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バウムテストにおける再検査信頼性の見なおし - 岐阜女子大学図書館

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佐 渡 忠 洋 * , 松 本 香 奈 ** ***, 田 口 多 恵*岐 阜 大 学 保 健 管 理 センター**岐 阜 女 子 大 学 文 化 創 造 学 部***浜 松 大 学 臨 床 心 理 教 育 実 践 センター(2012 年 9 月 1 日 受 理 )Re-viewing the Retest Reliability of the Baumtest*Health Administration Center, Gifu University**Faculty of Cultural Development, Gifu Women’s University,***Clinical Psychology Education Center, Hamamatsu UniversitySADO Tadahiro * , MATSUMOTO Kana ** and TAGUCHI Tae ***(Received September 1, 2012)Ⅰはじめに今 日 まで,わが 国 においてバウムテストの研 究 は 膨 大 に 行 われてきた( 佐 渡 ,2011)。それらの 中 には,バウムテストを 科 学 的 なテストとして 位 置 づけるために, 再 検 査 信 頼 性の 検 証 を 行 った 報 告 がいくつかある。 筆 者 らが 吟 味 した 限 り,それらの 研 究 は 1980 年 までに 行 われているが( 名 倉 ら,1968; 青 木 ,1976,1980; 仙 田 ,1980a,1980b),それはこの 時 期 に「 科 学 的 な 技 法 である」と 広 く 証明 する 必 要 があったからであろう。ともあれ,これらの 報 告 によって, 個 人 のバウム 表 現 は安 定 しており, 科 学 的 にも 信 頼 に 足 る 技 法 であることが 認 められ,さまざまな 心 理 学 的 研究 を 可 能 とする 基 盤 を 築 くことができた,といえる。しかしながら, 再 検 査 信 頼 性 の 知 見 に 対 しては, 臨 床 実 践 でしばしば 疑 問 を 感 じることがある。そもそも, 再 検 査 信 頼 性 の 高 さとは,4 4 4 4 4 4 4 4同 一 の 描 き 手 の 表 現 が 安 定 していること を 示4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4すものであって, 常 にまったく 同 じ 表 現 をす4 4 4ること ( 自 然 科 学 での 再 現 性 )を 意 味 するわけではない。それでも, 数 回 のバウムテストの 機 会 があった 心 理 療 法 事 例 はもちろん, 短期 間 に 2 つの 相 談 機 関 で 計 2 回 実 施 された 事例 などにおいて, 描 かれるバウムの 違 いに 驚きを 感 じる 時 があるからである。さらに, 同じ 描 き 手 の 数 枚 のバウムに, 大 きな 変 化 が 認められる 時 も,まったく 変 化 が 認 められない時 もあるため, 安 易 にバウムから 治 療 効 果 を理 解 することや, 治 療 の 展 開 からバウムの 変化 を 期 待 することには 危 険 な 場 合 もある。こういった 体 験 から, 再 検 査 信 頼 性 の 知 見 を 完全 に 否 定 する 者 がいるかもしれない。しかし,それも 直 解 主 義 的 な 発 想 で, 過 度 の 単 純 化 ではないだろうか。したがって, 再 検 査 信 頼 性 という 問 題 から考 えた 場 合 ,バウムを 理 解 する 姿 勢 には 少 なくとも 次 の2つがある,と 筆 者 らは 考 えた。○ バウム 表 現 とは,その 時 ,その 過 程 ,その関 係 性 という 文 脈 の 中 で, 描 き 手 がそう 表現 する 必 然 性 と 意 味 があるかのような,ま― 29 ―


バウムテストにおける 再 検 査 信 頼 性 の 見 なおし( 佐 渡 忠 洋 , 松 本 香 奈 , 田 口 多 恵 )(1) 同 日 群 の 調 査描 き 手 は, 東 海 地 方 の 私 立 大 学 の 陸 上 部 員71 名 ( 平 均 年 齢 19.4±0.95 歳 )で, 内 訳 は 男性 62 名 , 女 性 9 名 である。 手 続 きは,まず2011 年 10 月 上 旬 , 部 活 動 のミーティング 中に 30 分 の 調 査 時 間 を 確 保 した。 描 き 手 に 対して, 同 日 に 続 けてバウムテストが 2 回 行 われることは 伝 えず, 結 果 に 影 響 のない 程 度 に研 究 内 容 を 説 明 して, 調 査 協 力 への 同 意 を 得た。1 回 目 の 実 施 は,4B 鉛 筆 と A4 判 画 用 紙を 配 布 し,「 画 用 紙 はご 自 身 の 前 に 縦 長 の 向きで 置 いて 下 さい」「 時 間 は7 分 間 とります」と 伝 えてから,「 実 のなる 木 を 描 いてください」の 教 示 により 集 団 法 で 行 った。 描 画 の 終了 に 関 しては, 終 了 予 定 時 間 の 1 分 前 に,そのことを 描 き 手 らに 伝 えたが, 厳 密 に 7 分 で区 切 るのではなく, 全 体 の 様 子 を 伺 いつつ,描 画 が 自 由 な 雰 囲 気 で 行 えるようにも 努 めた。 描 画 後 , 画 用 紙 の 裏 にバウムの 樹 種 , 樹高 , 樹 齢 に 関 する 具 体 的 な 説 明 を 記 すよう 求めた。その 後 , 特 に 説 明 を 加 えることなく,改 めて 用 紙 を 配 布 して,1 回 目 と 同 じ 手 続 きで 2 回 目 を 実 施 し, 同 様 に 画 用 紙 の 裏 にバウムの 説 明 を 求 めた。 最 後 に,アンケート 用 紙を 配 布 し,「1 枚 目 と 2 枚 目 で 描 く“ 実 のなる木 ”を 変 えましたか?(「はい」「いいえ」の選 択 回 答 )」と,「“はい”と 答 えた 人 は,どのように 変 えようと 思 いましたか?( 自 由 記述 )」の 質 問 への 回 答 も 求 めた。(2)1 週 群 の 調 査描 き 手 は, 東 海 地 方 の 私 立 女 子 大 学 において, 幼 稚 園 教 員 免 許 取 得 に 必 須 の 講 義 を 受 講する 女 性 44 名 ( 平 均 年 齢 18.5±0.76 歳 )である。 手 続 きは,まず2011 年 7 月 上 旬 , 講 義 中に 20 分 の 調 査 時 間 を 確 保 した。そして,1 週間 の 間 隔 を 空 けてバウムテストが 2 回 行 われることは 伝 えず, 調 査 協 力 への 同 意 を 得 た。具 体 的 な 手 続 きは,ほぼ 同 日 群 と 同 じであるが,2 回 目 は 1 回 目 の 1 週 間 後 の 同 じ 時 間 に行 ったこと, 描 画 後 のバウムの 説 明 は 1 回 目も 2 回 目 もともにアンケート 用 紙 への 記 入 で求 めたこと,との 相 違 はある。以 上 のように,1 回 目 と 2 回 目 の 調 査 は 可能 な 限 り 条 件 を 均 一 にし, 同 日 群 と 1 週 群 についても 実 施 間 隔 を 除 いて 同 一 の 手 続 きになるように 努 めた。しかし, 描 き 手 の 属 性 の 違いは 群 間 で 統 制 できなかったため,その 比 較は 慎 重 に 行 う 必 要 がある。ここより,1 回 目 と 2 回 目 で 描 かれたバウムをそれぞれ1st バウム,2nd バウムと 記 す。2 分 析 方 法 の 検 討分 析 に 際 して,データと 評 定 の 均 一 性 を 確保 するために,2 本 以 上 のバウムを 描 いたデータは 検 討 の 対 象 から 除 くこととした。その 結 果 , 同 日 群 は 69 名 ( 平 均 年 齢 19.3±0.09歳 , 男 性 60 名 , 女 性 9 名 )の 計 138 枚 のバウムが,1 週 群 は42 名 ( 平 均 年 齢 18.5±0.77 歳 ,すべて 女 性 )の 計 84 枚 のバウムが 検 討 の 対象 となった。分 析 方 法 は, 本 研 究 の 目 的 から, 描 き 手 のバウムの 説 明 と 質 問 への 回 答 結 果 , 対 評 定 ,スクリーニング 法 で 行 うこととした。3 対 評 定ここでいう 対 評 定 とは, 評 定 者 に 同 一 の 描き 手 の 2 枚 のバウムを 左 右 に 並 べた 状 態 で 提示 し,「 描 線 」「 幹 」「 幹 先 端 」「 枝 」「 樹 冠 」「 根 」「 大 きさ& 位 置 」のカテゴリーごとに 評 価 を求 めるものである。 評 価 は 2 枚 のバウムを 眺めながら「 大 変 似 ている」「 似 ている」「どちらとも 言 えない」「 似 ていない」「 全 く 似 ていない」の5 段 階 で 行 う。そして「 似 ていない」「 全 く 似 ていない」と 評 定 された 場 合 , 当 該― 31 ―


岐 阜 女 子 大 学 紀 要 第 42 号 (2013. 3. )表 2 描 き 手 によるバウムの 回 答同 日 群 :n=691 週 群 :n=42「1 枚 目 と2 枚 目 で 描 く“ 実 のなる 木 ”を 変 えましたか?」の 質 問 に「はい」と 答 えた 者樹 種 二 枚 で 同 じ 樹 種二 枚 で 異 なる 樹 種樹 高二 枚 で 同 じ 樹 高1stバウムより2ndバウムの 方 が 高 い1stバウムより2ndバウムの 方 が 低 い人 数 (%)人 数 (%)54(78.3) 26(61.9)20(29.0)49(71.0)11(15.9)35(50.7)23(33.3)19(45.2)23(54.8)13(31.0)17(40.5)12(28.6)樹 齢二 枚 で 同 じ 樹 齢1stバウムより2ndバウムの 方 が 古 い1stバウムより2ndバウムの 方 が 若 い9(13.0)34(49.3)26(37.7)14(33.3)11(26.2)17(40.5)表 3 対 評 定 における 各 カテゴリーの 平 均 値 ( 標 準 偏 差 )同 日 群1 週 群描 線 幹 幹 先 端 枝 樹 冠 根 大 きさ & 位 置2.7(0.98)2.5(0.78)3.1(1.12)2.8(1.11)2.9(1.22)2.6(1.06)3.0(1.17)2.5(0.94)3.6(1.13)3.0(0.89)2.9(1.09)2.6(1.09)3.0(1.05)2.7(1.16)間 で 樹 種 が 変 化 する 者 は 5~7 割 , 樹 高 が 変化 する 者 は 7~8 割 , 樹 齢 が 変 化 する 者 は 7~9 割 であった。この 結 果 は, 上 の 結 果 と 関 連させて 考 えるべきであろう。2nd バウムを 描く 際 , 多 くの 描 き 手 が 1st バウムとは 異 なる表 現 を 行 う 意 図 を 持 ったとするならば,これらにも 変 化 が 生 じることは 当 然 といえる。同 日 群 と 1 週 群 とでは 描 き 手 の 属 性 が 異 なるため, 一 概 に 比 較 できないのだが, 同 日 群が 1 週 群 に 比 べ,ここで 検 討 したすべての 項目 で 変 化 が 強 く 認 められたことは 興 味 深 い。同 日 群 は 1st バウムが 目 の 前 にある 中 で 2ndバウムを 描 く 状 況 であるとすれば,1st バウムのイメージがより 鮮 明 で,それに 影 響 を 受け 続 ける 中 で 2nd バウムを 描 く 場 面 と 考 えることができるかもしれない。2 対 評 定 から対 評 定 の 結 果 をまとめたのが 表 3 と 図 1 である。この 検 討 より,2 枚 のバウム 間 で,どの 部 分 に 表 現 の 差 異 があるのかを 考 えることができる。図 1 が 示 すように, 同 日 群 と1 週 群 とでは,波 形 の 絶 対 的 な 高 低 には 差 がある。それは 描き 手 の 属 性 の 違 いによる 影 響 かもしれない。ただし, 両 群 の 波 形 を 相 対 的 に 比 較 した 場 合 ,ある 傾 向 を 読 み 取 ることができる。つまり,「 描 線 」に 差 異 は 認 められにくいが,「 幹 」「 大きさ& 位 置 」「 樹 冠 」に 差 異 が 認 められやすい,という 仮 説 を 得 ることができる。そこで,これらのカテゴリーに 対 して, 評 定 者 が 記 述 した 変 化 の 内 容 を 検 討 した。しかし,「 幹 」の差 異 は 両 群 とも 幹 表 面 の 描 写 に 差 異 を 認 めたものがほとんどで, 幹 の 形 態 についての 言 及はほとんどなかった。したがって,「 幹 」に大 きな 変 化 が 生 じているとは 考 えられにくい。また,「 樹 冠 」や「 大 きさ& 位 置 」に 関しては, 評 定 者 は 変 化 を 記 述 してはいるものの,どのような 変 化 が 生 じているかなど, 具体 的 で 法 則 的 な 意 味 は 読 み 取 れなかった。― 34 ―


バウムテストにおける 再 検 査 信 頼 性 の 見 なおし( 佐 渡 忠 洋 , 松 本 香 奈 , 田 口 多 恵 )図 1 同 日 群 と1 週 群 との 対 評 定 の 比 較以 上 から, 同 一 の 描 き 手 の 2 枚 のバウム 表現 には,「 樹 冠 」と「 大 きさ& 位 置 」に 何 らかの 変 化 が 生 じた 可 能 性 があるのだが, 具 体的 な 変 化 を 捉 えることはできなかった(バウム 表 現 の 中 でも「 幹 」「 樹 冠 」「 大 きさ& 位 置 」に 評 定 者 が 変 化 を 感 じやすい,という 点 も 考慮 しなければならないであろう)。 次 のスクリーニング 法 による 検 討 が,この 仮 説 をさらに 洗 練 させてくれるはずである。3 スクリーニング 法 からスクリーニング 法 の 分 析 結 果 を, 同 日 群 と1 週 群 とに 分 けてまとめたのが 表 4 および 表 5である。(1)1st バウムと 2nd バウムの 出 現 度 数 の 比較 から同 日 群 の 結 果 で「 波 線 の 樹 冠 」「 根 あり」「 樹冠 なし」に 有 意 差 が 認 められたことから,1st バウムと 2nd バウムとでは 樹 冠 と 根 に 変化 が 認 められやすいのではないか,という 仮説 が 得 られる。 一 方 ,1 週 群 の 結 果 で「 多 重 線 」のみに 有 意 差 が 認 められたことから,1st バウムと 2nd バウムとでは 描 線 の 特 徴 に 違 いが認 められやすい,と 推 測 できる。このように,同 日 群 と 1 週 群 とでは 統 計 学 的 分 析 から 得 られる 知 見 がいくぶん 異 なる。しかし, 検 討 した 27 個 の 指 標 の 内 , 有 意 差 が 認 められた 指標 がわずかであることは, 両 群 に 共 通 していよう。したがって, 本 研 究 は, 再 検 査 信 頼 性に 関 する 先 行 研 究 の 妥 当 性 を 概 ね 裏 付 ける 形になった,といえる。しかしながら, 描 き 手 らの 回 答 から 示 された よ う に,6~8 割 の 描 き 手 が 1st バ ウ ム と2nd バウムとで「 描 く“ 実 のなる 木 ”を 変 えた」としていることは 無 視 できるものではない。そこで, 次 に 両 バウムで 指 標 と 合 致 したか 否かの 変 化 人 数 から, 考 察 を 続 けることとしたい。(2) 変 化 人 数 の 記 述 統 計 から個 別 の 指 標 の 変 化 人 数 を 見 ると, 同 日 群 の方 が 1 週 群 に 比 べて,ほとんどの 指 標 で 変 化人 数 が 多 い。そのため, 同 日 群 の 方 が 一 週 群よりも 変 化 が 大 きい,と 考 えることもできるが,これは「 変 化 させた」と 回 答 した 者 が 同日 群 に 多 かったことや, 描 き 手 の 属 性 の 違 いが 影 響 しているかもしれないので,これ 以 上の 考 察 は 難 しい。 論 を 進 めるためには, 統 計学 的 分 析 の 有 意 差 には 表 れなかったものの,個 別 のバウムを 理 解 するという 点 では 見 過 ごせない 意 味 を, 両 群 の 共 通 点 から 探 す 必 要 がある。個 別 の 指 標 において, 両 群 とも 描 き 手 の20% 以 上 が 変 化 していたのは,「 多 重 線 」「 枝四 本 以 下 」「 枝 五 本 以 上 」「 実 一 種 」「 付 属 物あり」であった。これは,バウムの 中 でも 枝や 描 線 , 実 ,そして 付 属 物 に 変 化 が 認 められやすいことを 示 唆 している。しかし, 前 項 の対 評 定 で 推 測 された,「 大 きさ& 位 置 」と「 樹冠 」に 差 異 が 生 じるかもしれない,という 知見 とはズレがある。次 にカテゴリーにおける 変 化 人 数 を 考 えたい。このカテゴリー 内 の 変 化 とは,カテゴリー内 のいずれかの 指 標 との 合 致 が 変 化 したかを― 35 ―


岐 阜 女 子 大 学 紀 要 第 42 号 (2013. 3. )表 4カテゴリー 名用 紙 用 途スクリーニング 法 による 同 日 群 (n=69)の 1st バウムと 2nd バウムとの 比 較指 標 名1st 2nd人 数 (%) 人 数 (%) McNemar変 化 人 数 (%)指 標 内 1st 型 2nd 型 カテゴリー 内幹 下 縁 立 19(27.5) 26(37.7) 15(21.7) 11(15.9) 4( 5.8)上 縁 は み 出 し 11(15.9) 18(26.1) 17(24.6) 12(17.4) 5( 7.2) 28 (40.6)その 他 はみ 出 し 8(11.6) 15(21.7) 15(21.7) 11(15.9) 4( 5.8)描 線多 重 線 34(49.3) 27(39.1) 17(24.6) 5( 7.2) 12(17.4)22 (31.9)断 線 11(15.9) 11(15.9) 8(11.6) 4( 5.8) 4( 5.8)一 線 幹 0( - ) 0( - ) 0( - ) 0( - ) 0( - )幹 の 構 造幹 上 直 2( 2.9) 0( - ) 2( 2.9) 0( - ) 2( 2.9)22 (31.9)根 元 の 広 が り 48(69.6) 49(71.0) 15(21.7) 8(11.6) 7(10.1)曲 が っ た 幹 0( - ) 5( 7.2) 5( 7.2) 5( 7.2) 0( - )幹 の 表 面 幹 表 面 の 描 写 51(73.9) 45(65.2) 12(17.4) 3( 4.3) 9(13.0) 12 (17.4)枝 四 本 以 下 12(17.4) 13(18.8) 17(24.6) 9(13.0) 8(11.6)枝 の 本 数 枝 五 本 以 上 18(26.1) 20(29.0) 16(23.2) 9(13.0) 7(10.1) 26 (37.7)枝 な し 38(55.1) 34(49.3) 16(23.2) 6( 8.7) 10(14.5)全 一 線 枝 1( 1.4) 4( 5.8) 3( 4.3) 3( 4.3) 0( - )枝 の 構 造全 二 線 枝 25(36.2) 25(36.2) 18(26.1) 9(13.0) 9(13.0)27 (39.1)一 部 一 線 枝 4( 5.8) 3( 4.3) 5( 7.2) 2( 2.9) 3( 4.3)分 枝 あ り 17(24.6) 15(21.7) 16(23.2) 7(10.1) 9(13.0)丸 い 樹 冠 6( 8.7) 7(10.1) 7(10.1) 4( 5.8) 3( 4.3)波 線 の 樹 冠 44(63.8) 33(47.8) p=0.013 17(24.6) 3( 4.3) 14(20.3)樹 冠 そ の 他 の 樹 冠 14(20.3) 16(23.2) 16(23.2) 9(13.0) 7(10.1) 29 (42.0)樹 冠 な し 4( 5.8) 11(15.9) p=0.039 9(13.0) 8(11.6) 1( 1.4)葉 あ り 6( 8.7) 6( 8.7) 8(11.6) 4( 5.8) 4( 5.8)根 根 あ り 28(40.6) 19(27.5) p=0.022 13(18.8) 2( 2.9) 11(15.9) 13 (18.8)実バウム 以 外実 多 種 6( 8.7) 8(11.6) 8(11.6) 5( 7.2) 3( 4.3)15 (21.7)実 一 種 57(82.6) 50(72.5) 15(21.7) 4( 5.8) 11(15.9)地 面 描 写 27(39.1) 24(34.8) 13(18.8) 5( 7.2) 8(11.6)22 (31.9)付 属 物 あ り 15(21.7) 15(21.7) 14(20.3) 7(10.1) 7(10.1)捉 えているため,カテゴリー 名 はそのままバウムの 形 態 部 や 領 域 を 意 味 している。 両 群 ともに 描 き 手 の 30% 以 上 が 変 化 していたカテゴリーは,「 用 紙 用 途 」「 枝 の 本 数 」「 枝 の 構 造 」「 樹 冠 」「バウム 以 外 」であった。この 結 果 は,概 ね 前 項 の 対 評 定 の 知 見 と 一 致 するものであった。以 上 より, 同 一 の 描 き 手 に 対 して 同 じ 条 件下 でバウムテストを 2 回 施 行 した 場 合 ,1st バウムと 2nd バウムとの 間 には,「 筆 者 らが 用いた 指 標 で 理 解 したところ」という 条 件 付 きで, 次 のような 変 化 が 生 じていると 考 えることができる。○ 個 人 のバウム 表 現 は, 個 別 の 指 標 では 0~30%という 割 合 で, 指 標 をまとめたカテゴリーでは 10~40%という 割 合 で, 変 化 する 可 能 性 がある。○ その 変 化 は,バウム 表 現 の 内 , 用 紙 の 使 い方 (おさまり 方 ), 枝 の 本 数 や 構 造 , 樹 冠― 36 ―


バウムテストにおける 再 検 査 信 頼 性 の 見 なおし( 佐 渡 忠 洋 , 松 本 香 奈 , 田 口 多 恵 )表 5カテゴリー 名用 紙 用 途スクリーニング 法 による1 週 群 (n=42)の 1st バウムと 2nd バウムとの 比 較指 標 名1st 2nd人 数 (%) 人 数 (%) McNemar変 化 人 数 (%)指 標 内 1st 型 2nd 型 カテゴリー 内幹 下 縁 立 8(19.0) 11(26.2) 5 (11.9) 4 ( 9.5) 1 ( 2.4)上 縁 は み 出 し 6(14.3) 5(11.9) 5 (11.9) 2 ( 4.8) 3 ( 7.1) 13 (31.0)その 他 はみ 出 し 4( 9.5) 7(16.7) 5 (11.9) 4 ( 9.5) 1 ( 2.4)描 線多 重 線 19(45.2) 10(23.8) p=0.004 9 (21.4) 0 ( - ) 9 (21.4)11 (26.2)断 線 1( 2.4) 1( 2.4) 2 ( 4.8) 1 ( 2.4) 1 ( 2.4)一 線 幹 0( - ) 0( - ) 0 ( - ) 0 ( - ) 0 ( - )幹 の 構 造幹 上 直 0( - ) 0( - ) 0 ( - ) 0 ( - ) 0 ( - )根 元 の 広 が り 34(81.0) 38(90.5) 6 (14.3) 5 (11.9) 1 ( 2.4)9 (21.4)曲 が っ た 幹 4( 9.5) 1( 2.4) 3 ( 7.1) 0 ( - ) 3 ( 7.1)幹 の 表 面 幹 表 面 の 描 写 23(54.8) 24(57.1) 9 (21.4) 5 (11.9) 4 ( 9.5) 9 (21.4)枝 四 本 以 下 14(33.3) 17(40.5) 13 (31.0) 8 (19.0) 5 (11.9)枝 の 本 数 枝 五 本 以 上 11(26.2) 9(21.4) 12 (28.6) 5 (11.9) 7 (16.7) 16 (38.1)枝 な し 17(40.5) 16(38.1) 7 (16.7) 3 ( 7.1) 4 ( 9.5)全 一 線 枝 2( 4.8) 3( 7.1) 3 ( 7.1) 2 ( 4.8) 1 ( 2.4)枝 の 構 造全 二 線 枝 22(52.4) 21(50.0) 7 (16.7) 3 ( 7.1) 4 ( 9.5)一 部 一 線 枝 1( 2.4) 2( 4.8) 1 ( 2.4) 0 ( - ) 1 ( 2.4)13 (31.0)分 枝 あ り 10(23.8) 8(19.0) 6 (14.3) 2 ( 4.8) 4 ( 9.5)丸 い 樹 冠 0( - ) 1( 2.4) 1 ( 2.4) 0 ( - ) 1 ( 2.4)波 線 の 樹 冠 36(85.7) 33(78.6) 5 (11.9) 1 ( 2.4) 4 ( 9.5)樹 冠 そ の 他 の 樹 冠 4( 9.5) 4( 9.5) 4 ( 9.5) 2 ( 4.8) 2 ( 4.8) 13 (31.0)樹 冠 な し 1( 2.4) 4( 9.5) 3 ( 7.1) 0 ( - ) 3 ( 7.1)葉 あ り 13(31.0) 11(26.2) 8 (19.0) 3 ( 7.1) 5 (11.9)根 根 あ り 19(45.2) 15(35.7) 4 ( 9.5) 0 ( - ) 4 ( 9.5) 4 ( 9.5)実バウム 以 外実 多 種 9(21.4) 9(21.4) 6 (14.3) 3 ( 7.1) 3 ( 7.1)9 (21.4)実 一 種 30(71.4) 29(69.0) 9 (21.4) 4 ( 9.5) 5 (11.9)地 面 描 写 13(31.0) 13(31.0) 6 (14.3) 3 ( 7.1) 3 ( 7.1)14 (33.3)付 属 物 あ り 7(16.7) 13(31.0) 12 (28.6) 9 (21.4) 3 ( 7.1)の 形 態 や 有 無 ,バウム 以 外 の 描 写 ,に 認 められる 可 能 性 が 高 い。このことは,「バウムテストは 再 検 査 信 頼性 の 高 い 技 法 である」との 考 えに, 一 種 の 疑問 を 投 げかけるものではないだろうか。 少 なくとも, 同 一 の 描 き 手 には 上 述 のような 変 化が 生 じており,バウム 表 現 にはゆらぎがあることを 示 したこの 結 果 は, 決 して 無 視 できるものではないだろう。なぜならば, 微 細 なバウム 表 現 の 変 化 が 時 に 重 要 な 意 味 をもちうることを 知 るわれわれ 心 理 臨 床 家 には,「 個 人のバウム 表 現 は 安 定 している」というあまりに 単 純 化 した 理 解 に 留 まることが, 許 されないと 思 われるからである。4 表 現 の 変 化 とバウムの 論 理ところで, 宿 谷 ら(1969)の 指 摘 のとおり,描 画 結 果 と 描 き 手 と 状 態 像 との 間 には, 逆 説的 な 関 係 が 認 められることがある。この 逆 説的 な 関 係 があるために, 同 一 の 描 き 手 の 数 枚の 描 画 をどのように 理 解 していくかは, 実 際― 37 ―


バウムテストにおける 再 検 査 信 頼 性 の 見 なおし( 佐 渡 忠 洋 , 松 本 香 奈 , 田 口 多 恵 )矛 盾 について, 新 しいステージで 議 論 することを 可 能 にさせる,と 筆 者 らは 考 える。Ⅳ おわりに本 研 究 によって 筆 者 らは, 個 人 のバウム 表現 は 比 較 的 安 定 しており, 再 検 査 信 頼 性 は 高い,と 理 解 できる 構 造 があることを 示 しつつも, 同 時 に, 見 逃 したくない 変 化 も 個 人 のバウム 表 現 には 認 められることを 指 摘 してきた。この 変 化 を 重 視 する 立 場 からすれば, 特定 の 臨 床 群 に 特 徴 的 な 指 標 を 抽 出 する 研 究や,ある 特 定 の 心 理 学 的 特 性 と 関 連 する 指 標を 明 らかにする 研 究 は,そもそも 方 法 論 的 に問 題 を 有 している,と 指 摘 することになるかもしれない。 筆 者 らは, 決 してそのような 研究 を 否 定 するつもりはない。しかし, 得 られた 知 見 をあまりに 短 絡 的 に 理 解 しては,バウムが 心 理 臨 床 に 本 当 の 意 味 で 活 かされることは 難 しいだろう,ということを 強 調 したいのである。文 献1) 青 木 健 次 (1976). 描 画 法 の 再 検 査 信 頼性 ―バウム・テストを 使 って. 心 理 測 定ジャーナル,12(8), 11―16.2) 青 木 健 次 (1980). 投 影 描 画 法 の 基 礎 的 研究 ( 第 1 報 )― 再 検 査 信 頼 性 . 心 理 学 研究 ,51(1), 9―17.3) 古 川 裕 之 (2010). 描 画 作 品 の 変 化 の 意 味について― 表 現 心 理 学 からの 検 討 . 京 都大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 紀 要 ,56, 223―235.4) Koch,K(1957). 岸 本 寛 史 ・ 中 島 ナオミ・宮 崎 忠 男 訳 (2010).バウムテスト[ 第3 版 ]― 心 理 的 見 立 ての 補 助 手 段 としてのバウム 画 研 究 . 誠 信 書 房 .5) 国 吉 政 一 ・ 林 勝 造 ・ 一 谷 彊 ・ 津 田 浩 一 ・ 斎藤 通 明 (1980).バウム・テスト 整 理 表 .日 本 文 化 科 学 社 .6) 名 倉 啓 太 郎 ・ 大 塚 君 子 ・ 福 田 美 智 子 ・ 沢 井晴 美 ・ 細 見 房 子 (1968). 児 童 における 樹木 画 の 発 達 と 性 格 検 査 としての 信 頼 性 と 妥当 性 について. 大 阪 樟 蔭 女 子 大 学 児 童 学研 究 ,4, 59―76.7) 中 島 ナオミ(2011).バウムテストの 発 達指 標 に 関 する 研 究 . 甲 子 園 大 学 博 士 論 文 .8) 奥 田 亮 (2005). 本 研 究 のねらい.In; 山中 康 裕 ・ 皆 藤 章 ・ 角 野 善 宏 編 ,バウムの心 理 臨 床 . 創 元 社 ,pp. 144―151.9) 佐 渡 忠 洋 (2011).バウムテスト 研 究 の 可能 性 .In; 岸 本 寛 史 編 , 臨 床 バウム―治 療 的 媒 体 としてのバウムテスト. 誠 信 書房 ,pp. 28―43.10) 佐 渡 忠 洋 ・ 坂 本 佳 織 ・ 岸 本 寛 史 (2010) 実施 法 がバウムテストに 与 える 影 響 ― 同 一の 描 き 手 に 行 った 個 別 法 と 集 団 法 の 比 較 から. 日 本 心 理 臨 床 学 会 第 29 回 大 会 発 表 論文 集 ,P. 256.11) 坂 本 佳 織 ・ 佐 渡 忠 洋 ・ 岸 本 寛 史 (2012).バウムテスト 研 究 におけるスポットライト分 析 . 心 理 臨 床 学 研 究 ,30(1), 41―50.12) 仙 田 善 孝 (1980a).バウム・テストの 信 頼性 ― 幼 児 を 対 象 として. 心 理 測 定 ジャーナル,16, 14―20.13) 仙 田 善 孝 (1980b).バウム・テストの 信 頼性 に 関 する 研 究 ― 全 体 的 印 象 について.教 育 心 理 ,28, 69―72.14) 宿 谷 幸 次 郎 ・ 石 田 達 男 ・ 丸 山 普 ・ 望 月 節 子 ・小 林 保 子 ・ 岩 井 寛 (1969). 状 態 像 と 絵 画表 現 の 問 のパラドクシカルな 意 味 について. 芸 術 療 法 ,1, 41―46.― 39 ―

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