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「命のパスポート」―母子手帳のインパクト分析 - JICA Research Institute

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IN THIS ISSUE:Hot Issue:ルワンダの 紛 争 と 土 地 所 有 問 題 をテーマにワーキングペーパーを 発 表1994 年 の 大 虐 殺 がいまだ 記 憶 に 新 しいルワンダ。この 紛 争 がもたらした 難 民 帰 還 による 土 地 所 有 問 題 をテーマに、 武 内 進 一 上席 研 究 員 がワーキングペーパーを 発 表 しました。 武 内 上 席 研 究 員が、RPF(ルワンダ 愛 国 戦 線 )へ 政 権 移 行 した 後 の 土 地 所 有 の 現状 、 今 後 の 展 望 などについて 語 ります。READ MOREルワンダ 南 部 州 での 農 作 業 風 景Reviewsインドネシアでミクロレベルの 金 融 危 機 の 影 響 を 調 査世 界 的 金 融 危 機 が、インドネシアにおいてどのような 影 響 をもたらしているかをミクロレベルで 分 析 する 研 究 が 進 んでいます。READ MOREReviews「 命 のパスポート」― 母 子 手 帳 のインパクト 分 析<strong>JICA</strong>が 行 う「 母 子 健 康 保 健 サービス 向 上 のためのプロジェクト」についてインパクト 分 析を 行 う 上 山 美 香 研 究 員 に、インドネシアとパレスチナでの 母 子 手 帳 普 及 の 効 果 について聞 きました。READ MOREReviews国 境 を 越 えた 高 等 教 育 の 研 究 : 労 働 者 の 能 力 向 上 と 地 域 統 合 の 促 進黒 田 一 雄 客 員 研 究 員 と 結 城 貴 子 研 究 員 が 取 り 組 む、ASEAN+5 地 域 における 国 境 を 越 えた 高 等 教 育 (CBHE)プログラムが 労 働 市 場 に 及 ぼす 影 響 について、 研 究 の 狙 いなどを 聞きました。READ MORECopyright © 2009 Japan International Cooperation Agency <strong>Research</strong> <strong>Institute</strong>All rights reserved<strong>JICA</strong> 1研 究 所〒162-8433 東 京 都 <strong>JICA</strong> 新 宿 区 研 市 究 谷 所 本 村 ニューズレターNo. 町 10-5 • Tel: 03-3269-2911 5 2009.11 • dritpl@jica.go.jp


Hot Issueルワンダの 紛 争 と 土 地 所 有 問 題 をテーマにワーキングペーパーを 発 表<strong>JICA</strong> 研 究 所 の 武 内 進 一 上 席 研 究 員 が、「ルワンダの 紛 争 と 土 地 所 有 」をテーマにワーキングペーパーを 発 表 しました。 紛 争 後 の 難 民 の 帰 還 問 題 に 焦点 を 当 てて 研 究 を 進 める 武 内 上 席 研 究 員 に、その背 景 やルワンダの 現 状 、 今 後 の 展 望 などについて話 を 聞 きました。 以 下 は、 武 内 上 席 研 究 員 によるコメントの 要 約 です。1980 年 代 半 ばまで、 国 際 社 会 は 難 民 に 畑 を 付 与するなどして 流 出 先 に 定 住 させようとする 取 り 組みを 行 いました。しかし、 流 出 先 の 国 で 難 民 が 政治 的 に 利 用 されるなど 問 題 が 多 かったため、その後 は 本 国 に 帰 還 させる 政 策 が 主 流 となり、これに伴 って、 難 民 帰 還 後 の 土 地 所 有 問 題 がクローズアップされるようになりました。ルワンダのケースでは、62 年 のフツ 主 導 による 独 立 の 前 後 から 国 外 へ流 出 していたツチ 難 民 たちが、94 年 にRPF(ルワンダ 愛 国 戦 線 )が 政 権 を 獲 得 した 際 、 大 量 に 帰 還 しました。RPF 政 権 は、ツチ 帰 還 民 と 元 の 土 地 所 有 者 であるフツ 住 民 との 間 で 土 地 を 折 半 させるという 急 進 的な 政 策 を 実 施 しました。 表 面 上 、それによって 深 刻なあつれきが 生 じることはありませんでした。ただ、 少 数 派 であるツチ 中 心 の 政 権 下 で、 多 数 派 のフツ 住 民 を 中 心 に、 土 地 所 有 に 関 して 不 満 を 抱 く人 たちも 存 在 しています。つまり、 政 権 が 不 安 定 化した 場 合 に 土 地 所 有 問 題 が 一 気 に 表 面 化 する 恐れもあるわけです。こうした 観 点 から、 土 地 所 有 権の 安 定 性 が 政 権 自 身 の 安 定 性 に 強 く 依 存 する 今の 状 況 が 続 くことは 危 険 だと 思 っています。ルワンダの 土 地 所 有 問 題 について 語 る武 内 進 一 上 席 研 究 員土 地 所 有 権 を 安 定 化 させていくために、 国 民 から見 て 国 家 が 正 統 だと 長 期 的 、 継 続 的 に 認 められることが 大 切 です。そのために 国 家 の 正 統 性 を 高 める 施 策 が 必 要 だということです。今 回 発 表 したワーキングペーパーには、「 負 の 歴史 を 繰 り 返 さないための 政 治 が 必 要 」だというメッセージが 込 められています。 私 は 共 同 執 筆 者 のルワンダ 人 研 究 者 ジャン・マララ 氏 (ルワンダ 科 学技 術 研 究 所 研 究 員 )らとともに、 土 地 所 有 問 題 に限 らず、 地 域 の 人 々の 生 活 や 社 会 の 変 化 に 着 目 しつつ、 今 後 も 研 究 を 続 けていきたいと 思 います。なお、 武 内 上 席 研 究 員 は、 本 研 究 と 関 連 する 近 著「 現 代 アフリカの 紛 争 と 国 家 ―ポストコロニアル家 産 制 国 家 とルワンダ・ジェノサイド」( 明 石 書 店 )が 評 価 され、11 月 6 日 に「 第 31 回 サントリー 学 芸 賞(「 政 治 ・ 経 済 部 門 」)」( 主 催 = 財 団 法 人 サントリー 文 化 財 団 )を 受 賞 しました。2<strong>JICA</strong> 研 究 所 ニューズレターNo. 5 2009.11


Reviewsインドネシアでミクロレベルの 金 融 危 機 の 影 響 を 調 査多 くの 人 々にとって、 昨 年 の 世 界 金 融 危 機 は 驚 きの 出 来 事 でした。「 危 機 の 全 容 を 把 握 できなかった 当 初 、 国 際 社 会 は 送 金 額 の 推 移 や 季 節 労 働 者の 移 動 などが、どのように 変 化 しているかの 指 標を 探 し 求 めていた」と<strong>JICA</strong> 研 究 所 の 武 藤 めぐみ 研究 員 は 振 り 返 ります。 武 藤 研 究 員 による「インドネシア 農 村 部 における 成 長 と 貧 困 削 減 の 実 証 研 究 :空 間 、インフラ、 人 的 資 源 の 役 割 と 金 融 危 機 のインパクト」と 題 するプロジェクトは、このような、 特にアジアにおける 家 計 への 危 機 の 影 響 を 調 査 する 必 要 があるという 問 題 意 識 に 応 じて 開 始 されました。武 藤 研 究 員 は、9 月 28 日 、29 日 にハノイで 行 われた「アジア 太 平 洋 地 域 における 世 界 的 景 気 低 迷の 貧 困 及 び 持 続 可 能 な 開 発 への 影 響 」と 題 するASEAN+3 会 合 に 出 席 し、 二 つの 分 科 会 で 予 備 調査 結 果 の 発 表 を 行 いました。ASEAN・アジア 開 発銀 行 ・ベトナム 政 府 ・ 中 国 政 府 が 主 催 、<strong>JICA</strong>も 共 催したこの 会 合 は、 金 融 危 機 のミクロレベルの 影 響に 焦 点 を 当 てたものでした。武 藤 研 究 員 は「 学 歴 と 就 業 経 験 が 季 節 労 働 者 の雇 用 機 会 に 与 える 影 響 」と 題 した 最 初 の 発 表 で、金 融 危 機 下 、 季 節 労 働 者 が 仕 事 を 継 続 するか 仕事 を 失 って 農 村 部 に 帰 るかどうか、あるいは 新 たな 労 働 者 がそもそも 移 住 を 伴 う 季 節 労 働 をすることを 決 意 するかどうかの 判 断 には、 教 育 水 準 や 就業 経 験 、 雇 用 形 態 、 年 齢 、そして 居 住 地 の 全 てが 影響 することを 示 しました。は、 都 市 部 で 働 く 季 節 労 働 者 から 地 方 の 親 族 への送 金 を 含 む、 農 村 世 帯 収 入 の 構 成 の 変 化 を 分 析 しました。 世 帯 収 入 の 総 額 は 増 えているケースと 減っているケースの 両 方 があることや、 収 入 増 がある 場 合 は 多 くの 場 合 、 補 完 的 な 自 営 によるものが主 な 要 因 であったことが 分 かりました。 農 業 に 依存 している 人 々の 収 入 は、 生 産 した 農 産 物 の 種 類によって 増 減 がさまざまであることも 明 らかになっています。世 界 的 金 融 危 機 による 家 計 への 影 響 に 焦 点 を 当 てる武 藤 めぐみ 研 究 員この 研 究 はまだ 初 期 段 階 であるため、 武 藤 研 究 員は 再 びインドネシアの 現 場 に 行 き、 季 節 労 働 者 に関 する 産 業 別 の 詳 細 な 調 査 を 行 う 予 定 です。その調 査 によって、さまざまな 社 会 経 済 階 層 における金 融 危 機 の 影 響 が 明 らかになることが 期 待 されます。また、「 金 融 危 機 下 のインドネシアの 都 市 部 と 農村 部 の 送 金 メカニズム」と 題 した 二 つ 目 の 発 表 で3<strong>JICA</strong> 研 究 所 ニューズレターNo. 5 2009.11


Reviews「 命 のパスポート」― 母 子 手 帳 のインパクト 分 析録 」「 小 児 期 の 記 録 」のどちらか 一 方 のみを 所 持 していたケースに 比 べ、その 両 方 の 機 能 を 有 する 母子 手 帳 を 所 持 するケースでは、 母 親 の 知 識 ・ 行 動が 改 善 されることが 分 かりました。母 子 健 康 手 帳 普 及 の 効 果 を 語 る 上 山 美 香 研 究 員インドネシアとパレスチナにおける「 母 子 健 康 手帳 」( 以 下 「 母 子 手 帳 」)の 普 及 を 通 じた 母 子 健 康保 健 サービス 向 上 のためのプロジェクトについてインパクト 分 析 を 行 う、<strong>JICA</strong> 研 究 所 の 上 山 美 香 研究 員 に 話 を 聞 きました。戦 後 、 日 本 の 母 子 保 健 の 改 善 に 寄 与 してきた 母 子手 帳 の 開 発 途 上 国 への 普 及 は、ミレニアム 開 発 目標 (MDGs)にある「 幼 児 死 亡 率 の 削 減 」や「 妊 産 婦の 健 康 の 改 善 」への 貢 献 手 段 として、 世 界 的 に 注目 を 集 めています。しかし、その 有 効 性 の 実 証 は厳 密 に 計 測 されていませんでした。この 研 究 は、その 効 果 を 学 術 的 な 視 点 で 実 証 することが 重 要であるとの 問 題 意 識 から 始 まりました。1998 年 から 母 子 手 帳 が 導 入 されたインドネシアでは、 年 間 約 500 万 人 を 数 える 妊 婦 のうち 約 400万 人 に 普 及 (2008 年 度 )しており、 現 在 では 公 文 書として 利 用 されています。 母 子 手 帳 導 入 前 後 の 比較 を 行 うと、 導 入 前 すでに 存 在 した「 妊 娠 期 の 記また、 妊 産 婦 ・ 乳 幼 児 の 死 亡 率 が 非 常 に 高 いパレスチナでは、 母 子 手 帳 が「 命 のパスポート」とも 呼ばれ、 重 要 な 国 家 プログラムとなっています。データからは、 母 子 手 帳 を 提 示 することで 母 親 と 保 健医 療 従 事 者 とのコミュニケーションが 図 られ、 丁寧 な 診 察 が 行 われるなどの 効 果 が 確 認 されました。日 本 のもの( 左 )と 比 べ 、サイズが 大 きく、 絵 を 多 用 して 分かりやすく 作 られたインドネシアの 母 子 健 康 手 帳 ( 右 )上 山 研 究 員 は、「 母 親 の 意 識 の 変 化 が 医 療 サービスを 向 上 させる」と 分 析 します。そして、「『 母 子 手帳 を 介 して 母 親 と 父 親 の 会 話 が 増 える』というデータもあり、 家 庭 内 の 男 女 の 役 割 や 価 値 観 を 変 えるという 副 次 的 な 効 果 も 期 待 できる。そういう 意味 では、 母 子 保 健 の 枠 を 超 え、 社 会 を 変 えるツールにもなり 得 る」と 話 しています。4<strong>JICA</strong> 研 究 所 ニューズレターNo. 5 2009.11


Reviews国 境 を 越 えた 高 等 教 育 の 研 究 :労 働 者 の 能 力 向 上 と 地 域 統 合 の 促 進アジアの 労 働 市 場 に 対 して 域 内 の 高 等 教 育 プログラムはどのような 役 割 を 果 たしているのか―そのような 問 題 意 識 から、<strong>JICA</strong> 研 究 所 の 黒 田 一 雄 客員 研 究 員 と 結 城 貴 子 研 究 員 は、 域 内 で 発 展 しつつある「 国 境 を 越 えた 高 等 教 育 プログラム」(Cross-Border Higher Educationprogram)の 研究 を 進 めています。 研 究 の 狙 いは、アジア 地 域 の高 等 教 育 制 度 の 発 展 のためのCBHEプログラムの効 果 を 明 らかにすることにあり、 具 体 的 な 政 策 提言 の 抽 出 も 目 指 しています。プロジェクトの 進 捗 状 況 を 説 明 する 黒 田 一 雄 客 員 研 究 員 ( 右 )と 結 城 貴 子 研 究 員初 めに、ASEAN+5カ 国 ( 日 ・ 中 ・ 韓 、オーストラリア、ニュージーランド)でどのようなCBHEプログラムが 行 われているかの 状 況 把 握 のための 調 査 が進 められています。 域 内 のCBHEプログラムを「 従来 型 」「 新 型 」という2つの 類 型 に 区 分 しつつ、300の 大 学 を 対 象 に 調 査 を 実 施 しています。「 従 来 型 」とは 通 常 の 海 外 留 学 プログラムのように 学 生 が 自ら 移 動 するもの、「 新 型 」とは 例 えば 遠 距 離 教 育 のように、 学 生 が 域 内 のさまざまな 教 育 機 関 やプログラムに 対 して、 国 内 にいながらにしてアクセスできるようにするものをいいます。 近 年 、このような「新 型 」プログラムが 域 内 で 主 流 化 しつつある 状 況を 踏 まえ、 本 研 究 では、これらの 異 なる 教 育 プログラムが、 学 生 の 卒 業 後 の 労 働 市 場 における 進 路 に関 してどのような 違 いをもたらしているかに 関 心を 寄 せています。そのような 比 較 分 析 に 好 適 な 素 材 を 提 供 している国 としてマレーシアが 選 ばれました。 同 国 では、「 従 来 型 」プログラムと 並 んで、 近 年 では「 新 型 」プログラムも 積 極 的 に 進 められるようになってきているからです。 本 研 究 では、 卒 業 生 の 就 職 状 況 、昇 進 の 早 さおよび 海 外 への 流 出 の 度 合 いといった 点 において、 新 旧 2つのタイプのプログラムの間 にどのような 違 いが 出 ているかに 着 目 し、 過 去10 年 にわたる 卒 業 生 の 足 取 りをトレースして 詳 細な 調 査 とインタビューを 進 める 予 定 です。このような 個 人 レベルの 実 証 データは 世 界 的 にも 極 めて稀 少 であり、 研 究 の 付 加 価 値 を 高 めるためにも 必要 なものと 捉 えています。調 査 とデータの 分 析 を 完 了 するにはあと 半 年 ほど期 間 を 要 しますが、それまでの 間 、マレーシアおよび 日 本 で 入 手 できた 最 新 データを 活 用 してのバックグラウンドペーパーの 作 成 が 進 められています。その 成 果 はマレーシア 政 府 の 次 期 5カ 年 計 画の 作 成 において、 参 照 されることも 期 待 されています。また 本 研 究 では、 日 本 やアジアの 政 策 立 案者 に 向 けた、ポリシーブリーフ( 政 策 提 言 書 )を 作成 することも 予 定 しています。5<strong>JICA</strong> 研 究 所 ニューズレターNo. 5 2009.11

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