28.09.2015 Views

次世代ロボット技術(RT)の 環境構造化に関する ... - 日本ロボット工業会

次世代ロボット技術(RT)の 環境構造化に関する ... - 日本ロボット工業会

SHOW MORE
SHOW LESS
  • No tags were found...

Create successful ePaper yourself

Turn your PDF publications into a flip-book with our unique Google optimized e-Paper software.

<strong>序</strong><br />

わが 国 経 済 の 安 定 成 長 への 推 進 にあたり、 機 械 情 報 産 業 をめぐる 経 済 的 、 社 会 的 諸 条 件 は 急 速<br />

な 変 化 を 見 せており、 社 会 生 活 における 環 境 、 防 災 、 都 市 、 住 宅 、 福 祉 、 教 育 等 、 直 面 する 問 題<br />

の 解 決 を 図 るためには、 技 術 開 発 力 の 強 化 に 加 えて、ますます 多 様 化 、 高 度 化 する 社 会 的 ニーズ<br />

に 適 応 する 機 械 情 報 システムの 研 究 開 発 が 必 要 であります。<br />

このような 社 会 情 勢 に 対 応 し、 各 方 面 の 要 請 に 応 えるため、 財 団 法 人 機 械 システム 振 興 協 会 で<br />

は、 日 本 自 転 車 振 興 会 から 機 械 工 業 振 興 資 金 の 交 付 を 受 けて、 機 械 システムの 調 査 研 究 等 に 関 す<br />

る 補 助 事 業 、 新 機 械 システム 普 及 促 進 補 助 事 業 を 実 施 しております。<br />

特 に、システム 開 発 に 関 する 事 業 を 効 果 的 に 推 進 するためには、 国 内 外 における 先 端 技 術 、あ<br />

るいはシステム 統 合 化 技 術 に 関 する 調 査 研 究 を 先 行 して 実 施 する 必 要 がありますので、 当 協 会 に<br />

総 合 システム 調 査 開 発 委 員 会 ( 委 員 長 政 策 研 究 院 リサーチフェロー 藤 正 巖 氏 )を 設 置 し、 同<br />

委 員 会 のご 指 導 のもとにシステム 技 術 開 発 に 関 する 調 査 研 究 事 業 を 実 施 しております。<br />

この「 次 世 代 ロボット 技 術 (RT)の 環 境 構 造 化 に 関 する 調 査 研 究 報 告 書 」は、 上 記 事 業 の 一<br />

環 として、 当 協 会 が 社 団 法 人 日 本 ロボット 工 業 会 に 委 託 して 実 施 した 調 査 研 究 の 成 果 でありま<br />

す。<br />

今 後 、 機 械 情 報 産 業 に 関 する 諸 施 策 が 展 開 されていくうえで、 本 調 査 研 究 の 成 果 が 一 つの 礎 石<br />

として 役 立 てば 幸 いであります。<br />

平 成 19 年 3 月<br />

財 団 法 人 機 械 システム 振 興 協 会


はじめに<br />

我 が 国 のロボット 産 業 は、 強 い 国 際 競 争 力 を 持 っており、 近 年 のロボットの 技 術 シーズは、 着<br />

実 に 蓄 積 されつつあるが、 新 市 場 を 形 成 するロボットの 新 製 品 が 生 まれないと 言 う 問 題 も 指 摘 さ<br />

れており、この 状 況 を 改 善 するには、ユーザが 真 に 求 めるサービスを 特 定 し、それを 実 現 できる<br />

技 術 を 研 究 開 発 することが 重 要 であると 考 えられる。<br />

また、2006 年 6 月 に 取 りまとめられた「 経 済 成 長 戦 略 大 綱 」において、ロボットは、 我 が<br />

国 が「 世 界 のイノベーションセンター」となるための 新 産 業 群 の1つとして 位 置 づけられており<br />

、ロボット 新 市 場 拡 大 を 目 的 に、 経 済 産 業 省 の「21 世 紀 ロボットチャレンジプログラム」では<br />

、「サービスロボット 市 場 創 出 支 援 事 業 」や「 戦 略 的 先 端 ロボット 要 素 技 術 開 発 プロジェクト」<br />

「 人 間 支 援 型 ロボット 実 用 化 プロジェクト」「 次 世 代 ロボット 共 通 基 盤 開 発 プロジェクト」 等 が<br />

進 められている。<br />

産 業 用 ロボットの 世 界 では、 環 境 を 構 造 化 することによって、 単 純 繰 り 返 し 作 業 能 力 しかない<br />

ロボットでもその 機 能 と 実 用 価 値 、 応 用 範 囲 を 高 めることに 成 功 しているが、これまで 人 間 共 存<br />

環 境 下 の 中 で 動 作 するロボット 実 現 のアプローチは、ロボット 自 体 の 高 機 能 化 を 主 として 進 めら<br />

れてきたが、 現 実 環 境 は 多 様 なため、ロボットはごく 限 られたことしか 出 来 ず、 高 コスト、 大 型<br />

化 にならざるを 得 ず、サービスロボットの 普 及 がなかなか 進 めなかった。<br />

このような 状 況 の 中 で、ロボットが 行 動 する 環 境 側 に、 現 在 、および 近 未 来 のIT 技 術 、コン<br />

ピュータネットワーク 技 術 、ユビキタスコンピュータ 技 術 などを 活 用 し、ロボットが 行 動 する 環<br />

境 側 に、ロボットを 知 能 化 しやすいインフラを 整 備 する 環 境 の 情 報 構 造 化 技 術 が 進 捗 すれば、ど<br />

のような 用 途 にも 応 じられる 共 通 の 情 報 構 造 化 環 境 が 確 立 されると 想 像 されるが、 近 未 来 におい<br />

てこうした 汎 用 的 技 術 を 実 現 することは 困 難 であり、 用 途 に 応 じて、 個 別 に 環 境 構 造 化 技 術 を 追<br />

求 することが 重 要 である。<br />

このような 背 景 を 踏 まえて、「 次 世 代 ロボット 技 術 (RT)の 環 境 構 造 化 に 関 する 調 査 研 究 」<br />

は、RT 構 築 の 基 盤 としての、 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技 術 に 焦 点 を 当 て、 環 境 構 造 化 技 術 とそのロ<br />

ボット 技 術 (RT)での 活 用 法 を 明 らかにするもので、それにより、RTソリューションによる<br />

実 証 システム 事 例 が 多 数 発 掘 され、「21 世 紀 ロボットチャレンジプログラム」などで 取 り 上 げ<br />

るべき 研 究 課 題 が 数 多 く 創 出 されることを 期 待 して、 財 団 法 人 機 械 システム 振 興 協 会 より 委 託 を<br />

受 け 実 施 したものである。<br />

本 調 査 研 究 を 遂 行 するにあたり, 本 調 査 研 究 のために 設 置 された「 次 世 代 ロボット 技 術 環 境 構<br />

造 化 調 査 研 究 専 門 委 員 会 ( 本 委 員 会 )( 委 員 長 : 谷 江 和 雄 ・ 首 都 大 学 東 京 教 授 )」、 並 びに「 公 共<br />

空 間 情 報 構 造 化 WG( 主 査 : 淺 間 一 ・ 東 京 大 学 教 授 )、「 住 宅 情 報 構 造 化 WG( 主 査 : 水 川 真 ・<br />

芝 浦 工 業 大 学 教 授 )」、「 作 業 現 場 情 報 構 造 化 WG( 主 査 : 大 場 光 太 郎 ・( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究<br />

所 グループリーダ)」、「 産 業 用 情 報 構 造 化 WG( 主 査 : 新 井 民 夫 ・ 東 京 大 学 教 授 )」の 委 員 各 位<br />

と 専 門 分 野 から 貴 重 なご 意 見 、ご 指 導 を 賜 った 関 係 各 位 のご 尽 力 に 対 し 心 より 感 謝 申 し 上 げる 次<br />

第 である。<br />

平 成 19 年 3 月<br />

社 団 法 人 日 本 ロボット 工 業 会


目 次<br />

<strong>序</strong><br />

はじめに<br />

目 次<br />

1. 調 査 研 究 の 目 的 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 1<br />

2. 調 査 研 究 の 実 施 体 制 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2<br />

3. 調 査 研 究 の 内 容 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8<br />

第 1 章 生 活 支 援 RTシステムのアプリケーションによる 実 証 システム ‥‥‥‥‥‥ 8<br />

1.1 ロボットタウンの 実 証 的 研 究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 8<br />

1.2 環 境 と 作 業 構 造 のユニバーサルデザイン ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 11<br />

第 2 章 開 発 促 進 戦 略 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14<br />

2.1 公 共 空 間 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14<br />

2.1.1 公 共 空 間 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14<br />

2.1.2 駅 、 空 港 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14<br />

(1) 駅 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 14<br />

(2) 空 港 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 18<br />

2.1.3 図 書 館 、 美 術 館 、 科 学 館 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20<br />

(1) 科 学 館 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 20<br />

(2) 美 術 館 、 博 物 館 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 25<br />

(3) 図 書 館 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 31<br />

2.1.4 商 業 空 間 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 34<br />

(1) 大 型 商 業 施 設 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 34<br />

2.1.5 官 庁 、オフィス ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 38<br />

(1) 官 庁 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 38<br />

(2)オフィス ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 42<br />

2.1.6 公 共 空 間 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 ‥‥‥‥‥ 45<br />

2.1.7 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 49<br />

2.2 住 宅 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 53<br />

2.2.1 住 宅 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 53<br />

2.2.2 高 齢 者 支 援 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 54<br />

(1)80 歳 の 単 身 世 帯 者 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 54<br />

2.2.3 共 働 き 支 援 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 62<br />

(1) 二 人 の 子 供 を 持 つ 共 働 き 世 帯 者 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 62<br />

2.2.4 住 宅 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 ‥‥‥‥‥‥‥ 68<br />

2.2.5 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 80<br />

2.3 作 業 現 場 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 86<br />

2.3.1 作 業 現 場 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 86<br />

2.3.2 建 築 分 野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 86<br />

(1) 建 築 工 事 における 現 場 監 督 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 86<br />

(2) 建 築 工 事 作 業 に 携 わる 協 力 会 社 の 職 長 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 91<br />

2.3.3 土 木 分 野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 93<br />

(1) 建 設 機 械 工 事 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 93<br />

2.3.4 農 業 分 野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 98<br />

(1) 稲 作 ( 屋 外 ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 98<br />

(2)カンキツ( 屋 外 ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 101


(3) 高 設 栽 培 イチゴ( 屋 内 ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 104<br />

(4)トマト( 屋 内 ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 107<br />

2.3.5 災 害 分 野 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 111<br />

(1) 大 都 市 大 震 災 での 救 助 支 援 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 111<br />

(2) 地 下 街 における 化 学 剤 漏 洩 災 害 対 応 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 115<br />

(3) 化 学 プラント 事 故 対 策 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 118<br />

(4) 交 通 機 関 における 事 故 対 策 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 120<br />

2.3.6 作 業 現 場 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 ‥‥‥‥‥ 121<br />

2.3.7 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 122<br />

2.4 産 業 用 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 124<br />

2.4.1 産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 124<br />

2.4.2 作 業 構 築 を 中 心 とする 環 境 構 造 化 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 130<br />

(1) 汎 用 つかみ 機 構 の 開 発 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 130<br />

(2) 掴 み 機 構 データベースの 構 築 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 132<br />

(3)エンドエフェクタ 制 御 動 作 環 境 の 充 実 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 134<br />

(4)ロボット・ 環 境 配 置 設 計 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 135<br />

(5) 教 示 自 動 化 のための 情 報 埋 め 込 み ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 137<br />

(6) 環 境 構 造 化 による 物 流 インタフェース 支 援 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 139<br />

2.4.3 ビジョン・センシングを 中 心 とする 環 境 構 造 化 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 139<br />

(1)DfVision: ビジョンセンサ 用 の 設 計 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 139<br />

(2)ポカミス 防 止 のための 環 境 構 造 化 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 141<br />

(3) 安 全 のための 作 業 者 の 動 作 計 測 ・ 予 測 とロボット 制 御 ‥‥‥‥‥‥ 143<br />

2.4.4 産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 ‥‥‥‥‥‥ 146<br />

2.4.5 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 146<br />

第 3 章 環 境 構 造 化 における 標 準 化 案 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 148<br />

3.1 はじめに ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 148<br />

3.2 関 連 する 標 準 化 動 向 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 148<br />

3.2.1 NRF(ネットワークロボットフォーラム)‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 148<br />

3.2.2 RTミドルウェア ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 150<br />

3.2.3 その 他 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 151<br />

3.3 シナリオ 事 例 に 基 づく 検 討 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 153<br />

3.3.1 基 本 フレームワーク ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 153<br />

3.3.2 公 共 空 間 で 想 定 される 標 準 化 要 素 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 154<br />

3.3.3 住 宅 環 境 で 想 定 される 標 準 化 要 素 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 154<br />

3.3.4 作 業 現 場 で 想 定 される 標 準 化 要 素 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 154<br />

3.3.5 製 造 現 場 で 想 定 される 標 準 化 要 素 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 155<br />

4. 調 査 研 究 の 成 果 (まとめ) ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 156<br />

5. 調 査 研 究 の 今 後 の 課 題 及 び 展 開 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 168


1. 調 査 研 究 の 目 的<br />

我 が 国 のロボット 産 業 は、 産 業 用 ロボット 生 産 高 では 世 界 の60%を 占 め、 強 い 国 際 競 争 力 を 持 って<br />

おり、この 強 いロボット 産 業 を 一 層 強 化 するために、また、21 世 紀 の 高 齢 化 社 会 における 安 心 ・ 安 全<br />

で 質 の 高 い 生 活 の 実 現 を 目 指 すため、 社 会 ニーズを 鑑 み、 従 来 からロボットが 活 躍 している 産 業 用 から、<br />

医 療 ・ 福 祉 、 日 常 生 活 支 援 などの 非 産 業 分 野 に 展 開 し、 市 場 を 拡 大 する 技 術 開 発 努 力 が 進 められてきた。<br />

その 結 果 、ロボットの 技 術 シーズは、 着 実 に 蓄 積 されつつあるが、 新 市 場 を 形 成 するロボットの 新 製<br />

品 が 生 まれないと 言 う 問 題 が 指 摘 されており、この 問 題 に 対 処 するために、ロボット 産 業 をソリューシ<br />

ョンビジネスとして 育 成 する 方 向 が 提 案 され、それに 基 づいて 経 済 産 業 省 の「21 世 紀 ロボットチャレ<br />

ンジプログラム」では、 技 術 インフラの 整 備 を 目 的 とした「RTミドルウェア 開 発 」や「ロボットコン<br />

ポーネントの 充 実 を 図 る 戦 略 的 機 能 部 品 開 発 」が 進 められてきた。<br />

このような 背 景 の 中 で、これら 技 術 インフラを 活 用 して、 近 年 のユビキタスコンピュータ 技 術 やネッ<br />

トワーク 技 術 などIT 分 野 の 進 展 を 踏 まえ、ユーザが 求 める 真 に 役 立 つロボットシステムをいかに 構 築<br />

するかが 急 務 となっており、 生 活 空 間 などでRTコンポーネントを 統 合 し、 次 世 代 ロボット 技 術 システ<br />

ムを 容 易 に 構 築 するためには、 高 機 能 化 、 知 能 化 するアプローチだけにとらわれず、 環 境 をRTに 合 う<br />

ように 知 能 化 するための 基 礎 技 術 を 早 急 に 整 備 することが 求 められており、 今 後 とるべきロボット 技 術<br />

の 新 たな 方 向 、また、その 方 向 を 視 野 に、 具 体 的 に 技 術 開 発 すべき 課 題 を 明 らかにすることを 目 的 に 調<br />

査 研 究 を 実 施 する。<br />

一 方 、 近 年 のエレクトロニクスやITの 進 展 はめざましく、 空 間 位 置 のデジタル 化 や、 空 間 に 存 在 す<br />

る 物 体 をICタグ 等 により 知 的 情 報 として 活 用 することを 可 能 にしている。 例 えば、 自 動 車 分 野 では、<br />

衛 星 通 信 をベースにしたGPSが 社 会 インフラとして 普 及 したように、 自 動 車 単 体 ではなく 環 境 インフ<br />

ラとの 併 用 で、カーナビが 発 達 した。 環 境 ・ 空 間 を 各 種 の 位 置 計 測 手 段 によってデジタル 化 する 技 術 は、<br />

特 にGPSの 技 術 として 進 展 し、ミサイルの 誘 導 、カーナビなどに 応 用 されており、 近 年 では、その 位<br />

置 計 測 の 高 精 度 化 が 追 求 され、 携 帯 電 話 、 時 計 、パソコンなどに 搭 載 し、その 付 加 価 値 を 高 めることが<br />

検 討 されている。<br />

ロボット 技 術 の 新 たな 方 向 としてここで 注 目 した 技 術 は 環 境 の 情 報 構 造 化 技 術 である。<br />

ロボットは 作 業 を 実 行 するには 対 象 、 環 境 に 関 する 知 識 が 必 要 であり、また、 環 境 中 での 位 置 の 情 報 も<br />

必 要 である。こうした 知 識 ・ 情 報 を 最 近 のIT、ユビキタスコンピューティング 技 術 で 空 間 に 付 加 し、<br />

ロボットを 支 援 することを 考 え、ここではこうした 知 識 ・ 情 報 を 付 加 した「ロボットの 外 側 」の 対 象 や<br />

環 境 を 情 報 的 に 構 造 化 された 環 境 、あるいは 情 報 構 造 化 環 境 と 呼 ぶ。<br />

また、 経 済 産 業 省 の「 技 術 戦 略 マップ」の 中 で 必 要 機 能 とされている 環 境 構 造 化 の 技 術 的 手 段 として<br />

RFID 等 のICタグを 各 種 製 品 あるいは 環 境 の 各 所 に 設 置 する 技 術 が 検 討 されており、これらはセキ<br />

ュリティ、 軍 用 などで 一 部 実 用 化 されているものの、ロボット 技 術 分 野 への 応 用 はあまり 検 討 されてい<br />

ず、IT、 通 信 ネットワーク 技 術 と 並 び、 今 後 ロボットの 高 度 化 と 応 用 分 野 の 拡 大 を 支 援 する 重 要 な 要<br />

素 技 術 になると 期 待 されている。<br />

公 共 分 野 、 医 療 、 福 祉 分 野 、 生 活 分 野 などにおいて、RTコンポーネントをうまく 統 合 して、ユーザ<br />

が 期 待 する 新 製 品 を 開 発 しやすい 環 境 を 整 備 する 上 で、 重 要 なキーテクノロジは、ユーザの 期 待 に 応 え<br />

る 知 的 なシステムを 構 築 し 易 い 基 盤 を 整 備 することが 重 要 である。 生 活 空 間 で 使 われるロボットにおい<br />

ても、その 作 業 環 境 は 産 業 現 場 よりもより 作 業 対 象 は 複 雑 、 多 様 になることから、ロボットのみに 機 能<br />

を 依 存 し、 効 果 を 発 揮 することは 不 可 能 で 何 らかの 環 境 側 への 工 夫 が 求 められる。しかし、 人 の 生 活 空<br />

間 は 工 場 のようにロボット 向 きにその 物 理 構 造 を 改 変 できないことから、 工 場 とは 異 なる 方 法 による 環<br />

境 の 構 造 化 が 必 要 である。ここに 解 決 策 を 与 えるのが、 近 年 のIT、ユビキタスコンピューティング、<br />

ネットワーク 技 術 を 活 用 し、 情 報 によって 環 境 を 構 造 化 することである。<br />

本 調 査 研 究 はこのような、ロボット 導 入 の 阻 害 要 因 を 解 消 するための 環 境 側 への 情 報 の 埋 め 込 みを 行<br />

う 環 境 構 造 化 技 術 とそのRTでの 活 用 法 を 明 らかにするもので、 環 境 構 造 化 技 術 の 導 入 で、ロボットの<br />

新 たな 応 用 展 開 を 目 指 すもので、それにより、RTソリューションによる 実 証 システム 事 例 が 多 数 発 掘<br />

され、さらに「21 世 紀 ロボットチャレンジプログラム」などで 取 り 上 げるべき 研 究 課 題 が 数 多 く 創 出<br />

されることを 目 的 としている。また、 近 年 のエレクトロニクスやITの 進 展 による、 環 境 をデジタル 化<br />

し、 空 間 に 存 在 する 機 器 やシステムの 知 能 化 を 容 易 にする 技 術 の 進 展 はめざましく、 次 世 代 ロボット 技<br />

術 を 容 易 に 構 築 するための 基 盤 となる 環 境 構 造 化 を 図 ることによって、 今 後 、 期 待 の 大 きい 生 活 支 援 R<br />

T 市 場 の 顕 在 化 、 創 出 に 資 するものである。<br />

1


2. 調 査 研 究 の 実 施 体 制<br />

本 調 査 研 究 の 実 施 体 制 は、 社 団 法 人 日 本 ロボット 工 業 会 内 に 学 識 経 験 者 、メーカ、ユーザからなる 専<br />

門 委 員 会 を 設 置 し、これらの 審 議 、 指 導 により 事 業 を 実 施 する。<br />

また、 本 委 員 会 の 下 に4つのWG( 分 科 会 )を 設 置 し、 具 体 的 な 作 業 を 行 った。<br />

( 財 ) 機 械 システム 振 興 協 会 総 合 システム 調 査 開 発 委 員 会<br />

委 託<br />

( 社 ) 日 本 ロボット 工 業 会<br />

次 世 代 ロボット 技 術 環 境 構 造 化 調 査 研 究 専 門 委 員 会 ( 本 委 員 会 )<br />

委 員 長 : 谷 江 和 雄<br />

( 首 都 大 学 東 京 )<br />

公 共 空 間 情 報 構 造<br />

WG<br />

主 査 : 淺 間 一<br />

( 東 京 大 学 )<br />

住 宅 情 報 構 造 化<br />

WG<br />

主 査 : 水 川 真<br />

( 芝 浦 工 業 大 学 )<br />

作 業 現 場 情 報 構 造 化<br />

WG<br />

主 査 : 大 場 光 太 郎<br />

(( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 )<br />

産 業 用 情 報 構 造 化<br />

WG<br />

主 査 : 新 井 民 夫<br />

( 東 京 大 学 )<br />

2


総 合 システム 調 査 開 発 委 員 会 委 員 名 簿<br />

( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )<br />

委 員 長 政 策 研 究 院 藤 正 巖<br />

リサーチフェロー<br />

委 員 埼 玉 大 学 太 田 公 廣<br />

地 域 共 同 研 究 センター<br />

教 授<br />

委 員 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 金 丸 正 剛<br />

エレクトロニクス 研 究 部 門<br />

副 研 究 部 門 長<br />

委 員 独 立 行 政 法 人 産 業 技 術 総 合 研 究 所 志 村 洋 文<br />

産 学 官 連 携 部 門<br />

コーディネータ<br />

委 員 東 北 大 学 中 島 一 郎<br />

未 来 科 学 技 術 共 同 研 究 センター<br />

センター 長<br />

委 員 東 京 工 業 大 学 大 学 院 廣 田 薫<br />

総 合 理 工 学 研 究 科<br />

教 授<br />

委 員 東 京 大 学 大 学 院 藤 岡 健 彦<br />

工 学 系 研 究 科<br />

助 教 授<br />

委 員 東 京 大 学 大 学 院 大 和 裕 幸<br />

新 領 域 創 成 科 学 研 究 科<br />

教 授<br />

3


委 員 長<br />

委 員<br />

次 世 代 ロボット 技 術 環 境 構 造 化 調 査 研 究 専 門 委 員 会 ( 本 委 員 会 )<br />

委 員 名 簿<br />

( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )<br />

委 員 名<br />

谷 江 和 雄<br />

近 藤 直<br />

長 谷 川 勉<br />

山 口 亨<br />

水 川 真<br />

中 内 靖<br />

新 井 民 夫<br />

淺 間 一<br />

橋 本 秀 紀<br />

鈴 木 剛<br />

田 所 諭<br />

前 田 雄 介<br />

菅 野 重 樹<br />

天 野 久 徳<br />

平 井 成 興<br />

大 場 光 太 郎<br />

谷 川 民 生<br />

山 元 弘<br />

伊 藤 弘<br />

長 坂 善 禎<br />

辻<br />

邦 浩<br />

藤 田 俊 弘<br />

中 川 友 紀 子<br />

村 上 弘 記<br />

池 田 雄 一<br />

小 林 政 己<br />

蔡 成 浩<br />

稲 葉 良 平<br />

黒 澤 豊 樹<br />

吉 灘 裕<br />

竹 内 啓 五<br />

井 上 敬 治<br />

長 瀬 雅 之<br />

鈴 木 章 悦<br />

小 南 哲 也<br />

松 日 楽 信 人<br />

伊 藤 健 三<br />

山 本 浩 一<br />

岩 城 敏<br />

三 宅 徳 久<br />

機 関 名<br />

首 都 大 学 東 京<br />

愛 媛 大 学<br />

九 州 大 学<br />

首 都 大 学 東 京<br />

芝 浦 工 業 大 学<br />

筑 波 大 学<br />

東 京 大 学<br />

東 京 大 学<br />

東 京 大 学<br />

東 京 電 機 大 学<br />

東 北 大 学<br />

横 浜 国 立 大 学<br />

早 稲 田 大 学<br />

総 務 省 消 防 庁 消 防 大 学 校<br />

( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所<br />

( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所<br />

( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所<br />

( 独 ) 土 木 研 究 所<br />

( 独 ) 建 築 研 究 所<br />

( 独 ) 農 業 ・ 食 品 産 業 技 術<br />

総 合 研 究 機 構<br />

㈱Robotic Space Design<br />

研 究 所<br />

IDEC㈱<br />

㈱アールティ<br />

石 川 島 播 磨 重 工 業 ㈱<br />

㈱ 大 林 組<br />

川 崎 重 工 業 ㈱<br />

鹿 島 建 設 ㈱<br />

キヤノン㈱<br />

黒 澤 R&D 技 術 事 務 所<br />

㈱ 小 松 製 作 所<br />

清 水 建 設 ㈱<br />

JR 東 日 本 研 究 開 発 センター<br />

㈱セック<br />

大 成 建 設 ㈱<br />

㈱デンソーウェーブ<br />

㈱ 東 芝<br />

㈱ニチイ 学 館<br />

日 産 自 動 車 ㈱<br />

日 本 電 信 電 話 ㈱<br />

パラマウントベッド㈱<br />

所 属 ・ 役 職<br />

システムデザイン 学 部 ヒューマンメカトロニクスシステムコース 教 授<br />

大 学 院 理 工 学 研 究 科 教 授<br />

大 学 院 システム 情 報 科 学 研 究 院 教 授<br />

システムデザイン 学 部 情 報 通 信 システムコース 教 授<br />

工 学 部 電 気 情 報 系 電 気 工 学 科 教 授<br />

大 学 院 システム 情 報 工 学 研 究 科 知 能 機 能 システム 専 攻 助 教 授<br />

大 学 院 工 学 系 研 究 科 教 授<br />

人 工 物 工 学 研 究 センター 教 授<br />

生 産 技 術 研 究 所 助 教 授<br />

工 学 部 情 報 通 信 工 学 科 助 教 授<br />

大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 教 授<br />

大 学 院 工 学 研 究 院 システムの 創 生 部 門 助 教 授<br />

理 工 学 部 機 械 工 学 科 教 授<br />

消 防 研 究 センター 主 幹 研 究 官<br />

知 能 システム 研 究 部 門 部 門 長<br />

知 能 システム 研 究 部 門 空 間 機 能 研 究 グループグループリーダ<br />

知 能 システム 研 究 部 門 空 間 機 能 研 究 グループ 主 任 研 究 員<br />

技 術 推 進 本 部 先 端 技 術 チーム 主 席 研 究 員<br />

研 究 総 括 監<br />

中 央 農 業 総 合 研 究 センター 高 度 作 業 システム 研 究 チーム<br />

主 任 研 究 員<br />

代 表 取 締 役<br />

常 務 執 行 役 員 ・ 研 究 開 発 &マーケティング 戦 略 担 当<br />

代 表 取 締 役<br />

技 術 開 発 本 部 総 合 開 発 センタ- 制 御 システム 開 発 部<br />

主 幹 研 究 員<br />

技 術 研 究 所 建 築 生 産 システム 研 究 室 副 主 査<br />

技 術 開 発 本 部 研 究 企 画 部 上 級 専 門 職<br />

技 術 研 究 所 建 築 生 産 グループ 主 任 研 究 員<br />

生 産 技 術 本 部 生 産 技 術 推 進 センター 生 産 技 術 戦 略 部<br />

所 長<br />

研 究 本 部 建 機 第 1イノベーションセンタユニットマネージャ<br />

技 術 研 究 所 先 端 技 術 開 発 センター 主 任 研 究 員<br />

先 端 鉄 道 システム 開 発 センター 企 画 ・ 先 端 技 術 グループ 課 長<br />

開 発 本 部 第 4 開 発 部 部 長<br />

土 木 本 部 機 械 部 部 長<br />

制 御 システム 事 業 部 技 術 2 部 部 長<br />

研 究 開 発 センターヒューマンセントリックラボラトリ- 研 究 主 幹<br />

神 戸 ポートアイランドセンター 執 行 役 員<br />

車 両 生 産 技 術 本 部 車 両 技 術 開 発 試 作 部 主 担<br />

NTTサイバーソリューション 研 究 所 主 任 研 究 員<br />

技 術 本 部 主 席 研 究 員<br />

( 次 頁 続 く)<br />

4


細 田 祐 司<br />

茶 山 和 博<br />

内 山 隆<br />

青 山 元<br />

榊 原 伸 介<br />

伊 東 一 郎<br />

北 野 斉<br />

椎 名 一 博<br />

飯 島 雅 人<br />

村 井 真 二<br />

㈱ 日 立 製 作 所<br />

㈱フジタ<br />

㈱ 富 士 通 研 究 所<br />

富 士 重 工 業 ㈱<br />

ファナック㈱<br />

㈱ 前 川 製 作 所<br />

松 下 電 工 ㈱<br />

三 井 不 動 産 ㈱<br />

㈱ミサワホーム 総 合 研 究 所<br />

㈱ 安 川 電 機<br />

機 械 研 究 所 ロボティクスプロジェクト 主 管 研 究 員<br />

土 木 本 部 技 術 顧 問<br />

取 締 役<br />

戦 略 本 部 クリーンロボット 部 部 長<br />

ロボット 研 究 所 名 誉 所 長<br />

総 合 プロジェクト 企 画 室 上 席 理 事<br />

生 産 技 術 研 究 所 ロボット 技 術 開 発 グループ 主 担 当<br />

S&E 総 合 研 究 所 上 席 主 任 研 究 員<br />

センサ・IT ソリューション 担 当<br />

ロボット 事 業 部 ロボット 工 場 開 発 部 開 発 第 2 課 課 長<br />

オブザーバ<br />

土 屋 博 史<br />

加 賀 義 弘<br />

経 済 産 業 省<br />

経 済 産 業 省<br />

製 造 産 業 局 産 業 機 械 課 課 長 補 佐<br />

製 造 産 業 局 産 業 機 械 課 技 術 係 長<br />

次 世 代 ロボット 技 術 環 境 構 造 化 調 査 研 究 専 門 委 員 会<br />

公 共 空 間 情 報 構 造 化 WG・ 委 員 名 簿<br />

委 員 名 機 関 名 所 属 ・ 役 職<br />

主 査 淺 間 一 東 京 大 学 人 工 物 工 学 研 究 センター 教 授<br />

委 員 長 谷 川 勉<br />

橋 本 秀 紀<br />

九 州 大 学<br />

東 京 大 学<br />

大 学 院 システム 情 報 科 学 研 究 院 教 授<br />

生 産 技 術 研 究 所 助 教 授<br />

鈴 木 剛 東 京 電 機 大 学<br />

工 学 部 情 報 通 信 工 学 科 助 教 授<br />

辻 邦 浩 ㈱Robotic Space Design 代 表 取 締 役<br />

研 究 所<br />

中 川 友 紀 子<br />

村 上 弘 記<br />

㈱アールティ<br />

石 川 島 播 磨 重 工 業 ㈱<br />

井 上 敬 治<br />

松 日 楽 信 人<br />

細 田 祐 司<br />

森 田 俊 彦<br />

青 山 元<br />

椎 名 一 博<br />

JR 東 日 本 研 究 開 発 センター<br />

㈱ 東 芝<br />

㈱ 日 立 製 作 所<br />

㈱ 富 士 通 研 究 所<br />

富 士 重 工 業 ㈱<br />

三 井 不 動 産 ㈱<br />

( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )<br />

代 表 取 締 役<br />

技 術 開 発 本 部 総 合 開 発 センタ- 制 御 システム 開 発 部<br />

主 幹 研 究 員<br />

先 端 鉄 道 システム 開 発 センター 企 画 ・ 先 端 技 術 グループ 課 長<br />

研 究 開 発 センターヒューマンセントリックラボラトリ- 研 究 主 幹<br />

機 械 研 究 所 ロボティクスプロジェクト 主 管 研 究 員<br />

自 律 システム 研 究 部 長<br />

戦 略 本 部 クリーンロボット 部 部 長<br />

S&E 総 合 研 究 所 上 席 主 任 研 究 員<br />

5


次 世 代 ロボット 技 術 環 境 構 造 化 調 査 研 究 専 門 委 員 会<br />

住 宅 情 報 構 造 化 WG・ 委 員 名 簿<br />

( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )<br />

委 員 名 機 関 名 所 属 ・ 役 職<br />

主 査 水 川 真 芝 浦 工 業 大 学 工 学 部 電 気 情 報 系 電 気 工 学 科 教 授<br />

委 員 山 口 亨<br />

中 内 靖<br />

鈴 木 剛<br />

菅 野 重 樹<br />

安 藤 慶 昭<br />

長 瀬 雅 之<br />

伊 藤 健 三<br />

岩 城 敏<br />

三 宅 徳 久<br />

山 本 正 樹<br />

北 野 斉<br />

飯 島 雅 人<br />

首 都 大 学 東 京<br />

筑 波 大 学<br />

東 京 電 機 大 学<br />

早 稲 田 大 学<br />

( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所<br />

㈱セック<br />

㈱ニチイ 学 館<br />

日 本 電 信 電 話 ㈱<br />

パラマウントベッド㈱<br />

松 下 電 器 産 業 ㈱<br />

松 下 電 工 ㈱<br />

㈱ミサワホーム 総 合 研 究 所<br />

システムデザイン 学 部 情 報 通 信 システムコース 教 授<br />

大 学 院 システム 情 報 工 学 研 究 科 知 能 機 能 システム 専 攻 助 教 授<br />

工 学 部 情 報 通 信 工 学 科 助 教 授<br />

理 工 学 部 機 械 工 学 科 教 授<br />

知 能 システム 研 究 部 門 研 究 員<br />

開 発 本 部 第 4 開 発 部 部 長<br />

神 戸 ポートアイランドセンター 執 行 役 員<br />

NTT サイバーソリューション 研 究 所 主 任 研 究 員<br />

技 術 本 部 主 席 研 究 員<br />

先 端 技 術 研 究 所 グループマネージャ<br />

生 産 技 術 研 究 所 ロボット 技 術 開 発 グループ 主 担 当<br />

センサ・IT ソリューション 担 当<br />

次 世 代 ロボット 技 術 環 境 構 造 化 調 査 研 究 専 門 委 員 会<br />

作 業 現 場 情 報 構 造 化 WG・ 委 員 名 簿<br />

( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )<br />

委 員 名 機 関 名 所 属 ・ 役 職<br />

主 査 大 場 光 太 郎 ( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 知 能 システム 研 究 部 門 空 間 機 能 研 究 グループグループリーダ<br />

委 員 近 藤 直<br />

田 所 諭<br />

天 野 久 徳<br />

谷 川 民 生<br />

山 元 弘<br />

中 島 史 郎<br />

長 坂 善 禎<br />

池 田 雄 一<br />

蔡 成 浩<br />

吉 灘 裕<br />

竹 内 啓 五<br />

鈴 木 章 悦<br />

茶 山 和 博<br />

伊 東 一 郎<br />

愛 媛 大 学<br />

東 北 大 学<br />

総 務 省 消 防 庁 消 防 大 学 校<br />

( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所<br />

( 独 ) 土 木 研 究 所<br />

( 独 ) 建 築 研 究 所<br />

( 独 ) 農 業 ・ 食 品 産 業 技 術<br />

総 合 研 究 機 構<br />

㈱ 大 林 組<br />

鹿 島 建 設 ㈱<br />

㈱ 小 松 製 作 所<br />

清 水 建 設 ㈱<br />

大 成 建 設 ㈱<br />

㈱フジタ<br />

㈱ 前 川 製 作 所<br />

大 学 院 理 工 学 研 究 科 教 授<br />

大 学 院 情 報 科 学 研 究 科 教 授<br />

消 防 研 究 センター 主 幹 研 究 官<br />

知 能 システム 研 究 部 門 空 間 機 能 研 究 グループ 主 任 研 究 員<br />

技 術 推 進 本 部 先 端 技 術 チーム 主 席 研 究 員<br />

材 料 研 究 グループ 上 席 研 究 員<br />

中 央 農 業 総 合 研 究 センター 高 度 作 業 システム 研 究 チーム<br />

主 任 研 究 員<br />

技 術 研 究 所 建 築 生 産 システム 研 究 室 副 主 査<br />

技 術 研 究 所 建 築 生 産 グループ 主 任 研 究 員<br />

研 究 本 部 建 機 第 1イノベーションセンタユニットマネージャ<br />

技 術 研 究 所 先 端 技 術 開 発 センター 主 任 研 究 員<br />

土 木 本 部 機 械 部 部 長<br />

土 木 本 部 技 術 顧 問<br />

総 合 プロジェクト 企 画 室 上 席 理 事<br />

6


次 世 代 ロボット 技 術 環 境 構 造 化 調 査 研 究 専 門 委 員 会<br />

産 業 用 情 報 構 造 化 WG・ 委 員 名 簿<br />

( 順 不 同 ・ 敬 称 略 )<br />

委 員 名 機 関 名 所 属 ・ 役 職<br />

主 査 新 井 民 夫 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 教 授<br />

委 員 前 田 雄 介<br />

藤 田 俊 弘<br />

小 林 政 己<br />

稲 葉 良 平<br />

小 南 哲 也<br />

山 本 浩 一<br />

榊 原 伸 介<br />

村 井 真 二<br />

横 浜 国 立 大 学<br />

IDEC㈱<br />

川 崎 重 工 業 ㈱<br />

キヤノン㈱<br />

㈱デンソーウェーブ<br />

日 産 自 動 車 ㈱<br />

ファナック㈱<br />

㈱ 安 川 電 機<br />

大 学 院 工 学 研 究 院 システムの 創 生 部 門 助 教 授<br />

常 務 執 行 役 員 ・ 研 究 開 発 &マーケティング 戦 略 担 当<br />

技 術 開 発 本 部 研 究 企 画 部 上 級 専 門 職<br />

生 産 技 術 本 部 生 産 技 術 推 進 センター 生 産 技 術 戦 略 部<br />

制 御 システム 事 業 部 技 術 2 部 部 長<br />

車 両 生 産 技 術 本 部 車 両 技 術 開 発 試 作 部 主 担<br />

ロボット 研 究 所 名 誉 所 長<br />

ロボット 事 業 部 ロボット 工 場 開 発 部 開 発 第 2 課 課 長<br />

7


3. 調 査 研 究 の 内 容<br />

第 1 章 生 活 支 援 RTシステムのアプリケーションによる 実 証 システム<br />

総 合 科 学 技 術 会 議 連 携 施 策 群 「 次 世 代 ロボット- 共 通 プラットフォーム 技 術 の 確 立 -」として 平 成 1<br />

7 年 度 に 採 択 された「ロボットタウンの 実 証 的 研 究 」 並 びに「 環 境 と 作 業 構 造 のユニバーサルデザイン」<br />

について 調 査 を 実 施 した。<br />

1.1 ロボットタウンの 実 証 的 研 究<br />

(1) 概 略<br />

総 合 科 学 技 術 会 議 連 携 施 策 群 「 次 世 代 ロボット」 平 成 17 年 採 択 プロジェクトである「ロボットタウ<br />

ンの 実 証 的 研 究 」について、 計 画 内 容 と 現 状 について 報 告 する。これはロボットが 人 間 と 共 生 して 種 々<br />

の 作 業 を 行 うことを 可 能 にするため、 環 境 側 にプログラムや 情 報 、 知 識 を 埋 め 込 んだ 環 境 情 報 構 造 化 プ<br />

ラットフォーム:ロボットタウンを 研 究 開 発 するものである。 公 道 でのロボット 運 用 実 験 に 関 する 規 制<br />

緩 和 をはかった「ロボット 特 区 」での 実 績 ・ 経 験 をベースに、 種 々のロボットが 活 動 できるプラットフ<br />

ォームを 実 現 する。<br />

(2) 内 容<br />

ロボットは 我 々の 住 む3 次 元 空 間 において、 物 理 的 移 動 ・ 操 作 を 通 じて 有 益 な 作 業 を 行 う。そのため<br />

の 基 本 となるのが、ロボット 自 身 および 作 業 対 象 、 障 害 物 の 空 間 配 置 である。 屋 外 であればGPSを 利<br />

用 してロボットは 地 球 上 での 自 己 位 置 を 正 確 に 知 ることができる。さらに 地 図 情 報 を 併 用 すれば、 周 囲<br />

の 状 況 もある 程 度 知 ることができる。しかしそれだけでは 人 間 社 会 に 共 生 して 種 々の 作 業 を 行 うには 不<br />

十 分 である。 人 間 の 活 動 によりタウン 内 の 物 体 配 置 や 通 路 の 状 況 は 時 々 刻 々と 変 化 するからである。こ<br />

れらの 変 化 をリアルタイムに 認 識 ・ 管 理 して、ロボットが 必 要 とする 情 報 を 提 供 し、その 活 動 を 支 援 す<br />

る 機 能 を 環 境 側 に 持 たせようというのがロボットタウンの 基 本 概 念 である。<br />

ロボットタウン<br />

ロボットが 人 と 共 生 しながら 働 く 街<br />

住 宅 ゾーン<br />

中 央 公 園<br />

ICタグ<br />

ICタグ<br />

・ 物 に ICタグ<br />

・ 床 に IC タグ<br />

ロボットの 店 内 移 動<br />

物 の 発 見 を 支 援<br />

コンビニ 内<br />

シニアゾーン<br />

ICタグ<br />

病 院 内<br />

・ICタグ<br />

・ 院 内 地 図<br />

車 椅 子 を<br />

目 的 地 へ 誘 導<br />

海 浜<br />

GPS<br />

低 空 移 動 / 固 定 体<br />

電 子 タグ 付<br />

分 散 ビジョン<br />

システム<br />

知 的 道<br />

路 鋲<br />

5GHz 帯<br />

無 線 LAN<br />

タウンマネジ<br />

メントセンタ<br />

ロボット 店 舗<br />

(ロボットが 働 く)<br />

知 的 シニア<br />

カー<br />

各 種 ロボット<br />

システム<br />

図 1.1―1 概 念 図<br />

8


研 究 開 発 目 標 の 概 念 図 を 図 1.1-1に 示 す。 人 間 が 日 常 生 活 をしている 街 区 には、 街 角 ビジョンカ<br />

メラを 分 散 配 置 する。 街 角 ビジョンは 視 野 内 のロボットや 歩 行 者 などの 移 動 体 の 位 置 や 姿 勢 、 運 動 方 向<br />

を 計 測 する。また、 歩 道 路 面 や 側 壁 面 あるいは 建 物 内 部 にはRFIDタグやセンサを 分 散 配 置 する。 街<br />

角 カメラ、ロボット、センサはネットワークを 通 じて、タウンマネージメントシステムに 接 続 されてい<br />

る。このタウンマネージメントシステムがGIS 等 のデータベースを 含 め、すべての 情 報 を 統 合 ・ 管 理<br />

し、 街 中 の 人 、ロボット 等 の 移 動 体 の 状 況 を 実 時 間 で 認 識 ・ 把 握 する。 各 ロボットはその 周 囲 の 移 動 体<br />

や 障 害 物 状 況 などの 必 要 な 情 報 をマネージメントセンタから 供 給 され、その 作 業 目 標 を 達 成 することが<br />

できる。<br />

人 間 共 生 環 境 の 情 報 構 造 化 の 構 築 初 期 コストと 運 用 ・ 保 守 管 理 コストを 考 慮 すると、センサやRFI<br />

Dタグの 配 置 はできるだけスパースにしたい。スパースな 配 置 は、 人 間 にとって 自 然 で 快 適 な 生 活 環 境<br />

の 維 持 にもつながる。その 反 面 、ロボットの 行 動 に 必 要 な 空 間 的 計 測 精 度 の 確 保 が 難 しくなる。これら<br />

のトレードオフを 探 ることも 研 究 課 題 である。<br />

1ビジョンセンサ<br />

人 間 やロボットなどの 移 動 体 の 位 置 や 運 動 を 計 測 するため、 単 眼 カメラを 必 要 に 応 じてレーザレンジ<br />

ファインダなどと 組 み 合 わせて、 環 境 内 に 固 定 配 置 して 用 いる。 差 分 画 像 処 理 と 高 速 レベルセット 法 と<br />

を 組 み 合 わせたものをベースに、 移 動 体 の 検 出 と 位 置 計 測 を 実 時 間 で 行 う。<br />

屋 外 では、 日 照 変 化 や 風 による 草 木 の 動 きによる 背 景 画 像 の 変 動 の 影 響 があるが、 固 定 カメラである<br />

ので、カメラ 毎 に 学 習 による 適 応 や、 対 象 エリアに 関 する 知 識 などを 導 入 することにより、 頑 健 性 を 高<br />

めることができる。<br />

移 動 体 が 視 野 内 に 入 ってきたときに、 他 のビジョンシステムで 計 測 された 結 果 があれば、ネットワー<br />

ク 経 由 でタウンマネージメントシステムからそれらの 情 報 を 得 ることが 出 来 るので、これを 利 用 して 画<br />

像 計 測 処 理 の 頑 健 性 を 高 めることができる。また、レーザレンジセンサなどロボットに 搭 載 されたセン<br />

サ 情 報 をも 統 合 して、 全 体 として 精 度 の 向 上 と 頑 健 性 の 確 保 をはかる。<br />

各 ビジョンからの 移 動 体 に 関 する 位 置 情 報 は、タウンマネージメントシステムに 逐 次 送 られ 管 理 区 域<br />

内 の 全 ての 情 報 とともに 管 理 されるほか、ログとして 過 去 の 動 作 系 列 が 保 存 される。<br />

2RFIDタグによる 環 境 情 報 構 造 化<br />

屋 外 通 路 や 建 物 内 部 床 面 には、RFIDタグを 埋 込 配 置 し、 環 境 情 報 構 造 化 をはかる。また 住 宅 内 什<br />

器 やオフィス・ 病 院 内 でロボットが 操 作 対 象 とする 物 品 にもRFIDタグを 添 付 して、それらの 認 識 ・<br />

移 動 管 理 に 用 いる。これらにより 移 動 ロボットの 自 己 位 置 確 認 、あるいはマニピュレーション 作 業 支 援<br />

がなされる。<br />

内 蔵 電 源 を 持 たないパッシブタグについて、 実 環 境 使 用 状 況 下 での、 確 実 な 読 みとり 動 作 条 件 、 移 動<br />

ロボット 位 置 姿 勢 計 測 精 度 など、 性 能 確 認 は 完 了 している。<br />

3タウンマネージメントシステム<br />

宅 内 、オフィスや 病 院 など 建 物 単 位 、およびそれらの 集 合 としての 街 区 単 位 でタウンマネージメント<br />

システムは 管 理 区 域 内 の 人 やロボットなどの 移 動 体 の 位 置 ・ 姿 勢 および 運 動 を 計 測 し、 個 々のロボット<br />

の 動 作 および 作 業 を 支 援 する。<br />

通 常 のGISにくわえ、 街 角 ビジョンシステムの 配 置 と 視 野 範 囲 、RFIDタグの 設 置 状 況 、ロボッ<br />

ト 形 状 データなどを 基 本 データベースとして 装 備 する。ビジョンシステムに 対 しては、 観 測 されるはず<br />

のロボットの 形 状 や 位 置 情 報 を 渡 して、ビジョン 処 理 を 容 易 にするとともに、その 処 理 結 果 の 検 証 を 支<br />

援 する。またビジョンやロボットからの 位 置 情 報 を 統 合 し、 認 識 処 理 や 位 置 計 測 結 果 の 一 貫 性 を 維 持 管<br />

理 する。<br />

実 証 実 験 シナリオの 設 定 と、その 中 での 構 成 要 素 間 のインタラクションのチェックを 繰 り 返 しなが<br />

ら、プロトコルの 定 義 と 拡 張 をすすめている。<br />

9


4 実 証 プラットフォーム<br />

環 境 情 報 構 造 化 プラットフォームとして、モデル 住 宅 においてロボットによる 生 活 支 援 の 実 証 実 験 を<br />

行 う。<br />

福 岡 市 の 博 多 湾 埋 め 立 て 地 「アイランドシティー」 内 の 中 央 公 園 一 角 にあるレンガ 住 宅 ( 図 1.1-<br />

2、3、4)の 内 部 および 周 辺 領 域 を 対 象 に 環 境 情 報 構 造 化 を 行 い、 住 宅 内 部 でのロボットによる 生 活<br />

支 援 、 周 辺 地 域 での 通 行 者 とロボットとのインタラクション 支 援 を 行 うための 環 境 整 備 を 行 った。<br />

また、プラットフォームとしてのオープン 化 、 標 準 化 をはかるため、ハードウェアのインタフェース、<br />

通 信 インフラ 等 検 討 を 進 めている。<br />

アイランドシティ 住 宅 地 区<br />

九 州 大 学 付 属 病 院<br />

ロボスクエア<br />

福 岡 県 福 岡 市<br />

九 州<br />

図 1.1-2 実 験 拠 点<br />

図 1.1-3 実 験 住 宅<br />

介 護 ベット 操 作<br />

( 各 種 機 器 とマニ<br />

ピュレーション)<br />

窓 /ドア 開 閉<br />

( 環 境 構 造 物 とマニ<br />

ピュレーション)<br />

ダイニング 配 膳<br />

( 人 間 とマニピュ<br />

レーション)<br />

ゴミ 出 し( 屋 内 ⇔<br />

屋 外 移 動 )<br />

RFIDタグ<br />

入 出 管 理<br />

分 散 ビジョンシステム<br />

図 1.1-4 実 験 概 念 図<br />

10


(3) 研 究 体 制<br />

研 究 開 発 は、 九 州 大 学 、( 財 ) 九 州 システム 情 報 技 術 研 究 所 、( 株 ) 安 川 電 機 、 九 州 日 本 電 気 ソフト<br />

ウェア( 株 )で 実 施 する。<br />

既 存 市 街 地 での 環 境 情 報 構 造 化 は 現 時 点 では 困 難 であることから、アイランドシティ( 福 岡 湾 内 埋 め<br />

立 て 地 )の 都 市 作 りと 連 動 した 実 証 実 験 により 研 究 開 発 拠 点 の 実 現 をめざしている。モデル 住 宅 とそ<br />

の 敷 地 内 通 路 および 隣 接 公 道 の 環 境 情 報 構 造 化 を 行 う。 福 岡 市 は 公 園 敷 地 や 住 宅 をプロジェクト<br />

期 間 中 提 供 する。また、 福 岡 県 、 北 九 州 市 、 福 岡 市 が 地 域 の 産 学 を 結 集 して 設 立 したロボット 産<br />

業 振 興 会 議 も 公 式 プロジェクトとして 支 援 するなど 地 域 ぐるみの 推 進 体 制 をとっている。さらに、<br />

九 州 経 済 産 業 局 とも 密 接 に 協 力 しつつ、 本 プロジェクトを 起 爆 剤 に、ロボット 産 業 振 興 のための<br />

プロジェクトの 創 設 ・ 実 施 しようとしている。<br />

(4)まとめ<br />

総 合 科 学 技 術 会 議 連 携 施 策 群 「 次 世 代 ロボット」 平 成 17 年 採 択 プロジェクトである「ロボットタウ<br />

ンの 実 証 的 研 究 」の 概 要 を 報 告 した。 国 予 算 の 効 果 的 かつ 効 率 的 な 執 行 の 観 点 から、 本 プロジェクトで<br />

開 発 されるプラットフォームは、 各 省 庁 予 算 で 開 発 されているロボットの 実 証 に 提 供 することになって<br />

いる。 研 究 開 発 内 容 を 周 知 するため、 平 成 18 年 度 末 には、 中 間 成 果 の 公 開 をおこなうほか、19 年 度<br />

末 に 実 証 実 験 公 開 を 予 定 している。<br />

1.2 環 境 と 作 業 構 造 のユニバーサルデザイン<br />

ここでは、 科 学 技 術 振 興 調 整 費 科 学 技 術 連 携 施 策 群 次 世 代 ロボット- 共 通 プラットフォーム 技 術 の 確<br />

立 -として、 平 成 17 年 度 に 採 択 された「 環 境 と 作 業 構 造 のユニバーサルデザイン」のテーマについて、<br />

その 概 略 、 研 究 内 容 、 体 制 などについて 記 述 する。<br />

(1) 概 略<br />

ロボット 作 業 のための 位 置 姿 勢 精 度 として、 移 動 作 業 のために50mm、 把 持 作 業 のために5mm 程<br />

度 の 位 置 計 測 精 度 を 目 標 として、 環 境 に 埋 め 込 まれるセンサとしてはICタグ、GPS、 画 像 処 理 技 術<br />

など、ロボットに 搭 載 されるセンサとしては 主 に 画 像 処 理 技 術 を 用 いて 物 体 の 位 置 姿 勢 情 報 を 提 供 する<br />

環 境 の 情 報 提 供 インフラ( 環 境 構 造 )を 開 発 し 提 供 する。<br />

また、ロボット 作 業 に 必 要 とされる 作 業 の 記 述 構 造 ( 作 業 構 造 )についても 開 発 し 提 供 する。これら<br />

環 境 構 造 と 作 業 構 造 のユニバーサルデザイン 設 計 指 針 を 提 案 し、 標 準 化 を 目 指 す。ここでは、 神 奈 川 県<br />

の 安 心 安 全 RT(ロボットテクノロジー)パークなどの 実 証 スペースにおいて 広 く 継 続 的 に 実 証 を 行 い、<br />

共 通 プラットフォームをユーザに 提 供 する。<br />

本 提 案 は、 人 間 生 活 環 境 などロボットにとっての 非 整 備 環 境 での 作 業 、さらには 異 機 種 ・ 異 環 境 間 で<br />

の 作 業 を 簡 便 に 実 現 することを 可 能 とする、ロボット・インフラ 共 通 プラットフォーム 技 術 を 確 立 し、<br />

ロボット 利 活 用 範 囲 の 可 能 性 を 広 め、 新 産 業 創 出 することを 目 的 とする。ここでは、 物 体 の 位 置 姿 勢 情<br />

報 を 提 供 するインフラ 技 術 を 含 めた 環 境 構 造 と、 作 業 構 造 のユニバーサルデザインについて、 実 証 評 価<br />

実 験 を 行 いながら 研 究 開 発 を 行 う。<br />

(2) 内 容<br />

昨 今 のネットワークの 発 達 により、ユビキタス 的 なコンセプトをロボットに 応 用 しようとする 試 みが<br />

なされている。ロボットシステム 内 部 をネットワーク 化 するもの、それとは 対 照 的 に 環 境 構 造 にセンサ<br />

やアクチュエータなどを 埋 め 込 んだ 知 的 環 境 を 実 現 しようとするもの(ここではユビキタス・ロボティ<br />

クスと 呼 ぶ)などがある。これらネットワークを 効 率 よく 利 用 したシステムは、システム 構 成 要 素 のモ<br />

ジュール 化 を 可 能 とし、 従 来 型 の 煩 雑 なシステム 構 成 から、モジュール 単 位 のメンテナンス 性 の 良 いシ<br />

ステムを 実 現 し、モジュールの 再 利 用 を 可 能 とすることなどの 利 点 から、 広 く 広 まろうとしている。<br />

さらに、 環 境 にあるセンサを 有 効 に 利 用 (センサヒュージョンなど)することで 精 度 向 上 、1つ1つ<br />

11


のセンサを 安 価 に 抑 えることが 可 能 、システムの 高 信 頼 化 が 計 れる、などの 利 点 も 考 えられている。<br />

さらには、 外 部 ネットワークに 接 続 することにより、 外 部 ネットワークから 必 要 な 知 識 情 報 を 得 られ<br />

る 利 点 も 指 摘 されている。このユビキタス・ロボティクスの 特 色 としては、 上 記 のように 空 間 自 体 がロ<br />

ボット 化 するという 側 面 の 他 に、 従 来 のロボットのための 環 境 インフラとしての 位 置 づけがあり、 現 在<br />

のロボットシステムを 早 急 に 人 間 生 活 に 導 入 するための 足 がかりとして、 緊 急 に 整 備 が 求 められている。<br />

このような 人 間 生 活 環 境 などロボットにとっての 非 整 備 環 境 、さらには 異 なる 環 境 においても、ロボ<br />

ット 作 業 を 簡 便 に 実 現 するためのロボット・インフラ 共 通 プラットフォーム 技 術 を 考 えてみると、 現 在<br />

のロボットのおかれている 環 境 を、 物 理 的 にも 知 識 的 ( 位 置 姿 勢 計 測 などのセンサを 含 む)にも 整 備 し、<br />

何 らかのユニバーサルデザイン 化 「 環 境 構 造 のユニバーサルデザイン」する 必 要 がある。<br />

同 時 に、 異 なるロボットが 異 なる 環 境 においても 作 業 を 容 易 に 実 現 するためには、 作 業 知 識 などを 共<br />

有 することを 可 能 とするための「 作 業 構 造 のユニバーサルデザイン」が 必 要 不 可 欠 である( 図 1.2-<br />

1、 図 1.2-2 参 照 )。この2つのロボット・インフラ 共 通 プラットフォーム 技 術 (ユニバーサルデ<br />

ザイン)は、ロボットの 活 用 範 囲 を 広 げ、 新 たなロボット 応 用 産 業 の 新 産 業 創 出 することを 可 能 とする。<br />

機 種 ( 作 業 依 存 )<br />

異 環 境 間<br />

環 境 構 造 のユニバーサルデザイン<br />

• 知 識 的 環 境 構 造<br />

• 位 置 姿 勢 情 報 提 供 インフラ<br />

• 物 理 パラメータ( 形 状 、 硬 さなど)<br />

• 環 境 状 態 ( 照 度 など)<br />

•ロボット 状 態<br />

• 物 理 的 環 境 構 造 デザイン<br />

宇 宙 環 境<br />

工 場 環 境 研 究 室 環 境 住 宅 環 境 社 会 環 境<br />

異 機 種 間<br />

環 境<br />

作 業 構 造 のユニバーサルデザイン<br />

•タスク 知 識 構 造<br />

•スキル 知 識 構 造<br />

•サーボ 知 識 構 造<br />

図 1.2-1 異 機 種 ・ 異 環 境 間 プラットフォーム<br />

ロボット<br />

環 識 ・ 場<br />

物 体<br />

作 業 構 造<br />

タスク 知 識 どこをつかむか、どのように 扱 うかなど<br />

スキル 知 識 場 に 応 じた 作 業 方 法 や 手 順 など<br />

サーボ 知 識 位 置 制 御 ・ 力 制 御 など<br />

環 境 構 造<br />

知 識 的 環 境 構 造<br />

可 変 (センサ)<br />

不 変<br />

ロボット 知 識<br />

ロボット 状 態 知 識<br />

関 節 角 度 、 力 など<br />

ロボット 仕 様 知 識<br />

自 由 度 、ハンド 形 状 など<br />

環 境 知 識<br />

環 境 状 態 知 識<br />

照 明 条 件 など<br />

環 境 仕 様 知 識<br />

床 、 壁 の 配 置 など<br />

物 体 知 識<br />

物 体 状 態 知 識<br />

物 体 の 位 置 ・ 姿 勢 知 識<br />

x,y,z,θ,φ,ψ<br />

物 体 の 形 状 などの 知 識<br />

質 量 、 大 きさ、 柔 らかさなど<br />

物 理 的<br />

環 境 構 造<br />

図 1.2-2 環 境 構 造 と 作 業 構 造<br />

本 提 案 課 題 は、 人 間 生 活 環 境 などロボットにとっての 非 整 備 環 境 での 作 業 、さらには 異 機 種 ・ 異 環 境<br />

間 での 作 業 を 簡 便 に 実 現 することを 可 能 とする、ロボット・インフラ 共 通 プラットフォーム 技 術 を 確 立<br />

し、ロボット 利 活 用 範 囲 の 可 能 性 を 広 め、 新 産 業 創 出 することを 目 的 とする。<br />

12


ここでは 特 に、<br />

1 物 体 の 位 置 ・ 姿 勢 情 報 などを 提 供 するなどの 環 境 構 造 ユニバーサルデザイン 技 術 。<br />

2ロボット 作 業 を 円 滑 に 行 うための 作 業 構 造 ユニバーサルデザイン 技 術 。<br />

3 神 奈 川 県 RTパークなどにおいて 実 証 スペースを 構 築 し、 家 庭 内 移 動 ロボットやヒューマノイドロボ<br />

ットを 用 いて、 特 に 家 庭 内 環 境 での 作 業 の 実 証 評 価 実 験 ( 図 1.2-3)を 行 う。<br />

環 境 構 造 ユニバーサルデザインとしては、ICタグなどの 空 間 配 置 されるセンサの 特 性 を 考 慮 した 位<br />

置 姿 勢 計 測 技 術 を 提 案 し、シミュレーション 技 術 を 併 用 しながら、 構 造 化 手 法 の 研 究 開 発 を 行 う。<br />

また、ロボット 作 業 のユニバーサルデザインとして、 環 境 構 造 としての 位 置 姿 勢 情 報 を 活 用 し、 実 環<br />

境 でのロボット 作 業 に 必 要 な 作 業 の 記 述 方 式 の 構 造 化 を 行 う。これらの 環 境 構 造 と 作 業 構 造 のユニバー<br />

サルデザインについては 標 準 化 を 検 討 し、 実 証 スペースを 構 築 し、 実 証 評 価 実 験 を 行 う。<br />

(2) 作 業 構 造<br />

ロボット<br />

環 識 ・ 場<br />

1タスク 知 識 どこをつかむか、どのように 扱 うかなど<br />

2スキル 知 識 場 に 応 じた 作 業 方 法 や 手 順 など<br />

3サーボ 知 識 位 置 制 御 ・ 力 制 御 など<br />

物 体<br />

仮 想 空 間<br />

(シミュレーション 技 術 )<br />

(1) 環 境 構 造<br />

知 識 的 環 境 構 造<br />

可 変 (センサ)<br />

不 変<br />

物 理 的<br />

環 境 構 造<br />

ロボット 知 識<br />

ロボット 状 態 知 識<br />

関 節 角 度 、 力 など<br />

ロボット 仕 様 知 識<br />

自 由 度 、ハンド 形 状 など<br />

環 境 知 識<br />

環 境 状 態 知 識<br />

照 明 条 件 など<br />

環 境 仕 様 知 識<br />

床 、 壁 の 配 置 など<br />

物 体 知 識<br />

物 体 状 態 知 識<br />

物 体 の 位 置 ・ 姿 勢 知 識<br />

x,y,z,θ,φ,ψ<br />

物 体 の 形 状 などの 知 識<br />

質 量 、 大 きさ、 柔 らかさなど<br />

(3) 実 証 評 価 実 験<br />

神 奈 川 県 「 安 全 安 心 RTパーク( 仮 称 )」 など<br />

図 1.2-3 研 究 概 要<br />

(3) 研 究 体 制<br />

本 提 案 は、4つの 研 究 機 関 (( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 、 東 京 大 学 、㈱ 東 芝 、 測 位 衛 星 技 術 ㈱)の 特 色<br />

を 生 かし3つのサブグループの 協 力 の 下 で 実 施 する。すなわち、1) 位 置 姿 勢 計 測 インフラ・ストラク<br />

チャに 関 する 研 究 グループ(( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 とりまとめ)、2)ロボット 作 業 のためのユニバ<br />

ーサルデザインに 関 する 研 究 グループ( 東 京 大 学 とりまとめ)、3) 実 証 評 価 実 験 (㈱ 東 芝 とりまとめ、<br />

研 究 協 力 : 神 奈 川 県 )を 行 う。<br />

(4)まとめ<br />

科 学 技 術 連 携 施 策 群 の 効 果 的 ・ 効 率 的 な 推 進 、 次 世 代 ロボット- 共 通 プラットフォーム 技 術 の 確 立 -、<br />

作 業 空 間 における 物 体 操 作 のための 環 境 情 報 構 造 化 プロジェクトとして 平 成 18 年 度 より3 年 間 研 究<br />

する 機 会 を 得 た。4 機 関 協 力 し 合 い、 成 果 を 出 していきたい。<br />

13


第 2 章 開 発 促 進 戦 略 の 検 討<br />

環 境 を 構 造 化 することで、ロボットの 適 用 技 術 の 可 能 性 を 高 め、ロボット 利 用 分 野 を 拡 大 するために、<br />

大 きく4つの 分 野 ( 公 共 空 間 、 住 宅 、 作 業 現 場 、 産 業 用 )に 分 け、 具 体 的 なシナリオ 作 成 によるユーザ<br />

(サービス 受 け 手 の 側 )の 評 価 を 明 示 化 するとともに、 技 術 的 妥 当 性 等 について 検 討 を 行 った。<br />

2.1 公 共 空 間 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想<br />

2.1.1 公 共 空 間 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴<br />

公 共 空 間 にロボット 技 術 を 導 入 し、サービスを 提 供 する 際 の 最 大 の 特 徴 は、 多 様 な 人 がその 空 間 に 出<br />

入 りし、そこで 多 様 なサービス 提 供 が 求 められるということある。この 多 様 性 に 対 応 可 能 なRTサービ<br />

スシステムを 導 入 するには、<br />

1 人 の 属 性 や 行 動 、 特 性 などを 検 出 ・ 認 識 できること<br />

2 人 と 柔 軟 にかつ 安 全 に 接 することができること<br />

3 人 の 要 望 に 応 じて 適 応 的 に 行 動 し、サービスが 提 供 できること<br />

4 導 入 によって 付 加 価 値 の 増 大 、あるいは 効 率 化 ・ 省 人 化 といったメリットが 見 込 めること<br />

などの 条 件 を 満 たす 必 要 がある。すなわちこれらは、「 人 と 共 存 し、 人 ( 利 用 者 および 導 入 者 )の 多 様<br />

な 要 望 に 応 えることができるサービスロボットの 要 求 仕 様 」と 言 える。<br />

しかし、これらのいずれの 要 求 仕 様 を 見 ても、 個 々のサービスを 提 供 する 実 用 化 ロボットを 実 現 しよ<br />

うとすると、 機 能 性 ・ロバスト 性 ・ 安 全 性 ・コストのいずれの 面 からも、ロボットを 構 成 する 要 素 技 術<br />

の 知 能 化 、ロボット 単 体 の 知 能 化 のみでは 困 難 であり、 必 要 となる 知 識 や 情 報 、あるいは 情 報 処 理 機 構<br />

( 知 能 )を 分 散 化 させ、それを 環 境 内 にも 配 置 し、 構 造 化 された 環 境 とロボットを 動 的 に 協 調 させて 動<br />

作 させる 必 要 がある。すなわち、 実 用 化 サービスロボットを 実 現 するには、ロボット 本 体 やそれを 構 成<br />

する 要 素 技 術 のモジュール 化 ・ 知 能 化 だけでなく、 知 能 化 されたモジュールを 分 散 化 ・ 外 部 化 (ロボッ<br />

トの 外 部 、すなわち 環 境 に 分 散 して 配 置 )し、ロボットとその 環 境 と 状 況 に 応 じて 動 的 に 組 織 化 させる<br />

ことが 不 可 欠 である。これをここでは、 環 境 構 造 化 と 呼 び、 構 造 化 された 環 境 を 含 む 知 能 化 を 考 える。<br />

なお、ここで 環 境 とは、 床 や 壁 や 障 害 物 といった、いわゆるロボットが 動 作 する 空 間 のみならず、ロ<br />

ボットがハンドリングする 対 象 物 や、ロボットが 接 する 人 なども 広 く 含 める。<br />

次 に、 公 共 空 間 でRTを 導 入 し、サービスシステムを 実 現 する 上 で 必 要 となる 環 境 構 造 化 と、それを<br />

活 用 した 知 能 化 技 術 についてまとめる。 一 言 で 公 共 空 間 と 言 っても、 場 所 によって、そこで 求 められる<br />

サービスも 異 なるし、RTを 導 入 する 者 のニーズも 異 なる。そこで、まず 公 共 空 間 を(1) 駅 ・ 空 港 、<br />

(2) 図 書 館 ・ 美 術 館 ・ 科 学 館 ・ 博 物 館 、(3) 商 業 空 間 、(4) 官 庁 ・オフィスに 分 類 し、それぞれ<br />

の 空 間 において、ロボットの 利 用 者 (サービスを 享 受 する 人 )だけでなく、 導 入 者 からみたニーズを 正<br />

確 に 把 握 するために、 具 体 的 なシナリオを 設 定 し、その 中 でのRTの 活 用 という 観 点 から、ニーズをま<br />

とめ、 取 り 組 むべき 環 境 構 造 化 、 知 能 化 技 術 開 発 項 目 を 明 らかにする。<br />

2.1.2 駅 、 空 港<br />

(1) 駅<br />

公 共 空 間 分 野 として、まず 駅 に 着 目 する。RTの 導 入 を 決 める 事 業 者 は、 鉄 道 事 業 者 である。 鉄 道 事<br />

業 者 は、 常 に「 新 たな 顧 客 価 値 の 創 造 」を 目 指 しており、この 具 現 化 のために「 新 しい 駅 づくり」、「 利<br />

便 性 ・ 快 適 性 の 向 上 」、「 生 活 サービス 事 業 の 成 長 」、「 新 技 術 を 活 用 した 新 しいサービス」 等 につい<br />

て 取 組 んでいる。これらの 取 組 み 共 通 のアイテムとしてサービスロボットの 導 入 が 考 えられる。<br />

1)シナリオ<br />

公 共 性 の 高 い 鉄 道 事 業 を 考 える 際 には、その 背 景 となる 社 会 環 境 の 変 化 を 知 ることが 重 要 である。<br />

14


そこでまず、10 年 後 の 社 会 環 境 を 予 測 する。<br />

《 社 会 環 境 シナリオ (2015 年 )》<br />

人 口 は2006 年 のピーク(12,774 万 人 )から12,698 万 人 と 減 少 傾 向 にあり、 年 齢 構 成<br />

は65 歳 以 上 が25.2%、14 歳 以 下 が14.2%(1999 年 :65 歳 以 上 17%、14 歳 以 下 1<br />

5%)となり、 平 均 寿 命 も 女 性 86.5 歳 、 男 性 79.1 歳 (1999 年 : 女 性 84.6 歳 、 男 性 77.<br />

6 歳 )へと 延 び、 少 子 高 齢 化 が 加 速 的 に 進 むとともに、 独 身 者 が 増 え、 核 家 族 化 も 進 行 している。<br />

また、 生 活 の 力 点 は 昭 和 58 年 以 降 、それまでの 衣 食 住 からレジャー・ 余 暇 へとシフトし、レジャー・<br />

余 暇 を 重 視 する 傾 向 が 年 々 高 くなっている。<br />

特 に、 女 性 の 社 会 進 出 が 盛 んになるのに 伴 い、 高 齢 者 と 女 性 のレジャー 志 向 が 益 々 高 まり、 旅 行 が 活<br />

発 化 している。( 健 康 平 均 寿 命 は75 歳 以 上 )<br />

さらにユニバーサルデザインが 浸 透 ( 個 人 重 視 )し、 地 球 環 境 は 今 まで 以 上 に 重 視 されている。<br />

このような 社 会 環 境 を 背 景 に、 本 物 志 向 、 個 人 重 視 の 意 識 が 定 着 し、「 良 いもの, 自 分 の 求 めるもの」<br />

へのみお 金 を 使 う 傾 向 が 更 に 強 くなり、 人 々は 標 準 化 と 個 性 を 両 立 させた 専 門 的 サービスやスペースを<br />

求 めてくる。この 傾 向 は 特 に 女 性 に 強 く、 単 に 男 性 と 場 所 を 分 けるだけではなく、 女 性 専 用 のサービス<br />

やスペースへの 要 求 が 高 い。<br />

生 活 面 では、「IT 革 命 」などという 言 葉 も 皆 忘 れかけてきたほど、 家 庭 でも 双 方 向 通 信 システムが<br />

普 及 するとともに、 公 共 機 関 においてもネットワークを 用 いた 情 報 が 溢 れ、 誰 でも 簡 単 に 自 分 の 好 きな<br />

情 報 にアクセスできるのが 当 り 前 の 社 会 となっている。<br />

1エンドユーザ<br />

駅 のエンドユーザは、 通 勤 客 ・ 旅 行 客 であるが、 高 齢 者 の 増 加 とともに 健 康 平 均 寿 命 も 延 び、レジャ<br />

ー 志 向 が 高 まるのとあいまって、 高 齢 者 の 旅 行 が 活 発 化 してくる。 一 方 で、 公 共 機 関 においては 情 報 イ<br />

ンフラ( 光 ケーブル・ 無 線 LAN 等 )の 整 備 が 飛 躍 的 に 進 み、 情 報 のほとんどがネットワークを 活 用 し<br />

て 得 るようなシステムとなっている。<br />

しかし、 高 齢 者 はIT 技 術 に 対 する 抵 抗 感 が 大 きく、 駅 構 内 において 戸 惑 いを 感 じることが 予 想 され<br />

る。このことから、ユーザを 旅 行 に 出 かける 高 齢 者 夫 婦 と 設 定 した。<br />

2 具 体 的 シナリオ: 旅 行 に 出 かける 高 齢 者 夫 婦<br />

現 役 を18 年 前 にリタイヤし、 今 は 夫 婦 ( 夫 75 歳 と 妻 72 歳 ) 二 人 で、 大 宮 から 電 車 で30 分 の 町<br />

で 生 活 している。 二 人 の 子 供 が 居 るが、それぞれ 独 立 し 東 京 都 内 と 千 葉 県 で 生 活 している。<br />

夫 は 現 役 時 代 東 京 都 内 の 会 社 に 勤 めていたが、リタイア 後 は5 年 間 地 元 の 会 社 で 仕 事 をし、この13<br />

年 間 は 自 宅 で 生 活 を 送 っている。 夫 婦 とも 元 気 で、いつも 二 人 で 近 所 を 散 歩 している。<br />

結 婚 50 年 目 を 迎 える 今 年 、 二 人 の 子 供 夫 婦 から 温 泉 旅 行 をプレゼントされた。 電 車 のチケットや 旅<br />

館 の 手 配 は 東 京 に 住 む 長 男 が 全 てインターネットで 申 し 込 み、 大 宮 駅 のびゅうプラザに 行 けば 受 取 れる<br />

ように 手 配 してくれた。<br />

澄 み 渡 るように 晴 れた 旅 行 当 日 、 夫 婦 は 胸 躍 らせながら 自 宅 を 出 発 。 最 寄 の 駅 から 大 宮 駅 までの 切 符<br />

を 購 入 し 各 駅 停 車 で 大 宮 駅 に 向 かった。 購 入 した 切 符 はこれまでに 見 た 事 の 無 いカードのようなもので、<br />

駅 員 から「これはとても 便 利 な 切 符 ですよ」と 言 われ、 何 のことか 分 からないまま 電 車 に 乗 った。 妻 は<br />

慣 れない 旅 行 に 若 干 不 安 を 持 っていたが、 夫 は 現 役 時 代 東 京 に 勤 めており、 毎 日 電 車 で 通 勤 していたこ<br />

とから 何 の 不 安 も 持 っていなかった。<br />

田 園 風 景 を 見 ながらのんびりと 大 宮 駅 までの 時 間 を 楽 しみ、 定 刻 に 大 宮 駅 に 到 着 した。<br />

大 宮 駅 に 到 着 しびゅうプラザに 長 男 の 手 配 してくれたチケット 類 を 受 け 取 りに 行 こうと、ホームから<br />

エスカレーターを 使 ってコンコースへ 出 ると、そこは 夫 が 知 っている 大 宮 駅 ではなく、 全 く 別 の 世 界 に<br />

なっていた。 壁 全 体 がペーパーディスプレイになっており、その 前 に 行 くと 広 告 が 話 しかけてくる。 広<br />

告 だけではなく 駅 全 体 に 店 舗 やいろいろな 機 械 が 溢 れそこは 駅 と 言 うより 一 つの 近 代 化 した 街 であっ<br />

た。<br />

列 車 の 案 内 等 を 行 っている 大 型 のディスプレイがあり、 若 い 人 が 色 々な 画 面 に 触 れ 次 々に 変 わる 画 面<br />

を 見 てうなずいていたが、 何 をやっているのか 理 解 できなかった。 駅 員 を 探 したが 見 つからず、とりあ<br />

15


えず 改 札 を 出 ようと 改 札 口 を 探 したがどこにも 見 当 たらなかった。びゅうプラザへ 行 くことなど 忘 れ、<br />

これから 何 をしたら 良 いのか 途 方 にくれてしまった。<br />

その 時 、 夫 婦 の 脇 に 愛 くるしい 顔 をし、 駅 員 の 帽 子 をかぶったロボットが「 何 かお 困 りですか?よろ<br />

しければご 案 内 いたします」と 寄 ってきた。 一 瞬 びっくりしたが、その 愛 くるしさとロボットであるこ<br />

とへの 安 心 感 ( 見 知 らぬ 人 に 対 する 警 戒 感 を 持 たない)から、びゅうプラザに 行 きたいことを 話 した。<br />

すると、ロボットの 胸 の 画 面 に 地 図 が 出 て 現 在 位 置 からびゅうプラザまでの 道 のりを 表 示 してくれた。<br />

さらに、「こちらです」と 言 いながらびゅうプラザのカウンターまで 案 内 してくれた。<br />

びゅうプラザのカウンターには 別 のロボットがおり、 名 前 と 長 男 から 聞 いていた 番 号 を 言 うと、 電 車<br />

の 切 符 、 旅 館 のチケットを 説 明 しながら 渡 してくれた。その 後 、 行 き 先 の 温 泉 周 辺 の 観 光 案 内 までして<br />

くれた。 切 符 等 を 受 取 り 電 車 の 乗 り 場 を 聞 こうとした 時 、 先 ほど 案 内 してくれたロボットが「 電 車 の 乗<br />

り 場 までご 案 内 します」と 言 いながら 近 づいてきて、 持 っていた 荷 物 をロボットに 接 続 したカートに 載<br />

せ、 電 車 の 乗 り 場 まで 案 内 してくれた。びゅうプラザを 出 るときサービスマネジャーという 名 札 をつけ<br />

た 駅 員 が 笑 顔 で「 行 ってらっしゃいませ。どうぞ 楽 しいご 旅 行 を」と 言 って 見 送 ってくれた。<br />

乗 り 場 までの 間 、ロボットが 切 符 は 全 てゲートを 通 過 する 際 、 自 動 で 読 取 るので 改 札 が 無 いことを 説<br />

明 してくれた。 無 事 、 乗 り 場 に 到 着 すると、 列 車 がくるまでロボットが 胸 の 画 面 で 行 き 先 の 観 光 案 内 を<br />

してくれ、 列 車 が 到 着 すると 座 席 番 号 を 確 認 してくれ、「◇◇さん( 長 男 の 名 前 )に 無 事 出 発 したこと<br />

をお 知 らせしておきます。 行 ってらっしゃい」と 声 をかけ 見 送 ってくれた。<br />

この、 駅 の 変 わりように 夫 婦 で 驚 きながら、ロボットの 愛 くるしさに 癒 され 温 泉 地 に 向 かった。<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

鉄 道 事 業 者 にとっては、 鉄 道 利 用 客 に 対 するサービス 向 上 とサービス 格 差 是 正 の2 点 がRTに 対 する<br />

投 資 動 機 となる。<br />

鉄 道 事 業 者 は、 顧 客 が 最 初 に 鉄 道 に 接 する 窓 口 となる 駅 におけるサービス 向 上 を 常 に 目 指 している。<br />

最 近 の 取 り 組 み 例 として, 鉄 道 網 利 用 の 便 利 化 やシームレス 化 がある。 既 に 行 われている 鉄 道 会 社 各 社<br />

の 相 互 乗 り 入 れ、インターネットを 利 用 したチケット 予 約 システムやICカード 乗 車 券 の 発 行 に 加 え、<br />

ICカード 乗 車 券 の 参 加 事 業 者 の 拡 大 と 共 通 化 / 相 互 利 用 によって、 鉄 道 に 限 らずバスなども 含 めた 輸<br />

送 網 の 大 規 模 なICカードネットワークの 構 築 が 進 んでいる。<br />

また 駅 構 内 の 商 業 施 設 化 も 顕 著 である。エキュートやエチカといった「 駅 ナカ」ビジネスが 注 目 され<br />

て 久 しいが、これにより 駅 構 内 の 利 用 者 数 が 増 加 傾 向 にあり、 今 後 ますます 注 力 ・ 拡 大 していくと 考 え<br />

られる。また、ICカード 乗 車 券 に 電 子 マネー 機 能 やキャッシュカード、クレジットカード、ポイント<br />

カードなどの 各 種 カード 機 能 を 持 たせることによって、「 駅 ナカ」 施 設 をはじめとする 商 業 施 設 での 利<br />

便 性 の 向 上 を 図 り、ICカードネットワークの 拡 大 とそれによるビジネスの 発 展 性 が 見 込 まれる。<br />

このように 駅 構 内 の 情 報 化 や 利 用 形 態 の 変 化 が 進 み 利 便 性 やサービスが 向 上 する 一 方 で、 情 報 弱 者<br />

( 例 えば、 高 齢 者 、 障 害 者 、 外 国 人 など)にとっては、これらの 資 源 を 利 用 することが 困 難 であり、 利<br />

用 者 の 間 にサービス 格 差 が 生 じることが 予 想 される。 鉄 道 事 業 者 の 社 員 についても、 今 後 、 減 少 ・ 高 齢<br />

化 が 進 むため、 個 々 人 のニーズに 合 わせた 木 目 細 かなサービスを 提 供 することが 益 々 難 しくなる。ここ<br />

に、「ふれあい 感 や 安 心 感 を 持 ったサービス 創 造 」、「 高 齢 者 を 補 完 するサービスの 創 造 」のアイテムと<br />

して、 人 型 のサービスロボットを 導 入 する 動 機 が 形 成 されている。<br />

4 事 業 規 模 推 定<br />

全 国 のJR、 私 鉄 、 地 下 鉄 、モノレールを 含 む 営 業 駅 数 は9,633であり、JRだけをみても4,<br />

586の 駅 を 有 している( 平 成 16 年 7 月 1 日 現 在 )。ただし、サービスロボットが 最 初 に 導 入 される<br />

箇 所 としては、 概 ね1 日 当 たりの 利 用 10 万 人 以 上 の 駅 が 有 力 であり、 例 えば、JR 東 日 本 の 場 合 、3<br />

3 駅 がこれに 該 当 する( 最 も 利 用 の 多 い 駅 : 約 75 万 人 / 日 )。<br />

2) システム 構 成<br />

1ロボットの 形 態<br />

以 上 で 整 理 したニーズに 応 える 駅 ・ 空 港 用 のサービスロボットとしては、 次 のようなものが 考 えられ<br />

16


る。<br />

・ 案 内 ロボット<br />

・コンシェルジェロボット<br />

案 内 ロボットは、 対 話 的 なインタフェースと 移 動 機 能 を 有 しており、 構 内 利 用 客 の 問 い 合 わせや、 行<br />

動 状 況 を 観 察 して 自 ら 近 寄 り、 駅 構 内 の 施 設 案 内 、 利 用 方 法 などを 提 供 する。また、 旅 客 情 報 を 取 得 し<br />

運 行 案 内 や 旅 客 の 手 荷 物 の 搬 送 も 可 能 である。さらに、 外 線 通 信 機 能 を 有 しており、 高 齢 者 や 子 供 が 旅<br />

行 をする 場 合 、お 客 さまの 希 望 により、その 出 発 状 況 などを 家 族 に 知 らせる。<br />

コンシェルジェロボットは、 予 約 システムと 接 続 されており、 予 約 されたチケット 類 を 発 券 する。さ<br />

らに 駅 ・ 空 港 を 出 た 後 の 観 光 地 情 報 や 宿 泊 情 報 までを 提 供 することもできる。<br />

2 環 境 情 報 構 造 化 システムの 構 成<br />

このようなロボットを、 早 期 にかつ 低 コストで 実 現 するためには、ロボット 本 体 の 技 術 追 及 のみなら<br />

ず、 環 境 側 からの 情 報 支 援 を 視 野 に 入 れたシステム 構 築 が 必 要 である。 具 体 的 には、 図 2.1.2-1<br />

に 示 すように、<br />

・チケット 予 約 システムからの 情 報<br />

・ 運 行 情 報 システムからの 情 報<br />

・ 手 荷 物 情 報 システムからの 情 報<br />

インターネット<br />

イントラネット<br />

情 報 サービスシステム<br />

構 内 店 舗 情 報<br />

コールセンタ<br />

業 務 システム<br />

チケット 予 約 システム<br />

乗 換 交 通 情 報<br />

運 行 情 報 システム<br />

観 光 地 ・ 宿 泊 情 報<br />

手 荷 物 情 報 システム<br />

翻 訳 サービス<br />

チケット<br />

電 子 タグ<br />

ICカード<br />

ロボット(+ 各 種 リーダ)<br />

構 内 インフラ<br />

各 種 リーダ<br />

カメラ 等 センサ<br />

屋 内 GPS<br />

図 2.1.2-1 駅 ・ 空 港 用 ロボットのための 環 境 情 報 構 造 化 システムの 構 成<br />

・ 構 内 地 図 情 報 (ホーム、 店 舗 情 報 など)<br />

・ 乗 換 えのための 交 通 情 報<br />

・ 周 辺 の 観 光 情 報 、 宿 泊 施 設 の 情 報<br />

・ 外 国 語 翻 訳 サービス<br />

などをロボットに 提 供 し、 多 様 な 顧 客 ニーズに 応 える 情 報 サービスを 実 現 する 必 要 がある。ロボットは、<br />

構 内 ネットワークを 通 して 業 務 システムや 構 内 インフラと 接 続 されると 共 に、 広 域 ネットワークを 通 し<br />

17


て 外 部 サービスプロバイダからの 情 報 を 受 け、これらを 相 互 に 活 用 することで、 多 様 な 情 報 サービスを<br />

実 現 する。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

1センサネットワークによる 人 の 行 動 認 識<br />

上 記 のようなロボットサービスをより 高 いレベルで 実 現 するためには、 分 散 配 置 されたカメラやセン<br />

サからの 情 報 を 解 析 し、 利 用 客 の 行 動 を 計 測 する 技 術 が 必 要 となる。 計 測 できれば、 動 線 を 把 握 して 混<br />

雑 を 避 けるような 誘 導 を 行 ったり、あるいは 長 時 間 立 ち 止 まっている、 同 じところを 回 っている 等 の 行<br />

動 を 認 識 して 近 寄 っていくことも 可 能 となる。これらは、 駅 に 不 慣 れな 高 齢 者 に 対 するサービスを 充 実<br />

させ、サービス 格 差 の 是 正 に 寄 与 するものと 考 えられる。<br />

2チケット 情 報 を 活 用 した 対 話 技 術<br />

旅 行 客 が 求 めるサービスを 適 切 に 提 供 するためには、 旅 行 客 がどんなサービスを 求 めているかを 理 解<br />

する 必 要 がある。 理 想 的 には 音 声 を 用 いた 対 話 ができればよいが、 雑 踏 の 中 での 音 声 認 識 は 未 だ 実 用 レ<br />

ベルになく、 駅 へのロボット 導 入 の 妨 げになる。これに 対 し、 駅 では、 旅 行 客 がチケットや IC カード<br />

のような 切 符 を 持 っているという 点 に 着 目 することができる。 即 ち、ロボットがチケットリーダやカー<br />

ドリーダを 搭 載 すれば、 旅 行 客 の 行 き 先 等 の 情 報 を 得 、サービス 提 供 に 活 用 することができる。ロボッ<br />

トにチケットやカードを 読 ませる 必 要 があるが、 旅 行 客 自 体 もロボットからみた 環 境 の 一 部 として、ロ<br />

ボットが 不 得 手 な 機 能 を 補 助 することも、 一 つの 現 実 的 アプローチと 考 える。 技 術 としては、チケット<br />

から 読 み 取 った 情 報 を 元 に、 対 話 のコンテキストを 制 御 する 技 術 について 開 発 を 行 う 必 要 がある。<br />

3 屋 内 GPSと 視 覚 センサを 連 動 させた 走 行 ナビゲーション 技 術<br />

ロボットが 駅 構 内 を 移 動 する 際 には、 時 々 刻 々 位 置 を 判 断 し、 走 行 経 路 を 定 める 必 要 がある。このよ<br />

うなナビゲーションを 安 定 に 行 うためには、ロボット 本 体 に 備 えたセンサの 活 用 だけでなく、 環 境 側 に<br />

屋 内 GPS 等 を 配 備 し 支 援 することも 有 効 である。ただし、 死 角 0とするほど 屋 内 GPSの 送 信 機 を 高<br />

密 度 に 設 置 するのはコストの 点 で 現 実 的 でない。 従 って、ロボットに 搭 載 された 視 覚 センサの 情 報 とG<br />

PSの 情 報 を 相 補 的 に 活 用 するナビゲーション 技 術 の 開 発 が 必 要 である。<br />

(2) 空 港<br />

第 2の 公 共 空 間 分 野 として 空 港 を 取 り 上 げる。この 場 合 、 事 業 者 は、 空 港 事 業 者 である。 具 体 的 には、<br />

政 府 指 定 特 殊 会 社 ( 成 田 国 際 空 港 株 式 会 社 , 中 部 国 際 空 港 株 式 会 社 , 関 西 国 際 空 港 株 式 会 社 など)や、<br />

国 土 交 通 省 関 連 局 ・ 事 務 所 ( 東 京 航 空 局 東 京 空 港 事 務 所 ( 羽 田 空 港 )など)、 関 連 管 理 会 社 ( 日 本 空 港<br />

ビルデング 株 式 会 社 ( 羽 田 空 港 )など)となる。<br />

空 港 利 用 事 業 者 として、 上 記 の 空 港 施 設 関 連 管 理 会 社 、 及 び 航 空 会 社 が 想 定 される。 空 港 の 設 備 とし<br />

ての 案 内 表 示 板 のRT 化 という 考 え 方 、 及 びサービスの 担 い 手 としての 航 空 会 社 スタッフを 支 援 するツ<br />

ールという 役 割 分 担 になるが、サービスロボットとしてはいずれの 場 合 も 投 資 対 象 になるものと 考 えら<br />

れる。<br />

1) シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

空 港 のエンドユーザは 飛 行 機 を 利 用 する 旅 行 客 である。これら 旅 行 客 に 対 する 一 番 のサービスとして<br />

案 内 が 挙 げられる。 特 に 海 外 からの 旅 客 は 日 本 での 移 動 には 不 案 内 であり、 空 港 から 先 どこへ 行 ったら<br />

よいか、 何 線 に 乗 ったらよいかなどの 質 問 が 多 いようだ。( 写 真 2.1.2-1、 写 真 2.1.2-2<br />

参 照 ) 対 応 言 語 は 英 語 だけでなく、 多 言 語 に 渡 り、ポルトガル 語 やスペイン 語 、 近 年 では 中 国 語 、 韓 国<br />

語 などのアジア 圏 の 言 葉 も 多 くなってきた。 音 声 認 識 による 通 訳 システムが 実 用 化 されてきており、モ<br />

18


デル 機 が 出 始 めている。<br />

写 真 2.1.2-1 インフォメーションでのガイド 写 真 2.1.2-2 切 符 売 り 場 のガイド<br />

2 具 体 的 シナリオ: 外 国 人 ツーリスト<br />

ユーザはツアーを 利 用 していない 外 国 人 ツーリストである。 観 光 で 日 本 を 訪 れ、 日 本 語 は 読 めないし、<br />

話 せない。ある 程 度 旅 慣 れているツーリストであるため、 空 港 の 利 用 方 法 はある 程 度 慣 れているが、 空<br />

港 から 目 的 地 までの 移 動 が 問 題 となっている。<br />

ガイドは 日 本 語 、 英 語 はできるが、 他 の 言 語 はほとんどわからない。そのため、 英 語 以 外 の 言 語 を 認<br />

識 する 通 訳 ロボットをインフォメーションカウンタや 切 符 売 り 場 周 辺 に 配 置 する。<br />

ガイドは、 日 本 語 、 英 語 以 外 の 言 語 を 母 国 語 とすることが 分 かった 場 合 、タッチパネルの 言 語 選 択 を<br />

促 す。タッチパネルはロボットにつながっており、ロボットが 選 択 した 言 葉 で「こんにちは、 御 用 を 承<br />

ります。 私 に 向 かって 話 してください」と 話 しかける。<br />

ツーリストは 戸 惑 いながらもロボットに 話 しかける。( 母 国 語 で)<br />

『 秋 葉 原 に 行 きたいんだけど』<br />

ツーリストが 話 した 言 葉 がタッチパネルに 選 択 言 語 、 翻 訳 された 日 本 語 で 表 示 された。ガイドも「 秋<br />

葉 原 ですね」と 応 じた。しかし、ロボットが 認 識 した 言 葉 に 基 づいて 検 索 をかけたが、 適 切 な 答 えにな<br />

ってないようだ。そこでガイドが、キーボードから 日 本 語 で 入 力 し、 翻 訳 のアイコンをクリックすると<br />

選 択 された 言 語 で 翻 訳 された 文 章 がタッチパネルに 表 示 され、ロボットが 選 択 言 語 で 読 み 上 げた。<br />

ガイドがローマ 字 で 書 いた 乗 り 換 え 駅 名 と 料 金 表 のメモをツーリストに 手 渡 した。<br />

ツーリストはにっこり 笑 って、「ドモ、アリガト」といい、その 場 を 離 れ、 秋 葉 原 に 向 かった。<br />

ロボットの 翻 訳 は 完 璧 ではないが、 観 光 が 井 戸 用 に 意 味 が 通 じる 程 度 まではできており、ガイドは 多<br />

くの 場 合 で 助 かっている。<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

航 空 運 輸 の 拠 点 となる 空 港 では、 近 年 、ターミナルや 滑 走 路 の 拡 張 、 新 規 空 港 の 開 港 などが 相 次 いで<br />

いる。 羽 田 空 港 の 利 用 者 数 は 年 間 約 6,300 万 人 、 成 田 空 港 では3,145 万 人 (いずれも2005<br />

年 )であり、 今 後 も 長 期 的 に 成 長 していくと 考 えられている。この 集 客 率 を 見 込 んで、 空 港 ビル 内 の 商<br />

業 施 設 や「 空 ナカ」 事 業 も 展 開 されているが、 空 港 利 用 者 の 多 くはビジネスや 旅 行 などの 移 動 途 中 であ<br />

り、 航 空 機 利 用 の 時 間 的 な 制 約 や 利 用 形 態 、 立 地 といった 条 件 などから、 商 業 展 開 しづらいと 考 えられ<br />

る。 今 後 、 旅 客 だけではない 空 港 利 用 客 も 増 やすためには、 話 題 性 の 提 供 や 空 港 内 のサービス 向 上 を 行<br />

う 必 要 がある。<br />

また、 航 空 会 社 各 社 のグローバルアライアンスへの 加 盟 や、eチケットなどのオンライン 業 務 の 国 際<br />

的 な 普 及 などにより、 旅 客 手 続 きの 簡 素 化 、 迅 速 化 が 行 われるとともに、 旅 客 が 多 国 籍 化 する 傾 向 にあ<br />

り、 今 後 ますます 多 様 化 する 旅 客 へのサービスの 向 上 が 必 要 となる。<br />

19


すでにICタグを 利 用 したサービスの 検 証 実 験 等 も 進 められているが、RTによる 環 境 構 造 化 を 導 入<br />

することにより、ロボットによる 物 理 的 なサービスも 含 めたサービス 向 上 を 図 り、 話 題 性 を 提 供 すると<br />

ともに 空 港 内 業 務 の 効 率 化 、 利 用 者 の 増 大 を 図 ることが、 空 港 事 業 者 の 投 資 動 機 となる。<br />

4 事 業 規 模 推 定<br />

国 内 には96の 空 港 がある。 施 設 数 としては 決 して 多 い 数 ではない。しかしながら、 空 港 施 設 は 大 型<br />

であるため、1 施 設 で 多 数 のロボットを 活 用 する 可 能 性 があり、 全 国 で1,000 台 以 上 のロボットが<br />

利 用 される 可 能 性 がある。<br />

2)システム 構 成<br />

空 港 向 けのサービスロボットは、 駅 のサービスロボットと 基 本 的 には 同 じと 考 えることができる。た<br />

だし、 外 国 人 対 応 のため、 外 国 語 を 用 いたサービス 機 能 を 有 する 点 が 特 徴 となる。<br />

JTBの 旅 ガイドで 使 われている 単 語 は 約 5 万 語 といわれている。 一 方 で 翻 訳 システムで 使 われてい<br />

る 単 語 数 はほぼ1 万 語 程 度 での 組 み 合 わせだとされている。A 社 の 試 算 によると、 音 声 認 識 による 翻 訳<br />

システムを 構 築 する 場 合 、ある 程 度 の 翻 訳 システムが 確 立 している 場 合 は、1 言 語 1 年 、1 億 円 の 投 資<br />

で 開 発 が 可 能 とされている。<br />

音 声 認 識 システムには 静 かな 環 境 が 必 要 ではあるが、マイクを 工 夫 し、ロボットによる 画 像 認 識 で 音<br />

源 を 特 定 すれば 認 識 率 を 若 干 上 げることは 可 能 である。ロボット 自 体 は 動 く 必 要 はないので、タッチパ<br />

ネルの 画 面 、 話 しかけやすいようなフレンドリーな 顔 、マイク、カメラを 備 えていればよい。<br />

ロボット 自 体 の 開 発 コストよりも 音 声 認 識 システム 開 発 のコストがかかるため、 空 港 だけでなく、 駅 、<br />

郵 便 局 、 交 番 など、ツーリストが 立 ち 寄 りそうな 場 所 へも 導 入 されることが 望 ましい。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

要 素 技 術 で 見 ても、 空 港 向 けの 技 術 と 駅 向 けの 技 術 は 重 なる 点 がほとんどである。 駅 と 同 様 に、シス<br />

テム 化 を 図 った 上 で、<br />

1センサネットワークによる 人 の 行 動 認 識<br />

2チケット 情 報 を 活 用 した 対 話 技 術<br />

3 屋 内 GPSと 視 覚 センサを 連 動 させた 走 行 ナビゲーション 技 術<br />

の3 技 術 を 開 発 すべきと 考 える。<br />

2.1.3 図 書 館 、 美 術 館 、 科 学 館<br />

(1) 科 学 館<br />

事 業 者 : 独 立 行 政 法 人 、 民 間 企 業 など<br />

(1-1) 科 学 館 シナリオ1<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

スタッフ、 施 設 利 用 者<br />

2シナリオ<br />

国 立 の 科 学 館 。 公 共 施 設 でもあるので、 誰 でもが 入 れるフリースペースと 入 場 券 が 必 要 な 展 示 室 が 館<br />

20


内 に 共 存 している。 利 用 者 には、 券 売 機 で 売 られる 当 日 の 刻 印 つきの 入 場 券 を、ネックストラップで 身<br />

に 着 けてもらっている。 館 内 にいくつもある 展 示 室 出 入 り 口 に 人 を 配 備 してチェックしているが、スタ<br />

ッフの 数 も 限 られているので、 案 内 業 務 などが 入 ってしまうと 人 が 不 在 になり、 十 分 ではない。また、<br />

プラネタリウム・ 映 画 上 映 など、 予 約 が 必 要 な 展 示 には、 専 用 の 受 付 を 設 けて、スタッフが 整 理 券 を 配<br />

布 すると 引 き 換 えに 入 場 券 にスタンプを 押 している。ネックストラップは、 回 収 箱 を 設 置 するも、お 土<br />

産 に 持 って 帰 る 人 もいるので 足 りなくなると 補 充 している。 最 新 の 技 術 を 集 めた 科 学 館 といえども、 入<br />

退 出 管 理 は 非 常 にアナログである。 科 学 館 事 務 局 長 は、 入 退 場 や 施 設 予 約 を 含 めて、スマートな 方 法 で<br />

自 動 化 したいと 考 えている。<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

以 下 に 箇 条 書 きで 示 す。<br />

”・” 印 は 美 術 館 ・ 博 物 館 において 共 通 する 事 項 、”☆” 印 は、 当 該 施 設 特 有 の 投 資 動 機 事 項 である。<br />

・ 人 手 不 足 の 補 強<br />

・ 人 件 費 削 減<br />

☆ 展 示 物 の 魅 力 アップ<br />

ロボットシステム 自 体 が、 展 示 品 になる<br />

より 触 れ 合 うことのできる 展 示 品 が 求 められている<br />

・ 入 退 管 理 システム 効 率 化<br />

・ 清 掃 コストの 削 減<br />

・ 清 掃 機 会 増 加 による 施 設 の 保 全<br />

・ 展 示 支 援<br />

天 井 から、 照 明 による 演 出 を 施 す。 高 所 作 業 になるため、 危 険 度 が 高 い<br />

☆ 展 示 ガイドサポート<br />

ツアーガイドの 代 わりに、ロボットが 展 示 説 明 を 移 動 しながら 話 す<br />

・ 悪 天 候 時 のサポート<br />

雨 の 日 には、 床 が 滑 りやすくなり 危 険 である<br />

・ 見 学 者 の 安 全 保 護<br />

館 内 設 備 での 事 故 を 未 然 に 防 ぐ(エレベータ・エスカレータ・ 回 転 ドアなど)<br />

・ 展 示 物 の 保 護<br />

盗 難 や、 接 触 による 損 壊 被 害 を 防 ぐ<br />

・ 監 視 業 務 効 率 化<br />

・ 混 雑 整 理<br />

・ 動 線 の 計 測<br />

4 事 業 規 模 推 定<br />

全 国 博 物 館 約 1400。{ 総 合 98、 科 学 247、 歴 史 790、 産 業 223}<br />

日 本 の 博 物 館 美 術 館 ガイドhttp://e-museum。jp/より 検 索<br />

2) システム 構 成<br />

◆ 入 館 システム 管 理 RTシステム<br />

・ 無 線 タグ 内 蔵 の 入 館 カード<br />

・ 自 動 券 売 機 で 販 売 する<br />

・ 各 種 割 引 券 を 認 識 し、 値 引 きする<br />

・ 入 館 カードはゲートで 回 収 する<br />

・ 入 館 カードは、 記 念 に 持 って 帰 る 場 合 、 再 利 用 することで 特 典 がつく(ポイント 制 )<br />

・ 入 場 ゲートのみで、 自 動 改 札 機 ほど 場 所 をとらない<br />

・ 入 場 者 限 定 の 展 示 室 への 予 約 、チェックイン<br />

21


・ 天 気 情 報 と 連 動 し、 雨 の 日 はカメラによる 測 定 で、ぬれた 傘 を 検 出 。 傘 を 置 いていかないと 入 館 でき<br />

ない<br />

・タグリーダを 全 館 に 配 置 し、 利 用 者 の 動 線 を 測 定<br />

・ロボットにはアクティブの 無 線 タグを 搭 載 し、インフラを 利 用 して 自 己 位 置 の 特 定 や 補 正 を 行 う<br />

(タグリーダで 位 置 情 報 を 読 み 取 り、 位 置 情 報 を 修 正 する)<br />

・ロボットは、 端 末 として 展 示 室 の 予 約 も 受 付 可 能 である<br />

・ロボットは、 巡 回 監 視 も 行 い、 呼 び 止 められれば 道 案 内 を 行 う<br />

< 具 体 的 創 造 シナリオ><br />

チケット 発 行 から、 入 場 退 場 のチェックが 自 動 化 したことにより、スタッフも 本 来 業 務 である 展 示 説<br />

明 に 力 を 入 れることができるようになった。 特 に、ロボットが 簡 単 な 道 案 内 などを 代 行 してくれるのが<br />

大 きい。 展 示 というサービスの 質 を 向 上 することができた。<br />

入 館 確 認<br />

図 2.1.3-1 入 館 管 理 RTシステム<br />

3) 知 能 化 技 術<br />

・ 室 内 地 図 自 動 作 成<br />

・ 障 害 物 回 避<br />

・ 衝 突 予 測 、 回 避<br />

・ 経 路 の 最 適 化<br />

・ 自 動 経 路 生 成<br />

・ 自 己 位 置 修 正<br />

・ 移 動 ロボット 群 制 御<br />

上 記 、 知 能 化 技 術 を 支 える 環 境<br />

・ 高 出 力 充 電 池<br />

・ 急 速 充 電 技 術<br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

22


・ 無 線 IDタグ 技 術<br />

・ 音 声 合 成 技 術<br />

(1-2) 科 学 館 シナリオ2<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

利 用 者 、スタッフ<br />

2 具 体 的 シナリオ<br />

企 業 の 私 設 科 学 館 であり、 利 用 者 は 無 料 で 見 学 することができる。 科 学 教 室 、パソコン 教 室 、 映 画 上<br />

映 会 などイベントが 定 期 的 に 開 かれ、 平 日 には 団 体 客 も 多 く 毎 日 数 百 人 単 位 の 利 用 者 がいる。また、グ<br />

ローバル 企 業 として、 世 界 各 国 からビジネスパートナーを 迎 える 場 でもある。 老 若 男 女 ・ 国 籍 を 問 わず、<br />

顧 客 満 足 度 を 上 げることをミッションとしている。また、 無 料 で 見 学 といえども、 受 付 で 必 ず 記 帳 をお<br />

願 いしている。リピーターには、ポイントカードに 登 録 してもらい、 来 館 するたびにポイントを 集 めれ<br />

ば 景 品 と 交 換 するシステムが 好 評 である。 子 供 連 れの 場 合 、 保 護 者 が 受 付 で 記 帳 やポイント 登 録 をして<br />

いる 間 に 子 供 が 暇 をもてあまし、あらぬ 方 向 へ 駆 け 出 していってしまうことが 多 い。また、 英 語 対 応 ・<br />

中 国 語 対 応 可 能 なスタッフはいるが、 外 国 からのお 客 様 には、できればその 国 の 言 語 で 最 初 の 挨 拶 ぐら<br />

いしたいと 考 えている。<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

・ 案 内 業 務 効 率 化 によって 人 手 不 足 を 補 う<br />

・FAQに 答 える(トイレ、 自 販 機 、 入 り 口 、 出 口 )<br />

・ 受 付 業 務 のパフォーマンス 性 向 上<br />

・ 案 内 ・ 受 付 業 務 の 多 言 語 対 応<br />

4 事 業 規 模 推 定<br />

・ 案 内 業 務 効 率 化 によって 人 手 不 足 を 補 う<br />

・FAQに 答 える(トイレ、 自 販 機 、 入 り 口 、 出 口 )<br />

・ 受 付 業 務 のパフォーマンス 性 向 上<br />

・ 案 内 ・ 受 付 業 務 の 多 言 語 対 応<br />

2) システム 構 成<br />

◆ 受 付 ロボット: 受 付 でユーザを 歓 迎 する 据 え 置 き 型 ロボット<br />

・ 案 内 業 務 の 補 助 を 行 う<br />

・ツアー 外 、フリーのお 客 様 のご 案 内<br />

・ 質 問 に 答 える<br />

・エレベータ、トイレ、 自 販 機 、 休 憩 スペースなどへの 誘 導<br />

・アテンダントの 顔 を 認 識 して 挨 拶 する<br />

・ 子 連 れの 場 合 、 保 護 者 が 入 場 手 続 きをしている 間 に 子 供 がどこかに 行 ってしまわないように、 興 味 を<br />

引 いて 相 手 をする<br />

・VIPに 対 して、 仕 込 みで 特 別 に 挨 拶 する。 特 に 海 外 からのお 客 様 の 場 合 には、あいさつ 文 (「こん<br />

にちは。 本 日 はようこそいらっしゃいました。 私 はどこどこのロボット、なになにです。 楽 しんでく<br />

ださい。」 程 度 )を 登 録 し、 言 語 を 選 択 して 音 声 合 成 で 読 み 上 げることができる<br />

23


具 体 的 創 造 シナリオ><br />

受 付 で、 文 字 通 り 科 学 館 の 顔 として、ロボットが 来 館 者 を 迎 えている。 幼 い 子 供 も、まずロボットに<br />

目 を 奪 われ、 興 味 を 持 って 触 れようとする。 子 供 にとってはロボットの 反 応 が 新 鮮 で 楽 しく、かまって<br />

いる 間 に 保 護 者 はスムースに 受 付 を 済 ませることができる。すぐにトイレに 行 かせようと 思 っていたの<br />

で、すかさずロボットに 最 寄 りのトイレの 場 所 を 教 えてもらう。 子 供 が 目 の 届 く 範 囲 にとどまってくれ<br />

ているので、アテンダントも 落 ち 着 いて 受 付 業 務 が 可 能 になった。このあと、10 時 にフランスからの<br />

お 客 様 が 到 着 予 定 であるので、あらかじめ 用 意 したあった 挨 拶 文 をフランス 語 モードでセットしておく。<br />

お 迎 えすると 同 時 に 遠 隔 ボタン 操 作 でロボットに 挨 拶 させるのだ。 特 に 海 外 のお 客 様 には、こういった<br />

ロボットは 珍 しいので、より 身 近 に 感 じてもらえれば 幸 いだ。ロボットは、カメラで 顔 認 識 ができるの<br />

で、 利 用 者 としてはリピーターとなって 顔 と 名 前 を 登 録 すれば、 顔 認 識 の 結 果 、 名 前 を 呼 んで 挨 拶 して<br />

もらえるので 非 常 に 気 分 がいい。アテンダントにも 顔 を 見 て 挨 拶 するので、 業 務 にも 励 みとなる。<br />

受 付<br />

記 帳<br />

図 2.1.3-2 受 付 ロボット<br />

3) 知 能 化 技 術<br />

・ 多 言 語 自 動 対 応<br />

・ 音 声 認 識 技 術<br />

・ 顔 認 識 技 術<br />

・ 動 作 認 識 技 術<br />

・ 音 声 自 動 対 話 技 術<br />

上 記 、 知 能 化 技 術 を 支 える 環 境<br />

・ロボットシステムアップ 技 術<br />

・コンテンツ 開 発 インタフェース<br />

・ 簡 易 操 作 インタフェース<br />

・ 音 声 合 成 技 術<br />

24


(2) 美 術 館 ・ 博 物 館<br />

事 業 者 : 経 営 者 、オーナー<br />

(2-1) 美 術 館 シナリオ1<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

スタッフ、 美 術 館 学 芸 員<br />

2 具 体 的 シナリオ<br />

41 歳 男 性 、 政 令 指 定 都 市 の 海 際 の 人 気 スポットに 建 つ、 企 業 の 私 設 美 術 館 に5 年 前 から 勤 務 する 学<br />

芸 員 。 中 途 採 用 であり、 他 の 美 術 館 から 引 き 抜 かれた 経 緯 がある。 美 術 館 自 体 は 複 雑 で 仕 掛 けに 富 むこ<br />

とで 高 名 な 世 界 的 建 築 家 の 手 による 設 計 で、 建 設 がハートビル 法 施 行 前 であることから、バリアフリー<br />

化 は 十 分 でなく、 建 築 自 体 がキャッチーなセールスポイントである 反 面 、 実 用 性 が 低 く、スタッフにも<br />

お 客 様 にも 使 い 勝 手 が 悪 いというジレンマをかかえている。 美 術 館 としては、 近 現 代 が 主 で、1 年 に4<br />

回 か5 回 、 展 示 品 を 架 け 替 える。ポスターの 収 蔵 品 が 有 名 であるが、ポスター 以 外 の 企 画 展 示 のほうが<br />

年 間 を 通 して 多 い。 面 積 は 約 1,000 平 方 メートル、 平 日 は 平 均 1,500 名 が 訪 れ、 土 日 祭 日 は、<br />

10,000 名 を 越 える 混 雑 になることもある。 学 芸 員 スタッフは5 名 いるが、 土 日 は 二 人 体 制 で、 毎<br />

日 ギリギリで 対 応 している。 展 示 解 説 や、 企 画 業 務 に 注 力 したいところであるが、 現 場 ではお 客 様 を 誘<br />

導 するなど 案 内 業 務 が 圧 倒 的 に 多 い。さらに、 展 示 準 備 中 および 展 示 期 間 中 に 発 生 する 重 労 働 作 業 があ<br />

る。それは、 展 示 のための 調 光 作 業 である。コレクションを 持 つ 美 術 館 / 博 物 館 では、 展 示 物 を 常 設 し<br />

ているがこれに 期 間 限 定 の 企 画 展 示 が 併 設 されることが 多 い。コレクションが 無 い 施 設 では、 展 示 を 自<br />

ら 企 画 し、 一 定 期 間 ごとに 展 示 物 の 換 装 を 行 っている。つまり、 展 示 が 入 れ 替 わるたびに 照 明 条 件 も 変<br />

わるため、 年 間 を 通 して3、4 回 × 展 示 物 の 数 だけの 作 業 が 発 生 する。 電 球 の 交 換 やスポットライトの<br />

角 度 微 調 整 という 工 事 に 近 い 作 業 ではあるが、 展 示 物 に 対 する 責 任 があるため、これらの 仕 事 はもっぱ<br />

ら 学 芸 員 の 手 によって 行 われている。 照 明 器 具 は、たいていが 天 井 など 高 所 に 取 付 けられており、 本 来<br />

なら 工 事 を 専 門 としない 学 芸 員 たちが 脚 立 にのぼり、 下 から 指 示 を 受 け 展 示 物 を 見 ながら 微 調 整 を 行 っ<br />

ているのが 現 状 である。 展 示 期 間 中 に 電 球 がきれてしまったときなども、 施 設 管 理 担 当 者 ではなく、 学<br />

芸 員 が 高 所 で 電 球 交 換 の 作 業 を 行 っている。 脚 立 に 上 り、 展 示 品 の 位 置 に 合 わせて 天 井 のスポットライ<br />

トの 傾 き 角 や、 明 るさ(ルーメン)を 調 整 する 作 業 が 展 示 準 備 中 続 き、さらに 展 示 期 間 中 に 電 球 がきれ<br />

てしまった 場 合 の 交 換 作 業 も 同 様 に 学 芸 員 が 行 う。 入 社 当 時 は、 若 い 男 手 ということで 一 手 にこの 作 業<br />

をひきうけてきたが、40 歳 を 過 ぎたあたりから、この 作 業 が 続 くと 腰 に 負 担 がかかり、だんだんつらく<br />

なってきた。かといって、 自 分 より 若 く、 任 せられる 人 もいない。 現 場 では 即 戦 力 を 求 めているので、<br />

採 用 するとなると 学 芸 員 資 格 または 図 書 館 司 書 資 格 をもった 経 験 のある 人 物 しかなくなるのだ。 誰 でも<br />

操 作 が 簡 単 なように、 何 とか 自 動 化 できないか、と 思 っている。できるなら 天 井 ごと 変 えてしまいたい。<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

以 下 に 箇 条 書 きで 示 す。<br />

”・” 印 は 美 術 館 ・ 博 物 館 において 共 通 する 事 項 、”☆” 印 は、 当 該 施 設 特 有 の 投 資 動 機 事 項 である。<br />

・ 人 手 不 足 の 補 強<br />

・ 人 件 費 削 減<br />

・ 入 退 管 理 システム 効 率 化<br />

・ 案 内 業 務 効 率 化<br />

・ 受 付 業 務 のパフォーマンス 性 向 上<br />

・ 案 内 ・ 受 付 業 務 の 多 言 語 対 応<br />

・ 清 掃 コストの 削 減<br />

25


・ 悪 天 候 時 のサポート<br />

雨 の 日 には、 床 が 滑 りやすくなり 危 険 である → 収 蔵 品 保 護 のため、 湿 気 をシャットアウトする 必<br />

要 がある<br />

・ 監 視 業 務 効 率 化<br />

・ 混 雑 整 理<br />

☆ 展 示 物 の 保 護 → 収 蔵 品 は、 唯 一 無 二 であり 価 値 の 高 い 文 化 財 であり、これを 守 る<br />

☆ 照 明 による 調 光 の 自 動 化 → 展 示 物 ごとに 照 明 効 果 を 合 わせる<br />

美 術 を 専 門 とする 学 芸 員 が、 高 所 で 照 明 の 位 置 を 調 整 し、 電 球 を 交 換 している<br />

☆ストレージ 管 理 業 務 の 効 率 化 → 収 蔵 品 がDB 化 されていても、 倉 庫 のどこにあるのかがわからず、<br />

すぐに 探 せない 収 蔵 品 を 処 分 できず、どんどん 増 えていくのでDB 化 が 追 いつかない 虫 やカビが 天 敵<br />

☆ 人 件 費 削 減<br />

監 視 スタッフを 派 遣 してもらうため、 人 件 費 がかさむ<br />

・ 限 られたスペースの 有 効 利 用<br />

☆ 行 列 時 の 対 応<br />

展 示 内 容 、 平 日 か 休 日 かによって 混 雑 具 合 が 異 なる<br />

☆ 混 雑 時 の 対 応<br />

展 示 内 容 、 平 日 か 休 日 かによって 混 雑 具 合 が 異 なる<br />

☆ 展 示 品 架 け 替 えの 搬 送<br />

搬 入 ・ 搬 出 で 年 に 約 10 回 は 作 業 が 発 生 する<br />

4 事 業 規 模 推 定 : 全 国 美 術 館 数 約 720<br />

日 本 の 博 物 館 美 術 館 ガイド http://e-museum。jp/より 検 索<br />

2)システム 構 成<br />

1RT 天 井 システムの 提 案<br />

展 示 場 所 が 限 られている 展 示 室 内 では、RT 導 入 のためのスペースを 確 保 することが 難 しい。そこで、<br />

天 井 を 有 効 利 用 することを 考 える。 天 井 に 必 ずある 設 備 は 照 明 であり、 天 井 に 設 置 可 能 なデバイスとし<br />

てカメラや、 無 線 機 器 、プロジェクター、スピーカなどが 挙 げられる。まず、 照 明 は 展 示 品 の 演 出 のた<br />

め、 調 光 に 用 いられる。 調 光 とは、 照 明 条 件 を 調 整 することであり、 展 示 物 一 つ 一 つに 対 して 作 業 が 発<br />

生 する。これを 自 動 化 するために、 天 井 に20cm 平 方 メートルのマトリックス 構 造 を 持 つ 情 報 インフ<br />

ラ・ 電 源 供 給 ネットワークを 構 築 し、 各 座 標 ごとにデバイスを 選 んで 取 付 けることのできるモジュール<br />

を 配 置 する。 展 示 物 に 近 い 壁 側 には 照 明 を、 部 屋 の 角 には 監 視 カメラを、あいた 座 標 には 無 線 タグ 等 の<br />

受 信 機 を、 用 途 に 応 じて 配 置 することが 可 能 である。 天 井 に 実 装 する 作 業 は、 移 動 などが 困 難 でかつ 高<br />

所 作 業 のため 危 険 にさらされるので、これらがすべて 手 元 で 作 業 できるように、リモコン 操 作 でリール<br />

を 巻 き 上 げ、モジュールを 上 下 動 させる。モジュールは5 自 由 度 (xyz 軸 ・パンチルト)の 可 動 ユニ<br />

ットからなり、 電 球 、カメラ、RFID 受 信 機 、スピーカ、 小 型 プロジェクター 等 がユニットに 設 置 可<br />

能 となる。 赤 外 線 リモコン 操 作 により 明 るさ(ルーメン)を 調 整 することもできる。 監 視 カメラのネッ<br />

トワーク 化 により、 監 視 業 務 も 効 率 化 する。また、 無 線 タグの 受 信 機 で 記 録 をとることにより、 会 場 内<br />

の 混 雑 度 を 測 り、 利 用 者 の 動 線 を 計 測 し、 滞 留 時 間 を 記 録 することができる。まとめると、RT 天 井 シ<br />

ステムにより、「 調 光 」「 監 視 」「 動 線 計 測 」が 可 能 となる。<br />

< 具 体 的 創 造 シナリオ><br />

天 井 に、20cm 角 のマトリックスでスポットライトの 電 球 配 備 が 可 能 なようにネットワークが 構 築 。<br />

スポットライトを 設 置 したいXY 座 標 の 下 に 立 ち、 手 元 のリモコンを 用 いて、 天 井 のスポットライトユ<br />

ニットを 作 業 しやすい 高 さ(1.2mほど)までリールが 下 げてくる。ソケット 部 に 電 球 を 差 込 み、 再<br />

び 天 井 まで 上 げる。このとき、 電 球 は 真 下 を 向 いているので、 壁 面 の 展 示 品 に 合 わせながらパン・チル<br />

ト 角 をリモコンで 制 御 する。 脚 立 にのぼり、ヒヤリ・ハットの 連 続 だった 作 業 がとても 楽 になった。 展<br />

示 品 保 護 の 観 点 からも、 危 険 にさらされることがなくなり、 非 常 によい。また、 電 源 供 給 がされている<br />

26


ので、 電 球 ソケットのみでなく、カメラやスピーカ、 無 線 LANなどのアンテナ 等 の 小 型 電 子 機 器 も 天<br />

井 に 簡 単 に 設 置 可 能 となり、 監 視 業 務 の 効 率 もアップするだけでなく、ナレーションや 音 楽 を 流 すなど<br />

の 演 出 も 容 易 に 可 能 になった。 従 来 は、スピーカを 設 置 するための 壁 面 を 木 造 で 設 置 していたりしてい<br />

た。 小 型 化 されたプロジェクターも 設 置 できるので、 絵 画 のみでなく、 動 画 などのマルチメディア 対 応<br />

となり 展 示 の 幅 が 広 がった。 電 子 機 器 でなくても、 環 境 になじむようにデザインされた 案 内 標 識 をつり<br />

さげることができるので、ちょっと 天 井 を 見 れば、 休 憩 スペースや 順 路 、トイレがどこにあるのかすぐ<br />

にわかるようになり、 案 内 業 務 も 目 に 見 えて 減 った。このぶんを、「 学 芸 員 による 展 示 解 説 」や、「 学<br />

芸 員 による 展 示 ツアー」などにまわして、お 客 様 とコミュニケーションをとっていくことが、よりよい<br />

サービスの 提 供 になると 考 えている。<br />

天 井<br />

照 明<br />

カメラ<br />

RFID 受 信 機<br />

手 元 で 交 換 可 能<br />

リモコン<br />

図 2.1.3-3 RT 天 井 システム<br />

3) 知 能 化 技 術<br />

・ 照 明 度 調 整 の 自 動 化<br />

・ 音 響 設 備 配 置 の 自 動 化<br />

・プロジェクション 装 置 配 置 の 自 動 化<br />

・ 動 線 計 測 の 自 動 化<br />

・ 人 の 誘 導 の 自 動 化<br />

上 記 を 支 える 環 境 構 造 化 技 術<br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

・ 無 線 IDタグ 技 術<br />

・3 自 由 度 メカニズムのユニット 化<br />

・コントローラのコンパクト 化 およびユニット 化<br />

・ネットワーク 技 術<br />

27


(2-2) 美 術 館 シナリオ2<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

利 用 者<br />

2 具 体 的 シナリオ<br />

75 歳 、 都 市 近 郊 住 宅 地 の 一 軒 家 で 一 人 暮 らし。 大 正 生 まれの 夫 に 先 立 たれ、 年 金 ・ 家 賃 収 入 で 生 活<br />

し、 少 しではあるが 貯 金 もある。 病 気 もあって 足 腰 が 弱 くなり、 日 常 生 活 は 問 題 ないが、 外 出 には 杖 が<br />

必 要 。 長 女 (50 歳 )は 電 車 で1 時 間 の 都 市 部 に 家 族 とともに 暮 らし、 会 社 勤 めの 夫 の 世 話 をしながら、<br />

パート 勤 務 の 合 間 、2 日 か3 日 おきにやってきて 買 い 物 など 面 倒 を 見 てくれる。2 週 に1 度 の 病 院 通 い<br />

には 長 女 が 付 き 添 う。<br />

以 前 から 美 術 には 興 味 があり、 絵 画 教 室 に 通 って 油 絵 を 描 いていたこともある。 印 象 派 や、シャガー<br />

ルの 絵 が 好 きで、30 年 前 ニューヨークに 行 ったときにはオリジナルの 版 画 を 購 入 したほど。 特 に 木 彫<br />

は 近 所 の 奥 様 主 催 のサークルに 参 加 し、もう30 年 以 上 続 けている。40 代 、50 代 のころは 足 しげく<br />

美 術 館 や 展 覧 会 、アートギャラリーに 足 を 運 び、 重 たい 美 術 全 集 やカタログを 購 入 し 持 って 帰 る 元 気 も<br />

あったが、 今 では 例 え 付 き 添 いがあったとしても、 美 術 館 に 行 くことさえあきらめている。 最 後 に 行 っ<br />

たのは、 約 10 年 前 に 孫 と 行 ったBunka 村 ミュージアムのルノワール 展 で、 作 品 には 感 激 したがそ<br />

のときでもう 懲 りてしまった。ルーブル 美 術 館 ほど 広 くはないが、 休 憩 スペースが 全 くないので、 展 示<br />

室 で 一 息 つくこともままならないのだ。 長 椅 子 があったとしても、すぐ 埋 まってしまう。 車 椅 子 でまわ<br />

っていたとしても、 視 点 が 下 がってしまうため 観 賞 しにくいことは 想 像 に 難 くない。その 後 数 年 間 、 絵<br />

画 鑑 賞 から 遠 ざかっているうちに 病 気 にかかり、 長 時 間 たっていたり、 歩 いたりするのがつらくなって<br />

しまった。 最 近 でも、 数 年 前 にフェルメールやイタリア・ドイツなど、 興 味 は 持 ったがテレビの 絵 画 番<br />

組 で 鑑 賞 したのみ。テレビは 好 きでよく 見 ている。ドラマやバラエティ、お 笑 いを 楽 しみ、 人 の 顔 と 名<br />

前 を 覚 え、また 厳 しく 批 評 するくらいなので、 絵 画 鑑 賞 には 十 分 元 気 だろうと 思 われるが、「 展 覧 会 で<br />

も 美 術 館 でもどこか 行 きたいとこある?」と 聞 いても 本 人 は 消 極 的 である。 長 女 や 孫 は、 元 気 なうちに<br />

いろいろ 連 れて 行 って 見 せてあげたいと 思 っている。 家 でテレビを 見 るのと 同 じくらい 楽 な 姿 勢 で、 美<br />

術 館 をまわれたら。<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

以 下 に 箇 条 書 きで 示 す。<br />

”・” 印 は 美 術 館 ・ 博 物 館 において 共 通 する 事 項 、”☆” 印 は、 当 該 施 設 特 有 の 投 資 動 機 事 項 である。<br />

☆ 展 示 のバリアフリー 化 → 誰 にでもわかりやすく、 見 やすい 展 示 が 求 められている<br />

目 線 の 高 さ 設 定 ( 展 示 品 、 文 字 情 報 )によるクレーム 削 減<br />

☆ 展 示 物 の 保 護 → 収 蔵 品 は、 唯 一 無 二 であり 価 値 の 高 い 文 化 財 であり、これを 不 審 者 や 思 わぬ 事 故<br />

から 守 らなければならない。<br />

・ 見 学 者 の 安 全 保 護 → 館 内 設 備 での 事 故 を 未 然 に 防 ぐ。<br />

(エレベータ・エスカレータ・ 回 転 ドアなど)<br />

・サービスの 向 上 → 利 用 者 の 疲 労 負 担 が 大 きいことは、 事 業 者 ・ 利 用 者 双 方 の 認 識 は 高 いものの、<br />

構 造 的 な 改 革 には 至 っていない( 引 用 文 献 参 照 )。 図 2.1.3-4(1)および(2)は、それぞ<br />

れ1985 年 ( 昭 和 60 年 )、1986 年 ( 昭 和 61 年 ) 朝 日 新 聞 に 掲 載 された 漫 画 「フジ 三 太 郎 」<br />

(サトウサンペイ 作 )を 引 用 したものである。(1)では、 主 人 公 は1コマ 目 、 美 術 館 においてコツ<br />

コツ 歩 いて 絵 画 鑑 賞 しているが 疲 弊 し、2コマ 目 では、 十 分 な 休 憩 スペースが 確 保 されていないのか、<br />

屋 外 の 階 段 で 休 憩 している。3コマ 目 では 寝 転 がって 鑑 賞 できる『 和 風 美 術 館 』システムを 提 案 して<br />

いる。さらに、 翌 年 の 作 品 となる(2)では、 同 じ 美 術 館 を 舞 台 として、1コマ 目 は 同 様 に 歩 いて 鑑<br />

賞 し、2コマ 目 では 目 も 足 腰 も 疲 れはてて 展 示 室 内 のベンチに 横 たわる 姿 が 見 られる。そして3コマ<br />

目 では、 見 学 者 それぞれが 小 型 カートを 運 転 して 展 示 室 内 を 移 動 しながら 絵 画 を 鑑 賞 する 美 術 館 を<br />

28


『 遊 園 地 より 導 入 せよ』と 新 たに 提 案 している。<br />

4 事 業 規 模 推 定 : 同 上<br />

2) システム 構 成<br />

(1) (2)<br />

図 2.1.3-4 引 用 : 美 術 鑑 賞 における 疲 労 の 例<br />

出 典 :サトウサンペイ 作 『フジ 三 太 郎 名 場 面 』13、14( 朝 日 新 聞 社 刊 )より 引 用<br />

1 展 示 案 内 RTビークル<br />

電 動 式 自 走 ロボットカーによるミュージアム 案 内 システムを 考 案 した。 昨 今 のバリアフリー 化 にとも<br />

ない、 誰 にとっても 見 やすいことが 重 要 であるが、 展 示 物 の 高 さがそこで 問 題 になってくる。 立 ってい<br />

る 成 人 に 合 わせると 車 椅 子 の 利 用 者 には 高 すぎて 見 られない、かといって 低 すぎては 見 づらい、と 現 在<br />

では 中 途 半 端 な 設 定 でお 茶 を 濁 していることが 多 い。ロボットカーには 高 さ 調 整 ができる 機 能 を 持 たせ、<br />

これにより 絵 画 との 距 離 や 混 雑 具 合 に 合 わせて 見 る 高 さも 調 整 することができる。ロボットカーにはタ<br />

ッチパネルつきモニタが 設 置 され、 案 内 図 を 表 示 する。 搭 乗 者 は 行 きたいポイントを 選 ぶだけで 経 路 が<br />

自 動 生 成 される。 他 のロボットカーとの 兼 ね 合 いもあるので 順 番 どおりとは 限 らないが、 待 ち 時 間 がも<br />

っとも 少 なくなる 最 適 経 路 である。 最 初 の 経 路 通 りに 沿 って 案 内 された 後 に、もう 一 度 見 たいと 思 うと<br />

ころに 移 動 することもできる。 経 路 生 成 と 移 動 の 自 動 化 により、ユーザへの 負 担 を 軽 減 し、また 安 全 面<br />

29


ではロボットカー 同 士 の 衝 突 や、 運 営 上 では 混 雑 を 避 けることができる。<br />

館 内 には 無 線 LANやBlueToothなどによるネットワーク 網 が 天 井 に 構 築 されており、ロボ<br />

ットカーの 群 制 御 、 音 声 案 内 の 情 報 転 送 などに 使 われる。ロボットカーは、 各 ポイントに 移 動 するたび<br />

に 自 己 位 置 を 確 認 し、 修 正 する 機 能 を 持 っている。 一 般 の 歩 行 者 とも 共 存 できるように、ゆっくり 動 き、<br />

障 害 物 回 避 も 行 う。 健 康 状 態 に 不 安 がある 場 合 には、 常 に 搭 乗 者 の 状 態 をセンシングし、 異 常 を 検 知 し<br />

たら 知 らせる・AEDに 送 り 届 けるなどの 処 置 を 速 やかに 行 う。または、 搭 乗 者 が 寝 てしまっても 意 味<br />

がないので、 睡 眠 を 検 知 したら 起 こす・ 出 口 に 送 り 届 けるなどする。 走 行 時 間 は、 給 電 の 問 題 から、 長<br />

くて 2 時 間 であり 利 用 者 にとっても 集 中 力 が 持 続 できる 時 間 でちょうどいい。 次 の 利 用 者 のために、 急<br />

速 充 電 装 置 を 用 いてバッテリーを 充 電 する。 会 場 が 狭 い・または 極 端 に 混 雑 が 予 想 されるなど、 歩 行 者<br />

との 共 存 が 困 難 な 場 合 は 時 間 を 区 切 って 利 用 されることも 考 えられる。 導 入 当 初 は 数 台 ・ 時 間 限 定 でも、<br />

だんだんと 利 用 が 広 がってロボットカー 案 内 システムがミュージアムのスタンダードになる 日 も 近 づ<br />

くだろう。まとめると、RTビークルシステムにより「 経 路 計 画 」「 疲 労 の 低 減 」「 高 さのバリアフリ<br />

ー」が 実 現 できる。<br />

目 玉 作 品<br />

小 品<br />

座 面 高 さ 調 整<br />

経 路 選 択<br />

図 2.1.3-5 展 示 案 内 RT ビークル<br />

2 具 体 的 創 造 シナリオ <br />

ロボットカー 案 内 システムが 導 入 されたばかりの 国 立 西 洋 美 術 館 で、ベルギー 王 立 美 術 館 展 が 開 催 さ<br />

れている。 目 玉 は 国 内 初 公 開 となるブリューゲルの 作 品 で、その 他 にも 巨 匠 の 作 品 が 数 多 く 展 示 されて<br />

いる。ユーザが 興 味 を 持 ったので、 長 女 はぜひ 連 れて 行 ってあげたいと 思 った。ロボットカー 案 内 シス<br />

テムは、 鑑 賞 チケットに 加 えたエキストラチャージによる 予 約 制 になっており、 利 用 者 はネットや 電 話<br />

などを 通 じて 日 程 ・ 時 間 ・ 常 設 展 ・ 企 画 展 ・ 一 人 乗 りか、 二 人 乗 りを 選 んで 予 約 する。このエキストラ<br />

チャージは、 福 祉 制 度 の 整 備 により、 従 来 の 歩 行 による 鑑 賞 が 困 難 な 対 象 者 には 無 料 または 割 引 になる<br />

など、 保 障 されることが 望 ましい。ユーザは 朝 が 早 いので、 比 較 的 混 雑 が 避 けられる 平 日 の 午 前 中 をね<br />

らって 介 助 者 となるユーザの 長 女 が 予 約 をした。 当 日 朝 長 女 が 迎 えに 行 き、 美 術 館 まで 車 で 向 かう。 入<br />

り 口 受 付 で 手 続 きを 行 い、 搭 乗 口 まで 案 内 され、まずは 予 約 した 二 人 乗 りロボットカーに 乗 り 込 む。シ<br />

ートは 革 張 りに 廃 熱 を 利 用 したヒーター 付 で、 空 調 の 整 った 美 術 館 内 でも 快 適 である。 鑑 賞 の 邪 魔 にな<br />

らない 前 方 に 平 置 きでモニタが 配 備 されており、 見 学 コースを 選 ぶ。 時 間 もあるし、 目 玉 は 見 逃 せない<br />

ので 全 部 コースに 決 定 したところで 出 発 、ロボットカーがゆっくり 動 き 出 す。ヘッドフォンをかぶり、<br />

展 示 入 り 口 にたどり 着 くまでに、 今 回 の 企 画 展 について 概 要 を 説 明 する 音 声 案 内 に 耳 を 傾 ける。 最 初 に<br />

止 まった 絵 画 は、 展 示 室 の 中 央 のルーベンスだった。30 秒 ほど 止 まって、 案 内 を 聞 く。もう 少 し 見 た<br />

30


いので、 延 長 ボタンでもう 30 秒 。 次 はどこに 行 くかとわくわくしながら、 次 の 絵 画 へ 移 動 していく。<br />

少 し 待 てば 途 中 気 になった 場 所 へ 割 り 込 みも 可 能 である。ただ、 目 玉 のブリューゲルだけは、2 分 の 制<br />

限 つきであった。 展 示 は、 部 屋 ごとに 時 代 が 分 かれているので、15 世 紀 から20 世 紀 まで 逆 行 せず 順<br />

番 にたどることができた。 最 後 にもう 一 度 みたい 絵 画 を 選 んで 観 賞 し、 思 い 残 すことなく 会 場 をあとに<br />

することにした。ユーザも 自 分 のペースでゆったりまわることができて 満 足 である。<br />

3) 知 能 化 技 術<br />

・ 移 動 ロボット 群 制 御<br />

・ 自 己 位 置 修 正<br />

・ 室 内 マップ 自 動 作 成 ・ 修 正<br />

・ 経 路 の 最 適 化<br />

・ 自 動 経 路 生 成<br />

・ 衝 突 回 避<br />

・ 障 害 物 回 避<br />

上 記 、 知 能 化 技 術 を 支 える 環 境<br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

・ 無 線 IDタグ 技 術<br />

・ 高 出 力 充 電 池<br />

・ 急 速 充 電 技 術<br />

・ 乗 り 心 地 の 人 間 工 学 を 反 映 した 走 行 制 御<br />

・ 搭 乗 可 能 な 電 動 小 型 自 動 走 行 車 証 実 験 、 信 頼 性 向 上 、 安 全 性 確 認<br />

(3) 図 書 館<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

図 書 館 司 書 、 図 書 館 職 員<br />

2 具 体 的 シナリオ<br />

35 歳 女 性 、 図 書 館 司 書 の 資 格 を 持 ち、 大 学 図 書 館 から 移 り、 公 共 図 書 館 に 勤 めて8 年 になる。 業 務<br />

内 容 は、カウンターで 貸 し 出 し/ 返 却 を 行 うばかりでなく、 新 着 図 書 の 登 録 や 新 刊 の 購 入 、マルチメデ<br />

ィアサポート、 書 架 の 管 理 に 閲 覧 室 パトロールなど 忙 しい。 最 近 の 悩 みは、 図 書 の 盗 難 、 破 損 ( 切 抜 き・<br />

書 き 込 み・ 線 引 き)が 相 次 いで 見 つかることだ。 数 年 前 、インターネットを 通 じて 借 りたい 図 書 を 検 索<br />

して 予 約 できるサービスを 導 入 し、 利 用 率 も 高 く 好 評 だった。ところが、 利 用 者 から、「 予 約 をしたの<br />

に、 本 が 無 い」とのクレームを 複 数 受 け、つい 先 日 の 蔵 書 点 検 の 結 果 、 行 方 不 明 の 本 が 何 百 冊 単 位 で 判<br />

明 した。 高 額 な 研 究 書 、 貴 重 な 郷 土 資 料 を 含 め、 写 真 集 や 実 用 書 、 雑 誌 などの 欠 損 が 目 立 ち、 被 害 額 は<br />

一 千 万 超 。 手 に 入 る 本 なら 買 いなおすことができるが、その 分 新 刊 の 購 入 費 を 削 らなければならない。<br />

ましてや、 郷 土 資 料 や 絶 版 本 などはまず 手 に 入 らないだろう。また、 受 験 シーズンにより 図 書 館 内 が 混<br />

雑 し、 利 用 者 の 荷 物 の 置 き 引 きや、 財 布 をすられるなど 盗 難 被 害 も 頻 発 しているため、パトロールの 数<br />

を 増 やすようにしているが、カウンターや 事 務 室 もそれほど 留 守 にはできない。 学 芸 員 は、 幼 稚 園 の 先<br />

生 や 警 備 員 ではないのだから。パトロール 中 でもよく 頼 まれるのが、 場 所 取 り 荷 物 の 撤 去 だ。 人 がいな<br />

いのに、 席 に 図 書 館 の 本 や、コートなどが 無 造 作 に 置 かれている。 勉 強 目 的 で 閲 覧 室 に 来 る 利 用 者 は、<br />

一 日 中 過 ごすことを 目 的 としているので、 食 事 したり 飲 み 物 をとったりする。これらも、 見 つけ 次 第 没<br />

収 である。 見 回 っている 途 中 に、まるで 見 当 違 いな 収 められ 方 をしている 本 を 見 つけた。なぜ、 児 童 書<br />

が 社 会 学 の 棚 にまぎれこんでいるのか。 元 に 戻 さなくては。 本 来 の 業 務 に 負 担 をかけずに、できれば 利<br />

31


用 者 自 身 がモラルやマナーを 身 に 着 けてほしい、と 思 っている。<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

・ 図 書 館 の 目 的 → 利 用 者 が 知 識 を 獲 得 するのを 助 ける、 求 める 情 報 を 提 供 する<br />

・ 公 共 性 または 独 立 性 の 維 持<br />

・ 書 棚 管 理 → 本 が 分 類 どおりに 書 架 に 並 んでいるか?<br />

・ 図 書 管 理 → 本 の 不 正 持 ち 出 しや 損 壊 を 抑 止 する。 新 設 の 図 書 館 では、 磁 気 コードによる 図 書 管 理<br />

が 進 み、 不 正 持 ち 出 しは 減 る 一 方 で、ページの 切 り 取 り 等 の 損 壊 行 為 が 増 加 している。こうした 行 為<br />

には 防 犯 カメラの 設 置 、 書 架 の 配 置 の 工 夫 により 死 角 をなくすことであり、パトロールを 増 やすこと、<br />

またスタッフが 積 極 的 な 声 かけを 行 うことにより 抑 止 効 果 が 認 められているが、 人 員 配 置 にも 限 界 が<br />

ある。<br />

・マルチメディア 対 応 → 音 源 (CD)や 映 像 (DVD)の 貸 し 出 し<br />

・PC 環 境 整 備 → インターネット 無 料 開 放<br />

・マルチメディア 対 応 や、PC 環 境 導 入 による 高 価 な 機 材 の 盗 難 防 止<br />

・ 貸 し 出 し/ 返 却 手 続 きの 自 動 化 ・ 無 人 化 → スピード 化 により 行 列 がなくなる<br />

対 面 式 では 借 りるのに 抵 抗 があるような 本 も、ためらいなく 手 続 きできる<br />

・ 新 入 荷 図 書 の 追 加 → センサ 埋 め 込 み、シール 貼 り、 帯 ・カバーを 外 してラミネート<br />

・ 論 文 複 写 サービスの 提 供 ・ 効 率 化 → 製 本 した 論 文 をPDF 化 し、 電 子 配 信<br />

・ 論 文 検 索 サービスの 提 供 ・ 効 率 化<br />

・ 図 書 検 索 サービスの 提 供 ・ 効 率 化<br />

・ 利 用 者 増 加 による 活 性 化<br />

・バリアフリー 化<br />

・ 閲 覧 室 パトロール→ 閲 覧 室 での 飲 食 、 大 声 で 話 しかける、つきまとい、 長 時 間 に 及 ぶ 席 取 り 等 迷 惑 行<br />

為 の 抑 制<br />

・ 防 犯<br />

本 の 不 正 持 ち 出 し( 窃 盗 )、ページ 切 り 取 り・ 線 引 き( 器 物 損 壊 )、 荷 物 の 盗 難<br />

・ 閲 覧 室 パトロール → 閲 覧 室 での 飲 食 、 会 話 、 長 時 間 に 及 ぶ 席 取 り 等 迷 惑 行 為 の 抑 制<br />

4 事 業 規 模 推 定<br />

2006 年 公 共 図 書 館 3,083 館 、 大 学 図 書 館 1,658 館<br />

( 日 本 図 書 館 協 会 HPhttp://www.jla。or。jp/statistics/index。html より)<br />

2000 年 ごろより、 毎 年 50から100のペースで 増 加 し、 同 時 に 図 書 の 被 害 も 増 加 している。<br />

特 に 高 価 な 研 究 図 書 、 貴 重 な 郷 土 資 料 、 歴 史 資 料 などに 集 中 し、とりかえしがつかないどころか 被 害<br />

額 も 大 きい。( 下 記 参 考 記 事 より)<br />

< 参 考 資 料 ><br />

・ 図 書 館 資 料 の 盗 難 事 故 について- 埼 玉 県 富 士 見 市 立 中 央 図 書 館<br />

http://www.lib.fujimi.saitama.jp/l_main/jikohoukoku_tounan.htm<br />

・ 図 書 館 の 本 傷 だらけ「 切 り 抜 き」「 線 引 き」 横 行<br />

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20061212bk04.htm<br />

・ 傷 つく 図 書 館 の 本<br />

http://www.yomiuri.co.jp/book/news/20070115bk14.htm<br />

・ 金 沢 市 立 図 書 館 被 害 1000~2000 万 職 員 ため 息 「モラルに 頼 るしかない」<br />

http://hokuriku.yomiuri.co.jp/hoksub2/kyouiku/ho_s2_06062901.htm<br />

・Current Awareness Portal- 図 書 館 に 関 する 調 査 研 究 情 報<br />

http://www.dap.ndl.go.jp/ca/<br />

2) システム 構 成<br />

1 環 境 構 造 化 RT 導 入 のシステム 提 案<br />

32


◆ 閲 覧 室 監 視 &パトロールロボットシステム<br />

監 視 カメラを 設 置 し、ロボットはカメラと 連 携 し 閲 覧 室 、および 書 架 棚 を 動 きまわるものものしい 監<br />

視 カメラ 設 置 を 避 けたい 場 合 は、 感 性 にうったえる 魅 力 的 な 据 え 置 き 型 のカメラ 搭 載 ロボットを 代 えて<br />

設 置 する。 閲 覧 室 では、 監 視 カメラにより 定 点 観 測 し、 異 常 の 場 合 にロボットが 現 場 に 出 向 き 対 処 する。<br />

例 えば、 人 不 在 の 席 取 りを 防 止 するため、 人 がいないのに 荷 物 が 置 いてある 席 をチェック。 一 定 時 間 が<br />

経 過 すれば、ロボットがその 席 に 向 かう。その 場 でロボットが 画 像 処 理 を 行 い、 図 書 館 の 本 が 無 造 作 に<br />

置 かれていて 放 置 されているときはそれを 片 付 ける。 個 人 の 所 有 物 らしきものは、 忘 れ 物 として 預 かる。<br />

図 書 館 の 本 かどうかは、 無 線 タグのチェックにより 判 別 することができる。 貸 し 出 し 手 続 きがされたの<br />

かもわかる。<br />

移 動 ロボットにより、 利 用 者 の 監 視 も 行 う。 防 犯 カメラによる 監 視 は、その 仰 々しさゆえに 見 られる 側<br />

にとって 抵 抗 が 大 きいが、 移 動 ロボットならばスタッフと 同 じなので 防 犯 カメラほどの 嫌 悪 感 は 抱 かな<br />

い。 混 雑 にもかかわらず、 閲 覧 室 でつっぷして 寝 ている 人 を 起 こす、 切 り 取 りや 線 引 きの 行 為 を、カメ<br />

ラを 通 して 発 見 し、 止 めることができればマナー 向 上 も 期 待 できる。また、スリや 置 き 引 きなどの 犯 罪<br />

を 防 ぎ、 非 ・ 本 来 的 利 用 者 から 一 般 の 利 用 者 を 守 ることができる。<br />

書 架 棚 を 移 動 し、タグ 情 報 を 得 ることで 図 書 の 並 びをスキャニングし、それぞれの 図 書 が 正 しい 位 置 に<br />

納 められているかどうかをチェック。はぐれ 本 を 発 見 したら、 職 員 を 呼 んで 直 してもらう。 本 棚 の 整 理<br />

は、 動 作 範 囲 が 上 下 左 右 に 広 く、 両 手 を 使 った 重 労 働 なので 人 による 作 業 が 確 実 である。 図 書 館 とい<br />

う 性 質 上 、 稼 動 音 を 減 らしスピーカ 音 量 を 絞 るなど、 静 かな 動 作 が 求 められる。<br />

◆ 来 館 者 への 積 極 的 な 情 報 提 示<br />

図 書 館 の 活 性 化 : 来 館 者 に 移 動 ロボットが 声 をかけあいさつする。<br />

迷 惑 行 為 の 抑 制 :「 以 下 の 行 為 は 禁 じられています」、「 犯 罪 であり 罰 せられます」などの 深 刻 なお<br />

知 らせを 繰 り 返 し 伝 える。ロボットが 情 報 提 供 することにより、 大 げさな 印 象 を 和 らげてかつ 警 告 が 効<br />

力 を 発 することが 期 待 できる。<br />

◆ 新 刊 図 書 の 整 理 の 自 動 化<br />

分 類 してラミネート 貼 り、 書 庫 へ 収 納 。 文 字 読 み 取 りにより 図 書 目 録 へ 自 動 登 録<br />

2 図 書 館 パトロールロボットシステムの 導 入<br />

磁 気 センサで 本 の 不 正 持 ち 出 しを 防 ぐシステムとともに、 閲 覧 室 と 書 架 棚 を 巡 回 パトロールする 移 動<br />

ロボットを 導 入 した。 管 理 システムにより 本 の 不 正 持 ち 出 しによる 盗 難 は 減 っても、 本 の 切 り 取 りが 増<br />

加 するとのデータにより、 双 方 に 抑 止 効 果 があるシステムを 同 時 に 導 入 した。このシステムにより、 本<br />

は 書 架 棚 と 閲 覧 室 の 外 (トイレ 含 む)へは 勝 手 に 持 ち 出 せなくなった。 図 書 館 内 では、ロボットがパト<br />

ロールし、カウンターや 事 務 室 のモニタで 確 認 できるので、あやしいと 思 ったらすぐに 注 意 しに 行 けば<br />

よい。ロボットは 情 報 提 示 にも 一 役 買 っている。 図 書 館 の 本 で 破 損 が 目 立 つこと、 器 物 損 壊 になること<br />

を、それとなくつぶやいてくれているので、 若 い 利 用 者 の 啓 蒙 にも 役 立 つ。ロボットは、しゃべってい<br />

ないときは 音 も 無 く 忍 び 寄 るので、 本 を 切 り 取 ろうとした 人 も 気 づかず、スタッフが 現 場 を 取 り 押 さえ<br />

ることができた。また、 書 架 棚 も 蔵 書 点 検 をしながらくまなく 移 動 してくれるので、 死 角 がなくなり、<br />

効 率 的 に 監 視 ができる。 蔵 書 点 検 で 見 つかった、はぐれ 本 を 本 来 の 書 架 に 戻 すのは 職 員 の 仕 事 だが、 探<br />

すのが 一 番 大 変 なので、 見 つけてくれるだけで 大 助 かりである。これにより 利 用 者 から「 本 がない」と<br />

のクレームが 減 った。 普 段 から 書 架 が 整 っていることで、 蔵 書 点 検 にも 役 立 つ。すべての 利 用 者 は 信 用<br />

できないと 疑 心 暗 鬼 になっていたが、 今 では 問 題 行 為 も 少 なく、 明 るい 気 持 ちで 仕 事 ができる。また、<br />

コピー 機 の 利 用 が 増 え、わずかではあるが 収 益 となっている。<br />

3) 知 能 化 技 術<br />

・ 室 内 マップ 自 動 作 成 、 自 動 更 新<br />

33


・ 移 動 経 路 の 最 適 化<br />

・ 自 動 経 路 生 成<br />

・ 自 己 位 置 修 正<br />

・ 画 像 センシング 技 術<br />

・ 動 作 認 識 技 術<br />

上 記 、 知 能 化 技 術 を 支 える 環 境 技 術<br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

・ 無 線 IDタグ 技 術<br />

・ 音 声 合 成 技 術<br />

・IDタグリーダの 高 速 、 軽 量 化<br />

・ 高 出 力 充 電 池<br />

・ 急 速 充 電 技 術<br />

2.1.4 商 業 空 間<br />

(1) 大 型 商 業 施 設<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ: 大 型 商 業 施 設 の 来 場 者 ( 買 い 物 客 )<br />

45 歳 の 男 性 、 仕 事 の 合 間 にちょっとした 時 間 ができたので、このところの 大 型 商 業 施 設 のオープン<br />

ラッシュで、 近 くにできたショッピングセンターを 訪 問 した。 建 物 に 入 ると、 外 とは 別 世 界 の 街 並 みの<br />

景 観 で 魅 力 的 である。いろいろなお 店 があり、 見 て 歩 くのは 新 鮮 で 面 白 い。<br />

さて、 先 日 のテレビで 紹 介 された 子 供 がほしがっていた 服 を 買 おうとお 店 を 探 そうとしたが、 案 内 板<br />

がどこにあるのかよくわからない。お 店 を 探 しに 歩 き 始 めたが、だんだんどこにいるのかわからなくな<br />

ってきた。やっと 地 図 を 見 つけて 方 向 を 確 認 してみるとずいぶん 反 対 の 方 向 に 歩 いてきたようだ。 結 局 、<br />

店 内 を 一 周 してお 店 にたどり 着 いて 目 的 の 商 品 を 手 に 入 れることができた。<br />

そういえば、 評 判 のパン 屋 さんがあると 妻 に 聞 いていたので、 次 にパン 屋 さんへ 向 かった。どうも、<br />

評 判 のパンは 時 間 ごとに 焼 きあがりを 提 供 するようで、あと1 時 間 ほど 市 内 と 手 に 入 らないようだ。 荷<br />

物 が 増 えてきて、 移 動 するのも 億 劫 になってきた。お 昼 時 なので、 食 事 をしようとレストラン 街 に 向 か<br />

った。 時 間 帯 が 悪 くどの 店 もずいぶん 込 んでいるようだ。やっと 食 事 が 終 わって、 再 びパン 屋 さんに 向<br />

かうと、 少 し 時 間 が 過 ぎていて、またも 売 り 切 れだった。ずいぶん 歩 き 回 って、 疲 れてしまった。<br />

残 念 だが、もうあまり 時 間 に 余 裕 がなくなってきたので、 駅 に 戻 ることにした。またもや 方 向 がわか<br />

らなくなり、ずいぶん 違 う 出 口 に 出 てしまい、 予 想 より 時 間 がかかった。<br />

施 設 は 魅 力 的 だが、 慣 れない 施 設 はやはりあまり 来 るものではないかなあという 印 象 が 残 った。<br />

2ロボットのユーザ( 事 業 者 ): 都 市 部 再 開 発 のデベロッパー<br />

最 近 、 景 気 回 復 にともなって、 大 型 の 複 合 開 発 が 活 発 になっている。また、 競 争 の 激 化 から、 従 来 の<br />

商 業 施 設 の 再 開 発 やリニューアルも 避 けられなくなっている。 都 市 部 周 辺 では、 商 業 施 設 とオフィスビ<br />

ルに 加 え、 住 居 を 含 めた 総 合 的 な 街 づくりが、 開 発 の 条 件 となっている。 再 開 発 の 件 数 も 増 えてきたこ<br />

とから、 誘 致 するテナントの 魅 力 だけでは 差 別 化 が 難 しく、 新 しい 仕 掛 けを 探 求 している。なかなか、<br />

魅 力 の 維 持 が 難 しく、5 年 程 度 での 様 々な 見 直 しも 必 要 となってきている。<br />

施 設 運 営 をしていく 収 入 としては、 店 舗 賃 貸 料 に 加 え、 店 舗 売 り 上 げ 連 動 の 歩 合 もあることから、 魅<br />

力 的 な 施 設 に 見 合 った 賃 貸 料 に 加 え、 各 店 舗 が 確 実 に 収 入 を 上 げていくことが 必 要 となる。<br />

最 近 の 施 設 設 計 では、どの 場 所 も 均 等 に 人 が 流 れるようにループ 上 に 動 線 を 確 保 するような 方 法 を 取<br />

り 入 れている。しかし、この 方 法 では 目 的 のある 顧 客 には 方 向 感 覚 が 狂 いやすく 的 確 に 店 舗 まで 到 達 が<br />

難 しくなる 問 題 もある。また、 話 題 の 品 物 の 提 供 なども、あらかじめインターネットなどで 調 べるか、<br />

旧 来 の 折 り 込 み 広 告 による 情 報 提 供 程 度 である。 最 近 の 顧 客 の 購 買 行 動 として、 雑 誌 やテレビなどで 取<br />

34


り 上 げられた 商 品 を 求 めに 来 ることも 多 いが、 店 舗 内 の 案 内 表 示 はいろいろなものが 混 在 してわかりに<br />

くく、タイムリーな 商 品 情 報 の 提 供 をすることが 難 しい。ディスプレイを 使 うなどして 工 夫 しているが、<br />

顧 客 と 店 舗 のお 互 いの 機 会 損 失 を 少 なくできると 魅 力 的 な 施 設 となる。タイムリーな 商 品 情 報 提 供 で、<br />

顧 客 の 購 買 意 欲 の 向 上 を 計 る 効 果 も 期 待 できる。<br />

平 日 の 集 客 力 も 大 きな 問 題 である。このような 再 開 発 では、 住 居 施 設 が 隣 接 していることから、この<br />

住 民 へのサービスを 組 み 合 わせると 効 果 的 である。 住 居 設 備 についても、 魅 力 あるサービスを 付 加 する<br />

ことで、 住 居 の 価 値 が 向 上 できることが 期 待 され、 開 発 におけるシナジー 効 果 が 期 待 できる。<br />

これらのことから、 現 在 の 開 発 では、 以 下 のような 取 組 みにより 集 客 力 向 上 を 試 みている。<br />

・ 商 業 施 設 は、 日 用 品 からファッション、 飲 食 店 に 加 え 娯 楽 施 設 ( 映 画 館 )などを 併 設<br />

顧 客 の 滞 留 時 間 の 確 保 による 消 費 機 会 の 増 大<br />

・これらに 加 え、スポーツジムのような 会 員 制 の 施 設 の 併 設 による 固 定 客 の 確 保<br />

顧 客 の 固 定 化 とスポーツ 用 品 店 とのシナジー、 飲 食 店 への 誘 導<br />

・ 最 近 では、 健 康 増 進 に 関 する 施 設 を 併 設 するなど<br />

生 活 に 密 着 した 施 設 作 りと 消 費 機 会 の 獲 得<br />

・ 店 舗 情 報 を 細 かに 提 供 するディスプレイ 型 情 報 提 供<br />

リアルタイムの 情 報 提 供 、 複 数 ・ 時 間 帯 に 応 じた 情 報 提 供<br />

今 後 は、 以 下 のようなことが 期 待 されている。<br />

・ 情 報 端 末 ( 携 帯 電 話 )の 利 用 による 情 報 提 供<br />

個 人 への 情 報 発 信<br />

・ 近 隣 住 民 への 商 品 配 達 サービス<br />

併 設 住 宅 とのシナジー 効 果<br />

・ 来 客 者 の 落 ち 着 ける 空 間 つくりによる 滞 留 時 間 の 維 持<br />

家 族 連 れでの 個 々の 要 求 への 対 応 による 顧 客 確 保 ( 父 と 子 、 母 などの 要 求 の 多 様 化 )<br />

このような、 傾 向 の 中 で 新 しくて 魅 力 的 で 柔 軟 な( 変 化 に 対 応 できる)サービス 提 供 をできることが<br />

今 後 の 大 型 施 設 の 魅 力 となって 他 の 施 設 との 差 別 化 がはかれていくものと 考 えられる。<br />

以 上 のことをまとめるとユーザには、 以 下 のような 要 求 がある。<br />

・ 大 型 商 業 施 設 を 中 心 とした 再 開 発<br />

職 住 商 の 一 体 となった 開 発 / 魅 力 的 な 商 業 設 備 /<br />

住 宅 へのサービス 提 供 を 付 加 した 新 しい 価 値 の 創 造<br />

・ 大 型 施 設 運 営 側 の 収 入<br />

店 舗 賃 借 料 と 売 り 上 げ 連 動 の 歩 合<br />

施 設 の 魅 力 を 維 持 すること<br />

集 客 力 の 維 持 ・ 向 上<br />

快 適 な 空 間 を 顧 客 に 提 供 すること<br />

・ 集 客 力 向 上<br />

イベントの 開 催<br />

商 業 施 設 に 加 え 快 適 な 空 間 の 提 供 (リピータ)<br />

娯 楽 施 設 などの 併 設 など<br />

平 日 の 集 客 力 向 上 : 住 居 施 設 の 顧 客 の 囲 い 込 み<br />

日 常 生 活 に 対 応 する 商 品 提 供<br />

タイムリーで 顧 客 に 対 応 した 情 報 提 供<br />

近 隣 との 連 携<br />

2)システムの 構 成<br />

1 顧 客 に 対 応 した 情 報 提 供 ツールの 開 発<br />

35


機 能 としては、 以 下 のようなものが 考 えられる。<br />

・ 商 品 情 報 提 供 を 組 み 合 わせた 施 設 内 の 案 内 業 務<br />

・ 各 店 舗 からのリアルタイムの 各 種 販 売 情 報 (パンの 焼 き 上 がりなど)<br />

・ 客 層 を 判 断 しての 情 報 提 供<br />

・ 各 種 広 告 情 報 の 提 供 ( 近 隣 の 情 報 を 含 む)<br />

・イベントと 連 携 した 商 品 企 画 の 情 報 提 供<br />

・ 快 適 空 間 創 出 のための 空 間 提 供 ( 映 像 ・ 音 声 ・ 照 明 など)<br />

システムとして、 構 成 されるイメージは 以 下 のとおりである。<br />

・ 施 設 内 部 への 顧 客 の 情 報 を 収 集 できるカメラシステム<br />

・ 特 定 顧 客 の 持 つタグに 対 応 するタグリーダによる 顧 客 のトラッキングシステム<br />

会 員 カードのようなシステムの 応 用 と 嗜 好 にあわせた 情 報 提 供<br />

・ 情 報 提 供 および 案 内 をする 移 動 ロボットシステム<br />

情 報 提 供 は、ストレスのない 速 さでの 提 供 が 可 能 な 入 出 力<br />

・ 移 動 ロボットの 状 況 を 管 理 する 環 境 側 の 管 理 システム<br />

人 間 との 共 存 での 安 全 管 理 システム<br />

・ 顧 客 の 動 向 にあわせて 提 示 する 移 動 可 能 な 表 示 システム<br />

可 動 式 のプロジェクタなどで、 様 々な 場 所 への 情 報 提 示 あるいは 誘 導<br />

・ 店 舗 / 管 理 室 からの 情 報 提 供 システム<br />

2バックヤード 作 業 としての 搬 送 作 業 代 替 装 置 ( 周 辺 住 民 向 けを 意 識 した)<br />

快 適 な 買 い 物 を 実 現 するために、 以 下 のような 機 能 が 考 えられる。<br />

・ 駐 車 場 ・ 近 隣 バス 停 ・ 駅 ・タクシー 乗 り 場 までの 顧 客 商 品 の 搬 送<br />

・ 隣 接 住 居 までの 商 品 搬 送<br />

また、 店 舗 へのサービス 機 能 として 以 下 のようなものが 考 えられる。<br />

・ 店 舗 への 物 品 供 給 作 業 (バックヤード 通 路 を 使 用 )<br />

システムとして、 構 成 されるイメージは 以 下 のとおりである。<br />

・ 屋 内 外 をシームレスで 移 動 可 能 な 移 動 ロボットシステム<br />

・バックヤードなどでは、 環 境 側 のガイドによる 高 速 移 動 の 補 助 機 能<br />

・ 屋 外 では、 移 動 の 補 助 のための 環 境 側 へのガイド 機 能<br />

・ 台 車 搬 送 機 能 による 汎 用 的 な 移 動 ロボットシステム<br />

・ 屋 内 では、 移 動 を 補 助 する 安 価 な 屋 内 GPSシステム<br />

このような、 移 動 を 伴 うサービスシステムの 構 築 により、システム 全 体 の 新 規 性 による 魅 力 で、 集 客<br />

力 を 向 上 させるとともに、 先 行 者 としての 新 規 性 による 情 報 発 信 と 珍 しさによる 集 客 効 果 が 期 待 できる。<br />

付 加 的 な 効 用 として、 携 帯 型 端 末 への 位 置 情 報 提 供 などへの 転 用 できる 可 能 性 がある。<br />

36


環 境 設 置<br />

顧 客 行 動 計 測<br />

センサ<br />

カメラ<br />

センサ<br />

ノード<br />

・・・・・・・<br />

・・・・・・・・<br />

顧 客 に 合 わせた<br />

情 報 提 供<br />

RT の 操 作 などに<br />

よる<br />

移 動 型<br />

情 報 提 供<br />

RT システム<br />

移 動 型<br />

搬 送 RT システム<br />

図 2.1.4-1 顧 客 への 情 報 提 供 のRTシステムイメージ<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

1 屋 内 外 シームレス 搬 送 を 実 現 するためのガイド 情 報 を 提 供 する。<br />

・ 安 価 な 屋 内 GPSシステムの 構 築<br />

・ 屋 外 での 地 図 情 報 提 供 とGPSとの 連 携 システム<br />

・ 適 宜 、 事 故 位 置 補 正 をするためのガイド 情 報 適 用 システム<br />

2 人 の 中 にはいっていく 移 動 ロボット 技 術 の 開 発 が 必 要 となる。<br />

・ 人 の 中 での 安 全 性 確 保 のための 環 境 からの 監 視 技 術<br />

ロボットの 周 辺 の 人 の 状 況 をマクロに 監 視<br />

・ 許 容 動 作 速 度 などを 管 理<br />

ロボット 側 では、 周 辺 の 局 所 情 報 に 基 づく 行 動 修 正 機 能<br />

3 人 の 動 作 などからの 情 報 提 供 システム<br />

・ 人 の 集 まり 具 合 などに 対 応 して 情 報 を 提 供 する 技 術<br />

人 の 動 作 認 識 情 報 に 基 づく 表 示<br />

・ 店 舗 情 報 などをいろいろな 場 所 で 無 線 で 受 信 ・ 表 示 する 技 術<br />

大 量 の 情 報 を 送 信 できる 通 信 プロトコル<br />

アドホックな 接 続 方 式<br />

37


2.1.5 官 庁 、オフィス<br />

(1) 官 庁<br />

ここでは、 役 所 、 警 察 署 、 郵 便 局 、 銀 行 などの 官 庁 に 類 する 事 業 フィールドでのRTシステム 活 用 シ<br />

ナリオについて 記 載 する。この 事 業 フィールドでの 事 業 者 は、 国 、 地 方 自 治 体 、 銀 行 経 営 者 などである。<br />

(1-1) 官 庁 シナリオ1<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

市 民 利 用 者<br />

2シナリオ<br />

現 状 の 現 場 で 発 生 していると 想 定 されるサービスシーンを 下 記 に 記 載 する。<br />

a. 受 付 ロビーでの 受 付 ・ 窓 口 案 内 、セキュリティーサービス<br />

・ 外 人 客 が、インフォメーションに、 関 連 部 署 の 場 所 を 尋 ねようとしたが、 日 本 語 がしゃべれず、 苦 労<br />

している。 担 当 者 も、 英 語 なら 何 とか 対 応 できるが、 相 手 が 不 得 手 なポルトガル 語 を 話 すためになか<br />

なか 要 領 を 得 ない。 何 とか 該 当 窓 口 に 案 内 できたが、 該 当 窓 口 でも 客 との 対 話 に 不 自 由 している。<br />

・ 目 の 不 自 由 な 客 が、 手 続 きの 仕 方 が 分 からず 困 っている。また、 事 前 手 続 き 書 面 の 記 入 ができずに 困<br />

っている。 事 務 員 は、 事 務 窓 口 業 務 が 忙 しく、この 状 況 に 気 が 付 かず、 長 時 間 そのままでいた。イン<br />

フォメーション 係 がいれば、 対 応 できたが、 設 けられていなかった。<br />

・ 手 続 きの 仕 方 が 分 からず 困 っている 老 人 客 、 事 前 手 続 き 書 面 の 記 入 に 手 間 取 っている 老 人 客 がいるが、<br />

事 務 窓 口 での 作 業 が 忙 しく、きめ 細 かい 補 助 サービスができない。もしくは、この 手 の 補 助 サービス<br />

に、 元 々 人 手 をかけていない。<br />

・ 窓 口 処 理 待 ちの 親 子 連 れがいるが、 順 番 がなかなか 回 ってこないため、 子 供 が 飽 きてむずかりだした。<br />

接 客 サービスに 人 手 が 割 ければ、お 客 も 気 持 ちよく 時 間 を 過 ごせると 思 われる。このような 時 に、 新<br />

商 品 のPRや、 行 政 情 報 のお 知 らせ 等 をしても 良 い。 子 供 の 相 手 をしてあげるとか、 有 益 な 情 報 の 提<br />

示 で 客 の 待 ち 時 間 を 有 意 義 なものにするとサービスの 質 を 評 価 してもらえる。<br />

・ 道 に 迷 った 人 が、 窓 口 に 訪 ねてきた、 窓 口 業 務 に 忙 しく 対 応 できなかった。<br />

ちょっとした 親 切 ができれば 官 庁 のイメージも 向 上 する。<br />

・ 玄 関 ロビーに 挙 動 不 審 な 人 物 がいるが、 窓 口 業 務 が 忙 しく 気 が 付 かなかった。<br />

インフォメーション 係 は 気 が 付 いたが、 最 近 テロの 凶 悪 化 が 進 み、 対 応 になかなか 勇 気 がいる。<br />

・ 都 心 に 初 めて 出 てきたご 老 人 が、 次 の 目 的 地 にいくのに、どうしたら 良 いか 迷 っている。インフォメ<br />

ーションに 聞 けば 良 いのだが、 聞 きなれなくて、なんとなく 気 が 引 ける。 困 っている 時 に、 最 寄 の 交<br />

通 機 関 、 地 図 情 報 等 を 教 えてくれたり、タクシーを 呼 んでくれるなど、 気 を 利 かせて 助 けてくれる 人<br />

がいると 助 かる。でも、 見 ず 知 らずの 人 間 に 声 をかけられるのも 恐 い。<br />

・ 夜 中 に 窓 口 処 理 を 待 っている 時 に、 大 きな 地 震 が 起 きた。 建 物 全 体 が 停 電 になり、 周 囲 は 暗 闇 で 周 り<br />

の 人 達 もパニックに 陥 っている。 頼 りになりそうなインフォメーション 係 も 警 備 係 も 被 害 を 受 けたの<br />

か 沈 黙 している。 一 刻 も 早 く 建 物 の 外 に 非 難 したい。<br />

b. 公 共 通 路 の 夜 間 警 備 / 夜 間 清 掃 /ゴミ 処 理 作 業<br />

・ 警 備 員 は、 夜 になり 玄 関 ホールを 戸 締 りした 後 、 夜 間 巡 回 警 備 を 始 める。<br />

・ 夜 間 通 用 ゲートには、 少 なくとも1 人 の 守 衛 が 待 機 し、セキュリティー 守 衛 業 務 を 行 い、 不 審 者 の 侵<br />

入 を 防 ぐともに、 建 屋 から 出 ようとする 未 登 録 者 や 挙 動 不 審 者 のチェック 及 び 記 録 を 行 う。<br />

・ 巡 回 警 備 員 は、ビル 各 階 に 移 動 し 公 共 通 路 を 巡 回 し、 不 審 者 の 探 索 、 異 常 状 態 ( 異 常 音 、 煙 の 発 生 、<br />

38


火 災 の 発 生 、 水 漏 れ、ガス 漏 れなど)の 探 索 、 建 屋 設 備 のメンテ 異 常 ( 蛍 光 灯 の 切 れかけ、 無 線 LA<br />

N 端 末 の 故 障 など)の 探 索 を 行 う。<br />

不 審 者 を 発 見 した 場 合 、 誰 何 、 個 人 認 証 を 要 求 し、 要 求 に 応 じず、 攻 撃 もしくは 逃 走 を 企 てた 場 合 、<br />

警 備 本 部 に 緊 急 連 絡 を 入 れ、 不 審 者 の 確 保 に 向 かう。 最 近 は、テロ 活 動 の 凶 悪 化 が 進 み、 非 常 時 に 直<br />

面 すると、 命 の 危 機 を 感 じることが 多 くなった。<br />

・ビル 通 路 の 掃 除 は、 夜 間 の 建 屋 内 の 人 が 引 けた 後 の 時 間 帯 でやらなければいけない。しかし、ビルの<br />

ある 副 都 心 では、 定 常 的 に 夜 間 に 働 けるパートの 人 口 が 限 られており、さらに、ビルの 省 エネ 対 策 か<br />

ら、 近 隣 の 鉄 道 の 終 電 以 後 の0 時 から、 午 前 5 時 までビルの 通 路 の 照 明 が 落 とされ、 人 での 掃 除 作 業<br />

が、 午 前 6 時 から 始 業 の 午 前 8:00の 間 に 限 られ、 掃 除 作 業 従 事 者 の 確 保 がますます 難 しくなって<br />

いた。<br />

・ビルの 各 階 には、 分 別 ゴミの 集 積 ゴミ 箱 があるが、これも 掃 除 と 同 様 に 夜 間 にビル 地 下 階 の 集 中 ゴミ<br />

集 積 所 に 搬 送 しなければならないが、やはり 作 業 人 員 の 確 保 に 苦 慮 している。<br />

< 提 供 サービス><br />

以 上 のシナリオで 紹 介 したサービス 業 務 をまとめると 下 記 のようになり、ロボットにより 人 手 作 業 の<br />

代 行 により、 作 業 コスト 削 減 及 びサービス 作 業 の 質 の 向 上 を 図 ることができれば、 事 業 者 の 投 資 動 機 を<br />

喚 起 できる。<br />

a. 来 訪 者 の 要 件 の 確 認 及 び 対 応 窓 口 への 誘 導<br />

b. 外 国 人 向 け 外 国 語 対 応 受 付 、 対 応 窓 口 での 翻 訳 サービス<br />

c. 目 、 耳 の 不 自 由 な 方 への 応 対<br />

d. 事 前 手 続 き 書 面 記 載 の 補 助<br />

e. 目 的 外 来 訪 者 (ビルを 間 違 えた 人 、トイレ 借 用 の 人 など)へのサービス<br />

f. 情 報 提 供 :PR 情 報 、ビル 近 隣 場 所 の 道 案 内 、バス 時 刻 表 の 提 示 、 災 害 時 の 避 難 支 援 など<br />

g. 車 の 手 配 :タクシーの 呼 び 出 し<br />

h. 案 内 誘 導 : 対 応 部 署 への 誘 導 、トイレへの 誘 導 など<br />

i. 挙 動 不 審 者 の 排 除<br />

j. 夜 間 警 備 、 夜 間 清 掃 、ゴミ 処 理<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

事 業 者 のRTシステム 導 入 に 対 する 投 資 動 機 としては 次 の 点 が 考 えられる。<br />

・ 人 件 費 削 減 ( 成 立 の 基 本 条 件 : 既 存 人 件 費 を 上 回 ればそれに 見 合 う 人 ではできない 価 値 を 提 供 する 必<br />

要 あり。)<br />

・ 話 題 性 提 供 、 受 付 処 理 の 親 和 性 を 高 め 好 感 度 アップを 図 る<br />

・ 多 国 籍 言 語 対 応 による 受 付 作 業 の 効 率 化<br />

・セキュリティーサービスの 供 給 ( 不 審 者 対 策 、 非 常 時 対 策 、 建 屋 メンテナンス 対 策 、 危 険 物 対 策 付 き<br />

配 送 サービスなど)<br />

・ビル 公 共 領 域 ( 玄 関 、 廊 下 など)の 清 掃 コストの 低 減<br />

・ 労 働 時 間 帯 の 制 約 なし( 深 夜 ・ 早 朝 対 応 が 容 易 、 休 憩 時 間 不 要 )<br />

4 事 業 規 模 の 推 定<br />

事 業 者 側 ユーザの 規 模 から、この 事 業 フィールドでの 事 業 規 模 を 推 定 してみる。 国 内 の 事 業 拠 点 の 総<br />

数 は、おおよそ 下 記 のような 規 模 である。<br />

a. 役 所 国 内 総 数 :1,887 箇 所 、 警 察 署 国 内 総 数 :1,887 箇 所<br />

(= 県 :47 箇 所 + 区 :23 箇 所 + 市 :779 箇 所 + 町 :842 箇 所 + 村 :196 箇 所 )<br />

< 出 典 : 都 道 府 県 別 市 区 町 村 数 一 覧 ( 平 成 18 年 10 月 1 日 現 在 )、<br />

http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/com/addr/cyouson_ichiran.htm#a01><br />

39


. 郵 便 局 国 内 総 数 :26,980 箇 所<br />

(= 通 常 局 :24,608 箇 所 (= 集 配 局 :4,451 箇 所 + 無 集 配 局 :15,867 箇 所 + 簡 易<br />

局 :4,290 箇 所 )+ 出 張 所 :2,332 箇 所 + 分 室 :40 箇 所 )<br />

< 出 典 : 国 土 地 理 院 : 県 別 郵 便 局 データ 件 数 表<br />

http://www.kokudo.or.jp/database/sub/sub09.htm><br />

c. 銀 行 国 内 総 数 : 約 1,410 箇 所 (= 想 定 約 30 銀 行 / 県 ×47 県 )<br />

d. 上 記 総 合 計 数 :32,164 箇 所<br />

上 記 の 事 業 拠 点 規 模 から、 国 内 の 市 場 規 模 は、 約 240 億 円 / 年 (= 導 入 率 :0.1× 導 入 拠 点 候 補 :<br />

32,164 箇 所 × 代 替 人 員 :1.5 人 / 箇 所 ( 警 備 員 1 人 + 掃 除 係 0.5 人 )× 代 替 人 件 費 :0.0<br />

5 億 円 / 年 人 )と 推 定 する。<br />

2)システム 構 成<br />

上 記 1)に 記 載 した 現 状 作 業 に 対 する、 合 理 化 及 びサービスの 質 の 改 善 を 図 る 上 で、 図 2.1.5-<br />

1に 提 示 したような、 多 目 的 ビルサービスロボットによるサービス 自 動 化 が 考 えられる。このシステム<br />

の 所 要 作 業 機 能 及 びそれらを 実 現 するための 所 要 要 素 技 術 を 下 記 に 記 載 する。<br />

1 所 要 作 業 機 能<br />

a. 受 付 ・ 案 内 誘 導<br />

b. 挙 動 不 審 者 の 排 除<br />

c. 来 訪 者 の 要 件 の 確 認 及 び 対 応 窓 口 への 誘 導<br />

d. 外 国 人 向 け 多 国 籍 言 語 対 応 受 付 / 対 応 窓 口 での 翻 訳 サービス<br />

e. 来 訪 者 の 事 前 手 続 き 書 面 記 載 の 補 助<br />

f. 接 客 (お 茶 出 し、 情 報 提 供 PR・ 商 品 勧 誘 )<br />

g. 子 供 の 相 手 (アミューズメントサービス)<br />

h. 夜 間 巡 回 警 備<br />

i. 建 屋 内 共 通 スペースの 夜 間 清 掃 作 業<br />

j. 分 別 ゴミ 箱 の 廊 下 配 置 位 置 ・ 集 中 ゴミ 処 理 施 設 間 の 往 復 搬 送 作 業<br />

2 所 要 要 素 技 術<br />

a. 情 報 管 理 機 能 :<br />

・セキュリティー 情 報 管 理 、 非 常 時 連 絡 網 サーバーとの 連 動 、 手 続 き 書 面 作 製<br />

b. 自 律 移 動 :<br />

・ 搭 載 走 行 環 境 センサ 情 報 に 基 づく 移 動 位 置 推 定 及 び 障 害 物 回 避<br />

・インフラ 活 用 位 置 同 定 / 走 行 環 境 認 識<br />

・エレベータ 連 携 による 他 階 移 動 、 自 動 扉 との 連 動 による 各 部 屋 間 移 動<br />

c. 音 声 対 話 :<br />

・ 遠 隔 音 声 認 識 / 多 国 籍 言 語 音 声 対 話 機 能 (キーワードスポット 認 識 )<br />

・ 情 報 サービスサーバーのバックアップによる 対 話 コンテンツ 制 御<br />

・ 受 付 対 応 、 警 備 対 応 専 門 部 署 との 連 絡 応 対<br />

d. 人 物 状 態 監 視 天 井 カメラ:<br />

・ 天 井 カメラによる 複 数 人 物 の 動 線 識 別 、 不 審 動 作 識 別<br />

e. 個 人 認 証 :<br />

・ICタグカード、パスワード、 顔 / 網 膜 / 指 静 脈 / 声 紋 / 指 紋 認 証<br />

f. 夜 間 警 備 探 査 機 能 :<br />

・ 不 審 者 ( 動 体 識 別 )<br />

・ 異 常 状 態 ( 異 常 音 、 煙 発 生 、 火 災 発 生 、 水 漏 れ、ガス 漏 れなど)<br />

・ 建 屋 設 備 のメンテ 異 常 ( 蛍 光 灯 の 切 れかけ、 無 線 端 末 の 故 障 など)<br />

g. 清 掃 機 能 :<br />

・ 床 面 掃 除 アタッチメントを 装 着 し 真 空 吸 引 、 水 拭 き 掃 除<br />

40


h. 自 動 充 電 機 能 もしくは 自 動 電 池 交 換 機 能 :<br />

3) 知 能 化 技 術<br />

2)に 記 載 したシステムの 実 現 に 必 要 な、 情 報 構 造 化 環 境 の 知 能 化 要 素 を 下 記 に 記 載 する。<br />

1 情 報 サービスサーバー/データベース<br />

a. 受 付 業 務 情 報 処 理 支 援 サーバー<br />

音 声 対 話 知 能 、 個 人 認 証 バックアップ、 事 務 手 続 き 手 順 策 定 、 受 付 業 務 係 りとの 事 務 処 理 連 携 支 援 、<br />

PR 情 報 コンテンツ 提 供 、アミューズメントコンテンツ 提 供<br />

b.セキュリティー 情 報 管 理 、 非 常 時 連 絡 網 サーバー<br />

夜 間 監 視 緊 急 連 絡 網 、 地 図 、 人 の 所 在 位 置 、 部 署 位 置 などの 移 動 環 境 データベースなど、これらの 要<br />

素 は、サービスロボットの 作 業 コンテンツの 質 そのものに 係 わる。ハード 構 成 としては 一 般 のPCの 構<br />

成 となるが、サーバーに 繋 がる 社 内 / 外 データベース、コンテンツ 供 給 を 行 う 専 門 組 織 のサービスがど<br />

こまで 実 用 的 かつ 有 用 なものになるかが 鍵 。<br />

2 建 屋 設 備 との 作 業 連 携 インタフェース<br />

a.エレベータ 連 動 操 作 インタフェース<br />

b. 自 動 扉 連 動 操 作 インタフェース<br />

c.ゴミ 集 中 集 積 設 備 インタフェース<br />

a、bについては、ロボットの 自 動 建 屋 内 移 動 には 必 須 の 条 件 。<br />

エレベータの 統 合 管 理 システムのような 組 織 的 な 制 御 インフラがある 場 合 は、 制 御 ソフトの 改 訂 、 小<br />

規 模 ビルや 自 動 ドアのような、 個 別 操 作 システムで、 既 存 インタフェースが 存 在 しない 場 合 については、<br />

新 規 増 設 に 負 担 が 少 ないハードシステムの 供 給 が 課 題 となる。また、ロボット・ 建 屋 システム 間 の 操 作<br />

通 信 プロトコルの 標 準 化 が 課 題 である。<br />

cのような 専 門 作 業 のインタフェースについては、 人 との 共 存 作 業 の 枠 をある 程 度 外 し、ロボット 対<br />

応 専 用 の 設 備 を 設 けることになると 考 える。ただし、 種 々のロボット 間 での 運 用 で 共 通 化 を 図 ることが<br />

望 ましい。<br />

3ロボット 位 置 同 定 手 段<br />

ロボットの 移 動 位 置 同 定 に 関 しては、SLAM 等 ロボット 自 身 が 環 境 形 状 から 自 己 位 置 を 判 断 する 技<br />

術 開 発 が 進 展 すると 考 えられる。 実 用 的 には、これらの 移 動 制 御 技 術 をよりロバストにするために、 床<br />

面 に 絶 対 位 置 同 定 及 びそのロケーションの 意 味 ・ 属 性 の 情 報 を 提 供 するICタグ 等 のインフラの 活 用 が<br />

必 要 となると 考 えられる。<br />

4 個 人 認 証 手 段<br />

個 人 を 特 定 したサービスや、セキュリティー 管 理 のために、ICタグカード、パスワード、 顔 認 証 、<br />

網 膜 認 証 、 指 静 脈 認 証 、 声 紋 認 証 、 指 紋 認 証 のようなデバイスが 必 要 となる。 技 術 としては、 既 存 製 品<br />

のロボット 搭 載 で 済 む 物 が 多 い。 顔 認 証 、 声 紋 認 証 は、 個 人 特 定 の 信 頼 性 を 上 げるための 技 術 開 発 がさ<br />

らに 必 要 である。<br />

5 人 物 状 態 監 視 天 井 カメラ<br />

天 井 カメラにより 複 数 人 物 の 動 線 を 認 識 し、ロボットの 障 害 物 回 避 走 行 制 御 、 人 物 追 尾 制 御 、 不 審 者<br />

41


の 推 定 を 行 う。 対 象 識 別 に 必 要 な 解 像 度 を 確 保 しつつ 広 範 囲 な 監 視 領 域 を 確 保 するためにはカメラ 員 数<br />

が 増 えシステムコストが 課 題 となる。また、 複 数 の 対 象 物 の 信 頼 性 の 高 い 識 別 、 追 尾 画 像 処 理 も 課 題 で<br />

ある。<br />

6 物 品 識 別 手 段<br />

マニピュレーション 作 業 を 実 施 する 場 合 、ハンドリング 対 象 の 識 別 、 位 置 認 識 が 一 つの 課 題 となり、<br />

個 々の 作 業 対 象 物 に 識 別 用 のICタグを 設 置 しておき、 認 識 信 頼 性 を 確 保 することが 有 効 である。 手 続<br />

き 書 面 のトレイや、 回 収 対 象 のゴミ 箱 等 に 設 置 されることが 想 定 される。<br />

7 自 動 充 電 設 備 、 自 動 電 池 交 換 設 備<br />

ロボット 専 用 のインフラになるが、ロボットの24 時 間 自 立 稼 動 という 条 件 は、 人 間 代 替 作 業 のコス<br />

トパフォーマンス 確 保 のためには 必 須 であり、 信 頼 性 の 高 い 無 人 システムの 確 保 が 必 要 。<br />

(2)オフィス<br />

ここでは、テナントオフィスビルの 玄 関 、 通 路 などの 公 共 空 間 でのRTシステム 活 用 シナリオについ<br />

て 記 載 する。この 事 業 フィールドでの 事 業 者 は、オフィスビルオーナー、 会 社 経 営 者 などである。<br />

(2-1)オフィスシナリオ1<br />

1)シナリオ<br />

1エンドユーザ<br />

オフィスビル 従 業 員 及 び 外 部 訪 問 者<br />

2シナリオ<br />

作 業 シナリオとしては、(1-1)のシナリオと 重 複 する 所 が 多 い。ここでは、オフィスでの 作 業 に<br />

特 化 した、 現 場 でのサービスシーンを 記 載 する。<br />

a. 玄 関 ロビーでの 入 退 出 管 理 作 業<br />

・ 朝 夕 の 出 社 時 間 、 玄 関 ロビーに 守 衛 さんが 立 っており、 社 員 証 を 確 認 しながら、 挨 拶 を 交 わしつつ、<br />

個 人 の 顔 を 特 定 し 入 退 出 管 理 をしている。 時 々、 幹 部 が 顔 パスで 通 るが 容 認 している。<br />

・ 時 間 差 通 勤 が 叫 ばれているが、まだ、 朝 夕 の 人 の 出 入 りはピークとなり、もれなく 人 の 出 入 りを 監 視<br />

するためには、 守 衛 の 員 数 のある 程 度 の 確 保 が 必 要 。<br />

・ 最 近 は、 入 退 出 ゲートを 完 備 する 会 社 が 増 え、 厳 密 に 社 員 証 でゲートにより 入 退 出 管 理 を 行 うが、 設<br />

備 投 資 としては 高 価 。<br />

・ 最 近 は、 凶 悪 テロが 増 えてきており、オフィスへの 不 審 者 の 出 入 り 管 理 のいっそうの 強 化 が 必 要 。<br />

b.ビルテナント、 会 社 部 署 への 新 聞 、 郵 便 物 等 の 危 険 物 検 査 / 配 送 作 業<br />

・ 高 層 テナントビルにオフィスを 持 っているが、 新 聞 や 郵 便 物 は、 地 上 階 の 郵 便 ボックスに 届 けられ、<br />

秘 書 が 定 期 的 に 回 収 しに 行 くが、 毎 日 大 量 の 郵 便 物 が 届 き、 高 層 エレベータの 往 復 も 結 構 大 変 な 作 業<br />

になっている。かといって、 専 門 の 郵 便 係 を 雇 用 するのも 人 件 費 が 高 くて 避 けたい。ビル 側 が、セキ<br />

ュリティーを 保 証 して、 地 上 階 からの 搬 送 を 代 行 してくれたら、ありがたい。<br />

・ 米 国 では、 今 でも 爆 発 物 や 細 菌 封 入 の 郵 便 物 によるテロが 発 生 している。 国 内 でも、 毒 ガステロなど<br />

もあり、テナントユーザに 対 し、 高 信 頼 なセキュリティー 管 理 サービスは 売 りになると 思 われる。 一<br />

方 、 危 険 物 検 査 や 管 理 には、 専 門 家 のスキルが 必 要 であり、 何 とかリーズナブルなコストでサービス<br />

42


が 提 供 できないだろうか。<br />

< 提 供 サービス><br />

以 上 のシナリオで 紹 介 したサービス 業 務 をまとめると 下 記 のようになり、ロボットにより 人 手 作 業 の<br />

代 行 により、 作 業 コスト 削 減 及 びサービス 作 業 の 質 の 向 上 を 図 ることができれば、 事 業 者 の 投 資 動 機 を<br />

喚 起 できる。<br />

・ 入 退 出 管 理<br />

・ 各 階 テナント 別 ・ 部 署 別 郵 便 物 配 送 、 郵 便 物 危 険 物 検 査<br />

3 事 業 者 の 投 資 動 機<br />

事 業 者 のRTシステム 導 入 に 対 する 投 資 動 機 としては、(1-1)の3 項 に 記 載 した 動 機 に 加 え、 次<br />

の 点 が 考 えられる。<br />

・テナントユーザに 対 する 借 用 付 加 価 値 訴 求 (セキュリティーサービスの 強 化 、ビル 内 物 流 サービス、<br />

危 険 物 管 理 など)よるビル 価 値 の 向 上 。<br />

4 事 業 規 模 の 推 定<br />

2003 年 度 の 総 務 省 「 固 定 資 産 の 価 値 等 の 概 要 調 査 」のデータから、 国 内 の 事 務 所 ビルの 総 数 は、<br />

約 1,700,000 棟 と 推 定 される。<br />

ロボットを 導 入 しそうな 企 業 を、 東 証 一 部 上 場 企 業 とした 場 合 、その 総 数 は、1,738 社 (200<br />

7 年 1 月 時 点 、 出 典 :http://www.tse.or.jp/listing/companies/index.html)である。<br />

これらの 各 社 が 平 均 5 棟 のビル 建 屋 を 利 用 しているとした 場 合 、 上 記 した 国 内 事 務 所 ビル 総 棟 数 の 約<br />

0.5%(=1,738×5/1,644、367×100)の 規 模 である。これを 導 入 率 と 仮 定 し、<br />

国 内 の 市 場 規 模 は、 約 1,063 億 円 / 年 (= 導 入 率 :0.005×1,700,000 棟 × 代 替 人 員 :<br />

2.5 人 / 箇 所 ( 警 備 員 2 人 + 掃 除 係 0.5 人 )× 代 替 人 件 費 :0.05 億 円 / 年 人 )と 推 定 する。<br />

2)システム 構 成<br />

(1-1)の2) 及 び 図 2.1.5-1に 提 示 した 多 目 的 ビルサービスロボットの 構 成 と 同 様 。<br />

(1-1)の2)に 述 べた 以 外 に、オフィスシナリオで 要 求 される 所 要 機 能 及 び 所 要 要 素 技 術 を 下 記 に<br />

記 載 する。<br />

1 所 要 作 業 機 能<br />

a. 入 退 出 管 理<br />

b. 各 階 部 署 別 郵 便 物 配 送<br />

c. 郵 便 物 危 険 物 検 査<br />

2 所 要 要 素 技 術<br />

a. 個 人 認 証 技 術 :(1-1)2) 記 載 と 同 様<br />

b. 軽 量 物 ハンドリング 機 能 : 手 続 き 書 面 、 新 聞 / 郵 便 物 など<br />

c. 搬 送 機 能 : 搬 送 アタッチメントを 装 着 し 新 聞 / 郵 便 物 を 仕 分 け 搬 送<br />

d. 危 険 物 検 査 機 能 : 爆 発 物 、 薬 物 、 細 菌 など<br />

3) 知 能 化 技 術<br />

2)に 記 載 のシステム 構 成 に 要 する 要 素 技 術 はロボット 単 体 に 搭 載 する 技 術 であり、 情 報 構 造 化 環 境<br />

43


の 知 能 化 要 素 は、(1-1)3) 記 載 の 内 容 と 同 様 。<br />

外 部 サービス 組 織 :<br />

セキュリティーサービス、コンテンツ 供 給 サービス、 多 言 語 翻 訳 サービスなど<br />

ビル 内 情 報 サービスサーバー:<br />

・ 受 付 業 務 情 報 処 理 支 援 サーバー: 多 言 語 音 声 対 話 知 能 、 個 人 認 証 、PR 情 報 コンテンツなど<br />

・セキュリティー 情 報 管 理 ・ 非 常 時 連 絡 網 サーバー: 夜 間 監 視 緊 急 連 絡 網 など<br />

人 物 状 態 監 視 天 井 カメラ:<br />

人 流 監 視 、 不 審 者 監 視<br />

対 象 物 識 別<br />

ICタグ<br />

個 人 認 証<br />

ICタグカード<br />

多 目 的<br />

サービスロボット: 案<br />

内 作 業<br />

位 置 指 標<br />

ICタグ<br />

多 目 的<br />

サービスロボット: 受<br />

付 作 業<br />

受 付 ・ 案 内 作 業 のイメージ<br />

多 目 的<br />

サービスロボット: 夜<br />

間 警 備 作 業<br />

人 物 状 態 監 視 天 井 カメラ:<br />

人 流 監 視 、 不 審 者 監 視<br />

エレベータ・ 自 動 ドア/<br />

インターフェース<br />

作 業 拡 張 ユニット: 掃 除 、ゴミ 箱 搬 送<br />

位 置 指 標 ICタグ<br />

夜 間 警 備 ・ 清 掃 作 業 のイメージ<br />

図 2.1.5-1 多 目 的 ビルサービスロボットの 運 用 イメージ<br />

44


2.1.6 公 共 空 間 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

(1) 駅 ・ 空 港<br />

まず、 旅 行 に 出 かける 高 齢 者 夫 婦 、 外 国 人 ツーリストの 二 つシナリオを 設 定 した。 高 齢 者 の 案 内 や 外<br />

国 語 による 会 話 などのニーズが 高 く、ロボットの 形 態 としては、インフォーメーションロボット、コン<br />

シェルジェロボット、 自 律 移 動 カートなどが 考 えられる。 環 境 構 造 化 によって 下 記 の 情 報 がロボットに<br />

提 供 されることが 必 要 となる。<br />

・チケット 予 約 システムからの 情 報<br />

・ 運 行 情 報 システムからの 情 報<br />

・ 手 荷 物 情 報 システムからの 情 報<br />

・ 構 内 の 店 舗 情 報<br />

・ 乗 換 えのための 交 通 情 報<br />

・ 周 辺 の 観 光 情 報 、 宿 泊 施 設 の 情 報<br />

・ 外 国 語 翻 訳 サービス<br />

環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 に 関 しては、 分 散 配 置 されたセンサ 情 報 や 各 種 リーダからの 情 報 な<br />

らびにその 履 歴 を 解 析 し、<br />

・ 施 設 内 の 全 体 状 況 を 認 識 する 知 能 化 技 術<br />

・ 特 定 個 人 に 対 する 適 切 なサービス 内 容 を 時 々 刻 々 推 定 する 知 能 化 技 術<br />

を 開 発 する 必 要 がある。<br />

図 2.1.6-1に、 駅 ・ 空 港 用 ロボットのための 環 境 情 報 構 造 化 システムの 構 成 を 示 す。<br />

インターネット<br />

イントラネット<br />

情 報 サービスシステム<br />

構 内 店 舗 情 報<br />

コールセンタ<br />

業 務 システム<br />

チケット 予 約 システム<br />

乗 換 交 通 情 報<br />

運 行 情 報 システム<br />

観 光 地 ・ 宿 泊 情 報<br />

手 荷 物 情 報 システム<br />

翻 訳 サービス<br />

チケット<br />

電 子 タグ<br />

ICカード<br />

ロボット(+ 各 種 リーダ)<br />

構 内 インフラ<br />

各 種 リーダ<br />

カメラ 等 センサ<br />

屋 内 GPS<br />

図 2.1.6-1 駅 ・ 空 港 用 ロボットのための 環 境 情 報 構 造 化 システムの 構 成<br />

(2) 図 書 館 ・ 美 術 館 ・ 科 学 館 ・ 博 物 館<br />

図 書 館 ・ 美 術 館 ・ 科 学 館 ・ 博 物 館 などの 公 共 空 間 でのRT 導 入 の 可 能 性 について 検 討 を 行 ったが、そ<br />

れぞれニーズが 若 干 異 なることが 明 らかになった。そこで 個 々について 述 べる。<br />

まず、 科 学 館 に 関 しては、 見 学 者 ・スタッフなどのエンドユーザ、オーナー・ 経 営 者 などの 事 業 者 を<br />

想 定 できる。ここでのシナリオにおいて 提 案 可 能 なRTサービスは、 展 示 物 演 出 システム、 展 示 ガイド<br />

ロボット、 場 内 移 動 ビークル、 記 念 写 真 撮 影 サービス、パトロール 案 内 ロボット、バックヤード 支 援 、<br />

45


清 掃 ロボット、 入 館 システム 管 理 、 受 付 ロボットなどである。 美 術 館 ・ 博 物 館 に 関 しても、 上 記 科 学 館<br />

のシステムが 利 用 可 能 であるが、それに 加 えて、RT 天 井 システム( 図 2.1.6-2 参 照 )、 展 示 案<br />

内 RTビークルなどが 考 えられる。シナリオとしては、 美 術 館 スタッフをエンドユーザとしたシナリオ<br />

と、 美 術 鑑 賞 が 好 きな 高 齢 者 をエンドユーザとしたシナリオを 設 定 した。ここでは、 調 光 ロボットシス<br />

テムを 利 用 した 展 示 品 の 設 置 、 演 出 、ロボットカー 案 内 システムを 利 用 した 鑑 賞 などが 考 えられる。<br />

また、 図 書 館 に 関 しては、 利 用 者 ・フタッフなどのエンドユーザ、 行 政 機 関 ・ 各 自 治 体 ・ 教 育 機 関 な<br />

どの 事 業 者 を 想 定 できる。ここでは、 来 館 者 への 積 極 的 な 情 報 提 示 、 新 刊 図 書 の 整 理 の 自 動 化 、 閲 覧 室<br />

監 視 &パトロールロボットシステムなどのRTサービスが 考 えられる。 図 書 館 職 員 をエンドユーザとし<br />

たシナリオなどについて 検 討 した。<br />

以 上 のシナリオ 検 討 の 結 果 、 情 報 構 造 化 環 境 の 統 合 化 としては、 無 線 LAN 環 境 、 無 線 IDタグ 技 術 、<br />

室 内 マップ 取 り 込 み、 経 路 の 最 適 化 、 自 動 経 路 生 成 、 自 己 位 置 修 正 、 移 動 ロボット 群 制 御 、 生 体 モニタ<br />

リングセンサ、 高 出 力 充 電 池 、 急 速 充 電 技 術 、 乗 り 心 地 の 人 間 工 学 、 搭 乗 可 能 な 電 動 小 型 自 動 走 行 車 な<br />

どが 挙 げられた。<br />

天 井<br />

照 明<br />

カメラ<br />

RFID 受 信 機<br />

手 元 で 交 換 可 能<br />

リモコン<br />

図 2.1.6-2 RT 天 井 システムの 概 念<br />

(3) 商 業 空 間<br />

商 業 空 間 として、 大 型 商 業 施 設 を 対 象 として、シナリオを 作 成 した。ユーザは、 都 市 部 再 開 発 のデベ<br />

ロッパーである。 近 年 、 商 業 施 設 では、 日 用 品 からファッション、 飲 食 店 に 加 え 娯 楽 施 設 ( 映 画 館 )な<br />

どを 併 設 し、またこれらに 加 え、スポーツジムのような 会 員 制 の 施 設 の 併 設 による 固 定 客 の 確 保 、 健 康<br />

増 進 に 関 する 施 設 を 併 設 するなどの 取 り 組 みが 行 われており、 店 舗 情 報 を 細 かに 提 供 するディスプレイ<br />

型 情 報 提 供 が 行 われている。 今 後 以 下 のようなサービスが、 大 型 商 業 施 設 の 魅 力 向 上 の 上 で 重 要 である<br />

との 調 査 結 果 が 出 た。<br />

・ 情 報 端 末 ( 携 帯 電 話 )の 利 用 による 情 報 提 供<br />

・ 近 隣 住 民 への 商 品 配 達 サービス<br />

・ 来 客 者 の 落 ち 着 ける 空 間 つくりによる 滞 留 時 間 の 維 持<br />

システムの 構 成 としては、(1) 顧 客 に 対 応 した 情 報 提 供 ツールの 開 発 と、(2)バックヤード 作 業 と<br />

しての 搬 送 作 業 代 替 装 置 ( 周 辺 住 民 向 けを 意 識 した)が 考 えられ、そこでは 以 下 のようなRTシステム<br />

の 導 入 が 考 えられる。<br />

46


・ 施 設 内 部 への 顧 客 の 情 報 を 収 集 できるカメラシステム<br />

・ 特 定 顧 客 の 持 つタグに 対 応 するタグリーダによる 顧 客 のトラッキングシステム<br />

・ 情 報 提 供 および 案 内 をする 移 動 ロボットシステム<br />

・ 移 動 ロボットの 状 況 を 管 理 する 環 境 側 の 管 理 システム<br />

・ 顧 客 の 動 向 にあわせて 提 示 する 移 動 可 能 な 表 示 システム<br />

・ 店 舗 / 管 理 室 からの 情 報 提 供 システム<br />

・ 屋 内 外 をシームレスで 移 動 可 能 な 移 動 ロボットシステム<br />

・バックヤードなどでは、 環 境 側 のガイドによる 高 速 移 動 の 補 助 機 能<br />

・ 屋 外 では、 移 動 の 補 助 のための 環 境 側 へのガイド 機 能<br />

・ 台 車 搬 送 機 能 による 汎 用 的 な 移 動 ロボットシステム<br />

・ 屋 内 では、 移 動 を 補 助 する 安 価 な 屋 内 GPSシステム<br />

環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 としては、 以 下 の 開 発 が 必 要 となる。<br />

1 屋 内 外 シームレス 搬 送 を 実 現 するためのガイド 情 報 の 提 供<br />

・ 安 価 な 屋 内 GPSシステムの 構 築<br />

・ 屋 外 での 地 図 情 報 提 供 とGPSとの 連 携 システム<br />

・ 適 宜 、 事 故 位 置 補 正 をするためのガイド 情 報 適 用 システム<br />

2 人 の 中 にはいっていく 移 動 ロボット 技 術 の 開 発<br />

・ 人 の 中 での 安 全 性 確 保 のための 環 境 からの 監 視 技 術<br />

ロボットの 周 辺 の 人 の 状 況 をマクロに 監 視 、 許 容 動 作 速 度 などを 管 理 、ロボット 側 では、 周 辺 の 局 所<br />

情 報 に 基 づく 行 動 修 正 機 能<br />

図 2.1.6-3に、 商 業 空 間 での 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技 術 開 発 に 基 づくサービス 提 供 のイメージを<br />

示 す。<br />

大 型 商 業 施 設 (ららぽーと 柏 の 葉 )<br />

情 報 提 供 サービス<br />

柏 の 葉 キャンパス 駅<br />

柏 の 葉 開 発 計 画<br />

搬 送 サービス<br />

(4) 官 庁 ・オフィス<br />

図 2.1.6-3 公 共 空 間 における 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技 術 開 発 に 基 づく<br />

サービス 提 供 のイメージ<br />

官 庁 に 関 しては、 役 所 、 警 察 署 、 郵 便 局 、 銀 行 などの 官 庁 関 連 の 公 共 空 間 を 対 象 としたシナリオを 作<br />

成 した。エンドユーザは 市 民 利 用 者 、 事 業 者 は、 国 、 地 方 自 治 体 、 銀 行 経 営 者 などである。<br />

47


ここでは、<br />

1 来 訪 者 の 要 件 の 確 認 及 び 対 応 窓 口 への 誘 導 、<br />

2 事 前 手 続 き 書 面 記 載 の 補 助 、<br />

3 外 国 人 向 け 外 国 語 対 応 受 付 、 対 応 窓 口 での 翻 訳 サービス、<br />

4 目 、 耳 の 不 自 由 な 方 への 応 対<br />

5 目 的 外 来 訪 者 (ビルを 間 違 えた 人 、トイレ 借 用 の 人 など)への 応 対<br />

6 情 報 提 供 :PR 情 報 、ビル 近 隣 場 所 の 道 案 内 、バス 時 刻 表 の 提 示 、 災 害 時 の 避 難 支 援 など<br />

7 車 の 手 配 :タクシーの 呼 び 出 し<br />

8 案 内 誘 導 : 対 応 部 署 への 誘 導 、トイレへの 誘 導 など<br />

9 挙 動 不 審 者 の 排 除<br />

10 夜 間 警 備 、 夜 間 清 掃 、ゴミ 処 理<br />

などのサービスの 提 供 が 考 えられる。 受 付 ロビーでの 受 付 ・ 窓 口 案 内 、セキュリティサービス、ビル 公<br />

共 通 路 の 夜 間 警 備 / 夜 間 清 掃 /ゴミ 処 理 作 業 などでの 作 業 シナリオについて 検 討 を 行 った。<br />

また、オフィスに 関 しては、テナントオフィスビルの 玄 関 、 通 路 などの 公 共 空 間 を 対 象 としたシナリ<br />

オを 作 成 した。エンドユーザはオフィスビル 従 業 員 及 び 外 部 訪 問 者 、 事 業 者 は、オフィスビルオーナー、<br />

会 社 経 営 者 などである。<br />

1 入 退 出 管 理<br />

2 通 常 受 付 ・ 取 継 業 務 ( 多 国 籍 言 語 対 応 )<br />

3 各 階 テナント 別 ・ 部 署 別 郵 便 物 配 送 、 郵 便 物 危 険 物 検 査<br />

などのサービス 提 供 が 考 えられる。 玄 関 ロビー/ 入 退 出 管 理 作 業 、 玄 関 ロビー/ 出 迎 え/ 受 付 / 案 内 /<br />

不 審 者 排 除 作 業 、 公 共 通 路 の 夜 間 警 備 / 夜 間 清 掃 /ゴミ 処 理 作 業 、ビルテナント、 会 社 部 署 への 新 聞 、<br />

郵 便 物 等 の 危 険 物 検 査 / 配 送 作 業 などでの 作 業 シナリオの 検 討 を 行 った。<br />

以 上 のシナリオについて 分 析 し、 多 目 的 ビルサービスロボットの 所 要 作 業 機 能 及 びそれらを 実 現 する<br />

ための 所 要 要 素 技 術 を 明 らかにするとともに、 情 報 構 造 化 環 境 の 知 能 化 要 素 の 抽 出 を 行 った。 抽 出 結 果<br />

を 以 下 に 示 す。<br />

1) 情 報 サービスサーバー/データベース<br />

1 受 付 業 務 情 報 処 理 支 援 サーバー<br />

音 声 対 話 知 能 、 個 人 認 証 バックアップ、 事 務 手 続 き 手 順 策 定 、 受 付 業 務 係 りとの 事 務 処 理 連 携 支 援 、<br />

PR 情 報 コンテンツ 提 供 、アミューズメントコンテンツ 提 供<br />

2セキュリティ 情 報 管 理 、 非 常 時 連 絡 網 サーバー<br />

夜 間 監 視 緊 急 連 絡 網 、 地 図 、 人 の 所 在 位 置 、 部 署 位 置 などの 移 動 環 境 データベースなど<br />

2) 建 屋 設 備 との 作 業 連 携 インタフェース<br />

1エレベータ 連 動 操 作 インタフェース<br />

2エスカレータ 連 動 操 作 インタフェース<br />

3 自 動 扉 連 動 操 作 インタフェース<br />

4ゴミ 集 中 集 積 設 備 インタフェース<br />

3)ロボット 位 置 同 定 手 段<br />

1 廊 下 床 面 位 置 / 属 性 同 定 RFID<br />

2 無 線 LAN 位 置 同 定 システム<br />

48


4) 個 人 認 証 手 段<br />

RFIDカード、パスワード、 顔 認 証 、 網 膜 認 証 、 指 静 脈 認 証 、 声 紋 認 証 、 指 紋 認 証<br />

5) 人 物 状 態 監 視<br />

1 天 井 カメラによる 複 数 人 物 の 動 線 識 別 、 不 審 動 作 識 別<br />

2ロボット 周 辺 、セキュリティゲート 周 辺 の 人 の 流 線 を 逐 次 監 視 しており、ロボットの 人 物 トレースを<br />

支 援 。つれ 入 り、 不 審 行 動 などを 動 線 から 推 定 。<br />

6) 物 品 識 別 手 段<br />

1 搬 送 /ハンドリング 対 象 識 別 RFID( 湯 飲 み、 手 続 き 書 面 などの 搬 送 対 象 )<br />

2ゴミ 箱 識 別 RFID<br />

3 分 別 ゴミ 箱 識 別 RFID<br />

4 新 聞 、 郵 便 物 受 けの 宛 先 識 別 RFID<br />

7)ゴミ 廃 棄 支 援 環 境<br />

ゴミ 箱 回 収 / 分 別 廃 棄 設 備<br />

8) 危 険 物 検 査 デバイス<br />

爆 発 物 、 薬 物 、 細 菌 など<br />

9) 自 動 充 電 設 備 、 自 動 電 池 交 換 設 備<br />

以 上 、 公 共 空 間 におけるRTの 導 入 、RTによるサービスの 提 供 を 考 えた 場 合 、 多 様 なニーズがある<br />

ことが 明 らかになった。ニーズや 環 境 条 件 に 応 じて、どのような 環 境 構 造 化 を 行 うべきかが 異 なってく<br />

るものの、 基 本 的 には、ロボット 単 体 の 知 能 化 や、それを 構 成 する 要 素 の 知 能 化 だけでは、 実 用 化 シス<br />

テムを 構 成 することが 困 難 であることがより 明 確 となった。カメラ、レンジセンサ、GPS、 屋 内 GP<br />

S、RFID、その 他 様 々なセンサシステムや、センサノードとセンサネットワーク、 有 線 / 無 線 のネ<br />

ットワークなどを 環 境 に 設 置 することによって 構 造 化 し、 知 識 を 知 能 モジュールに 分 散 化 し、 状 況 に 応<br />

じて、 知 能 化 された 環 境 とロボットとを 動 的 に 組 織 化 し、 適 応 的 に 動 作 することを 可 能 にする 技 術 開 発<br />

を 行 う 必 要 がある。<br />

また、 人 とロボットとを 共 存 させるための 知 能 化 技 術 開 発 が 本 質 的 となる。これにおいても、サービ<br />

スRTの 実 用 化 を 考 えると、ロバスト 性 、 安 全 性 、 適 応 性 、コストの 観 点 から、 知 能 化 された 環 境 が 人<br />

の 属 性 や 行 動 を 把 握 し、それに 基 づきロボットを 動 作 させたり、ロボットが 人 を 認 識 して、 知 能 化 され<br />

た 環 境 が 情 報 を 提 示 することを 可 能 にする 必 要 がある。<br />

2.1.7 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術<br />

各 公 共 空 間 におけるシステム 構 成 と 技 術 項 目 について 表 2.1.7-1にまとめる。<br />

これらから、 公 共 空 間 における 実 用 化 サービスRTの 導 入 を 図 るには、 以 下 の 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技<br />

術 を 開 発 する 必 要 があることが 明 らかになった。<br />

・ 屋 内 GPS( 用 途 : 移 動 体 の 位 置 計 測 )<br />

・RFID( 用 途 : 人 の 認 識 、 認 証 、モノの 認 識 、 等 )<br />

・センサノード( 視 覚 機 能 を 内 蔵 したものを 含 む)( 用 途 : 人 の 認 識 、 行 動 計 測 など)<br />

・ 可 動 プロジェクタ( 用 途 : 動 的 な 情 報 提 示 ) 等<br />

また、 上 記 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 と 連 携 させることで、 以 下 の 知 能 化 技 術 を 開 発 することが 必 要 であろ<br />

49


う( 単 体 の 知 能 化 だけでは 実 用 化 システム 開 発 は 困 難 )。<br />

・ 移 動 ( 搬 送 を 含 む)( 人 のいる 環 境 で、 安 全 に 移 動 、 搬 送 する 技 術 )<br />

・ 情 報 提 示 ・コミュニケーション( 人 が 求 める 情 報 を 適 切 に 提 供 する)<br />

・マニピュレーション(モノのハンドリング)<br />

人 の 案 内 、 人 の 搬 送 、 情 報 提 示 、モノの 搬 送 をはじめとする、さまざまなサービスをロバストに 提 供<br />

することが 可 能 になると 考 える。<br />

表 2.1.7-1 各 公 共 空 間 におけるシステム 構 成 と 技 術 項 目<br />

公 共 空 間 システム 構 成 知 能 化 技 術<br />

駅 環 境 からの 情 報 支 援<br />

・ チケット 予 約 システムからの 情 報<br />

・ 運 行 情 報 システムからの 情 報<br />

・ 手 荷 物 情 報 システムからの 情 報<br />

・ センサネットワークによる 人 の 行 動 認 識<br />

・ 構 内 地 図 情 報 (ホーム, 店 舗 情 報 など) ・ チケット 情 報 を 活 用 した 対 話 技 術<br />

・ 周 辺 の 観 光 情 報 , 宿 泊 施 設 の 情 報 ・ 屋 内 GPS と 視 覚 船 さを 連 動 させた 走 行 ナビ<br />

・ 外 国 語 翻 訳 サービスロボット<br />

ゲーション 技 術<br />

・ 構 内 ネットワークを 通 して 業 務 システム, 構<br />

内 インフラと 接 続<br />

・ 広 域 ネットワークを 通 して 外 部 サービスプロ<br />

バイダの 情 報 活 用<br />

空 港 駅 と 同 様 .ただし,<br />

外 国 語 を 用 いたサービス 機 能 の 強 化<br />

駅 と 同 様<br />

科 学 館 1<br />

入 館 管 理<br />

・ 無 線 タグ 内 臓 の 入 館 カード<br />

・ 館 内 にタグリーダ<br />

・ 入 場 者 限 定 展 示 室 の 予 約 ,チェックイン<br />

・ 傘 の 認 識<br />

・ 動 線 計 測<br />

ロボット<br />

・ アクティブ 無 線 タグ<br />

・ インフラを 利 用 した 自 己 位 置 同 定 , 補 正<br />

・ 予 約 受 付 端 末 機 能<br />

・ 巡 回 監 視 , 道 案 内<br />

・ 室 内 地 図 自 動 作 成<br />

・ 障 害 物 回 避<br />

・ 衝 突 予 測 , 回 避<br />

・ 経 路 の 最 適 化<br />

・ 自 動 経 路 生 成<br />

・ 自 己 位 置 修 正<br />

・ 移 動 ロボット 群 制 御<br />

< 必 要 な 要 素 技 術 ><br />

・ 高 出 力 充 電 池<br />

・ 急 速 充 電 技 術<br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

・ 無 線 ID タグ 技 術<br />

・ 音 声 合 成 技 術<br />

科 学 館 2<br />

受 付 ロボット<br />

・ 案 内 業 務 補 助<br />

・ ツアー 外 ,フリー 客 の 案 内<br />

・ 問 い 合 わせ 対 応<br />

・ 館 内 設 備 への 誘 導<br />

・ アテンダントの 顔 認 識 と 挨 拶<br />

・ 子 供 の 相 手<br />

・ VIP の 認 識 と 挨 拶<br />

・ 音 声 合 成<br />

・ 多 言 語 自 動 対 応<br />

・ 音 声 認 識 技 術<br />

・ 顔 認 識 技 術<br />

・ 動 作 認 識 技 術<br />

・ 音 声 自 動 対 話 技 術<br />

< 必 要 な 要 素 技 術 ><br />

・ ロボットシステムアップ 技 術<br />

・ コンテンツ 開 発 インタフェース<br />

・ 簡 易 操 作 インタフェース<br />

・ 音 声 合 成 技 術<br />

50


美 術 館<br />

博 物 館<br />

図 書 館<br />

・RT 天 井 システム<br />

・ 展 示 案 内 RT ビークル<br />

閲 覧 室 監 視 &パトロールロボットシステム<br />

来 館 者 への 積 極 的 な 情 報 提 示<br />

新 刊 図 書 の 整 理 の 自 動 化<br />

RT 天 井 システム<br />

・ 照 明 度 調 整 の 自 動 化<br />

・ 音 響 設 備 配 置 の 自 動 化<br />

・ プロジェクション 装 置 配 置 の 自 動 化<br />

・ 動 線 計 測 の 自 動 化<br />

・ 人 の 誘 導 の 自 動 化<br />

< 必 要 な 要 素 技 術 ><br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

・ 無 線 ID タグ 技 術<br />

・ 3 自 由 度 メカニズムのユニット 化<br />

・ コントローラのコンパクト 化 およびユニット 化<br />

・ ネットワーク 技 術<br />

展 示 案 内 RT ビークル<br />

・ 移 動 ロボット 群 制 御<br />

・ 自 己 位 置 修 正<br />

・ 室 内 マップ 自 動 作 成 ・ 修 正<br />

・ 経 路 の 最 適 化<br />

・ 自 動 経 路 生 成<br />

・ 衝 突 回 避<br />

・ 障 害 物 回 避<br />

< 必 要 な 要 素 技 術 ><br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

・ 無 線 ID タグ 技 術<br />

・ 高 出 力 充 電 池<br />

・ 急 速 充 電 技 術<br />

・ 乗 り 心 地 の 人 間 工 学 を 反 映 した 走 行 制 御<br />

・ 搭 乗 可 能 な 電 動 小 型 自 動 走 行 車 証 実 験 ,<br />

信 頼 性 向 上 , 安 全 性 確 認<br />

・ 室 内 マップ 自 動 生 成 , 自 動 更 新<br />

・ 移 動 経 路 の 最 適 化<br />

・ 自 動 経 路 生 成<br />

・ 自 己 位 置 修 正<br />

・ 画 像 センシング 技 術<br />

・ 動 作 認 識 技 術<br />

< 必 要 な 要 素 技 術 ><br />

・ 無 線 LAN 環 境<br />

・ 無 線 ID タグ 技 術<br />

・ 音 声 合 成 技 術<br />

・ ID タグリーダの 高 速 , 軽 量 化<br />

・ 高 出 力 充 電 池<br />

・ 急 速 充 電 技 術<br />

51


大 型 商 業 施<br />

設<br />

官 庁<br />

オフィス<br />

顧 客 対 応 情 報 提 供 ツール<br />

・ 顧 客 情 報 収 集 カメラシステム<br />

・ 特 定 顧 客 IDタグトラッキング<br />

・ 情 報 提 供 , 案 内 移 動 ロボット<br />

・ 移 動 ロボット 管 理 システム( 環 境 )<br />

・ 顧 客 動 作 対 応 動 的 情 報 提 示 システム<br />

・ 店 舗 / 管 理 室 からの 情 報 提 供 システム<br />

バックヤード 作 業 としての 搬 送 作 業 代 替 装 置<br />

・ 屋 内 外 をシームレスで 移 動 可 能 なロボットシ<br />

ステム<br />

・ 屋 内 外 における 環 境 側 ガイドによる 高 速 移<br />

動 補 助 機 能<br />

・ 台 車 搬 送 用 汎 用 移 動 ロボットシステム<br />

・ 安 価 な 屋 内 GPS<br />

・ 情 報 管 理 機 能<br />

・ 自 律 移 動<br />

・ 音 声 対 話<br />

・ 人 物 状 態 監 視 カメラ<br />

・ 個 人 認 証<br />

・ 夜 間 警 備 探 査 機 能<br />

・ 清 掃 機 能<br />

官 庁 と 同 様<br />

・ 入 退 室 管 理<br />

・ 各 階 部 署 別 郵 便 物 配 送<br />

・ 郵 便 物 危 険 物 検 査<br />

要 素 技 術<br />

・ 個 人 認 証<br />

・ 軽 量 物 ハンドリング<br />

・ 搬 送 機 能<br />

・ 危 険 物 検 査 機 能<br />

・ 安 価 な 屋 内 GPS<br />

・ 屋 外 地 図 情 報 と GPS の 連 携<br />

・ 自 己 位 置 補 正<br />

・ 安 全 性 確 保 のための 監 視 技 術 (ロボット,<br />

人 )<br />

・ ロボットの 行 動 修 正<br />

・ 人 の 動 作 認 識 に 基 づく 適 応 的 情 報 提 示<br />

・ 大 容 量 通 信<br />

・ アドホック 接 続<br />

・ 受 付 業 務 情 報 処 理 支 援 サーバ<br />

・ セキュリティ 情 報 管 理 , 非 常 時 連 絡 網 サー<br />

バ<br />

・ エレベータ 連 動 操 作 インタフェース<br />

・ 自 動 扉 連 動 操 作 インタフェース<br />

・ ゴミ 集 中 集 積 設 備 インタフェース<br />

・ ロボット 位 置 同 定 手 段<br />

・ 個 人 認 証 手 段<br />

・ 人 物 状 態 監 視 天 井 カメラ<br />

・ 物 品 識 別 手 段<br />

・ 自 動 充 電 設 備 , 自 動 電 池 交 換 設 備<br />

官 庁 と 同 様<br />

52


2.2 住 宅 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想<br />

2.2.1 住 宅 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴<br />

物 に 関 する 情 報<br />

特 に 位 置 情 報 , 精<br />

度 保 証 された 空 間<br />

フレーム 変 化 , 注<br />

視 ,インタラクティ<br />

ブな 目 的 変 更<br />

状 況 履 歴 依 存 性<br />

状 況 = 「ヒト」,<br />

「モノ」, 「コト」の<br />

時 空 履 歴<br />

境 界 , 評 価 基 準 の<br />

ダイナミックな 変 化<br />

作 業 , 行 動 に 関 する<br />

知 識 は 位 置 情 報 保<br />

証 をもとに 記 述<br />

(シナリオに 基 づく)<br />

位 置 を 媒 介 としたモノ<br />

( 人 工 物 )に 関 する 座 標<br />

系 基 準 の 記 述<br />

( 関 係 性 は 隠 蔽 )<br />

状 況 における<br />

「ヒト」, 「モノ」, 「コト」<br />

の 相 互 作 用<br />

固 定 意 図 の 下 のアプリ<br />

オリな 状 況 設 定<br />

(フレーム 設 定 可 能 )<br />

(a) 実 用 化 されている 構 造 化 手 法<br />

関 係 性 のダイナ<br />

ミックな 変 化<br />

(b) RT による 人 の 支 援 における 問 題<br />

図 2.2.1-1 モデルベース 知 能 化 手 法 の 問 題<br />

図 2.2.1-1に 示 すように、これまで 工 場 などの 閉 鎖 された 環 境 において、 専 門 技 術 者 達 によっ<br />

てコントロールされ 利 用 されるロボットについては、 商 品 の 生 産 性 を 向 上 させ 高 品 質 な 物 を 作 り 上 げる<br />

ことに 成 功 している。これに 対 し、 近 年 、 家 庭 用 ロボットや 公 共 施 設 におけるサービスロボットなど、<br />

一 般 の 人 を 対 象 としたロボットが 提 案 ・ 開 発 されている。しかしながら、エンターテイメント 分 野 でい<br />

くつかの 成 功 例 をあげるのみで、 実 験 レベルをでていないのが 現 状 である。 工 業 用 ロボットは 固 定 環 境<br />

の 中 で 作 業 を 行 うため、 決 められたタスクを 決 められた 位 置 で 行 うだけで 良 かった。 人 間 と 共 生 するロ<br />

ボットは 刻 一 刻 と 変 化 する、 環 境 の 情 報 を 認 識 し 適 切 にサービスを 提 供 しなければならない。また、こ<br />

れまでのロボット 研 究 はロボット 一 個 体 にプログラムを 入 れ 高 知 能 化 、 高 機 能 化 を 目 指 してきた。しか<br />

しながら 環 境 に 合 わせた 事 前 設 計 は 難 しく、 環 境 の 変 化 に 対 応 することもまた 困 難 であった。<br />

状 況 における「ヒト」、「モノ」、「コト」の 相 互 作 用 に 着 目 し、ユビキタスコンピューティング 技 術 の 進<br />

展 により、 環 境 に 情 報 を 埋 め 込 み、ロボットと 環 境 が 相 互 に 通 信 することを 前 提 として、 人 ・ロボット・<br />

環 境 の 相 互 作 用 による 機 能 デザインを 実 現 する 新 たなアプローチが 環 境 構 造 化 である。 多 種 ・ 大 量 の 対<br />

象 物 が 存 在 し、 構 造 が 複 雑 である 住 宅 環 境 を 構 造 化 することにより、これまでのロボット 単 体 の 機 能 を<br />

用 いるアプローチとは 異 なり、ロボットと 環 境 の 総 和 として、 環 境 認 識 能 力 ならびに 環 境 マニピュレー<br />

ション 能 力 の 飛 躍 的 な 向 上 を 図 ることができる。このことより、 複 雑 な 住 宅 環 境 において、 機 能 不 全 に<br />

陥 ることなく、ユーザの 役 に 立 つ 機 能 を 果 たすサービスロボットが 実 現 される。<br />

本 分 野 では、 以 下 の 視 点 で、2つの 状 況 を 設 定 し、 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技 術 を 検 討 した。<br />

(1) 高 齢 者 支 援 (エイジフリーな 生 活 空 間 )<br />

(2) 女 性 の 社 会 進 出 支 援 (ジェンダーフリーな 生 活 空 間 インフラ)<br />

単 身 もしくは 夫 婦 で 自 立 した 生 活 を 送 っている 高 齢 者 は、 掃 除 ・ 洗 濯 ・ 料 理 などの 家 事 程 度 はこなす<br />

ことができたとしても、 日 常 生 活 において 些 細 なことに 苦 労 する 場 合 がある。 例 えば、 高 いところにあ<br />

る 棚 の 箱 の 上 げ 下 ろし、 天 井 の 電 灯 の 交 換 、 重 いゴミや 新 聞 紙 などを 外 に 出 す、 電 気 器 具 の 使 い 方 が 分<br />

からない・ 故 障 に 対 処 できない、などである。かつての 大 家 族 の 時 代 であれば、 子 や 孫 に 頼 めば 簡 単 に<br />

片 付 いたような 作 業 であっても、 高 齢 者 には 対 処 が 困 難 なことがある。このような、わざわざ 人 を 呼 び<br />

出 すほどではないが、 何 らかの 困 難 の 伴 う 作 業 を 支 援 するサービスロボットがあれば、 高 齢 者 の 自 立 的<br />

な 生 活 を 支 援 することができる。<br />

このような 状 況 を 想 定 して、 人 の 意 図 を 理 解 し、 指 示 により 作 業 を 代 行 するRTサービス 技 術 が 求 め<br />

られる。すなわち、 日 常 生 活 における、 人 に 頼 むには 気 が 引 ける「ちょっとした 作 業 代 行 」をRTで 代 行<br />

可 能 とするRTサービスフレームワーク、 特 にHRI 技 術 と、エージェント( 代 行 ) 技 術 を 開 発 する。<br />

この 技 術 開 発 により、21 世 紀 ビジョンで 謳 われている、「 健 康 長 寿 80 歳 」を 支 援 する 自 立 環 境 を 提 供<br />

53


でき、 主 体 的 に 生 きるためのRT 支 援 環 境 、すなわちエイジフリーな 生 活 空 間 インフラを 構 築 できる。<br />

さらに、「 時 持 ち」に 対 する、スキル 教 授 支 援 などにも 適 用 でき、ひいては、 家 庭 、 社 会 におけるRTに<br />

よる 支 援 空 間 サービスとして 多 くのRTビジネスが 期 待 できる。<br />

一 方 、 少 子 化 と 女 性 の 自 立 により、 現 在 でも 欧 米 のように 女 性 の 積 極 的 な 社 会 進 出 が 期 待 されている。<br />

社 会 をともに 支 える 立 場 からは、 本 来 、 家 事 は 男 女 の 区 別 無 く 協 力 して 行 うべきものであるが、 両 者 共<br />

に 家 事 に 割 ける 時 間 がなく 大 変 な 状 況 となってきた。 家 事 作 業 をロボットが 負 担 することで 生 活 にゆと<br />

りをもたらすことが 可 能 になる。ジェンダーフリーな 社 会 システムとしての 家 事 、 育 児 等 のサポートシ<br />

ステムの 充 実 とともに、RT 技 術 による 積 極 的 な 支 援 が 必 須 となる。すなわち、 共 働 き 家 庭 における、<br />

人 間 的 家 庭 的 関 係 を 損 なうことなく、 安 心 して 社 会 活 動 ができる 環 境 が 必 要 となる。<br />

政 府 によるIT 新 戦 略 の 策 定 が 進 む 中 、 今 後 高 齢 化 ・ 情 報 化 、 女 性 の 社 会 進 出 が 加 速 する 社 会 におい<br />

て、 年 齢 、ジェンダーおよびデジタルデバイドのない、 安 心 ・ 安 全 で 豊 かな 生 活 を 実 現 するためには、<br />

ネットワークを 通 じて 各 種 のセンサ・ 機 器 ・サービス・コンテンツ 結 びつけ、「 安 心 に」「 楽 しく」「 快<br />

適 に」ユーザに 提 供 することのできる「 察 してくれる」「 気 が 利 く」インタフェースが 重 要 になる。<br />

さらに、 近 年 、 地 域 住 民 の 連 帯 感 が 希 薄 になってきており、かつては 住 民 共 同 で 実 施 されていた 防 犯<br />

活 動 や 青 少 年 の 育 成 などが 次 第 に 行 われなくなりつつある。このような 中 、 健 全 な 地 域 社 会 の 維 持 、 安<br />

全 確 保 のための 実 環 境 における 移 動 ・ 運 搬 を 伴 うRTサービス 技 術 も 重 要 である。 少 子 高 齢 化 により、<br />

社 会 維 持 のための 通 学 路 立 ち 番 などの 人 手 確 保 が 困 難 になる 中 、 次 代 を 担 う 子 供 の 見 守 り、 高 齢 者 の 付<br />

き 添 い、 地 域 巡 回 警 備 、 夜 間 帰 宅 時 の 女 性 の 護 衛 、 徘 徊 高 齢 者 の 遠 隔 での 状 況 確 認 など 等 へのRTサー<br />

ビスの 導 入 。 実 世 界 環 境 におけるRT 移 動 技 術 の 実 用 化 は、 集 合 住 宅 、 戸 建 住 宅 、 地 域 の 清 掃 、ごみだ<br />

しサービスへの 展 開 も 期 待 できる。<br />

このように、 環 境 構 造 化 によるRTビルトインサービスインフラの 提 供 により、トータル 社 会 コスト<br />

の 低 減 により、エイジフリー、ジェンダーフリーの 生 活 環 境 が 実 現 できる。<br />

2.2.2 高 齢 者 支 援<br />

(1)80 歳 の 単 身 世 帯 者<br />

1)ユーザの 選 定<br />

大 都 会 T 市 の 西 近 郊 に 位 置 する 衛 星 都 市 A 市 の 住 宅 地 。かつて 宅 地 開 発 がなされ、 分 譲 された 当 初 は<br />

40 代 の 働 き 盛 り 世 代 が 多 かったが、この 世 代 がリタイアして 今 では 老 人 中 心 の 街 に 近 くなっている。<br />

丘 陵 地 帯 を 切 り 拓 いた 宅 地 開 発 であったため、 坂 道 が 多 く 住 居 の 入 り 口 が 階 段 になっている 家 等 も 多 い。<br />

M 氏 は80 歳 、 配 偶 者 ( 以 下 、 連 れ 合 い)には4 年 前 に 病 で 先 立 たれ、 今 は 独 身 生 活 を 送 っている。 一<br />

人 娘 が 居 るが、 嫁 いでT 市 の 東 側 近 郊 、A 市 からは 電 車 でも 車 でも2 時 間 少 しのC 市 に、 夫 (56 歳 )<br />

と 中 学 生 、 高 校 生 の 子 供 (M 氏 にとっては 孫 )2 人 と 住 んでいる。<br />

M 氏 の 家 は、A 市 のほぼ 中 心 部 に 位 置 するA 中 央 駅 から 徒 歩 で20 分 弱 のところにある 二 階 建 て 一 軒<br />

家 である。バスを 利 用 すれば 最 寄 りの 停 留 所 まで 駅 から5 分 であるが、 停 留 所 からは 急 な 上 り 坂 を5 分<br />

近 く 歩 く 必 要 がある。 駅 の 近 くにはアーケード 付 き 商 店 街 やスーパーマーケットがあり、 買 い 物 はここ<br />

でするのが 日 常 である。 自 宅 から 車 で 行 けば10 分 程 のところにショッピングセンターがあり、かつて<br />

は 連 れ 合 いと 一 緒 に 車 で 良 く 利 用 していたのだが、 最 近 は 車 の 運 転 もしなく( 出 来 なく)なり、ほとん<br />

ど 行 かなくなった。<br />

M 氏 はT 市 にある 企 業 を50 代 半 ばで 退 職 の 後 、A 市 の 企 業 で70 歳 まで 勤 務 したが、 既 に 退 職 して<br />

10 年 になる。 年 金 と 貯 蓄 で、 生 活 レベルは 同 世 代 の 標 準 よりは 多 少 豊 かな 経 済 状 態 であるが、リタイ<br />

ア 後 は 以 前 からの 持 病 であった 腰 痛 なども 災 いして、 少 しずつ 運 動 する 機 会 が 減 っており、 数 年 前 から<br />

は 高 血 圧 と 糖 尿 が 出 始 め、 現 在 投 薬 を 受 けている。<br />

朝 は6 時 前 に 目 が 覚 める。 寝 室 は2 階 である。 階 段 の 昇 り 降 りに 不 安 もあるが、 連 れ 合 いと 一 緒 だっ<br />

た 時 の 寝 室 に 慣 れているので1 階 に 寝 場 所 を 移 す 気 は 未 だ 無 い。しかし、 連 れ 合 いが 亡 くなってから 独<br />

り 暮 らしが 少 し 不 安 になり、トイレや 風 呂 場 、 階 段 や 廊 下 などに 手 すりを 取 り 付 けてもらった。 腰 痛 が<br />

あるため、 連 れ 合 いの 生 前 から 背 上 げが 出 来 るベッドを 利 用 しているが、 最 近 は 背 を 起 こした 後 、ベッ<br />

ドから 立 ち 上 がるのが 辛 くなって 来 た。<br />

ベッドから 離 れ、トイレを 済 ませ、 顔 を 洗 ってから、 階 段 で 一 階 に 降 りる。 以 前 は 階 段 の 手 すりに 掴<br />

まらずに 昇 降 が 出 来 ていたのだが、このところ 足 元 に 不 安 を 感 じ 始 め、 手 すりに 掴 まる 機 会 が 多 くなり、<br />

54


リフォームしておいて 良 かったと 思 うことしきりである。<br />

階 下 に 降 りてすぐのところが 玄 関 なので、まず 新 聞 を 取 りに 出 る。 新 聞 受 けは 門 柱 脇 の 塀 に 作 り 付 け<br />

になっているので、 玄 関 からほんの5、6 歩 ほどなのだが 屋 外 に 出 ることになる。 寝 巻 き 姿 をご 近 所 の<br />

人 達 に 見 られたら、と 連 れ 合 いにいつも 言 われたものだが、 朝 起 きてすぐに 新 聞 を 開 くことは 長 年 の 習<br />

慣 になってしまっている。うるさく 言 う 連 れ 合 いがいなくなってからは 大 手 を 振 って 出 来 るようになっ<br />

たのだが、 最 近 は 玄 関 の 上 がりかまちでサンダルを 履 くときがかなり 辛 い。 玄 関 から 門 までの 飛 び 石 に<br />

もつまずいて 転 ばないよう 気 を 使 わなければならなくなってしまい、とうとう 杖 を 買 った。ただ、 雨 の<br />

日 や 冬 の 寒 い 日 などには 身 体 の 節 々が 動 きにくく 痛 んだりするので、ほんの 数 歩 なのだが 歩 くのがおっ<br />

くうになり、 居 間 のテレビを 点 けてソファに 座 ってしまうこともある。<br />

新 聞 を 取 った 後 は、 雨 戸 を 開 け 居 間 のソファに 座 って、 点 けたテレビを 見 るとも 無 しに 見 ながら 新 聞<br />

を 読 むのが 日 課 である。そうやって 小 1 時 間 を 過 ごした 後 、ようやく 着 替 える 気 になって 寝 巻 きから 普<br />

段 着 に 着 替 えるのである。 居 間 のソファは 陽 当 たりの 良 い 場 所 にあるのだが、 冬 場 の 曇 りがちの 日 など、<br />

うっかりしていると 身 体 が 冷 えてしまうこともある。そうこうする 内 に、 起 きてから1 時 間 半 強 が 経 っ<br />

ており、 時 間 は8 時 近 くなっている。そろそろ 朝 食 の 時 間 である。<br />

朝 食 は 準 備 が 簡 単 なのでパン 食 で 済 ませることが 通 常 である。 料 理 は 全 くしない 訳 では 無 いが、 後 片<br />

付 けが 面 倒 なので、 好 きな 目 玉 焼 きもたまにしか 食 べず、ゆで 卵 とハム 程 度 で 済 ますことが 多 い。 飲 み<br />

物 はジュースかミルクである。コーヒーも 好 きなのだが 最 近 は 少 し 控 えるようにしている。 朝 食 にあわ<br />

せて 薬 を 飲 まねばならないのだが、 時 として 忘 れてしまうこともある。 調 理 器 具 や 食 器 をあまり 使 わな<br />

いことから、 食 事 の 後 片 付 けは 溜 めないように 食 後 すぐ 済 ませるようにしている。<br />

ゆっくり 朝 食 を 済 ませると、 週 に 二 日 、 街 中 にあるシニアセンターから 巡 回 バスが 来 るので、その 時<br />

間 にあわせて 支 度 をして 出 かけるのだが、 最 近 は 特 に、 門 から 表 の 道 路 に 出 る 階 段 がやや 段 差 が 高 いこ<br />

ともあり、 気 分 的 におっくうに 感 じてしまうことがある。それでも、 独 りで 家 に 篭 っていることは 良 く<br />

無 いと 思 い、 今 のところ 殆 ど 休 むことなく 出 かけている。しかし、 独 居 世 帯 であることは 外 からも 分 か<br />

っているだろうから、 昼 間 だけとは 言 え 留 守 にすることには 多 少 の 不 安 もある。 現 に 向 かいの3 軒 先 の<br />

お 宅 では、 空 き 巣 に 入 られた、との 事 件 もあり、それが 未 だ 記 憶 に 残 っているので、 戸 締 りは 念 を 入 れ<br />

て 確 認 して 出 かけている。<br />

シニアセンターでは、 友 人 との 語 らいや 囲 碁 、 工 芸 などの 時 間 が 一 番 の 楽 しみである。また、 昼 も 比<br />

較 的 まともなメニューが、そこそこの 値 段 で 食 べられるのも 魅 力 である。 午 後 は、シニアトレーニング<br />

室 で 軽 い 運 動 をすることもあるが、 元 来 スポーツが 大 好 きという 訳 でもなく、 老 骨 に 鞭 打 って、という<br />

のが 馬 鹿 馬 鹿 しく 感 じてしまうことも 度 々である。そういう 時 は 併 設 の 図 書 館 にも 顔 を 出 して 新 刊 書 や<br />

雑 誌 をめくったり、それで 飽 き 足 らない 時 には 気 が 向 けば 近 くの 本 屋 に 立 ち 寄 ることもある。<br />

また、 週 に 一 度 、 市 のボランティア「ホームアローン・サポーター」が 独 居 老 人 の 家 を 訪 問 に 来 てく<br />

れる。M 氏 は 幸 い 未 だ 自 分 で 身 の 回 りのことが 出 来 るので、 中 々 自 分 では 出 来 ない 布 団 干 しや、 古 雑 誌 、<br />

古 新 聞 をゴミ 置 き 場 へ 運 んだり、あるいは 大 きなペットボトル 飲 料 などを 買 って 来 るといった 力 仕 事 を<br />

手 伝 ってもらっている。また、 不 得 手 な 衣 類 の 繕 いなどの 細 かい 作 業 を 手 伝 ってもらうこともある。た<br />

だ、 風 呂 、トイレ 掃 除 や 窓 掃 除 、 庭 の 枯 葉 掃 除 といった 時 間 のかかる 作 業 はボランティアの 対 象 外 なの<br />

で、 有 料 サービス 会 社 を 利 用 している。<br />

もちろん 自 分 でも、 週 に 一 度 は 洗 濯 、また 別 の 一 日 には 簡 単 な 部 屋 の 掃 除 をするように 心 掛 けている。<br />

しかし、 洗 濯 物 を 干 したり、 掃 除 機 を 掛 けたりするのは、 不 自 然 な 姿 勢 を 取 らざるを 得 ないこともあり、<br />

かなり 身 体 がきついと 感 じるようになって 来 ている。センターに 出 かけない 日 には、 昼 食 が 面 倒 に 感 じ<br />

ることもあり、 時 には 昼 抜 き、ということもある。 食 べる 場 合 には、 時 には 出 前 を 取 ることもあるが、<br />

一 定 金 額 以 上 でないと 出 前 をしてくれないこともあり、インスタント 食 品 で 済 ますようなことが 多 くな<br />

ってしまった。<br />

自 宅 の 一 軒 置 いた 斜 め 向 かいには、この 界 隈 では 特 にウマが 合 って 仲 の 良 かった 友 人 が 住 んでいるの<br />

だが、 脳 卒 中 がもとで、 数 年 前 から 寝 たきりになっている。ほぼ 毎 日 介 護 ヘルパーが 通 って 世 話 をして<br />

いるとのことなのだが、 週 に 一 度 くらいは 顔 を 出 して、 話 し 相 手 をするようにしている。 話 相 手 をする<br />

だけでなく、 一 緒 におにぎりやおやつを 食 べたり、 時 には 多 少 の 身 の 回 りの 世 話 をすることもあるのだ<br />

が、 仲 の 良 い 友 達 だったとは 言 え、 友 人 の 側 が 気 を 遣 って、あるいは 引 け 目 を 感 じてか、あまり 喜 ばな<br />

いこともあり、 週 に 一 度 以 上 は 行 かないような 形 になってしまっている。<br />

ちょうど 顔 を 出 した 時 に 介 護 ヘルパーが 来 ていると、 介 護 の 様 子 を 垣 間 見 ることもあるが、そういっ<br />

た 場 面 を 見 られることも 友 人 にとっては 辛 いことなのかも 知 れない。ただ、その 様 子 を 見 るにつけ、 介<br />

護 をする 方 も 受 ける 方 も 大 変 で、 出 来 ることなら 自 分 は 元 気 で 居 たいなあ、と 思 うことしきりである。<br />

55


例 えば、おむつ 交 換 など、 体 位 の 変 換 、 衣 類 の 着 脱 などだけでなく 汚 物 の 取 扱 いといったことまで 考 え<br />

ると、 想 像 するだけでも 双 方 にとって 辛 いことだと 思 う。 介 護 する 側 は 肉 体 的 、 物 理 的 な 負 担 があり、<br />

介 護 される 側 にも 精 神 的 な 負 担 がある、ということは 頭 では 分 かっていても 実 際 自 分 の 立 場 になれば 果<br />

たして 出 来 ることなのか、 大 いに 不 安 である。<br />

自 宅 で 過 ごす 日 で、 掃 除 や 洗 濯 をしない 日 には、テレビを 漫 然 と 見 て 過 ごすことが 多 くなっている。<br />

若 い 頃 は 大 好 きだった 読 書 も、いざ 自 由 になる 時 間 がいくらでもある 状 態 になってしまうと 却 って 読 む<br />

きっかけが 無 くなり、 最 近 は 殆 ど 読 まなくなってしまった。 家 事 をする 日 であっても、 洗 濯 物 を 取 り 込<br />

んだり 程 度 なので、 同 じようなパターンになってしまう 日 が 多 い。テレビも、 興 味 深 い 番 組 がある 訳 で<br />

はなくボーッ 見 るともなしに 見 ている 程 度 であるが、 相 撲 だけは 欠 かさず 熱 心 に 見 ている。こんなこと<br />

では 認 知 症 になってしまうのでは、という 考 えが 一 瞬 頭 をよぎることもあるが、シニアセンターにも 行<br />

っているし、そこそこの 刺 激 を 受 けているから 自 分 は 大 丈 夫 だろう、と 楽 観 している。<br />

夕 方 近 くなると 宅 配 の 夕 食 サービスが 届 けられるので、これをきっかけに 雨 戸 を 閉 め、 届 けられた 食<br />

事 のパックを 電 子 レンジで 温 め、おかずをつまみにしながらビールを 飲 む。ビールは 好 きなのだが、 身<br />

体 のこともあり 医 者 からも350mlまで、それも 一 日 おき、と 言 われているのだが、ほぼ 毎 日 飲 んで<br />

いる。これは、やはり 独 りで 食 事 をする 侘 しさを 紛 らわすため、という 心 理 的 要 因 があるからかも 知 れ<br />

ない。<br />

時 に 気 が 向 いたり、あるいは 宅 配 のメニューが 自 分 の 好 みのもので 無 い 時 などには 簡 単 な 料 理 をする<br />

こともあるが、 独 り 暮 らしでは 食 材 にも 無 駄 が 出 てゴミも 多 く、 後 片 付 けが 面 倒 になってしまう。 時 に<br />

は 外 で 夕 食 を、ということも 考 えないわけではないのだが、 外 食 ではどうしてもアルコールを 頼 みたく<br />

なり、しかも 坂 を 登 って 夜 道 を 帰 ることを 考 えると、 外 食 は 昼 に 限 る、というのが 今 の 心 境 である。 実<br />

際 に 外 食 をする 機 会 は 夕 方 までシニアセンターに 居 た 時 、その 帰 りに、という 場 合 くらいである。<br />

ゆっくり 夕 食 を 済 ませて 手 早 く 後 片 付 けをしても 未 だ7 時 前 である。 若 干 のアルコールが 入 り、ソフ<br />

ァに 寝 そべりながらテレビを 見 るのは 気 持 ちが 良 い。 時 に 気 が 向 けば、 以 前 から250タイトルほど 集<br />

めていた 古 い 名 画 のDVDを 取 り 出 して 見 ることもある。 一 番 のお 気 に 入 りは、 白 黒 映 画 ではあるが「カ<br />

サブランカ」である。<br />

食 事 を 終 えてソファに 移 る 時 に 風 呂 の 自 動 給 湯 スイッチを 入 れる。これは 連 れ 合 いに 先 立 たれた 後 に、<br />

娘 夫 婦 が 火 の 元 だけは 心 配 ということで、 自 動 式 に 取 り 替 える 費 用 を 出 してくれ、 改 装 したものであり、<br />

風 呂 桶 のオーバーフローや 熱 湯 での 火 傷 などの 心 配 が 無 いのはありがたい。<br />

風 呂 は 一 日 を 締 めくくる 大 事 なイベントである。 夏 でも 汗 を 洗 い 流 すために 入 ることはもちろんだし、<br />

冬 は 湯 船 に 浸 かって 温 まることは 言 うまでも 無 い。ただ、 風 呂 場 で 亡 くなったという 友 人 が 居 り、その<br />

ことが 気 になって 更 衣 所 には 赤 外 ストーブを 入 れたのだが、 隙 間 風 のせいか 未 だ 不 十 分 なように 思 って<br />

いる。<br />

風 呂 から 上 がり、 一 年 中 飲 んでいる 麦 茶 をコップに2 杯 、それと 薬 を 飲 んでから 二 階 に 上 がる。テレ<br />

ビで 面 白 そうな 番 組 をやっている 時 には、 少 し 見 ることもある。 階 段 を 上 る 時 は 下 る 時 より 不 安 感 は 無<br />

いが、 上 りきる 前 に 息 が 弾 んでいるのに 気 付 いて、 足 の 衰 えを 自 覚 する 今 日 この 頃 である。この 時 の 節 々<br />

の 感 じで 体 調 がよく 分 かるような 気 がしている。<br />

二 階 の 寝 室 に 入 り、ベッドに 乗 る 時 も 結 構 つらいのは、 足 だけでなく 腰 を 痛 めたことが 理 由 かも 知 れ<br />

ない。 前 向 きにベッドに 移 ろうとすると 腰 が 痛 いことが 多 く、 後 ろ 向 きになり 尻 もちを 付 くのに 近 い 感<br />

じで 移 るというのが、 最 近 の 習 慣 になってしまった。<br />

ベッドサイドにもテレビが 置 いてあるのだが、めったに 見 ることはない。ベッドで 本 を 読 むというの<br />

も 実 は 好 きだったのだが、すぐに 腕 や 肩 が 痛 くなってしまい、かと 言 ってうつぶせは 姿 勢 を 変 える 時 に<br />

腰 に 来 るので、ベッドに 入 るとすぐに 目 を 閉 じて 寝 てしまう。 幸 い、 元 来 が 楽 観 的 な 性 格 でもあるせい<br />

か、 何 か 考 えてしまって 眠 りにつけない、といった 悩 みは 無 いのは 幸 いである。<br />

2)システム 構 成<br />

1セキュリティ、 安 心 、 安 全 に 関 するもの<br />

・ 留 守 宅 見 守 り: 住 人 の 外 出 や 帰 宅 を 自 動 的 に 検 知 することで、 設 定 や 解 除 等 にあたり 面 倒 な 手 間 をか<br />

けずに 留 守 宅 への 侵 入 等 を 検 知 し、 警 察 、 近 隣 の 家 、 本 人 や 友 人 の 携 帯 などに 通 報 するシステム<br />

・ 室 内 見 守 り: 階 段 で 躓 いての 落 下 、 風 呂 場 での 急 変 といった 異 常 を 検 知 し、 異 常 の 程 度 に 応 じて 近 隣<br />

の 家 、 地 域 ボランティア、 地 域 センター、 消 防 署 ( 救 急 )、 病 院 、 家 族 などに 自 動 通 報 するシステム。<br />

56


また 単 に 見 守 りだけでなく 様 々なシーンで 状 況 に 応 じた 声 掛 けをしてくれることで、 不 安 や 寂 しさの<br />

解 消 を 図 ることを 目 的 としたシステム。<br />

2 健 康 、 生 体 情 報 計 測 に 関 するもの<br />

・インテリジェントベッド: 生 体 センサの 一 部 機 能 を 組 み 込 んで、 快 適 な 睡 眠 が 得 られるように 環 境 を<br />

制 御 し、あるいは 見 守 りシステムと 通 信 する 機 能 を 有 したベッド。<br />

・ 生 体 センサ:ベッドに 寝 ている 時 、 手 すりを 握 った 時 、トイレに 着 座 した 時 などに 身 体 との 接 触 によ<br />

り 体 温 、 体 脂 肪 率 、 心 拍 などを、またトイレで 尿 の 成 分 や 色 などを 用 いて 塩 分 、 糖 分 や 疲 労 度 などの<br />

生 体 情 報 を 計 測 するシステム。<br />

・ 投 薬 リマインダ: 所 定 の 時 間 に 忘 れずに 薬 を 飲 むよう 音 声 等 で 知 らせる。<br />

・ 健 康 維 持 機 器 :スポーツジムにあるようなトレーニングマシンを 用 いて 行 うパワーリハビリや、 身 体<br />

のバランス 感 覚 を 維 持 、あるいは 筋 力 の 維 持 を 図 るためのトレーニング 機 器 、あるいは 認 知 症 の 予 防<br />

にも 役 立 つ 機 器 。<br />

3 移 動 に 関 するもの<br />

・ 立 ち 上 がり 支 援 機 : 立 ち 上 がる 意 図 を 力 センサ 等 によって 検 知 し、ベッドの 昇 降 と 同 期 して 手 すりを<br />

自 動 的 に 駆 動 し、 姿 勢 の 誘 導 と 力 の 補 助 を 行 う 支 援 装 置 。<br />

・ 階 段 昇 降 支 援 機 : 既 存 の 階 段 を 利 用 して 取 り 付 けられる 簡 易 型 の 斜 行 エレベータ 型 リフト、あるいは<br />

ホームエレベータなど。<br />

・ 段 差 解 消 機 器 : 玄 関 の 上 がりかまちの 段 差 、あるいは 屋 外 の 階 段 等 に 対 して、 身 体 機 能 の 衰 えの 程 度<br />

に 応 じて 用 いることの 出 来 るスロープ、 段 差 解 消 リフトなど。<br />

・ 歩 行 補 助 機 器 :ある 程 度 の 不 整 地 においても 利 用 できるサスペンション 付 き 車 輪 を 備 えた 屋 外 用 歩 行<br />

補 助 器 や、 段 差 乗 り 越 え 機 能 付 きのパワーアシスト 歩 行 補 助 機 。<br />

・インテリジェント 杖 : 歩 行 する 環 境 に 設 置 されたタグ 等 のデータにより、 段 差 等 の 危 険 を 検 知 すると<br />

音 、 光 、 振 動 等 で、つまずくことの 無 いよう 警 報 を 発 するもの。<br />

・パワーアシストスーツ: 利 用 者 本 人 が 装 着 するパワーアシスト 型 システム。<br />

4 家 事 に 関 するもの<br />

・ 自 動 開 閉 式 雨 戸 : 電 動 式 の 雨 戸 あるいはブラインド 等 。<br />

・ 台 所 片 付 け 支 援 機 : 流 し 台 一 体 型 のゴミ 自 動 分 別 、ディズポーザ、 食 器 洗 浄 機 。<br />

・インテリジェント 冷 蔵 庫 : 食 材 の 使 用 状 況 から、 不 足 栄 養 素 等 を 知 らせるもの。<br />

・インテリジェント 調 理 レンジ: 食 材 パッケージのタグを 認 識 して、 内 容 物 に 合 った 加 熱 などの 調 理 法<br />

を 自 動 選 択 し、 調 理 加 工 を 行 う。<br />

・ 自 動 衣 類 ・ 布 団 干 し 機 : 布 団 乾 燥 機 のようなもので、 殺 菌 、オゾンなど 戸 外 に 干 すのと 同 等 の 効 果 を<br />

発 揮 するもの。また、 戸 外 に 干 すことを 望 む 場 合 に 対 して、 腕 を 伸 ばして 干 す、 取 り 込 む、といった<br />

不 自 然 な 姿 勢 に 関 わる 部 分 を 支 援 するシステム。<br />

・ 重 家 事 ロボット: 古 新 聞 、 古 雑 誌 などの 重 量 物 、ゴミなどを、 屋 内 から 戸 外 の 所 定 の 廃 棄 場 所 に 搬 送<br />

したり、 逆 に 注 文 した 品 物 等 を 配 達 集 配 場 所 から 屋 内 に 搬 送 するシステム。 注 文 品 の 配 送 先 はタグで<br />

識 別 する。 利 用 者 本 人 が 装 着 するパワーアシスト 型 システムは、この 用 途 にも 用 いられる。<br />

・ 軽 家 事 ロボット: 衣 類 の 繕 いや 室 内 の 掃 除 など 細 かい 作 業 を 行 うロボット。 柔 軟 物 ハンドリングのた<br />

めの 視 触 覚 センサを 有 する。また、 利 用 者 本 人 が 装 着 するタイプのデキストラスアシスト 型 システム。<br />

一 部 は 掃 除 ロボット 等 の 専 用 機 で 既 に 実 現 済 。<br />

・ 家 事 手 伝 いロボット: 上 記 2 者 を 一 体 化 したもの。 風 呂 、トイレの 掃 除 、 窓 掃 除 、 庭 の 枯 葉 掃 除 とい<br />

った 力 仕 事 と 細 かさの 両 者 を 要 求 される 場 合 に 用 いる 汎 用 型 のロボット。<br />

5その 他 の 日 常 生 活 行 動 に 関 するもの<br />

・ 電 子 ペーパー、 電 子 ブック: 新 聞 や 雑 誌 、 新 刊 書 などをネット 経 由 で 配 信 。 同 様 のものは 既 にあるが、<br />

インターネット 等 の 操 作 を 知 らなくとも、 例 えば 図 書 館 に 電 話 して 借 りたい 本 を 言 えば 音 声 認 識 で 自<br />

57


動 受 付 けを 行 い、 配 信 するなど、ディジタルデバイドの 置 き 去 り 世 代 でも 容 易 に 使 えるもの。 更 には、<br />

囲 碁 などの 対 戦 型 ゲームについても 同 様 に 複 雑 な 操 作 なしに 用 いることの 出 来 るパートナーロボッ<br />

ト。<br />

・バーチャル 同 居 システム: 食 事 の 際 などに、 遠 隔 地 にいる 娘 夫 婦 と 共 に 場 を 共 存 している 感 覚 を 味 わ<br />

えるもの。 音 声 サラウンド、3Dホログラム 画 像 などの 利 用 。<br />

6 介 護 者 の 支 援 に 関 するもの<br />

・パワーアシストスーツ: 装 着 型 のパワーアシストシステムで、 着 用 した 介 護 者 の 動 作 通 りに、 力 を 増<br />

幅 することで 支 援 を 行 う。<br />

・ 体 位 変 換 ベッド 及 びマットレス: 寝 姿 勢 を 変 えることで 床 ずれを 防 止 したり、おむつ 交 換 などが 容 易<br />

となるように 寝 たきりの 方 の 姿 勢 を 変 える 機 能 を 有 したベッドならびにマットレス<br />

・ 排 泄 支 援 ベッド:ベッド 中 心 部 分 が 開 口 することで、 格 納 されたポータブルトイレが 利 用 可 能 となる<br />

もの。<br />

・ 食 事 支 援 ロボット: 本 人 の 支 援 用 であるが、これを 利 用 することで 介 護 者 の 仕 事 が 減 るとの 意 味 で、<br />

介 護 支 援 の 側 面 もあると 考 える。<br />

生 活 チ ャ ー ト<br />

時 刻<br />

4:00 9:00 12:00 15:00 18:00 21:00<br />

起 床 朝 食 掃 除 来 客 昼 食 買 い 物 夕 食 風 呂 くつろぎ 就 寝<br />

生 活 の 動 き 生 活 チャート 身 支 度 洗 濯 テレビ<br />

移 動 歩 行 ドアノブ・ 引 き 戸 の 細 かい 動 作 サポート 長 歩 きの 不 安<br />

立 ち 上 がり<br />

寝 起 きの 立 ち 上 がり 補 助<br />

座 り 込 み<br />

移 乗<br />

段 上 ( 下 )がり<br />

階 段 の 上 り 下 り<br />

膝 曲 げの 低 下<br />

浴 槽 への 出 入 りの 不 安<br />

飲 食 飲 食 動 作 誤 嚥 の 防 止<br />

料 理 準 備 食 材 買 出 し<br />

栄 養 管 理 糖 尿 食 ・ 塩 分 制 限 カロリー 制 限<br />

調 理<br />

調 理 方 法 の 工 夫<br />

服 薬 管 理<br />

常 薬 飲 み 忘 れ<br />

排 泄 小 用 漏 れの 不 安<br />

大 用<br />

慢 性 便 秘 の 予 防<br />

入 浴 洗 髪 洗 髪 の 補 助<br />

洗 体 ・ 洗 顔<br />

口 腔 ケア<br />

整 容 身 支 度 靴 みがき クリーニング 出 し 洗 濯 物 の 整 理<br />

歯 磨 き<br />

歯 科 予 防<br />

服 飾 管 理 コーディネイト 洋 服 の 管 理<br />

C<br />

コミュニケーション 対 応<br />

宅 配 受 取<br />

応 対 親 戚 来 訪 手 紙 の 代 筆<br />

会 話<br />

湯 茶 の 用 意<br />

監 視 ( 見 守 り) ホームドクターへの 連 絡 ケアマネ・ヘルパーとの 連 絡<br />

諸 届 ・ 諸 手 続 き<br />

銀 行 ・ 役 所 への 手 続 き<br />

視 聴 覚 聴 力 聴 力 低 下<br />

視 力<br />

視 力 低 下<br />

就 寝 シーツ 取 替 え 夜 具 の 準 備<br />

作 業 動 作 洗 濯 干 し 物 ・ 取 り 込 み<br />

掃 除<br />

整 理 ・ 整 頓 食 器 の 片 付 け 衣 替 え<br />

荷 移 動 ・ 運 搬<br />

買 った 物 の 手 の 届 かない 所 の 作 業<br />

風 呂 掃 除<br />

環 境 整 備 ゴミ 処 理 ゴミ 捨 て<br />

庭 ・ 家 周 り 整 備 水 撒 き 枯 葉 掃 除<br />

楽 しみ・ 娯 楽 知 りたい 情 報 取 得 各 種 予 防 ( 筋 トレ 等 ) 催 し 事 ( 映 画 ・ 旅 行 等 ) 趣 味 活 動<br />

ペットの 世 話<br />

ペットの 散 ペットの 餌<br />

社 会 参 加 日 常 社 会 情 報 の 取 得 社 会 情 勢 ・ 事 件 等 の 認 知<br />

高 齢 者 活 動 情 報 の 取 得<br />

女 性 活 動 情 報 の 取 得<br />

法 律 相 談 ・ 権 利 意 識<br />

老 人 クラブ 等 の 活 動<br />

相 続 の 心 配<br />

金 銭 管 理 預 貯 金 管 理 生 活 費 の 管 理 財 産 の 管 理<br />

B<br />

緊 急 時 連 絡 ・ 支 援 罹 病 ・ 負 傷 時<br />

夜 間 の 急 な 腹 痛<br />

故 障 器 具 の 交 換<br />

電 球 交 換<br />

留 守 時 の 管 理 無 人 時 の 屋 内 監 視 火 気 のつけっぱなし<br />

基 本 チェック 本 人 のチェック バイタルチェッ 微 熱 等 の 把 握<br />

異 常 チェック( 既 往 症 等 ) 水 分 補 給 無 呼 吸 等 の 監 視<br />

A<br />

情 動 その 日 の 気 分 のきっかけ 作 り 疎 外 感 からの 脱 皮 孤 独 感 の 排 除<br />

環 境 チェック 温 湿 度 ・ 採 光 ・カーテン・ 窓 開 け ほこり・カビ 等 の 常 菌 有 無 熱 射 病 予 防<br />

・ 騒 音 ・ 常 菌 有 無<br />

注 )A,Bは 生 活 行 為 の 基 盤<br />

Cは 生 活 行 為<br />

図 2.2.2-1 高 齢 者 の 生 活 チャート<br />

58


2) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

朝 は6 時 前 に 目 が 覚 める。 寝 室 は2 階 である。 連 れ 合 いと 一 緒 だった 時 の 寝 室 に 慣 れているので、1<br />

階 に 寝 場 所 を 移 す 気 は 無 い。 連 れ 合 いが 亡 くなってから 独 り 暮 らしが 少 し 不 安 になり、 階 段 の 昇 り 降 り<br />

も 不 安 になったので、 階 段 昇 降 支 援 機 を 設 置 したほか、トイレや 風 呂 場 、 階 段 や 廊 下 などに 手 すりを 取<br />

り 付 けてもらった。スイッチ 一 つで 階 段 の 昇 降 が 出 来 ると、 手 すりの 人 が 居 る 周 辺 足 元 には 照 明 が 自 動<br />

的 に 点 灯 するので、 孫 達 が 幼 稚 園 や 小 学 校 の 頃 は、 娘 一 家 が 訪 ねて 来 た 時 など、この 設 備 は 人 気 の 的 で<br />

あった。<br />

腰 痛 があるため、 連 れ 合 いの 生 前 から 背 上 げが 出 来 るベッドを 利 用 していたが、 最 近 はインテリジェ<br />

ントマットレスに 変 えたので、 起 き 上 がろうとすると 自 動 的 にベッドの 背 が 起 きて 楽 に 起 き 上 がれるし、<br />

また 辛 かった 立 ち 上 がりも、ベッドに 取 り 付 けるタイプの 立 ち 上 がり 支 援 機 を 娘 夫 婦 がプレゼントして<br />

くれたので、 冬 の 寒 い 日 でも 腰 が 痛 まず、 楽 に 立 ち 上 がれるようになった。この 支 援 機 は、 立 ち 上 がろ<br />

うとする 力 を 検 出 して 動 作 するので、その 日 の 体 調 に 合 わせた 立 ち 上 がりをすることが 出 来 る 点 が 特 に<br />

気 に 入 っている。<br />

ベッドから 離 れ、インテリジェントトイレで 用 を 済 ませる。 便 座 と 便 器 に 様 々なセンサが 配 置 されて<br />

いるので、トイレで 用 を 足 すだけでその 日 の 健 康 チェックができ、 気 分 的 にも 安 心 なのが 嬉 しい。 顔 を<br />

洗 ってから、 一 階 に 降 りる。 数 年 前 には 階 段 の 手 すりに 掴 まりながらスイスイと 昇 り 降 り 出 来 ていたの<br />

だが、このところ 手 すりを 使 っても 足 元 に 不 安 を 感 じ、 階 段 昇 降 支 援 機 を 利 用 している。<br />

階 下 に 降 りてすぐのところが 玄 関 なので、まず 新 聞 を 取 りに 出 る。 新 聞 受 けは 門 柱 脇 の 塀 に 作 り 付 け<br />

になっているので、 玄 関 からほんの5、6 歩 ほどなのだが 屋 外 に 出 ることになる。 寝 巻 き 姿 をご 近 所 の<br />

人 達 に 見 られたら、と 連 れ 合 いにいつも 言 われたものだが、 朝 起 きてすぐに 新 聞 を 開 くことは 長 年 の 習<br />

慣 になってしまっている。うるさく 言 う 連 れ 合 いがいなくなってからは 大 手 を 振 って 出 来 るようになっ<br />

たのだが、 皮 肉 なことにそれと 前 後 して 玄 関 の 上 がりかまちでサンダルを 履 くときがかなり 辛 くなり、<br />

玄 関 の 床 を 嵩 上 げして 上 がりかまちの 段 差 を 少 なくした。しかし、そのため 玄 関 から 外 に 出 るところに<br />

逆 に 今 まで 無 かった 段 差 が 出 来 てしまったので、 段 差 解 消 スロープを 置 いた。 門 までの 飛 び 石 にもつま<br />

ずいて 転 ばないよう 気 を 使 わなければならなくなってしまい、とうとうインテリジェント 杖 を 買 った。<br />

この 杖 は 優 れもので、 周 囲 に 埋 め 込 んだタグの 情 報 に 基 づき、つまずきそうな 場 合 等 には 音 や 光 、ある<br />

いは 振 動 で 危 険 を 教 えてくれる。 以 前 は、 雨 の 日 や 冬 の 寒 い 日 などには 身 体 の 節 々が 動 きにくく 痛 んだ<br />

りするので、ほんの 数 歩 を 歩 くのがおっくうになり、 居 間 のテレビを 点 けてソファに 座 ってしまうこと<br />

もあったが、 今 はよほどの 場 合 を 除 いて 新 聞 を 取 らないことは 無 くなった。<br />

新 聞 を 取 った 後 は、 雨 戸 を 開 ける。 雨 戸 だけでなく、 窓 やカーテンの 開 閉 も 外 の 天 気 に 応 じて 制 御 で<br />

きるので、スイッチを 一 つ 押 すだけで 済 むし、にわか 雨 や 日 暮 れには 自 動 的 に 開 閉 の 調 節 もしてくれる<br />

ので 便 利 である。 居 間 のソファに 座 って、 点 けたテレビを 見 るとも 無 しに 見 ながら 新 聞 を 読 むのが 日 課<br />

である。 最 近 では 電 子 ペーパーを 利 用 した 新 聞 配 信 もあるそうだが、やはり 昔 ながらの 紙 の 新 聞 が 気 持<br />

ち 良 いし、 何 と 言 っても 新 聞 紙 には 様 々な 使 い 道 がある。 唯 一 の 欠 点 は 溜 まった 後 の 資 源 ごみ 出 しが 重<br />

くて 大 変 、ということであるが、それも 家 事 ロボットがやってくれる 時 代 になった。そうは 言 ってもロ<br />

ボットは 未 だ 高 価 だし、 我 が 家 には 未 だ 入 っていない。しかし、 最 近 シニアセンターからの 誕 生 日 プレ<br />

ゼントで 割 引 券 を 貰 って 購 入 したアーム 型 パワーアシスト 機 「 安 楽 ・アーム 楽 くん」を 使 えば、3 週 間<br />

分 くらいの 新 聞 の 束 でも 自 分 で 軽 々と 運 べるので、 不 自 由 はしていない。<br />

そうやって 小 1 時 間 を 過 ごした 後 、ようやく 着 替 える 気 になって 寝 巻 きから 普 段 着 に 着 替 えるのであ<br />

る。 居 間 のソファは 陽 当 たりの 良 い 場 所 にあり、 冬 場 の 曇 りがちの 日 でもインテリジェントエコ 空 調 が<br />

体 調 に 合 わせて 連 続 運 転 しているので、 身 体 が 冷 えてしまうなどということは 無 い。そうこうする 内 に、<br />

起 きてから1 時 間 半 強 、 時 間 は8 時 近 くなっている。そろそろ 食 事 の 時 間 である。<br />

朝 食 は 準 備 が 簡 単 なのでパン 食 で 済 ませることが 通 常 である。 料 理 は 全 くしない 訳 では 無 いが、 後 片<br />

付 けが 面 倒 なので、 好 きな 目 玉 焼 きもたまにしか 食 べず、ゆで 卵 とハム 程 度 で 済 ますことが 多 い。 飲 み<br />

物 はジュースかミルクである。コーヒーも 好 きなのだが 最 近 は 少 し 控 えるようにしている。 朝 食 にあわ<br />

せて 薬 を 飲 まねばならないのだが、 時 として 忘 れてしまうこともあった。しかし、 薬 の 時 間 を 知 らせて<br />

くれる 投 薬 リマインダというものを 貰 ってからは、 飲 み 忘 れということは 全 く 無 くなった。 食 事 には、<br />

調 理 器 具 や 食 器 をあまり 使 わないのだが、 食 事 の 後 片 付 けは 流 しのシンクに 置 いておくだけでシンク 洗<br />

浄 機 が 汚 れの 種 類 を 判 断 して 自 動 的 に 洗 ってくれるため、 汚 れた 食 器 類 を 溜 めてしまう、ということも<br />

無 くなった。<br />

ゆっくり 朝 食 を 済 ませると、 週 に 二 日 、 街 中 にあるシニアセンターから 巡 回 バスが 来 るので、その 時<br />

59


間 にあわせて 支 度 をして 出 かける。 独 りで 家 に 篭 っていることは 良 く 無 いと 思 い、 殆 ど 休 むことなく 出<br />

かけているのだが、 門 から 表 の 道 路 に 出 る 階 段 がやや 段 差 が 高 いこともあり、 気 分 的 におっくうに 感 じ<br />

てしまうこともあった。しかし、ここにも 昇 降 支 援 装 置 を 備 え 付 けたので、 不 自 由 は 無 くなった。<br />

また、 独 居 世 帯 であることは 外 からも 分 かってしまうので、 昼 間 だけとは 言 え 留 守 にすることに 多 少<br />

の 不 安 もあり、 現 に 向 かいの3 軒 先 のお 宅 では、 空 き 巣 に 入 られた 事 件 もあった。しかし、 機 械 音 痴 の<br />

年 寄 りでも 簡 単 に 使 える 留 守 宅 見 守 りシステムが 出 来 、これを 町 内 会 全 体 で 導 入 したので、 戸 締 りには<br />

念 を 入 れて 出 かけてはいるものの、 不 安 は 全 くなくなった。このシステムでは、 室 内 の 人 の 動 き、 屋 内<br />

外 の 人 の 出 入 り、 屋 外 の 人 の 動 きなどを 検 出 し、その 家 の 住 人 が 不 在 かどうか 認 識 すると 共 に、 住 人 が<br />

日 常 的 に 行 っている 動 作 と、それとは 異 なる 動 作 との 判 別 を 行 うことで、 不 審 者 の 侵 入 を 検 知 し、 必 要<br />

に 応 じて 警 察 等 に 警 報 を 発 することが 出 来 る( 不 審 者 検 知 通 報 機 能 )。また、このシステムでは 住 人 の<br />

行 動 そのものが 日 常 と 異 なることも 検 知 出 来 るので、 室 内 で 万 一 倒 れた、といった 病 変 等 の 不 測 の 事 態<br />

にも 救 急 に 通 報 が 発 せられる( 住 人 の 異 常 認 識 通 報 機 能 )。このシステムを 用 いれば、 外 出 時 や 帰 宅 時<br />

のアラーム 設 定 、 解 除 といった 面 倒 な 操 作 も 不 要 であり、 安 心 、 安 全 という 点 での 精 神 的 な 不 安 も 払 拭<br />

され、 非 常 に 助 かっている。<br />

シニアセンターでは、 友 人 との 語 らいや 囲 碁 、 工 芸 などの 時 間 が 一 番 の 楽 しみである。また、 昼 も 比<br />

較 的 まともなメニューが、そこそこの 値 段 で 食 べられるのも 魅 力 である。 午 後 は、シニアトレーニング<br />

室 で 軽 い 運 動 をすることもあるが、 元 来 スポーツが 大 好 きという 訳 でもなく、 老 骨 に 鞭 打 って、という<br />

のが 馬 鹿 馬 鹿 しく 感 じてしまうことも 度 々である。しかし、 新 しく 導 入 された 適 応 型 トレーニングマシ<br />

ンは、 使 う 人 の 体 調 や 疲 労 度 に 合 わせて 動 きや 負 荷 を 変 えてくれ、しかも 動 きがバラエティに 富 んでい<br />

るので、 苦 痛 でなく、 飽 きずに 使 うことが 出 来 る。その 上 、 認 知 症 の 予 防 にもなる、とのことである。<br />

このマシンが 使 えないような 時 には 併 設 の 図 書 館 にも 顔 を 出 して 新 刊 書 や 雑 誌 をめくったり、それで 飽<br />

き 足 らない 時 には 気 が 向 けば 近 くの 本 屋 に 立 ち 寄 ることもある。<br />

また、 週 に 一 度 、 市 のボランティア「ホームアローン・サポーター」が 独 居 老 人 の 家 を 訪 問 に 来 てく<br />

れる。M 氏 は 幸 い 未 だ 自 分 で 身 の 回 りのことが 出 来 るので、 中 々 自 分 では 出 来 ない 布 団 干 しや、 古 雑 誌 、<br />

古 新 聞 をゴミ 置 き 場 へ 運 んだり、あるいは 大 きなペットボトル 飲 料 などを 買 って 来 るといった 力 仕 事 を<br />

手 伝 ってもらっているが、それもアーム 型 パワーアシスト 機 「 安 楽 ・アーム 楽 くん」を 使 って 自 分 で 出<br />

来 るものは 自 分 でしているので、サポーターとは、お 茶 を 飲 みながら 世 間 話 をする 時 間 も 取 れるように<br />

なった。また、 不 得 手 な 衣 類 の 繕 いなどの 細 かい 作 業 を 手 伝 ってもらうこともある。 風 呂 、トイレ 掃 除<br />

や 窓 掃 除 、 庭 の 枯 葉 掃 除 といった 時 間 のかかる 作 業 も、 大 がかりなものは 有 料 サービス 会 社 を 利 用 して<br />

いるが、 日 常 のちょっとした 作 業 に 関 してはアーム 型 パワーアシスト 機 「 安 楽 ・アーム 楽 くん」が 活 躍<br />

してくれる。<br />

自 分 でも、 週 に 一 度 は 洗 濯 、また 別 の 一 日 には 簡 単 な 部 屋 の 掃 除 をするように 心 掛 けている。ロボッ<br />

ト 洗 濯 機 は 衣 類 の 種 類 に 応 じて、また 汚 れの 内 容 に 応 じて 洗 濯 コースや 洗 剤 の 量 を 自 動 調 整 し、 無 駄 な<br />

く 布 地 を 痛 めない 洗 濯 ができるし、 部 屋 の 掃 除 は 掃 除 ロボットが 大 方 の 仕 事 をしてくれるので、 世 話 な<br />

しである。センターに 出 かけない 日 には、 昼 食 が 面 倒 に 感 じることもあったが、インテリジェントシン<br />

ク 洗 浄 機 もあるので、 以 前 のように 時 には 昼 抜 きとかインスタント 食 品 ばかり、ということも 無 くなっ<br />

た。<br />

自 宅 の 一 軒 置 いた 斜 め 向 かいには、この 界 隈 では 特 にウマが 合 って 仲 の 良 かった 友 人 が 住 んでいるの<br />

だが、 脳 卒 中 がもとで、 数 年 前 から 寝 たきりになっている。ほぼ 毎 日 介 護 ヘルパーが 通 って 世 話 をして<br />

いるとのことなのだが、 週 に 一 度 くらいは 顔 を 出 して、 話 相 手 をするようにしている。 話 相 手 をするだ<br />

けでなく、 一 緒 におにぎりやおやつを 食 べたり、 時 には 多 少 の 身 の 回 りの 世 話 をすることもあるのだが、<br />

仲 の 良 い 友 達 だったとは 言 え、 友 人 の 側 が 気 を 遣 って、あるいは 引 け 目 を 感 じてか、あまり 喜 ばないこ<br />

ともあり、 週 に 一 度 以 上 は 行 かないような 形 になってしまっている。<br />

ちょうど 顔 を 出 した 時 に 介 護 ヘルパーが 来 ていると、 介 護 の 様 子 を 垣 間 見 ることもある。このところ、<br />

以 前 とは 違 って 介 護 ロボットに 代 表 される 介 護 支 援 システムが 開 発 されて 来 たので、 小 柄 な 介 護 ヘルパ<br />

ーさんでもパワーアシストスーツや、 腕 の 力 を 増 幅 しつつもデリケートな 動 きが 出 来 て 着 脱 が 容 易 な<br />

「ヘルパーアーム」を 利 用 することで、 寝 ている 人 の 体 位 を 変 えたり 衣 類 の 着 脱 などを 行 うことが 簡 単<br />

に 出 来 るようになった。また、ベッド 内 蔵 のポータブルトイレを 利 用 することで、 介 護 者 が 排 泄 物 や 汚<br />

物 を 取 扱 わなければならない 機 会 も 大 幅 に 減 ってきた。また、このトイレには 洗 浄 、 乾 燥 機 能 も 付 いて<br />

いるため、 蒸 れやかぶれといった 問 題 も 解 消 でき、 身 体 を 清 浄 に 保 つためにも 役 立 っている。<br />

これらの 機 器 が 普 及 してきたおかげで、かつては 介 護 者 の 職 業 病 とまで 言 われていた 腰 痛 を 訴 えるヘ<br />

ルパーやケアワーカーはほとんど 居 なくなったと 言 う。 生 きている 以 上 誰 にでも 必 要 な 生 理 現 象 とは 言<br />

60


え、 他 人 の 排 泄 物 の 処 理 といった 仕 事 をすることに 対 する 嫌 悪 感 や 躊 躇 も、これらの 機 器 が 普 及 してき<br />

たことで 昔 話 となりつつあると 聞 く。また、 介 護 を 受 ける 側 にとっても、 自 分 の 汚 いところを 他 人 に 見<br />

られたり 処 理 して 貰 わなければならないという 羞 恥 心 や 引 け 目 をほとんど 感 じる 必 要 がなくなったこ<br />

とも、これらの 機 器 が 当 たり 前 のものとして 使 われる 時 代 なればこそ、である。<br />

友 人 の 介 護 される 姿 を 垣 間 見 ながら、 自 分 もいずれはこのような 状 態 になるのだろうか、と 漠 然 と 感<br />

じていた、 介 護 される 側 であることの 精 神 的 負 担 をあまり 感 じなくても 良 い 時 代 になったのだな、とい<br />

う 安 堵 感 に 近 い 気 持 ちを 味 わうのであった。<br />

自 宅 で 過 ごす 日 で、 掃 除 や 洗 濯 をしない 日 には、テレビを 漫 然 と 見 て 過 ごすことが 多 かったのだが、<br />

バーチャル 同 居 システムが 導 入 されてからは、 放 課 後 の 孫 と 一 緒 にゲームをすることもある。これはも<br />

う、 最 近 では 一 種 の 生 活 の 張 りにもなっている。 不 思 議 なことに、 彼 らと 遊 んだ 後 に 読 書 をする、とい<br />

ったことも 却 って 多 くなった。テレビも、 興 味 深 い 番 組 だけを 選 んで 見 るようになった。ただ 相 撲 だけ<br />

は 欠 かさず 熱 心 に 見 ている。シニアセンターにも 行 っているし、そこのマシンを 使 うことでも 刺 激 を 受<br />

けているので、 認 知 症 になるようなことは 自 分 には 無 縁 だろう、と 楽 観 している。<br />

夕 方 近 くなると 宅 配 の 夕 食 サービスが 届 けられるので、これをきっかけに 雨 戸 やカーテンが 未 だ 開 い<br />

ていればスイッチ 操 作 で 雨 戸 を 閉 め、 届 けられた 食 事 のパックを 調 理 法 認 識 型 電 子 レンジで 温 め、おか<br />

ずをつまみにしながら 時 にはビールを 飲 む。 食 事 パックにはタグが 埋 め 込 まれており、 電 子 レンジの 加<br />

熱 等 の 調 理 法 は 自 動 判 定 されるので、 最 も 美 味 しい 状 態 で 出 来 たてのものが 食 べられるようになった。<br />

また 休 日 などには、バーチャル 同 居 システムで 娘 一 家 と 会 話 しながら 一 緒 の 食 事 を 楽 しんでいる。ビー<br />

ルはやはり 独 りで 食 事 をする 侘 しさを 紛 らわすため、という 心 理 的 要 因 が 大 きいようで、 娘 一 家 と 一 緒<br />

に 食 事 をする 時 は、アルコールは 欲 しくならないのが 不 思 議 である。<br />

時 に 気 が 向 いたり、あるいは 宅 配 のメニューが 自 分 の 好 みのもので 無 い 時 などには 簡 単 な 料 理 をする<br />

こともある。 独 り 暮 らしでは 食 材 にも 無 駄 が 出 てゴミも 多 く、 後 片 付 けが 面 倒 になってしまうと 思 って<br />

いたが、インテリジェント 冷 蔵 庫 と 台 所 のシンク 洗 浄 機 があるので、おっくうではなくなった。 時 には<br />

外 で 夕 食 を、ということも 考 えないわけではないのだが、 坂 を 登 って 夜 道 を 帰 ることを 考 えると、 外 食<br />

は 昼 に 限 る、というのが 今 の 心 境 である。 実 際 に 外 食 をする 機 会 は 夕 方 までシニアセンターに 居 た 時 、<br />

その 帰 りに、という 場 合 くらいである。<br />

ゆっくり 夕 食 を 済 ませて 手 早 く 後 片 付 けをしても 未 だ7 時 前 である。ソファに 寝 そべりながらテレビ<br />

を 見 たり、 娘 や、 時 には 早 目 の 時 間 に 帰 って 来 た 娘 の 夫 ともバーチャル 同 居 システムで 話 をしたりする<br />

のは 至 福 の 時 である。 時 に 気 が 向 けば、 以 前 から250タイトルほど 集 めていた 古 い 名 画 の DVD を 取 り<br />

出 して 見 ることもある。 一 番 のお 気 に 入 りは、 白 黒 映 画 ではあるが「カサブランカ」である。<br />

食 事 を 終 えてソファに 移 る 時 に 適 応 型 風 呂 の 自 動 給 湯 スイッチを 入 れる。これは 連 れ 合 いに 先 立 たれ<br />

た 後 に、 娘 夫 婦 が 火 の 元 だけは 心 配 ということで、 自 動 式 に 取 り 替 える 費 用 を 出 してくれ、 改 装 したも<br />

のであり、 風 呂 桶 のオーバーフローや 熱 湯 での 火 傷 などの 心 配 が 無 いだけでなく、その 日 の 天 候 や 体 調<br />

に 合 わせた 湯 温 に 調 節 してくれるのはありがたい。<br />

風 呂 は 一 日 を 締 めくくる 大 事 なイベントである。 夏 でも 汗 を 洗 い 流 すために 入 ることはもちろんだし、<br />

冬 は 湯 船 に 浸 かって 温 まることは 言 うまでも 無 い。 見 守 りシステムを 導 入 する 前 には、 風 呂 場 で 亡 くな<br />

った 友 人 のことが 気 になり、 不 安 感 もあったのだが、 今 ではシステムのお 陰 で 不 安 もないし、また 更 衣<br />

所 、 風 呂 場 ともにインテリジェントエコ 空 調 が 作 動 しているので、 快 適 に 入 浴 を 楽 しむことが 出 来 てい<br />

る。<br />

風 呂 から 上 がり、 投 薬 リマインダに 教 えられて、 一 年 中 飲 んでいる 麦 茶 をコップに2 杯 と 薬 を 飲 んで<br />

から 二 階 に 上 がる。テレビで 面 白 そうな 番 組 をやっている 時 には、 少 し 見 ることもある。 階 段 を 上 る 時<br />

は 下 る 時 より 不 安 感 は 無 いので、 自 分 の 足 を 使 って 上 ることもあるが、センターのマシンで 頑 張 った 日<br />

などには 昇 降 支 援 機 のお 世 話 になることもある。<br />

二 階 の 寝 室 に 入 り、ベッドに 乗 る 時 にも、 立 ち 上 がり 支 援 機 を 使 えば、 尻 もちを 付 くようなこともな<br />

く、 自 然 な 姿 勢 で 楽 に 座 ることが 出 来 る。<br />

ベッドサイドにもテレビが 置 いてあるのだが、めったに 見 ることはない。ベッドで 本 を 読 むこともた<br />

まにはある。 腕 や 肩 が 痛 くなってしまったり、うつぶせになって 姿 勢 を 変 えるのも、インテリジェント<br />

ベッドが 優 しくサポートしてくれるし、 眠 りにつけば 自 動 照 明 システムにより 眠 りにあわせて 徐 々に 消<br />

灯 するので 安 心 である。 元 来 が 楽 観 的 な 性 格 でもあるせいか、 何 か 考 えてしまって 眠 りにつけない、と<br />

いった 悩 みはもともと 無 かったが、 最 近 は 精 神 状 態 も 極 めて 良 い。<br />

さて、ここまでの 一 日 の 行 動 を 振 り 返 ると、 生 活 環 境 の 中 にある 実 にさまざまなものに 身 体 が 触 れて<br />

いることに 気 付 く。ベッド、 手 すり、ドアノブ、その 他 もろもろである。また、トイレでは 便 座 に 座 っ<br />

61


ても 居 るし、 尿 もしている。この 間 、 心 拍 、 呼 吸 、 体 温 、 尿 成 分 、その 他 数 多 くの 生 体 情 報 が 計 測 され<br />

ており、その 日 の 体 調 が 記 録 されている。 生 体 情 報 のそれぞれに 微 小 な 変 動 があっても 見 落 としてしま<br />

うことが 考 えられるが、 多 数 の 情 報 を 用 いて 総 合 的 に 判 断 すれば、 少 しの 体 調 変 化 でも 見 落 とすことは<br />

無 い。また、この 情 報 を 用 いることで、 空 調 の 温 度 、 照 明 、 食 事 のヒント、 風 呂 の 温 度 等 、 環 境 の 自 動<br />

調 節 といったことは 言 うに 及 ばず 多 様 な 対 応 が 可 能 となっている。このシステムと 見 守 りシステムとは<br />

連 動 しているので、 例 えば 体 調 が 悪 い 場 合 には、 自 覚 症 状 の 有 無 に 関 わらず 必 要 に 応 じて 地 域 のセンタ<br />

ー 等 に 連 絡 が 行 き、 支 援 のボランティアやケアワーカー 等 が 様 子 を 見 に 来 てくれたり、 体 調 不 良 が 甚 だ<br />

しい 場 合 には 救 急 への 通 報 も 行 われる。 監 視 されているようで 嫌 だと 思 ったこともあるが、プライバシ<br />

ーが 守 られた 上 のことなので、 今 では、むしろ 安 心 に 感 じている。<br />

さらには、 人 や 物 の 認 識 機 能 、コミュニケーション 機 能 などを 代 行 したり、 補 完 、 拡 張 する 技 術 の 進<br />

展 により、バーチャル 同 居 システムのようなものまでが 現 実 のものとなっており、 物 理 的 にも 精 神 的 に<br />

もサポートが 得 られる 時 代 に 生 きている 幸 いを 享 受 している、という 実 感 がある。<br />

また、 食 品 や 衣 類 を 始 めとする 商 品 に IC タグが 内 蔵 されることが 常 識 となったため、 調 理 にしろ 洗<br />

濯 にしろ、 機 械 に 任 せきりでも 人 がやるより 上 手 に 仕 上 げてくれるので 世 話 なしであり、 後 片 付 けでさ<br />

えインテリジェントキッチン、シンク 洗 浄 機 、さらにはロボット 掃 除 機 に 任 せてしまえば 良 く、つくづ<br />

く 家 事 も 便 利 になったものだと 思 う。<br />

さまざまなロボットやパワーアシストシステムも、 屋 内 環 境 などに 埋 め 込 まれたタグを 用 いることで、<br />

人 や 家 具 、 部 屋 など、 住 環 境 に 合 わせた 移 動 動 作 やハンドリング 動 作 が 容 易 となっており、それが 安 価<br />

で 実 用 的 なシステムの 一 般 家 庭 への 浸 透 に 大 いに 役 立 っているのは 間 違 いないことである。<br />

2.2.3 共 働 き 支 援<br />

(1) 二 人 の 子 供 を 持 つ 共 働 き 世 帯 者<br />

1)ユーザの 選 定<br />

父 親 40 歳 、 母 親 38 歳 、 子 供 二 人 の 共 働 き 家 庭 。 子 供 は 小 学 校 3 年 (9 歳 )と 未 就 学 児 童 (4 歳 )、<br />

未 就 学 児 童 は 昼 間 保 育 園 に 預 けている。 郊 外 の 分 譲 マンションに 住 んでおり、 父 親 は、 通 勤 に1 時 間 3<br />

0 分 かかる 都 心 の 会 社 勤 めを 行 い、 母 親 は、 通 勤 時 間 20 分 の 地 方 公 務 員 。 父 親 は 残 業 が 多 く、 休 日 し<br />

か 子 供 と 接 することができない。 母 親 は、 通 常 は 定 時 に 帰 宅 するが、キャリアとともに 責 任 も 重 くなり、<br />

残 業 も 多 くなってきた。 両 親 世 帯 とは 別 居 しており、2 時 間 以 上 かかる 遠 方 に 住 んでいる。<br />

父 親 、 母 親 とも 朝 6 時 に 起 床 する。 父 親 は 朝 食 を 取 り、 自 分 の 身 支 度 だけ 行 い、7 時 前 に 仕 事 に 出 か<br />

ける。 母 親 は、 朝 食 の 支 度 を 行 いながら、 洗 濯 を 行 う。 子 供 たちは6 時 30 分 頃 から 起 き 出 し、 朝 食 を<br />

摂 るため、 洗 濯 、 子 供 の 面 倒 見 、 自 分 の 身 支 度 の 並 行 作 業 になる。したがって、 朝 はとても 忙 しい。 上<br />

の 子 は、7 時 30 分 に 学 校 に 出 かける。 母 親 は、7 時 45 分 に 家 を 出 、 下 の 子 を 保 育 園 に 送 り、その 足<br />

でそのまま 勤 務 先 に 向 かう。<br />

父 親 勤 務 先 、 母 親 勤 務 先 、 小 学 校 、 保 育 園 、と 日 常 の 活 動 は 家 族 バラバラであり、 日 中 のほとんどの<br />

時 間 (6 時 間 程 度 )は 留 守 宅 になる。 一 番 先 に 帰 宅 するのは 上 の 子 であり、 午 後 3 時 過 ぎである。 母 親<br />

は 午 後 5 時 30 分 に 勤 務 先 を 出 、 保 育 園 に 下 の 子 を 向 かえに 行 き、 帰 宅 する。 帰 宅 時 間 は18 時 前 後 と<br />

なり、 上 の 子 が 帰 宅 してから 母 親 の 帰 宅 まで3 時 間 程 度 の 時 間 差 がある。 子 供 が 帰 宅 してから、 母 親 が<br />

帰 宅 するまでの 安 全 が 心 配 であり、また、 時 折 、 子 供 がとても 寂 しい 思 いをし、 泣 いて 甘 えてくるので<br />

胸 が 痛 くなる。 何 で、こうまでして 仕 事 をしなければいけないか、と 自 問 自 答 しつつ、もう 少 し 子 供 が<br />

大 きくなるまでの 我 慢 、と 考 えて 仕 事 を 続 けている。<br />

帰 宅 後 、 洗 濯 物 を 取 り 込 み、すぐに 夕 食 の 支 度 にとりかかり、19 時 くらいから 夕 食 。 夕 食 後 は 風 呂 、<br />

後 片 付 け、 洗 濯 物 畳 み、とゆっくりテレビを 見 る 暇 もない。 後 片 付 けは 食 洗 器 に 任 せることも 多 いが、<br />

それとて 面 倒 になることも 多 い。 子 供 を 寝 かしながら、 疲 れきって21 時 頃 にはそのまま 寝 てしまう。<br />

父 親 は 残 業 で 疲 れて 深 夜 0 時 30 分 頃 に 帰 宅 し、1 人 で 軽 く 食 事 をしてすぐに 眠 る。<br />

毎 日 は 時 間 に 追 われて 慌 しく 過 ぎていくため、 日 々 片 付 けられなかった 家 事 は 休 日 に 回 る。 掃 除 、 布<br />

団 干 し、 大 きめの 洗 濯 物 、 一 週 間 分 の 食 料 品 の 買 出 し、 等 であり、 週 休 2 日 の 休 日 のうちの1 日 は、 家<br />

事 で 潰 れてしまう。<br />

上 記 のとおり、 日 々の 生 活 は 時 間 に 追 われて 大 変 だが、 子 供 が 病 気 になると 物 理 的 に 仕 事 をこなすこ<br />

とが 不 可 能 となり、 非 常 に 困 っている。 親 世 帯 が 近 くに 住 んでいれば、 急 な 子 供 の 病 気 でも 面 倒 を 見 て<br />

62


もらえるが、 現 状 ではままならない。 朝 の 子 供 の 発 熱 を 検 知 し、すぐに 連 絡 をとっても、 両 親 が 到 着 す<br />

るのを 待 っていれば、 会 社 には 遅 刻 してしまう。 子 供 が 病 気 になった 場 合 には、いつも、 父 親 、 母 親 の<br />

どちらが、 休 むか、 遅 刻 ・ 早 退 するか、どちらの 仕 事 が 重 要 であるか、という 話 し 合 いになる。しかし、<br />

どちらも 重 要 で 外 せない 仕 事 を 抱 えていることが 多 く、 本 当 に 困 っている。<br />

2)システム 構 想<br />

1 家 事 に 関 するもの<br />

・ 自 動 開 閉 式 雨 戸 : 電 動 式 の 雨 戸 あるいはブラインド 等<br />

・ 台 所 片 付 け 支 援 機 : 流 し 台 一 体 型 のゴミ 自 動 分 別 、ディズポーザ、 食 器 洗 浄 機<br />

・ 料 理 配 膳 支 援 : 家 庭 向 け 物 流 インフラを 使 い、 食 器 毎 料 理 を 受 け 取 り、 食 事 後 は、 洗 わずにそのまま<br />

食 器 毎 返 却 するシステム<br />

・ 衣 服 クリーニング 支 援 : 家 庭 向 け 物 流 インフラを 使 い、 汚 れた 衣 服 をハンガー 毎 クリーニングに 出 し<br />

、クリーニング 後 の 衣 服 をハンガー 毎 受 け 取 るシステム<br />

・ 宅 配 便 集 配 達 支 援 : 家 庭 向 け 物 流 インフラを 使 い、 宅 配 便 の 収 集 ・ 送 付 を 留 守 宅 でできるようにする<br />

システム<br />

2セキュリティ、 安 心 、 安 全 に 関 するもの<br />

・ 留 守 宅 見 守 り: 住 人 の 外 出 や 帰 宅 を 自 動 的 に 検 知 することで、 設 定 や 解 除 等 にあたり 面 倒 な 手 間 をか<br />

けずに 留 守 宅 への 侵 入 等 を 検 知 し、 警 察 、 近 隣 の 家 、 本 人 や 友 人 の 携 帯 などに 通 報 するシステム<br />

・ 通 学 見 守 り: 子 供 の 通 学 時 の 様 子 を 見 守 り、 連 れ 去 り、 事 故 等 を 検 知 し、 親 ・ 警 察 等 に 通 報 するシス<br />

テム。GPS 等 で 位 置 確 認 も 行 える。<br />

・ 親 留 守 宅 見 守 り: 共 働 き 世 帯 で 子 供 のみが 帰 宅 している 時 間 の 見 守 りシステム。 家 の 中 の 子 供 の 様 子<br />

を 見 守 り、 事 故 発 生 時 等 に 親 、 警 察 等 に 通 報 するとともに、 勤 め 先 の 親 、 別 居 している 親 世 帯 とのコ<br />

ミュニケーション 支 援 を 行 う。<br />

3その 他 の 日 常 生 活 行 動 に 関 するもの<br />

・バーチャル 同 居 システム: 食 事 の 際 などに、 遠 隔 地 にいる 親 世 帯 と 共 に 場 を 共 存 している 感 覚 を 味 わ<br />

えるもの。 音 声 サラウンド、3Dホログラム 画 像 などの 利 用 。<br />

63


必 要 な 支 援<br />

・ 留 守 宅 見 張 り<br />

必 要 な 支 援<br />

・ 子 守<br />

父 親 の 生 活<br />

母 親 の 生 活<br />

第 一 子 の 生 活<br />

第 二 子 の 生 活<br />

家<br />

通 勤<br />

通 学<br />

学 校<br />

職 場<br />

。5 時 6 時 7 時 8 時 9 時<br />

10<br />

時<br />

11<br />

時<br />

12<br />

時<br />

13<br />

時<br />

14<br />

時<br />

15<br />

時 16 時 17 時 18 時 19 時 20 時 21 時<br />

22<br />

時<br />

23<br />

時<br />

24<br />

時 1 時<br />

食 事 ・ 身 支<br />

留 守 宅<br />

夕 食 ・ 就<br />

就 寝 度<br />

寝<br />

食 事 ・ 身 支<br />

夕 食 準 後 片 付<br />

就 寝 弁 当 ・ 洗 濯 度<br />

備 ・ 夕 食 け 風 呂<br />

就 寝<br />

食 事 ・ 身 支<br />

おや テレビ・ 洗 濯 こ<br />

テレビ・<br />

就 寝 度 屋 外<br />

つ 宿 題 み 夕 食 風 呂 宿 題<br />

就 寝<br />

就 寝<br />

食 事 ・ 身 支<br />

夕 食<br />

就 寝 度<br />

テレビ<br />

風 呂<br />

就 寝<br />

通 勤 通 勤<br />

通 勤 通 勤<br />

通 学 通 学<br />

通 学 通 学<br />

保 育 園<br />

学 校<br />

職 場<br />

職 場<br />

必 要 な 支 援<br />

・ 食 事 準 備 ・ 後 片 付 け<br />

・ 洗 濯<br />

・ 留 守 宅 に 備 えた 支 援<br />

必 要 な 支 援<br />

・ 通 学 見 守 り<br />

図 2.2.3-1 共 働 き 世 帯 の 生 活 チャート<br />

必 要 な 支 援<br />

・ 食 事 準 備 ・ 後 片 付 け<br />

・ 洗 濯<br />

・ 留 守 宅 に 備 えた 支 援<br />

64


3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

1 住 宅 内 サービスロボットシステム<br />

住 宅 内 のロボットシステムとして 次 のようなサービスロボットが 考 えられる。たとえば、リビングで<br />

サッカーのテレビ 観 戦 に 夢 中 になっている 親 子 が、 喉 が 渇 いたため、ロボットに 対 して 飲 み 物 を 取 りに<br />

行 ってもらうものである( 図 2.2.3-2 参 照 )。<br />

a.ヒューマンインタフェイスRTコンポーネントを 使 ってロボットを 呼 ぶ。ヒューマンインタフェ<br />

ース 機 器 としては、 例 えばPDAが 使 われる。<br />

b.ロボットはリビングに 設 置 された 人 検 知 センサRTコンポーネントと 通 信 し、 人 の 位 置 情 報 を 獲<br />

得 しユーザのところへ 移 動 する。 次 にユーザの 飲 み 物 の 希 望 を 聞 き、 希 望 の 飲 み 物 が 冷 蔵 庫 内 にあ<br />

るか 冷 蔵 庫 を 管 理 するRTコンポーネントに 問 い 合 わせ 確 認 する。 希 望 の 飲 み 物 が 無 い 場 合 には、<br />

今 までに 学 習 したユーザの 好 みのものと 冷 蔵 庫 内 の 在 庫 から 飲 み 物 の 提 案 をする。<br />

c.ロボットは 冷 蔵 庫 まで 移 動 してキッチン 照 明 RTコンポーネントに 通 信 して 照 明 を 点 灯 する。 次<br />

に、 冷 蔵 庫 ドアRTコンポーネントと 通 信 して 冷 蔵 庫 ドアを 開 ける。 次 に、 視 覚 センサRTコンポ<br />

ーネントとアーム・ハンドRTコンポーネントが 協 調 して 飲 み 物 を 取 り 出 す。 次 に、 冷 蔵 庫 ドアR<br />

Tコンポーネントにドアを 閉 じる、 照 明 RTコンポーネントに 消 灯 の 通 信 を 行 う。<br />

d. 冷 蔵 庫 より 取 り 出 した 飲 み 物 をユーザのところまで 運 びユーザに 差 し 出 す。<br />

このように、ロボット、ヒューマンインタフェイス、 人 検 知 センサ、 照 明 、 冷 蔵 庫 などのRTコンポ<br />

ーネントを 連 携 させてサービスを 提 供 する。<br />

テレビ 観 戦 に 夢 中 で 喉 が 渇<br />

ロボットは 部 屋 のセンサを 使<br />

ロボットは、キッチン 照 明 、<br />

取 り 出 した 飲 み 物 をユーザー<br />

いたので 飲 み 物 を 取 って 来 て<br />

って 人 の 位 置 を 検 出 し 移 動 。<br />

冷 蔵 庫 ドアと 協 調 し、 飲 み<br />

へ 届 ける。<br />

もらうためにロボットを 呼 ぶ。<br />

ユーザーのオーダーを 聞 き<br />

物 を 取 り 出 す。<br />

冷 蔵 庫 内 の 在 庫 を 確 認 。<br />

2 集 合 住 宅 サービスロボットシステム<br />

図 2.2.3-2 住 宅 内 ロボットシステム<br />

住 宅 の 外 、たとえば 集 合 住 宅 の 共 用 スペースを 行 動 範 囲 としてサービスを 提 供 するロボットシステム<br />

は 次 のようなものが 考 えられ、 住 宅 内 のロボットシステムよりも 実 現 は 早 いと 考 えられる。<br />

図 2.2.3-3のように 集 合 住 宅 で 共 有 されている 運 搬 ロボットが、 入 居 者 の 荷 物 を 部 屋 まで 運 ぶ<br />

というものである。その 部 屋 に 上 記 の 住 宅 内 ロボットシステムがあれば、それとの 連 携 も 可 能 となり 次<br />

のようなサービスが 実 現 される。<br />

a. 運 搬 ロボットに 対 して、 荷 物 をユーザの 住 戸 まで 運 び、 住 戸 内 での 置 き 場 所 も 指 示 する。<br />

b. 運 搬 ロボットは 集 合 住 宅 共 有 のサーバからユーザ 住 戸 の 位 置 を 確 認 して 移 動 経 路 を 作 成 する。<br />

また、ユーザ 住 戸 のサーバへ 室 内 用 ロボットを 待 機 させるように 連 絡 する。<br />

65


c. 運 搬 ロボットは、ドア、エレベータのRTコンポーネントと 連 携 を 取 りながら 目 的 の 住 戸 まで 移<br />

動 する。 目 的 の 住 戸 に 到 着 すると、ユーザ 住 戸 のサーバと 通 信 して 住 戸 のドアを 開 け、 室 内 用 ロボ<br />

ットへ 荷 物 を 渡 す。また、この 時 、ユーザからの 室 内 での 置 き 場 所 の 指 示 を 室 内 用 ロボットへ 伝 達<br />

する。<br />

d. 室 内 用 ロボットは、ユーザの 指 示 場 所 に 荷 物 を 置 いていく。<br />

運 搬 ロボットに、 買 って 来 た<br />

運 搬 ロボットは、 依 頼 された<br />

運 搬 ロボットは、 途 中 、エレベ<br />

室 内 のロボットが、 住 人 の 指<br />

荷 物 を 部 屋 まで 運 び、 所 定 の<br />

住 人 の 住 戸 の 位 置 を 確 認 す<br />

ータと 連 携 をとり 住 戸 へ 到 着 。<br />

示 に 従 い、 荷 物 を 所 定 の 場<br />

場 所 へ 置 くことを 依 頼 。<br />

ると 共 に、 住 戸 のサーバーへ<br />

室 内 のロボットへ 荷 物 を 引 き 渡<br />

所 へ 置 く。<br />

荷 物 を 届 けることを 連 絡 。<br />

し、 住 人 の 指 示 を 引 き 継 ぐ。<br />

図 2.2.3-3 集 合 住 宅 サービスロボットシステム<br />

集 合 住 宅 サービスロボットシステムを 利 用 することにより、 以 下 のサービスの 提 供 が 可 能 になる。<br />

(a) 衣 服 クリーニングサービス<br />

共 働 き 世 帯 では 昼 間 に 不 在 であることから、クリーニングに 出 しに 行 くことや 取 に 行 くことが 困 難 で<br />

ある。クリーニングの 宅 配 もあるが、 在 宅 時 間 の 特 に 夜 に 配 達 される 場 合 には 安 全 ・ 安 心 という 面 で 不<br />

安 が 残 る。また 衣 服 の 素 材 や 形 状 、 好 みによってクリーニング 方 法 も 違 ってくるため、 最 適 なクリーニ<br />

ングが 行 われないとクレーム 問 題 となる。 正 確 な 情 報 がクリーニングする 側 に 伝 えられなければ、 品 質<br />

の 良 いクリーニングがされなくなってくるが、どのように 正 確 な 情 報 の 伝 達 と 収 集 をするかが 課 題 であ<br />

る。<br />

衣 服 クリーニングサービスは 以 下 のシステム 構 成 により 実 現 される。<br />

・ 衣 服<br />

衣 料 メーカでICタグが 取 付 けられ、 衣 服 の 種 類 、 形 状 ( 長 袖 、 襟 など)、 色 、 素 材 、クリー<br />

ニング 方 法 などなどいろいろな 情 報 が 規 格 化 されたコードで 書 き 込 まれている。<br />

・ハンガー<br />

ハンガーにはICタグのリーダが 取 付 けられており、 衣 服 のタグの 読 み 書 きができる。<br />

・ICタグリーダ<br />

室 内 および 玄 関 にリーダがあり、 衣 服 ごとの 着 衣 時 間 をカウントし、 季 節 、 天 候 、 気 温 、 衣 服 情 報 か<br />

らクリーニングの 要 否 をアドバイス。クリーニングを 選 択 した 衣 服 は、その 衣 服 情 報 がネットを 介 し<br />

てクリーニング 店 に 届 き、 仕 立 て、 費 用 、 仕 上 り 日 などの 情 報 がクリーニング 店 から 返 ってくる。そ<br />

の 情 報 からどのクリーニング 店 にするかを 選 ぶ。(ヒューマンインタフェイスは 室 内 のディスプレイ<br />

でもサービスロボットなどでもよい。)<br />

・クローゼット<br />

クリーニングに 出 す 衣 服 は、マンションの 廊 下 から 取 り 出 せる 鍵 つきの 受 渡 し 口 へコンベアなどでハ<br />

ンガーごと 自 動 的 に 移 動 する。 衣 服 のICタグには 持 ち 主 の 情 報 が 暗 号 化 され 書 き 込 まれている。<br />

・ 回 収 ・ 配 達 ロボット( 図 2.2.3-4 参 照 )<br />

回 収 時 :どの 部 屋 からクリーニングが 出 されたかの 情 報 が 伝 わり、マンションで 所 有 するロボットが<br />

回 収 する。このロボットにより 集 められた 衣 服 がクリーニング 店 ごとに 分 けられ 引 き 渡 され<br />

る。<br />

66


配 達 時 :クリーニング 店 から 届 いた 衣 服 をICタグの 情 報 により 配 達 する。<br />

回 収 ・ 配 達 ロボットは、いたずらなどによる 危 険 物 の 積 み 込 みがないように、 画 像 の 記 録<br />

や 危 険 物 検 知 センサなどを 搭 載 している。 各 部 屋 の 受 渡 し 口 に 配 達 するときは、ロボット<br />

が 受 渡 し 口 にドッキングし、 他 者 が 搬 送 物 を 見 たり 触 れたりできないようにしておく。 受<br />

渡 し 口 はロボットだけが 開 閉 できる 構 造 である。<br />

※ 以 上 の 説 明 では、ハンガーがコンベアで 移 動 したり、 回 収 ・ 配 達 をロボットで 行 ったりするが、こ<br />

の 搬 送 部 分 はクリーニングを 出 したい 人 が 行 っても 良 い。<br />

(a) 大 型 運 搬 ロボット<br />

(b) 荷 物 搬 送 支 援 ロボット<br />

(b) 食 材 仕 分 け 宅 配 サービス<br />

図 2.2.3-4 集 合 住 宅 内 搬 送 ロボット<br />

スーパー 等 で 提 供 されている 共 同 購 入 による 食 材 の 宅 配 サービスは、 昼 間 に 買 い 物 に 行 くことが 困 難<br />

である 共 働 き 世 帯 にとって 非 常 に 便 利 なサービスである。 不 在 でも、 専 用 箱 (コンテナ)で 冷 蔵 品 でも<br />

冷 凍 品 でも 玄 関 先 に 置 いていってもらえるが、 集 合 住 宅 の 場 合 、 共 用 スペースに 置 いたままにされるこ<br />

とになり、 防 災 ならびに 防 犯 上 問 題 がある。 業 者 による 配 達 後 、 速 やかに 各 家 庭 に 仕 分 けして 注 文 品 を<br />

引 き 取 って 箱 を 片 付 ける 必 要 がある。<br />

集 合 住 宅 サービスロボットシステムにより、 以 下 のサービスが 可 能 となる。 集 合 住 宅 の 共 用 スペース<br />

でロボットがコンテナを 受 け 取 り、 個 別 宅 ごとに 食 材 を 仕 分 けておく。この 際 、 冷 蔵 ・ 冷 凍 品 の 別 によ<br />

り 温 度 管 理 を 行 える 戸 別 毎 のストレージを 用 意 しておく。ロボットは 当 該 家 庭 の 帰 宅 を 検 知 すると、 一<br />

戸 ごとに 配 達 する。<br />

(c) 資 源 ごみ 収 集 サービス<br />

資 源 ごみは、ビン・ 缶 ・ペットボトル・ 古 紙 と 多 種 類 あり、 分 別 収 集 することによってはじめてリサ<br />

イクルとして 社 会 還 元 される 特 徴 がある。 核 家 族 化 している 集 合 住 宅 世 帯 では、 戸 別 には 集 積 率 が 低 く、<br />

家 庭 内 で 分 別 して 溜 め 込 むことが 困 難 である。 一 方 、 収 集 に 出 すときには、 重 さ・ 体 積 とも 相 当 な 量 と<br />

なり、 運 搬 に 負 担 がかかる。 缶 の 場 合 は 圧 縮 して 潰 したり、ペットボトルの 場 合 はパッケージのフィル<br />

ムを 剥 がしてから 潰 すといった 手 間 もかかる。さらには、 忙 しい 人 にとっては、 週 に 一 回 の 収 集 のタイ<br />

ミングを 逸 すると 非 常 に 面 倒 なことになり、これらを 守 らずに 資 源 ごみではなく、ごみ 出 ししてしまう<br />

住 人 もいる。<br />

集 合 住 宅 サービスロボットシステムにより、 以 下 のサービスが 可 能 となる。 集 合 住 宅 の 住 人 は、 資 源<br />

ごみが 少 したまるとロボットを 呼 び 出 す。ロボットが 新 聞 ・ 雑 誌 を 自 動 でまとめてくれるので、 括 って<br />

出 す 必 要 はない。ビン・ 缶 ・ペットボトルは、 住 人 が 洗 っていないと(ある 程 度 のニオイがしたら) 受<br />

け 取 らない。 缶 についてはアルミ 缶 であるのか、スチール 缶 であるのか 等 を 自 動 判 別 し、 住 人 から 受 け<br />

取 りながら 潰 していく。ロボットが 保 持 できるキャパシティーを 超 えたら、 共 用 スペースへ 移 動 し、 資<br />

源 ごみごとに 取 りまとめて 保 管 する。ロボットは 資 源 ごみ 回 収 のタイミングを 知 っているので、ゴミス<br />

テーションに 出 すタイミングを 逸 することはない。<br />

集 合 住 宅 サービスロボットシステムの 運 用 モデルとして、 図 2.2.3-5に 示 すように、マンショ<br />

ンデベロッパと 本 システムに 協 賛 するクリーニング 店 (あるいは、ごみ 収 集 を 行 う 自 治 体 等 )による 導<br />

入 が 考 えられる。クリーニング 店 に 支 払 われる 費 用 に 本 システムの 一 部 が 含 まれており、 費 用 回 収 する。<br />

集 合 住 宅 購 入 費 用 または 管 理 費 用 に 本 システムの 導 入 費 用 が 含 まれていても 良 い。<br />

67


ロボットメーカ<br />

回 収 ・ 配 達<br />

ロボット<br />

代 金<br />

(マンションデベロッパと<br />

クリーニング 店 が 共 同 で)<br />

マンション<br />

デベロッパ<br />

ロボット<br />

購 入 費<br />

(クリーニング 代 の 一 部 )<br />

協 賛<br />

クリーニング 店<br />

クリーニング<br />

マンション<br />

住 人<br />

クリーニング 代<br />

図 2.2.3-5 ビジネスモデル<br />

2.2.4 住 宅 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

(1) 住 環 境 における 環 境 構 造 化 デザイン<br />

1) 無 い」から「 有 る」そして「 使 える」へ<br />

自 動 車 では 様 々なセンサが 使 われて 性 能 向 上 に 役 立 っているのに 比 較 して、これまで 住 宅 には 殆 どセ<br />

ンサが 設 置 されていなかった。 数 少 ない 例 であるセキュリティーシステムで 用 いられる 開 閉 検 知 用 のマ<br />

グネットスイッチ 等 は 後 付 けで 意 匠 性 に 乏 しいものが 殆 どで 配 線 工 事 が 必 要 になる 等 の 問 題 があるだ<br />

けでなく、それを 用 いる 事 で 得 られるメリットを 居 住 者 が 日 常 生 活 で 実 感 することができない 状 態 であ<br />

った。 近 年 、センサの 小 型 化 ・ 省 電 力 化 が 進 展 し 建 材 や 設 備 機 器 への 内 蔵 が 物 理 的 にもコスト 的 にも 現<br />

実 的 になってきた。 今 後 はセンサ 設 置 に 特 別 な 工 事 が 必 要 になるのではなく、 従 来 通 りの 施 工 を 行 えば<br />

自 動 的 にセンサが 埋 め 込 まれた 空 間 が 提 供 される 様 になることが 予 想 される。<br />

単 純 に 沢 山 のセンサ 情 報 が 得 られるだけでは 居 住 者 の 利 便 性 や 快 適 性 を 高 めることはできない。 溢 れ<br />

る 情 報 を 如 何 に 取 捨 選 択 して 有 意 義 な 情 報 を 抽 出 できるかがポイントとなる。 設 置 すべきセンサの 種 類 、<br />

数 量 、 場 所 、 形 状 そしてそられから 得 られた 情 報 をどの 様 に 処 理 したら 良 いかのノウハウも 無 い 状 況 で<br />

ある。センサネットワークが 騒 がれて 久 しいが 電 気 的 なレベルでの 検 証 に 留 まっているのが 現 状 で 今 後<br />

の 開 発 が 待 たれる。<br />

2) 住 宅 のセンサ 化 による 変 化<br />

センサネットワークやロボット 技 術 が 効 果 的 に 導 入 されることで 住 宅 にどの 様 な 変 化 が 生 じるのか、<br />

デザインや 形 状 等 の 物 理 的 な 変 化 と 使 い 勝 手 等 の 機 能 的 変 化 に 分 けて 想 定 する。<br />

1 物 理 的 変 化<br />

例 えば、 住 宅 用 太 陽 電 池 では 以 下 の 様 にモジュールの 設 置 形 態 が 変 化 する 事 で 意 匠 性 が 高 まると 共 に<br />

コストダウンが 進 み 普 及 に 弾 みをつけることができた。 即 ち、 新 たな 設 備 部 品 を 住 宅 に 設 置 するのでは<br />

なくて、 現 在 ある 設 備 部 品 を 置 き 換 えることが 重 要 なポイントであった。 例 えば、 住 宅 用 太 陽 電 池 につ<br />

いては、 置 き 型 PV(photovoltaic) → 屋 根 一 体 型 PV → 建 材 型 PV へと 変 遷 してきている。<br />

これを 参 考 にセンサやロボットが 普 及 した 状 況 を 想 定 することができる。センサの 小 型 化 、 省 エネ 化<br />

が 進 み 様 々な 建 材 や 設 備 機 器 に 内 在 されるようになり、 外 観 はこれまでの 住 宅 と 殆 ど 変 わらないデザイ<br />

ンが 可 能 となる。また、 従 来 通 りの 工 事 を 行 うだけでセンサネットワークが 自 動 的 に 形 成 されるので 特<br />

68


別 な 配 線 工 事 コストが 不 要 で 普 及 が 進 む 事 が 予 想 される。<br />

例 に 示 したのは 窓 やドアを 現 状 の 形 状 のままで 多 機 能 ロボット 化 したものである。 従 来 窓 は 電 源 や 通<br />

信 等 の 配 線 を 行 う 場 合 等 には 障 害 でしかなかったが、ロボット 化 によってむしろ、 情 報 や 電 源 のターミ<br />

ナルとなる 可 能 性 が 考 えられるかもしれない。 開 口 部 ロボットは 以 下 のように 実 現 できるものと 考 える。<br />

・センサ<br />

開 閉 検 知 センサ、ガラス 破 壊 検 知 センサ、こじ 開 け 検 知 センサ、 施 錠 検 知 センサ、 人 感 センサ、 生 体<br />

認 証 センサ、 結 露 検 知 センサ、 他<br />

・ 機 能<br />

オートロック、パワーアシスト、 自 動 開 閉 、セルフクリーニング、オートロック、 音 声 発 生 、シャッ<br />

ター・ブラインド・カーテン 開 閉 、 他<br />

窓 への 不 審 者 の 接 近 を 検 知 すると 窓 が 自 動 的 に 閉 められて 音 声 による 威 嚇 を 行 う 機 能 は、 窓 を 開 け 放<br />

して 過 ごしたい 快 適 なシーズンに 不 審 者 の 侵 入 を 心 配 せずに 済 むのは 便 利 なだけでなく 安 心 である。ま<br />

た、 窓 の 大 型 化 だけでなく 断 熱 性 を 高 める 為 のガラスの 複 層 化 や 防 犯 性 を 高 める 為 の 防 犯 ガラス 化 に 伴<br />

う 窓 の 重 量 化 は 子 供 や 老 人 が 開 け 閉 め 困 難 な 状 況 を 生 み 出 している。 窓 の 開 閉 をパワーアシストする 事<br />

は 高 齢 化 社 会 に 向 けての 魅 力 的 なアプリケーションとなる。 同 様 に、 窓 ガラスの 掃 除 は 手 間 がかかるだ<br />

けでなく 高 所 に 設 置 された 窓 では 作 業 自 体 が 危 険 なのでセルフクリーニング 機 能 は 是 非 とも 欲 しい 機<br />

能 である。 窓 廻 りのシャッターやカーテン 等 も 適 切 に 制 御 することで 空 調 光 熱 費 を 抑 える 事 が 期 待 でき<br />

る。<br />

2 機 能 的 変 化<br />

センサが 空 間 に 埋 め 込 まれ、その 情 報 を 的 確 に 活 用 すれば、これまで 操 作 が 煩 雑 だった 機 器 が 特 別 な<br />

操 作 無 しで 使 えるようになったり、 雨 漏 りや 配 管 からの 水 漏 れ 等 の 不 具 合 を 早 期 に 発 見 して 対 応 するこ<br />

となどのメンテナンス 支 援 が 可 能 になる。 複 雑 な 操 作 は 手 間 がかかるだけでなく 操 作 ミス 発 生 の 確 率 が<br />

高 くなるため、そうしたミスを 防 止 する 役 割 は、センサ 活 用 の 重 要 な 目 的 となるが、それだけでなくセ<br />

ンサがなければ 提 供 できなかった 全 く 新 しい 様 々なサービスの 登 場 が 今 後 のセンサ、ロボットの 普 及 の<br />

上 では 重 要 なポイントとなる。<br />

以 下 に、セキュリティーシステムの 使 い 勝 手 の 変 化 について、ある 家 庭 の 休 日 の 朝 と 昼 間 を 想 定 し、<br />

センサを 活 用 した 場 合 とそうでない 場 合 を 比 較 する 形 でシナリオ 風 に 説 明 する。<br />

シナリオ1:ある 休 日 の 朝<br />

<br />

最 近 、 近 所 で 泥 棒 騒 ぎがあった。 物 騒 な 時 代 になったものだ。 家 族 の 安 全 を 考 えて 少 し 高 かったがセ<br />

キュリティシステムを 設 置 した。これで 安 心 だろう。<br />

日 曜 日 の 朝 、 夫 も 子 供 達 もまだ 眠 っている。セキュリティシステムを 解 除 するのを 忘 れない 様 に 注 意<br />

しながら 玄 関 を 出 て 新 聞 を 取 ると、 丁 度 向 かいの 奥 さんと 出 会 う。ゴミ 出 しのルールが 変 わって 面 倒 に<br />

感 じていたので、どんな 感 じで 対 応 しているのか 話 を 聞 いてみると、 同 じような 悩 みを 持 っていると 分<br />

かった。 話 題 になっている 子 供 の 給 食 代 の 件 など、ついつい 話 し 込 んでしまった。その 頃 、 物 陰 から 様<br />

子 を 伺 っていた 泥 棒 がカギのかかっていない 玄 関 から 侵 入 。 庭 の 窓 を 開 けて 逃 げ 道 を 確 保 してから 人 気<br />

のない 居 間 で 物 色 を 開 始 、5 分 程 で 作 業 を 終 えて 庭 先 から 裏 の 路 地 へ 逃 げていった。<br />

気 が 付 くと30 分 も 経 っていた。そろそろ 朝 食 の 準 備 をしようと 家 に 戻 る。 玄 関 を 開 けて 部 屋 に 戻 る<br />

と、どうも 様 子 がおかしい。 居 間 の 引 き 出 しが 荒 らされて 通 帳 や 印 鑑 が 無 くなっていた。<br />

<br />

日 曜 日 の 朝 、 夫 も 子 供 達 もまだ 眠 っている。 目 を 覚 まさない 様 に 注 意 しながら 朝 刊 をとりに 出 る。 丁<br />

度 向 かいの 奥 さんと 出 会 う。ゴミ 出 しのルールが 変 わって 面 倒 に 感 じていたので、どんな 感 じで 対 応 し<br />

ているのか 話 を 聞 いてみると 同 じような 悩 みを 持 っていると 分 かった。 話 題 になっている 子 供 の 給 食 代<br />

69


の 件 など、ついつい 話 し 込 んでしまう。その 頃 、 物 陰 から 様 子 を 伺 っていた 泥 棒 が 玄 関 から 侵 入 を 試 み<br />

るがオートロックされている。セキュリティシステムも 作 動 している 様 なので 諦 めて 立 ち 去 る。<br />

気 が 付 くと30 分 も 経 っていた。そろそろ 朝 食 の 準 備 をしようと 家 に 戻 る。 指 紋 で 開 錠 して 室 内 に 入<br />

る。 今 日 も 一 日 良 い 日 になりそうだ。<br />

シナリオ2:ある 休 日 の 昼 間<br />

<br />

リモコンの 電 池 が 切 れているのに 気 が 付 きお 父 さんが 近 所 のコンビニへ 買 出 しに 出 掛 ける。 最 近 物 騒<br />

な 話 が 多 いので 念 の 為 セキュリティシステムをセットして 外 出 。 留 守 番 をしていた 子 供 達 が 部 屋 の 中 が<br />

暑 くなったので 窓 を 開 けてしまう。 警 報 が 鳴 り 響 き 大 騒 ぎになり 奥 さんが 慌 てて 警 戒 を 解 除 する。 奥 さ<br />

んは 警 戒 解 除 のままで 家 事 に 戻 ってしまった。 子 供 達 がテレビに 夢 中 になり 奥 さんが 洗 面 所 で 洗 濯 をし<br />

ていたところ、 誰 も 居 ない 開 けっ 放 しにした2 階 から 泥 棒 が 侵 入 。 寝 室 を 物 色 し 通 帳 や 宝 石 類 を 盗 って<br />

逃 走 。<br />

<br />

リモコンの 電 池 が 切 れているのに 気 が 付 きお 父 さんが 近 所 のコンビニへ 買 出 しに 出 掛 ける。 玄 関 から<br />

表 にでると 玄 関 がオートロックされた。 指 紋 で 開 錠 できるのでカギを 持 ち 歩 く 必 要 がないので 便 利 だ。<br />

出 掛 けた 時 は 涼 しかったのだが、 部 屋 の 中 が 暑 くなったので 子 供 達 が 窓 を 開 ける。 家 族 が 窓 を 開 けたこ<br />

とをセンサで 把 握 して 一 時 的 に 警 戒 を 解 除 するので 警 報 が 鳴 ることもない。 子 供 達 がテレビに 夢 中 にな<br />

り 奥 さんが 洗 面 所 で 洗 濯 をしていたところ、 開 けっ 放 しにした2 階 の 窓 に 泥 棒 が 接 近 する。 不 審 者 の 接<br />

近 がセンサでキャッチし 警 報 を 発 すると 共 に 窓 が 自 動 的 に 閉 鎖 され 侵 入 を 防 ぐことができた。<br />

(2) 環 境 情 報 構 造 化 のための 住 宅 インフラ<br />

今 日 のインテリジェントビルにさらにRTの 機 能 を 追 加 することで、より 安 全 安 心 快 適 な 集 合 住 宅 が<br />

実 現 するのはそう 遠 い 先 のことではない。そのような 近 未 来 のRT 集 合 住 宅 インフラの 実 現 を 早 めるポ<br />

イントは2つある。 一 つは 技 術 的 な 工 夫 としてRTのための 環 境 情 報 の 構 造 化 であり、もう 一 つは2.<br />

2.3の3)に 述 べたような、 制 度 的 な 工 夫 としてRT 集 合 住 宅 ビジネスモデルの 構 築 である。ここで<br />

は 集 合 住 宅 における 前 者 の 環 境 情 報 構 造 化 技 術 に 関 して、 特 に 集 合 住 宅 側 の 共 用 設 備 に 求 められる 仕 様<br />

について 解 説 する。<br />

RT 集 合 住 宅 の 実 現 を 早 めるためには、ロボット 単 体 の 知 能 を 高 める 努 力 だけではなく、ロボットに<br />

とって 活 動 し 易 い 建 物 側 の 環 境 をインテリジェント 化 することがより 重 要 である。そのような 環 境 情 報<br />

構 造 化 を 進 めるための 建 物 側 の 共 有 設 備 をここでは「 環 境 情 報 構 造 化 のための 集 合 住 宅 インフラ」とよ<br />

ぶことにする。<br />

一 般 的 な 集 合 住 宅 の 共 用 インフラとしては、 情 報 通 信 ・ 電 力 ・ 建 築 物 ・ 什 器 ・ガス・ 水 道 ・ 照 明 ・エ<br />

レベータ・ 自 動 ドアなど 多 岐 に 渡 る。これらの 内 、 環 境 情 報 構 造 化 のための 集 合 住 宅 インフラとしては、<br />

情 報 通 信 ・ 電 力 ・ 建 築 が 特 に 重 要 である。 以 下 では、 集 合 住 宅 入 り 口 から 各 戸 口 までをカバーする 物 流<br />

システムを 例 題 として、これら 主 に3つのインフラに 要 求 される 機 能 について 述 べる。なお 使 用 するロ<br />

ボットの 形 態 は、 自 走 式 とレール 式 に 大 別 できるが、ここでは 環 境 情 報 構 造 化 技 術 の 例 題 としてより 望<br />

ましいと 思 われる、 自 走 式 に 関 して 解 説 する( 図 2.2.4-1 参 照 )。<br />

70


1) 情 報 通 信 インフラ<br />

図 2.2.4-1 集 合 住 宅 共 用 搬 送 ロボットのイメージ<br />

集 合 住 宅 内 に 自 走 式 ロボットを 導 入 するためには、 人 とロボットと 集 合 住 宅 設 備 と 有 機 的 に 連 携 させ<br />

る 必 要 がある。すなわち、 人 間 とロボットの 状 態 をセンシングし、そのデータをロボットコントローラ<br />

に 伝 送 し、 適 切 な 処 理 の 後 、ロボットや 集 合 住 宅 設 備 に 指 令 を 送 る 仕 組 みが 重 要 である。これらの 情 報<br />

の 流 れを 司 るのが 情 報 通 信 インフラであり 集 合 住 宅 RT 化 の 要 である。この 情 報 通 信 インフラは、ハー<br />

ドウェア 的 には 有 線 と 無 線 のネットワークとそれに 接 続 される 様 々なセンサデバイスに 大 別 される。<br />

( 図 2.2.4-2 参 照 )<br />

図 2.2.4-2 RT 集 合 住 宅 用 情 報 流 通 インフラ 概 念 図<br />

71


1 有 線 ネットワーク<br />

IPプロトコルをベースとした 一 般 的 なイントラネット( 狭 義 のLAN)と、Echonet、 LonWorks 等<br />

のセンサ 専 用 ネットワークに 大 別 される。 今 後 益 々デファクト 化 が 進 むLANにおいては、 集 合 住 宅 内<br />

を 縦 横 無 尽 にイーサケーブルや 光 ケーブルが 配 線 され、それらは 集 合 住 宅 内 部 イントラとインターネッ<br />

トを 接 続 する 集 合 住 宅 統 合 ゲートウエイ(サーバ)、ファイアウォール、ルータ・ブリッジ・ハブ・ 情<br />

報 コンセント、メディア 変 換 機 、 各 家 庭 に 置 かれるホームゲートウェイなどのノード 機 器 により 接 続 さ<br />

れる。これらのノード 機 器 は、 集 合 住 宅 内 部 の 専 用 サーバ 室 等 の 共 有 通 信 インフラルームや 情 報 ダクト、<br />

家 庭 に 収 納 される。<br />

2 無 線 ネットワーク<br />

自 走 式 ロボットとサーバとの 通 信 、あるいは、 建 物 の 構 造 上 ケーブルを 敷 設 しにくい 場 所 では 無 線 通<br />

信 が 利 用 される。<br />

イントラネットを 無 線 化 したものは、 一 般 に 無 線 LANと 呼 ばれ、これを 構 成 するのは、 無 線 局 、 子<br />

機 、 無 線 ルータ 等 である。またAd hocな 無 線 センサネットワークとして、Zigbee、<br />

Bluetoothなども 場 合 によっては 利 用 される。これらは 本 来 、サーバが 予 め 存 在 しないような<br />

状 況 で、 緊 急 的 ・ 一 時 的 に 活 用 されることが 多 い。<br />

3センサデバイス<br />

センサは 千 差 万 別 であるが、 今 回 の 例 題 では、 人 間 が 歩 く 環 境 にロボットも 共 存 する 必 要 があること<br />

から、 人 間 とロボットの 位 置 の 計 測 のためのセンサが 特 に 重 要 である。<br />

a. 人 間 の 位 置 計 測<br />

ロボットとの 衝 突 を 防 ぐためには、 人 間 の 存 在 を 認 識 してその 位 置 をシステム 側 が 把 握 しておく 必 要<br />

がある。そのための 人 間 の 位 置 計 測 法 としては 環 境 に 設 置 されたカメラ、 人 間 が 保 持 する 携 帯 電 話 やI<br />

Cタグ、 赤 外 線 カメラ 等 がある。これらの 計 測 技 術 により 人 間 の 位 置 を 把 握 し、ロボットが 人 間 の 負 担<br />

にならないよう 自 然 にすり 抜 ける 誘 導 制 御 技 術 が 求 められる。その 際 には、ロボットの 次 のアクション<br />

を 人 間 側 に 積 極 的 に 知 らせる 仕 組 みもまた 必 要 である。すなわちロボットの 未 来 の 行 動 を、 音 や 光 で 人<br />

間 側 に 自 然 に 伝 えるためのインタフェースを、ロボットあるいは 環 境 側 に 設 置 することで、 人 間 の 自 然<br />

な 移 動 を 妨 げることなく、ロボットとの 共 存 が 可 能 となる。<br />

b.ロボットの 位 置 計 測<br />

建 物 側 に 様 々なセンサあるいはマーカーを 埋 め 込 む 事 により、ロボットの 位 置 を 簡 単 に 計 測 する 工 夫<br />

が 求 められる。 以 下 では 代 表 的 なものを 説 明 する。<br />

・カメラ<br />

ロボットの 経 路 の 要 所 要 所 にカメラを 配 備 することでロボットの 位 置 計 測 が 可 能 となる。カメラの 存<br />

在 を 人 間 に 知 らせるかどうかはプライバシーに 問 題 に 関 わるが、 見 守 り・ 監 視 機 能 に 対 する 住 人 の 同<br />

意 が 得 られれば 積 極 的 に 配 備 し、 様 々な 機 能 に 使 う 事 が 可 能 である。 位 置 測 定 精 度 は、ズーミングの<br />

大 きさと 表 裏 一 体 であるので、 全 体 を 見 る 広 角 カメラとズーミングアップするカメラとを 併 設 するこ<br />

とで、 数 cmレベルの 精 度 でロボットの 位 置 を 計 測 することが 可 能 となる。また、ロボット 側 にビジ<br />

ュアルマーカーと 貼 り 付 けることで、 環 境 カメラが 認 識 しやすくする 工 夫 も 重 要 である。<br />

・バーコード<br />

壁 や 柱 の 要 所 にロボット 用 のバーコードを 貼 り 付 けておくことでロボットは 簡 単 に 自 分 の 位 置 を 認<br />

識 できるようになる。そのバーコードには 位 置 情 報 そのもの、あるいはその 情 報 を 収 納 するURL 情<br />

報 がエンコードされる。<br />

・ 特 殊 マーカー・ランドマーク<br />

72


バーコードはロボットにとって 見 易 いが 人 間 には 分 かり 難 いし 美 しいものではない。そのため、 人 間<br />

にもロボットにも 認 識 し 易 く 意 匠 性 のあるタイプの 目 印 が 実 用 化 されている。これも 人 間 とロボット<br />

の 共 存 のための 工 夫 の 人 である。<br />

・ライン<br />

工 場 の 自 律 搬 送 車 (AGV)に 見 られるように、ロボットの 移 動 経 路 用 にロボットのカメラが 認 識 し<br />

易 いラインを 床 に 予 め 描 いておくことで、 確 実 な 移 動 ロボットの 誘 導 が 可 能 となる。この 場 合 、 意 匠<br />

性 のある 床 に 無 機 質 なラインが 描 かれるのは 人 間 との 共 存 に 望 ましくないので、 画 像 透 かしのような<br />

技 術 により、 人 間 にとって 目 障 りにならないラインも 重 要 である。<br />

・ 赤 外 線 センサ・ 超 音 波 センサ<br />

環 境 とロボットの 間 の 距 離 を 測 定 する。 建 物 側 の 要 所 に 配 備 することで、ロボットと 環 境 との 距 離 や<br />

傾 きを 一 定 に 保 つような 誘 導 に 使 われる。<br />

・ 室 内 GPS<br />

室 内 GPSは 通 常 のGPSを 屋 内 に 人 工 的 に 拡 張 したものである。スードライト 等 の 擬 似 的 な 基 準 電<br />

波 発 信 装 置 を 要 所 に 配 備 することでGPSと 同 様 な 原 理 で 数 cmレベルの 精 度 でロボット 位 置 の 計<br />

測 が 可 能 である。<br />

・マイクロフォン<br />

ロボットの 経 路 の 要 所 要 所 にマイクロフォンを 配 備 することで 人 間 のバルクな 存 在 や、 緊 急 状 態 にお<br />

ける 環 境 音 を 取 得 する 事 ができる。これもプライバシーに 問 題 に 関 わるので 利 便 性 とのトレードオフ<br />

になる。<br />

・ICタグ<br />

環 境 構 造 化 の 要 であり、 受 動 型 と 能 動 型 が 存 在 する。 価 格 の 安 い 受 動 型 は、 床 や 壁 、 建 築 物 に 数 多 く<br />

配 備 することが 可 能 となり、ICタグ 受 信 機 を 有 するロボットが 容 易 に 自 分 の 位 置 を 把 握 することが<br />

可 能 となる。また 能 動 型 は、 通 信 可 能 距 離 が 大 きくまたそれ 自 身 に 様 々な 処 理 機 能 を 持 たせることが<br />

可 能 である。<br />

以 上 の 位 置 計 測 技 術 は、コスト・ 精 度 ・プライバシー 等 の 観 点 から 該 当 住 宅 の 実 情 にあった 最 適 なも<br />

のが 選 ばれることとなる。<br />

2) 電 力 インフラ<br />

集 合 住 宅 内 を 移 動 するロボットにとって 効 率 的 な 電 力 供 給 は 生 命 線 でありそのために 集 合 住 宅 内 廊<br />

下 や 踊 り 場 に、ロボット 用 電 力 スタンドを 設 置 しておく 必 要 がある。ロボットが 自 己 のバッテリーの 消<br />

費 状 態 から 自 律 的 にそのスタンドに 向 かい 給 電 する 仕 組 みは、 技 術 的 にはほぼ 完 成 されている。 従 って、<br />

なるべく 少 ないスタンドをどこに 配 置 するかという、 最 適 電 力 配 置 が 重 要 な 課 題 である。また 停 電 時 の<br />

安 定 化 電 源 設 備 なども 重 要 なインフラとして 準 備 される。<br />

3) 住 宅 におけるその 他 のインフラ<br />

a. 床<br />

車 椅 子 が 快 適 に 移 動 できる 環 境 は 自 走 式 ロボットにとっても 快 適 だといえる。そのためには 段 差 の 無<br />

い 床 、 開 閉 の 容 易 なドア 等 、 車 椅 子 利 用 者 にとって 快 適 な 建 物 構 造 が 重 要 である。<br />

b.エレベータ<br />

集 合 住 宅 における 自 走 式 ロボットの 場 合 、 階 の 移 動 は 人 間 用 のエレベータを 利 用 することが 自 然 であ<br />

る。エレベータの 呼 び 出 しやドアの 開 閉 等 の 制 御 は、ロボットとの 通 信 で 連 携 することで、 時 間 的 に<br />

ロスの 少 ない 効 率 的 な 誘 導 が 可 能 となる。<br />

c. 照 明<br />

カメラにとって 十 分 かつ 安 定 したな 照 明 は 極 めて 重 要 である。ただし 人 間 が 快 適 と 感 じる 照 明 環 境 を<br />

壊 しては 行 けないので、そこも 居 住 性 とのトレードオフとなる。<br />

d.ドア<br />

現 行 のインテリジェント 集 合 住 宅 では 既 に 一 般 的 であるセキュリティを 確 保 した 入 室 退 室 管 理 シス<br />

テムとロボットが 連 携 することが 重 要 である。 例 えば、どの 住 人 がいつ 帰 って 来 たという 情 報 をロボ<br />

ットが 素 早 く 知 ることでその 住 人 へのメッセージ 等 を 迅 速 に 伝 えることが 可 能 となり、 場 合 によって<br />

73


は、 輸 送 途 中 でロボットから 人 間 に 搬 送 物 を 渡 すというようなことも 可 能 となる。<br />

以 上 述 べてきたように、 環 境 情 報 構 造 化 のための 集 合 住 宅 インフラは、 人 間 との 共 存 が 最 重 要 な 視 点<br />

である。すなわち、 人 間 にとってもロボットにとっても、 住 み 易 い 環 境 作 りがポイントとなる。そのた<br />

めには、 従 来 の 人 間 専 用 として 作 られている 集 合 住 宅 の 既 存 インフラを 大 幅 に 改 造 することなしに、こ<br />

れらRTインフラを 追 加 することが 望 ましい。この 観 点 から、 今 後 集 合 住 宅 で 大 量 に 利 用 される 建 材 は、<br />

予 めセンサが 内 部 に 配 備 され、 機 能 上 もデザイン 上 も 人 間 にとって 快 適 な 物 が 量 産 されることになる。<br />

この 量 産 効 果 によりRT 集 合 住 宅 の 実 現 がコスト 的 ・ビジネス 的 に 妥 当 なものになることが 期 待 される。<br />

(3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

1) 環 境 構 造 化 のデザイン<br />

Text Text<br />

Text<br />

3. 機 能 デザイン・ 統 合<br />

Forward RightLeft Stop Object<br />

Forward Right Left Stop<br />

Forward Right Left Stop<br />

Right Left<br />

Object<br />

Context<br />

Ontology<br />

Intention<br />

Ontology<br />

Intention<br />

Intention<br />

Intention<br />

No intention<br />

No intention<br />

No intention<br />

Gaze No gaze<br />

Gaze No gaze Speed Location<br />

Gaze No gaze<br />

Common ontology<br />

Forward<br />

StepLeftRight<br />

No intention<br />

他 のサービスロボットと GazeNo gazeSpeedLocation 情 報 共 有<br />

Object<br />

Forward<br />

Forward<br />

Right<br />

Right<br />

Right<br />

Left<br />

Left<br />

Left<br />

Step<br />

Step<br />

object<br />

Robot<br />

Human vehicle<br />

室 内<br />

サービス 情 報<br />

マッチング<br />

ドアの 開 閉<br />

車 内<br />

押 す<br />

つかむ<br />

まわす<br />

マイニング<br />

意 図 認 識 プロファイリング<br />

サービス<br />

再 構 成<br />

サービス( 環 境 から ロボット<br />

ノード Action スキル 情 報 ) ルーム<br />

1. 相 互<br />

作 用<br />

状 況<br />

4.システムインテグレーション(1+2+3の 機 構 )<br />

好 み<br />

嗜 好<br />

趣 味<br />

の 獲 得<br />

2. 記 述 原 理<br />

スキル<br />

ひく<br />

ロボット 動 作<br />

押 す<br />

つかむ<br />

まわす<br />

ひく<br />

ロボット 動 作<br />

ロボット<br />

カー<br />

ノブ 式 扉<br />

引 き 戸<br />

回 転 扉<br />

自 動 扉<br />

環 境 情 報<br />

エアコン<br />

オーディオ<br />

ブレーキ<br />

ステアリング<br />

環 境 情 報<br />

環 境 から<br />

スキル<br />

獲 得<br />

Lv.1<br />

一 般 家 庭<br />

Lv.2<br />

iRoom<br />

Lv.1<br />

一 般 車<br />

環 境 から<br />

スキル<br />

獲 得<br />

Lv.2<br />

iCar<br />

図 2.2.4-3 Functional Design in Ambient Intelligence<br />

環 境 構 造 化 は、 図 2.2.4-3に 示 すように、4つの 基 本 柱 から 構 成 されるものと 考 えられる。 機<br />

能 デザインにおける 課 題 の 一 つは、 人 を 取 り 囲 む 空 間 における、 人 の 意 図 とロボットの 機 能 のマッピン<br />

グである。 人 の 行 動 を「テキスト」とし、 状 況 を「コンテクスト」、ロボットの 機 能 を「アクション」<br />

として、オントロジーを 構 築 することにより、ロボットが 人 を 理 解 し 状 況 に 合 わせたサービスを 行 うこ<br />

とが 可 能 となる 1) 。<br />

74


2)オントロジー<br />

1 環 境 を 考 慮 したジェスチャー 認 識<br />

人 間 との 相 互 作 用 への 適 用<br />

Text<br />

指 差 し<br />

頷 き<br />

Forward Right<br />

Ontology<br />

Intention<br />

Space object<br />

No intention<br />

robot<br />

move<br />

Pick-up<br />

parking<br />

Context 何 に 着 目 しているか<br />

何 を 指 差 しているか<br />

( 場 所 、 時 間 )<br />

人 の 動 き+ 状 況 ( 着 目 対 象 、 場 所 、etc)<br />

↓<br />

意 図<br />

Action<br />

移 動<br />

Pickup<br />

駐 車<br />

同 じ 動 作 でもシチュエーシ<br />

ョンによって 意 味 が 異 なる<br />

ロボット 間 で 知 識 を 共 有 。 個 々のロボットがそ<br />

れぞれ 自 分 に 見 合 った 仕 事 をする。<br />

図 2.2.4-4 Robots recognize human intention considering situation by ontology。<br />

顔 の 表 情 、 声 の 質 、 身 振 り 手 振 りなどの 非 言 語 情 報 はコミュニケーションにおいて 重 要 な 要 素 である。<br />

言 語 が 異 なる 地 域 においても、ボディーランゲージによってある 程 度 コミュニケーションをとることが<br />

できる。 非 言 語 情 報 のひとつであるジェスチャーは、 直 感 的 に 理 解 しやすくコミュニケーションを 円 滑<br />

に 進 めるために 重 要 な 役 割 を 担 っている。 日 常 生 活 で 用 いられる 様 々なジェスチャーの 中 でも、 指 差 し<br />

動 作 はロボットにおけるインタフェースとしても 重 要 である。 指 差 し 動 作 は 様 々な 場 面 で 利 用 されるた<br />

め、ロボットは 環 境 情 報 を 考 慮 することで、 自 律 的 に 行 動 を 選 択 することが 可 能 となる。 図 2。2。4<br />

-4に 指 差 し 動 作 による 人 とロボットとのコミュニケーションの 例 を 示 す。 様 々な 局 面 において、ユー<br />

ザは 指 差 しによってロボットを 指 示 与 えることが 考 えられ、ロボットはユーザからの 指 示 にしたがい、<br />

自 身 の 移 動 、オブジェクトの 移 動 、 駐 車 スペースへの 自 動 駐 車 などを 行 えるようになる 必 要 がある 2) 。<br />

2 環 境 情 報 の 利 用 とオントロジーの 獲 得<br />

Virtual Room<br />

Pointing Movement<br />

Text Human vehicle<br />

Ontology Action<br />

Arm Robot<br />

Text<br />

Ontology Action<br />

Text<br />

Ontology ActionCarry<br />

userthings<br />

move<br />

Set<br />

object stopmove<br />

stop<br />

Context<br />

Pointing Movement<br />

ロボットのオントロ<br />

ジーと 空 間 知<br />

Pointing Movement<br />

things Context point<br />

things Context point property<br />

things point property<br />

環 境 情 報<br />

指 差 し 情 報<br />

指 差 し 対 象 物 情<br />

報<br />

サービスの<br />

スキル 情 報<br />

等<br />

つかむ<br />

押 す<br />

載 せる<br />

( 待 機 )<br />

ロボット 動 作<br />

i-Room<br />

ペットボトル 等<br />

つかめない<br />

軽 いもの<br />

重 いもの<br />

図 2.2.4-5 Acquiring ontology from interaction with human<br />

75


人 の 動 作 の 意 味 を 理 解 するためには、 人 の 行 動 を 観 察 し 環 境 との 関 連 性 を 見 出 すことが 必 要 となる。<br />

学 習 によって、 日 常 動 作 を 発 見 し、 動 作 「テキスト」と 状 態 「コンテクスト」、 行 動 「アクション」か<br />

らなるオントロジーを 構 築 する 必 要 がある。<br />

環 境 にある 情 報 は 様 々であり、ロボット 内 にすべてを 作 り 込 むことは 不 可 能 である。オブジェクトの<br />

移 動 一 つ 取 り 上 げても、それぞれのオブジェクトに 対 して 適 切 な 移 動 のさせ 方 が 存 在 する。オブジェク<br />

ト 毎 に 必 要 な 動 作 、ドアノブであれば 位 置 や 半 径 、 開 錠 に 必 要 な 回 転 角 度 など、 製 品 ごとの 知 識 を 必 要<br />

な 時 にアクセスすることで、ロボット 内 へ 知 識 を 蓄 積 することなく、 環 境 に 適 した 行 動 をとることが 可<br />

能 となる。<br />

3) 階 層 化 RTサービス 環 境 構 築<br />

RTオントロジー<br />

環 境 構 造 化<br />

・ 知 能 化<br />

実 体 と 情 報 の<br />

一 致 一 体 化<br />

ユビキタス<br />

センサネットワーク<br />

RFIDタグ データマイニング<br />

ORBサービス<br />

関 係 機 能 処 理<br />

インターフェース<br />

プロファイル<br />

リポジトリ<br />

ネーミングサービス<br />

サービス<br />

作 業 タスク 動 作<br />

ミドルウェア<br />

モデル PIM PSM<br />

記 述 言 語<br />

システムツール<br />

tag<br />

ソフトウェア<br />

分 散 オブジェクト<br />

カプセル 化<br />

ロボットシステム 内 部<br />

機 器 組 込<br />

プロセス オブジェクト<br />

プロセッサ デバイス<br />

コンポーネント<br />

コントローラ アプリ<br />

省 配 線 機 械 拘 束 PnP<br />

図 2.2.4-6 RTサービスの 課 題<br />

RTサービスは、 環 境 に 分 散 したRTコンポーネント、および 人 に 対 して 具 体 的 な 物 理 的 サービスを<br />

提 供 する 個 体 のいわゆるロボットをネットワーク 化 し、 連 携 させることにより 提 供 される。RTサービ<br />

スは、その 環 境 の 中 に 存 在 ・ 生 活 する 生 活 者 、あるいはネットワークを 介 した 遠 隔 地 からの 支 援 者 の 意<br />

図 を 反 映 して 提 供 される。すなわち、RTサービスはRTシステム 環 境 内 における 人 に 意 図 を 反 映 した<br />

物 理 的 ・ 情 報 的 な 代 理 人 (エージェント)サービスということができる。このように、RTサービスは<br />

環 境 知 能 化 技 術 を 適 用 した 環 境 構 造 化 との 連 携 が 重 要 であるため、RTサービス・HRI(Human Robot<br />

Interaction)を 環 境 知 能 化 ・ 構 造 化 レベルに 応 じて、 環 境 提 供 サービス、RT 提 供 サービスの2 要 素<br />

に 分 けて 考 える。それぞれの 相 互 運 用 性 を 保 証 する 標 準 化 あるいは 規 約 制 定 の 実 現 、その 結 果 としての<br />

サービスモデル、ビジネスモデルを 構 築 する 必 要 がある。 課 題 を 図 2.2.4-6に 示 す。<br />

RTアプリケーション、RT 応 用 システムの 開 発 に 際 して、サービスモデルおよび、アプリケーショ<br />

ンならびにモジュールに 対 する 共 通 サービスを 提 供 するミドルウェアおよび 運 用 フレームワークを 規<br />

定 することにより、モデルベースの 設 計 が 可 能 となる。これにより、RT 開 発 成 果 の 相 互 利 用 を 促 進 し、<br />

ロボット 技 術 (RT)の 普 及 促 進 を 加 速 することが 可 能 となる。<br />

76


PART1<br />

アプリケーション<br />

サービスレベル<br />

モデル、データフレームワーク<br />

作 業 レベル<br />

モデル、データフレームワーク<br />

動 作 レベル<br />

モデル、データフレームワーク<br />

PART2<br />

アプリケーション<br />

共 通 API<br />

RTMW1<br />

ロボット<br />

プロファイル<br />

Common controller<br />

I/F<br />

コントローラ<br />

PART3<br />

コントローラ<br />

調 停 機 構<br />

RTMW2<br />

体 内 NW<br />

Vision Ctrl.<br />

Sensor Ctrl.<br />

Dev.Profile<br />

Dev.Profile<br />

Body Ctrl.<br />

Arm Ctrl.<br />

Robot A<br />

Robot B<br />

Dev.Profile<br />

Dev.Profile<br />

モータ<br />

アーム<br />

カメラ<br />

デバイス<br />

センサ<br />

図 2.2.4-7 Service layers of RT middleware<br />

RTミドルウェアサービスの 規 定 にあたって、 図 2.2.4-7に 示 す 次 の3つのパートに 分 割 ある<br />

いは、インタフェースを 考 えると 理 解 しやすい。<br />

・PART1:RTサービスモデル<br />

・PART2:RTアプリケーションサービスミドルウェア<br />

・PART3:RTコンポーネントサービスミドルウェア<br />

1RTサービス<br />

RT 機 器 を 利 用 、 連 携 してサービスを 提 供 する 際 、ユーザレベルからの 要 求 条 件 に 即 してシステムを<br />

構 築 するために 必 要 なプラットフォーム 非 依 存 なモデル(PIM: Platform Independent Model)とデ<br />

ータフレームワークを 与 える。レベルとしては、ロボット、RT 機 器 の 動 作 レベル、 一 連 の 動 作 を 組 み<br />

合 わせた 作 業 レベル、さらに 作 業 と 広 範 な 環 境 情 報 の 連 携 を 想 定 したサービスレベルの 階 層 が 想 定 され<br />

る。<br />

運 用 に 当 たっては、PIMから 個 々の 実 環 境 を 構 成 する 環 境 における 実 装 モデル(PSM: Platform<br />

Specific Model)を 生 成 するための、 実 際 の 組 み 込 み 機 器 、コントローラへの 実 装 コードを 生 成 する<br />

PSM-PIM 変 換 ツールの 研 究 開 発 が 必 要 となる。<br />

2ヘテロジニアスRTシステム 間 情 報 共 有 環 境<br />

3)<br />

専 用 システムとして 開 発 されたロボット 間 の 情 報 共 有 をはかり、サービス 環 境 構 築 フレームワークを<br />

確 立 する 必 要 がある。 ロボットに 関 するコントローラやミドルウェアは、 使 用 デバイスや 提 供 サービ<br />

ス・アプリケーションによって、 様 々な 使 い 分 けがなされている。 将 来 的 には、コントローラやミドル<br />

ウェア 間 をネットワークでつなぐことにより、 様 々なアプリケーションの 提 供 が 可 能 となることが 期 待<br />

される。<br />

そのためには、 単 一 の 規 格 に 集 約 するのではなく、 各 々の 規 格 の 特 徴 は 生 かしつつも、 必 要 最 小 限 の<br />

情 報 のみ 異 なる 規 格 間 でも 授 受 できるようなプロトコルとサービス(インターミドルウェアサービス)<br />

が 必 要 である。そして、 情 報 流 通 量 や 処 理 量 軽 減 化 の 観 点 から、そのプロトコルにおいて 情 報 は 一 定 レ<br />

ベルの 構 造 化 ・ 抽 象 化 がなされていることが 望 まれる。<br />

この 中 で、ローカルサービスとグローバルサービスのための 情 報 共 有 データ 構 造 、フロー 制 御 等 の 技<br />

術 を 確 立 する 必 要 がある。<br />

・ 遠 隔 地 の 操 作 者 の 代 理 人 としての 物 理 エージェントロボット<br />

77


・ 室 内 空 間 に 分 散 された、 環 境 センサによる、 人 の 行 動 モニタとログの 取 得<br />

・ 空 間 内 のRTシステム(ロボット、センサ、タグ 情 報 )の 相 互 連 携<br />

・ 共 通 コマンドセットによる 異 種 ロボットのサービス 制 御<br />

・ 遠 隔 データベースに 蓄 積 した 履 歴 情 報 を 活 用 した、RTサービスの 状 況 適 応<br />

・これらを 支 援 するミドルウェアと 事 象 記 述 のためのFDML(Field Data Markup Language)を 利 用<br />

した、 分 散 RTネットワークサービスシステムの 構 築<br />

これらにより、 空 間 知 能 化 と 状 況 に 適 応 した 生 活 支 援 のためのRTサービスシステム 構 築 技 術 が 確<br />

立 される。<br />

3タスクローカライゼーション<br />

作 業 の 空 間 依 存 性 に 着 目 し、 偏 在 性 と 局 在 性 の 統 合 による 作 業 実 行 情 報 環 境 の 構 成 法 を 研 究 する。 場<br />

所 依 存 性 を 利 用 することにより、 作 業 フレームが 簡 素 化 される 可 能 性 がある。<br />

すなわち、 作 業 情 報 の 完 備 (completeness)のため、「 場 所 」におけるタスクに 必 要 な 情 報 の 抽 出 、 限 定<br />

を 行 い、ロボットによる 作 業 レパートリ 確 定 、 物 体 や 環 境 に 埋 め 込 まれたICタグの 情 報 を 用 いること<br />

により、 物 の 存 在 ・ 属 性 などの 情 報 を 獲 得 し、 実 空 間 での 個 別 位 置 姿 勢 をネットワークサービスにより<br />

補 完 する。<br />

4RTサービス 運 用 のためのソフトウェアダウンロード<br />

上 記 のためには、RTオントロジーに 基 づく、レパートリ 情 報 の 空 間 分 散 化 による 作 業 保 証 系 の 構 築<br />

(フォルトトレラント)とタスクとレパートリのマッチングをとる、ディスカバリ 系 の 研 究 開 発 も 必 要<br />

となる。 既 存 ITのソフトウェアダウンロードは、 人 工 衛 星 の 運 用 の 例 を 除 いては、 以 下 の 特 徴 がある。<br />

・ 基 本 的 に 人 間 への 情 報 提 供 や、 機 器 のバグFixのため 人 間 系 の 介 在 を 前 提 としている<br />

・ネットワークはインターネットを 基 本 とし、ネットワークプロトコルは、HTTPやFTPが 通 るこ<br />

とが 前 提 とされている。<br />

・1 対 1のダウンロードを 基 本 としている。<br />

しかしながら 構 造 化 された 環 境 では、 機 器 自 らが 半 自 律 的 に 動 作 するためにデータ 取 得 を 行 う 必 要 が<br />

あり、そのため、そのデータ 取 得 が 行 われない 限 り、 正 常 な 運 用 ができない。この 点 は、 携 帯 電 話 やパ<br />

ソコンのように 人 間 が 対 面 して 使 う 機 器 と、 人 間 が 介 在 しなくても 構 造 化 された 環 境 から 知 識 を 得 なけ<br />

ればならないロボットとの 違 いとなる。また、 構 造 化 された 環 境 において、ICタグの 活 用 が 考 えられ<br />

ることを 想 定 すると、ロボットと 向 き 合 うネットワークプロトコルは、HTTPやFTPの 通 らないイ<br />

ンタフェースも 考 えておかなければならない。さらに、センサの 種 類 や、 複 数 ネットワークに 対 応 する<br />

ことが 必 要 である。<br />

制 御 に 必 要 なデータとしては 以 下 がダウンロードできれば 良 いか、ダウンロード 管 理 したいデータコ<br />

ンテンツは 以 下 で 良 いか 検 討 する。<br />

・ 環 境 認 識 に 必 要 なデータ( 地 図 等 )<br />

・モーションデータ<br />

・ 指 令 コマンド<br />

・コマンド 実 行 条 件 ( 時 刻 、イベント 等 )<br />

自 律 ダウンロードのため、ダウンロードトリガには、ロボット 側 から 環 境 をセンスする 必 要 がある。<br />

人 間 系 が 介 在 しないため、 異 常 発 生 時 の 追 跡 ができるように、ダウンロードの 履 歴 管 理 も 必 要 である。<br />

悪 意 のある 操 作 から 守 るため、 認 証 の 仕 組 みも 確 立 する 必 要 がある。また、どのような 事 態 に 陥 っても<br />

やってはいけない 制 約 条 件 を 抽 出 し、フェールセーフについても 考 慮 する 必 要 がある。センサ、アクチ<br />

ュエータ 個 別 に 管 理 するケース、それらの 群 で1つの 機 能 を 持 たせる 場 合 のサブ 単 位 ケース、ロボット<br />

個 体 ケース、ロボット 群 単 位 のケース 等 の 各 々で 必 要 な 情 報 は 異 なってくる。したがって、データ 構 造<br />

の 階 層 化 の 整 理 が 必 要 となる。<br />

78


5RTアプリケーションサービス<br />

今 後 、RTはさまざまな 日 常 環 境 ・ 機 器 に 埋 め 込 まれ、ユビキタス 社 会 において、 実 世 界 と 相 互 作 用<br />

するサービス 提 供 技 術 として 普 及 が 期 待 されている。この 際 、 機 器 固 有 のプロトコル、アプリケーショ<br />

ンインタフェースを 持 っていたのでは、 利 用 者 、インテグレータにとって 使 いにくく、かつ 製 造 者 にと<br />

っても 少 量 多 品 種 ゆえに、 高 コストとなるため、RTの 普 及 阻 害 要 因 として 働 く。アプリケーションソ<br />

フトから 呼 び 出 す 際 には 通 信 を 含 むインタフェース 仕 様 、データファイル 仕 様 、データ 交 換 規 約 に 共 通<br />

仕 様 を 利 用 することが 極 めて 重 要 となる。<br />

本 レイヤは、ロボットシステムが 保 有 する 資 源 にアプリケーションからアクセスするためのフレーム<br />

ワークを 規 定 し、ロボットシステム 内 部 は 対 象 としない。<br />

・ロボットを 記 述 する 標 準 化 されたフレームワークである 仮 想 ロボットクラスを 定 義 する。<br />

・この 仮 想 ロボットクラスに 従 い、ロボット 固 有 の 構 成 情 報 (プロファイル)を 記 述 する。<br />

・ミドルウェアは、プロファイルデータを 参 照 して、 個 々のロボット/デバイスのインスタンスを 生 成<br />

し、 実 ロボットとの 情 報 インタフェースを 提 供 する。<br />

これら 規 定 に 則 った 記 述 に 従 い、ロボットまたはデバイス 情 報 を 利 用 するアプリケーションプログラ<br />

ムは、 実 ロボット/デバイスの 実 装 情 報 を 知 ることなく、ロボット 内 部 情 報 をアクセスすることができ<br />

る。 既 存 の 産 業 システム 用 通 信 ミドルウェアであるORiNをはじめとして、RTアプリケーションに<br />

対 するミドルウェア 機 能 の 明 確 化 と 実 証 評 価 を 行 う 必 要 がある。<br />

6RTコンポーネントサービス<br />

オープンロボットコントローラアーキテクチャにおいては、まずネットワークで 接 続 したロボット 間<br />

あるいは 機 器 -ロボット 間 、さらにはロボット 内 の 腕 や 脚 などのパーツ 間 での 連 携 を 図 る。すなわち、<br />

ロボットコントローラを 構 成 する 軌 道 生 成 やサーボ 機 能 などのサービス 機 能 、さらに、ロボットコント<br />

ローラに 接 続 し 利 用 する、センサやアクチュエータなどのさまざまな 周 辺 機 器 を 簡 単 に 接 続 ・ 操 作 (プ<br />

ラグ&プレイ)できるようにするためには、コントローラ 内 部 のサービス 機 能 および、 各 周 辺 機 器 をコン<br />

トローラ 制 御 ソフトから 独 立 させ、 変 更 なし、あるいは 最 小 限 の 変 更 で 利 用 可 能 とすることが 必 要 で<br />

ある。 現 状 では、コントローラの 構 成 に 応 じて、 制 御 プログラムの 組 み 方 で 対 応 しているレベルだが、<br />

真 にロボットコントローラをモジュールの 組 み 合 わせで 構 成 し、 容 易 に 周 辺 機 器 を 接 続 可 能 とするため<br />

には 機 器 制 御 サービス 機 能 も 検 討 対 象 となる。これら 軌 道 生 成 機 能 モジュールをはじめとしてセン<br />

サ・アクチュエータモジュールおよびそのドライバに 対 するサービス 機 能 を 提 供 するミドルウェアを 総<br />

称 してRTコンポーネントサービスミドルウェアと 呼 ぶこととする。RTコンポーネントサービスミド<br />

ルウェアにおいては、リアルタイム 性 の 保 証 がキーとなる。 現 状 ではRTM-aistが 有 力 な 候 補 と<br />

なりうるが、 適 用 分 野 に 応 じたサービス 機 能 の 明 定 を 行 う 必 要 がある。<br />

現 RTミドルウェアはLinux+CORBA 環 境 で 動 作 しており、 組 込 系 への 適 用 は 十 分 ではない。<br />

産 総 研 の 安 藤 らのRTC-Lite、 水 川 らのRTC-CAN 4) などが 開 発 されているが、パフォーマ<br />

ンスの 改 善 と 開 発 環 境 の 整 備 が 求 められている。 研 究 では 実 装 プロセッサの 拡 大 とツール 開 発 、パフォ<br />

ーマンス 評 価 と 改 善 を 行 う 必 要 がある。<br />

同 時 に、コンポーネント、 機 器 ・デバイスの 機 能 仕 様 をたとえばXML(eXtensible Markup Language)<br />

で 構 造 定 義 (プロファイリング)し、これを 参 照 してシステムを 構 築 ・ 制 御 する 考 え 方 は 多 様 なユーザ<br />

ニーズにあわせてRTシステムを 構 築 し、ソリューションを 提 供 するためには 必 須 である。すなわち、 下<br />

位 のレイヤにおける 連 携 に 関 しては、 実 際 にはハードウェア・OS・ソフトウェアプラットフォームに<br />

依 存 しがちで、 開 発 時 に 再 利 用 性 とパフォーマンスのトレードオフとなりやすい。 将 来 的 にはさらに 高<br />

速 のCPUや 高 速 の 通 信 路 が 出 来 ればパフォーマンスの 問 題 は 減 るので 下 位 レイヤにおいても 標 準 化<br />

が 果 たす 役 割 は 大 きい。<br />

実 装 に 当 たっては、 特 にデバイスインタフェースと 密 接 にかかわる 内 部 ネットワークプロトコル( 体<br />

内 LAN)については、 通 信 容 量 、リアルタイム 性 などの 必 要 要 件 を 整 理 し、モジュール 追 加 のPnP<br />

方 式 、 制 御 ソフトのバージョンアップ 方 式 、デバイス 間 高 速 通 信 などについても 考 慮 する 必 要 がある。<br />

さらに、ハードウェアをラッピングすることにより、ソフトウェアモジュールと 同 等 に 扱 えるようにす<br />

79


るSDO 規 約 の 適 用 もRTコンポーネントのインテグレーションを 容 易 化 することが 期 待 できるため、<br />

普 及 の 重 要 な 技 術 となる。またアルゴリズムパッケージとしての 運 動 制 御 ・ 画 像 処 理 ・ 音 声 処 理 などの<br />

ライブラリについてはインタフェースの 統 一 が 必 要 である。<br />

7 情 報 構 造 化 へのソフトウェア 課 題<br />

5)<br />

サービスの 構 造 化 に 対 して、 単 にサービス 提 供 のための 実 行 環 境 の 構 築 については 現 状 技 術 の 応 用 で<br />

実 現 可 能 であると 思 われるが、ユビキタスなサービス 提 供 や 個 人 に 合 わせた 決 め 細 やかなサービス 提 供<br />

のためには、 環 境 およびサービスをどのように 統 一 的 に 記 述 するか、すなわちオントロジー 言 語 の 問 題<br />

や、そのオントロジー 言 語 といかに 連 携 するか、また、 個 々 人 の 趣 味 嗜 好 にあった 効 果 的 なサービス 提<br />

供 のため 人 間 の 意 図 理 解 や 行 動 分 析 および 学 習 機 能 をどのように 実 現 するかなどが 課 題 として 上 げら<br />

れる。<br />

次 世 代 ロボットの 応 用 が 期 待 されている 分 野 は 多 岐 にわたっているが、 広 範 囲 に 渡 って 応 用 可 能 なサ<br />

ービスのオントロジーを 構 築 するためには、 原 理 原 則 から 出 発 するトップダウンなアプローチが 有 効 で<br />

あろう。しかしトップダウンなアプローチを 行 うためには 対 象 とするサービスや 関 連 する 事 項 について<br />

かなりの 論 理 的 記 述 を 用 意 する 必 要 があり、 現 状 では 現 実 的 な 方 法 とは 言 いがたい。 特 にロボットによ<br />

るサービスの 特 徴 である 物 理 的 相 互 作 用 については、それを 厳 密 に 扱 うことは 実 用 的 とは 言 いがたい。<br />

そういった 意 味 から、デモのみに 陥 ることのない、 実 環 境 における 作 業 遂 行 性 を 実 現 することを 目 的<br />

に、まずは 具 体 的 なテーマに 絞 り 混 んで 語 彙 クラス 階 層 やオントロジー 記 述 を 整 備 していき、 領 域 に 特<br />

化 した 枠 組 みを 構 築 していくボトムアップなアプローチがまず 必 要 になってくると 思 われる。と 同 時 に、<br />

オントロジーの 乱 立 を 防 ぎ 相 互 運 用 性 を 確 保 するためにも、ボトムアップに 構 成 されていく 個 々のオン<br />

トロジー 記 述 法 をまとめあげるトップダウンなアプローチも 同 時 に 進 めていく 必 要 がある。<br />

以 上 述 べたように、ロボットは 物 理 属 性 ( 身 体 )を 持 つ、 実 世 界 と 相 互 作 用 するオブジェクトとして、<br />

捉 えることができる。ロボットを 構 成 するRTは 今 後 さまざまな 形 で 社 会 に 浸 透 し、サービスアプリか<br />

ら、 機 器 組 込 まで、さまざまな 形 態 でサービスを 提 供 し、 人 に 対 するサービスを 最 終 的 に 提 供 プロセス<br />

において、 他 の 機 器 、ロボット、 環 境 とネットワークを 介 して 物 理 的 、 情 報 的 協 調 を 行 わなければなら<br />

ない。<br />

RTがITと 大 きく 異 なるのは、ITは 論 理 世 界 のタスクであるのに 対 して、RTは 実 世 界 情 報 を 扱<br />

う 点 である。すなわち、RTサービスソフトウェアは 実 用 化 に 際 しては、 上 記 述 べた 諸 課 題 を 解 決 する<br />

必 要 があり、サービス 状 況 記 述 のためのRTオントロジーの 明 確 化 と 再 利 用 の 仕 組 み、RTミドルウェ<br />

アのサービス 規 約 とシステムフレームワークの 標 準 化 、 運 用 を 含 めたビジネスモデルの 構 築 実 施 が 強 く<br />

求 められている。<br />

2.2.5 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術<br />

(1) 技 術 課 題 の 概 要<br />

環 境 構 造 化 実 現 のために 必 要 な 技 術 は、 次 の3つに 大 別 される。<br />

・ 室 内 外 におけるシームレスな 測 位 技 術 と 情 報 の 入 出 力<br />

・ハウス 内 / 街 内 サービスモジュールの 開 発<br />

・サービスを 提 供 するための 情 報 構 造 化 とオープンなプラットフォームの 提 供<br />

測 位 技 術 については、GPS、 室 内 GPS(スードライト)そしてICタグなどがある。GPSは 位<br />

置 情 報 の 取 得 が 目 的 となるが、ICタグは 参 照 番 号 を 通 じて、さまざまな 作 業 情 報 や 環 境 情 報 の 取 得 と<br />

新 しい 情 報 の 提 供 をすることができる。<br />

次 に、 環 境 が 構 造 化 されただけでは、 人 間 とのインタラクションの 形 態 を 規 定 したことにはならない<br />

ため、 環 境 と 人 間 とのインタフェースとなり 得 る 家 電 製 品 や 家 具 などのサービスモジュール 開 発 が 求 め<br />

られる。さらに、 国 際 的 な 標 準 の 下 での 普 及 を 図 るため、RTミドルウェアなどを 軸 として、オープン<br />

化 されたさまざまなハードウェア 群 とソフトウェア 群 を 揃 える 必 要 がある。 特 に、RTミドルウェアに<br />

準 拠 した 通 信 用 ネットワークプロセッサは 早 期 の 開 発 が 望 まれる。<br />

80


(2) 技 術 ロードマップにおける 要 素 技 術<br />

環 境 構 造 化 の 主 たる 役 割 は、 人 ・ 家 具 ・ロボットの 位 置 情 報 取 得 や 住 宅 内 家 具 等 の 意 味 情 報 管 理 であ<br />

る。 住 宅 内 の 環 境 構 造 化 モデルは2005 年 に 経 済 産 業 省 が 発 表 した 技 術 ロードマップの 参 考 図 に 詳 し<br />

い( 図 2.2.5-1 参 照 )。この 図 に 含 まれる 主 たる 要 素 機 器 には 以 下 のものがある。いくつかの 機<br />

器 については 既 に2.2.4で 紹 介 しているが、ここではこれら 機 器 の 環 境 構 造 化 における 役 割 ・ 意 味<br />

を 中 心 にまとめ、 技 術 課 題 抽 出 の 基 礎 とする。<br />

1)ICタグ<br />

家 具 や 食 器 などに 付 けられており、 位 置 の 情 報 および 形 状 ・ 特 性 の 情 報 を 提 供 する。 位 置 情 報 は、ロ<br />

ボットのローカルなハンドリング 等 における 微 妙 な 物 体 間 の 相 対 位 置 の 把 握 に 活 かされる。 形 状 ・ 特 性<br />

情 報 は、 例 えばその 物 体 を 把 持 ・ハンドリングする 方 法 論 やそのスキルであり、ロボットは 自 らスキル<br />

を 獲 得 するのではなく、ICタグの 情 報 をもとに、ホームサーバーに 参 照 して 知 識 を 取 得 することにな<br />

る。<br />

2) 室 内 GPS<br />

スードライトに 代 表 される 室 内 でのGPS。 建 物 の 影 や 室 内 など、GPS 信 号 を 直 接 受 けられない 場<br />

所 用 に、GPSと 等 価 の 信 号 を 送 出 する 擬 似 衛 星 (スードライト)を 設 置 することで、 本 来 のGPSと<br />

シームレスに 位 置 を 特 定 することが 可 能 となる。 擬 似 衛 星 からの4ch 分 の 電 波 を 受 信 し 測 位 演 算 を 行<br />

うことで、いわゆる 衛 星 測 位 方 式 による 高 精 度 位 置 特 定 が 可 能 である。 遠 近 問 題 (GPS 電 波 と 干 渉 電<br />

波 の 強 さの 比 率 )、 時 刻 同 期 (GPSとの 時 刻 同 期 、 擬 似 衛 星 間 の 同 期 )、マルチパス( 電 波 の 反 射 )、<br />

初 期 座 標 ( 設 置 座 標 の 設 定 )など 実 用 化 には 解 決 すべき 問 題 も 多 いが、 数 cmの 精 度 で 位 置 情 報 を 得 る<br />

ことができる。また、 大 量 生 産 により 大 幅 なコストダウンが 可 能 である。<br />

3)ホームサーバーと 携 帯 端 末<br />

住 宅 における 環 境 情 報 構 造 化 の 中 心 的 役 割 を 担 う。ユビキタスの 情 報 は、 実 際 には 分 散 されているわ<br />

けではなく、ホームサーバーで 集 中 管 理 される。 例 えば、 新 しい 家 具 を 購 入 した 際 には、 付 属 のICカ<br />

ードを 読 み 取 らせることで、 寸 法 、 材 質 、 機 能 等 の 製 品 情 報 が 入 力 される。 次 に、 部 屋 の 中 で 設 置 した<br />

後 に、GPS 受 信 機 を 内 蔵 した 位 置 情 報 取 得 用 携 帯 端 末 に 家 具 の 特 定 の 位 置 ・ 向 きを 読 み 取 らせること<br />

で、その 家 具 の 位 置 情 報 がホームサーバーに 入 力 される。これによって、ロボットは 自 ら 部 屋 の 地 図 を<br />

作 らずとも、 家 具 を 含 めた3 次 元 の 部 屋 の 地 図 を 取 得 することが 出 来 る。<br />

また、 人 も 携 帯 端 末 を 所 持 することで、ホームサーバーにはサービスの 対 象 である 人 の 位 置 と 環 境 の<br />

マップおよび 必 要 となるサービスの 情 報 が 集 まり、ホームサーバーからロボットに 日 常 生 活 支 援 に 必 要<br />

な 情 報 を 伝 達 することができる。<br />

(3) 測 位 技 術 の 比 較 と 技 術 課 題<br />

環 境 情 報 構 造 化 を 進 めるにあたり 最 も 重 要 となる 技 術 開 発 課 題 の 一 つが、 人 やロボット、 家 具 などの<br />

位 置 を 正 確 に 獲 得 するための 測 位 技 術 (ポジショニング)である。 本 節 では、この 測 位 技 術 を 住 宅 環 境<br />

内 さらには 屋 外 へのシームレスな 位 置 決 めに 適 用 するための 各 種 技 術 について、その 特 徴 を 比 較 し、 技<br />

術 課 題 をまとめる。<br />

移 動 ロボットにおいて 一 般 的 な 位 置 決 めの 方 法 は、デッドレコニング(Dead Reckoning、<br />

推 測 航 法 )である。これはロボットに 内 蔵 されたエンコーダ 等 の 内 界 センサの 情 報 から、 相 対 的 な 位 置<br />

を 算 出 する 方 法 である。 技 術 的 には 簡 単 であるが、もともと 相 対 的 であるため、 精 度 や 屋 内 外 の 接 続 性<br />

における 安 定 性 に 問 題 がある。これを 補 うために、ビジョン、 超 音 波 センサ、レーザーレンジファイン<br />

ダなどのセンサを 組 み 合 わせる 方 法 がとられる。<br />

また、 地 図 情 報 と 外 界 センサを 組 み 合 わせた 方 法 も 一 般 的 であるが、 高 精 度 を 得 るにはいくつか 技 術<br />

課 題 がある。<br />

一 方 、ICタグは 安 定 性 には 優 れるが、パッシブタイプの 場 合 、 高 精 度 を 得 ることは 難 しく、 他 の 測<br />

81


位 技 術 と 組 み 合 わせて 用 いられることが 多 い。アクティブタイプの 場 合 は 高 精 度 は 得 られるが、コスト<br />

や 維 持 などが 課 題 となる。<br />

特 別 な 電 波 等 を 使 用 する 方 法 は、 精 度 は 得 やすいが、そのためのインフラ 整 備 が 必 要 となり、 屋 内 外<br />

シームレスの 実 現 も 難 しい。<br />

衛 星 測 位 技 術 は 容 易 に 高 精 度 を 得 ることができるが、 安 定 性 を 得 るための 制 御 方 法 の 確 立 が 課 題 とし<br />

て 残 されている。<br />

表 2.2.5-1に、 各 種 測 位 技 術 の 特 徴 を 示 す。<br />

最 も 高 い 性 能 が 得 られるのは、GPS、 室 内 GPS(スードライト)、ICタグ、デッドレコニング<br />

を 組 み 合 わせた 測 位 方 法 である。シームレスに 屋 内 外 で 高 精 度 な 測 位 ができ、 適 用 も 容 易 である。<br />

表 2.2.5-1 各 種 測 位 技 術<br />

System<br />

Seamless Positioning<br />

Outdoor<br />

Indoor<br />

Accuracy<br />

Stability<br />

Applicability<br />

to Robot<br />

Type<br />

Dead Reckoning ○ ○<br />

Active<br />

Beacon<br />

3 cm<br />

in a few meters<br />

△ ◎ Relative<br />

△ ○ 1 cm ○ △ Absolute<br />

GNSS ◎ × 3 cm △ ○ Absolute<br />

Pseudolite △ ◎ 3 cm △ ○ Absolute<br />

RFID Tags × ○ 10 cm ◎ ◎ Absolute<br />

Map-based<br />

Positioning<br />

Pseudolite +<br />

GNSS + RFID +<br />

Dead Reckoning<br />

△ ○ 5 cm ○ ○ Absolute<br />

◎ ◎ 3 cm ◎ ◎ Hybrid<br />

上 述 した、スードライト( 擬 似 衛 星 ) 技 術 は、<br />

・ 衛 星 数 増 加 による 測 位 の 精 度 向 上<br />

・ 都 市 部 や 山 間 部 などの 測 位 率 向 上<br />

・GPS 測 位 の 屋 内 への 拡 張<br />

などの 面 で 利 点 があるが、 表 2.2.5-2に 示 すように、 解 決 すべき 課 題 も 多 い。<br />

以 下 に、これらの 技 術 課 題 をまとめる。<br />

表 2.2.5-2 擬 似 衛 星 技 術 の 課 題<br />

課 題 内 容 検 討 項 目<br />

遠 近 問 題<br />

時 刻 同 期<br />

マルチパス<br />

初 期 座 標<br />

保 守 ・ 管 理<br />

GPS 電 波 との 干 渉<br />

電 波 の 強 さ<br />

GPS との 時 刻 同 期<br />

擬 似 衛 星 間 の 同 期<br />

電 波 の 反 射<br />

設 置 座 標 の 設 定<br />

保 守 ・ 管 理<br />

出 力 調 整 (パルス 化 )<br />

配 置 アルゴリズム<br />

シンクロライト(GPS 同 期 )<br />

ネットワークによる 同 期<br />

アンテナ 指 向 性 ( 配 置 )<br />

反 射 防 止<br />

地 図 データベース 参 照<br />

ネットワークによる 管 理<br />

コスト 低 コスト 化 LSI 化<br />

82


1) 遠 近 問 題<br />

GPS 衛 星 は 地 上 の 利 用 者 から 約 20,000km 離 れた 距 離 にあるが、 室 内 に 設 置 される 擬 似 衛 星<br />

と 利 用 者 との 距 離 はひじょうに 近 くなるため、 擬 似 衛 星 の 信 号 出 力 を 下 げる 必 要 がある。さらに、 距 離<br />

が 近 いと、 擬 似 衛 星 と 利 用 者 との 仰 角 が 大 きくなるため、 結 果 として 信 号 の 変 化 が 激 しくなり、 安 定 し<br />

た 受 信 が 難 しくなる。<br />

2)GPS 時 刻 同 期<br />

自 律 した 擬 似 衛 星 には、GPS 衛 星 と 同 等 の 原 子 時 計 相 当 の 時 刻 精 度 を 持 った 信 号 が 必 要 であるが、<br />

これは 現 実 的 ではない。そのために、GPS 衛 星 の 信 号 を 受 信 して 同 期 させることが 有 効 であるが、 室<br />

内 の 閉 鎖 空 間 ではGPS 信 号 の 受 信 が 難 しい。<br />

3)マルチパス<br />

障 害 物 などがあると、 信 号 が 反 射 して 誤 差 を 生 じさせる。 通 常 のGPS 衛 星 でもマルチパスは 問 題 と<br />

なるが、 室 内 空 間 では 特 に 壁 や 家 具 などの 障 害 物 が 近 くに 多 数 あるため、 大 きな 影 響 がある。<br />

4) 処 理 プログラム<br />

擬 似 衛 星 受 信 機 のファームウェアを 新 たに 開 発 する 必 要 がある。<br />

(4) 測 位 を 中 心 とした 技 術 課 題 の 例<br />

図 2.2.5-1に、 測 位 技 術 をベースとした 環 境 構 造 化 システム 構 築 の 際 の 技 術 課 題 の 一 部 をまと<br />

める。これは2.2.4 節 の 後 半 とも 関 連 するので、 合 わせて 参 照 されたい。<br />

このシステムでは、 具 体 的 に 得 られた 人 間 とロボットの 位 置 情 報 、 実 際 のロボットハードウェアスペ<br />

ック、 環 境 に 置 かれた 家 具 等 の 情 報 が、 適 切 な 拘 束 条 件 を 使 って 関 係 付 けられなければならない。さら<br />

に、ロボットと 家 具 や 壁 との 関 係 など、 人 間 へのサービスを 行 う 際 のロボットの 行 動 を 規 定 するルール<br />

を 記 述 しておく 必 要 がある。これらのシステムは、 実 際 にはホームサーバー 等 の 管 理 用 コンピュータ 上<br />

に 構 築 されることになるが、そこではこれらの 関 係 性 や 拘 束 条 件 をどのように 入 力 するか、 新 しい 家 具<br />

などのモジュールが 追 加 されたときに、どのようにその 情 報 を 入 力 するかなど、いわゆるインタフェー<br />

スの 機 能 も 開 発 課 題 となる。また、ミドルウェアの 観 点 からも、 上 記 の 機 能 を 実 現 するために 開 発 すべ<br />

きモジュールの 選 定 、それらの 統 合 技 術 など、 多 くの 技 術 課 題 がある。<br />

83


GPS<br />

シーリングカメラ スードライトアンテナ<br />

スードライトアンテナ<br />

家 ・ 部 屋 マップ タウンマップ<br />

インタネット<br />

生 活 モニタ<br />

TAG<br />

掃 除 ロボット<br />

TAG<br />

TAG<br />

ここを 掴 んで<br />

下 さい<br />

TAG<br />

アンテナ<br />

5kg 程 度 のハンドリング<br />

2015<br />

テーブル・イス<br />

を 部 屋 マップに<br />

登 録<br />

ホームサーバー<br />

部 屋 マップ<br />

「 片 付 ける」<br />

・ 床 の 上 の 物 を 認 識<br />

・ 各 物 体 を 定 位 置 に 戻 す<br />

2015 2025<br />

5mm 精 度 の3 次 元 視 覚 1mm 精 度 の3 次 元 視 覚<br />

10kg 程 度 の 可 搬 重 量<br />

4 本 指 ハンド<br />

2025<br />

2015<br />

ホームマップ<br />

ロボットコンフィギュレー<br />

ション<br />

タグリソースロケータ<br />

タスク 知 能 ・ 技 能<br />

個 人 健 康 管 理<br />

サービスアプリケーション<br />

2025<br />

「 片 付 ける」<br />

・ 床 の 上 の 物 を 認 識<br />

・ 各 物 体 を 任 意 に 位 置 変 更<br />

・ゴミの 選 別<br />

・ 収 集 日 にゴミ 廃 棄 場 所 へ 運 搬<br />

ホームマップ,タウンマップ<br />

ロボットコンフィギュレーション<br />

タスク 知 能 ・ 技 能<br />

健 康 医 療 管 理<br />

生 活 物 資 管 理<br />

ハードウェアコンポーネント<br />

ハードウェアコンポーネント<br />

component<br />

component<br />

ハードウェアコンポーネント<br />

component<br />

TAG<br />

掃 除 機 ロボットさん<br />

テーブルをよけて 下 さい!<br />

2015<br />

了 解 しました<br />

ホームネットワーク<br />

掃 除 機 ロボットさん<br />

テーブルの 周 りを 掃 除 して!<br />

2025<br />

1.イスを 掴 む<br />

2.イスを 後 ろに 引 く<br />

2015<br />

1. 掴 む 対 象 を 認 識<br />

2. 把 持<br />

3. 空 き 空 間 探 索<br />

4. 物 体 方 向 制 御<br />

2025<br />

RT ミドルウェア<br />

ソフトウェアコンポーネント<br />

ソフトウェアコンポーネント<br />

component<br />

ソフトウェアコンポーネント<br />

component<br />

ソフトウェアコンポーネント<br />

component<br />

component<br />

ロボットメーカ/サービスインテグレータ<br />

経 済 産 業 省 , ロボット 技 術 ロードマップ 2005<br />

図 2.2.5-1 環 境 構 造 化 と 要 素 技 術<br />

84


操 作 端 末<br />

環 境 センサ 群<br />

ブラウザ<br />

HTTP<br />

コ マ ン ド<br />

拘 束<br />

拘 束<br />

拘 束<br />

抽 象 オブジェクト 定 義<br />

関 係 ( 拘 束 ルール) 定 義<br />

例 )「ロボット」は「 壁 」を 通 れない<br />

「ロボット」は「 物 体 」を 操 作 できる<br />

3 次 元 仮 想 空 間<br />

オブジェクトの 位 置 ( 緯 度 ・ 経 度 ・<br />

高 度 )をリアルタムに 更 新<br />

環 境 センサインタフェース<br />

人 とロボット<br />

の 位 置<br />

ホームサーバ<br />

・ 3 次 元 仮 想 空 間 のリアルタイム<br />

更 新 アルゴリズムの 研 究<br />

・ 新 規 モジュール 動 的 追 加 の<br />

方 法 論 の 検 討<br />

・ 抽 象 オブジェクト 定 義 手 法 の 研 究<br />

RTミドルウェア<br />

ハウス 内 モジュール 群<br />

新 規 モジュールの 動 的 追 加<br />

コマンドセット<br />

オブジェクト 拘 束 ルール<br />

Move(d, dir)<br />

Turn(θ, cw/ccw )<br />

・・・<br />

実 モジュール<br />

オブジェクト 形 状<br />

図 2.2.5-2 環 境 構 造 化 と 関 係 性<br />

< 参 考 文 献 ><br />

1)“Intelligent Space and Human Centered Robotics”, Toru Yamaguchi and Eri Sato and Yasufumi<br />

Takama, IEEE Transaction on Industrial Electronics, Vol.50, No.5, pp. 881-889, 2003<br />

2)“Natural Interface using Pointing Behavior for Human-robot Gestural Interaction” Eri Sato,<br />

Toru Yamaguchi, Fumio Harashima, IEEE Transaction on Industrial Electronics (To be appear)<br />

3)“Enhancement of Versatility of the Agent Robot Operation Environment in the Physical Agent<br />

System- Proposal of Data Server Framework- “,Sumiko Takeda, Takenori Tsukikawa, Makoto<br />

Mizukawa, Toshihiro Inukai, Hirohisa Tezuka, Ken-ichiro Shimokura, Proc. SICE-ICASE<br />

International Joint Conference 2006, 2006<br />

4) ” Development of Light-Weight RT-Component (LwRTC) on Embedded Processor”, Yutaka Tsuchiya,<br />

Makoto Mizukawa, Takashi Suehiro, Noriaki Ando, Hiroyuki Nakamoto, Akihiro Ikezoe<br />

5) 「RT アーキテクチャのオープン 化 に 関 する 調 査 研 究 報 告 書 」,( 財 ) 機 械 システム 振 興 協 会 , 平 成 18<br />

年 3 月<br />

6)「GPS 擬 似 衛 星 システムの 現 状 と 課 題 」, 藤 井 健 二 郎 , 計 測 自 動 制 御 学 会 SI 部 門 学 術 講 演 会 , 平 成<br />

18 年 12 月<br />

85


2.3 作 業 現 場 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想<br />

2.3.1 作 業 現 場 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴<br />

作 業 現 場 分 野 においては、 作 業 目 的 が 明 確 であることから、 環 境 構 造 化 に 期 待 する 事 項 としては、 効<br />

率 が 優 先 であるものの、 昨 今 の 情 勢 などから、 安 心 ・ 安 全 、 環 境 保 全 、 利 便 性 、 高 齢 者 支 援 ・ 援 助 など<br />

を 向 上 させることも 考 慮 しながら、 効 率 を 上 げることが 求 められてきている。<br />

特 に 作 業 現 場 における 共 通 の 問 題 点 としては、2007 年 問 題 に 代 表 されるように、 作 業 者 の 高 齢 化<br />

と、 技 術 と 経 験 を 持 った 人 材 が 減 少 しており、 人 材 不 足 が 大 きな 問 題 である。<br />

また、 作 業 現 場 としてビジネスが 確 立 している 場 合 には、それぞれの 作 業 現 場 におけるビジネスのマ<br />

ーケット 構 造 が 大 きく 異 なる。 特 に 人 的 資 産 で 行 われていた 作 業 を 代 替 する 場 合 には、ロボット 技 術 が<br />

入 り 込 むためには 人 件 費 との 競 争 を 強 いられるが、 将 来 的 には 先 に 述 べた 人 材 不 足 問 題 からRT 技 術 の<br />

導 入 が 見 込 めるものの、 当 面 は 作 業 自 体 を 代 替 すると 言 うよりは、 人 間 の 作 業 を 物 理 的 に、 情 報 的 に 支<br />

援 する 技 術 が 必 要 であると 考 えられる。<br />

ここでは、 作 業 現 場 としてRT 技 術 が 期 待 されている 分 野 として、<br />

(1) 建 築 分 野<br />

(2) 土 木 分 野<br />

(3) 農 業 分 野<br />

(4) 災 害 分 野<br />

に 分 け、それぞれのサブ 分 野 における 作 業 の 特 徴 と、マーケット 形 態 を 明 らかにしながら、それぞれの<br />

シナリオベースに 議 論 を 行 うことで、 今 後 、 必 要 となる 環 境 構 造 化 技 術 の 洗 い 出 しを 行 う。<br />

建 築 分 野 に 関 しては、 建 物 本 体 の 施 工 業 者 、 建 物 内 部 の 電 気 設 備 業 者 、 水 道 設 備 業 者 、ガス 設 備 業 者<br />

等 、 様 々な 業 者 が 関 係 しており、それぞれの 業 者 が 建 物 の 施 工 スケジュールに 沿 って、 搬 入 、 施 工 、 搬<br />

出 を 個 別 進 められている。これらを 統 括 して 管 理 する 現 場 監 督 の 業 務 効 率 化 が 重 要 な 課 題 である。また、<br />

近 年 の 耐 震 偽 装 に 見 られる 社 会 的 問 題 に 対 して、 建 物 の 健 全 性 を 保 障 する 施 工 履 歴 の 管 理 も 重 要 な 課 題<br />

として 挙 げられる。 以 上 の 背 景 から、 建 物 の 施 工 管 理 において 効 率 化 が 可 能 なIT、RTの 導 入 におけ<br />

る 技 術 課 題 および、それに 伴 う 環 境 構 造 化 を 検 討 した。<br />

土 木 分 野 に 関 しては、 道 路 、トンネル、ダムと 言 った 建 築 分 野 以 上 の 幅 広 い 作 業 対 象 があり、 作 業 環<br />

境 も 都 市 、 山 岳 、 水 中 等 きわめて 多 岐 にわたっている。そこで 各 対 象 として 基 本 的 に 共 通 である 土 工 事<br />

を 対 象 とし、それに 使 用 される 建 機 の 高 度 化 についてのIT、RT 導 入 における 技 術 課 題 およびそれに<br />

伴 う 環 境 構 造 化 を 検 討 した。<br />

農 業 分 野 に 関 しては、 環 境 構 造 化 を 考 える 上 で、 屋 外 の 露 地 栽 培 と 屋 内 のハウス 栽 培 とに 大 きく 分 け<br />

る 必 要 がある。それぞれに 対 して 産 出 額 が 上 位 のものとして、 露 地 栽 培 では「 米 作 」「ミカン 栽 培 」、<br />

ハウス 栽 培 では「いちご 栽 培 」「トマト 栽 培 」を 対 象 とした。<br />

災 害 分 野 に 関 しては、 災 害 の 種 類 として、 大 都 市 での 震 災 を 想 定 した 広 域 災 害 の 救 助 支 援 と 地 下 街 と<br />

いった 閉 鎖 空 間 災 害 における 救 助 支 援 に 係 るIT、RT 導 入 における 技 術 課 題 およびそれに 伴 う 環 境 構<br />

造 化 を 検 討 した。 特 に 災 害 分 野 における 環 境 構 造 化 は、 他 の3つの 分 野 のように 前 もって 構 造 化 された<br />

環 境 でサービスを 提 供 する 形 態 ではなく、 壊 された 環 境 を 早 急 に 復 旧 できるための 環 境 構 造 化 という 点<br />

で 大 きく 異 なっている。<br />

2.3.2 建 築 分 野<br />

(1) 建 築 工 事 における 現 場 監 督<br />

1)ユーザの 選 定<br />

我 が 国 は 現 在 、 少 子 高 齢 化 が 増 々 進 み、 人 口 減 少 に 転 じている。 過 去 約 20 年 間 の 労 働 者 の 平 均 年 齢<br />

の 推 移 を 図 2.3.2-1に 示 す。 同 図 は、 建 設 業 と 製 造 業 および 全 産 業 の 労 働 者 平 均 年 齢 の 比 較 を 示<br />

し、 建 設 労 働 者 の 平 均 年 齢 が 他 産 業 に 比 べて 高 いことがわかる。こうした 状 況 は、 建 設 労 働 者 に 定 年 制<br />

86


がないことが 一 番 の 理 由 であるが、 若 い 世 代 の 建 設 業 への 就 業 率 が 低 い 一 方 、 離 職 率 が 高 いことも 一 因<br />

となっている。<br />

今 後 の10 年 間 は、 少 子 高 齢 化 の 影 響 や 労 働 者 のホワイトカラー 化 への 移 行 促 進 などにより、 建 設 労<br />

働 者 の 高 齢 化 や 技 能 労 働 者 不 足 が 今 より 顕 著 になることが 予 想 される。 建 設 業 を 若 い 世 代 にとって 魅 力<br />

ある 産 業 にし、 建 設 業 界 全 体 を 活 性 化 させるには、 高 等 な 技 能 を 伝 承 すべきところは 伝 承 できるような<br />

体 制 を 作 り 上 げ、 簡 略 化 すべきところは 極 力 単 純 化 して、 生 産 性 を 大 いに 向 上 させる 必 要 がある。また、<br />

製 造 業 と 比 較 して 低 いレベルにある 作 業 環 境 も 現 在 より 大 幅 に 改 善 する 必 要 がある。<br />

43<br />

42<br />

41<br />

平 均 年 齢 ( 歳 )<br />

40<br />

39<br />

38<br />

37<br />

36<br />

35<br />

全 産 業<br />

建 設 業<br />

製 造 業<br />

85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00 01 02 03<br />

図 2.3.2-1 労 働 者 平 均 年 齢 の 推 移 ( 厚 生 労 働 省 ホームページから 引 用 )<br />

建 築 工 事 は、 製 造 業 における 工 場 生 産 と 異 なり、 作 業 内 容 が 複 雑 で 種 類 が 多 く、それらの 作 業 工 程 が<br />

複 雑 に 絡 み 合 っているため、 現 場 に 複 数 の 現 場 監 督 が 張 り 付 き、 工 程 の 調 整 のほか、 品 質 管 理 や 安 全 管<br />

理 などと 合 せて 苦 心 しながら 施 工 管 理 を 行 っている。 建 築 工 事 にRTシステムを 導 入 することによって、<br />

施 工 管 理 の 効 率 や 生 産 性 が 大 きく 向 上 し、 作 業 環 境 が 大 幅 に 改 善 することが 期 待 できる。また、こうし<br />

た 変 化 によって、 建 設 労 働 者 の 得 られる 賃 金 が 上 昇 に 転 じ、 現 状 より 建 設 業 界 の 魅 力 が 向 上 するため、<br />

建 設 労 働 者 の 高 齢 化 や 技 能 労 働 者 不 足 に 歯 止 めが 掛 けられる 可 能 性 が 高 まる。<br />

以 上 のことから、 本 項 で 対 象 とするシナリオのユーザは、 建 築 工 事 における 現 場 監 督 とした。 具 体 的<br />

なユーザとして、 入 社 後 10 年 を 越 えた30 歳 台 の 中 堅 職 員 を 選 定 した。この 職 員 は、ITやRTを 積<br />

極 的 に 導 入 することによって、 自 らの 業 務 の 効 率 化 が 進 み、 残 業 時 間 や 休 日 出 勤 が 減 少 できることを 望<br />

んでいる。なお、 対 象 現 場 は 施 工 管 理 項 目 の 多 い 工 事 の 一 つであるマンションとした。マンション 施 工<br />

は、 顧 客 (マンション 購 入 者 )との 接 点 が 非 常 に 多 く、 仕 上 げを 始 めとする 品 質 管 理 項 目 が 多 い。<br />

2)システム 構 成<br />

通 常 、 現 場 監 督 は、 工 事 の 工 程 管 理 、 品 質 管 理 、 安 全 管 理 などの 施 工 管 理 業 務 を 行 っている。これら<br />

の 一 部 をRTシステムに 置 き 換 えることによって、 現 状 の 施 工 管 理 よりきめの 細 かい 効 率 の 良 い 施 工 管<br />

理 が 実 現 すれば、 現 場 に 常 駐 する 現 場 監 督 の 人 員 を 削 減 でき、 現 場 作 業 に 従 事 する 建 設 労 働 者 の 生 産 性<br />

が 大 幅 に 向 上 できる。また、 作 業 安 全 性 や 建 物 品 質 が 大 幅 に 向 上 すると 予 想 できる。RTシステムを 導<br />

入 した 建 築 工 事 現 場 の 状 況 を 図 2.3.2-2に 示 す。また、 同 図 において、 導 入 効 果 が 大 きいと 期 待<br />

できるRTシステムを 以 下 、 説 明 する。<br />

1「 現 場 内 パトロール」RTシステム<br />

カメラを 搭 載 した 移 動 ロボットによって、 現 場 内 をパトロールするRTシステムである。あらかじめ<br />

現 場 内 のマップをダウンロードした 移 動 ロボットは、 移 動 とともにマップを 更 新 する 機 能 を 備 える。 移<br />

動 体 は 外 部 との 通 信 によって 異 なる 技 術 を 併 用 したシームレスな 屋 内 リアルタイム 位 置 計 測 技 術 によ<br />

って 自 己 位 置 を 把 握 し、ICタグなどの 情 報 から 新 たな 障 害 物 を 理 解 して 現 場 内 のマップを 更 新 する。<br />

87


「 工 程 管 理 」RT システム<br />

5F<br />

躯 体 工 事 フロア<br />

「 現 場 内 パトロール」RT システム<br />

4F<br />

支 保 工 解 体 フロア<br />

「 資 材 揚 重 ・ 搬 送 」RT システム<br />

3F<br />

資 材 搬 送 フロア<br />

工 事 用<br />

エレベータ<br />

換 気 扇 温 湿 度 センサ<br />

結 露 防 止 自 動 開 閉<br />

「 建 築 現 場 内 制 御 」RT システム<br />

雨<br />

2F<br />

仕 上 工 事 フロア<br />

雨 感 知 センサ<br />

ICタグ<br />

1F<br />

仕 上 仮 置 フロア<br />

図 2.3.2-2 RTシステムを 導 入 した 建 築 現 場 の 状 況<br />

パトロールは 安 全 管 理 を 主 眼 に 行 うが、カメラの 機 能 は 現 場 内 の 安 全 に 関 するパトロール 以 外 に 資 材<br />

揚 重 ・ 搬 送 RTシステムが 問 題 なく 稼 働 できるか 通 路 状 況 の 確 認 、 工 程 管 理 RTシステムや 品 質 管 理 R<br />

Tシステムなどにも 幅 広 く 利 用 される。 移 動 体 は 資 材 を 積 載 した 台 車 を 牽 引 できる 機 能 を 備 えており、<br />

台 車 牽 引 時 には、 資 材 搬 送 RTシステムとして 稼 働 できる。<br />

2「 資 材 揚 重 ・ 搬 送 」RTシステム<br />

現 場 内 パトロールRTシステムの 移 動 ロボットに 台 車 を 牽 引 させることによって、 資 材 揚 重 ・ 搬 送 R<br />

Tシステムに 変 化 する。 資 材 揚 重 ・ 搬 送 は 事 前 の 予 約 に 基 づいて 行 われ、それと 連 動 して 資 材 搬 入 スケ<br />

ジュールが 作 成 され、 製 造 メーカに 自 動 的 に 連 絡 される 仕 組 みとなっている。 資 材 の 製 品 情 報 、 使 用 場<br />

所 、 一 梱 包 の 重 量 などの 情 報 は 資 材 に 貼 付 されたICタグを 読 取 ることで 確 認 できる。 揚 重 は 工 事 用 エ<br />

レベータによって 行 うため、 本 RTシステムでは、 工 事 用 エレベータへの 積 載 および 各 階 にて 工 事 用 エ<br />

レベータからの 荷 降 ろし、 各 階 の 資 材 搬 送 をそれぞれ 行 う。 各 階 での 資 材 搬 送 は、 夜 間 や 作 業 が 手 薄 な<br />

時 間 帯 に 行 うことを 前 提 としており、 搬 送 作 業 の 事 前 に 現 場 内 パトロールRTシステムによって 得 られ<br />

た 現 場 内 の 最 新 マップに 基 づき 作 業 を 行 う。 搬 送 作 業 に 支 障 を 来 たす 状 況 は、 現 場 内 パトロールRTシ<br />

ステムによって 情 報 を 得 ており、 事 前 に 担 当 会 社 へ 移 動 や 撤 去 など 速 やかに 連 絡 する。<br />

88


3「 工 程 管 理 」RTシステム<br />

前 日 に 計 画 した 作 業 内 容 と 当 日 の 作 業 進 捗 状 況 をICタグやカメラ 群 の 情 報 から 比 較 判 断 し、 業 種 ・<br />

業 社 ごとに 結 果 を 表 示 するRTシステムである。 各 作 業 を 行 う 作 業 員 は 施 工 が 完 了 した 建 材 に 貼 付 され<br />

たICタグを 読 取 り、 施 工 履 歴 を 蓄 積 する。また、 広 いエリアの 施 工 状 況 を 確 認 したい 場 合 は、 各 所 に<br />

配 備 されたカメラ 群 で 撮 影 された 知 能 化 写 真 を 利 用 する。<br />

4「 品 質 管 理 」RTシステム<br />

施 工 状 況 や 品 質 記 録 に 関 する 写 真 や 施 工 履 歴 情 報 に 基 づいて、 品 質 管 理 業 務 を 支 援 するRTシステム<br />

である。カメラ 群 から 得 られた 知 能 化 写 真 と 建 材 や 仮 設 材 に 貼 付 されたICタグを 読 取 ることで 得 られ<br />

る 施 工 履 歴 情 報 から 収 集 される。 本 RTシステムで 得 られたビル 建 設 時 の 品 質 管 理 情 報 は、オプション<br />

でマンション 購 入 者 に 提 供 され、マンション 管 理 組 合 などが 保 有 する 建 物 カルテに 移 行 させることでマ<br />

ンション 使 用 時 における 維 持 ・ 管 理 に 有 効 活 用 できる。また、ICタグには 施 工 履 歴 情 報 が 記 録 され、<br />

作 業 完 了 状 況 を 把 握 でき、その 情 報 は 工 程 管 理 RTシステムで 利 用 される。<br />

5「 建 築 現 場 内 制 御 」RTシステム<br />

建 築 工 事 現 場 内 の 各 所 に 設 置 されたセンサやカメラ 群 の 情 報 を 基 に 電 動 機 器 、セキュリティ 機 器 など<br />

を 総 合 的 に 制 御 するRTシステムである。 建 築 工 事 期 間 中 に 限 定 した 仮 設 使 用 ではあるが、 基 本 的 に 住<br />

宅 内 で 使 用 するRTシステムの 構 成 とほぼ 同 内 容 である( 一 部 、 防 滴 ・ 防 水 仕 様 が 必 要 な 場 合 有 )。 建<br />

築 現 場 内 を 制 御 する 項 目 として、 以 下 の 事 項 がある。<br />

・ 雨 検 知 機 能 付 自 動 開 閉 窓 システム<br />

・ 現 場 内 セキュリティシステム<br />

・ 自 動 照 明 ON-OFFシステム<br />

・ 結 露 防 止 用 自 動 換 気 システム<br />

表 2.3.2-1 RTシステム 実 現 に 必 要 な 技 術<br />

技 術 / 状 況<br />

無 線 通 信 のシームレス 接 続<br />

屋 内 リアルタイム 位 置 計 測<br />

無 段 差 部 自 律 移 動 + 牽 引<br />

ICタグの 利 活 用 状 況<br />

具 体 例<br />

各 種 無 線 通 信 技 術 併 用 型 のシームレスな 通 信 通 信 技 術 が 実 現<br />

各 種 技 術 併 用 型 のシームレスな 位 置 計 測 技 術 の 実 現 と 数 cmオーダーの 計 測 精 度<br />

3ton 未 満 の 資 材 を 牽 引 しながらの 自 律 移 動 が 実 現<br />

建 材 や 仮 設 材 にはすべてICタグが 貼 付 され、 各 種 情 報 が 記 録 される<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

ここでは、 上 記 のRTシステムで 利 用 する 環 境 構 造 化 技 術 および 同 技 術 により 得 られた 知 能 化 技 術 に<br />

ついてまとめる。また、RTシステムを 実 現 する 上 で 必 要 な 要 素 技 術 のスペックを 表 2.3.2-1に<br />

示 す。 環 境 構 造 化 技 術 と 得 られる 知 能 化 技 術 および 構 築 したRTシステムの 関 係 を 図 2.3.2-3に<br />

示 す。<br />

1 環 境 構 造 化 技 術<br />

・ICタグ<br />

建 設 資 材 に 貼 付 され、 知 能 化 写 真 の 撮 影 対 象 、 施 工 履 歴 情 報 の 取 得 や 移 動 ロボットの 位 置 計 測 に 利 用<br />

する。 施 工 履 歴 情 報 は 工 程 管 理 RTシステムや 品 質 管 理 RTシステムで 利 用 され、 位 置 情 報 は 現 場 内<br />

パトロールシステムや 資 材 揚 重 ・ 搬 送 システムに 利 用 される。<br />

89


・ 無 線 センサネットワーク<br />

センサを 現 場 内 に 大 量 に 配 置 するには、 無 線 センサネットワークの 利 用 が 有 効 である。 温 度 、 湿 度 、<br />

雨 検 知 、 人 検 知 などの 比 較 的 安 価 で 普 及 品 であるセンサーを 利 用 する。 計 測 は、1 分 程 度 から10 分<br />

程 度 の 比 較 的 長 いサンプリング 周 波 数 で 十 分 対 応 可 能 であるため、 消 費 電 力 も 少 なく、1 年 程 度 の 仮<br />

設 利 用 期 間 中 の 電 池 交 換 はほぼ 不 要 であると 考 えられる。 主 に 建 築 現 場 内 制 御 RTシステムに 利 用 さ<br />

れ、 場 合 によって 品 質 管 理 RTシステムの 付 加 情 報 として 利 用 される。<br />

・カメラ 群<br />

固 定 カメラは、カメラの 設 置 場 所 の3 次 元 座 標 が 既 知 であり、 移 動 カメラは、3 次 元 座 標 が 屋 内 位 置<br />

計 測 技 術 によって 既 知 となる。また、カメラに 内 界 センサを 取 付 けることでカメラの 向 きを 検 出 でき<br />

る。 得 られた 写 真 に 撮 影 日 時 、カメラの3 次 元 座 標 と 姿 勢 情 報 を 付 加 して 知 能 化 写 真 とすることがで<br />

きる。<br />

2 知 能 化 技 術<br />

・ 知 能 化 写 真<br />

写 真 は 撮 影 者 の 意 思 ・ 目 的 意 識 (いつ 何 を 何 の 目 的 でなど)が 低 い 場 合 、その 撮 影 意 義 を 低 下 させる。<br />

カメラ 群 で 膨 大 な 写 真 を 撮 影 し、その 中 から 任 意 の 現 場 監 督 にとって 意 味 のある 写 真 を 抽 出 するため<br />

には、 何 らかの 検 索 を 可 能 にするキーが 必 要 になる。 得 られた 写 真 に 撮 影 時 刻 と 撮 影 場 所 ・ 方 向 やI<br />

Cタグから 得 られる 撮 影 対 象 を 付 加 して 知 能 化 写 真 とすることで、 膨 大 な 写 真 データから 特 定 の 写 真<br />

を 抽 出 して 施 工 管 理 に 利 用 することができる。 撮 影 日 時 と 撮 影 対 象 が 限 定 できる 知 能 化 写 真 は、 施 工<br />

および 施 工 記 録 の 健 全 性 を 証 明 することができる 他 、3 次 元 CADデータと 比 較 することで 各 種 検 査 、<br />

確 認 業 務 などにも 利 用 できる。<br />

・ 施 工 履 歴<br />

マンション 購 入 者 にとって、 建 物 の 健 全 性 が 保 証 されることは 極 めて 重 要 である。 施 工 品 質 を 保 証 す<br />

る 手 段 は 数 多 くあるが、そのうち 最 も 有 効 であると 考 えられるのが、 施 工 状 況 の 写 真 記 録 とICタグ<br />

を 利 用 した 建 設 資 材 製 品 情 報 や 施 工 情 報 の 履 歴 である。ここでは、 知 能 化 写 真 とICタグに 記 録 され<br />

た 情 報 を 利 用 し、その 目 的 に 応 じて 検 索 、 絞 込 みを 行 うことで 必 要 な 施 工 履 歴 情 報 を 得 ることができ<br />

るようにする。その 技 術 によって、 住 戸 ごとに 施 工 履 歴 情 報 を 簡 単 に 分 類 できるようになるため、 施<br />

工 履 歴 情 報 のオプション 販 売 などのサービス 提 供 も 可 能 になる。<br />

・ 工 事 状 況 把 握<br />

建 材 や 仮 設 材 に 貼 付 されたICタグを 施 工 完 了 の 段 階 に 自 動 または 手 動 で 読 取 ることで 施 工 完 了 情<br />

報 を 収 集 でき、 蓄 積 することで 施 工 履 歴 情 報 が 得 られる。また、カメラ 群 から 比 較 的 広 いエリアの 知<br />

能 化 写 真 を 収 集 でき、 工 事 状 況 の 把 握 ができる。あらかじめ 作 成 した3D-CADデータと 知 能 化 写<br />

真 を 比 較 することで、 施 工 の 進 捗 状 況 を 理 解 することができる。<br />

・ 環 境 制 御<br />

センサの 設 置 期 間 が 短 く、センシングのサンプリング 周 波 数 が 低 い 建 築 工 事 現 場 では、 省 配 線 が 可 能<br />

な 無 線 センサネットワークの 利 用 が 有 効 である。センサ 情 報 として、 温 度 、 湿 度 、 雨 検 知 、 人 検 知 な<br />

どの 情 報 を 取 得 し、 雨 検 知 機 能 付 自 動 開 閉 窓 システム、 現 場 内 セキュリティシステム、 自 動 照 明 ON<br />

-OFFシステム、 結 露 防 止 用 自 動 換 気 システムなどのシステムを 制 御 する。<br />

・ 半 屋 内 における 自 律 移 動<br />

建 築 物 などの 上 方 空 間 を 構 造 体 で 遮 蔽 された 屋 内 空 間 ではGPSなど 公 共 の 位 置 計 測 サービスを 利<br />

用 できないため、 屋 内 GPSや 建 材 に 貼 付 されたICタグ、 特 殊 マーカーを 利 用 した 移 動 カメラによ<br />

る 位 置 計 測 技 術 など 異 なる 技 術 を 併 用 したシームレスな 屋 内 リアルタイム 位 置 計 測 技 術 が 必 要 であ<br />

る。 数 cmオーダーの 位 置 検 出 精 度 が 得 られれば、 移 動 体 には 内 界 センサを 搭 載 する 必 要 がない( 無<br />

線 通 信 モジュールのみ 必 要 である)。ICタグによって、 新 たな 障 害 物 を 検 知 した 場 合 には、 移 動 体<br />

内 の 現 場 マップを 逐 次 更 新 させて 安 定 した 自 律 移 動 性 能 を 確 保 する。<br />

90


環 境 構 造 化 技 術 知 能 化 技 術 システム 構 成<br />

・ ICタグ ・ 知 能 化 写 真 ・ 現 場 内 パトロール<br />

・ センサーネットワーク ・ 施 工 履 歴 ・ 資 材 揚 重 ・ 搬 送<br />

・ カメラ 群 ・ 工 事 状 況 把 握 ・ 工 程 管 理<br />

・ 環 境 制 御 ・ 品 質 管 理<br />

・ 半 屋 内 における 自 律 移 動 ・ 建 築 現 場 内 制 御<br />

図 2.3.2-3 環 境 構 造 化 技 術 と 知 能 化 技 術 およびRTシステムの 関 係<br />

(2) 建 築 工 事 作 業 に 携 わる 協 力 会 社 の 職 長<br />

1)ユーザの 選 定<br />

ここでは、 実 際 に 建 築 工 事 作 業 に 携 わる 協 力 会 社 ( 内 装 工 事 担 当 の 工 務 店 )の 職 長 を 想 定 する。 大 手<br />

建 設 会 社 が 施 工 する 都 内 の 超 高 層 マンションの 施 工 を 担 当 している。 管 理 する 作 業 者 数 は 日 によって 前<br />

後 するが、おおよそ10 名 程 度 となっている。ここで、 協 力 会 社 とは、 工 事 の 元 請 である 建 設 会 社 と 請<br />

負 契 約 関 係 にあり、 建 設 会 社 の 指 導 監 督 下 において 実 際 の 工 事 を 遂 行 する 立 場 にある。 建 設 会 社 各 社 の<br />

受 注 コストが 低 下 する 中 、 協 力 会 社 各 社 もより 多 くの 利 益 を 確 保 するために、さらなる 施 工 の 合 理 化 が<br />

求 められている。<br />

最 近 は、 建 設 会 社 から 特 に 工 期 短 縮 を 再 三 要 望 されている。 施 工 の 合 理 化 には、 工 期 短 縮 が 最 も 有 効<br />

な 手 段 であるため、 工 期 短 縮 を 実 現 すれば、 競 争 力 のある 協 力 会 社 として 建 設 会 社 から 良 い 評 価 を 受 け<br />

る。 工 期 が 短 縮 できれば、 自 分 の 会 社 の 人 件 費 を 抑 えられる。その 反 面 、 品 質 を 落 とすことは、 耐 震 偽<br />

装 事 件 を 例 に 取 るまでもなく、 以 後 の 企 業 活 動 が 立 ち 行 かなくなる。そのためには、 優 秀 な 職 人 の 確 保<br />

と 不 具 合 の 少 ない 確 実 な 施 工 が 一 番 である。とはいえ 現 場 施 工 においては、どうしても 不 具 合 箇 所 や 手<br />

戻 り 作 業 が 発 生 する 箇 所 が 出 てくる。それらを 如 何 に 少 なく 抑 え、すばやくクリアするかが 職 長 として<br />

の 経 験 の 見 せ 所 でもある。<br />

しかし、 作 業 工 程 は 他 業 種 の 協 力 会 社 の 状 況 にも 左 右 されやすく、 時 として 丸 1 日 作 業 に 取 りかかれ<br />

ず、 無 駄 な 作 業 手 配 になる 場 合 もある。これは、 時 間 と 金 の 無 駄 であり、その 解 決 は 建 設 会 社 と 協 力 会<br />

社 間 の 連 絡 の 徹 底 が 不 可 欠 である。しかし、 日 々 変 化 する 作 業 現 場 の 状 況 をすぐに 把 握 することはなか<br />

なか 難 しいことである。<br />

また、 資 材 の 現 場 搬 入 に 関 しても、 工 程 通 り 手 配 されていれば 問 題 はないが、どうしても 手 配 ミスや<br />

納 入 の 遅 れが 発 生 する。 都 市 部 では、 敷 地 が 狭 い 現 場 が 多 いので、 資 材 の 仮 置 場 所 を 十 分 に 確 保 できる<br />

現 場 は 少 ない。 適 時 資 材 が 入 ってくる 簡 単 な 仕 組 みがあると 仕 事 もやりやすくなるだろう。<br />

また、 横 の 連 携 という 意 味 で 各 作 業 員 がどこで 働 いているかを 把 握 することは、 作 業 の 連 携 や、 安 全<br />

の 面 からも 必 要 になっていると 感 じられる。 特 に 建 設 作 業 は、 危 険 と 隣 りあわせなので、いざというと<br />

きの 備 えは 様 々な 面 で 対 応 したい。<br />

しかし、これらの 効 率 化 は 資 金 ならびに 運 用 の 面 からも 協 力 会 社 単 独 で 完 遂 することは 難 しい。 元 請<br />

である 建 設 会 社 の 協 力 の 下 、 開 発 ・ 導 入 が 現 実 的 であろう。<br />

2)システム 構 成<br />

(1) 建 築 工 事 における 現 場 監 督 のように、 協 力 会 社 にとっても、 業 務 の 効 率 化 に 用 いるRTシステム<br />

は 建 設 会 社 と 共 用 することになる。RTシステムと 情 報 を 共 有 することが、 協 力 会 社 の 施 工 の 効 率 化 に<br />

対 しても 最 も 有 効 であるからである。そして10 年 後 の 協 力 会 社 の 職 長 にとっても、いつでもどこでも<br />

現 場 の 状 況 を 把 握 できるシステムは 有 効 性 を 発 揮 すると 考 えられる。<br />

91


(X,Y,Z)<br />

Position<br />

Schedule<br />

2F.B-2<br />

1F,A-1<br />

Auto logistics<br />

Check!<br />

協 力 会 社<br />

ゼネコン<br />

図 2.3.2-4 RTシステム 導 入 後 の 情 報 共 有 のイメージ<br />

1「 工 程 管 理 」RTシステム((1)と 共 通 )<br />

現 場 の 効 率 的 な 運 用 を 目 指 し、 建 設 会 社 と 協 力 し、 現 場 の 運 用 管 理 情 報 システムとして「 工 程 管 理 」<br />

RTシステムが 導 入 されている。 現 場 作 業 の 要 となるこのシステムは、1 日 の 作 業 の 最 後 に 皆 の 作 業 状<br />

況 を「 工 程 管 理 」RTシステム 共 用 の 端 末 に 記 入 するだけですむ。これを 見 れば 他 業 種 の 工 程 の 進 捗 も<br />

見 ることができるので、 人 員 配 員 を 計 画 するためには、 不 可 欠 のシステムである。 協 力 会 社 の 本 社 機 能<br />

側 は、 各 現 場 の 職 長 から 送 られるこの 情 報 を 元 に、 当 該 現 場 以 外 も 含 めた 担 当 の 現 場 への 人 員 配 置 計 画<br />

を 的 確 に 設 定 することが 可 能 となる。 適 切 な 配 置 計 画 は、 無 駄 な 人 件 費 を 抑 えることに 直 結 する。この<br />

RTシステムにより、 時 間 をもて 遊 ぶ 職 人 が 大 幅 に 削 減 できるようになる。<br />

2「 資 材 揚 重 ・ 搬 送 」RTシステム((1)と 共 通 )<br />

また、 上 記 「 工 程 管 理 」RTシステムに 連 動 して、 夜 間 に 資 材 を 自 動 的 に 搬 送 してくれる「 資 材 揚 重 ・<br />

搬 送 」RTシステムも 導 入 が 進 むであろう。 資 材 を 各 作 業 場 所 へジャストインタイムで 供 給 することが<br />

可 能 となるため、 実 際 に 資 材 を 取 付 ける 側 としては、 手 戻 りや 資 材 の 到 着 待 ちを 最 小 限 に 抑 えた 作 業 が<br />

可 能 となる。これは、 作 業 工 程 の 短 縮 や 要 員 の 最 適 な 配 置 にもつながるので、 人 件 費 を 抑 える 有 効 な 手<br />

段 となる。さらに、エレベータの 利 用 が 混 雑 しない 夜 間 に 必 要 な 資 材 を 所 定 のフロアに 運 んでおいてく<br />

れるこのRTシステムは、 職 人 にとってはすぐに 仕 事 に 入 れるので 非 常 にありがたい。<br />

3「 品 質 管 理 」RTシステム((1)と 共 通 )<br />

同 システムが 提 供 する 写 真 を 利 用 した 品 質 管 理 システムは、「 百 聞 は 一 見 にしかず」の 通 り、 現 場 監<br />

督 や 他 の 協 力 会 社 との 意 思 相 通 を 間 違 いのないものとしている。これにより、 手 戻 りやミスを 最 小 限 に<br />

抑 えた 施 工 を 実 現 することができる。「 品 質 管 理 」RTシステムを 介 して 示 される 不 具 合 状 況 も 映 像 ・<br />

音 声 つきで 送 信 されるので、 内 容 も 直 ぐわかるし、すばやい 対 処 につながっている。<br />

上 記 以 外 に、 実 際 に 施 工 に 当 たる 際 に 協 力 会 社 を 支 援 するものとして、 以 下 のRTシステムが 考 えら<br />

れる。<br />

4「スタッフ 位 置 管 理 」RTシステム<br />

協 力 会 社 の 各 作 業 員 の 現 場 内 での 配 置 を 逐 次 モニタリングするためのRTシステムである。 現 場 での<br />

92


作 業 は 時 々 刻 々と 変 化 するため、 時 として 作 業 員 の 相 互 協 力 を 必 要 とする 作 業 が 発 生 する。そのような<br />

場 合 、 常 に 作 業 員 配 置 が 把 握 できることで、 適 切 に 協 力 人 員 の 選 択 依 頼 を 行 うことができる。「 工 程 管<br />

理 」RTシステムや「 品 質 管 理 」RTシステムを 通 して、 不 具 合 箇 所 の 手 直 しについて 急 に 連 絡 があっ<br />

たとしても、 現 場 で 直 ちに 近 くにいる 職 人 を 集 めて 処 置 を 施 すことができる。<br />

さらには 安 全 の 面 からも、 突 発 的 な 事 故 が 起 こった 際 の 安 全 確 認 、 救 助 支 援 においても 有 効 となる。<br />

5「 位 置 合 わせ 情 報 サポート」RTシステム<br />

建 築 資 材 の 取 付 ける 位 置 を 正 確 に 行 うためのRTシステムである。 現 場 で 利 用 される 資 材 数 は 膨 大 で<br />

あり、そのすべてを 所 定 の 位 置 に 正 確 に 配 置 ・ 取 付 けることが 要 求 される。しかし、 外 見 が 類 似 の 資 材<br />

も 多 く、 時 として 違 ったものが 取 り 付 けられる、 向 きが 違 う、 位 置 が 違 う、 等 のミスを 発 生 させる。<br />

本 システムは、そのようなミスをなくすために、 資 材 に 貼 付 されたICタグの 情 報 に 基 づき、 資 材 の<br />

最 終 的 な 位 置 情 報 を 持 つCAD 情 報 と 連 動 させることによって、 取 付 けミスのない 施 工 を 実 現 する。ま<br />

た、 資 材 の 取 付 け 情 報 は、 上 位 の「 工 程 管 理 」・「 品 質 管 理 」RTシステムへも 情 報 を 反 映 する。<br />

また、 特 に 取 付 け 精 度 を 要 求 される 資 材 では、「 現 場 内 パトロール」RTシステムのうち、 特 に 測 量<br />

機 能 を 高 度 化 させた 移 動 型 測 量 RTシステムの 支 援 により、 資 材 の 取 付 け 精 度 を±1cm 以 内 に 収 める<br />

ことが 可 能 である。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

協 力 会 社 側 が 利 用 するRTシステムは、(1)と 大 きく 変 わらないため、そこで 利 用 される 環 境 構 造<br />

化 技 術 ならびに 知 能 化 技 術 もほぼ 同 様 である。ここでは、 協 力 会 社 側 が 利 用 するRTシステムにおいて、<br />

特 に 説 明 が 必 要 なものについて 記 述 する。<br />

1 環 境 構 造 化 技 術<br />

・ICタグ<br />

建 設 資 材 に 貼 付 される 以 外 にも、 作 業 員 各 員 がIDカードとして 携 帯 する。これらの 情 報 を 利 用 して、<br />

「スタッフ 位 置 管 理 」RTシステムが 運 用 される。 利 用 するICタグとしては、 通 信 距 離 の 面 ではア<br />

クティブ 型 が 良 いと 考 えられるが、 作 業 員 各 員 のID 情 報 は「スタッフ 位 置 管 理 」RTシステム 以 外<br />

にも 多 くの 利 用 先 があり、 電 池 内 蔵 を 基 本 とするアクティブ 型 より 通 信 距 離 の 長 いUHF 帯 のパッシ<br />

ブ 型 の 方 が 応 用 性 が 高 い。<br />

2.3.3 土 木 分 野<br />

道 路 工 事 、トンネル 工 事 、ダム 工 事 など、 土 木 分 野 には 多 数 の 工 事 の 種 類 があり、 施 工 する 場 所 も、<br />

都 市 、 山 岳 、 水 中 と、きわめて 多 岐 にわたる。それらのすべてを 取 り 上 げることは 困 難 なので、ここで<br />

はどの 工 事 にもほぼ 含 まれている「 土 工 事 」を、 土 木 分 野 の 代 表 的 な 作 業 と 考 え 検 討 の 対 象 とする。<br />

(1) 建 設 機 械 工 事<br />

1)ユーザの 選 定 : 建 設 機 械 オペレータ<br />

Aさん(63 歳 )は、 土 木 施 工 会 社 に 勤 務 する 建 設 機 械 のオペレータである。 Aさんのオペレータと<br />

しての 経 験 は 今 年 で40 年 になる。 初 期 の 完 全 に 手 動 式 の 建 設 機 械 から、 最 近 の 半 自 動 化 された 新 しい<br />

機 械 まで、 豊 富 な 運 転 経 験 がある。63 歳 のAさんは、ひと 昔 前 ならばとうに 現 役 を 引 退 している 年 齢<br />

である。しかし 最 近 の 知 能 化 建 機 では、 優 れた 視 力 と 集 中 力 を 要 する 直 線 仕 上 げ 掘 削 のような 難 しい 操<br />

作 は、 機 械 がほぼ 自 動 でやってくれるので、ほとんど 年 齢 を 感 じることもなく 乗 務 を 続 けている。<br />

・202X 年 2 月 X 日 、 今 日 の 仕 事 は、B 国 際 空 港 の 拡 張 工 事 である。<br />

充 電 器 の 上 に 置 かれた 自 分 のヘルメットを 取 り 上 げた。 以 前 の 無 骨 なヘルメットとは 違 い、 現 在 着 用<br />

93


しているのは、 掘 削 のガイダンスなどを 表 示 するアイマウントディスプレイや 音 声 ガイダンスのスピー<br />

カ、 生 体 認 証 用 の 網 膜 カメラ、ICタグなどが 組 込 まれたIT 端 末 の 機 能 を 備 えている。 顎 の 下 のベル<br />

トをカチリと 締 めて 駐 機 場 へ 向 かう。 今 日 の 担 当 機 種 は20tonクラスの 中 型 油 圧 ショベルだ。<br />

機 械 に 搭 乗 する。 安 全 ベルトを 締 めてスタートボタンを 押 した。エンジン 始 動 とともにすぐに 機 械 の<br />

健 康 チェックが 始 まる。このチェックシステムは、 機 械 の 健 康 状 態 をリアルタイムに 監 視 している。チ<br />

ェックの 結 果 は、 事 務 所 の 機 械 管 理 コンピュータと 建 機 ディーラのコンピュータに 送 信 されていて、 異<br />

常 があればその 対 応 が 直 ちに 運 転 席 のモニター 上 に 表 示 される。モニター 上 には、「すべてOK」のサ<br />

インが 表 示 された。<br />

ヘルメットのICタグ 認 証 で、 機 械 の 操 作 フィーリングはすでにAさんの 好 みに 書 き 換 えられている。<br />

つづいて「 本 日 の 作 業 」ボタンを 押 した。モニター 上 に 今 日 の 作 業 内 容 が 表 示 される。 今 日 の 作 業 は 構<br />

造 物 の 建 設 部 分 の「 床 付 掘 削 」だ。モニター 上 の「データ 受 信 済 」のサインを 確 認 した。これが 受 信 で<br />

きていれば、 作 業 の 詳 細 は 機 械 が 現 場 でガイダンスしてくれるので 何 の 不 安 もない。さぁ、いよいよ 今<br />

日 の 作 業 の 始 まりだ。<br />

バケットを 上 げ 走 行 レバーを 押 して 駐 機 場 を 出 発 する。いったん 駐 機 場 のフロントヤードにあるサー<br />

クル 内 に 機 械 を 入 れ、 自 動 走 行 のボタンを 押 す。ここからは 自 動 走 行 で 機 械 が 現 場 に 誘 導 してくれる。<br />

この 現 場 にある 車 両 の 位 置 は、すべて 高 精 度 のGPSで 把 握 されており、 適 正 な 運 転 間 隔 に 運 行 管 理 さ<br />

れているので 安 心 である。5 分 ほどかって 現 場 に 到 着 した。<br />

現 場 に 到 着 後 、 車 載 のステレオカメラをONにして 周 辺 地 形 の3 次 元 形 状 を 読 み 取 らせた。 事 前 にG<br />

PS 測 量 された 地 形 データがすでに 機 械 に 転 送 おり、 車 載 コンピュータが 両 者 の 一 致 を 確 認 した。モニ<br />

ター 画 面 上 には、「 実 画 像 」、「 測 量 データ」、「 設 計 データ」が 重 ね 合 わせて 表 示 されている。もち<br />

ろん 視 点 の 変 更 も 自 在 である。<br />

つづいて「ガイダンス」のボタンを 押 した。 画 面 上 に 掘 削 開 始 点 が 表 示 された。 走 行 レバーを 操 作 し<br />

て 機 械 を 移 動 させ、バケットを 動 かして 歯 先 を 開 始 点 に 合 わせた。 掘 削 開 始 だ。バケットには 掘 削 領 域<br />

制 限 が 働 いているので 仕 上 げ 線 を 超 えて 掘 削 してしまう 心 配 はない。また 歯 先 軌 跡 がモニター 上 に 表 示<br />

されているので 確 認 も 容 易 だ。 作 業 中 の「 土 工 量 / 消 費 燃 料 」は、 随 時 通 信 回 線 でホストコンピュータ<br />

に 送 られている。 効 率 的 な 掘 削 軌 跡 がモニター 上 にガイダンス 表 示 されるので、 掘 削 軌 跡 をなるべくこ<br />

れに 合 わせるように 操 作 する。 機 械 が 自 分 好 みの 操 作 フィーリングになっているので 操 作 はとても 楽 だ。<br />

また 転 倒 抑 制 システムが 働 いているので、 誤 った 機 械 操 作 でバランスを 崩 してしまうようなこともない。<br />

無 人 ダンプトラックがやって 来 た。 無 人 ダンプは、こちらの 機 械 の 位 置 をGPSのデータから 把 握 し<br />

ていて、 積 み 込 みに 最 適 な 位 置 まで 来 て 自 動 停 止 した。 排 出 土 をダンプトラックに 積 み 込 む。 操 作 パネ<br />

ルの「 積 込 モード」を 選 択 する。ダンプの 位 置 を 車 載 カメラが 認 識 して 自 動 パレタイズ 機 能 が 働 くので、<br />

土 砂 を 掬 い 取 ってボタンを 押 すだけで、ベッセルにバランスよく 積 載 される。 積 込 重 量 は 油 圧 ショベル<br />

のペイロードメータが 計 測 していて、そのデータは、 自 動 的 にホストコンピュータに 転 送 されている。<br />

ペイロードメータの 満 杯 を 確 認 して、 無 人 ダンプトラックに 発 進 OKの 指 令 を 送 った。<br />

午 前 中 一 杯 で 荒 掘 削 が 完 了 した。 経 験 と 勘 を 頼 りに 機 械 を 操 作 していた 時 代 に 比 べると、 時 間 当 たり<br />

の 施 工 面 積 は 倍 ほどになっているだろうか。<br />

午 後 の 作 業 は 午 前 中 に 荒 掘 削 した 部 分 の 仕 上 げ 掘 削 である。モニター 上 に 表 示 された 床 面 の 設 計 深 さ<br />

を 入 力 して、「 自 動 掘 削 モード」を 選 択 する。 歯 先 を 開 始 点 に 合 わせてスタートボタンを 押 す。ブーム、<br />

アーム、バケットが 自 動 的 に 連 動 して 指 定 した 深 さのきれいな 直 線 軌 道 を 描 いた。モニター 上 に 仕 上 げ<br />

線 と 現 在 の 掘 削 線 が 示 され、その 誤 差 が 表 示 される。2 回 掘 削 を 繰 り 返 して 規 定 値 内 の 寸 法 に 収 まった。<br />

掘 削 スピードも 手 動 で 仕 上 げていた 時 代 に 比 べて1.5 倍 ほどに 上 がっている。 以 前 はAさんのような<br />

一 部 のベテランオペレータだけがこなせる、とても 難 しい 作 業 であったのだが、 今 では 経 験 の 浅 いオペ<br />

レータでも 遜 色 のない 精 度 で 仕 上 げられるようになっている。<br />

少 しずつ 機 械 を 移 動 させてどんどん 仕 上 げ 掘 削 を 進 めていく。 周 囲 に 測 量 班 などの 作 業 員 はいないの<br />

で 安 全 だが、 万 一 近 くに 人 がいた 場 合 には、 作 業 員 のヘルメットに 仕 込 まれたICタグを 機 械 が 検 知 し<br />

て 警 報 を 出 すようになっている。さらに 作 業 員 との 距 離 があらかじめ 設 定 した 閾 値 を 超 えると、 機 械 が<br />

自 動 的 に 停 止 するようになっているので 安 心 だ。<br />

午 後 4 時 、 予 定 の 範 囲 の 作 業 を 終 了 することができた。 出 来 形 は 最 終 の 歯 先 軌 跡 の 集 合 として、 高 速 ・<br />

大 容 量 の 屋 外 無 線 LANを 介 してホストコンピュータに 送 られている。 手 動 施 工 の 時 代 には、Aさんで<br />

も5cm 程 度 の 精 度 で 仕 上 げるのが 精 一 杯 だったが、 今 ではほとんどの 範 囲 が2cm 以 内 の 精 度 に 収 ま<br />

っている。これは 最 近 開 発 された 精 度 1cmの 超 高 精 度 GPSによるところが 大 きい。 最 後 に 車 載 カメ<br />

ラで 出 来 形 を 撮 影 してホストコンピュータに 転 送 した。<br />

94


機 械 を 駐 機 場 に 戻 そう。 走 行 レバーを 操 作 して 指 定 の 走 行 経 路 に 機 械 を 移 動 した。ここから 駐 機 場 の<br />

フロントヤードまでは 自 動 走 行 なのでモニターを 監 視 しているだけでよい。フロントヤードに 到 着 した。<br />

機 械 を 自 動 洗 車 ・ 給 油 機 に 誘 導 する。 足 回 りやバケットに 付 いた 土 砂 はすっかりきれいに 洗 い 流 され、<br />

燃 料 も 満 タンに 給 油 された。 機 械 を 駐 機 場 の 所 定 の 場 所 へ 止 め、「ストップ」ボタンを 押 して 機 械 を 降<br />

りた。<br />

事 務 所 に 戻 ってヘルメットを 外 し、 充 電 器 の 上 に 戻 した。 午 後 5 時 、IDカードで 退 社 を 記 録 した。<br />

事 務 所 の 奥 では 監 督 さんがパソコンで 本 日 の 出 来 形 の 計 測 結 果 や 出 来 高 の 最 終 を 確 認 している。<br />

図 2.3.3-1 現 状 の 施 工 状 況<br />

図 2.3.3-2 土 木 分 野 RT 化 のシステム 構 成<br />

2)システム 構 想<br />

日 々 変 化 する 環 境 や 多 様 な 土 質 を 対 象 とする 土 木 工 事 では、15 年 後 程 度 の 近 未 来 を 予 測 する 場 合 、<br />

すべての 作 業 が 自 律 化 されるとは 考 えにくい。 前 項 のシナリオでは、 土 砂 搬 送 などの 比 較 的 単 純 な 作 業<br />

は 自 律 化 され、 掘 削 のようにきわめて 高 度 な 判 断 が 要 求 される 作 業 については、オペレータの 負 担 を 低<br />

減 し、 施 工 速 度 と 精 度 の 大 幅 向 上 を 図 る 支 援 ・ガイダンスのシステムがRT 化 の 中 心 になるものと 予 測<br />

している。システム 構 想 の 概 要 を 以 下 にまとめる。<br />

95


1 掘 削 支 援<br />

・ 掘 削 ガイダンスシステム( 完 全 な 丁 張 りレス)<br />

GPS、 視 覚 センサなどによる 地 形 計 測 結 果 と、 設 計 CADデータとの 比 較 から、 実 際 に 掘 削 する 領<br />

域 、 深 さ、 勾 配 などを 算 出 、 車 載 モニター 上 に 呈 示 する。 掘 削 開 始 点 、1 回 目 、2 回 目 、それ 以 降 の<br />

掘 削 線 、 仕 上 げ 線 なども、 掘 削 の 進 展 に 合 わせ 随 時 表 示 される。 実 際 の 掘 削 軌 跡 も 表 示 され、オペレ<br />

ータはそれらを 見 ながら 掘 削 作 業 を 進 める。 設 計 領 域 外 を 掘 削 しないようにするバケットの 動 作 領 域<br />

制 限 も 自 動 的 に 設 定 される。 施 工 スピードの 大 幅 アップと 測 量 員 が 不 要 で 高 い 安 全 性 を 実 現 する。<br />

・ 自 動 掘 削 システム<br />

難 しい 複 合 操 作 や 微 操 作 の 部 分 を 自 動 化 する。 掘 削 軌 跡 は 設 計 データから 転 送 することもできるし、<br />

オペレータが 自 分 で 設 定 することも 可 能 。オペレータは 掘 削 開 始 点 に 歯 先 を 合 わせ、スタートボタン<br />

を 押 すだけでよい。 施 工 スピード、 精 度 ともに 飛 躍 的 に 向 上 。 熟 練 オペレータ 不 足 も 解 消 する。<br />

・ 自 動 積 込 みシステム<br />

ダンプトラックは 油 圧 ショベルやホイルローダなどの 積 み 込 み 機 械 の 位 置 をGPSデータなどから<br />

把 握 しており、 積 み 込 みに 最 適 な 位 置 まで 自 動 的 に 誘 導 される。また 積 み 込 み 機 は、ダンプトラック<br />

のベッセル 位 置 を 視 覚 センサやGPSで 認 識 して、パレタイズ 機 能 が 働 き、 土 砂 を 自 動 的 にバランス<br />

よく 積 み 込 む。<br />

・ 自 動 走 行 システム<br />

RTKGPSなどを 用 い、 現 場 での 機 械 の 走 行 を 自 動 化 する。 作 業 開 始 点 への 誘 導 やブルドーザ、グ<br />

レーダ、 振 動 ローラなど、 走 行 機 能 を 使 った 施 工 も 自 動 化 される。また 土 砂 の 搬 送 用 のダンプトラッ<br />

クの 走 行 も 無 人 化 される。 複 数 台 の 機 械 の 走 行 はコンピュータによって 運 行 管 理 されるとともに、そ<br />

れぞれの 機 械 間 の 相 互 通 信 も 可 能 なシステムとして、 効 率 的 な 施 工 と 衝 突 などの 回 避 を 実 現 する。<br />

・ 最 適 燃 費 運 転 ガイダンスシステム<br />

「 土 工 量 / 燃 料 消 費 量 」が 最 小 となるような、 掘 削 手 順 や 掘 削 軌 跡 が、 車 載 コンピュータで 演 算 され、<br />

オペレータに 呈 示 される。システムには、ベテランオペレータのノウハウとスキルが 反 映 されている。<br />

オペレータはこのガイダンスに 従 うだけで、もっとも 効 率 的 な 掘 削 作 業 ができる。<br />

・ 自 分 好 みのフィーリングがインストールできる 操 作 性 可 変 システム<br />

オペレータの 好 みや 癖 を 機 械 が 学 習 。 自 動 的 にオペレータ 好 み 操 作 性 を 実 現 する。もちろんオペレー<br />

タ 自 身 がパラメータを 変 更 することも 可 能 。 学 習 結 果 は、 自 分 のIDカードなどにダウンロードでき<br />

るので、 別 の 機 械 に 搭 乗 するときは、 学 習 結 果 をインストールするだけで、すぐに 使 い 慣 れた 機 械 の<br />

ように 運 転 することができる。<br />

2 安 全 支 援<br />

・ 人 、 機 械 、 車 両 の 接 近 検 知 とアラーム<br />

現 場 内 のすべての 人 間 や 車 両 に、カード 化 やステッカー 化 されたICタグなどを 装 着 。 機 械 への 接 近<br />

を 検 出 して 警 報 を 出 す。あらかじめ 設 定 した 閾 値 を 超 えて 人 が 近 づくと 自 動 的 に 機 械 は 停 止 する。<br />

・ 転 倒 抑 制 の 動 的 車 体 制 御 システム<br />

機 械 のダイナミックバランスを 瞬 時 に 車 載 コンピュータが 算 出 。 動 的 不 安 定 領 域 に 入 ることを 自 動 的<br />

に 回 避 するシステム。<br />

3 施 工 管 理<br />

・ 出 来 形 、 出 来 高 の 自 動 計 測 と 情 報 転 送 システム<br />

掘 削 時 の 歯 先 位 置 が 常 時 モニタリングされていることにより、 出 来 形 はそれらの 最 終 軌 跡 から 把 握 で<br />

96


きる。また 機 械 に 搭 載 したペイロードメータにより 掘 削 土 量 も 自 動 的 に 累 積 される。 掘 削 前 後 の 地 形<br />

が 常 にモニタされていることにより、 掘 削 容 積 の 把 握 も 可 能 であり、 施 工 管 理 のための 測 量 や 帳 票 類<br />

のまとめは 大 幅 に 高 率 化 される。<br />

4 機 械 管 理<br />

・リアルタイム 機 械 健 康 管 理 システム<br />

機 械 に 各 種 センサを 装 着 。 機 械 の 状 態 を 常 時 モニタリングしてAIを 活 用 した 診 断 システムが、 機 械<br />

の 健 康 状 態 を 常 時 チェック。 最 終 故 障 に 至 る 前 の 予 防 保 全 で 高 い 稼 働 率 を 確 保 する。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

前 項 のようなシステムを 実 現 するために、 以 下 のような 環 境 構 造 化 の 技 術 課 題 の 解 決 が 必 要 とされる。<br />

1 高 精 度 GPS<br />

高 精 度 の 屋 外 測 位 、 方 位 の 計 測 システムは、 前 述 のシナリオのようなシステムを 構 築 する 上 で 要 とな<br />

る 技 術 である。RTKGPSなど、 現 行 のGPSも 高 精 度 化 が 進 んでいるが、 高 さ 方 向 の 精 度 が 十 分 で<br />

ないことや、コストがきわめて 高 価 であることなど、 課 題 も 多 く、 幅 広 く 産 業 分 野 に 用 いられるように<br />

はなっていない。スタティックな 測 位 では、 現 在 でもかなり 高 精 度 のものがあるが、これは 通 常 の 土 木<br />

施 工 には 不 向 きである。3 次 元 方 向 すべての 精 度 が1cm 以 内 で、 山 陰 など 電 波 の 難 受 信 の 場 合 でも 補<br />

完 が 可 能 な 高 精 度 測 位 システムは、 土 木 分 野 のRT 化 に 不 可 欠 な 技 術 である。またシステムが 小 型 であ<br />

ること、 振 動 や 粉 塵 、 熱 など、 十 分 な 耐 候 性 を 有 することが 必 要 である。ほとんどすべての 機 械 にGP<br />

Sが 必 要 となることから、 価 格 は 数 万 円 / 台 程 度 になることが 期 待 される。<br />

2 屋 外 ICタグ<br />

人 間 や 機 械 の 認 証 や 接 近 検 知 など、ICタグは 屋 外 においても 重 要 な 技 術 である。とくに 屋 外 におい<br />

ては、 検 出 距 離 が 長 く、 電 波 状 況 が 変 化 する 条 件 下 においても 安 定 した 受 信 ができることが 必 要 である。<br />

このため 土 木 分 野 で 用 いられるタグは、アクティブタグが 中 心 になると 予 測 される。 必 要 とされる 通 信<br />

距 離 は 数 10mに 及 ぶと 思 われるが、これを 実 現 する 周 波 数 利 帯 域 など、 電 波 法 など 行 政 上 の 改 革 も 必<br />

要 となるであろう。<br />

3 高 速 ・ 大 容 量 の 屋 外 情 報 伝 送 システム<br />

現 在 も 無 人 化 施 工 や 一 部 の 鉱 山 などでは、 屋 外 のLANシステムが 使 用 されている。しかし 通 信 量 が<br />

限 定 されていることや、 安 定 した 通 信 の 確 保 が 困 難 なことから、ロバストで 高 速 ・ 大 容 量 の 通 信 が 可 能<br />

な 屋 外 情 報 伝 送 システムの 実 現 が 望 まれる。<br />

その 他 、 環 境 構 造 化 以 外 では、 以 下 のような 技 術 課 題 の 解 決 が 必 要 であろう。<br />

・ 人 間 操 作 を 補 完 する 部 分 自 動 化 、 知 能 化 システム( 人 間 操 作 との 協 調 )<br />

・ 熟 練 者 のスキルを 再 現 するコントロール<br />

・ 複 数 機 械 の 群 管 理<br />

・ 障 害 物 の 感 知 など、 危 険 回 避 システム<br />

・ 情 報 化 施 工 との 統 合 ( 設 計 CADリンク、 施 工 ガイダンス、 出 来 高 管 理 ) など<br />

97


2.3.4 農 業 分 野<br />

農 業 分 野 においては 屋 外 作 業 の 代 表 例 としての 米 作 ・ 畑 作 ( 露 地 栽 培 )や 柑 橘 類 栽 培 が 上 げられる。<br />

さらには 今 後 RTシステムの 導 入 が 望 まれている「いちご」や「トマト」に 代 表 されるハウス 栽 培 さら<br />

には 同 じ 様 にRT 技 術 が 望 まれている 畜 産 分 野 、 林 業 分 野 と 幅 広 い。<br />

農 産 物 産 出 額 トップ10<br />

出 典 ;H16 年 度 農 水 省 統 計<br />

20,142<br />

6,776 5,435 5,140 3,809<br />

2,438 1,938 1,677 1,526 1,406<br />

米 牛 乳 豚 肉 用 牛 鶏 卵 ブロイラー いちご りんご<br />

トマト みかん<br />

米<br />

生 乳<br />

豚<br />

肉 用 牛<br />

鶏 卵<br />

ブロイラー<br />

トマト<br />

いちご<br />

みかん<br />

りんご<br />

今 回 は、 農 業 産 出 額 トップで 約 2 兆 円 の 米 ( 穀 類 )を 屋 外 環 境 対 象 とし、それに 次 ぐ 産 出<br />

額 1938 億 円 の「トマト( 野 菜 )」と 産 出 額 第 3 位 の「いちご( 果 物 )」をハウス 栽 培 環 境 対 象 に、<br />

さらには 果 樹 類 トップの 生 産 額 を 占 める「ミカン」を 屋 外 環 境 対 象 とする。<br />

(1) 稲 作 ( 屋 外 )<br />

1)ユーザの 選 定<br />

会 社 役 員 Aは、 関 東 地 方 にある 株 式 会 社 B 農 園 の 経 営 者 である。100ha 規 模 の 経 営 を 行 っている<br />

が、ほとんどは 農 地 リースである。この 会 社 では、 農 作 業 にロボットを 導 入 しており、 社 員 は5 人 で、<br />

田 植 えと 収 穫 の 忙 しい 時 期 でも 少 数 の 非 正 社 員 を 雇 用 する 程 度 である。<br />

B 農 園 では 人 件 費 を 削 減 するとともに 生 産 物 の 付 加 価 値 を 高 めるため、ロボット 技 術 、 情 報 化 技 術 を<br />

積 極 的 に 利 用 している。( 図 2.3.4(1)-1 参 照 )<br />

農 作 業 にはロボット 化 した 農 業 機 械 (ロボット 農 業 機 械 、 図 2.3.4(1)-2のロボット 田 植 機<br />

など)を 使 い、 社 員 ひとりが 複 数 の 機 械 を 監 視 して 作 業 を 行 っている。 機 械 装 備 は、トラクタ8 台 、 田<br />

植 機 6 台 、コンバイン8 台 、 管 理 機 3 台 、 農 薬 散 布 用 の 自 動 操 縦 ヘリコプタ1 台 、 乾 燥 機 、トラック 等<br />

を 所 有 している。 会 社 には 水 田 の 情 報 等 を 管 理 するためのサーバ( 管 理 サーバ)が 設 置 してあり、 会 社<br />

が 作 付 けを 行 っている 水 田 の 要 所 にフィールドサーバを 配 置 している。<br />

ロボット 農 業 機 械 に 取 り 付 けられているGPSから、フィールドサーバに 無 線 LAN を 介 して 位 置 情 報<br />

( 作 業 軌 跡 )が 転 送 される。フィールドサーバから 管 理 サーバに、 水 田 への 出 入 りの 時 刻 、 作 業 時 間 な<br />

どが 自 動 的 に 記 録 される。<br />

98


ロボット 作 業 機<br />

フィールドサーバ<br />

携 帯 端 末<br />

図 2.3.4(1)-1 ロボット 農 作 業 体 系 のイメージ<br />

使 用 する 農 薬 、 肥 料 等 の 資 材 は、 社 員 が 手 作 業 で 補 給 するが、ホッパ(あるいはタンク) 投 入 時 に 袋<br />

やボトルについたQRコードを 各 ロボット 農 業 機 械 に 取 り 付 けられたリーダで 読 むことで、 自 動 的 に 水<br />

田 ごとの 使 用 資 材 、 農 薬 使 用 量 、 投 入 時 刻 が 記 録 される。これらのデータは、フィールドサーバ 経 由 で<br />

管 理 サーバに 転 送 される。<br />

会 社 で 管 理 している 水 田 には、 水 田 の 位 置 情 報 、 作 業 経 路 を 記 録 したRFIDタグを 埋 め 込 んだ 杭 が<br />

立 ててある。ロボット 農 業 機 械 に 取 り 付 けてあるリーダで 情 報 を 呼 び 出 すことで、 作 業 経 路 が 作 成 され、<br />

自 動 作 業 が 可 能 になる。 実 際 に 作 業 する 水 田 の 入 口 にあるので、データの 呼 び 出 し 間 違 いなどがなく、<br />

確 実 に 設 定 できる。<br />

100ha 規 模 だと 水 田 の 枚 数 は400 筆 ほどになり、それらの 作 業 情 報 (どのような 作 業 をいつ 行<br />

い、どれだけの 資 材 が 投 入 されたか)は 管 理 サーバに 蓄 積 されている。 社 員 は 管 理 サーバと 携 帯 端 末 で<br />

通 信 でき、いつでも 水 田 ごとのデータを 呼 び 出 すことができる。GPSによる 農 業 機 械 ごとの 位 置 デー<br />

タ、QRコードの 読 み 込 みによる 使 用 資 材 のデータから、 自 動 的 に 作 業 日 誌 が 作 成 され、 管 理 サーバ 内<br />

のデータが 更 新 される。オペレータは、 携 帯 端 末 を 通 じて、どこにいても 作 業 済 みの 水 田 、 作 業 中 の 水<br />

田 、 未 作 業 の 水 田 を 閲 覧 することが 可 能 である。 昔 は 事 務 所 の 壁 にはった、 大 きな 地 図 にいちいち 情 報<br />

を 書 き 込 んだり、 作 業 日 誌 をめくったりして 調 べていたが、ずいぶん 楽 になった。これらのデータを 基<br />

に、400 枚 ほどある 水 田 をどのような 順 番 で 回 るか、 水 の 入 れやすさ、ロボットの 作 業 能 率 などから<br />

判 断 して、 事 前 にオペレータごとに 決 められた 作 業 ルートが 携 帯 端 末 に 表 示 されるので、スムーズに 作<br />

業 を 行 うことができる。<br />

耕 起 、 代 かき、 播 種 、 移 植 、 防 除 、 収 穫 などの 水 田 で 行 う 作 業 は、 社 員 ひとりで 4 台 までのロボット<br />

農 業 機 械 を 監 視 して 作 業 を 行 うため、 高 能 率 に 作 業 を 行 うことができる。ロボット 化 により 天 気 によっ<br />

ては 作 業 が 滞 りそうな 場 合 など、 天 気 のよい 間 に 夜 間 も 作 業 を 行 うことができ、 作 業 が 遅 れていらいら<br />

することがなくなった。また、 薬 剤 の 散 布 など、 自 動 操 縦 ヘリコプタやロボット 管 理 機 で 農 薬 を 散 布 す<br />

るため、オペレータの 被 曝 がない。 昔 は 炎 天 下 で 雨 合 羽 を 着 てマスクをつけて 作 業 せねばならず、 不 快<br />

であったが、それももう 昔 の 話 である。 畦 畔 の 除 草 には 小 型 の 除 草 ロボットを 使 用 する。 除 草 は6 月 中<br />

旬 ごろから 収 穫 期 まで、 数 回 作 業 を 行 わなくてはならない。ロボットでは 細 かいところは 作 業 できない<br />

が、 炎 天 下 で 人 間 の 作 業 する 面 積 が 少 なくなったため、ずいぶんと 助 かっている。ロボット 農 業 機 械 を<br />

使 った 作 業 では、オペレータの 主 な 仕 事 は 作 業 の 監 視 と、 作 業 が 終 わったロボットの、 次 の 水 田 への 移<br />

動 である。<br />

栽 培 データは、フィールドサーバで 気 温 、 水 温 や 日 射 量 などを 記 録 し 続 け、 葉 色 はロボット 農 業 機 械<br />

が 作 業 する 際 に 記 録 され、これらのデータはすべて 管 理 サーバに 転 送 される。これらのデータから 肥 料<br />

99<br />

管 理 サーバ


の 投 入 量 や 時 期 を 判 断 し、 作 業 を 行 っている。<br />

作 業 時 に 補 給 の 必 要 な 苗 や 肥 料 、 薬 剤 等 は、 資 材 担 当 の 社 員 がトラックにその 日 に 使 用 する 資 材 を 積<br />

んで、ロボット 農 業 機 械 に 補 給 を 行 う。ロボット 農 業 機 械 の 資 材 の 残 量 が 携 帯 端 末 に 表 示 されるので、<br />

次 にどこに 移 動 すればよいか 判 断 できる。 収 穫 時 もロボットコンバインのタンク 内 の 穀 物 の 量 が 携 帯 端<br />

末 で 調 べられるため、 担 当 社 員 は 次 に 穀 物 を 回 収 する 先 へ 向 かうことができる。 昔 は 機 械 1 台 に 対 して<br />

オペレータがひとり、さらに 補 給 や 収 穫 物 の 回 収 のための 補 助 者 が 数 人 必 要 だったので、とても 社 員 5<br />

人 だけで 農 繁 期 を 乗 り 切 ることはできなかった。 社 員 と 少 数 の 非 正 社 員 だけで 移 植 や 播 種 、 収 穫 の 作 業<br />

ピーク 期 が 乗 り 切 れるのは、ロボット 化 のおかげである。<br />

収 穫 時 に 作 業 履 歴 ( 作 業 日 や 使 用 薬 剤 など)をRFIDに 記 録 し、 収 穫 物 の 袋 につけて 管 理 し、 出 荷<br />

時 に 農 産 物 の 情 報 として 付 加 している。<br />

2)システム 構 成<br />

図 2.3.4(1)-2 移 植 作 業 中 のロボット 田 植 機<br />

B 農 園 で 使 用 しているシステムは、 以 下 のとおりである。<br />

1 農 業 ロボットに 関 するもの<br />

a)トラクタ、 田 植 機 、 管 理 機 、コンバインの 従 来 の 作 業 機 のロボット 化 による 高 能 率 な 農 作 業 システ<br />

ム(ロボット 農 作 業 体 系 )<br />

b) 自 動 操 縦 ヘリコプタ<br />

c) 畦 畔 除 草 ロボット<br />

トータルで 現 在 より+300 万 円 までのコストアップで 開 発 する 必 要 がある。<br />

a)については、GPSのような 位 置 センサと 姿 勢 センサを 組 み 合 わせた 航 法 センサ、 制 御 装 置 が 必<br />

要 である。また、 既 存 の 農 業 機 械 をロボット 化 するためのアクチュエータを 取 り 付 ける 必 要 がある。<br />

b)はヘリコプタに 航 法 センサを 取 り 付 け、 自 動 操 縦 のために 操 縦 装 置 側 にフィードバックして、そ<br />

れをもとに 制 御 するシステムの 開 発 が 必 要 である。<br />

c)は 類 似 の 既 製 品 がないので、 新 たな 開 発 が 必 要 である。<br />

2 情 報 化 に 関 するもの<br />

a) 管 理 サーバ<br />

b)フィールドサーバ<br />

c) 携 帯 端 末<br />

100


d) 無 線 LAN<br />

e)RFID<br />

情 報 化 については、トータルで+200 万 までのコストアップで 開 発 する 必 要 がある。<br />

管 理 サーバが、 資 材 の 投 入 量 、すべてのデータを 水 田 ごとに 記 録 、 管 理 しており、フィールドサーバは<br />

ロボット 農 業 機 械 からのデータ 中 継 と、 温 度 等 のデータ 収 集 を 行 う。 携 帯 端 末 は 社 員 (ロボット 作 業 の<br />

監 視 者 と 補 給 作 業 者 )へ 情 報 提 供 する。データ 通 信 は 無 線 LANを 通 じて 行 う。RFIDが 生 産 物 や、<br />

作 業 を 行 う 水 田 の 情 報 を 持 つ。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

1 農 業 ロボット 側 の 知 能 化<br />

・ 自 動 作 業 を 行 うため、 位 置 、 姿 勢 を 検 出 するためのGPS 等 の 位 置 センサと 姿 勢 センサ(ロボット 農<br />

業 機 械 間 で 載 せかえができるもの)。<br />

位 置 の 計 測 精 度 ±1cm、 姿 勢 の 計 測 精 度 ±1°の 性 能 が 必 要 である。<br />

・ 位 置 と 姿 勢 の 情 報 をもとに 自 動 運 転 するためのコントローラ(ロボット 農 業 機 械 間 で 載 せかえができ<br />

るもの)<br />

現 状 の 演 算 速 度 で 対 応 可 能 。<br />

・ 運 転 操 作 のためのアクチュエータ<br />

・ 障 害 物 を 検 出 するための 障 害 物 センサ<br />

・ 緊 急 時 の 自 動 通 報 システム<br />

RTミドルウェアを 用 いてコンポーネントを 共 通 化 し、コストを 低 減 する。<br />

2 環 境 側 の 知 能 化<br />

・ 収 穫 物 を 投 入 する 袋 に 取 り 付 けられるRFIDタグ<br />

作 業 履 歴 を 記 録 する。1kB 程 度 。 読 み 書 き 可 能 な 距 離 は1m 程 度 。<br />

・ 水 田 入 口 に 据 え 付 けられたRFIDタグ<br />

作 業 経 路 の 情 報 を 記 録 し、 自 動 作 業 開 始 時 に 水 田 に 固 定 されたタグから 情 報 を 呼 び 出 して 操 作 ミスを<br />

防 ぐ。1kB 程 度 。 読 み 書 き 可 能 な 距 離 は1m 程 度 。<br />

・フィールドサーバによる 温 度 等 のデータと 無 線 LAN<br />

作 業 情 報 、 水 田 の 生 育 情 報 を 記 録 、 転 送 する。フィールドサーバと 管 理 サーバをつなぐ 無 線 LANは、<br />

10Mbpsで 距 離 10km 程 度 の 安 定 した 通 信 が 可 能 で、 混 信 しないものが 必 要 である。<br />

また、フィールサーバと 携 帯 端 末 やロボット 間 の 無 線 LANは 距 離 1km 程 度 で、 混 信 しないものが<br />

必 要 である。<br />

・ 資 材 の 袋 やボトルに 取 り 付 けられたQRコード<br />

水 ぬれ、 汚 れに 強 いタイプのもの。<br />

(2)カンキツ( 屋 外 )<br />

1)ユーザの 選 定<br />

A 氏 は 愛 媛 県 ○○ 農 業 法 人 に 雇 われている40 歳 の 作 業 者 で、 土 壌 センサおよび 移 動 型 選 果 ロボット<br />

の 作 業 担 当 をしている。この 農 業 法 人 のある 地 域 は、 愛 媛 県 の 中 でも 品 質 の 高 いミカンが 生 産 できると<br />

評 判 で、 昔 から 高 い 価 格 で 取 引 されており、○○ブランドは 国 内 では 有 名 である。この 農 業 法 人 は 合 計<br />

30haのミカン 畑 を 利 用 した 生 産 を 行 っているが、その 畑 は50 軒 程 度 の 農 家 が 所 有 権 を 有 する60<br />

a 程 度 の 利 用 権 だけを 委 譲 されて 経 営 している。 法 人 化 してから 導 入 された 新 規 機 械 (ロボット)は、<br />

土 壌 センサ1 台 、フィールドサーバ10 台 、 移 動 型 選 果 ロボット3 台 、 防 除 用 ヘリコプタ1 台 、 観 測 衛<br />

星 画 像 解 析 システム1 式 である。この 法 人 は、 農 作 業 業 務 に 携 わる 作 業 者 が5 名 、 情 報 管 理 者 1 名 で 運<br />

営 している。 繁 忙 期 には、パートタイムの 作 業 者 を20 名 ほど 雇 うが、 昔 に 比 べると 少 ない 人 数 で 効 率<br />

101


的 な 生 産 が 行 えるようになった。<br />

作 業 としては、1 月 に 新 品 種 の 植 え 替 えを 行 う 園 地 内 の 土 壌 検 査 を 土 壌 センサで 園 地 ごとに 行 う。 最<br />

近 は、 消 費 者 の 嗜 好 の 変 化 に 合 わせて 新 しい 品 種 を 導 入 していかないといけないため、たいてい200<br />

枚 以 上 ある 園 地 のどこかで 新 しい 品 種 の 植 え 替 え 作 業 を 行 っている。 土 壌 センサは1 名 の 作 業 者 が、ト<br />

ラクタで 牽 引 すると、その 場 で 有 機 物 、N、EC、pHの 分 布 をモニターで 確 認 することができるので、<br />

その 場 で 施 肥 もできる。ただ、KおよびPに 関 しては、サンプルを 持 ち 帰 り、 分 析 する 必 要 があること<br />

より、 以 下 の 方 法 で 施 肥 する。<br />

まず、 土 壌 センサおよび 分 析 により 計 測 された 園 地 の 土 壌 情 報 は、 農 業 法 人 の 事 務 所 内 のサーバに 導<br />

入 されたGIS 上 に 展 開 され、どの 園 地 のどこにどんな 成 分 の 肥 料 をどれだけの 量 投 入 すればよいかわ<br />

かる。 車 両 が 樹 木 間 を 通 行 できるような 場 所 においては、 乗 用 可 変 施 肥 機 によって 有 機 物 および 肥 料 を<br />

必 要 な 場 所 に 必 要 な 量 、 施 肥 するが、 小 さな 園 地 においては、 示 された 量 の 肥 料 を 果 樹 ごとに 手 作 業 で<br />

行 う。このような 土 壌 センサと 可 変 施 肥 機 の 組 み 合 わせにより、 施 肥 量 はRT 導 入 前 の2/3の 量 にな<br />

った。<br />

2 月 には 整 枝 、 剪 定 作 業 を 行 うが、これには15 時 間 / 反 かかるため、 作 業 者 全 員 が 参 加 して 行 う。<br />

この 機 械 化 はまだ 難 しいようである。 複 雑 な 地 形 形 状 に 対 応 した 環 境 情 報 を 収 集 するため、フィールド<br />

サーバで 大 気 温 度 、 湿 度 、 日 照 量 、 土 壌 温 度 、 土 壌 水 分 、 降 雨 量 、 風 速 、 風 向 が 計 測 を 常 に 計 測 してい<br />

る。この 情 報 は、アンテナを 通 じて 事 務 所 内 のサーバに 転 送 されており、 毎 日 の 情 報 が 記 録 蓄 積 される。<br />

これには、1 台 50 万 円 を 要 したが、 地 形 、 高 度 による 環 境 の 異 なると 考 えられるエリアごとに 設 置 す<br />

る 必 要 があるので、この 地 区 では10 台 を 導 入 した。 一 方 、 観 測 衛 星 (Alos、その 他 の 衛 星 )から、<br />

地 域 の 園 地 の 白 黒 およびマルチスペクトル 画 像 、 温 度 画 像 を 購 入 し、 地 上 の 情 報 と 合 わせて、 樹 木 の 形<br />

状 、 葉 色 、 土 色 等 を 解 析 するシステムも 導 入 されたので、より 管 理 区 域 における 園 地 がグローバルに 観<br />

察 できることになった。いずれの 情 報 も 情 報 管 理 者 が 毎 年 チェックし、その 年 の 気 候 に 合 わせて、 栽 培<br />

暦 を 決 定 する。この 判 断 を 間 違 うと 大 きな 収 入 減 となるので 細 心 の 注 意 および 予 測 が 必 要 である。<br />

6 月 下 旬 ~7 月 に 着 果 の 多 い 樹 で、 生 理 落 果 終 了 後 に 荒 摘 果 を10 時 間 / 反 かけて 行 う。この 作 業 に<br />

は 台 車 ( 移 動 型 選 果 ロボット)を 用 いて 行 う。これにはGPSを 搭 載 しているため、どの 樹 木 からどの<br />

程 度 の 量 の 果 実 を 摘 果 したかが 自 動 的 に 記 録 される。 本 台 車 には、 樹 木 モニタリング 用 マシンビジョン<br />

を 備 えているため、 樹 木 の 葉 色 、 樹 冠 の 寸 法 等 も 計 測 され、 記 録 される。また、この 台 車 は 収 穫 時 にも<br />

使 用 する。<br />

7 月 に 雑 草 との 梅 雨 明 け 後 の 養 水 分 競 合 を 防 ぐため、 各 園 地 内 の 除 草 を 行 い、 春 から 秋 にかけて 一 斉<br />

に 薬 剤 散 布 ( 予 防 防 除 )を 行 う。 特 に、そうか 病 、 炭 疽 病 、 黒 点 病 、カミキリムシ、ダニ、アザミウマ<br />

などに 対 して 行 うが、この 防 除 作 業 は 法 人 が 購 入 したヘリコプタによって、その 年 の 情 報 に 合 わせて 一<br />

斉 に 行 う。これはある 程 度 自 律 で 飛 行 する 機 能 が 備 えられているものの、 安 全 のため 免 許 を 有 する 作 業<br />

者 が 操 作 する。いつ、どこに、どのような 薬 剤 を 散 布 したかという 情 報 は 自 動 的 に、データベースに 蓄<br />

えられ、GIS 上 で 見 ることができる。<br />

8 月 頃 から 手 直 しのために、 小 玉 果 、 病 害 虫 果 、 傷 果 等 を 摘 果 する。さらに 収 穫 果 実 の 均 質 化 と 商 品<br />

性 向 上 のために、 着 色 開 始 期 に 極 大 果 、 果 梗 の 太 い 果 実 、 着 色 不 良 果 、 小 玉 果 を 中 心 に 摘 果 する。 早 生<br />

温 州 は9 月 、 普 通 温 州 は10 月 に 行 う。これらには、20 時 間 程 度 / 反 (120 時 間 )かける。 前 の 荒<br />

摘 果 と 合 わせて、30 時 間 程 度 / 反 かけることになる。<br />

これにも、 前 述 したGPS 付 き 台 車 ( 移 動 型 選 果 ロボット)を 用 いる。<br />

早 生 温 州 は10 月 から、 普 通 温 州 は12 月 頃 から 収 穫 を 始 める。 収 穫 には 反 当 たり、80 時 間 を 要 す<br />

る 最 も 忙 しい 作 業 である。このときには、パートタイムの 作 業 者 を5 名 雇 い、2 名 で 一 台 のGPS 付 き<br />

台 車 が 利 用 される。カンキツでは 日 射 量 によってその 果 実 の 品 質 が 大 きく 変 化 することより 投 入 口 は2<br />

つ 用 意 されているので、 日 射 量 の 程 度 ( 例 えば 樹 冠 の 北 側 と 南 側 )に 応 じて 異 なる 作 業 者 が 担 当 の 側 の<br />

投 入 口 から 投 入 する。 投 入 後 、 果 実 は 整 列 装 置 で 搬 送 される 間 、 投 入 番 号 順 に1 列 に 並 べられ、 搬 送 速<br />

度 の 小 さな 整 列 装 置 から 速 度 の 大 きなRPCに 乗 り 移 る 際 に、 果 実 間 の 距 離 が 拡 大 される。 続 いて、 内<br />

部 品 質 センサで 糖 度 、 酸 度 、すあがり 等 が、TVカメラで 寸 法 、 色 、 形 状 、 欠 陥 が 計 測 される。その 後 、<br />

反 転 機 構 で 果 実 は180 度 回 転 し、 別 のTVカメラで 反 対 側 の 果 実 半 球 が 計 測 され、コンテナに 排 出 さ<br />

れる。 本 ロボットでは 果 実 はそのまま 同 一 コンテナに 排 出 されることとし、 後 に 地 域 に 導 入 済 みの 選 果<br />

機 で 選 別 、 箱 詰 めされることを 前 提 とするが、オプションとして、 等 級 ( 秀 、 優 、 良 )ごとに 異 なるコ<br />

ンテナに 排 出 すること、RFID、バーコードなどを 付 加 した 上 で1つのコンテナに 排 出 することにな<br />

っている。<br />

この 台 車 から 得 られる 選 果 情 報 は、D-GPSによる 位 置 情 報 とリンクされる(あるいは 園 地 ごとの<br />

102


樹 木 番 号 と 対 応 )ため、 全 ての 果 実 情 報 は 果 実 を 生 産 した 樹 木 ID、 果 実 投 入 口 、 投 入 番 号 と 対 応 づけ<br />

られて、 情 報 収 集 サーバに 保 存 される。 従 って、それぞれの 情 報 はマップにすることが 可 能 である( 色<br />

マップ、 収 量 マップ、 形 状 マップ、 糖 度 マップなど)。<br />

また、 施 肥 情 報 、 薬 剤 散 布 情 報 、 気 象 情 報 などともオーバーレイすることも 容 易 で、 収 量 、 糖 度 およ<br />

び 果 実 色 を 目 的 変 数 に、 葉 色 、 生 育 環 境 情 報 ( 土 壌 水 分 、 大 気 温 度 、 湿 度 、 日 照 量 、 土 壌 温 度 等 )、 施<br />

肥 情 報 を 説 明 変 数 として、 多 変 量 解 析 によりそれらの 関 係 を 樹 木 ごとに 求 める。ロボットを 導 入 したこ<br />

とにより、 樹 木 管 理 が 可 能 な 精 密 農 業 の 展 開 が 可 能 となって、 農 業 法 人 は 管 理 している 園 地 の 中 の 各 樹<br />

木 に 対 して、 品 質 向 上 、 生 産 量 向 上 のために 重 要 な 作 業 を 適 切 な 時 期 に 行 うことが 可 能 となった。<br />

収 穫 した 果 実 は、 法 人 が 有 する 選 果 施 設 により、 等 階 級 選 別 され、 箱 詰 めの 後 、 市 場 へ 出 荷 される。<br />

選 果 施 設 においては、 生 産 者 からの 荷 受 け 情 報 ( 生 産 者 ID、ほ 場 ID、 荷 受 け 日 、 品 種 、コンテナ<br />

数 、 果 実 数 など)をコンテナ 等 につけられたバーコード、RFIDのリーダで 読 み 取 り、 選 果 施 設 ( 選<br />

果 ロボット)で 選 果 情 報 ( 果 実 、 野 菜 のサイズ、 色 、 形 状 、 欠 陥 )を 読 み 取 る。 続 いて 製 品 ID(パッ<br />

ケージ 日 と 時 刻 、 箱 詰 めしたロボットの 番 号 に 加 えてそれまでの 選 果 情 報 、 荷 受 け 情 報 )がパッケージ<br />

ごとに 付 加 され、 出 荷 される. 出 荷 されたものは、 流 通 過 程 の 輸 送 形 態 、 手 段 、 輸 送 中 の 環 境 情 報 ( 温<br />

度 、 湿 度 、 振 動 等 )、 輸 送 時 間 などが 付 加 された 後 に、 小 売 店 で 商 品 、 販 売 情 報 ( 市 場 情 報 も 含 む)が<br />

さらに 付 加 されて、それぞれ、データベースに 入 力 される。 蓄 積 されたデータは、 出 荷 単 位 ごと(デコ<br />

ポン、 文 旦 のような 高 価 で 寸 法 の 大 きい 果 実 はごとに、 安 価 で 小 さい 果 実 は 箱 、パッケージごと)につ<br />

けられたICタグあるいはバーコードなどを 通 じて、 消 費 者 は 店 頭 でその 履 歴 を 確 認 することができる。<br />

また 購 入 後 にも、インターネット 等 を 利 用 してその 履 歴 を 確 認 できる。<br />

つまり 農 業 法 人 が 有 するデータベースは 消 費 者 のためのトレーサビリティにも 利 用 する( 図 2.3.<br />

4(2)-1 参 照 )。<br />

2)システム 構 成<br />

図 2.3.4(2)-1 情 報 の 流 れ<br />

ある 農 業 法 人 で 導 入 しているRTに 基 づくシステムは 以 下 の 通 りである.<br />

1 土 壌 センサ(3000 万 円 )1 台 :トラクタ 牽 引 式 のチゼルプラウの 形 状 をした 近 赤 外 分 光 センサで、<br />

土 壌 中 の 窒 素 、 有 機 物 、 水 分 、pH、EC、 牽 引 力 などが 計 測 可 能 。50cm/sのスピードで 移 動<br />

する。<br />

2 可 変 施 肥 機 (500 万 円 )1 台 : 窒 素 、リン 酸 、カリウム、 有 機 物 を 混 合 して 施 肥 可 能 。<br />

3フィールドサーバ(50 万 円 )10 台 : 温 湿 度 、 日 射 量 、 降 雨 量 、 風 速 、 風 向 が 計 測 可 能 。<br />

4 移 動 型 選 果 ロボット(300 万 円 )3 台 : 摘 果 、 収 穫 に 用 いるGPS 付 き 台 車 で、その 仕 組 みを 図 2.<br />

3.4(2)-2に 示 す。これは、レールの 上 を 走 行 し、 操 作 ハンドルにより 自 走 あるいは 手 押 しの<br />

103


切 り 替 えができる。 自 走 の 場 合 は、 超 音 波 センサにより、 作 業 者 との 距 離 を 一 定 ( 作 業 者 が 果 実 を 投<br />

入 容 易 な 距 離 )に 保 ちながら 移 動 する。これには、VGAクラスのカメラが3 台 、D-GPS、 赤 外<br />

分 光 分 析 装 置 が 搭 載 されており、 投 入 された 果 実 の 色 画 像 、 近 赤 外 による 内 部 品 質 情 報 などが 入 手 で<br />

きる。<br />

5 防 除 用 ヘリコプタ(1000 万 円 )1 台 :リモコンで 薬 剤 散 布 が 可 能 。<br />

6 観 測 衛 星 画 像 解 析 システム(300 万 円 )1 式 :ミカンの 樹 冠 の 形 状 、 色 、 寸 法 、 水 分 、 土 壌 温 度 等<br />

が 計 測 可 能 。<br />

7 共 同 選 果 システム(5 億 円 )1 式 :カラーカメラ6 台 、 糖 度 計 1 台 が 備 えられたライン 数 は10。<br />

各 ラインは 毎 秒 1mの 速 度 で 果 実 を 搬 送 することより、 毎 秒 6 個 の 果 実 の 処 理 が 可 能 。<br />

8GIS、 果 実 生 産 に 関 わるデータベース(トレーサビリティデータベース)1 式 。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

図 2.3.4(2)-2 カンキツ 用 台 車<br />

本 シナリオで 登 場 する 移 動 型 機 械 システムは、 土 壌 センサ、 可 変 施 肥 機 、 移 動 型 選 果 ロボット、 防 除<br />

用 ヘリコプタである。いずれも 車 両 自 身 はGPS 機 能 によって、 自 己 位 置 を 取 得 する。その 際 、GPS<br />

基 地 局 は 環 境 側 の 負 荷 となる。GPSは、50cmの 誤 差 が 許 容 されるDGPSである。これが 誤 差 2<br />

cm 程 度 のRTK-GPSとなると、 全 ての 車 両 は 自 律 移 動 が 可 能 となるので、 農 作 業 業 務 に 携 わる 作<br />

業 者 は5 名 から3 名 となる。また、これらのロボット、 共 同 選 果 システムのセンサからの 情 報 を 受 け 取<br />

るPC、フィールドサーバと 事 務 所 内 のサーバが 情 報 通 信 するためのアンテナ、データベース、GIS<br />

等 は 環 境 側 の 負 荷 とされている。また、 土 壌 センサを 牽 引 するトラクタ、 可 変 施 肥 機 、 移 動 型 選 果 ロボ<br />

ットには、RFIDが 付 加 されており、 園 地 に 車 両 が 進 入 する 際 にゲートを 通 ることで、それぞれのP<br />

Cのメモリに 入 出 車 時 刻 が 管 理 されている。<br />

(3) 高 設 栽 培 イチゴ( 屋 内 )<br />

1)ユーザの 選 定<br />

農 家 B 氏 は、50aのグリーンハウス 内 でイチゴの 高 設 栽 培 をしていたが、3 台 の 収 穫 ロボットと2<br />

台 の 選 果 ・パッキングロボットの 導 入 に 伴 って、1haに 拡 大 した。 収 穫 ロボットは、 夜 中 にタイマー<br />

運 転 し、1 台 当 たり 約 30aをカバーする。これにより、 画 像 処 理 のための 照 明 環 境 は 昼 間 運 転 よりも<br />

104


向 上 すると 共 に、 夜 間 の 時 間 および 安 価 な 電 力 を 有 効 に 利 用 可 能 で、 早 朝 の 苦 痛 な 作 業 から 解 放 される。<br />

果 実 をつみ 取 った 後 、 平 トレイに 入 れると 同 時 に、 収 穫 日 時 、 収 穫 場 所 ( 列 番 号 および 位 置 )とマシン<br />

ビジョンで 判 断 された 色 、 形 状 、 寸 法 等 が 記 録 される。 収 穫 トレイは 別 の 移 送 用 カートによって 自 動 的<br />

に 予 冷 庫 まで 移 送 され、 次 の 日 の 朝 、 選 別 するまで、5℃の 環 境 で 保 管 される。 最 近 では、 腰 に 負 担 の<br />

大 きな 土 耕 栽 培 を 行 う 農 家 が 少 なくなった。 高 設 栽 培 は 作 業 者 に 対 して、 労 働 力 の 軽 減 、 快 適 な 作 業 に<br />

貢 献 していると 同 時 に、 茎 葉 と 果 実 との 分 離 が 比 較 的 容 易 であることより、 土 耕 栽 培 と 比 較 してロボッ<br />

ト 作 業 に 対 しても 有 利 である。 自 治 体 では、この 高 設 栽 培 イチゴで 地 域 ブランドを 確 立 することも 考 慮<br />

中 という。<br />

収 穫 ロボットの 収 穫 率 は80%であるため、 残 りの20%を 人 が 朝 7 時 から8 時 の 間 に 収 穫 する。 人<br />

が 収 穫 した 果 実 および 保 管 されていた 果 実 は、 選 果 ・パッキングロボットによって1 個 ずつハンドリン<br />

グし、11 等 階 級 にグレーディングした 後 、パッキングする。 通 常 人 が 収 穫 した 果 実 は 果 柄 がないこと<br />

が 多 いが、ロボットが 収 穫 した 果 実 には、 果 柄 が10mm 程 度 残 っている。 選 果 ロボットでは、その 果<br />

柄 を 把 持 し、 近 赤 外 センサとマシンビジョンによって、 糖 度 、 形 状 、 色 、 寸 法 、 欠 陥 等 を 計 測 後 、その<br />

データを 基 に 箱 詰 めするシステムとなっている。そのため、このロボットシステムを 導 入 したところで<br />

は、 人 が 収 穫 するときにも、 果 柄 を 残 すようになった。これにより、 果 皮 に 接 触 しないため、 果 実 の 劣<br />

化 を 防 ぐことが 可 能 である。<br />

選 果 ロボットで 計 測 した 情 報 ならびに 収 穫 および 選 果 日 時 の 情 報 は、グリーンハウスの 地 図 にリンク<br />

させて 蓄 積 する。 同 時 に、 出 荷 用 パックにはICタグを 付 加 して 等 階 級 の 情 報 を 消 費 者 が 検 索 できるよ<br />

うなトレーサビリティシステムが 確 立 している。 収 穫 ロボットはエンドエフェクタおよびソフトウェア<br />

を 交 換 することにより、 散 布 ロボット( 防 除 、 養 液 )、 摘 果 ロボットにもなる。その 情 報 も 記 録 され、<br />

トレーサビリティデータベースに 蓄 積 されている。<br />

これらのロボットシステム 導 入 前 は、 人 間 の 作 業 は 収 穫 および 選 果 およびパッキング 作 業 を 行 った 後<br />

に、 時 間 があれば、 葉 かき、 芽 かきの 作 業 に 追 われていたが、 今 は、ロボットが 取 り 残 した 果 実 の 収 穫<br />

と 葉 かき、 芽 かきのみになり、 収 穫 時 間 は 以 前 の1/5に、 選 果 時 間 はロボットの 調 整 、 点 検 作 業 だけ<br />

となった。パートの 作 業 者 も 現 時 点 では 必 要 なく、 家 族 内 の 労 働 力 でまかなえる。また、 時 間 に 余 裕 が<br />

できたことにより、それらの 作 業 をしながら、 病 虫 害 の 早 期 発 見 に 努 められる。 病 虫 害 情 報 ならびに 環<br />

境 情 報 と 品 質 情 報 との 関 係 より、 減 農 薬 、 減 化 学 肥 料 が 可 能 となり、 県 等 の 認 証 制 度 を 受 けており、 生<br />

産 物 の 高 価 格 につながっている。ロボット 導 入 により、1 日 の 仕 事 が 終 わると、パソコンでその 日 の 果<br />

実 の 情 報 、 今 までの 蓄 積 、 去 年 との 比 較 などが 可 能 で、 非 常 にきめ 細 かな 作 業 が 可 能 となった。<br />

また、ロボットの 導 入 によって、その 日 のうちにイチゴが 店 頭 に 並 ぶことになり、 鮮 度 が 高 いこと、<br />

減 農 薬 、 人 手 にふれていないことより 低 雑 菌 、トレーサビリティ 情 報 が 得 られること 等 のロボット 収 穫<br />

による 付 加 価 値 を 最 大 限 に 活 かし、 商 品 価 値 を 向 上 させることができた。また、 労 働 力 不 足 がロボット<br />

によって 補 われたため、 今 後 の 品 質 評 価 には、 食 味 ・ 歯 触 り・ビタミン・ミネラルなど 栄 養 成 分 も 考 慮<br />

することに 関 して、 検 討 する 余 裕 が 生 まれてきた。 同 時 に、 収 入 予 測 シミュレーションソフトに 最 新 の<br />

各 地 の 市 場 での 価 格 を 入 力 すれば、いつの 時 期 にどれくらいの 量 のイチゴを 生 産 ・ 出 荷 すれば、 最 大 の<br />

収 入 が 得 られるかがわかる。 最 近 では 昔 に 比 べると 多 くの 品 種 が 市 場 でも 出 回 り、 消 費 者 の 嗜 好 も 変 化<br />

しつつあるため、その 動 向 調 査 をインターネット 等 で 調 べ、 戦 略 的 に 経 営 している 農 家 が 増 えた。<br />

2)システム 構 成 ( 図 2.3.4(3)-1)<br />

1 収 穫 ロボットシステム(1500 万 円 )3 式 : 以 下 は1 式 当 たりの 構 成<br />

・マシンビジョン:カラーTVカメラ3 台 、2 台 はステレオビジョン、1 台 はマニピュレータエンドに<br />

装 着 。いずれもVGAクラスでHSIにより 色 を 識 別 し、 形 状 、 寸 法 等 を 用 いて 距 離 検 出 。<br />

・マニピュレータ:スカラ 型 1 台 、 手 先 速 度 は1m/s。<br />

・エンドエフェクタ: 果 実 吸 着 ヘッド、 果 柄 把 持 用 フィンガ、 果 柄 切 断 用 カッタ<br />

・ 移 動 機 構 :バッテリーカーによるレール 式 で、 検 出 精 度 は5cm。<br />

・ブロワーおよび 吸 着 ヘッド: 果 実 収 穫 時 に 吸 着 することにより、 検 出 誤 差 を 吸 収 するとともに、 搬 送<br />

時 には 果 実 の 揺 れ 防 止 となる。<br />

・ 移 送 カート: 収 穫 ロボットのトレイが 果 実 で 満 たされると、 移 送 カートにトレイを 移 動 される。 移 送<br />

カート 内 のトレイが 全 て 満 たされるとバッテリーカーが 予 冷 庫 に 移 送 カートを 運 ぶ。<br />

・ 収 穫 スピード:5 秒 / 個<br />

105


・ 動 作 : 移 動 機 構 が200mm 移 動 した 後 、 停 止 し、ステレオビジョンにより 適 熟 果 実 の 識 別 および 位<br />

置 検 出 を 行 う。 続 いてマニピュレータが 目 的 果 実 に 接 近 する 間 に、エンドに 取 り 付 けられたカメラに<br />

より 果 柄 を 検 出 し、 果 柄 を 把 持 、 切 断 する。 収 穫 果 実 は、トレイに 収 納 され、 次 の 果 実 を 収 穫 する 動<br />

作 を 行 う。その 地 点 に 収 穫 適 期 の 果 実 がなくなれば、 移 動 機 構 が200mm 進 む。 移 送 カート 内 のト<br />

レイがすべて 果 実 で 満 たされると、 収 穫 ロボットは 移 送 カートを 切 り 離 し、 移 送 カートは 別 なバッテ<br />

リーカーにより 予 冷 庫 へ 運 ばれる。<br />

2 選 果 ・パッキングロボットシステム(1500 万 円 )2 式 : 以 下 は1 式 当 たりの 構 成<br />

・マシンビジョン:カラーTVカメラ5 台 、 上 方 向 から1 台 、 横 方 向 から4 台 のカメラで 計 測 。<br />

・ 糖 度 センサ: 近 赤 外 分 光 器 1 台 により、あらかじめ 糖 度 と 吸 光 度 の 関 係 より 検 量 線 を 作 成 しておき、<br />

未 知 の 果 実 の 吸 光 度 より 糖 度 を 推 定 する。0.5 度 Brix 程 度 の 誤 差 。<br />

・ 計 測 項 目 : 色 、 形 状 、 寸 法 、 外 観 上 の 欠 陥 、 糖 度<br />

・ 選 果 スピード:3 個 / 秒<br />

・ 動 作 : 予 冷 庫 から 排 出 されたトレイは、 選 果 ロボットの 前 に 運 ばれ、TVカメラにより、 果 実 および<br />

果 柄 の 位 置 が 検 出 される。トレイの 一 列 の 果 実 の 果 柄 を 把 持 するバーが1 列 分 の 果 実 を 持 ち 上 げ、4<br />

台 のカラーカメラおよび 糖 度 センサが 備 えられたライン 上 を50cm/sで 移 動 する。その 間 に、 色 、<br />

形 状 、 寸 法 、 外 観 上 の 欠 陥 、 糖 度 が 果 実 ごとに 計 測 され、その 結 果 に 基 づいて 等 階 級 分 けされ、パッ<br />

ク 詰 めされる。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

グリーンハウスの 通 路 にはロボットが 移 動 可 能 となるレールを 敷 設 しておく(オプションとして、ケ<br />

ーブル 埋 設 式 のものもある)ことが、まず 移 動 型 ロボット( 収 穫 ロボット)の 導 入 には 要 求 される。こ<br />

のレールの 代 わりにオランダ 型 トマト 生 産 ハウスのように 暖 房 用 パイプを 利 用 することも 可 能 である。<br />

また、 移 動 型 ロボットはバッテリによる 台 車 を 利 用 しており、この 充 電 設 備 も 備 わっている。<br />

グリーンハウスでの 屋 内 GPSの 代 わりに、ロボットの 自 己 位 置 検 出 を 行 う 方 法 として、RFIDが<br />

各 通 路 入 口 および 出 口 に 設 置 されている。ロボット 側 あるいは 移 送 カート 側 には、RFIDからの 信 号<br />

を 受 信 するアンテナがあり、どの 通 路 に 入 ったかがわかる。<br />

さらに、その 通 路 内 での 位 置 は 車 輪 に 装 着 されたエンコーダによって 計 測 される。<br />

しかし、 車 輪 とレールとの 間 のスリップ 等 によって 実 際 の 位 置 とのずれが 生 じる。そのため、レール 敷<br />

設 用 マクラに 金 属 片 を 埋 め 込 んでおき、ロボット 側 に 取 り 付 けた 電 磁 ピックアップでキャリブレーショ<br />

ンを 行 い、 正 確 な 位 置 検 出 を 行 う。また、 収 穫 ロボット、 選 果 ロボットからの 果 実 情 報 、 位 置 情 報 等 を<br />

サーバに 転 送 するアンテナ、データベース、グリーンハウス 内 地 図 情 報 等 は 環 境 側 の 必 要 項 目 として、<br />

ロボット 導 入 と 同 時 に 導 入 されている。<br />

図 2.3.4(3)―1 ロボットによるイチゴ 生 産<br />

1)<br />

< 参 考 文 献 ><br />

1) 林 茂 彦 、 2005、 イチゴ 収 穫 ロボット. 農 林 水 産 技 術 研 究 ジャーナル、 28(11), 21-25<br />

106


(4)トマト( 屋 内 )<br />

1)ユーザの 選 定<br />

農 家 Aは、これまでトマトを1haの 簡 易 ハウス(パイプハウス)で 栽 培 してきたが、 管 理 作 業 のほ<br />

とんどは 人 手 に 頼 っており、 作 業 の 集 中 する 時 期 には5、6 人 のアルバイトを 雇 ってきたため、その 賃<br />

金 が 経 営 を 圧 迫 してきた。<br />

また、 収 穫 時 期 の 狭 いハウス 内 でのトマトを 満 載 したコンテナの 運 搬 作 業 により 腰 を 痛 め、そのよう<br />

な 状 況 を 見 て、 子 供 たちは 都 会 へと 出 てしまった。<br />

そこで 農 家 Aは、 将 来 の 経 営 基 盤 の 強 化 と、 自 身 の 高 齢 化 と 後 継 者 の 育 成 を 考 え、 家 族 を 中 心 として<br />

経 営 が 可 能 で、 肉 体 的 負 担 の 少 ない 最 近 完 成 されたばかりの 最 新 鋭 の 低 段 密 植 によるトマト 栽 培 システ<br />

ムを 導 入 し、 家 族 4 人 による 新 たな 農 業 を 始 めた。<br />

全 体 のシステムは 主 に 育 苗 を 含 めた 栽 培 システムと、 収 穫 支 援 ロボットを 中 心 としたロボットシステ<br />

ムで 構 成 されており、それぞれは 環 境 制 御 システムとロボット 制 御 システムで 制 御 されるとともに、シ<br />

ステム 全 体 を 統 括 するホストコンピュータにより 統 合 されていて、さらに 制 御 システムは、 機 器 の 増 設<br />

などの 拡 張 性 を 有 している。<br />

ロボットは 基 本 モジュールの 走 行 ロボットに、オプションユニットを 追 加 することで、 様 々な 作 業 に<br />

対 応 可 能 としたもので、これまでのように 稼 働 率 の 低 い 高 価 な 作 業 機 械 を 多 数 そろえる 必 要 がなく、 設<br />

備 投 資 が 軽 減 されている。<br />

農 家 Aでは 基 本 モジュールの 走 行 ロボット4 台 と、オプションとして 収 穫 時 に 走 行 ロボットを 台 車 と<br />

して 使 用 するためのパワーアシストユニット4 台 、それに 自 動 防 除 ユニットと 残 渣 処 理 ユニットをそれ<br />

ぞれ1セットずつ 導 入 した。 苗 のセルトレーや 収 穫 パレットの 移 載 装 置 など 周 辺 装 置 は、 今 後 経 営 の 安<br />

定 化 とともに 増 設 していく 予 定 である。<br />

さて、いよいよシステムを 稼 動 させる 日 が 来 て、 農 家 Aは 自 動 播 種 機 の 運 転 を 開 始 した。あらかじめ<br />

選 んでおいた 培 度 が 自 動 的 にセルトレーに 詰 められ、 新 たに 選 んだトマトの 種 が 自 動 的 に 播 種 されてい<br />

く。 次 々と 種 の 播 かれたセルトレーができあがり、 作 業 者 は 走 行 ロボットのラックに 搭 載 して 行 く。ラ<br />

ックが 一 杯 になり、 作 業 者 は 育 苗 施 設 までセルトレーの 運 搬 を 行 うこととした。ラックにたくさん 載 せ<br />

たので、 運 搬 中 に 事 故 のないよう、パワーアシストモードにしてハンドルに 軽 く 手 を 置 いて 歩 き 出 した。<br />

台 車 は 軽 やかに 動 き 出 し、 育 苗 施 設 まで 走 行 し 停 止 した。 苗 を 育 苗 施 設 のラックに 収 めると、 作 業 者 は<br />

走 行 ロボットを 自 動 運 転 モードにして 格 納 庫 に 戻 し、 設 備 の 点 検 をしながら 引 き 上 げた。<br />

やがて 苗 が 育 ち 栽 培 区 に 移 植 する 日 が 来 たので、 作 業 者 は 育 苗 施 設 までセルトレーの 苗 を 取 りに 行 っ<br />

た。 苗 が 大 きくなっており、ラックの 段 数 が 減 って 一 度 にたくさん 運 搬 できないので、 二 台 の 走 行 ロボ<br />

ットを 自 動 モードで 育 苗 施 設 の 前 まで 移 動 させておいて、 作 業 者 は 事 前 に 予 定 の 場 所 を 確 認 し、あとか<br />

ら 到 着 した。ラックからセルトレーを 取 り 出 し、 二 台 の 走 行 ロボットにセルトレーを 移 載 すると、 自 動<br />

モードで 走 行 ロボットを 先 行 させ、 後 からロボットを 監 視 しながら 予 定 の 場 所 へと 移 動 した。 作 業 者 は<br />

高 設 台 に 苗 の 移 植 を 行 い、 育 苗 施 設 との 間 を4 往 復 して 作 業 を 終 えた。この 間 新 たに 播 種 されたセルト<br />

レーが、 別 の 作 業 者 によって 育 苗 施 設 へと 運 ばれた。<br />

収 穫 の 時 期 が 来 て、 作 業 者 はロボットをパワーアシストモードにして、 収 穫 予 定 の 列 まで 移 動 した。<br />

台 車 はハンドルに 加 わる 力 を 検 知 して、その 力 の 大 きさと 向 きに 応 じて 自 走 し、 作 業 者 は 肉 体 的 負 担 無<br />

く、セルトレーを 作 業 者 は 軽 々と 作 業 台 車 を 操 ることができる。 所 定 の 位 置 に 付 くと、 今 度 は 協 調 モー<br />

ド( 自 動 追 従 モード)に 切 り 替 え、 作 業 者 は 台 車 から 手 を 離 し、 収 穫 作 業 を 開 始 した。 台 車 は 常 に 作 業<br />

者 と 一 定 の 距 離 を 保 ちながら 自 走 し、 作 業 者 は 効 率 よく 収 穫 を 行 うことができる。やがて 収 穫 コンテナ<br />

が 一 杯 ないなり、 作 業 者 は 台 車 を 自 走 モードに 切 り 替 え、 回 収 の 指 示 を 与 えた。 台 車 は、ビジョンやレ<br />

ーザなどの 距 離 センサ、 栽 培 列 の 要 所 に 配 置 されたICタグなどによる 位 置 (マップ) 情 報 をもとに、<br />

経 路 を 決 定 し、 経 路 状 況 を 判 断 しながら 収 穫 場 所 で 待 つ 軽 トラックまで 自 走 し、 別 の 作 業 者 の 手 でコン<br />

テナが 回 収 され、 新 たに 空 のコンテナを 積 み 込 まれた。そこで 収 穫 場 所 まで 戻 るよう 新 たな 指 示 が 与 え<br />

られ、ロボットは 先 程 の 収 穫 場 所 まで 自 走 し、 収 穫 作 業 者 の 前 で 停 止 した。 収 穫 作 業 者 は 以 前 であれば<br />

自 分 で 重 たい 台 車 を 押 して 行 ったが、 今 日 では 肉 体 的 負 担 はなく、 空 いた 時 間 は 休 憩 や 他 の 管 理 作 業 に<br />

費 やし、 作 業 効 率 が 格 段 に 向 上 した。<br />

107


I<br />

R<br />

R<br />

I<br />

カメラ<br />

環 境 センサ<br />

人 についてくる<br />

運 搬 ロボット<br />

搬 出 中 の 運 搬<br />

ロボット<br />

図 2.3.4(4)-1 トマト 収 穫 ロボットシステム<br />

今 日 は 収 穫 作 業 を4チームで 行 っているので、1 人 1 台 の 収 穫 ロボットを 使 っているが、チーム 数 が<br />

少 なければ 空 いた 一 台 は 常 に 待 機 しており、 収 穫 ロボットがトマトを 回 収 のため 移 動 すると 同 時 に 作 業<br />

者 のもとに 移 動 し、 作 業 者 は 連 続 で 収 穫 作 業 を 行 うこともできる。 予 定 数 が 一 杯 になったので、 作 業 者<br />

はパワーアシストモードに 切 り 替 え、 台 車 ごとトマトの 回 収 を 行 った。 台 車 と 合 わせて100kg 近 く<br />

にもなるが、 作 業 者 は 軽 くハンドルを 握 って 歩 くだけで、 力 を 入 れること 無 く、 軽 トラックまで 戻 るこ<br />

とができた。 芽 欠 き 作 業 や 誘 引 作 業 などの 管 理 作 業 を 行 う 時 には、 必 要 な 機 材 や 回 収 ボックスを 積 んで<br />

協 調 モードで 運 転 される。 作 業 者 は 台 車 を 押 す 必 要 が 無 いので 管 理 作 業 に 集 中 し、これまでより10%<br />

程 度 作 業 時 間 を 短 縮 することができた。<br />

さて、これまで 作 業 者 にとって 危 険 な 作 業 であった 防 除 作 業 も 自 動 化 された。 作 業 者 が 散 布 したい 農<br />

薬 の 情 報 を 入 力 すると、 画 面 上 にいくつかの 選 択 肢 などが 表 示 され、 必 要 な 情 報 をインプットすると、<br />

薬 液 は 自 動 的 に 必 要 な 濃 度 で 調 整 され、 薬 液 タンクに 必 要 量 注 入 される。 台 車 は 散 布 ノズルユニットを<br />

積 んだ1 台 と、 薬 液 タンクを 積 んだ1 台 の2 台 を 用 意 する。 作 業 者 は 薬 液 のホースを 繋 いでスタートさ<br />

せると、2 台 の 台 車 は 協 調 運 転 しながら 連 なって 防 除 作 業 エリアに 向 かい、 薬 液 の 散 布 を 開 始 する。 防<br />

除 作 業 状 況 は、 畝 ごとに 設 けられたセンサでチェックされ、 確 実 に 決 められた 全 ての 経 路 で 防 除 作 業 が<br />

行 われよう 監 視 される。また 作 業 履 歴 はホストコンピュータに 記 録 されるとともに、 作 業 者 は 外 部 モニ<br />

ターで 走 行 ロボットの 作 業 状 況 を 監 視 できる。 異 常 時 には 自 動 的 に 走 行 ロボットを 停 止 させるとともに、<br />

作 業 者 に 連 絡 される。<br />

カメラ<br />

環 境 センサ<br />

防 除 システム<br />

図 2.3.4(4)-2 防 除 システム<br />

108


収 穫 も 終 わって 残 渣 処 理 を 行 う 段 階 になった。これまではかさばる 残 渣 を 何 回 にも 分 けて 回 収 し、あら<br />

ためて 細 かく 粉 砕 して 処 理 しており、かなりの 重 労 働 であった。 作 業 者 は 残 渣 処 理 のため、 残 渣 を 細 か<br />

く 粉 砕 する 残 渣 処 理 ユニットを 台 車 に 取 り 付 け、 粉 砕 された 残 渣 を 運 搬 する 台 車 モードでは、 残 渣 処 理<br />

機 搭 載 した 走 行 ロボットと、 処 理 された 残 渣 の 運 搬 用 走 行 ロボットを 用 意 した。ロボットは 協 調 作 業 モ<br />

ードに 切 り 替 えられ、 作 業 者 の 後 に2 台 のロボットが 一 定 の 距 離 で 追 走 していく。 作 業 者 は 残 渣 を 次 々<br />

に 処 理 機 に 投 入 していくと、 残 渣 は 細 かく 粉 砕 され、 次 位 のロボットに 積 みこまれてゆく。やがてケー<br />

スが 一 杯 になったので、 作 業 者 は 運 搬 ロボットを 自 動 モードに 切 り 替 え、スタート 釦 を 押 すと、ロボッ<br />

トは 残 渣 をあらかじめ 指 定 した 集 積 場 所 まで 運 搬 した。 待 機 していた 別 の 作 業 者 が 残 渣 を 降 ろし、 空 の<br />

コンテナを 積 んでスタートさせると、 運 搬 台 車 は 本 の 道 を 辿 り、 先 程 の 作 業 場 所 まで 戻 っていった。 重<br />

量 物 の 運 搬 作 業 がなくなり、 肉 体 的 負 担 はずいぶんと 軽 減 された。<br />

一 方 ハウス 内 の 環 境 は、 環 境 制 御 装 置 により、 温 度 、 湿 度 、 養 液 管 理 などが 自 動 的 に 行 われ、 各 所 に<br />

設 けられたモニターカメラはハウス 内 の 状 況 を24 時 間 監 視 している。<br />

Aはいつでも 自 宅 内 のモニターや、 携 帯 電 話 によりそれらのデータや 状 況 を 現 場 に 行 くことなく 確 認<br />

することができ、また、トマトの 状 態 に 合 わせて 環 境 条 件 の 変 更 を 遠 隔 操 作 により 行 うことができ、 手<br />

動 による 操 作 内 容 は 環 境 制 御 装 置 により 学 習 され、 以 降 の 自 動 制 御 に 反 映 される。<br />

図 2.3.4(4)-3 残 渣 処 理 ロボットシステム<br />

育 苗 施 設 は 自 動 化 された 完 全 閉 鎖 型 で、 温 度 、 湿 度 、 光 、 二 酸 化 炭 素 濃 度 などの 環 境 や 成 長 の 段 階 に<br />

合 わせて 必 要 な 水 分 量 や 栄 養 素 の 比 率 と 濃 度 も 制 御 され、 苗 は 専 用 のセルトレー 上 で 無 菌 かつ 最 短 日 時<br />

で 育 苗 される。<br />

本 圃 はガラスハウスであり、 自 然 光 など 自 然 エネルギーが 最 大 限 に 活 用 され、ランニングコストが 最<br />

小 になるよう、 必 要 な 動 力 がコントロールされている。<br />

雰 囲 気 の 温 度 、 湿 度 は 生 育 段 階 に 合 わせて 最 適 に 制 御 され、 雨 天 や 曇 天 など 自 然 光 の 不 足 する 場 合 に<br />

は、ランプにより 補 光 される。またトマトの 呼 吸 状 況 に 合 わせ、 光 合 成 が 効 率 よく 行 われるための 二 酸<br />

化 炭 素 濃 度 も 自 動 的 に 制 御 される。<br />

植 物 の 状 態 は 葉 の 色 具 合 や 成 長 度 合 いを 自 動 的 にセンシングし、 生 育 状 態 に 合 わせて 養 液 の 成 分 や 濃<br />

度 、さらには 温 度 も 自 動 的 に 調 整 される。<br />

特 に 異 常 が 認 められた 場 合 には 警 報 を 発 し、 作 業 者 が 直 接 またはロボットモニターを 通 して 観 察 し、<br />

環 境 条 件 を 調 整 することもできる。<br />

管 理 者 による 調 整 は 記 録 され、 学 習 されることで 次 の 機 会 に 生 かされる。<br />

また 市 場 ニーズに 合 わせて 生 育 速 度 のコントロールも 可 能 となっている。<br />

養 液 や 雰 囲 気 中 の 雑 菌 濃 度 も 自 動 計 測 され、 必 要 に 応 じて 自 動 的 に 養 液 などの 除 菌 を 行 い、 常 に 雑 菌<br />

数 を 一 定 濃 度 以 下 に 制 御 し、 発 病 の 確 立 を 低 く 抑 えている。このようなシステムのおかげで 防 除 を 効 率<br />

的 に 行 うことができ、 防 除 回 数 も 従 来 の1/3 程 度 に 減 らすことで、 大 幅 なコスト 削 減 を 実 現 し、かつ<br />

市 場 にアピールすることができて、 単 価 も 希 望 の 値 段 で 取 引 できた。<br />

農 家 Aは1 年 間 新 しいシステムでトマト 栽 培 を 行 ってみて、 家 族 4 人 で 十 分 経 営 が 成 り 立 つだけでな<br />

109


く、 将 来 はさらに 規 模 拡 大 が 可 能 だと 確 信 した。<br />

2)システム 構 成<br />

1 育 苗 システム( 閉 鎖 型 施 設 )<br />

環 境 制 御 システム: 温 度 、 湿 度 、 光 強 度 、ガス( 二 酸 化 炭 素 ) 濃 度 を 自 動 制 御 する。<br />

培 養 液 管 理 システム: 養 液 の 濃 度 、 成 分 を 成 長 に 合 わせて 自 動 調 整 する。<br />

2 栽 培 システム<br />

環 境 制 御 システム: 温 度 、 湿 度 を 外 気 も 利 用 して 自 動 調 整 するとともに、 雨 天 や 曇 天 時 の 自 然 光 の 不<br />

足 するときに、 人 工 灯 で 補 光 する。<br />

培 養 液 管 理 システム: 養 液 の 濃 度 、 成 分 を 成 長 に 合 わせて 自 動 調 整 する。<br />

3 収 穫 支 援 ロボットシステム( 苗 、 収 穫 物 運 搬 ステム)<br />

走 行 ロボットシステム<br />

・ 自 律 走 行 システム<br />

ビジョンセンサ: 小 型 CCDカメラでロボットを 誘 導 するためのターゲットを 認 識 する。<br />

ICタグ: 列 ごとに 設 置 された 位 置 情 報 を 管 理 し、ロボットに 与 えるとともに、ロボットの 通 過 を 認<br />

識 し、ホストコンピュータに 通 信 する。<br />

・パワーアシストシステム<br />

力 センサ:パワーアシストハンドルに 直 結 され、 人 の 押 す 力 の 大 きさと 向 きを 検 知 し、ロボットを<br />

制 御 する。<br />

変 位 センサ: 同 上<br />

・ 安 全 システム<br />

障 害 物 検 知 システム;レーザや 超 音 波 などの 距 離 センサで、 走 行 経 路 上 にある 障 害 物 を 検 知 し、ロ<br />

ボットを 停 止 させる。<br />

4 防 除 システム<br />

走 行 ロボット+ 防 除 ユニット: 基 本 モジュールの 走 行 ロボットに、 噴 霧 器 や 薬 液 タンクを 搭 載 し、 二<br />

台 一 組 で 防 除 システムを 構 成 する。<br />

5 残 渣 処 理 システム<br />

走 行 ロボット+ 残 渣 処 理 ユニット: 基 本 モジュールの 走 行 ロボットに、 残 渣 を 粉 砕 するチッピングマ<br />

シンを 搭 載 し、 粉 砕 された 残 渣 を 運 搬 する 走 行 ロボットと 二 台 一 組 で 残 渣 処 理 システムを 構 成 する。<br />

6トレーサビリティシステム<br />

栽 培 履 歴 管 理 システム: 環 境 制 御 、 養 液 管 理 、ロボット 制 御 の 各 履 歴 を 統 合 し、 記 録 する。<br />

学 習 機 能 : 自 動 制 御 プログラムと、 人 為 的 に 与 えられた 作 業 プログラムを 統 合 し、 必 要 に 応 じて 自 動<br />

制 御 プログラムを 変 更 する。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

1ロボット 側 の 知 能 化<br />

110


・ 自 動 作 業 を 行 うため、 位 置 、 方 向 を 検 出 する 方 位 センサ 及 び 位 置 情 報 をもったICタグ 読 取 装 置<br />

・ 位 置 と 方 向 の 情 報 をもとに 自 動 運 転 するためのコントローラ<br />

・ 運 転 操 作 のためのアクチュエータ<br />

・ 人 と 協 調 するためのパワーアシストシステムと、 距 離 センサ。<br />

・ 障 害 物 を 検 出 するための 障 害 物 センサ<br />

・ビジョン 等 による 監 視 システムと、 緊 急 時 の 自 動 通 報 システム<br />

2 環 境 側 の 知 能 化<br />

・ 温 度 、 湿 度 を 制 御 するための 温 度 センサ、 湿 度 センサ<br />

温 度 は 測 定 誤 差 ±0.1で 自 動 校 正 機 能 付 き。 湿 度 は 測 定 誤 差 ±1%で 自 動 校 正 機 能 付 き。<br />

・ガス 濃 度 を 制 御 するためのガス 濃 度 センサ<br />

CO2 濃 度 を 測 定 誤 差 ±0.1%で 測 定 可 能 。 自 動 校 正 機 能 付 き。<br />

・ロボットに 認 識 させる 位 置 情 報 を 持 ったICタグ<br />

通 信 距 離 は50cm 程 度 。 容 量 1kbyte。<br />

・ハウス 内 を 監 視 するビジョンシステム<br />

パンチルト 機 能 付 きで、ロボットの 動 きを 監 視 する。<br />

また、 遠 隔 操 作 機 能 付 き。1aに 1 台 天 井 に 装 備 。<br />

・ 環 境 情 報 のデータベース 化<br />

トレーサビリティシステムの 構 築 のため、 環 境 情 報 、 養 液 管 理 情 報 、ロボット 作 業 情 報 、 人 為 操 作 情<br />

報 はホストコンピュータに 統 合 される。<br />

・ 環 境 情 報 の 通 信 システム<br />

各 種 データの 通 信 は 無 線 LANまたは 携 帯 端 末 より 行 われる。<br />

2.3.5 災 害 分 野<br />

(1) 大 都 市 大 震 災 での 救 助 支 援<br />

1)ユーザの 選 定<br />

RTのユーザとして、 消 防 ・ 警 察 ・ 自 衛 隊 などの 救 助 対 応 専 門 機 関 に 加 え、オフィスや 一 般 市 民 を 主<br />

として 想 定 する。そのほか、 国 内 災 害 に 対 しては、 災 害 対 策 本 部 、 自 治 体 、 日 本 政 府 、 災 害 ボランティ<br />

ア 団 体 、 他 、を 想 定 することが 考 えられ、 国 外 災 害 に 対 しては、JICA 国 際 緊 急 援 助 隊 、 災 害 ボラン<br />

ティア 団 体 、 他 、が 想 定 可 能 である。<br />

2)システム 構 成<br />

文 部 科 学 省 大 都 市 大 震 災 軽 減 化 特 別 プロジェクト[1-3]で 開 発 、 基 礎 研 究 、あるいは、 発 案 された、<br />

上 空 からの 情 報 収 集 システム、 広 域 情 報 収 集 のためのインフラシステム、 瓦 礫 内 での 情 報 収 集 システム、<br />

地 下 街 ・ 瓦 礫 上 での 情 報 収 集 システム、をもとに、その 成 果 をさらに 発 展 させることによってはじめて<br />

可 能 になる、 図 2.3.5-1のような 未 来 の 救 助 支 援 の 姿 について 述 べる。<br />

111


図 2.3.5-1 RTを 活 用 した 大 都 市 大 震 災 における 人 命 救 助 [1]<br />

((C) 国 際 レスキューシステム 研 究 機 構 )<br />

20XX 年 XX 月 XX 日 午 前 10:46、 南 海 ・ 東 南 海 地 震 発 生 、 地 震 の 規 模 を 示 すマグニチュード<br />

8.5、 我 が 国 の 産 業 中 心 地 の 一 つが 壊 滅 的 な 打 撃 を 受 ける。 数 十 万 人 とも 知 れぬ 一 般 市 民 が 倒 壊 家 屋<br />

の 中 に 閉 じこめられ、 救 助 を 求 める。<br />

予 測 されていた 大 規 模 地 震 災 害 に 備 え、 各 オフィス・ 家 庭 には 要 救 助 者 の 位 置 情 報 等 をセンシング 統<br />

括 するレスキューコミュニケータが 配 備 されていた。これは、 平 常 時 にはネットワークサーバとして 使<br />

われているが、その 一 つの 機 能 として 緊 急 災 害 対 応 機 能 が 組 み 込 まれており、 建 物 内 のオフィス 機 器 、<br />

家 電 品 、 火 災 報 知 器 、 生 活 支 援 RT、ICタグ、 携 帯 電 話 などの 分 散 センサからの 人 間 の 位 置 情 報 等 を<br />

常 時 モニタリングしている。 大 規 模 災 害 の 発 生 確 率 が 高 いと 考 えられていたため、 安 全 性 がプライバシ<br />

ーよりも 優 先 すると 判 断 した 市 民 が、 災 害 弱 者 である 高 齢 者 を 中 心 に 多 数 を 占 めており、 政 府 自 治 体 の<br />

半 額 補 助 制 度 も 功 を 奏 し、この 地 区 においてはオフィスのみならず 多 くの 家 庭 がレスキューコミュニケ<br />

ータを 購 入 設 置 していた。 地 震 波 の 伝 達 時 間 遅 れを 活 用 した 緊 急 地 震 速 報 システムからの 信 号 に 基 づき、<br />

それまで 堅 くセキュリティガードされていたレスキューコミュニケータ 内 の 住 民 情 報 が、 緊 急 災 害 対 応<br />

機 関 である 消 防 ・ 警 察 ・ 自 衛 隊 にインターネット 経 由 で、 一 斉 に 送 られ、これら 機 関 では 要 救 助 者 の 位<br />

置 や 人 数 等 という、 救 助 活 動 開 始 の 意 思 決 定 に 最 も 重 要 な 覚 知 のための 情 報 が 集 められた。<br />

発 災 後 すぐに 無 人 ヘリコプターであるエアロロボットが 自 動 発 進 し、あらかじめ 決 められたルートに<br />

従 って、30 分 以 内 に、 重 要 施 設 を 中 心 に 倒 壊 状 況 を 上 空 から 情 報 収 集 した。また、 小 学 校 の 屋 上 から<br />

は 情 報 収 集 中 継 気 球 InfoBalloonが 自 動 的 にあげられ、 切 断 された 緊 急 災 害 通 信 網 を 自 動 修<br />

復 するとともに、あちらこちらで 上 がる 煙 や 津 波 の 押 し 寄 せる 様 子 を 自 動 認 識 しながら、 災 害 被 害 の 進<br />

展 、 災 害 軽 減 活 動 の 効 果 の 定 点 観 測 を 開 始 した。 上 空 では 風 速 10m/s 以 上 の 風 が 吹 いていたが、ロ<br />

バストなGPS-INS 制 御 、 最 適 化 された 空 力 特 性 、 係 留 ロープの 自 動 制 御 などにより、ヘリや 気 球<br />

の 飛 行 は 問 題 なく 行 われた。RT 安 全 性 規 格 に 基 づいて 設 計 製 作 がなされ、 緊 急 災 害 に 関 する 除 外 規 定<br />

が 適 用 されるため、 万 が 一 墜 落 事 故 が 起 きたとしてもメーカが 責 任 を 問 われることはない。 収 集 された<br />

情 報 は 災 害 軽 減 化 情 報 共 有 プロトコルMISPにより、リアルタイムあるいは 通 信 可 能 位 置 に 移 動 した<br />

際 に 伝 送 され、 神 戸 空 港 にある 国 際 レスキューシステム 研 究 機 構 の 基 地 [4] に 設 置 されたメインデー<br />

タベースサーバ「 親 DaRuMa」のみならず、 全 国 に 分 散 配 置 された 分 散 データベース「 子 DaRu<br />

Ma」にも 集 約 された。サーバ 上 の 情 報 に 対 しては、あらかじめ 設 定 されていた 自 動 プログラム( 画 像<br />

認 識 、データ 可 視 化 、 被 害 進 展 シミュレーションなど)はもとより 全 国 の 災 害 対 応 専 門 家 によるデータ<br />

への 意 味 づけが 次 々に 行 われており、 生 の 収 集 データとは 比 較 にならないリッチな 情 報 が 時 間 を 追 うに<br />

つれて 整 理 されてきており、 災 害 対 応 意 思 決 定 の 専 門 訓 練 を 受 けた 担 当 者 が 災 害 の 全 貌 と 詳 細 をわかり<br />

やすい 形 で 把 握 することが 可 能 になりつつある。<br />

112


現 地 の 災 害 対 応 機 関 や 自 治 体 では、 隊 員 ・ 職 員 自 身 や 家 族 の 被 災 にもかかわらず、 懸 命 の 救 助 活 動 が<br />

開 始 されていた。 現 場 隊 長 のPDAには 衛 星 電 話 を 通 じて、これらのシステムによるものも 含 めて 収 集<br />

された 救 助 関 連 情 報 が、 統 括 本 部 からの 指 令 と 同 時 にリアルタイムに 送 られている。レスキューコミュ<br />

ニケータからの 情 報 は、 建 物 倒 壊 後 も、アドホックネットワークにより 外 部 に 継 続 して 伝 送 されている<br />

ため、 現 場 での 聞 き 取 り 情 報 とともに、 救 助 隊 の 隊 長 判 断 に 大 きく 役 立 った。 市 民 による 救 助 隊 が 災 害<br />

対 応 機 関 隊 員 によるガイダンスに 基 づいて 次 々と 結 成 され、 人 手 で 対 応 可 能 な 救 助 活 動 が 開 始 されてい<br />

た。 広 域 消 防 隊 を 含 め、 近 隣 の 災 害 対 応 機 関 では 自 治 体 間 の 協 定 に 基 づいてすでに 応 援 部 隊 が 出 動 して<br />

いた。<br />

立 川 に 急 遽 設 置 された 政 府 の 災 害 対 策 本 部 では、 緊 急 対 策 会 議 が 招 集 され、 発 災 後 30 分 後 に 到 着 で<br />

きた 関 係 者 による 会 議 が 開 始 された。そこには、 収 集 情 報 を 反 映 した 災 害 被 害 進 展 ・ 軽 減 活 動 の 影 響 に<br />

関 するシミュレーションに 基 づき、 応 援 隊 全 体 としてのロジスティクスを 含 めた 戦 略 の 最 適 化 案 が 示 さ<br />

れている。 意 思 決 定 はリアルタイムに 次 々と 行 われ、 数 々の 指 令 がなされた。<br />

狭 い 空 間 しか 残 されていない 瓦 礫 内 の 要 救 助 者 の 探 索 には、 有 線 型 のヘビ 型 ロボットや 能 動 ファイバ<br />

ースコープやセンサボールが 投 入 された。これらの 瓦 礫 内 位 置 計 測 にはFSTに 加 えてUWBを 使 った<br />

外 部 からの 位 置 ガイダンスシステムが 活 用 され、 瓦 礫 内 の 空 間 と 障 害 物 特 性 と 要 救 助 者 の3 次 元 地 図 が<br />

作 られる。 自 動 認 識 と 半 自 律 制 御 を 活 用 したエコロジカルヒューマンインタフェースにより 操 縦 者 が 周<br />

囲 の 環 境 を 正 確 に 把 握 しながら、 遠 隔 操 縦 と 探 索 計 画 を 効 率 化 し、アクシデントからのリカバリを 容 易<br />

にしている。これによって、 安 全 で 確 実 な 移 動 を 可 能 とするとともに、 適 切 な 移 動 方 向 と 移 動 戦 略 を 定<br />

めることができているのだ。ロボットケーブルは3 次 元 地 図 情 報 に 基 づき 絡 まらないよう、もつれない<br />

よう 表 面 摩 擦 が 制 御 されている。<br />

地 下 街 やビルの 崩 壊 は 壁 や 天 井 が 落 ちる 程 度 でそれほど 激 しくないが、 内 部 は 真 っ 暗 で、 家 具 や 商 品<br />

等 が 散 乱 し、 都 市 ガスのにおいが 立 ちこめている。 探 索 のために、アーム 付 連 結 クローラ 型 、 低 床 車 輪<br />

型 、フリッパー 付 きクローラ 型 、ジャンプ 型 など、 現 場 状 況 にあったモビリティとサイズを 持 つ 多 数 の<br />

ロボットが 投 入 された。<br />

要 救 助 者 は 音 声 、UWBレーダー、インテリジェント 適 応 照 明 付 きマルチカメラ、 赤 外 線 カメラ、<br />

CO2・ 尿 素 センサ、 有 害 ガスセンサ、 携 帯 電 話 電 波 受 信 探 知 機 、 瓦 礫 内 で 動 作 しているレスキューコ<br />

ミュニケータ、 一 時 的 にばらまかれた 分 散 センサボール、 統 合 的 データマイニング 等 の 技 術 によって 発<br />

見 される。 何 台 ものロボットが 同 時 に 投 入 されているため、 異 なる 複 数 の 場 所 からさまざまな 状 況 デー<br />

タが 送 られてくるため、それらを 総 合 することによって 要 救 助 者 の 位 置 や 状 態 等 が 推 定 されている。<br />

投 入 されたシステムが 要 救 助 者 を 傷 つける 可 能 性 を 最 小 限 に 抑 えるための 半 自 律 機 能 が 搭 載 され、RT<br />

安 全 基 準 の 緊 急 災 害 字 の 特 例 規 程 に 準 拠 して 作 られており、 操 縦 の 詳 細 はすべて 記 録 されているため、<br />

万 が 一 の 事 故 においても 操 縦 者 やメーカの 責 任 が 一 方 的 に 問 われることはない。 要 救 助 者 に 対 して、 音<br />

声 による 呼 びかけ、 呼 吸 の 確 保 の 他 、 少 量 の 血 液 採 取 による 緊 急 診 断 がなされ、クラッシュシンドロー<br />

ムの 危 険 性 と 救 出 後 の 生 存 確 率 を 事 前 に 評 価 しながらトリアージが 行 われ、その 情 報 は 無 線 ICチップ<br />

を 内 蔵 したトリアージタグに 書 き 込 まれ、 要 救 助 者 に 付 けられた。これらの 情 報 はすべてリアルタイム<br />

に 災 害 軽 減 化 情 報 共 有 プロトコルMISPにより 分 散 データベースDaRuMaに 格 納 され、 自 動 ある<br />

いは 遠 隔 地 の 専 門 家 によって 意 味 等 の2 次 情 報 が 付 加 された。<br />

救 助 隊 はデータベースを 参 照 しながら、その 後 の 救 出 プロセスを 最 適 に 計 画 し、 無 事 に 救 助 が 行 われ<br />

た。<br />

以 上 述 べた「 大 都 市 大 震 災 軽 減 化 特 別 プロジェクト、レスキューロボット 等 次 世 代 防 災 基 盤 技 術 の 開<br />

発 」の 研 究 開 発 成 果 を 発 展 、 実 用 化 させたRTについて、 現 場 での 活 用 シナリオを 時 系 列 で 整 理 すると、<br />

図 2.3.5-2のようになる。<br />

113


上 空 ・ 地 上 ・ 地 中<br />

ロボット 等<br />

インフラ<br />

(ホーム<br />

ネット)<br />

事 前 の<br />

情 報 収 集<br />

上 空 ( 無 人<br />

インテリジェ<br />

ントヘリ)<br />

迅 速 な<br />

緊 急 情<br />

報 収 集<br />

上 空 ( 飛 行 船 ・バルーン)<br />

上 空 からの 長 時 間 情 報 収 集<br />

瓦 礫 上 ロボット<br />

街 路 ・ 瓦 礫 上 からの 情 報 収 集<br />

地 下 街 ・ 高 層 ビルからの 情 報 収 集<br />

瓦 礫 内 ロボット<br />

瓦 礫 内 からの 情 報 収 集<br />

救 助 用 アドバンストツール<br />

インフラ(マイクロサーバ・RFIDタグ)<br />

広 域 の 情 報 収 集<br />

時 間<br />

シミュレー<br />

ション<br />

人 間<br />

事 前<br />

の<br />

発 災<br />

リアルタイム 被 害 推 定<br />

意 志 決 定<br />

備 え<br />

現 場 情 報 収 集 出 動<br />

インフラ(ユビキタス 端 末 )<br />

広 域 の 情 報 収 集<br />

1 時 間<br />

災 害 対 策<br />

本 部 設 置<br />

3 時 間 後<br />

人 命 救 助<br />

2 次 災 害 防 止 緊 急 輸 送 ルート<br />

広 域 救 助 隊 ロジスティクス<br />

ライフライン 復 旧<br />

72 時 間 後<br />

図 2.3.5-2 大 都 市 大 震 災 の 人 命 救 助 におけるRTシステム 活 用 と 環 境 構 造 化 [1]<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

以 上 のシナリオより 抽 出 される 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 は 下 記 の 通 りである.<br />

・レスキューコミュニケータをサーバとし、オフィス 機 器 、 家 電 品 、 火 災 報 知 器 、 生 活 支 援 RT、IC<br />

タグ、 携 帯 電 話 などをセンサとした、 要 救 助 者 の 位 置 情 報 を 災 害 発 生 時 に 出 力 する 分 散 センサネット<br />

ワーク<br />

・ 必 要 なときに 自 動 的 に 情 報 収 集 ・ 配 信 を 開 始 できるよう 配 備 された、エアロロボット、 情 報 収 集 中 軽<br />

気 球<br />

・ 収 集 した 災 害 情 報 を 管 理 する 分 散 データベースDaRuMaと、 災 害 情 報 収 集 プロトコルMISP。<br />

ここで 想 定 した 地 震 災 害 においては、 環 境 が 激 しく 破 壊 されるため、 静 的 に 設 置 された 環 境 構 造 化 技<br />

術 の 活 用 は 困 難 である。 一 方 で、 一 時 的 に 設 置 されることを 前 提 とした、たとえば、 次 のようなダイ<br />

ナミックな 環 境 構 造 化 が 有 効 である。<br />

・UWBによる 建 物 外 からの 位 置 ガイダンスシステム<br />

< 参 考 文 献 ><br />

[1] 大 都 市 大 震 災 軽 減 化 特 別 プロジェクト,III-4 レスキューロボット 等 次 世 代 防 災 基 盤 の 開 発 , 平 成<br />

14 年 度 ~ 平 成 18 年 度 成 果 報 告 書 , 国 際 レスキューシステム 研 究 機 構 , 防 災 科 学 技 術 研 究 所 , 文 部 科 学<br />

省 ,2003-2007.<br />

[2] 大 都 市 大 震 災 軽 減 化 特 別 プロジェクト 総 括 報 告 書 , 文 部 科 学 省 ,2007.<br />

[3] 第 5 回 IRS 国 際 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 国 際 レスキューシステム 研 究 機 構 ,2006.<br />

[4] 世 界 初 , 民 間 国 際 ロボット 救 助 隊 を 創 ろう,http://www.maeda.co.jp/fantasy/, 前 田 建 設 ファン<br />

タジー 営 業 部 ,2006.<br />

114


(2) 地 下 街 における 化 学 剤 漏 洩 災 害 対 応<br />

1)ユーザの 選 定<br />

RTのユーザとして、 消 防 ・ 警 察 ・ 自 衛 隊 などの 災 害 対 応 専 門 機 関 を 想 定 し、RTを 駆 使 することに<br />

よって 迅 速 な 情 報 収 集 を 図 り、 隊 員 の 二 次 災 害 の 危 険 性 を 最 小 限 に 抑 えることを 目 的 とする。<br />

このケースの(1)との 大 きな 違 いは、 環 境 破 壊 の 程 度 が 低 いことであり、そのため 環 境 構 造 化 の 有 効<br />

性 が 高 い。<br />

表 2.3.5.1 地 下 街 における 化 学 剤 漏 洩 災 害 対 応 シナリオで 出 動 しているRT<br />

RT の 種 類<br />

高 速 探 査 群 ロボット<br />

光 ファイバー 敷 設 ロボット<br />

ドア 開 閉 ロボット<br />

生 活 支 援 ヒューマノイド<br />

インテリジェントセンサマーカ<br />

ーIC タグ<br />

重 量 物 ハンドリングマニピュレ<br />

ータ 付 きクローラ 型 ロボット<br />

機 能<br />

高 速 に 移 動 し, 要 救 助 者 等 の 情 報 を 収 集 する.<br />

光 ファイバーを 敷 設 し, 無 線 LAN のアクセスポイントを 設 置 す<br />

る.<br />

ドアを 開 閉 するロボット.<br />

平 時 に 使 われているヒューマノイドロボット.<br />

センサ 機 能 ,ネットワーク 機 能 , 視 認 ・ 無 線 兼 用 マーカー 機 能 を<br />

備 えたばらまき 用 IC タグ.<br />

要 救 助 者 , 瓦 礫 など, 重 量 物 を 移 動 できるロボット.<br />

2)システム 構 成<br />

NEDO 戦 略 的 先 端 ロボット 要 素 技 術 開 発 プロジェクト、 特 殊 環 境 用 ロボット 分 野 、 被 災 建 造 物 内 移<br />

動 RTシステム、 閉 鎖 空 間 内 高 速 走 行 探 査 群 ロボット、で 開 発 を 計 画 している。 高 速 で 移 動 して 人 がい<br />

る 災 害 空 間 で 情 報 を 収 集 する 群 ロボット、 光 ファイバーを 敷 設 して 通 信 インフラを 一 時 的 に 設 置 するロ<br />

ボット、ドア 開 閉 のためのロボットを 中 心 とするシステム( 図 2.3.5-3)により、それが 化 学 剤<br />

漏 洩 による 災 害 の 被 害 軽 減 化 に 適 用 された 際 の 活 用 イメージについて 述 べる。このシナリオの 中 で 使 用<br />

されるRTを 表 2.3.5-1に 整 理 する。<br />

200X 年 XX 月 XX 日 、 東 京 都 中 心 部 の 地 下 街 において、 化 学 剤 の 漏 洩 によると 推 定 される 災 害 が<br />

発 生 、 部 分 的 に 爆 発 を 伴 い、 停 電 し、さらに 被 害 が 拡 大 中 。 多 数 の 要 救 助 者 や 要 治 療 者 が 発 生 し、 地 下<br />

街 の 奥 深 くには 依 然 として 要 救 助 者 が 残 されている 模 様 。 発 災 後 推 定 10 分 後 に 地 下 街 の 防 災 センター<br />

より、 警 察 ・ 消 防 に 通 報 があり、 救 助 隊 が 出 動 した。 物 質 の 種 類 および 発 生 場 所 が 特 定 されておらず、<br />

通 常 部 隊 の 隊 員 が 地 下 街 の 中 に 入 って 検 索 ・ 救 助 活 動 を 行 うことは 危 険 、と 先 着 した 現 場 隊 長 が 判 断 、<br />

化 学 機 動 中 隊 の 出 動 が 要 請 された。 化 学 機 動 中 隊 には 先 端 的 なRT 高 度 資 機 材 が 配 備 されている.<br />

図 2.3.5.3 閉 鎖 空 間 内 を 高 速 移 動 計 測 マッピングする RT システムの 構 想<br />

(C) 国 際 レスキューシステム 研 究 機 構 , 東 北 大 学<br />

115


10 台 の 高 速 探 査 ロボット、2 台 の 光 ファイバー 通 信 路 敷 設 ロボット、1 台 のドア 開 けツールロボッ<br />

トを 搭 載 した、RT 救 助 工 作 車 計 12 台 が、6カ 所 の 地 下 街 の 入 り 口 に 分 れて 到 着 したのは 発 災 後 30<br />

分 後 であった。 地 下 街 の 入 り 口 近 くの 道 路 では、ぐったりとして 倒 れて 救 急 車 の 到 着 を 待 っている 人 、<br />

応 急 処 置 をしている 人 、 携 帯 電 話 で 連 絡 を 取 っている 野 次 馬 など、さまざまな 人 たちでごった 返 してい<br />

る。 入 り 口 の 中 から 口 を 押 さえながらようやくはい 出 てきた 人 がいる。 地 下 街 内 部 の 詳 細 な 状 態 は 不 明<br />

であるが、 商 店 で 働 くヒューマノイドロボットからの 映 像 が 地 上 まで 伝 えられてきており、 停 電 せず 平<br />

時 用 無 線 LANが 動 いている 箇 所 については、ある 程 度 の 状 況 を 知 ることができる。この 時 点 では、す<br />

でに 指 揮 車 が 現 場 に 到 着 し、 地 下 街 の 中 は 危 険 管 理 区 域 ( 入 ってはならない 区 域 )に 指 定 され、 総 指 揮<br />

への 現 場 隊 長 からの 詳 細 にわたる 状 況 報 告 が 終 わっていた。<br />

まず、2 台 の 照 明 ロボットとともに、まず5 台 の 高 速 探 査 ロボットが 次 々と 投 入 され、 入 り 口 から 無<br />

線 が 届 く 範 囲 内 での 探 索 が 開 始 された。 隊 長 1 名 を 含 む10 名 からなる 救 助 隊 ( 救 助 工 作 車 2 台 に 対 応 )<br />

のうち1 名 の 隊 員 が 先 頭 の1 台 のロボットを 操 縦 し、あとの4 台 は 自 動 的 に 先 頭 車 両 を 追 尾 している。<br />

また、2 名 の 隊 員 は 映 像 とセンサ 信 号 をモニタリングし、4 名 は 後 に 続 くロボットの 準 備 、 隊 長 は 指 令<br />

を 行 うとともに 総 指 揮 との 連 絡 をとっている。 無 線 通 信 としては 緊 急 災 害 用 の 専 用 周 波 数 への 変 換 用 レ<br />

スポンダを 通 した 無 線 LANが 使 われ、 制 御 ・ 映 像 用 のアンテナが 入 り 口 に 設 けられ、ロボットに 搭 載<br />

されたアドホックネットワーク 機 能 によって 地 下 街 のさらに 奥 に 対 して 自 動 的 に 中 継 されている。<br />

人 間 よりも 高 速 に 動 き 回 る 各 探 査 ロボットからの 映 像 が、 遠 隔 操 縦 に 必 要 かつ 十 分 なクオリティで、 人<br />

間 の 視 認 を 援 助 する 付 加 情 報 とともに、ほとんど 遅 れ 無 しに、RT 救 助 工 作 車 内 に 送 られてくる。これ<br />

らのロボットはある 程 度 の 自 律 性 を 持 っており、 隊 員 が 大 まかな 指 示 を 与 えるだけで 探 索 を 行 う 機 能 を<br />

持 っている。 音 声 、 赤 外 線 カメラ、UWBレーダー、インテリジェント 適 応 照 明 付 きマルチカメラ、 二<br />

酸 化 炭 素 ・ 尿 素 センサ、 携 帯 電 話 電 波 受 信 探 知 機 、 等 の 生 体 信 号 のためのセンサからの 情 報 は、 人 間 が<br />

認 識 容 易 なデータに 加 工 され、 疑 わしい 場 所 については 自 動 認 識 によりアラームが 発 せられ、 複 数 台 の<br />

データを 監 視 している 隊 員 でも 見 落 とす 心 配 が 無 い。これらのロボットはすべてRT 安 全 基 準 に 準 拠 し<br />

て 設 計 製 作 されており、 緊 急 災 害 時 の 特 例 規 程 が 適 用 され、かつ、 操 縦 の 履 歴 がすべて 記 録 されている<br />

ため、 万 が 一 危 険 回 避 自 律 機 能 が 十 分 に 働 かず、 人 間 との 干 渉 などの 事 故 が 起 きた 場 合 でも、 操 縦 者 や<br />

メーカの 責 任 が 一 方 的 に 問 われることはない。<br />

なお、この 地 下 街 は 開 設 時 期 が 古 く、 緊 急 用 の 無 線 設 備 は 設 置 されておらず、 平 時 用 のネットワーク<br />

設 備 は、 停 電 のためか 部 分 的 にしか 動 作 しなかった。<br />

ロボットはセンサとネットワークと 視 認 ・ 無 線 兼 用 マーカー 機 能 を 備 えた 小 型 軽 量 のインテリジェン<br />

トセンサマーカーICタグを 各 所 に 配 置 していく。 床 のみならず、ゲルにより 壁 や 天 井 に 粘 着 するよう<br />

になっている。これらは、 刻 一 刻 と 変 化 する 環 境 状 況 を 人 間 の 救 助 隊 に 伝 えるとともに、 通 路 や 階 段 に<br />

設 置 された 盲 人 ・ 生 活 支 援 ロボットガイダンス 用 のICタグや、 消 防 用 設 備 に 設 けられた 避 難 経 路 や 消<br />

防 設 備 の 配 置 情 報 を 示 すICタグと 併 用 することにより、 閉 鎖 空 間 内 でのロボットの 位 置 同 定 を 容 易 か<br />

つ 迅 速 に 行 うことを 可 能 にする。これらの「ダイナミック 環 境 構 造 化 」によって, 知 能 センシングのみ<br />

による 方 法 よりもはるかに 高 速 で 効 率 的 な 情 報 収 集 が 可 能 になり、 階 段 や 段 差 もものともせず 高 速 に 動<br />

き 回 ることができるのだ。 緊 急 時 用 にあらかじめ 用 意 された 地 下 街 内 部 のマップと、 高 速 走 行 ロボット<br />

が 収 集 した 地 形 改 変 データが 統 合 され、 入 り 口 近 くの 走 行 のための 情 報 が 整 った。また、ロボットによ<br />

ってガス 拡 散 防 止 のための 壁 が 設 置 された。<br />

現 地 指 揮 本 部 脇 の 主 進 入 口 には、シャワーをもつ 除 染 専 用 車 が 部 所 した。 危 険 管 理 区 域 から 出 てくる<br />

人 、 物 、ロボットは 全 て、 主 進 入 口 に 誘 導 され、 汚 染 状 況 に 応 じて 除 染 作 業 が 行 われている。<br />

高 速 ロボットが 倒 れて 動 けない 要 救 助 者 を 発 見 、その 位 置 がマップの 中 に 書 き 込 まれる。 声 を 掛 けた<br />

ところ 返 事 が 聞 こえる。マニピュレータ 付 きクローラ 型 ロボットが 体 の 下 に 摩 擦 軽 減 のためのシートを<br />

挟 み、アームにより 衣 服 をつかんで、 汚 染 が 少 ない 風 上 の 場 所 まで 緊 急 移 動 を 行 った。ロボットは 少 量<br />

の 採 取 血 液 を 採 取 、その 場 での 検 査 の 上 、ネットワーク 越 しに 医 師 によって 緊 急 診 断 がくだされ、 直 ち<br />

に 解 毒 剤 が 注 射 された。 指 揮 車 からは、 防 護 服 を 身 につけた 隊 員 への 出 動 命 令 と、 点 滴 用 薬 剤 の 収 集 運<br />

搬 指 令 が 下 った。このようにして、 次 々と 要 救 助 者 が 運 び 出 された。レストランで 働 くヒューマノイド<br />

ロボットが、 気 を 失 った 幼 児 を 乗 せた 乳 母 車 を 押 し、 地 下 街 から 出 てきたときには、あたりから 拍 手 が<br />

わき 起 こった。<br />

要 救 助 者 にはICタグを 用 いたトリアージタグが 付 けられた。そこには 救 助 された 場 所 、 写 真 、 緊 急<br />

診 断 結 果 などの 情 報 がデータとして 書 き 込 まれている。 次 々と 運 び 出 された 要 救 助 者 は、ICタグを 用<br />

いたロジスティクスの 管 理 によって、きわめて 効 率 的 に 医 療 機 関 に 配 送 された。このICタグは 全 世 界<br />

116


の 医 療 機 関 で 共 通 仕 様 化 され、 平 時 から 診 察 券 としても 使 われている。 隊 員 や 搬 送 ロボットがICタグ<br />

のデータを 読 み 取 ることにより 迅 速 に 判 断 を 下 せる 上 、 医 療 機 関 でも 患 者 データベースや 家 庭 内 での 健<br />

康 チェック 結 果 などと 照 合 することによって 既 往 症 などを 考 慮 した 診 断 が 可 能 であるため、 従 来 と 比 べ<br />

ると 飛 躍 的 に 生 存 率 が 高 まった。<br />

地 下 街 のこれ 以 上 奥 深 くはさらに 危 険 で、 無 線 が 届 かないため、 光 ファイバーとアクセスポイントを<br />

敷 設 するロボットが 投 入 された。また、 会 議 室 の 中 に 残 された 人 を 調 べるためにドア 開 けロボットが 投<br />

入 され、 生 活 支 援 ロボット 用 に 整 えられたドア 位 置 ・ 仕 様 を 示 すためのICタグの 情 報 を 活 用 して、 室<br />

内 の 検 索 が 行 われた。 無 線 が 届 きにくい 入 り 組 んだ 場 所 については、ロボットにより 漏 洩 同 軸 ケーブル<br />

アンテナが 敷 設 された。これら 重 量 ロボットはギャップに 落 ちたり 狭 所 にはまりこんだ 際 のリカバリが<br />

困 難 なため、 高 速 走 行 ロボット 上 のカメラを 使 ってモニタリングしながら、 慎 重 に 遠 隔 操 縦 がなされた。<br />

無 線 環 境 が 整 えられ 次 第 、 後 続 の 高 速 走 行 ロボットがさらに 奥 へ 向 かい、 面 的 に 探 索 範 囲 を 広 げていく。<br />

もうすでに6カ 所 の 入 り 口 から 合 計 100 台 以 上 の 高 速 ロボットが 投 入 され、 稼 働 を 始 めている。それ<br />

により、 要 救 助 者 の 発 見 と 状 態 の 確 認 はもちろんのこと、マップとインテリジェントセンサマーカーに<br />

よる 環 境 構 造 化 が 進 み、さらに 奥 へと 検 索 が 進 んでいく。<br />

ロボットに 搭 載 されたガスセンサや 放 射 線 センサは 反 応 しない。 地 下 街 内 数 百 カ 所 でサンプリングし<br />

た 空 気 をロボットが 持 ち 帰 ってきたので、 危 険 管 理 区 域 内 に 緊 急 設 置 された 質 量 分 析 ロボットに 掛 けた<br />

のだが、 汚 染 化 学 剤 はガス 物 質 ではないらしく、その 素 性 は 依 然 として 不 明 である。しかしながら、 医<br />

療 現 場 からの 連 絡 として、 要 救 助 者 の 状 態 の 検 査 に 基 づき、 汚 染 物 質 はある 程 度 の 範 囲 に 絞 られてきて<br />

いた。<br />

この 時 点 では、 順 次 、 各 進 入 口 に 除 染 テントが 設 置 されてきており、 除 染 用 の 水 利 、 廃 液 貯 蔵 タンク<br />

なども 設 置 された。 直 近 の 出 入 り 口 から 避 難 できるようになったため、より 円 滑 に 避 難 が 進 行 するよう<br />

になった。<br />

高 速 ロボットに 搭 載 された 小 型 軽 量 アームにより 疑 わしい 液 体 や 白 い 粉 の 採 取 が 進 められ、 質 量 分 析<br />

ロボットにより 次 々と 自 動 検 査 が 行 われているが、これら 大 量 のロボットをしても 地 下 街 全 体 をくまな<br />

く 調 べるにはまだ 時 間 がかかりそうだ。しかしながら、このプロセスを 精 査 してみると、 仮 にロボット<br />

でなく 人 間 が 作 業 を 行 った 場 合 には、 防 護 服 の 着 用 によって 作 業 効 率 の 低 下 が 避 けられず、 数 週 間 の 時<br />

間 がかかると 予 測 される。その 場 合 には、 作 業 にあたる 隊 員 の 負 担 は 莫 大 なものとなっていたであろう。<br />

仮 に 放 射 線 を 含 む 災 害 だった 場 合 には、 被 爆 のおそれもあり、 二 次 被 害 が 発 生 した 可 能 性 もある。<br />

また、ロボットによって 救 助 隊 の 負 担 が 減 少 したため、 同 じ 数 の 隊 員 でこなせる 作 業 のスピードと 量<br />

が 大 幅 に 向 上 した。さらには、ロボットに 単 純 作 業 を 任 せた 結 果 、 隊 員 はより 高 度 な 判 断 が 必 要 な 除 染<br />

作 業 に 専 念 できるようになったことも 特 筆 すべきである。<br />

以 上 のように、この 事 件 においてRTが 果 たした 役 割 は 明 らかに 大 きい。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

以 上 のようなシナリオにおける、 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 は 下 記 の 通 りである。<br />

・ 平 時 用 ネットワーク 設 備<br />

・ 平 時 用 に 通 路 ・ 階 段 ・ドアなどに 設 けられた 盲 人 および 生 活 支 援 ロボット 用 のICタグ<br />

・ 消 防 用 設 備 、そこに 設 けられたICタグ<br />

・GISによるデータによる 環 境 構 造 化<br />

・ 平 時 用 のデータ 標 準 化 (このケースでは 診 察 券 )<br />

一 方 で、 災 害 分 野 の 問 題 の 特 性 から、あらかじめ 社 会 インフラとして 埋 め 込 む 通 常 の 環 境 構 造 化 のみ<br />

ならず、ニーズが 生 じてから 短 時 間 にインフラを 設 置 する 次 のような「ダイナミック 環 境 構 造 化 」も 重<br />

要 である。<br />

・ 通 信 路 を 確 保 するための 光 ファイバー 通 信 路 敷 設 ロボット、 漏 洩 同 軸 ケーブル<br />

・ 一 時 的 に 設 置 するインテリジェントセンサマーカーICタグ<br />

環 境 を 構 造 化 する 方 法 (スタティックかダイナミックか)の 選 択 は、 少 なくとも 次 のような 項 目 の 評<br />

価 に 基 づき、あらかじめ 最 適 に 計 画 準 備 されていなければならない。<br />

117


・ 緊 急 事 態 が 起 きる 頻 度 、 想 定 される 被 害 の 大 きさ、 緊 急 ニーズの 重 要 性<br />

・ 平 時 においてインフラが 必 要 とされる 頻 度<br />

・ 緊 急 性 の 程 度 、 使 えるようになるまでに 許 容 される 時 間<br />

・ダイナミックな 設 置 に 必 要 な 所 要 時 間<br />

ダイナミック 環 境 構 造 化 は、イベント 会 場 、 工 事 現 場 などのように、 一 時 的 に 仮 設 インフラが 必 要 と<br />

なるケースや、 動 的 に 必 要 なインフラの 性 質 が 変 化 するケースに 対 して 有 効 であり、 災 害 分 野 のみに 限<br />

定 されたものではない。<br />

(3) 化 学 プラント 事 故 対 策<br />

1) 想 定 されるユーザ<br />

化 学 プラント 管 理 者 、 自 営 消 防 隊 、 公 設 消 防 隊<br />

2)シナリオ<br />

大 都 市 港 湾 地 域 に 立 地 する 化 学 プラント、フッ 素 化 学 品 の 一 種 を 製 造 する 反 応 棟 において 小 規 模 な 爆<br />

発 事 故 が 発 生 し、ガスが 漏 洩 、 同 時 に 黒 煙 が 発 生 している。 無 人 化 が 進 んだプラントの 中 央 管 理 室 では<br />

事 故 の 警 報 が 点 滅 し、 反 応 棟 上 層 階 で 事 故 が 発 生 している 状 態 を 監 視 カメラがとらえている。 中 央 管 理<br />

室 では、 事 故 の 発 生 を 消 防 へ 通 報 し、 現 場 に 残 っている 作 業 員 に 対 し、 事 故 状 況 に 応 じた、 安 全 な 避 難<br />

経 路 を 指 示 した。 作 業 員 が 身 につけているICタグと、 各 作 業 領 域 に 設 置 されたICタグの 情 報 交 換 に<br />

よって、 各 作 業 領 域 からの 避 難 状 況 が 刻 々と 把 握 されている。また、 周 辺 の 化 学 プラントへ 災 害 が 拡 大<br />

しないよう 防 御 態 勢 を 引 くように、 状 況 を 配 信 した。<br />

このような 化 学 プラントには、 劇 物 、 毒 物 、 危 険 物 など 多 様 な 化 学 物 質 が 存 在 している。そのため、<br />

化 学 プラント 管 理 者 や 消 防 隊 員 が 事 故 現 場 で 災 害 対 策 を 行 うためには 十 分 な 装 備 を 装 着 する 必 要 があ<br />

る。 各 種 装 備 を 装 着 するためには 時 間 を 要 するが、この 事 業 所 においては、いち 早 く 災 害 対 策 用 ロボッ<br />

トが 導 入 されているため、 事 故 に 対 する 初 動 を 早 く 起 こすことができた。 中 央 管 理 室 で 事 故 発 生 場 所 と<br />

事 故 概 要 を 入 力 することにより、 状 況 を 把 握 するため、 複 数 の 情 報 収 集 ロボットや 一 次 応 急 対 応 ロボッ<br />

トが 自 律 的 に 移 動 を 開 始 する。 移 動 経 路 は、 作 業 員 の 避 難 経 路 、 気 温 、 風 向 き、 周 辺 の 化 学 薬 品 貯 蔵 状<br />

況 を 勘 案 し、 自 動 的 に 設 定 される。 屋 外 を 移 動 する 際 は、GPSを 使 用 することも 可 能 であるが、プラ<br />

ント 内 は 高 さのある 施 設 設 備 、 建 家 などがあり、 十 分 な 精 度 を 得 られないこともある。また、 屋 内 の 迷<br />

路 的 な 通 路 を 通 過 する 必 要 もある。そこで、より 確 実 な 手 段 として 移 動 経 路 上 に 埋 め 込 まれているIC<br />

タグを 認 識 し、 指 定 された 経 路 を 高 速 に 移 動 することが 可 能 となっている。 高 精 度 GPSと 比 べ 安 価 で<br />

高 精 度 な 位 置 情 報 を 得 られるため、 企 業 では 容 易 に 導 入 することができている。<br />

一 方 、 化 学 プラントの 事 業 所 敷 地 内 では、 労 務 上 の 安 全 管 理 を 十 分 認 識 している 専 従 作 業 員 しか 利 用<br />

しない。したがって、 蹴 上 げ 面 が 無 く、 踏 み 面 がグレーチングや 縞 鋼 板 などで 作 成 された 急 な 螺 旋 階 段<br />

が 存 在 する。 情 報 収 集 ロボットは 比 較 的 小 型 、 軽 量 であるので、このような 経 路 を 移 動 することは 不 可<br />

能 ではない。しかしながら、 重 心 移 動 や 変 形 クローラ 機 能 などを、 階 段 の 状 況 に 適 応 させる 必 要 がある。<br />

階 段 入 り 口 に 埋 め 込 まれたICタグから 階 段 の、 蹴 上 げ、 踏 み 面 、 斜 度 、 材 質 情 報 などを 入 手 すし、 気<br />

象 条 件 等 も 考 慮 し 総 合 的 に 判 断 し、 自 律 的 に 螺 旋 階 段 を 上 るために 適 した 形 態 へ 迅 速 に 変 形 を 行 うこと<br />

ができる。さらに、 平 地 移 動 から 階 段 移 動 へシームレスな 移 動 が 可 能 となる。この 機 能 により、 事 故 発<br />

生 現 場 への 平 均 移 動 速 度 を 劇 的 に 向 上 することが 可 能 になっている。 重 心 移 動 やクローラの 変 形 などは、<br />

遠 隔 操 作 で 行 う 際 には、 停 止 して 行 う 必 要 がある 場 合 が 多 いからである。また、ロボットがこの 螺 旋 階<br />

段 を 上 るに 当 たって、 作 業 員 がこの 区 域 から 既 に 避 難 が 完 了 し、 避 難 活 動 と 干 渉 しないことがICタグ<br />

情 報 によって 確 認 されている。 一 次 応 急 対 策 用 ロボットは、 螺 旋 階 段 の 昇 降 が 難 しいため、エレベータ<br />

を 利 用 して 移 動 する 経 路 を 指 定 されている。 一 時 応 急 対 策 ロボットは、 遠 回 りになるが、 反 応 棟 の 隣 の<br />

建 家 に 設 置 されているエレベータ 利 用 し、 上 層 階 へ 移 動 し、 反 応 棟 へ 移 動 する 経 路 をとっている。エレ<br />

ベータ 乗 り 口 のICタグを 利 用 し、ボタンを 押 さなくてもエレベータが 自 動 的 に 呼 ばれ、 乗 り 込 み 後 の<br />

行 き 先 階 の 指 定 も、 環 境 が 整 備 され、 自 律 的 にエレベータによって 移 動 を 可 能 としている。エレベータ<br />

内 にロボットが 乗 っている 状 態 においてもエレベータ 内 に 設 置 された 中 継 器 により 通 信 が 可 能 となっ<br />

118


ている。 反 応 棟 への 原 料 物 質 の 供 給 は、 事 故 発 生 時 の 自 動 停 止 機 能 が 組 み 込 まれているが 現 場 に 到 着 し<br />

た 情 報 収 集 ロボットにより、 災 害 状 況 が 拡 大 していることがわかった。この 情 報 により 一 部 の 原 料 供 給<br />

が 停 止 していないことが 予 想 された。 平 時 では 遠 隔 操 作 でも、 手 動 でも 閉 鎖 できるが、 事 故 の 影 響 か、<br />

遠 隔 操 作 が 効 かない。そこで、 一 次 応 急 対 策 ロボットは、 閉 鎖 すべきバルブに 内 蔵 されたICタグ 情 報<br />

を 利 用 し、 位 置 を 自 律 的 に 認 識 しバルブハンドを 容 易 に 把 持 し、ICタグから 読 み 出 した 閉 鎖 方 法 に 従<br />

って、 自 律 的 にバルブを 閉 じ、 事 故 が 発 生 した 反 応 棟 への 原 料 の 供 給 を、 完 全 に 停 止 することに 成 功 し<br />

た。 情 報 収 集 ロボットは、 事 故 現 場 の 情 報 ばかりでなく、 事 故 現 場 周 辺 に 貯 蔵 されている 化 学 剤 貯 蔵 状<br />

況 も 中 央 管 理 室 へ 送 信 している。 貯 蔵 施 設 ごとに 取 り 付 けられたICタグを 読 むことによって、 貯 蔵 物<br />

質 の 種 類 、 量 などを 知 ることができる。ここで、 中 央 管 理 室 で 把 握 している 量 と 大 きく 異 なる 貯 蔵 量 の<br />

危 険 物 タンクが 認 知 された。これは、 爆 発 で 飛 散 した 破 片 によって、 貯 蔵 タンクに 何 らかの 損 傷 があり、<br />

二 次 災 害 として、 内 容 物 質 が 漏 洩 していることを 示 唆 している。また、この 時 点 においても、 反 応 棟 内<br />

に 残 存 している 物 質 によって、 黒 煙 が 発 生 し、その 内 部 では 火 炎 が 発 生 していることが、 現 場 直 近 に 進<br />

入 した 情 報 収 集 ロボットによって 確 認 された。 現 場 周 辺 に 部 署 している 情 報 収 集 ロボットは、 熱 により<br />

危 険 性 が 急 激 に 増 大 する 物 質 の 貯 蔵 設 備 があり、 最 大 貯 蔵 量 に 近 い 量 の 物 質 が 貯 蔵 されていることを 認<br />

識 した。 対 策 活 動 の 初 動 が 早 かったため、 爆 発 事 故 発 生 より10 分 後 で、 事 故 の 全 体 概 要 が 把 握 された。<br />

化 学 プラントには、 劇 物 、 毒 物 、 危 険 物 など 多 様 な 化 学 物 質 が 存 在 している。 事 故 現 場 周 辺 に 存 在 す<br />

る 薬 品 等 によって、 貯 蔵 、あるいは 使 用 されている 各 種 化 学 薬 品 をロボットが 認 識 できるようなICタ<br />

グを 設 置 することにより、 消 防 戦 術 上 、 使 用 すべき 薬 剤 、 使 用 してはならない 薬 剤 、 活 動 上 の 注 意 など<br />

が 容 易 に 認 識 できるようになる 中 央 管 理 室 の 担 当 者 の 簡 単 な 判 断 、 指 示 により、 複 数 の 二 次 応 急 対 策 ロ<br />

ボットが 自 律 的 移 動 を 開 始 した。 二 次 応 急 対 策 ロボットは、 情 報 収 集 ロボットの 情 報 を 基 に、まず、 爆<br />

発 事 故 を 起 こした 反 応 棟 の 閉 鎖 作 業 に 必 要 な 資 機 材 を 選 択 装 備 し、 現 場 へ 自 律 的 に 移 動 した。 各 種 活 動<br />

に 必 要 な 資 機 材 にもICタグが 設 置 されており、ロボットが 自 律 的 に 装 備 することが 可 能 となっている。<br />

次 に、 爆 発 の 影 響 で 破 損 した 貯 蔵 施 設 からの 漏 洩 物 質 の 吸 着 剤 、 中 和 剤 が 選 択 され、 漏 洩 物 質 の 処 理 作<br />

業 を 行 う 二 次 応 急 対 策 ロボットが 自 律 的 に 移 動 を 開 始 した。さらに 加 熱 危 険 物 質 の 冷 却 作 業 を 行 うロボ<br />

ットも 移 動 を 開 始 した。この 間 、 中 央 管 理 室 では、 反 応 棟 の 監 視 やロボットの 動 作 状 況 を 管 理 すること<br />

が 主 な 作 業 となっている。 二 次 応 急 対 策 ロボットが 活 動 現 場 に 到 着 し、 活 動 を 開 始 する 時 点 で 発 災 後 2<br />

0 分 が 経 過 していた。このころ、 公 設 消 防 隊 が 到 着 し、 本 格 的 な 対 策 を 行 うべく、 消 防 ロボットが 活 動<br />

を 開 始 した。この 消 防 ロボットも、プラント 内 に 設 置 された、ICタグやインフラとの 通 信 を 利 用 し、<br />

半 自 律 的 に 動 作 が 可 能 となっている。ロボットが 応 急 対 策 を 完 遂 し、 危 険 度 が 下 がった 状 態 で、 消 防 隊<br />

員 が 進 入 し、 最 終 的 な 事 故 対 応 、 処 理 を 行 った。<br />

ここで 利 用 されているICタグは、 消 防 用 設 備 に 設 置 されるなど、 比 較 的 事 故 に 対 して 耐 性 のある 設<br />

備 に 取 り 付 けられているため、そのほとんどが 利 用 可 能 であった。 一 部 利 用 不 可 ICタグもあったが、<br />

2 重 化 するなどによって、システム 全 体 としての 機 能 に 問 題 はなかった。<br />

ICタグやロボットがプラント 内 のインフラを 容 易 に 利 用 できる 環 境 を 構 築 することにより、ロボッ<br />

トが 自 律 的 に 機 能 し、 早 期 の 初 動 対 応 をとることができた。 若 干 、 大 気 中 へ 有 害 物 質 が 飛 散 したものの、<br />

事 故 災 害 の 拡 大 を 抑 制 することができ、 周 辺 のプラント、 住 宅 への 影 響 は 全 くなかった。<br />

3)システム 構 成<br />

・ 移 動 ロボット<br />

情 報 収 集 ロボット:ICタグ 情 報 を 利 用 し、 高 速 な 移 動 が 可 能 で、 検 知 機 などを 積 載 し、 事 故 情 報 を<br />

収 集 する 移 動 ロボット。<br />

一 次 応 急 対 策 ロボット: 移 動 体 に 簡 単 なマニピュレータが 装 備 され、ICタグ 情 報 を 利 用 し、 軽 作 業<br />

を 行 うことができる 移 動 型 ロボット。<br />

二 次 応 急 対 策 ロボット:ICタグ 情 報 により 自 律 的 に 危 険 物 質 に 対 する 中 和 剤 の 搬 送 、 散 布 を 行 う。<br />

また、 状 況 に 応 じ、 事 故 対 策 用 設 備 の 起 動 、 監 視 を 行 う。<br />

事 故 対 策 ロボット: 消 防 本 部 が 所 有 し、 各 種 事 故 の 本 格 的 対 応 処 理 を 行 う 移 動 ロボット。<br />

・ 環 境 構 造 化<br />

プラント 内 地 域 認 識 ICタグ:ロボットの 自 律 的 な 移 動 を 可 能 にする。<br />

経 路 特 徴 情 報 ICタグ: 階 段 などの 特 性 情 報 を 持 ち、ロボットに 経 路 に 適 応 する 情 報 を 提 供 する。 階<br />

段 、 狭 隘 な 迷 路 などの 経 路 的 障 害 があっても、 平 地 を 移 動 すると 同 様 、シーレスな 移 動 を 可 能 にする。<br />

119


劇 物 、 危 険 物 等 貯 蔵 情 報 ICタグ: 貯 蔵 している 劇 物 等 の 内 容 物 、 貯 蔵 量 情 報 を 持 ち、 事 故 の 拡 大 の<br />

抑 制 のための 情 報 を 得 ることができる。<br />

エレベータ 等 インフラの 操 作 : 人 が 操 作 する 装 置 を 介 さず、ロボットとインフラ 設 備 間 の 通 信 により<br />

操 作 を 可 能 にする。<br />

スイッチ、バルブ 等 作 業 用 ICタグ<br />

4) 環 境 構 造 化 を 利 用 した 知 能 化 技 術<br />

・ 情 報 収 集 活 動 に 活 用<br />

貯 蔵 、あるいは 使 用 されている 各 種 化 学 薬 品 、 現 在 の 貯 蔵 量 をロボットが 認 識 できるように、 各 施 設<br />

ICタグを 設 置 することにより、 消 防 戦 術 上 、 使 用 すべき 薬 剤 、 使 用 してはならない 薬 剤 、 活 動 上 の<br />

注 意 などが 容 易 に 認 識 できるようになる。<br />

・ 高 速 移 動 に 活 用<br />

化 学 薬 品 の 漏 洩 時 などにおいては、 消 防 隊 員 の 二 次 災 害 を 防 ぐためにも、ロボットによって 対 応 する<br />

ことが 適 している。そこで、プラント 内 の 各 所 へ 移 動 するための、 階 段 などの 経 路 上 の 難 所 の 事 前 認<br />

識 等 、 移 動 経 路 の 特 性 データを 持 ったタグが 設 置 されていると、ロボットによる 自 律 的 な 対 応 も 可 能<br />

になる。 例 えば、 漏 洩 事 故 発 生 場 所 への 移 動 は、 最 短 距 離 の 経 路 ではロボットの 性 能 では 踏 破 できな<br />

い 階 段 や 扉 がある 場 合 、 事 前 に 回 避 して、 自 律 的 に 災 害 現 場 に 進 入 し、 情 報 収 集 を 行 い、 災 害 対 策 に<br />

情 報 を 迅 速 に 役 立 てることが 可 能 になる。<br />

・ 既 設 の 移 動 手 段 の 活 用<br />

エレベータなどは、 人 が 利 用 することが 前 提 とされているため、 操 作 は、ボタンによって 行 われるが、<br />

ロボットとエレベータの 通 信 のみによって、 利 用 できる 環 境 を 提 供 することにより、 容 易 にロボット<br />

も 利 用 できる。 事 故 対 策 に 重 点 をおいて 開 発 された、ヒューマノイド 的 な 機 能 を 持 たないロボットで<br />

も 容 易 に 利 用 することができる。<br />

・ 複 雑 な 作 業 に 活 用<br />

バルブやスイッチの 開 閉 等 作 業 の 作 業 を 行 うため、ロボット 自 身 が 自 律 的 に 場 所 を 同 定 する 必 要 があ<br />

り、 高 度 な 技 術 が 必 要 となる。 一 方 、 遠 隔 操 作 では、かなりの 時 間 を 要 する。そこで、バルブに 内 蔵<br />

されたICタグにより 誘 導 され、ロボットハンドが 容 易 かつ 自 律 的 にバルブを 把 持 することが 可 能 に<br />

なる。また、バルブの 開 閉 操 作 方 法 も、ICタグから 情 報 を 得 ることにより、 迅 速 かつ、 自 律 的 に 作<br />

業 を 進 めることができる。<br />

(4) 交 通 機 関 における 事 故 対 策<br />

1)ユーザの 選 定<br />

交 通 機 関 利 用 者 、 消 防 隊<br />

2)シナリオ<br />

大 都 市 において 鉄 道 事 故 が 発 生 し、 車 両 は 転 覆 、 大 きく 変 形 し、 原 型 をとどめていない 状 況 である。<br />

新 型 車 両 では、アルミ 材 、 複 合 剤 、FRP 等 が 多 用 されている。この 状 態 では、 被 災 者 が 何 人 いて、ど<br />

のような 状 態 になっているのか 簡 単 には 分 からない。しかしながら、この 車 両 にはICタグが 多 数 取 り<br />

付 けられており、 到 着 した 消 防 隊 のロボットは、 各 ICタグのスキャニングに 取 りかかった。 平 行 して<br />

3 次 元 プロファイラも 使 用 されている。ICタグは 車 両 の 特 徴 的 な 位 置 に 取 り 付 けられているため、 位<br />

置 をスキャニングすることにより、 車 両 の 変 形 状 況 が 迅 速 に 確 認 された。3 次 元 プロファイラのデータ<br />

と 合 わせることにより 精 密 な 変 形 状 況 も 確 認 された。 特 に 車 体 中 央 部 はねじれるように 変 形 し、 車 内 空<br />

間 が 確 保 できていない 状 態 が 推 定 された。また 車 両 のICタグは 各 ドア 入 り 口 にも 設 置 されており、ド<br />

アを 通 過 する 時 点 で、 乗 客 の 持 っているICタグ 定 期 券 やチケットと 通 信 することにより、 乗 客 数 の 把<br />

握 はもちろん、 乗 客 の 配 置 もおよそ 把 握 することができている。したがって、 被 災 者 数 を 瞬 時 に、 正 確<br />

120


に 把 握 することができる。 自 力 で 事 故 現 場 から 脱 出 した 人 数 から、30 数 名 が 車 両 内 に 取 り 残 されてい<br />

ることが 推 定 された。<br />

消 防 隊 は、 空 間 が 最 も 狭 まっている 車 両 中 央 付 近 の 救 助 活 動 を 重 点 的 に 進 めることとした。ここで、<br />

定 期 券 やチケットに 内 蔵 されたICタグを 探 索 するロボットが 投 入 された。このロボットは、ICタグ<br />

に 対 応 した 信 号 波 を 発 信 し、その 反 応 に 応 じてICタグの 位 置 を 推 定 し、 探 索 を 行 う。さらに、 車 両 I<br />

Cタグを 灯 台 的 に 利 用 し、3 次 元 プロファイルデータを 参 照 しながら、 奥 への 効 率 的 な 進 入 を 可 能 にし<br />

ている。 従 来 の 人 体 を 探 索 する 装 置 と 比 較 して、 単 純 であるので、 小 さくすることが 可 能 である。 当 然<br />

ながら 狭 い 領 域 へも 容 易 に 進 入 が 可 能 である。 従 来 の 作 業 と 比 較 して、 約 1/3 以 下 の 時 間 で 要 救 助 者<br />

に 到 達 することができた。<br />

迅 速 な 救 助 活 動 を 実 施 することができ、 負 傷 者 を 早 期 に 全 員 救 出 することができた。<br />

3)システム 構 成<br />

・ 移 動 ロボット<br />

ICタグスキャニングロボット: 構 造 物 にあらかじめ 埋 め 込 まれているICタグの 位 置 をスキャンし、<br />

変 形 状 況 を 推 定 する。<br />

ICタグ 探 索 ロボット: 小 型 の 移 動 ロボットであり、ICタグ 定 期 券 やICタグチケットに 対 応 した<br />

信 号 波 を 発 信 し、ICタグの 反 応 に 応 じて 自 律 的 に 探 索 し、 位 置 を 特 定 する。<br />

・ 環 境 知 能 化<br />

ICタグ 車 両 : 各 入 り 口 や、 構 造 物 中 にICタグを 埋 設 設 置 している 車 両 。ICタグチケットやIC<br />

タグ 定 期 券 を 持 った 乗 客 が 乗 り 降 りすることにより、その 車 両 の 乗 客 者 数 やおよその 配 置 が 分 かる。<br />

また、 事 故 が 発 生 し、 車 両 が 大 きく 変 形 した 場 合 、このICタグの 場 所 を 特 定 することにより、 変 形<br />

状 況 も 知 ることができる。 平 時 には、 利 用 者 の 動 態 管 理 にも 使 用 できる。<br />

ICタグ 定 期 券 : 緊 急 時 にはICタグ 追 跡 ロボットからの 信 号 を 受 け、 電 波 を 発 し、 要 救 助 者 の 居 場<br />

所 を 容 易 に 突 き 止 めることを 可 能 にする。さらに、 要 救 助 者 の 個 人 情 報 から、 有 効 な 治 療 活 動 を 可 能<br />

にする。<br />

ICタグチケット: 緊 急 時 にはICタグ 追 跡 ロボットからの 信 号 を 受 け、 電 波 を 発 し、 要 救 助 者 の 居<br />

場 所 を 容 易 に 突 き 止 めることを 可 能 にする。<br />

4) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

・ 事 故 の 状 況 把 握 に 利 用<br />

各 入 り 口 や、 構 造 物 中 にICタグを 埋 設 設 置 している 車 両 。ICタグチケットやICタグ 定 期 券 を 持<br />

った 乗 客 が 乗 り 降 りすることにより、その 車 両 の 乗 客 者 数 やおよその 配 置 が 分 かる。また、 事 故 が 発<br />

生 し、 車 両 が 大 きく 変 形 した 場 合 、このICタグの 場 所 を 特 定 することにより、 変 形 状 況 も 知 ること<br />

ができる。<br />

・ 要 救 助 者 の 位 置 特 定 に 利 用<br />

定 期 券 やチケットをICタグ 化 することにより、ICタグを 探 索 することにより、 容 易 に 要 救 助 者 の<br />

探 索 を 行 うことが 可 能 になる。さらに、 定 期 券 には 個 人 情 報 を 記 憶 させることも 可 能 であり、 救 助 後<br />

の 救 急 医 療 に 重 要 な 情 報 を 提 供 することも 可 能 になる。<br />

2.3.6 作 業 現 場 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

作 業 現 場 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 としては、 幾 つかに 分 けられる。<br />

(1) 位 置 知 識 の 知 能 化<br />

作 業 現 場 において 環 境 構 造 化 に 求 める 期 待 としては、 位 置 情 報 をシームレスかつ 高 精 度 に 提 供 するイ<br />

ンフラ 技 術 が 求 められている。 屋 外 においては、GPS 信 号 、D-GPS、RTK-GPSなどを 用 い<br />

て 数 cmでの 位 置 情 報 の 獲 得 が 可 能 となってきているものの、ビルの 谷 間 や 地 下 街 などの 衛 星 信 号 が 獲<br />

121


得 できない 場 所 も 多 い。 特 に 建 築 分 野 においては 屋 外 と 屋 内 の 両 方 での 位 置 情 報 が 必 要 とされることか<br />

ら、 屋 内 外 のシームレスな 位 置 情 報 取 得 が 重 要 となる。また、 移 動 ロボットとしての 位 置 制 御 に 関 して<br />

は 数 10cm 程 度 で 十 分 であるが、 建 機 等 のマニピュレーションに 近 い 作 業 を 行 う 要 求 もあることから、<br />

手 先 で1cm 以 下 の 位 置 精 度 を 実 現 できるならば、その 応 用 範 囲 は 広 がると 考 えられる。そのため、 精<br />

度 の 要 求 に 応 じて、GPSからビジョンまでのシームレスな 位 置 情 報 取 得 技 術 が 望 まれる。また、 建 築<br />

現 場 、 土 木 現 場 等 は 工 事 中 のみ 一 時 的 にインフラ 設 備 が 必 要 となる 場 合 が 多 く、 簡 易 な 機 器 設 置 、もし<br />

くは、 工 事 後 にもそれらの 機 器 を 定 常 的 サービスに 利 用 可 能 な 社 会 的 仕 組 みが 望 まれる。さらに、 災 害<br />

分 野 においては、まずは 位 置 精 度 よりも、 早 急 な 機 器 設 置 (インフラ 復 旧 )が 要 求 されることから、 早<br />

急 な 設 置 のために 機 器 のコンパクト 化 、およびシステムの 位 置 情 報 の 高 精 度 化 へのフレキシビリティが<br />

重 要 であると 考 えられる。<br />

(2) 物 体 知 識 の 知 能 化<br />

建 築 などの 作 業 においては、 部 材 の 種 類 、 必 要 時 期 などの 施 工 管 理 が 重 要 であるし、 農 業 分 野 などに<br />

おいては、トレーサビリティが 重 要 となってきている。これらの 時 代 的 な 要 請 を 満 たすための 枠 組 みと<br />

して、 物 の 知 識 をデータベース 化 する 技 術 と、そのデータベースと 物 とを 繋 げる 技 術 (ICタグなど)<br />

が 重 要 となっている。 建 築 、 土 木 分 野 においては、 近 年 の 耐 震 偽 装 問 題 や 手 抜 き 工 事 といった 施 工 後 の<br />

目 に 見 えない 部 分 での 欠 陥 をチェックできない 問 題 が 業 界 全 体 の 信 頼 を 低 下 させており、 品 質 の 正 当 な<br />

評 価 がされていない。また、 施 工 時 での 変 更 が 定 常 的 に 発 生 することから、 設 計 時 と 施 工 後 の 実 物 が 同<br />

じにならず、 情 報 と 実 物 との 整 合 を 取 ることが 必 要 となっている。すなわちICタグ 等 の 技 術 により、<br />

施 工 管 理 を 厳 密 にすることで、 情 報 と 実 物 との 整 合 を 常 に 取 れる 技 術 が 重 要 である。また、 農 業 分 野 に<br />

おいては、 食 の 安 全 に 関 して 消 費 者 の 意 識 が 高 く、 低 コスト 化 に 縛 られない 日 本 独 自 の 高 品 質 、 高 付 加<br />

価 値 のある 作 物 を 安 定 に 供 給 するためには、その 作 物 に 対 する 品 質 保 証 を 証 明 できるICタグ 等 のトレ<br />

ーサビリティの 仕 組 みが 重 要 である。さらに 情 報 と 実 物 の 整 合 が 可 能 であるならば、 実 物 の 形 状 情 報 や<br />

重 さ 情 報 等 のマニピュレーションに 必 要 な 情 報 が 手 軽 に 取 得 でき、 上 記 の 位 置 情 報 取 得 技 術 と 組 み 合 わ<br />

せることで、より 高 度 なマニピュレーションをより 簡 易 なシステムで 実 現 できる 可 能 性 が 期 待 できる。<br />

(3)センサ 知 識 の 知 能 化<br />

現 在 のセンサ 技 術 は、ローカルに 情 報 を 取 得 することを 目 的 としているが、センサネットワークなど<br />

の 発 達 により、 遠 隔 モニタリング、 日 常 モニタリングが 可 能 となり、 現 在 、 熟 練 工 が 行 っている 監 視 な<br />

どの 技 術 を 肩 代 わりすることが 可 能 となりつつある。 近 年 のネットワークインフラの 高 度 化 から、 無 線<br />

LAN、 携 帯 電 話 等 のネットワーク 環 境 は 充 実 しつつあるといえる。しかし、 局 所 的 な 環 境 での 多 数 の<br />

機 器 をネットワーク 上 に 参 加 する 上 では 未 だチャンネル 数 の 制 限 や 無 線 帯 域 の 問 題 など、 安 定 なネット<br />

ワーク 環 境 を 実 現 できているとは 言 い 難 い。 各 分 野 で 共 通 的 に 求 められる 環 境 の 認 識 は、ロボットの 内<br />

界 センサのみで 可 能 なレベルではなく、 外 部 の 分 散 されたセンサ 情 報 からネットワークを 介 して 収 集 す<br />

ることが 求 められ、そのセンサの 数 も 要 求 に 応 じて 多 数 で 多 様 なセンサが 求 められる。これらのセンサ<br />

ネットワーク 環 境 を 安 定 にかつ 安 価 に 提 供 する 技 術 開 発 およびその 普 及 が 急 務 であると 考 えられる。さ<br />

らに 災 害 分 野 において、 場 所 に 応 じた 環 境 情 報 の 精 度 が 求 められることから、センサネットワーク 構 築<br />

におけるフレキシビリティは 他 の 分 野 以 上 に 重 要 な 仕 様 である。<br />

2.3.7 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術<br />

以 上 の 議 論 から、 作 業 現 場 分 野 において 特 に 環 境 構 造 に 求 められる 技 術 課 題 として 開 発 すべき 技 術 と<br />

しては、 以 下 のものが 上 げられる。<br />

(1) 測 位 技 術 ; 屋 内 GPSなどを 用 いて1cm 精 度 での 測 位 情 報 インフラの 早 期 整 備 が 求 められる。<br />

(2) 通 信 技 術 : 作 業 のため、 無 線 LANなどではチャンネル 数 の 奪 い 合 い、 混 信 などの 問 題 が 乗 じて<br />

おり、 信 頼 性 の 高 い 通 信 技 術 の 確 立 が 求 められる。<br />

(3) 認 識 技 術 :ICタグを 貼 り 付 けた 物 体 が 金 属 や 水 分 を 含 んでいても、 信 頼 性 高 く 物 体 を 認 識 する<br />

ための 技 術 の 確 立 。<br />

(4)インテグレーション 技 術 : 移 動 ・マニピュレーション 技 術 など、 作 業 に 必 要 な 物 体 搬 送 や 物 体 把<br />

122


持 など 上 記 3 種 類 の 技 術 を 統 合 的 に 利 用 したロボット 技 術 の 確 立 。<br />

屋 外 作 業 における 環 境 構 造 化 技 術<br />

建 設 分 野<br />

土 木 分 野<br />

共 通 技 術 課 題<br />

(1) 測 位 技 術 : 屋 内 GPSなど<br />

(2) 通 信 技 術 : 高 信 頼 通 信 技 術<br />

(3) 認 識 技 術 :IC:<br />

ICタグなど<br />

(4) 移 動 ・ 把 持 技 術 :ロボット<br />

農 業 分 野<br />

災 害 分 野<br />

123


2.4 産 業 用 環 境 構 造 化 分 野 におけるRTシステムの 構 想<br />

2.4.1 産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 の 特 徴<br />

産 業 用 ロボットは1970 年 代 から 実 際 の 製 造 現 場 において 使 用 されてきたという 実 績 がある。 大 量<br />

生 産 の 製 造 現 場 では 高 生 産 性 という 目 的 のために、ロボットの 作 業 環 境 をあらかじめ 整 備 する、あるい<br />

は 作 業 対 象 物 をロボットに 扱 いやすくするという 努 力 がされてきた。しかし、このことは「ロボットに<br />

扱 いやすい 作 業 」( 比 較 的 単 純 な 組 立 作 業 など)を「 環 境 を 整 備 する 余 裕 のある 作 業 現 場 」(すなわち、<br />

大 量 生 産 で 環 境 整 備 を 担 当 できる 技 術 者 がいる 企 業 )でしかロボット 化 が 進 まない 理 由 となった。ロボ<br />

ットも 低 価 格 化 が 進 み、 多 品 種 中 少 量 生 産 が 一 般 化 した 今 日 、 産 業 用 ロボットを 導 入 しやすくするため<br />

には、ロボット 周 辺 の 条 件 整 備 のシステム 的 な 導 入 方 法 ・ 運 営 方 法 が 求 められることとなったのである。<br />

以 上 の 状 況 から、 産 業 用 ロボット 分 野 のミッションを 次 のように 定 めた。<br />

・ 産 業 用 ロボットの 市 場 拡 大 を 可 能 とする 技 術 検 討 :10 年 後 に1.1 兆 円 を 目 標 とし、 中 小 企 業 やロ<br />

ボット 未 導 入 産 業 への 拡 大 を 図 る 方 法 論 を 検 討 する。<br />

・ 研 究 開 発 の 効 果 が 高 い 問 題 の 設 定 : 産 業 用 ロボットに 関 する 課 題 にはここ20 年 以 上 継 続 的 に 解 決 を<br />

求 められてきた 問 題 が 多 い。そのなかで、ここ10 年 間 の 技 術 的 発 展 に 支 えられて 解 決 可 能 となった<br />

問 題 を 優 先 的 に 取 り 組 む。<br />

次 に、 環 境 構 造 化 の 内 容 を 検 討 した。「 環 境 構 造 化 」は 移 動 ロボットについて 議 論 される 場 合 が 多 い。<br />

床 固 定 のマニピュレータが 中 心 を 占 める 産 業 用 ロボットにおいて 環 境 の 定 義 を 再 構 成 した。 一 方 、 製 造<br />

業 の 現 場 での 要 求 を 調 査 し、その 傾 向 を 解 析 した。ロボットの 応 用 分 野 は 広 いが、 産 業 的 に 要 求 の 高 い<br />

組 立 作 業 を 中 心 に 検 討 した。 現 場 での 要 求 には、 環 境 構 造 化 の 考 え 方 で 解 決 できるものが 多 いことが 分<br />

かり、 解 決 策 を 研 究 課 題 として 取 りまとめた。<br />

(1) 産 業 用 ロボットにおける 環 境 構 造 化<br />

ロボットからみて 環 境 とはロボットが 作 業 する 場 に 存 在 するものすべてである。 図 2.4.1-1に<br />

示 すように、ロボット(Robot)に 対 して、 作 業 者 (Man)、 作 業 対 象 物 (Work)が 存 在 し、<br />

加 えて、センサ(Sensor)も 外 部 に 置 かれることがあるので 環 境 に 含 まれる。すなわち、 環 境 の<br />

構 造 化 とはこれら、R-M-E-W-S 間 の 相 互 の 接 続 を 使 いやすくなるように、システム 的 に 設 計 し、<br />

最 終 的 には 標 準 化 することである。よって、 環 境 構 造 化 の 研 究 開 発 は、<br />

環 境 構 造 化 の 研 究 開 発 : 環 境 を 構 造 化 することで、 環 境 を 理 解 容 易 にすること。 最 終 的 には、 環 境 をインフ<br />

ラストラクチャとして、 深 い 知 識 なしに 利 用 可 能 とすることである。<br />

産 業 用 では 作 業 者 、 作 業 対 象 物 、センサ、ならびに 他 のロボットも 含 めて 環 境 と 考 える。<br />

と 定 義 することができる。 環 境 構 造 化 によって、ロボットの 知 能 化 が 容 易 になり、 高 度 な 技 術 者 が 居 な<br />

くてもロボットの 導 入 が 可 能 となると 期 待 される。<br />

このように 環 境 構 造 化 をインタフェースの 設 計 問 題 と 考 えれば、R-M-E-W-Sの 組 み 合 わせご<br />

とに 表 2.4.1-1のように 課 題 を 定 義 することができる。<br />

124


E Environment<br />

S Sensor<br />

R Robot<br />

W Workpiece<br />

M Man<br />

E Environment<br />

図 2.4.1-1 ロボットの 環 境 構 造 化 の 構 成 要 素<br />

表 2.4.1-1 ロボットの 環 境 要 素 間 の 関 係<br />

To<br />

From<br />

Robot • Cooperation<br />

Man<br />

Env<br />

Work<br />

Robot Man Env Work Sensor<br />

• Teaching-by-showing<br />

• Localization Assistance<br />

• Information Assistance<br />

• Env. Design for<br />

Robot<br />

• Handling Database<br />

• DfAssemby<br />

Sensor • Robot watching<br />

―<br />

• Safety<br />

code<br />

• DfAssembly<br />

• worker<br />

watching<br />

• Map-buildi<br />

ng<br />

• Searching<br />

125<br />

―<br />

• Co-Work<br />

• Cooperation<br />

• Robot-baseallocation<br />

• Parameter<br />

tuning<br />

• Object identification<br />

• Transportation/<br />

conveying<br />

―<br />

• Multi-modal<br />

sensor<br />

• Plug-and-Pla<br />

y<br />

fu-<br />

• Sensor<br />

sion<br />

表 2.4.1-1について 説 明 する。 第 1 行 第 2 列 (R-Mと 表 記 )はRobotからみたManへ<br />

の 関 係 を 意 味 し、ロボットと 人 との 協 調 や 協 働 である。 協 調 ・ 協 働 は 相 互 対 等 の 関 係 とも 取 れるが、ロ<br />

ボットに 組 み 込 むべき 技 術 として 表 記 してある。その 逆 の 関 係 である 第 2 行 第 1 列 (M-R)はMan<br />

からみたRobotへの 関 係 を 意 味 し、ここでは 視 覚 教 示 を 示 した。(R-E)は 一 般 的 な 意 味 での「ロ<br />

ボットのための 環 境 構 造 化 技 術 」となり、 典 型 的 な 研 究 開 発 技 術 はMap BuildingやSLA<br />

M (Simultaneous Localization And Mapping)である。(E-W)は 部 品 の 搬 送 方 法 、ワークの 保 管 方 法 、<br />

セッティング 方 法 を 意 味 し、Transportation/conveying や Fixturing がその 代 表 である。(M-M)や<br />

(E-E)は 意 味 がない。また、 空 白 の 欄 については、 今 回 の 調 査 では 扱 わないこととした。<br />

これら 多 くの 項 目 は、ロボットあるいはその 周 辺 機 器 に 関 する 設 計 改 善 が 必 要 となるので、 構 造 化 さ


れた 環 境 内 で 働 くロボットの 設 計 (Design for Robot on Environment)、あるいはロボットと 人 間 とが<br />

協 働 できる 環 境 設 計 (Universal design for Human and Robots) と 呼 ぶべき 設 計 方 法 が 準 備 されるべき<br />

であろうが、 問 題 が 大 きくなりすぎるので、 本 調 査 研 究 では 扱 わない。<br />

(2) 製 造 現 場 からの 産 業 用 ロボットへの 要 求<br />

本 分 野 では 産 業 用 ロボットの 使 用 現 場 で、どのような 要 求 が 存 在 するかを 調 査 した。 表 2.4.1-<br />

2にその 結 果 をまとめる。<br />

表 2.4.1-2 組 立 現 場 からの 要 求<br />

分 類 問 題 / 課 題 用 途 例 ・ 対 応 など<br />

ロボット 本 体<br />

(1) 繰 り 返 し 位 置 決 め 精 度 が 出 ない。 特 に<br />

回 転 座 標 系 ではアームの 位 置 により、ばら<br />

つきが 大 きい。 補 間 する 手 段 として、ビジ<br />

ョン 挿 入 や 倣 い 挿 入 などを 使 うが、 必 要 な<br />

精 度 と 信 頼 性 を 求 めるとスピードが 遅 く、<br />

高 速 組 立 に 向 かない。<br />

(2) 回 転 座 標 系 ロボットの 直 線 補 間 精 度 が<br />

十 分 でない。 精 度 保 証 するには、かなり 低<br />

速 で 駆 動 させる 必 要 があり 実 用 的 でない。<br />

(3)、 製 品 に 比 べて、ロボットサイズが 大<br />

きい。そのため、 人 の 作 業 で 折 角 排 除 した<br />

動 作 のムダを、ロボット 化 で 再 度 持 ち 込 む<br />

ことになる。 特 に、 小 サイズ 製 品 を 組 立 る<br />

時 のスペース 効 率 が 悪 い。より1コンパク<br />

ト2 力 持 ち( 可 搬 重 量 大 )が 望 まれるロボ<br />

ットの 姿 である。<br />

(4)ロボットに 多 作 業 をさせようとする<br />

と、6 軸 では 足 りない 場 合 がある。 軸 のモ<br />

ジュール 化 などで、ユーザが 自 由 に 選 択 追<br />

加 できる 軸 構 成 を 求 む。 移 動 軸 追 加 、ひね<br />

り 軸 追 加 など。<br />

(5)2 腕 協 調 作 業 をよりシンプルな 制 御<br />

(プログラミング 命 令 を 含 む)で 高 速 に 実<br />

現 したい。<br />

(6)ティーチングの 簡 素 化 を 望 む。<br />

(7)[ 将 来 ] 絶 対 位 置 決 め 精 度 をどこまで<br />

求 めるか?<br />

126<br />

中 サイズ(プリンタなど)で±0.2mm、<br />

小 サイズ(カメラ・ 携 帯 電 話 など)で±0.<br />

05mm 程 度 の 再 現 性 必 要 。<br />

長 軸 の 両 端 勘 合 挿 入 作 業 ・ 軌 跡 精 度 を 要 求<br />

する 塗 布 作 業 などで 必 要 だが、ロボットの<br />

挿 入 動 作 を 補 完 する 直 線 スライドガイド<br />

など 補 助 治 具 を 用 意 し、カバーしている。<br />

ロボットの 必 要 以 上 の 大 きさは、 動 作 のム<br />

ダ(タクトロス)だけでなく、 前 後 工 程 と<br />

の 間 の 搬 送 のムダや、 停 滞 ( 仕 掛 かり)の<br />

ムダも 生 む。<br />

必 要 な 場 合 は、 別 の 単 軸 との 組 合 せや 治 具<br />

化 などで 対 応 し、 制 御 は 別 体 で 通 信 でカバ<br />

ーしている。<br />

ロボットの 作 業 を 従 来 の 搬 送 主 体 から、よ<br />

り 付 加 価 値 の 高 い 作 業 ( 組 立 など)へ 大 き<br />

くシフトさせたい。 従 来 のロボット 周 辺 治<br />

具 でカバーしていた 作 業 をロボットアー<br />

ム 自 身 の 軌 跡 で 実 現 させようとすると、2<br />

腕 協 調 作 業 のニーズが 飛 躍 的 に 大 きくな<br />

る。 周 辺 治 具 レス 化 は、ロボット 機 能 の 生<br />

み 出 す 大 きな 価 値 (=トータル 設 備 コスト<br />

削 減 、コンパクト 化 、 立 ち 上 げ 期 間 短 縮 な<br />

ど)である。<br />

現 状 、ダイレクトティーチングに 頼 ってお<br />

り、 時 間 がかかる。(XY 平 面 マガジンで<br />

は、3 位 置 を 教 示 して 他 点 は 計 算 で 求 める<br />

ことも 試 みたが、ロボット・マガジンの 精<br />

度 上 の 問 題 で 完 全 に 実 用 はできていな<br />

い。)ビジョンセンサ・ 力 触 覚 センサなど<br />

の 併 用 も 含 めて、 初 期 ティーチングの 簡 易<br />

化 や 自 動 修 正 可 能 化 が 望 まれる。<br />

特 に 多 品 種 少 量 生 産 をロボット 化 する 場<br />

合 、 立 ち 上 げ 期 間 短 縮 が 大 命 題 である。 機<br />

械 加 工 と 同 様 の、CAD~CAM 化 を 組 立 装 置<br />

でも 求 めて 行 きたい。ロボット 単 体 の 課 題


ビ<br />

ジ<br />

ョ<br />

ン<br />

ハ<br />

ン<br />

ド<br />

制<br />

御<br />

(1)ビジョン 位 置 決 めのより 高 速 処 理 を 望<br />

む。<br />

(2)ビジョン 装 置 のより 小 型 ・ローコスト<br />

化 を 望 む。<br />

(3) 人 の 作 業 能 力 に 合 った 外 観 判 断 センシ<br />

ング 技 術 の 確 立 が 必 要 。 例 えば、 組 立 作 業<br />

遂 行 に 必 要 な、 目 視 工 程 検 査 自 動 化 ができ<br />

ないと、ロボットによる 連 続 jした 自 動 化<br />

作 業 が 実 現 できない。<br />

(4)ビジョン 判 定 アルゴリズム 適 用 プロセ<br />

スに 沿 った 制 御 コマンド 体 系 とプログラ<br />

ム 支 援 システムの 確 立 を 求 む。ロボットプ<br />

ログラミングとも 一 体 化 し、より 簡 易 化 さ<br />

れるのが 望 ましい。 現 状 は、 特 定 の 技 術 者<br />

に 頼 り、 普 及 が 進 まぬ 一 因 になっている。<br />

(5)2 次 元 ビジョンでは 不 足 の 場 面 があ<br />

り、その 対 応 が 個 別 になっている。 個 々の<br />

ニーズに 合 わせリーズナブルな 手 段 を 選<br />

択 するが、 負 担 が 大 きい。3D ビジョンを<br />

簡 易 に 実 現 する 標 準 的 な 手 段 (または 手<br />

法 )の 提 供 が 望 まれる。<br />

(1) 部 品 に 比 べてハンドが 大 きい・ 重 い。<br />

アクチュエータ・ 構 造 材 料 から 見 直 した、<br />

新 たなハンド 構 成 の 検 討 が 必 要 。ロボット<br />

が 必 要 以 上 に 大 きいことの 一 因 となって<br />

いる。<br />

(2) 汎 用 性 がない。または、 汎 用 ハンドの<br />

ベースとなる 基 台 や 考 え 方 がない。 特 に、<br />

多 品 種 少 量 生 産 では 必 須 の 事 項 。<br />

ではないが、ベースマシンであるロボット<br />

とそれを 補 間 する 周 辺 の 役 割 ・ 機 能 を 明 ら<br />

かにしていきたい。<br />

人 の 組 立 作 業 に 比 べ 明 らかに 劣 っている<br />

のが、 認 識 ~ 判 断 ~ 動 作 の 一 連 の 作 業 時 間<br />

である。 現 在 は 遅 くてもペイできる 工 程<br />

( 元 々 人 工 数 が 大 きいなど)にのみ 導 入 さ<br />

れている。 周 辺 治 具 や 供 給 装 置 ( 高 精 度 整<br />

列 のために 費 用 がかかっている)の 負 担<br />

を、ビジョンで 軽 減 することが、ロボット<br />

化 を 拡 大 する 大 きなキーである。そのため<br />

には、「 速 くて」「 安 い」ビジョン 装 置 の<br />

付 加 により、 人 と 同 等 以 上 の 作 業 能 力 をロ<br />

ボットに 付 けたい。<br />

キズやゴミなどをチェックして 次 の 部 品<br />

を 組 付 けるような 作 業 工 程 では、 組 付 け~<br />

目 視 検 査 ~ 組 付 け~ 目 視 検 査 ・・・と 連 続<br />

する。<br />

照 明 条 件 へのロバスト 性 、ワーク 表 面 性 ば<br />

らつきへの 対 応 など 個 別 の 環 境 因 子 、キャ<br />

リブレーション 方 法 などシステム 手 法 の<br />

確 立 など 課 題 の 整 理 から 必 要 。<br />

ビンピッキング 供 給 のみならず、トレイに<br />

よる 分 離 供 給 でも 搬 送 中 のワークの 暴 れ<br />

( 仕 切 りへの 乗 り 上 げ)への 対 応 などで 距<br />

離 情 報 の 確 認 が 必 要 。 安 価 な 距 離 計 測 手 段<br />

を 併 用 したい。<br />

現 状 、 部 品 ごとに 個 別 の 対 応 。 新 機 軸 を 盛<br />

り 込 む 研 究 進 まず、ロボット+ハンド 共 大<br />

きい・ 重 い 状 態 から 脱 却 できない。<br />

現 状 、 部 品 ごとに 個 別 の 対 応 。 新 機 軸 を 盛<br />

り 込 む 研 究 が 進 まない。マルチ 化 ( 大 き<br />

さ・ 重 さ 増 大 )やフィンガーチェンジ(ム<br />

ダな 時 間 増 大 )で 対 応 するも、 決 定 打 にな<br />

っていない。<br />

(1) 機 器 間 の 接 続 性 の 確 保 について。 個 別<br />

対 応 でどのような 機 器 でも 相 互 接 続 は 理<br />

論 上 可 能 だが、 最 小 の 負 担 で 各 機 器 の 持 っ<br />

現 状 は、マルチベンダーに 個 別 に 対 応 。<br />

ている 特 性 を 最 大 に 引 き 出 せる 仕 組 みの<br />

(DI/DO・RS 通 信 から EtherNET まで、 工<br />

構 築 は 必 要 。エンドユーザが 意 識 しないで<br />

場 間 ・ 設 備 間 でばらばらの 実 態 )<br />

各 機 器 と 通 信 が 可 能 なコマンド 体 系 ・それ<br />

を 支 えるインタフェース(ハード・ソフト)<br />

の 整 備 が 望 まれる。<br />

(2) 制 御 ソフト 体 系 の 再 利 用 可 能 化 につい<br />

て。 多 品 種 少 量 に 加 えて 短 ライフ 製 品 の 自<br />

動 化 が 求 められ、 多 作 業 化 でより 複 雑 な 工<br />

程 を、 短 期 に 立 ち 上 げることが 必 須 であ<br />

る。ソフトの 生 産 性 と 信 頼 性 向 上 のため<br />

に、 作 業 工 程 のモジュール 化 と 併 せてソフ<br />

ト 体 系 のモジュール 化 ・ 標 準 化 が 望 まれ<br />

る。<br />

現 状 は、 個 別 に 対 応 。 機 器 制 御 ・ステーシ<br />

ョン 制 御 ・ライン 制 御 の 階 層 を 踏 まえた 全<br />

体 像 から、 制 御 ソフト 体 系 の 標 準 化 の 検 討<br />

が 必 要 。<br />

127


人<br />

( 保 全 )<br />

( 安 全 )<br />

(1)ロボットの 稼 働 率 は、そのオペレータ<br />

の 能 力 に 大 きく 左 右 されることが 多 い。オ<br />

ペレータの 教 育 ・ 訓 練 ももちろんだが、ロ<br />

ボットを 含 めた 装 置 の 操 作 性 の 向 上 を、シ<br />

ステムの 能 力 発 揮 と 人 間 工 学 の 視 点 から<br />

整 備 構 築 し、 誰 でも 簡 単 に 操 作 できる 設 備<br />

を 目 指 したい。 不 良 品 をつくらない・ 人 の<br />

安 全 性 を 重 視 する 視 点 からも 重 要 。<br />

オペレータトレーニングをその 体 系 化 含<br />

めて 事 前 に 実 施 。 現 状 、 装 置 の 操 作 性 は 統<br />

一 されているとは 言 えないため、 教 育 も 個<br />

別 に 対 応 が 必 要 。<br />

(2) 人 (オペレータ・ 管 理 者 )に 装 置 状 態<br />

を 通 知 する 方 法 が 整 備 されていない。 装 置<br />

が 知 っている 詳 細 のエラー 事 象 ( 予 知 事 象<br />

を 含 む)を、いかに 速 く 顕 在 化 させるかが、 オペレータの 経 験 に 頼 って、 装 置 の 状 態 を<br />

システム 信 頼 性 ・ 生 産 性 アップのキーを 握 把 握 しているのが 現 状 である。<br />

る。ステップごとに 装 置 内 で 分 かっている<br />

事 実 をいかに 設 備 稼 働 ・ 設 備 保 全 につなげ<br />

るか、その 仕 組 みを 求 めたい。<br />

(3) 安 全 カバー・ 安 全 センサなどの 設 置 基<br />

準 とそれに 合 わせた 仕 組 み・ 手 段 の 標 準 化<br />

が 必 要 。 装 置 の 操 作 性 を 含 めて、トータル<br />

の 視 点 で 人 と 機 械 の 融 合 の 検 討 を 求 めた<br />

い。<br />

現 状 は 個 別 に 対 応 。より 安 全 を 求 めて 工 夫<br />

し、 方 法 は 統 一 できていない。<br />

製 造 現 場 からの 要 求 をK-J 法 で 解 析 し、 取 りまとめた 結 果 、 要 求 として1 小 型 化 ・ 高 機 能 化 、2 不<br />

足 機 能 強 化 、3 再 構 成 可 能 化 、4マンマシンインタフェースの 強 化 、の 4 点 が 挙 がり、それらは 対 象 別<br />

に、 (R)ロボット 本 体 、(S)センサ、 特 に 画 像 処 理 系 、ならびに(A)システム 全 体 の 設 計 、と 分 類 可<br />

能 であることが 分 かった。このことはすなわち 表 2.4.1-2に 述 べたロボットシステムの 要 素 に 対<br />

する 要 求 を 意 味 する。そこで、 表 2.4.1-2を 組 み 替 え、 表 2.4.1-3に 示 すように、 対 象 と<br />

それに 対 する 要 求 として 取 りまとめた。ただし、「ローコスト 化 」は 除 外 した。<br />

表 2.4.1-3 ロボットの 要 素 とそれに 対 する 要 求<br />

モノの 分 類<br />

ロボット<br />

ビジョン<br />

システム<br />

本 体<br />

ハンド<br />

要 求 の 分 類<br />

小 型 化 ・ 高 機 能 化 不 足 機 能 強 化 再 構 成 可 能 化<br />

• ロボット 小 型 化<br />

• ハンドの 小 型 軽 量<br />

化<br />

• 視 覚 装 置 の 小 型 化<br />

• 直 線 精 度 向 上<br />

• 繰 り 返 し 精 度 向 上<br />

• 絶 対 精 度 向 上<br />

• 双 腕 協 調<br />

• 汎 用 ハンド<br />

• 視 覚 利 用 時 の 高 速<br />

位 置 決 め<br />

• 3D ビジョン<br />

• 視 覚 外 観 チェック<br />

• 容 易 な 軸 追 加<br />

• ティーチング 簡<br />

素 化<br />

• 汎 用 ハンド<br />

• 視 覚 のプログラ<br />

ム 容 易 化<br />

• 制 御 ソフトの 再<br />

利 用<br />

• 機 器 間 の 接 続 性<br />

マンマシンインタフェース 特 性 強<br />

化<br />

• 操 作 性 向 上<br />

• 装 置 状 態 の 通 知<br />

• ティーチング 簡 素<br />

化<br />

• 視 覚 のプログラム<br />

容 易 化<br />

• 安 全 のための 人 ・<br />

機 械 融 合<br />

• オペレータの 教<br />

育 ・ 訓 練<br />

(3) 製 造 現 場 からの 産 業 用 ロボットへの 要 求<br />

現 場 からの 要 求 が 整 理 されたので、 表 2.4.1-3の 要 求 を「 環 境 構 造 化 」の 視 点 から 解 決 策 を 探<br />

す。 結 果 を 表 2.4.1-4に 示 す。たとえば、「ロボット 本 体 の 小 型 化 」は「ロボットに 組 込 む 機 能<br />

128


を 環 境 に 分 散 的 に 組 込 むことで、 同 一 機 能 を 達 成 するロボット 本 体 を 小 型 化 できる 可 能 性 が 高 くなる」<br />

と 考 え、「 環 境 機 能 分 担 による 投 資 の 削 減 」を 解 決 策 に 選 んだ。「ハンドの 小 型 軽 量 化 」は 本 来 、 軽 量 材<br />

料 の 使 用 、 高 機 能 アクチュエータの 開 発 、 高 率 ギアの 開 発 、アクチュエータの 分 散 配 置 、などが 挙 げら<br />

れるが、 環 境 構 造 化 の 視 点 からは、「 対 象 物 に 適 合 した 最 軽 量 グリッパを 採 用 したハンドを 設 計 する 方<br />

法 論 の 準 備 」と 考 え、「ハンド 利 用 支 援 +そのデータベース」ならびに「 掴 み 機 構 データベース」を 挙<br />

げた。ビジョンシステムに 対 する 再 構 成 可 能 化 とマンマシンインタフェース 特 性 強 化 の 要 求 に 対 しては<br />

ともに「 視 覚 のプログラム 容 易 化 」であり、それは 画 像 処 理 系 の 知 能 化 のみならず、CADの 利 用 、シ<br />

ミュレータの 開 発 、 視 覚 対 象 教 示 作 業 の 簡 易 化 を 含 む。それゆえ、 多 数 ある 研 究 開 発 項 目 の 中 からいか<br />

なる 具 体 的 開 発 対 象 を 選 択 するかはより 細 かな 検 討 が 必 要 となる。<br />

このような 解 決 策 の 探 索 は、 要 求 に 対 する 直 接 的 な 効 果 が 小 さい 場 合 もあるが、ロボットシステム 全<br />

体 ならびにロボット 産 業 全 体 の 進 展 を 考 慮 すると 適 切 な 方 向 であるといえる。これもモジュール 化 と 環<br />

境 構 造 化 という 共 通 目 標 を 設 定 した 結 果 である。<br />

これら 多 数 の 研 究 開 発 目 標 の 中 から 委 員 会 内 での 議 論 に 従 い、9つの 例 についてその 内 容 を 詳 細 に 検<br />

討 した。<br />

表 2.4.1-4 ロボットの 要 素 に 対 する 要 求 とその 解 決 策<br />

要 求 の 分 類<br />

小 型 化 ・ 高 機 能 化 不 足 機 能 強 化 再 構 成 可 能 化 マンマシンインタフェース 強 化<br />

モノの 分 類<br />

ロボット<br />

本 体<br />

ハンド<br />

ビジョン<br />

システム<br />

• 環 境 機 能 分 担 に<br />

よる 投 資 の 削 減<br />

• ハンド 利 用 支 援<br />

+データベース<br />

• 汎 用 掴 み 機 構<br />

• 視 覚 装 置 の 高 機<br />

能 化<br />

• 環 境 =インフラ<br />

ストラクチャ 化<br />

• 環 境 埋 め 込 み 制 御<br />

機 能 、 測 定 対 象<br />

• 利 用 支 援<br />

• エンドエフェクタ<br />

制 御 動 作 環 境 の 充<br />

実<br />

• 視 覚 利 用 の 高 速 位<br />

置<br />

決 め 支 援 環 境 設 計<br />

• 安 全 のための 作 業<br />

者 の 動 作 計 測 ・ 予 測<br />

• ロボット・ 環 境 配 置<br />

設 計<br />

• 物 流 インタフェー<br />

ス 支 援<br />

• 環 境 支 援 ティー<br />

チ ン グ+デ ータ<br />

ベース<br />

• 環 境 支 援 位 置 姿<br />

勢 測 定<br />

• 汎 用 掴 み 機 構<br />

• 機 器 間 の 環 境 経<br />

由<br />

接 続 性<br />

• 安 全 ・ 安 心 技 術<br />

• データベース<br />

• 掴 み 機 構 データベ<br />

ース<br />

• 視 覚 プログラム<br />

支 援 のデ ータベ ー<br />

ス<br />

• DfVision: ビジョン<br />

センサ 用 の 設 計<br />

• ポカミス 防 止 のた<br />

めの 環 境 構 造 化<br />

• 安 全 のための 作 業<br />

者 の 動 作 計 測 ・ 予 測<br />

• 安 全 機 器 の 環 境 埋<br />

込<br />

データベース<br />

• オペレータ 用 環 境<br />

利 用 教 育<br />

• 教 示 自 動 化 のため<br />

の 情 報 埋 め 込 み<br />

表 中 、 太 字 ・イタリック 表 記 の 項 目 は 本 報 告 書 で 検 討 を 加 えた 解 決 策<br />

129


2.4.2 作 業 構 築 を 中 心 とする 環 境 構 造 化<br />

(1) 汎 用 つかみ 機 構 の 開 発<br />

1)ユーザの 選 定<br />

産 業 用 ロボットを 用 いて、 組 立 、 搬 送 を 行 う 製 造 現 場 において、 実 際 にワークと 接 するハンドは、 製<br />

品 品 質 、 生 産 性 に 大 きく 寄 与 する 因 子 のひとつである。 取 り 扱 い 対 象 部 品 の 形 状 や 重 心 位 置 に 対 して、<br />

位 置 精 度 、 姿 勢 精 度 が 高 く、 加 減 速 時 にも 安 定 した 姿 を 保 つ 掴 み 特 性 を 示 すハンドを 設 計 することは 容<br />

易 ではない。そのため、 取 り 扱 う 部 品 及 び 製 品 によってハンドの 種 類 も 多 種 多 様 となり、ハンド 設 計 に<br />

は 経 験 とノウハウが 必 要 となる。ここで 想 定 する 真 のユーザは、 中 小 企 業 などでロボットを 利 用 する 経<br />

営 者 であり、 直 接 のユーザならびに 設 計 者 はそのハンド 設 計 を 行 う 生 産 技 術 者 である。<br />

2)システム 構 成<br />

製 造 現 場 では 作 業 内 容 、 作 業 対 象 部 品 によってそれらに 合 ったハンドを 使 用 する 必 要 がある。しかし<br />

ながら、 多 品 種 を 扱 う 製 造 現 場 では、それらに 合 った 専 用 ハンドを 用 いると、ハンドの 数 が 増 え、 費 用<br />

がかさむ、また、 作 業 及 び 部 品 によってハンドの 取 替 えの 手 間 がかかる 等 の 負 担 が 発 生 する。そのため、<br />

使 用 できる 作 業 及 び 部 品 が 多 い 多 指 ハンドタイプの 汎 用 ハンドが 有 効 となる。<br />

一 般 に 多 指 ハンドユニットを 設 計 ・ 製 作 するためには、 高 度 な 機 械 設 計 技 術 が 必 要 となるが、 容 易 に<br />

多 指 ハンドユニットが 構 成 できるようなアクチュエータ 構 造 とすることができれば、 多 指 ハンドの 設<br />

計 ・ 製 作 が 容 易 になる。そこで、ここでは、アクチュエータを 用 いた 構 成 のハンドシステムについて 説<br />

明 を 行 う。<br />

図 2.4.1-1にアクチュエータを 用 いたハンドのイメージ 図 、 図 2.4.1-2にそのシステム<br />

ブロック 図 を 示 す。 図 のハンドは3 指 で 構 成 、1 指 を3 軸 のアクチュエータで 構 成 、サーボアンプをハ<br />

ンド 上 に 装 備 し、ハンドユニットとしてまとめたものである。<br />

アクチュエータ<br />

サーボアンプ<br />

図 2.4.2-1 ハンドイメージ 図<br />

130


多 指 ハンドユニット<br />

上 位<br />

コントローラ<br />

高 速<br />

シリアル 通 信<br />

3 軸 まとめ<br />

モータ 用<br />

エンコーダ 用<br />

アクチュエータ<br />

サーボモジュール<br />

アクチュエータ<br />

電 源<br />

DC24V<br />

アクチュエータ<br />

固 定 側<br />

ロボットアーム 先 端<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

図 2.4.2-2 システムブロック 図<br />

上 記 のシステムを 実 現 するために 必 要 な、 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 として、ハンドの 設 計 に<br />

必 要 な 要 件 をまとめる。<br />

設 計 上 の 条 件 としては、 作 業 内 容 に 起 因 する 条 件 、ワークに 起 因 する 条 件 、 設 備 構 造 に 起 因 する 条 件<br />

がある。これらの 条 件 をもとに、アクチュエータ、リンク、つめのデータベースより、それぞれを 選 択<br />

し、ハンド 構 成 を 決 定 する。 以 下 にその 項 目 と 流 れを 述 べる。<br />

入 力 条 件<br />

作 業 内 容 条 件<br />

入 力 条 件 より、 準 備 された<br />

部 品 を 組 み 合 わせてハン<br />

ドを 構 成<br />

ワーク 条 件<br />

部 品 DB<br />

設 備 構 造 条 件 アクチュエータ DB リンク DB<br />

つめ DB<br />

図 2.4.2-3 ハンド 機 構 設 計 システム<br />

1 入 力 条 件<br />

a. 作 業 内 容 に 起 因 する 条 件<br />

作 業 内 容 により、ハンドに 求 められる 要 件 が 異 なる。ピッキング、 搬 送 等 は、 対 象 ワークを 掴 むこと<br />

が 主 だが、 組 立 作 業 を 行 う 場 合 、 対 象 ワークの 把 持 の 他 に、ワーク 持 ち 替 え、 使 用 治 具 、 工 具 の 把 持<br />

等 多 様 なものをつかめる 構 造 とする 必 要 がある。また、タクトタイムにより、ハンド 開 閉 速 度 を 決 定<br />

する。<br />

131


. ワークに 起 因 する 条 件<br />

把 持 対 象 のワーク 形 状 、「 大 きさ、 形 状 、 重 さ、 重 心 位 置 、 掴 み 位 置 、 素 材 ( 柔 らかさ 等 )」により、<br />

ハンドの 大 きさ、リンク 長 さ、つめ 形 状 、アクチュエータのトルク 等 を 決 定 する。<br />

c. 設 備 構 造 から 発 生 する 条 件<br />

取 り 出 すワークが 置 かれている 状 態 「、、< 整 列 、 仕 切 り、ランダ<br />

ム>、< 棚 、コンベア、 部 品 セット 台 >」によって、ワークの 掴 み 方 、 他 への 干 渉 等 を 考 慮 する 必 要<br />

がある。<br />

2 部 品 DB<br />

a. アクチュエータDB<br />

アクチュエータ: 大 きさ、トルク、 速 度 よりアクチュエータを 選 択<br />

b. リンクDB<br />

リンク: 長 さ、 形 状 、 材 質 を 選 択<br />

c. つめDB<br />

つめ: 長 さ、 形 状 、 材 質 を 選 択<br />

上 記 条 件 と 部 品 DBより、 指 の 本 数 、 関 節 の 数 、リンク、つめ、アクチュエータの 選 定 を 行 い、ハン<br />

ド 構 成 を 決 定 する。<br />

(2) 掴 み 機 構 データベースの 構 築<br />

1)ユーザの 選 定<br />

ロボット 利 用 での 最 大 の 問 題 はロボットの 機 械 的 インタフェースであるハンドの 汎 用 性 が 低 いこと<br />

である。 上 述 の「 汎 用 掴 み 機 構 」は、3 本 指 という 人 間 に 近 い 構 造 とその 利 用 方 法 を 開 発 することを 目<br />

指 した。 産 業 用 組 立 の 多 くは2 本 指 など 簡 単 な 機 構 を 使 い、 掴 み 対 象 に 適 合 したつかみ 位 置 、 掴 み 方 、<br />

放 し 方 をしたほうが、 安 定 性 ・ 作 業 性 ・ 速 度 ・コストの 点 で 優 れている。しかし、 形 状 や 重 心 配 置 によ<br />

って 組 み 合 わせが 多 いいため、 掴 み 機 構 の 設 計 は 勘 と 経 験 を 必 要 とする 難 しい 作 業 になり、 結 果 的 に、<br />

中 小 企 業 のロボット 導 入 を 妨 げる 理 由 となっている。<br />

そこで、このデータベースは、 中 小 企 業 でのロボット 導 入 担 当 者 (すなわち、 一 般 の 作 業 者 )が 簡 単<br />

に 扱 えることを 目 標 とする。<br />

2)システム 構 成<br />

機 械 設 計 用 パソコンCADで 利 用 可 能 な 指 形 状 のデータベースを 構 築 し、CADで 利 用 可 能 とする。<br />

指 の 形 状 を 探 し 出 すだけでは 不 十 分 であり、 掴 んだ 部 品 を 運 んだときにどのような 動 き(すべる、 回<br />

転 する)か、あるいは 指 を90 度 回 転 した 場 合 に 挿 入 作 業 に 適 するか、といった 細 かなチェックが 容 易<br />

にできることが 求 められる。よって、システムは 図 2.4.2-4に 示 すように、いくつかのデータベ<br />

ースとシミュレータからなる。<br />

132


掴 み 機 構 設 計 用 CAD<br />

汎 用 ロボット 動 作<br />

シミュレータ<br />

部 品 供 給 装 置<br />

データベース<br />

掴 み 動 作<br />

シミュレータ<br />

掴 み 形 状 設 計<br />

データベース<br />

掴 み 性 能 シミュレータ<br />

( 掴 み 姿 、 安 定 性 など)<br />

掴 み 対 象<br />

データベース<br />

指 形 状<br />

データベース<br />

駆 動 系 接 続<br />

データベース<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

図 2.4.2-4 掴 み 機 構 データベースのシステム 構 造<br />

このようなデータベースの 必 要 性 をテーブルの 片 付 け 作 業 で 考 察 してみよう。<br />

図 2.4.2-5 テーブルの 片 付 け<br />

テーブルの 片 付 けは 家 庭 用 サービスロボットとしての 要 求 であるが、 産 業 用 ロボットとほぼ 同 様 の 掴<br />

み 機 構 を 必 要 とする。グラスを 把 持 するには 指 にやわらかい 表 面 が 必 要 であろう。 皿 を 掴 むには、 指 が<br />

テーブル 上 面 に 沿 って 皿 の 側 面 から 近 づく 必 要 があり、そのような 動 作 ができる 機 構 が 必 要 である。ポ<br />

ット 状 の 深 さのある 掴 み 対 象 ではどの 位 置 で 掴 むかが 安 定 的 な 把 持 の 必 須 条 件 である。コーヒーカップ<br />

を2 本 指 で 持 ち 上 げるには、 大 きな 指 を 使 うか、まったく 別 の 保 持 方 法 を 準 備 しなければならない。ナ<br />

イフやフォークは 工 業 製 品 だが 形 状 が 不 定 形 でかつテーブル 面 からつまみあげる 必 要 がある。<br />

このような 事 例 を 検 討 するだけで 対 象 物 に 適 した 掴 み 機 構 の 選 択 が 困 難 であることが 容 易 に 理 解 さ<br />

れる。<br />

以 上 のことからシステムに 対 する 要 求 仕 様 をまとめる。<br />

・ 対 象 物 を 高 精 度 ・ 短 時 間 ・ 安 定 的 に 把 持 し、 搬 送 する 掴 み 機 構 の 設 計 事 例 集 と、その 性 能 評 価 システ<br />

ムの 開 発 。<br />

・ 掴 み 機 構 (Gripper)と、 部 品 確 認 機 構 (Sensor、 視 覚 センサ、 触 覚 センサ、 掴 みセンサ<br />

などの 総 称 )、 部 品 供 給 機 構 ( 部 品 供 給 装 置 、 掴 み 直 し 機 構 など)、 組 立 動 作 ( 部 品 掴 み 方 法 、 組 付 け<br />

方 法 )の4 者 の 組 み 合 わせで、データベースを 構 築 する。<br />

・ 掴 み 動 作 中 の 配 管 の 具 合 、 手 首 に 設 置 されたカメラやタレット 型 掴 み 機 構 の 影 響 、 部 品 供 給 荷 姿 への<br />

対 応 , 掴 みなおし 方 法 や 仮 置 き 方 法 など、ロボット 作 業 時 に 必 要 とされる 部 品 操 作 方 法 も 設 計 可 能 で<br />

あること。<br />

・ 安 定 性 , 作 業 時 間 などの 評 価 が 定 量 的 に 示 され、シミュレータによる 評 価 方 法 が 組 み 込 まれているこ<br />

133


と。<br />

(3)エンドエフェクタ 制 御 動 作 環 境 の 充 実<br />

1)ユーザの 選 定<br />

今 後 の 工 場 自 動 化 の 方 向 は、ロボット 制 御 セル 生 産 にある。 製 品 の 変 更 、 生 産 量 の 変 更 に 迅 速 、かつ<br />

経 済 的 にも 妥 当 に 対 処 できる 完 全 無 人 化 セル 型 生 産 システムの 課 題 は 多 い。ここではこのようなロボッ<br />

ト 制 御 セル 生 産 のユーザを 対 象 とする。<br />

ロボットを 用 いたセルシステムの 場 合 、 製 品 の 変 更 、 生 産 量 の 変 更 に 迅 速 に 行 うためオートツールチ<br />

ェンジャ(A・T・C)にて 自 動 的 にツール(エンドエフェクタ)を 交 換 することが 多 い。また、より<br />

効 率 的 ( 経 済 的 )に 組 立 作 業 を 行 うために、 図 2.4.2-6のような 手 先 をたくさん 持 てる 千 手 観 音<br />

モデルを 用 いることが 有 効 であると 考 えられる。 課 題 としては、 千 手 観 音 モデルの 信 号 ・ 動 力 伝 達 用 の<br />

配 管 ・ 配 線 系 が 複 雑 にもつれ 込 み、 動 作 によっては 障 害 になる。また、 断 線 等 によりシステムの 停 止 、<br />

故 障 の 原 因 になっている。<br />

配 線 ・ 配 管<br />

2)システム 構 成<br />

図 2.4.2-6 エンドエフェクタにおける 配 線 ・ 配 管 問 題<br />

さて、エンドエフェクタは、ロボット 本 体 から 見 れば 一 種 の「 環 境 」と 捉 えることができる。 図 2.<br />

4.2-7のように 多 種 ・ 多 様 なエンドエフェクタを 用 いる 場 合 に、ユーザが 配 線 ・ 配 管 の 問 題 に 煩 わ<br />

されることなく、 自 由 にエンドエフェクタを 利 用 できることは 極 めて 有 用 である。そのためには、いわ<br />

ばエンドエフェクタの 構 造 化 が 必 要 である。<br />

構 造 化 は、<br />

・「グリッパあるいはフィンガ 部 分 」と「 指 駆 動 系 」との 接 続<br />

・「 指 駆 動 系 」と「 手 首 」との 接 続<br />

・ 動 力 系 接 続<br />

・ 配 線 系 接 続 ・ 制 御 系 接 続<br />

・ 配 管 系 接 続<br />

それぞれに 対 して、 規 格 化 が 求 められる。 特 に、 千 手 観 音 のようなタレット 形 の 指 の 場 合 、 開 閉 寸 法<br />

を 必 要 最 小 限 にとめるなど、 複 数 の 指 を 搭 載 するための 規 格 も 必 要 となる。<br />

134


信 号 ・ 動 力<br />

の 伝 達<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

図 2.4.2-7 千 手 観 音 モデルにおける 信 号 ・ 動 力 の 伝 達<br />

・ 省 配 線 技 術<br />

エンドエフェクタ 周 りの 配 線 を、オープンな 標 準 規 格 に 対 応 させることにより、 省 配 線 化 を 進 めるこ<br />

とが 考 えられる。また、 高 速 シリアル 通 信 技 術 の 利 用 により 信 号 線 の 数 を 減 らすことも 有 用 である。<br />

・ 省 配 管 技 術<br />

エアー 周 りの 省 配 管 のために、 超 小 型 バルブの 開 発 が 求 められる。<br />

・ 無 配 線 ・ 無 配 管 技 術<br />

配 線 ・ 配 管 があると、その 手 間 もさることながら、 可 動 部 の 制 限 あるいは 可 動 領 域 の 制 限 をもたらす<br />

ことが 大 きな 問 題 である。それゆえ、 無 配 線 、 無 配 管 技 術 は、 産 業 用 にとどまらず 適 用 範 囲 がひろい<br />

技 術 である。 赤 外 線 通 信 、Bluetooth 等 の 採 用 により、 制 御 を 無 線 化 することも 可 能 となっ<br />

ている。この 場 合 、 信 頼 性 が 最 大 のネックであるが、その 問 題 もほぼ 解 決 されている。<br />

電 磁 誘 導 方 式 等 による 電 力 伝 達 により、バッテリーチャージの 無 線 化 が 可 能 となっているが、バッテ<br />

リ 重 量 がグリッパの 場 合 には 問 題 点 となる。バッテリなしの 動 力 の 無 線 化 が 考 えられる。<br />

・エアー 機 器 の 削 減<br />

エアー 機 器 はエネルギーロスが 大 きく、 環 境 面 においてこれからの 時 代 に 他 のアクチェータへの 切 り<br />

替 えが 必 要 と 考 えられているが、 安 価 で 小 型 なリニアモータ 駆 動 のグリッパアクチェータ 等 の 開 発 に<br />

よりエアー 機 器 を 極 力 減 らすことができるとともに、より 知 能 化 した 汎 用 性 の 広 いエンドエフェクタ<br />

へ 進 化 できると 考 えられる。<br />

(4)ロボット・ 環 境 配 置 設 計<br />

1)ユーザの 選 定<br />

現 状 では、ロボットを 用 いた 設 備 構 築 には、 企 画 、 設 計 、 設 備 準 備 担 当 者 が 参 画 している。 企 画 担 当<br />

は 設 備 に 求 められる 要 件 と 設 備 仕 様 を 定 義 する 者 、 設 計 担 当 とは 与 えられた 設 備 要 件 、 仕 様 を 基 に 設 備<br />

の 実 現 可 能 な 構 成 を 決 定 し、 詳 細 な 設 備 設 計 を 行 う 者 、 設 備 準 備 担 当 者 とは、 与 えられた 設 備 設 計 結 果<br />

を 基 に、ロボットの 動 作 経 路 や 設 備 の 詳 細 シーケンスを 定 義 し、 実 機 のロボット 教 示 データやシーケン<br />

スデータを 準 備 する 者 をいう。<br />

「 環 境 構 造 化 」 実 現 後 のロボット・ 配 置 設 計 のユーザとしては、 構 造 化 の 方 法 論 に 基 づく 新 技 術 を 活<br />

用 し、 設 備 企 画 から 設 備 設 計 、 準 備 までを 一 貫 して 実 施 できる 設 備 導 入 企 画 者 と 定 義 する。<br />

2)システム 構 成<br />

ロボット・ 環 境 配 置 設 計 の 流 れと、 配 置 設 計 を 支 援 するシステムの 要 件 と 構 成 について 述 べる。<br />

図 2.4.2-8に 示 すように、ロボット・ 環 境 配 置 設 計 の 流 れは 大 きく、 製 品 CADデータ 及 び 部<br />

135


品 構 成 情 報 の 取 り 込 み、 作 業 及 び 作 業 順 <strong>序</strong> の 定 義 、 機 器 構 成 及 び 機 器 配 置 の 指 定 、 作 業 及 び 設 備 問 題 点<br />

検 出 、 設 備 スループット 評 価 、 自 動 化 機 器 動 作 データの 生 成 に 分 けられる。<br />

配 置 設 計 においては、 把 持 、 移 動 、 部 品 挿 入 、 締 結 、 仕 上 げなどの 作 業 と 工 具 の 問 題 点 検 出 、センサ<br />

の 問 題 点 検 出 、ロボットをはじめとした 自 動 化 機 器 の 到 達 性 、 装 置 間 の 干 渉 、サイクルタイム、および<br />

設 備 全 体 のスループットの 評 価 、 装 置 内 で 作 業 をする 人 間 の 安 全 性 の 評 価 などが 行 われる。こうした 評<br />

価 は 極 めて 多 岐 にわたる 上 、 設 計 における 各 指 定 項 目 は 相 互 に 影 響 を 及 ぼすため、 現 状 では 設 計 検 討 は<br />

きわめて 繰 り 返 しの 多 いプロセスとなっている。<br />

今 後 、 組 み 立 て 自 動 化 の 拡 大 に 伴 い、こうしたエンジニアリング 工 数 は 莫 大 なものになると 考 えられ<br />

る 為 、 環 境 構 造 化 手 法 により、 作 業 順 <strong>序</strong> 、 機 器 構 成 、ロボット 経 路 などを 標 準 化 すること、そしてそれ<br />

に 基 き、 配 置 支 援 システムが 構 築 することが 不 可 欠 であると 考 えられる。 図 2.4.2-9にこうした<br />

支 援 システムの 基 本 構 成 を 示 す。 環 境 構 造 化 実 現 後 は、 配 置 設 計 が 容 易 化 され、 図 2.4.2-10に<br />

示 すような、ストレートフォワードな 業 務 フローに 変 革 できると 考 えられる。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

上 記 、 支 援 システムを 構 築 する 上 で 解 決 すべく 知 能 化 技 術 については 以 下 のものがあげられる。<br />

環 境 構 造 化 に 関 するものでは、 用 途 別 作 業 別 の1 環 境 即 ち 機 器 構 成 及 び 配 置 の 標 準 化 、2 作 業 、 作 業<br />

順 <strong>序</strong> の 標 準 化 、3 自 動 化 機 器 経 路 の 標 準 化 技 術 が 求 められる。<br />

環 境 構 造 化 を 利 用 した 配 置 支 援 システムに 関 するものとしては、1 最 適 な 標 準 の 自 動 選 定 に 関 する 技<br />

術 、3 動 的 に 変 化 する 環 境 下 でのロボットや 自 動 化 機 器 の 経 路 自 動 生 成 、 人 間 の 自 然 な 作 業 姿 勢 を 容 易<br />

に 生 成 する 技 術 、3ケーブル、ホース、 布 材 など、 柔 軟 変 形 物 の 挙 動 を 高 速 高 精 度 に 再 現 する 技 術 など<br />

が 課 題 となる。<br />

製 品 CAD<br />

データ 及 び<br />

部 品 構 成<br />

情 報 の<br />

取 り 込 み<br />

作 業 及 び<br />

工 順 の 定 義<br />

機 器 構 成<br />

及 び<br />

機 器 配 置 の<br />

指 定<br />

・ 作 業 、 設 備 工 具<br />

問 題 点 評 価<br />

・ 人 の 作 業 性 評 価<br />

・ 人 、 自 動 化 機 器<br />

動 作 経 路 定 義<br />

・ 設 備 動 的 問 題 点<br />

とスループット 評 価<br />

判 断<br />

自 動 化 機 器<br />

動 作 データ<br />

生 成<br />

ロボット 教 示<br />

データ<br />

シーケンスデータ<br />

等<br />

図 2.4.2-8 現 状 の 配 置 設 計 フロー<br />

製 品<br />

CADデータ<br />

BOM<br />

取 り 込 み<br />

モジュール<br />

作 業 、 工 順<br />

定 義<br />

モジュール<br />

機 器 構 成 、<br />

配 置<br />

モジュール<br />

作 業 、 機 器<br />

静 的 問 題 点<br />

評 価<br />

モジュール<br />

自 動 化 機 器<br />

動 作 データ<br />

生 成<br />

モジュール<br />

製 品 CAD<br />

データ・<br />

BOM<br />

用 途 作 業 別<br />

工 順 、 作 業<br />

DB<br />

用 途 作 業 別<br />

機 器 構 成<br />

DB<br />

用 途 作 業 別<br />

経 路<br />

DB<br />

自 動 化 機 器<br />

動 作 データ<br />

シーケンスデータ<br />

図 2.4.2-9 配 置 支 援 システムの 構 成<br />

136


製 品 CAD<br />

データ 及 び<br />

部 品 構 成<br />

情 報 の<br />

取 り 込 み<br />

作 業 及 び<br />

工 順 の 定 義<br />

機 器 構 成<br />

及 び<br />

機 器 配 置 の<br />

指 定<br />

・ 作 業 、 設 備 工 具<br />

問 題 点 評 価<br />

・ 人 の 作 業 性 評 価<br />

・ 人 、 自 動 化 機 器<br />

動 作 経 路 定 義<br />

・ 設 備 動 的 問 題 点<br />

とスループット 評 価<br />

確 認<br />

自 動 化 機 器<br />

動 作 データ<br />

生 成<br />

ロボット 教 示<br />

データ<br />

シーケンスデータ<br />

等<br />

(5) 教 示 自 動 化 のための 情 報 埋 め 込 み<br />

1)ユーザの 選 定<br />

図 2.4.2-10 環 境 構 造 化 後 の 配 置 設 計 フロー<br />

産 業 用 ロボットは「 教 示 」により 作 業 内 容 を 変 更 できるので、 様 々な 製 造 現 場 、 様 々な 工 程 で 使 われ<br />

ている。 例 えば 部 品 の 供 給 、 組 立 て、 検 査 、パレットへの 箱 詰 めなどの 多 様 な 作 業 であっても、 同 じ 型<br />

式 のロボットを 用 い、そのハンドと 教 示 (プログラム)を 変 更 することで 対 応 できる。 更 にモデルチェ<br />

ンジなどで 製 品 に 変 化 があっても、 教 示 の 変 更 で 作 業 内 容 をかえることができるという 特 徴 により、 多<br />

世 代 への 対 応 が 可 能 である。<br />

すなわちロボットを 用 いることにより、ユーザーニーズにマッチした 専 用 の 多 世 代 製 造 ラインを、 量<br />

産 品 のコストと 信 頼 性 で 実 現 できる。<br />

このロボットの 大 きな 特 徴 を 支 える「 教 示 」は 高 度 な 技 能 を 持 つ 作 業 者 が 細 心 の 注 意 を 払 い、 経 験 と<br />

カンコツを 駆 使 して 行 うというのが 現 状 である。この 教 示 作 業 者 の 技 量 で、ロボットを 用 いた 設 備 の 良<br />

し 悪 しが 決 まるといっても 過 言 ではない。この 教 示 作 業 のレベルアップと、 教 示 に 要 する 時 間 を 短 縮 す<br />

ることが 大 きな 課 題 である。<br />

本 技 術 では、ロボットを 用 いた 設 備 を 設 計 製 作 する 人 あるいは 会 社 をユーザとして 選 定 し、 教 示 作 業<br />

のレベルアップと 時 間 短 縮 を 図 り、 最 終 的 には 自 動 化 することを 目 標 とする。 上 記 を 実 現 するステップ<br />

として、ここでは 組 立 工 程 を 例 にとり、 次 のように 目 標 を 定 める。<br />

・ステップ1<br />

人 手 での 教 示 作 業 を 基 本 とする。 但 しロボットの 設 置 された 環 境 からの 情 報 を 取 得 することにより、<br />

不 用 意 にロボットを 動 作 させて、 設 備 とロボットを 衝 突 させるなどの 事 故 防 止 を 行 う。これにより 初 心<br />

者 にも 安 心 してロボットの 教 示 を 任 せることができると 共 に、 熟 練 者 にとっても 作 業 のストレスが 低 減<br />

でき、 教 示 に 要 する 時 間 が 短 縮 できる。<br />

・ステップ2<br />

部 品 のピックアップ、 組 立 てなど 精 度 やノウハウを 要 する 部 分 の 教 示 は 人 手 で 行 うが、 途 中 の 動 作 経<br />

路 の 生 成 を 自 動 化 する。ロボットの 置 かれた 環 境 データを 用 いて、 設 備 などとの 干 渉 を 避 けつつ 最 も 合<br />

理 的 な 経 路 を 自 動 生 成 することでロボットの 動 作 を 最 適 化 し、 教 示 作 業 のレベルアップができると 共 に、<br />

教 示 に 要 する 時 間 が 短 縮 できる。<br />

・ステップ3<br />

部 品 のピックアップ、 組 立 てなど、 精 度 やノウハウを 要 する 部 分 の 教 示 も 自 動 化 を 図 る。まずは 作 業<br />

が 単 純 で 簡 単 なピック&プレイスを 例 題 として 取 り 組 むが、これを 一 般 化 し、 実 際 の 工 程 に 導 入 するた<br />

めには、 環 境 の 構 造 化 だけでなく、 作 業 ノウハウの 獲 得 とその 教 示 など、 他 の 課 題 解 決 とあわせて 取 り<br />

組 む 必 要 がある。<br />

137


2)システム 構 成<br />

システム 構 成 を 図 2.4.2-11に 示 す。ロボットの 周 りには、 様 々な 機 器 が 配 置 されている。こ<br />

の 例 では、 部 品 供 給 のパレットやパーツフィーダ、 部 品 を 組 立 てるための 加 工 機 、 組 立 てステーション<br />

や 搬 送 コンベアなどである。<br />

本 システムでは、これらの 周 辺 機 器 にそのもの 自 体 の 形 状 や 使 用 方 法 などの 情 報 を 埋 め 込 み、これを<br />

活 用 することにより、 教 示 作 業 のレベルアップを 図 ることを 目 的 とする。<br />

ロボット<br />

部 品 供 給<br />

(パレット)<br />

加 工 機<br />

(かしめ 機 )<br />

部 品 供 給<br />

(パーツフィーダ)<br />

情 報 タグ<br />

組 立 ステーション<br />

搬 送 コンベア<br />

図 2.4.2-11 周 辺 機 器 などに 情 報 を 埋 め 込 んだロボット 設 備<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

教 示 作 業 を 自 動 化 するにあたって 必 要 な 情 報 として、 対 象 物 の 位 置 姿 勢 、 部 品 の 位 置 姿 勢 と 供 給 の 形<br />

態 、どのように 組 立 てるかの 手 順 、ロボットにとっての 障 害 物 の 存 在 領 域 、など 種 々 様 々なものがある。<br />

例 えば 部 品 を 供 給 するパーツフィーダでは、 部 品 をピッキングするための 位 置 姿 勢 、ピッキングする<br />

ときのアプローチ 方 向 と、その 最 低 限 必 要 な 距 離 などの 作 業 そのものを 実 行 するために 必 要 な 情 報 に 加<br />

え、ロボットとパーツフィーダの 干 渉 を 避 けるため、パーツフィーダそのものの 存 在 領 域 の 情 報 が 必 要<br />

と 考 えられる。<br />

ロボットの 周 りには、パーツフィーダをはじめとして 様 々な 周 辺 機 器 や、 組 立 ての 対 象 となるワーク、<br />

部 品 などが 配 置 される。 教 示 の 自 動 化 のために 必 要 なこれらの 機 器 の 情 報 は、ロボットが 扱 いやすいよ<br />

うに、その 内 容 や 記 述 方 法 を 取 り 決 めて 一 般 的 に 利 用 できるようにすることが 有 益 である。<br />

次 にこのように 記 述 されたデータをどのようにロボットに 伝 達 するかについて 検 討 する。オフライン<br />

のデータとしての 受 け 渡 しも 考 えられるが、 現 物 とデータの 不 一 致 などによるトラブルを 避 けるために<br />

は、 物 と 情 報 の 一 元 化 を 図 ることが 肝 要 である。 例 えばパーツフィーダなどを 設 備 に 設 置 したときに、<br />

必 要 な 情 報 が 既 に 埋 め 込 まれていて、ロボットが 簡 単 に 利 用 できるようになっていることが 望 ましい。<br />

IC タグはその 種 類 を 適 切 に 選 べば 情 報 量 としては 満 足 でき、ある 程 度 離 れた 位 置 や 隠 れた 状 態 からも<br />

その 存 在 を 検 出 できる。しかし、その 正 確 な 位 置 の 特 定 が 困 難 であり、ビジョンなどによる 位 置 の 認 識<br />

技 術 を 併 用 する 必 要 がある。<br />

一 方 、QRコードなどを 用 いれば、 位 置 と 情 報 を 同 時 に 獲 得 することも 可 能 であるが、 隠 れた 位 置 か<br />

らは 認 識 できない。<br />

これらの 情 報 の 埋 め 込 み 手 段 については 用 途 に 応 じて 選 択 する 必 要 がある。<br />

138


(6) 環 境 構 造 化 による 物 流 インタフェース 支 援<br />

1)ユーザの 選 定<br />

工 場 へは、 受 け 入 れ 部 署 を 通 して 外 部 から 素 材 や 部 品 が 搬 入 され、 生 産 ( 加 工 あるいは 組 立 )された<br />

部 品 あるいは 製 品 が 出 荷 部 署 を 通 して 外 部 へ 搬 出 される。また、これらの 物 品 あるいは 生 産 途 中 の 仕 掛<br />

品 は 一 旦 、 自 動 倉 庫 等 に 格 納 されることがある。 工 場 内 では、 一 つのラインあるいはセルから 別 のライ<br />

ンあるいはセルへの 部 品 あるいは 製 品 の 移 動 があり、 人 手 、AGV (Automatic Guided Vehicle) ある<br />

いは 移 動 ロボット 等 で 搬 送 される。このような 物 流 における、 部 署 と 部 署 の 間 をつなぐインタフェース<br />

部 分 は、 現 状 では 人 手 を 必 要 とすることが 多 く、ここに 環 境 構 造 化 による 自 動 化 技 術 の 適 用 が 求 められ<br />

る。<br />

2)システム 構 成<br />

受 け 入 れ 部 署 、 出 荷 部 署 、 自 動 倉 庫 、 各 ライン、 各 セル 等 において、これら 物 流 のための 物 流 ステー<br />

ションを 設 け、 標 準 化 し、 環 境 構 造 化 を 行 うことにより、そこを 訪 れるAGV、 移 動 ロボットあるいは<br />

物 流 ステーションで 荷 の 受 け 渡 しをする 固 定 ロボットは、 細 かい 指 示 がなくても 自 律 的 に 作 業 を 行 うこ<br />

とができる。<br />

搬 送 される 部 品 あるいは 製 品 は、 標 準 化 されたパレットあるいはトレイ 上 に 載 せられており、パレッ<br />

トあるいはトレイにはICタグが 埋 め 込 まれており、その 上 の 部 品 あるいは 製 品 についての 生 産 情 報 が<br />

書 き 込 まれる。<br />

物 流 ステーションの 作 業 領 域 は、DfVision(2.4.3(1))で 述 べているように、 識 別<br />

のための 色 やパターンでロボットが 容 易 に 認 識 できるように 構 造 化 しておく。<br />

物 流 ステーション 間 をAGV、 移 動 ロボットが 移 動 する 際 には、 工 場 の 天 井 等 を 利 用 した 屋 内 GPS<br />

等 の 測 位 技 術 により、AGVや 移 動 ロボットが 自 分 の 位 置 を 容 易 に 知 ることができるようにする。<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

上 記 のような、 環 境 構 造 化 のアプローチによって 物 流 インタフェースの 支 援 を 行 うために 求 められる<br />

技 術 を 下 記 にまとめる。<br />

・ 物 体 認 識 技 術 (ICタグ、コンピュータビジョン 等 )<br />

・ 高 精 度 位 置 同 定 技 術 (GPS、コンピュータビジョン 等 )<br />

・ 標 準 化 : 物 理 的 インタフェース、 通 信 プロトコル、 情 報 記 述<br />

2.4.3 ビジョン・センシングを 中 心 とする 環 境 構 造 化<br />

(1)DfVision:ビジョンセンサ 用 の 設 計<br />

1)ユーザの 選 定<br />

ここで 取 り 上 げるビジョンセンサは 産 業 用 ロボットと 共 に 用 いられるものであり、そのユーザとして<br />

は 産 業 用 ロボットを 使 う 一 般 的 ユーザを 想 定 している。 例 えば、 自 動 車 メーカ、 自 動 車 部 品 メーカ、そ<br />

の 他 、 一 般 産 業 分 野 である。このビジョンセンサおよび 産 業 用 ロボットの 性 能 、 操 作 性 がさらに 向 上 す<br />

れば、 中 小 企 業 への 一 層 の 導 入 も 期 待 される。<br />

産 業 用 ロボットは 主 に 工 場 内 で 使 われるため、 工 場 外 に 比 べて 一 般 によく 環 境 が 整 備 されており<br />

(well-structured)、 環 境 情 報 をうまく 使 うことでビジョンセンサの 性 能 向 上 が 期 待<br />

される。 最 近 の 産 業 用 ロボットはビジョンセンサを 用 いるケースが 多 くなっており、それに 伴 い、ビジ<br />

ョンセンサの 適 用 範 囲 拡 大 、 誤 検 出 に 対 するロバスト 性 向 上 、 画 像 処 理 時 間 短 縮 、あるいは 対 象 ワーク<br />

形 状 教 示 やキャリブレーションの 操 作 性 向 上 等 への 要 求 が 大 きくなっている。<br />

これらを 解 決 する 方 策 の 一 つとして、 環 境 情 報 を 活 用 したビジョンセンサ 用 の 設 計 指 針 について 以 下<br />

に 述 べる。<br />

139


2)システム 構 成<br />

システム 構 成 を 図 2.4.3-1に 示 す。<br />

PC<br />

コントローラ<br />

ロボット<br />

カメラ<br />

シミュレータ<br />

画 像 処 理 部<br />

3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

図 2.4.3-1 産 業 用 ビジョンセンサのシステム 構 成<br />

環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 を、1 近 い 将 来 に 実 用 化 できる 短 期 開 発 技 術 と、2リスクのある<br />

中 ・ 長 期 開 発 技 術 とに 分 けて 考 える。<br />

1 短 期 開 発 技 術<br />

産 業 用 ロボットにとって、 位 置 決 め、 確 実 な 組 立 位 置 への 接 近 などが 最 重 要 課 題 である。これらの 技<br />

術 はすでに 長 い 歴 史 を 持 つ。しかし、センサ 利 用 を 考 慮 した 組 立 用 部 品 設 計 、 環 境 設 計 はまだ 不 十 分 で<br />

ある。<br />

DfV(Design for Vision) が 浸 透 すれば、 作 業 効 率 の 向 上 、 作 業 教 示 の 簡 易 化<br />

が 見 込 まれる。<br />

たとえば、つぎのような 例 が 考 えられる。<br />

・パレットの 周 辺 には1Dあるいは2Dバーコードを 必 ず 印 刷 する。<br />

・プラスチック 射 出 成 型 品 の 一 部 に 決 まったマークをつける。<br />

・ 環 境 は、 一 定 の 色 ( 反 射 率 の 低 い 色 )と 数 色 のカラー 認 識 の 楽 な 色 によるマークをつける。<br />

産 業 用 ロボットの 環 境 をこのような 技 術 で 支 援 した 構 築 をする。 加 えて、 人 間 にとっても 分 かりやす<br />

いようにする。また、 安 全 を 十 分 考 慮 する。<br />

2 中 ・ 長 期 開 発 技 術<br />

昨 今 のIT 化 の 急 速 な 進 展 により、 工 場 内 でロボットの 周 囲 に 配 置 されている 機 械 装 置 類 は、そのほ<br />

とんどの3 次 元 形 状 データを 入 手 することが 可 能 あるいは 近 い 将 来 に 可 能 になることが 想 定 される。ロ<br />

ボットや 手 先 のエンドエフェクタについては 既 に 入 手 可 能 である。(このように 入 手 可 能 な 情 報 はでき<br />

る 限 り 利 用 するというのが 正 しい 方 向 と 思 われるが、 現 状 ではほとんど 利 用 されていない)<br />

工 場 内 機 器 の 全 ての3 次 元 形 状 データを 入 手 できれば、これらをシミュレータ 画 面 上 でレイアウトす<br />

ることは 現 在 では 容 易 である。この 時 、ロボットあるいは 周 辺 機 器 に 搭 載 されたビジョンセンサが 捉 え<br />

た 画 像 データをシミュレートし、 実 画 像 とマッチングをとれば、 画 像 からある 機 器 を 特 定 することが 可<br />

能 となる。もちろん、 機 器 類 の 表 面 材 質 や 光 源 位 置 等 の 情 報 はあらかじめシミュレータに 入 力 しておく<br />

ことで、シミュレータの 画 像 をきわめて 実 画 像 に 近 くできることが 前 提 となる。このためには 相 当 な 計<br />

算 量 が 必 要 であるが、 昨 今 のコンピューティングコストの 大 幅 な 低 下 を 考 慮 すれば 実 現 可 能 性 が 高 いと<br />

思 われる。<br />

シミュレータ 上 では、3 次 元 形 状 データに 意 味 付 け( 例 えば、これはマシニングセンタであり、この<br />

部 分 は 主 軸 部 である 等 )を 与 えることは 容 易 である。 従 って、ロボットは、ビジョンセンサで 見 ること<br />

140


により、 単 に 円 弧 や 直 線 を 検 出 するだけでなく、 対 象 が 何 であり、 工 場 内 の 環 境 がどうなっているかを、<br />

低 レベルとはいえ、 理 解 できることになる。 環 境 が 理 解 できれば、その 中 をロボットがある 程 度 自 律 的<br />

に 動 作 することは 困 難 ではないと 思 われる。また、 同 時 にビジョンセンサ 検 出 のロバスト 性 向 上 につな<br />

がる。<br />

(2)ポカミス 防 止 のための 環 境 構 造 化<br />

1)ユーザの 選 定<br />

製 造 現 場 においては 産 業 用 ロボット 等 を 用 いた 自 動 化 が 進 んでいる。 今 後 もこの 自 動 化 が 進 展 し、 産<br />

業 用 ロボットの 適 用 領 域 が 拡 大 していくと 考 えられるが、その 一 方 、 自 動 化 が 困 難 である 領 域 について<br />

は 人 とロボットの 協 働 による 作 業 の 効 率 化 、 製 品 品 質 の 向 上 、 生 産 ラインの 柔 軟 性 の 向 上 が 進 められる<br />

と 考 えられる。<br />

そのような 生 産 ラインの 形 態 の 一 つに 人 とロボットが 協 働 するセル 生 産 システムがあげられる。 人 と<br />

ロボットが 協 働 するセル 生 産 システムにおいて 生 産 効 率 、 製 品 品 質 の 向 上 を 図 るためには、 人 の 作 業 ミ<br />

ス(ポカミス)をいかに 防 止 するかが 重 要 な 課 題 となる。ここでは 人 とロボットが 協 働 するセル 生 産 シ<br />

ステム(ロボット 支 援 セル 生 産 システム)で 作 業 を 行 う 現 場 作 業 者 をユーザとして 選 定 した。<br />

2)システム 構 成<br />

人 による 作 業 が 中 心 となっている 一 般 的 な 加 工 ・ 組 立 工 程 においては、 以 下 のような 作 業 者 のポカミ<br />

スが 代 表 的 なものであり、その 防 止 が 望 まれている。<br />

1 部 品 の 取 り 付 け 忘 れ<br />

ボルト 等 の 締 め 付 け 箇 所 の 見 落 とし、トルク 不 足 など。<br />

2 部 品 の 取 り 付 け 間 違 い<br />

形 状 、 色 合 い、 材 質 が 類 似 する 部 品 と 間 違 えて 取 り 付 ける。 部 品 を 見 分 けるポイントはわかっている<br />

ものの、 作 業 を 繰 り 返 しているうちに 取 り 違 えることがある。<br />

3 部 品 の 配 膳 ミス<br />

組 立 てに 使 用 する 部 品 郡 を 部 品 棚 からマーシャリングする 際 に 取 り 違 える。<br />

4 公 差 を 満 足 しない 部 品 の 取 り 付 け<br />

部 品 の 加 工 後 に 寸 法 検 査 をするが、 公 差 を 満 足 しない 部 品 が 後 工 程 に 送 られ、そのまま 組 立 てられて<br />

しまう。<br />

5 工 作 機 械 の 誤 操 作<br />

工 作 機 械 を 誤 操 作 してワークに 疵 をつける。<br />

6 工 具 の 取 り 違 え<br />

工 作 機 械 に 取 り 付 けるべき 工 具 を 間 違 える。あるいは、 工 具 オフセット 寸 法 の 入 力 を 間 違 える。<br />

ロボット 支 援 セル 生 産 システムにおいては、「5 工 作 機 械 の 誤 操 作 」では、「 工 作 機 械 」を「ロボッ<br />

ト」と 置 き 換 えて 考 える。また、「6 工 具 の 取 り 違 え」は、ロボット 支 援 セル 生 産 システムにおいては<br />

工 具 はツールチェンジャにて 自 動 交 換 することが 想 定 されるため、ここでは 対 象 外 とする。<br />

これらのポカミスを 環 境 の 構 造 化 によって 防 止 するためのシステム 構 成 として、 以 下 のようなものが<br />

考 えられる。( 図 2.4.3-2 参 照 )<br />

141


状 態 監 視 センサ<br />

(ビジョンな<br />

ど)<br />

ロボット 動 作 センサ<br />

(エンコーダ、 力 セ<br />

ンサなど)<br />

部 品 管 理 センサ<br />

(RFID など)<br />

ロボット<br />

部 品 棚<br />

作 業 者 動 作 検 出 セン<br />

サ<br />

(センサスーツなど)<br />

ワーク<br />

作 業 者<br />

部 品 管 理 センサ<br />

(RFID など)<br />

作 業 指 示 装 置<br />

(モニタ、スピーカ、<br />

レーザポインタなど)<br />

図 2.4.3-2 ポカミス 防 止 のための 環 境 構 造 化 システム 構 成 例<br />

1 部 品 の 取 り 付 け 忘 れ 防 止 システム<br />

作 業 者 の 動 作 やワークの 組 み 付 け 状 態 を 監 視 するビジョンセンサ、センサスーツ、 締 め 付 けトルクを<br />

送 信 する 機 能 を 持 つトルクレンチなどの 情 報 からボルトの 締 め 付 け 箇 所 の 見 落 としや 締 め 付 けトルク<br />

不 足 を 検 出 して 作 業 者 に 通 知 する。<br />

2 部 品 の 取 り 付 け 間 違 い 防 止 システム<br />

作 業 者 の 動 作 やワークの 組 み 付 け 状 態 を 監 視 するビジョンセンサ、センサスーツ、 部 品 に 付 加 された<br />

識 別 のためのICチップ、バーコード、 部 品 の 組 み 付 け 手 順 を 記 録 したデータベースなどの 情 報 から 部<br />

品 の 取 り 付 け 間 違 いを 検 出 して 作 業 者 に 通 知 する。<br />

または、 部 品 の 組 み 付 け 手 順 を 記 録 したデータベース、 部 品 に 付 加 された 識 別 のためのICチップ、バ<br />

ーコード、それらの 部 品 がどこに 配 膳 されているかを 計 測 するビジョンセンサなどの 情 報 から、つぎに<br />

取 り 付 けるべき 部 品 とその 位 置 を 識 別 してレーザ 光 などにより 作 業 者 に 指 し 示 す。<br />

3 部 品 の 配 膳 ミス 防 止 システム<br />

部 品 に 付 加 された 識 別 のためのICチップ、バーコードなどの 情 報 から 部 品 棚 から 取 り 出 して 配 膳 し<br />

た 部 品 の 種 別 を 認 識 して 部 品 の 組 み 付 け 手 順 を 記 録 したデータベースとの 比 較 によって 部 品 の 配 膳 ミ<br />

スを 検 出 して 作 業 者 に 通 知 する。<br />

4 不 適 合 部 品 の 取 り 付 け 防 止 システム<br />

寸 法 検 査 結 果 などの 部 品 個 別 情 報 を 記 録 したICチップなどを 部 品 に 付 加 することにより 部 品 のト<br />

レーサビリティを 確 保 し、 検 査 工 程 で 取 り 除 かれるべき 部 品 が 使 われていないか、 公 差 管 理 による 選 択<br />

組 み 付 けの 際 に 正 しい 部 品 が 取 り 付 けられているかなどを 確 認 して 問 題 があれば 作 業 者 に 通 知 する。ま<br />

た、トレーサビリティを 確 保 することによって、 寸 法 ( 公 差 ) 情 報 に 基 づいてロボット 動 作 を 制 御 する<br />

という 応 用 も 考 えられる。<br />

5ロボットの 誤 操 作 防 止 システム<br />

作 業 者 ・ロボットの 動 作 やワークの 組 み 付 け 状 態 を 監 視 するビジョンセンサ、センサスーツ、 部 品 の<br />

組 み 付 け 手 順 を 記 録 したデータベースなどの 情 報 から 現 在 の 組 み 付 け 状 況 を 認 識 し、 作 業 者 が 不 適 切 な<br />

ロボット 操 作 を 行 おうとした 場 合 に 操 作 を 無 効 にして 誤 操 作 であることを 作 業 者 に 通 知 する。<br />

142


3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

上 記 のシステムを 実 現 するために 必 要 な、 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 は 以 下 のとおりである。<br />

1 作 業 者 の 動 作 推 定 技 術<br />

作 業 者 がワークやロボットに 対 してどのような 動 作 をしようとしているかを 推 定 する。<br />

環 境 構 造 化 の 例 :<br />

・ビジョンセンサ、センサスーツなどによる 作 業 者 の 動 き 検 出<br />

・ICチップ、バーコードなどによる 部 品 の 識 別<br />

2 作 業 状 況 の 推 定 技 術<br />

作 業 の 状 態 が 全 体 手 順 の 中 のどこにあるか、つぎにどの 部 品 をどのように 組 み 付 けるべきかなどを 推<br />

定 する。<br />

環 境 構 造 化 の 例 :<br />

・ビジョンセンサ、トルク 出 力 機 能 付 きレンチなどによるワークの 状 態 監 視<br />

・ 作 業 手 順 のデータベース 化<br />

3 部 品 の 適 合 性 チェック 技 術<br />

取 り 付 けようとしている 部 品 は 正 しい 手 順 であるか、 部 品 間 違 いはないか、 過 去 の 品 質 検 査 において<br />

問 題 のあるものではないかなどの 適 合 性 をチェックする。<br />

環 境 構 造 化 の 例 :<br />

・ICチップなどによる 部 品 の 識 別 、 過 去 の 品 質 検 査 結 果 の 確 認<br />

・ビジョンセンサ、センサスーツなどによる 作 業 者 の 動 き 検 出<br />

・ 作 業 手 順 のデータベース 化<br />

4 作 業 指 示 技 術<br />

つぎに 行 うべき 作 業 の 指 示 を 行 う。 類 似 した 部 品 がある 場 合 はレーザ 光 などにより 対 象 部 品 を 作 業 者<br />

に 指 し 示 す。<br />

環 境 構 造 化 の 例 :<br />

・ 作 業 手 順 のデータベース 化<br />

・ 作 業 者 への 指 示 インタフェース(レーザ 光 、 音 声 など)<br />

・ICチップなどによる 部 品 の 識 別<br />

・ビジョンセンサなどによる 部 品 位 置 などの 計 測<br />

(3) 安 全 のための 作 業 者 の 動 作 計 測 ・ 予 測 とロボット 制 御<br />

1)ユーザの 選 定<br />

生 産 現 場 における 作 業 者 の 安 全 は 最 重 要 課 題 であり、 図 2.4.3-3に 示 すように、グローバルに 通<br />

用 する 国 際 安 全 規 格 の3 階 層 構 成 が 整 備 され、リスクアセスメントにより、 本 質 安 全 化 や 安 全 防 護 を 行<br />

うことが 必 須 となっている。これら 規 格 は、 約 5 年 に 一 度 、 技 術 の 進 化 を 反 映 し 改 定 されるため、 今 後<br />

は、 安 全 性 と 高 生 産 性 を 両 立 する 新 技 術 の 規 格 化 が 要 望 されている。 現 実 、 安 全 柵 の 存 在 が、 最 適 な 作<br />

業 者 の 配 置 と 作 業 分 担 を 妨 げる、といった 事 例 が 存 在 する。そこで、 作 業 者 の 行 動 を 把 握 ・ 予 測 し、そ<br />

れらリスクアセスメント 基 づいたロボットの 制 御 を 行 うことができるようになれば、 生 産 性 と 安 全 性 を<br />

より 高 い 次 元 で 両 立 できると 考 えられる。 例 えば、 人 間 に 危 険 がないと 判 断 できるときは、ロボットに<br />

生 産 性 だけを 考 慮 した 動 作 を 行 わせることも 可 能 になる。また、 人 間 の 動 作 予 測 の 情 報 を 利 用 して、 安<br />

全 性 をより 高 めることも 可 能 である。ここでは 一 般 的 な 産 業 用 ロボットのユーザを 想 定 するが、この 技<br />

143


術 の 開 発 と 低 価 格 化 が 進 めば、 中 小 企 業 やロボット 未 導 入 産 業 への 市 場 拡 大 にもつながるものと 考 えら<br />

れる。<br />

ISO: 機 械 系<br />

機 械 類 の 安 全 性 - 基 本 概 念 ,<br />

一 般 設 計 原 則 規 格<br />

(ISO 12100)<br />

リスクアセスメント 規 格<br />

(ISO 14121)<br />

ISO/IECガイド51<br />

A<br />

基 本 安 全 規 格 :<br />

全 ての 規 格 類 で 共 通 に 利 用 できる<br />

基 本 概 念 , 設 計 原 則 を 扱 う 規 格<br />

IEC: 電 気 系<br />

インタロック 規 格<br />

ガードシステム 規 格<br />

機 械 類 の 安 全 性<br />

- 制 御 システムの 安 全 関 連 部 -<br />

安 全 距 離 規 格<br />

突 然 の 起 動 防 止 規 格<br />

両 手 操 作 制 御 装 置 規 格<br />

マットセンサ 規 格<br />

階 段 類 の 規 格<br />

(ISO 14119)<br />

(ISO 14120)<br />

(ISO 13849-1)<br />

(ISO 13852)<br />

(ISO 14118)<br />

(ISO 13851)<br />

(ISO 13856)<br />

(ISO 14122)<br />

B<br />

グループ 安 全 規 格 :<br />

広 範 囲 の 機 械 類 で 利 用 できる<br />

ような 安 全 , 又 は 安 全 装 置 を 扱<br />

う 規 格<br />

C<br />

個 別 機 械 安 全 規 格 :<br />

特 定 の 機 械 に 対 する 詳 細 な 安 全 要 件 を 規 定 する 規 格<br />

電 気 設 備 安 全 規 格<br />

センサ 一 般 安 全 規 格<br />

電 気 式 / 電 子 式 /プログラマブル 電 子<br />

式 安 全 関 連 システムの 機 能 安 全 性<br />

センサ 応 用 規 格<br />

スイッチ 類 規 格<br />

EMC 規 格<br />

トランス 規 格<br />

防 爆 安 全 規 格<br />

(IEC 60204)<br />

(IEC 61496)<br />

(IEC 61508)<br />

(IEC 62046)<br />

(IEC 60947)<br />

(IEC 61000-4)<br />

(IEC 60076)<br />

(IEC 60079)<br />

製 品 例 : 工 作 機 械 , 産 業 用 ロボット, 鍛 圧 機 械 , 無 人 搬 送 車 , 輸 送 機 械 など<br />

2)システム 構 成<br />

図 2.4.3-3 国 際 安 全 規 格 の 階 層 化 構 成<br />

(A: 基 本 安 全 規 格 B:グループ 安 全 規 格 C: 個 別 機 械 安 全 規 格 )<br />

ここで、ロボット 自 身 にこれらを 行 う 知 能 を 持 たせることはあまり 現 実 的 でないので、 環 境 構 造 化 技<br />

術 を 利 用 して、 必 要 な 情 報 が 人 間 側 からロボットに 通 知 される( 言 わば、 人 間 を 構 造 化 する)しくみを<br />

考 える。<br />

作 業 者 の 行 動 は、ビジョンセンサなどを 使 って 計 測 される。 作 業 者 自 身 がセンサスーツや 小 型 のウェ<br />

アラブル 機 器 を 身 につけ、そこに 搭 載 されたセンサ 類 を 用 いる 測 位 法 も 考 えられる。 管 理 ステーション<br />

は 計 測 データを 収 集 ・ 処 理 するとともに、 計 算 負 荷 の 高 い 動 作 予 測 処 理 などを 担 当 する。また、 作 業 者<br />

の 接 近 や 異 常 を 感 知 すれば、それをロボットに 通 知 して 動 作 変 更 を 行 わせる。 作 業 者 の 動 作 履 歴 の 収 集<br />

もここで 行 う。 想 定 するシステム 構 成 の 例 を 図 2.4.3-4に 示 す。<br />

有 線 / 無 線 Network<br />

管 理 ステーション<br />

• 高 次 処 理 ( 動 作 予 測 など)<br />

• 接 近 情 報 ・ 異 常 情 報 の<br />

ロボットへの 通 知<br />

• ログ 収 集<br />

S Sensor<br />

• ビジョンセンサなど<br />

R Robot<br />

M Man<br />

ロボットコントローラ<br />

• 作 業 者 の 情 報 に 基 づく 警 告 呈 示 ・ 動 作<br />

修 正<br />

• ビジョンセンサのためのマーカ<br />

and/or<br />

• ウェアラブル 機 器 (センサ・ 無 線 通 信 機<br />

能 搭 載 )<br />

図 2.4.3-4 安 全 のための 環 境 構 造 化 に 基 づく 作 業 者 の 動 作 計 測 ・ 予 測 システム 構 成 例<br />

144


3) 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

以 下 のような 技 術 課 題 が 存 在 し、そのための 知 能 化 技 術 としてセンシング 技 術 ・センサ 情 報 処 理 技<br />

術 ・ロボット 制 御 技 術 (オンライン 動 作 計 画 )の 開 発 が 必 要 となる。<br />

1 作 業 者 の 行 動 計 測 ・ 予 測<br />

ビジョンセンサや 作 業 者 が 身 につけたセンサの 情 報 から、 作 業 者 の 現 在 位 置 や 姿 勢 を 推 定 する。さら<br />

に、 履 歴 や 付 加 的 なセンサ 情 報 ( 筋 電 など)の 利 用 により、 作 業 者 の 行 動 や 動 作 の 予 測 ( 例 えば、 人 間<br />

がロボットに 近 づこうとしているか 遠 ざかろうとしているか)ができれば、より 高 度 な 制 御 が 可 能 とな<br />

る。<br />

ここで、 作 業 者 の 情 報 に 基 づいてロボットの 動 作 を 変 えるとなると、 正 しく 作 業 者 の 情 報 が 獲 得 でき<br />

るということが 前 提 となる。 逆 に、 正 しい 情 報 を 獲 得 できていない 場 合 には、 異 常 として 検 出 できなけ<br />

ればならない。 例 えば、 作 業 者 の 動 作 が 停 止 してしまったときは、マーカやセンサが 作 業 者 の 身 体 から<br />

脱 落 してしまったと 推 定 することができる。また、 通 常 作 業 時 の 動 作 情 報 をあらかじめ 収 集 しておけば、<br />

それとの 比 較 で、 作 業 者 の 異 常 な 動 作 を 検 出 することも 可 能 である。<br />

作 業 者 の 動 作 履 歴 情 報 は、 作 業 管 理 ・ 工 程 改 善 にも 活 用 できる。<br />

2 作 業 者 の 行 動 情 報 に 基 づくロボット 制 御<br />

作 業 者 の 行 動 情 報 が 把 握 できるようになれば、それに 基 づいたロボット 制 御 技 術 が 求 められる。 安 全<br />

性 の 度 合 いに 応 じて、 動 作 速 度 を 遅 くしたり 動 作 経 路 を 変 更 したりするようにして、 安 全 性 を 高 めるこ<br />

とが 考 えられるが( 図 2.4.3-5)、そのためにはオンライン 動 作 計 画 の 技 術 が 必 要 となる。 関 節<br />

のコンプライアンスを 動 的 に 変 更 するような 制 御 技 術 も 有 効 と 考 えられる。また、 作 業 者 への 警 告 提 示<br />

も 必 要 となるであろう。<br />

3 定 量 的 なリスクアセスメント 手 法 の 確 立<br />

国 際 的 な 安 全 基 準 の 中 でこのようなアプローチが 認 められるように、 定 量 的 なリスクアセスメント 手<br />

法 の 開 発 も 同 時 に 必 要 である。<br />

• 高 速 動 作<br />

• サイクルタイム 優 先 経 路<br />

• 低 速 動 作<br />

• 安 全 優 先 経 路<br />

図 2.4.3-5 利 用 シーンのイメージ( 作 業 者 位 置 に 応 じたロボット 動 作 変 更 )<br />

145


2.4.4 産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術<br />

以 上 で 検 討 した 課 題 は、「モノ( 対 象 )」とそれに 対 する「 要 求 」という 観 点 からすでに2.4.1に<br />

おいて 整 理 した( 表 2.4.1-4).これらの 中 には、 相 互 に 共 通 する 技 術 要 素 が 含 まれており、そ<br />

れを 抽 出 すると 以 下 のようにまとめられる。<br />

1 環 境 情 報 記 述 ・ 検 索 技 術<br />

産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 の 活 用 に 当 たって、まずは 情 報 をどのように 記 述 し、 記 憶 するかとい<br />

う 点 が 問 題 となる。 求 められる 機 能 を 実 現 するために 必 要 な 環 境 情 報 の 定 義 と、それを 表 現 する 記 述 法<br />

が 課 題 となる。さらに、それを 記 憶 し、 必 要 に 応 じて 取 り 出 すための 検 索 技 術 も 必 要 となる。2.4.<br />

2(1)(2)(4)のようなコンピュータ 上 のデータベースを 利 用 する 場 合 と、2.4.2(5)のよ<br />

うに 情 報 タグを 利 用 する 場 合 、およびそれらが 併 用 される 場 合 がある。<br />

2 環 境 情 報 獲 得 技 術<br />

環 境 構 造 化 の 実 現 のためには、 環 境 情 報 を 何 らかの 手 段 で 獲 得 することが 必 要 となる。RFID に 代 表 さ<br />

れるICタグ 技 術 による 物 体 特 定 手 法 、コンピュータビジョンに 代 表 されるセンシング 技 術 が 基 本 であ<br />

るが、2.4.3(1)に 示 した Design for Vision のように、 環 境 情 報 獲 得 を 支 援 する 技 術 も 極 めて<br />

重 要 である。 産 業 用 分 野 では、 他 分 野 と 比 較 すれば 環 境 情 報 の 不 確 定 性 が 低 いので、 有 効 な 活 用 が 期 待<br />

される。<br />

3 環 境 情 報 利 用 技 術<br />

環 境 情 報 が 獲 得 ・ 記 述 され 利 用 可 能 になった、すなわち 環 境 が 構 造 化 されたとしても、それだけでは<br />

何 ら 意 味 はない。ロボットの 設 計 支 援 (2.4.2(1)(2)(3))、システムの 構 築 支 援 (2.4.<br />

2(4)、2.4.3(1))、 運 用 支 援 (2.4.2(5)(6)、2.4.3(2)(3))などで 有 効<br />

な 利 用 技 術 が 開 発 されることで、 初 めて 環 境 構 造 化 のメリットを 享 受 できる。<br />

4 規 格 化 / 標 準 化<br />

環 境 構 造 化 技 術 は、ロボットシステムを 構 成 する 多 数 の 要 素 を 対 象 とするものであり、 規 格 化 ・ 標 準<br />

化 が 行 えるかどうかによって、その 実 現 性 や 実 現 レベルが 大 きく 左 右 される。2.4.2(3)のエン<br />

ドエフェクタ 関 連 技 術 に 見 られるように、 物 理 的 (ハードウェア 的 )な 規 格 化 ・ 標 準 化 と 情 報 的 (ソフ<br />

ト 的 )な 規 格 化 ・ 標 準 化 がともに 必 要 である。また、2.4.3(3)の 安 全 技 術 のように、 単 に 技 術<br />

的 に 可 能 であるというだけでは 不 十 分 で、 法 制 度 等 との 整 合 性 が 求 められる 課 題 が 存 在 する。<br />

2.4.5 環 境 構 造 化 を 推 進 するために 開 発 すべき 技 術<br />

産 業 用 分 野 では、 環 境 構 造 化 技 術 の 利 用 ターゲット、 利 用 シナリオが 明 確 である。それゆえ、 今 回 検<br />

討 した 技 術 課 題 を 改 めて 提 案 項 目 として 示 す。<br />

1) 作 業 構 築 を 中 心 とする 環 境 構 造 化<br />

1 汎 用 つかみ 機 構 の 開 発<br />

2 掴 み 機 構 データベースの 構 築<br />

3エンドエフェクタ 制 御 動 作 環 境 の 充 実<br />

4ロボット・ 環 境 配 置 設 計<br />

5 教 示 自 動 化 のための 情 報 埋 め 込 み<br />

6 環 境 構 造 化 による 物 流 インタフェース 支 援<br />

146


2)ビジョン・センシングを 中 心 とする 環 境 構 造 化<br />

7DfVision:ビジョンセンサ 用 の 設 計<br />

8ポカミス 防 止 のための 環 境 構 造 化<br />

9 安 全 のための 作 業 者 の 動 作 計 測 ・ 予 測 とロボット 制 御<br />

147


第 3 章 環 境 構 造 化 における 標 準 化 案<br />

3.1 はじめに<br />

ここ 数 年 、IT( 情 報 技 術 )とRT(ロボット 技 術 )を 融 合 させることで 新 しい 分 野 、 応 用 を 切 り 開<br />

こうという 試 みが 様 々になされている。これは、 従 来 の 産 業 技 術 がある 種 の 飽 和 状 態 になりつつあり、<br />

IT 分 野 だけ、あるいはRT 分 野 だけからは 新 しい 製 品 、 新 しいサービスを 生 み 出 すことが 難 しくなっ<br />

ているからである。そのような 状 況 で、 組 み 合 わせ 論 的 試 行 錯 誤 の 中 から 新 製 品 、 新 市 場 の 開 拓 を 目 指<br />

すのは 自 然 な 流 れであり、これまでにもそのような 分 野 融 合 の 中 から 新 規 な 製 品 、 新 規 な 市 場 が 発 生 し<br />

てきたことは 事 実 である。<br />

環 境 の 情 報 的 構 造 化 もそのようなチャレンジの 一 つであるが、ITとRTの 融 合 の 大 きな 潮 流 が 既 に<br />

ある 中 で、 場 合 によっては 急 速 に 製 品 化 、 市 場 化 の 可 能 性 が 期 待 される。このような 技 術 分 野 において<br />

は、 予 め 標 準 化 を 想 定 しておくことは 技 術 戦 略 的 にも 経 営 戦 略 的 にも 妥 当 なものと 考 えられている。<br />

本 章 では、 環 境 の 情 報 的 構 造 化 の 標 準 化 に 関 わる 事 項 を 概 観 し、シナリオ 事 例 に 基 づいて、 部 分 的 で<br />

あるが、 標 準 化 が 想 定 される 事 項 の 整 理 を 行 う。<br />

3.2 関 連 する 標 準 化 動 向<br />

最 初 に、ロボットならびにネットワークが 関 係 する 標 準 化 の 動 向 を 概 観 しておく。これにより、 環 境<br />

の 情 報 的 構 造 化 が 関 わることが 想 定 される 対 象 のイメージがつかみやすくなるであろう。<br />

3.2.1 NRF(ネットワークロボットフォーラム)<br />

総 務 省 により 創 設 されたフォーラムで、ユビキタスネットワークとロボットの 融 合 により 新 しいサー<br />

ビスを 生 みだすことを 目 的 としている。ネットワークにロボットが 接 続 されることにより、ロボットが<br />

単 体 で 活 動 する 場 合 に 比 べ、より 多 様 で 高 度 な 機 能 やサービスが 実 現 されることを 狙 いとしている。<br />

様 々なイントラネットが 既 に 存 在 する 状 況 を 考 慮 し、ブリッジイングによるインタフェースの 標 準 化 を<br />

提 案 している。<br />

ネットワークロボットフォーラムは、ネットワークにロボットがつながることで 実 現 される 様 々なサ<br />

ービスを 目 指 し、それに 係 る 標 準 化 案 を 企 画 している。その 対 象 となるのは 実 機 を 主 体 としたビジブル<br />

ロボット、CGによる 人 間 とのインタラクションを 主 体 としたヴァーチャルロボット、 見 守 りカメラの<br />

ような 形 はロボットでなくてもロボット 的 な 機 能 に 注 目 したアンコンシャスロボット、そしてこれらの<br />

インフラとなるネットワークの4つの 分 野 である。<br />

ネットワークでは、OSIの7 層 モデルが 参 照 されることが 多 いが、このネットワークロボットが 対<br />

象 とするレイヤーは、 基 本 的 には 全 7 層 にかかわる。 上 記 にあげた 標 準 関 係 の 事 例 の 多 くは、7 層 の 中<br />

の 特 定 のレイヤーの 中 での 規 格 化 を 目 指 すものであるが、ネットワークロボットは、これらの 統 合 を 目<br />

指 すのではなく、デファクトスタンダードとなったものを 対 象 として、それらのブリッジングを 標 準 化<br />

しようという 方 法 論 である。<br />

ネットワークロボットの 応 用 がカバーするサービスは、 空 間 構 造 化 と 同 じように 住 宅 、 公 共 空 間 、 街<br />

角 などの 多 地 点 で 人 々に 対 し 協 調 ・ 連 携 した 能 力 を 補 充 し、また 生 活 や 仕 事 などで 役 に 立 つ 様 々な 情 報<br />

を 共 有 できるようにし、 複 数 の 人 々が 遠 隔 からロボットを 連 携 操 作 することなどが 想 定 されている。こ<br />

のように 極 めて 多 様 で 普 遍 的 な 機 能 を 想 定 していることから、ネットワークロボットの 標 準 化 がカバー<br />

すべき 技 術 は、 現 時 点 におけるロボットやコンピュータネットワークの 機 能 を 満 遍 なく 利 用 するものと<br />

なっている。 表 3.2.1-1に、 想 定 される 技 術 分 野 、 要 素 、 関 連 する 標 準 がまとめられている。<br />

148


表 3.2.1-1 ネットワークロボットフォーラムで 検 討 されている 技 術 分 野 と 標 準<br />

表<br />

現<br />

形<br />

操<br />

作<br />

系<br />

技 術 分 野 要 素 標 準<br />

プロファイル 記 述 ( 要 素 ) 作 動 RDF,FOAF,vCard<br />

プロファイル 記 述 (モノ) 作 動 Triple 形 式 ,JAN,ID3,EPG,MPEG7,RDF<br />

プロファイル 記 述 (ロボット) 作 動<br />

プロファイル 記 述 ( 空 間 ) 空 間 、 作 動 RDF<br />

ID 情 報 URI<br />

FDML(NTT),DL<br />

オントロジー 記 述 情 報 OWL,DAML+OIL,RDFS<br />

コマンド 記 述 作 動 UPnP,ECHO,HORB,Socket<br />

サービス 記 述 作 動 WSDL,RDF<br />

サービスフロー 記 述 遠 隔 Flipcast( 東 芝 )<br />

ルール 作 動 RuleML,SWRL<br />

クエリ 作 動 SQL ベース,UDDI,RDQL<br />

サービス 発 見 作 動 オントロジーに 基 づく 推 論<br />

サービス 連 携 作 動 、 遠 隔 前 向 き、リアクティブ<br />

サービス 起 動<br />

作 動 、 遠 隔<br />

イベント 通 知 情 報 、 遠 隔<br />

Web サービス(SAOP)、イベント 通 知 ベ<br />

ース<br />

プロファイル 検 索 作 動 SQL ベース,RDQL ベース<br />

セキュリティ・プライバシ<br />

情 報<br />

アクセス 制 御 (XACML,ポリシーベー<br />

ス)<br />

ア<br />

|<br />

キ<br />

テ<br />

ク<br />

チ<br />

ュ<br />

ア<br />

セ<br />

ン<br />

サ<br />

ネットワーク 構 成<br />

格 納 スキーム<br />

作 動<br />

情 報<br />

ホームサーバーとネットワーク 上 の<br />

サーバーを 仮 定 、 各 種 ネットワーク<br />

から 収 集 、ホームサーバーによる 集<br />

中 管 理<br />

ホームサーバーとネットワーク 上 の<br />

サーバーを 仮 定<br />

テンプレート( 静 的 、Current)<br />

ヒストリ( 動 的 、イベント 単 位 で 記<br />

録 )<br />

センシング 対 象 毎 に 存 在 空 間 GPS,GIS,RFIDタグ<br />

情 報<br />

RFIDタグ、」カメラ、 顔 認 識 、 音 声 認<br />

識 、 赤 外 線 、 超 音 波 、 環 境 センサ( 温<br />

度 等 )<br />

平 成 17 年 度 ネットワークロボットフォーラム 技 術 部 会 報 告 、II-5-3 の 表 を 元 に 作 成<br />

149


3.2.2 RTミドルウェア<br />

RTミドルウェアは 経 済 産 業 省 の21 世 紀 ロボットチャレンジプログラムの 施 策 のもと、( 独 ) 新 エ<br />

ネルギー・ 産 業 技 術 総 合 開 発 機 構 の 委 託 事 業 として、2002 年 度 から3 年 計 画 で「ロボットの 開 発<br />

基 盤 となるソフトウェア 上 の 基 盤 整 備 」の 中 核 技 術 として( 独 ) 産 業 技 術 総 合 研 究 所 により 提 案 され、<br />

現 在 も 開 発 が 進 められている、ロボットシステム 構 築 のためのソフトウェア 体 系 である。<br />

ここでいうロボットシステムとは、 必 ずしも 移 動 ロボットやヒューマノイドロボットといった 単 体 の<br />

ロボットのみを 想 定 している 訳 ではなく、「ロボット 技 術 を 活 用 した、 実 世 界 に 働 きかける 機 能 を 持 つ<br />

ネットワーク 化 された 知 能 化 システム」の 総 体 としてのロボットシステムを 指 す。 例 えばセンサ、アク<br />

チュエータを 生 活 空 間 の 中 に 分 散 配 置 させ、ネットワークを 介 して 協 調 させることで 生 活 支 援 や 介 護 を<br />

実 現 するといった、 一 見 ロボットには 見 えないがロボット 的 な 技 術 を 利 用 したシステムを 広 く 包 含 して<br />

る。 実 際 、センシング 技 術 とセンサから 得 られる 信 号 の 処 理 、 及 びアクチュエータ 等 による 現 実 世 界 へ<br />

の 働 きかけのフィードバックにより 相 互 作 用 を 行 うシステムはロボット 技 術 と 言 えることから、 日 本 ロ<br />

ボット 工 業 会 が 主 体 となり、こうしたロボット 技 術 の 総 称 を RT(Robot Technolog<br />

y) と 呼 ぶことが 提 言 されている。<br />

このようなRTの 概 念 に 基 づくロボットシステムを 構 成 する 様 々な 機 能 要 素 であるRTコンポーネン<br />

トについて、それをネットワークに 接 続 するインタフェースを 共 通 化 しておくことで、 様 々なベンダー<br />

が 供 給 するコンポーネントを 自 由 に 組 み 合 わせて 新 規 なRTシステムの 開 発 が 容 易 になるような 産 業<br />

基 盤 の 確 立 を 目 指 したのが 上 記 のプロジェクトであり、プロジェクトと 並 行 してはじめられ、 現 在 も 引<br />

き 続 き 行 われているOMGにおけるRTコンポーネントの 標 準 仕 様 提 案 活 動 である。<br />

そもそもロボットシステムは、いわゆるロボット 部 品 をハードウェアとしてはもっぱら 機 構 学 的 およ<br />

び 運 動 学 により、ソフトウェアとしては 制 御 技 術 に 基 づいたコンピュータソフトウェアによって 統 合 す<br />

ることで、 当 該 ロボットが 目 的 とする 動 作 や 仕 事 ができるように 組 み 上 げられるシステムである。この<br />

観 点 からRTミドルウェアは、 様 々なロボット 要 素 (RTコンポーネント)を 通 信 ネットワークを 介 し<br />

て 自 由 に 組 み 合 わせることで、 多 様 なロボットシステムの 構 築 を 可 能 にするため、ネットワーク 分 散 コ<br />

ンポーネント 化 技 術 による 共 通 プラットフォームを 確 立 することを 目 指 すものである。そもそも、ロボ<br />

ットシステムのソフトウェア 開 発 においては、 通 常 のソフトウェア 開 発 と 比 べて、ロボットシステム 特<br />

有 の 問 題 のためにソフトウェアの 再 利 用 性 が 低 く 開 発 効 率 が 悪 いといった 問 題 が 指 摘 されている。こう<br />

した 背 景 から、ロボット 技 術 要 素 をソフトウェアレベルでモジュール 化 し、その 再 利 用 性 を 高 めるミド<br />

ルウェアを 研 究 ・ 開 発 し 多 くのユーザに 使 ってもらい、さらには 開 発 に 参 加 してもらうことで、ロボッ<br />

トシステム 開 発 に 資 する 共 通 プラットフォームを 提 供 することを 目 的 としている。<br />

産 総 研 が 提 案 しているRTコンポーネントの 基 本 的 構 造 は、 図 3.2.2-1のようなアーキテクチ<br />

ャ・ブロックで 構 成 され、 大 きく 分 けると 以 下 の3つの 部 分 からなっている。<br />

・RTComponent:<br />

RTコンポーネントの 本 体 であり、 基 本 的 なインターフェースおよび 入 出 力 を 行 う InPort/OutPort<br />

オブジェクトを 0~n 個 以 上 持 つ。 処 理 を 行 うコアロジックを1 個 持 ち、 外 部 または 内 部 からのイベ<br />

ントに 応 じて 内 部 状 態 を 遷 移 させる。これを Activity と 呼 び、 他 とは 独 立 したスレッドに 割 り 当<br />

てられ 以 下 に 挙 げる 入 出 力 とは 独 立 に 処 理 が 行 われる。<br />

・InPort:<br />

他 のRTコンポーネントからの 出 力 を 受 け 取 りハンドリングする 入 力 ポート。データのストリーム<br />

を 受 け 取 る 必 要 があるRTコンポーネントはこの InPort を 持 つ。コアロジックは 連 続 的 に 送 られ<br />

てくるデータに 対 して 処 理 を 行 うため、 基 本 的 に 周 期 動 作 を 行 うコンポーネントのみがこの InPort<br />

を 持 つ。<br />

・OutPort:<br />

他 のRTコンポーネントへ 処 理 結 果 のデータストリームを 渡 す 出 力 ポート。 受 け 取 る 側 のコンポー<br />

ネントから 値 を 取 得 する pull 型 のデータ 出 力 と、サブスクライブすることにより 受 け 取 り 側 へ 能<br />

動 的 にデータを 送 る push 型 の 動 作 がある。<br />

RTコンポーネントの 仕 様 ではネットワーク 上 に 分 散 されたコンポーネントへの 透 過 的 アクセスを 実<br />

150


現 するために、 分 散 オブジェクト 技 術 を 用 いて 実 装 されることを 想 定 している。<br />

なお、2006 年 9 月 のアナハイムの 会 議 で 採 択 された 標 準 案 では、より 一 般 化 されたフレームワー<br />

クとなっている。<br />

図 3.2.2-1 産 総 研 が 提 案 しているロボットコンポーネントのモデル<br />

将 来 的 な 標 準 化 の 候 補 、 検 討 事 項 については、 現 在 、 下 記 の3つのWGで 議 論 が 進 められている。<br />

・ロボットインフラストラクチュアWG:<br />

広 範 なロボット 技 術 の 応 用 を 開 発 統 合 することを 支 援 する 基 盤 的 モデル、 共 通 のファシリティ、<br />

ミドルウェアの 標 準 化 を 行 う。<br />

・サービスWG:<br />

ロボットシステムにおける 機 能 的 サービスの 定 義 を 明 確 にする。ロボット 技 術 の 応 用 において<br />

共 通 的 に 利 用 されるサービスを 同 定 し、 分 類 する。 含 まれる 技 術 についても 同 様 に。これらの<br />

技 術 がロボット 応 用 開 発 につながる 界 面 の 標 準 化 を 行 う。<br />

・プロファイルWG:<br />

応 用 プロラム 開 発 の 視 点 からは、APIのスコープとモデル、 典 型 的 なデバイス、それらの 階<br />

層 、インタフェースとデータ 構 造 、デバイスプロファイル、 物 理 的 通 信 ・リソースの 視 点 から<br />

は、IEEEなどの 関 連 する 企 画 の 適 用 、I/Oポイントのタグ 付 け( 利 用 可 能 リソースの 洗<br />

い 出 し)などを 行 う。<br />

上 記 はRobot DTFの 中 のワーキンググループであるが、 環 境 構 造 化 に 関 わるトピックとして<br />

は、このほかのDTFやPTFなどのトピックも 関 わってくる 可 能 性 があり、 日 本 からも 関 連 企 業 が 積<br />

極 的 に OMG の 会 合 に 参 加 することが 望 まれる。<br />

3.2.3 その 他<br />

この 他 に、ロボットやネットワーク、 情 報 家 電 の 標 準 化 に 関 する 事 項 を 列 挙 しておく。<br />

(1)ロボット 言 語<br />

ロボットが 行 う 作 業 の 情 報 を 記 述 する 上 で 重 要 なのがロボットそのものの 動 作 やプログラムに 関 す<br />

る 記 述 手 法 である。これには 対 応 するものとしていわゆる 以 下 のようなロボット 言 語 に 関 する 標 準 があ<br />

る。<br />

・JIS B 8439-1992 産 業 用 ロボット・プログラム 言 語 SLIM<br />

・JIS B 8440-1995 産 業 用 ロボット・ 中 間 コード STROLIC<br />

151


・JIS B 3602-1995 工 業 自 動 化 システム・ 製 造 メッセージ 仕 様 ・ロボット 付 帯 規 格<br />

(2)ORiN(Open Resource interface for the Network/Open Roboto interface for the Network)<br />

デンソーとロボット 工 業 会 が 中 心 となってISOでの 標 準 化 を 進 めている、ロボット 制 御 装 置 の 間 の<br />

通 信 インタフェースである。FAラインでのロボットや 周 辺 装 置 の 状 態 をモニタし、 生 産 管 理 に 利 用 す<br />

ることが 想 定 されている。RTミドルウェアがコンポーネントレベルであるのに 対 し、ORiNは、そ<br />

のようなコンポーネントで 構 成 されたロボットシステムレベル、ロボットコントローラ 間 での 情 報 通 信<br />

を 対 象 としている。<br />

(3)RSi(Robot Service initiative)<br />

三 菱 重 工 業 、ソニー、 富 士 通 などが 中 心 となって、 既 存 のロボットを、インターネットのwwwの 情<br />

報 インタフェースとして 持 ちいるための 標 準 化 を 目 的 としている。ロボットそのものよりは、ニュース<br />

の 流 し 方 など、インターネット 上 のサービスコンテンツ 配 信 の 標 準 化 が 主 眼 となっている。 環 境 の 情 報<br />

的 構 造 化 においても、RSi 提 供 のサービスを 利 用 することが 想 定 される。<br />

(4)UBLink<br />

ホームネットワークにおける 機 器 間 の 相 互 接 続 の 主 な 規 格 として、ECHONET、KNX、CEB<br />

us、HAVi、UPnPなどがある。これらの 規 格 は 家 電 の 間 でやりとりされるメッセージのフォー<br />

マットやプラグアンドプレイなど、 比 較 的 低 レベルに 位 置 する 機 能 に 焦 点 を 絞 っている。これらの 混 在<br />

状 況 を 想 定 し、リビングを 中 心 とした 情 報 家 電 の 利 用 を 支 援 するために 情 報 家 電 ミドルウェアUBLi<br />

nkが 提 案 されている。<br />

[IPSJ Magazine Vol.48 No.1 Jan. 2007, pp.53-58]<br />

(5) 関 連 標 準 化 団 体<br />

環 境 の 情 報 的 構 造 化 は 高 度 に 複 合 的 なシステムであるので、これを 統 一 的 に 扱 う 標 準 団<br />

体 は 現 時 点 では 存 在 しないし、また、 将 来 においてもこれだけで 標 準 コンソーシアムを 設 立 することは<br />

難 しいであろう。 既 存 の 様 々な 標 準 関 連 団 体 の 動 向 を 取 り 入 れつつ、また 影 響 力 の 強 い 団 体 で 標 準 提 案<br />

を 進 めるというアプローチになるであろう。 関 連 する 主 な 国 際 標 準 団 体 としては、 例 えば 下 記 のような<br />

ものがある。<br />

・ANSI(American National Standards Institute)<br />

・EIA(Electronic Industries Alliance)<br />

・ICANN(The Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)<br />

・IEC(International Electrotechnical Commission<br />

・IEEE(Insitute of E;lectrical and Electronics Engineers)<br />

・ISO(International Organization for Standardization)<br />

・ISOC(Internet SOCiety)<br />

・ITU(Internationl Telecommunication Union)<br />

・JIS(Japanese Industrial Standards)<br />

・OMG(Object Management Group)<br />

・W3C(World Wide Web Consortium)<br />

152


3.3 シナリオ 事 例 に 基 づく 検 討<br />

3.3.1 基 本 フレームワーク<br />

標 準 化 を 進 めるためには、 当 然 ながらその 分 野 を 構 成 する 要 素 、 事 柄 について、 十 分 な 定 義 がなされ<br />

ていることが 必 要 である。 一 方 で、 環 境 の 情 報 的 構 造 化 が 関 わる 要 素 や 事 柄 は、 実 際 にはロボット 分 野<br />

だけにとどまらず、 電 子 ・ 通 信 ・ 情 報 はもちろん、 土 木 ・ 建 築 さらには 一 般 社 会 的 な 事 物 も 含 まれる。<br />

さらに、 環 境 の 情 報 的 構 造 化 はまだ 発 展 途 上 のコンセプトで、これがどこまで 何 を 含 むのかは 未 確 定 な<br />

部 分 がたくさんある。この 段 階 で 環 境 の 情 報 的 構 造 化 の 体 系 的 な 定 義 を 行 うことは 難 しい。 今 回 は 本 報<br />

告 で 集 められたシナリオ 事 例 に 共 通 するものと 個 々の 環 境 に 特 徴 的 ・ 代 表 的 な 標 準 化 要 素 についてのみ<br />

議 論 する。<br />

最 初 に 環 境 の 情 報 的 構 造 化 に 特 徴 的 な 要 素 、 事 柄 について 基 本 フレームワークの 分 析 を 行 っておく。<br />

(1) 屋 外 であれ 屋 内 であれ、ロボットが 用 いられ、 作 業 をする 空 間 を 環 境 とよぶ。<br />

(2)その 中 でロボットが 作 業 を 行 う 上 で 有 用 な 情 報 を、その 作 業 をロボットが 行 う 環 境 のその 場 所 で<br />

得 られるように 構 造 付 けしておくことを 環 境 の 情 報 的 構 造 化 と 呼 ぶ。<br />

(3)それぞれの 情 報 の 配 置 、 読 み 出 しあるいは 書 き 込 みは 電 子 的 な 道 具 と 手 段 で、また 情 報 の 記 述 は<br />

記 号 的 に 行 なわれる。<br />

(4) 情 報 を 利 用 するための 処 理 装 置 ( 多 くはコンピュータ)は、ロボット 本 体 に 搭 載 されるものもあ<br />

れば、 環 境 側 におかれるものもある。<br />

(5) 情 報 の 読 み 出 し・ 書 き 込 み 装 置 と 情 報 処 理 装 置 の 間 の 情 報 的 接 続 は、 通 例 、いわゆるコンピュー<br />

タネットワークを 利 用 して 行 なわれる。このネットワークは 物 理 的 インフラストラクチュアとして<br />

環 境 に 埋 め 込 まれることが 想 定 されるが、それにはネットワークケーブルや 無 線 LAN が 用 いられる。<br />

PLCやセンサネットワークも 有 望 なインフラである。<br />

上 記 の 中 では、(3)は 情 報 交 換 のためのインタフェースデバイス、すなわち 手 段 としての 標 準 化 、<br />

つまりロボットシステムのために 情 報 的 構 造 化 される 環 境 でどれを 利 用 するかという 観 点 での 標 準 化<br />

を 含 むであろう。デバイスそのものは 汎 用 的 な 電 子 装 置 であろうから、デバイスそのものの 作 り 方 につ<br />

いては、 現 時 点 では 標 準 化 の 直 接 的 対 象 ではないと 考 えるべきであろう。もちろん、 環 境 の 情 報 的 構 造<br />

化 の 方 法 論 が 確 立 し、そのための 専 用 デバイスを 開 発 ・ 製 品 化 することが 得 策 となった 段 階 では、デバ<br />

イスそのものの 標 準 化 もありえるのであるが、 現 時 点 ではそれを 検 討 できるほどの 状 況 にはないという<br />

判 断 である。<br />

同 様 に、(1)や(4)も 環 境 の 情 報 的 構 造 化 において 重 要 ではあるが、いわば 汎 用 品 が 主 体 で、こ<br />

のレベルではロボットのためということで 情 報 的 構 造 化 のために 特 殊 化 される 部 分 はそう 多 くないで<br />

あろう。ただ、(1)においては 物 理 的 な 構 造 化 も 含 めるとすれば、 移 動 ロボットのための 床 面 の 凹 凸 、<br />

ドアの 幅 などの 建 築 仕 様 の 整 備 も 重 要 になってくる。<br />

(2)と(5)が 環 境 の 情 報 的 構 造 化 に 関 わる 標 準 化 要 素 をたくさん 含 んでいる。<br />

まず、(2)の 中 で、ロボットが 作 業 を 行 うために 有 用 な 情 報 というのは 情 報 的 に 構 造 化 された 環 境<br />

を 効 果 的 に 利 用 するためのコンテンツであって、それらの 共 通 的 な 記 述 の 仕 方 の 部 分 と、コンテンツそ<br />

のものの 記 述 要 素 が 標 準 化 の 対 象 となるであろう。 後 者 は 後 述 するような 個 別 応 用 的 な 事 柄 の 中 での 標<br />

準 化 の 中 心 的 対 象 となるであろう。とくにロボットの 場 合 、ITと 異 なり、 実 世 界 の 物 理 的 な 作 用 を 伴<br />

う 点 が 特 徴 的 である。すなわち、ロボットによるサービスはロボット 側 だけ、ロボットの 装 置 やプログ<br />

ラムに 閉 じた 範 囲 の 情 報 だけでは 成 立 せず、ロボットが 動 き 回 る 空 間 やロボットが 操 作 する 対 象 物 体 に<br />

関 する 情 報 も 必 要 となることである。このインタラクション 性 がRTの 本 質 であり、 環 境 構 造 化 に 期 待<br />

される 部 分 でもあろう。この 場 合 、 共 通 的 な 記 述 の 仕 方 については(3)の 範 疇 にもまたがるもので、<br />

個 別 応 用 的 な 内 容 の 多 様 性 を 考 慮 する 必 要 があり、 現 時 点 では 概 念 フレームワークとしてはオントロジ<br />

ーの 方 法 論 、 具 体 的 な 記 述 形 式 としては 構 造 性 と 柔 軟 性 を 両 立 させたXMLを 共 通 的 な 手 段 とするのが<br />

妥 当 であろう。<br />

構 造 化 のやりかた 自 体 は、 基 盤 的 な 標 準 項 目 であろう。 建 物 や 道 路 などの 地 図 的 情 報 、 設 置 あるいは<br />

配 置 されている 作 業 対 象 物 の 空 間 的 な 配 置 情 報 、これらの 絶 対 的 なあるいは 相 対 的 な 記 述 の 仕 方 など 現<br />

段 階 では 全 く 未 定 である。GPSで 確 立 されている 標 準 はもちろん 重 要 であるが、 現 時 点 ではロボット<br />

153


の 作 業 に 必 要 十 分 な 精 度 は 得 られていない。 特 定 のランドマークを 原 点 とした 相 対 的 記 述 の 利 用 が 現 実<br />

的 であろう。その 場 合 はロボット 言 語 における 世 界 モデルや 最 近 ではSLAMで 提 案 されているものも<br />

考 慮 する 必 要 があろう。<br />

(5)の、 主 に 通 信 インタフェースに 関 わる 部 分 も、ほとんどは 既 存 の 体 系 を 利 用 するのでそれらの<br />

標 準 化 は、 環 境 の 情 報 的 構 造 化 と 関 係 なく 進 められるであろう。 一 方 で、 現 実 に 利 用 可 能 なインタフェ<br />

ースデバイスはRFIDタグだけでなく、 多 岐 に 渡 る。それぞれのデバイスは、 利 用 目 的 すなわちロボ<br />

ットのどのような 作 業 の 中 で 必 要 な 情 報 をやりとりするのかということに 応 じて 適 切 なものが 利 用 さ<br />

れるであろう。 環 境 の 構 造 化 の 具 体 的 な 姿 、 実 用 レベルのものが 提 案 されるようになった 段 階 で、 特 定<br />

のデバイスの 使 用 を 標 準 として 提 案 できるようになると 考 えられる。<br />

3.3.2 公 共 空 間 で 想 定 される 標 準 化 要 素<br />

公 共 空 間 は、 空 間 の 各 場 所 が 持 つ 機 能 が 比 較 的 明 確 であろう。 空 間 の 整 備 もしやすいと 考 えられる。<br />

さらに、 公 共 事 業 によるものが 多 く、 全 国 で 類 似 のスペックを 共 通 的 に 導 入 することが 比 較 的 容 易 と 考<br />

えられ、これらでの 実 装 事 例 からデファクトスタンダート 的 なものをそろえていくことは 十 分 に 考 えら<br />

れよう。<br />

例 えば 図 書 館 であれば、 扱 う 対 象 も 書 籍 とその 類 似 物 に 限 定 可 能 なので、 空 間 構 造 化 のベーシックな<br />

標 準 化 の 初 期 モデルとして 可 能 性 がある。 通 路 、 書 架 、 閲 覧 室 といった 機 能 の 異 なった 部 分 空 間 があっ<br />

て、それぞれの 空 間 でロボットの 振 る 舞 いが 異 なり、 空 間 とリンクした 知 識 記 述 の 適 度 な 大 きさの 事 例<br />

であろう。 移 動 ロボット 的 なもの 以 外 にも 監 視 カメラやタグリーダーなど、 機 能 の 明 確 なRT 要 素 の 導<br />

入 が 容 易 に 想 定 され、デバイスレベルでの 標 準 化 のモデル 検 討 にも 適 するものがある。<br />

商 業 空 間 については、 図 書 館 のモデルよりは 細 かな 部 分 が 多 く、 標 準 モデルを 合 意 的 にまとめる 手 間<br />

は 多 いであろう。 一 方 で、 民 間 主 導 の 新 奇 なデザインやアイデアの 導 入 が 可 能 であり、 実 際 の 開 発 資 金<br />

を 伴 った、ロボット 導 入 向 けのトップダウンな 環 境 構 造 化 が 実 装 される 可 能 性 もあり、デファクトスタ<br />

ンダートよりは 提 案 主 導 の 標 準 戦 略 も 可 能 と 考 えられる。ただし、 実 装 内 容 については 本 報 告 書 のシナ<br />

リオ 以 外 にも 様 々に 考 えられ、ここで 推 測 することは 困 難 である。<br />

3.3.3 住 宅 環 境 で 想 定 される 標 準 化 要 素<br />

まず 家 屋 の 全 体 そのものが 環 境 である。 構 造 化 のベースとして、 家 屋 の 図 面 的 情 報 がある。その 表 現<br />

方 法 の 標 準 化 は 必 要 である。 家 屋 内 の 任 意 の 場 所 でロボットに 位 置 情 報 を 提 供 する 必 要 があるとすると、<br />

その 手 段 、 情 報 内 容 、 表 現 方 法 も 標 準 化 しておく 必 要 がある。<br />

家 屋 の 資 材 自 体 に 構 造 情 報 をもたせることも 可 能 である。 例 えば 壁 のパネルにRFIDタグのような<br />

ものを 組 み 込 み、 家 屋 全 体 でのロケーション 管 理 、ロボットへの 情 報 伝 達 に 利 用 することが 可 能 である。<br />

資 材 に 応 じた 様 々なRT 要 素 が 組 み 込 まれることも 想 定 され、それらとロボットの 連 携 方 法 に 関 わる<br />

事 項 の 標 準 化 もある。 組 み 込 まれるRT 要 素 として、センサであれば、 開 閉 センサ、 施 錠 センサ、 生 体<br />

認 証 センサなど、アクチュエータであれば 電 機 錠 、 自 動 ドア、 電 動 カーテン、 電 動 窓 など 様 々なものが<br />

あろう。これらのセンサがロボットに 情 報 を 提 供 し、あるいはロボットからの 信 号 で 作 動 することが 想<br />

定 され、その 場 合 に、それぞれのRT 要 素 としての 仕 様 の 記 述 、ロボットとのデータの 授 受 の 形 式 ・ 手<br />

順 などが 標 準 化 の 対 象 であろう。また、 情 報 家 電 を 含 めた 家 電 系 の 標 準 化 を 十 分 に 配 慮 しておく 必 要 も<br />

あろう。<br />

住 宅 内 に 設 置 される 様 々な 家 具 についても 同 様 の 事 項 が 想 定 される。<br />

3.3.4 作 業 現 場 で 想 定 される 標 準 化 要 素<br />

作 業 現 場 という 環 境 の 一 番 の 特 徴 は、 環 境 の 状 況 が 時 間 とともにどんどん 変 化 することであろう。ま<br />

た、 災 害 現 場 などのように、 通 路 や 壁 など、 他 の 環 境 ではデフォールトでベースとできるような 構 造 物<br />

が 全 く 無 い 環 境 もある。このような 環 境 でどのような 情 報 がもとめられ、どのように 蓄 積 されていくの<br />

か、 図 2.3.5-2の 大 都 市 大 震 災 の 人 命 救 助 における RT システム 活 用 と 環 境 構 造 化 の 図 にまとめ<br />

られている。これらの 状 況 に 対 応 するための 情 報 インフラおよび 情 報 可 変 的 な 記 述 手 段 がこの 作 業 現 場<br />

に 固 有 で 基 本 的 な 標 準 化 対 象 の 項 目 であろう。<br />

環 境 に 物 理 的 に 付 随 したものではなく、ロボットともリンクはしないが、 災 害 時 の 避 難 誘 導 のような<br />

154


ものも、 例 えば 地 下 街 やショッピングモールのような 環 境 が 持 つことが 好 ましい 構 造 的 情 報 に 加 えてよ<br />

いであろう。<br />

農 業 環 境 については、 災 害 のような 極 端 な 可 変 性 はないが、 環 境 の 構 造 化 に 必 要 なインフラがデフォ<br />

ールトでは 備 えられていない 点 では 類 似 性 がある。 設 置 や 構 築 に 手 間 のかかる 情 報 インフラのハードウ<br />

ェアを 導 入 することは 困 難 であるので、 簡 易 に 設 置 可 能 、あるいはポータブルな 情 報 機 器 設 備 を 利 用 す<br />

ることが 想 定 される。これらが、 共 通 性 のあるものとして 標 準 化 の 候 補 となろう。 個 々の 作 物 レベルで<br />

の 情 報 化 およびその 標 準 化 も 市 場 規 模 によっては 標 準 化 の 対 象 となることも 考 えられよう。<br />

3.3.5 製 造 現 場 で 想 定 される 標 準 化 要 素<br />

本 報 告 書 では 産 業 用 ロボットを 含 む 作 業 環 境 の 構 造 化 が 議 論 されている。 製 造 現 場 は 環 境 としては 今<br />

回 の 検 討 対 象 の 中 では 最 も 整 備 されており、「 環 境 を 構 造 化 することで、 環 境 を 理 解 容 易 にすること。<br />

最 終 的 には、 環 境 をインフラストラクチャとして、 深 い 知 識 なしに 利 用 可 能 とすること」という 環 境 構<br />

造 化 の 定 義 が 可 能 な 世 界 である。 環 境 を 構 成 する 要 素 として、 表 2.4.1-1に 具 体 的 な5 項 目 が 示<br />

されている。この 中 で 人 間 (Man)そのものの 標 準 化 は 難 しいが、 作 業 の 仕 方 を 対 象 とすればこれも 標<br />

準 化 の 対 象 となりうるものであろう。 産 業 のための 環 境 なので、 挙 げられている5 項 目 のいずれも、 産<br />

業 界 の 意 志 があれば 標 準 化 が 可 能 であろう。<br />

具 体 的 な 検 討 提 案 として、つかみ 機 構 データベース、ビジョンセンサ 用 設 計 に 基 づく 部 品 ・ 環 境 設 計 、<br />

作 業 者 の 動 作 情 報 のリアルタイム 計 測 ・ 予 測 とその 安 全 への 応 用 が 挙 げられている。<br />

155


4. 調 査 研 究 の 成 果 (まとめ)<br />

4.1 調 査 研 究 で 注 目 した 分 野 と 技 術<br />

ロボット 産 業 を 製 造 業 中 心 から、 日 常 生 活 支 援 、 福 祉 、 公 共 サービスなど 非 製 造 業 分 野 へと 展 開 し、<br />

いわゆる 次 世 代 ロボットを 新 たなロボット 産 業 を 創 成 することは、 経 済 産 業 省 の 新 産 業 創 造 戦 略 や 総 合<br />

科 学 技 術 会 議 第 3 次 科 学 技 術 基 本 計 画 などの 重 点 課 題 にも 取 り 上 げられるなど、 国 の 重 要 施 策 の 一 つと<br />

なっている。ここで、 高 い 技 術 レベルを 持 つわが 国 の 産 業 用 ロボットに 対 しても、 無 論 、 今 後 その 重 要<br />

性 は 変 化 することはなく、その 技 術 力 を 維 持 ・ 発 展 させるための 努 力 がまた 同 時 に 求 められている。<br />

こうした 状 況 下 で、 本 報 告 書 は、 次 世 代 ロボットの 新 たな 応 用 展 開 を 図 るために、 取 るべきロボット<br />

技 術 開 発 の 方 向 を、 生 活 分 野 を 中 心 に、 公 共 分 野 、 住 宅 分 野 、 作 業 現 場 分 野 、 産 業 分 野 を 対 象 に 示 した<br />

ものである。<br />

この 報 告 書 で 注 目 した 技 術 は、ロボットが 行 動 する 環 境 を 情 報 的 に 構 造 化 する 技 術 である。<br />

産 業 用 ロボットは、 製 造 業 の 広 範 の 分 野 で 作 業 の 自 動 化 ・ 省 力 化 に 導 入 され 生 産 性 の 向 上 に 貢 献 して<br />

いる。こうした 状 況 の 背 景 には 産 業 用 ロボットそのものの 性 能 向 上 も 多 大 に 貢 献 しているが、それだけ<br />

ではない。 産 業 用 ロボットが 使 われる 環 境 は、 機 能 の 限 られた 産 業 用 ロボットでも 機 能 が 発 揮 できるよ<br />

うに、ロボットの 周 りの 環 境 をロボットが 作 業 しやすいように 整 える 努 力 がなされている。 例 えば、コ<br />

ンベア 上 に 決 まった 位 置 に、 決 まった 時 間 に 決 まった 部 品 を 供 給 したり、また、そのための 専 用 のパー<br />

ツフィーダを 設 計 するなどの 工 夫 である。 生 産 技 術 者 のこうした 努 力 が、 日 本 の 産 業 用 ロボットの 稼 動<br />

実 績 を 世 界 一 にしたともいえる。<br />

われわれはこのように、ロボットの 環 境 を 機 能 の 限 られたロボットでもその 性 能 を 発 揮 しやすいよう<br />

に 整 えることを、 環 境 をロボット 向 きに 構 造 化 するあるいは 単 に 環 境 を 構 造 化 すると 呼 ぶ。 今 後 どんな<br />

高 性 能 なロボットが 出 現 するとしても、 鉄 腕 アトムのような 万 能 ロボットで 無 い 限 り、ロボットが 性 能<br />

を 発 揮 するには、 環 境 をロボット 向 きに 構 造 化 することは 不 可 欠 である。まして、 人 が 活 動 する 日 常 生<br />

活 空 間 で 使 われる 日 常 生 活 支 援 ロボットの 場 合 は、その 環 境 の 複 雑 さ、 想 定 される 作 業 の 複 雑 さを 考 え<br />

ると、なおさら 何 らかの 手 段 で 環 境 をロボット 向 きに「 整 える」ことは 避 けて 通 れない 問 題 である。この<br />

ことは、 環 境 にGPSが 装 備 され、 自 動 車 のナビゲーション 技 術 が 普 及 したことからもあきらかである。<br />

しかし、 環 境 をロボット 側 から 勝 手 に 変 更 できない 日 常 生 活 空 間 の 構 造 化 は、 産 業 用 ロボットとは 異<br />

なるアプローチが 必 要 である。 人 が 生 活 している 環 境 であるから 工 場 のように 自 動 化 のニーズに 応 じて<br />

勝 手 にレイアウトや 環 境 の 構 造 を 変 えることはできない。<br />

そこで、 採 用 される 方 法 が、「 情 報 」を 手 段 に 環 境 を 構 造 化 することである。<br />

ロボットが 環 境 で 行 動 するためには、 例 えば、ロボットが 環 境 のどこにいるかの 位 置 情 報 が 必 要 であ<br />

る。ロボット 単 独 での 位 置 を 計 測 する 方 法 は、デッドレコニングなど、 種 々の 方 法 が 開 発 されているが、<br />

正 確 な 位 置 計 測 法 は 今 のところない。こうした 中 で、 有 力 な 方 法 は 先 にも 自 動 車 でも 触 れた、GPSを<br />

用 いる 方 法 である。この 方 法 は 環 境 側 にGPSを 装 備 し、 環 境 の 中 で 行 動 する 物 体 との 情 報 交 換 で 計 測<br />

機 能 を 発 揮 する。このように、ロボットだけに 細 工 をするだけでなく、 環 境 にもロボットの 行 動 を 支 援<br />

する 細 工 を 加 え、ロボットの 性 能 を 高 める 際 の、 環 境 側 に 細 工 を 加 えることを 環 境 の「 情 報 構 造 化 」と<br />

この 報 告 書 では 呼 んでいる。<br />

近 年 のユビキタスコンピュータ、ネットワーク 技 術 、 分 散 オブジェクトプログラミング 技 術 の 進 展 は、<br />

ITベースの 情 報 構 造 化 を 可 能 にしつつある。<br />

近 年 のわれわれの 住 む 環 境 には、ネットワークで 接 続 されたコンピュータや、RFIDタグが 埋 め 込<br />

まれ、それを 介 してわれわれは 様 々なサービスを 受 けることができる。<br />

環 境 のITインフラとロボットの 間 にもこうした 状 況 を 作 り 出 せば、ロボットに 新 しい 機 能 を 付 加 す<br />

ることができる。<br />

今 後 の、ロボットは 図 4-1に 示 すような 昔 のようなロボットの 中 に 置 かれたコンピュータのみによ<br />

って 制 御 される 機 械 ではない。<br />

156


セン<br />

コン<br />

ピュータ<br />

ロボット<br />

図 4-1 従 来 のロボットシステム<br />

図 4-2に 示 すように 環 境 に 分 散 されたコンピュータとネットワークでつながり、 環 境 からのコンピ<br />

ュータの 情 報 的 支 援 を 受 けて 機 能 を 発 揮 するようになる。ロボットに 付 加 すべき 知 識 も、どのコンピュ<br />

ータに 入 れるかが 課 題 であり、こうした 知 識 記 述 のバリエーションは、ロボットの 知 能 化 に 新 たな 手 段<br />

を 提 供 するものと 考 えられる。<br />

われわれは、 図 4-2のロボットの 周 りの 部 分 ( 図 4-3 参 照 )を 環 境 とよび、そこにコンピュータ<br />

やGPSを 装 備 し、 様 々な 知 識 を 格 納 して 様 々な 支 援 をネットワーク 経 由 でロボットに 与 えるものを、<br />

情 報 構 造 化 された 環 境 と 呼 んでいる。<br />

こうした 情 報 構 造 化 環 境 は、われわれの 生 活 空 間 に 将 来 はどのような 環 境 下 でも 共 通 なものが 一 つ 用<br />

意 されるのが 理 想 であるが、 技 術 的 にそれは 現 時 点 では 困 難 なため、この 報 告 書 では、 社 会 的 に 応 用 分<br />

野 の 広 い、 公 共 空 間 、 居 住 空 間 、 屋 外 空 間 、それに 産 業 現 場 にわけて、ロボットを 支 援 する 情 報 構 造 空<br />

間 を 設 計 し、その 中 でのロボットが 発 揮 するサービスを 論 じている。<br />

ユビキタスコンピュータ<br />

通 信 ネットワーク<br />

センサ<br />

ICタグ<br />

コン<br />

ピュータ<br />

ロボット<br />

GPS<br />

( 情 報 構 造 化 環 境 )<br />

図 4-2 情 報 構 造 化 環 境 とロボット<br />

ユビキタス<br />

コンピュータ<br />

ICタグ<br />

通 信<br />

ネットワーク<br />

ICタグ<br />

ICタグ<br />

ICタグ<br />

( 情 報 構 造 化 環 境 )<br />

GPS<br />

図 4-3 情 報 構 造 化 環 境<br />

157


4.2 シナリオベースによる 開 発 技 術 の 明 確 化<br />

本 報 告 書 は 環 境 の 情 報 構 造 化 ということを 新 技 術 に、 新 たなロボット 技 術 の 展 開 を 調 査 したことが 一<br />

つの 大 きな 特 徴 であるが、もう 一 つの 特 徴 としてシナリオベースで 開 発 すべき 技 術 の 姿 を 記 述 したこと<br />

である。<br />

ロボット 技 術 の 常 として、 得 意 技 術 のみを 強 調 し、その 効 果 をデモし 宣 伝 する 傾 向 が 見 受 けられる。<br />

例 えば 最 近 話 題 のパワースーツ 技 術 を 例 に 取 れば、その 装 着 、 調 整 に 一 般 に2,3 時 間 、 場 合 によって<br />

はもっと 時 間 を 要 するのが 一 般 的 である。しかし、 人 にデモをするときは 装 着 された 状 態 で 重 いものを<br />

持 ちあげる 場 面 だけを 見 せる。こうしたデモがマスコミなどでは 話 題 になっているが、 実 用 を 考 えると、<br />

こうしたシステムは、 着 用 、 調 整 時 点 からの 使 い 勝 手 を 考 慮 しなければならないはずである。 例 えば、<br />

看 護 士 がベッドから 人 を 抱 き 上 げ、 車 椅 子 に 委 譲 させる 際 にこうしたシステムを 使 う 場 合 、それを2、<br />

3 分 で 行 うとすれば、その 装 着 に2 時 間 も3 時 間 もかかるシステムは 非 実 用 的 である。また、 限 られた<br />

病 室 の 並 ぶベッドの 間 で 使 うにはガサバるシステムも 実 用 的 でない。<br />

ロボット 技 術 は、 何 らかの 原 理 を 実 証 するという 学 問 の 性 格 上 、こうした 確 認 すべき 原 理 の 部 分 だけ<br />

を、 強 調 してデモする 傾 向 があり、それが 一 般 のユーザにロボット 技 術 の 効 用 に 対 する 誤 解 を 与 えるこ<br />

とがある。<br />

この 弊 害 を 取 り 除 くために、 本 報 告 書 では、ユーザが 技 術 を 使 う 姿 を 詳 細 に 記 述 すること(シナリオ)<br />

を 介 して、 開 発 すべき 技 術 課 題 を 明 らかにすることを 試 みた。すなわち 具 体 的 なユーザを 想 定 し、その<br />

ユーザがどのようなタイミングで、 生 活 の 流 れの 中 でどのように 技 術 を 使 うかを 詳 細 に 記 述 することを<br />

通 して、 開 発 すべき 技 術 を 明 らかにすることを 試 みている<br />

これによって、 実 際 に 使 えるロボットの 技 術 開 発 が 推 進 されることを 期 待 している。<br />

4.3 公 共 空 間 環 境 構 造 化 分 野<br />

公 共 空 間 にロボット 技 術 を 導 入 し、サービスを 提 供 する 際 の 最 大 の 特 徴 は、 多 様 な 人 がその 空 間 に 出<br />

入 りし、そこで 多 様 なサービス 提 供 が 求 められるということある。この 多 様 性 に 対 応 可 能 なRTサービ<br />

スシステムを 導 入 するには、<br />

1 人 の 属 性 や 行 動 、 特 性 などを 検 出 ・ 認 識 できること<br />

2 人 と 柔 軟 にかつ 安 全 に 接 することができること<br />

3 人 の 要 望 に 応 じて 適 応 的 に 行 動 し、サービスが 提 供 できること<br />

4 導 入 によって 付 加 価 値 の 増 大 、あるいは 効 率 化 ・ 省 人 化 といったメリットが 見 込 めること<br />

などの 条 件 を 満 たす 必 要 がある。すなわちこれらは、「 人 と 共 存 し、 人 ( 利 用 者 および 導 入 者 )の 多 様<br />

な 要 望 に 応 えることができるサービスロボットの 要 求 仕 様 」と 言 える。<br />

しかし、これらのいずれの 要 求 仕 様 を 見 ても、 個 々のサービスを 提 供 する 実 用 化 ロボットを 実 現 しよ<br />

うとすると、 機 能 性 ・ロバスト 性 ・ 安 全 性 ・コストのいずれの 面 からも、ロボットを 構 成 する 要 素 技 術<br />

の 知 能 化 、ロボット 単 体 の 知 能 化 のみでは 困 難 であり、 必 要 となる 知 識 や 情 報 、あるいは 情 報 処 理 機 構<br />

( 知 能 )を 分 散 化 させ、それを 環 境 内 にも 配 置 し、 構 造 化 された 環 境 とロボットを 動 的 に 協 調 させて 動<br />

作 させる 必 要 がある。<br />

すなわち、 実 用 化 サービスロボットを 実 現 するには、ロボット 本 体 やそれを 構 成 する 要 素 技 術 のモジ<br />

ュール 化 ・ 知 能 化 だけでなく、 知 能 化 されたモジュールを 分 散 化 ・ 外 部 化 (ロボットの 外 部 、すなわち<br />

環 境 に 分 散 して 配 置 )し、ロボットとその 環 境 とを 状 況 に 応 じて 動 的 に 組 織 化 させることが 不 可 欠 であ<br />

る。これをここでは、 環 境 構 造 化 と 呼 び、 構 造 化 された 環 境 を 含 む 知 能 化 を 考 える。<br />

なお、ここで 環 境 とは、 床 や 壁 や 障 害 物 といった、いわゆるロボットが 動 作 する 空 間 のみならず、ロ<br />

ボットがハンドリングする 対 象 物 や、ロボットが 接 する 人 なども 広 く 含 める。<br />

一 言 で 公 共 空 間 と 言 っても、 場 所 によって、そこで 求 められるサービスも 異 なるし、RTを 導 入 する<br />

者 のニーズも 異 なる。そこで、 公 共 空 間 を(1) 駅 ・ 空 港 、(2) 図 書 館 ・ 美 術 館 ・ 科 学 館 、(3) 商<br />

業 空 間 、(4) 官 庁 ・オフィスに 分 類 し、それぞれの 空 間 において、ロボットの 利 用 者 (サービスを 享<br />

受 する 人 )だけでなく、 導 入 者 からみたニーズを 正 確 に 把 握 するために、 以 下 のような 具 体 的 なシナリ<br />

158


オを 設 定 し、その 中 でのRTの 活 用 という 観 点 から、ニーズをまとめ、 取 り 組 むべき 環 境 構 造 化 、 知 能<br />

化 技 術 開 発 項 目 を 明 らかにした。<br />

(1) 駅 ・ 空 港<br />

・ 駅 ( 旅 行 に 出 かける 高 齢 者 夫 婦 )<br />

・ 空 港 ( 外 国 人 ツーリスト)<br />

(2) 図 書 館 ・ 美 術 館 ・ 科 学 館<br />

・ 科 学 館 (バックヤードスタッフ, 案 内 ・ 受 付 スタッフ, 施 設 利 用 者 )<br />

・ 美 術 館 ・ 博 物 館 (スタッフ, 美 術 学 芸 員 , 利 用 者 )<br />

・ 図 書 館 ( 図 書 館 司 書 , 図 書 館 職 員 )<br />

(3) 商 業 空 間<br />

・ 商 業 空 間 ( 大 型 商 業 施 設 の 来 場 者 ( 買 い 物 客 ))<br />

・ 商 業 空 間 ( 都 市 部 再 開 発 のデベロッパー)<br />

(4)オフィス・ 官 庁<br />

・ 官 庁 ( 市 民 利 用 者 )<br />

・オフィス(オフィスビル 従 業 員 及 び 外 部 訪 問 者 )<br />

以 上 の 公 共 空 間 におけるシナリオにおいて、 公 共 空 間 におけるRTの 導 入 、RTによるサービスの 提<br />

供 を 考 えた 場 合 、 人 の 行 動 や 問 合 せを 認 識 しての 情 報 提 示 や 案 内 ・ 誘 導 、 人 や 荷 物 の 運 搬 ・ 操 作 、シス<br />

テム 運 用 における 安 全 管 理 などに 関 わる 数 多 くの 様 々なニーズがあることが 明 らかになった。 特 に、 公<br />

共 空 間 という 場 の 特 性 から、 多 種 多 様 な 人 やモノを 対 象 とした、 行 動 や 言 語 への 対 応 、 屋 内 ・ 外 空 間 で<br />

の 広 範 囲 にわたる 移 動 、 認 識 とマニピュレーション、また、それらサービスの 運 用 と 利 用 における 安 全<br />

性 の 確 保 などが 求 められる。<br />

従 って、それぞれのニーズや 環 境 条 件 に 応 じて、 具 体 的 にどのような 環 境 構 造 化 を 行 うべきかが 異 な<br />

ってくるものの、 基 本 的 にはロボット 単 体 の 知 能 化 や、それを 構 成 する 要 素 の 知 能 化 だけでは 実 用 化 シ<br />

ステムを 構 成 することが 困 難 であることがより 明 確 となった。<br />

各 公 共 空 間 における 環 境 構 造 化 による 知 能 化 技 術 をまとめると、 公 共 空 間 における 多 様 なニーズに 応<br />

える 実 用 化 システムを 構 成 するためには, 次 の 技 術 が 必 要 となる。<br />

(1) 環 境 側 からの 計 測 ・ 自 動 化 技 術<br />

環 境 側 に 分 散 配 置 したセンサやアクチュエータ 等 による、 人 ( 集 団 / 個 人 )の 行 動 計 測 および 認 識 、<br />

地 図 情 報 の 作 成 と 提 示 、サービスロボット 等 の 位 置 検 出 、 施 設 内 の 設 備 および 情 報 の 運 用 管 理 の 自 動 化<br />

など<br />

(2)サービスロボット 開 発 および 知 能 化 技 術<br />

公 共 空 間 の 多 様 な 利 用 者 へのインタラクティブインタフェースおよび 情 報 端 末 としてのロボットの<br />

開 発 技 術 、 音 声 認 識 ・ 合 成 ・ 多 言 語 対 応 対 話 技 術 、 案 内 ・ 誘 導 ・ 搬 送 等 のための 自 動 経 路 生 成 や 障 害 物<br />

回 避 を 含 むナビゲーション 技 術 とマニピュレーション 技 術 、 長 時 間 稼 動 のための 高 出 力 バッテリや 自 動<br />

急 速 充 電 技 術 、 公 共 空 間 内 に 配 備 される 種 々の 機 能 を 持 つ 多 数 のロボットを 対 象 とした 群 制 御 技 術 など<br />

(3) 情 報 共 有 ・ 相 互 利 用 技 術<br />

広 域 / 局 所 ネットワーク、 有 線 / 無 線 ネットワーク、センサネットワーク、ICタグ 等 の 情 報 通 信 ネ<br />

ットワークおよびデバイスのシームレスな 接 続 による、 環 境 、ロボット、および、 利 用 者 も 含 めた 公 共<br />

空 間 内 情 報 の 相 互 利 活 用 ( 情 報 収 集 、 提 供 、それらを 利 用 したサービスコンテンツの 開 発 など)<br />

これらを 実 現 するためには、カメラ、レンジセンサ、GPS、 屋 内 GPS、RFID 等 のICタグ、<br />

その 他 様 々なセンサシステム、センサノードとセンサネットワーク、 有 線 / 無 線 のネットワークなどを<br />

環 境 に 設 置 することによって 構 造 化 する 必 要 がある。それにより、 知 識 を 知 能 モジュールに 分 散 化 し、<br />

状 況 に 応 じて 知 能 化 された 環 境 とロボットとを 動 的 に 組 織 化 して 適 応 的 に 動 作 することを 可 能 にする<br />

159


技 術 開 発 が 必 要 となる。<br />

また、 人 とロボットとを 共 存 させるための 知 能 化 技 術 開 発 が 本 質 的 となる。これにおいても、サービ<br />

スRTの 実 用 化 を 考 えると、ロバスト 性 、 安 全 性 、 適 応 性 、コストの 観 点 から、 知 能 化 された 環 境 が 人<br />

の 属 性 や 行 動 を 把 握 し、それに 基 づきロボットを 動 作 させたり、ロボットが 人 を 認 識 して、 知 能 化 され<br />

た 環 境 が 情 報 を 提 示 することを 可 能 にする 必 要 がある。<br />

以 上 述 べた 具 体 的 なシナリオに 基 づくニーズの 分 析 、サービスシステムの 構 成 、および、その 実 現 に<br />

必 要 となる 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技 術 を 検 討 した 結 果 、 公 共 空 間 における 実 用 化 サービスRTの 導 入 を 図<br />

るには、 主 に 以 下 の 要 素 技 術 を 開 発 する 必 要 があることが 明 らかになった。<br />

・ 安 価 な 屋 内 GPS 等 の 開 発 と,それによる 移 動 体 ( 人 ・ロボットなど)の 位 置 計 測 技 術 な<br />

ど<br />

・ 屋 外 での 地 図 情 報 作 成 ・ 提 供 とGPSとの 連 携 システムなど<br />

・ 屋 内 外 を 含 む 移 動 環 境 における 地 図 情 報 ネットワークなど<br />

・RFIDやセンサネットワーク( 視 覚 機 能 を 内 蔵 したものを 含 む) 等 による 人 の 認 証 、<br />

認 識 、 行 動 計 測 、 行 動 認 識 、モノの 認 識 など<br />

・ 音 声 認 識 ・ 発 話 、 多 言 語 翻 訳 など<br />

・ 可 動 プロジェクタ 等 を 用 いた 動 的 な 情 報 提 示 技 術 など<br />

個 々の 技 術 については 既 に 研 究 が 行 われているものもあるが、いずれも 単 体 の 要 素 技 術 開 発 だけでは<br />

実 用 化 システムの 開 発 は 困 難 であり、 上 記 を 含 む 関 連 要 素 技 術 に 基 づいて 実 現 される 知 能 モジュールを<br />

環 境 中 に 分 散 配 置 し、 相 互 利 用 を 可 能 とするネットワーク 化 、システム 化 を 行 うことで 環 境 構 造 化 を 実<br />

現 する 必 要 がある。さらに、それらに 連 携 させることで、 以 下 の 知 能 化 技 術 開 発 を 行 う。<br />

・ 移 動 技 術<br />

人 のいる 環 境 で、 安 全 に 移 動 、 搬 送 する 技 術<br />

・ 情 報 の 収 集 ・ 提 示 と、それを 利 用 したコミュニケーション 技 術<br />

人 やロボットのサービスに 必 要 な 公 共 空 間 内 の 情 報 を 適 切 に 収 集 し、 提 供 する 技 術<br />

・マニピュレーション 技 術<br />

多 様 なモノのハンドリング 技 術<br />

・ 安 全 管 理 技 術<br />

公 共 空 間 内 のサービスにおいて、 利 用 者 、システムとも 安 全 ・ 安 心 に 利 用 、 運 用 するための 技 術<br />

また、これらの 技 術 開 発 に 加 え、RTを 公 共 空 間 に 導 入 し、 積 極 的 に 実 証 実 験 を 行 うための 社 会 環 境<br />

の 整 備 も 必 要 不 可 欠 である。<br />

以 上 の 技 術 開 発 および 社 会 環 境 の 整 備 により 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技 術 が 推 進 され、 公 共 空 間 における<br />

人 の 案 内 、 人 の 搬 送 、 情 報 提 示 、モノの 搬 送 をはじめとする 様 々なサービスを、RTの 導 入 によってロ<br />

バストに 提 供 することが 可 能 になると 考 える。<br />

4.4 住 宅 環 境 構 造 化 分 野<br />

本 分 野 では、 以 下 の 視 点 で、2つの 状 況 を 設 定 し、 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 技 術 を 検 討 した。<br />

(1) 高 齢 者 支 援 (エイジフリーな 生 活 空 間 )<br />

21 世 紀 ビジョンで 謳 われている、「 健 康 長 寿 80 歳 」を 支 援 する 自 立 環 境 を 提 供 でき、 主 体 的 に 生 き<br />

るためのRT 支 援 環 境 、すなわちエイジフリーな 生 活 空 間 インフラを 構 築 する 必 要 がある。<br />

(2) 女 性 の 社 会 進 出 支 援 (ジェンダーフリーな 生 活 空 間 インフラ)<br />

少 子 化 と 女 性 の 自 立 により、 現 在 でも 欧 米 のように 女 性 の 積 極 的 な 社 会 進 出 が 期 待 されている。 社 会<br />

をともに 支 える 立 場 からは、 本 来 、 家 事 は 男 女 の 区 別 無 く 協 力 して 行 うべきものであるが、 両 者 共 に 家<br />

事 に 割 ける 時 間 がなく 大 変 な 状 況 となってきた。 家 事 作 業 をロボットが 負 担 することで 生 活 にゆとりを<br />

160


もたらすことが 可 能 になる。ジェンダーフリーな 社 会 システムとしての 家 事 、 育 児 等 のサポートシステ<br />

ムの 充 実 とともに、RT 技 術 による 積 極 的 な 支 援 が 必 須 となる。すなわち、 共 働 き 家 庭 における、 人 間<br />

的 家 庭 的 関 係 を 損 なうことなく、 安 心 して 社 会 活 動 ができる 環 境 が 必 要 となる。<br />

さらに、 近 年 、 地 域 住 民 の 連 帯 感 が 希 薄 になってきており、かつては 住 民 共 同 で 実 施 されていた 防 犯<br />

活 動 や 青 少 年 の 育 成 などが 次 第 に 行 われなくなりつつある。このような 中 、 健 全 な 地 域 社 会 の 維 持 、 安<br />

全 確 保 のための 実 環 境 における 移 動 ・ 運 搬 を 伴 うRTサービス 技 術 も 重 要 である。 少 子 高 齢 化 により、<br />

社 会 維 持 のための 通 学 路 立 ち 番 などの 人 手 確 保 が 困 難 になる 中 、 次 代 を 担 う 子 供 の 見 守 り、 高 齢 者 の 付<br />

き 添 い、 地 域 巡 回 警 備 、 夜 間 帰 宅 時 の 女 性 の 護 衛 、 徘 徊 高 齢 者 の 遠 隔 での 状 況 確 認 など 等 へのRTサー<br />

ビスの 導 入 、 実 世 界 環 境 におけるRT 移 動 技 術 、セキュリティ 技 術 の 実 用 化 は、 集 合 住 宅 、 戸 建 住 宅 、<br />

地 域 の 清 掃 、ごみだしサービス、セキュリティサービスへの 展 開 も 期 待 できる。<br />

このように、 環 境 構 造 化 によるRTビルトインサービスインフラの 提 供 により、トータル 社 会 コスト<br />

の 低 減 により、エイジフリー、ジェンダーフリーの 生 活 環 境 が 実 現 できる。<br />

以 下 に、 住 宅 環 境 におけるRT 環 境 構 造 化 ・ 知 能 化 に 関 して、 環 境 提 供 機 能 、ロボット 提 供 機 能 、 共<br />

通 インフラ 機 能 、インテグレーションのためのシステム 機 能 についてまとめる。<br />

(1) 環 境 提 供 機 能<br />

1) 環 境 構 造 化 による 人 、 物 の 認 識 および 履 歴 情 報 の 獲 得 蓄 積<br />

・ICタグの 利 用 による 存 在 状 況 、 利 用 状 況 の 管 理<br />

・ 利 用 状 況 による 人 の 行 動 の 把 握<br />

・ 屋 内 GPSなどの 測 位 機 能 による、タグ 付 けられた 物 品 、 人 、ロボットの 位 置 、 動 線 の 把 握 。 人 の 活<br />

動 状 況 だけでなく、ロボットが 位 置 決 めをして 移 動 するために 利 用<br />

2) 環 境 埋 め 込 み 型 ロボットサービス 例<br />

・ 健 康 状 態 をモニタリングすることのできるトイレシステム<br />

・ 天 気 と 連 動 した 雨 戸 ・ 窓 ・カーテンの 自 動 開 閉 システム<br />

・インテリジェントキッチンによる 自 動 調 理 、 自 動 ゴミ 出 し、 食 洗<br />

(3)ロボット 提 供 機 能<br />

1) 搬 送 ・ 移 動 機 能<br />

・ 不 整 地 移 動 機 能 ( 屋 内 、 屋 外 ( 新 聞 を 取 りに 行 く、ゴミステーションまでのゴミ 出 し))<br />

・ 日 常 的 オブジェクト( 含 む、 洋 服 などの 柔 軟 物 )のハンドリング 機 能<br />

・バックヤード 的 整 理 機 能<br />

・ 清 掃 機 能<br />

・ 異 常 検 知 の 際 の 威 嚇 ・ 通 報 機 能<br />

2) 情 報 サービス 機 能<br />

・コミュニケーション 機 能 : 音 声 対 話 、ジェスチャー、 行 動 による 違 和 感 のないコミュニケーション 機<br />

能<br />

・ 人 物 認 識 機 能<br />

・ 対 象 物 認 識 機 能<br />

・ 生 活 パートナーロボットとしての 外 部 情 報 の 通 知 、スケジュール 管 機 能<br />

・ 趣 味 仲 間 とのコミュニケーション 支 援 (ロボットによる 遠 隔 会 議 )<br />

・ 家 庭 内 行 動 のモニタリングによる 見 守 り( 通 常 と 異 なる 生 活 パターンが 観 測 された 際 には、 関 係 者 に<br />

通 知 )。ロボットがアバターとして 連 絡<br />

161


・ 健 康 情 報 の 表 示 と 健 康 管 理<br />

(4) 共 通 インフラ 機 能<br />

1) 共 同 住 宅 インフラ<br />

1 情 報 通 信 インフラ<br />

人 とロボットとマンション 設 備 と 有 機 的 に 連 携 させるため、 人 間 とロボットの 状 態 をセンシングし、<br />

そのデータをロボットコントローラに 伝 送 し、 適 切 な 処 理 の 後 、ロボットやマンション 設 備 に 指 令 を<br />

送 る 仕 組 みが 重 要 である。これらの 情 報 の 流 れを 司 るのが 情 報 通 信 インフラでありマンションRT 化<br />

の 要 である。<br />

a. 有 線 ネットワーク<br />

b. 無 線 ネットワーク<br />

c.センサデバイス: 人 間 とロボットの 位 置 の 計 測 のためのセンサ<br />

2 電 力 インフラ<br />

3 建 築 その 他 のインフラ<br />

a. 床<br />

車 椅 子 が 快 適 に 移 動 できる 環 境 は 自 走 式 ロボットにとっても 快 適 だと 言 える。そのためには 段 差 の 無<br />

い 床 、 開 閉 の 容 易 なドア 等 、 車 椅 子 利 用 者 にとって 快 適 な 建 物 構 造 が 重 要 である。<br />

b.エレベータ<br />

マンションにおける 自 走 式 ロボットの 場 合 、 階 の 移 動 は 人 間 用 のエレベータを 利 用 することが 自 然 で<br />

ある。エレベータの 呼 び 出 しやドアの 開 閉 等 の 制 御 は、ロボットとの 通 信 で 連 携 することで、 時 間 的<br />

にロスの 少 ない 効 率 的 な 誘 導 が 可 能 となる。<br />

c. 照 明<br />

d.ドア<br />

環 境 情 報 構 造 化 のためのインフラは、 人 間 との 共 存 が 最 重 要 な 視 点 である。すなわち、 人 間 にとって<br />

もロボットにとっても、 住 み 易 い 環 境 作 りがポイントとなる。そのためには、 従 来 の 人 間 専 用 として 作<br />

られているマンション 等 の 既 存 インフラを 大 幅 に 改 造 することなしに、これらRTインフラを 追 加 する<br />

ことが 望 ましい。この 観 点 から、 今 後 住 宅 環 境 で 大 量 に 利 用 される 建 材 は、 予 めセンサが 内 部 に 配 備 さ<br />

れ、 機 能 上 もデザイン 上 も 人 間 にとって 快 適 な 物 が 量 産 されることになる。この 量 産 効 果 により、 当 初<br />

はRTマンションの 実 現 がコスト 的 ・ビジネス 的 に 妥 当 なものとなっていくであろう。<br />

(5)インテグレーションのためのシステム 機 能<br />

1) 環 境 構 造 化 デザインのためのRTオントロジー<br />

環 境 構 造 化 の 機 能 デザインにおける 研 究 課 題 の 一 つは、 人 を 取 り 囲 む 空 間 における、 人 の 意 図 とロボ<br />

ットの 機 能 のマッピングである。ロボットが 人 を 理 解 し 状 況 に 合 わせたサービスを 行 うためには、 人 の<br />

行 動 を「テキスト」とし、 状 況 を「コンテクスト」、ロボットの 機 能 を「アクション」として、オント<br />

ロジーを 構 築 する 必 要 がある。<br />

サービスの 構 造 化 に 対 して、 単 にサービス 提 供 のための 実 行 環 境 の 構 築 については 現 状 技 術 の 応 用 で<br />

実 現 可 能 であると 思 われるが、ユビキタスなサービス 提 供 や 個 人 に 合 わせた 決 め 細 やかなサービス 提 供<br />

のためには、 環 境 およびサービスをどのように 統 一 的 に 記 述 するか、すなわちオントロジー 言 語 の 問 題<br />

や、そのオントロジー 言 語 といかに 連 携 するか、また、 個 々 人 の 趣 味 嗜 好 にあった 効 果 的 なサービス 提<br />

供 のため 人 間 の 意 図 理 解 や 行 動 分 析 および 学 習 機 能 をどのように 実 現 するかなどが 課 題 として 挙 げら<br />

れる。<br />

162


2) 階 層 化 RTサービス 環 境 構 築<br />

RTアプリケーション、RT 応 用 システムの 開 発 に 際 して、サービスモデルおよび、アプリケーショ<br />

ンならびにモジュールに 対 する 共 通 サービスを 提 供 する 階 層 化 したミドルウェアおよび 運 用 フレーム<br />

ワークを 規 定 することにより、モデルベースの 設 計 が 可 能 となる。これにより、RT 開 発 成 果 の 相 互 利<br />

用 を 促 進 し、ロボット 技 術 (RT)の 普 及 促 進 を 加 速 することが 可 能 となる。<br />

・PART1:RTサービスモデル<br />

・PART2:RTアプリケーションサービスミドルウェア<br />

・PART3:RTコンポーネントサービスミドルウェア<br />

3) 情 報 構 造 化 へのソフトウェア 課 題<br />

ロボットは 物 理 属 性 ( 身 体 )を 持 つ、 実 世 界 と 相 互 作 用 するオブジェクトとして、 捉 えることができ<br />

る。ロボットを 構 成 するRTは 今 後 さまざまな 形 で 社 会 に 浸 透 し、サービスアプリから、 機 器 組 込 まで、<br />

さまざまな 形 態 でサービスを 提 供 し、 人 に 対 するサービスを 最 終 的 に 提 供 プロセスにおいて、 他 の 機 器 、<br />

ロボット、 環 境 とネットワークを 介 して 物 理 的 、 情 報 的 協 調 を 行 わなければならない。<br />

ITと 大 きく 異 なるのは、ITは 論 理 世 界 のタスクであるのに 対 して、RTは 実 世 界 情 報 を 扱 う 点 で<br />

ある。すなわち、RTサービスソフトウェアは 実 用 化 に 際 しては、 上 記 述 べた 諸 課 題 を 解 決 する 必 要 が<br />

あり、サービス 状 況 記 述 のためのRTオントロジーの 明 確 化 と 再 利 用 の 仕 組 み、RTミドルウェアのサ<br />

ービス 規 約 とシステムフレームワークの 標 準 化 、 運 用 を 含 めたビジネスモデルの 構 築 実 施 が 強 く 求 めら<br />

れている。<br />

4.5 作 業 現 場 環 境 構 造 化 分 野<br />

(1) 作 業 現 場 の 概 要<br />

作 業 現 場 分 野 においては、 作 業 目 的 が 明 確 であり、 現 時 点 でビジネスとして 成 熟 していることなどか<br />

ら、ロボット 化 や 環 境 構 造 化 に 期 待 する 事 項 としては、 効 率 が 優 先 される。しかしながら、 昨 今 の 情 勢<br />

などから、 安 心 ・ 安 全 、 環 境 保 全 、 利 便 性 、 高 齢 者 支 援 ・ 援 助 などを 向 上 させることも 考 慮 しながら、<br />

効 率 を 上 げることが 求 められてきているのが 大 きな 動 向 である。<br />

(2) 議 論 内 容<br />

ここでは、 作 業 現 場 としてRT 技 術 が 期 待 されている 分 野 として、1) 建 築 分 野 、2) 土 木 分 野 、3)<br />

農 業 分 野 、4) 災 害 分 野 、が 挙 げられた。それぞれのサブ 分 野 における 作 業 の 特 徴 と、マーケット 形 態<br />

を 明 らかにしながら、 以 下 のような11 個 のシナリオをベースに 議 論 を 行 うことで、 今 後 、 必 要 となる<br />

環 境 構 造 化 技 術 の 洗 い 出 しを 行 った。それぞれの 分 野 における 特 徴 と 環 境 構 造 化 への 期 待 については、<br />

各 章 にまとめた。<br />

1) 建 築 分 野<br />

1 現 場 監 督 のシナリオ<br />

2 請 負 業 者 のシナリオ<br />

2) 土 木 分 野<br />

3 建 設 機 械 オペレータ<br />

3) 農 業 分 野<br />

163


4 稲 作<br />

5カンキツ 栽 培<br />

6 高 設 栽 培 イチゴ<br />

7トマト 栽 培<br />

4) 災 害 分 野<br />

8 大 都 市 大 震 災 での 救 助 支 援<br />

9 地 下 街 のおける 化 学 剤 漏 洩 災 害 対 応<br />

10 化 学 プラント 事 故 対 策<br />

11 交 通 機 関 における 事 故 対 策<br />

(3) 屋 外 作 業 の 特 徴<br />

この 中 でも、 作 業 現 場 の 特 徴 としては、<br />

・ 主 に 作 業 空 間 は 屋 外 である。<br />

・ 空 間 に 広 がりを 持 った 環 境 が 対 象 で、 対 象 物 体 が 散 在 している。<br />

・ 作 業 は 主 に 一 過 性 であり 恒 常 的 ではない。<br />

などが 上 げられる。<br />

(4) 必 要 となる 環 境 構 造 化 技 術<br />

これらの 特 徴 から、 屋 内 環 境 における 作 業 とは 異 なり、 環 境 構 造 化 を 作 り 込 むが 比 較 的 に 困 難 である<br />

反 面 、 作 業 と 物 体 が 空 間 に 広 がりを 持 つために、 以 下 のような 項 目 に 対 する 共 通 要 素 が 多 く 認 められた。<br />

1) 物 や 人 の 管 理<br />

・ 位 置 管 理<br />

・ 認 証<br />

2) 情 報 支 援 技 術<br />

・ 通 信 技 術<br />

・ 情 報 提 示 技 術<br />

3) 物 理 操 作 支 援 技 術<br />

・ 物 体 の 移 動 ・ 搬 送<br />

・ 物 体 のハンドリング<br />

(5) 技 術 内 容<br />

1) 物 や 人 の 管 理 のための 現 状 の 位 置 管 理 技 術 としては、 屋 外 であれば、D-GPS、RTK-GPS<br />

などの 技 術 により 数 cm 精 度 での 位 置 精 度 は 可 能 となってきているものの、 建 造 物 などがあり 衛 星 の<br />

電 波 の 届 かない 環 境 では、 位 置 精 度 が 取 れないなどの 問 題 が 指 摘 されており、この 分 野 の 技 術 開 発 が<br />

求 められる。また、 認 証 システムとしてはICタグが 多 く 用 いられ 始 めているが、 金 属 物 体 に 近 い 場<br />

合 や 水 分 を 多 く 含 む 物 体 の 回 りでは、 電 波 状 態 が 悪 く 認 識 できないなどの 問 題 を 解 決 する 必 要 がある。<br />

2) 次 に 情 報 支 援 技 術 としての 通 信 技 術 としては、 屋 外 での 安 定 な 通 信 を 実 現 するための 技 術 として、<br />

UWBなどが 開 発 されているが、 通 信 距 離 などを 考 えると、 更 なる 技 術 開 発 が 必 要 と 言 わざるを 得 な<br />

164


い。また、 情 報 を 提 示 するための 装 置 としても、PDAやHMDなどが 考 えられているものの、 実 際<br />

の 作 業 現 場 で 作 業 しながら、 作 業 に 支 障 のないように 情 報 を 提 示 する 技 術 はまだ 発 展 途 上 である。<br />

3) 物 体 操 作 支 援 技 術 であるが、 建 築 や 土 木 分 野 のように 作 業 内 容 によって 取 り 扱 う 職 種 が 明 確 に 分 け<br />

られている 分 野 と、 農 業 分 野 のように、 一 人 の 人 が 全 ての 作 業 を 行 う 業 種 など、 分 野 によって 求 めら<br />

れる 操 作 支 援 技 術 内 容 が 大 きく 異 なるため、 各 分 野 の 各 業 種 の 中 で、 本 当 にロボットに 必 要 とする 作<br />

業 であり、かつ、 人 件 費 と 競 争 しても 勝 てる 付 加 価 値 、ビジネスモデルなどを 考 慮 に 入 れながら、 対<br />

象 作 業 を 明 確 にする 必 要 があると 思 われる。<br />

(6)まとめ<br />

屋 外 作 業 において、 作 業 空 間 が 広 い 中 で 環 境 構 造 化 を 行 うためには、 屋 外 と 屋 内 のシームレスな 環 境<br />

構 造 化 インフラを 構 築 する 必 要 がある。 特 に 位 置 情 報 インフラとしては、 現 在 ある 衛 星 のGPS 信 号 を<br />

受 け 取 ることを 可 能 としつつ、 屋 内 でも 同 じ 機 器 で 位 置 情 報 を 受 けられる 仕 組 みが 必 要 であると 考 える。<br />

このような 枠 組 みで 考 えると、 特 定 の 作 業 空 間 のための、その 中 のロボットのためだけの 閉 じられた<br />

インフラ 整 備 ではなく、 社 会 インフラとして 側 面 を 見 ながら、 例 えば 携 帯 電 話 などにも 使 われるインフ<br />

ラ 技 術 を 想 定 し、インフラ 技 術 を 必 要 とするビジネスが 十 分 な 需 要 がある 市 場 を 想 定 しながら、そのイ<br />

ンフラを 供 給 するための 国 策 が 必 要 不 可 欠 であると 考 える。<br />

4.6 産 業 用 環 境 構 造 化 分 野<br />

単 体 のロボットに 作 業 達 成 に 必 要 な 知 能 をすべて 持 たせようとするのではなく、その 周 りの 環 境 を、<br />

ロボットが 行 動 しやすいように 整 備 することによって、 環 境 を 含 むロボットシステム 全 体 で 必 要 な 知 能<br />

を 実 現 する、というのが 環 境 構 造 化 の 考 え 方 である。<br />

この 考 え 方 は、 産 業 用 分 野 では 決 して 目 新 しいものではない。ロボットはあくまで 生 産 システムを 構<br />

成 する 一 要 素 であるから、これは 当 然 である。<br />

しかし、 自 動 車 産 業 をはじめとする 大 企 業 だけでなく、 中 小 企 業 やロボット 未 導 入 産 業 に、ロボット<br />

の 市 場 を 拡 大 する(すなわち、これらの 産 業 がロボットの 恩 恵 を 享 受 できるようにする)ためには、も<br />

っと 手 軽 に 利 用 でき、そして、 投 資 対 効 果 の 高 い 環 境 構 造 化 技 術 が 必 要 である。<br />

幸 いにして、 近 年 の 通 信 ・ネットワーク 技 術 、ユビキタスコンピューティング 技 術 の 急 速 な 発 達 によ<br />

り、 従 来 にない 高 度 なレベルでの 環 境 構 造 化 が、 低 コストで 実 現 できるようになりつつある。<br />

これを 踏 まえて、2.4 節 では 産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 の 研 究 課 題 の 掘 り 起 こしを 行 った。こ<br />

のとき、 作 業 者 ・ 作 業 対 象 ・センサ・エンドエフェクタなど、ロボット 本 体 から 見 た 外 部 のものすべて<br />

を「 環 境 」と 捉 えることで、 関 連 する 技 術 課 題 をこれらの 間 のインタフェース 問 題 として 理 解 すること<br />

ができることを 示 した。<br />

そして、 産 業 用 分 野 におけるロボット 利 用 時 の 問 題 のヒアリング 結 果 を 参 考 に、9つの<br />

技 術 課 題 を 設 定 した。これらはいずれも、ロボットおよびロボット 設 備 の 設 計 ・ 運 用 において、 現 実 世<br />

界 の 多 様 さ・ 複 雑 さに 起 因 する 諸 問 題 を、 環 境 構 造 化 のアプローチを 利 用 したシステム 全 体 の 知 能 化 に<br />

よって 解 決 しようとするものであると 言 える。<br />

1) 作 業 構 築 を 中 心 とする 環 境 構 造 化<br />

1 汎 用 つかみ 機 構 の 開 発<br />

2 掴 み 機 構 データベースの 構 築<br />

3エンドエフェクタ 制 御 動 作 環 境 の 充 実<br />

4ロボット・ 環 境 配 置 設 計<br />

5 教 示 自 動 化 のための 情 報 埋 め 込 み<br />

6 環 境 構 造 化 による 物 流 インタフェース 支 援<br />

2)ビジョン・センシングを 中 心 とする 環 境 構 造 化<br />

165


7DfVision: ビジョンセンサ 用 の 設 計<br />

8ポカミス 防 止 のための 環 境 構 造 化<br />

9 安 全 のための 作 業 者 の 動 作 計 測 ・ 予 測 とロボット 制 御<br />

9つの 技 術 課 題 において 相 互 に 共 通 する 環 境 構 造 化 を 活 用 した 知 能 化 技 術 は 以 下 の 通 りである。<br />

(1) 環 境 提 供 機 能<br />

1 環 境 情 報 記 述 ・ 検 索 技 術<br />

産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 の 活 用 に 当 たって、まずは 情 報 をどのように 記 述 し、 記 憶 するかとい<br />

う 点 が 問 題 となる。 求 められる 機 能 を 実 現 するために 必 要 な 環 境 情 報 の 定 義 と、それを 表 現 する 記 述 法<br />

が 課 題 となる。さらに、それを 記 憶 し、 必 要 に 応 じて 取 り 出 すための 検 索 技 術 も 必 要 となる。コンピュ<br />

ータ 上 のデータベースを 利 用 する 場 合 と、 情 報 タグを 利 用 する 場 合 、およびそれらが 併 用 される 場 合 が<br />

ある。<br />

2 環 境 情 報 獲 得 技 術<br />

環 境 構 造 化 の 実 現 のためには、 環 境 情 報 を 何 らかの 手 段 で 獲 得 することが 必 要 となる。<br />

RFIDに 代 表 されるICタグ 技 術 による 物 体 特 定 手 法 、コンピュータビジョンに 代 表 されるセンシン<br />

グ 技 術 が 基 本 であるが、Design for Visionのように、 環 境 情 報 獲 得 を 支 援 する 技 術<br />

も 極 めて 重 要 である。なお、 技 術 には「 人 間 の 意 識 への 働 きかけ」まで 含 み、これが 安 全 確 保 技 術 とし<br />

て 重 要 であることに 注 意 されたい。 産 業 用 分 野 では、 他 分 野 と 比 較 すれば 環 境 情 報 の 不 確 定 性 が 低 いの<br />

で、 有 効 な 活 用 が 期 待 される。<br />

3 環 境 情 報 利 用 技 術<br />

環 境 情 報 が 獲 得 ・ 記 述 され 利 用 可 能 になった、すなわち 環 境 が 構 造 化 されたとしても、それだけでは<br />

何 ら 意 味 はない。ロボットの 設 計 支 援 、システムの 構 築 支 援 、 運 用 支 援 などで 有 効 な 利 用 技 術 が 開 発 さ<br />

れることで、 初 めて 環 境 構 造 化 のメリットを 享 受 できる。 産 業 用 ロボットの 導 入 における 最 大 の 問 題 点<br />

は、 専 門 知 識 がなければロボットの 利 用 ができないことである。 環 境 構 造 化 は「ロボットが 環 境 の 手 助<br />

けを 得 て 行 動 ができる」ことであり、 換 言 すれば、「ロボットの 利 用 が 容 易 になる」ことである。シス<br />

テム 構 築 支 援 、 運 用 支 援 技 術 は 今 まで 軽 視 されてきただけに、 今 後 10 年 間 での 開 発 が 待 たれる。<br />

(2)ロボット 提 供 機 能<br />

産 業 用 ロボットは 機 能 提 供 機 器 として 研 究 開 発 されてきた 長 い 歴 史 を 持 つ。しかしながら、 多 くのロ<br />

ボットではまだユーザインタフェースやシステム 要 素 としての 概 念 構 築 が 不 十 分 であることは、 本 報 告<br />

書 でも 再 三 指 摘 した。 環 境 構 造 化 の 時 代 を 迎 えて、ロボット 提 供 機 能 の 再 構 築 が 求 められると 考 えられ<br />

る。<br />

・RTミドルウェアを 中 心 としたソフトウェアの 構 造 化<br />

・ユーザインタフェースの 高 度 化<br />

(3) 共 通 インフラ 機 能<br />

共 通 インフラ 技 術 としては、 次 の4つの 段 階 を 持 つ。<br />

1ロボット 機 器 開 発 者 用<br />

2ロボット 利 用 システム 開 発 者 用<br />

3ロボットの 動 作 プログラム 開 発 修 正 者 用<br />

4ロボット 利 用 者 用<br />

166


それぞれの 段 階 で、 機 能 、 寸 法 、 利 用 方 法 などのデータの 提 供 、シミュレータの 提 供 などが 中 心 にな<br />

ろう。この 中 で、3の「ロボットの 動 作 プログラム 開 発 修 正 者 」が 現 状 では 勘 とコツとに 頼 っているこ<br />

とを 指 摘 しておく。<br />

(4)インテグレーションのためのシステム 機 能<br />

産 業 用 ロボット 応 用 分 野 においてのインテグレーションのためのシステム 機 能 の 中 心 はネットワー<br />

クである。すでにORiNがあり、その 利 用 を 図 ることで 進 められよう。<br />

それ 以 外 にも 多 くの 規 格 化 / 標 準 化 が 求 められる。<br />

環 境 構 造 化 技 術 は、ロボットシステムを 構 成 する 多 数 の 要 素 を 対 象 とするものであり、 規 格 化 ・ 標 準<br />

化 が 行 えるかどうかによって、その 実 現 性 や 実 現 レベルが 大 きく 左 右 される。エンドエフェクタ 関 連 技<br />

術 に 見 られるように、 物 理 的 (ハードウェア 的 )な 規 格 化 ・ 標 準 化 と 情 報 的 (ソフト 的 )な 規 格 化 ・ 標<br />

準 化 がともに 必 要 である。また、 安 全 技 術 のように、 単 に 技 術 的 に 可 能 であるというだけでは 不 十 分 で、<br />

法 制 度 等 との 整 合 性 が 求 められる 課 題 が 存 在 する。<br />

情 報 表 現 の 標 準 化 は 初 期 段 階 から 見 通 しのよい 概 念 を 構 築 していく 必 要 がある。そのためにはすでに<br />

応 用 例 を 多 数 有 する 産 業 用 ロボット 応 用 分 野 で、サービス 分 野 などの 要 求 を 想 定 しつつ、 標 準 化 を 進 め<br />

ることが 要 請 される。<br />

(5)まとめ<br />

産 業 用 分 野 は、 公 共 空 間 ・ 住 宅 ・ 屋 外 作 業 現 場 などの 分 野 と 比 べ、 環 境 構 造 化 技 術 を 導 入 しやすいこ<br />

とは 明 らかである。 他 分 野 に 比 べれば、 作 業 対 象 や 環 境 の 不 確 定 性 は 少 なく、また、 環 境 を 作 業 達 成 の<br />

ために 整 備 することの 支 障 も 少 ない。<br />

したがって、 産 業 用 分 野 が 先 頭 に 立 って、 先 進 的 な 環 境 構 造 化 のアプローチを 推 し 進 め、その 効 果 を<br />

明 らかにすることが 必 要 であると 言 える。 特 に、 従 来 では 充 実 した 生 産 技 術 部 門 を 持 つ 大 企 業 でしか 行<br />

えなかったようなことが、 環 境 構 造 化 によって、 中 小 企 業 でも 実 施 可 能 になる、といった 成 果 が 期 待 さ<br />

れる。<br />

産 業 用 分 野 における 環 境 構 造 化 で 必 要 となる 技 術 の 中 には、 位 置 測 定 技 術 や 人 ・ 物 体 の 認 識 技 術 、 物<br />

体 の 把 持 ・マニピュレーション 技 術 など、 他 分 野 と 重 なる 部 分 も 多 い。 産 業 用 分 野 から、 環 境 構 造 化 に<br />

よる、システムとしての 知 能 の 実 現 を 図 っていくことは、 極 めて 重 要 であると 考 えられる。<br />

4.7 環 境 構 造 化 における 標 準 化<br />

環 境 それぞれで 特 殊 な 情 報 があることが 良 く 分 る。 災 害 現 場 のような 非 整 備 環 境 、 農 業 現 場 のような<br />

既 存 建 造 物 がほとんどない 環 境 、 公 共 空 間 のような 明 確 な 構 造 付 けが 比 較 的 容 易 な 環 境 、 住 宅 のような<br />

個 人 的 な 条 件 への 依 存 性 が 極 めて 強 い 環 境 など、 環 境 の 多 様 性 は 明 らかである。それぞれの 環 境 ごとに<br />

適 した 工 学 的 な 手 段 でローカルに 構 造 化 されたその 上 に、さらに 異 なった 環 境 を 動 き 回 るロボットが 異<br />

なったローカルな 構 造 へ 対 応 するシームレスな 手 段 もまた 必 要 となる。 環 境 構 造 のユニバーサルデザイ<br />

ン、 作 業 構 造 のユニバーサルデザインといったメタ 構 造 の 標 準 化 、NRFで 提 案 されている 異 種 LAN<br />

のブリッジング 標 準 などのアプローチがこのような 状 況 に 対 応 するものであろう。<br />

現 時 点 で、 環 境 構 造 化 の 産 業 的 実 装 例 はないが、ロボット 技 術 と 情 報 技 術 が 融 合 した 大 きな 産 業 とな<br />

る 可 能 性 は 高 く、 動 向 をウォッチしておく 価 値 はある。 各 環 境 ごとの 標 準 化 は、それぞれの 環 境 におけ<br />

る 実 装 が 産 業 となりうる 見 通 し、 製 品 の 共 通 化 への 業 界 ニーズの 高 まりに 応 じて 検 討 すべきものと 考 え<br />

る。<br />

167


5. 調 査 研 究 の 今 後 の 課 題 及 び 展 開<br />

5.1 今 後 の 課 題<br />

環 境 の 情 報 構 造 化 技 術 が 手 がけるべき 課 題 は 多 い。 本 報 告 書 は、 情 報 構 造 化 に 伴 う 技 術 課 題 を 整 理 し<br />

たもので、 今 後 は、それを 実 現 するための 技 術 課 題 を 一 つ 一 つ 解 決 していく 努 力 が 必 要 である。<br />

環 境 構 造 化 は、これまでのロボット 技 術 とは 異 なった 視 点 からの 問 題 へのアプローチが 必 要 とされよ<br />

う。また、それが、ロボット 技 術 に 新 たな 展 開 、 可 能 性 をもたらすものと 考 えられる。<br />

課 題 は 多 いが、ここでは 次 の3 点 を 指 摘 しておく。<br />

1)まず 第 一 はシナリオの 精 密 化 、およびリアリティを 高 めることである。 技 術 開 発 の 基 になるシナリ<br />

オにSF 的 な 技 術 課 題 が 含 まれていたのでは、 現 実 の 技 術 開 発 課 題 として 取 り 上 げられない。 近 未 来<br />

の 技 術 進 展 を 的 確 に 予 測 し、その 技 術 の 枠 内 で 具 体 化 できるシナリオを 想 定 すべきである。また、 得<br />

意 技 術 の 部 分 ばかりが 強 調 されないように、 生 活 の 流 れの 中 で、 技 術 が 適 切 に 使 われるシナリオを 描<br />

く 必 要 がある。<br />

2) 第 2に 重 要 な 技 術 として、 情 報 構 造 化 環 境 として 装 備 すべき 基 本 技 術 として、 環 境 の 中 で 行 動 する<br />

ロボットの 位 置 の 計 測 技 術 を 確 立 することである。 近 年 、 室 内 GPSの 技 術 も 進 展 しているが、 環 境<br />

内 に 存 在 する 物 体 の 材 質 に 計 測 結 果 が 左 右 されるなど、ロボット 技 術 側 からみて 必 ずしも 使 い 勝 手 が<br />

良 くない。 多 様 な 位 置 の 計 測 技 術 を 検 討 し、ロボット 向 きにロバストな 技 術 を 確 立 する 必 要 がある。<br />

3) 第 3に 指 摘 したい 課 題 は、 環 境 へロボットに 有 用 な 知 識 をいかに 埋 め 込 むかである。 将 来 のロボッ<br />

トシステムは、 従 来 のようにロボットだけがコンピュータを 持 っているわけではない。ロボット 内 に<br />

も 複 数 のコンピュータがあり、また、 環 境 にも 多 数 のコンピュータが 配 置 され、それらがネットワー<br />

クで 接 続 された 分 散 構 造 を 持 っている。ロボットに 必 要 な 知 識 も、 従 来 のようにロボットのコンピュ<br />

ータに 入 れるのではなく、 入 れるべき 可 能 性 のあるコンピュータが 多 数 存 在 する。どの 知 識 をどのよ<br />

うな 形 式 でどこに 入 れるかを 適 切 に 判 断 して、システムを 設 計 しなければならない。これを 具 体 化 す<br />

るソフトウェア 技 術 は、 分 散 オブジェクト 技 術 が 強 力 な 手 段 を 提 供 すると 考 えられるが、こうした 技<br />

術 を 背 景 に、ロボットのための 新 たな 知 能 化 技 術 を 確 立 する 必 要 がある。<br />

5.2 今 後 の 展 開<br />

今 後 の 展 開 としては、 環 境 構 造 化 技 術 を 将 来 どのように 導 入 するかに 触 れておきたい。 環 境 構 造 化 技<br />

術 はインフラ 技 術 である。その 中 で 行 動 するロボットを 支 援 する 機 能 を 持 つが、ロボットのサービスが<br />

異 なる 場 合 に、 異 なる 構 造 化 環 境 が 必 要 になるのでは、 環 境 を 構 造 化 する 意 味 が 無 い。 理 想 としてはど<br />

のようなサービスを 提 供 するロボットに 対 しても 共 通 に 使 える 構 造 化 環 境 が 用 意 されるべきであるが、<br />

それは 技 術 的 には 困 難 であるとして、 用 途 別 、 環 境 別 には 共 通 なものが 用 意 される 必 要 がある。<br />

例 えば、 公 共 空 間 のような 場 合 は、 公 共 施 設 を 管 理 する 自 治 体 などが 整 備 し、ロボットが 導 入 しやす<br />

い 環 境 を 社 会 に 整 えていくことが 必 要 であろう。<br />

一 方 、 居 住 空 間 の 場 合 は、 基 本 的 には 現 在 、2LDKや3LDKといった 住 宅 標 準 が 用 意 されている<br />

ように、 住 宅 標 準 として 普 及 していくものと 考 えられる。2LDKや3LDKは 日 本 住 宅 公 団 が 社 会 に<br />

若 年 夫 婦 が 購 入 できる 住 宅 を 供 給 するという 思 想 の 基 に、 国 策 で 普 及 したものであるが、 居 住 空 間 の 構<br />

造 化 環 境 も、マンション、アパートといった 集 合 住 宅 でまず 大 量 に 取 り 入 れられ、その 後 、 一 戸 建 て 住<br />

宅 へと 展 開 するものと 考 えられる。<br />

その 普 及 を 支 えるために 重 要 なことは、 標 準 化 である。どのようなロボットにも、また、 誰 が 開 発 す<br />

るロボットにも 共 通 に 使 える 情 報 構 造 化 環 境 を 整 備 するには、どのようなロボットにも 接 続 可 能 なネッ<br />

トワーク、ソフトウェア、インタフェースの 標 準 化 が 重 要 である。この 標 準 化 は、ある 程 度 環 境 情 報 構<br />

造 化 技 術 が 成 熟 し、 実 用 化 の 目 処 がついた 段 階 で 展 開 されなければならない 重 要 課 題 である。<br />

本 報 告 書 では、こうした 標 準 化 に 進 む 第 一 歩 として、 現 在 、ロボットで 進 められている 標 準 化 技 術 に<br />

ついて 調 査 した。これからのロボットは、すでに 上 でも 指 摘 したようにロボット 単 体 で 動 くことは 無 い。<br />

複 数 のロボット、 複 数 のロボットとユビキタスコンピュータ 群 、などがネットワークで 接 続 され、それ<br />

168


らの 連 携 で 動 く。また、ロボット 自 身 も、 組 み 込 みプロセッサの 組 み 込 まれた 機 能 モジュール 群 のネッ<br />

トワークを 介 した 連 携 で 構 成 され、 機 能 する。そのためには、 特 にロボット、 機 能 モジュールに 内 蔵 さ<br />

れたソフトウェアの 接 続 性 が 重 要 で、この 接 続 性 を 保 障 するために、ソフトウェア 同 士 を 接 続 すること<br />

を 可 能 にするミドルウェアが 必 要 である。このミドルウェアは 現 時 点 で、ネットワークに 接 続 されるロ<br />

ボットのためのものや、 機 能 モジュールを 接 続 するためのもの、 産 業 用 ロボットを 連 携 させるためのも<br />

のなどが 開 発 されており、 本 報 告 書 にまとめられている。<br />

環 境 構 造 化 にはそこに 装 備 される 機 能 モジュールや、 知 識 モジュール 間 の 接 続 性 は 必 須 の 機 能 であり、<br />

そのためにはモジュール 間 の 接 続 性 を 保 障 する 標 準 化 技 術 の 確 立 が 不 可 欠 であるが、 上 述 したように、<br />

これらの 標 準 化 は、 環 境 構 造 化 技 術 が 成 熟 した 段 階 で、 本 報 告 書 で 調 査 したミドルウェアの 標 準 化 技 術<br />

をベースに 展 開 されると 予 測 される。 本 報 告 書 はそのためのベースを 提 供 することになろう。<br />

169


- 禁 無 断 転 載 -<br />

システム 技 術 開 発 調 査 研 究<br />

18-R-4<br />

次 世 代 ロボット 技 術 (RT)の 環 境 構 造 化 に 関 する<br />

調 査 研 究 報 告 書<br />

平 成 19 年 3 月<br />

作<br />

成 財 団 法 人 機 械 システム 振 興 協 会<br />

東 京 都 港 区 三 田 一 丁 目 4 番 28 号<br />

TEL03-3454-1311<br />

委 託 先 名 社 団 法 人 日 本 ロボット 工 業 会<br />

東 京 都 港 区 芝 公 園 三 丁 目 5 番 8 号<br />

TEL03-3434-2919<br />

170

Hooray! Your file is uploaded and ready to be published.

Saved successfully!

Ooh no, something went wrong!