流出解析の基礎情報としての細密DEM - 東京大学空間情報科学研究 ...
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「デジタル 観 測 手 法 を 統 合 した 里 山 の GIS 解 析 」<br />
空 間 情 報 科 学 研 究 センターシンポジウム<br />
流 出 解 析 の 基 礎 情 報 としての 細 密 DEM<br />
杉 盛 啓 明 ( 東 京 大 学 空 間 情 報 科 学 研 究 センター)<br />
本 稿 では, 山 地 や 丘 陵 地 における 流 出 解 析 に,レーザレーダ 測 量 により 得 られた 高 解 像 度 の DEM( 空 間 解 像 度<br />
50cm)を 利 用 する 可 能 性 について 検 討 した.まず, 流 域 斜 面 形 状 の 再 現 性 に 優 れている 等 高 線 モデルを, 東 京 大 学 農<br />
学 部 附 属 愛 知 演 習 林 内 の 小 流 域 に 適 用 した.その 際 には,GIS による 平 滑 化 処 理 を 用 いることにより,レーザレーダ 測 量<br />
データに 含 まれる 微 細 な 凹 凸 を 効 率 的 に 除 去 した.また, 流 出 解 析 に 必 要 な 地 表 面 の 形 状 データを 得 るために, 樹 冠 面<br />
を 捉 えたオリジナルデータから 地 表 面 を 推 定 する 方 法 について 検 討 した. 現 地 で 樹 高 計 測 を 行 ったところ, 尾 根 部 より 谷<br />
部 で 樹 木 が 高 い 傾 向 が 認 められ, 地 表 面 推 定 の 際 には 地 形 条 件 による 樹 高 分 布 の 相 違 を 考 慮 すべきことが 判 明 した.<br />
1.はじめに<br />
流 域 における 流 出 過 程 を 解 析 する 上 で,DEM ( Digital<br />
Elevation Model)は 流 域 の 起 伏 形 状 を 表 現 する 基 礎 的 情 報 として<br />
重 要 である.しかし,これまで 国 内 で 流 通 してきた 代 表 的 な DEM<br />
である「 数 値 地 図 50mメッシュ( 標 高 )」( 国 土 地 理 院 発 行 )では, 起<br />
伏 の 激 しい 丘 陵 地 における 微 地 形 や 流 域 面 積 の 再 現 性 に 限 界 が<br />
あり( 小 口 ・ 勝 部 ,2000), 流 出 解 析 における 流 出 量 ・ 貯 留 量 ・ 洪 水<br />
到 達 時 間 などの 算 出 精 度 に 影 響 を 及 ぼすと 思 われる.そこで 今<br />
回 は,レーザレーダ 測 量 により 得 られた 空 間 解 像 度 50cmのDEM<br />
( 坪 井 ・ 村 手 ,2000)を 用 いて, 流 出 解 析 に 必 要 な 地 形 情 報 を 入 手<br />
する 可 能 性 について 検 討 した.<br />
DEM<br />
Fill Sinks<br />
Flow Direction<br />
Flow Accumulation<br />
Stream Line<br />
図 1 グリッドモデルにおけるトポロジー 構 築 手 順<br />
2. . 解 析 方 法<br />
DEM をもとに 流 出 過 程 のトポロジーを 構 築 する 方 法 には,グリ<br />
ッドモデルとベクターモデル( 等 高 線 モデル)の 2 タイプがある.<br />
DEM は 格 子 状 であることが 多 いため, 従 来 はグリッドモデルによ<br />
るトポロジー 構 築 が 多 用 されてきた.その 手 順 は 図 1の 通 りであり,<br />
GISアプリケーションを 用 いて 容 易 に 構 築 することができる( 図 2).<br />
このようにグリッドモデルはアルゴリズムが 確 立 されているというメ<br />
リットがある.しかし, 斜 面 に 沿 った 流 出 過 程 の 再 現 性 という 観 点<br />
からは, 等 高 線 およびそれと 直 交 する 境 界 線 で 斜 面 要 素 を 構 成<br />
するベクターモデルの 方 が, 流 下 方 向 が 限 定 されてしまうグリッド<br />
モデルよりも 優 れているといえる.そこで 今 回 はベクターモデルの<br />
適 用 を 試 みた.<br />
3. . 結 果<br />
解 析 対 象 地 域 は, 東 京 大 学 農 学 部 附 属 愛 知 演 習 林 内 の 小 流<br />
域 である( 図 3).<br />
レーザレーダ 測 量 データ( 以 下 ,50cm-DEM と 称 する)を 用 い<br />
て 1m 間 隔 の 等 高 線 を 生 成 してみたところ, 図 4 のように 微 小 な 閉<br />
曲 線 が 数 多 く 含 まれていた.これは,50cm-DEM が 樹 冠 面 の 形 状<br />
を 表 現 しているために, 個 々の 樹 木 が 閉 曲 線 として 表 されている<br />
と 解 釈 できる.しかし, 流 出 解 析 で 必 要 となるのは 樹 冠 面 ではなく<br />
地 表 面 であるため, 何 らかの 形 で 樹 木 の 影 響 を 除 去 し, 地 表 面 を<br />
推 定 する 必 要 がある.<br />
そこで,GIS の 平 滑 化 機 能 を 用 いて 樹 木 に 由 来 する 微 細 な 凹<br />
凸 を 除 去 する 処 理 を 行 った( 図 5).これは, 樹 冠 面 に 比 較 して 地<br />
表 面 の 凹 凸 は 滑 らかであるという 考 えに 基 づいている. 平 滑 化 さ<br />
れたデータから, 図 6 のような 等 高 線 モデルが 得 られた.<br />
- 27 -
Filled DEM<br />
Flow Direction<br />
1<br />
2<br />
4<br />
8<br />
16<br />
32<br />
64<br />
128<br />
Flow Accumulation<br />
0 - 46.556<br />
46.556 - 93.111<br />
93.111 - 139.667<br />
139.667 - 186.222<br />
186.222 - 232.778<br />
232.778 - 279.333<br />
279.333 - 325.889<br />
325.889 - 372.444<br />
372.444 - 419<br />
Stream Line<br />
図 2 GIS を 用 いたグリッドモデルによるトポロジー 構 築<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
<br />
図 3 レーザレーダ 測 量 により 得 られた 対 象 流 域 の 50cm-DEM<br />
- 28 -
地 表 面 の 高 さを 得 るためには, 凹 凸 の 平 滑 化 とともに, 樹 冠 面<br />
データから 樹 高 を 差 し 引 く 必 要 がある.そこで, 現 地 で 樹 高 を 計<br />
測 した( 図 7).その 結 果 , 尾 根 部 よりも 谷 部 で 樹 木 が 高 い 傾 向 が<br />
認 められ,2 次 曲 線 による 近 似 を 行 うと, 谷 と 尾 根 の 樹 高 差 が 中 ・<br />
上 流 では 約 6~7m になり, 下 流 では 約 11m になるという 結 果 が 得<br />
られた. 今 回 幸 運 にも, 現 地 測 量 による 対 象 流 域 の 等 高 線 データ<br />
が 入 手 できたので,それと 上 記 の 樹 冠 面 データとの 差 を 求 めたと<br />
ころ, 尾 根 と 谷 の 樹 高 差 についてほぼ 同 様 の 傾 向 が 得 られた( 図<br />
8-(a),(b),(c)).したがって, 今 回 の 手 法 の 妥 当 性 がある 程 度 示 さ<br />
れたと 考 える.<br />
Contours of 50cmdem<br />
Basin boundary<br />
<br />
<br />
4.まとめ<br />
本 報 告 では, 細 密 DEM を 流 出 解 析 に 利 用 する 手 法 を 検 討 す<br />
るために, 等 高 線 モデルによるトポロジー 構 築 や, 樹 冠 面 から 地<br />
表 面 を 推 定 する 方 法 について 検 討 を 行 った. 今 後 は, 対 象 流 域<br />
で 実 施 している 水 文 気 象 観 測 データを 入 力 し, 実 際 に 流 出 解 析 を<br />
行 い, 以 下 の 点 を 明 らかにしたい.<br />
1) DEM の 空 間 解 像 度 による 流 出 現 象 の 再 現 性 の 違 い<br />
2) 樹 冠 面 と 地 表 面 の 形 状 の 違 いによる 流 出 現 象 の 再 現 性 の 違<br />
い<br />
3) 土 地 被 覆 状 態 の 違 いによる 流 出 特 性 の 違 い<br />
【 文 献 】<br />
小 口 高 ・ 勝 部 圭 一 (2000): 細 密 DEM を 用 いた 地 形 解 析 .『デジ<br />
タル 観 測 手 法 を 統 合 した 里 山 の GIS 解 析 ― 東 京 大 学 空 間 情<br />
報 科 学 研 究 センター 公 開 シンポジウム―』, 杉 盛 啓 明 ほか 編 ,<br />
地 域 環 境 GIS 研 究 会 ,19-26.<br />
坪 井 知 美 ・ 村 手 直 明 (2000): レーザレーダ 50cm-DEM の 作 成 方<br />
法 と 精 度 . 『デジタル 観 測 手 法 を 統 合 した 里 山 の GIS 解 析 ―<br />
東 京 大 学 空 間 情 報 科 学 研 究 センター 公 開 シンポジウム―』, 杉<br />
盛 啓 明 ほか 編 , 地 域 環 境 GIS 研 究 会 ,15-18.<br />
図 4 50cm-DEM から 発 生 させた 1m 間 隔 の 等 高 線 ( 拡 大 図 )<br />
Resample<br />
(5mに 解 像 度 を 下 げる)<br />
Smooth<br />
( 曲 面 の 平 滑 化 )<br />
Fill<br />
( 窪 地 処 理 )<br />
図 5 樹 冠 面 から 樹 木 の 影 響 を 除 去 する 処 理 手 順<br />
<br />
<br />
図 6 50cm-DEM の 加 工 編 集 後 に 得 られた 等 高 線 モデル<br />
- 29 -
下 流<br />
中 流<br />
上 流<br />
図 7 樹 高 計 測 を 行 った 測 線 の 位 置<br />
(m)<br />
(m)<br />
400<br />
390<br />
380<br />
370<br />
360<br />
350<br />
340<br />
330<br />
60<br />
50<br />
40<br />
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200<br />
(m)<br />
30<br />
20<br />
10<br />
0<br />
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 200<br />
(m)<br />
(a) 上 流<br />
― 50cmDEMによる 樹 冠 面<br />
― 等 高 線 による 地 表 面<br />
― 樹 冠 面 ( 地 表 面 + 樹 高 )<br />
― 地 表 面<br />
(m)<br />
(m)<br />
350<br />
345<br />
340<br />
335<br />
330<br />
325<br />
320<br />
30<br />
25<br />
20<br />
15<br />
10<br />
5<br />
0<br />
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45<br />
(m)<br />
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45<br />
(m)<br />
(b) 中 流<br />
― 50cmDEMによる 樹 冠 面<br />
― 等 高 線 による 地 表 面<br />
― 樹 冠 面 ( 地 表 面 + 樹 高 )<br />
― 地 表 面<br />
(m)<br />
345<br />
340<br />
335<br />
330<br />
325<br />
320<br />
315<br />
310<br />
305<br />
0 5 10 15 20 25 30 35 40<br />
(m)<br />
30<br />
― 樹 冠 面 ( 地 表 面 + 樹 高 )<br />
25<br />
― 地 表 面<br />
(m)<br />
20<br />
15<br />
10<br />
5<br />
0<br />
0 5 10 15 20 25 30 35 40<br />
(m)<br />
(c) 下 流<br />
― 50cmDEMによる 樹 冠 面<br />
― 等 高 線 による 地 表 面<br />
図 8 樹 冠 面 と 地 表 面 の 高 度 差<br />
- 30 -