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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分<br />

- 資 産 化 と 利 子 配 分 -<br />

Discounted Present Value and Accounting Allocation<br />

: Relationship between Capitalization and Interest Allocation<br />

石 川 純 治 Junji Ishikawa<br />

1 はじめに<br />

2 リース 会 計 と 割 引 現 在 価 値<br />

3 満 期 保 有 目 的 債 券 と 割 引 現 在 価 値<br />

4 貸 倒 懸 念 債 権 と 割 引 現 在 価 値<br />

5 資 産 化 と 利 子 配 分<br />

6 結 び<br />

補 遺 1 会 計 配 分 の 基 礎<br />

補 遺 2 数 学 的 表 現<br />

Keywords: 割 引 現 在 価 値 、 利 子 、 会 計 配 分 、リース 会 計 、 満 期 保 有 目 的 債 券 、 貸 倒 懸 念 債 権 、<br />

時 価 会 計<br />

1 はじめに<br />

企 業 会 計 における 割 引 現 在 価 値 (PV) 計 算 は、 伝 統 的 な 会 計 配 分 という 枠 内 において<br />

もいくつかのケースにおいてみられる。そこには 将 来 キャッシュフローの 資 産 化<br />

(capitalization)と 利 子 配 分 (allocation of interest cost)という 共 通 の 会 計 処 理 がみ<br />

られる。<br />

本 稿 では、リース 会 計 ( 第 2 節 )、 満 期 保 有 目 的 債 券 ( 第 3 節 )、 貸 倒 懸 念 債 権 ( 第 4 節 )<br />

の3つのケースを 取 り 上 げ、それらに 共 通 する 資 産 (・ 負 債 ) 化 と 利 子 配 分 の 対 関 係 を 抽<br />

出 する( 第 5 節 )。こうした 共 通 の 構 造 をみることは、 今 日 の( 会 計 配 分 の 思 考 とは 異 な<br />

る)「 時 価 会 計 」における 公 正 価 値 ( 時 価 ) 評 価 との 相 違 を 明 らかにすることにつながる<br />

( 第 6 節 )。なお、 補 遺 1では 会 計 配 分 の 基 礎 について、 補 遺 2では 会 計 配 分 および 資 産<br />

化 と 利 子 配 分 の 対 関 係 をシンプルな 数 学 的 表 現 でもって、それぞれ 補 足 する。<br />

2 リース 会 計 と 割 引 現 在 価 値<br />

〈 設 例 ケース1:リース 会 計 〉<br />

A 社 ( 決 算 日 は 12 月 31 日 )は×1 年 1 月 1 日 に、 以 下 の 条 件 により 機 械 のリース 契<br />

約 を 結 び、 即 日 使 用 を 開 始 した。なお、 当 該 リース 契 約 はファイナンス・リース 契 約 で<br />

あり、リース 期 間 終 了 後 の 所 有 権 に 関 して 無 条 件 に 移 転 するものとは 認 められない。<br />

リース 条 件 :○イ リース 期 間 : 契 約 日 より 5 年 間 、○ロ 支 払 リース 料 : 年 間 400,000 円 ( 毎<br />

年 12 月 31 日 支 払 )、○ハ 借 手 の 見 積 現 金 購 入 価 額 :1,700,000 円 、○ニ 借 手 の 追 加 借 入 利 子<br />

率 : 年 5%<br />

- 1 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

表 1 リース 会 計 ( 借 手 )-リース 料 の 分 解 -<br />

1リース 債 務 額 2 返 済 額 3 利 息 相 当 額 4 元 本 返 済 額 5リース 債 務 残 高<br />

( 期 首 元 本 ) (リース 支 払 額 ) (1× 利 子 率 5.7%) (2-3) (1-4: 期 末 元 本 )<br />

×1 年 1/1~12/31 1,700,000 400,000 96,900 303,100 1,396,90<br />

×2 年 1/1~12/31 1,396,900 400,000 79,620 320,380 1,076,52<br />

×3 年 1/1~12/31 1,076,520 400,000 61,360 338,640 737,88<br />

×4 年 1/1~12/31 737,880 400,000 42,060 357,940 379,94<br />

×5 年 1/1~12/31 379,940 400,000 20,060(*) 379,940<br />

合 計 - 2,000,000 300,000 1,700,000 -<br />

(*) 誤 差 調 整 のため、 最 終 年 度 の 利 息 相 当 額 =リース 支 払 額 - 前 期 末 リース 債 務 額<br />

(1) 支 払 リース 料 の 分 解 - 元 本 分 と 利 息 分 -<br />

1つめのケースはリース 会 計 (ファイナンス・リース)である、そこでのポイントはリ<br />

ース 支 払 総 額 を 元 本 (これが 固 定 資 産 評 価 額 とその 期 間 配 分 としての 減 価 償 却 費 となる)<br />

と 利 息 に 分 解 することであり、そのさい 割 引 現 在 価 値 の 計 算 が 用 いられる。 以 下 、その 要<br />

点 をみておきたい。<br />

〈 要 点 :ケース1〉<br />

1 1リース 支 払 総 額 の 借 手 の 利 子 率 5%による 割 引 現 在 価 値 =1,731,790> 見 積 現 金 購<br />

入 価 額 =1,700,000<br />

2 リース 資 産 の 計 上 価 額 ( 元 本 )=1の 小 さい 方 1<br />

=1,700,000<br />

3 利 息 相 当 額 のための 利 子 率 の 計 算 :リース 支 払 総 額 の 割 引 現 在 価 値 =2となる 割 引 率<br />

( 利 子 率 )<br />

数 値 例 :r≒5.7% [400,000/(1+r)+400,000/(1+r) 2 +400,000/(1+r) 3 +<br />

400,000/(1+r) 4 +400,000/(1+r) 5 =1,700,000 となるrの 値 ]<br />

4 毎 期 のリース 支 払 額 の 元 本 分 と 利 息 分 の 分 解 : 利 息 分 = 期 首 元 本 (PV)×3の 利 率<br />

数 値 例 : 第 1 期 =2の 元 本 ×3の 利 子 率 =1,700,000×5.7%=96,900= 利 息 分 、 元<br />

本 返 済 分 =リース 支 払 額 400,000-96,900=303,100<br />

5 期 末 元 本 = 期 首 元 本 -4での 元 本 返 済 分<br />

重 要 なところは4の 計 算 、すなわち、 毎 期 支 払 リース 料 の 元 本 分 と 利 息 分 への 分 解 であ<br />

る。そのために、まず1と2で 元 本 額 であるリース 資 産 計 上 額 が 求 められる。これが 減 価<br />

償 却 として 毎 期 費 用 配 分 されることはいうまでもない。そして、3での 利 率 を 求 めるため<br />

に 割 引 現 在 価 値 の 計 算 がなされる。すなわち、リース 支 払 総 額 の 割 引 現 在 価 値 が 当 該 リー<br />

1 所 有 権 移 転 外 ファイナンス・リース 取 引 であるので、リース 支 払 総 額 の 借 手 の 利 子 率 5%によ<br />

る 割 引 現 在 価 値 と 見 積 現 金 購 入 価 額 ( 時 価 )の 小 さい 方 が 選 ばれる。その 資 産 の 時 価 を 超 える 価<br />

額 でもって 資 産 計 上 することはできないからと 思 われる。<br />

- 2 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

ス 資 産 計 上 額 (ここでは 見 積 現 金 購 入 価 額 )に 等 しくなる 利 率 ( 割 引 率 )5.7%が 求 めら<br />

れ、この 利 率 が 利 息 相 当 額 の 算 定 に 用 いられるわけである。こうして、 数 値 例 に 示 されて<br />

いるようにリース 支 払 総 額 2,000,000 は 元 本 部 分 1,700,000 と 利 息 分 300,000 に 分 解 され、<br />

この 300,000 が4での 計 算 によって 毎 期 配 分 されているわけである。これがいわゆる「 利<br />

息 法 」とよばれる 配 分 方 法 である 2 。<br />

以 上 の 要 点 を 仕 訳 で 示 せば 次 のとおりである。<br />

〈 仕 訳 :ケース1〉<br />

リース 開 始 日 :( 借 ) 機 械 装 置 ××(2) ( 貸 )リース 債 務 ××<br />

リース 料 支 払 日 :( 借 )リース 債 務 ××(4の 元 本 分 ) ( 貸 ) 現 金 預 金 ××<br />

支 払 利 息 ××(4の 利 息 分 )<br />

(2)いくつかの 議 論<br />

第 1は 元 本 化 と 利 息 配 分 ということについてである。すなわち、3と4の 計 算 にみられ<br />

るように、 割 引 率 は 将 来 ( 確 定 )キ ャッシュフローの 元 本 化 ( 元 本 と し てのリース 資 産 化 、<br />

capitalization)とその 元 本 にもとづく 利 息 計 算 との 連 結 子 となっている。つまり、その<br />

連 結 子 ( 割 引 率 )を 挟 んで 複 利 計 算 の 逆 算 による 割 引 現 在 価 値 としての 元 本 と、その 元 本<br />

から 今 度 は 複 利 計 算 による 利 息 計 算 がなされているわけである。あとで 論 じるように、こ<br />

の 元 本 化 ( 時 の 逆 順 )と 利 息 配 分 ( 時 の 正 順 )との 対 関 係 が 次 節 の 満 期 保 有 目 的 債 券 ( 購<br />

入 社 債 )のケースと「 同 形 」(symmetry)なのである。<br />

第 2は 生 産 とファイナンスの 交 錯 ということについてである。すなわち、リース 会 計 に<br />

あっては、 生 産 過 程 に 入 っていくもの( 減 価 償 却 資 産 = 元 本 部 分 )とその 過 程 の 外 に 位 置<br />

するファイナンス( 利 息 計 算 )という 経 済 学 的 に 性 格 を 異 にするものが 交 錯 している 3 。<br />

それゆえに、リース 支 払 総 額 から 元 本 額 ( 固 定 資 産 額 )と 利 息 額 とを 分 離 する 必 要 がある<br />

わけである。この 金 利 相 当 額 の 生 産 資 本 からの 分 離 は、 長 期 延 払 い( 割 賦 )による 固 定 資<br />

産 の 購 入 と 本 質 的 にかわらないといえる 4 。<br />

第 3はキャッシュフローの 配 分 に 関 してである。すなわち、リース 会 計 での 利 息 配 分 は<br />

総 額 からみればその 期 間 配 分 になっているが、( 本 設 例 ではリース 料 支 払 日 と 決 算 日 が 同<br />

じであるので)その 配 分 は 仕 訳 にも 示 されているように、 現 金 によるリース 支 払 料 の 利 息<br />

分 であるからキャッシュフロー( 支 出 )がともなった 配 分 ( 支 出 = 発 生 )となっている。<br />

あとのケースでの 配 分 ( 見 越 あるいは 繰 上 )では、キャッシュ・ベース(cash base) と<br />

2 「 利 息 法 とは、 各 期 の 支 払 利 息 相 当 額 をリース 債 務 の 未 返 済 元 本 残 高 に 一 定 の 利 率 を 乗 じて 算<br />

定 する 方 法 である」「 リース 取 引 の 会 計 処 理 及 び 開 示 に 関 する 実 務 指 針 」 三 1(3)。<br />

3 経 済 学 的 観 点 からいえば 資 本 の「 生 産 関 係 」と「 所 有 関 係 」との 交 錯 といえる。 生 産 関 係 と 所<br />

有 関 係 については 拙 稿 「 時 価 会 計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容 ( 下 )」(『 経 営 研 究 』 第 53 巻 第 3 号 )<br />

参 照 。<br />

4 設 備 購 入 にかかわる 長 期 支 払 手 形 において 金 利 が 明 示 されていない 場 合 (あるいは 明 示 されて<br />

いてもその 金 利 が 合 理 的 でない 場 合 )、 将 来 キャッシュフロー( 手 形 額 面 )の 割 引 現 在 価 値 がそ<br />

の 固 定 資 産 の 購 入 原 価 となり、 額 面 金 額 との 差 額 (imputed interest)が 支 払 利 息 として 支 払 満<br />

期 日 までにわたって( 実 効 ) 利 息 法 により 期 間 配 分 される。なお、SFAS No.34(1979 年 )<br />

「 利 子 費 用 の 資 産 化 」(Capitalization of Interest Cost)では、 特 定 の 資 産 購 入 に 要 する 利 子 費<br />

用 の 資 産 化 ( 資 産 計 上 )の 基 準 が 定 められている(パラグラフ9)。<br />

- 3 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

のタイムラグによる 不 一 致 が 発 生 ベース( accrual base)に よって 配 分 される。その 点 で、<br />

少 なくとも 毎 期 のリース 支 払 額 でみれば、 配 分 というより 分 解 (リース 料 のうち 利 息 相 当<br />

額 の 認 定 )である。<br />

3 満 期 保 有 目 的 債 券 と 割 引 現 在 価 値<br />

〈 設 例 ケース2: 満 期 保 有 目 的 債 券 〉<br />

A 社 (12 月 決 算 )は、×1 年 1 月 1 日 に 以 下 に 示 す 既 発 行 のB 社 社 債 を 9,650,000 で<br />

取 得 した。この 債 券 は、 満 期 まで 所 有 する 意 図 をもって 保 有 するものである。なお、 取 得<br />

価 額 と 債 券 金 額 ( 額 面 )との 差 額 ( 取 得 差 額 )は、すべて 金 利 の 調 整 部 分 ( 金 利 調 整 差 額 )<br />

である。<br />

○イ 額 面 :10,000,000、○ロ 満 期 :×4 年 12 月 31 日 、○ハ 利 子 率 : 年 利 5%、○ニ 利 払 日 : 毎<br />

年 12 月 末 日 ( 年 1 回 )<br />

表 2 満 期 保 有 目 的 債 券 - 利 息 配 分 と 償 却 原 価 -<br />

1 金 利 受 取 額 2 利 息 配 分 額 3 金 利 調 整 差 額 の 4 償 却 原 価<br />

(4× 実 効 利 子 率 ) 償 却 額 (2-1) ( 簿 価 )<br />

X1 年 1/1 - - - 9,650,000<br />

X1 年 12/31 500,000 579,000 79,000 9,729,000<br />

X2 年 12/31 500,000 583,740 83,740 9,812,740<br />

X3 年 12/31 500,000 588,760 88,760 9,901,500<br />

X4 年 12/31 500,000 598,500 98500(*) 10,000,000<br />

合 計 2,000,000 2,350,000 251,500 -<br />

(*) 誤 差 調 整 のため、 最 終 年 度 の3= 額 面 額 - 期 首 簿 価 、2=500,00+3。<br />

(1) 償 却 原 価 法 の 構 造<br />

2つめのケースとして 金 融 商 品 それも 満 期 保 有 目 的 債 券 ( 購 入 社 債 )での「 償 却 原 価 法 」<br />

をとりあげてみたい。 償 却 原 価 法 の 構 造 はそんなに 難 しいものではなく、 以 下 の 要 点 を 理<br />

解 するだけでよい。<br />

〈 要 点 :ケース2〉<br />

1 実 質 的 な 利 息 総 額 = 受 取 が 確 定 している 各 期 の 契 約 利 息 + 取 得 時 の 金 利 調 整 差 額<br />

( 額 面 額 と 取 得 価 額 との 差 額 )<br />

数 値 例 :2,000,000+(10,000,000-9,650,000)=2,350,000<br />

2 実 効 利 子 率 = 確 定 している 将 来 キャッシュ・インフロー( 契 約 利 息 + 額 面 額 )の 現<br />

在 価 値 が( 額 面 以 下 の) 購 入 価 額 に 等 しくなる 割 引 率<br />

数 値 例 :r≒6% [500,000/(1+r)+500,000/(1+r) 2 +500,000/(1+r) 3 +<br />

10,500,000/(1+r) 4 =9,650,000 となるrの 値 ]<br />

3 利 息 総 額 の 期 間 配 分 = 期 首 簿 価 ( 期 首 PV)× 実 効 利 子 率<br />

数 値 例 : 第 1 年 度 は 9,650,000×0.06=579,000<br />

4 金 利 調 整 額 の 配 分 =3- 契 約 利 息 = 毎 期 の 増 価 額<br />

- 4 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

5<br />

数 値 例 : 第 1 年 度 は 579,000-500,000=79,000<br />

簿 価 の 計 算 = 前 期 末 簿 価 +4の 利 息 配 分 額<br />

周 知 のとおり、ここでも「 利 息 法 」が 用 いられ、1の 利 息 総 額 が3の 計 算 によって 期 間<br />

配 分 される。 複 利 計 算 に 基 づいて 配 分 されているので、 定 額 法 ( 均 等 配 分 )に 対 して 利 息<br />

法 とよばれる。 社 債 の 発 行 価 格 ( 購 入 額 )と 額 面 金 額 との 差 額 が 金 利 調 整 であるかぎり、<br />

それをふくめた 金 利 つまり 実 効 利 子 率 6%( 契 約 利 子 率 5%より 当 然 に 高 くなる)で 配 分<br />

されるわけである。そして、4の 金 利 調 整 額 の 配 分 額 は、 最 初 の 購 入 価 額 から 始 まって 毎<br />

期 その 債 券 の 評 価 額 に 加 算 ( 増 価 、アキュムレート)され、 最 終 的 に 額 面 金 額 となるわけ<br />

である 5 。<br />

以 上 の 要 点 を 仕 訳 で 示 せば( 決 算 日 と 利 払 日 が 同 じとして)、 次 のとおりである。<br />

〈 仕 訳 :ケース2〉<br />

取 得 日 :( 借 ) 満 期 保 有 目 的 債 券 ××( 購 入 価 額 ) ( 貸 ) 現 金 ××<br />

決 算 日 ( 利 払 日 ):( 借 ) 現 金 ××( 契 約 利 息 ) ( 貸 ) 有 価 証 券 利 息 ××(3)<br />

満 期 保 有 目 的 債 券 ××(4)<br />

満 期 日 :( 借 ) 現 金 ×× ( 貸 ) 満 期 保 有 目 的 債 券 ××( 額 面 額 )<br />

(2)いくつかの 議 論<br />

第 1は 利 息 配 分 と 増 価 ないし 減 価 についてである。すなわち、5の 計 算 で 注 意 したいの<br />

は、 有 価 証 券 利 息 (フロー 計 算 )→ 増 価 として 加 算 (ストック 評 価 )…(a)であってその<br />

逆 ではないということである。むろん、 結 果 的 にみて、 各 期 末 の 割 引 現 在 価 値 は 増 価 加 算<br />

された 債 券 評 価 額 (ストック 評 価 額 )に 等 しく、したがって 各 期 の 有 価 証 券 利 息 は 期 末 と<br />

期 首 の 割 引 現 在 価 値 の 差 額 ではある。しかし、これをもってPVの 計 算 →PVの 期 末 と 期<br />

首 の 差 額 = 有 価 証 券 利 息 …(b)と 解 釈 してはいけない。このことは、 時 価 会 計 でのPV 計<br />

算 とその 差 額 としての 利 得 ・ 損 失 計 算 との 区 別 という 点 できわめて 重 要 である。 例 えば、<br />

ここでの 債 券 簿 価 の 変 動 ( 増 価 )および 次 節 での 債 権 簿 価 の 変 動 ( 増 価 )と 売 買 目 的 有 価<br />

証 券 の 時 価 変 動 とを 比 較 すること、すなわち 利 息 配 分 による「 増 価 」と 想 定 元 本 それ 自 体<br />

の 変 動 による「 時 価 」 変 動 差 額 の 違 いが 重 要 な 論 点 となる( 第 6 節 お よ び 補 遺 1の2 参 照 )。<br />

なお、 割 増 発 行 ( 打 歩 発 行 )の 場 合 は、 逆 に 額 面 よりも 高 い 購 入 価 額 となるので 簿 価 を<br />

毎 期 減 額 する(「 増 価 」に 対 して「 減 価 」)。 両 者 ふくめて 償 却 原 価 法 の 構 造 を 図 示 すれば<br />

図 1のようになる( 定 額 法 償 却 では 増 価 / 減 価 のラインが 直 線 になる)。<br />

5 実 効 利 子 率 6%は 計 算 の 便 宜 上 およその 値 で 計 算 しているので、×4 年 の 償 却 額 は 誤 差 調 整 の<br />

ため、3および4の 計 算 どおりとはなっていない。<br />

- 5 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

図 1 利 息 配 分 と 増 価 - 償 却 原 価 の 動 き-<br />

購 入 額<br />

( 割 増 発 行 )<br />

( 定 額 法 )<br />

減 価<br />

額 面<br />

(10,000,000)<br />

購 入 額<br />

(9,650,000)<br />

( 利 息 法 ) 増 価 =<br />

利 息 配 分<br />

購 入 日<br />

満 期 日<br />

第 2は 発 行 側 の 会 計 処 理 との 関 係 についてである。すなわち、 社 債 の 発 行 側 についてい<br />

えば、 金 利 調 整 差 額 ( 社 債 発 行 差 金 )は、 貸 方 の 社 債 金 額 を 額 面 で 計 上 するかぎり、 借 方<br />

側 に 社 債 発 行 差 金 として 仕 訳 される。しかし、それは 前 払 利 息 の 性 格 を 有 するので、そこ<br />

でもその 差 金 償 却 は 先 の 購 入 側 ( 投 資 側 )との 一 貫 性 ( 表 裏 の 関 係 )からすれば、 本 来 、<br />

利 息 法 によって 償 却 ( 支 払 利 息 の 配 分 )すべきものと 考 えられる 6 。 仮 にこの 発 行 側 の 会<br />

計 処 理 を 購 入 側 でも 一 貫 ( 表 裏 )して 採 るなら、 割 引 社 債 を 購 入 したときの 取 得 価 額 では<br />

なく 額 面 額 で 評 価 することも 考 えられるだろう。そして、その 差 額 は 発 行 側 での 前 払 利 息<br />

とは 逆 に 前 受 利 息 (ただし 借 方 は 現 金 ではなく、 満 期 償 還 のときに 取 得 価 額 との 差 額 とし<br />

て 現 金 化 )の 性 格 として 会 計 処 理 され、その 期 間 配 分 ( 毎 期 の 受 取 利 息 )がなされること<br />

になる 7 。<br />

逆 に、 上 記 の 仕 訳 と 一 貫 する 発 行 側 の 会 計 処 理 も 考 えられよう。すなわち、 発 行 側 も 負<br />

債 としての 社 債 が 額 面 ではなく 割 引 発 行 額 で 測 定 され、その 差 額 が 毎 期 社 債 評 価 額 に 増 価<br />

(アキュムレーション)されるという 会 計 処 理 が 考 えられる。そこでは 額 面 で 測 定 される<br />

「 前 払 利 息 説 」とはまったく 逆 に、いわば「 後 払 利 息 説 」となる。この 考 えによれば、 発<br />

行 側 ( 負 債 )と 購 入 側 ( 資 産 )の 社 債 評 価 額 が、ともに 資 産 と 負 債 の 違 いはあれ、「 割 引<br />

発 行 額 ( 発 行 側 )ないし 購 入 額 ( 投 資 側 )→ 増 価 → 期 末 評 価 額 」として 首 尾 一 貫 ( 表 と 裏<br />

6 それが 利 息 法 ではなく「 定 額 法 」( 均 等 償 却 )によって 処 理 されるのは 商 法 での 繰 延 資 産 の 均<br />

等 償 却 との 関 係 からであろう。そのことは「 金 融 商 品 会 計 に 関 する 実 務 指 針 ( 中 間 報 告 )」での<br />

「 有 価 証 券 や 債 権 等 の 金 融 資 産 と 異 なり、 金 銭 債 務 に 利 息 法 を 採 用 しない 理 由 は、 社 債 発 行 差 金<br />

の 償 却 が 商 法 上 の 繰 延 資 産 に 該 当 しており、その 償 却 については 商 法 上 定 額 法 しか 認 めていない<br />

と 解 釈 されることによる」(303 項 )との 説 明 に 伺 える。<br />

7 確 定 している 将 来 キャッシュフロー( 社 債 額 面 額 )を 資 産 評 価 額 とし、 取 得 価 額 ( 発 行 側 では<br />

発 行 価 額 )との 差 額 を 前 受 利 息 として 満 期 までに 合 理 的 に 期 間 配 分 する 方 法 は、「 外 貨 建 取 引 等<br />

会 計 処 理 基 準 注 解 」の 注 7での 為 替 予 約 等 に 関 する「 振 当 処 理 」の 方 法 に 該 当 するといえる。こ<br />

れに 対 し、 額 面 額 と 取 得 価 額 との 差 額 を 先 に 一 括 資 産 計 上 せず、 増 価 というかたちで 期 間 配 分 す<br />

ることで 徐 々に 資 産 計 上 するのが「 償 却 原 価 法 」にほかならない。 両 者 の 違 いは、 金 利 調 整 部 分<br />

を 先 に 一 括 資 産 計 上 するか、 逆 に 後 で 部 分 的 に 資 産 計 上 するかである。 振 当 処 理 についてはあと<br />

の 注 31 参 照 。<br />

- 6 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

が 同 じ 論 理 )する 8 。<br />

第 3はキャッシュフローと 発 生 ベースによる 配 分 に 関 してである。すなわち、 金 利 調 整<br />

差 額 (350,000)の 期 間 配 分 は、キャッシュフローの 配 分 という 観 点 から 将 来 キャッシュ<br />

フローの 広 い 意 味 での「 見 越 」(あるいは「 繰 上 」)といえる( 補 遺 1 参 照 )。 先 に 5 の 計<br />

算 でみたように、その 利 息 配 分 額 は 債 券 評 価 額 ( 債 券 簿 価 )の 毎 期 増 価 というかたちをと<br />

って 満 期 時 に 額 面 金 額 となり、その 金 額 がキャッシュインフローとなる。つまり、 毎 期 の<br />

利 息 配 分 は 将 来 確 定 キャッシュインフロー( 額 面 金 額 )の 見 越 配 分 としての 利 得 計 算 を 行<br />

っているということができる。なお、 毎 期 の 受 取 契 約 利 息 (500,00)についても 通 常 は<br />

利 息 受 取 日 と 決 算 日 とは 同 じでないので( 収 入 と 収 益 とは 一 致 せず)、 見 越 あ るいは 繰 延<br />

の 必 要 がでてくる。ただ、 前 者 が 満 期 までの 全 期 間 にかかわる 配 分 であるのに 対 し、 後 者<br />

は 毎 期 の 契 約 利 息 をはさんだ2 期 間 にかかわる 配 分 といえる。<br />

最 後 に「 償 却 原 価 」の 意 味 するものについて 考 えてみたい。まず、ここで「 償 却 」<br />

(amortization)とは 金 利 調 整 差 額 の 期 間 配 分 をいう 9 。では、「 原 価 」とは 何 を 意 味 して<br />

いるであろうか。 通 常 、 原 価 (あるいは 原 価 配 分 )というとき、それは( 将 来 支 出 も 含 め<br />

て) 支 出 額 とかかわり、 収 入 額 とはかかわらない。となると、ここで 原 価 とはまずは 割 引<br />

発 行 価 額 9,400 の 現 金 購 入 額 となろう。その 原 価 に 額 面 ( 将 来 キャッシュインフロー)と<br />

の 差 額 が 見 越 配 分 として 毎 期 増 価 されている。 注 意 したいのは 増 価 される 前 の 原 価 部 分 は<br />

( 資 産 の 購 入 であるから) 支 出 としての 原 価 であり、それに 増 価 加 算 される 金 額 は 将 来 収<br />

入 の 配 分 額 であるという 点 である。つまり、 過 去 支 出 に 将 来 収 入 (の 配 分 額 )が 加 算 され<br />

て「 原 価 」を 構 成 しているということである。ここに、 原 価 がなんらかの 支 出 とむすびつ<br />

いていると 解 釈 するかぎりは、この 支 出 と 収 入 という 異 種 の 合 算 という 問 題 が 生 じる。 償<br />

却 原 価 というときの 原 価 とは 何 を 意 味 するのか、あらためて 問 われる 10 。<br />

8 こうした 後 払 利 息 説 を 展 開 している 笠 井 昭 次 『 会 計 の 論 理 』( 税 務 経 理 協 会 、2000 年 )778 頁<br />

参 照 。ただ、 問 題 は 発 行 側 において 契 約 利 息 の 現 金 支 払 いも 増 価 としていったん 社 債 の 評 価 額 に<br />

入 り、ただちに 減 価 されるという 解 釈 は、 元 本 と 利 子 の 無 差 別 ・ 無 区 分 という 結 果 をまねく。こ<br />

の 点 で 検 討 の 余 地 があるようにも 思 えるが、 要 するに 笠 井 説 においては「 収 入 しうべき 額 」とい<br />

う 上 位 概 念 からは 元 本 も 利 息 も 無 差 別 であり、それらがともに 社 債 の 簿 価 を 構 成 しているのであ<br />

る。なお、 元 本 と 金 利 の 区 別 の 徹 底 という 観 点 からは、 購 入 価 額 を 最 後 まで 債 券 評 価 額 とし 金 利<br />

調 整 差 額 の 償 却 を 債 券 評 価 額 にふくめない( 例 えば 未 収 利 息 勘 定 をたてる)、という 第 3の 方 法<br />

も1つの 可 能 性 として 考 えられよう。<br />

9 一 般 に「 償 却 (amortization)」とは 減 価 償 却 や 減 耗 償 却 、 無 形 資 産 の 償 却 (この 場 合 は 特 別<br />

の 名 称 が 与 えられていない)も 含 む 広 い 概 念 である。Stickney C. P. R. L Well and S. Davidson,<br />

Financial Accounting (6th ed.),(Harcourt Brace Javanovich College Publishers, 1991)<br />

pp.322-23 参 照 。SFACNo.6のパラグラフ 142 では、「 配 分 (allocation)」を「 償 却<br />

(amortization)」を 含 むより 広 い 概 念 として「 配 分 はある 計 画 または 公 式 (a plan or a formula)<br />

によって 金 額 を 配 賦 (assigning)あるいは 分 配 (distributing)するプロセスである」( 平 松 ・ 広 瀬<br />

訳 『FASB 財 務 会 計 の 諸 概 念 』 中 央 経 済 社 、1988 年 ,352 頁 )と 説 明 している。<br />

10 この 異 種 の 合 算 という 問 題 をクリアーするには、 論 理 的 には2つの 可 能 性 、すなわち 社 債 の<br />

購 入 額 を 収 入 とみるか、 増 価 額 を 支 出 とみるしかない。どちらかといえば 前 者 の 方 が 考 えられる<br />

が、いずれの 解 釈 も 今 の 筆 者 にはむつかしい。なお、「 金 融 商 品 会 計 基 準 」では 償 却 原 価 法 につ<br />

いて「 債 権 又 は 債 券 を 債 権 金 額 又 は 債 券 金 額 より 低 い 価 額 又 は 高 い 価 額 で 取 得 した 場 合 において、<br />

当 該 差 額 に 相 当 する 金 額 を 弁 済 期 又 は 償 還 期 に 至 るまで 毎 期 一 定 の 方 法 で 貸 借 対 照 表 価 額 に 増<br />

減 する 方 法 」( 注 解 5)と 説 明 している。ここで 売 掛 金 や 受 取 手 形 のような 債 権 のケースではは<br />

じめから( 将 来 ) 収 入 にかかわっているので 問 題 はなさそうである(ただし、 同 じ 債 権 でも 貸 付<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

4 貸 倒 懸 念 債 権 と 割 引 現 在 価 値<br />

〈 設 例 ケース3: 貸 倒 懸 念 債 権 〉 11<br />

A 社 がB 社 に 対 し 有 する 債 権 金 額 1,000,000、 約 定 利 子 率 年 5%( 年 1 回 払 い)、 残 存<br />

期 間 5 年 ( 期 限 一 括 返 済 )の 債 権 について、X1 年 3 月 31 日 の 利 払 後 にB 社 から 条 件 緩<br />

和 の 申 し 出 があり、A 社 は、 約 定 利 子 率 を 年 2%に 引 き 下 げることに 合 意 した。<br />

表 3 貸 倒 懸 念 債 権 - 簿 価 切 り 下 げと 簿 価 変 動 -<br />

キ<br />

シ<br />

フ<br />

ロ<br />

債<br />

権<br />

簿<br />

価<br />

の<br />

計<br />

算<br />

イ) 契 約 上 の 将 来<br />

キャッシュフロー<br />

ロ) 条 件 緩 和 後 の<br />

将 来 キャッシュフロー<br />

X2 年 X3 年 X4 年 X5 年 X6 年<br />

3 月 31 日 3 月 31 日 3 月 31 日 3 月 31 日 3 月 31 日<br />

50,000 50,000 50,000 50,000<br />

ハ) 約 定 利 子 率 5% 1/1.05 1/1.05 2 1/1.05 3 1/1.05 4 1/1.05 5<br />

に 基 づく 現 価 係 数 =0.9524 =0.9070 =0.8638 =0.8227 =0.7835<br />

-<br />

X1 年 3 月 31 日 47,620 43,351 43,192 41,135 822.702 1,000,000<br />

( 当 初 :イ×ハ)<br />

簿 価 ×5% 簿 価 差 額<br />

X1 年 3 月 31 日<br />

( 修 正 後 :ロ×ハ)<br />

X2 年 3 月 31 日<br />

19,048 18,141<br />

19,048<br />

17,277<br />

18,141<br />

16,454<br />

17,277<br />

799,197<br />

839,157<br />

870,117<br />

893,623<br />

-<br />

43,506<br />

129,883<br />

23,506<br />

X3 年 3 月 31 日 19,048 18,141 881,114 918,303 44,681 24,681<br />

X4 年 3 月 31 日 19,048 925,170 944,218 45,915 25,915<br />

X5 年 3 月 31 日 971,429 971,429 47,211 27,211<br />

合 計<br />

1,050,000 1,250,000<br />

20,000 20,000 20,000 20,000 1,020,000 1,100,000<br />

X6 年 3 月 31 日 1,000,000 1,000,000<br />

( 満 期 日 ) 20,000 20,000<br />

48,571<br />

28,571<br />

あとで 議 論 することになるが、 表 3の 簿 価 計 算 おいて 将 来 キャッシュインフローを( 引<br />

き 下 げ 後 の2%ではなく) 当 初 の 約 定 利 子 率 5%で 割 り 引 いた 現 在 価 値 が 求 められている<br />

ことに 注 意 されたい。<br />

(1) 簿 価 切 り 下 げと 簿 価 変 動 額 の 意 味<br />

3つめのケースとして、これまでのケースとはやや 異 なるが( 簿 価 の 切 り 下 げがある)、<br />

同 じく 資 産 評 価 にPVの 計 算 が 用 いられ、それに 基 づいて 利 息 配 分 が 行 われている 貸 倒 懸<br />

念 債 権 のケースを 取 り 上 げてみたい。 数 値 例 での 要 点 は 以 下 のとおりである。<br />

〈 要 点 :ケース3〉<br />

1 債 権 金 額 1,000,000<br />

2 債 権 金 額 と 毎 期 の 当 初 契 約 の 受 取 利 息 (5%)50,000 のPV=1<br />

数 値 例 :X1 年 度 末 のPV=1,000,000、…、X5 年 度 末 のPV=(50,000+<br />

1,000,000)/1.05=1,000,000<br />

金 の 場 合 は 支 出 がともなっている)。 したがって 問 題 は 債 券 のケースであるといえる。<br />

11 本 設 例 は「 金 融 商 品 会 計 に 関 する 実 務 指 針 」の 設 例 13 に 基 づいている。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

3 債 権 金 額 と 毎 期 の 修 正 後 契 約 利 息 (2%)20,000 のPV(ただし 割 引 率 は 当 初 の<br />

利 子 率 5%)<br />

数 値 例 :X1 年 度 末 ( 修 正 時 )=¥870,117、X2 年 度 末 =893,623、<br />

4 貸 倒 見 積 高 =1-3( 修 正 時 :X1 年 度 末 )<br />

数 値 例 :1,000,000-870,117=129,883( 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 )<br />

5 毎 期 の 受 取 利 息 =3( 期 首 のPV)× 当 初 の 利 子 率 5%<br />

数 値 例 :X2 年 度 末 =870,117×0.05=43,506<br />

6 簿 価 の 増 価 額 =5- 修 正 後 契 約 利 息 20,000=3のPVの 期 間 差 額<br />

数 値 例 :X2 年 度 末 =43,508-20,000=23,506=893,623-870,117<br />

まず、1=2は 毎 期 成 立 していることを 確 認 されたい。つまり、 元 本 と( 当 初 の 利 子 率<br />

のもとでの) 利 息 の 将 来 キャッシュフローのPVは、 毎 期 いつでも 債 権 金 額 ¥1,000,000<br />

に 等 しいということである。3は 元 本 と 修 正 された 利 息 のもとでの 将 来 キャッシュフロー<br />

のPVであり、( 割 引 率 が 引 き 下 げられた 利 子 率 2%ではないので) 毎 期 末 のPVは 異 な<br />

る 12 。その 各 期 のPVの 差 額 ( 増 加 額 )の 意 味 するものがあとで 議 論 になる。4は 債 権 金<br />

額 ( 簿 価 )1,000,000 と 修 正 時 点 (1 年 度 末 )で 見 積 もり 直 されたPV=870,117( 新 た<br />

な 簿 価 )との 差 額 である。この 差 額 129,883 は 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 として 会 計 処 理 されるが、<br />

それは 簿 価 の 切 り 下 げであるので 減 損 とみてよいだろう。これもあとで 議 論 するが、この<br />

新 たな 簿 価 の 計 算 が 当 初 の 利 子 率 5%で 計 算 されていることに 留 意 されたい。5と6は 受<br />

取 利 息 の 計 算 であるが、3で 計 算 されるPV( 期 首 簿 価 )が 元 本 相 当 額 であるから、その<br />

当 初 利 子 率 5%( 使 用 した 割 引 率 )が 利 息 というわけであり、その 計 算 が5である。ただ、<br />

実 際 のキャッシュフローは 20,000 であるので、その 差 額 23,506 が 問 題 になる。6はそれ<br />

が 実 は3で 求 められるPV( 簿 価 )の 期 間 差 額 に 等 しいことを 示 している。これもあとで<br />

議 論 するが、この 差 額 の 性 格 とその 会 計 処 理 が 一 番 むつかしい 論 点 である。<br />

以 上 の 要 点 を 仕 訳 で 示 せば、 次 のようになる。 先 のむつかしい 論 点 であった6のPVの<br />

期 間 差 額 の 処 理 が 第 1 法 と 第 2 法 として 示 されている。<br />

〈 仕 訳 :ケース3〉<br />

条 件 緩 和 時 :( 借 ) 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 ××(4) ( 貸 ) 貸 倒 引 当 金 ××<br />

決 算 日 ( 第 1 法 ):( 借 ) 現 金 預 金 ××( 修 正 契 約 利 息 ) ( 貸 ) 受 取 利 息 ××(5)<br />

貸 倒 引 当 金 ××(6)<br />

決 算 日 ( 第 2 法 ):( 借 ) 現 金 預 金 ××( 修 正 契 約 利 息 )( 貸 ) 受 取 利 息 ××<br />

貸 倒 引 当 金 ××(6) 貸 倒 引 当 金 戻 入 益 ××<br />

(2)いくつかの 議 論<br />

第 1は、 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 128,883 の 性 格 についてである。 結 論 から 言 えば、それは 見<br />

12 割 引 率 を 当 初 の5%ではなく 引 き 下 げられた2%で 行 うとPV( 簿 価 )の 計 算 はどうなるか<br />

といえば、それは 毎 期 1,000,000 になるはずである。したがって、これから 先 の4から6の 計 算<br />

はいっさいでてこないことになる。ただ、 受 取 利 息 の 減 少 分 ( 50,000-20,000)×5 年 間 =150,000<br />

が 会 計 処 理 されるかどうかが 残 ることになる。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

積 もり 直 された 将 来 キャッシュフローの 収 益 率 が 当 初 の 収 益 率 (5%)と 同 じになる<br />

(catch up) 簿 価 修 正 として、 貸 倒 見 積 高 ( 減 損 )が 修 正 時 点 に 一 括 計 上 されているという<br />

ことである。5での 受 取 利 息 の 計 算 を 再 度 みられたい。 契 約 利 子 率 が2%に 引 き 下 げられ<br />

ているにもかかわらず、 元 本 に 相 当 するPV(3の 計 算 )に 対 する 収 益 率 が5%となって<br />

いるのである 13 。したがって、 注 意 すべきはこうした 計 算 がけっして 修 正 時 点 でのストッ<br />

クの 価 値 評 価 の 計 算 を 行 っているのではないということである 14 。<br />

第 2は 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 128,883 の 毎 期 取 崩 額 の 意 味 についてである。 第 1の 点 からす<br />

れば、この 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 は 結 局 6で 計 算 される 受 取 利 息 の 合 計 に 等 しくなる。つ ま り 、<br />

( 引 当 金 繰 入 額 =) 取 崩 額 の 合 計 =6の 利 息 配 分 額 の 合 計 となる。しかも、この 利 息 配 分<br />

は6に 示 しているようにPVの 期 間 差 額 、つまり 毎 期 の 債 権 簿 価 (PV)の 増 価 額 に 等 し<br />

い。このことは 次 のように 解 釈 すると 理 解 されるかもしれない。すなわち、 貸 倒 引 当 金 を<br />

設 定 せず 直 接 減 額 ( 直 接 法 で 表 示 )すれば、 例 えば 第 2 年 度 末 の 取 崩 額 23,506= 期 末 P<br />

V(893,623)- 期 首 PV(870,117)→ 債 権 簿 価 の 増 価 →( 貸 倒 引 当 金 を 設 けない) 直 接 法 表<br />

示 では( 借 ) 債 権 23,506/( 貸 ) 受 取 利 息 23,506、となろう。こうして、( 借 ) 資 産 ( 有<br />

価 証 券 、 債 権 )/( 貸 ) 受 取 利 息 という 仕 訳 は 先 の 購 入 社 債 のケースと 同 じかたちとなる。<br />

貸 倒 引 当 金 を 設 定 する 間 接 法 表 示 では、それがその 取 り 崩 しというかたちで 間 接 的 に 簿 価<br />

の 増 価 となっているのである。<br />

第 3は 最 初 の 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 とその 取 り 崩 しの 利 益 計 算 上 の 関 係 についてである。す<br />

なわち、 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 = 修 正 時 点 での 損 失 計 上 →それ 以 降 の 期 間 に 利 益 ( 受 取 利 息 )<br />

として 再 配 分 、という 構 造 になっている。この 利 益 計 算 の 仕 組 み( 構 造 )は 減 損 会 計 のそ<br />

れ、すなわち 修 正 時 点 とそれ 以 降 の 利 益 計 算 のリンク 関 係 ( 修 正 時 点 の 損 失 計 上 →それ 以<br />

降 の 利 益 計 上 )と 同 じである 15 。<br />

第 4は 取 り 崩 しの 会 計 処 理 が 同 じ 利 益 でも 受 取 利 息 とするか( 第 1 法 )、それとも 貸 倒<br />

引 当 金 戻 入 益 ( 第 2 法 )とするかである。この2つの 方 法 の 違 いは、 利 子 収 益 の 収 益 率 と<br />

いう 観 点 からは、 前 者 ( 第 1 法 )ではすでにみたように 当 初 の5%になるのに 対 し、 後 者<br />

( 第 2 法 )では 相 手 勘 定 が 受 取 利 息 ではないので5%にならない。また、 先 にみたように<br />

貸 倒 引 当 金 を 設 定 せず 修 正 前 の 簿 価 (PV)1,000,000 を 直 接 減 額 するのであれば、そも<br />

そも 引 当 金 の 取 り 崩 しもない。その 点 からすれば、 貸 倒 引 当 金 戻 入 益 は 直 接 減 額 では 本 来<br />

でてこないはずのものである。ただ、 貸 倒 引 当 金 戻 入 益 を 用 いると 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 ( 修<br />

正 時 点 の 損 失 計 上 )とその 戻 入 (それ 以 降 の 利 益 計 上 )という 関 係 になるので、 先 の 第 3<br />

にあげた 修 正 時 点 とそれ 以 降 の 利 益 計 算 のリンク 関 係 がより 直 接 的 にあらわれることに<br />

なる。<br />

第 5はキャッシュフローと 配 分 ( 見 越 配 分 )についてである。すなわち、 毎 期 の 増 価 に<br />

13 2%に 引 き 下 げられたのに5%の 収 益 率 が 確 保 されている。なぜか、これが 問 題 になる。 米<br />

山 正 樹 『 減 損 会 計 』( 森 山 書 店 、2001 年 ) 並 びにそこでの 理 論 展 開 を 期 間 利 益 計 算 の「 正 常 性 確<br />

保 説 」として 論 じている 拙 稿 「 書 評 : 米 山 正 樹 著 『 減 損 会 計 』」(『 経 営 研 究 』 第 53 巻 第 2 号 )<br />

参 照 。<br />

14 こうした 価 値 評 価 とは 基 本 的 に 異 にする 会 計 思 考 (「 評 価 スキーム」に 対 する「 配 分 スキーム」)<br />

については 前 掲 米 山 『 減 損 会 計 』 参 照 。<br />

15 この 修 正 時 点 の 損 失 ( 減 損 ) 計 上 とそれ 以 降 の 利 益 計 上 との 関 連 については 拙 稿 「 減 損 会 計<br />

と 利 益 計 算 の 構 造 」(『 企 業 会 計 』 第 53 巻 第 11 号 ) 参 照 。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

より 最 終 的 につまり 満 期 日 にPVが 1,000,000 となるということは、 最 終 的 に 1,000,000<br />

のキャッシュフローがはいってくるわけであるから、6で 計 算 される 利 息 配 分 は 将 来 キャ<br />

ッシュフローの「 見 越 」ということになる。 先 に( 借 ) 資 産 ( 有 価 証 券 、 債 権 )/( 貸 )<br />

受 取 利 息 という 仕 訳 が 購 入 社 債 のケースと 同 じであることをみたが、ここではキャッシュ<br />

フローの 配 分 という 観 点 から、それが 購 入 社 債 のケースと 同 じく 見 越 配 分 としての 利 息 配<br />

分 になるということである。<br />

5 資 産 化 と 利 子 配 分 -その 対 関 係 と 同 形 性 -<br />

以 上 3つのケースをみてきたが、い ず れのケースも1 確 定 している 将 来 キャッシュフロ<br />

ー、2その 現 在 価 値 (PV)、 3 両 者 の 差 額 としての 利 子 総 額 、4その 期 間 配 分 = 期 首 簿<br />

価 (PVであり 元 本 相 当 額 )× 割 引 率 、という 点 で 共 通 する( 簿 価 =PVについては 補 遺<br />

2 参 照 )。この 共 通 点 の 抽 出 が 重 要 である。それは 一 言 でいえば、 将 来 キャッシュフロー<br />

の 資 産 化 (1と2)と 利 子 配 分 (3と4)の「 対 関 係 」ということであり 16 、それが3つ<br />

のケースについて「 同 形 」なのである。 以 下 、このことについて 述 べたい。<br />

まず、 上 記 の1 将 来 キャッシュフロー、2そのPV、3 利 子 総 額 、4その 期 間 配 分 、を<br />

各 ケースについて 示 せば 以 下 のとおりである。<br />

表 4 3つのケースの 要 約 表<br />

1 将 来 キャッシュ 2=1のPV 3=1-2 4=3の 期 間 配 分<br />

フロー ( 割 引 率 r) ( 利 息 相 当 額 ) ( 毎 期 首 簿 価 × 割 引 率 )<br />

1)リース 会 計<br />

2,000,000 1,700,000 96,900+79,620+<br />

300,000<br />

(リース 支 払 額 ) (r=5.7%) …+20,060=300,000<br />

2) 購 入 社 債<br />

10,000,000+2,000,000 9,650,000 2,350,000 579,000+583,740+<br />

( 受 取 額 面 額 +5% 受 取 利 息 ) (r=6%) (2,00,000+350,000) * …+598,500=2,350,000<br />

1,000,000+100,000 870,117 229,883 43,506+44,681+<br />

3) 貸 倒 懸 念 債 権<br />

( 債 権 金 額 +2% 受 取 利 息 ) (r=5%) (100,000+129,883) * …+48,571=229,883<br />

*350,000と129,883の 部 分 が 増 価 配 分 となる<br />

〈ケース1:リース 会 計 〉<br />

1リース 料 総 額 2,000,000、2リース 資 産 額 1,700,000=1のPV( 割 引 率 5.7%)、 3<br />

支 払 利 息 総 額 =1-2=300,000、4その 期 間 配 分 = 毎 期 の 期 首 簿 価 (リース 債 務 簿 価 )<br />

×5.7%<br />

〈ケース2: 購 入 社 債 〉<br />

1 額 面 + 契 約 利 子 =10,000,000+500,000×4 年 、2 社 債 の 購 入 価 額 9,650,000=2の<br />

PV( 割 引 率 6%)、3 受 取 利 息 総 額 =1-2=2,350,000、4その 期 間 配 分 = 毎 期 の 期 首<br />

簿 価 ( 債 券 簿 価 )×6%( 実 効 利 子 率 )<br />

〈ケース3: 貸 倒 懸 念 債 権 〉<br />

1 債 権 金 額 + 修 正 契 約 利 子 =1,000,000+20,000×5 年 、2 当 初 利 子 率 での 債 権 価 値 ( 新<br />

16 この 資 産 とキャッシュフローの 対 関 係 は、 資 産 としての 現 在 価 値 が 将 来 キャッシュフローの<br />

現 時 点 での 割 引 価 値 であり、 逆 にその 現 在 価 値 にその 割 引 率 で 複 利 計 算 をすれば 将 来 キャッシュ<br />

フローに 一 致 するという 関 係 である。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

簿 価 )870,117=1のPV( 割 引 率 は 当 初 利 子 率 5%)、3 受 取 利 息 総 額 =1-2=229,883、<br />

4その 期 間 配 分 = 毎 期 の 期 首 簿 価 ( 債 権 簿 価 )×5%<br />

ケース1と2はあらためて 補 足 する 必 要 はないが、ケース3の3での 229,883 のうち 修<br />

正 後 の 契 約 利 子 20,000×5 年 =100,000 を 除 いた 金 額 、すなわち 1,000,000-870,117=<br />

129,883( 貸 倒 引 当 金 繰 入 額 であるが)が 受 取 利 息 として 期 間 配 分 ( 第 1 法 )されている<br />

ことに 注 意 されたい。いずれにせよ、3つのケースとも 期 間 配 分 される 毎 期 の 利 息 は、ケ<br />

ース2,3での 毎 期 の 契 約 利 息 も 含 めて、 期 首 簿 価 (PVであり、 元 本 相 当 額 である)×<br />

割 引 率 となる。そして、その 利 息 配 分 と 各 ケースの 簿 価 変 動 は 次 のように 示 される。 右 辺<br />

の 第 2 項 が 利 息 配 分 による 簿 価 変 動 部 分 である( 但 し、rは 各 ケースの 割 引 率 )。 各 数 値<br />

例 で 再 度 確 認 されたい。<br />

1)リース 債 務 … 期 末 簿 価 = 期 首 簿 価 -( 毎 期 支 払 リース 料 - 期 首 簿 価 × 割 引 率 )<br />

= 期 首 簿 価 ×(1+r)- 毎 期 支 払 リース 料<br />

2) 購 入 社 債 … 期 末 簿 価 = 期 首 簿 価 +( 期 首 簿 価 × 割 引 率 - 毎 期 契 約 受 取 利 息 )<br />

= 期 首 簿 価 ×(1+r)- 毎 期 契 約 受 取 利 息<br />

3) 懸 念 債 権 … 期 末 簿 価 = 期 首 簿 価 +( 期 首 簿 価 × 割 引 率 - 修 正 後 毎 期 契 約 支 払 利 息 )<br />

= 期 首 簿 価 ×(1+r)- 修 正 後 毎 期 契 約 支 払 利 息<br />

重 要 なことは、 割 引 現 在 価 値 (PV)と 利 子 配 分 の 関 係 である。 図 式 的 に 要 約 すれば 次<br />

の よ うに 示 される。 将 来 キャッシュフローの「 元 本 化 」( 造 語 ではあるが<br />

“principalization”)とその 割 引 率 による 利 子 配 分 という「 対 関 係 」が、すべてのケ<br />

ースについて「 同 形 」なのである。 割 引 率 が 両 者 を 繋 ぐ 連 結 子 となっていることに 注<br />

意 されたい( 補 遺 2 参 照 )。<br />

割 引 現 在 価 値 (PV)= 将 来 キャッシュフローの 元 本 化<br />

PV( 元 本 )← 割 引 率 ( 利 子 率 )- 将 来 キャッシュフロー<br />

対<br />

:ストック 化 ( 資 産 ・ 負 債 , capitalization)← 将 来 キャッシュフロー( 収 支 )<br />

利 子 配 分 =PV× 利 子 率 ( 割 引 率 )→ 利 子 の 期 間 配 分 :フロー 配 分 ( 益 費 )<br />

6 結 び- 会 計 配 分 vs. 価 値 評 価 -<br />

以 上 、3つのケースにおける 割 引 現 在 価 値 計 算 の 用 いられ 方 をみてきたが、いずれも 何<br />

らかのかたちで 確 定 している 将 来 キャッシュフローの 割 引 現 在 価 値 計 算 がなされている。<br />

すなわち、リース 会 計 では 支 払 リース 料 、 満 期 保 有 目 的 債 券 では 毎 期 の 契 約 利 息 と 償 還 日<br />

に 受 け 取 る 債 券 額 面 額 、そ し て 貸 倒 懸 念 債 権 では 毎 期 の 修 正 後 受 取 利 息 と 債 権 金 額 である。<br />

そして、い ず れのケースでもその 割 引 現 在 価 値 としての 簿 価 の 期 間 差 額 が 利 息 相 当 額 の 配<br />

分 計 算 に 基 づくものであることもみた。<br />

このことは、 売 買 目 的 有 価 証 券 やデリバティブでの 簿 価 変 動 ( 時 価 変 動 )と 比 較 すると<br />

き 重 要 な 論 点 となる。そのことはケース2での 簿 価 が「 償 却 原 価 」といわれることに 象 徴<br />

されている( 再 度 、 図 1をみられたい)。つまり、いずれのケースの 簿 価 計 算 もけっして<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

時 価 計 算 をしているのではなく、したがって 簿 価 変 動 もむろん 時 価 変 動 差 額 ではないとい<br />

うことである。い ず れも 当 初 認 識 時 に 確 定 しているキャッシュフローの 配 分 という 点 で 時<br />

価 会 計 ではなく、そこでの 割 引 現 在 価 値 の 計 算 および 利 息 配 分 は 伝 統 的 な 配 分 計 算 の 枠 内<br />

にあるといえる。<br />

この 簿 価 変 動 においては、 先 にみたように 毎 期 の 簿 価 がPVであり、それは「 利 息 法 」<br />

での 利 息 計 算 の 元 本 相 当 額 であるから、 元 本 相 当 額 が 一 定 額 だけ 毎 期 変 動 しているように<br />

みえる。しかし、よく 考 えてみるとそれは 利 息 法 を 採 用 しているからであって、つまり 利<br />

息 計 算 のための 元 本 相 当 額 の 計 算 であって、「 定 額 法 」を 用 いればこうした 利 息 計 算 によ<br />

る 期 間 配 分 はおこなわれず、したがって 簿 価 は 現 在 価 値 にならない。その 意 味 で、つまり<br />

利 息 法 が 期 間 配 分 の1つの 方 法 ( 償 却 原 価 法 の1つの 方 法 )であるかぎり、そこでの 簿 価<br />

変 動 は 本 来 的 な 元 本 額 が 変 動 しているというわけではない。その 点 で、 満 期 保 有 目 的 債 券<br />

は、それが 満 期 保 有 であるがゆえに、 債 券 ではあっても 会 計 上 は( 償 却 原 価 も 適 用 される)<br />

金 銭 債 権 と 同 じ 扱 いになっているといえよう。ただ、JWG 案 のように 将 来 、 全 面 時 価 ア<br />

プローチが 採 用 されると、 償 却 原 価 ではなく 時 価 評 価 されることになる。<br />

これに 対 し、 売 買 目 的 有 価 証 券 やデリバティブでの 時 価 変 動 ( 簿 価 変 動 )は、そこで 想<br />

定 される 元 本 価 値 それ 自 体 が 変 動 しているとみることができる 17 。しかも、その 変 動 は( 何<br />

らかの 配 分 による) 一 定 額 の 変 動 というものではなく、 時 点 時 点 での 時 価 の 変 動 差 額 にほ<br />

かならない 18 。つまり、そこでの 簿 価 は 配 分 に 基 づく 計 算 (derived measurement)では<br />

なく、 当 初 認 識 時 とは 切 断 された 特 定 時 点 での 不 確 実 性 ないしリスクを 反 映 した 時 価 測 定<br />

(direct measurement)なのである。 仮 にそれもキャッシュフローの 配 分 ということができ<br />

たとしても、それは 実 際 のキャッシュフローが 確 定 し 実 現 したあとからみての( 事 前 の 配<br />

分 ルールのない)“ 結 果 的 な 配 分 ”でしかない。そのことは 例 えば 売 買 目 的 有 価 証 券 の 時<br />

価 評 価 損 益 を1つ 取 り 上 げてみても 容 易 に 理 解 されるだろう。ちなみに、 前 者 の 簿 価 計 算<br />

ないし 簿 価 決 定 のあり 方 を「 連 続 ・フロー 配 分 型 」といえば、 後 者 は「 非 連 続 ( 離 散 )・<br />

ストック 評 価 型 」といえる。<br />

以 上 の 相 違 、すなわち 当 初 認 識 時 にその 計 算 基 礎 をおく「 会 計 配 分 」と 当 初 認 識 時 から<br />

切 り 離 された(フレッシュ・スタート) 特 定 時 点 でのより 直 接 的 な「 価 値 評 価 」との 相 違<br />

はきわめて 大 きいといえる( 補 遺 1 参 照 ) 19 。<br />

17 そこで 想 定 される( 擬 制 されている) 元 本 価 値 は 経 済 学 的 には「 擬 制 資 本 価 値 」とよばれる。<br />

擬 制 資 本 というとき 何 が 擬 制 されているかといえば 貸 付 資 本 が 擬 制 されており、 擬 制 資 本 価 値 が<br />

変 動 することは 貸 付 資 本 たる 元 本 そのものが 変 動 することにほかならない。 拙 著 『 時 価 会 計 の 基<br />

本 問 題 』( 中 央 経 済 社 、2000 年 ) 第 7 章 第 3 節 および 第 11 章 参 照 。<br />

18 したがって、その 時 価 評 価 差 額 ( 有 価 証 券 運 用 損 益 )の 会 計 処 理 は「 洗 替 法 」ではなく「 切<br />

離 法 」が 理 論 的 であるといえる。<br />

19 この 当 初 認 識 時 を 計 算 基 礎 にする 会 計 配 分 の 構 造 は、 井 尻 教 授 が 展 開 した 会 計 測 定 の 公 理 的<br />

構 造 でいえば「 価 額 帰 属 規 則 」と「 価 額 配 賦 規 則 」に 該 当 する。したがって、もう 一 方 の 価 値 評<br />

価 の 測 定 構 造 を 公 理 的 構 造 という 抽 象 レベルで 規 則 定 式 化 すれば、 今 日 の 会 計 測 定 システムの 全<br />

体 (2つの 計 算 系 のハイブリッド 構 造 - 補 遺 1 参 照 )を 公 理 的 構 造 として 記 述 できる。 井 尻 モデ<br />

ルを「 原 価 - 配 分 - 実 現 」の 公 理 的 モデル 化 ととらえた 拙 稿 「 井 尻 理 論 の 方 法 と 対 象 」(『 会 計 』<br />

第 119 巻 第 4 号 、1981 年 )141-42 頁 、および 井 尻 モデルの 今 日 の 会 計 測 定 モデルへの 再 構 成 の<br />

可 能 性 に 言 及 した 前 掲 拙 著 『 時 価 会 計 の 基 本 問 題 』318-19 頁 の 注 5 参 照 。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

会 計 配 分 … 当 初 認 識 時 にその 計 算 基 礎 をおく。そこでの 簿 価 計 算 は 配 分 に 基 づく 計 算<br />

(derived measurement)。 フロー 配 分 計 算 がストック 評 価 を 導 く。<br />

価 値 評 価 … 当 初 認 識 時 から 切 断 された 特 定 時 点 (フレッシュ・スタート)での 直 接 的<br />

測 定 (direct measurement)。ストック 評 価 の 自 立 性 。 金 融 商 品 に 代 表 される<br />

時 価 評 価 差 額 の 損 益 算 入 。<br />

したがって、 次 に 検 討 すべき 対 象 は 売 買 目 的 有 価 証 券 やデリバティブ、 年 金 債 務 ( 退 職<br />

給 付 債 務 )など「 時 価 会 計 」といわれるケースでの 資 産 ・ 負 債 の 簿 価 ( 貸 借 対 照 表 価 額 )<br />

の 決 まり 方 ( 時 価 ないし 割 引 現 在 価 値 )である。そ し て、すでに 本 稿 で 示 唆 されているが、<br />

そこでの 簿 価 変 動 の 性 格 が 本 稿 で 取 り 上 げたケースとどのように 異 なるか、このことが 重<br />

要 な 検 討 課 題 となる。そのことによって 今 日 の 時 価 測 定 の 特 徴 が 浮 き 彫 りにされる。 稿 を<br />

あらためて 論 じたい 20 。<br />

補 遺 1 会 計 配 分 の 基 礎<br />

1 収 支 配 分 型 利 益 計 算 の 基 礎 - 収 支 と 益 費 -<br />

会 計 上 の 利 益 計 算 を 基 礎 づけている 要 素 を 可 能 なかぎり 突 きつめていけば、3つに 還 元<br />

されるように 思 える。 少 なくとも、これまでの 利 益 計 算 ではそうである。 逆 に 言 えば、 複<br />

雑 に 見 える 様 々な 計 算 のルールも、 結 局 は、この3つの 要 素 から 成 り 立 っているというわ<br />

けである。その3つとは、1キャッシュフロー(Cash Flows)、 2 発 生 主 義 (Accrual)、<br />

3 配 分 (Allocation)である 21 。<br />

図 2はその3つの 要 素 の 関 係 (C-A-Aのトライアングル 関 係 )を 示 したものである。<br />

Cash を 網 掛 けにしているのは、それが( 計 算 ルールに 左 右 されない) 唯 一 具 体 的 なもの<br />

であり、それが( 企 業 活 動 のみならず 会 計 上 も)すべての 基 礎 になっていることを 示 すた<br />

めである 22 。そして、この3つの 要 素 からそれぞれ3つの 財 務 諸 表 、すなわち1Cash Flows<br />

からはキャッシュフロー 計 算 書 (C/F)が、2Accrual からは 損 益 計 算 書 (P/L)が、<br />

そして3Allocation からは( 未 配 分 としての) 貸 借 対 照 表 が 出 てくる。 図 2は、その 相<br />

互 関 連 のいわば 原 型 モデルを 示 しているといえる。<br />

20 本 稿 「 割 引 現 在 価 値 と 会 計 配 分 」の 続 編 として「 割 引 現 在 価 値 と 価 値 評 価 」を 予 定 している。<br />

21 ここで「 対 応 」(Matching)がもうひとつの 要 素 に 加 えられるかもしれない。しかし、 配 分 に<br />

は 対 応 が 直 接 かかわらない 配 分 ( 例 えば 有 価 証 券 運 用 損 益 や 利 子 損 益 )があるので、ここでは 特<br />

に 要 素 として 示 していない。むろん、 図 2の Allocation には 対 応 による 配 分 が 入 っている。<br />

22 より 詳 しくはキャッシュフローとインカムの 関 係 を 具 体 物 ( 基 本 物 )と 計 算 物 の 関 係 から 捉<br />

えている 拙 著 『キャッシュ・フロー 簿 記 会 計 論 』( 森 山 書 店 、1996 年 ) 参 照 。むろん、 資 産 ・ 負<br />

債 には 計 算 物 ではなく 実 体 的 具 体 物 としてのそれがあるが、 収 支 を 基 礎 にする 利 益 計 算 の 観 点 か<br />

らは 繰 延 資 産 も 設 備 資 産 もその 資 産 の 本 質 ( 支 出 の 繰 延 配 分 )を 異 にしないのである。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

図 2 Cash Flows/Accrual/Allocation<br />

- 利 益 決 定 と 資 産 ・ 負 債 決 定 -<br />

C/F Cash ――― Accrual P/L: 利 益 の 決 定<br />

Allocation<br />

B/S: 資 産 ・ 負 債 の 決 定<br />

図 2に 示 されているように、 利 益 も 資 産 ・ 負 債 も 何 らかのルールでもって、しかもキャ<br />

ッシュフローとの 関 連 において「 決 定 されるもの」であるが、キャッシュフローは「 決 定<br />

されるもの」ではなく「 事 実 そのもの」である。 以 下 では、より 具 体 的 にこのキャッシュ<br />

フローと 利 益 決 定 および 資 産 ・ 負 債 決 定 の 関 連 を 説 明 しよう。<br />

会 計 利 益 の 決 定 メカニズムあるいは 会 計 的 利 益 の 計 算 構 造 は、 少 なくともこれまでの 構<br />

造 は、 一 言 でいえば 収 支 すなわちキャッシュフローに 基 礎 づけられた 期 間 損 益 計 算 である<br />

といえる。この 収 支 を 基 礎 にする 期 間 損 益 計 算 ということを 最 も 象 徴 的 に 表 現 しているの<br />

..........<br />

が、ほかならぬ 企 業 会 計 原 則 での「すべての 費 用 及 び 収 益 は、その 支 出 及 び 収 入 に 基 づい<br />

.<br />

..........<br />

て計 上 し、その 発 生 した 期 間 に 正 しく 割 り 当 てられるように 処 理 しなければならない」( 損<br />

益 計 算 書 原 則 1A( 発 生 主 義 の 原 則 )、 傍 点 は 引 用 者 )である。<br />

一 般 に、 収 入 ・ 支 出 (キャッシュフロー)と 収 益 ・ 費 用 ( 以 下 、 単 に「 収 支 」と「 益 費 」)<br />

とは、 利 益 が 発 生 主 義 によって 決 定 されることから 一 致 しない。このことを 収 支 からみれ<br />

ば、 益 費 は 収 支 の 発 生 主 義 による 配 分 ということになり、 逆 に 益 費 からみれば( 過 去 ・ 現<br />

在 および 将 来 の) 収 支 に 対 して「 繰 延 (deferral)」および「 見 越 (accrual)」( 繰 上 ある<br />

いは 引 当 )となる。そして、 収 支 と 益 費 との 差 異 ( 不 一 致 )は 広 い 意 味 での「( 期 間 ) 配<br />

分 」が 完 了 ・ 完 結 することで 解 消 される。つまり、 配 分 しつくされると 両 者 は 最 終 的 ・ 全<br />

体 的 に 一 致 する。<br />

ここで、 収 支 を 支 出 (アウトフロー)と 収 入 (インフロー)、 さ らにフローを 過 去 ・ 現<br />

在 と 将 来 のフローに 分 けてみると、 収 支 の 配 分 は 以 下 のように2 分 類 される 23 。<br />

23 見 越 ・ 繰 延 は 一 般 には 一 定 の 契 約 に 従 い 継 続 して 役 務 の 提 供 を 行 うあるいは 受 ける 場 合 につ<br />

いていうが、ここではより 広 く 収 支 と 益 費 との 動 的 関 連 について 定 義 している。なお、SFAC<br />

No.6のパラグラフ 141 の 脚 注 55 では「 発 生 の 技 法 」( 償 却 原 価 )と「 繰 延 の 技 法 」( 減 価 償 却 )<br />

とを 区 別 しているが、ここではそうした 区 別 はしていない。 本 文 でも 述 べたように 償 却 原 価 での<br />

毎 期 の 利 息 配 分 額 は 債 券 評 価 額 の 毎 期 増 価 というかたちをとって 満 期 時 に 額 面 額 となりその 金<br />

額 がキャッシュインフローとなるので、その 点 でそこでの 利 息 配 分 は 将 来 確 定 キャッシュインフ<br />

ロー( 額 面 額 )の 見 越 配 分 とみることができる。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

1「 過 去 ・ 現 在 」の 支 出 および 収 入 の 次 期 以 降 への 繰 延<br />

「 繰 延 」(deferral: 時 の 正 順 配 分 )… 収 支 が 先 で 益 費 が 後 ( 現 在 収 支 ・ 将 来 益 費 )<br />

2「 将 来 」の 支 出 および 収 入 の 今 期 への 見 越 ( 繰 上 )<br />

「 見 越 」(accrual: 時 の 逆 順 配 分 )… 益 費 が 先 で 収 支 が 後 ( 現 在 益 費 ・ 将 来 収 支 )<br />

収 支 からみれば 繰 延 操 作 が 現 在 から 次 期 以 降 への 配 分 ( 時 の 正 順 )であるのに 対 し、 見<br />

越 操 作 は 将 来 から 今 期 への 配 分 ( 時 の 逆 順 )である。ただ、その 後 者 の 将 来 キャッシュフ<br />

ローは 確 定 ないしは 少 なくとも 確 実 性 の 高 い 見 積 可 能 なキャッシュフローであることが<br />

要 件 となる。<br />

さらに、 支 出 と 収 入 の 区 分 、すなわち 支 出 にかかわる 配 分 と 収 入 にかかわる 配 分 という<br />

点 から 次 のように 分 類 される。<br />

1「 支 出 」にかかわる 配 分 … 費 用 配 分 (ないし 原 価 配 分 )<br />

○イ 繰 延 … 過 去 ・ 現 在 支 出 = 資 産 → 費 用 化 、○ロ 見 越 … 費 用 化 ← 将 来 支 出 = 負 債<br />

2「 収 入 」にかかわる 配 分 … 収 益 配 分<br />

○ハ 繰 延 … 過 去 ・ 現 在 収 入 = 負 債 → 収 益 化 、○ニ 見 越 … 収 益 化 ← 将 来 収 入 = 資 産<br />

通 常 、 配 分 は 支 出 側 にかかわる 費 用 配 分 の 議 論 が 多 くなるが、 収 入 側 にかかわる 収 益 配<br />

分 も 費 用 配 分 とまったく 同 じ 理 屈 で 成 り 立 つことに 注 意 されたい 24 。そして、 原 価 配 分 と<br />

か 費 用 配 分 といわれるものが 支 出 側 にかかわることに 注 意 したい。さらに、 重 要 な 点 は、<br />

ここでは 収 支 の 配 分 による 益 費 の 決 定 がとりもなおさず 資 産 ・ 負 債 の 決 定 でもあるという<br />

ことである 25 。 以 上 の 要 約 図 を 示 せば、 図 3のようになる。<br />

図 3 収 支 と 利 益 / 資 産 ・ 負 債<br />

収 支<br />

益 費<br />

支 出 収 入<br />

繰 延 費 用 収 益<br />

( 過 去 ・ 現 在 収 支 ) 資 産 負 債<br />

見 越 費 用 収 益<br />

( 将 来 収 支 ) 負 債 資 産<br />

最 後 に 次 の 点 を 述 べておきたい。すなわち、 以 上 の 利 益 計 算 の 議 論 においては、 配 分 の<br />

24 先 の 注 23 でも 述 べたように 経 過 勘 定 項 目 ( 未 収 収 益 、 前 受 収 益 など)に 限 らず、 例 えば 掛<br />

売 りによる 収 益 計 上 も 広 い 意 味 での「 収 益 配 分 」(○ニ 見 越 )ということなる。さらに 現 金 売 りで<br />

さえも、より 広 い 意 味 で 配 分 のなかに 入 れてもいい。なお、 有 価 証 券 の 時 価 評 価 損 益 も「 実 現 」<br />

と 解 して、それがキャッシュフローの 配 分 であるという 見 解 ( 主 観 のれん 説 )がある。 前 掲 拙 著<br />

『 時 価 会 計 の 基 本 問 題 』 第 6 章 第 2 節 参 照 。<br />

25 今 日 こうした 繰 延 や 見 越 (フロー 配 分 )による 資 産 ・ 負 債 は 縮 小 される 傾 向 がある。それは<br />

いわば( 実 態 ・リスク 開 示 志 向 による)ス ト ッ ク 評 価 のフロー 配 分 への“ 浸 食 現 象 ”ともいえる。<br />

ここに、 性 質 を 異 にする2つの 計 算 系 のかかわりが 重 要 な 問 題 になる。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

基 礎 がキャッシュフローにあることに 加 えて、その 配 分 にあたって 当 初 認 識 時 の 計 算 基 礎<br />

がそれ 以 降 継 続 して 用 いられるということが 重 要 である。 配 分 のための 計 算 基 礎 がその 当<br />

初 認 識 時 の 計 算 基 礎 から 切 断 分 離 されていないということである。3つのケースでのPV<br />

の 計 算 と 利 子 配 分 においてこのことを 確 認 されたい。<br />

したがって、 以 上 の 議 論 に 基 づく 利 益 計 算 の 特 徴 を、とりわけ「 時 価 会 計 」との 比 較 に<br />

おいて 端 的 に 言 えば、 当 初 認 識 時 にその 計 算 基 礎 ( 当 初 時 の 測 定 情 報 )をおくキャッシュ<br />

フロー 配 分 型 利 益 計 算 ということができる。これが、これまでのいわゆる「 原 価 主 義 会 計 」<br />

といわれる 会 計 枠 組 みの 基 礎 にあるモデルである。それを3つの 要 素 の 頭 文 字 をとって 利<br />

益 計 算 の「C-A-Aモデル」( 計 算 系 Ⅰ)とでもいうことができる。 金 融 商 品 会 計 とりわ<br />

け 現 物 証 券 やデリバティブに 典 型 的 にみられる「 時 価 会 計 」でのストック 評 価 および 利 得<br />

損 失 計 算 ( 計 算 系 Ⅱ)との 対 比 が 重 要 な 論 点 となるが、そのためにも 原 型 的 モデルを 抽 出<br />

しておくことが 必 要 になるのである。<br />

2 会 計 配 分 と 価 値 評 価 -2つの 計 算 系 -<br />

会 計 配 分 による 利 益 と 資 産 ・ 負 債 の 決 定 が 会 計 計 算 にとって 唯 一 のモデルというわけで<br />

はない。とりわけ、 今 日 の「 時 価 会 計 」での 時 価 測 定 は、それとは 性 格 を 異 にしている。<br />

したがって、 両 者 を 区 別 するメルクマールが 何 であるかが 重 要 になる。ここでは、それを<br />

当 初 認 識 時 に 計 算 基 礎 をおく「 会 計 配 分 」 型 会 計 ( 計 算 系 Ⅰ)と 当 初 認 識 時 から 分 離 切 断<br />

された 特 定 時 点 (フレッシュ・スタート)でのより 直 接 的 な「 価 値 評 価 」 型 会 計 ( 計 算 系<br />

Ⅱ)との 相 違 として、 以 下 のように 要 約 しておきたい。<br />

〈 系 Ⅰ〉 当 初 認 識 時 に 計 算 基 礎 をおくキャッシュフロー 配 分 型 会 計<br />

収 支 を 基 礎 にする 適 正 な 期 間 損 益 計 算 を 志 向 : 収 支 と 益 費 から 資 産 ・ 負 債 が 決 定 さ<br />

れるという 点 が、これまでのいわゆる「 原 価 主 義 会 計 」といわれる 会 計 枠 組 みの 特 徴<br />

である。<br />

〈 系 Ⅱ〉 当 初 認 識 から 分 離 切 断 された 特 定 時 点 のストック 価 値 評 価 型 会 計<br />

ストック 価 値 評 価 による 実 態 ・リスク 開 示 を 志 向 : 今 日 の「 時 価 会 計 」の 測 定 の 特<br />

徴 であり、 特 定 時 点 の 価 値 評 価 として 貸 借 対 照 表 価 額 が 決 定 され、 利 益 ( 利 得 ・ 損 失 )<br />

計 算 はそれに 基 づく 評 価 差 額 として 計 算 される。その 点 で、 系 Ⅰと 性 質 を 異 にする。<br />

系 Ⅰと 系 Ⅱは 必 ずしも 二 者 択 一 というものではない。 両 者 がそれぞれ 対 象 を 異 にするな<br />

ら( 例 えば 非 金 融 系 と 金 融 系 )、「 全 体 」は2つの 計 算 系 のハイブリッドな 計 算 システムと<br />

して 構 成 されることになる。 実 際 、 現 実 の 制 度 はこうした 原 型 モデルからみると 性 質 の 異<br />

なる2つの 系 が 併 存 しているとみることができる。そして、 会 計 が 現 実 に 制 度 として 存 在<br />

しているかぎり、 系 Ⅰと 系 Ⅱは 計 算 の 論 理 だけから、つまり 制 度 中 立 的 に 存 在 するという<br />

ものではない。ひらたく 言 えば、 計 算 の 目 的 ( 会 計 目 的 )によって 規 定 されるということ<br />

である。したがって、「 原 価 」、「 配 分 」、「 実 現 」など 会 計 認 識 ・ 測 定 の 概 念 も 制 度 的 な 規<br />

定 を 受 けての 概 念 ということになる 26 。ここに 計 算 系 の 制 度 的 規 定 性 というより 大 きな 観<br />

点 からの 考 察 が 必 要 になる。<br />

26 この 点 については 前 掲 拙 稿 「 時 価 会 計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容 ( 下 )」 図 表 7 参 照 。<br />

- 17 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

系 Ⅰ<br />

系 Ⅱ<br />

表 5 2つの 計 算 系 の 特 徴 -そのモデル 比 較 -<br />

ストック/フロー 会 計 枠 組 みの 将 来 収 支 の 簿 価 計 算 の<br />

計 算 の 基 点<br />

資 産 の 評 価<br />

計 算 の 目 的 計 算 と 開 示<br />

の 関 係 思 考 確 定 性 あり 方<br />

フロー 志 向 配 分 固 定 原 価 ・ 連 続 ・ 分 配 可 能 志 向 投 下 資 金 回 収<br />

当 初 認 識 時<br />

(フロー→ストック) (derived meas.) ( 確 定 的 ) 償 却 原 価 フロー 配 分 型 ( 利 害 調 整 目 的 ) 剰 余 計 算<br />

ストック 志 向 価 値 評 価 特 定 時 点 変 動 時 価 非 連 続 ( 離 散 )・ 企 業 価 値 志 向 実 態 ・リスク 開 示<br />

(ストック→フロー) (direct meas.) (フレッシュ・スタート) ( 不 確 実 ) ( 公 正 価 値 ) ストック 評 価 型 ( 投 資 決 定 目 的 ) ( 財 務 透 明 性 )<br />

表 5は2つの 計 算 系 の 特 徴 の 大 まかな 比 較 を 示 したものである。 系 Ⅱがストック 志 向 で<br />

あることは 計 算 目 的 が 実 態 ・リスクの 開 示 会 計 ( 財 務 透 明 性 )を 志 向 しているところから<br />

きている。そこでの 財 務 透 明 性 は 本 来 的 には 利 益 計 算 とは 別 であり、 直 ちにそれに 直 結 す<br />

るというものではない。しかし、それを 財 務 諸 表 本 体 で 行 うと 利 益 計 算 とかかわってくる。<br />

これが 例 えば 包 括 利 益 なる 利 益 概 念 を 生 み、と り わ けストック/フロー 関 係 において 問 題<br />

を 複 雑 にしている 27 。 包 括 利 益 および(その 報 告 様 式 である) 包 括 利 益 計 算 書 は、いわば<br />

フロー 計 算 志 向 の 系 Ⅰとストック 計 算 志 向 の 系 Ⅱとの「 交 錯 」と「 調 整 」の 場 になってい<br />

るのである。このことは、あとでも 述 べるように、 最 近 の 業 績 報 告 をめぐる 議 論 のなかに<br />

もあらわれている。<br />

また、すでに 本 文 で 述 べたように、 計 算 の 基 点 の 相 違 も 重 要 である。この 計 算 基 点 の 相<br />

違 ( 当 初 認 識 時 vs.フレッシュ・スタート)は、 会 計 思 考 の 基 本 的 相 違 (フロー 配 分 思 考<br />

vs.ストック 価 値 評 価 思 考 )や 資 産 ・ 負 債 の 評 価 の 相 違 ( 原 価 vs. 時 価 )あるいは 簿 価 決 定<br />

の 方 法 の 相 違 ( 連 続 ・フロー 配 分 型 vs. 非 連 続 ・ストック 評 価 型 )と 密 接 にかかわってい<br />

る。さらに、この2つの 計 算 系 の 併 存 は 計 算 の 目 的 ( 会 計 目 的 )において 分 配 可 能 利 益 を<br />

志 向 する 会 計 と 企 業 価 値 を 志 向 する 会 計 とが 交 錯 するかたちで 現 れ、 現 実 の 制 度 ( 商 法 )<br />

においてその 調 整 がなされるかたちになっている 28 。ちなみに、 今 日 の 貸 借 対 照 表 を2つ<br />

の 系 のハイブリッドとして 示 せば、 表 6のようになる。ただし、B/Sのすべての 項 目 を<br />

あげているわけではない 29 (とりわけ 繰 延 資 産 は 系 Ⅰの 資 産 観 を 象 徴 する 資 産 といえる 30 )。<br />

そ し て、 損 益 計 算 ならびに 報 告 様 式 も 原 理 的 にP/L=(ⅰ) 系 Ⅰによる 成 果 計 算 +(ⅱ) 系<br />

Ⅱによる 成 果 計 算 …(a)、というかたちになる。そのさい、B/S=1 系 ⅠのB/S 項 目<br />

+2 系 ⅡのB/S 項 目 …(b)とすると、(a)と(b)との 規 定 関 係 は、<br />

27 実 態 ・リスク 開 示 志 向 会 計 と 利 益 計 算 との 矛 盾 については 前 掲 拙 著 『 時 価 会 計 の 基 本 問 題 』<br />

第 2 章 および 第 3 章 参 照 。 特 に、 実 態 ・リスクの 開 示 →リスクをともなう 資 産 ・ 負 債 の 測 定 属 性<br />

の 選 択 、という 規 定 関 係 が 重 要 である。リスク 開 示 (あるいはリスク 管 理 )にはリスクを 反 映 す<br />

る 測 定 属 性 が 選 択 されるわけで、それを 貸 借 対 照 表 本 体 でおこなうと、その 属 性 に 規 定 された( 原<br />

価 ・ 実 現 の 枠 組 みとは 性 質 を 異 にする)あらたな 利 益 計 算 の 問 題 が 生 じてくるわけである。<br />

28 商 法 第 290 条 1 項 6 号 の 新 設 がそれである。 商 法 の 配 当 規 制 と 開 示 規 制 との 調 整 方 式 につい<br />

ては 拙 著 『 時 価 会 計 の 基 本 問 題 』 第 5 章 補 論 5.2 参 照 。<br />

29 特 にキャッシュ 項 目 は 図 2で 示 される 観 点 からして、いずれかの 系 に 属 するという 性 格 をも<br />

つ 資 産 ではないといえる。<br />

30 しかしこうした 資 産 は 系 Ⅰを 象 徴 しているがゆえに、 今 日 の 系 Ⅱの 台 頭 からすれば、 先 の 注<br />

25 でも 指 摘 したように、“ 浸 食 ”の 格 好 の 対 象 になる。 実 際 、 制 度 的 にもそうした 資 産 の 一 部 は<br />

即 時 費 用 化 される 運 命 にある。すなわち、 従 来 、 繰 延 資 産 処 理 が 認 められていた 開 発 費 と 試 験 研<br />

究 費 は「 研 究 開 発 費 に 係 る 会 計 基 準 」( 企 業 会 計 審 議 会 、 平 成 10 年 )においてすべて 発 生 時 に<br />

費 用 処 理 され 繰 延 処 理 は 認 められなくなった。<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

系 Ⅰに 関 して:(ⅰ) 系 ⅠによるP/L → 1 系 ⅠのB/S<br />

系 Ⅱに 関 して:2 系 ⅡのB/S<br />

→ (ⅱ) 系 ⅡによるP/L<br />

という 基 本 関 係 になる。 系 Ⅰと 系 ⅡとではP/LとB/Sとの 規 定 関 係 が 互 いに 逆 になっ<br />

ていることに 注 意 されたい。<br />

表 6 貸 借 対 照 表 と2つの 系<br />

-そのハイブリッド 構 造 -<br />

資<br />

産<br />

資<br />

産<br />

資<br />

産<br />

負<br />

債<br />

・<br />

資<br />

本<br />

販 売 用 資 産 ( 製 品 ・ 商 品 、 販 売 用 不 動 産 )<br />

系 Ⅰ 回 収 資 産 ( 売 掛 債 権 )、 運 用 資 産 ( 貸 付 金 , 満 期 保 有 目 的 債 券 )<br />

事 業 用 資 産 ( 有 形 固 定 資 産 )<br />

系 Ⅱ 運 用 資 産 ( 売 買 目 的 有 価 証 券 ,デリバティブ)<br />

交 錯 投 資 不 動 産 、 無 形 資 産 、 土 地 、 減 損 会 計 対 象 資 産<br />

営 業 債 務 ( 買 掛 金 、 支 払 手 形 )<br />

系 Ⅰ<br />

資 金 調 達 ( 借 入 金 、 社 債 )<br />

系 Ⅱ デリバティブ 債 務 、 退 職 給 付 債 務<br />

交 錯 留 保 利 益 、 包 括 利 益<br />

表 6での 交 錯 とは2つの 系 が 重 なったところ、あるいはぶつかり 合 ったところ(ある 種<br />

の 混 乱 )であるが、 解 釈 によってはいずれかの 系 となりうる 可 能 性 も 考 えられる 31 。 退 職<br />

給 付 債 務 もある 種 の 交 錯 がみられるが、その 基 本 は 系 Ⅱに 属 する 32 。また 将 来 、 金 融 商 品<br />

の 全 面 時 価 アプローチが 採 られるとなると、 金 融 と 非 金 融 のハイブリッドがいっそう 明 確<br />

なかたちとなってあらわれることになる。いずれにしても、 今 後 、 貸 借 対 照 表 と 損 益 計 算<br />

書 の 再 構 成 の 議 論 が 必 要 になるであろう 33 。<br />

31 例 えば 減 損 会 計 を 系 Ⅰに 属 するものとして 論 じた 前 掲 米 山 『 減 損 会 計 』がある。 前 掲 拙 稿 「 書<br />

評 : 米 山 正 樹 著 『 減 損 会 計 』」 参 照 。 包 括 利 益 については、それを3 層 構 造 的 に 検 討 している 前<br />

掲 拙 著 『 時 価 会 計 の 基 本 問 題 』 第 4 章 補 論 4.2 参 照 。またデリバティブでも 例 えば「 外 貨 建 取 引<br />

等 会 計 処 理 基 準 注 解 」の 注 7、および 同 実 務 指 針 (1の3)での 為 替 予 約 等 の( 特 例 ではあるが)<br />

「 振 当 処 理 」(○イ 確 定 ・ 固 定 されたキャッシュフローの 円 換 算 額 = 資 産 ないし 負 債 →○ロ 直 先 差 額<br />

の 期 間 配 分 )は 系 Ⅰに 属 する 会 計 処 理 といえる(○イ と○ロ の 規 定 関 係 を 逆 にすれば、すなわち 直 先<br />

差 額 の 期 間 配 分 → 資 産 ・ 負 債 の 簿 価 とすればそれは 償 却 原 価 法 となるが、い ずれにしても 系 Ⅰで<br />

ある)。<br />

32 詳 しくは 本 稿 の 続 編 「 割 引 現 在 価 値 と 価 値 評 価 」で 論 じる 予 定 である。<br />

33 最 近 公 表 された 新 しい 業 績 報 告 書 に 関 するIASB 案 では「 営 業 」と「 金 融 」のヨコの2 区<br />

分 に 加 えてタテの2 区 分 (コラム1とコラム2)の 報 告 様 式 となっているが、そこでのコラム1<br />

とコラム2の 区 分 もこうしたハイブリッド 構 造 の1つの 現 れであり、その1つの 形 ( 形 態 )とみ<br />

ることができる。この 点 については 前 掲 拙 稿 「 時 価 会 計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容 ( 下 )」の 付 記 参<br />

照 。 損 益 計 算 書 の 将 来 方 向 については 前 掲 拙 著 『 時 価 会 計 の 基 本 問 題 』 第 9 章 補 論 9.2 参 照 。な<br />

お、こうした 貸 借 対 照 表 の 再 構 成 の 議 論 は、かつて 木 村 和 三 郎 が 展 開 した「 貸 借 対 照 表 の 分 解 」<br />

の 議 論 ともつながりうる。 前 掲 拙 稿 「 時 価 会 計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容 ( 下 )」 注 63 参 照 。 損 益<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

企 業 会 計 はこれまで 歴 史 的 に 大 きくは 静 態 論 思 考 から 動 態 論 思 考 への 発 展 進 化 してき<br />

たといえる。この 静 態 論 から 動 態 論 への 発 展 からみると、 今 日 の 企 業 会 計 には 動 態 論 とは<br />

また 性 質 を 異 にする 会 計 思 考 が 横 たわっているようにみえる。それは 端 的 に 言 えば 企 業 価<br />

値 ( 株 主 価 値 )を 志 向 する 会 計 といえる 34 。かくして、 今 日 の 会 計 は 動 態 論 的 会 計 観 から<br />

さらに 企 業 価 値 的 会 計 観 へと 移 行 しているようにみえる。それが 完 全 にとってかわる 会 計<br />

観 になるのかどうか、きわめて 重 要 な 点 である。 上 記 の2つの 計 算 系 の 比 較 の 基 底 には、<br />

実 はこうした 動 態 論 思 考 ( 動 態 論 的 会 計 観 )と 企 業 価 値 思 考 ( 企 業 価 値 的 会 計 観 )とが 存<br />

在 しているのである 35 。<br />

補 遺 2 数 学 的 表 現<br />

ものごとの 基 礎 にあるものや 本 質 をつかむには、 可 能 な 限 り 血 や 肉 を 取 り 払 って 残 って<br />

いくもの、すなわち 関 係 性 を 取 り 出 すことが 重 要 になる。この 関 係 性 の 表 現 には、 数 学 的<br />

表 現 がもっとも 有 効 である。 以 下 では、 収 支 配 分 型 利 益 計 算 の 基 礎 としての 会 計 配 分 ( 補<br />

遺 1)と、 資 産 化 と 利 子 配 分 の 対 関 係 ( 第 5 節 )をシンプルな 数 学 的 表 現 でもって 示 して<br />

おきたい。<br />

1 会 計 配 分 の 基 礎<br />

配 分 ルールを 関 数 f( 繰 延 操 作 をf 1 、 見 越 操 作 をf 2 )、キャッシュフローをCF( 現<br />

在 フローをCF、 将 来 フローをCF)、 さ らにインフローをCIF、アウトフローをCO<br />

Fとすれば、 収 益 R、 費 用 E、 資 産 A、 負 債 Lの 基 本 関 係 はキャッシュフローの 配 分 関 数<br />

fによって 以 下 のように 記 述 される 36 。<br />

E=<br />

○イf 1 (COF) → A t =COF-∑E ΣE=COF<br />

○ロf 2 (COF) → L t =ΣE ΣE=COF<br />

…(1)<br />

R=<br />

○ハf 1 (CIF) → L t =CIF-ΣR ΣR=CIF<br />

○ニf 2 (CIF) → A t =ΣR ΣR=CIF<br />

…(2)<br />

(1) 式 と(2) 式 とのシンメトリーな 関 係 、すなわち 両 式 のEとRは、f 1 とf 2 はそのま<br />

まで、COFとCIF、AとLとの 相 互 交 換 となっていることに 注 意 されたい。この 点 を<br />

計 算 書 の 将 来 方 向 については 前 掲 拙 著 『 時 価 会 計 の 基 本 問 題 』 第 9 章 補 論 9.2 参 照 。<br />

34 こうした 会 計 思 考 の 変 遷 については 前 掲 拙 稿 「 時 価 会 計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容 ( 上 )」 第 Ⅰの<br />

1 節 参 照 。<br />

35 こうした 経 済 の 動 態 と 会 計 観 の 変 遷 については 前 掲 拙 稿 「 時 価 会 計 と 資 本 利 益 計 算 の 変 容<br />

( 下 )」 図 表 8 参 照 。<br />

36 ここで 基 本 関 係 とは、キャッシュフローにつきそれが 現 在 キャッシュフローと 将 来 キャッシ<br />

ュフローだけからなる 場 合 をいう。○ロと○ニについては、 将 来 キャッシュフローが 実 際 フローとし<br />

て 実 現 するまで 益 費 を 継 続 して 計 上 する 場 合 をいう。<br />

- 20 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

理 解 するのがミソであり、そのためには 上 記 のシンプルな 数 学 的 表 現 で 十 分 なのである。<br />

さらに 集 約 すれば、(1),(2)より、 次 のように 示 される(ただし、gはA,Lの 決 定 関<br />

数 )。<br />

R お よ び E = f ( C F) → AおよびL=g(CF, f(CF)) …(3)<br />

2 資 産 化 と 利 子 配 分 の 対 関 係<br />

現 在 価 値 (PV)、 利 息 配 分 (I)、 資 産 ・ 負 債 (A、L)の 簿 価 および 簿 価 変 動 は、 将<br />

来 キャッシュフローをCF、 割 引 率 をr、 毎 期 の 契 約 上 の 支 払 い(あるいは 受 取 り) 利 息<br />

のキャッシュフローをcfとして、 以 下 のように 示 される。<br />

系 Ⅰの 簿 価 および 簿 価 変 動 : 当 初 認 識 時 に 計 算 基 点 をおく「 連 続 ・フロー 配 分 型 」<br />

n<br />

CF<br />

現 在 価 値 :PV t =f(CF,r, t)= ∑ t<br />

= (1+<br />

r)<br />

t 1<br />

…(4)<br />

資 産 ・ 負 債 の 簿 価 :A t orL t =PV t-1 ×(1+r)-cf=PV t<br />

…(5)<br />

利 息 配 分 :I t =PV t-1 ×r<br />

…(6)<br />

簿 価 変 動 :A t -A t-1 =PV t-1 ×r-cf=(6) -cf(=PV t -PV t-1 ) …(7)<br />

ここで、(5) 式 の 簿 価 の 値 が(4) 式 のPVに 等 しくなる 点 については 次 節 の 証 明 を 参 照 さ<br />

れたい。また、(7) 式 については、(5) 式 およびA t =PV t より<br />

A t =PV t-1 ×(1+r)-cf=PV t-1 ×+PV t-1 ×r-cf<br />

=A t-1 +PV t-1 ×r-cf<br />

∴ A t -A t-1 =PV t-1 ×r-cf<br />

となる。なお、リース 債 務 のケースでは(7) 式 の 値 がマイナスになるので、 簿 価 変 動 =c<br />

f-(6)=PV t-1 -PV t とすればよい。<br />

さて、 注 意 したいのは(7) 式 より、 簿 価 変 動 が(6) 式 の 利 息 配 分 から 出 てくることである。<br />

ここで 注 意 したいのは、(7) 式 より 簿 価 変 動 が(6) 式 の 利 息 配 分 から 出 てくること、そのさ<br />

い 利 子 率 rが 当 初 に 決 定 されていること( 購 入 社 債 のケースでは 実 効 利 子 率 の 決 定 )、P<br />

V t が 当 初 のPV 0 から 連 続 的 に 繋 がっており、しかもCFが 確 定 していること、 以 上 で<br />

ある。これが 時 価 会 計 での 時 価 変 動 との 決 定 的 な 相 違 である。そこで、 今 日 の 時 価 会 計 で<br />

の 価 値 測 定 ( 直 接 的 再 測 定 )についてPVでもって 示 しておくと、 次 のようになる。 但 し、<br />

表 5にも 示 されているように、 将 来 キャッシュフローは 確 定 的 なものではなく 不 確 実 ( 確<br />

率 変 数 )なので、CFは 不 確 実 な 将 来 キャッシュフローを 表 している。また、 割 引 率 も 測<br />

定 時 点 で 異 なりうるので、 先 と 異 なりrとしている。<br />

系 Ⅱの 簿 価 および 簿 価 変 動 : 当 初 認 識 時 から 分 離 切 断 された「 非 連 続 ( 離 散 )・ストッ<br />

ク 評 価 型 」<br />

- 21 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

資 産 ・ 負 債 の 簿 価 ( 価 値 ):PV t =f(CF,r, t)<br />

資 産 ・ 負 債 の 簿 価 変 動 :PV t -PV t-1<br />

…(8)<br />

…(9)<br />

ここで、3つの 重 要 な 相 違 点 を 指 摘 しておきたい。 第 1は、(4)と(8)の 相 違 、すなわち<br />

同 じくPVの 計 算 であっても、(8)ではCFとrが 確 定 的 ・ 固 定 的 なものではなく、 不 確<br />

実 ・ 変 動 的 であるという 相 違 に 注 意 されたい。 第 2は、(7)と(9)との 相 違 、すなわち 同 じ<br />

くPV t -PV t-1 であっても、(9)で 示 される 時 価 変 動 差 額 ( 評 価 損 益 )が(7)と 異 なり<br />

資 産 ・ 負 債 の 直 接 的 再 測 定 による 時 点 間 差 額 として 計 算 されるという 相 違 点 である。 第 3<br />

は、(5)と(8)との 相 違 、すなわち(5)の 簿 価 計 算 ないし 簿 価 決 定 のあり 方 を「 連 続 的 ・フ<br />

ロー 配 分 型 」といえば、(8)のそれは「 離 散 ( 非 連 続 ) 的 ・ストック 評 価 型 」ということ<br />

で 対 比 することができる。<br />

3 簿 価 =その 時 点 の 割 引 現 在 価 値 の 一 般 的 証 明<br />

3つのいずれのケースも 第 t 期 の 資 産 ・ 負 債 の 簿 価 =その 時 点 での 割 引 現 在 価 値 である<br />

ことを 一 般 的 に 示 しておきたい。 以 下 では、ケース1,ケース2について 証 明 するが、ケ<br />

ース3も 同 じように 証 明 できる( 読 者 自 ら 試 みられたい)。<br />

( 1 ) リース 会 計<br />

まず、n 年 後 ( 数 値 例 ではn=5)にリース 期 間 が 終 了 するリース 債 務 残 高 ( 簿 価 、 数<br />

値 例 では 1,700,000)は、 毎 期 のリース 支 払 額 をC( 同 じくC=400,000)とすれば、すで<br />

に 本 文 でみたように、 次 のように 表 される。ここでCの 係 数 は、 期 間 nに 関 する 年 金 現 価<br />

係 数 とよばれるものである。<br />

n<br />

n<br />

C (1+r)-1<br />

簿 価 = ∑ t = ×C<br />

n<br />

= (1+<br />

r) r(1+r)<br />

t 1<br />

=その 時 点 の 割 引 現 在 価 値<br />

…(10)<br />

次 に、1 年 後 の 簿 価 、すなわちn-1 年 後 にリース 期 間 が 終 了 するリース 債 務 残 高 ( 数 値<br />

例 では 1,396,900)は 次 のように 計 算 される。 本 文 でもみたように、 第 2 項 が 支 払 いリース<br />

料 Cのうち 元 本 支 払 額 である。<br />

n<br />

n<br />

(1+<br />

r)-1 ⎧ (1+r)-1<br />

⎫<br />

簿 価 =<br />

× C−<br />

⎨C-<br />

× C×<br />

r<br />

n<br />

n ⎬<br />

r(1+<br />

r) ⎩ r(1+r)<br />

⎭<br />

n<br />

n<br />

(1 + r)-1 (1+r)-1<br />

=<br />

× C−C+<br />

× C<br />

n<br />

n<br />

r(1+<br />

r)<br />

(1+r)<br />

n<br />

n<br />

n<br />

⎧(1+r)-1-r(<br />

1+r)+ r( 1+r)-r<br />

=⎨<br />

n<br />

⎩<br />

r(1+r)<br />

⎫<br />

⎬×<br />

C<br />

⎭<br />

- 22 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

n<br />

n-1<br />

(1+r)-1-r<br />

(1+r) -1<br />

× C=<br />

× C=その 時 点 の 割 引 現 在 価 値 …(11)<br />

n<br />

n-<br />

r(1+r)<br />

r(1+r)<br />

=<br />

1<br />

この(11) 式 の 値 はn-1 年 後 にリース 期 間 が 終 了 するリース 支 払 金 額 の 割 引 現 在 価 値 に<br />

等 しい。 そして、(10)、(11) 式 より 同 様 のことがn-2 年 後 以 降 についても 成 立 する。す<br />

なわち、 任 意 のnについてリース 債 務 簿 価 =その 時 点 での 割 引 現 在 価 値 が 成 立 する。<br />

(2) 満 期 保 有 目 的 債 券<br />

まず、n 年 後 ( 数 値 例 ではn=4)に 満 期 となる 債 券 の 期 首 簿 価 ( 数 値 例 では 9,650,000)<br />

は、 契 約 利 息 をC( 同 じく C=500,000)、 額 面 金 額 をK( 同 じくK=10,000,000)とすれば、<br />

C に 関 する 年 金 現 価 係 数 とKに 関 する 現 価 係 数 を 用 いて、 次 のように 表 される。<br />

n<br />

n<br />

C K (1+r)-1<br />

K<br />

簿 価 = ∑ t + =<br />

× C+<br />

n<br />

n<br />

n<br />

= (1+<br />

r) (1+r)<br />

r(1+r)<br />

(1+r)<br />

t 1<br />

=その 時 点 の 割 引 現 在 価 値<br />

…(12)<br />

次 に、1 年 後 の 簿 価 、すなわちn-1 年 後 に 満 期 となる 債 券 の 簿 価 ( 数 値 例 では<br />

9,729,000)は 利 息 法 に 基 づく 償 却 原 価 法 により 次 のように 計 算 される。 本 文 でもみたよう<br />

に、 第 2 項 が 金 利 調 整 差 額 ( 同 じく 350,000)の 償 却 額 、すなわち 債 券 簿 価 の 増 価 額 である。<br />

n<br />

n<br />

⎧(1+r)-1<br />

K ⎫ ⎡⎧(<br />

1+r)-1<br />

K ⎫ ⎤<br />

簿 価 =⎨<br />

× C+<br />

n<br />

n ⎬ +⎢⎨<br />

× C+ ⎬×<br />

r-C<br />

n<br />

n ⎥<br />

⎩ r(1+r)<br />

(1+r)<br />

⎭ ⎣⎩<br />

r(1+r)<br />

( 1+r)<br />

⎭ ⎦<br />

n<br />

n<br />

(1+r)-1<br />

K (1+r)-1<br />

Kr<br />

=<br />

× C+ +<br />

× C+ -C<br />

n<br />

n<br />

n<br />

n<br />

r(1+r)<br />

(1+r)<br />

(1+r)<br />

(1+r)<br />

n<br />

(1+r)-1<br />

K 1 Kr<br />

=<br />

× C+ - × C+<br />

n<br />

n<br />

n<br />

n<br />

r(1+r)<br />

(1+r)<br />

(1+r)<br />

(1+r)<br />

n<br />

(1+r)-1<br />

K(1+<br />

r) 1<br />

=<br />

× C+ - × C<br />

n<br />

n<br />

n<br />

r(1+r)<br />

(1+r)<br />

(1+r)<br />

(1<br />

=<br />

n<br />

+r)-(1+r)<br />

n<br />

r(1+r)<br />

K<br />

× C+<br />

(1+r)<br />

n-1<br />

n-1<br />

(1+r)<br />

-1 K<br />

= × C+<br />

=その 時 点 の 割 引 現 在 価 値 …(13)<br />

n-1<br />

n-1<br />

r(1+r)<br />

(1+r)<br />

この(13) 式 の 値 はn-1 年 後 に 満 期 となる 債 券 の 割 引 現 在 価 値 に 等 しい。 そして、(12)、<br />

(13) 式 より 同 様 のことがn-2 年 後 以 降 についても 成 立 する。すなわち、 任 意 のnについて、<br />

- 23 -<br />

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割 引 現 在 価 値 と 利 子 配 分 (PDF)<br />

償 却 原 価 法 による 債 券 簿 価 =その 時 点 での 割 引 現 在 価 値 が 成 立 する。<br />

Microsoft 数 式 3.0<br />

- 24 -<br />

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