咀嚼筋腱腱膜過形成症の病態に関する組織学的検討 ... - 埼玉医科大学

T10堀 直 子に 対 して, 各 種 組 織 学 的 観 察 および 免 疫 組 織 化 学 的 観察 , 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 を 用 いた 筋 組 織 の 微 細 構 造 の 観察 ならびに 卓 上 型 電 子 顕 微 鏡 における 腱 組 織 表 面 構 造の 観 察 ,さらに 腱 組 織 の 元 素 組 成 分 析 により, 腱 および 腱 膜 の 過 形 成 や 組 織 学 的 な 変 性 の 有 無 について 観 察し, 本 疾 患 の 病 態 について 検 討 を 行 ったので 報 告 する.材 料 および 方 法対 象疾 患 群 は 本 疾 患 患 者 のうち, 側 頭 筋 腱 膜 部 分 切 除 術を 行 った6 名 ( 女 性 6 名 ; 平 均 年 齢 44.7 歳 , 術 前 最 大開 口 域 20 ~ 32 mm)である. 対 照 群 は 外 科 矯 正 手 術 を行 った, 開 口 制 限 のない 顎 変 形 症 患 者 6 名 ( 男 性 2 名 ,女 性 4 名 ; 平 均 年 齢 26.3 歳 )とした. 両 群 ともに, 他 の内 科 的 基 礎 疾 患 , 関 節 疾 患 , 代 謝 性 疾 患 を 有 さないものとした. 組 織 検 体 としては, 筋 突 起 周 辺 の 側 頭 筋 腱組 織 を 採 取 した.なお, 本 学 倫 理 委 員 会 の 承 認 ( 埼 玉 医 科 大 学 医 学 部倫 理 委 員 会 承 認 番 号 No.595)を 得 た 上 で, 当 該 患 者 に対 して 本 研 究 に 関 する 十 分 な 説 明 を 行 い, 研 究 実 施 に対 する 同 意 を 得 た.組 織 学 的 , 免 疫 組 織 化 学 的 観 察 および 元 素 組 成 分析 は, 全 検 体 に 対 して 行 った. 透 過 型 電 子 顕 微 鏡 を用 いた 構 造 観 察 と 卓 上 電 子 顕 微 鏡 を 用 いた 表 面 構 造 観察 は, 対 照 群 1 検 体 ( 対 照 群 2), 疾 患 群 側 頭 筋 腱 検 体 2検 体 ( 疾 患 群 1・ 疾 患 群 6)に 対 してのみ 行 った( 表 1).組 織 学 的 観 察筋 を 含 む 腱 組 織 を10% 中 性 緩 衝 ホルマリンにて48時 間 固 定 し,エタノール 系 列 にて 脱 水 後 ,パラフィン包 埋 とした. 滑 走 式 ミクロトームで 厚 さ2.5 μmに 薄切 し た 組 織 に 対 し,Hematoxylin-Eosin(H-E) 染 色 ,Toluidine blue 染 色 ,Von kossa 染 色 ,Azan 染 色 を 行 い,光 学 顕 微 鏡 にて 観 察 した.免 疫 組 織 化 学 的 観 察組 織 学 的 観 察 と 同 じパラフィン 包 埋 標 本 を 使 用 し,滑 走 式 ミクロトームで 厚 さ2.5 μmに 薄 切 した 組 織 を 使用 した. 腱 分 化 に 関 与 するとされる 因 子 のマーカーとして, 抗 GDF5 抗 体 , 抗 Smad8 抗 体 , 抗 Tenomodulin抗 体 ( い ず れ もSanta Cruz Biotechnology 社 製 )を用 いた.ヒストファイン シンプルステイン MAX-PO(G)(ニチレイ・バイオサイエンス 社 製 )による 免 疫組 織 化 学 染 色 を 行 い, 光 学 顕 微 鏡 にて 観 察 した.なお, 陰 性 対 象 (Negative control)には, 一 次 抗 体として 使 用 した 各 抗 体 の 代 替 に,PBSを 使 用 し, 同 様の 手 順 で 染 色 を 行 った.透 過 型 電 子 顕 微 鏡 による 観 察筋 組 織 を2.5%グルタールアルデヒド(0.1Mリン 酸緩 衝 液 )および1% 四 酸 化 オスミウム(0.1Mリン 酸 緩 衝液 )にて 固 定 し,エタノール 系 列 にて 脱 水 後 ,エポン樹 脂 包 埋 した. 組 織 超 薄 切 片 を 作 成 し, 酢 酸 ウラン 飽和 液 ならびにクエン 酸 鉛 液 にて 電 子 染 色 を 施 した 後 ,透 過 型 電 子 顕 微 鏡 JEM-1010 型 ( 日 本 電 子 )にて, 筋 線維 ならびに 脈 管 周 囲 組 織 を 中 心 に 観 察 を 行 った.卓 上 電 子 顕 微 鏡 による 観 察腱 組 織 を10% 中 性 緩 衝 ホルマリンにて 固 定 し,エタノールで 脱 水 後 , 組 織 表 層 にオスミウム 蒸 着 処 理 を行 い, 卓 上 電 子 顕 微 鏡 Miniscope ® TM-1000S( 日 立 製作 所 )にて 腱 表 面 構 造 の 観 察 を 行 った.元 素 組 成 分 析腱 組 織 の 元 素 組 成 分 析 には, 組 織 学 的 , 免 疫 組 織 化学 的 観 察 と 同 じパラフィン 包 埋 標 本 を 使 用 した. 滑 走式 ミクロトームで 厚 さ2.5 μmに 薄 切 した 組 織 を, 脱 パラフィン 処 理 した.あらかじめ 行 ったH-E 染 色 ,Vonkossa 染 色 の 結 果 から 元 素 組 成 分 析 を 行 う 部 位 を 決 定した.この 観 察 試 料 を, 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 用 のアルミニウム 製 試 料 台 上 に,カーボンテープを 用 いて 固 定 し,表 1. 対 象対 照 群 ・ 疾 患 群 ともに 全 て 側 頭 筋 を 対 象 とした.