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秘密の地図展示中 ~駒澤大学所蔵外邦図展~ 解説リーフレット

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秘 密 の 地 図 展 示 中<br />

~ 駒 澤 大 学 所 蔵 外 邦 図 展 ~<br />

解 説 リーフレット


~ 開 催 にあたって~<br />

このほど「 駒 澤 マップ・アーカイブズ」の 活 動 の 一 端 が 公 開 されることになった. 外 邦<br />

図 の 整 理 ・ 研 究 は,すでにいくつかの 大 学 で 進 められているが, 本 学 での 特 徴 は, 学 生 諸<br />

君 がボランティアとして 独 力 で 行 ってきたことである.この 活 動 は 2004 年 に, 現 在 は 名<br />

誉 教 授 となられた 中 村 和 郎 先 生 の 指 導 の 下 で 始 められ, 博 物 館 学 講 座 の 太 田 喜 美 子 先 生 や<br />

応 用 地 理 研 究 所 のご 助 力 を 得 ながら, 地 理 学 科 と 歴 史 学 科 の 有 志 学 生 が 続 けてきた. 故 ・<br />

多 田 文 男 先 生 が 本 学 に 残 してくださった 資 料 には,20 世 紀 の 日 本 の 地 理 学 を 知 る 上 で 貴 重<br />

なものが 多 々あり,その 一 部 は 禅 文 化 歴 史 博 物 館 の 地 理 学 科 ・ 歴 史 学 科 創 立 75 周 年 記 念<br />

事 業 の 企 画 展 示 や 多 田 文 男 コレクション(DVD)などとして 公 開 されてきたが, 今 回 ,<br />

さらに 新 たな 一 歩 が 加 わることになる.<br />

今 回 展 示 されている 地 図 の 多 くは, 整 理 の 遅 れていた 中 国 ・ 満 州 ・ 朝 鮮 半 島 のコレクシ<br />

ョンから 選 んだものである. 多 田 先 生 が 精 力 的 に 調 査 された 地 域 だけあって, 清 朝 光 緒 年<br />

間 の 実 測 図 や, 明 治 初 期 にいわゆる 秘 密 測 量 によって 作 成 されたと 思 われる 外 邦 図 など,<br />

他 大 学 にない 貴 重 な 地 図 も 発 見 された. 今 後 は, 地 図 目 録 の 刊 行 にむけて 整 理 作 業 を 続 け<br />

ていくと 同 時 に, 研 究 資 料 としての 保 存 ・ 活 用 にも 目 を 向 けていくことになる.これから<br />

も 皆 様 のご 理 解 と 励 ましを 頂 ければ 幸 いである.<br />

駒 澤 マップ・ア-カイブズ 顧 問<br />

駒 澤 大 学 文 学 部 地 理 学 科 教 授<br />

佐 藤 哲 夫<br />

- 1 -


秘 密 の 地 図 展 示 中<br />

駒 澤 大 学 所 蔵 外 邦 図 展 解 説<br />

今 回 の 展 示 では, 外 邦 図 の 過 去 ・ 現 在 ・ 未 来 という 流 れで 展 示 を 行 なう. 外 邦 図 の 存<br />

在 意 義 から, 外 邦 図 の 現 状 , 今 後 の 展 開 などを 展 示 する. 各 部 屋 には 中 国 の 地 図 を<br />

中 心 に,それぞれ 明 治 ・ 大 正 ・ 昭 和 に 作 成 された 順 で 特 徴 ある 地 図 を 取 り 上 げている.<br />

~ 外 邦 図 がなぜ 存 在 するのか( 外 邦 図 とは 何 か)~<br />

明 治 中 期 以 降 , 日 本 は 近 隣 諸 国 への 拡 張 政 策 ( 侵 略 )をとったが,それにともなって 主<br />

に 軍 の 作 上 の 必 要 から 作 られた 厖 大 な 地 図 がある.その 作 成 範 囲 は, 日 本 周 辺 は 言 うに 及<br />

ばず,わが 国 の 対 外 政 策 の 変 遷 に 応 じて,シベリア,インドを 含 むアジア 大 陸 内 奥 部 まで<br />

のほか, 太 平 洋 のほぼ 全 域 とオーストラリア, 北 米 にまで 及 んだ.これらを 総 称 して 外 邦<br />

図 と 呼 ぶ. 外 邦 図 は 日 本 の 統 治 時 代 に 作 成 された 朝 鮮 , 台 湾 , 樺 太 等 およびこれらに 準 じ<br />

る 満 州 の 一 般 図 (ともに, 秘 図 区 域 を 除 いて 一 般 販 売 された)を 包 括 して 扱 う. 同 様 に,<br />

軍 用 として 作 られたものではないが,シベリアから, 中 央 ・ 南 東 アジアの 全 域 と 西 太 平 洋<br />

地 域 について 作 られた 百 万 分 一 東 亜 輿 地 図 等 の 小 縮 尺 編 纂 図 も 一 括 してここで 扱 う( 長 岡 ,<br />

1993 より 抜 粋 ).<br />

文 献 ・ 長 岡 正 利 (1993) 陸 地 測 量 部 外 邦 図 作 成 の 記 録 ― 陸 地 測 量 部 ・ 参 謀 本 部 外 邦 図 一 覧 図 ―. 地 図 31(4):12-25.<br />

多 田 文 男<br />

~ 外 邦 図 がなぜ 駒 澤 大 学 に 存 在 するのか~<br />

駒 澤 大 学 が 所 蔵 する 外 邦 図 は,かつて 地 理 学 教 室 の 教 授 で<br />

あった 多 田 文 男 が 持 ち 込 んだものとされている. 多 田 文 男 は<br />

1900( 明 治 33) 年 に 東 京 に 生 まれた. 東 京 帝 国 大 学 理 学 部<br />

地 理 学 科 を 卒 業 し,その 後 同 大 学 の 助 手 に 就 任 し 後 に 教 授 と<br />

なった. 日 本 の 地 理 学 ・ 地 形 学 ,また 駒 澤 大 学 の 地 理 学 科 を<br />

大 きく 発 展 させた 学 者 である.1941( 昭 和 16) 年 からは 文<br />

部 省 資 源 科 学 研 究 所 々 員 を 兼 任 していた.1961( 昭 和 36)<br />

年 に 東 京 大 学 を 定 年 退 官 し, 同 年 に 法 政 大 学 専 任 教 授 に 就 任<br />

した.1966( 昭 和 41) 年 からは 駒 澤 大 学 専 任 教 授 に 就 任 し,<br />

1978( 昭 和 53) 年 に 亡 くなるまで 駒 澤 大 学 教 授 として 在 籍<br />

された. 駒 澤 大 学 専 任 教 授 になる 以 前 の 1939( 昭 和 14) 年 から 兼 任 の 教 員 として 教 育 に<br />

従 事 してきたので, 今 年 で 79 年 におよぶ 教 室 の 歴 史 の 中 で 約 40 年 間 も 駒 澤 大 学 のために<br />

尽 力 されたことになる.<br />

1933 年 から 1944 年 までの, 朝 鮮 半 島 ・ 中 国 の 東 北 地 方 ( 満 州 )から 蒙 古 への 探 検<br />

的 調 査 を 記 録 した 17 冊 のフィールドノート( 小 池 ,2007)の 存 在 で, 少 なくともこ<br />

の 11 年 間 に 外 邦 図 を 用 いた 調 査 をしていた 事 がわかっている.<br />

- 2 -


第 二 次 世 界 大 戦 の 終 結 を 迎 え, 外 邦 図 が 連 合 軍 に 接 収 されてしまう 危 機 が 迫 った.<br />

地 図 は 軍 事 上 非 常 に 大 切 なものだからである. 多 田 や 他 の 地 理 学 者 達 は 市 ヶ 谷 の 参 謀<br />

本 部 にある 外 邦 図 を 可 能 な 限 り 多 田 らの 勤 める 資 源 科 学 研 究 所 へ 運 び 出 した( 浅 井 ,<br />

2007).それ 以 外 の 多 くの 外 邦 図 は 焼 却 処 分 されたり 戦 後 の 混 乱 で 散 逸 してしまった<br />

りした.その 後 整 理 作 業 を 経 てその 多 くが 日 本 各 地 の 大 学 や 研 究 施 設 などに 移 された.<br />

これらの 他 に 多 田 は, 自 身 が 調 査 ・ 研 究 した 朝 鮮 , 中 国 , 満 州 , 蒙 古 等 の 外 邦 図 なら<br />

びに 東 南 アジア 各 地 の 相 当 枚 数 の 外 邦 図 を 所 有 し, 駒 澤 大 学 まで 持 ってきたものと 考<br />

えられる.<br />

文 献 ・ 浅 井 辰 郎 (2007) 資 源 科 学 研 究 所 の 地 図 の 行 方 ー 多 田 文 男 の 英 断 . お 茶 の 水 女 子 大 学 外 邦 図 目 録 :5-10.<br />

・ 駒 澤 大 学 文 学 部 地 理 学 科 創 立 75 周 年 記 念 誌 .(2005) 駒 澤 地 理 41:304p.<br />

・ 多 田 文 男 (1978) 多 田 文 男 先 生 略 歴 および 著 作 目 録 . 駒 澤 地 理 14:263-271.<br />

・ 小 池 一 之 (2007) 多 田 先 生 のフィールドノート 駒 澤 大 学 大 学 院 地 理 学 研 究 第 35 号 :1<br />

~ 外 邦 図 の 調 査 ・ 研 究 の 始 まり~<br />

外 邦 図 については, 軍 用 として 秘 密 扱 いのものであったため, 関 連 する 資 料 はないに 等<br />

しかった( 長 岡 ,1993). 多 くの 関 係 者 がまだ 存 命 していた 1970( 昭 和 45) 年 までにま<br />

とめられた『 測 量 ・ 地 図 百 年 史 』 中 に, 地 域 別 の 網 羅 的 な 記 述 があるが,この 原 資 料 の 現<br />

存 については, 今 のところ 不 明 である( 長 岡 ,1993).<br />

近 年 外 邦 図 の 学 術 的 な 価 値 が 認 められ, 外 邦 図 研 究 の 気 運 が 高 まってきた.2002 年 に 大<br />

阪 大 学 , 京 都 大 学 が 中 心 となり 外 邦 図 研 究 会 の 第 一 回 研 究 会 が 行 われた( 小 林 ほか,2003).<br />

研 究 会 では 研 究 発 表 は 勿 論 , 情 報 交 換 などが 活 発 に 行 われている.2003 年 に 東 北 大 学 が 外<br />

邦 図 目 録 を 作 成 ,また 2005 年 には 京 都 大 学 が 目 録 を 完 成 させ,2007 年 にはお 茶 の 水 女 子<br />

大 学 も 目 録 を 完 成 させている. 大 学 の 枠 を 超 えた 外 邦 図 の 利 用 が 可 能 になりつつある.<br />

2005 年 にはインターネット 上 で 外 邦 図 の 閲 覧 が 可 能 な“ 外 邦 図 デジタルアーカイブ”と<br />

いうサイトが 立 ち 上 げられた. 専 門 家 だけでなく 一 般 の 方 も 外 邦 図 を 見 る 環 境 が 整 ってき<br />

ていると 言 えよう.<br />

文 献 ・ 小 林 茂 ・ 今 里 悟 之 ・ 鳴 海 邦 匡 (2003) 本 研 究 の 経 過 . 外 邦 図 研 究 ニュースレター,1:1-8<br />

・ 長 岡 正 利 (1993 陸 地 測 量 部 外 邦 図 作 成 の 記 録 ― 陸 地 測 量 部 ・ 参 謀 本 部 外 邦 図 一 覧 図 ―. 地 図 31(4):12-25.<br />

・ 外 邦 図 デジタルアーカイブHP http://dbs.library.tohoku.ac.jp/gaihozu/<br />

~ 駒 澤 大 学 での 調 査 ・ 研 究 の 始 まり~<br />

2003 年 11 月 に 駒 澤 大 学 で 開 かれた 第 4 回 外 邦 図 研 究 会 にて 本 学 にも 大 量 の 外 邦 図 が 未<br />

整 理 のまま 眠 っていることが 明 らかになった. 駒 澤 大 学 応 用 地 理 研 究 所 や 学 生 達 が,その<br />

重 要 性 を 認 識 し 2004 年 4 月 に 駒 澤 マップ・アーカイブズという 団 体 がつくられた. 週 に<br />

1 回 程 度 の 活 動 で 整 理 作 業 を 進 めて 行 った.また, 夏 季 や 春 季 休 業 中 には 合 宿 を 行 い 精 力<br />

的 に 活 動 した.2005 年 度 日 本 地 理 学 会 春 季 学 術 大 会 において, 整 理 作 業 の 成 果 や 駒 澤 大 学<br />

の 外 邦 図 の 特 徴 などを 発 表 した( 大 槻 ほか,2005).<br />

2008 年 現 在 も 駒 澤 マップ・アーカイブズは 活 動 を 続 けている. 駒 澤 大 学 所 蔵 外 邦 図 目 録<br />

- 3 -


の 完 成 は 目 前 に 迫 っており, 今 後 すでに 目 録 が 完 成 している 東 北 大 学 や 京 都 大 学 ,お 茶 の<br />

水 女 子 大 学 との 比 較 や 学 術 的 な 利 用 のための 情 報 交 換 が 可 能 となるだろう.<br />

文 献 ・ 大 槻 涼 ・ 後 藤 慶 之 ・ 上 條 孝 徳 (2005) 駒 澤 マップ・アーカイブズ. 日 本 地 理 学 会 発 表 要 旨 集 67:244.<br />

~どこの 大 学 に 外 邦 図 が 存 在 するのか~<br />

外 邦 図 は 戦 後 , 参 謀 本 部 から 直 接 運 び 出 されたもの( 東 北 大 学 ・ 東 京 大 学 ・ 名 古 屋 大 学 ・<br />

旧 資 源 科 学 研 究 所 )の 他 に 旧 資 源 科 学 研 究 所 (1941~1971)から 再 分 配 されたもの( 東 京<br />

大 学 ・ 京 都 大 学 ・ 筑 波 大 学 ・お 茶 の 水 女 子 大 学 ・ 広 島 大 学 ・ 立 教 大 学 ・ 熊 本 大 学 など),さ<br />

らに 旧 資 源 科 学 研 究 所 から 再 分 配 された 機 関 や 大 学 から 譲 渡 , 交 換 されたもの( 国 土 地 理<br />

院 ・ 大 阪 大 学 ・ 岐 阜 県 図 書 館 など),また 外 務 省 やさまざまな 機 関 あるいは 個 人 からの 移 管<br />

や 寄 贈 によるもの( 国 立 国 会 図 書 館 ),さらに 個 人 の 寄 贈 によるもの( 駒 澤 大 学 )など,い<br />

くつかに 分 類 できる. 日 本 国 内 における 外 邦 図 の 分 配 に 旧 資 源 科 学 研 究 所 の 果 たした 役 割<br />

は 大 きい.( 久 武 ,2005). 中 でも 整 理 作 業 が 進 み 目 録 が 完 成 している 大 学 と, 駒 澤 大 学 を<br />

比 較 してみた.<br />

総 数 ( 枚 ) 図 幅 数 ( 枚 ) 目 録 完 成 年<br />

東 北 大 学 約 70,000 12,402 2003<br />

京 都 大 学 13,495 11,712 2005<br />

お 茶 の 水 女 子 大 学 ― 16,886 2007<br />

駒 澤 大 学 10,296 約 8,000 2008 完 成 予 定<br />

( 久 武 ,2003 図 1 より 作 成 )<br />

文 献 ・ 久 武 哲 也 (2003) 旧 資 料 科 学 研 究 所 所 蔵 の 外 邦 図 と 日 本 の 大 学 所 蔵 の 外 邦 図 の 系 譜 関 係 . 外 邦 図 研 究 ニュース<br />

レター,1:15-20<br />

・ 久 武 哲 也 (2005) 日 本 および 外 国 の 諸 機 関 における 外 邦 図 の 所 在 情 報 とその 系 譜 関 係 . 地 図 情 報 ,25(3):7-11<br />

「 運 び 出 し 苦 労 エピソ-ド( 参 謀 本 部 → 資 源 科 学 研 究 所 など 各 地 へ)」<br />

終 戦 当 時 , 東 大 地 理 学 科 の 助 教 授 であり, 文 部 省 資 源 科 学 研 究 所 の 地 理 学 部 主 任 であっ<br />

た 多 田 文 男 先 生 の 書 簡 (1946)には,「 地 図 取 得 については 中 野 ・ 三 井 ・ 多 田 が 終 戦 直 後 ,<br />

参 謀 本 部 に 日 参 して 苦 労 して 運 び, 車 がないので 肩 に 担 いで, 初 めは 大 妻 女 子 大 学 に 移 し,<br />

さらに 大 久 保 ( 資 源 科 学 研 究 所 )に 移 しました.この 努 力 は 大 変 なものでした. 資 源 科 学<br />

研 究 所 でも 米 軍 が 監 督 に 来 るときは, 民 家 に 移 して 接 収 を 防 ぎました.」.<br />

種 類 にして16000 図 幅 , 枚 数 にすれば 恐 らく 十 数 万 枚 , 噂 ではトラック3 台 分 ともいわれ<br />

る 膨 大 の 地 図 を3 人 の 方 々の 力 で 運 んだ.この 三 井 さんの 話 によると「 終 戦 の9 月 に 復 員 し<br />

ました. 運 ぶのには, 後 に 大 八 車 も 使 いました. 預 けたのは 大 妻 女 子 大 学 , 続 いて 明 治 大<br />

学 ,それから 資 源 科 学 研 究 所 でした.この 民 家 とは 近 くの 金 子 材 木 店 です」とある( 浅 井 ,<br />

2007より 抜 粋 ).<br />

文 献 ・ 浅 井 辰 郎 (2007) 資 源 科 学 研 究 所 の 地 図 の 行 方 - 多 田 文 男 の 英 断 . お 茶 の 水 女 子 大 学 外 邦 図 目 録 :5-10.<br />

- 4 -


~ 現 在 の 地 形 図 と 比 較 したいくつかの 特 徴 ~<br />

・ 紙 質 は, 和 紙 のように 丈 夫 なものから, 劣 化 し 今 にもパリパリに 破 れてしまいそうな<br />

紙 もある. 時 代 背 景 により 印 刷 に 使 われる 紙 が 違 ったのだろう.<br />

・ 外 邦 図 の 大 きさは 基 本 的 には 縦 46cm, 横 58cm だが, 中 には 100cm を 超 える 大 きい<br />

物 も 存 在 する.<br />

・ 現 在 の 本 初 子 午 線 はグリニッジ 基 準 だが, 外 邦 図 ではバタビア 基 準 のものもある.<br />

・ 凡 例 ( 地 図 記 号 ・ 土 地 利 用 )が 現 在 とは 異 なる. 当 時 必 要 だったものが 使 われている<br />

外 邦 図 「トロキナ」(*1)のように 日 本 の 地 名 を 付 けてわかりやすくし, 図 中 に「 雲 」<br />

と 記 載 されているものもある.<br />

・ 現 在 の 地 形 図 は3 色 刷 りだが, 外 邦 図 の 中 には 多 色 刷 り(6~7 色 )のものもある.そ<br />

こまで 多 くの 色 を 使 い,どのように 複 製 されたかは 興 味 深 い.<br />

・ 多 田 文 男 氏 が 実 際 に 彩 色 した 外 邦 図 が, 駒 澤 大 学 に 存 在 する.<br />

・ 同 じ 図 幅 でも, 測 図 ・ 発 行 年 の 違 いにより 記 載 内 容 が 異 なる 場 合 がある.<br />

・ 遠 浅 の 海 底 に 等 深 線 の 記 載 がある 外 邦 図 もある.<br />

・ 測 量 精 度 の 比 較 . 現 在 とどの 程 度 違 っているのか, 同 じ 地 域 で 比 較 される 研 究 もある.<br />

・ 「マル 秘 」や「 極 秘 」などの 階 級 に 分 け, 外 邦 図 の 機 密 性 を 区 分 している.<br />

・ 現 在 も 手 に 入 らない 地 域 の 地 図 は, 外 邦 図 を 利 用 して 地 形 研 究 などが 行 われている.<br />

(*1)「トロキナ 附 近 要 圖 」: 駒 澤 マップ・アーカイブズの 活 動 の 一 環 として 執 筆 させていただいた.<br />

文 献 ・ 中 村 和 郎 編 (2005) 外 邦 図 「トロキナ 附 近 要 圖 」を 読 む. 地 図 からの 発 想 :34-35<br />

- 5 -


~ 外 邦 図 を 利 用 していくには~<br />

外 邦 図 を 整 理 して 使 いやすくする 努 力 が 近 年 行 われてきているが, 外 邦 図 を 利 用 した 研<br />

究 はあまり 行 われていない.そこで 外 邦 図 の 利 用 方 法 を 取 り 上 げてみる.<br />

・ 諸 外 国 の 現 在 の 衛 星 写 真 等 と 比 較 し, 地 形 の 変 化 を 見 る.また 土 地 利 用 の 変 遷 を 見 る.<br />

その 際 に 現 在 の 地 図 とは 制 作 方 法 , 測 地 系 等 多 くの 違 いが 存 在 する. 実 際 に 資 料 とし<br />

て 使 用 できるかどうかという 検 証 をしっかりした 上 での 利 用 が 重 要 になってくる.<br />

・ 外 邦 図 を 測 図 年 ごと・ 測 図 国 ごと・ 地 域 ごと 等 に 分 類 し, 比 較 することでその 特 性 を<br />

みることが 出 来 る.<br />

・ 特 色 ある 凡 例 や 表 現 を 確 認 し, 記 載 理 由 を 考 察 する.「 雲 」と 書 かれているためその 下<br />

は 何 も 書 かれていない 地 図 や, 海 外 の 地 図 であるにも 関 わらず 日 本 の 地 名 がつけられ<br />

ている 地 図 などが 存 在 する.<br />

・ 地 図 から 歴 史 の 背 景 をさかのぼっていく, 時 代 による 地 域 差 を 明 確 にするなど,その<br />

当 時 の 様 子 をうかがい 知 ることが 出 来 る. 外 邦 図 に 書 かれている 地 名 は,その 当 時 か<br />

ら 存 在 したということの 証 明 となる.<br />

・ 現 在 の 測 量 技 術 と 当 時 の 測 量 技 術 を 比 較 する. 測 量 の 精 度 が 今 と 昔 では 格 段 に 違 う.<br />

さらに 戦 争 中 という 緊 迫 した 状 態 で 作 成 された 地 図 では 違 うこともたくさんある.<br />

~ 駒 澤 大 学 の 外 邦 図 をどのように 利 用 していくか~<br />

駒 澤 大 学 が 他 の 大 学 と 同 様 に 今 後 どのように 利 用 していくことが 出 来 るか 取 り 上 げてみる.<br />

・ 地 域 ごとに 分 類 し, 他 の 大 学 と 保 有 を 比 較 する.<br />

駒 澤 大 学 に 存 在 し, 他 大 学 に 存 在 しないもの. 他 大 学 に 存 在 し, 駒 澤 大 学 に 存 在 しな<br />

いものを 分 類 し, 駒 澤 大 学 オリジナルな 外 邦 図 の 研 究 を 展 開 していく.<br />

・ 地 域 ごとに 特 徴 をまとめる.<br />

外 邦 図 にはさまざまな 地 域 のものが 存 在 する. 地 域 ごとの 特 徴 をつかむことで 現 在 の<br />

国 々とのかかわりを 考 察 する.とりわけ 駒 澤 大 学 にのみ 存 在 する 外 邦 図 の 特 徴 をつか<br />

むことが 重 要 である.<br />

・ 地 図 ごとに 特 色 のある 記 載 ( 表 記 , 地 図 記 号 など)についてまとめる.<br />

表 記 や 地 図 記 号 などに, 今 とは 異 なった 記 載 が 数 多 く 存 在 する.それらの 記 載 を 集 め<br />

ると 新 たな 発 見 が 見 つかるだろう.<br />

・ 歴 史 の 背 景 とともに 日 本 がどんなものを 使 ったか 調 べる.<br />

地 理 的 価 値 のある 資 料 であるとともに, 歴 史 的 価 値 もある 資 料 である. 当 時 の 様 子 を<br />

地 図 から 伺 うこともできる. 歴 史 の 事 実 との 関 わりでどのように 外 邦 図 が 使 われてき<br />

たか 考 察 する 必 要 がある.とりわけ 時 代 による 印 刷 された 紙 質 を 考 察 すると 当 時 の 社<br />

会 状 況 がよくわかる.<br />

- 6 -


~ 駒 澤 マップ・アーカイブズの 予 定 ~<br />

・ 駒 澤 大 学 の 外 邦 図 目 録 を 作 成 する.<br />

2004 年 に 駒 澤 マップ・ア-カイブズが 結 成 した 当 時 から 進 めていた 外 邦 図 の 整 理 の 区<br />

切 りとして, 駒 澤 大 学 の 外 邦 図 目 録 を 作 成 する.<br />

・ スキャンして, 使 いやすい 状 態 を 作 る.<br />

外 邦 図 のコピーを 作 り,いつでも 地 図 を 見 られるようにする. 電 子 媒 体 にすることで,<br />

地 図 の 比 較 等 に 便 利 になる.さらにはインターネット 上 で 公 開 できるようにしていき<br />

たい.<br />

・ 文 化 財 保 護 の 観 点 から 資 料 を 保 管 , 修 繕 について 考 える.<br />

貴 重 な 資 料 であるので, 今 以 上 に 劣 化 を 防 ぐために 保 護 していく 必 要 がある. 現 在 は<br />

整 理 番 号 が 図 幅 の 左 上 に 貼 られているが, 改 善 する 必 要 がある.またよりよい 環 境 で<br />

保 管 するように 検 討 する 必 要 がある.<br />

駒 澤 マップ・アーカイブズの 活 動 を 通 して, 外 邦 図 を 地 理 や 歴 史 の 研 究 や 卒 業 論 文 の 資 料<br />

として 大 学 で 活 用 していってほしい.<br />

< 駒 澤 マップ・アーカイブズの 活 動 風 景 ><br />

駒 澤 マップ・アーカイブズでは 現 在 スタッフを 募 集 しています.<br />

その 他 , 外 邦 図 に 興 味 を 持 った 方 , 意 見 がある 方 はお 気 軽 にご 連 絡 ください.<br />

< 活 動 予 定 ><br />

週 1~2 回 , 第 一 研 究 館 5 階 の 特 4 室 ・ 体 育 館 1 階 の 地 図 室 で 活 動 しています.<br />

今 年 度 は 水 曜 日 を 中 心 に 活 動 します.<br />

< 連 絡 先 ><br />

顧 問<br />

代 表<br />

佐 藤 哲 夫 ( 地 理 学 科 教 授 ): 第 一 研 究 館 5 階 佐 藤 研 究 室<br />

松 田 倫 明 ( 地 理 学 科 3 年 ):1ng6092m@komazawa-u.ac.jp<br />

副 代 表 塚 本 仁 美 ( 歴 史 学 科 3 年 ):1cx6015t@komazawa-u.ac.jp<br />

- 7 -


~ 展 示 一 覧 ~<br />

展 示 場 所 駒 番 図 版 名 ( 発 行 年 )<br />

1 企 画 展 示 室 1 7165 向 陽 店 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 15 年 複 製 ))<br />

2 「 多 田 文 男 と 外 邦 図 」 7166 太 原 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 13 年 調 製 昭 和 15 年 複 製 ))<br />

3 7173 翼 城 縣 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 15 年 複 製 ))<br />

4 7172 新 絳 縣 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 15 年 複 製 ))<br />

5 7167 交 城 縣 / 清 水 河 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 15 年 複 製 ))<br />

6 1430-B-02 支 那 調 査 フィールドノート( 大 正 13 年 )<br />

7 1430-B-03 支 那 調 査 フィールドノート( 大 正 13 年 )<br />

8 1430-B-39 満 蒙 調 査 フィールドノート( 昭 和 16 年 )<br />

9 企 画 展 示 室 2 7164 武 昌 ( 明 治 43 年 )<br />

10 「 明 治 期 の 外 邦 図 」 7466 南 昌 ( 明 治 43 年 )<br />

11 9085 清 国 盛 京 省 ( 明 治 17 年 創 製 )<br />

12 9097 揚 州 城 ( 実 測 光 緒 34 年 )<br />

13 企 画 展 示 室 3 5196 上 海 ( 大 正 15 年 )<br />

14 「 大 正 期 の 外 邦 図 」 6684 洞 庭 湖 ( 大 正 11 年 )<br />

15 6708 藍 田 ( 大 正 12 年 )<br />

16 6839 雲 和 ( 大 正 元 年 )<br />

17 7443 奉 天 ( 大 正 15 年 )<br />

18 2479D~G セイロン 島 ( 昭 和 17 年 複 製 )<br />

19 企 画 展 示 室 4 6889 香 港 ( 昭 和 18 年 )<br />

20 「 昭 和 期 の 外 邦 図 」 6970 束 龍 當 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 19 年 製 版 ))<br />

21 6841 星 子 墟 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 18 年 製 版 ))<br />

22 6900 三 柏 墟 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 19 年 製 版 ))<br />

23 6301 堰 掌 鎮 ( 発 行 年 不 明 ( 昭 和 16 年 複 製 ))<br />

24 回 廊 4713 斎 斎 哈 爾 ( 昭 和 17 年 )<br />

25 4714 海 倫 ( 昭 和 7 年 )<br />

26 4715 海 倫 ( 昭 和 17 年 )<br />

27 東 北 大 学 所 蔵 外 邦 図 目 録 ( 平 成 15 年 )<br />

28 駒 澤 大 学 外 邦 図 仮 目 録 ( 平 成 20 年 )<br />

( 編 著 )<br />

上 條 孝 徳 (*1)・ 後 藤 慶 之 (*2)・ 森 田 純 平 (*3)・ 駒 澤 マップ・アーカイブズ<br />

(*1)07 年 卒 業 現 首 都 大 学 東 京 大 学 院 博 士 前 期 課 程 (*2)07 年 卒 業 現 明 星 大 学 通 信 教 育 課 程 (*3)08 年 卒 業 現<br />

首 都 大 学 東 京 大 学 院 博 士 前 期 課 程<br />

2008 年 5 月 11 日 編 集<br />

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