Vol.2 No.1 2012 特集: 第22回内燃機関シンポジウム - 自動車技術会
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Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
JSAE エンジンレビュー<br />
特 集 : 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム<br />
編 集 委 員 の 視 点<br />
NEWS & INFORMATION<br />
公 益 社 団 法 人 自 動 車 技 術 会 ・ 編 集 会 議<br />
JSAE エンジンレビュー 編 集 委 員 会 : 編 著<br />
公 益 社 団 法 人 自 動 車 技 術 会
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
CONTENTS<br />
コラム● 大 言 壮 語 : 自 動 車 技 術 会 編 集 担 当 理 事 / 新 井 雅 隆 1<br />
特 集 : 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 3<br />
編 集 委 員 の 視 点 15<br />
NEWS & INFORMATION 17<br />
■ JSAE エンジンレビュー 編 集 委 員 会<br />
委 員 長 : 飯 田 訓 正 ( 慶 応 大 学 )<br />
副 委 員 長 : 村 中 重 夫 ( 元 日 産 自 動 車 )<br />
幹 事 : 川 那 辺 洋 ( 京 都 大 学 )<br />
委 員 : 井 上 香 ( 堀 場 製 作 所 )<br />
今 井 康 雄 ( 日 本 自 動 車 研 究 所 )<br />
小 栗 彰 ( 福 井 工 業 大 学 )<br />
金 子 タカシ (JX 日 鉱 日 石 エネルギー)<br />
菊 池 勉 ( 日 産 自 動 車 )<br />
小 池 誠 ( 豊 田 中 央 研 究 所 )<br />
小 酒 英 範 ( 東 京 工 業 大 学 )<br />
清 水 健 一 ( 産 業 技 術 総 合 研 究 所 )<br />
下 田 正 敏 ( 日 野 自 動 車 )<br />
調 尚 孝 ( 日 本 自 動 車 部 品 総 合 研 究 所 )<br />
鈴 木 央 一 ( 交 通 安 全 環 境 研 究 所 )<br />
沼 田 明 ( 三 菱 重 工 業 )<br />
藤 井 厚 雄 ( 本 田 技 術 研 究 所 )<br />
山 崎 敏 司 ( 編 集 )<br />
発 行 所 : 公 益 社 団 法 人 自 動 車 技 術 会<br />
発 行 日 : <strong>2012</strong> 年 3 年 20 日<br />
発 行 人 : 新 井 雅 隆 ( 群 馬 大 学 )<br />
〒 102-0076 東 京 都 千 代 田 区 五 番 町 10-2<br />
電 話 :03-3262-8211<br />
表 紙 写 真 / 東 工 大 蔵 前 会 館
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
1<br />
●コラム<br />
「 大 言 壮 語 」<br />
自 動 車 技 術 会 編 集 担 当 理 事<br />
新 井 雅 隆<br />
Masataka ARAI<br />
群 馬 大 学 大 学 院 工 学 研 究 科 教 授<br />
Professor<br />
Graduate School of Engineering, Gunma University<br />
筆 者 が 中 学 生 であったころ, 日 本 は 加 工 貿 易 立 国 であり, 海 外 から 生 産 資 源 を 輸 入 しそれを 付 加 価 値 の 高 い 工 業 製 品<br />
に 加 工 して 輸 出 し,そこで 得 られた 収 益 をもとに 種 々の 生 活 必 需 物 資 を 海 外 から 輸 入 していると 聞 かされていました。<br />
その 頃 の 輸 出 の 主 体 は 繊 維 や 軽 工 業 製 品 であり,その 後 は 重 工 業 製 品 , 家 電 , 自 動 車 に 移 行 しました。 我 が 国 のエネル<br />
ギー 資 源 の 大 半 がこの 加 工 貿 易 から 得 られた 収 益 で 賄 われていることは 周 知 の 事 実 でありますが, 中 学 生 の 当 時 はその<br />
実 感 が 全 くなかったものです。<br />
最 近 , 科 学 技 術 立 国 が 我 が 国 の 基 本 姿 勢 となっていますが, 科 学 技 術 の 何 をもって 国 の 基 盤 とするかについてはいさ<br />
さか 不 明 瞭 であります。 科 学 技 術 立 国 =ノーベル 賞 の 受 賞 者 数 , 科 学 技 術 立 国 = 基 本 特 許 数 ,などの 評 価 基 準 もありま<br />
すが, 科 学 技 術 立 国 = 貿 易 収 支 という 評 価 基 準 はほとんど 聞 かれません。 一 方 自 動 車 産 業 が 日 本 の 貿 易 収 支 を 支 える 基<br />
幹 産 業 であることは 自 明 でありますが, 自 動 車 産 業 と 科 学 技 術 立 国 が 連 動 していることについての 強 い 主 張 にはお 目 に<br />
掛 かっていません。 自 動 車 産 業 を 支 える 科 学 技 術 については 民 間 資 本 の 経 済 活 動 の 範 囲 で 十 分 であるとみなされ, 経 済<br />
基 盤 の 国 策 技 術 としてはあまり 重 きが 置 かれていないのが 現 状 でありますが,これは 大 きな 誤 りと 筆 者 は 考 えています。<br />
貿 易 収 支 の 面 からすれば, 産 業 資 源 ,エネルギー, 食 糧 の 三 者 が 輸 入 しなければならない 主 要 なものですが, 輸 出 する<br />
ものとしては 科 学 技 術 立 国 の 掛 け 声 の 下 に 生 みだされた 知 恵 と 工 業 製 品 ,それに 日 本 固 有 の 文 化 しかありません。とこ<br />
ろが 科 学 技 術 による 知 恵 の 創 造 には 国 が 積 極 的 な 支 援 を 行 っていますが, 現 状 では 自 動 車 のような 科 学 技 術 の 知 恵 の 集<br />
大 成 である 工 業 製 品 の 輸 出 拡 大 に 国 が 積 極 的 に 取 り 組 んでいるとは 思 えません。<br />
輸 入 するエネルギー 資 源 を 節 約 かつ 削 減 するための 新 エネルギー 技 術 の 開 発 が 奨 励 され, 多 くの 技 術 革 新 がなされて<br />
きました。 仮 想 的 な 数 値 目 標 をもとに 我 が 国 のエネルギー 資 源 の 節 約 と 新 エネルギーの 開 発 を 標 榜 する 組 織 や 集 団 は 多<br />
数 あります。そのなかには 技 術 評 価 の 基 準 となる 前 提 条 件 の 議 論 はせず, 得 られるであろう 将 来 のメリットの 数 値 にの<br />
み 固 守 した 大 言 壮 語 のもとに 国 の 支 援 を 得 る 競 争 を 行 っていると 思 われるものもあります。 自 動 車 の 内 燃 機 関 について<br />
も 同 じです。 内 燃 機 関 の 熱 効 率 を 70%にする 技 術 と 言 えば, 社 会 的 な 話 題 にもなり,うまくいけばその 技 術 開 発 のた<br />
めに 産 官 から 多 くの 支 援 が 寄 せられます。しかし 熱 効 率 45%を 目 指 すという 技 術 開 発 では, 現 状 より 多 少 高 めという<br />
程 度 に 取 られ, 誰 にも 見 向 きもされません。<br />
自 動 車 や 内 燃 機 関 はこれが 成 熟 した 工 業 製 品 であるため, 飛 躍 的 な 性 能 改 善 を 一 朝 一 夕 に 行 うことはできず, 地 味 で<br />
継 続 的 な 技 術 開 発 により 毎 年 少 しずつ 性 能 がアップしていくものと 理 解 しています。この 意 味 では 組 織 的 かつ 継 続 的 な<br />
技 術 開 発 が 必 要 であり,これは 技 術 体 系 を 一 挙 に 覆 す 大 言 壮 語 とは 無 縁 の 技 術 開 発 です。 結 果 として 地 味 であり, 我 が<br />
国 の 国 策 として 取 り 上 げられていないのが 現 状 です。 他 方 , 欧 州 をはじめとする 諸 外 国 では, 組 織 的 かつ 継 続 的 な 国 家<br />
戦 略 により 我 が 国 の 技 術 を 凌 駕 する 自 動 車 の 開 発 に 努 力 しています。したがって,ひとたび 我 が 国 の 優 位 性 が 失 われれ<br />
ば,その 失 地 の 回 復 は 絶 望 的 な 状 態 になり, 我 が 国 はエネルギー 資 源 を 輸 入 する 資 金 に 事 欠 くことになります。 諸 外 国<br />
と 我 が 国 の 自 動 車 技 術 の 在 り 方 を 振 り 返 ってみると, 地 味 な 自 動 車 技 術 を 科 学 技 術 の 根 底 に 据 えるのか,また 産 業 に 付<br />
随 した 技 術 とみるのかの 違 いによると 思 われます。たとえば 英 国 では 輸 出 の 基 幹 産 業 としての 自 動 車 産 業 は 存 在 してい<br />
ませんが, 科 学 技 術 の 基 盤 としての 自 動 車 関 連 の 研 究 機 関 が 整 備 され 大 学 の 内 燃 機 関 研 究 施 設 も 我 が 国 を 大 きく 凌 いで<br />
います。これは 自 動 車 産 業 の 規 模 が 小 さくても,その 技 術 の 中 に 科 学 技 術 の 本 質 が 含 まれ,それを 会 得 している 技 術 者<br />
や 研 究 者 が 国 家 にとって 必 要 であると 考 えているからだと 思 います。また 韓 国 や 中 国 には 自 動 車 産 業 こそが 国 の 基 幹 産
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Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
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業 であると 大 言 壮 語 する 有 識 者 も 多 くいて, 結 果 として 国 策 としての 技 術 開 発 支 援 が 盛 んです。 一 方 , 我 が 国 では 内 燃<br />
機 関 を 基 礎 とする 自 動 車 産 業 の 未 来 について 大 言 壮 語 を 語 る 有 識 者 が 大 学 人 も 含 めて 少 ないことが 挙 げられます。<br />
最 近 , 我 が 国 の 自 動 車 技 術 開 発 の 体 制 が 欧 州 や 他 の 諸 外 国 に 比 べて 劣 っているのではないかとの 危 惧 が 関 係 者 の 間 で<br />
叫 ばれ, 自 動 車 技 術 会 ・ 技 術 会 議 の 傘 下 に 平 成 20 年 より 新 エンジンコンセプト 創 出 特 設 委 員 会 が 設 置 されました。 委<br />
員 会 活 動 として 研 究 開 発 の 在 り 方 が 検 討 され, 我 が 国 の 基 幹 産 業 として 自 動 車 産 業 を 維 持 してくために 新 しい 産 官 学 の<br />
研 究 組 織 が 必 要 なことが 報 告 書 として 纏 められました。またこのことは 内 燃 機 関 シンポジウムにおける 平 成 21 年 度 と<br />
平 成 23 年 度 の 討 論 会 での 討 議 で, 関 係 者 の 共 通 の 概 念 となりました。その 結 果 , 平 成 24 年 4 月 より 自 動 車 技 術 会 ・<br />
共 同 研 究 センター 内 に 内 燃 機 関 共 同 研 究 推 進 委 員 会 を 設 置 し, 新 しい 共 同 研 究 組 織 の 構 築 をめざした 活 動 を 開 始 するこ<br />
とになりました。 筆 者 はその 委 員 長 就 任 予 定 者 です。 現 在 ( 平 成 24 年 3 月 ),3 回 の 準 備 会 議 を 開 催 し, 自 動 車 業 界 全<br />
体 で 共 有 すべき 非 競 争 的 技 術 と 個 々の 企 業 の 技 術 力 を 生 かした 競 争 的 技 術 に 開 発 領 域 を 区 分 し, 企 業 間 で 共 有 すべき 非<br />
競 争 的 領 域 の 研 究 技 術 開 発 について 産 官 学 の 英 知 を 結 集 する 予 定 にしています。またこの 委 員 会 傘 下 のプロジェクトに<br />
おいて 大 学 生 を 中 心 とした 将 来 の 自 動 車 産 業 を 担 う 人 材 の 育 成 を 行 うことも 予 定 しています。この 取 組 が 我 が 国 の 自 動<br />
車 産 業 の 将 来 を 決 すると 言 えば 大 言 壮 語 になりますが, 今 後 この 委 員 会 からの 呼 びかけに 応 じて, 資 金 と 人 材 と 英 知 が<br />
集 まることを 期 待 しております。<br />
監 事<br />
内 燃 機 関 共 同 研 究 推 進 委 員 会 の 組 織<br />
自 動 車 技 術 会<br />
総 会<br />
担 当 理 事 会<br />
理 事 会<br />
外 部 組 織<br />
支 部<br />
編 集 会 議<br />
共 同 研 究 セ ンター<br />
技 術 会 議<br />
情 報 交 換 と 研 究 分 担 の 調 整<br />
内 燃 機 関 共 同 研 究 推 進 委 員 会<br />
情 報 交 換<br />
研 究 目 標 の 設 定 ,<br />
設 置 企 画 , 評 価<br />
研 究 目 標 の 提 言 と 活 動 支 援<br />
共 同 研 究 センター<br />
○○ 研 究 会<br />
○○コンソーシアム<br />
○○ 開 発 コン<br />
ソーシアム<br />
内 燃 機 関 ○○<br />
共 同 研 究 会<br />
内 燃 機 関 共 同 研 究 推 進 委 員 会 の<br />
内 部 組 織 としての 研 究 実 行 組 織<br />
大 型<br />
企 画<br />
プロ<br />
ジ ェク<br />
ト<br />
企 画 WG<br />
内 燃 機 関 共 同 研 究 推<br />
進 委 員 会 が 参 画 する<br />
外 部 企 画 の 産 官 学 の<br />
連 携 組 織<br />
自 動 車 技 術 会 と<br />
は 別 の 産 官 学<br />
の 連 携 組 織<br />
内 燃 機 関 共 同 研 究 推 進 委 員 会 が 企 画 し,<br />
運 営 や 経 理 業 務 を 他 の 組 織 に 委 ねる 大 型<br />
コンソーシアム
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
3<br />
特 集 : 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム<br />
Report of The 22nd Internal Combustion Engine Symposium (Tokyo)<br />
編 集 委 員 : 飯 田 訓 正 , 小 池 誠 , 小 酒 英 範 , 調 尚 孝<br />
東 京 大 学 : 津 江 光 洋 , 日 本 大 学 : 飯 島 晃 良 , 茨 城 大 学 : 金 野 満<br />
北 海 道 大 学 : 小 川 英 之 , 明 治 大 学 : 相 澤 哲 哉 , 福 井 大 学 : 酒 井 康 行<br />
東 京 都 市 大 学 : 伊 東 明 美 , 交 通 安 全 環 境 研 究 所 : 佐 藤 進<br />
トヨタ 自 動 車 : 島 崎 勇 一 , 日 野 自 動 車 : 内 田 登<br />
本 田 技 術 研 究 所 : 神 田 智 博<br />
Norimasa IIDA, Makoto KOIKE, Hidenori KOSAKA, Naotaka SHIRABE (JSAE ER Editorial Committee)<br />
Mitsuhiro TSUE(The University of Tokyo), Akira IIJIMA (Nihon University), Mitsuru KONNO(Ibaraki University)<br />
Hideyuki OGAWA(Hokkaido University), Tets AIZAWA(Meiji University), Yasuyuki SAKAI(University of Fukui)<br />
Akemi ITOH(Tokyo City University), Susumu SATO (NTSEL), Yuichi SHIMASAKI(Toyota), Noboru UCHIDA(Hino)<br />
Tomohiro KANDA(Honda)<br />
日 時 :2011 年 11 月 29 日 ( 火 ) 〜 12 月 1 日 ( 木 )<br />
場 所 : 東 工 大 蔵 前 会 館 ( 東 京 )<br />
主 催 :( 公 益 社 団 法 人 ) 自 動 車 技 術 会<br />
共 催 : 日 本 機 械 学 会<br />
1 開 催 報 告<br />
2011 年 11 月 30 日 ( 火 )~ 12 月 1 日 ( 木 )に 東 工 大 蔵 前 会 館 にて, 第 22 回 内 燃 機 関 シ<br />
ンポジウム( 幹 事 学 会 : 自 動 車 技 術 会 , 共 催 学 会 : 日 本 機 械 学 会 )が 開 催 された。 実 行 委 員<br />
をはじめ, 学 会 事 務 局 , 関 係 の 皆 様 のご 尽 力 とご 協 力 のおかげにより, 不 安 定 な 経 済 状 況 に<br />
もかかわらず 428 名 ( 内 訳 : 有 料 405 名 , 招 待 23 名 )の 方 々が 参 加 した。<br />
一 般 講 演 は 3 室 21 のセッションにて 合 計 89 編 の 講 演 発 表 が 行 われ,2 件 の「 基 調 講 演 」<br />
に 加 えて, 若 手 とベテランの 研 究 技 術 の 伝 承 の 場 として「 先 進 内 燃 機 関 セミナー」,そして 産<br />
学 協 力 をテーマとする「 討 論 会 」が 企 画 された。 「エンジンテクノロジーの 高 度 化 とその 伝 承 」<br />
をテーマとして, 若 手 とベテランのエンジニアの 交 流 , 有 意 義 な 情 報 交 換 , 発 表 ・ 討 論 の 場<br />
が 提 供 された。( 飯 田 )<br />
1.2 テクニカルセッション<br />
1.2.1 講 演 申 し 込 み 受 付 , 講 演 論 文 集 ,プログラム 編 成<br />
講 演 申 し 込 みは 2011 年 2 月 上 旬 より 開 始 され, 同 年 7 月 10 日 に 締 め 切 られた。その 直 後<br />
からアブストラクト 査 読 およびプログラム 編 成 が 平 行 して 行 われ,7 月 下 旬 には 講 演 者 へ 採<br />
択 通 知 が 連 絡 された。 応 募 講 演 数 は, 海 外 からの 申 し 込 み 1 件 を 含 め 98 件 であり,21 のセッ<br />
ションに 分 けられ,3 講 演 室 並 行 のプログラムが 編 成 された。 応 募 講 演 の 内 訳 は, 約 半 数 が<br />
大 学 等 教 育 機 関 からのものであり, 残 り 半 数 が 企 業 あるいは 大 学 と 企 業 の 共 同 研 究 であった。<br />
セッション 司 会 者 の 人 選 に 当 たっては, 上 述 のシンポジウムテーマに 即 するように, 新 進 気<br />
鋭 の 若 手 研 究 者 に 担 当 いただくよう 配 慮 した。 前 刷 原 稿 の 提 出 は 9 月 末 で 締 め 切 られたが,<br />
1 件 の 講 演 取 り 下 げもなく, 予 定 通 り 講 演 論 文 集 の 編 集 作 業 が 行 われた。( 津 江 , 飯 島 )<br />
1.2.2 ES 部 門 賞 の 表 彰 候 補 者 選 考<br />
各 講 演 会 場 では,JSME ES 部 門 賞 の 表 彰 候 補 者 の 選 考 を 行 なった。ES 部 門 賞 の 表 彰 選 考 対<br />
象 となる 35 歳 未 満 の 講 演 数 は 63 件 であった。( 金 野 )<br />
1.3 基 調 講 演<br />
1.3.1 基 調 講 演 Ⅰ:ガソリンエンジンにおける 点 火<br />
シンポジウム 初 日 29 日 に 九 州 大 学 村 瀬 英 一 教 授 より,「ガソリンエンジンにおける 点 火<br />
― 火 焔 点 火 からレーザ 点 火 まで―」と 題 して,1700 年 代 の 火 焔 点 火 から 現 在 の 電 気 火 花 点<br />
Figure 1-1<br />
村 瀬 教 授 の 基 調 講 演 「ガソリンエンジン<br />
における 点 火 」
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
4<br />
火 やプラズマジェット 点 火 , 将 来 予 想 されるレーザ 点 火 までの 過 去 の 歴 史 と 将 来 予 測 につい<br />
て 講 演 をいただいた。これらの 点 火 システムが 燃 焼 に 及 ぼす 影 響 について, 写 真 を 用 いた 分<br />
かりやすい 説 明 がなされた。 点 火 システムは,ガソリンエンジンを 研 究 ・ 開 発 している 者 に<br />
は 身 近 なものであるが, 現 在 に 至 る 経 緯 を 整 理 し 将 来 展 望 を 述 べたものはなく, 大 変 貴 重 な<br />
講 演 であった。( 島 崎 )<br />
※ 本 基 調 講 演 の 講 演 資 料 はこちらから download できます。URL を 記 載 併 せてご 覧 ください。<br />
1.3.2 基 調 講 演 Ⅱ:コモンレールシステムの 開 発 と 進 化<br />
シンポジウムの 最 終 日 には,デンソーの 宮 木 正 彦 氏 より,「コモンレールの 開 発 と 進 化 」と<br />
題 して,1995 年 の 世 界 初 の 量 産 開 始 から, 既 に 第 4 世 代 へと 進 化 して 現 在 に 至 るディーゼル・<br />
コモンレール 噴 射 システムの 開 発 経 緯 と 将 来 の 展 望 について 講 演 をいただいた。 注 射 器 と 風<br />
船 に 例 えた 旧 来 の 列 型 ポンプ+ 自 動 弁 との 原 理 の 違 いから,インジェクタやサプライポンプ<br />
の 詳 細 な 作 動 メカニズムや 構 造 部 品 の 改 良 , 噴 射 圧 300MPa を 目 指 す 信 頼 性 向 上 技 術 , 次 世<br />
代 噴 射 制 御 技 術 の 紹 介 など, 日 頃 エンジンの 研 究 開 発 に 携 わる 者 でもなかなか 知 ることので<br />
きないエンジンの 基 幹 部 品 の 奥 深 いテクノロジーを 垣 間 見 ることが 出 来 , 本 シンポジウムの<br />
テーマに 相 応 しい 大 変 貴 重 な 機 会 であった。( 内 田 )<br />
※ 本 基 調 講 演 の 講 演 資 料 はこちらから download できます。URL を 記 載 併 せてご 覧 ください。<br />
Figure 1-2 宮 木 正 彦 氏 の 基 調 講 演 「コモンレールの 開 発 と 進 化 」<br />
1.4 討 論 会 : 内 燃 機 関 の 共 同 研 究 体 制 の 可 能 性<br />
海 外 で 内 燃 機 関 の 燃 焼 研 究 における 産 学 連 携 が 進 んでいるのに 対 し, 日 本 が 大 きく 立 ち 遅<br />
れているという 現 状 認 識 から, 今 後 あるべき 産 学 共 同 研 究 体 制 を 築 くための 討 論 会 が 開 催 さ<br />
れた。 話 題 提 供 数 は 8 件 ( 会 社 4 名 , 大 学 4 名 )でラウンドテーブルには 32 名 ( 会 社 20 名 ,<br />
大 学 8 名 , 経 産 省 1 名 , 民 間 研 究 所 1 名 , 座 長 2 名 )が 議 論 に 加 わり, 会 場 は 約 100 名 の 出<br />
席 で 満 席 であった。<br />
企 業 側 からは「 停 滞 している 日 本 の 開 発 力 に 強 い 危 機 感 を 持 っており, 基 礎 技 術 から 周 辺<br />
技 術 まで 幅 広 い 活 動 を 望 んでいる」などの 共 同 研 究 の 必 要 性 を 強 調 する 意 見 が 述 べられた。<br />
大 学 側 からは「 共 同 研 究 の 必 要 性 は 強 く 感 じているが, 大 学 での 活 動 に 必 要 な 人 材 や 研 究 資<br />
源 が 縮 小 している」などの 現 状 が 紹 介 された。 本 討 論 会 での 意 見 交 換 を 受 けて, 主 催 側 が 関<br />
係 者 と 討 議 し, 今 後 , 自 動 車 技 術 会 内 に 準 備 WG を 設 置 することとなった。( 中 田 ・ 小 川 )<br />
Figure 1-3 討 論 会 「 内 燃 機 関 の 共 同 研 究 体 制 の 可 能 性 」<br />
1.5 先 進 内 燃 機 関 セミナー: 内 燃 機 関 の 熱 効 率 を 探 求 する<br />
内 燃 機 関 は, 地 球 温 暖 化 , 石 油 資 源 枯 渇 などの 諸 問 題 を 背 景 に 一 層 の 熱 効 率 向 上 が 求 めら<br />
れている。 内 燃 機 関 の 熱 効 率 向 上 の 有 効 な 手 段 として 熱 損 失 低 減 が 挙 げられる。 本 セミナー<br />
は,JSME ES 部 門 の 研 究 会 「 先 進 内 燃 機 関 セミナー( 関 東 地 区 )」を 主 宰 された 神 本 武 征 教 授<br />
がモデレータを 担 当 され,「 内 燃 機 関 の 熱 効 率 を 探 求 する」をテーマに 5 件 の 話 題 提 供 で 構<br />
成 された。<br />
1) 榎 本 良 輝 先 生 より,ディーゼル 機 関 の 燃 焼 室 壁 面 における 熱 流 束 の 測 定 例 が 紹 介 された。<br />
機 関 の 運 転 条 件 , 燃 焼 条 件 , 燃 焼 室 壁 面 の 位 置 により, 瞬 時 熱 流 束 パターンがどう 変 化 する<br />
かについて, 数 々の 測 定 例 を 紹 介 され,エンジン 燃 焼 室 における 熱 損 失 の 実 態 について 解 説<br />
があった。<br />
2) 神 本 武 征 先 生 からは,ロイ・カモ 氏 が 開 発 した「アディアバティック・エンジン」の 紹 介<br />
があった。 遮 熱 エンジンのポテンシャル,すなわち, 熱 損 失 の 低 減 による 熱 効 率 の 向 上 のポ<br />
テンシャルについて, 遮 熱 率 をパラメータとした 推 算 結 果 を 示 すとともに, 燃 焼 効 率 と 熱 損<br />
失 低 減 のジレンマについて 言 及 された。<br />
3)ディーゼル 機 関 において, 熱 損 失 低 減 のアプローチの 一 つとして 火 炎 の 壁 面 衝 突 を 減 ら<br />
すことが 挙 げられる。トヨタの 古 野 志 健 男 氏 からは,この 観 点 から 低 スワール, 多 噴 孔 ノズ<br />
ルの 組 み 合 わせで 熱 効 率 の 向 上 を 実 現 したディーゼルエンジンの 燃 焼 技 術 が 紹 介 された。<br />
4) 森 吉 泰 生 先 生 からは,HCCI 燃 焼 エンジンが 低 熱 損 失 となる 理 由 が 解 説 され,ブローダウ<br />
ン 過 給 エンジンの 効 率 向 上 の 取 り 組 みが 紹 介 された。<br />
5) 最 後 に 畑 村 耕 一 氏 より, 自 動 車 の 走 行 燃 費 の 向 上 方 法 の 観 点 から, 過 給 ダウンサイジン<br />
グの 実 現 手 段 と 効 果 ,およびその 課 題 と 技 術 動 向 について 国 内 外 の 技 術 動 向 が 紹 介 された。<br />
( 飯 田 )<br />
Figure 1-4<br />
セミナー「 内 燃 機 関 の 熱 効 率 を 探 求 する」<br />
1.6 懇 親 会 : 東 北 震 災 復 興 企 画 - 東 北 の 味 を 楽 しみ, 文 化 を 知 る-
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
5<br />
今 年 3 月 11 日 に 発 生 した 未 曾 有 の 東 日 本 大 震 災 に 対 し, 復 興 を 祈 り 少 しでも 協 力 したい<br />
思 い, 懇 親 会 では, 東 北 料 理 やビンゴ 大 会 の 景 品 に 東 北 のおみやげが 用 意 された。また, 内<br />
燃 機 関 の 研 究 に 大 きな 業 績 を 残 され,この1 年 間 に 亡 くなられた 浜 本 嘉 輔 先 生 , 佐 藤 豪 先 生 ,<br />
廣 安 博 之 先 生 , 小 保 方 富 夫 先 生 , 松 岡 信 先 生 ,5 名 の 先 生 方 を 思 い 出 し 御 冥 福 をお 祈 りした。<br />
参 加 者 は, 予 定 していた 100 名 に 対 し 106 名 ( 招 待 7 名 含 む)と 上 回 り, 盛 況 のうちに 終 了<br />
した。( 島 崎 )<br />
1.7 会 場 運 営 ・ 広 告 ・ 機 器 展 示<br />
1.7.1 会 場 運 営<br />
会 場 の 設 営 と 当 日 の 運 営 については,JSAE 事 務 局 の 前 田 氏 , 大 平 氏 , 斉 藤 氏 に 尽 力 をいた<br />
だいた。また, 慶 應 大 学 , 明 治 大 学 , 東 京 工 業 大 学 の 合 計 12 名 の 学 生 諸 君 にアルバイトを<br />
依 頼 し, 参 加 受 付 , 講 演 会 場 の 運 営 , 会 場 内 インタネットサービス 対 応 など, 全 面 的 な 支 援<br />
をいただいた。シンポジウム 前 日 の 設 営 準 備 からシンポジウム 終 了 後 の 後 片 付 けまで, 会 場<br />
運 営 を 円 滑 に 進 められたのは, 彼 らの 力 によるところが 大 きい。( 小 酒 )<br />
1.7.2 広 告 ・ 機 器 展 示<br />
講 演 論 文 集 広 告 および 機 器 展 示 会 には, 広 告 掲 載 :1 社 , 機 器 展 示 :7 社 ,カタログ 展 示 :<br />
3 社 の 合 計 10 社 より 協 力 をいただいた。 基 調 講 演 等 が 行 われるメイン 会 場 に 隣 接 するギャラ<br />
リーを 展 示 会 場 として 使 用 するとともに, 同 会 場 に 無 料 のコーヒーサービスのコーナーを 設<br />
置 した。 多 くのシンポジウム 出 席 者 が 来 場 し, 盛 況 であった。( 相 澤 )<br />
Figure 1-5<br />
懇 親 会 で 故 人 を 偲 ぶ<br />
1.8 全 体 をとおして<br />
運 営 は 終 始 円 滑 に 行 われ, 参 加 者 数 が 示 すとおり 盛 会 のうちに 終 了 することができた。 会<br />
計 幹 事 を 担 当 した 東 京 都 市 大 学 の 伊 東 委 員 から, 黒 字 決 算 であることが 報 告 された。ご 尽 力<br />
頂 いた 方 々に 深 く 感 謝 したい。 内 燃 機 関 シンポジウムは, 第 20 回 以 降 , 毎 年 開 催 すること<br />
が JSAE および ES 部 門 にて 合 意 されており, 次 回 は「 世 代 を 超 えたエンジンシステムへの 再<br />
挑 戦 」と 銘 打 ち <strong>2012</strong> 年 10 月 31 日 から 11 月 2 日 の3 日 間 の 日 程 で, 北 海 道 大 学 にて 開 催<br />
される。( 小 川 )<br />
Figure 1-6<br />
協 力 企 業 の 展 示 会 場<br />
1.9 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 実 行 委 員<br />
〈 大 学 委 員 〉 飯 田 訓 正 ( 慶 大 , 委 員 長 / 先 進 セミナー 担 当 ), 小 川 英 之 ( 北 大 , 副 委 員 長 / 討<br />
論 会 担 当 ), 相 澤 哲 哉 ( 明 大 , 広 告 ・ 機 器 展 示 担 当 ), 伊 東 明 美 ( 東 京 都 市 大 , 会 計 ・ 議 事 録<br />
担 当 ), 小 酒 英 範 ( 東 工 大 , 会 場 担 当 ), 津 江 光 洋 ( 東 大 , 論 文 プログラム 担 当 ), 金 野 満 ( 茨<br />
大 ,ES 部 門 賞 担 当 ), 志 賀 聖 一 ( 群 大 ), 飯 島 晃 良 ( 日 大 ,Web サイト 広 報 担 当 )<br />
〈 企 業 委 員 〉 佐 藤 唯 史 (ケーヒン, 懇 親 会 担 当 ), 野 口 究 (スズキ, 懇 親 会 担 当 ), 島 崎 勇 一 (ト<br />
ヨタ, 懇 親 会 ・ 基 調 講 演 1 担 当 ), 大 橋 稔 生 (ガス 協 会 ), 松 木 正 人 ( 本 田 ), 稲 垣 和 久 (トヨタ),<br />
内 田 登 ( 日 野 , 基 調 講 演 2 担 当 ), 山 嵜 雅 和 ( 本 田 ), 岡 山 紳 一 郎 ( 日 産 ), 山 田 裕 之 ( 交 通 研 ),<br />
森 川 弘 二 ( 富 士 重 工 ), 北 田 泰 造 ( 三 菱 自 動 車 ), 中 山 真 治 ( 三 菱 ふそう), 川 端 裕 二 (ヤンマー),<br />
内 田 克 己 (ダイハツ), 渡 辺 克 哉 (コスモ 石 油 ), 工 藤 秀 俊 ・ 廣 瀬 一 郎 (マツダ), 寺 地 淳 ( 日<br />
産 ), 以 上 28 名 ( 順 不 同 敬 称 略 )<br />
2 基 調 講 演 を 聴 講 して<br />
九 州 大 学 大 学 院 教 授 の 村 瀬 英 一 先 生 を 講 師 として「ガソリンエンジンにおける 点 火 ― 火<br />
焔 点 火 からレーザ 点 火 まで―」と 題 し, 基 調 講 演 が 行 われた 2.1) 。 先 生 のご 講 演 は, 大 別 して<br />
「 点 火 システムの 変 遷 」,「スパークプラグの 変 遷 」および「 点 火 強 化 」の 三 つに 分 かれている。<br />
「 点 火 システムの 変 遷 」では 内 燃 機 関 の 着 火 源 たる 点 火 装 置 が 黎 明 期 から 現 在 の 姿 になるまで<br />
どのような 変 化 を 遂 げてきたが 説 明 され, 同 様 に「スパークプラグの 変 遷 」では, 点 火 装 置<br />
の 主 要 要 素 である 点 火 プラグが 初 期 から 今 日 までどのような 変 化 を 辿 ってきたかが 説 明 され<br />
た。 最 後 に「 点 火 強 化 」では 1980 年 代 から 現 在 までの 点 火 強 化 に 関 する 動 向 と, 先 生 ご 自<br />
身 が 長 年 取 り 組 まれておられるプラズマジェット 点 火 ,パルスジェット 点 火 に 関 する 研 究 の<br />
成 果 が 発 表 された。 以 下 三 項 目 のそれぞれについて 講 演 の 概 要 を 紹 介 する。<br />
2.1 点 火 システムの 変 遷<br />
1794 年 から 1878 年 にかけて, 種 々の 火 焔 式 点 火 が 考 案 された。 残 念 ながら 内 燃 機 関 と
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
6<br />
しての 構 造 図 しか 残 っておらず, 肝 心 の 点 火 装 置 部 分 の 細 部 の 構 造 が 定 かでないが, 概 して<br />
燃 焼 室 の 一 部 の 窓 から 火 焔 を 引 き 込 むことにより 着 火 する 仕 組 みとなっている。 一 例 として<br />
1838 年 の W.Barnett の 火 焔 点 火 装 置 を 図 2-1 に 示 す。 外 部 のパイロットバーナで 常 時 火 焔 を<br />
形 成 しておき, 回 転 するコックの 窓 が 内 部 のガスバーナーの 部 屋 と 連 通 したときに 内 部 のガ<br />
スバーナを 点 火 し,コックの 窓 が 燃 焼 室 と 連 通 したときに 火 焔 を 供 給 する 構 成 となっている。<br />
またマッチが 発 明 されたのが 1827 年 なので,1794 年 の R.Street の 混 合 気 を 利 用 した 最 初 の<br />
熱 機 関 ,1820 年 の W.Cecil の 水 素 機 関 ,1823 年 の Brown の 実 用 ガス 機 関 などの 初 期 の 火 焔<br />
点 火 にはおそらく 火 打 石 が 使 われただろうとのお 話 であった。1855 年 から 1900 年 ごろにか<br />
けて 熱 管 式 点 火 が 考 案 された。これはバーナで 加 熱 した 管 や 赤 熱 させた 白 金 線 を 点 火 源 とし<br />
て 用 いるもので,ガソリン 機 関 の 原 点 でもある 1883 年 の G.Daimler の 機 関 ではバーナを 使 っ<br />
た 熱 管 式 点 火 が 採 用 されている( 図 2-2)。また 1807 年 には, 既 に 電 気 火 花 点 火 装 置 が 登 場<br />
している。この 方 式 は 1850 年 以 降 バイブレータ 式 電 気 火 花 点 火 に 進 化 し, 代 表 例 は 1896 年<br />
Ford による 点 火 装 置 である。 但 し, 当 時 の 電 気 火 花 点 火 装 置 は 非 常 に 微 妙 な 構 造 で 信 頼 性 に<br />
乏 しかった。1887 年 になると 良 く 知 られた Bosch の( 低 電 圧 )マグネット 方 式 が 登 場 する。<br />
これは 1902 年 には 高 電 圧 マグネット 式 へと 進 化 する。1890 年 にはディストリビュータを 使 っ<br />
た 接 点 開 閉 式 電 気 火 花 点 火 方 式 が 登 場 し,これが 1962 年 以 降 セミトランジスタ 式 ,フルト<br />
ランジスタ 式 と 進 化 する。そしていよいよ 現 在 の 自 動 車 エンジン 用 としてなじみの 深 いディ<br />
ストリビュータレス 電 子 式 電 気 火 花 点 火 が 登 場 し, 最 新 の 点 火 装 置 はプラグホールの 中 で,<br />
点 火 プラグとコイルが 直 列 で 一 体 となっているプラグホールコイル( 図 2-3)である。<br />
Figure 2-1 Barnett の 火 焔 点 火 装 置<br />
Figure 2-2 Daimler の 熱 管 式 点 火 装 置<br />
2.2 スパークプラグの 変 遷<br />
1860 年 の Lenoir の 初 期 のプラグ( 図 2-4)から 今 日 まで 中 心 電 極 と 接 地 電 極 を 絶 縁 体 を 介<br />
して 対 向 させる 構 造 は 基 本 的 に 変 わっていない。 近 年 は 吸 気 バルブ 大 径 化 によりプラグの 小<br />
型 化 ( 取 り 付 け 部 のネジが M14 から M12,M10)が 行 われている。またプラグの 消 耗 を 防<br />
ぐ 目 的 から 電 極 端 材 料 として Ni から 白 金 やイリジウムのものも 採 用 され 始 めている。<br />
2.3 点 火 強 化<br />
1980 年 ごろから 点 火 強 化 の 研 究 が 開 始 され, 世 界 中 のカーメーカーから 色 々な 方 式 (2プ<br />
ラグ,TGP,CVCC 等 )が 提 案 されている。 日 系 メーカーのものだけが 実 用 化 されているのは<br />
大 変 興 味 深 い。 最 近 では,エンジン 搭 載 可 能 なレーザー 点 火 プラグも 研 究 されている。ここ<br />
では A.K.Oppenheim 先 生 からご 指 導 されて 研 究 を 始 めたプラズマジェット 点 火 (PJ)とパル<br />
スジェット 点 火 (PFJ)の 容 器 内 燃 焼 特 性 について 紹 介 する。これらは 容 積 点 火 の 分 類 である。<br />
イグナイタの 構 造 を 図 2-5 に 示 す。PJ はイグナイタにキャビティとオリフィスを 設 けた 構 造<br />
で,キャビティ 内 で 大 きなエネルギーの 火 花 放 電 を 行 わせることにより,オリフィスから 火<br />
炎 のジェットが 噴 出 する。PFJ は PJ のキャビティに 噴 射 弁 を 使 ってパルス 的 に 燃 料 を 供 給 し,<br />
通 常 の 火 花 放 電 をキャビティ 内 で 行 わせ,オリフィスから 火 炎 を 噴 出 させる 構 造 である。キャ<br />
ビティ 容 積 やオリフィス 径 は 実 験 変 数 とした。 定 容 燃 焼 容 器 を 使 って 静 止 希 薄 混 合 気 (メタ<br />
ン)の 燃 焼 状 態 を 解 析 した。PJ の 場 合 は 層 流 的 な 燃 焼 で PFJ の 場 合 は 乱 流 的 な 火 炎 成 長 が 観<br />
察 され,PFJ が PJ や SI(プラグによる 火 花 点 火 )よりも 燃 焼 速 度 が 速 かった( 図 2-6)。 次 に<br />
燃 焼 容 器 内 にスワール 流 を 誘 起 させ, 流 動 場 での 燃 焼 解 析 を 行 った。リーンリミットに 関 し<br />
ては PFJ がやや 良 く,PJ はジェットの 速 度 が 速 すぎて 必 ずしも 良 くないことも 分 かった。さ<br />
らに 急 速 圧 縮 装 置 を 用 い 高 温 高 圧 場 の PFJ 点 火 特 性 を 解 析 し, 燃 焼 速 度 とキャビティ 容 積 や<br />
オリフィス 径 の 関 係 を 把 握 した。 最 後 に PFJ により HCCI 燃 焼 の 着 火 時 期 が 制 御 可 能 かどう<br />
かを 急 速 圧 縮 装 置 を 使 って 解 析 し,PFJ 点 火 時 期 で HCCI 燃 焼 開 始 の 制 御 が 可 能 であることを<br />
確 認 した。<br />
講 演 後 , 聴 講 者 より「 高 過 給 エンジンなど, 将 来 エンジンにおける 最 適 な 点 火 系 とは?」<br />
の 質 問 が 出 され,「 現 時 点 でその 解 は 難 しい。 現 行 の 火 花 点 火 では 通 常 のエンジンでは 問 題 な<br />
いが, 高 圧 になると 火 花 点 火 では 限 界 があり, 例 えばレーザ 点 火 などの 点 火 強 化 が 必 要 なる<br />
と 考 える。」との 回 答 があった。 ( 調 )<br />
Figure 2-3 プラグホールコイル<br />
Figure 2-4 Lenoir の 点 火 Figure 2-5 プラズマジェット<br />
プラグ<br />
点 火 プラグ<br />
Figure 2-6 SI,PJ および PFJ の 定 容 容 器 内 燃 焼 観 察 結 果<br />
【 参 考 文 献 】<br />
2.1) 村 瀬 英 一 : 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 基 調 講 演 資 料 , 自 動 車 技 術 会 ,2011
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
7<br />
3 ディーゼルエンジン<br />
3.1)<br />
3.1 燃 焼 室 壁 に 衝 突 するディーゼル 噴 霧 による 縦 渦 形 成 と 燃 焼 過 程<br />
ディーゼル 燃 焼 において, 中 ・ 高 負 荷 運 転 域 におけるスモーク 低 減 手 法 としては 高 EGR・<br />
高 過 給 ・ 高 圧 噴 射 による 拡 散 型 燃 焼 が 主 流 であり, 燃 焼 室 技 術 による 噴 霧 混 合 気 形 成 の 改 善<br />
が 重 要 な 鍵 となる。これに 対 し 既 報 にて EGG 燃 焼 室 コンセプト( 図 3-1)を 提 案 されている。<br />
本 報 では 実 機 燃 焼 室 形 状 を 模 した 二 次 元 ピストンキャビティと 高 温 高 圧 容 器 を 用 いて,EGG<br />
燃 焼 室 内 での 流 動 と 噴 霧 混 合 気 形 成 ,および 燃 焼 過 程 の 解 析 を 通 してコンセプトの 検 証 がな<br />
されている。その 結 果 ,コンセプト 通 りに 大 きく 強 い 縦 渦 流 動 が 燃 焼 室 内 に 形 成 され, 広 い<br />
空 間 を 使 った 混 合 気 形 成 が 行 われていることが 確 認 されており,このことが 低 酸 素 濃 度 条 件<br />
での 排 気 スモーク 低 減 効 果 の 一 因 であることが 明 らかになってきている( 図 3-2)。<br />
また,<br />
EGG 燃 焼 室 コンセプトの 効 果 を 引 き 出 すためには, 噴 射 圧 と 過 給 圧 などの 操 作 により, 燃 焼<br />
室 内 の 縦 渦 流 動 の 強 度 を 適 切 に 制 御 することが 重 要 であることも 明 かされている。<br />
Figure 3-1<br />
EGG 燃 焼 室 コンセプト<br />
3.2)<br />
3.2 ディーゼル 機 関 における EGR デポジット 生 成 メカニズムの 解 析<br />
ディーゼル 機 関 は, 大 気 汚 染 物 質 ( 特 に Soot,NOx)の 排 出 規 制 が 強 化 される 中 , 大 量<br />
EGR による NOx 低 減 に 加 え DPF 再 生 中 の NOx 低 減 のためも EGR 導 入 が 求 められている。さ<br />
らに NSC などの 排 気 後 処 理 システムも 加 わり,NOx 還 元 や 硫 黄 分 除 去 の 燃 焼 時 に EGR 導 入<br />
が 必 要 である。そのため EGR システムに 導 入 される 排 出 ガス 中 の THC が 高 濃 度 になるため,<br />
デポジットが 生 成 しやすい 環 境 となり,EGR バルブスティックや EGR 通 路 の 詰 まり 等 の 発 生<br />
を 引 き 起 こしかねない 状 況 であり,EGR システムのオペレーションレンジの 設 定 により 一 層<br />
の 注 意 が 必 要 となる。 本 報 では 上 述 の 3 パターンの 燃 焼 条 件 ( 表 3-1)にて 排 出 ガスとデポジッ<br />
トの 分 析 をもとにデポジット 生 成 メカニズムの 仮 説 を 立 て, 再 現 性 評 価 を 通 して 仮 説 の 確 か<br />
らしさを 証 明 している。その 結 果 , 固 着 性 のあるデポジットの 生 成 には 反 応 性 HC 種 とアル<br />
デヒドの 存 在 , 触 媒 として 重 合 反 応 を 促 進 させる 硝 酸 などの 酸 類 の 三 つの 存 在 が 必 要 な 要 素<br />
であり, 加 えてデポジット 生 成 反 応 は 反 応 性 HC 種 が 壁 面 に 結 露 した 状 態 で 初 めて 進 行 する<br />
ことを 明 かしている。また,バルブスティックや EGR 通 路 の 詰 まり 等 の 回 避 手 法 として 排 気<br />
温 度 を 上 昇 させ, 反 応 性 HC を EGR バルブ 壁 面 に 付 着 させないことが 有 力 な 手 法 であり, 燃<br />
焼 条 件 により 異 なる 反 応 性 HC の 組 成 に 応 じた 蒸 気 圧 曲 線 と HC 濃 度 が 有 力 な 判 定 基 準 にな<br />
ることにも 言 及 している( 図 3-3)。<br />
Figure 3-2 EGG 燃 焼 室 のスモーク 低 減 効 果 と 燃 焼 挙 動<br />
Table 3-1 燃 焼 条 件 毎 の 排 気 温 度 と 排 出 ガス 組 成<br />
Figure 3-3 EGR オペレーションの 判 断 指 標<br />
3.3)<br />
3.3 ディーゼルエンジン 用 クローズドループロバスト 制 御 システムの 開 発<br />
ディーゼルエンジンは 排 出 ガス 規 制 の 強 化 に 伴 い 低 圧 縮 比 化 , 大 量 EGR 導 入 , 燃 焼 の 予 混<br />
合 化 等 が 採 用 されるようになり, 市 場 燃 料 のセタン 価 バラツキに 対 して 燃 焼 タフネス( 着 火<br />
性 )が 悪 化 してきており, 低 セタン 価 燃 料 を 給 油 した 際 に 失 火 によるエンジン 停 止 やドライ<br />
バビリティの 悪 化 , 未 燃 成 分 の 排 出 が 懸 念 される。その 対 策 として GLOW 一 体 型 筒 内 圧 セン<br />
サを 用 いた 制 御 システムについての 報 告 も 多 数 あるが, 本 報 では,コストの 上 昇 やハードウェ<br />
アの 変 更 を 最 小 限 にすることに 主 眼 を 置 きクランクパルス 信 号 を 利 用 した 制 御 システムに 着<br />
目 されている。 本 システムは 図 3-4 のようにデジタルフィルタを 用 いて,クランク 角 センサ<br />
のパルス 信 号 から,エンジン 回 転 2 次 振 動 や 路 面 からの 影 響 など 誤 差 判 定 要 因 を 除 外 して 失<br />
火 時 に 特 徴 的 な 周 波 数 成 分 (0.5 次 )を 抽 出 することにより, 燃 焼 状 態 の 判 定 を 行 っている。<br />
本 手 法 により 低 セタン 価 燃 料 の 給 油 時 ,および EGR 過 多 時 の 燃 焼 悪 化 や 白 煙 の 発 生 を 伴 う<br />
燃 焼 不 安 定 状 態 が 検 出 できることが 確 認 されている( 図 3-5)。また, 低 セタン 価 燃 料 給 油 時<br />
の 燃 焼 悪 化 は 燃 焼 判 定 指 標 が 標 準 燃 料 給 油 時 と 同 等 になるまで EGR を 減 量 することにより,<br />
HC,トルク 変 動 はほぼ 同 等 にまで 回 復 できることも 示 されている( 図 3-6)。( 神 田 智 博 )<br />
Figure 3-4 デジタルフィルタの 効 果<br />
Figure 3-5 完 全 失 火 の 検 出<br />
【 参 考 文 献 】<br />
3.1) 志 茂 大 輔 , 加 藤 雄 大 , 金 尚 奎 , 宮 崎 正 浩 , 神 崎 淳 , 西 田 恵 哉 : 燃 焼 室 壁 に 衝 突 するディー<br />
ゼル 噴 霧 による 縦 渦 形 成 と 燃 焼 過 程 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号<br />
12(2011)<br />
3.2) 古 川 尚 稔 , 後 藤 新 三 , 砂 岡 基 之 :ディーゼル 機 関 における EGR デポジット 生 成 メカ<br />
ニズムの 解 析 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 42(2011)<br />
3.3) 青 山 幸 俊 , 長 谷 川 亮 , 山 田 智 海 , 伊 藤 丈 和 , 友 田 晃 利 , 島 崎 勇 一 :ディーゼルエン<br />
ジン 用 クローズドループロバスト 制 御 システムの 開 発 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演<br />
論 文 集 , 講 演 番 号 45(2011)<br />
Figure 3-6<br />
同 一 失 火 判 定 時 のトルク 変 動 と THC
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
8<br />
4 ガソリンエンジン<br />
ガソリン 燃 焼 に 関 する 講 演 の 中 から 3 件 を 選 定 し, 内 容 を 紹 介 する。<br />
4.1)<br />
4.1 ガソリン 成 分 が PN( 排 出 粒 子 数 )に 与 える 影 響<br />
ディーゼルエンジンに 比 べてガソリンエンジンから 排 出 される 微 粒 子 (PM,Particulate<br />
Matter)に 対 する 燃 料 の 影 響 を 調 べた 研 究 は 少 ない。 本 講 演 では, 車 両 を 用 いた 興 味 深 い 実<br />
験 結 果 が 紹 介 された。エンジンはポート 噴 射 式 過 給 エンジンであり,PM 規 制 が 議 論 されて<br />
いる 直 噴 式 ではないが, 燃 料 中 の 沸 点 , 不 飽 和 炭 化 水 素 含 有 量 の 異 なる 燃 料 およびエタノー<br />
ル 混 合 燃 料 の 計 9 種 類 を 用 いて 試 験 モード NEDC 走 行 時 に 排 出 される PM 排 出 個 数 を 計 測 し<br />
ている。 試 験 結 果 は 最 終 的 に PM 排 出 指 標 という 形 でまとめられている。 排 出 量 ( 数 )を 燃<br />
料 に 含 まれる 不 飽 和 度 (DBE)の 重 量 割 合 と 蒸 気 圧 の 比 で 表 わし, 蒸 気 圧 に 443K の 値 を 用<br />
いると 高 い 相 関 が 得 られるとしている。 図 4-1 は PM 排 出 個 数 と 芳 香 族 含 有 率 との 相 関 を,<br />
図 4-2 は PM 排 出 指 標 との 相 関 を 示 す。 指 標 は 現 象 から 導 かれたものではないが,この 指 標<br />
で 市 場 燃 料 の 影 響 も 捉 えられていることも 示 している。 新 興 国 のモータリゼーションや 将 来<br />
的 に 非 在 来 燃 料 の 増 加 を 考 えると, 燃 料 に 対 するエミッションの 変 化 は 重 要 であり,この 種<br />
のアプローチの 有 用 性 は 高 いと 考 えられる。エンジン 形 式 や 燃 焼 方 式 の 違 いに 対 しても 指 標<br />
が 同 じように 適 用 できるかが 今 後 の 課 題 と 考 えられる。<br />
Figure 4-1 芳 香 族 含 有 率 との 相 関<br />
Figure 4-2 PM-Index との 相 関<br />
4.2)<br />
4.2 図 示 熱 効 率 向 上 への 高 圧 縮 比 化 と 冷 却 損 失 低 減 の 効 果 に 関 する 研 究<br />
内 燃 機 関 の 熱 効 率 向 上 は 終 わりなき 課 題 と 言 えるが,CO2 削 減 ,エネルギー 問 題 に 対 する<br />
社 会 的 要 請 から 近 年 特 に 重 要 度 が 高 くなっている。 熱 サイクルに 立 ち 返 ってエンジンを 再 構<br />
成 しようという 動 きはあちらこちらに 見 られ, 本 発 表 もその 一 つと 考 えられる。 熱 効 率 を 高<br />
めるために 期 待 される 方 策 の 一 つは 燃 焼 から 膨 張 行 程 における 冷 却 損 失 の 低 減 であり,この<br />
重 要 性 は 基 調 講 演 のうち 3 件 が 冷 却 損 失 に 直 接 触 れていることからも 分 かる。 本 講 演 の 中 で<br />
は, 燃 焼 室 内 ガスの 熱 力 学 的 状 態 量 と 壁 面 温 度 を 連 成 して 解 き, 冷 却 損 失 を 求 めている。こ<br />
こでは, 数 値 的 に 壁 面 の 熱 伝 導 率 と 比 熱 を 変 えたときの 壁 面 温 度 の 変 化 に 注 目 したい。 圧 縮<br />
比 範 囲 10 ~ 60, 空 気 過 剰 率 2 ~ 5 の 希 薄 燃 焼 場 が 計 算 対 象 であり, 燃 焼 計 算 には 些 か 疑 問<br />
が 残 るが,ペーパーに 示 されている 一 例 を 図 4-3 に 示 す。 低 熱 伝 導 だけではサイクルを 通 じ<br />
て 壁 面 温 度 が 高 くなるだけで 従 来 , 断 熱 エンジンで 指 摘 されてきた 圧 縮 行 程 ガス 温 度 の 上 昇<br />
を 誘 引 してしまうが, 比 熱 を 同 時 に 小 さくすると 吸 気 工 程 中 の 壁 面 温 度 は 低 くなることが 示<br />
されている。 筆 者 らも 同 様 の 考 えに 基 づいた 検 討 を 行 なっており, 冷 却 損 失 低 減 に 向 けた 方<br />
策 の 一 つとして 期 待 される。<br />
Figure 4-3<br />
Figure 4-4<br />
壁 面 温 度 の 変 化<br />
燃 焼 容 器 の 概 略<br />
4.3 2.0MPa までの 高 圧 下 での 炭 化 水 素 予 混 合 火 炎 の 燃 焼 特 性 に 関 する 研 究<br />
本 講 演 では, 高 圧 下 の 火 炎 伝 播 を 調 べるために 開 発 した 新 たな 燃 焼 試 験 容 器 が 報 告 された<br />
4.3)<br />
。 自 動 車 では 燃 費 の 観 点 から, 過 給 ダウンサイジングを 含 め 熱 効 率 の 高 い 高 負 荷 の 利 用 が<br />
多 くなっており, 高 圧 下 での 火 炎 伝 播 研 究 は 有 用 性 が 高 い。これまでの 定 容 容 器 では 燃 焼 に<br />
伴 う 容 器 内 圧 力 上 昇 が 無 視 できなくなるため, 燃 焼 試 験 容 器 内 の 圧 力 上 昇 が 低 く 抑 えられる<br />
よう 二 重 の 容 器 構 造 をとっている ( 図 4-4)。 具 体 的 には 内 側 の 容 器 内 に 燃 料 − 空 気 の 混 合 気 を,<br />
外 側 の 容 器 には 窒 素 ガスを 同 じ 圧 力 で 満 たし, 試 験 開 始 前 には 内 外 を 繋 ぐ 連 通 路 を 閉 じてお<br />
く。 試 験 開 始 と 同 時 に 連 通 路 を 開 き, 内 部 圧 力 が 高 くなると 連 通 路 を 通 ってガスが 外 側 容 器<br />
に 流 出 し 圧 力 上 昇 を 抑 える 構 造 になっている。 内 側 容 器 にはガラス 窓 が 付 いており, 光 学 計<br />
測 が 可 能 であり,メタン,プロパン,DME の 球 形 火 炎 速 度 について 2MPa までの 圧 力 影 響 が<br />
示 された ( 図 4-5)。 今 後 燃 焼 モデルとの 対 比 が 期 待 される。 火 炎 安 定 性 についての 考 察 がな<br />
されているが,ガスを 外 部 に 逃 がすことによる 容 器 内 部 流 れへの 影 響 も 懸 念 される。( 小 池 )<br />
Figure 4-5<br />
球 形 火 炎 の 速 度<br />
【 参 考 文 献 】<br />
4.1) 相 川 孔 一 郎 ,ガソリン 成 分 が PN( 排 出 粒 子 数 )に 与 える 影 響 , 第 22 回 内 燃 機 関 シン<br />
ポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 5(2011)<br />
4.2) 藤 本 英 史 , 山 本 博 之 , 藤 本 昌 彦 , 山 下 洋 幸 : 図 示 熱 効 率 向 上 への 高 圧 縮 比 化 と 冷 却 損<br />
失 低 減 の 効 果 に 関 する 研 究 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 47(2011)<br />
4.3) 田 上 公 俊 , 嶋 田 諒 , 岩 清 水 健 斗 , 宮 脇 健 :2.0MPa までの 高 圧 下 での 炭 化 水 素 予 混 合<br />
火 炎 の 燃 焼 特 性 に 関 する 研 究 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 49(2011)<br />
Figure 5-1<br />
筒 内 吸 収 測 定 システムの 概 要
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
9<br />
5 HCCI<br />
5.1 HCCI 機 関 における 燃 焼 室 内 ガスの 光 学 測 定 ― 紫 外 ・ 可 視 吸 収 分 光 法 によるホルムアル<br />
デヒド 測 定 ―<br />
岡 山 大 学 の 河 原 らより,「HCCI 機 関 における 燃 焼 室 内 ガスの 光 学 測 定 ― 紫 外 ・ 可 視 吸 収<br />
分 光 法 によるホルムアルデヒド 測 定 ―」 5.1) と 題 して 発 表 があった。HCCI 燃 焼 過 程 における<br />
冷 炎 反 応 から 自 着 火 発 生 にかけての 中 間 生 成 物 の 挙 動 を 実 験 的 に 把 握 することを 主 目 的 と<br />
し, 筒 内 の 分 光 測 定 を 実 施 している。 特 に, 自 着 火 に 重 要 な 役 割 を 果 たすホルムアルデヒド<br />
(HCHO)および OH ラジカルの 挙 動 測 定 に 着 目 している。1 回 の 圧 縮 膨 張 行 程 を 模 擬 できる<br />
圧 縮 膨 張 機 関 を 用 い,HCCI 燃 焼 を 行 っている。 機 関 圧 縮 比 は 9.0 で, 作 動 ガスには O 2 と Ar<br />
を 用 いることで 比 熱 比 を 向 上 させている。また, 燃 焼 には 低 温 酸 化 反 応 が 活 発 なジメチルエー<br />
テル(DME)を 使 用 している。 筒 内 吸 収 測 定 に 供 したシリンダヘッドの 概 略 を 図 5-1 に 示 す。<br />
光 源 である 重 水 素 ランプからの 光 を 燃 焼 室 内 に 照 射 し, 透 過 光 を 分 光 器 に 導 き 各 波 長 におけ<br />
る 吸 光 度 を 解 析 している。その 結 果 , 冷 炎 の 発 生 とともに HCHO のスペクトルが 確 認 される<br />
ことを 示 している( 図 5-2)。また, 熱 炎 の 発 生 とともに HCHO のスペクトルが 消 失 すること<br />
を 示 している( 図 5-2)。<br />
Figure 5-2<br />
熱 発 生 率 および 各 時 期 における 吸 収 スペクトル<br />
5.2 圧 縮 自 着 火 過 程 における PRF 燃 料 とトルエン / ヘプタン 混 合 燃 料 の 差 異 についての 排 気<br />
分 析 評 価 と 反 応 機 構 的 解 析<br />
富 山 大 学 の 小 崎 らより「 圧 縮 自 着 火 過 程 における PRF 燃 料 とトルエン / ヘプタン 混 合 燃 料<br />
の 差 異 についての 排 気 分 析 評 価 と 反 応 機 構 的 解 析 」 5.2) と 題 して 発 表 があった。HCCI 機 関 に<br />
おける 低 温 酸 化 反 応 機 構 を 明 らかにするために, 機 関 を 冷 炎 のみが 発 生 する 条 件 で 運 転 し,<br />
その 排 気 組 成 をフーリエ 変 換 赤 外 分 光 法 (FT-IR)で 分 析 することで, 冷 炎 での 各 種 中 間 生 成<br />
物 を 測 定 ・ 解 析 している。 燃 料 には PRF(n-heptane + iso-octane)および NTF(n-heptane<br />
+ toluene)を 用 い, 両 燃 料 の 差 異 について 検 討 している。PRF および NTF それぞれにおいて,<br />
オクタン 価 を 変 化 させた 際 の 各 化 学 種 の 生 成 率 (または 消 費 率 )を 図 5-3 および 図 5-4 に 示 す。<br />
PRF ではオクタン 価 増 加 に 伴 い n-heptane,iso-octane の 消 費 率 は 共 に 低 下 するが,NTF では<br />
toluene 含 有 率 増 加 に 伴 う 燃 料 成 分 の 減 少 は n-heptane では 見 られるが,toluene では 見 ら<br />
れない。つまり,toluene は iso-octane に 比 べて OH との 反 応 速 度 定 数 が 小 さく,n-heptane<br />
の 消 費 率 に 与 える 影 響 が 少 ない。また,PRF ではオクタン 価 増 加 とともに HCHO(ホルムア<br />
ルデヒド)の 生 成 率 がやや 増 加 するのに 対 し,NTF ではオクタン 価 の 増 加 とともに HCHO の<br />
生 成 率 が 低 下 する。これは,iso-octane が n-haptane に 比 べてより 多 くの HCHO を 生 成 する<br />
のに 対 し,toluene は n-heptane に 比 べ HCHO を 生 成 しにくいためである。<br />
Figure 5-3<br />
Figure 5-4<br />
PRF を 用 いた 際 の 燃 料 の 消 費 率 と 化 学 種 の 生 成 率<br />
NTF を 用 いた 際 の 燃 料 の 消 費 率 と 化 学 種 の 生 成 率<br />
5.3 EGR 率 が HCCI 燃 焼 過 程 に 及 ぼす 影 響 に 関 する 研 究<br />
慶 應 義 塾 大 学 の 小 田 島 らより,「EGR 率 が HCCI 燃 焼 過 程 に 及 ぼす 影 響 に 関 する 研 究 」 5.3)<br />
と 題 して 発 表 があった。HCCI 機 関 の 運 転 領 域 拡 大 に 有 効 な 手 法 である, 排 ガス 再 循 環 (EGR)<br />
および 過 給 が HCCI 燃 焼 に 及 ぼす 影 響 について, 素 反 応 数 値 解 析 によって 調 査 している。 燃<br />
料 には, 低 温 酸 化 反 応 が 活 発 なジメチルエーテル(DME)を 用 いている。その 中 で, 酸 素 の<br />
濃 度 と 分 圧 に 着 目 し,EGR や 過 給 によってその 影 響 を 調 査 している。 例 えば EGR を 与 えると,<br />
酸 素 濃 度 , 酸 素 分 圧 が 共 に 低 下 する。 過 給 を 行 うと, 酸 素 濃 度 がほぼ 一 定 のもと, 酸 素 分 圧<br />
が 増 加 する。EGR と 過 給 を 組 み 合 わせることで, 酸 素 分 圧 を 一 定 に 保 ったまま 酸 素 濃 度 を 変<br />
化 可 能 である。このような 条 件 で 素 反 応 数 値 計 算 を 実 施 し, 低 温 酸 化 反 応 での 発 熱 割 合 への<br />
影 響 をまとめた 結 果 を 図 5.5 に 示 す。EGR を 与 えることで 酸 素 濃 度 と 酸 素 分 圧 がともに 低 下<br />
し, 低 温 酸 化 反 応 での 発 熱 割 合 が 低 下 する。 過 給 により, 酸 素 濃 度 は 概 ね 一 定 の 下 で 酸 素 分<br />
圧 が 増 加 し, 低 温 酸 化 反 応 での 発 熱 割 合 が 増 加 する。EGR と 過 給 を 組 み 合 わせることで, 酸<br />
素 分 圧 一 定 の 下 で 酸 素 濃 度 を 低 下 させた 場 合 , 酸 素 濃 度 が 低 下 したにもかかわらず 低 温 酸 化<br />
反 応 での 発 熱 割 合 が 低 下 する。よって, 低 温 酸 化 反 応 での 発 熱 割 合 に 対 しては, 酸 素 濃 度 お<br />
よび 酸 素 分 圧 以 外 の 影 響 が 存 在 すると 結 論 付 けられている。<br />
Figure 5-5<br />
酸 素 分 率 および 酸 素 分 圧 が 低 温 酸 化 反 応 の 発 熱 割<br />
合 に 及 ぼす 影 響<br />
5.4 HCCI 運 転 限 界 に 及 ぼす 燃 料 の 酸 化 特 性 の 影 響 −トルエンとメタンの 比 較 -<br />
茨 城 大 学 の 木 村 らより,「HCCI 運 転 限 界 に 及 ぼす 燃 料 の 酸 化 特 性 の 影 響 −トルエンとメ<br />
タンの 比 較 -」 5.4) と 題 して 発 表 があった。 着 火 性 の 大 きく 異 なる 燃 料 を 組 み 合 わせた HCCI<br />
燃 焼 によって, 着 火 時 期 を 安 定 的 に 膨 張 行 程 に 移 行 させることで 高 負 荷 HCCI 運 転 が 可 能 に<br />
なる。 本 研 究 では, 着 火 しやすい 燃 料 に DME, 着 火 しにくい 燃 料 にメタン,トルエンを 選 択 し,<br />
Figure 5-6<br />
各 燃 料 と OH との 反 応 速 度 定 数
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
10<br />
メタン /DME,トルエン /DME 混 合 燃 料 の HCCI 燃 焼 特 性 と 反 応 メカニズムについて, 実 験 と<br />
素 反 応 数 値 解 析 によって 調 査 している。 図 5-6 に 各 燃 料 と OH との 反 応 速 度 定 数 を 示 す。 燃<br />
料 と OH の 反 応 速 度 定 数 は DME > トルエン > メタンの 順 である。 図 5-7 にメタン / DME,<br />
図 5-8 にトルエン / DME での 素 反 応 数 値 計 算 結 果 を 示 す。メタンと DME の 酸 化 開 始 温 度 に<br />
250 K 程 度 の 温 度 差 があるため, 高 温 酸 化 が 2 段 で 生 ずるものと 説 明 されている。 一 方 でト<br />
ルエンは,メタン 比 較 して1 DME の 低 温 酸 化 反 応 で 生 じた OH を 消 費 する,2メタンより<br />
低 温 で 消 費 される, 等 の 特 徴 が 示 されている。そのことが, 高 温 酸 化 の 2 段 発 生 の 起 きやす<br />
さに 影 響 を 与 えているものと 考 えられる。<br />
5.5 冷 却 水 温 度 がブローダウン HCCI 機 関 の 運 転 性 能 に 与 える 影 響<br />
千 葉 大 学 の 窪 山 らより,「 冷 却 水 温 度 がブローダウン HCCI 機 関 の 運 転 性 能 に 与 える 影 響 」 5.5)<br />
と 題 して 発 表 があった。 他 の 気 筒 のブローダウンによって EGR を 過 給 するブローダウン 過 給<br />
HCCI 機 関 において, 冷 却 水 温 度 が 機 関 性 能 に 及 ぼす 影 響 を 調 べている。ブローダウン HCCI<br />
システムの 概 要 を 図 5-9 に 示 す。 排 気 管 を 絞 ることで, 過 給 圧 を 調 整 できる。 図 5.10 に, 冷<br />
却 水 温 度 85℃,105℃における 熱 発 生 率 を, 図 5-11 に 運 転 領 域 を 示 す。 横 軸 は 排 気 圧 で, 縦<br />
軸 は 図 示 平 均 有 効 圧 力 (IMEP),NOx 排 出 量 である。 運 転 領 域 は, 最 大 圧 力 上 昇 率 400 kPa/<br />
deg. 以 下 ,IMEP 変 動 率 5 % 以 下 ,NOx 排 出 量 0.1 g/kWh 以 下 を 満 たす 条 件 である。 冷 却 水<br />
温 度 を 高 くした 場 合 , 燃 焼 期 間 が 短 期 化 し, 熱 発 生 率 最 大 値 が 増 加 する。つまり, 圧 力 上 昇<br />
率 が 増 加 する( 図 5-10)。しかし, 高 負 荷 側 の IMEP の 限 界 値 は 変 わらない( 図 5.11)。 冷 却<br />
水 高 温 化 により, 少 ない EGR 率 で 着 火 可 能 なため, 排 気 圧 を 低 下 させることが 可 能 である。<br />
つまり, 冷 却 水 温 度 を 高 温 化 しても 高 負 荷 側 の IMEP 限 界 値 が 変 化 しない 理 由 は,ポンプロ<br />
スが 低 減 するためである。( 飯 島 )<br />
Figure 5-7 メタン /DME 混 合 燃 料 の 数 値 計 算 結 果<br />
Figure 5-8 トルエン /DME 混 合 燃 料 の 数 値 計 算 結 果<br />
【 参 考 文 献 】<br />
5.1) 河 原 , 冨 田 , 斎 藤 :HCCI 機 関 における 燃 焼 室 内 ガス 成 分 の 光 学 的 測 定 − 紫 外 ・ 可 視 吸<br />
収 分 光 法 によるホルムアルデヒド 測 定 −, 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演<br />
番 号 88(2011)<br />
5.2) 小 崎 寛 之 ,Mohd Adnin bin Hamidi, 手 崎 衆 : 圧 縮 自 着 火 過 程 における PRF 燃 料 とトル<br />
エン / ヘプタン 混 合 燃 料 の 差 異 についての 排 気 分 析 評 価 と 反 応 機 構 的 解 析 , 第 22 回 内 燃 機 関<br />
シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 92(2011)<br />
5.3) 小 田 島 亮 , 飯 田 訓 正 :EGR 率 が HCCI 燃 焼 過 程 に 及 ぼす 影 響 に 関 する 研 究 , 第 22 回 内<br />
燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 93(2011)<br />
5.4) 木 村 優 介 , 江 口 貴 啓 , 松 澤 聡 , 金 野 満 :HCCI 運 転 限 界 に 及 ぼす 燃 料 の 酸 化 特 性 の 影 響<br />
−トルエンとメタンの 比 較 −, 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 97(2011)<br />
5.5) 窪 山 達 也 , 後 藤 俊 介 , 森 吉 泰 生 , 畑 村 耕 一 , 山 田 敏 生 , 高 梨 淳 一 , 浦 田 泰 弘 : 冷 却<br />
水 温 度 がブローダウン 過 給 HCCI 機 関 の 運 転 性 能 に 与 える 影 響 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウ<br />
ム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 98(2011)<br />
Figure 5-9 ブローダウン 過 給 システム<br />
Figure 5-10 異 なる 冷 却 水 温 度 での 熱 発 生 率<br />
6 着 火 ・ 燃 焼<br />
燃 料 の 自 着 火 機 構 ,プラズマやレーザによる 点 火 機 構 を 明 らかにするために, 反 応 モデル<br />
を 利 用 した 燃 焼 解 析 および 手 法 の 提 案 , 定 容 燃 焼 器 や 実 機 による 検 討 についての 講 演 があっ<br />
た。その 中 から 下 記 3 件 を 報 告 する。<br />
6.1 メタン / 酸 素 / アルゴン 予 混 合 気 の 自 着 火 燃 焼 に 対 する 非 平 衡 プラズマの 着 火 促 進 作 用<br />
中 野 らは, 詳 細 反 応 モデルを 用 いてメタン / 酸 素 / アルゴン 予 混 合 気 の 自 着 火 燃 焼 に 対 す<br />
る 非 平 衡 プラズマの 着 火 促 進 作 用 を 検 討 した 6.1) 。シミュレーションは, 非 平 衡 プラズマに<br />
よるラジカル 生 成 計 算 , 非 平 衡 プラズマからの 生 成 物 組 成 を 初 期 条 件 にしたメタンの 自 着 火<br />
計 算 から 構 成 されている。プラズマにより 生 成 されるイオンや 励 起 原 子 ・ 分 子 濃 度 は, 酸 素<br />
原 子 などの 中 性 粒 子 濃 度 と 比 較 して 極 めて 小 さいことを 確 認 し, 自 着 火 計 算 の 初 期 条 件 では<br />
考 慮 していない。まず 着 火 遅 れ 時 間 の 絶 対 値 およびその 非 平 衡 プラズマによる 短 縮 効 果 の 実<br />
験 値 が 再 現 できることを 確 認 し,シミュレーション 手 法 の 有 効 性 を 証 明 した( 図 6-1)。 次 に<br />
電 圧 印 加 時 間 や 電 圧 レベルが 着 火 促 進 効 果 に 与 える 影 響 を 検 討 し, 電 界 強 度 が 低 い 条 件 では<br />
急 速 に 着 火 促 進 効 果 が 失 われることを 示 唆 した( 図 6-2)。またプラズマ 生 成 物 の 単 位 濃 度 当<br />
たりの 着 火 促 進 効 果 や 効 果 の 温 度 依 存 性 を 検 討 した。エンジンへのプラズマ 適 用 を 考 慮 した<br />
Figure 5-11 冷 却 水 温 度 が 高 負 荷 側 の 運 転 領 域 に 及 ぼす 影 響<br />
Figure 6-1 メタンの 着 火 遅 れ 時 間
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
11<br />
1000 K 以 下 の 温 度 領 域 では,H/C 比 の 小 さい 炭 化 水 素 や 酸 素 原 子 の 着 火 促 進 効 果 が 大 きい。<br />
生 成 する 中 性 粒 子 の 濃 度 を 考 慮 すると, 特 に 酸 素 原 子 が 着 火 に 大 きく 寄 与 すること 示 唆 され<br />
た( 図 6-3)。<br />
6.2 大 気 圧 および 高 圧 力 雰 囲 気 中 のメタン / 空 気 希 薄 混 合 気 に 対 する 点 火 エネルギー 測 定 と<br />
シュリーレンによる 火 炎 核 形 成 過 程 の 観 察<br />
中 谷 らは, 電 気 火 花 およびレーザブレイクダウン 火 花 点 火 の 現 象 の 理 解 を 目 的 に, 大 気 圧<br />
および 高 圧 力 雰 囲 気 中 のメタン / 空 気 希 薄 混 合 気 に 対 して 点 火 エネルギー 測 定 とシュリーレ<br />
ンによる 火 炎 核 形 成 過 程 の 観 察 を 行 った 6.2) 。 電 気 火 花 およびレーザブレイクダウン 火 花 点 火<br />
のいずれも 当 量 比 の 減 少 に 従 い 点 火 エネルギーは 増 加 するが, 雰 囲 気 圧 力 が 高 い 場 合 にはこ<br />
の 増 加 率 が 大 きく, 量 論 混 合 気 付 近 では 圧 力 増 加 に 従 い 点 火 エネルギーが 減 少 するのに 対 し<br />
て, 希 薄 限 界 付 近 では 圧 力 増 加 に 従 い 点 火 エネルギーは 大 きくなることが 示 された。 希 薄 混<br />
合 気 は 燃 焼 速 度 が 小 さく, 高 圧 下 では 特 に 浮 力 の 効 果 が 大 きくなることが, 点 火 エネルギー<br />
の 増 加 に 関 係 している 可 能 性 があるとしている。また 電 気 火 花 と 比 較 してレーザブレイクダ<br />
ウンの 方 が 点 火 エネルギーが 大 きい。シュリーレン 画 像 から, 電 気 火 花 では 浮 力 の 影 響 によ<br />
り 火 炎 核 が 上 方 に 大 きく 成 長 していくことが 分 かる( 図 6-4)。 一 方 ,レーザブレイクダウン<br />
点 火 では, 電 気 火 花 と 比 較 すると 初 期 に 観 察 される 衝 撃 波 の 濃 淡 が 明 確 であり,エネルギー<br />
散 逸 が 比 較 的 大 きいことが 示 唆 されている( 図 6-5)。さらにサードローブ 部 と 下 部 において<br />
は 局 所 的 に 消 炎 していることが 観 察 された。これらの 理 由 により, 電 気 火 花 と 比 較 してレー<br />
ザーブレイクダウン 火 花 では 点 火 エネルギーが 大 きくなるものと 結 論 付 けている。<br />
Figure 6-2 電 圧 印 加 時 間 が 着 火 遅 れ 時 間 に 与 える 影 響<br />
Figure 6-3 プラズマ 生 成 物 着 火 短 縮 効 果 の 温 度 依 存<br />
6.3 マイクロ 波 燃 焼 技 術 の 含 水 エタノール 燃 料 の 燃 焼 改 善 効 果<br />
文 らは, 火 花 放 電 にマイクロ 波 を 供 給 して 非 平 衡 プラズマを 生 成 するマイクロ 波 プラズマ<br />
着 火 を 利 用 し, 含 水 エタノール 燃 料 の 燃 焼 改 善 効 果 を 検 証 した 6.3) 。この 研 究 は, 含 水 燃 料 の<br />
燃 料 精 製 エネルギーおよびコストを 低 減 するために, 含 水 燃 料 でも 安 定 燃 焼 を 実 現 できる 着<br />
火 システムの 開 発 を 目 指 している( 図 6-6)。 単 気 筒 エンジンを 用 いた 試 験 により, 通 常 の 火<br />
花 点 火 では 燃 焼 変 動 が 大 きくリーン 限 界 を 超 えている 運 転 条 件 においても,マイクロ 波 を 供<br />
給 することにより 安 定 した 燃 焼 を 実 現 できることが 示 された( 図 6-7, 図 6-8)。マイクロ 波<br />
を 供 給 することにより 火 花 放 電 よりも 大 きなプラズマが 形 成 され,そこで 生 成 したラジカル・<br />
原 子 等 が 燃 料 の 反 応 を 促 進 したことが, 燃 焼 改 善 の 要 因 であると 推 測 している。また,エタ<br />
ノールを 通 常 点 火 した 場 合 よりも, 含 水 率 20%のエタノールをマイクロ 波 プラズマ 着 火 した<br />
場 合 の 方 がリーン 限 界 が 広 がり 安 定 燃 焼 が 実 現 できることも 実 証 された。 現 在 ,マイクロ 波<br />
発 信 源 をマグネトロンから 半 導 体 素 子 への 変 換 を 進 めており, 高 効 率 かつ 安 定 なプラズマ 生<br />
成 が 可 能 になっているとのことである。( 酒 井 )<br />
Figure 6-4 電 気 火 花 点 火 の 火 炎 核<br />
Figure 6-5 レーザーブレイクダウン 火 花 点 火 の 火 炎 核<br />
【 参 考 文 献 】<br />
6.1) 中 野 道 王 , 服 部 邦 彦 , 森 吉 泰 夫 : 非 平 衡 プラズマによるラジカル 生 成 と 自 着 火 促 進 作 用 ,<br />
第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 60 (2011)<br />
6.2) 中 谷 辰 爾 , 横 治 克 洋 , 瀬 川 大 資 , 津 江 光 洋 : 高 圧 力 雰 囲 気 中 における 希 薄 メタン / 空<br />
気 混 合 気 に 対 する 火 花 点 火 の 最 小 点 火 エネルギー 測 定 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演<br />
論 文 集 , 講 演 番 号 62(2011)<br />
6.3) 文 雅 司 , 西 山 淳 , 池 田 裕 二 ,Anthony DeFilippo,Robert Dibble,Jyh-Yuan Chen:マ<br />
イクロ 波 燃 焼 技 術 の 含 水 エタノール 燃 料 への 適 用 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 ,<br />
講 演 番 号 65(2011)<br />
Figure 6-6<br />
マイクロ 波 の 供 給 ユニット<br />
7 トライボロジー<br />
低 負 荷 域 を 多 用 する 乗 用 車 用 エンジンでは,ピストンの 摩 擦 損 失 低 減 およびエンジンの 軽<br />
量 化 が 車 両 の 燃 費 向 上 に 効 果 的 である。 前 者 は 言 うまでもなくトライボロジー 的 課 題 である<br />
し, 後 者 も 摺 動 面 の 面 圧 増 加 時 の 信 頼 性 確 保 の 観 点 から,やはりトライボロジー 的 な 課 題 を<br />
多 く 含 んでいる。これらに 対 する 要 求 が 高 まっていることから, 近 年 ,トライボロジー 関 連<br />
のセッションは 総 じて 盛 況 である。 今 回 の 内 燃 機 関 シンポジウムにおいても 午 前 から 午 後 に<br />
わたる 2 セッションにて 計 8 件 の 発 表 が 行 われ,また 多 くの 方 々が 聴 講 のために 足 を 運 んで<br />
くださり, 活 発 な 討 論 が 行 われた。 以 下 に 講 演 内 容 をかいつまんで 紹 介 する。<br />
Figure 6-7<br />
火 花 点 火 のリーン<br />
限 界<br />
Figure 6-8<br />
マイクロ 供 給 によ<br />
る 安 定 燃 焼 の 実 現
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
12<br />
7.1 摩 擦 損 失 低 減 手 法<br />
午 前 中 のセッションでは,ピストン 周 りの 摩 擦 低 減 が 多 く 取 り 上 げられていた。ピストン<br />
系 の 摩 擦 力 を 論 じる 場 合 ,その 測 定 法 が 常 に 課 題 となっている。いすゞ 中 央 研 究 所 の 山 下 ら<br />
による「ディーゼルエンジンの 摩 擦 損 失 低 減 手 法 ( 第 1 報 )」では,エンジンに 大 きな 改 変<br />
を 加 えずにファイアリング 下 でピストン・クランク 系 の 摩 擦 損 失 を 計 測 する 方 法 が 検 討 され<br />
ている。 図 7-1 に 示 すように,エンジンと 動 力 計 の 間 に 取 り 付 けたトルクメータによりエン<br />
ジントルクの 変 化 を 測 定 する 手 法 が 採 られている。 測 定 法 自 体 は 目 新 しいものではないが,<br />
誤 差 要 因 を 緻 密 に 解 析 することにより, 図 7-2 7.1) に 示 すような 摩 擦 損 失 波 形 を 得 ることに 成<br />
功 している。 一 方 で,ピストン 系 の 摩 擦 損 失 低 減 のために 提 案 される 方 策 は, 百 家 争 鳴 の 感<br />
がある。 今 回 のシンポジウムにても 幾 つかの 提 案 がなされていた。 目 新 しいものとしては,<br />
いすゞ 自 動 車 の 飯 島 らによる, 摺 動 面 にディンプルを 施 したトップリングであろうか。 表 面<br />
のテクスチャリングにより 摩 擦 力 が 減 少 する 事 例 は, 近 年 , 数 多 く 紹 介 されているが,トッ<br />
プリングに 適 用 した 例 ( 図 7-3) 7.2) は 珍 しい。 他 方 ,DLC コーティングに 関 しては 継 続 的 に<br />
研 究 が 行 われている。 摩 擦 低 減 の 救 世 主 となり 得 るのでは,という 期 待 をこめて 見 られてい<br />
る DLC コーティングであるが,エンジンの 摺 動 面 に 使 用 するためには 幾 つかの 注 意 すべき 点<br />
があるようである。 東 京 都 市 大 学 の 中 武 らによる 測 定 結 果 では 図 7-4 7.3) に 示 すように, 母 材<br />
であるピストンスカート 表 面 粗 さが 同 等 の 条 件 では, 樹 脂 コーティングよりも DLC コーティ<br />
ングのほうが 高 い 摩 擦 力 を 示 していた。DLC コーティングの 注 意 点 として, 使 い 方 のほかに<br />
DLC 自 体 の 種 類 の 選 び 方 が 挙 げられる。トヨタ 自 動 車 の 森 田 らは, 分 子 シミュレーションと<br />
単 体 試 験 によりダイヤモンド 表 面 をOH 終 端 させることで 摩 擦 係 数 を 大 幅 に 低 減 できること<br />
を 示 した( 図 7-5) 7.4) 。<br />
7.2 軸 受<br />
午 後 のセッションでは, 一 変 して 軸 受 けの 研 究 が 多 く 紹 介 されていた。 東 京 都 市 大 学 の 古<br />
川 らは, 薄 膜 圧 力 センサを 用 いて 摺 動 面 の 形 状 や 剛 性 を 変 化 させることなく 軸 受 けの 圧 力 測<br />
定 が 可 能 であることを 示 した( 図 7-6) 7.5) 。エンジンの 主 軸 受 けは,シリンダブロックやク<br />
ランク 軸 の 変 形 を 考 慮 した 解 析 の 予 測 精 度 向 上 が 望 まれているが,そのために 必 要 な 現 状 把<br />
握 のために 本 手 法 は 非 常 に 有 効 であると 思 われる。 一 方 で 早 稲 田 大 学 の 林 は, 油 膜 の 理 論 解<br />
析 を 進 めるうえで 必 要 となった 精 密 な 試 験 装 置 ( 図 7-7) 7.6) を 紹 介 すると 共 に, 現 在 の 油 膜<br />
の 動 的 解 析 には 不 明 な 点 も 多 く 残 されており, 計 算 および 実 験 双 方 からの 更 なる 研 究 が 必 要<br />
であるとの 見 解 を 示 した。 大 阪 電 気 通 信 大 学 の 小 笹 からは,コンロッド 大 端 軸 受 けの 実 際 の<br />
摺 動 面 形 状 および 表 面 性 状 を 考 慮 した 質 量 保 存 則 弾 性 流 体 潤 滑 による 摺 動 面 のテクスチャリ<br />
ングの 評 価 結 果 が 紹 介 された。 図 7-8 7.7) に 示 されるように, 軸 方 向 に 設 けられた 溝 は 摩 擦 損<br />
失 を 増 加 させ, 周 方 向 に 設 けられた 溝 はそれを 減 少 させることが 分 かった。さらにこの 研 究<br />
では 軸 受 け 形 状 や 潤 滑 油 粘 度 の 圧 力 依 存 性 は, 計 算 上 , 摩 擦 力 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすことか<br />
ら, 慎 重 な 取 り 扱 いが 必 要 であることが 示 された。 岩 手 大 学 の 佐 藤 らは 潤 滑 油 性 状 が2スト<br />
ローク 機 関 の 燃 焼 室 デポジット 生 成 に 与 える 影 響 を 調 べ, 金 属 系 清 浄 剤 の 影 響 が 大 きいこと<br />
を 示 している( 図 7-9) 7.8) 。 今 回 , 潤 滑 油 を 扱 った 講 演 が 少 ない 中 ,この 講 演 はその 重 要 性<br />
を 思 い 出 させてくれた。<br />
以 上 のような 講 演 に 対 し, 会 場 からは 終 始 , 熱 心 に 質 問 や 意 見 が 寄 せられた。 本 セッショ<br />
ンは, 参 加 者 全 員 にとって,エンジンのトライボロジーに 寄 せられる 期 待 と 現 状 ,そして 今<br />
後 の 課 題 を 確 認 する 良 い 機 会 になったように 思 われた。( 伊 東 )<br />
Figure 7-1<br />
Figure 7-2<br />
Figure 7-3<br />
Figure 7-4<br />
Figure 7-5<br />
【 参 考 文 献 】<br />
7.1) 山 下 健 一 , 飯 島 章 , 中 島 健 朗 :ディーゼルエンジンの 摩 擦 損 失 低 減 手 法 ( 第 1 報 )−<br />
エンジン 摩 擦 計 測 技 術 の 改 良 −, 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 29<br />
(2011)<br />
7.2) 飯 島 章 , 山 下 健 一 :ディーゼルエンジンの 摩 擦 損 失 低 減 手 法 ( 第 2 報 )−ピストン 系<br />
改 良 による 摩 擦 損 失 低 減 −, 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 30(2011)<br />
7.3) 中 武 靖 , 伊 東 明 美 , 加 納 眞 :ピストンスカート 仕 様 が 摩 擦 力 に 及 ぼす 影 響 第 1 報 DL<br />
C/ 鋳 鉄 製 シリンダライナーの 摩 擦 特 性 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演<br />
番 号 31(2011)<br />
7.4) 森 田 祐 輔 , 神 野 哲 史 , 村 上 元 一 , 畠 山 望 , 宮 本 明 : 分 子 シミュレーションによるエンジ<br />
ンの 境 界 摩 擦 低 減 の 研 究 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 32(2011)<br />
Figure 7-6
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
13<br />
7.5) 古 川 卓 儀 , 尾 鷲 道 康 , 三 原 雄 司 , 乾 正 継 , 大 脇 建 作 , 小 林 誠 : 薄 膜 圧 力 センサによ<br />
る 4 気 筒 ガソリンエンジンの 主 軸 受 油 膜 圧 力 分 布 計 測 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演<br />
論 文 集 , 講 演 番 号 33(2011)<br />
7.6) 林 洋 次 :エンジン 軸 受 のモデル 試 験 機 開 発 と 油 膜 観 察 軸 受 性 能 実 験 , 第 22 回 内 燃 機 関<br />
シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 35(2011)<br />
7.7) 小 笹 俊 博 :エンジン 軸 受 の 高 面 圧 化 と 摩 擦 : 潤 滑 計 算 による 評 価 , 第 22 回 内 燃 機 関 シ<br />
ンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 36(2011)<br />
7.8) 佐 藤 慎 司 , 藤 田 尚 毅 , 衛 飛 , 廣 瀬 宏 一 , 今 洋 : 小 型 2 ストローク 機 関 の 運 転 条 件 が 燃<br />
焼 室 デポジット 生 成 に 与 える 影 響 , 講 演 番 号 34(2011)<br />
Figure 7-7<br />
8 燃 料<br />
8.1 バイオエタノール, 水 素 ,ディーゼル 代 替 燃 料<br />
燃 料 1 のセッションでは,バイオエタノール, 水 素 ,ディーゼル 代 替 燃 料 に 関 する 研 究 発<br />
表 が 併 せて 4 件 あった。その 中 から 2 件 を 紹 介 する。<br />
産 業 技 術 総 合 研 究 所 の 古 谷 らは,ガソリン 混 合 用 エタノールの 品 質 規 格 に 関 する 項 目 とし<br />
て,エタノールの pH 測 定 方 法 について 研 究 開 発 を 行 った 8.1) 。バイオエタノールの 品 質 に 関<br />
する 規 格 は, 国 内 では JASO 規 格 , 国 外 では 米 国 の ASTM を 始 めブラジル,EU と 各 国 独 自 に<br />
品 質 の 規 格 を 持 っている 状 況 である。そのため ISO での 議 論 では 規 格 値 については 統 一 する<br />
ことが 難 しいため,まずは 測 定 方 法 について 検 討 を 始 める 動 きになっている。 本 研 究 では,<br />
JIS に 適 した 測 定 方 法 として,バイオエタノールと 純 水 を 1:1 で 混 合 し 測 定 する 方 法 を 提 案 し,<br />
いくつかの 検 証 試 験 を 実 施 した。この 結 果 , 再 水 和 などいくつかの 手 順 を 導 入 することによ<br />
り, 特 定 のメーカの 測 定 機 器 や 測 定 プローブを 限 定 することなく, 安 定 した 値 が 得 られるこ<br />
とが 分 かった( 図 8-1)。<br />
京 都 大 学 の Mansor らは,アルゴン- 酸 素 雰 囲 気 中 における 水 素 噴 流 の 自 着 火 燃 焼 特 性 を<br />
調 査 した 8-2) 。アルゴン 循 環 型 水 素 エンジンの 実 用 化 のためには,アルゴン- 酸 素 雰 囲 気 中 で<br />
の 水 素 噴 流 の 自 着 火 燃 焼 特 性 を 解 明 する 必 要 があり, 雰 囲 気 条 件 および 噴 射 条 件 を 変 化 させ,<br />
それらが 自 着 火 燃 焼 特 性 に 与 える 影 響 を 調 べ, 実 機 関 における 燃 焼 制 御 の 指 針 となる 基 礎 的<br />
データを 取 得 することを 目 的 としている。 定 容 燃 焼 装 置 を 用 いて, 種 々の 条 件 下 で 着 火 遅 れ・<br />
熱 発 生 率 経 過 の 測 定 を 行 った。その 結 果 , 比 較 的 低 い 温 度 域 で 着 火 遅 れが 長 い 場 合 , 予 混 合<br />
的 燃 焼 により 急 激 な 熱 発 生 となるのに 対 し, 高 温 域 では 着 火 遅 れが 短 く, 急 激 な 熱 発 生 は 見<br />
られなくなり,ほぼ 拡 散 的 に 燃 焼 が 進 行 することを 明 らかにした。またアルゴン- 酸 素 雰 囲<br />
気 中 での 着 火 遅 れは, 空 気 雰 囲 気 中 と 比 べて, 雰 囲 気 温 度 1000K 以 上 の 高 温 域 で 短 く,900K<br />
より 低 温 域 で 長 くなること,またアルゴン- 酸 素 雰 囲 気 の 方 が 空 気 雰 囲 気 より 比 熱 比 が 大 き<br />
く, 雰 囲 気 温 度 が 等 しい 条 件 でも 着 火 後 の 温 度 および 圧 力 の 上 昇 は 高 くなり, 乱 流 混 合 に 依<br />
存 する 拡 散 燃 焼 過 程 における 熱 発 生 は 緩 慢 となることなどを 明 らかにした( 図 8-2)。<br />
Figure 8-1<br />
Figure 7-8<br />
Figure 7-9<br />
純 水 の pH がエタノール/ 純 水 の pH 測 定 結 果 に 及 ぼ<br />
す 影 響<br />
8.2 ディーゼル 代 替 燃 料<br />
燃 料 2 のセッションでは,ディーゼル 代 替 燃 料 に 関 する 研 究 発 表 が 4 件 あった。その 中 か<br />
ら 2 件 を 紹 介 する。<br />
交 通 安 全 環 境 研 究 所 の 水 嶋 らは,バイオマス 由 来 ディーゼル 代 替 燃 料 として FAME および<br />
HVO や BTL に 代 表 されるパラフィン 系 燃 料 の NOx 排 出 特 性 に 関 して 考 察 している 8.3) 。これ<br />
によると, 従 来 の 軽 油 に 適 合 されたエンジンにおいて NOx 排 出 量 を 抑 制 するためには, 図 に<br />
示 すように PME やパラフィン 系 炭 化 水 素 などの H/C の 高 い 燃 料 が 適 していることを 述 べて<br />
いる。また, 単 位 体 積 あたりの 発 熱 量 が 軽 油 と 同 等 であることも 重 要 な 因 子 であり,FAME<br />
より HVO や BTL などのパラフィン 系 燃 料 の 利 用 が 適 しているとのこと( 図 8-3)。<br />
徳 島 大 学 の 長 安 らは,バイオマス 資 源 の 直 接 利 用 を 狙 いとして 菜 種 油 のディーゼル 噴 霧 特<br />
性 を 評 価 し, 燃 焼 室 壁 面 形 状 の 最 適 化 について 検 討 した 結 果 を 報 告 している 8.4) 。 図 には, 菜<br />
種 油 は 蒸 発 温 度 が 高 いため, 軽 油 と 比 較 して 液 滴 の 蒸 発 特 性 が 悪 化 している 様 子 が 示 されて<br />
いる。 菜 種 油 はこのような 特 性 を 持 つため, 壁 面 衝 突 によりピストン 頂 面 ,シリンダヘッド<br />
下 面 に 噴 霧 が 進 展 しやすいことから,スキッシュリップを 持 つピストン 形 状 にすることでシ<br />
リンダヘッド 下 面 への 堆 積 物 の 付 着 を 抑 えられるということが 述 べられている( 図 8-4)。( 佐<br />
藤 )<br />
Figure 8-2<br />
Figure 8-3<br />
アルゴン- 酸 素 雰 囲 気 中 および 空 気 雰 囲 気 中 の 雰 囲 気<br />
温 度 が 着 火 遅 れに 及 ぼす 影 響<br />
各 種 燃 料 の H/C 比 と JE05 モード NOx 排 出 量 の 関 係
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
14<br />
【 参 考 文 献 】<br />
8.1) 古 谷 博 秀 , 貝 塚 昌 芳 , 広 津 敏 博 , 小 熊 光 晴 , 後 藤 新 一 :バイオエタノールの 品 質 規 格<br />
に 関 する 研 究 —バイオエタノールの pH 測 定 方 法 の 開 発 —, 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム<br />
講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 15(2011)<br />
8.2)Mohd Radzi Abu Mansor, 仲 尾 進 士 , 中 上 勝 貴 , 塩 路 昌 宏 , 加 藤 享 :アルゴン− 酸<br />
素 雰 囲 気 中 における 水 素 噴 流 の 自 着 火 燃 焼 特 性 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 ,<br />
講 演 番 号 17(2011)<br />
8.3) 水 嶋 教 文 , 川 野 大 輔 , 佐 藤 進 , 石 井 素 :バイオマス 由 来 ディーゼル 代 替 燃 料 使 用 時 の<br />
NOx 排 出 特 性 に 関 する 一 考 察 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 , 講 演 番 号 19(2011)<br />
8.4) 長 安 翔 ,Azwan Sapit, 矢 野 貴 之 , 名 田 譲 , 木 戸 口 善 行 : 菜 種 油 ディーゼル 噴 霧 の 壁<br />
面 衝 突 および 噴 孔 デポジット 付 着 による 噴 霧 特 性 , 第 22 回 内 燃 機 関 シンポジウム 講 演 論 文 集 ,<br />
講 演 番 号 21(2011)<br />
Figure 8-4<br />
菜 種 油 と 軽 油 の 噴 霧 特 性 の 比 較
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
15<br />
編 集 委 員 の 視 点<br />
Powertrains, Fuels and Lubricants Meeting in Kyoto<br />
Letter from a Member of Editrial Board (Powertrains, Fuels and Lubricants Meeting in Kyoto)<br />
編 集 委 員 : 下 田 正 敏 , 小 池 誠<br />
Masatoshi SHIMODA, Makoto KOIKE (JSAE ER Editorial Committee)<br />
日 時 :2011 年 8 月 30 日 ( 火 ) 〜 9 月 2 日 ( 金 )<br />
場 所 : 京 都 テルサ<br />
主 催 :JSAE and SAE International<br />
1.はじめに<br />
昨 年 の 8 月 末 か ら 9 月 頭 に 京 都 で SAE お よ び JSAE で 共 催 の<br />
Powertrain, Fuel and Luburicant という 会 議 が 行 われた。この 学 会 では 表<br />
題 のとおり, 自 動 車 の 動 力 源 , 燃 料 , 潤 滑 に 関 する 論 文 が 243 件 発 表 され,<br />
参 加 者 は 549 名 ( 内 海 外 より 219 名 ) になった。この 学 会 において 本 誌<br />
編 集 委 員 は 発 表 された 論 文 をどのように 見 たのか。ディーゼルエンジン<br />
およびガソリンエンジンに 関 して1 名 ずつからのレポートを 紹 介 する。<br />
2.ディーゼルエンジン 関 連<br />
注 目 する 発 表 論 文 は 燃 焼 関 係 , 後 処 理 関 係 で 下 記 の5つ。<br />
1 Yuki Bisaiji, Kohei Yoshida, Mikio Inoue, Kazuhiro Umemoto, and<br />
Takao Fukuma, Development of Di-Air-A New Diesel DeNOx System by<br />
Adsorbed Intermediate Reductants, JSAE 20119272, SAE2011-01-2089<br />
( トヨタ 自 動 車 )<br />
トヨタの NOx 吸 蔵 触 媒 の 最 新 版 。 触 媒 後 流 で CO 2 がストイキになる 位<br />
のリッチスパイクを 頻 繁 に 入 れることにより, 還 元 剤 の 炭 化 水 素 の 部 分<br />
酸 化 の 中 間 成 生 物 ができ,Ba などの 吸 蔵 材 の 吸 着 に 頼 らない 反 応 がおき<br />
300 〜 650 度 の 範 囲 で 80% 以 上 の NOx 低 減 性 能 と 高 SV, 硫 黄 被 毒 の 改<br />
善 性 能 を 示 した。この 触 媒 が 実 用 化 されると NOx 吸 蔵 触 媒 の 位 置 付 けが<br />
大 きく 変 わる 可 能 性 があり 乗 用 車 では 高 速 , 高 負 荷 領 域 まで 使 用 可 能 に<br />
なり, 商 業 車 においても 小 型 トラックの 領 域 まで 使 用 が 拡 大 されるか?<br />
2 Damodara M. Poojary, Jacques F. Nicole and David K. Yee, Durability<br />
and PGM Cost Reduction of Fuel Reformer, LNT, DPF and SCR Diesel<br />
Aftertreatment System, JSAE 20119019, SAE 2011-01-2085 (PurePOWER<br />
Technologies, Navistar, Eaton)<br />
米 国 2010 規 制 対 応 として,イートンがナビスターと 共 同 で 推 進 してい<br />
たと 推 察 される 改 質 器 ー LNT-DPF-SCR システム。〔 改 質 器 で 水 素 を 作 り<br />
LNT の 低 温 活 性 を 上 げ,LNT でリッチ 時 に NH 3 を 作 り SCR 触 媒 でも NOx<br />
還 元 )ナビスターが 2010 年 をこのシステムを 使 わずにバンキングで 立 ち<br />
上 がったため,イートンが 開 発 部 隊 を 支 えきれずこの 部 隊 をナビスター<br />
が 買 収 したものと 推 察 される。このシステムのついたエンジンで 耐 久 テ<br />
ストを 実 施 し 225 回 の 脱 S 処 理 をして 43.5 万 マイル 相 当 の 耐 久 性 を 実 証<br />
した。 改 質 器 の 触 媒 の 耐 久 性 に 関 しては 見 るべき 物 あり。 但 しこのシス<br />
テムはコストとしての 競 争 力 はどうか?<br />
3 Arnaud FROBERT , Stéphane RAUX, Arnaud LAHOUGUE, Christian<br />
HAMON, Karine PAJOT and Gilbert BLANCHARD, HC-SCR on Silver-Based<br />
Catalyst : From Synthetic Gas Bench to Real Use, JSAE 20119072, SAE<br />
2011-01-2092 (IFP, PSA Peugeot-Citroen)<br />
IFP のエンジン 研 究 所 と PSA の 共 同 で 実 施 した 乗 用 車 用 NOx 後 処 理<br />
システムの 開 発 。システムの 簡 素 化 を 狙 った, 銀 アルミナ 触 媒 を 用 いた<br />
HC-SCR。ガステストでは 水 素 を 還 元 剤 にして 良 い 結 果 が 得 られたが, 実<br />
際 のエンジンテストでは 軽 油 を 還 元 剤 にして20%レベル。HCの 排 気<br />
管 噴 射 の 高 圧 化 や 触 媒 を 大 容 量 にする 事 で 性 能 向 上 。 還 元 剤 にエタノー<br />
ルを 用 いると 更 に 向 上 。<br />
4 Christopher J. Polonowski, Charles J. Mueller, Christopher R. Gehrke,<br />
Tim Bazyn, Glen C. Martin, Peter M. Lillo, An Experimental Investigation of<br />
Low-Soot and Soot-Free Combustion Strategies in a Heavy-Duty, Single-<br />
Cylinder, Direct-Injection, Optical Diesel Engine, JSAE 20119091, SAE<br />
2011-01-1812 (Sandia, CAT, UC Berkeley)<br />
米 サンディア 研 究 所 の Flame lift-off length, 空 気 導 入 率 ,それによる<br />
噴 霧 内 平 均 当 量 比 のモデルの 最 新 版 検 証 実 験 。 従 来 のこの 実 験 は 高 温 ,<br />
高 圧 容 器 で 単 噴 口 ノズル, 自 由 噴 霧 であり, 実 機 と 乖 離 を 指 摘 されてい<br />
たが,その 点 を 改 良 して 可 視 化 エンジン, 多 噴 口 ノズル(2,6,10 噴<br />
口 ), 燃 焼 室 〔 壁 面 衝 突 有 り〕の 実 験 に 変 更 した。 上 記 条 件 で Flame liftoff<br />
length を 求 め 空 気 導 入 , 噴 霧 内 当 量 比 分 布 を 求 めると,<br />
* 予 混 合 燃 焼 終 了 時 の 当 量 比 より 噴 射 終 了 時 のそれが 高 く 5 〜 7 になり<br />
煤 発 生 。<br />
* 当 量 比 が 2 以 下 ならば, 煤 は 発 生 しない。<br />
* 6 噴 口 ノズルは 噴 霧 の 壁 面 衝 突 による 燃 焼 生 成 物 の 噴 霧 への 再 導 入 の<br />
効 果 により 当 量 比 〔 噴 射 終 了 時 〕が 1.5 倍 (4 → >6)に 増 加 。この 実 験<br />
では 燃 焼 室 衝 突 の 効 果 が 悪 く 出 ているが, 一 般 論 かどうか?<br />
* 10 噴 口 ノズルは 同 一 噴 口 径 のまま 10 噴 口 にしたため 予 混 合 燃 焼 の 促<br />
進 によるガス 温 度 の 上 昇 と, 噴 霧 間 の 近 接 による 効 果 で 全 体 的 に 当 量 比<br />
が 高 い。 最 大 で 噴 射 終 了 時 に 当 量 比 で 5。<br />
将 来 の 燃 焼 を 考 える 上 で 計 算 , 実 験 共 に 非 常 に 参 考 になる 物 と 思 われる。
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
5 Magnus Lewander, Bengt Johansson and Per Tunestål, Investigation<br />
and Comparison of Multi Cylinder Partially Premixed Combustion<br />
Characteristics For Diesel and Gasoline Fuels, JSAE 20119341 SAE 2011-<br />
01-9341 (Sweden LUND 大 学 )<br />
ディーゼルに 燃 料 としてガソリンを 用 い,ディーゼルと 同 じ 噴 射 系 で<br />
直 噴 , 圧 縮 比 16 で 圧 縮 着 火 をさせ PPC 燃 焼 ( 予 混 合 燃 焼 )の 特 性 解 析 と,<br />
領 域 拡 大 を 図 った 研 究 。 着 火 遅 れはディーゼル 燃 料 の 約 2 倍 の 為 , 混 合<br />
が 促 進 して NOx は 半 減 , 黒 煙 はおおよそ 0。 圧 力 上 昇 率 は 約 2 倍 ,HC<br />
は 400ppm レベル,CO も 1000 〜 1500ppm レベルであるが Pme を 12<br />
気 圧 まで PPC 燃 焼 を 実 現 。<br />
ガソリンの 火 炎 伝 播 より 燃 焼 期 間 が 半 減 し, 図 示 燃 費 としてはおおよ<br />
そデイーゼル 並 み。 着 火 特 性 等 々 疑 問 点 はあるが,NOx,PM の 後 処 理 無<br />
しはきわめて 魅 力 的 。 廉 価 で 燃 料 ロバスト 性 があり, 開 発 途 上 国 向 けと<br />
しても,また 将 来 の 軽 油 不 足 対 応 としても 有 力 な 候 補 の 可 能 性 あり。( 下<br />
田 )<br />
6 P. Hellier, N. Ladommatos, R. Allan, M. Payne and J. Rogerson,<br />
The Impact of Saturated and Unsaturated Fuel Molecules on Diesel<br />
Combustion and Exhaust Emissions, SAE 20119117, SAE 2011-01-1922<br />
(University College London)<br />
少 量 のサンプル 燃 料 (100cc) で 試 験 可 能 なインジェクタを 開 発 し, 排 気<br />
量 500cc の 単 筒 ディーゼルエンジンを 用 いて, 広 範 囲 (C 7 -C 22 ) の 燃 料 を 用<br />
いて 分 子 構 造 と 着 火 ,エミッションとの 関 係 を 詳 細 に 調 べている。 数 多<br />
くの 燃 料 パラメータの 影 響 を 早 く 評 価 できるため, 燃 料 多 様 化 が 危 惧 さ<br />
れる 現 在 , 燃 料 組 成 とエンジン 性 能 ・エミッションとの 関 係 が 詳 細 に 調<br />
べられるものと 期 待 される。 発 表 では,まず 直 鎖 の 飽 和 炭 化 水 素 では C<br />
結 合 が 増 えるほど 着 火 遅 れが 短 くなることが 良 い 相 関 で 示 された。 二 重<br />
結 合 , 異 性 体 (メチル 基 )は 着 火 遅 れを 延 長 するが,この 関 係 を 飽 和 度<br />
とメチル 基 の 割 合 を 用 いて 分 子 構 造 との 関 係 を 整 理 している。 着 火 遅 れ<br />
への 影 響 は 分 岐 より 二 重 結 合 の 影 響 の 方 が 大 きく,その 影 響 度 の 違 いは<br />
約 2 倍 であるとしている。エミッションは 着 火 遅 れの 影 響 を 強 く 受 ける<br />
ので, 着 火 促 進 剤 によって 着 火 遅 れ 期 間 をそろえた 場 合 を 含 めて 燃 料 種<br />
の 影 響 を 調 べている。 着 火 遅 れが 同 じ 場 合 , 不 飽 和 成 分 の NOx への 影 響<br />
は 断 熱 火 炎 温 度 の 違 いと 解 釈 され, 蒸 発 性 の 違 いは 予 混 合 燃 焼 の 最 大 熱<br />
発 生 率 の 差 として 現 れることを 示 している。( 小 池 )<br />
3.ガソリンエンジン 関 連<br />
本 学 会 において 興 味 深 い 発 表 は 下 記 の 通 り。<br />
16<br />
1 Alain Lunati and Oswin Galtier, Determination Of Mixture Of Methanol<br />
And Ethanol Blends In Gasoline Fuels Using A Miniaturized NIR Flex, JSAE<br />
20119264, SAE 2011-01-1988 (SP3H, France)<br />
車 載 を 目 指 した 燃 料 性 状 センサの 開 発 状 況 が 報 告 された。 測 定 原 理 は<br />
近 赤 外 分 光 であり, 芳 香 族 , 直 鎖 パラフィン,イソパラフィン,アルコー<br />
ルの 含 有 率 を msec から sec の 時 間 で 測 定 できる。 分 析 精 度 はかなり 高 い<br />
ことが 報 告 されている。FFV を 想 定 したものであり, 計 算 によってオク<br />
タン 価 の 算 出 も 可 能 であるとしている。タンク 内 の 燃 料 性 状 が 既 知 であ<br />
るのは 制 御 上 のメリットだけではなく,メンテナンスや 故 障 診 断 の 上 か<br />
らも 有 用 性 が 高 いと 考 えられる。<br />
2 (1)Trevor Davies, Roger Cracknell, Guy Lovett, Luke Cruff and John<br />
Fowler, Fuel Effects in a Boosted DISI Engine, JSAE 20119155, SAE 2011-<br />
01-1985 (Shell and Ricardo), (2)Trevor J Davies, Roger F Cracknell and Bob<br />
Head, Kathryn Hobbs and Timothy Riley, A new method to simulate the<br />
octane appetite of any spark ignition engine, JSAE 20119173, SAE 2011-<br />
01-1873 (Shell and Univ. of Bath)<br />
多 くの 国 では 市 場 燃 料 の 耐 ノック 性 指 標 にリサーチオクタン 価 RON<br />
を 用 いているが 米 国 ではモータオクタン 価 MON を 加 えたアンチノック<br />
インデックス AKI が 使 われている。AKI はオクタンインデックス OI=(1-<br />
K)・RON+K・MON の K=0.5 とした 値 であり,RON と MON の 平 均 値 をノッ<br />
ク 指 標 としたものであるが,K=0.5 は 現 在 のエンジンに 合 わないという<br />
報 告 が 多 くなりつつある。この 2 件 の 報 告 はこの K 値 について 調 べたも<br />
のであり,(1) は 直 噴 過 給 エンジンを 対 象 にクールド EGR の 有 無 を 組 み<br />
合 わせ,エンジン 回 転 数 1500 ~ 3500rpm の 全 負 荷 , 平 均 有 効 圧 14.3 ~<br />
20.1bar という 高 負 荷 で, 量 論 比 燃 焼 のノック 特 性 を 10 種 類 の 燃 料 につ<br />
いて 調 べている。 試 験 結 果 は 全 ての 条 件 で K の 値 が 負 であることが 報 告<br />
されている。すなわち,MON が 小 さい 方 が 有 利 であり, 試 験 燃 料 の 中 で<br />
は RON=96.4,MON=82.8 の 燃 料 はイソオクタン (MON,RON=100) に 比<br />
べて 進 角 が 可 能 で,2 〜 3% 燃 費 で 有 利 であると 報 告 している。(2) は 計<br />
算 で K 値 を 調 べている。 実 験 から 得 られる 温 度 と 圧 力 履 歴 に,イソオク<br />
タン,ノルマルヘプタンとトルエンから 成 る PRF の 反 応 計 算 を 当 てはめ<br />
て K 値 を 計 算 しており, 実 験 結 果 を 良 く 再 現 できるとしている。ガソリ<br />
ンエンジンは 小 型 ダウンサイジング,ダウンスピーディング,CVT 利 用 ,<br />
HV 化 が 進 められており,これまでより 高 負 荷 運 転 の 度 合 いが 増 えている。<br />
これらの 検 討 がエンジンの 進 化 に 合 わせた 燃 焼 性 状 の 改 良 に 繋 がること<br />
を 期 待 したい。( 小 池 )
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
NEWS & INFORMATION<br />
R350 4MATIC に 新 世 代 エンジン●メルセデス・ベンツ 日 本<br />
メルセデス・ベンツ 日 本 は,クロスオーバーモデル「メルセデス・ベ<br />
ンツ R クラス」に, 最 先 端 の 直 噴 技 術 「BlueDIRECT テクノロジー」を<br />
駆 使 した 新 世 代 3.5L V 型 6 気 筒 直 噴 エンジンを 搭 載 した。 成 層 燃 焼<br />
(リーンバーン)と 理 論 空 燃 比 による 均 質 燃 焼 , 成 層 燃 焼 と 均 質 燃 焼 を<br />
組 み 合 わせた 均 質 成 層 燃 焼 の 各 燃 焼 モードを 切 り 替 え, 最 新 の 高 効 率 7<br />
速 AT「7G-TRONIC PLUS」と 組 み 合 わせる。 最 高 出 力 225kW(306PS)<br />
/6500rpm, 最 大 トルク 370Nm/3500 ~ 5250rpm ( 従 来 モデル 比 : 出 力<br />
+25kW/+34PS, 最 大 トルク +20Nm)。 約 10%の 燃 費 向 上 , 平 成 22 年 燃<br />
費 基 準 +25%, 平 成 21 年 排 出 ガス 基 準 75% 低 減 レベルを 達 成 した。<br />
新 開 発 ピエゾインジェクタ( 最 大 圧 力 200bar)とスプレーガイド 式 燃 焼<br />
システムの 第 3 世 代 直 噴 システムによる,1 万 分 の 1 秒 の 反 応 速 度 で 1<br />
回 の 吸 気 行 程 に 最 大 5 回 の 燃 料 噴 射 を 実 現 している。1 千 分 の 1 秒 以 内<br />
に 最 大 4 回 のスパークを 発 生 させる MSI(マルチスパーク・イグニッショ<br />
ン)システムにより, 従 来 よりも 大 きなプラズマ 拡 散 を 発 生 ,ピエゾイ<br />
ンジェクタと 併 せ 燃 焼 時 間 を 約 4% 短 縮 。エンジン 負 荷 に 応 じて, 成 層 燃<br />
焼 (リーンバーン)と 理 論 空 燃 比 による 均 質 燃 焼 ,さらに 成 層 燃 焼 と 均<br />
質 燃 焼 を 組 み 合 わせた 均 質 成 層 燃 焼 の 各 燃 焼 モードを 制 御 する。<br />
均 質 成 層 燃 焼 (HOS)は 従 来 の 均 質 燃 焼 と 成 層 燃 焼 を 組 み 合 せたもの。<br />
スロットルバルブが 開 いている 場 合 , 最 初 の 燃 料 噴 射 は 吸 気 行 程 で 行 い,<br />
均 質 な 基 本 混 合 気 を 生 成 。 実 際 の「 成 層 」 噴 射 は 点 火 前 の 圧 縮 行 程 で 行 い,<br />
特 性 マップに 応 じて 1 回 または 2 回 噴 射 する。<br />
均 質 スプリット(HSP)は 燃 料 の 95% 以 上 を 1 回 または 複 数 回 で 噴 射<br />
した 後 ,きわめて 微 量 な 点 火 噴 射 を 行 い, 燃 焼 を 安 定 化 させる 均 質 燃 焼<br />
モード。 燃 焼 の 条 件 が 厳 しい 場 合 ( 高 負 荷 ・ 高 回 転 )に 使 用 する。<br />
V バンク 角 を 従 来 の 90 度 から 60 度 に 変 更 しクランクシャフトに 発 生<br />
する 二 次 振 動 を 低 減 。バランサシャフトが 不 要 となり,スムーズかつ 優<br />
れた 静 粛 性 を 実 現 した。 新 開 発 のチェーンドライブシステムを 採 用 。2 本<br />
の 短 い 2 次 チェーン( 各 シリンダバンクに 1 本 )を 1 次 チェーンと 中 間<br />
スプロケットを 使 って 駆 動 するもので,3 本 のチェーンそれぞれをチェー<br />
ンテンショナにより 個 別 に 調 整 することにより, 張 力 が 小 さく,チェー<br />
ンの 動 きが 少 なくなったことで, 正 確 なタイミングと 騒 音 の 低 減 を 実 現<br />
するとともに, 摩 擦 も 低 減 した。クランクケースとシリンダヘッドをア<br />
ルミニウム 製 とするとともに,コンパクトな 設 計 や 樹 脂 パーツの 使 用 に<br />
よりエンジンを 軽 量 化 した。<br />
メルセデス・ベンツ 日 本 ( 株 ):http://www.mercedes-benz.co.jp/<br />
R 350 4MATIC<br />
17<br />
クリーンディーゼル X5 xDrive35d BluePerformance ● BMW<br />
ビー・エム・ダブリューは, 排 出 ガス 処 理 技 術 BMW BluePerformance<br />
テクノロジーの 採 用 などにより, 世 界 で 最 も 厳 しい 排 ガス 基 準 である 日<br />
本 のポスト 新 長 期 規 制 に 適 合 するクリーンディーゼルエンジンを 搭 載 し<br />
た「ニュー BMW X5 xDrive35d BluePerformance」を 発 売 した,BMW グ<br />
ループは, 日 本 市 場 における BMW EfficientDynamics 戦 略 の 重 要 な 柱 の<br />
一 つとして,ハイブリッドシステムを 搭 載 する BMW ActiveHybrid モデ<br />
ルと 共 に,ポスト 新 長 期 規 制 をクリアするクリーンディーゼルエンジン<br />
を 搭 載 した BMW BluePerformance モデルの 順 次 投 入 を 発 表 しており,こ<br />
の BMW X5 xDrive35d BluePerformance がその 第 一 弾 となる。<br />
「BMW BluePerformance テクノロジー」は, 還 元 剤 となる 尿 素 水 溶 液<br />
「AdBlue(アドブルー)」を 噴 射 し, 排 気 ガス 中 の NOx を 大 幅 に 低 減 す<br />
る SCR システムや, 排 気 ガス 中 の PM をフィルタに 吸 着 し, 燃 焼 ・ 除 去<br />
する DPF などを 採 用 した。 搭 載 される 3L 直 列 6 気 筒 BMW ツインパワー<br />
ターボディーゼルエンジンの 最 高 出 力 は 180kW(245ps), 最 大 トルクは<br />
V 型 8 気 筒 ガソリン・エンジンに 匹 敵 する 540Nm(55.1kgm)を 発 揮 す<br />
ると 同 時 に, 燃 料 消 費 率 (JC08 モード)は,11.0km/L を 達 成 。 同 じ 3L<br />
の 直 列 6 気 筒 ガソリンエンジンを 搭 載 した BMW X5 xDrive35i と 比 較 して<br />
約 30%も 向 上 している。<br />
ピエゾインジェクタを 用 いた 新 世 代 コモンレールダイレクトインジェ<br />
クションシステムは, 最 大 1800 バールまで 高 めた 高 圧 の 燃 料 をシリンダ<br />
内 に 噴 射 させることにより 燃 焼 効 率 を 向 上 させ,また, 可 変 ジオメトリー・<br />
ターボチャージャは, 電 子 制 御 式 のガイドベーンの 角 度 をエンジン 回 転<br />
数 に 応 じて 可 変 制 御 する。<br />
ビー・エム・ダブリュー( 株 ):http://news.bmw.co.jp/<br />
BMW X5 xDrive35d BluePerformance<br />
新 型 「Audi A6 Avant」●アウディ<br />
アウディ ジャパンは,ステーションワゴン「Audi A6 Avant」をフル<br />
モデルチェンジした。 新 型 Audi A6 Avant は 軽 量 化 したボディや 新 世 代<br />
クワトロ(フルタイム 4WD システム)と,スタート・ストップシステ<br />
ムを 搭 載 するガソリン 直 噴 エンジンを 採 用 している。またモノコックボ<br />
ディは, 軽 量 なアルミ 素 材 を 全 体 の 20% 以 上 に 使 用 することで 安 全 性 ,<br />
快 適 性 をさらに 高 めた。アルミニウムとスチールを 組 み 合 わせるハイブ<br />
リッド 構 造 により, 旧 モデルと 比 較 して(A6 Avant 2.8 FSI quattro の 場<br />
合 ), 車 両 重 量 は 約 20kg もの 削 減 している。エンジンは 2.8L V 型 6 気 筒<br />
ガソリン 直 噴 (FSI)と,3 L V 型 6 気 筒 ガソリン 直 噴 スーパーチャージャ<br />
(TFSI)の 2 種 類 を 用 意 。いずれのパワーユニットにもスタート・ストッ<br />
プシステムを 採 用 し,さらに 7 速 S トロニックトランスミッションを 組<br />
みあわせている。また 減 速 エネルギーを 電 気 エネルギーへ 変 換 ,バッテ<br />
リへ 還 流 させるエネルギー 回 生 システムを 搭 載 。JC08 モード 燃 費 は 2.8<br />
FSI quattro が 11.8km/L,3.0 TFSI quattro が 11.0km/L, 旧 モデル 比 で 約<br />
20% 向 上 させている。<br />
アウディ ジャパン( 株 ):http://www.audi.co.jp/jp/brand/ja.html
Engine Review<br />
Society of Automotive Engineers of Japan Vol. 2 No. 1 <strong>2012</strong><br />
18<br />
し, 二 つの 新 世 代 エンジンをラインナップしている。クリーンディーゼ<br />
ルエンジン「SKYACTIV-D 2.2」 搭 載 車 は, 高 価 な NOx 後 処 理 装 置 なし<br />
でポスト 新 長 期 規 制 に 適 合 しながら,すべての SUV の 中 でトップとなる<br />
18.6km/L(JC08 モード)の 燃 費 性 能 と, 最 大 トルク 420Nm による 4.0L<br />
V8 ガソリンエンジン 車 並 みの 力 強 い 走 りを 両 立 した。 高 効 率 直 噴 ガソリ<br />
ンエンジン「SKYACTIV-G 2.0」 搭 載 車 は,4-2-1 排 気 システムを 初 採 用 し,<br />
16.0km/L(2WD 車 ・JC08 モード)の 燃 費 性 能 を 持 つ。アイドリングストッ<br />
プ 機 構 「i-stop(アイ・ストップ)」を 全 車 に 搭 載 。 新 開 発 したディーゼ<br />
Audi A6 Avant<br />
新 型 車 「アクア」を 発 売 ●トヨタ<br />
トヨタは,コンパクトクラスのハイブリッドカー 新 型 車 「アクア」の<br />
発 売 を 開 始 した。 小 型 ・ 軽 量 ・ 高 効 率 化 した 最 新 の 1.5L ハイブリッドシ<br />
ステムなど,トヨタの 量 産 ハイブリッドカー 開 発 17 年 間 の 技 術 を 結 集<br />
し, 世 界 トップの JC08 モード 走 行 燃 費 35.4km/L(10・15 モード 走 行 燃<br />
費 40.0km/L)を 実 現 するとともに,エントリー 価 格 を 169 万 円 に 抑 え<br />
た。 採 用 された 技 術 は 膨 張 比 率 を 高 めたアトキンソンサイクルエンジン<br />
や, 排 出 ガスを 再 循 環 させるクールド EGR システム,バッテリの 電 力 で<br />
駆 動 する 電 動 ウォータポンプはベルトレス 化 によるフリクション 低 減 と<br />
冷 却 水 流 量 の 制 御 を 緻 密 に 行 い,パワーコントロールユニットや, 発 電 用 ・<br />
駆 動 用 モータなどを 含 むハイブリッドトランスアクスルを 新 設 計 し, 小<br />
型 ・ 軽 量 化 を 実 現 した。 また,モータのみで 走 る EV ドライブモードを<br />
採 用 している。<br />
トヨタ 自 動 車 ( 株 ):http://toyota.jp/<br />
ルエンジン 用 「i-stop」は,ディーゼル 車 で 世 界 最 速 の 0.40 秒 以 内 で 再<br />
始 動 する。<br />
マツダ( 株 ):http://www.mazda.co.jp<br />
マツダ CX-5<br />
「デリカ D:5」2WD 車 に 新 型 MIVEC エンジンと「AS&G」<br />
を 採 用 ● 三 菱 自 動 車<br />
三 菱 自 動 車 は,ミニバン『デリカ D:5』2WD 車 の 燃 費 を 約 14% 向 上 さ<br />
せるなど 一 部 改 良 を 施 し, 発 売 を 開 始 した。 新 開 発 の 可 変 動 弁 機 構 を 採<br />
用 した 4J11 型 MIVEC エンジン(2.0L SOHC16 バルブ 4 気 筒 )と,アイ<br />
ドリングストップ「オートストップ&ゴー(AS&G)」を 2WD 車 に 新 た<br />
に 搭 載 。これにより,10・15 モード 燃 料 消 費 率 ( 国 土 交 通 省 審 査 値 )を,<br />
従 来 から 約 14% 向 上 させて 15.0km/L とした。<br />
三 菱 自 動 車 ( 株 ):http://www.mitsubishi-motors.co.jp/<br />
アクア<br />
「アトラス F24」2.0 トン 系 ポスト 新 長 期 排 出 ガス 規 制 適 合<br />
● 日 産 自 動 車<br />
日 産 自 動 車 は,「ポスト 新 長 期 排 出 ガス 規 制 ( 平 成 22 年 排 出 ガス 規 制 )」<br />
に 適 合 し, 併 せて「 平 成 27 年 度 重 量 車 燃 費 基 準 」も 達 成 した「アトラス<br />
F24」2.0 トン 系 ディーゼル 車 を 発 売 した。 今 回 の 一 部 改 良 では,ディー<br />
ゼルエンジンの 低 圧 縮 比 化 ,コモンレール 式 超 高 圧 燃 料 噴 射 システムの<br />
改 良 , 酸 化 触 媒 および DPF (Diesel Particulate Filter)の 容 量 拡 大 等 で 排 出<br />
ガス 浄 化 性 能 を 大 幅 に 向 上 させることにより,2.0 トン 系 ディーゼル 車 全<br />
車 がポスト 新 長 期 排 出 ガス 規 制 に 適 合 した。 併 せて 同 車 は,エンジン 燃<br />
焼 効 率 の 改 善 およびトランスミッションのギヤ 比 の 変 更 により 燃 費 を 向<br />
上 させ,「 平 成 27 年 度 重 量 車 燃 費 基 準 」を 達 成 した。この 結 果 ,2.0 トン<br />
系 ディーゼル 車 は 全 車 ,「 環 境 対 応 車 普 及 促 進 税 制 」による 減 税 措 置 に 適<br />
合 し, 自 動 車 取 得 税 と 自 動 車 重 量 税 が 75% 減 税 される。<br />
日 産 自 動 車 ( 株 ):http://www.nissan.co.jp/<br />
軽 自 動 車 の 生 産 を 終 了 ● 富 士 重 工 業<br />
富 士 重 工 業 は,<strong>2012</strong> 年 2 月 29 日 , 軽 商 用 車 サンバーの 生 産 を 終 え,<br />
すべての 軽 自 動 車 の 生 産 を 終 了 した。 軽 自 動 車 を 生 産 してきた 群 馬 製 作<br />
所 本 工 場 ( 群 馬 県 太 田 市 )は 3 月 以 降 , 登 録 車 生 産 工 場 へとリニューア<br />
ルし,トヨタ 自 動 車 との 共 同 開 発 車 である SUBARU BRZ / TOYOTA 86 の<br />
生 産 を 開 始 し,さらに <strong>2012</strong> 年 度 中 にインプレッサの 生 産 を 開 始 する 予 定 。<br />
スバル 車 の 生 産 は 1958 年 , 日 本 の 国 民 車 と 絶 賛 された 軽 自 動 車 「スバル<br />
360」から 始 まった。その 後 サンバー,レックス,プレオ,ステラなど,<br />
54 年 間 で 延 べ 9 車 種 , 約 7968 千 台 を 生 産 。スバルの 軽 自 動 車 は 乗 用 車 ,<br />
商 用 車 共 に 4 輪 独 立 サスペンション,4 気 筒 エンジン,CVT( 無 段 変 速 機 )<br />
の 採 用 や 4WD の 展 開 など, 登 録 車 並 みの 機 構 や 商 品 性 を 特 長 とした。 同<br />
社 は 2008 年 4 月 のトヨタ 自 動 車 とダイハツ 工 業 との 協 力 関 係 発 展 への 合<br />
意 を 機 に, 水 平 対 向 エンジン 等 のコア 技 術 を 活 かす 登 録 車 の 開 発 や 生 産<br />
に 経 営 資 源 を 集 中 することを 決 断 し, 以 降 , 軽 自 動 車 の 開 発 と 生 産 を 順<br />
次 終 了 してきた。 軽 自 動 車 は 引 き 続 きダイハツ 工 業 から OEM 供 給 を 受 け,<br />
スバル 販 売 店 において 販 売 していく。<br />
富 士 重 工 業 ( 株 ):http://www.subaru.jp/index.html<br />
SUV「マツダ CX-5」を 発 売 ●マツダ<br />
マツダは, 新 型 クロスオーバー SUV『マツダ CX-5』を 発 売 した。 初 め<br />
て「SKYACTIV(スカイアクティブ) 技 術 」をガソリンエンジン,ディー<br />
ゼルエンジン,トランスミッション,ボディ,シャシーのすべてに 採 用