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平 成 25 年 度<br />

経 済 産 業 省 委 託 調 査<br />

平 成 25 年 度 地 球 温 暖 化 問 題 等 対 策 調 査<br />

( 環 境 情 報 を 始 めとする 非 財 務 情 報 に 係 る<br />

国 際 的 な 企 業 評 価 基 準 に 関 する 調 査 事 業 )<br />

報 告 書<br />

2014 年 3 月<br />

創 発 戦 略 センター/ESG リサーチセンター


目 次<br />

. 1 調 査 研 究 の 概 要 ...................................................................................................................... 1<br />

1.1 調 査 研 究 の 背 景 ................................................................................................................... 1<br />

1.2 調 査 研 究 の 目 的 ................................................................................................................... 2<br />

1.3 リサーチ・デザイン ........................................................................................................... 3<br />

1.4 調 査 研 究 の 対 象 ................................................................................................................... 4<br />

. 2 海 外 ESG 投 資 家 等 の ESG 投 資 実 践 手 法 及 び 企 業 の 非 財 務 情 報 に 係 る 評 価 基 準 の 分 析 .. 11<br />

2.1 ESG 情 報 の 一 次 利 用 者 ..................................................................................................... 11<br />

2.1.1 ESG 情 報 提 供 機 関 の 役 割 ................................................................................ 11<br />

2.1.2 ESG 評 価 の 目 的 ・ 視 点 .................................................................................... 16<br />

2.1.3 企 業 の 非 財 務 情 報 に 係 る 評 価 基 準 ・ 情 報 ソース .............................................. 18<br />

2.1.4 エンゲージメントを 支 援 する 機 関 ................................................................... 21<br />

2.1.5 日 本 企 業 の ESG 要 因 開 示 ............................................................................... 23<br />

2.2 ESG 情 報 の 二 次 利 用 者 (アセットオーナー・ 運 用 機 関 )............................................... 26<br />

2.2.1 ESG 投 資 の 目 的 ・ 手 法 .................................................................................... 26<br />

2.2.2 企 業 の 非 財 務 情 報 に 係 る 評 価 基 準 ・ 情 報 ソース .............................................. 29<br />

2.2.3 日 本 企 業 評 価 の 事 例 ......................................................................................... 31<br />

. 3 海 外 における 非 財 務 情 報 に 係 る 企 業 ・ 投 資 家 間 のコミュニケーション 動 向 の 分 析 ........... 32<br />

3.1 報 告 書 における ESG 要 因 の 開 示 ..................................................................................... 32<br />

3.1.1 ESG 投 資 家 の 望 む 情 報 開 示 ............................................................................. 32<br />

3.1.2 海 外 の 先 進 的 企 業 の 情 報 開 示 ・ 取 り 組 み ......................................................... 37<br />

3.2 直 接 対 話 の 取 り 組 み ......................................................................................................... 47<br />

3.2.1 ESG 投 資 家 の 望 む 企 業 との 直 接 対 話 .............................................................. 47<br />

3.2.2 海 外 の 先 進 的 企 業 が 実 践 する 投 資 家 との 直 接 対 話 .......................................... 49<br />

. 4 日 本 企 業 への 示 唆 ................................................................................................................ 52<br />

4.1 今 後 の ESG 要 因 の 開 示 / 投 資 家 との 直 接 対 話 に 向 けて ................................................. 52<br />

4.2 報 告 書 における ESG 要 因 の 開 示 ..................................................................................... 53<br />

4.3 ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 .................................................................................................. 54<br />

参 考 資 料 ...................................................................................................................................... 56


図 表<br />

図 表 - 1 ESG 投 資 に 係 るインベストメント・チェーン ................................................ 3<br />

図 表 - 2 本 調 査 研 究 の 調 査 対 象 機 関 の 一 覧 .................................................................. 5<br />

図 表 - 3 ヒアリング 実 施 者 一 覧 .................................................................................... 6<br />

図 表 - 4 文 献 調 査 項 目 一 覧 ........................................................................................... 8<br />

図 表 - 5 ヒアリング 調 査 項 目 一 覧 ................................................................................. 9<br />

図 表 - 6 地 域 別 の ESG 投 資 比 率 ................................................................................. 12<br />

図 表 - 7 ESG 投 資 の 手 法 ............................................................................................ 12<br />

図 表 - 8 ESG 情 報 提 供 機 関 の 情 報 提 供 先 ................................................................... 14<br />

図 表 - 9 MSCI ESG Portfolio Analytics.......................................................................... 15<br />

図 表 - 10 Bloomberg Carbon Risk Valuation Tool ........................................................... 15<br />

図 表 - 11 ESG 情 報 提 供 機 関 の ESG 評 価 の 目 的 ・ESG 要 因 の 捉 え 方 ......................... 16<br />

図 表 - 12 ESG 情 報 提 供 機 関 のカバレッジ .................................................................. 18<br />

図 表 - 13 評 価 基 準 一 覧 ............................................................................................... 19<br />

図 表 - 14 情 報 ソース 一 覧 ........................................................................................... 21<br />

図 表 - 15 エンゲージメントサポート 機 関 の 概 要 ....................................................... 22<br />

図 表 - 16 日 本 企 業 の ESG 要 因 開 示 で 不 足 している 項 目 ........................................... 23<br />

図 表 - 17 サステナビリティ 戦 略 の 段 階 ...................................................................... 37<br />

図 表 - 18 事 業 戦 略 とサステナビリティ 戦 略 の 関 係 性 ................................................ 38


. 1 調 査 研 究 の 概 要<br />

1.1 調 査 研 究 の 背 景<br />

近 年 、 世 界 的 に 深 刻 化 する 環 境 問 題 や、 顧 客 の 意 識 の 変 化 等 を 背 景 に、 事 業 の 成 功 と 環<br />

境 負 荷 削 減 を 両 立 させる 持 続 可 能 な 企 業 経 営 ( 以 下 、「 持 続 可 能 な 経 営 」という) 実 現 への<br />

要 請 が 高 まっている。こうした 要 請 に 呼 応 する 形 で、 国 内 の 企 業 は 持 続 可 能 な 経 営 実 現 に<br />

取 り 組 んでいる。<br />

企 業 の 評 価 者 である 投 資 家 も、 財 務 情 報 だけでなく、 企 業 における 環 境 負 荷 削 減 の 取 り<br />

組 み 等 、 所 謂 ESG( 環 境 ・ 社 会 ・ガバナンス) 要 因 を 投 資 判 断 に 考 慮 する 傾 向 を 強 めてい<br />

る。 事 実 、ESG 要 因 を 考 慮 する 投 資 家 ( 以 下 、「ESG 投 資 家 1 」という)の 比 率 は 年 々 高 ま<br />

っており、2012 年 時 点 において 全 世 界 の 機 関 投 資 家 が 運 用 する 運 用 資 産 の 21.8%を 占 める<br />

までに 拡 大 してきているとされる 2 。<br />

さらに、こうした ESG 投 資 家 の 多 くが、 企 業 の ESG 要 因 について 独 自 の 考 え 方 ・ 評 価 基<br />

準 を 有 しており、 投 資 先 企 業 に 課 題 や 懸 念 があると 判 断 した 場 合 には、 株 主 の 立 場 から 企<br />

業 との 直 接 対 話 や 株 主 提 案 などを 通 じて 企 業 に 改 善 を 要 求 することが 増 えてきている。ま<br />

た、こうした ESG 投 資 家 に 対 して、 上 場 企 業 の ESG 要 因 に 関 する 具 体 的 な 取 り 組 みなどの<br />

情 報 ( 以 下 、「ESG 情 報 」という)を 収 集 ・ 整 理 ・ 分 析 し、 情 報 提 供 を 行 う「ESG 情 報 提 供<br />

機 関 」が 数 多 く 存 在 している( 以 下 、ESG 投 資 家 と ESG 情 報 提 供 機 関 を 合 わせて「ESG 投<br />

資 家 等 」と 表 記 する)。<br />

同 時 に、 企 業 の 側 でも、 投 資 家 とのコミュニケーションを 担 う IR 部 門 に ESG 投 資 家 向 け<br />

の 担 当 者 を 設 置 したり、あるいは ESG 投 資 家 を 対 象 とする 説 明 会 (ロードショー)を 開 催 す<br />

るなど、ESG 投 資 家 とのコミュニケーションを 積 極 的 に 行 う 企 業 が 徐 々に 増 えてきている 3 。<br />

我 が 国 における 持 続 可 能 な 経 営 実 現 に 取 り 組 む 企 業 にとっても、ESG 投 資 の 普 及 拡 大 に<br />

伴 い、ESG 投 資 家 等 から 高 い 評 価 を 受 けることの 重 要 性 が 高 まっている。なぜなら、ESG<br />

投 資 家 等 からの 高 い 評 価 と 支 持 を 追 い 風 に、 企 業 はさらに 持 続 可 能 な 経 営 実 現 に 取 り 組 み、<br />

それをさらに ESG 投 資 家 等 が 高 く 評 価 する、という 好 循 環 が 生 まれる。そして、そのこと<br />

が 結 果 的 に、 企 業 の 中 長 期 的 な 成 長 を 促 すことに 繋 がると 考 えられるからである。<br />

しかしながら、 現 状 では、 持 続 可 能 な 経 営 実 現 に 取 り 組 む 国 内 企 業 の ESG 情 報 の 開 示 、<br />

1 本 調 査 研 究 では、 具 体 的 には、 国 連 責 任 投 資 原 則 (PRI)に 署 名 もしくはそれに 準 ずる 取 り 組 みを 実 施 しているアセ<br />

ット・オーナーや 運 用 機 関 のことを 指 す。<br />

2 Global Sustainable Investment Alliance(GSIA) [2013] “2012 Global Sustainable Investment Review” <br />

3 例 えば 2012 年 から 2013 年 にかけて、サステナビリティ 諸 課 題 解 決 にコミットする 企 業 が 署 名 する 国 連 グローバル・<br />

コンパクトと、ESG 要 因 を 投 資 判 断 に 考 慮 する 金 融 機 関 が 署 名 する PRI は、 共 同 で ESG 投 資 家 と 企 業 との ESG 要 因<br />

に 関 するコミュニケーションを 促 進 する「ESG Investor Briefing Project」を 実 施 し、 欧 米 の 複 数 の 企 業 が ESG 投 資 家<br />

向 けの 説 明 会 (ロードショー)を 開 催 している。<br />

1


及 び ESG 投 資 家 とのコミュニケーションは 必 ずしも 十 分 とは 言 えないと 考 えられる。その<br />

結 果 、 国 内 企 業 が ESG 投 資 家 等 からの 適 切 な 評 価 を 得 られていない 懸 念 もある。<br />

そこで 本 調 査 研 究 においては、まず、ESG 投 資 家 等 がどのような 考 えに 基 づき、どのよ<br />

うに 企 業 の ESG 要 因 ・ 情 報 を 評 価 しているか、どのような ESG 要 因 ・ 情 報 の 開 示 やコミュ<br />

ニケーションを 望 んでいるのか、ESG 投 資 家 から 既 に 高 い 評 価 を 受 けている 海 外 企 業 は<br />

ESG 投 資 家 とどのようなコミュニケーションを 行 っているのかを 把 握 する。その 上 で、 日<br />

本 企 業 が ESG 投 資 家 から 高 い 評 価 を 受 けるために、どのような 情 報 開 示 や 投 資 家 とのコミ<br />

ュニケーションの 取 り 組 みが 求 められるのかを 考 察 する。<br />

1.2 調 査 研 究 の 目 的<br />

本 調 査 研 究 の 目 的 は 以 下 のとおりである。<br />

(1) 海 外 の ESG 投 資 家 等 の ESG 投 資 実 践 手 法 および 企 業 の ESG 要 因 に 係 る 評 価 基 準 に<br />

ついて、 以 下 の 点 を 中 心 に 明 らかにする。<br />

1ESG 投 資 の 目 的 ・ 視 点 ・ 手 法<br />

2 企 業 の 非 財 務 情 報 4 に 係 る 評 価 基 準 ・ 情 報 ソース<br />

3 日 本 企 業 評 価 の 事 例<br />

(2) 海 外 における ESG 要 因 に 関 する 企 業 ・ 投 資 家 間 のコミュニケーション 動 向 について、<br />

以 下 の 点 を 中 心 に 明 らかにする。<br />

1 報 告 書 における ESG 要 因 の 開 示 :ESG 投 資 家 の 望 む 情 報 開 示<br />

2 報 告 書 における ESG 要 因 の 開 示 : 海 外 の 先 進 的 な 企 業 の 情 報 開 示 ・ 取 り 組 み<br />

3 直 接 対 話 :ESG 投 資 家 の 望 む 直 接 対 話<br />

4 直 接 対 話 : 海 外 の 先 進 的 な 企 業 の 実 践 する 直 接 対 話<br />

(3)(1)、(2)を 踏 まえ、 日 本 企 業 が、 海 外 の ESG 投 資 家 等 からより 高 く、より 適 切 に<br />

評 価 されるために 以 下 の 点 を 考 察 する。<br />

1 報 告 書 における ESG 要 因 の 開 示<br />

2 直 接 対 話<br />

4 非 財 務 情 報 とは、 財 務 情 報 以 外 の 情 報 を 意 味 する。 本 調 査 研 究 においては、 主 に 環 境 ・ 社 会 を 中 心 とする ESG 要 因 に<br />

関 連 した 情 報 を 非 財 務 情 報 として 取 り 扱 った。<br />

2


1.3 リサーチ・デザイン<br />

ESG 投 資 においては、 資 金 の 出 し 手 である 年 金 基 金 等 の「アセット・オーナー」、アセッ<br />

ト・オーナーから 委 託 を 受 けて 株 式 売 買 などの 運 用 の 実 務 を 行 う「 運 用 機 関 」に 加 えて、<br />

アセット・オーナーや 運 用 機 関 の 投 資 判 断 のための 情 報 提 供 を 行 う「ESG 情 報 提 供 機 関 」<br />

などの 様 々なプレイヤーからなる 独 自 の「インベストメント・チェーン」が 構 成 されてい<br />

る。<br />

図 表 - 1 ESG 投 資 に 係 るインベストメント・チェーン<br />

ESG 情 報 の 収 集 ( 公 開 情 報 のデータベース 化 、アンケート 調 査 、 等 )<br />

ESG 情 報<br />

提 供 機 関<br />

( 一 次 利 用 者 )<br />

※1<br />

ESG<br />

情 報 提 供<br />

年 金 基 金 等 の<br />

アセット・<br />

オーナー<br />

( 二 次 利 用 者 )<br />

※2<br />

運 用 委 託<br />

ESG 情 報 の 参 照 、 直 接 対 話<br />

売 買 執 行<br />

ESG 情 報 の 参 照<br />

直 接 対 話<br />

投 資 先 企 業<br />

ESG 情 報 提 供<br />

運 用 機 関<br />

( 二 次 利 用 者 )<br />

売 買 執 行<br />

( 注 1)エンゲージメントをサポートする 機 関 ESG 情 報 を 運 用 機 関 に 提 供 する 証 券 会 社 も 含 む<br />

( 注 2) 運 用 機 関 に 委 託 せずに、 自 家 運 用 を 行 う 基 金 もある<br />

当 該 「インベストメント・チェーン」は、 企 業 が 開 示 する 統 合 報 告 書 や CSR 報 告 書 等 か<br />

ら 得 られる ESG 情 報 の 一 次 利 用 者 である「ESG 情 報 提 供 機 関 」と、 主 に「ESG 情 報 提 供 機<br />

関 」からの 情 報 を 二 次 利 用 する「アセット・オーナー」 及 び「 運 用 機 関 」に 分 類 すること<br />

ができる。<br />

本 調 査 研 究 の 目 的 (1)に 掲 げた「 海 外 の ESG 投 資 家 等 の ESG 投 資 実 践 手 法 および 企 業<br />

の 非 財 務 情 報 に 係 る 評 価 基 準 の 分 析 」においては、ESG 情 報 の 一 次 利 用 者 及 び 二 次 利 用 者<br />

のそれぞれを 区 別 して 調 査 を 行 う。<br />

また、「アセット・オーナー」 及 び「 運 用 機 関 」は 二 次 利 用 者 でありつつも、 自 ら ESG 情<br />

報 を 企 業 から 直 接 取 得 する 場 合 がある。 企 業 の ESG に 関 係 する 取 り 組 みについて、 株 主 提<br />

案 ・ 議 決 権 行 使 ・IR ミーティング・ 非 公 式 な 打 合 せなどを 通 じて 企 業 と 直 接 対 話 を 行 うの<br />

も「アセット・オーナー」 及 び「 運 用 機 関 」である。そこで、 本 調 査 研 究 の 目 的 (2)に<br />

掲 げた「 非 財 務 情 報 に 係 る 企 業 ・ 投 資 家 間 のコミュニケーション 動 向 の 分 析 」においては<br />

3


「アセット・オーナー」 及 び「 運 用 機 関 」を 主 な 調 査 の 対 象 とする。<br />

さらに、ESG 投 資 家 等 から 既 に 高 い 評 価 を 獲 得 していると 考 えられる 国 内 外 の 投 資 先 企<br />

業 についても 調 査 の 対 象 とし、ESG 情 報 の 一 次 利 用 者 に 対 する 情 報 開 示 の 取 り 組 みや、 二<br />

次 利 用 者 とのコミュニケーション 活 動 について 調 査 を 行 う。<br />

1.4 調 査 研 究 の 対 象<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 については、グローバルな 上 場 企 業 の ESG 情 報 の 収 集 、 整 理 または 分<br />

析 を 行 っている 11 機 関 を 調 査 研 究 の 調 査 対 象 とした。なお、ESG 情 報 提 供 も 行 いつつ、 自<br />

らも 資 産 運 用 を 行 っている 運 用 機 関 、 運 用 機 関 に ESG に 関 する 情 報 の 提 供 を 行 う 証 券 会 社 、<br />

並 びに ESG 要 因 に 関 する 投 資 家 のエンゲージメントをサポートする 機 関 もここに 含 めてい<br />

る。<br />

ESG 投 資 家 (アセット・オーナー、 運 用 機 関 )については、 運 用 資 産 総 額 が 大 きく、か<br />

つ PRI に 署 名 しているなど、ESG 投 資 を 積 極 的 に 行 っていると 考 えられる、 欧 州 及 び 米 国<br />

を 所 在 国 とする 11 機 関 を 調 査 研 究 の 調 査 対 象 とした。<br />

さらに、ESG の 取 り 組 みが 進 んでいると 考 えられる 海 外 の 企 業 6 社 及 び 国 内 の 企 業 は 5<br />

社 をそれぞれ 本 調 査 研 究 の 調 査 対 象 とした。<br />

なお、 本 調 査 研 究 においては、 対 象 機 関 による 開 示 情 報 及 び 先 行 研 究 文 献 をもとに 調 査<br />

を 行 うとともに、 調 査 研 究 対 象 機 関 のうち ESG 情 報 提 供 機 関 4 機 関 、アセット・オーナー5<br />

機 関 、 運 用 機 関 2 機 関 、 海 外 企 業 6 社 、 国 内 企 業 5 社 に 対 してはヒアリング 調 査 を 実 施 し<br />

た。<br />

4


図 表 - 2 本 調 査 研 究 の 調 査 対 象 機 関 の 一 覧<br />

名 称<br />

本 拠 地<br />

ヒアリング<br />

実 施<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

Bloomberg 米 国 ●<br />

Goldman Sachs, GS Sustain 5<br />

米 国<br />

●<br />

MSCI ESG Research 米 国 ●<br />

CDP 欧 州 ( 英 国 )<br />

FTSE4Good 欧 州 ( 英 国 )<br />

Oekom Research<br />

欧 州 (ドイツ)<br />

RepRisk<br />

欧 州 (スイス)<br />

RobecoSAM 6<br />

欧 州 (スイス)<br />

Trucost 欧 州 ( 英 国 )<br />

As You Sow 米 国 ●<br />

ISS<br />

米 国<br />

アセット・オーナー<br />

カリフォルニア 州 職 員 退 職 年 金 基 金 (CalPERS) 米 国 ●<br />

カリフォルニア 教 職 員 退 職 年 金 基 金 (CalSTRS) 米 国 ●<br />

ニューヨーク 市 年 金 基 金 米 国 ●<br />

ニューヨーク 州 職 員 退 職 年 金 基 金<br />

米 国<br />

カナダ 年 金 制 度 投 資 委 員 会 (CPPIB)<br />

カナダ<br />

オランダ 公 務 員 年 金 基 金 (ABP)<br />

欧 州 (オランダ)<br />

オランダ 厚 生 福 祉 年 金 基 金 (PFZW)<br />

欧 州 (オランダ)<br />

ノルウェー 政 府 年 金 基 金 ―グローバル(GPFG) 欧 州 (ノルウェー)<br />

デンマーク 労 働 市 場 付 加 年 金 (ATP) 欧 州 (デンマーク) ●<br />

運 用 機 関<br />

BlackRock 米 国 ●<br />

Allianz Global Investors 欧 州 (ドイツ) ●<br />

海 外 企 業<br />

Cisco Systems 米 国 ●<br />

Johnson & Johnson 米 国 ●<br />

Novo Nordisk 欧 州 (デンマーク) ●<br />

Volkswagen 欧 州 (ドイツ) ●<br />

SAP 欧 州 (ドイツ) ●<br />

LANXESS 欧 州 (ドイツ) ●<br />

国 内 企 業<br />

花 王 日 本 ●<br />

武 田 薬 品 工 業 日 本 ●<br />

東 芝 日 本 ●<br />

TOTO 日 本 ●<br />

トヨタ 自 動 車 日 本 ●<br />

( 注 1) 国 内 企 業 は 五 十 音 順 で 記 載 している。<br />

( 注 2) 匿 名 を 条 件 にヒアリングを 実 施 したところは、ヒアリング 実 施 欄 に「●」を 記 載 して<br />

いない。<br />

5 同 社 は 証 券 会 社 であるが、GS Sustain は 独 自 の ESG 調 査 を 実 施 、 運 用 機 関 に 情 報 提 供 していることからここに 分 類 し<br />

た。<br />

6 自 社 において 資 産 運 用 ビジネスも 行 っているが、 独 自 の ESG 調 査 を 行 っていることからここに 分 類 した。<br />

5


Bloomberg<br />

名 称<br />

Goldman Sachs<br />

GS Sustain<br />

MSCI ESG Research<br />

As You Sow<br />

CalPERS(カリフォルニア<br />

州 職 員 退 職 年 金 基 金 )<br />

CalSTRS(カリフォルニア<br />

州 教 職 員 退 職 年 金 基 金 )<br />

ニューヨーク 市 年 金 基 金<br />

ATP(デンマーク 労 働 市 場<br />

付 加 年 金 )<br />

BlackRock<br />

Allianz Global Investors<br />

図 表 - 3 ヒアリング 実 施 者 一 覧<br />

ヒアリング 者<br />

Barbara Pomfret 氏 (Bloomberg Industries ESG Analyst)<br />

Hideki Suzuki 氏 (Global Data ESG Analyst)<br />

黒 崎 美 穂 氏 (ESG Analyst)<br />

堀 江 伸 氏 ( 投 資 調 査 部 門 統 括 マネージング・ディレクター)<br />

クリス・ビルバーン 氏 ( 投 資 調 査 部 ヴァイス・プレジデント)<br />

Olga Emelianova 氏 (ESG Research)<br />

Sarah Greenberg 氏 (ESG Sales)<br />

鷹 羽 美 奈 子 氏 (シニア ESG アナリスト)<br />

Andrew Behar 氏 (CEO)<br />

Carrie Douglas Fong 氏 (Investment Office)<br />

Craig Rhines 氏 (Global Governance)<br />

Mary Hartman Morris 氏 (Corporate Governance, Global Equity)<br />

Margerie Reyes 氏 (Investment Officer in Global Governance)<br />

Brian Rice 氏 (Corporate Governance, Portfolio Manager)<br />

Michael Garland 氏 (Assistant Comptroller, Environmental,<br />

Social and Governance)<br />

Johan Mellerup 氏 (Analyst,Investments)<br />

江 良 明 嗣 氏 ( 運 用 部 門 コーポレートガバナンス・チーム<br />

ヴァイス・プレジデント)<br />

Adam Johnson 氏 (Vice President, Product Specialist Equities, Global<br />

Sustainability & EcoTrends)<br />

Cisco Systems Teri Jenkins Treille 氏 (CSR 部 門 )<br />

Johnson & Johnson<br />

Novo Nordisk<br />

Volkswagen<br />

SAP<br />

LANXESS<br />

花 王<br />

Shaun Mickus 氏 (Corporate Citizenship & Sustainability Team)<br />

Yodit Kifle 氏 (Corporate Citizenship & Sustainability Team)<br />

Stan Panasewicz 氏 (Investor Relations)<br />

Susanne Stormer 氏 (Vice President, Corporate Sustainability Global<br />

Stakeholder Engagement)<br />

Jseper Lindhardt 氏 (Manager, Corporate Sustainability)<br />

Anne Gadegaard 氏 (Programme Director, Corporate Sustainability)<br />

Prof. Dr. Gerhard Prätorius 氏<br />

(Head of Coordination CSR and Sustainability)<br />

Dr. Peter Graf 氏 (Chief Sustainability Officer(CSO))<br />

Dr. Silke Jansen 氏 (Vice President Public Affairs Germany &<br />

Education Initiatives Corporate Communications)<br />

Christiane Müller 氏 (Vice President, Internal Communications and<br />

Corporate Responsibility Corporate Communications)<br />

Gabriela Garcia Villalpando 氏 (Corporate Responsibility Management<br />

Corporate Communications)<br />

横 見 瀬 薫 氏 (コーポレートコミュニケーション 部 門<br />

サステナビリティ 推 進 部 部 長 )<br />

竹 内 淑 雄 氏 ( 経 営 戦 略 室 IR グループ マネジャー)<br />

市 川 裕 佳 子 氏 (コーポレートコミュニケーション 部 門<br />

サステナビリティ 推 進 部 )<br />

6


武 田 薬 品 工 業<br />

東 芝<br />

TOTO<br />

トヨタ 自 動 車<br />

金 田 晃 一 氏 (コーポレート・コミュニケーション 部 (CSR)<br />

シニアマネジャー)<br />

圭 室 俊 雄 氏 (コーポレート・コミュニケーション 部 ( 広 報 ・IR)<br />

IR 担 当 主 席 部 員 )<br />

大 森 圭 介 氏 (CSR 推 進 室 室 長 )<br />

佐 々 木 智 子 氏 (CSR 推 進 室 参 事 )<br />

林 公 平 氏 ( 広 報 ・IR 室 IR 担 当 部 長 )<br />

伊 藤 一 穂 氏 ( 広 報 ・IR 室 IR 担 当 参 事 )<br />

坂 田 明 子 氏 ( 広 報 部 東 京 広 報 第 二 グループグループリーダー)<br />

山 根 伸 弘 氏 (ESG 推 進 部 ESG 企 画 グループグループリーダー)<br />

藤 井 郁 乃 氏 ( 総 合 企 画 部 CSR 室 長 担 当 部 長 )<br />

木 村 美 保 子 氏 ( 総 合 企 画 部 CSR 室 推 進 グループ 主 任 )<br />

7


ESG<br />

情 報 提 供 機 関<br />

図 表 - 4 文 献 調 査 項 目 一 覧<br />

A. 組 織 概 要<br />

概 要<br />

情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )<br />

B. 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容<br />

遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等<br />

ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的<br />

C. 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

コーポレートガバナンス 側 面 の 基 準<br />

環 境 側 面 の 基 準<br />

社 会 側 面 の 基 準<br />

ネガティブ・スクリーニングにおける 評 価 基 準<br />

D. 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

ポジティブ 側 面 による 評 価 の 事 例<br />

ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング)の 事 例<br />

エンゲージメントの 事 例<br />

E. 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )<br />

社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )<br />

アセット・オー<br />

ナー/<br />

運 用 機 関<br />

A. 組 織 概 要<br />

概 要<br />

資 産 ポートフォリオの 状 況<br />

B. 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

ESG 投 資 方 針 の 内 容<br />

遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等<br />

ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的<br />

C. 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )<br />

投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの<br />

評 価 )<br />

D. 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

ポジティブ 側 面 による 評 価 の 事 例<br />

ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメ<br />

ント)の 事 例<br />

E. 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )<br />

社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )<br />

8


海 外 企 業<br />

A.サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略<br />

サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略 の 内 容<br />

B. 投 資 家 に 向 けた ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み<br />

ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み( 足 下 ・ 今 後 )<br />

ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 取 り 組 み( 足 下 ・ 今 後 )<br />

ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 事 例 ( 過 去 の 事 例 )<br />

ESG<br />

情 報 提 供 機 関<br />

図 表 - 5 ヒアリング 調 査 項 目 一 覧<br />

A.ESG 評 価 概 要<br />

投 資 家 向 けに ESG 情 報 提 供 を 開 始 した 背 景<br />

ESG サービスの 概 要<br />

ESG の 具 体 的 な 評 価 手 法 および 評 価 項 目<br />

投 資 家 が 重 視 する 項 目<br />

B.ESG 投 資 家 と 企 業 のコミュニケーション: 報 告 書 における ESG 要 因 開 示<br />

の 取 り 組 み<br />

投 資 家 にとって 有 益 な 開 示 ( 網 羅 性 かマテリアリティか)<br />

現 状 の 企 業 の 情 報 開 示 に 対 する 意 見 ( 日 本 企 業 も 含 む)<br />

ESG 情 報 開 示 に 関 する 国 際 的 な 枠 組 みに 対 する 意 見<br />

C.ESG 投 資 家 と 企 業 のコミュニケーション: 直 接 対 話<br />

ESG 投 資 家 と 企 業 の 直 接 対 話 に 対 する 意 見<br />

アセット・オー<br />

ナー/<br />

運 用 機 関<br />

A. 重 要 視 する ESG 要 因<br />

企 業 をポジティブに 評 価 する 場 合<br />

企 業 をネガティブに 評 価 する 場 合<br />

重 要 視 する 情 報 ソース<br />

B.ESG 投 資 家 と 企 業 のコミュニケーション: 報 告 書 における ESG 要 因 開 示<br />

の 取 り 組 み<br />

投 資 家 にとって 有 益 な 開 示 ( 網 羅 性 かマテリアリティか)<br />

現 状 の 企 業 の 情 報 開 示 に 対 する 意 見 ( 日 本 企 業 も 含 む)<br />

ESG 要 因 開 示 に 関 する 国 際 的 な 枠 組 みに 対 する 意 見<br />

C.ESG 投 資 家 と 企 業 のコミュニケーション: 直 接 対 話 の 取 り 組 み<br />

ESG 投 資 家 向 けの IR(ロードショー)の 有 益 性<br />

エンゲージメントに 具 体 的 内 容 、 実 施 事 例<br />

海 外 企 業<br />

A.サステナビリティ 戦 略<br />

事 業 戦 略 に 統 合 する 際 の 社 内 における 合 意 形 成 の 図 り 方<br />

サステナビリティ 戦 略 の 実 施 から 得 られた 効 果<br />

B.サステナビリティ 戦 略 の 情 報 開 示<br />

ESG 投 資 家 向 けの 情 報 開 示 の 工 夫<br />

ESG 評 価 機 関 等 からの 情 報 開 示 要 請 に 対 する 対 応 方 針<br />

ESG 情 報 開 示 に 関 する 国 際 的 な 枠 組 みに 対 する 意 見<br />

9


C. 投 資 家 との 直 接 対 話<br />

サステナビリティ 戦 略 に 関 する 直 接 対 話 の 機 会 の 有 無 / 具 体 的 効 果<br />

ESG 投 資 家 と 直 接 対 話 した 事 例<br />

国 内 企 業<br />

A.サステナビリティ 戦 略 の 情 報 開 示<br />

ESG 投 資 家 向 けの 情 報 開 示 の 工 夫<br />

ESG 評 価 機 関 等 からの 情 報 開 示 要 請 に 対 する 対 応 方 針<br />

ESG 情 報 開 示 に 関 する 国 際 的 な 枠 組 みに 対 する 意 見<br />

B. 投 資 家 との 直 接 対 話<br />

サステナビリティ 戦 略 に 関 する 直 接 対 話 の 機 会 の 有 無 / 具 体 的 効 果<br />

ESG 投 資 家 と 直 接 対 話 した 事 例<br />

C. 日 本 企 業 全 体 が ESG 投 資 家 から 高 く 評 価 されるための 課 題<br />

必 要 な 取 り 組 み<br />

10


. 2 海 外 ESG 投 資 家 等 の ESG 投 資 実 践 手 法 及<br />

び 企 業 の 非 財 務 情 報 に 係 る 評 価 基 準 の 分 析<br />

2.1 ESG 情 報 の 一 次 利 用 者<br />

2.1.1 ESG 情 報 提 供 機 関 の 役 割<br />

○ 主 に 国 連 責 任 投 資 原 則 (PRI) 策 定 以 降 、メインストリームの 投 資 家 による ESG 投 資 の<br />

採 用 ・ 拡 大 を ESG 情 報 提 供 機 関 が 下 支 えしてきた。<br />

○ ESG 情 報 提 供 機 関 の ESG 要 因 の 考 え 方 は、ESG 投 資 家 に 強 い 影 響 力 を 与 えている。<br />

○ ESG 情 報 や 分 析 結 果 は、 顧 客 であるアセット・オーナー/ 運 用 機 関 のニーズに 合 わせて<br />

様 々な 形 で 提 供 されている。<br />

メインストリーム 化 が 進 む ESG 投 資<br />

ESG 投 資 は、2006 年 の PRI 7 策 定 以 降 、メインストリーム 化 が 急 速 に 進 みつつある。それ<br />

までの 社 会 的 責 任 投 資 は、 一 部 の 倫 理 的 な 投 資 家 の 関 心 の 領 域 を 出 ず、 投 資 家 の 倫 理 的 な<br />

価 値 観 を 反 映 した 投 資 であった。しかし、PRI では、 投 資 ポートフォリオのリスクリターン<br />

に 関 わるからこそ ESG 要 因 を 考 慮 すべき、という 姿 勢 が 強 調 された。そして、 投 資 家 は 長<br />

期 的 な 投 資 ポートフォリオの 価 値 を 毀 損 しないため、「 受 託 者 責 任 の 範 囲 内 」で ESG 要 因 を<br />

考 慮 すべきとの 整 理 が 行 われた。<br />

こうした 考 え 方 は、 一 部 の 倫 理 的 な 投 資 家 だけでなく、 一 般 的 な 投 資 家 の 賛 同 も 得 るこ<br />

とができた。その 結 果 、PRI 策 定 を 契 機 に、 社 会 的 責 任 投 資 は ESG 投 資 として 多 くの 投 資<br />

家 の 間 で 急 速 に 普 及 した。 地 域 差 はあるものの、2012 年 時 点 において Global Sustainable<br />

Investment Alliance(GSIA)の 集 計 によると、ESG 投 資 は 世 界 の 機 関 投 資 家 が 運 用 する 運 用<br />

資 産 残 高 の 21.8%を 占 めているとされる 8 。<br />

7 PRI は、 国 連 環 境 計 画 金 融 イニシアティブ(UNEP-FI)と 国 連 グローバル・コンパクトの 共 同 イニシアティブとして、<br />

2006 年 に 発 表 された。<br />

8 GSIA による 集 計 は、 各 地 域 の ESG 投 資 の 普 及 ・ 啓 発 団 体 である 社 会 的 責 任 投 資 フォーラム(SIF)が、 各 々の 地 域 で<br />

設 問 票 調 査 等 により 実 施 した ESG 投 資 に 関 する 調 査 結 果 を 統 合 したものである。 集 計 されている SIF は、Eurosif( 欧 州 )、<br />

US SIF Foundation( 米 国 )、Social Investment Organization(カナダ)、Responsible Investment Association Australia(オース<br />

トラリア/ニュージーランド)、ASrIA(アジア 除 く 日 本 )、NPO 法 人 社 会 的 責 任 投 資 フォーラム( 日 本 ) 及 び AfriaSIF.org<br />

(アフリカ)である。<br />

11


図 表 - 6 地 域 別 の ESG 投 資 比 率<br />

地 域<br />

ESG 投 資 比 率<br />

欧 州 49.0%<br />

アフリカ 35.2%<br />

カナダ 20.2%<br />

オーストラリア/ニュージーランド 18.0%<br />

米 国 11.2%<br />

アジア 除 く 日 本 2.9%<br />

日 本 0.2%<br />

全 世 界 21.8%<br />

( 資 料 ) GSIA より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

ESG 投 資 の 手 法 は 主 に 図 表 - 7 の 6 つあり、PRI 策 定 以 降 伸 びが 著 しいのは、「インテグレ<br />

ーション」「 規 範 に 基 づくスクリーニング」「エンゲージメント」である。<br />

ESG 投 資 の 手 法<br />

ネガティブ・<br />

スクリーニング<br />

ベスト・イン・クラス<br />

テーマ 投 資<br />

規 範 に 基 づく<br />

スクリーニング<br />

エンゲージメント<br />

インテグレーション<br />

図 表 - 7 ESG 投 資 の 手 法<br />

具 体 的 な 内 容<br />

タバコ、ギャンブル、ポルノなどの 特 定 業 種 など、 価 値 観 に 基 づ<br />

いて 特 定 の 銘 柄 や 業 種 を 排 除 する 手 法 。 多 地 域 で 採 用 されている<br />

手 法 で、 世 界 の ESG 投 資 による 運 用 資 産 総 額 の 61% 程 度 。<br />

業 種 内 で 相 対 的 に ESG 関 連 の 取 り 組 みの 進 んだ 企 業 を 抽 出 する 手<br />

法 。 世 界 の ESG 投 資 による 運 用 資 産 総 額 の 7% 程 度 。<br />

環 境 テクノロジー、 持 続 可 能 な 農 業 などの 環 境 関 連 や、マイクロ<br />

ファイナンスなどの 社 会 関 連 のサステナビリティテーマに 関 連 し<br />

た 銘 柄 へ 投 資 する 手 法 。 一 部 はインパクトインベストメントなど<br />

とも 言 われる。 世 界 の ESG 投 資 による 運 用 資 産 総 額 の 1% 程 度 。<br />

国 連 グローバル・コンパクトなどの 人 権 ・ 労 働 ・ 環 境 ・ 腐 敗 防 止<br />

などに 関 する 国 際 行 動 規 範 などの 国 際 的 に 合 意 された 規 範 に 基 づ<br />

くスクリーニング。 対 話 を 行 う 場 合 もあれば、 排 除 する 場 合 もあ<br />

る。 実 践 するのは 欧 州 の 投 資 家 がほとんどで、 世 界 の ESG 投 資 に<br />

よる 運 用 資 産 総 額 の 22% 程 度 。<br />

ESG に 関 連 した 取 り 組 みの 改 善 を 促 すために、 企 業 に 直 接 働 きか<br />

ける 手 法 。 投 資 家 同 士 が 協 働 して 行 う 場 合 もある。 企 業 に 非 公 式<br />

の 場 で 働 きかける 場 合 もあれば、 株 主 提 案 や 議 決 権 行 使 などの 公<br />

式 の 場 で 働 きかける 場 合 もある。 手 法 は 地 域 により 差 がある。 多<br />

地 域 で 採 用 されている 手 法 であり、 世 界 の ESG 投 資 による 運 用 資<br />

産 総 額 の 35% 程 度 。<br />

既 存 の 財 務 分 析 や 投 資 意 思 決 定 プロセスに ESG 要 因 を 組 み 込 む 手<br />

法 。2006 年 の PRI 策 定 以 降 出 現 し、ここ 数 年 で 最 も 発 展 してきた<br />

手 法 の 1 つ。 欧 州 、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド<br />

などで 多 く 採 用 されており、 世 界 の ESG 投 資 による 運 用 資 産 総 額<br />

12


の 46% 程 度 。<br />

( 注 )2012 年 の 世 界 の ESG 投 資 による 運 用 資 産 総 額 (13 兆 5680 億 米 ドル)に 占 める 比 率 の 合<br />

計 値 が 100%を 上 回 っているが、 複 数 の 手 法 を 同 時 に 採 用 する 運 用 資 産 が 重 複 計 上 されているこ<br />

とによるものである。<br />

( 資 料 ) GSIA、Eurosif 資 料 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

インベストメント・チェーンにおける ESG 情 報 提 供 機 関 の 役 割<br />

「インテグレーション」は、 企 業 の 収 益 獲 得 機 会 やリスク 面 に 関 係 する ESG 要 因 を 既 存<br />

の 財 務 分 析 や 投 資 意 思 決 定 プロセスにおいて 考 慮 する 手 法 である。そのため、 企 業 の 収 益<br />

獲 得 機 会 やリスク 面 に 関 係 する ESG 要 因 を 特 定 していく 必 要 がある。 特 定 の 業 種 ・ 業 態 を<br />

排 除 する「ネガティブ・スクリーニング」よりも、ESG 要 因 に 対 するより 高 度 な 知 識 が 求<br />

められる。「 規 範 に 基 づくスクリーニング」も 同 様 で、 規 範 に 抵 触 しているか 否 かの 情 報 は<br />

企 業 や 公 的 機 関 が 発 表 するものではないことから、 投 資 家 が 関 連 情 報 を 独 自 に 収 集 し、 規<br />

範 に 抵 触 しているか 否 かの 判 断 を 行 う 必 要 がある。<br />

PRI 策 定 以 降 、より 一 般 的 な 投 資 家 が ESG 投 資 を 実 践 するようになり 主 流 化 が 進 んでき<br />

たことは、ESG 要 因 に 対 する 高 度 な 知 識 を 持 たない 投 資 家 も ESG 投 資 を 実 践 するようにな<br />

ってきたことを 意 味 する。その 一 方 で、 支 持 を 得 てきた 手 法 は、ESG 要 因 に 対 するより 高<br />

度 な 知 識 ・ 多 くの 情 報 が 求 められるものであった。そのギャップを 埋 める 役 割 を 果 たして<br />

きたのは、ESG 要 因 に 対 するより 高 度 な 知 識 ・ 多 くの 情 報 を 持 つ ESG 情 報 提 供 機 関 である。<br />

実 際 、ヒアリング 調 査 においても、そうした 意 見 が 聞 かれた。<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 の 役 割<br />

<br />

ESG と 投 資 判 断 の 世 界 は、 想 像 以 上 に 分 断 されている。 投 資 家 は ESG のことに<br />

ついて、そもそも 良 く 知 らないし、 専 門 家 でもない。だからこそ、ESG 情 報 提<br />

供 機 関 にアウトソースしている。( 運 用 機 関 )<br />

<br />

倫 理 的 な 価 値 観 を 持 つ 投 資 家 は、 投 資 家 自 身 がどのイシューが 重 要 かを 決 める。<br />

最 近 米 国 でも 主 流 になりつつあるインテグレーションを 実 践 する 投 資 家 は、その<br />

業 種 で 重 要 な(マテリアルな) 課 題 を 重 視 する。 投 資 家 自 身 がマテリアルな 課 題<br />

をよく 知 っている 場 合 もあれば、そうでない 場 合 もある。そうでない 場 合 には、<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 がそれを 伝 える 役 割 を 担 っている。 大 手 金 融 機 関 も 含 め、イ<br />

ンテグレーションを 実 施 している 金 融 機 関 は 増 えている。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

13


さらに、ESG 情 報 提 供 機 関 による 企 業 の ESG 要 因 に 対 するレーティングやスコアには、<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 独 自 のマテリアリティの 考 え 方 が 反 映 されていることから 9 、ESG 情 報 提<br />

供 機 関 からの 情 報 提 供 を 受 ける 形 で ESG 投 資 の 採 用 と 拡 大 を 進 めてきたメインストリーム<br />

の 投 資 家 の 意 思 決 定 に、 事 実 上 、ESG 情 報 提 供 機 関 のマテリアリティの 考 え 方 が、 強 い 影<br />

響 力 を 与 えている 可 能 性 が 大 きいと 考 えられる。<br />

多 様 な 形 で 提 供 される ESG 情 報<br />

図 表 - 8 のように、ESG 情 報 提 供 機 関 は ESG 投 資 家 を 中 心 とする 多 数 の 顧 客 を 持 つ。<br />

図 表 - 8 ESG 情 報 提 供 機 関 の 情 報 提 供 先<br />

本 拠 地 機 関 名 情 報 提 供 先<br />

米 国 Bloomberg 既 存 ユーザーのうち、8000 近 くが ESG 情 報 を 利 用<br />

米 国<br />

MSCI<br />

ESG Research<br />

15 兆 ドルの 資 産 規 模 を 持 つ 600 の 投 資 家 (うち 60 のアセット・<br />

オーナー)からの 支 持 を 得 る<br />

欧 州 CDP 署 名 する 投 資 家 は 700 以 上 、 総 資 産 残 高 は 87 兆 円 を 超 える<br />

欧 州 Oekom Research 100 以 上 の 金 融 サービス 機 関<br />

欧 州 RepRisk 銀 行 18、 年 金 基 金 5 社 、 運 用 機 関 17 社 など<br />

欧 州 RobecoSAM 25 の 運 用 機 関 等<br />

欧 州 Trucost 企 業 、 投 資 家 、 政 府 機 関 、 大 学 など 90 機 関<br />

( 注 ) 調 査 研 究 の 対 象 機 関 であっても、データが 確 認 できない 場 合 は 表 に 含 めていない<br />

( 資 料 ) 各 機 関 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 は、ESG 投 資 家 向 けに ESG 情 報 や、 独 自 の 視 点 に 基 づく 評 価 結 果 を 提<br />

供 するだけでなく、 様 々な 分 析 ツールも 提 供 している。<br />

例 えば、MSCI ESG Research の 提 供 する「MSCI ESG Portfolio Analytics」では、ポートフ<br />

ォリオの ESG 特 性 をベンチマークと 比 較 することが 可 能 である。<br />

9 ESG 情 報 提 供 機 関 の 多 くは 企 業 の ESG 情 報 を 網 羅 的 に 調 査 し、 企 業 の ESG 要 因 に 対 するレーティングやスコアの 算<br />

出 を 行 っている。 企 業 が 属 する 業 種 や 業 態 とそれに 対 応 するマテリアリティの 考 え 方 に 応 じて、レーティングやスコア<br />

に 対 する ESG 要 因 の 寄 与 度 (ウェイト)を 調 整 している 場 合 が 多 い( 主 要 な ESG 情 報 提 供 機 関 の ESG 評 価 の 目 的 ・ 視<br />

点 は 2.1.2 参 照 )。<br />

14


図 表 - 9 MSCI ESG Portfolio Analytics<br />

( 資 料 )MSCI ESG Research ホームページより 抜 粋<br />

また、Bloomberg の 提 供 する「Carbon Risk Valuation Tool」では、 石 油 やガスの 保 有 量 が 頭<br />

打 ちになった 場 合 に 発 生 する 座 礁 資 産 (Stranded Assets)の 影 響 度 合 を 分 析 することが 可 能<br />

である。 具 体 的 には、 石 油 価 格 切 り 下 げなどの 5 つのシナリオを 想 定 し、それぞれが 実 現<br />

した 場 合 の 株 価 などへの 影 響 度 を 計 測 している。<br />

図 表 - 10 Bloomberg Carbon Risk Valuation Tool<br />

( 資 料 )Bloomberg ホームページより 抜 粋<br />

ESG 投 資 家 の 多 様 なニーズに 応 えるべく、リスク 分 析 やリスク 管 理 など、 様 々な 目 的 に<br />

15


応 じたツールが 提 供 されている。 多 様 な ESG 投 資 を 実 践 する 環 境 は 十 分 に 整 備 されている<br />

といえる。<br />

2.1.2 ESG 評 価 の 目 的 ・ 視 点<br />

○ ESG 情 報 提 供 機 関 の 評 価 の 目 的 は、 投 資 におけるリスク 管 理 に 資 することが 最 も 多 い。<br />

○ 全 世 界 の 企 業 を 調 査 対 象 とし、 国 の 中 で 企 業 を 比 較 するのではなく、 同 一 セクター 内 の<br />

企 業 をグローバルに 比 較 するところが 大 半 を 占 める。<br />

ESG 評 価 の 目 的 ・ESG 要 因 の 捉 え 方<br />

各 ESG 情 報 提 供 機 関 の、ESG 評 価 を 実 施 する 目 的 ・ESG 要 因 の 捉 え 方 は 図 表 - 11 のとお<br />

りである。 本 調 査 研 究 の 調 査 対 象 機 関 の 中 では、 評 価 の 目 的 ・ESG 要 因 の 捉 え 方 として、<br />

多 くは、ESG 要 因 をリスクもしくは 事 業 機 会 と 捉 えていた。<br />

さらに、 本 調 査 研 究 の 調 査 対 象 機 関 においては、ESG 要 因 は 事 業 機 会 よりもむしろリス<br />

クであると 捉 える 機 関 の 方 がやや 多 い。 実 際 、ヒアリング 調 査 でも、ESG 要 因 は 株 価 上 昇<br />

に 貢 献 するものではなく、むしろ 下 落 リスクを 防 ぐもの、テールリスク 10 を 把 握 するもの、<br />

といった 指 摘 があった。<br />

図 表 - 11 ESG 情 報 提 供 機 関 の ESG 評 価 の 目 的 ・ESG 要 因 の 捉 え 方<br />

本 拠 地 機 関 名 ESG 評 価 を 実 施 する 目 的 ・ESG 要 因 の 捉 え 方<br />

米 国<br />

米 国<br />

米 国<br />

欧 州<br />

Bloomberg<br />

GS Sustain<br />

MSCI ESG<br />

Research<br />

CDP<br />

ESG に 限 らず、 収 集 した 情 報 に 独 自 の 定 性 判 断 を 付 与 すること<br />

は 行 っていない。あくまでも 中 立 的 な 立 場 での 情 報 提 供 を 行 う<br />

という 姿 勢 を 持 つ。<br />

ESG 要 因 は、 業 界 が 直 面 する 環 境 、 社 会 、ガバナンス 問 題 に 対<br />

する 各 社 の 対 応 の 有 効 性 を 計 測 するものであり、 経 営 の 質 を 示<br />

しているとする。ESG のみの 評 価 では 市 場 をアウトパフォーム<br />

できないが、 他 の 要 素 を 追 加 することでアウトパフォームする<br />

ことが 可 能 になるとする。<br />

ESG 課 題 対 応 の 巧 拙 は、 将 来 の 予 期 せぬコスト 負 担 を 予 測 する<br />

ものであるとの 考 え 方 を 基 本 とする。 予 期 せぬコストには、 罰<br />

金 、 訴 訟 費 用 、オペレーションコスト、 操 業 許 可 取 得 コスト、<br />

レピュテーション 回 復 コストなどが 含 まれる。<br />

気 候 変 動 、 水 不 足 、 洪 水 、 公 害 、 森 林 破 壊 は、 投 資 家 にとって<br />

重 要 なリスクと 機 会 を 見 極 める 要 素 。CDP のデータを 通 じて、<br />

投 資 家 は、 説 明 責 任 と 透 明 性 に 優 れた 企 業 を 見 極 め、 長 期 的 な<br />

投 資 判 断 を 行 うことが 可 能 とする。<br />

欧 州 FTSE4Good FTSE4Good Index は、 投 資 家 およびアセット・マネジャーが、<br />

10 テールリスクとは、 発 生 確 率 は 小 さいものの、 発 生 すると 多 大 なる 損 失 をもたらすリスクのことを 指 す。<br />

16


社 会 的 責 任 の 世 界 基 準 を 満 たす 企 業 の 特 定 ・ベンチマーク、お<br />

よび 効 果 的 な 投 資 を 行 うための 判 断 指 標 として 活 用 し、 企 業 が<br />

世 界 基 準 に 合 わせた 質 の 高 い 責 任 ある 事 業 を 慣 行 ・ 促 進 するこ<br />

とを 目 指 す。<br />

欧 州 RepRisk<br />

透 明 性 確 保 およびリスク・マネジメントを 通 じた 顧 客 の 長 期 的<br />

な 成 功 に 貢 献 することをミッションに 掲 げる。<br />

欧 州 RobecoSAM<br />

様 々な 資 源 の 制 約 が 増 える 中 、 持 続 可 能 な 経 営 は 長 期 的 なステ<br />

ークホルダーの 価 値 を 形 成 するのに 重 要 であり、また、 企 業 の<br />

競 争 力 を 評 価 する 上 で 重 要 なリスクであり 機 会 でもある、とす<br />

る。<br />

欧 州 Trucost<br />

企 業 ・ 投 資 家 ・ 政 府 ・アカデミックへのデータ 提 供 を 通 して、<br />

現 在 の 企 業 活 動 や 製 品 、サプライチェーンや 投 資 活 動 が 自 然 資<br />

本 に 依 存 している 状 況 への 理 解 を 広 げ、 日 々 増 加 する 環 境 コス<br />

トのリスク・マネジメントと、より 持 続 可 能 なビジネスモデル<br />

の 構 築 を 促 進 することを 目 指 している。<br />

( 注 ) 調 査 研 究 の 対 象 機 関 であっても、データが 確 認 できない 場 合 は 表 に 含 めていない<br />

( 資 料 ) 各 機 関 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

ESG リスクの 計 測 方 法<br />

ESG 要 因 をリスクの 観 点 で 捉 える 場 合 、その 計 測 方 法 は 様 々である。<br />

例 えば、MSCI ESG Research は、リスクが 顕 在 化 する 前 に、 潜 在 リスクを 把 握 することを<br />

試 みている。 客 観 的 なデータ 分 析 などをもとに、 業 種 毎 に 最 もインパクトのある ESG 要 因<br />

を 特 定 。その 要 因 に 対 するエクスポージャーと 管 理 するマネジメント 力 の 両 面 により 評 価<br />

を 行 っている。<br />

一 方 、RepRisk は、 顕 在 化 しつつあるリスクを 把 握 することを 試 みている。 企 業 に 関 する<br />

事 業 プロジェクトや 事 件 ・ 事 故 などのネガティブ 情 報 を、13 の 言 語 圏 ( 英 ・ 仏 ・ 独 ・ 西 ・<br />

葡 ・ 露 ・ 中 ・ 韓 ・ 日 ・デンマーク・フィンランド・ノルウェー・スウェーデン) 及 び 700<br />

以 上 の 大 手 新 聞 社 によるニュース、NGO のウェブサイト、ニュースレター、ニュース、ブ<br />

ログなどから 情 報 収 集 。ネガティブ 情 報 源 の 影 響 力 、メディアにおける 露 出 頻 度 、そこで<br />

取 り 上 げられているイシューの 重 大 性 などを 考 慮 し、リスクの 数 値 化 を 行 っている。<br />

調 査 のカバレッジ<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 毎 にカバレッジは 異 なるが、 概 ね 全 世 界 で 1000 社 以 上 を 網 羅 し、グロ<br />

ーバルに 比 較 が 可 能 なデータを 揃 えている。 日 本 企 業 のカバレッジについては、 公 開 情 報<br />

から 確 認 する 限 り 500 社 程 度 以 内 としているところが 多 いことから、TOPIX500 に 該 当 する<br />

ような 時 価 総 額 が 特 に 大 きい 企 業 が、 海 外 の ESG 情 報 提 供 機 関 のカバレッジの 大 半 を 占 め<br />

ると 考 えられる。ただし、 企 業 以 外 の 情 報 (メディアや NGO 等 )を 情 報 ソースとする RepRisk<br />

については、カバレッジが 他 の 機 関 よりも 一 桁 大 きいことから、 日 本 企 業 についても 情 報<br />

が 存 在 する 限 りにおいて、 上 場 企 業 の 多 くがカバレッジに 含 まれていると 考 えられる。<br />

17


図 表 - 12 ESG 情 報 提 供 機 関 のカバレッジ<br />

本 拠 地 機 関 名 カバレッジ<br />

米 国 Bloomberg 52 か 国 5000 社 以 上<br />

米 国 GS Sustain 全 世 界 1400 社 程 度<br />

米 国<br />

MSCI ESG Research<br />

先 進 国 、 新 興 国 合 わせて 約 5000 社 、<br />

うち 日 本 企 業 は MSCI World に 組 み 入 れられてい<br />

る 約 300 社<br />

欧 州<br />

CDP<br />

全 世 界 6000 社 以 上 、うち 気 候 変 動 質 問 書 の 対 象<br />

となる 日 本 企 業 数 は 500 社<br />

欧 州<br />

FTSE4Good<br />

全 世 界 2800 社 程 度 (FTSE All-World に 含 まれる<br />

企 業 )、FTSE Developed Index Series の 日 本 企 業<br />

対 象 数 459 社 (2033 社 中 )<br />

欧 州 Oekom Research 56 カ 国 3000 社<br />

欧 州<br />

RepRisk<br />

全 世 界 40000 社<br />

( 先 進 国 ・ 新 興 国 市 場 の 上 場 ・ 非 上 場 企 業 )<br />

欧 州<br />

RobecoSAM<br />

全 世 界 3300 社 、うち 日 本 企 業 は 352 社 (DJSI 選<br />

定 のための 日 本 企 業 調 査 母 集 団 )<br />

欧 州 Trucost 全 世 界 4500 社<br />

( 注 ) 日 本 企 業 のカバレッジについては、 公 開 情 報 から 判 明 したもののみを 記 載 している<br />

( 資 料 ) 各 機 関 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

2.1.3 企 業 の 非 財 務 情 報 に 係 る 評 価 基 準 ・ 情 報 ソース<br />

○ 環 境 に 特 化 した 評 価 基 準 を 採 用 するところもあるが、 多 くは 環 境 ・ 社 会 ・ガバナンスに<br />

対 応 した 網 羅 的 な 評 価 基 準 を 置 いている。<br />

○ 社 会 面 の 取 り 組 みに 対 する 投 資 家 の 理 解 は 十 分 に 進 んでいるとはいえないが、 中 でもサ<br />

プライチェーン 問 題 や 取 締 役 におけるダイバーシティへの 関 心 は 高 い。<br />

○ アンケート 方 式 によって 調 査 を 行 っている 機 関 もあるが、 自 ら 公 開 情 報 を 調 査 し、 必 要<br />

な 情 報 の 取 得 を 行 っているところも 多 い。<br />

○ CSR 報 告 書 などの 企 業 が 開 示 する 情 報 だけでなく、 他 の ESG 情 報 提 供 機 関 や、メディ<br />

ア・NGO からの 情 報 など、 情 報 ソースは 多 様 化 の 傾 向 にある。<br />

主 な 評 価 基 準<br />

各 機 関 の 評 価 基 準 は、それぞれに 特 色 があり 多 様 である。より 企 業 の 責 任 性 を 重 視 した<br />

評 価 基 準 を 設 定 している 機 関 もあれば、ブランドマネジメントのように、 企 業 価 値 創 造 に<br />

向 けた 取 り 組 みを 広 く 評 価 基 準 に 組 み 込 んでいる 機 関 もある。 評 価 基 準 の 設 定 においては、<br />

ESG 評 価 の 目 的 ・ESG 要 因 の 捉 え 方 が 影 響 していると 考 えられる。 多 様 な 評 価 基 準 を 一 律<br />

に 比 較 するのは 困 難 であるものの、 環 境 (E)・ 社 会 (S)・ガバナンス(G)のそれぞれ 基 本<br />

的 な 項 目 による 一 覧 表 は 以 下 のとおりである。<br />

環 境 に 特 化 した 評 価 基 準 を 採 用 するところもあるが、 多 くは 環 境 ・ 社 会 ・ガバナンスに<br />

18


対 応 した 網 羅 的 な 評 価 基 準 を 設 定 していることがわかる。<br />

11<br />

図 表 - 13 評 価 基 準 一 覧<br />

G S E<br />

企<br />

業<br />

統<br />

治<br />

公<br />

正<br />

な<br />

事<br />

業<br />

慣<br />

行<br />

従<br />

業<br />

員<br />

消<br />

費<br />

者<br />

サ<br />

プ<br />

ラ<br />

イ<br />

ヤ<br />

ー<br />

コ<br />

ミ<br />

ュ<br />

ニ<br />

テ<br />

ィ<br />

環<br />

境<br />

米 国 Bloomberg ○ ○ ○ ○ ○ ○<br />

米 国 GS Sustain ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○<br />

米 国<br />

MSCI ESG<br />

Research<br />

○ ○ ○ ○ ○ ○ ○<br />

欧 州 CDP ○<br />

欧 州 FTSE4Good 12 ○ ○ ○ ○ ○<br />

欧 州 Oekom Research ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○<br />

欧 州 RepRisk ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○<br />

欧 州 RobecoSAM ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○<br />

欧 州 Trucost ○<br />

( 資 料 ) 各 機 関 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

ESG 要 因 に 対 する 投 資 家 の 認 識<br />

こうした 評 価 項 目 に 対 する 投 資 家 の 認 識 について、 米 国 においては、E・S・G の 中 では G<br />

が 重 要 だと 認 識 する 投 資 家 が 多 く、マルチステークホルダーへの 配 慮 を 中 心 とする 社 会 面<br />

の 取 り 組 みに 対 する 理 解 は 十 分 でないとの 意 見 が 聞 かれた。<br />

投 資 家 の ESG の 要 因 に 対 する 認 識<br />

<br />

E・S・G の 中 でも、 特 に G はマテリアルな 課 題 だと、ほとんどの 投 資 家 が 認 識<br />

している。その 次 は E。マテリアルなリスクとなる 業 界 もあるし、また 規 制 も 強<br />

化 されつつある。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

環 境 ・ 社 会 の 中 では、 米 国 の(ESG 投 資 家 ではなく)メインストリーム 投 資 家<br />

にとっては、 環 境 問 題 を 解 決 するイノベーション、 貧 困 問 題 ・ 衛 生 問 題 を 解 決 す<br />

11 各 機 関 の 開 示 情 報 に 基 づくものであり、 実 際 はさらに 多 くの 評 価 基 準 を 持 っている 可 能 性 はある。<br />

12 人 権 クライテリアは「サプライヤー」「コミュニティ」とし、 贈 収 賄 クライテリアは「 公 正 な 事 業 慣 行 」とした。<br />

19


るイノベーションなどの 事 業 機 会 側 面 への 関 心 が 高 いと 考 えられる。ヨーロッパ<br />

では、 企 業 がマルチステークホルダーへの 配 慮 を 重 要 視 するが、 米 国 では 株 主 第<br />

一 の 考 えが 根 付 いており、マルチステークホルダーへの 配 慮 に 対 する 関 心 は 薄<br />

い。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

ESG 要 因 のうち、 何 が 重 要 であるかは 業 種 によって 異 なるが、ガバナンス 以 外 ではサプ<br />

ライチェーン 問 題 や 取 締 役 におけるダイバーシティへの 関 心 が 高 いとの 指 摘 があった。<br />

重 要 視 する ESG 要 因<br />

マテリアルな 課 題 は 業 種 によって 異 なる。 例 えば、 地 域 コミュニティへの 参 画 は、<br />

資 源 開 発 会 社 など、 地 域 社 会 と 資 源 を 取 り 合 うようなこともある 企 業 にとって<br />

は、 非 常 に 重 要 な 課 題 となる。 一 方 、アパレルのような 小 売 業 にとっては、 最 低<br />

賃 金 、 児 童 労 働 などの 従 業 員 の 権 利 に 関 わるイシューが 重 要 となる。(ESG 情 報<br />

提 供 機 関 )<br />

バングラデシュのビル 倒 壊 事 故 13 などもあり、サプライチェーンのリスクは 重 要<br />

だといわれる。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

紛 争 鉱 物 の 開 示 が 義 務 付 けられたこともあり、サプライチェーン 問 題 への 関 心 は<br />

高 い。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

データの 閲 覧 件 数 の 高 い 項 目 には、 女 性 役 員 比 率 、 女 性 管 理 職 比 率 、CEO や 取<br />

締 役 会 の 情 報 などが 含 まれる。ただし、 女 性 関 連 の 指 数 は、クオータ 制 の 影 響 も<br />

あり 欧 州 では 関 心 が 高 いが、 米 国 ではそこまで 高 くない 印 象 を 持 っている。<br />

(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

主 な 情 報 ソース<br />

各 機 関 の 情 報 ソース 一 覧 は、 以 下 のとおりである。アンケートを 主 な 情 報 ソースと 位 置<br />

づけている 機 関 もあるものの、 多 くは 企 業 の 開 示 情 報 を 取 得 しにいっている。<br />

13 2013 年 4 月 にバングラデシュのダッカ 近 郊 で 発 生 した 8 階 建 てビルの 倒 壊 事 故 。 縫 製 工 場 に 勤 務 する 労 働 者 等 1,129<br />

人 が 死 亡 する 大 惨 事 となった。 崩 壊 前 日 にはビルに 亀 裂 が 確 認 されていたが、 労 働 者 は 勤 務 を 継 続 させられたことが 指<br />

摘 されている。 劣 悪 な 労 働 環 境 への 批 判 に 加 え、 縫 製 工 場 に 製 造 を 委 託 していた 欧 米 のファストファッションに 対 して<br />

も、バングラデシュ 工 場 からの 搾 取 の 上 に 成 り 立 っているとして 批 判 が 高 まった。<br />

20


アンケート・ 企 業 開 示 情 報 ・インタビュー 以 外 にも、NGO の 情 報 、メディアの 情 報 など<br />

企 業 が 管 理 できない 情 報 の 利 用 も 進 んでいる。<br />

また、 気 候 変 動 などの 特 定 環 境 問 題 に 特 化 した 情 報 を 取 得 している CDP のデータや、NGO<br />

などからの 批 判 情 報 を 専 門 に 収 集 する RepRisk のデータをいくつかの ESG 情 報 提 供 機 関 が<br />

利 用 している。 特 定 領 域 ・ 特 定 ソースに 特 化 した 専 門 的 な ESG 情 報 提 供 機 関 の 情 報 を、よ<br />

り 網 羅 的 な 評 価 を 行 う ESG 情 報 提 供 機 関 が 利 用 するという 構 図 も 出 来 上 がっていることが<br />

わかる。<br />

図 表 - 14 情 報 ソース 一 覧<br />

主 な 情 報 ソース<br />

本 拠 地 機 関 名<br />

企 業 開 示 情 報 ・<br />

アンケート<br />

インタビュー<br />

その 他<br />

米 国 Bloomberg ○ CDP のデータ<br />

米 国 GS Sustain ○<br />

米 国<br />

MSCI ESG<br />

Research<br />

欧 州 CDP ○<br />

欧 州 FTSE4Good ○<br />

○<br />

国 際 機 関 、 国 際 NGO、 研 究 機<br />

関 が 公 開 するデータおよび<br />

情 報 、メディア 情 報 、CDP の<br />

データ<br />

NGO の 情 報 、メディア 情 報 、<br />

規 制 当 局 による 情 報 など<br />

欧 州 Oekom Research ○<br />

メディア 情 報 、 独 立 した 専 門<br />

家 へのインタビュー、 専 門 機<br />

関 の 評 価 など<br />

欧 州 RepRisk<br />

メディア、インターネット 上<br />

の 新 聞 記 事 ・ニュース、NGO<br />

の 情 報 など<br />

欧 州 RobecoSAM ○ RepRisk データ<br />

欧 州 Trucost ○ CDP のデータ<br />

( 資 料 ) 各 機 関 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

2.1.4 エンゲージメントを 支 援 する 機 関<br />

○ ESG に 関 連 したエンゲージメントを 支 援 する 機 関 もある。 議 決 権 行 使 に 対 するアドバイ<br />

スを 行 うこともあれば、 企 業 行 動 の 変 革 を 促 すために 投 資 家 を 組 織 するように 積 極 的 に<br />

行 動 することもある。<br />

○ 投 資 家 がエンゲージメントにおいて 何 を 重 要 視 するかという 点 に、こうした 機 関 が 影 響<br />

を 与 えている。<br />

これまで 述 べてきた ESG 情 報 提 供 機 関 以 外 にも、ESG 投 資 実 践 をサポートする 機 関 はあ<br />

る。その 1 つは、エンゲージメントを 支 援 する 機 関 である。ここでのエンゲージメントと<br />

21


は、 議 決 権 行 使 や 株 主 提 案 などの、より 公 式 なものから 非 公 式 なミーティングまでを 含 む。<br />

機 関 名<br />

ISS( 米 国 )<br />

As You Sow 14 ( 米 国 )<br />

図 表 - 15 エンゲージメントサポート 機 関 の 概 要<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

活 動 の 主 な 内 容 ・ 目 的 ・ 顧 客 数 等<br />

株 主 の 利 益 のために、 企 業 のガバナンスリスクに 対 応 することを<br />

ミッションとする。<br />

主 なサービスである 議 決 権 行 使 助 言 サービスでは、 顧 客 ( 金 融 機<br />

関 )のポートフォリオ 上 の 企 業 (100 か 国 以 上 )について 調 査 を<br />

行 い、 議 案 に 対 する 賛 否 推 奨 レポートを 提 供 する。<br />

「 社 会 性 助 言 サービス」 部 門 では、 収 益 性 と 社 会 的 価 値 の 2 つの<br />

投 資 目 的 を 持 つ ESG 投 資 家 向 けに、それが 両 立 できることを 目 的<br />

として、 議 決 権 行 使 にあたっての 特 別 基 準 を 策 定 している。<br />

機 関 投 資 家 を 中 心 に 世 界 の 1700 が 同 社 のサポートを 利 用 してい<br />

る。<br />

環 境 や 人 権 問 題 の 多 くは 企 業 の 社 会 的 責 任 が 推 進 されることによ<br />

り 解 決 されるとの 考 えに 基 づき、 企 業 の 経 営 層 に 直 接 対 話 する<br />

「investor representatives」( 投 資 家 の 代 理 人 )としての 活 動 を 行 う。<br />

下 記 の 手 法 を 用 いて、 株 主 による 企 業 へのエンゲージメント 活 動<br />

を 支 援 する。<br />

‣ 企 業 との 直 接 対 話 (dialogue with selected companies)<br />

‣ 株 主 決 議 の 提 案 (file shareholder resolutions)<br />

‣ 投 資 家 連 合 の 動 員 (mobilize investor coalitions)<br />

‣ 株 主 提 案 イニシアティブの 実 施 (conduct unique shareholder<br />

solicitation initiative)<br />

150 以 上 の 株 主 および 企 業 との 対 話 や 議 決 権 行 使 を 支 援 した 実 績<br />

を 有 する。<br />

( 資 料 ) 各 機 関 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

エンゲージメントにおいて 重 要 視 される ESG 要 因 は、 常 に 決 まっているわけではなく、<br />

時 代 とともに 変 化 する。 投 資 家 連 合 の 動 員 を 行 う As You Sow のような 団 体 が、 何 が 重 要 な<br />

ESG 要 因 かについての 慎 重 な 検 討 を 行 っており、 投 資 家 のエンゲージメントに 何 らかの 影<br />

響 を 与 えていよう。<br />

エンゲージメントサポート 機 関 が 重 要 視 する ESG 要 因<br />

<br />

現 在 注 力 しているプログラムは、 環 境 と 健 康 分 野 では「 毒 物 から 子 ども 達 を 守 る<br />

こと(Protect Our Kids from Toxins)」、エネルギー 分 野 では「 温 暖 化 防 止 (Stop<br />

Climate Change)」、 廃 棄 物 分 野 では「 省 資 源 (Resource Reduction)」。「 子 供 たち<br />

の 毒 物 からの 保 護 」では、 粉 ミルクに 遺 伝 子 組 換 作 物 (GMO)の 使 用 の 取 りや<br />

め、ナノレベルの 原 料 を 使 った 食 品 の 安 全 性 確 保 、 若 者 の 喫 煙 を 促 すような 映 像<br />

14 As You Sow は「As you sow, so you shall reap( 種 を 蒔 いたら、 刈 り 取 らねばならない= 因 果 応 報 )」の 考 え 方 から 組<br />

織 の 名 前 を 取 っている。<br />

22


( 若 者 の 喫 煙 シーン)の 排 除 などを 企 業 に 求 めている。「 温 暖 化 防 止 」について<br />

は、 特 に 天 然 ガスの 水 圧 破 砕 抽 出 法 の 取 りやめを 求 める 活 動 に 注 力 している。「 省<br />

資 源 」については、リサイクルできない 包 装 紙 等 を 多 用 することで、 海 や 川 にご<br />

みが 浮 くという 事 態 の 発 生 などに 着 目 する。(エンゲージメントサポート 機 関 )<br />

2.1.5 日 本 企 業 の ESG 要 因 開 示<br />

○ 日 本 企 業 の ESG 情 報 開 示 については、 連 結 対 象 企 業 を 含 む 企 業 全 体 についてのデータ<br />

が 開 示 されていないという 意 見 が 多 い。<br />

○ グローバルな ESG 情 報 提 供 機 関 が 情 報 収 集 するデータ 項 目 と、 日 本 企 業 が 採 用 する 開<br />

示 項 目 の 相 違 を 指 摘 する 意 見 も 見 られる。<br />

日 本 企 業 の ESG 要 因 開 示 については、データの 開 示 範 囲 の 問 題 を 指 摘 する 声 が 多 く 聞 か<br />

れた。 単 体 ベースは 開 示 されていても、 連 結 ベースの 開 示 がない 結 果 、 該 当 項 目 のデータ<br />

の 開 示 はなしとみなされることも 多 い。その 他 、 以 下 のとおり、 環 境 面 や 社 会 面 のデータ<br />

に 関 しても、 一 部 データの 不 足 を 指 摘 する 意 見 があった。<br />

図 表 - 16 日 本 企 業 の ESG 要 因 開 示 で 不 足 している 項 目<br />

データ 開 示 範 囲<br />

環 境 面<br />

社 会 面<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

単 体 ではなく 連 結 ベースでの 開 示<br />

連 結 ベースが 出 せない 場 合 は、 全 体 に 対 する 比 率 を 開 示<br />

二 酸 化 炭 素 に 加 えて、 温 室 効 果 ガスの 開 示 。 温 室 効 果 ガスを 二 酸 化 炭<br />

素 換 算 している 場 合 は、そうとわかるように 開 示 。<br />

グリーンビルディングの 認 証 に 関 する 情 報<br />

事 故 、 休 業 度 数 、 死 亡 者 などの 労 災 関 連 のデータ(※ 単 体 ベースはあ<br />

るが 連 結 ベースがないとの 指 摘 があった)<br />

サプライチェーン 管 理 に 関 する 以 下 の 項 目<br />

‣ ポリシーの 有 無 および 内 容<br />

‣ CSR 監 査 を 実 施 している 場 合 は、そのスコープ(Tier1, Tier2,<br />

Tier3) 別 、 全 体 に 対 するカバー 率<br />

‣ ポリシーを 遵 守 していない 場 合 の 是 正 措 置<br />

‣ サプライヤーの 数 ・ 所 在 地 (※ただし、この 情 報 は 日 本 企 業 に<br />

限 らず 不 足 しているとの 指 摘 があった)<br />

( 資 料 ) 各 機 関 へのヒアリング 調 査 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

23


日 本 企 業 の 環 境 面 のデータ 開 示 に 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

環 境 に 関 しては、データ 項 目 は 概 ね 網 羅 されているように 見 えるが、 実 は 足 りな<br />

い 項 目 もある。 具 体 的 には、 連 結 ベースでのデータ 開 示 および 温 室 効 果 ガスでの<br />

開 示 が 足 りていない。また、 項 目 は 網 羅 されていても 単 体 ベースであることも 多<br />

い。 仮 に 連 結 で 開 示 できなかったとしても、データのカバレッジを 割 合 で 表 示 す<br />

ることが 望 ましい。また、 二 酸 化 炭 素 データの 開 示 はあっても、 温 室 効 果 ガスと<br />

しての 開 示 はないところも 多 い。 海 外 では、 温 室 効 果 ガスのデータを 使 う 人 のほ<br />

うが 多 く、 二 酸 化 炭 素 のデータはあるのに、なぜ 温 室 効 果 ガスのデータがないの<br />

かという 問 い 合 わせも 受 けている。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

環 境 面 では、 化 学 物 質 の 管 理 が 強 いのは 特 徴 の1つ。 一 方 、 遅 れているのは、グ<br />

リーンビルディング 関 連 。 日 本 のビルの 性 能 は 良 く、また 技 術 もある 一 方 で、 認<br />

証 制 度 などはあまり 充 実 していない。 欧 州 、 米 国 、オーストラリアなどでは 認 証<br />

制 度 が 充 実 しており、REIT などもそうした 取 り 組 みを 進 めている。(ESG 情 報<br />

提 供 機 関 )<br />

日 本 企 業 の 社 会 面 のデータ 開 示 に 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

社 会 に 関 しては、データ 項 目 が 足 りていない 印 象 。 特 に、 事 故 、 休 業 度 数 、 死 亡<br />

者 などの 労 災 関 連 のデータが 少 ない。 開 示 されていても 単 体 のみということが 多<br />

い。 女 性 管 理 職 比 率 も 単 体 でしか 開 示 されていないことが 多 く、 海 外 企 業 との 比<br />

較 ができない。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

サプライチェーンの 問 題 について 言 えば、サプライヤーに 質 問 票 を 送 ったという<br />

開 示 はあるものの、サプライチェーンの 管 理 に 関 する 情 報 はない。(ESG 情 報 提<br />

供 機 関 )<br />

<br />

サプライチェーンの 管 理 は 遅 れている。 児 童 労 働 など、サプライチェーンが 抱 え<br />

る 問 題 は 把 握 できていないし、 開 示 もなされていないのが 現 状 だ。 足 下 では、 欧<br />

州 、 米 国 に 加 え、 新 興 国 、 韓 国 や 台 湾 なども、サプライチェーンの 監 査 結 果 を 開<br />

示 している。そうした 結 果 を 出 せば NGO の 攻 撃 の 対 象 となりやすい。しかし、<br />

各 国 企 業 はそうした 中 で、NGO とコミュニケーションをとりながら 良 いところ<br />

を 伸 ばし、 悪 いところは 改 善 することが 重 要 だし、そういう 時 代 だ。 現 状 、 日 本<br />

企 業 は 不 買 運 動 の 対 象 になることは 少 ないが、 日 本 企 業 にはサプライチェーンの<br />

24


透 明 性 を 高 めようとする 姿 勢 があまり 見 られない。サプライチェーンの 評 価 にお<br />

いては、ポリシーの 具 体 的 な 内 容 、 監 査 のスコープ(Tier1、Tier2、Tier3 別 、 全<br />

体 に 対 するカバー 率 )、ポリシーを 遵 守 していない 場 合 の 是 正 措 置 などを 具 体 的<br />

に 見 ている。また、 業 種 によっては EICC のように 業 界 団 体 で 取 り 組 みを 進 めて<br />

いるところもあるが、そうした 業 界 団 体 に 入 って 使 っているかなども 評 価 してい<br />

る。また、 日 本 企 業 に 限 ったことではないが、サプライヤーの 数 、どこがサプラ<br />

イヤーかという 基 本 的 なデータもない。サプライチェーン 管 理 の 基 本 的 な 方 針 や<br />

情 報 を 開 示 することは 企 業 のリスク 管 理 につながる。 過 去 に NGO などに 問 題 を<br />

指 摘 された 米 国 企 業 などは、サプライヤー 一 覧 表 などを 開 示 しているが、 日 本 は<br />

そういう 開 示 はない。 紛 争 鉱 物 についても、 台 湾 ・ 韓 国 の 企 業 は 取 り 組 みを 進 め<br />

る 中 、 日 本 はなかなか 進 んでいない 印 象 。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

分 析 には 多 くのデータが 必 要 となる。 例 えば、バングラデシュの 事 件 などもあり、<br />

サプライチェーンのリスクは 重 要 だといわれる 一 方 で、サプライヤーの 所 在 地 ・<br />

数 などの 基 本 的 なデータを 公 開 している 企 業 はほとんどない。より 多 くのデータ<br />

が 必 要 。 日 本 は 不 足 どころか、 全 くデータがない。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

サプライチェーンについては、どこにサプライヤーが 所 在 しているのかといった<br />

基 本 的 なデータも 含 めて、 企 業 の 情 報 開 示 が 不 足 していると 認 識 している。(ESG<br />

情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

社 会 面 では、 労 働 安 全 の 問 題 などの 数 値 が 単 体 や 日 本 拠 点 のみであることも 問<br />

題 。 仮 にパフォーマンスが 良 かったとしても、グループとしては 一 部 の 評 価 なの<br />

で、 比 率 を 掛 けたりしている。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

日 本 企 業 に 共 通 しているのは、データ 開 示 が 限 定 的 であること。 特 に、ガバナン<br />

スデータや 従 業 員 に 関 するデータ( 死 亡 率 、 休 業 災 害 率 (LTI: Loss Time Injury<br />

Rates)など)が 不 足 している。 一 方 、 安 全 ・ 衛 生 の 方 針 を 開 示 する 企 業 は 多 い<br />

ことから、CSR 報 告 書 は 宣 伝 のために 開 示 しているという 印 象 が 強 い。(ESG 情<br />

報 提 供 機 関 )<br />

日 本 企 業 の ESG 要 因 開 示 全 般 に 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

日 本 企 業 の ESG スコアは、 欧 州 に 比 較 すると 低 い。レベルが 低 いというのでは<br />

なく、データ 開 示 がないのが 理 由 。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

25


データは 当 然 、 連 結 ベースのものが 必 要 である。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

ESG は 事 業 リスクを 減 らすものであるから、そういった 視 点 で 企 業 は 開 示 を 行<br />

うべきである。 宣 伝 のためや、 社 会 に 良 いことをやっていることをアピールする<br />

ためのものではない。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

環 境 報 告 書 からは、 将 来 の 企 業 価 値 に 貢 献 するストーリーはあまり 見 えてこな<br />

い。アニュアルレポート、 有 価 証 券 報 告 書 などの 株 主 向 けの 媒 体 にこうした 情 報<br />

をどれだけ 織 り 交 ぜて 書 いていくかも 重 要 。あえて 環 境 報 告 書 を 見 に 行 く 投 資 家<br />

はほとんどいない。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

将 来 の 企 業 価 値 をどう 高 めていけるか、 他 社 とはどう 違 うのか、ビジネスモデル<br />

の 中 における ESG の 位 置 づけなどを 明 確 にすることが 重 要 。 海 外 の IR ロードシ<br />

ョーで ESG に 関 する 質 問 が 出 ないという 声 もあるが、ESG 情 報 を 見 た 上 で 質 問<br />

しないことを 決 めている 可 能 性 もある。 積 極 的 にアピールすることが 重 要 。なか<br />

なか 難 しいと 思 うが、ESG の 項 目 がビジネスの 源 泉 になっているというストー<br />

リーがあってこそ 初 めて 可 能 となる。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

<br />

セクターによって 異 なるが、 全 体 としては、 日 本 企 業 はどの 企 業 も 同 じような 開<br />

示 をしているという 印 象 。 同 業 他 社 を 見 て 作 成 しているのではないか。 投 資 家 は、<br />

経 営 へのインパクトを 重 要 視 しているが、そうした 情 報 も 少 ない。 環 境 報 告 ガイ<br />

ドラインの 影 響 もあるかもしれない。 開 示 が 始 まった 状 況 には 適 していたもの<br />

の、そこから 進 んでいない 印 象 だ。(ESG 情 報 提 供 機 関 )<br />

2.2 ESG 情 報 の 二 次 利 用 者 (アセットオーナー・ 運 用 機 関 )<br />

2.2.1 ESG 投 資 の 目 的 ・ 手 法<br />

○ 欧 米 の 主 要 アセット・オーナーの ESG 投 資 は、 長 期 的 な 資 産 価 値 の 維 持 ・ 向 上 の 目 的<br />

が 牽 引 。<br />

○ ESG 情 報 の 二 次 利 用 者 (アセット・オーナー/ 運 用 機 関 )によって ESG 投 資 の 実 践 手<br />

法 は 多 岐 に 渡 る。<br />

○ リスク 管 理 のための ESG 要 因 の 考 慮 は 多 くのアセット・オーナー・ 運 用 機 関 が 取 り 組<br />

む。<br />

26


ESG 投 資 を 実 践 する 目 的<br />

海 外 における ESG 投 資 は、 倫 理 的 な 価 値 観 から、 例 えば、 武 器 製 造 、タバコ 製 造 、ギャ<br />

ンブルに 関 連 する 銘 柄 を 投 資 対 象 から 排 除 するという、 所 謂 「 倫 理 投 資 :Ethical Investment」<br />

と 呼 ばれる 投 資 行 動 が 源 流 の 一 つであり、わが 国 においては、 依 然 として ESG 投 資 に 対 し<br />

て、 倫 理 投 資 のイメージが 根 強 く 残 っていることも 考 えられる。<br />

例 えばノルウェー 政 府 年 金 ―グローバル(GPFG)においては、 確 かに 運 用 実 務 を 担 って<br />

いるノルウェー 中 央 銀 行 (NBIM)による 投 資 判 断 とは 別 に、 基 金 そのものを 所 管 する 財 務 省<br />

に「 倫 理 委 員 会 」が 設 置 されており、ポートフォリオに 含 まれる 企 業 が「 武 器 製 造 」や「 児<br />

童 労 働 」、「 深 刻 な 環 境 破 壊 」、「 悪 質 な 贈 収 賄 」などに 関 係 していないかどうかについて、「 倫<br />

理 ガイドライン」に 照 らして 状 況 の 把 握 を 行 い、 同 ガイドラインに 抵 触 すると 判 断 した 投<br />

資 先 について、 財 務 省 に 対 して 排 除 を 要 求 する 勧 告 が 行 われている。 同 様 に、デンマーク 労<br />

働 市 場 付 加 年 金 (ATP)、オランダ 公 務 員 年 金 基 金 (ABP)、オランダ 厚 生 福 祉 年 金 基 金 (PFZW)<br />

などのように、クラスター 爆 弾 の 製 造 に 関 与 する 企 業 などを 排 除 する 方 針 を 対 外 的 に 明 示<br />

しているところが 多 い。これらの ESG 要 因 を 問 題 視 する 理 由 は、 本 調 査 研 究 が 調 査 対 象 と<br />

した 年 金 基 金 においては 公 的 な 側 面 が 強 く、 受 益 者 の 民 意 は 当 該 国 の 法 律 や 当 該 国 が 批 准<br />

する 条 約 等 に 反 映 されているという 考 え 方 の 下 、 当 該 国 の 法 令 等 が 禁 止 している 行 為 に 関<br />

与 する 企 業 を 投 資 候 補 から 排 除 するとしている 場 合 が 多 い。<br />

しかしながら、 本 調 査 研 究 が 調 査 対 象 とした 欧 米 の 主 要 なアセット・オーナーである 年<br />

金 基 金 において、 上 記 のような 倫 理 的 な 理 由 からの 投 資 候 補 からの 排 除 は、 投 資 行 動 にお<br />

ける ESG 要 因 の 考 慮 としてはごく 限 られた 一 側 面 でしかない。 今 日 ではむしろ、 長 期 的 な<br />

資 産 価 値 の 維 持 ・ 向 上 のために、 各 機 関 独 自 の 考 え 方 に 基 づいて 積 極 的 に ESG 要 因 の 考 慮<br />

の 拡 大 が 図 られている。 例 えば、カナダ 年 金 制 度 投 資 委 員 会 (CPPIB)では、 投 資 先 排 除 の<br />

ために ESG 要 因 を 考 慮 するのではなく、リスク/リターンの 観 点 からの 投 資 先 分 析 におい<br />

て ESG 要 因 を 織 り 込 むことを ESG 投 資 方 針 としている。また、GPFG では、 財 務 省 に 設 置<br />

された「 戦 略 委 員 会 」が ESG 投 資 戦 略 全 体 において 包 括 的 なレビューを 行 っており、 現 時<br />

点 では「 非 財 務 情 報 」と 呼 ばれているものであっても 将 来 的 なファンドの 財 務 的 価 値 に 影<br />

響 を 与 える 全 ての 重 要 な ESG 要 因 を 理 解 し、 考 慮 することが 重 要 であるとの 提 言 を 行 って<br />

いる。<br />

同 時 に、 運 用 機 関 からも、 倫 理 的 な 観 点 での 銘 柄 の 排 除 要 請 は、アセット・オーナーが<br />

自 身 のレピュテーションを 保 持 するために 行 われているものであると 理 解 しているとの 声<br />

があり、アセット・オーナーからの 要 請 のとおり 条 件 に 該 当 する 銘 柄 を 除 外 した 上 で、そ<br />

こからのポートフォリオの 構 築 段 階 で、パフォーマンスを 追 求 するために ESG 要 因 を 考 慮<br />

することをアセット・オーナーに 対 して 提 案 しているという。<br />

27


ESG 投 資 の 実 践 手 法<br />

前 述 のとおり、 本 調 査 研 究 が 調 査 対 象 とした 欧 米 の 主 要 なアセット・オーナーが ESG 要<br />

因 を 考 慮 する 理 由 として、 長 期 的 な 資 産 価 値 の 維 持 ・ 向 上 が 主 な 理 由 となっていることが<br />

確 認 されたが、ESG 要 因 を 考 慮 することによって、どのように 投 資 におけるリスク/リタ<br />

ーンを 改 善 するかについての 考 え 方 は 機 関 によって 様 々である。すなわち、 投 資 先 の ESG<br />

の 取 り 組 みが 企 業 の 価 値 創 造 に 繋 がるという 考 えを 重 視 する 機 関 、 投 資 先 の ESG 要 因 を 考<br />

慮 することがポートフォリオのリスク 低 減 であるとする 機 関 など、 多 様 な 考 え 方 が 見 られ<br />

た(なお、ESG 要 因 の 中 で 特 に 重 要 視 する 項 目 については 後 述 する。)。<br />

前 者 について 所 謂 「エコファンド」と 呼 ばれるような、 環 境 関 連 の 技 術 や 製 品 を 扱 う 企<br />

業 への 投 資 行 動 が 見 られる。 例 えば、GPFG では 2012 年 、 再 生 可 能 エネルギー 関 連 、 水 マ<br />

ネジメント、 廃 棄 物 処 理 等 に 関 連 する 銘 柄 への 投 資 を 行 うテーマ 型 投 資 を 新 たに 開 始 して<br />

いる。 同 様 に ABP においても、”High Sustainability Investment”と 称 して、 例 えば 再 生 可 能 エ<br />

ネルギー 関 連 など、サステナビリティに 貢 献 する 製 品 ・サービスを 扱 う 企 業 やインフラ 等<br />

の 投 資 機 会 を 追 求 している。カリフォルニア 州 職 員 退 職 年 金 基 金 (CalPERS)も、 気 候 変 動 対<br />

応 を 取 り 上 げ、2010 年 に 環 境 インデックスファンドに 運 用 資 金 の 一 部 を 振 り 向 ける 決 定 を<br />

行 っている。しかし、 前 者 の 考 え 方 を 明 示 した ESG 要 因 の 考 慮 による 投 資 判 断 は 比 較 的 限<br />

定 的 であるといえる。<br />

他 方 、 後 者 のリスク 管 理 の 視 点 から ESG 要 因 を 考 慮 する 考 え 方 は、 今 回 調 査 研 究 を 行 っ<br />

た 全 てのアセット・オーナーで 採 用 されている 考 え 方 であった。 例 えば、カリフォルニア 教<br />

職 員 退 職 年 金 基 金 (CalSTRS)では、「Investment Policy Mitigating ESG Risks」と 名 付 けられ<br />

た ESG 投 資 方 針 から 示 唆 されるように、 投 資 意 思 決 定 時 のデューデリジェンスの 一 環 とし<br />

て、 外 部 運 用 機 関 及 び 外 部 担 当 者 によって ESG リスク 要 因 を 考 慮 することに 主 眼 が 置 かれ<br />

ている。<br />

さらに、 特 筆 すべきは、パッシブ 運 用 における ESG リスクの 考 慮 の 取 り 組 みである。パ<br />

ッシブ 運 用 においては、そもそもその 運 用 手 法 ゆえ、アクティブ 運 用 のように 銘 柄 を 選 択<br />

したり 排 除 したりすることは 行 わない 代 わりに ESG リスクを 軽 減 する 観 点 から、 積 極 的 に<br />

エンゲージメントが 行 われている。<br />

パッシブ 運 用 における ESG リスク 考 慮 の 事 例<br />

<br />

投 資 戦 略 は、 低 コストのインデックス 運 用 のため、 売 買 を 通 じてではなくエンゲ<br />

ージメントを 通 じて 投 資 パフォーマンスを 維 持 ・ 向 上 することに 取 り 組 んでい<br />

る。 運 用 コストの 低 いインデックスファンドに 代 えて ESG 要 因 に 基 づくポジテ<br />

ィブ・スクリーニングやネガティブ・スクリーニングを 実 践 するには、 追 加 的 な<br />

コストを 上 回 るパフォーマンスを 上 げる 必 要 がある。しかし、ESG は、あくま<br />

28


でもリスク・マネジメントの 問 題 であると 捉 えているため、ポートフォリオの 価<br />

値 を 守 るため・ 維 持 するためにエンゲージメントを 行 う 現 在 の 手 法 が 合 理 的 であ<br />

ると 考 える。( 米 国 アセット・オーナー)<br />

年 金 基 金 などから 受 託 運 用 を 行 う 運 用 機 関 においては、 基 本 的 に 資 金 の 出 し 手 であるア<br />

セット・オーナーの 投 資 方 針 や 意 向 に 従 って ESG 投 資 戦 略 が 実 行 されているが、ベスト・<br />

イン・クラスによるポートフォリオ 構 築 を 提 案 する Allianz Global Investors のように、 特 定<br />

の 強 みを 有 する ESG 投 資 戦 略 について、アセット・オーナーに 提 案 を 行 っている 運 用 機 関<br />

も 存 在 している。<br />

なお、 我 が 国 においても、2014 年 2 月 に 金 融 庁 が 策 定 した『「 責 任 ある 機 関 投 資 家 」の 諸<br />

原 則 ≪ 日 本 版 スチュワードシップ・コード≫』 15 において、 投 資 先 企 業 の 社 会 ・ 環 境 問 題 に<br />

関 連 するリスクへの 対 応 やガバナンスなど、 非 財 務 面 の 事 項 も 含 めた 投 資 先 企 業 の 状 況 を<br />

的 確 に 把 握 することが 求 められている。 本 調 査 研 究 が 調 査 対 象 とした 世 界 の 主 要 なアセッ<br />

ト・オーナーによるリスク 管 理 としての ESG 要 因 の 考 慮 の 取 り 組 みは、 我 が 国 の 機 関 投 資<br />

家 にも 参 考 になると 考 えられる。<br />

2.2.2 企 業 の 非 財 務 情 報 に 係 る 評 価 基 準 ・ 情 報 ソース<br />

○ 財 務 的 なパフォーマンス 改 善 のために 重 要 視 する ESG 要 因 は、アセット・オーナー/<br />

運 用 機 関 によって 多 種 多 様 。<br />

○ アセット・オーナー/ 運 用 機 関 の 大 多 数 が 外 部 の ESG 情 報 提 供 機 関 の 情 報 を 利 用 。<br />

重 要 視 する ESG 要 因<br />

ESG 要 因 を 考 慮 するのは、 長 期 的 な 資 産 価 値 の 維 持 ・ 向 上 が 最 大 の 理 由 であることを 述<br />

べたが、ESG 要 因 の 中 でも 特 にどの 項 目 を 重 視 するかはアセット・オーナー/ 運 用 機 関 に<br />

よって 多 種 多 様 である。<br />

特 に、 財 務 的 なリスク/リターンに 直 接 的 に 影 響 する 要 因 としてガバナンスを 挙 げる 声<br />

が 多 く、ESG 要 因 の 中 でもガバナンスは、CalPERS や CalSTRS 等 においても 古 くから 投 資<br />

判 断 において 考 慮 されてきた。ガバナンスに 比 べると、 環 境 面 や 社 会 面 の 考 慮 が 一 般 的 に<br />

行 われるようになったのは 比 較 的 最 近 といえる。<br />

環 境 面 や 社 会 面 については、 当 然 ながら 業 種 ・ 業 態 によって 考 慮 すべき 重 要 な ESG 要 因<br />

は 異 なるという 認 識 が 一 般 的 であるが、 例 えば、GPFG では、「 気 候 変 動 に 関 するリスク・<br />

マネジメント」「 水 マネジメント」に 関 して、 投 資 先 企 業 に 期 待 する 取 り 組 み 内 容 を 詳 細 に<br />

15 詳 細 は 金 融 庁 ホームページを 参 照 <br />

29


掲 げている( 詳 しくは 参 考 資 料 参 照 。)。また、CPPIB も、 企 業 への 直 接 的 な 働 きかけの 重<br />

点 領 域 として、 気 候 変 動 、 水 、 資 源 産 業 を 挙 げており、 長 期 的 なリターンの 向 上 のために<br />

アクティブに 働 きかけることが 重 要 であるとしている。その 他 、ニューヨーク 市 年 金 基 金<br />

のように、シェールガス 採 掘 に 用 いる 水 圧 破 砕 作 業 における 地 域 や 環 境 影 響 といった、さ<br />

らに 具 体 的 な 課 題 を 重 要 視 する 機 関 もある。<br />

その 他 、ヒアリングで 得 られた 重 要 視 する ESG 要 因 とその 理 由 については 以 下 のとおり<br />

である。<br />

重 要 視 する ESG 要 因 とその 理 由<br />

<br />

人 種 差 別 、ダイバーシティを 含 む 労 働 の 問 題 を 重 要 視 している。 人 的 資 本 は、 長<br />

期 的 な 企 業 のパフォーマンスにとって 重 要 だと 考 えている。もし、 労 働 環 境 で 人<br />

種 差 別 があれば、 優 秀 な 人 材 候 補 が 減 るだろう。 労 働 の 問 題 に 加 え、 気 候 変 動 を<br />

中 心 とする 環 境 のイシューも 長 期 的 に 重 要 だと 考 えている。( 米 国 アセット・オ<br />

ーナー)<br />

<br />

長 期 投 資 家 として 長 期 的 なリターンに 影 響 するものをマテリアルな ESG 要 因 と<br />

捉 えている。 環 境 面 については、 気 候 変 動 は 中 長 期 的 に 必 ず 顕 在 化 し 影 響 するこ<br />

とは 間 違 いない(IPCC を 支 持 している)ことから、ポートフォリオに 気 候 変 動<br />

リスクがあることは 間 違 いなく 財 務 的 なリスクである。ガバナンスについては、<br />

十 分 に 取 締 役 会 が 機 能 することと 捉 えているが、これも 間 違 いなく 財 務 的 に 影 響<br />

する 要 因 である。 一 方 、 社 会 面 については、その 対 応 を 怠 ることが 企 業 あるいは<br />

企 業 役 員 についてのレピュテーションリスクになると 捉 えている。それが 間 接 的<br />

に 投 資 家 にとってもマテリアルであると 考 えている。( 欧 州 アセット・オーナー)<br />

なお、サンプライチェーン 上 の ESG 要 因 を 重 要 視 するアセット・オーナーも 多 く、 投 資<br />

先 企 業 のサプライチェーン 行 動 規 範 の 有 無 を 確 認 したり、あるいは、 投 資 先 企 業 に 対 して、<br />

主 要 なサプライヤーに GRI(Global Reporting Initiative)に 準 拠 した 情 報 開 示 を 行 わせるよう<br />

に 株 主 提 案 した 事 例 の 紹 介 もあった( 米 国 アセット・オーナー)。<br />

外 部 の ESG 情 報 提 供 機 関 の 利 用 状 況<br />

本 調 査 研 究 が 調 査 対 象 とした 世 界 の 主 要 なアセット・オーナー/ 運 用 機 関 においては、<br />

全 ての 機 関 において 少 なくとも1 機 関 以 上 の 外 部 の ESG 情 報 提 供 機 関 からの 情 報 提 供 を 活<br />

用 していることがわかった。<br />

一 般 的 に、ESG 情 報 提 供 機 関 の 多 くは、 多 数 の ESG アナリストを 抱 えているが、アセッ<br />

30


ト・オーナー/ 運 用 機 関 は、ESG 要 因 を 考 慮 するためのスタッフの 数 が、 投 資 先 企 業 数 に<br />

比 べて 限 定 的 であり、 中 には ESG 要 因 の 考 慮 を 専 門 に 担 当 するスタッフがわずか 3 名 であ<br />

るアセット・オーナーも 存 在 している。このように 人 的 リソースが 限 定 的 であるアセット・<br />

オーナー/ 運 用 機 関 においてインハウスで 全 ての ESG 調 査 を 行 うのは 現 実 的 ではなく、 多<br />

数 の ESG アナリストを 抱 える ESG 情 報 機 関 との 間 に 分 業 関 係 が 発 生 していることが 推 察 さ<br />

れる。<br />

アセット・オーナー/ 運 用 機 関 における、 情 報 の 利 用 方 法 も 多 種 多 様 であるが、 運 用 機<br />

関 では、 複 数 の ESG 情 報 提 供 機 関 から 企 業 の ESG 情 報 とレーティングの 提 供 を 受 け、 自 社<br />

独 自 の 考 え 方 を 反 映 して 自 社 としての 企 業 のレーティングを 作 成 してポートフォリオ 構 築<br />

に 反 映 している 機 関 があった。<br />

また、 企 業 への 直 接 的 働 きかけを 積 極 的 に 行 うアセット・オーナーでは、 企 業 に 対 する<br />

NGO 等 からの 批 判 情 報 を RepRisk などの 外 部 の ESG 情 報 提 供 機 関 から 購 入 し、エンゲージ<br />

メントのための 基 礎 情 報 として 活 用 しているところもあった。<br />

2.2.3 日 本 企 業 評 価 の 事 例<br />

○ 倫 理 的 な 観 点 等 からの ESG 要 因 を 事 由 に 日 本 企 業 が 投 資 先 から 除 外 された 事 例 は 過 去<br />

に 存 在 。<br />

日 本 企 業 については、 倫 理 的 な 観 点 等 から ESG 要 因 の 事 由 として 投 資 先 から 排 除 された<br />

事 例 は 限 定 的 であるが、 本 調 査 研 究 が 調 査 を 行 ったアセット・オーナーにおいては、5 社 の<br />

事 例 を 確 認 した。<br />

東 京 電 力 について、ABP が、 原 発 事 故 に 関 し 安 全 性 や 環 境 影 響 について 繰 り 返 し 協 議 を<br />

申 し 入 れたが 応 答 がなかったとして 2014 年 に 排 除 銘 柄 に 指 定 している。 日 本 たばこ 産 業 に<br />

ついては GPFG が 2009 年 に、タバコ 製 造 を 理 由 に 排 除 を 行 っている。また ATP では、スー<br />

ダンに 対 する 武 器 禁 輸 措 置 に 抵 触 しているとして 2009 年 に 日 産 自 動 車 を、ミャンマーに 対<br />

する 禁 輸 措 置 に 抵 触 していたとして、2008 年 に 三 菱 石 油 と 新 日 本 石 油 を、クラスター 爆 弾<br />

製 造 への 関 与 を 理 由 に 2007 年 に 石 川 島 播 磨 重 工 業 ( 当 時 )をそれぞれ 投 資 先 から 除 外 した<br />

ことを 発 表 している。<br />

なお、これらの 事 例 は、あくまでの 当 該 時 点 における 判 断 であり、 現 時 点 まで 投 資 先 か<br />

らの 排 除 指 定 が 続 いていることを 必 ずしも 意 味 していない。<br />

31


. 3 海 外 における 非 財 務 情 報 に 係 る 企 業 ・ 投 資<br />

家 間 のコミュニケーション 動 向 の 分 析<br />

3.1 報 告 書 における ESG 要 因 の 開 示<br />

3.1.1 ESG 投 資 家 の 望 む 情 報 開 示<br />

○ 企 業 の ESG 情 報 開 示 について、マテリアリティを 重 要 視 した 企 業 価 値 創 造 等 に 関 する<br />

ストーリーの 開 示 充 実 を 期 待 する 声 が 多 数 。<br />

○ その 一 方 で、 網 羅 的 な ESG 情 報 開 示 の 継 続 ・ 発 展 を 期 待 する 声 も 根 強 い。<br />

○ 欧 州 を 中 心 に 高 い 支 持 を 得 ている 国 際 統 合 報 告 評 議 会 (IIRC) 16 と、 米 国 を 中 心 に 支 持<br />

を 急 拡 大 させているサステナビリティ 会 計 基 準 評 議 会 (SASB)。<br />

○ 欧 米 のアセット・オーナーは 企 業 の 日 本 語 による 情 報 開 示 は 基 本 的 に 見 ていない。<br />

マテリアリティを 重 要 視 した 企 業 価 値 創 造 等 に 関 する 情 報 開 示<br />

本 調 査 研 究 においては、アセット・オーナー 及 び 運 用 機 関 に 対 して、マテリアリティを<br />

重 要 視 した 企 業 価 値 創 造 等 に 関 する 情 報 開 示 と、 網 羅 的 な ESG 情 報 開 示 のどちらが 好 まし<br />

いかをヒアリングで 尋 ねたところ、 前 者 の 充 実 を 期 待 する 声 が 多 数 を 占 めた。<br />

その 理 由 としては、 業 種 別 に ESG 要 因 についてのマテリアリティを 重 視 した 評 価 軸 によ<br />

って、ベスト・イン・クラスに 基 づくポートフォリオを 構 築 しているため、 企 業 側 もマテ<br />

リアリティを 意 識 して 情 報 開 示 をしてほしい、 膨 大 な 投 資 先 企 業 を 抱 える 投 資 家 は、 投 資<br />

先 企 業 一 社 当 たりの ESG 情 報 を 参 照 する 時 間 は 限 られることから、 企 業 が 最 も 重 要 視 して<br />

いることだけを 分 かり 易 く 伝 えてほしい、などの 声 があった( 運 用 機 関 )。<br />

さらに、ESG 情 報 を 開 示 することに 主 眼 を 置 くのではなく、 企 業 価 値 創 造 等 のストーリ<br />

ーを 説 明 するために、ESG 要 因 が 重 要 なのであれば 開 示 する、すなわち ESG 要 因 は 企 業 価<br />

値 創 造 等 のストーリーを 説 明 する 上 での 一 要 素 でしかない、という 指 摘 や、 企 業 の 価 値 観<br />

や 価 値 観 を 落 とし 込 んだ 企 業 戦 略 、さらにはそれをトップマネジメントが 自 分 の 言 葉 で 語<br />

っていることを 重 要 視 する、という 指 摘 があった( 運 用 機 関 )。<br />

また、マテリアリティについて、 事 業 活 動 において 重 要 かどうかという 判 断 基 準 ではな<br />

く、 直 接 的 に 株 価 に 影 響 するかどうかという 企 業 側 の 勝 手 な 判 断 により、 情 報 が 取 捨 選 択<br />

されることを 懸 念 する 声 も 聞 かれた( 欧 州 アセット・オーナー)。<br />

網 羅 的 な ESG 情 報 開 示<br />

前 述 のとおり、マテリアリティを 重 要 視 した 企 業 価 値 創 造 等 に 関 するストーリーの 開 示<br />

16 本 報 告 書 において、「IIRC」と 表 記 する 場 合 は 国 際 統 合 報 告 評 議 会 及 び 同 団 体 が 策 定 した 開 示 フレームワームを 指 し、<br />

報 告 書 そのものを 指 す 場 合 は「 統 合 報 告 書 」と 表 記 している。<br />

32


充 実 を 期 待 する 声 が 多 数 を 占 める 一 方 で、 投 資 家 以 外 の 幅 広 いステークホルダーに 対 する<br />

網 羅 的 な ESG 情 報 の 開 示 の 重 要 性 を 指 摘 する 意 見 もあった。 具 体 的 な 意 見 は 次 のとおり。<br />

網 羅 的 な ESG 情 報 開 示 に 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

企 業 の 情 報 開 示 に 関 する 社 会 的 責 任 は、 株 価 にとってマテリアルな 情 報 という 観<br />

点 から 情 報 を 取 捨 選 択 して 開 示 することではない。 事 業 活 動 に 関 連 する 情 報 はす<br />

べて 開 示 されるべきである。 株 価 との 関 係 性 の 判 断 はあくまで 投 資 家 サイドが 行<br />

うべきことである。( 欧 州 アセット・オーナー)<br />

<br />

投 資 家 は 一 般 的 に、マテリアリティを 重 視 した 企 業 からの 情 報 開 示 が 重 要 である<br />

と 考 えるだろう。しかし、ESG 情 報 開 示 は 投 資 家 だけに 向 けた 情 報 開 示 ではな<br />

く、 幅 広 いステークホルダー 向 けの 開 示 である。ステークホルダーから 批 判 を 受<br />

けるということは、 投 資 家 のネガティブ・スクリーニングにも 繋 がり 得 ることで<br />

ある。 幅 広 いステークホルダーからの 信 頼 を 得 るために、ステークホルダー 向 け<br />

の 情 報 開 示 がしっかりと 行 われていることが 重 要 である。( 欧 州 アセット・オー<br />

ナー)<br />

<br />

網 羅 的 なデータ 開 示 は、“グリーンウォッシュ”を 見 抜 くのにも 役 立 つ。( 米 国 ア<br />

セット・オーナー)<br />

CDP の 排 出 量 データやスコアについては、CO2 排 出 がマテリアルな 業 種 以 外 では、 数 値<br />

そのものを 投 資 判 断 に 活 用 しているという 声 は 少 ないが、 企 業 間 の CO2 削 減 についての 取<br />

り 組 みの 比 較 が 容 易 である 点 を 評 価 する 声 や、CDP への 回 答 の 有 無 は、 企 業 の 透 明 性 に 対<br />

するデータの 指 標 になるという 意 見 があった。 他 方 で、CDP への 対 応 は 企 業 への 負 荷 が 大<br />

きく、それを 負 担 することが 出 来 る 企 業 だけが 対 応 していると 考 えられることから、 投 資<br />

判 断 において 考 慮 していないという 意 見 もあった。<br />

開 示 フレームワークに 対 する 見 解<br />

IIRC( 詳 細 は、 次 々ページ「IIRC とは」 参 照 )については、 国 際 統 合 報 告 評 議 会 が 英<br />

国 に 置 かれていることもあり、 特 に 欧 州 地 域 でその 考 え 方 を 支 持 する 意 見 が 多 く 聞 かれた。<br />

前 項 で 述 べたように、マテリアリティを 重 要 視 した 価 値 創 造 等 のストーリーの 開 示 と、IIRC<br />

の 考 え 方 は 整 合 性 が 高 いことから、 前 者 を 支 持 することはすなわち IIRC を 支 持 することを<br />

33


意 味 しているといえる。ただし、 詳 細 な 情 報 に 欠 ける 等 の 理 由 から、あくまでも 網 羅 的 な<br />

ESG 情 報 を 土 台 とした 上 で、 統 合 報 告 の 思 想 を 反 映 した 開 示 の 重 要 性 を 指 摘 する 声 が 複 数<br />

あった 点 には 留 意 が 必 要 である。<br />

他 方 、SASB( 詳 細 は、「SASB とは」 参 照 )については、 米 国 主 導 であるためか、 米 国 の<br />

アセット・オーナーにおいて 支 持 が 高 く、IIRC とは 異 なり、 業 種 別 にマテリアリティを 重<br />

視 したメトリスク( 指 標 )が 示 されるという 具 体 性 が 指 示 を 集 めている 理 由 と 考 えられる。<br />

IIRC に 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

統 合 報 告 書 では、どのようなイシューがどのような 影 響 を 及 ぼし、 企 業 が 長 期 的<br />

にどのような 価 値 を 創 造 するのかが 示 される。ただし、 詳 細 な 情 報 には 欠 けるか<br />

もしれない。おそらく、GRI ガイドラインのような 網 羅 的 な ESG 情 報 開 示 と 両<br />

方 必 要 であろう。( 米 国 アセット・オーナー)<br />

<br />

IIRC については 投 資 家 向 けに 有 効 な 情 報 開 示 の 促 進 につながると 考 えるが、 情<br />

報 開 示 を 行 う 企 業 側 が 乗 り 越 えるべきことが 多 く、 必 ずしもすべての 企 業 が 直 ち<br />

に 統 合 報 告 書 作 成 には 向 かわないのではないか。( 欧 州 アセット・オーナー)<br />

<br />

統 合 報 告 書 は 投 資 家 に 有 益 であると 考 えるが、 事 業 活 動 に 関 連 する 網 羅 的 な 事 実<br />

やデータが 全 て 開 示 されたうえで、 事 業 活 動 に 対 するマテリアリティが 説 明 され<br />

るのが 望 ましい。( 欧 州 アセット・オーナー)<br />

SASB に 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

SASB は 業 種 別 にマテリアルなメトリクス( 指 標 )を 作 ることを 目 的 としており、<br />

IIRC よりも 具 体 的 で 良 い。( 米 国 アセット・オーナー)<br />

<br />

SASB の 設 立 当 初 から 積 極 的 に 取 り 組 みに 参 画 してきており、(IIRC にも 期 待 し<br />

ているが)、SASB を 最 も 重 要 視 している。ただし 業 種 別 に 異 なる 基 準 が 88 もあ<br />

り、 各 々の 策 定 プロセスに 様 々なステークホルダーが 参 画 していることから、 全<br />

体 としてステークホルダーが 多 すぎる。( 米 国 アセット・オーナー)<br />

34


―SASB とは―<br />

サステナビリティ 会 計 基 準 評 議 会 (SASB:Sustainability Accounting Standards Board)<br />

は 非 営 利 の 民 間 団 体 であり、 米 国 の 上 場 企 業 が 米 国 証 券 取 引 所 (SEC)に 提 出 を 義 務<br />

付 けられている 年 次 財 務 報 告 において、 重 要 なサステナビリティイシューを 開 示 する<br />

際 の 基 準 を 策 定 することを 目 的 としている。サステナビリティイシューは、「 環 境 」、<br />

「 社 会 資 本 」、「 人 的 資 本 」、「ビジネスモデルとイノベーション」、「ガバナンス」の 5<br />

つのカテゴリーに 分 けられる。<br />

開 示 基 準 は、10 のセクターで 80 以 上 の 業 界 ごとに 設 定 することを 試 みており、マ<br />

ルチステークホルダーによるオープンな 議 論 により 検 討 が 進 められている。SASB の<br />

基 準 開 発 の 手 順 としては、まずは 業 界 固 有 の 調 査 に 基 づき、 業 界 における 重 要 なサス<br />

テナビリティイシューを 設 定 し、 企 業 、 投 資 家 等 からなる 業 界 ごとのワーキンググル<br />

ープ(Industry Working Groups)において 議 論 した 上 でイシューを 決 定 する。その 後<br />

SEC への 説 明 などを 経 て 業 界 の 開 示 基 準 案 を 策 定 し、パブリックコメントにかけた<br />

後 に 最 終 的 な 基 準 を 決 定 ・ 発 表 するといった 流 れである。2014 年 3 月 現 在 、5 つのセ<br />

クターのワーキンググループのメンバーは 1000 名 以 上 に 及 ぶ。 既 に、ヘルスケア 業<br />

界 や 金 融 業 界 に 関 する 基 準 が 策 定 ・ 公 表 されている。SASB は 各 業 界 における 重 要 な<br />

イシューを 正 確 に 反 映 する 完 全 な、 業 界 固 有 の 会 計 報 告 基 準 を 策 定 することを 目 指 し<br />

ている。<br />

2014 年 1 月 に、SASB と IIRC は、 企 業 報 告 の 発 展 及 び 投 資 家 に 対 する 企 業 価 値 の<br />

説 明 に 関 する 協 力 関 係 を 強 化 するため、 覚 書 を 締 結 した。 覚 書 に 署 名 した SASB 設 立<br />

者 のエグゼクティブ・ディレクターJean Rogers は、「SASB の 基 準 は、 統 合 報 告 を 米<br />

国 の 資 本 市 場 で 実 現 させるものである。SASB と IIRC のミッションは 同 じ 方 向 性 で<br />

あり、パートナーシップが 正 式 なものになったことで、 重 要 なサステナビリティ 要 因<br />

の 開 示 の 改 善 に 関 する 協 調 事 項 や 企 業 へのガイダンスが 強 化 されるだろう。 両 組 織 と<br />

も、 投 資 家 を、マテリアリティの 決 定 における 中 心 的 な 存 在 と 捉 えている。」と 述 べ<br />

ている 17 。<br />

―IIRC とは―<br />

国 際 統 合 報 告 評 議 会 (IIRC:International Integrated Reporting Council)とは、 従 来<br />

から 企 業 により 開 示 されてきた 財 務 情 報 と、CSR 報 告 書 /サステナビリティレポート<br />

を 始 めとする ESG 等 の 非 財 務 情 報 を 統 合 し、 企 業 価 値 の 向 上 等 についての 情 報 開 示<br />

17 IIRC ホームページ <br />

35


を 推 進 することを 目 的 に 設 立 された 民 間 団 体 である。2010 年 8 月 に、 英 国 チャール<br />

ズ 皇 太 子 が 率 いる A4S(Accounting for Sustainability)や GRI などの 団 体 により 設 立 さ<br />

れ、 開 示 フレームワークの 開 発 が 進 められてきた。IIRC 設 立 のきっかけの 一 つには、<br />

2008 年 のリーマン・ショックに 端 を 発 する 金 融 危 機 が 挙 げられる。 投 資 家 が 過 度 に<br />

短 期 的 な 視 点 で 企 業 に 投 資 したことが 危 機 の 一 因 になったとの 反 省 から、 企 業 の 長 期<br />

的 な 成 長 性 ・ 収 益 性 を 見 極 めるための 材 料 として、 非 財 務 情 報 も 包 括 的 に 見 ようとす<br />

る 動 きが 強 まった。IIRC は、 規 制 当 局 、 投 資 家 、 企 業 、 基 準 設 定 主 体 、 会 計 の 専 門<br />

家 及 び NGO からなる 国 際 団 体 であり、 企 業 報 告 が 進 化 する 中 で、 価 値 創 造 に 関 する<br />

コミュニケーションは 次 の 段 階 に 進 むべきという 視 点 を 共 有 している。2013 年 12 月<br />

には、 開 示 フレームワークの 第 1 版 18 が 公 表 された。 第 1 版 によると 統 合 報 告 書 は、<br />

「 組 織 がその 外 部 環 境 を 背 景 として、 戦 略 、ガバナンス、 実 績 、 及 び 見 通 しがどのよ<br />

うに 短 、 中 、 長 期 の 価 値 創 造 をもたらすかに 関 する 簡 潔 なコミュニケーションであ<br />

る。」と 定 義 されている。<br />

現 在 、 試 行 的 に 統 合 報 告 を 作 成 するパイロットプログラムが 世 界 の 企 業 100 社 以 上<br />

の 参 加 のもとで 進 められており、2014 年 9 月 まで 続 けられる 予 定 である。<br />

日 本 語 による 情 報 開 示<br />

本 調 査 研 究 が 調 査 対 象 とした 欧 米 の 主 要 なアセット・オーナーにおいては、いずれも 企<br />

業 の 日 本 語 での 情 報 開 示 には 直 接 アクセスすることは 一 切 行 われていない。なお、 運 用 機<br />

関 については、 日 本 に 拠 点 がある 場 合 が 多 く、 日 本 語 を 参 照 するスタッフが 存 在 する 場 合<br />

もある。また、アセット・オーナー 等 が 情 報 提 供 を 受 けている ESG 情 報 提 供 機 関 において<br />

は、 多 くの 機 関 で 日 本 語 による 情 報 開 示 を 参 照 する 体 制 が 取 られている。<br />

18 IIRC ホームページ<br />

36


3.1.2 海 外 の 先 進 的 企 業 の 情 報 開 示 ・ 取 り 組 み<br />

○ 強 力 なリーダーシップや 確 固 たる 理 念 がベースにあるのはもちろんだが、サステナビリ<br />

ティ 戦 略 が 事 業 戦 略 に 統 合 されるための 工 夫 は 様 々ある。<br />

○ 例 えば、 事 業 戦 略 との 整 合 性 を 意 識 すること、サステナビリティの 取 り 組 みが 事 業 推 進<br />

の 中 に 位 置 づけられるような 組 織 とすること、 外 部 からの 意 見 を 取 り 組 みに 活 かすよう<br />

な 仕 組 みを 構 築 することなどがある。<br />

○ サステナビリティ 戦 略 が 事 業 戦 略 に 統 合 されているため、 情 報 開 示 においても、サステ<br />

ナビリティ 戦 略 と 事 業 戦 略 が 融 合 した 形 で 開 示 されている。<br />

○ 開 示 に 関 するフレームワークのうち、どれを 重 視 するかは 業 態 や 戦 略 によって 異 なる。<br />

特 定 のフレームワークを 支 持 する 場 合 は、その 策 定 にも 積 極 的 に 参 加 している。<br />

○ サプライチェーンに 関 する 情 報 開 示 は、 詳 細 かつ 具 体 的 な 数 値 目 標 が 設 定 されている。<br />

また、 特 定 の 事 業 活 動 についての 経 済 性 ・ 社 会 性 を 詳 細 に 分 析 したレポートも 出 現 して<br />

いる。<br />

サステナビリティ 戦 略 の 位 置 付 けと 開 示<br />

企 業 のサステナビリティ 戦 略 は、 図 表 - 17 のように、 法 令 への 対 応 として 捉 える 段 階 から<br />

法 令 を 先 取 りする 段 階 へと 進 み、 最 終 的 にはサステナビリティ 戦 略 が 目 的 やミッションそ<br />

のものになるような、 事 業 戦 略 と 完 全 に 統 合 する 段 階 にまで 進 むといわれている。<br />

第 1 段 階 法 令 に 未 対 応<br />

第 2 段 階 法 令 を 遵 守<br />

第 3 段 階 法 令 を 先 取 り<br />

第 4 段 階 戦 略 への 反 映<br />

第 5 段 階 目 的 やミッション<br />

図 表 - 17 サステナビリティ 戦 略 の 段 階<br />

( 資 料 )Senge, P. [2008] “The Necessary Revolution: How Individuals and Organizations<br />

Are Working Together to Create a Sustainable World”より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

本 調 査 研 究 の 調 査 対 象 とした 海 外 先 進 企 業 の 多 くは、 上 記 第 4 段 階 や 第 5 段 階 におり、<br />

サステナビリティ 戦 略 が 事 業 戦 略 の 中 に 明 確 に 位 置 づけられており、そうした 内 容 が 開 示<br />

されている。<br />

37


企 業 名<br />

Novo Nordisk<br />

SAP<br />

図 表 - 18 事 業 戦 略 とサステナビリティ 戦 略 の 関 係 性<br />

事 業 戦 略 とサステナビリティ 戦 略 の 関 係 性<br />

経 営 戦 略 とサステナビリティ 戦 略 のそれぞれに 分 類 することが 可 能 な<br />

複 数 の 戦 略 はなく、 取 締 役 会 によって 毎 年 レビューと 更 新 が 行 われる<br />

「Novo Nordisk’s Strategy」が 唯 一 存 在 する。<br />

2012 年 版 のアニュアルレポートにおいては、 戦 略 的 重 点 領 域 として、<br />

次 の 5 項 目 が 挙 げられている<br />

糖 尿 病 領 域 におけるリーダーシップの 拡 大<br />

肥 満 領 域 におけるプレゼンスの 確 立<br />

血 友 病 領 域 におけるリーダーシップの 追 求<br />

成 長 障 害 領 域 におけるリーダーシップの 拡 大<br />

自 己 炎 症 性 疾 患 領 域 におけるプレゼンスの 確 立<br />

企 業 戦 略 をよりサステナブルなものにすることを、サステナビリティ<br />

戦 略 の 目 的 とする。サステナビリティ 戦 略 には、 責 任 性 の 観 点 と 成 長 の<br />

ための 事 業 機 会 の 両 方 が 含 まれるとし、 責 任 性 の 観 点 の 取 り 組 みは 以 下<br />

とする。<br />

人 材 マネジメント- 最 も 能 力 のある 人 材 によって 技 術 の 開 発 ・ 販<br />

売 ・ 利 用 を 確 実 にするのに 役 立 つ<br />

知 材 マネジメント- 最 も 効 率 的 な 調 査 や 能 力 開 発 をとりまとめる<br />

のに 役 立 ち、それによって 高 い 品 質 をもって 新 たなソリューション<br />

を 実 現 させることができる<br />

セキュリティとプライバシー- 非 常 に 高 いレベルのデータセキュ<br />

リティとプライバシー 制 御 を 提 供 するソリューションを 設 計 し 実<br />

現 させることを 確 実 にする<br />

行 動 規 範 - 企 業 行 動 規 範 やその 他 の 企 業 方 針 で 明 確 に 示 している<br />

とおり、 高 いレベルの 倫 理 的 行 動 を 維 持 しながら 事 業 活 動 を 行 うこ<br />

とを 確 実 にする<br />

気 候 とエネルギー- 我 々のソリューションや 事 業 活 動 による 環 境<br />

への 影 響 を 削 減 または 最 小 化 するやり 方 を 見 つけるのに 役 立 つ<br />

Cisco Systems<br />

Volkswagen<br />

CSR とビジネスとの 関 係 について、「 顧 客 や 社 会 、 環 境 にとっての 価 値<br />

を 創 出 することが 自 社 ビジネスを 強 化 する」との 認 識 を 示 す。CSR 戦 略<br />

の 具 体 的 な 内 容 は 以 下 のとおりである。<br />

サプライチェーン- 倫 理 、 労 働 者 の 権 利 、 健 康 、 安 全 、 環 境 の 高 い<br />

基 準 を 維 持 するために、サプライヤーと 共 に 働 く<br />

人 - 従 業 員 が、 共 同 的 、 包 摂 的 、かつ 健 康 的 な 職 場 の 中 で 能 力 を 伸<br />

ばし、 全 てのポテンシャルを 達 成 できることを 支 援 する<br />

社 会 - 教 育 、ヘルスケアへのアクセスの 拡 大 、 重 大 な 人 類 のニーズ<br />

への 応 答 、 災 害 援 助 の 取 り 組 み、 経 済 的 発 展 の 機 会 の 創 造 、コミュ<br />

ニティの 存 続 を 助 けるため、 他 の 組 織 とともに 働 く<br />

環 境 - 技 術 と 提 唱 を 通 して、 顧 客 及 び 自 社 自 身 の 環 境 面 での 持 続 可<br />

能 性 を 改 善 する<br />

グループの 戦 略 は、CSR の 概 念 をベースに 策 定 されている。2018 年 ま<br />

でに 最 も 収 益 率 の 高 い 企 業 になるだけでなく、 全 世 界 で 最 も 魅 力 的 でサ<br />

38


LANXESS<br />

Johnson &<br />

Johnson<br />

ステナブルな 自 動 車 メーカーになることを 目 指 しており、サステナビリ<br />

ティが「グループ 戦 略 2018」の 全 体 像 を 形 成 している。 具 体 的 には 以 下<br />

を 掲 げる。<br />

顧 客 満 足 と 品 質 において 世 界 のリーダーとなるために、 聡 明 なイノ<br />

ベーションとテクノロジーを 展 開 する<br />

年 間 の 売 上 車 数 を 1000 万 台 以 上 に 増 やす<br />

売 上 高 ( 税 込 ) 利 益 率 を 少 なくとも 8% 以 上 に 増 やす<br />

全 てのブランド、 国 、 地 域 において 最 高 の 雇 い 主 になる<br />

車 1 台 当 たりの 生 産 に 伴 うエネルギー 消 費 量 、 廃 棄 物 排 出 量 、 溶 剤<br />

排 出 量 、 水 消 費 量 と CO2 排 出 量 を 2010 年 度 比 25% 削 減 する。<br />

LANXESS グループの 世 界 における 活 動 には、 持 続 可 能 な 発 展 を 目 指 す<br />

という 方 針 が 貫 かれている。 持 続 可 能 性 は LANXESS の 全 活 動 の 基 盤 と<br />

なるものであり、 環 境 への 適 合 と 社 会 的 責 任 を 重 視 するとしている。<br />

サステナビリティ 方 針 の 本 文 では、 企 業 の 責 任 性 (CR)は、LANXESS<br />

のコアビジネスの 中 心 的 な 要 素 であり、 企 業 の 最 終 目 標 は、 企 業 戦 略 の<br />

中 で 経 済 ・ 環 境 ・ 社 会 側 面 を 調 和 させることであるとする。CR 活 動 は、<br />

環 境 保 全 、 水 、 教 育 、 文 化 との 関 わり 合 いに 焦 点 を 当 て、これらの 取 り<br />

組 みは 全 て 長 期 的 にはコアビジネスに 利 益 をもたらすべきと 明 示 して<br />

いる。<br />

サステナビリティ 活 動 の 根 幹 には、「 我 が 信 条 (Our Credo)」という 企<br />

業 理 念 がある。これは、 顧 客 、 社 員 、 地 域 社 会 、 株 主 に 対 する 責 任 を 具<br />

体 的 に 明 示 したものであり、 長 期 の 成 長 やサステナビリティにおける 未<br />

来 の 構 想 である、ともしている。また、 倫 理 基 準 だけでなく、ビジネス<br />

における 成 功 の 秘 訣 でもあるとしている。<br />

( 資 料 ) 各 社 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

サステナビリティ 戦 略 を 事 業 戦 略 の 中 に 位 置 づけるための 工 夫<br />

サステナビリティ 戦 略 が 事 業 戦 略 の 中 にきちんと 位 置 づけられている 背 景 には、 強 力 な<br />

リーダーシップや 理 念 がある。<br />

強 力 なリーダーシップや 確 固 たる 理 念 が 背 景 にある 例<br />

<br />

活 動 のベースには、70 年 以 上 前 に 策 定 したコアバリューがある。そこでは、 企<br />

業 の 責 任 として、 顧 客 、 父 親 、 母 親 、 従 業 員 、 専 門 的 な 支 援 、コミュニティへの<br />

支 援 、 株 主 への 配 慮 などに 言 及 しており、 日 々の 活 動 指 針 となっている。<br />

citizenship and sustainability 活 動 はそれらから 生 まれている。( 米 国 企 業 )<br />

<br />

(サステナビリティ 部 署 を 率 いてきた 人 物 の) 強 いリーダーシップがあったこと<br />

は 勿 論 だが、 創 業 時 からトリプル・ボトムラインの 思 想 に 繋 がる 精 神 が 根 付 いて<br />

いたことが、 早 期 の 段 階 からプロアクティブにサステナビリティを 推 進 すること<br />

39


ができた 最 大 の 理 由 だと 考 えている。( 欧 州 企 業 )<br />

リーダーシップや 長 年 引 き 継 がれてきた 企 業 理 念 以 外 にも、 事 業 戦 略 との 整 合 性 を 意 識<br />

すること、サステナビリティの 取 り 組 みが 事 業 推 進 の 中 に 位 置 づけられるような 組 織 とす<br />

ること、 外 部 からの 意 見 を 取 り 組 みに 活 かすような 仕 組 みを 構 築 することなど、サステナ<br />

ビリティ 戦 略 が 事 業 戦 略 に 統 合 されるための 工 夫 は 様 々 行 われている。<br />

事 業 戦 略 との 整 合 性 を 意 識 している 例<br />

<br />

通 常 の 企 業 戦 略 にサステナビリティの 活 動 を 織 り 込 むことで「 整 合 性 を 取 る」こ<br />

とが 必 要 だと 考 えている。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

中 期 のグループ 戦 略 を 策 定 しているが、これは 経 済 的 な 視 点 でだけでなく、サス<br />

テナビリティも 意 識 したものである。 経 済 的 な 指 標 として 売 上 や 収 益 などに 関 す<br />

る 目 標 を 設 定 しているがそれだけでなく、 雇 用 や 環 境 など、サステナビリティに<br />

関 する 目 標 も 設 定 しており、これもまた 重 要 な 指 標 と 考 えている。( 欧 州 企 業 )<br />

事 業 推 進 の 中 に 位 置 づけられる 組 織 編 成 の 例<br />

<br />

マーケティング、 人 事 、 広 報 ( 寄 付 や 社 会 貢 献 活 動 を 行 う CSR はこの 中 に 入 る)、<br />

開 発 など、 各 部 門 にサステナビリティ 担 当 者 を 置 く。 各 部 門 の 担 当 者 は、 直 属 の<br />

上 司 のほかに、サステナビリティを 所 管 する 役 員 へも 報 告 することになってい<br />

る。こうしたマトリックス 型 の 組 織 を 置 くことで、 各 部 門 の 生 きた 情 報 を 得 るこ<br />

とができる。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

サステナビリティ 戦 略 を 実 現 させるために、 明 確 な 組 織 とマネジメント 体 制 を 構<br />

築 している。グループの 取 締 役 会 がサステナビリティの 最 高 責 任 機 関 であり、1<br />

年 に 少 なくとも 2 回 、サステナビリティのイシューについて 報 告 を 行 っている。<br />

継 続 的 に 情 報 交 換 を 行 い、 経 営 層 を 巻 き 込 むことが 重 要 である。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

サステナビリティ 戦 略 を 成 功 させるために、 体 制 面 での 工 夫 も 行 っている。サス<br />

テナビリティ 活 動 の 責 任 者 が 取 締 役 会 のメンバーであることと、サステナビリテ<br />

ィコミッティーを 設 置 して 活 動 を 進 めるという 2 点 である。( 欧 州 企 業 )<br />

40


外 部 からの 意 見 を 取 り 組 みに 活 かす 仕 組 みの 例<br />

<br />

ステークホルダーからのフィードバックは、 各 事 業 責 任 者 に 速 やかに 共 有 され<br />

る。 各 事 業 責 任 者 は、フィードバックを 踏 まえた 改 善 に 対 して 努 力 を 怠 らない。<br />

その 背 景 には、ありとあらゆるものを 測 る(measure)という 社 風 があり、 改 善<br />

度 合 いや 改 善 までの 時 間 なども 測 っている。( 米 国 企 業 )<br />

開 示 フレームワークに 対 する 見 解<br />

サステナビリティ 戦 略 や 取 り 組 みの 開 示 に 関 するフレームワークは、GRI の 他 にも、SASB<br />

や IIRC などの 検 討 が 進 められている。IIRC については、 欧 州 発 であることや、 投 資 家 から<br />

の 要 請 もあり、 欧 州 企 業 は 前 向 きに 取 り 組 む 一 方 で、 米 国 企 業 は 重 要 だが 長 期 的 な 取 り 組<br />

みとの 認 識 がなされていた。SASB については、 米 国 上 場 企 業 を 中 心 に 好 意 的 な 意 見 が 多 い<br />

一 方 で、 一 般 的 ではない 業 種 に 属 する 企 業 からは、それほど 意 義 はないのではという 懐 疑<br />

的 な 意 見 も 聞 かれた。GRI については、 準 拠 を 進 める 企 業 が 多 い 一 方 で、 方 針 が 合 わないた<br />

めに 準 拠 をやめ、IIRC に 移 行 した 企 業 もあった。<br />

支 持 するフレームワークは 異 なるものの、 支 持 を 示 したフレームワークに 対 しては、そ<br />

の 策 定 に 積 極 的 に 関 与 する 動 きが 見 られた。<br />

IIRC に 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

ESG 投 資 業 界 というのは、よくも 悪 くもメトリクス( 指 標 )とチェックリスト<br />

で 成 り 立 っている。ESG 評 価 機 関 からの 質 問 票 には 答 えるが、それにすべて 答<br />

えてよい 評 価 をもらっても( 評 価 をもらうのは 良 いことだが)、それによって 自<br />

社 のサステナビリティ 戦 略 を 伝 えられるとは 思 わない。このあたりが、IIRC を<br />

サポートする 理 由 である。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

IIRC に 関 しては、 将 来 的 にはアニュアルレポートとサステナビリティレポート<br />

が 統 合 される 可 能 性 はある。アニュアルレポートの 中 でサステナビリティに 関 す<br />

るイシューに 触 れることは 重 要 だが、 我 々の 考 えでは、それとは 別 にサステナビ<br />

リティに 関 する 活 動 や 戦 略 を 包 括 的 に 開 示 するものとして、サステナビリティレ<br />

ポートを 作 成 することが 必 要 である。 投 資 家 以 外 のステークホルダーにとっては<br />

包 括 的 な 開 示 が 必 要 だからである。( 欧 州 企 業 )<br />

41


統 合 報 告 書 を 作 成 するきっかけの 一 つは、 投 資 家 からビジネス( 価 値 創 造 )との<br />

関 連 に 関 する 質 問 に 端 を 発 している。この 報 告 書 は、 当 社 がトリプル・ボトムラ<br />

インの 考 え 方 に 従 って、どのように 共 有 価 値 を 創 造 するビジネスモデルを 作 りあ<br />

げているのかを 具 体 的 に 示 すものである。しかし、この 報 告 書 は 単 に 投 資 家 への<br />

報 告 だけを 目 的 としたものではなく、 特 定 の 社 会 的 課 題 に 対 して、 実 際 に 地 域 コ<br />

ミュニティや 行 政 、パートナー 等 のステークホルダーとの 協 業 を 行 う 過 程 そのも<br />

のである。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

IIRC は、 財 務 のデータと 非 財 務 のデータを 真 の 意 味 で 統 合 しなければならず、<br />

多 くの 会 社 にとっても 実 施 を 行 うには 時 間 がかかる(longer journey)と 考 えてい<br />

る。( 米 国 企 業 )<br />

IIRC は 重 要 であるが、 長 期 的 な 取 り 組 みと 認 識 。( 米 国 企 業 )<br />

SASB に 対 する 主 な 意 見<br />

業 種 のガイドライン 策 定 時 に 参 加 した。( 米 国 企 業 )<br />

<br />

業 種 のガイドライン 策 定 に 協 力 している。ただ、これも 長 期 的 な 取 り 組 み。1 つ<br />

のセクターに 15~20 ヶ 月 かけている。 簡 略 化 してもよいのではないか。( 米 国 企<br />

業 )<br />

<br />

SASB は 悪 くないと 思 うが、ただ 企 業 数 が 少 ない 業 界 向 けのスタンダードをわざ<br />

わざ 作 成 する 意 味 はあまりないと 思 う。 更 に、 自 社 が CO2 を 削 減 しても、 顧 客<br />

の CO2 が 減 るわけではない。 社 会 全 体 に 起 こっていることをみると、 極 めて 意<br />

義 があるとも 言 い 難 い。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

SASB についてはサポートすることを 決 定 している。 実 際 に、 業 種 のガイドライ<br />

ン 作 成 に 参 加 した。なお、 米 国 証 券 取 引 所 に 上 場 しているため、 将 来 的 に 影 響 が<br />

ある 可 能 性 があることも 背 景 としてある。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

SASB についてはまだ 開 拓 段 階 である。 将 来 的 には GRI に 代 わるものとなるかも<br />

しれない。 個 人 的 には 価 値 のある 枠 組 みと 考 えているが、それが 唯 一 の 解 決 策 と<br />

は 思 わない。( 欧 州 企 業 )<br />

42


IIRC と SASB は 共 存 しうると 考 えている。( 欧 州 企 業 )<br />

GRI に 対 する 主 な 意 見<br />

G4 のガイダンスも 認 識 しており、それに 沿 って 報 告 書 も 作 成 した。( 米 国 企 業 )<br />

<br />

GRI は 報 告 書 のベースにしている。 特 に 環 境 分 野 の 量 的 情 報 は GRI に 沿 った 開<br />

示 を 5 年 ほど 行 っている。( 米 国 企 業 )<br />

<br />

GRI に 準 拠 したレポーティングを 開 始 している。 経 済 ・ 環 境 ・ 社 会 側 面 における<br />

情 報 開 示 の 項 目 が 当 社 の 主 要 なトピックスと 一 致 していたため、GRI に 準 拠 する<br />

ことにした。 新 たに 発 行 された GRIG4 にも 準 拠 するように 改 良 している。( 欧 州<br />

企 業 )<br />

<br />

グループのサステナビリティレポートは、GRI に 沿 って 作 成 している。また、ア<br />

ニュアルビジネスレポートの 中 でも、CSR やサステナビリティのイシューにつ<br />

いて 言 及 している。 我 々の 考 えでは、サステナビリティレポートはサステナビリ<br />

ティに 関 する 事 業 機 会 について 幅 広 く 具 体 的 に 述 べるものであり、 統 合 レポート<br />

に 代 替 されるものではない。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

GRI が 策 定 されたときから 参 照 して 情 報 開 示 を 行 ってきたが、 徐 々に 自 社 の 考 え<br />

方 と 合 わなくなってきた。その 理 由 は、 自 社 独 自 の 考 え 方 を 発 展 させきたこと、<br />

GRI が 定 義 するアカウンティングポリシーに 関 するインディケーターの 基 準 が<br />

具 体 的 ではないことなどが 挙 げられる。そして、 最 終 的 に 2013 年 の 報 告 書 から<br />

は、GRI に 準 拠 した 報 告 書 を 作 成 しないことを 決 定 した。( 欧 州 企 業 )<br />

サプライチェーンに 関 する 情 報 開 示<br />

日 本 企 業 の 取 り 組 み・ 開 示 が 遅 れているとされているサプライチェーンに 関 しては、 具<br />

体 的 な 数 値 目 標 や、 取 り 組 み 内 容 の 詳 細 な 内 容 を 開 示 している 企 業 も 見 られた。<br />

Johnson & Johnson のサプライチェーンに 関 する 情 報 開 示<br />

Johnson & Johnson では、サステナビリティ 活 動 について 2015 年 をターゲットとし<br />

43


た 目 標 と 進 捗 状 況 を「Healthy Future 2015 sustainability Goals Progress」の 中 で 開 示 し<br />

ている 19 。サプライヤーに 関 しては、「サプライヤーの 持 続 可 能 性 (suppliers<br />

sustainability)」と 題 して 以 下 の 5 つの 目 標 が 設 定 されている。 具 体 的 な 数 値 目 標 も 含<br />

めて 開 示 されており、 目 標 に 対 する 取 り 組 みの 進 捗 度 合 いが 分 かりやすく 示 されてい<br />

る 点 が 特 徴 と 言 える。<br />

すべての 戦 略 的 サプライヤーは、2 項 目 ないしはそれ 以 上 の 持 続 可 能 性 を 目 指 す<br />

目 標 を 開 示 する<br />

2011 年 までに 10 億 ドルを 多 様 なサプライヤーの 持 続 可 能 性 の 取 り 組 みに 充 てる<br />

人 権 リスクの 高 い 国 の 全 てのサプライヤーは、Johnson & Johnson の 人 権 規 定 を<br />

認 識 し、 自 社 の 方 針 と 適 合 していることを 確 認 する<br />

全 ての 重 要 職 にある 従 業 員 は 人 権 研 修 を 受 ける<br />

全 てのパーム 油 とパーム 油 由 来 のものは、 認 証 を 受 けた 持 続 可 能 な 生 産 源 から 調<br />

達 する<br />

Novo Nordisk のサプライチェーンに 関 する 情 報 開 示<br />

Novo Nordisk は、サプライチェーンを 通 じたサステナビリティの 取 り 組 みとして、<br />

自 社 のトリプル・ボトムラインの 考 え 方 を 反 映 させた「ビジネスパートナーのための<br />

責 任 ある 調 達 基 準 」を 開 示 している 20 。その 目 的 は、サプライチェーンを 通 じてビジ<br />

ネスパートナーの 倫 理 ・ 社 会 ・ 環 境 のパフォーマンスを 改 善 するためと、リスクを 緩<br />

和 し Novo Nordisk のレピュテーションを 守 るためである。Novo Nordisk はこの 調<br />

達 基 準 を 開 示 し、ビジネスパートナーに 対 して、「 法 令 遵 守 」、「 健 康 と 安 全 」、「 労 働<br />

慣 行 」、「ビジネス 倫 理 」、「 環 境 」、「 下 請 供 給 者 」という 項 目 に 関 してパフォーマンス<br />

を 証 明 する 書 類 を 提 出 するよう 求 めている。<br />

具 体 的 には、「 労 働 慣 行 」では「 児 童 労 働 の 禁 止 」、「 賃 金 と 報 酬 」、「 労 働 時 間 及 び<br />

休 日 に 関 する 規 程 の 遵 守 」などについて、ビジネスパートナーが 遵 守 すべき 事 項 を 詳<br />

細 に 開 示 している。「ビジネス 倫 理 」では「 臨 床 試 験 患 者 の 安 全 と 権 利 」や「 動 物 保<br />

護 」などの 項 目 がある。「 環 境 」では、 環 境 目 標 を 設 定 し、アクションプランを 立 て、<br />

内 部 ・ 外 部 アセスメントによって 特 定 された 必 要 な 改 善 を 施 すことで 環 境 パフォーマ<br />

ンスを 継 続 的 に 改 善 することなどについて 要 求 している。<br />

19 Johnson & Johnson ホームページ<br />

20 Novo Nordisk ホームページ<br />

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特 定 の 事 業 活 動 についての 経 済 性 ・ 社 会 性 を 分 析 したレポート<br />

従 来 型 の CSR 報 告 書 ・サステナビリティ 報 告 書 に 加 え、 特 定 地 域 などでの 事 業 活 動 に 関<br />

して、その 経 済 性 や 社 会 性 を 詳 細 に 分 析 したインパクトレポートを 開 示 する 企 業 も 出 てき<br />

ている。 個 別 取 り 組 みがどのように 価 値 を 創 造 しているのかを 詳 細 に 把 握 することができ<br />

るという 点 では、 投 資 家 にとっても 有 益 な 開 示 手 法 といえる。<br />

Novo Nordisk のインパクトレポート<br />

Novo Nordisk では、 特 定 地 域 や 特 定 のイシューに 焦 点 を 当 て、 同 社 のトリプル・<br />

ボトムラインの 考 え 方 の 実 践 を 通 じて 同 社 が 価 値 を 生 み 出 しているかについての 理<br />

解 を 促 進 するため、「The Blueprint for Change Programme」と 名 づけ、 社 会 への 便 益 と<br />

企 業 への 便 益 を 分 析 したインパクトレポートを 複 数 作 成 している。 現 時 点 で 発 行 され<br />

ているレポートのタイトルは 以 下 の 通 りである。<br />

• 気 候 変 動 への 挑 戦 (The Climate Change Challenge)<br />

• 中 国 における 糖 尿 病 の 変 革 (Changing Diabetes in China)<br />

• 米 国 における 共 有 価 値 の 創 造 (Creating shared value in the United States)<br />

• バングラデシュにおける 糖 尿 病 の 変 革 (Changing Diabetes in Bangladesh)<br />

• インドネシアにおける 糖 尿 病 の 変 革 (Changing Diabetes in Indonesia)<br />

レポートは 主 に「 解 決 すべき 社 会 的 課 題 に 関 する 現 状 分 析 、 社 会 的 課 題 を 解 決 する<br />

にあたっての 障 壁 は 何 か(the challenge)」「 社 会 的 課 題 の 解 決 に 向 けて Novo Nordisk<br />

がどのように 対 応 してきたか(our approach)」「その 結 果 、どのような 価 値 が 創 出 さ<br />

れたか( 共 有 価 値 、 社 会 にとっての 価 値 、 自 社 にとっての 価 値 )(Shared Value created,<br />

Value to society, Value to Novo Nordisk)」「 今 後 の 展 望 (perspectives)」といった 内 容 か<br />

ら 構 成 される。<br />

例 えば、「インドネシアにおける 糖 尿 病 の 変 革 」では、 初 めにインドネシアにおけ<br />

る 糖 尿 病 患 者 やその 予 備 軍 の 人 数 を 示 し、そのうち 適 切 な 治 療 を 受 けている 人 数 が 非<br />

常 に 少 ないという 現 状 を 説 明 している。そして、インドネシアで 糖 尿 病 患 者 が 増 えて<br />

いる 理 由 について 食 生 活 の 特 徴 や、 農 村 地 域 から 都 市 への 移 住 が 進 み、デスクワーク<br />

中 心 のライフスタイルをおくる 人 が 増 えてきたことなどを 挙 げ、 課 題 解 決 に 向 けて<br />

「 糖 尿 病 に 関 する 認 識 の 不 足 」、「 患 者 数 に 対 して 適 切 な 治 療 ができる 医 者 の 数 が 少 な<br />

いこと」などのイシューを 特 定 している。さらに、 各 イシューを 関 連 付 けたマッピン<br />

グ 図 を 作 成 している。 課 題 解 決 に 向 けたノボ・ノルディスクの 対 応 としては、 政 府 や<br />

地 域 の NGO 等 のステークホルダーとの 連 携 や、 活 動 のバリューチェーン 全 体 を 通 じ<br />

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て 各 ステークホルダーがどのように 貢 献 し、どのような 恩 恵 を 受 けたかをビジネスモ<br />

デルの 形 で 開 示 している。<br />

また、 活 動 の 結 果 、どのような 共 有 価 値 が 創 出 されたかについては、 克 服 すべき 4<br />

つのイシュー「awareness」「accessibility」「affordability」「quality for patients」それぞ<br />

れに 対 して、 共 通 価 値 へのパス(paths to shared value)を 開 示 している。 例 えば<br />

「accessibility」に 関 しては、アジアの 他 国 と 比 べてもインドネシアは 内 分 泌 科 医 が 不<br />

足 している 状 況 をグラフで 示 した 上 で、その 状 況 を 改 善 するために 内 科 医 に 対 するト<br />

レーニングを 行 った 結 果 、 糖 尿 病 に 関 する 知 識 レベルが 上 がったことを、テストのス<br />

コアとして 定 量 的 に 測 定 した 結 果 を 開 示 している。また、 定 量 的 な 情 報 だけでなく、<br />

主 要 なステークホルダーにインタビューするなどして、 活 動 を 通 じてどのように 変 わ<br />

ったかという 支 援 を 受 けた 側 の 生 の 声 も 掲 載 されている。<br />

自 社 にとっての 価 値 は、 活 動 を 通 じてインドネシア 市 場 についての 深 い 知 見 を 得 ら<br />

れたことなどが 挙 げられている。 地 域 の 主 要 ステークホルダーとの 関 係 性 構 築 や 臨 床<br />

試 験 などを 通 じて、 市 場 におけるシェア 獲 得 にも 良 い 影 響 をもたらしたとされてい<br />

る。 現 状 の 市 場 成 長 率 を 踏 まえると、インドネシアにおけるインスリン 市 場 は 3.4 倍<br />

になるという 予 想 も 併 せて 示 されている。また、こうした 活 動 が 会 社 のレピュテーシ<br />

ョン 向 上 をもたらし、 従 業 員 の 離 職 率 の 低 下 や 満 足 度 向 上 に 結 び 付 いているとして、<br />

それらのデータを 開 示 している。Novo Nordisk ではこれらのインパクトレポートを 通<br />

して、 地 域 コミュニティや 政 府 、パートナー 等 のステークホルダーとの 協 業 を 行 う 過<br />

程 そのものを 分 かりやすく 開 示 するだけでなく、 特 定 の 社 会 的 課 題 に 向 けた 取 り 組 み<br />

が 自 社 ビジネスにどのような 影 響 をもたらすのかについても 説 明 している。<br />

Cisco Systems のインパクトストーリー<br />

Cisco Systems では、CSR 活 動 によって 地 域 社 会 や 地 域 住 民 にどのような 影 響<br />

(impact)をもたらしたかについて、「インパクトストーリー(Impact Stories)」とし<br />

て 開 示 している。 具 体 的 には、アフリカやアメリカ、ヨーロッパ、 中 東 、アジアにお<br />

いて 実 施 している IT・ネットワーク 関 連 の 教 育 の 影 響 (education impact)、ネットワ<br />

ーク 技 術 がもたらすヘルスケアへのアクセスの 影 響 (healthcare impact)、その 地 域 に<br />

もたらした 経 済 的 影 響 (economic empowerment impact)について、ストーリー 立 てて<br />

開 示 している。<br />

例 えば、Education Impact Story では、 南 アフリカにおける 貧 しいコミュニティ 出 身<br />

の 黒 人 女 性 の 話 が 紹 介 されている。 南 アフリカでは 経 済 的 機 会 の 欠 如 により、いまだ<br />

に 所 得 の 低 い 人 々が 多 い。また、ICT 教 育 を 提 供 する 高 等 学 校 は 9000 あるうちの 5%<br />

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以 下 である。こうした 近 代 的 な 教 育 を 受 けにくいことが 経 済 的 な 成 長 を 難 しくしてい<br />

るという。ヨハネスブルグには「CIDA」という、 恵 まれない 環 境 で 育 った 生 徒 に 対<br />

して 少 額 で 高 等 教 育 を 提 供 する 非 営 利 の 機 関 がある。Cisco Systems は CIDA に 対 し<br />

て 奨 学 金 などをサポートするほか、Cisco Systems が CSR プログラムの 一 つとして 実<br />

施 している ICT の 教 育 カリキュラム(Cisco Networking Academy curriculum)を 提 供<br />

している。その 女 性 は CIDA に 通 い、Cisco Systems の ICT 教 育 を 受 けたことで 貧 困<br />

から 脱 することができたという。IT 技 術 を 身 に 付 けたことで 就 職 先 が 見 つかり、 会<br />

社 でも 昇 進 し、 給 料 を 得 て 両 親 のために 家 を 建 てることができたそうだ。インパクト<br />

ストーリーでは、Cisco Systems の CSR プログラムによって、 彼 女 の 実 際 の 生 活 にど<br />

のような 変 化 をもたらしたかが 具 体 的 に 説 明 されている。 特 定 の 人 物 を 主 人 公 にした<br />

ストーリー 仕 立 ての 説 明 の 中 で、 支 援 を 受 けた 者 やその 家 族 に 与 えた 恩 恵 の 内 容 や、<br />

その 地 域 にもたらす 影 響 について 示 されている 点 が 特 徴 である。<br />

Economic Empowerment Impact Stories についても、アフリカやアメリカ、 中 東 、ア<br />

ジアでの 事 例 が 掲 載 されている。インドの 事 例 では、 農 家 の 支 援 策 として Cisco<br />

Systems が 協 力 している、 専 門 家 やデータベースを 活 用 した 電 話 での 情 報 提 供 サービ<br />

ス(LifeLines)について 紹 介 している。インドでは 労 働 人 口 の 約 65%が 農 業 に 従 事 し<br />

ているが、 田 舎 の 農 家 では 家 畜 の 病 気 への 対 処 法 などの 情 報 が 共 有 されていない。<br />

LifeLines の 利 用 により 地 域 にもたらした 経 済 的 影 響 として、 農 家 の 生 産 性 や 収 入 が<br />

平 均 で 20~30% 増 加 したことが 報 告 されている。<br />

Cisco Systems がこれまでに 作 成 した 各 地 域 におけるインパクトストーリーは、20<br />

以 上 にも 及 ぶ。 同 社 ではこれらのストーリーを CSR レポートとは 別 に、ウェブサイ<br />

ト 上 で 写 真 や 動 画 を 交 えて 開 示 している。<br />

3.2 直 接 対 話 の 取 り 組 み<br />

3.2.1 ESG 投 資 家 の 望 む 企 業 との 直 接 対 話<br />

○ ESG 投 資 家 は、 一 般 的 に ESG に 関 するエンゲージメントは 有 用 との 意 見 が 多 いが、そ<br />

のスタンスは 異 なる。<br />

○ アセット・オーナー/ 運 用 機 関 は、ESG 要 因 に 関 して 企 業 の 側 から 投 資 家 に 積 極 的 な 働<br />

きかけを 歓 迎 する 声 が 多 数 。<br />

エンゲージメントに 対 するスタンス<br />

本 調 査 研 究 が 調 査 対 象 とした 欧 米 の 主 要 なアセット・オーナー/ 運 用 機 関 においては、<br />

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エンゲージメントが 積 極 的 に 行 われている。 特 に、 前 述 のとおり、パッシブ 運 用 が 株 式 投<br />

資 の 大 半 を 占 めるようなアセット・オーナーであっても、ポートフォリオの 価 値 を 毀 損 し<br />

ないために、ESG 要 因 について 積 極 的 にエンゲージメントを 行 っている。<br />

一 方 、エンゲージメントの 手 段 や 目 的 は、アセット・オーナー/ 運 用 機 関 において 様 々<br />

である。 特 に 米 国 では、 株 主 提 案 や 議 決 権 行 使 がエンゲージメントの 主 な 手 段 であるのに<br />

対 して、 欧 州 では、 非 公 開 の 場 での 一 対 一 ミーティングなどのソフトな 方 法 による 働 きか<br />

けが 重 視 されるという 地 域 的 な 特 性 が 見 られる。 特 に ATP のように、エンゲージメントの<br />

ための 事 前 調 査 段 階 においては 外 部 の ESG 情 報 提 供 機 関 の 情 報 を 活 用 しているものの、 企<br />

業 との 直 接 対 話 を 行 う 段 階 では、 外 部 機 関 に 委 託 することはせず、 株 主 の 責 任 を 果 たすた<br />

めに、 必 ずインハウスでそれを 行 うことを 明 言 しているアセット・オーナーも 存 在 する。<br />

エンゲージメントの 目 的<br />

エンゲージメントの 目 的 については、ターゲット 企 業 の 行 動 変 革 が 主 な 目 的 であるとす<br />

るアセット・オーナー/ 運 用 機 関 が 大 勢 を 占 めるが、 一 部 には、 投 資 先 に 何 らかの 課 題 が<br />

あるからという 理 由 でエンゲージメントを 行 うのではなく、 企 業 との 対 話 を 通 じて 投 資 先<br />

企 業 のことを 良 く 知 ること、 企 業 の 価 値 創 造 のサポート 役 となることをエンゲージメント<br />

の 主 目 的 しているとの 声 もあった。このことから、 投 資 家 による 企 業 へのエンゲージメン<br />

トと 一 言 で 言 っても、アセット・オーナー/ 運 用 機 関 によって、 何 をもってエンゲージメ<br />

ントとするのか、そのスタンスは 大 きく 異 なるといえる。<br />

なお、エンゲージメントを 仕 掛 ける 企 業 を 選 択 する 考 え 方 として、 企 業 の 変 革 を 重 要 視<br />

する 欧 州 のある 年 金 基 金 では、エンゲージメントを 行 うための 組 織 的 なキャパシティの 問<br />

題 から、 投 資 金 額 が 大 きく、かつ ESG に 関 する 問 題 が 深 刻 な 投 資 先 を 優 先 的 に 対 象 として<br />

いるとの 声 があった。なお、 同 基 金 において、ESG に 関 する 問 題 が 深 刻 、かつ 投 資 金 額 が<br />

小 さい 場 合 は 即 時 売 却 になるという。<br />

ESG 投 資 家 向 けの IR 活 動<br />

ESG 投 資 家 向 けの 説 明 会 (ロードショー)を 行 う 企 業 は、ドイツなど 欧 州 を 中 心 に 増 え<br />

てきている。アセット・オーナー/ 運 用 機 関 は、 一 般 に 限 られた 時 間 のなかで 多 くの 投 資<br />

判 断 を 行 っており、 企 業 各 社 の 開 示 情 報 を 参 照 する 時 間 が 限 られていることから、 企 業 の<br />

側 から 積 極 的 にアピールしたいことを 投 資 家 に 訴 えることは 重 要 であるとする 意 見 が 多 数<br />

を 占 めた。 特 に 日 本 企 業 については、 言 語 の 問 題 もあり、 海 外 向 けの 英 語 での 情 報 発 信 が<br />

限 定 的 な 企 業 が 多 いことから、 積 極 的 な ESG 投 資 家 向 けの IR 活 動 を 期 待 する 声 があった。<br />

ただし、 見 栄 えのよいサステナビリティの 活 動 をマーケティング 的 に 紹 介 するだけのロ<br />

ードショーは、 投 資 家 にとって 有 益 とは 言 えず、しっかりと 事 実 とデータを 伝 えることが<br />

重 要 との 声 も 聞 かれた。<br />

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3.2.2 海 外 の 先 進 的 企 業 が 実 践 する 投 資 家 との 直 接 対 話<br />

○ ESG 投 資 家 をターゲットとする 場 合 は、ESG 投 資 家 等 を 対 象 とする 説 明 会 (ロードシ<br />

ョー)などを 通 じて 投 資 家 に 積 極 的 に 働 きかけることが 重 要 。<br />

○ 一 方 、IR の 現 場 では ESG 情 報 に 関 するニーズはほとんどないという 指 摘 は 多 い。 投 資<br />

家 からのニーズを 基 点 にして 情 報 開 示 を 行 うのではなく、 企 業 価 値 創 造 の 過 程 を 正 しく<br />

理 解 してもらうために 投 資 家 に 積 極 的 に 働 きかけを 行 うことが 重 要 。<br />

ESG 投 資 家 等 をターゲットとした 説 明 会 (ロードショー)<br />

企 業 が ESG 投 資 家 を 主 なターゲットとする 場 合 は、ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 を 積 極 的 に<br />

行 うことで、 良 好 な 関 係 を 築 くことが 可 能 である。ある 欧 州 の 企 業 は、ESG 投 資 家 を 対 象<br />

とする 説 明 会 を 10 年 以 上 継 続 し、フィードバックを 得 ながら 取 り 組 みを 進 化 させ、そうし<br />

た 投 資 家 をひきつけるのに 成 功 している。<br />

ESG 投 資 家 とのコミュニケーション 成 功 事 例<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

ESG 投 資 家 を 対 象 とする 説 明 会 (ロードショー)を 初 めて 行 ったのは 2002 年 で<br />

ある。その 後 、 毎 年 行 ってきている。 時 期 としては、 年 度 の 業 績 が 出 る 第 1 四 半<br />

期 に 行 い、それ 以 外 はアドホックに 行 っている。<br />

初 回 のロードショーで、サステナビリティの 取 り 組 みを 紹 介 した 際 には、 取 り 組<br />

みの 内 容 はとても 興 味 深 いがビジネスにどう 関 係 するのか、という 反 応 だった。<br />

こうしたやり 取 りから、 投 資 家 は 何 を 求 めているのかについて 非 常 に 多 くのこと<br />

を 学 ぶことができた。 同 時 に、IR チームも ESG やサステナビリティの 取 り 組 み<br />

について 多 くのことを 学 ぶことができた。<br />

また、ESG アナリストからの 質 問 と、 伝 統 的 なアナリストからの 質 問 が 同 じ 場<br />

で 行 われることで、それまであまり 交 流 のなかった ESG アナリストと 通 常 のア<br />

ナリストの 間 でも 気 付 きやコミュニケーションが 起 こった 点 も 成 果 として 挙 げ<br />

られる。<br />

ロードショーの 効 果 について、 具 体 的 に 資 本 コストがこれだけ 下 がったといった<br />

ことを 明 示 するのは 難 しいが、 長 期 投 資 家 を 引 き 付 けることには 成 功 していると<br />

考 えている。 勿 論 、 相 場 の 上 下 によって 売 買 は 行 われるが、 保 有 期 間 の 長 い 機 関<br />

投 資 家 及 び 個 人 投 資 家 ( 従 業 員 含 む)の 安 定 投 資 家 が 株 主 になっているという 認<br />

識 である。( 欧 州 企 業 )<br />

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IR 現 場 での ESG 情 報 に 対 するニーズ<br />

前 述 のような 好 事 例 がある 一 方 で、IR の 現 場 では ESG 情 報 に 関 するニーズはほとんどな<br />

いという 指 摘 は 多 く 聞 かれた。<br />

IR における ESG 情 報 ニーズに 対 する 主 な 意 見<br />

<br />

投 資 家 との 情 報 のやりとりについては、「 鶏 と 卵 」であるとは 感 じる。(※ 投 資 家<br />

からの 問 い 合 わせに 備 えて 情 報 はいつも 準 備 しているものの、 実 際 に 投 資 家 から<br />

質 問 は 受 けないという 意 味 )( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

足 下 では 特 にサステナビリティの 取 り 組 みにフォーカスした 対 話 は 行 っていな<br />

い。 投 資 家 との 対 話 の 内 容 は 広 範 囲 にわたっており、サステナビリティはほんの<br />

一 部 にすぎない。 投 資 家 から 質 問 があった 場 合 などには 対 応 しているが、それほ<br />

ど 多 いわけでもない。ESG 投 資 家 の 割 合 は 小 さいことから、 彼 らをターゲット<br />

にはしていない。( 米 国 企 業 )<br />

これまでみてきたように、ESG 情 報 提 供 機 関 は ESG 要 因 を 主 にリスクとして 捉 えており、<br />

ESG 投 資 家 は 主 にリスク 管 理 の 一 環 として ESG 投 資 を 実 践 している。 一 方 、 先 進 的 な 企 業<br />

は、サステナビリティ 戦 略 を 事 業 戦 略 に 統 合 しており、リスクだけでなく 事 業 機 会 である<br />

とも 捉 えている。こうした 認 識 のギャップが、“ESG 情 報 ニーズがない”ということの 背 景<br />

にあるのかもしれない。<br />

国 連 グローバル・コンパクトが 推 進 している 投 資 家 と 企 業 のコミュニケーションを 促 進<br />

するためのプロジェクトにおいても、 同 様 のことが 指 摘 されている 21 。 投 資 家 の 視 点 では、<br />

「サステナビリティはリスク 管 理 であるものの、 事 業 機 会 への 明 確 な 道 筋 は 見 えてこない<br />

(Good risk management, but no clear connection to upside opportunity)」が、 企 業 の 視 点 では、<br />

「サステナビリティはイノベーションにつながり、そして 業 績 を 向 上 させるものである<br />

(Sustainability drives innovation, which drives results)」とし、そのギャップを 埋 めるために、<br />

新 たなコミュニケーションが 必 要 であるとする。<br />

今 回 ヒアリングをした 企 業 の 中 にも、 先 進 的 な 企 業 は 投 資 家 を 教 育 すべきであるとの 意<br />

見 が 聞 かれた。サステナビリティ 戦 略 を 事 業 戦 略 に 統 合 し、そうした 内 容 を 投 資 家 に 理 解<br />

してもらうことが 必 要 なのであれば、 投 資 家 からのニーズを 基 点 にして 情 報 開 示 を 行 うの<br />

ではなく、 企 業 の 方 が 一 歩 先 に 進 んでいるとの 前 提 に 立 ち、 企 業 価 値 創 造 の 過 程 を 正 しく<br />

21 国 連 グローバル・コンパクト・PRI [2013] “THE VALUE DRIVER MODEL: A TOOL FOR COMMUNICATIN<br />

G THE BUSINESS VALUE OF SUSTAINABILITY” <br />

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理 解 してもらうために 投 資 家 に 積 極 的 に 働 きかけを 行 うことが 重 要 であろう。<br />

啓 発 的 観 点 での 投 資 家 とのコミュニケーションに 対 する 主 な 意 見<br />

投 資 家 は、 企 業 の 業 績 を 比 較 できるようにチェックリストのようなものを 持 って<br />

いる。ただ、ESG に 関 しては 投 資 家 コミュニティ 内 に 統 一 した 観 点 はない。む<br />

しろ 積 極 的 にサステナビリティの 取 り 組 みを 行 っている 企 業 が、 投 資 家 を「 教 育 」<br />

すべきだと 思 う。ネガティブな 要 素 を 取 り 除 くことがサステナビリティの 取 り 組<br />

みだという 投 資 家 もいるが、それは 本 当 にサステナビリティの 取 り 組 みだとは 言<br />

えない。 様 々な 課 題 間 の 関 係 性 を 把 握 し、 自 社 の 通 常 業 務 における KPI との 関<br />

係 性 を 明 確 にすべきである。 特 に KPI の 目 標 達 成 度 というのは、 投 資 家 が 気 に<br />

するためである。( 欧 州 企 業 )<br />

<br />

財 務 パフォーマンスの 良 い 企 業 とサステナビリティのリーダー 企 業 は 強 く 関 係<br />

している。 製 品 で 成 功 するには、 顧 客 を 惹 きつけることとサステナビリティへの<br />

配 慮 の 両 方 が 必 要 である。 我 々は、 財 務 的 なパフォーマンスとサステナビリティ<br />

パフォーマンスとの 間 には 関 連 性 があると 考 えており、そのエビデンスもいくつ<br />

かある。それをアナリストに 説 明 しようとしている。( 欧 州 企 業 )<br />

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. 4 日 本 企 業 への 示 唆<br />

4.1 今 後 の ESG 要 因 の 開 示 / 投 資 家 との 直 接 対 話 に 向 けて<br />

○ 今 後 の ESG 情 報 開 示 や 投 資 家 との 直 接 対 話 に 取 り 組 むにあたって、 欧 米 の ESG 情 報 提<br />

供 機 関 及 び ESG 投 資 家 は、 企 業 の ESG 要 因 を 主 にリスク 管 理 の 視 点 から 視 ているとい<br />

う 点 に 留 意 することが 重 要 。<br />

○ TOPIX500 に 該 当 するなど、 時 価 総 額 が 特 に 大 きい 企 業 は、 必 要 に 応 じて 報 告 書 におけ<br />

る ESG 情 報 開 示 と 投 資 家 との 直 接 対 話 の 両 面 から 取 り 組 むことが 肝 要 。<br />

○ 時 価 総 額 が 必 ずしも 大 きくない 企 業 においては、 欧 米 の ESG 情 報 提 供 機 関 の 調 査 カバ<br />

レッジに 含 まれない 場 合 も 多 いと 考 えられるが、 欧 米 の ESG 投 資 家 に 対 して 株 主 政 策<br />

として ESG 情 報 を 積 極 的 にアピールしていくことは 有 効 。<br />

ESG 投 資 家 等 の 視 点 に 留 意<br />

2 章 、3 章 で 確 認 したように、 本 調 査 研 究 が 調 査 の 対 象 とした 欧 米 の 主 要 な ESG 情 報 提 供<br />

機 関 及 び ESG 投 資 家 の 多 くが、 投 資 運 用 におけるリスク 管 理 の 視 点 から、 企 業 の ESG 要 因<br />

を 考 慮 していることが 明 らかとなった。それはすなわち、 投 資 判 断 において、 企 業 が 如 何<br />

に 社 会 的 責 任 を 果 たしているか、あるいは 社 会 貢 献 を 行 っているか、という 視 点 から 企 業<br />

の ESG 要 因 が 評 価 されている 訳 ではないと 考 えられる。したがって、 日 本 企 業 が ESG 情 報<br />

開 示 や 投 資 家 との 直 接 対 話 の 強 化 を 検 討 するにあたっては、この 点 を 念 頭 に 置 いておくこ<br />

とは 重 要 であると 考 えられる。<br />

評 価 の 対 象 となる 企 業<br />

図 表 -12 で 確 認 したように、グローバルに 活 動 する ESG 情 報 提 供 機 関 による 日 本 企 業 調<br />

査 のカバレッジは、 公 開 情 報 から 確 認 する 限 り 500 社 程 度 であった。したがって、ESG 情<br />

報 開 示 に 関 しては、TOPIX500 に 該 当 するなど 時 価 総 額 が 大 きく、かつグローバルにビジ<br />

ネスを 展 開 する 企 業 においては、 後 述 の 4.1 に 十 分 に 留 意 した 上 で、ESG 投 資 家 等 からの<br />

評 価 を 向 上 させるために、さらなる ESG 情 報 開 示 の 進 展 が 期 待 される。<br />

他 方 、ESG 情 報 の 二 次 利 用 を 行 う 欧 米 の ESG 投 資 家 の 中 には、 例 えば GPFG のように<br />

日 本 企 業 1,243 社 (2012 年 末 時 点 )の 株 式 を 保 有 している 投 資 家 も 存 在 しており、ESG 情<br />

報 提 供 機 関 のカバレッジには 含 まれていない 投 資 先 であっても、 欧 米 の ESG 投 資 家 は 積 極<br />

的 に 投 資 していると 考 えられる。したがって、 時 価 総 額 の 多 寡 にかかわらず、グローバル<br />

でビジネスを 展 開 し、かつ 株 主 政 策 として 海 外 の ESG 投 資 家 も 含 めて 積 極 的 に IR 活 動 を<br />

行 いたいと 考 える 企 業 においては、 後 述 の 4.2 を 踏 まえ、 積 極 的 に 海 外 の ESG 投 資 家 向 け<br />

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に ESG 情 報 を 発 信 していくことが 期 待 される。<br />

4.2 報 告 書 における ESG 要 因 の 開 示<br />

○ ESG 情 報 提 供 機 関 向 けには、 必 要 な 情 報 を 取 得 しやすく 開 示 することが 重 要 。 特 に、 環<br />

境 面 では、 二 酸 化 炭 素 排 出 量 に 加 えて、 温 室 効 果 ガス 排 出 量 や、 温 室 効 果 ガス 排 出 量 の<br />

二 酸 化 炭 素 換 算 値 の 開 示 も 合 わせて 開 示 することが 重 要 。<br />

○ アセット・オーナー/ 運 用 機 関 向 けには、 何 を 重 要 と 考 えているか、 何 を 評 価 してほし<br />

いかを 分 かりやすく 開 示 することが 重 要 。<br />

主 に 報 告 書 における ESG 情 報 の 利 用 においては、 一 次 利 用 者 である ESG 情 報 提 供 機 関 、<br />

二 次 利 用 者 である ESG 投 資 家 (アセット・オーナー/ 運 用 機 関 )の 間 で、 分 業 の 構 図 が 出<br />

来 上 がっていることが 確 認 された。 一 次 利 用 者 はより 網 羅 的 なデータの 充 実 を、 二 次 利 用<br />

者 は 何 が 重 要 な ESG 要 因 かがわかるような、よりマテリアリティを 重 視 した 企 業 価 値 創 造<br />

等 に 関 する 情 報 開 示 の 充 実 を 期 待 する 声 が 多 く 聞 かれた。これら ESG 投 資 家 等 の 情 報 開 示<br />

ニーズに 応 えるには、 網 羅 的 な 情 報 の 整 備 及 びマテリアリティを 重 視 した 簡 潔 な 情 報 開 示<br />

の 両 面 が 必 要 である。<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 向 けの ESG 要 因 の 開 示<br />

図 表 -16 で 示 したように、パフォーマンスなどのデータは 連 結 ベースで 開 示 するとともに、<br />

その 開 示 範 囲 を 明 確 にすること、 労 災 関 連 のデータ、サプライチェーン 管 理 に 関 するデー<br />

タなど、 日 本 企 業 に 全 般 的 に 足 りないとされている 項 目 の 開 示 を 進 めることが 重 要 である。<br />

サプライチェーン 管 理 については、そもそも 取 り 組 み 自 体 がない 企 業 も 多 いかもしれない。<br />

しかしながら、 今 回 の 調 査 研 究 の 調 査 対 象 としたアセット・オーナーの 多 くは、サプライ<br />

チェーン 管 理 に 対 する 関 心 が 高 かった。 取 り 組 みを 進 めつつ、 的 確 な 開 示 を 行 っていく 必<br />

要 があろう。<br />

情 報 開 示 の 手 法 としては、PDF ファイルやウェブサイト、もしくはその 併 用 など 様 々な<br />

形 がある。 今 回 ヒアリングした 米 国 企 業 からは、PDF にまとめることをやめてウェブサイ<br />

トのみで ESG 情 報 を 開 示 したところ、 複 数 の ESG 情 報 提 供 機 関 から、1 つの PDF に 情 報 を<br />

完 結 させた 方 が 検 索 の 成 功 率 が 高 まり、より 有 用 だと 指 摘 されたとのコメントがあった。<br />

もちろん、この 情 報 だけをもって、PDF で 開 示 する 方 が 良 いというわけではない。しかし<br />

ながら、ESG 情 報 提 供 機 関 の 人 的 リソースにも 限 りがあるため、 必 要 な 情 報 を 検 索 しやす<br />

く 開 示 することは 重 要 であろう。<br />

53


アセット・オーナー/ 運 用 機 関 向 けの ESG 要 因 の 開 示<br />

情 報 取 得 の 一 部 を ESG 情 報 提 供 機 関 にアウトソースしているため、アセット・オーナー<br />

/ 運 用 機 関 は、マテリアリティを 重 要 視 した 企 業 価 値 創 造 等 に 関 する 情 報 開 示 の 充 実 を 期<br />

待 する 声 が 多 かった。ESG 情 報 取 得 に 割 く 時 間 の 限 られるアセット・オーナー/ 運 用 機 関<br />

向 けには、 自 社 にとってマテリアルな ESG 情 報 を 簡 潔 に 開 示 していくことが 重 要 である。<br />

わざわざ CSR 報 告 書 を 見 に 行 く 投 資 家 はいないとの 意 見 もあったことから、 投 資 家 向 け 媒<br />

体 の 方 が 望 ましいと 考 えられる。ある 運 用 機 関 は、アニュアルレポートの 中 でも、その 企<br />

業 の 持 つ 価 値 観 を 重 視 し、その 価 値 観 をどのように 企 業 戦 略 に 落 とし 込 み、 個 別 課 題 に 取<br />

り 組 んでいるかを 見 ているという。ESG 情 報 がパーツとして 存 在 するのではなく、 企 業 の<br />

価 値 観 があり、それにひも 付 く 形 で 重 要 な ESG 情 報 が 語 られるといった、ストーリーを 重<br />

視 した 開 示 が 求 められる。<br />

4.3 ESG 投 資 家 との 直 接 対 話<br />

○ IR の 現 場 では ESG 情 報 ニーズは 限 定 的 であるとの 声 が 多 いが、 待 ちの 姿 勢 ではなく、<br />

積 極 的 に ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 機 会 を 持 つことも 有 益 である。<br />

○ ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 では、 積 極 的 なアピール、 双 方 向 のコミュニケーションが 重 要<br />

である。<br />

今 回 調 査 研 究 の 調 査 対 象 とした 海 外 企 業 ・ 日 本 企 業 においては、IR の 現 場 では ESG 情 報<br />

のニーズは 限 定 的 であるとの 声 が 多 数 であった。ニーズがないから 行 動 を 変 えないという<br />

のはもちろん 合 理 的 な 選 択 肢 であるものの、ESG 投 資 家 との 対 話 は 有 益 であるとする 日 本<br />

企 業 も 複 数 存 在 している。ESG 投 資 家 をターゲットにしていきたいと 考 えるのであれば、<br />

問 い 合 わせを 待 つのではなく、 積 極 的 に 働 きかけることが 重 要 であろう。<br />

ESG 投 資 家 との 対 話 のメリット<br />

<br />

実 際 に ESG 投 資 家 と 直 接 対 話 してみると、 意 外 に 自 社 の 取 組 みについて 知 られ<br />

ていないことや、 考 え 方 の 違 い 等 が 分 かる。そういう 意 味 で 得 られる 示 唆 も 多 い。<br />

ESG 投 資 家 も ESG 情 報 は 外 部 の 調 査 会 社 に 頼 っていることが 多 く、こちらから<br />

直 接 投 資 家 に 伝 えていくことが 重 要 と 考 えている。( 日 本 企 業 )<br />

<br />

ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 結 果 、 株 価 が 安 定 した、というような 直 接 的 な 効 果<br />

は 感 じていない。 欧 州 ESG 投 資 家 と 対 話 することで、コミュニケーションの 方<br />

54


法 がわかってきた 面 はある。その 結 果 かは 不 明 だが、ESG 評 価 機 関 からの 評 価<br />

も 向 上 した。( 日 本 企 業 )<br />

直 接 対 話 が 重 要 といっても、 一 方 的 に 取 組 んでいることを 述 べるだけでは 意 味 がない。<br />

実 際 、 日 本 の 企 業 団 体 等 とのコミュニケーションにおいて、 決 められた 話 が 順 番 にされる<br />

だけで、 対 話 という 観 点 からはとてもつまらない、との 指 摘 もあった。もちろん、 言 語 の<br />

問 題 もあろう。しかしながら、 相 手 に 理 解 してもらうまで、ESG の 取 組 みの 背 景 などを 説<br />

明 していくことが、 海 外 の ESG 投 資 家 とのコミュニケーションにおいては 重 要 である。<br />

55


参 考 資 料<br />

56


目 次<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 本 拠 地 ページ 番 号<br />

Bloomberg 米 国 参 考 資 料 -1<br />

Goldman Sachs, GS Sustain 米 国 参 考 資 料 -4<br />

MSCI ESG Research 米 国 参 考 資 料 -7<br />

CDP 欧 州 ( 英 国 ) 参 考 資 料 -10<br />

FTSE4Good 欧 州 ( 英 国 ) 参 考 資 料 -14<br />

Oekom Research 欧 州 (ドイツ) 参 考 資 料 -22<br />

RepRisk 欧 州 (スイス) 参 考 資 料 -26<br />

RobecoSAM 欧 州 (スイス) 参 考 資 料 -32<br />

Trucost 欧 州 ( 英 国 ) 参 考 資 料 -39<br />

As You Sow 米 国 参 考 資 料 -42<br />

ISS 米 国 参 考 資 料 -44<br />

アセット・オーナー<br />

カリフォルニア 州 職 員 退 職 年 金 基 金 (CalPERS) 米 国 参 考 資 料 -48<br />

カリフォルニア 教 職 員 退 職 年 金 基 金 (CalSTRS) 米 国 参 考 資 料 -54<br />

ニューヨーク 市 年 金 基 金 米 国 参 考 資 料 -60<br />

ニューヨーク 州 職 員 退 職 年 金 基 金 米 国 参 考 資 料 -65<br />

カナダ 年 金 制 度 投 資 委 員 会 (CPPIB) カナダ 参 考 資 料 -67<br />

オランダ 公 務 員 年 金 基 金 (ABP) 欧 州 (オランダ) 参 考 資 料 -73<br />

オランダ 厚 生 福 祉 年 金 基 金 (PFZW) 欧 州 (オランダ) 参 考 資 料 -77<br />

ノルウェー 政 府 年 金 基 金 ―グローバル(GPFG) 欧 州 (ノルウェー) 参 考 資 料 -80<br />

デンマーク 労 働 市 場 付 加 年 金 (ATP) 欧 州 (デンマーク) 参 考 資 料 -89<br />

運 用 機 関<br />

BlackRock 米 国 参 考 資 料 -95<br />

Allianz Global Investors 欧 州 (ドイツ) 参 考 資 料 -98<br />

海 外 企 業<br />

Cisco Systems 米 国 参 考 資 料 -101<br />

Johnson & Johnson 米 国 参 考 資 料 -104<br />

Novo Nordisk 欧 州 (デンマーク) 参 考 資 料 -110<br />

Volkswagen 欧 州 (ドイツ) 参 考 資 料 -112<br />

SAP 欧 州 (ドイツ) 参 考 資 料 -115<br />

LANXESS 欧 州 (ドイツ) 参 考 資 料 -119


名 称<br />

Bloomberg<br />

区 分<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

ニューヨークに 本 社 を 持 ち、ロンドン、 東 京 、 香 港 、シンガポール、ド<br />

バイなど 72 カ 国 に 202 のオフィスとニュース 支 局 を 有 する<br />

住 所 731 Lexington Ave, New York, NY 10022( 本 社 )<br />

従 業 員 数<br />

約 13,000 名 、うち 日 本 の 従 業 員 は 約 600 名<br />

URL<br />

http://www.bloomberg.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

投 資 情 報 データやニュースなどを 閲 覧 ・ 分 析 することのできるツール(Bloomberg Professional) 及 び 専<br />

用 端 末 (Bloomberg Terminal)を 主 要 サービスとする。Bloomberg Professional の 利 用 ユーザーは、315,000<br />

を 超 える。<br />

2009 年 に、クリーンエネルギー 市 場 分 析 を 行 うニュー・エナジー・ファイナンス 社 の 買 収 以 降 、ESG<br />

の 領 域 を 拡 大 し 始 める。2009 年 に ESG データの 提 供 を 開 始 、2011 年 にはサステナビリティに 関 するニュ<br />

ース 配 信 も 開 始 している。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

既 存 ユーザーのうち、8000 近 いユーザーが ESG データを 利 用 している。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

企 業 が 公 開 する 情 報 を 独 自 に 収 集 し、データベース 化 。<br />

ESG 情 報 に 限 らず、 収 集 した 情 報 に 独 自 の 定 性 判 断 を 付 与 することは 行 っておらず、あくまでも 中 立<br />

的 な 立 場 での 情 報 提 供 を 行 うという 姿 勢 を 持 っている。ESG 情 報 についても、 開 示 レベルやパフォーマ<br />

ンス 水 準 を 比 較 するツールなどを 提 供 しているものの、どの 情 報 がより 重 要 であるかといった 定 性 判 断<br />

は 行 っていない。ESG 情 報 の 収 集 企 業 数 は、52 か 国 5000 社 以 上 1 。<br />

同 業 他 社 との 比 較 分 析 、スクリーニング 分 析 、ファンドの 分 析 などを 財 務 データと 組 み 合 わせて 行 う<br />

ことが 可 能 なツールを 提 供 している。 顧 客 は、これらツールを 自 由 にカスタマイズすることができる。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

SASB には 積 極 的 に 支 援 を 行 うことを 表 明 している 2 。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

1 Bloomberg “2012 Sustainability Report” <br />

2 “Bloomberg Supports SASB as it Defines Sustainability Reporting That Matters” 2012.10.4. <br />

参 考 資 料 -1


上 述 の 通 り、ESG 情 報 について 定 性 評 価 は 行 っていない。 投 資 家 の 関 心 のある 情 報 は 随 時 提 供 してい<br />

るものの、 何 が 重 要 な ESG 要 因 なのかは 顧 客 が 決 めるというスタンスを 取 っている。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

投 資 家 のニーズに 合 わせて、データ 項 目 は 追 加 している。 以 下 に 関 連 したパフォーマンスデータなど<br />

を 多 数 有 する。<br />

【コーポレートガバナンス 側 面 】<br />

取 締 役 会 の 構 成 、 取 締 役 会 の 独 立 性 、 取 締 役 会 の 多 様 性 、 委 員 会 、 役 員 の 活 動 、 株 主 権 ( 買 収 防 衛 策 )、<br />

株 主 総 会 結 果 など<br />

【 環 境 側 面 】<br />

温 室 効 果 ガス、エネルギー、 水 、 廃 棄 物 、 環 境 関 連 法 違 反 、 環 境 関 連 ポリシー( 政 策 )など<br />

【 社 会 側 面 】<br />

従 業 員 、 多 様 性 、 労 災 、サプライチェーン、ステークホルダー、 社 会 関 連 ポリシー( 政 策 )など<br />

以 下 は、そのデータ 項 目 の 一 部 である。<br />

図 表 ―ESG データ 項 目<br />

環 境<br />

社 会<br />

ガバナンス<br />

項 目<br />

データ 項 目<br />

二 酸 化 炭 素 総 排 出 量 ( 千 トン)<br />

GHG 総 排 出 量 ( 千 トン)<br />

GHG スコープ 1 ( 千 トン)<br />

GHG スコープ 2 ( 千 トン)<br />

GHG スコープ 3 ( 千 トン)<br />

エネルギー 消 費 量 合 計 (MWh)<br />

再 生 エネルギー 使 用 (MWh)<br />

使 用 電 気 量 -MWh<br />

水 消 費 量 (1000 立 米 )<br />

気 候 変 動 対 応 策<br />

従 業 員 離 職 率<br />

女 性 管 理 職 比 率<br />

女 性 従 業 員 比 率<br />

傷 害 事 故 による 非 就 労 時 間 率<br />

傷 害 事 故 による 非 就 労 時 間 率 ( 請 負 業 者 )<br />

死 亡 者 数 - 契 約 業 者<br />

死 亡 者 数 - 従 業 員<br />

監 査 済 サプライヤー 数<br />

児 童 労 働 防 止 策<br />

人 権 政 策<br />

独 立 取 締 役 比 率<br />

独 立 監 査 役 比 率<br />

女 性 取 締 役 比 率<br />

執 行 取 締 役 (CSR 担 当 )<br />

( 資 料 )Bloomberg 提 供 データより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

参 考 資 料 -2


【ネガティブ・スクリーニングにおける 評 価 基 準 】<br />

独 自 の 価 値 観 は 持 っていないものの、 武 器 、タバコなどのネガティブ・スクリーニングを 行 う 投 資 家 向<br />

けのデータも 提 供 している。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

企 業 の 公 開 情 報 を 主 な 情 報 ソースとする。CDP のデータなども 掲 載 している。<br />

参 考 資 料 -3


名 称 Goldman Sachs, GS Sustain 3<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

アメリカ(ニューヨーク)<br />

住 所 200 West Street , New York, NY 10282<br />

従 業 員 数<br />

GS Sustain チームはグローバルで 約 15 名<br />

URL<br />

http://www.goldmansachs.com/our-thinking/archive/gs-sustain-2011/index.ht<br />

ml<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

GS Sustain は 2007 年 に Goldman Sachs 社 が 構 築 した、 短 期 売 買 を 抑 え、ロング・オンリー 戦 略 で 長 期<br />

パフォーマンスの 達 成 を 目 指 すグローバルな 投 資 戦 略 。2007 年 7 月 にスイスのジュネーブで 開 催 された<br />

国 連 グローバルコンパクト・リーダーシップサミットにおいて 公 表 され、 市 場 をアウトパフォームする<br />

ESG 投 資 戦 略 として 大 きな 話 題 となった。<br />

2011 年 頃 までは 一 般 にも 広 く 情 報 開 示 を 行 っていたが、 現 在 では 一 般 向 けの 情 報 開 示 は 限 定 的 である。<br />

ただし、 投 資 家 向 けの 情 報 提 供 は 継 続 している。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

GS-Sustain における 企 業 評 価 では、1 経 営 の 質 ( 業 界 が 直 面 する 環 境 、 社 会 、ガバナンス 問 題 に 対 する<br />

各 社 の 対 応 の 有 効 性 )に 加 えて、2キャッシュ・リターン( 投 下 資 本 に 対 して 生 み 出 されたキャッシュ<br />

フローを 独 自 に 測 定 )、3 業 界 内 でのポジション(ビジネスモデルが 戦 略 的 に 強 固 であるかを 客 観 的 に 評<br />

価 )の 3 要 素 を 重 要 視 している。 調 査 対 象 は、 全 世 界 1400 社 程 度 。<br />

以 下 のようなプロセスで、 企 業 の ESG 要 因 を 評 価 している。<br />

• 市 場 全 体 の 問 題 に 関 するトップダウン 評 価 及 びグローバルセクターアナリストのボトムアップ 評 価<br />

に 基 づき、 各 業 界 が 直 面 している 主 要 な ESG 要 因 を 特 定<br />

• 70~90 の 開 示 されている 客 観 的 なデータ·ポイントに 基 づいて、 上 記 ESG 要 因 に 関 する 企 業 経 営 の<br />

有 効 性 を 評 価 するための 25〜30 の 潜 在 的 指 標 を 決 定<br />

• 各 会 社 の 各 年 における 70〜90 のデータポイントを 収 集<br />

• 各 業 界 が 直 面 している 主 要 な ESG 要 因 の 中 で 25%より 多 くの 企 業 が 列 挙 しているものを 取 り 出 し、<br />

20〜25 の 指 標 リストを 作 成 。 各 指 標 のスコアを 1-5 に 割 り 当 てる 採 点 構 造 を 定 義<br />

• 収 集 したデータの 正 確 性 と 網 羅 性 を 検 証 するために、 各 企 業 にデータを 送 信 。 通 常 、60%ほどの 企<br />

業 がそのリクエストに 応 答<br />

• 明 確 に 定 義 された 各 業 界 におけるスコア 計 算 式 に 沿 って、 各 社 1-5 の 指 標 スコアを 計 算<br />

3 ここでは、Goldman Sachs 社 の 提 唱 する 株 式 戦 略 「GS Sustain」を 中 心 に 記 載 している。 運 用 会 社 向 けに ESG 情 報 の 提 供 を 行 っている 観<br />

点 から、「ESG 情 報 提 供 機 関 」に 分 類 している。<br />

参 考 資 料 -4


【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

GS Sustain の 戦 略 は、 経 営 の 質 ( 業 界 が 直 面 する 環 境 、 社 会 、ガバナンス 問 題 に 対 する 各 社 の 対 応 の 有<br />

効 性 )、キャッシュ・リターン( 投 下 資 本 に 対 して 生 み 出 されたキャッシュフローを 独 自 に 測 定 )、 業 界<br />

内 でのポジションの 3 つのパフォーマンス 要 素 全 てに 効 果 的 に 取 り 組 む 企 業 は、 業 界 リーダーのポジシ<br />

ョンを 維 持 し、 高 いキャッシュ・リターンを 生 み、 長 期 的 なアウトパフォーマンスを 達 成 するという 考<br />

えに 基 づいている。<br />

ESG のみの 評 価 では 市 場 をアウトパフォームできないが、 他 の 2 つの 要 素 を 追 加 することでアウトパ<br />

フォームすることが 可 能 になるとしている。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )】<br />

ESG 要 因 の 評 価 においては、 以 下 の 項 目 を 重 要 視 している。ただし、 重 要 度 合 は 業 種 毎 に 異 なるため、<br />

業 種 毎 にウェイトを 変 えている。<br />

図 表 -ESG 評 価 フレームワーク<br />

コーポレートガバナンス<br />

社 会 面 :リーダーシップ<br />

社 会 面 : 従 業 員<br />

社 会 面 :ステークホルダー<br />

環 境<br />

役 員 会 の 独 立 性 とリーダーシップ<br />

監 査 の 透 明 性 とストックオプション<br />

取 締 役 報 酬<br />

少 数 派 株 主 の 権 利<br />

環 境 ・ 社 会 的 パフォーマンスと 報 酬 の 連 動 及 びそれに 対 するリーダーシッ<br />

プの 責 任<br />

環 境 ・ 社 会 性 の 報 告 と 保 証<br />

報 酬<br />

生 産 性<br />

健 康 と 安 全<br />

ジェンダーダイバーシティ( 多 様 性 )<br />

消 費 者<br />

サプライヤー<br />

コミュニティ<br />

政 府 と 監 督 機 関<br />

投 資 家<br />

エネルギー 使 用 と 炭 素 排 出 (カーボンエミッション)<br />

水 、 廃 棄 物 、リサイクルの 管 理<br />

サプライヤーと 調 達<br />

生 物 多 様 性 と 土 地 の 利 用<br />

( 資 料 )GS-Sustain 資 料 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

参 考 資 料 -5


D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ポジティブ 側 面 による 評 価 の 事 例 】<br />

2011 年 に 発 行 された 同 社 のレポートによれば、 日 本 企 業 の ESG 要 因 の 評 価 結 果 は 以 下 のとおりである<br />

( 下 線 は 日 本 総 合 研 究 所 が 追 加 )。 特 に、パフォーマンスに 関 する 情 報 開 示 が 限 定 的 である 点 が 指 摘 され<br />

ている 4 。<br />

<br />

「 日 本 はアジア 諸 国 の 中 で、ESG 問 題 への 取 り 組 みで 世 界 トップレベルにある 海 外 の 企 業 を 追 い<br />

上 げる 可 能 性 が 最 も 高 い。リスクとして 一 つ 懸 念 されるのは、 環 境 問 題 に 対 処 するための 方 針 や<br />

慣 行 を 採 用 しているにもかかわらず、それが 実 際 のパフォーマンスにどう 影 響 しているのかを 報<br />

告 していない 企 業 が 少 なくないことである。こうした 企 業 には、いわゆる「グリーンウォッシュ」<br />

(うわべだけの 環 境 対 応 )の 疑 いもあるが、 株 主 が 透 明 性 の 高 い 情 報 開 示 を 重 視 し 高 く 評 価 する<br />

ことに 企 業 側 が 確 信 を 持 てないでいるという 可 能 性 もある。しかし、 日 本 の 資 産 運 用 業 界 で 投 資<br />

決 定 の 基 準 として ESG を 採 用 する 動 きが 広 がっていることから、 数 年 後 には 企 業 の 情 報 開 示 が 改<br />

善 し、 株 価 に 対 する ESG の 影 響 が 高 まると 予 想 される。」<br />

<br />

「 日 本 経 済 団 体 連 合 会 、 経 済 同 友 会 、 日 本 商 工 会 議 所 及 び 各 業 界 の CSR 政 策 に 対 応 して、 当 社 が<br />

評 価 対 象 とした 企 業 の 75%が CSR 報 告 書 を 最 低 でも 過 去 5 年 にわたり 発 行 していた。だが、CSR<br />

パフォーマンスの 評 価 を 外 部 に 求 めたり、 役 員 の 個 人 的 責 任 を 開 示 したり、あるいは 報 酬 に CSR<br />

を 反 映 させたりしている 企 業 は 少 ない。」<br />

<br />

「66%の 企 業 は 従 業 員 のための 安 全 ・ 衛 生 方 針 を 開 示 しているが、そのうちの 60%は 死 亡 率 や 休<br />

業 災 害 率 (LTI)のデータを 公 表 していないため、それらが 安 全 ・ 衛 生 面 のパフォーマンスにどの<br />

ように 影 響 しているのか 同 業 他 社 との 相 対 分 析 ができない。 日 本 企 業 の CSR 報 告 書 は 社 会 活 動 に<br />

ついて 述 べているものが 多 いが、やはりそうした 活 動 に 費 やされた 資 金 や 時 間 について 国 内 外 の<br />

競 合 他 社 との 比 較 を 可 能 とするデータは 提 供 されていない。」<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

グローバルで 約 15 名 。<br />

4<br />

Goldman Sachs [2009].「GS SUSTAIN 日 本 の 可 能 性 を 解 き 明 かす: 逆 風 を 超 えて-2020 年 の 勝 ち 組 企 業 」<br />

参 考 資 料 -6


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

MSCI ESG Research<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

米 国 (ニューヨーク)を 本 社 とし、 世 界 22 か 国 に 拠 点 を 持 つ<br />

住 所 7 World Trade Center, 250 Greenwich Street, New York, NY 10007 ( 本 社 )<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

3,000 名 以 上<br />

http://www.msci.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

MSCI は、 資 産 運 用 会 社 ・ヘッジファンド・ 年 金 基 金 を 含 む 世 界 中 の 投 資 家 向 けに、 投 資 意 思 決 定 サ<br />

ポート・ツールを 提 供 する。 提 供 している 商 品 ・サービスは、 株 価 指 数 、ポートフォリオのリスクやパ<br />

フォーマンス 分 析 、ガバナンス 関 係 ツールなど 多 岐 にわたる。<br />

2010 年 に RiskMetrics 社 を 買 収 したことで、Innovest や KLD などの 米 国 における 著 名 ESG 調 査 機 関 を<br />

傘 下 に 配 置 。その 後 、ESG 領 域 も 含 めたリスクマネジメントサービスやインデックスサービスを 拡 充 し<br />

てきた。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

世 界 で 600 以 上 のクライアント( 資 産 規 模 15 兆 ドル)、うち 約 60 のアセットオーナー( 資 産 規 模 2.3<br />

兆 ドル)がリサーチを 活 用 している。<br />

2013 年 5 月 には、カリフォルニア 州 教 職 員 退 職 年 金 (CalSTRS)が MSCI ESG Research のリサーチ 全<br />

プロダクトの 採 用 を 決 定 。 日 本 では、2012 年 8 月 に、 全 国 市 町 村 職 員 共 済 組 合 連 合 会 が MSCI Japan ESG<br />

指 数 を 利 用 したパッシブ 運 用 を 開 始 している。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

同 社 の ESG リサーチは、 先 進 国 、 新 興 国 合 わせて 株 式 銘 柄 の 約 5000 企 業 (MSCI ACWI 及 び 一 部 マー<br />

ケットのスモールキャップ 銘 柄 )、133 カ 国 のソブリン 債 を 含 む 260,000 以 上 の 債 券 銘 柄 をカバーしてお<br />

り、 以 下 の 4 つにより 構 成 される。なかでも、IVA に 最 も 注 力 していることから、 以 下 では IVA を 中 心<br />

に 記 載 する。<br />

図 表 ―MSCI が 提 供 するリサーチ<br />

プロダクツ 名<br />

Intangible Value Assessment<br />

(IVA)<br />

Government Ratings<br />

Impact Monitor<br />

概 要<br />

伝 統 的 な 企 業 分 析 ではとらえきれない ESG の 投 資 リス<br />

クを 測 定 する<br />

主 要 な ESG リスクファクターに 対 する 国 や 地 域 のエク<br />

スポージャーを 評 価 する<br />

ESG 不 祥 事 及 びグローバルな 行 動 規 範 (UN Global<br />

Compact など)に 対 する 違 反 を 分 析 、モニタリングする<br />

参 考 資 料 -7


Business Involvement Screening<br />

Research<br />

宗 教 、 倫 理 、そして 非 投 資 部 門 ( 武 器 、タバコ、スーダ<br />

ン 関 連 など)のスクリーニングをサポート<br />

( 資 料 )MSCI ESG Research 資 料 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成 。<br />

同 社 の ESG リサーチは、 投 資 ポートフォリオのリスク 管 理 を 強 化 することを 目 的 としている。<br />

具 体 的 には、34 の ESG イシューの 中 から、 最 もインパクトがある ESG イシューを 業 種 毎 に 特 定 。エ<br />

クスポージャーとリスクを 管 理 するマネジメント 力 の 2 つで 評 価 。 高 いリスクに 直 面 する 企 業 は、より<br />

レベルの 高 いマネジメントプログラムを 実 行 することが 求 められる、との 考 えを 前 提 としている。<br />

業 種 内 での 相 対 評 価 で、 格 付 けは AAA から CCC の 7 段 階 で 表 記 されている。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

ESG 課 題 対 応 の 巧 拙 は、 将 来 の 予 期 せぬコスト 負 担 を 予 測 するものであるとの 考 え 方 を 基 本 としてい<br />

る。 予 期 せぬコストには、 罰 金 、 訴 訟 費 用 、オペレーションコスト、 操 業 許 可 取 得 コスト、レピュテー<br />

ション 回 復 コストなどが 含 まれる。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

10 の ESG テーマ 及 びそれぞれに 紐 づく 34 の ESG イシュー( 括 弧 内 の 数 値 はそれぞれのテーマに 対 す<br />

るイシューの 数 )は 以 下 の 通 り。 業 種 毎 に 重 要 なイシューを 4 から 6 選 定 する。 例 えば、 食 品 インダス<br />

トリーのキーイシューは、Product Carbon Footprint、Water Stress、Raw Material Sourcing、Product Safety and<br />

Quality、Opportunities in Nutrition and Health。<br />

【Governance のテーマとイシュー】<br />

・Corporate Governance(1):Corporate Governance<br />

・Busuiness Ethics(3):Corruption and Instability、Business Ethics and Fraud、Anticompetitive Practices<br />

・Governance and Public Policy(1):Financial System Instability<br />

【Environment のテーマとイシュー】<br />

・Climate Change(4):Carbon Emissions、Energy Efficiency、Product Carbon Footprint、Insuring Climate Change<br />

Risk<br />

・Natural Recourse Use(4):Water Stress、Biodiversity and Land Use、Raw Material Sourcing、Financing<br />

Environmental Impact<br />

・Waste Management(3):Toxic Emissions and Waste、Packaging Material and Waste、Electronic Waste<br />

・Environmental Opportunities(3):Opportunites in Clean Tech、Opportunities in Green Building、Opportunities in<br />

Renewable Energy<br />

【Social のテーマとイシュー】<br />

・Human Capital(5):Labor Management、Health and Safety、Human Capital Development、Supply Chain Labor<br />

Standards、Controversial Sourcing<br />

参 考 資 料 -8


・Product Safety(6):Pruduct Safety and Quality、Chemical Safety、Privacy and Data Security、Financial Product<br />

Safety、Responsible Investment、Insuring Health and Demographic Risk<br />

・Social Opportunitis(4):Opportunities in Nutrition and Health、Access to Communication、Acess to Health Care、<br />

Access to Finance<br />

【ネガティブ・スクリーニングにおける 評 価 基 準 】<br />

宗 教 、 倫 理 、そして 非 投 資 部 門 ( 武 器 、タバコ、スーダン 関 連 など)のスクリーニングサポートに 加<br />

え、 不 祥 事 リサーチ(Impact Monitor)も 実 施 。 環 境 、 顧 客 ・ 市 場 対 応 、 人 権 ・コミュニティー、 労 働 権<br />

とサプライチェーン、ガバナンスなどに 関 連 した 不 祥 事 をモニターし、 社 会 ・ 環 境 に 及 ぼす 影 響 の 度 合<br />

いと 構 造 的 な 問 題 か 否 かの 2 軸 で 評 価 。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

世 界 22 か 国 3000 人 以 上 の 従 業 員 のうち、ESG サービスの 専 任 スタッフは 140 名 程 度 、うち 90 名 は 専<br />

任 アナリスト。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

企 業 が 公 開 する 情 報 及 び 国 際 機 関 ・ 国 際 組 織 などの 情 報 を 元 に 評 価 。CDP のデータなども 利 用 。<br />

参 考 資 料 -9


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

住 所<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

CDP(Carbon Disclosure Project)<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

イギリス(ロンドン)<br />

40 Bowling Green Lane, London, EC1R 0NE, UK<br />

イギリス 本 社 13 名 、グローバル 各 拠 点 のヘッド 15 名 、その 他 の 従 業 員 数<br />

は 不 明<br />

https://www.cdp.net/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

CDP は、 気 候 変 動 がもたらすリスクや 機 会 の 影 響 についての 情 報 を 提 供 することを 目 的 として、2000<br />

年 に 設 立 された。2013 年 には、 同 プロジェクトに 署 名 する 投 資 家 は 722 にまで 増 え、 彼 らの 運 用 する 総<br />

資 産 残 高 は 87 兆 円 を 超 える。ビジネス、 政 策 、 投 資 における 意 思 決 定 の 中 心 に 必 要 な 情 報 を 提 供 するこ<br />

とで、 気 候 変 動 問 題 の 解 決 を 促 進 することをミッションとして 掲 げる。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 向 けにもデータ 提 供 を 行 っている。 協 働 の 度 合 に 応 じて、パートナーを 以 下 のよう<br />

にランク 付 けしている。 下 記 の 他 、EIRIS 社 や FTSE の 指 数 である FTSE CDP Carbon Strategy Index Series<br />

向 けにも 情 報 提 供 を 行 っている。<br />

Global data partners:Bloomberg<br />

Gold data partners:Nedbank Capital, PE INTERNATIONAL, Thomson Reuters, Trucost<br />

Silver data partners:Environ, RepuTex, MSCI, Sustainalytics, POSCO, CSRHUB, Oekom Research,<br />

Verdantix, The CarbonNeutral Company<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

アンケートに 基 づく 評 価 を 行 っている。 投 資 家 を 代 表 して 企 業 へ 送 付 する 気 候 変 動 に 関 する 質 問 書 ( 気<br />

候 変 動 質 問 書 )の 他 、メンバーとなった 民 間 企 業 を 代 表 してメンバーの 取 引 先 企 業 へも 送 付 する 質 問 書<br />

(サプライチェーン 質 問 書 )、 投 資 家 を 代 表 して 送 付 する 水 利 用 情 報 に 関 する 質 問 書 (ウォーター 質 問 書 )、<br />

森 林 リスク・コモディティに 関 する 質 問 書 (フォレスト 質 問 書 )などがある。<br />

参 考 資 料 -10


気 候 変 動 質 問 書 を 用 いた CDP 気 候 変 動 の 評 価 対 象 企 業 は、 全 世 界 で 6000 社 以 上 。うち 日 本 企 業 は 50<br />

0 社 。グローバル 500(FTSE Global Equity Index Series の 上 位 500 社 )、 北 米 、 欧 州 、 日 本 を 含 むアジアに<br />

加 え、インド・ブラジル・ 南 アメリカなど、 投 資 家 の 関 心 の 高 い 地 域 をほぼカバーしている 5 。<br />

CDP Water Disclosure(CDP ウォーター・ディスクロージャー)<br />

2010 年 から 開 始 した 水 資 源 の 使 用 状 況 を 開 示 する 新 たなプログラム。ウォーター 質 問 書 で、 企 業 の 水<br />

管 理 とガバナンス、リスクと 機 会 、 水 利 用 データの 開 示 を 要 請 。 対 象 企 業 は、2013 年 の 時 点 で、 全 世 界<br />

629 社 、 日 本 企 業 21 社 だが、2014 年 からはヨーロッパ、アジアでの 対 象 企 業 数 を 拡 大 し、スコアリング<br />

も 開 始 予 定 。<br />

CDP Forest Footprint Disclosure(CDP フォレスト・フットプリント・ディスクロージャー)<br />

既 に 実 施 している 世 界 最 大 の 気 候 変 動 や 水 といったナチュラル・キャピタル( 自 然 資 本 )に 関 する 情<br />

報 開 示 の 一 環 として、2012 年 から 2 年 をかけて 同 プロジェクトを CDP の 活 動 に 統 合 し 2013 年 からオン<br />

ライン 回 答 システムを 用 いたスコアリングを 開 始 した。フォレスト 質 問 書 の 対 象 となる 企 業 は、 全 世 界<br />

750 社 、うち 日 本 企 業 は 56 社 。<br />

木 材 、パーム 油 、 畜 牛 、 大 豆 、バイオ 燃 料 の 5 つの 森 林 リスク・コモディティから、 自 社 の 事 業 に 関<br />

連 する 項 目 を 選 び 回 答 。 回 答 結 果 をまとめたレポートで、 対 象 企 業 の 回 答 有 無 や、セクターごとに 選 定<br />

した 取 組 度 合 いや 開 示 度 合 いの 優 秀 な 企 業 を 公 表 。 回 答 企 業 へのフィードバックも 行 っている。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

・CDSB(Climate Disclosure Standards Board)の 事 務 局 をつとめる。CDSB は、 企 業 の 気 候 変 動 情 報 開 示<br />

の 標 準 化 を 目 指 し、 世 界 的 なフレームワークを 構 築 し 有 価 証 券 報 告 書 などにおける 気 候 変 動 情 報 の 開 示<br />

を 進 めているコンソーシアムで、 以 下 の 8 団 体 のパートナーシップで 構 成 される。<br />

- Californian Environmental Resources Evaluation System (CERES)<br />

- Carbon Disclosure Project (CDP)<br />

- The Climate Group<br />

- The Climate Registry (TCR)<br />

- The International Emissions Trading Association (IETA)<br />

- World Business Council for and Sustainable Development (WBCSD)<br />

- World Economic Forum (WEF)<br />

- World Resources Institute (WRI)<br />

・GRI とも 緊 密 に 活 動 しており、GRI 指 標 と 情 報 開 示 依 頼 内 容 の 整 合 性 と 相 互 補 完 に 努 めている。<br />

・IIRC、CDP 及 び CDSB(Climate Disclosure Standards Board)は、 企 業 報 告 の 発 展 のため 提 携 することを、<br />

2013 年 7 月 に 宣 言 している 6 。<br />

5 CDP 事 務 局 [2013].「CDP 日 本 報 告 会 CDP の 活 動 報 告 」 <br />

6 IIRC [2013].“CDP, CDSB and IIRC Announce Collabolation to Accelerate Integrated Reporting” <br />

参 考 資 料 -11


【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

気 候 変 動 、 水 不 足 、 洪 水 、 公 害 、 森 林 破 壊 は、 投 資 家 にとって 重 要 なリスクと 機 会 を 見 極 める 要 素 で<br />

あり、CDP ディスクロージャー・スコアやパフォーマンス・スコアを 通 して、 投 資 家 は、 説 明 責 任 と 透<br />

明 性 に 優 れた 企 業 を 見 極 め、 長 期 的 な 投 資 判 断 を 行 うことが 可 能 とする。CDP は、 企 業 に 関 連 するこれ<br />

らの 開 示 情 報 を 統 合 した 形 で 提 供 し、 低 炭 素 及 び 持 続 可 能 経 済 に 対 する 投 資 の 流 れを 活 性 化 させること<br />

を 目 指 している。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 環 境 側 面 の 基 準 】<br />

気 候 変 動 に 対 する 取 り 組 みは、ディスクロージャー・スコア、パフォーマンス・スコアとして 評 価 さ<br />

れる。<br />

<br />

気 候 変 動 に 関 する 情 報 開 示 度 合 いを 評 価 。スコアはパーセント 表 示 で 算 出 される。セクター 分 類 に 関<br />

係 なく、ディスクロージャー・スコアの 高 い 企 業 は、 先 進 企 業 (Climate Disclosure Leadership Index:CDLI)<br />

として 認 定 され、 以 下 の 基 準 を 満 たしている 企 業 が 選 定 される。<br />

1. 回 答 が 公 表 されていること、 及 び 回 答 がオンライン 回 答 システムより 行 われていること。<br />

2. 排 出 実 績 でパフォーマンス・スコアの 最 高 点 が 与 えられていること。<br />

3. スコープ 1、スコープ 2 排 出 量 を 回 答 し、それぞれの 外 部 検 証 / 保 証 において 最 高 点 が 与 えられてい<br />

ること。<br />

具 体 的 な 評 価 項 目 は 以 下 のとおり。<br />

気 候 変 動 管 理<br />

- ガバナンス<br />

- 戦 略<br />

- 排 出 削 減 目 標 と 排 出 削 減 活 動<br />

- コミュニケーション<br />

リスクと 機 会<br />

- 気 候 変 動 によるリスク( 規 制 によるリスク、 物 理 的 リスク、その 他 のリスク)<br />

- 気 候 変 動 がもたらす 事 業 上 の 機 会 ( 規 制 による 機 会 、 物 理 的 機 会 、その 他 の 機 会 )<br />

排 出 量<br />

- 排 出 量 の 算 定 方 法<br />

- 排 出 量 データ<br />

- スコープ 1 排 出 量 内 訳<br />

参 考 資 料 -12


- スコープ 2 排 出 量 内 訳<br />

- エネルギー 使 用 量<br />

- 排 出 実 績<br />

- 排 出 量 取 引<br />

- スコープ 3 排 出 量<br />

<br />

Climate Performance Leadership Index(CPLI)は、 気 候 変 動 の 抑 制 ・ 緩 和 、 適 応 、 透 明 性 に 寄 与 する<br />

活 動 などの 内 容 を 評 価 。パフォーマンス 評 価 を 受 けるためには、ディスクロージャー・スコアが 50% 以<br />

上 である 必 要 があり、それ 以 下 の 場 合 には 評 価 対 象 にならない。パフォーマンス・スコアはディスクロ<br />

ージャー・スコアと 同 様 にパーセント 表 示 で 算 出 される。<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ポジティブ 側 面 による 評 価 の 事 例 】<br />

2013 年 に 公 開 された 評 価 結 果 によれば、CDLI、CPLI 双 方 に 含 まれる 企 業 は 12 社 。 日 本 企 業 は、 本 田<br />

技 研 工 業 、 日 産 自 動 車 が 含 まれている。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

Trucost がパートナーとして 情 報 を 提 供 。Trucost は、CDP サプライ・チェーン・プログラムで、メンバ<br />

ー 企 業 の 情 報 開 示 作 業 プロセスにおいて、 最 も 炭 素 排 出 の 高 いサプライヤーの 識 別 できるサービスを 提<br />

供 している。<br />

参 考 資 料 -13


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

住 所<br />

URL<br />

FTSE4Good<br />

7<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

イギリス(ロンドン)<br />

Level 12, 10 Upper Bank Street, Canary Wharf, London, UK<br />

http://www.ftse.com/Indices/FTSE4Good_Index_Series/index.jsp<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

FTSE4Good Index は、2001 年 にイギリスを 拠 点 とする ESG 情 報 提 供 機 関 EIRIS の 協 力 のもとで FTSE<br />

社 が 設 定 した 指 数 。FTSE 社 は、ロンドン 証 券 取 引 所 とフィナンシャル・タイムズ 社 が 共 同 で 出 資 した 指<br />

数 の 算 出 を 行 なう 会 社 。FTSE4Good 指 数 のほかにもさまざまな 指 数 を 提 供 。EIRIS は、1983 年 に 複 数 の<br />

教 会 と 慈 善 事 業 団 体 により 設 立 されたというバックグラウンドを 持 つ、 英 国 におけるコアな ESG 投 資 推<br />

進 の 代 表 的 存 在 。ESG 情 報 提 供 機 関 として、 英 国 中 心 に 幅 広 い 支 持 を 得 ている。<br />

ただし、 両 社 の 契 約 解 消 により、2013 年 9 月 30 日 付 で EIRIS は FTSE4Good Index のデータ 収 集 を 停 止<br />

している。 本 資 料 では、 調 査 実 施 時 点 で 公 開 されている 情 報 を 元 に 記 載 している。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

基 本 的 には 公 開 情 報 に 基 づく 勝 手 格 付 けであるが、 情 報 収 集 の 結 果 、 情 報 が 不 足 している 場 合 、アン<br />

ケートを 送 付 することもある。また、 当 該 社 へのフィードバックによる 確 認 のプロセスも 重 視 している。<br />

企 業 による 公 開 情 報 に 加 え、NGO のレポート、メディア 情 報 、 規 制 当 局 による 情 報 なども 利 用 する。<br />

FTSE4Good Index シリーズは、FTSE Global Equity Index Series から 派 生 しており、そのクライテリア 適<br />

応 対 象 は、23 市 場 2000 社 以 上 の 構 成 銘 柄 からなる FTSE Developed Index Series である 8 。FTSE4Good シ<br />

リーズには、FTSE4Good Global、FTSE4Good UK、FTSE4Good US、FTSE4Good Europe、FTSE4Good<br />

Australia、FTSE4Good Japan がある。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

FTSE4Good Index は、 投 資 家 及 びアセットマネジャーが、 社 会 的 責 任 の 世 界 基 準 を 満 たす 企 業 の 特 定 ・<br />

ベンチマーク、 並 びに 効 果 的 な 投 資 を 行 うための 判 断 指 標 として 活 用 し、 企 業 が 世 界 基 準 に 合 わせた 質<br />

の 高 い 責 任 ある 事 業 を 慣 行 ・ 促 進 することを 目 指 している。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

7 FTSE4Good は 株 価 指 数 であるが、 企 業 の ESG 側 面 を 評 価 しているため、ここでは「ESG 情 報 提 供 機 関 」に 分 類 している。<br />

8 FTSE [2014]. “FTSE4Good Index Series Fact Sheet” <br />

参 考 資 料 -14


FTSE4Good の 選 定 においては、 以 下 の 領 域 のクライテリア 要 件 を 満 たす 必 要 がある。 業 種 の 特 性 に 応<br />

じて、 要 求 レベルは 異 なるのが 特 徴 である。また、 投 資 家 ニーズや 時 代 の 流 れに 合 わせて、 評 価 項 目 を<br />

変 更 している。 例 えば、 気 候 変 動 クライテリアは 2007 年 に 追 加 された。<br />

1 贈 収 賄 防 止 クライテリア<br />

2 環 境 マネジメントクライテリア<br />

3 気 候 変 動 クライテリア<br />

4 人 権 クライテリア<br />

5 サプライチェーン 労 働 基 準 クライテリア<br />

各 クライテリアは、 基 本 的 に、 方 針 ・ マネジメントシステム・ 報 告 の 3 つの 視 点 から 構 成 されている。<br />

【コーポレートガバナンス 側 面 の 基 準 】<br />

1 贈 収 賄 防 止 クライテリア<br />

贈 収 賄 に 関 する 企 業 の 評 価 指 標 は 以 下 の 通 り。 満 たすべき 評 価 項 目 は、 企 業 のリスクレベルによって 異<br />

なる。<br />

方 針<br />

マネジメント<br />

システム<br />

報 告<br />

中 核 指 標<br />

• 方 針 の 開 示<br />

9<br />

• 贈 収 賄 の 禁 止<br />

• 関 連 法 規 の 遵 守 へのコミットメント<br />

• 利 益 供 与 金 の 禁 止 ・ 管 理 へのコミットメント 10<br />

• 贈 答 品 受 け 渡 し 制 限 へのコミットメント 11<br />

• 従 業 員 に 対 する 方 針 の 周 知 徹 底<br />

• 関 連 従 業 員 に 対 する 研 修<br />

• コンプライアンスメカニズム<br />

• コンプライアンス 違 反 を 改 善 するための 手 続 き 12<br />

• 安 全 なコミュニケーション・チャネルの 提 供 ( 通 報<br />

窓 口 ) 13<br />

A<br />

• 従 業 員 ・ビジネスパートナーへの 方 針 周 知 の 詳 細<br />

• 研 修 の 詳 細<br />

• モニタリングと 監 査 の 詳 細<br />

• コンプライアンスメカニズムの 詳 細<br />

B<br />

• 進 捗 状 況 と 実 績 の 詳 述<br />

• 方 針 違 反 ・コンプライアンス 違 反 の 詳 細<br />

• 第 三 者 (サプライヤー、 代 理 人 、 請 負 業 者 )についての 実 績 の 詳 細<br />

C<br />

• リスク/インパクト 評 価 と 結 果 の 開 示<br />

• ステークホルダー・エンゲージメント<br />

• 代 理 人 の 指 名 ・ 報 酬 のシステム<br />

• 内 部 通 報 制 度 の 詳 細 ( 定 量 的 なデータ)<br />

望 ましい 指 標<br />

• 左 記 について 役 員 会 レベルのコミットメント<br />

• 政 治 献 金 に 関 する 透 明 性<br />

• 請 負 業 者 、サプライヤー、 代 理 人 への 方 針 適 用<br />

• 懲 戒 等 にかかるプロセス<br />

• リスクに 基 づいた 評 価<br />

• ビジネスパートナーへの 方 針 周 知<br />

• 代 理 人 の 任 命 ・ 報 酬 に 関 る 適 切 なシステム<br />

評 価 条 件<br />

‣ レベル 3: 贈 収 賄 リスクの 高 い 企 業<br />

9<br />

国 連 グローバル・コンパクトの 署 名 企 業 はこのクライテリアを 満 たしているとみなす。<br />

10<br />

「 望 ましい 指 標 」により 代 替 することができる。<br />

11<br />

「 望 ましい 指 標 」により 代 替 することができる。<br />

12<br />

企 業 とそのサプライヤー、 請 負 業 者 、あるいば 代 理 人 を 含 むビジネスパートナーが 贈 収 賄 に 関 与 しているという 疑 義 が 生 じた 場 合 、 企<br />

業 は、 明 確 ・ 実 証 的 ・ 定 量 的 な 手 順 に 則 り、 当 該 疑 義 について 適 正 な 調 査 を 行 ったことをタイムリーに 証 明 する 必 要 がある。<br />

13<br />

「 望 ましい 指 標 」により 代 替 することができる。<br />

参 考 資 料 -15


方 針 : 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 事 例<br />

マネジメントシステム: 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 事 例<br />

報 告 :A, B, C のうち 一 項 目 を 満 たす 実 践 例 と、 内 容 の 開 示<br />

‣ レベル 2: 贈 収 賄 リスクが 中 程 度 の 企 業<br />

シナリオ1: 基 本 方 針 と 包 括 的 マネジメントシステム<br />

方 針 : 公 開 必 須 、 及 び 中 核 指 標 もしくは 望 ましい 指 標 の 内 1 項 目 を 満 たす 優 良 事 例<br />

マネジメントシステム: 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 事 例<br />

報 告 :なし<br />

シナリオ2: 包 括 的 方 針 と 基 本 マネジメントシステム<br />

方 針 : 公 開 必 須 及 び 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 事 例<br />

マネジメントシステム: 中 核 指 標 もしくは 望 ましい 指 標 の 内 1 項 目 を 満 たす 優 良 事 例<br />

報 告 :なし<br />

【 環 境 側 面 の 基 準 】<br />

2 環 境 マネジメントクライテリア<br />

環 境 負 荷 リスクにおける 企 業 の 評 価 指 標 は 以 下 の 通 り。 満 たすべき 評 価 項 目 は、 企 業 のリスクレベルに<br />

よって 異 なる。<br />

中 核 指 標<br />

望 ましい 指 標<br />

方 針<br />

マネジメン<br />

トシステム<br />

報 告<br />

• 全 てのキーイシューへの 言 及<br />

• 取 締 役 会 または 部 門 レベルでの 方 針 に 対 する 責 任<br />

• 目 標 の 使 用 に 対 するコミットメント<br />

• モニタリングと 監 査 に 対 するコミットメント<br />

• 情 報 開 示 に 対 するコミットメント<br />

• グローバルに 適 用 される 基 準 : 以 下 のいずれかに 対 する<br />

コミットメント<br />

1 業 界 のベストプラクティス 構 築 に 向 けた 活 動<br />

2 法 定 基 準 を 上 回 る 活 動<br />

3 環 境 に 関 するグローバルに 採 用 されている 業 界 基<br />

準 に 基 づく 活 動<br />

• ステークホルダーの 関 与 に 対 するコミットメント<br />

• 製 品 ・サービスの 影 響 についての 言 及<br />

• 持 続 可 能 性 に 向 けた 戦 略 的 取 り 組 み<br />

• 環 境 方 針<br />

• 重 大 なインパクトの 特 定<br />

• 主 要 分 野 における 目 的 と 目 標 の 文 書 化<br />

• プロセス、 責 任 、マニュアル、 行 動 計 画 、 手 順 の 策 定<br />

• システムの 要 件 に 対 する 内 部 監 査 ( 法 令 順 守 に 限 定 されない)<br />

• 内 部 報 告 と 管 理 層 によるレビュー<br />

※ 全 てのリスクレベル 企 業 において、ISO14001 認 証 又 は 環 境 管 理 監 査 (EMAS) 登 録 を 持 つ 企 業 は、 上 記 6 つの 指<br />

標 全 てを 満 たしていると 見 なす( 数 値 化 された 目 的 と 目 標 を 含 む)。<br />

• 環 境 方 針<br />

• 主 要 インパクトについての 説 明<br />

• 定 量 的 なデータ<br />

• 目 標 対 する 実 績<br />

• 環 境 マネジメントシステム(EMS)の 概 要<br />

• コンプライアンス 違 反 、 告 発 、 罰 金 、 事 故<br />

• 財 務 側 面<br />

• 第 三 者 検 証<br />

• ステークホルダーとの 対 話<br />

• 持 続 可 能 性 に 関 する 課 題 の 網 羅<br />

評 価 条 件<br />

‣ レベル 3: 環 境 負 荷 の 高 い 企 業<br />

方 針 :グループ 全 体 を 網 羅 し、 次 のいずれかを 満 たす<br />

• 指 標 6 項 目 を 満 たし、 少 なくともうち 4 項 目 は 中 核 指 標<br />

参 考 資 料 -16


• 方 針 がグループ 全 体 をカバーしない 場 合 は、 以 下 の 条 件<br />

- 中 核 指 標 5 項 目<br />

- 望 ましい 指 標 3 項 目 、うち 1 項 目 は「 持 続 可 能 性 に 向 けた 戦 略 的 な 動 き」である<br />

マネジメントシステム: 次 のうち 一 つを 満 たす<br />

• 会 社 の 活 動 全 体 の 3 分 の 2 以 上 (66%)の 範 囲 に EMS が 適 用 されている 場 合 は、5 つの 指 標 を<br />

満 たし、 文 書 における 目 的 と 目 標 は 数 値 化 されている<br />

• 会 社 の 活 動 全 体 の 3 分 の 1 から 3 分 の 2(33~66%)の 範 囲 に EMS が 適 用 されている 場 合 は、6<br />

つの 指 標 全 てを 満 たし、 文 書 における 目 的 と 目 標 は 数 値 化 されている<br />

報 告<br />

• 報 告 は、 過 去 3 年 以 内 に 発 行 されており、グループ 全 体 を 網 羅 し、3 つの 中 核 指 標 を 満 たす<br />

• グループ 全 体 を 網 羅 していない(95% 以 下 ) 報 告 は、4 つの 指 標 全 部 を 満 たさなければならない<br />

か、3 つの 中 核 指 標 と 一 緒 に 2 つの 望 まれる 指 標 を 満 たさなければならない<br />

‣ レベル 2: 環 境 負 荷 が 中 程 度 の 企 業<br />

方 針 :グループ 全 体 を 網 羅 し、 次 のいずれかを 満 たさなければならない<br />

• 全 中 核 的 指 標 のうち 4 項 目 を 満 たす( 少 なくとも 中 核 指 標 は 3 項 目 )<br />

• 方 針 がグループ 全 体 をカバーしない 場 合 は、どちらかの 条 件<br />

- 中 核 指 標 5 項 目 及 び 望 まれる 指 標 1 項 目<br />

- 中 核 指 標 4 項 目 及 び 望 まれる 指 標 2 項 目<br />

マネジメントシステム: 次 のうち 一 つを 満 たす<br />

• 会 社 の 活 動 全 体 の 3 分 の 1 以 上 (33%)の 範 囲 に EMS が 適 用 されている 場 合 は、4 つの 指 標 を<br />

満 たす<br />

• 会 社 の 活 動 全 体 の 3 分 の 1 以 下 (33%)の 範 囲 に EMS が 適 用 されている 場 合 は、6 つの 指 標 全<br />

てを 満 たし、 文 書 化 された 目 的 と 目 標 の 数 値 化 が 求 められる<br />

報 告 :なし<br />

‣ レベル 1: 環 境 負 荷 が 低 い 企 業<br />

方 針 : 中 核 指 標 のコミットメント 1 項 目 を 満 たす 実 践 例<br />

マネジメントシステム:なし<br />

報 告 :なし<br />

3 気 候 変 動 クライテリア<br />

気 候 変 動 における 企 業 の 評 価 指 標 は 以 下 の 通 り。 満 たすべき 評 価 項 目 は、リスクを 抱 える 企 業 のレベル<br />

によって 異 なる。<br />

レベル 3( 高 リスク) レベル 2( 中 リスク) 気 候 変 動 高 負 荷 製 品 に 関 る 企 業<br />

方 針 ・ガバナ<br />

ンス<br />

• 取 締 役 や 経 営 幹 部 の 気 候 変 動 に 関 す<br />

るイシューに 対 する 責 任 ( 個 人 また<br />

は 委 員 会 )<br />

• 声 明 / 方 針 の 開 示 ( 気 候 変 動 を 企 業<br />

活 動 の 一 環 として 取 組 む 課 題 と 認 識<br />

したもの)<br />

• 取 締 役 や 経 営 幹 部 の 気 候 変 動 に 関 す<br />

るイシューに 対 する 責 任 ( 個 人 また<br />

は 委 員 会 )<br />

• 声 明 / 方 針 の 開 示 ( 気 候 変 動 やエネ<br />

ルギー 消 費 を 企 業 活 動 の 一 環 として<br />

取 組 む 課 題 と 認 識 したもの)<br />

• 声 明 / 方 針 の 開 示 ( 排 出 及 び 気 候<br />

変 動 に 負 荷 を 与 える 製 品 を 減 ら<br />

すコミットメント)<br />

参 考 資 料 -17


マネジメン<br />

ト・ 戦 略<br />

情 報 公 開<br />

パフォーマ<br />

ンス<br />

以 下 の 項 目 から1つ:<br />

• 事 業 活 動 に 伴 う 温 室 効 果 ガス 排 出 量<br />

の 削 減 または 炭 素 強 度 の 改 善 に 関 す<br />

る 5 年 以 上 の 長 期 的 かつ 定 量 的 な 戦<br />

略 的 目 標 の 開 示<br />

• 事 業 活 動 に 伴 う 温 室 効 果 ガス 排 出 量<br />

の 削 減 に 関 する 5 年 未 満 の 中 ・ 短 期<br />

的 な 管 理 目 標 の 開 示<br />

下 記 の 2 項 目 について 3 年 以 上 連 続 し<br />

たデータの 開 示<br />

• 事 業 活 動 に 伴 う CO2 総 排 出 量 または<br />

温 室 効 果 ガス 総 排 出 量 (CO2 換 算 値 )<br />

の 絶 対 値<br />

• 業 界 の 規 範 として 指 標 が 確 立 されて<br />

いる 場 合 は 当 該 指 標<br />

※「マネジメント・ 戦 略 」の 項 目 条 件<br />

で 代 替 することができる。<br />

下 記 の 項 目 のうち 1 つについて 3 年 以<br />

上 連 続 したデータの 開 示<br />

• 事 業 活 動 に 伴 う CO2 総 排 出 量 、 温 室<br />

効 果 ガス 総 排 出 量 (CO2 換 算 値 ) 又<br />

はエネルギー 消 費 量 の 絶 対 値<br />

• 業 界 の 規 範 として 指 標 が 確 立 されて<br />

いる 場 合 は 当 該 指 標 ※「マネジメン<br />

ト・ 戦 略 」の 項 目 条 件 で 代 替 するこ<br />

とができる。<br />

製 品 に 伴 う 排 出 量 ・ 効 率 性 の 開 示<br />

( 以 下 のとおりセクターによって<br />

異 なる)<br />

• 石 油 ・ガス 産 業 :エンドユーザー<br />

使 用 時 の 排 出 量<br />

• 石 炭 鉱 業 :エンドユーザー 使 用 時<br />

の 排 出 量<br />

• 自 動 車 産 業 : 燃 料 効 率<br />

• 航 空 産 業 : 燃 料 効 率<br />

※パフォーマンスの 要 求 項 目 は、 現 在 パフォーマンスへのより 包 括 的 なアプローチが 求 められているため 保 留 。<br />

FTSE4Good 委 員 会 は、 全 ての 高 ・ 中 程 度 リスク 企 業 が 他 の 全 ての 要 求 項 目 を 満 たした 時 点 でレビューを 行 う<br />

以 下 の 項 目 から1つ:<br />

• 直 近 2 年 の 炭 素 強 度 削 減 実 績 (5%~<br />

10%)<br />

• 一 般 的 に 認 められた 炭 素 利 用 効 率 の<br />

測 定 基 準 で 評 価 した 場 合 、そのサブ<br />

セクター 内 で 過 去 2 年 上 位 4 分 の 1<br />

にランク 付 けされたことを 示 す<br />

• 定 量 化 され 重 要 であるという 条 件 の<br />

下 、 変 革 的 イニシアティブまたは 連<br />

携<br />

自 動 車 産 業 及 び 航 空 産 業 は 以 下 の<br />

項 目 から1つ:<br />

• 排 出 量 削 減 :サブセクター 平 均 以<br />

上 の 燃 料 効 率 の 改 善<br />

• エコ 効 率 測 定 基 準 :サブセクター<br />

の 同 業 他 社 と 比 較 して 平 均 以 上<br />

の 燃 料 効 率<br />

• 製 品 に 伴 う 排 出 量 を 削 減 する 変<br />

革 的 イニシアティブ<br />

【 社 会 側 面 の 基 準 】<br />

4 人 権 ・ 労 働 クライテリア<br />

人 権 ・ 労 働 の 権 利 における 企 業 の 評 価 指 標 は 以 下 の 通 り。 満 たすべき 評 価 条 件 は、 企 業 のリスクレベル<br />

によって 異 なる。<br />

中 核 指 標<br />

方 針 • 人 権 問 題 を 含 めた 方 針 の 開 示<br />

• ILO の 次 の 4 つの 中 核 的 条 約 に 対 するコミットメント<br />

14<br />

を 示 す、または 明 確 に 準 拠 する 方 針 / 規 範<br />

- 平 等 / 差 別 、 強 制 労 働 、 児 童 労 働 、 労 働 者 代 表<br />

制 度<br />

レベル 3 向 け 付 加 的 中 核 指 標<br />

• 国 連 「 法 執 行 官 による 力 及 び 火 器 の 使 用 に 関 する 基 本<br />

原 則 」 及 び「 法 執 行 官 のための 行 動 綱 領 」に 基 づいた<br />

武 装 警 備 員 の 使 用 ガイドライン 15<br />

• 人 権 方 針 が、 必 要 に 応 じて 各 地 域 の 言 語 に 翻 訳 され、<br />

明 確 なコミュニケーションが 行 われている<br />

16<br />

• 先 住 民 の 権 利 を 尊 重 するコミットメントを 明 示<br />

マネジメン • 何 らかの 違 反 是 正 のための 手 続 きを 含 む 人 権 方 針 実 施<br />

望 ましい 指 標<br />

• 役 員 会 の 責 任 : 人 権 方 針 に 戦 略 責 任 を 負 う CEO 直 属 の 1<br />

名 若 しくは 複 数 の 経 営 幹 部 がいること<br />

• 世 界 人 権 宣 言 を 明 確 に 指 示 する 声 明<br />

• 人 権 方 針 に 関 するグローバルなコミュニケーション<br />

14<br />

国 連 グローバル・コンパクトもしくは、SA8000 の 署 名 企 業 、OECD 多 国 籍 企 業 ガイドラインを 支 持 する 明 記 のある 方 針 をもつ 企 業 は、<br />

この 要 件 を 満 たすものとする。<br />

15 The Voluntary Principles on the Security and Human Rights( 基 本 的 人 権 、 業 務 の 安 全 確 保 などについて 自 主 的 に 提 起 した 原 則 )に 署 名 して<br />

いる 場 合 はこの 条 件 を 満 たすものとする。<br />

16<br />

人 権 リスクの 高 い 国 で、かつ 著 しい 人 口 の 先 住 民 族 が 存 在 する 開 発 地 域 で 事 業 を 行 う 林 業 関 連 企 業 は、 追 加 クライテリアを 満 たす 必<br />

要 がある。 採 掘 を 含 むグローバル 資 源 セクターの 企 業 は 上 記 付 加 的 中 核 指 標 にある 先 住 権 クライテリアを 満 たす 必 要 がある。 新 しいクラ<br />

イテリアは 以 下 のコミットメントを 含 む: 自 由 で 事 前 の 十 分 な 情 報 に 基 づいた 話 し 合 い、 有 意 義 な 参 加 と 早 期 かつ 継 続 的 な 話 し 合 い、 戦<br />

略 ・ 責 任 ・ 対 話 、 先 住 権 のその 他 の 側 面 を 含 む 付 加 的 な 証 拠 の 提 示 。<br />

参 考 資 料 -18


トシステム<br />

報 告<br />

の 監 視<br />

• 人 権 方 針 に 関 する 従 業 員 のグローバル 研 修<br />

• 人 権 リスクの 懸 念 がある 国 におけるその 地 域 の 独 立 し<br />

たステークホルダーとの 話 し 合 い<br />

• 人 権 インパクト・アセスメントの 証 拠 の 提 示 。 企 業 が<br />

直 面 する 主 たる 人 権 問 題 を 認 識 し、そのリスクアセス<br />

メント 手 順 に 人 権 問 題 を 組 み 込 んでいること。<br />

• 人 権 に 関 する 方 針 とその 実 績 に 関 する 公 の 報 告 書 発 行<br />

• 同 報 告 において、 最 低 限 の 方 針 とマネジメントシステ<br />

ムについての 言 及<br />

パフォーマンス<br />

• ( 定 量 ・ 定 性 的 な) 進 捗 及 び 実 績 の 詳 細 開 示<br />

• 法 令 遵 守 、 何 らかの 方 針 ・ 法 令 違 反 があればその 詳 細 に<br />

関 する 声 明 の 発 行<br />

品 質<br />

• 社 外 監 査 ・ 検 証<br />

• ステークホルダーによる 検 証<br />

• 報 告 におけるイノベーション/リーダーシップに 関 する<br />

詳 細 の 提 示<br />

評 価 条 件<br />

‣ レベル 3:グローバル 資 源 セクターにおける 人 権 リスクの 高 い 企 業<br />

方 針 : 中 核 指 標 、 望 ましい 指 標 の 全 項 目 、 付 加 的 中 核 指 標 を 満 たす 優 良 事 例<br />

マネジメントシステム: 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例<br />

報 告 : 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例<br />

‣ レベル 2: 人 権 リスクの 懸 念 がある 国 と 関 与 する 中 程 度 リスクの 企 業<br />

方 針 : 中 核 指 標 の 全 項 目 と、 望 ましい 指 標 1 項 目 を 満 たす 優 良 事 例<br />

マネジメントシステム: 中 核 指 標 の 2 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例<br />

報 告 :なし<br />

‣ レベル 1: 人 権 リスクの 低 い 企 業<br />

グローバル 資 源 セクターもしくは 懸 念 のある 国 における 関 与 が 顕 著 な 会 社 以 外 を 低 リスクと 見 なす<br />

次 の 3 つのうちのいずれか1 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例 の 提 示<br />

指 標<br />

機 会 均 等 方 針<br />

機 会 均 等 制 度<br />

従 業 員 との 関 係<br />

• 機 会 均 等 方 針 の 採 用 ・ 機 会 均 等 もしくは 多 様 性 へのコミットメントが 年 次 報 告 やウェブサイトに 掲 載 され<br />

ること<br />

次 のうち 1 つ 以 上 を 含 む 機 会 均 等 制 度 の 証 拠 の 提 示<br />

• 方 針 及 び 労 働 者 構 成 の 監 視<br />

• 労 働 に 関 する 柔 軟 な 取 り 決 めと 家 族 手 当<br />

• マネジャーの 10% 以 上 が 女 性 、または 女 性 もしくは 少 数 民 族 出 身 のマネジャーの 割 合 が 関 係 する 労 働 者<br />

全 体 における 代 表 者 の 40%を 超 えている<br />

• 組 合 承 認 の 合 意 書 やその 他 の 協 議 合 意 書 を 含 む、 従 業 員 関 係 を 良 好 に 維 持 するための 制 度 についての 証 拠<br />

の 提 示<br />

5 サプライチェーン 労 働 基 準 クライテリア<br />

サプライチェーン 労 働 基 準 における 企 業 の 評 価 指 標 は 以 下 の 通 り。 満 たすべき 評 価 条 件 は、 企 業 のリス<br />

クレベルによって 異 なる。( 著 しく 労 働 基 準 リスクを 伴 うハイリスク 製 品 、 調 達 する 国 の OECD 所 得 レベ<br />

ル、 企 業 の 売 上 の 3 分 の 1 以 上 もしくは 一 定 以 上 の 売 り 上 げがハイリスク 製 品 からなる 条 件 などによっ<br />

てレベル 分 けされる)<br />

中 核 指 標 付 加 指 標 望 ましい 指 標<br />

方 針 • 方 針 ・ 規 範 の 明 確 な 開 示 以 下 を 明 記 する 方 針 / 規 範 • 調 達 プロセスに 明 確 に 方 針 / 規 範 が 組 み<br />

参 考 資 料 -19


• サプライヤーとの 関 連 性 を 明 示<br />

• ILO 次 の 4 つの 中 核 的 条 約 に 対 す<br />

るコミットメントを 示 す、または 明<br />

確 に 準 拠 する 方 針 / 規 範<br />

• 機 会 均 等 、 強 制 労 働 、 児 童 労 働 、 労<br />

働 者 代 表 制 度<br />

• 健 康 と 安 全 に 関 する 方 針 / 規 範<br />

• 労 働 時 間<br />

• 賃 金<br />

• 懲 戒 手 続 き<br />

込 まれていること<br />

• 労 働 基 準 に 関 連 するイニシアティブの 一<br />

員 であること(ETI など)<br />

マネジメント<br />

システム<br />

報 告<br />

• 監 査 :サプライヤーの 査 察 / 監 査<br />

• コミュニケーション: 世 界 中 のサプ<br />

ライヤーとの 方 針 / 規 範 について<br />

の 周 知<br />

• 関 連 従 業 員 の 研 修 :コンプライアン<br />

スまたは 監 査 チーム、それに 相 当 す<br />

る 購 買 チーム、ネジャーや 従 業 員 に<br />

対 しての 方 針 / 規 範 の 研 修<br />

• 方 針 / 規 範 を 実 施 する 戦 略 上 の 責<br />

任 者 に、1 人 以 上 の 取 締 役 または 上<br />

級 役 員 /マネジャーを 含 む<br />

• 方 針 / 規 範 に 非 コンプライアンス<br />

の 内 容 を 改 善 する 際 の 手 順 がある<br />

こと<br />

サプライチェーン 労 働 基 準 に 関 する<br />

方 針 と、 以 下 の 情 報 に 関 する 報 告 の<br />

開 示<br />

• コミュニケーション<br />

• 監 査<br />

• 方 針 違 反 時 の 手 続 き<br />

• 研 修<br />

• 広 範 な 監 視 :サプライヤーに 対 する 幅 広<br />

い 監 視 、 査 察 、 監 査 、 外 部 モニターの 使<br />

用<br />

• リスク 評 価 : 最 もリスクの 高 い 分 野 の 特<br />

定 するシステムもしくは、 包 括 的 にリス<br />

ク 範 囲 を 網 羅 していること<br />

• 広 範 囲 のコミュニケーション:サプライ<br />

ヤーの 従 業 員 に 対 する 方 針 / 規 範 の 周 知<br />

( 工 場 での 現 地 語 による 告 知 等 )<br />

• 能 力 強 化 : 自 社 従 業 員 及 びサプライヤー<br />

従 業 員 に 研 修<br />

• バイヤーの 関 与 : 購 買 管 理 システムとの<br />

明 確 な 連 携<br />

• 監 視 するサプライチェーンの 割 合 もしく<br />

は 監 視 するサプライヤー 施 設 の 数<br />

以 下 のパフォーマンスのうち 1 項 目<br />

• 自 社 方 針 に 反 する 事 例 の 提 供<br />

• 自 社 方 針 違 反 事 例 の 数 の 報 告 (データ 提<br />

供 )<br />

• サプライヤーの 実 績 データ 提 供<br />

評 価 条 件<br />

‣ レベル 3:サプライチェーン 労 働 リスクの 高 い 企 業<br />

方 針 : 中 核 指 標 全 項 目 と、 追 加 指 標 のうち1 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例<br />

マネジメントシステム: 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例<br />

報 告 : 方 針 の 開 示 と、 中 核 指 標 全 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例<br />

‣ レベル 2:サプライチェーン 労 働 リスクが 中 程 度 の 企 業<br />

方 針 : 中 核 指 標 、 付 加 指 標 、 望 ましい 指 標 のうち 少 なくとも 1 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例 か、サプラ<br />

イチェーン 労 働 基 準 方 針 を 設 定 している 証 拠 の 提 示<br />

マネジメントシステム: 中 核 指 標 か 望 まれる 指 標 のうち 少 なくとも 1 項 目 を 満 たす 優 良 実 践 例<br />

報 告 :なし<br />

【ネガティブ・スクリーニングにおける 評 価 基 準 】<br />

FTSE4Good シリーズでは、 以 下 の 産 業 に 関 与 のある 企 業 は 除 外 される。<br />

・タバコ 生 産 業 者<br />

・ 核 兵 器 システムの 本 体 、 戦 略 部 品 、またはプラットフォームのいずれかを 製 造 する 企 業<br />

・ 兵 器 システム 本 体 を 製 造 する 企 業<br />

・ 原 子 力 発 電 所 の 所 有 者 または 運 用 者<br />

・ウランの 抽 出 、または 処 理 に 関 係 する 企 業<br />

参 考 資 料 -20


D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ポジティブ 側 面 による 評 価 の 事 例 】<br />

開 示 情 報 に 基 づけば、2012 年 3 月 から 2013 年 9 月 までに FTSE4Good に 新 規 に 採 用 された 企 業 は 以 下 。<br />

2012 年 3 月 、 東 京 センチュリーリース、ヒューリック 17<br />

2012 年 9 月 、アステラス 製 薬 、 新 日 鉄 住 金 ソリューションズ 18<br />

2013 年 3 月 、 関 西 アーバン 銀 行 、 西 日 本 シティ 銀 行 、ソニーフィナンシャルホールディングス 19<br />

2013 年 9 月 、アンリツ 20<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング)の 事 例 】<br />

開 示 情 報 に 基 づけば、2012 年 3 月 21 、9 月 22 、3 月 23 に FTSE4Good から 除 外 された 企 業 は 以 下 10 社 。<br />

クライテリアは 基 準 に 満 たなかった 内 容 を 示 す。<br />

- セコム: 人 権 労 働 クライテリア<br />

- トヨタ 自 動 車 : 人 権 労 働 及 び 環 境 マネジメントクライテリア<br />

- ヒロセ 電 機 : 人 権 労 働 クライテリア<br />

- セブン&アイ・ホールディングス: 人 権 労 働 及 びサプライチェーン 労 働 クライテリア<br />

- スカパーJSAT ホールディングス: 環 境 マネジメントクライテリア<br />

- 日 本 製 紙 : 人 権 労 働 クライテリア<br />

- 住 友 ゴム: 人 権 労 働 クライテリア<br />

- ヤマトホールディングス: 環 境 マネジメントクライテリア<br />

- 日 本 通 運 : 人 権 労 働 及 び 環 境 マネジメントクライテリア<br />

- 三 菱 商 事 : 気 候 変 動 クライテリア<br />

17 FTSE [2012]. “Semi-Annual Review of FTSE4Good Indices March 2012” <br />

18 FTSE [2012]. “Semi-Annual Review of FTSE4Good Indices September 2012” <br />

19 FTSE [2013]. “Semi-Annual Review of FTSE4Good Indices March 2013” <br />

20 FTSE [2013]. “Semi-Annual Review of FTSE4Good Indices September 2013” <br />

21 FTSE [2012]. “Semi-Annual Review of FTSE4Good Indices March 2012” <br />

22 FTSE [2012]. “Semi-Annual Review of FTSE4Good Indices September 2012” <br />

23 FTSE [2013]. “Semi-Annual Review of FTSE4Good Indices March 2013” <br />

参 考 資 料 -21


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

Oekom Research<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

ドイツ(ミュンヘン)<br />

住 所<br />

Goethestraße 28, 80336 Munich, Germany<br />

従 業 員 数 53 名 のスタッフで 構 成 されており、アナリストは 38 名 24 。<br />

URL<br />

http://www.oekom-research.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

1999 年 に 出 版 社 から 分 離 する 形 で 設 立 。 近 年 、 顧 客 、 体 制 共 に 拡 大 傾 向 にあり、 特 に 欧 州 ドイツ 語 圏<br />

における 影 響 力 は 大 きい ESG 情 報 提 供 機 関 。 環 境 からスタートしたが、2002 年 に 環 境 以 外 の 項 目 も 全 般<br />

的 に 網 羅 している。<br />

同 社 株 式 の 85.68%は 42 人 の 個 人 株 主 が 所 有 。 残 りは、 環 境 関 連 出 版 社 、カトリック 教 会 関 連 団 体 、 環<br />

境 財 団 など。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

100 以 上 の 金 融 サービス 機 関 を 顧 客 として 抱 えており、ホームページ 上 に 開 示 されている 顧 客 数 は 84 25<br />

( 運 用 機 関 ( 資 産 運 用 ・ 信 託 銀 行 ・ファンドトラスト)59、 機 関 投 資 家 25)で、 主 要 な 顧 客 は 以 下 の 通<br />

り。2007 年 9 月 からハンブルク 証 券 取 引 所 が 公 表 している Global Challenges Index に 情 報 提 供 している。<br />

- AmpegaGerling Investment GmbH<br />

- Bankhaus Schelhammer & Schattera<br />

- Daiwa Asset Management Co. Ltd<br />

- Kepler-Fonds<br />

- Pioneer Investments<br />

- Raiffeisen Kapitalanlage-Gesellschaft m.b.H.<br />

- SEB Invest<br />

- Sparkasse Oberosterreich<br />

- HypoVereinsbank AG<br />

- Salzburg-based Schoellerbank<br />

- Bank fur Orden und Mission<br />

- Steyler Bank<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

24 Oekom Research ホームページ<br />

25 Oekom Research ホームページ<br />

参 考 資 料 -22


原 則 としてアンケートに 基 づく 格 付 けを 行 っているが、 作 成 されたレポートは 当 該 社 にフィードバッ<br />

クを 行 い、 確 認 するプロセスを 重 視 している。 評 価 対 象 企 業 数 は、56 か 国 約 3,000 社 。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

・ARISTA( 責 任 投 資 のリサーチのための 品 質 規 格 ):Oekom Research は 創 立 団 体 の 一 つで、この 規 格 に<br />

基 づく 認 証 を 取 得 している。<br />

・CDP : 提 携 パートナーとして、CDP のデータを 活 用 。<br />

・GRI : 石 油 ・ガス 業 界 の 報 告 書 でよりサステナビリティに 焦 点 を 当 て、 比 較 しやすいものにすること<br />

を 目 的 とした、 補 足 文 書 作 成 のマルチステークホルダー・ワーキング・グループに 参 画 。<br />

・PRI: 署 名 機 関 。<br />

・Eurosif: 欧 州 SRI 調 査 ・ 普 及 活 動 団 体 のメンバー。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

企 業 の 社 会 また 環 境 的 パフォーマンスに 対 する 同 社 の 分 析 は、ダイナミックな 市 場 におけるスタンダ<br />

ードとなっている、とする。 責 任 投 資 向 けサービス、 持 続 可 能 性 に 関 するレポート 提 供 など、 幅 広 いサ<br />

ービスを 提 供 しており、 顧 客 における ESG 評 価 の 有 用 性 には 言 及 。ただし、 組 織 として ESG 評 価 実 施 の<br />

目 的 については 明 確 には 示 していない。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

社 会 ・ 環 境 の 6 つのカテゴリーについて、 業 種 別 の 項 目 も 含 めて 100 以 上 の 調 査 項 目 を 設 定 している。<br />

さらに 17 以 上 の 事 業 及 び 事 業 慣 行 についてネガティブ・スクリーニングを 実 施 している。<br />

【コーポレートガバナンス 側 面 の 基 準 】 26<br />

<br />

・ 取 締 役 会 の 独 立 及 び 有 効 性<br />

・ 株 主 主 権 ( 議 決 権 の 付 与 、 株 主 提 案 が 可 能 な 株 式 保 有 比 率 、 株 主 の 参 加 促 進 の 仕 組 み)<br />

・ 取 締 役 報 酬 に 関 する 透 明 性 確 保<br />

・ 株 主 構 成 に 関 する 透 明 性 確 保<br />

< 企 業 倫 理 ><br />

・ 行 動 規 範 ( 公 正 な 事 業 慣 行 を 確 保 する 為 の 取 り 組 み、 主 な 批 判 ・ 罰 金 ・ 和 解 )<br />

【 環 境 側 面 の 基 準 】<br />

< 環 境 マネジメント><br />

・ 環 境 方 針<br />

・ 環 境 マネジメントシステム<br />

・ 認 証 取 得 状 況<br />

26 ホームページにおいて 公 開 されているサンプルレポートをもとに 評 価 基 準 を 作 成 した。そのため、これ 以 外 にも 評 価 軸 を 保 有 している<br />

可 能 性 はある。<br />

参 考 資 料 -23


・ 外 部 報 告<br />

・ 環 境 パフォーマンス 指 標<br />

・ 気 候 変 動 に 対 する 戦 略 と 体 制<br />

・ 出 張 及 び 移 動<br />

< 製 品 及 びサービス><br />

・ 原 料 及 び 含 有 物 ( 有 害 性 物 質 の 使 用 ・ 含 有 状 況 )<br />

・ エネルギー 効 率<br />

・ 製 品 の 排 出 量<br />

・ アップグレード 性 、 耐 久 性 、リサイクル 性<br />

・ 製 品 の 回 収 とリサイクル<br />

・ 包 装<br />

< 環 境 効 率 ><br />

・ エネルギー 消 費<br />

・ 出 張<br />

・ 二 酸 化 炭 素 排 出<br />

・ 紙 使 用 量<br />

・ 全 廃 棄 物<br />

・ リサイクル<br />

・ 水 使 用<br />

【 社 会 側 面 の 基 準 】<br />

< 従 業 員 及 びサプライヤー><br />

・ 結 社 の 自 由<br />

・ ワークライフ・バランス<br />

・ 雇 用 の 保 護<br />

・ 安 全 衛 生<br />

・ 機 会 均 等<br />

・ 研 修 と 教 育<br />

・ サプライヤー<br />

< 社 会 と 製 品 責 任 ><br />

・ 人 権 ( 方 針 、 主 な 批 判 ・ 罰 金 ・ 和 解 等 )<br />

・ コミュニティ( 方 針 とマネジメント、 貢 献 に 関 する 透 明 性 )<br />

・ 納 税 と 助 成 ( 透 明 性 )<br />

・ ステークホルダーダイアログ<br />

・ 外 部 向 け 報 告 書<br />

・ 製 品 責 任 ( 方 針 及 びその 範 囲 、 責 任 ある 販 売 と 流 通 ネットワークを 保 障 する 為 の 取 り 組 み、 主 な 批 判 ・<br />

罰 金 ・ 和 解 )<br />

参 考 資 料 -24


【ネガティブ・スクリーニングにおける 評 価 基 準 】<br />

ネガティブクライテリアとしては、 以 下 のとおり。<br />

< 問 題 となる 事 業 領 域 ><br />

・ 中 絶 ( 中 絶 用 薬 品 の 製 造 や 実 施 )<br />

・ アルコール( 製 造 )<br />

・ 殺 虫 剤<br />

・ 有 機 塩 素 系 量 産 製 品 (ポリ 塩 化 ビニール 等 )<br />

・ 胚 細 胞 研 究 ( 生 命 科 学 に 特 化 した 企 業 )<br />

・ 毛 皮 ( 製 造 及 び 販 売 )<br />

・ ギャンブル<br />

・ 遺 伝 子 組 換 え( 組 換 え 種 子 の 製 造 等 )<br />

・ 武 器<br />

・ 原 子 力 ( 施 設 運 用 、 主 要 部 品 製 造 )<br />

・ ポルノ( 製 造 、 販 売 )<br />

・ タバコ( 製 造 )<br />

< 問 題 となる 事 業 慣 行 ><br />

・ 事 業 上 の 違 法 行 為 の 訴 追 や 立 証<br />

・ 動 物 実 験<br />

・ 児 童 労 働<br />

・ 問 題 となる 環 境 に 関 わる 事 業 活 動<br />

・ 人 権 侵 害<br />

・ 労 働 者 の 権 利 侵 害<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

アナリストは 38 名 。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

主 要 な 情 報 ソースは 以 下 の 通 り。<br />

• 社 会 ・ 環 境 報 告 書 等 の 公 開 情 報<br />

• 企 業 へのインタビュー<br />

• メディア 情 報<br />

• 独 立 した 専 門 家 へのインタビュー<br />

• 政 府 、 公 共 機 関 、 産 業 団 体 、 社 会 ・ 環 境 関 連 研 究 所 、 消 費 者 保 護 団 体 等 の 独 立 した 機 関 の 評 価 、 等<br />

• GES – 2012 年 6 月 、Oekom Research は、スウェーデンの ESG 調 査 機 関 GES と、ドイツ 語 圏 及 び 北 欧<br />

諸 国 における 責 任 投 資 普 及 を 目 的 とした 戦 略 パートナー 契 約 を 結 んでいる。<br />

参 考 資 料 -25


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

住 所<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

RepRisk<br />

ESG 情 報 提 供<br />

スイス(チューリヒ)<br />

Stampfenbachstrasse 42, 8006 Zurich, Switzerland<br />

スイス 本 社 従 業 員 数 は 不 明 だが、 欧 米 アジア 全 体 で 40 名 以 上 のアナリスト<br />

を 抱 える 27 。2013 年 5 月 に 新 しく 開 いたアジア・パシフィック 地 域 拠 点 フ<br />

ィリピンのマニラ 支 部 では、 新 たにアナリストを 含 む 8 名 の 従 業 員 が 雇 用<br />

されている。<br />

https://www.reprisk.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

前 身 は、1998 年 に 社 会 ・ 環 境 コンサルタント 会 社 として 設 立 された ECOFACT。 大 手 金 融 機 関 の 顧 客<br />

等 からの 要 望 により、2006 年 に「The RepRisk® Web-based Tool」を 開 発 し、2010 年 に RepRisk AG として<br />

独 立 。 企 業 の 社 会 的 責 任 は、 中 長 期 的 な 観 点 から、 健 全 な 財 務 、レピュテーション・リスク 管 理 、 優 れ<br />

た 経 営 と 収 益 増 加 と 密 接 に 関 わっている、という 企 業 信 念 の 下 、 環 境 ・ 社 会 ・ガバナンスにおける 企 業<br />

の 評 判 、コンプライアンス、 投 資 に 影 響 するリスク 評 価 を 行 っている。<br />

取 締 役 会 は、CEO の Phillip Aeby を 含 む 3 名 、エグゼクティブ・コミッティーは CEO の Phillip Aeby<br />

を 含 め 3 名 (チューリヒ 本 社 )、マネジメント・チームは 4 名 (チューリヒ 1 名 、ロンドン、アメリカ、<br />

フィリピンに 各 1 名 )で 構 成 。<br />

リスクマネジメントとデューデリジェンスの 包 括 的 なデータベースを 開 発 し、 投 資 専 門 家 、サプライ<br />

チェーン・マネジャー、 政 策 ・ 広 報 担 当 者 、コンプライアンス 部 門 等 が、 日 々のビジネスにおける ESG<br />

リスクを 管 理 、あるいは 軽 減 するためのツールを 提 供 している。<br />

RepRisk が 提 供 するプロダクトの 一 つである「The RepRisk® Web-based Tool」では、 現 時 点 で 最 もネガ<br />

ティブニュースへの 露 出 が 高 い 企 業 の 一 覧 などを 検 索 することが 可 能 。さらに、ESG リスクのイシュー、<br />

国 連 グローバル・コンパクトに 照 らし 合 わせた 場 合 どの 項 目 に 反 しているかも 確 認 することができる。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

Rep Risk ホームページによれば、 金 融 機 関 のうち 銀 行 は 18 社 、 年 金 基 金 5 社 、 資 産 運 用 は 17 社 が 同 社<br />

の 情 報 を 活 用 している。<br />

金 融 機 関 (18)<br />

ABN AMRO(オランダ)<br />

ANZ(オーストラリア・ニュージーランド)<br />

27 Novethic [2013]. “Overview of ESG Rating Agencies September 2013” <br />

参 考 資 料 -26


ASN(オランダ)<br />

Bayern LB (ドイツ)<br />

Commerzbank(ドイツ)<br />

Credit Suisse(スイス)<br />

Deutsche Bank(ドイツ)<br />

European Investment Bank(ルクセンブルグ)<br />

Goldman Sachs (アメリカ)<br />

Hypo Vereins Bank (ドイツ)<br />

J.P. Morgan (アメリカ)<br />

Kaisar Ritter Partner (リヒテンシュタイン)<br />

Nordea (スウェーデン)<br />

RBS(イギリス)<br />

SEB(ドイツ)<br />

Standard Chartered(イギリス)<br />

UBS (スイス)<br />

Zürcher Kantonalbank (スイス)<br />

年 金 基 金 (5)<br />

APG(オランダ)<br />

ATP(デンマーク)<br />

Council on Ethics Norwegian Government Pension Fund Global (ノルウェー)<br />

Unipension(デンマーク)<br />

USS (イギリス)<br />

資 産 運 用 会 社 (17)<br />

Amundi (フランス)<br />

Colonial First State(オーストラリア)<br />

MN Services(オランダ)<br />

NEI Investments(カナダ)<br />

Perpetual(オーストラリア)<br />

PICTET(スイス)<br />

Portofolio 21(アメリカ)<br />

QUANTEX(スイス)<br />

Allianz Global Investors(ドイツ)<br />

Union Investment(ドイツ)<br />

Boston Common(アメリカ)<br />

The Corporative Asset Management(イギリス)<br />

COMGEST(イギリス)<br />

参 考 資 料 -27


GTP(フランス)<br />

EDMOND DE ROTHCHILD (スイス)<br />

GLG (イギリス)<br />

La Française AM (フランス)<br />

投 資 調 査 ・ 顧 問 業 務 企 業 (3)<br />

Ethos(スイス)<br />

Ethix SRI Advisors(デンマーク)<br />

Oekom Research (ドイツ)<br />

その 他 多 国 籍 企 業 など (12)<br />

BASF(ドイツ)<br />

EDP(ポルトガル)<br />

Hamburger Stiftung für Wirtschaftsethik(ドイツ)<br />

Rheinmetall AG(ドイツ)<br />

Roche(スイス)<br />

Swiss Re(スイス)<br />

EKN(スウェーデン)<br />

The Nature Conservancy(アメリカ)<br />

Pirelli(イタリア)<br />

SEK(スウェーデン)<br />

Vedanta(イギリス)<br />

Zurich(スイス)<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

メディア、インターネット 上 の 新 聞 記 事 、ニュース、 環 境 ・ 社 会 関 連 の 民 間 非 営 利 団 体 による 情 報 を 基<br />

に 独 自 に 格 付 けを 行 っている。<br />

企 業 について、 事 業 プロジェクトや 事 件 ・ 事 故 などのネガティブ 情 報 を、13 言 語 圏 ( 英 ・ 仏 ・ 独 ・ 西 ・<br />

葡 ・ 露 ・ 中 ・ 韓 ・ 日 ・デンマーク・フィンランド・ノルウェー・スウェーデン) 及 び 700 以 上 の 大 手 新<br />

聞 社 によるニュース、NGO のウェブサイト、ニュースレター、ニュース、ブログなどから 情 報 を 収 集 。<br />

環 境 、 社 会 、ガバナンスの 側 面 から、 企 業 の 評 判 、コンプライアンス、 投 資 においてリスクとなるイシ<br />

ュー27 項 目 に 分 類 し、ネガティブ 情 報 源 の 影 響 力 、メディアにおける 露 出 頻 度 、そこで 取 り 上 げられて<br />

いるイシューの 重 大 性 などをもとに、RepRisk Index(RRI)として 0~100 の 間 でリスクを 数 値 化 してい<br />

る。 評 価 対 象 企 業 は、 約 40,000 社 ( 先 進 国 ・ 新 興 国 市 場 の 上 場 ・ 非 上 場 企 業 )で、 評 価 対 象 地 域 は 全 世<br />

界 。<br />

参 考 資 料 -28


【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

・ 国 連 世 界 人 権 宣 言 、ILO 条 約 、 国 連 腐 敗 防 止 条 約 、 赤 道 原 則 、 世 界 銀 行 .グループの 環 境 ・ 衛 生 ・ 安 全<br />

(EHS)ガイドライン、OECD 多 国 籍 企 業 行 動 指 針 、 国 連 グローバル・コンパクト 10 原 則 の 項 目 を 網 羅 。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

透 明 性 確 保 及 びリスクマネジメントを 通 じた 顧 客 の 長 期 的 な 成 功 に 貢 献 することをミッションに 掲 げ<br />

る。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

図 表 の 27 項 目 の ESG イシューに 分 類 した 後 、 入 手 したネガティブ 情 報 源 の 影 響 力 ( 大 手 新 聞 、 地 域 新<br />

聞 、 市 民 団 体 のブログなど)、メディアにおける 露 出 頻 度 、そこで 取 り 上 げられているイシューの 重 大 性<br />

や 新 しさを 基 に 以 下 の 指 数 を 算 出 。<br />

<br />

Current RRI( 最 新 レップリスク 指 数 ): 企 業 もしくは 事 業 プロジェクトの 現 時 点 における 批 判 レ<br />

ベルを 数 値 化 。<br />

<br />

Peak RRI(ピークレップリスク 指 数 ): 過 去 2 年 間 で 最 も 批 判 を 受 けた 時 点 を 示 す 指 標 で、 企 業<br />

もしくは 事 業 プロジェクトに 関 連 する 環 境 、 社 会 、 企 業 評 判 、 投 資 のリスク 指 標 となる。<br />

<br />

RRI Change(レップリスク 指 数 変 動 傾 向 ): 過 去 30 日 間 における RRI の 数 値 変 動 をプラスマイ<br />

ナスで 表 示 。<br />

図 表 ―27 項 目 の ESG イシュー<br />

環 境 フットプリント コミュニティとの 関 係 従 業 員 との 関 係 コーポレート・ガバ<br />

地 球 規 模 の 汚 染 ( 気<br />

候 変 動 含 む)<br />

地 域 的 な 汚 染<br />

生 態 系 及 び 景 観 へのイ<br />

ンパクト<br />

ナンス<br />

人 権 侵 害 強 制 労 働 汚 職 、 賄 賂 、 恐 喝 、<br />

資 金 洗 浄<br />

地 域 住 民 ・ 社 会 へのイ<br />

ンパクト<br />

地 域 や 関 連 住 民 ・ 団<br />

体 ・ 社 会 の 参 画 問 題<br />

製 品 ポートフォリオ<br />

に 関 連 するリスク<br />

社 会 的 に 物 議 を 醸 し<br />

ている 製 品 及 びサー<br />

ビス<br />

児 童 労 働 経 営 幹 部 報 酬 健 康 及 び 安 全 性 に 問<br />

題 のある 製 品<br />

結 社 ・ 団 体 交 渉 の<br />

自 由<br />

資 源 の 過 剰 消 費 ・ 浪 費 社 会 的 差 別 雇 用 差 別 不 正 行 為<br />

グリーン・ウォッシ<br />

ングなど 表 面 的 ・ 欺<br />

瞞 的 な 環 境 ・ 社 会 ・<br />

労 働 環 境 の 訴 求<br />

廃 棄 物<br />

労 働 における 健 脱 税 行 為<br />

康 ・ 安 全 問 題<br />

動 物 虐 待 劣 悪 な 労 働 条 件 反 競 争 的 行 為<br />

国 際 規 範 違 反<br />

国 内 法 違 反<br />

サプライチェーン( 環 境 ・ 社 会 ・ 法 律 問 題 )<br />

( 資 料 )RepRisk ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【ネガティブ・スクリーニングにおける 評 価 基 準 】<br />

図 表 のイシューと 連 携 したホット・トピックスとして、タグを 28 項 目 設 定 している。データベース 上<br />

で、 関 連 する 企 業 やニュースを 確 認 する 場 合 に、タグから 検 索 可 能 。<br />

アルコール<br />

参 考 資 料 -29


ダイヤモンド<br />

高 度 保 全 価 値 森 林<br />

パーム 油<br />

北 極 圏 採 掘<br />

絶 滅 危 惧 種<br />

違 法 伐 採<br />

ポルノ<br />

アスベスト<br />

森 林 消 失<br />

先 住 民<br />

保 護 地 域<br />

クラスター 爆 弾<br />

フラッキング ( 水 圧 破 砕 採 掘 )<br />

地 雷<br />

海 底 採 掘<br />

紛 争 鉱 物<br />

ギャンブル<br />

単 一 農 法<br />

タールサンド<br />

深 海 掘 削<br />

遺 伝 子 組 み 換 え 生 物<br />

山 頂 除 去 石 炭 採 掘<br />

タバコ<br />

劣 化 ウラン 弾<br />

集 団 虐 殺<br />

原 子 力<br />

水 不 足<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメント)の 事 例 】<br />

2014 年 2 月 20 日 時 点 の 日 本 企 業 の RRI 指 数 例 (RepRisk 社 提 供 )<br />

農 林 水 産 業 A 社 (RRI Current 58/ Change +1/ Peak 63)<br />

電 力 ガス 業 B 社 (RRI Current 49/ Change +6/ Peak 59)<br />

RRI の 数 値 区 分<br />

0~25: 低 い 批 判 レベル・メディア 露 出 度<br />

25~50: 中 程 度 の 批 判 レベル・メディア 露 出 度<br />

50~75: 高 い 批 判 レベル・メディア 露 出 度<br />

参 考 資 料 -30


E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

欧 米 アジア 全 体 で 40 名 以 上 のアナリストが 所 属 。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

調 査 機 関 では、Ethix SRI Advisors, AfU Investor Research、 株 式 会 社 日 本 総 合 研 究 所 の 3 社 とパートナー<br />

シップを 結 んでいる。<br />

プロジェクトベースでの 協 力 企 業 は、Factset Research Systems Inc、Interactive Data Corporation、SIX<br />

Financial Information、SunGard, Aditus、CSRHub、WeGreen の 7 社 28 。<br />

28 Novethic [2013]. “Overview of ESG Rating Agencies September 2013” <br />

参 考 資 料 -31


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

RobecoSAM<br />

29<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

スイス(チューリヒ)<br />

住 所 Josefstrasse 218, 8005 Zurich, Switzerland ( 本 社 )<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

約 130 名<br />

http://www.robecosam.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

サステナビリティに 特 化 した 世 界 初 の 運 用 機 関 として、1995 年 に 設 立 。2007 年 にオランダの 運 用 機 関<br />

であるロベコ 社 の 傘 下 に 入 り、グループでのサステナビリティ 事 業 のさらなる 強 化 の 下 、2013 年 1 月 に<br />

ロベコ 社 SAM 社 から RobecoSAM に 社 名 を 変 更 。2013 年 2 月 には、 日 本 の 金 融 機 関 ORIX 社 がロベコ 社<br />

の 株 式 を 9 割 以 上 取 得 し、ORIX 傘 下 に 入 る。<br />

1999 年 に、ダウ・ジョーンズ 社 と 共 同 で、ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ 指 数 (DISJ: Dow Jones<br />

Sustainability Index)を 開 発 。 銘 柄 選 定 のための 調 査 は RobecoSAM 社 が 行 い、 最 終 的 な 意 思 決 定 を 両 社 の<br />

代 表 者 で 構 成 される 委 員 会 で 行 っている。DJSI は、サステナビリティ 関 連 評 価 の 中 でも 知 名 度 も 高 く、<br />

また 信 頼 されている 評 価 の 1 つである 30 。 以 下 、 主 に DJSI に 係 る ESG 評 価 の 内 容 について 記 載 する。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

欧 州 を 中 心 とした 以 下 の 25 運 用 機 関 等 が( 除 く RobecoSAM)、DJSI のライセンスを 利 用 している。<br />

Aegon (オランダ)<br />

Ahorro Corporacion Gestion (スペイン)<br />

Amundi Asset Management (フランス)<br />

Anima SGR (イタリア)<br />

Aviva (スペイン)<br />

Barclays Capital (イギリス)<br />

BlackRock Asset Management (イギリス)<br />

BT Financial Group (オーストラリア)<br />

Credit Suisse Asset Management (スイス)<br />

Danske Capital, Sampo Bank (フィンランド)<br />

Deutsche Postbank (デンマーク)<br />

Eurizon Capital (イタリア)<br />

Folksam Sak (スウェーデン)<br />

Generali Investments Italy SpA (イタリア)<br />

29 RobecoSAM 社 は、ESG 情 報 提 供 機 関 の 機 能 も 合 わせ 持 つ、サステナビリティ 分 野 に 特 化 した 運 用 機 関 である。そのため、ここでは「E<br />

SG 情 報 提 供 機 関 」に 分 類 している。<br />

30 SustainAbility [2012]. “Rate the Raters: Polling the Experts 2012 - A GlobeScan / SustainAbility Survey” に 実 施 した 調 査 に 基 づく。 同 調 査 は、850 人 のサステナビリティ 関 連 の 専 門 家 が 回 答 している。<br />

参 考 資 料 -32


Groupama (フランス)<br />

Invesco (デンマーク)<br />

JP Morgan Asset Management (イギリス)<br />

Lombard Odier Asset Management (スイス)<br />

MEAG Munich Ergo (デンマーク)<br />

Metzler Asset Management (デンマーク)<br />

Seligson & Co Fund Management (フィンランド)<br />

Shinhan BNP Paribas Asset Management ( 韓 国 )<br />

Sparinvest (デンマーク)<br />

State Street Global Advisors ( 米 国 )<br />

Theodoor Gilissen Bankiers (オランダ)<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

「 環 境 」「 社 会 」「 経 済 」の 側 面 で 企 業 を 評 価 し、 業 種 内 で 相 対 的 に 優 れた 企 業 を DJSI World として 選<br />

定 。グローバルな 約 2,500 社 31 を 対 象 とした DJSI World の 他 、 各 国 ・ 各 地 域 に 応 じたインデックスも 策 定<br />

しており、 全 体 で 3300 社 が 調 査 対 象 に 含 まれる。<br />

評 価 は、アンケート 式 による「Corporate Sustainability Assessment」 及 び NGO などの 情 報 に 基 づく「メ<br />

ディア&ステークホルダー 分 析 」で 構 成 される。これらの 評 価 結 果 を 統 合 し、 委 員 会 での 審 査 を 経 て DJSI<br />

構 成 銘 柄 が 決 定 される。<br />

図 表 ―DJSI 選 定 プロセス<br />

RobecoSAM 社 による<br />

Corporate Sustainability<br />

Assessment<br />

DJSI デザイン<br />

コミッティ<br />

ユニバース<br />

開 始<br />

ロベコ 社<br />

アンケート<br />

メディア&ステーク<br />

ホルダー 分 析<br />

DJSI<br />

構 成 プロセス<br />

DJSI<br />

ファミリー<br />

情 報 源<br />

( 資 料 )RobecoSAM ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

RobecoSAM は 以 下 の 組 織 等 との 関 係 があり、また 支 持 を 表 明 している。このほか、GRI を 発 足 させた<br />

NGO の Ceres なども 積 極 的 に 支 援 している。<br />

図 表 ―RobecoSAM の 関 係 組 織<br />

31 S&P グローバル 株 価 指 数 を 対 象 に、 時 価 総 額 上 位 2500 社 。<br />

参 考 資 料 -33


PRI<br />

Eurosif<br />

組 織 等 名 称<br />

関 係 性<br />

PRI に 賛 同 し 署 名 。 企 業 の ESG 課 題 解 決 に 向 けて、<br />

投 資 家 ネットワークに 参 加 している。<br />

Eurosif が 策 定 した 個 人 向 けサステナビリティに 関<br />

連 した 投 資 信 託 に 係 る 透 明 性 ガイドラインに 署 名<br />

32 。<br />

( 資 料 )RobecoSAM ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

ESG 評 価 を 行 うスタンスは 様 々あるが、RobecoSAM 社 は 自 身 も 運 用 機 関 であることから、 調 査 項 目 の<br />

中 に「 経 済 」が 含 まれるように、 株 価 向 上 ・ 企 業 価 値 向 上 をより 意 識 した 調 査 になっているのが 特 徴 で<br />

ある。RobecoSAM 社 によれば、 同 社 のアプローチは 以 下 2 つの 考 えに 基 づいている。<br />

• 様 々な 資 源 の 制 約 が 増 える 中 、サステナブルビジネスは 長 期 的 なステークホルダーの 価 値 を 形 成 す<br />

るのに 重 要 である<br />

• サステナブル 要 因 は、 企 業 の 競 争 力 を 評 価 する 上 で 重 要 なリスクであり 機 会 でもある<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

「Corporate Sustainability Assessment」は 経 済 側 面 ・ 環 境 側 面 ・ 社 会 側 面 により 構 成 される。それぞれ 6<br />

から 10 の 評 価 軸 で 構 成 され、 各 評 価 軸 はそれぞれ 2 から 10 の 質 問 項 目 により 構 成 される。 質 問 項 目 は<br />

全 体 で 80 から 120 となる。 評 価 軸 及 び 質 問 項 目 は、 業 種 共 通 の 内 容 及 び 業 種 特 有 の 内 容 により 構 成 され<br />

る。 詳 細 な 内 容 は 開 示 されていないため、 以 下 はサンプルとして 開 示 されている 質 問 票 に 基 づいている。<br />

【ガバナンス・ 経 済 側 面 の 基 準 】<br />

<br />

・ チェック&バランス: 取 締 役 会 の 構 成<br />

・ チェック&バランス: 取 締 役 会 の 議 長<br />

・ チェック&バランス: 業 務 の 責 任 と 委 員 会<br />

・ 透 明 性 & 説 明 責 任 :コーポレートガバナンス 方 針<br />

・ チェック&バランス: 取 締 役 会 のダイバーシティ<br />

・ チェック&バランス: 取 締 役 の 有 効 性 評 価<br />

・ チェック&バランス: 監 査 の 利 益 相 反<br />

・ 取 締 役 等 の 報 酬 に 関 する 透 明 性<br />

・ CEO 及 び 全 従 業 員 の 平 均 報 酬 の 開 示<br />

<br />

・ リスク・ 危 機 管 理 の 所 管<br />

・ リスクの 分 析<br />

・ 感 度 分 析 及 びストレステスト<br />

32 サステナビリティ 評 価 の 透 明 性 を 高 める 目 的 の 下 、2008 年 に Eurosif が 策 定 した“European SRI Transparency Code”。 2012 年 12 月 現 在 、<br />

500 以 上 の 投 資 信 託 、50 以 上 の 機 関 が 署 名 している。<br />

参 考 資 料 -34


・ リスク 対 応 戦 略<br />

<br />

・ 行 動 規 範 : 対 象 項 目<br />

・ 行 動 規 範 :システム、 手 続 き<br />

・ 不 正 ・ 賄 賂 : 方 針<br />

・ 行 動 規 範 ・ 不 正 ・ 賄 賂 : 事 業 との 関 係 性<br />

・ 行 動 規 範 ・ 不 正 ・ 賄 賂 : 違 反 報 告<br />

<br />

・ 満 足 度 の 測 定<br />

・ 顧 客 へのフィードバック・プロセス<br />

・ カスタマーセンターのデータへのアクセシビリティ<br />

・ 顧 客 価 値 分 析<br />

<br />

・ ブランドに 関 わる 総 経 費<br />

・ ブランド 戦 略<br />

・ ブランドメトリクス<br />

・ ステークホルダーへの 認 知 度 分 析<br />

<br />

・ サプライチェーンの 分 析<br />

・ リスクエクスポージャー<br />

・ リスクマネジメント<br />

・ サプライチェーンマネジメントにおける ESG 配 慮<br />

・ 事 業 機 会<br />

・ パフォーマンスの 測 定<br />

・ 透 明 性<br />

<br />

・ プライバシーポリシー<br />

・ プライバシーポリシー: 範 囲<br />

・ プライバシーポリシー:システム・ 手 順<br />

・ データ 保 護 の 責 任<br />

・ 顧 客 情 報<br />

・ システムの 脆 弱 性<br />

参 考 資 料 -35


【 環 境 側 面 の 基 準 】<br />

<br />

・ 環 境 報 告 : 品 質<br />

・ 環 境 報 告 :マテリアリティ<br />

・ 環 境 報 告 : 範 囲<br />

・ 環 境 報 告 : 保 証<br />

・ 環 境 報 告 : 定 性 データ<br />

・ 環 境 報 告 : 定 量 データ<br />

<br />

・ 企 業 の 環 境 方 針<br />

・ 企 業 の 環 境 方 針 : 含 まれる 分 野<br />

・ EMS( 環 境 マネジメントシステム): 認 証 ・ 監 査 ・ 検 証<br />

・ EMS( 環 境 マネジメントシステム): 認 証 範 囲<br />

( 環 境 効 率 )<br />

・ 直 接 的 温 暖 化 効 果 ガス(4 年 分 の 実 績 及 び 目 標 値 )<br />

・ 間 接 的 温 暖 化 効 果 ガス(4 年 分 の 実 績 及 び 目 標 値 )<br />

・ エネルギー(4 年 分 の 実 績 及 び 目 標 値 )<br />

・ 水 (4 年 分 の 実 績 及 び 目 標 値 )<br />

・ 廃 棄 物 (4 年 分 の 実 績 及 び 目 標 値 )<br />

【 社 会 側 面 の 基 準 】<br />

<br />

・ 社 会 的 報 告 : 品 質<br />

・ 社 会 的 報 告 :マテリアリティ<br />

・ 社 会 的 報 告 : 範 囲<br />

・ 社 会 的 報 告 : 保 証<br />

・ 社 会 的 報 告 : 定 性 的 データ<br />

・ 社 会 的 報 告 : 定 量 的 データ<br />

<br />

・ 労 働 KPI:ダイバーシティ、 差 別<br />

・ 労 働 KPI: 男 女 平 等 な 報 酬<br />

・ 労 働 KPI: 結 社 の 自 由<br />

・ 労 働 KPI: 解 雇<br />

・ 労 働 KPI: 労 働 安 全 衛 生<br />

・ 苦 情 や 不 満 の 解 決 方 法<br />

参 考 資 料 -36


・ ビジネスと 人 権<br />

<br />

・ 人 材 スキルマッピング・ 開 発<br />

・ 人 材 パフォーマンス・インディケーター<br />

・ 人 事 及 び 組 織 の 研 修 ・ 開 発 ・その 評 価<br />

<br />

・ 所 定 の 業 務 評 価 プロセスで 評 価 される 従 業 員 の 範 囲<br />

・ 各 従 業 員 グループの 業 績 と 報 酬 の 関 係<br />

・ 企 業 または 個 人 の 業 績 に 基 づく 変 動 報 酬 のバランス<br />

・ 業 績 に 関 連 する 報 酬 に 対 する 企 業 のインディケーター<br />

・ 個 人 業 績 評 価 のタイプ<br />

・ 実 績 関 連 報 酬 の 支 払 いのタイプ<br />

・ 従 業 員 回 転 率<br />

・ 従 業 員 満 足 度 の 傾 向<br />

<br />

・ 企 業 市 民 活 動 に 関 する 戦 略<br />

・ フィランソロフィー 活 動 のタイプ<br />

・ フィランソロフィー 及 び 社 会 貢 献 への 投 資 の 規 模<br />

・ 成 果 の 測 定<br />

<br />

・ 社 外 ステークホルダーとのエンゲージメント<br />

【ネガティブ・スクリーニングにおける 評 価 基 準 】<br />

アルコール、タバコ、ギャンブル、 兵 器 、クラスター 爆 弾 、 鉄 砲 、 地 雷 、 原 子 力 、アダルト 産 業 のビジ<br />

ネスに 関 与 している 企 業 は、 選 定 から 外 れる。<br />

また、「メディア&ステークホルダー 分 析 」において、 個 社 に 関 する NGO 等 からのネガティブ 情 報 を<br />

基 にしたネガティブスクリーンを 実 施 。 上 記 ビジネスに 関 与 していなくとも、 重 大 な 不 祥 事 などがある<br />

場 合 は 選 定 から 外 れることもある。<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ポジティブ 側 面 による 評 価 の 事 例 】<br />

2013 年 度 の 評 価 では、 以 下 の 24 企 業 がセクター・リーダーとして 選 定 。 日 本 企 業 は、パナソニック 社<br />

のみ。<br />

参 考 資 料 -37


図 表 ―2013 年 度 のセクター・リーダー<br />

セクター・リーダー 企 業 (2013-2014)<br />

セクター<br />

フォルクスワーゲン<br />

自 動 車 ・ 自 動 車 部 品<br />

オーストラリア・ニュージーランド 銀 行 グループ 金 融 機 関<br />

シーメンス<br />

資 本 財<br />

アデコ<br />

商 業 ・サービス 用 品<br />

パナソニック<br />

個 人 消 費 財 ・アパレル<br />

タブコープ・ホールディングス<br />

消 費 者 サービス<br />

シティグループ<br />

総 合 金 融 機 関<br />

BG グループ<br />

エネルギー<br />

ウールワーズ<br />

食 品 ・ 生 活 必 需 品 小 売 り<br />

ネスレ<br />

飲 食 ・タバコ<br />

アボット・ラボラトリーズ<br />

ヘルスケア 機 器 ・ 用 品<br />

ヘンケル<br />

家 庭 用 品 ・パーソナル 用 品<br />

アリアンズ<br />

保 険<br />

アクゾ・ノベル<br />

素 材<br />

テレネット・グループ・ホールディング メディア<br />

ロシュ・ホールディング<br />

医 薬 品 ・バイオテクノロジー・ライフサイエンス<br />

ストックランド<br />

不 動 産<br />

ロッテ・ショッピング<br />

小 売 り<br />

台 湾 セミコンダクター・マニュファクチャリング 半 導 体 ・ 半 導 体 製 造 装 置<br />

SAP<br />

ソフトウェア・サービス<br />

アルカテル・ルーセント<br />

テクノロジー・ハードウェア 及 び 機 器<br />

KT<br />

電 気 通 信 サービス<br />

エール・フランスーKLM<br />

運 輸<br />

EDP<br />

公 益 事 業<br />

( 資 料 )RobecoSAM ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

スタッフは 110 名 。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

他 の ESG 評 価 機 関 との 連 携 も 積 極 的 に 行 い、2013 年 3 月 には CDP との 共 同 により、アンケート 質 問<br />

の 一 部 設 問 を CDP の 設 問 に 変 更 している。また、「メディア&ステークホルダー 分 析 」においては、RepRisk<br />

のデータを 利 用 。<br />

参 考 資 料 -38


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

住 所<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

Trucost<br />

ESG 情 報 提 供 機 関<br />

イギリス(ロンドン)<br />

22 Chancery Lane, London, WC2A 1LS, UK<br />

エグゼクティブチーム 9 名 、セールス&マーケティングチーム 12 名 、リサ<br />

ーチアナリスト 19 名 、オペレーション 5 名 の 計 45 名<br />

http://www.trucost.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

2002 年 に 設 立 。バリューチェーン 全 体 の 自 然 資 本 依 存 度 を 計 測 する input-output(EI-O)モデルを 開 発 。<br />

モデルに 基 づき 個 別 企 業 の CO2 排 出 量 を 算 出 する 仕 組 みを 構 築 しており、 環 境 データのパイオニア。 自<br />

然 資 本 に 依 存 した 経 済 活 動 の 悪 影 響 を 理 解 してもらうことをミッションとし、 企 業 ・ 投 資 家 ・ 政 府 ・ア<br />

カデミック 向 けのデータ 提 供 を 行 う。2010 年 に 退 任 した CEO Paul Druckman 氏 は、 現 在 は 国 際 統 合 報 告<br />

評 議 会 (IIRC)の CEO を 務 める。 企 業 向 けには、サプライチェーン 全 体 での 環 境 負 荷 の 把 握 から、 環 境<br />

P/L 算 出 、 環 境 戦 略 策 定 なども 請 け 負 う。 投 資 家 向 けには、データ 提 供 サービスに 加 え、 投 資 ポリシーに<br />

合 ったプロダクトをオーダーメイドで 提 供 するとしている。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

情 報 提 供 先 は、 企 業 (18)、 投 資 家 (38)、 政 府 機 関 (12)、 調 査 機 関 (12)、 大 学 (10)など 計 90 顧 客<br />

をウェブサイト 上 に 挙 げている。<br />

例 えば、 以 下 の 企 業 などが 含 まれる。<br />

- AXA FINANCIAL<br />

- HERMES<br />

- Bank of America Merrill Lynch<br />

- UBS<br />

- FTSE<br />

- PUMA<br />

その 他 、FactSet や Style Research platforms などの 情 報 ベンダーを 通 じても 投 資 家 に 情 報 を 提 供 してい<br />

る。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 方 針 の 内 容 】<br />

モデルに 基 づき、 企 業 の CO2 負 荷 量 を 算 出 。また、 企 業 に 対 する 直 接 調 査 で、 最 新 のデータを 収 集 し<br />

ている。<br />

評 価 対 象 は、 全 世 界 4500 社 データを 網 羅 。 以 下 のインデックスに 対 応 。<br />

参 考 資 料 -39


MSCI ワールド、S&amp;P 500、MSCI エマージング・マーケット、MSCI ヨーロッパ、STOXX 欧 州 600、<br />

S&amp;P/IFCI 大 型 / 中 型 株 、MSCI アジア( 日 本 除 く)、FTSE 全 株 、 日 経 225、Topix 150、ボベスパ、<br />

ASX 200、CAC 40、SMI、KOSPI、IBEX、AEX、FTSE MIB<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

PRI に 署 名 。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

企 業 ・ 投 資 家 ・ 政 府 ・アカデミックへのデータ 提 供 を 通 して、 現 在 の 企 業 活 動 や 製 品 、サプライチェ<br />

ーンや 投 資 活 動 が 自 然 資 本 に 依 存 している 状 況 への 理 解 を 広 げ、 日 々 増 加 する 環 境 コストのリスク・マ<br />

ネジメントと、より 持 続 可 能 なビジネスモデルの 構 築 を 促 進 することを 目 指 している。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

企 業 を 464 のセクターに 分 類 し、 独 自 のモデル・ 開 示 情 報 などを 用 いて、 企 業 のバリューチェーン 全<br />

体 の 環 境 負 荷 量 を 算 出 。さらに、 外 部 性 なども 金 額 で 算 出 。<br />

【 環 境 側 面 の 基 準 】<br />

< 環 境 負 荷 データ><br />

・GHG 排 出 量 、CO2 排 出 量<br />

・ 水 使 用 量<br />

・ 天 然 資 源 依 存 度<br />

・ 大 気 ・ 水 ・ 土 壌 汚 染<br />

・ 廃 棄 物 排 出 量 等<br />

< 財 務 データ( 金 額 換 算 されたデータ)><br />

・ 外 部 性<br />

・インパクトレシオ( 天 然 資 源 利 用 が 引 き 起 こす 偶 発 債 務 など) 等<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ポジティブ 側 面 による 評 価 の 事 例 】<br />

Natural Capital Leader Index 33 では、 直 近 5 年 の 間 に 事 業 活 動 とサプライチェーンにおける 天 然 資 源 イン<br />

パクトを 収 益 から 切 り 離 すことに 成 功 している Decoupling Leader と、 事 業 活 動 及 びサプライチェーンに<br />

おける 収 益 100 万 ドル 毎 の 天 然 資 源 インパクトが 低 い Efficiency Leader を、19 業 界 の 米 国 トップ 企 業 を<br />

含 むグローバル 企 業 から 選 出 する。<br />

33 Trucost [2014]. “State of Green Business 2014” <br />

参 考 資 料 -40


2014 年 1 月 、 塩 野 義 製 薬 がヘルスケア 業 界 、NTT 都 市 開 発 が 不 動 産 業 界 からそれぞれ Decoupling Leader<br />

の 1 社 として 選 ばれた。また、 銀 行 業 界 からは、りそなホールディングスが、Efficiency Leader として 選<br />

出 されている 34 。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

エグゼクティブチーム 9 名 、セールス&マーケティングチーム 12 名 、リサーチアナリスト 19 名 、オ<br />

ペレーション 5 名 の 計 45 名<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

CDP のゴールド・パートナーとして 提 携 しているため、CDP 報 告 書 を 調 査 、 標 準 化 、 評 価 に 活 用 。Trucost<br />

は、 気 候 変 動 関 連 情 報 開 示 に 関 する CDP サプライ・チェーン・プログラムで、メンバー 企 業 の 情 報 開 示<br />

作 業 プロセスにおいて、 最 も 炭 素 排 出 の 高 いサプライヤーの 識 別 できるサービスを 提 供 している。<br />

34 Trucost ホームページ<br />

参 考 資 料 -41


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

As You Sow<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 (エンゲージメントサポート)<br />

アメリカ(カリフォルニア 州 オークランド)<br />

住 所 1611 Telegraph Ave., Ste. 1450 , Oakland, CA 94612<br />

従 業 員 数 8 名 (2014 年 2 月 時 点 の 有 償 スタッフ 数 )<br />

URL<br />

http://www.asyousow.org/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

As You Sow は、1992 年 に 設 立 されたエンゲージメントサポート 機 関 で、 特 に ESG 分 野 に 関 する 株 主 行<br />

動 についてアメリカ 国 内 で 有 数 の 団 体 である。 環 境 や 人 権 問 題 の 多 くは 企 業 の 社 会 的 責 任 が 推 進 される<br />

ことにより 解 決 されるとの 考 えに 基 づき、 企 業 の 経 営 層 に 直 接 対 話 する「investor representatives」( 投 資<br />

家 の 代 理 人 )としての 活 動 を 行 う。なお、 同 機 関 は 非 営 利 組 織 ( 免 税 団 体 )である。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

これまでに 150 以 上 の 株 主 と 企 業 の 対 話 や 決 議 を 支 援 した 実 績 を 有 する。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【 活 動 手 法 】<br />

As You Sow では、 下 記 の 手 法 を 用 いて、 株 主 による 企 業 へのエンゲージメント 活 動 を 支 援 する。<br />

・ 企 業 との 直 接 対 話 (dialogue with selected companies)<br />

・ 株 主 決 議 の 提 案 (file shareholder resolutions)<br />

・ 投 資 家 連 合 の 動 員 (mobilize investor coalitions)<br />

・ 株 主 提 案 イニシアティブの 実 施 (conduct unique shareholder solicitation initiative)<br />

注 力 する ESG 分 野 は 以 下 のとおりである。<br />

エネルギー: 石 炭 、 石 油 ・ 天 然 ガス 開 発 における 水 圧 破 砕 、クリーンテクノロジー<br />

化 石 燃 料 の 燃 焼 に 伴 う 温 室 効 果 ガスの 排 出 や、 有 害 な 副 産 物 から 人 々を 守 ることや、クリーンテク<br />

ノロジーがクリーンなだけではなくグリーンであることに 注 力 する。<br />

<br />

環 境 と 健 康 : 遺 伝 子 組 換 生 物 、ナノ 素 材 、 有 毒 物 質 (toxic enforcement)<br />

食 品 や 消 費 財 に 含 まれることの 多 い 有 害 な 物 質 の 健 康 リスクや 環 境 リスクに 企 業 が 対 処 することを<br />

求 める。 発 がん 性 物 質 や 生 殖 毒 性 物 質 に 関 するテストも 実 施 し、 日 常 的 な 消 費 財 から 毒 性 物 質 を 除<br />

くよう 企 業 に 訴 える。<br />

<br />

廃 棄 物 : 容 器 包 装 及 び 電 気 ・ 電 子 機 器 廃 棄 物<br />

参 考 資 料 -42


国 際 的 な 拡 大 生 産 者 責 任 の 広 まりにより、 生 産 とリサイクルに 責 任 を 持 つことや、 天 然 資 源 への 需<br />

要 を 減 らすための 電 気 ・ 電 子 機 器 について 特 に 主 張 している。<br />

<br />

人 権 : 特 に 綿 花 と 鉱 物<br />

ウズベキスタンの 綿 花 農 場 とコンゴの 鉱 山 における 児 童 労 働 と 強 制 労 働 の 排 除 に 注 力 する。 特 に<br />

「Responsible Sourcing Network」( 責 任 ある 調 達 ネットワーク)によって 実 施 されるプログラムであ<br />

る。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

特 に 定 まったものはない。 企 業 が 何 かの 原 則 等 に 賛 同 していればそれでよいとは 考 えられないので、<br />

参 考 としてみている。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

環 境 や 人 権 問 題 の 多 くは 企 業 の 社 会 的 責 任 が 推 進 されることにより 解 決 されるとの 考 えに 基 づき、 企<br />

業 の 経 営 層 に 直 接 対 話 する「investor representatives」( 投 資 家 の 代 理 人 )としての 活 動 を 行 う。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

エンゲージメントの 実 施 事 例 は 以 下 のとおり。<br />

図 表 ― 成 功 事 例<br />

企 業 名<br />

IDACORP(アイダホ 州 の 発 電 事 業<br />

者 )<br />

Best Buy( 全 米 最 大 の 家 電 量 販 店 )<br />

ペプシコ、コカコーラ、ネスレ<br />

アップル、デル、ヒューレット・<br />

パッカード<br />

アパレル 業 (GAP など)<br />

自 動 車 業<br />

ホームデポ<br />

エンゲージメントの 概 要<br />

温 室 効 果 ガス 排 出 削 減 目 標 とその 進 捗 開 示 を 求 める<br />

株 主 提 案 を 実 施 し、 株 主 総 会 で 52%という 高 い 賛 同<br />

を 得 た。<br />

電 気 ・ 電 子 廃 棄 物 のリサイクリングプログラムを<br />

2009 年 に 国 内 すべての 1,006 店 で 実 施 。 全 社 で 実 施<br />

する 小 売 業 は 同 社 のみ。<br />

パートナーである Walden Asset Management 社 と 共<br />

同 で 実 施 。3 大 飲 料 メーカーから、 容 器 リサイクル<br />

の 定 量 目 標 (50~60%)の 設 定 確 約 を 得 た。<br />

電 気 ・ 電 子 廃 棄 物 リサイクルのため、 目 標 策 定 やプ<br />

ログラム 実 施 などの 取 り 組 みを 促 した。<br />

アパレル 工 場 労 働 者 のための 労 働 水 準 向 上 への 取 り<br />

組 み 促 進 。<br />

自 動 車 部 品 ・ 製 品 からのトルエンの 除 去<br />

認 証 付 材 のみを 扱 うようにシフト。 株 主 行 動 ととも<br />

に 外 部 での 草 の 根 活 動 も 実 施 。<br />

( 資 料 )As You Sow ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

スタッフは、 注 力 する 環 境 や 人 権 分 野 に 関 する 専 門 家 で 構 成 される。<br />

参 考 資 料 -43


名 称<br />

ISS<br />

区 分<br />

ESG 情 報 提 供 機 関 (エンゲージメントサポート)<br />

アメリカ(マサチューセッツ 州 ボストン)<br />

所 在 国 ( 都 市 ) 他 、ベルギー、フランス、イギリス、インド、フィリピン、シンガポール、<br />

オーストラリア、 日 本 に 拠 点 を 有 する<br />

住 所 101 Federal St. Suite 2105 Boston, MA 02110<br />

従 業 員 数<br />

約 500 名<br />

URL<br />

http://www.issgovernance.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

ISS は、 投 資 先 企 業 のコーポレートガバナンスに 関 し、 議 決 権 行 使 コンサルティングサービスを 金 融 機<br />

関 に 提 供 する。1985 年 設 立 の 同 社 は、 業 界 のパイオニア 的 な 存 在 であり、 欧 米 や 豪 州 の 同 業 他 社 との 合<br />

併 や 買 収 により、2005 年 には 圧 倒 的 なシェアを 確 保 していた。2001 年 東 京 に 進 出 。2006 年 以 降 、 金 融 リ<br />

スク 管 理 会 社 の Risk Metrics グループ 傘 下 入 りし、2010 年 に Risk Metrics が MSCI に 買 収 されたことによ<br />

り、 現 在 は MSCI のグループ 企 業 としてブランドを 維 持 する。 業 界 1 位 。<br />

【 情 報 を 利 用 する 顧 客 数 等 ( 投 資 家 数 )】<br />

現 在 の 顧 客 数 は 約 1,700 社 である。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【 活 動 手 法 】<br />

ISS の 主 なサービスである 議 決 権 行 使 助 言 サービスでは、 顧 客 ( 金 融 機 関 )のポートフォリオ 上 の 企 業<br />

(100 か 国 以 上 )について 調 査 を 行 い、 議 案 に 対 する 賛 否 推 奨 レポートを 提 供 する。<br />

このほか、 様 々な 調 査 分 析 ・ 意 思 決 定 支 援 ツールを 提 供 しており、 例 えば「ISS Governance Quick Score」<br />

では、 機 関 投 資 家 はポートフォリオ 上 の 企 業 のリスク 特 定 のためのスコアリング・スクリーニングを 行<br />

うことができ、25 市 場 の 4,100 社 以 上 を 対 象 としている。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

株 主 の 利 益 のために、 企 業 のガバナンスリスクに 対 応 することをミッションとしている。<br />

ISS は 毎 年 、 助 言 基 準 を 設 けている。 助 言 基 準 の 設 定 にあたっては、 毎 年 、 機 関 投 資 家 や 企 業 経 営 者 、<br />

その 他 ガバナンス 市 場 関 係 者 に 対 し 調 査 を 行 い、その 結 果 を 公 開 、 翌 年 の 基 準 に 反 映 させるプロセスを<br />

踏 む。<br />

参 考 資 料 -44


2013 年 2 月 1 日 付 の「2013 年 日 本 向 け 議 決 権 行 使 助 言 基 準 ( 概 要 )」では、 以 下 の 15 の 大 項 目 別 に、<br />

どのような 時 に 賛 成 または 反 対 を 推 奨 するか、 及 びその 解 説 を 示 している 35 。<br />

図 表 ―ISS の 助 言 基 準 項 目 一 覧<br />

1 計 算 書 類 の 承 認<br />

2 剰 余 金 の 処 分<br />

3 取 締 役 選 任<br />

4 監 査 役 選 任<br />

5<br />

項 目<br />

定 款 変 更 ( 目 的 事 項 の 変 更 、 委 員 会 設 置 会 社 への 移 行 、 授 権 資 本 の 増 加 、 種 類<br />

株 式 の 創 設 ・ 変 更 、 自 社 株 取 得 の 取 締 役 会 授 権 、 株 主 の 権 利 行 使 の 手 続 き、 単<br />

元 未 満 株 主 の 権 利 制 限 、 株 主 総 会 の 定 足 数 の 緩 和 、 買 収 防 衛 策 関 連 の 変 更 、 取<br />

締 役 会 の 定 員 の 減 少 、 取 締 役 解 任 の 要 件 加 重 、 取 締 役 の 任 期 の 短 縮 、 取 締 役 の<br />

期 差 任 期 制 、 取 締 役 ・ 監 査 役 の 責 任 減 免 の 取 締 役 会 授 権 、 会 計 監 査 人 の 責 任 減<br />

免 の 取 締 役 会 授 権 、 剰 余 金 配 当 の 取 締 役 会 授 権 、 非 公 開 化 (Management Buyout<br />

等 ) 関 連 の 定 款 変 更 )<br />

6 役 員 賞 与<br />

7 退 職 慰 労 金 / 退 職 慰 労 金 制 度 廃 止 に 伴 う 打 ち 切 り 支 給<br />

8 ストックオプション/ 報 酬 型 ストックオプション<br />

9 取 締 役 報 酬 枠 の 増 加<br />

10 監 査 役 報 酬 枠 の 増 加<br />

11 会 計 監 査 人 の 選 任<br />

12 自 社 株 式 の 取 得<br />

13 買 収 防 衛 策 (ポイズンビル)<br />

14 買 収 、 合 併 、 第 三 者 割 当 増 資<br />

15 株 主 提 案<br />

16 社 会 問 題 ・ 環 境 問 題<br />

( 資 料 )「2013 年 日 本 向 け 議 決 権 行 使 助 言 基 準 ( 概 要 )」より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

上 記 の 16 番 「 社 会 問 題 ・ 環 境 問 題 」では、「 提 案 が 株 主 価 値 の 向 上 もしくは 保 護 に 資 するかどうか、<br />

に 基 づき 個 別 判 断 する」とし、その 際 に 考 慮 する 事 項 として 次 を 挙 げる 36 。<br />

・ 提 案 が 対 象 とする 事 柄 が、 個 々の 企 業 によってではなく、 法 律 もしくは 政 府 の 規 制 により 対 応 される<br />

べき 問 題 か<br />

・ 提 案 が 対 象 とする 事 柄 に 対 して、 企 業 がすでに 適 切 で 十 分 な 対 応 を 取 っているか<br />

・ 提 案 が 企 業 に( 範 囲 、 時 間 、 費 用 の 面 で) 過 度 な 負 担 を 強 いたり、 過 度 に 企 業 行 動 を 制 約 しないか<br />

・ 提 案 が 対 象 とする 事 柄 に 対 して 業 界 水 準 で 求 められる 対 応 と、その 企 業 の 対 応 状 況 の 比 較<br />

・ 情 報 開 示 の 拡 充 や 透 明 性 の 確 保 を 求 める 提 案 の 場 合 は、すでに 十 分 な 情 報 が 株 主 もしくは 公 衆 に 開 示<br />

されているか<br />

・ 情 報 開 示 の 拡 充 や 透 明 性 の 確 保 を 求 める 提 案 の 場 合 は、 会 社 の 機 密 情 報 を 開 示 させ、 会 社 を 競 走 上 不<br />

利 な 状 況 に 追 い 込 むことはないか<br />

また、 解 説 としては 以 下 を 挙 げる。<br />

「 社 会 問 題 ・ 環 境 問 題 の 範 疇 には、 商 品 の 安 全 性 、 環 境 問 題 、エネルギー 問 題 、 労 働 問 題 、 人 権 問 題 、<br />

従 業 員 の 多 様 性 、 取 締 役 会 の 多 様 性 、 政 治 献 金 をはじめとして、 幅 広 い 分 野 の 事 柄 が 含 まれる。 株 主 提<br />

案 を 分 析 する 際 には、 上 記 の 様 々な 要 素 が 考 慮 されるが、その 提 案 が 短 期 及 び 長 期 の 株 主 価 値 の 向 上 、<br />

もしくは 保 護 に 資 するかどうかが 重 要 である」。<br />

35 2014 年 版 についても 2013 年 12 月 に 公 開 されている( 英 語 版 のみ)。<br />

36<br />

「2013 年 日 本 向 け 議 決 権 行 使 助 言 基 準 ( 概 要 )」より 抜 粋 <br />

参 考 資 料 -45


C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【SRI 投 資 家 向 けのサービス】<br />

ISS の「 社 会 性 助 言 サービス」 部 門 では、 収 益 性 と 社 会 的 価 値 の 2 つの 投 資 目 的 を 持 つ SRI 投 資 家 向 け<br />

に、それが 両 立 できることを 目 的 として、 議 決 権 行 使 にあたっての 特 別 基 準 を 策 定 している。2014 年 版<br />

としては、 以 下 の 3 種 類 について、それぞれ 米 国 版 と 国 際 版 がある。<br />

・SRI 投 資 家 向 け 議 決 権 行 使 ガイドライン<br />

37<br />

・タフト‐ハートリー 法 対 応 議 決 権 行 使 ガイドライン<br />

・カトリック 教 会 向 け 議 決 権 行 使 ガイドライン<br />

図 表 ―SRI 投 資 家 向 けガイドライン 米 国 版 の 項 目 一 覧<br />

項 目 ( 括 弧 内 は 細 目 についての 要 約 )<br />

1 取 締 役 会 ( 無 競 争 選 挙 による 取 締 役 選 任 など)<br />

2 会 計 監 査 人<br />

3 買 収 防 衛 と 株 主 の 利 益<br />

4 その 他 のガバナンス 対 策<br />

5 資 本 構 成<br />

6 役 員 賞 与 ( 評 価 のクライテリア、インセンティブプランなど)<br />

7 合 併 及 び 企 業 のリストラクチャリング<br />

8 社 会 及 び 環 境 に 関 する 提 案<br />

8a 多 様 性 と 平 等<br />

8b 労 働 と 人 権<br />

8c 環 境<br />

8d 安 全 衛 生<br />

8e 政 府 及 び 軍<br />

8f 動 物 愛 護<br />

8g 政 治 献 金 及 び 寄 付<br />

8h 消 費 者 金 融 と 経 済 開 発<br />

8i その 他<br />

9 ミューチュアルファンド( 投 資 信 託 )の 議 決 権<br />

( 資 料 )SRI 投 資 家 向 けガイドライン 米 国 版 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成 。<br />

上 記 のうち「8c 環 境 」を 取 り 上 げると、さらに 13 の 細 目 に 分 かれている。<br />

図 表 ―SRI 投 資 家 向 けガイドライン 米 国 版 「8c 環 境 」の 細 目 一 覧<br />

項 目<br />

1 環 境 / 持 続 可 能 性 報 告 書<br />

2 気 候 変 動 と 温 室 効 果 ガス<br />

3 クリーン/ 再 生 可 能 エネルギーへの 投 資<br />

4 エネルギーの 効 率 的 利 用<br />

5 環 境 面 で 課 題 のある 地 域 での 操 業<br />

6 水 圧 破 砕 法<br />

7 塩 素 系 化 学 物 質 の 段 階 的 廃 止<br />

8 土 地 の 買 収 及 び 開 発<br />

9 集 中 家 畜 飼 養 施 設 38 に 関 する 持 続 可 能 性 の 報 告<br />

10 包 括 的 なリサイクル 方 針 の 策 定<br />

11 原 子 力 エネルギー<br />

12 水 の 使 用<br />

13 京 都 議 定 書 の 遵 守<br />

( 資 料 )SRI 投 資 家 向 けガイドライン 米 国 版 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

37<br />

タフト‐ハートリー 法 とは、 米 国 の 1947 年 労 使 関 係 法 の 通 称 。 労 使 の 交 渉 力 の 平 等 化 という 観 点 を 持 つ。<br />

38 Concentrated Area Feeding Operations(CAFO)のこと。<br />

参 考 資 料 -46


「8c-1 環 境 / 持 続 可 能 性 報 告 書 」では、「リスクや 負 債 などの 観 点 を 含 み、 環 境 や 社 会 性 に 関 する 情 報 開<br />

示 を 促 す 提 案 には 賛 成 するのがよい」と 助 言 しているほか、 環 境 問 題 に 関 するテーマについては 透 明 な<br />

情 報 公 開 を 求 めていくといったスタンスを 奨 励 している。<br />

また、 毎 年 、 環 境 と 社 会 的 課 題 に 関 し、 株 主 提 案 の 概 要 や 賛 否 状 況 をまとめた「U.S. Proxy Season Review<br />

Environmental & Social Issus」を 発 行 している。2013 年 には 21.7%が 支 持 を 集 め、 企 業 の 政 治 的 活 動 に 関<br />

する 提 案 が 最 も 多 かったとする。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

SRI 投 資 家 向 けガイドラインの 米 国 版 では、 参 照 したフレームとして 以 下 を 挙 げている。<br />

・Interfaith Center on Corporate Responsibility<br />

・General Board of Pension and Health Benefits of the United Methodist Church<br />

・Domini Social Investments<br />

・ 国 連 環 境 計 画 金 融 イニシアティブ<br />

・PRI<br />

・ 国 連 グローバル・コンパクト<br />

・ 環 境 と 社 会 に 関 連 する EU 指 令<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

ISS 社 では 日 本 企 業 に 関 する 議 決 権 助 言 も 行 っており、 社 会 的 に 注 目 度 の 高 い 企 業 買 収 事 案 等 で、 同 社<br />

が 賛 成 や 反 対 助 言 を 行 ったとの 報 道 がなされている。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

経 営 層 及 びスタッフはコーポレートガバナンス 及 び 金 融 に 精 通 している。<br />

参 考 資 料 -47


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

カリフォルニア 州 職 員 退 職 年 金 基 金 (CalPERS)<br />

(California Public Employees’ Retirement System)<br />

アセットオーナー<br />

アメリカ(サクラメント)<br />

住 所 400 Q-Street, Sacramento, CA 958111<br />

運 用 資 産 総 額 2,715 億 米 ドル(2013 年 10 月 末 時 点 )<br />

従 業 員 数 2,891 名 (2013 年 11 月 末 時 点 )<br />

URL<br />

www.calpers.ca.gov<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

CalPERS は、1932 年 に 創 設 された、 米 国 ・カリフォルニア 州 の 州 職 員 向 け 年 金 基 金 である。<br />

2013 年 10 月 末 時 点 における、CalPERS の 運 用 資 産 総 額 は 2,715 億 ドルであり、 公 務 員 向 けとしては 世<br />

界 最 大 。 加 入 者 はカリフォルニアにおける 約 3,000 の 公 的 機 関 から、1,678,996 人 。 年 間 のリターンは、<br />

過 去 3 年 間 の 平 均 は 10.4%、 過 去 5 年 間 の 平 均 は 9.9%であった。<br />

組 織 の 最 高 意 思 決 定 機 関 は、13 名 から 成 る「Board of Administration」( 管 理 委 員 会 )である。<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

CalPERS の 資 産 アロケーションの 内 訳 をみると、 上 場 株 式 とプライベートエクイティを「 成 長 」に 分<br />

類 し、2013 年 10 月 時 点 では 株 式 が 55.0%、プライベートエクイティが 11.0%、 合 わせて 66%を 占 める。<br />

株 式 には、 国 や 地 域 別 のターゲットを 有 していない。この「 成 長 」 分 野 のうち、 株 式 のうち 67%がパッ<br />

シブ 運 用 されている 他 はすべてアクティブ 運 用 されており、 全 資 産 における 比 率 はパッシブ 36%、アク<br />

ティブ 64%である。<br />

「 成 長 」 分 野 に 続 くのは、 債 券 15%、 実 物 10%となっており、 実 物 には 不 動 産 9%のほか、 森 林 及 び<br />

インフラ 投 資 1%が 含 まれている。<br />

図 表 ― 資 産 アロケーションの 内 訳<br />

区 分<br />

2013 年 10 月 時 点 の 割 合<br />

成 長 66.0%<br />

上 場 株 式 55.0%<br />

プライベートエクイティ 11.0%<br />

債 券 15.0%<br />

流 動 性 4.0%<br />

実 物 投 資 10.0%<br />

不 動 産 9.0%<br />

森 林 及 びインフラ 1.0%<br />

インフレーション 3.0%<br />

Absolute Return Strategy 2.0%<br />

合 計 100%<br />

( 注 1) 総 資 産 は 2,772 億 米 ドル。<br />

( 資 料 )CalPERS Facts at a glance, Jan 2014 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

参 考 資 料 -48


B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

CalPERS は、ESG に 配 慮 した 投 資 に 関 し 業 界 をリードし、イノベーションを 起 こしてきたことを 自 認<br />

する。その 理 由 は、 長 期 投 資 家 として、 将 来 の 年 金 を 支 払 う 役 割 の 遂 行 するためであるとする。<br />

1984 年 にコーポレートガバナンス 改 革 プログラムに 着 手 して 以 来 、ESG 投 資 に 関 する 主 要 な 団 体 やイ<br />

ニシアティブ、 投 資 家 活 動 、 調 査 研 究 等 をけん 引 してきた。「Global Principles of Accountable Corporate<br />

Governance」(2011 年 11 月 改 定 )が、エンゲージメントの 方 針 である。その 構 造 を 以 下 に 示 す。<br />

図 表 ―CalPERS「 責 任 あるコーポレートガバナンスのためのグローバル 原 則 」<br />

A<br />

B<br />

内 容<br />

責 任 あるコーポレートガバナンスのための 基 本 原 則<br />

1. 株 主 利 益 の 最 大 化<br />

2. 経 営 者 の 説 明 責 任<br />

3. 企 業 情 報 の 透 明 性 確 保<br />

4. 一 株 一 票<br />

5. 議 決 権 に 関 する 情 報 (Proxy materials)<br />

6. Code of Best Practice の 採 択<br />

7. 長 期 戦 略 とビジョン<br />

8. 取 締 役 指 名 に 関 する 株 主 のアクセス<br />

米 国 国 内 における 責 任 あるコーポレートガバナンスのための 原 則<br />

1. 取 締 役 会 の 独 立 性 とリーダーシップ<br />

2. 取 締 役 会 、 取 締 役 、 最 高 経 営 責 任 者 の 評 価<br />

3. 役 員 報 酬<br />

4. 財 務 報 告 の 誠 実 さ<br />

5. リスクの 概 要<br />

6. 企 業 の 社 会 的 責 任 ( 人 権 侵 害 の 排 除 、 環 境 情 報 開 示 、Sustainable Corporate<br />

Development、Reincorporation、 慈 善 及 び 政 治 的 貢 献 )<br />

7. 株 主 の 権 利<br />

C 国 際 的 な 責 任 あるコーポレートガバナンスのための 原 則 (ICGN の 原 則 )<br />

D<br />

E<br />

1. 企 業 目 的<br />

2. 役 員 会<br />

3. 企 業 文 化<br />

4. リスクマネジメント<br />

5. 報 酬<br />

6. 監 査<br />

7. 情 報 開 示 と 透 明 性<br />

8. 株 主 の 権 利<br />

9. 株 主 の 責 任<br />

新 興 国 市 場 における 責 任 あるコーポレートガバナンスのための 原 則<br />

1. 持 続 可 能 な 長 期 的 価 値 の 創 造<br />

2. 人 権 侵 害 の 排 除<br />

ジョイントベンチャーガバナンス<br />

1. 情 報 開 示 及 び 透 明 性<br />

2. ジョイントベンチャーガバナンスガイドラインの 参 照<br />

( 資 料 )CalPERS 2011「 責 任 あるコーポレートガバナンスのためのグローバル 原 則 」よ<br />

り 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

参 考 資 料 -49


こうした、 従 来 からのコーポレートガバナンスを 中 心 とした 意 思 決 定 に 加 え、 最 近 ではあらゆる 投 資<br />

プロセスにおいて ESG 要 素 を 考 慮 に 入 れる 方 向 に 注 力 し 始 めた 39 。<br />

投 資 部 門 では、2013 年 9 月 に、 以 下 の 10 項 目 から 成 る「 投 資 理 念 (Investment Beliefs)」を 策 定 している。<br />

図 表 ―CalPERS の「 投 資 理 念 」<br />

内 容<br />

1 負 債 サイドに 即 した 資 産 構 造 とするべきである。<br />

2 長 期 の 投 資 ホライズンは、 責 任 でもあり 強 みでもある。<br />

3<br />

4<br />

5<br />

6<br />

CalPERS は、ステークホルダーの 意 見 が 加 入 者 と 受 益 者 への 受 託 者 責<br />

任 と 一 致 する 限 り、 投 資 意 思 決 定 にそれを 反 映 させる。<br />

長 期 的 に 価 値 を 創 造 するためには、 財 務 資 本 、 物 的 資 本 、 人 的 資 本 の<br />

3 つの 資 本 を 効 率 よく 管 理 する 必 要 がある。<br />

CalPERS は 投 資 目 標 、 成 果 指 標 、 実 行 の 説 明 責 任 を 明 確 に 述 べなけれ<br />

ばならない。<br />

戦 略 的 な 資 産 アロケーションが、ポートフォリオのリスクとリターン<br />

の 主 要 決 定 要 因 である。<br />

7 CalPERS は、その 対 価 の 獲 得 に 確 信 があるときにのみ、リスクを 取 る。<br />

8 費 用 は 重 要 で、 効 果 的 に 管 理 されなければならない。<br />

CalPERS にとってのリスクは 複 合 的 な 側 面 を 持 ち、ボラティリティや<br />

9<br />

トラッキングエラーだけでは 十 分 把 握 できない。<br />

CalPERS の 事 業 目 的 を 達 成 するためには、 強 力 な 業 務 プロセス、チー<br />

10<br />

ムワーク、 深 いリソースが 必 要 である。<br />

( 資 料 )CalPERS 2013「 投 資 理 念 (Investment Beliefs)」より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

2 について、 長 期 的 なホライズンを 持 つことで、「 将 来 世 代 の 加 入 者 と 納 税 者 への 影 響 を 考 慮 する」「 投<br />

資 先 企 業 や 外 部 運 用 機 関 に 長 期 的 影 響 の 考 慮 を 促 す」「 長 期 的 に 持 続 可 能 な 価 値 を 生 み、 資 金 調 達 目 的 の<br />

達 成 と 永 続 的 に 強 い 経 済 の 重 要 性 を 認 識 するような 投 資 戦 略 を 選 好 する」「 公 正 で 効 率 性 の 高 い 資 本 市 場<br />

の 規 制 について 公 共 政 策 に 提 言 する」 行 動 につながるとする。<br />

4 については、 補 足 として、「ガバナンスは CalPERS、 外 部 の 運 用 機 関 、 投 資 先 企 業 のあいだの 利 害 を<br />

一 致 させるために 必 要 な 第 一 の 手 段 である」「 強 いガバナンスとともに、 効 果 的 な 環 境 や 人 的 資 本 に 関 す<br />

る 経 営 であることが、 企 業 の 長 期 的 な 好 業 績 や 効 果 的 なリスクマネジメントの 可 能 性 を 高 める」「CalPERS<br />

は 投 資 先 企 業 と 外 部 運 用 機 関 に 対 し、ガバナンスとサステナビリティの 課 題 について 関 与 しうる」と 述<br />

べる。 最 後 のサステナビリティの 課 題 については、リスクマネジメントの 実 施 、 人 的 資 本 への 取 り 組 み<br />

( 公 正 な 労 働 、 健 康 、 安 全 、 責 任 ある 調 達 、ダイバーシティ。ただしこれらに 限 らない)、 環 境 への 取 り<br />

組 み( 気 候 変 動 、 天 然 資 源 。ただしこれらに 限 らない)を 例 に 挙 げている。<br />

なお 2012~17 年 の 経 営 計 画 では、 次 のような 目 標 を 有 しており、2012 年 度 には 調 査 研 究 を 主 な 活 動 成<br />

果 としている。 調 査 研 究 により、ESG 要 素 を 全 ての 投 資 プロセスに 導 入 するための 意 義 を 明 確 にする。<br />

39 "CalPERS' Simpson Keeps a Close Eye on Investments" Pensions&Investments, 2013.3.18. <br />

参 考 資 料 -50


図 表 ―CalPERS の 経 営 戦 略<br />

位 置 づけ<br />

ゴール C<br />

戦 略 目 標<br />

内 容<br />

長 期 的 なサステナビリティと CalPERS のプログラムの 効 率 性 を 向 上<br />

させるため、 州 及 び 国 の 政 策 に 対 し 働 きかける。<br />

・ 年 金 、 健 康 及 び 金 融 市 場 に 関 するカルパースの 考 えを 明 確 にし、 発<br />

信 する。<br />

・ 政 策 課 題 に 関 し 教 育 やエンゲージメント 機 会 を 提 供 する。<br />

資 産 運 用 に 関 する 理 念 を 表 現 する「Investment Beliefs」の 改 定 継 続<br />

「Sustainable Investment Research Initiative」の 推 進<br />

2012 年 度 活 動<br />

株 主 及 び 委 任 状 に 関 するキャンペーンの 推 進 (ガバナンス 改 革 、 役 員<br />

会 、サステナビリティ 要 素 の 報 告 など)<br />

投 資 リスクとリターンに 影 響 を 与 えるサステナビリティ 指 標 に 関 す<br />

る 700 の 学 術 資 料 のデータベース 化<br />

( 資 料 )CalPERS「2012-17 Strategic Plan」「Annual Report July 2013」より 日 本 総 合 研 究<br />

所 作 成<br />

このほか、 同 様 の 考 え 方 は、2011 年 に 方 針 を 定 め 2012 年 から 正 式 に 実 施 を 始 めた「Total Fund ESG<br />

Integration plan」( 投 資 部 門 において ESG を 戦 略 的 な 優 先 課 題 と 位 置 づけ)や、2012 年 に CalPERS にとっ<br />

て 初 めて 公 表 した「サステナブル 投 資 レポート」に 相 当 する「Towards Sustainable Investment 2012」でも 示<br />

されている。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

CalPERS は、 持 続 可 能 なリスク 調 整 投 資 リターンを 得 ることを 最 終 目 標 に、 様 々な 機 関 と 連 携 してい<br />

る。<br />

図 表 ―CalPERS のパートナーシップ 等 (リーダーとして 活 動 する 主 要 機 関 )<br />

組 織 等 名 称<br />

Council of Institutional Investors<br />

(CII)<br />

国 際 コーポレートガバナンス・ネ<br />

ットワーク(ICGN)<br />

PRI<br />

Ceres(Coalition for Environmentally<br />

Responsible Economies)<br />

The Credit Roundtable<br />

Institutional Limited Partners<br />

Association<br />

SEC- Public Company Accounting<br />

Oversight Board<br />

Los Angeles Trustees Network<br />

Robert. F. Kennedy Center for Justice<br />

& Human Rights<br />

その 他 、メンバーとして 活 動 する 機 関 は 以 下 の 通 り:<br />

・Asian Corporate Governance Association (ACGA)<br />

・Aspen Institute<br />

・ 欧 州 コーポレートガバナンスインスティテュート<br />

関 係 性<br />

CII は 1985 年 に 設 立 された 非 営 利 の 年 金 基 金 等 の 協<br />

会 で、コーポレートガバナンスや 株 主 の 権 利 行 使 に<br />

ついて 活 動 する。メンバー 運 用 資 産 は 3 兆 ドル。 設<br />

立 時 の 21 基 金 のうちの 1 つ。<br />

コーポレートガバナンスに 関 する 意 見 ・ 情 報 交 換 等<br />

を 目 的 に 設 立 された 国 際 組 織 ICGN のメンバーとし<br />

て 参 加 。<br />

PRI については、 策 定 前 から 国 連 活 動 に 協 力 した。<br />

UNEPFI の 不 動 産 ワーキンググループにも 参 画 して<br />

いる。<br />

Ceres は 環 境 と 経 済 関 連 の 政 策 提 言 を 行 う NGO。<br />

CalPERS は 1989 年 の 創 設 時 に 協 力 。<br />

大 規 模 な 債 券 投 資 家 による 連 合 で、 投 資 適 格 の 債 券<br />

保 有 者 を 保 護 するための 活 動 を 行 う。<br />

プライベートエクイティのリミティド・パートナー<br />

のための 教 育 ・ 調 査 ・ 情 報 発 信 などを 行 う 協 会 。<br />

上 場 企 業 を 監 視 し、 株 主 と 公 共 の 利 益 を 守 るための<br />

非 営 利 機 関 。 米 国 の 議 会 により 設 立 された。<br />

公 的 及 び 企 業 年 金 の 投 資 受 託 会 社 によるネットワー<br />

ク。<br />

政 策 提 言 プログラム。 個 人 や 組 織 の 協 業 により 人 権<br />

保 護 を 実 施 することを 目 標 とする。<br />

参 考 資 料 -51


・ハーバードロースクール<br />

・ロバート・トイゴ 基 金<br />

・スタンフォード 大 学 コーポレートガバナンスに 関 するロックセンター<br />

・エール 大 学 経 営 学 科 Millstein Center for Corporate Governance and Performance<br />

・The Conference Board<br />

・National Association of Corporate Directors<br />

・オーストラリア 老 齢 退 職 年 金 投 資 家 連 合<br />

・Global Investor Governance Network<br />

なお、これらのほか、CDP にも 署 名 済 であり、SASB も 支 援 する。 情 報 開 示 フレームと<br />

して GRI や Global Framework for Climate Risk Disclosure を 推 奨 している。<br />

( 資 料 )CalPERS「Towards Sustainable Investment 2012」より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

CalPERS において、ESG 投 資 は「サステナブル 投 資 」という 語 を 用 いて 表 現 されている。 加 入 者 に 退<br />

職 金 を 支 払 うことを 本 業 とすれば、 最 も 重 要 な 投 資 の 優 先 順 位 は、 将 来 の 受 給 者 のための 約 束 を 果 たす<br />

ことを 可 能 にするように 資 産 を 増 やすことにあり、したがってサステナビリティが 関 わってくると 整 理<br />

する。<br />

財 務 資 本 、 人 的 資 本 、 物 理 的 資 本 が 三 位 一 体 になることで 価 値 が 創 造 されるという 考 えのもと、ESG<br />

に 関 し 3 つのコアテーマを 定 めている。2 番 目 に 気 候 変 動 が 挙 げられているが、これについては、 気 候 変<br />

動 が 投 資 先 企 業 のエネルギー 及 び 水 資 源 の 利 用 に 大 きな 影 響 をもたらすために、 環 境 問 題 の 中 でも 特 に<br />

取 り 上 げている。<br />

1 コーポレートガバナンスによる 利 害 の 一 致 ( 株 主 の 権 利 、 役 員 報 酬 、ファンドマネジャーの 契 約<br />

条 件 、 投 資 家 保 護 )<br />

2 気 候 変 動 ( 資 源 枯 渇 、 水 ストレス、 温 室 効 果 ガス 排 出 、エネルギー 効 率 、クリーンテクノロジー、<br />

及 び 再 生 可 能 エネルギーに 関 する 課 題 を 含 む)<br />

3 人 的 資 本 ( 搾 取 的 な 労 働 問 題 、 健 康 、 安 全 衛 生 、 責 任 ある 調 達 (contracting)、ダイバーシティ)<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )】<br />

気 候 変 動 については、 上 場 株 式 のポートフォリオのうちで、2010 年 に 5 億 ドルを 環 境 インデックスフ<br />

ァンドに 振 り 向 けた。これは、HSBC のグローバル 気 候 変 動 ベンチマークインデックスを 基 礎 とし、 売 上<br />

の 一 定 割 合 を 気 候 変 動 対 応 から 得 る 約 380 銘 柄 に 投 資 をしている。<br />

包 括 的 には、Sustainable Investment Program の 策 定 に 取 り 組 んでいる。<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

CalPERS では、 前 述 のとおり、 議 決 権 行 使 にあたりフレームワークとして「The Global Principles of<br />

Accountable Corporate Governance」を 作 成 、 公 開 している( 最 新 版 :2011 年 11 月 改 定 )。「 株 主 」という<br />

用 語 についても、「shareholder」という 一 般 的 な 言 葉 を 用 いずに「shareowner」とすることで、 活 発 な 責 任<br />

遂 行 を 行 うという 考 え 方 を 示 している。<br />

参 考 資 料 -52


2010 年 11 月 より、CalPERS では、 株 価 がアンダーパフォームしている 上 場 企 業 に 対 して、 企 業 名 を 公<br />

開 する「Focus List」の 方 法 よりも、 非 公 開 でのエンゲージメントを 行 うことを 優 先 させる 方 針 を 採 択 し<br />

た。これは、 非 公 開 の 対 話 方 式 の 効 果 が 大 きいという 実 証 分 析 に 基 づく。ただし、 議 決 権 行 使 や 株 主 提<br />

案 について 一 部 の Focus List エンゲージメントも 継 続 する。2013 年 の Focus List プロセスによると、 米 国<br />

の 主 要 1,000 上 場 企 業 で 時 価 総 額 20 億 ドル 以 上 の 企 業 を 調 査 し、1・3・5 年 の 相 対 的 な 株 式 投 資 収 益 率<br />

をみる。そして、 主 要 なガバナンス 要 素 ( 能 力 や 多 様 性 の 観 点 からの 取 締 役 会 の 質 、 取 締 役 会 の 独 立 性 、<br />

リーダーシップ、 取 締 役 選 定 プロセス、 株 主 の 権 利 、 後 継 者 計 画 、 役 員 報 酬 、リスク 対 応 、 環 境 ・ 社 会<br />

的 課 題 など)や 財 務 分 析 を 実 施 する。こうして 選 定 した 企 業 に 対 し、ガバナンス 構 造 や 事 業 戦 略 につい<br />

て 正 確 に 理 解 するために 面 談 し、 場 合 によって 改 革 を 提 案 する。<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメント)の 事 例 】<br />

「Towards Sustainable Investment 2012」では、 三 井 住 友 建 設 の 株 式 買 戻 し 事 案 について 賛 成 したことが 事 例 と<br />

して 掲 載 されているが、その 理 由 等 は 公 表 されていない。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

投 資 部 門 でアセットクラスごとに 担 当 スタッフがいる。 業 種 や 地 域 ごとにカバーしている。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

アセットクラスごとに 社 外 機 関 を 利 用 している。また、Ceres や CDP のような 活 動 にも 賛 同 し、 企 業<br />

の ESG 情 報 開 示 を 促 進 する 活 動 を 積 極 的 に 行 っている。<br />

調 査 研 究 にも 積 極 的 に 取 り 組 んでおり、 最 近 の 事 例 は 以 下 のとおり。<br />

・2010 年 、マーサー・コンサルティングのとりまとめにより、 世 界 の 13 の 機 関 投 資 家 とともに、 気 候<br />

変 動 を 戦 略 的 アセットアロケーションに 関 する 調 査 研 究 を 実 施 。<br />

・2013 年 、UC デービスマネジメントスクールと 共 同 で、「CalPERS Sustainable Investment Research<br />

Initiative / Review of Evidence: Database of Academic Studies」を 発 表 。<br />

参 考 資 料 -53


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

カリフォルニア 教 職 員 退 職 年 金 基 金 (CalSTRS)<br />

(California State Teachers’ Retirement System)<br />

アセットオーナー<br />

アメリカ(サクラメント)<br />

住 所 100 Waterfront Place, MS-04, West Sacramento, CA 95605-2807<br />

運 用 資 産 総 額 1,658 億 米 ドル(2013 年 6 月 末 時 点 )<br />

従 業 員 数 937 名 (2013 年 6 月 末 時 点 )<br />

URL<br />

http://www.calstrs.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

CalSTRS は、1913 年 に 創 設 された、 米 国 ・カリフォルニア 州 の 公 立 学 校 の 教 職 員 向 け 年 金 基 金 である。<br />

創 設 100 周 年 となった 2013 年 6 月 末 時 点 における、CalSTRS の 運 用 資 産 総 額 は 1,658 億 ドルであり、<br />

教 職 員 向 けとしては 世 界 最 大 。 加 入 者 はカリフォルニアにおける 約 1,700 の 学 校 等 から、868,493 人 。 年<br />

間 のリターンは、 過 去 3 年 間 の 平 均 は 12.6%、 過 去 5 年 間 の 平 均 は 3.7%であった。<br />

組 織 の 最 高 意 思 決 定 機 関 は、「Teachers’ Retirement Board」( 教 職 員 退 職 委 員 会 )である。<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

CalSTRS の 資 産 アロケーションの 内 訳 をみると、 世 界 株 式 が 約 半 分 を 占 めており、2013 年 6 月 時 点 で<br />

は 53.6%である。 世 界 株 式 はさらに、 米 国 、 米 国 以 外 の 先 進 国 、 新 興 国 に 分 類 され、 米 国 に 約 66%を 投<br />

資 する。 世 界 株 式 のうち 約 66%は 外 部 運 用 機 関 で 運 用 され、 残 りの 34%は CalSTRS の 投 資 スタッフによ<br />

りパッシブ 運 用 される。 同 時 点 での 主 要 投 資 先 は、エクソン・モービル、アップル、マイクロソフト、<br />

ジョンソンアンドジョンソン、シェブロン、グーグル、GE、AT+T、IBM、ファイザーである。<br />

次 に 大 きい 内 訳 は、 債 券 、プライベートエクイティ、 不 動 産 で、15% 前 後 で 推 移 している。プライベ<br />

ートエクイティでは、レバレッジド・バイアウト、ベンチャーキャピタル、メザニン 投 資 等 からなり、<br />

米 国 と 米 国 外 に 投 資 する。<br />

不 動 産 は、 完 全 所 有 、ジョイントベンチャー 投 資 、 合 同 運 用 ファンドからなり、 約 15%が 海 外 資 産 に<br />

振 り 向 けられる。<br />

その 他 、インフレーション・センシティブとは、 比 較 的 新 しい 投 資 カテゴリーで、 今 後 2% 程 度 までア<br />

ロケーションを 増 やす 予 定 がある。 具 体 的 な 対 象 は、インフレ 連 動 債 がその 半 分 を 占 めるが、 残 りでイ<br />

ンフラ 投 資 を 行 っており、 環 境 関 連 投 資 の 1 つとして 後 述 する。<br />

参 考 資 料 -54


図 表 ― 資 産 アロケーションの 内 訳<br />

区 分<br />

2013 年 6 月 時 点 の 割 合<br />

世 界 株 式 53.6%<br />

債 券 16.8%<br />

不 動 産 13.8%<br />

プライベートエクイティ 13.2%<br />

現 金 1.6%<br />

オーバーレイ 40 0.6%<br />

インフレーション・センシティブ 0.4%<br />

合 計 100%<br />

( 注 ) 総 資 産 は 1,658 億 米 ドル。<br />

( 資 料 )CalSTRS Annual Report 2013 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

CalSTRS は 1978 年 に 最 初 の 投 資 に 関 する 方 針 (Statement of Investment Policy)を 策 定 しており、これ<br />

が 現 在 の ESG 投 資 方 針 の 源 流 と 位 置 づけられている。コーポレートガバナンスに 関 する 方 針 としては、<br />

「Corporate Governance Principles」「Principles for Executive Compensation」「Executive Compensation Model<br />

Policy Guidelines」「Investment Policy Regarding Geopolitical and Social Risks」「Responsible Contractor Policy」<br />

を 掲 げている。<br />

ESG 面 では、2005 年 、 株 式 投 資 における 環 境 と 経 済 の「ダブルボトムライン」 両 立 が 可 能 と 判 断 し、<br />

ESG を 投 資 判 断 に 組 み 込 む 外 部 の 株 式 投 資 マネジャーを 4 機 関 任 命 し、2.25 億 ドルを 投 資 した。これに<br />

続 き、2006 年 には、 教 職 員 退 職 委 員 会 より、 株 式 市 場 における 環 境 への 関 心 を 高 めるためには 活 発 なエ<br />

ンゲージメントを 実 施 すべきとの 判 断 がなされ、 気 候 リスクマネジメントに 焦 点 を 当 て 始 めた。そして<br />

2008 年 、 北 アメリカの 年 金 基 金 として 最 初 に、 正 式 な ESG 投 資 方 針 「Investment Policy Mitigating ESG Risks」<br />

を 策 定 した。この 方 針 の 付 属 書 A が「21 のリスク 要 因 」を 示 しており、 投 資 意 思 決 定 時 のデューデリジ<br />

ェンスの 一 環 として、 外 部 運 用 機 関 及 び 内 部 担 当 者 によって 考 慮 されている。 付 属 書 B では「Statement of<br />

Shareowner ESG Responsibility」を 定 めており、CalSTRS の 株 主 議 決 権 行 使 におけるガイドラインを 補 足<br />

するとともに、ESG に 関 する 提 案 の 評 価 の 方 向 性 を 示 す。<br />

ESG のなかでも 環 境 に 注 力 しており、「Green Initiative Task Force」( 通 称 Green Team)が 組 成 されてい<br />

る。ミッションは、「CalSTRS の 投 資 ポートフォリオのリスク 調 整 後 リターンを 向 上 させるために、 環 境<br />

の 観 点 からの 戦 略 を 立 て、 地 球 規 模 のサステナビリティ 課 題 に 関 するリスク 管 理 と 機 会 追 求 を 行 う」こ<br />

とである。<br />

2012~17 年 の 経 営 計 画 では、 次 のような 目 標 と 活 動 計 画 を 打 ち 出 している。<br />

図 表 ―CalSTRS の 経 営 戦 略<br />

位 置 づけ<br />

内 容<br />

ゴール 2<br />

目 的 D<br />

責 任 あるリスクマネジメント<br />

ESG 機 会 を 組 織 文 化 と 戦 略 に 統 合 することにより、CalSTRS を 総 合 的<br />

に 持 続 可 能 なグローバル 機 関 に 変 革 する。<br />

40 オーバーレイ(overlay)とは 重 ねるという 意 味 を 持 つ。1つの 投 資 信 託 の 中 で 株 や 債 券 などの 運 用 と、 先 物 などのデリバティブの 運 用<br />

を 別 々に 行 う 手 法 。<br />

参 考 資 料 -55


1. 組 織 のサステナビリティ 方 針 を 策 定 し 従 業 員 を 教 育 する(2013 年<br />

活 動 計 画<br />

月 ~2014 年 )<br />

2.サステナビリティ 方 針 と 期 待 について、ステークホルダーの 関 与<br />

を 得 る( 同 上 )<br />

3.GRI を 活 用 した 内 部 計 画 と 情 報 開 示 フレームを 策 定 する(2013 年<br />

7 月 ~2017 年 )<br />

4.ESG 要 素 を 内 部 、 投 資 実 務 、 及 び 投 資 ポートフォリオ 全 体 に 反 映<br />

させる(2012 年 7 月 ~2017 年 )<br />

( 資 料 )CalSTRS「Green Initiative Task Force 2013 Annual Report」より 日 本 総 合 研 究 所 作<br />

成<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

CalSTRS は、グローバルなガバナンスのリーダーとしての 役 割 を 果 たすためには、 協 業 パートナーと<br />

の 戦 略 的 な 関 係 作 りが 必 要 であるという 認 識 のもと、 業 界 のスタンダード・セッターや 志 を 同 じくする<br />

投 資 家 と 密 接 な 関 係 を 持 っている。<br />

図 表 ―CalSTRS のパートナーシップ 等<br />

組 織 等 名 称<br />

Council of Institutional Investors<br />

(CII)<br />

国 際 コーポレートガバナンス・ネ<br />

ットワーク(ICGN)<br />

PRI<br />

Asian Corporate Governance<br />

Association (ACGA)<br />

Ceres(Coalition for Environmentally<br />

Responsible Economies)<br />

Investor Network on Climate Risk<br />

(INCR)<br />

カーボン・ディスクロージャー・<br />

プロジェクト(CDP)<br />

関 係 性<br />

CII は 1985 年 に 設 立 された 非 営 利 の 年 金 基 金 等 の 協<br />

会 で、コーポレートガバナンスや 株 主 の 権 利 行 使 に<br />

ついて 活 動 する。メンバー 運 用 資 産 は 3 兆 ドル。 設<br />

立 時 の 21 基 金 のうちの 1 つ。<br />

コーポレートガバナンスに 関 する 意 見 ・ 情 報 交 換 等<br />

を 目 的 に 設 立 された 国 際 組 織 ICGN のメンバーとし<br />

て 参 加 。<br />

PRI に 賛 同 し 2007 年 に 署 名 。2014 年 1 月 、 最 高 投<br />

資 責 任 者 の Ailman 氏 が PRI の 管 理 委 員 会 メンバー<br />

に 就 任 した。<br />

ACGA は 1999 年 に 設 立 された 非 営 利 組 織 で、アジ<br />

ア 経 済 と 資 本 市 場 のための 効 果 的 なコーポレートガ<br />

バナンスについて 活 動 する。アジアで 70 億 ドルを 運<br />

用 する CalSTRS は 米 国 の 年 金 基 金 として 早 くから<br />

参 加 。<br />

Ceres は 環 境 と 経 済 関 連 の 政 策 提 言 を 行 う NGO。<br />

CalSTRS は 積 極 的 に 活 動 ・ 支 援 する。 最 近 では「Ceres<br />

Blueprint for Sustainable Investing」を ESG 推 進 の 自 己<br />

評 価 ガイドとして 活 用 、また、 化 石 燃 料 リザーブエ<br />

ンゲージメントも 支 援 している。<br />

Ceres によるプロジェクトである INCR にも 積 極 的<br />

に 参 加 。 政 策 ワーキンググループでの 活 動 を 通 し、<br />

米 国 とカナダの 株 式 市 場 における 気 候 変 動 関 連 の 情<br />

報 開 示 ガイドラインを 引 き 出 している。<br />

CDP に 署 名 ( 活 用 方 法 については 後 述 )。<br />

( 注 1) CII から INCR までを「Partnerships」として 明 示 している。CDP については「Green Initiative Task Force<br />

2013 Annual Report」やウェブサイトでは 密 に 活 動 との 言 及 あり。また、SASB にも 参 加 している。<br />

( 資 料 )CalSTRS「Corporate Governance 2013 Annual Report」より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

CalSTRS は 経 営 計 画 で「 責 任 あるリスクマネジメント」という 大 目 標 を 掲 げ、そのもとで ESG 投 資 ・<br />

評 価 の 実 践 を 行 っているように、リスク 低 減 を 主 目 的 としている。 組 織 の 経 営 に 与 える「 脅 威 」として<br />

「 公 的 年 金 に 関 する 政 治 的 混 乱 」「 規 制 強 化 」「 不 安 定 な 経 済 」「リスクエクスポージャーの 増 大 」の 4 つ<br />

参 考 資 料 -56


を 挙 げ、さらに「リスクエクスポージャーの 増 大 」の 筆 頭 として 気 候 変 動 と 炭 素 資 産 へのポートフォリ<br />

オリスクを 挙 げている。<br />

ESG 投 資 促 進 に 向 け、2012~13 年 には、 投 資 に 関 わる 従 業 員 に 対 する ESG 教 育 に 注 力 した( 実 施 は<br />

Green Team のメンバーによる)。 各 アセットクラスにおいて 様 々な ESG リスクがどのようにポートフォ<br />

リオの 収 益 率 に 影 響 を 及 ぼすのかという 点 に 焦 点 を 当 てたが、 同 時 に、ESG 関 連 の 投 資 機 会 についても<br />

取 り 上 げた。 環 境 の 観 点 からは、 投 資 と 環 境 のあいだにあるインパクトの 双 方 向 性 に 着 目 し、 投 資 が 環<br />

境 汚 染 を 引 き 起 こす 可 能 性 もあれば、 干 ばつや 洪 水 、その 他 の 異 常 気 象 などの 環 境 が 投 資 に 悪 影 響 を 及<br />

ぼすこともある、という 内 容 としている。<br />

ESG 要 素 のうち、 重 要 視 しているのは 環 境 面 では 気 候 変 動 、 社 会 面 では 役 員 報 酬 、ダイバーシティで<br />

ある。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )】<br />

いわゆる「ポジティブ・スクリーニング」は 明 示 的 には 行 っていない。<br />

環 境 関 連 投 資 の 実 績 は、 以 下 のとおりである。<br />

株 式 では、Global Equity Sustainable Investment Program により、2013 年 6 月 時 点 の 運 用 資 産 は 約 7.8 億<br />

ドルで、 株 式 全 体 の 約 0.9%を 占 めている。<br />

図 表 ― 投 資 ポートフォリオとパフォーマンス( 株 式 )<br />

マネジャー 組 成 時<br />

時 価 ( 単 位 :<br />

US 百 万 ドル)<br />

New Amsterdam<br />

Partners<br />

Light Green Advisors &<br />

Rhumbline<br />

AGF Investments<br />

America<br />

Generation Investment<br />

Management<br />

平 均 年 間 リタ<br />

ーン<br />

ベンチマーク<br />

との 比 較<br />

2007 85.5 2.60% ▲0.83%<br />

2007 64.2 3.95% +0.58%<br />

2007 208.4 ▲0.03% ▲0.62%<br />

2007 421.8 5.60% 5.52%<br />

合 計 - 779.9 - -<br />

( 資 料 )CalSTRS「Green Initiative Task Force 2013 Annual Report」より 日 本 総 合 研 究 所<br />

作 成<br />

プライベートエクイティでは、Private Equity Clean Technology and Energy Program により、2013 年 6 月<br />

時 点 の 運 用 資 産 は 約 7 億 ドルで、プライベートエクイティ 全 体 の 約 3%を 占 めている。<br />

図 表 ―ポートフォリオの 状 況<br />

投 資 名<br />

年<br />

金 額 ( 百 万<br />

ドル)<br />

投 資 方 式<br />

分 野 等<br />

Co-investment #1 2005 30.0 マイナー 投 資<br />

小 規 模 な 代 替 エネ<br />

ルギー 事 業<br />

NGEN Enable<br />

Technologies Fund II<br />

VantagePoint Cleantech<br />

Partners<br />

2005 15.0<br />

2006 15.2<br />

ベンチャーキャピ<br />

タルファンド<br />

ベンチャーキャピ<br />

タルファンド<br />

サンタバーバラの<br />

資 源 企 業<br />

クリーンテクノロ<br />

ジー<br />

参 考 資 料 -57


Craton Equity Investors 2006 30.0<br />

Carlyle-Riverstone<br />

Renewable Energy<br />

Infrastructure Fund<br />

Hg Renewable Power<br />

Fund<br />

2006 50.0<br />

2006 61.2<br />

ベンチャーキャピ<br />

タルファンド<br />

バイアウトファン<br />

ド<br />

バイアウトファン<br />

ド<br />

Co-investment #2 2006 12.5 マイナー 投 資<br />

USRG Power &<br />

Biofuels Fund II<br />

2007 60.0<br />

バイアウトファン<br />

ド<br />

クリーンテクノロ<br />

ジー<br />

再 生 可 能 エネルギ<br />

ー 事 業<br />

欧 州 の 風 力 事 業 等<br />

埋 立 地 ガス 発 電 事<br />

業<br />

北 米 での 小 規 模 再<br />

エネ・バイオ 燃 料<br />

Co-investment #3 2008 6.0 マイナー 投 資 廃 棄 物 発 電<br />

Riverstone/Carlyle<br />

Renewable &Alternative<br />

Energy Fund II<br />

2008 300.0<br />

バイアウトファン<br />

ド<br />

再 エネ/ 代 替 エネ<br />

Co-investment #4 2010 36.0 マイナー 投 資 太 陽 熱 発 電 事 業<br />

Hg Renewable Power<br />

Fund II<br />

Craton Equity Investors<br />

II<br />

2010 65.5<br />

2012 15.0<br />

バイアウトファン<br />

ド<br />

ベンチャーキャピ<br />

タルファンド<br />

欧 州 の 風 力 事 業 等<br />

クリーンテクノロ<br />

ジー<br />

合 計 - 696.4 - -<br />

( 資 料 )CalSTRS「Green Initiative Task Force 2013 Annual Report」より 日 本 総 合 研 究 所<br />

作 成<br />

不 動 産 投 資 では、CalSTRS Real Estate Green Program により、 既 存 ポートフォリオに 環 境 保 全 とサステ<br />

ナビリティの 要 素 を 取 り 入 れようとしている。 米 国 環 境 保 護 局 の Energy Star(r)プログラムに 参 加 し、<br />

管 理 する 不 動 産 の 82%が 省 エネ 格 付 で 上 位 4 分 の 1 に 達 している。<br />

債 券 では、2500 万 ドルのグリーン・ボンドを 保 有 している。<br />

インフレーション・センシティブでは、CalSTRS Infrastructure Program により、 太 陽 光 、 風 力 、 水 力 、<br />

ガス 化 等 の 省 エネ 設 備 への 投 資 を 行 っている。<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

CalSTRS では、 投 資 先 企 業 、 規 制 当 局 、 政 府 、 他 の 投 資 家 に 対 し、 日 常 的 にエンゲージメントを 行 っ<br />

ている。エンゲージメントを 統 括 するコーポレートガバナンスチームが 注 目 しているのは、 役 員 報 酬 、<br />

役 員 会 のダイバーシティ、 役 員 会 の 構 造 、 取 締 役 選 任 基 準 、 地 政 学 リスク、 及 びサステナビリティリス<br />

クの 喚 起 と 統 合 である。また、 同 チームで 年 間 約 7,000 の 国 内 外 の 議 案 を 精 査 している。エンゲージメン<br />

トにあたり 重 視 するのは、 長 期 投 資 家 として、 企 業 に 長 期 的 な 価 値 を 与 える 内 容 とすることであり、 短<br />

期 的 に 株 価 を 上 げさせるための 行 動 から 距 離 を 置 く。<br />

テーマ 別 の 基 準 等 は 以 下 のとおりである。<br />

・ 取 締 役 選 任 基 準 としては、 過 半 数 の 賛 成 を 得 られる 場 合 に 選 任 すべきであるという 考 えを 持 つ。<br />

・ 役 員 会 のダイバーシティについては、2008 年 から 注 視 している。 議 決 権 行 使 、 株 主 提 案 、ガイド<br />

ラインに 従 った 投 票 、ベストプラクティスの 普 及 啓 発 など 多 様 な 手 法 で 企 業 にアプローチする。な<br />

おダイバーシティについては、「Diverse Director Datasource」を CalPERS と 共 同 で 開 発 (GMI Rating<br />

社 が 所 有 ・ 維 持 管 理 する)し、 適 切 な 人 材 を 集 めて 適 任 者 を 推 薦 できるようにしている。<br />

参 考 資 料 -58


・ サステナビリティについては、 投 資 における 持 続 可 能 性 とは 短 期 的 な 利 益 を 確 保 しながらも 長 期 的<br />

な 投 資 リターンを 犠 牲 にしない、という 考 え 方 のもと、 複 数 の 関 連 するエンゲージメントに 取 り 組<br />

む。 特 に 積 極 的 なテーマとしては 省 エネが 挙 げられ( 低 いリスクで 高 い 収 益 性 を 得 られるため)、<br />

2012 年 8 月 には 100 社 に 書 面 を 送 り、30 社 から 回 答 を 得 ている。この 過 程 で、CDP に 回 答 してい<br />

ない 企 業 というカテゴリーを 設 けて 検 討 を 行 った。<br />

また、 議 決 権 行 使 については、 社 外 リソースも 活 用 している( 後 述 )。2011 年 からは、 国 内 外 の 議 決 権<br />

を 検 討 するために Glass Lewis と 共 同 で 議 決 権 行 使 ガイドラインを 作 成 した。ガイドラインでは、 取 締 役 、<br />

監 査 役 、 報 酬 計 画 、Say on Pay 41 、M&A、その 他 を 主 な 課 題 とし、 個 々に 原 則 を 開 示 している。<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメント)の 事 例 】<br />

特 筆 事 項 なし( 上 場 企 業 の 株 式 保 有 のほか、リート 等 も 含 めると 日 本 の 1,180 社 に 投 資 をしている。2013<br />

年 6 月 末 現 在 )。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

Corporate Governance 部 門 でテーマ( 環 境 やダイバーシティ)ごとに 担 当 者 が 決 まっている。 世 界 株 式<br />

のうち 約 66%は 外 部 運 用 機 関 で 運 用 されるが、 残 りの 34%は CalSTRS の 投 資 スタッフによりパッシブ 運<br />

用 される。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

議 決 権 行 使 にあたっては、Glass Lewis & Co、Institutional Shareholder Services (ISS)、GMI Ratings、Equilar、<br />

MSCI ESG Research、the Sustainable Investment Institute(Si2)などから 情 報 を 得 て 分 析 を 行 っている。 特<br />

に 2011 年 からは、 国 内 外 の 議 決 権 を 検 討 するために Glass Lewis と 共 同 で 議 決 権 行 使 ガイドラインを 作 成<br />

した。ガイドラインでは、 取 締 役 、 監 査 役 、 報 酬 計 画 、Say on Pay、M&A、その 他 を 主 な 課 題 とし、 個 々<br />

に 原 則 を 開 示 している。また、MSCI ESG Research から、2013 年 5 月 から 包 括 的 に ESG 情 報 を 購 入 。<br />

日 本 及 びアジア 企 業 のガバナンス 関 連 情 報 については、ACGA も 情 報 ソースの 1 つである。<br />

41 2011 年 に 米 国 でも 導 入 された、 経 営 者 報 酬 に 関 する 議 案 を 株 主 総 会 に 諮 り、 株 主 投 票 の 対 象 とする 制 度 。 英 国 に 倣 い、2010 年 の 金 融<br />

規 制 改 革 法 によって 開 始 。<br />

参 考 資 料 -59


名 称<br />

区 分<br />

42<br />

ニューヨーク 市 年 金 基 金<br />

(New York City Pension Funds)<br />

アセットオーナー<br />

所 在 国 ( 都 市 ) 米 国 (ニューヨーク 市 )<br />

ニューヨーク 市 管 理 官 (New York City Comptroller)<br />

One Centre Street, New York, NY 10007<br />

ニューヨーク 市 教 育 委 員 会 年 金 基 金 (BERS)<br />

65 Court Street, 16th Floor Brooklyn, NY 11201-4965<br />

ニューヨーク 市 公 務 員 年 金 基 金 (NYCERS)<br />

335 Adams Street, Suite 2300, Brooklyn, NY 11201-3724<br />

住 所<br />

ニューヨーク 市 消 防 部 職 員 年 金 基 金 (Fire)<br />

9 Metrotech Center Brooklyn, NY 1120<br />

ニューヨーク 市 警 察 職 員 年 金 基 金 (Police)<br />

233 Broadway, New York, NY 10279<br />

ニューヨーク 市 教 職 員 年 金 基 金 (TRS)<br />

55 Water Street, New York, NY 10041<br />

運 用 資 産 総 額 1,439 億 ドル(2012 年 末 )<br />

約 7 名 (2013 年 1 月 末 時 点 ) ※ニューヨーク 市 管 理 官 の 下 で ESG 投 資 実 践<br />

従 業 員 数<br />

に 取 組 む 担 当 者 の 人 数<br />

ニューヨーク 市 管 理 官<br />

URL<br />

http://comptroller.nyc.gov/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

ニューヨーク 市 の 職 員 向 けの 公 的 年 金 基 金 は、 異 なる 設 置 法 に 基 づいて 設 立 された 職 種 別 の 5 つによ<br />

り 構 成 される。ニューヨーク 市 教 育 委 員 会 年 金 基 金 (BERS: New York City Board of Education Retirement<br />

Systems)、ニューヨーク 市 公 務 員 年 金 基 金 (NYCERS: New York City Employees’ Retirement System)、ニュー<br />

ヨーク 市 消 防 部 職 員 年 金 基 金 (Fire: New York City Fire Department Pension Funds)、ニューヨーク 市 警 察 職 員<br />

年 金 基 金 (Police: New York City Police Pension Funds)、ニューヨーク 市 教 職 員 年 金 基 金 (TRS: New York City<br />

Teachers’ Retirement System)。<br />

各 基 金 に 理 事 会 (Board of Trustee)が 設 置 されている。ニューヨーク 市 の 管 理 官 (New York City<br />

Comptroller)が、これらの 年 金 に 対 する 投 資 アドバイザーの 役 割 を 担 っており、 議 決 権 行 使 や 投 資 先 への<br />

エンゲージメントは、 管 理 官 が 一 括 して 実 践 している。 外 部 に 運 用 委 託 を 行 った 場 合 でも、 議 決 権 に 関<br />

しては 委 託 していない 43 。<br />

42<br />

情 報 ソースは New York City Comptroller のホームページのほか、 一 部 ヒアリングによる 内 容 も 含 まれる。<br />

43 「 米 国 における 機 関 投 資 家 の 投 資 先 企 業 に 対 するエンゲージメントのあり 方 に 関 する 調 査 」、 金 融 庁 日 本 版 スチュワードシップ・コード<br />

に 関 する 有 識 者 検 討 会 ( 第 4 回 ) 資 料 <br />

参 考 資 料 -60


図 表 ― 年 金 運 用 ・ 管 理 に 関 する 組 織 分 担<br />

管 理 官<br />

組 織 等<br />

役 割<br />

ニューヨーク 市 の 5 つの 年 金 基 金 に 対 して、 管 理 (カス<br />

トディアン) 及 び 各 基 金 の 理 事 会 (board of trustee)に<br />

対 する 投 資 アドバイザーの 役 割 を 担 う<br />

5 つの 年 金 基 金 の 米 国 国 内 での 議 決 権 行 及 び 投 資 先 へ<br />

のエンゲージメントを 実 施<br />

各 年 金 基 金<br />

理 事 会 が 投 資 方 針 を 承 認 し、アセットアロケーション 方<br />

針 及 び 運 用 目 的 を 策 定<br />

( 資 料 ) 管 理 官 のホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

2013 年 9 月 末 時 点 での 5 基 金 の 資 産 運 用 総 額 は、1,439 億 ドル。5 基 金 総 額 で、CalPERS や CalSTRS と<br />

並 ぶ 規 模 を 持 つ。2013 年 6 月 末 の 年 間 投 資 リターンは、11~12%。<br />

図 表 ― 各 年 金 基 金 の 資 産 規 模 及 び 投 資 リターン<br />

TRS NYCERS Police Fire BERS 合 計<br />

運 用 資 産 規 模 ( 百 万 ドル) $51,849 $48,327 $30,446 $9,613 $3,690 $143,925<br />

投 資 リターン 11.90% 12.24% 12.28% 11.90% 12.90% -<br />

( 資 料 ) 管 理 官 のホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

各 年 金 の 理 事 会 が 決 定 するアセットアロケーション 方 針 に 基 づき、 各 年 金 は 様 々な 資 産 クラス( 米 国<br />

株 ・ 米 国 債 券 ・ 外 国 株 等 )に 投 資 する。2013 年 6 月 末 時 点 では、 米 国 株 式 42%、 外 国 株 式 17%、 債 券 29%、<br />

プライベートエクイティ 6%、 不 動 産 3%、ヘッジファンド 2%と、 米 国 株 式 が 5 割 弱 を 占 めるポートフォ<br />

リオとなっている。<br />

図 表 ― 各 年 金 基 金 のアセットアロケーション<br />

TRS NYCERS Police Fire BERS 合 計<br />

米 国 株 式 45% 39% 41% 41% 43% 42%<br />

外 国 株 式 18% 16% 16% 16% 24% 17%<br />

債 券 29% 29% 29% 28% 27% 29%<br />

プライベートエクイティ 5% 8% 7% 6% 3% 6%<br />

不 動 産 2% 4% 3% 4% 2% 3%<br />

ヘッジファンド 0% 3% 3% 3% 0% 2%<br />

現 金 1% 1% 1% 1% 1% 1%<br />

100% 100% 100% 100% 100% 100%<br />

( 資 料 ) 管 理 官 のホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

参 考 資 料 -61


B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

パッシブ 運 用 が 中 心 であるため、ESG 投 資 の 実 践 は 議 決 権 行 使 を 含 むエンゲージメントが 中 心 である。<br />

売 買 を 通 じてではなく、エンゲージメントを 通 じて 投 資 パフォーマンスを 維 持 ・ 向 上 することに 取 り 組<br />

む。 特 に 規 定 はないが、 現 在 はリソースの 問 題 もあり、 米 国 企 業 をエンゲージメントの 主 な 対 象 として<br />

いる。<br />

アクティブな 株 主 として 長 い 歴 史 を 有 しているものの、ESG を 考 慮 する 明 示 的 な 方 針 があるわけでは<br />

ない。<br />

議 決 権 行 使 、エンゲージメント、コーポレートガバナンスの 改 革 、 責 任 ある 取 締 役 報 酬 、 責 任 あるビ<br />

ジネスを 重 要 な 受 託 者 責 任 と 捉 え、 長 期 的 な 基 金 の 価 値 を 保 持 もしくは 高 めると 整 理 している。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

歴 史 的 には GRI を 強 く 支 持 しており、 企 業 にも GRI に 基 づく 開 示 を 行 うように 要 請 している。 企 業 の<br />

情 報 を 深 く 見 たいときに、 沢 山 の 役 立 つ 情 報 が 報 告 されるためである。ただし、そうした 情 報 が 企 業 の<br />

意 思 決 定 とどう 関 連 しているかについては、 不 明 である。 一 方 、 統 合 報 告 では、どのようなイシューが<br />

どのような 影 響 を 及 ぼし、 長 期 的 にどのような 価 値 を 創 造 するのかが 示 される。ただし、 詳 細 な 情 報 に<br />

は 欠 ける。おそらく、 両 方 必 要 であろう。 最 終 的 には、ESG イシューを 投 資 家 側 が 投 資 決 定 の 際 に 利 用<br />

する 際 には、 統 合 報 告 が 重 要 になると 考 えられる。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

議 決 権 行 使 、エンゲージメント、コーポレートガバナンスの 改 革 、 責 任 ある 取 締 役 報 酬 や 責 任 あるビ<br />

ジネスの 推 進 を 重 要 な 受 託 者 責 任 と 捉 え、 長 期 的 な 基 金 の 価 値 を 保 持 もしくは 高 めると 整 理 。<br />

重 視 するイシューは、その 時 々で 変 わる。 足 下 では、 人 種 差 別 、ダイバーシティを 含 む 労 働 の 問 題 を<br />

重 要 視 している。 役 員 のダイバーシティ、ダイバーシティな 労 働 環 境 、セクシャルオリエンテーション、<br />

ジェンダーアイデンティティなども 含 む。 労 働 の 問 題 は、 長 期 的 には 企 業 のパフォーマンスに 重 要 だと<br />

考 えている。<br />

気 候 変 動 を 中 心 とする 環 境 のイシューも 長 期 的 に 重 要 だと 考 えている。さらに、ここ 数 年 は、サプラ<br />

イチェーンの 問 題 についても、 積 極 的 に 関 わっている。 企 業 に 対 してはサプライヤーのサステナビリテ<br />

ィレポートの 報 告 を 求 めている。サプライチェーンも 長 期 的 に 企 業 のパフォーマンスに 影 響 を 与 えると<br />

考 えている。サプライチェーンで 違 法 が 発 覚 すれば、 最 低 でもレピュテーションのリスクは 発 生 し、オ<br />

ペレーショナルリスクにもなる。 44<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

44 ESG を 担 当 する Assistant Comptroller の Michael Garland 氏 のヒアリングに 基 づく。<br />

参 考 資 料 -62


議 決 権 行 使 については、 様 々なイシューで 株 主 提 案 を 行 っている。 環 境 や 社 会 のイシューについては、<br />

32 の 提 案 を 行 い、うち 16 は 内 容 について 会 社 と 合 意 したために 取 り 下 げ、うち 14 は 合 意 に 至 らず 提 訴<br />

している。<br />

図 表 ―イシュー 別 株 主 提 案 (2013 年 度 )<br />

提 案 取 り 下 げ 提 訴 その 他<br />

コーポレートガバナンス 23 11 11 1<br />

環 境 / 社 会 32 16 14 2<br />

45<br />

EEO-1 Report の 開 示<br />

5 3 2 -<br />

ジェンダーアイデンティティ 7 4 3 -<br />

政 治 献 金 開 示 8 2 5 1<br />

フラッキングリスク 1 - 1 -<br />

サステナビリティレポート 開 示 3 2 1 -<br />

営 利 大 学 の 学 生 ローン 情 報 開 示 2 - 1 1<br />

サプライヤーによる<br />

サステナビリティレポート 開 示<br />

6 5 1 -<br />

( 資 料 )New York City Pension Funds (2013) “2013 SHARE OWNER INITIATIVES”より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

EEO-1 Report の 開 示<br />

American International Group(AIG)、Bank of NY Mellon Corporation などの 5 つの 主 要 金 融 機 関 ・<br />

広 告 企 業 に、EEO-1 レポートの 開 示 を 提 案 し、3 社 と 合 意 。 金 融 ・ 広 告 業 種 はシニアのポジショ<br />

ンを 中 心 に 男 女 間 の 格 差 が 残 るため、 解 消 することが 必 要 とする。<br />

ジェンダーアイデンティティ<br />

Phillip Morris International、Ralph Lauren Corporation などの 7 社 に 性 による 差 別 廃 止 を 提 案 し、<br />

うち 同 2 社 を 含 む 4 社 と 合 意 。4 社 は 既 にある 雇 用 機 会 均 等 方 針 [Equal Employment<br />

Opportunity(EEO) policies]を、 性 同 一 性 障 害 にまで 拡 大 することで 合 意 した。<br />

フラッキングリスク<br />

Exxon Mobile 社 に 対 して、シェールガス 採 掘 に 用 いるフラッキング( 水 圧 破 砕 ) 作 業 における<br />

地 域 や 環 境 の 安 全 を 確 保 する 取 り 組 みの 数 量 的 なデータ 開 示 を 提 案 。 数 量 的 なデータには、 単 位<br />

当 たりのフラッキング 排 出 量 (fracking air emission)や 地 域 からの 苦 情 件 数 などが 含 まれる。 提<br />

訴 の 結 果 、30.2%の 支 持 が 得 られている。<br />

サステナビリティレポート 開 示<br />

REIT などの 不 動 産 会 社 に 対 して、GRI フレームワークに 沿 った 情 報 開 示 を 要 求 。4 社 中 3 社 と<br />

合 意 。<br />

45<br />

従 業 員 100 人 以 上 を 有 する 雇 用 主 と 50 人 以 上 を 有 する 連 邦 政 府 請 負 業 者 に 提 出 が 義 務 付 けられているレポート。 従 業 員 の 人 権 やジェ<br />

ンダーを 含 む 内 容 について、 雇 用 機 会 均 等 委 員 会 (U.S. Equal Employment Opportunity Commission)に 提 出 する。<br />

参 考 資 料 -63


サプライヤーによるサステナビリティレポート 開 示<br />

Gap, Nike, Target など 6 社 に 対 して、サプライヤーの 安 全 ・ 人 権 ・ 環 境 などについての 情 報 を、<br />

国 際 的 にも 合 意 された 基 準 ・ 手 法 を 用 いて 開 示 することを 提 案 。6 社 中 、5 社 と 合 意 。5 社 は、<br />

主 要 はサプライヤーに 対 して GRI に 基 づくサステナビリティレポート 作 成 を 促 していくことで<br />

合 意 。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

社 内 スタッフは 秘 書 も 含 めて 7 名 。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

エンゲージメントについては、 毎 年 ESG のイシューを 特 定 し、 人 種 差 別 などの 以 前 から 重 要 視 してい<br />

るイシューに 新 しいものを 加 えている。 情 報 収 集 には、いくつかのプロバイダーから 情 報 も 利 用 してい<br />

る。GMI、Sustainable Investment Institute、ISS、Glass Lewis、Bloomberg などが 含 まれる。<br />

参 考 資 料 -64


名 称<br />

区 分<br />

ニューヨーク 州 職 員 退 職 年 金 基 金<br />

(New York State Common Retirement Fund)<br />

アセットオーナー<br />

所 在 国 ( 都 市 ) 米 国 (ニューヨーク 市 )<br />

59 Maiden Lane #29<br />

住 所<br />

New York, NY 10038, United States<br />

運 用 資 産 総 額 1,642 億 ドル (2013 年 3 月 末 )<br />

従 業 員 数<br />

n/a<br />

URL<br />

http://www.osc.state.ny.us/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

ニューヨーク 州 職 員 年 金 基 金 は、613,900 人 以 上 もの 加 入 者 で 構 成 される 職 員 退 職 年 金 制 度 (The<br />

Employees’ Retirement System: ERS) 及 び 33,600 人 以 上 の 加 入 者 で 構 成 される 警 察 ・ 消 防 職 員 退 職 年 金 制<br />

度 (The Police and Fire Retirement System: PFRS)の 2 制 度 による 資 産 から 成 る。いずれの 制 度 も、ニュー<br />

ヨーク 市 職 員 以 外 の 州 職 員 が 対 象 となる。<br />

州 の 財 務 管 理 官 (The New York State Comptroller)が、 年 金 基 金 の 管 理 を 担 う。<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

足 もとの 資 産 ポートフォリオの 状 況 は 以 下 の 通 りである。2010 年 に 長 期 方 針 を 策 定 し、より 資 産 分 散<br />

化 を 図 るため、オポチュニスティック・ポートフォリオ 46 (opportunistic portfolio) 及 びリアルアセット・<br />

ポートフォリオ 47 (real asset portfolio)を 追 加 した。 長 期 方 針 の 導 入 には 時 間 を 要 するため、 移 行 期 間 の<br />

暫 定 的 な 方 針 (Interim Policy)を 策 定 している。<br />

図 表 ― 基 金 のアセットアロケーション<br />

アセットタイプ 長 期 方 針 2013 年 3 月 時 点 の<br />

アロケーション<br />

暫 定 的 な 方 針<br />

株 式<br />

国 内 30.0% 36.0% 36.0%<br />

海 外 13.0% 17.0% 15.5%<br />

オルタナティブ 資 産<br />

プライベートエクイティ 10.0% 8.6% 9.0%<br />

不 動 産 6.0% 6.8% 6.0%<br />

絶 対 収 益 4.0% 3.2% 3.0%<br />

オポチュニスティック・ポートフォリオ 4.0% 0.2% 1.0%<br />

リアルアセット・ポートフォリオ 3.0% 0.0% 0.0%<br />

債 券 、 現 預 金 、 抵 当 22.0% 20.6% 21.0%<br />

46 オポチュニスティック・ポートフォリオとは、 収 益 獲 得 の 機 会 (オポチュニティ)を 得 るために、 様 々なアセットクラスに 投 資 を 行 う、<br />

より 柔 軟 性 の 高 い 運 用 のことを 意 味 する。<br />

47 リアルアセット・ポートフォリオとは、コモディティ、インフラ、 天 然 資 源 、 森 林 などのインフレヘッジとなるアセットに 投 資 を 行 う<br />

運 用 のことを 意 味 する。<br />

参 考 資 料 -65


インフラ 指 数 連 動 債 8.0% 7.6% 8.5%<br />

( 資 料 ) 管 理 官 のホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

基 金 としての ESG 投 資 方 針 の 開 示 はないものの、 基 金 の 管 理 を 担 う 管 理 官 は ESG の 観 点 を 投 資 プロセ<br />

スに 包 括 的 に 取 り 入 れることは 重 要 視 している。 資 産 の 健 全 な 運 用 には、 長 期 間 の 持 続 的 な 経 済 成 長 が<br />

欠 かせないとし、それには 環 境 や 社 会 に 配 慮 することが 重 要 であるとする。 企 業 への 積 極 的 なエンゲー<br />

ジメントを 通 し、マネジメントプラクティスの 改 善 や 環 境 や 経 済 への 悪 影 響 を 生 み 出 す 企 業 活 動 への 説<br />

明 責 任 を 果 たさせることで、 加 入 者 の 年 金 を 守 る 役 割 を 果 たしている 48 。<br />

下 記 のように、より 環 境 に 配 慮 した 企 業 経 営 を 促 すようなエンゲージメントや 非 投 資 などを 実 施 して<br />

いる。<br />

再 生 可 能 エネルギーへの 投 資 促 進<br />

Ameren, DTE energy, First Energy と SCANA の 国 内 主 要 電 力 供 給 会 社 に 対 してエネルギー 効 率 化 や 再 生<br />

可 能 エネルギーへの 取 り 組 みに 関 して 報 告 するように 促 す。この 4 社 は 2010 年 時 点 でその 電 力 生 成 の<br />

50%を 石 炭 に 頼 っており、この 石 炭 依 存 は 将 来 株 主 価 値 にとって 深 刻 なリスクとなりうることを 指 摘 。<br />

企 業 はエネルギーの 効 率 化 と 再 生 可 能 エネルギー 資 源 の 増 進 へ 率 先 して 取 り 組 むべきとしている 49 。<br />

武 器 への 非 投 資<br />

基 金 は 2012 年 のコネチカット 州 ニュータウンの 小 学 校 における 銃 乱 射 事 件 とその 後 の 銃 器 規 制 の 全 国<br />

的 な 流 れとそれによる 株 主 価 値 への 影 響 を 考 慮 し、 上 場 商 業 銃 器 メーカーへの 投 資 を 凍 結 することを<br />

2013 年 1 月 に 発 表 。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

現 在 の 管 理 官 である Thomas DiNapoli 氏 は、Ceres のボードメンバーを 務 めており、Ceres との 関 係 は 深<br />

い。Ceres は、 企 業 の 環 境 面 の 取 り 組 みを 促 進 することを 中 心 として 様 々な 活 動 を 展 開 している NGO で<br />

ある。 同 ボードメンバーには、 年 金 基 金 の 代 表 や 企 業 の 取 締 役 、 州 政 府 の 会 計 係 、 教 会 系 組 織 の 代 表 な<br />

ど 顔 ぶれはさまざまである。<br />

Ceres 主 導 の 機 関 投 資 家 ネットワーク Investor Network on Climate Risk (INCR) へ 加 入 し、 政 治 指 導 者 た<br />

ちへ 気 候 変 動 への 取 り 組 みに 関 する 国 際 的 な 同 意 を 発 展 させるよう 働 きかけている。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

資 産 の 健 全 な 運 用 には、 長 期 間 の 持 続 的 な 経 済 成 長 が 欠 かせないとし、それには 環 境 や 社 会 に 配 慮 す<br />

ることが 重 要 であるとする。<br />

48<br />

“ESG USA keynote: Thomas Di Napoli, New York State Comptroller, Trustee, New York State Common fund” Responsible Investor.com,<br />

2011.12.21. <br />

49 “New York State Pension Fund and Other Investors Urge Utilities to Ramp Up Renewable Energy and Energy Efficiency,” Ceres, 2013.2.<br />

26. <br />

参 考 資 料 -66


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

カナダ 年 金 制 度 投 資 委 員 会 (CPPIB)<br />

アセットオーナー<br />

カナダ(トロント)<br />

住 所<br />

One Queen Street East, Suite 2500, Toronto, Ontario M5C 2W5<br />

運 用 資 産 総 額 1928 億 カナダドル(2013 年 9 月 時 点 )<br />

従 業 員 数 約 906 名 (トロント 823 名 、ロンドン 51 名 、 香 港 32 名 )(2013 年 時 点 )<br />

URL<br />

http://www.cppib.com/en/home.html<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

カナダの 年 金 制 度 は 3 段 階 に 分 かれる。 第 一 段 階 は 老 齢 所 得 保 障 制 度 (Old Age Security)である。 第 2<br />

段 階 がカナダ 年 金 制 度 (Canada Pension Plan、 以 下 CPP)であり、 労 働 者 と 雇 用 者 の 保 険 料 から 賄 われる<br />

所 得 比 例 の 確 定 給 付 型 公 的 年 金 である。CPP は 1965 年 に 発 足 して 以 来 、 徴 収 した 保 険 料 を 非 市 場 性 償 還<br />

20 年 の 州 政 府 債 権 で 運 用 して 給 付 を 行 っていたが、そのパフォーマンスは 低 下 し 90 年 代 には 持 続 可 能 性<br />

が 危 ぶまれると 各 方 面 から 指 摘 された。このため、 連 邦 政 府 と 州 政 府 は 給 付 を 削 減 、 保 険 料 を 引 き 上 げ、<br />

さらに 積 立 金 を 増 加 させ、 積 立 金 の 運 用 方 針 を 変 更 する 改 革 を 97 年 に 行 った。このときに 運 用 を 専 門 と<br />

する 連 邦 公 社 として 新 たに 設 立 されたのが、CPPIB(CPP Investment Board)である 50 。<br />

CPPIB の 資 産 規 模 は、2013 年 9 月 時 点 で 1,928 億 カナダドル( 日 本 円 で 約 18 兆 円 程 度 )である。 今 後 、<br />

資 産 規 模 は 長 期 的 に 拡 大 すると 予 想 されており、2030 年 の 段 階 では 現 在 の 倍 以 上 の 5,180 億 カナダドル<br />

に 及 ぶと 見 込 まれている 51 。なお、2012 年 末 の 同 年 金 全 加 入 者 は 1800 万 人 である。<br />

【 運 用 パフォーマンスの 推 移 と 資 産 ポートフォリオの 多 様 化 】<br />

運 用 利 回 りは 2009 年 頃 に 一 時 低 くなったものの、 概 して 良 好 なパフォーマンスを 実 現 している。2013<br />

年 度 の 運 用 利 回 りは 10.1%、2004 年 から 10 年 間 の 年 平 均 運 用 利 回 りは 7.4%となっている 52 。<br />

( 出 所 )CPPIB アニュアルレポート 2013<br />

50<br />

翁 百 合 [2013].「カナダ 公 的 年 金 の 運 用 見 直 しとわが 国 への 示 唆 」 日 本 総 研 Research Report、No.2013-006. <br />

51 CPPIB ホームページ<br />

52 CPPIB ホームページ<br />

参 考 資 料 -67


CPPIB は、 債 券 パッシブ 運 用 一 辺 倒 から 徐 々にアクティブ 運 用 の 比 率 を 拡 大 している。2000 年 時 点 で<br />

はアクティブ 運 用 比 率 は 0%だったが、2013 年 時 点 で 42.9%にまで 上 昇 している。このアクティブ 運 用 に<br />

よって 生 み 出 された 付 加 価 値 は 50 億 ドルとなっており、 高 いパフォーマンスを 実 現 している。<br />

( 資 料 )CPPIB アニュアルレポート 2013<br />

ポートフォリオは 年 々 多 様 化 しており、インフラや 不 動 産 なども 含 めて 極 めて 多 様 なポートフォリオ<br />

を 展 開 している。 近 年 は 株 式 投 資 の 比 率 が 高 くなっている。<br />

( 資 料 )CPPIB アニュアルレポート 2013<br />

CPPIB の 最 高 意 思 決 定 機 関 (Board of Directors)は、 政 府 から 独 立 した 12 名 の 理 事 によって 構 成 され<br />

る。 理 事 は、 金 融 市 場 などの 専 門 家 の 中 から 州 政 府 と 協 議 の 上 、 連 邦 政 府 が 指 名 する。 多 くの 理 事 は、<br />

民 間 企 業 の 経 営 者 も 兼 任 している。 金 融 の 専 門 家 や 実 業 家 を 多 く 揃 えていることが 特 徴 である。<br />

理 事 の 経 歴<br />

実 業 家 ( 金 融 分 野 )<br />

実 業 家 ( 非 金 融 分 野 )<br />

会 計 士<br />

弁 護 士<br />

大 学 教 授 等<br />

5 名<br />

2 名<br />

2 名<br />

1 名<br />

2 名<br />

( 資 料 )CPPIB アニュアルレポート 2013<br />

資 産 運 用 における 競 争 優 位 性 として、 長 期 性 (Long horizon)を 掲 げている。 他 の 投 資 家 が 様 々な 理 由<br />

から 短 期 的 な 投 資 行 動 を 取 らざるを 得 ないのに 対 して、CPPIB は 10 年 を 超 える 長 期 的 視 点 で 投 資 行 動 を<br />

取 ることができるとしている。<br />

参 考 資 料 -68


B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

CPPIB は 株 式 投 資 にあたり、ESG 投 資 に 極 めて 積 極 的 に 取 り 組 んでいる。ESG 要 因 を 効 果 的 にマネジ<br />

メントする 組 織 は、 長 期 的 に 見 れば 持 続 可 能 な 価 値 を 創 出 し 得 るという 考 えを 持 っている。このため 投<br />

資 先 の 排 除 のために ESG を 考 慮 するというよりは、 投 資 対 象 先 の 分 析 において ESG 要 因 を 織 り 込 んでい<br />

る 53 。<br />

CPPIB では、2 つのアプローチで ESG への 取 り 組 みを 強 化 している。 第 一 は、 投 資 対 象 先 の 選 択 であ<br />

る。 投 資 先 の 選 定 にあたっては、デューデリジェンスの 段 階 から ESG 要 因 を 十 分 に 吟 味 し、 長 期 的 なリ<br />

ターンとリスクにどのような 影 響 を 与 えるかを 評 価 したうえで 投 資 の 可 否 を 判 断 している。 第 二 は、 投<br />

資 した 後 に ESG をさらに 重 視 するよう 企 業 に 働 きかける、エンゲージメント 活 動 を 行 うことである。ア<br />

クティブな 投 資 家 として 長 期 的 な 果 実 を 得 るためには、ESG に 当 該 企 業 が 取 り 組 むことが 極 めて 重 要 と<br />

考 えている。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

2005 年 10 月 に 国 際 連 合 の PRI に 署 名 しており、その 他 EAI(Enhanced Analytics Initiative)、カーボン・<br />

ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)、 採 取 産 業 透 明 性 プロジェクト(EITI)といった、ESG 要 因<br />

を 重 視 する 機 関 投 資 家 のイニシアティブに 参 加 している 54 。<br />

参 加 しているイニシアティブの 一 覧<br />

PRI<br />

Canadian Coalition for Good Governance(CCGG)<br />

International Corporate Governance Network (ICGN)<br />

World Economic Forum Global Agenda Council on Long-Term Investing 2013<br />

Pension Investment Association of Canada (PIAC)<br />

Carbon Disclosure Project (CDP)<br />

Extractive Industries Transparency Initiative (EITI)<br />

( 資 料 )CPPIB ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

財 務 パフォーマンスへの ESG 要 因 のインパクトは 徐 々に 現 れてきているとの 考 えを 示 している。「ESG<br />

要 因 は 明 らかに、 企 業 の 収 益 性 に 直 接 的 なインパクトを 与 えている。さらに ESG 要 因 は、 顧 客 ロイヤル<br />

ティー、 企 業 ブランド、 才 能 ある 人 の 引 き 付 け、 企 業 の 操 業 のための 許 可 といった 企 業 体 質 を 測 る 基 準<br />

に 影 響 することによって、 企 業 の 長 期 的 なパフォーマンスにも 間 接 的 なインパクトを 与 える。 長 期 投 資<br />

家 として、 短 期 的 視 点 の 投 資 家 よりも ESG 要 因 をより 重 要 視 している。ESG 関 連 情 報 のより 良 い 開 示 は、<br />

長 期 投 資 家 が 投 資 先 を 決 定 するのに 役 に 立 つ。」としている 55 。<br />

53 CPPIB “2013 Report on Responsible Investing: Investing for Long-Term Value” <br />

54 CPPIB ホームページ<br />

55 CPPIB “A complement to CPP Investment Board’s 2013 Report on Responsible Investing: Our Approach to Responsible Investing”<br />

<br />

参 考 資 料 -69


【 機 関 として 重 要 視 するポイント】<br />

CPPIB は 長 期 投 資 を 強 化 し 続 けていくために、 以 下 の 5 つの 重 要 な 優 先 事 項 を 掲 げている。<br />

‣ アクティブなアセットオーナーとして、フォーカスエリアに 関 連 するイシュー(サプライチェーン<br />

マネジメントのように 新 しく 追 加 したイシューを 含 め)に 対 するエンゲージメントを 継 続 する<br />

‣ 内 部 の ESG ケイパビリティを 構 築 し、 責 任 投 資 コミッティーを 再 構 成 することで、ESG インテグレ<br />

ーションを 深 化 する<br />

‣ 企 業 の ESG マネジメントや 情 報 開 示 のベストプラクティスの 進 展 を 監 視 し 続 ける<br />

‣ エンゲージメント 活 動 をグローバルに 拡 げていくために、これまでに 得 た 経 験 を 活 用 する<br />

‣ 長 期 投 資 の 提 唱 者 であり 続 けるために、 長 期 的 な 思 考 ( 物 の 見 方 、 行 動 )を 促 進 する<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )】<br />

投 資 先 の 選 定 の 際 に 考 慮 ・ 調 査 している ESG 要 因 の 例 としては、 以 下 のとおり。ESG 要 因 については、<br />

リスクとオポチュニティの 両 面 から 分 析 ・ 評 価 を 行 っている。<br />

環 境<br />

・エネルギーマネジメントと GHG 排 出 量 削 減 の 取 り 組 み<br />

・ 水 処 理 / 排 出 の 法 令 遵 守 とマネジメント<br />

・ 持 続 可 能 な 資 源 計 画<br />

社 会<br />

・ 製 品 安 全 の 履 歴 、 試 験 方 法<br />

・ 労 働 安 全 衛 生 の 取 り 組 み、 安 全 の 記 録<br />

・ 汚 職 防 止 に 関 する 内 部 規 定<br />

ガバナンス<br />

・ 役 員 報 酬<br />

・ 株 主 の 権 利 の 保 護<br />

・ 階 層 構 造 の 共 有<br />

・ 取 締 役 会 の 構 成 と 構 造<br />

( 資 料 )A complement to CPPIB Responsible Investing レポート 2013 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

ESG 要 因 に 基 づき 投 資 先 企 業 を 排 除 することは 行 わない 方 針 であるが、 以 下 の 企 業 に 対 しては 投 資 し<br />

ないことを「A complement to CPPIB Responsible Investing レポート 2013」の 中 で 明 示 している。<br />

Anti-Personnel Landmines(カナダの”Anti-Personnel Mines Convention Implementation Act”に 従 わない 企<br />

業 )<br />

Cluster Monitions(クラスター 爆 弾 禁 止 条 約 (オスロ 条 約 )に 従 わない 企 業 )<br />

CPPIB ではエンゲージメントとして、 企 業 の 直 接 対 話 や 株 主 提 案 のサポート、 他 の 組 織 (CDP、EITI<br />

など)を 通 じた 企 業 への 働 きかけを 行 っている。 現 状 、エンゲージメント 先 の 大 半 がカナダ 企 業 である<br />

が、 将 来 的 には 外 国 企 業 へも 広 げたいという 意 向 を 持 っている。<br />

参 考 資 料 -70


エンゲージメントのフォーカスエリアとしては、「 気 候 変 動 」、「 水 」、「 採 取 産 業 ( 石 油 、ガス、 鉱 業 )」、<br />

「 役 員 報 酬 」の 4 つを 挙 げている。その 他 、タバコ 会 社 にもコンタクトし、 健 康 への 影 響 について 開 示<br />

を 要 求 するなどの 取 り 組 みを 行 っている。<br />

フォーカス<br />

エリア<br />

気 候 変 動<br />

水<br />

採 取 産 業<br />

役 員 報 酬<br />

我 々はなぜ<br />

エンゲージメントするのか<br />

気 候 変 動 は 企 業 の 財 務 的 なパフォー<br />

マンスに 直 接 的 ・ 間 接 的 な 影 響 をも<br />

たらし、 気 候 変 動 イシューに 対 して<br />

的 確 に 順 応 する 企 業 は、 長 期 的 には<br />

報 いられるため<br />

水 は 重 要 な 資 源 であり、 効 果 的 なリ<br />

スクマネジメントと 供 給 は、 企 業 の<br />

長 期 的 なパフォーマンスの 基 礎 とな<br />

るため<br />

石 油 ・ガス・ 鉱 業 企 業 は、 環 境 への<br />

物 理 的 な 影 響 及 び 地 域 コミュニティ<br />

の 双 方 に 大 きなインパクトをもたら<br />

すため<br />

役 員 報 酬 とパフォーマンスのリンク<br />

を 適 切 に 説 明 することは、 長 期 投 資<br />

おいて 重 要 であるため<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

<br />

我 々は<br />

何 を 求 めているのか<br />

排 出 量 やその 他 のデータに 関 するより 完 全<br />

な、より 標 準 化 された 開 示<br />

リスクマネジメント 戦 略 やオポチュニティ<br />

についてのレポーティングの 強 化<br />

長 期 的 な 収 益 に 関 する 将 来 の 規 制 による 影<br />

響 予 測 の 改 善<br />

水 関 係 の 戦 略 やレポーティングを 増 やすこ<br />

と<br />

水 関 係 データの 情 報 開 示 の 改 善 、もっと 比 較<br />

可 能 な 形 で 開 示 を 行 うこと<br />

環 境 パフォーマンスとマネジメント 戦 略 の<br />

情 報 開 示 の 改 善 ( 投 資 家 が 企 業 のより 長 期 的<br />

な 見 通 しを 評 価 できるように)<br />

人 権 の 取 り 組 み、 地 域 コミュニティとの 関<br />

係 、 汚 職 防 止 を 含 めた 運 用 の 基 準<br />

報 酬 とパフォーマンスの 明 確 なリンク<br />

報 酬 についての 理 論 的 根 拠 と 企 業 レポーテ<br />

ィングにおける 明 確 ・ 完 全 な 開 示<br />

( 資 料 )A complement to CPPIB Responsible Investing レポート 2013 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

ESG リスクの 重 要 性 や、 現 状 の ESG 取 り 組 みとベストプラクティスとのギャップ、 保 有 株 式 の 大 きさ<br />

に 基 づき、CPPIB が 株 式 を 保 有 する 約 3000 の 企 業 の 中 からエンゲージメントを 行 う 企 業 を 決 定 する。そ<br />

の 際 、 下 図 の 4 つのステップが 行 われる 56 。<br />

1 Analyze<br />

2 Identify<br />

3 Optimize<br />

4 Engage<br />

( 分 析 )<br />

( 特 定 )<br />

( 最 適 化 )<br />

(エンゲージ)<br />

社 内 及 び 第 三 者 機 関 の 調<br />

エンゲージメントのフ<br />

エンゲージメントの 最 適<br />

直 接 エンゲージメントを<br />

査 を 用 いて 企 業 の ESG<br />

ォーカスエリアを 特 定<br />

なやり 方 を 決 定 する。<br />

行 う 企 業 のリストを 作 成<br />

リスクを 分 析 する。<br />

する。<br />

( 直 接 対 話 、 議 決 権 の 行<br />

し、エンゲージメントの<br />

使 など)<br />

目 標 を 立 てる。<br />

エンゲージメントが 企 業 に 与 えた 良 い 影 響 として、 以 下 のような 具 体 的 な 事 例 が 挙 げられている。<br />

(2013 Report on Responsible Investing p.10~より 抜 粋 )<br />

56<br />

CPPIB “A complement to CPP Investment Board’s 2013 Report on Responsible Investing: Our Approach to Responsible Investing”<br />

<br />

参 考 資 料 -71


カナダの 大 規 模 GHG 排 出 企 業 に 対 して 働 きかけた 結 果 、 気 候 変 動 やサステナビリティイシューに 関<br />

するレポーティングの 質 が 改 善 した。<br />

特 定 の 企 業 に 対 して、 水 に 関 する 情 報 開 示 の 改 善 を 奨 励 しており、 水 のパフォーマンス 測 定 基 準 や<br />

長 期 目 標 などの 情 報 開 示 が 改 善 しつつある。<br />

採 取 産 業 数 社 に 対 して、 人 権 等 の 諸 問 題 に 関 する 経 営 陣 からの 説 明 ・ 報 告 書 の 開 示 を 要 求 した 結 果 、<br />

承 諾 を 得 た。<br />

経 営 陣 の 報 酬 に 関 する 開 示 レベルが 上 がった。<br />

また、 上 場 株 式 の 投 資 において、HALCON Resources corporation という 企 業 のデューデリジェンスプロ<br />

セスに ESG 要 因 のアセスメントを 組 み 込 んだ。 同 社 の 取 締 役 へのインタビューの 実 施 、 取 締 役 会 の 議 事<br />

録 のレビュー、 環 境 や 安 全 に 関 するレポートの 評 価 、マネジメント 層 との 議 論 を 何 度 か 実 施 することで、<br />

同 社 の 取 り 組 みの 評 価 を 行 った。 投 資 が 行 われた 時 だけに 限 らず、CPPIB の 代 表 は 取 締 役 を 指 名 して 継<br />

続 的 に ESG 取 り 組 みを 推 進 するための 働 きかけを 行 った。<br />

タバコ 会 社 に 関 しては 2004 年 以 降 、39 の 株 主 提 案 をサポートしてきた。 株 主 提 案 は、 企 業 のマーケテ<br />

ィングやロビー 活 動 を 含 めた ESG 要 因 に 関 する 情 報 開 示 と 基 準 の 改 善 を 求 めるものである。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

社 内 リソースとして、 責 任 投 資 グループのメンバーが、 投 資 先 企 業 の 選 定 の 際 の ESG 取 り 組 みの 調 査<br />

や、エンゲージメントを 行 う 企 業 を 決 定 する 際 の ESG リスクの 分 析 に 従 事 している。また、 投 資 先 企 業<br />

がカナダの 対 人 地 雷 禁 止 条 約 やクラスター 爆 弾 禁 止 条 約 に 違 反 していないかどうかを 調 べるため、 責 任<br />

投 資 グループが 独 自 の 調 査 を 行 い、 必 要 に 応 じて 企 業 と 直 接 コミュニケーションを 行 う。 責 任 投 資 コミ<br />

ッティーは 年 に 一 度 、 上 記 に 違 反 し 投 資 をしない 企 業 リストのレビューを 実 施 する。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

エンゲージメントを 行 う 企 業 を 決 定 する 際 には、 社 内 リソースのほか 第 三 者 機 関 の 調 査 を 用 いて 企 業<br />

の ESG リスクを 分 析 している。また、 投 資 先 企 業 がカナダの 対 人 地 雷 禁 止 条 約 やクラスター 爆 弾 禁 止 条<br />

約 に 違 反 していないかどうかを 調 べるにあたり、 社 内 リソースによる 調 査 のほか、 必 要 に 応 じて 第 三 者<br />

機 関 の 調 査 も 利 用 している。<br />

参 考 資 料 -72


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

住 所<br />

オランダ 公 務 員 年 金 基 金 (ABP)<br />

アセットオーナー<br />

オランダ(ヘールレン)<br />

Oude Lindestraat 70 6411 EJ Heerlen<br />

運 用 資 産 総 額 約 3,000 億 ユーロ(2013 年 末 時 点 )<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

グループ 全 体 で 4,000 名 以 上 ( 年 金 給 付 等 の 実 務 を 担 当 するスタッフを 含<br />

む。)<br />

http://www.abp.nl/en/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

ABP は、 職 域 年 金 が 充 実 していることで 知 られるオランダの 年 金 制 度 の 2 階 部 分 に 該 当 し、 公 務 員 を<br />

対 象 とする 職 域 年 金 である。1922 年 に 政 府 の 組 織 として 設 立 、その 後 1996 年 に 民 営 化 された。ABP は<br />

同 国 最 大 の 年 金 基 金 であり、 受 給 者 も 含 めた 加 入 者 約 280 万 人 、 総 資 産 額 は 2013 年 末 時 点 で 約 3,000 億<br />

ユーロである。 設 立 以 来 から 2013 年 3 月 末 までの 実 質 ベースでの 平 均 運 用 利 回 りは 年 率 で 5.2%である。<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

ABP の 政 策 アセットミックスは 次 のとおりである。 上 場 株 式 への 投 資 比 率 については、 先 進 国 ・ 新 興<br />

国 併 せて 27%に 設 定 されている。 不 動 産 投 資 やインフラ 投 資 も 積 極 的 に 行 っている。<br />

図 表 ― 政 策 アセットミックスの 内 訳<br />

区 分<br />

比 率<br />

国 債 10.0%<br />

指 数 連 動 型 債 権 12.0%<br />

クレジット 投 資 16.0%<br />

オルタナティブ・インフレーション 7.0%<br />

GTAA(グローバル 戦 術 的 資 産 配 分 ) 3.0%<br />

株 式 ( 先 進 国 ) 20.0%<br />

株 式 ( 新 興 国 ) 7.0%<br />

プライベートエクイティ 5.0%<br />

不 動 産 9.0%<br />

インフラ 2.0%<br />

商 品 1.0%<br />

オポチュニティファンド 4.0%<br />

ヘッジファンド 4.0%<br />

( 資 料 )ABP ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

参 考 資 料 -73


ABP の 株 式 及 び 転 換 社 債 の 地 域 別 の 保 有 状 況 は 次 のとおりである。<br />

図 表 ― 地 域 別 の 株 式 及 び 転 換 社 債 の 保 有 状 況 (2013 年 9 月 末 時 点 )<br />

地 域 投 資 先 国 投 資 先 企 業 数 運 用 総 額<br />

アジア 16 1,345 21,892<br />

(うち、 日 本 ) ― 438 6,198<br />

アフリカ 4 107 1,120<br />

オセアニア 2 198 2,918<br />

北 米 4 1,250 37,859<br />

南 米 5 128 2,979<br />

欧 州 25 788 46,869<br />

合 計<br />

( 注 1) 運 用 総 額 の 単 位 は 百 万 ユーロ。<br />

( 注 2)アジアの 投 資 先 国 数 において、 中 国 と 香 港 はそれぞれ1とカウントしている。<br />

( 資 料 )ABP ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

日 本 企 業 については、438 企 業 に 投 資 を 行 っており、 運 用 額 が 1 億 ユーロを 上 回 っているのが、トヨタ 自 動<br />

車 (2.16 億 ユーロ)、 三 菱 地 所 (2.10 億 ユーロ)、 三 菱 UFJ フィナンシャルグループ(1.50 億 ユーロ)、 三 井 不<br />

動 産 (1.50 億 ユーロ)、 日 本 電 信 電 話 (1.47 億 ユーロ)、イオンモール(1.32 億 ユーロ)、 住 友 不 動 産 (1.18 億<br />

ユーロ)、ソニー(1.06 億 ユーロ)、KDDI(1.05 億 ユーロ)の 9 社 である。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

ABP は、ESG 投 資 方 針 として「ABP’s responsible investment policy」を 定 めて 開 示 している。その 内 容<br />

の 概 要 は 次 のとおりである。<br />

1 ESG 要 因 を 投 資 プロセスに 統 合 する<br />

2 投 資 先 企 業 の 持 続 可 能 性 とコーポレートガバナンスを 改 善 するために 投 資 先 企 業 へのエンゲージ<br />

メントを 行 う<br />

3 コーポレートガバナンス 方 針 を 積 極 的 かつ 責 任 を 持 って 履 行 する<br />

4 持 続 可 能 性 へのソリューションに 対 する 投 資 機 会 を 最 大 活 用 する<br />

5 市 場 全 体 の 持 続 可 能 性 への 取 り 組 みを 促 進 し、かつコーポレートガバナンス 基 準 を 底 上 げするため<br />

に 政 策 当 局 への 働 きかけを 行 う<br />

6 オランダや 国 際 法 で 禁 止 されている、またはオランダ 国 民 が 広 く 反 対 している 製 品 の 製 造 に 直 接 関<br />

与 する 企 業 への 投 資 は 行 わない<br />

7 国 連 が 禁 輸 措 置 国 に 指 定 する 国 の 発 行 する 国 債 に 投 資 を 行 わない<br />

8 他 の 機 関 投 資 家 や 市 場 参 加 者 と 協 力 して、この ESG 投 資 方 針 を 実 行 する<br />

9 この ESG 投 資 方 針 の 説 明 責 任 を 果 たす<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

参 考 資 料 -74


ABP は、 投 資 先 企 業 に 対 して、 国 連 グローバル・コンパクト、OECD 多 国 籍 企 業 ガイドライン、OECD<br />

コーポレートガバナンス 原 則 、ICGN のグローバル・コーポレートガバナンス 原 則 に 準 拠 した 企 業 活 動 を<br />

行 うことを 要 求 している。<br />

ABP の 運 用 業 務 を 行 う 子 会 社 APG の Claudia Kruse 氏 が 国 際 統 合 報 告 評 議 会 (IIRC)のワーキンググ<br />

ループに 参 画 するなど、 統 合 報 告 策 定 に 積 極 的 に 関 与 している。ABP は ESG 要 因 の 考 慮 と 財 務 分 析 の 統<br />

合 を 進 めており、 企 業 側 でも 統 合 思 考 を 進 めるべきであるという 考 え 方 を 持 つ。<br />

農 業 用 地 への 投 資 にかかる 責 任 投 資 原 則 である Farmland Principle や、 採 取 産 業 (Extractive industries)に<br />

おける 腐 敗 防 止 を 目 指 す 国 際 イニシアティブ Extractive Industries Transparency Initiative(EITI)にも 署 名 して<br />

いる。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

ESG 投 資 方 針 を 履 行 する 目 的 は 以 下 の 3 つである。<br />

1 投 資 における 財 務 的 リターンの 改 善<br />

2 ABP としての 社 会 的 責 任 を 果 たしていることを 示 す<br />

3 金 融 市 場 のインテグリティへの 貢 献<br />

上 場 株 式 に 限 定 したものではなく、 不 動 産 投 資 やインフラ 投 資 なども 含 めたものであるが、 持 続 可 能<br />

なエネルギー、エネルギー 効 率 性 、 公 共 交 通 インフラ、 水 浄 化 及 び 廃 棄 物 管 理 、 持 続 可 能 な 林 業 、マイ<br />

クロファイナンス、ヘルスケア・インフラなどについての 新 たな 投 資 機 会 を 追 及 しているとしている。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

ABP は、ESG 投 資 方 針 に 明 記 されているように、オランダや 国 際 法 で 禁 止 されている、またはオラン<br />

ダ 国 民 が 広 く 反 対 している 製 品 の 製 造 に 直 接 関 与 する 企 業 への 投 資 は 行 わないとしており、 具 体 的 には<br />

クラスター 爆 弾 製 造 への 関 与 が 挙 げられる。<br />

また、 投 資 先 企 業 に 対 して、 国 連 グローバル・コンパクト、OECD 多 国 籍 企 業 ガイドライン、OECD<br />

コーポレートガバナンス 原 則 、ICGN のグローバル・コーポレートガバナンス 原 則 に 沿 った 企 業 活 動 を 求<br />

めており、これらの 規 範 等 に 反 する 行 為 も、エンゲージメントや 排 除 の 対 象 となりうる。<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメント)の 事 例 】<br />

2013 年 1 月 時 点 において、ABP が 開 示 している 除 外 銘 柄 の 中 に 日 本 企 業 は 含 まれていないが、2014 年<br />

1 月 1 日 付 で、 安 全 性 や 環 境 影 響 について 繰 り 返 し 協 議 を 申 し 入 れたが 企 業 側 が 応 じなかったとして、 東<br />

京 電 力 を 除 外 銘 柄 に 追 加 したことが 報 じられている 57 。<br />

57 「オランダ 年 金 基 金 が 東 電 株 売 却 、 原 発 事 故 処 理 への 懸 念 で」、ロイター、2014.1.8. <br />

参 考 資 料 -75


海 外 の 企 業 では、クラスター 爆 弾 製 造 への 関 与 を 理 由 として、ロッキードマーチン 社 など 14 社 が 投 資<br />

先 から 除 外 されている。さらに、 国 連 グローバル・コンパクト 原 則 に 反 しているとして、2012 年 、ウォ<br />

ルマート 社 とペトロチャイナ 社 をそれぞれ 投 資 先 から 除 外 している。<br />

2011 年 にオリンパスで 発 覚 した 粉 飾 決 済 問 題 を 巡 り、 他 の 機 関 投 資 家 と 協 業 して、 企 業 のマネジメン<br />

トに 関 する 徹 底 的 な 調 査 を 要 求 している。<br />

その 他 、 詳 細 な 情 報 は 不 明 であるが、 同 じくコーポレートガバナンスに 関 して 東 芝 と、 環 境 マネジメ<br />

ントに 関 して 資 生 堂 とそれぞれ 対 話 を 行 ったことを 明 らかにしている。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

ABP の ESG 投 資 方 針 を 履 行 するために、9 名 のスタッフで 構 成 される ESG チームが 組 織 されている。<br />

この ESG チームが、ポートフォリオマネジャーとも 緊 密 に 連 携 し、さまざまな 資 産 クラスにおける ESG<br />

投 資 方 針 の 履 行 のための 横 串 機 能 を 担 う。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

外 部 の ESG 情 報 提 供 機 関 及 び 議 決 権 行 使 サポートを 利 用 している。<br />

参 考 資 料 -76


名 称 オランダ 厚 生 福 祉 年 金 基 金 (PFZW) 58<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

アセットオーナー<br />

オランダ(ザイスト)<br />

住 所<br />

Noordweg Noord 150 PO Box 117, 3700 AC Zeist<br />

運 用 資 産 総 額 1,373 億 ユーロ(2013 年 12 月 末 時 点 )<br />

従 業 員 数<br />

公 開 情 報 からは 不 明<br />

URL<br />

https://www.pfzw.nl/about-us/Paginas/default.aspx<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

公 務 員 や 教 職 員 を 対 象 としたオランダ 公 務 員 年 金 基 金 (ABP)と 並 ぶ、オランダの 2 大 年 金 基 金 のう<br />

ちの 一 つで、 医 療 、 福 祉 部 門 の 従 事 者 を 対 象 としている。2013 年 12 月 末 時 点 の 資 産 規 模 は 1,373 億 ユー<br />

ロである。2008 年 1 月 に 旧 PGGM の 管 理 運 用 部 門 が 独 立 し、 旧 PGGM が PFZW と 改 称 された。 運 用 ・<br />

管 理 は PGGM Vermogensbeheer B.V.( 以 下 、「PGGM」と 表 記 )に 委 託 している。 最 高 意 思 決 定 機 関 は 6<br />

名 の 代 表 者 から 構 成 されている。<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

幅 広 い 資 産 クラスへの 分 散 投 資 を 行 っており、Quarterly report PFZW fourth quarter 2013 59 によると、2013<br />

年 末 の 資 産 配 分 は、 流 動 性 株 式 29%、プライベートエクイティ 6%、 不 動 産 11%、 国 債 や 社 債 などの 債<br />

権 は 26%である。1971 年 以 降 の 年 平 均 運 用 利 回 りは 8.2%、2004 年 から 10 年 間 の 年 平 均 運 用 利 回 りは 7.4%<br />

となっている。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

責 任 ある 投 資 を 行 うことと 投 資 のリターンを 追 及 することは 両 立 しうるという 信 念 のもと、 投 資 方 針<br />

に ESG の 要 素 を 取 り 入 れている。 投 資 哲 学 として、リスクなくして 高 収 益 なし、リスクの 多 様 性 の 重 要<br />

性 、コスト 効 率 が 結 果 の 相 違 を 生 む、 長 期 投 資 家 としての 強 みの 活 用 、 持 続 可 能 性 の 重 要 性 の 5 つが 示<br />

されている。<br />

PGGM の Responsible Investment Annual Report2012 60 によると、 責 任 投 資 活 動 において 以 下 の 6 つの 柱 を<br />

掲 げている。(Responsible Investment Annual Report2012 p.9~11)<br />

‣ ESG integration in investment process<br />

環 境 ・ 社 会 側 面 の 取 り 組 みとコーポレートガバナンスの 質 は、 顧 客 の 投 資 リターンに 影 響 し 得 る。PGGM<br />

は ESG 要 因 を 考 慮 することがリスクマネジメントに 貢 献 すると 信 じている。<br />

58 PFZW は 年 金 の 運 用 ・ 管 理 を PGGM に 委 託 しており、PGGM のメインの 顧 客 は PFZW であることから、 一 部 の 情 報 を、PGGM の 責 任<br />

投 資 のアニュアルレポートから 入 手 している。<br />

59 PFZW. “Quarterly Report: Fourth Quarter of 2013” <br />

60 PFZW. “Responsible Investment Annual Report 2012” <br />

参 考 資 料 -77


‣ Investments with ESG impact<br />

テーマ 型 の ESG 投 資 (targeted ESG investments)は、ポートフォリオへの 財 務 的 なリターンに 貢 献 する<br />

だけでなく、 社 会 的 な 付 加 価 値 を 生 み 出 すことが 期 待 される。ESG 投 資 による 社 会 的 付 加 価 値 を 測 定 す<br />

るために、PGGM はその 定 義 と 投 資 プロセスのアセスメント・ 精 緻 化 を 行 っている。<br />

‣ Voting as an active shareholder<br />

株 主 の 重 要 な 権 利 の 一 つは 株 主 ミーティングにおける 議 決 権 行 使 と 考 え、PGGM は 投 資 先 企 業 の 株 主<br />

ミーティングにおいて、 顧 客 の 立 場 で 議 決 権 を 行 使 する。<br />

‣ Importance of engagement<br />

企 業 の ESG 分 野 の 取 り 組 みの 改 善 をもたらすことが、 最 終 的 には 社 会 的 なかつ/もしくは 財 務 的 なリタ<br />

ーンに 貢 献 すると 考 えており、エンゲージメント 活 動 を 重 要 視 している。<br />

‣ Legal proceedings<br />

企 業 の 違 法 行 為 によりもたらされた 投 資 損 失 を 回 復 するために、 法 的 手 続 きを 進 めることがある。<br />

‣ Deciding not to invest:exclusion<br />

顧 客 や 自 社 のアイデンティティにそぐわない 企 業 については、 投 資 先 から 排 除 する。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

ACGA(Asian Corporate Governance Association)が 作 成 した「 日 本 のコーポレート・ガバナンス 白 書 」<br />

の 共 同 提 唱 機 関 の 一 つでもある。<br />

【 機 関 として 重 要 視 するポイント】<br />

PFZW としてフォーカスしている 具 体 的 な 分 野 としては、「 武 器 」「 人 権 」「 気 候 変 動 」「 健 康 」「 健 全 な<br />

コーポレートガバナンス」を 挙 げている 61 。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )】<br />

評 価 基 準 の 詳 細 については 開 示 されていないが、 環 境 や 社 会 的 側 面 の 取 り 組 みや 良 いコーポレートガ<br />

バナンスによるインパクトを 投 資 活 動 において 考 慮 している。<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

PFZW では 1985 年 以 降 、 人 権 を 重 視 する 観 点 から 基 準 を 設 けてネガティブ・スクリーニングを 開 始 し<br />

た。 投 資 先 として 好 ましくない 企 業 として、 核 兵 器 やクラスター 爆 弾 、 対 人 地 雷 などの 武 器 製 造 に 関 わ<br />

る 企 業 やタバコ 企 業 、 人 権 において 問 題 がある 企 業 を 中 心 に 120 社 近 くをリスト・アップして PFZW の<br />

ウェブサイトで 公 開 62 している。<br />

エンゲージメントにも 積 極 的 で、PGGM が PFZW の 代 わりにエンゲージメント 活 動 を 行 っている。<br />

PFZW は 人 権 や 従 業 員 の 権 利 の 分 野 において、 国 連 の 世 界 人 権 宣 言 と ILO の 労 働 者 の 権 利 (ILO 中 核 的<br />

61<br />

PFZW ホームページ<br />

62<br />

PFZW ホームページ<br />

参 考 資 料 -78


労 働 基 準 )を 遵 守 するとしている。 例 えば 児 童 労 働 はフォーカスポイントの 一 つである。エンゲージメ<br />

ント 活 動 が 望 む 結 果 を 生 まなかった 場 合 は、 企 業 への 投 資 をやめることもある。<br />

< 紛 争 地 域 における 対 話 の 事 例 :Western Sahara>(PFZW・ウェブサイト 63 より)<br />

紛 争 地 域 と 関 わりのある 企 業 は、 例 えば 人 権 侵 害 などにより 甚 大 なリスクを 招 くことがあることから、<br />

こうした 企 業 と 対 話 を 試 みており、 西 サハラ 地 域 の 事 例 が 開 示 されている。 西 サハラ 地 域 からリン 酸 塩<br />

を 輸 入 する 企 業 に 対 して、 活 動 に 対 する 法 的 根 拠 や、 現 地 住 民 の 同 意 をもとに 行 っていることをどのよ<br />

うに 裏 付 けているかなどを 明 言 するよう PGGM が 要 求 している。また、PGGM は 企 業 が 別 のやり 方 (よ<br />

り 責 任 性 のあるやり 方 で) 原 材 料 を 調 達 できないかを 説 得 するために、さらなる 対 話 が 望 まれるかどう<br />

かを 評 価 している。<br />

D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメント)の 事 例 】<br />

投 資 先 として 好 ましくないとして 公 開 されているリスト 64 の 中 に、 日 本 企 業 としては「 日 本 たばこ 産 業<br />

株 式 会 社 」が 挙 げられている。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

PGGM の 社 内 リソースを 利 用 して、 直 接 的 なエンゲージメント 活 動 を 行 っている。PGGM Responsible<br />

Investment Annual Report2012 によると、PGGM では 直 接 的 なエンゲージメントの 実 施 社 数 について、150<br />

社 以 上 とする 目 標 を 設 定 している。2011 年 の 直 接 的 なエンゲージメントの 実 施 社 数 は 154 社 、2012 年 は<br />

186 社 であり 目 標 を 達 成 している。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

PGGM Responsible Investment Annual Report2012 によると、エンゲージメントにおいて、 社 内 リソース<br />

を 利 用 したエンゲージメント 活 動 の 他 に、イギリスのアセットマネジメント 会 社 である F&C 社 も 利 用 し<br />

ている。F&C 社 を 通 じたエンゲージメントの 実 施 社 数 は、2011 年 は 453 社 、2012 年 は 560 社 となってい<br />

る。<br />

63<br />

PFZW ホームページ<br />

64<br />

PFZW ホームページ<br />

参 考 資 料 -79


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

ノルウェー 政 府 年 金 基 金 ―グローバル(GPFG)<br />

(Government Pension Fund – Global)<br />

アセットオーナー<br />

ノルウェー(オスロー)<br />

ノルウェー 財 務 省<br />

Akersgata 40, Postbox 8008 Dep, 0030 Oslo<br />

住 所<br />

ノルウェー 中 央 銀 行 投 資 管 理 部 門 (NBIM)<br />

Bankplassen 2, P.O. Box 1179 Sentrum, NO-0107 Oslo<br />

運 用 資 産 総 額 3 兆 8160 億 ノルウェー・クローネ(NOK)(2012 年 末 時 点 )<br />

従 業 員 数 約 340 名 (2013 年 2 月 末 時 点 )<br />

ノルウェー 財 務 省 の GPFG に 関 するホームページ<br />

http://www.regjeringen.no/en/dep/fin/Selected-topics/the-government-pension<br />

URL<br />

-fund/government-pension-fund-global-gpfg.htmlid=697027<br />

ノルウェー 中 央 銀 行 投 資 管 理 部 門 (NBIM)<br />

http://www.nbim.no/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

ノルウェー 政 府 年 金 基 金 ―グローバル(GPFG)は、1990 年 に 設 立 されたノルウェーの 政 府 石 油 基 金 を<br />

2006 に 継 承 する 形 で 設 立 された、 世 界 最 大 級 のソブリン・ウェルス・ファンドである。2012 年 末 時 点 の<br />

運 用 資 産 総 額 は 3 兆 8160 億 NOK であり、その 規 模 は 同 国 GDP のおよそ 131%に 相 当 する。 世 界 の 上 場<br />

企 業 7,427 社 の 株 式 を 保 有 し、 世 界 の 上 場 株 の 1.2%を 所 有 する 65 。<br />

同 基 金 は、「 石 油 ・ 天 然 ガスを 金 融 資 産 へ(From oil and gas to financial wealth)」を 掲 げ、 北 海 油 田 由 来<br />

の 石 油 ・ 天 然 ガス 資 産 を 金 融 資 産 に 変 換 し、 将 来 的 に 資 源 が 枯 渇 した 後 の 将 来 世 代 に 渡 ってその 果 実 を<br />

享 受 し、ノルウェー 国 民 の 年 金 資 金 等 に 充 当 していくことを 目 的 としており、 長 期 投 資 家 であることを<br />

明 確 に 宣 言 している。<br />

GPFG は、ノルウェー 財 務 省 が 所 管 官 庁 となり、 同 国 法 令 に 基 づいて 運 用 方 針 の 決 定 を 行 い、ノルウェ<br />

ー 中 央 品 行 投 資 管 理 部 門 (NBIM)が、 実 際 の 運 用 実 務 を 担 う。ESG 投 資 に 関 しては、2004 年 の 倫 理 ガ<br />

イドラインの 策 定 と 併 せて、 倫 理 委 員 会 が 設 置 されており、 倫 理 ガイドラインに 反 していると 判 断 する<br />

企 業 について、 財 務 省 に 対 して 排 除 を 行 うように 勧 告 を 行 う。<br />

2013 年 9 月 末 時 点 において、 過 去 10 年 間 の 平 均 利 回 りは 3.96%、 過 去 5 年 間 では 6.73%である。<br />

65<br />

在 ノルウェー 日 本 大 使 館 [2014].「ノルウェー・ 政 府 年 金 基 金 ―グローバルの 概 要 」<br />

参 考 資 料 -80


図 表 ―GPFG の 監 督 に 関 する 組 織 分 担<br />

組 織 等 名 称<br />

役 割 ・ 特 徴<br />

ノルウェー 財 務 省<br />

ノルウェー 中 央 銀 行 投 資 管 理<br />

部 門 (NBIM)<br />

倫 理 委 員 会<br />

運 用 方 針 の 決 定 、 戦 略 ベンチマークの 策 定 と 運 用 成 績 の<br />

評 価<br />

倫 理 委 員 会 の 勧 告 を 得 て、 投 資 対 象 からの 排 除 の 決 定<br />

ノルウェー 議 会 への 報 告<br />

財 務 省 の 定 める 運 用 方 針 等 に 基 づく 資 産 運 用 の 実 施<br />

企 業 に 対 するエンゲージメントの 実 施 ( 株 主 の 権 利 行<br />

使 )<br />

2004 年 の 倫 理 ガイドラインの 策 定 と 併 せて 設 置<br />

投 資 先 企 業 の 倫 理 的 側 面 についてモニタリングし、 投 資<br />

先 から 排 除 すべき 企 業 を 財 務 省 に 対 して 勧 告<br />

( 資 料 )ノルウェー 財 務 省 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

GPFG は 財 務 省 が 定 める 戦 略 ポートフォリオにより、 投 資 先 を 国 外 の 株 式 、 債 券 及 び 不 動 産 とすること<br />

が 定 められている(なお、 不 動 産 投 資 は 2011 年 から 開 始 された)。それぞれのアセットクラスに 対 する<br />

投 資 割 合 の 基 準 及 び 地 域 別 割 合 基 準 は 以 下 の 通 りである。 投 資 先 1 社 当 たりの 株 式 保 有 上 限 は 10%と 設<br />

定 されている。<br />

図 表 ― 戦 略 ポートフォリオにおけるアセットアロケーション<br />

( 資 料 )ノルウェー 財 務 省 ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

運 用 実 務 を 担 う NBIM は、 財 務 省 が 定 める 戦 略 ポートフォリオを 基 本 としつつ、アクティブ 運 用 のた<br />

めに 一 定 の 範 囲 内 で 戦 略 ポートフォリオからの 乖 離 が 認 められており、 内 部 用 の 運 用 ベンチマークとし<br />

て 参 照 ポートフォリオを 独 自 に 設 定 することができる。NBIM は 長 期 投 資 家 として、あくまで 長 期 的 な 視<br />

点 から 参 照 ポートフォリオを 構 築 している。 言 い 換 えれば、 戦 略 ポートフォリオと 参 照 ポートフォリオ<br />

の 差 分 は、 長 期 的 な 視 点 からの 投 資 に 係 る 意 思 決 定 の 結 果 であると 言 える。 例 えば、2012 年 には、パー<br />

ム 油 生 産 を 行 う 23 の 企 業 について、そのビジネスが 長 期 的 な 視 点 から 持 続 可 能 ではないとして、 参 照 ポ<br />

ートフォリオから 除 外 している。<br />

参 考 資 料 -81


2012 年 末 時 点 での 世 界 の 保 有 上 場 株 式 7,427 社 の 内 訳 は 下 図 のとおりである。 外 部 の 運 用 会 社 への 委<br />

託 割 合 は 2012 年 末 時 点 で 3.9%であり、2011 年 末 時 点 の 4.4%から 減 少 している。 外 部 への 運 用 委 託 は 主<br />

に 新 興 国 投 資 、または 先 進 国 における 小 型 銘 柄 への 投 資 の 場 合 が 基 本 である。<br />

図 表 ― 地 域 別 の 株 式 保 有 状 況 (2012 年 末 時 点 )<br />

地 域 投 資 先 国 投 資 先 企 業 数 運 用 総 額<br />

アジア 12 2,645 2,909<br />

(うち、 日 本 ) (1,243) (1244)<br />

アフリカ 4 123 164<br />

オセアニア 2 281 544<br />

ラテンアメリカ 8 524 893<br />

欧 州 30 1,508 11,432<br />

中 東 5 115 489<br />

北 米 4 2,231 7,248<br />

合 計 65 7,427 23,239<br />

( 注 ) 運 用 総 額 の 単 位 は 億 NOK。<br />

( 資 料 )NBIM ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

投 資 先 の 日 本 企 業 のうち、 株 式 の 保 有 割 合 が 上 位 の 企 業 として、パイオニア(6.55%)、ステラケミフ<br />

ァ(3.92%)、ケネディクス(3.62%)、ノーリツ(3.45%)、 日 本 ケミコン(3.38%)などの 銘 柄 が 並 ぶ。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

GPFG の ESG 投 資 戦 略 の 主 な 特 徴 は、「 国 際 的 な 協 力 の 下 でのベスト・プラクティスへの 貢 献 」、「ESG<br />

要 因 の 考 慮 の 全 ての 投 資 行 動 への 統 合 」、「 環 境 関 連 のテーマ 投 資 」、「アクティブ・オーナーシップ( 積<br />

極 的 株 主 行 動 )」、「 調 査 ・ 分 析 」、「 企 業 のモニタリングと 排 除 」の 6 つである。なお、 財 務 省 に 設 置 され<br />

ている「 戦 略 委 員 会 」は、GPFG の ESG 投 資 戦 略 についての 包 括 的 なレビューを 行 い、2013 年 11 月 、<br />

ESG 投 資 の 目 的 について 以 下 のように 明 確 化 することを 提 言 しており、あくまで 長 期 投 資 家 として 長 期<br />

的 な 財 務 リターンのために 必 要 なこととして、ESG 要 因 も 含 めた 重 要 なイシューへの 理 解 が 重 要 である<br />

としている。<br />

<br />

<br />

許 容 可 能 なリスクの 下 でのリターン 最 大 化 の 実 現<br />

ファンドの 将 来 の 財 務 的 価 値 に 影 響 を 与 える 重 要 なイシュー(※)の 理 解<br />

(※ 現 時 点 において、 非 財 務 情 報 と 呼 ばれているものであっても、 将 来 的 なファンドの 財 務 的 価 値<br />

に 影 響 を 与 えうるもの。)<br />

<br />

ノルウェー 国 民 に 対 するファンドの 正 当 性 の 確 保<br />

参 考 資 料 -82


「 企 業 のモニタリングと 排 除 」に 関 しては、2004 年 、ノルウェー 財 務 省 が 倫 理 ガイドラインを 策 定 し、<br />

ノルウェー 議 会 (ストーティング)により 全 会 一 致 で 承 認 さている(その 後 、2009 年 に 一 部 を 改 訂 )。 倫<br />

理 ガイドラインは、 投 資 先 から 排 除 すべきものとして、 製 品 ベースの 排 除 基 準 と、 行 為 ベースの 排 除 基<br />

準 の 2 種 類 を 設 定 している。<br />

1 製 品 ベースの 排 除 基 準<br />

・ 非 人 道 的 武 器 生 産 に 係 る 企 業<br />

・ 武 器 及 び 軍 事 目 的 の 物 品 を 武 器 禁 輸 国 に 輸 出 する 企 業<br />

・タバコを 製 造 する 企 業<br />

2 行 為 ベースの 排 除 基 準<br />

・ 児 童 労 働 など 人 権 侵 害 を 制 度 的 に 行 う 企 業<br />

・ 戦 争 ・ 紛 争 時 の 個 人 の 権 利 を 侵 害 する 企 業<br />

・ 深 刻 な 環 境 破 壊 を 行 う 企 業<br />

・ 悪 質 な 贈 収 賄 に 係 る 企 業<br />

・その 他 基 本 的 倫 理 概 念 に 反 した 行 為 を 行 う 企 業<br />

「アクティブ・オーナーシップ( 積 極 的 株 主 行 動 )」については、 投 資 先 企 業 のコーポレートガバナン<br />

スの 強 化 と、 環 境 ・ 社 会 的 な 配 慮 の 促 進 の 効 果 を 目 指 している。なお、2013 年 の 第 2 四 半 期 に、 外 部 有<br />

識 者 3 名 からなるコーポレートガバナンス 委 員 会 を 設 置 しており、 委 員 には、 通 称 「ケイ・レビュー」 66<br />

を 取 りまとめたことで 知 られる LSE のジョン・ケイ 教 授 の 他 、Tony Watson 氏 、Peter Montagnon 氏 の 3<br />

氏 が 就 任 している。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

株 主 の 権 利 の 行 使 にあたっては、 国 連 グローバル・コンパクト、OECD コーポレートガバナンス 原 則 、<br />

OECD 多 国 籍 企 業 ガイドライン、PRI を 尊 重 するとしている。<br />

PRI への 報 告 資 料 において、GRI 及 びカーボン・ディスクロージャー・プロジェクトへの 支 持 を 表 明 し<br />

ている 67 。<br />

また、2012 年 には、 財 務 省 らがノルウェーにおける ESG 投 資 の 普 及 ・ 啓 発 を 図 るフォーラム Norsif<br />

(Norwegian Forum for Sustainable and Responsible Investment)の 立 ち 上 げにも 協 力 している。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

GPFG の 最 大 の 特 徴 は、 資 産 を 将 来 世 代 に 引 き 継 いていくことが 目 的 であり、 長 期 的 な 視 野 での 投 資 判<br />

断 を 行 う 長 期 投 資 家 であること、さらに 規 模 が 巨 大 であることの 2 点 である。 長 期 的 なリターンは、 経<br />

済 ・ 環 境 ・ 社 会 の 持 続 的 な 成 長 に 依 存 しているが、GPFG は 世 界 中 の 市 場 に 分 散 投 資 していることから、<br />

世 界 が 持 続 的 に 成 長 することが 長 期 投 資 のリターンの 観 点 から 重 要 である。したがって、GPFG が 投 資 家<br />

66 「ケイ・レビュー」とは、ジョン・ケイ 氏 が 英 国 政 府 からの 要 請 により、2012 年 7 月 に 公 表 された、 英 国 株 式 市 場 の 構 造 的 問 題 、 上<br />

場 企 業 行 動 、コーポレート・ガバナンスについて 調 査 ・ 分 析 を 行 ったレポートである。 株 式 市 場 におけるショート・ターミズム( 短 期 主<br />

義 ) 問 題 、 市 場 が 資 金 調 達 の 役 割 を 果 たさなくなっている 事 実 、 英 国 企 業 の 株 式 保 有 構 造 とガバナンス 上 の 問 題 点 など、 英 国 の 株 式 市 場<br />

が 抱 える 広 範 な 問 題 に 考 察 を 行 い、 改 善 のための 政 策 提 言 を 行 っている。<br />

67<br />

財 務 省 及 び NBIM から PRI への 報 告 資 料 (2011 年 ) <br />

参 考 資 料 -83


として 持 っている 影 響 力 を 行 使 し、 持 続 的 な 成 長 に 貢 献 していくことが 重 要 であるとの 立 場 を 示 してい<br />

る。<br />

NBIM は、アクティブ・オーナーシップ( 積 極 的 株 主 行 動 )における 戦 略 重 点 領 域 として、 株 主 の 平 等<br />

な 取 扱 い、 株 主 による 影 響 力 の 確 保 と 取 締 役 会 の 説 明 責 任 、 正 しく 機 能 し 効 率 的 な 株 式 市 場 の 実 現 に 向<br />

けた 貢 献 の 主 にコーポレートガバナンスに 関 連 する 3 領 域 に 加 えて、 環 境 ・ 社 会 については、 子 どもの<br />

権 利 、 気 候 変 動 に 係 るリスクマネジメント、 水 マネジメントの 3 領 域 を 掲 げている。 特 に、 後 者 の 3 領<br />

域 については、 企 業 に 期 待 する 取 り 組 み 内 容 をそれぞれ 明 らかにしている。 詳 細 は 以 下 の 通 り。<br />

1 子 どもの 権 利<br />

企 業 の 事 業 活 動 及 びサプライチェーンにおける 児 童 労 働 問 題 を 巡 り、 企 業 に 期 待 する 取 り 組 み 水 準<br />

を 公 表 している。 当 該 水 準 に 照 らして、 毎 年 度 、 投 資 先 企 業 の 状 況 を 評 価 し 結 果 を 公 表 し、 問 題 があ<br />

る 場 合 には 企 業 に 改 善 を 働 きかける。<br />

この 評 価 に 当 たっては、 子 どもの 権 利 確 保 にかかる 企 業 による 情 報 開 示 のみに 基 づいて 評 価 を 実 施<br />

している。さらに、ココア、 鉱 業 、 鉄 鋼 、アパレル 小 売 業 については、 業 界 横 断 的 な 児 童 労 働 の 改 善<br />

も 追 求 している。<br />

ILO 第 182 号 条 約 を 踏 まえ、 最 悪 の 形 態 の 児 童 労 働 を 撤 廃<br />

ILO 第 138 号 条 約 を 踏 まえ、15 歳 未 満 の 労 働 を 禁 止 し、 危 険 作 業 については 18 歳 未 満 の 労 働 を<br />

禁 止<br />

児 童 の 権 利 に 関 する 条 約 を 踏 まえ、 児 童 福 祉 を 向 上<br />

児 童 労 働 の 撤 廃 と 子 どもの 権 利 の 確 保 を 担 保 するための 社 内 態 勢 の 構 築<br />

2010 年 末 に 実 施 した 調 査 では、 子 どもの 権 利 侵 害 ・ 児 童 労 働 発 生 リスクの 高 い 業 種 ( 食 品 ・ 飲 料<br />

品 、 農 業 、アパレル 小 売 り、ハードウェア 製 造 、 鉄 鋼 、 鉱 業 、 玩 具 )に 属 する 527 社 について 調 査<br />

を 行 いその 結 果 を 2011 年 に 公 表 。 調 査 を 行 ったのは 以 下 の 10 項 目 。なお、 当 該 10 項 目 についての<br />

評 価 の 結 果 、 満 点 を 取 得 した 企 業 として、モトローラ 社 、インテル 社 、アングロ・アメリカン 社 、<br />

ウォルト・ディズニー 社 、フィリップス・ヴァン・ヒューゼン 社 、ギルダン・アクティブウェア 社 、<br />

エキストラータ 社 、H&M 社 、テレフォナクティーボラーゲ LM エリクソン 社 の 名 前 を 挙 げている。<br />

児 童 労 働 防 止 に 関 する 方 針<br />

児 童 労 働 リスクのアセスメント<br />

児 童 労 働 の 防 止 と 改 善 に 向 けたアクションプラン<br />

児 童 労 働 防 止 のためのサプライチェーンマネジメント<br />

児 童 労 働 に 関 する 透 明 性 のある 実 績 開 示<br />

ステークホルダーとの 対 話 と 協 業<br />

企 業 行 動 による 児 童 福 祉 の 向 上 に 反 する 影 響 の 防 止 のための 仕 組 み<br />

子 どもの 権 利 向 上 のための 透 明 性 のあるガバナンス<br />

潜 在 的 な 社 会 的 影 響 の 事 業 戦 略 への 統 合<br />

長 期 投 資 家 の 関 心 を 反 映 する 透 明 性 のある 情 報 開 示<br />

参 考 資 料 -84


2 気 候 変 動 に 関 するリスクマネジメント<br />

企 業 の 気 候 変 動 に 関 するリスクマネジメントについて、 以 下 の 内 容 を 企 業 への 具 体 的 な 期 待 事 項 とし<br />

て 挙 げている。<br />

a. 気 候 変 動 のリスク 軽 減 に 関 する 最 適 投 資 の 戦 略<br />

以 下 の 内 容 に 係 る 企 業 とっての 重 大 なリスクと 事 業 機 会 に 関 する 認 識<br />

気 候 変 動 による 直 接 的 な 影 響<br />

気 候 変 動 の 緩 和 と 適 応 に 関 する 規 制 や 基 準<br />

特 に 主 要 プロジェクトへの 投 資 に 関 して、 将 来 の 企 業 の 収 益 性 に 影 響 し 得 る 以 下 の 要 因 に 関 す<br />

る 認 識<br />

直 接 的 な 影 響 ( 利 用 可 能 な 水 資 源 の 変 化 、 異 常 気 象 、 等 )<br />

規 制 ( 炭 素 価 格 、 温 室 効 果 ガス 排 出 可 能 枠 、 再 生 可 能 エネルギー 導 入 目 標 比 率 、 環 境 に<br />

関 する 義 務 的 技 術 要 件 、 熱 帯 雨 林 における 事 業 活 動 の 制 限 、 等 )<br />

熱 帯 雨 林 破 壊 に 関 するリスク 管 理 を 含 めた、 企 業 の 気 候 変 動 に 関 するリスク 管 理 を 反 映 した 具<br />

体 的 な 環 境 方 針 や 指 針 の 策 定<br />

企 業 にとって 主 要 なリスク 要 因 に 対 するインプリケーションと 企 業 における 戦 略 的 対 応<br />

リスクの 認 識 と 企 業 の 対 応 についての 定 期 的 かつタイムリーな 見 直 しの 実 施<br />

b. 気 候 変 動 に 対 する 戦 略 に 基 づく 具 体 的 取 り 組 み<br />

事 業 活 動 におけるリスク 低 減 のための 取 り 組 み。 例 えば 以 下 の 取 り 組 みを 行 っているか。<br />

エネルギー 及 び 資 源 効 率 性 向 上 のためのプログラム<br />

低 炭 素 素 材 の 利 用 促 進<br />

物 流 や 輸 送 の 最 適 化<br />

持 続 可 能 な 森 林 管 理 に 関 する 国 際 的 行 動 規 範 の 遵 守<br />

サプライチェーンでのリスク 低 減 の 取 組 。 例 えば 以 下 の 取 り 組 みを 行 っているか。<br />

製 品 ・サービスの 調 達 基 準 の 策 定<br />

戦 略 的 サプライヤーとの 間 でのベストプラクティスの 共 有<br />

サプライチェーンのマネジメントシステムに 炭 素 価 格 の 概 念 を 統 合<br />

熱 帯 雨 林 由 来 の 商 品 、 製 品 、 原 材 料 を 取 り 扱 うサプライヤーに 対 する、 持 続 可 能 な 森 林<br />

管 理 に 関 する 国 際 的 行 動 規 範 の 順 守 状 況 のモニタリング<br />

気 候 変 動 リスクを 評 価 し 管 理 するための 知 識 ・ 技 術 が 不 足 している 領 域 での 研 究 開 発 に 対 する<br />

助 成 ・ 支 援<br />

c. リスク 管 理 のための 効 果 的 ・ 効 率 的 ガバナンス<br />

取 締 役 会 がリスクマネジメントの 範 囲 を 拡 大 し、 気 候 変 動 をそこへ 融 合 することの 必 要 性 を 明<br />

確 に 認 識 しているか<br />

気 候 変 動 リスクをカバーする 適 切 なモニタリングと 開 示 システムがあるか<br />

参 考 資 料 -85


組 織 内 における 責 任 の 所 在 とレポーティング・ラインレベルを 取 締 役 の 階 層 まで 含 めて 明 確 化<br />

しているか<br />

d. 透 明 性 と 情 報 開 示<br />

現 状 での 温 室 効 果 ガス 排 出 量 の 二 酸 化 炭 素 換 算 値 、 及 び 業 種 における 適 正 な 排 出 量 原 単 位<br />

スコープ1、2、3のそれぞれの 内 訳<br />

温 室 効 果 ガス 排 出 量 原 単 位 の 削 減 目 標 をタイムラインとともに 開 示 し、 定 量 的 かつ 意 味 のある<br />

原 単 位 削 減 の 経 年 変 化 を 開 示 することにより 企 業 が 取 り 組 みの 質 のシグナルを 発 しているか<br />

不 確 実 性 を 考 慮 したうえで、 排 出 量 は 検 証 されているか<br />

カーボン 生 産 性 や 負 荷 の 多 寡 について、 国 際 的 かつ 均 一 の 基 準 を 設 けているか。また、 予 測 さ<br />

れる 規 制 強 化 の 水 準 とどのように 比 較 しているか<br />

熱 帯 雨 林 フットプリントに 関 する 情 報 開 示 をしているか。どのように 熱 帯 雨 林 への 影 響 の 経 年<br />

監 視 を 行 い、 事 業 活 動 に 伴 うリスクを 評 価 しているか<br />

企 業 とサプライヤーが 持 続 可 能 な 農 業 品 の 生 産 や 森 林 管 理 のための 国 際 基 準 の 遵 守 をするため<br />

に 行 動 してきたか<br />

熱 帯 雨 林 の 伐 採 の 削 減 方 針 に 対 する 実 施 状 況 を 開 示 しているか<br />

関 連 する 法 や 規 制 に 対 して 企 業 の 立 場 の 表 明<br />

政 策 担 当 者 や 規 制 当 局 との 関 係 性<br />

政 策 担 当 者 や 規 制 当 局 への 働 きかけについての 方 針 やガイドラインを 有 しているか。 資 金 供 給<br />

や 寄 付 を 提 供 し、これらの 支 出 に 関 して 企 業 は 情 報 開 示 しているか<br />

3 水 マネジメント<br />

企 業 の 水 マネジメントについて、 以 下 の 内 容 を 企 業 への 具 体 的 な 要 求 事 項 として 挙 げている。<br />

a. 水 マネジメント 戦 略<br />

水 マネジメントン 関 する 明 確 な 方 針 の 策 定<br />

継 続 的 なリスク 分 析 の 実 施<br />

水 のフットプリント 分 析 は 直 接 的 な 水 使 用 と 排 水 量 、 及 び 間 接 的 なそれらの 両 方 を 含 み、<br />

かつ 地 域 コミュニティと 生 態 系 への 影 響 を 分 析 するものになっているか。<br />

自 社 の 事 業 活 動 、サプライチェーン、 製 品 ・サービス、 及 び 事 業 パートナーに 関 連 する<br />

水 リスクの 分 析 を 行 っているか<br />

当 該 分 析 において、 地 域 固 有 の 水 不 足 の 状 況 や、 社 会 ・ 環 境 要 因 並 びに 規 制 を 考 慮 した<br />

ものになっているか<br />

リスク 分 析 手 法 の 透 明 性 ( 企 業 は 国 際 的 に 広 く 受 け 入 れられている 指 標 や 測 定 体 系 を 用 いて 分<br />

析 を 行 う 必 要 がある)<br />

b. 持 続 可 能 な 水 マネジメント<br />

特 定 したリスクに 対 する 予 防 的 ・ 是 正 的 行 動 計 画 の 策 定<br />

参 考 資 料 -86


規 制 強 化 や、 水 供 給 量 の 変 化 、 水 質 の 変 化 、 水 価 格 の 上 昇 などによる 事 業 活 動 へのネガ<br />

ティブな 影 響 に 対 応 するために、どのような 措 置 が 取 られているか<br />

自 社 の 事 業 活 動 、サプライチェーン、 製 品 ・サービスを 通 じて、 水 質 を 向 上 させ、 排 水<br />

処 理 の 質 を 高 め、または 水 資 源 を 効 率 的 に 利 用 するための 明 確 な 目 標 と KPI を 設 定 し、<br />

開 示 しているか<br />

自 社 またはサプライチェーンにおいて、 水 資 源 の 効 率 的 な 利 用 にむけた 適 切 な 投 資 が 行<br />

われているか<br />

サプライチェーンのマネジメントシステム<br />

サプライチェーンをモニタリングし、リスクを 低 減 するための 十 分 なマネジメントシス<br />

テムがあるか<br />

どのようにしてサプライチェーンにおける 持 続 可 能 な 水 管 理 を 促 進 しているか<br />

活 動 の 環 境 ・ 社 会 へのインパクトのモニタリングシステム<br />

地 域 住 民 が 必 要 な 水 資 源 にアクセスすることを 保 証 する 現 地 でのプログラムを 実 施 し<br />

ているか<br />

ステークホルダーへの 相 談 、 協 業<br />

地 域 コミュニティ、NGO やその 他 の 関 連 組 織 に 相 談 し、 協 業 することによって、 必 要<br />

な 情 報 や 研 究 を 入 手 し、 現 地 でのプログラムを 作 成 しているか<br />

c. ガバナンス<br />

水 マネジメントに 関 する 明 確 な 方 針 が 策 定 され 開 示 されているか<br />

水 マネジメントに 関 する 方 針 と 取 り 組 みの 実 施 と 監 督 を 担 保 するための 透 明 性 があり、かつ 十<br />

分 に 機 能 するガバナンスが 体 制 されているか<br />

情 報 開 示 は 透 明 性 が 確 保 され、かつ 短 期 的 な 投 資 家 の 関 心 事 だけでなく 多 様 な 長 期 投 資 家 の 関<br />

心 事 が 盛 り 込 まれているか<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )】<br />

2012 年 、 新 たに 10 の 環 境 関 係 のテーマ 型 投 資 を 開 始 している。10 のうち 8 は 外 部 の 運 用 会 社 に 委 託<br />

し、 残 り 2 は、インハウスでの 運 用 を 行 っている。10 のうち 7 は、 再 生 可 能 エネルギー 関 連 の 製 造 又 は<br />

販 売 を 行 う 企 業 、 並 びに 再 生 可 能 エネルギー 関 連 の 生 産 設 備 を 製 造 する 企 業 へのテーマ 型 投 資 である。<br />

残 りの 3 は、 水 マネジメント 及 び 廃 棄 物 処 理 の 関 連 する 銘 柄 への 投 資 を 行 うテーマ 型 投 資 である。<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

倫 理 ガイドラインに 定 められている、 製 品 ベースの 排 除 基 準 、 及 び 行 為 ベースの 排 除 基 準 に 列 挙 され<br />

た 計 8 項 目 が、 投 資 先 から 排 除 する 際 の 基 準 である。2014 年 2 月 時 点 において、 倫 理 委 員 会 がポートフ<br />

ォリオから 除 外 すべきとして 財 務 省 に 対 して 勧 告 し、 排 除 された 銘 柄 は 60 企 業 に 上 る。<br />

参 考 資 料 -87


D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメント)の 事 例 】<br />

日 本 企 業 の 排 除 事 例 は、たばこ 製 造 を 理 由 に、 日 本 たばこ 産 業 (JT)が 2009 年 に 除 外 された 事 例 1 件<br />

のみである。 海 外 企 業 では、 核 兵 器 製 造 への 関 与 を 理 由 にボーイング 社 、 児 童 労 働 への 加 担 を 理 由 にウ<br />

ォルマート 社 、 環 境 破 壊 を 理 由 にリオ・ティント 社 を 排 除 するなどの 決 定 が 行 われている。<br />

なお、 前 述 したように、2012 年 、インドネシアとマレーシアのパーム 油 生 産 企 業 23 社 について、 森 林<br />

破 壊 を 理 由 に 投 資 対 象 から 引 き 揚 げているが、これは 倫 理 委 員 会 の 勧 告 に 基 づくものではなく、 運 用 実<br />

務 を 担 当 する NBIM が、 長 期 的 な 視 点 からの 投 資 判 断 として 行 われたものである。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

倫 理 委 員 会 については、 実 務 を 担 う 事 務 局 は 8 人 (2012 年 時 点 )である。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

外 部 の 調 査 機 関 や NGO などの 情 報 を 活 用 している。 外 部 の 調 査 機 関 には、スイスに 拠 点 を 置 く 世 界 的<br />

な ESG に 関 連 する 企 業 への 批 判 情 報 のプロバイダーである RepRisk 社 と 契 約 していることを 明 らかにし<br />

ている。2012 年 は 230 社 について 倫 理 ガイドラインに 照 らした 調 査 を 実 施 。<br />

参 考 資 料 -88


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

デンマーク 労 働 市 場 付 加 年 金 (ATP)<br />

アセットオーナー<br />

デンマーク(ヒレレズ)<br />

住 所<br />

Kongens Vænge 8DK 3400 Hillerød<br />

運 用 資 産 総 額 623 億 デンマーク・クローネ(DKK)(2012 年 末 時 点 )<br />

従 業 員 数 約 843 名 (2012 年 末 時 点 )( 保 険 料 の 徴 収 業 務 等 を 担 っている 職 員 を 含 む)<br />

URL<br />

http://www.atp.dk/X5/wps/wcm/connect/ATP/atp.dk/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

ATP は、デンマークの 3 階 建 ての 年 金 制 度 のうちの 1 階 部 分 に 分 類 され、 被 用 者 及 び 雇 用 主 からの 拠<br />

出 金 により 賄 われる 積 立 方 式 の 公 的 年 金 制 度 である。2012 年 末 の 同 年 金 全 加 入 者 は 4,782,900 人 。<br />

2012 年 末 時 点 における、ATP の 運 用 資 産 総 額 は 623 億 DKK であり、 欧 州 地 域 における 最 大 規 模 の 年<br />

金 基 金 の 一 つである。1964 年 に 設 立 されて 以 来 、50 年 近 くの 運 用 実 績 があり、 世 界 の 主 要 な 年 金 基 金 の<br />

中 でも 特 に 運 用 実 績 が 長 い。1964 年 の 設 立 時 から 2005 年 まで、 物 価 変 動 を 考 慮 した 実 質 ベースで 年 率<br />

5.69%の 利 回 りを 上 げている 68 。<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

ATP では、 運 用 資 産 を、 年 金 債 務 の 時 価 評 価 リスクを 取 り 除 くための「ヘッジ・ポートフォリオ」と、<br />

投 資 リスクを 取 ってリターンを 追 求 する「 投 資 ポートフォリオ」の 二 つに 分 けて 管 理 しており、それぞ<br />

れのポートフォリオが 取 ることのできるリスクは 厳 密 に 管 理 ・ 監 視 され、お 互 いにリスクを 貸 し 借 りす<br />

ることはできないようにしている 69 。<br />

資 産 運 用 においては、ベンチマークに 対 する 利 回 り 目 標 を 設 定 するベンチマーク 運 用 ではなく、 絶 対<br />

利 回 り 目 標 を 設 定 しており、 年 初 の 年 金 負 債 総 額 に、 物 価 上 昇 率 と 1%のリスクプレミアムの 和 を 掛 け 算<br />

した 値 が 年 度 の 絶 対 利 回 り 目 標 水 準 となる。ちなみに、2013 年 度 は、 年 金 債 務 総 額 97 億 デンマーク・ク<br />

ローネを 基 に 設 定 されている。<br />

さらに ATP は、アルファ(= 投 資 技 術 を 駆 使 した「マーケット・ニュートラル」な 戦 略 )とベータ(=<br />

システマティックなリスクプレミアムの 追 求 )の 分 離 という 考 え 方 を 採 っており、「 投 資 ポートフォリオ」<br />

はさらに「アルファ・ポートフォリオ」と「ベータ・ポートフォリオ」の 2 つに 分 離 され、 別 々の 投 資<br />

チームが 判 断 を 行 う 体 制 となっている(なお、ここでいうベータはロング 戦 略 の 意 味 であり、 株 価 指 数<br />

等 への 追 従 を 行 うパッシブ 運 用 の 意 味 ではない。 事 実 、PRI への 報 告 において、パッシブ 運 用 比 率 は 2011<br />

年 時 点 で 0%となっている 70 )。<br />

68 Vittas, D. [2008] “A Short Note on the ATP Fund of Denmark” Policy Research Working Paper, The World Bank.<br />

69 Rohde, L. and C. Dengsøe [2010] “Higher Pensions and Less Risk: Innovation at Denmark's ATP Pension Plan” Rotman International Journal of<br />

Pension Management, Vol.3(2).<br />

70 ATP から PRI への 報 告 資 料 (2011 年 ) <br />

参 考 資 料 -89


「ベータ・ポートフォリオ」は 株 式 、 金 利 、 信 用 、インフレ、 商 品 の 各 アセットクラスに 分 類 される。<br />

なお、 上 場 株 式 については、 金 融 危 機 後 の 流 動 性 の 低 下 を 理 由 に、 一 時 的 に 海 外 株 式 を 全 て 売 却 してい<br />

る 71 。プライベートエクイティについては、 海 外 への 投 資 も 行 っている。<br />

図 表 ― 投 資 ポートフォリオの 内 訳 と 運 用 総 額<br />

区 分<br />

2012 年 末 時 点 の 運 用 総 額<br />

アルファ・ポートフォリオ 105<br />

ベータ・ポートフォリオ 2,702<br />

金 利 ( 国 債 、モーゲージ 債 、 等 )<br />

1,246<br />

信 用 ( 低 格 付 社 債 、 等 )<br />

465<br />

株 式 ( 上 場 株 式 、VC、PE、 等 )<br />

462<br />

インフレ( 不 動 産 、インフラ、 等 )<br />

453<br />

商 品 ( 商 品 先 物 、 等 )<br />

76<br />

合 計 2,806<br />

( 注 1) 単 位 は 億 DKK である。<br />

( 注 2) 合 計 のうち、ヘッジに 伴 うファイナンス 分 が 2,183 億 DKK 含 まれており、これを 差 し 引 いた 運 用<br />

資 産 総 額 は 623 億 DKK である。<br />

( 資 料 )The ATP Group Annual Report 2012 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

ATP は 1997 年 に ESG 投 資 に 関 する 方 針 「ATP’s Policy of Social Responsibility in Investments」を 策 定 。<br />

その 内 容 は 以 下 のとおり。<br />

1 企 業 が 活 動 する 国 の 行 政 当 局 及 び、デンマーク 政 府 が 支 持 する 国 際 機 関 により 定 められたルールに 反<br />

した 行 動 を、 故 意 にかつ 繰 り 返 し 行 う 企 業 の 株 式 への 投 資 を 行 わない。<br />

2 国 連 、EU 及 びデンマーク 政 府 が 禁 輸 措 置 国 に 指 定 する 国 に 所 在 する 企 業 の 株 式 への 投 資 を 行 わない。<br />

同 じく 1997 年 、ATP はコーポレートガバナンスに 関 する 方 針 も 策 定 しており、 投 資 先 企 業 への 働 きか<br />

けを 行 っている。コーポレートガバナンスの 側 面 では、 企 業 統 治 体 制 や 取 締 役 会 の 構 成 、 腐 敗 防 止 、 投<br />

資 家 権 利 保 護 などが 主 な 領 域 である。<br />

【 遵 守 ・ 考 慮 している 規 則 、イニシアティブ 等 】<br />

ATP は 以 下 の 組 織 等 との 関 係 があり、また 支 持 を 表 明 している。なお、 企 業 の GRI に 準 拠 した 情 報 開<br />

示 は 特 に 重 要 視 していない 72 。<br />

図 表 ―ATP の 関 係 組 織 等<br />

PRI<br />

組 織 等 名 称<br />

関 係 性<br />

2006 年 に PRI に 署 名 していたが、PRI の 組 織 運 営 に<br />

おける 透 明 性 と 民 主 主 義 が 欠 けており、ガバナンス<br />

上 の 不 満 があるとして、2013 年 に PRI を 離 脱 。しか<br />

71 ”Denmark's ATP Exits Foreign EQ,” Institutional Investor, 2011.11.17. <br />

72 ATP から PRI への 報 告 資 料 (2011 年 ) <br />

参 考 資 料 -90


国 際 コーポレートガバナンス・ネ<br />

ットワーク(ICGN)<br />

Danish Social Investment Forum<br />

(Dansif)<br />

カーボン・ディスクロージャー・<br />

プロジェクト(CDP)<br />

Institutional Investors Group on<br />

Climate Change(IIGCC)<br />

Farmland Principle<br />

Extractive Industries Transparency<br />

Initiative(EITI)<br />

し、PRI の 6 つの 原 則 には 引 き 続 き 賛 同 し、 尊 重 し<br />

ていく 旨 を 明 らかにしている。<br />

ATP はコーポレートガバナンスに 関 する 意 見 ・ 情 報<br />

交 換 等 を 目 的 に 設 立 された 国 際 組 織 ICGN のメンバ<br />

ーとして 参 加 。<br />

デンマークにおける ESG 投 資 の 普 及 ・ 啓 発 を 図 るフ<br />

ォーラムであり、ATP は 同 フォーラムの 共 同 設 立 者<br />

である。2011 年 から 2013 年 までの 間 は 会 長 も 務 め<br />

ていた。 現 在 も、 強 い 結 びつきがある。<br />

2008 年 から CDP に 署 名 。2012 年 までは CDP Nordic<br />

Partner も 務 めた。<br />

欧 州 地 域 における 気 候 変 動 問 題 に 関 する 70 以 上 の<br />

機 関 投 資 家 が 参 加 するネットワーク 組 織 であり、<br />

ATP は 2009 年 に IIGCC に 参 加 。2011 年 には 議 長 を<br />

務 めるなど、 活 動 に 積 極 的 に 参 画 。<br />

ATP は 現 時 点 で 農 地 への 投 資 は 行 っていないが、 農<br />

地 への 投 資 が 活 発 化 している 状 況 下 において、 多 国<br />

籍 企 業 への 批 判 が 高 まっている 土 地 収 奪 (Land<br />

grabbing) 行 為 等 への 懸 念 や、 環 境 ・ 地 域 への 配 慮<br />

等 に 賛 同 するスタンスを 表 明 。<br />

採 取 産 業 (Extractive industries)における 腐 敗 防 止 を<br />

目 指 す 国 際 イニシアティブに 2011 年 から 投 資 家 と<br />

して 参 加 。<br />

( 注 2) ATP は、PRI への 2011 年 の 報 告 資 料 において、ATP にとって 最 も 重 要 な 組 織 として Dansif を、 二<br />

番 目 に 重 要 な 組 織 として CDP を、 三 番 目 に 重 要 な 組 織 として IIGCC と 挙 げている。<br />

( 資 料 )ATP ホームページ、ATP から PRI への 報 告 資 料 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

企 業 の ESG 側 面 での 取 り 組 みに 関 して 何 が 適 切 かを 判 断 する 上 で、ATP の 受 益 者 の 中 にも 複 数 の 意 見<br />

が 存 在 し 得 ることから( 例 えば、たばこ、 武 器 製 造 、 採 取 産 業 、 農 業 化 学 物 質 )、デンマーク 国 会 の 決 定<br />

( 法 整 備 等 )を 常 に ESG 投 資 方 針 に 反 映 させることを 持 って、 民 意 を 反 映 した ESG 投 資 方 針 となるよう<br />

に 配 慮 していると 説 明 している。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

企 業 の ESG 側 面 の 取 り 組 みが、 企 業 の 事 業 リスクを 低 減 させ、かつ 事 業 の 可 能 性 を 創 出 することに 資<br />

することから、ESG 投 資 が ATP の 投 資 のリスクの 低 減 とリターンの 最 大 化 に 貢 献 するとの 考 えをしめし<br />

ている。また、コーポレートガバナンス・ポリシーに 基 づいて 投 資 先 企 業 のガバナンスの 改 善 を 促 して<br />

いくことは、 投 資 先 企 業 の 資 本 コストの 低 下 と 企 業 競 争 力 の 強 化 に 貢 献 するとの 考 えを 持 ち、それがひ<br />

いては 株 主 及 びその 他 のステークホルダーの 効 用 を 高 めることにつながる、としている。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

前 述 した ESG 投 資 方 針 を 評 価 基 準 とし、これに 反 する 企 業 の 株 式 への 投 資 は 行 わない。なお、ESG 投<br />

資 方 針 にあるように、デンマーク 政 府 が 支 持 する 国 際 機 関 により 定 められたルールに 反 した 行 動 が 一 度<br />

あった 時 点 で 排 除 されるのではなく、 故 意 にかつ 繰 り 返 し 行 っているかどうかが 評 価 のポイントとなっ<br />

ている。<br />

投 資 先 企 業 へのエンゲージメントは、 下 図 の 4 つのステップによって 行 われている。<br />

参 考 資 料 -91


1 スクリーニング<br />

ATP の 投 資 先 に ATP の ESG 投 資 方 針 に 抵 触 する 事 例 が 無 いかどうかについて、 外 部 調 査 機 関 も 活 用<br />

して 調 査 を 行 う。その 際 、メディアや NGO、 行 政 機 関 、 国 際 機 関 など 様 々な 情 報 ソースを 活 用 する。<br />

スクリーニングの 結 果 、 懸 念 が 発 覚 し、 更 なる 詳 細 調 査 が 必 要 とした 場 合 は、 事 実 確 認 ステップへと<br />

進 む。<br />

2 事 実 確 認<br />

スクリーニングにより 生 じた 懸 念 事 項 について、 以 下 のような 詳 細 な 調 査 を 行 う。その 際 、 特 に、 意<br />

図 的 かつ 繰 り 返 し 生 じている 事 実 かどうかが 重 要 視 される。<br />

懸 念 事 項 が 真 実 かどうかについて、 複 数 の 外 部 情 報 ソースの 情 報 を 検 証<br />

情 報 の 信 ぴょう 性 の 評 価<br />

生 じている 懸 念 事 項 に 対 する 当 該 企 業 からの 社 会 に 対 する 応 答 や 説 明 責 任 を 果 たしているかの<br />

検 証<br />

再 発 防 止 策 を 講 じているかどうかの 検 証<br />

3 対 話<br />

事 実 確 認 によって、ATP の ESG 投 資 方 針 に 抵 触 していると 判 断 した 投 資 先 については、 企 業 との 直<br />

接 対 話 が 実 施 される、ATP は、 投 資 運 用 上 の 理 由 以 外 では、 対 話 なしの 即 時 株 式 売 却 は 行 わないとし<br />

ている。その 理 由 として、 即 時 売 却 行 為 は、 企 業 に 改 善 を 促 す 影 響 力 が 小 さくなるためとしている。<br />

また、 企 業 との 直 接 対 話 は、 投 資 家 の 主 要 な 責 任 と 捉 え、 外 部 機 関 に 委 託 等 することはなく、 全 て<br />

ATP 自 らが 直 接 行 う 方 針 を 掲 げている。<br />

4 除 外<br />

企 業 との 直 接 対 話 の 結 果 は 以 下 の 3 通 りに 分 類 され、3 番 目 の 場 合 は 保 有 株 式 の 売 却 が 行 われる。<br />

対 話 の 結 果 、 生 じていた 懸 念 に 対 する 十 分 な 証 拠 が 示 されるなど 懸 念 が 事 実 ではないことが 判 明<br />

し、ATP の ESG 投 資 方 針 に 抵 触 しないことが 確 認 される 場 合<br />

懸 念 が 事 実 であると 確 認 されるが、 企 業 側 が 事 態 の 改 善 と 再 発 防 止 に 向 けて 十 分 な 対 策 を 講 じる<br />

場 合<br />

企 業 が 改 善 を 行 うことができない、または 行 う 意 思 がないと 判 断 する 場 合<br />

1スクリーニング 2 事 実 確 認 3 対 話 4 除 外<br />

( 注 1) 例 えば、 対 話 の 結 果 、 新 たに 判 明 した 事 実 について 改 めて 事 実 確 認 を 行 うこともあるなど、これらの 4 ステップは 必 ずし<br />

も 直 線 的 かつ 不 可 逆 なプロセスを 意 味 していない。<br />

( 資 料 )ATP ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成 。<br />

図 表 ―ATP のエンゲージメントの4つのステップ<br />

参 考 資 料 -92


D 日 本 企 業 を 評 価 した 事 例<br />

【ネガティブ 側 面 による 評 価 (ネガティブ・スクリーニング/エンゲージメント)の 事 例 】<br />

過 去 に ATP が 株 式 を 保 有 していた 日 本 の 上 場 企 業 のうち、 企 業 との 直 接 対 話 の 結 果 、 対 話 が 拒 否 され<br />

た、あるいは 望 ましい 改 善 が 得 られなかったとして 除 外 されたものの 一 覧 とその 理 由 は 次 のとおりであ<br />

る。なお、 前 述 のとおり、 金 融 危 機 の 発 生 後 、 上 場 株 式 について 保 有 していた 日 本 株 を 全 て 売 却 してお<br />

り、2010 年 以 降 の 日 本 企 業 の 除 外 事 例 はない。<br />

図 表 ― 日 本 企 業 が 除 外 された 事 例<br />

年 企 業 名 除 外 の 理 由<br />

2009 日 産 自 動 車 スーダンに 対 する 武 器 禁 輸 措 置 に 抵 触<br />

2008<br />

三 菱 石 油<br />

新 日 本 石 油<br />

ミャンマーに 対 する 禁 輸 措 置 に 抵 触<br />

2007 石 川 島 播 磨 重 工 業 クラスター 爆 弾 製 造 への 関 与<br />

( 注 1) 企 業 名 は ATP のホームページに 記 載 されているまま 訳 したものであり、 当 時 の 表 記 である。<br />

( 資 料 )ATP ホームページより 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

ATP 全 体 の ESG 投 資 活 動 全 体 を 総 括 する 内 部 委 員 会 (Committee for Social Responsibility in Investments)<br />

が 設 置 されている。 委 員 長 は ATP の CEO が 務 め、ATO の CIO、Head of Equities、Head of Illiquid Investments<br />

がメンバーとなっており、 年 4 回 の 定 例 会 議 と 必 要 に 応 じたアドホックな 会 議 が 行 われている。また ATP<br />

の 投 資 部 門 の 中 に ESG チームが 設 置 されており、ポートフォリオマネジャーと 連 携 して、ESG 投 資 が 行<br />

われている。<br />

ATP のエンゲージメントは、 前 述 のとおり、1スクリーニング、2 事 実 確 認 、3 対 話 、4 除 外 の 4 つ<br />

のステップで 行 われるが、3 つ 目 の 企 業 との 直 接 対 話 を 行 うのは 投 資 家 の 主 要 な 責 任 であると 捉 え、 外 部<br />

機 関 への 対 話 の 委 託 は 決 して 行 わないことを 方 針 としている。さらに、 対 話 による 企 業 への 影 響 力 を 高<br />

めるために、 同 様 の 考 え 方 を 持 つ 他 の 投 資 家 との 連 携 の 可 能 性 も 検 討 するとしている。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

1997 年 の ESG 投 資 方 針 を 策 定 後 、ESG に 関 する 企 業 調 査 はインハウスで 行 い 徐 々に 拡 充 を 図 ってきた<br />

が、2005 年 にイギリスの 独 立 系 ESG 評 価 機 関 EIRIS による 調 査 の 活 用 も 開 始 している。 現 在 は、EIRIS<br />

の 他 、 複 数 の 外 部 機 関 の 調 査 も 利 用 している 73 。 外 部 機 関 による 調 査 は、スクリーニング 及 び 実 態 調 査 に<br />

活 用 している。<br />

その 他<br />

73 Responsible Investor.org [2013]. “RI INSIGHT DENMARK: asset owner leaders in ESG and renewables”<br />

参 考 資 料 -93


PRI の 組 織 運 営 における 透 明 性 と 民 主 主 義 が 欠 けており、ガバナンス 上 の 不 満 があるとして、2013 年<br />

に PRI を 離 脱 したことを 明 らかにしているが、PRI の 6 つの 原 則 そのものの 趣 旨 には 引 き 続 き 賛 同 し、 尊<br />

重 していく 旨 を 明 らかにしている。<br />

参 考 資 料 -94


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

BlackRock<br />

運 用 機 関<br />

米 国 (ニューヨーク 市 )を 本 社 とし、30 か 国 以 上 に 70 拠 点 を 有 する<br />

住 所 55 East 52nd Street, New York, NY 10055<br />

運 用 資 産 総 額 総 額 4.32 兆 米 ドル( 約 454 兆 円 )(2013 年 12 月 末 時 点 )<br />

従 業 員 数<br />

約 11,200 名<br />

URL<br />

http://www.blackrock.com/<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

BlackRock は、グローバルに 資 産 運 用 、リスク・マネジメント、アドバイザリー・サービスを 提 供 して<br />

いる。ニューヨークを 本 社 とし、 北 米 、 南 米 、 欧 州 、アジア、オーストラリア、 中 東 、アフリカ 等 、 世<br />

界 30 カ 国 以 上 の 拠 点 と 従 業 員 約 11,200 名 を 有 する。2013 年 12 月 末 時 点 の 運 用 資 産 残 高 は、グループ 全<br />

体 で 総 額 4.32 兆 米 ドル( 約 454 兆 円 )と、 資 産 運 用 業 界 で 世 界 最 大 級 である。<br />

【 株 式 運 用 戦 略 】<br />

同 社 が 提 供 する 株 式 運 用 は、 主 に 以 下 の 3 通 りである。<br />

1インデックス 運 用<br />

iShares 多 様 な 株 式 指 数 に 最 小 限 のトラッキング・エラー74 で 追 随 することを 目 指 す 戦 略 。<br />

2 科 学 的 株 式 アクティブ 運 用<br />

定 量 モデルの 活 用 により 効 率 的 にリスク・バジェットを 配 分 し、 不 要 なリスクや 執 行 コストを 最 小<br />

化 したポートフォリオの 構 築 を 目 指 す。トラッキング・エラーが 低 位 なものから 中 位 のものまで、 様 々<br />

な 商 品 を 提 供 する。<br />

3ファンダメンタル 運 用<br />

徹 底 したファンダメンタル 分 析 に、チーム・アプローチとポートフォリオ・マネジャーによる 裁 量<br />

を 組 み 合 わせ、リスク 対 比 で 効 率 的 なポートフォリオの 構 築 を 目 指 す 株 式 戦 略 。トラッキング・エラ<br />

ーとリスク 水 準 は 中 位 から 高 位 まで、 多 様 な 商 品 を 有 する。<br />

ESG に 特 化 した 商 品 も 提 供 しているものの、 全 体 に 占 める 割 合 は 6% 程 度 である。 但 し、 全 商 品 に 対 し<br />

て、ESG リスク 及 び 事 業 機 会 の 分 析 、それらに 基 づくエンゲージメントや 議 決 行 使 を 実 施 している。そ<br />

れらは、Corporate Governance and Responsible Investment(CGRI) Team によって 実 施 されている。 同 チーム<br />

74 トラッキング・エラーとは、 運 用 におけるリスクを 測 定 する 尺 度 の 一 つで、ポートフォリオとベンチマークのリターンの 乖 離 のことを<br />

指 す。トラッキング・エラーが 小 さいほどリスクが 小 さく(=ベンチマークとほぼ 同 様 )、 大 きいほどリスクが 高 いアクティブ 運 用 である<br />

ことを 意 味 する。<br />

参 考 資 料 -95


は、サンフランシスコ・ニューヨーク・ロンドン・ 東 京 ・ 香 港 ・シドニーに 拠 点 を 置 き、 総 勢 20 名 の 専<br />

門 家 により 構 成 されている。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

良 質 なコーポレート・ガバナンスは、 企 業 の 長 期 的 な 成 功 に 貢 献 し、 結 果 として 顧 客 資 産 のリスク・<br />

リターン 向 上 にも 貢 献 すると 認 識 している。 同 社 では、 環 境 問 題 や 社 会 的 な 課 題 等 への 対 応 もコーポレ<br />

ート・ガバナンスとして 捉 えている。、 同 社 のコーポレート・ガバナンス 哲 学 は 以 下 の 通 り 75 で、この 哲<br />

学 に 基 づき、 企 業 とのエンゲージメントを 行 っている。なお、エンゲージメントを 行 うのは、 同 社 のコ<br />

ーポレート・ガバナンス 哲 学 の 考 えも 含 め、 企 業 との 相 互 理 解 を 促 進 するためである。<br />

1. 受 託 者 責 任 を 全 うするため、 私 たちの 主 要 な 使 命 は 顧 客 の 求 める 利 益 の 最 大 化 を 目 指 すことです<br />

2. 私 たちは 投 資 先 企 業 との 信 頼 を 構 築 して 相 互 理 解 を 深 めるためにたゆまぬ 努 力 をいたします<br />

3. 株 主 利 益 を 保 護 するためにも 私 たちは 責 任 感 を 持 って 投 資 先 企 業 の 状 況 を 適 格 に 把 握 したうえ、<br />

投 資 先 企 業 との 建 設 的 な 対 話 に 努 めます<br />

4. 長 期 株 主 としての 見 解 を 提 示 し、それに 対 する 企 業 の 回 答 を 傾 聴 します<br />

5. 環 境 問 題 や 社 会 的 な 問 題 等 もコーポレート・ガバナンスの 課 題 とみなし、そうした 点 においても<br />

企 業 経 営 者 とともに 相 互 理 解 を 深 めてまいります<br />

6. コーポレート・ガバナンスのプロフェッショナルとして、より 現 実 的 で 効 果 的 な 提 案 をいたしま<br />

す<br />

7. 株 主 価 値 を 保 護 するために、 企 業 とのエンゲージメントについては 公 にいたしません<br />

8. エンゲージメントが 意 図 した 方 向 に 進 まない 場 合 、 経 営 陣 に 反 対 票 を 投 じることもあります<br />

9. 当 社 のコーポレート・ガバナンス・プログラムは、 企 業 のコンプライアンスではなくリーダーシ<br />

ップと 経 営 に 焦 点 を 当 てており、 投 資 機 能 の 一 部 として 捉 えられています<br />

10. 私 たちは 社 内 の 様 々な 投 資 チームのポートフォリオマネージャーと 密 に 連 携 し、コーポレートガ<br />

バナンスについて 企 業 に 一 貫 したメッセージを 送 ります<br />

これまでに 行 ったエンゲージメントの 件 数 ( 地 域 別 )は 以 下 の 通 り。テーマが 複 数 の 場 合 もあるため、<br />

各 項 目 の 合 計 がトータル 件 数 と 一 致 していない。なお、 括 弧 内 の 比 率 は 各 項 目 の 合 計 で 各 項 目 の 件 数 を<br />

除 したものとしている。<br />

コーポレート・ガバナンスがエンゲージメントのテーマとなることがどの 地 域 も 多 いが、 特 に 日 本 、<br />

イギリス 除 く EMEA、 南 北 アメリカでその 色 彩 が 強 い 傾 向 が 見 られる。<br />

図 表 ― 分 野 別 のエンゲージメント 件 数<br />

地 域 トータル 件 数 環 境 社 会 ガバナンス<br />

オーストラリア/ニ<br />

ュージーランド<br />

283 87 (31%) 84 (30%) 112 (40%)<br />

日 本 116 8 (6%) 9 (7%) 116 (87%)<br />

75 日 本 総 合 研 究 所 による 仮 訳 。<br />

参 考 資 料 -96


日 本 除 くアジア 35 8 (18%) 6 (14%) 30 (68%)<br />

イギリス 除 く<br />

EMEA<br />

134 13 (8%) 14 (9%) 133 (83%)<br />

イギリス 186 20 (9%) 25 (12%) 167 (79%)<br />

南 北 アメリカ 692 34 (4%) 52 (7%) 677 (89%)<br />

トータル 1,446<br />

( 資 料 )BlackRock “2012 Engagement Review”(2012)より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

エンゲージメントの 目 的 は、 企 業 に 変 化 を 促 すことではなく、 企 業 の 意 見 を 尊 重 し、コミュニケーシ<br />

ョンをとることにある。 長 期 的 な 視 野 に 立 って、 企 業 に 建 設 的 なエンゲージメントを 行 うことによって、<br />

企 業 利 益 の 成 長 に 貢 献 すると 考 える。こうした 活 動 が 結 果 として 顧 客 資 産 のリスク・リターンの 向 上 に<br />

つながると 考 えている。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

Corporate Governance and Responsible Investment(CGRI) Team は 総 勢 20 名 の 専 門 家 により 構 成 されてい<br />

る。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

全 商 品 に 対 して 実 施 している ESG リスク 及 び 事 業 機 会 の 分 析 においては、 外 部 ESG 情 報 提 供 機 関 のデ<br />

ータを 利 用 している。<br />

参 考 資 料 -97


名 称<br />

区 分<br />

所 在 国 ( 都 市 )<br />

Allianz Global Investors<br />

運 用 機 関<br />

ドイツ(フランクフルト)<br />

住 所<br />

Bockenheimer Landstrasse 42-44, 60323 Frankfurt , Germany<br />

運 用 資 産 総 額 約 3,000 億 ユーロ(2012 年 12 月 時 点 )<br />

従 業 員 数<br />

約 2,800 名<br />

URL<br />

http://www.allianzgi.com/en/Pages/default.aspx<br />

A 組 織 概 要<br />

【 概 要 】<br />

Allianz Global Investors は、 世 界 最 大 級 の 保 険 会 社 アリアンツ 傘 下 の 資 産 運 用 会 社 である。アリアンツは<br />

1890 年 にドイツで 損 害 保 険 会 社 として 創 業 し、 今 日 ではそのグループ 全 体 で 14 万 人 もの 役 職 員 を 世 界<br />

70 か 国 に 抱 えている。<br />

Allianz Global Investors は、アリアンツの 資 産 運 用 事 業 の 大 部 分 を 所 有 する 持 株 会 社 Allianz Asset<br />

Management の 子 会 社 に 位 置 する。 世 界 の 19 の 市 場 で、 個 人 投 資 家 、 富 裕 層 、 機 関 投 資 家 を 顧 客 としてビ<br />

ジネスを 展 開 している。 親 会 社 であるアリアンツの 保 険 料 による 資 産 の 運 用 も 行 っている。 役 職 員 は 世<br />

界 で 2800 人 であり、うち 運 用 のプロフェッショナルが 約 500 名 である。 約 500 名 の 内 訳 は、 欧 州 が 280<br />

名 、 米 国 が 120 名 、アジア・パシフィックが 100 名 である。<br />

ESG 調 査 については、2000 年 に 専 門 部 隊 を 立 ち 上 げている。2013 年 現 在 、ロンドン 及 びパリオフィス<br />

を 中 心 に Global ESG Team が 組 織 され、ESG アナリスト、 議 決 権 行 使 スペシャリストが 合 計 12 名 所 属 し<br />

ている。Global ESG Team は 同 社 のリサーチ 体 制 の 一 角 を 形 成 しており、 横 串 的 に ESG リサーチを 実 施 、<br />

その 情 報 は 全 社 的 に 共 有 されている。<br />

【 資 産 ポートフォリオの 状 況 】<br />

2012 年 12 月 時 点 で、 受 託 運 用 資 産 総 額 は 約 3,000 億 ユーロである。 投 資 戦 略 としては、マルチアセッ<br />

ト 戦 略 、 債 券 戦 略 、 株 式 戦 略 、オルタナティブ 戦 略 など 幅 広 い 戦 略 を 手 がける。 世 界 でも 最 大 級 のアク<br />

ティブ 運 用 マネジャーの 1 社 である。<br />

ESG 投 資 については、 欧 州 地 域 で 230 億 ユーロ(うち、55 億 ユーロは ESG 投 資 に 関 するアドバイザリ<br />

ー)の 運 用 に 関 わっている。<br />

B 当 該 組 織 の ESG 投 資 ・ 評 価 方 法<br />

【ESG 投 資 方 針 の 内 容 】<br />

ESG 投 資 の 目 的 は、パフォーマンスの 向 上 にあるという 考 えである。ESG 評 価 にあたってはセクター<br />

別 にマテリアリティを 判 断 することが 極 めて 重 要 であり、 現 時 点 では 株 価 に 織 り 込 まれていない 長 期 の<br />

参 考 資 料 -98


リスク 及 び 事 業 機 会 を 特 定 することによって 長 期 的 なリスクリターン・プロファイルの 改 善 に 貢 献 する<br />

と 考 えている。<br />

【ESG 投 資 ・ 評 価 実 践 の 目 的 (ESG 投 資 と 運 用 成 績 との 関 連 性 に 関 する 考 え 方 等 )】<br />

ESG 要 因 を 考 慮 することは、 投 資 家 に 以 下 をもたらすとしている。<br />

1 アセットオーナーとしてのレピュテーションを 守 る:ネガティブ・スクリーニングにより 実 施<br />

2 リスクリターン・プロファイルを 改 善 する:ベスト・イン・クラスのアプローチにより 実 施<br />

3 投 資 先 企 業 のサステナビリティの 推 進 :エンゲージメント 及 び 議 決 権 行 使 により 実 施<br />

また、Allianz Global Investor として、 運 用 に 影 響 し 得 るすべての 情 報 を 考 慮 することが 受 託 者 責 任 を 果<br />

たすために 必 要 であり、ESG 要 因 を 考 慮 しないということは 受 託 者 責 任 に 反 するという 考 え 方 を 持 って<br />

いる。<br />

ESG 投 資 とパフォーマンスの 関 係 には、2011 年 に RCM 社 ( 当 時 。 現 在 は Allianz Global Investor に 改 組 )<br />

が、ESG 投 資 と 運 用 成 績 の 関 連 性 についてレポートを 公 表 76 。それによると、ESG 側 面 の 基 準 を 株 式 選<br />

定 プロセスに 組 み 入 れることは、ポートフォリオのパフォーマンスにマイナスの 影 響 はもたらさないこ<br />

と、 長 期 的 に 超 過 収 益 を 獲 得 する 可 能 性 が 上 昇 することが 明 らかになった、としている。<br />

Allianz Global Investor は、 業 種 別 にマテリアルな ESG 要 因 すべてにおいて 相 対 的 に 優 れた 銘 柄 によりポ<br />

ートフォリオを 構 築 するベスト・イン・クラスの 手 法 を、アセットオーナーに 対 して 提 案 しており、 同<br />

社 の ESG 投 資 による 運 用 資 産 はすべてベスト・イン・クラスによるものである。<br />

武 器 製 造 に 関 与 する 銘 柄 の 除 外 といったネガティブ・スクリーニングは、 顧 客 からの 要 請 に 基 づいて<br />

実 施 しており、それは、 顧 客 のレピュテーション 低 下 を 回 避 するために 行 うものであると 位 置 づけてい<br />

る。<br />

ESG に 関 する 投 資 家 と 企 業 とのコミュニケーションは、 例 えばある 年 に ESG 投 資 家 向 けの 説 明 会 が 行<br />

われても 翌 年 は 実 施 されないなど、コミュニケーションがまばらで 首 尾 一 貫 していないという 認 識 をも<br />

っている。 企 業 の ESG 取 り 組 みを 正 しく 理 解 し 評 価 するためには、 定 期 的 、 直 接 的 なコミュニケーショ<br />

ンが 重 要 であると 考 えている 77 。<br />

C 企 業 の 非 財 務 情 報 の 評 価 に 係 る 評 価 基 準 の 特 徴<br />

【 投 資 先 を 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ポジティブ 側 面 の 評 価 )】<br />

前 述 のとおり、ESG のすべての 側 面 に 関 して、マテリアルな ESG 要 因 を 特 定 ・ 評 価 し、ベスト・イン・<br />

クラスによってポートフォリオを 構 築 している。なお、ガバナンスは 特 定 業 種 に 限 ってマテリアルなも<br />

のではないため、 全 業 種 一 律 の 評 価 軸 である。<br />

76 RCM [2011]. “RCM Sustainability Heading White Paper” <br />

77 Bozena Jankowska, Global Co-Head of ESG Research へのインタビュー 記 事 <br />

参 考 資 料 -99


【 投 資 先 を 非 選 定 する 際 の 評 価 基 準 (ネガティブ 側 面 /エンゲージメントの 評 価 )】<br />

前 述 のとおり、ネガティブ・スクリーニングは 顧 客 にとってのレピュテーション 維 持 のための 手 段 で<br />

あり、 顧 客 からの 要 請 にしたがって、 実 行 している。<br />

E 企 業 の 非 財 務 情 報 評 価 に 係 る 情 報 ソース<br />

【 社 内 リソースの 利 用 ( 社 内 スタッフの 有 無 等 )】<br />

Global ESG Team に 在 籍 する 9 名 の ESG アナリストが ESG 調 査 を 実 施 している。<br />

【 社 外 リソースの 利 用 ( 外 部 の 独 立 系 ESG 評 価 機 関 の 利 用 等 )】<br />

外 部 の ESG 調 査 会 社 から、 企 業 の ESG に 関 する 基 礎 的 な 生 データを 取 得 し、それを 同 社 独 自 の ESG<br />

レーティングモデルに 入 力 して 使 用 している。<br />

参 考 資 料 -100


名 称<br />

Cisco Systems<br />

本 社 所 在 国 ( 都 市 ) 米 国 (サンノゼ)。 全 世 界 165 ヵ 国 以 上 で 事 業 を 実 施 。<br />

住 所 170 West Tasman Dr. San Jose, CA 95134<br />

124 億 ドル(2013 年 度 第 4 四 半 期 )。アメリカ(59.2%)、ヨーロッパ・<br />

売 上 ( 地 域 別 )<br />

中 東 ・アフリカ(25.3%)、 環 太 平 洋 、 日 本 、 中 国 、インド(15.5%)<br />

http://newsroom.cisco.com/documents/10157/ad84312a-f915-4b10-8ee3-c700<br />

84e16e4b より 算 出<br />

セクター<br />

情 報 ・ 通 信<br />

従 業 員 数 約 75,000 名 (2013 年 度 )<br />

URL<br />

主 要 な ESG 評 価 機 関 の 評 価<br />

http://www.cisco.com/<br />

DJSI、FTSE4Good Index に 選 定 。CDP2013 で CPLI・CDLI に 選 定 。<br />

http://investor.cisco.com/awards.cfm<br />

A サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略<br />

【サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略 の 内 容 】<br />

CSR レポート 2013 によると、 同 社 の CSR 戦 略 では 以 下 の 分 野 に 注 力 するとしている。<br />

サプライチェーン: 倫 理 、 労 働 者 の 権 利 、 健 康 、 安 全 、 環 境 の 高 い 基 準 を 維 持 するために、サプライヤ<br />

ーと 共 に 働 く<br />

人 : 従 業 員 が、 共 同 的 、 包 摂 的 、かつ 健 康 的 な 職 場 の 中 で 能 力 を 伸 ばし、 全 てのポテンシャルを 達 成 で<br />

きることを 支 援 する<br />

社 会 : 教 育 、ヘルスケアへのアクセスの 拡 大 、 重 大 な 人 類 のニーズへの 応 答 、 災 害 援 助 の 取 り 組 み、 経<br />

済 的 発 展 の 機 会 の 創 造 、コミュニティの 存 続 を 助 けるため、 他 の 組 織 とともに 働 く<br />

環 境 : 技 術 と 提 唱 を 通 して、 顧 客 及 び 自 社 自 身 の 環 境 面 での 持 続 可 能 性 を 改 善 する<br />

CSR とビジネスとの 関 係 については、「 顧 客 や 社 会 、 環 境 にとっての 価 値 を 創 出 することが 自 社 ビジネ<br />

スを 強 化 する」との 認 識 を 示 している(CSR レポート A5)。<br />

また、 同 社 はサステナビリティの 取 り 組 みにおいて 27 の 課 題 を 抽 出 し、マテリアリティの 評 価 を 行 っ<br />

ている(CSR レポート B11~12)。 顧 客 、 従 業 員 、 投 資 家 、 事 業 を 実 施 する 地 域 コミュニティを 含 めた 多<br />

様 なステークホルダーからの 要 請 が 想 定 される 項 目 について、1「ステークホルダーにとっての 重 要 性<br />

(ステークホルダーにとっての 影 響 や 関 心 度 合 いの 大 きさ)」、2「CISCO が 及 ぼす 影 響 」の 2 つの 観 点<br />

から 測 定 し、マッピングしている。この 評 価 結 果 は、 環 境 、 社 会 、ガバナンス 側 面 における 戦 略 策 定 の<br />

ための 意 思 決 定 に 用 いられている。<br />

マテリアリティ 評 価 の 結 果<br />

環 境<br />

水 の 使 用 は、 当 初 予 想 していたより 関 連 性 が 薄 かった。 水 とその 他 の 環 境 課 題 に 対 してど<br />

参 考 資 料 -101


社 会<br />

ガバナンス<br />

のようなバランスで 注 力 していくべきかを 内 部 で 議 論 し、 我 々は、 事 業 活 動 における 水 の<br />

使 用 から、 安 全 で 安 心 な 水 へのアクセスへと 注 力 対 象 を 広 げるために 評 価 結 果 を 用 いるこ<br />

ととした。<br />

シスコと 社 会 の 両 方 にとって、「 雇 用 創 出 」と「21 世 紀 型 スキル」が 重 要 と 位 置 づけら<br />

れた。 雇 用 創 出 と 21 世 紀 型 技 術 ・ビジネススキルを 提 供 する 我 々の 社 会 的 プログラムに<br />

よる「 雇 用 され 得 る 能 力 (employability)」の 成 果 を 評 価 する 方 法 の 開 発 に 注 力 した。<br />

我 々は、 人 権 擁 護 のために 長 期 的 な 立 場 でコミットメントを 行 ってきた。しかし、マテリ<br />

アリティ 評 価 によって、より 深 い 理 解 を 得 られ、 人 権 のどの 側 面 に 最 も 注 力 すべきかを 特<br />

定 するのに 役 立 った。その 結 果 、 情 報 へのアクセスとプライバシーの 保 護 に 関 しコミット<br />

メントを 強 化 した。<br />

( 資 料 )CSR レポート B13 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

特 に 環 境 面 では、 自 社 の 事 業 活 動 やサプライチェーン、 顧 客 の 製 品 使 用 に 伴 う 環 境 へのインパクトに<br />

応 じて、 取 り 組 みの 優 先 順 位 を 以 下 の 5 つの 階 層 に 分 けている。<br />

Tier Environment Topic<br />

1 製 品 のエネルギー 効 率 (Product energy efficiency)<br />

事 業 活 動 におけるエネルギー 消 費 (Energy consumption (operations))<br />

2 使 用 済 み 製 品 による 廃 棄 物 (Waste (product EOL))<br />

3 使 用 済 み 製 品 の 容 器 包 装 による 廃 棄 物 (Waste (product packaging EOL))<br />

水 質 汚 染 Water pollution (liquid effluents)<br />

製 品 輸 送 における 排 出 (Transport emissions (from product logistics))<br />

4 事 業 活 動 における 廃 棄 物 Waste (operational “trash”)<br />

有 害 物 質 (Hazardous materials)<br />

水 の 使 用 (Water use)<br />

生 物 多 様 性 と 土 地 活 用 (Biodiversity and land use)<br />

5 GHG 以 外 の 大 気 への 排 出 Non-GHG airborne emissions<br />

( 資 料 )CSR レポート F6 より 日 本 総 合 研 究 所 作 成<br />

温 室 効 果 ガス 排 出 量 の 削 減 に 関 しては、2013 年 1 月 、 新 たに 5 つの 削 減 目 標 を 発 表 した。<br />

1. Scope 1 と 2 について、2017 年 度 までに 全 世 界 の 温 室 効 果 ガス 排 出 量 を、2007 年 度 を 基 準 とし<br />

て 40% 削 減 する。<br />

2. 売 上 高 単 位 当 たりの 運 用 エネルギー 使 用 を、2017 年 度 までに、2007 年 度 を 基 準 として 15% 削<br />

減 する。<br />

3. 2017 年 度 末 までに、 電 力 消 費 量 を 正 味 、 消 費 加 重 値 、 電 力 排 出 係 数 について、 公 に 入 手 可 能 な 最<br />

新 の IEA の 世 界 平 均 排 出 係 数 に 対 して 半 分 に 減 らす。<br />

4. 2017 年 度 までに、 毎 年 、 電 力 消 費 量 の 25% 以 上 を、 再 生 可 能 エネルギーにより 発 電 された 電 力<br />

とする。<br />

参 考 資 料 -102


5. 2017 年 度 までに、 航 空 便 を 利 用 した 出 張 の 削 減 により、Scope 3 の 排 出 量 を 2007 年 度 を 基 準 と<br />

して 40% 削 減 する。<br />

なお、 同 社 ではブラジル( 英 語 、ポルトガル 語 )と 中 国 ( 中 国 語 )においても、CSR レポートを 発 行<br />

している。<br />

また、CSR 活 動 によって 地 域 社 会 や 地 域 住 民 にどのような 影 響 (impact)をもたらしたかについて、”CSR<br />

impact Stories”として 開 示 している。 具 体 的 には、アフリカやアメリカ、ヨーロッパ、 中 東 において 実 施<br />

している IT・ネットワーク 関 連 の 教 育 の 影 響 (education impact)、ネットワーク 技 術 がもたらすヘルスケ<br />

アへのアクセスの 影 響 (healthcare impact)、その 地 域 にもたらした 経 済 的 影 響 (Economic Empowerment<br />

Impact)について、ストーリー 立 てて 開 示 している 78 。<br />

B 投 資 家 に 向 けた ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み<br />

【ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み( 足 元 ・ 今 後 )】<br />

同 社 は、CDP への 回 答 に 注 力 しており、2008 年 から 5 年 連 続 で CDLI(Carbon Disclosure Leadership Index)<br />

に 選 定 されている。2012 年 はサプライヤー 企 業 に 対 しても、CDP のサプライチェーンプログラムへの 回<br />

答 を 促 している。<br />

【ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 取 り 組 み( 足 元 ・ 今 後 )】<br />

シスコの IR チームは、 主 要 なサステナビリティ 課 題 ( 人 権 から 役 員 報 酬 まで)に 対 する 投 資 家 の 見 解<br />

を、 同 社 の 役 員 や 取 締 役 会 のメンバーに 共 有 している。IR は 社 会 的 責 任 投 資 家 との 会 合 を 定 期 的 に 開 催<br />

し、 同 社 のリーダー 達 にも 同 様 に 社 会 的 責 任 投 資 家 とのダイアログに 関 与 させている。(CSR レポート<br />

B10「investors」より 抜 粋 )<br />

同 社 では 2012 年 に 12 月 に 人 権 方 針 を 策 定 した。ビジネス 領 域 が 拡 がるにつれて、 同 社 としても 人 権<br />

に 関 するオポチュニティとリスクの 位 置 付 けを 特 定 ・ 強 化 していかなければいけない。このため、 人 権<br />

問 題 に 関 して、 投 資 家 を 含 めたステークホルダーと 協 働 、 定 期 的 にエンゲージメントしていく 方 針 を 示<br />

している。(CSR レポート B20「Our Approach to Engagement on Human Rights」より 抜 粋 )<br />

2014 年 度 末 までに、 投 資 家 にとって 重 要 な 課 題 についてより 有 意 義 なダイアログを 行 うために、 主 要<br />

な 社 会 的 責 任 投 資 家 とのエンゲージメントを 増 加 ・ 深 化 させることを 目 標 に 掲 げている。(CSR レポート<br />

B3 より 抜 粋 )<br />

78<br />

Cisco Systems ホームページ<br />

参 考 資 料 -103


名 称<br />

Johnson & Johnson<br />

本 社 所 在 国 ( 都 市 )<br />

米 国 (ニュージャージー 州 )。 世 界 60 カ 国 に 250 以 上 のグループ 企 業<br />

を 有 する。<br />

住 所 1 Johnson & Johnson Plaza, New Brunswick , NJ 08933<br />

売 上 ( 地 域 別 ) 672 億 ドル(2012 年 度 )。 米 国 (44%)、 米 国 以 外 (56%)<br />

セクター<br />

ヘルスケア<br />

従 業 員 数 約 127,600 名 ( 子 会 社 も 含 む)<br />

URL<br />

http://www.jnj.com/<br />

主 要 な ESG 評 価 機 関 の 評 価<br />

FTSE4Good Index、Dow Jones Sustainability Index(N. America,<br />

Global)に 選 定 。Global Access to Medicines Index ではグローバルな 製<br />

薬 メーカー20 社 中 2 位 、その 他 、100 Best Companies for Working<br />

Mothers, Best Places to Work for Gay, Lesbian, Bisexual and<br />

Transgender Equality など、 多 数 の 評 価 を 受 けている<br />

A サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略<br />

【サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略 の 内 容 】<br />

サステナビリティ 活 動 の 根 幹 には、「 我 が 信 条 (Our Credo)」という 企 業 理 念 がある。これは、 顧 客 、<br />

社 員 、 地 域 社 会 、 株 主 に 対 する 責 任 を 具 体 的 に 明 示 したものである。1943 年 のニューヨーク 証 券 取 引 所<br />

の 株 式 公 開 の 1 年 前 に、3 代 目 社 長 によって 起 草 された。その 後 、 取 締 役 会 において「この 文 書 はジョン<br />

ソン・エンド・ジョンソンという 会 社 の 社 会 的 責 任 (Company Social Responsibility)を 記 したものである」<br />

として 導 入 された。<br />

1982 年 には、 同 社 のタイレノール( 解 熱 鎮 痛 剤 )に 毒 物 混 入 事 件 が 発 覚 し、 顧 客 7 名 が 死 亡 するとい<br />

う 大 惨 事 が 起 きた。しかし、 顧 客 への 周 知 、 回 収 、パッケージの 改 良 などを 迅 速 に 行 った 結 果 、 顧 客 か<br />

らの 信 頼 を 失 うことはなかった。そうした 迅 速 な 対 応 の 背 景 に「 我 が 信 条 」があるというのは、 同 社 の<br />

姿 勢 を 示 す 有 名 なエピソードとなっている。<br />

世 界 が 直 面 するヘルスケアに 関 するニーズギャップを 優 先 課 題 とし、Citizenship & Sustainability Report<br />

だけでなく、 同 社 のアニュアルレポートの 中 の 株 主 向 けのトップメッセージの 中 でも 言 及 されている。<br />

そうしたギャップには、 新 興 国 における 基 本 的 なヘルスケアへのギャップ、 先 進 国 におけるメンタルヘ<br />

ルスケアサービスのギャップ、 予 防 的 医 療 に 対 するギャップなどが 含 まれる。<br />

2012 Citizenship & Sustainability Report によれば、サステナビリティの 取 り 組 み 実 践 においては、 以 下 の<br />

領 域 に 注 力 している。<br />

- 製 品 の 品 質 と 安 全 性<br />

-グローバルヘルス<br />

- 生 命 倫 理<br />

-イノベーション<br />

-ヘルスケアコンプライアンスと 倫 理<br />

参 考 資 料 -104


- 環 境 への 影 響<br />

- 生 物 多 様 性 保 全<br />

- 製 品 スチュワードシップとデザイン<br />

- 人 権<br />

- 透 明 性<br />

-サプライチェーン<br />

- 新 興 国 市 場<br />

- 健 康 と 予 防<br />

- 偽 造 医 薬 品<br />

- 従 業 員 や 労 使 関 係 の 統 計<br />

-ベネフィット<br />

-ダイバーシティとインクルージョン<br />

-ステークホルダー・エンゲージメント<br />

また、2015 年 までのゴールは「Healthy Future 2015 Sustainability Goals Progress」の 中 で、 具 体 的 に 以 下<br />

のように 設 定 している。いずれも、 具 体 的 かつ 進 捗 測 定 が 可 能 な 目 標 が 設 定 されているのが 特 徴 である。<br />

目 標 ・ 進 捗<br />

Health Future 2015 サステナビリティ 目 標 と 進 捗<br />

2015 戦 略 施 策 / 目 標 進 捗 ( 特 に 注 記 ない 場 合 は 累 積 実 績 )<br />

世 界 的 な<br />

健 康 の 促 進<br />

研 究 協 力 1 件 、 発 展 途 上 国 の 疾 病 に 関 するラ<br />

イセンス 契 約 3 件<br />

少 なくとも 90 の 発 展 途 上 ・ 中 間 所 得 国 で、 特<br />

別 努 力 価 格 による HIV 治 療 登 録 と 利 用 を 実 現<br />

発 展 途 上 国 の 疾 病 に 関 する 自 社 全 製 品 の<br />

WHO の 事 前 資 格 審 査 通 過<br />

回 虫 のいる 子 供 向 けに、 年 に 2 億 回 分 のメベ<br />

ンダゾルを 提 供<br />

HIV 向 けの 3 剤 併 用 治 療 の 登 録 とジェネリッ<br />

ク・ライセンス 契 約<br />

ストップ TB( 結 核 )パートナーシップに 参 加<br />

/2012 年 にはそれに 伴 う 付 加 的 パートナシッ<br />

プの 基 礎 作 りとライセンス 契 約<br />

自 社 抗 レトロウィルス 薬 (ARV)の 2 製 品 を<br />

66 か 国 において 特 別 努 力 価 格 で 提 供 / 中 間 及<br />

び 低 所 得 国 48 か 国 において、 自 社 レトロウィ<br />

ルス 薬 の 製 剤 承 認 取 得 / 現 地 規 制 によって 許<br />

可 されている 全 ての 国 で、 前 承 認 アクセスプロ<br />

グラム 実 施 中<br />

結 核 薬 の 必 須 医 薬 品 リストに 申 請 /WHO の 事<br />

前 資 格 審 査 に 通 過 したいくつかの 自 社 HIV 抗<br />

レトロウィルスの 製 剤<br />

2012 年 14 か 国 で 1.16 億 回 分 を 提 供<br />

2011 年 、 米 国 及 び 欧 州 ・ 中 東 ・アフリカにお<br />

ける 新 しい 3 剤 併 用 治 療 の 登 録 /<br />

2011 年 、HIV 治 療 薬 リルピビリンのジェネリ<br />

ック・ライセンス 契 約 5 件 成 約<br />

参 考 資 料 -105


地 球 環 境 の<br />

保 全<br />

サプライヤ<br />

ーの 持 続 可<br />

能 性<br />

健 康 を 意 識<br />

した 従 業 員<br />

施 設 の CO2 排 出 :2020 年 までに 施 設 での CO2<br />

排 出 の 20% 削 減<br />

クリーンエネルギー: 施 設 内 の 再 生 可 能 エネ<br />

ルギー 及 びクリーンテクノロジーの 稼 働 能 力<br />

を 50MW に 増 加<br />

輸 送 の CO2 排 出 : 輸 送 車 両 の CO2 排 出 効 率<br />

を 20% 改 善<br />

水 使 用 量 : 製 造 及 び 研 究 開 発 拠 点 における 水<br />

の 使 用 量 の 10% 削 減<br />

廃 棄 物 : 製 造 及 び 研 究 開 発 拠 点 における 総 廃<br />

棄 物 量 の 10% 削 減<br />

製 品 とパッケージングについては、ライフサ<br />

イクルと 持 続 可 能 性 の 改 善 を 目 指 す<br />

Earthwards®(アースウォーズ) 認 定 の 評 価 を<br />

行 う<br />

全 ての 戦 略 的 サプライヤーは、2 項 目 ないし<br />

はそれ 以 上 の 持 続 可 能 性 を 目 指 す 目 標 を 開 示<br />

する<br />

2011 年 までに 10 億 ドルを 多 様 なサプライヤ<br />

ーの 持 続 可 能 性 の 取 り 組 みに 充 て、その 後 は<br />

毎 年 5% 増 とする<br />

人 権 リスクの 高 い 国 の 全 てのサプライヤー<br />

は、Johnson & Johnson の 人 権 規 定 を 認 識 し、<br />

自 社 の 方 針 と 適 合 していることを 確 認 する<br />

全 ての 重 要 職 にある 従 業 員 は 人 権 研 修 を 受 け<br />

る<br />

全 てのパーム 油 とパーム 油 由 来 のものは、 認<br />

証 を 受 けた 持 続 可 能 な 生 産 源 から 調 達 する<br />

外 部 ベンチマークとの 比 較 において、 従 業<br />

員 エンゲージメントが 90 パーセンタイル<br />

約 6.1%の 削 減<br />

45.5MW 規 模 の 導 入 もしくは 導 入 段 階<br />

9.1% 削 減<br />

2% 弱 の 削 減<br />

9.2%の 削 減<br />

36 製 品 の Earthwards®(アースウォーズ) 認 定<br />

戦 略 的 サプライヤーの 41%が、2 項 目 ないしは<br />

それ 以 上 の 持 続 可 能 性 を 目 指 す 目 標 を 開 示<br />

2012 年 には、12 億 ドルをサプライヤーの 持 続<br />

可 能 性 の 取 り 組 みに 計 上 、<br />

対 2011 年 で、5% 減<br />

88%の 外 部 生 産 者 と 関 与 する 製 薬 原 料 サプラ<br />

イヤーが Johnson & Johnson の 人 権 規 定 への 適<br />

合 を 確 認 / 戦 略 サプライヤーの 19%が 人 権 規<br />

定 への 適 合 を 確 認<br />

76%が 研 修 完 了<br />

認 証 を 持 つ 新 たな 持 続 可 能 なパーム 油 の 派 生<br />

品 調 達 源 を 探 索 ・ 開 発 中 だが、 目 標 達 成 までは<br />

グリーン・パーム 認 定 のものを 調 達 し、 農 場 レ<br />

ベルで 持 続 可 能 なパーム 林 の 育 成 能 力 を 向 上<br />

させるプロジェクトを 支 援<br />

2012 年 には、 自 社 で 使 用 するパーム 油 の 100%<br />

に 相 当 する 持 続 可 能 なグリーン・パーム 認 定 原<br />

料 を 調 達 し、 独 立 した 小 自 作 農 園 から 認 定 グリ<br />

ーン・パームを 調 達 した 初 の 企 業 となった<br />

総 合 的 な Johnson & Johnson 及 び 各 事 業 区 分 の<br />

エンゲージメント・レベルが、メイフラワー・<br />

参 考 資 料 -106


のエンゲー<br />

ジメント<br />

コミュニテ<br />

ィの 健 康<br />

慈 善 活 動<br />

透 明 性 と<br />

協 業<br />

( 上 位 10%) グローバル 基 準 79 を 超 える<br />

従 業 員 の 90%がカルチャー・オブ・ヘル 50%の 従 業 員 が 達 成<br />

ス・プログラム( 社 員 の 健 康 増 進 プログラ<br />

ム)を 利 用 する<br />

従 業 員 の 80%が 健 康 リスクアセスメント 41%の 従 業 員 が 達 成<br />

を 完 了 し、 各 自 の 主 要 健 康 指 標 を 認 知 する<br />

測 定 対 象 となった 従 業 員 のうち、80%が 低 78%の 測 定 結 果 が 低 リスク<br />

リスクとの 測 定 結 果<br />

2010 年 比 で 従 業 員 の 安 全 を 15% 改 善 ( 労 働 時 労 働 時 間 損 失 災 害 率 で 15% 改 善<br />

間 損 失 災 害 率 [Lost workday case rate] 目 標<br />

0.09)<br />

2010 年 比 で 委 託 労 働 者 の 安 全 を 15% 改 善 労 働 時 間 損 失 災 害 率 で 21% 改 善<br />

( 労 働 時 間 損 失 災 害 率 目 標 0.12)<br />

2010 年 比 で 自 動 車 の 業 務 使 用 時 の 安 全 を 100 万 マイル 毎 の 自 動 車 事 故 5% 増 加<br />

15% 改 善 (100 万 マイル 毎 の 自 動 車 事 故<br />

4.7)<br />

25 か 国 100 の 自 治 体 で 健 康 啓 発 イニシアティ 未 実 施<br />

ブの 立 ち 上 げ<br />

上 記 イニシアティブによる 関 与 人 数 の 報 告<br />

健 康 関 連 効 果 を 測 定 する 主 要 慈 善 活 動 プログ 主 要 慈 善 活 動 プログラム 63 件 のうち 90%が 健<br />

ラム 数 の 増 加<br />

康 関 連 効 果 を 測 定<br />

健 康 関 連 効 果 の 測 定 及 び 報 告 を 行 う 主 要 な 慈 全 プログラムにおいて、モニタリング 及 び 評 価<br />

善 活 動 プログラムの 割 合 を 増 加<br />

論 理 モデルを 開 発<br />

中 間 階 層 の 健 康 関 連 効 果 の 測 定 及 び 報 告 を 行 プログラム 250 件 中 181 件 (72%)で 健 康 関 連<br />

う 主 要 な 慈 善 活 動 プログラムの 割 合 を 増 加 効 果 の 測 定 と 報 告 を 行 う<br />

全 てのブランドのウェブサイトにおいて、 製 主 要 ブランドのうち 43%が、ウェブサイトで<br />

品 の 持 続 可 能 性 に 関 する 情 報 を 公 開<br />

製 品 の 持 続 可 能 性 に 関 する 情 報 を 公 開<br />

主 要 なステークホルダー・エンゲージメント 実 行 中<br />

と 新 規 協 業 の 報 告<br />

JNJ.com/responsibility で、 主 要 なイシューに 関 JNJ.com/responsibility で 企 業 方 針 ・ 考 え 方 を 共<br />

する 企 業 方 針 ・ 考 え 方 を 共 有 する<br />

有<br />

主 要 な 市 場 の 経 済 及 び 持 続 可 能 性 のオンライ 実 行 中<br />

ン 報 告 を 強 化 ・ 提 供<br />

【 我 が 信 条 の 内 容 】<br />

我 々の 第 一 の 責 任 は、 我 々の 製 品 及 びサービスを 使 用 してくれる 医 師 、 看 護 師 、 患 者 、<br />

79 Mayflower Group は、 最 低 7500 人 の 従 業 員 を 抱 える 大 手 トップ 企 業 40 社 以 上 からなるコンソーシアム。 世 界 中 の 300 万 人 の 従 業 員 か<br />

ら 収 集 した 調 査 結 果 をデータベースとして 保 持 し、 主 に 従 業 員 の 姿 勢 測 定 、ベンチマーキングなどの 調 査 を 行 い、グローバル 基 準 を 構 築<br />

している。<br />

参 考 資 料 -107


そして 母 親 、 父 親 をはじめとする、すべての 顧 客 に 対 するものであると 確 信 する。<br />

顧 客 一 人 一 人 のニーズに 応 えるにあたり、 我 々の 行 なうすべての 活 動 は 質 的 に 高 い 水 準 のものでなければなら<br />

ない。<br />

適 正 な 価 格 を 維 持 するため、 我 々は 常 に 製 品 原 価 を 引 き 下 げる 努 力 をしなければならない。<br />

顧 客 からの 注 文 には、 迅 速 、かつ 正 確 に 応 えなければならない。<br />

我 々の 取 引 先 には、 適 正 な 利 益 をあげる 機 会 を 提 供 しなければならない。<br />

我 々の 第 二 の 責 任 は 全 社 員 ―― 世 界 中 で 共 に 働 く 男 性 も 女 性 も―― に 対 するものである。<br />

社 員 一 人 一 人 は 個 人 として 尊 重 され、その 尊 厳 と 価 値 が 認 められなければならない。<br />

社 員 は 安 心 して 仕 事 に 従 事 できなければならない。<br />

待 遇 は 公 正 かつ 適 切 でなければならず、<br />

働 く 環 境 は 清 潔 で、 整 理 整 頓 され、かつ 安 全 でなければならない。<br />

社 員 が 家 族 に 対 する 責 任 を 十 分 果 たすことができるよう、 配 慮 しなければならない。<br />

社 員 の 提 案 、 苦 情 が 自 由 にできる 環 境 でなければならない。<br />

能 力 ある 人 々には、 雇 用 、 能 力 開 発 および 昇 進 の 機 会 が 平 等 に 与 えられなければならない。<br />

我 々は 有 能 な 管 理 者 を 任 命 しなければならない。<br />

そして、その 行 動 は 公 正 、かつ 道 義 にかなったものでなければならない。<br />

我 々の 第 三 の 責 任 は、 我 々が 生 活 し、 働 いている 地 域 社 会 、<br />

更 には 全 世 界 の 共 同 社 会 に 対 するものである。<br />

我 々は 良 き 市 民 として、 有 益 な 社 会 事 業 および 福 祉 に 貢 献 し、 適 切 な 租 税 を 負 担 しなければならない。<br />

我 々は 社 会 の 発 展 、 健 康 の 増 進 、 教 育 の 改 善 に 寄 与 する 活 動 に 参 画 しなければならない。<br />

我 々が 使 用 する 施 設 を 常 に 良 好 な 状 態 に 保 ち、 環 境 と 資 源 の 保 護 に 努 めなければならない。<br />

我 々の 第 四 の、そして 最 後 の 責 任 は、 会 社 の 株 主 に 対 するものである。<br />

事 業 は 健 全 な 利 益 を 生 まなければならない。<br />

我 々は 新 しい 考 えを 試 みなければならない。<br />

研 究 開 発 は 継 続 され、 革 新 的 な 企 画 は 開 発 され、 失 敗 は 償 わなければならない。<br />

新 しい 設 備 を 購 入 し、 新 しい 施 設 を 整 備 し、 新 しい 製 品 を 市 場 に 導 入 しなければならない。<br />

逆 境 の 時 に 備 えて 蓄 積 を 行 なわなければならない。<br />

これらすべての 原 則 が 実 行 されてはじめて、 株 主 は 正 当 な 報 酬 を 享 受 することができるものと 確 信 する。<br />

B 投 資 家 に 向 けた ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み<br />

【ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み( 足 下 ・ 今 後 )】<br />

ESG 評 価 機 関 対 応 は 積 極 的 に 実 施 していると 推 測 される。 同 社 が 選 定 されているアワード 等 は 以 下 。<br />

・FTSE4Good Index・・・ 選 定<br />

・Dow Jones Sustainability Index・・・ 北 米 及 びグローバル 指 数 に 選 定<br />

・America’s Most Admired Companies( 米 国 において 最 も 称 賛 されるべき 企 業 )・・・12 位<br />

参 考 資 料 -108


・Global Access to Medicines Index( 医 薬 品 アクセス 貢 献 度 )・・・2 位<br />

・100 Best Companies for Working Mothers(ワーキングマザーの 働 きやすい 企 業 100)・・・26 年 間 継<br />

続 して 選 定<br />

・Best Places to Work for Gay, Lesbian, Bisexual and Transgender Equality (ゲイ、レズビアン 、ゲイ、バ<br />

イセクシャル、トランスジェンダーの 働 きやすい 企 業 )・・・トップレーティングを 獲 得<br />

参 考 資 料 -109


名 称<br />

Novo Nordisk<br />

本 社 所 在 国 ( 都 市 ) デンマーク(Bagsvaerd )<br />

住 所<br />

Novo Allé, 2880 Bagsvaerd, Denmark<br />

売 上 ( 地 域 別 )<br />

498 億 DDK(グローバル)、うち、 北 米 205 億 DDK、 欧 州 132 億 DDK、<br />

日 本 及 び 韓 国 40 億 DDK、 中 国 42 億 DDK、その 他 80 億 DDK である。<br />

セクター<br />

医 薬 品<br />

従 業 員 数 グローバルの 従 業 員 数 は 34,731 名 (2012 年 )。<br />

URL<br />

http://www.novonordisk.com/default.asp<br />

Dow Jones Sustainability Index World への 組 入 れ<br />

主 要 な ESG 評 価 機 関 の 評 価 FTSE4Good Index への 組 入 れ<br />

CDP においてヘルスケア 企 業 でトップ 10 入 り<br />

A サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略<br />

【サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略 の 内 容 】<br />

同 社 は 経 営 戦 略 とサステナビリティ 戦 略 のそれぞれに 分 類 することが 可 能 な 複 数 の 戦 略 はなく、 取 締<br />

役 会 によって 毎 年 レビューと 更 新 が 行 われる「Novo Nordisk’s Strategy」が 唯 一 存 在 し、2012 年 版 のアニ<br />

ュアルレポートにおいては、 戦 略 的 重 点 領 域 として、 次 の 5 項 目 を 挙 げる。<br />

1 糖 尿 病 領 域 におけるリーダーシップの 拡 大<br />

2 肥 満 領 域 におけるプレゼンスの 確 立<br />

3 血 友 病 領 域 におけるリーダーシップの 追 求<br />

4 成 長 障 害 領 域 におけるリーダーシップの 拡 大<br />

5 自 己 炎 症 性 疾 患 領 域 におけるプレゼンスの 確 立<br />

上 記 の 戦 略 を 支 える 土 台 として、 同 社 は「 価 値 ベースのマネジメント」を 標 榜 しており、 財 務 、 環 境 、<br />

社 会 への 配 慮 のバランスをとることを 目 指 すトリプル・ボトムラインの 考 え 方 が、2004 社 に 改 定 した 同<br />

社 の 定 款 と、1920 年 代 の 創 業 時 からの 考 え 方 を 引 き 継 いでいるノボ ノルディスク・ウェイ(Novo Nordisk<br />

Way)において 明 確 に 位 置 づけられている 点 が 特 徴 である。<br />

具 体 的 には、 同 社 の 定 款 には、 財 務 的 、 環 境 的 、 社 会 的 責 任 に 配 慮 した 事 業 を 行 うとする 一 文 が<br />

掲 げられている。<br />

また、ノボ ノルディスク・ウェイの 全 文 は 次 のとおりである。<br />

私 たちの 目 標 は、 糖 尿 病 におけるリーダーシップを 強 固 なものにしていくことです。<br />

私 たちは、 私 たちが 強 みを 発 揮 できる 領 域 である 血 友 病 、その 他 の 重 篤 な 慢 性 疾 患 において 可<br />

能 性 を 変 えることを 目 指 します。<br />

私 たちは、 革 新 的 なバイオ 医 薬 品 を 創 出 し、 世 界 中 の 患 者 さんに 届 けることに 貢 献 します。<br />

私 たちは、 事 業 を 成 長 させ 競 合 他 社 より 優 れた 業 績 を 上 げることで、 患 者 さんがより 良 い 生 活<br />

を 送 ることを 助 け、 株 主 に 魅 力 的 な 収 益 で 報 い、コミュニティに 貢 献 することができます。<br />

参 考 資 料 -110


ノボ ノルディスクの 経 営 理 念 は、 財 務 、 社 会 、 環 境 への 配 慮 のバランスをとるというもので、<br />

私 たちはそれを「トリプル・ボトムライン」と 呼 んでいます。<br />

私 たちはオープンかつ 正 直 であり、 意 欲 的 で 責 任 を 持 った 行 動 をとり、すべての 人 々を 尊 重 し<br />

ます。<br />

ノボ ノルディスクは、 社 員 に 自 己 の 潜 在 能 力 を 発 揮 させる 機 会 を 提 供 します。<br />

私 たちは、クオリティと 企 業 倫 理 について 決 して 妥 協 しません。<br />

( 出 所 )Novo Nordisk の 日 本 語 版 ホームページから 抜 粋<br />

【 統 合 報 告 を 発 行 する 理 由 】<br />

2004 年 の 早 期 から、 従 来 のアニュアルレポートとサステナビリティレポートを 統 合 した 統 合 報 告 書 を<br />

発 行 しており、 世 界 で 最 も 早 く 統 合 報 告 を 作 成 した 企 業 の 一 つである。<br />

2004 年 3 月 、 同 社 は 前 述 したとおり、トリプル・ボトムラインの 考 え 方 を 定 款 に 反 映 する 改 定 を 行 っ<br />

ている。 経 営 理 念 が、ビジネスの 根 幹 に 一 層 明 確 に 据 えられたことを 反 映 する 形 で、 従 来 は 別 々に 発 行<br />

していたアニュアルレポートとサステナビリティレポートが 統 合 され、 長 期 的 な 企 業 価 値 の 維 持 ・ 向 上<br />

に 関 して 長 期 投 資 家 を 主 なターゲットとするレポートが 発 行 されるに 至 っている。1994 年 の 同 社 初 の 環<br />

境 報 告 書 の 発 行 から 始 まり、2004 年 に 統 合 報 告 書 の 形 へ 収 束 したことについて 自 然 の 成 り 行 きであった<br />

としている。<br />

B 投 資 家 に 向 けた ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み<br />

【ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み( 足 元 ・ 今 後 )】<br />

1994 年 に 最 初 の 環 境 報 告 書 を 発 行 し、1998 年 には 社 会 報 告 書 を 作 成 、2004 年 には 従 来 のアニュアルレ<br />

ポートとサステナビリティレポートを 統 合 した 統 合 報 告 書 を 世 界 に 先 駆 けて 発 行 。<br />

さらに、 特 定 地 域 や 特 定 のイシューに 焦 点 を 当 てて、 同 社 のトリプル・ボトムラインの 考 え 方 の 実 践<br />

を 通 じて 同 社 が 価 値 を 生 み 出 しているかについての 理 解 促 進 のため、「The Blueprint for Change Programme」<br />

と 名 づけて、 社 会 に 対 する 便 益 と 企 業 に 対 する 便 益 を 分 析 したインパクトレポートを 複 数 作 成 して 発 行<br />

している。 現 時 点 で 発 行 されているレポートのタイトルは 以 下 のとおり。<br />

Climate change<br />

Changing Diabetes in China<br />

Creating shared value in the United States<br />

Changing Diabetes in Bangladesh<br />

Changing Diabetes in Indonesia<br />

【ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 事 例 ( 過 去 の 事 例 )】<br />

同 社 は IR 方 針 において、IR 活 動 の 目 的 は、 長 期 的 な 視 点 を 重 視 し、 同 社 のビジョンと 戦 略 を 共 有 する<br />

多 様 な 機 関 投 資 家 の 安 定 的 な 支 持 を 得 ることであるとしている。<br />

参 考 資 料 -111


名 称<br />

本 社 所 在 国 ( 都 市 )<br />

Volkswagen<br />

ドイツ(Wolfsburg)<br />

住 所<br />

Volkswagen Aktiengesellschaft P.O. Box 1849 D-38436 Wolfsburg<br />

1926 億 7600 万 ユーロ(2012 年 度 )<br />

売 上 ( 地 域 別 ) 西 ヨーロッパ(24.4%)、 南 アメリカ(19.6%)、 中 央 ・ 東 ヨーロッパ<br />

(15.4%)、アジア 太 平 洋 (12.2%)、 北 アメリカ(4.9%)<br />

セクター<br />

輸 送 用 機 器<br />

従 業 員 数 約 550,000 名 (2012 年 度 )<br />

URL<br />

http://www.volkswagenag.com/content/vwcorp/content/en/homepage.html<br />

主 要 な ESG 評 価 機 関 の 評 価 DJSI、FTSE4Good Index に 選 定 。CDP2013 で CPLI・CDLI に 選 定 。<br />

A サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略<br />

【サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略 の 内 容 】<br />

サステナビリティの 考 え 方 について、『サステナビリティは 企 業 方 針 の 土 台 となるものであり、 企 業 の<br />

バリューチェーン 全 体 においてサステナビリティを 浸 透 させている。Volkswagen の 社 会 的 責 任 は、 常 に<br />

環 境 や 社 会 へのインパクトを 考 慮 することである。 我 々は、 環 境 、 経 済 、 社 会 面 の 目 的 を 同 じ 様 に 追 求<br />

する。それがゆえに、 持 続 可 能 な 経 済 秩 序 を 創 造 するための 必 要 不 可 欠 な 取 り 組 み 要 素 となっている』<br />

としている 80 。<br />

サステナビリティレポート 2012 のトップメッセージでは、2020 年 までに 欧 州 で 発 売 する 新 車 1 台 当 た<br />

りの 平 均 CO2 排 出 量 を 95g/km 以 下 に 削 減 するという 意 欲 的 な 目 標 を 設 定 したことに 言 及 している。ま<br />

た、サステナビリティには 社 会 的 に 重 要 な 側 面 があるとの 考 えを 示 し、「 働 きがいのある 人 間 らしい 仕 事 」<br />

の 原 則 に 従 って 作 業 環 境 を 整 備 することや、 労 働 条 件 の 最 低 基 準 を 見 直 し、 向 上 させると 宣 言 している 81 。<br />

Volkswagen グループの 戦 略 は、CSR の 概 念 をベースに 策 定 されている。2018 年 までに 最 も 収 益 率 の 高<br />

い 企 業 になるだけでなく、 全 世 界 で 最 も 魅 力 的 でサステナブルな 自 動 車 メーカーになることを 目 指 して<br />

おり、サステナビリティが「グループ 戦 略 2018」の 全 体 像 を 形 成 している。 具 体 的 には 以 下 を 掲 げてい<br />

る。(サステナビリティレポート p.16 より)<br />

顧 客 満 足 と 品 質 において 世 界 のリーダーとなるために、 聡 明 なイノベーションとテクノロジーを 展<br />

開 する<br />

年 間 の 売 上 車 数 を 1000 万 台 以 上 に 増 やす<br />

売 上 高 ( 税 込 ) 利 益 率 を 少 なくとも 8% 以 上 に 増 やす<br />

全 てのブランド、 国 、 地 域 において 最 高 の 雇 い 主 になる<br />

車 1 台 当 たりの 生 産 に 伴 うエネルギー 消 費 量 、 廃 棄 物 排 出 量 、 溶 剤 排 出 量 、 水 消 費 量 と CO2 排 出 量<br />

を 2010 年 度 比 25% 削 減 する<br />

80 Volkswagen ホームページ<br />

81 Volkswagen ホームページ<br />

参 考 資 料 -112


また「グループ 戦 略 2018」 82 によると、 同 社 は 特 に 自 動 車 プロジェクトにおける 環 境 配 慮 指 向 と 収 益<br />

性 に 焦 点 を 当 てており、それによって 経 済 不 況 の 中 でも 成 功 する 製 品 を 創 出 するとしている。 環 境 配 慮<br />

型 自 動 車 の 生 産 を 着 実 に 拡 大 し、 全 世 界 の 市 場 でブランド 地 位 を 築 いている。 環 境 配 慮 型 自 動 車 は、 自<br />

社 の 競 争 優 位 性 を 増 す 重 要 な 要 素 であるという 認 識 を 示 している。また、モジュール 式 のツールキット<br />

システム(modular toolkit system)は 生 産 効 率 を 常 に 改 善 させ、グループの 収 益 を 上 げているという。<br />

環 境 配 慮 型 自 動 車 については、”Think Blue”を 掲 げ、 天 然 ガス 自 動 車 やプラグインハイブリッド(PHV)、<br />

電 気 自 動 車 といった 新 しい 自 動 車 の 開 発 を 進 めている。 燃 費 効 率 の 改 善 も 進 めており、「XL1」は 1l 当 た<br />

り 100km の 燃 費 を 達 成 した。コンパクトカー「e-up!」のシリーズは、Volkswagen から 出 された 初 めての<br />

電 気 自 動 車 で、 車 1 台 当 たりの 平 均 CO2 排 出 量 79g/km を 基 準 としている。<br />

車 1 台 当 たりの 生 産 に 伴 う 環 境 負 荷 を 2018 年 までに 25% 削 減 するという 目 標 を 達 成 するため、 工 場 で<br />

は、”Think Blue. Factory”というイニシアティブのもとで、 省 エネ 型 ボイラーの 導 入 などの 設 備 更 新 を 行<br />

っている。(サステナビリティレポート p.130)<br />

また、 同 社 ではヨーロッパで 問 題 となっている 若 者 の 失 業 率 の 増 加 を 社 会 的 課 題 と 捉 えている。 若 者<br />

の 雇 用 を 促 進 するため、 企 業 内 訓 練 と 職 業 学 校 を 並 行 して 行 う 国 の 職 業 訓 練 制 度 にならい、 全 世 界 16 か<br />

国 で 16,000 人 の 若 者 に 対 して、 職 業 訓 練 を 大 学 などでの 勉 強 と 組 み 合 わせて 提 供 している。 人 事 を 担 当<br />

する 役 員 Dr. Horst Neumann によれば、 過 去 5 年 間 に 欧 州 で 新 たな 追 加 的 な 仕 事 を 創 出 したとしている。<br />

B 投 資 家 に 向 けた ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み<br />

【ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み( 足 元 ・ 今 後 )】<br />

アナリストや 投 資 家 は、 意 思 決 定 の 際 に 企 業 のビジネスパフォーマンスだけでなく、CSR やサステナ<br />

ビリティの 側 面 を 見 る 機 会 が 増 えてきていると 同 社 では 考 えている。 企 業 の 環 境 ・ 社 会 ・ 経 済 パフォー<br />

マンスを 評 価 するために、アナリストや 投 資 家 はサステナビリティの 格 付 を 使 っているとの 認 識 を 持 つ。<br />

また、これらの 格 付 でトップのスコアを 獲 得 すれば、ステークホルダーに 対 してアピールできるだけで<br />

なく、 従 業 員 のモチベーションアップにつながり、 雇 い 主 として 従 業 員 を 惹 きつけることができると 考<br />

えている(サステナビリティレポート p.20 より)。DJSI や FTSE4Good などのインデックスに 選 定 されて<br />

いるほか、ノルウェーの 金 融 機 関 「Storebrand」が 2012 年 に 立 ち 上 げたファンド” Trippel Smart”、 “SPP<br />

Global Top 100 (Sweden)”に「 社 会 面 」でランクインしている。また、CDP に 参 加 しており、2011 年 から<br />

は CDP Water Project にも 参 加 している。ESG 評 価 機 関 の 調 査 に 関 しては、Oekom Research(Prime Status)、<br />

Sustainalytics -DAX 30VCD automobile manufacturer ranking(ranked 3rd)、Environmental Management(ranked<br />

2nd)、Reputation Institute – DAX 30(ranked 2nd)に 対 応 している。<br />

企 業 が 持 続 的 に 成 長 していくためには、 長 期 的 なプランニングが 有 益 であることは 明 らかだが、 長 期<br />

的 なプランニングは 柔 軟 なものでなければならないとも 言 っている。 経 済 は 周 期 的 に 変 動 し、 国 際 市 場<br />

は 法 規 制 によって 支 配 され、 新 たな 顧 客 のニーズは 急 に 現 れ、 重 要 になることがあるためである。 社 会<br />

82 Volkswagen ホームページ<br />

参 考 資 料 -113


的 変 化 は 主 にグローバルなメガトレンドによって 起 きる。 自 社 と 関 連 するメガトレンドは、 都 市 化 や 高<br />

齢 化 社 会 、 資 源 の 枯 渇 などの 問 題 だとしている。これらのトレンドは、 顧 客 の 購 買 に 劇 的 な 変 化 をもた<br />

らしている。Volkswagen グループでは、 社 会 的 なメガトレンドや 顧 客 のトレンド、 競 合 の 分 析 など 全 て<br />

の 側 面 を 考 慮 した 上 で、 長 期 的 なプランニングを 策 定 し、 定 期 的 な 見 直 しを 行 っている。この 策 定 プロ<br />

セスは、”planning round”と 呼 ばれているが、これが 10 年 のタイムフレームで 生 産 ・ 調 達 ・ 売 上 構 成 を 考<br />

えることを 可 能 にしている。 長 期 的 なプランニングを 策 定 することは、 持 続 的 な 成 長 のための 唯 一 の 方<br />

法 と 考 えられている(サステナビリティレポート p.21 より)。<br />

参 考 資 料 -114


名 称<br />

SAP<br />

本 社 所 在 国 ( 都 市 ) ドイツ(ウォルドルフ)。 全 世 界 130 ヵ 国 で 事 業 を 実 施 。<br />

住 所<br />

売 上 ( 地 域 別 )<br />

セクター<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

Dietmar-Hopp-Allee 16 69190 Walldorf<br />

168.2 億 ユーロ(2013 年 度 )。 米 国 (27.7%)、ドイツ(14.9%)、その 他<br />

のヨーロッパ・ 中 東 ・アフリカ(32.0%)、 日 本 (3.7%)、 米 国 以 外 のア<br />

メリカ(10.1%) 日 本 以 外 のアジア、(11.5%)<br />

ソフトウェア<br />

約 66,000 名<br />

http://www.sap.com/index.html<br />

主 要 な ESG 評 価 機 関 の 評 価 DJSI、FTSE4Good Index に 選 定 。CDP2013 で CPLI・CDLI に 選 定 。<br />

A サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略<br />

【サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略 の 内 容 】<br />

Integrated Report2012 –About this Report -Materiality において 示 されているように、SAP 社 としてサステ<br />

ナビリティ 戦 略 を 持 つというよりは、SAP の 企 業 戦 略 をよりサステナブルなものにするためにどうすべ<br />

きかを 考 えていこうとしている。<br />

(Integrated Report2012 - Vision, Mission, and Strategy より)<br />

・Our Vision and Mission<br />

ビジョンとして”to help the world run better and improve people’s lives”、ミッションとして”to help every<br />

customer become a best-run business”を 掲 げる。<br />

・Our Goal: Sustained Business Success<br />

SAP は、 自 社 と 顧 客 の 双 方 にとってサステナブルなビジネスの 成 功 を 強 く 意 識 しており、 売 り 上 げを<br />

2015 年 までに 200 億 ユーロ 以 上 とする 目 標 などを 設 定 している。<br />

・Our Strategy: Innovative Solutions for Real-Time Business<br />

戦 略 としては、これまで 進 めてきた ERP を 含 む Applications と Analytics( 分 析 )や Mobile(モバイル)<br />

を 強 化 しつつ、さらに Cloud(クラウド)、Database & Technology(データベースとテクノロジー)の 5<br />

つの 市 場 を 注 力 分 野 として 定 めている。インメモリーデータベース 製 品 「SAP HANA」は、この 5 つの<br />

市 場 分 野 全 てにまたがる 基 盤 製 品 として 顧 客 に 競 争 優 位 をもたらすとされている。また、パートナー 企<br />

業 のネットワークを 拡 大 することは 革 新 的 な 製 品 ・サービスの 発 展 につながり、 販 売 チャネルを 増 やす<br />

ことができるとしている 83 。<br />

【マテリアリティへの 考 え 方 】<br />

83<br />

SAP ホームページ<br />

参 考 資 料 -115


(Integrated Report2012 –About this Report -Materiality より) 84<br />

イノベーションとサステナビリティに 向 けたアプローチの 土 台 は、マテリアリティの 評 価 (materiality<br />

assessment)と 考 え、 数 年 かけてこの 評 価 方 法 を 精 緻 化 している。2011 年 には、マテリアル 課 題 をどのよ<br />

うに 定 義 するかについて 重 要 な 変 更 を 行 った。 主 な 指 標 は 以 下 の 通 りである。<br />

我 々の 企 業 戦 略 の 一 要 素 しか 表 さないサステナビリティ 戦 略 というより、サステナブルな 企 業 戦 略<br />

を 創 るという 目 的 を 反 映 すること。 統 合 報 告 への 移 行 は、これと 同 じ 意 味 を 持 つ。<br />

課 題 と 機 会 により 広 く 焦 点 を 当 てること。 以 前 のマトリックスでは、 我 々が 特 定 した 課 題 にはリス<br />

クや 機 会 、 個 別 具 体 的 なソリューションを 含 んでいた。 我 々は、サステナビリティのためのソリュ<br />

ーションだけでなく、 我 々のソリューションの 品 揃 え 全 てにまたがって 機 会 を 見 つけるよう 進 化 し<br />

てきた。<br />

相 対 的 な 評 価 を 得 るために 提 供 する 取 組 一 覧 表 (longer list)とは 対 照 的 に、より 重 要 性 の 高 い 少 数<br />

の 課 題 に 絞 って 明 確 に 焦 点 を 当 てること。この 新 しい 手 法 は、これまでの 重 要 性 判 断 のマトリック<br />

スにあるような 個 々の 課 題 におけるステークホルダー 対 企 業 の 観 点 を 含 むのではない。<br />

この 指 標 に 基 づき 検 討 した 結 果 、SAP にとってのマテリアリティには、 責 任 性 の 観 点 と 成 長 のための<br />

事 業 機 会 の 両 方 が 含 まれるとしている。<br />

成 長 のための 事 業 機 会 には、5 つの 市 場 分 野 (Applications、Analytics( 分 析 )、Mobile(モバイル)、Cloud<br />

(クラウド)、Database & Technology(データベースとテクノロジー))における 取 り 組 みを 挙 げている。<br />

責 任 性 については 以 下 を 対 象 範 囲 としている。<br />

人 材 マネジメント- 社 内 及 びネットワークを 通 し 最 も 能 力 のある 人 材 によって 技 術 の 開 発 ・ 販 売 ・<br />

利 用 を 確 実 にするのに 役 立 つ<br />

知 材 マネジメント- 最 も 効 率 的 な 調 査 や 能 力 開 発 をとりまとめるのに 役 立 ち、それによって 高 い 品<br />

質 をもって 新 たなソリューションを 実 現 させることができる<br />

セキュリティとプライバシー- 非 常 に 高 いレベルのデータセキュリティとプライバシー 制 御 を 提 供<br />

するソリューションを 設 計 し 実 現 させることを 確 実 にする<br />

行 動 規 範 - 企 業 行 動 規 範 やその 他 の 企 業 方 針 で 明 確 に 示 しているとおり、 高 いレベルの 倫 理 的 行 動<br />

を 維 持 しながら 事 業 活 動 を 行 うことを 確 実 にする<br />

気 候 とエネルギー- 我 々のソリューションや 事 業 活 動 による 環 境 への 影 響 を 削 減 または 最 小 化 する<br />

やり 方 を 見 つけるのに 役 立 つ<br />

【 統 合 報 告 を 発 行 する 理 由 】<br />

(Integrated Report2012 –About this Report -Why Integrated Reportingより) 85<br />

SAP では 2012 年 から、 財 務 と 非 財 務 指 標 との 関 連 性 を 目 立 たせるためにアニュアルレポートとサステ<br />

ナビリティレポートを 統 合 した 統 合 報 告 を 発 行 している。 将 来 の 成 功 は、 自 社 がいかに 社 会 ・ 環 境 ・ 経<br />

済 面 の 取 り 組 みを 包 括 的 に 行 うかによって 決 まるという 考 えを 示 している。<br />

84<br />

SAP ホームページ<br />

85 SAP ホームページ<br />

参 考 資 料 -116


【 環 境 ・ 社 会 取 り 組 みと 経 済 取 り 組 みの 関 係 性 】<br />

(Integrated Report2012 –Key Fact - Connecting financial and non-financial performance より) 86<br />

同 社 の 統 合 報 告 では、 環 境 ・ 社 会 面 の 取 り 組 みがなぜ、どのように 経 済 取 り 組 みと 関 係 しているかを<br />

説 明 している。4 つの 環 境 指 標 、7 つの 社 会 指 標 及 び 3 つの 経 済 指 標 を 経 営 上 の 重 要 な 指 標 と 位 置 づけ、<br />

社 会 指 標 や 環 境 指 標 がどのように 経 済 指 標 に 貢 献 しているのかを 説 明 している。 例 えば、「GHG フット<br />

プリント」(SAP 社 が 直 接 的 ・ 間 接 的 に 排 出 する 温 室 効 果 ガス 総 量 )は、「 営 業 利 益 率 」 改 善 に 貢 献 する<br />

とされている。その 説 明 としては、 従 業 員 の 出 張 が 多 い SAP 社 にとって、 従 業 員 の 出 張 削 減 は「GHG フ<br />

ットプリント」 削 減 のための 取 り 組 みとなる。 従 業 員 の 出 張 が 減 れば 従 業 員 の 健 康 増 進 や 家 族 と 過 ごす<br />

時 間 の 増 加 につながるため、「GHG フットプリント」は、「 従 業 員 の 健 康 や 文 化 の 指 数 」を 高 めることに<br />

貢 献 するといえる。そして、 従 業 員 の 健 康 維 持 は 欠 勤 率 低 下 につながるため、 従 業 員 欠 勤 によるコスト<br />

( 基 本 給 の 35%に 上 るという)を 減 らし、「 営 業 利 益 率 」 改 善 に 貢 献 する、といったものである。<br />

経 営 上 の 重 要 な 指 標 として 位 置 づけられている 環 境 ・ 社 会 ・ 経 済 指 標<br />

環 境 指 標 GHG フットプリント、エネルギー 消 費 、データセンターエネルギー 消 費 、 再 生 可 能 エネルギ<br />

ー<br />

社 会 指 標 従 業 員 ロイヤリティ※、 従 業 員 の 健 康 や 文 化 の 指 数 、 従 業 員 定 着 、 女 性 管 理 職 、ソーシャルイ<br />

ンベストメント、 従 業 員 の 能 力 開 発 、 従 業 員 満 足 のランキング<br />

経 済 指 標 売 上 ※、 営 業 利 益 率 ※、 顧 客 満 足 ※<br />

※ 同 社 の 経 営 目 標 に 設 定 されている 指 標<br />

B 投 資 家 に 向 けた ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み<br />

【ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み( 足 元 ・ 今 後 )】<br />

(Integrated Report2012 - Stakeholder Engagement「Financial analysts and investors」より)<br />

IR チームと 執 行 委 員 会 は、 四 半 期 決 算 の 報 告 会 や 年 次 集 会 において 投 資 家 向 けロードショーを 実 施 したり、<br />

財 務 アナリストや 投 資 家 と 1 対 1 のブリーフィングを 行 っている。IR チームはサステナブル・インベストメ<br />

ントのコミュニティにも 参 加 している 87 。<br />

同 社 は IIRC のパイロットプログラムに 参 加 している。その 2013 年 の 実 施 内 容 が 記 載 されている” The<br />

IIRC Pilot Programme 2013 Yearbook”の 中 で、Group Accounting and Reporting の 責 任 者 である Sonja Simon<br />

は 以 下 のようにコメントしている。「 投 資 家 は、 我 々のビジネスモデルがサステナブルかどうかを 知 りた<br />

がっている。リスクや 事 業 機 会 に 対 してどのように 対 応 しているか、それらの 対 応 のためにどのような<br />

方 針 を 持 っているか、といったことである。」「 短 期 の 財 務 面 だけでなく、 将 来 の 発 展 やリスクプレミア<br />

ムを 見 据 えてどのように 進 むべきかといった 情 報 を 投 資 家 やアナリストに 提 供 すべき」としている。(The<br />

IIRC Pilot Programme 2013 Yearbook p.32 より)<br />

86<br />

SAP ホームページ<br />

87 SAP ホームページ<br />

参 考 資 料 -117


【ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 事 例 ( 過 去 の 事 例 )】<br />

2012 年 7 月 30 日 、ESG 投 資 家 とのブリーフィングを 実 施 している。 同 社 からサステナビリティ 部 門 チ<br />

ーフオフィサーと IR 部 門 ディレクター、 投 資 家 ・ESG 評 価 機 関 から 23 名 、モデレーターとして PRI の<br />

Investor Engagements の 代 表 が 出 席 した。<br />

ブリーフィングの 質 疑 応 答 の 中 で、カナダのアセットオーナーから、メインストリームの 投 資 家 向 け<br />

資 料 の 中 で ESG パフォーマンスデータをどの 程 度 含 めているかという 質 問 があった。この 質 問 に 対 して、<br />

投 資 家 との 情 報 のやり 取 りは「 鶏 と 卵 」のようなものであると 答 えている。「 通 常 の 投 資 家 向 け 説 明 会 の<br />

際 に ESG 関 連 情 報 を 利 用 可 能 としており、 投 資 家 からの 質 問 に 答 えるための 準 備 も 行 っているが、 実 際<br />

に 投 資 家 から 質 問 は 受 けない。そのような 情 報 がほしいのであれば、 質 問 をするところから 始 めるべき<br />

だ、ぜひ 質 問 をしてほしい。」という 考 えを 示 している。 同 社 は 統 合 報 告 への 取 り 組 みを 含 め 非 財 務 情 報<br />

の 開 示 を 積 極 的 に 行 っており、 併 せて、 投 資 家 の 非 財 務 情 報 への 関 心 も 高 まることを 期 待 している。(ESG<br />

Investor Briefing p.12 より) 88<br />

88 “ESG Investor Briefing: SAP, Transcript” <br />

参 考 資 料 -118


名 称<br />

本 社 所 在 国 ( 都 市 )<br />

住 所<br />

売 上 ( 地 域 別 )<br />

セクター<br />

従 業 員 数<br />

URL<br />

LANXESS<br />

ドイツ(ケルン)に 本 社 を 置 き、 全 世 界 31 ヵ 国 で 事 業 を 実 施<br />

2005 年 、ドイツ・バイエルグループの 化 学 品 事 業 と 高 分 子 材 料 事 業 の<br />

一 部 が 分 離 ・ 独 立 し、ランクセス 社 が 設 立<br />

Kennedyplatz 1 50569 Cologne<br />

約 91 億 ユーロ(2012 年 度 )。<br />

ドイツ 以 外 のヨーロッパ・ 中 東 ・アフリカ:27.8%、Asia/Pacific:24.1%、<br />

ドイツ:17.3%、North America:17.7%、Latin America:13%<br />

(Analyst Roundtable 2013 p.5 Regional development of sales より 算 出 )<br />

化 学 ( 世 界 最 大 手 の 特 殊 化 学 品 メーカー)<br />

約 17,300 名<br />

http://lanxess.com/en/corporate/home/<br />

主 要 な ESG 評 価 機 関 の 評 価 DJSI、FTSE4Good Index に 選 定 。CDP2013(DACH)で CDLI に 選 定 。<br />

A サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略<br />

【サステナビリティ 方 針 ・ 戦 略 の 内 容 】<br />

Lanxess グループの 世 界 における 活 動 には、 持 続 可 能 な 発 展 を 目 指 すという 方 針 が 貫 かれている。 持 続<br />

可 能 性 はランクセスの 全 活 動 の 基 盤 となるものであり、 環 境 への 適 合 と 社 会 的 責 任 を 重 視 するとしてい<br />

る。<br />

サステナビリティの 方 針 として、「 企 業 活 動 にとって 良 いことは、 社 会 にとっても 良 いことである<br />

(What’s good for business is good for society)」を 掲 げる。 89<br />

サステナビリティ 方 針 本 文<br />

特 殊 化 学 品 メーカーとして、LANXESS は 環 境 や 社 会 問 題 を 解 決 するために 何 ができるだろうか。 経 済<br />

的 な 成 功 と 社 会 的 な 価 値 ・ 利 益 は 相 互 によい 影 響 を 及 ぼし 合 うのか。LANXESS のやり 方 は、 以 下 の 言 葉<br />

に 要 約 される。「 企 業 活 動 にとって 良 いことは、 社 会 にとっても 良 いことである。」<br />

国 際 的 な 特 殊 化 学 品 メーカーとして、 我 々は 人 々と 環 境 に 向 けた 責 任 性 を 重 視 する。 我 々の 企 業 家 と<br />

しての 活 動 (entrepreneurial activities)は、この 責 任 性 の 考 えを 反 映 する。 安 全 、 環 境 保 全 、 社 会 的 責 任 、<br />

品 質 と 商 業 的 な 効 率 性 (commercial efficiency)はすべて LANXESS の 企 業 目 標 である。<br />

企 業 は、 長 期 的 な 視 点 で 気 候 や 環 境 に 配 慮 し、 付 加 価 値 の 向 上 と 同 時 に 人 々の 生 活 の 品 質 を 改 善 する<br />

サステナブルな 製 品 と 技 術 を 開 発 するためにノウハウや 経 験 を 使 う。 企 業 の 責 任 性 (CR)は、LANXESS<br />

のコアビジネスの 中 心 的 な 要 素 である。 企 業 の 最 終 目 標 は、 企 業 戦 略 の 中 で 経 済 ・ 環 境 ・ 社 会 側 面 を 調<br />

和 させることである。<br />

89 LANXESS ホームページ<br />

参 考 資 料 -119


LANXESS CR 戦 略<br />

( 資 料 )LANXESS ホームページ<br />

環 境 保 全 、 水 、 教 育 、 文 化 -LANXESS のコーポレートシチズンシップが 推 進 する 分 野<br />

当 社 の CR 活 動 は、 環 境 保 全 、 水 、 教 育 、 文 化 とのかかわりあいに 焦 点 を 当 てている。これらの 取 り 組<br />

みは 全 てコアビジネスとリンクしており、 長 期 的 にはコアビジネスに 利 益 をもたらすべきである。 最 新<br />

の 水 処 理 技 術 から 環 境 配 慮 型 の 高 性 能 ”エコタイヤ”に 至 るまで、LANXESS は 革 新 的 な 製 品 や 技 術 の 新 し<br />

い 市 場 を 開 拓 するだけでなく、グローバルな 課 題 解 決 に 重 要 な 貢 献 をもたらす。<br />

B 投 資 家 に 向 けた ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み<br />

【ESG 要 因 開 示 の 取 り 組 み( 足 元 ・ 今 後 )】<br />

CSR 関 連 の 情 報 はホームページ 上 に 開 示 しており、サステナビリティレポート 等 は 発 行 していない。<br />

アニュアルレポート 2012 の 中 で、Corporate Responsibility の 章 を 設 け、LANXESS が 重 要 視 する 社 会 的 責<br />

任 に 関 するイシュー(CR Issues)についての 取 り 組 み 内 容 を 開 示 している。2014 年 1 月 に 公 開 された IR<br />

資 料 90 の 中 で、CSR についての 4 つの 目 標 ( 気 候 変 動 目 標 、 環 境 目 標 、 品 質 目 標 、 社 会 面 のイニシアティ<br />

ブ)を 開 示 している。DJSI や FTSE4Good などのインデックスに 選 定 されているほか、Oekom research<br />

社 の 格 付 では C+に 格 上 げされている。CDP2013(DACH)では CDLI に 選 定 されている。<br />

【ESG 投 資 家 との 直 接 対 話 の 事 例 ( 過 去 の 事 例 )】<br />

2011 年 に、SRI Roadshow を 開 催 したことがある。グリーン・モビリティに 向 けた「グリーンタイヤ」<br />

や「ハイテクプラスチック」などの 事 業 や 水 処 理 事 業 、CO2 削 減 に 向 けたサステナビリティの 取 り 組 み<br />

について 説 明 が 行 われた。(Lanxess - SRI Roadshow Sustainable Growth Investor Relations, April 2011 91 よ<br />

り)<br />

90 “LANXESS – 13th German Corporate Conference Frankfurt Taking action in a challenging environment” <br />

91<br />

“LANXESS SRI Roadshow: Sustainable Growth” <br />

参 考 資 料 -120

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