Le meilleur de MP - Maison de la France
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ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
史跡と文化<br />
目次<br />
主な見どころ : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1<br />
トゥールーズ、アルビ、ルルド、コルド・シュル・シエル、サン・ベルトラン・ド・コマンジュ、<br />
コンク、ラルザック地方のテンプル騎士団、聖ヨハネ騎士団ゆかりの地、モワサック、ロカマ<br />
ドゥール<br />
独特な風土を生み出すもの : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3<br />
サンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼街道、カタリ派、城砦、パステル<br />
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
ゆかりの人物や作品<br />
ミディ・ピレネーが輩出した著名人 : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5<br />
ダルタニャン、シャンポリオン、アングル、トゥールーズ=ロートレック、ゴヤ、ジョレス<br />
天才の軌跡 : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・7<br />
ミディ運河、ピック・デュ・ミディ天文台、エアバス工場、ミヨー高架橋<br />
工芸品 : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9<br />
ライヨールナイフ、レヴェルの家具、ミヨーの手袋、コサードの帽子、など<br />
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
大自然とレジャー<br />
大自然 : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10<br />
ピレネー山脈、峡谷や渓谷、高原、自然公園<br />
大自然でリフレッシュ: ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 12<br />
ハイキング、アウトドアスポーツ、運河クルーズ、スパでリフレッシュ<br />
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
グルメとイベント<br />
高級食材 : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15<br />
フォワグラ、豚肉加工品、カスレ、肉、フルーツ、チーズ、ワイン、アルマニャック、など<br />
主なイベント : ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・17<br />
マルシアック・ジャズフェスティバル、アロール・シャント!、リオ・ココ、シルヴァネス宗教音楽<br />
祭、テンポ・ラティーノ、など<br />
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
数字で知るミディ・ピレネー<br />
面積、人口、観光客のプロフィール、マーケットシェア、など・・・・・・・・・・・・・・・ 19<br />
ミディ・ピレネー地方マップ
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
史跡と文化<br />
主な見どころ<br />
風景、人々、歴史が織りなすハーモニーが美しいミディ・ピレネー<br />
地方。フランスでもっとも広大な地方で、大聖堂、修道院、古城、<br />
中世の村々などから構成される、まさしく生きた大絵巻。ミディ・<br />
ピレネー地方の名声を世にあまねく知らしめる魅力あふれる数々の<br />
見どころを訪ねる。<br />
トゥールーズ Toulouse<br />
ミディ・ピレネー地方の首都。大都市だが、小さな村の精神が息<br />
づいている。トゥールーズの魅力を醸し出しているのは、町並みの<br />
美しさ、大都市ならではの興奮、そして心から味わえるリラックス<br />
した気分。歴史のある地区は簡単に歩いて回れる。ルネッサンス時<br />
代に建てられた富豪の邸宅の数々、荘厳なキャピトル広場 p<strong>la</strong>ce du<br />
Capitole、サン・セルナン聖堂 basilique Saint-Sernin(ロマネス<br />
ク建築の建物としてはヨーロッパ最大)、ジャコバン修道院<br />
cloîtres <strong>de</strong>s Jacobins やオーギュスタン修道院 cloîtres <strong>de</strong>s<br />
Augustins…。更に、市内にはいくつも美術館、博物館があり、ま<br />
た天気のいい日にはトゥールーズっ子たちが散歩に繰り出すガロン<br />
ヌ川の岸辺も捨てがたい。<br />
アルビ Albi<br />
イタリアのトスカーナ地方を思わせる穏やかな風景の中にあるア<br />
ルビ。ルネッサンス期の邸宅、木組みの家々、ロマネスク建築の教<br />
会や回廊があり、フランスにおいて歴史保護地域が最も広大な町の<br />
ひとつ。アルビはまたキリスト教の異端とされたカタリ派を受け入<br />
れた町としても知られ、討伐する十字軍は「アルビジョワ十字軍」<br />
と呼ばれた。カタリ派を制圧したカトリックは教皇の威厳を見せつ<br />
けるため、13 世紀に二つの威圧的な建物を建てた。サント・セシル<br />
大聖堂 cathédrale Sainte-Cécile と、現在はトゥールーズ=ロートレ<br />
ック美術館 musée Toulouse-Lautrec.となり、17 世紀の庭園が素晴<br />
らしいベルビー宮 Pa<strong>la</strong>is <strong>de</strong> <strong>la</strong> Berbie である。<br />
コルド・シュル・シエル Cor<strong>de</strong>s-sur-Ciel<br />
アルビからほど近いところにあるコルド・シュル・シエルはミデ<br />
ィ・ピレネー地方でもっとも古く、またもっとも有名な要塞都市。<br />
カタリ派を守るため、1222 年にトゥールーズの伯爵によって作ら<br />
れ、14 世紀から 15 世紀にかけて繁栄した。かつて「錬金術師のふ<br />
るさと」と異名をとった町の潤いぶりは、砂岩で作られた黄土色、<br />
薄紫色、灰色などの瀟洒なゴシック建築の邸宅を見ても明らか。<br />
カオール Cahors<br />
優美な曲線を描くロット川沿いにあり、黄金色に輝く石造りの<br />
家々の間をくねくねとした小道が走る町、カオール。ローマ時代に<br />
はすでに重要な町として栄え、ガリア=ローマ時代の浴場が今も残<br />
っている。13 世紀にはヨーロッパにおける重要な経済的な拠点のひ<br />
とつとなった。この黄金時代のものとしては、世界遺産に指定され<br />
た ヴ ァ ン ト レ 橋 pont Valentré 、 サ ン ・ テ テ ィ エ ン ヌ 大 聖 堂<br />
cathédrale Saint-Etienne、サン・<br />
ジャン塔 Tour Saint-Jean のある<br />
城壁、バデルヌ地区 Ba<strong>de</strong>rnes、<br />
スービルー地区 Soubirous・・・<br />
と、多くの素晴らしい遺跡が残さ<br />
れている。<br />
マジック・タッチ<br />
「ここから、1年もの間、ひとつとし<br />
て同じではない絵を何枚も描けるだろ<br />
う。そして描かれたすべての絵が素晴<br />
らしいに違いない」コルド・シュル・<br />
シエルについて述べたトーマス・エド<br />
ワード・ロレンス(アラビアのロレン<br />
ス)の言葉。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
ルルドで兄弟愛を感じる<br />
ルルドは西洋においてもっとも重要な<br />
巡礼地。「兄弟愛」という言葉の持つ<br />
意味を実感できる土地だ。1858 年、少<br />
女ベルナデット・スービールの前にマ<br />
リアが現れた泉のある洞窟では毎日<br />
人々が集まり熱心に祈りを捧げている。<br />
泉の脇にはプールが作られ、毎日病人<br />
が水浴びを行っている。現在までに 65<br />
名の病人が奇跡的に治癒したと認定さ<br />
れた。そして、何万人ものボランティ<br />
アが彼らを支えている。ロゼ―ル聖堂、<br />
聖ピオ 10 世地下聖堂などこの聖地を構<br />
成するあらゆる場所で感動を覚えるこ<br />
とができるだろう。<br />
位置情報<br />
◇トゥールーズ:オート・ガロンヌ県。<br />
人口 76 万人、フランス第4の都市。<br />
◇アルビ:タルン県。トゥールーズよ<br />
り 76 ㎞北部に位置する。<br />
◇コルド・シュル・シエル:タルン県。<br />
アルビより 25 ㎞北西。<br />
◇カオール:ロット県。トゥールーズ<br />
より 113 ㎞北部。<br />
◇ルルド:オート・ピレネー県。タルブ<br />
Tarbes より 21 キロメー トル南西。<br />
1
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
史跡と文化<br />
主な見どころ<br />
サン・ベルトラン・ド・コマンジュ Saint-Bertrand-<strong>de</strong>-<br />
Comminges<br />
ピレネー山脈を背に建てられたサン・ベルトラン・ド・コマンジ<br />
ュは古代にグナエウス・ポンペイウスによって作られた町で、中世<br />
に作られた城壁からローマ時代の遺跡を見下ろすことができる。サ<br />
ント・マリー大聖堂では内陣仕切りの素晴らしい木彫りの装飾やル<br />
ネッサンス時代の装飾を施されたオルガン、ピレネーの山に向かっ<br />
て開かれた回廊などを見て欲しい。<br />
コンク Conques<br />
サン・ベルトラン・ド・コマンジュとは逆に、コンクは谷間に作<br />
られた町だ。金箔に覆われ宝石をちりばめられた像の中に聖女フォ<br />
アの聖遺物が納められた秘宝(11~12 世紀)があるので知られる。<br />
サンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼の重要な聖地としても知られ、<br />
サント・フォア大修道院付属教会の正面にある「最後の審判」を表<br />
したタンパンは中世彫刻の最高傑作。ロマネスク様式の教会の完璧<br />
なまでの美しさに感動した現代画家ピエール・スラージュは教会の<br />
ためにステンドガラスを製作している。<br />
テンプル騎士団、聖ヨハネ騎士団ゆかりの地 cités templières<br />
et hospitalières<br />
テンプル騎士団、聖ヨハネ騎士団ゆかりの史跡がコース・ド・ラ<br />
ルザック地方に点在している。1152 年よりラルザック地方はテン<br />
プル騎士団の支配する王国となっていたが、1312 年にテンプル騎<br />
士団が廃止されたのちは、1792 年まで聖ヨハネ騎士団が受け継い<br />
だ。85 キロほどの街道を成しているのは、ラ・カヴァルリー La<br />
Cavalerie、ラ・クーヴェルトワラド <strong>la</strong> Couvertoira<strong>de</strong>、サント・ウラ<br />
リー・ド・セルノン Sainte-Eu<strong>la</strong>lie-<strong>de</strong>-Cernon、ル・ヴィアラ・デ<br />
ュ・パ・ド・ジョ le Via<strong>la</strong>-du-Pas-<strong>de</strong>-Jaux、そしてサン・ジャン・<br />
ダルカス Saint-Jean-d’Alcas。いずれも非常に保存状態のよい城壁が<br />
残っている。<br />
モワサック Moissac<br />
モワサックはサンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼街道の重要な<br />
聖地である。モワサックの僧侶たちは非常に創意あふれる建築家だ<br />
ったようだ。7世紀に建てられたサン・ピエール修道院 abbaye<br />
Saint-Pierre は何世紀もの間、影響を与え続けた。1100 年に作られ<br />
た回廊は、四隅の柱には使徒の浮き彫りが、76 本の柱頭には植物や<br />
動物、聖書の場面などが彫られている。この時代に作られた回廊で、<br />
モワサックの回廊のように完全な状態で残っている例は他にない。<br />
ロカマドゥール Rocamadour<br />
アルズー峡谷の絶壁に張り付いた村ロカマドゥールは黒いマリア<br />
像と聖アマドゥールの聖遺物を詣でるために 12 世紀より巡礼者で<br />
あふれかえる聖地である。7つの<br />
教会が重なり合うように建てられ<br />
ている非常にユニークな史跡。<br />
ミディ・ピレネー特有の宿泊施設<br />
特色ある宿泊施設<br />
13 世紀の古城、中世の村の中心にあ<br />
る家、アルマニャックのブドウ畑に囲<br />
まれた一軒家…。ミディ・ピレネー地<br />
方では民宿やホテルに宿泊しながら文<br />
化を感じることができる。しっかりと<br />
したサービスと施設を保証しつつ、特<br />
色ある宿泊施設を提供できるのはミ<br />
ディ・ピレネー地方だけである。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
コンクはフランスでも有数の観光地で<br />
ある。ロマネスク芸術がこれほど溢れ<br />
ている場所はなかなか他にはない。赤<br />
褐色の石や銀色やバラ色、藤色に輝く<br />
瓦が調和する町は見事である。<br />
位置情報<br />
◇サン・ベルトラン・ド・コマンジュ<br />
オート・ガロンヌ県。トゥールーズよ<br />
り 113 キロメートル北西に位置する。<br />
◇コンク アヴェロン県。ロデズより<br />
39 ㎞北。<br />
◇ラルザック地方テンプル騎士団、ホ<br />
スピタル騎士団ゆかりの地 ミヨーよ<br />
り 20 ㎞南<br />
◇モワサック タルン・エ・ガロンヌ<br />
県 モントーバンより 30 ㎞南<br />
◇ロカマドゥール ロット県。カオー<br />
ルより 60 ㎞北。<br />
2
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
史跡と文化<br />
独特な風土を生み出すもの<br />
サンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼街道<br />
<strong>Le</strong>s chemins <strong>de</strong> Compostelle<br />
歩く楽しみや精神の探求あるいは単なるバカンス。それぞれ理由<br />
はさまざまだが、多くの人がミディ・ピレネー地方のサンチャゴ・<br />
デ・コンポステーラ巡礼街道を行く。ミディ・ピレネー地方には<br />
ル・ピュイ・アン・ヴレーPuy-en-Ve<strong>la</strong>y 街道、アルル Arles 街道、<br />
ピエモン・ピレネアン Piémont Pyrénéen 街道、と3本の街道が通っ<br />
てる。いずれもサンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼街道の真髄が<br />
味わえる街道だ。計 135 キロある街道上に、巡礼の重要な道しるべ<br />
として世界遺産に指定された史跡が 33 か所ある(フランス国内に<br />
は 76 か所)。コンクのサント・フォア大修道院付属教会 abbatiales<br />
<strong>de</strong> Conques、モワサックの教会、トゥールーズのサン・セルナン聖<br />
堂 basilique Saint-Sernin <strong>de</strong> Toulouse、ロミウーの聖堂 collégiale <strong>de</strong><br />
<strong>la</strong> Romieu、カオールのヴァラントレ橋 pont Valentré などが挙げら<br />
れる。<br />
カタリ派 <strong>Le</strong> catharisme<br />
カトリックから異端とされるカタリ派は南フランスを中心に信仰<br />
を集めたキリスト教の一宗派。ミディ・ピレネー地方は特に多くの<br />
「善良な人々」(カタリ派の人々はそう自称した)がいた地方であ<br />
る。この世は悪である、と考え、教会の富を拒絶したカタリ派の拡<br />
大に危機感を抱いたカトリックは 1209 年よりアルビジョワ十字軍<br />
を派遣。最終的にはこの派遣により、オック語圏のオクシタニアが<br />
フランスに組み入れられることになった。<br />
アリエージュ県にあるモンセギュール城 château <strong>de</strong> Montségur は<br />
標高 1200 メートルの高さにそそり立つ峰の尖峰に建てられた城だ<br />
が、ロクシタニアの領主や伯爵たちの援助を受け、カタリ派が籠城<br />
して抵抗を続けた拠点である。<br />
モンセギュールから始まる「善良な人々街道」をたどれば、さら<br />
にカタリ派ゆかりの地を訪ねることができる。フォワ城 château <strong>de</strong><br />
Foix やロックフィクサッド城 château <strong>de</strong> Roquefixa<strong>de</strong>(アリエージ<br />
ュ県)、マザメ Mazamet の カ タ リ 派 記 念 博 物 館 musée <strong>de</strong> <strong>la</strong><br />
Mémoire du Catharisme Occitan(タルン県)、コルド・シュル・シ<br />
エル Cor<strong>de</strong>s-sur-Ciel の城塞(タルン県)をはじめ、数多くの遺跡が<br />
ミディ・ピレネーには残されている。<br />
ミディ・ピレネー特有の文化<br />
オクシタニア十字<br />
オクシタン十字は 12 世紀のトゥール<br />
ーズ伯爵家の紋章。ミディ・ピレネー<br />
の人々が、旗や紋章を見る度に自分た<br />
ちの存在を確認できるシンボルである。<br />
ロクシタン十字は完全な宇宙の象徴で、<br />
ロクシタニアの言語、精神、文化を表<br />
す。ロクシタニアは現在のフランスの<br />
南部地方に相当する。ロクシタニア文<br />
化は現在でもさまざまな形で残ってい<br />
る。ラジオやテレビの番組、文学、詩<br />
(詩作の伝統は中世の吟遊詩人にまで<br />
さかのぼることができる)、音楽、ダ<br />
ンス、祭り…。もちろんカスレやフォ<br />
ワグラのような郷土料理にも残ってい<br />
ることを忘れてはならない。<br />
ミディ・ピレネーの特産物<br />
トゥールーズのスミレ<br />
トゥールーズのスミレはトゥールーズ<br />
独特の品種で 19 世紀半ば頃より見るこ<br />
とができるになった花である。やさし<br />
く繊細な香りが特徴で、冬に咲く。ト<br />
ゥールーズでは、町のシンボルとなっ<br />
たスミレに捧げられた祭りも開催され<br />
るほか、スミレを使った石鹸やオー・<br />
ド・トワレなどの化粧品、飴やキャラ<br />
メルなどの食品も人気。<br />
3
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
史跡と文化<br />
独特な風土を生み出すもの<br />
要塞都市<br />
コローニュ Cologne、ミランド Miran<strong>de</strong>、モンプザ・ド・ケルシー<br />
Montpezat-<strong>de</strong>-Quercy、ロゼルト Lauzerte、ヴィルフランシュ・<br />
ド・ルエルグ Villefranche-<strong>de</strong>-Rouergue、ナジャック Najac、リル・<br />
シュル・タルン Lisle-sur-Tarn…。これらの村はいずれも要塞化し<br />
た村である。13 世紀から 14 世紀にかけて作られた要塞は地方内に<br />
およそ 300 ほどが残されており、1144 年に作られたモントーバン<br />
Montauban の要塞が最も古く、最新の要塞は 1342 年に作られたル<br />
ヴェル Revel の要塞だ。要塞は歴代のトゥールーズ伯やフランス国<br />
王、領主や聖職者たちの軍事、経済、社会的な戦略のために、非常<br />
に革新的な都市計画に則って造られた。中央広場を中心に細分化さ<br />
れた区画が規則的に広がり、あらゆる交流の場であった広場に面し<br />
て、マルシェが開かれるホールや選ばれた執政官たちのための会館<br />
が並ぶ。このようにきちんと画一的に整備されている一方、要塞そ<br />
れぞれは非常に個性的だ。城塞が四角形のものもあれば、楕円形に<br />
伸びているものもある。広場を囲む屋根が、アーケードで支えられ<br />
ているものもあれば、支柱に支えられているものもある。ホールの<br />
骨組みがシンプルなものも複雑なものもあれば、石材、レンガ、土<br />
なでの材質のものもある。隣の要塞と似ている要塞、などというこ<br />
とはありえないのである。<br />
パステル <strong>Le</strong> pastel<br />
ルネッサンス文化はミディ・ピレネー地方全域において花開くが、<br />
顕著なのがトゥールーズである。トゥールーズには 16 世紀にパス<br />
テル交易で財を成した商人たちの豪邸が数多く残されている。パス<br />
テルは染料として使われる植物で、布地やタピスリーの糸、画材な<br />
どを美しい藍色に染め上げヨーロッパで大流行した。気候と土壌が<br />
栽培に適したアルビ、トゥールーズ、カルカッソンヌを結ぶ三角地<br />
帯で産業として発展した。染色には葉の部分のみを使う。粉砕して<br />
発酵させた後、ピンポン玉大の堅い塊りにして出荷する。その塊り<br />
を極楽を意味するコカーニュと呼び、一帯をコカーニュの王国、す<br />
なわち桃源郷、と呼ぶほど繁栄をもたらしたのである。パステルの<br />
思い出の片鱗は、トゥールーズ南部のロラゲ地方やタルン県にある<br />
マグラン城博物館、ジェール県レクトゥール <strong>Le</strong>ctoure で今でもパス<br />
テルを使って作業を行っている世界でも珍しい工房「藍のアトリ<br />
エ」などに見ることができる。トゥールーズでは、贅に糸目をつけ<br />
ない豪商たちが競って豪華絢爛な邸宅を建てた。誰がもっとも瀟洒<br />
な邸宅を建てるのか、どこの邸宅の塔が一番高いか、最も豪奢な本<br />
館は誰の家か…。アセザ邸 Hôtel d'Assézat、ベルニュイ邸 Hôtel <strong>de</strong><br />
Bernuy、ヴィユー・レザン邸 Hôtel du Vieux Raisin、ピエール邸<br />
Hôtel <strong>de</strong> Pierre、メイ邸 Hôtel du May…など、市内にはこのようにし<br />
て建てられた邸宅が 70 軒以上も残っている。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
バスティード(要塞都市)は、見ての<br />
通り周囲を建物が取り囲んでいる。建<br />
物は、一般住居だったが、それぞれが<br />
固有の歴史をもつような特徴を石の中<br />
に見ることができ、ひとつとして同じ<br />
建築物はない。<br />
ミディ・ピレネー特有の文化<br />
ラグビー<br />
ミディ・ピレネーでは、ラグビーは単<br />
なるスポーツという概念を超えた存在<br />
だ。19 世紀末にイギリスから伝わった<br />
ラグビーはあっという間に地方内のほ<br />
とんどの地域に広まった。アルビやト<br />
ゥールーズのような都会でもモントー<br />
バンやカストルのような村でも、ラグ<br />
ビーは常に大きな興奮を呼ぶ。もはや<br />
宗教と言ってもよいくらいだ。作家の<br />
アンリ・ロゼスも「パステル王国にお<br />
いてはラグビーは神である」と書いて<br />
いる。<br />
日曜日に行われる試合では世代を超え<br />
た観客が家族や友人と会場に集まる。<br />
2007 年にはワールドカップの会場とも<br />
なったことでもわかるが、ヨーロッパ<br />
選手権で 16 回優勝しているトゥールー<br />
ズのチーム、スタッド・ド・トゥール<br />
ーザンをはじめ、100 年もの間フラン<br />
スの強豪チームがいるのもミディ・ピ<br />
レネー地方である。<br />
4
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
ゆかりの人物、その作品や事業<br />
ミディ・ピレネーが輩出した著名人<br />
トゥールーズ=ロートレック、シャンポリオン、ダルタニアン…。<br />
芸術家や探検家、あるいは物語のヒーローの軌跡を辿ることにより、<br />
彼らが生まれた町や村の美しさを再認識したい。<br />
ダルタニャン D’Artagnan.<br />
ミディ・ピレネー地方は多くの著名人を輩出しているが、その中<br />
にダルタニアンが含まれることはミディ・ピレネー地方にとって誇<br />
らしいことである。ダルタニャン、本名シャルル・ド・バツ=カス<br />
テルモールが生まれたのはジェール県のカステルモール城 château<br />
<strong>de</strong> Castelmore、1615 年頃のことである。人生の成功を求めて 20<br />
歳でパリに出たシャルルはダルタニャンと名乗るようになり、やが<br />
て彼の冒険を全世界の人々が知るところとなるのである。ダルタニ<br />
ャンの燃えたぎるような心、勇気、忠誠心は今でもアルマニャック<br />
地方ガスコーニュの人々の心に残っている。オーシュ村 Auch には<br />
ダルタニャンの像があり、リュピアック村 Lupiac にはダルタニャン<br />
センターがある。そしてテルム・ダルマニャック城 château <strong>de</strong><br />
Termes d’Armagnac はガスコーニュの勇士たちをテーマにしたパナ<br />
ッシュ・ガスコン博物館 musée du Panache Gascon となっている。<br />
ジャン=フランソワ・シャンポリオン Jean-François<br />
Champollion<br />
1790 年、フィジャック Figeac に生まれたジャン=フランソワ・<br />
シャンポリオン。生家は「シャンポリオン-世界の文字博物館<br />
musée <strong>de</strong>s Ecritures du Mon<strong>de</strong>」となり一般公開されている。時代を<br />
問わず、さまざまな文明の文字を対象とした博物館はヨーロッパで<br />
唯一のものである。博物館に隣接したエクリチュール広場 p<strong>la</strong>ce <strong>de</strong>s<br />
Ecritures には、黒い花崗岩による大きな石碑がある。これはアメリ<br />
カ人アーティストのジョセフ・コスースが手掛けた作品で、シャン<br />
ポリオンが解読に成功したヒエログラフの書かれたロゼッタ・スト<br />
ーンを表している。フィジャックは洗練された建物が数多く残り、<br />
「歴史と芸術の街」ラベルにも登録されている美しい町。世界の文<br />
字博物館と合わせ、ゆっくり堪能したい。<br />
ジャン=フランソワ・アングル Jean-Dominique Ingres<br />
ジ ャ ン= フラ ンソ ワ・ アン グ ルは 、 1870 年 にモン ト ーバン<br />
Montauban で生まれた。近郊に多くの果樹園が点在する南部の美し<br />
い町である。タルン川沿いにある 17 世紀の古い司教館が美術館と<br />
なっており、油彩画、デッサンなどアングルの作品が展示されてい<br />
る。アングルは細かい観察眼と精密な描写で知られる画家である。<br />
アングルが描いた作品からもモントーバンの町の細部が見て取れる。<br />
モントーバンはのんびりした町のイメージがあるが、なかなかどう<br />
して、素晴らしい史跡が隠されているのである。1144 年に建てら<br />
れた厳つい要塞、洗練された装飾が美しい豪奢な数々の邸宅。その<br />
ほかに見ておきたいものとしては、ナシオナル広場 p<strong>la</strong>ce Nationale<br />
を囲む不揃いなアーケードやサン=ジャック教会 église Saint-<br />
Jacques にある<br />
砲弾痕があげられる。ルイ 13 世<br />
がプロテスタントだったモントー<br />
バンを制圧しようとした際の名残<br />
である。<br />
ミディ・ピレネー特有の文化<br />
シャンポリオン-世界の文字博物<br />
館<br />
2007 年7月末オープン。古代メソポ<br />
タミアで誕生した文字からデジタル文<br />
字に至るまで、世界の文字の歴史をテ<br />
ーマごとに8つの展示室で紹介する。<br />
展示コレクションを充実するにあたっ<br />
て苦慮されたのは、展示対象物である<br />
文字の歴史の古さとその範囲の広さで<br />
ある。その結果、3000 年以上も前の古<br />
い絵文字が記載されている板、不思議<br />
な文字の書かれた陶器の盃、または 17<br />
世紀に数ヶ国語で書かれた聖書、と言<br />
ったように非常に希少価値の高いもの<br />
が陳列されている。シャンポリオン博<br />
物館には文字に関する展示物が 800 点<br />
を数え、すべてオリジナル品か、厳密<br />
なレプリカである。ルーブル美術館、<br />
ケ・ブランリー美術館から貸し出しを<br />
受けている展示物もある。<br />
位置情報<br />
◇リュピアック Lupiac:ジェルス県、オ<br />
ーシュ Auch より 25 ㎞南。<br />
◇フィジャック Figeac:ロット県、カオ<br />
ール Cahors より 70 ㎞東。<br />
◇モントーバン Montauban :タルン・<br />
エ・ガロンヌ県、トゥールーズより 50<br />
㎞北。<br />
5
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
ゆかりの人物、その作品や事業<br />
ミディ・ピレネーが輩出した著名人<br />
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック<br />
Henri <strong>de</strong> Toulouse-Lautrec<br />
ベルビー宮 Pa<strong>la</strong>is <strong>de</strong> <strong>la</strong> Berbie はサント・セシル大聖堂 cathédrale<br />
Sainte-Cécile と並び、アルビで威容を誇るレンガ造りの素晴らしい<br />
建築物。1864 年、アルビ生まれのトゥールーズ=ロートレックに<br />
とって、遠く日本にまで届くその才能を紹介するのに、これ以上の<br />
環境はないだろう。<br />
13 世紀に造られたベルビー宮は、現在はトゥールーズ=ロートレ<br />
ックの最大の美術館として、デッサン、油彩画、リトグラフなど<br />
1000 点以上もの作品が展示されている。パリのキャバレー、売春<br />
宿、芸術家やダンサーなど 19 世紀のさまざまな光景を対象とした<br />
作品群である。館内を歩けば、故郷アルビ同様華やかに彩られたト<br />
ゥールーズ=ロートレックの世界に浸ることができる。<br />
フランシスコ・ゴヤ Francisco Goya<br />
フランス式庭園が美しい 17 世紀に建てられたカストル Castres の<br />
司教館がフランシスコ・デ・ゴヤの美術館となっている。ゴヤはカ<br />
ストルで生まれたわけではないが、19 世紀末、ゴヤはこのタルン県<br />
の町の魅力の虜となった。ゴヤは「眼鏡の自画像」が有名だが、ゴ<br />
ヤ美術館はルーブルに次いで、14 世紀からピカソに至るまで、スペ<br />
イン美術のコレクションが充実していることで知られている。<br />
ジャン・ジョレス Jean Jaurès<br />
カストル Castres は、フランス社会主義の生みの親であるジャン・<br />
ジョレスゆかりの町としても有名だ。20 世紀初頭、進歩主義的な活<br />
動を民衆のために行った政治家として知られるジャン・ジョレスは<br />
1859 年にカストルで生まれ、生家はスール・リシャール通りに現<br />
在も残っている。国立ジャン・ジョレスセンターには写真や当時の<br />
新聞、絵や自筆原稿を展示されており、この偉大な活動家の人生に<br />
触れることができる。<br />
位置情報<br />
◇ アルビ Albi : トゥールーズより 76 ㎞北部に位置する。<br />
◇カストル Castres : タルン県。アルビより 43 ㎞南。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
宝石箱のような美術館・博物館<br />
トゥールーズ=ロートレック美術館となっ<br />
ているアルビのベルビー宮、アングル美術<br />
館となっているモントーバンの司教館、ゴ<br />
ヤ美術館となっているカストルの司教館だ<br />
けではなく、ミディ・ピレネー地方はあらゆ<br />
る地域で美術に触れることのできる地方だ。<br />
トゥールーズでは、16 世紀建設の学校<br />
が改修され、考古学・古代文化の博物館、<br />
サン・レイモン博物館 musée Saint-<br />
Raymond となっている。由緒あるアセザ邸<br />
Hôtel d'Assézat はバンベルグ財団美術館<br />
となり、ルネッサンスから 20 世紀にかけ<br />
ての美術作品や工芸品を展示している。<br />
かつては屠殺所だったユルバン・ド・ヴィト<br />
リーUrbain <strong>de</strong> Vitry は現代美術センター<br />
Centre d'Art Contemporain として生まれ<br />
変わった。オーギュスタン修道院 cloître<br />
<strong>de</strong>s Augustins はオーギュスタン美術館<br />
musée <strong>de</strong>s Augustins となり、ゴシック時代<br />
の彫刻、宗教絵画、円柱や柱頭に施され<br />
たロマネスクの彫刻などのコレクションで<br />
知られている。ガロンヌ河沿岸には、トゥー<br />
ルーズ市内に飲料水を運ぶ役割を果たし<br />
ていた塔が、現代写真の殿堂となっている。<br />
ミディ・ピレネー各地で由緒ある建物が<br />
美術館、博物館となり、展示コレクションに<br />
付加価値を与えている。<br />
ロデズ に は 、 個 人 の 邸 宅 が 紀 元 前<br />
2600 年のものをはじめ数多くのメンヒル<br />
を所蔵するユニークなフナイユ博物館とな<br />
っている。アヴェロン峡谷のモトリクー城<br />
château <strong>de</strong> Montricoux はモントーバン生<br />
まれでマティスの友人であるが、残念なが<br />
らあまり知られていない画家マルセル・ル<br />
ノワールの美術館となっている。リル・ジュ<br />
ルダン L’Isle-Jourdain には、ヨーロッパ鐘<br />
楼 博 物 館 musée européen d’Art<br />
Campanaire があり、バスティーユの鐘を<br />
はじめ、数多くの希少な展示物がある。<br />
更に、サル・ラ・スルス Salles-<strong>la</strong>-Source<br />
にある充実したコレクションを誇るルエル<br />
グ工芸美術館 Musée <strong>de</strong>s Arts et Métiers<br />
du Rouergue、ラバスティッド・ルエルー<br />
Labasti<strong>de</strong>-Rouairoux のテキスタイル美術<br />
館 Musée du Textile、コンドム Condom の<br />
ア ル マ ニ ャ ッ ク 博 物 館 Musée <strong>de</strong><br />
l'Armagnac、そしてコルド・シュル・シエル<br />
Cor<strong>de</strong>s-sur-Ciel の砂糖博物館 Musée du<br />
Sucre も挙げておきたい。<br />
6
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
ゆかりの人物、その作品や事業<br />
天才たちの軌跡<br />
ミディ・ピレネーの地域性は先人たちの精力的な行動力に寄るもの<br />
があると言える。古くはルイ 14 世の治世下のミディ運河建設から<br />
最先端テクノロジーを駆使したエアバス工場あるいはミヨー高架橋<br />
まで、その精神を見て取ることができる。<br />
ミディ運河 Canal du Midi<br />
ミディ運河は 17 世紀に建築家ピエール=ポール・リケ(1604~<br />
1680)によって考案された。トゥールーズと地中海の港町セート<br />
Sète を結ぶ前代未聞の土木工事である。長さ 240 キロの運河は人の<br />
手によって掘られ、工事期間は 14 年、1万 2000 人の作業員が工<br />
事に従事し、4万 5000 本の木が沿道に植えられ、橋や水門、水路<br />
などの建造物は 350 を超えた。数字を見るだけでもリケによるこの<br />
工事の規模の大きさ、複雑さが想像できるだろう。この運河建設の<br />
当初の目的はラングドック地方における徴税だった。<br />
運河は 1681 年に開通。オート・ガロンヌ県のルヴェル Revel にあ<br />
るサン・フェレオル湖 bassin <strong>de</strong> Saint-Ferréol から運河へと水が流れ<br />
るが、サン・フェレオル湖の湖水自体もモンターニュ・ノワール山<br />
脈 Montagne Noire を流れる川から巧みに取水されている。<br />
19 世紀、アキテーヌ県を抜け大西洋まで続くガロンヌ運河が造ら<br />
れ、ミディ運河がトゥールーズより下流に延長される形となった。<br />
人間の英知を結集させた建造物として、また、トップクラスの運河<br />
レジャーが楽しめる運河として、ミディ運河は 1996 年ユネスコ世<br />
界遺産に登録された。<br />
ピック・デュ・ミディ天文台 L’observatoire du Pic du Midi<br />
ピレネー山脈でも最も有名な山頂ピック・デュ・ミディ・ド・ビ<br />
ゴール Pic du Midi <strong>de</strong> Bigorre(標高 2872 メートル)。国定自然保<br />
護地域に指定されているが、山頂には天文台があり、一般公開され<br />
ている。世界でも権威のある天文台で、アメリカによるアポロ計画<br />
の研究にも使われた。1880 年代当時、天文台建設は隣接するカン<br />
パン谷の住民にとって大変な事業であった。建築資材などは、危険<br />
な区域もすべて人間かロバが背負って運び上げたため、地元住人は<br />
「ピックの徒刑囚」と呼ばれるほどであった。多くの利用者を安全<br />
かつ簡単に山頂に運ぶロープウェー敷設までそれは続いたのである。<br />
ピック・デュ・ミディは、夏期だけではなく冬期もアクセス可能<br />
である。気象や動植物、天体の観測、宇宙の歴史、そして天文台の<br />
歴史など本格的な展示を誇る博物館が併設されている。ヨーロッパ<br />
でもっとも標高が高い場所にある博物館だ。レストランや展望台が<br />
付設されており、東西 300 キロ以上遠望できる。<br />
位置情報<br />
◇ミディ運河:トゥールーズ(オート・ガロンヌ県)から、セート Sète<br />
(エロー県)まで。<br />
◇ピック・デュ・ミディ天文台:オート・ピレネー県。タルブ Tarbes<br />
より 47 ㎞南。<br />
ミディ・ピレネー特有の文化<br />
ミディ運河博物館・庭園<br />
2008 年7月、レヴェル Revel(オー<br />
ト・ガロンヌ県)近郊のサン・フェレ<br />
オル湖畔 St-Ferréol にミディ運河博物<br />
館・庭園 Musée et Jardin du Canal du<br />
Midi がオープンした。<br />
運河への用水に非常に重要な役割を果<br />
たす堤防が 17 世紀に造られたが、その<br />
堤防近くにあり、ミディ運河建設技師<br />
の責任者たちが利用していた旧技師会<br />
館が博物館として再整備された。19 世<br />
紀に造られた素晴らしいイギリス式庭<br />
園の木々の木陰の中、800 ㎡の広さの<br />
ある博物館はミディ運河建設の歴史を<br />
展示する。<br />
展示室はテーマごとに6つあり、ピエ<br />
ール=ポール・リケへの人物像にも迫<br />
りつつ、豊富な模型や視聴覚教材、当<br />
時の資料を通じて生き生きと建設の歴<br />
史を解説する。イベントホールも備え<br />
る。ミディ運河の大小あらゆるエピソ<br />
ードに触れることができる博物館であ<br />
る。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
世界遺産に登録されたミディ運河は、<br />
いつの時代も地中海と大西洋を穏やか<br />
に結ぶ水路だ。秋になるとより一層魅<br />
力が増す。<br />
マジック・タッチ<br />
ピークで宿泊<br />
ピック・デュ・ミディに一泊すれば、<br />
さらにその魅力を堪能できる。天文台<br />
スタッフの解説付きで天体観測し、本<br />
格的な料理を楽しむ。満天の星空のも<br />
とで眠り、翌朝はピレネー山脈のご来<br />
光で目覚める。<br />
7
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
ゆかりの人物、その作品や事業<br />
天才たちの軌跡<br />
エアバス Airbus<br />
19 世紀、トゥールーズはフランスにおける航空産業の発祥の地と<br />
なった。まず、1855 年、トゥールーズで発明家クレマン・アデー<br />
ルが生まれた。初めて浮上に成功し、フランス語で飛行機を示す<br />
「アヴィオン」を造語した人物である。20 世紀初頭になると、サン<br />
=テグジュペリやメルモーズなど郵便輸送機を操縦する伝説的なパ<br />
イロットが次々と登場。その後、町はアエロスパシアル社の工場や<br />
国立宇宙研究センターの本拠地がある航空産業の先端都市として発<br />
展を続けた。コンコルドやロケットのアリアンが製造され、エアバ<br />
スの工場ができ、ヨーロッパで最大の航空産業の町となったのだ。<br />
エアバスの組み立て工場は一般公開されており見学が可能。トゥ<br />
ールーズを訪れたら是非足を向けたい観光名所となっている。A330<br />
および A340 の組み立てが行われているクレマン・アデール工場は、<br />
テニスコート 227 面分、凱旋門が 10 個分の広さがある。更に広い<br />
ラガルデール工場では史上最大の旅客機 A380 の製造が行われてい<br />
る。いずれの工場も、まずは広大な敷地をバスで見学したあと、下<br />
車して実際に航空機が組み上がっていく様子を目の当たりすること<br />
ができる。<br />
ミヨー高架橋 Viaduc <strong>de</strong> Mil<strong>la</strong>u<br />
ミディ・ピレネー地方における旺盛な探求心はミヨー高架橋建設<br />
にも見て取れる。ミヨー高架橋は世界で最も長く(長さ 2.s4 ㎞)、<br />
最も高い(高さ 270m)斜張橋である。最も高い主塔はエッフェル<br />
塔を 20 メートルも越す。タルン渓谷にわずか7本の主塔で支えら<br />
れた高架橋は素晴らしい技術の結集であり、またフランス南部の美<br />
しい自然にその姿を溶け込ませている。ミシェル・ヴィルロジュー<br />
が考案し、ノーマン・フォスターによって設計され、エファージュ<br />
社によって建設されたミヨー高架橋を利用すれば、地中海に出るの<br />
に通常より 30 分早く、混雑期には4時間も短縮することが可能だ。<br />
2004 年 12 月の落成以来、何千人、何万人もの人が見学に訪れてい<br />
る。徒歩、バギー、船、ヘリコプター、とあらゆるアクセスが可能<br />
だ。冒険好きなら超軽量動力機によるアクセスすら可能である。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
シテ・ド・レスパス<br />
独自の手法で宇宙と関わる試み<br />
宇宙に国境はない。シテ・ド・レスパ<br />
ス Cité <strong>de</strong> l’Espace の名声にも国境はな<br />
い。非常にユニークな宇宙へのアプロ<br />
ーチの仕方で知られるこのシテ・ド・<br />
レスパスの見学に遠方からわざわざ訪<br />
れる人が後を絶たない。宇宙ステーシ<br />
ョンミールに入ってみたり、プラネタ<br />
リウムで感動したり、テラドーム館の<br />
ドームの中で宇宙飛行士気分を味わっ<br />
たり、『永遠の小道』を歩いて地球の<br />
様子を見たり…とさまざまな楽しみ方<br />
が用意されている。<br />
シテ・ド・レスパスは、研究者、宇宙<br />
飛行士そして一般人を結ぶ大切な役割<br />
を果たしており、常に双方向的なイベ<br />
ントや楽しみながら宇宙を学べる新し<br />
い催し物、宇宙学の最新研究に触れら<br />
れる講座などを開催している。<br />
位置情報<br />
◇エアバス組み立て工場:オート・ガ<br />
ロンヌ県。<br />
◇ミヨー高架橋:アヴェロン県<br />
8
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
ゆかりの人物、その作品や事業<br />
工芸品<br />
ミディ・ピレネー地方では斬新で独創的な工芸品が生まれておりフ<br />
ランス内外で愛用されている。<br />
ライヨールナイフ coutgeau <strong>de</strong> Laguiole<br />
ライヨールナイフはアヴェロン県の北部にあるライヨール村<br />
Laguiole で生産されており、原産地ライヨール村以外の地域で生産<br />
されたナイフをライヨールナイフとよぶことはできない。フランス<br />
の宝、とでもいうべきナイフである。現在の工場は世界的に有名な<br />
デザイナーでライヨールナイフの熱狂的なファンであるフィリッ<br />
ク・スタルクによるものだ。昔も今も、自由な発想でデザインでき<br />
るナイフで、角や黒檀、ツゲあるいはアクリルガラスなどでできた<br />
柄は鳩の羽、あるいは女性の足を思わせる。ライヨールナイフなら<br />
どんなひらめきも自由自在。ただし商品のコピーはのぞく。<br />
ルヴェルの家具<br />
桜やオーク、バラあるいはレモンなどの木材を使った高級家具で<br />
知られるのがレヴェル Revel。オート・ガロンヌ県の要塞化した村レ<br />
ヴェルには、19 世紀以来、家具職人、寄木細工職人、漆職人、タピ<br />
スリー職人など 10 数名が住んでおり、ルイ 14 世、15 世、帝政時<br />
代のレプリカ家具を作り続けている。希少な木材で作られる非常に<br />
クオリティーの高い家具はアメリカやアラブ首長国連邦にも輸出さ<br />
れている。<br />
ルヴェルはフランスにおける高級家具の都だが、アヴェロン県南<br />
部のミヨーMil<strong>la</strong>u は革手袋の都である。ミヨーは 12 世紀以来、皮な<br />
めし業と手袋生産が盛んなことで知られている。過去何世紀もの間、<br />
エレガントな女性たちを喜ばせてきたミヨーの手袋だが、現在はモ<br />
ード界のトップクリエイターたちを魅了してやまない。<br />
タルン・エ・ガロンヌ県の小さな村コサード Caussa<strong>de</strong> で作られて<br />
いる帽子もクリエイターたちを魅力の虜にしている。パナマ帽、カ<br />
ンカン帽、麦わら帽、野球帽など、コサード村は 19 世紀より確か<br />
な技術と豊かな創造力に裏付けられた帽子生産で発展し、今ではフ<br />
ランス国内随一の帽子生産拠点である。<br />
アリエージュの角製の櫛も有名である。ラヴラネ Lave<strong>la</strong>net 近くに<br />
ある小さな村で 13 世紀より作られており、ケラチンが豊富で非常<br />
に髪によい櫛として知られている。角製櫛の博物館もあるので合わ<br />
せて訪れたい。<br />
マルトル・トロサンヌの陶器<br />
オート・ガロンヌ県には 18 世紀より陶器の生産で知られる村マル<br />
トル・トロサンヌ Martres-Tolosane がある。村のアトリエでは繊細<br />
な陶器が一点一点手で絵付けされている。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
デザイナーとスターたち<br />
モード界のクリエイターや建築家、デ<br />
ザイナーたちにとって、ライヨールナ<br />
イフをデザインすることは面白い訓練<br />
になるらしい。オブラック地方の牛飼<br />
い人のものたちであったこのナイフに<br />
惹かれ、新たにデザインしたクリエイ<br />
ターには、ジャン=ミッシェル・ヴィ<br />
ルモット、フィリップ・スタルク、ソ<br />
ニア・リキエル、ヤン・ペノールズや<br />
クレージュなどが挙げられる。<br />
ミヨーの手袋ブランド、メゾン・コー<br />
ス <strong>Maison</strong> Causse の手袋は、ジャクリー<br />
ン・ケネディやステイーブ・マックイ<br />
ーンなどが愛用したことで知られる。<br />
ミヨーに古くから伝わる手袋生産の技<br />
がパリやニューヨークの大ブランドと<br />
肩を並べている。<br />
9
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
大自然とレジャー<br />
大自然<br />
ミディ・ピレネー地方はしばしば、フランスの中でももっとも住み<br />
やすい、長寿の地方と言われている。確かに広々とした空間のある<br />
暮らしやすい環境を誇る。その素晴らしい自然をいくつかご紹介す<br />
る。<br />
ピレネー山脈<br />
ピレネー山脈はフランスとスペインに間に位置し、ミディ・ピレ<br />
ネー地方内の3つの県(オート・ガロンヌ県、アリエージュ県、オ<br />
ート・ピレネー県)にまたがる。標高の高く威容を誇る山々が連な<br />
り、高原では牛や馬がのんびり草を食み、スレートや片岩の家々が<br />
並ぶ村が山腹に点在するピレネー。アックス谷 Ax、ベトマル谷<br />
Bethmale リュション谷 Luchon 、オール谷 Aure 、ルロン谷<br />
Louron、カンパン谷 Campan、バレージュ谷 Barèges…。いずれ<br />
も何世紀もの間羊など家畜の放牧で暮らしてきた。<br />
ミディ・ピレネー地方には、バライトゥーBa<strong>la</strong>ïtous(3146m)、ヴ<br />
ィニュマル Vignemale(3298 m), ピック・ロン Pic Long (3192 m),<br />
ピック・デュ・ミディ Pic du Midi (2872m)など 3000 メートル級<br />
の峰がいくつもある。更には息をのむような圧倒的な存在感の圏谷<br />
もある。現在は残っていない巨大な氷河の浸食によってできた圏谷<br />
はピレネーの特徴とも言える。ヴィクトール・ユーゴが「ありえな<br />
い、かつ驚異的なオブジェ」と形容したガヴァルニー圏谷は代表的<br />
なものだ。<br />
もう一ヶ所、スケールの大きい自然があるところが コートレ<br />
Cauterets 近くにあるポン・デスパーニュ Pont d’Espagne である。<br />
無数の滝が落ちて迫力のある眺めが楽しめる。高地にあるいくつも<br />
の 湖 も ピ レ ネ ー の 魅 力 の ひ と つ 。 ネウヴィエ ル 自 然 保 護 区 域<br />
Réserve naturelle du Néouvielle には 80 もの湖があり、いずれも<br />
クリスタルのような透明度を誇り、くすんだ青や輝くような緑とそ<br />
の色を変える。<br />
峡谷や渓谷<br />
ドルドーニュ渓谷、ロット渓谷、ガロンヌ渓谷、タルン渓谷、ア<br />
ヴェロン渓谷、とミディ・ピレネー地方には5つの大きな渓谷があ<br />
る。<br />
谷を構成する地質や谷の長さ、そして谷をゆく道は非常に変化に<br />
富んでいる。谷の壮大さ、谷に点在する歴史遺産の多さから、大自<br />
然の中でのレジャー観光のポテンシャルを感じさせる地域である。<br />
また、ロット谷でカオールより川上に続く断崖絶壁、アヴェロン<br />
峡谷を蛇行する川と、谷を見下ろすように山腹に張り付く村々、こ<br />
れから行く峡谷の興奮を告げてくれるような町、ミヨーから始まる<br />
タルン峡谷もお忘れなく。特にタルン峡谷はヨーロッパでもっとも<br />
有名な峡谷のひとつである。<br />
マジック・タッチ<br />
もっとも美しいイベント会場<br />
ガヴァルニー圏谷はふもとは 3.5 ㎞に<br />
広がり、上部は 14 ㎞にもある壮麗な圏<br />
谷だ。カールを囲むように 3000m級の<br />
山々が連なる。山稜からはヨーロッパ<br />
でもっとも高地にある滝グランド・カ<br />
スカードを始め無数の滝が落ちて迫力<br />
ある眺めが楽しめる。ユネスコの世界<br />
遺産の登録 名は「 ガヴァルニー/モ<br />
ン・ペルデュ、圏谷と峡谷」。毎年7<br />
月に開催される演劇、音楽、振付のフ<br />
ェスティバルの煌びやかな自然の舞台<br />
でもある。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
汚れのないピュアな自然の中を行くド<br />
ルドーニュ河。戦士の古城や洗練され<br />
た美しい城のふもとを流れ、象牙色や<br />
濃い紫色の瓦が輝く村々や修道院の合<br />
間を縫う。<br />
10
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
大自然とレジャー<br />
大自然<br />
高原<br />
見渡す限り続く草の海、玄武岩に縁取られた小道、地平線でやっ<br />
と空と結ばれる、何もさえぎるものがない広々とした空間…。オブ<br />
ラック高原(標高 800~1000m)はアヴェロン県の北部に広がる<br />
高地で、その風景はフランス南部でも非常に独特なものである。モ<br />
ンゴルの草原にも並び評されるオブラック高原は伝統的に酪農が盛<br />
んな地域で、夏には、花が咲き乱れる高地で放牧するためオブラッ<br />
ク牛を移動させる盛大な祭りトランスユマンスも行われる。ライヨ<br />
ールナイフを生産しているライヨール村があるのもオブラック高原<br />
である。<br />
アヴェロン県南部に広がるのがコース高原。ラルザック Larzac、<br />
コース・ノワール Causse Noir、コース・ド・ソヴテール Causse<br />
<strong>de</strong> Sauveterre に分かれ、すべてグラン・コース地方自然公園として<br />
保護地区に指定されている。石灰岩の高原で侵食により深い谷が刻<br />
まれ、タルン峡谷 gorge du Tarn、ジョント峡谷 gorge <strong>de</strong> <strong>la</strong> Jonte、<br />
ドゥルビー峡谷 gorge <strong>de</strong> <strong>la</strong> Dourbie を見下ろす断崖絶壁が続く。<br />
ドロマイト鉱石の岩だらけで、蘭が咲き乱れ、草地が地平線まで続<br />
く高原はいかにも異国を感じさせる景勝地だ。ラルザックはテンプ<br />
ル騎士団ゆかりの地でもあり、またロックフォールチーズの生産地<br />
としても知られている。<br />
自然公園<br />
ミディ・ピレネー地方には地方自然公園が3つある。グラン・コ<br />
ース地方自然公園 Parc Naturel Régional <strong>de</strong>s Grands Causses(31 万<br />
5640 ヘクタール)、オー・ラングドック地方自然公園 Parc Naturel<br />
Régional du Haut-Languedoc(26 万ヘクタール)、コース・デュ・<br />
ケルシー地方自然公園 Parc Naturel Régional <strong>de</strong>s Causses du Quercy<br />
(17 万 6000 ヘクタール)である。これらの自然公園では自然や文<br />
化が保護されており、地元の人々との交流などの観光が盛んだ。<br />
フランスで最初の国立公園、東西 100 キロに延びるピレネー国立<br />
公園 Parc National <strong>de</strong>s Pyrénées があるのもミディ・ピレネー地方だ。<br />
また多くの自然保護地区があり、それぞれの地域に固有の動植物が<br />
数多く保護されている。アリエージュ県にオルリュ Orlu 保護地区、<br />
モン・ヴァリエ Mont Valier 保護地区があり、オート・ピレネー県に<br />
ネウヴィエイユ Néouvielle 保護地区がある。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
地下の世界<br />
ミディ・ピレネー地方では地下にも空<br />
間が広がっている。ロット県のパディ<br />
ラック洞窟はフランスでも屈指の洞窟<br />
だ。他にも 110 メートルもの深さがあ<br />
るオート・ピレネー県のエスパロ洞窟<br />
gouffre d’Esparros、ラブイシュ地下川<br />
rivière souterraine <strong>de</strong> Labouiche、アリエ<br />
ージュ県のヨーロッパ最大の洞窟、ロ<br />
ンブリーヴ洞窟 grotte <strong>de</strong> Lombrives な<br />
ど見事な洞窟はいくつもある。<br />
また、アリエージュ県内にはヨーロッ<br />
パでも唯一の先史時代の洞窟がある。<br />
なかでもニオー Niaux、ベデイヤック<br />
Bé<strong>de</strong>ilhac、マ・ダジル Mas d’Azil の洞窟<br />
が有名。<br />
洞窟に描かれた壁画は全世界で研究の<br />
対象となっており、アリエージュ県で<br />
はタラスコン・シュル・アリエージュ<br />
先史時代公園 Parc <strong>de</strong> <strong>la</strong> Préhistoire à<br />
Tarascon-sur-Ariège を作り、人類の富<br />
を保護している。<br />
ロット県にあるペッシュ・メルル洞窟<br />
grotte <strong>de</strong> Pech Merle の調査も先史時代<br />
の研究にとって不可欠だ。また、フォ<br />
ワサック洞窟 grotte <strong>de</strong> Foissac(アヴェ<br />
ロン県)、ロカマドールのメルヴェイ<br />
ユ洞窟 grotte <strong>de</strong>s Merveilles ( ロ ッ ト<br />
県)も非常に興味深い洞窟である。<br />
11
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
大自然とレジャー<br />
大自然でリフレッシュ<br />
ミディ・ピレネー地方では、山岳地帯も、渓谷や峡谷も、開発や<br />
公害といったものとは縁遠く、自然は手厚く保護されている。豊か<br />
な自然に加え、ヴァラエティーに富んだ風景に恵まれ、ミディ・ピ<br />
レネー地方の田舎は心からリラックスし、気持ちを解放し、日常の<br />
世界を忘れるのには最適な場所だ。<br />
ハイキング<br />
フランスとスペインの国境を成す稜線やジェルス川の谷、あるい<br />
はトゥールーズからわずか 20 分行った郊外…。ミディ・ピレネー<br />
地方ではあらゆるところで遊歩道や登山道が整備されており、いつ<br />
でも、どこでもハイキングが楽しめる。地方内には整備された登山<br />
道や遊歩道が2万 6000 ㎞相当もあるのだ。簡単なハイキングや遊<br />
歩道は PR ( Promena<strong>de</strong>s et Randonnées )、登山道は GR<br />
(sentiers <strong>de</strong> Gran<strong>de</strong> Randonnée)、ピレネー山脈横断大登山道<br />
は GRT (sentiers <strong>de</strong> Gran<strong>de</strong> Randonnée Transpyrénéens)と表<br />
記される。古城や要塞巡り、ワイナリー巡り、自然に触れるなどテ<br />
ーマごとに地方を横断できる地方横断街道は GRP (sentiers <strong>de</strong><br />
Gran<strong>de</strong> Randonnée <strong>de</strong> Pays)である。<br />
地方内に張り巡らされた整備道を行けば、どんなに短い簡単な散<br />
策でも、ミディ・ピレネー独特の昔のままに保全された田舎の風景<br />
や手つかずの自然、変化に富んだ眺望を楽しむことができる。<br />
ミディ・ピレネー地方ハイキング委員会と8つの県委員会は連携<br />
を密にしており、さらに 250 ほどの愛好会が活発に活動しているの<br />
もこの地方の強みである。タルン県による登山道・遊歩道を指定や<br />
ロット県による「危機に瀕している自然地域」における登山道の整<br />
備などにも注目したい。<br />
さらに、ミディ・ピレネー地方にはサンチャゴ・デ・コンポステ<br />
ーラ巡礼街道が3つも通っている。ル・ピュイ街道(GR 65)、ア<br />
ルル街道(GR 653)、アルル街道の支道であるピエモン・ピレニア<br />
ン街道(GR 78)である。かの有名な GR10 もミディ・ピレネー地<br />
方を通過している。アリエージュ県、オート・ガロンヌ県、オー<br />
ト・ピレネー県を通過しながら 40 日間かけて大西洋から地中海ま<br />
でトレッキングする、という魅惑のルート。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
ミディ・ピレネーのゆるやかな小道を<br />
歩けば、さらさらと流れる小川や澄ん<br />
だ空気が迎えてくれ、どこよりもこの<br />
世で生きていることを喜びを実感させ<br />
てくれるに違いない。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
ミディ・ピレネー、冬の楽しみ<br />
ドメーヌ・ド・トゥルマレ=ラ・モン<br />
ジーDomaine du Tourmalet-La Mongie、<br />
サ ン = ラ リ ー ・ ス ー ラ ン Saint-Lary<br />
Sou<strong>la</strong>n、ペイラギュード Peyragu<strong>de</strong>s、<br />
リュション =シュペールバニェール<br />
Luchon-Superbagnères 、 プ ラ ト ー ・<br />
ド・ベイユ P<strong>la</strong>teau <strong>de</strong> Beille、ギュゼ<br />
Guzet…などピレネー山脈には 22 もの<br />
スキー場がある。加えてアヴェロン県<br />
のオブラック山脈も自然に親しみたい<br />
ノルディック・スキー客に最適のスキ<br />
ーエリアだ。<br />
ピレネーのスキー場はアルペンスキー、<br />
クロスカントリー、スノーボード、ス<br />
ノーサーフィン…とどんなウィンター<br />
スポーツも楽しめるよう整備されてい<br />
るが、いずれも山への敬意を失わない<br />
姿勢が共通している。ピレネーのスキ<br />
ー場は評判は高く、トレンドとなって<br />
いる。それに伴い、スノシューイング、<br />
かんじきでの散策、犬ぞり、スノーモ<br />
ービルのほか、スパ施設などスキー客<br />
の期待に応えるレジャーが年々充実し<br />
ている。<br />
12
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
大自然とレジャー<br />
大自然でリフレッシュ<br />
アウトドアスポーツ<br />
ハイキング、トレッキングはミディ・ピレネー地方全域で楽しめ<br />
るレジャーの王様であるが、そのほかにも誰でも楽しめるものから<br />
愛好家を満足させるものまで、あらゆるアウトドアスポーツが充実<br />
している地方である。提供するアウトドアスポーツの種類の多さ、<br />
アマチュアからプロ級までを満足させる密度の濃さがミディ・ピレ<br />
ネー地方の切り札だ。<br />
セレ川、ドルドーニュ川、アヴェロン川、タルン川の急流をカヌ<br />
ーで下る。34 を数える美しいゴルフ場でゴルフを楽しむ。レヴェズ<br />
ー地域 Lévézou にいくつもある巨大な湖でヨットをやる。オフロー<br />
ドバイクに乗って、峡谷や田園を数百キロと走り抜ける。サイクリ<br />
ングロードも完備している。国際的なパラグライダーの名所として<br />
知られるラルザックの断崖 fa<strong>la</strong>ises du Larzac の上空を飛んだり、コ<br />
ース・デュ・ケルシー高原にある迷路のような洞窟でケービングを<br />
楽しむこともできる。乗馬用に考えられたコースを行けば、県から<br />
県だけではなく、スペインにまで馬で行くことができる。<br />
ピレネー山脈も、誰でも楽しめるスポーツができる場所として皆<br />
が夢見る場所。急流ではキャニオニング、ラフティング、ハイドロ<br />
スピードを楽しみ、山ではヴィア・フェラータに挑戦したり、クラ<br />
イミング技術に磨きをかけたり、あるいはハングライダーやパラグ<br />
ライダーで空を飛んだり、あるいはツール・ド・フランスの選手の<br />
ようにトゥルマレ峠を自転車で登ってみる、ということすらできる。<br />
ミディ・ピレネー地方では水遊びも楽しい。湖や川は楽しく水遊<br />
びができるよう整備されている。サン・フェレオル湖 <strong>la</strong>c <strong>de</strong> Saint-<br />
Ferréol(オート・ガロンヌ県)、レヴェズー地域の湖(アヴェロン<br />
県)、モンタニェス湖 <strong>la</strong>c <strong>de</strong>s Montagnès、ラウザ湖 <strong>la</strong>c du Laouzas<br />
などの湖、ロット川、タルン川、アヴェロン川、ヴィオール川など<br />
の川にはビーチが整えられており、監視員もいるので安心して遊ぶ<br />
ことができる。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
ミディ・ピレネーの気象<br />
ミディ・ピレネー地方の平均日照時間<br />
は約 2000 時間もあり、フランスでも<br />
っとも長い地方のひとつだ。ライバル<br />
はコート・ダジュール地方およびロー<br />
ヌ河沿岸地域。春は非常に早く訪れ、<br />
すぐに夏の気配がする。4月から6月<br />
にかけての最高気温の平均は 16 度から<br />
24 度と幅が広い。<br />
7月、8月はふんだんに太陽の光が降<br />
り注ぐ。最高気温は 26 度から 28 度の<br />
間になる。9月は残暑が続き、日中は<br />
21 度から 25 度程度である。10 月も平<br />
均気温 16 度から 19 度、とさわやかな<br />
日が続く。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
幸せは庭園にあり<br />
ミディ・ピレネー地方は多くの庭園が<br />
ある地方である。西洋式の庭園であれ、<br />
エキゾチックな庭園であれ、庭園は訪<br />
れた者を世界の果てに誘う。中世風の<br />
庭園であればタイムトリップも可能だ。<br />
テーマのある庭園は夢と想像の世界。<br />
カオール Cahors(ロット県)には 30<br />
ほどの「秘密の庭園 Jardins Secrets」が<br />
あ る し 、 コ ル ド ・ シ ュ ル ・ シ エ ル<br />
Cor<strong>de</strong>s-sur-Ciel(タルン県)の「天国<br />
の庭園 Jardin <strong>de</strong>s Paradis」も是非訪れた<br />
い。マルテル庭園 Jardin <strong>de</strong>s Martels(タ<br />
ル ン県) 、コロ ンビエ 城 château du<br />
Colombier に あ る エ デ ン 庭 園 Jardin<br />
d’E<strong>de</strong>n(タルン県)、クルジアナ庭園<br />
Jardins <strong>de</strong> Coursiana(ジェール県)をは<br />
じめ、ロゼルト Lauzerte のペルラン庭<br />
園 Jardin du Pèlerin(タルン・エ・ガロ<br />
ンヌ県)、タルブ Tarbes のマッセー庭<br />
園 Jardin Massey ( オ ート・ ピレ ネー<br />
県)もお忘れなく。<br />
13
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
大自然とレジャー<br />
大自然でリフレッシュ<br />
運河クルーズ<br />
船に乗ればミディ・ピレネー地方を新たな観点から見ることがで<br />
きる。トゥールーズから出発するガロンヌ河クルーズでは、ドラー<br />
ド港、美術学校、16 世紀に架けられたポン・ヌフ橋、と次から次へ<br />
ガロンヌ河沿岸にある見どころを楽しむことができる。<br />
ミディ運河でのクルージングは必ず押さえたいアクティビティー<br />
だ。クルーズ船による数時間の観光から宿泊可能なクルーズ船によ<br />
る数日観光など選択肢は多く、免許の必要がないボートを自分で操<br />
縦して行くのも可能である。木漏れ日がやさしい河岸を眺めながら<br />
のんびり進めば、トゥールーズ近郊の典型的な家々が並ぶ村や花々<br />
で飾られた水門、ウォータースポーツが楽しめる港などが現れては<br />
後ろに遠ざかっていく。河岸沿いの道をサイクリングするのも楽し<br />
い。<br />
運河だけではなく、河川でのクルーズも楽しめる。ガスコーニュ<br />
地 方 を 蛇 行 す る ビ ュ ゼ 河 は 、 ヴ ァ ラ ン ス ・ シ ュ ル ・ バ イ ー ズ<br />
Valence-sur-Baïse からビュゼ Buzet にかけて運航可能な区域となっ<br />
ており、ハウスボートや観光船が行きかう。70 キロにわたって運航<br />
可能なロット川はサン・シル・ラポピーSaint-Cirq-Lapopie からワ<br />
インで有名なカオール Cahors まで両サイドに断崖絶壁が続き、素晴<br />
らしい眺望の中クルーズが楽しめる。タルン川では、この地方の独<br />
特の平底の川船に乗ってクルーズを楽しみつつアルビやミヨーの高<br />
架橋を仰ぐことが可能だ。<br />
スパでリフレッシュ<br />
ミディ・ピレネー地方はフランスで4番目に鉱泉が多い地方で、<br />
オリュ・レ・バン Aulus-les-Bains、バニェール・ド・ビゴール<br />
Bagnères-<strong>de</strong>-Bigorre、バレージュ Barèges、リュズ・サン・ソヴ<br />
ール Luz-Saint-Sauveur、リュション Luchon 、レクトゥール<br />
<strong>Le</strong>ctoure など 17 か所の鉱泉施設があり、それらはピレネー山脈、<br />
ジェルス県、アヴェロン県に集中している。鉱泉は古代時代から湧<br />
き出ており、ミディ・ピレネー地方の重要な資源であった。長年の<br />
研究の成果や鉱泉利用のノウハウの向上により、さまざまな疾患に<br />
効果をあげている。特に、子供の喉や耳、鼻の疾患、リューマチ、<br />
外傷、肥満に効く。治療目的の滞在だけではなく、保険の対象とな<br />
らない一週間あるいは週末のみのレジャー目的の短期滞在も可能だ<br />
(注:フランスでは治療目的の滞在は健康保険の対象となってい<br />
る)。スキーやハイキングのあとスパ施設でゆっくりする観光客は<br />
多く、リラクゼーションを目的としたさまざまなプランが提案され<br />
ている。<br />
マジック・タッチ<br />
ボートを家の代わりに、自転車を積み<br />
込んでロッ ト川をゆっくり下る。 サ<br />
ン・シル・ラポピーからカオールまで、<br />
太陽をいっぱいに浴びながら、ゆっく<br />
りとした流れに身を任せよう。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
スパで過ごすのがトレンド<br />
ジャクジー、ハマム、打たせ湯、水流<br />
浴プール、リラックスバス、ケア用キ<br />
ャビン…。スパ街道なるものがフラン<br />
スにあったとしたら、ミディ・ピレネ<br />
ー地方は街道が通過する重要な拠点と<br />
なるに違いない。バニェール・ド・ビ<br />
ゴール Bagnères-<strong>de</strong>-Bigorre のアケン<br />
シス Aquensis 、 ル ダ ン ヴ ィ エ イ ユ<br />
Lou<strong>de</strong>nvielle にあるバルネア Balnéa、<br />
サン・ラリーSaint-Lary にあるサンソ<br />
リア Sensoria など、特にピレネー山脈<br />
において。リラクゼーションを追求し<br />
たスパ施設が数多く存在する。デラッ<br />
クスな雰囲気の中、充実したスパで大<br />
人も子供も楽しめる。一人ひとりのニ<br />
ーズに応えるさまざまなプランが工夫<br />
されている。<br />
14
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
グルメとイベント<br />
高級食材<br />
ミディ・ピレネーの人々や自然など、いくつもある魅力のひとつが<br />
料理。まごころがこもった自慢の味、郷土の味を訪ねる旅。<br />
食欲を促進させるアペリティフ。ミディ・ピレネーだけにしかな<br />
いアペリティフをいくつか紹介しよう。ジェルス県のプース・ラピ<br />
エール Pousse-Rapière はアルマニャックと発泡性白ワインをブレ<br />
ンドするカクテル。搾りたてのブドウ果汁と若いアルマニャックを<br />
ブレンドしたフロック・ド・ガスコーニュ Floc <strong>de</strong> Gascogne,も有<br />
名で、赤と白の2種類がある。4世紀ほど前に考案された飲み物で、<br />
AOC原産地統制呼称を厳守しており、瓶詰めの認可も厳しい。ア<br />
リエージュ県で乾杯に使われる飲み物はイポクラス Hypocras。さ<br />
まざまなハーブやスパイスを加えて熟成させた琥珀色の甘いワイン<br />
で中世の時代から親しまれている薬用酒。<br />
アペリティフの次に来るのは前菜。ミディ・ピレネーでは東西南<br />
北、何はなくとも、フォワグラが登場する。伝統を守りつつ、新た<br />
な食べ方を研究し、楽しみ倍増させる工夫の努力を惜しまないフォ<br />
ワグラ農家たちの熱意がこもった食材である。<br />
カモと言えば、ミディ・ピレネーではさまざまな形で食卓に上る。<br />
マグレ・ド・カナール(胸肉のロースト)や、コンフィ(カモの脂<br />
で煮込み、同じ脂に漬けこんで熟成させた料理)、パテ、リエット<br />
(脂を出した後の繊維)、砂肝のサラダなど、バリエーション豊か<br />
だ。<br />
オー・ラングドック地方自然公園内で生産されているラコーヌ<br />
Lacaune のハムやソーセージなど豚肉加工品も丁寧な仕事ぶりが味<br />
わえる一品である。ガスコーニュの黒豚は、一生を自然の中で過ご<br />
す放牧豚でジューシーで上品な旨味のある肉が特徴。また、ガルビ<br />
ュール garbure も是非試したい郷土料理だ。ジャガイモ、キャベツ、<br />
タルブ産白インゲン豆、スネ肉のハムなどを入れて煮込んだ栄養た<br />
っぷりのスープで、ピレネー山脈の料理だ。<br />
そして、いよいよ真打ちトゥールーズのカスレ cassoulet の登場。<br />
思わず、敬意を表して黙々と食べてしまう料理である。タルブ産白<br />
インゲン豆、カモのコンフィ、豚のスネ肉、ソーセージ、各種ハー<br />
ブ、ニンニク、ナツメグなどを入れた煮込みで、正しく作ろうと思<br />
ったら調理に非常に時間がかかる。陶製の椀に入れて供す。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
黒いダイヤモンドと赤い黄金<br />
希少で繊細な贅沢品、ケルシー産の黒<br />
トリュフとサフランのことである。一<br />
方は香りを楽しむ食品、一方はスパイ<br />
スだが、両方ともロット県の産物であ<br />
る。<br />
黒トリュフは冬に収穫する。犬や豚の<br />
嗅覚に頼って探させるのだ。ラルバン<br />
クのマルシェ marché <strong>de</strong> Lalbenque は<br />
「味の景勝地」に認証されているマル<br />
シェだが、そこでは 1 キロあたり 300<br />
から 700 ユーロ、と値段に幅がある。<br />
ロット県では年間約3トンから 10 トン<br />
の生産があり、その品質は折り紙つき。<br />
フランス料理を世界に知らしめる一員<br />
を担っている<br />
一方のサフランだが、ケルシーにおけ<br />
るサフランの歴史は中世の十字軍の時<br />
代にまでさかのぼることができるほど<br />
古い。10 月になるとサフランの開花が<br />
始まり、丁寧な手作業により薄紫色の<br />
花から赤い雌しべが採取されていく。<br />
1グラムおよそ 30 ユーロで販売されて<br />
いるが、1グラムのサフランを採取す<br />
るのに 200 本分の花が必要であること<br />
を知れば納得できる値段である。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
フォワグラのマルシェ<br />
ジモン Gimont、セッサン Seissan、<br />
サ マ タ ン Samatan 、 フ ル ラ ン ス<br />
Fleurance…ジェルス県の村々では 11<br />
月になると翌年3月までフランスでも<br />
珍しいフォワグラのマルシェがたつ。<br />
開催開始時には笛が鳴るなど、伝統を<br />
感じられるマルシェで、厳しい品質チ<br />
ェックなども昔からのしきたりだ。<br />
マルシェはフォワグラや「お嬢さん」<br />
(鶏ガラの詩的な名称)を求める人々<br />
で大変な賑わい。マグレ・ド・カナー<br />
ルやコンフィを自分で作るなら、レシ<br />
ピやアドバイスを生産者から聞き出す<br />
絶好の機会だ。<br />
15
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
グルメとイベント<br />
高級食材<br />
母乳で育てられたケルシー産子羊や平飼いで知られるジェルスの鶏、<br />
ガスコーニュ牛とも呼ばれるオブラック牛、母乳だけで育てるアヴェ<br />
ロンの子牛やセガラの子牛…などまだまだ試したい食材は豊富だ。牛<br />
肉に関して言えば、ミディ・ピレネーの牛はすべて生産データ追跡シ<br />
ステムで履歴が保証されているほか、アニマルウェルフェアも遵守、<br />
餌は人口餌ではなく牧草が与えられている。<br />
チーズプレートが運ばれてきた。原料乳が牛のチーズだけではなく<br />
ヤギやヒツジの乳から作るチーズなど、垂涎もののチーズが並ぶ。ロ<br />
カマドゥール Rocamadour のとろけるような丸いチーズ。チーズセ<br />
ラーの奥で長い時間をかけてゆっくり熟成させた青カビチーズのロッ<br />
クフォール Roquefort とコースのブルーチーズ Bleu <strong>de</strong>s Causses。<br />
アリ エージュ県 のセラーの良 い香りがす る トム・デ・ ピレネー<br />
tomme <strong>de</strong>s Pyrénées。オブラックに伝わる伝統的な手法で作られた<br />
ライオールチーズ fromage <strong>de</strong> Laguiole などである。<br />
食へのこだわりは、ミディ・ピレネーでは時に突飛な形で現れる。<br />
例えば、作るのに何時間も暖炉の火の前でつきっきりとなるガトー・<br />
ア・ラ・ブロッシュ gâteau à <strong>la</strong> broche。パスティス・ガスコン<br />
pastis gascon は非常に薄い層を重ねたパイ菓子だが、作るにはやは<br />
り並はずれた器用さを要求される。<br />
完熟したところで収穫し、夏の間ずっと楽しめるケルシーQuercy<br />
やレクトール <strong>Le</strong>ctoure のメロンも甘くてジューシーな果肉で有名だ。<br />
そし て、もうひ とつ、グルメ を喜ばせる フルーツが モ ワサック<br />
Moissac のブドウ、シャスラ Chasse<strong>la</strong>s である。フランス国内で一<br />
番知られているブドウであり、シャスラのように AOC 原産地統制呼<br />
称を受けている果物はほかにあまりない。<br />
ミディ・ピレネーで食事をするのに美味しいワインは欠かせない。<br />
カオール Cahors、ガイヤック Gail<strong>la</strong>c、フロントン Fronton、マデ<br />
ィラン Madiran、マルシアック Marcil<strong>la</strong>c などの AOC ワイン。これ<br />
ら高級ワインは系統樹をたどれば古代にまでさかのぼることができる。<br />
これらのワインのアロマや色、舌触りを語り始めたら止まらないに違<br />
いない。<br />
ミディ・ピレネーは有料品質限定ワイン VDQS カテゴリーのワイン<br />
(AOC のワンランク下のカテゴリー)も豊富だ。コート・ド・サン<br />
=モン Côtes <strong>de</strong> St-Mont、コート・ド・ブリュオワ Côtes <strong>de</strong><br />
Brulhois、エントレーグ Entraygues、フェル Fel、エスタン Estaing、<br />
コート・ド・ミヨーCôtes <strong>de</strong> Mil<strong>la</strong>u などが挙げられる。またコー<br />
ト・デュ・タルン Côtes du Tarn 、 コ ン テ ・ ト ロ サ ン Comté<br />
Tolosan、コート・ド・ガスコーニュ Côtes <strong>de</strong> Gascogne など、ヴ<br />
ァン・デュ・ペイのカテゴリーも捨てがたい美味しさを誇る。<br />
さて、この香り豊かな变事詩を締めくくるのはアルマニャックであ<br />
る。14 世紀に考案された芳醇なブランデーだ。ジェルス県で生産さ<br />
れ て いる この アル マニ ャッ ク<br />
Armagnac があるからこそフラ<br />
ンスはアール・ド・ヴィーヴル<br />
の国であると認められている、<br />
と言っても過言ではない。<br />
マジック・タッチ<br />
自然の叡智と人間の英知を掛け合わせ<br />
た結果がロックフォールチーズ。力強<br />
くかつ繊細な味のロックフォールは、<br />
フランスで AOC 原産地統制呼称を受け<br />
た初めてのチーズである。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
シェフたちと食材。極上の極上。<br />
ミディ・ピレネーは実に 106 項目の<br />
食品が公的機関によって品質を保証さ<br />
れており、フランスの地方でトップで<br />
ある。13 の AOC 原産地統制呼称があ<br />
り、20 品目がラベル・ルージュを受<br />
け、数多くの農産物が適合性証明書の<br />
発行を受けているか、原産地名称保護<br />
制度に基づいている。<br />
もてなしの心にあふれている土地柄、<br />
多くのシェフがミディ・ピレネーで店<br />
を開いており、非常に評判が高い店も<br />
多い。ライオル村のミッシェル・ブラ<br />
Michel Bras やトゥールーズのミッシ<br />
ェル・サラン Michel Sarran はミシ<br />
ュランガイドでも最高のランクだ。地<br />
方内には 20 軒ほどミシュランの星付<br />
きレストランがあるが、その他にも創<br />
造性に富んだ店は多い。<br />
16
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
グルメとイベント<br />
主なイベント<br />
ミディ・ピレネー地方の人々は、あらゆる機会を見つけてはお祭<br />
り騒ぎをするのが大好き。音楽イベント、文化イベント、さまざま<br />
なフェスティバルや祭りが開催されている。<br />
地方内で開催されるフェスティバルは 100 以上もあるので、ここ<br />
ではフランス内外で話題をさらう評判のイベントのみをいくつか紹<br />
介する。まずはマルシアック・ジャズフェスティバル Jazz in<br />
Marciac。キース・ジャレット、ディー・ディー・ブリッジウォー<br />
ター、ダイアン・リーヴス、ウィントン・マルサリスなど世界各国<br />
から一流のジャズプレーヤーが集うフェスティバルである。スイヤ<br />
ック・ジャズフェスティバル Souil<strong>la</strong>c en Jazz やモントーバン・ジ<br />
ャズフェスティバル Jazz à Montauban でも熱気に満ちたスウィン<br />
グが楽しめる。モントーバンではフランスのシャンソンのフェステ<br />
ィバル、アロール・シャント!(さあ、歌って)Alors … chante !<br />
も開催されている。才能ある若い歌手からベテランまでが参加する<br />
人気の高いフェスティバル。カウボーイブーツとカウボーイハット<br />
で参加したいのが、ミランド Miran<strong>de</strong> で開催されるカントリーミュ<br />
ージック・フェスティバル Festival <strong>de</strong> Country Music。トゥール<br />
ーズでは、ガロンヌ河沿いにある公園プレリー・デ・フィルトルで<br />
リオ・ロコ Rio Loco というイベントが開催され、毎年、スペイン<br />
やブラジル、セネガルなど一カ国が特別招待国となり、10 日間熱気<br />
に包まれる。<br />
まったく趣きの違ったフェスティバルがサン・セレ Saint-Céré で<br />
開催される歌曲フェスティバル Festival Lyrique <strong>de</strong> Saint-Céré。<br />
毎年見事なプログラムで開催されている。サン・ベルトラン・ド・<br />
コマンジュ Saint-Bertrand-<strong>de</strong>-Comminges では、コマンジュ・<br />
フェスティバル Festival du Comminges、サン・リジエ Saint-<br />
Lizier ではサン・リジエ・フェスティバル Festival <strong>de</strong> Saint-Lizier、<br />
といずれも町の大聖堂でクラシック音楽フェスティバルが開催され<br />
ている。開催場所の厳かさ、レパートリーと参加する歌手の素晴ら<br />
しさで人気が高い。<br />
そして、最高の宗教音楽を聴くことができるのが、シルヴァネス<br />
宗教音楽祭 Festival <strong>de</strong> Sylvanès。トゥールーズでもさまざまなク<br />
ラシック音楽フェスティバルが開催されているが、ピアノ・オ・ジ<br />
ャコバン Piano aux Jacobins は、フランスで初めてピアノだけに焦<br />
点を当てたフェスティバルである。また、パイプオルガンの音楽祭<br />
トゥールーズ・レ・ゾルグ Toulouse les Orgues は、期間中、市内<br />
と郊外に場所を交互に変えて毎晩開催される。<br />
マジック・タッチ<br />
フランス内外で定評のある音楽祭マル<br />
シアックのジャズフェスティバル。場<br />
内は凄まじい熱気と興奮の渦に包まれ<br />
る。ジャズ界のスターたちも観客もみ<br />
な、甘い陶酔に浸り、熱狂する。<br />
ミディ・ピレネー特有のもの<br />
名所旧跡で行われる音楽祭<br />
ミディ・ピレネーではホールだけが音<br />
楽祭の会場ではない。サン・ベルトラ<br />
ン・ド・コマンジュ Saint-Bertrand-<br />
<strong>de</strong>-Comminges や サ ン ・ リ ジ エ<br />
Saint-Lizier の大聖堂、コンクの教会、<br />
トゥールーズのジャコバン修道院 <strong>Le</strong><br />
cloître <strong>de</strong>s Jacobins やカレンナック<br />
Carennac の 修 道 院 の 回 廊 、 フ ォ ワ<br />
Foix の城壁などがまずは会場となるの<br />
である。アヴェロン県南部にあるシル<br />
ヴァネスの修道院 Abbaye <strong>de</strong> Sylvanès<br />
もしばしば文化イベントに使われる。<br />
この孤高のシトー派修道院が活気づく<br />
のは8月のフェスティバル開催時だけ<br />
ではない。聖歌や歌曲など声楽にとっ<br />
て欠かせない場所となっている。<br />
…<br />
17
ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
グルメとイベント<br />
主なイベント<br />
そのほかにもめくるめくような夜を過ごせるイベントが相次ぐ。<br />
ヴァランス・ダジャン Valence d'Agen では、300 人以上もの俳優<br />
がガロンヌ運河にかかる橋の上で時代劇を演じる野外イベント、<br />
オ・フィル・ド・ロー、ユンヌ・イストワール(水の流れにのって、<br />
歴史物語)Au fil <strong>de</strong> l'eau, une histoire が行われる。脚本やセリフ<br />
も優れており、花火も上がって豪華で幻想的なイベント。フラニャ<br />
ック F<strong>la</strong>gnac においても野外演劇イベント、イエール、アン・ヴィ<br />
ラージュ(昨日、ある村)Hier, un vil<strong>la</strong>ge が開催される。俳優たち<br />
が、100 年前のこの村の喜びや悲しみを表現する。特殊効果も使っ<br />
た大掛かりなイベントである。コルド・シュル・シエル Cor<strong>de</strong>s-<br />
sur-Ciel で開催されるのは鷹ショーを中心としたフェスティバル、<br />
フェット・デュ・グラン・フォコニエ Fêtes du Grand Fauconnier。<br />
1222 年にできたこの要塞でパレードや路地などで行われるイベン<br />
ト、展示会などが催される。フォワ伯爵ガストン・フェビュが暮ら<br />
した城下で開催されるのは中世の祭りフォワ、テール・ディストワ<br />
ール Foix, Terre d'Histoire。先史時代からフォワ伯爵の治世、そし<br />
て革命までのアリエージュ県の豊かな歴史が語られる。<br />
ヴィック・フザンサック Vic-Fezensac では聖霊降臨の祝日に闘<br />
牛 Feria <strong>de</strong> Pentecôte が行われる。長い歴史があり、情熱で、なお<br />
かつ敬意と誠意が込められた祭りである。闘牛の次に行われるのが、<br />
ラテン音楽祭 Festival Tempo Latino。ヴィック・フザンサックの<br />
豊富な自然の中でラテンの音が心地よく響く音楽祭だ。さらに、生<br />
き る 喜 び に あ ふ れ た イ ベ ン ト を 二 つ 紹 介 し よ う 。 リ ュ シ ョ ン<br />
Luchon で 開 催 さ れ るフラ ワ ー ・ フェ ス テ ィバ ル Bataille <strong>de</strong>s<br />
Fleurs <strong>de</strong> Luchon は、フランスの劇作家エドモン・ロスタンが沿道<br />
で花を投げ合ったことから始まった花合戦。またヴァウールで開催<br />
されるバーレスク国際演劇祭 l'Eté <strong>de</strong> Vaour は毎年何千人もの人を<br />
笑いの渦に巻き込む。<br />
ミディ・ピレネーの情緒を味わう<br />
マルシェと祭り<br />
ミディ・ピレネーの青空の下、雰囲気<br />
のある町や村でいくつものマルシェが<br />
開かれている。フィジャック Figeac、<br />
カオール Cahors、ルヴェル Revel、ヴ<br />
ィ ル フ ラ ン シ ュ ・ ド ・ ル エ ル グ<br />
Villefranche-<strong>de</strong>-Rouergue などで開催<br />
されるマルシェは取り扱う農産物も多<br />
く、評判が高いマルシェだ。プラタナ<br />
スの陰になった涼しいマルシェで、あ<br />
るいは屋根付き市場で、ミディ・ピレ<br />
ネーの人々の温かい心に触れよう。美<br />
味しいものをみんなで食べるのが大好<br />
きな人々だ。<br />
マルシェからそのまま特産品の祭りと<br />
なっているものも多い。ロートレック<br />
Lautrec ではピンクニンニク、ボーモ<br />
ン ・ ド ・ ロ マ ー ニ ュ Beaumont-<strong>de</strong>-<br />
Lomagne の 白 ニ ン ニ ク 、 カ ド ゥ ー ル<br />
Cadours の紫ニンニクの祭りがそれぞれ<br />
行われている。桃、ブドウ、イチゴな<br />
どのタルン・エ・ガロンヌ県のフルー<br />
ツもモワサック Moissac のマルシェを<br />
賑 わ せ て い る 。 ロ カ マ ド ゥ ー ル<br />
Rocamadour ではチーズ祭り fête <strong>de</strong>s<br />
fromages、ラコーヌ Lacaune ではソー<br />
セージ祭り fête <strong>de</strong> <strong>la</strong> charcuterie、<br />
リ ュ ズ ・ サ ン ・ ソ ヴ ー ル Luz-St-<br />
Sauveur ではスペアリブ祭り <strong>la</strong> fête<br />
<strong>de</strong>s côtelettes など面白い祭りがたく<br />
さんある。トリー・シュル・バイズの<br />
豚祭りも捨てがたい。<br />
ジェルス県では、夜間に行われている<br />
マルシェが評判だ。7 月と8月の夏の間<br />
は日が長い。バカンス客も地元客も、<br />
生産者のスタンドや出店をのぞきなが<br />
ら長い夏の夜を楽しむ。ミディ・ピレ<br />
ネー地方らしい夏の過ごした方。<br />
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ベスト オブ ミディ・ピレネー<br />
数字で知るミディ・ピレネー<br />
人口 286 万 2700 人<br />
毎年1万 5000 人が新規に転入<br />
面積4万 5348 ㎢ (フランスで最も広い地方)<br />
8つの県から構成される。アリエージュ県 Ariège、アヴェロン県 Aveyron、ジェルス県 Gers、<br />
オート・ガロンヌ県 Haute-Garonne、オート・ピレネー県 Hautes-Pyrénées、ロット県 Lot、<br />
タルン県 Tarn、タルン・エ・ガロンヌ県 Tarn-et-Garonne<br />
フランス人の(沿岸地域を除く)国内旅行先第 3 位。(私的旅行)<br />
外国人観光客の訪問先、地方別では6位。マーケットシェア 4.3%<br />
例年、ミディ・ピレネー地方における宿泊日数は 8550 万泊を数える。うち、43%が 7 月、<br />
8月に集中。<br />
フランス人観光客は 85%、外国人観光客は 15%<br />
外国人旅行客の 56%はオランダ人、イタリア人、イギリス人<br />
トゥールーズ・ブラニャック空港から 78 の国外デスティネーションへと結び、うち 17 都市<br />
はヨーロッパ。フランス国内線も 15 路線がある。<br />
観光産業における雇用は 3 万 3500 人<br />
31 の村が「フランスの最も美しい村」に指定されている。<br />
5つの町や地域が「芸術と歴史地区」に認定されている。<br />
ロカマドゥール Rocamadour およびガヴァルニー圏谷 Cirque <strong>de</strong> Gavarnie の2か所の観光名所<br />
が「フランスの偉大なる名所 Grands Sites <strong>de</strong> <strong>France</strong>」に認定されている。<br />
ユネスコ世界遺産に指定されている名所は 5 ヵ所。ミディ運河 Canal du Midi、ガヴァルニー<br />
圏谷 Cirque <strong>de</strong> Gavarnie、サンチャゴ・デ・コンポステーラ巡礼街道 Chemins <strong>de</strong> Saint-<br />
Jacques <strong>de</strong> Compostelle(街道沿いの史跡)、アルビの司教都市 Cité Episcopale d’Albi、<br />
コースとセヴェンヌ(地中海の農耕・牧畜の文化的景観)Causses et Cévennes<br />
ミディ・ピレネー地方の 17%が、国立公園ないしは地方自然公園に指定されている。<br />
13 の AOC 原産地統制呼称がある。<br />
ミシュランガイド星付きシェフが 25 人。<br />
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