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権利の拡張と自然権訴訟(1)

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『 大 型 類 人 猿 の 権 利 宣 言 』ピーター・シンガー/パオラ・カヴァリエリ 編( 山 内 友 三 郎 ・ 西 田 利 貞 監 訳 、 昭 和 堂 、2001 年 )• 大 型 類 人 猿 についての 宣 言• われわれは 平 等 なものの 共 同 体 を 拡 張 して、このなかにあらゆる 大 型 類 人 猿 、すなわち 人 類 、チンパンジー、ゴリラ、オランウータンを 含 むようにすることを 要 求 する。• 「 平 等 なものの 共 同 体 」とは、 一 定 の 基 本 的 な 道 徳 原 則 や道 徳 的 権 利 が、われわれ 相 互 間 の 関 係 を 支 配 するものとして、また 法 によって 強 制 できるものとして 認 められているような 道 徳 的 共 同 体 である。このような 原 則 や 権 利 のなかには 次 のものが 含 まれる。• 1 生 存 への 権 利 2 個 体 の 自 由 の 保 護 3 拷 問 の 禁 止


反 捕 鯨 運 動 にも 類 似 した 部 分 がある• 高 等 な 知 的 動 物 だから???


『 動 物 との 契 約 ― 人 間 と 自 然 の 共 生 のために』デズモンド・モリス 著 ( 渡 辺 政 隆 訳 、 平 凡 社 、1990 年 )• 動 物 のための 新 しい「 権 利 章 典 」1 いかなる 動 物 も、われわれの 迷 信 や 宗 教 的 偏 見 を 満 たすために、 善 ないしは 悪 という 想 像 上 の 資 質を 賦 不 されるべきではない。2 いかなる 動 物 も、われわれを 楽 しませるために 支 配 されたり 卑 しめられたりすべきではない。3 いかなる 動 物 も、 適 正 な 物 理 的 および 社 会 的 環 境 が 提 供 されえない 場 合 は、 飼 育 下 に 置 かれるべきではない。4 いかなる 動 物 も、 人 間 の 飼 い 主 の 生 活 様 式 にたやすく 適 応 できない 場 合 は、コンパニオンとして 飼育 されるべきではない。5 いかなる 動 物 種 も、 直 接 的 な 虐 待 ないしは 人 間 の 人 口 のさらなる 増 加 によって 絶 滅 に 追 いやられるべきではない。6 いかなる 動 物 も、われわれにスポーツを 提 供 するために 苦 痛 を 被 らされるべきではない。7 いかなる 動 物 も、 丌 必 要 な 実 験 目 的 のために 肉 体 的 ないしは 精 神 的 苦 痛 にさらされるべきではない。8 いかなる 家 畜 も、われわれに 食 料 ないしは 産 物 を 提 供 するために、 剥 奪 された 環 境 下 で 飼 育 されるべきではない。9 いかなる 動 物 も、 毛 皮 、 皮 革 、 牙 あるいはそれ 以 外 のぜいたく 品 をとるために 搾 取 されるべきではない。10 いかなる 使 役 動 物 も、ストレスないしは 苦 痛 の 原 因 となるような 重 労 働 を 強 いられるべきではない。


動 物 裁 判• 世 俗 裁 判 所教 区 裁 判 所• 豚 に 服 を 着 せて 絞 首 刑 にする• 動 物 に 対 して、 召 喚 状 ( 出 頭 命 令 )・ 退 去 命 令 を 出 す• 動 物 に 対 して、 破 門 を 宣 告 する• 18 世 紀 ごろまで 続 く


動 物 裁 判 に 対 する 西 洋 中 世 の 考 え 方 (2)• トマス・アクィナス『 神 学 大 全 』• 分 別 のない 存 在 に 呪 いの 言 葉 を 発 することはゆるされない。なぜなら、 呪 いは、 罪 にたいする 罰 のひとつの 相 として合 法 的 であるように 思 われるから。 理 性 分 別 のない 被 造物 は、 罪 を 犯 すことも 罰 せられることもできないから、それを 呪 うのは 正 当 ではないのである。( 中 略 )また、もし 被 造物 を 神 の 手 によってできたものと 考 えれば、そのように 呪 うことによって、 人 は 真 正 の 冒 涜 を 犯 すことになるし、 他 方 、呪 い 自 体 をとりあげれば、それは 無 用 無 益 で、したがって丌 当 なおこないとなる。


アマミノクロウサギ 訴 訟• 1995 年 3 月 鹿 児 島 地 方 裁 判 所 は 却 下 。• 「…… 動 物 が 訴 え 提 起 等 の 訴 訟 行 為 をすることなどおよそあり 得 ない 事 柄 である 以 上 、 右 表 示 ( 原 告 名 )は 無 意 味 な記 載 であると 解 するほかはない」


権 利 の 拡 張 と 自 然 権 訴 訟 (2)• 脱 動 物 化 ( 脱 自 然 化 )した 人 間 VS 脱 自 然 化 した 自然 という 図 式 から 脱 却 する 試 み• 人 間 中 心 主 義 から 脱 却 して 自 然 / 生 態 系 中 心 主 義 へ至 る 試 み


論 理 的 には?• すべての 人 間 は 権 利 を 有 する…… 全 称 命 題• ある 種 の 人 間 は 権 利 を 有 する…… 特 称 命 題• この 人 間 は 権 利 を 有 する………… 単 称 命 題排 他 性 が 付 加 されると( 全 称 命 題 は 変 わらないが)?(A)すべての 人 間 は 権 利 を 有 する(B)ある 種 の 人 間 のみが 権 利 を 有 する(C)この 人 間 のみが 権 利 を 有 する


• (B)の 立 場 は、 権 利 を 有 さない 人 間 の 可 能 性 を 主 張 している• 人 間 はそれ 自 体 で 権 利 を 有 するのではなく、 何 か(=X)との関 係 において 権 利 を 有 する論 理 的 に 見 ると大 前 提 ……Xをもつ 人 間 のみが 権 利 を 有 する小 前 提 ……ある 種 の 人 間 のみがXを 有 する結 論 ………ある 種 の 人 間 のみが 権 利 を 有 する


問 題 の 所 在• Xは 存 在 するか? Xは 何 か?• 大 前 提 が 真 である 根 拠 は 何 であるのか?


生 命 体 の 権 利 (→ 自 然 の 権 利 )• ( 人 間 を 含 む)すべての 生 命 体 は 権 利 Aを 有 する全 称 肯 定 命 題• ある 種 の 生 命 体 ( 人 間 )のみが 権 利 Aを 有 する排 他 的 特 称 命 題排 他 的 特 称 命 題 を 結 論 するためには?• 大 前 提 ……Xを 有 する 生 命 体 のみが 権 利 Aを 有 する• 小 前 提 ……ある 種 の 生 命 体 のみがXを 有 する• 結 論 ………ある 種 の 生 命 体 のみが 権 利 Aを 有 する


問 題 の 所 在• Xは 何 か?• Xを 排 他 的 基 準 として 規 定 しているのは 誰 か?• 現 実 にXを 有 する 人 間 がXを 基 準 とする( 人 間 中 心主 義 )• 基 準 の 恣 意 性 ( 理 性 性 ・ 民 族 性 ・ 男 性 性 ・ 健 常 性 ・ 現実 性 etc.)


Land Ethicsと 共 同 体 (1)• アルド・レオポルド:Aldo Leopold, A Sand CountyAlmanac (1949)• これまでの 倫 理 のすべては 一 つの 前 提 に 拠 っていた。個 人 は 相 互 依 存 的 な 部 分 からなる 共 同 体 の 一 員 であるという 前 提 である。• 土 地 の 倫 理 とは、 共 同 体 の 境 界 をただ 押 し 広 げ、 土 、水 、 植 物 、 動 物 を、あるいはそれらを 集 合 的 に 土 地 と呼 び、そこまでを 含 むようにするのである。


Land Ethicsと 共 同 体 (2)• 人 間 の 土 地 に 対 する、またそこに 育 つ 動 物 と 植 物 とに 対 する 関 係 を 扱 う 倫 理 は、これまでのところ 存 在 しない。 土 地 は、オディセウスの 奴 隷 女 のように、いまだに 所 有 物 なのである。 土 地 関 係 は 未 だに、 特 権 を 伴うが 義 務 は 伴 わない、 厳 密 に 経 済 的 な 関 係 である。


Land Ethicsと 共 同 体 (3)• 西 洋 近 代 の 本 質 :「 人 間 が 主 体 (Subjekt)となることによって、 人 間 の 本 質 そのものが 変 化 すること」(M・ハイデガー『 世 界 像 の 時 代 』)• 自 然 の 自 然 性 の 喪 失 / 人 間 の 抽 象 化 ・ 狭 隘 化• 自 然 に 対 する 知 的 支 配 と 技 術 的 支 配• デカルト『 方 法 序 説 』• 人 間 中 心 主 義 とロゴス 中 心 主 義


Land Ethicsと 共 同 体 (4)• 生 態 学 的 共 同 体 ( 生 態 系 )の 事 実 性• 生 態 学 的 共 同 体 から 道 徳 的 共 同 体 へ• 自 然 の 権 利 という 問 題 = 道 徳 的 共 同 体 の 構 成 員 の 拡 張の 問 題• 事 実 判 断 と 価 値 判 断• 論 理 的 な 飛 躍 ?


リン・ホワイト• リン・ホワイト( 科 学 史 ・ 技 術 史 家 )• 「 生 態 学 的 危 機 の 歴 史 的 根 源 」• 人 間 の 特 権 性 と 自 然 に 対 する 尊 大 な 態 度• 「われわれは 自 然 より 優 越 しており、 自 然 を 軽 蔑 しており、自 分 たちのつまらぬ 気 まぐれのために 自 然 を 利 用 してもかまわない」とする 態 度


旧 約 聖 書 と 人 間 の 特 権 性 ?• 堕 罪 以 前これに 海 の 魚 と、 空 の 鳥 と、 家 畜 と、 地 のすべての 獣 と、 地 のすべての 這 うものとを 治 めさせよう。( 創 世 記 1-26)• 堕 罪 以 後あなたが、 妻 の 声 に 聞 き 従 い、 食 べてはならないと 私 が 命 じておいた 木 から 食 べたので、 土 地 は、あなたのゆえにのろわれてしまった。あなたは、 一生 、 苦 しんで 食 を 得 なければならない。( 創 世 記 3-17)• 牧 歌 的 な 過 去 としての 黄 金 時 代エデンの 園 、ギリシャの 黄 金 時 代 、 荘 子 「 完 全 な 徳 の 時 代 」• ユダヤ 教 独 自 のもの…… 支 配


ジョン・パスモア• 支 配 の 意 味 ?• プラトン『 国 家 』 第 1 巻 343b,345c-d• 『エゼキエル 書 』 第 34 章 3-4 節• 『ヨハネ 福 音 書 』 第 10 章• トラシュマコス 的 支 配 とソクラテス 的 支 配• 自 然 に 対 する 人 間 の 責 任


われは 善 き 羊 飼 いなり• 支 配 : 全 体 を 配 慮 すること• ステュワード(Steward) 精 神 Villicus 農 園 監 督 官• 類 似 の 考 え ヤンブリコス(3Cの 新 プラトン 主 義 者 )• 支 配 : 自 然 を 完 成 させるために 助 力 する• Nature > natura > nascere• エデンの 園 を 回 復


三 つの 見 解• 自 然 神 秘 主 義 ( 原 始 信 奉 論 ) 的 見 解• ソクラテス 的 支 配 という 見 解• 専 制 君 主 的 支 配 という 見 解


保 存 論 と 保 全 論• 自 然 保 護 って 簡 単 に 言 うけど……• 自 然 保 護 をめぐる 二 つの 論 理


保 全 論• 保 全 conservation という 考 え• 人 間 に 被 害 が 及 ばないようにするために、 自 然 環 境を 保 護 するのだという 論 理 。• 自 然 の 道 具 的 価 値• 人 間 のために 自 然 を 守 る


保 存 論• 保 存 preservation という 考 え• 自 然 環 境 は、それ 自 体 貴 重 で 尊 い 価 値 をもっている。だから、 自 然 環 境 を 保 護 するのだという 論 理 。• 自 然 の 内 在 的 価 値• 自 然 のために 自 然 を 守 る


一 致 と 対 立保 全保 存介 入 や 保 護 に 賛 成 反 対(1) (4)反 対 賛 成(2) (3)


代 表 例• (1) 森 林 を 荒 れさせずに 持 続 的 に 資 源 として 利 用 してゆくためには、 人 間 がきちんと 手 を 入 れて 管 理 しなければならない。• (2) 山 を 開 発 すると、その 結 果 土 砂 が 流 れ 出 して 海 を汚 染 し、 漁 獲 量 が 減 るので、 開 発 すべきではない。• (3)トキなどの 貴 重 な 種 を 絶 滅 から 守 るためには、 人 間が 人 工 飼 育 などで 保 護 しなければならない。• (4) 何 千 年 もかけて 作 り 上 げられてきた 原 生 林 は、 手つかずのまま 保 存 しなければならない 。


白 神 山 地 をめぐって


フロンティア 倫 理 (カウボーイ 倫 理 )• 人 間 = 自 然 の 支 配 者• 人 間 以 外 の 存 在 者 は、 人 間 が 尊 重 せざるをえない、いかなる 権 利 も 持 っていない。• 野 生 ・ 未 開 ・ 野 蛮 ⇔ 文 化 ……「 聖 戦 」• 地 理 的 経 済 的 拡 大• 「あり 余 るほどの 豊 富 さという 神 話 」• 有 限 性 という 事 実 ( 地 球 : 物 質 的 には 閉 鎖 系 )• 新 たな 神 話 による 問 題 の 回 避 ?• 「 科 学 至 上 主 義 の 神 話 」…… 問 題 の 解 決 になるのか?


救 命 ボート 倫 理 (1)• 人 口 爆 発 ← 科 学 技 術 による 食 糧 需 要 の 問 題 解 決• → 他 の 物 資 の 公 平 な 配 分 : 困 難• 科 学 技 術 は「 共 有 地 の 悲 劇 」を 回 避 できない。• 価 値 体 系 の 逆 転 : 個 々の 人 間 の 福 利 < 環 境 の 福 利• G・ハーディンの 発 想 は、よさそうに 見 えるが……• 実 は、えげつない 発 想 !「 生 き 残 りのための 倫 理 」• ナチズムとの 類 似 性


救 命 ボート 倫 理 (2)• 三 つの 選 択 肢• 1. 完 璧 な 正 義 の 実 現 → 完 璧 な 破 局• 2. 選 択 による「 安 全 性 」の 問 題 回 避選 択 の 問 題 / 当 面 の 問 題 回 避 と 将 来 の 危 険 性• 3. 自 己 の 安 全 性 のみ 確 保 (ハーディンの 解 決 策 )寛 大 さによる 悲 劇 / 回 避 できない 共 有 地 の 悲 劇援 助 の 加 害 性 / 将 来 世 代 (?)の 権 利 侵 犯 /• P・アーリック『 人 口 爆 発 』における「 負 傷 者 選 別 」の 概 念• 問 題 : 豊 かな 救 命 ボートの 乗 客 の 利 益 を 優 先 するのは 妥 当 か?


救 命 ボート 倫 理 (3)• 救 命 ボート 倫 理 の 前 提 の 誤 り• 「 豊 かな 自 給 可 能 な 救 命 ボート」という 欺 瞞自 給 可 能 ? 豊 かさは 何 によって 生 じたか?• おぞましい 想 定完 全 な 正 義 は 不 可 能 → 正 義 を 行 なう 義 務 はない豊 かな 国 には、 他 者 の 生 死 を 決 定 する 権 利 がある• 豊 かさのもつ 未 来 世 代 に 対 する 加 害 性 を 無 視 した 議 論


宇 宙 船 倫 理• 第 三 の 道 : 人 間 と 自 然 のいずれにも 優 越 性 をもたせない• バックミンスター・フラー• 宇 宙 船 の 比 喩• 倫 理 的 提 言節 約 、 所 有 形 態 の 根 本 的 変 革習 慣 の 変 革 、 心 の 変 革• 環 境 の 安 定 を 保 つために、すべての 人 々、とりわけ 裕 福な 人 々の 回 心 を 求 める• 無 邪 気 な 楽 観 主 義 ?人 間 の 自 己 抑 制 力 ・ 集 団 的 抑 制 力 を 過 大 評 価 ?

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