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ONELIFE #38 – Japanese

Land Rover’s Onelife magazine showcases stories from around the world that celebrate inner strength and the drive to go Above and Beyond. New perspectives meet old traditions - these contrasts unite in the latest issue of ONELIFE. Together with Landrover we travelled around the globe. From the high-tech city of Shenzhen in China to the carnival subculture in Brazil to Wuppertal. We got to know one of the oldest space travelers, technology visionaries and watch lovers, just as the new Range Rover Evoque. An exciting journey through the world of yesterday, today and tomorrow.

Land Rover’s Onelife magazine showcases stories from around the world that celebrate inner strength and the drive to go Above and Beyond.

New perspectives meet old traditions - these contrasts unite in the latest issue of ONELIFE. Together with Landrover we travelled around the globe. From the high-tech city of Shenzhen in China to the carnival subculture in Brazil to Wuppertal. We got to know one of the oldest space travelers, technology visionaries and watch lovers, just as the new Range Rover Evoque. An exciting journey through the world of yesterday, today and tomorrow.

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<strong>ONELIFE</strong><br />

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I S S U E 1 2019


それぞれの 分 野 のパイオニアであるクラークスとランドローバーの、 絶 え 間 ない 進 化 の 歴 史 。<br />

固 定 観 念 を 打 ち 破 り、 履 く 人 や 乗 る 人 へ 限 界 を 超 える 力 を 与 えてきた、その 蓄 積 を 活 かすこと。<br />

この 共 通 の 目 的 からLife.Limitlessコレクションは 生 まれた。 大 都 会 からそのまま 大 自 然 の 中 へ 分 け<br />

入 るための、 工 夫 が 詰 まったフットウェア。 限 界 のない 人 生 を 送 るためのコレクション。<br />

自 分 自 身 の 世 界 を 取 り 戻 せ。<br />

CLARKS.CO.JP<br />

クラークスジャパン 公 式 オンラインストアにて 限 定 販 売


CLR52.N<br />

GRIP<br />

ENVIRONMENT<br />

STABILITY<br />

地 面 の 乾 湿 に 関 わらず 最 適 なグリッ<br />

プ 力 を 発 揮 。ラバーの 密 度 を 精 密<br />

に 調 整 したモジュール 構 造 のソール<br />

と、 特 徴 的 なアウトソールの 突 起 が<br />

高 い 耐 滑 性 を 実 現 。<br />

頑 丈 さ、ゴアテックス 製 ならでは<br />

の 防 水 性 、 強 化 された 通 気 性 。<br />

街 でもオフロードの 冒 険 でも 活 躍<br />

できる 設 計 。<br />

細 かく 調 整 されたミッドソールが<br />

地 形 に 合 わせてしなやかに 反 発 し、<br />

足 へとエネルギーを 還 元 。ヒールス<br />

タビライザーによりポジショニン<br />

グも 安 定 。<br />

その 世 界 は、 探 索 されるのを 待 っている。


Clear space around logotype = 1.5*X<br />

savoirbeds.com<br />

London Paris New York Düsseldorf Moscow Berlin Shanghai Hong Kong Seoul Taipei


表 紙 : MICHAEL SCHNABEL 写 真 : GREG WHITE<br />

W E L C O M E<br />

ISSUE 1 2019<br />

人 行 かぬ 道 を 行 けば・・・<br />

『<strong>ONELIFE</strong>』マガジンは、 今 号 もランドローバーの 名 にふさわしい 示 唆 に 富 むストーリーを 数 多 く 収 録 。「ABOVE AND<br />

BEYOND(さらなる 高 みへの 挑 戦 )」の 世 界 へと 皆 さまを 誘 います。<br />

革 新 的 な 中 国 の 環 境 都 市 、またブラジルの 興 味 深 いサブカルチャーの 記 事 では、 世 界 の 多 様 なパラダイムをお 届 けしています。<br />

栄 光 に 包 まれた 米 国 人 宇 宙 飛 行 士 や、 英 国 トップのファッションモデル 兼 活 動 家 へのインタビュー 記 事 も 見 逃 せません。<br />

好 奇 心 をかきたてる、ランドローバーのモデルも 掘 り 下 げます。 新 型 レンジローバー イヴォークの 全 貌 をつまびらかにするドラ<br />

イブや、レンジローバー ヴェラールとレンジローバー スポーツ PHEV での 刺 激 的 な 体 験 のほか、 待 望 の 新 型 ランドローバー ディ<br />

フェンダーが 本 誌 初 登 場 。 心 の 奥 深 くに 眠 っていた 冒 険 心 が、 目 を 覚 ますことでしょう。 今 号 も、どうぞお 楽 しみください。<br />

5


XXXXXXX LEFT<br />

08 26<br />

C O N T E N T S<br />

ISSUE 1 2019<br />

08_レコメンド<br />

新 たに 誕 生 した 高 級 ホテル、<br />

ユニークな 世 界 のイベント、<br />

旅 行 の コ ツ、トレンド な ど 。<br />

本 誌 がキュレートする<br />

「 見 て、 試 して、 体 験 したい」<br />

最 新 情 報 。<br />

20_プレビュー<br />

世 界 が 待 ち 望 むSUVが<br />

帰 ってくる 。まも なく 登 場 する<br />

新 型 ランドローバー<br />

ディフェンダーの<br />

試 験 走 行 の 様 子 を<br />

初 披 露 する。<br />

22_ 最 新 モデル<br />

初 代 レンジローバー<br />

イヴォークの 成 功 には<br />

デザインが 大 きく 寄 与 した。<br />

さらなる 進 化 を<br />

遂 げようとしている<br />

最 新 モデルの 詳 細 。<br />

26_ドライブ<br />

活 気 あるギリシャの 首 都<br />

アテネを 舞 台 に、<br />

モータージャーナリストの<br />

ケン・ギブソンが<br />

新 型 イヴォークを<br />

最 速 レポート。<br />

32_パーソナリティ<br />

自 然 体 でクール、 先 鋭 的 。<br />

英 国 トップのファッション<br />

モデルで、ロンドンを 愛 する<br />

アジョワ・ア ボ アー が 、<br />

大 切 にしていること、<br />

ロンドン 愛 について 語 る。<br />

34_デザイン<br />

カリフォルニアで 名 高 い<br />

モダニズム 建 築 家<br />

リチャード・ノイトラ。<br />

ドイツ 西 部 の 森 に 佇 む<br />

ユニークなプロジェクトを<br />

ヴェラールで 訪 ねる。<br />

40_ 遠 征<br />

栄 光 ある 探 検 家<br />

ラヌルフ・ファインズ が<br />

1969 年 のナイル 川 探 検 を<br />

再 現 。 俳 優 で 甥 のジョセフ・<br />

ファインズとランドローバー<br />

ディスカバリーを 従 える。<br />

44_ 探 検 家<br />

月 面 を 歩 いた 人 物 のうち<br />

存 命 するのはわずか4 人 。<br />

人 類 初 の 月 面 着 陸 から<br />

50 年 を 迎 える 今 、<br />

その 一 人 である 宇 宙 飛 行 士<br />

チャーリー・デュークに 会 う。<br />

48_ 開 拓 地<br />

宇 宙 への 個 人 旅 行 は<br />

もはやSF 小 説 ではない。<br />

宇 宙 観 光 旅 行 という 壮 大 な<br />

冒 険 に 挑 むヴァージン・<br />

ギャラクティックの<br />

計 画 に 注 目 する。<br />

50_トラベル<br />

中 国 製 から「 中 国 創 」へ。<br />

変 化 をけん 引 する<br />

深 センの 野 心 家 たちに<br />

レンジローバー スポーツ<br />

PHEVを 走 らせて<br />

会 いに 行 く。<br />

58_クラフトマンシップ<br />

高 級 腕 時 計 のカスタマイズ<br />

という 急 成 長 事 業 を 営 む<br />

ジョージ・バンフォード。<br />

ランドローバーに<br />

ほれ 込 む 彼 に、<br />

オフロードでインタビュー。<br />

62_カルチャー<br />

高 名 なリオのカーニバル。<br />

そのきらめきの 裏 で<br />

独 自 に 発 達 した 庶 民 たちの<br />

サブカルチャーがある。<br />

映 像 作 家 のベン・ホルマンが<br />

語 るバテ・ボラの 魅 力 。<br />

写 真 : VANDER ARMANDO, STUDIO SCHNABEL, STEFEN CHOW, NEIRIN JONES<br />

Editor in Chief David Barnwell Senior Editor Sachin Rao Senior Art Director Dan Delaney Art Editor Salman Naqvi Designer Thomas Saible Photo Director Elina Gathof<br />

Production Director Marie Bressem Business Director Moray McLaren Account Manager Adrianna Juraszek Market and Production Manager Hannah McDonald<br />

MD Production Unit Dr. Markus Schönmann. For Land Rover: Marketing Communications Senior Manager Jim Matthews Marketing Communications Manager Hannah Dixon<br />

6


RIGHT XXXXXX<br />

50 62<br />

66_ 遺 産<br />

さびついた 古 い<br />

レンジローバーを 発 見 した<br />

ランドローバー<br />

クラシックワークス。<br />

この 車 に 秘 められた<br />

76_エッセイ<br />

大 地 の 下 には 最 高 の 物 語 が<br />

存 在 する。そう 主 張 する<br />

化 石 ハンター、<br />

ケネス・ラコバラが<br />

生 き 生 きとした 独 特 の 語 りで<br />

寄 稿 者<br />

ミヒャエ ル・シュナー ベ ル<br />

受 賞 歴 のあるドイツ 人 風 景 写 真 家 。 独 特 な 視 覚 スタイルで、<br />

ドラマチックな 景 観 を 見 事 に 切 り 取 る。<br />

今 号 ではアテネで 新 型 レンジローバー イヴォークを 撮 影 し、<br />

街 との 調 和 と 魅 力 を 巧 みに 表 現 。<br />

驚 きの 軌 跡 をたどる。<br />

70_ 革 新<br />

美 しいデザインと<br />

革 新 的 思 考 が 混 じり 合 うと<br />

レガシーが 生 まれる。<br />

私 たちを 地 球 深 くへと 誘 う。<br />

78_コラム<br />

極 地 探 検 家 として 活 躍 する<br />

ベン・ソーンダースが<br />

相 棒 ランドローバー<br />

バイシャリ・ディナカラン<br />

ベルリンを 拠 点 とする 著 名 なインド 人 モータースポーツ<br />

ジャーナリスト。 先 頃 、ギルド・オブ・モータリング・<br />

ライターズから 賞 を 受 ける。 心 を 揺 さぶる 情 熱 的 な 描 出 に 長 け、<br />

今 号 では 米 国 人 宇 宙 飛 行 士 チャーリー・デュークにインタビュー。<br />

ランドローバーBORN<br />

アワードの 最 新 の<br />

受 賞 者 たちを 称 えよう。<br />

74_パイオニア<br />

ワスフィア・ナズリーンは<br />

ディスカバリーとの 旅 を<br />

振 り 返 り、 自 分 好 みの<br />

冒 険 とは 何 かを 探 る。<br />

ル ー ク・ポ ンスフォード<br />

ロンドンを 拠 点 とするライフスタイル&モータリングライター。<br />

自 動 車 、 腕 時 計 、クラシックデザインに 夢 中 な 彼 が、<br />

今 号 はレンジローバー ヴェラールでモダニズム 建 築 を 訪 れ、、<br />

車 好 きのウォッチカスタマイザーにインタビューした。<br />

山 に 登 る。 荘 厳 な 七 大 陸<br />

最 高 峰 だけではなく、<br />

社 会 問 題 という 困 難 な<br />

山 にも 。 強 い 情 熱 を 持 つ<br />

登 山 家 ・ 活 動 家 に 会 う。<br />

ステフェン・チョー<br />

北 京 を 拠 点 に 活 動 するマレーシア 生 まれの 写 真 家 。<br />

作 品 はグローバルブランドの 広 告 写 真 から 個 人 的 な 連 作<br />

「 社 会 的 良 心 からのプロジェクト」まで 幅 広 く、 評 価 は 高 い。<br />

今 号 では、 深 センでの 旅 物 語 に 命 を 吹 き 込 んでいる。<br />

ランドローバーの『<strong>ONELIFE</strong>』マガジンは、Land Rover(Abbey Road, Whitley, Coventry CV3 4LF)の 代 理 として、Spark44 Ltd.(The White Collar Factory, 1 Old Street Yard, London EC1Y 8AF)が 発 行 して<br />

います。Copyright Spark44 Ltd. 2019. All rights reserved. 出 版 社 の 書 面 による 許 可 なく 全 体 、または 一 部 を 複 製 することは 禁 止 されています。 本 誌 に 表 明 されている 意 見 などはランドローバーのものではなく、 執 筆 者<br />

の も の と な り ま す 。『 <strong>ONELIFE</strong>』マガジンに 掲 載 のコンテンツ 作 成 にあたっては 万 全 を 期 していますが、 仕 様 、 機 能 、 装 備 が 変 更 される 場 合 や 国 によって 異 なる 場 合 があります。 立 ち 入 りが 制 限 されている 区 域 でのビデオや<br />

写 真 の 撮 影 にあたっては、 必 要 な 許 可 を 得 た 上 で 行 っています。また 記 載 の 情 報 は、 印 刷 時 において 最 新 のものとなります。ランドローバーの 車 両 についてのお 問 い 合 わせは、お 近 くのランドローバー 正 規 ディーラーにお 願 い<br />

します。 本 誌 では、 正 規 の 手 続 きを 踏 まない 原 稿 、 写 真 、イラストなどは 受 け 付 けておりません。また、それらに 対 して 一 切 の 責 任 を 負 いかねます。<br />

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PATHFINDER<br />

-<br />

内 なる 世 界 を 探 る<br />

-<br />

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アイスランドと 言 えばブルーラグーン。 青 みがかっ<br />

た 乳 白 色 のお 湯 は、 火 山 島 ならではの 自 然 エネル<br />

ギーを 利 用 し、 地 熱 発 電 で 温 められている。ゴツゴ<br />

ツとした 岩 肌 に 覆 われた 風 景 と、ブルーの 温 泉 から<br />

穏 やかに 湯 気 が 立 ち 上 がっている 様 子 は、まさにイ<br />

ンスタグラム 時 代 の 絶 景 スポットである。だが、ブ<br />

ルーラグーンはただ 美 しいだけではない。ミネラル<br />

を 豊 富 に 含 む 温 水 と 泥 が 健 康 を 促 進 するとも 言 われ<br />

ているのだ。そして 今 、スパ、レストラン、シリカ・<br />

ホテルなど 当 初 からの 施 設 に、ホテル「ザ・リトリー<br />

ト・アット・ザ・ブルーラグーン」が 新 しく 加 わった。<br />

写 真 : BLUE LAGOON ICELAND<br />

削 ぎ 落 としのデザインで<br />

絶 景 に 心 洗 われる<br />

洗 練 されたエレガンスを 感 じ<br />

世 界 最 大 のスパにステイ させるラグジュアリーな 新 施<br />

設 だ。 火 山 島 らしい 起 伏 あ<br />

る 景 観 に 半 ば 隠 れるように 建 てられたホテルは、 流<br />

れる 水 や 露 出 した 溶 岩 など 自 然 の 要 素 を 取 り 込 んで<br />

いるため、 視 覚 的 な 調 和 と 豊 かな 質 感 を 楽 しめると<br />

同 時 に、 環 境 への 負 荷 も 少 ない。 全 62 室 のスイー<br />

トルームは、 壁 一 面 に 広 がる 窓 から 絶 景 を 享 受 でき<br />

る、 落 ち 着 いた 空 間 だ。 広 さ60 平 方 メートルのラ<br />

グーン・スイート(1 泊 1,950 ポンド= 約 27 万 円 か<br />

ら)では、 広 いテラスとラグーン 内 の 専 用 スペース<br />

を 利 用 できる。1 日 の 締 めくくりは、ホテルの 高 級 レ<br />

ストラン「モス」で、 新 鮮 な 地 元 の 産 物 や 旬 の 素 材<br />

を 使 った 美 食 を 堪 能 しよう。 心 も 身 体 もすっかり 清<br />

められることだろう。www.bluelagoon.com<br />

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P<br />

写 真 : IAN BEATTIE/AUSCAPE/CONTRIBUTOR/GETTY IMAGES<br />

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バラード 湖 へ 50 人 ばかりの 見 知 らぬ<br />

アートエスケープ 人 たち、それも「 鉄 人 」と<br />

一 緒 にキャンプする 休 暇 は<br />

いかがだろうか? 西 オーストラリアの 広 大<br />

な 自 然 の 中 に 位 置 する、ゴールドラッシュ<br />

時 代 の 小 さな 町 メンジーズ。そこから 50<br />

キロ 離 れた 塩 湖 、バラード 湖 に、 著 名 な 彫<br />

刻 家 アントニー・ゴームリーによる 鋼 の 人<br />

体 像 が51 体 立 てられている。シュールな<br />

像 をちりばめた 不 思 議 なアートに 触 れる 時<br />

間 は、 冒 険 のハイライトにもなりうるだろ<br />

う。 像 を1 体 1 体 めぐるには 数 時 間 かかる<br />

が、この 塩 湖 は 車 両 禁 止 。 静 寂 の 中 を 歩<br />

いてまわる 趣 向 だ。ためらわず、ぜひ 訪 ね<br />

てみてほしい。 美 しい 大 地 と 空 が 迎 えてく<br />

れるキャンプに、きっと 満 足 感 を 覚 えるは<br />

ずだ( 指 定 エリアのみ)。 十 分 な 水 と 薪 をお<br />

忘 れなく。lakeballard.com<br />

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The Pioneers Of High Resolution Audio


EXPERIENCE SOUND<br />

ON THE MOVE<br />

LIKE NEVER BEFORE<br />

We are the pioneers of high resolution audio and proud partners<br />

with Jaguar Land Rover. Our shared passion for quality, luxury and<br />

innovation drives us to create the most immersive sound whilst on<br />

the move. The twists, the turns and the rhythm of the road ahead.<br />

Each album, every song, in authentic and exceptional detail.<br />

meridian-audio.com


XXXXXXX LEFT<br />

P<br />

世 界 のイベント<br />

ノ ル ウ ェ ー の「 S A L T 」<br />

通 年<br />

ノルウェー 北 部 ヌールラン 県 で 始 まっ<br />

たアート・フェスティバルがオスロに<br />

進 出 。 開 催 期 間 は2020 年 まで。ノ<br />

ルウェーの 漁 師 が 使 う 伝 統 的 な 魚 干<br />

し 棚 から 着 想 を 得 た、 三 角 形 の 木 造<br />

建 築 物 で、 巨 大 サウナや 展 示 会 、ラ<br />

イブなどを 楽 しめる。salted.no<br />

サーディン・ラン<br />

5〜7 月<br />

南 アフリカ 沖 で 生 まれた 何 十 億 匹 と<br />

いうイワシが、 捕 食 者 から 逃 げなが<br />

ら 何 キロも 続 く 群 れとなって 東 海 岸<br />

を 北 上 する。この 大 移 動 はまさに 地<br />

球 上 で 最 も 壮 大 な 海 中 ショーでもあ<br />

る。ダイビングやスノーケリングで<br />

観 賞 するツアーに 参 加 してみよう。<br />

ユーコン 1000<br />

6 月<br />

2020 年 開 催 の 世 界 最 長 カヌー・レー<br />

スの 登 録 が 始 まる。ユーコン 川 を 下<br />

り、カナダ 極 北 からアラスカへ 入 って<br />

北 極 圏 の ゴ ー ル を 目 指 す 、 全 長 1 , 6 0 0<br />

キロメートルのレース。 世 界 中 から<br />

参 加 者 が 集 まる 究 極 のカヌー・フェス<br />

ティバルだ。yukon1000.org<br />

モ ン ゴ ル の 祭 典 「 ナ ー ダ ム 」<br />

7 月<br />

モンゴルの 国 技 である 相 撲 、 競 馬 、<br />

弓 射 という3 つの 競 技 が 行 われる 同<br />

国 最 大 の 祭 りが「ナーダム」。モンゴ<br />

ル 各 地 で 催 されるが、 首 都 ウランバー<br />

トルの 大 会 が 最 も 盛 大 だ。 詳 細 は<br />

ウェブサイトでチェック。<br />

naadamfestival.com<br />

写 真 : ENDRE LOHNE, DOUG PERRINE/GETTY IMAGES,<br />

JAY DICKMAN/CONTRIBUTOR/GETTY IMAGES, JACK TAYLOR/GETTY<br />

IMAGES, JODHPUR RIFF/OIJO, ENTE FIERA DEL TARTUFO <strong>–</strong> FOTO<br />

DAVIDE CARLETTI, DOGWALK(2015)/MAELLA JAARSMA<br />

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グチャ 音 楽 祭<br />

8 月<br />

セルビアの 小 さな 町 グチャで 開 催 され<br />

るブラスバンドの 音 楽 祭 。 多 くのバン<br />

ドが 各 地 から 参 加 し、ジプシー 音 楽 の<br />

影 響 を 受 けたバルカン 音 楽 が 町 中 にけ<br />

たたましく 鳴 り 響 く。トランペッターが<br />

トップの 座 を 競 うことでも 知 られる。<br />

gucafestival.rs<br />

ジョードプルの 音 楽 祭<br />

10 月<br />

インドの 都 市 ジョードプルにある 巨 大<br />

なメヘラーンガル 城 内 で 開 催 されるラ<br />

ジャスタン 国 際 フォーク・フェスティバ<br />

ルでは、 伝 統 音 楽 やクラシック・アン<br />

サンブル、 国 外 アーティストの 共 演 が<br />

見 どころ。 後 援 者 であるサー・ミック・<br />

ジャガーも 大 ファン。jodhpurriff.org<br />

アルバ のトリュフ 祭 り<br />

瀬 戸 内 国 際 芸 術 祭<br />

10 〜 11 月<br />

11 月 まで<br />

イタリアはピエモンテ 州 アルバ。この 小 3 年 に 一 度 、 瀬 戸 内 海 に 点 在 する 美 しい<br />

さな 街 に 世 界 のトップシェフたちが 寄 り 島 々で 開 催 される 瀬 戸 内 国 際 芸 術 祭 で<br />

集 まる 頃 、 白 トリュフの 旬 が 始 まる。 祭 は、 建 物 や 風 景 の 中 に 現 代 アートを 融<br />

りの 目 玉 は 招 待 制 のオークションだが、 合 させることで 海 の 復 権 を 訴 え、 地 域 の<br />

一 般 客 も 毎 週 末 開 催 される 市 場 で 購 入 活 性 化 を 願 う。「ふれあう 春 」「あつまる<br />

可 能 。たくさん 並 ぶ 関 連 商 品 の 試 食 もで 夏 」「ひろがる 秋 」の3 期 構 成 。<br />

きる。fieradeltartufo.org<br />

setouchi-artfest.jp<br />

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alanmcsmith.weebly.com<br />

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YOUTUBE “ALAN MCSMITH ELEPHANT ENCOUNTER1“, SHUTTERSTOCK/KENTOH, SHUTTERSTOCK/FRIMUFILMS<br />

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wineofmoldova.com<br />

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P<br />

「 人 生 の 最 高 の 瞬 間 を 捉 えたい。そう 思 って 写 真 を 仕 事 に 選 んだんだ」。イヴァンダー・ファウジー・ア<br />

ルマンドはそう 語 る。 彼 のインスタグラムのアカウント(@familywithnature)を 見 れば、そうした 瞬<br />

間 がどのようなものかが 分 かるだろう。 現 在 26 歳 、 愛 称 ヴァンダー。 彼 が 生 み 出 す 美 は 際 立 っている。<br />

インスタグラムのフィード 上 でもすぐに 目 に 飛 び 込 んでくる。テーマは 大 自 然 や 壮 大 な 屋 外 の 景 観 。 暖 か<br />

い 色 合 い、 見 事 な 反 射 、ドローンによる 圧 巻 の 空 撮 が 作 品 に 輝 きをもたらす。ほと<br />

社 会 とつながるレンズ んどは 母 国 インドネシアの 風 景 だ。もう 一 つよく 登 場 するテーマは 家 族 。 妻 と 娘 た<br />

@FAMILYWITHNATURE ちはたびたび 被 写 体 になり、 投 稿 に 極 めてパーソナルな 趣 を 添 えている。「カメラ<br />

を 持 って 家 族 旅 行 するのが 大 好 きなんだ。 一 緒 に 経 験 する 忘 れられない 瞬 間 を 記<br />

録 して、 世 界 と 共 有 したい」。インスタグラムで 名 声 を 獲 得 し 始 めたのは7 年 前 、まだ 料 理 人 として 働 いて<br />

いたときのことだ。 娘 とハイキング 旅 行 に 行 ったとき、こうして 家 族 と 大 切 な 時 間 を 過 ごしながら 写 真 へ<br />

の 情 熱 を 同 時 に 満 たすことにチャンスを 見 出 した。そしてインスタグラムへの 投 稿 を 真 剣 に 始 めたのだ。<br />

今 では1 万 2,000 人 を 超 えるフォロワーが、 写 真 と 家 族 に 対 するヴァンダーの 熱 い 想 いを 共 有 している。<br />

写 真 : VANDER ARMANDO<br />

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旅 の 準 備 は<br />

いつでも 万 端<br />

shop.landrover.com<br />

お 近 くの 販 売 店 をご 訪 問 いただくか、shop.landrover.comでコレクションをご 覧 ください。


NEW MODELS<br />

W A T C H<br />

T H I S<br />

S P A C E<br />

新 型 ランドローバー ディフェンダー。<br />

世 界 中 が 強 く 待 ち 望 んでいる 車 が<br />

いよいよローンチされる。<br />

登 場 を 前 に 興 奮 は 高 まるばかりだ。<br />

ディフェンダーは 世 界 中 で 最 も 愛 され、 先 駆 的 なオールテレイ<br />

ン 性 能 を 備 えたランドローバー シリーズをそのまま 引 き 継 ぐモデ<br />

ルだ。その 系 統 はアイコニックなフォルムと 鋼 のような 頑 丈 さの 両<br />

方 に 現 れ、 何 十 年 経 っても 未 だ 現 役 の 車 を 路 上 で( 当 然 オフロー<br />

ドでも) 目 にするほどである。 農 場 からアウトバック、 都 会 のジャ<br />

ングル、サファリパークまで、ディフェンダーは 世 界 を 舞 台 に 活 躍<br />

する SUVの 象 徴 なのだ。<br />

だからこそ、 今 年 後 半 に 予 定 される 新 型 ランドローバー ディフェ<br />

ンダーのローンチは 一 大 イベントなのである。ランドローバーにとっ<br />

てだけではない。 世 界 中 の 何 百 万 人 という 愛 好 家 にとっても。ラ<br />

ンドローバーでは 現 在 、 新 型 ディフェンダーが 初 代 と 同 じくらいの<br />

ゲームチェンジャーになるよう 全 力 を 挙 げている。 現 代 に 合 わせ<br />

て 進 化 していると 同 時 に、 能 力 の 面 での 妥 協 は 一 切 ない。それは<br />

写 真 のような 米 国 での 試 験 走 行 の 様 子 からも 一 目 瞭 然 だ。 現 在 プ<br />

ロトタイプが 世 界 のあちこちで 極 限 まで 試 験 されている。スウェー<br />

デンはアリエプローグの 凍 える 寒 さの 中 で、 米 国 ユタ 州 の 岩 場 の<br />

暑 さや 英 国 イーストナーの 特 別 に 設 計 された 試 験 用 サーキットで。<br />

新 型 ディフェンダーは、 並 外 れたオールテレイン 性 能 と、 目 的<br />

にかなった 耐 久 性 の 高 いデザインを 備 えた、 新 世 代 のための「ど<br />

こにでも 行 ける 車 」になるだろう。 同 様 に、 残 りの 人 生 の 挑 戦 に<br />

も 落 ち 着 き 払 って 取 り 組 むに 違 いない。 冷 静 かつ 自 信 に 満 ちた 強<br />

さを 見 せる、あの 典 型 的 なディフェンダーの 流 儀 で。<br />

新 型 ディフェンダーのローンチは 数 ヵ 月 後 。 次 号 で 紹 介 する 詳<br />

細 情 報 を 楽 しみにしていてほしい。<br />

写 真 : NICK DIMBLEBY<br />

20


21


NEW MODELS<br />

S M O O T H<br />

掲 載 モデルはファーストエディション 限 定 のノリータグレー。<br />

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O P E R A T O R<br />

すでに 都 会 のアイコンであるレンジローバー イヴォークが、 進 化 した。<br />

デザインの 傑 作 として 揺 るぎない 評 価 を 得 る 一 方 で、サステナビリティと<br />

テクノロジーについては、 新 たなベンチマークを 打 ち 立 てている。<br />

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NEW MODELS<br />

レンジローバー イヴォークをあらゆる 都 市 の 街 角 で 見 かける<br />

ようになった 昨 今 、その 独 創 性 をつい 忘 れがちだ。 急 進 的 なコ<br />

ンセプトカー「LRX」のラインを 忠 実 に 体 現 した、 初 代 レンジ<br />

ローバーイヴォーク。2011 年 にローンチした 後 、たちまち 大 成<br />

功 をおさめた。 刺 激 があふれる 都 会 にあっても、ひときわ 目 を 引<br />

くフォルム。コンパクトな 佇 まいの 中 に 漂 う 高 級 感 。 魅 力 的 な 都<br />

市 型 SUVという 新 たなセグメントを 開 拓 し、 若 い 購 入 層 にア<br />

ピールしたイヴォークは、ランドローバーだけではなく 業 界 全 体<br />

にとっても 真 のゲームチェンジャーだった。タイムレスなはずの<br />

デザインが2 年 もすれば 時 代 遅 れに 見 えることが 多 い 業 界 にあっ<br />

ては、 画 期 的 といえる。すでに 販 売 台 数 が 80 万 台 近 くに 上 り、<br />

ここ10 年 における 偉 業 ともなっている。ランドローバーではイ<br />

ヴォークの 成 功 以 降 、モデル 作 りの 中 核 にデザインを 据 えるとい<br />

う 変 革 が 起 きている。もちろん、ブランドの 伝 説 的 な 能 力 も 維<br />

持 しながら。このように、イヴォークは 太 刀 打 ちすることが 難 し<br />

い 車 だ。だからこそ、 新 型 レンジローバー イヴォークはこのゲー<br />

ムをまったく 新 しいレベルへと 自 ら 引 き 上 げる 必 要 があったのだ。<br />

エクステリアデザインでは、 一 目 でそれと 分 かる 初 代 のフォル<br />

ムをベースに、 流 れるようなルーフラインと 後 方 に 向 かって 上 昇<br />

するウエストラインの 独 自 シルエットをさらに 洗 練 させた。 装 備<br />

もフラッシュデプロイアブルドアハンドル、フロントとリアの 超 ス<br />

リムなマトリックス LED ライト *、シーケンシャルターンランプ *<br />

を 完 備 。 一 方 、インテリア 素 材 にはクヴァドラのプレミアムテキ<br />

スタイル、ディナミカのスエードクロスなど 一 流 ブランドによる 環<br />

境 に 配 慮 したオプションを 用 意 。 全 長 4.37メートルとコンパクト<br />

であるにもかかわらず 後 部 座 席 のニールームは80パーセント、<br />

ラゲッジスペースは10 パーセント 拡 大 し、 穏 やかな 幸 福 感 が 漂 う。<br />

インテリアには、コネクティビティやインターフェースの 最 新<br />

テクノロジーを 搭 載 している**。スマートフォンにはApple<br />

CarPlay*、インターネットには 4G Wi-Fi* ホットスポット、 車<br />

にはInControlリモートアプリを 使 って 接 続 。ツインタッチスク<br />

リーンのTouch Pro Duoシステム *によって、 直 感 的 に 操 作 で<br />

きる。スマートセッティング *はAIのアルゴリズムを 使 用 してド<br />

ライバーの 好 みを 学 習 し、 出 かける 前 にキャビンを 準 備 する。<br />

ドライバーアシスト 機 能 やアクティブセーフティ 技 術 も、 当 然 な<br />

がら 装 備 している。<br />

アーキテクチャは 一 新 され、よりスムーズで 静 かな 走 りに 磨<br />

きをかけている。インジニウムエンジンはガソリンエンジンと<br />

ディーゼルエンジンの 両 方 を 用 意 、48 ボルトのマイルドハイブ<br />

リッドオプションもある。またストップ/スタートシステム( 時 速<br />

16 キロ 未 満 でエンジンが 停 止 し、バッテリー 走 行 に)の 改 良 で<br />

燃 費 も 向 上 している † 。2019 年 後 半 には 効 率 性 の 高 いインジニ<br />

ウム 3 気 筒 ガソリンエンジンとフル EV 走 行 が 可 能 なプラグイン<br />

ハイブリッド(PHEV)も 登 場 する。<br />

ハンドリングは 俊 敏 性 と 反 応 性 を 高 め、 都 会 の 狭 い 道 路 を 走<br />

行 するのに 理 想 的 だ。 新 型 イヴォークをアテネで 走 らせたモー<br />

タージャーナリストのケン・ギブソンの 体 験 レポートは、 次 の 記<br />

事 でご 覧 いただきたい。<br />

「イヴォークの 個 性 は、 洗 練 されていること、<br />

楽 しさを 感 じられることにあります。オーナーと<br />

車 との 間 の 感 情 的 なつながりも 強 まるでしょう。<br />

これは 極 めて 重 要 な 要 素 です」<br />

ジェリー・マクガバン(チーフデザインオフィサー)<br />

この 車 、 死 角 なし。<br />

新 型 レンジローバー イヴォークは、 革 新 的 なテクノロジーによって 視 認 性 が 向 上 し<br />

ている。 世 界 初 となる「クリアサイトグラウンドビュー」 * †† を 搭 載 することで、ボンネッ<br />

ト 下 180 度 の 映 像 をタッチスクリーンで 確 認 できる。このテクノロジーは、オフロー<br />

ド 走 行 はもちろん、せまい 場 所 での 駐 車 や 高 い 縁 石 の 脇 を 抜 けるときなどに 役 立 つ。<br />

ランドローバー 初 採 用 の「クリアサイトインテリアリアビューミラー」は、リアの 視 認<br />

性 が 悪 いときに 活 躍 する。スイッチを 入 れると、 車 体 後 方 のカメラで 撮 影 した 映 像 が<br />

ルームミラーに。 鮮 明 な 高 解 像 度 で、 視 野 角 は 通 常 の 倍 となる 50 度 と 広 い。 暗 がり<br />

でも、 優 れた 視 認 性 をもたらす。<br />

*オプション 装 備 ** 車 内 機 能 は、 安 全 が 確 保 された 状 態 でご 利 用 ください。ドライバーは、 常 に 車 両 を 安 全 に 制 御 できる 状 態 にある 必 要 があります。 †† 360° サラウンドカメラの 一 部 としてご 用 意 しています。 † WLTPの 燃 料 消 費 率 ( 複 合 、MPG、カッコ 内 はL/100km):<br />

TEL 6.3(44.9)、TEH 9.9(28.5)。CO2 排 出 量 ( 複 合 、g/km):TEL 165、TEH 224。 数 値 はWLTPモードのもの。WLTP( 乗 用 車 等 の 国 際 調 和 排 出 ガス・ 燃 費 試 験 法 )は 新 しい 欧 州 公 式 試 験 で、 乗 用 車 の 標 準 の 燃 料 消 費 とCO2 排 出 量 を 算 出 する 試 験 手 順 です。<br />

燃 料 消 費 、 電 気 エネルギー 消 費 、 走 行 距 離 、CO2 排 出 量 を 測 定 し、 実 際 の 走 行 に 近 い 数 値 を 算 出 するよう 設 計 されています。オプション 装 備 、およびより 厳 しい 試 験 手 順 や 走 行 状 態 でも 試 験 されます。TEL(テストエネルギー: 低 )とTEH(テストエネルギー: 高 )は、WLTPテスト 測 定<br />

値 の 範 囲 を 表 します。TELはオプション 装 備 の 合 計 重 量 が 最 も 軽 い 場 合 の 数 値 であり、CO2 排 出 量 は 最 小 、 燃 料 消 費 率 は 最 高 となります。TEHはオプション 装 備 の 合 計 重 量 が 最 も 重 い 場 合 の 数 値 であり、CO2 排 出 量 は 最 大 、 燃 料 消 費 率 は 最 低 となります。<br />

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フラッシュデプロイアブルド<br />

アハンドルからスリムなヘッド<br />

ライトまで、 新 型 レンジロー<br />

バー イヴォークのすべての 要<br />

素 が、 個 性 的 なフォルムを 見<br />

事 に 形 作 っている。<br />

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GREEK<br />

GODDESS<br />

都 会 のジャングルを 走 るにふさわしい<br />

新 型 レンジローバー イヴォーク。<br />

伝 統 と 先 進 を 力 強 く 融 合 し、<br />

街 を 魅 了 する 新 たな 個 性 を<br />

不 朽 の 都 市 アテネで 考 察 する。<br />

文 : K E N G I B S O N<br />

写 真 : M I C H A E L S C H N A B E L<br />

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27


アテネほど 豊 かな 遺 産 と 現 代 性 が 見 事 に 溶 け 合 っている 都<br />

市 は 珍 しい。ここはヨーロッパ 文 化 発 祥 の 地 だ。 古 代 遺 跡 アク<br />

ロポリスの 丘 には、パルテノン 神 殿 の 麗 姿 が 見 える。 同 時 に 現<br />

代 のスタイルを 持 ち、 新 鮮 なエネルギーに 満 ちた 都 市 でもある。<br />

つまり、 新 型 レンジローバー イヴォークの 試 乗 にピッタリの 場<br />

所 なのだ。SUV 市 場 を 一 新 し、ランドローバーを 世 界 のデザイ<br />

ンリーダーへと 飛 躍 させたイヴォークは、すでに 現 代 のアイコ<br />

ンなのだから。<br />

アクロポリスが 建 築 と 文 化 で 一 世 を 風 靡 したことに 比 すれば、<br />

ランドローバー シリーズ I は 一 つの 流<br />

儀 となる 車 を 自 動 車 業 界 にもたらし<br />

シュボード、ドアのすべてを 覆 う 高 級 ソフトレザー * から、レ<br />

ザートリムの 代 替 として 徹 底 して 環 境 に 配 慮 しているクヴァドラ<br />

の 高 級 クロスまで、どこに 触 れても 質 の 高 さを 感 じるだろう。<br />

また 現 代 の 車 には 素 早 いコネクティビティと 最 新 テクノロ<br />

ジーが 欠 かせない。 新 型 イヴォークではデュアルスクリーンの<br />

インフォテインメントシステム * がダッシュボードとセンターコン<br />

ソールに 美 しく 組 み 込 まれ、キャビンがすっきりとして 合 理 的 に<br />

感 じられる。ドライバーと 同 乗 者 は Android AutoとApple<br />

Carplay*を 使 ってスマートフォンに 接 続 し**、6 個 のUSBポー<br />

トと4G Wi- Fi* ホットスポットを 利 用 でき<br />

る。このおかげで 私 は 手 持 ちのプレイリ<br />

た。だが、 時 代 は 移 り 変 わる。いに 「エクステリアが<br />

ストにアクセスし、すぐにお 気 に 入 りの 音<br />

しえを 象 徴 する 建 築 物 の 横 には 現 代<br />

楽 を 楽 しむことができた( 地 元 のラジオは<br />

進 化 ならインテリアは<br />

的 なビル 群 が 立 ち 並 び、スカイライ<br />

残 念 ながら 好 みではなかったので)。<br />

ンを 仲 良 く 共 有 しているアテネの 街 素 材 、 技 術 、<br />

早 朝 のアテネ。 交 通 渋 滞 の 中 へと 出 発<br />

がその 事 実 をよく 物 語 っていた。<br />

だ。 最 初 に 気 付 いたのはキャビンの 静 け<br />

ラグジュアリーの<br />

ランドローバーは 時 代 を 超 えるデ<br />

さだった。ぜいたくな 静 寂 のオアシス、と<br />

ザイン= 初 代 イヴォークという 意 義 深<br />

い 商 品 を 世 に 送 り 出 した。ローンチ<br />

時 からあまりにも 的 を 得 ていたので、<br />

スマートな 進 化 しか 必 要 とされな<br />

かった 車 だ。その 新 しいモデルであ<br />

れば、すぐに 見 分 けがつく。<br />

新 型 レンジローバー イヴォークを<br />

一 目 見 て、デザイナーがまたしてもい<br />

い 仕 事 をしたなと 直 感 した。 群 れか<br />

ら 突 出 する 車 とはこのことだ。ボディ<br />

革 新 を 表 す。<br />

新 型 イヴォークは<br />

シリーズに 君 臨 する<br />

兄 貴 分 と 同 様 に<br />

隅 から 隅 まで<br />

レンジローバーだ」<br />

でも 言 おうか。 防 音 性 と 洗 練 度 を 高 める<br />

ための 大 幅 な 改 良 が 施 されている 証 だ。<br />

2.0リッターターボチャージドのガソリ<br />

ンエンジンとディーゼルエンジンの 両 方 を<br />

運 転 したが、どちらもスムーズでキビキビ<br />

としたパフォーマンスを 見 せた。9 速 オー<br />

トマチックトランスミッションは 滑 らかで、<br />

初 代 のロータリーシフトから、よりスポー<br />

ティな 伝 統 のシフトレバーに 代 わっている。<br />

だが 間 違 いなく 大 きな 前 進 になってい<br />

カラーのひとつであるソウルパールシルバーの 美 しさは、イメー<br />

ジを 重 視 するオーナーの 心 を 鷲 掴 みにするだろう。エクステリ<br />

アは、 一 見 したところわずかに 進 化 を 遂 げたのみだが、 注 目 す<br />

べきはより 洗 練 されたディテールだ。 例 えば 超 スリムなLED<br />

ヘッドライト、グリル、フラッシュエクステリアドアハンドル、<br />

そして 優 雅 に 角 を 包 み 込 むリアライトなど。 確 実 に 成 熟 度 が 増<br />

している。<br />

エクステリアが 進 化 なら、インテリアは 素 材 、 技 術 、ラグジュ<br />

アリーの 革 新 を 表 す。 新 型 イヴォークはシリーズに 君 臨 する 兄<br />

貴 分 と 同 様 に、 隅 から 隅 までレンジローバーだ。シート、ダッ<br />

るのは、ランドローバー 初 となる 48 ボルトのマイルドハイブリッ<br />

ドシステムである。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンのど<br />

ちらでも 組 み 合 わせ 可 能 で、 通 常 であれば 減 速 時 に 失 われるは<br />

ずのエネルギーを 回 収 し、 小 型 のバッテリーに 蓄 えるという。<br />

オーナーにとってのメリットは、 発 車 時 にこのエネルギーを 使 っ<br />

てエンジンを 補 助 し、 燃 料 消 費 とCO 2 排 出 を 低 減 できること。<br />

今 年 後 半 には、フル EV 走 行 が 可 能 な3 気 筒 ガソリンエンジン<br />

のプラグインハイブリッド(PHEV)が 登 場 する 予 定 だ。<br />

後 席 の 空 間 が 広 くなって、 大 人 が 快 適 に 座 れるようになった<br />

のもありがたい。ラゲッジスペースは 591リッターに 拡 大 し、<br />

* オプション 装 備 ** 車 内 機 能 は、 安 全 が 確 保 された 状 況 でご 利 用 ください。ドライバーは、 常 に 車 両 を 安 全 に 制 御 できる 状 態 にある 必 要 があります。<br />

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狭 い 路 地 から 大 通 りまで、 新 型 レンジローバー イヴォークは<br />

コンパクトなサイズ、 豪 華 なキャビン、キビキビとした<br />

パフォーマンスによって、 都 会 で 個 性 を 放 っている。<br />

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30


† 360° サラウンドカメラの 一 部 としてご 用 意 しています。 * オプション 装 備<br />

大 型 のスーツケースを2 個 、 造 作 なく 積 める。これはホイール<br />

ベースを 長 くしたことによってもたらされたスペースであり、 新<br />

型 イヴォークのサイズが 変 わらずコンパクトであるのは、 実 に<br />

巧 みな 進 化 だ。 通 勤 時 間 帯 の 渋 滞 も 楽 に 走 り 抜 け、 狭 い 場 所<br />

でもするりと 駐 車 できる。これはどの 都 市 でも 重 宝 する 点 で、<br />

アテネではそのありがたみを 痛 感 する。せわしなく 続 く 車 の 波<br />

間 を 抜 けていくのは、イヴォークにとって 魅 力 的 な 挑 戦 だ。 幸<br />

い、 進 みが 遅 いおかげでこの 街 の 美 しさを 堪 能 できる。<br />

さぁ、アクロポリスとパルテノン 神 殿 を 目 指 そう。この 神 聖 なる<br />

場 所 へと 向 かう 道 案 内 には、ナビゲーショ<br />

ンプロ *システムを 使 った。 以 前 よりはる<br />

冒 険 好 きのオーナーも 安 心 してほしい。 新 型 イヴォークはほ<br />

かに 肩 を 並 べるもののないオフロード 性 能 を 備 えた、 真 正 なる<br />

ランドローバーである。 壮 大 なカタフィギオの 山 々のゴツゴツと<br />

した 険 しい 道 を 登 りながら、イヴォークに 搭 載 されたテレインレ<br />

スポンス 2*システムの 驚 くばかりの 能 力 を 思 い 知 らされた。こ<br />

れさえあれば、どんな 地 形 でも 乗 り 越 えることができるだろう。<br />

山 道 は 二 つの 画 期 的 なテクノロジーを 試 すチャンスでもあっ<br />

た。ひとつはクリアサイトグラウンドビュー *† 。カメラを 使 って<br />

ボンネットをシースルーし、 車 両 前 方 下 部 を180 度 見 ることが<br />

できる 機 能 で、オフロード 走 行 や 高<br />

い 縁 石 の 脇 を 進 むような 走 行 にピッタ<br />

かに 洗 練 されていて、 壮 大 な 遺 跡 の 影 に 「 街 の 大 渋 滞 を<br />

リだ。もうひとつはクリアサイトイン<br />

ある 最 高 の 駐 車 スペースへと 導 かれた。<br />

テリアリアビューミラー *。 初 代 イ<br />

抜 け 出 て 二 車 線<br />

アクロポリスの 切 り 立 つ 丘 は、 我 を 忘 れ<br />

ヴォークはリアウィンドウが 細 く、 後<br />

るほどの 美 しさだ。バスで 詰 めかける 大<br />

道 路 に 入 ると<br />

部 に 荷 物 を 積 むとリアビューの 視 認 性<br />

勢 の 観 光 客 と 一 緒 でも 特 別 な 体 験 を 楽 し<br />

がゼロに 近 くなった。 新 型 イヴォーク<br />

新 型 イヴォークの<br />

める。 名 所 を 満 喫 した 後 は 伝 統 的 なギリ<br />

では、ミラーが 高 解 像 度 のスクリーン<br />

シャ 料 理 でエネルギーを 回 復 した。レス<br />

進 化 した 性 能 を<br />

になり、カメラで 撮 影 した 後 方 の 映 像<br />

トランは 旅 行 者 と 地 元 客 であふれ、 誰 も<br />

を 鮮 明 に 映 し 出 す。<br />

実 感 し 始 めた。<br />

が 会 話 に 夢 中 なのだ。<br />

自 らハンドルを 握 る 体 験 を 満 喫 し<br />

午 後 は 混 沌 とした 狭 い 脇 道 をジリジ<br />

リと 進 む、 市 街 地 のドライブとなった。<br />

この 運 転 で、ハンドリングと 乗 り 心 地<br />

の 両 方 が 明 らかに 向 上 していることに<br />

気 づく。 本 当 に 楽 にリラックスして 運 転<br />

できるのだ。 混 雑 したシングル 通 りを<br />

特 にディーゼル<br />

エンジンの 静 けさは<br />

特 筆 に 値 する」<br />

た 後 は 運 転 を 交 代 してもらい、マル<br />

コ・ポーロ・ハイウェイを 後 席 で 楽<br />

しむことにした。 頭 上 も 足 元 も 広 々<br />

として 乗 り 心 地 は 抜 群 。とても 落 ち<br />

着 けるスペースである。かの 偉 大 な<br />

る 冒 険 家 マルコ・ポーロが 新 型 レン<br />

進 み、にぎやかなダウンタウン、メタクスルギオ 地 区 を 通 り 抜<br />

ける。 買 い 物 客 は 最 新 ファッションやグルメを 楽 しみ、ストリー<br />

トアートに 触 れて 刺 激 を 受 ける。 地 元 の 有 名 アーティスト、ソ<br />

ンケによる 独 特 な 作 品 が 魅 力 を 放 っていた。<br />

街 の 大 渋 滞 を 抜 け 出 て 二 車 線 道 路 に 入 ると、 新 型 イヴォーク<br />

に 施 された 改 良 点 の 奥 深 い 部 分 を 実 感 し 始 めた。 特 にディーゼ<br />

ルエンジンの 静 けさは 特 筆 に 値 する。イヴォークでは 都 会 の<br />

ジャングルで 過 ごす 時 間 がほとんどだろうが、 穏 やかに 走 行 す<br />

る 田 舎 道 でも 同 じ 幸 せを 感 じられそうだ。<br />

ジローバー イヴォークで 移 動 したなら、 旅 の 手 段 として 高 く<br />

評 価 したに 違 いない。<br />

初 代 イヴォークがゲームチェンジャーだとしたら、 新 型 イ<br />

ヴォークはその 基 準 をさらに 押 し 上 げる 存 在 ……2 日 間 の 試 乗<br />

を 終 え、 私 はそう 確 信 した。 高 級 感 と 洗 練 度 が 増 し、 先 進 テク<br />

ノロジーは 走 行 性 能 をさらに 引 き 上 げている。エクステリアの<br />

魅 力 が 深 まっていることは 言 わずもがな。レンジローバーから<br />

生 み 出 されたコンパクト SUV は、 初 代 をベースに 飛 躍 的 な 成<br />

熟 を 遂 げ、 新 たな 個 性 で 街 を 魅 了 する。<br />

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M O D E L<br />

C I T I Z E N<br />

新 型 レンジローバー イヴォークのローンチキャンペーンで<br />

活 躍 するアジョワ・アボアー。ファッションモデルで<br />

活 動 家 の 彼 女 に 、な ぜ 都 会 で 生 きる こと が 好 き な の か を 聞 く。<br />

「ロンドンっ 子 の 強 みというと、ユーモアのセンス 旅 行 はいつでも 楽 しみね」。 現 在 は 英 国 と 米 国 の 間<br />

が 光 っていることと、あらゆる 機 会 をパーティーにし を 行 き 来 する 生 活 だが、「 家 に 帰 ったと 感 じるのは<br />

てしまうことね。 今 まで 会 ったロンドンっ 子 はみん ロンドン」だそうだ。「ロンドンは 私 のアイデンティ<br />

なそんな 感 じ」。そう 言 う26 歳 のアジョワ・アボアー ティの 大 きな 部 分 を 占 めている。 永 遠 にロンドンっ<br />

にも、 称 賛 に 値 するものがたくさんある。 例 えば 新 子 なの。あのエネルギーが 好 き。 活 気 があって、い<br />

たなスーパーモデルの 一 人 であり、 世 界 的 に 展 開 す つ も 何 か が 起 き て い る か ら 」。<br />

るファッションキャンペーン(ディオール、カルバン・ 家 族 もファッション 一 家 だ。 母 親 のカミリア・ロ<br />

クライン、マーク・ジェイコブスほか 多 数 )でも 活 ウザーはクリエイティブ 業 界 のマネジメントエージェ<br />

躍 していること。 個 性 的 な 外 見 はもちろんのこと、 ンシー、CLM の 創 業 者 で、アボアーは16 歳 のとき<br />

活 動 家 としても 知 られている。<br />

にエージェンシーと 契 約 を 結 んだ。 妹 のケシーワも<br />

ファッションショーで 拍 手 喝 采 を 受 ける 彼 女 の 存 モデルで、アレキサンダー・マックイーンの 最 新 広<br />

在 感 については 言 うまでもない。 特 にフェンディと 告 に 主 演 している。 妹 とは 仲 が 良 いが、 一 人 の 時 間<br />

シャネルのショーが 多 い。 新 生 『Vogue』 第 1 号 を も 楽 しいと 言 う。「 一 人 のときにくつろげるのは 大 事<br />

はじめ、 数 々の 雑 誌 の 表 紙 を 飾 り、2017 年 には 誰 も なことだと 思 う。ネットフリックスをたくさん 観 るし、<br />

がうらやむ 英 国 ファッション 協 議 会 のモデル・オブ・ 本 を 読 んだり、ロンドンを 歩 き 回 って 人 を 観 察 した<br />

ザ・イヤーを 受 賞 した。「 夏 はたいてい 近 所 でほかの りするのも 大 好 き。この 街 には 個 性 的 な 人 たちが 本<br />

子 たちと 遊 んで、ローラーブレードで 滑 っていた」 子 当 に た くさ ん い る か ら 」。<br />

ども 時 代 から 言 うと、 実 に 遠 くまでやってきたものだ。 「ドライブはその 街 を 知 る 最 高 の 方 法 だと 思 う」<br />

アボアーはガーナ 系 イギリス 人 。アジョワという とアボアー。そもそも 新 型 レンジローバー イヴォー<br />

名 前 は 西 アフリカで 月 曜 日 生 まれの 女 性 によく 付 け クのローンチキャンペーンに 主 演 するという 決 断 が、<br />

られる。ベリーショートの 髪 型 、 前 歯 の 飾 り、 堂 々 彼 女 の 運 転 に 対 する 情 熱 を 裏 付 けている。「 運 転 す<br />

とした 態 度 がファッション 界 でも 異 彩 を 放 つ。その るのがワクワクする 車 ね。サステナビリティを 考 慮<br />

個 性 からか、アボアーは 旅 先 でもユニークな 場 所 を しているのも 気 に 入 っている」。オプションにある 天<br />

探 し 求 めるという。モデルの 仕 事 以 外 でも、 共 同 設 然 素 材 とハイブリッドエレクトリックの 駆 動 システム<br />

立 した 女 性 サポート 団 体 「ガールズ・トーク」の 一 環 について 触 れながらそう 言 う。<br />

で 若 い 女 性 とともに 協 働 し、 世 界 を 飛 び 回 っている。 移 動 生 活 が 多 いが、どのようなときに 世 界 に「 根<br />

「 私 が 思 い 描 く 夢 の 街 ? ロンドンのポートベロー・ を 下 ろしている」と 感 じるのだろうか。「 友 達 や 家 族<br />

マーケットとゴルボーン・ロードに、メキシコシティ と 一 緒 にいるときね。 彼 らと 一 緒 だと、どこにいよ<br />

のレストラン、 東 京 のヴィンテージショップとカラオ うと 家 にいるのと 同 じようにくつろぐことができる<br />

ケバー、ロサンゼルスの 広 い 道 路 を 組 み 合 わせるわ」 の」。そしてどこへ 行 っても、アボアーの 中 にあるロ<br />

とアボアーは 言 う。<br />

ンドン 精 神 は 消 えない。「 多 様 性 こそ、ロンドンが<br />

学 生 時 代 は 英 国 南 西 部 サマセットの 学 校 に 通 った。 特 別 である 最 たる 理 由 。そこに 身 を 置 くと、ほかの<br />

当 時 を 振 り 返 ってこう 語 る。「 都 会 と 田 舎 の 両 方 の 生 人 への 思 いやりと 理 解 を 学 ぶことができるのよ」。<br />

活 を 体 験 できたのは 幸 運 だったけれど、いつもロン そうして 大 切 なことを 学 びながら、 都 会 のジャン<br />

ドンに 戻 れるまであと 何 日 と 数 えていたわ。 今 は 旅 グルを 生 き 抜 いていく。アボアーの 人 気 は、 着 実 に<br />

をして 新 しい 場 所 や 人 に 出 会 うのが 好 きだから、 小 上 がり 続 けるだろう。<br />

文 : LOTTE JEFFS 写 真 : OLIVIA MALONE/TRUNK ARCHIVE<br />

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33


DESIGN<br />

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I F E<br />

D E S I G N E D<br />

F O R<br />

時 代 をこえたミッドセンチュリーモダンデザインの 一 例 を<br />

レンジローバー ヴェラールで 訪 ねる。それはカリフォルニアを<br />

拠 点 に 名 声 を 築 いたモダニズム 建 築 家 、リチャード・ノイトラ<br />

設 計 による、ヨーロッパにほんの 一 握 りしかない 住 宅 の 一 つだ。<br />

文 : L U K E P O N S F O R D<br />

写 真 文 : G R E G W H I T E<br />

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DESIGN<br />

「ノイトラがデ ザインの<br />

中 心 に 据 えた 信 条 の 一 つは<br />

建 物 の 内 と 外 の 境 を<br />

あいまいにすることだった」<br />

ドイツ 西 部 のノルトライン・ヴェストファーレン 州 にあるヴッ<br />

パータールは、 面 積 の3 分 の2 が 公 園 と 森 林 という、 同 国 で 最<br />

も 緑 の 多 い 街 だ。 心 地 良 い 場 所 ではあるが 世 界 的 に 珍 しいわ<br />

けでもなく、ガラスと 鋼 材 で 銀 色 に 輝 くミッドセンチュリーモダ<br />

ン 建 築 の 最 たる 例 を 探 して 最 初 に 訪 れる 場 所 ではおそらくない。<br />

大 抵 はロサンゼルスの 峡 谷 のてっぺんや、カリフォルニアの 砂<br />

漠 で 目 にする 月 面 のような 風 景 の 中 で、 巨 岩 とサボテンの 間 に<br />

隠 れるように 立 っていたりするのだ。<br />

だが、ヴッパータール 中 心 部 からちょっとのドライブで(もっ<br />

とも 豪 華 なレンジローバー ヴェラールに 乗 っていると、もっと<br />

時 間 のかかるルートを 走 りたくなるが)、 曲 がりくねった 林 道 に<br />

入 ると、 驚 くべき 光 景 が 待 ち 受 ける。ドイツ 西 部 に 位 置 し、 特<br />

に 目 立 つことのないこの 一 角 で、 幾 重 もの 木 々や 生 垣 の 奥 に 伝<br />

説 的 なモダニズム 建 築 家 、リチャード・ノイトラによるヴィラが<br />

あるのだ。ヨーロッパにたった 8 軒 しかないうちの1 軒 である。<br />

現 代 建 築 を 代 表 する 人 物 であるノイトラはオーストリアに 生<br />

まれ、1920 年 代 はじめにロサンゼルスに 移 住 した。ロサンゼ<br />

ルスの 広 々とした 空 間 、 余 りある 陽 光 、 自 由 の 精 神 に 惹 かれた<br />

のだ。ノイトラは 先 見 性 のある 建 築 家 、フランク・ロイド・ライ<br />

トの 下 で 短 期 間 仕 事 をした 後 、1929 年 に 独 立 。この 時 期 に、<br />

今 なお 20 世 紀 で 最 も 重 要 な 家 屋 の 一 つと 考 えられているロサ<br />

ンゼルスのロヴェル 邸 ( 健 康 住 宅 )を 設 計 ・ 建 築 した。 初 期 の<br />

高 層 建 築 の 技 術 に 基 づき、 米 国 で 初 めて 住 宅 建 築 に 鋼 材 を 採<br />

用 したロヴェル 邸 は、 建 築 界 で 大 きな 話 題 を 呼 んだ。そしてこ<br />

れをきっかけに、ノイトラは 国 際 的 に 知 られるようになった。<br />

その 後 の 40 年 間 、ノイトラは 300 以 上 の 住 宅 やビルを 設<br />

計 ・ 建 築 し、その 多 くは 米 国 西 海 岸 に 存 在 する。 息 子 ディオン<br />

との 共 作 も 多 い。ノイトラは 光 と 景 観 をふんだんに 取 り 込 んで<br />

設 計 する 一 方 、 施 主 の 要 望 に 応 えるよう 十 分 に 配 慮 した。 施 主<br />

の 職 業 は 何 か、 社 交 スタイルはどのようなものか、 目 にするも<br />

のや 耳 にするものの 好 みは 何 か、といったことだ。<br />

実 際 、ノイトラがデザインの 中 心 に 据 えた 信 条 の 一 つは、 建<br />

物 の 内 と 外 の 境 をあいまいにすることだった。 天 井 から 床 まで<br />

あるスライド 式 のガラス 窓 で 内 側 の 空 間 と 隔 てられたテラスは、<br />

外 の 環 境 を 内 側 へ、あるいは 内 側 の 環 境 を 外 へと 延 長 する 試<br />

みだった。ロサンゼルスのノイトラ 社 を 今 なお 経 営 する 92 歳 の<br />

ディオン・ノイトラが 笑 顔 で 語 る。「ノイトラのデザインは 何 よ<br />

りも『 自 然 との 触 れ 合 い』が 特 徴 だといえます。デザインでそ<br />

れ を 取 り 戻 す こ と を 目 指 して い る ん で す」。<br />

「 自 然 との 触 れ 合 い」を 取 り 戻 すことは、ヨーロッパでは 少 し<br />

寒 く 感 じるような 提 案 だったかもしれないが、それにもかかわ<br />

らず、1960 年 からリチャード・ノイトラが 亡 くなる1970 年 まで、<br />

父 子 は 共 作 により、スイスに4 軒 、ドイツに3 軒 、フランスに<br />

1 軒 のヴィラを 設 計 ・ 建 築 した。<br />

「 何 がきっかけだったのかは 分 かりませんが、 一 般 家 屋 の 設 計<br />

依 頼 が 来 るようになったんです。ヨーロッパでのヴィラ 建 築 は<br />

すべて、どこかで 私 たちのことを 耳 にし、 目 にしたものを 気 に<br />

入 ったオーナーの 主 導 で 実 現 したものです」とディオン。<br />

その 一 例 がケンパー 夫 妻 だった。ヴッパータールでコルセッ<br />

ト 製 造 事 業 を 成 功 させた 彼 らは、 米 国 西 海 岸 の 新 しい 生 活 スタ<br />

イルに 魅 力 を 感 じていた。1963 年 、 夫 妻 はノイトラに 連 絡 し、<br />

ノイトラはヴッパータールで 適 切 な 場 所 を 探 し 始 めた。4 万 平 方<br />

右 :マンフレッド・<br />

ヘリングと 妻 サラの<br />

オーナー 夫 妻 は、<br />

彼 らの 見 事 な 審 美 眼 に<br />

かなう 家 具 をケンパー・<br />

ハウスのためにそろえた。<br />

36


ARCTIC ADVENTURE<br />

37


38


DESIGN<br />

左 : 水 をたたえて<br />

反 射 する 一 連 の 水 盤 は<br />

ケンパー・ハウスと<br />

周 囲 の 森 林 環 境 との<br />

関 係 を 映 し 出 す。<br />

メートルの 場 所 を 選 定 すると、1965 年 に 始 まった 工 事 は1968<br />

年 8 月 まで 続 いた。 完 成 した380 平 方 メートルの 家 には、6つ<br />

の ベッドル ーム、 全 面 ガラス 張 りの 壁 、 複 数 の 大 型 暖 炉 が 備 わっ<br />

ていた。ほかにも、 住 み 込 みベビーシッター 用 の 部 屋 やサロン<br />

なども 組 み 込 まれた。 後 者 は 現 在 のオーナー、マンフレッド・ヘ<br />

リングのオフィスになっている。<br />

2016 年 にこの 家 を 購 入 したヘリングは 現 在 、 当 初 の 仕 様 に<br />

戻 す 修 復 作 業 を 進 めている。 骨 の 折 れる 仕 事 だ。「 購 入 したとき<br />

はブティック・ホテルのようだったよ。すべてがグレーとベージュ<br />

で、 木 材 の 多 くは 前 のオーナーたちが 塗 装 を 重 ねていた。 僕 た<br />

ちは 家 全 体 を 正 しい 時 代 に 戻 すためにすべての 素 材 を 確 認 し、<br />

書 籍 を 買 って、 前 のオーナーたちと 話 をしたんだ。 当 初 の 姿 に 戻<br />

し、 修 復 したことさえ 分 からないようにするためにね」と 彼 は 言<br />

う。 現 在 50 歳 のヘリングは、クラシックカーをレストアするエ<br />

キスパートで、ミッドセンチュリーモダンの 大 ファンだ。<br />

このケンパー・ハウスが 木 で 覆 われた 丘 の 頂 上 に 立 つ 様 子 は、<br />

まるでそこに 見 事 に 組 み 込 まれているかのようだ。ガラス 張 りの<br />

リビングは 中 心 となる 2 階 建 て 構 造 に 付 属 している。 床 から 天<br />

井 まで 広 がる 窓 が、 驚 くほど 居 心 地 の 良 いメインルームに 光 を<br />

採 り 入 れている。 一 方 、 天 井 のしつらえは、ガラスの 境 界 線 を<br />

通 って 家 の 内 から 外 へ 一 貫 して 続 いている。 平 らな 屋 根 の 上 と<br />

テラスの 後 ろにある 水 盤 は 水 をたたえて 反 射 し、 周 囲 の 木 々や<br />

森 林 が 映 り 込 む。すべてが「 自 然 との 触 れ 合 い」というテーマに<br />

合 致 している。<br />

家 の 中 は、アルネ・ヤコブセンのエッグチェア、ノールのソファ、<br />

ヴェルナー・パントンのシェルランプといった 当 時 の 調 度 品 に<br />

よって、1970 年 代 半 ばの 生 活 体 験 が 再 現 されている。この 時<br />

代 のインテリアデザインとドイツ 製 スポーツカーは、いずれもヘ<br />

リングの 嗜 好 にあっている。ケンパー・ハウスはモダニズムのわ<br />

ずかな 代 表 例 というより、 本 物 の 家 として 存 在 している。それこ<br />

そが、ノイトラが 意 図 したものだ。 彼 は、 住 宅 建 築 は 建 築 評 論<br />

家 のためではなく 住 人 のためにあると 信 じていた。 居 心 地 が 良 く<br />

快 適 で、くつろぎを 感 じない 方 が 難 しい。<br />

外 に 停 めてあるレンジローバー ヴェラールも、テラスですっか<br />

りくつろいでいるように 見 える。ケンパー・ハウスとヴェラール<br />

には 何 十 年 もの 隔 たりがあるが、 両 者 は 還 元 主 義 者 のデザイン<br />

哲 学 と、 優 雅 なるシンプルさを 共 有 している。ケンパー・ハウス<br />

同 様 、ヴェラールのデザインにも 余 分 なものは 何 もない。 不 要<br />

なものを 一 切 排 除 しているのだ。この「 引 き 算 の 美 学 」を 体 現<br />

したレンジローバーのクリーンでスッキリとした 運 転 席 に 座 ると、<br />

未 来 を 訪 れるかのように 感 じる。ケンパー 夫 妻 は1968 年 夏 に<br />

新 居 の 中 へ 足 を 踏 み 入 れたとき、 同 じように 感 じたに 違 いない。<br />

その 空 間 、 光 、そして 建 物 全 体 の 控 えめなデザイン。すべてが<br />

当 時 新 しく、 今 再 び 新 しさを 取 り 戻 そうとしている。<br />

「まだ 作 業 が 少 し 残 っているけれど、すでに 当 時 の 雰 囲 気 を 感 じ<br />

ることができる。 建 築 当 初 の 精 神 を 取 り 戻 したんだ。 僕 にとって<br />

永 遠 の 家 だね。 最 期 の 日 は 絶 対 にここで 迎 えるよ」とマンフレッ<br />

ドは 笑 う。 陽 光 ふり 注 ぐ 南 カリフォルニアの、 華 やかだがやや 不<br />

調 和 なひとかけらが、ドイツ 西 部 の 緑 豊 かな 丘 で 息 づいている。<br />

その 姿 を 眺 めているとマンフレッドの 気 持 ちを 理 解 できそうだ。<br />

39


VOYAGE OF DISCOVERY<br />

写 真 : GETTY IMAGES/NICK BRUNDLE PHOTOGRAPHY<br />

40


R E T U R N T O T H E<br />

N<br />

I<br />

L<br />

E<br />

ハリウッド 俳 優 のジョセフ・ファインズと、 伝 説 的 な 探 検 家 である<br />

ラヌルフ・ファインズが、ランドローバー ディスカバリーで<br />

エジプトを 巡 る 旅 に 出 た。そこで 目 にした 驚 きの 光 景 、 危 険 な 生 き 物 、<br />

砂 丘 ドライブへの 挑 戦 について、 本 誌 がいとこ 同 士 の 二 人 に 話 を 聞 く。<br />

文 : G E O F F P O U L T O N<br />

41


VOYAGE OF DISCOVERY<br />

狭 いトンネルをはって 進 み、 広 大 な 砂 丘 を 高 速 で 走 り 回 り、<br />

ヘビやサソリに 出 くわす。そのすべてがテレビ 番 組 のために 撮<br />

影 されている。これがいとこをよりよく 知 るための 方 法 だと 言<br />

われたら、ほとんどの 人 は 首 をかしげるだろう。だが、そのい<br />

とこが 著 名 な 探 検 家 ラヌルフ・ファインズであれば 話 は 別 だ。<br />

ハリウッド 俳 優 で、 現 在 ヒット 中 のドラマ『ハンドメイズ・テ<br />

イル/ 侍 女 の 物 語 』で 主 演 を 務 めるジョセフ・ファインズにとっ<br />

て、サー・ラヌルフと 一 緒 にエジプトを 探 検 することは 長 年 の<br />

野 望 であり、 探 検 家 として 高 名 ないとこをより 深 く 知 る 絶 好 の<br />

チャンスだと 思 ったようだ。「ところが、 人 はいざ 思 いが 現 実 に<br />

なると、 準 備 が 全 然 足 りないと 焦 ってしまうものだ。 僕 も 到 着<br />

したときは 少 しばかり 心 配 になったよ。そんなそぶりは 見 せな<br />

いようにしたけれどね」とジョセフ。<br />

心 配 を 密 かに 抱 いていた 彼 の 様 子 は、ナショナル ジオグラ<br />

フィックの 撮 影 隊 がカメラに 収 めた。2019 年 春 に 放 送 の 新 シ<br />

リーズ(3 部 構 成 )だ。 番 組 は、ナイル 川 沿 いをたどる 二 人 の<br />

ファインズを 追 う。それは1969 年 にラン(ラヌルフの 愛 称 )が<br />

探 検 した、アレクサンドリアからビクトリア 湖 までのルートの 一<br />

部 である。 本 誌 が 途 中 で 合 流 すると、 二 人 はエジプトでの 冒 険<br />

を 喜 んで 共 有 してくれた。 控 えめで 冷 静 なランと 話 上 手 でダジャ<br />

レ 好 きなジョー(ジョセフの 愛 称 )は、 魅 力 的 で 時 に 愉 快 なコ<br />

ンビだ。<br />

存 命 する 世 界 最 高 の 探 検 家 との 呼 び 声 も 高 いランは、 決 死 の<br />

覚 悟 で 挑 戦 を 続 けてきた。 南 極 と 北 極 の 両 方 を 探 検 し、エベレ<br />

スト 山 に 登 り、7 大 陸 でマラソンを 走 り、 凍 傷 になった 指 先 を<br />

自 ら 切 り 落 とすなど。48 歳 のジョーは 認 める。「 僕 はというと、<br />

恐 れを 感 じたと 言 えば 数 百 人 の 観 客 を 前 に 舞 台 に 立 ったことく<br />

らい。 今 回 は、ただランが 年 下 のいとこにあきれませんように<br />

と ひ た す ら 願 っ て い た よ 」。 7 4 歳 の ラ ン が す ぐ に 続 け る 。「 私 は<br />

その 逆 を 考 えていた。『ヨボヨボのこの 老 いぼれは、まだ 何 か<br />

しようっていうのか?』くらいに 思 っているんじゃないかとね」。<br />

ジョーにとって、この 旅 は 自 らを 試 すチャンスだった。「 自 分<br />

の 限 界 を 知 る」のと 同 時 に、「 一 族 にいる 伝 説 ともいうべき 人 物<br />

から、その 信 じられないような 功 績 の 背 後 にある 原 動 力 を 考 察<br />

する」。 一 方 、ランにとっては、 大 切 な 思 い 出 の 場 所 を 再 訪 し、<br />

新 たな 場 所 を 探 検 する 機 会 だった。<br />

ランが 取 り 組 んだ 旅 の 多 くでランドローバーは 重 要 な 役 割 を<br />

果 たしてきた。 今 回 の 冒 険 も 同 様 で、 旅 の 仲 間 に 加 わったのは<br />

多 才 な 冒 険 家 に 匹 敵 するランドローバー ディスカバリーだ。ディ<br />

スカバリーはローンチ 以 来 30 年 にわたって、ランをはじめとす<br />

る 多 くの 著 名 な 探 検 家 やチーム、 良 きチャレンジのために 地 球<br />

規 模 の 探 検 をサポートしてきた。その 一 つとして 記 憶 に 残 るの<br />

は、2012 年 に100 万 台 目 のディスカバリーを 駆 ってバーミンガ<br />

ムから 北 京 まで 走 行 した 旅 である。<br />

そのディスカバリーで、ジョーは 今 回 オフロード 走 行 を 初 め<br />

て 味 わった。 乾 いたエジプトの 地 で、 立 ちはだかる 砂 丘 に 挑 ん<br />

だのだ。「 車 が 飛 んだこともあったよな?」とランが 皮 肉 めいて<br />

言 うと、ジョーが 続 ける。「あれは 悪 かった。 巨 大 な 砂 丘 に 向<br />

かう 途 中 で『もっとスピードを 出 せ!』というランの 声 があって<br />

ね。 頂 上 に 着 いたらスピードを 落 とすはずがそのまま 全 速 力 で<br />

反 対 側 に 着 地 。すごい 振 動 があって、 装 備 があちこちに 散 ら<br />

ばったよ。でもランはまるで 動 じなかったね」。<br />

何 ら 動 揺 することがないラン。それは 心 配 無 用 のはずだったカイ<br />

ロ 近 くの 準 備 セッションで、 二 人 が 毒 ヘビやサソリ、クモに 出 合 っ<br />

たときも 同 じだった。「ランは 恐 怖 をコントロールできる。 僕 はとい<br />

えば、 何 に 出 合 っても 対 処 できると、ランに 証 明 しようとするのが<br />

やっとだった」とジョー。 記 憶 を 辿 りながらランが 言 う。「うん、よ<br />

くやったという 以 上 の 出 来 だったよ、 本 当 に」。<br />

二 人 はミニヤー 近 郊 で 最 近 発 見 された 墓 に 行 くのに、 高 さが<br />

50 センチもないようなトンネルをはって 進 んだときのことを 振<br />

り 返 る。「ジョーは 運 動 神 経 が 良 くて 体 が 柔 らかいんだ。 彼 のス<br />

ピードにはついていけなかったよ。でも 怖 いと 思 っても 彼 はそ<br />

れを 見 せなかったね。それにしても 素 晴 らしい 体 験 だった。ミ<br />

イラが 何 体 も 眠 る、 何 千 年 も 封 印 されていた 部 屋 に 入 る 最 初 の<br />

一 人 になれた。それだけでもこの 旅 をして 良 かったと 思 うよ」。<br />

映 画 『インディ・ジョーンズ』と 違 ってゆったりとした 冒 険 の<br />

中 で、ジョーも 機 会 あるたびにスケッチブックやカメラを 取 り 出<br />

して 自 らの 芸 術 的 な 志 向 を 満 たすことができた。「ブラブラ 歩 い<br />

たりスーク( 市 場 )で 迷 子 になったりしながら、ただそこに5 分<br />

くらい 座 ってエジプトの 美 を 捉 えるのが 楽 しかった」。<br />

ギザの 大 ピラミッドからアブシンベル 神 殿 までの 行 程 では、<br />

一 生 忘 れない 光 景 に 遭 遇 したとジョーは 振 り 返 る。だが 重 要 な<br />

のは、いとこの 冒 険 を 垣 間 見 ることで、 危 険 をいとわず 粘 り 強<br />

さで 限 界 を 押 し 広 げる 力 を 学 んだことだろう。ランがうなずいて<br />

付 け 加 える。「ジョーはね、こうした 状 況 で 俳 優 ならこういう 態<br />

度 をとるだろうという 先 入 観 を、 完 全 に 覆 してくれた。 一 族 の<br />

DNAによるものだろうね」。 来 る 数 十 年 、ランドローバー ディ<br />

スカバリーはさらに 遠 くへ 行 く 準 備 ができている。ひょっとする<br />

とファインズ 家 の 冒 険 の 機 会 は、また 訪 れるかもしれない。<br />

エピソードを 見 る 二 人 のファインズがエジプトを 巡 る 旅 はこちらで<br />

「Return To The Nile」と 検 索 :natgeo.com/worldsgreatestexplorer<br />

写 真 : COURTESY OF NATIONAL GEOGRAPHIC AND JOSEPH FIENNES<br />

42


「ランは 恐 怖 を<br />

コントロールできる。<br />

僕 はといえば、<br />

何 に 出 合 っても<br />

対 処 できると<br />

証 明 しようとするのが<br />

やっとだった」<br />

43


M O O N L I G H T<br />

S O N A T A<br />

月 面 を 歩 いた 人 物 のうち<br />

存 命 するのはわずか 4 人 。<br />

そのひとりが、チャーリー・デュークだ。<br />

人 類 初 の 月 面 着 陸 から 50 年 を 迎 え、<br />

本 誌 はこの 特 筆 すべき 人 物 に 会 いに 行 った。<br />

天 上 の 音 楽 を 耳 にした 宇 宙 探 検 家 は<br />

今 なおその 音 色 に 合 わせて 踊 っている。<br />

文 : V A I S H A L I D I N A K A R A N<br />

写 真 : D A N I E L A U F D E R M A U E R<br />

45


左 と 上 :ミッションパッチを<br />

誇 らしげにまとうデューク。<br />

左 下 :アポロ 16 号 の 乗 組 員 だった<br />

デューク( 左 )、ケン・マッティング<br />

リー、ジョン・ヤング。<br />

下 :デュークは 月 面 を<br />

歩 いた10 人 目 の 人 物 。


EXPLORATION<br />

写 真 : GETTY IMAGES/SCIENCE & SOCIETY PICTURE LIBRARY/KONTRIBUTOR, GETTY IMAGES/ROLLS PRESS/POPPERFOTO/KONTRIBUTOR<br />

チャーリー・デュークはいつも 探 検 を 希 求 している 冒 険 家 だ。それは 今<br />

も 昔 も 変 わらない。12 歳 のときにはカリフォルニア 州 コロナド 島 で 巨 岩 の 構<br />

造 を 調 べ、 洞 窟 を 探 検 した。 昨 年 は、 齢 83 にしてサウスカロライナ 州 にあ<br />

る 所 有 地 の 荒 野 を 歩 き 回 った。しかし 最 もよく 知 られている 冒 険 は、1972<br />

年 に 月 面 を 歩 いたときのことだろう。その 足 跡 は 今 日 に 至 るまであちらの 世<br />

界 に 刻 まれている。<br />

チューリッヒの 静 かなカフェで 私 たちは 落 ち 合 った。ここでデュークはあ<br />

る 冒 険 について 語 ってくれる。 同 じ 経 験 を 今 語 れるのは、ほかに 3 人 しか 存<br />

在 しない。50 年 前 の 壮 大 な 旅 を 語 る 彼 の 瞳 は 輝 き、<br />

その 声 には 神 々しい 響 きさえ 感 じられる。 物 語 はア<br />

ポロ 16 号 のミッションについてだ。<br />

お 互 いに 愛 を 与 え 合 う 必 要 がある」というものだ。デュークはその 眺 めを 昨<br />

日 のことのように 覚 えている。「3つの 色 で 構 成 されていた。 大 地 の 茶 色 、<br />

海 の 澄 んだ 青 、 雪 と 雲 の 白 だ。 地 球 は 宇 宙 の 暗 闇 に 浮 かぶ 宝 石 なんだよ」。<br />

闇 はあまりにも 深 く 滑 らかで、 手 を 伸 ばせば 地 球 に 触 れられると 確 信 する<br />

ほどだった。<br />

太 陽 の 光 を 浴 びる 地 球 の 輝 きと 宇 宙 の 闇 という 対 比 は、もしかすると<br />

デューク 自 身 の 人 生 、そして 彼 が 進 む 道 のりを 示 唆 するものだったのかもし<br />

れない。その 暗 い 闇 は、 地 球 に 帰 還 した 直 後 に 体 験 した。「『 人 生 これから<br />

何 をすればいいんだ? 何 に 挑 戦 すれば?』という 疑<br />

問 が 湧 いてしまってね」。 目 標 を 達 成 したという 安 ら<br />

ぎを 得 る 代 わりに、 満 たされない 気 持 ちに 襲 われた。<br />

「 体 験 したことはいつまでも 覚 えているけれど、そ 「 私 たちはみな<br />

彼 を 月 へと 向 かわせた 思 いが 自 身 の 中 でまだ 燃 え 続<br />

の 記 憶 自 体 が 不 思 議 そのものなんだ。 夢 とは 違 う。<br />

けていて、その 気 持 ちをどこへ 向 けてよいか 分 から<br />

強 い 衝 動 を<br />

でも、 本 当 に 自 分 が “それ” を 体 験 したのだろうか、<br />

なかった。<br />

という 感 覚 だよ。 月 面 を 歩 いたわずか12 人 の 中 の<br />

ひ と り だ な ん て ね 」。<br />

着 陸 船 「オリオン」から、 操 縦 した 船 長 のジョン・<br />

ヤングがまず 降 り 立 ち、その 後 に 続 いたデュークは<br />

月 面 歩 行 をした10 人 目 になった。36 歳 の 彼 は 最 年<br />

少 でもあった。それは 彼 の 人 生 で 最 も 意 義 深 い 一<br />

歩 となり、ずっと 待 ち 望 んでいたものだった。<br />

米 航 空 宇 宙 局 (NASA)による 地 質 学 の 訓 練 が<br />

グランド・キャニオンで 行 われた 時 のことだ。 寝 袋<br />

から 見 上 げた 空 に 月 が 輝 き、 自 分 もいつかあそこに<br />

行 けるのだろうかという 不 安 が 頭 をよぎったという。<br />

だからこそ、 実 現 できた 瞬 間 には 成 し 遂 げた 喜 びが<br />

秘 めていると 思 う。<br />

知 りたいという<br />

情 熱 を。 宇 宙 旅 行 は<br />

宇 宙 を 理 解 したい<br />

という 願 望 を<br />

満 たすものなんだ」<br />

不 安 が 長 じて 危 うく 家 族 を 犠 牲 にするところだっ<br />

たが、デュークは 宗 教 に 安 寧 を 見 出 し、 人 生 を 立 て<br />

直 した。その 後 、 月 へ 行 った 体 験 と、そこから 始<br />

まった 神 と 歩 む 道 を 人 々に 伝 えるために 世 界 を 飛 び<br />

回 るようになった。「 自 分 が 持 っている 熱 意 を 人 と 共<br />

有 することが 自 分 の 役 割 だと 真 剣 に 受 け 止 めている。<br />

特 に 若 い 人 たちとね。 彼 らの 気 持 ちに 火 をつけるん<br />

だよ。 人 生 、どこにたどり 着 くかなんて 分 からない<br />

ん だ か ら って ね 」。<br />

デュークは 今 なお 宇 宙 旅 行 に 熱 い 関 心 を 寄 せる。<br />

スペース X、ブルーオリジン、ヴァージン・ギャラク<br />

ティックという 民 間 の 企 業 がせめぎ 合 う 新 たな 宇 宙<br />

全 身 を 駆 け 巡 った。 自 らの 足 が 月 面 に 触 れたとき 頭 に 浮 かんだのは「ついに<br />

月 に 降 り 立 ったぞ! 自 分 は 月 にいるんだ!」という 純 粋 な 思 いだったと 笑 う。<br />

月 面 探 査 車 であちこちを 移 動 した。 巨 礫 の 周 りを 走 り、クレーターの 端 で<br />

止 まり、その 深 みを 注 意 深 くのぞき 込 み、 岩 を 少 しずつ 削 り 取 り、NASAで<br />

調 査 できるよう 持 ち 帰 るためにサンプルを 採 取 した。その 間 、 好 奇 心 は 常 に<br />

刺 激 され、 見 るものすべてに 驚 いた。「このクレーターの 中 はどうなっている<br />

んだろう? こっちには 何 があるんだろう? そういった 不 思 議 、 冒 険 、 興 奮 の<br />

連 続 だよ」。 記 憶 をたどる 彼 の 顔 は、 輝 きを 増 していく。<br />

月 面 と 同 じくらい 魅 了 されたのは、 宇 宙 から 見 る「 息 をのむほど 美 しい」<br />

地 球 だった。 彼 はその 姿 に 完 全 に 心 を 奪 われ、 啓 示 を 得 た。それは、 生<br />

まれた 国 にかかわらず「 私 たちはみな 宇 宙 船 地 球 号 の 乗 組 員 なのだから、<br />

開 発 競 争 によって、その 興 味 はいっそう 高 まっている。「 未 来 の 様 子 が 目 に<br />

浮 かぶよ。 地 球 の 軌 道 を 大 きな 居 住 モジュールが 回 るようになるんだ。 私 は<br />

月 に 永 住 する 科 学 基 地 の 建 設 に 賛 同 している。 人 類 は 最 終 的 には 火 星 に 到<br />

達 するだろうね」と 揺 るぎのない 様 子 で 言 う。<br />

宇 宙 がもたらす 神 秘 を 体 験 したデュークは、 有 人 宇 宙 飛 行 を 声 高 に 支 持 す<br />

る。そこから 得 られる 技 術 的 な 発 展 のためだけではない。 人 間 が 本 質 として<br />

持 つ、 発 見 への 尽 きることのない 願 望 に 応 えるものだと 信 じているのだ。「 私<br />

たちはみな、 強 い 衝 動 を 秘 めていると 思 う。 知 りたいという 情 熱 をね。 宇 宙<br />

旅 行 は、 宇 宙 とその 美 しさを 理 解 したいという 願 望 を 満 たすものなんだよ」。<br />

確 信 を 持 ってそう 話 す83 歳 の 元 宇 宙 飛 行 士 は、 微 笑 みながらこう 締 めく<br />

くった。「 私 もね、 時 折 思 うんだ。また 月 に 戻 ろうかなってね」。<br />

47


EXPLORATION<br />

48


T H E F I N A L<br />

F R O N T I E R<br />

民 間 の 宇 宙 観 光 旅 行 が、もうすぐ 現 実 のものになろうとしている。<br />

ヴァージン・ギャラクティックも、その 冒 険 に 取 り 組 む 1 社 だ。<br />

多 くの 人 類 が 未 だ 到 達 していない 場 所 へ 思 いを 馳 せよう。<br />

頭 上 に 広 がる 星 空 を 探 検 することは、はるか 昔 の 祖 先 た<br />

ちがこの 大 いなる 未 知 の 世 界 に 思 いを 馳 せて 以 来 、いつの<br />

時 代 も 人 類 の 夢 だった。だがまもなく、 丸 い 地 球 を 見 下 ろ<br />

す 旅 が 国 家 機 関 の 宇 宙 飛 行 士 だけの 特 権 ではなくなる。 民<br />

間 宇 宙 旅 行 という 新 たな 時 代 が、 幕 を 開 けようとしている<br />

のだ。その 日 はそう 遠 くない。 憧 れのまなざしで 空 を 見 上<br />

げてきたすべての 人 が、 宇 宙 の 不 思 議 を 自 ら 体 験 するチャ<br />

ンスを 手 にすることになる。<br />

その 最 前 線 で 開 発 の 先 頭 に 立 っているのが、ヴァージン・<br />

ギャラクティックだ。2018 年 12 月 13 日 、 彼 らのプロジェ<br />

クトは 大 きな 飛 躍 を 遂 げた。この 日 、カリフォルニア 州 モ<br />

ハ ベ の 基 地 か ら 母 船 「 V M S イヴ」と 宇 宙 船 「 V S S ユ ニティ」<br />

が 打 ち 上 げられた。ユニティは 母 船 から 切 り 離 されると、<br />

飛 行 士 がロケット・モーターを60 秒 間 噴 射 させ、 宇 宙 船<br />

は 音 速 の3 倍 近 い 速 度 で 初 めて 大 気 圏 外 に 到 達 した。これ<br />

は 大 きな 節 目 だった。 民 間 の 乗 客 向 けに 造 られた 有 人 宇 宙<br />

船 が 宇 宙 に 初 めて 到 達 したのだ。この 成 果 を 受 けて、 民 間<br />

宇 宙 飛 行 士 ウイング 賞 が 飛 行 士 に 贈 られた。<br />

ロケットエンジンによる 有 人 宇 宙 船 を 宇 宙 に 送 り 込 むこ<br />

とには、 単 純 にそれが 可 能 だと 証 明 する 以 上 の 意 味 がある。<br />

同 社 を 立 ち 上 げた 英 国 人 起 業 家 であり 慈 善 活 動 家 である<br />

サー・リチャード・ブランソンは、 宇 宙 旅 行 ビジネスについ<br />

て「 宇 宙 をあらゆる 人 に 開 かれたものにし、 世 界 を 永 久 に<br />

変 える」ことに 等 しいと 言 っている。ヴァージン・ギャラク<br />

ティックのミッションは 私 たちの 世 界 の 見 方 を 変 えることな<br />

のだと。 同 社 CEO のジョージ・ホワイトサイズは、 民 間 宇<br />

宙 旅 行 が 世 界 のモビリティに 与 える 計 り 知 れない 影 響 をほ<br />

のめかし、「 宇 宙 は 輸 送 の 未 来 にとって 重 要 なだけではなく、<br />

想 像 力 の 未 来 にとって 重 要 なのです」と 語 っている。<br />

2014 年 以 来 、ヴァージン・ギャラクティックの 独 占 パー<br />

トナーであるランドローバーは、このミッションで 独 自 の 役<br />

割 を 果 たす。モハベにあるヴァージン・ギャラクティックの<br />

製 造 試 験 施 設 と、 航 空 業 務 の 本 拠 地 となるニューメキシコ<br />

州 のスペースポート・アメリカで、 業 務 を 支 える 車 両 を 提 供<br />

しているのである。 民 間 の 定 期 便 が 開 始 されれば、 宇 宙 旅<br />

行 に 先 立 つ3 日 の 準 備 期 間 中 に、 宇 宙 飛 行 士 が 施 設 間 を<br />

移 動 する 手 段 になる。もちろん 飛 行 当 日 はランドローバー<br />

が 乗 員 を 宇 宙 船 まで 送 り、 帰 還 後 はスペースポート・アメ<br />

リカに 送 り 届 ける。 彼 らはそこで 祝 賀 とウイング 賞 を 受 ける。<br />

パートナーシップは 基 地 における 地 上 支 援 だけにとどま<br />

らない。ヴァージン・ギャラクティックとランドローバーは、<br />

世 界 中 で 子 供 向 けのSTEM 教 育 プログラムに 共 同 で 取 り<br />

組 んでいる。さらに、ヴァージン・ギャラクティックの 宇 宙<br />

船 での 宇 宙 旅 行 に 申 し 込 んでいる 600 人 のために、イベン<br />

ト も 実 施 して い る 。 彼 ら は 同 社 に よる 未 来 宇 宙 飛 行 士 コ ミ ュ<br />

ニティのメンバーだ。イベントは 英 国 内 外 にあるランドロー<br />

バー・エクスペリエンス・センターで 開 催 され、はるか 彼 方<br />

へ 旅 する 宇 宙 旅 行 者 の 準 備 をサポートしている。<br />

成 層 圏 のラグジュアリー<br />

宇 宙 の 旅 を 体 験 してしまうと、 地 上 を 走 るだけの 車 は 凡<br />

庸 に 感 じられるだろうか? いや、その 心 配 はない。ランド<br />

ローバーがラグジュアリーを 新 たな 高 みに 引 き 上 げている。<br />

スペシャルビークルオペレーションズ 部 門 が 手 がけたレンジ<br />

ローバーアストロノートエディションの 登 場 だ。この 特 別 エ<br />

ディションは、 象 徴 的 なデザインと 優 れたエンジニアリング<br />

の 追 求 という、 両 ブランドに 共 通 する 取 り 組 みからインスピ<br />

レーションを 受 けて 実 現 した。 夜 の 空 をイメージし、 何 層 に<br />

も 重 ねられた 独 特 のペイントカラーから、 宇 宙 船 ユニティ<br />

の 木 製 ブレーキ 用 スキッドで 作 られたコンソールまで、その<br />

名 にふさわしいビスポーク 仕 様 であふれている。 後 者 は 自<br />

らの 宇 宙 旅 行 の 後 、 体 験 時 のものに 取 り 換 えることが 可 能<br />

だ。アストロノートエディションを 購 入 できるのは、ヴァー<br />

ジン・ギャラクティックの 未 来 宇 宙 飛 行 士 プログラム 参 加<br />

者 のみとなっている。<br />

49


XXXXXXX TRAVEL LEFT<br />

E L E C T R I C<br />

D R E A M S<br />

深 セン 市 は、 未 来 都 市 の 設 計 図 になろうとしている。<br />

その 最 たる 例 が、 電 気 自 動 車 を 中 心 とする<br />

先 進 的 な 交 通 インフラである。<br />

革 新 的 かつ 野 心 的 な 中 国 のこの 都 市 を、<br />

レンジローバー スポーツ PHEV で 探 る。<br />

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RIGHT XXXXXX<br />

文 : N A T H A N I E L H A N D Y<br />

写 真 : S T E F E N C H O W<br />

51


TRAVEL<br />

雲 にも 届 くガラス 張 りの 高 層 ビル 群 が、 天 然 港 に 沿 ってそび<br />

えている。その 街 は 国 の 経 済 のエンジンルームであり、どこよ<br />

りも 一 人 当 たり 資 産 額 が 高 い。 何 より 土 台 になっているのは、<br />

移 民 の 街 であること……こう 聞 くと 別 の 都 市 を 思 い 浮 か べるか<br />

もしれない。だが、ここは 20 世 紀 のニューヨークではない。<br />

21 世 紀 の 深 センだ。 新 たな 中 国 を 定 義 する、 最 先 端 の 街 である。<br />

昨 年 は 深 センの 改 革 開 放 40 周 年 だった。1978 年 、 同 市 は<br />

当 時 の 最 高 指 導 者 、 鄧 小 平 が 進 める 改 革 開 放 政 策 の 最 初 の 実<br />

験 に 選 ばれた。 人 口 3 万 人 の 長 閑 な 漁 師 町 が 選 定 された 理 由 は、<br />

金 融 の 中 心 地 である 香 港 と 湾 を 挟 んで 隣 接 していたためだ。こ<br />

の 実 験 により、 家 庭 にある「メイド・イ<br />

ン・チャイナ」のほとんどを 製 造 する 工<br />

場 エリアとして 始 まった 深 センはその 後 、<br />

になり、 充 電 スタンド 網 は 世 界 で 最 も 整 備 されていると 言 える<br />

だろう。だから 深 センで 聞 こえるのは、 吠 えるようなエンジン<br />

音 ではなく、 猫 が 喉 を 鳴 らすような 音 だ。レンジローバー スポー<br />

ツプラグインハイブリッドカー(PHEV)を 走 らせるにはもってこ<br />

いではないか。では 深 セン・スタイルの 未 来 へ、 進 んでみよう。<br />

街 のあらゆる 場 所 に「 深 センに 来 れば、あなたはもう 深 セン<br />

の 人 」という 広 告 が 掲 げられている。 本 質 的 に 極 めて 開 かれた<br />

街 なのだ。 我 々は 社 会 事 業 スタートアップの 山 寨 都 市 (シャン<br />

ツァイ・シティ)を 創 業 したタット・ラムに 会 うため、 新 たに 開<br />

発 された 后 海 地 区 へと 向 かう。この 地 区 には 鋼 材 とガラスを<br />

使 った 高 層 ビルが 多 く 集 まり、さらに 高<br />

さを 増 し 続 けている。 桁 や 安 全 ヘルメッ<br />

トに 囲 まれる 中 で、タットはわずか 数 十<br />

1,300 万 人 都 市 へと 発 展 し、 華 為 技 術<br />

(ファーウェイ)、 騰 訊 (テンセント)、 阿<br />

里 巴 巴 (アリババ)といった 大 手 テクノ<br />

ロジー 企 業 が 本 社 を 構 える 街 になった。<br />

深 センではすべてがめまぐるしく 変 化<br />

する。 未 来 もその 例 外 ではない。 地 元<br />

で 出 会 った 多 くの 人 が「 最 後 に 財 布 を 持<br />

ち 歩 いたのがいつだったのか 思 い 出 せな<br />

い」と 語 った。 今 では 駐 車 場 やレストラ<br />

ン、 質 素 な 屋 台 まで、すべてスマートフォ<br />

深 センには 持 続 可 能 な<br />

都 市 生 活 について<br />

自 ら 策 定 した 目 標 があり、<br />

電 気 自 動 車 のインフラで<br />

世 界 をリードする。<br />

年 で 作 り 上 げられたこの 街 の 独 特 なアイ<br />

デンティティを 説 明 する。「 深 センは 都<br />

市 版 スタートアップといえます。 革 新 の<br />

ないところに 価 値 はないので、 常 に 新 た<br />

な こ と を 追 求 して い る の で す」。<br />

こういったエネルギーは、 中 国 全 土<br />

から 来 た 新 しいものを 求 める 人 たちと 混<br />

ざり 合 うことで 生 まれる。この 傾 向 はク<br />

ラフトビール、 中 国 茶 や 紅 茶 に 泡 状 の<br />

チーズを 浮 かべたドリンクまで、あらゆ<br />

ンで 支 払 うことができる。 高 層 ビルは 今 後 も 驚 くようなスピード<br />

で 高 さを 増 していくだろうが、ここではあらゆる 面 で 生 活 の 質 が<br />

高 まっていることは 明 らかだ。<br />

街 中 は 清 潔 で 緑 や 美 しい 公 園 が 多 い。 深 セン 市 民 が 余 暇 を<br />

楽 しむ 方 法 は 豊 富 で、 人 々はきらびやかなショッピングモール<br />

に 押 し 寄 せる。アートギャラリーや 美 術 館 、レストランが 並 ぶ<br />

OCT-LOFT( 華 僑 創 意 文 化 園 )では、 最 高 の 四 川 料 理 から、<br />

北 京 料 理 の 牛 肉 火 鍋 、 寿 司 、エスプレッソまで、あらゆるもの<br />

がそろう。<br />

しかし 最 も 重 要 なのは、 深 センには 持 続 可 能 な 都 市 生 活 につ<br />

いて 自 ら 策 定 した 目 標 があることだ。 国 際 低 炭 素 都 市 イニシア<br />

チブの 一 環 として、 同 市 は 電 気 自 動 車 のインフラで 世 界 をリー<br />

ドしている。 昨 年 、 同 市 のバスとタクシーはすべて 電 気 自 動 車<br />

る 分 野 に 広 がっている。 工 場 や 倉 庫 街 だった 地 区 が 生 まれ 変<br />

わったOCT-LOFT を 歩 いていると 革 張 りのチェスターフィール<br />

ドソファが 置 かれた 薄 暗 いジムがあり、 間 に 合 わせに 建 てたよ<br />

うにも 見 える 美 術 館 、OCAT 深 セン 館 では、アーティスト 隋 建<br />

國 による 彫 刻 や3Dプリンターで 制 作 した 作 品 、 映 画 の 回 顧 展<br />

を 開 催 している。<br />

「 深 センは、 言 わば 革 新 が 有 機 的 に 発 展 するアーバンビレッジ<br />

の 集 まりです。その 意 味 では、クラウドシティと 考 えていいで<br />

しょう。 複 数 の 巨 大 プロジェクトよりも 小 規 模 な 革 新 的 取 り 組<br />

みの 中 で 最 適 なものを 人 々が 決 め、 人 気 を 集 めたものが 発 展 し<br />

ていくのです」とタットは 言 う。<br />

過 去 20 年 間 で、こうした 小 さなアイデアのいくつかは 実 に 大<br />

きな 成 長 を 遂 げた。5 平 方 キロメートルの 一 角 には、 阿 里 巴 巴<br />

心 地 良 く 洗 練 された<br />

深 センは、 今 や 世 界 の<br />

流 行 を 呼 び 込 むだけでなく、<br />

流 行 を 自 ら 生 み 出 している。<br />

左 上 : 急 増 する<br />

高 層 ビル 群 の 中 に 立 つ<br />

社 会 事 業 スタートアップの<br />

創 業 者 、タット・ラム。<br />

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53


XXXXXXX LEFT<br />

54


TRAVEL<br />

テクノロジー 発 明 家 の<br />

ロビン・ウー( 右 上 )や<br />

オープンイノベーション・<br />

ラボを 設 立 した<br />

セス・リー( 左 )たちは<br />

先 駆 的 思 考 のハブとして<br />

深 センが 地 位 を 高 める<br />

推 進 力 になっている。<br />

(アリババ)、 騰 訊 (テンセント)、 華 為 技 術 (ファーウェイ)と<br />

いう 大 手 テクノロジー 企 業 と 世 界 トップのドローンメーカー、<br />

DJIの 本 社 がある。このような 発 展 は、 同 時 にあまり 好 ましく<br />

ないものを 生 じさせる。 土 埃 、スモッグ、 騒 音 だ。だがここで<br />

も、 深 センは 自 らのDNAに 組 み 込 まれた 解 決 策 を 巧 みに 使 う。<br />

深 セン 湾 の 向 かいには、かげろうのように 丸 い 山 々が 緑 色 にそ<br />

びえ 立 つ。 香 港 だ。 深 センは 香 港 から 優 れたアイデアを 得 て 街<br />

づくりに 生 かしてきた。「 例 えば 山 間 部 を 公 園 に 変 えた 香 港 を<br />

手 本 にし、 今 では 深 セン 全 体 の 半 分 は 緑 地 です。 中 国 ではほ<br />

ぼ 唯 一 の 例 ですよ」とタットが 説 明 する。<br />

そうした 緑 化 が 行 われているのは、 中<br />

フィスは 后 海 にあるビルの22 階 。ガラスの 高 層 ビル 群 とゴルフ<br />

場 の 緑 を 見 晴 らしながら 話 を 聞 く。<br />

「 1 9 8 0 年 代 以 降 生 ま れ に と って 、 深 セ ン に 来 る こ と は 片<br />

道 切 符 です。 全 力 を 尽 くさなければなりません。 深 センで<br />

の 成 功 物 語 の 多 くは、 私 のようにほかの 省 から 来 た 者 が 成 し<br />

遂 げたものです」と 語 るロビン。 彼 は 江 西 省 の 山 間 部 で 生 まれ<br />

た。10 年 前 、 先 駆 的 な ITスペシャリスト 集 団 の 一 人 として、<br />

デュアル SIM のような 機 能 でスマートフォンに 革 新 をもたらした。<br />

今 、 自 らの 最 新 のプロトタイプに 囲 まれて 座 る 彼 は、 深 センに<br />

おける 猛 烈 な 変 化 の 時 期 は 過 ぎたと 考 え<br />

て い る 。「 今 後 は 単 純 な 製 造 と い う よ り 、<br />

心 地 区 まで 入 り 込 む 山 だけではない。レ<br />

ンジローバー スポーツ PHEV で 音 もな<br />

く 街 を 走 って い る と( 電 動 モ ー タ ー の お<br />

かげだ)、すべての 道 路 脇 にヤシの 木 や<br />

熱 帯 のつる 植 物 が 並 んでいるのが 見 える。<br />

コンクリートとガラスの 建 物 の 足 元 にも、<br />

日 陰 には 下 草 が 密 生 している。 高 層 ビル<br />

にさえ 側 面 から 植 物 がぶら 下 がっている。<br />

こうした 緑 の 帯 に 沿 って 幹 線 道 路 から 駐<br />

車 場 に 入 る。ここにはヤシの 木 と 芝 生 に<br />

囲 まれたEV 充 電 スタンドがあるのだ。<br />

水 場 もあちこちにあり、 滝 や 噴 水 のほか、<br />

静 かに 水 をたたえた 水 盤 もある。<br />

タットは 言 う。「こうした 持 続 可 能 な 開<br />

発 はすべて、 改 善 のために 行 動 するかし<br />

ないかという、 単 純 な 選 択 の 結 果 で す。<br />

ほとんどの 都 市 は 歴 史 や 既 存 インフラと<br />

「ほとんどの 都 市 は<br />

歴 史 や 既 存 インフラ<br />

という 重 荷 がありますが<br />

深 センはそういった<br />

くびきがないので<br />

自 らを 作 り 変 える<br />

ことが できます。<br />

行 動 のきっかけも<br />

トップダウンで は<br />

ありません」<br />

革 新 や 世 界 一 の 競 争 力 をキーとしてこの<br />

街 は 発 展 していくでしょう。 私 たちは 欧<br />

米 の 市 場 にまだ 存 在 しない 製 品 を 生 み<br />

出 す こ と を 目 指 して い る の で す」。<br />

そう 言 って、ロビンは 自 らの 最 新 作 を<br />

手 に 載 せて 見 せてくれる。クレジットカー<br />

ドサイズの 小 型 デバイスで、スマートフォ<br />

ンにつなぐとプロジェクターかスクリーン<br />

を 使 ってラップトップになるというもの。<br />

見 た 目 もよく、 実 にシンプルだ。ロビン<br />

の 会 社 、MeeGoPadは 伝 統 的 なメー<br />

カーである 華 建 (Huajian)から 生 まれ<br />

た、 創 造 性 を 発 揮 してリスクを 取 る 革 新<br />

部 隊 で あ る。 プ ロジェクトの 多 くは、<br />

資 金 源 にクラウドファンディングを 利 用<br />

している。<br />

ロビンが 説 明 する。「MeeGoPad は<br />

いう 重 荷 がありますが、 深 センはそういったくびきがないので<br />

自 らを 作 り 変 えることができます。 行 動 のきっかけもトップダウ<br />

ンではありません。リスクを 取 る 勇 気 を 持 ち、 実 施 することが<br />

すべて。 人 口 10 万 人 という 小 さな 都 市 でこうしたシステムを 試<br />

しても 革 新 の 真 価 は 分 かりませんが、1,300 万 人 都 市 では 革 新<br />

の 規 模 も 素 早 く 広 げることができます。 新 たな 方 法 を、あっと<br />

い う 間 に 広 め ら れ る の で す」。<br />

深 センモデルへとスケールアップすることの 価 値 を 誰 より<br />

もよく 知 っている 人 物 は、ロビン・ウーだ。 優 れたテクノロジー<br />

の 先 駆 者 である 彼 は、この 街 の 精 神 を 体 現 している。 彼 のオ<br />

サークルのような 存 在 です。 異 なるバックグラウンドの 人 たちが<br />

集 まって、 新 しいものを 作 るために 知 識 を 共 有 します。 生 産 ラ<br />

インの 方 向 も 固 定 しません。ニーズのあるところでそのニーズを<br />

満 たす、それが 基 本 姿 勢 です」。ロビンは 周 囲 の 高 層 ビルを 見<br />

やり、 話 を 続 ける。「 深 センの 人 は 財 を 築 くことだけを 考 えてい<br />

るわけではありません。もっと 深 いモチベーションがあります。<br />

どうやって 人 々の 生 活 を 向 上 させ、より 良 い 地 域 社 会 を 実 現 す<br />

るか、ということが 大 事 なのです。この 地 域 には 上 場 企 業 が<br />

300 社 ありますが、 彼 らは 小 規 模 の 事 業 者 も 大 切 にしています。<br />

誰 もがそう 遠 くない 昔 に 小 さい 規 模 で 始 めたのですから」。<br />

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TRAVEL<br />

街 の 反 対 側 に、 深 センオープンイノベーション・ラボがある。 「 双 方 にとって 冒 険 ですよ。 私 たちは 深 センのデザイン 協 会 、<br />

街 の 作 り 手 である 小 規 模 事 業 者 と 工 業 デザイン 企 業 をつなぐ 場<br />

だ。「ファブラボとして 創 業 しました」とプロジェクトコーディ<br />

ネーターのセス・リーが 説 明 する。ファブラボは 米 国 で 始 まっ<br />

た 構 想 で、 個 人 が 製 品 の 作 り 方 を 理 解 できるよう、プロジェク<br />

トマネジメント、ウェブサイトのデザイン、ハードウェアのデザ<br />

インといった 基 本 をすべて 提 供 する 場 である。「 誰 もが 自 分 のア<br />

イデアから 試 作 品 を 作 れるよう 工 作 機 械 を 提 供 しています。 参<br />

加 に 条 件 はなく、ワークショップや 講 座 も 開 催 しています。 作<br />

り 手 はここに 来 て、ほかの 人 と 気 軽 に 話 し 合 えるのです」。<br />

こうしたアイデア 交 流 は 深 センの 至 るところで 起 きている。<br />

近 くの 充 電 スタンドに 駐 車 して、あらかじめ 室 内 を 適 温 に 保 って<br />

おいたレンジローバー スポーツに 乗 り 込 み、この 街 の 最 初 の 港<br />

地 域 である 蛇 口 へ 向 かう。 目 的 地 はデザ<br />

イン・ソサエティだ。<br />

副 館 長 のロン・ジャオが 説 明 する。「 当<br />

テ クノロジー 分 野 の 企 業 や 学 校 を 紹 介 しました。V& A からは<br />

彼 らが 実 施 している『ラピッド・レスポンス・コレクティング』プ<br />

ロジェクトなどのアイデアを 教 えてもらいました。このプロジェ<br />

クトは 地 域 社 会 を 中 心 に 据 えていて、 一 般 の 人 から 自 分 たちの<br />

地 域 社 会 の 象 徴 と 感 じるものを 寄 贈 してもらう、という 取 り 組<br />

みです。その 結 果 、 今 では 深 センの 学 校 の 制 服 が V&Aの 常 設<br />

コレクションに 入 っています」とロン。<br />

デザイン・ソサエティが 入 っている 建 物 でさえ、 深 セン 市 民 と<br />

の 関 わりを 重 視 して 設 計 されている。ロンが 説 明 する。「 完 全<br />

に 開 かれた 建 物 で、 館 内 から 外 へスムーズに 移 動 できます。 屋<br />

上 庭 園 は 階 段 で 周 囲 の 公 園 とつながっています。 私 たちはこの<br />

土 地 全 体 を 公 共 のものに 戻 したのです」。<br />

「 公 共 に 戻 す」と 言 う 意 識 は 文 化 の 面<br />

でも 感 じられる。 一 番 最 近 の 展 示 は「 工<br />

芸 :ザ・リセット」と 題 され、 伝 統 的 な<br />

施 設 の 中 国 語 の 名 前 を 英 語 に 訳 すと、 実 アイデア 交 流 は<br />

中 国 の 紙 工 芸 、 家 具 、 陶 芸 を 称 えるもの<br />

はデザイン・ソサエティではなくデザイ<br />

だった。だがその 称 賛 は、21 世 紀 にふ<br />

深 センの 至 るところで<br />

ン・インターコネクテッドです。 世 界 や 地<br />

さわしい 中 国 のこの 都 市 のためであり、<br />

域 社 会 への 架 け 橋 、この 街 の 作 り 手 と 工 起 き、 芸 術 と 革 新 の まさにこの 街 でなされているのだ。<br />

業 デザイン 企 業 とをつなぐ 架 け 橋 になる<br />

杭 州 市 を 拠 点 にする3 人 組 のデザイナー<br />

融 合 がこの 街 に<br />

というビジョンを 反 映 しています」。<br />

集 団 、PINWUの 一 人 、ヨバナ・ボグダノ<br />

8 年 前 、 大 企 業 である 招 商 局 集 団<br />

(China Merchants Group)が、プリ<br />

ツカー 賞 を 受 賞 している 日 本 人 建 築 家 の<br />

槇 文 彦 に、 蛇 口 港 エリアの 文 化 の 中 心 と<br />

浸 透 しつつある。<br />

ビ ッ チ は 語 る 。「 変 化 の ス ピ ー ド が 速 い 現<br />

代 の 都 市 では、 工 芸 がいまだかつてない<br />

ほど 重 要 な 意 味 を 持 っています。さまざま<br />

な 形 で、 工 芸 は 建 築 、デザイン、ライフ<br />

なる 建 物 の 設 計 を 依 頼 。2017 年 12 月 に 開 業 した。<br />

ロンが 続 ける。「 蛇 口 は、 一 連 の 改 革 開 放 が 始 まった 特 別 な<br />

場 所 です。 深 センに、 試 験 となる 場 所 を 提 供 したんです」。 当 時 、<br />

招 商 局 集 団 は 外 の 世 界 につながるための 港 をつくることから 始<br />

めた。そして 今 、デザイン・ソサエティによって 彼 らは 再 び 世 界<br />

的 な 結 びつきを 構 想 している。<br />

「『 中 国 製 造 (メイド・イン・チャイナ)』から『 中 国 創 造 (ク<br />

リエイテッド・イン・チャイナ)』へと 変 化 が 起 きています。<br />

深 センは2008 年 、 中 国 で 初 めて 国 連 教 育 科 学 文 化 機 関 (ユ<br />

ネスコ)にデザイン 都 市 として 認 定 されました。 私 たちはこれ<br />

を 足 がかりとして 欧 州 の 国 立 博 物 館 を 中 国 にもたらすという 最<br />

初 のイニシアチブに 着 手 しました」。その 結 果 、ロンドンのヴィ<br />

クトリア・アンド・アルバート 博 物 館 (V& A)と 提 携 し、デザイ<br />

ン・ソサエティでの 常 設 展 「V&A ギャラリー」をはじめ、さま<br />

ざまな 構 想 を 共 有 することになった。<br />

スタイル、 食 に 影 響 を 与 えているのです」。 展 示 には、PINWU<br />

の 代 表 的 な 作 品 であるエルメスのための 紙 製 椅 子 もみられる。<br />

こういった 芸 術 と 革 新 の 融 合 が、 今 この 街 に 浸 透 しつつある。<br />

近 くのアートロン・アートセンターでは、 中 国 の 著 名 な 火 薬 アー<br />

ティストである 蔡 國 強 によるインスタレーションが、 世 界 最 大 の<br />

書 籍 の 壁 を 背 景 に 展 示 されている。この 壁 は 高 さ30メートル、<br />

幅 50メートルに 広 がる 書 棚 で 芸 術 史 の 関 連 書 籍 が 並 び、 来 館<br />

者 が 閲 覧 できる 図 書 館 になっている。<br />

深 センは 今 、テクノロジー、 都 市 文 化 、 持 続 可 能 な 未 来 の<br />

ニーズに 対 して 創 造 的 な 答 えを 生 み 出 しながら、 世 界 における<br />

自 らの 新 しい 役 割 を 形 作 っている。どんな 方 向 に 進 むのであれ、<br />

深 センが 決 してとらない 選 択 肢 がある。それは、 立 ち 止 まるこ<br />

とだ。 道 を 開 くのはいつも 前 進 する 人 であり、そのような 挑 戦<br />

者 によって 未 来 は 形 成 される。そしてもし 深 センのスピードで 進<br />

むなら、 自 ずと 先 頭 に 立 つことになるだろう。<br />

ロン・ジャオ( 上 ) 曰 く、<br />

デザイン・ソサエティは<br />

より 広 い 世 界 へ 文 化 的 な<br />

架 け 橋 を 築 いている。<br />

右 :アートロン・<br />

アートセンターの<br />

記 念 碑 的 な 書 籍 の 壁 。<br />

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RIGHT XXXXXX<br />

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G<br />

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E<br />

E<br />

T<br />

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T<br />

S<br />

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O<br />

N<br />

N<br />

G<br />

A<br />

L<br />

高 級 カスタマイズウォッチで<br />

知 られるバンフォード<br />

ウォッチデパートメント。<br />

その 創 業 者 でランドローバー<br />

オーナーでもあるジョージ・<br />

バンフォードが、 腕 時 計 に 捧 げる<br />

人 生 とラグジュアリーを 語 る。<br />

文 : L U K E P O N S F O R D<br />

写 真 : A L E X A N D E R R H I N D<br />

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59


「ラグジュアリーというのは 価 格 がすべてじゃない。ビスポークであることと<br />

パーソナル 化 が 必 須 なんだ。この 二 つは 密 接 に 関 連 している」


CRAFTSMANSHIP<br />

上 :ジョージ・<br />

バンフォードと 彼 が<br />

生 み 出 した 腕 時 計 たち。<br />

下 : 愛 情 を 込 めて<br />

レストアされた<br />

ランドローバー「110」<br />

ピックアップトラック。<br />

コッツウォルズの<br />

エステートにて。<br />

ジョージ・バンフォードはランドローバーが 好 きだ、というのは<br />

かなり 控 えめな 表 現 になるだろう。 彼 はランドローバーに 惚 れ 込 ん<br />

でいる。コッツウォルズにある 自 らのエステートでは、 敷 地 のそこ<br />

かしこにある 車 庫 に14 台 を 所 有 。その 中 にはディフェンダーが 1 台 、<br />

軍 用 モデル「ウルフ」が 数 台 あるほか、めまいを 起 こさせるほどの<br />

オフロード 走 行 に 駆 られる 通 称 「ザ・ビースト」、 彼 の 最 新 のレスト<br />

アモデルである1972 年 式 「110」のピックアップトラックもある。<br />

そんなわけで、 私 たちがカスタマイズウォッチを 手 がける 彼 のビジ<br />

ネス、バンフォード ウォッチデパートメントについて 話 している 場<br />

所 が、ロンドンのメイフェアにある「ザ・ハイヴ(ハチの 巣 )」とあ<br />

だ 名 されるこじゃれた 本 社 ではなく、バンフォードが 所 有 するこの<br />

湿 ったオフロードコースであるのは 驚 くには 当 たらない。<br />

英 国 でも 有 数 の 裕 福 な 家 系 に 生 まれたバンフォードは、16 年<br />

前 、 黄 色 い 重 機 で 知 られる 家 業 の JCB には 入 社 せず、 自 らのビジ<br />

ネスを 始 めた。ザ・ハイヴの 応 接 室 では、 顧 客 が 腕 時 計 の 色 、 針 、<br />

文 字 盤 を 選 び、 細 部 に 至 るまで 個 性 を 生 かして 作 り 上 げる。<br />

バンフォードは、こうした 細 部 へのこだわりを 生 きがいにしてい<br />

る。 彼 は 子 供 のころから 腕 時 計 に 夢 中 だった。「エンジニアリング<br />

の 家 系 で、 僕 の 血 にも 流 れているんだ。 子 供 のころはテレビや<br />

ジューサーをよく 分 解 して、 両 親 をイライラさせたものだよ。16<br />

歳 のときに 高 級 腕 時 計 のブライトリング ナビタイマーをもらった<br />

んだけど、それも 分 解 した。 両 親 のイライラ 度 はさらに 増 したね」。<br />

先 述 したピックアップトラックに 乗 り、 濡 れている 坂 を 滑 るように<br />

下 りながら 笑 顔 で 語 る。だが、このナビタイマーをきっかけに、<br />

突 如 として 腕 時 計 にのめり 込 むようになった。それから 数 年 間 、<br />

ニューヨークのパーソンズ 美 術 大 学 で 写 真 を 学 ぶ 一 方 、フリーマー<br />

ケットに 行 っては 安 価 な 昔 の 時 計 を 買 い 集 め、バラバラにしては<br />

組 み 立 て 直 し、 時 計 が 動 く 仕 組 みを 研 究 した。<br />

内 部 の 構 造 に 魅 了 される 一 方 で、 腕 時 計 のデザインには 失 望 す<br />

ることが 多 かった。「 大 量 生 産 される 高 級 腕 時 計 は 新 鮮 さに 欠 け<br />

る、と 感 じたんだ。 同 じスチールケースに 同 じブラックの 文 字 盤 と<br />

いった 具 合 にね。それであるとき、もらい 受 けたタグホイヤーモナ<br />

コを 自 分 だけのデザインにしようと 決 めた。 時 計 全 体 をブラック<br />

でまとめたよ。 文 字 盤 もケースもすべてね。2003 年 のことで、あ<br />

れ が 僕 の 最 初 の カ ス タ マ イ ズ ウ ォ ッ チ だ っ た 」。<br />

そのブラックのモナコを 身 に 着 け 始 めると、それに 気 付 いた 友 人 た<br />

ちがほしがるようになった。そこでバンフォードは 制 作 を 請 け 負 うこ<br />

とになり、こうしてバンフォード ウォッチデパートメント(BWD)が<br />

誕 生 した。BWDを 特 徴 付 ける 初 期 のプロジェクトは、 大 幅 にカスタ<br />

マイズしたロレックス、 中 でもオールブラックのコスモグラフ デイト<br />

ナだった。だが、ロレックスは 自 分 たちのクラシックなデザインに 対<br />

するバンフォードのこうした 解 釈 を 快 く 思 わなかった。<br />

実 際 、バンフォードが 有 名 ブランドの 腕 時 計 に 対 して 独 自 の 解 釈<br />

を 施 してデザインを 変 えると、メーカー 保 証 の 対 象 外 になってしまっ<br />

た。これはアフターサービスの 面 では 大 きな 問 題 だった。にもかか<br />

わらず、パーソナル 化 ビジネスは 伸 び 続 けた。ザ・ハイヴの 最 上 階<br />

に 独 自 のサービス 部 門 まで 設 立 し、やがてBWDは、ロレックス 腕<br />

時 計 の 世 界 トップカスタマイザーとして 知 られるようになった。<br />

ところが、2016 年 に 状 況 が 一 変 する。ラグジュアリービジネス<br />

の 世 界 的 グループであるLVMH が BWD を 全 面 的 に 受 け 入 れたの<br />

だ。「あの 取 引 で 僕 たちはとても 良 いポジションを 得 たんだ。 承 認<br />

されるというのは 最 高 の 出 来 事 だった。それによって 僕 たちの 製<br />

品 でもメーカー 保 証 を 提 供 できるようになったから」。ランドロー<br />

バーで 不 可 能 に 近 い 坂 と 格 闘 しながら、バンフォードは 語 る。<br />

BWD はロレックスを 封 印 し、LVMH の 3 つの 高 級 ウォッチブラ<br />

ンドに 特 化 して 取 り 組 んだ。タグ・ホイヤー、ゼニス、ブルガリだ。<br />

バンフォードのさまざまなカスタマイズ・オプションが 完 全 に 正 統<br />

なものになった。 顧 客 は10 億 以 上 あるオプションから 自 分 の 好 み<br />

に 合 うものを 選 んで、 組 み 合 わせることができる。BWD は 同 時 に<br />

独 自 ブランドの 腕 時 計 「バンフォード ロンドン メイフェア」と 自<br />

動 巻 き 式 GMTの 生 産 も 開 始 した。BWD の 腕 時 計 を 手 軽 に 持 ち<br />

始 められるように 価 格 を 抑 えたブランドだ。<br />

バンフォードが 熱 く 語 る。「メイフェアには49 色 あって、カスタ<br />

マイズするのもほんの 少 しの 追 加 料 金 で 可 能 だよ。でもラグジュ<br />

アリーというのは 価 格 がすべてじゃない。ビスポークであることと<br />

パーソナル 化 が 必 須 なんだ。この 二 つは 密 接 に 関 連 している。 車<br />

についても 個 性 を 重 視 しているよ。 純 粋 主 義 者 には 受 け 入 れられ<br />

ないかもしれないけれど、 僕 は 気 に 入 っている。 人 それぞれに 自<br />

分 のほしいものを 手 に 入 れられるのが 理 想 だね」。<br />

こうした 姿 勢 こそ 現 在 の 成 功 の 基 盤 にあるものだ。 世 界 中 の 専<br />

門 店 や 代 理 店 、BWD 製 品 を 求 めるアジアや 米 国 という 要 求 の 厳<br />

しい 市 場 を 相 手 に、バンフォードは 一 族 の 横 に 並 ぶ 小 さな 帝 国 を<br />

築 き 上 げた。さらに、 身 だしなみケア 商 品 やアクセサリーもライン<br />

アップに 追 加 されている。<br />

バンフォードブランドはこれからどこへ 向 かって 進 むのだろうか。<br />

オーダーメイドの 車 、またはプライベートジェットか? 彼 は 苦 笑 い<br />

し、ランドローバーを 砂 利 敷 きの 車 寄 せに 入 れながら 答 える。「 短<br />

期 的 には 夏 前 に 新 しいウォッチを 発 売 するよ。それからLVMHと<br />

はまったく 別 の 新 しいコラボレーションも 控 えている。もし10 年 前<br />

に 同 じことを 聞 かれても 現 在 のようなビジネス 展 開 は 予 想 できてい<br />

なかっただろうね。 今 でも『 明 日 終 わってたらどうしよう』と 思 う<br />

ときがあるよ」と 笑 う。「でも、いくつかのブランドに 受 け 入 れられ<br />

て 一 緒 に 取 り 組 んでいる 今 は、 太 陽 の 日 差 しを 肌 で 感 じることがで<br />

きる。 人 生 のドライブとしては 悪 くないね」。すっかり 泥 だらけに<br />

なったランドローバーとの 関 係 にも、 同 じことが 言 えるのだろう。<br />

BW D の 詳 しい 情 報 はこちらで:bamfordwatchdepartment.com<br />

61


文 : S O P H I E B R O W N<br />

写 真 : N E I R I N J O N E S<br />

B A T E<br />

B O L A<br />

毎 年 、リオ・デ・ジャネイロの 裏 通 りでカラフルな 祭 りが 炸 裂 する。<br />

でもそれは、 誰 もがよく 知 るカーニバルの 話 ではない……。<br />

ドキュメンタリー 映 像 賞 を 受 賞 した 庶 民 の 文 化 に、 本 誌 が 迫 る。<br />

62


RIGHT XXXXXX<br />

63


CULTURE<br />

フリルにふわふわの 毛 皮 、 点 滅 するライト、キラキラしたも<br />

のすべてがリオ・デ・ジャネイロ 近 郊 グアダルーペの 路 上 に 舞 い、<br />

まばゆいエネルギーを 放 つ。 思 い 思 いの 衣 装 や 仮 面 で 飾 り 立 て<br />

街 を 練 り 歩 くパレードの 一 行 だ。 遠 目 には 古 典 的 なシルエットに<br />

も 見 えるが、 実 際 はネオンカラーの 縁 飾 りという 完 全 に 現 代 風<br />

のアレンジになっている。 派 手 に 見 えるが 威 厳 もある。 一 行 は 今 、<br />

一 年 にわたる 準 備 を 経 て、クジャクのように 気 取 って 歩 いている<br />

ところだ。パラソル、 色 とりどりの 煙 、 花 火 が 辺 りを 満 たす。 通<br />

りは 子 供 たちで 溢 れ、みんな 興 奮 して 得 意 満 面 だ。<br />

この 勢 いのあるパレードの 様 子 は『This is Bate Bola(これ<br />

がバテ・ボラだ)』という 短 編 フィルムに 収 められた。 監 督 はベ<br />

ン・ホルマンとネイリン・ジョーンズ。 現 在 、いくつかの 映 画 祭<br />

に 出 品 されている 本 作 は、 観 客 を「リオのカーニバル」 裏 バー<br />

ジョンの 世 界 へと 引 き 込 む。<br />

豪 華 なことで 知 られる 有 名 なカーニバルと 違 って、バテ・ボラ<br />

では 労 働 階 級 による 何 十 ものグループが、それぞれのテーマで<br />

パレードを 披 露 する。 隣 接 する 郊 外 の 町 同 士 が 競 い 合 う、 作 り<br />

込 まれた 衣 装 と 小 道 具 に 満 ちあふれたシュールな 闘 いだ。 楽 しく<br />

もあり、 恐 ろしくもあるバテ・ボラの 起 源 は、アフリカとヨーロッ<br />

パの 伝 統 的 な 謝 肉 祭 にある。かつては 仮 面 をかぶった 男 たちが<br />

動 物 の 膀 胱 を 地 面 にたたきつけ、 群 衆 は 興 奮 と 恐 怖 を 味 わった。<br />

現 在 では 膀 胱 はプラスチックの 球 に 置 き 換 えられ、 棒 に 結 び 付<br />

けられる。そう、バットとボールだ。これがカーニバルの 名 前 の<br />

由 来 であり、 意 味 は「ボールを 打 て」だ。<br />

ホルマンは 英 国 人 ドキュメンタリー 映 像 作 家 で、そのパスポー<br />

トにはうらやましいほど 数 多 くのスタンプが 並 んでいる。「 休 暇<br />

で 本 当 に 行 きたい 場 所 をまず 考 えて、 仕 事 を 組 み 込 めるようテー<br />

マを 決 めるんだ」とホルマンは 冗 談 で 言 う。 世 界 各 地 に 散 らば<br />

る 胸 に 響 く 物 語 に 光 を 当 て、 自 らの 立 ち 位 置 を 決 然 と 映 像 で 示<br />

してきた。 作 品 同 様 、 心 の 温 かい 人 物 だ。 愛 嬌 があって、たち<br />

まち 人 から 好 かれる。 撮 影 中 に 骨 折 し、 片 脚 を 固 定 している 姿<br />

からは、 精 力 的 で 行 動 ありきという 姿 勢 が 一 目 瞭 然 だ。<br />

西 暦 2000 年 を 迎 える 大 晦 日 をリオのコパカバーナ・ビーチ<br />

で 過 ごすという 子 供 のころからの 夢 をかなえて 以 来 、ホルマン<br />

はロンドンとブラジルの 両 方 を 拠 点 としてきた。「10 代 のときは<br />

いつも 友 達 を 通 して 南 米 文 化 と 強 いつながりがあった。それで<br />

親 近 感 が 湧 くようになったんだ」。<br />

当 初 は 先 入 観 からビクビクしたという。『シティ・オブ・ゴッド』<br />

のような 映 画 の 影 響 だった。「 確 かにギャングはいるし、 銃 もあ<br />

る。でも、おばあちゃんと 子 供 たちが、そうした 状 況 を 日 々の<br />

生 活 の 一 部 として、うまく 生 きている。 僕 もそこにいれば 同 じよ<br />

うにして 暮 らせるはずだと 思 った」。<br />

熱 心 なアマチュアボクサーでもあるホルマンは、ある 日 、リ<br />

オの 悪 名 高 い 貧 民 街 でボクシングを 通 した 教 育 を 展 開 している<br />

NGO を 知 った。ホルマンはこの 団 体 と 強 い 関 係 を 築 き、 何 らか<br />

の 貢 献 を 期 待 して 共 に 映 画 製 作 を 始 めた。その 後 「アブラソ・<br />

カンペオン」と 名 付 けた 自 らのNGOを 設 立 。メンバーのひとり、<br />

アラン・デュアルテの 活 動 に 共 鳴 して 生 まれたのが『ザ・グッド・<br />

ファイト』だ。この 作 品 が、2017 年 のトライベッカ 映 画 祭 で 最<br />

優 秀 短 編 ドキュメンタリー 賞 を 受 賞 したことにより、 地 域 の 若 者<br />

へのサポートを 一 変 させるほどの 資 金 が 集 まった。<br />

経 験 をもとに 作 られたホルマンの 作 品 からは、 空 気 感 、 興 奮 、<br />

その 瞬 間 に 立 ち 上 がるパワーが 手 に 取 るように 伝 わってくる。 社<br />

会 の 隅 に 追 いやられた 声 をすくい 上 げる 役 割 も 担 う。「 僕 が 作 品<br />

で 繰 り 返 し 主 題 にするのは、 誤 解 され<br />

ていたり、 正 しく 伝 えられていなかった<br />

りする 場 所 や 人 々のところに 行 って、 現<br />

実 をきちんと 示 すことだ。 僕 たちの 知<br />

識 は 報 道 に 大 きく 依 存 しているからね。<br />

バテ・ボラ 作 品 のアイデアも 同 じ。あ<br />

の 地 域 で 見 つけた 美 しい 心 と 温 かさを<br />

見 せることだった。とても 強 くて、 確 か<br />

に 存 在 しているものをね。バテ・ボラ<br />

ベン・ホルマンはロンドンの 広 告 代 理 店 勤 務 の 後 、<br />

独 立 し、 世 界 の 隠 れた 物 語 に 光 を 当 てる<br />

は とても 活 気 が あって、 騒 が しい 音 、<br />

ドキュメンタリーを 製 作 している。<br />

におい、 狂 気 に 満 ちている。 楽 しくて<br />

美 しいけれど、ちょっと 緊 張 があって 怖<br />

い 部 分 もある。 貧 民 街 そのものを 見 事 に 象 徴 していると 思 うよ」。<br />

ホルマンは、バテ・ボラが 自 国 で 評 価 されるためには、 外 か<br />

らの 視 点 が 必 要 だと 考 えている。「カーニバルがなければ、 彼 ら<br />

は 見 えない 存 在 だ。コミュニティの 外 では 誰 も 彼 らを 知 らない。<br />

でも、 仮 面 をつけて 外 に 出 ることで 人 の 目 につく。 美 しい 衣 装<br />

や パ レ ー ド に 注 が れ る 技 術 で 尊 敬 さ れ も す る 」。<br />

作 品 上 映 は 立 ち 見 席 を 設 け、ブラジル 人 ミュージシャンやサウ<br />

ンドトラックを 担 当 したベン・ラマー・ゲイのバンドによる 半 ば 即<br />

興 のライブ 演 奏 、 巨 大 スピーカーでカーニバルの 盛 り 上 がりを 再<br />

現 するアフターパーティーを 催 すなど、シカゴとロンドンの 特 別<br />

上 映 に 倣 った。ホルマンは、この 作 品 によって、 有 名 なカーニバ<br />

ルだけではないリオの 魅 力 に 注 目 が 集 まればと 願 っている。 「 僕<br />

にとってリオは 世 界 でいちばん 美 しい 都 市 であり、 同 時 に 最 も<br />

醜 い 都 市 でもある。 闇 を 見 せられる 一 方 で、いつ 訪 れても 本 当<br />

に 魔 法 が か っ た 、 何 か し ら 特 別 な 瞬 間 に 出 くわ す ん だ 」。<br />

動 画 を 見 る 『This is Bate Bola』の 一 部 視 聴 とホルマン 作 品 に<br />

ついてはこちらで:www.beijafilms.com<br />

64


RIGHT XXXXXX<br />

「 楽 しくて 美 しいけれど<br />

ちょっと 緊 張 が あって<br />

怖 い 部 分 もある。 貧 民 街<br />

そのものを 見 事 に<br />

象 徴 していると 思 う」<br />

65


HERITAGE<br />

REDEMPTION SONG<br />

クラシックワークスのリボーンチームが<br />

奇 抜 なカラーのレンジローバーを 見 つける。<br />

音 楽 史 に 新 たな 道 を 開 いた 車 だった。<br />

文 : D A N D R A G E<br />

「ランドローバー クラシックワークス」が 2 年 前 に 開 始 したリ<br />

ボーンプログラムの 目 的 は、ランドローバーの 歴 史 で 節 目 となっ<br />

た 車 両 を 見 つけて 取 り 寄 せ、 発 売 当 時 とまったく 同 じ 仕 様 でレス<br />

トアすること。ディテールと 深 いこだわりに 情 熱 が 注 がれる 案 件<br />

を 扱 う。 古 い 部 品 を 再 調 整 し、 精 密 工 学 による 新 しい 部 品 を 組<br />

み 合 わせるという、ひと 手 間 もふた 手 間 もかけた 仕 事 だ。<br />

ランドローバーは「どこにでも 行 ける」をテーマにした 車 であ<br />

る。ゆえにリボーンプログラムに 寄 贈 される 車 両 は、 山 頂 から<br />

谷 底 、 都 会 の 真 ん 中 から 辺 境 の 地 、 酷 暑 や 氷 点 下 など 気 候 も 関<br />

係 なく、まさに 地 球 のどこからでも 現 れる。それは、 修 復 する<br />

人 間 にとって 面 倒 なことなのだろうか。あるいは 逆 に、 一 生 に 一<br />

度 という 機 会 なのだろうか?<br />

「 確 実 に 後 者 だね。ここのスタッフは 皆 ランドローバーマニアで、<br />

どんなことでも 知 っている。いつも 現 場 に 行 きたいという 志 願<br />

者 が 殺 到 するんだ。ルーマニアの 牛 小 屋 からディフェンダーを<br />

引 っ 張 り 出 すケースでも、ヒマラヤの 中 腹 でレンジローバーの 修<br />

理 が 必 要 なときでもね」と、クラ<br />

シックワー クスの カラム・マケク<br />

ニーは 説 明 する。<br />

リボーンプログラムに 寄 贈 される<br />

車 両 のほとんどに 物 語 がある。 塗<br />

装 の 劣 化 や 剥 がれが 激 しい 車 両 、<br />

自 己 流 にカスタマイズされたランド<br />

ローバー、 見 事 な 改 造 によって 消<br />

防 車 や 移 動 図 書 館 、 仕 出 し 屋 のワ<br />

ゴン 車 になったものまである。クラ<br />

シックワークスの 百 戦 錬 磨 のスタッ<br />

フたちを 魅 了 するストーリーは、ま<br />

だまだ 存 在 する。 最 近 見 つかったある 車 は、 特 にレゲエやルー<br />

ツに 興 味 があるスタッフを 喜 ばせた。<br />

マケクニーはこう 語 り 出 した。「 始 まりは、1980 年 式 の 2ドア<br />

のレンジローバーがあると 知 ったこと。その 来 歴 が 実 に 異 色 だっ<br />

たんだよ。ソリハル 工 場 で 造 られ、まずドイツに 輸 出 された。<br />

そのすぐ 後 にジャマイカへ 輸 送 されて、マサイレッドから 黒 、 青 、<br />

緑 のミックスに 塗 り 直 された。それからジャマイカと 英 国 との 間<br />

を 何 度 も 行 き 来 しているんだ。<br />

誰 がオーナーだったんだろう、ということで 調 べたんだよ。そ<br />

うしたら 最 初 の 登 録 書 にロバート・ネスタ・マーリーと 記 されて<br />

いた。つまり、ボブ・マーリーのレンジローバーだったんだ」。<br />

マーリーとランドローバーというと 直 観 的 には 結 び 付 かないか<br />

もしれないが、 両 者 には 深 い 関 係 があった。 同 じくマーリーが<br />

所 有 した1976 年 式 のランドローバー シリーズ III ピックアップ<br />

トラックは 2015 年 に 発 見 され、レストアされている( 次 ページ<br />

のコラム 参 照 )。なぜボブ・マーリーは、 大 人 になってから2 台<br />

のランドローバーを 求 める 必 要 性 を 感 じたのだろうか。その 答 え<br />

写 真 : GETTY IMAGES/DENIS O´REGAN/CONTRIBUTOR<br />

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67


68


HERITAGE<br />

世 界 的 な 音 楽 アイコンの<br />

一 人 として 知 られる<br />

ボブ・マーリーは 熱 心 な<br />

自 動 車 ファンでもあった。<br />

写 真 : GETTY IMAGES/KIRK WEST/CONTRIBUTOR, AUTO-MEDIENPORTAL.NET<br />

は、 彼 が 育 ったジャマイカ 北 岸 の 田 舎 、セント・アン 教 区 にある。<br />

レゲエの 才 能 が 育 つ 無 類 の 地 として 知 られ、バーニング・スピア、<br />

シャバ・ランクス、そして 彼 らに 大 きな 影 響 を 与 えた 黒 人 民 族<br />

主 義 のマーカス・ガーベイの 出 生 地 でもある。 国 内 で 最 も 農 業<br />

が 盛 んで、 起 伏 の 激 しい 地 形 だ。 田 舎 の 美 しさを 満 喫 するため<br />

に、マーリーにはあちこち 駆 けまわれるオフロード 車 が 必 要 だっ<br />

た。その 好 みは 成 人 しても 変 わらなかった。<br />

彼 のシリーズ IIIはほぼオリジナルのままだったが、レンジロー<br />

バーの 方 はマーリーか、 家 族 の 誰 かが 色 を 変 える 決 断 をしたの<br />

ではと 推 測 した。<br />

「こうしてマーリー 本 人 のレンジローバーを 取 り 寄 せてみると、<br />

独 自 の 塗 装 に 驚 いたよ。ボンネットはブラック、ドアパネルのほ<br />

とんどはグリーン、ルーフはダークブルーだ。これまで 見 たこと<br />

もない 組 み 合 わせだね」とマケクニー。<br />

クラシックワークスによるさらなる 調 査 の 結 果 、マーリー 自 身<br />

が 塗 装 にいそしんだわけではないことが 分 かった。 子 供 たちに<br />

任 せたのだ。このレンジローバーの 塗 装 作 業 は、スティーブン、<br />

ローハン、ジュリアンという3 人 の 息 子<br />

たちによるものだった。 彼 らがブラシで<br />

「マーリーは<br />

作 業 したのは、 全 員 まだ10 歳 前 後 のと<br />

きだ。 自 分 たちで 塗 り 上 げた 車 に 乗 って、<br />

車 の 塗 装 作 業 を<br />

所 属 していた 学 校 やサッカークラブなど<br />

子 供 たちに 任 せた」 への 送 り 迎 えを 父 親 がしてくれたことを<br />

3 人 とも 懐 かしく 思 い 出 す。<br />

事 実 、ローハンはレンジローバーとシ<br />

リーズ IIIの 記 憶 は 色 褪 せないと 語 っている。 彼 はアメリカンフッ<br />

トボール 選 手 としての 活 躍 から 大 きな 転 身 を 遂 げ、 今 はジャマイ<br />

カのポートランド 教 区 でコーヒーを 栽 培 し、プランテーションの<br />

オーナーになっている。<br />

彼 の 父 親 の 生 誕 70 周 年 記 念 コンサートでは、 中 央 にレストア<br />

されたシリーズ III が 置 かれた。このとき、 英 国 放 送 協 会 (BBC)<br />

のインタビューでローハンはこう 答 えている。「ランドローバーで<br />

コーヒー 畑 を 走 るのは 最 高 です。 農 家 の 人 たちは1970 年 代 のラ<br />

ンドローバーに 乗 っています。ランドローバーは 不 死 身 だから、<br />

い つ ま で も 走 り 続 け る ん で す」。<br />

今 回 発 見 されたレンジローバーでは、 物 語 の 次 章 が 進 んでい<br />

る。マケクニーが 打 ち 明 ける。「まず、 色 を 決 めないといけない。<br />

マーリー 家 の 配 色 を 維 持 するか、 生 産 ラインに 立 ち 戻 ってマサイ<br />

レッドに 塗 り 直 すか。その 後 は 選 択 肢 がいくつもある。オーク<br />

ションに 出 品 するか、ボブ・マーリー 博 物 館 に 寄 贈 するか、ある<br />

いはここのコレクションに 追 加 するか。 僕 自 身 マーリーの 大 ファ<br />

ン だ か ら 、 す で に ち ょ っ と し た 愛 着 が 生 ま れ 始 め て い る よ 」。<br />

リボ ーン・ケ ース:<br />

マーリーが 所 有 したもう1 台<br />

現 在 クラシックワークスでレストア 作 業 を 行 っているマーリーのレ<br />

ンジローバー( 上 ) 以 前 に、ブルーの 1976 年 式 シリーズ III( 下 )<br />

が 2015 年 にレストアされ、マーリー 生 誕 70 周 年 を 祝 う 無 料 コン<br />

サートでの 主 役 まで 務 めた。 復 元 には、ジャマイカのランドローバー<br />

正 規 ディーラーを 運 営 するサンダルズ・リゾート・インターナショナ<br />

ル、ランドローバーの 専 門 技 術 者 である ATL オートモーティブの<br />

スティーブン・ジェームズ、 米 国 の 部 品 サプライヤーのローバーズ・<br />

ノース、そしてマーリー 家 が 協 力 して 取 り 組 んだ。クラシックワー<br />

クスのような、 細 部 まで 徹 底 するレストアには 及 ばないものの、 今<br />

にも 走 り 出 しそうな 仕 上 がりは 見 事 だ。<br />

もっと 詳 しく ランドローバーのソーシャルメディアをフォローして、マーリーの<br />

レンジローバーに 関 する 情 報 をチェック。ヘリテージ 車 両 のレストアについての<br />

お 問 い 合 わせはこちら:jaguarlandroverclassic.com( 英 語 のみ)<br />

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B O R N<br />

W I N N E R S<br />

ライフスタイルを 彩 る 優 れたデザインに 贈 られるランドローバー BORN アワード。<br />

物 の 本 質 とスタイルを 見 事 に 融 合 させた、 最 新 の 受 賞 者 たちを 紹 介 しよう。<br />

70


DESIGN INNOVATION<br />

偉 大 なるデザインは 歳 月 を 経 ても 古 びない。その 創 出 は 至 難 の 業<br />

だ。ランドローバーは、 目 的 に 忠 実 であるだけでなく、 大 勢 の 人 に<br />

魅 力 的 と 感 じさせるデザインについて 精 通 している。それはランド<br />

ローバー シリーズ(そしてその 直 系 の 後 継 モデルであるディフェン<br />

ダー)に 始 まり、 最 新 のレンジローバー イヴォークまで 連 綿 と 息 づく。<br />

車 以 外 の 分 野 でも、 無 双 のデザインが 生 み 出 されている。 例 えば<br />

ジッポーのライター、アングルポイズのスタンドランプ。スイス・アー<br />

ミーナイフやパントンチェアなどもそうだ。いずれも 優 れた 機 能 性 と<br />

ともに 美 しいデザインによって 広 く 知 られている。<br />

2018 年 の BORN グローバルアワードの 主 要 目 的 は、そう<br />

した 類 いまれなデザインによる 功 績 を 広 く 評 価 することだった。<br />

ランドローバーが 2 年 連 続 で 協 賛 した 本 賞 は、ライフスタイル<br />

のさまざまな 領 域 にわたって、 世 界 中 のクリエイションを 年 間 左 上 : 巧 みに 電 動 化 された<br />

折 りたたみ 自 転 車 の<br />

テーマに 沿 って 表 彰 する。BORN の 創 設 者 はジャン = クリスト<br />

ブロンプトン。<br />

フ・ショパン。 第 一 線 で 活 躍 するクリエイターたちのネットワー 右 上 : 受 賞 者 を 称 える<br />

クとして 誕 生 し、デザイン 主 導 の 優 れた 製 品 を 扱 うB2B 市 場 ランドローバーの<br />

チーフデザインオフィサー、<br />

として 機 能 させることも 目 的 としている。 果 敢 に 進 化 するイン ジェリー・マクガバン。<br />

スピレーションに 富 んだ 製 品 とその 作 り 手 を 称 えるBORNア 右 下 :トロフィーを<br />

手 にするブロンプトンの<br />

ワードの 競 争 は、 熾 烈 だ。 今 年 は 世 界 6 地 域 から7,000 件 ほ<br />

ウィル・カーレイスミス<br />

どの 応 募 があった。その 中 からわずか 48 作 品 に 絞 られ、ロン とデイビッド・リース。<br />

ドンのデザインミュージアムで 開 かれた 授 賞 式 で「ベスト・オ<br />

ブ・ベスト」が 発 表 された。<br />

モビリティデザイン 部 門 で 受 賞 したのは、 折 りたたみ 自 転 車 、<br />

ブロンプトンの 電 動 アシスト 版 だ。ブロンプトンは 人 気 の 高 い 英<br />

国 ブランドで、1981 年 の 製 造 開 始 以 来 ほぼ 変 わらないラインを<br />

保 つデザインは 名 作 と 呼 べるほど。ロンドンでは 通 勤 でこの 小 型<br />

自 転 車 をたたんで 地 下 鉄 に 乗 り、 駅 を 出 るとさっと 広 げて 走 り 去<br />

る 人 々をよく 見 かける。 最 寄 り 駅 からの 短 い 移 動 に 便 利 なため、<br />

都 会 で 手 にする 自 由 の 象 徴 ともなっているのだ。<br />

好 況 な 電 動 自 転 車 市 場 にあって、 昨 年 発 売 された 電 動 アシスト<br />

版 は、 折 りたたむというスタイリッシュさと 品 質 の 高 さの 両 方 が<br />

融 合 して 突 出 。 巧 妙 に 小 型 化 された 250 ワットのフロントハブ<br />

モーターに、 軽 量 で 簡 単 に 取 り 外 し 可 能 なバッテリーパックを 接<br />

続 し、 走 破 性 を 一 気 に 高 めてユーザーの 負 担 を 軽 減 している。 審<br />

査 員 の 一 人 となったランドローバーのチーフデザインオフィサー、<br />

ジェリー・マクガバンが「『 類 まれな』という 言 葉 に 真 に 値 する 物<br />

には、 想 像 力 、 知 性 、 理 性 、そして 十 分 な 英 知 が 求 められる」<br />

と 表 彰 式 で 述 べたとおり、 称 賛 に 値 する 勝 者 だ。<br />

次 ページでは、 他 の 受 賞 者 たちを 紹 介 しよう。デザインの 英 雄<br />

と 将 来 は 名 作 と 呼 ばれるであろう、 一 流 の 作 品 群 だ。<br />

71


01<br />

72


2018 年 BORNアワード<br />

ベスト・オブ・ベスト<br />

01 インテリアデザイン<br />

英 国 を 拠 点 とする 照 明 ブランド、フロスのマイケル・ア<br />

ナスタシアデスによる「アレンジメンツ」は、ジュエリー<br />

のように 美 しい。 幾 何 学 的 な 形 のチューブをエレガン<br />

トに 配 した 繊 細 なペンダントライトは、 天 井 から 吊 り<br />

下 げられた 光 る 鎖 だ。 組 み 合 わせも 自 由 自 在 。<br />

次 点 作 :イリア・ポテミン「ISP ランプ」(フランス)<br />

02 建 築 デザイン<br />

イタリアのコーヒーブランド、ラバッツァの 新 しいトリ<br />

ノ 本 社 ビルが 受 賞 。 設 計 したのは、チノ・ズッキ。ヌ<br />

ヴォラ(イタリア 語 で「 雲 」の 意 味 )と 名 付 けられた 目<br />

を 引 く 建 物 は、 工 業 用 地 だった 場 所 を 見 事 に 自 然 と 融<br />

合 させ、 新 たに 生 命 を 吹 き 込 んだもの。 建 築 物 の 環 境<br />

性 能 を 評 価 するLEEDゴールド 認 証 を 得 た、 美 しくサ<br />

ステナブルなデザイン。<br />

次 点 作 :ラモン・エステーベ「ボンバス・ヘンス」(ス<br />

ペイン)<br />

03 スポーツデザイン<br />

フランスの 老 舗 スキーウェア・ブランド、フザルプのア<br />

レクサンドル・フォーヴェが 受 賞 。ブランド 特 有 のス<br />

ポーツ・シックという 考 え 方 に、 性 能 と 優 雅 さが 融 合 。<br />

スキーウェアは 冬 季 オリンピック 大 会 のゲレンデに 映<br />

え、スキーをしていないときもスタイリッシュだ。<br />

次 点 作 :テッケル「90°ミヌート」(イタリア)<br />

03 04<br />

02<br />

04 レジャーデザイン<br />

米 国 人 のゴールドストン 兄 弟 が 生 み 出 したスニーカー<br />

「アスレチック・プロパルジョン・ラボ(APL)」は、<br />

北 米 の 男 子 プロバスケットボールリーグ(NBA)が 使<br />

用 を 禁 じたことで 認 知 度 が 高 まった。 前 足 部 に 圧 縮 バ<br />

ネを 搭 載 し、 履 くとパフォーマンスが 向 上 。サポート<br />

性 があり、 快 適 なテックルームという 編 み 構 造 が 特 徴<br />

で、 瞬 く 間 にスポーツ 界 に 広 まった。<br />

次 点 作 :クララ・ダギャン「オーラ・インサイド」(フラ<br />

ンス)<br />

05<br />

05 テクノロジーデザイン<br />

スペイン 人 起 業 家 のハビエル・ゴジェネチェは、ファッ<br />

ション 界 の 無 駄 の 多 さに 不 満 を 抱 き、ECOALFを 立 ち<br />

上 げた。 海 に 廃 棄 されたプラスチックなどを 再 生 して 作<br />

られた 服 やアクセサリーは、 今 ではグウィネス・パルト<br />

ロウやウィル・アイ・アムら 著 名 人 が 愛 用 している。<br />

次 点 作 :ユーゴ・メルシエ「ドリーム」(フランス)、マッ<br />

クス・ポントレッリ「ラップ・スチールギター」(イタリア)<br />

特 別 賞<br />

ロエベ 財 団 、 彫 刻 家 のニノ・ムスティカ、スコット・ペ<br />

インターによる 米 国 を 拠 点 とするアプリ「フェア」の 三<br />

者 に 贈 られた。フェアは、 長 期 の 契 約 やローンなくモバ<br />

イル 経 由 で 中 古 車 を 借 りられる、 洗 練 された 取 引 プラッ<br />

トフォームだ。すっきりとしたデザインだが、その 機 能<br />

は 奥 が 深 い。すべての 手 続 きが、アプリで 完 結 する。<br />

73


V I C T O R Y<br />

I<br />

S<br />

M A D E<br />

O<br />

F<br />

T H I S<br />

74


PIONEERS<br />

バングラデシュの 登 山 家 、 人 権 活 動 家 のワスフィア・ナズリーンが、 強 い 情 熱 で 慣 習 に 挑 む。<br />

ワスフィア・ナズリーンは、 自 分 がいつか 世 界 の 頂 上 から 日 の<br />

出 を 見 るなど 夢 にも 思 っていなかった。その 彼 女 がエベレスト 山<br />

頂 を 目 指 したときの 危 険 は 凄 まじかった。 極 度 の 寒 さ、 体 調 不 良 、<br />

日 々 襲 いかかってくる 雪 崩 との 闘 い。 登 っていく 道 すがら、 落 命<br />

した 登 山 者 の 凍 った 遺 体 を 目 にし、 危 険 を 改 めて 痛 感 した。 標<br />

高 8,000メートルを 超 える 山 頂 が 近 付 くと、 涙 がこぼれ 始 めた。<br />

そしてとうとう 頂 上 に 到 達 したときには、 感 謝 の 気 持 ちがこみあ<br />

げ、 声 を 上 げて 泣 いていた。「 登 っている 間 は 孤 独 だったの。そ<br />

れが、 突 然 すべてのものとのつながりを 感 じたのよ。それまでの<br />

人 生 が 走 馬 灯 のように 頭 の 中 を 駆 け 巡 った。 私 という 存 在 は、<br />

神 々が 宿 るヒマラヤにいる 虫 よりも 小 さいと 感 じたわ」。<br />

現 在 36 歳 でバ ングラデシュ 出 身 のナズリーンにとって、<br />

2012 年 のエベレスト 登 頂 は 人 生 を 変 える 体 験 だった。 人 生 はい<br />

かに 短 いかということを 改 めて 認 識 し、 行 動 を 起 こすための 勇<br />

気 、 新 たな 視 点 をその 体 験 から 得 た。 山 に 登 るのは 自 分 のため<br />

だけではない。 母 国 をはじめとする 世 界 中 の 女 性 たちの 勇 気 と<br />

希 望 を 後 押 しするためでもあるのだ。<br />

エベレスト 登 頂 は「バングラデシュ・オン・セブン・サミット」<br />

という 自 身 が 立 ち 上 げたプロジェクトの 一 環 だった。バングラデ<br />

シュ 独 立 戦 争 で 苦 しんだ、 女 性 たちの 不 屈 の 精 神 をたたえる 取 り<br />

組 みだ。2015 年 にはニューギニア 島 のプンチャック・ジャヤに 登<br />

頂 。 彼 女 は 七 大 陸 最 高 峰 を 制 覇 した 世 界 でもわずか 数 百 人 のう<br />

ちの 一 人 となり、バングラデシュ 人 としては 初 の 快 挙 となった。<br />

それぞれの 山 頂 で、ナズリーンはバングラデシュ 国 旗 を 堂 々<br />

と 掲 げた 後 、 組 み 立 て 式 フラフープを 取 り 出 して 回 してみせた。<br />

「 子 供 のころ、フラフープをすると 叱 られたの。だから 自 分 自 身<br />

と 故 郷 の 女 の 子 たちのために 回 すのよ。これは 自 由 を 主 張 する<br />

私 の や り 方 な の 」。<br />

ナズリーンはバングラデシュ 第 二 の 都 市 、チッタゴンで 育 った。<br />

首 都 ダッカの 学 校 を 卒 業 し、 奨 学 金 を 得 て 米 国 の 大 学 で 美 術 と<br />

心 理 学 を 学 んだ。 論 文 では 女 性 がどのように 美 術 をセラピーとし<br />

て 利 用 するかをテーマに 選 び、インド 各 地 を 訪 ねた。その 一 つに<br />

チベット 亡 命 政 府 のあるダラムサラがあり、ここで 彼 女 は 山 と 人<br />

権 に 対 する 思 いを 強 くした。 援 助 機 関 で 働 いた 後 、 登 山 と 人 権<br />

への 情 熱 を 融 合 させた、 新 たな 取 り 組 みに 挑 戦 。 現 在 、 人 権 侵<br />

害 と 気 候 変 動 についての 気 づきを 促 す 活 動 を 行 っている。<br />

世 界 中 から「 愛 」が 寄 せられたにもかかわらず、バングラデ<br />

シュ 人 女 性 として 七 大 陸 最 高 峰 を 制 覇 したことは 大 きな 挑 戦 を<br />

もたらした。 身 体 や 精 神 、 金 銭 やロジスティクスの 面 だけでは<br />

ない。「 差 別 や 中 傷 、 殺 害 の 脅 迫 さえあった。でもそうした 反<br />

応 は 、 勢 い を 増 す 女 性 の 力 を さ ら に 強 くす る だ け よ 」。<br />

完 璧 主 義 者 であることを 認 めるナズリーンは、 遠 征 計 画 は 芸<br />

術 だと 考 えている。 通 常 、ロジスティクスの 準 備 は 数 カ 月 前 から、<br />

場 合 によっては 数 年 前 に 始 める。 身 体 トレーニングは 一 年 中 だ。<br />

「でもね、どれだけしっかり 計 画 しても、ほとんどのことはうまく<br />

いかない 可 能 性 があることも 想 定 内 」。ナズリーンは 毎 朝 、 瞑 想<br />

で1 日 を 始 めることを 心 がけている。「マインドフルネスは 登 山 に<br />

欠 かせないもの。 山 に 登 ることは、 私 にとって 内 面 を 見 つめ 心 の<br />

平 穏 を 得 ることと 同 じなの」。 型 破 りな 職 業 選 択 だと 自 身 も 認 め<br />

る。とりわけ 彼 女 が 選 択 したすべてが「 普 通 ではない」「タブー<br />

である」と 捉 えられる 男 性 社 会 においては。「でも 自 分 で 選 んだ<br />

人 生 を 歩 むことそのものが、 私 が 最 も 誇 りに 思 うことなの」。<br />

文 : GEOFF POULTON 写 真 :ダライ・ラマ 法 王 庁 、SEBASTIAN GRAU<br />

ナズリーンの 七 大 陸<br />

最 高 峰 制 覇 は<br />

故 国 の 女 性 たちに<br />

捧 げられている。<br />

左 上 :エベレスト 山 頂<br />

から 撮 影 したチベットの<br />

写 真 をダライ・ラマ 法 王<br />

14 世 に 見 せている 様 子 。<br />

右 上 :アラスカの<br />

デナリ 山 頂 にて。<br />

75


S T O R I E S U N D E R F O O T<br />

究 極 の 発 見 の 旅 とはなんだろうか? それはタイムトラベルに 似 ているのかもしれない。<br />

古 生 物 学 者 のケネス・ラコバラが、 地 球 の 中 心 へと 向 かう 旅 にいざなう。<br />

76


ESSAY<br />

イメ ー ジ : STOCKSY/ CATHERINE MACBRIDE, 人 物 写 真 : ROBERT CLARK<br />

日 常 にあるとは 思 えない、 驚 くべき 場 所 に 行 ってみたくはないだろう<br />

か? 謎 に 包 まれてはいるが、 何 が 起 きたのかを 垣 間 見 ることは 十 分 にで<br />

き、 興 味 をそそる 場 所 。あまりに 壮 大 で 現 実 味 がないので、 熱 心 な 空 想<br />

小 説 の 読 者 でなければこの 目 で 見 ても「まさか」と 思 ってしまう、そんな<br />

場 所 だ。 心 の 目 を 通 して、 大 地 との 間 にあるすべての 障 害 物 を 取 り 払 い、<br />

足 の 下 にあるものを 観 じてほしい。そこには 長 い 歴 史 の 中 で、 自 然 の 驚 異<br />

に 匹 敵 する 何 かが 横 たわっているに 違 いないのだ。<br />

地 球 の 壮 大 さを 最 大 限 に 感 じられるのは、 米 国 グランド・キャニオンの<br />

縁 から 見 る 景 色 だ。そこから 全 長 約 13 キロのブライト・エンジェル・ト<br />

レイルへと 下 りていくと 魂 の 高 揚 を 感 じるだろう。それは 約 20 億 年 の 時<br />

空 を 旅 することに 等 しい 体 験 だ。 地 球 に 存 在 したいくつもの 過 去 世 界 へと<br />

つながる、 内 なる 旅 。 人 生 観 さえ 変 わるかもしれない。<br />

生 物 種 の 75パーセント 以 上 が 絶 滅 していた。<br />

当 時 支 配 的 だった 大 型 の 陸 上 動 物 は、ワニの 祖 先 だった。まだ 登<br />

場 したばかりの 恐 竜 は、 同 時 代 のより 大 きくどう 猛 な 生 き 物 との 競 争<br />

に 苦 しんだ。どちらのグループも 大 量 絶 滅 を 生 き 抜 いたわけだが、ワ<br />

ニはこの 競 争 に 負 けた。 公 平 な 条 件 を 得 て 恐 竜 は 繁 栄 し、ジュラ 紀<br />

と 白 亜 紀 を 通 して 陸 上 生 態 系 を 完 全 に 支 配 する、 驚 くほど 多 様 な 種<br />

へと 進 化 した。 今 でもジョージ・ワシントン・ブリッジを 渡 るときに<br />

ちょっとばかり 見 上 げると、このように 生 物 学 的 に 見 て 大 変 革 を 引 き<br />

起 こした 信 じられないほどの 変 動 跡 を 目 にすることができるのだ。<br />

サンフランシスコで 見 られる 岩 相 も、こういった 例 の 一 つ。 北 米 の<br />

西 端 沿 いに 表 面 を 覆 っている 岩 相 は、サンフランシスコの 岩 盤 をアラ<br />

スカの 中 心 に 堆 積 させていく 地 殻 変 動 の 動 きに<br />

旅 人 の 多 くは 大 地 と 膨 大 な 時 の 流 れとのつながりを 感 じ<br />

よって 形 成 されるものだ。フィラデルフィアから<br />

「 私 たちを 取 り 巻 く<br />

て、 圧 倒 されるだろう。<br />

ピッツバー グ まで ペンシル ベ ニア・ターンパイク<br />

ねじれた 基 盤 から 熱 を 受 けて 圧 縮 される 変 成 岩 。そ 時 間 という 深 遠 な<br />

( 有 料 道 路 )を 走 っていると、アパラチア 山 脈 を<br />

の 上 にそびえ 立 つのは、 過 去 5 億 年 にわたってこの 地 域<br />

横 切 ることになる。この 山 脈 は、かつてモロッコ<br />

物 語 は、ちょっと 手 間 を<br />

を 陸 から 海 へ、 海 から 陸 へと 変 動 させ、 海 面 の 上 昇 と<br />

のアトラス 山 脈 とスコットランドのハイランド 地 方<br />

下 降 を 何 度 も 記 録 している 巨 大 な 堆 積 岩 だ。 砂 岩 、 石 かければその 一 端 を<br />

を 部 分 的 に 含 む 連 峰 の 一 部 だった。 表 土 の 大 部<br />

灰 岩 、 頁 岩 が 重 なる 層 には 化 石 が 埋 まっている。 化 石 は、<br />

分 が 石 灰 岩 で、 遠 い 昔 は 海 底 だったフロリダ。 全<br />

見 ることができる」<br />

地 底 深 くに 横 たわる 原 始 的 な 祖 先 であるさまざまな 種<br />

長 およそ12 メートルという 歴 史 上 最 大 のサメ、メ<br />

から、 表 層 でも 見 ることが 可 能 な 馴 染 みのある 現 代 の<br />

形 態 まで、 生 命 の 連 なりを 物 語 ってくれる。 地 質 学 的 にいえば、それはご<br />

く 普 通 のことだ。ここで 特 別 なのは 物 語 のページがむき 出 しになっている<br />

こと。つまり 誰 もが 目 にできる 点 にある。<br />

例 えばコロラド 川 の 浸 食 の 力 は、 台 地 をバラバラにしてその 下 にある 歴<br />

ガロドンがはびこっていた 海 だ。コロラドの 山 脈 、<br />

フロント・レンジでハイキングをすれば、メキシコ 湾 から 北 極 海 へと<br />

伸 びる 内 陸 海 路 のかつての 海 岸 を 横 断 することになる。ステゴサウル<br />

スやアパトサウルスなど 最 もよく 知 られる 恐 竜 たちが、この 海 辺 に 沿 っ<br />

て 歩 き 回 っていた。<br />

史 をあらわにした。 地 質 学 では、 露 頭 がすべてだ。 地 球 の 岩 石 圏 (リソス<br />

今 いる 場 所 について 考 えてみるきっかけになっただろうか? 45 億<br />

フェア)── 地 球 の 最 上 層 、すなわち 地 殻 とマントル── はこの 惑 星 の 歴<br />

史 の 所 蔵 庫 である。 何 巻 もある 大 作 だが、 地 表 で 生 活 する 私 たちに 対 し<br />

て 書 庫 の 扉 はたいてい 閉 じられている。しかし 浸 食 と 隆 起 が 発 生 すると、<br />

そこかしこでページや 章 が 現 れる。 私 たちは 数 えきれないほどある、 見<br />

知 らぬ 物 語 の 一 番 上 のページを 行 き 来 しながら 人 生 を 過 ごしてきたのだ。<br />

年 にわたる 世 界 史 のユニークな 物 語 が、 私 たちの 足 の 下 に 横 たわって<br />

いることは 間 違 いない。その 驚 異 的 な 物 語 は、インターネット 検 索 で<br />

地 質 学 的 歴 史 を 調 べたり、 地 元 の 自 然 史 博 物 館 を 訪 れたりすることで<br />

見 えてくる。あるいは 自 ら 道 具 を 手 に 取 って、 掘 ってみてもいい。 岩<br />

盤 の 物 語 を 見 る 目 を 養 えば、 世 界 の 見 方 が 一 変 するはずだ。<br />

だが 時 間 という 深 遠 な 物 語 は、ちょっと 手 間 をかければその 一 端 を 見 る<br />

ことができる。<br />

マンハッタンを 背 にハドソン 川 の 向 こう 岸 を 見 ると、 岸 辺 から 石 の 要 塞<br />

をつくるべくそびえ 立 つ 暗 い 色 の 岩 の 崖 が 見 える。 高 さ 約 91メートルの<br />

絶 壁 「パリセード」は、 地 球 の 歴 史 で 最 もドラマチックな 瞬 間 の 一 つを 見<br />

せてくれている。それは2 億 年 前 、 当 時 存 在 していた 超 大 陸 、パンゲア<br />

が 地 殻 変 動 の 力 によって 引 き 裂 かれたときの 光 景 だ。 地 殻 が 薄 くなり、 後<br />

に 大 西 洋 となる 線 に 沿 って、 下 にあったマグマがあふれて 広 大 な 溶 岩 のポ<br />

ケットを 形 成 した。 激 変 によって 大 量 の 二 酸 化 炭 素 が 大 気 に 放 出 され、<br />

地 球 温 暖 化 が 急 速 に 進 行 したのである。こうした 突 然 の 変 化 はほとんど<br />

の 生 物 に 死 をもたらし、 三 畳 紀 の 終 わりに 最 悪 の 時 期 が 終 わった 段 階 で、<br />

筆 者 について<br />

ケネ ス・ラコ バ ラ<br />

ローワン 大 学 が 運 営 するエデルマン・<br />

フォッシル・パーク( 米 ニュージャージー 州 )<br />

の 創 設 ディレクター。『Why Dinosaurs<br />

Matter』(サイモン&シュスター 社 、<br />

2017 年 )の 著 者 。 講 演 「 恐 竜 の 化 石<br />

探 しを 通 して 知 った、 宇 宙 における 人 類 」を<br />

TED Talksのウェブサイト(TED.com)<br />

でチェックすることができる。<br />

77


OFFTRACK<br />

A R E W E T H E R E Y E T ?<br />

探 検 家 のベン・ソーンダースが、いつも 行 動 を 共 にしているディスカバリーへの 信 頼 を 語 る。<br />

大 人 になってからの 人 生 は、 極 地 でそりを 引 いて 過 ごす 時 間<br />

が 長 くなっている。そんな 日 々を 送 るうち、 北 極 や 南 極 に 到 達<br />

しない 旅 は 冒 険 とは 呼 べないなどという 虚 構 を 作 り 上 げていた<br />

かもしれない。しかし 実 際 は 膨 大 な 準 備 やトレーニングなどの<br />

地 味 な 時 間 があって、 初 めて 氷 の 上 の 冒 険 が 可 能 になるのだ。<br />

現 代 の 極 地 探 検 家 は、そりのハーネスを 付 けている 時 間 とスプ<br />

レッドシートに 取 り 組 んでいる 時 間 の 割 合 が 半 々に 近 付 いてい<br />

るのではないだろうか。<br />

面 白 いのはこういった 冒 険 が 車 での 移 動 に 随 分 と 寄 っている<br />

ところだ。2013 年 、3,000キロメートル 弱 の 南 極 遠 征 に 二 人<br />

で 挑 戦 し、 徒 歩 による 極 地 移 動 の 最 長 記 録 を 樹 立 した。その<br />

準 備 期 間 は、ロンドンの 小 さなアパートで 犬 と 一 緒 に 暮 らして<br />

いた。 恐 ろしいベアドモア 氷 河 を 登 るためのトレーニングには<br />

近 所 の 公 園 は 向 いていなかったので、 必 然 的 にかなりの 回 数 の<br />

ドライブをすることになった。<br />

今 年 、ディスカバリーは30 周 年 を 迎 える。 地 球 の 辺 境 をめ<br />

ぐり、 人 間 の 限 界 を 追 究 してきた 30 年 だ。10 年 間 乗 ってきた<br />

私 のディスカバリーは 走 行 距 離 が6 桁 になった。ウェールズ、<br />

湖 水 地 方 、スコットランド、アルプス 山 脈 、さらにはアイスラン<br />

ドの 丘 陵 、 湿 原 、 高 原 、 台 地 、 峡 谷 へと、トレーニングのため<br />

に 移 動 した 記 録 である。その 間 にスーツに 身 を 固 めてスポン<br />

サーに 会 うときや、 正 装 してチャリティーイベントでスピーチを<br />

するときにも、この 由 緒 正 しき「ディスコ」(ディスカバリーの 愛<br />

称 )が 会 場 まで 私 を 運 んでくれた。<br />

奇 妙 な 背 反 とも 言 える 気 持 ちを 体 験 したのは、これまでの 経<br />

歴 で 最 大 の 目 標 を 達 成 したときのことだ。 私 は 単 独 で 南 北 両 極<br />

へスキーで 渡 り、シャクルトンが 成 し 遂 げられなかった 南 極 遠<br />

征 を 完 遂 した。もちろんゴール 地 点 で 花 火 は 待 っていない。た<br />

だ 疲 労 と 安 堵 が 全 身 を 包 み、 現 実 世 界 に 戻 ることへのぼんやり<br />

とした 抵 抗 があったのみ。 我 ながら 興 味 深 い 感 覚 だった。 旅 は<br />

目 的 より 道 行 きが 重 要 だとよく 言 うが、 全 く 真 実 だと 思 う。<br />

私 が 最 も 好 む 旅 。 結 局 それは 丘 を 一 つか 二 つ 歩 いて 越 えるよ<br />

うなトレーニング 旅 行 であり、 泥 だらけのウォーキングブーツや<br />

リュックサック、 紅 茶 を 入 れた 保 温 ボトル、そしてトランクに 濡<br />

れた 犬 を 乗 せてランドローバーで 移 動 する 旅 なのだ。わずか 数<br />

年 の 後 に、また 極 北 に 挑 戦 することになるだろう。 同 時 に 相 棒<br />

たちとのトレーニング 旅 行 をもっと 増 やそうと 決 めてもいる。ス<br />

プレッドシートに 取 り 組 む 時 間 を、 少 し 減 らせばいいのだ。<br />

写 真 : XISCO FUSTER<br />

78


CASTROL EDGE PROFESSIONAL<br />

地 球 上 で<br />

最 も 過 酷 な 環 境 で 走 る。<br />

ランドローバーにふさわしいパワー<br />

「 燃 費 は 最 高 に。CO 2 排 出 量 はかつてない 少 なさで。そしてもちろん、<br />

伝 説 のランドローバーにふさわしいパフォーマンスを 発 揮 できること。」<br />

ランドローバーとの 共 同 開 発 による 唯 一 の 推 奨 エンジンオイルとして<br />

最 も 過 酷 な 条 件 を 満 たすよう 作 られているカストロール EDGE Professional。<br />

エンジンに 対 する 要 求 が 前 代 未 聞 のレベルにまで 達 している 今 、<br />

ランドローバー 車 両 の 性 能 を 最 大 限 に 発 揮 することができます。<br />

最 も 過 酷 な 環 境 には、 完 璧 なツールを。<br />

これはランドローバーのオーナーにとって、 当 たり 前 のことなのです。<br />

カストロール EDGE Professional は<br />

お 近 くのランドローバー 正 規 ディーラーにてお 求 めいただけます。<br />

Castrol EDGE Professional はランドローバーが 推 奨 する 唯 一 のオイルです。


LONDON 71-72 JERMYN STREET | 4 DAVIES STREET | 23 BURY STREET | NEW YORK 50 EAST 57 TH STREET<br />

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