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紙の基礎と印刷適性-構造・物性・加工・印刷品質評価- - 江前敏晴の ...

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江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)ある。 図 3 に 示 すように、 蒸 解 中 に 木 材 中 のリグニンの 大 部 分 は 溶 解 し、パルプ 繊 維 だけが 取 り 出 される。 木 材 中 のヘミセルロースは 広 葉 樹 材 で 約 30 % 含 まれているが、アルカリに 溶 出 しやすいため、3 分 の 1 程 度 に 減 少 する。 蒸 解 工 程 は、 図 4 に 示 す 木 材 のチップ( 通常 パルプ 工 場 付 近 の 海 岸 沿 いに 作 られる 図 5 に 示 すチップヤードから 運 搬 する)を 図 6 に示 す 連 続 式 の 蒸 解 釜 で 蒸 煮 して 製 造 する。図 4 木 材 チップ図 5 チップヤード木 材 パルプには 化 学 パルプのほか、 機 械 的 にすりつぶして 個 々の 繊 維 に 分離 した 機 械 パルプ(MP=Mechanical Pulp)もある。リグニンを 溶 出 させないので、 収 率 (パルプ 質 量 / 木 材 質 量 で、 約 95 %)や 不 透 明 度 が 高 くなるが、 図 6 蒸 解 釜白 色 度 が 低 い。 繊 維 が 短 くなりダメージを 受 けるため 強 度 が 出 にくく、 繊維 長 の 長 い 針 葉 樹 を 使 う。 回 転 する 砥 石 に 丸 太 を 押 し付 けて 摩 砕 する GP(Groundwood pulp)、 歯 の 付 いた 2枚 のディスク 板 でチップを 摩 砕 する RGP(RefinerGroundwood pulp) 及 び RGP を 加 圧 下 で 少 し 加 熱 して製 造 する TMP(Thermomechanical pulp)などがある。新 聞 用 紙 などに 使 われる。古 紙 利 用 率 ( 紙 ・ 板 紙 生 産 量 に 占 める 古 紙 消 費 の 比率 )が 1990 年 に 50%を 超 え、 現 在 も 少 しずつ 増 加 している。1998 年 の 日 本 の 古 紙 利 用 率 は 54.9 %、 古 紙 回収 率 ( 国 内 で 消 費 された 紙 ・ 板 紙 のうち 回 収 された 割図 7 古 紙 ヤード合 )は、55.3 %に 達 し、 世 界 的 に 高 いレベルにある。図 7 のように 回 収 された 古 紙 は、パルパーで 離 解 されるが、このとき 水 酸 化 ナトリウム、 珪 酸 ナトリウム、 過 酸 化 水 素 、脱 墨 剤 ( 界 面 活 性 剤 )を 入 れ、 次 のフローテーション 工 程 に 入 る。 図 8 のようなフローテーター 内 に 約 1% 濃 度 の 原 料 を入 れ、 中 に 細 かい 気 泡 を 入 れる。すると、インキ 粒 子 が 泡 の 周 りに 吸 着 して 浮 上 するので、これをかきとって 除 去 する。どのパルプも 印 刷 用 紙 として 使 用 するときは 次 に 漂 白 工 程 を 経 る。 図 9 のよう図 9 漂 白 塔図 8 フローテーター2


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)な 漂 白 塔 で 行 われ、クラフトパルプに 対 しては、 酸 素 と 二 酸 化 塩 素 を 使 用 する 酸 素 漂 白 システムを 用 い、 機 械 パルプや 新 聞 古 紙 パルプは、 過 酸 化 水 素 やハイドロサルファイトが 使われる。1-2 抄 紙紙 は、 木 材 パルプを 主 原 料 に、 次 のような 工 程 で 抄 造 される。 前 記 のよう 木 材 チップからにパルプ 化 工 程 を 経 たあと、 漂 白 工 程 があり、そのあと 抄 紙 工 程 に 入 る。 抄 紙 工 程 は 次 のよな 各 パートに 分 けて 考 えることができる。 各 工 程 の 抄 紙 機 の 中 での 位 置 は、 図 10 に 示 してある。木 材 から 樹 皮を 除 去 しチップに 加 工→水 酸 化 ナトリウム、 硫 化 ナトリウムの 水溶 液 中 で 高 温 加 熱 処 理 し、 化 学 的 に 木 → 材を 1 本 1 本 の 繊 維 にパルプ 化 する塩 素 、 二 酸 化 塩 素 、 酸 素等 で 漂 白 すると → 白 いパルプ繊 維 が 得 られるパルプ 繊 維 に 水 存 在 下 で 機 械 的なずり 応 力 を 加 えて 叩 解 し、 繊維 を 柔 軟 にする。パルプ 縣 濁 液 に、サイズ 剤 ・ 紙 力剤 ・ 填 料 ・ 歩 留 り 剤 ・ 染 料 等 の 添加 剤 を 加 えて 紙 の 特 性 を 制 御パルプ 縣 濁 液 をワイヤー 上 に 噴出 し、 濾 過 - 脱 水 -プレス- 乾燥 工 程 を 経 て 紙 ができあがる原 紙 はさらにサイズプレス、コーティング、カレンダー 処 理 等により、 目 的 とする 紙 の 機 能 が付 加 される図 10 紙 の 製 造 工 程 模 式 図1-2-1 紙 料 調 成 工 程乾 燥 したパルプシート(ベールパルプ)を 解 繊 し、 叩 解 を 行 い、 図 11 に 示 すような 各 種添 加 剤 ( 填 料 やサイズ 剤 、 歩 留 まり 向 上 剤 など)を 添 加 してよく 攪 拌 し、 適 切 な 濃 度 に 調節 する。この 工 程 以 降 は 抄 紙 機 内 で 連 続 的 に 行 われる。1-2-2 ストックインレット調 成 した 紙 料 をワイヤーパートに 送 り 込 む 工 程 で、 幅 方向 に 均 質 で、 安 定 した 原 料 を 適 切 な 濃 度 、 速 度 及 び 角 度 で供 給 することが 重 要 である。1-2-3 ワイヤーパート図 12 に 示 すような PET( 又 は 青 銅 ) 繊 維 で 織 られた 網図 11 フローテーター3


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)で、 連 続 して 回 転 できるような 帯 状 である。 紙 料 がワイヤー上 で 脱 水 され 紙 層 が 形 成 される。ある 程 度 脱 水 が 進 んだ 後 半部 では、サクションボックス( 真 空 ポンプにより 水 を 吸 引 する)が 装 備 されている。1-2-4 プレスパートワイヤーからはがされた 湿 紙 はフェルトに 移 され、 圧 力 をかけてさらに 水 分 を 絞 るプレスパートに 入 る。3~4 つのプレスニップを 通 る。 十 分 なプレスを 行 うことにより 密 度 の 高い 紙 となる。 図 13 に 示 す。1-2-5 ドライヤーパートさらに 蒸 発 によって 湿 紙 を 乾 燥 させるドライヤーパートにはいる。 図 14 に 示 すようなスチームによって 加熱 する 多 数 のシリンダドラムに 次 々と 転 移 させながら巻 き 付 けて 乾 燥 させる。 最 もエネルギーを 消 費 する 工程 である。ティッシュペーパーなどは、 大 径 の 単 一 シリンダーであるヤンキードライヤーを 用 いる。図 12 ワイヤーパート1-2-6 カレンダーパートこれ 以 降 は、 紙 の 加 工 工 程 に 属 し、 印 刷 用 紙 の 場 合サイズプレス、 塗 工 、カレンダーの 工 程 に 入 るがこの加 工 工 程 は 後 で 詳 しく 述 べる。 塗 工 やカレンダリングは、オフマシン(いったん 巻 き 取 ってから 別 の 専 用 装置 にかける)で 行 われることも 多 い。 詳 しくは 後 述 する。図 13 プレスパートー1-2-7 リールパート抄 紙 工 程 の 最 後 に 図 15 に 示すようなドラムリールによって 巻 き 取 られる。そのあとオフマシンの 加 工 工 程 や、 断 裁 に 入る。そのあと 図 16 に 示 すような 自 動 管 理 機 能 を 持 つ 倉 庫 に保 管 され、 必 要 に 応 じて 出 荷 される。日 本 の 紙 の 生 産 量 は 図 17 に示 すように 世 界 でも 有 数 であり、 板 紙 も 含 め 年 間 約 3000 万トンである。図 15 リールパート図 14 ドライヤーパート図 16 倉 庫4


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)1-3 紙 の 種 類紙 及 び 板 紙 の 種 類 は 印 刷 用 紙 の 他 にも、包 装 用 紙 や 電 気 絶 縁 紙 のような 特 殊 紙 もあるように 多 岐 にわたっている。 通 産 省 生産 動 態 統 計 における 紙 ・ 板 紙 の 品 目 分 類 を表 1 及 び 表 2 に 示 す。 実 際 の 取 引 ではこの表 に 基 づいて 分 類 されているとは 限 らない。図 17 世 界 の 紙 及 び 板 紙 の 生 産 量 比 較紙新 聞 巻 取 紙印 刷 ・ 情 報 用 紙非 塗 工 印 刷 用 紙上 級 印 刷 紙中 級 印 刷 紙下 級 印 刷 紙薄 葉 印 刷 紙微 塗 工 印 刷 用 紙塗 工 印 刷 用 紙アート 紙 (A1)コート 紙 (A2)表 1 紙 ・ 品 目 分 類新 聞 印 刷 に 使 用 されるもの。書 籍 、 教 科 書 、ポスター、 商 業 印 刷 、 一 般 印 刷 などに 使 用 される 印刷 用 紙 A、ノート、 便 箋 、 帳 簿 、 製 図 、スケッチブックなどに 使 用される 筆 記 ・ 図 画 用 紙 などのほか、 書 籍 用 紙 、 辞 典 用 紙 、 地 図 用 紙 、クリーム 書 籍 用 紙 など。さらし 化 学 パルプ 100% 使 用 。書 籍 、 商 業 印 刷 、 一 般 印 刷 、 教 科 書 、 雑 誌 本 文 、 電 話 番 号 簿 本 文 などのほか、 雑 誌 などのグラビア 印 刷 に 使 用 されるもの。雑 誌 本 文 、 謄 写 版 印 刷 、 漫 画 誌 の 本 文 などに 使 用 されるもの。辞 書 、 六 法 全 書 、バイブルなどのほか、タイプライター 用 紙 、コピー 紙 、カーボン 紙 原 紙 、エアメールペーパー、 転 写 用 紙 、 謄 写 版 原紙 などに 使 用 されるもの。雑 誌 本 文 、カラーページ、チラシなどに 使 用 されるもの。1 m2 当 り両 面 で 12g 以 下 の 塗 料 を 塗 布 。高 級 美 術 書 、 雑 誌 表 紙 、 口 絵 、ポスター、カタログ、カレンダー、パンフレット、ラベル、 煙 草 包 装 用 などに 使 用 されるもの。1 m2 当り 両 面 で 40g 前 後 の 塗 料 を 塗 布 。高 級 美 術 書 、 雑 誌 表 紙 、 雑 誌 本 文 、カラーページ、 口 絵 、ポスター、カタログ、カレンダー、パンフレット、ラベル、チラシなどに 使 用されるもの。1 m2 当 り 両 面 で 20g 前 後 の 塗 料 を 塗 布 。軽 量 コート 紙 (A3) カタログ、チラシ、 雑 誌 本 文 、カラーページなどに 使 用 されるもの。1 m2 当 り 両 面 で 15g 前 後 の 塗 料 を 塗 布 。その 他 塗 工 印 刷 紙 高 級 美 術 書 、 雑 誌 表 紙 などに 使 用 されるキャストコート 紙 、カタログ、パンフレットなどに 使 用 されるエンボス 紙 のほか、 絵 葉 書 、 商品 下 げ 札 、 雑 誌 表 紙 、 口 絵 、グリーティングカード、 商 業 印 刷 、 高級 包 装 などに 使 用 されるアートポスト、ファッションコーテッドペーパー、 純 白 ロールコートなど。特 殊 印 刷 用 紙5


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)色 上 質 紙その 他 特 殊 印 刷 用紙情 報 用 紙複 写 原 紙表 紙 、 目 次 、 見 返 し、プログラム、カタログ、 健 康 保 険 証 などに 使用 されるもの。さらし 化 学 パルプ 100% 使 用 の 抄 き 色 紙 。郵 政 省 で 発 行 する 通 常 はがき、 年 賀 はがき、 往 復 はがきなどに 使 用される 官 製 はがき 用 紙 のほか、 小 切 手 、 手 形 、 証 券 、グリーティングカード、 地 図 、 製 図 用 紙 、ファンシーペーパーなどの 特 殊 な 用 途に 使 われるもの。ノーカーボンペーパーの 原 紙 、 裏 カーボンペーパーの 原 紙 、クリーンカーボンペーパーなどの 複 写 用 原 紙 。感 光 紙 用 紙 ジアゾ 感 光 紙 ( 青 写 真 )の 原 紙 。フォーム 用 紙 コンピュータのアウトプットに 使 用 されるもの。NIP を 含 む。PPC 用 紙 普 通 紙 複 写 機 (PPC)に 使 用 されるもの。情 報 記 録 紙 ファクシミリやプリンターなどのアウトプットに 使 用 され、 熱 によって 文 字 、 像 などを 発 色 する 感 熱 紙 の 原 紙 のほか、 静 電 記 録 紙 原 紙 、熱 転 写 紙 、インクジェット 紙 、 放 電 記 録 紙 原 紙 、 計 測 記 録 用 紙 などアウトプットに 使 用 されるもの。その 他 情 報 用 紙 統 計 カード 用 紙 、さん 孔 テープ 用 紙 、OCR 用 紙 、OMR 用 紙 、MICR用 紙 、 磁 気 記 録 原 紙 など 主 としてコンピュータのインプットに 使 用されるもの。包 装 用 紙未 ざらし 包 装 紙重 袋 用 両 更 クラフ セメント、 肥 料 、 米 麦 、 農 産 物 などを 入 れる 大 型 袋 に 使 用 されるもト 紙の。その 他 両 更 クラフ 角 底 袋 、 小 袋 、 一 般 包 装 及 び 加 工 用 などに 使 用 される 一 般 両 更 クラト 紙フト 紙 、 手 提 袋 、 一 般 事 務 用 封 筒 などに 使 用 される 特 殊 両 更 クラフト 紙 。その 他 未 ざらし 包 ターポリン 紙 果 実 袋 、 封 筒 などに 使 用 される 筋 入 クラフト 紙 、タイ装 紙ル 用 の 原 紙 、 果 実 袋 、 合 紙 、 雑 包 装 などに 使 用 される 片 艶 クラフト紙 のほか、ワンプなどに 使 用 されるもの。さらし 包 装 紙純 白 ロール 紙片 面 光 沢 の 紙 で、 包 装 紙 、 小 袋 、アルミ 箔 貼 合 などの 加 工 原 紙 として 使 用 されるもの。さらしクラフト 紙 手 提 袋 、 封 筒 、 産 業 資 材 の 加 工 用 などに 使 用 される 両 更 さらしクラフト 紙 、 薬 品 、 菓 子 、 化 粧 品 などの 小 袋 、 加 工 用 などに 使 用 される片 艶 さらしクラフト 紙 。その 他 さらし 包 装 両 面 光 沢 の 薄 い 紙 で 一 般 包 装 及 び 伝 票 などの 事 務 用 紙 などに 使 用 さ紙れる 薄 口 模 造 紙 のほか、 純 白 包 装 紙 、 色 クラフト 紙 など。衛 生 用 紙ティシュペーパー 吸 水 性 のある 衛 生 紙 で、 普 通 2 プライで 連 続 取 り 出 しされるようになっている。ちり 紙平 判 で 主 としてトイレ 用 に 使 われる。トイレットペーパロール 状 にしたもの。ータオル 用 紙 トイレや 台 所 で 使 用 され、 平 判 、ロール 状 のものがある。その 他 衛 生 用 紙 上 記 以 外 の 衛 生 用 紙 、 生 理 用 紙 、 京 花 紙 、テーブルナプキン、おむつなど。雑 種 紙6


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)工 業 用 雑 種 紙加 工 原 紙電 気 絶 縁 紙家 具 、 壁 材 用 のプリント 合 板 用 原 紙 、 壁 紙 用 原 紙 などの 建 材 用 、 主としてプリント 基 盤 として 使 用 される 積 層 板 用 、 粘 着 ・ 剥 離 用 の 基紙 、 工 程 紙 の 接 着 用 、 紙 コップ、 紙 皿 、 小 型 液 体 容 器 などの 食 品 容器 用 などのほか、 硫 酸 紙 、 耐 紙 ・ 耐 油 紙 、 防 錆 紙 、 防 虫 紙 、 温 床 紙 、擬 革 紙 、 研 磨 紙 、ろう 紙 、バルカナイズド 紙 、 製 版 用 マスター、 写真 用 印 画 紙 原 紙 など。コンデンサ、 変 圧 器 、ケーブル、コイルなどに 使 用 される 電 気 絶 縁用 のもの。ライスペーパー、グラシンペーパー、トレーシング、 濾 紙 、 水 溶 紙 、遮 光 紙 、 煙 草 用 チップ、 吸 取 紙 など。その 他 工 業 用 雑 種紙家 庭 用 雑 種 紙書 道 用 紙 書 道 半 紙 、 書 初 用 紙 、 画 仙 紙 。その 他 家 庭 用 雑 種 紙 ひも、 障 子 紙 、ふすま 紙 、 紙 バンド、 奉 書 紙 、ティーバッグ、 傘紙紙 、 油 紙 、のし 紙 などに 使 用 されるもの。7


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)表 2 板 紙 ・ 品 目 分 類板 紙段 ボール 原 紙ライナー外 装 用 (クラフト) 段 ボールシートの 表 裏 に 使 用 されるもの。 原 料 がクラフトパルプ。外 装 用 (ジュート) 段 ボールシートの 表 裏 に 使 用 されるもの。 原 料 が 古 紙 。内 装 用低 強 度 の 段 ボール 箱 の 中 仕 切 などに 使 用 されるもの。中 しん 原 紙パルプしん 段 ボールシートの 中 の「 段 」に 使 用 されるもの。 主 原 料 はパルプ。特 しん 段 ボールシートの 中 の「 段 」に 使 用 されるもの。 原 料 は 古 紙 。紙 器 用 板 紙白 板 紙マニラボール絵 はがき、カレンダー、カード 類 、 美 術 本 、 図 鑑 、タッグなどの 厚手 印 刷 物 や 液 体 食 品 、 化 粧 品 、 石 鹸 、タバコ、 薬 品 などの 印 刷 箱 に使 用 されるもの。食 料 品 、 雑 貨 、 洗 剤 などの 包 装 容 器 に 使 用 されるもの。白 ボール黄 ・チップボール 上 製 本 の 表 紙 のしん、 洋 服 の 箱 、 紙 製 玩 具 などに 使 用 されるものなど。色 板 紙染 料 で 着 色 したもの。雑 板 紙建 材 原 紙アスファルトやタールを 合 浸 させた 屋 根 床 などの 建 築 用 防 水 材 原 紙紙 管 原 紙その 他 板 紙のほか、 耐 火 性 の 壁 材 、 天 井 材 の 原 紙 。紙 、 布 、セロファン、 箔 、テープ、 糸 などの 巻 きしんに 使 用 されるもの。紙 ・パルプ 用 の 包 装 紙 のほか、 各 種 台 紙 、 地 券 、しん 紙 など。高 級 印 刷 用 紙 として 使 用 される 塗 工 紙 は、 次 のように 分 類 されている。(1) 塗 工 紙表 3 塗 工 紙 の 分 類品 種 アート 紙 コート 紙 軽 量 コート 紙呼 称 A1 A2 B2 A3 B3原 紙 上 質 上 質 中 質 上 質 中 質塗 工 量 両 面 40 g/m 2 両 面 20 g/m 2 両 面 20 g/m 2 両 面 15 g/m 2 両 面 15 g/m 2用 途 高 級 美 術 書 、カレンダー 等 の 高 級 美術 印 刷ポスター、カタログ、カレンダー 等 商 業 印 刷 、 書 籍 、 雑 誌などのカラー 印 刷雑 誌 、 本 文 のカラーページ、チラシ(2) 微 塗 工 紙表 4 微 塗 工 紙 の 分 類品 種 微 塗 工 上 質 紙 微 塗 工 印 刷 紙 1 微 塗 工 印 刷 紙 2 微 塗 工 印 刷 紙 3原 紙 上 質 ( 印 刷 A) 中 質 ( 印 刷 B) 中 質 ( 印 刷 B) 中 質 ( 印 刷 C)塗 工 量 両 面 40 g/m 2 両 面 20 g/m 2 両 面 20 g/m 2白 色 度 79 以 上 74~78 68~73 62~678


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)A、B グレードの 区 別 は 上 質 紙 ( 原 料 が 化 学 パルプ 100 %)か 中 質 紙 かということだが、A グレードであっても 古 紙 パルプが 使 用 されている( 例 えば 50 %)ものもある。次 に、いろいろな 紙 の 表 面 を 比 較 した 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 写 真 を 見 て 見 る。 紙 の 種 類 によって 用 いられる 繊 維 の 種 類 や 表 面 形 状 が 異 なることがわかる。 図 18 は、コピー 用 紙 で 比 較 的表 面 がデコボコしている。これはカレンダー 処 理 を 弱 くして 厚 みを 出 すことにより 紙 の 曲げこわさ(こし)を 大 きくし、 給 紙 時 の 紙 詰 まりを 減 らすためである。 幅 の 細 い LBKP を用 いており、 填 料 として 炭 酸 カルシウムを 含 んでいる。 図 19 は、 新 聞 用 紙 でカレンダリング 処 理 により 表 面 の 繊 維 がつぶれ、 平 滑 である。 繊 維 は 短 繊 維 化 した 針 葉 樹 の 機 械 パルプが 多 く、LBKP や 古 紙 パルプなども 配 合 されている。図 20 は、 和 紙 でコウゾやミツマの 靭 皮 繊 維 が 用 いられる。 繊 維 は 剛 直 でまっすぐである。図 21 は、ティッシュペーパーで、 幅 の 広 い 針 葉 樹 パルプを 用 いるが、 表 面 にシワつけ(クレープ 処 理 )が 施 されていることがわかる。ヤンキードライヤーからはがす 時 にドクター(つめ)を 当 てるのでしわができる。100 μm図 18 コピー 用 紙図 19 新 聞 用 紙100 μm図 20 和 紙図 21 ティッシュペーパー9


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)2 紙 の 物 性紙 の 性 質 を 理 解 する 上 で 最 も 基 本 的 な 概 念 となるのは、 坪 量 である。これは 1 m 2 当 たりの紙 の 質 量 (g)であり、 単 位 はg/m 2 である。 紙 は 水 分 を 吸 収 しやすいセルロースを 主 体 とする 繊 維 から 構 成 されているので、 雰 囲 気 の 相 対 湿 度 によって 紙 の 含 水 率 は 変 化 し、 坪 量 もそれに 伴 って 変 化 することになるが、 通 常 、 坪 量 と 言 うときは 乾 燥 機 で 恒 量 になるまで 乾燥 したときの 値 を 基 準 とする。その 他 、 厚 さが 基 本 的 な 概 念 であり、 平 滑 な 金 属 面 で 紙 を挟 んで 一 定 荷 重 をかけたときの 金 属 面 間 の 距 離 をもって 厚 さとする(マイクロメータ 法 )。この 方 法 では、 紙 の 表 面 に 凹 凸 がある 分 、 平 均 的 な 厚 さよりも 多 少 大 きな 値 が 出 る。また、坪 量 を 厚 さで 除 したものが 蜜 度 である。セルロース 固 有 の 密 度 は 約 1.5 g/m 3 であるが、 紙 は空 隙 率 が 大 きい 材 料 であるので、 通 常 0.5~1.0 g/m 3 である。紙 の 力 学 特 性 、 光 学 特 性 などのさまざまな 物 性 は 紙 を 構 成 する 各 材 料 の 組 成 、 繊 維 の 長さ・ 粗 度 、 填 料 の 量 と 分 布 、 紙 層 構 造 、 地 合 (ムラ)、 方 向 性 (MDとCD)、 密 度 、 抄 紙 の履 歴 、ウェットプレス、 叩 解 、 乾 燥 時 の 収 縮 量 、 乾 湿 ・ 温 度 の 履 歴 、 環 境 、 含 水 率 、 温 度などに 影 響 される。このような 影 響 を 調 べる 手 段 として 通 常 約 60 g/m 3 の 手 抄 きシートを 調製 して 測 定 する。 調 製 の 方 法 はJISに 詳 しく 規 定 されている。これらの 因 子 がどう 関 係 するかを 見 ていくことにする。2-1 力 学 特 性紙 の 力 学 的 特 性 を 測 定 する 試 験 の 種 類 は 数 多 い。JIS 規 格 にあるだけでも 破 裂 強 さ 試 験 、引 張 (ひっぱり) 特 性 の 試 験 、 耐 折 強 さ 試 験 、 引 裂 強 さ 試 験 、 圧 縮 強 さ 試 験 (リングクラッシュ 法 )、 印 刷 での 紙 むけ 試 験 、 湿 潤 引 張 強 さ 試 験 、 耐 摩 耗 強 さ 試 験 、こわさ 試 験 、 摩擦 係 数 試 験 がある。このような 紙 の 強 度 を 直 接 担 っているのは 個 々のパルプ 繊 維 の 強 度 と、繊 維 間 の 水 素 結 合 の 強 度 である。引 張 試 験 が 最 も 代 表 的 な 力 学 強 度 試 験 で、 紙 の 場 合 は 幅 15 mm スパン 長 100 mm( 切 り 出す 長 さは 150 mm 程 度 以 上 )となるように 引 張 試 験 機 のジグに 挟 み、10 mm/min の 速 度 で 引っ 張 る。 図 22 は、 紙 の 比 引 張 強 さ( 紙 の 試 験 片 幅 あたりの 引 張 強 度 を 坪 量 で 除 したもの)及 び 破 断 伸 び( 破 壊 に 至 るまでに 伸 びた 長 さの 元 のスパン 長 に 対 する 比 率 )に 及 ぼすパルプ 繊 維 の 種 類 (LBKP か NBKP)、 叩 解 の 程 度 及 びサイズ 剤 (AKD)・ 填 料 ( 二 酸 化 チタン)の 添 加 の 影 響 を 調 べた 結 果 である。 繊 維 長 の 長 い NBKP の 方 が 比 引 張 り 強 さが 大 きく、また 破 断 伸 びも 大 きかった。しかし、 叩 解 の 程 度 を 上 げると、 一 般 に 強 度 が 上 がる。また、この 図 では NBKP と LBKP の 差 が 少 なくなった。サイズ 剤 を 加 えることにより、 非 引 張 り強 さは 多 少 大 きくなったが、 助 剤 がサイズ 剤 だけ 出 なく、 繊 維 の 微 細 成 分 も 歩 留 (ぶど)まらせたためと 考 えられる。 填 料 は、 鉱 物 性 であるため 繊 維 間 結 合 を 阻 害 するだけであるので、 比 引 張 強 さも 破 断 伸 びも 小 さくなった。図 23 は、 同 様 に 密 度 と 耐 折 強 さに 与 える 影 響 を 示 したものである。 耐 折 強 さ(ただし 個 々では 回 数 )は、 幅 15 mm の 試 験 片 に 1 kgf の 張 力 をかけた 状 態 で、 左 右 に 60°ずつ 折 り 曲げを 繰 り 返 したとき、 破 断 までに 何 往 復 まで 耐 えられるかの 回 数 を 対 数 で 表 す。この 試 験法 は 紙 の 劣 化 状 態 の 評 価 によく 用 いられる。、NBKP の 方 が LBKP に 比 べて 耐 折 強 さがはるかに 大 きく、 引 張 試 験 結 果 以 上 の 開 きがあった。 叩 解 や、サイズ 剤 ・ 填 料 の 添 加 の 影 響 は、引 張 試 験 結 果 と 同 様 であった。10


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)破 断 伸 び比 引 張 強 さ比 引 張 強 さ(Nm/g),破 断 伸 び(%×10)50454035302520151050無 添 加サイズ(+ 助 剤 )3000R 叩 解サイズ・ 填 料NBKP無 添 加サイズ(+ 助 剤 )サイズ・ 填 料5000R 叩 解無 添 加サイズ(+ 助 剤 )サイズ・ 填 料3000R 叩 解LBKP無 添 加サイズ(+ 助 剤 )サイズ・ 填 料5000R 叩 解図 22 引 張 強 さに 与 える、パルプの 種 類 、 叩 解 、サイズ 剤 、 填 料 の 影 響3NBKPLBKP密 度耐 折 強 さ密 度 (g/cm 3 ),耐 折 強 さ( 回 )2.521.510.50無 添 加サイズ(+ 助 剤 )サイズ・ 填 料3000R 叩 解無 添 加サイズ(+ 助 剤 )サイズ・ 填 料5000R 叩 解無 添 加サイズ(+ 助 剤 )サイズ・ 填 料3000R 叩 解無 添 加サイズ(+ 助 剤 )サイズ・ 填 料5000R 叩 解図 23 密 度 及 び 耐 折 強 さに 与 える、パルプの 種 類 、 叩 解 、サイズ 剤 、 填 料 の 影 響紙 は 水 を 吸 着 しやすい 材 料 であることは 前 にも 述 べたが、 図 24 に、 紙 を 置 いた 雰 囲気 の 相 対 湿 度 と 紙 の 含 水 率 との 関 係 を 示 す。 通 常 の 大 気 下 ( 相 対 湿 度 が 50~65 %)では、紙 の 含 水 率 は 8~10 % 程 度 である。また、 調 湿 ( 紙 をある 湿 度 、 温 度 に 長 時 間 置 いて 含 水11


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)率 を 安 定 させる)の 方 向 によって 含80水 率 は 異 なる。これをヒステリシス 75702nd cycleと 呼 ぶ。 高 湿 度 側 から 調 湿 すると 含65水 率 は 高 くなる。60図 25 は、 同 様 に 相 対 湿 度 が 紙 の 力5550学 物 性 、 引 張 破 断 伸 び 及 び 含 水 率 に 4540及 ぼす 影 響 を 示 す。 引 張 強 さ、 破 裂 35Start強 さは、 湿 度 が 上 がると 強 度 が 減 少 3025する 傾 向 にある。 耐 折 強 さは、 湿 度 20が 高 い 方 が 強 度 が 増 加 する 傾 向 が 顕1510著 に 見 られる。これは、 含 水 率 が 上 50がると 繊 維 が 柔 軟 で 紙 が 伸 びやすく 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13なり、 応 力 が 分 散 して 破 壊 の 進 行 がMoisture content, %食 い 止 められるためではないかと 考図 24 紙 の 含 水 率 に 及 ぼす 相 対 湿 度 の 影 響えられる。また 引 裂 強 さも 同 様 の 傾向 がある。85Burststrength75 TensileMoisture2-2 異 方 性Tearstrengtcontentstrength紙 には 方 向 性 が 65 hある。 新 聞 紙 など55では、 一 定 方 向 にFolding裂 きやすくそれと 45endurance直 角 方 向 には 裂 き 35にくいことからもStretch25わかるように、 紙には 縦 と 横 がある。 1550 40 30 20 10 0 10 20 30 40 50 60 70抄 紙 機 で 抄 かれるPercent decrease Percent increase紙 の 場 合 、その 流れ 方 向 を 縦 方 向図 25 紙 の 力 学 的 特 性 などに 及 ぼす 相 対 湿 度 の 影 響(MD)とし、これに 垂 直 な 方 向 が 横 方 向 (CD)である。 新 聞 紙 は、 記 事 を 読 むときの 上 下 方 向 が 紙 の 縦 方 向と 一 致 するように 印 刷 されている。そうでないと、 手 で 支 えながら 読 むときに 新 聞 がしおれるように 倒 れてしまう。 抄 紙 機 では、 紙 料 のジェット 速 度 よりワイヤー 速 度 が 速 いため 叩引解に 繊 維 が 引 っ 張 られるようにして 配 向 すること、また 紙 料 を 噴 き 出 すスライスの 流 れの 度 中張で MD に 繊 維 が 配 向 することが 原 因 と 考 えられる。また、 繊 維 が 紙 面 に 対 して 平 行 になる の破違ように 配 向 する 面 配 向 もある。い断異 方 性 は、 前 述 した 引 張 試 験 での 引 張 り 強 さ、 破 断 伸 び 及 びヤング 率 で 評 価 することがで伸きるほか、 超 音 波 伝 播 速 度 v、 動 的 ヤング 率 MD(MD=r v 2 の 関 係 から 計 算 可 能 )、 染 色 繊 維びを 用 いる 方 法 ( 染 色 した 繊 維 を 抄 き 込 み、 角 度 を 画 像 処 理 で 統 計 処 理 )などの 乾 燥 収 方 縮 法 = がある。 破 断,伸 びとなる 線図 26 は、 種 々の 紙 の 引 張 破 壊 荷 重 をMD 及 びCD 方 向 で 比 較 したもので、 一 般 に 繊 維 が 配 向%Relative humidity, %Relative humidity, %12乾 燥 収 縮 , %図 27 乾 燥 時 の 収 縮 量 に 対 する 引張 破 断 伸 び


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)1212Load, kgf108642未 晒 しクラフト 紙 (89.4 g/m 2 )コピー 用 紙 (64.4 g/m 2 )MD未 晒 しクラフト 紙CDコピー 用 紙Load, kgf108642微 塗 工 紙 (64.9 g/m 2 )新 聞 用 紙 (46.4 g/m 2 )MD微 塗 工 紙新 聞 用 紙CD0-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8Elongation, %0-1 0 1 2 3 4 5 6 7 8Elongation, %図 26 いろいろな 紙 の 引 張 破 壊 荷 重 の MD/CD 比 較しているMD 方 向 に 引 張 強 度 が 大 きく、 引 張 破 断 伸 びが 小 さいことがわかる。 微 塗 工 紙 では、CD 方 向 の 引 張 破 断 伸 びが 特 に 大 きい。これは 塗 工 工 程 と 関 係 がある。 非 塗 工 紙 の 乾 燥 は、数 十 本 のドラムに 巻 き 付 けて 次 々と 転 移 させながら 乾 燥 させるので、 紙 が 中 に 浮 いている(オープンドロー) 時 間 が 極 めて 短 くなり、 紙 の 収 縮 は 少 ない。 塗 工 紙 の 場 合 、 乾 燥 はエアフォイルドライヤーと 呼 ばれる 乾 燥 機 の 中 を、ドラムに 接 することなく 風 で 浮 かしながら 通 過 させるため、いわゆる 自 由 乾 燥 となってCD 方 向 に 収 縮 する。そのため 引 っ 張 ったときにはその 収 縮 分 だけ 余 計 に 伸 びるのである。この 現 象 は、 図 27 に 示 す 手 抄 き 紙 での 実 験結 果 からもわかるように、 引 張 破 断 伸 びは、 叩 解 などで 決 定 される 一 定 の 伸 び 量 があり、これに 乾 燥 時 の 収 縮 量 を 加 えた 分 だけ 伸 びることがわかる。図 28 は、30°ずつ 角 度 を 変 えながら 引 張 破 壊 荷 重 と 引 張 破 断 伸 びについて 測 定 し、 全 方位 ( 実 際 は 半 面 )について 表 示 したもので、 標 準 法 で 調 製 した 手 抄 き 紙 や 手 すき 和 紙 は 異方 性 がなく、その 他 の 機 械 抄 き 紙 には 異 方 性 があることがわかる。 塗 工 紙 の 引 張 破 壊 荷 重の 異 方 性 は、 未 晒 しクラフト 紙 より 小 さいが、 引 張 破 断 伸 びの 異 方 性 は 逆 に 大 きいことがわかる。これは 前 述 のように 乾 燥 方 法 の 違 いによる。すなわちオープンドローの 長 い 塗 工紙 乾 燥 工 程 では CD 方 向 に 大 きな 乾 燥 収 縮 が起 きるからである。図 29 は、 動 的 ヤング 率 による 異 方 性 の 表示 例 で、この 図 から 繊 維 は 完 全 に MD 方 向 に7引 張 強 さ( 破 断 荷 重 ), kgf6543210MDMDOrientation angleMDvalue手 すき 和 紙未 晒 しクラフト 紙 引 張 破 断 伸 び, %塗 工 紙コピー 用 紙手 抄 き 紙セロハン新 聞 用 紙ティッシュペーパーMaximumvalueCDvalueMinimum valueCD図 29 超 音 波 法 ( 動 的 ヤング 率 )による 新 聞 用 紙紙 の 配 向 図2CDCD0-7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4 5 6 7 -8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8864MD手 すき 和 紙未 晒 しクラフト 紙塗 工 紙コピー 用 紙手 抄 き 紙ティッシュペーパー図 28 いろいろな 紙 の 引 張 挙 動 の 異 方 性13


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)配 向 しているわけではないことがわかる。 幅 の 広 い 抄 紙 機 の 両 サイドではワイヤ 上 で 紙 料の 流 れが 起 きることなどにより MD からある 角 度 を 持 って 配 向 することも 珍 しくない。2-3 表 面 平 滑 性紙 の 平 滑 度 は 版 との 接 触 が 起 きるニップ 型 商 業 印 刷 やレーザー 方 式 のプリンタでは 印 刷品 質 を 支 配 する 最 も 重 要 な 特 性 である。平 滑 性 の 測 定 と 表 現 の 方 法 には 大 きく 分 けて 2 種 類 ある。 非 常 に 平 滑 な 金 属 面 と 紙 表 面 が接 触 したときにできる 隙 間 を 空 気 が 漏 れ 出 る 速 度 や 一 定 量 の 空 気 が 漏 れ 出 るのに 要 する 時間 で 表 現 する 空 気 漏 洩 式 がその 1 つで、 装 置 の 仕 様 によりベック 式 、シェフィールド 式 、ベントセン 式 、 王 研 式 、パーカープリントサーフなどがある。 迅 速 な 測 定 と 実 際 の 印 圧 を想 定 して 圧 力 を 変 えることができる 利 点 がある。 空 気 漏 洩 法 ではないが、 加 圧 時 に 平 滑 なガラス 面 との 接 触 面 積 を 測 定 して 粗 さを 算 出 するマイクロトポグラフと 呼 ばれる 装 置 もある。もう 1 つは、 触 針 、 光 (レーザー)、 電 子 線 、プローブ( 走 査 型 プローブ 顕 微 鏡 )などを 用 いて 表 面 形 状 を 2 次 元 または 3 次 元 のプロファイルとして 測 定 する 方 法 である。 曲 線そのものを 客 観 的 に 比 較 するのは 難 しいのでそのプロファイル 曲 線 データから 色 々な 粗 さ指 数 を 計 算 する。 代 表 的 なものは 自 乗 平 均 平 方 根 粗 さ RMS 及 び 中 心 線 平 均 粗 さ Ra である。これは 次 のようにして 求 められる。 線 または 面 の 傾 きを 補 正 するために 基 準 直 線 (2 次 元 )または 基 準 平 面 (3 次 元 )を 定 める。これはその 基 準 線 ( 面 )の 上 下 で 囲 まれる 面 積 ( 体 積 )のそれぞれの 総 和 が 等 しくなるように 設 定 する。その 線 ( 面 )からの 各 点 までの 距 離 y を求 め、それぞれ 式 (1) 及 び 式 (2)で 計 算 する。RMS =1l2∫ yl 0dy式 (1)R a1=∫ll 0ydy式 (2)ここで、l: 曲 線 の 走 査 距 離 である。3 次 元 の 場 合 はこれと 直 角 方 向 の 座 標 軸 にも 走 査 方 向があるので 式 中 の 積 分 は 二 重 になる。空 気 漏 洩 法 による 平 滑 度 と 表 面 形 状 プロファイルの 間 にはどのような 関 係 があるのであろうか。 表 面 粗 さがミクロな 粗 さ 領 域 からマクロな 粗 さ 領 域 まで 分 布 しているという 概 念から 考 えると、 空 気 漏 洩 式 平 滑 度 計 はどの 大 きさの 粗 さレベルを 表 現 しているのかをフーリエ 解 析 によって 調 べることが 可 能 である。 触 針 式 表 面 形 状 測 定 機 によって 測 定 される 表面 形 状 プロファイルをフーリエ 変 換 によっていろいろな 波 長 の 波 に 分 解 した。そしてそれぞれの 波 の 振 幅 と 王 研 式 平 滑 度 との 相 関 を 調 べた。また 通 常 800 μm 以 上 の 長 さの 波 長 を 持つ 波 の 成 分 を 除 いてから 中 心 線 平 均 粗 さを 計 算 するが、このカットオフ 値 を 変 化 させたときの 中 心 線 平 均 粗 さと 王 研 式 平 滑 度 王 研 式 平 滑 度 との 相 関 を 調 べた。このようなスペクトル 的 な 解 析 をカレンダーがけレベルや 叩 解 度 レベルの 異 なる 手 抄 き 紙 について 行 った。その 結 果 、 特 定 のカットオフ 波 長 で 最 も 相 関 が 高 くなるようなはっきりしたピークが 見 られた。さらによく 日 本 で 使 用 される 王 研 式 平 滑 度 の 表 す 粗 さ 領 域 は、 手 抄 き 紙 の 場 合 、およそ 273 μm 程 度 の 波 長 領 域 であることがわかった。また、 空 気 漏 洩 式 では、 世 界 的 な 標 準 規 格 になりつつあるパーカプリントサーフ(PPS) 粗さがどのような 紙 の 表 面 粗 さを 表 しているかも 同 様 に 検 討 した。まず PPS 粗 さとベック 平14


B江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)滑 度 の 理 論 式 の 比 較 をまず 行 い、 次 に 紙 表 面 の 触 針 式 プロファイルのスペクトル 解 析 からPPS が 表 している 波 長 領 域 を 求 めた。 理 論 式 の 比 較 から、 紙 表 面 と 空 気 漏 洩 式 平 滑 度 計 の 金属 ヘッドとの 間 にできる 間 隙 を 通 る 空 気 の 流 れのモデルとして、PPS モデルの 方 が 王 研 (ベック) 式 モデルより 合 理 的 であることがわかった。しかし、 両 試 験 器 が 測 定 しようとするものは 同 一 のものであるので、2 つの 理 論 式 を 関 係 づけることが 可 能 であり、その 変 換 式 は式 (3.3)で 示 される。G 3=(G 3 : PPS 粗 さ、T B : 王 研 式 平 滑 度 )18.653TB式 (3)測 定 データの 比 較 では、この 変 換 式 が 多 くの 紙 について 概 ね 成 り 立 ったが、 叩 解 度 の 異 なる 紙 など、 圧 縮 性 の 異 なるものについては 成 り 立 たない。カレンダーがけした 手 抄 き 紙 について、 王 研 式 の 場 合 と 同 様 に 触 針 式 プロファイルを 様 々なカットオフ 値 に 設 定 して 計 算した 中 心 線 平 均 粗 さと PPS 粗 さとの 相 関 を 調 べたところ、 紙 の 表 面 形 状 は PPS 試 験 器 内 で波 長 234 μm に 相 当 する 粗 さになるように 変 形 することが 示 唆 された。このカットオフ 波 長は、 紙 表 面 が 正 弦 曲 線 であると 仮 定 した 場 合 の 変 換 式 か Gらの3= 2. 13 偏 差 × Rのa2 乗 和 を 最 小 にするものである。 同 様 に 王 研 式 平 滑 度 は 波 長 410 μm に 相 当 する 粗 さを 見 ていることが 示 唆 された。一 般 的 には、 変 換 式 に 最 も 近 い 関 係 が 成 り 立 つカットオフ 波 長 は、 抄 紙 や 加 工 の 方 法 などによって 変 化 する、 紙 表 面 の 変 形 特 性 に 依 存 すると 考 えられる。接 触 方 式 である 触 針 式 表 面 形 状 測 定 機 によって 紙 の 表 面 形 状 プロファイルを 測 定 する 際に、 針 が 紙 表 面 を 引 っかく 問 題 が 生 じる。このスクラッチ 現 象 をトポグラフィック SEM( 表面 の 形 状 を 測 定 できる 走 査 型 電 子 顕 微 鏡 )を 用 いて 調 べた。トポグラフィック SEM によって 測 定 された 触 針 痕 のある 箇 所 とない 箇 所 の 表 面 形 状 曲 線 について、 同 様 に 一 定 波 長 以 上の 成 分 をカットオフし、 中 心 線 平 均 粗 さを 比 較 することにより、 触 針 のスクラッチがプロファイルに 与 える 影 響 を 分 析 することができる。 上 質 紙 の 場 合 HN10 、 波 長 約 16 μm 以 下 のHN120レベルで 両 者 のプロファイルに 有 為 な 差 (t 検 定 による)があり、 触 針 によるスクラッチの 影 響が 現 れることがわかった。これは 触 針 先 端 の 曲 率 半 径 の 約 3 倍 に 相 当 する。キャストコート 紙 では 全 波 長 領 域 で 有 為 な 差 があった。 最 近 ではきわめて 触 針 圧 の 小 さい 装 置 が 実 現 しており、 触 針 痕 の 影 響 はほとんど 問 題 がないくらいである。図 30 は 試 験 印 刷 機 RI テスターを 使 って 塗 工 紙 、 非 塗 工 紙 にオフセット 用 インキを 印 刷 したときのインキ 濃 度 と 平 滑 性 の 関 係 を 示 したものである。 横 軸 は 王 研 式 の 平 滑 度 の 3 乗 根をとっているが、これは 式 (3)に 基 づくものである。インキ 濃 度 HP10 と平 滑 性 には 高 い 相 関 HP120 があることがわかる。 紙 の 平 滑 性 はカレンダリングの 程 度 により 変 化 させた。2-4 地 合SN10SN12015SP10SP120図 31 広 葉 樹 漂 白 クラフトパルプから 調 製 した手 抄 き 紙 のスキャナーによる 透 過 画 像


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)地 合 むらと 呼 ばれる 紙 の 2 次 元 的 な 構 造 むらが 印 刷 品 質 に 大 きく 影 響 する。 地 合 という 概念 は 単 層 構 造 である 非 塗 工 紙 の 方 が 扱 いやすく、 地 合 は、 白 色 光 を 透 過 させたときに 視 覚的 に 感 ぜられるむらと 定 義 することができる。 装 置 による 測 定 では 透 過 光 量 の 面 内 分 布 を測 定 して 解 析 することになる。また、より 物 理 的 に 取 り 扱 いやすいように 局 所 的 な 坪 量 の分 布 であるとする 定 義 もある。 光 は 繊 維 間 の 空 隙 量 によって 散 乱 量 が 異 なり、 例 えば 極 度のカレンダリング 処 理 では 透 過 光 量 を 大 きくする。しかし、( 横 方 向 にわずかに 伸 びるであろうが) 坪 量 の 変 化 はほとんどないので 坪 量 分 布 の 方 がそのシート 固 有 の 特 性 として 扱 いやすくなる。 透 過 光 量 の 場 合 は CCD カメラを 使 ったビデオシステムやピンポイントのビームを 使 って、 試 料 をおいたステージを xy 方 向 に 移 動 させたりあるいは 円 筒 状 のステージを回 転 させることによって 試 料 面 を 走 査 するシステムなどがある。 局 所 坪 量 の 分 布 を 測 定 するには、 散 乱 の 影 響 がなく 透 過 量 と 局 所 坪 量 に 一 定 の 関 係 があるβ 線 を 通 常 使 う。 軟 X 線も 可 能 で、 電 子 線 を 使 う 新 しい 方 法 も 開 発 されている。図 30 インキ 濃 度 と 紙 の 平 滑 性 の 関 係 図 31 は 広 葉 樹 (H) 及 び 針 葉 樹 (S)の 漂 白 クラフトパルプから 調 製 し、 炭 酸 カルシウムを 内 添 した 手 抄き 紙 のスキャナーによる 透 過 画 像 である。N は、パルプ 繊 維 及 び 填 料 のの 凝 集 剤 であるカチオンポリマー(ポリアミンポリアミドエピクロロヒドリン)を 添 加 してないもので、P は 添加 したもの。10 は 紙 料 を 撹 拌 してから 標 準 法 に 従 って 10 秒 後 にろ 水 したもので、120 は 120秒 後 にろ 水 したものである。 画 像 の 暗 い 部 分 は 繊 維 や 炭 酸 カルシウムが 凝 集 してフロックを 形 成 し 分 厚 くなった 部 分 を 示 している。 静 置 時 間 を 120 秒 にするとその 間 に 繊 維 や 炭 酸カルシウムの 凝 集 が 進 行 して 次 第 にフロックを 大 きくしていきそれが 紙 中 に 残 ることがわかる。また、カチオンポリマーを 添 加 するとやや 地 合 が 悪 くなったが、フロックを 大 きくする 影 響 は 少 なかった。しかし、 凝 集 効 果 により 網 から 微 細 繊 維 や 炭 酸 カルシウムが 抜 け落 ちずに 坪 量 が 大 きくなったために 全 体 に 暗 い 透 過 光 像 となった。 通 常 このような 透 過 光像 から 地 合 を 客 観 的 に 評 価 するには 各 画 素 のグレーレベルを 元 に 標 準 偏 差 などを 計 算 して評 価 することが 多 い。また、グレーレベルそのものではなく 対 数 をとった 光 学 濃 度 を 元 に計 算 した 標 準 偏 差 の 方 が 主 観 的 評 価 に 近 くなる 場 合 もある。 光 学 濃 度 は 次 の 式 (4)で 表 される。⎛V0⎞OD = log ⎜ ⎟式 (4)⎝ V ⎠ここで、OD: 光 学 濃 度 V 0 : 試 料 のない 部 分 でのグレーレベルV: その 画 素 でのグレーレベル表 5 手 抄 き 紙 の 透 過 光 像 から 計 算 した 各 種 地 合 指 数 と 主 観 評 価 値 。r はケンドールの 相 関係 数 で 光 学 濃 度 2 の 標 準 偏 差 及 びそれを 坪 量 で 割 ったものと 主 観 評 価 の 相 関 が 高 いことがわかる。サンプル HN10 HN120 HP10 HP120 SN10 SN120 SP10 SP120 rグレーレベル 平 均 45.3 45.6 34.2 32.2 70.8 71.7 49.9 51.3標 準 偏 差 2.1 2.3 1.7 3.0 4.5 6.7 3.1 5.1 0.36光 学 濃 度 標 準 偏 差 0.020 0.022 0.022 0.040 0.028 0.041 0.027 0.043 0.642光 学 濃 度 標 準 偏 差 0.030 0.033 0.038 0.072 0.031 0.045 0.038 0.061 0.79( 光 学 濃 度 2 - 標 準 偏 差 )/ 坪 量 , 47 53 52 95 55 75 57 88 0.863 2主 観 評 価 値 ( 小 さいほど 地 合 良 ) 0.0 3.6 1.4 6.4 2.3 5.5 3.0 5.816


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)表 5は 前 図 で 示 した8 種 類 のシートの 透 過 光 画 像 を 構 成 する 各 画 素 からグレーレベル、 上式 によって 計 算 した 光 学 濃 度 及 び 光 学 濃 度 の2 乗 から 標 準 偏 差 を 計 算 したもので、これが 地合 指 数 となる。 最 下 行 の 主 観 評 価 値 は6 人 のパネリストにより 一 対 比 較 法 で 順 位 付 けを 行 った 結 果 を 示 す。 最 右 列 のrはケンドールの 相 関 係 数 で、 次 のように 計 算 する。2つの 試 料 を 比較 したとき 地 合 指 数 と 主 観 評 価 値 の 優 劣 が 同 じであれば1、 異 なれば-1を 与 え、 全 てのペアについてこの 得 点 の 合 計 を 計 算 する。これをペアの 数 で 割 ることによって 得 られる。 主 観評 価 値 を1つの 変 数 とみなす 通 常 の 相 関 では 評 価 値 そのものが 一 定 の 尺 度 をもっていて 初めて 意 味 を 持 つが 実 際 にはそうではない。 例 えば、 最 良 の 主 観 評 価 を 得 たHN10の 地 合 をさらによくしても 評 価 値 は0のままであることから 評 価 値 の 大 きさそのものは 意 味 がないことがわかる。したがってケンドールの 相 関 は 主 観 評 価 値 の 大 きさではなく、 序 列 だけを 問題 にした 相 関 を 調 べるものである。このケンドールの 相 関 係 数 を 見 ると、グレーレベルの標 準 偏 差 は 主 観 評 価 との 相 関 は 低 く、 光 学 濃 度 やさらに 光 学 濃 度 の2 乗 との 相 関 が 高 いことがわかる。 透 過 光 像 の 入 力 装 置 であるこのイメージスキャナーでは 光 学 濃 度 の2 乗 は 局 所 的な 坪 量 とほぼ 比 例 関 係 にあることがわかっており、 人 間 の 目 は 透 過 光 量 の 違 いではなく 坪量 の 違 いをリニアな 尺 度 として 感 じとっているのではないかと 思 われる。また 人 間 の 目 には 透 過 光 量 の 感 じ 方 以 外 に 面 方 向 の 分 解 能 に 対 して 波 長 依 存 性 がある。つまり、 特 定 の 距 離 の 周 期 的 な 変 動 に 対 して 敏 感 だが、 視 力 の 限 界 より 細 かい 波 長 成 分 では変 動 を 見 分 けにくく、またあまり 大 きな 波 長 成 分 の 変 動 もまた 視 野 の 限 界 により 見 分 けにくい 傾 向 がある。 同 じくスキャナーの 透 過 光 像 を 元 にした 周 波 数 解 析 による 結 果 から、 人間 の 目 には 6~8 mm 周 期 の 変 動 に 最 も 敏 感 であるという 結 果 が 得 られている。このような考 え 方 は 後 述 の MTF(Modulation transfer function)と 同 じような 概 念 である。塗 工 層 の 均 一 性 は 画 像 部 の 均 一 性 と 密 接 に 関 わっており 重 要 な 性 質 である。 塗 工 量 は 通 常その 塗 工 紙 全 体 の 平 均 的 な 値 で 示 されるが、 面 内 での 不 均 一 性 、すなわち 塗 工 量 の 面 内 分布 を 測 定 する 方 法 がいくつかある。視 覚 的 に 簡 便 に 判 断 する 方 法 としてバーンナウト 試 験 法 がある。これは 図 32 に 示 したように 次 の 手 順 で 行 う。 水 とエタノールを 半 々に混 合 した 溶 媒 に 25 g/L 塩 化 ナトリウム 溶 液 を調 製 し、 塗 工 紙 を 浸 漬 し 十 分 含 浸 させる。 塗 工 水 /エタノール=50/50 225 ℃ 7 分 間(v/v)に 溶 解 した 塩 化紙 を 取 り 出 して 風 乾 し、さらに 225 度 のオーブアンモニウム 溶 液ン 内 で 7 分 間 乾 燥 する。 原 紙 部 分 及 び 塗 工 層 中図 32 塗 工 むらを 視 覚 的 に 評 価 するための 有 機 物 だけが 炭 化 され 黒 くなり、 表 面 にある のバーンナアウト 試 験 のやり 方顔 料 だけが 白 く 見 えるようになるので、 白 い 部分 の 均 一 性 を 視 覚 的 に 判 断 する。 図 33 は、 印 刷 品 質 のよい 塗 工 紙 と 悪 い 塗 工 紙 での 例 である。2 種 類 の 塗 工 紙 は 同 様 な 条 件 のパイロットスケールで 塗 工 されたものであるが、 乾 燥 のタイミングなど 細 部 の 条 件 がわずかに 異 なっている。これらのバーンナウト 後 の 試 料 をイメージスキャナーで画 像 を 取 り 込 んだもので 印 刷 品 質 の 悪 い印17刷 品 質 のよい 塗 工 紙 印 刷 品 質 の 悪 い 塗 工 紙図 33 異 なった 印 刷 品 質 を 与 える 塗 工 紙 でバーンナアウト 試 験 を 行 い、スキャナーで取 り 込 んだ 画 像 (5 cm×5 cm)


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)塗 工 紙 は 筋 状 のむらがあるのに 加 えてさらに 大 きな 1~2 cm の 大 きさのむらの 存 在 が 確 認できる。 図 34 にあるように 2 値 化 するとさらにその 差 がはっきりする。2-5 光 沢光 沢 のある 印 刷 物 は、 高 級 感 を 醸 し 出 すことができる。そのため、 印 刷 光 沢 ( 印 刷 インキが 載 った 部 分 の 光 沢 )は、 印 刷 品 質 を 左 右 する 重 要 な 要 素 となっている。 特 に、 商 品 宣伝 用 の 高 級 塗 工 紙 グレードでは、 一 般 消 費 者 の 購 買 意 欲 をそそる 効 果 があるので 高 い 印 刷光 沢 が 求 められる。 本 発 表 では、 印 刷 光 沢 発 現 メカニズムに 関 し、 内 外 の 研 究 例 を 紹 介 するとともに、 我 々がこれまでに 行 ってきた 研 究 結 果 をまとめて 報 告 する。2-5-1 理 論 - 光 沢 の 表 す 意 味紙 の 光 沢 は 紙 の 平 滑 性 と 密 接 な 関 係があり、 通 常 平 滑 性 の 指 標 であるとみなされるが、それは 次 の 理 由 による図 35 に 示 すように 紙 面 の 法 線 方 向 に対 しθ=75°の 入 射 角 で 光 I 0 を 当 て、 同 じく 75°の 反 射 角 で 反 射 光 Iを 検 出 し、そ印 刷 品 質 のよい 塗 工 紙 印 刷 品 質 の 悪 い 塗 工 紙の 光 の 強 度 の 比 率 I/I 0 を 測 定 して 求 める。図 34 バーンナアウト 後 のイメージスキャナ光 沢 度 は 相 対 分 光 分 布 と 分 光 視 感 効 率 の ー 画 像 を 2 値 化 したもの。 塗 工 むらが 印積 を 全 ての 波 長 にわたって 積 分 したもの 刷 品 質 を 低 下 させる。に 相 当 する。フレネルの 法 則 によれば 光 学 的 に 平 滑 な 表 面 の( 分 光 ) 鏡 面 反 射 率 は、 入 射光 の 波 長 λと 入 射 光 の 角 度 θの 関 数 になっている。この 関 数 f(θ, λ)はフレネル 係 数 と 呼 ばれ、式 (4)で 表 される。22⎡⎛2 2( ) ⎞ ⎛ 22 2 ⎤1( ) ( ) ⎞( ) ⎢⎜cosθ− n λ − sin θ ⎟ ⎜ n λ cosθ− n λ − sin θf θ , λ =+⎟2 ⎢⎜2 2 ⎟ ⎜ 22 2 ⎟⎢( ) ( ) ( )⎥ ⎥⎥ 式 (5)⎣⎝cosθ+ n λ − sin θ ⎠ ⎝ n λ cosθ+ n λ − sin θ ⎠ ⎦ここで、n(λ): 波 長 λのおける 屈 折 率 θ: ( 紙 の 場 合 通 常 )75°である。紙 のような 粗 い 表 面 については、 反 射 率 はさらに 表 面 粗 さの 関 数 にもなっており、 式 (5)で 表 される。2I⎡ ⎛ 4πσcosθ⎞ ⎤= f ( θ , λ)exp⎢−⎜ ⎟ ⎥式 (6)I0⎢⎣⎝ λ ⎠ ⎥⎦ここで、I: 鏡 面 反 射 光 強 度 、I 0 : 入 射 光 強 度 、σ: 表 面 粗 さの 標 準 偏 差 である。ISO 及 び JIS で 定 義 されている 光 沢 度 の 単 位 は、 屈 折 率 1.567(Tappi では 1.540)のガラスの 鏡 面 研 磨 面 に 対 する 反 射 率 が光 沢 度 100(%)となるように 目 盛 られている。これは 反 射 率26.46 %に 相 当 する。 従 って 屈 折 率 の 高 い 材 料 では 100 以 上 の光 沢 度 になる。なお、 印 刷 面 の 光 沢 を 測 定 する 場 合 インキの図 35 鏡 面 反 射 の 光 路色 や 拡 散 反 射 が 光 沢 に 与 える 影 響 はごくわずかで、 白 色 面 は黒 色 面 よりわずかに 光 沢 度 が 高 いが、その 差 は 1 以 下 である。式 (6)によれば、 紙 の 光 沢 は、 光 の 入 反 射 角 、 入 射 光 の 波 長 、 屈 折 率 及 び 材 料 表 面 の 平 滑IθnθσI018


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)度 で 決 定 される。 塗 工 層 は、 異 種 の 塗 工 紙 でも 材 料 の 組 成 は 似 通 っており、また 塗 工 層 に使 用 される 鉱 物 性 顔 料 の 屈 折 率 は 近 い 値 をとる。そのため、 同 一 の 光 学 条 件 下 で 測 定 した光 沢 度 は、 表 面 の 平 滑 度 によってほぼ 決 定 されることになる。 印 刷 表 面 でも 顔 料 や 樹 脂 分の 組 成 やそれぞれの 屈 折 率 は 同 程 度 である 考 えられるので、 同 様 に 印 刷 光 沢 もインキ 層 表面 の 平 滑 度 によってほぼ 決 まるとみなすことができる。2-6 白 色 度 及 び 不 透 明 度白 色 度 及 び 不 透 明 度 のような 光 学 的 性 質 は 印 刷 媒 体 としての 紙 の 機 能 を 知 る 上 で 特 に 重要 なものである。2-6-1 白 色 度白 色 度 は 印 刷 物 におけるコントラストを 高 め、より 鮮 鋭 な 画 像 部 を 得 るために 重 要 な 性質 である。白 色 度 は 次 のように 定 義 される。 拡 散 照 明 光 を 当 て、( 試 料 面 に 垂 直 な)0° 方 向 で 受 光 したときの 反 射 光 量 の、 完 全 拡 散 反 射 面 によって 反 射 された 光 量 に 対 して 百 分 率 で 表 した 値 。このときの 試 料 は 十 分 不 透 明 なほどの 厚 さを 持 つか、 同 種 のものを 十 分 不 透 明 になるほど重 ねて 測 らなければならない。また、 有 効 波 長 457 nm で 測 定 する。 従 来 から、 紙 ではハンター 白 色 度 が 使 われてきた。これは 次 のような 欠 点 があった。 一 つの 光 線 束 による 45 度 照明 ・0 度 受 光 であり、 紙 を 測 定 する 際 に 紙 の 縦 ・ 横 方 向 の 影 響 を 受 ける。また 照 明 光 に 青 色フィルタを 通 すため 蛍 光 増 白 剤 を 励 起 させる 波 長 領 域 の 光 ( 主 に 紫 外 領 域 の 光 )が 大 幅 にカットされる。したがって、 蛍 光 増 白 剤 を 含 む 試 料 を 測 定 すると 視 感 白 さと 一 致 しない 場合 がある。したがって 今 後 はハンター 白 色 度 を 使 用 しない。塗 工 紙 の 場 合 は 塗 工 層 と 原 紙 という 白 色 度 のまったく 異 なる 層 構 造 を 持 っているため、白 色 度 は 本 来 塗 工 層 と 原 紙 層 に 分 けて 考 えるべきだが、 実 際 は 製 品 としての 塗 工 紙 を 十 分な 枚 数 重 ねて 測 定 しその 紙 の 白 色 度 としている。したがって同 一 の 組 成 でも 塗 工 量 が 変 わればその 紙 の 白 色 度 は 変 わる。θ i紙 はパルプ 繊 維 や 塗 工 用 顔 料 が 白 いために 白 色 度 の 高 い n1材 料 であるが、それ 以 外 に 細 かな 空 隙 構 造 を 持 つことによっn2θ rても 白 色 度 が 高 くなっている。これは 光 の 屈 折 と 関 係 がある。一 般 に 光 は 屈 折 率 の 差 がある 2 つの 媒 質 界 面 で 屈 折 して 進む。 図 36 のような 屈 折 率 がn 1 とn 2 の 媒 質 があり 入 射 角 と 屈 図 36 屈 折 率 n 1 の 媒 質 からのn折 角 がθ i とθ r であるとき、 式 (7)のようなスネルの 法 則 が 成 り2 の 媒 質 へ 光 が 進 入 するときの 屈 折立 つ。sinθi n1= (スネルの 法 則 ) 式 (7)sinθnr2紙 の 場 合 、 空 気 と 繊 維 を 構 成 する 物 質 ( 非 塗 工 紙 では 主 にセルロース、 塗 工 紙 ではこれに 顔 料 やラテックスが 加 わる)の 間 でこのような 屈 折 が 起 き、しかもその 細 かくてランダムに 配 置 する 無 数 の 空 隙 のために 屈 折 が 不 特 定 の 方 向 に 幾 重 にも 起 こる。これは 光 の 散 乱に 相 当 する。そのため 表 面 からの 反 射 光 量 も 多 くなり、 白 色 度 が 上 がる。 食 塩 や 雪 が 白 く見 えるのも 同 じ 現 象 である。19


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)一 般 的 な 紙 の 白 色 度 を 表 6 に 示 す。コピー 用 紙 は 蛍 光 増 白 剤 を 使 用 しているため 白 色 度は 高 いが、 白 色 度 70 程 度 の 再 生 紙 のコピー 用 紙 を 普 及 させようという 動 きもある。 上 質 紙に 塗 工 するとカオリンだけを 顔 料 として 使 用 した 場 合 は 白 色 度 は 低 下 する。このカオリンの 白 色 度 が 低 いためであるが、 一 般 には 塗 工 により 白 色 度 は 上 昇 する。印 刷 物 から 視 覚 的 に 得 られる 情 報 量 はインフォメーションキャパシティという 概 念 で 表現 されるが、これは 濃 度 階 調 数 n を 持 つ 印 刷 物 では 式 (8)で 表 現 されるエントロピーH の 最大 値 として 記 述 できる。H = log2n式 (8)これは 一 般 に 言 うビット 数 に 相 当 し、例 えば 256 階 調 の 場 合 はエントロピーは8 ビットということになる。インフォメーションキャパシティはその 印 刷 物 が 持ちうる 最 大 のエントロピーであり、 紙 やインキ、 印 刷 の 条 件 により 表 現 できる 階調 数 が 変 化 するため、 自 ずと 変 化 することになる。 実 際 には 空 間 周 波 数 、すなわち 画 像 の 細 かさ( 線 数 )が 異 なる 場 合 もインフォメーションキャパシティは 変 化する。 図 37 はインクジェットプリンタで4 種 類 の 用 紙 に 同 一 の 条 件 及 びその 用 紙に 最 適 な 条 件 を 使 って CMYKRGB100%で 印 字 した 場 合 の 印 字 面 の Lab値 を 分 光 測 光 器 で 測 定 し、インフォメーションキャパシティを 計算 した 結 果 を 示 す。 用 紙 の 優 劣 は白 色 度 だけではないが、 白 色 度 はこのインフォメーションキャパシティと 高 い 相 関 を 示 すことがわかる。2-6-2 不 透 明 度7650普 通 紙 スーパー 光 沢 紙 光 沢 フィルム959391 同 一 のドライバー最 適 化 ドライバー89白 色 度図 37 インクジェット 用 紙 のインフォメーションキャパシティと 白 色 度 の 関 係表 6 一 般 的 な 紙 の 白 色 度 。 塗 工 紙 は 上 質 紙 にそれぞれの 顔 料 だけを 使 い 片 面 塗 工 したものである。紙 白 色 度 (%)コピー 用 紙 89上 質 紙 (オフセット 印 刷 用 ) 82.5- 塗 工 紙 (カオリン13.0 g/m 2 ) 80.9- 塗 工 紙 ( 炭 酸 カルシウム15.2 g/m 2 ) 85.6新 聞 用 紙 55-60インクジェット 用 専 用 紙 ( 塗 工 面 ) 91紙 の 不 透 明 性 は、 両 面 印 刷 された 印 刷 物 で、 裏 面 にある 文 字 や 画 像 に 影 響 されることなく 表 面 にある 文 字 や 画 像 を 認 識 できるかどうかという 意 味 で 非 常 に 重 要 である。 紙 の 軽 量化 が 進 んでいる 中 で 不 透 明 性 をいかに 維 持 するかが 技 術 的 な 課 題 となっている。不 透 明 度 は 次 にように 定 義 される。 白 色 度 と 同 様 な 分 光 測 光 器 を 用 い、 緑 色 光 ( 正 確 には CIE イルミナント C 及 び CIE 等 色 関 数 y(λ)について 560nm を 中 心 に 一 定 の 幅 の 分 光 分 布を 持 つように 定 義 された 光 )を 一 枚 の 試 料 に 拡 散 照 射 したときの 反 射 率 ( 単 一 シート 視 感反 射 率 という)の、 十 分 不 透 明 なほど 厚 いか 又 は 十 分 な 枚 数 を 重 ねた 試 料 の 反 射 率 ( 固 有視 感 反 射 率 )に 対 する 比 率 を 百 分 率 で 表 した 値 。 白 色 度 同 様 、 従 来 法 では 一 つの 光 線 束 に878520


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)よる 45 度 照 明 ・0 度 受 光 のハンター 反 射 率 計 を 用 いて 測 定 を 行 い、 固 有 視 感 反 射 率 の 代 わりに 反 射 率 89% 白 色 板 によって 裏 当 てして 測 定 した 反 射 率 を 用 いて 不 透 明 度 を 計 算 するが、いずれこの 方 法 は 規 格 からはずれることになる。なお 緑 色 光 を 使 ったときが 最 も 視 覚 的 特性 と 合 うので 視 感 反 射 率 と 呼 ばれる。紙 は 軽 量 にも 関 わらず 比 較 的 不 透 明 性 の 高 い 材 料 である。 金 属 やセラミックほどではないが、プラスチックフィルムなどと 比 べる 裏 側 にあるものがよく 見 えないことからもわかる。これは 紙 の 中 に 非 常 に 空 隙 が 多 いためである。パルプ 繊 維 内 にもルーメンと 呼 ばれる空 孔 があり、また 繊 維 間 は 完 全 に 密 着 してi 0j 0いるわけではないので 隙 間 だらけの 構 造 x=0iを 持 っている。また、 塗 工 層 内 にはさらにj-j(S+K)dxiSdxx=x細 かい 無 数 の 空 隙 が 存 在 する。このような dxjKdxiKdx空 隙 のために 光 が 散 乱 されることは 前 にi-i(S+K)dx j述 べた 通 りであるが、 光 が 多 く 散 乱 されるx=Wi Wj Wと、1 枚 の 紙 の 反 対 側 に 透 過 する 光 の 量 がBacking少 なくなり、 必 然 的 にその 紙 の 不 透 明 度 は高 くなる。図 38 .Kubelka-Munk 理 論 を 説 明 する 紙 の 断光 を 散 乱 する 材 料 の 不 透 明 度 、 白 色 度 及 面 模 式 図 。び 光 の 透 過 率 の 関 係 は 次 に 示 すクベルカ-ムンク(Kubelka-Munk)の 式 で 説 明 される。 図 38 は 1 枚 の 紙 の 断 面 で、その 中 の 位 置 x に存 在 する 厚 さ dx の 層 を 光 が 通 過 する 場 合 を 考 える。 下 に 向 かう 光 束 i と 上 に 向 かう 光 束 jがこの 層 を 通 過 するときの 光 束 の 変 化 量 は、 下 方 を x 軸 の 正 の 向 きと 考 えると、それぞれ 上向 き、 下 向 きで 式 (9) 及 び 式 (10)のように 表 される。di = −( S + K ) idx + Sjdx式 (9)( S + K ) jdx Sidx− dj = − +式 (10)ここで、S: 比 散 乱 係 数 (m 2 /kg)、K: 比 吸 収 係 数 (m 2 /kg)、W: 坪 量 (g/m 2 )である。さらにこの 2 式 から、 式 (11) 及 び 式 (12)が 得 られる。2d i2 2= {( S + K ) + S }i2dx式 (11)2d j2 2= {( S + K ) + S }j2dx式 (12)この 2 つの 微 分 方 程 式 を 解 くための 境 界 条 件 を 次 のように 決 める。x=0 のとき、 i=i 0 , j=j 0 , R=j 0 /i 0x=W のとき、 i=i W , j=j W , R g =j W /i W (R g は 裏 当 ての 反 射 率 ), T=i W /i 0 (Tは 透 過 率 )x=∞のとき、 R=R ∞ (R ∞ は 白 色 度 )すると、 式 (13) 及 び 式 (14)のようなクベルカ-ムンクの 基 本 式 が 得 られる。−2bSWR∞( 1−RgR∞) − ( R∞− Rg) eR =−2bSW1−R R − R R − R e( 反 射 率 ) 式 (13)( ) ( )g∞∞∞g21


江 前 敏 晴 , 紙 の 基 礎 と 印 刷 適 性 (Part 1)2 −bSW( 1−R∞) e− bSW( 1−R R ) − R ( R − R ) eT2g ∞ ∞ ∞ g= ( 透 過 率 ) 式 (14)ここで、 b1 ⎛ 1⎜ − R2 ⎝ R∞=∞⎞⎟ である。⎠比 散 乱 係 数 S はその 紙 の 単 位 坪 量 あたりの 散 乱 能 力 を 示 す 指 標 になる。S が 大 きいほど 紙は 不 透 明 になる。 図 39 はトレーシングペーパーとプラスチックフィルムをそれぞれ 重 ねていき、2 種 類 の 反 射 率 の 異 なる 裏 当 てを 置 いたときの 反 射 率 からクベルカ-ムンク 式 を 利 用して 計 算 した 光 学 濃 度 ( 式 (4) 参 照 )と 比 散 乱 係 数 である。プラスチックフィルムの 光 学 濃度 (■)は 重 ねる 枚 数 に 比 例 して 増 加 していく。これはランベールの 法 則 に 一 致 するが、 比散 乱 係 数 が 0 の 時 に 成 り 立 つ 法 則 で、このプラスチックフィルムの 比 散 乱 係 数 (▲)は 約0.5 と、 非 常 に 小 さい。 一 方 、トレーシングペーパーは、 比 散 乱 係 数 ()が 約 8.0 であり、光 学 濃 度 (□)もシート 枚 数 には 比 例 しないことがわかる。 一 般 に 上 質 紙 の 比 散 乱 係 数 は、この 単 位 では 30~40 であり、また 塗 工 層は 150 程 度 である。この 応 用 として 塗 工 紙 の 塗 工 層 だけの白 色 度 及 び 比 散 乱 係 数 を 測 定 する 方 法 が2c − c − 4R∞=2( Rwhere c =g1+ R2)( R1Rg2−1)− ( R1+ RR R − R R1g22g1g 2)( R R2Measured optical densityg1 −1)and R1< R0.8ある。ただし、その 塗 工 紙 の 原 紙 と 同 種 の0.6Plastic film - Opt Dens 3Tracing paper - Opt Dens原 紙 を 手 に 入 れる 必 要 がある。この 方 法 を 0.4Plastic film - Scat Coef 2Tracing paper - Scat Coef以 下 に 示 す。まず 同 種 の 原 紙 に 黒 色 筒 ( 反 0.21射 率 0 と 見 なせるもの)あるいはきわめて0.00白 色 度 の 低 い 紙 などを 裏 当 てして 反 射 率 0 10 20 30 40を 測 定 しこれをR g1 とする。 次 に 白 色 度 のわかっている 標 準 板 (あるいは 白 色 度 の 高 い紙 )を 用 意 し、 同 種 の 原 紙 に 裏 当 てして 反Number of sheets stacked図 39 トレーシングペーパーとプラスチックフィルムの 光 学 濃 度 と 比 散 乱 係 数射 率 を 測 定 しR g2 とする。 同 じ 裏 当 てをそれぞれ 塗 工 紙 に 置 き、 反 射 率 を 測 定 しそれぞれR 1 、R 2 とする。この 4 つの 測 定 値 を 式 (15)に 代入 し 塗 工 層 だけの 白 色 度 R ∞ を 計 算 して 求 める。クベルカ-ムンクの 基 本 式 を 使 って 比 散 乱 係数 Sも 計 算 できる。このようにして 塗 工 層 のみの 白 色 度 と 比 散 乱 係 数 を 求 めることは 塗 工 量とは 無 関 係 にその 塗 工 層 の 光 学 特 性 を 決 定 できるほか、 同 種 の 塗 工 層 の 塗 工 量 が 異 なる 場合 の 塗 工 紙 全 体 の 白 色 度 を 予 測 できる 点 で 有 用 である。1.81.61.41.21.02式 (15)987654Specific light scattering coefficient, m 2 /kg22

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