代 後 期 便 一 方 面 呼 應 台 灣 方 面 的 日 治 時 期 資 料 挖 掘 活 動 , 一 方面 開 始 整 理 、 重 新 評 價 過 去 的 台 灣 原 住 民 族 研 究 者 之 業 績 。 較 鳥 居 龍 藏 及 伊 能 嘉矩 相 關 資 料 的 整 理 、 重 新 評 價 晚 約 10 年 ,1990 年 代 後 期 日 本 終 於 開 始 著 手 整 理 森丑 之 助 的 相 關 資 料 ( 宮 岡 真 央 子 ,1997a、1997b; 笠 原 政 治 ,2002; 森 丑 之 助 ,23擔 任 該 研 究 室 主 任 教 授 的 移 川 子 之 蔵 與 森 丑 之 助 認 識 ( 台 灣 總 督 府 博 物 館 ,1939:389-90)。關 於 森 丑 之 助 的 交 友 關 係 請 參 照 ( 笠 原 政 治 ,2005a)。國 立 台 灣 博 物 館 於 2008 年 舉 行 的 特 別 展 「 百 年 物 語 ── 台 灣 博 物 館 世 紀 展 藏 特 展 」 中 , 提 到 森丑 之 助 乃 對 國 立 台 灣 博 物 館 有 重 大 貢 獻 的 人 物 之 一 , 並 介 紹 森 丑 之 助 所 蒐 集 的 標 本 資 料 ( 李 子寧 ,2009:48-53)。2

宮 岡 真 央 子時 代 相 隔 的 兩 位 學 術 探 險 家 ── 森 丑 之 助 與 楊 南 郡 老 師2002 等 ), 其 與 開 頭 所 述 楊 南 郡 老 師 撰 寫 的 森 丑 之 助 著 作 選 集 出 版 時 間 相 差 不 久 。2003 年 和 歌 山 縣 新 宮 市 的 佐 藤 春 夫 記 念 館 舉 辦 展 覽 會 , 聚 焦 於 留 下 許 多 以 台 灣 為舞 台 作 品 的 作 家 佐 藤 春 夫 和 森 丑 之 助 間 的 友 誼 關 係 , 公 開 展 示 森 丑 之 助 寄 給 佐 藤春 夫 的 書 信 ( 新 宮 市 立 佐 藤 春 夫 記 念 館 ,2003)。 經 過 這 一 連 串 的 活 動 , 森 丑 之 助這 位 研 究 者 的 具 體 形 象 遂 漸 明 朗 。 不 過 , 這 些 主 要 為 書 誌 學 觀 點 的 研 究 , 對 森 丑之 助 這 位 人 物 的 全 面 性 理 解 , 則 在 楊 老 師 的 研 究 之 後 才 開 始 4 。二 、 楊 南 郡 老 師 的 森 丑 之 助 研 究 之 特 色楊 南 郡 老 師 之 所 以 能 解 析 森 丑 之 助 的 研 究 與 生 涯 全 貌 , 乃 因 楊 老 師 「 發 現 」了 長 久 以 來 鮮 為 人 知 的 森 丑 之 助 著 作 以 及 他 者 對 森 丑 之 助 的 描 述 。 此 可 謂 楊 老 師的 森 丑 之 助 研 究 之 一 大 特 色 。廣 為 人 知 的 森 丑 之 助 著 作 , 除 了 前 述 的 《 台 灣 蕃 族 志 》(1917) 與 《 台 灣 蕃 族圖 譜 》(1915) 等 單 行 本 之 外 , 尚 有 刊 載 於 《 人 類 學 雜 誌 》 及 其 前 身 的 《 東 京 人 類學 會 雜 誌 》、《 台 灣 時 報 》、《 東 洋 時 報 》 等 論 文 與 彙 報 類 文 章 。 其 主 要 為 文 體 簡 潔的 調 查 報 告 ( 宮 岡 真 央 子 ,1997a:192-3), 因 此 難 自 其 中 尋 獲 森 丑 之 助 個 人 的 生活 與 思 想 等 訊 息 。 此 外 , 當 時 其 他 人 對 森 丑 之 助 的 描 述 亦 有 限 , 因 此 欲 探 究 其 人物 形 象 相 當 不 易 。 不 過 , 慶 幸 的 是 大 正 2 年 森 丑 之 助 離 台 前 夕 的 演 講 紀 錄 〈 關 於台 灣 蕃 族 〉( 森 丑 之 助 ,1913) 不 僅 詳 細 敘 述 森 丑 之 助 對 原 住 民 族 的 看 法 亦 談 及 其自 身 成 長 過 程 , 楊 老 師 於 著 作 中 亦 引 用 這 篇 演 講 內 容 論 述 森 丑 之 助 的 思 想 與 人生 。 但 楊 老 師 並 不 滿 足 於 此 , 除 了 這 篇 紀 錄 之 外 , 還 詳 盡 調 查 當 時 的 報 章 雜 誌 ,重 新 「 發 現 」 有 關 森 丑 之 助 為 人 的 文 章 並 細 讀 內 容 , 終 能 成 功 地 勾 勒 出 森 丑 之 助的 思 想 與 人 生 態 度 。例 如 , 楊 南 郡 老 師 所 挖 掘 的 著 作 之 一 乃 連 載 於 《 台 灣 日 日 新 報 》19 回 的 〈 南中 央 山 脈 探 險 〉, 其 於 森 丑 之 助 眾 多 的 調 查 報 告 中 可 謂 描 寫 得 最 生 動 的 讀 物 ( 森 丙牛 ,1909)。 該 文 每 回 皆 佔 報 紙 一 整 個 版 面 , 宛 如 人 氣 連 載 小 說 。 也 許 在 當 時 的 台灣 , 森 丑 之 助 於 山 地 的 所 見 所 聞 與 台 灣 平 地 的 生 活 是 迥 然 不 同 的 世 界 , 因 而 吸 引一 般 讀 者 莫 大 的 興 趣 與 關 心 。 而 且 內 容 詳 細 地 描 寫 森 丑 之 助 與 原 住 民 族 間 的 關 係 ,42005 年 楊 老 師 的 〈 學 術 探 險 家 森 丑 之 助 〉 在 日 本 翻 譯 出 版 時 , 笠 原 政 治 曾 討 論 佐 藤 春 夫 等 與森 丑 之 助 的 交 流 ( 笠 原 政 治 ,2005a、2005b)。 同 年 , 從 事 許 多 關 於 台 灣 原 住 民 族 報 導 文 學 的柳 本 通 彦 (2005) 亦 出 版 《 明 治 冒 險 科 學 者 》 論 述 森 丑 之 助 與 伊 能 嘉 矩 、 田 代 安 定 。3

宮 岡 真 央 子時 代 相 隔 的 兩 位 學 術 探 險 家 ── 森 丑 之 助 與 楊 南 郡 老 師例 如 森 丑 之 助 回 憶 其 於 大 崙 坑 社 被 布 農 族 的 阿 里 曼 ・ 西 肯 追 殺 逃 過 一 劫 , 數 年 後兩 人 成 為 莫 逆 之 交 等 紀 錄 , 成 為 後 世 認 識 森 丑 之 助 的 為 人 及 其 與 原 住 民 族 交 情 的重 要 資 料 。此 外 , 楊 老 師 亦 探 討 刊 載 於 《 實 業 台 灣 》 中 未 受 重 視 的 森 丑 之 助 晚 年 之 論 述( 丙 牛 生 ,1924b; 森 丙 牛 ,1924、1925a、1925b)。 這 些 是 森 丑 之 助 針 對 官 界 、學 界 以 及 一 般 台 灣 社 會 表 明 自 己 對 原 住 民 族 社 會 與 研 究 立 場 、 意 見 之 文 章 , 透 過文 中 所 述 思 想 , 使 我 們 對 森 丑 之 助 的 認 識 變 得 具 體 鮮 明 。楊 老 師 不 僅 針 對 森 丑 之 助 的 著 作 進 行 研 究 , 更 進 一 步 地 參 考 森 丑 之 助 歿 後 由宮 川 次 郎 撰 寫 的 文 章 以 及 《 台 灣 日 日 新 報 》 上 刊 載 的 含 森 丑 之 助 好 友 尾 崎 秀 眞 發言 的 森 丑 之 助 訃 聞 相 關 報 導 , 成 功 地 發 掘 、 解 析 森 丑 之 助 晚 年 的 思 想 與 活 動 ( 宮川 次 郎 ,1926; 筆 者 不 詳 ,1926)。 宮 川 次 郎 與 尾 崎 秀 眞 皆 提 到 , 對 布 農 族 抗 日 戰爭 感 到 心 痛 的 森 丑 之 助 將 大 阪 每 日 新 聞 提 供 的 著 作 出 版 獎 助 金 運 用 於 「 蕃 人 樂 園計 畫 」 盼 能 協 助 布 農 族 移 居 並 安 定 生 活 , 由 此 可 窺 見 森 丑 之 助 原 計 畫 出 版 的 《 台灣 蕃 族 志 》(1917) 與 《 台 灣 蕃 族 圖 譜 》(1915) 續 刊 未 能 實 現 的 原 因 之 一 , 同 時其 亦 為 重 要 證 言 使 後 世 得 以 認 識 森 丑 之 助 這 位 人 物 的 人 生 態 度 。 換 言 之 , 由 於 楊老 師 鉅 細 靡 遺 的 調 查 與 研 究 , 終 能 具 體 勾 勒 出 森 丑 之 助 的 一 生 。楊 老 師 對 森 丑 之 助 研 究 的 第 二 點 特 色 在 於 , 關 於 森 丑 之 助 以 中 央 山 脈 為 舞 台的 研 究 調 查 之 解 析 , 皆 出 自 於 楊 老 師 身 為 資 深 登 山 家 的 豐 富 經 驗 與 確 切 的 觀 點 。森 丑 之 助 本 身 的 文 章 中 少 有 調 查 行 程 的 詳 細 記 載 , 即 使 有 記 載 也 僅 片 斷 式 地 記 錄地 名 , 且 其 多 為 現 今 已 不 再 使 用 的 日 文 地 名 或 已 遷 移 、 荒 廢 的 村 名 。 如 今 , 欲 尋得 此 些 地 名 的 所 在 地 是 極 困 難 的 事 , 但 楊 老 師 將 地 名 和 森 丑 之 助 片 斷 式 描 述 的 地形 、 周 圍 環 境 對 照 後 尋 獲 其 現 今 所 在 地 , 並 標 記 於 地 圖 上 , 這 是 項 相 當 耗 時 的 工程 , 但 楊 老 師 的 堅 持 使 其 成 功 地 解 析 出 森 丑 之 助 走 過 的 路 線 及 其 調 查 經 歷 。 若 無踏 遍 台 灣 各 山 脈 的 經 驗 以 及 對 地 形 、 環 境 的 理 解 , 絕 對 無 法 有 此 研 究 成 果 。 即 使同 時 代 的 人 都 難 以 理 解 的 森 丑 之 助 之 調 查 足 跡 , 於 一 百 年 後 , 由 楊 南 郡 老 師 精 采地 重 構 。楊 老 師 對 森 丑 之 助 研 究 的 第 三 點 特 色 則 是 , 長 久 以 來 對 於 森 丑 之 助 功 績 的 探討 僅 限 於 原 住 民 族 與 考 古 學 研 究 領 域 , 但 楊 老 師 則 指 出 森 丑 之 助 於 植 物 學 、 地 理學 上 的 貢 獻 。 例 如 , 植 物 學 研 究 方 面 , 森 丑 之 助 發 現 許 多 新 物 種 , 從 學 名 或 中 文名 稱 中 含 森 丑 之 助 名 字 的 高 山 植 物 至 少 有 20 種 以 上 便 可 窺 見 一 斑 。 楊 老 師 參 考 植4

宮 岡 真 央 子時 代 相 隔 的 兩 位 學 術 探 險 家 ── 森 丑 之 助 與 楊 南 郡 老 師物 學 家 佐 佐 目 舜 一 對 森 丑 之 助 的 評 價 以 及 森 丑 之 助 本 身 撰 寫 其 與 川 上 瀧 也 的 交 情等 資 料 , 探 究 森 丑 之 助 鮮 為 人 知 的 植 物 學 研 究 貢 獻 ( 楊 南 郡 ,2000:57-62)。 此 外 ,在 地 理 學 方 面 , 以 連 載 〈 南 中 央 山 脈 探 險 〉 中 為 了 證 明 玉 山 山 脈 有 別 於 中 央 山 脈而 進 行 的 調 查 為 例 , 楊 老 師 強 調 森 丑 之 助 在 台 灣 地 理 學 上 所 扮 演 的 角 色 ( 楊 南 郡 ,2000:53-57)。另 外 , 根 據 〈 學 術 探 險 家 森 丑 之 助 〉 的 表 現 手 法 來 論 述 楊 老 師 研 究 上 的 特 色 ,我 們 可 以 說 楊 老 師 的 著 作 具 備 高 水 準 的 文 學 價 值 。 眾 所 周 知 , 楊 老 師 的 著 作 以 「 報導 文 學 」 廣 受 好 評 , 尤 其 〈 學 術 探 險 家 森 丑 之 助 〉 的 描 寫 生 動 且 富 戲 劇 性 , 宛 如是 篇 以 森 丑 之 助 為 主 角 的 小 說 。 一 方 面 踏 實 地 求 證 , 另 一 方 面 運 用 文 學 修 辭 手 法生 動 地 描 述 , 這 可 說 是 楊 老 師 的 特 有 風 格 !三 、 時 代 相 隔 的 兩 位 學 術 探 險 家 ── 森 丑 之 助 與 楊 南 郡 老 師目 前 為 止 , 楊 老 師 探 討 的 多 是 投 入 研 究 世 界 的 人 。 然 而 , 當 他 追 尋 這 些 人 的足 跡 時 , 其 所 重 視 的 與 其 說 是 這 些 人 發 表 的 學 術 研 究 成 果 , 不 如 說 是 他 們 的 調 查行 程 以 及 激 發 其 調 查 原 動 力 的 心 志 、 熱 情 與 為 人 等 層 面 。 因 此 , 楊 老 師 雖 然 根 據詳 細 資 料 論 述 學 術 研 究 者 , 但 筆 法 上 並 未 充 斥 學 術 用 語 或 理 論 , 其 所 重 視 的 是 對「 人 物 」 的 魅 力 與 真 實 存 在 的 描 寫 。 例 如 〈 學 術 探 險 家 森 丑 之 助 〉 中 , 楊 老 師 對森 丑 之 助 未 學 習 正 規 學 問 而 急 於 展 開 調 查 一 事 , 敘 述 如 下 :因 為 沒 有 學 術 基 礎 , 他 所 有 的 原 始 性 資 料 與 原 創 性 的 論 點 , 都 是 在 歷 經 千辛 萬 苦 的 實 地 踏 查 後 , 以 非 學 術 語 言 樸 實 無 華 地 紀 錄 下 來 , 是 針 對 親 眼 目睹 的 現 況 做 最 平 實 的 記 載 , 而 非 以 主 觀 理 論 來 詮 釋 事 實 。 這 樣 原 汁 原 味 的記 錄 , 比 起 通 篇 演 繹 的 學 術 論 文 更 具 價 值 , 因 為 學 術 論 文 常 常 受 到 新 出 土證 據 的 挑 戰 , 某 些 當 時 被 視 為 至 高 無 上 的 經 典 , 幾 年 後 可 能 淪 為 不 值 一 顧的 笑 話 。 然 而 , 實 地 採 訪 的 部 落 生 活 文 化 或 地 理 原 貌 的 記 錄 , 幾 年 後 當 調查 訪 問 對 象 因 為 時 勢 的 變 遷 而 消 失 或 變 異 時 , 原 始 的 記 錄 就 更 加 珍 貴 了( 楊 南 郡 ,2000:39)。楊 南 郡 老 師 在 此 談 的 是 森 丑 之 助 , 但 我 認 為 其 實 其 亦 深 深 地 反 映 楊 老 師 本 身的 立 場 與 態 度 。例 如 , 楊 老 師 譯 著 中 經 常 加 註 原 書 沒 有 的 調 查 行 程 地 圖 和 大 量 的 注 解 。 這 些5